元スレ
一方通行「イヤだ」part2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1296993804/
「んん・・・」
不自然な違和感を感じ、男は目を覚ました。
いつもの様に自分の部屋のベッドに入って寝入ったというのに、布団の重さも温もりも感じられない。
もっと眠りたいという欲望を押し殺しながら寝ぼけ眼を辛うじて開いた彼の目に入ったのは
彼の部屋のそれとは違う、見たことのない天井。
「どうなってやがる・・・?」
それを確認した彼 ― 学園都市の第二位、垣根帝督の頭は一気に覚醒した。
垣根「俺は確かに自分の部屋で寝てたはずだが・・・」
「おォ、よォやくお目覚めか」
垣根「!?」
自分の状況を確認しようとした垣根の耳に、聞き覚えのある、最も聞きたくない男の声が聞こえてくる。
だが、冷静に考えれば当然のことだ、と彼は思考する。学園都市の序列二位である彼を、
こんなわけのわからない状況に追い込める存在などそう多くはないのだから。
垣根「この状況はテメエの仕業か、一方通行・・・!」
身を起こした彼は目の前にいる真っ白い男 ― 学園都市第一位、一方通行を睨みつけた。
一方通行「おいおい、今回ばかりは俺も知らねェぞ」
垣根「信じられるかよ!」
垣根はこれまで一方通行に数々のイヤガラセを受けてきた。冷蔵庫を改造されたり
パンツを全てブリーフに摩り替えられたり、携帯番号をゲイサイトに投稿されたり、と
それはもう散々な仕打だ。それ故、「知らない」と言われてもそれを信じることなど、とてもできない。
大方、また禄でもないイヤガラセを思いつき寝ていた自分を部屋から拉致したのだろう。彼はそう当たりをつけていた。
一方通行「落ち着きやがれ。俺のイヤガラセだと思ってるンだろォが、
それが目的なら俺はオマエごときに姿を見られるような真似はしねェよ」
垣根「・・・」
実際、冷静に過去を振り返ると、一方通行がイヤガラセを実行している現場を垣根は見たことがなかった。
一方通行のイヤガラセはいつの間にか行われいつの間にか終わっており、
イヤガラセに気付いた時には既に手遅れ、というのが普段のパターンだ。
それを思うと、今堂々と自分の前に彼が姿を現しているのは確かに妙だと言える。
一方通行「それに、気付いてるか?」
垣根「あぁ?」
一方通行「・・・能力が使えねえ」
垣根「んだと!?」
一方通行の口から出た驚愕の言葉に、垣根は慌てて能力を使おうとする。
しかし言われたとおり、演算は出来ているにも関わらず能力は発現しない。
一方通行によるイヤガラセという線は、これで限りなく低くなった。
垣根「・・・一方通行、知ってることを全部話せ」
一方通行「・・・悪ィな、正直俺もほとんど何も分からねェ。実のところこっちもさっき目が覚めたばっかりでな。
わかってンのは、どォも俺達は自分の意思でこから出ることは出来ねェらしいってことくれェだ」
改めて、垣根は今自分の置かれている状況を確認する。
それほど広くない、プレハブ小屋の中のような殺風景な部屋。
外界とつなっていると思われるドアは鍵がかかっているらしくビクともせず、
どのような理屈でか能力が封じられている今、ドアをこじ開けて部屋から出ることはできそうもない。
ドアの近くに備え付けられている曇りガラスの窓から光が差していることから
辛うじて今が夜でないことはわかるが、窓には鉄格子がかかっており、そちらからの脱出も無理そうだ。
垣根「ん?」
部屋を見回していた彼の目に、出口と思しきドアとは別にもう一つ、部屋の奥へと続くかのようなドアを見つける。
垣根「一方通行、そっちのドアはなんだ?そっちも鍵かかってんのか?」
一方通行「あァ、こっちか・・・イヤ、鍵はかかってねェよ。覗いてみな、笑えるぜ」
ドアノブに手をかけると、すんなりとドアは開いた。ゆっくりとドアを開け、
恐る恐る中を覗いた垣根の目に、信じ難い光景が映る。
垣根「御坂・・・麦野・・・」
ドアを開けた先、同じような殺風景な部屋に、学園都市の第三位と第四位が転がっていた。
一方通行「心配すンな、俺等と同じように寝かされてるだけだ」
垣根「・・・そうか」
一方通行「だが笑えるよなァ?学園都市の第一位から第四位まで、上位の四人が黙って誘拐さてるンだぜ」
ククク、と自嘲気味な笑みを浮かべる。
垣根「そんな真似が出来る奴・・・テメエの仕業じゃねえとしたら、後は限られてる」
一方通行「学園都市の上層部が動いたと考えるのが自然だろォな」
垣根「チッ、めんどくせえことになりやがった」
一方通行「垣根、とりあえず超電磁砲と第四位を起こしてこい。
二人がいた所でここから脱出する方法が見つかるとも思えねェが、状況を理解させるのは早ェほうが良い」
垣根「ハッ、俺が起きるのを待ってた理由はそれか。
確かにテメエが起こしに行ったら起きて顔見た瞬間ブン殴られるだろうからなぁ」ククク
一方通行「うるせェよ、わかってンならさっさと起こして来いクソが」
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――――
麦野「なるほどねぇ」
御坂「信じられないけど・・・本当に能力が使えないのね」
一方通行「意外とすンなり理解してくれたみてェだな。正直な所、有無を言わさず殴りかかってくると思ってたぜ」
状況を整理しようとしている御坂と麦野に対し、
一方通行はケラケラと笑いながら右手をヒラヒラと挑発的に振るう。
麦野「チッ 殴って欲しいんなら殴ってやるよ、と言いたい所だけどね」
御坂「うん、今はそんなことやってる場合じゃないみたいだし、無駄な消耗は避けたいわ」
垣根「・・・殴ったよな?起こしに行った俺のことは思いっきり殴ったよなお前等?」
御坂「あー・・・ほら、あれはまだ事情説明されてなかったし・・・」
麦野「起きていきなりアンタの顔が目の前になったらそりゃ殴るわよ、自宅に不法侵入されたのかと思ったわ」
垣根「ちくしょう・・・」
御坂「いじけてる垣根さんは置いといて」
垣根「置くな!とりあえず謝ってくれてもいいんじゃねえか!?」
麦野「うるせえぞ小物が」
垣根「お前寝起きだからって不機嫌すぎじゃねえ?低血圧か?更年期障害か?」
麦野「そうねえェ!!ちょっと低血圧対策に寝起きの運動に付き合ってもらえるゥッ!?」
垣根「ハハッ、やめとけよ麦野。いくら能力が使えなくても、男の俺が女のお前に殴り合いで負けるわけgブハァ!!」
垣根が喋り終わるよりも先に、麦野の拳が彼の顔面に突き刺さった。
殴られた垣根は反動で壁に激突するほど吹っ飛び、そのまま受け身も取れずにうつ伏せに倒れる。
どう見ても一発KOなのだが、そんなことで満足する麦野ではない。
ビクンビクンと痙攣する彼に更なる一撃を加えんと、彼女はゆっくりと前進していった。
ヤ、ヤメ…
オラァ!
御坂「うわ・・・」
一方通行「えぐ・・・」
カオハヤメテ!カオハヤメテ!
ウヒャヒャヒャ!ホラドウシタァ!!
コカンモダメ!ダークマターツクレナクナッチャウ!
カァンケイネェェンダヨォォォ!!
ヒギイイイィ!!
一方通行「おい第四位、そンなもンにしとけ・・・垣根のヤツもォジャガイモみたいになってンじゃねェか・・・」
御坂「そ、そうよ麦野さん!これから何が起こるかわからないんだし
垣根さんはいざと言う時、盾にするために生かしておきましょうよ」
麦野「・・・それもそうね、気も済んだし」フゥ
一方通行「おっかねェ・・・つーか超電磁砲黒すぎるだろ・・・」
御坂「ちょ、麦野さん止める為の方便だってば!本気で盾にしようなんて思ってるわけじゃないわよ!」
麦野「え、そうなの?」
一方通行(・・・後で第四位に今までのこと謝っとくかァ)
垣根「あぁちくしょう・・・ひでえ目にあったぜ・・・」
御坂「あ、もう復活した」
麦野「思ったより早かったわね」
垣根「ギャグ補正なかったら確実に死んでたぞクソ。 どんな馬鹿力してんだこのメスゴリラが」
麦野「あぁ!?」
垣根「すいませんでした」
一方通行「すいませンでした」
御坂「何であんたまで謝ってんの・・・」
一方通行「いや、何か怖かったンで・・・」
麦野「・・・それで、これからどうする?」
一方通行「どォするもこォするもねェだろ、俺達を閉じ込めた誰かさンから
何かしらのアプローチがあるのを大人しく待つ以外にねェよ」
御坂「そうね、ドアは開かないし窓には鉄格子、壁はそんなに厚くなさそうだけど素手じゃ流石に壊せそうにないわ
余計なことせずに体力を温存しながら機会を待つのが現状取れる最良の手段でしょうね」
垣根「俺すでにボロボロなんだけど」
麦野「このまま私達が死ぬまでドア開かないっていう可能性はあると思う?」
一方通行「まず無ェだろォな、殺すのが目的なら寝てる間にサクッとやっちまってるはずだ
それに貴重な超能力者の上位四人をこンな所で殺しちまうってのも考え辛ェ」
御坂「とにかく、今は何か動きがあるまで待つしかないみたいね」
垣根「無視かよチクショウ」
一方通行「一応聞いとくが、オマエ等ここに連れてこられるまで何してた?
昨日何か普段と変わったことがあったかァ?」
垣根「別にねえな、普通の一日で普通に自分の部屋で寝て、目が覚めたらここだった」
御坂「同じね。寝る前も特別何かやってたわけじゃないしいつも通りだったわ」
麦野「こっちも同じ。特に話すこともないような平凡な一日よ」
一方通行「だよなァ、俺も同じだ。予兆も何も無く、寝て起きたらここに放り込まれてたってことだな全員」
垣根「何の参考にもなりゃしねえな」
麦野「本当にこれ以上こっちで出来ることはなさそうね。受け身の姿勢ってのは気に喰わないけど仕方ないか・・・」
御坂「・・・ねえ、どうせやることないんだし折角だから何か話さない?」
一方通行「女ってのは無駄話好きだなァ」
垣根「喋ってねえと死ぬらしいぞ」ケケケ
麦野「うるせえよ童貞どもが」
垣根「どどどど、童貞ちゃうわ!」
一方通行「つーか何話すンだよ?」
御坂「うーんそうね・・・これから何が起こるか皆で予想してみるとか・・・」
麦野「これから何が起こるか?そんなの決まってるわ」
一方通行「そォだな、一つしかねェ」
御坂「やっぱりそうよね」
垣根「え、お前等予想ついてんの?」
一方通行「垣根が死ぬ」
御坂「垣根さんが死ぬ」
麦野「垣根が死ね」
垣根「」
一方通行「これしかねェよなァ」
御坂「うん、なんとなくだけど垣根さんが死ぬ姿は容易に想像できるわ」
麦野「むしろ私が殺す」
垣根「何なのお前等、口裏でも合わせてたのか?麦野は俺に何の恨みがあるんだよ」
麦野「別に無いけど」
垣根「あって欲しかったよ!改善のしようがねえのかよ!やめだやめだこんな話!」
御坂「それじゃ何話すの?」
垣根「ん・・・そうだな・・・おい一方通行」
一方通行「あン?」
垣根「お前実は女だったりしねえのか?」
一方通行「意味がわかンねェ・・・」
麦野「何言ってんだコイツ・・・」
垣根「ほら、一方通行が女だったらこの部屋俺のハーレムだなー、なんてな」ハハッ
一方通行「・・・」
麦野「・・・」
御坂「・・・」
垣根「・・・ハハ・・・冗談だって、笑えよ・・・」
一方通行「笑えねェよ!目が本気っぽかったぞテメエ!!」
御坂「流石にこれは引くわぁ・・・」
麦野「つーか仮に第一位が女だったとして、テメエ的には『アリ』なのか?それ」
垣根「ん・・・」チラッ
一方通行「こっち見ンな」
垣根「・・・俺の未元物質に常識は通用しねえ」フッ
御坂「そこは通用して欲しかった」
一方通行「垣根ェ!!しばらく俺の近くに寄るンじゃねェぞォ!!!」
麦野(垣根×一方・・・?アリね、こいつら顔だけはそこそこ良いし)ニタ
<ガチャガチャ
「「!!」」
和やかな(?)会話を続けていた彼等だったが、突如ドアから聞こえてきた音に反応し
即座にそちらに意識を向ける。待ち望んでいた『機会』が今まさに訪れようとしているのだ。
ガチャリと鍵が開く音が聞こえ、ゆっくりとドアが開いていく。そして
「やぁやぁおはようございます、とミサカは手を振りながら朝の挨拶をします」
呆れるほど脳天気な声を出しながら、一人の少女が手を振りながら部屋に入ってきた。
垣根「・・・は?」
麦野「え?」
御坂「あ、あんた!」
一方通行「・・・」
「皆さん起きているようですね、関心関心、とミサカは修学旅行中の学校の先生のようなことを言います」
そう言うと、少女 ― 御坂美琴のクローンである『妹達』の一人は腕を組み満足気にうんうんと頷いた。
そのあまりに場違いな様子に皆、溜息を吐いて肩の力を抜いたが
ただ一人、一方通行だけは苦虫を噛み潰したような顔をして少女を睨み続けていた。
「一方通行、そんなに見つめないでくださいよ照れるじゃないですか、とミサカは顔を真っ赤にして俯きます。いやん」
一方通行「赤くなってねェし真っ直ぐこっち睨み返してンだろォが!どォせ11111号なンだろテメエ!!」
11111号「大正解!正解者の一方通行には上位個体おさわり券を差し上げます
とミサカは懐から紙切れを取り出します。よかったなロリコン」
一方通行「ほざいてろ・・・おい11111号、コレはオマエの仕業か?」
その一言で、弛緩した雰囲気を出していた一方通行以外の三人に、再び緊張が走る。
11111号があまりにも場違いな空気を纏っていたため忘れかけていたが、状況を振り返るに
彼女は彼等を拉致した人物、或いはその一味である可能性が非常に高いのだ。
11111号「そうではないとも言えますが、その通りだとも言えますね、とミサカは曖昧に言葉を濁します」
御坂「どういうことよ!?ちゃんと説明しなさい!」
11111号「今回の『計画』の一端を担っていることは確かですが、皆さんを拉致ったのはこのミサカではありません。
ミサカはただの案内役です、とミサカは掴みかかって来そうな勢いのお姉様を制止します」
麦野「計画?」
垣根「案内役?」
一方通行「オマエ一人じゃねェってことか、誰の差し金だ?」
11111号「順番にお答えしていきましょう」
ピン、と人差し指を立て、諭すような口調で11111号は喋り始める。
11111号「まず『計画』と言いましたが、そんな大層なものではありません
ただ皆さんにちょっとしたゲームに参加していただくだけです、とミサカは簡単に説明します」
一方通行「ゲームだァ?」
11111号「内容については後ほど説明致します。次に誰の差し金か、ですが
これはもう皆さん想像ついているのでは?」
垣根「・・・アレイスターの野郎か」
11111号「正解です、とミサカは頷きます」
垣根の答えに、11111号は首を縦に振る。
アレイスター=クロウリー ― 学園都市の最大権力者、総括理事長であり、
学園都市の、暗部まで含め文字通り全てを掌握している人間である。
レベル5の上位四名を拉致監禁し能力を封じるなどという大それた事は、彼の指示以外に有り得ないだろう。
垣根「俺にはおさわり券くれねえのか?」
11111号「あなたはちょっとガチっぽいので・・・とミサカは引きつつ答えます」
垣根「おい」
一方通行「それよりテメエ、アレイスターと繋がってやがったのか」
11111号「それは少し語弊ありますね。あくまでも利害が一致した為に
一時的に手を組んでいるだけです、とミサカは弁明します」
御坂「利害って何よ?」
11111号「彼は指示通りに動く手駒が欲しかった、そしてミサカはあなた方にこれから起こることを間近で見たかった
それだけのことです、とミサカは答えます」
麦野「これから起こること・・・さっき言ってたゲームって奴?私達が素直に参加すると思ってんのか?」
11111号「参加する以外に道がありますか?例えこのミサカを張り倒してこの部屋から脱出しても
それだけでは能力は復活しませんし、そのような状態でアレイスターの追っ手から
逃げ切れるとは思えませんが、とミサカは推測します」
麦野「・・・チッ」
11111号「ご安心ください、さっきも言ったように、ゲームは本当にちょっとしたものですし
それさえ終われば能力の使用制限も解除され、皆さんはいつも通りの生活に戻れますよ
とミサカは今にも怒りで爆発しそうな麦野氏を宥めます」
垣根「いいからゲームとやらの説明をしてくれねえか?他に選択肢がねえのは十分わかったからよ」
11111号「わかりました、それでは・・・」コホン
11111号「『一方通行「イヤだ」part2』改め、 『笑ってはいけない学園都市』 の説明をはじめます
とミサカは声高に宣言します」
一方通行「」
垣根「」
御坂「」
麦野「」
11111号「えー皆さんにはこれから、とある高校で24時間学校生活を過ごしていただきます
ルールは簡単、その間に笑ってはいけません。笑ってしまった場合はペナルティとして武装した妹達に竹刀で尻をシバかれます
終了時点で尻をシバかれた回数を集計、最も回数の多かった方は更に罰ゲームを受けていただきます
以上説明終わり、とミサカはカンペを仕舞います」
一方通行「・・・ようはガキの使いのアレだよな」
垣根「え、アレイスターが企画したのこれ?」
11111号「企画者のアレイスターさんからお言葉を預かってきております
『この前再放送してたガキの使いを見てて面白かったからちょっとやってみたくなった』
だそうです、長く生きてると娯楽が欲しくなるのでしょうね
とミサカは寂しい独居老人を思い浮かべて目頭を押さえます」
麦野「何考えてんだ・・・」
御坂「学園都市のトップってそんな人なの・・・?」
11111号「さぁさぁ言いたいことはあるでしょうが、朝礼の時間が迫っているのでそろそろ行きましょう
とミサカはがっくり肩を落としている皆さんを急かします」
垣根「朝礼て・・・マジかよ・・・」
御坂「アハハ・・・でも思ってたよりもしょうもない事で良かったわね・・・」
一方通行「気ィ抜くな、絶対ろくなことになンねェから」
麦野「人生最悪の24時間になりそうね・・・」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―とある高校、体育館
11111号「はい、それでは今から校長先生がやってきますので静かにお待ちください
とミサカは皆さんに座るよう促します」
垣根(なぁ、校長ってもしかして・・・)ヒソヒソ
一方通行(・・・多分な)ヒソヒソ
『校長先生が入場されます』
麦野「一々校内放送使ってアピールするようなこと?」
御坂(うぅ・・・笑っちゃいけないと思うと全部がおかしく見えてくる・・・)
11111号「シッ!静かに・・・校長先生用のBGMが流れてきますよ、とミサカは耳を澄ませます」
御坂「び、BGM・・・?」
ズンズンチャ!ズンズンチャ!ズンズンチャ!ズンズンチャ!♪
垣根「こ、これは・・・」
Buddy you're a boy make a big noise
Playin' in the street gonna be a big man some day
You got mud on yo' face
You big disgrace
Kickin' your can all over the place
Singin' ♪
一方通行「Queen・・・ッ」プルプル
We will we will rock you!
We will we will rock you!
御坂「あ、この曲知ってる」
麦野「アンディ・フグの入場曲ね」
一方通行「・・・ッ」
垣根「ブハッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「おかしィだろ!何でアンディ・フグが即座に出てくンだよ!!」
垣根「麦野おおおお!!テメエが余計なこと言わなけりゃああ!!」
校内放送でのアウト通告に合わせて、バタバタと竹刀を構えた妹達が現れる。
基本無表情なはずの彼女達の顔が今日ばかりはニヤついて見えるから不思議なものだ。
バチーン!
一方通行「ぐあァァァ!!」
垣根「あぐッ!!」
御坂「うわぁ本当に叩かれてる・・・」
麦野「べ、別にいいだろK-1好きなんだから!」
一方通行「クソが・・・数年振りに受けた痛みが竹刀でのケツへの一撃ってのは
精神的にしンどいもンがあるぜ・・・」
垣根「ケケケケ、ひ弱なテメエには辛えだろうな・・・あっ」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
一方通行「バカかオマエ・・・」
垣根「イヤイヤイヤ、今のくらい許せよ!ノーカウントだノーカウント!」
バチーン!
垣根「はぐぁ!!」
11111号「ほらほら、お前等が遊んでる間に校長がスタンバイしちゃってるぞ
とミサカは壇上を指差します」
11111号に促され、四人は壇上に目を向ける。するとそこにはいつの間にか巨大なビーカーが設置されていた。
ビーカー内は何がしかの液体で満たされており、そこに逆さまの状態で一人の人間が浮いている。
その人間は、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見え・・・
一方通行「見えねェよ!!どォ見てもただのバカだろ!!!!」
垣根「本当にアレイスター出てきちゃったよ!!」
麦野「何だこの光景・・・何だこの光景・・・」
御坂「あ、あれが学園都市で一番偉い人・・・?」
ガックリと肩を落とす彼等を満足気に眺めると、ビーカー内の人間 ― アレイスターは口を開いた。
しかし、パクパクと口を動かすだけで一向に何も聞こえてこない。
アレイスター「・・・ ・・・ ・・・」パクパク
一方通行「あン・・・?」
御坂「・・・何も聞こえないわよ?」
垣根「鯉の真似でもしてんのか?」
11111号「ハッハッハ、密閉されたビーカー内に入ってんだからそりゃ声なんて聞こえないでしょう
とミサカは当然のことを口にします」
一方通行「何のための朝礼だ!?」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「ちくしょう・・・ちくしょおおおぐあああ!!」バチーン
麦野「何のために出てきたんだあの野郎・・・ったあぁ!!」バチーン
御坂「笑ってない!私今耐えてたでしょ!!いたああああ!!!」バチーン
11111号「いえ、どう見ても笑ってましたよお姉様とミサカは肩をヒクつかせていたお姉様の姿を思い出します」
一方通行「つーかあのビーカーがwe will rock youにあわせて運ばれてきたのかよ・・・」
垣根「・・・」
麦野「・・・」
垣根「・・・ク」
麦野「ッフ」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「一方通行ァァァァ!!ア゛ァァァァ!!」バチーン
麦野「変なもん想像させやがってえええ!!つああァ!!!」バチーン
11111号「おや、朝礼は終わったようですね。校長が退場なされますよ、拍手でお見送りください
とミサカは手をパチパチと叩きます」
11111号の言葉で壇上に視線を戻すと、天井からUFOキャッチャーのクレーンを巨大化させたようなものが下りてきていた。
クレーンはアレイスターの入っているビーカーをガッシリと掴むと、ゆっくりとそれを持ち上げていく。
一方通行「アレイスターの野郎なンか満足気な顔してるけど、アイツの言ったこと何一つ俺等の耳に届いてねェよな・・・」
御坂「ねえ、クレーンちょっとグラついてない?」
11111号「何分急ごしらえですからねぇ、ちょっとバランスが悪いのはご愛嬌ということで
とミサカは・・・あっ」
お約束通り、クレーンの腕の一部が突如破損し天井近くまで吊り上げられていたビーカーが落下しはじめる。
内部のアレイスターは「え?」と言った表情を浮かべたまま、なす術も無くビーカーごと地面に打ちつけられた。
パリーン!!
アレイスター「」ビクンビクン
垣根「・・・」
麦野「あーあ・・・」
御坂「・・・わたしこれ終わったら学園都市出るわ」
一方通行「ウグッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「アレイスタアアアアア!!痛゛ェェェ!!!」バチーン
11111号「さて、校長は放っておいて校舎に移動しましょうか、とミサカは腰を上げます」
御坂「ほっといていいの・・・?」
11111号「大丈夫だ、問題ない、とミサカは流行を取り入れた返しをします」
アレイスター「」ビクンビクンビクン
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―とある高校、校舎内廊下
11111号「皆さん右手側をご覧ください、こちらの廊下には歴代の校長の肖像が飾られております
とミサカは説明します」
一方通行「歴代校長ねェ・・・ッ」
御坂「・・・!?」
垣根「全部同じ写真じゃねえか!!」
麦野「クソッこの程度でこの私が・・・ッ」ギリギリ
御坂(まだ続きが・・・)プルプル
デデーン♪
『一方通行、御坂、アウトー』
一方通行「さらっと混ざってンじゃねェぞアホ毛がァァァ!!づああああ!!!」バチーン
御坂「どうせアレもアンタの仕業でしょうが一方通行ァァァ!!!いきゃあああああ!!!」バチーン
垣根「や、やばかった・・・」ピクピク
麦野「いつぞやの美琴の三本アホ毛に鍛えられてなかったらやられてたわね・・・」プルプル
11111号「さてお次はあちらをご覧ください、とミサカは先を指差します」
一方通行「今度は何だァ・・・?」
御坂「あ、あいつ・・・」
11111号が指し示した方を見てみると、そこでは三人の学生がジャージを着た女教師に怒られているところだった。
断片的に聞こえてくる会話から察するに、どうやらその三人は遅刻してきたらしい。
11111号「怒られている方はこの学校でも有名な三バカ(デルタフォース)で、
怒っている方は黄泉川という、警備員も勤めている大変恐ろしい方です、とミサカは解説します」
黄泉川「お前達、どうして遅刻したのか答えてもらうじゃん?まずは土御門、言ってみるじゃん」
土御門「昨日ちょっと義妹とハッスルしすぎたんだにゃー、悪いとは思ってるぜよ」
黄泉川「はぁ、またか・・・次から気をつけるじゃん?行っていいぞ。次、青髪ピアス」
青ピ「ちょっと可愛い子見つけてストーキングしてたんよ、気付いたら遅刻確定の時間になってて焦ったわー」
黄泉川「全く、しょうがない奴じゃん・・・もう遅刻するなよ?行け。次、上条」
上条「スキルアウトに絡まれてる女の子を助けてt」バチーン
上条が喋り終わるより先に、黄泉川の平手がその頬に飛んだ。
突如ビンタを喰らった彼は、何が起きたのかわからない、という表情で黄泉川を見つめ返す
黄泉川「・・・どうして遅刻したじゃん?」
上条「女の子を助けt」バチーン
黄泉川「どうして遅刻した?」
上条「女の子を」バチーン
黄泉川「どうして遅刻した?」
上条「女のk」バチーン
上条「女の子を助k」バチーン
上条「女」バチーン
上条「不k」バチーン
上条「不幸だああああ!!」バチーン
黄泉川「こっち来い!お前は指導室行きじゃん!」
上条「うわああぁぁぁ!!!」
散々ビンタを喰らった挙句ガッシリと襟首を掴まれ、上条はずるずると引き摺られていった。
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「ボコボコにされてンじゃねェかァァ!!ってええェェェ!!」バチーン
垣根「何で一番まともな理由の奴が連れてかれてんだよ!!んぐああ!!!」バチーン
御坂「あ、あいつ普段こんな扱いなわけ・・・?うああぁ!!」バチーン
麦野「誰でも笑うわこんなの!!いたあああ!!」バチーン
一方通行「ちくしょォ・・・ケツが割れちまいそォだ・・・」
御坂「・・・クッ」
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「ちょっとおおおお!!いやああぁぁ!!」バチーン
垣根「一方通行テメエ・・・」
一方通行「え、何か笑うところあったか・・・?あ、ケツって最初から割れてたなァそう言えば」
垣根「ッッ!」
麦野「クフッ」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「一方通行ァァァ!!あがぁぁ!!」バチーン
麦野「ふざけんなよクソが!あつううう!!」バチーン
一方通行「すまねェ、わざとじゃねェンだ」
11111号「ほらほら、そろそろ教室に行きますよ。こんな所で消耗し尽くさないでくださいね
とミサカはペース配分を心配します」
―とある高校、教室
11111号「ここが今日一日皆さんが授業を受ける教室です
それでは大人しく先生を待っていてくださいね、とミサカは退室します」
11111号が教室から出て行き、ピシャリとドアが閉められる。
笑い通しだった四人につかの間の休息が訪れた。
一方通行「ふゥ、よォやく一息つけるのか・・・」
垣根「24時間耐えれる気がしねえんだけど・・・」
御坂「予想以上にきつかったわね」
麦野「私を引っ叩いた奴等、終わったら全員ぶち殺してやる・・・」
一方通行「おっかねェなァ・・・ん、おい垣根何してンだァ?」
何やらゴソゴソと机を漁っている垣根に、一方通行が声をかける
垣根「いや、机の中に何か入っててだな・・・お、取れ・・・た?」
彼の机から姿を現したもの、それは・・・
小型軽量化された帝凍庫クンのフィギュアであった。
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
一方通行「余計なことしてンじゃねェよクソ垣根がァァァ!!」
垣根「元を辿ればテメエが悪いんだろうがああ!!」
麦野「私完全にとばっちりじゃねえかクソが・・・」
御坂(やだ・・・かわいい・・・)
バチーン!!
一方通行「ぐあああ!!」
垣根「くふぁ!!」
麦野「いったあああ!!」
一方通行「あァちくしょォ・・・捨てろ、捨てろそれ、俺の視界に入らないところに捨てろ」
垣根「にしても無駄にリアルに出来てやがるな・・・麦野、そっちのゴミ箱に捨てといてくれ・・・」
麦野「チッしょうがないわね・・・ん?」
垣根から呪われたフィギュアを受け取った麦野が、ある事に気付く。
麦野(コイツ、背中にスイッチついてる・・・)
一方通行「おい、早く捨てろ」
垣根「聞こえてるか?」
麦野「・・・」ポチ
帝凍庫<常識ハ通用シネエ!!常識ハ通用シネエ!!
一方通行「うわあァァァァ!!!」
垣根「喋ったあああぁぁぁ!!!!」
御坂「ブフッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、アウトー』
一方通行「ちっくしょォ・・・!!」
垣根「何をしやがった麦野ぉ!!!」
御坂「それよりあんた等の反応はなんなのよおおお!!!」
バチーン!!
一方通行「ぐおァァ!!」
垣根「あ゛ァァァ!!」
御坂「やあああああ!!!」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
「はい皆さーん、朝のホームルームをはじめますよー」
ガラガラとドアを開け、明るい声を上げながら一人の少女が教室に入ってくる。
垣根「ん?」
麦野「何?このちっこいの・・・」
小萌「はじめまして、今日一日皆さんの担任をすることになった月詠小萌です」
御坂「た、担任?」
一方通行「何の冗談だァ?」
彼等が首を傾げるのも当然で、小萌と名乗ったその少女はどこからどう見ても小学生にしか見えない。
それを指摘すると、彼女はぷくっと頬を膨らませて分かりやすい怒りを表現した。
小萌「こう見えても先生はれっきとした教師なのですよ!免許も持ってますし大学も出ています!」
一方通行「嘘ォ・・・」
垣根「これも学園都市の技術の成せる業か・・・」
麦野「その技術凄く興味あるわ」
小萌「ちなみに趣味は酒とタバコなのです!」
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「何なのよそのギャップはああ!!」
バチーン!!
御坂「いったああ!!」
小萌「ホームルームの時間に皆にも自己紹介をしていただきたいのですよー」
垣根「自己紹介っつわれてもなぁ」
小萌「名前と趣味くらいで大丈夫ですよ、それが終わったら先生が素敵なあだ名をつけてあげます!」
麦野「いらねえ」
垣根「イヤな予感しかしねえ」
小萌「じゃあそこの真っ白ちゃんから自己紹介お願いします」
一方通行「・・・俺かァ? あー・・・一方通行です、本名は忘れましたァ
趣味は他人にイヤガラセをすることでェす」
小萌「んま!イヤガラセなんてしちゃだめなのですよー
一方通行・・・あだ名は『セロリ』ちゃんで決まりです!」
一方通行「」
垣根「クッ」プルプル
小萌「次はそっちのイケメンちゃん、お願いします」
垣根「あ、ああ・・・ 垣根帝督だ。 趣味は・・・えっと、ナンパかな?」
小萌「見た目の通りチャラいのですねー、あだ名は『ていとくん』に決定なのです」
垣根「あ、思ったよりまともだ」
麦野「意外と毒舌ね、この合法ロリ・・・」
小萌「さてお次はそこの短髪ちゃん、どうぞ」
御坂「あ、私よね? 御坂美琴です。趣味は可愛い物を集めることです」
小萌「実に女の子らしくて面白みに欠ける自己紹介なのです、あだ名は『ビリビリ』で」
御坂「面白みに欠ける!?ていうか今の私の自己紹介にビリビリ要素あった!?」
小萌「最後にそちらの長髪さん、お願いします」
麦野「何で私だけ『ちゃん』じゃねえんだ?」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
垣根「ギャハハハハ!一人だけ年長扱いされてんじゃねえよ!!」
麦野「・・・後で覚えてやがれ」
バチーン!!
垣根「ぶあああぁぁ!!!」
麦野「とにかく、私の番だな? 名前は麦野沈利、趣味はシャケよ」
デデーン♪
『垣根、御坂、アウトー』
御坂「鮭が趣味ってどういうことよ・・・」
垣根「勘弁してくれ麦野・・・連続はやばいんだよ・・・」
麦野「酒がありならシャケもありでしょ」
バチーン!!
御坂「いきゃああああ!!」
垣根「ぐえぁ!!!」
小萌「麦野さんですね?それじゃあだ名は『ナージャ』にしましょう」
麦野「おいィ!?」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「それあだ名じゃなくて前世だからァ!!」
垣根「前世っつーかご先祖様だな、初代だ」
バチーン!!
一方通行「アア゛ァァァァ!!」
小萌「絶対に許さない!!」
麦野「こっちのセリフだあああああ!!!!」
※ゲーム版麦野さんの声優は「明日のナージャ」のナージャ役などで有名な小清水さんです。
小萌「冗談はさておき、無難に『むぎのん』あたりにしておきましょうか」
麦野「あぁはい・・・むぎのん・・・」
一方通行「むぎのん」
垣根「むぎのん」
御坂「むぎにょ・・・のん」
麦野「・・・」
一方通行「・・・フッ」
垣根「ングッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「噛ンでンじゃねェよクソがァァ!!」
垣根「むぎにょ!むぎにょ!!」ゲラゲラ
麦野「垣根しね」
御坂「ご、ごめん、わざとじゃなくてね・・・?」
バチーン!!
一方通行「づああァァァァ!!!」
垣根「ってえええェェェ!!」
小萌「はい、それではあだ名も決まったことですし一時間目を始めるのですよー」
一方通行「先生ェー、ケツが爆発しそうなンで保健室行って来ていいですかァー?」
小萌「そのまま爆発しちゃってください」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「はぁ!?俺!?違うだろ!!」
麦野「笑ってない!今のは笑ってないって!!」
バチーン!!
垣根「アオォォォ!!」
麦野「にゃあああああ!!!」
一方通行「いや、明らかに笑ってたわオマエ等」
御坂「アンタも、普通に『痛い』でいいのに何で『爆発』なんて単語チョイスしたのよ・・・」
小萌「一時間目は音楽なのですよー、皆さん机から笛入れを取り出してください」
麦野「笛入れ・・・これね」
御坂「縦笛かな?しばらく吹いてないわね・・・」
一方通行「垣根ェ、オマエの机もォ変なモン入ってねェだろォなァ・・・」
垣根「思い出させるんじゃねえよ・・・大丈夫だ、もう入ってねえよ」
小萌「はい、それじゃセロリちゃん、笛を取り出してドレミファソラシドを吹いてみてください」
一方通行「へェへェ・・・ん?」ガサガサ
一方通行「・・・先生ェー、笛入れからデカい野菜スティックが出て来たンですけどォー」
デデーン♪
「垣根、御坂、アウトー」
垣根「ちくしょう・・・何かあるとは思ってたのに・・・」
御坂「わかってても笑っちゃったわよ・・・」
一方通行「しかもこれ、セロリだ・・・」
デデーン♪
「麦野、アウトー」
麦野「余計な事言ってんじゃねえええ!!」
バチーン!!
垣根「おうふ!!」
御坂「いっつぅ!!!」
麦野「くあぁ!!」
小萌「それじゃセロリちゃん、吹いてください」
一方通行「イヤ、だから野菜スティック・・・」
小萌「吹いてください」
一方通行「・・・」
小萌「・・・」
一方通行「・・・シャリッ」
垣根「!?」
一方通行「シャクシャク・・・シャリッ」
御坂「・・・ッ」プルプル
一方通行「シャクシャクシャク・・・ゴクン」
麦野「クッ・・・」
一方通行「先生ェー、笛なくなりましたァ」
小萌「もう、仕方のない子ですね!」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「食ってんじゃねえよ!!!」
御坂「何なのよアンタの行動!おかしいでしょ!?」
麦野「テメエ実は仕掛ける側とグルなんだろ!?」
一方通行「他にどうすりゃよかったンだよ・・・」
バチーン!!
垣根「ぐがああああ!!!」
御坂「んああああ!!!」
麦野「あああああああ!!!」
小萌「仕方が無いのでビリビリちゃん、代わりにお願いするのですよー」
御坂「あぁはい・・・あれ?」ガサガサ
麦野「美琴、どうしたの?」
御坂「えっと、私の笛、先端がないんだけど・・・」
小萌「むむ、きっとヘンタイさんがペロペロする為に先っぽだけ持って行ったに違いありません
クラスメートを疑いたくはありませんが、皆さんの持ち物を検査させていただきます!」
一方通行「・・・くだらねェ」
垣根「出てくるわけねぇだろ」
麦野「つーか女の私も検査されるのかよ」
小萌「くっ出てきません・・・このままでは私の責任問題に・・・何とか犯人を・・・」
垣根「何か自己保身しか考えてねぇぞこいつ」
一方通行「何で出てくる女全員腹黒いンだよ・・・」
麦野「私を入れるんじゃねえよ」
垣根「グフッ」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
麦野「・・・おい垣根」
垣根「だってお前、腹黒い女の筆頭だろ!」ゲラゲラ
バチーン!!
垣根「だおおぉぉ!!」
垣根「そろそろ歩行が困難になるレベルだぞ・・・」
御坂「まだ一時間目なのよね・・・」
小萌「犯人がいないのなら・・・作り出してしまえば・・・」ブツブツ
一方通行「おい何か物騒なこと言い出したぞこのチビ」
小萌「・・・ていとくん、あなたが犯人だということで手を打ちませんか?」
垣根「打つか!!意味がわかんねぇよ!!」
小萌「では多数決を取りましょうか。ていとくんが犯人だと思う人は手を挙げて欲しいのです」
垣根「なめてんだろ!!!誰が挙げるってんだよ!」
垣根のそんな言葉とは裏腹に、彼以外の三人は迷うことなくその右手を高く吊り上げた。
その様子を見て、「これで問題を有耶無耶にできる」と胸を撫で下ろす小萌。
垣根は「信じられない」と言いたげな表情のまま固まり、ゆるゆると首を振った。
垣根「おいテメエ等何の真似だ・・・」
一方通行「だってなァ・・・」
御坂「ここで挙げなかったら間違いなく被害が拡大するし・・・」
麦野「悪いけど生贄になってもらうわ」
垣根「ふざけんな!!」
小萌「それでは多数決の結果、ていとくんが犯人に決定しました。民主主義って素晴らしいですねー」
垣根「認めねええええ!!!」
御坂「私の知ってる民主主義と違う」
デデーン♪
『垣根、ジャッジメントー』
垣根「ジャッジメントって何だよ!?つーか完全に濡れ衣だろ!!」
ドア<ガラガラ
御坂「!?」
ドアが開き、一人の少女が軽快なステップで教室に入ってくる。
四人はそのツインテールの少女に、思いっきり見覚えがあった。
御坂「く、黒子・・・?」
珍妙なポーズで決め台詞を叫ぶ白井に、御坂は困惑の表情を浮かべる。
『さあジャッジメントさん、刑を執行してください、とミサカはGOサインを出します』
白井「ですの!」
校内放送に出されたGOサインに頷き、彼女は構える。
その姿に戦慄した垣根は「イヤイヤ」と首を振りつつ距離を取ろうとするが
いつの間にか現れていた妹達によって進路を阻まれ、それもままならない。
垣根「ちくしょうどけ!クローンどもがああああ!!!」
バキィ!!!
垣根「ぐがあああああアアァァァァ!!!!」
白井の得意技、空間移動からのドロップキックが華麗に垣根の尻に直撃する。
本日最大の衝撃をその尻に受けた垣根は机を巻き込みながら吹き飛び、もんどり打って倒れ込んだ。
御坂「か、垣根さあぁぁん!!!」
麦野「うわぁ痛そう・・・」
一方通行「ン?おい白黒、何か落としたぞ」
ドロップキックの拍子に白井のポケットから落下した小物を、一方通行はひょいと拾い上げた。
一方通行「おいこれ・・・」
麦野「これって・・・」
それは間違いなく笛の先端部で、ご丁寧に『御坂美琴』と名前までシールで貼り付けてある。
何故白井のポケットからこれが出てきたのか?答えは一つしかない。
御坂「黒子、あんた・・・」
白井「・・・」
御坂「・・・」
一方通行「・・・」
麦野「・・・」
白井「ジャッジメントですの!(キリッ」ビュン
御坂「あ!待ちなさいよ!!」
捨て台詞を残し、白井は空間移動で消えてしまう。後に残ったのは騒動で荒れ果てた教室と
倒れ伏したままピクリとも動かない垣根だけであった。
御坂(でも私、あの笛指一本触ってないんだし盗んでもどうしようもないわよね・・・)
小萌「むぎのんさん、ていとくんを起こしてあげてください
このままでは授業が進まないのですよー」
麦野「チッ おら垣根、立て」
垣根「ぐ、あぁ・・・すまねえな、むぎのん」
デデーン♪
『一方通行、御坂、アウトー』
一方通行「垣根ェ・・・」
御坂「ごく自然に『むぎのん』なんて言わないでよおおお!!!」
バチーン!!
一方通行「ぬあァァァ!!」
御坂「きゃう!!!」
小萌「それじゃビリビリちゃん、先っちょも戻って来たことですし吹いてもらえますか?」
御坂「えぇ!?黒子が持ってた笛の先端なんて吹きたくないわよ!!」
垣根「露骨に嫌がりすぎじゃね?大事な後輩じゃなかったのかよ」
御坂「それはそれ、これはこれよ!何をやられてるかわかったもんじゃないわ・・・」
麦野「間違いなく****を*****してるわね」
一方通行「自重しろむぎのん」
麦野「黙ってろセロリ」
垣根「おい、身内通しで争うのはやめろ」
御坂「アンタが言うか」
小萌「んもう!喧嘩してないで早く吹いてくださいよビリビリちゃん!」
御坂「え、えぇー・・・でも・・・」
小萌「このままだと連帯責任で皆お仕置きなのですよー」
一方通行「早く吹け」
垣根「急げ、今度はテメエが犠牲になる番だ」
麦野「大丈夫よ、ちょっと*****なだけで害はないだろうから」
御坂「大有りよ!! あうう・・・」パクッ
他の三人からの視線に耐え切れず、御坂は仕方なく笛に口をつける。
御坂「うぇっ」
しかしその直後、耐えられないと言った表情をし、彼女は笛を投げ捨てた。
御坂「苦!にっが!!うえぇ・・・」
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
一方通行「クソ!あの白黒何やりやがった!!」
麦野「何ってそりゃナニでしょうよ・・・」
御坂「麦野さん変なこと言わないで!うぇッまだ苦い・・・」
バチーン!!
一方通行「ごあああァァあ!!!」
麦野「あ゛ああぁぁもう!!」
キーンコーンカーンコーン♪
小萌「む、もう終わりの時間ですか・・・仕方がありません、皆さん今度補修を受けてもらいます!」
そういい残すと、小萌はぷりぷりと怒りながら教室から出て行った。四人は疲労困憊でそれを黙って見送る。
彼等の長い一日はまだ始まったばかりである。
小萌が出て行ったのとほぼ入れ違いで、教室に11111号が戻ってくる。
その手には何やら大きな手提げ袋を携えていた。
11111号「ハイ皆さん、次は楽しいビデオ学習ですよ
とミサカは情けない顔をしているレベル5達を元気付けます」
一方通行「その手提げ袋の中にビデオが入ってンのか」
11111号「ビデオっていうかDVDですけどね、この中から適当に何本か選んでもらって
皆さんに見ていただきます、とミサカは説明します」
ザザッと袋の中身が教卓の上にぶちまけられる。『国語』や『数学』と言った一般的なものから
『能力開発』、『解剖学』等というキワモノまで一通り揃っているようだ。
11111号「ささ、お好きなものを選んでください。『お笑い』なんてお勧めですよ
とミサカはテレビを準備をしながら四人に勧めます」
垣根「誰が選ぶかよクソったれが」
御坂「真剣に選ばないとマズイわよねこれ・・・」
一方通行「あァ・・・絶対に何か仕込ンであるだろォな。 少しでも被害が少なそうなモン探すぞ」
麦野「って言われてもパッケージからだけじゃイマイチわからないわよねぇ」
ガサゴソと数十本はあるDVDのパッケージを真剣な表情で吟味する四人。
何ともシュールな光景だが、彼等は大真面目である。
と、垣根が何かを見つけたようで肩をヒクつかせながら一方通行に耳打ちをする。
垣根「おい、一方通行」コソコソ
一方通行「あァ?」
垣根「AV混ざってた」
一方通行「ゴァッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「何で俺にだけ言うンだよテメエエェェェ!!!」
垣根「女に見せるわけにもいかねえだろうがよ」
バチーン!!
一方通行「があああああ!!!」
麦野「はぁ・・・何やってんのよ」
突如噴き出した一方通行を呆れ顔で眺めながら、
麦野は原因となったであろう垣根の持っていたDVDをヒョイと奪い取った。
垣根「あっ」
麦野「あぁ?何だこりゃ・・・『深夜のジャッジメント~愛の空間移動~』
主演:白○黒子 助演:番外○体 制作:学園都市
が、学園都市公認のAVだと!?」
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、アウトー』
垣根「学園都市が作ってたのかよ!?」
一方通行「番外個体・・・そンなところまで堕ちてやがったのか・・・」
御坂「何やってんのよ黒子おおおおお!!!」
バチーン!!
一方通行「ああああァァァ!!」
垣根「ひょおおおお!!!」
御坂「うわああああああ!!!」
麦野「ちなみに全編に渡って盗撮した映像で作られてるらしいわ」
垣根「普通に犯罪じゃねえか!!いいのか学園都市!?」
御坂「あぁ・・・黒子がAV女優になったり自分から売り込みに行ったわけじゃなかったのね・・・」
一方通行「ちょっと安心したわ・・・」
11111号「おいお前等、早く選ばないとミサカが『お笑い』のDVD流しちまうぞ
とミサカは脅し半分に急かします」
御坂「あぁもう!じゃあ無難にこれにしましょ!」
一方通行「国語か・・・」
垣根「いいんじゃねえか?お堅いイメージはあるし」
麦野「そうね、どうせ判断材料少ないから最終的には運任せでしょ」
11111号「わかりました、国語ですね、とミサカはDVDをセットします。はじまりはじまりー」
11111号がDVDをセットし、テレビの電源を入れると、画面に『正しい日本語講座』という文字が表示され、
バックにどこか気品を感じる、長い金髪の女性が映っていた。
一方通行「正しい日本語講座ァ?」
垣根「何で日本人が日本語講座受けなきゃならねえんだよ」
11111号「お前等全員まとめて日本語おかしいだろ、とミサカはつっこみを入れます」
麦野「後ろに映ってる金髪の女が講師か?どう見ても日本人には見えないんだけど
百歩譲って私達の日本語がおかしかったとして、外人に教わる筋合いはねえよ」
御坂「でもさ、なんとなく日本語使ってる日本人よりも正しく日本語を学んだ外国人の方が
綺麗な日本語を使えるのかも知れないわよ」
11111号「そろそろ始まりますから静かにしてくださいね、とミサカは音量を上げながら釘を刺します」
『正しい日本語講座』の文字が消え、金髪の女性がクローズアップされる。
彼女は目を細め優雅な笑みを浮かべるとゆっくりと口を開いた。
「これより正しい日本語講座の講義を始めたりけるのよ!」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「今のだけでわかったわ!!こいつに教わる日本語なんて何一つねェよ!!」
御坂「今の日本語もどきはどこの基準で『正しい』のよ!?」
麦野「つーか今垣根も笑ってただろうが!!」
垣根「笑ってねえよ、耐えてただろ」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
垣根「うおおおおい時間差ああああ!?」
麦野「ざまぁ」
バチーン!!
一方通行「ぐがああああ!!!」
垣根「ぬおおぁ!!」
御坂「ああッ!!!」
麦野「っつあああぁぁ!!!!」
「本日の講義内容は『日本の偉人』なのよね
私が今から偉人の名前を挙げるから、皆後に続きけるのよー」
一方通行「おい思いっきり初心者外人向けの内容じゃねェか」
垣根「その割りに解説は日本語でされてるんだな・・・」
御坂「何のために作られたDVDなのよこれ・・・」
「えー・・・s、しょ、しょうとく、たいしぃ・・・」
一方通行「オマエが言えてねェじゃねェか!!!」
垣根「く・・・」プルプル
御坂「つぅ・・・」ギリギリ
麦野「こいつに日本語教えた奴出てきやがれ!!」
「とよtみ・・・とぉよとみ、ひぃでよぉすぃ!」
垣根「ガフッ」
御坂「アウッ」
デデーン♪
『垣根、御坂、アウトー』
垣根「語尾上げるんじゃねえよクソがあああ!!!」
御坂「何なのよもおおおお!!」
バチーン!!
垣根「ぬふ!!」
御坂「んあああ!!!」
「おd・・・お、おおだのぶなぁが」
垣根「信長さんの苗字オオダになっちまったよ・・・」
麦野「こんな所で歴史変えてんじゃねえぞ」
「とくがわぁ・・・いぃえやぁすぅ」
一方通行「いつまで続くんだよ・・・」
御坂「くぅ・・・」ガクガク
「鎌池和馬」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「突然流暢になるンじゃねェよ!!!」
垣根「つーか偉人じゃねえだろ!!」
御坂「それは問題発言よ垣根さん・・・」
「通称かまちー」
麦野「やかましいわ!!!」
バチーン!!
一方通行「おおおおお!!!」
垣根「んぐあ!!」
御坂「い゛いいいぃぃ!!」
麦野「ひゃうぁ!!!」
「こいずぅみじぅんいちろおぅ」
麦野「少し慣れてきたわね・・・」
「アレイスター=クロウリー・・・」
垣根「アレイスターだ?」
「Ohh・・・Aleister・・・・・・・・・Fuck!Fuckin ' Aleister!!」
一方通行「!?」
「No good!!Shit!Fuck!No!Aleister No!!Son of a bitch!!!」
御坂「」
「Oh shit!!Fuck!!Aleister Fuck!! Cheesy dick!!AAAAAAAH!!!!」ガタンガタン
テレビ<プツン
11111号「日本語講座終了です」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「何なンだよあのババアは!!?」
垣根「どんだけ嫌われてんだアレイスター!?」
御坂「ハァ、ハァ・・・もう、何なのよホント・・・」
麦野「国語大ハズレじゃねえかクソ!!!」
バチーン!!
一方通行「ぎいいいい!!!」
垣根「あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁ!!」
御坂「ひぐ!!」
麦野「ぐぎゃ!!!」
11111号「さて、次は何にしましょうか、とミサカは再びDVDの山を見つめます」
御坂「ちょ、まだやるの!?」
11111号「時間はまだありますしね、このミサカが適当に選んでも構いませんがどうします?
とミサカは再び脅迫紛いの発言をします」
垣根「クソ・・・何にするよ」
麦野「どれもこれも地雷に見えるわ・・・」
御坂「むしろ一つでもマトモなのがあるのかしら・・・」
一方通行(またAVあった・・・『神の右席筆頭ご乱心スペシャル~刮目せよ、これが俺様の聖なる右曲がりだ~』
何なンですかァこれェ・・・)
垣根「うし、次は音楽にしようぜ」
御坂「えぇー・・・」
麦野「さっきの時間、散々痛い目見たじゃねえか・・・」
垣根「だからこそだ、一度痛い目を見たから音楽を選ぶはずがねえ、敵もそう考えてるはずだぜ」
一方通行「更に裏をかかれてる可能性もあると思うがなァ」
御坂「んー・・・でもまぁ、別にいいんじゃない?音楽で」
麦野「多分何選んでも一緒よね・・・早くしないとクローンが勝手にDVD再生しちゃいそうだし」
11111号「ふむ、音楽でよろしいのですね?了解しました、とミサカはDVDをセットします」カチャカチャ
11111号がDVDをセットすると、テレビから聴き馴染みのある軽快な音楽が流れてくる。
一方通行「お」
御坂「この音楽は」
テレビ<放て!心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして ♪
垣根「どうやら普通のPVみたいだな」
麦野「上手いこと当たり引いたみたいね」
一方通行「気をつけろよ、このPVマギーが出てくるからよォ」
垣根「今更マギーごときで笑うわけねえだろ」
御坂「垣根さんさっきから失礼なこと言いまくりよ」
テレビ<暗闇に堕ちる街並み 人はどこまで立ち向かえるの?加速するその痛みから 誰かをきっと守れるよ ♪
御坂「この曲ってタイトルからして私のテーマ曲みたいなもんよね」
一方通行「そいつはよかったですねェー」
御坂「何よその棒読み・・・」
垣根「俺も欲しいなテーマ曲」
麦野「テーマ曲なんて持ってどうすんだ」
垣根「かっこよくねえか?痺れるテーマ曲をバックに翼をはためかせて光臨する俺」
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
垣根「おいこら笑う要素なかっただろうが今」
一方通行「むしろ笑う要素しかなかっただろォが!」ゲラゲラ
麦野「想像したらシュール過ぎて思わずね・・・」ククク
バチーン!!
一方通行「おゥ!!!」
麦野「った!!」
御坂「ちなみにどんな曲で想像したの?」
麦野「ワルキューレの騎行」
垣根「地獄の黙示録か!?」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「クソがァ・・・映画の武装ヘリよろしく垣根の大群が押し寄せてくる姿を想像しちまった・・・」
麦野「笑えるわよね」
バチーン!!
一方通行「ぐああォォォ!!!」
御坂「一方通行はどんな曲思い浮かべたわけ?」
一方通行「あァ? あー・・・・・・蝋人形の館」
垣根「オマエも蝋人形にしてやろうかぁ!!」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「垣根さん今のつっこみは明らかに笑わせにきたでしょ!?」
麦野「ブチコロスぞクソメルヘンがぁ!!!」
垣根「今夜も一人~生贄になる~♪」
一方通行「歌ってンじゃねェよボケ、テメエが生贄になってろ」
バチーン!!
御坂「やう!!!」
麦野「だああああ!!!」
垣根「で、話戻すけど麦野は欲しくねえか?テーマ曲」
麦野「そもそも欲しがる意味がわからないわ・・・」
御坂「でもさ、戦ってる時とかに専用BGMが流れたりすると嬉しくない?」
垣根「うし、麦野のテーマ曲考えてやるか」
麦野「いらねえよ!!」
一方通行「考えるまでもねェ、デビルマンのうた一択だろォが」
垣根「麦野イヤーは地獄耳で麦野ビームは熱光線ってか」
御坂「プクッ」
デデーン♪
『御坂、アウトー』
麦野「テメエ等あああああ!!!」
御坂「ごめんなさい・・・想像したら意外とハマってたから・・・」
バチーン!!
御坂「ひぐうう!!!」
垣根「デビルマンも悪くねぇが、個人的にはゲッターロボを推すな」
麦野「まだ続けるのかよその話!?」
一方通行「ビームつながりかァ?それなら別にデビルマンでもよくねェか」
垣根「いや、それだけじゃなくて登場人物の性格的にもだな・・・特に漫画版」
麦野「垣根ぇ・・・」
垣根「うん?」
麦野「目だ!!耳だ!!鼻ァァァ!!!」ガスガスガス
垣根「おう!!ぐふぁ!!ぐああああああ!!!」
11111号「直接危害を加えるのは反則ですよ!とミサカは修羅と化したむぎのんを制止します
つーか意外とノリノリじゃねえか」
テレビ<色褪せてく 現実に揺れる 絶望には 負けたくない ♪
垣根「あ、いつの間にか曲随分進んでんな」
御坂「垣根さんの回復の早さには本当に驚かされるわ」
垣根「常識は通用しねえからな」フッ
麦野「マギーの登場シーン見逃したわね、仮面脱ぎ捨てるアレ」
一方通行「見たかったかァ?」
麦野「いや、全然」
テレビ<Looking!The blitz loop this planet to search way.
Only my ACCELERATOR OUT! 今すぐ ♪
御坂「・・・今さりげなく『一方通行アウト』って歌詞に入ってたわよね」
一方通行「」
垣根「ざまぁねえな一方通行!」
テレビ<放て!心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして 限界など知らない 意味無い!
この垣根は二回アウト その先に遥かな想いを~ ♪
垣根「ハ!?」
麦野「二回アウトだってよ垣根」
垣根「イヤイヤ待て、そんなバカなことが・・・」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
『垣根、二回アウトー』
垣根「なんだそりゃああああ!!!」
一方通行「理不尽にも程があるだろォが!!」
バチーン!!
一方通行「おおおああァァ!!!」
垣根「いっで!!!」
バチーン!!
垣根「二発目きたあ゛ァァァァ!!!!」
11111号「いやはや中々いい仕事しましたねぇ音楽の教材も、とミサカは大満足でDVDを取り出します
さて次は・・・」
一方通行「もォいいだろォが!!」
11111号「『もういいだろ、そろそろAVを見せろ』ですと?
全く仕方の無い童貞坊やですねこのセロリは、とミサカは頭を抱えます」
一方通行「他人の発言捏造するのやめてもらえますゥ?」
11111号「よしこれにしましょう『世界名作劇場』、とミサカはDVDをセットします」
一方通行「おい勝手に決めてンじゃねェ!!」
御坂「どんだけマイペース貫いてるのよこの子・・・」
垣根「ああクソ、はじまっちまったぞ」
「クゥーン」
「パトラッシュ・・・お前、僕を探してきてくれたんだね」
麦野「これは・・・」
一方通行「フランダースの犬の最終回、か?」
「パトラッシュ・・・僕見たんだよ、一番見たかった、ルーベンスの二枚の絵・・・」
「クゥー・・・」
垣根「く・・・」
御坂「・・・か、感動シーンよね」ブルブル
麦野「えぇ、感動するところよね」ギリギリ
一方通行「あァ・・・これ全部、妹達が演じてるンじゃなければな・・・」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「ふざけんなああああ!!!」
御坂「妹達がダベッてるだけじゃないのよおお!!!」
麦野「セリフ全部棒読みじゃねえか!!」
バチーン!!
垣根「きたあああああ!!!」
御坂「ああぁ!!あぁぁ・・・」
麦野「ふぎゃ!!!」
11111号「ちなみにこれを撮影するためだけにアントワープ大聖堂まで遠征してきました
とミサカは解説します」
一方通行「心底いらねェ情報どォも・・・」
「何だかとても眠いんだ・・・パトラッシュ、とネロは目を閉じます」
垣根「もはや演技する気ゼロだろこれ」
麦野「そろそろ天使のお迎えが来るころだけど」
御坂「どうせ妹達がワラワラ出てくるんでしょ・・・」
「いたぞ!こっちだ!!」
「侵入者め!もう逃がさんぞ!!」
「本部に連絡!侵入者を発見!侵入者を発見!」
一方通行「現地の警察出てきちゃってますよォ!?」
垣根「ウグッ」
御坂「ッッ!」
麦野「ぶ、物騒な天使ね・・・」
「侵入者確保!」
「侵入者確保!」
「あぁやめてください!まだ演技中で、とミサカは懇願します」
「演技?何を言ってるんだ!おい、連行しろ!」
「ほら立て!来るんだ!!」
「ああぁぁぁ・・・」
―END―
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「放送事故ってレベルじゃねェぞ!!」
垣根「不法侵入してまでこんなことやってんのかよ!?」
11111号「ちなみにあの二人は未だに現地で拘留されております、とミサカは補足説明をします」
御坂「助けてあげなさいよ!!」
麦野「いらねえよそんな情報!!!」
バチーン!!
一方通行「あぐおァ!!」
垣根「ふぅぅぅぅぅ!!!」
御坂「やだあぁぁ!!」
麦野「づあぁぁぁ!!!」
キーンコーンカーンコーン♪
11111号「おや、丁度良い時間ですね
それではこれでビデオ学習を終わります、とミサカはDVDをまとめて退室します。アデュー」
麦野「ちょっと個性育ちすぎてるんじゃないのアイツ等・・・」
一方通行「・・・実験、やっとくべきだったかもなァ」
垣根「やるんなら手伝うぞ・・・」
御坂「今なら止めないわよ・・・」
『次は体育です、着替えが用意してあるので更衣室で着替えて体育館に集合してください
とミサカは指示を出します』
一方通行「体育ね・・・」
垣根「もうイヤな予感しかしねえ」
麦野「奇遇ね、私もよ」
御坂「いい予感がする人なんていないわよ・・・」
―男子更衣室
垣根「このロッカーに着替えが入ってんのか?」
一方通行「・・・垣根、絶対罠が張ってるからオマエのロッカーから開けろ」
垣根「意外とチキンだな第一位、まぁ構わねえけどよっと」ガチャリ
一方通行「どォだ?」
垣根「普通のジャージしか入ってねえよ、ハズレだ。いや、当たりなのか?」
一方通行「つーことは俺の方に何か仕込んである可能性が高ェのか・・・」ハァ
垣根「さっさと開けろ、遅刻するぞ」
一方通行「いつからそンな真面目ちゃンになったンだオマエは・・・ッ」ガチャリ
垣根「どうした・・・?」
一方通行「・・・白い全身タイツが入ってる」
垣根「ウッ・・・」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
垣根「はあああああ!?今のはセーフだろおおおお!!!」
一方通行「完璧アウトだっただろ」
バチーン!!
垣根「はいやああああ!!!」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
『垣根、アウトー』
麦野「・・・何やってんだアイツ等」
御坂「何か細工がしてあったんじゃない?」
垣根が尻をシバかれていたその頃、特に何の騒動にも見舞われなかった女性陣は
さっさと着替えを済ませ、一足先に体育館の前まで来ていた。
麦野「中に何か仕掛けられてるかもしれないから気をつけなよ」
御坂「わかってる」
体育館の扉に手を掛けている御坂に麦野が注意を呼びかける。
御坂「・・・開けるわ」
ゆっくりと扉が押し広げられていく。その先で、二人は信じ難いものを目にした。
アレイスター「」グッタリ
麦野「ぐふっ」
御坂「ウクッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「何でまだ倒れてるのよおおお!!!」
麦野「誰か助けてやれよ!!あんなんでも学園都市のトップだろうが!!!」
バチーン!!
御坂「うぎぃいいいい!!」
麦野「だああ!!!」
二人が叩かれるのを見届けると、アレイスターは裏方の妹達によって運ばれて行った。
どうやらこのためだけに今までずっと放置されていたようだ。
御坂「ぐったりしてたけど大丈夫なのかな?」
麦野「アレの心配より今は自分達の心配しましょ・・・」
垣根「おう、オマエ等先に来てたのか」
脱力していた二人の背中に、ようやく現れた垣根が声をかける。
麦野「遅えよクソg・・・」
御坂「何やってt・・・」
喋りながら振り返った二人は、しかし最後まで言葉を続けることができなかった。
眼前に白い全身タイツに身を包んだ学園都市の第一位が憮然とした表情で立っていたのだからそれも当然だろう。
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
一方通行「なァに他人の格好見て笑ってやがるンですかァ?」
麦野「そんな白いモジモジくんみたいな格好で何言ってやがる!!」
御坂「笑うなって言う方が無理よね・・・」
バチーン!!
御坂「ひぐ!!!」
麦野「あうぁぁ!!」
11111号「ようしお前等揃ったな、とミサカは確認を取ります」
一方通行「あァ?またオマエが教師役かァ?」
垣根「体育って何やんだよ」
11111号「本日の体育の種目は『鬼ごっこ』です
題して『捕まってはいけない学園都市』とミサカは宣言します」
御坂「鬼・・・ごっこ・・・?」
11111号「イエス、ルールは以下の通りです」
・これから一時間、学校の敷地内をフルに使って鬼ごっこをする
・鬼に捕まるとクジを引かされる。クジには様々な罰が書かれている
・罰は基本的には鬼によって執行される
・各自にそれぞれ数人専属の鬼がつき、専属の鬼以外からは捕まらない
・罰が執行された後は一分間逃げる猶予が与えられる。
・鬼に危害を加えてはならない
・鬼は能力を使用しても良い
・この授業の間は笑っても問題ない
11111号「とまぁこんな感じです、とミサカは説明を終えます」
一方通行「一時間フルで鬼ごっこだと・・・」
垣根「一人につき鬼数人ってきつくねえ?」
11111号「学校の敷地全部使ってOKですから、適当に隠れたりしてれば大丈夫なんじゃないですかね
とミサカは他人事のように言い放ちます」
麦野「クジに書かれてる罰ゲームの内容が気になるんだけど」
11111号「あー、詳しくは言えませんが、基本的には尻をシバかれる系統のものです
とミサカは簡単な解説をします」
御坂「つまり音楽の時間に垣根さんが喰らった『ジャッジメント』みたいなヤツがたくさん入ってるのね・・・」ハァ
垣根「鬼は能力使用化って、俺等はやっぱり使えないままなんだよな?ちょっと不利すぎじゃねえか?」
11111号「そこはレベル5の知能でなんとかしてくださいよ、さっきから泣き言ばっかだなオマエは
とミサカは情けないホスト崩れみたいな外見の第二位を罵倒します」
垣根「何なのオマエ」
11111号「さて、それでは順番に鬼の紹介をしていきます
最初に一方通行を追い掛け回す鬼ですが・・・」
11111号「まずは番外個体」
番外個体「あひゃひゃひゃひゃ!久しぶりだね第一位!あの時ミサカを殺さなかった事を心底後悔させてあげるよ!」
11111号「続いて上位個体」
打ち止め「わーいわーい鬼ごっこだー!ってミサカはミサカはあなたと一緒に遊べることを喜んでみる!」
11111号「最後に00001号です」
00001号「フフフ、恨みを晴らすときが来ましたよ 覚悟しやがれモヤシ野郎、とミサカは闘志を燃やします」
一方通行「うわァよくこんなめんどくさそうな面子揃えたなァ・・・」
11111号「次にお姉様の鬼ですが、上条当麻氏と白井黒子氏です」
上条「おっす御坂、よろしくな」
黒子「うへへへへ、罰ゲームに乗じてお姉様にあんなことやこんなことを・・・」
御坂「ちょ、何であんたが・・・ていうか空間移動能力者から逃げれるわけないじゃない!!」
11111号「不平不満は聞こえませーん、とミサカは耳を塞ぎます
さて、お次はむぎのんの鬼役ですが、『アイテム』の皆さんに来ていただきました」
絹旗「麦野に超合法的に仕返しできる機会なんて滅多にないので超がんばります!!」
フレンダ「ふへへ・・・結局、麦野にべたべた触りまくってOKなのよね?」
浜面「パシリで鍛えた足腰を見せてやるぜ!」
麦野「テメエ等ァ・・・」ギリッ
滝壺「大丈夫だよむぎの、私は皆に謀反を起こされたむぎのを応援してる」
御坂(あの金髪から黒子と同じ気配がする・・・)ゾクリ
麦野「・・・なぁ、私だけ人数多くねえか?」
11111号「あんた能力使えなくても身体能力ぶっ飛んでるでしょうが、とミサカはつっこみを入れます
さて、最後にていとくんの鬼なのですが・・・ていとくん、」
垣根「あぁ?」
11111号「あなたの鬼の紹介を最後に持ってきた理由がわかりますか?」
垣根「知るわけねえだろ」
11111号「想像力が乏しいですね、最後ということはようするに『オチ』ですよ、とミサカはヒントを与えます」
垣根「『オチ』・・・だと・・・?」
11111号「刮目するがいい!あれがあなたの鬼役です!とミサカは指し示します」
11111号が壇上を指差すと、その先で『ドン!!』と派手な爆発が巻き起こり、カラフルな煙が噴き出した。
垣根「あれは・・・まさか!?」
爆発の中心地で誇らしげにポーズをとっている男、それは・・・
削板「ハッハッハ!!よろしくな第二位!!!」バァーン
垣根「やっぱりテメエかあああああ!!!!」
11111号「さて、鬼役の紹介も終えたことですし、」
垣根「いや待て、どう考えても俺の鬼がおかしいだろ」
11111号「そろそろゲームを開始しましょうか、とミサカは時計を確認します」
垣根「無視か?無視ですか?」
削板「よっしゃあああ!!燃えてきたぜええええ!!!」
垣根「やめてください しんでしまいます」
11111号「では、スタートの合図を出したら逃げ始めてください。30秒後に鬼が追いかけ始めます、とミサカは説明します
まぁ合図まで5分くらい時間やるから鬼と親睦でも深めてろよ、ひょっとしたら手心加えてくれるかもよ?」
番外個体「さあさあ第一位様、覚悟はいいかにゃーん?」ウヒャヒャ
一方通行「よくないんで全員まとめてお引取り願えますかァ?同じ顔の大中小が揃ってると流石に不気味なんでェ」
番外個体「相変わらずムカつくねあなたは、ガンジーでも助走つけてぶん殴るレベルだよ
服装のセンスは随分よくなったみたいだけどねー、かっこいいよ、その全身タイツ」ケラケラ
一方通行「うるせーよ、つーかオマエ何で戻ってきてンの?白黒に監禁されてたはずだろォが」
番外個体「ああああぁぁぁ!!!思い出させないで!思い出させないでえええ!!!」ガクガク
打ち止め「この子は何だか知らないけど酷いトラウマを背負ってるんだからやさしくしてあげて!
ってミサカはミサカはお願いしてみたり!!」
一方通行「あァー・・・何かゴメンなァ?」
00001号「よし、その調子でこのミサカにも謝りなさい。床に額擦り付けて謝りなさい
とミサカは床を指差しながら一方通行を睨みつけます」
一方通行「つーかオマエ誰だっけ」
00001号「ほあああああ!?」
番外個体「イヤだよぉイヤだよぉ・・・やめろよぉ・・・」シクシク
打ち止め「ほら、泣いてないでがんばろう?ってミサカはミサカは大きな妹を慰めてみる」
一方通行(何やらかしたンだ白黒・・・アイツの変態っぷりをちっと見縊ってたか、一線は越えないと思ってたンだが)
御坂「何でアンタがこんなことに参加してるわけ?」
上条「こんなことって、ただの鬼ごっこだろ?上条さんは人数あわせに呼ばれただけですよ」
御坂「ただの鬼ごっこって・・・アンタ何聞いてたのよ・・・」
上条「??・・・あー、何か捕まったら罰ゲームとか言ってたな
フフン、普段追い掛け回されてる上条さんの気持ちをわからせてあげますよ!」
御坂「やめて、やる気出さないで」
白井「ご安心くださいお姉様!この黒子が命に代えてもこの類人猿をお姉様には指一本触れさせません!!
そう・・・お姉様を捕まえるのはわたくしですの!捕まえていいのはわたくしだけですの!!」
御坂「ちょっと自重しといてね黒子、最近本気でアンタのこと嫌いになりそうだから」
白井「ぐへへへ・・・黒子無しでは生きられない身体にしてさしあげますの・・・」
御坂「ダメだこいつ・・・早く何とかしないと・・・」
麦野「でぇ?アンタ達どうしてこんなクソ下らないゲームに嬉々として参加してるのかにゃーん?」
絹旗「そうですね・・・私は超強いて言えばいつぞやの超イクラ騒動の恨みを晴らすためでしょうか」
麦野「いや、あれアンタも悪いでしょ」
絹旗「それでも!それでもあれは超酷いですよ!!超ビームが頬っぺた超掠ったんですよ!?」
麦野「はいはいごめーんね」
絹旗「許しません!超許しません!今日は超本気で麦野を超捕まえてやります!」
麦野「・・・後でどうなるかわかってんのか?」
フレンダ「フフン!結局、そんな脅しは効かない訳よ!
何せ学園都市のお墨付きで麦野にボディタッチしていいんだからね!!」
浜面「そうだそうだ!日頃パシらされてる恨みを晴らすんだ!!」
麦野「あぁ?」ギロ
浜面「ヒィッ!?」
滝壺「(チッ)大丈夫だよはまづら、私はそんなあっさり脅しに屈しそうなはまづらを応援してる」
浜面「滝壺さん今ちょっと舌打ちしませんでした!?」
削板「ハッハッハ!!鬼ごっこなんて久しぶりだぜ!楽しもうな第二位!!」
垣根「ちょっとオマエ本気で自殺してくれねぇ?今この場でさ。いやマジで」
削板「そういう態度のことツンデレって言うんだってな!第二位は俺のことが好きか!照れるぜ!」
垣根「吐きそうなんで保健室行かせてください」
削板「根性だ!根性があれば何でもできる!!根性はいいぞ第二位!!」
垣根「根性出して俺の目の前から消えてくれよホント頼むから・・・」
削板「うおおおお!!!準備運動に腕立て1000回だああああ!!!」
垣根「もうやだこいつ、俺今のうちに遺書書いといたほうがいいんじゃねえの?」
11111号「紙とペンを用意しましょうか?とミサカは提案します」
垣根「あぁ・・・一番いいのを頼む」
11111号「さて、皆さん準備はいいですか?30秒後に鬼がスタートするのでがんばって逃げ隠れしてください。
それでは『捕まってはいけない学園都市』スタート!!とミサカはホイッスルを吹き鳴らします」ピピー!
削板「よっしゃ捕まえたぞおおおお!!!」
垣根「ハァァ!?」
スタートの合図が鳴り響いた直後、削板は逃げ出そうとしていた垣根の肩をがっしりと掴み捕獲した。
勿論ルール違反である。しかし彼はドヤ顔のまま、掴んだ手を離そうとしない。
垣根「いやいやいや、オマエルール聞いてた!?鬼のスタートは30秒後だぞ!!」
削板「そんなもんは知らん!俺がルールだ!!」ババーン
垣根「ふざけんな!!おい審判!どうすんだよこれ!明らかなルール違反だろうが!!!」
11111号「んー・・・・・・面白そうなので有効!とミサカは親指を立てます
ていとくん、クジを引いてください」グッ
垣根「なめてやがんのか!?絶対引かねえぞ!!!」
11111号「ふむ、引きませんか、実に残念です。仕方が無いのでこちらで勝手に罰を決めさせていただきます
とミサカは通告します」
垣根「・・・は?」
デデーン♪
『垣根、すごパー』
垣根「ハァァァァァ!?待て待て待て待てえええぇぇぇ!!!」
削板「よし第二位、こっちに尻を向けろ!」
垣根「ホモくせえセリフ吐いてんじゃねえよ!!死ね!!!」
削板「すごい・・・」ググッ
垣根「ダメだ!やめろ!!よせえええええ!!!!」
削板「パーンチ!」
バチコーン!!
垣根「ぐ、があああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
一瞬で垣根の背後に回りこみ、削板はすごパをその尻に叩き込む。
叫び声を上げながらぶっ飛んだ垣根は体育館の壁をぶち破り、校舎の三階辺りに着弾した。
削板「ム、逃げやがったか!!根性ねえな全く!!」プンプン
11111号「いやあんたが吹っ飛ばしたんですよ、わかってますか?とミサカは呆れ顔でつっこみます」
これには流石の11111号も苦笑い。一部始終を見ていた他の鬼達もげんなりした表情をしている。
当の削板はそんな周囲の様子などどこ吹く風といった様子で、体育館から飛び出して行った。
11111号「あー・・・とっくに30秒経ってるんで追いかけ始めてもいいですよ、鬼の皆さん
とミサカは今更合図を出します」
その言葉にようやく我に返った鬼達は、バタバタと慌てて獲物を追いかけに行った。
垣根の尊い犠牲は決して無駄ではなく、彼はその命を賭して他の三人の時間を稼ぐことに成功したのだ。
― 麦野サイド
麦野(あーあ、バタバタとみっともなく逃げちゃって)
一方通行と御坂の二人が慌しく逃げていくのを尻目に、麦野はまるで散歩でも楽しむかのうように
のんびりと校庭を歩いていた。それはしかし、ルールを理解していないわけでも、観念したわけでもない。
ただ彼女には、「アイテムの連中が自分を捕まえるはずが無い」という確信にも似た自信があった。
『アイテム』はただの仲良しグループとは違う。勿論、仲が悪いわけではなく
暇な時にファミレスに集まって丸一日雑談で潰したりする程度には仲が良いのだが
そんな甘ったれた絆だけで成り立つほど、『暗部組織』というものは温くない。
構成員の根底にあるのは、本能レベルで刷り込まれたレベル5『第四位』である麦野への絶対的な恐怖。
その恐怖を克服し自分に歯向かうことなど有り得ないだろう、麦野はそう考えている。
それ故、彼女は鬼に追いつかれても些かも余裕の態度を崩さず、逃げようとすらしなかった。
絹旗「フフン、こんなところを超のんびり歩いているだなんて、超観念しましたか麦野!」
フレンダ「結局、麦野に本気で逃げられてたら追いつけるかわからないし、手間が省けたわけよ」
麦野「・・・ねえ、アンタ達本気で私を捕まえるつもり?」
啖呵を切る二人に、麦野は薄く笑いながら問いかける。
浜面「当たり前だろ!そういうルールじゃねえか!」
ビシィ!と麦野を指差しながら、パシリが偉そうな口を利く。
そんな態度に少しだけ気分を害した彼女は、「ふぅ」と溜息を零すと、もう一度口を開いた。
麦野「ちょっと言い方を変えるわね。 ・・・テメエ等本気で私を捕まえられると思ってんのか?」
彼女の眼が、まるで獲物を前にした肉食動物のソレのように、ギョロリと剥かれる。
たったそれだけの事で、ほんの一睨みで、能力を制限されているにも関わらず、麦野はアイテムの面々の動きを封じこめた。
絹旗「うくっ・・・」
フレンダ「うぁ・・・」
浜面「ヒィッ」
わかりやすくビビっているパシリは置いといて、後の二人はもう一押しか
そんなことを考えながら、彼女は一歩前へと進もうとする。
と、あることに気付く。
麦野(あれ、滝壺どこいった?)
「むぎの・・・」
麦野「ひゃ!」
不意に真後ろ、ほぼ零距離から声がかかり、麦野は思わず声を上げる。
見ると、いつの間にか自分の腰にピンク色のジャージを着た少女が絡みついていた。
滝壺「つかまえた」ニコ
麦野「ちょ、いつの間に・・・」
浜面「さすが滝壺!俺達にできない事を平然とやってのけるッ!!」
フレンダ「そこにシビれる!あこがれるゥ!!」
絹旗「超チャンスです!行きましょう!!例え後で麦野が超ブチ切れても垣根がなんとかしてくれます!!」
滝壺が彼女を捕まえた時点でルール的には既に罰の執行は確定なのだが、
三人はそんな事はお構いなしとばかりに、一斉に麦野へと飛び掛る。
「おい」とか「待て」とか聞こえたような気がしたが、テンション上がりきった彼女達にその声は届かない。
カウンターで浜面が沈められるも、絹旗とフレンダの二人は無事に目標まで辿り着き
麦野は散々に揉みくちゃにされることとなった。
浜面「」ビクンビクン
フレンダ「うへへへ・・・」スリスリ
滝壺「んー」ギュッ
絹旗「これでもか!超これでもか!」ポコポコ
麦野「わかった、わかったから離れなさいアンタ等!私が悪かったから!・・・絹旗はホント後で覚えとけ」
やっとの思いで三人を引き剥がした麦野は、「はぁ」と先程とは全く違う感情で溜息を吐き
ぺたんとその場にへたり込むと、頭を抱えた。
麦野(こいつら思ってた以上に馬鹿だった・・・いや、馬鹿だったのは私か?)
『むぎのんむぎのん、クジを引いてください、罰が執行されます
とミサカは無様に捕まったむぎのんに声をかけます』
麦野「うっさいわよ!ていうかもう罰受けたようなもんじゃないこれ・・・」
『それは自業自得というものです、脅しなんて卑怯な真似するから・・・とミサカは呆れます
つーかスルーしたけどアンタ鬼に暴力振るったろ、浜面だから別にいいけど。ほら早く引け』
浜面「えっ」
麦野「チッわかったわよ・・・クジはどこにあんの?」
絹旗「あ、私が超持ってますよ、ほら」
どこからともなく、絹旗がクジの入った箱を取り出す。
一瞬の躊躇の後、麦野は箱に手を突っ込み、一枚のクジを引いた。
デデーン♪
『麦野、胴上げー』
麦野「ど、胴上げ・・・?」
浜面「よしここは俺が」
絹旗「超しね」
フレンダ「結局しね」
滝壺「しね」
麦野「ころす」
浜面「た、滝壺まで!?俺はただ女の子三人じゃ辛いだろうと思っただけなのに・・・」
フレンダ「う、確かに・・・」
滝壺「三人じゃきついかも・・・むぎの重たい」
麦野「おい」
絹旗「フフ、ここは私に超任せていただきましょう」
そう言うと絹旗は自身の能力、窒素装甲を展開させ麦野を抱きかかえる。そして
麦野「ちょ・・・アンタまさか・・・」
絹旗「超行きますよ麦野!!うおおおお!!そぉい!!!」
麦野「うわああああぁぁぁぁ・・・・」
気合一閃、力の限り彼女を上空へとブン投げた。
自動車すら軽々と操るとんでもパワーで空へと投げられた麦野は
あっという間に数十メートルの高さまで打ち上げられ、そしてゆっくりと戻ってきた。というか落ちてきた。
麦野「・・・・・・ぁぁぁぁあああああ!!!!」
絹旗「超もう一回!!そいやぁ!!!」
麦野「ああああぁぁぁぁ・・・」
浜面「これ胴上げって言うのか?」
滝壺「どっちかと言うと・・・高い高い?」
フレンダ「結局、そういうレベルじゃないと思うんだけど・・・」
絹旗「うひょう!超もう一回です!!ひゃっはぁ!!!」
麦野「んにゃああああぁぁぁぁ・・・・・・」
数分後、そこには十数回に渡るスーパー胴上げを喰らい
ぐったりと倒れ伏している麦野の姿があった。
麦野「」
滝壺「きぬはた、ちょっとやりすぎ」
絹旗「・・・超テンション上がっちゃって」
フレンダ「結局、陸に上がった軟体動物みたいになってるわけよ・・・」
『あー、がんばって一分間で回復して逃げてくださいね
とミサカは予想以上に酷かった胴上げを思い出しながらむぎのんを元気付けます』
―――――――――――――――
―――――――――
――――
垣根「・・・という夢を見たんだ」
― 垣根サイド
垣根「そうだ、これは夢だ、夢なんだ・・・だから俺の身体は動くし能力も使えるはずなんだ・・・」
垣根「夢、夢をみてるんだよ俺は・・・」フフフ
校舎の三階に着弾した垣根は、瓦礫に包まれながら現実逃避をしていた。
一人だけ明らかに鬼のレベルが違い、その上ルールを捻じ曲げるような行為を平然とやられたのだから
堪ったものではない。しかも審判はあっさりとその反則を許してしまうときたもんだ。
彼がちょっと夢の世界に旅立ったところで誰が責めることができようか。
しかしそんな現実逃避もつかの間、瓦礫を吹き飛ばしながら現れた男によって
彼は再び辛い現実に引き戻されることとなる。
削板「いたな!!逃げ隠れするなんざ根性ねえな第二位!!」
垣根「・・・」
もはや「オマエが吹っ飛ばしたんだろ」「そういうルールだろ」というつっこみをする気力すら出てこない。
削板「ほら捕まえたぞ!罰ゲーム執行だな!」
垣根「やめて、ホントやめて・・・」
削板「すごーい・・・」
垣根「やめろ!せめてクジを引かせろおおおおおお!!!!」
削板「パーンチ!!」
垣根「ふぐあああああああああああ!!!!!」
垣根の悪夢は終わらない。
― 一方通行サイド
00001号(いましたか?とミサカ00001号は校舎の二階を見回りながら上位個体と番外個体に尋ねます)
打ち止め(まだ見つからないよってミサカはミサカは校庭を探しながら答えてみたり)
番外個体(こっちもいないや、細いからどっかの隙間にでも隠れてるのかな?机の引き出しとかさ)ヒャヒャヒャ
妹達三人組はMNWで情報を共有しながら、三手に分かれて一方通行の捜索をしていた。
遊び盛りで一番元気のいい打ち止めが校舎の外を、復讐に燃える00001号が校舎の二階から上を
トラウマを刺激されテンションが若干落ちている番外個体がとりあえず校舎の一階を、という感じに役割分担をしたのだが
如何せん探す範囲が広すぎるため、なかなか一方通行の足取りを掴むことができない。
打ち止め(あ!)
00001号(どうしました上位個体、見つけましたか?)
打ち止め(ううん、髪の長いお姉さんが凄い勢いで胴上げされてて楽しそう!
ってミサカはミサカは目を輝かせてみたり!)
00001号(おい真面目に探せチビ)
一方通行(チッこのままじゃやべェなァ…)
獲物が見つからずに一部の鬼がイラだっているその頃、獲物たる一方通行もまた焦りを感じていた。
元々能力に頼りきっているところがある彼は、同年代の平均と比べるとその身体能力は極端に劣っている。
動体視力や技量がいくら優れているとは言え、
彼が電撃を飛ばしながら追いかけてくる妹達から逃げ切ることなど不可能だと言って良いだろう。
見つかってしまえばその時点で罰が確定してしまうようなものだ。
そんな彼の潜伏場所― 二階男子トイレに今、魔の手が忍び寄りつつあった。
どうやら隣の女子トイレから探しているようで、薄い壁越しにバタンバタンと個室のドアを開閉する音が響き、
時折ミサカが云々という声が聞こえてくる。
一方通行(どォすっか…)
このままトイレに潜伏し続けるか、それとも飛び出して逃げるか、彼は岐路に立たされていた。
鬼が男子トイレを探さずにスルーするという可能性は極めて低いだろう。
しかし可能性がないわけでもない。妹達とて女性なのだから相応の躊躇はあるだろうし、
個室に閉じこもって鍵をかけていれば、普通の男子生徒だと思って見逃してくれるかもしれない。
一方通行(イヤ、そりゃただの希望的観測に過ぎねェな…
「あァなれば、こォなれば」なンつー受け身の願望を抱いてたところで待ってンのは絶望だけだ)
彼の瞳に決意の炎が灯った。音を殺し、トイレの出入り口からそっと外を窺う。
どうやら待ち伏せはいないようで、これで不安要素の一つは消えたことになる。
もうすぐにでも女子トイレの捜索は終わってしまうだろう。もはや迷っている時間は無い。
一方通行(今しかねェ!)ダッ
音を立てぬよう細心の注意を払いつつ、それでいて全速力で彼は駆け出す。
一方通行(目指すのは階段、一階か三階に行って潜伏できそォな場所を探す)
まるで床の上を滑るかのように、彼は僅かばかりの気配も発さず廊下を走る。
途中何度か背後を振り返ってみたが鬼が追い掛けてくる様子も無く、どうやら難を逃れることができたようだ。
一方通行(…まさかこンな所でガキの頃にシミュレートして訓練した、
『建物がテロリストに占拠されたのに何故か自分だけ発見されておらず自由に動くことが出来る場合どう動くべきか』
なンて厨二妄想が役に立つとはなァ… さて上に行くか下に行くか)
階段の前まで来た彼は、幼き日の自分の妄想と行動に感謝しつつ、三階に上るか一階に下りるか思案する。
<スゴイパーンチ!!
<フグアアアアア!!!
一方通行(…上はねェな、巻き込まれたら死ぬ)
上階から聞こえてくるコンクリートが砕けていく音を聞きながら、彼は一階へと下っていった。
一方通行(とりあえず手近な部屋に潜り込ンで様子窺うか…)
番外個体「あれ?」
一方通行「ン?……え?」
階段を下りてきた一方通行は、なんとも運の悪いことに偶然付近を探索していた番外個体と鉢合わせしてしまう。
お互い完全に虚をつかれた形となり、二人はしばらく目をぱちくりさせながら見つめ合うこととなった。
番外個体「うひゃひゃひゃ!まさかそっちから現れてくれるとは思ってなかったよ!
そんなにミサカに捕まえて欲しかったわけ?第一位はドMちゃんだったんだね!」
一方通行(やっちまったァァァァ!!)
沈黙を破りゲラゲラと楽しげに笑う番外個体の声を聞きながら、一方通行は盛大に顔を顰め、頭を抱える。
一方通行(どォする!どォする俺!?)
たたかう
にげる
⇒ ごまかす
一方通行(戦っても逃げてもあっさり捕まる未来しか見えねェ……ここは何とか誤魔化すしかねェな)
番外個体「ねぇどうしたの?黙っちゃってさ。そんなにミサカのことが怖い?
だったら逃げてもいいんだよ?逃げれるもんならね!あひゃひゃひゃひゃ!!」
一方通行(だがどォやってだ?どォやって誤魔化す!?)
番外個体「そんな泣きそうな顔しちゃって……そんなに悔しい?そんなに逃げたい?
じゃあさぁ、跪いてミサカの足にキスでもしたら考えてあげてもいいよ」ヒャヒャヒャ
一方通行「……マジで?」
番外個体「えっ」
一方通行「いやいや、マジで足にキスしたら見逃してくれンのか?」
番外個体「いやちょっと……え?」
一方通行「どォなンだって聞いてンだよ!!」
番外個体「あ、いや……うん、多分見逃す……かな?え、本気でやる気?」
一方通行「あァ、安いもンだ」
番外個体「ちょ、ちょっとあなたプライドとか無いわけ!?」
一方通行「生憎だなァ、俺が生きてる世界はプライドだけで生き残っていけるよォな甘い所じゃねェンだよ
それにな……」
番外個体「それに…?」
一方通行「オマエにならキスしてもいいかな、なンてちょっと思っただけだ(キリッ」
番外個体「え…」ドキン
一方通行「番外個体、目ェ閉じろ」
番外個体「な、何でよ…?」
一方通行「恥ずかしィだろォが、面と向かって見つめ合ってキスなンざ……
だから目ェ閉じててくれ」
番外個体「う、うん…わかったよ……こう?」ギュッ
一方通行「おォ、それでいい……動くなよ?」
番外個体「うん……」
番外個体(……あれ、何かおかしくない?あれー?)
一方通行(いやァ誤魔化せるモンだな、コイツの頭の中がメルヘンで助かったぜ)ケケケ
番外個体が頬を染め、目を閉じるのを見届けると、一方通行は含み笑いをしつつ、さっさとその場を後にした。
人生経験が少ない妹達の多くがこのような乙女チックな雰囲気に弱いのを理解した上で
それを悪用する彼は、能力が使えなかろうがやはり外道である。
一方通行(ン、あれは……そォだな、後顧の憂いを断つためにも番外個体にはここで退場してもらうか)ニヤ
番外個体(まだかな?焦らしすぎだよちょっと……)
「ハァハァハァ…」
番外個体(き、きた!?何かすっごい息荒い…ミサカに欲情してるんだ……)
「ハァハァハァハァ…ウッ」
番外個体(イヤイヤイヤイヤ、ちょっと息荒すぎだって!何かおかしいよ!?
ていうかこの感じ、どこかで……)
何やら異常な気配を感じ取り、番外個体はそっと目を半開きにする。
白井「ハァハァハァ…オオキイオネエサマ……」
彼女の眼前に、ちょっと首の角度を変えるだけで顔が接触する程の至近距離に、
かつて自分にトラウマを刻み込んだ忌まわしきツインテールがいた。
番外個体「」
白井「大きいお姉様あああああああ!!!!!」ガバッ
番外個体「あああああァァァァァ………」
― 番外個体、心の傷をいっそう重症にされ無念のリタイア ―
―――――――――――――――
―――――――――
――――
― 御坂サイド
白井「きぃぃ!あなたがノロマだからお姉様を見失ってしまったではありませんの!!」
上条「いやいやスタートが遅れたのは別に上条さんのせいじゃありませんよね!?」
白井「いいえあなたのせいですの!!出遅れたのも、お姉様が見つからないのも
戦争がなくならないのも地球が丸いのも、全部あなたのせいですの!!!」
上条「俺どんだけ高次の存在なの!?」
白井「とにかく!わたくしはこのままお姉様の香りを頼りに校舎内を探しますの!
あなたも適当探し回ってくださいまし」
上条「おう、わかったぜ! っと、見つけたら連絡するから携帯の番号教えてもらえるか?」
白井「……そうやってわたくしの番号を知ってどうするつもりですの?」
上条「いや、だから御坂を見つけたら連絡するんだって
俺一人じゃ見つけても捕まえられるかわかんねえからさ」
白井「信じられませんの!さてはわたくしの携帯番号を見ながら****したり*****したりするつもりですのね!?」
上条「あの……上条さんは白井さんの中ではどんな人間なのでせうか?」
白井「あぁ汚らわしい汚らわしい!二度とわたくしの視界に入らないでくださいまし!」
言うだけ言うと、白井は空間移動でその場から消えてしまう。
上条「ちょっと酷くないですか……?」
散々暴言を吐かれ、ぽつんとその場に取り残された上条は涙目で呟いた。
白井「むぅー、ここにもいませんの……ク、お姉様分が足りないせいで演算に支障が……」
「おいそこの白黒ォ」
お姉様分枯渇という独自の症状でフラついていた白井の背後に、不意に声がかけられる。
白井「あら第一位様、ごきげんよう。そうだ、お姉様の下着とか持ってませんの?」
一方通行「相変わらず何の脈絡もなく変態だなオマエは……
まァ下着は持ってねェがプレゼントは一つ用意してあるぜェ?」
白井「マジですの?流石は第一位様!太っ腹ですの!」
一方通行「あァ、このまま一階の階段前まで飛べ。そこに置いてあるからよォ」
白井「まあまあ、一体何を用意してくださったんですの?」
一方通行「それは見てからのお楽しみってなァ
それより急げよ、早く行かねェと無くなるかもしれねェぞ?」
白井「ですの!」ビュン
一方通行「じゃあな……番外個体」ニタァ
白井が空間移動で飛んでいくのを見届けた一方通行は嗜虐的な笑みを浮かべながら
自分を殺すために作られた哀れな個体への別れの言葉を吐き捨てた。
上条「うおおおお!!!待て御坂ああああ!!!」
御坂「待つわけないでしょ!!いい加減諦めなさいよおお!!!」
白井が番外個体と接触していたその頃、校舎の二階では日常とは真逆の追いかけっこが繰り広げられていた。
御坂は能力を抜きにしても非常に身体能力が高いはずなのだが、
それでも普段から身一つで強敵と戦っており、尚且つ校舎の構造を熟知している上条が相手では分が悪い。
その差は徐々にではあるが縮まっていき、ついにもう一歩で手を伸ばせば届くという所まで肉薄される。
御坂「大体、何でそんなに必死になってるのよ!?」
上条「逃げる女の子を追いかけたくなるのは男の本能なの!」
御坂(……じゃあ止まったら追いかけてこなくなるの?)
既に疲労で上手く頭が回転していない彼女はピタリとその動きを止める。
上条「おま、突然止まるな!?」
当然、真後ろに迫っていた上条は止まりきることが出来ず、御坂は背後からタックルを喰らうような形になり
そのまま二人で縺れながら階段を転がり落ちて行った。
上条「いてて……おい御坂、大丈夫か?」
御坂「うん…だ、大丈夫だからとりあえずどいてくれる?」
上条「お、おお、悪い」
気が付いてみれば、上条はまるで御坂を押し倒したかのような状態になっていた。
背後からぶつかったというのに実に器用な男である。
そして、一階に転げ落ちてきたそんな二人を、一人の少女が目ざとく見つける。
「お、お姉様!?」
御坂「え?」
上条「お?」
声のした方に目を向けると、そこには番外個体に覆いかぶさっている白井の姿があった。
白井「お姉様!!一体何をなさっているんですの!?」
御坂「アンタが何してんだコラアアアアア!!!!」
上条「俺は何も見てない!何も見てないぞ!!」
番外個体「」グッタリ
白井「お姉様は黒子というものがありながら……そんな類人猿なんかと……!!」
御坂「こ、こいつとはそんなんじゃ……ってそもそもアンタともそんな関係じゃないでしょ!!
この際だから言うけど、ぶっちゃけレズとかキモいわ!!!」
白井「ひ、ひどいですの!あんまりですの!!」
『あー、お取り込み中申し訳ありませんがお姉様、
上条当麻氏に捕まったのでクジを引いてください、とミサカは通告します』
御坂「あぁ、はいはい……」ガサゴソ
デデーン♪
『御坂、そげぶー』
御坂「……ナニコレ」
『おやおやお姉様当たりを引きましたね。上条当麻氏、見せ場ですよ
とミサカは囃し立てます』
上条「え、そげぶしていいの?」
『はい、尻にですけど』
御坂「いやだからそげぶって何よ?」
上条「御坂、後ろ向いてくれ」
御坂「え、でも……」
上条「罰ゲームなんだ、仕方が無いだろ?」
『そうですよお姉様、早くしないとビーストをそちらに差し向けますよ、とミサカは脅しかけます』
御坂「ビースト!?」
上条「絶対痛くしねえから、な?」
御坂「うぅ……わかったわよ……よくわからないけど、本当に痛くしないでね?」
上条「いいぜ御坂……てめえが本当に痛くしないと思ってんなら」
御坂「え?」
上条「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」
ゴス!!!
御坂「ひああああああ!!!!」
凄まじい衝撃に襲われ、御坂はその場に膝から崩れ落ちる。そんな彼女に一瞥をくれると
上条はしばらく己の右手をじっと見つめ、それから口を開いた。
上条「なあ審判、聞こえてるか?」
『はいはい聞こえてますよ何でしょう、とミサカは全力で尻にそげぶを叩き込んだ鬼畜なウニ頭に返事をします』
上条「……足りないんだ」
『はい?』
上条「今のじゃ全然足りないんだ!!やっぱり尻を殴っても幻想を殺せた気がしないんだよ!!」
『それはつまり……?』
上条「顔面を殴りなおしてもいいよね?」
『いいわけねえだろバカ、とミサカは全力で制止します』
上条「ダメなんだよ……こんな中途半端なそげぶじゃ俺の魂が満足してくれないんだ!!」
『捨てっちまえそんな腐った魂』
上条「御坂、歯を食いしばっててくれ!!」
御坂「え、ちょっと顔殴るつもりなの!?冗談よね!?」
只ならぬ雰囲気の上条から距離を取ろうとする御坂だが、さっきの一撃で腰が抜けており
満足に動くことができない。上条はグッと右手を握り締めると、ギラリと鋭い眼光で彼女を射抜いた。
御坂「ヒッ」
上条「いいぜ……てめえが冗談だって思ってんなら……」
御坂「あ、あああ……」
『おい誰かあのウニ頭を止めろ!!おい!!!』
上条「その幻想を――」
御坂「ああああああ!!!」
白井「こんの類人猿がああああ!!!!」
上条「ぶへぁ!!?」
上条がその右腕を振り下ろさんとしたまさにその瞬間、白井のドロップキックが彼の頭に炸裂した。
白井「スパンキングまではアリだと思って黙って見ておりましたが、これ以上は許しませんの!!」
上条「ぐふぅ……いいぜ、てめえが俺のそげぶを邪魔するってんなら」
上条「その幻想をぶち殺す!!!」
白井「ジャッジメントですのおおお!!!」
『あーお姉様、馬鹿が仲間割れしてる内に離れることをお勧めしますよ
とミサカは人選ミスに頭を抱えます』
御坂「……そうね、とりあえず今の内に逃げましょ」
― 麦野サイド
絹旗「超待てー!」
フレンダ「麦野待ってー」
麦野「しつっこいのよアンタ等!もう諦めなさい!」
胴上げのダメージからなんとか回復したものの、動けるようになった時には既に隠れる時間など残っておらず
結果、麦野は校庭で四人の鬼から全力で逃げ回っていた。
浜面「く、流石は麦野、超はええ……」
絹旗「超って言うな超バカ面、私のイメージが超悪くなるじゃないですか」
滝壺「大丈夫だよはまづら、私はそんなイメージ最悪なはまづらを応援してあげてる」
浜面「滝壺さん超上から目線!?」
絹旗「だから超……」
フレンダ「結局、遮蔽物ほとんどない校庭で四人でこれだけ追い掛け回してるのに捕まらないって
麦野の体力どうなってんの……?」
絹旗「このままではこちらが超スタミナ切れで倒れてしまいます
仕方がありません、超奥の手です!浜面!!」
浜面「え、何?」
絹旗「超歯を食いしばっててください!!」
浜面「は?おい待て何を!?」
絹旗「超!浜面ミサイル!!!」
ガッシリと浜面の腕を掴むと、絹旗は戸惑うことなく彼を麦野に向かってブン投げた。
窒素装甲により凄まじい勢いで放たれた浜面は超スピードで麦野に迫っていく。
浜面「うあああああああ!!!!」
麦野「な、なんだと!?」
浜面「あああぁぁぁぁ……」グシャリ
そしてそのまま彼女を横切り、校舎の壁にぶつかってトマトが潰れるような音を立てた。
麦野「えぇー……」
フレンダ「……うわ」
滝壺「しばらくトマトは食べたくないね」
絹旗「……ハッ!超今です!麦野の動きが超止まりましたよ!!」
麦野「あ、しまった!?」
唖然とした様子で浜面を見つめていた麦野に、鬼達は一斉に襲い掛かる。
不意をつかれた彼女は慌てて逃げようとするも足が縺れてしまい、結局あっさりと捕まることとなった。
絹旗「フフフ、超浜面ミサイルで気を逸らして隙をつく!超計算通りです!」
麦野「はーまづらぁ……後で覚えてろよ……」
浜面「いや、どう見ても俺も被害者じゃね!?」
絹旗「ささ麦野、超クジを引いてください」
麦野「チッ」ガサガサ
麦野「ん?」
絹旗「おや?」
フレンダ「結局どういうことよこれ?」
『ピンポンパンポーン♪業務連絡です』
浜面「おぉ?」
『むぎのんの能力制限が一時的に解除されます』
「「えっ」」
デデーン♪
『浜面、原子崩しー』
浜面「なんじゃそりゃあああああああぁぁぁ!!!!!」
絹旗「うわぁ……超がんばってください」
フレンダ「結局、浜面のことは忘れないわけよ……」
浜面「ちょっと待って!!何で俺なの!?何で俺なの!?」
滝壺「大丈夫だよはまづら、私はそんな若くして命を散らすはまづらのお墓参りを気が向いたらするよ」
浜面「待って!見捨てないで!!」
『浜面氏、10秒時間を差し上げましょう』
浜面「なに!?」
『精々無様に逃げ回ってギャラリーを楽しませてください、とミサカはほくそ笑みます』
浜面「あんた本物の鬼やあああ!!!!」
麦野「はーまづらぁ……」ニタァ
浜面「ひいいいいぃぃぃ!!!」
― 垣根サイド
垣根「ハァハァ……なんとか撒いたか?」
垣根は今、三階の一室に身を潜めていた。削板が起こした爆風に紛れて
彼の眼を欺き距離を取ることに成功したのだ。
<おーい第二位!どこに行きやがったー!
垣根「あいつは感知系の技は持ってねぇはず……
冷静になってみりゃ所詮は鬼一人、このまま転々と場所を変えながら隠れ続ければ逃げ切れるはずだ」
<この部屋か?いねえなぁ
彼の思った通り削板は一室一室念入りに探しているようで、
今垣根が隠れている教室まで到達するのはまだ時間がかかるだろう。
垣根「よし、アイツが次の教室を探し始めたら一気に二階に逃げるぞ」
外の様子を窺いながら、彼は逃げるための算段をする。
削板は一つの教室を調べるのに使う時間はおよそ一分強
それだけあれば気配を殺しながら階段まで行くのには十分事足りるだろう。
だが、削板は中々次の教室に探しに入らず、廊下に立ったまま腕を組み、何かを考えている。
垣根(クソが、足りない頭で考えてねえでさっさと次に行きやがれってんだ)
削板「よし!探すのはやめだ!!」
垣根(な、なに!?)
削板「やい根性無しの第二位!!聞こえてるか!!!」
垣根(チッ、あの野郎何をする気だ?)
削板「これから一室ずつ声をかける!返事がなかったら問答無用で教室ごとふっ飛ばす!!
それがイヤだったら声をかけた時点で即出てきやがれ!!!」
垣根(なん……だと……)
削板「まずはこの教室!!いるか第二位!?」
垣根(いやいや待て、脅しだ、脅しに決まってる……)
削板「いねえか……すごいパーンチ!!!」
ドゴオオォォォ!!!
垣根(本当にふっ飛ばしやがったあああああ!!!)
スゴイパーンチ
スゴイ パーンチ
ス ゴ イ パ ー ン チ
少しずつ、彼の元に鬼の叫び声が近付いてくる
垣根「へへ……万策尽きたか……」
もはや手の打ち様なし。廊下に陣取って教室を吹き飛ばして行く削板の目を欺くことなど不可能といって良い。
垣根は教壇に背中を預け、己の不運に自嘲気味な笑みを浮かべる。
<すごいパーンチ!
<すごいパーンチ!!
ついに、隣の教室が壁ごと吹き飛ぶ。そこから覗く青空と、燦々と輝く太陽に彼は目を細めた。
垣根(ああ……青空を見上げるなんてどれくらいぶりだ……?)
削板「おーい、この教室にもいないのかー!?」
最終通告が下るが、垣根はその場から動こうとしない。
削板「ここにもいねえか……すごい―」
垣根「綺麗だわ……空……」
削板「パーンチ!!!」
美しい青空への純粋な感想をぽつりと漏らすと、垣根は襲い来る衝撃波にその身を委ねた。
― 一方通行サイド
一方通行「うおォォォォ!!」
00001号「えぇいちょこまかと!!」
鬼ごっこも終盤、00001号に発見されてしまった一方通行は狭い教室内を
机や椅子などを利用しつつ全力で逃げ回っていた。
00001号「もう諦めなさい一方通行!すぐに上位個体もやってきますよ!とミサカは降伏を勧めます」
一方通行「ハッ、残念だが俺は諦めが悪いんでなァ……足掻けるだけ足掻かせて貰うぜェ!」
00001号「かっこよくて惚れてしまいそうなセリフですが
へっぴり腰で教卓を盾にしている姿では様になりませんよ、とミサカは無様な一方通行を嘲笑します
おまけに全身白タイツですしね、白すぎて肌と服の境目がわかりませんよ」プゲラ
一方通行「うるせェ!これでも喰らっとけ!!」ブン
00001号「チッ……!!」
叫ぶと同時に、一方通行は背後にあった黒板消しを00001号に投げつける。
咄嗟に手で叩き落とす彼女だったが、想像以上にチョークの粉を含んでおり、一瞬視界を奪われることとなった。
00001号「くっ」ゴホゴホ
一方通行(今なら行けるか!?)
00001号が顔を覆いながら怯んだのを見て、一方通行は一か八か教室からの脱出を試みる。
00001号「行かせません!!」バチバチ
一方通行「ぐォッ!!」
しかし彼がドアを潜る直前、00001号は霞む目で闇雲に電撃を乱射しはじめた。
直撃こそ免れたものの、身体の数箇所を電撃が掠り、彼はバランスを崩し転げながら教室から飛び出した。
一方通行「いってェなクソが……っと、いい物見っけェ!」
転倒した彼の眼に、現状を打破する事が出来そうな道具が映る。
彼は瞳を輝かせると、即座にそれに向かって手を伸ばした。
00001号「絶対に逃がしませんよ一方通行!とミサカは怒りの炎を燃やします」
彼がその道具を手にすると同時、00001号が雷を纏いながら教室から駆け出してくる。
その姿を見た一方通行は、手にした道具を慌てて彼女に向けた。
00001号「そ、それは!?」
一方通行「怯んだなァ?もらったぜェ!!」バシュウウウ
僅かにたじろいだ彼女に、彼は微塵の躊躇もすることなくそれをブチマケる。
一瞬で白い気体が00001号を包み込み、のみならず周囲一帯を完全に覆いつくした。
彼が手に入れた現状を打破可能な道具、それは―
00001号「ぐぅっ……ゴホッ消火器……ッ!?」
一方通行「ひゃはははは、中々いい感じに色白美人になったじゃねェか!!
しばらく大人しくしてやがれ!!」
00001号「お、おのれええ!!」
電撃を用いて必死に消化剤を掻き分けるも、
凄まじい勢いでガスを噴出する学園都市製の消火器は中々止まってくれない。
彼女がようやく消化剤の霧を晴らした時には既にその場に一方通行の姿は無く、
ただ消火器の空が転がっているだけだった。
00001号「く……ですがまだ遠くまでは行ってないはず!必ず見つけてやりますよ一方通行!!
とミサカは決意を新たに捜索を開始します」
一方通行(何とか隠れることは出来たが、これからどォする……?)
00001号の予想通り、一方通行はすぐ近くの教室に隠れていた。
電撃に掠った時のダメージで身体が痺れ、あまり遠くに逃げることが出来なかったのだ。
一方通行(ろくに確認もせずに飛び込ンだがここは……?)
改めて自分の今入る教室を観察してみると、調理器具や業務用の大型冷蔵庫などが並んでいる。
どうやら家庭科室か何かのようで、それに気付いた彼はニタリと悪意のある笑みを浮かべた。
一方通行「いいねいいねェ、ここなら多分アレがある……
追いかけっこにも飽きて来たしケリをつけさせてもらうぜェ」ニィィ
00001号(この教室……中から物音がしますね)
00001号は今、とある教室の前で聞き耳を立てていた。
00001号(思った通り、遠くまでは逃げられなかったようですね
恐らく一方通行はここにいる……上位個体、聞こえますか?)
打ち止め(うん、聞こえてるよ)
00001号(一方通行の潜伏している教室が判明しました。
このミサカは先に突入しますので、上位個体も急いでこちらへ)
打ち止め(りょーかい!でもあんまり無茶しちゃダメだよってミサカはミサカは下位個体の身を案じてみる)
00001号(ご安心を、そう何度もあんなモヤシに出し抜かれはしませんよ
とミサカ00001号は自信満々に答えます……さて、と)
彼女はそっと教室のドアに手をかける。
00001号(罠を仕掛けるような時間はなかった……ここは一気に飛び込むべし!)
ドアを開け放つと、00001号は一気に教室内に踊りこんだ。しかしその途端、彼女は再び視界を奪われてしまう。
見回してみると、どうやら教室全体が白い気体に覆われているようだ。
00001号「ゲホッゴホッまた消火器ですか!?芸がありませんね一方通行!とミサカは鼻で笑います」
00001号「先程の一件で消化剤を晴らすコツは覚えました!
こんなものすぐに散らして捕まえてみせます、とミサカは―」
叫びながら電撃を発したその瞬間、彼女は凄まじい爆風に包まれ、そこで意識は途絶えた。
一方通行「おォ派手にいったもンだなァ」
爆音が止むのを確認すると、彼は身を隠していた大型の冷蔵庫からひょっこりと顔を出した。
教室内はあちこち焼け焦げ、まるで空襲にでもあったかのような惨状となっている。
一方通行「あァー……一応量の調節はしたつもりだったンだが、アイツ死ンでねェよな?」
予想以上の被害に、頭を掻きつつ室内を見渡す。
と、隅っこの方に黒こげでアフロヘアーになった00001号らしきモノが転がっていた。
00001号「」プスプス
一方通行「こいつも大変だなァ、アホ毛になったりアフロになったり……おし、生きてンな」ケケケ
00001号の息があるのを確認すると、彼は一先ず胸を撫で下ろす。
彼女がかつてアホ毛になったのも、今現在アフロになっているのも
他ならぬ一方通行の仕業なのだが、彼はそんな事は棚上げしてケラケラと笑い声を上げた。
『おいこらモヤシ、鬼に危害加えるなつっただろうが、とミサカは爆死した同胞に黙祷を捧げます』
一方通行「いやいや死ンでねェよ!つーか俺が直接危害加えたわけじゃねェからセーフだろォが」
『そんな屁理屈が通るとでも……』
一方通行「屁理屈じゃありませェン、俺は目眩ましの為に小麦粉ブチマケて
見つからないように冷蔵庫の中に隠れてただけですゥ
バカがそんな状況下で電撃使って粉塵爆発起こすなンざこれっぽっちも予想してませンでしたァー」
『ぐぬぬ……』
「見つけたよー!ってミサカはミサカはあなたを指差してみたり!」
笑っていた一方通行に元気一杯な声がかけられる。ようやくやって来た最後の鬼だ。
『上位個体、もはや残された鬼はあなただけです!必ずやそのモヤシを引っ捕えてください
とミサカは全力で鬼を応援します』
一方通行「オイコラ審判は中立でいろよ」
打ち止め「え、もうミサカだけなの?00001号は?ってあー!!アフロになってる!?
ってミサカはミサカは変わり果てた姿の00001号に駆け寄ってみる!」
一方通行(今の内に……)
打ち止めが00001号に気を取られている隙に、一方通行はコソコソと教室の出口へと近付いていく。
一方通行(よし、まだあっちに意識が集中してンな……この調子なら……)
『上位個体!一方通行が逃げますよ!そんなアフロなぞ放っておきなさい
とミサカはアフロをもふもふしている幼女に声をかけます』
一方通行「て、テメエ!!!クソが!!」ダッ
打ち止め「ハッ!待てー!!ってミサカはミサカは全力疾走!!」
逃げようとしたことを暴露された一方通行は慌てて教室から逃げ出す。
それに続き、打ち止めも00001号を投げ出して教室から飛び出した。
一方通行(ここまで来て捕まってたまるかってンだ!!幸い残ってンのはあのチビだけ、
このまま時間切れまで走り続けてやンよ!!!)
いくらモヤシッ子と言えども、子供相手に追いかけっこで負けるはずはない。
そう考え、彼は小細工なしの真っ向勝負に出た……のだが
一方通行(あるェー……)
打ち止め「追いついたよーってミサカはミサカは笑顔であなたに声をかけてみたり!」
気付いてみれば後方にいたはずの打ち止めが併走していた。
まだ逃げ始めて一分も経過していないというのに。
打ち止め「とりゃー!!ってミサカはミサカはあなたの胸にだーいぶ!!!」
一方通行「ぐふおァ!!!」
飛びついてきた打ち止めを支えきれず、一方通行はゴロゴロと無様に転がり捕まった。
散々粘ってきた割にはなんともあっけない、と言うか切ない幕切れである。
『いやー、素で幼女に走り負けるのは流石に無いわぁ……とミサカは一方通行のモヤシっぷりにドン引きします』
一方通行「うるせェ!!」ゼェゼェ
打ち止め「わーいわーい捕まえたー!ってミサカはミサカは体中で喜びを表現してみる」
一方通行「ちくしょォォォ……」
ピョンピョンと喜び飛び跳ねる打ち止めの隣で、彼は唸り声を上げながら頭を抱える。
これほどの敗北感を味わったのは人生で初めてかもしれない。
『さて、悔しがってるところ悪いですがさっさとクジを引いていただけますか?
とミサカはマジで悔しそうな表情の一方通行に眼を輝かせます』
打ち止め「はいどうぞ!ってミサカはミサカはあなたにクジを差し出してみたり!」
一方通行「わかってンよ、引きゃいいンだろ引きゃァ、クソッ」ガサガサ
打ち止め「何が出るかな何が出るかなー♪ってミサカはミサカはワクワクドキドキ!!」
一方通行「コイツだ」ガサッ
一方通行「なン……だと……」
因果は巡る小車。人を呪わば穴二つ。
これまで彼が幾度と無く繰り返してきたそのイヤガラセは見事にはね返ってきた。
デデーン♪
『一方通行、アホ毛―』
一方通行「こンな馬鹿な話があるかァァァァ!!!」
『いやはや実にナイスな引きをしてますねぇ、流石は学園都市第一位
とミサカは笑いを堪えながら…クフッ……プクククク………』クスクス
一方通行「堪えれてねェよちくしょおォォォ!!!」
『さぁ上位個体やるのです!調子ぶっこいてた白タイツに無慈悲な鉄槌を下すのです!
とミサカはGOサインを出します』
打ち止め「りょーかい!電気を使って髪の毛の一部を素敵に逆立てればいいんだよね?
ってミサカはミサカはバチバチやりながらあなたの頭に手を伸ばしてみたり……」
一方通行「やめろおおおおォォォォ!!!!」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
― 麦野サイド
絹旗「もうすぐ終わりだというのに超見つかりませんね、何処に隠れているのでしょう?」
フレンダ「結局浜面が途中で使い物にならなくなったのが結構痛手だったわけよ」
滝壺「率先して探し回る人がいなくなると大変だね、歩き疲れちゃった」
絹旗「く……このままじゃ私達は浜面がいないと麦野一人超見つけられないみたいじゃないですか!」
フレンダ「でもどうする?結局もう時間あんまり残ってないわよ」
絹旗「滝壺さん!何か電波とか神の声とか超受信できませんか!?」
滝壺「んー……」
フレンダ「電波って、いくら何でもそれは……」
滝壺「むぎのは多分、体育館のすぐ近くにいる。私のゴーストがそう囁いてる」
フレンダ「受信できちゃったよ!!」
絹旗「体育館ですね?行きましょう!超行きましょう!!」
フレンダ「結局本当にそこにいるわけ?」
滝壺「わかんない」
フレンダ「えぇー……」
絹旗「むぅ、超見つかりませんね」
フレンダ「結局、勘みたいなもんなわけだしね」
滝壺の電波を頼りに体育館前までやって来た一同だったがやはりそこに麦野に姿は無く、
念入りに周辺を探してみたが結局ヒントすら見つけ出せないでいた。
滝壺「……二人ともごめんね、役に立てなくて」ショボン
絹旗「いいんですいいんです、超気にしないでください!」
フレンダ「結局他にアテもなかったしね……もうちょっと探してみようか」
絹旗「そうですね、ではフレンダは超そっちを、私は……」
滝壺「ごふっ」
絹旗「!?」
フレンダ「!!」
計画を練っていた絹旗とフレンダの背後で、突如滝壺が血を吐き倒れ伏す。
あわてて二人が駆け寄ると、彼女の手には小さな透明ケースが握り締められていた。
滝壺「ハァ、ハァ……」
絹旗「こ、これは……! 滝壺さん、あなた体晶を!?」
滝壺「……見えた………むぎ、のは……あそこの、体育倉庫の中に………」ハァハァ
息も絶え絶えに、滝壺は震える手で近くの倉庫を指差す。
絹旗「体育倉庫……?でもさっき確認した時は……」
滝壺「隠れてる………跳び箱の、中……くぅ………」ゼェゼェ
フレンダ「どうしてそこまでして……」
滝壺「みんなの………力、で……むぎのに、勝つ………私だけ、足を…引っ張るのは………」ハァハァ
絹旗「わかりました、超わかりましたからもう喋らないでください!」
フレンダ「後は任せて!結局すぐに麦野を捕まえてくるから……」
滝壺「ありが……と………ぐふっ」
絹旗「滝壺さああああん!!!!」
キーンコーンカーンコーン♪
『鬼ごっこ終了です、皆さん体育館に戻ってきてください。
なお今からは再び笑ってはいけない学園都市に戻りますので笑わないように気をつけてください』
フレンダ「えええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
絹旗「滝壺さん超無駄死に!!!?」
滝壺「きぬはた、死んでないから」
麦野「ふー、アンタ達残念だったわね」
ガラガラと体育倉庫のドアが開き、麦野が手を振りながら現れる。
絹旗「く、麦野ぉ……ッ」
フレンダ「結局ずっと見られてたわけなのね……」
麦野「そういうこと。滝壺が体晶使った時は焦ったけど、惜しかったわね……
ん、ちょっと絹旗何近付いて来てんの?もう終わってんのよ?」
麦野の制止もお構い無しに、絹旗はがっしりと彼女に組み付く。
それから一度麦野の顔をじっと見つめると、近くの監視カメラに向けて大声で叫んだ。
絹旗「審判!!ロスタイムを超要求します!!!」
麦野「はぁ?」
フレンダ「へ?」
『ん?』
絹旗「麦野は浜面に原子崩しを超ブチ込む際に約三分間いたぶっていました!!
つまりその三分間麦野は鬼ごっこに参加しておらず、私達は麦野を追いかけることができませんでした!!
よって私達にはロスタイムを超受け取る権利があります!!!」
『ふむなるほど、一理ありますね』
麦野「ねえェェェよボケがァァァァ!!!!あれは罰ゲームの一環だろうが!!!」
『いたぶれ、とは書いてなかったでしょう?あれはあなたの暴走です
よってモアイちゃんの発言は有効です!とミサカは面白いのでロスタイムを認めます』
絹旗「さっすが!超話がわかりますね!!さぁ麦野、超捕まえましたよ!!!」
麦野「ふざけんな!!!認めないわよそんなの!!!」
『認めませんか、残念です。 ならばこちらで罰を……えーっと第七位の現在地は………』
麦野「ああぁぁぁわかった!!引く!クジ引くから!!!」
『うむ、素直でよろしい、とミサカは笑顔で頷きます』
絹旗「ささ麦野、超クジですよ」
麦野「絹旗ァ……アンタ本当に後で覚えてなさいよ………」ガサゴソ
絹旗「うぅ、だってこのままじゃ滝壺さんがタダの犬死にで超可哀相じゃないですか……超浮かばれませんよ……」
滝壺「きぬはた、生きてるからね?」
麦野「また『原子崩し』とか引けないかしらね……」
麦野「……あぁ?」
デデーン♪
『麦野、ぺろぺろー』
麦野「ぺろぺろって何よ……」
フレンダ「ペロペロ(^ω^)」
麦野「は?」
フレンダ「ペロペロ(^ω^)」
麦野「何言ってんのフレンダ?」
フレンダ「ペロペロ(^ω^)」
麦野「おいフレンダ、近付いて来るな」
フレンダ「むぎのんペロペロ(^ω^)」
麦野「フレンダ、おい止まれ!フレンダ!!ちょ、絹旗離せ!!」
フレンダ「むぎのんペロペロ(^ω^)ペロペロ(^ω^)」
麦野「フレンダアアァァァァ!!!!!」
ペロペロペロペロペロペロペロ(^ω^)
―――――――――――――――
―――――――――
――――
― 体育館
垣根「あー、ようやく終わったな……」
御坂「垣根さん大丈夫?一番大変だったでしょ?」
垣根「あぁそうだな、授業時間のうち半分くらいは瓦礫の下にいたよ……」
御坂「うわぁ……」
垣根「でもそっちも大変だったんじゃねえか?空間移動から逃げるのは骨が折れたろ」
御坂「んー、鬼同士が仲間割れ始めてさ、空間移動能力者の方が気絶させられてたから、結構楽だったわ」
垣根「羨ましい話だな」
一方通行「……オマエ等先に来てたのか」
垣根「おう、戻ったか一方……通行………?」
御坂「あ、アンタ……」
一方通行(アホ毛)「………なンだよ」
垣根「……プッ」
御坂「ゴホッ」
デデーン♪
『垣根、御坂、アウトー』
垣根「何なのオマエ、そこまでして俺等を笑わせたいの?」
御坂「に、似合ってるわよ……」プルプル
一方通行「うるせェよクソボケどもが」
バチーン!!
垣根「ぐおぉ!!」
御坂「あったぁぁぁ!!!」
一方通行「あー人類滅びねェかな……」
垣根「その程度で人類滅ぶとかどんだけだよオマエ」
御坂「アンタもっと酷いことやってきてるでしょ!」
麦野「……」
御坂「あ、麦野さんもお帰り、遅かったわね」
麦野「……」
垣根「……なぁ麦野、何かオマエ顔面べったべたになってねえか?」
麦野「……聞かないで」
御坂(何があったんだろう……)
11111号「揃いましたね?お疲れ様でした、とミサカは疲労困憊な様子の皆さんを労います」
麦野「お疲れじゃねえんだよ!!!何なんだロスタイムって!!!!!」
11111号「更衣室の隣にシャワーがあるので各自浴びてもいいですよ、次は皆さんお待ちかねの昼休みです
とミサカは指を立ててを励まします」
麦野「無視してんじゃねえぇぇぇ!!!」
一方通行「無駄だ第四位、アイツのペースは俺でも崩せねェ……それよりさっさと顔洗ってこい」
御坂「そうよ、行きましょう麦野さん」
麦野「……そうね」
垣根「俺等も行こうぜ一方通行、早くしねえと昼休みの時間がなくなっちまう」
一方通行「すっかり学生しちゃってるなァオマエは……」
11111号「うーむ、しかし……」
レベル5勢が立ち去った後、11111号は一人頭を抱えていた。
11111号「まさか鬼の方が被害が大きくなるとは……レベル5恐るべし、とミサカは戦慄します」
・番外個体……精神ダメージ甚大、再起不能
・00001号……爆発炎上、アフロ
・打ち止め……生存
・白井黒子……顔面陥没
・上条当麻……生存
・絹旗最愛……生存
・滝壺理后……瀕死
・フレンダ……ご満悦
・浜面仕上……はま/づら
・削板軍覇……馬鹿
― 男子更衣室
垣根「さーてシャワーも浴びたし、さっさと教室に戻って昼休みをエンジョイしようぜ」
一方通行「この状況で昼休みがエンジョイできると思ってるオマエがすげェよ」
腰にタオルを巻きグッと背伸びをする垣根の背後で、一方通行は心の底から呆れた顔をする。
尻をシバかれた回数、理不尽なお仕置き、極め付けに先程の鬼ごっこ、どれを取っても
現時点で最も被害を受けているのは垣根自身のはずなのだが、それをわかっているのだろうか。
垣根「ん?何だテメエそんなマヌケ面して……って、アホ毛直らなかったのか」
彼が一方通行の視線に気付き振り向くと、シャワーを浴びたにも関わらず
その頭には先程までと変わらぬ姿のアホ毛が元気に聳え立っていた。
思わず噴き出しそうになった垣根は慌てて口元を手で覆い、なんとか笑いを堪える。
一方通行「あァ……所詮電気で立たせただけだからシャワーで直ると思ってたンだが
どォやら電撃の熱で形状記憶させやがったみてェだ」
垣根「熱パーマの原理か。まあいいじゃねえか、似合ってるぜ」
一方通行「……能力使えるようになったらまず最初にお前の頭にアホ毛植え付ける事から始めるわ」
垣根「おいばかやめろ」
軽口を叩き合いながら、彼等は元の服に着替え始める。全身タイツともこれでお別れだ。
一方通行「あン?どォしたンだ垣根」
一方通行がいつもの黒シャツから顔を出すと、垣根はまだパンツ一丁で己の服を睨みつけていた。
それだけではなく、何やら小刻みにプルプルと震えている。
垣根「ちくしょう……やられた………」
絞り出すような声で、彼が呟く。
一方通行「あァ?」
垣根「………シャツの乳首のとこだけ切り取られてやがる」
一方通行「ブッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
垣根「ふざけんなよ!!気に入ってたんだぞこのシャツ!!!」
一方通行「大丈夫だって、オマエ自称イケメンだから何着ても似合うはずだろ?」ゲラゲラ
バチーン!!
一方通行「だおォォォォ!!!」
垣根「俺がイケメンなのは事実だが、流石にこれは着れねえだろ……
こんなもん着てるの麦野に見られたら最悪乳首引きちぎられちまう」
一方通行「イケメンなのは事実(笑)」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「今のアウトォォォ!?」
垣根「ざまみろこのアホ毛が」
バチーン!!
一方通行「ぐぎィ!!」
垣根「仕方ねえ、ジャージのままで過ごすか……」ハァ
溜息をつき、彼は仕方なく先程まで着ていたボロボロのジャージに手をかける。
こちらも鬼ごっこ影響であちこち破れたりしているのだが、乳首が出ているよりはマシだろう。
着替え終わった彼はもう一度深く溜息をつくと、ちらりと時計を確認して顔を顰めた。
垣根「やっべもうこんな時間か、早くしねえと昼休み終わっちまうぞ」
一方通行「オマエはどンだけ昼休みに執着してンだよ……まァさっさと戻るか」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―校舎内 廊下
垣根「あー、今朝初めてこの廊下を通ったのが遠い昔のように感じるぜ……」
一方通行「ヘヴィな時間過ごしてっからなァ……まだ半日も経ってねェってのによォ」
教室へと続く廊下を歩きながら、二人はしみじみと思い出す。
ほんの数時間前の事なのだが、その時はまだこれほど酷い事になるとは誰も予想していなかっただろう。
垣根「授業だけでもまだ半分は残ってるだろうし、24時間ってことは多分ここに泊まることになるんだよな?
ったく、洒落にならねえぜクソったれが」
一方通行「やってらンねェ……早退ってできねェのかァ?………ン?」ピタ
垣根「どうした?」
愚痴を吐きながら教室へと向かっていた彼等だったが、唐突に一方通行の動きが止まる。
一方通行「いや……何かこォ、違和感が………」
垣根「違和感……?ん、確かに何かが違う気がするな………」
今朝とは微妙に違う何かを感じ取った二人はその原因を見つけ出そうと、キョロキョロと周囲を見回す。
「下手なことは止めておけ」「さっさと教室に戻るべきだ」二人の頭の中に警笛が鳴り響く。
だがもう遅い。彼等はソレを見つけてしまった。
一方通行「おい……」
垣根「あぁ……」
一方通行「……何でだろォな?」
垣根「……」ギリリ
一方通行「何で……」
一方通行「何で校長の肖像画のアホ毛が増えてンだよォォォ!!!!!」
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「小細工しやがってェェェェ!!」
垣根「ちくしょう……完全に不意を突かれたぜ……」
バチーン!!
一方通行「ごがァァァァ!!!」
垣根「ぬおぉぉぉお!!」
一方通行「ってェ……クソが、何が仕掛けられてるかわからねェ、さっさと教室に戻るぞ!」
垣根「待て一方通行!あれを見ろ!!」
一方通行「あァ?……ッッ!?」
歩き出そうとした一方通行を引き止め、垣根がある方向を指差す。
反射的にそちらを向いてしまった一方通行は、即座に己の軽率な行動を後悔した。
垣根の指し示した先で――
黄泉川「……」
ベチンベチンベチンベチンベチン
上条「」
ジャージの女教師がツンツン頭の学生に延々と往復ビンタを喰らわせていた。
一方通行「……」
垣根「……」
黄泉川「……」
ベチンベチンベチンベチン
上条「」
一方通行「プハッ」
垣根「コフッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「何で無言なンだよクソがァァ!!!!」
垣根「あのウニ頭は何やったんだよ!?死んだ魚みてえな眼になってるじゃねえか!!!」
ベチーン!!
一方通行「ぐおおォォォ!!」
垣根「ぬふぅ!!!」
黄泉川「……」
ベチンベチンベチンベチンベチンベチン
上条「」
垣根「……いつまでやるんだろうな?」
一方通行「おい、いいからもォ行くぞ、これ以上はケツが持たねェ………」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
― 教室
垣根「ようやく戻ってこれたな……」
一方通行「とンでもねェトラップだったぜェ……」
ただ廊下を歩いていただけで二発も尻をシバかれる羽目になった彼等は
ようやく教室に辿りつくと、自分の席に崩れ落ちるように座り込んだ。
折角の昼休みだというのに容赦の無い怒涛のラッシュである。
一方通行「そォいや超電磁砲どもはまだ来てねえんだな」
垣根「女だからな、シャワーひとつとっても男より遥かに時間がかかるもんなんだろ」
一方通行「おーおー流石は女の扱いに慣れてる垣根くンだなァ、心理定規に捨てられたとは思えねェ」
垣根「オーケー、テメエは喧嘩を売ってるってことでいいんだな?」
一方通行「ハッやめとけよ三下、オマエなンざ俺のアホ毛の足元にも及ばねェよ」ミョイン
垣根「なんでちょっと誇らしげにアホ毛アピールしてんの?気に入ったの?つーかアホ毛の足元ってなんだコラ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
垣根「おぉ?」
一方通行「噂をすれば、かァ?」
垣根「廊下のトラップにでも引っ掛かりやがったか」
一方通行「ざまァねェな」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
垣根「もう一発か」
一方通行「俺等と同じルート辿ってンだろォなァ……」
垣根「……つまりあのウニ頭は未だにビンタ喰らいまくってんのか」
一方通行「やめろ、想像させンな」
御坂「いったぁー……もう最悪………」
麦野「油断したわ……鬼ごっこ直後だってのにもう仕掛けてくるなんてね……」
ガラガラと教室のドアが開き、苦痛に顔を歪めた女性陣が中に入ってくる。
そんな彼女達を一方通行と垣根の二人は生暖かい視線で出迎えた。
御坂「何よその目……ってアンタ、アホ毛直らなかったの!?」
垣根「一方通行改め一毛通行(アホゲラレータ)だ、よろしくやってくれ」
一方通行「おい」
麦野「……フッ」
デデーン♪
『麦野、アウトー』
一方通行「おいィィ!?笑ってンじゃねェぞォ!!」
麦野「何でそんなに妙に似合ってるんだよテメエ!!!」
バチーン!!
麦野「んにゃあ!!!」
垣根「にゃあってオマエ……」
御坂「にゃあ」
一方通行「ンでンで」
麦野「……何だよ」
垣根「流石にその叫び方は猫被りすぎじゃねえ?」
麦野「被ってねえよ!!出ちゃったものは仕方ないでしょ!!!」
一方通行「素で『にゃあ』とか叫ンでるンだったらそれはそれで引くわァ……」
麦野「あ゛あ゛ぁ!?」
一方通行「むぎのンかわいい」
垣根「ウグッ」
御坂「カハッ」
デデーン♪
『垣根、御坂、アウトー』
垣根「むぎのんはやめろ!!!」
御坂「不意打ちしないでよもおお!!」
麦野「『むぎのん』がそんなにおかしいわけ……?」
一方通行「明らかにおかしいだろ」
バチーン!!
垣根「がっはぁぁ!!」
御坂「やあぁぁぁぁ!!!」
『はーいとっても楽しそうですねー、とミサカは笑いながら皆さんの神経を逆撫でします』ケラケラ
一段落ついたのを見計らい、不愉快な笑い声とともに校内放送が響き渡った。
脳天気なその声にイラついた一方通行は、不機嫌な様子を隠そうともせず盛大に舌打ちをする。
そんな彼の態度に、校内放送の声はますます愉快そうに笑い声を上げた。
一方通行「クソが、何の用だ」
『いえね、皆さんお腹が空いているだろうと思いまして、お昼御飯を用意させていただきました』
言われてみれば、と極限状態に置かれ食事の事など忘れていた四人は今更ながら空腹感を覚える。
時計を確認すると時刻はとうに12時を過ぎ、13時に差し掛かろうとしていた。
御坂「へえ、お昼どうするのかと思ってたけど、ちゃんと用意してくれてるのね」
『それぞれの机の中にお弁当を仕込んであるので、各自取り出して食べてください
とミサカは皆さんの健闘を祈ります』
垣根「弁当ねぇ……」
麦野「普通の弁当ならいいんだけど……」
「検討を祈る」という言葉に一抹の不安を覚えながらも、一同は空腹に抗えずガサガサと机の中を漁り始める。
程なくして、彼等の手が何か角ばった固いモノを探し当てた。
麦野「あ、これかな?」
一方通行「これかァ?」
御坂「はっけーん」
垣根「っと、あったあっ……た………?」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
垣根「再びかァァーッ!!!」
一方通行「何でまた出てきてンだよそいつ!?」
麦野「捨てたはずでしょ!?」
帝凍庫<常識ハ通用シネェ!!
垣根「うるせえよクソが!!!」
御坂(やっぱりかわいい……)キュン
バチーン!!
一方通行「づああァァ!!!」
垣根「だああああああ!!」
麦野「いったあああぁ!!!」
垣根「ハァ、クソ……今度こそあったぞ弁当箱……」
再び現れた帝凍庫クンのフィギュアを窓から投げ捨て、垣根は今度こそ本物の弁当箱を手にする。
一方通行「さァて……」
御坂「誰から開ける……?」
垣根「……おい麦野、オマエから行け」
麦野「はぁ?なんでよ」
垣根「何かオマエの弁当箱だけやけに豪華だし、多分安牌だろ」
麦野「そういうもんかねぇ?」
皆の弁当箱がごく普通のシンプルな四角いアルミのケースであるのに比べ
麦野の机から出てきたものだけは見るからに高級感漂う漆器の重箱であった。
見た目通りの豪勢な中身が入っているのならば、確かに笑う要素は少ないだろう。
御坂「こういうのってむしろ危ないんじゃ……」
麦野「……まぁ、睨み合ってても埒が明かないし私から行ってやるよ」
ヤレヤレと言った面持ちで、彼女はサッと重箱の蓋を取り去る。
その中には海の幸や山の幸をふんだんに使った、本当に豪華な料理が――
麦野「……」
本当に豪華な料理の実寸大の写真が、入っていた。
無言で写真を投げ捨てると、その下から本物の料理が姿を現す。
それは先程までの写真とは比べ物にならないほど貧相で
まるでコンビニ弁当を頑張って重箱に詰め込んだかのような有様であった。
スカスカの重箱が、なんとも物悲しい雰囲気を演出している。
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「グルーポンのおせちかよ!?」
御坂「くぅぅぅ、写真までは耐えたのに!!」
麦野「垣根ぇ!!どこが安牌だよ!!!」
バチーン!!
垣根「ほぅ!!!」
御坂「うきゃああぁぁぁ!!!」
麦野「づぅぁああああ!!」
一方通行「うし、じゃァ次は俺が開けてやンよ」
御坂「自分から行くなんて、アンタにしちゃ珍しいわね」
一方通行「腹減ってンだよ」パカ
一方通行「……うわぁ」
垣根「どうした?」
一方通行「……一見普通の弁当に見せかけて、おかずがモヤシばっかだこれ………」
デデーン♪
『麦野、アウトー』
一方通行「何笑ってンだ?俺ちょっと悲しいンですけど」
麦野「共食いだと思ったら耐えれなかったのよ……」
一方通行「俺人間だから、共食いじゃねェから」
バチーン!!
麦野「ひあああぁぁ!!!」
御坂「えっと、それじゃ次は私が行くわね?」
一方通行「妥当だな、垣根のは多分オチだろォからよ」
垣根「オイコラ」
御坂「開けまーす」パカ
麦野「どう?」
御坂「……本当に普通のお弁当」プルプル
一方通行「……フハッ」
デデーン♪
『一方通行、御坂、アウトー』
御坂「普通なのに!普通なのにぃぃぃ!!!」
一方通行「死角を突かれたぜ……」
バチーン!!
一方通行「おごァ!!!!」
御坂「ひゃうぅ!!!」
一方通行「……よし行け、オチ」
垣根「オチって言うんじゃねえよ」
麦野「でも何か仕掛けられてるのは確実だと思うわ、美琴の分が普通枠だったわけだし」
垣根「と、見せかけて……」
御坂「そんな甘い展開には期待しないほうが……」
垣根「ハァ……まぁいい、とにかく開けるぞ」パカッ
一方通行「……」
麦野「……うわ」
御坂「これって……」
垣根「日の丸弁当……だと……」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
垣根「何で俺だけ笑ってんだよクソが!!!」
一方通行「オチとしちゃァちっと弱かったな」
バチーン!!
垣根「ぐふぉ!!!」
― 何はともあれ楽しくお弁当タイム
一方通行「シャリシャリ」
垣根「モグモグ」
御坂「モキュモキュ」
麦野(何だこのお通夜みたいな雰囲気……)
一方通行「モヤシ炒め……」ボソッ
垣根「……」
一方通行「モヤシのナムル……」
御坂「……」
一方通行「モヤシの卵とじ……」
麦野「……」
一方通行「モヤシサラダ……」
垣根「……」プルプル
一方通行「茹でただけのモヤシ……」
御坂「……グッ」
一方通行「……米だと思ってたら細かく切ったモヤシだった」
麦野「……ッ!?」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
御坂「もおおおおお!!!!」
垣根「黙って食えやあああ!!!!」
一方通行「うるせェ!!モヤシしか入ってねェ俺の気持ちがわかンのか!?」
麦野「モヤシはテメエだクソ野郎が!!!」
バチーン!!
垣根「おおぉぉおぉ!!!」
御坂「くううぅぅ!!!」
麦野「づああああああ!!!」
一方通行「………ぶっちゃけまじィ」
麦野「ムシャムシャ」
御坂「モクモク」
垣根「……味の宝石箱やぁ~」ボソ
麦野「クッ!?」
一方通行「日の丸で宝石箱ってどンな極貧家庭だよ……」
御坂「ッ!!」
垣根「米の下から萎びたレタスが出てきた………」
一方通行「よかったな、宝石箱がちっとだけ豪華になったじゃねェか」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
御坂「いい加減にしろおおお!!!」
麦野「テメエ等もう一切口を開くんじゃねえ!!!!」
一方通行「食事は楽しくがモットーなンでェ……」
垣根「レタスの汁吸って米がちょっと緑色になってる……」
バチーン!!
御坂「ぎぃ!!!」
麦野「づううァァ!!!」
御坂「……アンタ達ちょっともう本当にいい加減にしてよね」
麦野「身内同士で争っても特しねえだろクソ」
一方通行「なンだかンだでオマエ等二人は弁当恵まれてンだから
そンくらいやられてくれねェと帳尻合わねェよ」
垣根「全くだ、俺の弁当なんて梅干すら甘いはちみつ梅だったんだぞ?何をおかずにすりゃいいんだよこれ」
麦野「本気で喋んなバ垣根」
― 保健室
白井「うわああああああ!!!」
先程の鬼ごっこで負傷した鬼達でごった返す保健室で、
白井黒子は叫び声を上げながら目を覚まし、ベッドから跳ね起きた。
部屋の隅っこの方で膝を抱えて座っていた番外個体がその声に怯え泣き叫び、
すぐ近くにいた滝壺理后がそれに驚き吐血する。地獄絵図とはまさにこのことである。
ついでに浜面の手術をしていたカエル顔の医者の手元がちょっと狂ってしまったようだが、
それはまぁどうでもいいことだ。
白井「わ、わたくしは……わたくしはなんということを………いったいなぜ……」
自分の招いた惨状に目もくれず、白井は頭を抱え俯く。その表情は暗く、
焦点の合わない瞳からは完全に光が消え失せていた。
絹旗「お、起き抜けに一体どうしたんですか?超何かあったんですか?」
尋常ではない様子に、滝壺の介抱をしていた絹旗は思わず声をかける。
しかし白井はその問いかけには答えようとせず、というよりも耳に入っていないようで、
ただひたすら虚ろな眼で「なぜ?なぜ?」と自問し続けていた。
絹旗(えぇー、なにこれ超怖い)
白井「どうしてあのような……これからどうすれば……」ブツブツ
絹旗「滝壺さぁん、何かこの人も超電波受信しちゃってますよー……電波同士、超なんとかしてくださいよぉ」
滝壺「きぬはた、後で一発ぶたせて」ゼェゼェ
白井「……」
そんな失礼な発言をしている絹旗を見向きもせず、白井は無言で立ち上がると
未だに震えている番外個体の元へと向かっていった。
番外個体「やだ、こっち来ないでよ!これ以上何する気!?」
近付いて来る白井に怯え、番外個体はまるでレイプ魔にでも襲われているかのような反応を見せる。
彼女がこれまで受けた仕打ちを思えばそれも仕方の無いことではあるが……
番外個体「それ以上近付いたら舌噛んでやるから!!」
打ち止め「ねぇ番外個体、舌噛んだくらいじゃ死ねないよ?このお医者さん何でも治しちゃうから
ってミサカはミサカはBJバリの腕を持つカエル顔のお医者さんの腕を褒め称えてみたり」
「――僕を誰だと思っている?(キリッ」
浜面「すいません先生、俺なんか血が止まらないんですけど大丈夫なんすかこれ」ドクドクドク
番外個体「ちょっと黙っててもらえないかな?」
白井「……」
番外個体「ヒッ!?」
いつの間にかすぐ近くまで迫っていた白井に、番外個体は思わず悲鳴をあげる。
もはやここまで……自分の(社会的な意味での)最期を悟った彼女は眼をきつく閉じ、
身を震わせながらその瞬間が訪れるのを待つしかなかった。
番外個体「……?」
しかしどれ程待ってもそれは訪れない。焦らしプレイというものだろうか?
それともまさか、誰かが助けてくれたというのか? 番外個体は恐る恐るその眼を開く。
番外個体「……へ?」
予想もしていなかった光景に気の抜けた声が漏れる。
彼女の目の前で、白井は膝をつき頭を地面に擦り付けていた。いわゆる土下座というやつだ。
番外個体「な、何してんのよ?今度は何企んでるわけ!?」
白井「大きいお姉様……本当に、なんとお詫びすれば良いか……」
頭を上げ、瞳を潤ませながら彼女はポツポツと語り始める。
白井「いえ、お詫びのしようも無い事はわかっていますの。ですが、ですが……」
番外個体「な、何よ?」
白井「いったいどうしてあのような破廉恥な行いをしてしまったのか、自分でもわからないんですの……」
番外個体「はい?それって……」
上条「白井いぃぃぃ!!!」
番外個体が僅かに口を開いたその時、勢いよく扉が開き、顔面を酷くに張らした上条が保健室に飛び込んでくる。
彼は白井の姿を確認すると、彼女の元へ滑り込むように土下座をした。かの有名なスライディング土下座である。
上条「すみませんでしたあぁぁぁ!!!
テンション上がっちまってたとはいえ、女の子の顔面ブン殴るなんてどうかしてたんだああ!!」
大声で謝罪の言葉を述べながら、上条はガツガツと何度も床に頭を叩きつける。
額が割れ鮮血が飛び散り、周囲の者がドン引きしても彼はそれをやめようとしない。
白井「上条さん、どうかお顔をお上げになってくださいまし
そんな目と鼻と口の場所もわからないほどボコボコになった顔で謝られても反応に困ってしまいますの……」
そんな彼に、白井は困ったような笑みを浮かべると、優しく声をかけ手を差し伸べた。
白井「それに、わたくしはむしろ感謝しておりますのよ?」
上条「え?」
白井「あなたに顔面をブン殴られたお陰で、どうやらわたくしは正気に戻れたみたいなんですの」
上条「正気に……」
言われてみれば、これ程普通に喋っている白井を見るのは初めてかも知れない。
いつも「ジャッジメントですの」だの「お姉様!」だの叫びながら、
自分に対しては罵詈雑言の嵐を叩きつけてきた彼女が、今は微笑みながら優しい言葉をかけてくれているのだ。
憂いを帯びたその笑顔に、上条は不覚にも股間の幻想殺しが反応してしまうのを感じた。
白井「はい。もう何ヶ月も何かに操られていたような、悪い夢でも見ていたような気分ですの……」
上条(操られていた……?もしかして、あの時急に顔面を殴りつけたくなったのは
白井を操っている何かに俺のそげぶセンサーが無意識に反応してたからなのか?)
白井「でも、夢ではありませんのね……」
悲しげに目を細めると、白井は番外個体の方へと向き直り、再び頭を下げた。
白井「あれだけの事をしておいて今更何を、とお思いになるでしょうが、どうか聞いてくださいまし――」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
『皆さんお弁当は食べ終わりましたね?そろそろ授業が始まりますから準備してください
とミサカは昼休みの終わりを告げます』
麦野「準備って言われてもねぇ」
御坂「何の授業やるのかもわかんないしね……」
垣根「結局飯食っただけで昼休み終わりかよ」
一方通行「オマエは何でそンなに昼休みに執着してンだよ」ハァ
「よぉし揃ってるみてえだな」
ガラガラとドアが開き、一人の男が教室に入ってくる。
一方通行「!?」
見覚えのあるその男の姿に、一方通行は一瞬目を丸くすると、すぐにそっぽを向き
思いきり顔を顰め、小さく舌打ちをこぼす。
逆立った金色の髪、顔面に施された刺繍、猛禽類のごとき獰猛な面構え。
他人を小馬鹿にするような笑みを浮かべながら、木原数多は教壇に立った。
木原「この時間の授業を担当する木原数多だ。よろしくなぁクソガキども」
一方通行「……お引取り願えますかァ?出来れば呼吸ごとォ」
ニヤニヤと笑いながら自己紹介をする木原に、一方通行は顔を90度背けたまま毒づく。
御坂「一方通行、アンタこの刺青の先生と知り合いなの?」
一方通行「知らねェよこンなおっさン」
木原「おうおう、育ての親に対して随分と冷たいこと言ってくれるじゃねえの」
御坂「親!?」
一方通行「気持ち悪ィ事言ってンじゃねェよクソ野郎が 反吐が出るぜ」
木原「はぁー、そんな強気でいいのか一方通行ちゃんよぉ……
能力が使えねえテメエなんざ10秒もありゃ息の根止めれるんだぞ?そこんとこわかってる?」
一方通行「……チッ」
木原「他のガキどももよく覚えとけ、この時間は俺が絶対だ。
もし俺に歯向かったり俺の機嫌を損ねるような真似しやがったら……ぶっ殺しちまうぞ?」
御坂「!!」ゾク
麦野(こいつ……ッ)
垣根(今までの仕掛け人とは明らかに違え……)
一方通行「木原ァ……!」ギリッ
木原「ぎゃはははは!そう睨むなよテメエ等、テンション上がっちまうじゃねえか!
………さて、そろそろ時間だなぁ、覚悟はいいかガキども」ニィ
御坂(何させられるんだろ……)
垣根(殺しあえとか言い出してもおかしくねえぞこいつ)
木原「それじゃ『家庭科』の授業始めんぞー」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
一方通行「木原ァァァァァ!!!!」
垣根「そのツラで『家庭科』はないわ……」
麦野「全部前フリかよクソがああああ!!!」
バチーン!!
一方通行「おぐ!!!」
垣根「ぬぅあ!!」
麦野「ってええぇ!!!」
木原「よしテメエ等移動するぞ、今日の家庭科は調理実習だ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「ドヤ顔で『調理実習』とか言うのやめてもらえますゥゥ!?」
バチーン!!
一方通行「ごがあああァァ!!!」
『木原くん木原くん、残念ながら家庭科室は使えませんよ、とミサカは報告します』
木原「あぁ?使えねぇってどういうこった?つーかやけに馴れ馴れしいなクローン風情が」
『さっき一方通行が粉塵爆発で吹き飛ばしちゃいましたから、とミサカは事実を伝えます』
木原「はぁぁ!?何やってくれてんだ一方通行!!」
一方通行「何でそンなに怒ってンだよ……」
木原「俺は腹が減ってんだよ!!」
一方通行「知らねェよボケが!指でもしゃぶってやがれ!!」
木原「クソが、一方通行くんのせいで皆が楽しみにしてた調理実習は中止になっちまいましたぁ」
御坂「いや別に楽しみじゃ……」
垣根「なんてことしてくれたんだ一方通行!!」
一方通行「だから何でオマエはそんなに学校生活楽しもうとしてンの?
何か根性馬鹿の性格が伝染してきてねェか?」
麦野「根性ないしただの馬鹿でしょ垣根は」
木原「仕方ねぇから普通の授業だ。おいテメエ等、机の中に家庭科の教科書入ってるから出しやがれ」
垣根「せっかく弁当以外のものを食えるチャンスだったってのに……」
御坂(そう言えば垣根さん日の丸弁当だけだったわね……)
木原「よし一方通行、教科書の85ページから読め」
一方通行「……おい木原ァ、俺の教科書が『孤独のグルメ』なンだが、こいつは何の冗談だァ?」
麦野「……ッ!」
木原「あぁ、俺の愛読書だ」
垣根「ツッ!」
御坂「……クッ」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
麦野「おい第一位ふざけんな!!!」
一方通行「俺のせいじゃねェだろ」
垣根「何でテメエだけ周りを笑わせるような武器が与えられるんだよ!?」
御坂「顔面刺青のクセに似合わないもの読んでるんじゃないわよ!!」
木原「刺青してたらグルメ漫画読んじゃいけねえのか」
バチーン!!
垣根「ふうぅぅぅぅ!!!」
御坂「あいッッ!!!」
麦野「ぐあぁぁぁ!!!」
木原「で、一方通行、読めや」
一方通行「はァァ?漫画音読なンざどンな羞恥プレイですかァ?」
木原「いいから読め、ぶっ殺すぞ」
一方通行「チッ………あー……『これがチャプチュかァ 思ったよりボリュームあるなァ』」
垣根「ッッ」プルプル
御坂「グッ」ピクピク
木原「もっと感情込めて」
一方通行「………『すいませェん、ライスもう一つ下さい あとウーロン茶もォ』」
麦野「ォォォ……」ガクガク
木原「もっと!もっとだ!ゴローさんになりきれ!!」
一方通行「『うおォン!!俺はまるで人間火力発電所だァ!!!』」
木原「それだ!!!」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「それだ!じゃねえよクソったれがああああ!!!!」
御坂「一方通行ァァ!!!アンタやっぱり仕掛け側なんでしょおおお!?」
一方通行「……今度は俺のせいかもなァ」
麦野「かも、じゃねぇんだよォォ!!思いっきり狙った読み方してんじゃねえかァァ!!!」
バチーン!!
※孤独のグルメ……主人公の井之頭五郎が定食屋やレストランなどでひたすら飯を食ったり
気に入らない店主にアームロックをかけたりする漫画。
上記の「人間火力発電所」のように意味がよくわからない表現も多いが
何故か妙な説得力がある。名作。
垣根「ちくしょう……つーか仲いいじゃねえかテメエ等……」
麦野「息ぴったりね……」
御坂「流石は育ての親って感じ……?」
一方通行「ェ……」
木原「おい一方通行、そんな『本気で傷ついた』みたいな顔すんのやめろ、俺が傷つくだろうが」
一方通行「木原くンと息あってるとか末代までの恥だぜェ……」
『オマエで末代だよ童貞野郎、とミサカはさり気なくつっこみます』
一方通行「うるせェよ!いいからさっさとこの目障りなおっさン片付けろ!!」
木原「このクソガキが、ムカつかせやがる……もう朗読の時間は終わりだ
こっからは『家庭内暴力』について叩き込んでやる、覚悟しやがれ一方通行ァァ!」
一方通行「はァァ?家庭内暴力だァ?テメエは俺みたいなモヤシに暴力振るって楽しいンですかァ!?」
垣根「オマエ自分で言ってて悲しくならねえ?」
一方通行「ちょっとなったわ」
木原「おい聞こえてんだろ?ちょっくら一方通行の能力制限を解除しろや」
『え、いいんですか?あなた最悪死にますよ?とミサカはとんでもない提案をしている木原数多に確認します』
木原「構いやしねえよ、普通に殴ってもつまらねえだろうが」
『はぁ……それでは……』
一方通行「おォ……この感じィ」
木原「能力は戻ったみてえだな?よし一方通行、こっち来い。
ガキどもよく見とけ、今から無能力者でもできる反射の破り方ってやつを教えてやる」
一方通行「ふゥン、無能な木原くンが一体どうやって反射を突破してくれるンですかァ?」スタスタ
木原「こんな感じだ」ブン
一方通行「いてっ」
垣根「なッ……」
御坂「一方通行に当たった!?」
木原「ほれもう一発」ブン
一方通行「ぐァッ!チョップはやめろ木原!地味に痛ェ!!」
麦野「……どうなってるわけ?」
木原「さて、それじゃ種明かしといくか。なぁに簡単なこった
寸止めの要領でコイツの反射が始まる直前に拳を引いてるだけだ」
一方通行「……はァ?」
木原「つまりテメエは拳を引いた時の『戻っていくベクトル』を反射して自分にぶつけてるわけよ」
一方通行「な、何だそりゃ!?」
垣根「常識外れにも程があんだろ……」
木原「で、だ。こう説明すっとコイツはムキになって反射の向きを調整して対抗しようとしやがるから……」ブン
一方通行「いってェ!」
木原「こんな風に思考を先読みして引く向きを変えてやりゃあいい」ケラケラ
御坂「え……え?」
麦野「事も無げに言ってるけどアンタ以外誰も出来ないわよそんな事……」
木原「そぉらもう一発だ!」
笑いながら、木原は今までよりも力を込めた腕を振り下ろす。
だがその一撃はバチンと音を立てて反射され、鈍い痛みを拳に残すこととなった。
木原「いってぇ!!何だぁ!?」
困惑し、ぷらぷらと手を振る木原を他所に、一方通行はニタニタと笑いながら挑発的な視線をぶつける。
一方通行「どうしたの木原くゥン」
木原「……チッ、ミスっちまったか。今度こそ喰らっとけ!」
舌打ちをしもう一度拳を振るう木原だが、やはりそれも反射され自分の手を痛めつけることになる。
その様子に、一方通行は満面の悪意ある笑みを浮かべ、ケタケタと嬉しそうに喉を鳴らした。
木原「つうぅぅ……どうなってやがる!?」
一方通行「ひゃは!まァだわからないンですかァ木原くゥン」
まるで出来の悪い生徒を諭すように、先程木原が反射の破り方を解説した時と同じように、
一方通行は人差し指を立て、木原を見下すように言葉を続ける。
一方通行「なァに簡単なこった。オマエが俺の思考を先読みしてンなら、
俺は俺の思考を読むオマエの思考を先読みして反射を調整してるだけだぜェ?」ケラケラ
木原「テメエごときが俺の思考を読んだだと……?」
一方通行「あくまでも『俺の思考を読むオマエを』だ。
『普段ならこう反射するけど読まれてそうだからこうしよう、と見せかけて実はこう……
ってところまで読まれてるだろうからやっぱりこっちに反射しとくか』って感じになァ
つまりオマエは読みの深さで俺に負けたってわけだ」
木原「偶然上手く行ったからって調子に乗るんじゃねえぞガキ!!」
一方通行「ぐォッ!?」
木原の拳が再び一方通行に突き刺さる。勝利を確信し油断しきっていた一方通行は
その一撃にあっさりと膝をついた。
一方通行「なンだとォ……」
木原「この前の一件もあるし、テメエがクソみてえに捻くれてんのはよぉくわかった。
だったらその捻くれっぷりまで計算に入れるだけの話だクソガキが!!」
更に追撃を加えんと拳を振り下ろすが、それはまたも反射される。その反動でバランスを崩し、
木原もまた、無様に膝をつくこととなった。
木原「ぐぅ!?」
一方通行「舐めンなよ木原ァ……テメエの方こそ偶々上手くいったから調子に乗ってンじゃねェかァ!?」
ほぼ同時に両者は立ち上がる。
一触即発、彼等の間には、まるで西部劇の決闘のような張り詰めた空気が流れていた。
木原「一方通行ァァァァァ!!!!」
一方通行「木原ァァァァァァ!!!!!」
吼えながら拳を振るう木原に、身構えそれを待つ一方通行。
今ここに、学園都市最高レベルの壮絶な読み合いが展開されることとなった。
が……
垣根「……」
御坂「……」
麦野「しょぼ……」
反射される、当たる、反射される、当たる、反射される…………
ペチンペチンと攻撃が当たったり弾かれたりする様は傍から見るとなんとも間抜けで
とてもではないが学園都市最強の能力者とその開発者の争いには見えなかった。
ていうか見た目は完全に子供の喧嘩レベルである
垣根「いや、やってることがすげえのはわかるんだけどよぉ……」
御坂「うん、すんごい苦しそうな顔してるし……」
麦野「それがまたシュールよね、多分相当思考の先読みとかやってるんだろうけど……」
白井「し、失礼しますの……」
御坂「ゲッ」
二人の争いを微妙な空気で眺めていた三人だったが、突如教室に現れた白井に意識を奪われる。
色々と思うところがある御坂は露骨に顔を顰め、白井はその反応に悲しげに目を伏せた。
白井「お、お姉様、お話を聞いていただけますか……?」
御坂「……何よ、変なこと言ったら本当に怒るわよ?」
白井「そ、その……今まで本当に申し訳ございませんでした!!」
御坂「えっ」
ガバッとその場に土下座する白井に、御坂は驚き目を剥く。
御坂「ちょ、ちょっと何やってんのよ!ていうか何を謝ってわけ!?」
白井「全て、これまでやってきたこと全てですの!!」
御坂「は、はぁぁ?」
ひたすら頭を下げ「すいませんすいません」と謝り倒す白井に、御坂の頭は困惑の一途を辿る。
見かねた垣根と麦野は、やれやれと溜息を吐くと彼女達に助け舟を出してやることにした。
麦野「ほらツインテール、そんなもんにしときなさい。美琴も困ってるじゃない」
垣根「そうだぜ、ちゃんと分かるように説明しねえと謝った事にならねえぞ?
つーか今までとやけに雰囲気違うなオマエ」
白井「あ……わ、わたしくとしたことが……」
御坂「落ち着いて話して黒子、いったい何を謝ってるの?」
白井「それはですから……これまでやってきた全部ですの……お姉様の下着をゴニョゴニョしたり……」
御坂「え?あぁ、あの時の……なんで今更……?」
白井「他にもこっそり毛布を摩り替えたり歯ブラシをくすねたり……」
御坂「え?え?」
白井「お姉様が入った後のお風呂のお湯を飲んだり排水溝の髪の毛を拾い集めたり……」
御坂「え、いや……え?」
白井「あとはお姉様の私物で****や******したりしたことですの!!!」
御坂「黒子ォォォォォォ!!!!!!」
垣根「うわぁ……」
麦野「流石に……」
思わぬカミングアウトに、御坂は大絶叫する。垣根と麦野もこれ以上ないほどドン引きし、
助け舟を出したことを後悔したくらいだ。
御坂「まさかそこまでやってるとは思ってなかったわよ!何でそんなことやったのアンタ!?」
白井「そ、それが、その……」
御坂「あァ!?はっきり喋りなさいよ!ツインテール引きちぎるわよ!?」
白井「ヒィッ!わ、わからないんですの!どうしてあのようなことをやろうと思ったのか
当時の自分の心境が全く理解できないんですの!!」
御坂「は?」
言い訳とも言えない様な言い訳に逆に毒気を抜かれ、気の抜けた声が漏れる。
白井は更に深く頭を下げ、言葉を続けた。
白井「あ、あのですね、確かに黒子はお姉様のことをお慕いしておりますし、
お姉様のためならこの身を投げ出す覚悟もありますの……
ですが、あのような犯罪の真似事を犯してしまうなんて自分でも信じられないんですの」
麦野「真似事っていうか完璧に犯罪よね」
垣根「純度100%、文句なしの犯罪だな」
白井「都合のいい話にしか聞こえないでしょうが、誰かに操られていたようにしか思えないんですの!」
御坂「操られてって……まぁいいわ、それでどうして今頃謝ろうと思ったの?」
白井「ようやく正気に戻れたからですの。あの殿方……上条さんに思いっきり顔面を殴られて気絶した後
目が覚めるたときには頭の中がスッキリとしておりました」
御坂「アイツに殴られて正気に戻ったって……え、まさか……?」
垣根「どういうこった?」
御坂「アイツ……上条当麻の右手には、あらゆる能力を打ち消すっていう有り得ない力が宿ってるの」
麦野「そいつに殴られて正気に戻ったってことはつまり……」
御坂「本当に操られてた……?でも誰が何のために?」
白井「や、やっぱりわたくしは操られていたんですの!?
くぅぅ、きっとわたくしとお姉様の仲を引き裂こうとする陰謀ですの!!いったいどこのどいつが!?」
御坂「数ヶ月に渡って人一人の思考を操ることができて、私とアンタを仲違いさせて得をする奴……
いるじゃない、一人だけ……」
白井「え……あ、まさか!?」
御坂「心理掌握……あの女しかいないわ」
垣根「第五位か!」
麦野「でも得をするってどういう?」
御坂「うん、常盤台にはいくつも派閥があるんだけど、あの女は最大派閥の女王様を気取ってるのよ
で、どこの派閥にも属さない、自分より序列が上の私を疎ましく思って孤立させるために
手始めとして黒子を操ったって考えると自然だと思う」
垣根「女子校って怖えなぁ」
白井「……ですが、操られていたとはいえわたくしが許されないことをしてしまったのは事実!
お姉様、わたくしは……ッ」
御坂「黒子、もういいのよ……私の方こそ気付いて上げられなくてごめんね?」
白井「お、お姉様……なんとお優しい………」
麦野「何はともあれ、一件落着ってとこ?」
キハラァァァァァ!!!
エ、チョ、ナニソノ黒イ翼!?アァァァ……
垣根「あっちも終わったみたいだな」
一方通行「あァクソ、手間取らせやがって……」
舌打ちをしながら、一方通行はコキコキと首を鳴らした。
木原数多の姿はどこにも見えないが、きっと何処かで元気に暮らしているだろう。
一方通行「ン?白黒がいるじゃねェか、どォした、また垣根が蹴飛ばされるのかァ?」
垣根「違えよ!!」
ようやく白井の存在に気付いた一方通行は首を傾げながら尋ねる。
音楽の時のように垣根の尻を蹴飛ばしに来たのかと思ったが、どうやらそれは違うらしい。
白井「第一位様、あなたにも大変なご迷惑をお掛けいたしました……」
一方通行「何言ってンだこいつ?」
垣根「何か正気に戻ったんだとよ」
一方通行「はァ?」
御坂「簡単に説明するとね……」
訝しげな表情の一方通行に、御坂は先程までの話を掻い摘んで説明する。
白井がこれまでやってきたこと、それは操られての行為だったこと、そして正気に戻ったこと……
説明を進めるに従い、彼の表情がどんどん険しくなっていくように見えるが、気のせいだろうか
一方通行「ふゥン、操られて、ねェ……」
白井「ですからあの、大きいお姉様もお返しします。ちょっと残念ですが……」
一方通行「いやいらねェ、生ゴミにでも出しといてくれ」
御坂「ひど!?」
一方通行「しかしまァ、よかったなァ白黒、許してもらえてよォ」
白井「あっ……」
ニヤっと笑うと、一方通行は右手を白井の頭に乗せ、わしゃわしゃと撫で回す。
突然の行為に困惑し手を払いのけようとする白井だったが、一方通行の反射に阻まれてしまい、
結局は顔を真っ赤にして成すがままにされることとなった。
何ともほほえましい光景である。ハッピーエンドだ。いやそんなわけねえだろ。
白井「ピギィ!!」
突如、屠殺される豚のような悲鳴を上げると、白井はバタリと受け身も取れずにその場に倒れ伏す。
あまりにも唐突な出来事に、誰も声を上げることすらできない。ただ一方通行の笑い声だけが教室に響いた。
御坂「く、黒子!! アンタ何を!?」
ようやく事態を把握した御坂が白井を助け起こしながら一方通行を睨みつける。
そんな彼女を庇うかのように、垣根と麦野の二人が一方通行の前に立ちはだかった。
垣根「何の真似だ一方通行ァ!」
一方通行「おいおいそう睨むなよ、これ以上は何もしねェよ」
麦野「何をしやがった!!」
一方通行「ハッ、まァ見とけ、すぐ分かるからよォ」
白井「ん……う……お、お姉様……」
御坂「黒子!!よかった、気がついたのね?」
白井「フヒ、フヒヒヒヒ!!」
御坂「!?」
白井「お姉様!お姉様あああああ!!!!」
御坂「ぎゃああああああ!!!」
不気味な笑い声を上げながら、白井が全身で御坂に絡みつく。垣根と麦野はその光景にひたすら唖然とし、
一方通行だけが、それを満足そうに眺めていた。
垣根「本当に何しやがったのオマエ……」
一方通行「今更白黒にマトモになられても困るからよォ、ちょっとベクトル操作で脳味噌いじりましたァ」
麦野「おい……」
一方通行「具体的に言うと『理性の壁』って奴をぶち壊してみました」
御坂「何してくれてんのよアンタァァァ!!!!ちょ、離せ!離しなさい黒子!!黒子ォォォ!!!」
白井「ウケケケケケケ!!!オネエサマァァァァ!!!」
御坂「いやああああ!!前より悪化してるううう!!!!」
一方通行「これが本能のみで動く人間の姿か、なンて醜いンだ……」
垣根「おま、自分でやっといて……」
手で口を覆い、汚いものを見るような目で白井を眺める一方通行。
もはや外道というにも生温い存在である。
麦野「それより美琴助けないとヤバイわよあれ!!」
垣根「お、おう!」
一方通行「精々頑張るンだなァ」ケラケラ
必死に白井を引き剥がそうとする二人と、何とか逃れようとする御坂の姿を
一方通行は満足そうにゲラゲラと笑いながら見つめる。
ただ、彼は忘れていた……
『一方通行、楽しそうなところ悪いのですが……』
一方通行「あァ?」
いまこの時間は――
『えー、木原数多とのやり取りから数えて、七回アウトです、とミサカは馬鹿笑いしている一方通行に通告します』
一方通行「……はァァァァ!?」
――笑ってはいけないという事を。
『すでに能力は制限しました。それでは幸運を、とミサカは十字を切ります』
一方通行「おいちょっと待て!!」
デデーン♪
『一方通行、七回アウトー』
一方通行「待て待て待てェェェェ!!!!」
『と言いたい所ですが、白井黒子の存在が危険すぎるためそちらに妹達を派遣することができません』
一方通行「あ?」
『というわけで、ですね、ちょうど数字も『七』とキリが良いことですし……』
一方通行「おいまさか……待て!それは!!!」
デデーン♪
『一方通行、すごパー』
一方通行「ふざけンなァァァァァ!!!!!」
削板「ハーッハッハッハ!!待たせたな第一位!!!」
一方通行「来ンなボケがァァァ!!!」
削板「死なない程度には手加減してやる!!だから安心してケツを出せ!!!」
一方通行「やめろ!!やめろォォォォ!!!!」
削板「すごい……」
一方通行「アアァァァァァァ!!!!!」
削板「パ ー ン チ ! ! !」
校舎中に、第一位と第三位の悲鳴のアンサンブルが響き渡った。
【後編】に続きます