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――――【次の日・8月14日・支部】
…ペラッ…
竜騎士「…ふーん」
トコトコ
女武道家「おはようございます…ふわぁ」
竜騎士「おはよう、お前な…昨日ドンだけ大変だったか…」
女武道家「あ~…ご迷惑おかけしました。ちょっと私には、あのお肉は強すぎたようで…」アハハ
竜騎士「反省してるならよろしい」
女武道家「え、えと…土地の歴史の本、何か面白いこと書いてありましたか?」アセッ
竜騎士「いーや、まだ分からん。元々ここは、商人たちが切り開いた土地らしい」
女武道家「商人が?」
竜騎士「分かりやすいようにいうと…」
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商人A「中央から結構離れてるけど、キレイな水源もあるし町作れるかも」
商人B「だったら、商人が住む商人たちの町とかどーよ」
商人C「あぁ、いい考えかもね。だったら、凄い商店街とか作ったりしてえな」
商人A「おっしゃ、色々な職人を集めて、一代で素晴らしい富を得よう!」
商人B「あぁ、がんばるぞ!」
商人C「やってやるぞ!」
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竜騎士「ってわけだな」
女武道家「わー…たんじゅーん…」
竜騎士「町の歴史なんてそんな感じだろ。今も商店街という歴史は残ってるみたいだけどな」
女武道家「今の商店街に繋がってるってことですね」
竜騎士「だが残念ながら、凄い!っていうほどにはならなかったみたいだな」
女武道家「何でだったんでしょうね」
竜騎士「…戦争のせいだ」
女武道家「戦争?」
竜騎士「もう何百年も前に起きた、3度の戦争分かるか?」
女武道家「いえ…聞いたことあるくらいです」
竜騎士「1度目は魔王と人類の全面戦争。2度目は人類同士が争った大陸戦争」
女武道家「3度目は?」
竜騎士「一度、この世界が王政になったことがある。その時に起きた王政反逆軍と王政側の大規模な戦争だ」
女武道家「あー…全部絵本で読みましたよ!」
竜騎士「え…絵本…。まぁいい、その戦争の影響を著しく受けたのがこと土地だったってわけだ」
女武道家「なるほど!」
竜騎士「魔物も当時は多く住み着いてたみたいだな。魔物にとって、あの泉にしろ、森にしろ、生活するには困らないからなぁ」
女武道家「それから、どうなったんですか?」
竜騎士「戦争が?この土地が?どっちだ」
女武道家「この土地がです」
竜騎士「…んーとな…」ペラッ
女武道家「…」ワクワク
竜騎士「…なるほど。だいぶ飛ぶが、ここまでくれば…スミスさんの話通り。あの天然洞窟の存在だ」
女武道家「鉱石が採れるところですね」
竜騎士「洞窟が発見されたのが今から80年前。魔石やらレアメタルが多く採れた、とある」
女武道家「レアメタル?」
竜騎士「希少鉱石。貴重な鉱石ってことだ」
女武道家「ふむふむ」
竜騎士「あったあった、25年前。洞窟の深部にて魔物が確認、鉱夫36人を死傷させる大惨事となる」
女武道家「そんなに!?」
竜騎士「36人か。中はよっぽど広いのか?」
女武道家「洞窟怖いですね…」
竜騎士「お前は泉も洞窟も森も、全部怖いじゃねーか。田舎に住んでるのに都会っ子って…」
女武道家「仕方ないじゃないですか!」
竜騎士「はは…、っと、ここで本は終わってる」
女武道家「あれ?最近のことは書いてないんですか?」
竜騎士「発行年がちょうどそこまでだ」
女武道家「あぁ…そういうことですか」
竜騎士「ご丁寧に、本の中に当時の洞窟内部の地図まで封入されてるぞ」ペラッ
女武道家「ふむふむ」
竜騎士「…ふーん、思ったより複雑ではないな。主坑道みたいなのがきちんと伸びてるし」
女武道家「これが単純って…」
竜騎士「何箇所か落盤事故、封鎖区間もはっきりしてるな。んー…」
女武道家「どうしました?」
竜騎士「…ふむ」
女武道家「?」
竜騎士「あれが…つまり…」ブツブツ
女武道家「何か嫌な予感…、畑に水やりながら散歩に行ってこようかな…」コソッ
竜騎士「…女武道家」ガシッ
女武道家「あ、嫌、何ですかその笑顔、絶対いつもみたく変な場所に行くつもりじゃ」
竜騎士「…」ニッコリ
…ゴソゴソ
女武道家「何でピックハンマーを…、ちょ、洞窟の地図を剥がして…あ、待って…あぁぁぁっ!」ズルズル
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――――【 天然洞窟 】
ヒュウゥゥゥッ…
竜騎士「おふっ…、相変わらず洞窟の中から冷たい風が」ブルッ
女武道家「本当に行くつもりですか…」
竜騎士「多少古いが、地図はあるし大丈夫だって!」
女武道家「で、でもぉ…」
竜騎士「…そんなに心配か?」ウーン
女武道家「そ、そうですよ!」ハッ
竜騎士「うーむ」
女武道家「第一、落盤やらで頭に岩が当たったり、昔の地図と違って色々変わってたりするかもしれませんよ!」ビシッ
竜騎士「確かにそれは困るな…」
女武道家「でしょ!ってなわけで、今日は大人しく別の場所に…」
竜騎士「よし、ちょっと待ってろ」
タッタッタ…
女武道家「ふぇ?」
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竜騎士「ただいま…お待たせ!ほいっ、これ装備しとけ」スッ
女武道家「な、何ですかこれ、っていうか…」
スミス「やぁ!」ビシッ
女武道家「何で鉱夫の格好したスミスさんがいるんですかぁ!」
スミス「いやー、竜騎士くんが天然洞窟入るから着いてきてくれっていうからさ」
竜騎士「魔物が出たら守るし、良い鉱石が出たら安く譲るっていう話で」
女武道家「本気じゃないですかぁ!」
竜騎士「道具やら、防具やら、補えそうなのをスミスさんが持ってたのを思い出して。借りようとね」ハハハ
女武道家「うぅ…もう何言っても無駄ですね…大人しく装備します…」パサッ
竜騎士「ははは、それじゃ出発!」
スミス「はいよっ!」
女武道家「あうう…」
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――――【天然洞窟・内部】
カツーン…カツーン…
女武道家「スミスさん」
スミス「んー?」
女武道家「スミスさん、長い時間は戦えないって言ってましたよね?」
スミス「あぁ、そうだね」
女武道家「こういうことは大丈夫なんですか?」
スミス「こういうこと?」
女武道家「冒険っていうか、探索っていうか…」
スミス「あー、まぁね。一応人並みには体力はあると思うよ。古傷が痛むとかそういうことはあるけどね」
女武道家「なるほど」
竜騎士「じゃなかったら、そもそもクソ重い鉄槌使って武器防具なんて作れないだろ」
女武道家「そういえばそうですね」
スミス「よっぽどな相手が出ない限りは大丈夫だと思うよ」
女武道家「それならいいんですが」
竜騎士「…」キョロキョロ
女武道家「まっすぐ広い坑道が続いてますね」
竜騎士「分かれ道も多いけど、この一本道さえ進んでれば大丈夫だろう」
スミス「地図見せてくれ」
竜騎士「どうぞ」スッ
スミス「…、このまま真っ直ぐ行くと、事故現場とやらに繋がるな」
竜騎士「まだ多分、魔物はいますよね」
スミス「どうだろうな?もういなかったりするんじゃないか?」
竜騎士「と、いうと?」
スミス「その魔物は、人が侵入してきたから捕食に来ただけってかもしれないだろ?」
竜騎士「あ、なるほど」
スミス「そもそも、生物が住み辛く、虫しかいないような場所に人間の脅威になる魔物がいるか?」
竜騎士「考えてみれば…」
スミス「そうだろう?つまり、人が入らなくなった洞窟の最深部は、安全な可能性もあるということだ」
竜騎士「そう願いますよ」
女武道家「本当に…」
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――――【天然洞窟・深部】
カツンカツン…
竜騎士「この辺が事故現場だ」
女武道家「あいたっ!」ゴツッ
竜騎士「どうした?」
女武道家「何かに引っかかりました…」
スミス「お、これは」スッ
竜騎士「なんです?」
スミス「当時の人たちの道具のようだ」ボロッ
竜騎士「錆まくってますね。使えそうには…ないか」
スミス「まぁ仕方ないさ」
女武道家「…お?竜騎士さん、このスイッチなんですかね!」
竜騎士「触るなよ!」
スミス「不用意にその辺のもの触ると危ないぞ!」
女武道家「え?」カチッ
バチ…バチバチッ…!!
スミス「何の音だ!」
竜騎士「何を押した!」
女武道家「このスイッチを…」
パァッ…
竜騎士「…明るくなった」
女武道家「洞窟の中を明るくするスイッチだったんですね」アハハ
竜騎士「アハハじゃないぞ!何かあったら、このまま閉じ込められることだってあるんだ!」
スミス「明かりのスイッチだったのか…、良かった良かった」
女武道家「ごめんなさい…」
スミス「次から気をつけるってことで、許してあげるさ」
女武道家「はい…」
竜騎士「ったく…」
……ギャァァァァッ!!!!!
竜騎士「!」
女武道家「!?」
スミス「何だ、今の悲鳴は!」
ギャァァァッ!!!…アァァァ……シーン…
竜騎士「耳がいてぇ…何だよ一体!」
女武道家「収まり…ましたね」
竜騎士「こっち側からか…」
スミス「こんな最深部に人?いるわけがない…よな」
竜騎士「…と、なると」
スミス「いるな。魔物、が」
女武道家「なな、何がいるんでしょうか…」
竜騎士「この過酷な中で生き抜いてきた魔物だ。相当なやり手かもな」
スミス「どうする?戻るか」
竜騎士「まさか。売れるものかもしれませんしね」スチャッ
女武道家「やっぱり、言うと思いましたよ…」
スミス「はは、こんな男の付き合いで君も災難だな」
女武道家「災難です!!…けど、ちょっとだけ今までと違って楽しいなとか思える部分があるんですけどね」ヘヘ
竜騎士「…はは」
スミス「と、叫び声のほうへ行ってみるか」
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チャポン…
竜騎士「…地底湖!」
女武道家「わっ…綺麗」
スミス「透き通るような水だな…」
竜騎士「…」キョロキョロ
女武道家「どうしました?」
竜騎士「…敵の気配がない。確かにこの辺から声が聞こえたんだが」
スミス「ふむ、確かにな」
竜騎士「んー…」
女武道家「あ、何ですかあれ?」
竜騎士「あれ?」
女武道家「ほら、湖の脇に並んで生えてる草。こんなところに草生えてるんです?」
竜騎士「…草?」
スミス「あぁ…草みたいだな」
女武道家「もしかしたら、珍しい植物かもしれませんよ」
竜騎士「…こんな場所に草…?陽も当たらぬような場所で、水だけで…?」
女武道家「ほらほら、善は急げですよ!」タタタッ
竜騎士「…洞窟…叫び声…水、草…」ブツブツ
女武道家「抜いてみますよー!」
竜騎士「…っ!!」ハッ
女武道家「せーのっ…」グググッ
竜騎士「待て…やめろっ!それを抜くなぁぁ!」
女武道家「えっ?」
ググッ…ズボッ…
女武道家「…え、これ…!」
竜騎士「スミスさん、女武道家、耳を塞げぇぇっ!」
女武道家「…ひっ!」ギュッ
スミス「っ…!」ギュッ
マンドラゴラ『ギャアアアァァッ!!!』
竜騎士「~~…っ!」ビリビリ
スミス「くっ…!」キーン
女武道家「み、耳がぁぁっ!!」ズキズキッ
マンドラゴラ『アァァァ…ァ…』
…ヘナッ
竜騎士「はぁ…はぁ…っ」
女武道家「…」フラッ
竜騎士「ちっ…」ダッ
…ダダダダッ…ガシッ!!…ズザザザッ…!!
女武道家「…」
竜騎士「おい、しっかりしろ!」
スミス「く…」フラフラ
竜騎士「スミスさん、大丈夫ですか!?」
スミス「何とかね…」
竜騎士「迂闊だった、あそこまで状況が揃ってて…っ、女武道家、目ぇ覚ませ!」
女武道家「…」ユサユサ
スミス「今のはなんだったんだ…?」
竜騎士「マンドラゴラです…くそっ、気付け薬なんて持ってないぞ!」
スミス「こいつが…マンドラゴラ…ってやつなのか」
マンドラゴラ『…』
竜騎士「女武道家、起きろぉぉ!」バンッ
女武道家「…うっ…」
竜騎士「!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゴクンッ…
竜騎士「水飲んで、落ち着けたか?」
女武道家「はぁ…はぁ…、一体私はどうなったんですか…?」
竜騎士「小さいサイズで助かった。もう一回り大きかったら、俺らは全員あの世だったな」
女武道家「あの…世…!?」ゾクッ
竜騎士「こいつはマンドラゴラ。錬金術、魔術における貴重な素材の1つって感じか」
女武道家「マンドラ…ゴラ…」
竜騎士「見た目はただの小さな植物だが、実際は生きてる魔物だ。抜くと同時に死んでしまう」
女武道家「じゃあ、こいつはもう死んでるんですか?」
マンドラゴラ『…』
竜騎士「あぁ。そして死ぬ時、さっきのような叫び声を出すんだが、あれが厄介でな…死を誘う最悪の声なんだ」
女武道家「よ、よく私生きてましたね…」
竜騎士「たまたま小さめだったからだろう。だが耳を防がなかったら、今も目は覚ましちゃいないさ」
女武道家「…」
スミス「…とにかく皆が無事でよかったよ」
竜騎士「本当にそうですね」
スミス「しかし、マンドラゴラは抜いていけないものなのか?」
竜騎士「えっ?」
スミス「貴重な材料となるんだろう?高値で売れるんじゃないのか?」
竜騎士「そりゃ1つ数十万はくだらないですが、命を引き換えにするのはちょっと…」
スミス「手段はないのか?」
竜騎士「あるっちゃあります…が…」
女武道家「どんな方法です?」
竜騎士「…犬」
女武道家「わんこ?」
竜騎士「犬の首輪と、マンドラゴラの葉をくくりつけて、主人は離れる。そして、犬を呼ぶんだ」
女武道家「え…そ、それって」
竜騎士「飼い主は遠くで声を聞くだけで、何もない。だが、犬は死ぬ。それでマンドラゴラも死ぬ。一件落着ってわけだ」
女武道家「そ、そんなことダメですよ!!」
竜騎士「これが今のマンドラゴラの入手方法だ。市場に出回っているほとんどが…な」
スミス「そうだったのか…」
女武道家「かわいそうすぎますよ…」
竜騎士「俺も初めて聞いた時は残酷すぎると思ったさ」
女武道家「…」
スミス「そりゃここにあるのを抜くのは無理だな…、この1本だけ入手したということで…プラスだと考えよう」
竜騎士「そうですね」
女武道家「…うーん」
竜騎士「ほら、女武道家…いつまで落ち込んでるんだ。探索に戻るぞ」
女武道家「あ、竜騎士さん」
竜騎士「ん?」
女武道家「マンドラゴラって、光にも弱いんですか?」
竜騎士「いや?」
女武道家「ですよね。現に今の明かりの下では叫びませんし」
竜騎士「何が言いたい?」
女武道家「じゃあ…さっき、明かりを点けたときに響いたマンドラゴラの声は…なんですか?」
竜騎士「あ…」ハッ
スミス「そうか、魔物の声だけだと思って忘れていた、マンドラゴラが声をあげるのは…」
竜騎士「地中から"抜かれた時だけ"…だ」
ザシュッ!!!…
ザッ…ザッ…グルル……
スミス「!」
女武道家「!」
竜騎士「!」
ザッザッザ…
???『グルル…』
女武道家「な、ななな…」
スミス「こりゃあ…たまげた」
竜騎士「はっ…そういうことか…」
ファイアドレイク『グ…』
竜騎士「ファイアドレイク…竜族…か」
女武道家「りりり、竜!?」
スミス「これはちょっと不味いんじゃないか…?」タラッ
竜騎士「栄養のあるマンドラゴラを食べて生き続けていたってことか」
ファイアドレイク『…』ギロッ
スミス「どうするんだ…?」
女武道家「ここ、こ…今度こそ死んじゃいますか…?」クラクラ
竜騎士「ドレイクは竜族なだけで"竜"ではない。もしかしたら…ということもある…」スチャッ
スミス「戦う気か!?」
女武道家「いけるんですかっ…」ブルブル
竜騎士「いや、あくまで足止めだ。女武道家、スミスと外へ出てくれ」
女武道家「竜騎士さんは!?」
竜騎士「俺まで逃げたら、こいつが外に出ることになる。それだけは避けなければ」
女武道家「危険ですよ!」
竜騎士「逃げたら周辺の町が危険にさらされる!いいから逃げてくれ!」
女武道家「ううぅ…」
スミス「…竜騎士くん」
竜騎士「これでも竜を狩る者、"竜騎士"ですよ。心配しないでください」ニコッ
ファイアドレイク『グガァァッ!!』クワッ
ドッドッドッド…ガキィィンッ!!
ファイアドレイク『…ッ!』ググッ
竜騎士「ぬぐっ…」ブルブル
女武道家「竜騎士さんっ…!」
竜騎士「早く行けっ!!」
女武道家「…ごめんなさい…!いきましょう、スミスさん…」ダッ
スミス「それが懸命だ。今は彼に従おう」ダッ
タッタッタッタ…
竜騎士「ふーっ…やっと行ったか…」
ファイアドレイク『…』ググッ
竜騎士「最初から全力だ…龍突っ!」ブワッ
…キキキィンッ!!!
ファイアドレイク『…グ?』
竜騎士「おいおい、全然効いちゃいないのか…」
ファイアドレイク『グゥアッ!』ボワッ
竜騎士「ぬあっ!!」
ボオオッ…ドゴォォォンッ!!
…パラパラ…
竜騎士「おーあちち…、予想以上の火炎だな、ドレイクさんよ」
ファイアドレイク『…グアアアアッ!!』クワッ
竜騎士「…参ったね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タッタッタッタッタ
女武道家「うう…」グスッ
スミス「…女武道家」
女武道家「もっと私が強かったら、立ち向かえたんでしょうか」
スミス「わからんさ。今は彼を信じるしかない」
女武道家「外に出たところで…どうすれば…」
スミス「軍の通信機器で、応援を呼ぶことは?」
女武道家「壊れてるみたいなんです…」
スミス「なんと…、どうするか…」
女武道家「…」ピタッ
スミス「女武道家?」
女武道家「やっぱり…逃げることは…できないです」
スミス「だが、今の我々では足手まといになるだけだぞ」
女武道家「で、でも…でも…」
…ドゴォォォォンッ…!!パラパラ…
女武道家「…」
スミス「なんて轟音だ…竜騎士君は…」
女武道家「やっぱり…助けに行きます!」
スミス「…死ぬかもしれんぞ」
女武道家「竜騎士さんが命を張って私たちを助けようとしてるのに…見過ごすなんて!」
スミス「玉砕覚悟か?」
女武道家「これでも…私は軍人です!」
スミス「…」
女武道家「だから、戻ります…戻らせてください!」
スミス「まぁ待ってくれ。なら、一旦俺の鍛冶場に行く」
女武道家「え?」
スミス「俺の仕事、昔と、今。何だったか考えてみてくれ」ニカッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドシャァァッ…ゴォォォ…
竜騎士「げほっ…随分ハデにやってくれるじゃないの…」
ファイアドレイク『グルル…』
竜騎士「さすがは上位種、一筋縄じゃいかない…ってか…」
ファイアドレイク『グゥオッ!』ボワッ
竜騎士「また火吹きかよ…、ぬあああっ!」
ドゴォォォンッ…パラパラパラ…
竜騎士「…ふぅ、ふぅ…」
ファイアドレイク『グルル…』
竜騎士「あんま狭い場所で炎吐かないでくれるか…空気も薄くなるだろうが…」
ファイアドレイク『グゥオッ!!』ボワッ
…ドゴォォォンッ!!
竜騎士「くそ…聞いちゃいねえ」
ファイドレイク『グウアッ!!』ビュッ
竜騎士「!!」
ザシュザシュッ!!
…ポタ…ポタポタ…
竜騎士「ぐ…早すぎて…見えなかった…う、腕が…っ」ガクッ
ファイアドレイク『グゥ…』
竜騎士「…まだだ、お前を最高の肉にしてやる…からなっ!」スチャッ
ファイアドレイク『…』
竜騎士「龍刃っ!!」ブゥンッ!!
…ガキィィンッ!!…
ファイアドレイク『グググゥゥッ!!』ググッ
竜騎士「まだ足りないのか…うらあああっ!」ググググッ…
…ブシュッ…!!
竜騎士「!」
ファイアドレイク『…』
竜騎士「…っ、俺の、腕が…先に壊れたか」ズキンッ
パッ…ガランガランッ…
竜騎士「…」ヨロッ
ファイアドレイク『グ…グルルル…』ギロッ
竜騎士「2人…逃げられたか…?無事なら…いいんだけどな…」
ファイアドレイク『グゥアッ!!』ボワッ
竜騎士「もうちっと生きていたかった…かな」
…ゴォォォッ…ボォンッ!!!
竜騎士「!」
ファイアドレイク『!』
竜騎士「空中で炎が爆発…した?ま、まさか!」クルッ
女武道家「我が一族に伝わる、気合を飛ばす"気功波"ですっ!」
竜騎士「お前…逃げなかったのか!」
女武道家「もっと生きたいんですよね…お手伝い致します!」
竜騎士「ばかやろう!お前じゃドレイクは無理だ!」
女武道家「で、でも…見捨てるくらいなら、一緒に戦って倒れたほうがましです!」
竜騎士「…っ」
スミス「少しだけだが、俺も行くぞ!」スチャッ
竜騎士「ス、スミスさんまで戻ってきたんですか!」
スミス「武器を取りに行って遅れたんだ。久々だな…この感覚」チャキンッ
竜騎士「2人とも…」
女武道家「竜騎士さん、一緒に戦います!」
ファイアドレイク『グルルル…』
スミス「…すげぇ気迫だな。弱点とかはないのか?」
竜騎士「竜族は、弱点という弱点は…ないんです。唯一あるのは、"心臓"」
スミス「つまり、心臓を突き刺せばいいんだな?」
竜騎士「簡単なようで、あそこの皮膚は硬く、単純にはいきませんよ」
女武道家「私はどうすれば…?」
竜騎士「気功波、っつったか。あれで前線に出る俺らを援護してくれ」
女武道家「はいっ!」
スミス「とにかく弱らせないと話にはならんのか?」
竜騎士「そうです。攻撃が通るのは、硬い皮膚のある隙間の…関節」
スミス「ドレイクの左腕から血が出ているな…、あれは竜騎士くんが?」
竜騎士「はい、ですが…ドレイクに斬られた腕が先に潰れ…完全に切断とはいけませんでした」ズキンッ
スミス「…任せてくれ」ダッ
竜騎士「女武道家、援護!」
女武道家「任せてください…気功波ぁっ!」ビュッ
ファイアドレイク『グガ…ッ!』ドォンッ
スミス「ここだ、大斬っ!」ブン!!
…ガキィンッ!!
竜騎士「惜しい、カスった!」
スミス「くそっ…あの動く的で、よく狙って関節に当てられたな」ズザザ
竜騎士「ま、それで食べてますからね」ハハ…
スミス「もう1度、だな」
竜騎士「今度は俺も切り込みます…」スチャッ
スミス「その腕、大丈夫か?血が出ているようだが」
竜騎士「なんのこれしき。現役の戦士が、引退した人に遅れをとるわけにはいきませんからね」
スミス「ふ…、まだ若いやつには負けないぞ!」ダッ
竜騎士「スミスさん、無理をなさらずに!」ダッ
女武道家「支援はお任せを!」ググッ!
ファイアドレイク『グルルァァッ…!!』ググッ…
スミス「おりゃああっ!」ブンッ!!
竜騎士「刺さりやがれぇぇっ!!」ビュンッ!!!
ファイアドレイク『グウアアアッ!!』ボワッ!!
竜騎士「くっ、また火球…っ!」
…ボォォォッ…ドゴォンッ!!!
女武道家「気攻波…っ!2人を燃やしはしませんよ!」
竜騎士「ナイス…ココだぁぁっ!」タァンッ!!
スミス「飛んだ…高い!」
竜騎士「この高さからの一撃なら…どうだっ!龍落っっ!!」ヒュウウウッ
…ガキンッ…ズッ…ズブッ…
竜騎士「!」
…ズブズブズブ…ドシュウッ…!!!
竜騎士「肩を貫いた!」
スミス「おぉ!」
ファイアドレイク『グギャアアッ…!!』
竜騎士「…ふんぬっ!」ズボッ
…ポタポタポタ…
ファイドレイク『グ…』ダランッ
スミス「動きが鈍くなったな…いけるか!?」
竜騎士「だが、この槍だけじゃ火力が足りないみたいですね…」
スミス「はは、それじゃ…これの出番だな」
ゴソゴソ…ザシュッ!!!
竜騎士「これは…」
スミス「あの時のトゥハンドソードさ。これなら…いけるんじゃないか?」
竜騎士「…本当に持ち替える事になるとは思いませんでしたよ」
スミス「一応、持ってきてよかった。さ…」スッ
竜騎士「はい、貸していただきます」スチャッ…
女武道家「2人とも、危ないです!」
ファイアドレイク『グルアッ!!』ボワッ
…ドゴォンッ!!!…パラパラ
竜騎士「く…そ、体は鈍っても底なしの魔力持ちやがって…」
スミス「竜騎士くん、頼んだよ」
竜騎士「剣は苦手ですが…いくぞ、ドレイク!」
ファイアドレイク『グルルルゥ…』
竜騎士「…おああっ!」タァンッ!!
スミス「さっきより高い!」
女武道家「でも、あの高さじゃ…火球の狙いうちですよ!」
ファイドレイク『グガアアッ!!』ボワッ
スミス「やはり火球…女武道家、援護を!」
女武道家「だめです、竜騎士さんにも当たってしまう!」
竜騎士「大丈夫だ、心配すんな…」
…ドゴォォォンッ!!!…
女武道家「竜騎士さぁん!!」
スミス「いや…!」
竜騎士「あっちいなコラァァ!肉を切らせて…骨をたぁぁぁっつ!!!」ビュウウウンッ!!
ドシュッ…!!!!
ファイアドレイク『グガアアアッ…!!』
竜騎士「まだまだ…まだまだぁぁっ!」グググッ
ファイアドレイク『グウウウッ…』
スミス「いけぇぇ、竜騎士ぃ!」
女武道家「やっちゃってくださああい!」
竜騎士「ぬあああっ!!」
……ズバァンッ!!!
ファイドレイク『…ッ』
…ドォォン……パラパラパラ……
女武道家「胸に…剣が刺さってドレイクが…倒れた…!」
スミス「お、おおおお…っ!!」
竜騎士「…倒せた、のか?」
女武道家「や、やったんですよ!!」
竜騎士「お、うおおおっしゃああーーーっ!」
スミス「はは…本当に寿命が縮むよ…」
竜騎士「このトゥハンドソードのおかげですよ、ありがとうございます!」
スミス「竜族を倒せたし、この剣はドラゴンスレイヤーとでも名づけようかな」ハハハ
竜騎士「そこまで名づけるほどのモノを倒したわけじゃないんですがね」アハハ
スミス「いやいや、十分だよ!」
女武道家「竜騎士さん、凄いですよ!」
竜騎士「…ま、俺一人じゃ死んでたしな。ありがとう、2人とも。2人のおかげで倒せました」
女武道家「えへへ」
スミス「何、足手まといにならなくて良かったくらいだ。気にしないでくれ」
竜騎士「…それにしても、最後の炎はちょっと焦りました」タハハ
スミス「肉を切らせて骨を断つか」
竜騎士「正直、気合だけで耐えようとしたんですが、思ったよりダメージを受けませんでした」
スミス「戦いの中で成長しているのかもしれないね。そうじゃなかったら、普通は黒こげだろう」
女武道家「黒こげにならなくてよかったです…」
竜騎士「まぁ…終わってみればスゲェ相手だったな」
スミス「うん、よく倒した!」
竜騎士「では…さて!」パンッ
女武道家「…」
竜騎士「…」ニタァ
スミス「お?」
女武道家「私は、そこの地底湖でも眺めてますね」ニコッ
竜騎士「音だけでも楽しんでおけ」ククク
女武道家「うぇええ…」
スミス「何をするんだい?」
竜騎士「解体、ですよ。売る為にも!」
スミス「あぁ、なるほど。だが…少々でかすぎないか?」
竜騎士「ですよねえ…自分一人じゃきついかな…どうするか」
スミス「一旦、外に運んでからするのはどうだ?商人なんかだったら、そのままでも買い取ってもらえそうだが」
竜騎士「うーん、知り合いの商人に連絡とろうにも、考えたら通信のが壊れてるんですよね」
スミス「中央まで往復するにも、そこまで時間かかったら腐っちまうか」
竜騎士「どうしたもんか」
女武道家「この大きさかぁ…だったら、商店街の皆さんに手伝ってもらって加工する、とか…どうですか?」
竜騎士「商店街の人たちに?」
女武道家「はい。腕はいいってこの間、言ってたじゃないですか?」
竜騎士「あー…そりゃそうなんだけど、劣化とはいえ、竜族の加工はちょっと骨が折れて、工夫が必要なんだ」
女武道家「なるほど…これで、どのくらいの価値があるんでしょうか」
竜騎士「状態にもよるが、ドレイク系統は比較的生息してるからなぁ…、300万…いくかいかないか」
女武道家「充分すぎますね…」
竜騎士「俺らの活動報告書としても充分すぎる。これで大きな評価につながったはずだ」
女武道家「と、なると、やっぱりすぐ売りたいですよねー」
竜騎士「んむむ…」
スミス「君は解体できるのか?」
竜騎士「一応経験はありますので…」
スミス「あぁ、だったら簡単な話じゃないか」
竜騎士「え?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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――――【数時間後・商店街】
ガヤガヤ…
町民A「あの時の悪魔か…、よく仕留めてくれた…」
町民B「ワシらの家族の敵だったんじゃ…、ありがとう…」
竜騎士「いえいえ」
コック「おーい、この肉はこのカットでいいのか!」
アクセサリ職人「皮はどう下ろすんだ?もっかい教えてくれ!」
竜騎士「あ、今いきまーす!」タッタッタ
女武道家「スミスさん、考えましたね」
スミス「腕がある人たちがいる。加工方法が分からないなら分かる人が教えればいい。それだけだったな」
女武道家「それにしても、皆さん、あのドレイクの存在知ってたんですね」
スミス「俺は知らなかったが、爺さんなんかは皆…涙ながらに話し合ってるな」
女武道家「教えてくれても良かったのに…って竜騎士さんが嘆きそうです」
スミス「歴史がある町や村には、決して口にしてはいけないことがあるんだよ」
女武道家「うーん…」
スミス「どうしたんだ?」
女武道家「当時の事故も、しっかり軍の支部の情報に乗ってました。でも、ドレイクのことはなくて…」
スミス「ふむ」
女武道家「…」
スミス「つまり、当時の軍人が、ここの町人だったということだろう?」
女武道家「あ…あー…そういうことなんですかね?」
スミス「そりゃ情報として残しておかないといけないことだろうが、やっぱり身内が殺された事は公にできなかったんだろう」
女武道家「なるほど…」
竜騎士「スミスさーん!!」オーイ
スミス「ん…なんだぁー!」
竜騎士「ちょっと、来てください!面白いもの見つけました!」
スミス「わかったー!女武道家、行ってみよう」
女武道家「はいっ!」
タッタッタッタッタ…
スミス「なんだい?」
コック「肉の解体をしていたら、内蔵から面白いものが出てきた」
スミス「面白いもの?」
竜騎士「これです。この銀色の…」キラッ
スミス「こっ、こりゃあ…」
竜騎士「多分ですが、ミスリル…かと」
スミス「確かにこれはミスリルだ。これがドレイクの体から!?」
竜騎士「長年、あのドレイクは周囲の岩をも食べて生きてきたようです。取り込まれた岩が、ドレイクの中で変化したものかと」
スミス「す、素晴らしいな」
竜騎士「あげますよ。スミスさんがいなければ、あのドレイクは倒せなかったんですし」
スミス「い、いいのか?」
竜騎士「俺が持っていても、売るしか道がありませんから。ぜひ使ってあげてください」
スミス「だが、ミスリルといえば少量でも魔力を宿すという高位鉱石のひとつ…君らの為にもなるんだぞ?」
竜騎士「お金ばかり見て、人付き合いをおろそかにしては元も子もありませんし」アハハ
スミス「竜騎士くん…」
竜騎士「いいですよ、受け取ってください」ニコッ
スミス「…っ」
竜騎士「皆さんー!お手伝いしてくださる代わりに、素材は少なからずお渡ししますのでー!」
アクセサリ職人「本当か!?」
コック「そりゃ嬉しいことだが…」
土木職人「俺はこの内臓にたまってるスゲー硬い岩とかでも充分だけどな」
…ザワザワ…
竜騎士「はは、何とかなりそうで良かった」
女武道家「ですね!」
スミス「心からお礼を言うよ。こんな鉱石を加工できるとは思わなかった」
竜騎士「いえいえ、さてと…配り終わったら俺は準備しないとな」ヨイショ
女武道家「準備ですか?」
竜騎士「素材を持って、中央までちょっくら行ってくる」
女武道家「中央まで!?」
竜騎士「向こうまで連絡しに行って、来てもらって、また行って、売れたお金持ってきてもらうとか…時間がかかりすぎる」
スミス「確かにね…」
竜騎士「ってなわけで、今日の夜にでも素材もって出発するよ」
女武道家「今日の夜からいないってことです?」
竜騎士「そうなるな。往復で1週間…くらいあれば戻ってこれるだろう」
女武道家「1週間もですか?でも、売るだけなら近くの大きな街でもいいような気がしますけど」
竜騎士「中央のほうが高くなるし、売るついでに報告書をまとめたりしてようと思ってね」
女武道家「なるほど…」
竜騎士「なぁに、しばらく留守にしても、その分の稼ぎにはなるんだから安心しとけ」ハハハ
女武道家「そうですよね…留守の間は、任せてください!」
竜騎士「んむ。任せた」
女武道家「え?」
竜騎士「え?」
女武道家「え、いや…、いつもなら、"お前じゃ無理だー"とか言うかと…」
竜騎士「あー…」ポリポリ
女武道家「この私をついに認めたってことですね!そりゃあ私がいなかったら確かに竜騎士さんは!」
竜騎士「スミスさん、やっぱコイツのこと、面倒見てください…心配です」
スミス「そうだな、そうするよ」
女武道家「ちょっとおお!」
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――――【 夜 】
ホー…ホー…チチチチ…
竜騎士「おっこらしょっと…」
女武道家「リヤカー程度で大丈夫なんですか?」
竜騎士「ま、大丈夫だ。途中から馬車にでも乗っていくからな」
女武道家「道中気をつけてくださいね」
竜騎士「お前もな」
女武道家「はいっ。留守は任されました!」
竜騎士「なぁに、出来るだけ早くは帰ってくる」
女武道家「…そういや、竜騎士さん」
竜騎士「なんだ?」
女武道家「腕、大丈夫なんですか?」
竜騎士「腕?」
女武道家「血ドロドロだったじゃないですか…。痛そうだったし…」
竜騎士「あー…大丈夫。血も止まったし、一応薬も塗っておいた。ただの切り傷さ」ニカッ
女武道家「それならいいんですが…」
竜騎士「今日は14日か。20、21日くらいには戻ってこれるとは思う。それじゃあな」
女武道家「はいっ!」
竜騎士「くれぐれも、無理はすんなよ。行ってくる」
女武道家「行ってらっしゃいです!」
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・・・・
・・・
・・
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――――【3日後・中央都市】
…ガラッ…バタンッ
竜騎士「これが、14日までの報告書です」
上官「…確かに受け取った。さっきも軽く聞いたが、よくやってるみたいだな」
竜騎士「色々大変でしたけどね。ドレイクも商人に売れたし、一応は上手くいってます」
上官「…」キョロキョロ
竜騎士「?」
上官「ここだけの話だがな」ボソッ
竜騎士「はい?」
上官「お前を左遷させ、クビに追いやろうとしたのは…偏屈な中将殿だ」ボソボソ
竜騎士「やはり…ですか」
上官「わかってたか」
竜騎士「いやでも分かりますよ。俺を潰そうとしてるんですよね」
上官「…俺としては、お前の力は認めている。これからの為にもクビにはしたくない」
竜騎士「俺だってなりたくは…ありませんよ。だから頑張ってるんです」
上官「今月末までに、ある程度の結果はこれで回避できそうだな」
竜騎士「まだ目標額には達してません。どうにかして、500万まではもっていきたいところです」
上官「竜騎士が初めて左遷された場所に支部長として結果をあげれば、会議でも話題になるだろう」
竜騎士「まだドレイク程度では話題になりませんか?」
上官「やはりそれではな…。北部や、もっと辺境の果てではこの程度の戦いはいつも行われているわけだしな…」
竜騎士「団体戦での討伐ではないんですけどね…」
上官「だが、この事はしっかり俺に任せておけ。話は出してやる」
竜騎士「感謝します。あなたがいて良かったと思います」
上官「はっはっは、褒めても何も出ないぞ」
竜騎士「はは…それでは、報告も終わりましたし、また支部へと戻ることにします」
上官「気をつけてな」
竜騎士「上官殿こそ。それ…では…」クラッ
上官「あぁ、またな」
竜騎士「…あれ?」フラッ
上官「どうした?」
竜騎士「なんか…眼が…霞んで」ゴシゴシ
上官「お、おい?」
竜騎士「体が…何か…」フラフラ
上官「大丈夫か?しっかりしろ!」
竜騎士「…う」
フラッ…ドサッ…
上官「おい…竜騎士、竜騎士!!おい!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【同時刻・水晶の泉】
…ハッ
女武道家「…竜騎士さん?」
スミス「どうした?」
女武道家「あ、いえ…何でも。何か…変な感じが」
スミス「変な感じ…ねぇ」
女武道家「…あ!」パシャッ
スミス「魚がかかってるぞ!」
女武道家「うぬぬ…」ソワソワ
スミス「ゆっくりだ、あせるな…!」
女武道家「…」ジー
パシャパシャッ……ザバザバ…
スミス「今だ!」
女武道家「ええいっ!」
…ザバァンッ!!…ピチピチッ!!
女武道家「や、やったああ!おっきな魚ゲットですー!」
スミス「やったな!」
女武道家「んふふ~♪竜騎士さんが帰ってきたら、驚きますね!」
スミス「それまで腐っちまうでしょうが…。生簀(いけす)にするなら別だが」
女武道家「だめですか…、スモークとかに出来ませんか?」
スミス「お?スモークか」
女武道家「それなら日持ちしますよね?」
スミス「うちに一応、燻製に出来るのはあったな。おっしゃ、いっちょやったるか!」
女武道家「わーい!」
スミス「帰ってきたら美味いモン食わせて、頬落としてやるか」ハハハ
女武道家「きっと疲れて帰ってきますし、せめて美味しいものくらいは食べさせてあげたいです!」
スミス「そうだな、よし、魚キズつけないように慎重に持ち帰るぞー」
女武道家「はーいっ!」
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――――【中央都市・本部・治療棟】
ガラガラガラッ…!!
竜騎士「…」
医僧侶「体熱が上昇しています!急いで水魔石を!」
助手「さっきから処置をしています…熱が下がりません!」
医僧侶「腕の様子は…どんどん黒くなっていく…、血をもっと持ってきてくれ!」
上官「い、医僧侶さん!竜騎士の様子はどうなんですか!一体何が!?」
医僧侶「腕の切りキズから、感染症にかかっているようで…危険な状態です」
上官「そんな…!助けてやってください!お願いします!」
医僧侶「分かっております。全力を尽くします…任せてください」
上官「…っ」
ブーッ…ブーッ…!!
助手「医僧侶さん、心音、心拍数が低下!急いでください!」
医僧侶「集中治療室へ!エネルギーの変換もさせる、ありったけのヒーラーを呼んでおいてくれ!」
助手「はいっ!」
…ガラガラガラ…バタンッ…
上官「…竜騎士…生きてくれよ…」
???「あらら、大変なことになってるみたいだ」スッ
上官「…誰だ」
中将「目上の者に向かって、なんつー口の聞き方だ」
上官「ち、中将殿!申し訳ありません!」ビシッ
中将「まぁいい。竜騎士くんの容態はどうなんだ」
上官「重体です…意識も戻ってないようです」
中将「そうか。彼は、軍の未来を背負うであろう身…こんなところで死んでもらっては困るな」
上官「…」ギリッ
中将「俺からも、竜騎士くんの治療にもっと手が回るように声掛けをしよう」
上官「…お言葉ですが、中将殿」
中将「あん?」
上官「あなたが、竜騎士を左遷し、あんな田舎の町に送らなければ…こんな事にはならなかったはずです」ギリッ
中将「…俺のせい、だと?」
上官「少なからず、自分はそう思っております」
中将「ほぉ…大佐程度がいい度胸だ」
上官「まだ若い芽を潰しては、軍は再び崩れ去ります!優秀な部下は、今のうちに育てておかなければ…っ!」
中将「育てておかぬと、また軍政が崩れ去ると?」
上官「可能性はゼロではありません…、記録によれば、1度軍政が滅んだのは、重鎮たちの怠慢からだったという」
中将「怠慢…?軍人として、中将まで上り詰めた俺が、そう言いたいのか!?」
上官「…そうでしょう!あなたのせいで、私の部下が…何人酷い思いをしてきたと!」
中将「俺が俺である為だ!悪いか!」イラッ
上官「なっ…それが、仮にも国を動かす人物の言葉ですか!」
中将「俺は実力でここまで上り詰めた。だが、最近の若いやつは俺に従わんからだ」
上官「あなたのような"人"に、従う義理がないから!!」
中将「何だと…、俺は歴戦の戦士であり、キャリアがある!俺に従えば、この世界も潤うのだ!」
上官「だから、自分に脅威にある種を…潰すということですか」
中将「目障りなやつ、俺に意見をしてくるやつ、従わぬやつ、そして俺より優秀な人材…そんな奴は…いらん」ニタッ
上官「…っ」
中将「楽しみにしておけよ、お前も月末の会議で俺に対しての傲慢な態度…改めさせてやる」
上官「楽しみにしておきますよ…」
中将「う、うははは、ははははははは!」
ハハハ…ハハ…
…………………
上官「…もう、いいぞ。出て来い青年少尉」
…コソッ…
青年少尉「…気づかれませんでしたかね」
上官「歴戦の戦士だか知らぬが、感覚は鈍っているらしいな」フッ
青年少尉「…はは、そうみたいですね」
上官「録ったか?」
青年少尉「えぇ、そりゃもうバッチリと。最初から最後まで」
上官「…覚えていろよ、中将め」
青年少尉「考えましたね。中将を怒らせ、本音を言わせてそれを音魔石に入れるなんて」
上官「なぁにちょっとした手だ。竜騎士が倒れた話を聞けば、必ず現れると睨んだからな」
青年少尉「…竜騎士さんのピンチでも、本当にキレる人ですね」
上官「まぁ…それより…竜騎士。本当に心配だ」
青年少尉「はい…。僕も、軍学校時代にお世話になっていたので…」
上官「あいつのことだ。きっと、大丈夫さ」
青年少尉「無駄に体だけは頑丈でしたもんね」クスッ
上官「今は信じて待とう」
青年少尉「はい」
上官「さて、竜騎士から預かっている報告書をまとめるか。手伝ってくれ」ウーン
青年少尉「もちろんです」
上官(…竜騎士、俺らも精一杯戦う。だからお前もまだ…戦い続けるんだ)
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――――【8月27日・支部】
…ザアアアアッ…
コンコン
女武道家「はいっ!竜騎士さんですかっ!」
…ガチャッ
スミス「悪いな、俺で…ひでぇ雨だ」ビチョビチョ
女武道家「あ…スミスさん」
スミス「そう明らかにガッカリされると、俺もへこむんだが…」
女武道家「あ、いえ!すいません…」
スミス「ま、仕方ねえか…、あれからもう2週間になる」
女武道家「…」
スミス「…」
女武道家「もう、戻ってこないんでしょうか」
スミス「…」
女武道家「もしかして、無事に中央に戻れたんですかね。もう、支部には…」
スミス「…短い間だが、俺はあいつはそんな白状なやつじゃないと思うぞ」
女武道家「はい…信じてはいます…」
スミス「もしかしたら、何かあったのかもしれん。行く前に、何か言われなかったか?」
女武道家「いえ、急いで帰ってくると…」
スミス「それだけか?」
女武道家「あ…、そういやキズ…」
スミス「キズ?」
女武道家「ドレイクに受けた傷、血が止まったから大丈夫だと放っておいたんです!」
スミス「…まさか」
女武道家「い、いや…でも、竜騎士さんですよ?そんな…」
スミス「万が一ということもある。中央からの通達はないのか?」
女武道家「今のところは…ないです」
スミス「少なくとも無事ってことじゃあないのか」
女武道家「きっと、そうですよね」
…コンコン…
女武道家「!」ガタッ
タタタタタッ…ガチャッ!!
女武道家「は、はい!どちら様ですか!竜騎士さんですか!」
軍人「こんにちわ、凄い雨ですね…いつもお世話様です」ペコッ
女武道家「あ、こ…こんにちわ」
軍人「…どうかしましたか?」
女武道家「い、いえ…それで、今日は何の用でしょうか」
軍人「本部からの手紙を預かっています。通信器が繋がらないようなので、遅れました」ゴソゴソ
女武道家「手紙…ご苦労様です」
軍人「…こちらになります。それでは、ありがとうございました」
…バタンッ…
女武道家「手紙…」
スミス「誰からだ?」
女武道家「待ってください…」ビリビリ
スミス「…」
女武道家「…」
スミス「?」
女武道家「竜騎士さんの上官さんからです」
スミス「何て?」
女武道家「え…と…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本部の上官と申します。この度は、竜騎士の面倒を見てくれてありがとう。
早速本題ですが、今回、竜騎士が中央へ訪れ、報告書を受け取りました。
素晴らしい内容に、感無量です。
ですが…ご報告があります。
この度、竜騎士が本部で感染症を発症し、意識不明の重体になりました。
8月18日現在、治療を終え、そのまま入院をしています。
心配なさらずとも、回復へは向かっておりますので、何とぞお待ちください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「…」
スミス「感染症…やはり…」
女武道家「…」
トコトコ…ゴソゴソゴソ…パサッ…
スミス「お、おい、何をしている?」
女武道家「中央へ行きます」
スミス「ま、待て!それはダメだ!」ガシッ
女武道家「離して下さい!竜騎士さんが倒れて…倒れ…」グスッ
スミス「女武道家は、この留守を任されたんだろう!君がしっかりしないで、どうする!!」
女武道家「でも、私のせいで…私が、竜騎士さんを1度でも見捨てようとしたから…っ」
スミス「それは違う!!」
女武道家「一緒です!!」
スミス「…」
女武道家「…一緒、です…」ガクッ
スミス「…竜騎士は、自分のためだけじゃなく、君のためにも戦っていた。この町のためにも」
女武道家「…」
スミス「そんな男の言葉を、裏切るのか?」
女武道家「で、でも…」
スミス「竜騎士くんは絶対帰ってくる。それを信じて待つのが、君の仕事だ」
女武道家「…か?」
スミス「ん?」
女武道家「大丈夫…でしょうか?本当に」
スミス「あぁ。俺が保障する」
女武道家「はい…、わかりました…」
スミス「…」
女武道家「でも、具合が悪いので…少しだけ横になりますね」フラフラ
…ドサッ…ゴロンッ…
スミス(竜騎士くん…)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・8月28日】
ミーンミンミン…
女武道家「…」スゥスゥ
ガチャッ…バタン
女武道家「…」スヤスヤ
???「…」
女武道家「…」スヤスヤ
ジジジ…ミーンミンミンミン…
???「おい」
女武道家「…ふぇ?」パチッ
???「もう朝10時だぞ。いい加減、起きろ」
女武道家「起きなくてもいいんです!!どうせ今日も一人で支部にいなくちゃいけないんです!」
???「…ああ、そう。んじゃ寝てろ、アホ。俺がいないとすぐこれだ…」ハァ
女武道家「…うっさいです!私の気持ちが…って、誰ですか?」
…チラッ
竜騎士「寝起きで、寝癖ひでーぞ。少しくらい整えてこい」ハァ
女武道家「…あ」
竜騎士「中央からお土産も買ってきたしな。あとでスミスさんとかコックさんに持っていかないと」
女武道家「あ、あああ…あああああ!!!」
竜騎士「うっせ!!何だよ!!」
女武道家「竜騎士さん、竜騎士さぁぁぁん!!」ダキッ
竜騎士「な、なんだぁ!?」
女武道家「無事でよかったです、戻ってきたんですね…よかったですぅぅ…うぇええん…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
竜騎士「なるほどな。上官殿が手紙をね…」ペラッ
女武道家「本当に心配しました…全然帰ってこなくて…」
竜騎士「あー…その、心配かけたな…」
女武道家「本当です!!!」
竜騎士「そんな怒らんでくれよ、死に掛けたんだからさ」ハハハ
女武道家「うぅぅ~…」
竜騎士「ほら…これ、見てくれ」パサッ
女武道家「…」
竜騎士「腕にガッツリと手術の傷跡だ。ここから全身にウィルス入ったみたいでな」ハハ
女武道家「…本当に死ぬところだったんですね」
竜騎士「俺じゃなかったら、死んでたって医僧侶っつーヤツにも言われてな」
女武道家「本当ですよ…、こんなに早く元気になるものなんですか?」
竜騎士「ありえないぜ、お前の体を解剖させてくれって頼まれた。バカかっつーの!」
女武道家「あはは…」
竜騎士「…ま、無事に戻ってこれた。ドレイクは全部で250万で捌けたし、マンドラゴラが20万。上々だな」
女武道家「そんなになったんですか!?」
竜騎士「うむ。目標額まで、あと92万ゴールドだ」
女武道家「でも、期限まであと3日もないですよ…」
竜騎士「そうなんだよな、それが問題だ」
女武道家「あと3日で92万…どうします?」
竜騎士「…どうするったって、マンドラゴラでも抜くか…」
女武道家「わんこ使ったりしませんよね」
竜騎士「え、あ…犬の値段計算する準備をしようと…」
女武道家「却下です!!」
竜騎士「くそー…相変わらずだな…」
女武道家「竜騎士さんも…です」
竜騎士「ふ…」
女武道家「ふふ…」
竜騎士「はははっ!」
女武道家「あははっ!」
竜騎士「はー…、いやでも、本当にどうするか」
女武道家「ですねぇ」
竜騎士「とりあえず、レアメタルの発掘ってのも悪くない…って、あれ?」
女武道家「?」
竜騎士「ここにあった銀のピックハンマーはどうした?」
女武道家「あ、そうでした。少し前にスミスさんがちょっと借りたいって言って…」
竜騎士「そうなのか。何かに使うのかな」
女武道家「今日持ってくる、みたいなことは言ってました」
…コンコン…ガチャッ
スミス「入るぞー」
女武道家「あ、噂をすればなんとやらですね」
竜騎士「スミスさん!」
スミス「り、竜騎士くん!!」
竜騎士「久しぶりです…」ペコッ
スミス「本当に久しぶりだ…体、大丈夫なのか!?」
竜騎士「ええ、なんとか…」
スミス「よかったな…、女武道家も毎日心配してな…」
竜騎士「…」
スミス「だけど、こうやって元気に戻ってきてくれて、嬉しいぞ」ニカッ
竜騎士「はい、俺もまたこうして会えて嬉しいですよ」
スミス「あ。それと…これ」スッ
竜騎士「これ?」
スミス「この2つ。受け取ってくれ」
竜騎士「これは…」
スミス「一つはミスリル鉱で打った特性の槍だ。銀のピックハンマーから銀の魔力を打ち込んだ」
竜騎士「ミスリルの槍!?」
スミス「銀の魔力も入っているから、ただの槍とは違う。普通に突き刺すだけで火力は何倍にもなる」
竜騎士「だ、だけど、ミスリルを使ってまで…」
スミス「無事に戻ってきたときに退院祝いにしようとして。今日は女武道家に見せに来ただけだったが、渡せてよかった」ハハハ
竜騎士「でも…」
スミス「こんな希少鉱石を打てただけで、鍛冶屋冥利に尽きるってもんさ!」
竜騎士「ありがたく、受け取らせていただきます…っ」
スミス「あぁ」
女武道家「もう1つは何ですか?」
スミス「ハンマーの銀の魔力を少なくしちまったからな。余ったミスリルと合わせておいた」
女武道家「なんか段々凄いものが出来上がっていきますね…」
竜騎士「…だけど、これで上位種が狩れるし、洞窟で改めて探索が出来る!」
女武道家「また、行くつもりですか?」
竜騎士「今はあそこくらいしかもう、成果は上げられないだろう」
女武道家「…ですよね」
竜騎士「あと3日だ…頑張るぞ」
女武道家「はいっ!」
スミス「…今日はどうする?まだ昼にもならんし、探索するのか?」
竜騎士「戻ってきたばっかりですが、時間が惜しいです。準備して向かうつもりですよ」
スミス「そうか。じゃ、俺もこの出来を見たいし、着いてっていいか?」
竜騎士「えぇ、構いません」
…コンコン
女武道家「ん…また誰か来た?はーい!」
…ガチャッ
中央商人「こんちゃ。竜騎士、いるかい」
女武道家「え?」
中央商人「俺は中央商人。竜騎士の友達だ、おーい!」
竜騎士「あ…中央商人…あー…!」
中央商人「おい、まさか忘れてたんじゃねーだろうな」
竜騎士「や…忘れてはないよ…忘れては…」
中央商人「おい…」
竜騎士「はは…」
女武道家「え?何ですか?」
竜騎士「いやさ、前、コックさんの店が余ってるって話聞いて…この間、戻ったときに中央商人に頼んでいた事があったんだ」
女武道家「何ですか?」
中央商人「自分の店を持てるとかっつー話。ここら辺と中央の品を交易使って稼がせてもらおうと思ってよ」
竜騎士「…そういうこと。これで、多少の高値の品でもすぐに金にすることができるしな」
中央商人「安くしてやるけどな」ククク
竜騎士「本当に勘弁してくれ。それと、一緒にコックさんに話をしに行かないといけないんだった」ハァ
スミス「なるほどね、悪くない考えだ。それじゃ、午後からにするかい?」
竜騎士「本当にすいません、あとで出発するとき、こちらから伺いますね」
スミス「はいよ。んじゃ、待ってるよ」
…バタンッ…
中央商人「そんじゃ、話聞きに行かせてもらうぜ」
竜騎士「んむ。女武道家も、何かしらの準備はしておいてな」
女武道家「わかりましたっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【コックの家】
コック「いや俺としてはいいんだが、本当にいいのか?」
中央商人「いやいや勿論!こんな立派な店を持てるとは、商人冥利につきますよ!」
コック「それならいいんだが」
中央商人「ここらへんじゃ中央品も不足してるし、交易なら一儲け出来そうですし」
コック「いい材料が入ったら、買ってやるさ」
中央商人「お安くしときますさ」ハハハ
竜騎士「あんま調子のんな。商店街に迷惑かけることだけはやめろよ?」
中央商人「その辺は任せてくれって。これでもエリートって呼ばれてたほどの男だぞ」
竜騎士「まあそりゃ知ってるんだが…」
中央商人「看板はどうするか…、パン屋という看板は外しても?」
コック「もちろん。ただ、思い出といえば思い出だ…倉庫くらいにしまって置いてくれ」
中央商人「わかりましたっと。それじゃ、後から俺の部下が来るはずだし、掃除なんかしとくかな」
竜騎士「何、今日から開店すんの?」
中央商人「善は急げ、ってな。買取も今日からはじめるぞ」
竜騎士「資本金は?」
中央商人「中央で稼いだ金がある。ざっと…1億飛んで…4000万ってところか」
竜騎士「…お前、よくこの話乗ったな」
中央商人「ははは、気にするな。中央だと何億あっても自分の店なんて持てないしな」
竜騎士「そか。んじゃ、今日も何か売れるもん取ってきたら渡すわ」
中央商人「わかった。楽しみにしとく」
コック「中央商人、後でうちに来い。祝いだ、飯くらい作ってやる」
中央商人「本当ですか!いやー、竜騎士に最高の料理って聞いてて、楽しみですわ!」
コック「褒めても何も出んぞ…料理は出るか」
竜騎士「んじゃ、俺は準備して早速また探索に行ってくるよ」
中央商人「お気をつけて」
コック「気をつけて行って来い」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 天然洞窟 】
ヒュウウウッ…
竜騎士「準備はいいかー」
女武道家「いつでも!」
スミス「しっかり稼いで、報告書出して、クビは免れんとな」ハハハ
竜騎士「ですね、新しい装備も手に入ったし、大丈夫ですよ!」
女武道家「あとわずかな時間、頑張りまくりましょう!」
竜騎士「そうだな」
スミス「それじゃ、出発するか?」
竜騎士「ですね。この武器があれば、何だって倒せる気がしますよ」ハハ
女武道家「今度は…最初から戦いますからね!」
竜騎士「あぁ、支援は任せるぞ」
女武道家「へへ…」
竜騎士「そんじゃ…出発!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
【8月28・29日終了時点での収支】
■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド
・ドレイクの素材販売250万ゴールド
・マンドラゴラの販売20万ゴールド
・鉱石販売60万ゴールド
■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド
■収支合計
・プラス468万ゴールド
■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後32万ゴールド
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【そして8月30日】
…チチチチ…
竜騎士「ん~…今日もいい朝だ…」ノビノビ
女武道家「ですねえ、相変わらず外は暑いですが」
竜騎士「…そういや、野菜とかどうなってるんだ?」
女武道家「あ、ちゃんと面倒見てましたよ?芽も出て、すくすく育ってます!」
竜騎士「あれからもうすぐ20日になるか…、そろそろ食べごろかな」
女武道家「!」ピョコンッ
竜騎士「少しだけ採ってみるか。ご飯炊いておい…あ、いや…俺がやる…」
女武道家「もう大丈夫ですって!お粥とか、パサパサにはしませんからぁ!」
竜騎士「…信じるぞ」
女武道家「はい、大丈夫です!」
竜騎士「んじゃ、軽くとってくる。何かおかずはあるか?」
女武道家「あ、そうだ!釣りで大物を釣って、それをスモークにしといたんですよ!」
竜騎士「ふむ、よし、任せろ。俺が料理してやる」
女武道家「はーいっ!」
竜騎士「んじゃ、準備しといてな」
女武道家「はいっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドンッ!!
竜騎士「大根は微妙だったが、レタスのほうは育成早かったから採ってきた」
女武道家「どんなの作るんですか?」
竜騎士「えーと、まずはセパレートタイプのフレンチドレッシングを作ります」
女武道家「ふむふむ」
竜騎士「まずは玉ねぎを微塵切り…って、玉ねぎがないじゃないか!」
女武道家「ですね…」
竜騎士「仕方ない…代用品だ。サラダ油、酢、塩とコショウをあわせ、よくかき混ぜてくれ」
女武道家「は、はいっ」
トプトプ…カッカッカッカッカ…
竜騎士「その間に、俺はこのスモークされた魚を角切りにします…って、こりゃサーモンじゃないか」
女武道家「だめでしたか…?」
竜騎士「いや、最高だ」ビシッ
女武道家「よかったですっ」ホッ
竜騎士「で、サーモンを角切りにしたら、レタスを細切りにして…」トントン
ピーッ!!!
女武道家「ご飯、炊けました!」
竜騎士「それじゃ、ご飯をボウルに入れて、さっき作ったドレッシングを入れてまた混ぜてくれ」
ホカホカ…
女武道家「あちち…、よいしょっ!」
竜騎士「ご飯がつぶれないように、やさしくな」
女武道家「は、はい」マゼマゼ
竜騎士「それがサワーライスってやつ。大体混ざったか?」
女武道家「はい」
竜騎士「じゃ、このサーモンとレタスも混ぜるぞ…。ここからは俺がやる」
ドサドサッ…マゼマゼ…
竜騎士「あとは皿に移して…簡単だが、スモークサーモンとレタスのサワーライスの出来上がりだ!」
女武道家「うわっ…いい匂い…」クンッ
竜騎士「酢飯のようなご飯に、サーモンがしっかり絡んで、レタスの風味をドレッシングが引き出す一品だ!」
女武道家「朝ごはんとしても、スッキリして食べやすそうですね」
竜騎士「さ、まず食べて…今日も天然洞窟でも行くか?」
女武道家「そうですねぇ、この2日、ずっと洞窟に篭りっきりで…正直、少し疲れました。お金にはなってますが」
竜騎士「あー…まあな。目ぼしい所は掘ったし、地図のない場所に足を踏み入れるのもなぁ」
女武道家「とりあえず、軽く食べちゃいましょう」ジュルッ
竜騎士「ハラ減らしてるだけだろ」ハハハ
女武道家「むぅ…」
竜騎士「それじゃ、居間に運んでおくから、冷蔵庫から飲み物でも出しといてくれ」
女武道家「わっかりましたぁ~!」
タッタッタッタッタ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
モグモグ…ゴクンッ…
女武道家「お…おいしかった…」
竜騎士「だろー!?」
女武道家「コックさんと比べればごにょごにょですけど、十分最高でした…」ムフ-
竜騎士「本業と比べないでください」
女武道家「えへへ…」
竜騎士「んじゃー…今日はどうするかなぁ」
女武道家「…そういや、聞きたい事があったんです」
竜騎士「え?」
女武道家「竜騎士さんは、もしですよ?もし、31日の査定で、結果を残し、戻れるとしたら…戻りますか?」
竜騎士「…」
女武道家「ここが存続したら、私はまた残る事になります。竜騎士さんは、戻ってしまうんですよね?」
竜騎士「あー…まぁ…」
女武道家「そうですよね…、最初の目的はそれですもんね…」
竜騎士「でも、な」
女武道家「?」
竜騎士「この短期間で出会った人らに感化されたってのは本当だ。今もスゲー楽しいと思う」
女武道家「な、なら…」
竜騎士「で、一番影響を受けたのが…スミスさんだ」
女武道家「影響?」
竜騎士「今回のことは、いわゆる自分自身を見つめなおすいい機会にもなったと思ってる」
女武道家「見つめなおす…」
竜騎士「実力にしろ、軍にしろ、出会いにしろ、やっぱり俺は改めて戦士だったと思う。そしてもう1つ」
女武道家「はい」
竜騎士「世界を、見てみたいと思った」
女武道家「…世界?」
竜騎士「スミスさんの口からたまたま出る、旅っていう言葉。少し羨ましくなっていった」
女武道家「もしかして、世界を旅したいって事ですか?」
竜騎士「…悪くない」
女武道家「…」
竜騎士「軍にはもう1つ、冒険部ってのがあってな。俺やお前は"通常部"に入っているわけだ」
女武道家「冒険部?」
竜騎士「いわゆる自分で世界を歩き、世界で起きてる事情を解決する、みたいな仕事だな」
女武道家「…大変じゃないですか?」
竜騎士「だが、ぬくぬくと本部に浸かっていた頃より、今のほうがよっぽど楽しいと思った。それで気づいたんだ」
女武道家「そう…ですか」
竜騎士「女武道家は、まだここに残りたいと思うのか?」
女武道家「えっ?」
竜騎士「中央に行けば、新たな出会いもある。ここから出ようとは思わないか!?」
女武道家「私が中央都市に…?」
竜騎士「いや何も無理にとはいわん。俺は今後どうするか、月末には決める」
女武道家「万が一クビになったとしたら?」
竜騎士「旅に出る。それは変える気はないな」
女武道家「…私も、ちょっとだけ考えてみます」
竜騎士「そうだな…それがいい。もしかしたらこの機会は、天がくれたのかもしれないぜ」
…コンコン
竜騎士「ん、はーい、どーぞ」
ガチャッ!!
中央商人「はぁはぁ…おい!竜騎士!」
竜騎士「あ?どうしたよ」
中央商人「いた…よかった…急いで来てくれ!助けてくれ!!」
竜騎士「…あん?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの街道 】
…ガラガラガラ!!
弟子商人「ひ、ひぃぃ…」ブルブル
盗賊兄貴「さっさと出せや!お前らが中央から高価な品を取引してるのは知ってるんだよ!」
盗賊A「殺されたいのか?」
盗賊B「あ、ああ、兄貴、め、面倒だ、ここ、殺して奪いましょうよ!」
弟子商人「でで、ですが、これは中央商人さんから預かっている大切な品で…!」
盗賊兄貴「さっき、ただでさえもう1人の人間を逃がしてるんだ、軍とか警備隊が来る前に頂くぞ!」
盗賊A「ってな訳だ、恨むなよ?」スッ
盗賊B「う、うへへ、うへへ…」ジリッ
弟子商人「い…嫌です…、来ないでください…」ブルブル
盗賊兄貴「積荷を渡すのをジャマするっつーなら、仕方ないことなんだよ」
盗賊A「俺たちだって生きる為だ」
盗賊B「そそ、そうだ…っ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タッタッタッタッタ!!
竜騎士「この辺の街道か!?」
中央商人「あぁ。同行してた馬車商人は町で休ませてる。盗賊に襲われて…ケガしてな…」
竜騎士「くっそ、どこだ…!」
中央商人「無事でいてくれよ…弟子商人。俺はお前を失えないんだ…」
女武道家「竜騎士さんがきっと助けてくれますよ!」
竜騎士「当たり前だ」
タッタッタッタッタ……!!!
…ゴォォォ…パチパチ…
竜騎士「!」
中央商人「…あれは…つ、積荷が…燃やされてる…」
竜騎士「弟子商人とやらは!?」
中央商人「そ、そうだ…弟子商人!!どこだぁぁーっ!」
竜騎士「…っ、返事しろー!」
女武道家「どこですかぁーー!」
弟子商人「うっ…ここです…」ゴホゴホ
中央商人「…つ、積荷の脇に!」
竜騎士「急げ、積荷が崩れたら巻き添えになるぞ!」ダッ
女武道家「はいっ!」
ダダダダダッ…ズザザザ…ガシッ…!!
中央商人「…!」
竜騎士「おい、しっかりしろ大丈夫か弟子商人!」
弟子商人「ごほごほっ…だ、大丈夫です…少し殴られて…」
…ゴォォォォッ…ガラガラガラッ!!!
竜騎士「危ない、崩れるぞ!」
女武道家「離れましょう!」
中央商人「ぬおおおっ!」
…ガラガラガラ…ズズゥゥゥン…モクモク…
竜騎士「危なかった…間一髪だったな」
中央商人「あーあー、見事に燃やしやがって」
グスッ…
中央商人「ん?」
弟子商人「あ、あの…その…僕…ごめんなさい。ごめんなさいぃ…」グスッ
中央商人「何、泣いてるんだ?」
弟子商人「僕のせいで、大切な荷物が盗まれて…燃やされて…」ポロポロ
竜騎士「おい…中央商人」
中央商人「わかってるよ。おい、上向け。俺は別に怒っちゃいないし、どうも思わん。それより」
弟子商人「…」グスッ
中央商人「お前が無事…でもないが…、こうやって会えただけでも幸せってもんだ。それが嬉しい。な?」
弟子商人「中央商人さん…うぅ~…」
竜騎士「お前さー…口、へったくそだな」ハハハ
中央商人「あぁ!?いいシーンに水を差すんじゃねーよ!」
竜騎士「はは…、ま、そういうことだ弟子商人。大丈夫だ、泣くんじゃない」
弟子商人「ううう…」グスグス
竜騎士「さて…女武道家、俺らは俺らの仕事が…」チラッ
女武道家「うぇええん…」
竜騎士「ええっ!?」ビクッ
中央商人「な、何でこいつが泣いてるんだ!?」
女武道家「貰い泣きですよぉ…いい人たちで良かったですね、弟子商人さぁぁん…」ヒクッ
弟子商人「はいぃぃ…」ポロポロ
竜騎士「…こいつら」
中央商人「お互い、似たような後輩もってるな」
竜騎士「笑えるほどにな…」ハハ…
中央商人「さて、どうすっか…」
竜騎士「この街道、盗賊が隠れられるようなアジトは?」
中央商人「近くに岩場があって、洞窟がある。そこが拠点だとは聞いた。こんな田舎道、放っておかれてるんだろうな…」
竜騎士「おっし。新しい武器、試す時が来たな」スチャッ
女武道家「え…もしかして銀の槍ですか?」
竜騎士「そうそう。…月末最後の大仕事。盗賊団の殲滅といきますか」
女武道家「大丈夫なんですか…?」
竜騎士「俺のこと心配してんのか?何、俺は心配されるほどヤワじゃ…」
女武道家「いえ…そんな極悪な武器もって攻撃したら、相手の命に関わりそうなんですが…」
竜騎士「…」
女武道家「力加減考えてくださいね…、相手は人間なんですから…」ハァ
竜騎士「わかってるっつーの!」
中央商人「んじゃ、反撃といきますか。弟子商人の仇、しっかり取ってもらうぜ」
竜騎士「俺の仕事は高くつくぜ?」
中央商人「なぁに、任せておけ」ハハ
竜騎士「んじゃ、盗賊狩り…行くぞ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【盗賊団のアジト(街道の洞窟)】
盗賊兄貴「しかし素晴らしいモンばっかもってやがったな」
盗賊A「ですねぇ、この衣なんて相当なもんですよ」
盗賊B「お、おお、俺もこれがいいな…」
盗賊兄貴「ダメだ、これは全部売るんだよ。中央でしばらく遊べそうだな」ハハハ
盗賊B「俺、お、女と遊びたい!」
盗賊兄貴「お前はそればっかだな」
…ドォンッ!!
盗賊兄貴「なんだっ!?爆発音…?」
盗賊A「外からだ!」
盗賊B「お、俺見てくる…!」
タッタッタッタ…
盗賊B「だ、誰だ!ああ、あ、兄貴のアジトだと知ってのことか!」
…ザシュッ!!!
盗賊B「うあああっ!い、痛いぃ!」
盗賊兄貴「!…どうした!」
盗賊A「おい!今の音はなんだ!」
盗賊B「あ…兄貴…誰か来たぁ…血が出てるよぉ…」ドロッ
盗賊兄貴「なっ、おい、大丈夫か!」
盗賊B「痛いよぉ…」
…トコトコ…
竜騎士「んなもんかすり傷だろうが」ハァ
盗賊兄貴「…軍服、てめえ軍人か!」
竜騎士「いかにも。お前が襲った商人たちは、俺の知り合いなんだ。そう簡単にくたばれると思うなよ?」
女武道家「そうですよ!」
中央商人「覚悟しろよ」
弟子商人「…」ブルブル
盗賊兄貴「てめ…さっきの…」
盗賊A「やっぱりあの時、殺しておけばよかったんですよ…面倒なことになった」
盗賊兄貴「だが、俺もこの生業では有名な身…!そう簡単にやれるかな?」スチャッ
盗賊A「そうだぞ、兄貴…こいつら倒して身包み剥ぎましょうぜ」
盗賊兄貴「かかってこいコラァ!」
竜騎士「ん?お前、結構戦えるほうなのか?」
盗賊兄貴「うはは、俺に恐れをなしたか!?」
盗賊A「兄貴は、昔…竜をも一人で倒した事のあるスゲー方なんだ!命が惜しかったら出て行けや!」
竜騎士「それ本当?なら、遠慮しなくていいんだな?」ググッ
盗賊兄貴「え?」
盗賊A「え?」
竜騎士「全力で最初から一撃を決める…龍突っ!!!」ビュワッ!!!!
…ズドォォォォン!!!!!…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】
竜騎士「あーいってぇ…」
女武道家「し…死ぬかと思いました…」
中央商人「この、馬鹿力が!!洞窟まで崩すことないだろうが!」
竜騎士「俺のせいだっつーのかよ!あいつらが戦えるほうっつーから、本気でやったんじゃねーか!」
中央商人「そんなのウソに決まってるだろうが!」
竜騎士「あー悪かったな!俺が悪かったです!」
中央商人「あぁ!?」
竜騎士「あぁ!?」
女武道家「はぁー…」
竜騎士「ははは、だけどこれで報告書も今日までしっかり書けた」
女武道家「もうすぐ中央から報告書受け取りに来るんですよね?」
竜騎士「明日は31日で俺らを決する会議がある。っつーわけで、明日は休みだ」
女武道家「休み!?」ピョコンッ
竜騎士「そうだなー戦いばっかだったし、たまにはのんびり…」
女武道家「釣りですか!?」
竜騎士「気に入ったの?」
女武道家「元々好きですってば!」
中央商人「へー、釣りか。面白そうだな」
竜騎士「面白いけどな、お前はその前に…依頼料よこせ」
中央商人「ちっ…金の亡者め」ゴソゴソ
竜騎士「お前にだけは言われたくねえ」
スッ…
中央商人「40万ゴールドだ」
竜騎士「あ?こんなには要らないぞ?」
中央商人「取り戻せた商売品が120万。仇討ちでそのくらいになるぜ」
竜騎士「ちょうど欲しい金額だったし、何も言わず受け取るぞ?」
中央商人「おうよ」
竜騎士「ありがとよ」
中央商人「あぁ」
女武道家「もしかして、これで目標金額に…」
竜騎士「500万…突破だ」
女武道家「やったー!」
竜騎士「これで、中央も認めざる得ないだろう。存続または中央へ戻るには十分すぎる」
女武道家「結果はいつでるんですか?」
竜騎士「早くて9月1日には出るだろう。通信機が壊れてるから伝えられるのは9月2日か」
女武道家「…怖いですね、少し」
竜騎士「お前も、これからどうするか決めておけよ」
女武道家「中央へ行くか、ここに残るか、ですか…」
竜騎士「俺はもう決めた」
女武道家「…どうするんですか?」
竜騎士「冒険部または旅に行く。世界を見て回ろうと思う」
女武道家「そうですか…ここに残るというのは…」
竜騎士「なくはないが、やはり…な」
女武道家「そうですか…」
中央商人「ん~それじゃ、俺らはこれで失礼するぜ」
竜騎士「ん?もうちょっとゆっくりしていってもいいんだがな」
中央商人「いやいや、俺も仕事あるしな。弟子商人、行くぞ」
弟子商人「は、はいっ、ありがとうございました皆さん!」
竜騎士「うむ、変なのには気をつけろよ」
弟子商人「はいっ!」
中央商人「またな」
竜騎士「あいよ、またな」
女武道家「またです!」
トコトコ…ガチャガチャ…バタンッ
竜騎士「…」
女武道家「…」
竜騎士「さ、報告書でもまとめるか」
女武道家「お手伝いしますよ」
竜騎士「んむ」
女武道家「…」
竜騎士「…」
カキカキ…
竜騎士「…」
女武道家「…」
カキカキ…ペラッ…
竜騎士「…」
女武道家「…竜騎士さん」
竜騎士「んー?」
女武道家「世界って、広いんですかね」
竜騎士「そりゃあ広いだろ。この町全部の土地を合わせても、世界の1%にも及ばないぞ」
女武道家「世界って、楽しいですかね」
竜騎士「楽しいだろうな。知らない事がたくさんある」
女武道家「そうですか…」
竜騎士「お前は世界を見たいとは思わないのか?」
女武道家「私ですか?」
竜騎士「確か、出会った時にこの町が好きだから残っているって言ってたが」
女武道家「言いましたねぇ…」
竜騎士「今はどうだ?戦いとか、新たな出会いを通じて、何か変わったことは」
女武道家「…変わってきました。あのアヴァちゃんみたいな、可愛い動物ってもっと世界に沢山いるんですよね?」
竜騎士「そこか…、まあ沢山いるだろうな」
女武道家「そういうもので、世界を見たいってのは不謹慎ですかねぇ」
竜騎士「不謹慎て…、そんなことないだろ」
女武道家「…うーん」
竜騎士「スミスさんじゃないが、何事も動けるうちじゃないかなって思ってな」
女武道家「…」
竜騎士「俺よりも遥かに女武道家は若いし、俺くらいまで鍛錬を積んでからのほうがいいかもしれないが」
女武道家「…」
竜騎士「中央へ行って、もっと世間ってやつを見て、そこから世界へ出る。それも悪くない」
女武道家「色々な手段があるんですね」
竜騎士「無数の未来、無数の道。無限の未来ってやつかな」
女武道家「そうですね…」
竜騎士「ま、何にせよ最後に決めるのは自分自身だ」
女武道家「はい」
竜騎士「さて…、報告書がまとまったら今日から少しの間休みだぞ!」
女武道家「が、頑張ります!」
竜騎士「っしゃ、スパートかけてやるぞぉ!」
女武道家「おーっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
【8月30日終了時点での収支】
■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド
・ドレイクの素材販売250万ゴールド
・マンドラゴラの販売20万ゴールド
・鉱石販売60万ゴールド
・盗賊団の撃破、商人の商品奪還40万ゴールド
■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド
■収支合計
・プラス508万ゴールド
■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後0ゴールド
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【8月31日中央軍・本部・会議室】
元帥「それではこれより、 月末定例会議を行う!」
大将「うっす」
中将「了解です」
少将「いつでも」
大佐(上官)「お願いします」
中佐「月末の報告書、全てご用意いたしました」
元帥「今回の議題は、南部森林における魔物の問題と…」
大佐「お待ちください!」バッ
中将「…!」
元帥「なんだ?」
大佐「少々、お時間を頂きたく存じます。ひとつ、ご報告と、提案がありまして」
少将「お前、元帥殿のお話の最中に何を!」グワッ
大佐「申し訳ない少将殿、これは今後の軍に関わる重要な話。耳を貸して頂けたら幸いです!」バンッ
元帥「…ふむ、良い。申してみろ」
大佐(竜騎士、期待して待っていろ!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 支 部 】
竜騎士「さて、今日は…休みだぁ!」
女武道家「何します!?」
竜騎士「何する!?」
女武道家「釣りっ!」
竜騎士「…釣りだけじゃ、何か味気ないないだろう」
女武道家「でも、遊べるところもないですしね」
竜騎士「待て、今考える」
女武道家「?」
竜騎士「…スミスさんの工房…釣り…、コックさん…」ブツブツ
女武道家「…」ジー
竜騎士「決めた!決めたぞ!」
女武道家「な、なんですか!?」
竜騎士「来い!」グイッ
女武道家「え、ちょ、このパターン何か久々…引っ張られるのは嫌ぁぁっ…!」ズリズリ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】
スミス「…鉄板?網?準備?…まあいいが」
コック「まあ、今日は店も暇だから手伝うが一体何だ?」
弟子「僕も呼ばれてなんですかね」
バイト「久しぶりですね、皆さん」
中央商人「急に呼ばれたと思ったら、いらん食品8万で安く譲れだぁ?」
弟子商人「まあまあ、助けてもらったお礼ですし…」
女武道家「大勢集めて…道具もって、どこ行くんですか?」
竜騎士「まぁまぁ、水晶の泉のいつもの場所行くぞ」
中央商人「…ははーん」ピーン
コック「なるほど」
スミス「あー…いいんじゃないか?」
弟子商人「ちょっと楽しみになってきましたよ!」
中央商人「なら、新鮮な肉もある。それも特別に出してやろう」
竜騎士「お、いいねえ!」
女武道家「…??」
竜騎士「お前、まだわからないのか?」
女武道家「…うーん」
弟子商人「アレですよね。これだけの人材と道具が揃っているということは…」
女武道家「なんですかっ!?」
竜騎士「水辺で釣りしながら…バーベキューといこうじゃないか!夏の最後だし、満喫するぞ!」
女武道家「ば…バーベキュー!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉付近(釣り場)】
…ザバァッ!!
女武道家「きゃーっ、また釣れましたぁ!」
スミス「おお、でかい!」
コック「次々と捌くぞ、弟子、お前はもっと手際よくだな」
バイト「おっそーい」
弟子「うっさいな、バイトもやってみろよ!動く魚なんて滅多に捌かないんだから!」
コック「こりゃ、一から教えなおす必要があるな」
中央商人「…肉、これでいいんですか」
コック「あぁ上出来だ。思ったより腕がいいな」
中央商人「これでも一人暮らし長かったんで。あと串に刺すんですよね」
コック「そうだな、スミス…お前、遊んでばっかいないで早く手伝え」
スミス「あー…魚釣るのが俺の仕事だから」
コック「食わせないぞ」
スミス「さ、どれを刺せばいいんだ?」
女武道家「あははっ、スミスさん面白いです」
タッタッタッタ…
弟子商人「追加で肉とか野菜、持って来ましたぁ!」
中央商人「暑い中ご苦労さん、ちょっと座ってていいぞ」
弟子商人「いえいえ、手伝いますよ!」
女武道家「うちで採れた野菜もありますよ!」
コック「レタスは肉に巻いて食べると旨い。焼肉ベースも鉄板で設けよう」
スミス「いいねー!」
コック「それじゃ、焼くぞ」
…ジュワ~…!!!パチパチ…ジュウウウ…
女武道家「いい音ぉ…」
コック「油がちっと少ないな、弟子、ちゃんとやれ。これはこのくらいの量だ」スッ
弟子「す、すいません…、覚えておきます!」
中央商人「北方牧場からの直送の牛肉と豚肉だ。今朝届いたから、美味いぞ」
コック「脂がしっかり乗ってて、しつこすぎないから料理もしやすい。いい肉だ」
中央商人「へへ、これを機会に御ひいきに」
コック「考えておく」
…トコトコ
竜騎士「おー…準備終わってた。遅れました」
女武道家「遅いですよ!企画した本人が消えてどうするんですか!」
竜騎士「はは、ちょっと森の深部まで走って新鮮な肉とってきた。」
女武道家「また…仕事じゃないんですからぁ…」
竜騎士「…ついでにこんなのも着いてきた。くっついて離れないんだよ…」
アーヴァンク『キュイッ!』ベタァ
女武道家「アヴァちゃぁぁんっ!」
アーヴァンク『キュ~♪』
竜騎士「そいつの面倒は任せた…あとで寝かせて戻すからな…」
女武道家「ん~…可愛い♪」スリスリ
アーヴァンク『キュウ!』
コック「…ま、持ってきた肉は全部ぶちこめ。俺が旨くしてやる」
竜騎士「美味しいですよきっと」ハハハ
スミス「…いい天気だし、バーベキュー日和ってかんじだな」
竜騎士「ですね、みんな楽しそうで良かったです」
スミス「…だが、お前は中央に全部終わったら戻るんだろう?」
コック「そうだったな、短かったが…寂しくなる」
竜騎士「…そこまで言ってもらえると、俺もうれしいですよ」
スミス「お別れ会っていうか、見送り会って感じでもあるかもな」
竜騎士「…ですかね」
スミス「ま、いつでも戻って来いよ。いつでも武器は新調してやる」ハハ
コック「俺は美味いもん食わせてやる」
中央商人「俺はいいもん売ってやるよ。俺は長い間ここに留まるしな」
竜騎士「はいっ!」
…ジュワジュワジュワ…ジュウウ…
女武道家「…、……あ、竜騎士さん、焼けましたよ!」
竜騎士「お!?」
コック「お前が企画したことだ、最初に食べてみろ。最高の焼き加減だ」スッ
竜騎士「それじゃ…遠慮なく頂きます」ニコッ
…ハフハフ…モグモグ…
全員「…」ジュルッ
竜騎士「…う、美味い…!!!」ゴクン
コック「当たり前だ」フン
スミス「次々焼きあがるぞ、魚も野菜も、どんどん食え、飲め!」
全員「かんぱぁぁいっ!」カァンッ
女武道家「いただきまーっす!!」
弟子商人「う、うまいです!」モグモグ
中央商人「我ながら、いい肉を仕入れて良かった」ハフハフ
バイト「おいっしー!」
弟子「美味しくできてよかったぁ…」モグモグ
竜騎士「…楽しいなぁ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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【8月31日終了時点での収支】
■収入
・木材販売4万ゴールド
・コックのクエスト報酬・アイテム販売130万ゴールド
・弟子のクエスト報酬10万ゴールド
・ドレイクの素材販売250万ゴールド
・マンドラゴラの販売20万ゴールド
・鉱石販売60万ゴールド
・盗賊団の撃破、商人の商品奪還40万ゴールド
■支出
・食事代・農耕具・釣具等16万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド
・バーベキュー費用8万ゴールド
■収支合計
・プラス500万ゴールド
■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後0ゴールド
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【そして9月2日…】
コンコン
女武道家「は、はいっ」
竜騎士「…来たか。どうぞ」
…ガチャッ
上官「失礼するぞ。竜騎士、女武道家」
竜騎士「!?」
女武道家「あれ?いつもの人じゃない?」
竜騎士「上官殿!?どうして…ここに!」
女武道家「上官さん!?」
上官「なぁに、折角だしココまで来たんだ」
竜騎士「折角だしって…」
上官「話に聞いてた通り、自然が多くていい場所だな」
竜騎士「そりゃそうですが…」
上官「それと、本題はこっちだ。これを伝える為にきた」スッ
竜騎士「この書類は…」
上官「君たちの処遇、この支部に関しての結論が出た」
竜騎士「…」
女武道家「…」
上官「…簡単に読み上げる」ペラッ
竜騎士「…」ゴクリ
上官「この支部は存続。予想以上の成果と、竜騎士が軍にとって有益をもたらす重要な人材と認められた」
竜騎士「お…!」
女武道家「え、じゃ、じゃあクビじゃないんですか!?」
上官「もちろん、支部に在籍する1名の軍人も含め、続行される」
女武道家「や、やったああー!」
竜騎士「っしゃあああ!」
上官「それと、女武道家。君の働きは中央に認められ、1階級上げて中央勤務が認められる」
女武道家「曹長で、中央に行けと…?」
上官「望めばの話だ。ココに残る場合は、支部長の権限も場合によっては与えられる」
女武道家「場合?」
上官「まぁ、その話はこれの後。竜騎士、中央への復帰が認められたぞ。おめでとう」
竜騎士「!」
上官「つまり、竜騎士が中央へ戻ったら…この支部長として女武道家が迎えられる」
女武道家「え…じゃあ私と竜騎士さんが中央勤務を望んだら、この支部はどうなるんですか?」
上官「…」
女武道家「嫌ですよ…、この支部がなくなるのは…思い出が詰ってる場所なんです!」
上官「心配するな」ニヤッ
竜騎士「ま、まさか…上官殿…」
上官「俺…いや、私の任務はここまで。現支部長、竜騎士少佐殿、あなたはこれからどうするのですか?」
竜騎士「…っ、やっぱり…か…」
女武道家「え、え?」
上官「月末会議で、少し燃えてしまって、将官たちに生意気な口を聞いてしまってな」ハァ
竜騎士「…」
上官「中将は軍法会議にかけられるが、私はついでにココの支部送りにされてしまった」ハハハ
竜騎士「…」
上官「そんな顔をするな。まぁ、それも謹慎のようなものだし…一時的に左遷されたわけさ」
竜騎士「…わざわざ、俺のために…」
上官「何、気にするな。私は軍の未来を思ってそうしたまでだ。それとな…」
竜騎士「?」
上官「昔、私に言ったあの言葉、今も心に強く残っているぞ?」ククク
竜騎士「え…ちょ、それは!」
女武道家「昔、言った言葉?」
上官「ああ、こいつは私の後輩なんだが、その時に学校でな…、面と向かって」
竜騎士「わーっ!わーっ!!!もう忘れてください!僕ももう忘れた事にしてるんですから!」
上官「はははっ!相変わらずだ!」
女武道家「?」
上官「あー涙が出るほど面白い。それで、どうするんだ?中央へ戻るか?」
竜騎士「…」
女武道家「竜騎士さん…」
竜騎士「俺は、もう決めています」
上官「ほお…どうするのだ?」
竜騎士「俺は…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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――――【12月26日・馬車の中】
…パカラッ…パカラッ…
運送商人「…」
竜騎士「っていう事があったわけです」
運送商人「へぇ…兄さん、若いのに苦労してるんだね」
竜騎士「今はこうやって、志願通りに世界を巡る冒険部として活躍してますけどね」
運送商人「…大変じゃないのかい?」
竜騎士「大変なことも沢山あります。けど、何よりも…楽しいですから」
運送商人「そりゃあいいな。楽しいことが一番さ」ハハハ
ビュウウウッ…!!
運送商人「うう…寒くなってきたな。もうすぐ、猛雪山だよ」
竜騎士「雪が凄いな…」ブルッ
運送商人「吹雪で前が見えなくなる前に、着きたいねぇ」
竜騎士「…ですね」
…ガタガタン!!!…
運送商人「おっと!揺れたか…ごめんよ」
ゴロゴロゴロ…ゴツンッ!!
女武道家「あいたぁーーー!」モゾモゾ
竜騎士「うっさ!」
運送商人「あらら…寝てたの起こしちゃったか…ごめんごめん」
女武道家「気にしないでください…」イタタ
竜騎士「ったく、どこでも寝るからそうなるんだ」
女武道家「あーっ、ひどい!」
竜騎士「耳元で騒ぐなうるさいー…」キーン
運送商人「はっは、その子が話しに出てきた女武道家さんってことだね?」
竜騎士「えぇ、何を思ったのか…あの時、俺が冒険部に志願した時…」
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女武道家「私も冒険部へ…行こうと思います!」
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竜騎士「軍も何を思ったのか知らないんですが、そのままパーティでくっ付けられて…」ハァ
女武道家「いいじゃないですか、楽しいんですから!」
竜騎士「あー…そうね…」
女武道家「今回は、この場所に何の用事ですか?」
竜騎士「山岳にいるイエティの討伐。皮は売れるし、それなりの報告にもなる」
女武道家「山登りですか…」
竜騎士「文句あるなら、登らなくてもいいぞ」
女武道家「い、いえ、登りますよぉ!」
運送商人「はっはっは、二人とも、仲がいいねえ」
竜騎士「…」ハハ
女武道家「さーっ、今回もバリバリ働きますよ!」
竜騎士「可愛いのはいないからな?」
女武道家「…えぇ」
竜騎士「はは…いつまでたっても変わらないな、お前は…」
―――2人を乗せた馬車は、雪の中を静かに進む。
果たして、彼らはどんな運命を辿るのか。
どんな世界が待っているのか。
…それはまた、別のお話。
【…E N D…】
697 : ◆qqtckwRIh.[] - 2013/10/09 23:52:38 DTFm/z9. 580/601
■後書き
これで完結になります。読んで下さった方々、意見感想を下さった方々、心より感謝致します。
本来予定していたよりもやや短めになり、描ききれなかった場面も多くあるのが心残りだったりします。
ですが、こうやって最後まで物語を描けた事をうれしく思い、
ひとえに、皆さんのおかげでもあります。本当にありがとうございました。
短めながら、もう1つの小さなお話を投稿し、本当の終了となります。
…その町であったもう1つのちょっとしたお話…
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――――【今から数百年前のこと】
都市商人「暑いなー…こんな場所に本当に町なんて出来るのか?」
王国商人「王に言われたとはいえ、切り開くのだけで精一杯だぞ…」
古商人「俺はちょっと水辺探してくる」
…トコトコ…
都市商人「でもまあ、自然が多いってだけで意外といい場所だとは思うが」
王国商人「そりゃそうなんだが…」
都市商人「それに、近くに洞窟があった。ありゃ鉱物が眠ってそうだぞ」
王国商人「本当か!?そりゃいい…うちの王国から腕のいい鍛冶屋を紹介しよう!」
都市商人「お、頼むぞ」
王国商人「近くに大きな林もあったし、そこの付近なら木材も困らん。鍛冶屋の小屋でも建ててやろう」
都市商人「林か…動物も多いだろうし、新鮮な食材も手に入りそうだな」
王国商人「お?確か、お前の所に有名なシェフがいたな。そいつとか連れてこれないのか?」
都市商人「さすがに無理だろう、弟子が動けないかは聞いてみる」
王国商人「いいね、そっちも頼むわ」
都市商人「おう、任せておけ」
タッタッタッタ!!
古商人「お、おーい!おーーい!!」
都市商人「なんだ?」
古商人「こっちにやばい泉を見つけた!早く来い!」
都市商人「水辺もあったか。何がやばいんだ?」
古商人「とっ、とにかく来い!」
都市商人「?」キョトン
王国商人「?」キョトン
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――――【 近くの泉 】
古商人「見ろ!!」
王国商人「おぉー」
都市商人「でけえ…綺麗だな…」
古商人「ばか、綺麗なだけならどこでもある。よく見ろ!」
都市商人「…?」ジッ
…パシャッ!!バシャバシャ…
都市商人「はっ!?ありゃ…海魚じゃねえか…」
古商人「み、水飲んでみろ!」
グビッ…
都市商人「…!」
古商人「…な?」
都市商人「ただの水?なんで海魚がいるんだよ…」
古商人「わからん、不思議な場所だ」
王国商人「こりゃあ思ったより、凄い開拓地かもしれんぞ」ワクワク
古商人「楽しくなってきたな!」
…ガサガサッ!!
都市商人「なんだ!?」
インプ『ケケ…なんだお前ら…』
都市商人「インプ…」
王国商人「くっ、やはり魔物がいたのか!」
インプ『…人間か』
王国商人「…」
インプ『見た所、商人か?そうか…開拓にでも来たか?』
王国商人「…お前、知性が高いのか?」
インプ『ふん…』
王国商人「それなら話が早い。いずれ、ここに町を開く。その時、人間に手出しはしないでもらいたい」
インプ『…さあな。だが俺たちだって自分の命を脅かすことはしないさ』
都市商人「それはありがたい。それと、この泉はなんだ?内地で海の生き物がいるとは…」
インプ『俺らの生命の魔力のおかげだ。勝手に採るなよ?俺らの生活の糧なんだ』
都市商人「なるほどな…。少しだけでも分けては貰えないか?」
インプ『人間に渡すものはない。関わるな』
都市商人「…この泉があれば、民は潤う。頼む」
インプ『だめだ』
都市商人「…なら、これでどうだ」キラッ
インプ『…ほぉ』
王国商人「お前、それは…」
古商人「そりゃ…だめだろ…」
都市商人「せめて、民が安定するまでの供給を願う。この"金の魔力の金貨"を泉に落とそう」
インプ『確かに、それがあれば俺たちも楽にこの泉を維持できるな』
都市商人「…どうだ?」
インプ『ケケ…いいだろう。安定するまで、だがな』
都市商人「充分だ…ありがとう」
ピンッ…ヒュウウッ…パシャンッ……
パァァァッ…
都市商人「…泉が魔力で満ちていく。素晴らしい輝きだ…」
王国商人「ありゃ、お前が命をかけて手に入れた古代の金貨だろ…いいのか?」
都市商人「これが未来の為になるならば」
王国商人「…よくやるわ」
都市商人「溶けた金貨はいずれ魔力を失い、この泉の底で姿を戻すだろうしな」
王国商人「つったってな、お前生きていないぞ?金の魔力だ…何百年後になるか、何千年後になるか」
都市商人「何、誰かいつか見つけてくれるさ」ハハハ
インプ『変わったヤツだ。ま、約束だ。もう少しいった場所に、俺らが住んでいる場所がある。欲しい時はそこに来い』
王国商人「…んー、近くに、開けた場所はないか?」
インプ「泉から少し歩いた場所に、平坦な土地はある」
王国商人「俺らの拠点を作らないか?ここなら飲み水、食べ物にも困らないし」
都市商人「悪くないね」
古商人「いいぞ」
インプ『遠慮のない奴らだ…まぁ…いいが』
王国商人「よっしゃ、広大な土地、自然、俺らがここに町を作る!」
都市商人「そうだな、がんばろうぜ!」
古商人「…おう!」
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――――【そして、長い時が流れ】
ザバァンッ!!
竜騎士「ぷはぁっ!」
女武道家「!」
竜騎士「やー、思ったよりも深くて手間取った」ハハ
女武道家「ご…5分ですよ!?どんだけ潜ってるんですか!」
竜騎士「5分くらい…」ゴニョゴニョ
女武道家「信じられません…」
竜騎士「それより…よいしょっと」
…カチャンッ
女武道家「何です?これ?」
竜騎士「泉の深くに落ちてた。金貨…みたいだな」
女武道家「…金貨?」
竜騎士「見たことない金貨だ。なんだこりゃ」
女武道家「使えたり、売れるんです…かね?」
竜騎士「変な模様入ってるし…使えないんじゃないか?もしかしたらオモチャか何かもしれん」
女武道家「こんな泉に?」
竜騎士「何があるかなんて、誰にも分からないもんだ」
女武道家「ふむ…?」
竜騎士「うっしゃ、とりあえず戻るか。涼めたし」ザバッ
女武道家「私は違う意味で涼みましたけどね…」
竜騎士「とりあえず戻ったら、書類整理の続きだ!」
女武道家「え…」
竜騎士「今までサボってた分のツケが来たと思うことだな」
女武道家「そ、そんなぁ…」
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【 E N D 】
718 : ◆qqtckwRIh.[sag... - 2013/10/10 00:08:37 vHbzholw 601/601
もう1つのお話は、これで終わりです。
そして、今回はこれで本当に終了となります。
今後、スレが残っている間にまた何か新作があるような事があれば是非、ご報告致したいと思います。
それでは、皆さま、ありがとうございました…。
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