436 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 12:54:03.60 7/8fagvUo 1/59



  ――幕間 もうすぐ春ですね



元スレ
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」~その6
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333982113/

※関連記事
【本編シリーズ】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 【前編】 【後編】 【おまけ短編集】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その2号室 【前編】 【後編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その3号室 【本編】 【番外編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その4号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その5号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その6号室 【前編】 【後編】 【幕間】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その7号室
【番外編】
絹旗「……超暑いです」白井「沖縄ですし」 【前編】 【後編】
【アフター】(当SSシリーズ)
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」
#0 プロローグ
#1 とある秋風の休日模様
#2 子どもができたら名前を考えないとね
#3 絹旗・白井のあの人はいま!
幕間1 婚后さん帰国の日&超番外編
#4 トライアングル△トーク
#5 新約・温泉に行こう
#6 きぬくろ七番勝負!(前編)
#6 きぬくろ七番勝負!(後編)
#7 はっちゃけ年末!
超番外編2&3
#8 事件ですの!(前編)
#8 事件ですの!(後編)
幕間2 黒子、退院す
#9 甘々と苦々、どちらがお好み?
#10 きぬ散歩

※注記
『絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」』は2013年10月時点で未完結です。

437 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 12:54:55.93 7/8fagvUo 2/59



~2月下旬 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~


ショチトル 「」ゴシゴシ

ショチトル 「こんなものか」フー

ショチトル 「……休憩しよう」

ショチトル (それにしても、この状況ってマスターにバレたらマズイかな)

ショチトル (休業中なのをいいことに)

ショチトル (気がつけば、自分の秘密基地のようにここを使っちゃってた)

ショチトル (……だって居心地いいんだもん。静かだし、本を読むには実は丁度いい)

ショチトル (そ、それに、ごくごくたまに電話もかかってくるから電話番もしなきゃいけないし)

ショチトル (あ、電話と言えば)



 *** 回想 自室にて ***


ショチトル 「では、3/1から再開なのか?」

番外個体 『うん。ホント言うと、もうちょい早い段階でもよかったんだけどね』

ショチトル 「遅らせたということか? 何か不都合でも?」


438 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 12:56:08.73 7/8fagvUo 3/59


番外個体 『キリがいいじゃん。3月初日からですよ、って言ったほうがさ』

ショチトル 「……分からなくはないが」

番外個体 『そういうワケなんで、心の準備だけしといてね』

ショチトル 「心だけでいいのか? 他に準備しておくことは?」

番外個体 『んー、ないかなー。食べもんとかは当日の朝に全部届くようにしてもらったし。それに』

ショチトル 「それに?」

番外個体 『週イチペースでわざわざ掃除してくれてるんでしょ? だから平気かなーって』

ショチトル (週イチどころかほぼ毎日行っちゃってるけど)

番外個体 『あ、そうそう。一つあった』

ショチトル 「なんだ?」

番外個体 『バイトが一人増えるよ』

ショチトル 「は?」

番外個体 『私も動けるようになったっつっても、完全元通りとはいかないし。
       よかったらサポートにでも雇ってやってくれませんか? って紹介された人がいたから』

ショチトル 「その人を雇った、と」

番外個体 『そゆこと。だから、貴女を3/1付でフロアチーフに』

ショチトル 「時給は上がるのか?」


439 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 12:57:09.07 7/8fagvUo 4/59


番外個体 『ううん』

ショチトル 「だったらいい」

番外個体 『相変わらずクールだなぁ』

ソチトル 「で、どんな人なんだ?」

番外個体 『ひとまず前日の2/29に来てもらえるから。そのときに私も行くよ』

ショチトル 「分かった。待ってる」

番外個体 『はーい、じゃーねー』


 *** 回想 ここまで ***



ショチトル 「増える、のか」

ショチトル (ということは、私が先輩?)

ショチトル (あれこれ教えたりとか、面倒みたりとかしなきゃいけないのか?)

ショチトル (……"よろしくお願いします、先輩"とか言われたら)

ショチトル (想像しただけで緊張してきた)


 [[電話]]<ジリリリリン



440 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 12:58:27.15 7/8fagvUo 5/59


ショチトル 「……珍しいな」カチャ

ショチトル 「はい、もしもし」

?? 『む……そちらはカフェであっているか?』

ショチトル (なんだいきなり?)

ショチトル 「今は休業中だが、カフェと言えばカフェだ」

?? 『休業?』

ショチトル 「店主が怪我をして、作業できる状態ではないので」

?? 『怪我だと? 程度は?』

ショチトル 「左手首と肋骨の骨折を、って」

ショチトル (いけない、誰かも分からない相手に喋りすぎた!)

ショチトル 「……失礼だが、貴方は?」

?? 『これは失礼した。そちらの店主の古い知り合いである』

ショチトル 「そうか。マスターに用事があるならば、2/29にかけてくれるといい。その日はいる筈だ」

?? 『了解した。時に、貴殿は従業員であるか』

ショチトル 「あ、ああ」

?? 『ふむ。丁寧な対応、感謝する。それでは』


441 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 12:59:38.49 7/8fagvUo 6/59


ショチトル 「……切れちゃった。誰だったんだ?」

ショチトル 「マスターには伝えておくか」



~翌日 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~


番外個体 「電話が?」

ショチトル 「ああ」

番外個体 「誰から?」

ショチトル 「……そういえば、名前を聞いていなかった」

番外個体 「まー、いいよ。用事があるなら向こうからかけてくるでしょ」

ショチトル 「だといいのだが……それで今日は」

番外個体 「うん、来てくれるよ。これでまた私が楽できるようになるね」

ショチトル 「今からこんなことを言うのもおかしいが、その人は大丈夫なのか?」

番外個体 「大丈夫じゃない? ファミレスでバイトしたこともあるって言ってたし」

ショチトル 「そうか」

番外個体 「あ、でね。その人もしかしたらあなたの」


442 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:00:53.30 7/8fagvUo 7/59



<カランカラン♪


トチトリ 「おはようございます」

番外個体 「知ってる人かも、って来たか」

ショチトル 「」ズコー

トチトリ 「久しぶりだな、小娘」

ショチトル 「なっ、ななななな、なー」

番外個体 「あ、やっぱり知り合いだったんだ」

ショチトル 「マ、マスター!? 紹介されたと言っていたな!? まさか、紹介したのって」

トチ個体 「「お兄ちゃんだよ」」

ショチトル 「」

番外個体 「とりあえず、明日からはよろしくねん」

トチトリ 「ああ、急なお願いにも関わらず受け入れてもらえて感謝しているよ」

番外個体 「そりゃお兄ちゃんから頼まれたことだし。無碍にゃできないよ」

トチトリ 「よかったな、ショチトル。お前のお兄ちゃんの評判は中々だぞ」

ショチトル 「……今までいったい何をしていたんだ? 私よりもかなり先に退院していた筈だが」


443 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:02:30.46 7/8fagvUo 8/59


トチトリ 「お前と同じだよ。先生の粋な計らいで学園都市に留まっている。検査や経過観察もあるからな」

ショチトル 「おに……あの男は何も言っていなかったぞ?」

トチトル 「こちらはこちらでどうにかすると言っておいたからさ。あまり"お兄ちゃん♪"に頼りすぎると
      どこぞの小娘が嫉妬の炎で焼け死んでしまうからな」ニヨニヨ

ショチトル 「」プルプル

番外個体 「ショチトルはお兄ちゃんっ子だから」

トチトル 「ブラコンと言うのだろう?」

トチ個体 「「こやつめ、ハハハ」」

ショチトル (私、やっていけるの……?)

 :
 :
 :

番外個体 「仕事の説明は以上」

トチトリ 「すごいな。5分で終わってしまうなんて」

ショチトル 「事実、それほど複雑なことはない」

番外個体 「というかね、実際やって覚えた方が早いんだよ、こういうのは」

ショチトル 「それはあるな」ウン

トチトリ 「身体で覚えろ、ということだな。話が早くて助かるね」


444 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:03:44.43 7/8fagvUo 9/59



~その頃 第18学区 長点上機学園~


美琴 「ぷっはー!」

婚后 「」クピクピ

美琴 「この天気のいい昼休みに一気飲みするやしの実サイダーの美味しさってないわね」

婚后 (この方はきっと数年後には酒豪になってますわ)

美琴 「……はー」コキッ

婚后 「いい音が鳴りましたわね」

美琴 「最近ちょっと肩こりがね」

婚后 「……それほど育っておられるようには見えませんが」

美琴 「違うわよ! 婚后さんが年中悩まされてる肩こりとは原因が違うの! 悪かったわね!」

婚后 「いえ、あの、謝らなくても」

美琴 「大体さー、私の年齢だってあの子が生まれた頃に追いついたのに、なんでここはこのままなのよ」ペタシ

婚后 「……」

美琴 「絶対なんかズルしてるわ。そうに違いない。今度問い詰めてやるんだから」

婚后 「あ、あの、それで肩こりの原因に心当たりは」


445 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:05:15.78 7/8fagvUo 10/59


美琴 「あー……今年、というか去年末ぐらいからかなりの時間勉強してたから」

婚后 「御坂さんが? 勉強?」

美琴 「その言い方だと私が勉強嫌いみたいじゃない。……好きってわけでもないけど」

婚后 「それにしても、どうして」

美琴 「私じゃなくて。今年受験するヤツのね、家庭教師」

婚后 「あぁ、それなら合点がいきますわね」

美琴 「ホント、本人のやる気の割に頭の出来が悪くて。大変だったわ」

婚后 「ご苦労ですこと」

美琴 「でも結果は出せたからね。ちゃんと卒業も大学も決まって」

婚后 「大学ぅ!?」

美琴 「……ど、どうしたの?」

婚后 「も、申し訳ございません。受験と聞いて、勝手に高校受験と脳内補完を……」

美琴 「ゴメン、言葉不足だったわ。大学よ、大学」

婚后 (確かに御坂さんなら、そこらの大学を今からでも受けれる学力をお持ちですが……)

美琴 「私ともう一人、文系分野にすっごい強い子と二人体制でみっちり教え込んでね」

婚后 「それは大変でしたわね」


446 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:06:30.78 7/8fagvUo 11/59


美琴 「大変だったわよ。一時期、受験どころか卒業すら危ぶまれたんだから」

婚后 「そこまで? どのようなお人なのですか」

美琴 「そうね……とにかく危険なことでも迷わず頭を突っ込むし、自分がケガするのも顧みないし」

婚后 「……」

美琴 「困ってる人がいたら、それが悪人だろうと放っておけない性格で」

婚后 「……」

美琴 「でも基本バカで、すぐに女の子と仲良くなるし、バカだし、ツンツンだし」

婚后 「まあ、いい人だということは伝わりました」

美琴 「い、いい人って……こっ、こ、婚后さんも気を付けて! アイツ女の子だろうと迷わず顔面殴るから!」

婚后 「御坂さんも殴られたのですか?」

美琴 「私は、まだ……」

婚后 (まだ?)

美琴 「も、もう、そんなところよ」

婚后 「では、この話はこれぐらいで……ところで、どちらの大学に」

美琴 「なんて言ったかしら……そこは私、口出してないのよね」

婚后 「あら、そうなのですか」


447 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:07:44.58 7/8fagvUo 12/59


美琴 「ゴールを決めるのは向こうよ。私はそこに向かうサポートをしただけだし」

婚后 「それもそうですわね」

美琴 「確か、担任の先生と相当話して決めたって言ってたわね」

婚后 「進路相談ということですわね」

美琴 「うん。色々悩んで、結局教育者を目指すことにしたとか」

婚后 「先生とかですか?」

美琴 「あ、思い出した! それで教育関係者の育成に強い大学に行くことにしたんだった」

婚后 (? どこかで聞いたような)

美琴 「"落第防止"とか向いてるかもしれませんねー、って担任の先生に言われたらしいわよ」

婚后 「"落第防止"? となると、難しい役目ですわね。勉強と心のケアを両立させなければいけませんから」

美琴 「うーん、でもね、向いてるんじゃないかってのは私も思うのよね」

婚后 「教えるのが得意なのですか?」

美琴 「そうじゃないけど……ひねた子とか相手にするの得意そうだからさ」

婚后 「まっすぐなお人なのですね」

美琴 「頭にバカがつくぐらいね」ケラケラ


448 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:08:40.07 7/8fagvUo 13/59


婚后 「では今は充電期間といったところですわね」

美琴 「そうね。あ、でも今日は」

婚后 「?」

美琴 「入学前説明会かなんかで、キャンパスに行ってるハズ」

婚后 「となりますと、一足早いデビューになりますわね」

美琴 「ちゃんと辿り着けてるといいんだけど……」

婚后 「小さい子供ではないのですから」

美琴 「ちょこっと不幸体質だからねー……乗ったバスのタイヤが4つパンクするとか」

婚后 「え……」

美琴 「交通事故で大規模渋滞とか、電気トラブルで地下鉄停止とか出くわすかもしれないから」

婚后 「そこまでいくと、周囲を巻き込むのでは……」

美琴 「ま、まあ、ほら、そこまでは滅多にないから」

婚后 「滅多にない、ということはイコールたまにはあるということですわよ」

美琴 「ははは、大丈夫……だと思う」

婚后 「だと良いのですが」


449 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:09:42.32 7/8fagvUo 14/59



~その頃 第5学区 教育関係者の育成に強い大学~


  ヒュンッ


滝壺 「到着っ」スタッ

結標 「……」

滝壺 「お疲れ様。むすじめがいて助かったよ」ポンポン

結標 「ここまで連続で転移したのは久しぶりよ……」フー

滝壺 「びっくりしたよね。なんで今日に限って」

結標 「交通機関がどこもかしこもトラブってるってどういうことよ」

滝壺 「おかげでタクシーも大儲け」

結標 「タクシー乗り場に、金曜日の夜中なみの列ができてたものね」

滝壺 「でも道路も渋滞してたね」

結標 「あれじゃタクシーも怪しいわ……」

滝壺 「こういうときのむすじめだよね」

結標 「褒められてるんだかなんだか」

滝壺 「さてと、説明会の会場ってどっちかな」


450 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:10:50.99 7/8fagvUo 15/59



<ドドドドドド


滝壺 「?」

結標 「なに?」

滝壺 「誰かすごい勢いで走ってきてる」

結標 「誰かって」


<うおおおおお!!


結標 (なんかどっかで見たような……)

滝壺 (あ、あの人ってもしかして)

削板 「着いたーー! 交通機関のトラブルなんぞで俺を止められてたまるかぁ!」ドン

結標 (うるさい……)

滝壺 「ねえ」

削板 「つかぬことを伺うが、説明会の会場はどちらだ!」

滝壺 「もしかして、第7位さん?」

削板 「急いでいたもので、案内書を忘れてしまってな!」

滝壺 「きぬはたから聞いてた通りの人だ」


451 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:12:13.03 7/8fagvUo 16/59


結標 「第7位って、超能力者の?」

滝壺 「うん、前にきぬはたとしらいが闘って負けたんだって」

結標 「あの子たち二人がかりでも適わなかったの? こいつに?」

削板 「おい、何の話をしてるんだ」

滝壺 「前に小学生みたいな小さい女の子二人と模擬戦やらなかった?」

削板 「……」

結標 「片方はショートヘアで、片方はツインテールなんだけど」

削板 「…………」

滝壺 「片方は体表面がなんだか固くなる能力で、片方はテレポ屋さん」

削板 「あぁ、あの二人か! よーく覚えてるぞ!」

結標 「どこがよ」

滝壺 「私たちはね、その二人の友達」

削板 「そうなのか! いや、あの二人は根性溢れる二人だったな!」

結標 「あの子たちを下したぐらいだし、そうは見えないけど超能力者なのね……」

滝壺 「私はたきつぼ」

結標 「一応名乗っておくけど、結標よ」

削板 「これはご丁寧に。俺は超能力者第7位、削板軍覇ことナンバーセブンだ!」ドパーン


452 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:13:13.53 7/8fagvUo 17/59


結標 「ちょっと、何よこの煙」ケホッ

滝壺 「おお、すごい」

結標 「で、貴方の名前はナンバーセブンさんでいいのね?」

削板 「……すまん、根性が足りなかった。削板軍覇だ」

滝壺 「ねえ、さっき説明会って言ってたけど」

削板 「おお、そうだった! 俺は説明会に来たんだった!」

結標 「ということは、貴方もこの大学に」

削板 「うむ! 俺は体育教師兼警備員となり、根性を伝道することを目標としている!」ドン

滝壺 「体育教師」

結標 「体力だけはありそうよね」

削板 「そして! ゆくゆくはこの学園都市を根性で満たし、根性都市にレベルアップを」

結標 「どう思う?」

滝壺 「目標があるのはいいことだよ」

結標 「高すぎる目標だけどね……あ、いけない!」

滝壺 「?」

結標 「時間! もうギリギリよ!」


453 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/13 13:15:02.38 7/8fagvUo 18/59


滝壺 「あ、ホントだ」

削板 「なんだ? 予定でもあるのか?」

結標 「説明会よ。貴方だってそのために来たんでしょ」

滝壺 「でもこれ見ると"任意参加"って書いてあるし」ガサッ

削板 「例え出れなかったとしても、ペナルティはなしか。根性がないな」

結標 「ここまで来て不参加だなんて、私が何のために頑張ったか分からないじゃない」

削板 「それもそうだな! よし、向かうぞ!」

結標 「貴方、場所分かってないでしょ」

削板 「」

滝壺 「第5校舎だって。行こう」

削板 「よし乗れ! 二人いっぺんに運んでやる!」

滝壺 「……それはちょっと」

結標 「結構よ。普通に急ぎなさい」

削板 「なんだ……俺の根性が足りなくて不満か?」

結標 「そうじゃないから!」

滝壺 「二人とも、早く行こうよ」


476 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:29:29.62 JMEkR++Uo 19/59



~その頃 第7学区 とある病院~


麦野 「」ウトウト


<ガチャ


19090 「……ようやく、見つけました」

19090 「また掃除とゴミの廃棄をミサカに押し付け……よくも」

19090 「……」

麦野 「」ウトウト

19090 (もしやこれって、し、仕返しのチャンスなのでは?)

19090 (そ、そうですよね、いつも貧乏くじ引かされてるミサカにも、その権利は)

19090 (……あぁぁぁぁ、でもバレたときが、バレたときがすごく怖いです!)gkbr

麦野 「」スピー

19090 「……」

19090 (やりましょう、とミサカは決意を新たにします)キリッ

19090 (ちょうどここにマジックインキが一つ)スチャ


477 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:31:07.59 JMEkR++Uo 20/59


19090 (先程まで段ボールに"可燃物"とか"業者行き"とか書いてましたからね)

19090 (さて、どうしましょう。ここは)

麦野 「」スピー

19090 (やはりスタンダードに、額に肉とでも……いえ、それはスタンダード過ぎです)

19090 (……)

19090 「」カキカキ

麦野 「んっ」ビクン

19090 「」ビクッ

麦野 「すぅ……」

19090 (お、起きたかと思いました……)ドキドキ

19090 (あと一文字で……完成です。インキは隠しておきましょう)コソコソ

麦野 「あ……?」

19090 「あっ…………みっ、み、見つけましたよ!」

麦野 「やん、見つかっちゃった」

19090 「またミサカに雑務を押し付けてあなたという人はぁ……!」プルプル

麦野 「悪かった、悪かったよ。そんな震えるほど怒らないで」

19090 (笑いを堪えているんです、とは言えません!)

麦野 「よーし、じゃ戻るとしましょうか」


478 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:33:20.55 JMEkR++Uo 21/59


 :
 :
 :

麦野 「そういえば、あの悪人ヅラは? ここのところ見てないけど」

19090 「ワーストですか? もうすぐ仕事再開するかも、ってメールは来てましたよ」

麦野 「そっか。動けるようになったっつっても、手首だからな。元通りにはならなそうだけど」

19090 「なので、バイトが増えたとも言ってました」

麦野 「ふーん。じゃ、また今度売り上げに貢献しにいってやるか」

19090 「いいですね、是非行きましょう」

麦野 「アンタ、アイツが好きだもんなぁ」ニヨニヨ

19090 「しずりんも好きですよ」

麦野 「は……え?」

19090 「そ、その……しずりんの、その悪役女子プロレスラーのような気概と腕っぷしには憧れます」

麦野 「よーしよしよし、褒めてくれたお礼にパイルドライバーしてあげる」

19090 「や、やめてください! 頭から落とされたら死にます! 死にますってば!」

麦野 「ったく、私みたいなか弱い乙女捕まえて何を言うんだか」

19090 「か弱い? 脚が細い? 乙女?」キョトン

麦野 「ホント殴ってやろうかしら……待て、二つ目はなんだ」


479 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:35:10.80 JMEkR++Uo 22/59


冥土帰し 「おぉ、キミたち。いいところに戻ってきたね?」

麦野 「なんかあるんですか?」

冥土帰し 「午後からの患者の問診を頼むよ」

19090 「了解しました」スチャ

麦野 「お、出たわね。伊達メガネ」

19090 「髪型を変えてメガネをかければ、お姉様に似てると気付かれにくいことに気付きました」フンス

麦野 「それだけで印象変わるもんね。失礼しまーす」コンコン ガチャ

青ピ 「あ、ども」

青麦 「「ひぃ!?」」

麦野 「って、アンタ人の顔見るなり"ひぃ!?"ってどういうことだコラ」

青ピ 「いやいや、そちらさんも言うとったやないか!」

19090 「お知り合いですか?」

麦野 「知らないわ、こんなヤツ」

青ピ 「え。僕は看護師さんのことよーく覚えてるで?」

麦野 「許可するから忘れなさい」

青ピ 「あぁもう、見た目通りにキツクールなところがたまらんなぁ」クネクネ

19090 「……そ、それで今日はどうされました?」


480 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:37:01.07 JMEkR++Uo 23/59


青ピ 「あ、うん、ちょいと肩に違和感を感じてて」

麦野 「野球選手みたいなこと言うのね」

19090 「原因にお心当たりは?」

青ピ 「うーん……特にないかなぁ。敢えて言うなら、小麦粉の袋をよいしょと担ぎ上げた時にコキッって鳴ってたけど」

19090 「重かったのですか?」

青ピ 「30kgはあったんちゃう?」

麦野 「どう考えてもそれだろ」

19090 「場合によってはレントゲンでしょうか」カキカキ

麦野 「運が悪ければ折れてるかもしれないしね」

青ピ 「ええ? そないな簡単に折れるん?」

麦野 「鎖骨なんかは折れやすいから」

青ピ 「鎖骨もええね! 女の子がお風呂入ってるときに、あの窪んだところに溜まったお湯を飲ませてもらえるなら」

麦野 「ねえ、こいつ頭も診てもらった方がいいんじゃない?」

19090 「追記しておきましょう」カキカキ

青ピ 「ところで看護師サン、いっこ聞いてもええかな?」

麦野 「なに。休日の予定とか安全日とかなら聞いてもムダよ」

青ピ 「それもごっつ気になるところやけどな。おでこのそれは、なんかのおまじないなん?」

麦野 「? なんの話?」


481 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:39:10.00 JMEkR++Uo 24/59


青ピ 「縦書きで"大往生"って書いてるやん。魔除けとか?」

麦野 「ふ? え?」ペタペタ

青ピ 「あ、ハンドミラーならあるで」ゴソゴソ

麦野 「スカートの中を覗くためか、このミラーマン」

青ピ 「いやいやいや、ボクは変態だけど紳士や! んなことするワケないやん! 身だしなみチェック用や!」

麦野 「どっちでもいいわ、貸して」

青ピ 「はい、どぞ」

麦野 「…………何よ、コレ」

麦野 「オイ、テメェかぁぁぁ!! って、あれ?」

青ピ 「もう一人の看護師さんなら、さっき凄い勢いで出ていったで?」

麦野 「あの命知らずには後で制裁を下すとして……なんで誰も言ってこないのよ」フキフキ

青ピ 「そういうファッションだと思ったんちゃう?」

麦野 「ねぇよ。なんかすれ違う人間がチラチラ見てくるからおかしいと思ったんだ」フキフキ

青ピ 「そりゃ看護師さんがLEVEL5級の別嬪さんやからや」

麦野 「……アンタさ、前回もそうだったけど、ナンパするなら頭使いなさい。
    そういう軽い文句が気に食わない女もいるんだからね」フキフキ

青ピ 「おぉ、やっぱ亀の甲よりなんとやら(ズビシッ)ボク患者やで……」ヒリヒリ


482 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:41:00.06 JMEkR++Uo 25/59



~同日午後 第5学区 教育関係者の育成に強い大学~


滝壺 「楽しかったね」

結標 「色々驚かされたわ……貴方、先輩だったのね」

削板 「後輩だと言った覚えはないが」

結標 「さっきの会話の流れだと、新入生として説明会に来たように聞こえるじゃない」

削板 「それは言い方が悪かった。根性が足りなかったな」

滝壺 「アシスタントだったんだね」

結標 「ほとんど立ってるだけだったけどね」

滝壺 「でもあの質疑応答は面白かったよ」




 *** 回想 説明会の模様 ***


講師 「私からのお話は以上です。ご清聴ありがとうございました」

講師 「それでは本日はアシスタントとして生徒に来て頂いておりますので、質問のある方はどうぞ」

削板 (やっと出番か!)ムフ-


483 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:42:15.04 JMEkR++Uo 26/59


男子 「大学生活で、あると有利なものとかありますか?」

削板 「根性だ!」

女子 「大学生活は充実してますか?」

削板 「根性にあふれているぞ!」

滝壺 「好きな人はいますか?」

削板 「は? ……あ、いやー……好きというか、パートナーのような、そういう人なら一人」


 *** 回想 ここまで ***



結標 「LEVEL5だから呼ばれたのかもしれないけど、絶対人選を間違えてると思うわ」

滝壺 「そうかな? 私はよかったと思うよ」

削板 「お褒めに頂き光栄だ!」

滝壺 「さてと、これからどうしようか」

結標 「お昼食べてないしね。何か軽く食べに行く?」

滝壺 「この辺にお店ってある?」

削板 「無くはないが、それならここの食堂を使った方が早いんじゃないか?」

結標 「え? 私たちでも使えるの?」


484 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:43:19.38 JMEkR++Uo 27/59


削板 「問題なかろう。ここの関係者に違いはないからな」

滝壺 「行こう行こう」wktk

削板 「よし! 案内をしてやろう! つかまれ!」

結標 「歩けるから!」

 :
 :
 :

削板 「む、ちょっと待ってもらっていいか」

結標 「どうしたの?」

削板 「あそこに根性がないヤツがいるのでな。注入してやろうかと」

滝壺 「……あそこのベンチでぐったりしてる人?」

結標 (あら? あの人って……)

削板 「おい、そこのツンツン!」

上条 「……あ、はい、わたくしめでございましょうか」ゲッソリ

削板 「……お、おい、大丈夫か?」

上条 「いやー、少々お疲れでして」

滝壺 「何かあったの?」


485 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:44:41.17 JMEkR++Uo 28/59


上条 「今日の説明会に来たのはいいけど、交通機関があの有様で……」

削板 「あぁ、まったくだ。根性がないよな」

上条 「遅れそうだったんで猛然とダッシュしまして」

削板 「水分補給はしたか?」

上条 「悲しいことに来る途中で財布をどこかに落としてしまいまして」

削板 「おい、水分補給を侮ってはいかんぞ!」

上条 「侮ってません! お金がないんです!」ウルウル

結標 「ねえ」

上条 「?」

結標 「私の顔に見覚えある?」

上条 「…………ええと、あるようなないような」

結標 (ま、そんなもんよね)

上条 「あ、あの、もしや前にご迷惑かなにか」

結標 「ううん、それはむしろ私」

上条 「?」

結標 「ね、彼もご一緒していいかな」


486 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:45:51.69 JMEkR++Uo 29/59


滝壺 「私はいいよ」

削板 「構わんぞ!」

上条 「いやいや、先ほども申し上げた通りで、上条さんはお金が」

結標 (へー、上条っていうんだ)

結標 「いいわよ、一食分ぐらい出してあげるから」

上条 「さすがに見ず知らずの方にそこまでしてもらうのも」

結標 「見ず知らずじゃないの。貴方には借りがあるのよ」

上条 「……借り?」ハテ

削板 「おい、話がまとまったのなら行こうじゃないか。腹が減って死にそうだ!」

上条 「」<グギュルルルル

滝壺 「うん、行こう」

削板 「さて、今日の日替わりはなんだろうな」

滝壺 (ねえ)ヒソヒソ

結標 「ん?」

滝壺 (知ってる人?)ヒソヒソ

結標 (ずいぶん前にちょっとね。ひっそりと助けられたのよ)ヒソヒソ

上条 「ところで、みなさんはこちらの生徒で?」


487 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:48:04.86 JMEkR++Uo 30/59


削板 「うむ、一年の削板軍覇だ!」

結標 「私は違うわよ」

滝壺 「私も。春から一年生」

上条 「あれ? てっきり3人とも先輩になる人なのかと」

結標 「残念ね、同学年よ」クスクス

滝壺 「私とむすじめは一浪してるから間違えられたのかもね」

上条 「あ、いや、決してそういうつもりではなく」

滝壺 「私はたきつぼ」

結標 「そういえば名前言ってなかったわね。私は結標」

上条 「上条当麻と申しますです、はい」

滝壺 「同学年だから、無理して敬語とか使わなくてもいいよ」

結標 「そうそう」

上条 「え? じゃあ、まあ、いつも通りに」

結標 「そこのそいつはセンパイだけどね」

滝壺 「そぎいたセンパイだね」

削板 「先輩として、なんでも教えてやるぞ!」フンス

結標 「あら、頼もしいわね」


488 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:49:37.84 JMEkR++Uo 31/59



~その頃 第7学区 隠れ家的喫茶店(開店準備中)~


番外個体 「……冷蔵庫に飲みかけのジュースがいくつかあるんだけど、ショチトルの?」

ショチトル 「あぁ、私のだ」

番外個体 「あれ? 閉めてる間ってブレーカー落としてなかった?」

ショチトル 「」

トチトリ 「ショチトルは電化製品に弱いからな。冷蔵庫は電気で動くということを知らなかったのさ」

番外個体 「あぁ、なるほど」

ショチトル 「それぐらい知って……ない」

番外個体 「悪くなる前に飲んじゃってねー」

ショチトル (くそぅ……今に見てろ)

トチトリ 「ところでセンパイ、何か気をつけておくこととかあるか?」

ショチトル 「センパイと片仮名なのが気になるが……そうだな」チラッ

番外個体 「?」

ショチトル 「マスターは普段こそこんな感じだが、怒らせたら冗談抜きに怖いから気をつけろ」

トチトリ 「よし、そこは気をつけよう」

番外個体 「そういう話は本人がいない場でするもんだよ」


489 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:51:40.65 JMEkR++Uo 32/59


トチトリ 「本人がいる前でするのもスリリングなものさ」

番外個体 「あ、うん。分かるなー、それ。醍醐味だよね」

ショチトル 「なんの醍醐味だ!?」

番外個体 「それはさておき、お二人さんよ。私から重大発表があるよ」

ショチトル 「まさか閉店とか?」

トチトリ 「だったら私はなんのためにここに来たんだ?」

番外個体 「違う違う。療養中にこそこそ準備してたんだけどさ」ガサガサ

トチトル 「「?」」

番外個体 「じゃーん☆」ジャーン

ショチトル 「服?」

トチトリ 「もしかして制服?」

番外個体 「その通り」

ショチトル 「ひどくシンプルだな」

トチトリ 「制服だからこんなものだよ。大きなお友達が集まる店なら別だろうが」

ショチトル 「? 大きなお友達?」

トチトリ 「知らないならそれでいいんだ」


490 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:52:55.49 JMEkR++Uo 33/59


番外個体 「サイズは後で確認するとして、デザインに不満はある?」

トチトリ 「私は構わない、シンプルで好感が持てるね」

ショチトル 「白いブラウスに黒いスラックスか。ブラウスも黒やグレーならマスターのいつもの服装だな」ガサガサ

トチトリ 「それにしても、これまでは制服はなかったんだな」

ショチトル 「ああ、私服だった」

番外個体 「……節目だからね。用意するのもいいかと思ってさ」

ショチトル 「節目?」

番外個体 「前のマスターから私がここを引き継いで、そろそろ一年なんだよね」

トチトリ 「先代がいたのか」

番外個体 「うん、私だってもともとバイトだったんだもん」

ショチトル 「……なあ、私は先代のことをよく知らないのだが。どういったお人なんだ?」

番外個体 「そうだねぇ。口数が少なくて、渋くて、ガチムチで」

トチトリ 「……特徴的な人だな」

ショチトル 「顔は?」

番外個体 「顔? 精悍っていうのかな、ああいうタイプは」


<カランカラン♪



491 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:54:26.51 JMEkR++Uo 34/59


先代 「邪魔するであるぞ」

番外個体 「あ、そうそう。ちょうどこんな感じふぇぇぇぇぇ!?」ガタッ

トチトル 「「?」」

番外個体 「マスター? なんでここに?」

ショチトル 「まさか、あれが先代の?」

トチトリ 「なるほど、言われた通りの人だな」

番外個体 「……あの、その花束と果物籠は」

先代 「怪我をしたと聞いていたので、用意してきたのであるが」

番外個体 「なんでそれを?」

先代 「電話で応対して頂いた従業員殿から」

番外個体 「まさか電話って……」

ショチトル 「あの電話は貴方だったのか」

トチトリ 「これは面白い偶然だな」

番外個体 「ま、まあ、座ってくださいよ」

先代 「うむ、失礼する。存外、元気そうで安心した」

番外個体 「明日から再開しようかってところでしたからね」

先代 「そうであったか」


492 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:55:52.85 JMEkR++Uo 35/59


ショチトル (この人が初代マスター)ジー...

トチトリ (想像していたよりはいい男だな)ジー...

先代 「……何やら熱視線を感じるのであるが」

番外個体 「まあ、マスターを見るのは初めてですから」

先代 「彼女らが従業員であるか」

番外個体 「ええ」

先代 「そうか。私から言うのも差し出がましいが、これからも頑張ってほしい」

トチトル 「「は、はい」」

番外個体 「すいませんマスター、ご存知の通り今日まで休業してたんでなんも用意できないんですけど」

先代 「構わぬ、長居はしないであるからな」

ショチトル 「初代マスターは、今は何を?」

番外個体 「たしかお城で働いてるんですよね。ビデオ見ましたよ」

先代 「うむ、ウィンザー城であるな」

トチトリ (ウィンザー城……?)

先代 「時間ができたら、貴殿らも是非遊びに来てほしい」

番外個体 「行ってみたいですねぇ……ビデオで見ても、すごい綺麗でしたし」


493 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/18 00:58:03.17 JMEkR++Uo 36/59


先代 「ときに、今は開店の打ち合わせ中であったか」

番外個体 「ええ。あ、見てくださいよ。とうとうウチでも制服を導入ですよ」ホラ

先代 「ほう……」

トチトリ 「先代の眼からみて、いかがだろう」

先代 「シンプルなのは良いが、一つアクセントがあっても良いのではないか」

ショチトル 「アクセントか……」

番外個体 「なるほど。それでオリジナリティを出す、と」

トチトリ 「それはいいかもしれないな」

番外個体 「例えば?」

先代 「それはこれから考えればよかろう」

トチトリ 「んー……何か思いつくかい、センパイ」

ショチトル 「そんなすぐには」

番外個体 「エプロンつけることを前提に考えてよね」

先代 「隠れてしまっては意味を成さない」

トチトル 「「」」ウーン

番外個体 「マスターのお土産の果物、おいしいですね」シャクシャク

先代 「奮発したであるからな」

ショチトル 「あ、ズルイ!」


521 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 22:55:02.27 kJL5krWwo 37/59



~その頃 第7学区 番外通行邸~


フレ止め 「「」」ガサガサ

一方通行 「……オイ、なンでわざわざ持ち込んでまでウチでやる必要があるンだよ」

浜面 「フレメアがなー、せっかくなら一緒にがいいって主張するもんだから」

一方通行 「チッ……」

浜面 「舌打ちとかしつつもあっさり家に招き入れる一方通行くん、マジツンデレ可愛い」

一方通行 「」ゲシッ

浜面 「イテェ!?」

一方通行 「蹴るぞ」

浜面 「蹴る前に言えよ!」

一方通行 「ったくよォ……大体なンで今日なンだよ。ンなもン前日でもいいだろォが」

浜面 「ダメだろ」

一方通行 「なンでだよ」

浜面 「そりゃお前、サイズの確認とか、セット揃ってますかとか、あるだろ」

一方通行 「……」

浜面 「入学する前日になってアレがありません、やっぱり足りませんじゃ間に合わんぜ」


522 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 22:56:25.42 kJL5krWwo 38/59


一方通行 「……」ホゥ

浜面 「……え、俺なんか間違ってた?」

一方通行 「オマエ、年に一回ぐらい良いこと言うよな」

浜面 「一回!? いやいや、もっとあるでしょうよ! それに今の発言で"良いこと"レベルなの!?」

一方通行 「オマエにしちゃ上出来だ」

浜面 「お前、俺のことバカだと思ってんだろ」

一方通行 「おォ」

浜面 「チキショォォォ!」


<あ、すごい!
<ブレザーの裏地に名前の刺繍が!


浜面 「あ、そうそう。そこも間違ってないか確認しておけよ」

一方通行 「……スカート短くねェか?」

浜面 「今時の制服ならあんなもんだろうよ」

一方通行 「……」

浜面 「なんだ、心配か? 確かになー、小さい方の姐さんはあの年にしちゃ背高めだし、卒業する頃には脚もスラっと」

一方通行 「なァにガキ相手に欲情してやがンだ、浜面クンよォォォ!」カチッ

浜面 「なんでだよ褒めただけだろぉ! ちょっ、おい、危ねぇって!」


523 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 22:57:27.25 kJL5krWwo 39/59


フレメア 「ね、試しに着てみていい?」

浜面 「着とけ着とけ、サイズが大体あってるか確認しとかんといかんからな」

フレメア 「大体いいって」

打ち止め 「じゃ、早速!」

一方通行 「オイ待て」

打ち止め 「え……ミサカはダメ?」

一方通行 「そォじゃねェ。山猿が見てる前で着替えるな、何されるか分からねェぞ」

浜面 「山猿って俺か!?」

一方通行 「着替えるなら自分の部屋でやれ」

打ち止め 「はーい」トテテテ

フレメア 「私も」トテテテ


<バタン


浜面 「……前から思ってんだけど、お前って過保護だよなぁ」

一方通行 「オマエが危機意識なさすぎンだよ。KYって知ってるか?」

浜面 「おお、よく言われるぜ!」ブイ

一方通行 「……そっちじゃねェよ」ハァ


524 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 22:58:30.85 kJL5krWwo 40/59



~しばらくして~


一方通行 「やけに遅ェな」

浜面 「第2ボタンの交換でもしてんじゃねぇか?」

一方通行 「気が早すぎンだろ」


<カチャ


フレメア 「ねえ、浜面」ヒョコッ

浜面 「どうした」

フレメア 「大体ちょっと思ったんだけど、タイツって違反になるのかな?」

浜面 「違反? そんなんでキップ切られるわけないだろ」

一方通行 「アホ。校則のこと気にしてンだろ」

浜面 「あぁ、そっちか。派手な色とか網とかじゃなけりゃ大丈夫じゃないか?」


<大体大丈夫だって。
<心配しすぎちゃった。


浜面 「大丈夫だよな?」

一方通行 「知らねェよ」


525 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 22:59:58.69 kJL5krWwo 41/59


打ち止め 「着てみた!」

フレメア 「どう? 変じゃないかな?」

浜面 「いいとは思うが、いざ通うときになったら帽子はアウトだからな」

フレメア 「えー」

打ち止め 「ね、似合う?」ヒラヒラ

一方通行 「……ま、いいンじゃねェの?」

フレメア 「シロ、大体それだけ?」

浜面 「他にあんだろ? 着慣れてない感じがいいとか、白いソックスが眩しいとか、黒タイツがセクシーだとか」

一方通行 「オマエ、本当にベランダから放り投げるぞ?」

打ち止め 「でもちょっと大きいような」

フレメア 「採寸して作ってもらったのにね」

浜面 「まだ成長する年齢だからな。そこを見越して、ちょいと大きめにしてんだろ」

打ち止め 「もっと背伸びるかな」wktk

フレメア 「出るとこ出るかな」wktk

浜面 「そこは将来に期待だろ。時間が経てば勝手に成長すると思うぜ」

一方通行 「オイお前ら。どこぞの誰かさンみたいに、図体ばっか成長して頭は成長しないなンてことのねェようにしろよ」

浜面 「どこぞの誰かさんみたいに、頭脳ばっか成長してもやしにならないようにな」

フレ止め 「「はーい」」


526 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:00:49.09 kJL5krWwo 42/59



~その頃 第18学区 長点上機学園~


美琴 「はー、今日も終わった終わった!」ノビー

婚后 「終わりましたわね」

美琴 「長点上機って言ってもさ、毎日が復習ばっかで退屈よねー」

婚后 「まあ、常盤台で履修したところと範囲が被ってますから」

美琴 「しょうがないと言えばしょうがないのかもしれないけど」

婚后 「ところで、お昼休みに聞きそびれたのですが」

美琴 「何?」

婚后 「御坂さんのお弁当。あれはいったいどうして……」

美琴 「あー、それね……移動しながら話そっか」

婚后 「移動? あ、申し訳ございませんが、それは」

美琴 「?」

婚后 「この後、第7学区まで向かう用事がありますので」

美琴 「あ、ちょうどよかったじゃない」

婚后 「?」

美琴 「私もそっちに用事あるからさ」


527 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:01:55.61 kJL5krWwo 43/59


婚后 「あら、奇遇ですわね」

美琴 「じゃ、とりあえずバス停まで行きましょ」

婚后 「ええ」



~バス車内~


  ブロロロロ...


美琴 「で、なんだっけ?」

婚后 「お弁当がなぜ、ご飯とエビフライだけだったのかと思いまして」

美琴 「エビフライがね……食べても食べてもなくならないのよ」

婚后 「手からエビフライを生み出す能力者でも?」

美琴 「違う違う。そういうのじゃなくてね。友達が賞品でもらってきたのよ、エビフライ一年分」

婚后 「エビフライを?」

美琴 「この間ね、大食い大会に飛び入り参戦して、そのまま優勝しちゃって。その商品がエビフライ」

婚后 「……あの、もしやその大会のお題もエビフライだったのでは」

美琴 「え? なんでわかったの?」


528 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:03:06.04 kJL5krWwo 44/59


婚后 「その大会、わたくしは観客として観戦しておりましたので」

美琴 「じゃあ、婚后さんもあの会場にいたんだ。なんだ、知ってたら探してたのに」

婚后 「友人と一緒に来ておりましたし」

美琴 「へー。あ、もしかして、いつか見た絹旗さんとか?」

婚后 「えぇ、絹旗さんもおられましたわね」

美琴 「ますます探しておけばよかったなぁ。久しぶりに会うチャンスだったのに」

婚后 「チャンスなどいつでもこざいますでしょう」クスクス

美琴 「それもそっか。すぐお隣の学区にいるんだしね」

婚后 「それにしても気になるのですが」

美琴 「?」

婚后 「あの優勝した方なら、エビフライ一年分ぐらい軽く消費してしまうのでは」

美琴 「…………そう思うわよね。私もあの頃は、そう思ってた」フッ

婚后 (もしや聞いてはいけない話題だったのでしょうか……)

美琴 「ねえ、婚后さん」

婚后 「は、はい」

美琴 「まさか、食欲の権化たるあの子が"飽きた"なんて匙を投げる量が来るとは思ってなかったわ」

婚后 「それほどまで……?」


529 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:04:21.09 kJL5krWwo 45/59


美琴 「私も私なりに工夫してみたの。卵でとじてみたり、カレーにのせてみたり、チョコでコーティングしたり」

婚后 「エビフライのチョコフォンデュ?」

美琴 「でも、エビフライは何してもやっぱりエビフライだった」

婚后 (なんて……物憂げで遠い目をなさるのでしょう)

美琴 「結局食べないとなくならないのよね、残ったのはその揺るぎない事実だけだったわ」

婚后 「大変ですわね」

美琴 「数が少ない伊勢エビフライはさっさと食べられちゃったし」

婚后 「伊勢エビフライ!?」

美琴 「いくら婚后さんでも伊勢エビはフライにはしないでしょ?」ケラケラ

婚后 「見たことないですわ……」

美琴 「そうだ! 婚后さんもよかったら手伝ってよ!」ゴソゴソ

婚后 「今お持ちなのですか!?」

美琴 「うん、人に押しつ……おすそ分けするために」ハイ

婚后 「冷凍でしたか……では、まあ、頂戴いたします」

美琴 「お勧めの食べ方は、タルタスソースね!」

婚后 「試してみますわね」


530 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:05:24.81 kJL5krWwo 46/59



<ツギハ ダイナナガックチュウオウ


美琴 「あっ」

婚后 「着きましたわね」

美琴 「降りまーす」ポチッ



~同日 第7学区 バスターミナル~


婚后 「わたくしはここで待ち合わせですわね」

美琴 「じゃ、ここでお別れね」

婚后 「御坂さんはどちらに?」

美琴 「さっき話した二人……ええと、大学に受かったヤツとエビフライで優勝の子」

婚后 「3人で待ち合わせですか」

美琴 「うん、エビフライはもういいよって話になって、じゃ外食でもしましょうかって」

婚后 「本当に飽きておられるのですね」

美琴 「飽きるわよ、そりゃ」


531 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:06:38.94 kJL5krWwo 47/59


婚后 「……もしよろしければ、この後合流する人にも渡しておきましょうか?」

美琴 「え? いいのかな」

婚后 「絹旗さんと白井さんですわよ」

美琴 「あ、じゃお裾分け、渡しといてくれる?」ハイ

婚后 「確かに預かりました」

美琴 「時間があるから、私もう行くね。二人によろしく伝えておいて」ノシ

婚后 「ええ、ごきげんよう」


<ドサッ


婚后 「あら……?」


<いたたたた……な、なんで超中途半端に上空にテレポしてるんですか!
<急かして押したりゆすったりするから座標がズレましたの!
<もっと正確にやってくださいよ、もー。
<そもそも空間移動しなければ間に合わないような時間に起きる方が問題ですの!
<ひっ、人を超寝坊したみたいに言わないでくださいよ!お昼寝してただけじゃないですか!
<寝坊であることに変わりはございません!


婚后 「こちらも到着したようですわね」クスクス


532 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:08:15.97 kJL5krWwo 48/59



~その頃 第5学区 教育関係者の育成に強い大学~


削板 「食後のコーヒーは根性があるな!」

上条 「あるのか……?」

滝壺 「……みさわのお店には負ける」

結標 「だってあそこはコーヒーだけがウリなんだから」

滝壺 「店員さん目当てに行くお客さんもいるってきくよ」

結標 「お兄ちゃんが聞いたらどんな顔するかしらね」

削板 「それにしてもお前、見かけによらず小食じゃないか」

上条 「いや、身に着いた節約癖は中々落ちないっていうか」

滝壺 「今日の日替わり、おいしかったのに」

結標 「カロリー高そうだけどね」

削板 「カロリーなぞ気にしてたら根性あるモンは食えんぞ!」

上条 「日替わりはちょっと……」

滝壺 「えびふらい、苦手?」

上条 「好きか嫌いかで言ったら、好きなんだけどな」


533 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:09:35.61 kJL5krWwo 49/59


削板 「ともかく腹も満たしたし、そろそろ出るとするか!」

滝壺 「そうだね、いこっか」

上条 「あのお支払いの方は」

結標 「食べる前に済ませたじゃない」

上条 「重ね重ね申し訳ない」

結標 「いいわよ、気にしないで」

上条 「これで終わりもなんだから、何か困ったことがあったら何でも言ってくれな」

結標 「……」

上条 「春からは同級生なんだしな。俺にできることならどんなことでも手を貸すぜ」

結標 「じゃあ、そのときが来たらお願いするわね」

 :
 :
 :

滝壺 「これからどうする?」

結標 「そうね……随分ゆっくりしてたけど、今何時?」

削板 「15時30分だ!」

上条 「え? わああああ!!」

滝壺 「どうしたの?」


534 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:11:39.81 kJL5krWwo 50/59


上条 「いや、この後待ち合わせしてんだけど……遅刻確定だ」ガックシ

削板 「遅刻とは根性がないな。待ち合わせ場所はどこだ」

上条 「第7学区に16時でございます、はい」

結標 「今出れば十分間に合うわよ」

上条 「だから財布を落としたんだって!」

結標 「……ご、ごめん」

滝壺 「そういうことならむすじめの出番だね」フンス

結標 「ちょっとぉ!?」

削板 「お、どういうことだ?」

結標 「まあ……私、空間移動系の能力使えるから」

上条 「あー、それじゃムリだ」

滝壺 「なんで?」

上条 「俺の右手はな、異能の力を打ち消しちまうんだ。だから転移もできないんだよ」

結標 「…………ホントだ」

上条 「な?」

滝壺 「出来ないの?」

結標 「なんか分からないけど……できない」フルフル


535 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:13:23.16 kJL5krWwo 51/59


削板 「……おい、ということは、だ」

上条 「?」

削板 「俺の攻撃も防げるのか!?」

上条 「攻撃の種類にもよると思うけど、できるんじゃないか?」

削板 「種類? 念動力だ!」

上条 「だったら大丈夫だと思うぜ」

滝壺 (念動力なんだ)

削板 「よし! ならば試しに手合わせでも」

結標 「待って待って! ええと、ほら、上条くんだって時間ないんだし、また今度にしたら?」

削板 「む……それもそうか」

上条 「そうだ時間!」ウワー

滝壺 「止めちゃうんだ」

結標 「絹旗さんと白井さんでも適わないようなヤツが大学の敷地内で暴れたら、面倒な騒ぎになるじゃない」

滝壺 「たしかに」フム

結標 「で、結局貴方は自分の足で移動するしかないってことね」

上条 「そうなるよなぁ」ショボン


536 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:14:38.26 kJL5krWwo 52/59


削板 「つまりランニングだな! よし付き合うぞ!」

上条 「え、いや」

削板 「目的地は第7学区、ペースはそうだな……軽めで、3分1キロってところでいいか?」

滝壺 「3分で1キロって、相当のペースだよね」

結標 「時速にすると20km/h? 軽めとはいえないわね」

滝壺 「フルマラソンなら世界記録レベルだ」

上条 「上条さんとしてはですね、食べてすぐの運動は」

削板 「腹ごなしの運動というだろう!」グイグイ

上条 「アキレス健伸ばしてるってことはすごくやる気ってことですね!」

滝壺 「頑張って」

結標 「遠くから応援しておいてあげる」

上条 「不幸……なのか?」

削板 「よし、行くぞ!」

上条 「避けられない運命か……じゃ、二人とも、またいずれってことで」

滝壺 「これから世界記録に挑戦するかみじょうを応援してる」ノシ

結標 「死なない程度にね」


537 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:15:57.06 kJL5krWwo 53/59



<野をー越え山越えー、夕日を目ー指ーし
<どこまで走らせるつもりでせうか!?


結標 「……私たちどうする?」

滝壺 「どうしよっか」

結標 「とりあえず第7学区まで戻るとして」

滝壺 「私たちも走るべきだった?」

結標 「やだ」

滝壺 「疲れちゃうもんね。……あっ」ピンポン

結標 「?」

滝壺 「みさわのところに行ってみる?」

結標 「え? でも明日からでしょ? 今頃準備……あ、そっか」

滝壺 「差し入れもって凸してみよう」

結標 「そうね、アイツが紹介したっていうバイトがどんな子なのかも気になるし」

滝壺 「まず何か買いに行こう」

結標 「最近鯛焼き屋できたでしょ? あそこいってみない?」

滝壺 「あの白いの? うん、いいよ」

結標 「じゃ、まずは第7学区まで戻りましょ」


538 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:17:44.21 kJL5krWwo 54/59



~その頃 第7学区 隠れ家的喫茶店(準備中)~


トチトリ 「無難に行こうとすると、ネクタイかリボンだろうな」

ショチトル 「それではマスターがつけれないぞ」

トチトリ 「なぜだ?」

ショチトル 「ブラウスのボタン、いつも3つぐらいは開けてるからな」

先代 「ミサワさんは前からそのスタイルであるな」

番外個体 「いやー」

トチトリ 「ならば背中だな」

ショチトル 「背中?」

トチトリ 「エプロンをつけてもガラ空きだろう?」

ショチトル 「まあ、そうだが……」

番外個体 「背中ねぇ。"第一位上等"って縦書きででっかく刺繍してみるとか」

ショチトル 「なんの店だ?」

先代 「もっと日本らしさを前面に出して、ネオジャパネスクなデザインにしてはどうであろう」

番外個体 「ついでにアバンギャルドさもあるといいかもね」


539 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:19:15.07 kJL5krWwo 55/59


ショチトル 「……もう何を言っているのか分からない」

トチトリ 「そうだな……背中にばーんと昇り竜でも刺繍するか」

番外個体 「……なるほど、それはありかもしれない」

ショチトル 「やめてくれ。違う店になってしまう」

先代 「貸すのである」

番外個体 「お、何かアイディアでも?」

先代 「デザインとは少々違うが、裏地に水の術式を施して夏でも快適に働ける服を……」

トチトリ (ウィンザー城で働いていると聞いて、もしやと思ったが)

ショチトル (この人、魔術師なんだ)

番外個体 「術式? ええと、つまり何が起こるんです?」

先代 「こちらの住人にも分かるように説明すると、常にナノミストに包まれていると思えばよい」

番外個体 「おぉ」

ショチトル 「待ってくれ。いくらこんな店でも夏場は空調を使っているから寒いぞ」

トチトリ 「おや? 今聞き捨てならない発言をしたな?」

ショチトル 「」

番外個体 「……」

ショチトル (あぁぁ、これは、これはマズイ!)


540 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:21:07.93 kJL5krWwo 56/59


番外個体 「……マスターの上着についてるそれ、かっこいいですね」

先代 「これはダメである」

ショチトル (助かった……?)ダラダラ

番外個体 「ダメなんですか?」

先代 「エスカッシャンと言ってな、個人ではなく家柄に与えられる、由緒ある品である。
    いくらミサワさんでも、おいそれとは譲れない」

トチトリ (あれは紋章にも見えるが……)ヒソヒソ

ショチトル (何らかの意味は込められているだろう)ヒソヒソ

番外個体 「うーん、じゃしょうがないですね」

先代 「代わりと言ってはなんだが、夏でも快適に働ける服を」ゴソゴソ

ショチトル 「あの、それはやっぱり冷房ついてると寒そうなので」

先代 「切ればよい」

トチトリ 「客足が遠のく。こういう店は暑さ寒さから逃げるために来る客もいるからな」

先代 「確かに。なら仕方ないであるな」

番外個体 「なかなかまとまらないねぇ」

トチトリ 「こういうときはお偉いさんの意見を採用するものさ」

ショチトル 「ということは……第一位上等、か?」

番外個体 「……ゴメン。自分で言っといてなんなんだけど、それはどうかと思う」


541 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:22:51.56 kJL5krWwo 57/59



~そんなこんなで~


先代 「ではこれで決まりであるな」

トチトリ 「私たちは襟元に色違いのリボンだな」

ショチトル 「私青系の色がいい」

番外個体 「ちなみにヒモみたいに細いタイプのリボンね」

先代 「主張しすぎないながらも、ワンポイントになるであるな」

トチトリ 「で、マスターは。これまた細いタイプのネクタイか」

ショチトル 「シンプルに無地、と」

先代 「これからはブラウスのボタンは上まで閉めておく必要が出たか」

番外個体 「ボタンあけてネクタイゆるめてたら、だらしないですもんね。それも私らしいかもしれませんけど」

トチトリ 「私たちと違って色は決めてないけど、黒はやめてくれよ?」

ショチトル 「縁起でもないからな」

番外個体 「無難に赤にでもしておこうか」

先代 「して、現物は用意できるのであるか」

番外個体 「これから買いに行きます」

ショチトル 「粗方準備はできている。いつでも出れるぞ」


542 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:24:34.03 kJL5krWwo 58/59


先代 「ふむ、そういうことであれば私はそろそろ」

番外個体 「え、もう行っちゃうんですか?」

トチトリ 「すまないな、先代相手に大したもてなしもできず」

先代 「構わぬ。そもそも近況を聞きたかったであるからな。目的は達成された」

ショチトル 「そう言えば、元は電話だったのだな」

番外個体 「また来てくれます?」

先代 「むしろ、次はそちらが来る番である」

ショチトル 「イギリスか……行ったことないな」

トチトリ 「是非見物してみたいものだ」

番外個体 「まあ……いつかは行ってみたいですね」

先代 「学園都市の最新の航空機であれば、あっという間と聞いているが」

番外個体 「あの飛行機、あまりいい評判聞かないんですが」

先代 「手段は問わない。なんなら泳いでくればよい」

番外個体 「ムリですってば!」

トチトリ (たしかそんな術がなかったか?)ヒソヒソ

ショチトル (マスターには使えないだろう)ヒソヒソ

先代 「では失礼する、壮健にな」


543 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2012/05/23 23:26:30.55 kJL5krWwo 59/59


3人 「「「お気をつけてー」」」


<カランカラン♪


番外個体 「……びっくりしたよぉ」

ショチトル 「先代を直に見たのは初めてだった」

トチトリ 「年上好きには好まれそうなタイプだな」

番外個体 「実際そうなんだろうね。さて、私たちも」


  [[携帯電話]]<テンメイニーイードミタータカウ ソレガサイゴノヤークソク♪


トチトリ 「おいおい、マナーモードにしてないのは誰だ?」

ショチトル 「す、済まない。私だ」ワタワタ

トチトリ 「これから買い物か?」

番外個体 「そうだね、さっき話した通りの」

ショチトル 「……マスター、待ってくれ。義姉さんと滝壺さんがこちらに向かってるそうだ」

番外個体 「え、マジで? じゃあ……来るのを待って、買い物に付き合ってもらっちゃおうか」

トチトリ 「義姉さん、ね……あの男のお相手か? これは一見の価値があるな」ニヨニヨ

ショチトル 「ケンカを売るようなマネはするなよ?」

トチトリ 「心得ておくさ」

番外個体 「じゃ、待ってるとしましょうか。ニート生活も今日までなんだし、せいぜいダラけとこ」


続きます

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