part1 【前編】 【後編】 part2 【前編】 【後編】 part3 【前編】 【後編】 の続きです
元スレ
一方通行「イヤだ」part4
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329455814/
11111号「……」
一方通行「……」
11111号「……え、何このスレ?またお前が何かやらかしたの?
とミサカは隣の怪人白モヤシをジト目で睨み付けます」ジロ
一方通行「何か不都合な事態が起きたらとりあえず俺のせいにするのやめろってのに……
つかこンなスレマジで知らねェぞ、立てた覚えが一切ねェ」
11111号「思わずスレタイ三度見くらいしてしまいましたしねぇ、とミサカは頭を抱えます」
一方通行「ひょっとして誰か代わりに続き書いてくれるンじゃね?とかちょっと期待しちまったンだがなァ」
11111号「ドキドキしながらスレを開いてみたらこの有様、
まさかこのスレの>>1も元になったスレの作者が釣られるとは思ってなかったでしょうよ、
とミサカは屈辱に身悶えながら歯軋りをします。悔しい……でも……」ビクンビクン
一方通行「つかもっと有名なスレくれェいくらでもあるだろうに、何でこンなスレを釣りに選ンだンだかなァ……
もォ一年くらい前に終わらせたスレじゃねェか、覚えてる人も少ねェだろ」
11111号「んで、どうしましょうか?とミサカは一方通行に尋ねます」
一方通行「あ?何がだよ」
11111号「いえ、このスレの処遇についてですが」
一方通行「はァ?普通に落としてもらえばいいンじゃねェのか?」
11111号「いやでも何かこう、釣られっぱなしって悔しくないですか?とミサカは舌打ちします」チッ
一方通行「悔しいっつーか何つーか……まァ色々思うところはあるけどよォ、
ンなモン釣られちまったモンはどうしようもねェだろ」
11111号「……例えばですよ、とミサカは人差し指を立てます」ピン
一方通行「あン?」
11111号「ここで『>>1さん代理スレ立てありがとう』とか言って普通に投下を始めてしまえば
釣られたという事実を誤魔化せるのではないでしょうか、とミサカは画期的な案を提示してみます」ドウヨ
一方通行「その発想はなかったわァ……」
11111号「そもそもですね、こんな釣りスレが立ってしまったのには
part3の終盤が超グダグダでつまらなかった事も一因になっているのではないでしょうか、
とミサカは推測してみます」
一方通行「あァー……確かに終盤酷かったしなァ」
11111号「加えてここ最近は短編しか書いてませんし、『そろそろ長編書けよクソムシが』
みたいな無言の圧力がこういう形を取って噴出してしまったのではないでしょうか」
一方通行「でもネタねェよ?マジで空っぽだぜ?ダラダラしてたら一ヶ月一万円生活も先越されてたしよォ……
ぶっちゃけ長編書くとか無理だろ、どォしようもねェ」
11111号「と言いつつ作者はドMなのでこういうどうしようもない無茶振りは案外嫌いではありません、
とミサカはドン引きしながら作者の心情を代弁してみます」
一方通行「こンなモン書いてる時点で既に結構ノリノリなのは間違いねェからな」
11111号「というわけで2,3日お待ちください、長編になるかはともかくとして
何か形にして投下しますんで、とミサカは声高に予告します」
一方通行「猶予2,3日!?流石に短くねェか!?」
11111号「大丈夫です、土日をフルに使えば何とか……
とミサカはちょっと自分の迂闊な発言に後悔しながらも親指を立てます」
一方通行「……まァ、ゲーム三昧で土日潰すよりは健全かもな」
11111号「日曜か月曜には何らかの報告をしにきますんで、付き合ってくれる奇特な方はのんびりお待ちください、
とミサカは久方ぶりの出番にわくわくしながらこの場を締めます」
一方通行「何か書けるといいンだがなァ」
11111号「最悪、今構想練ってるSSのネタを使ってしまえば……」
一方通行「えェー……」
11 : 元>>1[sage] - 2012/02/17 17:58:17.83 5DXYjKzuo 5/438ふ、よりによって俺のスレを元に釣りスレを立てるなんざ運がなかったな!
このスレは俺が乗っ取らせてもらうぜ!釣りスレのまま終わらせて堪るかよヒャッハー!!
※はじめに☆
・ギャグ物
・基本は台本形式、偶に地の文が割り込む
・キャラ完全崩壊
・約一年ぶりなのでSS上のキャラすら忘れました☆
・遅筆 (今回は割りとマジで)
・登場人物はだいたい皆酷い目に遭う
・ちょいちょい大き目のAAが出てくる
・割と不本意な形で始まったので最初から深刻なネタ不足。いつ終わってもおかしくねぇ!
ここまで見てる人はもうわかってるだろうけど、以上の点が受け付けない人は回れ右してくれたまえよ
さて、それじゃ10ヶ月ぶりに続きをはじめようか
「うン……」
ゆりかごに揺られるような心地よい振動の中、一方通行はゆっくりと目を覚ました。
季節はもう冬だと言うのに、その場所は万人に眠気を誘うほどにぽかぽかと暖かい。
寝起き特有の、頭の中に靄がかかっているかのような甘美な痺れを享受しつつ、彼はぼんやりと窓の外に目を向けた。
かつて学園都市を壊滅寸前にまで追い詰めた未曾有の大破壊、『審判の日』から早数ヶ月、
町並みはもうほとんど元の姿を取り戻しており、町の住人達も楽しげにそこ彼処を歩き回っている。
一方通行「人間ってのは逞しいモンだなァ……」
学園都市自慢の高性能無人バスに揺られながら、一方通行は穏やかな目でその様子を見守る。
そもそも学園都市を破壊して回った張本人は彼を筆頭とする超能力者達だと言うのに
その事は完全に棚上げしているようだ。
一方通行「……」
さて、穏やかな目で見守ると先述したが、勿論ただ見守っているだけではない。
彼は獲物を物色しているのだ。そう、彼お得意のチャチなイヤガラセのターゲットに出来そうな獲物を。
獲物を探しイヤガラセの内容を考える事、これこそ彼の至福の一時なのである。
故に彼は今この瞬間、驚くほど穏やかで満たされた表情をしているのだ。
それはまさしく悪魔の微笑みと言えよう。
一方通行「ふァ……クソ、まだ眠ィな……」
しかしどうにも先程から眠気が晴れない。バスの走る振動が心地よい為だろうか。
一方通行は大きく欠伸をしつつ緩慢な動作でリクライニングシートに身を預け、そのまま目を閉じる。
睡魔は直ぐに忍び寄って来た。徐々に意識が閉ざされていき、思考もほとんど停止する。
僅かに伝わってくるバスの振動すら心地よい。嗚呼、これ程心地よく眠りに落ちるのは初めてかもしれない。
バスで眠るのがこんなに気持ちいいだなんて――
一方通行「……待てよ」
今にも夢の世界に没しそうだった一方通行は、しかし突如強烈な違和感を覚え、強引にその目をこじ開ける。
バス。そうバスだ、バスに乗っている。このバスは一体何処に向かっている?
いや、その前に……
一方通行(俺はいつバスに乗った?)
甘い痺れも吹き飛び、急速に彼の頭は冷めていく。そうだ、バスに乗った覚えがない。
そもそも彼は普段バスを利用しないのだ。遠出するなら能力を使ったほうがずっと早いし、
獲物を物色するなら歩いた方が遥かに効率が良い。彼にバスを利用する理由は存在しない。
そして外敵の多い彼は決して公共の場で無様に眠りこける事など無いはずなのだ。
如何に無意識で働く反射の膜があるとは言え、彼は己の能力が万能である等とは思っていない。
にも関わらず、彼は今の今まで暢気に寝ていたのである。乗った覚えも無いバスの中で。
一方通行(ワケがわからねェ……わからねェが、この状況は――)
マズイ。非常にマズイ。置かれている状況の全てが理解不能で不可解だ。
冷静に車内を見回すと、自分以外に誰一人として乗客は乗っておらず、
その事が更に状況の異常さに拍車をかけている。
嫌な予感がする。
すぐにでもバスから脱出せねば取り返しのつかない事になってしまいそうな、そんな予感が。
眠気などはとっくに覚め、頭の奥では警笛が煩いほどに鳴り響いている。
細かいことを考えるのは後にし、とにかくこの状況から逃れる事を最優先とするべきだ。
一方通行は満身の力を込め、窓に拳を突きたてた。が――
一方通行(ビクともしねェ、だと……こいつはまさか)
窓は割れるどころかヒビ一つ入らず、僅かに軋んだ音を立てるばかりであった。
学園都市最強の超能力者であり、単身で学園都市を学区単位で破壊する事が可能な一方通行が
全力で殴りつけたにも関わらず、である。
無論、彼が乗っている無人バスが常識外れに硬いなどという事は無い。
つまり――
一方通行(能力が使えねェ!?)
突きつけられた現実に一方通行は戦慄する。
どういう理屈かはわからないが、彼の能力は完全に封じられているらしい。
能力さえあれば最強最悪の超能力者だが、一度それを封じられてしまえば
彼は同年代の平均を大きく下回る程度の身体能力しか持ち合わせていないのだ。
万事休す。走っているバスをどうにかするなど、能力を封じられた彼には到底出来はしない。
一方通行(待てよ、似たような状況を以前どこかで……)
わからないことだらけで混乱する一方で、彼は少しずつ状況を整理し、そして思い出し始めていた。
かつて己が良く似た状況を経験している事を、そしてその延長にあった人生最悪とも言うべき24時間の事を……
一方通行(『アレ』か、もしかしてまた『アレ』なのか……)
『審判の日』の引き金ともなったあの24時間、あれが再び繰り返されようとしているとしたら……
一方通行は身震いしつつ、色素の薄い白い顔を更に青白くさせる。
いや、そんなはずはない。あの時の首謀者はキッチリとシメたはずだ。
二度とあんな馬鹿な真似をしようとは思わないはず。しかし、この状況は……
混乱する一方通行を乗せたまま、バスはゆっくりと目的地へと向かっていく。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
一方通行「………止まったか。ここは……」
バスの振動が止まったのを感じ、一方通行は戦々恐々としながら窓の外を眺める。
どうやらここは巨大な駐車場のようで、周囲には彼の乗っているものと同型の無人バスが数台並んでいる。
一方通行(この大きさ……何かの施設の駐車場か?
いや、それよりバスが止まったって事はそろそろ……)
彼の予想通りなら、悪い予感が当たっているのなら、そろそろ迎えが来るはずだ。
憎い憎いアイツが、あの馬鹿が、邪悪な笑みを浮かべながら迎えに来るのだろう。
一方通行(頼むぞ、この予想だけは外れててくれ……)
一方通行は柄にも無く本気で神に祈りを捧げた。
困ったときだけ神頼みというのも虫のいい話である。
そして神は当然そんな輩は助けない。神は死んだ。
彼の予想した通り、バスのドアが外から開かれ、
彼が今、最も会いたくなかった人物が手を振りながら車内に踊りこんできた。
「やぁやぁおはようございます。気分はどうですか?よく眠れましたか?ハッハァ!
と、ミサカは上機嫌に手を振りながら登場します」
一方通行「やっぱりオマエかよォォォォォォ!!!」
フード付きのロングコートを身に纏ったその少女は一方通行を挑発するかのように手を振り上げる。
自分の悪い予感がクリーンヒットしてしまった事に、一方通行は頭を抱えて蹲ると、少しだけ涙を流した。
もう確定だ、間違いない。あの24時間が、再び始まろうとしている。
「お久しぶりです。わかっているとは思いますが11111号です。
とミサカは蹲ってしまった一方通行に手を差し伸べながら口角を吊り上げます」
一方通行「ちくしょうがァ……」
11111号と名乗った妹達の一員は悪意が透けて見えるような微笑を浮かべながら一方通行に向かって手を差し伸べた。
しかし一方通行はそんな彼女を無視し、歯を食いしばりながらガンガンとバスの床を殴りつけている。
彼は悔いているのだ。何故もっと警戒していなかったのか、と。
何故前回もっとしっかり断罪しなかったのか、と。何故、何故、何故……
11111号「一方通行、悔やんでも嘆いても時は逆様には戻りません。
希望を信じて未来に生きようではありませんか。とミサカは白々しく一方通行を慰めてみます」
一方通行「こっから先の24時間はどォ足掻いても絶望しかねェだろォが……」
11111号「わかっているのなら話は早い。さぁ行きますよ、とミサカは手招きしながら先導します。ダヴァイ!」
一方通行「……あァ、どォせなるようにしかならねェしな……腹括ってやンよクソ……」
そう、ここまで来てしまった以上、というか能力を封じられてしまった時点でもはや相手の思惑に乗るしかないのだ。
ならば抵抗して無駄に体力を消耗するよりも、従順な態度で出来るだけ力を温存するのが得策だろう。
学園都市第一位の頭脳は思考の切り替えも早いのだ。
11111号「フフ、そういう切り替えの早いところは好感が持てますよ。
とミサカは一方通行に向かって親指を立てます」グッ
一方通行「オマエが立ててるそれは中指だろォが!!
大体、オマエの好感なンざ両生類のクソ程の価値もねェよ!!」
11111号「おっとこれはうっかり。失礼しました、とミサカは改めて親指を……」グッ
一方通行「おい下向けンな!サムズダウンすンな!!中指立てンのと意味同じじゃねェか!!」
11111号「元気が出たようで何よりです。さ、皆待ってるから行きましょう。
とミサカは再度手招きをします」
一方通行「あァ、皆って事はやっぱアイツらもいンのか……」
いつも通り弾けたテンションの11111号に会話のドッジボールを強要されつつ、
一方通行はようやくバスからの脱出を果たす。最も、それは彼の最も望まない形での脱出となってしまったわけだが……
11111号「はいはいお待たせしました皆さん、とミサカはお待ちかねの皆さんに改めて手を振ります」
「……よう、遅かったな一方通行」
「あぁ、やっぱりあと一人ってあんただったんだ……」
「チッ、いつまで待たせてんのよ」
一方通行「……久しぶりだなァオマエら」
11111号に連れられて駐車場を少し移動した先、これまた一方通行の想像した通りのメンツがそこに揃っていた。
第二位、垣根帝督。第三位、御坂美琴。第四位、麦野沈利。
何れも学園都市の頂点に君臨するたった七人のレベル5の一員である。
しかし、そんな化け物達が大人しく11111号に従っていると言う事は、
その三人もまた一方通行と同じように何らかの方法で能力を封じられているのだろう。
レベル5の第一位である一方通行を含め、これで学園都市のトップ4が一堂に集結したことになる。
そして彼らは、かつて苦難の24時間を共に過ごした戦友とでも言うべき存在なのだ。
一方通行(……にしても)ジッ
垣根「あぁ?」
御坂「何よ?」
麦野「こっち見んな」
一方通行(……)
揃いも揃って不機嫌そうな面をしているな、と一方通行は先に集まっていた三人の顔を順に眺めながら思う。
皆これから何が始まるのか察しがついているに違いない。
そして、恐らくは自分も同じように不機嫌な顔をしているのだろう。
とは言え、これから起こる事を考えれば不機嫌になるなという方が無理というものだ。
突然拉致されて勝手に能力を封じられて、挙句に悪夢の24時間が再開されようとしているこの状況、
普通なら何とか状況を打破しようと大暴れしていても不思議ではない。
四人が冷静さを保ち大人しく従っているのは、偏に彼らが賢い為である。
泣こうが叫ぼうが暴れようがどうにもならないという事を全員が理解しており、
誰もがこれから起こることに備えて体力を温存しているのだ。
11111号「さて皆さん、もうわかっているとは思いますが、
これから皆さんにはちょっとしたゲームに参加して頂きます。
とミサカは不機嫌な様子のレベル5勢を尻目に解説に入ります」
垣根「もう一々前置きしなくていいっての……」
御坂「あぁこの流れ……やっぱり『アレ』なのね……」
麦野「あーもう、思い出すのすらイヤなのにまた参加させられんのか……」
11111号「何ですか皆して、なんだかんだで結構楽しんでたくせに!
とミサカはいきなり不満垂れてるレベル5勢を叱咤します」
一方通行「うっせェ、もォいいからさっさと始めろ。ンでさっさと終わらせろ」チッ
11111号「フフフ、待ちきれないようですね。それでは……」
コホン、と芝居がかった動作で咳払いをし、11111号は一度全員の顔を順に見渡す。
誰も彼もが負の感情に満ちた目をしている。全く、堪らんな。
11111号「これより『一方通行「イヤだ」part4』改め『笑ってはいけない学園都市part2』を開始させていただきます。
とミサカは声高に宣言します」
一方通行「わァー……」パチパチ
垣根「いぇーい……」パチパチ
御坂「やったー……」パチパチ
麦野「ひゃっほー……」パチパチ
11111号の宣言と同時、参加者であるレベル5勢からやる気のない歓声と拍手が巻き起こる。
一方通行がイヤガラセするスレだと思ったか?残念だったな!またガキの使いのパロディだ!
一方通行「……で」
一通りやる気のない歓声を送った後、一方通行は溜息混じりに切り出す。
一方通行「今回は24時間何処で何をやらされンだ?」
垣根「前は学校だったよな」
御坂「あー、懐かしいわね……」
麦野「懐かしむ物でもないでしょうに……出来れば二度と思い出したくないわ」
垣根「オマエはセーラー服まで着せられたもんな」
麦野「思い出させんな殺すぞ」
11111号「今回はですね……まぁ見て頂いた方が早いでしょう。
そぃや!とミサカは羽織っていたコートを華麗に脱ぎ捨てます」バサッ
言いながら、11111号は気取った仕草でコートを脱ぎ捨てる。
普段の常盤台の制服と軍用ゴーグルという格好ではなく目深いフード付きのロングコートを着ていたのは
ギリギリまでネタバレを避ける為だったのだろう。
一方通行「その格好は……」
垣根「チッ、そういう事か……」
御坂「あー、なるほど……」
麦野「面倒なことになりそうね……」
コートを脱ぎ捨てた11111号を見て、一同はこれから24時間何処で過ごすのかを即座に理解する。
彼女がコートの下に着込んでいたもの、それは目が痛くなるような純白の帽子とワンピースであった。
そう、所謂ナースキャップとナース服である。
11111号「もうお分かりですね?今回皆さんにはとある病院で見習い看護師として過ごして頂きます。
とミサカはちょっとスカートの丈が際どいコスプレ衣装のようなナース服で
グラビアアイドルのようなポーズを決めながら説明します。どうです、可愛いでしょう?」
一方通行「……まァ、アリなンじゃねェか?首から下は」
11111号「ほう、お姉様譲りのつるぺた幼児体型がお気に召しましたか、流石はロリコンですね、
とミサカは一方通行の揺るぎないロリコンっぷりを賞賛します」
一方通行「死ね」
御坂「ちょっと待ちなさい誰が幼児体型よ!?」
11111号「おや失礼、マニア向け寸胴体型と言い直しましょう」
御坂「悪化してるわよ!!」
11111号「……?どうしてお姉様は激怒しているのでしょうか?
わけがわからないよ、とミサカは某インキュベーターのように可愛らしく小首を傾げます」ハテ
垣根「人間な、本当の事言われるのが一番傷つくんだよ」
御坂「どういう意味よ!?」
一方通行「そのまンまの意味だろ」
御坂「うっさいうっさい!!ちゃんと成長してるもん!!」
麦野「……してんの?」
御坂「麦野さんまで……」
麦野「冗談冗談、いじけないの」ヨシヨシ
11111号「さて落ち着いた所で説明を続けましょうか。
ルールは簡単、これから24時間の病院での研修生活の間、笑ってはいけません。
笑ってしまった場合はお仕置きとして竹刀で武装した妹達に尻をシバかれます。
終了時点で尻をシバかれた回数を集計、最も回数の多かった方は更に罰ゲームを受けていただきます。
以上説明終わり、とミサカはカンペを仕舞います」
一方通行「その説明ほぼ完全に前回の使い回しじゃねェか」
11111号「それだけルールが変わっていないという事です。
ただ今回はラストの罰ゲームは確実にあなた方の内の誰かに受けて頂きます。
もうこのミサカが前回のような理不尽な仕打ちを受けるのは御免です。
とミサカは前回のあんまりなラストに憤慨します」プンスカ
垣根「どの口が理不尽とかほざいてんだコイツ」
御坂「相変わらずフリーダムね……」
麦野「まぁテメェが罰ゲーム受けなくても私らがこの手でシバけばいいんでしょ?」
11111号「おぉっと、今回も企画者はアレイスター=クロウリーですので、ミサカを恨むのは筋違いというものですよ?
とミサカは自分がただの案内役である事をアピールします。
ミサカだって本当はこんな事したくないんですよ?いやマジで」フフ
一方通行「顔ニヤケてンぞオマエ……
しっかしアレイスターの野郎、前回あンだけシメたのにまだ懲りてねェのかよ」
垣根「落とし前が足りなかったみてぇだな……」ギリ
御坂「てかさ、総括理事長ってそんなに暇なわけ?」
麦野「暇なんでしょうよ、言うまでもなく」ハァ
一方通行「つかよォ、一個だけ確認しときてェ事があンだが」
11111号「はい何でしょう?」
一方通行「妹達のほとンどは学園都市から出て行ったンじゃなかったか?
残るのは三人か四人っつー話だったろ。つーかオマエもどっか海外行くって言ってたよな?」
11111号「あー、そこにつっこみますか、つっこんでしまいますか……
とミサカは片手で額を覆います」アイタタタ
一方通行「あァ?」
11111号「うんまぁ、あれです。なかった事にしましょう、とミサカは前スレの終盤をバッサリ切り捨てます」
一方通行「おい待てそれは流石に……」
11111号「いいんですよ、終盤グダグダになってましたし、
このミサカがちょっとデレ入ったりしててキモかったですし
この際丸ごと無かった事にしてしまいましょう、とミサカは最善と思われる案を提示します」
一方通行「いや、でもよォ……つかデレ?ン?」
11111号「デモも何もありません。それにあなただってなかった事にしたいものがあるんじゃないですか?」
一方通行「あ?」
11111号「具体的に言うと百合子ちゃんとか、とミサカは当時の録音データを懐から取り出しつつ……」
一方通行「よし、なかった事にすンぞ」
11111号「はい、なかった事にします。これにて一件落着ですね、とミサカは額を拭います」フゥ
御坂「何の話してんのよあんたらは……」
11111号「いえ何でも、お気になさらずに、とミサカは全力で首を振ります」ブンブン
一方通行「まァ大人の事情って奴だ」
御坂「……?」
垣根「つっこんでやるな御坂、火傷じゃ済まねぇぞ」
麦野「えぇ、ここはスルーするところよ」
御坂「う、うん?」
―この瞬間part3の後半は無かった事になりました―
11111号「さて、懸念事項も無くなった所でそろそろ開始と行きましょう。準備はよろしいですか?
とミサカは四人を見回しながら最終確認を取ります」
一方通行「良くねェつったら待ってくれンのか?」
11111号「甘えんな馬鹿って返します」
垣根「確認の意味が全くねぇな」
麦野「何でこいつこんな偉そうなわけ?」
御坂「それこそ今更でしょ……」
11111号「よし、皆さん準備はよさそうなので、それでは――」
――午前9時、笑ってはいけない学園都市・病院編スタート――
11111号「はい、もう今から笑ってはいけませんからね、気をつけてください。とミサカは注意を促します」
垣根「今回はオープニングヒット喰らわねぇように気を付けねぇとな……」
一方通行「オマエ沸点低ィからなァ」
御坂「あんたも結構笑ってたでしょ」
麦野「美琴はかなり強かったわよね」
垣根「影が薄かったとも言う」
御坂「るさい!!」
一方通行「ケツぶっ叩かれるくれェなら影薄ィ方がマシだろ」
11111号「さて、病院の門を潜る前にまず皆さんには研修生に相応しい格好に着替えて頂きます。
こちらにどうぞ、とミサカは手招きします」
11111号に誘導され、四人はぐだぐだと雑談をしながら移動を開始する。
最悪の24時間が開始されたというのに、のんびりと雑談を交わせるというのは流石の精神力である。
単にそうでもして気を紛らわせていないとやってられないというだけかも知れないが。
程なくして四つの扉のついたプレハブ小屋のような物が見えてきた。
簡易的な更衣室のようなものだろう。前回のように男女別で分かれるだけではなく、
今回は四人全員が個室で着替えを行えるようだ。ご丁寧に各扉に各人の名前まで書かれている。
11111号「ささ、皆さんどうぞご自分の名前の書いてある扉の中へ。
着替えは中に置いてありますので、とミサカは四人を急かします。ハリーハリーハリー」
垣根「あー、イヤな予感しかしねぇ……」
一方通行「着替えネタと言やァ汚れ役の垣根くンだからなァ」
麦野「ば、やめろ第一位!思い出させんな!!」
御坂「流石にいきなりあんなきっついネタはこないでしょ」
一方通行「オマエはあンまり迂闊な事言うとウニ頭が出てきて幻想をぶっ殺されるぞ」
御坂「……」
前回、着替えネタで散々痛い目を見た一行はおっかなびっくりといった感じで、
肩を落としながらそれぞれの更衣室へ消えていく。
残された11111号はニタニタと邪悪な微笑みを浮かべながらそれを見送った。
もはや無表情キャラでも何でもない、ただの外道である。
―数分後
11111号「さて、そろそろ着替え終わりましたね?順番に名前を呼びますので
呼ばれた方から出てきてください、とミサカは更衣室に向かって声をかけます。
それではまずていとくんから出てきてくださーい」
垣根「おう」ガチャ
11111号の呼びかけに、まずは垣根が応じる。オチ担当かと思われた垣根だったが、
一番最初に呼ばれたと言うことはつまりそうではなかったと言う事だ。ネタ切れとか言うな、仕方ないだろ。
足取り軽く更衣室から姿を現した垣根は白衣にネクタイを締め、濃紺のズボンを履いており、
その姿はさながら、新米のエリート医師か、或いは優秀な若手研究員と言った風情がある。
普段のチャラけた格好からは想像もつかないが、長身美形な彼は基本的にどんな服でも着こなせるのだ。
垣根「かっこいいだろ?」フフン
11111号「えぇ、いいんじゃないですか?とミサカはさして興味もないしネタにもならないので
明後日の方向を眺めながら当たり障りのない発言で適当に流します」
垣根「俺フェミニストだけどオマエだけは絞め殺したいわ」
11111号「続いてお姉様、どうぞ」
御坂「う、うん……」ガチャ
ギリギリと歯軋りする垣根をガン無視し、11111号は続いて御坂に声をかける。
そろそろと更衣室から顔を出した御坂の頭には11111号のものと同系統のナース帽が装着されており、
続いて現れた心持ち未成熟な身体には丈の長い清純なナース服が纏われていた。
いかにも白衣の天使と言った出で立ちである。僕も女子中学生に看護されたいです。
御坂「な、何かコスプレみたいで恥ずかしいんだけど……変じゃない?」
11111号「コスプレみたいって言うかコスプレなんですけどね?
しかし大変良くお似合いですよ、流石はこのミサカのオリジナル。
ミサカと同じ顔と身体を持っているだけの事はありますね、
とミサカは間接的に自分の事をベタ褒めします」パチパチパチ
御坂「あんたのオリジナルだと思いたくないわぁー……」
垣根「しっかし、似たような格好してんのに御坂とそっちのクローンはイメージが全然違うな……」
御坂「あ、垣根さん普通の格好でよかったわね。似合ってるわよ」
垣根「おう、本当によかったわ。サンキュー」
11111号「さてお次はむぎのんの番ですよ、カモン!とミサカは扉に向かって声をかけます」
11111号は御坂、ではなく自分を散々に褒め称えた後、そのまま上機嫌に麦野に向かって声をかける。
しかし麦野の更衣室が開かれることはなく、帰ってくるのは静寂ばかりであった。
11111号「むぎのーん?」
麦野「……」
11111号「まだですかむぎのーん?とミサカは再度むぎのんに声をかけてみます」
麦野「……」
御坂「……ねぇ垣根さん」
垣根「皆まで言うな。ただ、覚悟だけはしとけ」
御坂「うん……」
11111号「へいむぎのん、へい!とミサカは更衣室のドアを猛然とノックしてむぎのんを急かします」ドンドンドン
麦野「ああああうっせぇ!!出りゃいいんでしょ出りゃあ!!!」バン
御坂「!?」
垣根「……クッッ!!」
11111号のうざったい程のノックに耐え切れなくなった麦野がようやく更衣室から姿を現す。
飛び出してきた彼女の姿に、周囲の空気が停滞した。
御坂はポカンと口を開けてそれを眺め、垣根は肩を震わせながら俯いている。
麦野に用意された衣装は、その形状こそ御坂や11111号が身につけている正統派のナース服と同じ物であったが、
彼女らのそれと比較して、明らかに丈が短かった。スカートが太股の真ん中辺りまでしかない。
ミニスカートどころかマイクロミニのレベルである。オマケに、ご丁寧にガーターベルトまで装着されている。
どう見てもナース物のコスプレAVかイメクラです、本当にありがとうございました。
デデーン♪
『垣根、アウトー』
麦野「何笑ってんだコラァァ!!!」
垣根「朝っぱらからオマエのその格好はきついわぁ……AV嬢かよ……」ククク
ヒクヒクと肩を震わせていた垣根に、愉快な効果音と共に無慈悲なアウト通告が下され、
それと同時にどこからともなく竹刀を持った妹達(ナース服装備)が現れる。
オープニングヒットはやっぱりていとくんだったよ……
竹刀を携えたその個体は垣根の背後に歩み寄り、静かに竹刀を振り上げると、
それを垣根のケツに向けて思い切り叩き付けた。
バチーン!!
垣根「ぐはぁぁぁぁ!!!」
御坂「うわ、叩かれてる叩かれてる……」
麦野「あー、始まっちまったんだって実感するわね……」
垣根「はぁーいってぇ……久しぶりだわこの感覚……おい麦野、」
麦野「あ?」
打たれた尻をさすさすと擦りながら、垣根は麦野に向かって歩み寄る。
垣根「いきなり笑って悪かったな、その格好いいと思うぞ。エロくて」グッ
麦野「フォローのつもりか?ぶっ殺すわよ?」
11111号「さて時間も押してますしサクサク行きましょう。
一方通行、出てきてください、とミサカはドアに向かって呼びかけます」
一方通行「……おォ」ガチャ
11111号の呼びかけに応じ―
垣根「!!?」
御坂「グッ!?」
―一方通行はそっと更衣室から顔を覗かせた。
麦野「ッッッ!!」
11111号「oh……」
その身に、純白のナースキャップとナース服(ミニスカート)を纏って――
――サービスカット:ナースな一方通行さん
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「……ンなに笑うなよ、傷つくだろォが」
垣根「ふざけんな!!オマエ何て格好してやがんだよ!?俺らが傷つくわ!!」
御坂「そこまでして私達を笑わせたいわけ!?最低よあんた!!」
麦野「女装癖でもあんのかこのクソモヤシ!!後で覚えとけよ!!」
11111号「まさか素直にナース服を着ていただけるとは……正直引くわ。
とミサカは苦笑いをしつつ後ずさりします」
一方通行「俺だって着たくて着てるわけじゃねェよ!!この服しか用意されてなかった上、
それまで着てた服は脱衣籠に入れた瞬間何故か籠ごと燃え上がったンだぞ!?
他にどォしろってンだ!!選択の余地ねェだろォが!!」
11111号「全裸という手が……」
一方通行「ねェよ!!」
バチーン!!
垣根「だああああ!!!」
御坂「いったああぁぁぁ!!!」
麦野「ってええぇぇ!!!!」
一方通行「……つーか良く見りゃ第四位は酷ェ格好だなァオイ、まァたイメクラかよ」
麦野「テメェにだけは格好の事言われたかねぇよ!!!クソ、こんな屈辱……」ギリ
御坂「いや、何で一方通行はそんな格好しときながら平静を保ってられるのよ……」
垣根「ブーメランパンツ履かされた時の俺より酷ぇだろ、その服装……」
11111号「いえ、それもどうでしょうか」
一方通行「抵抗しても無駄ってのは前回でよォくわかってっからなァ。
むしろ抵抗すりゃァするだけ悪化すンだろ、何が来ようと粛々と受け入れるのがベストなンだよ……」
御坂「何か、イヤな悟り方してるわね……」
垣根「スカートが違和感無くて怖いわ……しかし麦野と比べると足ほっそいなオマエ」
麦野「死ぬか?垣根、お前死ぬか?」
11111号「あぁ一方通行、流石に24時間その格好でいられると大変見苦しくて目障りなので
着替えなおしていただけますか?とミサカは新たな着替えを一方通行に差し出します。
ぶっちゃけそれ一発ネタですし」
一方通行「オマエは一回どォにかしてマジ泣きさせてやりてェンだがなァ……」
御坂「本当に酷いわねこの子……一方通行が目障りなのは確かだけどさ」
垣根「着替え直しは妥当だろ、一日中こんな格好の一方通行に目の前うろちょろされたら腹筋持たねぇよ」
11111号に恨み言を吐きつつ、一方通行は受け取った着替えを片手に更衣室へ引き返していく。
流石にあの格好で24時間と言うのは一緒に過ごさねばならない他のメンバーに酷というものだろう。
一方通行「……待たせたなァ」ガチャ
しばらく後、一方通行は呼びかけられるまでもなく更衣室から姿を現す。
その身には垣根と同じような白衣が纏われていたが、彼の不健康な容貌と相俟って、
医師や看護師と言うよりはマッドサイエンティストと呼びたくなるような印象を醸し出している。
垣根「ふーん、案外似合ってんじゃねぇか。看護師には到底見えねぇけどよ」
御坂「確かに……何か地下室とかで怪しげな研究してそうよね」
11111号「ちょっと『フゥーハハハ!』って感じで笑ってみ?とミサカはリクエストをしてみます」
一方通行「っせェよボケどもが」
麦野「……おい何か私だけ扱い悪くねぇか?何でお前ら全員マトモな格好してんだ?
第一位か垣根か、どっちか私にズボンよこせよ」
垣根「ズボンよこせって……鬼畜かオマエは」
御坂「だ、大丈夫だって!麦野さんの格好もマトモよ!ちゃんと看護師に見えるもん!
似合ってるわよガーターベルト!!」
麦野「こんなもん似合ってても嬉しくないわぁ!!!」
一方通行「いい歳ぶっこいてミニスカナース服にガーターベルトって
冷静に考えっとすげェきついよなァ……」ウワァ
垣根「ついさっきまでナース服着てたオマエが言えた口かよ」
11111号「さて着替えも終わりましたし、いよいよ本番ですよ。行きましょう!
とミサカはこんな着替えネタなど所詮序の口である事を仄めかしつつ四人を先導します」
一方通行「あァー、行きたくねェー……」
垣根「プロローグから重てぇよクソ……」
御坂「人生最悪の24時間再びかぁ……」
麦野「これ終わったら、本気で学園都市壊滅させとくべきかもね」
かくして悪夢の24時間は再び幕を開ける。
果たして四人は再び開始された最悪の一日を無事切り抜ける事が出来るのだろうか。
人物名鑑
一方通行(あくせられーた)
本作主人公、本名不詳。学園都市にたった七人しかいないレベル5の第一位。要するに全能力者の頂点。
最強の能力と最高の演算力と最悪の性格を併せ持つ災厄のような存在。
他人に子供のイタズラレベルのチャチなイヤガラセをし、
それを受けた相手の反応を観察することに至上の喜びを覚える外道。頭の中では常に新しいイヤガラセを考えている。
天井亜雄と学園都市上層部に対するイヤガラセとして絶対能力進化実験を凍結させた過去を持つが、
そこに妹達を慮って、などという生温い感情は一切入っていない。マジで。
精神的苦痛を他人に与えるのが大好きな一方で、肉体的苦痛を与えかねない行為や
相手を絶望の淵まで追いやるようなハードなイヤガラセは好まない傾向にある。
完全に相手の心をへし折ってしまうよりも、ある程度の所に留めておいて無駄な抵抗をさせた方が面白いからだ。
とは言え、今回は能力を制限されている上に笑ってはいけないというルールに縛られている為、
その外道っぷりをフルに発揮する機会は少ないだろう。
攻めている間は無双するが守りに入ると案外打たれ弱かったりする。
垣根帝督(かきね ていとく)
『未元物質(ダークマター)』という『一方通行』にも劣らない強力かつメルヘンな能力を持つ学園都市のナンバー2。
が、性格の捻じ曲がった一方通行にイヤガラセのターゲットとして目を付けられ、いつも煮え湯を飲まされている。
元は『スクール』という暗部組織のリーダーだったが、part1で諸事情によりスクールは解散、
それ以後は『アイテム』という似たような暗部組織に平構成員として身を寄せている。
美形のはずなのに二枚目半や三枚目どころを演じさせられる事の多い悲劇のイケメルヘン。
「常識は通用しねぇ」という迷台詞を持つ彼だが、本作では屈指の常識的感性の持ち主として仕上がっている。
しかし常識人であるが故に悲惨な目に遭う事も多く、part1時代から散々弄られ続けているかわいそうな子でもある。
訳も無く理不尽な暴力に晒される事も多い。垣根が何をした。
今回はもう少し彼に優しくしてあげたいです、マジで。
御坂美琴(みさか みこと)
学園都市のナンバー3、汎用性の高い電撃能力を持つちょっぴり腹黒い中学二年生。
垣根と並んで本作の貴重な常識人枠である。こいつと垣根が常識人枠に含まれてしまうところからも
このSSの登場人物は頭おかしい奴ばっかりだという事が良くわかる。どうしてこんなことに……
かつては学園都市を代表する超能力者として持て囃され、後輩には慕われ、想い人もいて、
と順風満帆な学生生活を送っていたのだが、一方通行に目をつけられたのが運の尽きであった。
常識人の宿命なのか、垣根ほどでは無いが彼女も大概酷い目に遭っている。
本作でも原作と同様、上条当麻に淡い恋心を抱いていたのだが、前回の笑ってはいけない学園都市高校編で
彼に散々な仕打ちを受けて以来ちょっと距離を置いている。色々と幻想をぶち殺されてしまったらしい。
前回は他にも友人や後輩との交友関係にヒビが入ったり母親が登場したり
宝物が破壊されたりと、結構深刻な被害を被っていたりする。かわいそうに。
part3終盤には後輩の変態ジャッジメントに唇を奪われるなど悲惨さに更に拍車がかかっていたが、
その辺は全部無かったことになったので一安心である。よかったね!
麦野沈利(むぎの しずり)
本作メインキャラ最年長(多分)、攻撃に特化した能力の学園都市ナンバー4。
『アイテム』という暗部組織のリーダーを務めている。
鮭をこよなく愛し、利き酒ならぬ利き鮭が出来るという変態的な味覚の持ち主。定期的に鮭を食べないと死ぬ。
鮭に対する愛情は本物であり、前回では切り身の鮭と対話するほどの以心伝心っぷりを発揮した。
どこぞのメタル化したガンダムマイスターも真っ青である。クアンタムバーストォォォ!!
前述の垣根、御坂の二人と組んで『一方通行被害者の会』を開いているが、その成果は芳しくない。
三人で集まって会議をしている所を、全員纏めてイヤガラセの標的にされる事もあるとか無いとか。
性格は基本的に短気で傲慢、自分本位。仲間(主に垣根)を切り捨てる事も厭わないが、御坂には何故か優しい。
彼女も本来は他人をいぢめる事に快感を見出すサディスティックなタイプであり、
比較的一方通行に近い感性を持っているのだが、
いかんせん一方通行との力の差が大き過ぎる為パッとせず、基本的には彼に手玉に取られている。
俺の嫁。
11111号
本作のメインヒロイン(自称)、正式名称はミサカ11111号。
『妹達(シスターズ)』と呼ばれる御坂の体細胞クローン集団の一員である。
総勢二万体の妹達は、本来絶対能力進化実験で一方通行に殺される為だけに作られた存在だったのだが、
前述の通り一方通行が実験を拒否している為、彼女達は皆、何不自由する事なく
毎日をだらだらぷらぷらと生きている。(一方通行のイヤガラセの標的になる個体もいるが)
初登場時は毒舌キャラ程度だった11111号だが、一方通行の悪影響を受けまくった結果
どんどん言動が悪化していき、今となっては一方通行が逆に引くほどの外道っぷりを発揮する事も。
一方通行が他人にイヤガラセをしている場面を見物するのが大好き。
しかしそれ以上に一方通行自身が悶え苦しんでいる姿を見るのが好きらしい。
逆に痛めつけられるのも嫌いじゃないとか。どうしようもねぇ。
当初は猫を被っているという設定だったのだが、そんなものは既に忘却の彼方である。
て言うか冷静に振り返るとpart1の頃から別に猫被ってなかった。
何か無駄にこいつの笑顔のAAが豊富。
Q:ネタがないない言いながらこんな長編っぽい展開にして大丈夫なん?
A:大丈夫なわけねぇだろ!!次からどうすりゃいいんだよ!?
一年前のスレ蒸し返された上に続きを書かされるってどんな羞恥プレイだよちくしょうめ!
がんばるけど多分投下遅いから思い出したときにでもスレを覗いて見てください><
それとイヤガラセ系のを期待してた人はゴメンネ!マジでネタが無かったんです!
>>1って名乗れないのが地味に不便だな……
11111号「さて、こちらがこれから皆さんがお世話になる『とある総合病院』です、
とミサカは門の前で両手を広げます。ウェルカム」
垣根「何か見たことあると思ったらここ冥土帰しのいる病院じゃねぇか。
あのクソ藪医者も一枚噛んでんのかよ」
一方通行「知ってンのか垣根?」
垣根「あぁ、何度か世話になってんよ」
一方通行「オマエ第二位のクセして医者の世話になンかなってンのかよ、情けねェな」
垣根「主にテメェのせいだけどな?胃に穴が開きそうになったりな?」ビキビキ
一方通行「なァンのことやら」
御坂「いやー、それにしても総合病院って言うだけあって流石に大きいわねー」
麦野「デカいって事はそれだけ仕掛けも多いって事でしょうよ」チッ
11111号に誘導されて辿り着いた巨大な病院を前に四人は思い思いの感想を述べる。
着目した点や漏らした感想こそバラバラだが、彼らの表情は一貫して共通している。
誰もが皆、心底イヤそうな顔をしているのだ。これから先を思えばそれも当然の事ではあるが……
11111号「さ、いよいよ病院の敷地内に入りますよ、とミサカは……おや?」
<ピーポーピーポーピーポー
一方通行「あン?」
垣根「ん?」
御坂「サイレン?」
麦野「近づいて来てるみたいね」
彼らがいざ病院の門を潜ろうとしたまさにその時、
甲高いサイレン音を鳴り響かせながら一台の救急車が猛スピードで向かってきた。
救急車はそのまま彼らの前を横切って病院の門を潜り、玄関先で急停止する。
同時に玄関の扉が開かれ、慌しい様子でカエルのような顔をした白衣の男が飛び出してくる。
何を隠そう、このカエル顔の男こそ『冥土帰し』の異名を取る凄腕の医者なのだ。
先に垣根が藪医者呼ばわりしていたが、藪どころか彼は医療の神とも言うべき存在なのである。
冥土帰しは背後にナース服を着た妹達を二名従わせ、救急車の元へ急ぐ。
11111号「ふむ、どうやら急患が搬送されてきたようですね、
とミサカは目の前の光景を分析します」
一方通行「見りゃァわかるっての」
垣根「冥土帰し自らがお出迎えたぁな、かなり重症なんじゃねぇか?」
御坂「あ、あんまり酷い状態なのは見たくないかな……」
麦野「そう?血が噴水のように噴き出てるほうが楽しいじゃない?」
ぼーっと目の前の様子を眺めているレベル5勢の前で救急車の後部ドアが開かれ、
ストレッチャーに乗せられた患者が救急隊員に扮した妹達によって運び出されて来た。
患者は苦悶の表情を浮かべ、苦しげに呻いている。
病院に運ばれて来たばかりだというのに、何故か既に緑色の手術衣をまとっているその患者は、
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見え……
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「アレイスターじゃねェかァァァァ!!!」
垣根「散々言われてっけどただの馬鹿にしか見えねぇよ!!!」
御坂「もうやだこの学園都市……」
麦野「呻き声上げてるのがシュール過ぎてもう……」
バチーン!!
一方通行「があァァァ!!!」
垣根「ッくぅぅ!!」
御坂「うぁいった!!!」
麦野「ってええぇぇ!!!」
11111号「お前ら瀕死の患者見て爆笑するとかどんだけ鬼畜だよ、ドン引きだわ、
とミサカは肩をヒクつかせつつ必死に笑いを堪えながらレベル5勢を非難します」プークスクス
御坂「堪え切れてない堪え切れてない……」
一方通行「流石の俺もオマエにだけは鬼畜呼ばわりされたくねェよ」
四人が尻をシバかれているのを尻目に、冥土帰しは急ぎストレッチャーに寝かされているアレイスターに駆け寄り、
彼に付き添っている救急隊員に扮した妹達の一人に話しかける。
冥土帰し「状況は?」
「ハッ!衰弱が著しく、このままでは心肺停止の可能性もあります、とミサカは簡潔に報告します」
冥土帰し「よし、心臓マッサージをしよう。どいてくれるかい?」
言いつつ、冥土帰しはヒラリとストレッチャーに飛び乗ると、アレイスターに跨り
己の掌をその心臓部に当てがう。そして――
冥土帰し「アレイスタァァァァ!!!戻ってくるんだアレイスタァァァァァ!!!」グッグッグッ
普段の彼からは想像も出来ないほどの大声でアレイスターの名をシャウトしながら
胸骨をへし折らんばかりの激しさで心臓マッサージを繰り返す。
あの、ちょっと、アレイスターさん白目剥いてビクンビクンしてますよ?大丈夫なんですかそれ?
アレイスター「」ビクンビクン
冥土帰し「く、このままでは……僕は心臓マッサージを続ける、このまま院内に運んでくれ!」
「了解しました!とミサカはストレッチャーを病院内に向かって押し進めます」カラカラカラ
冥土帰し「アレイスタァァァ!!!!頑張るんだアレイスタァァァァ!!!!アレイスタァァァァァァ……」
ストレッチャーに寝かされたアレイスター、そのアレイスターに跨って
大地を揺るがすようなシャウトをしながら心臓マッサージを繰り返す冥土帰し、
二人を乗せたストレッチャーはナース服に身を包んだ妹達の手によって、ゆっくりと病院内へと運ばれていく。
何という矍鑠たる混沌か。
アレイスターの名を呼ぶ冥土帰しのシャウトはしばし辺りに鳴り響き続けたが、
ストレッチャーが完全に院内に消え、アレイスターを搬送してきた救急車が撤収した頃にはその声も聞こえなくなっていた。
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「カオスにも程があンだろォがァ!!!」
垣根「何で一々アレイスターの名前叫びながら心臓マッサージすんだよ!?」
11111号「患者の名を呼びながら心臓マッサージをする事で意識回復の手助けに……」
御坂「どうでもいいわよそんな事……」
麦野「あのまま死にゃいいのにアレイスター……」
バチーン!!
一方通行「はぐァァァ!!!」
垣根「ばああぁぁぁ!!!!」
御坂「うぃッッ!!つぅぅぅ……」
麦野「ぐぁいった!!!」
垣根「つかアレイスターの野郎、いつものビーカーから出て大丈夫なのかよ?」
一方通行「大丈夫じゃねェからあンな風になってたンじゃねェか?」
垣根「そっか……」
一方通行「おォ」
垣根「……そっか」
一方通行「……おォ」
垣根「………フッ」
一方通行「クッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「何なンだよその間はよォォォ!?」
垣根「いや俺のせいじゃねぇだろ!?」
バチーン!!
一方通行「ッつあァァァァ!!!」
垣根「ぐがああぁぁぁ!!!」
麦野「仲いいわねあんたら」ハァ
御坂「麦野さん何かテンション低くない?」
麦野「……寒いのよ、この格好」ブルッ
御坂「あぁ……ミニスカートだもんね、麦野sンフッ」
デデーン♪
『御坂、アウトー』
麦野「あぁ!?私のミニスカート姿がそんなおかしいってのかぁ!!?」
御坂「ご、ごめん、違うの!違うのよ!?何でか知らないけど笑っちゃったのよ!?」
バチーン!!
御坂「ひゃうぅぅ!!!」
垣根「でも実際問題おかしいと言えばこの上なくおかしいですけどね?その格好」
一方通行「もォ少し歳相応の格好をお願いしますよ第四位さァン」
麦野「テメェら捩じ切られてぇか?」
11111号「はいはい皆さんじゃれ合うのはそこまでですよ、とミサカは手を叩いて皆の注意を引きます」パンパン
時間が惜しい、とばかりに11111号はレベル5勢のやり取りを中断させる。
それもそのはず、彼らはまだ建物内に入ってすらいないのだ。
案内人である11111号としては、こんな所でグダグダと自爆や身内争いをされるよりも
さっさと先に進んで用意した仕掛けに引っかかって欲しいのだろう。
11111号「これからいよいよ病院内へ入って頂くわけですが、その前にまずはあちらをご覧ください。
とミサカは玄関前を指差します」
一方通行「あァ?」
垣根「なんだありゃ?」
11111号「あちらに立っている銅像がこの病院を創設した初代院長であります、
とミサカはレベル5勢を銅像の前まで誘導します」カムカム
御坂「へぇ、この人g!?」
麦野「ぐっ!!!」
11111号「……」
一方通行「……」
垣根「……」
御坂「……」
麦野「……」
―全員、セーフ―
11111号「チッ」
一方通行「これは読めた」
垣根「アフロヘアーだったのにはちっとビビッたが、概ね予想通りだったぜ」
御坂「ふぅ……前回の流れ的にそろそろ来ると思ってたわ」
麦野「今更この程度で笑うかっての(ちょっと危なかったけど)」
前回似たような手口で散々笑わされた四人だったが、それ故に今回のこれは予測済みだったようで、
アフロヘアーにされた妹達の銅像を前にしても彼らはピクリとも笑わなかった。
どうやら同じ轍は踏まないということか、流石は学園都市のトップ4と言えるだろう。
しかし――
11111号(あなた方がこれで笑わない事くらい、こちらも予測済みなのですよ。
とミサカは声を押し殺して不適に笑います)ククク
一方通行「あ?何笑ってンだオマエ」
垣根「つーか案内役が笑うのやめろ、釣られて笑っちまったらどうしてくれんだ」
麦野「もういいからさっさと建物の中に案内しろっての、寒いのよこっちは」チッ
御坂「ちょ、ちょっと待って!あの銅像何かおかしくない!?」
垣根「うん?何だ、銅像に裂け目が……?」
彼らの見ている前で、銅像に縦に両断するかのような裂け目が浮き上がる。
そして銅像を内側から左右に押し広げるようにして、中から例の冷蔵庫型マスコットが姿を現した。
デデーン♪
『全員、アウトー』
垣根「うわああぁぁ割れたあああぁぁぁ!!!」
一方通行「トータルリコールかよ……アフロなのは中にコイツを収納してたからか……」
御坂「い、いやでもおかしくない?明らかに出てきたやつの方が元の銅像より大きいわよ!?」
麦野「つっこんだら負けよ美琴」
一方通行「しかしここで帝凍庫クンを持ってきやがるとはな……何だよこの二段構え、死ねよ垣根……」
垣根「帝凍庫クンに関しては俺は完璧に被害者だよ!?つーかあれ作ったのオマエだろ!!」
バチーン!!
一方通行「くあァァァァ!!!」
垣根「おっふぁぁぁ!!!!」
御坂「あぅっあぁぁぁ!!!」
麦野「ひぐッあぁぁ!!!」
11111号「ここまで見事にはまっていただけると見てるこちらも気持ちがいいですよ、
とミサカは蹲るレベル5勢をホクホク顔で眺めます」フフフ
一方通行「クソッタレがァ……そォ何度も思い通りに行くと思ってンじゃねェぞ……」
垣根「もう笑わねぇぞ……一瞬たりとも気を抜かねぇ……」
御坂「そうね、気を引き締めて行きましょう!」
麦野「サクサク行くわよ!オラ、案内しろクローン!」
11111号「全く、そう死に急ぐ事もあるまいに……まぁいいでしょう、行きましょうか、
とミサカは四人を建物内に誘導します」
――病院内
垣根「パッと見た感じ、平時と比べて多少内装がいじられちゃいるがそれ程おかしな所はねぇな」キョロキョロ
一方通行「どこに何が仕掛けてあっかわかンねェから注意しとけよオマエら」
御坂「一人笑うと連鎖的に笑いが起こっちゃうもんね」
麦野「最初に笑った奴は罪が重いわよ」
11111号「まぁまぁ皆さん、そうピリピリしないでください、とミサカは臨戦態勢に入っているレベル5勢を宥めます。
さて、それでは最初に院長室まで挨拶に行きましょうか」
垣根「院長っつーと……冥土帰し、だよな?」
一方通行「さっきのカエルみてェな面したジジイか?」
御坂「愛嬌のある顔してるわよね」
麦野「アレイスター連れて行ったばっかだし手術とかしてんじゃないの?そんなすぐに会えるわけ?」
11111号「こまけぇこたぁいいんですよ、ほら行きますよ、とミサカは先導します」
一方通行「……ン?」
垣根「どうした?」
一方通行「何か視線を感じねェか?」
麦野「言われて見れば……どっかから見られてるみたいね」
11111号「貴様見ているな!?とミサカはジョジョ立ちを決めてみます」バッ
垣根「そういう小ネタはいらねぇから」
御坂「前みたいにどっかから妹達が監視してるんじゃないの?」
一方通行「いや、そォいうのじゃなくて……」キョロキョロ
11111号に先導され院長室へ向かう途上、何やら視線を感じた一向はキョロキョロと周囲を見渡す。
と、それは案外すぐに見つかった。
元々特に隠れているわけでも無く、廊下の隅から普通にこちらに視線を送っていたようだが、
存在感があまりにも希薄であった為、注意深く周囲を見渡さなければその存在に気付けなかったようだ。
何故か巫女服を着用している存在感の薄いその少女は、何かを訴えるようにジッと彼らを見つめている。
「……」ジー
一方通行「……何だありゃ」
垣根「何で巫女服?まぁ似合ってっけど……」
御坂「うわ、ビックリした。いる事に気付かなかったわ……」
麦野「この距離まで私達に存在を察知されないとはね……タダモノじゃないわ」
「病院といえば巫女服。何もおかしくない。いよいよもって私の時代が来る」
一方通行「……何か言ってンぞ」
垣根「病院と巫女服に何の関係があるってんだ?意味がわからねぇよ」
麦野「無視無視、さっさと行くわよ。気味が悪いわ」
御坂「待って、まだ何か言ってるみたい」
病院と巫女服に因果関係を見出せず、無視して先に進もうとする一行だったが、
少女はまだ言い足りない事があるようで彼らのほうを見つめたままブツブツと呟いている。
律儀に聞いてやる必要など無いのだが、御坂の一声で全員がそこで足を止め、反射的に少女の声に耳を傾けた。
「ミコ……ナース……」ブツブツ
一方通行「何だ……?」
垣根「これは……歌か?何か歌ってるのか?」
ハッキリとは聞こえない。だがそれは確かに歌のように聞こえる。
こっちをガン見しながら歌のようなものを口ずさんでいるその姿に
どことなく空恐ろしさを覚える四人だったが、そんな事はお構いなしとばかりに
囀る様な少女の声は徐々に大きさを増し、やがて明確な旋律を成して彼らの元へ届けられた。
「巫女みこナース。巫女みこナース。生麦生米巫女みこナース……」ブツブツブツ
一方通行「……えェェー」
垣根「クッ」
麦野「エフッ」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「ちっくしょう、巫女服なのはそういうことかよ……ッ」
麦野「久しぶりに聞いたわ、この歌……」
バチーン!!
垣根「くああぁぁぁ!!!」
麦野「いったぁぁぁぁ!!!」
11111号「巫女みこナースわかるとかお前らいくつだよ?特にむぎのん、とミサカは冷静につっこみを入れます」
麦野「何で私を強調する?」
一方通行「ンなに古いモンでもねェだろ、辛うじて俺も知ってンぞ?」
御坂「何あの歌……」
11111号「あぁ、お姉様はサッパリ理解されていない!これがジェネレーションギャップというものですか……
とミサカは世知辛い現実に愕然とします」
「巫女みこナース。巫女みこナース。巫女みこナース。巫女みこナース」ブツブツブツ
一方通行「まだ歌ってンぞ」
麦野「無視しときなって、律儀に耳傾けてやる必要ないわよ」
垣根「クソが、何なんだよあの女……」チッ
11111号「彼女はこの病院の患者さんですよ、とミサカは一応補足説明をしておきます」
御坂「患者なの?」
11111号「はい、精神病棟の」
垣根「精神病……?」
11111号「えぇ、あの方は『自分はメインヒロインを張れる器だ』
という悲しい勘違いをいつまでもしている哀れな方なのですよ……
とミサカは涙無しには語れない事実をぶっちゃけてみます」
麦野「一粒の涙も見せてねぇだろ」
一方通行「……つかよォ、メインヒロイン張れる器だって本気で信じてンなら
こンな病院の片隅で電波ソング(しかもエロゲ主題歌)を熱唱したりしねェだろ。
メインヒロインならそンな事しなくてもじゃンじゃン出番来るはずだろォが」
「巫女みこナ……!?」ビクッ
垣根「確かに」
麦野「そりゃ言えてるわ」
一方通行「なァそこのオマエ、本当はとっくに気付いてンだろ?自分はメインヒロインなンて器じゃねェって事に……」
「あ。あぁぁ……」ガクガク
一方通行「現実見ろよ、オマエはこンな汚れ役でしか出番を貰えねェカスだ。
メインどころかサブヒロイン騙るのもおこがましいわ。
所詮オマエは存在感の無いモブキャラ……いや、それにも満たねェ背景キャラなンだよ」
「ち。ちが。私……あ……ああぁぁぁぁぁ!!!!」ダッ
御坂「あ、逃げた」
一方通行の容赦無い言葉責めに、巫女服の少女は大泣きしながら走って逃げていく。
能力制限を喰らっているとはいえ、外道モヤシは本日も平常運転である。
11111号「お前何やってんだコラ!!精神病の患者に現実突きつけるなんて一番やっちゃいけない事なんだぞ!?
とミサカは半笑いになりながら一方通行の行動を形だけでも非難します」メッ
一方通行「っせェな、俺流の治療だ治療、少しばかり荒っぽかったかもしれねェけどよォ」
垣根「今の行動に対してどうこう言う気はねぇが、オマエは絶対に医療に携わっちゃいけない人種だと思うわ」
御坂「何か、生かさず殺さずの所で患者をいたぶったりしそうよね……」
麦野「全快直前まで治してからわざとバレないようなミスして入院長引かせたりしそう」
一方通行「オマエらの中で俺はどンだけ外道なンだよ?」
11111号「どの口がほざきますか、とミサカは己を省みない一方通行に呆れ果てます。
まぁいいや、少々予定外に時間を喰いましたが院長室に急ぎましょう」
人物名鑑
冥土帰し(へぶんきゃんせらー)
学園都市第七学区の病院に勤める凄腕の医者。カエルのような顔をしている。
前回も一応登場していたのだが、その時は名前すら出ておらず、
隅っこで決め台詞を2,3回言うだけの存在だった。
今回は病院が舞台と言う事もあり、晴れて名前付きで登場。
彼の手にかかればどんな怪我や病気もほぼ完全に治療する事が出来るので、
万が一、本作で瀕死の重症を負った人間が出たとしても安心である。
アレイスター=クロウリー(あれいすたー くろうりー)
学園都市の総括理事長。ようするに一番偉い人。妙な事が起こるのは大体こいつのせい。
普段はよくわからない液体で満たされたビーカーに逆様の状態で浸っている。文章にするとそれだけでギャグだな……
『笑ってはいけない学園都市』の企画者であり、
参加しているレベル5勢の能力を封じているのもこいつの謎パワーである。詳細な設定なんて考えてねぇよ?
前回、笑ってはいけない学園都市・高校編が終わった後、一方通行によってきつい御灸を据えられたにも関わらず
懲りずにまたこんな企画を計画実行しているロクデナシ。喉元過ぎて熱さを忘れたと言う事か。
このままでは本企画終了後に再度フルボッコにされる未来しか見えないのだが、何か手は打っているのだろうか。
帝凍庫クン(ていとうこくん)
冷蔵庫に手と顔をくっつけた癒し系マスコットキャラ。
人物名鑑と銘打っておきながら早速人物どころか生物ですらないものを紹介するとはこれいかに。
垣根本人ではなく、元は垣根の家の冷蔵庫に一方通行が細工しただけのものだった。
現在は小型軽量化された手の平サイズの物から本来の冷蔵庫サイズの物まで、
幅広く学園都市内で流通しているらしい。(一方通行によるイヤガラセの一環で)
元々part1序盤の一発ネタのはずだったのだが、適当に作ったAAが何故かウケしてしまい、
スレ住民の愛の手によってどんどんと予想も付かない改造をされ、凄まじい進化をしていった。
その結果、なんだかんだでレギュラーキャラとして定着してしまう。
て言うかもはや本作の顔、代名詞的な存在である。スレが喰われてしまったよ母さん。
親元を離れ様々な場所で活躍しているこの子の姿を見るととても嬉しいです。
巫女服の少女(みこふくのしょうじょ)
病院の廊下でレベル5勢を待ち受けていた存在感の薄い少女。
前回は登場すらしなかったので今回は活躍させてあげようと思ったらこの様である。
ようやく出番が来たとあってワクワクしながらスタンばってたのに
蓋を開けてみれば名前すら明らかにならず、電波ソングを歌わされた挙句、
一方通行に散々な言葉責めを喰らってマジへこみさせられる。かわいそうに。
そして、きっとこれで彼女の出番は終わりである。合掌。
11111号「こちらが院長室になります、とミサカは目の前の扉を指し示します」
11111号に連れられた一行は木製の豪華な扉の前に立っていた。
いかにも『この先に偉い人が待ってますよ』と言わんばかりの佇まいである。
RPGなら扉を開けるとボス戦が開始される場面だろう。
垣根「こりゃまた見るからに何か仕掛けてありそうだな」
御坂「うーん、扉開けるのが怖いわね……」
一方通行「さて何が待ってンのやら……鬼が出るか蛇が出るかってか」
11111号「ご安心ください、出てくるのはただの院長先生です、
とミサカは過剰な心配をしている皆さんに気休めを言います」
麦野「やかましいわ」
11111号「では時間も押してますしサクサク行きますよ。
院長先生、研修生をお連れしました、とミサカは扉越しに声をかけながらノックします」コンコン
11111号は扉を軽くノックしつつ、室内にいるであろう院長に入室許可を求める。
普段の彼女に有るまじき礼儀正しい行動が反って不気味である。
そして待つこと数秒――
「入室を許可するのである」
特徴的な口調の野太い声が室内から帰ってくる。
どこかで聞いた事のある声だ。しかし扉越しということで多少くぐもっており、どうにもハッキリしない。
少なくとも今朝聞いた冥土帰しの声とは違っているようだが。
一方通行「今の声、どっかで……」
垣根「何だろうな、イヤな予感がして堪らねぇ……」
麦野「垣根?あんたすっごい汗かいてるけど突然どうしたのよ?」
御坂「何か顔色もすごく悪いけど、大丈夫?」
垣根「あ、あぁ、大丈夫だ……良くわかんねぇが、今の声聞いた途端何か……」
11111号「はいはい、許可も出ましたしさっさと中に入りますよ、
とミサカは院長室の扉を押し開きます。よっこいせ」ギィー
何かが琴線に触れたのか、扉越しの声を聞いた垣根は顔を青くして脂汗を流している。
しかし11111号はそんな状態の垣根に特に気を使うこともなく、院長室の扉を躊躇なく押し開く。
豪華な木製の扉は、これまたゲームの演出のようにギギギと大げさな音を立てながらゆっくりと開いていった。
その様はまるで地獄の門が開くのを間近に眺めているようで、
『この門を潜る者は一切の希望を捨てよ』というダンテの一説が聞こえてくるようだ。
「ようこそ研修生諸君、歓迎するのである」
一方通行「オグッ」
垣根「」
御坂「フフッ」
麦野「ゲフッ」
デデーン♪
「一方通行、御坂、麦野、アウトー」
完全に開かれた扉の先、一人の大男が彼らに背を向けて立っていた。
男は5人が室内に入ってきたのを察知すると、ゆっくりと彼らのほうへと向き直る。
振り返ったその姿を見た途端、垣根を除いた一同は一斉に吹き出してしまう。
その顔に、その声に、その筋骨隆々の肉体に、彼らは思いっきり見覚えがあったのだ。
むしろ前回あれだけの目にあったと言うのに何故すぐに思い出せなかったのか。
垣根「ば、オマエら笑い事じゃねぇぞコレ!?」
一方通行「いやァ、笑い事だろコレ……」
御坂「白衣パッツンパッツンじゃないの……着てる意味ないでしょそれ……」
麦野「今回このおっさんの登場早いわね……」
11111号「えー紹介します、臨時で当医院の院長を務めているアックア先生です、
とミサカは予想外に早いアックア先生の登場に戸惑っている皆さんに院長を紹介します」
アックア「はじめましてである」
垣根「お、おいちょっと待て院長は冥土帰しじゃねぇのか!?何でこのおっさんが院長やってんだよ!!
つーか何が『はじめまして』だ!?テメェ前回高校教師やってただろうが!!」
前回、完全な濡れ衣で制裁を喰らわされた垣根はアックアに食って掛かる。
しかしアックアはそんな垣根の態度にあからさまに不快な顔をし、
逆に垣根を食い殺さんばかりの視線で睨み付けた。全く持って理不尽な話である。
アックア「目上の人間に対して『おっさん』だの『テメェ』だのと……礼儀というものを知らないのであるか!?」キッ
垣根「え、えぇ……?……えっと、あの……スイマセン」ビクビク
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
垣根「だからオマエ笑い事じゃねぇって!!」
一方通行「いや今のはオマエ笑わせに来ただろ!」
麦野「いきなり弱気になってんじゃないわよバ垣根が……」
バチーン!!
一方通行「ぎゃァァァァ!!!」
麦野「うああぁぁぁ!!!!」
11111号「えー、アックア先生は優秀な流れの医者でして、
今回は皆さんを迎える為にわざわざ当病院の臨時の院長をお願いしたのです。
とミサカはカンペを眺めながら設定を説明します」
アックア「その通りである」
一方通行「何だよ流れの医者って……」
御坂「ていうか『設定』って言っちゃってるじゃない……」
11111号「ちなみに免許は持ってませんし、メス握った事すらありません、とミサカは補足します」
一方通行「グゥッ」
御坂「ングッ」
デデーン♪
『一方通行、御坂、アウトー』
一方通行「医者ですらねェじゃねェかァ!!!」
御坂「そんな藪医者を何で院長待遇で招いちゃうのよ……」
バチーン!!
一方通行「おァッたァァァァ!!!」
御坂「や、いったああぁぁぁ!!!!」
垣根「つーか流れの優秀な医者って設定は何処行ったんだ?」
麦野「メスを使わない治療は上手いんじゃない?例えば……マッサージとか?」
御坂「それって治療なの……?」
11111号「いえ、そもそもこのおっさん大学すら出てませんから、
ぶっちゃけ医学の事なんてからっきしですよ?とミサカは更に補足します」
アックア「気合で治すのである」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「意味わかンねェンだよォォォォ!!!!」
垣根「何の為にいるんだよこのおっさん!?」
御坂「余計な補足やめてよもおおおお!!」
麦野「やっぱりね、どう見ても知的には見えないものね、
ゴリラと人間のハーフみてぇな外見のおっさんに医者の真似事なんて出来るわけないわ、わかってたわよ……クソ」
バチーン!!
一方通行「ぐおァァァァ!!!」
垣根「ぬああぁぁあ!!!」
御坂「ひぐぅッ!!!」
麦野「ッッちいぃぃッ!!!」
一方通行「あァークソが、連発は堪えるぜェ……」サスサス
御坂「もう最悪……」グスン
11111号「ご安心ください、ここは病院ですし肛門科もしっかり備えてありますので、
万が一臀部に深刻なダメージを負ってもすぐに治療が出来ます、とミサカは親指を立てて励まします」グッ
一方通行「いらねェよ!!」
垣根「でもマジで痔になったらどうすっかな……」ハァ
11111号「さて皆さん、散々アックア先生の事を無能のようにおっしゃっていましたが
こんなおっさんでも役に立つ事もあるんですよ?とミサカはフォローします」
麦野「無能のように説明したのはテメェだよテメェ」
御坂「役に立つってあれでしょ?どうせ警備員的な役割なんでしょ?」
11111号「いえいえ違います、ちゃんと医療的な面でですよ、
とミサカは仮にも院長であらせられるアックア先生に対する無礼を嗜めます」メッ
一方通行「だから一番無礼な事ほざいてたのオマエだろォが」
垣根「大体、学歴もねぇ医学知識もねぇ筋肉ダルマのおっさんが医療面でどう役に立つってんだ?」
アックア「貴様はさっきから随分と礼儀知らずな物言いであるな?」ギロ
垣根「何で俺だけ睨まれんの!?」ビクッ
11111号「具体的に説明するとですね、アックア先生は世界でも珍しい『ビンタ治療』の第一人者でして……」
一方通行「ン?」
麦野「ビンタ……何?」
11111号「治療です、ビンタ治療、とミサカはリピートします」
御坂「び、ビンタと治療とどう関係あるのよ!?」
11111号「思いっきりビンタかます事で闘魂注入、みたいな?
まぁ良くわかりませんけど何かそんな効果があるんじゃないですかね?
とミサカは投げやりに説明します」
麦野「説明適当にも程があるわ!!絶対効果ねぇだろそれ!!」
垣根「うおぉぉい!!ちょっと待てイヤな予感しかしねぇぞ!!!」
11111号「今回は特別サービスということで、皆さんの中からどなたか一人だけ
実際にビンタ治療を体験していただきます、とミサカは重大発表をぶちかまします。
いや実に羨ましい、アックア先生のビンタ治療は中々受けられるものではないのですよ?」
垣根「やっぱそういう流れになんのかよおおお!!!やめろよもおおおお!!!!」
一方通行「いらねェよ、ンなサービスゥ!!!!」
11111号「それではアックア先生に選んでいただきましょう、誰にビンタしたいですか?
とミサカはアックア先生に選択権を委ねます」
アックア「垣根帝督、貴様に決めたのである」
11111号「ナイス即答」
垣根「やっぱ俺!だよね!!わかってたよ俺!!こうなるって知ってた!!知ってたよ俺!!
こういうのは俺の役割だもんね!!わかってた!このおっさんが出てきた時点で
こんな流れになるのなんてわかってたよ!!
でもそんな『ピカチュウ、君に決めた!』みたいなノリで即答する事ないじゃん!?
もうちょっと焦らして希望持たせてくれてもいいんじゃないの!!?
最終的に俺を選ぶにしても想像を膨らませる過程を大事に……あぁもうチクショオオオォォォ!!!!」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
垣根「あぁ笑え!好きなだけ笑え!哀れな俺を笑うがいいさ!!」
一方通行「垣根オマエマジでうっせェ!!!」
麦野「私ら巻き込む為にわざと大袈裟に振舞ってんなテメェ!?黙ってビンタされとけ馬鹿が!!」
御坂「かわいそうだけど……ごめん、堪えられない……」
バチーン!!
一方通行「づおあァァァァ!!!」
御坂「ひゃううぅぅ!!!」
麦野「ぐに゛ゃあぁぁぁぁ!!!」
アックア「さ、こっちに来るのである」オイデオイデ
垣根「手招きすんな誰が行くか馬ァ鹿!!大体何で俺なんだクソッタレが!!そっちの白モヤシで手ぇ打っとけよ!!」
一方通行「おま!?こっちに押し付けようとすンじゃねェ!!」
アックア「垣根帝督、貴様は前回(高校編で)身体が弱いと言っていたであろう?
だから治療してやると言っているのである」ブンブン
垣根「何でそんな細かい事覚えてんだよ!?あんなもん嘘だよ嘘!!
つーかもう自分で『前回』とか言っちゃってるじゃねぇか!!!あと素振りすんのやめて!?」
アックア「嘘をつくような輩には制裁が必要であるな」ブゥンブゥン
垣根「制裁!?治療じゃなくて制裁!!?」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
垣根「やっぱ笑うなオマエら!!ムカツクわ!!!」
一方通行「ムカついてンのはこっちだアホンダラァァァァ!!!」
麦野「テメェ前回もそうやって私ら巻き添えにしただろうが!!いい加減にしろよ!!!」
御坂「ごめん垣根さん!さっさとビンタされて!!」
垣根「酷ぇよオマエら!!ほんと酷ぇよ!!!」
アックア「もう時間が惜しい、来ないのからこっちから行くのである」ザッザッ
垣根「いやああああ!!!こっち来んなああああああ!!!!」
アックア「安心するのである、一瞬で終わらせる」コキコキ
垣根「明らかに治療の前に言う台詞じゃねぇよそれえええ!!!首コキコキ鳴らすのやめろよおおお!!!!」
アックア「首にはしっかり力を入れておく事をお勧めするのである。
下手をすると捻じ切れてしまうかも知れないからな」
垣根「もはや治療じゃないって事を隠す気すらねぇだろテメェェェェ!!?」
アックア「大丈夫、任せるのである」ニカッ
垣根「何が大丈夫なんだよぉぉぉぉ!!!勘弁してください、マジで勘弁してください!!!」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「ふっざけンなバ垣根が!!マジでいい加減にしろ!!!」
麦野「どうせ逃げられないんだから粘るのやめろ!!!これ以上私ら巻き込むな!!」
御坂「お願い垣根さん、もうやめて!もう諦めて!!」
垣根「テメェらなあああ!!!こっちは命懸かってんだぞ!!!
テメェらこのおっさんのビンタがどんだけ威力あんのか知らねぇだろ!!!?」
アックア「さ、覚悟は出来ているな?」グッ
垣根「うおぉ!?」ビクッ
ふと気付いた時にはアックアは垣根の目の前まで迫っており、既に右手を振りかぶっている。
もはや距離を取って逃げる時間はなく、身を捩っての回避も間に合わないだろう。
防御した所でアックアの馬鹿力の前ではどれ程の効果が期待できるものか怪しい。
進退ここに窮まれりと言ったところだろうか。しかし、垣根の目はまだ死んではいなかった。
垣根「ッッ!!!」ギリッ
一方通行(あの野郎、何かやる気か!?)
これまで多くの人間の様々な感情の発露を間近に見て来た一方通行だからこそわかる。
垣根は、この絶体絶命の状況の中で絶望せずに、まだ何か抵抗しようとしている。
決して折れぬ不屈の反骨心がその瞳に宿っていた。
アックア「むぅん!!!」ブンッ
垣根(タダでは逝かねぇ!!!)ヒュッ
麦野「あ、あれは!!」
動いたのは、ほぼ同時。否、垣根の方が早くすらあった。
アックアが右手を振り下ろし始めたとき、垣根の左腕は既に動き始めていた。
例え能力を制限されていようと、垣根には鍛え抜かれた動体視力と洞察力、
そして暗部で培われた命を顧みない度胸と、ここ一番での集中力がある。
黙って狩られるだけの家畜とはワケが違うのだ。彼は肥え太った豚ではなく、餓えた狼なのである。
垣根の左頬目掛けて振り下ろされるアックアの右手と交差するように、
垣根の左手はアックアの右頬を狙って伸びて行く。
御坂(これはまさか……)
11111号(ク、クロスカウンター……ッ!?)
一方通行(アイツ、この状況で狙ってやがったのか……)ゴクリ
麦野(フフ、垣根の奴、案外やるじゃない)ニヤ
それはボクシング未経験者が咄嗟に繰り出したとは到底思えない程に
タイミングも角度も申し分ない、完璧な一撃であった。芸術的なクロスが、そこに完成していた。
垣根(捉えた!!)
垣根の鍛え抜かれた目が鮮明なる勝利の未来を夢想する。
このタイミングならば、このスピードならば、自分の拳の方が先に相手に突き刺さる!本能レベルでそれがわかる!
勝利を確信した垣根は、まるで祝福されるかのように自分の目の前が眩い光に包まれていくような感覚を覚えた。
そして――
アックア「ずおぉりゃあ!!!」ブゥゥン!
バチャーン!!!
垣根「はぶぉぁッッ!!!!!」ビターン!
小手先の技術など、所詮アックアの圧倒的なパワーの前には無力と言う外になかった。
絶妙なタイミングで放たれた垣根の起死回生の一撃は結局アックアの右手に押し戻され、
その身体ごと風の前の塵のごとく散り散り粉々に吹き飛ばされてしまう。
やっぱり聖人パワーには勝てなかったよ……
垣根「」ビクンビクンビクン
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
11111号「あ、ちなみにむぎのんはていとくんのクロスカウンター見て
何かわかってるみたいな態度でニヤけてたんで二回分アウトです、
とミサカは些細な点も見逃さない出来る女をアピールします」フフン
麦野「ふざけんなコラァ!!!」
アックア「ふむ、スッキリしたしオペは成功である」ムフー
一方通行「スッキリしたって……垣根じゃなくてオマエの治療だったのかよ……」
御坂「あぁ、そういう事……」
麦野「それただのストレス解消じゃねぇか……」
垣根「」ブクブクブク
11111号「大丈夫ですかていとくん、しっかりしてください、
とミサカは泡吹いてるていとくんを爪先でつついてみます」ツンツン
一方通行「流石にそこは普通に助け起こしてやれよ……おい垣根大丈夫か?しっかりしろ」
御坂「あ、一方通行が真っ当な事言ってる……」
麦野「しかも垣根を気遣ってるだと……」
垣根「うー……ん……」
一方通行「オラ早く起きろ垣根、起きて弾除けの役割を果たせ。
オマエがいつまでも寝てっとこっちの被害が増えンだよ」ユサユサ
御坂「あ、納得」
麦野「そりゃ第一位が打算無しに垣根に手を差し伸べるなんてあり得ないわ」
アックア「それではこちらは仕事に戻るので諸君らも研修に戻って欲しいのである」
11111号「はい、彼らの教育はお任せください、とミサカはアックア先生に向かって敬礼します」ビシ
御坂「結局挨拶とは名ばかりでビンタされに来ただけじゃない……」
一方通行「つーか仕事に戻るって、このおっさンは何の仕事すンだよ?ビンタしか出来ねェだろ」
麦野「……そりゃビンタでしょ、ビンタしか出来ないんなら」
一方通行「……そォか、ビンタか」
麦野「えぇ、ビンタ」
一方通行「ビンタか……」
麦野「……」
一方通行「……」
麦野「……」
御坂「……」
一方通行「……グゥッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「だから何なンだよこの間はよォォォォ!!!
何で黙ンだよオマエらァ!?つーかこっち見ンじゃねェよクソがァァァァ!!!」
御坂「あんたこういうの弱いわね」
麦野「弱点見っけー」
バチーン!!
一方通行「おああァァァァ!!!!」
人物名鑑
アックア
はるばる海を渡って学園都市までやって来た筋肉の魔術師。本名はウィリアム=オルウェル。
神の右席と呼ばれるローマ正教禁断の組織の一員であり、『後方のアックア』の二つ名を取る。
『後方』の『アッー!クア』とはなんとも性的な二つ名だとは思わんかね?俺なら耐えられんわ。
世界に20人といないと言われる聖人の一人で、その戦闘能力は魔術を使わずとも
身体能力だけで超能力者と渡り合える程に強力。クロスカウンターなぞ入るはずもない。
前回と変わらぬ圧倒的パワーを込めたビンタで垣根を一撃の下に葬った。垣根が何をしたと言うのだ。
彼が垣根に執着している理由は先述した通り『アッー!クア』だから……というわけではなく
どちらかと言うと垣根側の性質(重度の弄られ属性)に問題がある。
今回は早々に登場したが、院長という役割上また後で出番が回って来るかも知れない。
その場合やっぱり垣根がビンタされてしまうのだろうか?うーん……
11111号「ほらていとくん、起きて下さい、ウェィカップウェイカップ!
とミサカはていとくんの頬をぺちぺち叩きます」ペチンペチン
垣根「うう……ん、く……んん?」パチ
御坂「あぁ良かった気付いた……このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思ったわよ」
麦野「弾除け的な意味でね」
御坂「違うわよ!?」
垣根「おぉ……ここは、どこだ?」キョロキョロ
一方通行「病院だ」
垣根「んな事はわかってんだよ馬鹿、病院の何処だよ?それにあのおっさんは……俺はどうなったんだ?」
麦野「ここは院長室前の廊下で、あんたはカウンター失敗してあのおっさんのビンタまともに喰らって今まで伸びてたの」
垣根「マジかよ結局俺は一矢報いる事すら出来なかったのか……」ハァ
一方通行「この負け犬が」
御坂「ちょ、やめなさいよ一方通行……あんなキングコングみたいな人が相手じゃ仕方ないわよ」
垣根「いいんだ御坂、事実俺はどうしようもねぇ負け犬だ……何と言われようが言い返せねぇよ」
御坂「そう?それじゃ私も言わせてもらっていい?」
垣根「ん?」
御坂「垣根さんがビンタされるまでの時間を無駄に引き伸ばしたせいで私達まで結構な被害を被ったわ。
過ぎた事は仕方ないけど、もうあんな風に無駄な抵抗をするのはやめてね?
一方通行も言ってたでしょ?抵抗すればするほど状況は悪化するって。
あんな行動取っても、誰も、勿論垣根さん自身も得しないってわかるわよね?」ネ?
垣根「……ハイ」
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
一方通行「いきなりどうしたンだオマエ……」ククク
麦野「垣根のせいで被害受けた事が結構ムカついてたんでしょうね」プククク
バチーン!!
一方通行「くはァァァァ!!!!」
麦野「うあッつぅぅぅぅ!!!」
垣根「……でも、俺そんなに悪くないよね?あのビンタマジで痛いんだぞ?
無駄だってわかってても抵抗せずにはいられなくてだな、」
御坂「言い返さないんじゃなかったっけ?」
垣根「ハイ」シュン
11111号「おぉ……お姉様がいつになくはじけておる……
とミサカは滅多に見れないドSなお姉様に戦慄します」ゾクゾク
一方通行「あァ……間違いなく妹達のオリジナルだコレ」
麦野「どす黒いわぁ……」
御坂「ちょ、ち、違うのよ!?私は保身で言ってるわけじゃなくて、
ただあんな風に無駄な体力消耗しちゃったら垣根さんの為にもならないと思ったから……」
垣根「わかってる、オマエは優しい子だよ、俺ちゃんとわかってるから……」ハァ
麦野「あーもう、垣根がへこんでるじゃないの……ほら美琴、形だけでも謝っときな」
御坂「ご、ごめんね?ちょっと言い過ぎたみたい……」
垣根「おう……」
一方通行「以上、形だけの謝罪でしたァ」
垣根「……」
御坂「ちゃんと本心から謝ってるわよ!?」
垣根「大丈夫、わかってっから……」
11111号(……ていとくん、ていとくん)ヒソヒソ
垣根(あ?何よ?何で小声?)ボソボソ
11111号(可哀想なていとくんにだけ、とっておきの耳寄り情報をお伝えしましょう、
とミサカはていとくんに耳打ちします)ヒソヒソ
垣根(可哀想とか言うな、俺を哀れむな!!どいつもこいつも!!
……で、情報ってのは何だ?一応聞かせろ)ボソボソ
11111号(次にむぎのんが尻をシバかれる際にこっそり彼女の背後に立ってみてください、いいもん拝めまっせ、
とミサカはむぎのんのスカートの短さ故に起こってしまう丸秘情報を伝達します)ククク
垣根(それはマジか)ピクン
11111号(えらくマジです、あのスカートの短さで尻突き出して竹刀でシバかれてるんですよ?
どうなるかなんて火を見るよりも明らかでしょう、とミサカは情報の正確さをアピールします)ニヤリ
垣根(……フン、一応感謝しといてやる)
11111号(いえいえどういたしまして、幸運を祈ります、とミサカは親指を立てます)グッ
垣根(それ中指だけどな)
麦野「おいそこ。何こそこそ話してやがんのよ?
垣根、テメェまさかそのクローンと結託して私らを笑わせようとしてんじゃねぇだろうな?」
垣根「何の事だ?さっぱりわからねぇな」ファサッ
麦野「前髪ファサッてやんのやめろ、きめぇから」
御坂「何か無駄に爽やかな表情してるわね……」
一方通行「……オマエ何かロクでもねェ事吹き込みやがったな?」
11111号「何の事やらわかりかねますね、とミサカは口笛を吹きつつしらばっくれます。
それではていとくんも復活した事ですし、一先ず病院の案内から始めましょうか」
垣根「……」ジー
麦野「ん?」
垣根(確かにあのスカートの短さなら背後を取れば……)ウーム
麦野「……何こっち見てんだ?」
垣根「気にすんな」
麦野「キメェから見んなつってんのよ」チッ
垣根「ハッ、そう照れんなよ」
麦野「うざっ!!こいつうざっ!!」
『ピンポンパンポーン♪館内放送です』
一方通行「あン?」
垣根「なんだ?」
『総回診の時間です。各医師や看護師、研修生は準備をしてください』
11111号「おぉっとどうやら総回診がはじまるようですよ。手始めにそちらの見学をさせていただきましょう、
とミサカは案内を中断します」
一方通行「総回診っつーとアレか、ドラマとか本で偶に見かける……」
垣根「お偉い教授様が大名行列みてぇに取り巻き大量に引き連れて入院患者診て回るアレだよな」
御坂「あれって本当にやってるんだ?何か意味あるの?」
麦野「フィクションでは権威の象徴みたいに扱われてるけど、アレ実際は新人教育的な意味合いが強いらしいわよ?
若手の医師がお偉いさんの診察を間近で見る数少ない機会なんだとさ」
垣根「へぇそういうもんなのか」
御坂「流石麦野さん、博識ね」
一方通行「伊達に歳喰ってねェな」
麦野「張り倒すぞ」
11111号「シッ、お静かに。総回診の邪魔にならないように廊下の端っこに避けてください、
とミサカは廊下のど真ん中でぐだぐだ喋っているレベル5勢を隅へと誘導します」
11111号に促され、レベル5の面々は会話を中断し、渋々廊下の隅へと移動する。
と、丁度そのタイミングで『ピンポンパンポーン♪』と館内放送を開始を告げる間抜けな効果音が
廊下の天井に設置されたスピーカーから再び鳴り響いた。
『ただいまより、木原数多内科教授による総回診が行われます』
一方通行「木原くン教授役かよ!?」ビクゥ
垣根「あのおっさん生きてたのか……」
告げられた館内放送の内容に一同、特に一方通行は大きく目を見開き驚愕する。
前回一方通行の黒翼に吹っ飛ばされて以来行方不明だった木原だがどうやら生きていたらしい。
驚愕冷め止まぬ内にザッザと大人数の足音が響き始め、廊下の向こうから総回診の大名行列が現れた。
その先頭に立つ顔面に刺青を施した強面金髪逆毛頭の男は紛れも無く木原数多その人であり、
どう見ても医者には見えないその風貌でカルテを眺めながら歩いて来るその姿は
なんとも言えないシュールさで笑いを誘う。しかし、真に着目すべきは彼の背後にあった。
先頭を歩く木原数多。彼の背後にぞろぞろとくっついて歩く十数人の取り巻き。
その取り巻き連中の誰も彼もが、まるでSWATのような特殊部隊風の装備を着込んでおり、
更にその手には何故か重火器が握られているのだ。どう見ても医療とは無関係の方々である。
彼らと比べれば、木原は白衣を着てカルテを持っている分だけまだ医療関係者に見えなくも無い。
木原を先頭とした異様な大名行列は、何事か医学用語の飛び交う会話を交わしながら
ゆっくりとしたペースでレベル5勢の目の前を横切っていく。
一応、医者として総回診を行っているつもりらしいが、まずはその格好をなんとかしていただきたい。
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「猟犬部隊連れて来てンじゃねェよ木原ァァァァ!!!!」
垣根「病院占拠したテロリストにしか見えねぇ……」
御坂「何で銃なんて抱えてるわけ!?何に使うのよ!!」
麦野「取ってつけたように医学用語で会話しやがって……」
木原一行が通り過ぎた後、レベル5勢は頭を抱えながらがっくりと肩を落とす。
そんな彼らの尻をシバく為、竹刀を持った裏方の妹達がぞろぞろと湧いて出てきた。
11111号(ていとくんチャンスですよ、とミサカは耳打ちします)コソコソ
垣根(ん?そうか、そうだったな)
コソコソと、垣根が麦野の背後のポジションを取るべく、気付かれないようにスリ足で移動し始める。
裏方の妹達も空気を読んでいるのか、垣根が移動し終わるまでお仕置きするのを待ってくれているようだ。
垣根(この辺か?いや、もうちょっと……)ソロリソロリ
麦野「ん?垣根、あんた何やってるわけ?」
垣根「……あぁ?別に何にもやってねぇだろ」
麦野「いや何か移動してんじゃん?てか私の背後に回ろうとしてねぇか?
死角に人がいると落ち着かないからやめろっての」
垣根「ちょっと動いてたら偶々そんな感じになってるだけだろ、
別にオマエの背後に回り込もうとなんてしてねぇよ(クソ、あと少し……)」ズリズリ
麦野「ふーん、偶々ねぇ?」クル
垣根「あっ」
後一歩で絶好のポジションを獲得できるという所まで進んでいた垣根だったが、
寸でのところで麦野が彼の方へと振り向いてしまう。
流石は一暗部組織の長、そう易々と背中を取らせてはくれないらしい。
麦野「『あ』って何よ?やっぱり何か企んでやがったな?」
垣根「……」
一方通行「何やってンだオマエら?」
麦野「いや、垣根が私の死角に立とうとしてるからさ」
御坂「それよりお仕置き遅くない?どうせ叩くんならもうさっさとやって欲しいんだけど……」
11111号「早く叩かれたいだなんて、お姉様どんだけドMちゃんなんですか、
とミサカはお姉様の新たな一面にドン引きします」ウワァ
御坂「違うわよ!!こんなに待たされたら精神衛生上良くないでしょ!!?」
麦野「そういやクローンどもはとっくにスタンバってるのに中々叩かれないわね」
垣根(よし、俺から注意が反れてる間に移動して……)コソコソ
一方通行「あァ?何妙な動きしてンだ垣根?」ウン?
垣根「一方通行ァァァァァ!!!」
一方通行「なンよ?」ア?
麦野「その動き、やっぱり私の背後取ろうとしてるじゃねぇかテメェ。一体どういうつもりよ?」
垣根「何でもねぇよ」
麦野「何でも無い事ないだろ、何を……ん?」
ふと、麦野の目が窓ガラスに映った己の姿を捉える。
そして再確認する。今、自分がどれ程露出度の高い服装をしているのかを。
少し前に屈んだだけで後ろから中が見えてしまいそうな短いスカート、
そしてそんなスカートを履いた自分の背後をこのタイミングで執拗に狙う垣根。全てが、つながった。
麦野「て、テメェそういう狙いか!!こんな時に何考えてんだ変態野郎!!!」
垣根(気付かれた!?)
むしろ気付かれないとでも思っていたのだろうか。
麦野「それでさっきから私の後ろに立とうとしてたって事か!!頭おかしいんじゃねぇの!?」
垣根「……いいから」ススス
麦野「開き直ってんじゃねぇぞクソ野郎!!」
垣根「いいから」
麦野「何一つよくないっての!!そこで止まれ馬鹿!!」
垣根「いいから!!!」クワッ
麦野「いい加減にしろこのド変態がぁ!!!!」ヒュッ
垣根「おぶッッ!!!」ドスゥ
開き直って麦野ににじり寄っていた垣根の鳩尾に麦野の中段足刀蹴りが突き刺さる。股間じゃなくてよかった!
あまりの痛み悶絶しながら、垣根は堪らず腹を押さえて蹲った。そして――
「そぉい!!」ブン
バチーン!!
垣根「ぬわああぁぁ!!!!」
待ってましたとばかりに、裏方の妹達が容赦なく彼のケツに向かって竹刀を振り下ろす。
前後からのヘヴィな波状攻撃に、垣根は悲痛な声をあげながらゴロゴロと無様に床を転げまわった。合掌。
そんな垣根の様子を眺めながら、11111号は『計算通り』とでも言いたげな顔で満足そうに頷くのであった。
垣根「」ビクンビクン
麦野「ったく、マジで死ねよクソが」ペッ
一方通行「結局垣根は何がしたかったンだ?」
御坂「さぁ……」
11111号「あ、タイミングがズレましたがそちらのお三方もお仕置きですのでお忘れの無いよう、
とミサカは裏方の妹達に指示を飛ばします」
一方通行「げっ」
バチーン!!
一方通行「っでええェェェ!!!」
御坂「ぴぎゅあ!!!」
麦野「だああああ!!!」
11111号「さて、それでは総回診を追いかけましょうか、
とミサカは涙目で尻を擦っている皆さんを誘導します」
一方通行「……はァ?何で追いかけなきゃならねェンだ?」
御坂「正直あんな集団には近寄りたくないんだけど……」
11111号「先程むぎのんが説明していたではありませんか、総回診には新人の研修的な意味合いがあるのですよ。
ですので、研修に来ているという設定の皆さんは総回診に参加すべきなのです、
ついでに内科の案内にもなりますし、とミサカは理由を説明します」
麦野「総回診って言うけどあいつら医者じゃないでしょ?診察とかちゃんと出来るわけ?」
11111号「そんなことは知らん、とミサカはバッサリ切り捨てます。
つべこべ言わずに追いかければいいのです、追いかける事に意味があるのです」
麦野「マジで一々ムカつくなテメェ」
垣根「ぐぅ……いててて、ちくしょうめ……」サスサス
御坂「あ、垣根さんが起きた」
麦野「チッ」
垣根「くそったれめ……いいじゃねぇかよ、俺は散々酷ぇ目に遭ってんだから少しくらいサービスしてくれても……」
一方通行「何で涙目になってンのオマエ」
11111号「そんなに見たかったのかよ、ドン引きだわ、
とミサカは苦笑いしつつていとくんから距離を取ります」
垣根「そもそも焚き付けたのはテメェだろうが!!!」
麦野「おい垣根、次私の後ろに立とうとしたらタマ潰すからな?」
垣根「ハイ(本気の目ぇしてる……)」
一方通行「うン?オマエの後ろに何かあンのか?」
麦野「うるせぇ黙れ目ぇ潰すぞモヤシ」
一方通行「えェー……何なンですかァその理不尽なキレ方ァ」
御坂「いつも私達に散々理不尽な事やってくるあんたがどの口でそんな事言うのよ?」ハァ
11111号「ほらほら、早く追いかけないと木原くん達を見失ってしまいますよ、
とミサカはいつまでも駄弁っているレベル5勢を嗜めます」メッ
垣根「見失ってもいいわボケ、むしろ見失いたいくれぇだよ」
一方通行「つーかその『メッ』ってのムカつくからやめろ」
11111号「かわいいでしょう?とミサカはドヤ顔でVサインを決めます」
一方通行「うぜェ……」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
11111号に急かされ何とか木原達に追いついたレベル5の一行は、黙って彼らの後について歩く。
先頭にカルテを抱えた木原、真ん中に完全武装の猟犬部隊十数名、
最後尾に看護師風のコスプレをしたレベル5勢、という何とも珍妙な大名行列の出来上がりである。
しばらくそのまま奇妙な行進は続いたが、にわかに木原が入院患者の個室へと入って行き、猟犬部隊もそれに追従する。
どうやら奴らは本気で患者の診察をするつもりのようだ。
レベル5勢は顔を見合わせしばし逡巡した後、しぶしぶと木原達の後を追って個室へと足を踏み入れた。
木原「……」
「zzz……」
一行が追いつくと、木原達は物量に任せて患者をベッドごと包囲していた。
猟犬部隊が邪魔で患者の状態を直接視認する事は出来ないが、微かに寝息が聞こえることから、
どうやら患者はベッドに横たわって眠っているらしいと言う事が伺える。
もし今この瞬間に患者が目を覚ましたらショック死するんじゃなかろうか。
一方通行「何で患者取り囲ンでンだよ……」
御坂「どんな診察してるかわかる?」
垣根「いや、サッパリだ。そもそも患者が見えねぇ」
麦野「つーか診察してんの?大勢で取り囲んで患者眺めてるだけじゃない?」
一方通行「患者も寝てるみてェだしなァ。こォいう場合はどォすンだ?」
木原「おい」
「ハッ!」
木原「叩き起こせ」
「了解です!」
一方通行の疑問に答えるかのように、木原は猟犬部隊の一人に指示を飛ばす。
どうやら眠っている患者を無理矢理起こして診察をしようという腹積もりらしい。
本来の回診ではこんな事やりません、多分。
「……」スチャ
木原の指示を受けた隊員の一人が、無言でサブマシンガンを構え照準を合わせる。
そしてその指が引き金に……ちょっと待て。
「ひゃっはあぁぁぁ!!!起きろオラァァァァ!!!」
ズダダダダダダダダ!!!
「うおわあぁぁぁぁぁ!!!!何事おおおぉぉ!!?」ガバッ
凄まじい轟音と眩いばかりのマズルフラッシュ。それと共に無数の銃弾がバラ撒かれ、
堪らず患者がベッドから跳ね起きる。流石に直接患者に鉛弾をぶち込むような真似はしなかったようだ。
要は度が過ぎる目覚ましみたいなものなのだろう。
無論、狭い個室で銃をぶっ放してただで済むはずもなく、ベッドのパイプや床にぶつかった一部の弾丸が跳弾し、
数人の猟犬部隊(撃った張本人含む)がそれに直撃してぶっ倒れた。お前ら本当に特殊部隊か?
とは言え倒れた連中は特に血も流れたりしていないので多分麻酔弾か何かだったのだろう。
一安心である。危うくギャグSSで人死にが出るところだった。
一方通行「あン?アイツ……」
御坂「どっかで……」
垣根「グゥッ!?」クッ
麦野「ゴハッ!」プクッ
視界を遮っていた猟犬部隊が何人かぶっ倒れた事と患者がベッドから身体を起こした事で、
ようやく一行もその姿を確認する事が出来た。しかし患者の顔を見た途端、垣根と麦野の二人は咳き込むように噴出す。
ぼさぼさの金髪頭に、『やられ役』という言葉がピッタリ似合いそうなチンピラフェイス。
今叩き起こされた入院患者は間違いなく、『アイテム』の下っ端、浜面仕上であった。
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「野郎、浜面……」
麦野「やってくれたわ……後で殺す……」
バチーン!!
垣根「ごふぉぉあ!!!」
麦野「うぐぅ!!!」
浜面「うわあああぁぁぁ何これ!?何これえぇぇぇぇ!!!
どうなってんの!?何で俺いきなり完全武装した人達に包囲されてんの!?ここ病院だよね!?
て言うか何人か倒れてるし!!?」
周囲を見渡した浜面が己の置かれた状況に驚愕し、腹の底から絶叫する。
その反応から察するに、どうやら彼は仕込みではなくガチで患者として入院していたらしい。
あまりにもテンパっている為、遠巻きにやり取りを見ているレベル5勢には気付いていないようだ。
想像して頂きたい。入院して個室を宛がわれたので誰にも邪魔されずに気持ちよく寝ていた所、
突如轟音(銃声)で叩き起こされ、跳ね起きて見れば銃を構えた特殊部隊風の集団に包囲されているという状況を。
……何だ夢か。
木原「うるせぇな、一々騒いでんじゃねぇよガキが」チッ
浜面「えぇ!?いやホント何なのこれ!?命狙われるような事した覚えないよ俺!?ドッキリ!?」ビクゥ
木原「いーや、診察だ」
浜面「絶対嘘だ!!!」
あくまでも診察だと言い張る木原に、浜面はビクつきながらも必死に食い下がる。
そりゃ誰だってこんな状況受け入れたくないだろう。て言うかこんな連中に診察されたくない。
治療と称して非合法な人体実験の被験者にでもされそうな雰囲気である。
しかし、下っ端とはいえ暗部に所属している癖に『命を狙われる覚えはない』とは……
普段よっぽど働いていないのだろうか?
木原「んで、このガキはどこが悪ぃんだ?頭か?それとも顔か?性根だったら俺は専門外だぞ」
浜面「ナチュラルに酷ぇ!!」
浜面に軽い暴言を吐きつけながら、木原はカルテをペラペラと捲る。抗議の声などガン無視である。
しかしこの状況でこれ程反抗的な態度を取る浜面も相当な度胸である。
テロリストみたいな集団に囲まれて銃突きつけられてんだよ?わかってんのか?
単に頭が悪いのか、それとも寝起きでボケているのか、
或いは常日頃から麦野のストレスの捌け口にされている為、死ぬ覚悟はいつでも出来ているのかもしれない。
木原「んー?何だ、悪ぃのは腹か……何やらかしやがったんだ?」チッ
浜面「あ、あぁ、昨日ちょっとファミレスで飲み食いしすぎて……」
なんだかんだで、浜面は木原の問診に普通に受け答えをし始める。
流石は適応能力の高さに定評のある浜面である。
置かれた状況が異常過ぎて感覚が麻痺しているだけかもしれないが。
木原「ファミレスでねぇ………よし、手術だ」
浜面「はぁ!?」
木原「はぁ?じゃねぇ、手術だよ手術。それとも手術も知らねぇのか?まぁ頭悪そうだし仕方ねぇか」ヤレヤレ
浜面「わかるわ!!どこまで馬鹿にしてんの!?そうじゃなくて、
俺はただの検査入院だから今日の昼には退院するはずなんだけど!?」
木原「お前ら、このガキ手術室まで運べ」
「「ハッ!!」」
浜面「ちょ、ちょおぉぉぉ!!?俺の声聞こえてますぅ!!?」
猟犬部隊は木原の一声に敬礼で答えると、即座に浜面の手足を縛り上げる。
そして、まるで神輿のように彼を担ぎ上げたかと思うと、何故か胴上げのごとく上空に放り投げはじめた。
何とかそれから逃れようと、叫び声を上げながら必死に身を捩る浜面だったが、
いかんせん、四肢を拘束され十数人に胴上げされている状態では逃れようがない。
それに仮に逃れられたとしてもそんな状態では冷たい床とキスする羽目になるだけだろう。
浜面「うわあぁぁやめろぉぉぉぉ!!!助けてえぇぇぇぇ!!!!」
必死の抵抗も空しく、浜面はわっしょいわっしょいと胴上げされながらゆっくりと個室から連れ去られて行く。
猟犬部隊が浜面を連れて行ったのを見届けると、木原もまた、めんどくさそうに溜息を一つ零し、
その後に続くようにして個室から出て行った。
後には穴だらけのベッドと跳弾に倒れた数人の猟犬部隊だけが残されている。回収して行けよ……
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「意味わかンねェンだよォォォォォ!!!!」
垣根「浜面ァァァァ!!!!」
御坂「何で胴上げしながら連れてくのよ!?担架とか使えばいいじゃないの!!!」
麦野「クソが!全部浜面のせいだ!!」
バチーン!!
一方通行「おゥあァァァ!!!」
垣根「どぅっふ!!!!」
御坂「きゃあぁぁぁぁ!!!」
麦野「にゃーん!」
一方通行「グフォァ」
垣根「オッフ」
御坂「ブフッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、アウトー』
垣根「おい麦野ぉ!!何だよ今のやる気無い悲鳴!!?わざとだろテメェ!!」
一方通行「『にゃーン』とかマジ自重しろやクソババア!!」
麦野「わざとじゃねぇよ誰がババァだクソモヤシが!!!」
御坂「わざとじゃないんだ……」
バチーン!!
一方通行「づああァァァァ!!!」
垣根「ごあああぁぁ!!!」
御坂「ういったぁぁぁぁぁ!!!」
一方通行「はァ……つかよォ、結局あのチンピラ野郎は何で入院してやがったンだ?仕込みじゃなかったみてェだが」
麦野「さぁ?知らないわよ。昨日まで普通にファミレスで駄弁ってたはずだけど」
垣根「オマエが『無差別級デスマッチ、浜面VSドリンクバー』とか言ってジュース飲ませまくったからだろ。
最終的に浜面の野郎、目鼻口からメロンソーダ垂れ流しながらぶっ倒れてたぞ」
麦野「あー、そう言やそんな事やったっけ……でもあれは折角空になったジュースサーバーに
ムキになってドリンク補充しまくった店員が悪いでしょ、私のせいじゃないわ」
垣根「罪の意識すら感じちゃいねぇよこいつ……」
御坂「本気で欠片も悪いと思ってなさそうね……」
11111号「さてさて、そろそろ総回診を追いかけるのはやめて病院の案内に移ろうと思うのですが、
とミサカは次なるプランに移行するよう進言します」
垣根「ん、終わりか……助かったぜ……」
一方通行「助かったかどうかはわかンねェけどな」
御坂「行く先々に笑わせるための仕掛けが用意されてるんでしょ、どうせ……」
麦野「でしょうね。体力温存のためにも仲間割れは避けて行きましょう」
垣根「オマエがそれ言っちゃうの?」
11111号「それではまずここから近い小児科に向かいましょう、とミサカは目的地を定めます」
人物名鑑
木原数多(きはら あまた)
学園都市の暗部に名だたる木原一族の一員。優秀な科学者であり、かつて一方通行の能力開発を行い
彼にとんでもない力を与えてしまった張本人でもある。ある意味全部こいつのせい。
前回、一方通行の反射の力を逆に利用した対一方通行専用拳法、『木原神拳』を披露して
調子ぶっこいていた所を彼の黒翼で吹っ飛ばされた。(こう書くと何か原作通りっぽいな)
前述の木原神拳を用いることで、至近距離なら一方通行に打ち勝つことも可能であり、
part1では一方通行に絶対能力進化を開始させるべく彼に挑んでいるのだが、
性格の歪みまくっている彼が接近戦に付き合ってくれるはずも無く、
体力切れまで逃げ回られるという屈辱的な戦法で惨敗している。
様々な経験から「一方通行と関わると酷い目に遭うんじゃないか?」と仮説を立てた彼は
その考えに基づいて今回は極力一方通行に触れなかったのだが、そのお陰か
今回は何事もなく無事五体満足で退場していった。護身開眼!
浜面仕上(はまづら しあげ)
麦野がリーダーを務める暗部組織『アイテム』の下っ端。無能力者。
原作のように泥臭くも熱い見せ場は一切無いのでいつまで経っても成長せずにヘタレのままである。
また、それ故にアイテムの仲間内からの評価は頗る低い。誰か浜面に主人公補正を!
前回から引き続き、出てくると基本的に酷い目に遭う。その悲惨さは垣根と双璧を成すレベルだろう。
手術室に連行された彼がその後どんな仕打ちを受けるのかは不明である。再登場はあるのだろうか。
余談だが、原作とは違って駒場さんが生きているはずなのに何故かアイテムに所属している。
理由?知らないわよ馬鹿!
―移動中
一方通行「……」
御坂「……」
垣根「……?どうしたオマエら、二人して沈んだ顔して」
麦野「辛気臭い面すんのは垣根だけで十分だっての」
垣根「サラッと酷い事言うなオマエは」
一方通行「あのよォ、今俺らは小児科に向かってンだよなァ?」
11111号「えぇ、その通りですよ?とミサカは先を歩きながら肯定します」
御坂「小児科って言うと、大体小学生くらいまでの子が診察対象なのよね?」
麦野「確かそうだったと思うけど、それが?」
一方通行「……イヤな予感しかしねェ」
御坂「うん……」
垣根「あん?」
11111号「はい皆さん、だらだら会話してる間に小児科に到着しましたよ、
早速診察室に行って小児科医の方に挨拶をしましょう、
とミサカは前方の扉を指し示します」ズビシ
一方通行「小児科医ねェ……」
御坂「気が進まないわね……」
垣根「そりゃこの病院にいる限り気が進むようなもんはねぇだろ」
麦野「頑なに『笑っちゃいけない』と思うから逆に笑えてくるのよね、気楽に行きましょ気楽に」
―小児科、診察室
「待っていたわ、研修生の皆」
診察室に足を踏み入れた一行を、一人の女性が笑顔で出迎えた。
白衣を羽織っていることから辛うじて彼女が医療に携わる者だと推測できるが、
その服装は一般的なそれとは大きくかけ離れている。
なにせ、白衣の下には胸部を覆うサラシと学生風のミニスカートしか着用していないのだから。
『見られるのが趣味なんですか?見ていいんですか?ありがとうございます』と言いたくなるような格好である。
しかし問題はそんな事ではない。レベル5の一行に取って真に問題なのは
その露出狂染みた格好の、赤い髪の女性に見覚えがあると言う事であった。
一行の脳裏に、前回の彼女の奇行が色鮮やかに蘇って行く。
結標「よく来たわね、私が小児科医の結標淡希よ」フッ
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「マジモンのショタコンが小児科医ってお前……」
麦野「この配役だけはやっちゃダメだろ!!!」
一方通行「やっぱりなァ、イヤな予感してたンだよ……」
御坂「ねー。絶対どっかでこの人出てくると思ってたわー」
バチーン!!
垣根「ぐへあぁ!!!」
麦野「っづああぁぁ!!!」
結標「まったく、いきなり人の顔見て笑うなんて失礼ね、あなた達」フン
垣根「うるせぇよこのショタコン!オマエ絶対患者に手ぇ出してんだろ!?」
一方通行「ホモが肛門科医やってるよりも怖ェ……」
御坂「うぅぅ、イヤな思い出が……」ビクビク
麦野「そういや美琴と第一位は前回この女に貞操狙われてたんだっけか」
11111号「一方通行は華奢ですから外見だけ見ればショタっぽいと言えない事もありませんし、
お姉様は女性としての魅力が乏しかった為にショタコンの琴線に触れてしまったんでしたね、
とミサカは過去を回想します」シミジミ
御坂「しみじみ回想すんな!!悪かったわね魅力なくて!!」
結標「ちょっとちょっと、何か散々な言われようだけど、私はショタコンじゃないわよ?」プンスカ
結標はレベル5勢からの罵倒の嵐を受けると、心外だ、とでも言いたげに
机に頬杖をつきながら憮然とした表情で彼らを睨み付ける。自分の普段の行動を省みれない人なのだろうか。
そんな結標に対し、一行、特にイヤな思い出のある一方通行と御坂は顔を顰めながら露骨に距離を取った。
結標「確かにどちらかと言うと年下の方が好みだけど、そんなの私が小児科医をやってる事とは関係ないわ。
って何で私から離れていくのよ、別に取って食ったりはしないって」
一方通行「因果関係ありまくりだろ!絶対ショタコンだから小児科医やってンだろオマエ!?
つーか前回取って食おうとしやがっただろォが!!」
御坂「すいません半径5m以内に近寄らないでください」
垣根「何気にキツい事言ってんな御坂、5mってかなり遠いぞ」
麦野「前回が前回だったからしょうがないでしょ、私が助けなかったらどうなってた事か」
一行が結標から距離を取りながら彼女の事をボロクソに詰っていると
それを遮る様にして、コンコン、とドアをノックする音が診察室に飛び込んで来た。
結標「あら、患者かしら?丁度いいわね、私の診察を良く見ていなさい。
私がどれだけ真摯に医療に取り組んでいるかわからせてあげるわ」フフン
一方通行「うわァ超見たくねェ……」
垣根「目の前でガキが×××される所見せ付けられるのかよ……」
麦野「こっちに被害が及ばないんなら別にいいんでない?」
垣根「そういう所マジドライっすね麦野さん」
御坂「し、診察の邪魔だし私達は部屋から出てた方がいいんじゃない?」
11111号「いえいえ診察風景を見学するのも研修の一環ですよ、
とミサカはさり気なく逃げようとしたお姉様の道を阻みます」ククク
御坂「ぐぬぬぬ……」
垣根「腹括ろうぜ御坂、逃げられないのなんざ最初からわかってただろ」ポン
11111号「では邪魔にならないように部屋の隅に隠れて患者さんを待ちましょうか、とミサカは一行を誘導します」
11111号に促され、一行は仕方なしに部屋の片隅へと移動する。
彼らが移動したのを見届けると、結標はドアに向かって『どうぞ』と猫撫で声で返事をした。
ここで甘ったるい声を出す時点で何かもう真面目に診察する気があるとは到底思えないのだが。
「……失礼します」
一瞬の間の後、ゆっくりとドアが開き、マスクをかけた小柄な少年が一人、
躊躇いがちに診察室へと足を踏み入れて来た。
その姿を確認した瞬間、結標の瞳は猫科動物の如く拡大し、口元に歪な笑みが広がって行く。
まさに獲物を見つけた肉食獣さながらの反応である。
『真摯に医療に取り組んでいる』などとほざいた舌の根も乾かぬ内にこの様だ。
結標「いらっしゃい、どうぞそこにかけて」ニタァ
「あ、はい、どうも……」
結標に促され、少年は若干引きながらも彼女の前の椅子に腰を下ろす。
結標「まずはお名前を聞かせてもらえるかしら?」ズイ
「あ、え……こ、香焼っす」
腰を下ろした少年―香焼が一息つく間もなく、結標は口付けをせんばかりの勢いで彼の方へと顔を寄せ、名前を尋ねる。
突如身を乗り出してきた結標に対し、香焼は慌てて身を逸らしながら、しどろもどろに答えた。
決して美人のお姉さんに急接近されて照れている、とかそう言うわけではない。
結標の気配にただならぬ物を感じ、気圧されているのだ。
結標「そう、香焼くんね?私は小児科医の結標よ、『お姉ちゃん』と呼んでくれて構わないわ。
いえ、むしろ呼びなさい」ニコッ
香焼「えぇぇぇ!?」ビクッ
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「おいおいおい!獣の目ェしてンぞこの女ァ!!」
垣根「やべぇよコイツ、やっぱ筋金入りのショタコンじゃねぇか……」
御坂「お姉ちゃんってあんた……」クッ
麦野「しっかし気持ち悪い笑顔してるわ……」
11111号「今まさにショタが毒牙にかかろうとしているというのに爆笑してる皆さんもどうかと思いますがね、
とミサカは冷静につっこみを入れてみます」
バチーン!!
一方通行「おぐあァァァァ!!!」
垣根「ふいいぃぃぃい!!!」
御坂「あっふぅ!!」
麦野「ぐにゃああぁぁ!!!」
結標「それで香焼くん、今日はどうしたのかしら?」ニコッ
香焼「え、えっと、どうも風邪引いたみたいなんすよ」ケホケホ
結標「なるほど、それでマスクをしてるのね。後でそのマスク貰ってもいいかしら?」
香焼「は、はい!?」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
一方通行「ダメだコイツ、早くなンとかしねェと……」
垣根「何に使う気だよ使用済みマスク……」
麦野「何にって、そりゃナニでしょうよ」
御坂「ちょっとやめてよ麦野さん、下品よ」
麦野「下品?私はナニとしか言ってないんだけど、美琴ちゃんは何を想像しちゃったわけ?」
御坂「うぇ!?」
一方通行「ったく、これだからむっつりは……」ハァ
垣根「言ってやるなよ一方通行、御坂だって中学生なんだ、性的な事に興味くらい持つさ」フ
御坂「うるさいうるさい!そんなんじゃないもん!!
ちょっと、さっさとお仕置き執行してこいつら黙らせなさいよ!」
11111号「いやまぁ、言われずともやりますが……しかし、無理矢理口を封じようだなんて
どんどん腹黒くなって行きますねお姉様、流石はこのミサカのオリジナル、
とミサカは本性を曝け出し始めたお姉様にドン引きしながら裏方の妹達に指示を出します」ヤレ
バチーン!!
一方通行「ごああァァァァ!!!」
垣根「んがああぁぁあ!!!」
麦野「うがああぁぁ!!!」
御坂「ちょっと誰が腹黒いって?今のは妙な事口走った麦野さんが発端で……」
11111号「そしてこの責任転嫁です。いやぁ素晴らしい、とミサカは明後日の方向を眺めながらお姉様をベタ褒めします」
結標「誤解しないで香焼くん、私は何も個人的な理由であなたの使用済みマスクが欲しいと言ってるわけじゃないわ」
香焼「へ?」
結標「そのマスクに付着したあなたの唾液や粘膜を分析する事で速やかに病原体を特定して
それから専用のワクチンを生成するのよ」
香焼「いえ多分ただの風邪っすからそこまでして頂かなくてもいいと思うんすけど」
結標「シャラァァップ!!!風邪は万病の元よ!甘く見てたら死ぬわよ!!わかったらマスクをよこしなさい!!」カッ
香焼「ひいぃぃ!!!」
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、アウトー』
一方通行「オマエがシャラップだクソがァァァァ!!」
垣根「おい誰かこの女止めろよ!!」
御坂「どんだけ必死なのよ……」
麦野「患者怯えまくってるわね、どう見ても医者の姿じゃねぇわ」
バチーン!!
一方通行「はァァァァ!!!」
垣根「おあったぁぁぁああ!!」
御坂「きゃう!!」
結標「コホン、大声出してごめんなさいね?でもそれだけ香焼くんの事が心配なのよ。
人間の身体って皆が思ってる以上に弱いものでね、
『たかが風邪だ』なんて高を括って取り返しの付かないことになるケースも珍しくないんだから」
香焼「は、はぁ、そうなんすか……」
一方通行「取り返しが付かねェのはオマエの頭だろ……」
麦野「何か簡単に言い包められてるわね、所詮ガキか」
垣根「騙されるなー、逃げろ香焼くーん」
結標「まぁマスクは後で貰うとして、一先ず診察を始めましょうか」
香焼「あ、はいお願いします」
結標「うん、それじゃ脱いでください」ニコッ
香焼「……え?」
結標「脱いでください」ズイ
香焼「いやあの、え?」
結標「はよ脱げ」ハァハァ
香焼「えぇ!!?」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「滅茶苦茶呼吸荒くなってんぞ!?」
麦野「いよいよガチ×××かぁ……」
一方通行「……」←前回結標に迫られたのを思い出して笑えない人
御坂「……」←同上
バチーン!!
垣根「はぐあぁぁ!!」
麦野「ぐええぇ!!」
結標「勘違いしないで!聴診器を当てるからシャツを捲り上げてって言ってるのよ!」
香焼「あ、そ、そういうことすか」ホッ
一方通行「いや思いっきり『脱げ』とか言ってたじゃねェか」
垣根「オマエも一々つっこむなよ、キリがねぇぞ」
御坂「一方通行がつっこみ役に回るなんて珍しいわね」
麦野「童貞なのにつっこみ役とはねぇ」
11111号「あぁ!セリフ取られた!!一方通行を罵るのはミサカの役目なのに!
とミサカはむぎのんに先を越された事に歯軋りして悔しがります」ギギギ
一方通行「おい」
結標「はい、じゃぁ誤解も解けたしシャツを捲り上げてもらえるかしら?胸の上までね」ニコッ
香焼「えっと、こうすか?」メクリ
結標「んほぉおおおおおおおおお!!!!」ビクンビクン
香焼「何なんすかあんたはぁぁぁ!!!」ビクゥ
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「もういいだろ!もうやめてくれ!!つーかあのガキも逃げろよ!!」
垣根「臨界点突破してんぞ!そろそろマジで止めろよ!!」
御坂「何か痙攣してるし……」
麦野「おまけに白目も剥いてるわね、ほっといたら死ぬんじゃない?」
11111号「実際問題、興奮のし過ぎで死ぬ方って稀にいるらしいですからね。
特に女性に多いそうですよ?とミサカは豆知識を披露してみます」
バチーン!!
一方通行「うがあァァァ!!」
垣根「ぬわあぁぁ!!!」
御坂「ひゃい!!!」
麦野「うわッッたぁ!!!」
結標「大丈夫、診察を続けましょう。もう一度服を捲り上げて貰えるかしら?」スーハースーハー
香焼「どう見ても大丈夫じゃないすよ!こっちはもういいすからあなたが診察受けて来てください!!」
結標「え?香焼くんが私の診察をしてくれるの?私の身体を隅々まで調べたいのね?
んもう、おませさんなんだから(ハァト」
香焼「本当に何なんすか……日本語通じないんすか……」ゲッソリ
一方通行「おい泣きそうになってンぞあのガキ」
垣根「かわいそうになぁ……ってあれ、何かオマエ嬉しそうなツラしてねぇ?」
11111号「一方通行は基本的に他人が可哀想な目に遭ってる姿見るのが大好きですからね、
何か琴線に触れるモノがあったのでしょう、とミサカは外道モヤシに嘆息します」ハァ
御坂「そっか、他人の嫌がる事するの大好きだもんねこいつ」
一方通行「別にイヤガラセそのものが大好きなわけじゃねェ、その後の反応を眺めンのが好きなンだよ」
麦野「他人が驚いたり苦しんだり必死に無駄な抵抗したりする姿見るのが好きで、
それを見る為の最適手段がイヤガラセってわけね。死ねよこのモヤシ」
結標「ごめんなさい冗談が過ぎたわ、緊張をほぐして上げようと思ったんだけどやり過ぎちゃったみたいね」フゥ
香焼「やり過ぎってレベルじゃないすよ……」グスン
結標「もう一度チャンスを貰えないかしら?苦しんでる患者さんをこのまま帰すわけにはいかないわ。
お姉ちゃんを信じて!悪いようにはしないから!」
香焼「苦しめたのはあなたすけどね」スンスン
結標「涙目ショタぺろぺろ!ぺろぺろ!!(泣かないで香焼くん)」
香焼「うわああぁぁぁぁん!!!」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「クソッタレがァァァァ!!!」
垣根「本音と建前逆になってんじゃねぇか!!」
御坂「もうやめてあげて!本気で泣いてるわよその子!!」
麦野「てか長ぇぞこいつのパート!そろそろ終われよ!!」
バチーン!!
一方通行「いっでええェェ!!!」
垣根「ぐぬああああ!!!!」
御坂「いたああああ!!!」
麦野「っつううううう!!!」
香焼「も、もう本当に僕はいいすから!!失礼します!!」ガタン
結標「あ……」
ついに結標の奇行に耐えられなくなったらしく、香焼はすっ転ぶように慌しく椅子から立ち上がると
涙も拭わずに脱兎のごとく駆け出した。それにしても良くぞここまで耐えたものである。
普通の人なら使用済みマスクを要求された時点で立ち去ろうとしているだろう。
香焼は振り返りもせず一気にドアまで走り寄り、
何とかこの魔窟から逃れようと試みた。しかし――
結標「んもう、駄目じゃない逃げちゃ、診察はまだ始まったばかりなのよ?」
香焼「……え?」
今まさにドアを開かんとしていた香焼は、次の瞬間には何故か結標の目の前に立っていた。
香焼「な?え?ど、どうして!?」
突然の事態に香焼はDIOと対峙したポルナレフの如く困惑する。
ほんの一瞬前まで、彼はこの部屋から逃れる為にドアを開けようとしていたはずだ。
その時点で香焼と結標は距離にして数mは離れていたに違いない。
にも関わらず、今は手を伸ばせば届くような距離まで結標が迫って来ている。
否、結標が香焼に迫ったのではない。彼女は変わらず診察室の中央で椅子に座ったまま微笑んでいる。
そう、逃げようとしていた香焼の方が、強制的に結標の目の前まで移動させられたのだ。
結標「何人たりとも、私の座標移動からは逃げられないわ」クス
結標は狼狽する香焼を上気した顔で見つめながら、クスクスと笑みを零す。
『座標移動(ムーブポイント)』。結標の持つレベル5にも迫る最強の空間移動能力は
始点と終点が固定されておらず、範囲内ならば任意の物を任意の場所へ、彼女の思うが侭に転移する事が出来るのだ。
もし結標がその気になれば、手を触れずとも範囲内の人間の服だけをすっ飛ばしたり
逆に服を引き剥がした生身の身体だけを自分の腕の中に移動することも可能だろう。
正直、変態が一番手にしてはいけない能力である。
結標「さ、診察を再開しましょう?もし次に逃げようとしたら、いたーい注射をしちゃうからね?」グヘヘヘ
香焼「ひぃ!?」
結標「どうも聴診器当てられるのに抵抗感があるみたいだし、特別サービスで触診にしてあげるわ」ワキワキ
香焼「いやもう聴診器で!是非聴診器でお願いします!!」
結標「さ、楽にしてお姉さんに身体を委ねなさい」ガシ
香焼「いやちょ、やめ……ちょ、マジで……どこ触ってんすかああぁぁぁぁ!!!」
結標「うっひょおおおぉぉぉ!!!生ショタ柔らけええぇぇぇ!!!!」モゾモゾモゾ
香焼「いやあああぁぁぁぁ!!!」
デデーン♪
『全員、アウトー』
11111号「この状況で笑うとかお前ら鬼畜かよ、とミサカは腹を抱えているレベル5勢を非難します」
一方通行「一番最初に吹き出したのオマエだろォが!!」
垣根「こっちは釣られて笑っちまったんだよ!!」
御坂「か、かわいそうだとは思ってるのよ?ほんとよ?でもちょっと、あんまりリアクションが派手だからつい……」
麦野「いやぁこれは笑うわ、うん。他人の不幸すっごく楽しい」
バチーン!!
一方通行「ごほォあァァ!!!」
垣根「エンッ!!!」
御坂「あぐッッ!!!」
麦野「ぎにゃあぁ!!!」
結標「ほらほらここ?ここがいいんでしょ?ん?お姉さんに言ってみなさい」ハァハァハァ
香焼「も、もうやめ……や、下半身は……あぁぁぁーーーッ!!!」
11111号「……あー、こっから先はR18への一方通行になりそうなんでそろそろ退室しましょうか、
とミサカはドアを指差しながら提案します」
垣根「あ、助けねぇの?」
11111号「助けたところで一文の得にもなりませんし」
御坂「いやいや助けてあげましょうよ!あのままじゃあの子本当に……」
11111号「もし結標先生から香焼くんを引き剥がした場合、標的がこちらに移る可能性もあるのですが
お姉様はそれを覚悟の上で助けようとおっしゃっているのですか?
とミサカはお姉様を正面に見据えながら尋ねます」
御坂「……ごめんね香焼くん、あなたの事は忘れないわ」
一方通行「変わり身早ェな、流石腹黒」
麦野「でも美琴のこういう所嫌いじゃないわよ?」
11111号「それでは部屋から出て次に向かいましょう。結標先生、どうぞごゆるりと、
とミサカは別れの挨拶をしながらドアを開きます」ガチャ
一方通行「達者でなァ」
垣根「死ぬなよ香焼くーん」
御坂「早く行きましょうよ、何かの拍子でこっちを標的にされたら堪ったもんじゃないわ」
麦野「落ち着きなさいって、目の前に餌がある内は大丈夫でしょ」
結標「あら、もう研修は終わり?また来てね」ニコッ
香焼「た、助け、助けてええええぇぇぇ!!!」イヤァァァ
11111号「ちゃお、とミサカは手を振りながらドアを閉めます」バタン
結標「さ、邪魔者はいなくなったし心行くまで楽しみましょう?」ドゥフフフ
香焼「ひ……ッ!も、もうやめ……」
結標「ねぇ香焼くん、硬いのと太いのと、どっちがお好みかしら?」ニッコォ
香焼「いやだあああぁぁぁ!!どっちもいやだあああぁぁぁぁ!!!!」
結標「え、どっちも?仕方ない子ねまったく……」フフフフフ
香焼「やめてええぇぇぇぇぇ!!!!」
「あっ……」
人物名鑑
結標淡希(むすじめ あわき)
重度のショタコン。相も変わらず全力全壊絶好調である。
あらゆるギャグSSでキャラがブレない事に定評がある。フルスロットル!
ショタコンなだけならまだいいのだが、彼女はレベル5級の能力(それも性的な事に使えそうなもの)を持っており、
しかもそれを思いっきり悪用するので凄まじく性質が悪い。誰かどうにかして。
しかし意外と好みがうるさいらしく、某身長2mの14歳には反感を抱いており、
『ショタを冒涜している』として粛清した過去がある。
ロリキャラ、ショタキャラにおいて一番重要なのはやっぱり見た目だよね。
part3まではショタらしいショタが登場しなかった為、一方通行や御坂に反応していたが、
今回は晴れて香焼くんが登場したので、全力でそっちにアプローチをかけに行った。
結果、一方通行達が性的な被害を被る事は無かったが……それはそれで寂しいなぁ。
そろそろ普通な結標さんを書きたいです。と毎回言っている気がする。
香焼(こうやぎ)
天草式十字凄教という日本の十字教一派に所属している小柄な少年。フルネーム不明。
禁書界における貴重なショタ担当。短パンとかが良く似合いそうな容姿をしています。
つーか禁書はロリキャラ多いのにショタキャラ少なすぎだろ……
「結標を暴れさせたいなー」という作者のアバウトな思惑から登場する羽目になってしまった可哀想な子。
まさに結標に襲われる為だけに出てきたようなキャラである。めんごめんご。
この後彼が結標に何をされたのかは不明。何とか隙をついて逃げ出していて欲しいものだ。
あれ、これ下手したら十字教と学園都市で戦争になるんじゃね?
―移動中
一方通行「あァクソ、あのショタコン散々暴れやがって……」
垣根「ケツ痛ぇ……」
御坂「ちょっと垣根さん大丈夫?フラついてるわよ」
麦野「そんな事でいざって時に私達の盾になれるわけ?」
垣根「何でオマエらの盾になる前提なの?」
辛くも小児科から離脱したレベル5勢だったが、そのダメージは深刻であった。
エンジン全開の結標の奇行により散々アウトを取られた彼らは、
企画開始からまだそれ程時間は経っていないというのに、早くも心身ともにボロボロの状態となり果てている。
特に院長室でビンタを喰らったり麦野に蹴りを喰らったりした垣根はだいぶ足にきているようで
先程から覚束ない足取りでフラフラと一人遅れるようにして一行の最後尾を歩いていた。
一方通行「どォしたよ、前回は第七位に何度かぶン殴られてもあっさり回復してたオマエが」
麦野「フレンダの爆弾で爆破されてもピンピンしてたあんたが」
垣根「良く生きてんなー、俺……」
御坂「ドンマイ垣根さん」
垣根「心のこもってない励ましはやめてくれ、メンタル面にくるから」
御坂「こめてるわよ!?」
11111号「ていとくんの回復が遅いのは今回ギャグがパンチ力不足なんでギャグ補正が薄いせいでしょう、
とミサカは自虐ネタで誤魔化そうとしてみます」
一方通行「そォいうのはやめろってのに」
麦野「ところで今どこに向かってんの?」
11111号「外科の方に向かっております、とミサカは返答します」
垣根「ふーん外科か、何か病院の華って感じがするな」
一方通行「確かに、病院と言やァ外科手術、みてェなイメージあるわな」
御坂「医療系の漫画やドラマも大抵は外科医が主人公だもんね」
麦野「そういうのってブラックジャックの影響とか大きいのかねぇ、やっぱり」
11111号「医療漫画というジャンルを確立した作品ですからね、
手塚先生は実に偉大なお方です、とミサカは時代の先駆者を褒め称えます。
あ、ちなみにそこの階段下りたらもう外科に着きますよ」
垣根「ん、もうか……流石に外科医に妙な奴は持ってこねぇよな?つーか冥土帰しだよな多分」
一方通行「オマエのそォいう迂闊な発言は逆方向のベクトルでフラグが立つからやめろ」
麦野「てか外科医が冥土帰しだったとしても油断は出来ないでしょうよ、今朝の見る限り」
御坂「あー……すっごい叫びながら心臓マッサージしてたわよね……」
一方通行「アレイスターの野郎、陸に打ち上げられた魚みてェにビクンビクンしてやがったしなァ」
垣根「ビクンビクンしてたなぁ」
麦野「ビクンビクンしてたわねぇ」
御坂「ビクンビクンしてたしてた」
一方通行「ビクンビクンなァ」
垣根「……」チラッ
麦野「……」ジッ
御坂「……」ジト
一方通行「………グッ」ブフッ
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「何なンだよオマエらァァァァ!!!
突然黙ンなよ!!!こっち見ンなよォォォォ!!!」
垣根「ぃよっし」グッ
御坂「やっぱこういうの弱いわねあんた」フッ
麦野「ざまぁ」
11111号「『悔しい……でも、感じちゃう!(ビクンビクン)』とか思ってんだろ?このドMちゃんがぁ!!
とミサカは冷めた目で一方通行を罵ります」
一方通行「だァれがドMだクソボケがァ!!!」
バチーン!!
一方通行「ぎいィィィィ!!!」
麦野「そういや垣根、あんた足大丈夫?そろそろ回復した?」
垣根「あぁ?まぁ普通に歩く分にはそれ程問題ねぇよ、まだ多少フラつくけどな」
一方通行「うわ、第四位が垣根の心配してやがる気持ち悪ィ」
御坂「いやいや私ら三人普段仲いいからね?麦野さんも本当は優しいのよ?」
一方通行「ねェわァ……」キモイワー
垣根「オマエ、あんまり言ってると麦野にぶっ殺されるぞ?」
麦野「んー……」
垣根「って聞いてねぇのかよ……何考え込んでんだ?」
御坂「どうしたの?」
麦野「今から階段下りるのよね?」
11111号「その通りですよ、エレベーターなんざ使わせません、てか使ってはいけません、
とミサカは研修生の立場の低さを暗に示します」
一方通行「……なァるほど、下りの階段プラス足にきてフラついてる垣根、そォいう事か」
垣根「おいコラどういう事だ」
麦野「これってフラグよねぇ」ハァ
一方通行「フラグだよなァ」ヤレヤレ
御坂「ど、どうしよう……もしそんな期待通りの事が起きたら笑わないでいる自信がないわ……」
垣根「なぁにがフラグだ!!オマエらは何処まで俺を痛めつけてぇんだよ!?
つーかいくら足にきてても階段で足踏み外して転がり落ちるなんて間抜けを俺がやらかすと思ってんのか!?」
一方通行「はァい追加のフラグいただきましたァ」
麦野「多分あんたが余計な事言えば言うほどアクロバティックに落ちていく羽目になると思うわよ?」
御坂「階段から転げ落ちるのはもう確定みたいなもんよね、これ」
一方通行「つかここまでフラグ立ってて転ばなかったら逆にすげェわ」
垣根「言いたい放題言いやがって……」
11111号「まぁまぁていとくん、転がり落ちなくてもちょっと場が盛り下がるだけですから
どうぞお気になさらずに普通に下りてください、とミサカはていとくんを励まします」ガンバ
垣根「何で俺が転がり落ちなきゃいけないみたいな空気を作っちゃうの!?」
一方通行「とりあえず垣根先頭で行かせようぜ」
麦野「そうね、後ろから転がり落ちて来られたら巻き込まれるかもしれないし」
御坂「垣根さん、ファイト」オー
11111号「カメラの準備は出来ております、とミサカは親指を立てながらていとくんを送り出します」グッ
垣根「転ぶわけねぇだろバカ、バァーーカ」ペッ
妙な期待を寄せている四人を横目で睨みつつ、垣根は仕方なしに先頭に出る。
階段はかなり長めだが、病院という事もあって傾斜は緩く、中間の踊り場で折り返しになっており、
更に手摺もしっかりと備え付けてある。健常者が普通に下るのならば転ぶ要素などほとんどありはしないし、
万一転んでも踊り場で止まる為、そこまで大事にはならないだろう。
また、いくら垣根のダメージが多少足にきているとは言え、既にその気になれば走れる程度には回復しているのだ。
はっきり言って、余程笑いの神に愛されてでもいない限りここで転ぶような事はまずないと言っていい。
しかし、だからと言ってここで油断しては思う壺である。万が一という事もあるし用心するに越した事はない。
垣根は期待に胸膨らませる四人の視線を背中に感じながら、臆病な程ゆっくりと慎重に、階段に一歩踏み出した。
垣根「ぬへあぁぁぁーーーーッッ!!!!」ズテン、ゴロゴロゴロ
んで転んだ。やっぱり転んだ。お約束通り転んだ。
一段目で速攻足を踏み外した垣根は、奇声を発しつつ
前宙を決めるようなアクロバティックな動きをしながら転がり落ちて行った。
垣根「ごぷっ!!!」ベチャ
そして勢い良く踊り場まで転げ落ちると、折り返しの壁に顔面から突っ込んだ。
垣根「ぷああぁぁぁーーーー………」ゴロゴロゴロ
リアクション芸人垣根がそれだけで終わるはずもなく、ぶつかった反動で壁に弾かれた彼は
今度はバク宙でもするかのような勢いで後ろに吹っ飛ばされ、
踊り場で止まる事も無く更に下へ転げ落ち、悲鳴を上げながら完全に四人の視界から消えて行った。
まったく、期待を裏切らない男である。物理法則を完全に無視した動きをしているのはご愛嬌。
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「はァい垣根くゥン!フラグ回収お疲れ様でェす!!」ゲラゲラ
御坂「いや凄いわ垣根さん、信じられないくらい綺麗に転んだわね」クスクス
麦野「本当、流石としか言い様がねぇわ」ケケケケ
11111号「狙ったんじゃないかってくらい器用な転がり落ち方してましたね、
折り返しの壁に弾かれて更に転がっていくところなんてもう芸術的でした、
とミサカはカメラを回しつつ腹を抱えて爆笑します」ケタケタ
バチーン!!
一方通行「ぐがああァァァ!!!」
御坂「やああぁああ!!!!」
麦野「んに゛ゃあぁぁぁぁ!!!」
御坂「うぅぅ、痛い痛い……」サスサス
一方通行「まァ垣根は多分もっと痛ェンだろォけどな」
麦野「痛いでしょうねぇ、あの落ち方は……」
一方通行「転ンだっつーかもォ飛ンでたもンな、体操競技かと思ったわ。
俺が審査員だったら満点出してたぜ」
御坂「クッ」
麦野「ゴフッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「余計な事言ってんじゃないわよもおおお!!!」
麦野「クッソ、転んだ瞬間の垣根のツラがフラッシュバックした……」
一方通行「今別に笑わせる気なンざ全く無かったンだが……」エー
バチーン!!
御坂「あああぁぁあん!!!」
麦野「いってえぇぇぇぇ!!!」
11111号「……何と言うか、むぎのんの悲鳴はかわいくねぇな、もうちょっと何とかならないんですか?
とミサカは誰もが思っているであろう事を今更ながらつっこんでみます」
麦野「あぁ!?」
一方通行「おいおい、かわいいの対極みてェな女に何を求めてンだよオマエは。
つーか第四位が下手にかわいさとか出しやがったらこっちが笑い死ンじまうから余計なつっこみすンな」
麦野「テメェら調子ぶっこいてるとまとめて捻じ切るぞ」パキパキ
御坂「そうよ!麦野さんだって本当はかわいい女の子なんだから!」
一方通行「ゴホッ」
麦野「テメェ何吹き出してんだコラァァァァ!!!」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「か、わ、い、い、女の子(笑)」ゲラゲラ
麦野「決めた、お前殺す。お前だけは絶対殺す」プルプル
一方通行「落ち着けよ、かァわいいツラが台無しになってンぞォ?スマイル、スマァイル」ゲラゲラゲラ
麦野「ぬがあああああああ!!!!」ビキビキビキィ
御坂「……何かごめんなさい」
バチーン!!
一方通行「っでェああァァァ!!!」
一方通行「あァァクソ、いってェ……」サスサス
麦野「大丈夫?第一位……」ポン
一方通行「あ?」
顔を顰めつつ、打たれた尻を擦る一方通行。麦野はそんな彼を心配するかのように、
優しげな手つきで正面から一方通行の肩をぽんと叩く。
不自然に優しい麦野の態度に、一方通行は怪訝な顔をしつつ彼女の顔を覗き込んだ。
そんな一方通行を他所に、麦野はニコニコとまるで聖母のような微笑を浮かべたまま、
真正面から両手で一方通行の肩をガッシリとホールドする。
麦野「オラ私からも一発喰らっとけや!!」
ドスン!!!
一方通行「あぐォァッッ!!!」
渾身の膝蹴り(鳩尾狙い)であった。
11111号「すっごい鈍い音がしましたね、とミサカは一方通行の内臓をちょっぴり心配してみます」ナムナム
麦野「ハッ、能力なけりゃただのモヤシの癖して私につっかかってくるからこういう目にあうんだよ」
一方通行「お、おお、ォォォ……」ピクピク
御坂「……クッ」
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「ええぇぇ!?ちょっと私今笑ってないってえぇ!!!」
11111号「いえ思いっきり吹いてましたお姉様、とミサカは冷静にジャッジを下します。
しかし腹を蹴られて悶えてる一方通行を見て吹き出すだなんて、
お姉様も随分鬼畜っぷりが板についてきましたね」クククク
御坂「違う!違うわよ!仮に笑ってたとしてもあんたに釣られて笑っちゃったのよ!!」
一方通行「ゲホッゲホッゴホッ……ハッ、こ、ここまで、計算の上だぜ……ゴホッ」フッ
麦野「そりゃ流石に嘘だ」
バチーン!!
御坂「いひゃああぁぁぁぁ!!!」
11111号「さてお三方が楽しげな所を申し訳ないのですが、そろそろ下に行きましょう。
ていとくんがどうなってるのかも心配ですし、とミサカは今更ながらていとくんの事を気にかけてみます」
一方通行「ケホッ、あァ、そォいやアイツ戻ってこねェな」ゴホゴホ
11111号「いつまで咳き込んでんですかこのモヤシは、とミサカはモヤシのあまりのモヤシっぷりに嘆息します」ハフゥ
麦野「んー、単に下まで行って私らを待ってるのか、それとも」
御坂「階段を上ってこれないほどのダメージを負ってるか……?」
11111号「後者でいきましょう、とミサカはお姉様の案を採用します」
御坂「いや、いきましょうってあんた……」
一方通行「あの勢いなら下まで転がり落ちたのは間違いねェだろォしなァ」
麦野「死んでなきゃいいけどねー」
11111号「それはそれでネタになりますよね、
とミサカはていとくんがお亡くなりになっていた場合を脳内シミュレートしてみます」プークスクス
御坂「死んでたら流石に笑えないわよ……」
11111号を先頭に、四人はようやく階段を下り始める。
この時既に垣根が転がり落ちてから優に五分は経過していた。
階段から転がり落ちた上に放置プレイされるとかちょっと高度すぎやしませんかね?
今回は垣根にやさしくしてあげたいとか宣言してた気がするがそんな事は無かったぜ!
大丈夫だよ、私はそんなかきねを応援してる。
一方通行「しかしまァアイツは無駄に頑丈だからなァ。
実際の所、階段から落ちたくれェなら死ぬどころかほぼ無傷でピンピンしてンだろォよ」
11111号「ビンビンと申したか」
一方通行「申してねェよ」
御坂「あんたらそういう下らない小ネタで笑わせようとすんのやめなさいよ……」ピクピク
一方通行「こンな小学生レベルの下ネタで笑いそうになンのかオマエは」
11111号「下ネタにきっちり反応してるあたり、お姉様も案外好き者ですなぁ、
とミサカはいやらしく笑ってみます」ニタニタ
御坂「は、はぁ?下ネタって何のことよ?」
11111号「チッ、カマトトぶりおってからに、とミサカは露骨に顔を顰めます」
麦野「ちょっとちょっと、あんまりうちの美琴ちゃんをからかわないでくれる?
そっちのクローンと違ってこの子純真なんだから」
一方通行(保護者気取りは歳だけにしとけよ、とか言ったらまた蹴られるンだろォなァ)
11111号「むぎのん、一方通行が何か言いたそうですよ?とミサカは素早く思考を読み取ります」
一方通行「うォい!」
麦野「あぁ?んだこらモヤシ」ギロ
一方通行「何でもねェからこっち見ンな!」
垣根の不死身っぷりを良く知っている四人は一切彼の心配をする事無く、
和やかな会話を繰り広げながら焦らず急がずゆっくりと、
垣根のようにすっ転んでしまわないよう注意を払いながら階段を下っていく。
途中、踊り場の壁に血痕が付着しているのを発見してしまい吹き出しそうになった一行だったが
何とかそれも堪え、四人は無事階段を下りきった。
そして――
垣根「」ドクドクドク
一方通行「ウグッ」
麦野「クッ」
御坂「か、垣根さあぁぁぁん!!!」
階下で血を流しながらうつ伏せに倒れている垣根を発見し、一方通行と麦野の二人が同時に吹き出した。
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
一方通行「まァた派手にぶっ倒れてやがンなァコイツ……」アチャー
麦野「やっべ、意外と血ぃ出てるわよこれ、笑えるわー」
御坂「いやいや笑い事じゃないでしょ!?」
11111号「お姉様の予想が大当たりでしたね、流石です、とミサカは親指を立てます」グッ
御坂「私のせいみたいに言わないでよ!!」
垣根「」シーン
バチーン!!
一方通行「ぐおああァァァ!!!」
麦野「ぐああぁぁぁぁ!!!」
御坂「まったくあんたらは……垣根さん、大丈夫?」
垣根「」グター
血を流して倒れている人間を前にして笑い転げる外道どもに呆れつつ、
御坂は急ぎ垣根の元へ駆け寄り、ぐったりと体中の力が抜けている垣根を助け起こす。
腹黒ではあるが根はいい子である。数少ない常識人枠は伊達ではない。
一方通行「ったく、一々大げさなンだよ垣根は」チッ
麦野「階段から転げ落ちたくらいでねぇ」
11111号「あんだけ愉快に転げ落ちたら普通はこうなりますって、
とミサカは珍しく真面目につっこみをしてみます」
一方通行「垣根の耐久力は普通じゃねェはずだろォが」
垣根「」グッタリ
御坂「垣根さん?垣……え?」ユサユサ
麦野「ん?どうかした?」
相変わらず垣根の心配などそっちのけで雑談していた外道どもを尻目に
垣根の介抱をしていた御坂だったが、不意にその表情が曇り、カタカタと小刻みに震え始める。
その様子を妙に感じた麦野がようやく雑談を切り上げそちらに注意を向けると、
御坂は青白い顔をしながら麦野の方へと向き直り、ゆっくりと口を開いた。
御坂「………息、してない」
垣根「」チーン
一方通行「………グゥッ」
麦野「プフッ」
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
御坂「だから笑い事じゃないってえええ!!!息してないのよ!?呼吸止まってんのよ!?」
11111号「ロスでは日常茶飯事ですよお姉様、とミサカはお姉様を宥めます」
御坂「知らないわよ!!何よロスって!?」
麦野「ロサンゼルスのことでしょ?アメリカで二番目に人口の多い国よ」
御坂「いやそういう事じゃなくて……」
一方通行「あァ、こりゃ冗談抜きで不味ィな……
ここで垣根が退場しちまったらその分俺らの負担が増えちまう」ゴクリ
御坂「そういう方面の心配じゃなくて!!」
バチーン!!
一方通行「だおおォォォ!!!」
麦野「っでええあぁぁぁ!!」
御坂「垣根さん、垣根さん!」ユサユサ
垣根「」
麦野「ま、そんなに心配する必要もないでしょ。第一位も前回呼吸止まってたし」
御坂「一方通行は別に死んでもいいけど垣根さんは……」
一方通行「酷くねェ?俺死ンでもいいのかよ」
11111号「あなたは普段が普段ですし、ぶっちゃけ死んだ方が世の為人の為ですよ、
とミサカは外道モヤシをジト目で見ながらぶっちゃけます」
一方通行「オマエにだけは言われたくねェが……
俺が生きてる事そのものが世界へのイヤガラセになるわけか、そいつァいいな」
麦野「開き直りやがったこのモヤシ」
御坂「元々他人にイヤガラセするのが生き甲斐みたいな奴だしね……」
垣根「」
11111号「そろそろ不憫なていとくんをどうにかしましょうか。
幸いにしてここは病院で外科はすぐそこですし、ちゃちゃっと運んで治療して頂きましょう、
とミサカは裏方の妹達にていとくんを運ぶよう指示を出します」ゴー
11111号が指示を出すとすぐにキャスター付きのストレッチャーを押す裏方の妹達が数人現れた。
彼女達はテキパキとした動作で垣根をストレッチャーに乗せると、無駄の無い動きでスピーディーに彼を運んで行く。
またそれだけではなく、いつの間にやら床の血までもふき取られている。実に手際のいい裏方である。
一方通行「おォ、早ェ早ェ」
麦野「あの連中、あんな細っこいのに軽々垣根持ち上げてたわね」
御坂「妹達って意外と力あるのよね」
11111号「元々戦闘用に作られたクローンですから。かわいいだけじゃないんですよ?
とミサカはドヤ顔で妹達のスペックの高さを誇ってみます」ドヤァ
一方通行「オマエは何もしてねェけどな。つーかかわいくはねェよ」
11111号「かわいくないとか言われてますよお姉様」
御坂「ちょっと一方通行!誰がかわいくないですって!?」
一方通行「ノせられてンじゃねェアホ」
麦野「大丈夫よ美琴、あんたはそこの性悪クローンの万倍はかわいいから」ポン
一方通行「マイナスを乗算してもマイナスのままだけどな」
麦野「黙ってろこのモヤシ」
11111号「さ、雑談はそんなものにして、ていとくん達を追いかけますよ、とミサカは前方を指差します」
御坂「あ、やっぱり追いかけるんだ?」
一方通行「垣根の復活待ちがてら外科の見学ってとこか?」
麦野「垣根が治療受けてるとこでも見せられるんじゃない?」
11111号「ほら急いだ急いだ、早くしないと担架を見失ってしまいますよ、とミサカは三人を急かします」ハリーハリー
11111号の先導の元、一行はストレッチャーで運ばれる垣根の後を追いかける。
既に呼吸停止から結構経っていると思うのだが、果たして大丈夫なのだろうか。
応急手当くらいしてから運んだ方が良かったのでは……
一方通行「ン?」
そのまま正面に見える診察室に運ばれるのかと思いきや、ストレッチャーは途中で廊下を曲がると
迷う事無く一直線に、その先にある大きな銀色の扉へと向かって行った。
扉のサイドには大きな丸っこい文字で『手術室』と書かれている。
一方通行「手術室直行かよ……」
麦野「てか手術すんのかよ、今から」
御坂「呼吸止まってたし、即手術しなきゃいけないくらい危なかったんじゃ……」
一方通行「……まァ大丈夫だろ垣根だし」
麦野「垣根だもんねぇ」
御坂「そうよね、垣根さんなら……」
11111号「さてさて流石に手術室の中までは入れませんし、ここで待ってましょうか、
とミサカは近場にあるソファに腰を下ろします」ヨイセ
御坂「手術室前のソファで手術が終わるのを待つって、医療ドラマのワンシーンみたいね」
一方通行「階段ですっ転ンで呼吸止まった馬鹿の手術する医療ドラマなンざありえねェだろォけどな」
麦野「手術ってどんくらい時間かかるわけ?まぁここで何もせずに時間潰せるんなら大歓迎だけどさ」
ソファに腰を下ろす四人の前で垣根を乗せたストレッチャーは躊躇無く手術室の中へと消えて行き、
直後に手術室の扉の上部に備え付けられた『手術中』の表示ランプが赤く点灯した。
御坂(外傷らしい外傷はなかったけど、どんな手術するんだろ?)
麦野(つか診察なしに即手術とかしていいもんなのかねぇ?)
一方通行(垣根の野郎、手術受けた後ちゃンと復帰すンだろうな……
ここでアイツがリタイアとかになるとこっちの被害が増えちまうぞクソ)
三者三様、『手術中』のランプを眺めながらぼんやりと物思いに耽る。
現状はイレギュラーな事態であるが故に三人を笑わせようとする刺客も姿を見せない。
垣根の犠牲の上に成り立った休息時間を、彼らは存分に噛み締めていた。
やがて、手術室の内側から手術をしていると思しき音が一行の元に届き始める。
手術室<キュイイィィィン………ガリガリガリガリ!ガリッ!!ガンガンガン!バキィ!!
ガキンガキンガキンガキン!!ガンガンガンガン!!チュィィィィィィン!!ギコギコギコ!!
一方通行「うおォォォォい!!!何か板金屋さンみてェな音がしてンですけどォォォォォ!!!」ビクッ
御坂「コフッ」
麦野「ングッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「ちょっと一方通行!突然大声出さないでよ!!」
一方通行「悪ィ、ちょっとビビッちまってよォ」
麦野「何で手術室から金属加工するような音が響いてくるんだ!?垣根どうなってんのよ!?」
バチーン!!
御坂「あたああぁぁ!!!」
麦野「んぎゃあぁああ!!」
手術室<ガインガインガイン!!ガンガン!ボン!!キンキンキン!カコン!!
麦野「いやほんと、手術室の中で何が起きてんだ?鉄板ぶっ叩いてるような音がするわよ?」
御坂「あー、ほら……ギプスでも作ってるんじゃない?きっと垣根さん階段から落ちた拍子に骨が折れて……」
一方通行「金属のギプスなンざねェよ。つーか手術室で作るモンじゃねェだろ」
御坂「そうよね……」
手術室<ガサガサガサ……ガシュガシュガシュ!ズリズリザザザザ!ズササササ……
一方通行「……おいヤスリがけが始まりやがったぞ」
麦野「なるほど、加工も大詰めってわけね」
御坂「加工って……手術でしょ、一応……」
手術室<……
麦野「音がやんだ……?」
御坂「終わった、の……?」
手術室<チーン♪
一方通行「電子レンジ!!?」ビクッ
御坂「ウッ」
麦野「グッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「一方通行ァァァ!!!あんたオーバーリアクションするのやめなさいよおおお!!!」
麦野「お前がいなけりゃ今のは堪えれるレベルだったってのに……」
一方通行「責任転嫁してンじゃねェよ雑魚どもが」ハンッ
バチーン!!
御坂「あああぁぁぁあ!!」
麦野「ってえええぇぇぇ!!!」
引っ叩かれる御坂と麦野二人の様子を、一方通行は心底楽しそうに目だけで笑いながら眺める。
口元は一切動かしておらず真一文字に結ばれているというのに、今にも嘲笑う声が聞こえてきそうだ。
何とも悪意に満ちた表情である。
一方通行「ハッ、無様だなァ」
御坂「くぅぅ、すっごいムカつくわぁ……」
麦野「おいこいつのこのツラはアウトにならねぇのか?目が笑ってんだろ」
11111号「んー、アウトにしたいのは山々なのですが、口元は緩んでませんし笑い声も出てませんから……
てか目が笑ってるくらいでアウト取ってたら際限なくアウトの範囲が広がってしまいますよ?
とミサカは断腸の思いでこの場は見逃します。アウト取りすぎてもテンポ悪いですし」
御坂「何だかんだで半笑いとかは結構見逃してもらってるしね……判定シビアにされるのは困るわ」
麦野「……チッ、運が良かったわね」
一方通行「はいはい、どォも」
手術室<……
麦野「……あっちももう音はしないみたいね」
一方通行「静かなモンだな」
御坂「手術終わったのかな?」
先の電子レンジのような音以来手術室から聞こえてくる音は完全に途絶え、辺りは静寂に包まれていた。
とは言え、ここで気を抜けば不意打ちで何が飛んでくるかわかったものではない。
三人は顔を強張らせながら、じっと手術室の扉を注視する。
が、そんな三人の心配を他所に、それ以降何も起こらぬまま『手術中』の表示ランプは消え
手術室の扉が内側から押し開かれた。どうやら本当に手術は終了したようだ。
「やぁ待たせてしまったようだね?だけどもう彼は大丈夫だよ、何も心配はいらない」
手術室から姿を現した蛙のような顔をした医者―冥土帰しは、マスクを外しつつ、
開口一番微笑みを湛えながら手術の成功を一行に伝える。
あの音でいったいどんな手術を行ったのかはともかくとして、とりあえず垣根は大丈夫らしい。
11111号「こんな短時間で手術を終わらせるとは、流石学園都市を代表する名医ですね、
とミサカはカエル顔の医者の禿頭をぺちぺち叩きながら褒めちぎります」ペチペチ
冥土帰し「――僕を誰だと思っている?」キリッ
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「頭叩かれながらかっこつけてンじゃねェよクソッタレが……」
麦野「あっぶねぇ、咄嗟に目ぇ背けてなかったらやられてたわ」フゥ
御坂(頭ぺちぺちされてるリアルゲコ太かわいいなぁ)
バチーン!!
一方通行「おごォああァァァ!!!」
御坂「あーでもよかった、とりあえず垣根さんは無事なのよね」
一方通行「正直垣根の安否よりも手術内容の方が気になるわ」
麦野「同感ね、とても生身の人間を手術してたような音には聞こえなかったわ」
御坂「ま、まぁ確かにどう聞いても金属加工してるような音してたけど……」
麦野「改造手術でもされてたりしてねー」
一方通行「改造手術……仮面ライダー垣根かァ」
麦野「びっくりするほど見たくないわね、その仮面ライダー」
御坂「羽生やして戦う仮面ライダーは私も見たくないなぁ……」
麦野「つーか垣根ってバイクの免許持ってたっけ?あいつ何か乗れんの?」
一方通行「チャリとかならいけンじゃねェか?」
御坂「………ッ」ブフッ
麦野「ウグッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「うぅ……自転車に乗って現れる白い羽の生えた仮面ライダーを想像したらもう……」クッ
麦野「おいコラ第一位テメェもう喋んな」ギリ
一方通行「オマエから振ってきた話題だろうが」チッ
バチーン!!
御坂「うあああああ!!!」
麦野「あっくうぅぅぅ!!!」
一方通行「つーか仮面ライダーになンぞならなくても
垣根が自転車乗ってるだけで何かシュールで面白ェ気がするわ」
御坂「あー……言えてるかも」
麦野「あいつは爽やかなイメージのあるもんは似合わないわね」
いともたやすく行われるえげつない垣根ディス。
もはや手術室の方を見ようともせず、三人はこれでもかと言うほどに垣根をディスる。
垣根の安否なんてどうでもいいんだろうなー……
しかし、そんな三人のもとへ向かってひたひたと這い寄る影があった。
垣根「オマエら何好き勝手言ってやがんだ、ぶっ殺すぞ」
一方通行「ン、もォ大丈夫なのk」
御坂「あ、垣根s」
麦野「何だ無事だっt」
突如割って入ってきた垣根の声に反応し、三人それぞれが適当な事を口走りながら
声の聞こえてきた方へと顔を向ける。
その瞬間、時が止まった。
振り向いた三人の視線の先に、何か良くわからんものが立っていた。
本当になんだこれ。
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「何がどうしてこうなったァァァァァァ!!!」
御坂「か、垣根さん……?」
麦野「な、なるほど……こんなもん作ってたから金属加工する音が聞こえてたわけか……」
バチーン!!
一方通行「おあああァァァァ!!!」
御坂「ぴぎゃああぁ!!!」
麦野「ぬがああぁぁ!!!」
帝凍庫「……」ヒタヒタヒタ
一方通行「どうすんだコレ……本当にどうなってンだ……つーか気持ち悪ィから動き回るンじゃねェよ」
御坂「垣根さん……随分可愛い姿になっちゃったわね……」
麦野「可愛くはないだろ」ビシ
垣根「いやいやオマエら何言ってんだ!?それは俺じゃねえよ!!」
自立歩行する帝凍庫クンに目を奪われている三人に対し、
本物の垣根(ちゃんと人間)が帝凍庫クンを押し退けながら大声でつっこみを入れる。
そりゃ容姿に自信のある垣根としてはこんな気持ち悪い物体と一緒にされたら堪ったもんじゃないだろう。
それはそうと、どうやら垣根が帝凍庫クンに改造されたわけではなかったらしい。よかった、本当によかった。
一方通行「垣根が増えただと!?」
麦野「な、そんな……どっちが本物!?」
垣根「見りゃわかんだろ!!目ぇ腐ってんのかテメェら!?」
帝凍庫「……」ヒタヒタ
御坂「……クッ」プルプル
デデーン♪
『御坂、アウトー』
垣根「うぉい何笑ってんだオマエ!!」
御坂「ごめんなさい、ごめんなさい……無理」
一方通行「まァ気ィ落とすなよ垣根」ポン
麦野「とりあえず復活オメデトウ、垣根」ポン
帝凍庫「イイッテコトヨ」
垣根「だからそっちは俺じゃねぇつってんだr喋った!!!?」ビクッ
バチーン!!
御坂「ひいいぃぃん!!!」
11111号「さてさて、ていとくんも復活したことですし次に行きましょうか、
とミサカはカエル顔の医者の禿頭をぺちぺち叩きながらレベル5勢を次なる目的地へと先導します」ペチペチ
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「まだ叩いてたのかオマエ!?」
麦野「つーかまだ叩かれてたのかそっち!?」
冥土帰し「――僕を誰だと思っている?」キリッ
御坂「もういいからそういうの!!て言うか頭真っ赤になってるじゃないの!やめなさいよ!!」
11111号「いやでも叩き心地いいんですってこれ」ペチペチ
垣根「復帰して早々なんだこの光景……」
バチーン!!
11111号「はーいこちらが休憩室になりまーす。少し早めですがお昼休みの時間ですよ皆さん、
とミサカはくたびれた様子のレベル5勢を室内へ誘導します」ドウゾドウゾ
一方通行「やっとこさ休憩時間かァ」ハァ
御坂「はぁ……何か前回よりもきつい気がするわ……」
垣根の復活後、外科を出た一行は休憩室へと案内されていた。(足の生えたマスコットは置いてきました)
その部屋は休憩室を兼ねた医局とでも言うような構造をしており、
医学書や何かしらの資料がぎっしりと詰まった棚や医療機器が壁際にいくつも並んでいる。
部屋そのものは結構広く、人数分のデスクと背もたれ付きの椅子が部屋の中央に用意されているものの、
壁際に並ぶ棚などの圧迫感のせいか、どうにもあまりくつろぎ心地は良さそうに見えない。
まぁこの際部屋の内装に関して贅沢は言っていられまい。休憩が取れるだけでも良しと思うべきだろう。
11111号「本当は午前中にもう少し病院内を案内しておきたかったのですが、
とミサカはプログラムが狂ってしまった事に頭を抱えながら
元凶であるファッキン冷蔵庫野郎を睨み付けます」ジロ
垣根「張り倒すぞテメェ」
まだ案内されていない部署も結構あるのだが、どうやら突発的に起こってしまった垣根の手術などの影響で
時間がかなり圧迫されているらしく、プログラムの練り直しも兼ねて少し早めに休憩時間に入るつもりらしい。
11111号「それではミサカは少々席を外します。後でお昼ご飯を持って来ますので
それまで適当にくつろいでいてください、とミサカはにこやかに手を振りながら退室します」バイビー
麦野「二度とツラ見せんなクソが」チッ
一方通行「昼飯はオマエ以外の妹達に持って来させろ」ケッ
他者を小馬鹿にするような笑みを浮かべつつ部屋から出て行く11111号の後姿を、
レベル5の面々は舌打ちや歯軋り、暴言などを交えつつ見送る。
こんなかわいい子になんて酷い事を!
一方通行「はァ……ようやく消えやがったかアイツ」
垣根「あのクローンがいなくなっただけでかなり気分が楽になったわ」フゥ
御坂「あの子、案内役だかなんだか知らないけど今回ずぅーっと近くにいるもんねぇ」
麦野「とにかく休める内に休んどきましょ、折角の休憩時間なんだし」
垣根「……あぁ」
案内係の11111号がいなくなった開放感からか、一行は若干表情を弛緩させながら各々用意された椅子に腰を下ろす。
ようやく手にした休憩時間に気が緩むのは仕方が無いが、休憩時間だからと言って油断出来ないのがこの企画だ。
果たして彼らはそれをわかっているのだろうか。
一方通行「くあァ、眠ィ……コーヒーでも置いてねェのか?カフェインが足りねェ。
つーか喉渇いてきたンだが……」
一方通行は誰にはばかる事も無く大きな欠伸をしつつ、机に突っ伏しながら目だけで部屋の中を探る。
しかし当然コーヒーなどという気の利いた物が用意されているはずもなく、一方通行は溜息を吐きながら顔を伏せた。
垣根「部屋の奥の方、給湯室になってるみてぇだぞ。コーヒーはねぇだろうが茶くらいはあるんじゃねぇか?
見てきたらどうだ一方通行」
背もたれに身を預けながら、垣根は一方通行を一瞥した後に部屋の奥に向かって顎をしゃくる。
その態度が癇に障ったのか、一方通行は頭を掻きながら身を起こすと、垣根を睨み付けながらチッと舌打ちを零した。
一方通行「なァンか暗に俺に茶ァ淹れて来いつってねェかァ垣根くンよォ?」
垣根「あぁ?」
御坂「いやいや、喉渇いたって言ってるのあんただけでしょうに……」
一方通行のあまりに身勝手な物言いに、御坂は呆れ顔をしながら溜息を吐く。
相変わらず傲慢で唯我独尊なモヤシ野郎である。
麦野「ま、どうでもいいけど誰かお茶淹れに行くんなら私の分もお願いねー」
彼らのやり取りを傍観する姿勢で、麦野は頭の後ろで手を組みつつ背もたれに身体を預けた。
と、次の瞬間――
バキッ!
麦野「にゃああぁぁぁ!!?」ズテーン
麦野の座っていた椅子の背もたれが音を立ててへし折れてしまい、
哀れ麦野はもたれかかった勢いそのままに叫び声を上げながら後ろに向かって派手にずっこけ、
強かに腰を床に打ち付けた。
ちなみに今麦野さんはとても短いスカートを履いておられます。
その格好で床に腰を打ち付けるような角度で後ろ向きに倒れます。
紳士のお前らならどうなるかわかるな?
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、アウトー』
麦野「何笑ってんだテメェら!!」イタタタ
御坂「ご、ごめん……いやでも突然隣の人が背もたれ壊れて椅子から転げ落ちたら笑っちゃうって……」クスクス
一方通行「ダイエットしようぜ第四位」クククク
麦野「ちがっ!私の体重で背もたれが壊れたわけじゃねぇよ!?ぶっ殺すぞモヤシ!!」
垣根「あぁ麦野、ご馳走様でした」
麦野「あ?何言って……!!!て、テメェ見やがったのか!!?」バッ
垣根「黒の総レース」グッ
麦野「死ね!!お前マジで死ね!!」
バチーン!!
一方通行「ぐがああァァァァ!!!」
垣根「っしゃぁぁぁぁ!!!」
御坂「あッッ!!!くうぅぅぅ……」
麦野「死ね、垣根死ね、死ね……」ブツブツ
御坂「麦野さん大丈夫?垣根さんに何かされたの?」
垣根「つーか俺悪くねぇだろ、不可抗力ってやつだ」フ
麦野「うるせぇ死ね、椅子交換しろ、死ね、金払え」
垣根「あぁ?まぁいいもん拝ませてもらった礼に椅子くれぇ交換してやるか」ヤレヤレ
麦野「フン、こんなもんでチャラになると思ってんじゃねぇぞ」ケッ
一方通行「交換した椅子の背もたれまで壊れたら笑うわァ」
麦野「壊れるわけねぇだろ!!」
垣根「あのよ、俺一個だけ気になってる事あんだけどいいか?」
麦野がずっこけてから数分、ようやく皆が落ち着きを取り戻しくつろぎ始めたのを見計らって垣根が静かに切り出す。
麦野に椅子を交換させられたせいで今現在彼の椅子だけ背もたれがなく、一人だけ微妙に窮屈そうである。
一方通行「ンだよ?」
麦野「下らない事だったら張り倒すわよ?」ギロ
一方通行は机に突っ伏しつつ顔だけで垣根の方を向き、麦野は背もたれに寄りかかりながら
まだ若干不機嫌そうに垣根を睨み付ける。どうやら今度の背もたれは壊れなかったらしい。よかったね。
御坂「まぁまぁ麦野さん。 それで、何かあったの?」
机に突っ伏すでもなく、背もたれに寄りかかるでもなく、お行儀良く椅子に腰掛けていた御坂が
不機嫌な様子の麦野を宥めつつ、垣根の方へと向き直り小首を傾げる。あざとい、実にあざとい。
垣根「あーいや、大した事じゃねぇんだがよ」
全員の注目を浴びた垣根は少しばかり照れ臭そうに頬を掻く。
そしてコホンと咳払いを一つすると、一同の顔を順に見渡した後、ゆっくりと口を開いた。
垣根「あのさ、この机、引き出しついてんじゃん?」
一方通行「……」
御坂「……」
麦野「……」
垣根「中に何が入ってるのか、気にならねぇか?」
一方通行「……」
御坂「……」
麦野「……」
垣根「引き出し開けてみねぇ?」
一方通行「……馬鹿なのオマエ?」
御坂「ちょっとフォローのしようがないわね」
麦野「馬鹿なだけじゃなくてドMだったのかよテメェ」
垣根「んだとコラ!?」
垣根の提案を、他の三人は罵倒を交えつつ速攻で却下する。
前回引き出しに仕込まれたトラップの数々で散々な目に遭ったのだからそれも当然だろう。
一方通行「まさかオマエ、前回引き出しでどンな目に遭ったか忘れたわけじゃねェよなァ?」
御坂「引き出しだけじゃなくて笛入れとか筆箱とかも……」
垣根「当たり前だろ、忘れようたって忘れられねぇよ」
麦野「だったら何で今引き出し開けようなんて発想になるわけ?何か仕込まれてんのは目に見えてるでしょ」
垣根「麦野の言う通り、間違いなく引き出しの中には俺達を笑わせる為の何かが仕掛けられてるだろうよ。
何も自分から虎の尾を踏みに行く事はない、引き出しはこのまま封印して
ここはのんびり休憩を取る事に徹するべきだ、とまぁオマエらはこう言いたいわけだろ?」
一方通行「わかってンじゃねェか。折角の休憩時間にわざわざ仲間内で潰し合いする必要なンざねェだろォがよ」
御坂「前回は疲労が頭に回ってたせいで休憩中に結構仲間割れしちゃったけど……」
麦野「ありゃ終盤だったし、罰ゲームがチラついてたから保身の為に周りを蹴落とさなきゃって意識があったからね」
一方通行「今はまだ真昼間だしなァ。潰し合い始めるにしても早ェし、何も休憩時間使うこたァねェだろ」
垣根「お前らの言ってることは正しい。至極真っ当だ、非の打ち所もねぇよ。ただな……」
一方通行「あァ?」
垣根「理屈じゃねぇんだ!俺は今!引き出しを開けて中身を確認してぇんだよ!」カッ
一方通行「いや馬鹿だろオマエ」
麦野「さっきの手術で脳味噌でも弄られたのあんた?」
御坂「垣根さんは私と同じ数少ないマトモな人だと思ってたのに」
麦野「美琴ちゃぁん、ちょっと今のは聞き捨てならないにゃー。
その言い方だと私がマトモじゃないみたいじゃなぁい?」ギロ
御坂「あー、言葉の綾よ、うん。気にしないで麦野さん」
麦野「おい悪意が透けて見えてんぞ」
一方通行「どンどン黒くなってくなァコイツも。
オリジナルの方がクローンに似てきやがった」
垣根「はいオマエらこっち注目、引き出し開けるぞー」イエーイ
一方通行「オマエマジで何なの?何でそンな引き出し開けてェの?」
麦野「馬鹿なの?死ぬの?」
散々に罵倒されながらも垣根は引き出しを開けようとするのをやめようとしない。
勿論それには理由がある。「理屈じゃない」などとのたまっていたが、その裏には冷徹な打算が隠されていた。
お気付きの方も多いだろうが、今現在垣根は四人の中でもダントツで尻を叩かれた回数が少ない。
現時点では他のメンバーに比べてかなり優位な状況にあると言っていいだろう。
(その分ビンタされたり階段から転げ落ちたりしてるけど)
しかし垣根は理解している。己の笑いの沸点が他の面子と比べてもかなり低く、
この『笑ってはいけない』という企画は自分にとって不利なものであると言う事を。
普通にやれば自分が最後の罰ゲームを受ける事になる可能性は高く、
このままでは折角体を張って稼いだリードもすぐに挽回されてしまうのは目に見えている。
どうすればリードを維持出来るか、どうすれば自分に有利に事が運ぶのか、垣根はずっとそれを考えていた。
そうして彼は考え至る。自分が笑いに弱いのは仕方が無い。それを認め、受け入れ、
自分が笑いを我慢出来ないのならば周囲の笑いの沸点を自分のラインまで引き下げればいいのだ、と。
さて、疲れて冷静な思考が出来なくなると、ついどうしようもなく下らない事で笑ってしまう、
という経験が皆さんにもあるのではないだろうか?垣根がやろうとしているのは、つまりそう言う事である。
彼はわざと引き出しトラップに引っ掛かり全員を巻き込む事により
周囲に休憩する間など与えず、この機会に一気に疲労させようとしているのだ。
無論、垣根自身も休憩する事は出来ないが、そこは回復力と打たれ強さに定評のある垣根である。
休憩なしのノンストップで企画が進んで行けば体力のある垣根が有利になる可能性は十分にある。
一見するとただの自爆にしか見えない垣根の行動は、その実最終的な勝利を掴み取る為の勝利の方程式だったのだ。
垣根「とにかく、オマエらが何と言おうが俺は引き出しを開ける。誰にも邪魔はさせねぇよ」
一方通行「あァもう好きにしろ、ンで勝手に死ね」
麦野「何が出てきても私らを巻き込むんじゃねぇぞ?」
御坂「て言うかどっか隅っこの方でやってもらえない?」
垣根「んじゃ開けるぜー」ガラガラ
御坂「あぁぁ……」
一方通行「マジで開けやがったよこいつ」
麦野「死んでも治らないレベルの馬鹿ね」
垣根「ん、何だこりゃ?」ゴソ
引き出しを引っ張り出した垣根は首を傾げながら引き出しの中に手を突っ込む。
引き出しを開けることに否定的だった垣根以外の三人だが、やはり中身が気になるのか
チラチラと垣根の方を伺っている。しかし三人からは引き出しの中は死角になっている為、
残念ながら中に何が入っているのかは確認出来ない。
やがて垣根が引き出しの中から手を引っ張り出すと、その手にはある物が握り締められていた。
垣根は神妙な顔をしながら、全員に見えるようそれを机の上に放り出す。
プラスチックをレンズ代わりに使った瓶底メガネ、それにくっつくデフォルメされた巨大な鼻、
鼻の下に生い茂るナイロン製の黒いヒゲ。それはまさしく――
垣根「……鼻眼鏡てオマエ」クッ
一方通行「……ッ」
麦野「んッ……」
御坂「く……」
垣根「何で病院の机の中に鼻眼鏡?」キョロキョロ
一方通行「……」プルプル
麦野「ゲホゲホ」プイ
御坂「ぅぅ……」ガクガク
垣根「なぁ一方通行見ろよ、鼻眼鏡だぜ?」チラッ
一方通行「………うぜェ……」ピキピキ
垣根「あん?」
一方通行「オマエさァ、笑いかけたのか知らねェけど一々こっち見ンのやめろよ。
オマエが笑いそうなのはオマエの勝手で、俺は関係ねェだろうが。
こっちに振らずにそっちで処理して勝手に笑やいいだろ、巻き込もうとしてンじゃねェカスが」
麦野(必死過ぎだろ第一位……)
垣根「何だよオマエ……そんな言い方ねぇだろ!」スチャ
一方通行「ッッ!!」
垣根「苦楽を共に過ごす仲間だろうが!それをオマエは……!」クイクイッ
一方通行「ングファ」ブフゥ
御坂「アフッ!」ゴフォ
麦野「ングッ」ブハ
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「かけてンじゃねェよ鼻眼鏡をよォォォォ!!!」
麦野「巻き込むなつっただろうがクソがぁぁぁ!!!」
御坂「もおおおお!!!喧嘩するんなら二人で勝手にやってよおおお!!!」
バチーン!!
一方通行「うォあァァァ!!!」
御坂「いやああああぁぁ!!」
麦野「ぎやあああぁぁ!!!」
垣根「フ、ざまぁねぇな……さぁどうする?このまま笑わされっぱなしで引き下がるのか?」
一方通行「オマエ……そォいう事か……」ギリ
麦野「あぁぁクソムカつく……こうなったら……」ガタン
御坂「麦野さん……?」
一方通行「おい第四位待て、オマエまさか……」
麦野「私も引き出しを開けるわ!垣根の馬鹿にやられっぱなしなんてごめんよ!」キッ
御坂「ちょ、やめて麦野さん!垣根さんなんて放っといて休みましょうよ!」ヒィ
一方通行「どンだけ頭に血が上りやすいンだオマエ!!瞬間湯沸かし器でも積ンでンのか!?」
垣根「ハッ、いいじゃねぇか!やれやれ、やっちまえ!」クイッ
一方通行「煽ってンじゃェよ!!つーかオマエはさっさと鼻眼鏡外せェ!!!」
怒り心頭で引き出しに手をかける麦野の様子を眺めながら、垣根は内心ほくそ笑む。
事は全て彼の思惑通りに進んでいる。麦野は完全に垣根の掌の上で踊らされていた。
一方通行だけは垣根の意図に気付いた気配があるが、もはや遅い。
既に麦野は周囲の制止の声が聞こえないほどに頭に血が上ってしまっているのだ。
そして一度引き出しを開けてしまえば、麦野もまた吹っ切れて
垣根と同じく残りの二人に引き出しを開ける事を強要する側になるだろう。
そうなれば押しに弱い御坂辺りは引き出しを開けてしまうに違いない。それで三人。
残るは一方通行だが、三対一ならばどうにでもなる。いざとなれば無理矢理引き出しを開けてしまえばいい。
もう誰にも止められはしないさ!この宇宙を覆う憎しみの渦はなぁ!!
麦野「おらぁ開けるぞぉ!!」ガラッ
一方通行「クソ、開けちまいやがったか……」
御坂「あーあもう……結局こんな流れになんのね……」ハァ
垣根「よくやった麦野!さぁ出せ!中の物を根こそぎ取り出せ!」ハッハァ!
麦野「……」
垣根「あら?」
御坂「麦野さん?」
麦野「……何も入ってない」ガラーン
一方通行「……フゥッ」
御坂「ウッフ」
デデーン♪
『一方通行、御坂、アウトー』
一方通行「チクショウ、このパターンか……」ギリ
御坂「はぁぁ……何で笑ったんだろ、私」ハァ
垣根「前回も似たようなので笑ってたよなオマエら」
麦野「肝心の垣根は笑ってねーし、何か釈然としないわ」チッ
バチーン!!
一方通行「ごはあァァァァ!!!」
御坂「ひいいぃ!!!」
垣根「さぁ次は誰だ?一方通行か?御坂か?」ン?
一方通行「開けねェっつってンだろ馬鹿が」
麦野「おんや?第一位様ともあろうお方がそんな逃げ腰でいいのかにゃーん?」
一方通行「うっぜェ、何でオマエまで煽る側に回ってンだよ……」
御坂「……開ける順番って大事よね、最初に開けたのが麦野さんだったら多分笑わなかったもん」
垣根「まぁそうだろうな、麦野からだったら『あれ何も入ってねぇ、今回トラップなしか?』
みたいな感じでスルーされただろうよ。鼻眼鏡が出てきた後って事で過敏になってたのがマズかったわけだ」
御坂「多分、一方通行の引き出しの中にはオチが用意されてると思う。だから開けるんなら私の方からにするべきよ」
一方通行「開ける前提なのかよ、やめろよ、休めよオマエら。揃ってドMちゃンかよ」
御坂「だって何かもう開ける流れじゃない?拒み続けても力ずくで開けさせられそうだし……」
麦野「わかってるじゃない」
御坂「だから私、行くわ。サクッと全部終わらせて休みましょう」ウン
一方通行「乗せられやがって馬鹿が……」チッ
御坂「スーハー……よし!」ガラッ
垣根「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか、と」
麦野「出来れば垣根と第一位をピンポイントで笑わせるようなのが出て来て欲しいわね」
一方通行「オマエが一人で笑っとけクソが」
御坂「んー?何か封筒が出てきたわ」ペラ
垣根「封筒?今までに無いパターンだな」
御坂「中に何か入ってるみたいだけど、何だろ?」カサカサ
一方通行「おいそれそのまま捨てとけ、絶対ろくなモンじゃねェから」ナ?
麦野「ここまで来てそれは無いわ、開けちゃいな美琴」ゴーゴー
御坂「はいはい、今中身出すわよ」パサッ
御坂が封筒を引っ繰り返すと、中から一枚の写真がハラリと滑り落ちて来た。
一行が身を乗り出して覗き込んだその写真には、ランドセルを背負った可愛らしい少年が一人、
はにかむような表情で写っている。被写体の少年は肌も髪も真っ白で、その目だけが煌々と燃えるように赤い。
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「オマエら何笑ってンの?人様の子供の頃の写真見て笑うとか失礼にも程があると思うンですけどォ?」
垣根「ランドセル背負ってる、一方通行がランドセル背負ってるよおい……」クククク
一方通行「そら背負うわ、小学生だもの」
御坂「何か見ちゃいけないもの見ちゃった気分……」ププププ
麦野「いや、えぇ……?この純真無垢っぽい子がこんなになんの?」
一方通行「こンなとか言うなコラ、言っとくけどそン時から性格変わってねェからな」
バチーン!!
垣根「ぬふあぁぁぁぁ!!!」
御坂「あぐぅ!!!」
麦野「っつあああぁぁぁ!!!」
一方通行「オマエらホントさァ、他人の昔の姿見て笑うとか人として最低だと思わねェの?
俺のガラスのハートがすげェ傷ついたンだけど」
垣根「どの口が『人として最低』とかほざいてんだよ」
麦野「いっそ割れちまえそのハート」
御坂「でも一方通行にもこんな時期があったのね……」ペラ
結標「あ、その写真もらってもいいかしら?」パッ
御坂「え?あ、はいどうぞ」ハイ
結標「ありがとう」ヒュン
一方通行「……ン?今何か」
麦野「気のせいでしょ」
一方通行「何だ気のせいか」
垣根「それより次は一方通行の番だぜ?盛大なオチを期待させてもらおうか」
一方通行「だァから開けねェって」
麦野「モヤシなだけじゃなくてチキンかよ第一位」
垣根「炒めたら美味そうだな」
一方通行「うるせェよクソムシどもが、オマエらと違って俺はマゾヒストじゃねェンだよ」チッ
御坂「あのさちょっといい?この封筒、まだ何か入ってるみたいなんだけど」
垣根と麦野が一方通行の机に詰め寄って行くのを、御坂が封筒を掲げながら制止する。
どうやらまだ彼女のターンは終了していないらしい。
御坂「ほら、振ると音がするでしょ?」カサカサ
垣根「お、マジだ」
皆が注目する中で御坂が封筒を振ると、確かに中からカサカサと何か入っているような音が聞こえる。
麦野「もう一枚写真でも入ってんのかねぇ?」
一方通行「捨てろ、もう封筒ごと捨てとけ」
垣根「まーだそんなつまんねぇ事言ってんのかオマエは」ヤレヤレ
麦野「どうしたのよ第一位、今回ノリ悪いわよあんた」
一方通行「むしろノリノリなオマエらが頭おかしいわ」
御坂「どうしよう?中身出しちゃっていい?」
垣根「おう行け行け、一方通行の目の前にどーんと行ってやれ」
一方通行「ふざけンな!!」
御坂「それじゃ行くわよー、えい」パサ
一方通行の制止をガン無視し、御坂が彼の前で封筒を逆さにして振ると、
大方の予想通り、写真がもう一枚封筒の中から滑り落ちてきた。
それは先程出てきた写真に比べるとかなり大きく、封筒とほぼ同じサイズがある。
最初に引っ繰り返したときに出てこなかったのは、その大きさ故に引っ掛かっていた為だろう。
白日の下に晒されたその写真の中央には、セーラー服に身を包んだ肌も髪も真っ白な人間が
恥ずかしげに頬を赤らめながらそっぽを向いた状態で写っていた。
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「おィィィィ!!!!何だこれェェェェェェ!!!」
御坂「え……っと、一方通行、あんた男よね?」プルプル
一方通行「一々確認すンな!!見りゃわかンだろォがアホ!!」
垣根「今朝のナース服といい、オマエやっぱそういう趣味があんのか」ゲラゲラゲラ
一方通行「あるかボケェ!!こンなモン性質の悪ィコラ写真に決まってンだろ!!!」
麦野「違和感無さ過ぎてやばいわ……第一位、あんたこういう道でも食っていけるわよ」クックック
一方通行「いや感じろよ違和感!どォ見てもおかしいだろ!!つーかどンな道だ!?」
御坂「さっきの10歳の写真と比べると凄いわね……五年間でこんなに変わるの……?」クスクス
垣根「あぁ……こいつは間違いなく男を知った変化だな」
麦野「第一位、あんた童貞だけど非処女だったわけね」クククク
一方通行「キメェ事言ってンじゃねェェェェェ!!!!」イヤァァ
バチーン!!
垣根「あおォーッ!!!」
御坂「あうぅぅぅ!!」
麦野「ぎにゃああぁぁ!!!」
【後編】に続きます