――#9 甘々と苦々、どちらがお好み?
元スレ
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」~その5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1327676276/
※関連記事
【本編シリーズ】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」
【前編】
【後編】
【おまけ短編集】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その2号室
【前編】
【後編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その3号室
【本編】
【番外編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その4号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その5号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その6号室
【前編】
【後編】
【幕間】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その7号室
【番外編】
絹旗「……超暑いです」白井「沖縄ですし」
【前編】
【後編】
【アフター】(当SSシリーズ)
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」
#0 プロローグ
#1 とある秋風の休日模様
#2 子どもができたら名前を考えないとね
#3 絹旗・白井のあの人はいま!
幕間1 婚后さん帰国の日&超番外編
#4 トライアングル△トーク
#5 新約・温泉に行こう
#6 きぬくろ七番勝負!(前編)
#6 きぬくろ七番勝負!(後編)
#7 はっちゃけ年末!
超番外編2&3
#8 事件ですの!(前編)
#8 事件ですの!(後編)
幕間2 黒子、退院す
※注記
『絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」』は2013年10月時点で未完結です。
~2月初旬 第7学区 とある大通り~
絹旗 「ようやく特別門限措置が解除されましたね」トテトテ
白井 「とはいえ、言い方は悪いですが目を付けられていることに変わりはございませんの」
絹旗 「分かってますよ。卒業までは超大人しくしましょう、って言いたいんでしょう」
白井 「おわかりなら話は早いですわね」
絹旗 「まあ、特に何も起こらなければ私だって……おっ」トテテテ
白井 「?」
絹旗 「白井さん、チョコの特設コーナーできてますよ」
白井 「あぁ、そういえばそんな時期ですのね」
絹旗 「よっぽど売れてないんでしょうね」
白井 「絹旗さん、時期を考えてくださいまし」
絹旗 「…………そっか。バレンタインですか」
白井 「浮わついた話題の気配もない絹旗さんにはピンと来ないかもしれませんが」クスクス
絹旗 「いわゆる殿方に超興味のない白井さんには言われたくないです」
白井 「なっ、何を仰います! 人を同性愛者か何かかと」
絹旗 「違うんです?」
白井 「わたくしの愛は、お姉様とその属性を持つ方のみに向けられる極めてピュアなものですの!」
絹旗 「……ええ、まあ」
白井 「それはそうと……昨年は作りあって食べあったりましたわね」
絹旗 「あー、やりましたね。アレ今年も超やりたいです」
白井 「それは同感ですが、昨年とは皆さん状況も変わっておられますし」
絹旗 「そうなんですよねー……誰かの家にそこまで長時間居座るのも超悪いですし」
白井 「それに、昨年ほどのスペースと設備を望むのは難しいかと」
絹旗 「あの家のキッチンだったら、3人が超余裕をもって作業できるぐらいありましたからね」
白井 「となると、今年はやはり」
絹旗 「あっ!」ピコーン
白井 「?」
絹旗 「私に一つ妙案があります!」
白井 「妙案?」
絹旗 「早速交渉してみましょうか」カチカチ
白井 「?」
絹旗 「あ、もしもし? 絹旗です。あのですね、ちょいとお話が……」
~同日 第7学区 番外通行邸~
絹旗 「えーと、ここですかね」
白井 「まさか呼ばれるなんて……」
絹旗 「私も電話で超済ませるつもりだったんですが」
白井 「考えてみたら、ここを訪問するのも初めてですの」
絹旗 「私もですよ。じゃ、凸しましょうか」ポチットナ
<ピンポーン
<ドタタタタ
打ち止め 「はーい!」ガチャ
絹旗 「あ、すいません。来ちゃいました」
白井 「突然来てしまいまして、申し訳ございません」
打ち止め 「話は聞いてるよ。入って入って! ってミサカはミサカは促してみたり」
絹旗白井 「「お邪魔しまーす」」
打ち止め 「ねー、二人がきたよー」
番外個体 「え? 早かったね」
絹旗 「調子はどうですか」
番外個体 「ご覧の通り。ピンピンしてるよ」ニャハハ
白井 「あぁ、なんと痛々しいお姿……やはりわたくしが左腕の代わりに」
番外個体 「白井さんは既に絹旗さんの右腕じゃん」
白井 「えっ」
絹旗 「でもよかったんですか? 超お邪魔しちゃって」
打ち止め 「あの人がね、長話するぐれェなら呼ンじまえって言うから、
ってミサカはミサカはお茶を出しつつ事情を説明してみたり」カチャカチャ
白井 「どうぞお構いなく」
絹旗 「そういえば、それ言い出した一方通行の姿が超見えませんが」
番外個体 「ちょっと用があってさっき出かけた。まあ、だからこそ呼べとか言ったんだと思うけど」
白井 「そうですか、ご挨拶しておきたかったのですが」
打ち止め 「それで今日はどうしたのかな? ってミサカはミサカは本題を促してみたり」
絹旗 「あ、そうそう。今日はお願いがあってですね」
番街個体 「お願いって?」
絹旗 「ミサワさんのお店、休業中ですよね? 一日貸してほしいんです。ちゃんとショバ代は出しますんで」
白井 「あぁ、なるほど。そういうお考えでしたのね」
番街個体 「え、なに? 絹旗さんと白井さんでオープンしてみる?」
絹旗 「しませんよ。ちょっとキッチンとそれなりのスペースが超欲しいんです」
番街個体 「?」
白井 「絹旗さん、順を追ってご説明しませんと」
絹旗 「ええとですね……」
:
:
:
番街個体 「バレンタインの、ね。なるほどねぇ」
絹旗 「どうでしょうか」
番外個体 「いいよ」
打ち止め 「決断はやっ」
白井 「よろしいので?」
番外個体 「使わなくてもホコリが溜まるばっかだしね。その代わり、作業前後の掃除はやってね?」
絹旗 「超もちろんですとも」
打ち止め 「ミサカも! ミサカも参加してみたい!」
番外個体 「付け加えるなら、この子も連れてってくれるのが条件かな」クスクス
白井 「はい喜んで!」
番外個体 「で、去年みたいにまたみんなでやるの?」
絹旗 「来れる人には来て欲しいなぁと思ってます。その方がたくさんの種類食べれますし」
番外個体 「じゃ使うのは来週ぐらいだね」
白井 「それぐらいで丁度良いかと。あまり早く作っても痛んでしまうでしょうから」
絹旗 「ちなみに言うまでもないですが」
白井 「男子禁制、ですわね」クスクス
打ち止め 「今から楽しみー、ってミサカはミサカはうきうきしてみたり」
~その頃 第7学区 とある路地~
エツァリ (やれやれ、妙なものを見てしまいましたね)
エツァリ (あのカフェにいるのは、間違いなく一方通行さん)
エツァリ (なのですが、向かいに座るスーツの男性は……?)
エツァリ (そして机の上に広げられた無数の書類)
エツァリ (……まさか、とは思いますが)
エツァリ (裏の仕事を引き受けるおつもりでは)
エツァリ (彼が選んだならばそれも……いや)
エツァリ (今の一方通行さんがそんなことをすれば、心配し悲しむ人がいる)
エツァリ (友人として止めなくてはならないでしょう)
エツァリ (む、スーツさんが出て行かれましたね……一つ、話してみましょうか)
:
:
:
エツァリ 「やあ、奇遇ですね」ニコニコ
一方通行 「……なンだ、オマエか」ガサガサ
エツァリ 「おや、お取込み中でしたか?」
一方通行 「構わねェ、終わったところだ」
エツァリ 「一体何をなさるおつもりで……」
一方通行 「丁度いい、ちょっと見てもらえるか」
エツァリ 「え? あ、はい。では失礼して」ペラペラ
一方通行 「……」ズズ...
エツァリ 「参考書の原典のようですが」
一方通行 「俺が書いた」
エツァリ 「一方通行さんが?」
一方通行 「前に話してただろ。在宅ワークだよ」
エツァリ 「これが、ですか?」ガサッ
一方通行 「参考書やらのライター、それと論文や小説・映画の翻訳」
エツァリ 「では先ほどまでここにいた方は」
一方通行 「見てたのかよ……ありゃ出版関係の人間だ」
エツァリ 「なるほど、そういうことでしたか。しかし、なぜ物書き稼業に?」
一方通行 「家から出なくていいし、締切さえ守っときゃ仕事の時間はこっちの勝手だろ」ズズ...
エツァリ 「仰る通りですね。第一位の頭脳も有効活用できて、天職じゃないですか」
一方通行 「独力じゃこんな手早く進まなかった。知り合いの教師や研究者の伝手に頼ったがな」
エツァリ (素直に人を頼り、しかもそれを人に話すとは……良い意味で変わりましたね)
一方通行 「で、どォだ? それ」
エツァリ 「さあ……難しすぎて自分の頭では」
一方通行 「……そォか、相当簡単にしたつもりだったンだが」
エツァリ 「貴方の基準で簡単と言われても、大多数の人間はついてこれませんよ」
一方通行 「メンドくせェ」ガシガシ
エツァリ 「浜面さんにでも見てもらったらいかがです?」
一方通行 「爆発しちまうだろ。あいつの頭が」
エツァリ 「左様で。……おや、こちらの原稿は毛色が違いますね」ガサッ
一方通行 「そりゃ論文の翻訳だな。原本はドイツ語だ」
エツァリ 「専門用語等入ってると、翻訳も大変でしょう」
一方通行 「まァ、日常会話のようにはいかねェわな」
エツァリ 「……小難しい話ですね。天文学の心得はありますが、宇宙物理学は専門外でして」
一方通行 「俺だって得意じゃねェよ。なんかイラッとくる単語が何回も出てくるしよ」
エツァリ 「単語?」
一方通行 「……暗黒物質」
エツァリ 「あぁ、なんとなく……こちらは、論文でも参考書でもないですね」ガサッ
一方通行 「あー……そりゃ映画の翻訳だな」
エツァリ 「字幕用ですか。……?」
一方通行 「なンだよ」
エツァリ 「お言葉ですが……映画や小説の翻訳は受けないほうがよいかと」
一方通行 「なンかマズかったか?」
エツァリ 「ヒロインはこんなチンピラみたいな汚い言葉使いで喋らないでしょう」
一方通行 「……それ、さっきも言われた」ハァ
エツァリ 「得手不得手は誰にでもあるものですよ」ニコニコ
[[携帯電話]]<Prrrr Prrrr
エツァリ 「おっと失礼」カチカチ
一方通行 「ごゆっくりィ」
差出人:浜面氏
<siage-age@comodo.ne.jp>
件名:緊急
日付:20yy/m/d 15:50
───────────────
な、なんか分からんが家を追ん出
されそうなんだ!来週の金曜は家
にいなくていいって言われた!!
なんて言って謝ればいい!?
エツァリ 「…………一方通行さん」
一方通行 「ン?」
エツァリ 「来週の金曜日はお暇ですか? 浜面さんを爆発させるチャンスですよ」
一方通行 「はァ?」
エツァリ 「どうでしょう?」
一方通行 「別に予定は……いや、午後からだな。午前中はうちのに付き合って病院行ってくる」
エツァリ 「丁度いいですね。浜面さんに動いてもらっては?」
一方通行 「あいつがいいのなら俺は構わねェがな。来週の金曜……2月13日だな」カキカキ
~同日夜 第7学区 常盤台新寮~
白井 「お風呂空きましたの」ホコホコ
絹旗 「はいはーい、ってまたそんな格好でウロウロして……」
白井 「まだ汗が引ききっておりませんので。それに絹旗さんだって、下着同然ではないですか」
絹旗 「私のコレは部屋着ですけど、白井さんのそれはモロ下着じゃないですか!」
白井 「あら、絹旗さん。まさかわたくしの下着姿が」クネ
絹旗 「ありませんから。超ありませんから、ポーズ決めないでください」
白井 「されても困りますの。ところで、首尾はいかがですか?」ポスン
絹旗 「みんな来るって返事来てますよ」
白井 「それはそうでしょう。一人でもくもくとやるよりは大人数の方が楽しそうですもの」
絹旗 「やっぱみんな超ヒマなんですね。入れ食いですよ」
白井 「こら」ペシッ
絹旗 「いたっ」
白井 「呼びかけておいてその言い草はなんですか」
絹旗 「いやいや、超冗談じゃないですかぁ」
白井 「冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょうに」
絹旗 「うー、気をつけます」
白井 「まったく……読んでいるのは、また映画の雑誌ですか?」
絹旗 「違いますよ」
白井 「C級映画の専門誌なんて、世界中探しても読者は絹旗さんだけでしょうに」
絹旗 「だから違いますってば! あと他にも超いっぱいいますってば!」
白井 「では何を?」
絹旗 「コレですよ」ハイ
白井 「……手作りチョコレートのムックですか」
絹旗 「ミサワさんの家から帰るとき、コンビニ寄ったじゃないですか。そのときに」
白井 「バレンタイン特集号……ははぁ、この時期らしい本ですわね」ペラペラ
絹旗 「逆にこの時期でもないと超売れやしないでしょうね」
白井 「この本を参考になさるおつもりで?」
絹旗 「ええ、どんなのを作ろうかなーと」
白井 「なるほどなるほど……」ペラペラ
絹旗 「なんか変わり種というか、超面白いのないですかねー」
白井 「そうですわね……クジを入れてみるとか」
絹旗 「クジ? 当たったらどうなるんですか?」
白井 「三等賞が絹旗さんとキスする権利、二等賞が」
絹旗 「すいません、もういいです。聞いた私が超アホでした」
白井 「絹旗さん、これぐらい身体を張りませんと!」
絹旗 「いやいや、張ってどうするんですか!」
白井 「それぐらいしないと、意中のお相手を射止めることはできませんのよ?」
絹旗 「もう何年もお姉様に超片思いしてる白井さんに言われても」
白井 「」ヒュンッ
絹旗 「あ」
白井 「あぁ、お姉様。なぜわたくしの気持ちが……」
絹旗 「あー、ウソです、超ウソです! ウソですからテレポしてまで壁に向かって体育座りしないでください!」
白井 「ま、それはともかく」ヒュンッ
絹旗 (さすがに立ち直りが超早いですね)
白井 「絹旗さん、いつものメンバー以外に渡す予定はおありで?」
絹旗 「いえ、特には。異性の友達なんてあの三バカぐらいしかいませんし」
白井 「たしかに……絹旗さんからは殿方の気配がしませんものね」
絹旗 「超ほっといてくださいよ。そういう白井さんはどうなんですか」
白井 「入院中にお世話になりましたので。麦野さんとナースお姉様の分は確保しておこうかと」
絹旗 「……あれ? なんか違くないですか?」
白井 「と申されますと?」
絹旗 「カエル先生には?」
白井 「あぁ……それも考えたのですが」
絹旗 「なんかマズいんですか?」
白井 「麦野さんとナースお姉様がお話していたのですが」
*** 回想 入院中の病室にて ***
19090 「テレビのニュースでやっていたのですが、もうすぐバレンタインですね」
麦野 「まだ一ヶ月近く先だろ……気の早いこって」
白井 (バレンタインですか……)
19090 「今年は先生は大丈夫なのでしょうか」
麦野 「さあねぇ。去年も相当苦労してたし」
19090 「"僕を糖尿病にして病死させようとする勢力がいるね?"とか仰ってましたね」
麦野 「それがシャレに聞こえないからすごいんだよ」
19090 「……今年は壊れせんべいでもお渡ししましょうか」
麦野 「私、味付け海苔にするつもり」
*** 回想 ここまで ***
絹旗 「はー、医者はすごいですね」
白井 「あの先生のお人柄も加味されているでしょう」
絹旗 「じゃ、カエル先生には味付け海苔ですか?」
白井 「さすがにそれは……そこは少々決めあぐねてますが」
絹旗 「……アレですよ、アレなんかどうです?」
白井 「アレ?」
絹旗 「去年ミサワさんが使ってたチョコレート」
白井 「あぁ、あのすっごい苦いヤツですわね」
絹旗 「甘いものと苦いもので相性超バッチリじゃないですか」
白井 「でも甘さ苦さの違いこそあれ、どちらもチョコレートではないですか」
絹旗 「それを言ったら超おしまいですよ」
白井 「ん、苦いもの……その手がございましたわね」
絹旗 「? 何か思いついたんですか?」
白井 「ええ」
絹旗 「なんですか、教えてくださいよ」
白井 「そこは敢えてヒミツですの」クスクス
絹旗 「えー、超ケチです」
白井 「絹旗さんも、ご自分のアイデアを練っておいてくださいまし」
絹旗 「んー……」パラパラ
白井 「あ、ちょっとお待ちになって」
絹旗 「?」
白井 「」ピト
絹旗 「ちょっとちょっと、なんで私の本にポストイット貼ってるんですか」
白井 「よいではないですか」
絹旗 「しかもこのページ……なんですか、"これで超イチコロ! 媚薬チョコ!"って」
白井 「要チェックですの」
絹旗 「超ダメですよ、こんなワケ分からないの!」
~その頃 第7学区 浜滝邸~
フレメア 「」クルクル
滝壺 「ねえ、はまづら。ちょっいいかな」
浜面 「はいな」
滝壺 「来週の金曜、出かけてほしいって言ったけど」
浜面 「おぉ、どうしようかプランを練ってるぜ」
フレメア 「」ピョコピョコ
滝壺 「ごめんね、やっぱりなし。のーかん」
浜面 「え? あ、そ、そうか」
滝壺 「その代わり、私とフレメアが一日いないから」
浜面 「」
フレメア 「いないから」
浜面 「ま、まさかアレか! 実家に帰らせて頂きますってヤツなのか!」ウォーン
滝壺 「帰る実家がないよ」
フレメア 「……浜面、もしかしてやましいことがある?」
浜面 「えっ」
滝壺 「そうなの?」
フレメア 「だから焦ってる? にゃあ」ジー
浜面 「ない! 断じてないぞ!」
滝壺 「そうだよ、フレメア。はまづらは隠し事が下手だから」
フレメア 「」ジー
浜面 「?」
フレメア 「うん、大体そうだね。ウソついたりごまかしたりすると顔のアレが動くのに、今は動いてない」
滝壺 「ね?」
浜面 「え、ちょっと待って。なにそれ」
フレメア 「ねーお風呂! 今日はお姉ちゃんと入る」
滝壺 「そうだね。そろそろ入ろうか」
浜面 「ねえ、顔のアレってなに?」
フレメア 「浜面、お先に、にゃあ」シュタッ
滝壺 「先入るね」
浜面 「お、おう、ごゆっくり」
<ガチャ バタン
浜面 「……鏡、鏡」
浜面 「うん、今日もイケメンだな……いや、違うだろ」
[[携帯電話]]<ナーゼナーラ オレハハラガヘルー ヒハマタノーボルー♪
浜面 「なぁ、顔のアレってなんだ?」ピッ
エツァリ 『はい?』
浜面 「いや、すまん。こっちの話だ。忘れてくれ」
エツァリ 『は、はあ』
浜面 「で、いかがした?」
エツァリ 『夕方にメール頂いた件についてなのですけど』
浜面 「あー、それか。すまん、追い出されなくて済みそうだ。代わりに出て行かれるが」
エツァリ 『一体何をやらかしたんですか』
エツァリ (いや、そうじゃないのは分かるんですけどね。日付的に考えて)
浜面 「いやー、心当たりないんだよな……強いてあげるとしたら」
エツァリ 『あげるとしたら?』
浜面 「フレメアのプリンを食っちまったことかな」
エツァリ 『……』
浜面 「食い物の恨みってなぁなんとやらってことかねぇ」
エツァリ 『ま、どうでもいいです。それはそれとしてですね』
浜面 「おいなんか冷たいぞ!!」
エツァリ 『来週の金曜日なんですけど、お暇なことに変わりはありませんよね?』
浜面 「そりゃ、な」
エツァリ 『バイトしませんか? 浜面さんでもできる簡単なお仕事です』
浜面 「なんだよ、そりゃ。まあ、一応聞いておこうか」
エツァリ 『護衛と送迎です。対象は一方通行さんとミサワさんの2名』
浜面 「……それ別に、俺が護衛するまでもないだろ。むしろ邪魔だろ」
エツァリ 『仰る通りかもしれません』
浜面 「つまりアレか? アッシーくんやれってことか?」
エツァリ 『これは驚きです! 結果的にそうなってしまいました』ニコニコ
浜面 「何が驚きだ! 最初からそのつもりだっただろ! ちくしょう!」
エツァリ 『で、どうでしょう』
浜面 「暇だからやる」ウン
エツァリ 『承りました』
~その頃 第7学区 エ結邸~
エツァリ 「はい、それでは失礼します。健やかな夜を」ピッ
結標 「……」ジトー
エツァリ 「どうされました?」
結標 「サイッテー」
エツァリ 「え?」
結標 「なんで、もう寝る準備して、消灯して、ウトウトし始めたその隣で電話し始めるのよ」
エツァリ 「あ、電話するの忘れてた。と思い出してついつい」
結標 「」ムスー
エツァリ 「いやー、ははは」
結標 「知らない」ゴロン
エツァリ 「マナー違反だったことは謝罪します。機嫌を直してくださいよ」
結標 「……」
エツァリ 「」チョンチョン
結標 「……明日の朝食メニュー次第では直るかもね」
エツァリ 「プレーンオムレツなどいかがでしょう」
結標 「……」
エツァリ 「サラダもつけましょう」
結標 「……もう一声」
エツァリ 「では手間を惜しまずフレンチトーストなど」
結標 「……アレ、カロリー高いんだけど」
エツァリ 「もう少し余裕があったほうが、なんといいますか、触り心地が」
結標 「」スパーーン
エツァリ 「いったぁぁ!?」
結標 「誰のためにこっちが日々努力してると思ってるのよ!」
エツァリ 「失礼しました、今のは失言でしたね」
結標 「……まあ」
エツァリ 「?」
結標 「それでも、朝食は大事だし……貴方が手をかけて作ってくれるんだし……」
エツァリ 「ええ」
結標 「わかった。じゃそれで許しといてあげる」
エツァリ 「ありがたいことです」
結標 「これ以上ケンカしてるとまたあの子に殴りこまれちゃうからね」クスクス
エツァリ 「最近は夜更かし気味なので、余計に気を付けませんと」
結標 「あぁ、早起きの必要がないからとか言ってたわね」
エツァリ 「生活のリズムが崩れます。そういう意味でも、ミサワさんには早く復帰してほしいですね」
結標 「来週ぐらいにはギプスとれるらしいけど」
エツァリ 「その後はリハビリが待っているでしょう。……あ、来週といえば」
結標 「?」
エツァリ 「来週の金曜、いらっしゃいませんよね?」
結標 「あれ? なんで知ってるの? もう話したっけ?」
エツァリ 「分かりますとも」ニコニコ
結標 「なんか腑に落ちないけど……その通りで、朝から晩までいないから」
エツァリ 「了解しました」
結標 「あの子も一緒にね」
エツァリ 「ええ、よろしくお願いしますね」
結標 「……ゴメン、限界。寝ましょ」
エツァリ 「ええ、お休みなさい」
結標 「寒いんだから、もう少しこっちきてよ」グイ
~数日後 第7学区 常盤台新寮 カフェテリア~
絹旗 「……はー、暇ですね。超暇ですね」グテー
白井 「進路が決定していて、尚且つ卒業判定に問題がない者は早い春休みに入っておりますものね」ズズ...
絹旗 「あ、そうだ。今日の午後でしたっけ」
白井 「ええ、現地で待ち合わせですの」
絹旗 「遅れないようにしませんと」
白井 「そちらの準備も大事ですが。絹旗さん、どのようなものを作るか決まっておりますの?」
絹旗 「うぬ」
白井 「まだですか……まあ最悪、溶かしてハートの形にでも固めれば見てくれはそれなりになるでしょうから」
絹旗 「そんなの超つまらないですよー。もう一ひねりほしいです」
白井 「……難しいですわね」
絹旗 「いっそ白井さんの顔を模して作りましょうか」
白井 「それに何の意味がございますの」
絹旗 「白井さん! 新しい顔です!」
白井 「この顔はチョコ製でもなければ取り換えもききませんの!」
絹旗 「そんなこと言って、ペロッとしたらチョコ味だったりするんじゃ」
白井 「……いいでしょう。そこまで仰るなら」ガタッ
絹旗 「?」
白井 「ご自身の舌で確かめてみればいいですの」
絹旗 「え?」
白井 「さあ、どうぞ」
絹旗 「いやいや、いいです! 超いいですから!」
白井 「まったく……突飛もないことを言い出すかと思えば」
絹旗 「だって白井さんの歯磨き粉、チョコ味じゃないですか」
白井 「」
絹旗 「アレでチョコ成分を超補充してるのかと」
白井 「あっ、あれは偶々そういう気分だから何とはなしに買ってみただけですの!」
絹旗 「ふーん……まあ、確かに。なんで? っていう味の歯磨き粉たくさん売ってますもんね」
白井 「そこは学園都市クオリティかと」
絹旗 「もっと超マシなものを作ればいいのに……ワサビ味の歯磨き粉なんて誰が使うんですか」
白井 「期待するのも酷でしょう」ズズ...
絹旗 「そういえば白井さん」
白井 「?」
絹旗 「私、何人かからチョコくださいって言われたんですけど」
白井 「何人かと申しますと?」
絹旗 「ここの生徒ですよ! 毎年こんな感じなんですか?」
白井 「重く考えすぎです。女子が集まって甘いものを食べあっているだけですの」
絹旗 「むー……」
白井 「そういう意味では、わたくしたちがやろうとしていることと変わりございません」
絹旗 「まあ、そうなんですけどね」
白井 「中には本気で絹旗さんを狙っている方もおられるかもしれませんが」ズズ...
絹旗 「やめてくださいよ……」
白井 「そうですわね。絹旗さんには既に黒夜さんがおられますもの」クスクス
絹旗 「アレはそういうアレじゃないですってば!」
白井 「まあ、義理として渡すだけならば悪いことではないでしょう」
絹旗 「一目見て"超義理!"って分かるようなのにしなくちゃいけないですね……」
~同日午後 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
<カランカラン♪
ショチトル 「む、来たか。時間通りだな」
絹旗 「また超掃除中ですか?」
ショチトル 「ああ」
白井 「何かお手伝いいたしましょうか?」
ショチトル 「いや、大丈夫だ。私の仕事だからな」
絹旗 「まあまあ、そう言わずに」
白井 「遠慮しあう仲でもございませんでしょう」
ショチトル 「……そうか。では、床の掃除を頼む。それで掃除は全部なんだ」
絹旗 「任せといてくださいよ。これ使えばいいですよね」【デッキブラシ】スチャ
ショチトル 「違う違う違う! こっちだこっち!」【モップ】
白井 「絹旗さん、そんなもので床を擦ったら傷だらけになってしまうでしょう」
絹旗 「じゃなんでデッキブラシなんてあるんですか」
ショチトル 「悪漢撃退用の護身具の一つだ」
絹旗 「……別にミサワさんがいれば、得物なんてなくても超よさそうですけど」
ショチトル 「マスターならばな。私はそうもいかない」
白井 「水を汲んできましたので使ってください」ゴトッ
絹旗 「あ、コレ一回やってみたかったんですよ。モップ絞るローラーつきバケツ」ジャブジャブ
白井 「存外アナクロなものを使っておられますのね。スチームモップやスイブルスリーパーなどの方がお手軽では」
ショチトル 「マスターの先代のマスターの趣味らしい。レジや電話もあの通りだからな」
絹旗 「ガチャガチャチーンってなるレジ、映画でしかみたことなかったですよ」ゴシゴシ
白井 「もはやアンティークですの」
ショチトル 「慣れると悪くないぞ」
絹旗 「確かに、味がありますよね」
白井 「うーん……」
絹旗 「あ、気にしないでください。白井さんは未来マニアなんで」
白井 「未来マニアってなんですか」
絹旗 「最新鋭っぽい、っていう理由であーんな変な携帯電話使ってるじゃないですか」ゴシゴシ
ショチトル 「あぁ、アレか……私は二度と持たないと決めた」
絹旗 「正直私も使い方が超わかりませんし。あの携帯電話」
白井 「なっ、慣れればそれなりに使いこなせますの」
ショチトル 「私はこれで十分だ」
絹旗 「うわっ、これって」
白井 「電話とメールだけ残して、極限まで機能を削りに削ったモデルですの」
ショチトル 「別に不便でもないぞ」
絹旗 「カメラとかWebぐらいあってもいいんじゃ」
ショチトル 「必要ない」キッパリ
白井 「本当に……」
絹旗 「……同い年?」
ショチトル 「なぜそこでその疑問が湧いてくる!?」
:
:
:
絹旗 「掃除超終了です」ドン
ショチトル 「助かったぞ」
白井 「では、そろそろ本題に入りましょうか」
ショチトル 「調理器具の説明だったか」
絹旗 「はい、当日超スムーズに作業するために聞いておこうかと」
白井 「どこになにがどうしまってあるか、まったくわかりませんものね」
ショチトル 「当日は私も来るつもりだが……手が埋まってる可能性もあるからな」
絹旗 「やっぱり作るんですよね? 超お兄ちゃんに」
ショチトル 「……去年は買って済ませてしまったから今年は、と思っているところもある」
白井 「確か、昨年の今頃は入院なさっておられたでしょう。仕方ございませんの」
絹旗 「超お兄ちゃんなら喜んでくれますよ。世の中の男はみんな妹好きですから」
ショチトル 「それは初めて聞くが……まあいい。ついてきてくれ」
絹旗 「」トテトテ
白井 「カフェのカウンターの内側……これほど近くて遠い場所もございませんわね」
ショチトル 「大体のものは、ここの扉を開けたところに入っている」カパッ
絹旗 「カウンターの下ですね」
白井 「鍋にフライパンにボウルはここと」
ショチトル 「細かいものはここの引き出しだ」ガラッ
絹旗 「菜箸に計量スプーンですか」
白井 「これも必須ですわね」
ショチトル 「……あとは、何かあるか?」
白井 「クッキングペーパーがあると助かるのですが」
ショチトル 「ああ、それなら後ろの棚のここだ」ガチャ
絹旗 「お、ありましたね」
白井 「大体これで足りるでしょうか」
絹旗 「アレはないんですか?」
ショチトル 「アレ?」
絹旗 「あのー、型とか冷やす用のトレイとか」
ショチトル 「さすがに型はないな」
白井 「必要なものは各自で用意するという話だったでしょう」
絹旗 「ええ、まあ。材料とか必要なものは用意するようにってことになってますけど」
ショチトル 「……そうか、型か」
白井 「そういえば、わたくしたちもそっちの器具はございませんわね」
絹旗 「超ちょうどいいじゃないですか。この後で見に行きましょうよ」
白井 「そうですわね、3人で参りましょう」
ショチトル 「わ、私もいいのか?」
絹旗 「むしろダメって考える理由があるんですか?」
白井 「ええ、お時間があるのならぜひ」
ショチトル 「そ、そうだな……私はそういうのに疎いから、教えてもらうのも」
絹旗 「え? カフェ店員なのに?」
ショチトル 「分かってると思うが、ここは自作菓子まではやっていない」
白井 「やる予定は?」
ショチトル 「マスター次第だ。現状では時間と設備の問題があるらしいが」
絹旗 「まあまあ、今の内から練習しておけば超役に立ちますってば」
白井 「そうですの、ゆくゆくは暖簾分けで独立もできるかもしれませんの」
ショチトル 「今はそこまで考えが及ばないが……役に立つというのは同意だな」
絹旗 「それに、お菓子作りが得意な女の子とくればお兄ちゃんも超イチコロですよ」
白井 「結標さんからお兄様を取り戻すなんてことも」
ショチトル 「……それはないな。私自身の心変わりが起きない限りは」
絹旗 「まあともかく、行きましょうよ」
白井 「そうですの。あまり遅くなってしまってもいけませんし」
ショチトル 「それもそうだな。では、行くとしよう」
~同日 第7学区 調理器具専門店~
ショチトル 「おお」キョロキョロ
絹旗 「ここに来れば大抵のものはあるでしょうね」
白井 「ええ。それこそプロが使うような道具まで揃ってますから」
ショチトル 「すごいな。日本では刀も調理器具にカテゴライズされるのか」
絹旗白井 「「えっ?」」
ショチトル 「アレはそうではないのか?」
絹旗 「……あぁ」
白井 「アレは鮪包丁ですの」
ショチトル 「包丁!? アレが包丁なのか!」
絹旗 「ええまあ、鮪っていう超デカイ魚専門の包丁ですよ」
ショチトル 「……どれぐらい大きいんだ?」
白井 「絹旗さんと同じぐらいかと」
絹旗 「え、そこまでですか?」
ショチトル 「なるほど……道理で包丁も大きくなる訳だ」
絹旗 「さて、目的のものは」トテトテ
白井 「製菓製品はこちらのようですが」
絹旗 「あ、これっぽくないですか?」
ショチトル 「これに、溶かしたチョコレートを流し込むのか」カチャ
絹旗 「ええ、それで冷やして固めるんですよ」
白井 「随分色々ございますのね。さすが専門店といったところでしょうか」
ショチトル 「この大きい箱型のは……?」パカッ
絹旗 「あ、小さいヤツの超量産用ですね」
白井 「ここに流し込めば、いっぺんに作れるということですのね」
絹旗 「これ超良さげじゃないですか。買いです」
ショチトル 「こんな一口サイズのを大量に作ってどうするんだ?」
絹旗 「絨毯爆撃用です」
ショチトル 「?」
白井 「まあ、付き合い等ございますのよ」クスクス
絹旗 「望んだ付き合いじゃないですけどね」
ショチトル 「望まなくても付き合いが発生するのはいいことじゃないか?」
絹旗 「うーん」
白井 「それだけ慕われているという証拠とも言えますもの」
絹旗 「まあ、そう考えておくことにします」
白井 「それで、どんな形にするか決まりました?」
ショチトル 「私か? そうだな……」
絹旗 「コレなんかどうですか、コレ」
白井 「この形は……サーベルですか?」
ショチトル 「なぜサーベル?」
絹旗 「本当はあのノコギリ刀の方が超それっぽいですが、さすがになさそうなんで」
ショチトル 「ノコギリ刀って……」
白井 「決闘の申し込みかと思われてしまうやもしれませんの」
ショチトル 「それならやめるべきだな。真っ向勝負でもお兄ちゃんには勝てないさ」
絹旗 「そんなに超強いんですか?」
ショチトル 「かなり、な」
ショチトル (そりゃ原典2冊持ってるんだし)
白井 「しかし、こう悩んでるだけでも楽しいものですの」カチャ
ショチトル 「なかなか決まる気配がないが……悪くない」
絹旗 「こういうのなんて言うんでしたっけ」
ショチトル 「後の祭り、だったか?」
白井 「逆です、逆。祭りは準備の方が、ですの」
絹旗 「あぁ、そうだ。それです、それ」
白井 「今回に関しては大丈夫でしょうが、後の祭りにはならないようにいたしましょう」
絹旗 「今回に関しては、というか私たちに関しては、ですよね」
ショチトル 「?」
絹旗 「本命に渡すとかじゃなく、自分たちが超食べたいだけですから」フンス
白井 「花より団子、とはこういうことですの」
ショチトル 「そういうことか」クスクス
白井 「……ところで、その手に持ってる型は」
ショチトル 「あぁ。これに決めた」
絹旗 「へー、どんなんですか? 見せてくださいよ」パカ
白井 「あら、こちらは……」
ショチトル 「私の故郷の古い言葉で、な」
絹旗白井 「「?」」
ショチトル 「私の名前は、これを表しているんだ」
白井 「まあ、そうだったのですか。そう考えると、素敵な名前ですの」
絹旗 「ちなみに私の名前は」
ショチトル 「もあい」
絹旗 「ちーがーいーまーすー!!」
白井 「存外、平仮名で書くと可愛いですわね」
ショチトル 「違うのは分かっているのだが……最初にそう教えられたものだから、なかなか切り替えられなくてな」
絹旗 「誰ですか、教えたのは」
ショチトル 「マスターだ」
絹旗 「こうなったら右腕も超折って、両腕ギブスでファイアーマンみたくしてやります!」プンスコ
白井 「させませんのー!」ガシッ
絹旗 「放してくださいよ! これは私が私であるための戦いなんです!」
白井 「大きいお姉様にこれ以上傷はつけさせません!」
絹旗 「白井さんだってサムスピの審判とか言われたら超悔しいですよね!?」
白井 「それはわたくしたちが言い争いになったときに絹旗さんがいつも言ってるフレーズではないですか!」
<超ー!
<ですのー!
ショチトル 「……やれやれ」
ショチトル 「本当に仲が良いのだな」
~同日夕方 第7学区 とある大通り~
ショチトル 「さて、買い物も済んだな」
絹旗 「いやー、まさか店長さんが鮪包丁振りかざしてくるとは……」
白井 「驚いて思考がフリーズしてしまいましたの」
ショチトル 「店内でケンカするからだ。うちの店でも、迷惑客には容赦はしないぞ?」
絹旗 「黒夜が何回か雷落とされてましたね。文字通りの意味で」
白井 「迷惑客に毅然とした態度をとれるお店は好感がもてますわね。手段はともかくとして」
絹旗 「んで、そろそろいい時間ですけど、超買い残しとかないですか?」
白井 「うーん……」
ショチトル 「何かあるのか?」
白井 「いえ、先ほどのお店では見つからなかったもので」
絹旗 「え、なんですか? あるのなら今の内に言ってくださいよ」
白井 「媚薬の類」
絹旗 「お腹空いたし、超帰りましょうか」
白井 「絹旗さん、聞いておいて無視は反則ですの」
絹旗 「なんに使うんですか、そんなモノ!」
白井 「お姉様攻略のためですの」キリッ
絹旗 「言い切らないでくださいよ」ハァ
ショチトル 「媚薬か……そういえば」
絹旗 「超乗っからなくていいですよこんな話題!」
ショチトル 「ん、そうか?」
白井 「いえいえ、言いかけて引っ込めるのは無粋ですのよ」
ショチトル 「それもそうか。まあ、大した話でもない」
絹旗 「はは、もう私知りませんからね」
ショチトル 「私の故郷にも、媚薬というか惚れ薬のようなものが伝わっていてな」
白井 「ぜひ教えてくださいまし」
絹旗 「おい」
ショチトル 「まじないの域は出ないぞ? それに作るための素材集めが厳しい」
白井 「それでもご参考までに」
ショチトル 「材料はたしか……毒カエルの体液、サソリの針、人食い魚の鱗」
絹旗 「超黒魔術……?」
ショチトル 「あぁ、あと惚れさせたい人間の血液だ」
白井 「これは本格的ですの」メモメモ
絹旗 「メモしてどうすんですかぁ!」
ショチトル 「やめておいたほうがよさそうだな」クスクス
白井 「え、ここまできてやめるというのは」
ショチトル 「絹旗さんが実験台にされたら大変だ」
絹旗 「」ゾクッ
ショチトル 「それにさっきも言ったが、まじないの域は出ない。民間療法のようなものだからな」
絹旗 「療法じゃないですよね」
白井 「まあ……確かに、その材料を当日までに揃えるのは難しそうですの」
ショチトル 「学園都市では難しいだろう。ならば、他に必要なものの準備をしたほうが得策だろうな」
絹旗 「そうですね、当日になって超慌てないように準備をしておきませんと」
白井 「買い足さなければいけないものは揃ったでしょう。後は当日を待つばかりかと」
~2月13日午前 第7学区 番外通行邸付近~
浜面 「本日、運転を担当させて頂きます浜面仕上と申します」キリッ
番外個体 「うん、知ってる」
一方通行 「まさか本当に連れてくるとはな」
エツァリ 「交渉事は得意なんですよ」ニコニコ
番外個体 「まあ、悪いとは思うけどせっかくだし……今日はお願いね?」
浜面 「任せといてくれ、運転は得意なんだ」
一方通行 「ほれ、鍵」ポイ
浜面 「はいよ」パシッ
エツァリ 「では向かいましょうか」ガチャ
バタン バタン
浜面 「エンジン始動!」カシュシュ ブルン
番外個体 「……さっきから気になってるんだけどさ」
一方通行 「聞くな。こいつらなりの考えがあるンだろォよ」
番外個体 「だからその考えとやらが気になってるっつの」
エツァリ 「なんでしょうか?」
番外個体 「……助手席と運転席のお二人、なんで黒スーツにサングラスなの?」
エツァリ 「様式美です」ニコニコ
浜面 「様式美だな」
一方通行 「分かンねェ……」
番外個体 「マトリックスかMIBをインスパイヤしてるのかと」
エツァリ 「自分は後から知った話なのですが」
番外通行 「「?」」
エツァリ 「ミサワさんも絹旗さんと組んで、こんな恰好でスパイ活動していたそうじゃないですか」
番外個体 「!!!」ブーッ
浜面 「あー、アレだ。あの時だな」
一方通行 「……オイ、何の話だ?」
番外個体 「えい」ゴッツン
一方通行 「ンごォ!?」
番外個体 「あんときゃノリノリだったけど、今となっては黒歴史寸前だよ」ガシガシ
一方通行 「オマエなァ! ギプスで殴るヤツがあるか!」
番外個体 「痛かった?」
一方通行 「また折れたらどォすンだ、ボケ」ナデナデ
番外個体 「……ゴメン」
エツァリ 「浜面さん、少々エアコンが効きすぎなようです」
浜面 「こりゃ失礼」
エツァリ 「しかも見ましたか? 乗り込むとき、ドア開けてエスコートしてましたよ」
浜面 「んもう、仲がよろしいこって」
一方通行 「黙って運転しやがれ。乱暴な運転しやがったら、次はオマエがギプス巻く番だからな」ゲシゲシッ
浜面 「分かった! 分かったから運転席を後ろから蹴るな!」
番外個体 「ほーら、やめなよ」
一方通行 「」チッ
浜面 「助かった……それにしても、アレだな」
エツァリ 「どれですか」
浜面 「人様の車を運転するときにいつも思うんだけどよ、運転席狭いんだよな」
エツァリ 「浜面さんの身長がムダに高いからでしょう」
浜面 「ムダと言ったか? 失敬だな、キミは」
番外個体 「あー、この車のシートの位置も私用にしてあるからね。浜面さんにゃ狭いかも」
エツァリ 「あの日も運転したでしょう。その時に調整なさった筈では?」
浜面 「あんときはそんな余裕なかったわ。つうワケで、ちょっと下げるぞ」グイ→
一方通行 「オイバカ危ねェ!!」
浜面 「おっ、悪い。下げすぎちまったか」
一方通行 「オイ、鉄パイプ貸せ、鉄パイプ。後ろからシートごとブッ刺してやる」
浜面 「死んじゃうだろバカ!」
一方通行 「どォせ病院に行くンだから変わりゃしねェよなァ?」
番外個体 「だからやめろっての」ペシッ
エツァリ 「浜面さん、そろそろ出発しましょう」
番外個体 「未だに出発してないことにびっくりだよ」
浜面 「アレだ、アレ。外寒いからエンジンあっためてたんだよ」
一方通行 「だったらもういいだろ。さっさと出せ」ゲシゲシッ
浜面 「お前さっきからなんなの!? タクシーとかでそういうことすんなよ!」ブロロロ
:
:
:
浜面 「そういえば、小さい方の姐さんはどうしたんだ?」
エツァリ 「あちらの会に参加ですか?」
番外個体 「うん」
浜面 「参加? 何に参加か知らんが、もしかして一人で行かせちゃったのか?」
番外個体 「絹旗さんと白井さんが迎えに来てくれたよ。あの二人が一緒なら大丈夫でしょ」
一方通行 「チビ二人もそれぞれ大能力者なンだからな、なンとかなンだろ」
エツァリ 「……白井さんが暴走しなければよいのですが」
浜面 「大丈夫だろ。絹旗もいるんだし」
番外個体 「それに白井さんも普段はあんなだけど、超えちゃいけないラインは弁えてるから」ニャハハ
一方通行 (……ちょっと不安になってきた)
浜面 「しかしみんな集まって何やっとんだ? 女子会ってやつかい。おっと信号だ」キキー
エツァリ 「えっ、ご存知ない?」
番外個体 「あれ? 聞かされてないの?」
一方通行 「」クピクピ
浜面 「……もしかしなくても、知らないの俺だけ!?」
一方通行 (いいのかよ、コレ)ヒソヒソ
番外個体 (滝壺さんのことだから、直前まで秘密にしてるんだと思う)ヒソヒソ
エツァリ 「ま、まあ、浜面さんにとって悪いことは起こりませんよ。断言できます」
浜面 「そ、そうなのか?」
一方通行 「オマエ、信用してねェのか? アイツのこと」
番外個体 「えー、かわいそー。あんなに表に裏に浜面さんに尽くしてるのに」
エツァリ 「浜面さん、これはいけませんね。一方通行さんからの呼称が三下から四下になってしまいますよ」
浜面 「な、何を言うか! 俺は世界中が敵になったとしても滝壺の味方でありつづけるぞ!」
他3人 「「「それが聞きたかった」」」
浜面 「先生!……ってなにがしたいんだお前ら!」プンスコ
エツァリ 「ほら、信号変わりましたよ」
浜面 「ああもう、わかりましたよ」ブロロロ
番外個体 (滝壺さんとフレメアから、か。明日には狂喜乱舞してるんだろうなぁ)クスクス
~同日 第7学区 とある病院~
番外個体 「よーし、着いた着いた」
一方通行 「時間通りだな。三下2号も少しはやるじゃねェか」
浜面 「そんなことあるよ」フンス
エツァリ 「では先生のところに向かいましょう」
番外個体 「つってもどこにいるかなぁ」
浜面 「看護師さんに聞けば早いだろ。あ、すいませーん」
麦野 「あぁ?」クルッ
浜面 「ひぃ!?」
麦野 「おい、人を呼び止めといて"ひぃ"ってどういうことだコラ。
しかもよく見たら浜面じゃねぇか。よし、ブチコロシ確定な」
浜面 「なんだよその理論! 横暴だ!」E:一方通行の盾
一方通行 「オイこら、人を盾にするンじゃねェ!」
番外個体 「あ、しずりん。ちょうどよかったー」
麦野 「あぁ、アンタか。そういえば今日ギプス取る日だっけ」
番外個体 「そゆこと」
麦野 「で、第一位はともかくこっちはなに? SPでも雇ったの?」
番外個体 「いいでしょ。逆ハーレム」
麦野 「……正直、このメンツじゃなんも羨ましくないな」
エツァリ 「それで、先生を探しているのですが」
麦野 「アンタ、確か座標移動の旦那か。浜面に合わせるとバカが伝染るぞ? まあ、今案内するよ」
~同日 第7学区 とある病院 処置室~
冥土帰し 「やあ、待たせたね。さっそく始めようか」
麦野 「さー、男どもは出てった出てった」
浜面 「なんだよ、出産かよ」
エツァリ 「浜面さん、忘れてませんか?」
浜面 「?」
エツァリ 「ミサワさんは肋骨も折っているのですよ」
番外個体 「そっちのサポーターも外すから。どうしても上脱がなきゃいけなくて……」チラッ
一方通行 「分かったら出てけ! 肉塊にされてェか!」ゲシゲシゲシ
浜面 「なんで俺ばっか蹴るんだよ! 蹴られたら痛いんだぞ!」
エツァリ 「終わったらお呼びください」
麦野 「第一位も嫉妬深いのね? ジェラシー強い男は嫌われるちゃうにゃー?」ニヨニヨ
一方通行 「ウルセェ。外で待ってるからな、さっさと済ませろ」カツンカツン
冥土帰し 「レントゲンを確認して外すだけだから、そんなに時間はかからないね?」
麦野 (にしても、浜面も来てるなんて嬉しい誤算だわ。早めに用意しといてよかった)
~その頃 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
婚后 「ようやく出番ですわ」
フレメア 「?」
絹旗 「そうですね、とうとうこの日が超来ましたね」
白井 「でも婚后さん、今日は授業では?」
婚后 「だってこっちの方が楽しそうなのですもの」
打ち止め 「大丈夫なのかな……?」
婚后 「ご心配には及びません。今授業で行っている地点など、わたくしは2年前に通過済みですわよ」ナデナデ
結標 「流石ね、常盤台中学」
滝壺 「時代を先取りしてるよね」
白井 「その表現はちょっと違うのでは……」
ショチトル 「さて、何から始めるんだ」
婚后 「昨年の失敗を活かしましょう」
滝壺 「失敗って……何かあったっけ?」
白井 「結標さんが大量のチョコを焦がしたぐらいでは」
結標 「今年はしないわよそんなこと!」
打ち止め 「もしかして、直接火にあてちゃったの? ってミサカはミサカは推理してみたり」
フレメア 「大体お湯を使って溶かさなきゃダメ」メッ
結標 「」
ショチトル 「それで、昨年は何を失敗したんだ?」
婚后 「ラッピングです。後から気付いて慌てて買いに出かけたではないですか」
絹旗 「あー、そうだ。私買いに行かされました」
滝壺 「そうだった。私たちが作ってる間に3人が買いに行ってくれたんだよね」
婚后 「ええ、わたくしと絹旗さんとミサワさんで。そこで、わたくしから提案なのですが」
結標 「」
白井 「まず準備しましょう、ということですのね」
婚后 「ご明察です。買い出しを二手に分けて、材料係とラッピング係で調達してまいりましょう」
絹旗 「それが超よさそうですね。器具はあるから、これで必要なものは全部揃いそうです」
ショチトル 「義姉さん、そろそろ戻ってきてくれ」ユサユサ
結標 「だ、大丈夫よ。年下の子に料理の腕を指摘されたショックでフリーズするほどヤワじゃないわ」
ショチトル (していたではないか)
滝壺 「むすじめも再起動したから、班分け決めようか」
婚后 「どうやって分けましょうか?」
絹旗 「あ、それなら」
フレメア 「それなら?」
絹旗 「去年と超逆にすればいいんじゃないですかね」
婚后 「つまり、昨年ラッピング用品を買い出しに行った方が材料班にまると」
結標 「なるほどね。それならすぐ決まるし、揉める要因もなくていいじゃない」
滝壺 「……あれ? でも去年は材料買い出しは全員で行ったよね?」
白井 「ええと言い直すと、去年ラッピング用品を買いに行かなかった人が行ってきて、と」
滝壺 「なるほど」フム
絹旗 「んで、去年そっち買い物に超行ったのは私と婚后さんとミサワさんでしたよね」
婚后 「ミサワさんはおられませんから……では、貴女にお願いできますかしら」
打ち止め 「任せて!」フンス
結標 「じゃ、私と滝壺さんと白井さんは決まりとして……貴女たちはどっちに行く?」
ショチトル 「先に決めていいぞ」
フレメア 「……すごく、大体、迷う」
打ち止め 「じゃ一緒に行こうよ」グイグイ
フレメア 「うん、じゃこっち!」
ショチトル 「ならば私はこちらか。これで人数も均等だろう」
白井 「決まりですの」
婚后 「では、後はそれぞれ必須品を書きだしましょう」
結標 「それに加えて"あ、これも"ってものがあれば買っちゃえばいいわね」
絹旗 「書くものありますか?」
ショチトル 「紙とペンぐらいしかないが」ハイ
滝壺 「十分だよ」
絹旗 「んでは超早速」カキカキ
白井 「あら、絹旗さんはもうどういったものを作るか決まりましたのね」
絹旗 「ええ、どうにか」
滝壺 「こっちの紙にラッピング用品とか書いてね」
打ち止め 「」カキカキ
ショチトル 「お、早いじゃないか。プランはできているのだな」
打ち止め 「……うん、去年ラッピングできなかったから、今年こそは……」
結標 「貴女も作ったんだ? じゃ、どうやって渡したの?」
打ち止め 「……アルミホイル」
婚后 「それはそれで手作り感が溢れるほど滲み出ていて素敵ですわね」
白井 (ナイスフォローですの)
:
:
:
絹旗 「じゃ、材料はこれで超全部でいいですか?」
白井 「同じくラッピング用品も」
結標 「うん、私は大丈夫」
滝壺 「全部書いたよ」
打ち止め 「色々書いた! ってミサカはミサカは準備万端であることをアピールしてみたり」フンス
フレメア 「よくわからないから同じく!」フンス
ショチトル 「では出発か? 戸締りもしなきゃいけないな」
婚后 「ええ、行くといたしましょう」
~同日 第7学区 大型スーパー~
絹旗 「まずメモにあるものを全部揃えましょうか」
婚后 「そうですわね、漏れがあるといけませんし」
打ち止め 「じゃ、何から買えばいいのかな、ってミサカはミサカはメモを広げてみたり」ガサガサ
フレメア 「色々書いてあるね」
絹旗 「なにせあのお店休業中ですからね。食べるもんは超一通り揃えなきゃいけませんから」
婚后 「これは結構な荷物になりますわよ」
フレメア 「怪力絹旗がいるから大丈夫、にゃあ」
絹旗 「誰が怪力ですか! これは能力です、超窒素です!」
フレメア 「? でも浜面がいつも"絹旗は怪力"って言ってた」
絹旗 「あンの野郎……次会ったら超泣かす」
打ち止め 「ね、ね、これなんて読むのかな? ってミサカはミサカは難読漢字を指さしてみたり」
婚后 「どちらですか? ええと…………」
打ち止め 「?」
婚后 「これは必要ございませんわね。何かの手違いでしょう」
打ち止め 「え? いいの?」
婚后 「ええ、大丈夫ですわ」
婚后 (どなたですか、惚れ薬などと書いたのは……)
絹旗 「超ちょっとメモ確認させてもらっていいですか?」
打ち止め 「はい」ガサッ
絹旗 「んー、チョコは当然として、小麦粉、ビスケット、ココアパウダー……バナナ?」
フレメア 「あ、それ私」
絹旗 「チョコバナナですか」
フレメア 「大体おいしい」
婚后 「そういった路線もございましたか」
絹旗 「まるで縁日ですね」
打ち止め 「上から順番にカゴに入れればいいのかな?」
婚后 「その方が少々時間はかかりますが買い洩らしはないでしょう」
絹旗 「じゃ、始めるとしましょうか」
フレメア 「カート! カート私押したい!」
婚后 「ではお願い致しますわね。きっと重くなりますわよ」クスクス
絹旗 「ええと、まず超チョコレートですね」
打ち止め 「この製菓用ブロックってやつでいいのかな? ってミサカはミサカは差し出してみたり」
婚后 「どうせ溶かしてしまうのですし、よろしいでしょう」
フレメア 「大体、何個?」
婚后 「そうですわね、とりあえず5kgほど」
絹旗 「そんないります!?」
婚后 「あの人数なのですよ? それに失敗しないとも限りません」
絹旗 「まあ、確かに……」
打ち止め 「5kgってことはこれを……10個!!」
フレメア 「10個投入ー」ポイポイ
絹旗 「初っ端からこの量ですか……」
婚后 「想定できていたことですが……これはそれ以上の大荷物になりそうですわね」
打ち止め 「どんどん行こうー!」トテテテ
フレメア 「おー!」ガロガロガロガロ
~その頃 第7学区 大手雑貨店~
ショチトル 「ラッピングとは一口に言うが、何が必要なんだ?」
結標 「ざっとあげると包装紙、箱、リボン、袋あたり?」
滝壺 「あと緩衝材とかもあるといいかもね」
ショチトル 「緩衝材?」
白井 「箱等に敷き詰めてつかいますのよ。細切りにした紙の束だとか」
ショチトル 「あぁ、なるほど」
結標 「そういう訳だから、その辺のものをかき集めていきましょうか」
白井 「結標さん、お待ちになって」
結標 「?」
白井 「まずメモにある必須リストから片付けませんと」
滝壺 「そうだ。そこにあるのは買い忘れちゃいけないんだったね」
ショチトル 「では、上から順番に探していくとするか」
白井 「そうですね、ええとメモによりますと……」ガサッ
滝壺 「最初はなに?」
白井 「……丈夫で軽い、正方形の白い箱。深さは5cm前後」
結標 「細かいわね……」
ショチトル 「こだわりを感じるな」ウン
結標 「そういうものなの?」
白井 「とはいえ、任されている以上はなるべくニーズを満たしませんと」
滝壺 「箱だね、探してみようか」
結標 「箱、箱……」
ショチトル 「ボックスというコーナーがあるぞ。ここじゃないか?」
白井 「あ、こちらで探せばよさそうですわね」
結標 「これ良さげだけど……微妙に正方形じゃないわね」
ショチトル 「これは?」
白井 「んー……少々深すぎでは」
滝壺 「あった」テッテレー
結標 「正方形で白い箱、深さもまあ大丈夫そうね」
ショチトル 「では次だな」
白井 「えー、次は……包装紙、英字新聞を切った貼ったデザインしたようなの」
結標 「よく見かけるわね、そういう包装紙」
滝壺 「これはすぐ見つかりそうですの」
滝壺 「じゃ探しに」
ショチトル 「あったぞ」ハイ
結標 「え? もう見つけたの?」
ショチトル 「いや……後ろ振り向いたら包装紙の棚だったから」
滝壺 「あ、ホントだ。気付かなかった」
結標 「すぐ見つかってよかったじゃない。次は?」
白井 「ええと、木製の箱、特定の手順で表面のパネルを動かしたときだけ開くやつ」
結標 「誰よそんなの書いたの!?」
滝壺 「からくり箱? それとも寄木細工?」
ショチトル 「さすがにないだろう……」
結標 「ちょっと簡単に見つかりそうにないから後にしましょう」
白井 「それがよさそうですの。では次は……布製、白いリボン」
ショチトル 「リボンか……この辺にはなさそうだな」キョロキョロ
滝壺 「仕方ないね、探しに行こう」
結標 「分かってたけど、一筋縄じゃいかないわね」
~その頃 第7学区 とある病院 処置室~
冥土帰し 「どんな感じかね?」
番外個体 「……かゆ、うま」ムズムズ
麦野 「ま、ギプスしてたところは3週間近く洗ってなかった訳だからな。かゆくもなるわ」
冥土帰し 「動かした感じはどうかね? 痛みとかは」
番外個体 「やっぱ思うようには動かないし力も上手く入らないけど、痛みはそれほどでも」
冥土帰し 「まあ、そこはおいおいリハビリしていくといいね? 当分は重いものを持ったり、
激しく動かしたりは避けるように。また折れるということはないが、痛みが発生するからね?」
番外個体 「はいはい。にしても右腕折ったときよりも全然いい感じ。やっぱ腕のいい先生に診てもらうと違うねー」
麦野 「そりゃそうだ。私なんか左腕折ったどころか吹っ飛んだけど、それも治しちゃうんだからな」フンス
冥土帰し 「君は義手だけどね? ひとまず、今日はこれで完了だね」
麦野 「ほら、これ持って行きな」
番外個体 「なにこれ?」
麦野 「骨折患者向けの注意点と、ご家庭でもできるリハビリ法をまとめたパンフレット」
番外個体 「へー」ペラペラ
麦野 「……にしても、3週間か。色々溜まってるんじゃないの?」
番外個体 「そりゃね。なんだかんだいって不便だったから、それなりにストレスが」
麦野 「そっちじゃないわよ」デコピンッ
番外個体 「いたっ。え、じゃなんの話?」
麦野 「第一位のお、あ、い、て」
番外個体 「」プシューー
麦野 「ギプスもとれたし。お預け食らいまくったワンちゃんが、今夜あたり餓狼になるかもな?」ニヨニヨ
番外個体 「それは、大丈夫だと思う。……多分」
麦野 「あ、なに? そんな身体でも処理してやってたの?」
番外個体 「なんもしてないし! いや、そうじゃなくて!」
麦野 「片腕使えないし、ご自慢のバストも使えないとなると、あと使えるのは」
番外個体 「先生、ここにセクハラおやじがいます! 隔離病棟にブチ込んでください!」
冥土帰し 「麦野さん、患者のプライバシーを詮索するような言動は控えるようにね?」
麦野 「友人として接してるので大丈夫ですん」
番外個体 「こんの耳年増が」
麦野 「誰が年増だ」ズビシッ
番外個体 「ふぎゃ」
:
:
:
番外個体 「おまたせー」
エツァリ 「おや、お帰りなさい」
一方通行 「調子はどォだ?」
番外個体 「万全とはいかないけど、まあ一区切りでしょ」
浜面 「そうかそうか、そいつは何よりだな」ウン
麦野 「あ、よかった。まだいた」
一方通行 「なンだ、まだなンかあンのか」
麦野 「アンタの嫁は平気よ。私が用事あるのはそっちのチンピラ」
浜面 「すいませんでしたぁ!」ガバッ
麦野 「……なんで謝ってんの?」
浜面 「え? いや、お前が俺に用事あるっつったら、俺が何かやらかしたか、
もしくは"機嫌が悪いから原子崩しさせろ"の二択だろ?」
麦野 「テメェは人をジャンアンかなんかと勘違いしてんのか!」バシッ
浜面 「いてぇ!? なんだよ、モノ投げるな……って、なんだこりゃ?」
エツァリ 「おやおや、この包みはもしや」
麦野 「自分が食べたくて買ったついでだよ。時期も丁度いいし、やるよ」
番外個体 「あれれ? ついでに買った品物に、こーんな綺麗で可愛いラッピングg」
麦野 「やん、またギプス巻きたいの? いいわよぉ、アフターケアもお仕事だから♪」パキポキ
番外個体 「なんでもないです」ササッ
一方通行 「オイ、俺の後ろに隠れンな」
浜面 「時期って……おおそうか、明日はバレンタインか!」
エツァリ 「それすらも気付いてなかったのですか」ハァ
麦野 「バレンタインも気付いてないヤツだから、ついでの品で十分よね」
浜面 「いや、ついででもチロルでもいいんだよ。男にとってのバレンタインつうのはな、
零と一、この間には天と地ほどの差があるもんだ」
エツァリ 「零回避は確定的明らかなご身分でそれを語りますか」
浜面 「ともかくありがとな、麦野。で、これなんて読むんだ? ぴえれ……んん?」
麦野 「別になんだっていいだろ。ハラに入れば同じよ」
一方通行 「」プルプル
番外個体 (必死に笑い堪えてるし)
麦野 「ま、せいぜいありがたく食いな。じゃ私、仕事に戻るから。お大事に」ヒラヒラ
番外個体 「またねー」ノシ
エツァリ 「さて、これからどうしましょうか」
浜面 「まあ、とりあえず出るか?」
番外個体 「ゴメン、送ってもらっといて悪いんだけどさ。私ここで退場」
浜面 「お、どっか行くのか?」
一方通行 「あっちに向かうンだろ?」
番外個体 「うん、様子だけ見てこようかなーと思って」
エツァリ 「お店の方ですか、それもよいかもしれませんね」
浜面 「だったらまた俺が運転してくか?」
番外個体 「んー、いいよ。最近引きこもってて運動不足だったし、帰りぐらいは歩いていくよ」
エツァリ 「大丈夫なのですか?」
番外個体 「平気平気、もともと脚の方はなんともなかったんだしね」
浜面 「まあ、気をつけてくれよ。なんかあったら連絡してくれ、こいつが飛んでくから」
一方通行 「なンでオマエが言うンだよ……まあ、必要があれば飛ぶけどな」
エツァリ 「みなさんによろしくお伝え下さい」
番外個体 「……いけね、忘れるとこだった。これ二人に、今日の報酬代わり」ハイ
浜面 「こ、これはもしやまさか! チヨコレイトでございますか!」
エツァリ 「なんだか申し訳ないですね、そこまで働いてませんよ」
浜面 「お前はな。俺は後ろから蹴られながら運転したんだぞ」
番外個体 「まあまあ、義理だなんて分かりきってるでしょ?」ニャハハ
一方通行 「……」クピクピ
エツァリ 「……? 一方通行さんにはないんですか?」
浜面 「バカお前、本命には本命用があるんだろ? そこは察してやるのが粋ってもんでしょうが」
エツァリ (なんで人のことになると敏感なんですかね)
番外個体 「じゃ、後は野郎3人で楽しんでおくといいよ。じゃね」ノシ
浜面 「はいよぉ」
エツァリ 「またその内に」
一方通行 「気をつけろよ」ノシ
浜面 「さて、どうするか」
エツァリ 「本来の任務である護衛と送迎は完了しましたからね。車もお返ししますか?」
一方通行 「ここで返されても困るだけだ。今日一杯は好きに使ってろ」
浜面 「別に今すぐ行きたいところがある訳でもなし」
エツァリ 「とはいえ、ここに留まる訳にもいかないでしょう」
エ浜通行 「「「じゃあ、ウチにでも」」」
浜面 「……被ったな」
エツァリ 「被りましたね」
一方通行 「被っちまったな」ハァ
~同日 第7学区 とある路地~
フレメア 「」ヨテヨテ
打ち止め 「ね、大丈夫? ってミサカはミサカはおぼつかない足取りのフレメアを心配してみたり」
フレメア 「だ、大体、大丈夫」フンヌ
絹旗 「予想通り、超すごい荷物になりましたね」
婚后 「チョコレートに加えビスケットにパウダーにナッツ……牛乳に小麦粉に卵とくれば……応えますわね」ズッシリ
絹旗 「二人は大丈夫ですか?」
打ち止め 「袋が手に食い込んで、ちょっと痛いかも」
フレメア 「大体、重い……」
婚后 「さすがにわたくしと絹旗さんも、これ以上は分担できませんし……」
絹旗 「超失敗しました。こっちに一人多くまわしてもらえばよかったですね……というかですよ」
婚后 「?」
絹旗 「こういうときのためのテレポ屋さんなのに、白井さんと結標さんが同じチームになっちゃったのが失敗でした」
婚后 「ご本人が聞いたら呆れる発言ですわね。まあ、もう少しなのですから、頑張りましょう」
フレ止め 「「はーい」」
絹旗 「さすがにここまで来てから諦めてタクシー使うのも超バカらしいですしね」
婚后 「雨でも降っていれば迷わず使ったのでしょうけれど」
打ち止め 「あ、見えてきたよ! ってミサカはミサカはゴールが近いことに喜びを感じてみたり」
フレメア 「やっとついたー」
絹旗 「……婚后さん、私いま超すごくイヤなことに気付いたんですけど」
婚后 「絹旗さん……もしやわたくしと同じ考えなのかもしれません」
フレ止め 「「?」」
絹旗 「で、でもほら、滝壺さんたちが先に戻ってればそんな心配ないですよ!」
婚后 「そうですわね、あちらのチームが向かったであろう手芸品店や雑貨店がここからだと
少し離れていることなど、この際些末な問題に過ぎませんわね」
打ち止め 「……あの、もしかして」
フレメア 「鍵持ってない……」
絹旗 「超大丈夫です! いざとなったら婚后さんと私の超ツープラトンでドアを」
婚后 「そ、それはいくらなんでもいけませんわよ」
フレメア 「ちょっと持ってて」ハイ
打ち止め 「え!? ちょっと、え!?」ズッシリ
フレメア 「」ガチャガチャ
フレメア 「……大体開かない」
婚后 「」アチャー
絹旗 「ええ、そりゃ片手で目を覆いつつ天を仰ぐポーズもしたくなりますよね」
フレメア 「電気でびびびーて開けられない?」
打ち止め 「ミサカじゃムリかも、お姉ちゃんなら……ていうかそもそもここのドア、電子ロックじゃないよ」
絹旗 「超仕方ないですね、ここは私が」
婚后 「だからダメです! 他所様の建物なのですから!」
絹旗 「えー、じゃどうするんですか」
婚后 「……向こうのチームに連絡をとって、鍵を持ってる方だけ戻ってきてもらうか。乃至は」
打ち止め 「ないしは?」
婚后 「帰ってくるまで待つかの2択ですわね」
フレメア 「食べ物、悪くならないかな」
絹旗 「それが一番の超懸案事項ですね」
婚后 「では連絡を取りましょう。今はそれが最善策でしょうから」カチカチ
<あれ?何やってんの?
打ち止め 「え? あー!」
番外個体 「路上販売するなら、もうちっと人が多いとこ行ったほうがいいよ」
婚后 「あら、ミサワさん?」
絹旗 「今日病院じゃないんですか?」
番外個体 「もう終わったよ。ギプスないでしょ?」ホラ
フレメア 「大体、大丈夫なの?」ペチペチ
番外個体 「うん、もう骨はくっついたから」
打ち止め 「でもこれからリハビリだよね? ってミサカはミサカはあの人と話してるのを盗み聞きしたのを思い出してみたり」
番外個体 「ま、気長にね」
絹旗 「一ヶ月かかりませんでしたね。超よかったじゃないですか」
婚后 「一時はどうなることかと思いましたが」
番外個体 「でもこの子が言ってたように、リハビリもあるんだけどね。明日からここを営業再開とはいかないかな」
婚后 「性急に走らず、身体と相談しながらがよろしいですわね」
絹旗 「あ、そうだ。ミサワさん、超早速でホント申し訳ないんですけれども」
婚后 「こちらの鍵、お持ちではないですか?」
番外個体 「ああ、外で何やってんのかと思ったらそういうことだったの? 今開けるよ」ゴソゴソ
~同日 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
<カランカラン♪
番外個体 「うっわ、なんか懐かしい」
絹旗 「3週間ぶりならそうも感じるでしょうね」
打ち止め 「よいしょー」ドサッ
フレメア 「疲れたー」ドサッ
婚后 「お二人ともお疲れ様でした。あとはわたくしたちでやりますので、休憩なさってください」
絹旗 「すいません、超お願いします」
婚后 「絹旗さんはこちらです」グイ
絹旗 「あうぅ、私だって超疲れてるのに」ズルズル
番外個体 「冷蔵庫の電源、入ってないでしょ?」
婚后 「え? あら、本当に」
番外個体 「ブレーカーごと落としてるからさ。ちょっと待ってね」
絹旗 「食材は超処分したって聞いてましたけど、ここまでしてたんですね」
番外個体 「保存きくヤツはしまっておけばいいんだけどね。要冷蔵のヤツはショチトルに持って帰ってもらったよ」パチッ
婚后 「卵やバターなど、常温では保存がききませんものね」
絹旗 「じゃ、とりあえずどんどん放り込んでいきましょうか」ガサガサ
婚后 「ミサワさん、改めて。設備お借りしますわね」
番外個体 「使うがよい」
絹旗 「でも助かりましたよ。あっさり貸してもらえて」
番外個体 「ほっといてもテナント料は発生するからね。使ったほうがまだマシってもんでしょ」
婚后 「言えてますわね」クスクス
フレメア 「ねえねえ」
婚后 「どうされました?」
フレメア 「ついでに買ったジュース、どこかな」
絹旗 「ええと……どの袋でしょうね」
打ち止め 「」ガサガサ
番外個体 「なんか探し物?」クピクピ
打ち止め 「うん、買い物ついでにペットボトルのあーーー!」
番外個体 「?」
打ち止め 「今飲んでるのって……」プルプル
フレメア 「落ち着いて、ミネラルウォーターは買ってない」
打ち止め 「そういえばそうだった」ウン
番外個体 「いくら私でも勝手に飲んだりはしないよ」
絹旗 「超終了です」バタン
婚后 「後は、向こうのチームの帰りを待つばかりですわね」
番外個体 「そういや、これで全員じゃないよね? 他の人はどうしたの?」
フレメア 「ラッピング、にゃあ」
打ち止め 「2チームに分かれて買い物だよ、ってミサカはミサカは達成感を感じつつ答えてみたり」
番外個体 「なるほど、それで4人が先に帰ってきちゃったと。じゃ、あとは……5人?」
絹旗 「? 4人ですよ。一人多く数えてます」
婚后 「……まさか、わたくしたちも知らない間に5人目が」
フレメア 「」クピクピ
打ち止め 「」プハー
番外個体 「ん? 間違ったかな?」
絹旗 「あ、もしかして黒夜を数えちゃってます?」
番外個体 「え、いないの?」
婚后 「そういえばおられませんわね」
絹旗 「声はかけたんですけどねー、後で超いじけるから。そしたら返信が……」カチカチ
婚后個体 「「?」」
差出人:窒素女
<kuro-iruka@comodo.ne.jp>
件名:Re:2月13日
日付:20yy/m/d 22:12
───────────────
せっかくだけどな、甘いものは得意
じゃないし、渡す相手もいないから
パス。
でも絹旗ちゃんからのチョコは欲し
い。くれ。イルカ型な。
番外個体 「はー、なるほど」
婚后 「さりげにリクエストされてますわね」クスクス
番外個体 「クロちゃんも、銀さんに渡せばいいのにね」
絹旗 「銀さん?」
番外個体 「カマキリロボの人」
絹旗 「あぁ、はいはい」
婚后 「一瞬わかりませんでしたわ」
番外個体 「これ以上なく分かりやすく、且つ的確なネーミングだと思うけどなぁ」
絹旗 「超本人はどう思うかですけど。ところで、ミサワさんは今日はどうするんですか?」
番外個体 「見学と味見係」
絹旗 「それじゃ結標さんのチョコを超たっくさん食べてもらいましょう」
番外個体 「……私、絹旗さんの恨みを買うようなことした?」
婚后 「あの、さすがに結標さんの腕もそこまで非道いものでもないかと」
絹旗 「あ、恨みと言えば! ミサワさん、人の名前」
<カランカラン♪
結標 「ただいまー」
番外個体 「あ、噂をすれば」
結標 「あれ? 来てたの?」
番外個体 「予想外に早く終わったから、見学と味見係にね」
滝壺 「よいしょ」ドサッ
ショチトル 「あぁ、先を越されてしまっていたか……」
白井 「鍵をこちらが持ってることに気付いて、やむをえず連続テレポで戻ってきましたのに……」
絹旗 「だったらショチトルだけ戻ってくれば超よかったんじゃ」
ショチトル 「その発想はなかった」
フレメア 「お姉ちゃんがたまたま来てくれたから助かった、にゃあ」
ショチトル 「マスターは徘徊して大丈夫なのか?」
番外個体 「徘徊って……うん、まあ大丈夫でしょ。先生の腕がよかったからね」
滝壺 「でも無理は禁物」
白井 「そうですの、また何かあったら困りますもの」
番外個体 「だから今日は見学」クスクス
結標 「まあ、ここの設備を知り尽くした人がいてくれたほうが助かるわね」
フレメア 「ねえ、チョコ作る?」
打ち止め 「さっそく始める? ってミサカはミサカはwktkしてみたり」
滝壺 「ちょっと休憩しよ」
白井 「あ、でしたらそちらのチームから始めて頂いても」
絹旗 「すいません、こっちも今休憩中なんです」
婚后 「大荷物でしたものね」
結標 「私たちも少し休みましょうか」
白井 「そうですわね、連続で空間移動は少々こたえますの」
滝壺 「じゃ、みんなで昼休みだね」
ショチトル 「昼休みか……ちょうどいいな、昼食にするか?」
絹旗 「とは言っても、チョコの材料以外に食べるものなんてなんにもないですよ」
番外個体 「宅配でいいじゃん」
婚后 「では何か適当に頼んで、ささっと済ませてしまいましょうか」
~その頃 第7学区 とあるファミレス~
浜面 「ま、何はともわれ腹ごしらえだよな」
エツァリ 「丁度食事時ですしね」
一方通行 「しっかし、オマエらその服装は気合入れすぎだろ」
浜面 「考えてみたらお前だけ浮いちゃってるな。服も中身も白くて」
一方通行 「殴るぞ」
エツァリ 「そうですね……一方通行さんにも事前にスーツ着用を打診しておくべきでしたか」
一方通行 「そォじゃなくてだな……あァ、いいや。めンどくせ」ハァ
浜面 「しかし、ミサワの姐さんの評価はマトリックスにMIBか」
エツァリ 「何かご不満でも?」
浜面 「俺としては敏腕の運び屋を意識したつもりだったんだがな」キリッ
一方通行 「悪かったな。あいつの車がBMWじゃなくてよ」
浜面 「いやいや、別にいいんだけどな」
エツァリ 「さて、何にしましょうか」
一方通行 「……サーロインステーキ」
浜面 「お前、それしか頼まねぇのな」
エツァリ 「いいじゃないですか、こういうときぐらい好きなものを食べても」
一方通行 「形が残った肉なンざ食えるのは外食のときぐれェだからな。見逃せ」
浜面 「そういうもんなのか……お、この店でもバレンタインメニューなんてやってるんだな」
エツァリ 「これは興味深い。チョコフォンデュでも頼んでみますか?」
一方通行 「似合わねェにもほどがあンだろ」
浜面 「……おいおい、ハンバーグのソースにスパイシーチョコなんてのがあるぞ」
エツァリ 「もしやモーレソースでは? 懐かしいですね」
浜面 「懐かしい?」
エツァリ 「ええ、自分の故郷ではよく食べられていますよ」
浜面 「面白そうだな、俺これにしよ」
エツァリ 「では自分も懐かしさからそれで」
一方通行 「決まりだな? 押すぞ」ポチットナ
店員 「はい、ご注文をどうぞ」シュタッ
:
:
:
浜面 「しかしチョコか……ぐふふふ」
一方通行 「なァ、こいつとうとう頭おかしくなったのか?」
エツァリ 「困りましたね。病院に引き返すことになりそうです」
浜面 「いやいや、俺は至って正常だぜ。見てくれよ、これ」ジャジャン
エツァリ 「ミサワさんと麦野さんから頂いたチョコレートですね」
浜面 「最終的には最下位に落ちるのは目に見えてる。あぁ、それはいいんだ。俺の人生いつもそうだったからな」
一方通行 (ここのコーヒーいまいちだな)ズズ...
浜面 「だが! 今この場において、俺はもらった数暫定第一位だ! 畏れ入ったか!」
エツァリ 「さすがです。適いませんね」
浜面 「いやぁ、俺の人生も上向いてきたなぁ」キラキラ
一方通行 「やっすい人生だな」
店員 (あーあ、バレンタインってなんだよ。そんなことより地球とか滅びねぇかな。明日にでもさ)
店員 「失礼致します。サーロインステーキのお客様」
一方通行 「はいよ」
店員 「器お熱いので、お召し上がりの際はお気を付けください」カチャ
~同日昼 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
フレ止め 「「」」ゲフー
結標 「こら、女の子が堂々とゲフーってしちゃダメ」
番外個体 「いいじゃん、別に」モシャモシャ
結標 「一方通行と貴女のところにいて大丈夫なのかしら……」
白井 「あぁ、でしたらわたくしが一から千まで淑女としての教育を」
絹旗 「超心配になりますよ、そっちの方が」
ショチトル 「そろそろ片付けるぞ。これではこの後の作業にも支障が出るだろうからな」ゴソゴソ
婚后 「あ、手伝いますわよ」
ショチトル 「あぁ、済まない」
滝壺 「」ウトウト
フレメア 「お姉ちゃん、起きて」
滝壺 「いけない、お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった」
番外個体 「にしても、サンドイッチ屋さんもまさかカフェから注文が来るなんて思ってなかったろうね」ケラケラ
絹旗 「事情を知らない人からすれば、空き店舗をジャックした超不良の群れですよね」
結標 「喫茶店にたむろする不良、ね……いつの時代の話よ」
婚后 「さて、そろそろ始めましょうか」
打ち止め 「どういう風にやるの? ってミサカはミサカはフォーメーションを気にしてみたり」
絹旗 「買い物のチーム分けと超同じでいいんじゃないんですかね」
ショチトル 「そうだな、ここの広さだと同時に作業できるのは4人が限度だろう」
フレメア 「じゃ、私たちからでいい!?」キラキラ
番外個体 「そっちのチームはどうよ」
結標 「私は構わないけど」
滝壺 「うん、いいよ」
白井 「時間はあるのですし。お先にどうぞ」
ショチトル 「……決まりのようだな」
打ち止め 「準備!」E:バンダナ
フレメア 「OK!」E:ポニテ
番外個体 (ポニテって装備するもんなの……?)
婚后 「それでは、早速始めるといたしましょうか」シャキッ
絹旗 「超開始です!」
フレメア 「何からすればいいのかな」
婚后 「では、まず……何を作るかにより初動も変わりますわね」
絹旗 「私は超端的に言えば溶かして固めるだけですよ」
打ち止め 「私も」
婚后 「あら、シンプル勝負に出ましたわね」
絹旗 「今回は超ちょっと数を作る必要があるので……」
フレメア 「絹旗、もてもて?」
婚后 「ええ、絹旗さんは後輩に人気があると伺っておりますわね」クスクス
絹旗 「あんまり嬉しくないですけどね。頭もふもふされたり、猫耳つけさせられたり、
スカート捲られたり、そんなんばっかですよ」
打ち止め 「あ、去年聞いた話だね、ってミサカはミサカは瞬時に思い出してみたり」
絹旗 「アレは私じゃなくてK旗さんの話ですー」
婚后 「きっと高校に進学すれば、次は先輩に可愛がられるのでしょうね」
絹旗 「やめてくださいよ、夢も希望も超なくなっちゃいます……あ」ジャブジャブ
婚后 「?」
絹旗 「すいません、手洗ったはいいんですけど……タオルないですか?」
<後ろの棚、一番左下段の扉開ければ新品があるよー。
フレメア 「ここ?」ガチャ
打ち止め 「え、なんかたくさんあるよ? ってミサカはミサカはタオルの山を凝視してみたり」
絹旗 「超一枚お借りしていいですか?」
<一枚借りるとか言わず、何枚か持って帰っちゃって。
絹旗 「は、はあ」
婚后 「あら? こちら……」
フレメア 「大体、お店の名前っぽいのが書いてある」
<卸売業者さんがさー、どっさり置いてったんだよ。
打ち止め 「……このタオル、うちのキッチンとお風呂とお手洗いと玄関とあの人の寝室にもある」
絹旗 「超余ってますね……じゃ、遠慮なく一枚お借りします」フキフキ
婚后 「お二人も、手は洗いましたか?」
フレ止め 「「大丈夫!」」フンス
絹旗 「んではまず、超溶かしましょうか」
婚后 「そうですわね、どの道必要になるでしょう」
フレメア 「ええと、ということは」
打ち止め 「チョコレートを寸分刻みにまで切り刻むんだよ、ってミサカはミサカは教えてみたり」
絹旗 「たまに怖い言い方するのは超ご両親の影響でしょうか」
打ち止め 「?」キョトン
婚后 「刻むには包丁を使うのですが……お二人とも、包丁を握ったことはございますか?」
フレメア 「家で教えてもらってる」ハイ
打ち止め 「同じく、家で教えてもらってる」ハイ
婚后 「それではお二人にお願い致しましょうか」
絹旗 「え、大丈夫なんですか?」
婚后 「何事もやらないことには上達しませんもの。怪我したとしても、それも糧ですわ」
絹旗 「いや、怪我させたら超怒られそうなんですが……」
婚后 「そうならないように、わたくしたちが付いているのでしょう」
打ち止め 「じゃ、フレメア。チョコとってこよう」
フレメア 「おー」トテテテ
婚后 「では今の内にお湯の準備をすると致しましょう」
絹旗 「はーい」ゴソゴソ
番外個体 「しっかし甘くないチョコだね」ポリポリ
結標 「クーベルチュール用って、要は加工用ってことでしょ? なら甘くないわよ」ポリポリ
ショチトル 「」ポリポリ
打ち止め 「何食べてんのー!」
フレメア 「それ溶かして使うヤツ!」
白井 「申し訳ございません。止めたのですが……」
滝壺 「」スピー
番外個体 「いや、素材の味を知らないとさ、どう作るのかも」
打ち止め 「あなたは作らないじゃん!」プンスコ
結標 「ゴメンね、味見したかったの。これで終わりにしておくから」クスクス
白井 「出番なのですよね? こちらお持ちください」
打ち止め 「あ、ありがと!」
フレメア 「足りなくなったらまた取りにくる」
打ち止め 「よーし、(パク)始めよー!」
フレメア 「(パク)がんばろー!」
ショチトル 「……今一口食べたぞ」
白井 「女子は甘い物の誘惑に弱いものですの」
フレメア 「持ってきた!」トテテテ
婚后 「では、お湯を沸かしている間に刻んで頂けますか?」
打ち止め 「……絹旗、そのポットで沸かしてるの? コーヒーでも作るの?」
絹旗 「ヤカンがこれしかなかったんですよ!」
フレメア 「ねえねえ」
打ち止め 「?」
フレメア 「大体、半分こ」バキン
打ち止め 「あ、うん。じゃこっちやるね!」
絹旗 「大丈夫なんですかね」
婚后 「ここは見守りましょう」ナデナデ
絹旗 「なんで私の頭を超撫でるんですか!」ウガー
フレメア 「どれぐらいの大きさ?」
打ち止め 「もー、とにかく細かく!」
フレメア 「大体分かった!」
婚后 「あ、大きさはなるべく均一にしたほうが後で困りませんわよ」
打ち止め 「了解!」シャキン
フレメア 「それじゃあ開始、にゃあ」チャキッ
<ドカカカカカ
<ドコドコドコドコ
婚后 「……まずはいいスタートですわね」
絹旗 「そうなんですか?」
婚后 「これで"どっちか早く終わるか勝負!"なんて言い出したら全力で止めるところでした」
絹旗 「あー、確かに。それは超危ないですね」
婚后 「それにしても絹旗さんも。バンダナ姿が様になっておりますわね」
絹旗 「いやいや、婚后さんこそ。給食のオバちゃんみたいで超いい感じです」
婚后 「……それは褒めているのですか」
<ド カカンド カカンド カカン
<ドンドンカッ ドンドンカッ
絹旗 「なんか超リズムがついてきましたよ」
婚后 「まるでアレですわね。せき止め飴」
絹旗 「あー、今年のお正月にテレビで観ましたよ。切ったばかりのは超美味しそうでしたね」
婚后 「では来年のお正月に行ってみては?」
絹旗 「まだ全然先の話じゃないですか。あ、もういいですかね」バチン
婚后 「大体50℃ぐらいですか」
絹旗 「……まあ、超50℃ぐらいじゃないですかね」
婚后 「ここは大事ですから、なるべく正確に行きたいところですが」
絹旗 「ミサワさん、超温度計ってないですか?」
<ちょうど絹旗さんの真後ろの引き出し。
婚后 「こちらですか?」ガラッ
絹旗 「おっ、たしかに温度計ですけども……」
婚后 「この金属の棒をお湯に入れればよいのですね」スチャ
絹旗 「いや、なんでこんな超本格的なのが」
婚后 「では、絹旗さん。メータのご確認を」
絹旗 「はいはい」ピッ
婚后 「どうでしょう」
絹旗 「……55℃ですね。超いいんじゃないですか」
婚后 「お湯の準備はよさそうですわね」
絹旗 「じゃ、後はチョコレートですけど」
打ち止め 「できてるよ?」ハイ
フレメア 「これで大丈夫かな?」
婚后 「っ……こ、こちらは……!」
絹旗 「なんと超均一な……」
打ち止め 「も、もしかしてマズかった?」
フレメア 「だっ、大体やり直しー!」
打ち止め 「いそげー!」
婚后 「だっ、大丈夫です! 大丈夫ですから!」
絹旗 「もうこれで超上出来ですよ!」
フレメア 「でも、刻みながら食べたからちょっと少ないかも」
打ち止め 「あ、フレメア!」
フレメア 「あ」
絹旗婚后 「「……」」
フレ止め 「「……にゃはは」」
婚后 「まったく、絹旗さんみたいなことをしてはダメです」ハァ
絹旗 「えぇ!? なんで私!?」
<絹旗さんも、共同生活時代はつまみ食い常習犯だったではないですか。
<ちょっ、超昔の話です!
白井 「……フレメアも小さい大きいお姉様も、なかなかに器用ですのね」
番外個体 「なんだろうね、器用さってのは。素養なのかな?」
ショチトル 「訓練で身につけることもできるが、生まれ持った要素も大きいだろう」
滝壺 (そういえば、フレンダも手先は器用だったな)ポケー
結標 「正直羨ましいわ……」
番外個体 「おやおや? 最強のテレポ屋さんがそれ言うかな」
結標 「手先の器用さとは別よ」
白井 「結標さんは、料理の腕は鍛えておられますの?」
ショチトル 「見た目さえ気にしなければ、食べられるぐらいにはなった」
白井 「あら。それはすごい上達ぶりですの」
結標 「なんで貴女が答えてるのよ!」ペシッ
番外個体 「あ、うちの店員への狼藉は許さんよ」
結標 「私からすれば妹同然の存在だから許されるの」ギュゥ
ショチトル (胸が! 胸が口を塞いで息が!)バタバタ
~その頃 第7学区 番外通行邸~
浜面 「いや、悪いな。お邪魔しちまって」
一方通行 「構やしねェ。どォせ暇なンだ」
エツァリ 「お仕事の邪魔ではないですか?」
一方通行 「そこまで切羽詰まってねェよ」
浜面 「仕事? 自宅警備員か?」
一方通行 「自宅警備員? なンだ、自己紹介か?」
浜面 「すいません」
エツァリ 「丁度いいですね。先日のあれ、浜面さんにも見て頂いては?」
浜面 「?」
一方通行 「……ちょっと待ってろ」
:
:
:
一方通行 「今書いてる分だ」ドサッ
浜面 「……なんじゃぁ、こりゃぁ」
エツァリ 「一方通行さんが始めた"お仕事"です」
浜面 「一言で言や物書きか? ま、お前らしいっちゃらしいわな」ガサガサ
エツァリ 「先日も思ったのですが、小説はないのですか?」
一方通行 「そっちは専門外だ」
浜面 「なるほど。ま、確かにお前が小説ってのもイメージしづらいわな」ケラケラ
エツァリ 「さて、浜面さん。一方通行さんが執筆しているこれらは、平たく言えば
"人に理解してもらう"ための文章です」
浜面 「まあ、教科書つうか参考書だからな。それもそうだろ」
一方通行 「オイ、2号。試しにコレ読んで感想聞かせてくれ」ハイ
浜面 「お、どれどれ……ふむふむ……なるほど」
エツァリ 「これは好感触でしょうか」
浜面 「」ボンッ
エツ通行 「「!?」」
浜面 「」プスプス
エツァリ 「……一方通行さん、何を見せたのですか」
一方通行 「数理物理学の入門参考書の下書きなンだが」
エツァリ 「浜面さんが爆発しないぐらいの難易度にしてくださいよ」
~同日 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
フレメア 「おー」トローリ
打ち止め 「前に聞いたけど、フレメアって家でお菓子作ってるんだっけ?」
フレメア 「うん、滝壺お姉ちゃんと一緒に作ってる。でもチョコは大体初めて」
絹旗 「じゃ、次はちょっと冷ましましょうか」
打ち止め 「え?」
フレメア 「冷ますの?」
婚后 「ええ。ここで一旦冷まして、また少し温めてから固めれば、完成形がより綺麗になりますのよ」
フレ止め 「「おー」」
絹旗 「超丁度いいことに、やたらと本格的な温度計もありますし」
婚后 「では絹旗さん、こちらはお願い致しますわね」
絹旗 「? 婚后さん、どうするんですか?」
婚后 「わたくしはわたくしの準備もしなくては」ゴソゴソ
打ち止め 「無塩バターにタマゴ……」
フレメア 「もしかしてケーキ?」
婚后 「あら。こんなに早い段階で当てられてしまうなんて」
絹旗 「婚后さん、去年は確か超ムースでしたよね」
婚后 「昨年は冷やして作るものでしたので、今年は焼いて作るものにしようかと」
絹旗 「あ、そういう違いなんですか」
フレメア 「ねー、冷ますときって大体まぜまぜしながらのほうがいいかな」
絹旗 「その方が温度のムラできないんじゃないんですかね」
打ち止め 「じゃ今度は私やる!」ハイ
フレ旗 「「どうぞどうぞ」」
絹旗 「温度は……超35℃。ええと、どれぐらいがいいんでしたっけ」
婚后 「大体28℃ぐらいだったかと思いますが」カチャカチャ
打ち止め 「もうちょっとだね」マゼマゼ
絹旗 「あ、そうだ。ミサワさん、パンの耳とかないですかー?」
<は?なんに使うの?
絹旗 「この状態のチョコをつけて食べてみようかと」
婚后 「……絹旗さん、やめてくださいな。二人も見てる前で」
フレ止め 「「」」ヒソヒソ
絹旗 「ちょ、なんですか。超味見じゃないですかぁ!」
:
:
:
【冷蔵庫】<バタン
絹旗 「あとは超固まるのを待つばかりですね」
打ち止め 「まだだよ?」
絹旗 「え? なんかあるんですか?」
打ち止め 「これ! デコるの!」スチャ
絹旗 「あ、超チョコペンですか。そういえば買ってましたね」
フレメア 「」ジー...
絹旗 「この立ち並ぶチョコバナナ、超もろに屋台ですよね」
フレメア 「大体、まだ固まらないかな」ジー...
打ち止め 「さすがにまだかかるんじゃないかな」
絹旗 「人数分の本数はないので、超カットして食べることになると思いますよ」
フレメア 「……浜面のだけは残しておく」
絹旗 (どうやって持って帰るつもりでしょう)
婚后 「」ウーーン
絹旗 「婚后さんはどうしたんですか」
婚后 「いえ、オーブンには入れたのですが……」
フレメア 「さっきから漂ういい匂いはこれだね」クンカクンカ
打ち止め 「香ばしくて甘くて……」クンカクンカ
婚后 「業務用のオーブンなので勝手分からず、半ば勘でやってしまいまして」
絹旗 「まあ、超大丈夫だと思いますよ」
婚后 「大丈夫でしょうか……」
絹旗 「超コゲたら匂いで分かるじゃないですか」
婚后 「コゲてからでは遅いのです!」
打ち止め 「ね、もう洗い物したほうがいいのかな」
婚后 「あ、そうですわね。こちらはともかく、片付けを始めましょう」
絹旗 「超白井さんチームに引き継がないといけませんしね」
フレメア 「じゃ、片付け開始ー」
打ち止め 「おー」
婚后 「洗い物、お任せしても平気ですか?」
フレメア 「水じゃぶじゃぶするの好きだから平気、にゃあ」
絹旗 「じゃ、私たちゴミ片付けるんで超お願いしますね」
打ち止め 「任せて!」フンス
フレメア 「♪」ジャブジャブ
打ち止め 「ちょ、ちょっとフレメア。お皿は裏も洗わないとダメ」フキフキ
絹旗 「……そういえば、今まで気にしてなかったんですけど」
婚后 「?」ガサガサ
絹旗 「この二人でも、キッチンの高さ超大丈夫でしたね」
婚后 「絹旗さんが大丈夫なのですもの。こちらのお二人だって」
絹旗 「いやいや、どういう意味ですか! それに私だって、そっちの二人よりはまだ背高いですよ!」ムキー
婚后 「……」
絹旗 「スルーですか。超スルーですか」
婚后 「いえ……確かわたくしたちが、こちらのお二人と初めてお会いしたのは」
絹旗 「あの時ですよ。2回目の沖縄に行くちょっと前」
婚后 「あの頃に比べると、すごい成長っぷりだなと思ってしまいまして」
絹旗 「超成長期ですよね、きっと」
婚后 「わたくしは成長期など終わってしまいましたのに」ハゥ
絹旗 「……婚后さん、私知ってるんですからね」
婚后 「?」
絹旗 「バストサイズが今も「わーわーわー!」
絹旗 「な、なんですか、いきなり」
婚后 「わっ、わたくしの話などよいではないですか」
絹旗 「語りだしたのはそっち……まあ、でもここにいるメンバーと知り合ってもうすぐ2年ですか」
婚后 「早いものですわね」
絹旗 「この間ですね、荷物の整理をしていたときに発見した写真を見て、超実感したんですよ」
婚后 「と申されますと?」
絹旗 「身長とかスリーサイズとか髪型とか服の趣味とかありますけど、みんな超ちょっとずつ変化してるんですよね」シミジミ
婚后 「絹旗さんだけは変わらず当時のお姿を残しておられて」
絹旗 「超ほっといてくださいよ!!」ウガー
フレメア 「任務完了、にゃあ」
打ち止め 「洗い物終わったよ! ってミサカはミサカは報告してみたり」
婚后 「はい、お疲れ様でした」
絹旗 「ミサワさーん、ゴミってどこに出しとけばいいですか」
<そっちの「STAFF ONLY」って書いてあるドアの前に置いといてー。
絹旗 「STAFF ONLY……ああ、ここですか」ドサッ
婚后 「さて、後は……」
【オーブン】<ピーーーーーーーーーーーー!!!
絹旗 「はわ」ビクッ
婚后 「ひゃっ」ビクッ
フレメア 「にゃっ」ビクッ
打ち止め 「わっ」ビクッ
<ゴメン、言い忘れてた。それめっちゃ音デカイんだ。旧式だから。
婚后 「驚きましたわ」ドキドキ
絹旗 「何事かと思いましたよ」ドキドキ
フレメア 「もしかして焼けたのかな」
婚后 「そうですわね。出してみましょうか」ガコン
打ち止め 「おー、いい匂い」
絹旗 「なるほど、カップケーキでしたか。では一つ超味見を」
婚后 「こら」ベシッ
フレメア 「大体、これ使う?」つ【竹串】
婚后 「そうですわね、お願いします」
フレメア 「にゃあ」ブスッ
絹旗 「さあ、どうでしょうかね」
フレメア 「てい」スポッ
打ち止め 「……大丈夫なのかな?」
婚后 「この分なら、中まで焼けておりますわね」
絹旗 「ちょっと見せてください」
フレメア 「」ハイ
打ち止め 「この後は冷ますの? ってミサカはミサカは確認してみたり」
婚后 「熱いままでもそれはそれで美味しいのですけどね」
絹旗 「」ペロ
打ち止め (竹串舐めた……)
婚后 「あ、ダメですわよ、行儀の悪い」
絹旗 「味見ですよ、味見」タハハ
フレメア (私が味見しようと思ったのに)ムスー
絹旗 「あ、いります? 私がペロペロした竹串ですけど」
婚后 「さっさと捨てなさい!」
:
:
:
白井 「そういえば大きいお姉様は」
番外個体 「ん?」
白井 「左手の握力はどの程度まで回復しておられますの?」
結標 「そうね、前みたいにはいかないでしょ」
番外個体 「そりゃね、力みすぎるとまだ少し痛いし」
ショチトル 「復帰にはもう少しかかるか……」
番外個体 「んでもほら、この水のペットボトルぐらいなら」ベコベコ
滝壺 「おお、いろはすがぺっちゃんこ」
結標 「復帰を急ぐことはないでしょ。このお店的にはマイナスだろうけど」
白井 「そうですの、リハビリもあるのですし」
番外個体 「あ、リハビリと言えば。なんか冊子もらってきたんだった」ペラペラ
フレメア 「終わったよー」トテテテ
打ち止め 「キッチン使っていいよー! ってミサカはミサカは達成感を感じつつ引き継いでみたり」
滝壺 「うまくできた?」
フレメア 「大体大丈夫」フンス
結標 「じゃ、次私たちの番ね」
ショチトル 「さて、うまくいくといいが……」
滝壺 「大丈夫だよ」
白井 「わたくしたちが全力で結標さんをサポートいたしますの」
結標 「ちょ、何よそれ!」
ショチトル (私は自分の心配をしたのだけど)
滝壺 「ともかく準備しよう」イソイソ
白井 「そうですの、ええと持参したエプロンは」ゴソゴソ
結標 「……目に物見せてやるんだからね」
ショチトル (何事もなければいいが。まあ、ひとまず)
滝壺 「番号」
白井 「1ですの」ハイ
結標 「2」
ショチトル (店の設備が壊れないことを祈ろう)
滝壺 「」チョンチョン
ショチトル 「3」
~その頃 第7学区 番外通行邸~
浜面 「……クソッ」
一方通行 「慌てる必要はねェぞ?」
エツァリ 「落ち着いてください、焦りは禁物ですよ」
浜面 「いや、あの、そもそもな」
一方通行 「?」
浜面 「お前らが序盤で変な積み方したからっておぁぁあ危ねぇぇぇ!!」
グラングラン...
浜面 「……ど、どうにか踏ん張ってくれたか」ハァ
一方通行 「声ってな即ち空気の振動だ。振動をあてられた物体がどォなるか、オマエの頭でも」
浜面 「そこまでご大層な話でもなかろうよ」
エツァリ 「つまり大声を出すなということです。ご近所にも迷惑ですからね」
浜面 「はぁ……さて、どうしたもんか」
一方通行 「オイ、2号。いいか? どんな物体でもな、安定するポイントってのは必ず存在する」
浜面 「……」
エツァリ 「卵を立てる、ということに似てるかもしれません」
一方通行 「そこがどこか見極めろ。コレ、アドバイスだ」
エツァリ 「敵に塩ですか? ふふ、貴方らしくもない」
一方通行 「ほっとけ。このまま勝負が硬直しても面白くねェだけだ」
浜面 「あのさ、一ついいか?」
エツ通行 「「?」」
浜面 「誰のせいでこうなったと思ってんだ」
エツァリ 「生存戦略です」
一方通行 「自分に有利に、敵が不利に。それを考慮した結果に過ぎねェ」
浜面 「その結果が、なんで立ってるのかもようわからん、このジェンガか!」
グラッ
浜面 「おおおおい、頑張れよぉぉぉぉ!」
エツァリ 「しかし粘りますね、このジェンガも」
一方通行 「どンなにブロックを抜かれても、どンなにブロックを積まれても倒れねェ、か。
大したヒーローっぷりじゃねェか」
浜面 「この後あっけなく倒れることになるかもしれねぇんだけどな」
エツァリ 「まあ、ともかく先に進みましょう」
一方通行 「さっさとしやがれ」
浜面 「あぁ、わかったよ。男は度胸、ってな。話しかけんじゃねぇぞ」スー
一方通行 「……」
エツァリ 「……」
浜面 「……このまま、このまま」スー
一方通行 (いい位置だ)
エツァリ (これはいけそうですね)
浜面 「…………とれた、っ」
一方通行 「お? やるじゃねェか」
エツァリ 「やりましたね、あとはそれを上に積むだけです」
浜面 「分かってる。ここまでくればやってやるさ。引き続き話しかけんじゃねぇぞ」スッ
浜面 (安定するポイント、か……んなもん分からねぇ。やっぱ最後に頼りになるのは……)
浜面 (勘と度胸、だよな!)
浜面 「ここだ!」トンッ
ガシャンッ
~同日 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
結標 「今年は焦がさない」マゼマゼ
白井 「だいぶいい具合ですわね」
滝壺 「♪」ムニムニ
ショチトル 「これはなんだ? なんだか楽しそうだな」
滝壺 「これ? 求肥」グニグニ
ショチトル 「ぎゅう?」
滝壺 「一口食べてみて。そしたら分かると思う」
ショチトル 「」モキュモキュ
ショチトル 「!? 知らなかった……求肥というのか、コレは」
結標 「貴女が美味しい美味しい言いながら何個も食べてたイチゴ大福の外側よ」
白井 「滝壺さんは変化球勝負ですのね」
滝壺 「チョコモナカとチョコ大福、ぎりぎりまで迷ってた」
結標 「最中か……ところで、貴女はどうするか聞いてなかったわね」マゼマゼ
ショチトル 「この型を使って固める。面白味はないかもしれないが、奇を衒って失敗しても仕方がない」
白井 「先日ご購入されていた型ですのね」
結標 「あら、こんなの用意してたんだ」
滝壺 「これは……固まったら、一口サイズのバラの形になるのかな」
ショチトル 「作り方はシンプルだが、完成形はいくらか複雑だ。お得だろう?」クスクス
白井 「そこまで考えておられたとは」
滝壺 「二人はどうするの?」
結標 「私はね……トリュフ」
ショチトル 「トリュフ?」
結標 「ええ。去年あの子が作ったの食べてみて、美味しかったからさ」
滝壺 「トリュフって、作るの難しい?」
結標 「ううん、徹夜で調べたけど、どうにかなりそう」
ショチトル 「白井さんは」
白井 「こちらを使いますの」ガサッ
ショチトル 「ピーナッツか?」
白井 「ええ、これを混ぜ込もうかと」
滝壺 「ハワイのお土産みたいなヤツだね」
結標 「あれってマカダミアじゃなかった?」
滝壺 「あれ?」
<マカダミアが正解だろう。
<ええ、おそらくは。
フレメア 「」グテー
打ち止め 「疲れちゃった」
婚后 「お二人には色々任せてしまいましたものね」
番外個体 「はは、いい練習になったんじゃないの?」
絹旗 「練習?」
番外個体 「いや、この二人ね。もっと料理うまくなりたいらしくてさ」
婚后 「いいですわね。身に着けておいて損のない技能ですもの」
絹旗 「作ってればだんだんと超上達しますよ。多分」
フレメア 「大体、多分なんだ」
打ち止め 「目標はね、ミサカが二人の食事を用意すること。ってミサカはミサカは大きな目標を掲げてみたり」
絹旗 「あー、そっか。両親が超共働きみたいなもんですしね。片方は自宅警備ですけど」
番外個体 「両親じゃないっての! こんなデカイ子供がいてたまるかい」
打ち止め (でも前に親子に間違えられたよね……)
婚后 「立場と言いますか、役割的なものかと」クスクス
:
:
:
ショチトル 「」トローリ
ショチトル 「……よし」
【冷蔵庫】<バタン
結標 「そっちは大丈夫そうね」コネコネ
ショチトル 「手伝うか?」
結標 「やってみる? じゃ、先にこれね」
ショチトル 「氷水?」
結標 「手を冷やしてからやるといいらしいわよ」
ショチトル 「それはマスター情報か」チャプ
結標 「準備はいい? じゃ、これを手に取って。一口サイズで丸めて」
ショチトル 「……まるで泥遊びだ」コネコネ
結標 「言わないでよ」
白井 「あの、もう少し大きさを揃えた方がよいのでは」
結標 「……いいじゃない。これぐらいの方が手作り感があって」
白井 「それはそうかもしれませんが」
結標 「そ、それに白井さんが作ってるピーナッツチョコだって、大きさも形も不揃いだし」
白井 「これはこういうものなのですの!」
ショチトル 「その後で冷やすのか?」
白井 「ええ。あとはペーパーの上に適当な形で整形して、冷やすだけですの」
ショチトル 「きっちりとした図形にはならないのだな」
白井 「こういったオブジェのようなものもよろしいかと」
結標 「これ、ペーパーにくっつかないの?」ポリポリ
白井 「きちんと固まった後ならば剥がれますの。って結標さん……」
結標 「いいじゃない。ピーナッツ余ってるんだから」
滝壺 「♪」ポムポム
ショチトル 「……意外とコンパクトなサイズに作っているのだな」
滝壺 「うん。一口サイズ」
結標 「あ、可愛い」
白井 「チョコと求肥の相性、実はよさそうですの」
滝壺 「いいと思うよ。もちもちだし」
<じゃ私が超味見を。
滝壺 「だめ。全員分できてから」
白井 「あ、すみません。冷蔵庫を開けてくださいますか?」
ショチトル 「ああ」ガチャ
白井 「後は待つだけですの」ゴトッ
結標 「よし。私たちも仕上げに入りましょうか」
ショチトル 「まだ何かあるのか?」
結標 「これ、全体的に振りかけて完了よ」つ【ココアパウダー】
ショチトル 「なるほど。では始めよう」
白井 「ちょ、ちょっとお待ちになって。そのままどさっと振りかけるおつもりですの?」
結標 「? なんか違ったかな」
白井 「こし器などでふるった方が良いのでは」
ショチトル 「あぁ、それならあるぞ」カチャ
結標 「あら、これ便利そうね。じゃ、パッパッとかけて完成させましょうか」
滝壺 「私の方はもうちょっとかかるかも」コネコネ
結標 「じゃ、それ持っててね。今、ココアパウダーあけるから」ガサガサ
ショチトル 「少しずつでいいからな。少しずつでいいからな」
結標 「大丈夫よ、何そんなに怯えてるの?」
ショチトル 「いや、前に家で料理の訓練をしているときも、似たような」
結標 「とりあえずこれぐらいかしら」ドザザザザザザ
ボワッ モワモワモワ...
ショチトル 「……けほっ」
結標 「ゴ、ゴメンなさい。勢い付きすぎちゃった」
白井 「これは何の有様ですの……」
滝壺 「ショチトルがココア味になっちゃった」ポンポン
ショチトル 「だから2回言ったんだ。大事なことだから」
結標 「え、ええと……ほらアレよ!」
白井 「どれですか」
結標 「プレゼントは私作戦」
滝壺 「なるほど。だから自分にココアパウダーを」
ショチトル 「」プルプル
白井 「」ポンポン
ショチトル 「……すまない、私は大丈夫だ」
白井 「その作戦にでるなら、ココアパウダーを振るよりもチョココーティングしたほうがよろしいかと」
ショチトル 「な、何を言い出すんだ!? らしくもない!」
結標 (いや、らしいでしょ)
滝壺 (まさにしらい)
ショチトル 「や、やめろ! 塗るな!」
白井 「お兄様を振り向かせるチャンスですの!」
ショチトル 「別に私はそんなつもりは……!」
結標 「……」
滝壺 「とられちゃうかもよ?」
結標 「大丈夫よ」
滝壺 「おぉ、余裕だ」
結標 「それよりほら、アレ止めないと」
滝壺 「そうだった。……しらい、食べ物で遊んじゃダメ」
白井 「はっ、あ、いえ、も、申し訳ございませんの」
ショチトル 「ご……ゴメンなさい」
結標 「まったく、二人して何やってるのよ」
滝壺 「むすじめもだよ」
結標 「へ?」
滝壺 「ココアパウダー。ショチトルがココア色になっちゃった」
ショチトル 「元からだ」
結標 「あ……で、でも、私のは遊んでたんじゃなく手が滑って」
滝壺 「」ジロ
結標 「不器用でゴメンなさい」ペコリ
白井 (さすが怒らせたらいけない人第一位ですの……)
ショチトル (マスターといい義姉さんといい滝壺さんといい、なぜこの年齢の人は武装闘気を持っているんだ……)
滝壺 「とりあえず、後は完成を待つだけだから。その間にお片づけしよう」
結標 「そ、そうね。綺麗な状態で返さないといけないし」
白井 「もうキッチンを使う予定は」
ショチトル 「いや、あるぞ。だから隅々まで掃除する必要はない」
白井 「?」
結標 「ねー、ゴミ袋どこ?」
ショチトル 「買い置きがここにある」ガチャ
滝壺 (モップ楽しい)ゴシゴシ
フレメア 「」ブルッ
婚后 「どうかされましたか?」
フレメア 「わ、わかんにゃい」
フレメア (大体、なんで? 今一瞬、滝壺お姉ちゃんが怒ったときの空気が……私、何もしてない、よね?)キョロキョロ
打ち止め 「大丈夫? 目が真っ青だよ」
番外個体 「元からでしょうが」
婚后 「ところで絹旗さん」
絹旗 「なんでしょう」
婚后 「先ほど、荷物がどうとか仰ってましたが」
番外個体 「何? 寮追い出されるの?」
絹旗 「違いますよ! 超卒業の準備です!」
番外個体 「あー、卒業するから追い出されんだ」
絹旗 「あくまで超自主的に出るんですってば!」
婚后 「それで、次のお住まいは見つけてますか?」
絹旗 「あー……それは近々、探しに行く予定なんですよね」
番外個体 「去年みたいにバタバタしないようにしないとねぇ」
絹旗 「アレは急過ぎたんですよ……」
婚后 「進学先の寮でよろしいのでは?」
絹旗 「もう寮は十分です。この一年で超堪能しましたから」
婚后 「仰る通りですわね」クスクス
絹旗 「ユリコたちもいますしね。ペット対応マンションの方が何かと超便利そうです」
フレメア 「あ、そうだ! リックは元気?」
打ち止め 「ミサカのテスラは?」
絹旗 「超元気ですよ。もう手に負えないぐらいです」
打ち止め 「会いたいなー。おっきくなってるんだろうなー」
絹旗 「あ、じゃあ引っ越したら来てくださいよ。今の寮よりは入りやすくなってるでしょうし」
番外個体 「大丈夫なのかな、この子連れていって」ピンッ ピンッ
打ち止め 「ちょ、やめ」ミョンッ ミョンッ
婚后 「あの、アホ毛弾いて遊ばないであげてください」
絹旗 「大丈夫でしょう。ユリコの子ですし」
番外個体 「なら大丈夫か」ウン
婚后 「心配材料はございませんわね」ウン
フレ止め 「「?」」
滝壺 「ねえ、モップ使い終わったらどうすればいいかな」
番外個体 「あ、貸して。外に干しておくから」
ショチトル 「マスター、それなら私が」
番外個体 「いいからいいから。私のリハビリの邪魔をするな」ナデナデ
<カランカラン♪
絹旗 「そっちはもう終わったんですか?」
白井 「作成に関してはほぼ完了ですの」
結標 「片付けも一通り終わったし。休憩休憩」
滝壺 「フレメア、みんなのジュースとかお茶ってどこにしまったっけ?」
フレメア 「持ってきてあげる!」トテテテ
打ち止め 「……あ、フレメア! 一人じゃ重いよ!」トテテテ
絹旗 「それじゃそろそろ超試食会に」
婚后 「いえ、まだでしょう」
絹旗 「え。なんでですか」
ショチトル 「もう一仕事残っているだろう」
白井 「ラッピングがまだですの。せっかくそちらの材料も買ってきているのですし」
婚后 「自分たちが食べる分だけ残して、あとは先に包んでしまったほうがよさそうですわね」
滝壺 「うっかり全部食べちゃうかもしれないしね」
<カランカラン♪
婚后 「あ、おかえりなさい。妙に時間かかっておられましたわね」
番外個体 「うん、よく来てくれるお客さんにちょっと捕まってた」
ショチトル 「常連さんか。マスターを見かけて思わず声をかけたのだろうな。ちなみに、どの人だ」
番外個体 「"ロマンスグレー"」
ショチトル 「あぁ、あの人か」
絹旗 「……なんですか、それ」
番外個体 「暗号名」
結標 「コンビニの店員がよく来る客に独自に渾名つけてるって聞くけど、そういうものなのかしらね」
滝壺 「私はきっと、近所のコンビニではピンキストとかジャージとか呼ばれてるんだろうと思う」
番外個体 「いいやぁ、一緒にしないでほしいなぁ。ここでは暗号名と顔とセットで覚えなきゃいけないものがあるんだから」
白井 「と申されますと?」
ショチトル 「いつもの、というヤツだ。慣れた客はそう注文することも少なくないからな」
結標 「ふーん……じゃ、さっきの"ロマンスグレー"さんの場合は?」
ショチトル 「トマトジュース」
婚后 「あら、ロマンスグレーと聞いてコーヒーか紅茶かと思いましたのに」
番外個体 「甘党だからね、あの人」
ショチトル 「そういえばマスター。先日掃除していたら"大佐"さんがいらしたぞ」
番外個体 「ウソ? マジで?」
ショチトル 「別の日には"次元"さんも来ていた。みんな再開時期を気にしていたな」
番外個体 「はー、こりゃプレッシャーだ」
絹旗 「だんだん会話についていけなくなりました」
白井 「とりあえずここの常連様は、絹旗さん好みの壮年の男性が多いということは分かりましたの」
絹旗 「一言超余計ですよ!」
滝壺 (そういえばきぬはたの好みって年上だったっけ)
フレメア 「も、持ってきたよー」ヨテヨテ
打ち止め 「そっか、買い物で重かったのはコレだったんだ……」
婚后 「はい、お疲れ様。あとはお任せになって」ヒョイ
結標 「ゴメンね、やらせちゃって」
絹旗 「いいですよ、私たちはそっちのチームが作ってる間休んでましたし」
白井 「では、完成までの間休憩するといたしましょう」
~その頃 第7学区 番外通行邸~
エツァリ 「よし、あとはこのままゴールに」
浜面 「させねぇよぉぉぉ!!」
エツァリ 「おやおや、往生際が悪いですね。当たりもしない緑甲羅を投げてどうするおつもりで?」
浜面 「クソッ、惜しかった……」
エツァリ 「残念でした。今回は自分の勝ちのようで」
一方通行 「邪魔だ、どけ三下ども」テンテンテン テンテンテレッテ♪
浜面 「なんだぁ! 吹き飛ばされた!」
エツァリ 「一方通行さん、まさかスターですか!」
一方通行 「はい、ゴールっと」テンテンテン テンテンテレッテ♪
エツァリ 「こっ……この期に及んで逆転されるとは……詰めが甘かったですね」
浜面 「最終ラップ後半でスターとか、反則だろ」
一方通行 「あァ? アイテムを有効活用することになンの問題があるンだよ」
浜面 「ちょっとキャラ変えるわ。ここは加速重視でいくか……」
エツァリ 「さて、勝者の一方通行さん。次のコースを決めてください」
一方通行 「適当でいいだろ」
エツァリ 「では適当に決めてください」
一方通行 「……じゃ、ここだな。ここはまだ使ってねェ」カチカチ
浜面 (ウーフーアイランド2か……キタコレ。ここには大幅ショートカットがある。この勝負、いただいたぜ!)
浜面 (運転職人HAMADURA、本領発揮と行こうじゃないの!)ムッフー
エツァリ (……これはなにか企んでますね)
一方通行 「あ、そうそう。オイ、2号。バグショートカット使ったら制裁だからな」
浜面 「あ、あれ? ご存知でいらした?」
一方通行 「オマエな、俺がガキと性悪の接待のために何百週走ってると思ってンだよ」
エツァリ 「僕らが今お借りしている本体も、ミサワさんと妹さんのものですしね」
浜面 「はは、そういやそうか……クソッ、今度は勝てると思ったんだがな」
一方通行 「実力で勝ってみせろよ、たまにはな」
浜面 「言ってくれるじゃないの。ようし、そこまで言うなら俺のドライビングテクニックを見せ付けてやらぁ!」
エツァリ 「お、始まりますよ」
一方通行 「さあ、楽しませてみせろよ。こっちゃ楽勝すぎて退屈してンだからよォ!」
浜面 「言ってろ超能力者!……うぉぉ!? 変なところで話しかけるからロケットスタート失敗したじゃねぇかぁぁ!」キュルルル
エツァリ 「狙ってましたか?」
一方通行 「そこまで姑息じゃねェよ」ハァ
~同日 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
番外個体 「白井さん……ホントにもらっていいの?」
白井 「ええ。どうぞお気になさらずに」
番外個体 「なんか悪いなぁ」
白井 「大きいお姉様は怪我をしておられましたし、今日もチョコを作られておりません。
きっと第一位様も溜め……いえ、寂しい思いをしておられる筈」
番外個体 「今何言おうとした」
白井 「ですから、今日はそれを使って」
番外個体 「あ、うん、分かった。分かったから、ちょっと落ち着こうか」
白井 「よろしければ、今この場で黒子を相手に練習試合をして頂いても!」グヘヘ
絹旗 「はーい、超すいません。白井さんが色々とー」ガシッ
白井 「ぐえ」
絹旗 「ほら、戻りますよ」ズルズル
番外個体 (……でも確かに。ギプスあるときは寝るのも別だったし、あの人もスキンシップとか控えてたし)
番外個体 (寂しがらせて……むしろ私が寂しい。よし……)
婚后 「それで、そちらから折り畳んで」
打ち止め 「こうかな?」ガサガサ
婚后 「あとはリボンなりで止めれば完成ですわね」
フレメア 「おー、綺麗」
結標 「」ガサガサ
ショチトル 「……苦戦しているな」
結標 「こういうの苦手なのよ、知ってるでしょ」
滝壺 「♪」ガサガサ
絹旗 「大体皆さん終わりそうですかね」
白井 「絹旗さんは大丈夫なのですか?」
絹旗 「私は超本命がいないですからね。それなりの見た目になってれば超おkです」
番外個体 「いるじゃん、本命」
絹旗 「はい?」
番外個体 「クロちゃん」
絹旗 「だからなんでみんなして私とあいつをくっつけようとするんですか!」ウガー
ショチトル 「お似合いだからだろう」
絹旗 「超やめてください」
婚后 「あの、すみません。お三方に」
番外個体 「え、私?」
結標 「どうしたの?」
婚后 「こちら、お預けしてもよろしいですか? それぞれの方たちに」
滝壺 「うん、ありがと。きっとはまづらも血の涙を流して喜ぶよ」
番外個体 「ゴメンね、わざわざ」
婚后 「わたくしが繋がりのある数少ない殿方ですし」クスクス
白井 「あ、すみません。ついでといってはなんですが、わたくしからも」
ショチトル (お兄ちゃん、意外と……異性の受けはいいんだな)
絹旗 「というか、一応全員三バカの分は用意してあるんですよね」
白井 「婚后さんも仰ってましたが、他に親しい殿方もおりませんもの」
絹旗 「なんていいましたっけ。あの、御坂さんが通い妻してる超ツンツン頭にはいいんですか?」
白井 「いいんですの」プイッ
フレメア 「私からも。お兄ちゃんたちに」ハイ
番外個体 「フレメアのは特に保存きかないから、さっさと食べさせないとね」クスクス
結標 「チョコバナナだっけ? 変り種で攻めてきたわね」
フレメア 「にゃあ」
:
:
:
滝壺 「うん、これで全部かな」
番外個体 「結局、自分たちで食べる以外のって、ほとんどうちの人たちに渡すヤツだったんだね」
結標 「なんだか悪いわね。こんなにもらっちゃって」
絹旗 「……なんか、3人ともあまり嫉妬ってしないんですね」
番外個体 「正妻の余裕ってやつ?」ニヨニヨ
結標 「それに貴女たちからだしね」
白井 「あら。わたくしたちはそこまで魅力がないのでしょうか」
結標 「違うわよ。信用してるって言いたいの。この中に人の男寝取るような阿婆擦れはいないわよね、って」
滝壺 「でも宣戦布告ならいつでも受け付ける」フンス
絹旗 「勝てないと分かりきってる勝負なんてしないですよ」
番外個体 「ま、ともかくありがとね。預かった分はきっちり渡しておくよ」
フレメア 「ね、そろそろ? そろそろ?」キラキラ
打ち止め 「みんなで食べる?」キラキラ
絹旗 「そうですね、超お待ちかねの試食会と行きましょうか」
ショチトル 「では準備を始めるか」
結標 「? 準備って」
ショチトル 「コーヒーがほしい人はいるか?」
番外個体 「」ノ
白井 「」ノ
婚后 「」ノ
結標 「」ノ
絹旗 「いつもので」
フレメア 「絹旗のいつものって?」
番外個体 「超あっまーいカフェオレだよ。その名もモアイブレンド」
フレメア 「じゃ私もモアイ!」ノ
打ち止め 「あ、ミサカもモアイ!」ノ
絹旗 「モアイモアイうるせー!」ギャース
結標 「でも、食材って処分したんじゃなかった?」
番外個体 「コーヒー豆は処分しきれる量じゃなかった。それに、生の状態なら結構もつからさ」
滝壺 「なるほど」フム
ショチトル 「では少し待っていてくれ」カチャカチャ
フレメア 「何か手伝うことない?」トテテテ
打ち止め 「お手伝いしまーす」トテテテ
ショチトル 「お湯を沸かしてもらえるか?」
フレ止め 「「はーい」」
番外個体 「そういえば滝壺さんはいいの?」
滝壺 「私にはこのお茶があるから」
婚后 「日本茶も悪くはないですわね」
ショチトル 「なあ、食器やフォークはあったほうがいいか?」
白井 「あるに越したことはないかと」
ショチトル 「分かった。準備しよう」
番外個体 「あ、そっち私がやるよ」
絹旗 「大丈夫なんですか?」
番外個体 「リハビリだよ、リハビリ。それに、どこになにがあるかは私が一番把握してるからね」
婚后 「無理のない範囲になさってください」
結標 「じゃ、私たちもそれぞれ作ったものを超準備するとしましょうか」
滝壺 「そうだね、食べられる状態にしておいたほうがよさそう」
絹旗 「さて、ようやく本日の超メインイベントですよ」wktk
白井 「そういえば、絹旗さんはそれがお目当てでしたわね」クスクス
~実食タイム~
婚后 「」ズーン
結標 「そんなに凹むほどの出来? 婚后さんのケーキ、普通に美味しいじゃない」モフモフ
婚后 「少々焼きすぎですわ……固くなってしまいまして」
打ち止め 「確かに、お口の中の水分がもっていかれるかも」モクモク
番外個体 「言わんでよろしい」
絹旗 「うお、コレ超おいしいですよ」モチモチ
フレメア 「チョコ大福? 冷やしたの?」
滝壺 「冷やしてもおいしいんだよ」
フレメア 「」モチモチ
白井 「このバラ、なんと見事な造形でしょう」
ショチトル 「溶かして固めただけなのだがな」ズズ...
番外個体 「ねー、このトリュフだれの?」
結標 「私」
番外個体 「」ス...
結標 「なんでそっと皿に戻してるのよ! 一度触ったんだから食べなさい!」
ショチトル 「マスター、大丈夫だ。見た目はともかく、味はまともなハズだから」
番外個体 「」パク
結標 「……どう?」
番外個体 「ココアパウダーかけすぎな感じはするけど、普通に美味しいよ」
結標 「ココアパウダーかけたのはショチトルよね」
ショチトル 「あれは私のせいなのか!?」
白井 「どう考えても結標さんの瑕疵かと」
滝壺 「うん、あれはむすじめの不手際」
結標 「むむ……」
フレメア 「はい、あーん」
打ち止め 「? これなに?」
フレメア 「私が作ったやつ」
打ち止め 「」パク
フレメア 「どう? どう?」
打ち止め 「これでも美味しいけど、冷やしたらもっと美味しいかも。帰る頃にはぬるくなってるよね?」
フレメア 「なるほど、にゃあ」フム
:
:
:
絹旗 「いやー、超食べました」
白井 「一年分ぐらい食べたのでは」
結標 「気になるわね……カロリー」
番外個体 「気にするな」ケラケラ
婚后 「さて。そろそろ片付けましょうか。洗い物はわたくしが」
ショチトル 「いや、私が」
婚后 「場所と設備を提供して頂いたのですから、これぐらいはいたしませんと」
白井 「わたくしたちでやりますので、休んでおいてくださいまし」
ショチトル 「では……お言葉に甘えておこう」
白井 「ほら、絹旗さん。もう一仕事ですの」
絹旗 「え。なんで私まで」
婚后 「主催者なのですから。せめて最後の始末ぐらいはご自分でなさってください」
絹旗 「むー、そういうことであれば」
婚后 「もう日も傾いてきておりますし。手早くやってしまいましょう」
白井 「では、流し場をお借りしますわね」カチャカチャ
~同日夕方 第7学区 隠れ家的喫茶店(休業中)~
婚后 「ええと、お皿はこちら、と」バタン
白井 「これで全部ですの」
絹旗 「さすがに3人でやれば超あっという間ですね」
婚后 「これで今日のお役目もすべて完了ですわね」シュルシュル
絹旗 「あっ、髪解いちゃうんですか。後ろ結び婚后さんとか超レアなのに」
婚后 「調理中は邪魔だから結んでいただけですもの」
白井 「さて、みなさんお待たせしておりますし。帰り支度も初めてしまいましょう」
絹旗 「はーい」イソイソ
婚后 「お二人とも、門限は大丈夫ですか?」
白井 「まだ余裕はありますの」
絹旗 「といっても、超寄り道するほどの余裕はなさそうですけどね」
白井 「寄り道する用事もございませんでしょう」
絹旗 「そうなんですけど、ただまっすぐ帰るのも超味気ないといいますか」
白井 「それはまたの機会になさってくださいまし」
婚后 「ユリコたちもお待ちでしょうしね」クスクス
滝壺 「ほら、フレメア。コートきて」
フレメア 「はーい」イソイソ
番外個体 「もうブレーカー落としちゃうよー」
結標 「落としちゃっても大丈夫でしょ」
<ガチャ
打ち止め 「ただいまー、ってミサカはミサカは任務完了の達成感を味わいつつ戻ってみたり」トテテテ
ショチトル 「ゴミは全て裏口のところに出してきたぞ」
番外個体 「はい、お疲れさん」
滝壺 「あ、そうだ。余った材料ってどうする?」
結標 「主催者さんに持って帰ってもらったら?」
絹旗 「そんなにいりませんよ。あの寮にいる間は使いそうもないですし」
白井 「同じくですの」
絹旗 「ほしい人が持ってっちゃえばいいじゃないんですか? ムダにするより超マシです」
婚后 「あ、では……小麦粉いただいてもよろしいですか? ちょうど切らしていて」
結標 「…………他にいないみたいね。いいんじゃない?」
番外個体 「あと何が残ってるの?」
滝壺 「チョコレート、白玉粉、ピーナッツ、がそれぞれちょっとずつ」
結標 「白玉粉ってなに?」
滝壺 「求肥の材料」
ショチトル 「……すまない。いいか?」
滝壺 「どれ?」
ショチトル 「白玉粉とやらがほしい。家でも作ってみたい」
結標 「貴女、よほど気に入ったみたいね」
ショチトル 「あの食感はクセになる」
滝壺 「作り方は自分で調べて。チンすればそんなに難しくないから」ハイ
ショチトル 「あぁ、なんとかなるだろう」
絹旗 「じゃ私はピーナッツを頂いていいですか? おやつ代わりに」
打ち止め 「ミサカもちょっとほしいかも」
絹旗 「じゃ超半分にしましょう」
滝壺 「あとはチョコレートが残ってる」
番外個体 「もー、この場で食べちゃえば?」
結標 「さすがにもういいわよ……」
婚后 「家庭単位で見ると、滝壺さんのところだけ何も入手しておりませんわね」
白井 「言われてみれば。では、差し障りなければ滝壺さんがお持ちになっては?」
滝壺 「いいの?」
白井 「クーベルチュール用ですので、そのまま食べるにはあまり向きませんが」
滝壺 「分かった、もらう」
フレメア 「また何か作りたい、にゃあ」クイクイ
滝壺 「そうだね。これ使って何か作ってみようか」
ショチトル 「これで全部だな」
絹旗 「じゃ出ましょうか。あ、ミサワさん、今日は超ありがとうございました」
番外個体 「いいよいいよ。私なにもしてないのに色々食べさせてもらったし」
結標 「ま、快気祝い代わりね」
婚后 「では出るといたしましょう。戸締りもあるでしょうし」
番外個体 「ガスの元栓は?」
ショチトル 「先ほど閉めた」
番外個体 「りょーかい。じゃブレーカー落としてくるよ」
~同日 第7学区 とある路地~
フレメア 「」トテテテ
打ち止め 「」トテテテ
婚后 「ほーら、不必要に走ると転びますわよ」
絹旗 「超元気ですよね、こんな寒いのに」
白井 「わたくしたちだってそこまで歳が離れている訳ではないのですが」
結標 「……夜が近づいてくると、まだまだ寒いわね」ブルッ
番外個体 「そりゃこれだけ胸元開けてれば、風も吹き込んでくるよね。お、今日は青か」
結標 「引っ張らないでよ、伸びるでしょ」ペシッ
滝壺 「むすじめの胸で既に伸びてるような気もする」
番外個体 「あー、伸びちゃうんだよね、こういう服」
結標 「別に見せ付けてるワケじゃないのよ、私だって」
ショチトル (かつて義姉さんのお下がりばかり着ていた私もそう見られていたのか……?)
白井 「ところであちらのお二人、中学の制服は用意しておられますの?」
滝壺 「まだ」
番外個体 「そろそろ届くんじゃないかね」
婚后 「届いたら早速のお披露目会でしょうね」クスクス
滝壺 「うん、私たちが何か言うよりも先に自分で出して着ちゃうと思う」
番外個体 「いいんじゃない? サイズの確認もあるし」
絹旗 「そういえば年末に聞きましたけど、中学の制服ってブレザーなんですよね」
滝壺 「うん、ブレザー。ちなみにはまづらはブレザーかセーラー服なら、セーラー服派らしいよ」
絹旗 「超どうでもいい情報をありがとうございます」
結標 「セーラー服か。私着たことないのよね」
滝壺 「私も、学校では着たことない」
ショチトル 「私は……あ、いや、あるな」
絹旗 「え? あるんですか?」
ショチトル 「理由あってな。赤いセーラー服を」
白井 「赤いセーラー服……たまに見かけますわね」
結標 「一回ぐらいなら着てみてもよかったかも」
婚后 「女子なら一度は着てみたいと思うものかもしれませんわね」
番外個体 「そっか、霧ヶ丘も常盤台もブレザーだね。まあ、着てみたいならそのテのお店でバイトでも」
結標 「」ベシッ
番外個体 「イテェ!?」
白井 「わたくしも、もう着る機会はないのでしょうね」
絹旗 「隣の芝って超青いんですよね。ブレザー組とセーラー服組、お互いに羨ましがってるらしいですよ」
婚后 「全員が全員そうではないでしょうけど。個人の好みもあるでしょうし」
滝壺 「あの二人も、ブレザーの制服に慣れてきたらセーラー服着てみたいって思うのかな」
結標 「それなら、高校はセーラー服のとこを選べばいいじゃない」
ショチトル (詳しくないから黙っているが、制服で学校を選ぶのもアリなのか)
フレメア 「ねー、私たちは大体こっちだよ」
打ち止め 「ここでお別れ、ってミサカはミサカはくれなずむ街をバックに名残惜しんでみたり」
番外個体 「ありゃ、もうそんなところまで来てたか」
絹旗 「あ、ここで超分岐ですか?」
滝壺 「私たちはこっち」
白井 「今日はお疲れ様でした」
婚后 「帰り道、気をつけてください」
ショチトル 「マスター、くれぐれも」
番外個体 「分かってるって、大丈夫。また連絡するからね」
ショチトル 「あぁ、待っている」
フレメア 「みんな、またね!」
打ち止め 「また今度ね!」
絹旗 「ええ、また超その内に」
結標 「気をつけてね」
<それー!
<待てー!
<こらー!走るなー!
<子供は風の子だね。
結標 「元気ね、ホント」
ショチトル 「若さだろう」
絹旗 「いやいや、私たちも超若いですから。最年少だったんですから」
白井 「わたくしたちは最年少の座は譲りましたが、結標さんの最年長の称号はキープですわね」
結標 「なんか引っかかる言い方ね……」
婚后 「他意はないかと」
ショチトル 「こんなところで立ち止まっても周りに迷惑だ。行くとしよう」
絹旗 「そうですね、行きましょうか」
結標 「これ以上寒くなる前に帰りたいしね」
:
:
:
ショチトル 「では、私たちは向こうだな」
結標 「ええ。じゃ、3人とも気をつけてね」
絹旗 「超お疲れ様です」
婚后 「では、またその内に」
白井 「どうぞお気をつけて」
ショチトル 「あぁ、またな」ノシ
結標 「それじゃね」ノシ
<ところで、お兄ちゃんは戻っているのか?
<あ、メールするの忘れてた。今しちゃおうか。
婚后 「……そういえば、男性陣は今日をどう過ごしておられたのでしょうね」
絹旗 「ゲームでもやってたんじゃないんですかね」
白井 「時間をつぶす手段ならいくらでもございますでしょう」
絹旗 「ジェンガとかツイスターとかですか」
婚后 (ツイスターは男性3人でやるものなのでしょうか……ルール的には問題ないのでしょうけど)
~同日 第7学区 駅付近~
婚后 「ところで、お二人に聞いてみたかったのですが」
白井 「わたくしたちにですか?」
絹旗 「なんでしょう」
婚后 「お二人は」
<アリアタシター
<ガラッ
黒夜 「ほーしくずのくーずとなーりてー♪」トテトテ
絹旗 「あ」
白井 「あら」
婚后 「あらら」
黒夜 「……え、ええと、あららら?」
絹旗 「いやいや、何やってんですか」
黒夜 「ご覧の通り、ちょっと早めのディナーだ」
白井 「ディナー……あぁ、牛丼屋ですか」
黒夜 「そっちこそ、3人揃って……あ、言わなくていいや。匂いで分かった」
絹旗 「え、匂い?」
黒夜 「うん、すげぇチョコの匂い。服とか髪についちゃってんだろ」
白井 (あぁ、それはきっと……)
婚后 「黒夜さんもいらっしゃればよかったのに」
黒夜 「いやぁ、食べるのはともかく作るのはなぁ。匂いだけで胸焼けしちゃいそうだもん」
絹旗 「確かに作ってる最中は嗅覚がチョコに対しては超鈍感になっちゃってましたけど」
黒夜 「というわけで、絹旗ちゃんからのチョコほしい。くれ」
絹旗 「まあ、あげますよ。今回は超量産体制でしたし」ハイ
婚后 「絹旗さんは小さいのたくさん作っておられましたものね」
白井 「大変ですの、もてる人は」
絹旗 「そういうのじゃないですってば!」
白井 (なんだかんだ言って、リクエストには応える姿勢を見せる面倒見の良さはあるのですね)
黒夜 「なんだよ、私というものがありながら」
絹旗 「そもそもあなたがそういう冗談言うから、超変な方向に勘違いされるんですからね!」ムキー
黒夜 「( ゚3゚)~♪」
絹旗 「まったく……はい、これ」
黒夜 「ちっちゃ」
絹旗 「全部そのサイズですよ。いらないなら超返してください」
黒夜 「ううん、ありがと」パク
絹旗 「おいしいですか? ホウ酸チョコ」
黒夜 「」ブフォ
婚后 「絹旗さんも人が悪いですわね」
白井 「ホウ酸など用意していなかったではないですか」
絹旗 「」テヘ
黒夜 「……」プルプル
絹旗 「起こらないでくださいよ。超もういっこあげますから」
黒夜 「ホウ酸の次はなんだ。媚薬か? 酒か?」
絹旗 「だからなんも入ってませんてば。はい、あーん」
黒夜 「」パク
絹旗 「どうです?」
黒夜 「……甘い」
婚后 「まあ、チョコですしね」
黒夜 「よし、次は口移しだ」
絹旗 「そういうのは白井さんにお願いしてくださいよ」
白井 「なぜわたくしなのですか!」
:
:
:
絹旗 「あれ? そういえば婚后さん」トテトテ
婚后 「はい?」
絹旗 「さっき何か言おうとしてませんでした?」
白井 「そうでしたの。黒夜さんの乱入で中断してしまいましたが」
黒夜 「乱入したつもりはないんだけど」
婚后 「あぁ、はいはい。いえ、お二人に聞いてみたいことがありましたので」
絹旗 「どうぞ聞いてください」
婚后 「お二人の進学先、決め手はなんだったのかな、と」
黒夜 「あ、高校の話?」
婚后 「そんなところですわね」
黒夜 「へー、どこいくの?」
絹旗 「白井さんは霧ヶ丘ですよね」
白井 「ええ」
婚后 「正直、意外に感じました。だからこそ、こんなことを聞いてもいるのですが」
白井 「意外……? ははぁ、さては。わたくしがお姉様を追って長点上機に行くとお思いで?」
絹旗 「いや、私もそれがあるから長点上機だとばかり超思ってました」
白井 「もちろん、その選択肢がなかった訳でもございません」
黒夜 「てことはそうなる可能性もあったんだな」
白井 「ですが、わたくし自身のことをもっと考えた場合、霧ヶ丘も妥当な選択肢ですのよ」
絹黒婚 「「「女子高だから?」」」
白井 「ハッ、ハーモニクス!? わたくしをなんだと思っているのですか!」フギャー
絹旗 「だって他に理由なんかないじゃないですか」
白井 「ありますのー!」
黒夜 「だったらその理由を語ってくれ」
白井 「はあ……霧ヶ丘は、結標さんが籍を置いていた高校ですの」
婚后 「あぁ、なるほど。そういうことですのね」
絹旗 「え、どういうことですか」
黒夜 「空間移動能力の育成に関する実績とノウハウがあるってことだろ」
白井 「ご名答ですの。もちろん、結標さんのコピーになるつもりなどありませんが、
そのデータを活用するのも悪いことではないかと」
絹旗 「なるほど。超一理ありますね」
黒夜 「それに女子高だしな」
白井 「それはもういいですの!」ムキー
婚后 「さ、次は絹旗さんの番ですわね」
絹旗 「私ですか……正直、白井さんみたいに超しっかりした理由じゃないんですけど」
黒夜 「絹旗ちゃんはどこいくのよ」
絹旗 「霧ヶ丘や長点上機に比べると、名もなき超平凡な高校ですよ」
婚后 「絹旗さんほどの実力があれば、もっと上も狙えたでしょうに」
白井 「"もっと上"がイヤだそうですの、絹旗さんは」
絹旗 「ええ。エリートエリートしたところよりは、ゆるいぐらいが私には超あってます」
黒夜 「あ、それわかるわー」
絹旗 「それに」
婚后 「それに?」
絹旗 「高校関係者と接触してみたら、私の能力と成績なら筆記は超免除してくれると言ってもらえたので」
黒夜 「お、超お得じゃん」
白井 「役得ですの」
婚后 「たしか……あの、青い髪の殿方がいるところでしたわね」
黒夜 「もしかして彼氏?」ニヨニヨ
絹旗 「超ないです! それに青髪さんは今年で卒業のハズですし」
黒夜 「ふーん、どうだかなー」
白井 「そういえば黒夜さんは、進路といいますか、この先どうなさるおつもりで?」
黒夜 「さて、ね。どうしよっかな」
絹旗 「高校でもいけばいいんじゃないんですか? LEVEL4ってだけで迎えてくれるところもあるらしいですし」
婚后 「少々ズルな気もしますが」
黒夜 「楽してズルして頂き、ってね。そりゃ私らしいかもしれないな」ケラケラ
黒夜 (ま、方針はもう決めてるし、動き始めてもいるんだけどな)
黒夜 (黙っておいたほうが面白そうだし、言わなくていいや)ニシシ
婚后 「あ、見えてきましたわね」
絹旗 「おおう、ついちゃいましたか」
白井 「? 何か不都合でも?」
絹旗 「いや、ついちゃったなーと」
黒夜 「後ろ暗いことがあるんだろ、どうせ」
婚后 「絹旗さん、寮監に目をつけられるようなことでも?」
絹旗 「いや、ない……ハズなんですけどね」
白井 「もはや寮監と聞くだけで心拍数が早まりますもの」
黒夜 「調教されてんだなぁ」ケラケラ
~同日 第7学区 常盤台新寮~
絹旗 「婚后さんたちも入ってもらえばよかったのに」
白井 「仰る通りですが、時間が時間ですし」
絹旗 「まあ……それを考えると超仕方ないですが」
寮監 「二人とも、戻ったのか」
白井 「はい、ただいま戻りました」
絹旗 「超ただいまです」
寮監 「丁度良かった。白井、お前に荷物が届いているぞ」
白井 「え」
寮監 「今持ってくる。少し待っていてくれ」
白井 「は、はい。申し訳ございません」
絹旗 「荷物ですか。なんかポチったんですか?」
白井 「ええ、そんなところですの」
白井 (宅配屋さん、お届け時間帯指定は守ってくださいまし……)
絹旗 「あ、私チョコ渡してきますね。超ほしいって言ってた人に」
白井 「はい、先に戻っていてください」
絹旗 「」トテテテ
~同日夜 常盤台新寮 301号室~
ユリコ 「( ・ω・)」マッタリ
リック 「」スピー
絹旗 「ほらほら猫じゃらし、とれるもんならとってみやがれです」ミョンミョン
テスラ 「」バッ
絹旗 「超甘いですね! こっちですよ!」ミョンッ
テスラ 「」ダダダ
ユリコ 「( ・ω・)っ」チョンチョン
絹旗 「? どうしました?」
ユリコ 「(・ω・ )」
絹旗 「?」
アスカ 「」ガサガサ
絹旗 「あー!? 何やってんですかー!」
アスカ 「」ガサガサ
絹旗 「超ダメですよ、それ白井さんの荷物じゃないですか」ヒョイッ
アスカ 「イヤーン」ジタバタ
絹旗 「あ、こら、暴れないでください。何をそんなに超求めてたんですか」
絹旗 「……チョコレート? 白井さんもちゃんとしまってくださいよ。チョコは猫に毒なんですから」ヒョイパク
アスカ 「」ジタバタ
絹旗 「はいはい、もう諦めてください。白井さんに超怒られますよ?」
絹旗 「」ドクンッ
絹旗 (え……なんですか、今の)
<ガチャ
白井 「絹旗さん、シャワー空きましたの」
アスカ 「」ポテテテテ
絹旗 「……白井、さん?」
白井 「絹旗さん? どうし……」ハッ
絹旗 「……」ポー
白井 「き、絹旗さん!? まさかそれを食べたのですか!?」
白井 (カエル先生に贈ろうと思って注文した、ラム酒チョコレート……!)
絹旗 「白井さん……またインナー姿でウロウロして……超誘ってんですか?」
白井 「いえ、決してそのようなつもりでは」
絹旗 「」ガシッ
白井 「絹、旗さん……?」
絹旗 「てい」ポイッ
白井 「ひゃっ……」ボスンッ
絹旗 「えへへー。超捕まえましたー」グイ
白井 「絹旗さん! 落ち着いてください!」
白井 (まさか上をとられるなんて……)
絹旗 「」ジー...
白井 「……?」
絹旗 「白井さんってー、よく見たらー、超綺麗な顔してますねー」
白井 「いけませんの……わたくしたちは女子同士です。絹旗さん、どうか」
絹旗 「……う゛ぇ」ガクンッ
白井 「?」
絹旗 「なんか……超気持ち悪、い……」ウッ
白井 「いやぁぁぁ! 絹旗さんどいて! 吐くならそこからどいてくださいぃぃぃ!」ジタバタ
絹旗 「……か、らだが超重くて……」
白井 (こ、これは非常にマズイですの! かくなる上は……!)
~同日 常盤台新寮 301号室 浴室~
白井 「絹旗さん、お身体の具合は?」
絹旗 「吐いて楽にはなりましたけど……」ゴシゴシ
白井 「そうですか。それはなによりですの」
絹旗 「……」ゴシゴシ
白井 「全く。カラッポの胃袋にアルコールなど入れるからですの」
白井 (浴室に咄嗟にテレポートすることで、被害はわたくしと絹旗さんだけで済みましたが……)
白井 (それにしても、能力暴走対策のAIMジャマーとやらも、貧弱な出力ですのね)
絹旗 「……あの、お背中流し終わりました、です」
白井 「はい、ご苦労様」
絹旗 「なんで私がこんなソープ嬢みたいなマネを……」
白井 「わたくしが誰のせいで汚されたと思っておりますの」
絹旗 「超悪かったとは思ってます」
白井 「まあ……前向きに考えましょう。この部屋で、こんな触れ合いの機会も、あと数えるほどしかないのでしょうし」
絹旗 「超寂しいこと言わないでくださいよ」ザブン
白井 「あら、寂しいと感じてくださるなんて光栄ですわね」チャプ
絹旗 「え、なんで入ってきてんですか」
白井 「冷えてしまいましたので」
絹旗 「まあ、いいですけども」
白井 「それにしても、まさか絹旗さんに組み伏せられる日がこようとは」
絹旗 「だから超謝ってんじゃないですかぁ……」
白井 「ついてっきり絹旗さんがそちらの道に目覚めてしまったのかと」
絹旗 「ないですから。超ないですから」
白井 「ふふ、この話はこれぐらいにしておきましょう」
絹旗 「超イジワルですね」プイ
白井 「そろそろ大丈夫ですか?」
絹旗 「まだ超ちょっと、頭がグラグラします」
白井 「それほど強烈でしたのね、あのチョコレート」ナデナデ
絹旗 「あんなの注文したのが寮監にバレたらどうするつもりなんですか」
白井 「その辺は抜かりないですの」クスクス
絹旗 「超程々にしてくださいよ」
:
:
:
絹旗 「はふぅ」モニャ
白井 (お湯にあてられて、すっかりたれ旗になってしまってますの)
絹旗 「白井さんはー」チャプ
白井 「はい?」
絹旗 「この中学にいる間に、何かやり残したことってあります?」
白井 「あるといえばありますの」
絹旗 「お、なんです?」
白井 「お姉様と結ばれなかったことが、唯一の」ウッ
絹旗 「はいはい、超そんなことだろうと思いました」
白井 「そういう絹旗さんは、何かあるのですか?」
絹旗 「んーーー」
白井 「まあ、思い残すことはないようにしてくださいまし。卒業してしまえば、
この寮にも学舎の園にもおいそれとは入れないのですから」
絹旗 「……あ、そうか! それです!」ザバァァァァ
白井 「あ、絹旗さん。そんな突然立ち上がったら」
絹旗 「あぅ」フラッ
白井 「え、ちょ」
バシャーーン ブクブクブク
絹旗 「……ぷっ、は。超あぶねー、あんな超ひどい立ち眩みは初めてですよ」ザバァ
絹旗 「あれ? 白井さん?」
白井 「ゴボゴボゴボ」ベシベシ
絹旗 「わぁぁぁ私の下に!? すいません大丈夫ですかすいません!!」
白井 「はっ……はー……死ぬかと思いましたの」
絹旗 「超事故ですってば!」
白井 「そういうことにしておくとして……何か閃いたのですか」
絹旗 「やり残したことですよ。超正確に言うなら、今じゃないとできないことです」
白井 「と申しますと?」
絹旗 「それはお風呂でてから超ゆっくり語りますよ」ザバ
白井 「また勿体ぶって。それほどのプランだと、期待しておくといたしましょう」ジャブ
絹旗 「うーん、みんなノってきてくれるといいんですけど」ノビー
~その頃 第7学区 番外通行邸~
番外個体 「」プシュッ プシュッ
番外個体 (うーん、自分じゃ分からないや)スンスン
番外個体 (白井さんがくれたこの香水、自分でも試しにつけてるって言ってたけど)
番外個体 (チョコ作り真っ最中のあの空間じゃなー、分からないよなー)
番外個体 「ま、いいや。こうしててもしょうがない」
番外個体 「とっつにゅー」
コンコン ガチャ バタン
番外個体 「やっほ」
一方通行 「オイ……ノックからドア閉めるまで3秒って随分な早業じゃねェか」
番外個体 「お忙しい?」
一方通行 「問題ねェ。で、どォしたンだ」カチャカチャカチャ ッターーン!
番外個体 「特に何も。今日はここで寝させてもらおうと思って」ギシ
一方通行 (オイ、マジかよ。こいつまだ折れた部分の痛みひいてねェだろ?)
一方通行 (手を出すワケには……いかねェよなァ)ガシガシ
番外個体 「さっき渡したチョコ詰め合わせの感想も聞きたいしね」ゴロゴロ
一方通行 「あァ……チマチマ食わせてもらってる」
番外個体 (なーんか様子がヘンだな。やっぱしずりんや白井さんが言ってた通りなのかねぇ)
一方通行 「」カチャカチャ ッターン!
番外個体 「寝ないの?」
一方通行 「まだキリが悪い」
番外個体 (さすがにこの距離じゃまだ気付かないか)
番外個体 「……あのさ、ギプス取れたっつっても握力戻らないし手首もまだうまく動かないから、
私はみんなみたいにチョコ作れなかったんだけど」
一方通行 「別に気にする必要はねェよ」
番外個体 「そんな私を見かねた白井さんが、面白いものくれたよ」
一方通行 「?」
番外個体 「ちょっとでいいからこっちきて」
一方通行 「なンだよ……」
番外個体 「」ダキッ
一方通行 「……オマエ、この匂い」
番外個体 「チョコレート風味の香水だって。面白いこと考える人もいるもんだね」
一方通行 「甘ったるいな、オイ」
番外個体 「私の残り香がベッドに残るのはイヤかな?」
一方通行 (いや、そりゃむしろ歓迎すべきことなンだろォが)
番外個体 「改めて聞くけど、寝ないの?」
一方通行 「……寝るか」
番外個体 「♪」
一方通行 「痛みはねェのか?」
番外個体 「普段はね。冷やしたり、激しく動かしたりすると痛いかな」
一方通行 (つゥことはまだまだお預けだな、こりゃ)
番外個体 「ね、我慢とかしてない?」
一方通行 「あァ? 何の話だ」
番外個体 「今日病院でさ。しずりんからそんな話聞かされたから」
一方通行 (あンの歩く有害図書館、余計なこと吹き込ンでンじゃねェ!!)
一方通行 「心配ねェよ。自分の身体のことだけ考えてろ。復帰も視野にいれねェとな」ナデナデ
番外個体 「……ありがと」ピト
一方通行 「オマエが仕事休んでる間、あのバイトは無職無収入の状態になってるワケだしなァ」
番外個体 「う……善処します」
一方通行 (ちょっとスキャンしてみるか)カチッ
番外個体 (? 今、私の生体電流にノイズが? 何かしやがったな?)
一方通行 (骨はかっちりくっついてンな。つゥことは周辺の筋肉と神経の問題か)
番外個体 「今なんかした?」
一方通行 「なンもしてねェし、なンもしねェよ。さっさと寝とけ」
番外個体 「……うん」
番外個体 (あー、この感触もこの匂いもこの温もりも、全部がすっごい懐かしい)スリスリ
一方通行 (……)
番外個体 (うー、落ち着く。なんかふにゃーってなってきた)フニャー
一方通行 (自覚してンのかこいつ……)
番外個体 (あ、ヤバイ。寝そう……もうちょっとこれ味わってたいのに)ギュー
一方通行 (あァァァ、腹空かした野良犬にほンの一口だけ食いモン施すよォなマネしやがってェェェ)
番外個体 (……短パンじゃちょっと寒いなぁ)モゾモゾ
一方通行 (オイオイオイ、なンで脚絡ませてきてンだ誘ってンですかァァァ!?)
番外個体 (う、ここまで、か……)スゥ
一方通行 (ギプスが取れるまで3週間かかった、最低限痛みを感じなくなるまでのリハビリも同じぐらいか……)
一方通行 (俺、悟り開けるかもしれねェ)
番外個体 「」スピー
一方通行 「……いい気なモンだよな、ホントによ」ナデナデ
~その頃 第7学区 エツ標邸~
ショチトル 「少し早いが、私はもう休む」
結標 「あら、今日は早いのね」
ショチトル 「すぐに寝るワケではない。……あぁ、そうそう」
結標 「?」
ショチトル 「私はこれから絹旗さんが貸してくれたCDを聞くつもりだ」
エツァリ 「?」
ショチトル 「深夜だし、近所迷惑にならないようにヘッドフォンを使う。
だから呼ばれても気付かないかもしれないし、大きな物音も聞こえないかもしれない」
エツ標 「「」」
ショチトル 「そういうワケなので、お休み」
<ガチャ バタン
結標 「ねえ……もしかして気を使わせちゃってるかな」
エツァリ 「もしかしなくてもそうでしょう」
結標 「むー」
エツァリ 「彼女は聡明なところがありますから」
結標 「だとしたらちょっと悪いことしちゃったわね」
エツァリ 「埋め合わせは考えましょうか」
結標 (たまにはお兄ちゃん返したあげたほうがいいのでしょうね)
結標 (でも、今日は……ちょっと、その聡明さに甘えさせてもらおうかな)
:
:
:
結標 「で、さ。何か気の利いた感想はないの?」グイグイ
エツァリ 「と、申されますと?」
結標 「私みたいなのに押し倒されて、挙句馬乗りにされてるなんて。世の中の男子は羨むシチュだと思うけど?」グイグイ
エツァリ 「いや、あの」
――貴方、なんでこんな肩ガチガチなのよ。ちょっとそこに寝なさい。
エツァリ 「と言われたので、実際乗られてるのは背中なワケで」
結標 「そ、れ、で、も」
エツァリ 「体重増えました?」
結標 「なんか言った?」ギリギリギリギリ
エツァリ 「あぁぁぁぁぁ!? 言ってません! 言ってませんからフェイスロックはやめてください!!」
結標 「ならいいけど。……よし、こんなものかな。あとは湿布のエツの字張りでもしておきなさい」ポンポン
エツァリ 「あぁ、はい、了解です」
結標 「……」
エツァリ 「……? あの、終わったのならどいて頂いても」
結標 「どいてほしいの?」
エツァリ 「自分の背中に乗り続ける必要もないかなと」
結標 「やっぱり重いんだ」
エツァリ 「そうは言ってませんよ」
結標 (何かしらね、このある種の居心地のよさ)
エツァリ (次はキャメルクラッチでしょうか)
結標 (浜面くんほどじゃないけど、こいつもそこそこ鍛えてるのよね)サワサワ
エツァリ (うわ、くすぐったい!?)ゾゾ
結標 (滝壺さん的にはあれぐらい筋肉質なのがいいのかしら……)
結標 (ま、結局は好みよね。骨と皮だけの漂白エノキみたいなのと付き合ってるのもいるんだし)
エツァリ 「そ、そういえば今日は集まっておられたのですよね。首尾はどうでしたか?」
結標 「あ、そうだ。ちょっと待ってて」ガサガサ
エツァリ 「?」
結標 「はい、これ」
エツァリ 「これはまた大量じゃないですか。随分と勝ちましたね」
結標 「パチスロじゃないわよ、バカ。作ったの、みんなでね」
エツァリ 「分かっておりますとも」
結標 「ったく……みんなの作品、全部まとめて入れてあるから」
エツァリ 「……」ガサガサ
結標 「ちなみに、あえて私のも混ぜてあるわよ」
エツァリ 「結標さんのも……?」
結標 「もし一回で当てることができたら……そうね、貴方の命令1つだけ、なんでも従ってあげる」クスクス
エツァリ 「これですよね?」
結標 「えっ? な、んで……?」
エツァリ 「あ、正解ですか。やりましたね」
結標 「そんな……味は食べないとわからないとしても、形やラッピングは頑張ってみんなと同じレベルにしたのに……」
エツァリ 「わかりますとも」ニコニコ
結標 「ぐぬぬ……」
エツァリ 「さて、賭けは自分の勝ちということで。ちょっと考える時間を頂きます」
結標 「言い出したの私だし……今更逃げも隠れもしないから、好きになさい」
結標 (あぁ、もう……ちょっと強気になりすぎちゃったなぁ)
エツァリ (やはり立場の優位が入れ替わると弱いですね)
~その頃 第7学区 浜滝邸~
滝壺 「フレメアは寝ちゃった?」
浜面 「バタングゥだぜ。さすがに疲れてたんだろ」
滝壺 「今日は頑張ってたからね。お茶淹れた」カチャ
浜面 「ややっ、これはかたじけない」
滝壺 「ところで、これってチョコ?」
浜面 「あぁ、麦野とミサワの姐さんからもらった分だな」
滝壺 「……みさわは分かる。今日病院に送るって聞いてたから。でもむぎのも?」
浜面 「病院で出くわしたんだよ。自分が食うのに買ったから、ついでにやるってな」
滝壺 (嘘。ついで、だったらこんな綺麗にラッピングしてるハズがない)
浜面 「ま、ついでだろうと恵んでもらえるならありがたいってもんだよな」ハハハ
滝壺 (しかもこれ、小さいのでも何千円する高級ブランド……むぎの)
浜面 「……あ、あのー、滝壺さん?」
滝壺 (負けられない。今日の私はちょっと攻撃的)メラメラ
浜面 (あれ? 俺なんかマズったか?)
滝壺 「はまづら、これはみんなから」ガサッ
浜面 「おお!? なんだこの多種多様なチョコのIT革命は!」
滝壺 「今日作ってたんだよ。それはみんなの作品」
浜面 「そうか。今日はチョコ作り大会だったのか。……だからさっきフレメアのヤツ、
俺の口にチョコバナナ突っ込んできたんだな」
滝壺 「それはフレメアが作ったやつだね」
浜面 「で、滝壺さんのはどれでしょうか」ガサゴソ
滝壺 「こっち」
浜面 「え」
滝壺 「はい、あーん」
浜面 「」アーン
滝壺 「おいしい?」
浜面 「大福、か? おお、モチモチだぜ!」モキャモキャ
滝壺 「まだあるよ」
浜面 「は、はい、いただきます」アーン
滝壺 「でもよかった。気に入ってもらえて」
浜面 「当たり前だろうが! 手作りチョコ大福をアーンしてもらえるなんて、俺は世界中の男どもからの嫉妬を一身に受けてるぞ」
滝壺 「……そっか」
浜面 (? 今一瞬、目の色が変わらなかったか?)
滝壺 「じゃ、次も口で受け取ってね」パク
浜面 「え?」
滝壺 「ん」
浜面 (次なるチョコ大福があるのは、滝壺のやわらかそうな唇の間。口で受け取れってつまり……にょほー!?)
滝壺 「」ジー...
浜面 (………………フリーズしてる場合じゃねぇ! ま、待たせるワケにもいかんのよな)
浜面 (こ、こ、こ、これが初めてのチュウでもないだろ! 慌てるな、俺!)
浜面 「し、失礼します」スッ
滝壺 (はまづら、真っ赤。かわいい)
浜面 (う、受け渡し成功。味がもうよく分からん)モキュモキュ
滝壺 「溶けてない?」
浜面 「だ、大丈夫です!」
滝壺 「そっか、よかった。まだあるよ」
滝壺 (次はどうしようかな)
滝壺 「」ピンポン
滝壺 「ちょっと待って」プチ プチ
浜面 「」ブシュー
浜面 (なんでパジャマの前のボタンを外してるんでしょうかぁぁ!?)
滝壺 「次はここ」
浜面 (あ、ありのまま今起こったことを話すぜ! 滝壺がそのふくよかな胸の谷間に
チョコ大福を置いた。何を言っているのかわからねーと思うが)
滝壺 「早くしないと溶けちゃうよ」
浜面 (おい、チョコ大福。そこ代われ、すぐ代われ)
滝壺 「はまづら? やっぱりやりすぎだったかな」
浜面 「いやいやいや、そのお気持ちはすごく嬉しいでございますよ!」
滝壺 「じゃ、ほら」
浜面 「……やっぱり、これも口で拾わなきゃダメ?」
滝壺 「任せる」
浜面 (滝壺がここまでしてくれてんだ……俺が怖気づいてどうする!)
浜面 「……う、動かないでくれな」スッ
滝壺 (息がかかってくすぐったい)ブルッ
浜面 (……ど、どうにか大福は救出、いや回収できたが……さっき鼻血を出しすぎた、浜面もう限界)
浜面 「ハマー」バタッ
滝壺 「あれ? はまづら?……寝ちゃった、まだ半分近く残ってるのに」ツンツン
滝壺 「ちょっと攻撃的過ぎたのかも」
続きます