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EX.6 Knight.Parade
-黄泉川・リビング-
打ち止め「ねえねえ!」
一方通行「あァ?」
打ち止め「これ見てみて、ってミサカはミサカはチラシを差し出してみる」サッ
一方通行「……『スターランドパーク』だァ? ンだこりゃ?」
結標「たしか、今月に新しくオープンする予定の遊園地じゃなかったかしら?」
一方通行「……あァ、たしかに遊園地みたいなことは書いてるな」
芳川「ネット上で話題になってるわね。今までの常識を覆すようなアトラクションがある遊園地だそうよ」
一方通行「ヘェー……で、これがどォしたンだ?」
打ち止め「……連れて行って! ってミサカはミサカはお願いしてみる」
一方通行「……は? 何で?」
打ち止め「だってだってー、この前あなたは遊園地に連れて行ってくれるって言ってくれた、ってミサカはミサカは思い出してみる」
一方通行「……あァ、そォいやそンなこと言ってたな」
打ち止め「だから、連れて行って欲しい、ってミサカはミサカは再度お願いしてみる」
黄泉川「いいじゃん。連れて行ってあげれば」
一方通行「……いや、別にいいンだけどよォ」
打ち止め「やったー!! ほんとは、また眠いとか言って断られそうと思ってたけど、ってミサカはミサカは予想外の回答に歓喜してみたり」
一方通行「でも、これ今週の日曜日にオープン……つゥことは二日後か」
打ち止め「何か問題でもあるの? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
一方通行「いいや。オープン初日に加え、その日は日曜日だから人が多いなと思ってな」ハァ
芳川「そうね。パスの予約が開始直後に終了したらしいし」
結標「そ、それはすごいですね……」
一方通行「そンな人気だったら、人がゴミのようにウジャウジャ湧いて出るだろォな」
打ち止め「ねえねえ、それってどういうこと? ってミサカはミサカは会話の流れが把握しきれなかったり」
芳川「率直に言えば、初日には行かない方が良いってことよ」
打ち止め「えええええええええええええええええええええええええ!!」
一方通行「うるせェぞクソガキ!」
打ち止め「ミサカは初日に行きたい! ってミサカはミサカは希望を言ってみたり!」
一方通行「はァ!? バカですかオマエは? 初日に行っても何にも良いことねェぞ」
打ち止め「ううう、それでも行きたいって、ミサカはミサカは信念を曲げずに言ってみる」
一方通行「何がオマエをそこまで駆り立てるンだよ?」
結標「……たぶん、これじゃない?」サッ
一方通行「あァ?」
結標「ほら、初日にナイトパレードをするらしいよ」
一方通行「ナイトパレード? 大覇星祭でやってたヤツみたいなモンか?」
結標「大覇星祭? 何それ?」
芳川「学園都市で行われる、まあ、簡単に言うなら体育祭みたいなものね」
結標「……ああ、そういえば一時期病院内に、体操服を着た怪我人がたくさん来るなんてことがあったけど、そんな行事が行われてたんですね」
黄泉川「で、その大覇星祭の初日にイルミネーションや花火とかで夜空を彩る、って感じのパレードが行われてたじゃん」
結標「へー、いいなあ、見てみたかったなー」
一方通行「……つまり、オマエはこれが見たいから初日に行きたかったわけか?」
打ち止め「……う、うん。ミサカ、このパレードを貴方と一緒に見たいんだ、ってミサカはミサカは要望を言ってみたり」
一方通行「……芳川」
芳川「何?」
一方通行「さっき予約が終わったとか何とか言ってたよな?」
芳川「ええ、それが?」
一方通行「それって、予約してねェヤツは入れねェのか?」
芳川「さあ? それはどうかは知らないけど、八万枚でパスがすぐに売り切れて販売中止、ってあったからどうでしょうね?」
一方通行「チッ、そりゃァ面倒なことになってやがンな」
打ち止め「そ、それってどういう事なの? ってミサカはミサカは恐る恐る聞いてみる」オロオロ
一方通行「もしかしたら、行っても中には入れねェかもしれねェってことだ……」
打ち止め「そんな……」グスン
芳川「でも、パレードの花火くらいは外からでも見れるんじゃない?」
一方通行「まァ、それで十分だろ。アトラクションはまた日を改めて行けばいいしな」
打ち止め「……う、うん、わかった。ってミサカはミサカは……納得してみる」
一方通行「………………………」
一方通行「ちょっと、出てくる」カツンカツン
芳川「あら、こんな時間にどこに行くつもり?」
一方通行「何でもねェよ」
一方通行「ただの買い物だ」
-ファミリーサイド・従犬部隊オフィス-
木原「……オイ!!」
社員A「は、はい!!」
木原「会社を立ち上げてからしばらく経つが、何で一人も客が来ねぇんだ!?」
社員A「さ、さあ?」
木原「わざわざ、新聞社脅してまで広告を配らせたってのによー、無駄骨じゃねぇか!」
社員B「おそらく、その広告に問題があるのでは?」
木原「あぁ!? どーいうことだ?」
社員B「この配られたチラシを見てください」ペラ
木原「あん?」ジロ
社員B「……………………」
木原「……………………」
木原「何がおかしいんだ?」
社員B「この『犬の散歩から暗殺まで』ってところです!」
木原「……だから、何がおかしいんだっつうの」
社員B「この『暗殺』の部分ですよ!」
社員B「こんな暗殺までやるような会社に、犬の散歩なんて普通頼みませんって!」
木原「……テメェ、マジで言ってんのか?」
社員B「『何でもやります』というキャッチコピーにした方が良いと思います」
木原「チッ、しかたがねえ。あと一週間待って客が来なかったら考えてやるか」
社員一同(俺(私)たちの給料は果たして出るのだろうか?)
ガシャーン!!
社員一同「!?」
木原「あん?」
一方通行「木ィィィィ原くゥゥゥゥゥン!!」カツンカツン
社員一同「」
木原「………………………」
木原「らっしゃーいッ!! 一方通行!!」
―――
――
―
―
――
―――
一方通行「―――ッつゥわけで、スターランドパークの予約パスを用意しろ」
木原「おいおい、学園都市最強()の小僧が、ガキのいいなりなんて笑わせる話だぜぇ」
一方通行「そォいう返事は聞ィいてねぇンだよ。いいから黙ってイエスと言え」
木原「スターランドパーク。週末に新しくできるテーマパークか」カタカタ
木原「たしかに、予約パスはすでに販売が終了してるな」
一方通行「だからオマエに頼んでンじゃねェか。売られてンだったら普通に買うわ」
木原「相変わらずムカつくガキだなー、おい」
一方通行「オマエなら裏ルートとかで入手とかが可能だろ?」
木原「……あぁ……まあ、可能っつったら可能だわな」
一方通行「恐喝、強盗、殺しでの入手はなしだ」
木原「……似合わないねぇ。前までのテメェならそんなモン気にしなかっただろーに」
一方通行「黙れ。オマエは大人しく予約パスを用意してりゃァイインだよ」
木原「チッ、まあいいや。もちろん金は払うんだろーなぁ」
一方通行「当たり前だろ。これは取引だ」
木原「ひゃははは、いいだろ。コイツにサインしろ」ペラ
一方通行「ンだこれ?」
木原「何って、ただの契約書だろ。依頼を頼んだだけ頼んで、トンズラさせねぇためのな」
一方通行「……わかった。妙なことは書いてねェよォだからな」カキカキ
一方通行「……ほら」ペラ
木原「よーし、契約成立だ」パシ
一方通行「で、具体的にどォやって手に入れるつもりだ?」
木原「まあ、焦るな。手に入れる算段はすでにできている」
一方通行「それは何だ?」
木原「ちなみに、今回売るのは物じゃねぇ。情報だ」
一方通行「情報だと?」
木原「ああ。コイツを手に入れる方法だ」
一方通行「オイオイ、手抜きかよ木原くゥン?」
木原「手抜き? 馬鹿言うんじゃねぇよ。コイツを手に入れるには多額の金が必要なんだよ」
一方通行「金? 何で金なンか必要なンだ?」
木原「馬鹿かテメェは? 暴力で手に入れたらいけねぇっつったのはテメェだろ?」
一方通行「……まさか、オマエが律儀にそンなことを守るなンてな」
木原「まあ、一応契約条件だしな。何よりこっちの方が楽だ」
一方通行「まァいい。早くその情報を言え」
木原「まあまあ、焦るんじゃねぇよ早漏君。説明ぐらいさせてくれてもいいじゃねぇか」
一方通行「……チッ。早くしろ」
木原「よーし、まずこういう数が限られたもの、いわゆる限定品って言われているのは知ってるか?」
一方通行「あァ、プレミアとかそォいうのだろ?」
木原「今回の予約パスは端から消費するために買うもんだからちょっと違うが、本質は変わらねぇ」
木原「実はこういうものは高く売れる。なぜかわかるか?」
一方通行「……限定っつゥくらいなら、数少ねぇ……つまり希少価値があるからか?」
木原「ま、そうだな。世に出回ってる数が少なければ少ないほど、それに比例して持ってる人数が限られてくるわけだ」
一方通行「……それって普通じゃねェか?」
木原「最後まで聞けって。そういう限定品は数が少ねえからなぁ、みんな欲しがるもんなんだよ」
木原「欲しいからこそ、それ自体に高い値がつく」
木原「それはテメェが欲しがってるパスも同じだ」
一方通行「……どォいう事だ?」
木原「わかんねぇのか? 八万枚限定で売られたパス。これイコール初日に入場できる権利みてぇなもんだ」
木原「このスターランドパークに行きたいやつは全員思うだろうな。初日に行きたいと」
木原「まして、初日にはナイトパレードっつう特典付きだしな」
木原「だけど、このパスが欲しいヤツ全員に手に入ったかどうかっつったら否だ」
一方通行「あァ、そりゃ限定だしな」
木原「だから、持ってねぇやつは全員欲しがるもんだ。だが手に入れようにも、もう普通には売られてねぇ」
木原「しかし、もしもだ。その価格よりちょっと多い金を払うだけで、その権利を買えるとしたら?」
木原「限定と言う催眠にかかったバカどもは、もちろん買うだろう」
木原「もし、たかが一万円ちょっとの紙切れが、数十万円の紙切れになったとしてもだ」
一方通行「……まさか」
木原「ああ、そのまさかだッ!! 買うんだよ、その安っぽい紙きれをよぉ!! 高い金でぇ!!」
一方通行「……だけどよォ、それは無理じゃねェか?」
木原「あん?」
一方通行「仮にそんな高い金を注ぎ込んでまで買おうと思うものを、そうやすやすと手放すとは思ェねンだよソイツらが」
木原「ああ、その点は大丈夫だ」
一方通行「はァ?」
木原「この八万枚限定のパスを買ったやつが、全員が全員スターランドパークに行きたくて買ったわけじゃーねぇんだよ」
木原「いるんだよ。そういう心理を利用して、一儲けしようとする輩、転売屋ってヤツがよぉ」
一方通行「……つまり、その転売屋ってヤツから買うってことか?」
木原「まあ、そういうこった」
一方通行「方法は分かった。で、その転売屋っつゥのはどこにいるンだ?」
木原「ここにいるよ」
一方通行「……………は?」
木原「だから、ここにいるよ」
一方通行「…………………………はァ!?」
木原「だから、ここにいるっつってんだろクソガキィ!!」
一方通行「まさか、オマエが転売屋……」
木原「あぁ? 違う違う。何勘違いしてんだよ。あんなクソ野郎どもと一緒にすんじゃねぇよ」
一方通行「あァ? オマエじゃねかったら、じゃァ、誰なンだよ?」
木原「まあ、これ見ろって」クル
一方通行「……パソコンか?」
一方通行「…………」
一方通行「……オークションだァ?」
木原「そうそう、転売屋のホームグラウンド。ネットオークション」
木原「さて、『スターランドパーク 予約パス』検索っと」カチャカチャ
木原「……おうおう、転売屋が蔓延ってんじゃねぇか」
木原「しかし、買う方もイカレてんじゃねぇか? こんな紙切れに五十万なんてよ?」
一方通行「だけど、これなら好都合じゃねェか」
一方通行「オークションだったら、高い金注ぎ込めば必ず手に入る」
木原「レベル5の財力だったら余裕だろうな」
一方通行「……アリガトよ木原。これでパスを買いに行く事ができる」
木原「よーし、じゃあ報酬の金を払ってもらおうか?」
一方通行「わかってるわかってる。百円くらいか?」
木原「舐めてンのかクソガキィ!? そんな金で商売成り立つか!!」
一方通行「じゃァ、いくらなンだよ?」ハァ
木原「七億」
一方通行「…………………はァ?」
木原「七億円だよ七億円。早く出せよクソガキ」
一方通行「オイオイ、木原くゥン。情報一つでこンな金額って詐欺じゃねェのか? あァン!?」
木原「あぁ? 何言ってんだ一方通行。契約書にサインしたじゃねぇか?」
一方通行「は?」
木原「『指定された金額を支払います』ってここに書いてんだろうが!!」
一方通行「普通、一回数万円くらいじゃねェのかよ? こォいうヤツって」
木原「見ろよ、そこの貼り紙」ビシ
一方通行「あァ?」
一方通行「……依頼料一回七億だと?」
一方通行「つゥかンだァ? この貼り紙。今さっき貼った感がすげェンだけどよォ」
木原「あぁ? 関係ねぇよ小僧! 指定したんだから払えよ!?」
一方通行「……チッ、クソッたれが」
木原「さあさあ、早く出せよ一方通行。何なら金がそろうまで待ってもいいんだぜ?
木原「ただし、一日ごとに利子が十割つくけどな? ぎゃははははっ!!」
一方通行「……………………………」
木原「さすがのレベル5のガキでも、そんな大金持ってるわけねぇか?」
木原「これでテメェは返し切れねェの借金を背負って、一生泥の中だ。ぎゃはははははっ!!」
一方通行「……あはッ、ギャハハハッ、あはぎゃはアギャはッ!!」
木原「……おいおい、テメェ。状況判断能力が壊れちまってんのか?」
一方通行「何面白ェことほざいてンだよ? 笑わせてくれるなよ木原くゥゥン?」
木原「あ?」
一方通行「いやァ、久々に腹の底から笑ったわ。ぎゃはっ! まだ笑いが止まんねえよ」
木原「はぁ?」
一方通行「久しぶりに笑わせてくれたお礼だ。チップだ。受け取れ木ィ原くゥゥン」ペラ
木原「あん?」ペラ
『小切手 ¥1,000,000,000』
木原「」
一方通行「オマエがそンな数億とか無茶苦茶な金額請求してくンのは端っから読めてンだよ」
木原「く、クソガキが……」orz
一方通行「レベル5ナメてンじゃねェぞ三下が」カツンカツン
~スターランドパーク開園当日~
-黄泉川家・リビング-
打ち止め「……はぁ」
黄泉川「どうしたじゃん打ち止め? 楽しみにしてた遊園地に行ける日だっていうのに」
芳川「でも、行ったところで中には入れないのだけどね」
打ち止め「……うう」
芳川「打ち止め。貴女に一つ伝えたい事があるのだけど」
打ち止め「何? ってミサカはミサカは元気はない声で聞いてみる」
芳川「もし、外からパレードを見るつもりなら早めに向かった方が良いわよ? ま、もう遅いけど……」
打ち止め「……それってどういう事?」
芳川「予約パスが手に入らなかったたくさんの人たちが、パレードだけでもと周辺に集まって来てるのよ」
芳川「まあ、簡単に言うと花見の場所取りみたいなものね」
打ち止め「そ、それって、今から行っても見れるのはせいぜい花火だけってこと? ってミサカはミサカは恐る恐る聞いてみる」
芳川「ええ、そういうことよ」
打ち止め「そ、そんな!? ってミサカはミサカは絶望に打ちひしがれてみたり」
結標「……でも、それって交通の邪魔とかで警備員が取り締まったりするんじゃないんですか? どうなんですか黄泉川さん?」
黄泉川「ええと、その遊園地の代表取締役があらかじめこうなる事を予想して、警備員に交通整理とかを頼んで来てるらしいじゃん」
結標「交通整理……て、周りに集まってくる事自体は許してるってことですか? 警備員も」
黄泉川「まあ、そういうことになるじゃん。上が決めた事だから何とも言えないけど」
芳川「と、言う事は愛穂? 貴女もその交通整理をしに行くという事?」
黄泉川「そうじゃん。昼から出勤じゃん」
結標「こんな休日にまでごくろうさまです」
黄泉川「はははー、いいじゃんいいじゃん、好きでやってる事だし」
打ち止め「……ところであの人はいつ帰ってくるのー? 一昨日の夜に出たっきり帰ってこないんだけど、ってミサカはミサカはぼやいてみる」
結標「そういえば帰ってきませんね」
黄泉川「まったく! あの悪ガキ何してんだか」
芳川「まあ、たぶん、今日中には帰ってくるのではないかしら?」
結標「? 何でそんなこと言えるんですか?」
芳川「彼あんなだけど、打ち止めとの約束を破るような馬鹿じゃないし……」
結標「……そう、ですね!」
芳川「それに、彼が幼女の泣き顔なんて見たいはずないしね。だって彼ロリk―――」
ボゴン!!
芳川「あたっ!? 何よ……スリッパ?」
一方通行「誰がロリコンだってェクソババァ!?」カツンカツン
打ち止め「あ、アクセラレータ?」
結標「あら、お帰りなさい一方通行。随分と遅かったわね」
一方通行「まァな。ちょっと、やっかいなことになってやがってな――」
ガコン!!
一方通行「痛って!? 何しや―――」
黄泉川「この悪ガキ!! 心配させんじゃないじゃん」ダキッ
一方通行「お、オイ! やめろ! 離れろ! ふざけんじゃねェぞオイ!」
黄泉川「帰らないなら帰らないってちゃんと連絡するじゃん……馬鹿」ウル
一方通行「……すまねェ」
芳川「……ところで、唐突に感動的な再開シーンモドキをやってる所悪いけど、キミは今まで何しに行ってたの?」
一方通行「あ? あァ……コレを買いに行ってた」スッ
結標「そ、それってまさか予約パス!?」
芳川「よくそんなモノが手に入ったわね」
一方通行「まァ、元の値段よりはるかに高くついたけどな」
打ち止め「一方通行……」ウル
一方通行「……つゥわけで、オマエはこれで正々堂々パレードを見に行けるってわけだ」
打ち止め「あ、ありがとう……」ウルウル
一方通行「泣くンじゃねェよ、みっともねェ。ガキは何も考えずただ笑顔で笑ってりゃイインだよ」
打ち止め「う、うん」ゴシゴシ
打ち止め「ありがとうね! 一方通行!!」ニコ
一方通行「ケッ、やっぱりオマエには笑顔――――」
ピィィィィィィィィィ……。
一方通行「が―――――――――」バタン
打ち止め「きゃ、きゃー!! ど、どうしたの!? ってミサカはミサカは突然のアクシデントに焦りを見せてみたり」ドタバタ
芳川「……あー、どうやら電極の電池が切れてしまってようね。たぶん家にいない間、能力使用モードばかり使ってたのじゃないかしら?」
一方通行「くぁwせdrftgyふじこlp」ピクピク
結標「うわー、カッコいいこと言おうとしてたっぽいのにかわいそうね」
打ち止め「うわーん! あなた起きてー!!」ブンブン
一方通行「ほあwfのあflじゃンrげぇあ」グラングラン
芳川「たしか、昔使ってたやつが残ってなかったかしら?」
結標「そういえば、病院で貰ってましたね」
芳川「結標さん。彼の部屋からチョーカー持って来てもらえる?」
結標「わ、わかりました!」ドタドタ
打ち止め「わぁーん!!」ガシガシ
一方通行「をえいsjhdkンvsじゃs」バンバン
黄泉川「……ふふふ、やっぱり騒がしいのっていいじゃんね」
-第六学区・スターランドパーク入口-
一方通行「あァー、体のアチコチが痛てェ」
打ち止め「ご、ごめん。ミサカが叩きすぎたせいで……」
一方通行「別にオマエは悪くねェよ。そもそも俺の不注意のせェだしな」
一方通行「それに、歩くのには支障はねェよ」
打ち止め「そ、そう……よかった、ってミサカはミサカは安心の溜め息を吐いてみる」
一方通行「……つゥか、何でババァ二人組は来ねェンだよ!?」
結標「しょうがないじゃない。黄泉川さんは警備員の仕事で、芳川さんはバイトなんだし」
一方通行「ったく、人がせっかく電池切れを起こしてまで人数分のパスを手に入れたっつゥのによ」
打ち止め「そうだよねー、どうせならみんなで行きたかったよね、ってミサカはミサカは少し残念がってみる」
一方通行「まァ、いいか。人数少ねェ方がラクだし」
結標「でも、打ち止めちゃんがいる時点で楽ではないと思うけど」
一方通行「まァな」
打ち止め「?」
係員「ただいま十時となりました。これより開園します。押さず走らずゲートをお通りください」
結標「……どうやら開園みたいよ」
打ち止め「わーい!! やっと入れるー、ってミサカはミサカは今までにないくらいはしゃいでみる!!」バタバタ
一方通行「係員が走るなっつってたの聞こえなかったのかクソガキ!」
打ち止め「ごめんなさい。でも、楽しみで楽しみで無意識に走ってしまうのだー、ってミサカはミサカは止まらないー!!」ドタドタ
一方通行「……結標」
結標「……はあ、わかってるわ」ブン
シュン
打ち止め「わーい!! って痛っ!? って、あれ? ミサカもっと前にいたような気がしたんだけど……」キョロキョロ
一方通行「一々動き回ってンじゃねェ!」
打ち止め「あ、あれ? 何であなたがこんなところにいるの?」
結標「私がテレポートさせたのよ」フリフリ
打ち止め「あ、そういうことか、ってミサカはミサカは全部把握してみたり」
結標「ダメよ打ち止めちゃん。私たちから離れたら」
打ち止め「えー、ミサカは早く中に入りたーい、ってミサカはミサカは――」
一方通行「次離れたらベクトルチョップ千叩きな」
打ち止め「……はい、ごめんなさい、ってミサカはミサカは前より一ケタ多いお仕置きの回数に恐怖を覚えてみたり」
係員「……次の方どうぞ!」
打ち止め「はい! ってミサカはミサカは挙手をして次の人アピールをしてみる」ノ
係員「あははー、お嬢ちゃん。パスは持ってるのかな?」
打ち止め「うん、持ってるよ! ってミサカはミサカはポケットからパスを……ん?」ゴソゴソ
係員「…………」
打ち止め「……あれ?」ゴソゴソ
係員「……どうしたのー? お嬢ちゃん?」
打ち止め「……お、落としちゃったかもしれない、ってミサカはミサカは空っぽのポケットを見て青ざめてみたり」タラ
結標「打ち止めちゃん? どうしたの?」
打ち止め「ぱ、パスを落としちゃった!! ってミサカはミサカは絶体絶命のピンチだと悟ってみたり」アセ
結標「えっ? ま、まさか、あの時に……」
打ち止め「ど、どうしよー、ってミサカはミサカは助け船を求めてみたり」アセ
結標「ど、どうしよう、って言われても……」アセアセ
結標「ど、どうしましょう? 一方通行……ってあれ? 一方通行?」
打ち止め「あれ? あの人どこにいったの? まさかもう中に……」
一方通行「オイ、クソガキ」ビシ
打ち止め「って痛っ! あれ、どこに行ってたの? ってミサカはミサカは……ってそれはミサカのパス!」
一方通行「ったく、落としてンじゃねェよ、探す身にもなれよクソガキ」スッ
結標「貴方……この人混みの中、一体どうやって捜し当てたのよ?」
一方通行「あァ? 俺の能力使えば余裕だろ」シレ
結標(どんだけ万能なのよ? ベクトル操作……)
打ち止め「あ、ありがとう! ってミサカはミサカは内心ホッとしながら感謝してみる」
一方通行「そンなことより、とっととパス出せよ。後がつっかえてやがンぞ」
打ち止め「あ」
<オイハヤクシロヨー モタモタシテンジャネエヨ イツマデカカッテヤガンダー
打ち止め「ご、ごめんなさい!! ってミサカはミサカは謝罪をしながらパスを渡してみる」
係員「はい、確認できましたよ。最後まで楽しんでくさいねー」
打ち止め「わーい!! やっと中に入れたー!! ってミサカはミサカはこの開放感に浸ってみたり」ドタドタ
一方通行「オイ! あンま動き回ンじゃねェぞクソガキィ!」
―――
――
―
―
――
―――
-スターランドパーク・ゲート前広場
打ち止め「うわー、すっごく広いねー、ってミサカはミサカはこの広大な空間に驚きを隠せなかったり」
一方通行「だが人の数がこれだから、そンなに広いとは感じねェけどな」
結標「初日は予約パスを買った人だけ入れるから、大体ここに八万人いることになるわね」
一方通行「まァ、あとから来る人間もいるだろォから、それよりちょっと少ねェンじゃねェか?」
打ち止め「すごーい!! いろいろなアトラクションがあるね、ってミサカはミサカは周りを見渡しながら報告してみたり」
結標「さっきゲートで貰ったパンフレットを見る限り、大きいアトラクションだけでも七〇種類、小さいのも含めれば一五〇種類のアトラクションがあるらしいわよ」
打ち止め「そ、そんなにあるの? ってミサカはミサカは膨大な数のアトラクションに呆気をとられてみたり」
一方通行「全部周るのに確実に一週間以上かかるな」
結標「どこに行こうか迷ってしまうわね」
一方通行「つゥか、そんな七〇種類も作れるくらい、遊園地のアトラクションの種類ってあったか?」
結標「ああ、それなら一つの種類のアトラクションにいろいろなやつがあるらしいわよ」
結標「例えば、ジェットコースターなら一〇種類、コーヒーカップなら一三種類、とか」
一方通行「無駄すぎンだろそれ」
結標「そうね」
一方通行「どンだけ広いンだよここ? 一五〇もアトラクション入るなンてよ」
結標「……どうやら、アンダーグラウンドっていう地下世界があって、そこにもたくさんあるらしいわね」
一方通行「スケールがデカ過ぎて、逆に笑っちまうな」
打ち止め「ねえねえ、早く乗り物乗ろうよ! ってミサカはミサカは二人の袖を引っ張ってみる」
一方通行「引っ張ンじゃねェよ。まず計画を立ててからだろ」
結標「そうね。数が多い上広いから、計画的に周った方が良さそうね」
一方通行「とりあえず、周りたいところを各々述べろ」
打ち止め「ジェットコースターに乗りたい!! ってミサカはミサカは要求を言ってみる」
一方通行「ジェットコースターっつっても、一〇種類あンだから、どれか選択しろ」
打ち止め「うーん、そうだねー。……この『トルネードスクリューコースター』に乗りたい! ってミサカはミサカはパンフレットに指を指してみる」
一方通行「……イヤな予感しかしねェ名前のアトラクションだなァオイ」
結標「そ、そうね。打ち止めちゃん、この『セブンスターズレディバグ』の方が良いんじゃない?」
一方通行「何だそれ?」
結標「この遊園地にあるジェットコースターの中でも、比較的にゆっくりな分類に入る子供用コースターだって」
打ち止め「ぶー、ミサカを子供扱いしないで欲しいんだけど、ってミサカはミサカは訴えてみたり」
一方通行「ガキをガキ扱いして何が悪りィンだよ?」
打ち止め「ぶーぶー!」
結標「とりあえず、この『トルネードスクリューコースター』はやめた方が良いわ」
一方通行「そォだな。ガキの体には負担が強すぎる」
結標「私でも、胃の中にある物が逆流してきそうで怖いわ」
一方通行「つゥわけで、ガキ用のジェットコースターで決まりだな」
打ち止め「嫌だ! ミサカはもっと楽しそうなやつが良い!! ってミサカはミサカは地団太を踏みながら抗議してみる」ドスドス
一方通行「クソガキィ……」
―――
――
―
―
――
―――
-スターランドパーク・スカイラインコースター-
ガチャンゴォウウウウウウウウンギュワー
<ワーワーキャーキャーヒャッホーイイエーイハガァァァイエェェェェェ
結標「……というわけ、ジェットコースターの中で真ん中くらいに位置する、『スカイラインコースター』に来ました」
打ち止め「わーい、これが実物のジェットコースターなんだね、ってミサカはミサカはテレビで見た時以上の迫力にビックリしてみたり」
一方通行「オイオイ、これ本当に真ん中なのか? すげェスピード出てンぞ」
打ち止め「もしかして、あなた怖いの? ってミサカはミサカはあなたの意外な弱点にニヤニヤしてみたり」ニヤニヤ
一方通行「あァ? 何バカなこと言ってンだクソガキ。これでも昔は音速を超える速度でビルの間を飛び交ってたンだぞ」
一方通行「この程度のおもちゃで怖がるわけねェだろォが」
結標「たぶん怖いと言うより、打ち止めちゃんのことが心配なんじゃない?」
打ち止め「えっ、そうなの? 何だー、ミサカのことを心配してくれてたのかー」
一方通行「はァ? 別に心配なンかしてねェし」
打ち止め「またまたー、そんなに照れなくてもいいのにー、ってミサカはミサカは指でツンツン――」
一方通行「ブン殴るぞクソガキが」プルプル
打ち止め「しようと思ったけど、命が惜しいのでやっぱりやめてみたり」ソー
一方通行「そォいや、あンま人が並んでねェな。八万人来てンだったら、てっきり二、三時間待ちはザラかと思ったが」
結標「そうね。まあ、一五〇種類もアトラクションがあるのだから、それなりに人数が割れるのじゃない?」
一方通行「見た感じからして、一番速度の速いジェットコースターに人が集まってるよォだな」
結標「これなら、結構な数一日で周れるんじゃない?」
打ち止め「ねえねえー、待ってる間に次行くアトラクション決めとこうよ! ってミサカはミサカは提案してみる」
一方通行「ああ、そォだな。じゃァ次は結標。オマエが決めろ」
結標「えっ? 私? うーん、そうねえ……」
一方通行「出来れば安全なヤツにしろよ。このクソガキに気絶されたらめンどくせェからな」
打ち止め「ひどーい! ミサカはそんなにやわじゃないよ、ってミサカはミサカは自分の耐久力の高さをアピールしてみたり」
一方通行「あァ? ナニ愉快な寝言ほざいてやがるンですかァ?」
打ち止め「寝言じゃないよ、ちゃんと起きてるよー」
一方通行「そもそもオマエ、前まで乗り物自体乗ったことねかったくせに、いきなりジェットコースターって、絶対オマエ吐くだろ?」
打ち止め「吐かないよー、ミサカはミサカは頑丈ですよーと」
一方通行「これに乗った後もそんな戯言を言えるといいな」
結標「よし! 決まったわ!」
一方通行「あァ? 何に乗るつもりなンだ?」
結標「この『スピニングバードスイングタワー』に……」
一方通行「却下」
結標「えー、何でよ? 面白そうじゃない?」
一方通行「さっきの話聞いてたか? 俺は安全なヤツを選べって言ったンだよ」
結標「でもこれ絶叫度はそんなに高くないわよ?」
一方通行「……ンだよ、その絶叫度ってのは?」
結標「そのアトラクションの激しさというか、怖さというか……」
結標「まあジェットコースターに例えるなら、どれくらいの高さから、どれくらいのスピードで降りるかとかの総合点を五点満点評価したものね」
一方通行「ヘェー、そンなモンがあンだな」
結標「ちなみにこの『スカイラインコースター』は三点で、さっき言ったスピニングバードスイングタワー』は二点」
結標「さっき私が勧めてた『セブンスターズレディバグ』と同じ絶叫度よ」
一方通行「……つまり、同じ絶叫度だから、このクソガキが乗っても大丈夫だと?」
打ち止め「ミサカは満点でも大丈夫だよー! ってミサカはミサカは心配性なあなたに言ってみる」
一方通行「ふざけンな、オマエに満点は十年早ェ。それと心配なンかしてねェ」
結標「とりあえず、この『スカイラインコースター』に乗ってみないと判断しようがないんじゃない?」
一方通行「そォだな。これに乗って万が一ガキがピンピンしていたら、それに乗っても大丈夫ってことだな」
結標「そういうこと」
打ち止め「だからミサカは満点(ry」
一方通行「だから十年(ry」
係員「……えー、次のお客様どうぞー!」
結標「あ、順番が周ってきたみたいよ」
打ち止め「お、おおー、ついにミサカ達の出番か、ってミサカはミサカは戦に出る武将のような気持ちで足を進めてみる」ブルブル
一方通行「あァ? あれだけエライ口利いたクセに、ビビってンじゃねェか?」
打ち止め「び、びびってなんかないよ! 武者震いだよ! ってミサカはミサカは訂正を求めてみたり」
一方通行「ハイハイわかりましたよー、と」
一方通行「つゥか、今さらだがガキの身長で制限に引っ掛かったりしねェのか?」
結標「どうやら大丈夫みたいよ。シートベルトと安全バーが変形して身長六〇センチまでは固定出来るらいいわ」
打ち止め「さすが学園都市製! ってミサカはミサカは高度な技術を褒め称えてみたり!」
係員「あのー、すみません」
一方通行「あァ?」
係員「誠に申し訳ないのですが……」
一方通行「ンだよ?」
係員「身体に障害のある方はご遠慮していただいているのですが……」
一方通行「あ? ああ、それなら問題ねェ」カチ
係員「あ、ああ、普通に立てる方でしたか。それは誠に申し訳ありませんでした。どうぞお楽しみください」
一方通行「あァ……」
結標「……ちょ、ちょっといいの? 能力使用モードは制限時間があるんじゃなかったっけ?」
一方通行「そォだな。ちなみにこれは古い方だから十五分しかねェ」
結標「ど、どうするつもりなの? いくらジェットコースターって言っても、出発して到着する時間は二分弱はあるわよ」
一方通行「なァに、別に乗ってる時も能力を使う必要はねェよ」
結標「えっ? そうなの?」
一方通行「学園都市の遊園地は結構前にジェットコースターの事故があって、人一人が死んでンだ」
一方通行「それ以降は安全装置とかその辺が強化されてるから、障害者が振り回されて落下するみてェなことは多分ねェだろ」
結標「まあ、言われてみればそうよね」
一方通行「それに、万が一落下したところで俺にはこれがあるしな」コンコン
結標「相変わらず万能ねえ、ベクトル操作」
係員「しっかりとシートベルトを締めて安全バーを下ろしてください。あと荷物は隣に置いてある籠の中にお入れください」
打ち止め「うおー、何か緊張してきた」ブルブル
結標「大丈夫打ち止めちゃん?」←打ち止めの隣に座っている
一方通行「オイクソガキ。ちゃンとバッグを籠の中に入れろ」←打ち止めの後ろに座っている
打ち止め「あ、忘れてた」ヨイショト
係員「シートベルトの確認をします」
結標「あ、どうぞ」
係員「……はい、問題ないですね」
打ち止め「ふふふ、さ、さあそろそろしゅ、出発だぜー」ブルブル
結標「打ち止めちゃん、もはや語尾を言う余裕もなくなったのね」
打ち止め「だ、大丈夫だよミサカは正常だよ、ってミサカはミ――」
係員「では安全バーをロックしますので、勝手に安全バーを上げないでくださいね」
ガタン
打ち止め「ぎゃー、何か下りてきたー!?」ガタ
一方通行「落ち付けクソガキ。係員が見てンじゃねェか」
係員「あのー、よろしいですか?」
結標「どうする打ち止めちゃん? 引き返すなら今よ?」
打ち止め「だだだだ大丈夫だよ、みみみミサカはオールオッケー準備万端でございますのよ」
一方通行「口調がめちゃくちゃじゃねェか」
係員「えー、ではこれより出発いたします。空の旅をお楽しみください!」
プルルルルルルルルルルルルルルル
打ち止め「おおー、いいいいいよいよ出発でござるかー!」
ガタン
結標「……ふう。いざ出発すると緊張するものね」
ガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタン
一方通行「……緊張するとかバカかよオマ――」
ガタン!!
一方通行「ッエーイ!!」
結標「何声を裏返してるのよ? 貴方だって緊張しているんじゃない?」ニヤニヤ
ガタガタガタガタガタガタガタ
一方通行「べ、別に緊張なンかしてねェし。むしろソファーの上に寝転がってるくらいにはリラックスして――」
打ち止め「うわ、つ、ついに頂上だねっ!! ってミサカはミサカは――」
ガコン ギュォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
結標「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
打ち止め「ぎゃああああああああああああああああああ、ってミサカはミサカはぎゃあああああああああああああああああああああ!!」
一方通行「くぁwせdrftgyふじこl」
―――
――
―
―
――
―――
結標「あー、楽しかった!」
打ち止め「ふふふふふふふふ、よよよよ余裕だったぜ、ってミサカはミサカは震える唇を必死に動かして喋ってみる」
一方通行「あァー、死ぬかと思った」
結標「ところで貴方何で演算切ってたの?」
一方通行「あァ? あれだあれ、操作を誤って切っちまったンだよ」
結標「そう。それは災難だったわね」
打ち止め「あれー、何でジェットコースターに乗ってる間に電極を操作する必要があったのかなー? ってミサカはミサカはニヤニヤしながら聞いてみる」ニヤニヤ
一方通行「……さァて、次のアトラクションに向かおォぜ」カツンカツン
打ち止め「あ、待って無視しないでよー、ってミサカはミサカはあなたの後を追ってみる」テクテク
結標「……予想外に怖かったのね」
-スターランドパーク・スピニングバードスイングタワー-
テッテレレテッテレレ~♪
グルングルングルングルングルングルングルン
<キャーヒャッホーイドッセーイ
一方通行「……初めは名前だけ聞いて何かと思ったが、よォするに回転ブランコか」
結標「……貴方は一体何だと思ってのよ?」
一方通行「チャイナ服を来たババアに回転蹴り食らわされるのかと」
結標「何それ?」
打ち止め「おおー、すっごい回転してる、ってミサカはミサカは見たままの光景を言ってみる」
一方通行「まァ、案の定こォいうアトラクションは人気がねェのか空いてるな」
結標「これなら待たずに乗れそうね」
一方通行「そォだな。それにコレなら怖……楽しめそォだな」
打ち止め「……今怖いって言わなかった? ってミサカはミサカは気のせいだと思うけど聞いてみる」
一方通行「……気のせいだろ」
結標「まあとにかく、さっさと乗りましょ? 時間は限られているのだから」
一方通行「おォ」カツンカツン
打ち止め「はーい」テクテク
―――
――
―
―
――
―――
係員「すみません。体の不(ry」
一方通行「チッ……問題ねェよ」カチ
係員「すみません(ry」
結標「貴方、もうあらかじめ電極のスイッチ入れといたら?」
一方通行「そォだな。一々このやり取りがめンどくせェ……」
打ち止め「でも、一応時間制限とかあるから節約するに越したことはないんじゃないかな? ってミサカはミサカは助言をしてみる」
一方通行「別にそンなに気にする必要はねェだろ」
結標「でも、そんな考えを持って行動した結果が朝のアレでしょ?」
一方通行「アレはな、学園都市の端から端まで飛び回ってたからその分電池を使ったからだ」
一方通行「こンなお遊び程度の能力使用で電池切れになってたまるか」
打ち止め「うーん、まあそこまで言うなら止めないよ、ってミサカはミサカは納得してみる」
打ち止め「じゃあ、このブランコに乗ろうよ!」
―――
――
―
―
――
―――
係員「はい、では不思議な空の世界をお楽しみください」
ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
打ち止め「うわー! 始まる始まる、ってミサカはミサカは胸を躍らせてみたり」
結標「楽しみねー」
一方通行「…………」
ガタンガタンガタンガタンガタン
グルングルングルングルングルングルングルン
打ち止め「わあああああああああああああ!!」
結標「ヤッホーーーーーーーーーーーーー!!」
一方通行「…………………………………………」
―――
――
―
―
――
―――
打ち止め「あー、楽しかった! ってミサカはミサカは感想を言ってみる」
結標「いやー、久しぶりに童心に帰ったわ。子供の頃の記憶なんてないけど」
一方通行「…………」
打ち止め「すごかったね。何か世界が傾いているみたいに感じた、ってミサカはミサカは不思議な空の世界というキャッチフレーズに納得してみたり」
結標「そうね。あんな感覚滅多に味わえないんじゃない?」
一方通行「なァ?」
打ち止め・結標「「何?」」
一方通行「どこがおもしろかったンだ?」
打ち止め「…………」
結標「…………」
一方通行「…………?」
結標「よし、次のアトラクションに行こう」テクテク
打ち止め「そうだね、ってミサカはミサカは次の目的地に向かって歩き出してみたり」テクテク
一方通行「オイ、ちょっと待てよオイ!」カツンカツン
-スターランドパーク・オープンカフェ-
結標「よくよく考えたら次行くアトラクション決めてなかったわね」
打ち止め「そうだねー、ってミサカはミサカはコップを片手に相槌を打ってみる」
一方通行「次はオマエが決めろよ」
打ち止め「えっ? ミサカ? あなたは行きたいところとかないの? ってミサカはミサカは思わぬ展開に戸惑ってみたり」
一方通行「俺は別にこれと言って行きてェ所はねェしな」
結標「相変わらずこういう事には関心がないようね」ハァ
一方通行「ンだよ? 文句あンのか?」
結標「別にー、でももう少しぐらいは遊びに対して関心を持ったら?」
一方通行「遊び……ねェ。考えたことねかったなァそンなの」
打ち止め「たしかにそうだよね。あなたは遊ぶというより寝る方を優先してるしね、ってミサカはミサカはあなたの生活リズムを思い出してみたり」
打ち止め「でも、アクセラレータもアワキお姉ちゃんがウチに来てからは結構変わったんだよ、ってミサカはミサカはアワキお姉ちゃんに感謝してみたり」
結標「えっ? そうなの? 別に感謝されるほどのことはしてない気がするけど……」
一方通行「オイクソガキ。余計なこと言ってンじゃねェぞ」
打ち止め「アワキお姉ちゃんが来る以前なンて絶対に早起きなンてしなかったもん! ってミサカはミサカはいくら起こしても全然起きなかったあなたを思い出してみたり」
一方通行「あァ? そンなのただの気まぐれだろ」
打ち止め「えー、でも絶対早起きする割合が増えてるよね?」
一方通行「……チッ、くっだらね」
結標「ふふふ、昔話もいいけどこれからのことを考えましょ?」
一方通行「ああそォだな。次はどのアトラクションに行くか」
打ち止め「無難にメリーゴーランドとかどうかな? ってミサカはミサカは提案してみる」
結標「メリーゴーランドか……あれって子供が乗る分はいいのかもしれないけど、大人の私たちが乗るのはちょっとねー」
一方通行「メリーゴーランドは俺には不向きのアトラクションだ。どォしても乗りてェンならオマエ一人だけで乗れ」
打ち止め「うーんそこまで言うなら別のが良いかな? ってミサカはミサカはパンフレットを眺めてみたり」
結標「このコーヒーカップ系のヤツは? そんなに人気もなさそうだし、貴方の体にも優しいでしょ?」
一方通行「つゥか、そンなの乗って楽しいか、って話しになンねェか?」
打ち止め「あ、でも絶叫度四点のコーヒーカップがあるよ! ってミサカはミサカは指を指してみる」
結標「『サイクロンカプセル』。あからさまに嫌な予感しかしないわね」
一方通行「これあそこにあるヤツじゃね?」
結標「えっ?」
グルグルグルグルグルグルグル
<キャーワースゴーイヤバーイオエー
結標「…………」
一方通行「……アレはないな」
打ち止め「ミサカもさすがにあれに乗る勇気はないかも」
結標「うーん、というか今何時?」
打ち止め「十一時をちょっと過ぎたくらいだよ! ってミサカはミサカはネットワークから時刻情報を拾ってきてみたり」ビビ
結標「ということは、次のアトラクションに行ってから昼食を取るって行く感じで行くわけね」
一方通行「そォだな。あンまりちょうどいい時間過ぎても人が多くてうっとォしいしな」
結標「じゃあこの近くにあるアトラクションに行って後に、またここに戻ってくるってのはどう?」
打ち止め「賛成ー! ミサカ実を言うと少し歩き疲れていたんだー、ってミサカはミサカは現状報告してみる」
一方通行「……じゃァこの近くにあるモンっつったら……」キョロ
グルグルグルグルグルグルグル
<オエーオエーオエーオエー
一方通行「……アレは除外」
結標「……そうね。ある意味お腹空きそうだけど」
打ち止め「う、見てるコッチが吐きそうになってくる」
一方通行「オイ吐くンじゃねェぞめンどくせェから」
結標「……そうだ、これとかどう?」
一方通行「あァ?」
打ち止め「うん?」
『恐怖! Dr.GENSEIの館』
一方通行「……お化け屋敷ってヤツか」
結標「うん。絶叫度満点だからきっと叫び過ぎてお腹がペコペコになると思うわ」
打ち止め「こ、これはちょっとキツイかも、ってミサカはミサカ怖気付いてみる」ボソ
一方通行「まァ、暇潰しにはなるか」
打ち止め「えっ?」
結標「たぶんこの絶叫度ってイコール恐怖度ってことよね? 楽しみだわ」
打ち止め「えっ?」
一方通行「……どォした?」
結標「もしかして怖くて入りたくない?」
打ち止め「え、え、そ、それは……」
一方通行「じゃァオマエは出口で大人しく待ってるこったな」
打ち止め「そ、それは嫌だ! ミサカも行く、ってミサカはミサカは内心かなりビビってるけど参加宣言してみる」ブルブル
結標「……やめた方が良いんじゃない? かなり体が震えてるし」
打ち止め「行くって言ったら行くのー!」ブンブン
一方通行「……まァいいや。じゃァ行くか」カツン
結標「あ、私がお金払っとくね」
一方通行「おォ、先に行ってるぞ」
結標「うん、わかったわ」
一方通行「オイ、行くぞ」
打ち止め「う、うん」トボトボ
-スターランドパーク・恐怖! Dr.GENSEIの館-
一方通行「おーおーいかにもって感じの建物だなァオイ」
結標「廃病院ならぬ廃研究所ってところ?」
打ち止め「ううー、こ、怖い、ってミサカはミサカはこれ以外の言葉が出てこなかったり」
<ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
打ち止め「!?」ビク
一方通行「あァ? あの建物防音工事してねェのか?」
結標「まあ、逆にしてない方が周りから見れば怖いのかもしれないしね」
一方通行「まァ、どォでもいいや。あの叫び声にネタバレされる前に中に入るぞ」カツンカツン
結標「そうね」テクテク
打ち止め「…………」テクテク
―――
――
―
―
――
―――
受付「ぎゃはは、いらっしゃいませぇ。三名様ですかぁ?」
結標「あ、はい」
一方通行「こンなところまで演出してンのか。凝ってンなァ……」
打ち止め「…………」ブルブル
結標「打ち止めちゃん、やめるなら今よ?」
打ち止め「み、み、ミサカは一人はヤダ」
一方通行「……ハイハイ知らねェぞ? 気絶しちまってもよォ」
打ち止め「だ、だ、だ、大丈夫だって、何たってミサカには九九六九人の妹達が付いてるんだから、ってミサカはミサカは強がりを言ってみる」
一方通行「……オイ、ココって途中退出は可能なのか?」
受付「あぁ、そうだな。チェックポイントにいる係員に言やぁ大丈夫だ」
一方通行「そォか……」
受付「っつってもチェックポイントは一つしかねぇんだけどなぁ? ぎゃははっ!」
一方通行「つゥわけで、すぐダメだと感じたらすぐ言ゥンだぞ。わかったな?」
打ち止め「う、うんわかった、ってミサカはミサカは了承してみる」
結標「じゃあ入りましょ。準備はいい?」
一方通行「おォ」
打ち止め「…………」コク
結標「はい! 扉オープン!!」
ガチャン!!
係員「ぎゃはは、三名様ご案内ー!」
ウィーーンガチャン!!
-恐怖! Dr.GENSEIの館・ロビー-
一方通行達が入口の扉をくぐり、最初に目にしたのは薄暗いロビーだった。
二人ほど入れそうな受付に、どこにつながっているのかわからない扉。
四人座れるかどうかの大きさの横長の椅子が六つ等間隔で配置されていた。
誰もいない受付。誰もいない待ち合い。誰もいない空間。
それらが彼らの恐怖のボルテージを上昇させていく。
一方通行「……見た感じロビーか?」
結標「そうね。しかし辺りに散らばってる血痕とかがもうあからさまよね」
彼女が言うとおり、大理石でできた床、横長の椅子、コンクリートの壁。
この空間にあるあらゆるものに赤い液体が付着していた。
窓から入る微量の光を受け反射しているところから、この液体はまだ渇いていないと言う事がわかる。
打ち止め「…………」
周りの見慣れない光景を見て、少女は無言で体を震わせる。
一方通行「やっぱガキにはこのレベルでもキツイか?」
打ち止め「だ、大丈夫」
大丈夫、大丈夫、そう心で呟きながら足を進めていく。
結標「さっさと進みましょ? あ、こっちに行けばいいのね」テクテク
そう言うと結標は矢印の看板の示す通り、奥の通路に一人で速足で歩いていく。
一方通行「あァ、ちょっと待てよオイ」
それを見た一方通行は杖を器用につきながら後を追っていく。
その後ろを小さな少女打ち止めが不安そうについていく。
結標「…………ひっ!?」ビク
通路の曲がり角を曲がった結標は引きつった顔で声を上げる。
目を大きく見開き、口に手を当てる。
一方通行「……あァ? どォし……!?」
打ち止め「ど、どーしたの? ッ!?!?!?!?」
あとからついてきた二人も、彼女が見た光景を目の当たりにする。
廊下の曲がり角には爆発した後のように大量の赤い液体が広がっていた。
その中央には、バラバラになったヒトの形をしていた何か。
人間か人形か、本物か偽物か、そんな区別をする事ができないほどに、バラバラになっていた。
赤い塊の中に、紫色をした何かや、ピンク色をした何かなど、とにかく色々な物が散乱している。
結標「こ、これはひどい……わね」
吐き気を必死に抑えるように結標は体を折り曲げる。
ここに来てから臭う生臭さが彼女の吐き気を加速させる。
一方通行「ホラーと言うよりグロテスクの間違いじゃねェのか?」
打ち止め「なななななななななななななななな!!?」
小さな少女をどうしようもない恐怖が襲う。
彼女はその気持ちを言葉にできずにただ震え、その光景を凝視するだけだった。
一方通行「もう見るな。ガキには目に毒過ぎる……」
そう言うと、一方通行は杖の持っていないもう片方の手で打ち止めの頭を無理やり引っ張り、体へ抱き寄せた。
Tシャツ越しでも彼女の振動が彼の体に伝わってきた。
結標「つ、次に進みましょ」
吐き気を押さえきったのか、彼女は次に進むことを提案する。
このままここにいてもどうしようもない。
そう思って、彼女は足を踏み出した。
一方通行(……この中にいると昔の研究所暮らしを思い出す)
一方通行「チッ、胸糞悪りィ場所だ……クソッたれ……」
一方通行はそう吐き捨てて、その場を後にした。
-恐怖! Dr.GENSEIの館・廊下-
結標「……今度は廊下?」
彼女たちの目の前には一直線の廊下があった。
奥の方は暗くて見えないが、おおよそ二〇メートルくらいである。
一方通行「両側のガラス越し見えるのは手術室……いや、実験場ってところか?」
廊下の両側にはそれぞれ対になるように部屋が三つずつあった。
その中は様々な実験器具や手術台が置いてある。
それらの器具には大量の血痕が残っていた。
打ち止め「な、な、何か寝てない? ってミサカはミサカは部屋の中を眺めてみる」
少女が言うように、その部屋の中にはそれぞれ二、三人の人間が転がっていた。
青い手術着を真紅の赤で染めて、手術台や床の上で力を抜いたようにダランとしている。
一方通行「大方、実験によって殺されたモルモット、って感じの設定か?」
結標「酷いわね。その設定」
一方通行「まァな。現実にあったらブチ壊したくなるほどヒデェ設定だな」
打ち止め「……あ、出口が見えてきたよ」
彼らが歩いているうちに、暗がりで見えなかった廊下の出口が見えだした。
そこには暗闇へとつながる階段があった。
一方通行「出口っつっても廊下のだろ」
結標「ここまで何も無しってのもおかし――!?」
そう彼女が疑問を持ったその時。
ダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
それぞれの部屋の中にいた人間がその場から消えていた。
それらは部屋から廊下側の扉、窓に張り付いて、こちらの方へ出ようとしていた。
鍵がかかっていたのか、出る事ができずにただただ扉や窓を開けようとする音が廊下に鳴り響く。
彼らの視線は一直線に三人の方へ向いていた。
打ち止め「きゃ、きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
当然の恐怖に理性を失い、幼い少女は本能の赴くままに真っ直ぐ、全力で走り去っていく。
その小さな体はあっという間に暗闇の中へと消えていった。
一方通行「チッ、走ンじゃねェクソガキ!」
舌打ちをしながら、彼は首元にあるチョーカー型電極のスイッチを入れる。
通常モードから能力使用モードへと変更する。
ダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
未だに廊下には、こちらの世界へ入ってこようとする亡者たちの、消えそうな声と、金属音が鳴り響いている。
一方通行「結標、俺が能力で先に行ってガキを捕まえてくる。あとを急いで追って来い。わかったな!?」
そう確認を取ると、彼は足元へと力を込める。ミシミシと靴の裏側から地面をこする音が聞こえる。
結標「わ、わかった」
ダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
一方通行「じゃァ、先行ってるぞ」
次の瞬間、彼は靴の裏のベクトルを操り一瞬で廊下から暗闇へと飛び込んでいった。
結標「は、速い……」
結標「……って、こんなことしてる場合じゃなかったわ。早く追わないと……」
そう言うと、彼女は急いで廊下を駆け抜けていく。
後ろで未だに音が聞こえるが、全部無視して前へ進む。
ダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテダシテ。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。
-恐怖! Dr.GENSEIの館・チェックポイント-
一方通行「……チッ、あのクソガキどこに行きやがった?」
一方通行の眼球が上下左右と忙しく動き回る。
それと同時に彼は移動に必要な様々なベクトルを操り、
複雑に入り組んだ細い道を慣性の法則を無視した挙動で高速移動する。
一方通行「これだけ動いて見つからねェってことは、まさか追い抜いちまったのか?」
後ろを振り向く。そこには眼中にもなかったが人を驚かせようとする仕掛けがあった。
大量のやけどをした痕が目立つ長髪の女の人形が、天井からぶら下がっていると言う仕掛けだ。
自動追尾機能でもあるのか、その人形の赤い目玉は彼のいる方を向いていた。
一方通行「そンなことはねェはずだ。あのガキを最優先に視界を動かしたはずだ」
そうつぶやくと、一方通行は再び前を向く。
そこには今まで気付かなかったが、『CheckPoint』と血のようなもので書かれた看板が立っていた。
後ろには受付のようなものがあり、そこには一人の人間が座っていた。
看護婦が着るような俗に言うナース服を着ていた。
しかし、その体表面には緑色のぬちゃぬちゃしたようなものや、
例の如く大量の帰り血のようなものを浴びていた。
目が隠れるほど長い前髪が、さらに恐怖感を煽る。
その人間を確認した一方通行は首元のスイッチに手を当て、
能力使用モードから通常モードへと変更させた。
杖を器用に使い、その人間の方へと足を進める。
一方通行「オイ、オマエ」
視界に入れば必ず嫌悪感を覚える格好をした人間に、何も臆せず彼はいつも通りの声で話しかける。
看護婦「ふひひ、なんでございましょうか?」
一方通行「ここを一人のガキが通らなかったか?」
看護婦「子供? でしょうか? ふひひ」
一方通行「背は俺の腰ぐらいまで、髪は茶髪、淡い水色のワンピースを着て、男物のワイシャツ羽織っていて、体にはカエルのキャラクターの形をした鞄をかけている」
一方通行は看護婦に打ち止めに関する特徴を全て伝えた。
もしかしたら気持ち悪がられるかもしれないが、そんなことを気にする余裕も必要性も彼にはなかった。
看護婦「それは女の子でございましょうか? ふひひ」
一方通行「あァ。で、どォなンだ? 通ったか通ってないのか?」
看護婦「ふひひ、通りましたよ」
その解答はあっさりとしたものだった。
まあ、ここ遊園地の中のアトラクションであるわけで、別に殺し合いや騙し合いが応酬する場ではない。
そのような環境に長い間浸かっていた一方通行は、いつの間にかこんな場違いな場所で用心深くなってしまっていたようだ。
一方通行(通ってなかったら通ってなかったでめンどくせェが、通ったンならもうアイツはゴールするしかねェってことか……)
小さな少女はすでにこの唯一途中下車する事の出来るチェックポイントを越えてしまっている。
つまり彼女はもう、これから続く地獄のような道を歩いてゴールするしかないということだ。
一方通行「さァて、どこまで行きやがったンだ? クソガキがァ……」
首元の電極をいじりながら彼は思う。
こんなことになるならあの少女をここに入れるべきではなかった。
入る前に止めて彼女が不貞腐れてしまっても、あとでいくらでも埋め合わせする事ができる。
しかし、今はこの地獄に近い環境を彼女一人にしてしまっている。
正直このお化け屋敷は遊びではない。子供に本格的にトラウマを植え付けようとする仕掛けだ。
早くあの子のもとへ駆けつけ、少女の心の支えになってやらなければならない。
一方通行「……すぐに追いついてやる」
そうつぶやくと、彼は思い切り地面を踏みつける。
この建物全体が地震でも起きたかのように振動する。
脚力、空気抵抗、風力、慣性、などのあらゆるベクトルを変換し彼は音速を超える速さで移動する。
その間にある邪魔な仕掛けを全て無視しして。
ここにある仕掛けがいくら壊れようが関係ない。
ただ早く彼女の所へたどり着く。
あの子にこれ以上恐怖を与えないためにも。
-恐怖! Dr.GENSEIの館・死体安置所-
打ち止め「……ここは……どこ?」
少女は周りを見渡す。
人一人入るような木製の箱があちこちに転がってた。
その中からは赤い液体や、黒い髪の毛のようなものなど、
彼女にとっては目に毒なようなものが溢れ出していた。
その代わりに、鉄製の柵が道なりに置いてあり、出口までの道のりを表している。
あの気味の悪い箱に近づくためにはこの柵を乗り越えなければならない。
反対のことを言えばこの柵さえ乗り越えなければ、あの恐怖の原因に近づくことはない。
打ち止め「な、なんでこんなところにいるの? ってミサカはミサカはネットワークを介して下位個体たちに尋ねてみたり」
ネットワーク上にいる妹達からの情報によると、
自分は二番目の仕掛けから意識が錯乱し、その場を立ち去ろうと一生懸命逃走した。
その間にたくさんの仕掛けがあり、それに遭遇する度に悲鳴を上げ、上げればまた逃げる。
それらの繰り返しで現在いる位置に辿り着いたと言う。
10032『全く上位個体は子供ですねー、こんな仕掛けごときで理性を失うなんて、とミサカ10032号は上位個体が見てきた造り物に内心ビビりながらも嘲笑します』
14510『そうですよ。あの人が近くにいたのですからそこは彼に抱きつくべきでしょ、とミサカ14510号は共有感覚で彼に抱きつけなかったことへの文句を言います』
19090『脳内お花畑は黙っていてください。それより早くここから脱出するべきです、とミサカ19090号は上位個体へアドバイスをしてみます』
14510『は? 黙るのはあなたですミサカ19090号。ここは戻ってあの人のもとへ行くべきです、とミサカ14510号はアドバイスの上書きを試みます』
10039『どちらにしても、ここから早く出た方がいいのでは? とミサカ10039号は喧嘩する二人の間を割って提案します』
10032『どういうことでしょう? とミサカ10032号はミサカ10039号に質問します』
10039『まず外に出る事で安全を手に入れます。その後中から出てきた一方通行へ泣きつきます』
10039『そうしたら二人の利害も一致するのでは? とミサカ10039号は争う二人のために懇切丁寧に説明します』
14510・19090「それだ! とミサカ14510(19090)号はミサカ10039号の案に賛成します』
打ち止め「つ、つまりミサカはどうすればいいの? ってミサカはミサカは指示を仰いでみたり」
10032『つまりとっととそこから逃げろよ、とミサカ10032号はとりあえず上位個体に指示を出してみます』
打ち止め「わ、わかった! ってミサカはミサカはミサカ10032号の指示に従ってこの場の脱出を試みてみたり」
ミサカネットワークからの指示により、少女は出口に向かって足を進める。
今はどっちかと言うと涼しい季節なのに、室内には冷房がかかっていた。
寒くて震えるのか、怖くて震えるのか、どちらかはわからないが彼女の体は小刻みに振動していた。
打ち止め「も、もうー、こんな季節なのに冷房何かつけないでよ、ってミサカはミサカは環境を考えない係員に意味もなく文句を言ってみたり」
そんな独り言をブツブツとつぶやきながら、周りからの恐怖を緩和させる。
怖さを紛らわさせるために、今は他の妹達に積極的に話しかけて、という指示を出しているが、
彼女たちも怖いのか、まったくと言って話しかけてこない。
先ほどのミサカネットワーク内の会話を見てわかるように、会話に参加しているのは極少数だ。
打ち止め「むー、出口は見えるんだけど全然辿り着く気がしない、ってミサカはミサカはこの不親切設計に文句を垂れてみたり」
そう彼女が呟いた次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
この建物全体が揺れる感覚がした。
その揺れに驚き、思わず尻もちをついてしまう打ち止め。
彼女は焦りを見せながらも、ネットワークに確認を取る。
打ち止め「ね、ねえ。今、学園都市に地震とか起きてるの? ってミサカはミサカは学園都市に住んでいる妹達に聞いてみたり」
10032『いいえ。ミサカの方では確認できません、とミサカ10032号は率直に述べてみます』
10039『こちらでも確認できません、というか正直同じ場所に住んでいるから報告する意味なくね、とミサカ10039号は何となく思った事を口に出してみます』
19090『こちらも確認はできません、というか隣に10039号がいるので報告する必要はないですね、とミサカ19090号はミサカ10039号に同意します』
14510『学園都市には地震を抑えるアブソーバが付いているので多少の振動は吸収されてしまいますよ、とミサカ14510号は上位個体のネタにマジレスします』
打ち止め「ね、ネタじゃないよ! それよりこれはどういうこと? ってミサカはミサカはこの事態を全然理解できなくて困ってみたり」
頭を抱えて困惑する少女に、さらなる事態が襲いかかる。
ゴガガガガガガガガガガ。
打ち止め「……えっ?」
どこからともかく木と木が擦り合う音が聞こえてくる。
困惑する彼女はこの音を聞きさらに困惑する。
ガタン。
何か重い物が落ちる音がした。
その音の発生源に打ち止めは首を向けた。
そこには……。
『イーーーカーーーーセーーーーンーーゾーーーーーーー」
木の箱からのめき声をあげながら、二、三メートルくらいの大男が這い上がって来た。
身体中の皮が剥がれ、肉が腐り落ち、所々に見える白いものが不気味さを際立たせていた。
頭には茶ばんでいてわかりにくいが、たくさんの包帯が巻かれていた。
その包帯の間から、どこを見ているのかわからないが鋭く眼光が輝いていた。
打ち止め「きゃ、きゃああああああああああああああ!!」
思わず声を上げた。
しかし、謎の男と自分との距離は間に柵を挟んでおおよそ十メートル弱。
普通に振りむき、走れば逃げ切れる。
相手がスプリンター選手のような速度で走ってこない限り、逃げ切れないなんてことはない。
そう考え、彼女は後ろを振り向く。
しかし、そんな考えは一瞬で砕け散った。
「アアーアーアーアーアーアアアーアーアーアーアアーアーアー」
「カーエーセーエエーエエエーエーエーーエエ」
「ヤーーーラーーーナーーイーカーーーーーアアーアーアーア」
打ち止め「ひっ!?」
彼女の周りにはたくさんの大男が周りこんでいた。
確認しただけでも五人。
少女は思い出す。
部屋を見回して最初に疑問に思ったたくさんの木箱。
数は一〇以上は存在していたと記憶している。
もし、仮に。
それらの箱全部にこの化け物たちが入り込んでいたら。
ガタンガタンガタンガタン。
その乾いた音を聞き、少女は思わず体をビクンとさせた。
右を見ると二人の大男が。
左を見ると三人の大男が。
後ろを見ると逃げ場を塞ぐように立つ一人の大男が。
前を見ると五人もの大男が立ち塞がる。
四面楚歌。昨日たまたま見たクイズ番組の中で出された問題の解答。
それが今現実に起こっていた。
打ち止め「ひ、ひぃ……ひぃい」
思わずその場に座り込む少女。
何でこんなところに来てしまったのだろう。
そんな後悔の念が彼女の中に渦巻く。
アーアーアーアアーアーーアーアーアーアーーアーーアーアーーアア
うめき声がもうすぐそこに近づいてくるのがわかった。
すでに囲まれた。もう終わりだ。
そう思い、彼女は目を瞑った。
大男の巨大な手が、少女に向かって伸びた次の瞬間。
轟、という爆風と共に周りの大男たちが吹き飛ばされていく。
しかし、その爆風は打ち止めという少女を避けて巻き起こっていた。
「チッ、手間かけさせンじゃねェぞクソガキ」
その周りに吹き荒れる風の音が鳴り響く中、たしかにその声だけは少女の耳に届いた。
打ち止め「あ、アクセラレータ!!」
一方通行「……余計な体力使わせやがって」
打ち止め「アクセラレータ!!」
ヒーローの参上に思わず涙する打ち止め。
そして一方通行に飛びかかろうとする少女。
しかし。
一方通行「アレだけ勝手に行くなっつったろがゴラァ!!」
打ち止め「痛い痛い痛い痛い痛い――」
少女の頭を彼は何回も何回もビシビシと叩く。
やめてという声も無視して叩く。
だが、次第にその勢いは弱まって行く。
一方通行「……はァ、さっさと出るぞガキ」
打ち止め「う、うん! ってミサカはミサカは大きな声で返事をしてみる」
「ニーーガーーーーーサーーーンゾーーーー」
先ほど暴風に吹き飛ばされた大男たちが再び立ち上がり、うめき声を上げながらこちらへ向かってくる。
一方通行は汚い床につばを吐きながら、首元のスイッチに手を当てる。
一方通行「ここまでしてまだ吹き飛ばされたりねェってンのかァ? たかがお遊びでオマエらがなぜそこまですンのかは知ンねェけどよォ……」
電極のスイッチが押される。
ベクトル操作。
その瞬間。この場の支配権は全て彼の手の中に納まる。
一方通行「俺が誰だかわかって歯向かってるってことだよなァ?」
口元をビキビキと割れていく。その中に生える獣のような牙が輝く。
一方通行「あはぎゃはあがぎゃあはあはははははッ!!」
悪魔のような不気味な笑い声を上げながら左手を大男の腹部へ突っ込む。
バチバチバチという音と共に五本の指が包帯だらけの皮膚に突き刺さる。
ゾンビ「オオオオオ?????アアアアアアアアアアア???」
突然動けなくなり、戸惑いの声を上げる大男。
その光景を見て一方通行は口角を釣り上げる。
一方通行「ギャハハハッ! そォいう事か。その汚っねェ着包みは全部駆動鎧っつゥわけかァ?」
重量一トンはありそうな巨大な体を片手で軽々と持ち上げる。
メキメキと音を上げながら中から機械の部品のようなものがボロボロと落ちてくる。
一方通行「そォだよなァ、この能力者の街で遊園地を開くンだァ! それぐらいの装備は整えとかなきゃ危ねェよなァ!? あァ!!?」
叫び声と同時に大男を近くにある壁に向かって投げ飛ばす。
一方通行「まァ、俺にはまったく関係ねェ話だけどな、ギャハッ!」
大男の巨体が壁へ激突した瞬間、その体がコナゴナに砕け散った。
「ひ、ひぃいいいいい」
中から真っ黒な特殊部隊が着ているような装備を着こなす男が出てきた。
周りに立っている大男たちはその光景を見てたじろぐ。
さっきから上げていた不気味なうめき声さえ彼らから出てこない。
一方通行「オイオイこりゃァどォいう事だァ? ただのお化け屋敷の仕事熱心な係員かと思ったら、中から出てきたのは俺かクソガキを狙ったクズ野郎でしたってかァ?」
真っ白な頭をボリボリと掻き毟りながら、着包みの無くなった男へとゆっくりと歩いて近づいていく。
一方通行「上等ォじゃねェか!! オマエら全員生きて帰られると思うなよォ!? 体の部品一つ一つゆっくりと丁寧に解体してやっから喜べカス共ォ!!」
そう言うと、彼は触れた瞬間血液を逆流させ血管を爆破させる悪魔の手を、黒ずくめの男に向かってゆっくり振りかざす。
男の表情は絶望と恐怖によってクシャクシャに崩れ去った顔で、その真反対に一方通行の表情は怒りと快楽とどちらと共とれる邪悪な笑み。
数秒後、その男はバラバラの肉塊になるはずだった。
だが。
「――――――――こんのぉ!」
一方通行「…………あァ?」
一つの足音が一方通行に向かって進んできた。
地面を蹴る早さからして走ってきていることは簡単に理解できた。
一方通行はつまらなさそうにそちらの方へ視線を向けようとした。
一方通行(どこのバカだァ? 俺には反射っつゥ絶対防御があるって言うのによォ。さて、どう料理してや―――)
「――――クソガキィ!!」
男の拳が一方通行の頬へ突き刺さった。
一方通行「ご……がぁ……!?」
その衝撃で地面を転がっていく。
すぐさまベクトルを操作し、体勢を立て直す。
一方通行(反射が……効いてない!?)
チョーカー型電極の方へ目を向ける。
だがいつも通り能力使用モードを意味する赤いランプが点灯していた。
それを確認し、すぐさま目線を前に向けた。
一方通行「……………は?」
思わず声が出てしまった。
なぜここにいる?
なぜ反射が効かない?
なぜこんなことになっている?
いろいろな疑問が渦巻く中、彼が真っ先に出した名前。
一方通行「木ィィィ原クゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」
木原「あーあー、ちょっとうるさいから黙っててくれないかなー?」
木原数多。
一方通行の能力発現に関わった科学者の中の一人。
元猟犬部隊のリーダー。
現従犬部隊の社長。
一昨日顔を合わせたばかりの男が一方通行の前に立ちふさがっていた。
一方通行「あはぎゃははっ!! ンだァ? その頭についてる飾りはァ? コスプレ大会開くンなら別の所でやってくれないかなァ?」
彼の言うとおり木原の側頭部にはフランケンシュタインを髣髴とさえる大型のボルトのようなものが二本刺さっていた。
木原「あぁ? コスプレじゃねぇよ、仕事だ仕事」
一方通行「……クソッたれがァ」
一方通行「結局は俺達を狙ったバカどもの犬だったってことかァ? 木ィ原ァァああああああああああああああああああああああッ!!」
脚力のベクトルを操り、ロケットのような速度で木原に突撃する。
だがそんなことも気にもせずに木原は表情を変えずに口を動かす。
木原「だからさぁ……」
体の軸を二〇センチほど横にずらす。
すると、一方通行の体がちょうど木原の体の横を通るような位置関係となった。
一方通行は視線だけを下に向けた。
そこには木原数多の右腕がミシミシと握力を上昇させる音が鳴っていた。
木原「黙ってろっつってんだろクソガキィ!!」
木原の右拳が一方通行の顎を容赦なく貫いた。
反射を通り越しての渾身の一撃だった。
一方通行「がァ………あァァ……!?」
人中を貫いた一撃は一方通行の頭蓋骨を揺さぶり、容赦なく彼の意識が奪い去った。
一方通行(クソ……野郎ォ……が……)
消えゆく意識の中、不安そうにこちらを見つめている打ち止めの姿だけが視界に映った。
-スターランドパーク・第3休憩所-
一方通行「……お……あァ?」ムク
一方通行「いつの間に寝てたんだ俺はァ?」
一方通行「…………」
木原「よぉ一方通行ーようやくお目覚めか?」
一方通行「あァ? 木原か。何でここに……!?」
一方通行「木ィィ原くゥゥン!! あンときはよくもやってくれたなクソ野郎ォォがァ!!」
木原「まあまあ落ち付けって。そもそもテメェが勝手にお化け屋敷の中で暴れ出すのが悪りぃんだろ?」
一方通行「……チッ。つゥか何でオマエがこンなところにいたンだ?」
木原「まーあれだ、俺の職業思い出してくれたらわかると思うぜ」
一方通行「あァー、何だっけかァ……奴隷だっけなァ……」
木原「殺す」ブン
一方通行「ハイ反射反――ごふっ」ガコン
木原「あひゃひゃひゃ! ざまあねぇねなーマゾヒストクン?」
一方通行「……一体どォいう事だこれは?」
木原「テメェの反射は絶対的な壁じゃねーだろが?」
一方通行「は? 何だよそれ?」
木原「ただ力の向きを逆にして跳ね返してるだけの単純な構造だ」
木原「だったら跳ね返る寸前に拳を引き戻してやればいい話だ」
一方通行「……つまりオマエは寸止めで俺を殴ってるってことか?」
木原「そうそう。理解が早くて助かるねー、さすがレベル5のクソガキだわ」
一方通行「ありえねェだろそれ。理屈的には合ってんだろォがそンなモンわかってて実践できるモンじゃねェだろ」
木原「おいおい、誰がそのくだらねえ力を発現してやったと思ってんだ?」
一方通行「チッ、ふざけた野郎だ」
一方通行「……つゥかそンな話をしてる場合じゃねェ。何でこンなところにいンだよオマエ?」
木原「……はぁ、まあ面倒臭ェけど説明してやっか」
木原「俺の会社従犬部隊は何でも屋みてぇなもんだってのはわかるか?」
一方通行「あァ、そンなわかりきった事いちいち説明してんじゃねェよ」
木原「は? テメェが奴隷とかふざけた事抜かすからこっちがわざわざ説明してやったんじゃねーか」
一方通行「何そンな言葉に煽られてンですかァ? バカなンですかァマゾ太クン?」
木原「殺す」ブン
一方通行(そォ何度も同じ手は食ゥか。風のベクトルを操ってガード)ブォオオオン
木原「…………」ピー
一方通行「なっ? 俺の風の防壁が!?」
木原「厨二発言お疲れさまでしたマゾヒスト君!?」ブン
一方通行「ごはっ!?」ガコン
木原「じゃあ話し続けンぞ?」
一方通行「…………」
木原「お前が仕事の依頼をしに来た後、一向に仕事が来なくて暇だったんだよ」
一方通行「ニート乙」
木原「それでよお、寂しくむなしく部下共と大富豪してたときにその電話がかかって来たんだ」
一方通行「大富豪ってトランプのアレかよ? ぎゃはははッ!! おもしれェなァオイ!?」
木原「その電話の主が何とこのスターランドパークのオーナーでよお」
一方通行「(´・ω・`)」
木原「世界で最高の遊園地を作りてーからってよぉ、俺に世界で一番怖ぇお化け屋敷を作ってくれって依頼があってよー」
一方通行「で、その結果オマエはその無様なフランケンシュタインってかァ!? ぎゃはははッ!!」
木原「つーわけで、そのスターランドパークの従業員何人借りて、そいつらを徹夜でみっちり教育してやったわけだ」
一方通行「あははぎゃははは!! それでオマ――」
木原「その結果があのお化け屋敷っつうわけだ。わかったかなー?」
一方通行「……で、何であのクソゾンビ共は俺たちを襲って来たンだ?」
木原「ああ、あれ? あれは俺のせいだ。ごめん」
一方通行「は? それどォいう事だオマエ?」
木原「実は俺変装してこのお化け屋敷の受付やってたんだよ」
一方通行「……ああ、あの変態はオマエだったのか」
木原「それでテメェがこのお化け屋敷に来たからサービスしてやろうと、ゾンビ役の俺の部下たちにある通達をしたんだ」
一方通行「……言ってみろ」
木原「『一方通行達を脅かせられなかった給料なしな』ってな」
一方通行「……その達ってのにクソガキや結標も入ってたっつゥわけかオイ?」
木原「そーいうことー。まあまさか俺もあの打ち止めって娘をあそこまで泣かせるとは思わなかってよー」
木原「まーなんだぁ、ここは御破算ってことでどうよ? オマエもそうとうウチの設備破壊したしな」
一方通行「……チッ、まァいい。そォいうことにしてやるよ」
木原「つーわけであとはせいぜい遊園地をごゆっくり堪能する事だな」
一方通行「つゥか今何時だ?」
木原「あ? あーと、二〇時前だけど何? ああ、安心しろ。このサービス精神旺盛な遊園地は二四時まで開いてるから」
一方通行「……てことは、オイ、ナイトパレードは何時からだ!?」
木原「あん? 二〇時だけど、あ、もしかしてガールフレンドと約束してたりするわけ? ぎゃはははざまぁ!」
『このパレードを貴方と一緒に見たいんだ、ってミサカはミサカは要望を言ってみたり』
一方通行「チッ、能力使用モードにして捜しゃァまだ間に合うだろクソが!」カチ
木原「…………」
一方通行「どこに居やがるンだアイツら?」
木原「おいクソガキ」
一方通行「何だよ木原クン? 悪りィが俺は忙しいンだ、あとにしろ」
木原「まあ落ち付けって、コイツはただの独り言だ。……そーいや、パレードが始まる八時に中央広場の噴水で待つ、ってあの娘が言ってたな」
一方通行「木原……オマエ」
木原「ああ? 何返事してんだテメェ? これは独り言だっつってんだろ。さっさと出ていけクソガキ!!」
一方通行「……アリガトよ」
ドォウン!!
木原「…………」
木原「……へっ、まだまだケツの青いガキだなぁあいつも」
木原「おいテメェら、今日で契約期間は終わりだ! 後始末して撤収するぞカス共!」
社員一同「はっ!」
木原「……そうだな、今夜は社員全員で飲み会とでも行くかぁ?」
社員A「えっ、自分達も行ってよろしいんですか?」
木原「あ? 別に構わねえよ。一方通行の馬鹿が十億なんてアホみてーな大金置いていったんだからよー」
木原「今日は俺のおごりだ! サービス精神旺盛な俺に感謝しろよカス野郎ども!!」
社員一同「りょ、了解!!」ザッ
ちょっと休憩
御指摘されたように休憩時間伸ばします
17:00に再開します
-スターランドパーク・中央広場-
打ち止め「……あの人遅いね、ってミサカはミサカは少し心配になってみる」
結標「そうね。彼、睡眠時間の長さも結構異常だしね」
打ち止め「でもさすがに八時間も寝るなんてことはないよね、ってミサカはミサカは尋ねてみる」
結標「うーん、どうかしらね? 一日の四分の三を睡眠に使った経歴があるのだからないとは言えないかしらね」
打ち止め「うー、もー、あの人寝過ぎ! ってミサカはミサカは文句を垂れてみたり」
結標「まあ、それには激しく同意だわ。掃除してる時にソファーの上とかで寝られたらうっとおしいものね」
打ち止め「もう少し他のことに時間を有意義に使って欲しいな、ってミサカはミサカは要望を言ってみたり」
結標「私に言われても困るんだけどね」
打ち止め「……そういえばこんな会話前もやらなかったっけ? ってミサカはミサカは既視感に襲われてみたり」
結標「あー、そういえばそうね。わりと最近だった気がするけど」
打ち止め「そんなことよりあの人はまだ来ないのー? ってミサカはミサカは地団太を踏んで憤怒の感情を表にしてみたり」
結標「まあまあ落ち付いて」
打ち止め「あ、でも最悪キハラが起こしてくれるって言ってたから大丈夫だよね? ってミサカはミサカは最後の希望を思い出してみたり」
結標「でもそれって閉園時間にだったよね、たしか……」
打ち止め「あれ? そうだっけ?」
結標「うん。間違いはないと思うわ」
打ち止め「あれ、あれれー? 何か伝言頼んだ時はいかにもその時間には起こす的な雰囲気を醸し出していたのにー?」
結標「会話の内容を見てみると、閉園時間には起こすって感じだからただの雰囲気だけだわ」
打ち止め「えっ? それ? 本当!?」
結標「これは大変だ。彼もう起きてこないかもね、はは」
打ち止め「そ、そんなー、ってミサカはミサカは絶望に打ちひしがれてみたり」
ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ
結標「……何か周りが騒がしくなってきたわね」
打ち止め「どうしたのかな?」
結標「ええと……ああ、あと一分でパレード開始らしいわね」
打ち止め「えっ? もうそんな時間なの? ってミサカはミサカは時間の経つ早さに違和感を覚えてみたり」
結標「まあ、時間なんてそんなものよ。早く終わって欲しい時は遅くて、長く続いて欲しい時は早くて……」
打ち止め「うー、時の流れって残酷だー」
結標「……そんなこと言っている間にあと十秒ね」
10!! 9!! 8!!
打ち止め「わ、わ、もうカウントダウンに入っちゃったよ、ってミサカはミサカはザ・ワールド!って言って時を止める努力をしてみたり」
7!! 6!!
結標「時間を止めちゃったら一方通行もずっと起きてこないんじゃない?」
5!! 4!!
打ち止め「ううぅ、あの人……もう来ないのかな、ってミサカはミサカは涙目になりながら呟いてみたり」グスン
3!! 2!!
結標「まあ大丈夫じゃない? だって朝芳川さんが言ってたじゃない」
1!!
結標「アイツは貴女との約束を破るような馬鹿じゃないって……」
0!!
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーードォンドドドドドン!!!!
結標「ね? 一方通行」
一方通行「…………」カツンカツン
打ち止め「……えっ?」
結標「随分と遅い御到着じゃない? 王子さま♪」
一方通行「オイオイ、一応コレ間に合ってンだろ? 八時の時点ではここに着いてたンだし」
打ち止め「あ、アクセラレータ……」
結標「何言ってんのよ。女の子を待たせただけでもう三〇分は遅れたことになるわよ」
一方通行「いつからこの世界は女至上主義の世界になったってンだ?」
結標「でも待たせるという行為はダメでしょ?」
一方通行「……チッ」
打ち止め「アクセレータ……」
一方通行「あァ?」
打ち止め「アクセラレータ」ガシ
一方通行「ンだよ?」
打ち止め「この――」
一方通行「は?」
打ち止め「バカァァあああああああああああああああああああああああ!!」
一方通行「!?」ビク
打ち止め「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ――」バコバコ
一方通行「み、耳元で騒いでンじゃねェよクソガキ!」
打ち止め「いっつもいっつもいっつもいっつも寝過ぎなんだよバカバカバカバカバカバカバカバカ――」ベシベシ
一方通行「……はァ、すまねェなァ、オマエをまた不安な気持ちにさせてたみてェだな」
打ち止め「わかってるならもっと早く来いこのばかぁああああ……」エグエグ
一方通行「…………はァ」
―――
――
―
―
――
―――
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーードォンドドドドドン!!!!
「おーおー盛大に始まってるじゃんよ!」
「ちょっと黄泉川さん! そんなところでつっ立ってないで交通整理手伝ってくださいよ!」
「そうですよぉ! ただでさえ休日出勤で人数少ないんですからぁ」
「はははー悪い悪い。でもこれを見て思うじゃんよ」
「……何がですかぁ?」
「これを見て笑顔になってくれてる子供たちを見ると、今まで守ってきたかいがあったってもんじゃん?」
「黄泉川さん……」
「よーし! 今夜は仕事終わりに一杯行くか?」
「で、でも明日は普通に学校があるんですよ?」
「固いこと言うなよ鉄装ー! ちょっとぐらいいじゃんよ?」
「……わかりましたぁ。ちょっとだけですよ?」
「ははは、やったじゃん! 今夜は飲み明かすぞー!!」
「えっ? ちょっとだけじゃないんですか?」
「二人とも、遊んでないでさっさと交通整理に戻ってください!」
「へーい」
―――
――
―
―
――
―――
ドォンドドドドドドドドドドドドドドォン!!!!
「―――ありがとうございましたー」
「またお越しください、とミサカはリピーターになってもらえるように努力します」
「……うーん、この音がするってことはもう始まったのかしら?」
「何がです? とミサカはあなたの言った言葉に疑問を抱いてみます」
「ナイトパレードよ。今日オープンした遊園地のね」
「ああ、スターランドパークのことですね? それぐらい知っています、とミサカは自分の知識の豊富さをひけらかします」
「ここらじゃあ音しか聞こえないけどもね」
「そうですね、とミサカは相槌を打ちます」
「あら? あそこには貴女たちの上位個体がいるんだから、感覚共有してもらえば見れるのではないかしら?」
「そうしてもらいたいのは山々ですが、あのクソガキの野郎が感覚共有を切りやがったので、
私たち下位個体はその光景を目の当たりにする事ができないのです、とミサカはふざけんな上位個体がと憤怒の感情を露わにしながらも懇切丁寧に説明しました」
「そ、そう……それは残念だったわね」
「なので今晩はあの幼女が寝られないようにお化け屋敷の中の映像を一晩中ネットワークを通して送りつけてやります、とミサカは嫌がらせを画策します」
「うーんやるのは勝手だけど、どっちみち最終信号の権利でシャットアウトされるのじゃない? その嫌がらせ」
「な、そ、そういえばそうでした。おのれ上位個体め、とミサカは権力の差に歯噛みします」
「ま、いずれいいことがあるわよ」
ピンポーン
「「いらっしゃいませー」」
―――
――
―
―
――
―――
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンドォォォォン!!!!
「ほほー、これは凄いですねー」
「ほんと。綺麗」
「いやー、こういうところにタダで来られるなんて、やっぱり人望は厚い方がいいんですねー」
「はぐっはぐっ……こもえ、おかわり頼んでもいいかな?」
「もー、シスターちゃーん。まだ食べるのですかー? たまにはこの綺麗な花火やイルミネーションに目を向けてみてはどうですかー?」
「確かに綺麗だけど、これだけじゃあお腹は膨れないんだよ」
「……花より団子」
「うーわかりました。あと一杯だけですよー、わかりましたか?」
「うん! ありがとうなんだよ!」
「……こんなことなら。上条くんと来たかった」
「大覇星祭のナイトパレードも。わけあって一緒に回れなかったし……はあ」
―――
――
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―
――
―――
ドドドドドドドドドドドドドドドォンバァアアアアアアアアン!!!!
「はぁー、超ド派手ですねー。この花火の爆発音がこの間見た映画の大砲の音に超似てます」
「はぁ? アンタこの前、超ベッタベタのラブコメ見に行きます、とか言ってなかったっけ?」
「? はい、ラブコメでしたが」
「……何でラブコメに大砲なんて似合わなさすぎるモンが出てくんだよ?」
「いえいえ、あの映画には大砲が超不可欠ですよ? 東京を襲った巨大パンダを大砲で撃たなかったら、パンダは恋のキューピットになってくれませんでしたし」
「……相変わらず訳の分からん映画を見てんのねえ」
「結局、絹旗の趣味は理解不能って訳よ」
「はあ? いつも変な味のサバの缶詰大量摂取してる変人には超言われたくないですね」
「何を言ってるのかなー、結局、サバ缶が最強の食べ物って訳よ。お子ちゃまにはわかんないかなー?」
「寝言は寝てから言ってください。何なら超グッスリ眠れるように手伝って上げましょうか?」
「……つーかさあ、浜面の野郎遅くね?」
「そういえば飲み物買いに行かせたっきり帰ってきませんね」
「結局は浜面は浜面って訳よ! ってアレ? 滝壺もいなくない?」
「……ほんとですね。さっきまでそこに居た気がしたんですが」
「…………」
「「「まさかアイツら!?」」」
―――
――
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―――
ヒュォーーーーーーーーーーーーーーンパパパパパパン!!!
「……綺麗だねはまづら」
「あ、そ、そうだな」
「はまづら……」ギュッ
「……えっ?」
(やばいやばいやばいやばい近い近い近い近い!!)
「…………」
「……ゴクリ」
(こ、これはあれだよな? ロマンチックってヤツだよな?)
「……はまづら?」
(もうこれは行くしかねえのか? 男浜面、言っちまうしかねえのか!?)
「どうしたのはまづら?」
「た、滝壺ッ!!」
「何? はまづら」
「お、お、俺は……」
「…………」
「お、俺は滝壺のことが―――」
「……東北から信号がきてる……」
「好k……えっ?」
バビュン!!
「うわっ!? これって麦野の……」
<ハーマーヅーラー
「って、あ、あの、その……」
「スンマセンでしたァああああああああああああああああああああ!!」ダッ
「……あともう少しだったのに」ボソ
―――
――
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――
―――
パラランパララランパララランパララン!!!
「……ふつくしい」
「貴方はいつから某コーポレーションの社長になったのかしら?」
「いやー本当に美しい物を見ると、思わず心の中の言葉が漏れちまうんだよな」
「……きも」
「しかし花火みたいな激しい輝きもいいが、このイルミネーションの幻想的な光もまたいいよなぁ」
「貴方がそんなだからメルヘンチックな翼が生えてくるんじゃない?」
「は? 何言ってんだお前? あれは俺の意思関係なく出てくるって何度も言ってんじゃねえか」
「無意識の内に『自分だけの現実』がメルヘン一色になった結果がその翼なんじゃない?」
「なん……だと……」
「…………」
「まあいいや。別にどうでもいいしよぉ、そんなこと」
「……どうでもいいのかよ」
「おっ、さっきのさっきの花火の美しさはすさまじかったな。心理定規、お前もそう思わねえか?」
「……そんなことよりさ」
「あん? そんなことって何だよそんなことって?」
「私のドレスはどう? 今日のために新調してきたのだけど? まだ貴方から感想とか聞いてなかったわ」
「……は?」
「……ど、どう?」
「はぁ……何ガキが一丁前に背伸びしてんだ?」
「……なっ!?」
「大体ファッションってのには年相応のだな……あ?」
パチン
「痛たっ!? テメェ何しやがる!?」
「一生そこでメルヘンやってろエセホストが!!」ズンズン
「……え?」
「ああもしもし砂皿ね。今すぐこの馬鹿の脳天を狙撃してちょうだい……えっ? 無理? やれ今すぐ」
「……何怒ってんだアイツ?」
―――
――
―
―
――
―――
ドドドドンドドドォオオン!!!! パラランパンパン!!!!
「ふふふ。こんな綺麗なイルミネーションや花火に囲まれて優雅にお茶を飲むのは乙なものよねぇー」
「そうですね。しかし女王。よくこんなところに来ようと思いましたね?」
「何でそう思うのぉ?」
「いえ、常盤台の女王である貴女が、こんなケダモノが蔓延る場所に来ようなどと……」
「別にぃー、たまにはいいじゃない。アナタだってここ乗り物に乗った時は結構ハシャイでいたじゃない♪」
「そ、そんな! あ、あれは別にハシャイでるわけじゃ……」
「ハイハイ……あっ、そこの店員さん? いちごショートもう一つお願いしたいのだけどぉ?」
「女王! ダメです! 今日はイベントだからとかこつけて散々食べたじゃないですか!?」
「えー、いいじゃなぁい? 今日ぐらい別にぃ」
「ダメです。そう言った油断が危険だと何度言ったら――」
「……えい☆」ピッ
「…………」
「じゃあ今日もエクレア二〇個早食いタイムアタック行ってみましょう☆」
「……承りマシタ」テクテク
「がんばってねぇー♪」ノシ
「…………」
「じゃあ改めて店員さん? いちごショートもう一つお願いできるかしらぁ♪」
―――
――
―
―
――
―――
ヒューパパパパンパパパパパンヒョオーーーーーーーーーンパパパン!!!!
「うわぁー、綺麗ですねー」
「いやー来れてよかったねー、まさか偶然買った予約パス四枚が最後のパスだなんてビックリしたね」
「でもその内の一枚は使われずに廃棄処分なのはもったいないですよねー」
「……あの類人猿が……よくもお姉さまを……本当だったら私が……」ブツブツ
「……まだ言ってるんですか白井さん? いい加減あきらめてパレードを楽しみましょうよ」
「しかし御坂さんは例の上条さんとデートかー、青春だねー」
「何言ってるんですか佐天さん。まだ私たちだって花の中学生ですよ? そんなオバサン臭いこと言わないでくださいよ」
「なーにー? 言ったなー? うーいーはーるー!!」ガバッ
「ちょ、ちょっと止めてください佐天さん! こんな人がたくさん居る場所でー!」バッ
ざわ………ざわ………ざわ……ざわ……。
「ひゃ、ひゃー、みんな見てるじゃないですかー!」
「しかし御坂さんの告白成功すると良いなー」
「華麗にスルーしないでください! まあ、そうですね。御坂さんと上条さんが恋人同士になってくれれば白井さんの変態行動が少しでも自重されると思うので」
「認めませんの!! あの麗しきお姉さまがあんな腐れ類人猿て付き合うなんて、断じて認めませんの!!」
「でも恋愛は個人の自由ですよ白井さん」
「ダメですの!! 何なら今からその告白を私が妨害しに―――」
ガコン!!
「へぶし」
「わっ、白井さんが謎の男に殴られた!?」
「ぐっ…ふふふ…貴方? この私が風紀委員と知っての狼藉ですの? って何で私がこんな不愉快な言葉遣いをしなければなりませんの?」
「知らん!!」
「「「!?」」」ビク
「な、何ですの貴方!?」
「お前の事情なんてまったくもって知らねえ、だがな! 人の恋愛を妨害するなんざぁ根性が足りねえ!!」
「あ、貴方なんかに何がわかりますの!? 私がどれほどお姉さんのことを思ってきたか……」
「それがあんなパッと出の類人猿なんかに奪われる憎たらしさが!?」
「いや、白井さん。まだ奪われると決まったわけじゃ……」
「うるさいですの!」
「ふん! 怒りを他人にぶつけることでしか晴らすことができねえようだな。根性がねえ証拠だ!」
「黙りますの!! ふふふ、いいでしょう。私は今からお姉さまの告白を妨害するため、腐れ類人猿の後頭部にドロップキックを食らわせに行きますの!」
「貴方がどこの誰だか知りませんが、ジャマするのなら容赦しませんの!」シャキーン
「ちょ、ちょっと白井さん止めましょ――」
「いいだろう」
「ってあなたも了承しないでください!」
「では、風紀委員白井黒子、貴方を倒しお姉さまのところへ参りますの……いざ!! クケケケケ!!」シュン
「人の恋路をジャマする根性の無いヤツはー、俺に殴られ根性付けろ!!」ゴゥ
ドカァアアアアアアアアアン!! シャバシュバドカァアアアアアアアアアン!!!
シュバシュババコバコドカドカバキィィィィィィィィィィィン!!!
「うわぁ、何か白井さんが変な人とドラゴンボール張りの戦闘を始めちゃいましたよ! どうしましょう佐天さん!?」
「いやー、青春だねー」
「もー、佐天さーん!!」
―――
――
―
―
――
―――
ヒューーーーーンバンバンババババンバンバンババババンババババババン!!!!
「うっわぁー、派手だなこりゃー」
「…………」
「……? どうしたんだ御坂? 黙りこくっちまってよ」
「な、何でもないわよ!」
「ふーん、なら良いけどよ」
「…………」
(ヤバいヤバいヤバいどうしようこれ!?)
「…………?」
(あれよね? これってあれよね? ロマンチックってヤツよね!?)
「……御坂?」
(せっかく高い金出して競り落とした予約パスを無駄にするわけにはいかないわよね?)
「おーい御坂さーん」
(これはもうこ、こ、こ、こ、告白するしかないわよね!?)
「おい返事しろよビリビリ」
「び、ビリビリ言うな!」ビリビリ
「わっ、いきなり電撃出すなよ!」パキン
「えっ? あ、ああごめん」
「!?」
(み、御坂が謝っただと?)
「……ねえ」
(あ、ありえねえ。あのビリビリ中学生が謝るなんて)
「……? ちょ、ちょっとねえ?」
(まさかこれから何かが起きるのか?)
「ちょっと! アンタ! ねえ!!」
(もしかしてこれは不幸の前触―――)
「……無視すんなやゴォルァァあああああ!!」バチバチ
「って、おわぁー!? な、何だよ?」パキン
「アンタが無視するからでしょうが!」
「……で、何だよ? 飲み物でも欲しいのか? なら買ってくるけど」
「ち、違うわよ! そ、そのあの……アンタに聞いてもらいたいことがあるのよ!!」
「はあ、何でしょうか御坂さん? そんな改まって」
「あ、あ、あ、あのね? じ、実は私ね」
「うん」
「あ、あ、あ、あ、あ、アンタのことがね?」
「……俺のことが? 何だよ」
「…………」ゴクリ
「あ、あの、アンタのことがね!! 好―――」
ドカァアアアアアアアアアン!!
「―――きぃ!!」
「うわぁ! なんだあの爆発!? カラフルな煙だなーおい」
「…………」
「……で御坂。最後の方もう一回言ってくれない? アンタのことがす、ぐらいから聞こえなかったからよ」
「…………こんのぉ」プルプル
「今野?」
「鈍感野郎ォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」バリバリバリ
バリバリバリバリバリバリバリバリバッシャーン!!
「ええええええええッ!! 何でええええええッ!?」シュタッ
「うるさい!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! このバカァァああああああああッ!!」バリンバリンバリン
「理不尽だ!! 無茶苦茶だ!! だぁーもう……」
「不幸だァァああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
―――
――
―
ドカァアアアアアアアアアン!!
バリバリバリバリバリバリバリバリバッシャーン!!
打ち止め「……何だか周りが騒がしいね? ってミサカはミサカは周りのざわつきがちょっと気になってみたり」
一方通行「あァ? 花火上がってンだから当たり前だろ」
打ち止め「んーん、そういう騒がしいじゃなくてもっと違う何か……」
一方通行「別にいいだろ。パレードだからってバカどもが騒いでるだけだろ?」
打ち止め「……そういうものなのかなー、ってミサカはミサカは無理やり納得してみる」
ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
打ち止め「あっ! どうやら最後の連弾花火みたいだよ? ってミサカはミサカは今までにない数の閃光を見て期待を抱いてみたり」
一方通行「おーおー、すげェ数だな。百はあるんじゃねぇか?」
打ち止め「あっ、花火が爆発するよ!! ってミサカはミサカは背伸びして眺めてみたり」
ドォンドドドドドドドドドドドドドドォン!!!!ドォンドドドドドン!!!!ババババンバババンバンドォオオオオン!!!!
打ち止め「……綺麗だね、ってミサカはミサカはあなたの手を握りながら呟いてみる」
一方通行「……あァ、そォだな」
打ち止め「……ミサカね。またここに来たい! ってミサカはミサカはあなたを上目遣いで見ながら頼み込んでみたり」
一方通行「……はァ。わかったわかった連れて行ってやるよ。いつでもな……」
打ち止め「ホント!? ってミサカはミサカは信じられないからもう一度聞き返してみる」
一方通行「あァ? ンなこと言うンなら連れて行ってやンねェぞ?」
打ち止め「うう、いじわる……」ウルウル
一方通行「あァ……もォ、嘘だ嘘だ、連れて行ってやる! 絶対にだ」
打ち止め「わーいやったー引っ掛かったー!! 嘘泣きした甲斐があったぜ、ってミサカはミサカは持ってた目薬をポケットに隠しながら喜んでみたり」」
一方通行「なっ!? クソガキィ、嘘泣きだったのかこの野郎ォ!」
打ち止め「へへーん、もうあなたは連れて行くって言ったもんね!」
打ち止め「もうこの言葉はミサカネットワークに配信されたから全妹達が証人だもんね、ってミサカはミサカは勝ち誇りつつ精一杯のドヤ顔をしてみる」ドヤ
一方通行「……はァ、くっだらね」
結標「いやー、貴方達ってホント仲いいのねー」ニヤニヤ
一方通行「あァ? オマエ居たのかよ?」
結標「なっ!? 失礼な。最初からずっといたわよ! 貴方達のいちゃいちゃをずっと眺めてたわよ!? ほんとごちそうさまでした!!」
打ち止め「たぶん全読者がアワキお姉ちゃんの存在を忘れてたと思うよ、ってミサカはミサカはメタ発言をしてみたり」
一方通行「そりゃァオマエアレだろ、ずっと空気と一体化してたモンなァ」
結標「……いつから私は空気キャラと化したのよ?」
一方通行「そンなの知るかよ」
結標「何か一方通行が冷たい!」
一方通行「気のせいだろ」
結標「気のせいではないわ。さっきまであんなに饒舌に喋っていたのに、今は言葉の文字数が少ない」
一方通行「何言ってンだオマエ?」
打ち止め「あっ! 最後のフェニッシュの花火だよ! ってミサカはミサカは目をパッと開けてしっかりと見つめてみたり」
一方通行「やっと終わりか……」
結標「何かあっという間だったわね」
一方通行「まっ、こンなモンだろ花火なンて……」
打ち止め「たーーーーーまやーーーーーーーーーー!!」
一方通行「バカみてェな三下を顔面パンチしたら記憶喪失になった」
~おわり~
いいぞいいぞ!続きも待ってます!!