【前編】の続きです
「お願いやめて!やめてええええ!!!!」
「ぎゃは!力ずくで止めてみろよ!!ほら、このままじゃテメエの大事なモンが滅茶苦茶になっちまうぜェ!?」
路地裏に少女の悲痛な叫び声が響き、次いで、そんな反応を楽しむかのように、
白い少年の口から脅迫まがいの言葉が飛ぶ。
「何で!?一体どうしてそんなことするの!?どうしてそんなことができるの!?」
少女が大声で問う。今まさに目の前で行われようとしている行為は、明らかに人道に反しており、
彼女がこれまで受けてきた数多くの仕打ちのどれよりも残酷で、屈辱的で
真っ当な神経の持ち主ならばとても考え付きもしないような事だった。
「何でかって?ひゃはっ!決まってンだろ、楽しいからだ!!」
返ってきたのは、必死な彼女を嘲笑うかのような、あまりにも冷酷な言葉。
「さァどうすンだァ?もう後がないぜ。自慢の超電磁砲でもなんでも使って、俺を止めてみろよ!」
ゲラゲラと笑いながら、少年は冷たい言葉を続ける。
「お願い、その子だけは!その子だけは助けてあげて!私はどうなってもいいから!!」
少女の目には、無表情で、何も喋らないその子が、涙を流しながら助けを求めているように映る。
それでも彼女は動かない、動けない。既に、何度も挑み、散々に痛めつけられているのだ。
目の前の憎い少年に、やめてくれと懇願する以外に、もう大切なその子を助ける術はない。
「だからよォ・・・力ずくで止めようとしてみろ!ひょっとしたらどうにかなるかもしれねェぞ!?」
力ずくで・・・それが不可能なのを少女は、そして少年もよく知っていた。
少女は学園都市の第三位で、少年は第一位なのだから。
知っていながらなお、動けなくなるほどに痛めつけておきながらなお、
第一位である一方通行は、第三位の御坂美琴に「挑んで来い」と「力ずくでやってみろ」と叫んでいる。
それはチャンスを与えているわけでもなければ、当然鼓舞しているわけでもない。
ただ、ただ反応を楽しむためだけに、一方通行は笑いながら御坂を煽り続けていた。
一方通行「ほォら、テメエの意気地がねェから、今からコイツの頭が大変なことになるぜェ?」
叫び続ける御坂に、もう良いと言わんばかりにそう言い放つと、一方通行はドス黒い何かを握り締めている右腕を振り上げた。
御坂「イヤアアアアア!!!やめてえええええ!!!」
誰も助けに来ない。
最高のタイミングで現れるヒーローなど存在しない。
御坂には叫び続ける他に何もない。
御坂「私のゲコ太に、そんな誰のかもわからないパンツを被せないでええええええ!!!!」
一方通行「俺のじゃねェから安心しろ」ゲラゲラ
御坂「そういう問題じゃないわよ!!!一体誰のなのよおおお!?」
御坂「あっあぁあ!あああぁぁぁぁ・・・」
ほんの数十分前まで、御坂美琴はこの上なく上機嫌だった。予てより目をつけていた
人間大のサイズはあろうかという、超巨大ゲコ太ぬいぐるみをついに購入できたからだ。
御坂「ついに私のモノになってくれたわねゲコ太ぁ・・・」ウフフ
早く家に帰って飾る場所を考えなきゃね、がっしりと両手に大きなぬいぐるみを抱え、
幸せ一杯といった気分でそんな独り言を呟く。
しかし、悲劇とは常に何の前触れもなく襲い掛かる。悪魔は常に側に隠れている。
学園都市の白い悪魔が、そんな幸福に満ち溢れた表情で道を歩いている彼女を見過ごすわけもなかった。
「おンやァ、随分と嬉しそうですねェ」
御坂「!?」
突如死角からかかった聞き覚えのある声に、御坂は一瞬身体を硬直させる。
逃げる、隠れる、戦う。あらゆる行動を取るその前に、彼女は物凄い力で路地裏に引きずり込まれた。
その先で、やはり見覚えのある、今最も出会いたくなかった少年が嗜虐的な笑みを浮かべていた。
御坂「一方通行!これは一体何の真似なの!?」
一方通行「何か?なんて聞かなきゃわかンねェかァ?」
警戒する御坂に、一方通行はケラケラと笑いながらゆっくりと手を伸ばす。
御坂「ま、まさかこのゲコ太を狙ってるわけ!?ダメよ!それだけは許さないわ!」
ゲコ太のぬいぐるみを自分の背後に隠し、庇うように仁王立ちする。
その姿はさながら子を守ろうとする母のようでもあり、
その目には「指一本触れさせない」という強い決意の光が宿っていた。
一方通行「いいねいいねェ!最ッ高だねェ!そういう反応をするモノこそ、やりがいがあるってモンだ!」
御坂「ふざけんなあああああ!!!」
ゲコ太を守るため、御坂は全身全霊をかけて一方通行に挑む。しかしどのような抵抗も、
彼の反則的な能力には全く通じず、逆に全て反射され、彼女自身の身体を痛めつけることとなった。
それでも幾度と無く立ち上がり続けた御坂だったが、ついにその膝が崩れる。
御坂「うぁ・・・く・・・」ハァハァ
一方通行「もォ終わりかァ?それじゃコイツを・・・」
倒れ伏す彼女を一瞥すると、一方通行はゲコ太のぬいぐるみに再び手を伸ばす。
なんとかその手を止めようと必死にもがく御坂だが、もはや満足に能力を使うことすらできない。
御坂「ゲコ太!逃げて!!」
一方通行「イヤ無理だろ・・・」
御坂の必死の声もむなしく、ゲコ太のぬいぐるみは一方通行に確保され、
そして冒頭へと続く。
ゲコ太のぬいぐるみにイタズラの限りを尽くし、御坂の泣き叫ぶ姿を散々堪能した一方通行は、
「クリーニング代だ」と札束を投げ捨て行ってしまった。良く訓練されたレイプ魔のような野郎である。
後に残ったのは泣き崩れている少女と、そして変わり果てた姿となった、少女の守れなかったもの(ゲコ太)
「あれ、御坂・・・御坂か?どうしたんだそんな所で」
そんな哀れな少女を、一人の少年が見つけた。
「一体何して・・・どうしたんだその格好!?・・・お前、泣いてるのか?」
御坂「あ、アンタ・・・」
少年―上条当麻は驚く。彼の知る限り相当強い部類入る少女、
学園都市の第三位である御坂がボロボロの状態で泣き伏していたからだ。
上条「何が、あったんだ?」
―――――――――――――
上条「ハァ、ハァ」
上条当麻は路地裏を全速力で駆けていた。ある人物を探すために。
その人物を殴ってでも御坂の前に引きずり出し、全力で頭を下げさせるために。
泣き止まない御坂から断片的に聞き出せたことを思い出す。
第一位である一方通行に敗れたこと
目の前で大切な「友人」を汚されたこと
それを黙って見ていることしかできなかったこと
一つ語る度に、御坂の瞳からは大粒の涙がこぼれた。
「友人」の姿が見当たらないのは一方通行に連れ去られたか、或いは自分から何処かへ消えてしまったのか、
それは語られなかったが、恐らく前者の可能性が高いと当たりをつけた上条は
一方通行がどちらの方向へ歩き去ったかを聞き出すと、すぐに走り出した。
まさかその「友人」というのが、側に転がっていたパンツを被ったぬいぐるみのことだとは夢にも思うまい。
走り続ける上条の目に、一人の人物の後姿が映る。
華奢な身体、白い髪に白い肌、黒い服。間違いない、こいつが―
上条「てめえが一方通行か!」
一方通行「あァ?何だテメエ」
背後からかけられた声に、一方通行はめんどくさそうに振り返る。
その顔には、自分を一方通行だと知りながらこんなナメた口を利くのは一体どこのバカだろう、
そんな傲慢な態度がありありと表れていた。
一方通行「ハッ運がよかったなァ三下野郎、俺は今機嫌がいいンだ」
ナメた態度は忘れてやるからとっとと消えろ、そう言い放つ一歩通行に、上条は激昂する。
上条「てめえの機嫌がいいってのは、御坂をボコッたからか!?あいつの友人を散々辱めたからか!?」
一方通行「テメエ第三位の知り合いかァ?イヤ、それより友人辱めたって何だ?知らねェぞ」
上条「惚けんな!!御坂の友人を何処にやった!?」
一方通行(えェー・・・)
一方通行は困惑していた。突然御坂の知り合いらしい熱血漢が現れ、
身に覚えのないことを糾弾されているのだから当然といえば当然である。
彼がやったのは子供のイタズラレベルのことであり、
当人はともかく第三者にここまでキレられる言われはない。
一方通行(友人ってダレ?コイツ何か勘違いしてねェ?)
流石の学園都市第一位も、「友人」がゲコ太のぬいぐるみを指していることには気付かない。
上条「あの御坂が、俺に助けを求めたんだぞ!無能力者の俺なんかに!!
その時のあいつの気持ちが、てめえに分かるかよ!?」
一方通行「サッパリ分かンねェ・・・(テメエの言ってることが)」
上条「そうかよ・・・てめえにとっちゃ御坂達にやったことは、
ちょっと目に付いた道端の石ころを蹴飛ばすも同然、何でもねえことだって言うんだな・・・」
一方通行「言ってねェよ」
上条「いいぜ、てめえが何でも思い通りに出来るってなら・・・」
一方通行「聞けよ」
上条「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」
一方通行「テメエの妄想をまずはどうにかしやがれこの三下があァァァ!!!」
上条「御坂が受けた痛み、てめえにも教えてやる!!」
問答無用、とばかりに上条は右拳を振りかぶり、一方通行に向かって突進する。
一方通行(死ぬほどめンどくせェ・・・誤解とくのもめンどくせェ・・・
サクっと反射して昏倒させて、それで終わりだ)
そんなことを思い、身構えすらせずにいた一方通行だったが、ある事に気付く。
コイツは第三位の知り合いで、色々な勘違いはあるが、どうやら第三位の代わりに俺を殴りに来たらしい。
ということは俺の能力がどンなもンか少し位は聞いているはずだ。にも関わらず、真っ直ぐに殴りに来ている。
これは・・・
一方通行(何かあるな・・・)
イヤな予感がした一方通行は、上条の拳が当たる寸前、その身をそらす。
顔面に向かっていた拳は狙いが外れ、その頬を掠める。
そう、あらゆるものを反射するはずの一方通行の能力を超えて・・・
一方通行(掠りやがった、だと・・・)
ある程度予想していたとは言え、反射が効かなかったことに一方通行は少なからず動揺した。
上条「オラァ!!」
一方通行「!!チィッ!」
その動揺を見て取ったか、すぐに二の拳を振るう上条。一方通行はそれを何とか回避し、
追撃を逃れるため、後ろ跳びに大きく距離を開けた。
上条「どうした、一発掠っただけでビビッてそんなに逃げちまうのか!?情けねえな最強!!!」
一方通行「どいつもこいつも勝手なこと言いやがる。
最強だからどンな不測の事態に陥っても決して引くな、
トコトン相手の流儀に付き合って、それを下してこその最強だろってかァ?」
一方通行「生憎だなァ、俺は確かに最強だが、万能でも全能でもねェ。
いくら格下相手だろォが、何をしてくるかわかンねェ以上は油断してやる余裕なンざねェんだよ」
一方通行「そンで、どォもその安い挑発を聞く限り、テメエ接近戦がやりてェみたいだなァ
どんな方法で俺の反射を破ったのかは知らねェが、近距離じゃねェとその方法は使えねェんだろ?」
上条「く・・・」
一方通行「図星みてェだな。ひゃは!だったら簡単だ。俺はテメエに近付かねェ
後は遠距離から一方的に嬲るだけだ」ニタァ
笑いながら、一方通行はベクトル操作を用いて風を集める
一方通行「ほォら、そよ風をプレゼントだ。死なねェ程度にぶっ飛んで頭冷やしやがれ!!」
うなり声を上げ、一方通行の放った爆風が上条を襲う。
その風は明らかに指向性を持ち、周囲には被害を与えることなく、上条にだけ襲い掛かっていく。
しかし当の上条に到達する寸前、彼の突き出した右腕により、風は音も無く雲散した。
一方通行「ンな!?」
上条「うおおおおおおおお!!!」
驚愕する一方通行に、上条は全力で駆け寄る。
ここしかない。この機会を逃せば、もう一方通行には近づけないだろう。
握り締めた拳が、一方通行に向かって振り下ろされる。
だが・・・
一方通行「おォーっと怖ェ怖ェ」
それでも、上条の拳は届かなかった。
驚愕による思考の空白から素早く立ち直った一方通行は、
上条が拳を振り下ろすよりも先に、再び後ろ跳びに距離を取っていた。
一方通行「なるほどなァ、手で触れた能力を打ち消す能力ってとこか」
上条「く、クソぉ・・・」
そして、上条の持つ「幻想殺し」の本質すらも見抜かれる。
もはや勝ち目など無いに等しいだろう。
一方通行「『能力を打ち消す』ってことは、こういうのは打ち消せねェンだろォ!?」
そう叫びながら、一方通行は地面に手を当てる。
途端、上条の周囲の建物が崩壊を始め、瓦礫が彼に降り注ぐ。
一方通行「建物を壊したのは俺の能力だが、今テメエに降り注いでるソレはただのコンクリ片だ。
消せるモンなら消してみやがれ!」
上条「う、うわああああああ!!!」
―――――――――――――
ガラガラという、瓦礫の崩れ落ちてくる騒音が収まり、上条はそっと目を開ける。
上条「い・・・生き、てる?」
それどころかどこにも痛みすら感じない。傷一つないのだろうか。
一方通行「『生きてる』じゃねェよ、『生かしてやった』ンだ俺が」
上条「!?」
すぐ目の前から聞こえたその声に、すぐ目の前に現れたその顔に反応し、
上条は咄嗟に右手を突き出そうとする。だが、身体が全く動かない。
改めて自分の状態を確認すると、彼は尻餅を突くような体勢で、両手両足が瓦礫に埋もれていた。
一方通行「ったく、苦労したンだぜェ、テメエに傷一つ付けないように建物の崩れ方計算すンの」
上条「クソ!これは何の真似だ!?」
一方通行「テメエが暴れるから四肢拘束させてもらったンだよ!
何か勘違いしてるみてェだからとりあえず話聞け!」
上条「断る!御坂を泣かせて、あいつの友人を連れ去るような奴の言葉に耳を傾ける気はねえ!!」
一方通行「イヤ、だからそれがだな?」
上条「すまない御坂・・・俺はここまでかも知れない・・・
いや、まだだ!そんな簡単に諦めてたまるか!こんな瓦礫、すぐに跳ね除けて・・・」
一方通行「だあああァァァ!!テメエも第七位みたく一人で熱くなって他人の話を全く聞かねェタイプか!!」
もういい、ちょっと眠っとけ そう言いつつ、一方通行は身動きの取れない上条の胸に手を伸ばす。
上条(よく分からないが、あいつに触れられるのはやばい!!
く、くそ・・・本当にここまでなのか・・・?)
何かないか、どうにか出来ないか、上条は全力で考える。
タイムリミットは一方通行の手が胸に触れるまでの数秒間。
あまりにも分が悪い勝負だったが
上条(!!)
彼は思いついた、思い出した。自分に残された最後の手段を・・・
一方通行「な、なンだァ!?」
ゆっくりと伸ばしていた彼の手を、突如迫り上がってきた何かが遮る。
驚いた彼は思わずその何かを握り締めた。
一方通行「なンだこりゃ・・・!?」
それの正体に気付いたとき、一方通行は今日何度目かの思考停止を強いられた。
上条の胸に届く寸前だった一方通行の手を遮ったもの、それは――
上条「おい最強・・・」
上条「熱膨張って知ってるか?」
――彼自慢の孝行息子であった。
一方通行「て、テメエ・・・自分の股間を膨張させて・・・!つーかでけェ!?」
一方通行「く、は、だが残念だったなァ!生憎触るんならどこでも構わねェンだ!」
このまま意識を飛ばしやがれ!そんな腐女子が聞いたら悶絶しそうな台詞を吐きながら、
一方通行は己の能力を行使しようとする。しかし
上条「あっふ、あんまり強く握らないで」
一方通行「な、なンだ、能力が使えねェ!?」
上条「残念だったな・・・能力を打ち消せるのが手だけだ、なんて誰が言った?」
一方通行「まさか・・・」
上条「股間の幻想殺し・・・ずっと隠してたが、まさかこんな所で役に立つとはな!!」
一方通行「て、テメエ・・・ッ」
上条「そしてゼロ距離だ!!歯を食いしばれよ最強・・・」
一方通行「しまッ!!!」
上条「俺の最弱は、ちっとばっか・・・あれ?」
一方通行「・・・?」
上条「両手両足、更に股間まで拘束されて・・・この状況でどうやって反撃すればいいのでせうか?」
一方通行「・・・」
上条「・・・」
一方通行「知るかボケええええええェェェェェ!!!!!」
渾身のベクトルチョップが、上条の頭部に直撃した。
一方通行「クソ、下らねェことに時間費やしちまったぜ・・・」ハァハァ
息を切らせながら一方通行は呟く。
一方通行「コイツは・・・死んではねェみてェだし放っとくか・・・」
目の前の、両手両足が瓦礫に埋もれ気を失っている少年を放置することに決め、踵を返す。
もうさっさと帰ろう、そんなことを考えながら顔を上げた先に、よく見知った少女が立っていた。
「お疲れ様です、とミサカは携帯を構えながら一方通行を労います」
一方通行「て、テメエ・・・」
立っていたのは、何故か携帯を前に突き出すように構えた妹達の一人。一方通行の目には、
無表情であるはずの彼女の顔に、悪意の塊のような笑顔が張り付いているように見えた。
そんな悪意ある無表情を出来る妹達を、彼はたった一人だけ知っている。
一方通行「11111号だな?何してやがる、その携帯は何だ!?」
11111号「正解です。写真を撮って遊んでいただけですよ、とミサカは簡潔に説明します」
矢継ぎ早に質問を繰り出す一方通行に、11111号は極めて簡潔に回答する。
だが、彼が聞きたいのはそんな答えではない。
一方通行「ナニを撮ってたかって聞いてンだよ!!」
11111号「ナニをって・・・『ナニ』をですよ、とミサカは意味深に言葉を濁します」
11111号の言葉に、一方通行の顔が青ざめる。
一方通行「テメエ、まさか・・・」
11111号「いえいえ撮っていませんよ?一方通行がかわいそうなツンツン頭の少年の四肢を拘束し、
その股間を弄る様など、断じて撮ってはいませんよ、とミサカは否定します。正直ご馳走様でした」
一方通行「」
11111号「『熱膨張って知ってるか?』『このまま意識を飛ばしやがれ!』
いやいや素晴らしい言葉の応酬でした、とミサカは何故か気恥ずかしくなってきたので顔を両手で覆います」イヤン
一方通行「うく・・・ァ・・・」
怒りか羞恥か、或いはその両方か 一方通行は言葉にならない言葉を搾り出し、
プルプルとその身を振るわせる。
11111号「しかし一方通行にそういう趣味があったとは・・・なんつーかお前特殊性癖持ちすぎじゃね?
とミサカは携帯を奪われないようポケットに隠しながらドン引きします」ウヘェ
一方通行「ふ、ふざけンなああああ!!!違ェよ!!!違ェから!!!!
つーか会話聞いてりゃそうじゃねェって分かっただろうがああああァァァァ!!!」
11111号「写真には会話は写りませんからねぇ、とミサカは面白い絵が撮れた事に大満足します」ウフフ
一方通行「出せ!すぐにその携帯を出しやがれ!!張り倒すぞクソがああああ!!!!」
11111号「オイオイ、他人に物を頼むときはそれ相応の態度ってもンがあるンじゃないですかァ?
とミサカは再びあなたの発言をなぞります。今度はそう簡単に渡さねーぞ」
一方通行「どォォォやら素っ裸に引ん剥かれて奪われるコースをお望みらしいなあァァァ!!!」
11111号「出来もしない事を言うなよ童貞坊や(笑)とミサカは嘲笑います
女の服の脱がし方なんて知らねーんだろ?」プゲラ
一方通行「ぎゃは!ビリビリに引き裂きゃいいだけだろォがよおォォォ!!!」
11111号「あ、やべえこいつマジでキレかけてやがる。
こんなところで強制ストリップさせられるなんてゴメンだぜ
とミサカは戦慄し逃げ出します。アデュー」ダダッ
一方通行「待てコラアアァァァア!!!!!」バビュン
ウヒョーニゲロニゲロートミサカハ(ry
マチヤガレエエエエ!!!
―――――――――――――
「はぁ、不幸だ・・・」
その晩、上条当麻はそんな言葉を呟きながら、一人帰途についていた。
あの後、自分のことを探しに来た御坂に瓦礫の山から助け出され、そして彼は真実を知った。
彼女の言う汚された友人というのが、ゲコ太のぬいぐるみのことだという、どうしようもない真実を・・・
御坂が本気で悲しみ泣いていたことは事実なのだが、それでも上条は
「そんなしょぼい理由かよ!」とつっこまずにはいられなかった。
結果、「しょぼいって何よ!」と激昂する御坂の電撃をまともに喰らい、再び意識を失うこととなった。
彼も年頃の男の子である。命がけで戦うというのに、
そんな理由ではテンションが上がらないのも仕方のないことだろう。
上条「もうこんな時間か・・・インデックスの奴怒ってるだろうな・・・!?」
唐突に、彼は思い出した。そもそも彼が出かけていた理由、
それは空腹を訴える同居人の為の買出しだったということを。
上条「ああああヤバイ!あいつ絶対に怒ってる!!せめて今からでも何か買って・・・
さ、財布がない!?瓦礫に飲まれたのか!?不幸だああああ!!!!」
頭を抱え叫ぶ彼に――
「とうま・・・」
上条「!?」
消え入りそうな程儚げで、それでいて、とてつもなく冷めた声がかけられる。
上条「い、いいいいい、イン・・・」ガクガク
「とうま・・・」
「ミィツケタ」
一方通行「あァァァちくしょおォ・・・」
ある日の朝、一方通行は研究所の一室で頭を抱えて唸っていた。
妹達も、研究員も、何時も実験実験と小うるさい天井ですら、その部屋には近付こうとしない。
何故彼がこんな状況に陥っているのか、理由は簡単である。「野放しにすると危険だから」
というのも先日、彼は11111号から携帯を奪い取るために本気で彼女の服を引っぺがしたのだ。
それも彼女が研究所に逃げ込む直前に。
携帯を奪い取り、11111号に撮影された恥ずかしい写真を削除する。
一方通行の目的は本当にそれだけであり、他意など全く無かったのだが
突如下着姿に剥かれる11111号を見た、事情を知らない第三者達の目には
「一方通行がとち狂って妹達の一人を犯そうとしている」ようにしか映らなかった。
研究者達に取り囲まれ、一方通行は慌てて弁解しようとする。
しかし事情を説明しようにも写真は既に削除済みで、仕方なく11111号に身の潔白を証明させようとしたが、
あろう事か彼女は芳川桔梗に抱きつき、時折彼の様子を伺いながら泣き真似をしていた。
かくして一方通行はレイプ魔の烙印を押され、研究員や妹達の冷たい視線を浴びながら、
研究所の片隅の小さな部屋に軟禁されることとなった。
無論、彼の力を持ってすれば部屋から抜け出すどころか研究所ごと破壊することも容易なのだが、
そんなことをすれば「レイプ魔が脱走した」と大げさに騒がれ、
今回の一件が研究所の外にまで漏れるのは目に見えている。
それだけは絶対に避けねばならない。
一方通行「つーか何なんだよ、「妹達を20000体虐殺しろ」なンてクソッたれな計画立てた奴等が、
どうして今更妹達が一人犯されそうになったくらいであんなにキレるンだよ・・・」
わけがわかンねェ・・・そんなことを呟きながら、一方通行は深い溜息をついた。
そもそも、そのレイプ未遂すら実際には誤解だというのに。
コンコン、とドアをノックする音が響く。
一方通行「あァ?誰だよ、勝手に入ってきやがれ」
「お邪魔します、とミサカは手を振り上げながら部屋に押し入ります」
見知った顔の少女が、能天気な声を上げ、手を振りながら入ってくる。
一方通行「押し入るの使い方間違ってンだろ・・・テメエは11111号だな?」
レイプ魔の烙印を押された今の自分に無警戒に近付いてくるということは、
恐らく自分をこんな状況に陥れた張本人に違いないだろう。一方通行はそう判断した。
11111号「よくお分かりで、流石はミサカの服を引っぺがし
体中のホクロの数まで数えた一方通行ですね、とミサカは賞賛します」
一方通行「数えてねェよ!どこで覚えて来るンだそォいうの・・・」
ハァ、と頭を抱え、一方通行は11111号から顔を逸らす。その表情は、何かもう心底疲れきっていた。
11111号「おやおや、何やら元気がありませんね。ちゃんと飯食ってるのかモヤシ?とミサカは心配します」
一方通行「元気の出る要素が全くねェだろ・・・誰かさンのせいでよォ」
あまりにもナメた口を利く今回の騒動の原因に、
本当なら全力の一撃でも喰らわせてやりたいところだが、一方通行はぐっと堪える。
だって喜ばれるだけだし。
11111号「自業自得じゃね?そんなことより大勢の前で
下着姿披露したミサカのほうがダメージでけえよ、とミサカは思い出して赤面します」
一方通行「全然顔色変わってねェし、それこそ自業自得だろォが。
むしろテメエにとっちゃ望むところなンじゃねェのか。つーか何しに来たンだよ?」
11111号「君を笑いに来た。そう言えば君の気が済むのだろう?とミサカは良い声で言い放ちます」
一方通行「イヤそォいう下らねェ小ネタはもォいいから・・・」
11111号「本当にお疲れのようですね。そんな一方通行クンに朗報です、とミサカは人差し指を立てます」
一方通行「何なンだよそのキャラは・・・」
11111号「研究所に広まった誤解は解いておいて上げました、とミサカは伝えます」
一方通行「マジでか」
11111号「マジですマジ、被害者であるミサカの説得なので、皆結構簡単に納得してくれました。
もう部屋の外に出ても大丈夫ですよ、とミサカは引きこもりの一方通行を勇気付けます」
一方通行「・・・ナニ企んでやがるンだ?」
11111号「企んでいるとは酷い、100%善意の行動です、とミサカは目を逸らしながら答えます」
一方通行「目ェ見て話せ。テメエが善意の行動取るなンざ有り得ねェんだよクソが」
11111号「流石にそれは酷くね?こんな可憐な乙女捕まえてその言い草はなくね?
そんなだから童貞なんだよこのモヤシが、とミサカは童貞の一方通行を嘲笑います」
一方通行「もォそれは聞き飽きたからさっさと企ンでること話しやがれ!」
11111号「わかったわかった、ちゃんと説明してやるよ、
とミサカは『聞き飽きた』と言いつつちょっとイラついてる一方通行にニヤニヤしながら答えます」
一方通行「ブチコロスぞ」
11111号「簡単に言うとですね、あなたが00001号のアホ毛を直したのと同じ理由です、とミサカは説明します」
一方通行「同じだァ?」
11111号「ぶっちゃけると、一方通行に引きこもられてちゃつまらないんですよ、
ミサカはあなたのイヤガラセを間近で見るのが大好きなのです
とミサカはサラリと最悪なことを言ってのけます」
一方通行「・・・自分の手は汚したくねェ、でも被害を受けて頭抱えてる他人の姿は見てェ
つまりはそォいう事か。で、俺に汚ェ仕事をさせる為に、ここから出してやる、と?」
11111号「Exactly(その通りでございます)、とミサカは頷きます」
一方通行「・・・」
目を閉じ、うんうんと頷く11111号に、流石の一方通行もしばし絶句する。
しかし同時に
一方通行(そォいやこいつとンでもねェ腹黒だったな・・・この位言い出しても不思議じゃねェか)
とも思う。
むしろ、「やりすぎたと思った」や「悪く思っている」などという風に
殊勝な態度をとられるよりも、遥かにしっくりとくる。
一方通行「・・・なるほどなァ、そう言うことなら納得しといてやるぜ
しかし、テメエもとンだ外道だなァオイ」ククク
11111号「いえいえお代官様程では・・・とミサカは時代劇の悪徳商人のように謙ります」フフフ
二人の悪魔が、互いの外道振りを笑いあう。なんともおぞましい光景である。
一方通行「それじゃァちっと出てくるか」
そう言いつつ部屋から出て行く一方通行を、11111号はいつものように、
悪意の塊のような無表情で見送った。
11111号「一方通行・・・私は確かにあなたのイヤガラセを見るのが好きですが・・・」
誰もいなくなった部屋で、11111号は一人クスクスと嗤う。
11111号「あなたにイヤガラセをするのも、同じくらい好きなんですよ、とミサカは独白します」クスクス
――――――――――――
「あら、出てきたのね一方通行」
部屋から出て適当に歩いていた一方通行に声がかかる
一方通行「ん、芳川か・・・」
芳川「昨日はごめんなさいね、気分はどう?」
どうやら本当に誤解は解かれているらしい。一方通行は密かに安堵する。
先程までの11111号の話が全て嘘で、誰かと出会った瞬間悲鳴を上げられる、
というケースもある程度覚悟していたのだが、どうやらその心配は杞憂だったようだ。
一方通行「ケッ、あンな濡れ衣着せられたて、良い訳ねェだろォが」
芳川「そうよね、本当にごめんなさい。」
一方通行「フン・・・」
ペコリと頭を下げる芳川を興味無さげに眺める一方通行。彼の頭の中は今、
研究員達にどんな仕返しをしてやるかで一杯なのだ。
芳川「でも意外ね」
一方通行「あァ?」
そんな彼の思考は、芳川の一言で強制的に中断されることとなる。
芳川「あなたがゲイだったなんて」
一方通行「!!?」
コイツは今、なんと言った?
ゲイ?どォいう意味だ?男色家、誰が?・・・俺が?
困惑する一方通行を芳川は優しげに見つめる。
芳川「大丈夫よ、同性愛は恥ずかしいことではないわ
少しずつではあるけれど、世界中でゲイに対する偏見は減っていってるし
海外の著名な俳優やミュージシャンにも多いのよ」
そうじゃねェ、そンなことが聞きたいンじゃねェ、俺が、ゲイ?何故、どうして?
一方通行「だ・・・誰が・・・」
混乱の坩堝の中、ようやくそれだけを搾り出す。
芳川「誰から聞いたかって?11111号よ。彼女は必死になって説明してくれたわ
『一方通行はゲイなのだから自分をレイプしようなどとしていない』とね
納得しない私達に証拠の写真まで見せてくれて・・・」
写真・・・あの時のか?バカな、消したはずだ!他にもあった?バックアップを取られていた?
・・・いや、そんなことはどォでもいい、それよりも・・・
一方通行「あンのクソガキがああああァァァァァアアア!!!!!!!!」
一方通行は吼え、来た道を猛然と引き返す。自分が軟禁されていた部屋へ、11111号がいた部屋へ。
芳川が何事か叫んでいたようだが、彼の耳には届かない。一方通行は今、漆黒の殺意に塗り潰されていた。
一方通行(コロス、コロス、コロスコロスコロスコロスコロス!!!ブチコロス!!!!)
長きに渡って己に課してきた不殺という枷を、彼は完全に外していた。
一方通行「ギャハハハハハ!!!11111号!!!望み通りぶち殺しに来てやったぜェェェ!!!」バン
ドアを開けるのも面倒だ、とばかりに能力を使ってドアを弾き飛ばす。しかしそこには既に誰もいない。
代わりに机の上に書置きのようなものが残されていた。書かれていたのはたった一言だけ。
『ちゃお(はぁと』
一方通行「クソがあああああああ!!!!!」
机ごと書置きをぶん殴って粉砕する。
反動で床まで砕け、底が見えないほど深い穴が開いたが、彼にとってはどうでもいいことである。
騒ぎを聞きつけた一人の研究員が一方通行に近付く。一方通行の教育で紳士化した天井だ。
天井「お、落ち着いてください一方通行様!研究所を破壊するおつもりですか!?」
一方通行「いいィィ所に来たなァ天井くゥゥン!!!実験開始してやンよォ!!!
手始めに11111号を俺の前に引き摺って来いやァァァァ!!!!」
天井「ヒィィとにかく落ち着いてください!
貴方がゲイだと言うことは誰も気にしていませんし、外部にも漏れていませんから!!」
一方通行「テメエもかあああァァァァァ!!!!!」
こいつもか!こいつも俺がゲイだなンて与太話を信じてやがンのか!!
天井「そ、それにですね、貴方がゲイで、もし望むのなら・・・」
一方通行「あ・・・?」
待て、コイツは何を言おうとしている?
天井「もし望むのなら、私はこの身を貴方に・・・」
一方通行「」ブッツン
あまりにも気持ち悪い天井の言動に、
ついに一方通行の理性を繋ぎ止めていた最後の何かが音を立てて切れた。
一方通行「オオオオォォォオオアアアアアアァァァァ!!!!!」
両手で額を覆い叫び声を上げる彼の背中から、得体の知れない黒い何かが噴き出す。
元々、能力に頼りきっている分だけ、彼は非常に打たれ弱い。肉体的にも、精神的にも。
そして気が長い人間でもない。彼は他人にイヤガラセをするのは大好きだが、
自分の身に、或いは心に、他人が危害を加えようとすることを決して許さない。
それでも、生きていくうちに彼は自然と感情の制御方法を覚え、
多少の悪口や自分に向けられた悪意をある程度受け流すことができるように成長していた。
しかしもはやそんな事は関係ない。
11111号・・・彼女は些か『やりすぎた』
――――――――――――
一方通行「あァー・・・」
やりすぎちまった・・・そう呟きながら、ほんの少し前まで研究所だった地で
一方通行は今朝と同じように頭を抱えていた。
一方通行「怒りで我を忘れるなンてホントにあるンだなァ・・・」
かすかに覚えているのは、逃げ惑う研究員達の姿、絶句した様子でこちらを眺める妹達、
そして「不幸だ」等と言いながら消し飛んだ、偶然研究所の近くを歩いていたどこかで見覚えのある男。
一方通行(最後のは気のせいだった気がする・・・)
「暴れたわねぇ・・・」
沈み込んでいた彼に声がかかる。
一方通行「生きてやがったか芳川ァ」
芳川「なんとかね・・・私だけじゃなくて所員も妹達も全員無事よ。
研究所がなくなってしまって、明日からどうしようってレベルだけれど」
一方通行「ハン、そいつァよかったな」
理性を吹っ飛ばして好き勝手暴れたつもりだったが、どうやら最低限の判断力は残っていたらしい。
犠牲者無しとは結構なことだ、と一方通行は消し飛ばしたはずの男の事を速攻で頭から追い出した。
芳川「でも、こんなことになるなんてね・・・」
一方通行「チッ悪かったとは思ってンよ」
芳川「いえ、悪かったのは私達もよ。少しからかい過ぎたわ」
一方通行「あン?どォいうことだァ?」
芳川「あなたがゲイだなんて、最初から誰も思ってないわ。
というより、そもそもそんな話を聞かされていたのは私と天井だけ」
一方通行「つまり・・・?」
芳川「あの子・・・11111号と私と天井の三人で組んで、あなたにちょっとしたイヤガラセを仕掛けたのよ」
日頃の恨みにね、笑いながら芳川は最後にそう付け加えた。
一方通行「ハァ・・・そういう事だったか・・・じゃァそもそも俺が小部屋に軟禁されたのも?」
芳川「半分はお芝居ね。本当は私と天井だけで11111号を追い掛け回すあなたを部屋に連れて行く予定だったのだけど
派手に彼女の服を剥ぎ取るものだから大勢の研究員を巻き込むことになってしまったわ」クスクス
一方通行「ひゃははは・・・くっだらねェ」
笑いながら、一方通行はごろんと仰向けに寝転がる。
芳川「意外ね、もっと烈火のごとく怒ると思っていたのだけど」
一方通行「こンだけ暴れた後だ、疲れてンだよ」ヒャハハ
芳川「そう、派手に暴れたものね。何とかあなたが制御していたんでしょうけど、
犠牲者が出ていないのが不思議なくらいよ
・・・そういえば一人見覚えのないツンツン頭の少年がやけに狙われていたけど、彼は無事かしら」
一方通行「そんな奴ァいなかった」
芳川「えっ」
一方通行「いなかったンだ」
芳川「・・・そうね、いなかったわね」
強い口調で念押す一方通行に、甘い芳川は簡単に折れた。
かわいそうな犠牲者など、何処にもいなかったのだ。
「おいおい何か爽やかに談笑してるけど明日からの生活どうしてくれんだ?
とミサカは和やかな雰囲気の二人に水を注します」
一方通行「ン・・・11111号か」
11111号「いやしかしここまで暴れるとは正直思っていませんでした、
とミサカは自分の見通しが甘かったことを素直に認めます。
芳川をはじめ研究員の皆様にはご迷惑をお掛け致しました」ペコリ
芳川「いいのよ、悪乗りしたのは私達だしね」
芳川苦笑いしつつそう言い、深く頭を下げる11111号の顔を優しく上げさせる。
一方通行「オイコラ俺には謝ンねェのか」
11111号「チッうっせーな、反省してまーす、とミサカは器の小さい一方通行に謝罪します」
一方通行「やっぱお前だけは殺しとくべきだったか」
11111号「いやいや格好よかったですよ、あの黒い翼、厨二病の塊って感じで(笑)
とミサカは先程までの一方通行の姿を思い出して吹き出します」プクク
一方通行「黒い翼なンて生えてたのか俺は・・・」
芳川「えぇ、上層部もあなたの能力が進歩したことを随分喜んでいるらしいわよ」
一方通行「あァそォですか、どォでもいいわ・・・」
11111号「一方通行、もう一度厨二モードになってくださいよ、今度は写真取りますから、とミサkプギュ」
ついに一方通行のベクトルチョップが、11111号に炸裂する。
彼女は潰されたカエルの様な声を出しながら、数十メートルほどぶっ飛んでいった。
芳川(何かアヘ顔しながら飛んでった・・・)
一方通行「あァ・・・やっちまった・・・アイツ殴っても喜ぶだけなのに・・・」
まァ殴ったときちょっと気持ちよかったからいいか・・・そんなことを思いながら、彼は立ち上がる。
一方通行「疲れたから俺ァもォ帰るぞ、研究所はどうにかしとけ」
芳川「あら、やるだけやって一人だけ帰ろうだなんて随分勝手ね」
一方通行「ハッ、心配しなくても今日の礼はそのうちたっぷりしてやンよ。首洗って待ってやがれ」ケラケラ
ケラケラと笑いながら彼は歩き出す。散々暴れた為か、不思議とその心は晴れやかだ。
一方通行(さァて明日は誰に何をしてやろうか)
今回の、彼がブチ切れることになった一件も
元を正せば身から出た錆なのだが、彼はそんなことは一切気にしない。
今更己の行動を改めるつもりも全くない。
一方通行(イヤガラセの仕返しだァ?上等だ、好きなだけやりゃァいい)ククク
彼は一人笑う。
一方通行(後で万倍にして返しゃいいだけなンだからなァ)
能力だけでなく、その性格の悪さまで進化させ、彼は歩き続ける。
444 : >>1[] - 2011/01/16 21:48:16.78 83BZm3Dio 208/326打ち切りEND
完全にネタ切れである
いやはや一話完結型のギャグSSってのは難しいねぇどうも
ここまで読んでくれてありがとなお前等
上条さんも草葉の陰で喜んでいることだろうよ
帝凍庫クンのAAは用法用量を守って正しくお使いください
452 : >>1[sage] - 2011/01/17 01:29:14.13 9Jp8isK9o 209/326打ち切りと言ったな、あれは嘘だ
いやスマン、なんとなくネタが浮かんできたからもう少しだけ投下していくわ
ネタが思いついたらちょいちょいっと投下して行くスタイルになるから、
多分投下超遅くなるし何時いなくなるかもわからないけど、もうちょっとだけ付き合ってくれぃ
「さァて、今日はどうすっかなァ」
とある日の朝、例によって例の如く、一方通行は今日も暇を持て余していた。
先日研究所を完全に破壊し尽してしまったため、研究所でダラダラと時間を潰すこともできない。
余談だが、研究所が壊れた反動で芳川はそのままニートになってしまったらしい。
こんなとき、彼が取る行動は決まっている。
一方通行「誰かの家にイヤガラセしに行くかァ」
誰に聞かせるでもなく一人そう呟き、彼は懐からメモ帳を取り出す。
一方通行「えェーっと、この時間帯はァ・・・」
そのメモ帳には、これまで彼と関わった人物のスケジュールがビッシリと書き込まれていた。
学園都市第一位の前には、どんな人間もプライバシーなどあって無いようなものなのである。
一方通行「第四位が家を空けてるなァ」ニタァ
悪意に満ちた笑みを浮かべ、本日の獲物を決定する。
――――――――――――
一方通行「お邪魔しまァすっと」
誰もいないはずの第四位、麦野沈利の家に彼は易々と侵入する。
どのような電子ロックも、通報装置も、彼の能力の前には完全に無意味なのだ。
一方通行「相変わらず鮭臭ェ部屋だなオイ」
女性の部屋に無断で侵入しておきながら、彼はそんな失礼な独り言を言う。
そもそも半分は、以前彼がイヤガラセで部屋中に撒いたシャケフレークのせいであるというのに。
一方通行「さァてと、何をしてやるか・・・ん?」
部屋を見渡していた彼の視線が、ベッドに集中する。
最初は気付かなかったが、ベッドには小さなふくらみができていた。
一方通行(誰か寝てやがるのか?あのふくらみ様から察するに、第四位じゃなさそォだが・・・)
そっとベッドの前まで近付き、そこにいる人物を確認する。
そこには一方通行の知らない、小さなショートカットの女の子が寝息をたてていた。
一方通行(誰だこれ・・・第四位の友達っつーには年齢が合わねェよなァ・・・
アイテムの一員だって考えるのが無難か。まァ寝てるンなら問題ねェ、さっさとやる事やっちまおう)
眠っている少女から目を離し、一方通行はさっさと作業に取り掛かる。
「ふあぁ・・・超よく寝ました・・・」
「あれ、ここは・・・そっか、麦野の家に超泊めてもらったんでしたね」
軽く伸びをしながら、ショートカットの少女―絹旗最愛は目を擦りながら現状を確認する。
昨日の仕事は絹旗がフルで働くことになり、くたくたに疲れ果ててしまった為、
近くにあった麦野の家に泊めてもらうことにしたのだ。
絹旗(麦野は確か朝一で超用事があるって言ってましたね、
昼には戻るとも言ってましたし、それまで超留守番をしておきましょうか)
ふああと大口を開けて欠伸をし、二度寝をしようとする。
しかしそんな彼女に
一方通行「ンお、起きたのか」
絹旗「!?」
学園都市の白い悪魔が反応した。
絹旗「だ、誰!?超誰ですか!?」
一方通行「え、イヤお前が誰?」
絹旗「え、わ、私は麦野の・・・そ、そうだ!
ここが学園都市第四位、麦野沈利の部屋だと超知っての狼藉ですか!?」
一方通行「知ってンよ。つーか狼藉ってなンだよ、何もやってねェだろ(まだ)」
絹旗「超知ってるんですか・・・では第四位の部屋なら超金目のものがあると考えて侵入してきたんですね!?」
一方通行「いや話聞けよ、何もやってねェって。いきなり泥棒扱いしてンじゃねェぞ」
心外だ、と言わんばかりの口調で淡々と話す彼だが、実際は泥棒なんぞよりも遥かに性質が悪い。
絹旗「泥棒じゃない・・・?ではあなたは超何者なんですか?」
一方通行「他人に何者か聞く前にまずテメエが名乗れよ
俺は第四位の部屋に来たはずなのに何でテメエみてェなチビッ子がいるンだァ?」
絹旗「ち、チビッ子!?超失礼ですねあなた!!私は麦野の超知り合いの絹旗最愛です!」
一方通行「ふゥン、それでその絹旗さンは第四位の部屋で何してるンですかァ?」
絹旗「昨日泊めてもらって、そのまま超留守番を・・・ハ!そういえば超鍵がかかっていたはずです!
あなたは一体どうやって入って来たんですか!?超何者なんですか!?」
一方通行「何者かっつわれてもなァ・・・第四位の部屋に自由に入れるレベルの存在ってとこかァ」
絹旗(麦野の部屋に超自由に入れる存在?それって・・・)
絹旗「それはつまり、麦野の超彼氏だということですか!?」
一方通行「」
一方通行としては、暗に第四位よりも序列が上の存在だということを
仄めかすつもりの発言だったのだが、どうやらそうとは受け取ってもらえなかったようだ。
一方通行(なンかキラッキラした目で見てやがる・・・)
絹旗「・・・」キラキラ
一方通行「あァ、まァそンなところだ・・・」
否定して、「じゃあ何者か」とまた尋ねられるのも面倒だと判断した一方通行は
絹旗の疑問をさっくりと肯定した。
絹旗「うひょう本当に!?麦野め私達に黙ってこんな超ビジュアル系な彼氏を作るなんて!!」
一方通行(テンション高ェなァこのチビ・・・)
絹旗「許せません!超許せません!とりあえずメールで超皆に報告してやります!
麦野に超からかいのメールを入れてやります!!」
一方通行「盛り上がってるところ悪いンだけどよォ」
絹旗「はい、超何でしょうか彼氏さん」
一方通行「今アイツに『サプライズプレゼント』をちょっと仕掛けてンだ
だからあンまり話広げないで貰えねェか」
絹旗「う・・・超わかりました、それでは麦野へのメールは超控えます」
一方通行「すまねェな。それじゃ今から台所に仕掛けるからよ、オマエこっちに来るんじゃねェぞ?」
そう言い残し、一方通行は台所に消えていった。
絹旗(サプライズプレゼントですって・・・超羨ましいです・・・)
絹旗(とりあえずアイテムの皆にメール回して・・・)
絹旗(早!?フレンダの返信超早!?あ、やっぱり超発狂してますね)
絹旗(お、垣根さんからの返信も早い・・・「写メよこせ」ですと、
流石第二位、麦野の超弱みを握るつもりですね)
――――――――――――――
垣根(麦野に彼氏・・・だと?)
御坂「垣根さん、どうしたの?携帯見つめて」
麦野「固まってないで早く進行しろよ、会議進まないじゃない」
垣根「あ、あぁすまねえ」(麦野のいない時間帯を狙って、サプライズプレゼントを仕掛けに来る彼氏・・・)
御坂「ちょっと、顔色悪いわよ?風邪でも引いてるんじゃ・・・」
麦野「垣根は風邪ひかないわよ」ケラケラ
垣根「どういう意味だコラ」(イヤな予感がする、けど本物の彼氏だったら?あぁぁ言い出せねえ!)
垣根(写メ送ってもらって判断するか・・・)ポチポチ
――――――――――――――
絹旗(んー、流石に超勝手に写メ送っちゃうのは超悪いですよね、麦野にも彼氏さんにも)
一方通行「ふゥ、まァこンなもンか」
絹旗「あ、もう終わったんですか?超早いですね」
一方通行「おォ、今回は簡単な仕掛けしかしてねェからな」
絹旗(今回は、ということはちょくちょくサプライズをプレゼントしているんですね・・・
くぅ、超羨ましいです!)
一方通行「それじゃ俺は帰るわ」
絹旗「あれ、超帰っちゃうんですか?麦野のこと待たなくても?」
一方通行「俺がいたらサプライズになンねェだろ」
絹旗「それもそうですね、では麦野が帰ってきたら超それとなく台所に誘導しておきます」
一方通行「おォ、頼むわ。アイツがサプライズに引っかかるまで俺のことは言うなよ?」
絹旗「超わかっています!麦野がサプライズに引っかかってビックリする姿を超写真にとってやります!」
一方通行「・・・そォか、頑張れよ」
麦野「ただいまー」
絹旗「超お帰りなさい!遅かったですね」
麦野「んー、何か会議の進行が捗らなくてね」
絹旗「超会議、ですか?なんのです?」
麦野「そのうち話すわ。それより何かアンタそわそわしてない?」
絹旗「そ、そんなことは超ありませんよ?」
麦野「そう?」
絹旗(流石はレベル5、超鋭いです・・・)
絹旗「そ、そんなことより麦野、超咽渇いてるんじゃないですか?」
麦野「ん、そうね 何か飲もうかしら」
台所へ向かう麦野。その背後で、絹旗はシャッターチャンスとばかりに携帯を構える。
絹旗(さぁさぁ!彼氏さんからのサプライズに超乙女な反応を超見せるがいいです!)ククク
麦野が台所へ入る。
その次の瞬間・・・
麦野「ギャアアアアアアアア!!!?」ビシャビシャビシャ
絹旗「超撮ったああ!って、む、麦野おおおおおお!?」
四方八方から、麦野に向かって何か赤いものが襲い掛かった。
赤くて丸くて小さくて、そんなものが大量に彼女にぶつかり、
破裂して中に入っていた液体状のものをぶちまけ、彼女を朱に染めた。
麦野「これ・・・イクラ?」
絹旗(彼氏さあああん!?超なんですかこれえええ!!!
大量のイクラぶっかけるのが超サプライズプレゼントですかああああ!?)
絹旗「あ、あの麦野・・・これは私では・・・」
麦野「きーぬはたぁ?」
絹旗「ひゃい!?」
麦野「オ・シ・オ・キ・か・く・て・い・ね」
絹旗「ひいいいいいいこれは超私の仕業ではあああああ!!!」
麦野「携帯まで構えてるくせに何言ってんだチビガキがああああああ!!!!」
―――――――――――――
垣根「はぁ・・・結局メール返ってこなかったし、麦野にも言い出せなかった・・・」
垣根「あいつ大丈夫かね・・・」
そんな心配をしている垣根の視線の遥か先の東の空に、極太のビームが輝く。
間違いなく、原子崩しのビームである。
垣根「・・・絹旗生きてっかな」
絹旗「む、麦野!超話を・・・話を・・・!!」
麦野「ギャハハハハ!!逃げろ逃げろ!!少しでも長く私を楽しませろォ!!!」
絹旗「ヒイイイイィィィ!!!」
その後、駆けつけた垣根により麦野はなんとか鎮圧されたが、
勝手な勘違いをした、ということで絹旗は減給3ヶ月の刑に処されたという
「今日もいい仕事したぜェ」
麦野の部屋にイクラのトラップをしかけ、彼女がそれに掛かって荒れ狂う様を物陰から堪能した後、
一方通行は缶コーヒー片手に上機嫌で帰途についていた。
あんまり気分がいいから次に擦れ違った奴にはコーヒーをプレゼントしてやろう、頭から
ニヤニヤと笑いながらそんな物騒な事を考えていた彼だが、不自然な事に気付く。
一方通行(何でこンなに人がいねェんだ?)
元々人通りの多い道ではないが、それにしても少なすぎる。
というより数分前に見かけた露出狂染みた格好をした赤毛の女性を最後に、人っ子一人見ていない。
まだ日も明るいこの時間帯だというのに、この閑散さはいくらなんでも異常である。
とはいえ、一方通行はそんなことに興味を抱かない。
彼が今考えている事と言ったら、精々
一方通行(コーヒーぶっかける計画が台無しだなァ)
くらいのことである。仕方なく、彼は少しだけ残しておいた缶コーヒーの中身を飲み干した。
そんなわけで少しだけ気分を害していた一方通行の視線の先に、ようやく一人の人物の姿が映る。
真っ黒いコートを着た、2mはある長身の、どう見ても怪しい赤い髪の男の姿が。
一方通行(何だありゃ?近くで仮装大会でもやってンのか?)
向こうも一方通行に気付いたのだろう、何やら驚愕した様子で目を見開き、彼に近寄ってくる。
「キミは何者だ?」
一方通行「あァ?」
何を言っているのだろうかこのデカブツは、と一方通行は首を傾げる。
「人払いのルーンを刻んでいたはずなのに、どうしてキミはここに近づけたんだ!?」
一方通行「人払い、だァ・・・?」
黒いローブを着た男の言葉に一方通行が反応する。
ルーンとやらが何かは知らないが、どうやら人が全くいなかったのはこの男のせいらしい。
つまり・・・
一方通行「テメエかァ、俺の愉快で素敵な計画を邪魔してくれたクソ野郎は・・・」
誰とも擦れ違わなかったのも、コーヒーをぶっかける事が出来なかったのも、目の前の男のせいだ。
どんな理由で人を払っていたのかは知らないが、一方通行は計画を中止する原因となった男に軽い苛立ちを覚えた。
「計画だと・・・やはりキミか!彼女を狙っているのは!!!」
一方通行の『計画』という言葉を聞いて、男は突如大声を出す。
一方通行「は、彼女?なんだそりゃ」
「いいか、僕は誓ったんだ・・・何があろうと彼女を守ると!」
一方通行「イヤ、ちょっと話聞いてもらえませン?」
「キミが何者かは知らない。だが、彼女から平穏を奪おうと言うのなら・・・」
一方通行「話聞けっつってンだろォが!!!!」
ガン!と彼は思い切り右足を踏み込む。その衝撃で地面が裂け、
周囲の建物が崩壊しそうな程の激しい揺れが起こる。震度6弱と言ったところか。
「」
一方通行「お話聞いてくれる気になりましたかァ?」
「あ、はい・・・」
一方通行「まずお名前はァ?」
ステイル「ステイル=マグヌスです・・・」
一方通行「ハイ、じゃァステイルクン、どうして人払いなンてしてたンですかァ?」
ステイル「そ、それは彼女を・・・ハッそ、そうだ!」
一方通行「あァン?」
ステイル「さっきも言っただろう!僕は彼女を守ると誓ったと!
キミがどれ程の力を持っていようと、この命に代えても彼女の元へ行かせはしない!!」
圧倒的な力を見せられ一度は折れかけた心を奮い立たす。全ては大切な彼女を守る為・・・
そんな彼を前に、一方通行は頭を抱える。
一方通行「ったく、いつから学園都市はこンなに他人の話を聞かない奴等ばっかになっちまったンだァ?」
一方通行「いいか良く聞け!そっちの方向には俺の家があンだよ!
だから俺はこの先に行く!テメエの言う彼女なンてモンは知らねェ!」
ステイル「・・・悪いが信用できないな」
一方通行「だったらどうするよ?」
ステイル「力ずくでも、キミを排除する!!」
一方通行「ひゃは!面白ェ!この俺にそンな口を利けるバカがまだいたとはなァ!」
ステイル「・・・『Fortis931』」
一方通行(・・・気配が変わった、本気で仕掛けてくるつもりだな)
ステイル「炎よ、巨人に苦痛の贈り物を!!」
ステイルが言葉を発すると、彼の手に炎で出来た剣が現れる。
そんな、本気で殺しにかかってこようとする男を前に一方通行は――
一方通行「ぶふッ」
ステイル「!?」
思いっきり噴き出していた。
ステイル「な、何を噴き出しているんだキミは!?」
一方通行「ひゃひゃひゃ!だってオマエ、何だよ今のは!」ゲラゲラ
ステイル「い、今の・・・?」
一方通行「『巨人に苦痛の贈り物を(キリッ』じゃねえよ!真顔でそんな事言われたら噴くしかねえだろォが!!」
ステイル「いやあの、魔術ってそういうものなんで・・・」
一方通行「魔術!魔術!?いい歳こいて魔術はねェだろ!」ゲラゲラゲラ
魔術の存在など知らない、欠片も信じない一方通行は、ステイルの言葉をゲラゲラと笑う。
ステイル「くぅ、こ、これだから頭の固いこの街の人間は・・・!
それにいい歳だって?僕はまだ14歳だ!!」
その言葉を聞き、笑い転げていた一方通行の動きがピタリと止まる。
一方通行「14歳・・・マジでか?」
ステイル「大マジだ」
一方通行「その身長で・・・?」
ステイル「悪かったな!」
一方通行「・・・」
ステイル「・・・」
一方通行「ぶはッ」
ステイル「!?」
一方通行「イヤイヤ無ェよ!有り得ねェ!14歳でその身長!?
え、成長期終わってねェの!?最終的に何処までデカくなンだよ!!
3メートルの宇宙人にでもなる気かテメエは!!」ゲラゲラゲラ
ステイル「ぐぐぐぐ・・・」ギリギリ
一方通行「いやァでも14歳ってことは正真正銘の中二か、それなら魔術なンてェ設定つけるのも頷けるなァ」
ステイル「言わせておけばあ!!」
うんうん、と勝手に納得する一方通行にステイルは掴み掛かるかの様な勢いで吼える。
ステイル「いいか!キミが知らないだけで魔術は存在する!!
この世界はキミのちっぽけな頭で測れるほど狭くないんだ!!!」
一方通行「あァハイハイ、魔術はあるンですねェ、スゴイスゴイ」ケラケラ
ステイル「ぐぬぬ・・・ん?」
一方通行にからかわれながらも、彼はハタとある事に気付く。
ステイル「魔術のことを知らないということは、キミは本当に彼女を狙っているわけじゃないのか?」
一方通行「だから最初からそォ言ってンじゃねェか。誤解が解けたンなら行かせて貰うぜ?」
ステイル「・・・待て」
一方通行「何なンですかァ?」
ステイル「彼女を狙っていないのはわかった。だがね・・・
ここまでコケにされて黙って道を譲ってやるほど、僕はお人好しじゃないんだ!」
一方通行「ほォ・・・で、どうすンだ?」
ステイル「決まっている!キミを叩きのめして土下座の一つでもしてもらうさ!」
一方通行「ぎゃは!いいねェ土下座!俺が勝ったときにもして貰おうか!!」
一方通行「ただし俺にじゃねェ・・・全国のショタコンどもにだ!!!」
ステイル「は!?な、何故そんなことを僕がしなければ・・・」
一方通行「決まってンだろォ、テメエが残念な14歳だからだ」
ステイル「ざ、残念だと!?」
一方通行「いいか、14歳の外人男児つったら頭の腐ったショタコンどもなんて字面だけで涎垂らすレベルだぞ?
そこで出てくるのがオマエ、そりゃショタコンもブチギレるわ『こンなもンショタじゃねえ!』ってなァ」
一方通行「だからテメエは『期待させてすいませン』って頭の可哀相な連中に謝る義務があンだよ!
手始めにさっき見かけた露出狂みてェな格好した女に頭下げてもらうぜェ・・・
アイツ、ショタコンっぽかったからなァ」
一目見ただけの女性をショタコン呼ばわりする彼は間違いなく外道である。
ステイル「・・・これは、負けられないね。先手必勝だ!」
ステイル「灰は灰に 塵は塵に 吸血殺しの・・・おいい!何でまた噴き出してるんだキミは!?」
一方通行「その設定マジでやめろって!!堪えきれねェから!!」ゲラゲラ
ステイル「く、とにかく喰らえ!!」
炎剣が一方通行に向かって振り下ろされる。しかし一方通行は動かない。
防御も回避もしようとしない。彼はただ笑いながら立っている。
確実に一方通行を捉えていた筈の炎剣は、しかし彼に接触する刹那、あらぬ方向へと弾かれ雲散する。
一方通行(!?)
ステイル「弾かれた!?」
その現象に、弾かれたステイルは勿論、弾いた一方通行も驚愕する。
一方通行(反射し切れなかっただと?どォいうこった・・・ただの炎じゃねェのか?)
ステイル「クソ、もう一度だ!」
炎剣が再び、一方通行に襲い掛かる。
一方通行(落ち着け、完全な反射はできなかったが、逸らすことが出来たってこたァ
操れないわけじゃねェはずだ・・・ベクトルは確かに存在してる)
ステイル「く、また弾かれただと・・・まだだ、もう一発!!」
一方通行(反射は出来ねェが、さっきと『同じ様に』弾くことはできる・・・
物理法則が通常のソレとは異なってンのか?・・・・・・魔術?
イヤ、今はそンな事考えるな、ただ目の前のアレを解析することに頭を使え)
三度、炎剣が振り下ろされた時、
一方通行「捕まえたぜェ・・・」ニィ
ステイル「な、炎が跳ね返されて・・・ぐあぁ!?」
一方通行は魔術の炎の解析を完了した。
一方通行「ハッ!この俺に何度も同じ手を使うンじゃねェよ」
自らの炎に飲まれたステイルに、彼は悠然とそう言い放つ。
ステイル「クソ・・・どういうことだ?」
一方通行「おォ?無事だったか」ケラケラ
ステイル「自分の炎で焼き尽くされるようなバカな真似はしないさ・・・
それより、まさかもう勝った気でいるのかい?」
一方通行「やめとけ、もォテメエの魔術とやらの解析は終わってンだ
今更何やろうが俺の髪の毛一本焦がすこたァ出来ねェよ」
ステイル「・・・どういう心境の変化かは知らないが、魔術を認めてくれたようだね
だが、今更後には引けない、僕の『とっておき』を見せてやるよ!」
ステイル「『世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ
それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光、それは穏やかな至福を満たすと同時、
冷たき闇を滅ぼす凍える不幸なり その名は炎、その役は剣 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ』
ってだから何で笑ってるんだキミは!?魔術認めたんじゃないのか!?」
一方通行「いや認めてようが認めてまいがこればっかりは無理だろ!
むしろそんな呪文一々言わなきゃならないなンてかわいそうだなァ魔術!!」ゲラゲラ
ステイル「・・・『イノケンティウス』!!!」
ステイルの叫びと同時に、炎を纏った巨人がその姿を現す。
一方通行「ほォ・・・こいつァすげェ・・・」
ステイル「関心している暇はないよ?やれ、イノケンティウス!!」
掛け声に呼応し、炎の巨人、イノケンティウスが一方通行に襲い掛かる。
一方通行「確かにすげェよ、見た目はな! だが言ったはずだ、テメエの魔術の解析は終わったってなァ!」
巨人に向かい、彼は真っ直ぐに右手を突き出す。
そしてその手が触れた瞬間、巨人は散り散りに弾け飛んだ。
一方通行「ほォら仕舞いだ!さて、次はどうすンだ?」
ステイル「フフ、何も終わってやしないさ」
勝利を確信する一方通行に、ステイルは不敵に笑う。
一方通行「!?・・・なンだとォ」
四散したはずの巨人が再びその形を取り戻し一方通行の前に立ちはだかる。
ステイル「イノケンティウス・・・その意味は『必ず殺す』だ
何度でも蘇り、確実に敵を追い詰める僕の『とっておき』さ。 堪能してくれ」
一方通行「チィ!」
巨人の腕を弾き飛ばす。弾き飛んだ腕は即座に巨人に取り込まれ、瞬時に欠損した部位を再生させる。
一方通行「なるほど、こいつァ厄介だな」
ステイル「無駄だよ・・・さあ行け!イノケンティウス!!」
ステイルの指示に、巨人はまるで抱擁するかのように、その炎で一方通行を包み込んだ。
一方通行「ひゃはは!まるで出来の悪ィ着ぐるみでも着せられてるみてェだな!」ケラケラ
しかし一方通行は怯まない。巨人に抱かれ、炎に包まれながらなお、彼は無傷のまま笑っている。
ステイル「・・・どういう理屈かは知らないが、イノケンティウスの炎ですら届かないというのだから恐れ入るよ
しかし、キミにもイノケンティウスは倒せない。どちらかが根を上げるまで根競べと行こうじゃないか!」
一方通行「根競べだァ?冗談じゃねェ、そんなモンやってらンねェよ」
ステイル「ほう?じゃあキミにイノケンティウスをどうにか出来ると?」
一方通行「いやァ、コイツ自体をどォにかするのは時間がかかりそォだわ、ただな・・・」
ニィィと炎に包まれたまま、一方通行は歪な笑みを浮かべる
一方通行「テメエをぶっ倒せばそれで終わりだろォが!!」
ステイル「ちょ、待!それは反則じゃないかい!?
というか何でキミはイノケンティウスに抱きつかれたまま動けるんだ!?」
逃げるステイル、笑いながらそれを追う、炎の巨人に包まれたままの一方通行。
その光景は傍目に見れば、自分で生み出した巨人に追われているアホな魔術師という構図にしか見えなかった。
ステイルが疲労で倒れるまで、奇妙な鬼ごっこは続けられた。
ステイル「ハァ、ハァ、ハァ」ゼーゼー
一方通行「ギャハハハ!もォ終わりかァ!?」
四つん這いになり息を切らすステイル。イノケンティウスはとうに消滅している。
ステイル「く、クソ、フィールドにモンスターがいるのに
プレイヤーにダイレクトアタックを仕掛けようとするなんて反則だ・・・」ハァハァ
一方通行「イヤ、何言ってンだオマエ・・・」
ステイル「TCGの基本ルールだよ!キミはやっちゃいけないことをやったんだ!」
一方通行(やっぱこいつただのゲーム脳じゃね?)
魔術の存在を再び訝しむ一方通行であった。
一方通行「はァ、ったく・・・」
ぐだぐだと文句を言い続けるステイルに背を向け、一方通行は歩き始める。
ステイル「ま、待て、何処に行くんだ!」
一方通行「帰ンだよ、追い掛け回してたら家通り過ぎちまったからなァ」
ステイル「まだ勝負はついていないぞ!!」
一方通行「動けねェくれェへばってンじゃねェか、誰がどう見てもついてンよ」
ステイル「く、くそう・・・」
動けないステイルを振り返りもせず、一方通行はその視界から消えていった。
――――――――――――――
ステイル「完敗、だな・・・」
一方通行が立ち去ってしばらくした後、ステイルは一人そう呟いた。
口では強がったが、実際にグゥの音も出ないほどの大敗だったということは、本人が一番よくわかっている。
ステイル(結局、彼は一度も自分から攻撃を仕掛けてこなかった・・・こちらは半ば殺すつもりだったと言うのに)
それほどのハンデを貰っておきながら、彼は結局、一方通行の髪の毛一本燃やすことすらできなかったのだ。
ステイル「まだまだ修行が足りないな・・・」
彼女を守る為にも、もっと強くならなければ・・・そう改めて決意をしている彼の目に
先程行ってしまった白い少年の姿が映る。
一方通行「おォ、まだここにいたか」
ステイル「・・・帰ったんじゃなかったのかい?」
一方通行「イヤ、ちょっと忘れ物しちまってなァ」ニタァ
ステイル「忘れ・・・物?」
――――――――――――――
一方通行「お、いたいた、あの女だ」
ステイル「ま、待て、本当にやるのかい?」
物陰に隠れながら会話をする二人の視線の先には、下半身にミニスカート、上半身はサラシを巻き、
そこにブレザーを羽織っているだけ、という露出狂めいた格好をした女性の姿がある。
一方通行「いいから早く行け、アイツ多分ショタコンだから」ケラケラ
ステイル「キミは本当に失礼な奴だな・・・それに僕は負けていないぞ!だから・・・」
一方通行「『完敗だァ』とか言ってたのは何処の誰でしたっけェ?」ケケケ
ステイル「クソ、聞いていたのか」
一方通行「ほォら行った行った、残念ショタ代表としてショタコン代表に謝って来い」ゲラゲラ
一方通行に促され、ステイルは渋々女性に近付いていく。
ステイル(クソ、何故僕がこんなことを・・・
そもそも偶然見かけた女性がそんなに都合よくショタコンだったりするわけがないだろう!)トボトボ
ステイル「あ、あー、そこのキミ」
「・・・どちら様?ナンパなら他を当たってくれる?」
ステイルの呼びかけに、女性はあからさまに不快感を示している。
ステイル「えーっとだね、僕は14歳なんだが・・・」
「えっ」
ステイル「こんな14歳ですみません」ペコリ
「」
深く頭を下げるステイルを、女性は絶句した様子で見つめる
ステイル(そりゃそうだろ、いきなりこんなわけわからない事されたら・・・)
「ねえあなた」
ステイル「は、はい」
「本当に14歳なの?」
ステイル「はい、一応・・・」
やっぱり見えないか・・・そんなことを思いつつも、
女性が思ったより普通に対応してくれていることに、ステイルは安堵する。
しかし
「・・・けんな」
ステイル「え?」
「ふざけんな!!!」
ステイル「!?」
突如、女性は激昂する。
「あなたみたいのが14歳!?そんなことあってはいけない事よ!!!」
ステイル「え、え?」
「あなた、見たところ学園都市の人間じゃないみたいね・・・?」
ステイル「あ、はいイギリスから来ました・・・」
「イギリス出身の14歳!!なんて甘美な響きなのかしら・・・
それなのに・・・どうしてあなたみたいなのが出てくるの!?詐欺じゃない!!女将を呼べ!!!」
ステイル(うわぁ、本当にショタコンだった・・・)
「いい?14歳って言うのはもっとこう、汚れを知らない顔をしていてね・・・」
ステイル(何か語りだした・・・)
ドン引きしつつ、思わず一方通行が隠れているほうを見る。
一方通行(本当にショタコンだった!本当にショタコンだったよオイ!それも超重度の!!)ゲラゲラゲラ
彼は人目もはばからず、腹を抱えて笑い転げていた。
ステイル(あの野郎・・・)ギリギリ
「それで髪ももっとこうふんわりとしていて、思わず撫でたくなるような・・・
ちょっと、聞いてるの!?」
ステイル「は、はい聞いてます!あの、お話は良く分かりましたからこれで失礼します!!」ダッ
「あ、ちょっと待ちなさい!!」
ステイル(付き合ってられないよ、これ以上聞いてたら頭がどうにかなってしまう・・・)
そんなことを思いつつ、女性から逃げ出したステイルだったが・・・
ステイル「あ、あれ?」
「はい、おかえりなさい」ニタァ
何故か目の前に、先程の女性がいる。
ステイル(さ、先回りをされた・・・どうやって!?
イヤ、これは・・・僕が移動させられたのか!?)
彼は驚愕する。真っ直ぐに逃げ出したはずの自分が、何故か元の、女性に話しかけた場所まで戻っていたからだ。
ステイル(ど、どうやって・・・これも何らかの能力なのか!?)
ステイル「クソ!」ダッ
再び、彼は逃走を試みる。だが・・・
「フフフ、どれだけ逃げても無駄だってわかった?」
ステイル「」
「さぁて、残念ショタのあなたにはたっぷりとショタのなんたるかを聞いてもらうわよ・・・」
ステイル(た、助けてくれ・・・って、いないだと!?)
一方通行に助けを求めようとしたステイルだったが、既にそこに一方通行の姿は無かった
「・・・そしてショタの全てを理解した暁には、手術でも超能力でも何でも使って、理想のショタになってもらうわ!!!」
ステイル「だ、誰か・・・」
学園都市の一角に、可哀相な魔術師の声が響き渡った。
501 : >>1[] - 2011/01/18 20:35:07.12 Nu1siBe3o 247/326ステイルさん編、完
14歳で身長2mで赤毛でピアスでタバコでバーコードの刺青とか完全に需要を無視してるよね!
最後に出てきたショタコンは勿論あの人だ!
「あなたを抹殺する為の個体が作られたそうですよ、とミサカは恐ろしい事実を伝えます」
一方通行の部屋を訪れた11111号は唐突に、冷蔵庫を開けながらそう言った。
一方通行「俺を抹殺する為の個体、だァ?いやその前に勝手に冷蔵庫のモン漁るのやめろ」
11111号「はい、その通りです、とミサカは頷きます。
研究所の食事は味気ないんです、コーヒーでいいからよこしなさい」
一方通行「何の為にンな下らねェモン作りやがったンだァ?おいそのコーヒーすぐに置け」
11111号「あなたが実験を行わないからでは?とミサカは缶コーヒーを開けながら考えを述べます。ブラック(笑)」
一方通行「本気で殺しにかかってくる個体を作ることで無理矢理実験開始させようってか?
笑ってンじゃねェぞブラックが一番うめェだろォが」
11111号「それもあるかもしれませんが、恐らくあなたが自発的に実験開始するための
後押しという側面が大きいのではないでしょうか、とミサカは推測します
ブラック好きって大抵ただの厨二病ですよね(笑)」
一方通行「アレか、上の奴等は俺が実験やらない理由を妹達を殺したくないから、
ンでもって、一人殺せば諦めもついて実験開始するだろう、とでも思ってやがンのか
あァァ結局飲みやがったなこのクソガキ・・・」
11111号「多分そうなのでしょうね、ですからあなたを『抹殺する』為の個体というよりは
あなたに『抹殺される』為の個体、と言った方が正しいかもしれません、とミサカは訂正します。
このコーヒー不味!」
一方通行「別にわざわざ新しく作らなくても、オマエ等を再調整でもしてけしかけて来りゃいいだけじゃねェのか?
オイコラ勝手に飲ンどいて不味いとか言ってンじゃねェぞ」
11111号「サラっとミサカ達を虐殺することに抵抗がないというアピールをしていますね、恐ろしい
あなたが積極的に実験に取り組んで二万通りの殺し方をしないと、ただ反射でサクサク殺すだけじゃ実験の意味がないのです。
それに、数ヶ月間人間として経験を積んで来たミサカ達を再調整するよりも
新しく作った方が楽だったのではないでしょうか、単価18万円だし、とミサカは説明します
こんなもん人間の飲み物じゃないだろ・・・」
一方通行「テメエ、コーヒー馬鹿にしてンのか・・・?」
11111号「いいか白モヤシ、いくらコーヒー飲んでも黒くはなれないんだぞ、とミサカは優しく諭します」
一方通行「ぐああァァ!相変わらずムカつくなテメエは!!朝から最悪な気分だぜクソが!」
11111号「最悪といえば、その新しい個体の名前は番外個体(ミサカワースト)と言うらしいですよ、
とミサカは思い出したことを口にします」
一方通行「番外個体ォ?随分ひでえ名前だなオイ
まァこの俺を抹殺する為に作られるなンざ、確かに最悪かもなァ」ククク
11111号「名前の酷さならあなたも負けていないでしょう、とミサカはつっこみます。一方通行(笑)」
一方通行「それ本名じゃねェから!つーか名前すら無ェ奴に言われたかねェよ!」
11111号「oh・・・そういえばミサカには検体番号しかありませんでしたね、とミサカは落ち込みます」
11111号「あ、そうだ、ミサカに名前を付けてくださいよ、とミサカは一方通行にお願いします」
一方通行「はァ?なンで俺がそンな面倒なことしなきゃならないンですかァ?」
11111号「いつまでも検体番号じゃあなたも呼び辛いでしょう?
それに最近流行ってるらしいですよ、とミサカは流行に疎そうな一方通行を説得します」
一方通行「メンドイ、断る。つーかテメエの名前呼ぶ機会なンざ有り得ねェ」
11111号「何にしようかなぁ、とミサカは腕を組んで考えます」
一方通行「オイ結局自分で考えンのかよ、絶対呼ンでやンねェからな」
11111号「・・・よし、思いつきました、とミサカは親指を立てます」
一方通行「あァ?」
11111号「ナナ、なんてどうでしょう」
一方通行「おいばかやめろ」
11111号「どうしてダメなのでふか?とみしゃかはあくせられーたにたずねまふ」
一方通行「わかってんじゃねェかァァァァ!!!怒られるから早くやめろこのクソガキィィィ!!!!」
11111号「ちなみにスレタイが地味に似ているため
間違えてスレを開く人が後を絶たないとか、とミサカは頭を抱えます」
一方通行「どォでもいいわボケがァァァ!!!」
※間違えて開いちゃった人、本当にすみません
一方通行「それで、番外個体とやらについてもっと詳しく話せ」
11111号「スリーサイズとかですか?残念ながら知りませんよ、とミサカは首を振ります」
一方通行「いらねェよボケが どうせテメエ等やオリジナルと同じ残念ボディだろォが」
11111号「このわがままボディを前にしてなんということを!
とミサカは憤慨しつつ悩ましげなポーズを取ってみます」
一方通行「メリもハリもねェマニア向け寸胴体系じゃねェか」
11111号「ロリコンのお前には丁度いいだろ、とミサカは童貞でロリコンの一方通行を嘲笑います。アクセロリータ(笑)」
一方通行「テメエは俺にどンだけ妙な性癖付け加えてェンだよ・・・
いいから番外個体について知ってる情報よこしやがれ!」
11111号「はいはいわかりましたよ、全くこれだから早漏は・・・とミサカは膨れっ面になります」
一方通行「オマエは俺をどォしてェんだ」
11111号「えーっとですね、番外個体なのですが、
まずMNWから負の感情を拾いやすいように調整されています、とミサカは説明します」
一方通行「負の感情だァ?」
11111号「はい。特にあなたに対する妹達の不満や怒り等を凝縮したような感じになっているようです。
そんなわけで番外個体は死ぬほどあなたを憎悪しているみたいですよ、とミサカは溜息をつきます」
一方通行「妹達ってそンなに俺のこと憎ンでたかァ?あンまり身に覚えがねェンだけど」
11111号「どの口がほざきやがる・・・とは言え確かにこのミサカは全然、全く、これっぽっちも、
道端に生えている雑草程もあなたのことなど気にしていませんが、」
一方通行「ブチコロスぞ」
11111号「主に00001号の負の感情を拾っているみたいですね、とミサカは納得します」
一方通行「あァ、元アホ毛か」
11111号「ええ、元アホ毛です、とミサカは頷きます」
一方通行「アイツは確かに俺のこと恨んでそォだなァ」
11111号「ちょっと前に藁人形に五寸釘打ってましたよ、とミサカは思い出し笑いをします」ククク
一方通行「ほォ、俺を呪おうたァいい度胸だ。今度見かけたらトリプルアホ毛の刑だなァ」ケケケ
11111号「さて次の情報なのですが、番外個体はミサカ達よりも外見の設定年齢が高くなっています
とミサカは一目見た彼女がミサカ達よりも女らしい体つきをしていたことに歯軋りをします」ギギギ
一方通行「設定年齢高くねェ・・・何の意味があンだ?能力向上の為とかかァ?」
11111号「ロリコンのあなたを喜ばせない為でしょう
とミサカはロリコン、童貞、早漏の三重苦の一方通行を哀れんだ目で見つめます。あ、ついでにゲイでドSでしたね」
一方通行「ちょっとホントに死ンでもらえませン?」
11111号「まあ実際のところあなたの言う通り能力向上の為とかではないでしょうか、とミサカは・・・!?」
一方通行「!!」
11111号の言葉を遮るかのように、玄関から轟音が響く。
「うひゃひゃひゃ!いたいたぁ」
次いで聞こえてきたのは、他人を小馬鹿にするような不快な調子の笑い声。
玄関をドアごと破壊した声の主は、土足のまま部屋へと上がりこんできた。
「やっほう、あなたが第一位だよね?思った通りムカつく顔してるね」
一方通行「テメエが番外個体って奴か。家に入るときはちゃンとドア開けて靴脱げって習わなかったかァ?」
番外個体「きゃは!ミサカ生まれたばかりだからわかんなーい☆」
一方通行「ギャハハ!学習装置使ってもらえなかったのか?それとも学習したこと忘れちまったか?
どっちにしろトンだ欠陥品だなァこいつァ」ゲラゲラ
番外個体「ひゃひゃひゃひゃ、ホントにムカつくね!
あなたの顔なんてこれ以上一秒たりとも見てたくないからさっさと死んでくれる?」
言い終わるや否や、番外個体は右手を前に突き出し電撃を放つ。
しかし一方通行はそれを避けようとも防ごうともしない。
一方通行「よっと」
11111号「え?」
番外個体「ハ?」
ただ、11111号をひょいと己の前に移動させた。
無論、電撃は彼女に直撃する。
11111号「あばばばばばば!!!」ビリビリビリ
一方通行「11111号!!!!」
番外個体「え、いや自分で盾にしたよね?」
一方通行「クソ、しっかりしろ11111号!」
倒れ伏す11111号を一方通行は胸に抱き寄せる。
11111号「うぅ・・・どうやらミサカはここまでのようです・・・とミサカは息も絶え絶えに語ります」グフッ
一方通行「なに弱気になってやがる!らしくねェぞ!!」
11111号「そんなに焦燥して・・・らしくないのは、あなたの方ですよ・・・とミサカは情けない一方通行を嘲笑し、うくッ」ゼェゼェ
一方通行「もう喋ンな!すぐ研究所に連れてってやるから大人しくしてろ!!」
苦痛に喘ぐ11111号を抱き抱え、研究所に連れて行こうとと立ち上がる一方通行。
しかし、11111号はそれを制す。
11111号「いえ、もう間に合いません・・・そんな事より一方通行、
最後に一つだけ、お願いをしてもいいですか?とミサカは確認をします」ハァハァ
番外個体「いや、あなた達何言ってんの・・・」
一方通行「・・・・・・なンだ?」
11111号「ありがとうございます・・・
嘘でも、冗談でも構いません・・・ただ、最後にもう一度・・・いつかの散歩の時のように、
ミサカのことを『好きだ』と言って貰えませんか・・・とミサカは懇願します・・・」
一方通行「・・・11111号」
11111号「はい・・・」
一方通行「そォいう事はこれ見よがしに構えてる携帯を隠してから言いやがれ!!」
叫びながら、一方通行は抱えていた11111号をポイッと投げ捨てる。
投げられた11111号は片手に携帯を構えていた為受け身を取りそこない、思い切り尻から床に落下して悶絶した。
11111号「いってぇー!お前乗り掛かった船なんだから最後まで乗れよこのモヤシが!
とミサカはお尻をさすりながら中途半端に演技をやめたノリの悪い一方通行を罵倒します」
一方通行「託けて他人にクサエセリフ要求してンじゃねェよクソガキが!!しかもまた録音しようとしやがって!!」
11111号「別にいいだろ減るモンじゃなし、そんな些細なこと気にしてるから何時まで経っても童貞なんだよ
とミサカは股間だけでなく器まで小さいモヤシを嘲笑います」プゲラ
一方通行「いい加減童貞ネタはつまンねェンだよおォォォォ!!!あと小さくねェから!!!」
11111号「そんな貧弱モヤシ体系で巨根とかむしろそっちのが怖いわ・・・とミサカはドン引きします」ウワァ
一方通行「よしテメエはそこに直れ、この場で愉快に素敵なオブジェクトにしてやる」
番外個体「・・・あのさ」
一方通行「あァ!?」
番外個体「いつまでミサカの事無視してイチャついてんの?ホントにイラつくんだけど」
一方通行「あァ・・・なンだオマエ」
一方通行「まだいたのか」
番外個体「ハアアァァァァ!?」
11111号「派手な登場の割りに実に空気ですね、とミサカは新人をいびります」ククク
番外個体「ていうか、何であなたは平気なわけ!?」
11111号「あの程度の電撃ご褒美だ!とミサカはツヤツヤとした顔で言い放ちます」
番外個体「ムカつく・・・ムカつくムカつく!!さっさと死んじゃえ!!」
再び、一方通行に向かって電撃が放たれる。しかし、今度も彼は避けようとも防ごうともしない。
もちろん11111号を盾にしようともしない。
ただそこに立っていただけで、電撃は反射され番外個体の元へと戻っていった。
番外個体「!?クソ!これが反射ってヤツ!?あなたに似て捻くれた能力だね!」
反射された電撃をなんとか相殺し、番外個体が吼える。
一方通行「いいねいいねェ!そォいう素直な反応する奴は好きだぜェ!」
11111号「はい、『好きだぜェ』頂きましたー、とミサカは携帯片手にほくそ笑みます」
一方通行「おらァ!!」バキィ
11111号「あぁ!!ミサカの携帯が!?」
会話を録音し、ニタニタと悪意の有る無表情をしていた11111号から
携帯をぶん取り破壊する一方通行。どこかで見た光景である。
11111号「これで何台目だと思ってんだ、携帯だってタダじゃねえんだぞ
とミサカは物を大切にしない一方通行に憤慨します」
一方通行「全部自業自得だろォが!!!」
番外個体「だからさぁ・・・ミサカのこと無視すんなつってんの!!!」
再び漫才を始めそうな二人に、番外個体は怒鳴り声を上げながら詰め寄る。
一方通行「テメエの短気さは間違いなくオリジナル譲りだなァ
ったく、先に造られた妹達を見習ってちっとは大人しく出来ないンですかァ?」
11111号「ほう、ようやくミサカ達のありがたみがわかってきましたか
今後は11111号様と呼んでも良いのですよ?さあ跪きなさい、とミサカは勝ち誇ります」
一方通行「前言撤回だ、こいつ等みてェには絶対なるンじゃねェ」
番外個体「・・・もうあなた達の相手するのに疲れてきたよ、本当に死んでくれない?」
一方通行「死なねェよ、そもそもテメエはどうやって俺のこと殺すつもりなンだ?」
番外個体「え?」
一方通行「俺の詳細データとか貰ってンだろ?そンで勝てると思ったのか?」
番外個体「殺せなかったらあなたに殺されろって言われてるから、別にミサカは勝敗なんて考えてないよ」
一方通行「言っとくが俺はテメエを殺してなンてやらねェぞ」
番外個体「ハァ?・・・あ、そうかあなた妹達の一人も殺せないチキン君なんだっけ
あひゃひゃ!ミサカコンプレックスとかそういう歪んだ性癖でも抱えてるわけ?」
一方通行「違うわボケ。 どいつもこいつも自分から死にたがるからよォ
そんな奴等を殺してやるほど優しくねェンだよ俺は。
どォしても死にてェンなら勝手に自殺でもしてろ」
番外個体「あなたがやる気になって殺してくれないと意味ないんですけどー
ミサカのこと生かしておくと四六時中あなたのこと攻撃しちゃうよ?それでもいいの?」
一方通行「お好きにどォぞ、テメエが何やらかそうが俺には傷一つ付きませェン、残念でしたァ」
そう言い放つと、彼は番外個体に背を向けゴロンと横になった。
それは「殺せるモンなら殺してみろ」という無言の挑発にも見える。
番外個体「ムカつくー!!聞いてたよりもずっとイヤなヤツだね第一位!!」
11111号(番外個体、番外個体、聞こえますか)
番外個体(・・・何なの?目の前にいるのにわざわざMNWなんて、ミサカあなたにもムカついてるんですけど)
11111号(いいから黙って聞きなさい、一方通行をヤル気にさせたいのでしょう?)
番外個体(ハァ?ミサカに味方してくれるわけ?ワケわかんない、あなた一方通行派でしょ?)
11111号(ククク、色々事情があるのですよ。
ミサカの伝える通りの発言をすればきっと一方通行はヤル気になります。いいですか・・・)
番外個体(・・・)
番外個体「ねえ第一位」
一方通行「あァ?まだ諦めてねェのか」
番外通行「このモヤシ野郎」
一方通行「あ?」
番外個体「ロリコン!変態!モヤシ!童貞!」
一方通行「・・・オイ」
番外個体「ホモ!厨二!えーっとそれから・・・」
一方通行「何のつもりか知らねェけどな、そンなやっすい挑発に乗ると思ってンのかァ?」
番外個体(何よ、全然ダメじゃん!)
11111号(む、おかしいですね・・・仕方がありません、では最終手段です)
番外個体「ねえ、その服全然似合ってないんだけど」
一方通行「・・・あ?」ピク
番外個体「特撮ヒーローでも意識してるわけ?あひゃひゃ!そんなのに憧れてもあなたはモヤシのままだよ?」
一方通行「・・・ハッ!テメエみてェな生まれたてのクソガキにこの服の良さはわかンねェンだよ!」
番外個体「うわ、本当に気に入ってるんだ・・・自分ではセンスあるとか思っちゃってるの?
はっきり言うけど全ミサカが引いてるよ、ドヤ顔でそんな服着てるの恥ずかしくない?」
一方通行「・・・」
番外個体「だいたい、黒って言うのがもうダメだよね、丸っきりセンス感じない
あ、あなた白いからバランス取ってるんだ?うひゃひゃひゃひゃ、そんなに白黒が好きならオセロでもやってろってのー」
一方通行「・・・」
番外個体「あれあれ、どうして俯いちゃってるの?服馬鹿にされて落ち込んでる?
ごめんね、ミサカって正直者だからさー」ギャハハハ
11111号(番外個体、番外個体、楽しそうなところ悪いのですが)
番外個体(ハァ?何なの、いい所なのにさ)
11111号(このモヤシ、音反射してるっぽいです)
番外個体(へ?)
11111号(つまり、あなたはドヤ顔でブツブツうざったい独り言を言ってただけです)
番外個体「ふざけんな!!」
衝撃の事実に番外個体は思わず声を上げた。
独り言をで悦に入っていた自分が恥ずかしいのか、その顔は朱に染まっている。
番外個体「どこが一方通行をヤル気にさせる方法なの?全然ダメじゃん!」
11111号「おかしいですねぇ、ミサカはどんな暴言を吐いても音声の反射なぞされたことはないのですが・・・
ハッ、これが愛!?ダメですよ一方通行、ミサカはあなたに性的な興味などこれっぽっちもありませんから
とミサカはツンデレな一方通行の無言の告白をバッサリ切り捨てます」
一方通行「テメエの都合のいい妄想も、そこまで行くとつっこむ気にすらなれねェよ・・・」
11111号「つっこむ?ナニをつっこむつもりですか?とミサカはニヤニヤしながら尋ねます」
一方通行「どこぞのセクハラオヤジかテメエは!!一々下ネタに走るンじゃねェよ!!!」
番外個体「ちょっと、なんでそっちの声はちゃんと聞こえてるわけ!?ミサカの話も聞けよ!!」
一方通行「・・・」
番外個体「もおおおおおおおお!!!!!!」
散々暴言を吐いてからかっていたつもりが、実は全て聞こえてすらいなかったという事実をつきつけられ、
怒りが臨界点に達した番外個体は発狂したかのような叫び声を上げる。しかし、その叫びすら一方通行には届かない。
一方通行「ところでアイツまだいンのか?」
11111号「ええ、あなたの後ろで叫んでますよ、とミサカは報告します」
番外個体「死ねええええええええええ!!!!!!」
番外個体から推定2億ボルトという、落雷すら上回る電圧の電撃が放たれる。
背を向け、彼女の発する音を全て反射していた一方通行にそれを感知する術はない。
一方通行「お?」
しかしそれほどの電撃を受けてもなお、一方通行はそよ風が吹いた程にも感じない。
彼の能力は、科学によりもたらされるあらゆる脅威を完璧に反射する。
番外個体「あっ・・・」
そして、半ば我を忘れて全力で能力を使った番外固体には反射された電撃を相殺し切るだけの余力が残っていなかった。
哀れ彼女は自分の放った電撃に飲まれ吹っ飛ばされてしまう。
一方通行「あーあ・・・死ンでねェだろォな・・・」
11111号「意識はないようですが辛うじて生きているようですね、とミサカは一先ず安心します」
一方通行「どうすっかなァこれ、起きたらまためんどくせェことになりそォだし・・・
イヤ、このままガン無視し続けるのもアリか・・・可愛い反応見せてくれるしなァ」ククク
11111号「今はあなたしか眼中に無かったから良いかも知れませんが、
知識付いて家具狙ったり間接的に地味なイヤガラセに走るようになるかもしれませんよ?とミサカは危惧します」
一方通行「それもそォか、身近にテメエみてェなクソうざってェイヤガラセの手本がいるわけだしなァ」
さてどうするか、と腕を組み考える一方通行。
殺すのは主義に反する、生かしておいても後々鬱陶しいことになり兼ねない、
となると、生かさず殺さず何処かに監禁するのがベストだろうか・・・しかしどこに?
一方通行「おォそォだ」
彼の脳裏に、一人の人物の姿が浮かび上がる。
一方通行「良ィこと思いついたぜェ」ニタァ
11111号「なにその笑顔怖い、とミサカはかつて無いほど凶悪な笑みを浮かべる一方通行に身震いします」
――――――――――――
一方通行「さァて、こンなモンでいいだろ」
一方通行の周囲は今、完全な廃墟と化していた。
とある人物を誘き寄せるために彼が適当に暴れまわったのだ。
「そこのあなた!!あなたがこの惨状の犯人ですのね!?」
一方通行「きたきたァ」ニタリ
そして彼の思惑通り、その人物はすぐに現れた。
白井「ジャッジメントですの!(キリッ ってあなたはああああ!!!!」
一方通行「はァいどォもお久しぶりでェす」ケラケラ
白井「きいいいいい!!ここで会ったが100年目ですの!!先日の恨み、晴らさせて頂きますの!!!!」
一方通行「何かしましたっけェ?」
白井「あなたのせいでお姉様と部屋が離れ離れになってしまったんですのよ!!
お陰でわたくしの中のお姉様分は枯渇寸前なんですの!!」
一方通行「ほォ、まだ超電磁砲とは別の部屋なのか、そいつァ都合がいいな」
白井「何の都合ですの!?さてはまたお姉様の部屋に侵入してナニかするつもりですのね!?
許せません!わたくしにも一枚噛ませてくださいまし!!」
一方通行「本音ダダ漏れじゃねェか」
白井「ハッ!わたくしとしたことが・・・なんて高度な誘導尋問ですの!
学園都市第一位は伊達ではないということですのね!?」
一方通行「オマエはホントに頭が可哀相だなァ」
白井「とにかく!この惨状はあなたの仕業なのでしょう?
今日はキッチリ連行させていただきますの!」
一方通行「まァ落ち着け、今日はテメエに愉快なプレゼントがあンだよ」
白井「・・・賄賂が通じると思ったら大間違いですのよ?」
一方通行「いいから受け取れよ、ホラ」
そう言いつつ、一方通行は白井の前に「何処に置いてたの?」と聞きたくなるような
馬鹿でかい箱をドン、と置いた。
白井「な・・・なんですの、この見るからに怪しい箱は・・・」
一方通行「プレゼントだつってンだろ、有難く受け取れよ」
白井「イヤ、どう見ても罠でしょうこれ・・・こんなモンいりませんの!」
一方通行「あァ?テメエは学園都市第一位を敵に回してェのか?」
白井「」
一方通行「あーァ、誰かさンがプレゼント受け取らねェから学園都市の区分が一つ減っちまう・・・」
白井「ヒイイイイ!!わかりました!受け取ります!受け取りますのおおおお!!!!」
一方通行「はァいよく出来ましたァ、部屋に着くまで絶対に開けるンじゃねェぞ?
それと生ものだから腐らせねェよォに気をつけろよォ」ゲラゲラ
白井「うぅ・・・イヤな予感しかしませんの・・・」
――――――――――――
白井「け、結局持って返って来てしまったんですの・・・」
現場の後始末をし、部屋に戻った彼女の前に先程一方通行から押し付けられた巨大な箱がある。
白井「うぅ・・・開けたくないですの・・・けど何処かから見られてるかも知れないと思うとそういうわけにも・・・」
巨大な箱の前に正座し、半泣きになりながら開けるか開けまいか悩む白井。
箱に手をかけ、やっぱりやめて、という動作を小一時間ほど繰り返した時、
箱<ガタンガタンガタン!!
白井「!?」ビクゥ
箱の中からなにやら音が聞こえ、ガタガタと揺れ始めた。
白井「何ですの!?何が入ってるんですの!?生もの・・・まさか生き物でも入ってるんですの!?」
だとしたらヤバイかもしれない、既に数時間箱詰めのまま放置してしまっている。
もし小動物などが入っていたら瀕死になっているかもしれない。
その可能性を考えた白井は、半ばやけっぱちで箱を一気に開いた。
そこには――
番外個体「んーんー!!」モガモガ
白井「」
両手両足を縛られ、猿轡をされた少女が入っていた。
白井(え、なに、なんですのこれ?)
理解が追いつかず、白井は完全にフリーズしてしまう。
それはそうだろう、プレゼントを開けたら生きた人間が入ってました、などそう滅多にあることではない。
白井(ま、まさかあの方は人身売買にでも手を染めてますの!?
でも・・・プレゼント?一体どういう・・・いえ、考えるよりもすぐに通報しなくては・・・)
警備員に連絡しようと、携帯を取り出す。しかしそこで彼女はある事に気付く。
白井(あれ、この方・・・お姉様に似てね?)
番外「んー!!(ちょっと、はやくほどいてよ)」モガモガ
白井(やっぱり・・・瓜二つですの!ちょっと大きいですけどお姉様の香りがしますの!)
白井「嗚呼、第一位様・・・わたくしあなたのことを誤解しておりました・・・」
恍惚とした表情で白井が呟く。その様子に身の危険を感じた番外個体は
なんとかその場から逃れようと身体を捩るが、手も足もきつく縛られており身動き一つとれない。
白井「こんな素敵なプレゼントを頂けるだなんて・・・
今日まで風紀委員として真面目に頑張ってきた甲斐がありましたの・・・」
番外個体「んーんー!!!!(やばいってこいつ目がイッちゃってるよ!!)」
白井「うへへへ・・・そんなに怯えてかわいそうに・・・すぐに黒子がめくるめく快楽の世界へ誘って差し上げますわ・・・」
番外個体「んんー!!!(ちょ、馬鹿!くんな変態!!!)」
白井「大きいお姉様あああああああああ!!!!」
番外個体「んー!!!!!(らめえええええ!!!)」
――――――――――――
一方通行「いやァ、良い事した後ってなァ気分がいいなァ」
11111号「結局どうしたんですか?とミサカは尋ねます」
一方通行「ンー?とォーってもいい所に連れてってやったンだよォ」ゲラゲラゲラ
11111号「おかしい・・・見慣れているはずの一方通行の笑顔がとてつもなく恐ろしいです
とミサカは震えます」
一方通行「ひゃは!テメエもそのうち連れてってやるから楽しみにしとけよォ」ニタァ
11111号「ちょっとだけですが、自分の行いを改めようかと思いました、とミサカは震えながら反省します・・・」
時間は少々巻き戻る。
白井が一方通行から巨大な箱を押し付けられていた丁度その頃、
御坂美琴は街を全速力で駆けていた。
御坂「黒子、無茶してなければいいけど・・・」
高位の能力者が暴れているという速報を聞いたのが数分前
その後、風紀委員の第一七七支部が出動したという情報を入手した御坂は
後輩である白井が現場に向かった可能性が非常に高いと見当をつけ
何かと独走しがちな彼女をサポートするために家を飛び出したのだ。
御坂(ん・・・あれは!?)
現場近くまで辿り着いた御坂は、とある人物の後姿を見つけ咄嗟に物陰に隠れた。
白い肌に白い髪そして黒いシャツ、彼女はその後姿にイヤと言うほど見覚えがある。
御坂(間違いない・・・一方通行!どうしてこんなところに・・・?)
高位能力者が暴れているという情報、そしてその現場から遠ざかるように歩いていく学園都市第一位の能力者。
御坂(無関係ってことはないわよね・・・あいつが犯人?それとも何か企んでる?)
しばしの思案の末、御坂は一方通行の後をつけることにした。
御坂(騒ぎはもう収まってるみたいだし、黒子も多分大丈夫でしょ
それよりも、アイツを見失う方が厄介なことになるかもしれない・・・)
しかしそんな彼女の考えに反し、一方通行は何をするでもなく、ただ歩き続けているだけだ。
彼にとっては、やる事をやったので散歩がてら家に帰っているだけなのだが、当然御坂はそんなことを知る由もない。
御坂(何処まで行くんだろう、段々人通りの少ないところに来てるけど・・・
まさか尾行がバレてる!?人のいない場所まで誘導して私をどうにかする気なんじゃ・・・え!?)
不吉な考えが頭を過ぎり一瞬目を離した隙に、前方にいたはずの一方通行の姿が消えていた。
御坂(嘘、なんで・・・どこに!?って、なんだ・・・)
慌てて周囲をバタバタと見回した御坂だったが、すぐに一方通行を見つけ安堵する。
彼はカンカンと音を立てながらすぐ近くのアパートの階段を登っていた。
何のことはない、目を離した隙にアパートの方に曲がった為見失っただけだ。
御坂(アイツこんな所に住んでるの?ていうか、家に帰ってただけ?)
勝手に陰謀の臭いを感じて尾行してきた自分が馬鹿みたいだ、と彼女は大きく溜息をつく。
なんとも無駄な時間を過ごしたものだ。
御坂(ん?イヤイヤ待ってよ、無駄だなんてとんでもない
アイツの住んでる場所を知れたってのは大収穫じゃない?)
そう、今まで彼女は、彼女のみならず一方通行にイヤガラセを受けているほとんどの人物は彼の住処を知らなかった。
それもそのはずで、突然現れたかと思うとターゲットにイヤガラセの限りを尽くし、
それが終わるといつの間にかいなくなっている、というのが彼の普段のパターンだからだ。
その為バレないように後をつけて住処を割り出す、等と言う事は今まで誰にもできなかったのである。
御坂(これはチャンスよね・・・今から奇襲をかければ一矢報いる事くらいできるかもしれない
いえ、それより麦野さん達に連絡して皆で一緒に仕掛けた方が・・・)
「おや、そこにいるのはお姉様ではありませんか?とミサカは声をかけます」
御坂「!?」ビクッ
悩んでいた御坂に突如声がかけられる。ギョッとして声の聞こえてきた方を見ると、
彼女と瓜二つの人間が、先程一方通行の登って行ったアパートの階段を下りてくるところだった。
御坂「な、なんだアンタか、驚かせないでよ」
「はて、何故驚くのです?こんなところで何を?とミサカはお姉様に尋ねます」
先程まで一方通行の部屋にいた個体―11111号は、挙動不審な御坂に首を傾げながら尋ねる。
御坂「わ、私はちょっとその・・・そ、それよりアンタどうしてこんな所に?」
11111号「質問に質問で返すな!と学校で習いませんでしたか?とミサカは慌てた様子のお姉様を訝しげに見ます」ジトー
御坂「いいから答えなさいよ!ここ、一方通行が住んでるのよね?こんな所で何してたの?」
11111号「・・・お姉様が期待しているようなことはありませんよ?
ミサカはあんなモヤシ野郎に体を許すほど緩い女ではありません
とミサカは手をパタパタ振りながらお姉さまの邪な予想を否定します」
御坂「か、体を・・・って、そんなの考えてないわよ!!」
11111号「oh・・・冗談が通じませんね、そんないい反応するから一方通行の格好の餌食になるのですよ
とミサカは初心なお姉様に哀れみの視線を向けます」
御坂(この子生まれて数ヶ月のはずよね・・・?)
11111号「まあ本当のところはお姉様の想像通り、一方通行の部屋で色々していたのですよ、とミサカは説明します」
御坂「やっぱりアイツの部屋に・・・いや、それよりも色々してたって何?」
11111号「ふむ・・・今日起こったこと、お姉様には話しておいたほうが良いかもしれませんね
とミサカは一人頷きます」
御坂「今日起こったこと・・・?」
11111号「はい、実はですね、カクカクミサミサ、ということなのですよ、とミサカは簡単に解説します」
御坂「アイツを抹殺するための個体・・・そんなものが作られてたなんて・・・」
11111号(うわぁ本当に伝わったよ、お姉様パねえな)
御坂「番外個体か・・・いやいやそれも大変なことだけど、今の話もっと重要なことがあったわ」
11111号「はてなんでしょう?とミサカは首を傾げます」
御坂「アンタは一方通行に暴言を吐いても仕返しをされないってところよ!これ重要でしょ!」
11111号「・・・新しく造られたご自分のクローンに関することよりもそっちが重要ですか、
とミサカは遠い目をします」
御坂「ねえ、何でアンタはイヤガラセ受けないの?何かコツとかあるわけ?」
11111号「えー・・・あー・・・ミサカは愛されてますから、とミサカは説明を半ば放棄した返答をします」
御坂「あああああ、愛!?ダメよ!アイツは他人の不幸を喜ぶ最低のクズなのよ!?」
11111号「信じるなよ・・・本当にいい反応するなぁお姉様、とミサカは単純なお姉様をからかうのが楽しくなってきました」
御坂「ちょっと!!」
11111号「めんごめんご。 まぁ性格の問題でしょうね、とミサカは当たり障りのないことを言ってみます
それにあのモヤシは妹達には甘いところがありますし」
御坂「妹達には甘い・・・つまり私も妹達のふりをすればアイツに反撃できるってことね!」
11111号「妹達のふりをして反撃、そしてその後の被害は全て妹達へ、ですか
流石お姉様、流石このミサカのオリジナル、実に腹黒い、とミサカはドン引きします」
御坂「い、いいじゃないちょっとくらい!アンタなんて好き放題言ってるわけでしょ!?
・・・今度妹達全員に甘いものご馳走してあげるからさ、アンタのゴーグル、ちょっとだけ貸してもらえない?」
11111号「このゴーグルはミサカのチャームポイントなのですが・・・お姉様にそこまで頼まれては仕方がありませんね
決して甘いものに釣られたわけではありません、お姉様の必死な態度に心を動かされたのです
とミサカは弁解しておきます」
御坂「ありがとう!じゃあ早速行って来るわね!」
11111号「あ、少々お待ちを、とミサカはお姉様を呼び止めます」
ゴーグルを受け取り、アパートに駆け込もうとする御坂を11111号が制止する。
出鼻を挫かれた御坂はバランスを崩し、前のめりに倒れそうになった。
御坂「ちょっと、何よ?」
11111号「検体番号をしっかり吟味しなければなりませんよ
中にはモヤシのイヤガラセの標的になっている個体もいますから、とミサカは説明します」
御坂「そっか・・・じゃあさ、アンタに成り済ますから検体番号教えてくれる?」
11111号「む・・・仕方がありませんね、その代わりミサカには特別たくさん奢ってくださいよ?
とミサカは交換条件を提示します」
御坂「オッケーオッケー、ドンと来なさい」
11111号「契約成立ですね。 さて、このミサカの検体番号なのですが・・・」
11111号「00001号です、とミサカは自分が最初のミサカであることを誇らしげに言い放ちます」
御坂「00001号ね?わかったわ、一方通行に番号聞かれたらそう答えとく」
上機嫌でアパートに駆け込んでいく御坂を、11111号はいつもの様に無表情で見送った。
御坂にはわからなかったが、その無表情は見る人が見れば悪意の塊のように映っただろう。
御坂(うわ、本当に玄関吹き飛んでる・・・部屋の中丸見えじゃん
ってアイツこんな状況で普通に寝てるし!)
番外個体が吹き飛ばした玄関から中を覗くと、そこには一方通行がこちらに背を向け、無防備な姿で寝転がっていた。
とは言えこの状況でもキッチリ反射は作用しているので、例え核が振ってこようが彼は無傷なのだが。
御坂(えーっと、アイツ眠ってる?中入っちゃって大丈夫かな?どうしよ・・・)
一方通行「オイ」
御坂「ひゃい!」
下を向いて考え込んでいた御坂の思考は、唐突に発せられた一方通行の言葉で強制的に中断させられた。
見ると先程まで背を向けていた彼が、めんどくさそうな表情でこちらを伺っている。
一方通行「何やってンだテメエは?俺に何か用ですかァ?」
御坂「え、あの、えっと・・・」
一方通行「ったく、今日は客が多い日だな・・・入りてェンならさっさと入って来い、そうじゃないンなら帰れ」
御坂「お、お邪魔します・・・とミサカは挨拶します」
一方通行「チッ用があンのかよ」
御坂(思わず入っちゃったけどどうしよう・・・)
一方通行「ンでェ、何なンですかァ?」
御坂「えー・・・」(どうしよどうしよ・・・適当に暴言吐いちゃっていいのかな)
一方通行「おいィ?」
御坂「んー・・・」(いいわよね、今までこっちは散々やられて来たんだし・・・)
一方通行「耳聞こえてっか?」
一方通行は参っていた。やけに挙動不審な妹達が外からこちらを伺っていたため
とりあえず部屋の中に入れてみたのだが、唸るばかりで一向に何も言おうとはしないからだ。
一方通行(ホントに何なんだコイツ?つまみ出しちまうか・・・)
御坂「・・・バーカ」
彼が妹達に化けている御坂を追い出す決意をしたとき、ようやく彼女は口を開いた。
一方通行「ハ?」
御坂「バーカバーカ!モヤシ!色白!」
一方通行「いや・・・なに?え?」
突然発せられた小学生レベルの悪口に、一方通行は困惑する。
先程まで借りてきた猫のように大人しかった彼女の態度が一変したのだから、それも当然である。
― 数分後、息が上がったのか気がすんだのか、ようやく彼女の暴言は止まった。
御坂「ふぅふぅ・・・」(言ってやった!言ってやったわ!)
一方通行「あー・・・何か知らねェけど気ィ済ンだかァ?」
御坂「全然堪えてない!!」
一方通行「そンな小学生レベルの悪口でダメージ受けるほど繊細じゃないンで・・・」
御坂(く・・・何て精神力なの!?これが学園都市第一位・・・!
でも妹達に甘いっていうのはどうやら本当みたいね、定期的に妹達のふりしてストレス解消にこようかな)
一方通行「で、結局オマエは何なンだ?何がしてェンだ?」
御坂「わたsゲフン ミサカは日頃の恨みを晴らしたかっただけです・・・とミサカは返答します」
一方通行「日頃の恨みねェ・・・何号だか知らねェがよくもまァ面と向かって来たもンだなァ」
御坂「あ、えっと、ミサカの検体番号は00001号です・・・とミサカは自分の番号を述べます」
これまでどこか気だるそうで、半ば呆れたように彼女の相手をしていた一方通行だが
『00001号』という番号を聞いた瞬間、彼の雰囲気が一変した。
眠たげだった半開きの眼は限界まで見開かれ、口角は吊り上がって行き、その髪までもが音を立てて逆立っていく。
悪意に満ちた狂気の笑顔が、一方通行の顔に張り付いた。
一方通行「そォかそォか、テメエ00001号だったのか・・・随分雰囲気が変わってたから気付かなかったぜ」ククク
御坂(え?え?何これ・・・何でこいつ突然こんなになってるの!?
00001号って何やっても許される個体じゃなかったわけ!?)
一方通行「呪いのかかり具合でも確認しに来たか?それとも別の目的があったか?
まァどっちでもいいンだけどよォ・・・俺の前に姿を現したクソ度胸だけは褒めてやンよ」ケラケラ
御坂(の、のろい?何のことだかわからないけど・・・とにかくやばいって!目が据わっちゃってる!
逃げなきゃ・・・逃げなきゃ・・・)
一方通行の只ならぬ雰囲気を感じ取り、御坂は逃げ出そうと身体に力を込める。
しかし、手も足も凍りついたかのようにピクリとも動かない。
一方通行の悪意に飲まれた彼女は、まさに蛇に睨まれた蛙のように身動き一つとることができなかった。
御坂「あ・・・あぁ・・・」
一方通行「ひゃは!楽しい楽しいお仕置きの時間だぜェ」
ゲラゲラと笑い声を上げながら、一方通行は右手を御坂の方に伸ばしていった。
――――――――――――
「御坂の奴どうしたんだろうな?会議に遅刻するなんて今までなかったはずだが」
「垣根が遅刻するんならともかく、美琴が来ないっていうのは珍しいわね」
一組の男女―垣根帝督と麦野沈利はとあるレストランの一角で話し込んでいた。
本来なら今の時間帯はもう一人、御坂を加えて三人で一方通行の対策会議をしているはずなのだが、
集合時間を数十分過ぎた今になっても彼女が現れないのだ。
垣根「イヤ待て俺も遅刻した事一回しかねえし、そもそもあれは途中で一方通行に遭遇してたからだろ」
麦野「遅刻は遅刻でしょ?どんな事情があれ可愛い女の子二人も待たせるなんて男としてどうなのよ?」
垣根「可愛い・・・女の『子』?」
麦野「ブチ殺されてぇかブタ野郎」
垣根「あんまり怒ると小皺が・・・ん、あれ御坂じゃねえか?」
麦野「おい小皺がなんだって?」
垣根の視線の先にいたのは確かに御坂だったのだが、どうも様子がおかしい。というか格好がおかしい。
いつもの常盤台の制服に加え、彼女の顔に不釣合いなほど大きな帽子とサングラスを装着している。
変装をしているつもりなのかも知れないが、はっきり言ってバレバレである。
御坂「お、遅れてごめん・・・」
垣根「いや、ごめんっつーかさ・・・」
麦野「何よその格好・・・」
御坂「ちょっと事情があって・・・」
垣根「一方通行の野郎に何かやられたのか?」
御坂「うん・・・あのさ、ちょっと人目につかない所に移動できない?
あんまり大勢の人がいる所にいたくないの・・・」
麦野「よくわからないけど重症みたいね・・・わかった、私の家に行こうか」
そんなこんなで、何も注文せずに店を出る三人。これにはレストランの店員も苦笑い。
麦野「それで、そろそろ何があったか話してくれる?」
麦野の家に辿り着いても一向に何も語ろうとしない御坂に、痺れを切らした麦野が催促する。
当の御坂は、サングラスは外しているが帽子はまだつけたままで、怯えるように部屋の隅に座っている。
垣根「その帽子が関係してるのか?整理がつかないんなら俺はまた今度でも構わねえが」
御坂「ううん、話すわ。 私一人じゃどうしようもないもん・・・
今から帽子脱ぐけど、絶対に笑わないでね?二人とも信じてるから・・・」
覚悟を決めたように、御坂が帽子に手をかける。
彼女の頭から帽子が取り払われた時、垣根と麦野はかつてない程の衝撃を受けた。
垣根(アホ毛が・・・ッ!!)
麦野(三本も・・・!?)
それはアホ毛と言うにはあまりにも大きすぎた
大きく ぶ厚く 重く そして大雑把すぎた
でもやっぱりそれはアホ毛だった
垣根「ぐ・・・おお・・・」(麦野ぉ!絶対笑うんじゃねえぞ!!)プルプル
麦野「くぅ・・・」(わかってるわよ!美琴を裏切るわけにはいかない!)ピクピク
アホ毛を揺らしながら瞳を潤ませる御坂の姿に、垣根と麦野は過去最大の苦戦を強いられることとなった。
これまで何度も一方通行と対峙し、どんな絶望的な状況に陥ろうと決して折れなかった二人の心は
たった三本のアホ毛によって粉砕寸前に追い込まれていた。
垣根(アホ毛なんてもんじゃねえ・・・アホ過ぎだ!一方通行の野郎なんて真似しやがる・・・!)
麦野(これは分が悪いわね・・・普通に喋ろうと思って口を開いたらその瞬間ドカンよ・・・)
垣根(ダメだ・・・視線を逸らしても目に焼きついてやがる!どうすりゃいい?どうすりゃ・・・)
麦野(か、垣根・・・悪いけど私もう・・・)
垣根(何言ってやがる!諦めるな!絶対に何か方法があるはずだ!!)
麦野(アイテムの皆には・・・勇敢に戦ったって伝えて・・・うぐっ)
垣根(止めろ麦野おおおおお!!!!今笑われたら俺まで釣られて・・・)
御坂「・・・」
――――――――――――――
垣根「正直すまんかった」
麦野「ごめんね、悪気はなかったの」
御坂「・・・」ズーン
小一時間後、そこには後ろを向き膝を抱えて落ち込む御坂に土下座する黒コゲになった垣根と麦野の姿があった。
一度決壊し、溢れ出してしまった爆笑を途中で止めることなどできるはずもなく、二人は体をくの字にして散々笑い、
息も絶え絶えになり演算すら禄にできなくなってもなお笑い続けていた所で御坂に電撃を落とされたのだ。
垣根「ほ、ほら御坂、気を取り直してそのアホ毛どうするか考えようぜ」
御坂「・・・」クルッ
垣根「ぶふっ!」
御坂「うあああああん!!!!」バチバチ
垣根「うぼぁ!!」ビリビリ
振り向いた御坂を見て垣根は再び噴き出す。演算が停止しかかっている彼に対し、
御坂は容赦なく高圧の電撃を浴びせた。
麦野「お、落ち着きなって!そのアホ毛、ハサミとかで切れないわけ?」
御坂「切れるんならとっくに切ってるわよ!ハサミだけじゃなくてナイフでも
チェーンソーでも電撃でもダメだったのよおお!!!」
垣根「どんなアホ毛だよ!?」
御坂「・・・垣根さん生きてたんだ」
垣根「流石にそれはちょっと酷くねえか?」
麦野「美琴の電撃でも通じないってどうなってんのよ・・・ちょっと私も試してみていい?」
御坂「あ、うん、どうぞ」
垣根「くっ・・・」
アホ毛を麦野に差し出す御坂の姿に、垣根は再度噴出しそうになる。
完全にツボに入ってしまっているようだ。
麦野「動かないでねー・・・狙って狙って・・・」キュイイイン
揺れるアホ毛に麦野は慎重に狙いを定める。彼女の能力は制御が難しいため、
下手な撃ち方をすると御坂の顔面を吹っ飛ばしてしまいかねない。
麦野「さんにーいちドバーン!!」
麦野から放たれた原子崩しのビームは正確に御坂の頭部に生えているアホ毛に襲い掛かる。
が・・・
アホ毛<ミョイン
御坂「!!」
麦野「反射された!?」
垣根「危ねえ!!!」
まるで一方通行を相手にした時のように、ビームはアホ毛に反射され何故か垣根の方に飛んでいった。
御坂「やっぱりダメか・・・私の電撃も同じように反射されたし」
麦野「第一位の反射と同じ仕組みなのかしら?にしてもアホ毛に弾かれるって悔しいわ・・・」
垣根「何で俺の方に飛んできたんだよ、このアホ毛俺に恨みでもあんのか?」
麦野「そりゃアンタ笑いまくってたしアホ毛もいい気はしなかったんでしょ」
垣根「クソが、アホ毛の分際で俺に歯向かうつもりか」
御坂「あのさ、アホ毛に意思があるみたいな話し方やめてよ、気持ち悪いじゃない・・・」
垣根「アホ毛だって生きてるんだぞ!それを否定するつもりか!?」
御坂「生きてないわよ!!他人事だと思って馬鹿にしてるでしょ!?」バチバチ
垣根「止めとけ御坂、能力使うと電気で髪が逆立って余計愉快な事になるぞ」
御坂「ふざけんなゴラアアアアアア!!!!」バチバチバチ
本日三度目の電撃が垣根を直撃した。
雷を纏い直立した三本のアホ毛は、神々しくすら見えたという。
垣根「おい御坂、俺じゃなかったら死んでるレベルの電撃を何度も撃つんじゃねえよ」
麦野「・・・もう垣根は放っといて二人で対策考えましょうか」
御坂「うん・・・」
垣根「無視すんな、聞け。一方通行の反射と同じ仕組みだってんなら
俺にならなんとか出来るはずだぞ」
御坂「ほんとに!?」
麦野「方法があるんならさっさと言えよ」
垣根「現金だなお前等・・・要はそのアホ毛が生きるために受け入れてるベクトルを逆算して、
それと同じベクトルを持つ有害な物を作ればいいだけのこった。それでアホ毛にダメージが通るはずだ」
御坂「すごい・・・そんなことができるんだ」
麦野「・・・なんでそれだけのことが出来るはずなのに第一位にやられっぱなしなわけ?」
垣根「あの野郎が逃げ回るから中々解析出来ねえんだよ!
アホ毛は逃げねえからな・・・この機会に反射を解析して一方通行の野郎に一泡吹かせてやるぜ」ケケケ
御坂「それじゃお願い・・・」
垣根「あぁ、任せろ」
差し出されたアホ毛を真剣な表情で睨みつける垣根。しかし、睨むばかりで彼は一向に動こうとしない。
それどころかどんどん顔色が悪くなり、その額には脂汗が滲み始めていた。
麦野「・・・垣根?」
御坂「垣根さん大丈夫!?凄い汗よ!」
垣根「御坂・・・スマン」ハァハァ
御坂「ど、どうしたの!?解析できなかったの!?」
麦野「いえ、まだ解析を始めてすらなかった・・・
まさか、感付いた第一位に攻撃を受けた!?クソ、何処から!?」
垣根「違う、違うんだ・・・解析に失敗したわけでも攻撃を受けたわけでもねえ・・・」
御坂「じゃあどうして!?」
垣根「近付くな!!」
駆け寄ろうとした御坂を、垣根は辛そうな表情で制止すし、彼はそのまま頭を抱え蹲ってしまった。
そんな彼を御坂と麦野は不安げに見つめる。
垣根「実はな・・・」
蹲ったまま、垣根が呟く。
垣根「実は・・・御坂がアホ毛をこっちに向けたときから・・・もう笑いを堪えるだけで精一杯なんだ・・・
とてもじゃねえが能力使って解析してる余裕なんてねえんだよ・・・」
御坂「」
麦野「」
垣根「だからスマン御坂!その姿に俺が見慣れるまでしばらく待ってくrクフックククク」ケラケラ
ついに堪えきれなくなったのか、最後まで喋る前に垣根は肩を揺らして笑い始める。
最初は静かに、しかし次第に大声になり、遂には腹を抱えて爆笑まで始めた。
御坂「やっぱり垣根さん私のこと馬鹿にしてるんでしょ?してるのよね?」
垣根「やめろ、こっちを見るな!俺を殺す気か!!」ゲラゲラ
御坂「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」バチバチバチ
麦野(私の台詞・・・)
垣根「だから能力使うなって!アホ毛が偉いことになってるぞ!!」ゲラゲラゲラ
御坂「死ねやああああああ!!!!」
コインをトスし、御坂は躊躇無く超電磁砲を放つ。
しかし彼女の一撃が垣根に直撃する刹那、彼はその身体から白い翼を発し、超電磁砲の軌道を逸らした。
逸らされた超電磁砲はそのまま麦野の部屋の屋根を破壊し、大空へと消えていく。
麦野「・・・」ピキピキ
御坂「使えるじゃん!能力使えるじゃん!!」ムキー
垣根「お前の電撃防ぐくらいは楽勝なんだよ!そのアホ毛の反射の解析は負担が段違いなんだ」ゲラゲラ
御坂「何よ!私がアホ毛以下みたいな言い方しないでよ!!」
垣根「ひゃはははは!!事実アホ毛以下なんだよ!!」
御坂「ふざけんなああああああ!!!!」バチバチ
もう一発超電磁砲を放つが、やはりそれも垣根の翼に逸らされてしまう。
今度は部屋の壁を破壊し、そのまま外へ飛び出していった。
垣根「お、何だやんのか?いいぜ、今ならひょっとしたら掠り傷くらい付けられるかもなぁ!」ゲラゲラ
麦野「テメエ等私の家で暴れてんじゃねええええええ!!!!」
一触即発、いつぞやのファミレスの悪夢が再び繰り広げられようとしたまさにその時
二発目の超電磁砲が飛んでいった先から「不幸だあああ!!」という絶叫が聞こえてきた。
垣根「な、なんだ!?」
御坂「まま、まさか超電磁砲が誰かに当たっちゃった!?」
麦野「お、落ち着きなさい美琴!まだそうと決まったわけじゃ・・・」
慌てる三人の元に、『何か』が飛んでくる。
その『何か』は赤黒い液体を撒き散らしながら、御坂の頭にクリーンヒットした。
御坂「いたた・・・何よこれ・・・ってこれぇ!?」
飛んできた物を拾い上げた御坂が大声を上げる。
彼女の頭に直撃した物、それは・・・
垣根「人間の右手、だな・・・」
麦野「・・・超電磁砲で四散した反動で飛んできたって考えるのが妥当よね」
御坂「どどど、どうしよう!?私やっぱり一般の人を殺しちゃった!?」
麦野「大丈夫、逸らした垣根が全部悪いわ」
垣根「どういう理屈だ!? ん?御坂、お前アホ毛が・・・」
御坂「え?」
麦野「あれ、なくなってるわね」
御坂「嘘!本当に!?」
さすさすと御坂は自分の頭を撫で回す。すると確かに、さっきまであったはずの不快な感触が消えている。
御坂「本当になくなってる!垣根さんがやってくれたの?」
垣根「いや、俺はまだ何もしてねえ」
麦野「不思議なこともあるものね」
御坂「よかったー、一時はどうなるかと・・・って、それよりも被害者の確認にいかないと!!」
垣根「何の被害者だ?」
御坂「何のって・・・超電磁砲のよ!悲鳴が聞こえたじゃない!」
麦野「悲鳴?そんなの聞こえたっけ?」
垣根「さぁ・・・」
御坂「ちょ、ちょっと二人とも何言ってんのよ?千切れて飛んできた右手がここに・・・あれ?」
麦野「右手・・・?何のこと言ってるのよ」
御坂「な、ない!?そんな・・・確かに飛んできて私の頭に当たったのに・・・」
垣根「おいおい、夢でも見てたのか?」
麦野「おかしな美琴ね」
御坂「ゆ、夢?あれは夢だったの・・・?」
垣根「実際飛んできた右手とやらは無くなってるんだし、夢以外の何者でもねえだろ」
御坂「そ、そっか・・・疲れてたのかな私・・・」アハハ
麦野「そうそう、アホ毛のことで精神的に参ってたのよ」
垣根(・・・で、どうすんだ?)
麦野(大丈夫、さっき浜面達に連絡したからすぐに死体は片付くはずよ
美琴には人殺しの重荷なんて背負って欲しくないし、このまま夢で押し通すわ)
垣根(証拠の右手はもうしばらく俺が隠し持ってればいいか・・・
しかし何なんだこれ、能力で消そうとしたのに無効化されたぞ、気持ち悪い)
御坂「何かよくわからないけど、アホ毛が消えてよかった!」
麦野「そうね、よかったわね」
垣根「ハハ、よかったな」
学園都市は今日も平和です。
―前略 木原くン
「ZZZ・・・」スースー
散歩から帰って来たら家で見知らぬ幼女が寝ていました。
一体何が起こったと言うのでしょうか。
「んー・・・ZZZ・・・」クークー
一方通行「マジで何なンだこの状況・・・」
一方通行は酷く困惑していた。いつもの様に彼が日課のイヤガラセ兼散歩から帰って来てみれば
自分のベッドの上で見知らぬ幼女が眠りこけていたのだからそれも当然であろう。
そんな状況で平然としていられるのは、二次元と三次元の境界が曖昧になっている良く訓練されたロリコンくらいなものである。
一方通行「どっかのガキが間違えて入って来やがったか?でも鍵かけてたよなァ・・・どうすっかな」
カリカリと頭を掻きながら思案に暮れる。最初は叩き起こそうと思っていたのだが
無邪気な寝顔を見ているとどうにも毒気を抜かれ、無理に起こすのがかわいそうな気がしてきたのだ。
一方通行「誰かに似てる気がすンだよなァ・・・こうしてても埒が明かねェしやっぱ起こすか」
やれやれと溜息を吐きつつ、彼が眠っている幼女に手を伸ばした丁度その時
<ピンポーン
玄関からインターフォンが鳴り響いた。
一方通行「おォ?ったく、誰だよ・・・」
「一方通行一方通行、大変なことが起きました、開けてください、とミサカは激しくドアをノックします」ドンドン
一方通行「その声は・・・11111号か、どうした?」
11111号「ついに声だけで判断できるようになりましたか、ミサカマイスターを名乗れる日も近いですね
とミサカは一方通行の無駄な判別能力を褒めちぎります。そんなことより開けてください」ドンドン
一方通行「わかったからドア叩くのやめろ、近所迷惑だろォが!」
文句を言いながら玄関の鍵を開けようとする一方通行だが、その手が鍵にかかる直前、彼の動きは停止した。
一方通行(今玄関を開けるとマズいンじゃねェか・・・?)
外にいるのは彼の天敵とも言うべき最悪の妹達。
そして今、彼のベッドでは見知らぬ幼女が眠りこけている。
彼女にこの状況を目撃されればどうなるかは火を見るより明らかだ。
下手をしなくても、一方通行はロリコンの烙印を押され社会的に抹殺されることになるだろう。
一方通行(開けるわけにはいかねェ!!)
11111号「どうしたんですか?早く開けてくださいよ、とミサカは一方通行を急かします。ハリーハリー」
一方通行「悪ィ、ちょっと立て込ンでるから後にしてくれ!」
11111号「いえいえ、そういうわけにも行かないのです。最初に言った通り大変なことが起きているのですよ
とミサカは再度玄関を開けるてくれるようにお願いします
早くしないと能力で開けてしまいますよ?」
一方通行「いやいやいや、こっちも大変なンだよ!頼むから引き下がってくれ!」
11111号「全ミサカの存在がかかってるレベルで大変なんです、それでも開けて貰えませんか?
とミサカは電撃で鍵をこじ開けながら懇願します」
一方通行「既に実力行使入ってンじゃねェか!!反射だ反射ァァ!!
こっちだって俺の(社会的な意味での)生死がかかってンだよォォ!!」
11111号「精子ですと?別にあなたが股間の一方通行をベクトル操作してようがこのミサカは気にしませんから
観念してさっさと反射を解きなさい、とミサカは高圧的な口調で命令します」
一方通行「意味のわかンねェこと言ってンじゃねェェェ!!絶対開けねェからなァァァ!!!」
11111号「・・・どうしてもダメですか、わかりました。
仕方がありません、出直すことにします、とミサカはガックリと肩を落として退散します」ハァ
一方通行「すまねェ、片付いたら連絡入れるから待っててくれ」
妹達の存在がかかっている用件とやらが気になるところではあるが、とにかくこれで一安心か
と一方通行が玄関に背を向け一息ついた直後
11111号「かかったなアホが!!」ドゴーン
11111号が重火器で玄関をふっ飛ばしながら部屋に侵入してきた。
一方通行「リフォーム終わったばっかなのに何やってンですかテメエはァァァァ!!!?」
11111号「うるせえええ!!緊急事態なんだよこのモヤシが!!とミサカは話の分からない一方通行を罵倒します
何だズボンもパンツも履いてるじゃん、一体何をやって・・・ん、あれは?」
彼女の目が、一方通行の背後のベッドで眠っている幼女を捕らえた。
11111号「・・・」
一方通行「待て、違ェぞ、話を聞け」
11111号「お前ロリコンが高じてついに誘拐までやらかしたのかよ・・・流石に引くわ・・・
とミサカは犯罪者を見る目つきでロリコンモヤシを睨みます。マンマミーア」
一方通行「違えっつってンだろォが!!!マンマミーアじゃねェよクソが!!!」
11111号「・・・ハァ」
一方通行「その蔑むような視線やめてくれねェ?マジでちょっと心痛いンですけど・・・
散歩から帰って来たらあの幼女がいきなりベッドの上で寝てたンだよ・・・」
11111号「そんな言い訳が通ると思ってんの?第一位ならもっとマシな嘘考えろよ・・・
とミサカはあまりにもお粗末な一方通行の言い訳を一笑します」ハッ
一方通行「こうなると思ってた、こうなると思ってたよ・・・だから開けたくなかったンだよちくしょォ・・・」
頭を抱え項垂れる一方通行を尻目に、11111号はベッドの上の幼女に歩み寄る。
そのまま幼女の顔を覗き込むと、彼女は安堵したかのような、呆れたかのような溜息を吐いた。
11111号「やはりそうでしたか・・・やれやれ、こんな所にいたんですね『上位個体』
とミサカは呆れながらも胸を撫で下ろします」
一方通行「・・・『上位個体』だァ?」
頭を抱えていた一方通行が11111号の声に反応して顔を上げる。
11111号「はい、この幼女は『打ち止め(ラストオーダー)』と言って、
こんな見た目ですがこれでもれっきとした妹達を管理する上位個体なのです。
この幼女を通した命令一つでミサカ達は従順なメイドにも冷酷な殺人マシンにもなるのですよ
とミサカは幼女の恐ろしさについて解説します」
一方通行「誰かに似てると思ったらテメエ等に似てやがったのか・・・
何でそいつだけ小せェんだ?」
11111号「先程も言った通り、ミサカ達全体を管理する個体ですから
研究員達が掌握しやすいようにわざと幼く作られているのでしょう、とミサカは推測します。
まぁその幼さのせいでチョロチョロと研究所から脱走しやがったわけですが」
一方通行「研究所から脱走ねェ、テメエが言ってた『大変な事』ってなァそれか
・・・てことはテメエ、俺がそいつを誘拐したわけじゃねェってわかってて暴言吐きやがったンだな?」
11111号「いえいえ、ミサカは本当にあなたがミサカそっくりな幼女を目にして
自制が効かなくなってしまい誘拐に走ったのだと考えていますが、違うのですか?
とミサカは可愛らしく小首を傾げます」
一方通行「違ェよ!わかってンだろォが!!あと可愛くねェから!!テメエ等そっくりなんて願い下げだ!!!」
一方通行は息を荒げながら怒鳴り声を上げる。先程まで無邪気でかわいらしく見えた幼女の顔も
妹達に(というか11111号に)似ていると認識した途端ムカついて見えるから不思議なものである。
そんな彼の大声に、眠っていた打ち止めがもぞもぞと身を捩り、次の瞬間バサリと布団を跳ね除けた。
打ち止め「うるさーい!ってミサカはミサカは眠りを妨げられたことに激怒してみたり!」
11111号「やっべ起きちまったよめんどくせえ、とミサカは密かに舌打ちをします」チッ
打ち止め「起こされた上に舌打ちされるなんてどういうことなの!
ってミサカはミサカは下位個体の態度を諌めてみたり!」
11111号「勝手に脱走した挙句こんな所で何やってたんですか、とミサカは上位個体のアホ毛を掴みながら尋ねます」
打ち止め「ちょ、掴まないで!何であなたはそんなに無礼なの!
ってミサカはミサカは手をバタつかせて抵抗してみる!」ジタバタ
一方通行「ああァうるせェ・・・いいからさっさと二人で研究所に帰れよ・・・もォ用事ねェんだろ?」
打ち止め「あ、あなたが一方通行?はじめまして、ミサカは打ち止めって言います
ってミサカはミサカは礼儀正しく挨拶してみたり!」
一方通行「あァはい、ハジメマシテ。 そしてサヨウナラ」
そう言いつつ、一方通行は打ち止めと11111号を持ち上げ、玄関からポイと投げ捨てた。
打ち止め「ひどい、ひどすぎるよ!せめてミサカがここにいた理由くらい聞いてくれてもいいのに!
ってミサカはミサカはあんまりな仕打ちに文句を言ってみる!」
11111号「あ、上位個体は誘拐されたんじゃなくて本当に自分の意思でここに来ていたのですね
とミサカは今更ながら一方通行が真実を語っていたのだと認識します」
ギャーギャーと声を上げながら、打ち止めは再び一方通行の部屋に駆け込む。
それに続いて、彼女を連れ戻すと言う使命を帯びている11111号も部屋に戻ってきた。
一方通行「ハァ・・・わかったよ、理由なら聞いてやるから話したらさっさと帰れよ?」
打ち止め「ありがとう!ってミサカはミサカは優しいあなたに感謝してみる」
11111号「やはり幼女には優しいのですね、さすがロリコン」
一方通行「しね」
打ち止め「あのね、ミサカがここに来た理由はあなたに会ってみたかったからなの
ってミサカはミサカは説明してみたり!」
一方通行「・・・ハ?」
打ち止め「だからね、実験を凍結してミサカ達を救ってくれた王子様を一目見たかったの!
ってミサカはミサカは仄かな想いをぶっちゃけてみる!」
一方通行「・・・え、そンだけ?」
11111号「おいこら幼女、お前探すためにどんだけの人員が動員されたかわかってんのか?
とミサカは身勝手な上位個体に凄みます」
打ち止め「うぅ~、でもでもMNW見たら皆この人と遊んで楽しそうにしてたじゃん!
ミサカも一緒に遊びたかったんだもんってミサカはミサカは仲間外れにされたことを悲しんでみたり」
11111号「楽しそう!?楽しそうに遊んでるように見えたの!?一体MNWの何を見てたんだ!?
とミサカは上位個体の脳味噌のお花畑っぷりに驚愕します」
一方通行「おいチビ、今度遊んでやるからとりあえず今日は帰れ。 この後客が来ンだよ」
打ち止め「えー、そんなこと言って体よく追い払うつもりなんじゃないの?ってミサカはミサカは訝しんでみる!
11111号「あなたを訪ねてくる物好きなんているんですか?とミサカは素朴な疑問を口にします」
一方通行「うるせェな本当に来るンだよ、テメエ等とと会わせると絶対に面倒な事になるやつが・・・だから、」
「ジャッジメントですの!(キリッ」
一方通行「あァ来ちまった・・・」
一方通行の説明が終わるより先に、彼と11111号達の間に一人の女性が
決め台詞を叫びながら空間移動で飛び込んできた。
白井「第一位様!白井黒子、只今参上致しました!」
白井は11111号達に気付かず、彼女達に背を向けたまま一方通行に向かって一礼をする。
11111号「おや、この方は・・・」
11111号(確か変態と名高いお姉様の後輩・・・)
打ち止め「お姉ちゃん誰!?ってミサカはミサカは突然目の前に現れた人にビックリしてみたり!」
一方通行「バカ、話しかけンなお前等」
白井「はい?・・・!?」
そこで初めて自分以外の人間が一方通行の部屋にいることに気付いた彼女は、
声をかけられた方に視線を向けて驚愕の表情を浮かべる。
白井「お姉様何故ここに!?いえ、それだけでなく隣にいるのは何だか小さいお姉様!?
この前の大きいお姉様といい、第一位様はお姉様の栽培でもしてますの!?」
一方通行「落ち着け、そいつは超電磁砲じゃねェ。 つーか栽培って何だよ・・・」
11111号(大きいお姉様・・・番外個体のことでしょうか?ということはこのツインテールが
番外個体を監禁して色々と禁則事項している張本人・・・?)
重度のミサカコンプレックスをこじらせている白井にとって、目の前の光景は楽園以外の何者でもない。
彼女は恍惚の表情を浮かべながらくるくると回り、やがてピタリと止まると一方通行の前で膝をついた。
白井「第一位様!あの小さいお姉様をわたくしにくださいまし!」
打ち止め「やだ、このお姉ちゃん何か怖い・・・ってミサカはミサカは怯えてみたり・・・」
白井「あぁん!震えてる姿もキュートですの!お持ち帰りしたいですのおおお!!!」
一方通行「イヤ流石にダメだろ・・・倫理的にアウトだ」
白井「えっ」
一方通行「何でそンな貰えて当然だと思ってたみたいな反応してンの?」
打ち止め「ミサカはあなたを信じてたよ!ってミサカはミサカはお姉ちゃんの要望を突き返したあなたに感謝してみる!」
そう言いつつ、一方通行に抱きつこうと駆け寄る打ち止めだったが、
彼の能力にあっさりと反射され、強かに床に尻を打ちつけ悶絶した。
打ち止め「痛ぁーい!ってミサカはミサカはお尻をさすりながら涙目になってみたり」
一方通行「あ、悪ィ」
白井「く・・・ではそちらのゴーグルをかけたお姉様を!」
一方通行「あー、そりゃァ今日のテメエの成果次第だなァ」
11111号「おい何の権限があってこのミサカを勝手に変態に譲り渡そうとしてんだ
とミサカは身勝手な一方通行に憤慨します」
白井「は、はい今日の成果ですのね。 まずはこちらが・・・」
喋りつつ、白井は懐からメモ帳を取り出し、一方通行に差し出す。
白井「こちらがこの先一週間のお姉様のスケジュールの詳細ですの」
一方通行「おォ、ご苦労」
そう、彼女は一方通行に御坂の情報を売り渡していた。白井から受け取った情報を元に
一方通行はイヤガラセを実行する。そして彼女はそれに乗じて御坂の部屋に侵入したり、
落ち込む御坂を慰めたりして、彼女との距離を縮めているのだ。ようするにマッチポンプである。
一方通行から番外個体をプレゼントされてからというもの、白井は完全に彼の手駒と成り果てていた。
11111号「後輩に売られるとか・・・これは流石にお姉様に同情するわ・・・
とミサカは何も知らないお姉様のことを思い浮かべて切ない気持ちになります」
白井「それで次の情報なのですが・・・」
白井が再び懐からメモ帳を取り出そうとした時
「そこまでよ!!!!」
白井「あばばばばばば!!!!」ビリビリビリ
叫び声と共に、特大の電撃が彼女を襲った。
「黒子ぉ!最近こそこそしてると思ったら、まさかアンタがコイツと繋がってたなんてねぇ!!」バチバチバチ
玄関の方から近付いてくる怒号。声の主である少女はその身を怒りに打ち震わせながら
既に意識を失っている白井に更なる電撃を喰らわせた。
白井「」プスプス
一方通行「チッ、まためんどくせェのが出てきやがったなァ
可愛い後輩にいきなり電撃喰らわすなンざ随分ひでェ事しやがるじゃねェか、超電磁砲」
御坂「可愛い後輩は先輩を悪人に売り渡したりしないわよ!」
11111号「正論ですね、とミサカはお姉様の肩を持ちます」
打ち止め「これがお姉様・・・?想像してたよりちょっと怖い
ってミサカはミサカは怒り心頭のお姉様に震えてみたり」
御坂「・・・え、何このちっこいの?この子も妹達なの?」
打ち止め「はじめまして、ミサカは・・・」
11111号「ストーップ!」
御坂に自己紹介をしようとした打ち止めに、11111号が途中で割り込む。
打ち止め「ちょっとなんなの?ってミサカはミサカは割り込んできた11111号をジト目で見てみたり!」
11111号(まぁまぁ、ちょっと面白いことを思いついたのでここはミサカに任せておいてください)
打ち止め(MNW?どうして普通に会話しないの?)
11111号(ククク、見ててください。 お姉様はからかうと面白いのですよ)
打ち止め(??)
御坂「ちょっと、この子はなんなの?」
11111号「はい、この子はですね・・・」
11111号「ミサカと一方通行の愛の結晶です、とミサカは顔を赤らめながら衝撃の告白をします」
御坂「」
打ち止め「」
一方通行「なにそれこわい」
打ち止め「え、そうだったの?じゃあ、あなたがパパで11111号がママなの?
ってミサカはミサカは自分の出生に驚愕してみたり!」
11111号「いや何で上位個体まで信じてんですか、あんた培養機から這い出してきたでしょうが
とミサカはボケっぱなしの上位個体につっこみを入れます」
一方通行「冗談でも愛の結晶とか言うのやめて貰えますゥ?マジで気分悪くなって来たンですけどォ」
11111号「こっちの台詞だモヤシが!自分で言ってて吐きそうになったわ!!
お詫びにダッシュでスイーツの一つでも買ってきやがれ!!
とミサカはこの手の冗談に乗れずに童貞丸出しの反応をしている一方通行に逆ギレします」
一方通行「何なのオマエ」
11111号「しかしおかしいですね、お姉様が思ったよりも反応をしてくれません、とミサカは残念がります」
打ち止め「ねぇねぇ、お姉様息してないよ・・・ってミサカはミサカはまさかの事態に戦慄してみたり・・・」
11111号「なんですと!?」
一方通行「こンなンでショック死だァ!?笑えねェぞ!!」
打ち止め「お姉様戻ってきて!ってミサカはミサカは最高出力の電撃を浴びせてみる!!」バチバチバチ
御坂「あふっ!」ビクン!
御坂の身体が激しく痙攣する。いくら打ち止めの電撃が御坂のそれに比べて遥かに出力が低いと言えど
呼吸すら止まっている状態でモロに喰らえばひとたまりもない。
息を吹き返すことには辛うじて成功したが、彼女はそのまま白目を向いて意識を飛ばしてしまった。
打ち止め「テヘッやりすぎちゃったってミサカはミサカは可愛く舌を出して誤魔化してみる!」
11111号「さすが上位個体、末恐ろしい幼女です、とミサカは上位個体のドSっぷりに将来を危惧します」
一方通行「まァ、とりあえず息は吹き返したしセーフだろ・・・
目障りだし白黒もろとも外に捨てとくかァ」
そう言うと、彼は先程11111号と打ち止めを投げ捨てた時と同じように、
黒コゲの白井と御坂をポイっと玄関から投げ捨てた。まさに外道。
打ち止め「これでお客さんはいなくなったしミサカと遊べるね
ってミサカはミサカは期待に満ちた眼差しであなたを見つめてみる!」
一方通行「まさか・・・このガキ、ここまで計算してやがったのか!?」
11111号「イヤイヤそれはねーだろ、とミサカは深読みし過ぎてる一方通行に呆れます」
打ち止め「ねーねー遊んでよー、他のミサカ達とは遊んでるんだからいいでしょー
ってミサカはミサカは駄々をこねてみたり!」
一方通行「・・・ようするに他の妹達と同じ目に会いてェわけだなァ?」
打ち止め「うん!同じように遊んで欲しいの!
ってミサカはミサカは乗り気になってきたあなたに期待の眼差しを向けてみる!」
11111号「おいモヤシ、まさかこんな幼女に・・・」
一方通行「同じようにして欲しいつってンだ、しょうがねェだろォ?」
しょうがないと言いつつ、一方通行の顔には悪意に満ちた笑顔が張り付いていた。
彼の手が、ゆっくりと打ち止めの頭に向かって伸ばされていく。
一方通行「動くンじゃねェぞチビ」
打ち止め「何をしてくれるの?ってミサカはミサカは期待で胸がドッキドキ!」
11111号(ご愁傷様です上位個体・・・)
一方通行「よォし完成だ、似合ってるぜェ」ケラケラ
彼が打ち止めの頭から手をどけると、そこには彼女の身長と同じくらいはあろうかという
超巨大なアホ毛が聳え立っていた。
11111号「oh・・・This way・・・」
打ち止め「うわあああああ何これえええええええ!!」
一方通行「ギャハハハハ!!ちったァ大人の怖さがわかっt」
打ち止め「かっこいい!!!」キラキラ
一方通行「」
11111号「」
打ち止め「スゴイスゴイ、ながーい!ってミサカはミサカは大満足!ちょっと皆に自慢してくるね!」ダッ
一方通行「お、おい!」
11111号「ちょ、待ってください上位個体!!とミサカはイカれたセンスの上位個体を呼び止めます」
超ド級のアホ毛を装備したまま外に出て行こうとする打ち止めを制止しようとした二人だったが、
彼女はそんな言葉などどこ吹く風と言った様子で元気に部屋から駆け出していった。
一方通行「・・・」
11111号「あー・・・ドンマイ、とミサカは親指を立てて一方通行を慰めます
上位個体を追わなければならないのでミサカもこれで・・・」タッタッ
一方通行「何なンだ、この敗北感は・・・」
二人を見送った後、一方通行はぐったりとその場に崩れ落ちた。
683 : >>1[] - 2011/01/26 01:17:45.67 0DuOfmg9o 317/326投下終了
打ち止めの超アホ毛姿は勝手に想像してくれ!
あといい加減ネタも出てこないからこのスレはそろそろ終わりな
一旦終了させた後騙し騙し続けてきたがそろそろ限界だぜ
ここまで付き合ってくれてありがとよ またそのうち適当なスレ立てるから、よかったら見てくれ
一方通行「もォ見てる人もほとんどいないだろォし、唐突ですが『裏話、没ネタ大公開』のコーナーでェす」
11111号「その名の通り『本当はこうするつもりだった』『こんなネタも考えてた』
というぶっちゃけトークをするコーナーです。完全な蛇足かつメタ発言のオンパレードなので
苦手な方は回れ右をしてください、とミサカは説明します」
一方通行「今から話す没ネタ等が今後この作者の他SSで使われるかも知れませンが、
そン時は生暖かく見守ってください」
11111号「もし見かけたら罵って上げてください、喜びます、とミサカは作者の性癖に頭を抱えます」
一方通行「罵れなンて言うンじゃねェよ!偶々ネタが被った別の作者だったらどうすンだ!」
11111号「SS書いてる人なんて程度の差はあれ皆変態なんだから問題ねえだろ
とミサカは溜息混じりに言い放ちます」
一方通行「11111号さァァン!?いきなり超問題発言してますよォォォ!!」
絹旗「『超』と聞いて超やってまいりました」
11111号「おぉっと皆大好きモアイちゃんですね、とミサカはわざとらしく彼女の名前を間違えます」
一方通行「どこ行っても人気だよなァ、世の中ロリコン多すぎだろォ・・・」
11111号「お前もな(笑)」
一方通行「しね」
11111号「さてこの超モアイちゃんなのですが実はもっと出番が与えられる予定でした、
とミサカはさっそく裏話を公開します」
絹旗「超当初は一方通行の手によって、ただでさえ超ギリギリのワンピースの丈を
超気付かないほど微妙に上げられてしまいパンチラを超晒しまくってしまう、というネタが存在しましたね」
11111号「他にも対策会議に参加したり第二位とフラグが立ちかけたり、
という結構重要なポジションも用意されていたのですが・・・」
一方通行「ただ絹旗と俺が絡むことになると、どォしても暗闇の五月計画がついて回るからなァ
その辺どォするか考えてたら無駄にシリアスな方向に行きそうだったから
結局お互い素性も事情も知らない状況でしか会えませンでした」
絹旗「不幸です!超不幸です!超薄幸の美少女です!」
一方通行「つってもフレンダやら滝壺やらよりは随分マシだろォ」
11111号「あっちは最初から出番考えられてませんでしたからね、とミサカは同意します」
絹旗「そういえば浜面も超ネタにされる予定だったんですよね?」
一方通行「そうそう、浜面クンも俺のイヤガラセの標的にはるはずだったンだよ」
11111号「確か、一方通行が唐突に浜面氏の服を引ん剥くと、彼は何故か第四位の下着を身につけていた
とかいう感じのネタでしたよね、とミサカは確認します」
絹旗「どう転んでも浜面が超虐殺されることにしかならないから没になったんですよね」
一方通行「今思えば浜面も三下と同じく死ンでは蘇る不死身設定でよかったかもなァ」
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11111号「さて次の没ネタなのですが、実はこのミサカがアレイスターとつながっている
などというぶっ飛んだネタもありました、とミサカは暴露します」
一方通行「11111号が俺に対してイヤガラセしたり挑発したりすンのはアレイスターからの指示で
その目的は俺を精神的に追い詰めて能力進化させるため、ってとンでも設定でしたァ」
11111号「>>437辺りでぶち切れて黒翼を出す一方通行の姿を見届けた時点でミサカのお仕事は終了、
その後一方通行からの復讐と情報の漏洩を避けるためにアレイスターの指示で
ミサカはヨーロッパ方面に逃走するという壮大な計画がありました、とミサカは投げやりすぎな設定にげんなりします」
一方通行「ちなみに俺は当然それを追いかけてヨーロッパ上陸、魔術師編が開始されるって流れも考えてたンだぜ」
11111号「一方通行はバチカンで同じ趣味を持つフィアンマ氏と遭遇、意気投合して大暴れ、という予定でしたねぇ
とミサカは最初に浮かんだプロットを懐かしみます」
一方通行「ローマでの主な被害者は前方のバナナさンの予定でしたァ」
11111号「敵意ではなく悪意を向けているため天罰術式は通用しません、という理屈でしたね、とミサカは思い出します」
一方通行「書かれなかった理由は話が広がりすぎて書ききる自信がなかったってのと
作者が魔術をあンまり理解できてなかったからというお粗末なもンです」
11111号「もし新しくスレが立つとしたら『フィアンマ「断る」』とかになるんでしょうかね
とミサカは推測します」
一方通行「冗談じゃねェ、とてもじゃねェが書き切れねェよ。 誰か代わりに書いてくれ」
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11111号「さて次の話題ですが、このSS屈指の見所である『熱膨張って知ってるか?』に関してです
とミサカは解説します」
一方通行「本編では両手両足ついでに股間を拘束されてなす術も無くぶっ飛ばされた三下さンでしたがァ」
11111号「初期段階では股間の幻想殺しから純白の竜王の顎を放つ予定でしたね
そんで一方通行の顔面に直撃、キレた一方通行が黒翼を発して全員虐殺ENDという流れも有り得たんですよね
とミサカは恐ろしいバッドエンドを思い浮かべ身震いします」
一方通行「書いてる途中で気持ち悪くなってきたし、その先のネタも思い浮かンできたから結局お蔵入りになりましたァ」
11111号「バッドエンドといえば、本格的な欝エンドも用意されてたんですよね
とミサカは思い出します」
一方通行「あァ、結局俺が学園都市の暗部に抗い切れなくて実験開始しちゃうエンドな」
11111号「上位個体を通した命令で、妹達は近いうちにとんでもない苦痛をともなう
生物の尊厳すら無視した無残な死を迎えてしまう。それを阻止するために一方通行は実験の開始を決意する・・・
という欝ストーリーでしたね、とミサカはとんでもない展開に怯えます」
一方通行「誰も特しねェよなァ・・・ラストシーンは俺が11111号を抱きしめながら殺すっていう
これまたとんでもない欝展開が考えられてたンだと」
11111号「>>531の『嘘でも冗談でも~』辺りの件はそもそも
その欝エンドのために考えられてた台詞でしたからね、とミサカはぶっちゃけます」
一方通行「本来この作者は欝展開好きだからなァ、ギャグで終われてよかったですねェ」
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11111号「そういえばハワイアンこと初春氏が出てきませんでしたね、微妙に登場フラグ立ってたのに
とミサカは>>507~周辺の書き込みを思い出します」
一方通行「いやァ割と真面目に登場考えてたンだけどよォ、花畑登場させたら
その後キチガイなハワイアンAAで埋め尽くされるのが目に見えてたから見送ったンだわ」
11111号「個人的にはマジキチなハワイアンのAA大好きなんですがね、とミサカは作者の気持ちを代弁します」
一方通行「リアルに気持ち悪いから苦手な人も多いだろォしなァ」
11111号「他にも、土御門氏なんかも登場予定でしたよね
とミサカはちょい役でしか登場できなかった彼を不憫に思います」
一方通行「アレイスターの指示で実験を開始させるために俺と接触、それが原因で俺に目を付けられるって設定だったよなァ」
11111号「その後、女装した一方通行に迫られ、義妹の舞夏さんとの関係を滅茶苦茶にされる
という流れでしたね、とミサカは一方通行の女装を思い浮かべて額を押さえます。気持ち悪ぅ・・・」
一方通行「イヤガラセの為ならなンでもやりますよォ」
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一方通行「さて、次はジャッジメントですのに関してですがァ」
11111号「本来もうちょっとまともな突っ込み役になるはずだったんですよね
どうしてああなった・・・とミサカは白井氏の変態っぷりにドン引きします」
一方通行「なっちまったもンはしょうがねェってことで終盤は番外個体との絡みとか
書こうと思ってたンだよ」
番外個体「うひゃひゃひゃひゃ!ほら、どうして欲しいのか言ってごらんよ!」
白井「欲しい・・・欲しいんですの・・・」
番外個体「何が欲しいのか言ってごらんよ、はっきり言わないとやめちゃうよ?」
白井「大きいお姉様の!大きいお姉様の電撃が欲しいんですのおおおお!!!」
番外個体「あひゃひゃひゃ!電撃喰らって喜ぶなんてとんだ変態雌豚だね!!
望み通りたくさんあげるよ!!」バチバチバチ
白井「ですのおおおおお!!!!」ビリビリ
11111号「とまぁこんな感じで番外個体と白井氏の立場を逆転させる予定もありましたねぇ
とミサカは新しい喜びに目覚めた番外個体を思い浮かべホロリとします」
一方通行「そのシーンを俺が録画して超電磁砲に見せ付けてトラウマ植えつける
って流れも考えてたンだよな」
11111号「お姉様精神崩壊まっしぐらでしたねぇ、とミサカは合掌します」
一方通行「番外個体は他にも、ちょっと流れが違ったら終盤の11111号みたいな
俺の悪友的ポジションになってた可能性もあったンだよ」
11111号「このミサカのキャラが濃すぎたのと、最近一方通行と番外個体のラブラブなSSが多いから
ちょっとアプローチを変えてみるか、というどうでもいい理由で彼女はフルボッコにされることになったんでしたね
とミサカは不憫な番外個体に同情します」
一方通行「あンな性悪願い下げだァ」
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一方通行「裏話もこンなもンにしとくか、あンまり話しすぎると次のSSのネタが無くなっちまうからなァ」
11111号「いやしかし、こんなに長々とSS書いたのは久しぶりでしたねぇ
とミサカは一仕事終えていい汗かいた作者を労います」
一方通行「禁書系ではこンだけ長く書いたのは始めてだなァ」
11111号「ここまで読んで下さってありがとうございましたまた適当なSSでお会いしましょう
とミサカは当たり障りのない挨拶で締めくくります」
一方通行「まァ次も多分ギャグSSだろォなァ、欝ストーリーは誰も望ンでねェだろォし」
11111号「真面目にシリアス物書いてるはずなのに、上条氏が股間で銃弾を受け止めながら
『熱膨張って知ってるか?』とか言い出しますからねぇ
とミサカは根本的にシリアス物が書けない作者を哀れみます」
一方通行「つーわけで本当にこのスレは終わりでェす、また何処かでお会いしましょう。 次はAAもっと頑張るぜェ」
END
715 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/01/26 21:26:23.59 gFbSxKYio 325/326美琴と麦野の初めて受けた嫌がらせの話って結局したっけ?
>>715
一方通行「それは多分今後別のSSで活かされることになりまァす」
11111号「概要だけ説明すると、お姉様は絶対能力進化を止めるために研究所に乗り込んだ先で一方通行に遭遇
麦野さんは原作通りお姉様を阻止するために研究所の護衛をしてた所に一方通行が現れる、という感じでしたね
とミサカは解説します」
【part2】に続きます