竜騎士「ち…ちょっと待ってください。何故ですか!」
上官「何故も何も、決まったことなのだ。明日には向かってもらうぞ」
竜騎士「なんで俺が…」
上官「…とにかく、お前は明日から田舎町の支部に転勤だ」
竜騎士「そ、そんなぁ~…」
元スレ
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1379945614/
That's where the story begins!
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【竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活】
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Don't miss it!
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――――【7日後・田舎町】
ミーンミンミンミン…
竜騎士「…暑い」
ジージージー…
竜騎士「そして、セミうるせぇぇ!何で俺がこんな田舎に左遷されなくちゃならないんだよ!」
…トボトボ
竜騎士「自然が多いのは嫌いじゃないが…、はぁぁ…」
???「ため息ばかりついてると、幸せが逃げますよ?」
竜騎士「ん?」
女武道家「どーも初めまして、支部に勤めている女武道家と申します。竜騎士さんですよね?」
竜騎士「そうだが…」
女武道家「本部から話は聞いてます。支部まで案内しますので、どうぞこちらへ」
トコトコ…
竜騎士「…」
女武道家「…どうかしたんですか?」
竜騎士「いや、何でもないよ。君、いくつ?」
女武道家「女性に歳を聞くのは野暮ですね…。一応18ですがっ」
竜騎士「そうか。俺は今年で24だ。よろしくな」
女武道家「は、はいっ」
竜騎士「君はここに住んで長いのか?」
女武道家「私ですか?ここ出身なので、長いも何も、18年間ずっとですよ」
竜騎士「そうか。多少暑いが、いいところだな」
女武道家「…"こんな田舎"ですが、いいところはあると思いますよ」ニコッ
竜騎士「…聞いてたのね」
女武道家「あはは…」
竜騎士「支部ってのは、どんな奴が多いんだ?支部長は?」
女武道家「…えっ?」
竜騎士「えっ?」
女武道家「えっ…え?」
竜騎士「えっ?」
女武道家「ん?」
竜騎士「お?」
女武道家「あれ…、竜騎士さん…です、よね?」
竜騎士「そうだけど…」
女武道家「…新しい、支部長さんですよね?」
竜騎士「え…えっ?えっ!?」
女武道家「え…ち、違うんですか?本部からはそう連絡を聞いてましたが…」
竜騎士「ちょ…聞いてないんだけど」
女武道家「それと、支部は私1人ですよ?」
竜騎士「はぁ!?」
女武道家「…」ビクッ
竜騎士「ちょ、本当に!?」
女武道家「…はい」
竜騎士「…えぇぇ…、待って、女武道家さんの階級は?」
女武道家「呼び捨てでいいですよ。一応代理支部長だったりしたので、それも考慮されて軍曹です」ムフー
竜騎士「ぐ…軍曹…。18で軍曹さんか…」
女武道家「竜騎士さんは階級上がったんですよね?支部長ですし」
竜騎士「…少佐のまんまだよ。えぇ~…」
女武道家「本部のほうで、何か悪いことでもしたんですか…?」
竜騎士「…心当たり、ないんだけどなぁ」
女武道家「…でも、階級も貰えず、本部からここへ移動って…中々ないですよ」
竜騎士「せいぜい軍事演習で中隊長やって、偏屈な性格の中将率いる大隊を敗北させたくらいで…」
女武道家「…」
竜騎士「…」
女武道家「…」
竜騎士「そ、それだーーーっ!?」
女武道家「あはは…」
竜騎士「どうせまだ若いからって、左遷させられたのか…ああ~っ、バカなことをしたなぁぁ」ガクッ
女武道家「謝れば、許してもらえたりするんじゃないですか?」
竜騎士「謝ってすむなら、こんな場所にいないよ…」
女武道家「あ~っ、また"こんな"っていう!」
竜騎士「あ、いや…ごめん!つい!」
女武道家「もー…」
竜騎士「…うん、ごめんよ」
女武道家「いいですよ、別に!でも、ちょっと嬉しかったりするんです」
竜騎士「"こんな"って言われて?」
女武道家「そっちじゃないです!ようやく、久々に一緒に働く人が出来たな~ってことです」
竜騎士「ああ、なるほど…って、久々?」
女武道家「はい。前は、先輩が2人ほどいたんですけど、今は中央都市に勤めに行きました」
竜騎士「昇進?」
女武道家「いえ、自分から志願すれば大体は都市部勤務になりますよ」
竜騎士「え、じゃあ俺ももう1度志願すれば戻れるのか、なんて」
女武道家「どうでしょう…左遷みたいなもんですし…」
竜騎士「そうだよなぁぁ…」ハァ
女武道家「…あ、見えてきました。あれが支部ですよ!」ビシッ
竜騎士「…」
女武道家「…」ニコニコ
竜騎士「ねえ、女武道家さん」
女武道家「はい?」
竜騎士「俺には、ただの一軒家にしか見えないんだけど」
女武道家「…かもしれません」
竜騎士「…」ハァ
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・・・・
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…カチャカチャ
女武道家「今、お茶出しますね」
竜騎士「ものの見事に、ただの家だな。まともな軍事品が何もない」
女武道家「…変、ですかね?」
竜騎士「変すぎるだろ。変だと思わないのか?」
女武道家「軍に所属してから、ずっとここですので…全部こんなもんかなと…」
竜騎士「…都市部には志願しないのか?」
女武道家「私、この町が好きですから」
竜騎士「ふーん…」
女武道家「お茶、どうぞ」
カチャッ…スッ
竜騎士「ありがとう。それで、泊まる場所は?寮なんかはどこに?」グビッ
女武道家「ここです」
竜騎士「…ぶーっ!」
女武道家「きゃあっ!」
竜騎士「ここ!?ここ、支部だろ!?」
女武道家「そ、そうですよ?私もここですし…」
竜騎士「…具合悪い」
女武道家「だ、大丈夫ですか!?」
竜騎士「そういう意味じゃないから大丈夫…」
女武道家「そう…ですか」
竜騎士「じゃあ、ここに一緒に住むのか…?」
女武道家「そうなりますね?」
竜騎士「…き、君の実家はここから近いのかな?」
女武道家「もっと奥ですから、歩いて1時間くらいですかね!」
竜騎士「そ、そう…、家からは通わないのかな?」
女武道家「いえ、義務はしっかり果たします!」
竜騎士「ぎ、義務?」
女武道家「夜に住民に何かあったとき、誰もここにいないんじゃダメじゃないですか!」
竜騎士「軍は便利屋さんじゃないんだけどなー」ハハハ…
女武道家「ってなわけで、お互い頑張りましょうね!」
竜騎士(ただの家みたいなところに男女で住むだって…?どうなっちまうんだか…)
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――――【1時間後】
…ペラッ
竜騎士「…ふーん。一応、活動はしてたのか」
女武道家「さっき言った通り、便利屋みたいな活動ばっかりですけどね」
竜騎士「この、天然洞窟やらの探索ってのは?」
女武道家「私がここで働く前、森林探索や、天然洞窟の探索が行われたらしいです」
竜騎士「ふむ…、ま、大体わかった」
女武道家「ここでやっていけそうですか?」
竜騎士「いけるも何も、やらないといけない状況なんでね…」
女武道家「中央の人は、大変ですねぇ」
竜騎士「出世争い、妬み、裏切り、何でもあるぞー」
女武道家「ひぃっ…」
竜騎士「…ははは、冗談冗談」
女武道家「…怖い」
竜騎士(冗談じゃないけどね)
女武道家「それで、これからどうします?」
竜騎士「今やってる業務とかはあるか?それと、中央からの連絡手段はどうなってる?」
女武道家「業務は特にないです。連絡手段は、別の部屋に通信装置はありますので」
竜騎士「なるほどな」
女武道家「はい」
竜騎士「…」
女武道家「…」
…ミーンミンミンミン・・・
竜騎士「…」
女武道家「…」
竜騎士「…え、えっと…女武道家は、1日を何して過ごしているのかな?」
女武道家「こうやってお茶を飲んで、外を眺めて、住民の方や、本部からの連絡待ちですとか…」
竜騎士「ほ、ほう…」
女武道家「お昼を食べたら、食後の散歩がてら、外出して見回りとか…」
竜騎士「…頭痛くなってきた」
女武道家「だ、大丈夫ですか!?」
竜騎士「だから、そういうのじゃないから大丈夫…」
女武道家「そうですか…」
竜騎士「…参ったな。えーと…今は午後2時か…」
女武道家「そうみたいですね」
竜騎士「んー…、ただいてもしょうがない。さっきの報告書にあった、昔、魔物が出たという場所に行ってみるか」
女武道家「えーっ!」
竜騎士「えっ」
女武道家「昔といえども、もしかしたら、今は魔物いるかもしれませんし、危ないですよ!」
竜騎士「そ、そりゃそうだが…。俺らの仕事は魔物退治もあるわけで…」
女武道家「ケガとかしたらどうするんですか!」
竜騎士「…女武道家?」
女武道家「はいっ?」
竜騎士「無理やりにでも連れて行く、道案内よろしく」
…ズーリズーリズーリ
女武道家「きゃーーっ!引っ張らないで下さい~!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【天然洞窟】
ヒュウウウウウッ…
竜騎士「ここは少し寒いな」
女武道家「…」ビクビク
竜騎士「何震えてるんだ?寒いかやっぱり?」
女武道家「もも、もしも魔物が出たら怖いじゃないですか!」
竜騎士「…」
女武道家「も、もういいですよね?ね?」
竜騎士「…まあ、異常はないようだし…いいか。次行くぞ」
女武道家「まだ行くんですかっ!?」
竜騎士「一応見回りはこういうことを言うんだよ!ほら、次!」
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――――【水晶の泉】
…キラキラ
竜騎士「うおっ、透き通って綺麗な水だなおい!」
女武道家「ここは、昔はよく魔物が出ていたらしいので、町人も近づかないんですよぅ…」
ジャブジャブッ…
女武道家「って、何してるんですかぁぁ!」
竜騎士「え、いや、暑いからちょっと水浴びでもしようかなと…」
女武道家「ダメですって!何かいたらどうするんですか!」グイッ
竜騎士「あ、おい、ちょ、引っ張るな!こら!」
女武道家「次行くなら行きますよ!ほら!」
竜騎士「少しくらい水浴びさせてくれてもいいじゃないかぁぁ…」
…キラッ
竜騎士「…水の中に何か…ある?」
女武道家「何してるんですか!」
竜騎士「わ、わかったよ!…まあ、いいか…」
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――――【迷いの森】
…バサバサバサッ!!…
竜騎士「こりゃまた、見事な森林だな」
女武道家「通称、迷いの森ですね。まだ深部には魔物がいるって話です」
竜騎士「何、そりゃ危ないな。早速、退治に行くか」ヨイショ
女武道家「ちょちょちょ、何してるんですか!」
竜騎士「え、魔物がいたら倒すのは当たり前だろ?」
女武道家「なな、何も今行かなくてもいいじゃないですか!」
竜騎士「町人に危険が及んだらどうする。それを防いでこそだろう」
女武道家「…もう、ここ数年は被害なんて聞いてないですから、大丈夫ですってば!」
竜騎士「…そうか?」
女武道家「そうですよ!とりあえず、これで報告書は全部です。一回戻りますよ!」
竜騎士「わ、わかった」
女武道家「全くもう…」
竜騎士(あれ?立場逆転してるし、俺間違った事言ってない…よね?あれ?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【田舎町・支部】
…バタンッ
女武道家「はー…戻ってこれた。中央の人は、色々びっくりすることしますねぇ…」
竜騎士「…普通だと思うんだが」
女武道家「中央だと普通かもしれませんが、こっちでは私が普通なんですっ!」
竜騎士「そう、なのか…?」
女武道家「せっかちすぎますよー。もっとのんびりいきましょうよ…」
竜騎士「うーむ…まあ、確かに…せっかちなのは認めるが…」
女武道家「でしょう?のんびりですよ、のんびり」
竜騎士「ま…、今まで働きづめだったし、久々の休暇と思ってのんびりするか…」
女武道家「休暇!?」
竜騎士「な、なんだ」
女武道家「のんびりしても、しっかり働くのは変わりませんよ!?」
竜騎士「朝起きて、昼間でお茶飲みながらココにいて、昼ごはん食べたら…外回りもとい、散歩が…?」
女武道家「外回りがてら、夕飯のおかずを買って、夜は本を読んだりして、お風呂に入って寝る!ここまでが仕事です!」
竜騎士「…」
女武道家「…」エッヘン
竜騎士「あほーっ!世間では、それを"休暇"というんだ!!」
女武道家「きゃああーーっ!お、大声出さないで下さい~!」
竜騎士「…明日は住民に一応挨拶がてら顔を出しながら、何か問題がないか聞く!」
女武道家「う、うぅ…」
竜騎士「2人といえども、きちんとした仕事はするぞ!」
女武道家「今まで通りでも良いと思うのに…」ガクッ
竜騎士「スケジュールは今日の夜、相談しながらでも決める!いいな!」
女武道家「ふ…ふぁい…」
竜騎士「…本当に、大丈夫なんだろうか…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コチ…コチ…コチ…
竜騎士「朝は9時までに起床、ここに集合。12時まではしばらく、書類整理だな」
女武道家「書類整理…」
竜騎士「古い書類がたまり過ぎだ、一回整理する必要がある」
女武道家「…うう」
竜騎士「そこから1時までは休憩。1時からは、その記載されている危険な場所を見回る。日替わりだな」
女武道家「…危ないですよう」
竜騎士「知らん!2時からは、住民に何か問題がないか聞いて回る」
女武道家「全部回るのに、3、4時間かかりますよ多分…」
竜騎士「…商店街をメインにして、4時までには終わらせる」
女武道家「ちょっとだけ、省きましたね!?」
竜騎士「ごほん。4時から6時までは、鍛錬だ」
女武道家「鍛錬?」
竜騎士「まぁ体力作りとか、演舞とか。そういうのだ」
女武道家「…熱中症になりますよ?」
竜騎士「休憩がてら、これは出来る範囲でやっていく。軍人という立場上、必須だ」
女武道家「あうう…」
竜騎士「6時からは自由時間だ。それで仕事は終了、ご飯やらはそこからでいいだろう」
女武道家「すっごい厳しいスケジュールに…」
竜騎士「これで厳しかったら、中央だと死ぬな」
女武道家「そんなきついんですか?」
竜騎士「…ふ、ふふ…」
女武道家「ふふ?」
竜騎士「朝5時起床!30キロのマラソンの後、1時間の勉学!演習を含み、12時まで各自必要なー…」
女武道家「わ、わかりました!もうわかりました!私には中央は無理です!」
竜騎士「ふ…ふふ…」
女武道家「つくづく、支部でよかったなと思いますよ」
竜騎士「支部でもこんなになってるのは、レアケースすぎるけどな」
女武道家「はー…」
…グゥゥッ
女武道家「!」
竜騎士「…そろそろ、晩御飯…ご飯食べるか?」
女武道家「…はい」カァッ
竜騎士「えっと…冷蔵庫はどこだ?」
女武道家「あ…」
竜騎士「…あった、これか。旧式の魔石による冷蔵庫か…懐かしい…」
…ガパッ
竜騎士「…」
女武道家「あう…」
竜騎士「おい」
女武道家「はいっ!」
竜騎士「…まともに材料と呼べるのがないぞ。全部、お惣菜と、その余りなのだが…?」
女武道家「え、えーと…それは…その…」モジモジ
竜騎士「あほーーっ!!」
女武道家「今日2度目ーっ!」
竜騎士「しゃあない、この惣菜使って、ちょっとした料理を作ってやる…ご飯でも炊いとけ!」
女武道家「は、はいっ!」
竜騎士「…ったく、色々深刻すぎるだろ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「んーーーっ!美味しいぃ!」
竜騎士「…」ピクピク
女武道家「料理上手なんですね!さすが、中央の人!」
竜騎士「…なぜ、ご飯がお粥になっているんだ…?」
女武道家「ち、ちょっと水を入れすぎたかなー…なんて…?」
竜騎士「1合炊くのに、どれくらいの水を使ったんだ…?」
女武道家「コップ3杯分です!!」
竜騎士「…1合は、コップ1杯分…それでも少し多いくらいなんだぞ!」
女武道家「ひ、ひえぇ、そうなんですかー!」
竜騎士「…」
女武道家「たまに、ご飯がパッサパサだったり、のりみたいだったり…したんです…けど」チラッ
竜騎士「俺が、料理のやり方は教えてやるよ!!覚えろー!」
女武道家「はいいーっ!」
竜騎士「…ったく…」
女武道家「えへへ……しいな…」
竜騎士「ん?何て言った?」
女武道家「…やっぱり、楽しいです」
竜騎士「楽しい?」
女武道家「前のいた先輩がいなくなって、こうやって他の人とご飯を食べるの久しぶりなんです」
竜騎士「あー…なるほどな」
女武道家「その時もこうやって言われちゃって。成長してないっていうんでしょうけど…」
竜騎士「…ははは」
女武道家「…」モグモグ
竜騎士「…」モグモグ
女武道家「…」グビッ
竜騎士「…ん?」
女武道家「え?」
竜騎士「今、18歳っていったよな」
女武道家「はい」
竜騎士「…いつから軍に所属してるんだ?軍の所属は18歳からだったはずだが…」
女武道家「正式な所属は今年ですけど…元々軍希望だったんで、こんな田舎ですし、大目に見てもらって15歳から働いてました」
竜騎士「あぁ…なるほど」
女武道家「だから、中央都市には行かないんじゃなくて、行けなかったのが正しいんですけどね」
竜騎士「行きたいとは思わないのか?」
女武道家「…やっぱりこの町が好きですし」
竜騎士「へぇ…」
女武道家「…よしっ。ご馳走様でした!」
竜騎士「食べるのはやっ!」
女武道家「お風呂、準備してきますね!」
竜騎士「お…おう…」
…タッタッタッタ
竜騎士「…」
…ジャーッ…キュッキュッキュ……
タッタッタ…
竜騎士「…」
女武道家「よし、いつでも大丈夫です。お湯が張ったら言いますね、一番風呂をどうぞ!」
竜騎士「う、うむ…、本当に所帯染みてるな…」
女武道家「…ふぅ」
…ゴロン
竜騎士「食べた後、すぐに横になると体に悪いぞ」
女武道家「これが好きなんですよー…」
竜騎士「…太るぞ?」
女武道家「…」ピクッ
竜騎士「…」
女武道家「い、今何て言いました…?」
竜騎士「太るぞ、と」
女武道家「わ、私太ってます…か…?」
竜騎士「ぷっ…さあな?」
女武道家「…っ、じゃ、じゃあ!見てくださいよ!これ!!どうですか!!」
…パサッ
竜騎士「ふ、服を脱ぐんじゃない!」
女武道家「て…撤回してくださいよ!ほら、まだ若いんですからぁぁ!」
竜騎士「わかったわかったーーー!笑ったのは冗談だから!」
女武道家「絶対本気でいったー!」
竜騎士「お、ふ、風呂が溜まった、いってくる!」
女武道家「…もーっ!デリカシーがないんですからぁ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ホゥ…ホゥ
竜騎士「で、どこで寝ればいいんだ?」
女武道家「2階の…ここが寝室です。布団敷きますね」
竜騎士「お、悪いな」
女武道家「いえいえ、どうせ自分のも敷くので」
竜騎士「うんうん…、うん…うん!?」
女武道家「うん?」
竜騎士「一緒の部屋で寝るのか!?」
女武道家「そうですけど、何か?」キョトン
竜騎士「それはいささか問題があるような気が…」
女武道家「…男女ですけど、仕事仲間ですし…」
竜騎士「…あのさ、え…、いやそうだけど…」
女武道家「…やっぱり、別々のほうがいいですか?」
竜騎士「いや俺は別にいいんだ…けど…」
女武道家「それじゃ、敷きますね!」
竜騎士「あ…あぁ…うん、まあ…いいんじゃないの…」
女武道家「もう夜遅いですし、明日に備えて寝ましょうっ」バサッ
竜騎士「お、おう…」
女武道家「…よしっ、出来ました。それじゃ…」モゾモゾ
竜騎士(布団ちけぇ)
女武道家「おやすみなさいっ!」
竜騎士「お…おう、おやすみ」
女武道家「…」スゥッ
竜騎士(そして…寝るのはえぇ)
…モゾモゾ
竜騎士(とはいえ…俺も疲れた…。せめて、いい夢だけでも…見たいもんだ…)チラッ
女武道家「…」スヤスヤ
竜騎士(はぁ…、しばらく休暇もらったと思って、楽にするか…)
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・・・・・・・・
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・・・
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――――【次の日・田舎町の商店街】
…ガラッ
竜騎士「それでは、ありがとうございました」
…バタンッ
竜騎士「挨拶回りも楽じゃないな。それにしても、みんな笑顔でいい人たちだ」
女武道家「ですよね!」ニコニコ
竜騎士「少しでも名前を覚えてくれると良いんだがな」
女武道家「でも、竜騎士の名前を受ける位ですから、相当強いんですよね?」
竜騎士「まー…強い、のか…?」
女武道家「竜の力を解放できるとか?おりゃーっ!とか!」
竜騎士「はは、竜のように魅せた戦い技術とか、竜をも砕く騎士!みたいな感じで元帥殿にもらった名前だよ」
女武道家「竜の力を持っている、とかそういうことではないんですね?」
竜騎士「…かの英雄と呼ばれた剣士は、竜の血を持って世界を救ったとか聞いたことあるよ」
女武道家「あ、知ってます!勉強で習いました。絵本でも読みましたし」
竜騎士「まぁ…確かに竜族はいるけど、絵本の剣士のように、本当に竜と戦って勝てる自身はないよ…」タハハ
女武道家「へえー…何か、技見せてくださいよっ!」
竜騎士「わ…技…?」
女武道家「その、竜のように魅せる技を!」ブンブンッ
竜騎士「ふむ…よし…」スチャッ
女武道家「…」ワクワク
竜騎士「…」スゥゥ
女武道家「…」ウキウキ
竜騎士「龍突っ!!」グワッ
…ズドォォォッ!!!
女武道家「…!!穂先が龍のように飛んでいく!」
…ドォォォッ!!!!
女武道家「…お…?」
ドォォォォッ……ドゴォォォン!!ガシャン!!バリン!!
町民「だ、誰だーーー!!!人の家の壁壊したやつはーーー!」
竜騎士「あ」
女武道家「…あ」
竜騎士「や、やべ…逃げろ!!」
女武道家「いいんですかー!?」
竜騎士「わざとじゃないからな、わざとじゃ!」
女武道家「わかってますけども!」
竜騎士「はっはっは!」
女武道家「あははっ!」
…タッタッタッタッタ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女武道家「はぁ…はぁ…はー…笑った」クスクス
竜騎士「焦ったぁ…」
女武道家「お堅い人だと思ってたんですけど、意外とユーモアがあって安心しました」
竜騎士「堅そうだったか?」
女武道家「はい、なんていうか…"軍は規律が全て!!"みたいな…」
竜騎士「はは、確かに大事だが、それに縛られすぎるのも良くない…そういう考えだ」
女武道家「そうですよね!」
竜騎士「お前みたく、温過ぎるのもどうかと思うけどな」コツンッ
女武道家「あいたっ!」
竜騎士「さて、もうすぐ昼か。お昼ごはん食べたら、まだ挨拶回りを続けるぞ」
女武道家「はいっ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ガラガラッ
婆や「女武道家ちゃん、またおいでよ」
女武道家「はいっ、お婆ちゃんも元気でね!」
婆や「漁騎士さんも、これからよろしくね」
竜騎士「り、竜騎士です。これからよろしくお願いします」ペコッ
…トコトコ…ジリジリ…
女武道家「一応、商店街と離れの家はこれで終わりですね」
竜騎士「あと、山の奥やら森側に数軒、町外れにもあるみたいだが…日を改めてでいいな」
女武道家「ですね、少し遠いですし」
竜騎士「つーか…」
ジリジリ…ミーンミンミンミンミン…
竜騎士「暑い…暑い…!暑い!!」
女武道家「仕方ないですよ、夏ですもん」ニコッ
竜騎士「猛雪山でのミッションが懐かしい…」
女武道家「あー、万年雪山って言われてる所ですよね?」
竜騎士「あそこだと逆に寒すぎるがな…、今何時だ?」
女武道家「午後3時を回るところです」
竜騎士「…」ユラッ
女武道家「…?」
竜騎士「ついて来い!」グイッ
女武道家「えっ、ど、どこに行くんですか!」
竜騎士「暑すぎてな…我慢の限界だ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【水晶の泉】
…ザパァン!!!
竜騎士「冷てぇぇ!」
女武道家「…ど、どこに行くかと思ったら…まさかの…」
竜騎士「こんなにキレイな水で、泳がないのは損だろ!」
女武道家「いやそりゃそうなんですけど…」
竜騎士「ほら、来たらどうだ!」
女武道家「いやー…泳ぐのは嫌いじゃないんですけど…何ていうか…」
竜騎士「ん?」
女武道家「自然の泉とか、森の中のとか、キレイすぎる水辺とか…なんか嫌なんですよね…」
竜騎士「嫌?」
女武道家「見るのは好きなんですけど、なんか怖いっていうか…分かりません?」
ジャブジャブ…
竜騎士「んー…気にしたことなかったな」
女武道家「疎いだけですよ!」
竜騎士「それに、都市部だとこんな事できないからね~…」
女武道家「あと昨日も言いましたけど、魔物がいたりしたら怖いじゃないですか!」
竜騎士「報告もあがってないんだし、ゆっくりしようよって言ったのは君だぞ?」ハハハ
女武道家「む、むぅぅぅ…」
竜騎士「…ん」
…キラッ
竜騎士「…そういや昨日も何か光ってたな。ちょっと潜って見てくる」
女武道家「え、ちょっ!」
ザバザバ…トプンッ…
女武道家「私ここ苦手なんですから、一人にしないでくださいよーーー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザバァンッ!!
竜騎士「ぷはぁっ!」
女武道家「!」
竜騎士「やー、思ったよりも深くて手間取った」ハハ
女武道家「ご…5分ですよ!?どんだけ潜ってるんですか!」
竜騎士「5分くらい…」ゴニョゴニョ
女武道家「信じられません…」
竜騎士「それより…よいしょっと」
…カチャンッ
女武道家「何です?これ?」
竜騎士「泉の深くに落ちてた。金貨…みたいだな」
女武道家「…金貨?」
竜騎士「見たことない金貨だ。なんだこりゃ」
女武道家「使えたり、売れるんです…かね?」
竜騎士「変な模様入ってるし…使えないんじゃないか?もしかしたらオモチャか何かもしれん」
女武道家「こんな泉に?」
竜騎士「何があるかなんて、誰にも分からないもんだ」
女武道家「ふむ…?」
竜騎士「うっしゃ、とりあえず戻るか。涼めたし」ザバッ
女武道家「私は違う意味で涼みましたけどね…」
竜騎士「とりあえず戻ったら、書類整理の続きだ!」
女武道家「え…」
竜騎士「今までサボってた分のツケが来たと思うことだな」
女武道家「そ、そんなぁ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
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―――――【 夜 】
…ホー…ホー…
サワサワ…
女武道家「…よし、これで最後で終わりっと♪」
竜騎士「お疲れさん」
女武道家「これで、明日の分は楽になりますよね?」
竜騎士「倉庫いっぱい分あるからな。まだまだだ」
女武道家「うう…」
竜騎士「…んー」
女武道家「どうしたんですか?」
竜騎士「…この支部の維持ってどうなってるんだ?」
女武道家「維持?」
竜騎士「考えてなかった。普通は、本部から資金やらを貰えるはずなんだが、貰ってるのか?」
女武道家「あー…一応、月イチですけど、軍に所属している商人が、お金は持ってきますよ?」
竜騎士「いくらだ?」
女武道家「えーと…先月が支部の資金が6万ゴールドでした」
竜騎士「…」
女武道家「?」
竜騎士「…そりゃ、食費やら雑費で消えるだろ!どうやってやりくりしてるんだ!」
女武道家「えーと…あと足りない分は、自分の給料から出してます」
竜騎士「きゅ…給料…」
女武道家「ですから、私の給料もあわせて、大体1人で生活には困ってませんでしたよ」
竜騎士「…」バンッ!!
女武道家「ど、どうしました?」ビクッ
竜騎士「本部に通信する!通信装置を貸してくれ!」
女武道家「は、はいっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ザザ…ザザザザ…
竜騎士「もしもし、聞こえますか」
上官"「もしもし…おー、竜騎士!」"
竜騎士「久しぶりです」
上官"「心配してたんだぞ、そっちはどうだ」"
竜騎士「ええ、まぁ…予想通りといえば予想通りですが…」
上官"「はは…それで、どうした?」"
竜騎士「この支部の設備、運営資金、仕事、その他諸々たくさん聞きたいことがあるんですが…?」
上官"「ふむ」"
竜騎士「まあ何にせよ、きちんと支部として動かすには資金が足りなすぎるんです!」
上官"「どのくらい必要なんだ」"
竜騎士「この通信機器も古すぎますし、いざという設備、装備など…見積もって1500万ゴールドですね」
女武道家「ご、1500万ゴールド!?」
竜騎士「…うるさっ!」キーン
女武道家「そんな、そんなにいらないですよ!」
竜騎士「はは…わかったから、静かにしといてくれるかな…」
上官"「わかった、検討して、明日にでも返事を出す。今日はもう夜遅いからな」"
竜騎士「夜分にすいませんでした。よろしくお願いします」
…ザザ…ブツンッ・・・
竜騎士「ふう、これで一先ずは安心か」
女武道家「せ、1500万ゴールドとか横暴すぎますよぉ…」
竜騎士「そのくらいないと、この支部は本当にただの"家"だっつーの!」
女武道家「あうう…」
竜騎士「とりあえず、今日も…早めに寝るぞ」
女武道家「は、はいっ」
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日】
…ザザ…
竜騎士「え…出せない!?」
上官"「すまんな。そちらの支部に送る金額は毎月の6万ゴールド…それが限界なのだ」"
竜騎士「そ、そんな!」
上官"「それと…その会議で決まって、もう1つ、2つほど残念な報告がある」"
竜騎士「なんでしょう?」
上官"「もうすぐ、そこの支部はなくなるかもしれん」"
竜騎士「はぁ!?」
女武道家「えっ!?」
上官"「そこの土地は元々、軍の保有ではない。借りている為、毎月別途に土地主に金を払っているのだ」"
竜騎士「…軍にお金はあるんですから、買いましょうよ」
上官"「そこはほとんど、軍のいる意味がない場所だからな。撤廃されても問題ないらしい」"
竜騎士「じゃあ、どうすればいいんですか?というか、ここがなくなったら俺はどうなります?中央に戻されるんですよね?」
女武道家「私もどうなるんでしょう…」
上官"「…クビ、だそうだ」"
竜騎士「なんですって!?」
女武道家「クビッ!?」
竜騎士「そんな話聞いたことがない!誰が命じたんですか!」
上官"「…それは言えん。だが、何とか出来ないこともない」"
竜騎士「クビなんて嫌ですよ、どうすればいいんですか!」
上官"「毎月の土地代をきちんと支払い、軍としてきちんと活動することだな。認められれば、中央に戻れるだろう」"
竜騎士「…月6万の支給と、我々の給与から支払えと?」
上官"「あと給与だが、そこの支部の活動の結果に左右、つまり歩合制に変更されるようだ」"
竜騎士「さ…散々だ…」
上官"「ちなみに、土地代は月20万だそうだ」"
竜騎士「…」
女武道家「そんな…」
上官"「今月の月末の定期報告までに、それなりの結果を出しておかんと厳しいぞ」"
竜騎士「け、結果って…」
上官"「土地代の支払いもある。何とか頑張ってくれ…」"
竜騎士「頑張ってくれって…どうすれば!」
上官"「さっきも言った通り、そこの支部が何かしらで利益を出したり結果を出せば、クビは免れ…中央に戻れるかも、しれん」"
竜騎士「クビは免れるって…」
上官"「ま、何にせよ結果を出せということだ。土地代の支払い、利益も含めてな」"
竜騎士「…利益って、何もない状態ですよ!」
上官"「それは…」"
竜騎士「と、とにかく、何かしらで"利益"になる結果、を出せばいいんですね!?」
上官"「…う……む……」"
ザザ…ザー……ブツンッ……
竜騎士「あ…」
女武道家「…切れちゃった。通信機器が古すぎるせいですね…」
竜騎士「ど、どうすりゃいいんだよ…、いまさらクビだなんて…」ドンッ!!
女武道家「…どうやってか土地代を稼いで、軍としての活動報告をするしか…」
竜騎士「何も揃ってない、住民からの依頼はない、敵はいない!」
女武道家「…八方塞ですね」
竜騎士「頭が痛くなってきた…」
女武道家「大丈夫ですか!?風邪ですか!?」
竜騎士「もうその流れはいいよ…」
女武道家「…どうしますか?」
竜騎士「…」
女武道家「…」
竜騎士「そうだ…、深部。森の深部!あそこなら魔物がいるって話じゃなかったか!」
女武道家「確かにいますけど、危ないですし…道も整備されてませんし、迷いますよ…」
竜騎士「だけどな、それ以外にやれることがないんだよ」
女武道家「そもそも、魔物を倒してどうするつもりですか?害はないので、ポイント稼ぎにはなりませんよ…」
竜騎士「魔物を倒して、皮やら何やらを俺の知り合いの中央の商人に売るんだ。まずは利益優先にしよう!」
女武道家「な、なるほど」
竜騎士「きちんとしたハンティングポイントが見つかれば、それだけで儲けになる!」
女武道家「そんな上手くいきますかね…?」
竜騎士「分からんが…。それと、もし処理しきれなかったアイテムは、この支部で販売するのも有りか」
女武道家「小売店みたいですね…」
竜騎士「どっちかといえば、卸売りだがな」
女武道家「どっちでもいいです!」
竜騎士「よっしゃ、そこまでの道を整備したりすれば、それなりの活動報告にもなる…いけるかもしれん!」
女武道家「そういう整備用や、そこまで行く道具、食料、装備……出せるお金ないですよ私…」
竜騎士「あ…」
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・・・・・・・
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・・・
・・
・
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…チャリンチャリンッ!!
道具屋「毎度ありがとうございましたー!」
竜騎士「…2人分で、大体の道具やら揃えるのに、俺の貯金が吹き飛んでしまった…」
女武道家「あ…あはは…」
竜騎士「しかも、まともな道具がない…。材料が粗悪なのか、すぐに壊れるぞこんなん…」
女武道家「もっと良い材料さえあれば、いい物も作ってもらえたりするんでしょうか?」
竜騎士「そ、れ、だ」
女武道家「へっ?」
竜騎士「見たところ、この商店街の人たちは腕は良い。魔物やら自然にある材料を取ってきて、作ってもらえばいいんだ!」
女武道家「なるほど!」
竜騎士「作ってくれそうな店は大体あるしな!」
女武道家「やることが増えてきましたね…」
竜騎士「土地代20万を毎月稼ぐのに、森の奥に行く為に材料やら道具を集めて店に渡したり、売ったりするか…」
女武道家「なんか自給自足生活みたいな…」
竜騎士「はぁ…月6万がなんとかの救いだな。支部に戻ったら一度収支付けを…」
女武道家「…」チラッ
竜騎士「…ん?」
女武道家「今日、何月何日か知ってます…?」
竜騎士「8月10日だが?」
女武道家「毎月1日にお金は貰えるので、もう今月の支給金はなかったり…」テヘ
竜騎士「…」
女武道家「あはは…」
竜騎士「…」ニコッ
女武道家「…?」ニコッ
…グイッ
女武道家「…何で笑顔で引っ張って…そっちは森で…まさか今日から仕事を…きゃーーー!いやぁぁ!」
【現時点での収支】
■収入
・特になし
■支出
・食事代・雑費など6万ゴールド
・土地代(月末支払い予定)20万ゴールド
■収支合計
・マイナス26万ゴールド
(必要な道具に出したお金は竜騎士のポケットマネーなので除外)
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ミーンミンミンミン…カツーン…カツーン…
竜騎士「とりあえず、今日は深部までの道を確保するぞ」
女武道家「な、何も今日から始めなくても…」シクシク
竜騎士「俺に見捨てられて、クビになりたいなら別だが」
女武道家「さ、竜騎士さん。さっさと道を切り開きましょう!」
竜騎士「…こいつ」
…バサッ!!ズバッ!!
女武道家「ふぅ…暑い…」
竜騎士「…おいっしょ…よいしょっと…」
女武道家「それにしても、切り開く必要ありますか?」
竜騎士「道という道がないからな。大物がいたとき、道が確保されていないと運べないだろう」
女武道家「大物…」
竜騎士「簡単に整備しといて、まずは損はない。きちんとするのは、その後だ」
女武道家「ふむー…」
…オーイ
竜騎士「ん?」
女武道家「今、誰かが呼んだような…」
オッサン「おーい!こっちだこっち!」
タッタッタ…
竜騎士「ん…こんにちわー」
オッサン「こんにちわ、君たち、一体何をしてるんだい?」
竜騎士「まぁ…色々ありまして…、深部への道を切り開いてまして」
女武道家「ですね…」タハハ
オッサン「…軍服。軍人さんだね、何かあるのかい?」
竜騎士「ちょっと人生がかかってるような途中です」
オッサン「お、重いね…」
竜騎士「それで、何か用事ですか?」
オッサン「その伐採してる木、どうするんだい?」
竜騎士「…一応、売れるものなら売ろうかなとか思ったりしてます」
オッサン「ふむ、軍人さんが木を売る…?」
竜騎士「はは…ちょっと色々ありまして…」
オッサン「訳有りっぽいね。近くに家があるから、良かったら話を聞きたいんだけど」
竜騎士「えと…その…ですね」
オッサン「はは、俺は怪しいもんじゃないよ。この近くで鍛冶場をやってる、スミスってもんだ」
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――――【スミスの鍛冶工房】
スミス「…なるほど。そりゃ災難だったね」
竜騎士「本当に…」
スミス「ん~…なるほど…」ブツブツ
竜騎士「?」
スミス「じゃあさ、良かったらなんだけど、その"木"、売ってくれないかな」
竜騎士「!」
スミス「鍛冶で火を炊くのに沢山使うんだよね…、ここの経営は俺一人だから、つらくてさ」
竜騎士「願ってもない話です!」
スミス「集まる度に、渡してくれればその量に応じてゴールドを支払うよ」
竜騎士「わかりました!」
スミス「ただ、あまり高値じゃ厳しいけどね」ハハハ
竜騎士「いえいえ、助かります!」
スミス「30キロ、2千ゴールドでどうだろう?これでも相場より少し高いくらいなんだけどな」
竜騎士「分かりました、ぜひお願いします」ペコッ
スミス「うん、ありがとう」
女武道家「30キロといえば…どのくらいですか…?」
スミス「あそこのストーブの脇にある蒔が、大体25キロだね」
女武道家「た、沢山なんですね…」
竜騎士「木以外にも、必要なものとかあります?」
スミス「ふむ…、基本的には木材だけでも充分だけど、もし鉄鋼やらレアメタルなんか見つけたら、買うよ」
竜騎士「鉱石ですか…」
スミス「ここからしばらく歩いた所に、洞窟があるのは知ってるかい?」
竜騎士「あー…はい」
スミス「あそこはレアメタルやら、鉱石やらよく出た鉱石場だったんだけどねー…」
竜騎士「天然洞窟じゃないんですか?」
スミス「もちろん天然さ。そこに鉱夫が入って、よく稼いでたんだけど…」
竜騎士「ふむ…」
スミス「魔物が出現して以来、誰も足を踏み入れてないんだ。もしかしたら、まだ鉱石が眠ってるかもしれないよ」
竜騎士「なるほど。それは面白い…」
女武道家「は…入るんですか…?」
竜騎士「さすがに、鉱物掘るようなモノはまだないからなぁ。そのうち、余裕が出来たら行ってみよう」
スミス「はは、楽しみにしているよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スミス「それじゃ、また」
竜騎士「はい、お茶までご馳走になって…ありがとうございました」
女武道家「ありがとうございました」ペコッ
ガチャッ…バタンッ
竜騎士「いやー良い情報貰ったし、なんとか収入は確保できそうだ」
女武道家「木を切るだけなら、この辺なら私も出来そうですしね」
竜騎士「今日は切れるだけ、切っておこう」
女武道家「はいっ!」
トコトコ…
…カーン…カーン…カーン…
竜騎士「っしょ…」ブゥンッ
女武道家「…よいしょーっ!」ブンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…カァ…カァ…
竜騎士「ふぅ~…」
女武道家「もう…夕方、です…ね」フゥ
竜騎士「深部まではまだ遠いけど、それなりに整備できた…かな。君、フラフラじゃないか」
女武道家「はぁ~そりゃそうですよ…、木も結構貯まりましたね」ゼェゼェ
…トコトコ
スミス「おやおや、ずいぶん切ったなぁ」
竜騎士「あ、スミスさん」
女武道家「どうですか!」エッヘン
竜騎士「ほとんど俺だけどね…」
スミス「この数だと…、目視での計りでもいいかな?」
竜騎士「えぇ、いいですよ」
スミス「えーと…3万ゴールドでいいかな…」
竜騎士「そんなに…ありますかね?」
スミス「まあ、オマケだよ。これからよろしくねっていう感じで」ハハハ
竜騎士「ありがとうございます!」
スミス「はは、そこまで喜ばなくても。それじゃ、はいっ」
スッ
竜騎士「はい、確かに3万ゴールド受け取りました…、これ、全部運びます?」
スミス「ああ、いいよ。それは俺がやっておくから」
竜騎士「そうですか、あっちは相当疲れてるようで、休ませたかったので…お言葉に甘えますね」チラッ
女武道家「」
スミス「はは、了解了解」
竜騎士「それでは、失礼します」ペコッ
スミス「はいよ、またな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ドサッ
女武道家「体中が…ガタガタです…。後は寝るだけー…」
竜騎士「あれ式で情けない…。本当に戦士か!」
女武道家「確かに戦士ですけど、木こりじゃないんです!」
竜騎士「ご飯も食ったし、風呂も入った。どうだ、体を使った1日は」
女武道家「ご飯はおいしかったし、お風呂も体中にバチバチ来ました」
竜騎士「そうだろうな。悪いもんじゃないだろ?」
女武道家「まぁそうですけど…」
竜騎士「木材の収入は、あくまでもオマケ程度だなー…。明日から、少しずつ深部に入って魔物を探さないとな」
女武道家「魔物ですか…」
竜騎士「皮が売れる魔物とかだといいんだけどなー」
女武道家「倒しても意味のない魔物とかいるんですか?」
竜騎士「魔物の種類も、アンデット、精霊、巨人、幻獣、悪魔…とにかく沢山いるわけで」
女武道家「ふむふむ」
竜騎士「例えば、ゴブリン。あいつらは、知性が高いから武器や防具を作ったりするだろう?」
女武道家「そうですね」
竜騎士「ゴブリン自体は意味ないが、そういう武器防具は売れる場合がある。本当は、アウルベアなんかいると…助かるんだけどな」
女武道家「なるほど…って、アウルベア?」
竜騎士「まあいわゆる熊の魔物だ。肉は売れるし、皮は高値で取引されるからな。無駄がない」
女武道家「なるほどー…森だし、いそうですよね」
竜騎士「いるといいんだけどな」ハァ
女武道家「そういう売れるもので、これがあれば一発で解決!とかあるんですか?」
竜騎士「そりゃやっぱり、竜の素材だろう」
女武道家「竜!?」
竜騎士「爪からウロコ…眼まで全身すべて、最高級品…いや、究極の素材といえるな」
女武道家「へぇぇ…」
竜騎士「まあ討伐にはそれなりの人数、装備がいるし…、失敗は死を意味するくらい最悪な相手だ」
女武道家「怖いですね…」
竜騎士「だが、討伐に成功すれば一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入る」
女武道家「そんなのに挑戦する人たちがいるんですねぇ。バカみたい」
竜騎士「…バカだと!?」
女武道家「…」
竜騎士「…」
女武道家「まさか…」
竜騎士「…竜の騎士として、軍の討伐クエストで向かったことはある。失敗したけどな」ハハ
女武道家「まさか、竜騎士さんは幽霊じゃ!?」
竜騎士「生きてるっつーの!」
女武道家「でもさっき、失敗は死を意味するって…」
竜騎士「…仲間に守られたおかげで、命からがら帰還したんだよ」
女武道家「…」
竜騎士「ま、後遺症やら大きなキズがなかったのが幸いだった」
女武道家「ほぇー…」
ボーン…ボーン…
竜騎士「もう10時か…、今日は疲れただろうし、早く寝とくか…」フワァ
女武道家「そうですね…」
竜騎士「明日からは本格的に探索やら開始するぞ。まずは森の深部に行く」
女武道家「はいっ…怖いですが」
竜騎士「何事も体験だ。俺がついてる限りは、大丈夫だろうしな」
女武道家「頼りにしてますよ…頼りにせざるをえませんけどっ!」
竜騎士「おうおう、んじゃ…」
女武道家「おやすみなさい~です」
【8月10日終了時点での収支】
■収入
・木材販売3万ゴールド
■支出
・食事代(雑費含め)6万ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド
■収支合計
・マイナス23万ゴールド
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・森の深部】
…バサッ…バサッ…
女武道家「ここから先が、深部と呼ばれる所になります…けど…」
竜騎士「へー、鬱蒼としてるな」
バサバサッ…ギャーッ!!ギャーッ!!
女武道家「!」ビクッ
竜騎士「鳥だよ鳥。んじゃ、行きますか」
女武道家「ほほ、本当に行くんですかぁ…」
竜騎士「お前は、森を探索する道と、クビになる道、どっちがいいんだ!」
女武道家「行きますか」キリッ
竜騎士「…素直でよろしい」
女武道家「一応、武器つけておきますね」スチャッ
竜騎士「うむ。何があるか分からないからな」
…バサッ…バサッ…ガサガサ…
竜騎士「歩きにくいな」
女武道家「太陽が見えない…」
竜騎士「深い森って、こういう事をいうんだろうな」
女武道家「…深部ですし?」
竜騎士「そういうことじゃないから」
女武道家「?」
竜騎士「この辺の木とか、いいモノだったら売れるんだけどなー」
女武道家「…スミスさんにですか?」
竜騎士「違う違う。木も、種類が沢山あって、貴重な木材とかは高値で取引されるんだ」
女武道家「あぁ…なるほど…」
竜騎士「ま、俺に目利きできるわけじゃないんだがな」
女武道家「商人さんとかいたら、これが素晴らしい!とか言うんでしょうね~
竜騎士「そんなことより…魔物やーい。何かいないか~」
女武道家「変なの出てきたらどうするんですかぁ」ビクビク
竜騎士「気配はするんだけどなー…」
女武道家「な、なんのですかっ」ビクッ
竜騎士「何かこう…いる…感じ…」
女武道家「う~っ…」
…ガサガサッ!!!
女武道家「ひっ!」
竜騎士「おっ?」
…ズサッ!!
アーヴァンク『…キュイ』
女武道家「…」
竜騎士「あ…アーヴァンクか…」
女武道家「きゃーっ!なんですかアレ!可愛い!」
竜騎士「ビーパーに似てる魔獣だ。害っていう害はないんだ…が…」
女武道家「が…?」
アーヴァンク『ギュイッ!』
…タァンッ…ガシッ!!ガリガリッ!!
女武道家「!」
竜騎士「いてて…何でかは知らんが、こうやって男ばっかり攻撃してくるから面倒なんだ。力はないがな」グイッッ
アーヴァンク『キュ…キュキュ…』ブルブル
女武道家「ちょ、そんな強く掴んでイジめないでくださいよ!離してあげて下さい!」
竜騎士「一応、こいつの皮と肉は売れるんだが」チラッ
女武道家「だめですーっ!こんな可愛い子を…食べるなんて…」
竜騎士「あのな…」
アーヴァンク『キュイッ!』
ゲシッ!!
竜騎士「いてっ!」
…タタタタタッ…ピョンッ
女武道家「!」
…ダキッ
女武道家「え、えっ?」
竜騎士「おーいてぇ…、そしてそいつは何故か女性が大好きでな。そして、女性に抱きついたアーヴァンクは…」
女武道家「あ…」
アーヴァンク『…』スヤッ
竜騎士「寝る」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
トコトコ…
女武道家「はーあ、ペットにでもすればよかったなぁ」
竜騎士「売れるのだったのに…、逃がしやがって」
女武道家「ダメです!愛玩動物は殺しちゃいけません!」
竜騎士「だがな…」
女武道家「もっと害悪なものが出たら倒してください!熊とか、猪とか!」
竜騎士「そりゃ倒すけどよ」
女武道家「…」
竜騎士「アーヴァンクが消えてから、めっきり気配がない。ただ深い森って感じだな」ハァ
女武道家「ここまで深かったら、何かいそうですけどねぇ」
竜騎士「だから、アーヴァンクが…」
女武道家「…」
竜騎士「冗談だって!」
トコトコ…ガサガサ…トコトコ…
女武道家「ん…あれ、何ですか?」
竜騎士「…あー、ウィスプなんかもいるのか…」
女武道家「ウィスプ…精霊ですよね?」
竜騎士「…ここから先は行かない方がいいな…戻るぞ」
女武道家「え?」
竜騎士「ウィスプ自体は害がないが、それ以上は"危険"の印になる」
女武道家「危険?」
竜騎士「…ま、いいよ。とりあえずここで一区切りだ。ウィスプがいるとなると…ふむ…」
女武道家「?」
竜騎士「…まあいい、とりあえず別の道を探すぞ」
タッタッタ…
女武道家「あ、待ってくださいよー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
竜騎士「…ふーむ」
女武道家「竜騎士さん」
竜騎士「ん?」
女武道家「何でさっき、ウィスプから離れたんですか?危険が危ない?」
竜騎士「女武道家」
女武道家「はい?」
竜騎士「君と話すと、頭痛が痛いよ」
女武道家「だ、大丈夫ですか!?」
竜騎士「…はは…冗談だよ…冗談…」ハァ
女武道家「で、ウィスプから離れたのは何でですか?」
竜騎士「…まぁ、ウィスプの正体はよく分かってないんだが…」
女武道家「へぇ」
竜騎士「一部だと、死後の魂だとか、妖精だとか色々ある」
女武道家「ひいっ!」
竜騎士「…あいつらに着いてって、悲惨な目に合ったという話は少なくないからな」
女武道家「そうだったんですね」
竜騎士「ま、逆にいえば"何かある"ってことなのかもしれん」
女武道家「!」
竜騎士「…やっぱ戻って行ってみるか?」
女武道家「…」ブンブンブン
竜騎士「全力拒否すぎるだろ」
女武道家「…」ブンブンブン
竜騎士「わかったわかった!」
女武道家「…」ホッ
竜騎士「…とりあえず、こっち側は何もないみたいだし…戻るか…」
女武道家「はいっ」
竜騎士「まだ時間はあるし、帰りに木でも切って、スミスさんに届けてからな」
女武道家「は…はい…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】
…コンコン
竜騎士「スミスさーん」
ガチャッ
スミス「お、竜騎士くん」
竜騎士「今日も切ったので、運んできました」
スミス「わざわざ運んでくれたのか…ありがとう助かるよ」
竜騎士「いえいえ」
スミス「えーと…大体1万ゴールド…かな。いいかな?」
竜騎士「お願いします」
スミス「きつい割りに安いから、もう来ないかと思ってたけど、本当に助かるよ」
竜騎士「そりゃ本気ですからね…」
スミス「今日はどこかへ行ってきたのかい?」
竜騎士「あ、深部のほうへ。まぁ…収穫はなかったんですけど」
スミス「ふーむ…やっぱり、この木材買取だけじゃまともな収入にならないだろう?」
竜騎士「正直に言うと…」
スミス「俺がもっと依頼らしい依頼を出せればいいんだけどね」
竜騎士「いえいえ、伐採だけでお金をもらえるなんて…それだけでも充分ですよ」
スミス「ふむ…」
竜騎士「…」
スミス「竜騎士くんは、やれるようなことならやる覚悟はあるかい?」
竜騎士「できる範囲なら、何でもやろうとは思います」
女武道家「えっ」
スミス「んじゃー…ちょっと、明日またお昼頃に来てくれる?」
竜騎士「は、はぁ…?分かりました」
スミス「ちょっと…依頼を頼めそうな人がいて、紹介してあげるよ」
竜騎士「それは助かります…が、なぜここまでしてくれるんですか?」
スミス「なぁに、ちょっとした人助けをして、いい気分に浸ってるだけさ。気にするんじゃない」
竜騎士「…ありがとうございます」ペコッ
スミス「それじゃ、また明日」
竜騎士「はい」
女武道家「また明日です」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】
竜騎士「うーむ…」トントン
女武道家「どうしたんですか?」
竜騎士「木材の取引で4万ゴールドの利益を生んだが…」
女武道家「いいペースですね?」
竜騎士「今の時点ですら、今月に君が食事代や雑費に使った6万ゴールドには及ばないわけで…」
女武道家「木だけ毎日切ってれば、月収支は浮くんじゃないですか?」
竜騎士「君は、毎日、あの量を伐採し続けられるか?木だって無限じゃないしな」
女武道家「そうですね…」
竜騎士「それと、月末に20万ゴールドの土地代もやってくる」
女武道家「今月は厳しいとしても、来月からは6万ゴールドで多少浮くのでは?」
竜騎士「…食事代、維持費、雑費で6万ゴールドなんかすぐ吹き飛ぶ。むしろマイナスだ」
女武道家「安く済ます方法を考えないといけませんねぇ…」
竜騎士「とはいえ、人よりきつい仕事をするからには、それなりの食事がないと倒れる可能性だってある」
女武道家「…」
竜騎士「最低でも抜けるのは、30万ゴールドと見積もったほうがいいな」
女武道家「私たちの給料はどうなるんでしょう?」
竜騎士「歩合制になったといってたな。軍としての活動報告もしっかりして、稼げってことだ」
女武道家「うーん…」
竜騎士「俺の貯蓄から出してもいいと考えたが、このペースではすぐ剥がれるし、大体…」
女武道家「大体?」
竜騎士「お前の分の面倒を見るのに、何万も月抜ける計算になるんだよ!」
女武道家「サービスで…♪」
竜騎士「その精神、羨ましくなるよ…。ま、それと話は違うんだけどな」
女武道家「?」
竜騎士「軍での"活動収支"が実質の評価に繋がる部分がある。それを個人の貯蓄から出したって意味がないだろう」
女武道家「なるほど」
竜騎士「食事代が足りないので、個人から出しました、なんて言ったら現状じゃ一発でアウトだぞ」
女武道家「あくまでも、軍の支部としての結果を出さないといけないんですね」
竜騎士「まー…とにかく"お金"の儲けを報告するのが一番早い。目標額は…」
女武道家「目標額は…?」
竜騎士「月末までに最低で500万…かな」
女武道家「ごっ…500…!?」
竜騎士「支部の一般的な金額は700万から1000万オーバーだ。これでもまだ安いほうだぞ」
女武道家「でも、500万なんてどうすれば…!」
竜騎士「だよなぁ…。土地代ですら危ないっていうのに」
女武道家「うぅぅ…」
竜騎士「とりあえず…」
女武道家「とりあえず?」
竜騎士「…一般市民を頼るのはどうかと思うが、スミスさんの明日の話、期待しておこう」ハァ
女武道家「そうですね…」
竜騎士「よし、それじゃ今日は寝よう。明日は少しだけ早めに行くぞ」
女武道家「少し早く?」
竜騎士「こういうのは少しだけ早く行くのがマナーなんだよ!」
女武道家「は、はいっ!」
【8月11日終了時点での収支】
■収入
・木材販売4万ゴールド
■支出
・食事代6万(雑費含め)ゴールド
・土地代(月末支払い)20万ゴールド
■収支合計
・マイナス22万ゴールド
■月末までの目標金額
・500万ゴールドまで、後522万ゴールド
【中編】に続きます
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」【中編】