770 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/26 23:49:32.62 ou77gP3Lo 1/159



  ――#3 絹旗・白井のあの人はいま!



元スレ
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311523412/
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」~その2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1315074469/

※関連記事
【本編シリーズ】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 【前編】 【後編】 【おまけ短編集】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その2号室 【前編】 【後編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その3号室 【本編】 【番外編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その4号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その5号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その6号室 【前編】 【後編】 【幕間】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その7号室
【番外編】
絹旗「……超暑いです」白井「沖縄ですし」 【前編】 【後編】
【アフター】(当SSシリーズ)
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」
#0 プロローグ
#1 とある秋風の休日模様
#2 子どもができたら名前を考えないとね

※注記
『絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」』は2013年10月時点で未完結です。

771 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/26 23:50:47.74 ou77gP3Lo 2/159



~10月下旬 第7学区 常盤台新寮~


絹旗 「うはー」ニヨニヨ

テスラ 「」キョロキョロ

アスカ 「ミィー」ペチペチ

リック 「ナー」

ユリコ 「( -ω-)」スピ-

絹旗 「もう目も超開きましたね」

絹旗 「……やっべ、超可愛い」

絹旗 「リックをいじって遊ぶアスカが超可愛すぎです!」ピャー

テスラ 「」ジー

絹旗 「お、なんですか?」

テスラ 「」バタバタ

絹旗 「え、箱から出ようとしてるんですか? 超ダメです、まだ危ないです」


<ガチャ



773 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/26 23:52:51.62 ou77gP3Lo 3/159


白井 「絹旗さん」

絹旗 「あ、超おかえりなさい」

白井 「ちょっと……」チョイチョイ

絹旗 「?」

 :
 :
 :

絹旗 「どうしたんですか? 部屋の中じゃ超できない話でも?」

白井 「部屋の中でできないようなお話をなぜ廊下でするのですか」

絹旗 「じゃなんですか」

白井 「寮監がお呼びですの」

絹旗 「えっ? わ、私なにもしてませんよ!?」

白井 「まだそういう話か分かりませんの。それに、わたくしにもお話があるようでしたし」

絹旗 「じゃ、白井さんが何かやらかしたんですか?」

白井 「咎められるようなことをした覚えはございませんが……」

絹旗 「超つまみ食いしたとか」


774 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/26 23:54:36.04 ou77gP3Lo 4/159


白井 「まさか。絹旗さんじゃございませんし」

絹旗 「私だってこの寮に来てからはやってませんよ」

白井 「……まあ、話してても埒があきません。とりあえず向かいましょう」

絹旗 「なんだか気が超重いです……」

白井 「やましいことがないのならば、毅然としていればよろしいですの」

絹旗 「そうなんですけどねー……」



~寮監執務室~


<コンコン


寮監 「入れ」


<ガチャ


白井 「失礼いたしますの」

絹旗 「し、失礼します」


775 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/26 23:56:42.99 ou77gP3Lo 5/159


寮監 「二人とも、わざわざ呼び立ててすまないな」

白井 「いえ、とんでもないことでございますの」

絹旗 「ええと、どのようなご用で……」

寮監 「常盤台の役員会を通して、お前たち二人にある依頼が来ている」

白井 「依頼……研究協力の類ですか?」

寮監 「そうではない。そうではないが……」

絹旗 「?」

寮監 「いやな、私自身もなぜこんな指示を出さねばならないのか、よく分かっていないというのが実情だ」

絹旗 「どういうことですか」

寮監 「まずはこれに目を通してくれ」つ□

白井 「……取材?」

絹旗 「私たち、超記者でもなんでもないんですけど」

白井 「どうして、こんな?」

寮監 「ふむ、私が知る限りのことは話しておこうか」

絹旗 「超お願いします」


776 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/26 23:58:33.56 ou77gP3Lo 6/159


寮監 「まず、常盤台の役員会宛にこのタスク協力の依頼がきた。依頼元は私も知らされていない」

白井 「はい」

絹旗 「どこの誰がこんなことを……」

寮監 「協議の結果、生徒に危険を及ぼす可能性は低いということ、この経験は今後にも
    活かせるだろうということで、特別学習という形で受諾することになった」

絹旗 「まあ、超怪しげな研究協力よりはマシっぽいですよね」

寮監 「そして、役員は校内で良くも悪くも有名人であるお前たちをご指名だ」

絹旗 「有名人だなんて、そんな」

白井 「褒めてませんの」

寮監 「さて、どうする? 受ける受けないの最終的な選択権はそちらにあるが」

絹旗 「超面白そうなのでやります」

白井 「ちょっ」

寮監 「では、その旨伝えておこう。白井、絹旗は放っておくと危険だ。くれぐれも頼んだぞ」

白井 「……はぁ、仕方ございませんわね」

絹旗 「な、なんで危険なんですか!」

寮監 「自分の胸に聞いてみろ。では、一通りのものは渡しておこう。よく目を通しておくように」


777 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:01:06.99 DQakXavGo 7/159



~301号室~


<バタン


絹旗 「はー、寮監と同じ空間にいるだけで寿命が超縮んじゃいますね」

白井 「なんだか妙なことになってしまいましたの……」

絹旗 「でも超面白そうじゃないですか」

白井 「何事も無ければよいのですが」ガサガサ

絹旗 「あ、それ要項ですか? 超ちょっと見せてくださいよ」

白井 「ええ、どうぞ」

絹旗 「んー……取材対象に、交渉方法に……お!」

白井 「どうしましたの?」

絹旗 「取材のための欠席、外出、外泊は全面的に認めると超書いてありますよ!」

白井 「なんと」

絹旗 「超サボり放題ってワケですね!」


778 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:03:06.75 DQakXavGo 8/159


白井 「ですが、それと引換にこの特別学習で成果を出さねばならないことをお忘れなく」

絹旗 「ええ。超大丈夫ですよ」

白井 「それで、取材対象というのは?」

絹旗 「……なんだか超知ってる人ばっかりですね」

白井 「!? お、お姉様まで!」

絹旗 「御坂さんもですか……おんや?」

白井 「今度は何が?」

絹旗 「原則、取材対象と交渉の上での密着取材とする? なんで?」

白井 「なんだかやる気が出てきましたのー!!」フォォー

絹旗 「超ちょろっと話を聞くだけと思ってました……こりゃ大変そうですね」

白井 「書類はそれで全部のようですわね」

絹旗 「他なにかありました?」

白井 「どういう訳だか、最新型のハンディデジタルビデオカメラもお預かりしてますの」●REC

絹旗 「超最新型ですか? じゃ、これで私を撮ればフルハイビジョン絹旗になる訳ですね!」ピャー

白井 「あとは細々としたものが色々」ゴソゴソ


779 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:04:51.58 DQakXavGo 9/159


絹旗 「おー、なんだか超取材っぽいですね」

白井 「それで、いつから始めましょう」

絹旗 「これ見ると、期限は今月いっぱいになってますね」

白井 「取材先の数も考えると、明日から着手したほうがよさそうですの」

絹旗 「急ですが超仕方ないです」

白井 「どのように対象と接触するおつもりで?」

絹旗 「書いてある順番でいいんじゃないんですか?」

白井 「特に指定もございませんし、そういたしましょうか」

絹旗 「あ、さっきのカメラ貸してもらっていいですかね」

白井 「ええ」つ【カメラ】

絹旗 「ユリコー、超キャメラテストですよ」●REC

ユリコ 「(ノ・ω・)ノ」

絹旗 「子どもたちも超元気でーす」

白井 「絹旗さん。明日は忙しくなりそうですし、早めにお休みになってくださいまし」

絹旗 「超了解です!」


780 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:06:56.66 DQakXavGo 10/159



~翌日 第18学区 ???~


白井 「3、2、1、スタート」●REC

絹旗 「はい、今回はですね。第18学区、とある学生寮、とある部屋に超来てます」

白井 「今回密着取材するにあたり、特殊な交渉術を用いておりますの。それについては
    極秘事項であるため詳細はお伝えできませんが、無事に密着取材のお許しが出ましたの」

美琴 「ねー、何か飲む?」

絹旗 「牛乳あります?」

白井 「絹旗さん!」

美琴 「いいからいいから。黒子も同じでいいのよね?」

白井 「あ、申し訳ございません。頂きますの」

美琴 「はい、おまちどうさま」

絹旗 「えー、こちらは御坂美琴さん。長点上機学園1年。LEVEL5の超超電磁砲のすごい人です」

白井 「身長161cm、体重」

美琴 「ちぇいさー!」ゴキッ

白井 「」


781 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:09:02.80 DQakXavGo 11/159


絹旗 「あ、私たちのことは空気扱いでよろしいので超お構いなく」

美琴 「え? そ、そうなの?」

美琴 (って言われてもねぇ……)

絹旗 「それより今のでキャメラの映像が」

白井 「カメラより私の心配をしてくださいまし」

美琴 「アンタならあれだって快感に変換しちゃうでしょ。さーて、と」トントン

絹旗 「あ、これから学校ですか?」

美琴 「うん、いつも通り」

白井 「あぁ、お姉様! 長点上機の制服もお似合いですのぉぉ!」ビクン

美琴 「ふふっ、ありがとね」コツコツ

絹旗 「ほら、白井さん。悶えてないで、私たちも行きますよ」

白井 「……はっ、わたくしとことが」

 :
 :
 :



782 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:11:33.26 DQakXavGo 12/159


美琴 「♪」コツコツ

白井 (お姉様、なんだかご機嫌ですのね)

絹旗 「この寮は長点上機学園に超割と近く、歩いて15分ほどで学校に到着します」

白井 「時間帯もあって、同じように学校に向かう生徒が多いですのね」●REC

絹旗 「ところで、御坂さんはなぜ超長点上機に?」

美琴 「あ、その話しちゃう? そうね、どこから話そうかな」

白井 「たしか、当初の志望では」

美琴 「うん。当麻と同じ高校にいくつもりだったわよ」

絹旗 「ですよね」

美琴 「なんだけどね。それを当麻に言ったら3時間説教されて」

絹旗白井 「「説教?」」

美琴 「"お前にも夢があるんだろ!?"とか"上条さんは上手くいけば来年には卒業ですよ!?"とかね」

絹旗 (上手くいけば?)

美琴 「で、私も引き下がれなくなっちゃってさ。そのあと4時間近く口ゲンカして」

白井 「お姉様らしいですの……」


783 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:13:54.57 DQakXavGo 13/159


絹旗 「最終的にどう決着したんですか」

美琴 「まずお互いに冷静になろうってことで、別々に1時間ぐらい散歩してきて」

白井 (この時点で8時間経過してますの)

美琴 「その後で、将来の夢とか、そのためにどうするべきとか延々話してたわね。5時間ぐらいかな?」

絹旗 「合計13時間!」

美琴 「でね。ずっと蚊帳の外だったインデックスが空腹で意識失っちゃたからお開きになったってワケ」

絹旗 「超ちょっと可哀想です」

白井 「あのシスターさんのことですから、干からびてしまったのでは」

美琴 「だから、その後大量に食事作って埋め合わせしたってば」

絹旗 「まあともかく、そういうエピソードがあったんですね」

白井 「お姉様もあの殿方も、一歩引くということを知らない方ですから……」

美琴 「当麻が頑固なんだもん」ブー

絹旗 「はあ……あ、見えてきましたね」

白井 「久しぶりにあの学び舎を見ましたわね」

美琴 「うん、時間もちょうど良かったわね」


784 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:16:00.04 DQakXavGo 14/159



~同日 長点上機学園 教室~


絹旗 「えー、ただいま午前の授業を超やっています」

白井 「さすがトップ校。授業中の空気も張りつめてますの」●REC

絹旗 「……でも、この範囲って超見覚えありますね」

白井 「これは、常盤台の生徒なら履修済みのところですわね」

美琴 「」ガシガシ

絹旗 「なんか超一生懸命ノートとってますよ」

白井 「さすがお姉様。いつ何時も決して手を抜かないその姿勢!」

絹旗 「どれどれ、どんな調子」チラッ

美琴 「」ガリガリ

絹旗 「……」

白井 「絹旗さん? 何を」チラッ

絹旗白井 ((ゲコ太のパラパラ漫画ーー!?))

美琴 「♪」ペラペラ


785 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:17:55.60 DQakXavGo 15/159



~同日夕方 長点上機学園 正門~


美琴 「はー、終わった終わった」ノビー

絹旗 (御坂さんって、どっちかというと不真面目な部類に入るのでは……)ヒソヒソ

白井 (フリーダムと言ってくださいまし)ヒソヒソ

美琴 「よしっ。んじゃ行くとしますかー」

絹旗 「あれ? どっか行くんですか?」

美琴 「ん、まあね」

白井 (まっすぐ家にお帰りになる訳ではない……まさか)

美琴 「♪」タッタッタッ

絹旗 「え、足はやっ!」

白井 「わたくしたちも急ぎましょう!」

絹旗 「超待ってくださいー!」トテテテ

美琴 「急がないとバス行っちゃうわよー」タッタッタッ

白井 (バス!? いったい何処へ!?)


786 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/27 00:20:28.67 DQakXavGo 16/159



~バス車内~


  ブロロロロ...


絹旗 「現在私たちは第7学区へ向かうバスに乗っています」

美琴 「」カチカチ

白井 「ずっと携帯をいじっておられますの」

絹旗 「超ファンシーな携帯ですね。子供用じゃないんですか?」

美琴 「あ、返事きた」

美琴 「……そっかー」ニパニパ

美琴 「了解です、っと」カチカチ

絹旗 「うはぁ、超頬が緩みっぱなしですよ。こりゃアレですね、彼氏ですね」

白井 「ぐぬぬ……」

美琴 「あっ、いけない!」ピンポーン


<ツギ、テイシャシマス



817 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 00:52:56.88 5WI0+Y7To 17/159



~同日夕方 第7学区 とあるスーパー~


  ワイワイガヤガヤ


絹旗 「……なんかやけに混んでないですか?」

白井 「夕食の準備、ということを差し引いてもこれは……」●REC

美琴 「……ねえ、絹旗さん。能力ってどんなだっけ?」

絹旗 「窒素装甲ですか? ええとですね。大気中の窒素を集約、超圧縮することにより」

美琴 「ゴメン! 詳しい話は後で聞くとして、今は手短に!」

白井 「超固くて目に見えない全身タイツを着込む能力ですの」

絹旗 「他に言い方ないんですか!?」

美琴 「で、黒子は空間移動……よし、採用!」

絹旗白井 「「???」」

美琴 「卵Lサイズ8個入りが38円、お一人様2パックまでだからね」

白井 「だからね、と申されましても」


818 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 00:55:40.37 5WI0+Y7To 18/159


絹旗 「あの、それを私たちも超確保してこいと?」

美琴 「そゆこと♪」

絹旗 「御坂さん、そんなことしなくてもお金超ありますよね!?」

美琴 「細かいことはあとあと! ほら行くわよ!」ダッ

白井 「」

絹旗 「やらなきゃならないみたいですね……」

白井 「お姉様……」



~特売コーナー~


絹旗 「ぬわーー! どいてください押さないでください!!」

白井 「いたっ! いたたたた!」

絹旗 「超邪魔です! 窒素連牙弾!!」ポカポカポカポカ

白井 「誰ですか髪を引っ張ってるのはぁぁ!!」

絹旗 「ひゃぁっ!? だっ、ど、どこ触ってるんですかー!!」ポカッ


819 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 00:57:42.14 5WI0+Y7To 19/159


 :
 :
 :

絹旗 「」ゲッソリ

白井 「」グッタリ

美琴 「お疲れさん♪ じゃお会計行くわよ」

絹旗 「……あ、白井さん。テールが片方ほどけてますよ」

白井 「いつの間にやらリボンが消失してましたの……」

絹旗 「超スペアはないんですか」

白井 「残念ながら」

絹旗 「じゃこれ使ってください。お惣菜コーナーから超頂きまして」

白井 「輪ゴムではないですか……」

絹旗 「ダメですかね」

白井 「もう結構ですの。一本で纏めておきますので」シュルシュル

絹旗 「おっ、超ポニテ。下ろしておくって選択肢はないんですか?」

白井 「くせっ毛ですので。対策なしに下ろすと後々大変ですの」


820 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 00:59:49.84 5WI0+Y7To 20/159



~同日 第7学区 ???~


絹旗 「さて、命がけで戦利品をゲットした私たちは移動を開始しました」

白井 「どちらへ向かうおつもり……いや、分かってはいるんですけれども」●REC

美琴 「……アイツ、まだメール返してこない。何やってんのかしら……」ブツブツ

絹旗 「御坂さんは、さきほどから超少々不機嫌ですが」

白井 「どうもメールの返事が滞っておられるようですの」

絹旗 「返事が来ないんですか?」

美琴 「あ? うん、そんなところ」

絹旗 (うわ、超怖ぇ)

美琴 「この買い物だって、アイツのリクエストのために買ったのに」

絹旗 「あ、じゃこれ夕食の材料なんですね」

白井 「いつもこうしておられますの?」

美琴 「へ? う、うん……いつもっていうか」

絹旗 「毎日ですか」


821 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:01:22.81 5WI0+Y7To 21/159


美琴 「まっ、ままま、毎日じゃないわよ! 週6日ぐらい、かな……?」

絹旗 「毎日ですね」

白井 (し、嫉妬の炎が……!)

美琴 「いいじゃない、別に! あの部屋で一人で食べたってつまらないもん」

白井 「……そういえば、なぜ長点上機の寮に?」

美琴 「だっていつまでも厄介になってるのも悪いかなって思って……
    そ、そりゃ一緒にいれるならその方が楽しいけど、でも、なんていうか」

絹旗 「あ、もう超いいです。分かりましたんで」

白井 (ぐぉぉぉぉぉ)

絹旗 (これ以上は白井さんがしっとマスクになっちゃいますね)

美琴 「さ、て。着いたけど、アイツいないのかな」

絹旗 「えー、どうやら目的地に到着した模様です」

白井 「やはりここでしたか……」●REC

絹旗 「ご不在だったらどうするんですか?」

美琴 「カギなら持ってるから大丈夫よ」


822 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:03:11.08 5WI0+Y7To 22/159


 :
 :
 :


<ガチャ バタン


禁書 「あ、みこと。今日は遅かったね」

美琴 「うん。買い物してたからね」

絹旗 「現在、とある学生寮の一室に入りました。超質素ですね」

白井 「ベッドと机しかないわたくしたちの寮よりはマシかと」

美琴 「当麻は、やっぱいないのね」ハァ

禁書 「こもえから電話があって、今日は補習なんだって」

美琴 「またぁ!? っていうか、なんで先生が連絡してくるのよ」

禁書 「私に言われても分からないんだよ」

絹旗 「この時期に超補習なんてしてて大丈夫なんですか?」

美琴 「知らないわよ! 私とインデックスがあんだけ勉強みてあげたのに」

禁書 「とうまはおバカだからしょうがないんだよ」

白井 「あの殿方の場合は、頭の出来云々より出席日数の問題かと」


823 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:05:29.89 5WI0+Y7To 23/159


美琴 「はぁー……とりあえず、待ちながら夕食の準備でもしましょ」

禁書 「今日のご飯は何なのかな!?」キラキラ

美琴 「シチューよ」

禁書 「キターーーー」

美琴 「じゃ、始めるとしますか」

絹旗 「……しかしすごいですね。よくみたら家電が須らく超最新型ですよ」

白井 「テレビも、これは75インチプラズマ……」

禁書 「それはね、みことがすぐに漏電して壊しちゃうからなんだよ」

絹旗 「なんとまぁ」

白井 「お姉様の漏電癖はこんなところでも被害を」


<だから弁償してるじゃなーい!


絹旗 「こんなものをポンと買ってのけるのに、なんでスーパーの特売で戦っていたんでしょう」

白井 「まったく、謎ですわね」

禁書 「んー、とうまのせいじゃないかな」


824 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:07:59.55 5WI0+Y7To 24/159


白井 「と、申されますと?」

禁書 「前にね、みことが100グラム6000円のお肉を買ってきたことがあったの」

絹旗 「すげ……」

禁書 「その日の夜に、とうまが吐き気と腹痛がすごかったんだよ。
    救急車を呼ぼうとしたんだけど、"ダメだ! 肉もったいない!"って止められるし」

絹旗 「アホですか」

白井 「食あたりでしょうか」

禁書 「でも私とみことは同じものを食べてなんともなかったんだよ。つまり」

絹旗 「つまり?」

禁書 「とうまの臓物は、高い食材は受け付けないようにできてるんだよ」

絹旗 「あっ、だから超安い食材を選んで買ってるんですね」

白井 「こんな下らないことでお姉様にいらぬ苦労をさせやがってですの……」ギリギリ

絹旗 「今日に関しては私たちもです」

スフィ 「」ポテポテ

絹旗 「お、ここでも猫飼ってるんですね」


825 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:10:32.28 5WI0+Y7To 25/159


禁書 「そうだ。スフィンクスのご飯の時間なんだよ」トテトテ

白井 「スフィンクス……」

絹旗 「超個性的な名前ですね……」

禁書 「スフィンクス、お待たせー」【猫缶】プキッ

スフィ 「♪」

絹旗 「こっ、こいつ! うちのユリコより超いいもん食べてますよ!」

白井 「この猫缶も、お姉様が?」

禁書 「うん。みことが補充してくれてる」

絹旗 (ユリコのエサもワンランクアップしてあげますか……子どもも出来たんですし)

スフィ 「」マフマフ

絹旗 「え、なんか超おいしそうですよ」

白井 「食材的に、人間が食べても違和感はないでしょうし」

禁書 「そうかな? 猫向けの味付けだから。あんまり美味しくなかったんだよ」

絹旗白井 ((食べたんだ……))


826 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:12:49.13 5WI0+Y7To 26/159



~30分後~


美琴 「あとは煮込むだけ♪」

絹旗 「超お疲れさまです」

白井 「お姉様は、以前の常盤台の寮が壊れてからここにお住まいになっていたんですよね」

美琴 「うん、まあね」

絹旗 「それが分からなかったんですよね。なんでまた?」

美琴 「なっ、なんでって……そりゃ、あの……ほら、あれよ、あれ……」プシュー

白井 「絹旗さん、いけません。これ以上は漏電の恐れがありますの」

絹旗 「えっ。そりゃ超マズイですね」

禁書 「スフィンクスは危険を察知してとっくに逃げちゃったんだよ」

絹旗 「このテの質問はNG、と」メモメモ

美琴 「あっ、そ、そうだ! 二人とも門限は大丈夫なの!?」

絹旗 「この取材に関しては超問題ないです」

白井 「お姉様は大丈夫なのですか?」


827 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:14:47.12 5WI0+Y7To 27/159


美琴 「私? 平気平気。だってあの寮、決まりとかないもん」

絹旗 「あ、なら超平気ですね」

美琴 「寮って言ってるけどね。結局、学校がオーナーやってるマンションよ」

絹旗 「超ちょっとうらやましいです」

美琴 「常盤台はねー。絹旗さんみたいなタイプには窮屈なんじゃない?」

絹旗 「ええ、まあ。ちょくちょく寮監に超締められますし」

白井 「そろそろわたくしを巻き込むのはやめて頂きたいのですが」

美琴 「二人とも相変わらずね」クスクス


<ガチャ バタン
<戻ったぞぉ……


禁書 「あっ、とうまが帰ってきた!」

絹旗 「なんかやけに超疲れ果てた声が聞こえてきましたが……」

美琴 「当麻のことだから。財布落としてチンピラに絡まれて上から信号機が降ってきたとか、そんな程度でしょ」

白井 「それでそんな程度なのですか」


828 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:17:26.97 5WI0+Y7To 28/159


禁書 「当麻、おかえりなんだよ!」

美琴 「お帰り。食事できてるから準備するわね」

上条 「おう、たでーまー……あー、今日は疲れましたことよ」グッタリ

絹旗 「何があったんですか?」

白井 「どうせいつもの不幸ですの」●REC

上条 「財布落として、探してたらチンピラに絡まれて、逃げれたと思ったら頭上から信号機が降ってきてな……」

絹旗白井 「「……」」

上条 「やめて! 憐れむような目で上条さんを見つめるのはやめて!」

絹旗 (御坂さん超すげー……)

白井 (不幸もここまで続くと、逆に幸運なのでは)

美琴 「はいはい、シケた話してないで。ご飯にするわよ」

禁書 「ごはんごはんごはーーん!」

上条 「上条さんの不幸話はシケた話ですか……」

美琴 「いつも財布落とすからって、もう財布にはレシートしか入れてないじゃない」

上条 「まあな! 現金とかカードは、このウェストポーチ金庫に入れればバッチリだぜ!」フンス

絹旗 「もう財布持ち歩かなくていいじゃないですか」


829 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:19:56.03 5WI0+Y7To 29/159


白井 「絹旗さん」●REC

絹旗 「あ、いけね。超忘れてました。ええと、手元の資料に寄りますと」

絹旗 「このウニ頭は上条当麻さん。どこぞの高校の3年生でレベルはゼロ」

白井 「類人猿、以上」

上条 「ひどい!……っていうか、白井か?」

白井 「ええ、白井ですが」

上条 「髪型変えたんだな。一瞬誰か分からなかったぜ」

白井 「まあ、アクシデントですの。貴方ほどではございませんが」

上条 「その髪型もいいじゃねぇか。いつもと違う雰囲気でさ」

白井 「っ」

美琴 (またこいつは天然でこんなこと言ってぇぇぇぇ!!)

禁書 (とうまはブレないんだよ)ハァ

絹旗 (いるんですよね、超無自覚でこういうことやらかすヤツ)

絹旗 「さて、こちらのシスターは禁書さん。正しくは、Index-Librorum-Prohibitorum……?」

禁書 「うん。魔法名はdedicatus545、込めし意味は」

絹旗 「ち、ちょっ、ちょっと待ってください! これ本名ですか?」

禁書 「違うんだよ?」


830 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:22:06.30 5WI0+Y7To 30/159


絹旗 「は、はあ……まあ、そういうものでしょうか……」

美琴 「深く考えなくていいわよ。それじゃ夕食にしましょ」

禁書 「ごはんごはんごはーーん!」

上条 「こら! みかんみかんみかーーんみたいに言うんじゃありません!」

白井 「旺盛な食欲ですのね……」

上条 「お蔭で上条家のエンゲル係数は青天井でございますことよ」シクシク

禁書 「みことのおかげで人間らしい食事ができるようになったんだよ」

絹旗 「つまり以前は人間らしくなかったと」

白井 「これはDVの解釈が当てはまるでしょうか」

上条 「俺だって頑張った! 頑張ったんですよ!」

美琴 「うん、頑張ったよね」ナデナデ

上条 「御坂は優しいな……」

禁書 「じゃ、いただきまーす!!」ガツガツ

絹旗 「……あの、私たちの分も超並べられてるんですが」

白井 「お姉様の手料理を食べないという選択肢はこの世に存在しませんの」

美琴 「ほら、みんな。冷めちゃうわよ」


831 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:23:50.00 5WI0+Y7To 31/159


 :
 :
 :

禁書 「お代わり!……じゃなくて、持ってくるんだよ」トテトテ

絹旗 「何杯目ですか!?」

上条 「あいつはよく食うからな」

白井 「これだけ美味しいんですから当然ですの。もうジョッキで飲みたいぐらいですの」

美琴 「大袈裟よ」

絹旗 「さっきキッチンのぞいたとき、ラーメン屋でスープ作るみたいな鍋でシチュー作ってましたけど」

美琴 「ここじゃアレぐらい普通よ」

禁書 「普通なんだよ!」ガツガツ

絹旗 (常識が超通用しない空間ですね……)

禁書 「ごちそうさま!」ブフィー

白井 「ごちそうさまでしたの」ペコリ

上条 「ごちそうさまでした!」

絹旗 「あ、超ごちそうさまです」

美琴 「はーい、お粗末さま」

上条 「うし。こっからは上条さんの仕事だな! 片付けのプロに任せなさい!」カチャカチャ


832 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:25:56.79 5WI0+Y7To 32/159



~しばらくして~


美琴 「さて、そろそろ私帰るわね」

禁書 「あれ? 今日はお泊りじゃないんだね」

美琴 「うん。明日も学校だしね」

上条 「悪ぃな。いつもいつも」

美琴 「別にいいわよ、こんぐらい」

上条 「いやいや、感謝してもしきれませんよ」ナデナデ

美琴 「ふにゃー」

絹旗 「どうやら帰るみたいです」

白井 「気安くお姉様の綺麗な髪にぃぃぃ……」ギリギリ

上条 「送ってかなくて平気か?」

美琴 「私を誰だと思ってるのよ」

絹旗 「まあ、超LEVEL5ですしね」

白井 「お姉様にかかれば、チンピラ数百人など一瞬ですの」フンス


833 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:27:40.09 5WI0+Y7To 33/159


美琴 「じゃ、また明日ね!」

上条 「くれぐれも気を付けてな」

禁書 「みこと、ごちそうさまなんだよ!」ノシ

美琴 「アンタ相手だと作り甲斐があるわね、ホント」クスッ

絹旗 「超仲良しなんですね」

白井 「よきことですの」

美琴 「じゃ、おやすみ!」


  ガチャ バタン


美琴 「さってと」コツコツ

絹旗 「もうバスないですよ?」

美琴 「うん、だからタクシーね。歩くには遠いし」

白井 「お姉様、今充実しておられますの?」

美琴 「してるかしてないかでいったら、すごく充実してるわね」

白井 「……それが聞けて安心しましたの」


834 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 01:30:18.64 5WI0+Y7To 34/159



~同日 第7学区 とある大通り~


美琴 「二人とも、お疲れさん」

絹旗 「ええ、超お疲れ様でした」

白井 「絹旗さん、お疲れ様ですの」

絹旗 「なに一緒に乗ってこうとしてるんですか!!」グイー

白井 「あぁん、お姉様ぁ」ズルズル

美琴 「ホント、変わらないわね。絹旗さん、黒子のことよろしくね」

絹旗 「任せといてくださいよ」

美琴 「二人なら大丈夫だと思うけど、帰り道気を付けてね」

白井 「あぁ、お姉様に気遣って頂けるなんて」クネクネ

美琴 「じゃ、またその内ねー」ノシ


  ブロロロロ


白井 「さあ、絹旗さん」●REC

絹旗 「切り替え超早いですね。はい、ということで御坂さんたちは充実した生活を送っているとのことでした」

白井 「それでは、今回の取材を終えたいと思いますの。ごきげんよう」


862 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 23:54:47.03 5WI0+Y7To 35/159



~翌日 第11学区 ???~


白井 「3、2、1、スタート」●REC

絹旗 「超おはようございます。現在、私たちは物資搬入拠点である第11学区に来ています」

白井 「さて。早速なんですが、困ったことになっておりますの」

絹旗 「まさか今日の取材対象が捕まらないなんて……」

白井 「第18学区のご自宅ももぬけの殻でしたし」

絹旗 「探し出すとしかないというワケですね」

白井 「当てはございますの?」

絹旗 「手元の資料によりますと、毎朝の超ロードワークが日課だということですので」

白井 「ここがそのコースに入っていると」

絹旗 「そのコースが学園都市外周らしいんですよ」

白井 「は?」

絹旗 「で、ここ張ってれば通るかな、と」

白井 「範囲が広すぎるのでは」


863 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 23:57:09.94 5WI0+Y7To 36/159


絹旗 「ここに来た理由はもう一つあります」

白井 「と申されますと?」

絹旗 「取材対象は第18学区にある研究所に超頻繁に通ってるそうで」

白井 「それで、第18学区に隣接し、外周部にある第11学区に来たということですのね」

絹旗 「超その通りです」

白井 「……にしても、どこまでも行動的な殿方なのですね」

絹旗 「いつぞやの大覇星祭でも超無双してましたからね」

白井 「お姉様と張り合って無傷で帰ってくるなんて、驚きましたの」

絹旗 「あー、聞きましたよ。超超電磁法を歯で受け止めたんですよね」

白井 「人間技じゃございませんの……」

絹旗 「手元の資料には能力の超詳細が書いてませんね。何ができるかは書いてありますけど」

白井 「詳細が分かる人間が誰もいないということですの」

絹旗 「超本人もですか?」

白井 「本人ですら大雑把にしか分かっていないらしくて」

絹旗 「……それ、能力ですか? 宇宙パワーとかそういうのじゃないですよね?」


864 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/28 23:59:13.80 5WI0+Y7To 37/159


白井 「否定も肯定もできませんわね」

絹旗 「やっぱり超宇宙人とかなんですよ」

白井 「なんにせよ、取材という大義名分があるのですし、ご本人に直撃してみては?」

絹旗 「そうですね、それが超一番早そうです」



~1時間後~


絹旗 「まだ現れませんか……」

白井 「もう取材ではなく張り込みですの」

絹旗 「んー、もしかして読みが超外れましたか」

白井 「どうなさるおつもりですの?」

絹旗 「超仕方ないです。ちょっと聞いてみましょう」カチカチ

白井 「? どなたに?」

絹旗 「今日接触する予定のもう一人の取材対象さんです。メモに書いてありますよね?」

白井 「……ああ、この方ですのね。確かにこの方ならご存知かも」


865 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:01:44.77 EdVhohaoo 38/159


絹旗 「あ、もしもし。絹旗ですが……え、なんで怒ってるんですか」

絹旗 「仮眠中? 研究所で徹夜だった? そりゃすいません」

絹旗 「それでですね。彼がどこにいるのか確認したいのですが」

絹旗 「……は? 第五学区!? なんで!?」

絹旗 「……あー、そういうことですか。……分かりました。超ありがとうございます」ピッ

白井 「第5学区となると、ここからですと第18学区を挟んで向こう側ですわね」

絹旗 「超盲点です。午前中は大学に行ってるみたいです」

白井 「大学……たしかに、手元の資料には在学している大学も書いてありますわね」

絹旗 「うーん、裏をかかれてしまいましたか」

白井 「いえ、そんな話でもないかと……」

絹旗 「ともかく向かいましょう。タクシーならそんな時間かからないハズです」

白井 「そうですわね。また移動される前に捕まえませんと」

絹旗 「そうと決まれば、超急ぐとしましょうか」トテテテ

白井 「えー、という事情により移動を開始致しますの」●REC


866 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:03:41.39 EdVhohaoo 39/159



~同日 第5学区 とある大学~


白井 「さ、どうぞ」●REC

絹旗 「えー、という訳で。対象が通っている大学に超やってきています」

白井 「今回密着取材するにあたり、特殊な交渉術を用いておりますの。それについては
    極秘事項であるため詳細はお伝えできませんが、無事に密着取材のお許しが出ましたの」

削板 「なんだかよくわからんが、まぁ頑張れ!」

絹旗 「とまぁ、このように。超あっさりと見つかった訳で」

白井 「よくも悪くも目立つ方ですから」

削板 「お前たちのことはよく覚えているぞ。根性あるチビっ子たちよ!」

絹旗 「誰が超チビですか!」ギャオー

削板 「超は言っとらんぞ!?」

白井 「えー、こちらは削板軍覇さん。LEVEL5、第7位。見ての通り熱いお方ですの」

絹旗 「超脳筋のくせに!」

削板 「お、おいおい! 俺だって人並みには勉強できるぞ!?」


868 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:05:40.47 EdVhohaoo 40/159


絹旗 「超ちっそぱーーんち!」ポカポカ

削板 「ふははは! 軽い! 軽いぞ!」

白井 「ところで、第7位さんはなぜこの大学に?」

削板 「よくぞ聞いてくれた! 俺はな、将来体育教師をしつつ警備員となり、根性とはなんたるかを広めたいと思っている!」

絹旗 (こんな体育教師がいたら超厄介でしょうね)

削板 「そこで、この大学に来たという訳だ!」ドパーン

絹旗 「カラフルな煙吹かないでください!」ケホッ

白井 「そういうことであれば、ここはおあつらえ向きかもしれませんの」

絹旗 「そうなんですか?」

削板 「うむ。ここは先生とか教師の育成に力を入れているらしいからな!」

白井 「こういっては失礼ですが、ちゃんと下調べもしておられますのね」

削板 「してないぞ!」

絹旗 「なんなんですか」

削板 「いや、教師になりたいって言ったら、じゃここにしろって言われてな」

絹旗 「言われてって……」


869 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:07:42.16 EdVhohaoo 41/159


削板 「それはそうと、そろそろメシにするか!」

白井 「まだ早くないですか?」

削板 「午後から第18学区にある研究所に用事があってな。早めに済ませておきたい」

絹旗 「研究所ですか」

削板 「うむ。細かいことは分からんが、手伝ってほしいらしくてな」

白井 「LEVEL5ともなりますと、研究協力の依頼も多いのでしょうね」

絹旗 「そう言えば、第7位の能力って」

削板 「細かいことはメシを食いながらだ! いくぞ!」ヒュン

絹旗 「超早ぇ!」

白井 「あれも能力なのでしょうか……」



~同日 とある大学 食堂~


削板 「うん、今日も根性でメシが上手い!」ガツガツ

絹旗 「……なんか昨日から超大食漢ばかり見てるような気がします」

白井 「奇遇ですわね。わたくしもですの」


870 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:10:07.61 EdVhohaoo 42/159


絹旗 「ところで、先程研究協力というお話がありましたが」

削板 「あったな!」

絹旗 「第7位さんの能力って、つまりなんですか?」

削板 「わからん!」

絹旗白井 「「……」」

削板 「だから、午後からそれを調べにいくと言っただろうが」

絹旗 「言ってませんよ!!」

白井 「では、あの、能力名とかは?」

削板 「ん? そういえば決めたことはないかもしれん」

絹旗 「……あー、じゃ聞き方を変えます。どんなことができますか?」

削板 「うむ、まず俺の代表的な必殺技は念動砲弾<アタッククラッシュ>!」

絹旗 「はいはい、すごパ」

削板 「あとはなんだろうな。俺も細かいことを考えるのは苦手でな!」ガハハ

絹旗 「もういいです……」

白井 「手元の資料によりますと、先程のカラフルな煙に加え、自分を中心とした変な爆発、
    銃弾をものともしない肉体、一瞬で数十メートル移動する、電撃を叩き落とす、と」

絹旗 「もう超ワケわからないです」


871 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:11:54.74 EdVhohaoo 43/159


削板 「すごいな! そこまで調べてるのか!」

白井 「なんといいますか、訳の分からない能力ですのね」

削板 「俺も分からんからな!」

絹旗 「これじゃ能力名とかなくて超当然のような気もしてきますね」

削板 「能力名か。そうだな、ないというのも根性なしっぽいよな……」ウーン

絹旗 「関係あるんですか?」

白井 「価値観は人それぞれですの」

削板 「よし、チビっ子たちが考えてくれ! 難しいことを考えるのは性に合わん!」

絹旗 「はぁ!?」

白井 「よ、よいのですか。そんなことで」

削板 「何、構わん!」

白井 「どうしましょう……」

絹旗 「御坂さんみたいに、秘奥義を能力名にしちゃえばいいんじゃないんですか?」

白井 「となると、念動砲弾?」

絹旗 「とてもそれで説明しきれるとは超思いませんけどね」


872 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:14:20.26 EdVhohaoo 44/159


削板 「なるほど、念動砲弾を採用するのか。……アリだな!」ウンウン

絹旗 「アリなんだ」

白井 「お気に召したようでホッとしましたの」

削板 「よしよし、今日からは俺は念動砲弾だ!」

絹旗 (よかったんですか?)ヒソヒソ

白井 (ご本人が納得しておられますし)ヒソヒソ

削板 「話も一段落ついたし、さっさとメシを済ませるとするか」

絹旗 「しっかし、見てるだけで胃が持たれそうですね」

削板 「どうした? お前さんたちもいるから多めに頼んだんだぞ。遠慮なく食ってくれ」

絹旗 「いや、あの……」

白井 「ステーキにハンバーグ、ローストビーフ、スペアリブ……」

絹旗 「なんでこんなんばっかなんですか!」

削板 「根性フーズだからだ!」

白井 「野菜もあったほうが」

削板 「あるぞ! 食え!」ドン


873 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:16:36.74 EdVhohaoo 45/159


絹旗 「このお皿山盛りのフライドポテトを野菜と超言い張るんですか」

削板 「オニオンリングのほうがよかったか?」

絹旗 「そうではなく!」

白井 「まあまあ、絹旗さん。ご馳走になる身分、贅沢は言えませんの」モギュモギュ

絹旗 「いや、肉自体がイヤって訳じゃないんですけどね」マグマグ

削板 「そうそう、食わないと大きくなれないぞ!」

絹旗 「ほっといてくださいよ!」

白井 (この食生活で大きくなるのは横方向ですの……)



~食後~


削板 「よし! 腹も満たしたし、行くとするか!」

白井 「たしか第18学区の研究所でしたわね」

絹旗 「となるとバスで」

削板 「何言ってんだ、走るぞ」

絹旗白井 「「え?」」


874 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:18:55.16 EdVhohaoo 46/159


削板 「食後の運動にもちょうどいいだろう!」フンフン

絹旗 「いやいや、ストレッチ始めないでくださいよ」

削板 「心配するな! ペースはあわせてやる!」

白井 「仕方ございませんわね。これも務め。お付き合い致しましょう」

絹旗 「え」

削板 「では出発だ!」ダダダダ

白井 「ほら、絹旗さん。おいていかれますの」タッタッタッ

絹旗 「ま、待ってくださいよー!」トテテテ

 :
 :
 :

白井 「ところで、これから向かう研究所というのは?」

削板 「統括理事の貝積のとっつぁんの管轄にある研究所だ」

白井 「まあ、理事が?」

削板 「最近できたんだがな。細かいことは俺もよく分からん」

絹旗 (なんでこの二人は超走りながら平然と会話してるんですか……)


875 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:20:51.71 EdVhohaoo 47/159


白井 「午後から調べに行く、と仰ってましたが」

削板 「貝積のとっつぁんはな、理事ではあるがどっちかという研究者気質なんだよ」

白井 「なるほど」

削板 「それで、俺の能力を詳しく調べたいらしい」

白井 「ではまさか、貴方一人のために研究所を建てましたの?」

削板 「考えてみれば、そうとも言えるか! なんだか申し訳なくなってきたな!」

絹旗 (て、ていうか、何気にペースが……)

白井 「まあ、LEVEL5ともなれば単身のために設備を新設するのも珍しくないかと」

削板 「俺にできることも限られてるしな。その中で成果を出してやらねばならんか」

白井 「腕の見せどころですわね」

絹旗 (ち、超疲れた……ひい……)

削板 「お、見えてきたぞ!」

白井 「あちらが件の研究所ですのね」

削板 「よし! ラストはダッシュで行くぞ!」ダッ

白井 「あ、お待ちくださいまし」ダッ

絹旗 (ぎにゃぁぁぁ!!)


876 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/29 00:23:07.06 EdVhohaoo 48/159



~第18学区 念動力研究センター~


白井 「造りはスタンダードな研究所ですのね」●REC

絹旗 「」シュコー

白井 「酸素スプレー使うほど走ってもないでしょうに」

絹旗 「なんで超平然としてるんですか……」

白井 「風紀委員の訓練に比べれば、こんなの短距離走ですの」

絹旗 「風紀委員超パネェ……」

?? 「あら、貴女たち」

絹旗 「?」

布束 「So, 久しぶりね」

絹旗 「あ、超お久しぶりです」

白井 「お久しぶりですの。貴女はここの?」

布束 「ええ、職員よ。話は聞いてるわ。ついてきなさい」

絹旗 (しかし、相変わらずのゴスロリ白衣なんですね)


899 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/31 23:58:26.65 KPASmFAso 49/159


白井 「絹旗さん、いつものを」●REC

絹旗 「えー、こちらの超眼力の方は布束博士。長点上機学園卒業後、ニート同然の生活をしていたとのこと。
    その後、この研究所創設にあたりスカウトされ現在に至ります」

白井 「生物学的精神医学の権威で、その道では知らぬ人はいないと」

絹旗 「? なんでそんな人が念動力研究センターにいるんですか?」

布束 「さっき自分で言っていたじゃない。スカウトされたからよ」

絹旗 「いや、まあ、そうなんですけど」

白井 「専門分野ではないのでは」

布束 「私はマルチプレイヤーなのよ」フンス

絹旗 「超天才は言うことが違いますね」

布束 「それとは別にもう一つ理由があるのだけれど、それは面白い話でもないからいいわ」

絹旗 「え。聞かせてくださいよ。超気になりますよ」

布束 「ま、貴女の態度次第ね」スタスタ

絹旗 「超ケチですー」

白井 「ところで第7位さんは?」




900 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:00:28.44 gQVMfx0vo 50/159


布束 「バイタルチェックに入っているわ。30分はかかるわね」

絹旗 「別にあの人にケガとか病気の心配なんて超ないと思うんですけど」

布束 「念のためよ」

?? 「おや、布束君。削板君はもう来てるのかな?」

布束 「ええ。今しがた」

?? 「毎日毎日申し訳ないな」

布束 「お気遣いなく」

白井 「あの方は?」

絹旗 「ええーと……貝積継敏。統括理事の一人ですが、最近では学者業のほうに超精を出してるらしいです」

貝積 「言ってくれるな。私にはこの方が性に合っている」

布束 「左様で」

白井 「ここでは、第7位さんの力を研究しておられますの?」

貝積 「うむ、彼は不思議だ。どこまでも繊細で、どこまでも不安定で、どこまでも強力」

布束 「……原石」

貝積 「原石という呼称にはいささか抵抗を覚えるがね」





901 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:03:10.73 gQVMfx0vo 51/159


白井 「!? 第7位さんが原石と……?」

貝積 「そうだ。彼は学園都市における能力開発カリキュラムを一切受けていない……
    というより、力そのものが繊細すぎてどの研究者も手を出せなかった」

白井 「なんと……」アゼン

絹旗 「あの、原石ってなんですか」

布束 「そうね……私たち能力者が人工ウナギだとすれば、原石は天然ウナギ」

絹旗 「その例えじゃ大した違いがないように超思えるワケですが」

布束 「besides 人工ダイヤと天然ダイヤと言えばいいかしら」

絹旗 「それならまあ、まだ」

白井 「こんな身近に実在していたなんて……」

絹旗 「でも、超天然ダイヤなんてことがありえるんですか?」

布束 「学園都市における能力開発のプロセス、それと似たような状況が日常生活において、
    あるいは偶発的に自然に起こった。といっても、そう頻繁に出るものでもないわ」

貝積 「分かってる限りでは世界に50人程度しかいない。そもそも原石とはなんなのか。
    分からないことの方がずっと多い」

白井 「その解明となると困難を極めるのでは」

貝積 「だからこそやりがいがあるし、楽しいというものだよ」

絹旗 「なるほど。理事というより研究者気質というのは超本当ですね」





902 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:05:44.73 gQVMfx0vo 52/159



~1時間後 第1測定ルーム~


削板 「すっごぉぉいパーーーンチ!!」ドガァァ

貝積 『いいぞ。次は60%の力で撃ってみよう。君が60%だと感じたならそれでいい』

削板 「すごいぱんち」ボン



絹旗 (パンチングマシーンで遊んでるようにしか見えないです)

布束 「測定データは概ね揃いましたね」

貝積 「うーむ……欲を言えば、実戦データがほしいところだが……彼とまともに戦える人間など」

布束 「」チラッ

絹旗白井 「「」」ビクッ

布束 「ねえ、貴女たち。よりリアリティに満ちたレポをお送りするのに、一番いい方法って何かしら」

絹旗 「え、えと、なんでしょうかね……」

布束 「Decidedly 体験取材よ」ビシィ

 :
 :
 :





903 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:07:49.51 gQVMfx0vo 53/159


絹旗 「白井さーん、なんでこんなことになっちゃったんですかー」

白井 「流れ、でしょうか……」

絹旗 「超無理ですよ、超死んじゃいますよ。第7位相手に組手なんて」

白井 「ハンデとして、2対1が認められているではないですか」

絹旗 「LEVEL4が二人とLEVEL5が一人じゃ超つりあいませんって!」

白井 「絹旗さん。あくまでも組手、練習試合ですの」

絹旗 「だってあの人、絶対に超細かい加減とかできませんよ」

白井 「その時はその時ですわね」

絹旗 「あ、白井さんなら脳髄に針を転移しちゃえば」

白井 「練習試合と申していますでしょう!」

絹旗 「むー」

白井 「しかしまさか、原石と……いえ、過去に対峙した経験はありますが」

絹旗 「ずいぶん拘りますね、超原石」

白井 「世界に50人のレアモンスターですもの。戦々恐々ともしますわよ」

絹旗 「まあ、死なない程度に頑張りましょうか」

904 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:10:06.94 gQVMfx0vo 54/159



~第3測定ルーム~


削板 「正直気が進まんな。女を殴るのは根性がないヤツのすることだ」

白井 「あら、練習試合と言えど手心を加えられるのは心外ですの」

絹旗 「え、ちょっと?」

白井 「こちらは全力で参ります。全力で立ち向かってくる相手には自らも全力で立ち向かうのが礼節ではなくて?」

絹旗 (白井さん! 何挑発してるんですか!)ヒソヒソ

白井 (手加減されるのが気に食わないだけですの)ヒソヒソ

削板 「……たしかにな、言う通りだ。組手とはいえ、本気の勝負に手を抜いて臨むのは根性なしと名乗っているようなものか」

絹旗 (こうなりゃ超ヤケです)

削板 「ならばこのナンバーセブン削板軍覇、全力でお相手仕ろう!!!」カッ


  ビュオォォォォ


白井 「……ッ!」

絹旗 「ただそこに存在するだけでこの空気ですか……超バケモンですよ」





905 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:11:51.89 gQVMfx0vo 55/159


白井 「絹旗さん、前後から参りますの」

絹旗 「超了解です……!」ダッ

削板 「さあ、来い!」

絹旗 「うああぁぁぁぁぁ!!」ダダダダダ

白井 (絹旗さんが前から、それに合わせてわたくしが後ろから挟撃すれば……)

削板 「遅いっ!」ゴッ


  ゴシャァン


絹旗 「がぁっ……!?」

絹旗 (なん、で……今何が、起こっ……!?)

絹旗 (なんで私が、頭掴まれて壁に押し付けられてるんですか……!)

絹旗 「ぐ……超離せーーー!!」ポカポカポカポカ

白井 (そんな! 動きを知覚できない!?)

絹旗 「離せって超言ってるンですよォーー!!」ジタバタ

白井 「き、絹旗さん!」





906 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:14:36.71 gQVMfx0vo 56/159


削板 「すごいパーンチ、裏拳バージョン」ヒュッ

白井 「えっ」


  ゴオッ


白井 「あぅっ……!」ズシャァァ

白井 「い、今のが……!」ヨロヨロ

絹旗 「白井さン! こいつ目に見えない何かをしてきます! 気をつけてください!」ジタバタ

白井 「ご本人の動きも、攻撃そのものも視認できないとは……気をつけようがないですの」

削板 「嬢ちゃんたちの根性は認めよう! だが、この俺の根性にはまだ届かないようだな!」

白井 「ぐぬ……と、とにかく、絹旗さんを放しなさい!」ヒュンッ

削板 「おっと」ダンッ

絹旗 「うあっ!?」ドサッ

白井 「絹旗さん! お怪我は!?」

絹旗 「超平気です……窒素装甲、ナメないでください。それより第7位は……」

削板 「パートナーを思いやる姿勢! それでこそ根性だ!」ウンウン





907 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:16:51.76 gQVMfx0vo 57/159


白井 「一蹴りで部屋の反対側まで移動を……?」

絹旗 「超余裕ぶっこいてるじゃないですか……超ムカつきます」ヨロヨロ

白井 「……絹旗さん、わたくしに考えがありますの」

絹旗 「……どっちみちこのままじゃ超ジリ貧ですし。乗りましょォか」

白井 「あの殿方は前後から攻めても隙がございませんの。で、あれば……」ヒソヒソ

絹旗 「なるほど……超了解です」

削板 「何をヒソヒソやってる! 来ないならこちらからいくぞ!」フォォォ

削板 「すごいパーンチ」

絹旗 「超!」

白井 「参ります!」ヒュンッ


<ボォォォン


削板 「消えた!?」

絹旗 (右手に窒素を超集約ゥ、超凝縮ゥ……)ギリギリ

削板 (一瞬で左ショートレンジに……そうか、空間移動か!)





908 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:18:57.97 gQVMfx0vo 58/159


削板 「さっきもそうだったな! もう一人の嬢ちゃんは後ろか!」ブンッ


  バサッ


削板 (ブレザーだけ!? 空蝉か!!)

白井 「隙ありですの」ヒュンッ

削板 「しまっ……!」

絹旗 「この一撃に!」ダッ

白井 「この一瞬に!」ヒュォッ

絹旗白井 「「全てをかける!!」」

絹旗白井 「「変形クロスボンバーー!!!」」ゴゴキャッ

削板 「ふぉ……!?」



貝積 「なんと……!」

布束 「Fantastic……あの男の良くも悪くも直情型単純バカな性格をうまく逆手にとったわね」

貝積 「左斜め下からの拳撃に右斜め上からの蹴撃か。普通の人間なら首を痛めてるぞ」

布束 「普通の人間なら、ですけどね……」





910 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:21:08.05 gQVMfx0vo 59/159


白井 「くっ、大博打でしたわね……」ヒュンッ

絹旗 「やりましたか!?」タンッ

削板 「」

絹旗 「……?」

白井 「ダメ……でしたか」

削板 「いやー、今のは効いた! 根性こもった一撃だ!」コキコキ

絹旗 「なンで!?」

白井 「万策尽きまわしたわね」ペタン

削板 「まさか合体奥義でくるとはな! 意志の疎通に合わせた呼吸、素晴らしい! これぞ根性だ!」

絹旗 「はは……もォ超無理ですってば」ヘナヘナ

白井 「分かってたことですが、LEVEL4とLEVEL5の間には絶対的な溝がございますの……」

絹旗 「そもそもアレはLEVELというカテゴリに収まるンですか?」

布束 『そこまでよ。これ以上は全員危険だわ』

貝積 『みんな、多大な協力にはいくら感謝しても足りないな』

貝積 『とりあえず全員引き上げてくれ。念のため、メディカルチェックを行おう』

削板 「根性ある一戦に感謝!!」

絹旗白井 「「」」グッタリ





911 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:23:59.19 gQVMfx0vo 60/159



~メディカルルーム~


絹旗 「白井さんは超大丈夫ですか?」

白井 「肩と肘の関節が少々痛みますの。すごいパンチのせいですわね」


<ガラッ


布束 「二人とも、"体験取材"お疲れ様」

絹旗 「なんちゅうもんを体験させてくれてるんですか」

白井 「ここまで能力全開でバトったのは久しぶりですの」ツヤツヤ

絹旗 (えぇぇぇぇ……)

布束 「これは私の奢りよ」ポイッ ポイッ

白井 「ありがとうございますの」パシッ

絹旗 「超いただきます」パシッ

白井 「喉が渇いてましたので……」

絹旗 「なんか超不思議な味ですね。ドクペみたいです」





913 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:25:53.12 gQVMfx0vo 61/159


布束 「……」ジー...

絹旗 「?」

布束 「それ飲んで身体の調子に変化とか違和感とか感じない?」

白井 「いえ、特には……」

布束 「そ、ありがと……興味深いわね」メモメモ

絹旗白井 「「」」ブーッ

絹旗 「なんちゅうもんを飲ませてくれてるんですか! 何混ぜてるんですか!」ムキー

布束 「冗談よ」

白井 「貴女が言うと冗談に聞こえませんの」

布束 「さ、飲んだら行くわよ」

絹旗 「えっ? もうヤですよ!!」ガオー

布束 「何を勘違いしてるの。ブリーフィングよ」

白井 「ブリーフィング……今日の研究成果について、ですか?」

布束 「そんなところね」

絹旗 「まあ、ならいいですか……」





914 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:28:11.10 gQVMfx0vo 62/159



~ミーティングルーム~


貝積 「……以上。質問は?」

削板 「」フゴー

布束 「」バシッ

削板 「ふおっ!?」

絹旗 「」ウトウト

白井 「はい」●REC

貝積 「ふむ、なにかな?」

白井 「わたくしのブレザーはどこに消えてしまったのでしょうか」

布束 「? さっきの部屋になかった?」

白井 「ええ、いつの間にやら」

布束 「」ギロリ

削板 「おっ、おおおお俺は知らんぞ!? そんな根性のないマネするわけなかろう!!」

貝積 「おい、すぐに探し出せ。手隙きの者は全員当たらせるように」





915 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:30:28.39 gQVMfx0vo 63/159


主任 「へい! 合点承知でやんす!」

貝積 「済まないな。なんとしてでも見つけさせる」

白井 「はあ……お願い致しますの」

布束 「嘆かわしいわね。どこの変態が……」

貝積 「他に質問や意見があるものは?」

絹旗 「」ガクンッ

貝積 「ふむ。なければ今日はこれで終わりにしよう。最後に……」

貝積 「そちらのお嬢さん方の自主的なご協力のお蔭で、貴重な実戦データを採ることができた」

白井 「いえいえ、とんでもないことでございますの」

絹旗 (自主的?)

貝積 「あらためてお礼を言わせてくれ。今日はありがとう」

削板 「嬢ちゃんたちの根性は俺すら震えたぜ!」パチパチ

貝積 「よし。今日はこれまで!」

主任 「さあ、一杯いくでやんす」

貝積 「お前は仕事が山ほど残ってるだろう」





917 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:33:11.39 gQVMfx0vo 64/159



~同日夕方 第18学区 とある大通り~


絹旗 「さて、夕闇が超迫りつつある中、私たちは帰路についています」

白井 「……」●REC

布束 「ブレザー、見つかってよかったわね」

削板 「まさか掃除のおじさんが回収していたとはな!」

白井 「ゴミ扱いなんて心外ですの」

布束 「常盤台の制服よ。 Also 出すとこに出せば数十万で売れるのにね」

白井 「出しませんの!! 売れませんの!!」ムキー

絹旗 「ところで、次はどこに超向かうんですか?」

削板 「我が家だ! そろそろ晩メシの時間だしな!」

布束 「……そうね。人数もいることだし」

白井 「え? 私たちもご一緒してよろしいんですか?」

削板 「構わんぞ! 遠慮は根性なしのすることだ!」

絹旗 「そうとも言い切れないかと」





919 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:35:23.19 gQVMfx0vo 65/159


削板 「よし! 今日は根性焼きといくか!」フンハ

白井 「は!?」

絹旗 「ちっ、超イヤですよ!!」

布束 「"寿命中断"」カッ

削板 「」

布束 「So 鵜呑みにしちゃダメよ。こいつの言う根性焼きって、ただの焼き肉のことだから」

絹旗 「超紛らわしすぎです……」

白井 「押さえつけられて、タバコの火をグリグリされるのかと」

布束 (常盤台はどういう教育してるのよ……)

削板 「」ハッ

絹旗 「あ、超起きた」

削板 「根性焼きはダメか? ならば、根性煮なら」

絹旗 「だからなんなんですか、それは」

布束 「Anyway メニューについては、帰宅してから冷蔵庫と相談ね」





921 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:37:14.49 gQVMfx0vo 66/159



~同日 第18学区 削板邸~


削板 「自分の家だと思ってくつろいでくれ!」

布束 「ふう」ポスン

絹旗 「ここがお二人のご自宅ですか」

削板 「正確にはあいつの家。私は居候よ」

白井 「そういえば、どういう経緯があってこのような形に?」

布束 「……面白い話じゃないわよ」


<うぉぉい、布束ー!


削板 「冷蔵庫に野菜しかないぞぉ!」

布束 「何か問題かしら」

削板 「肉がない!」

布束 「野菜からもタンパク質は摂れるわ」

削板 「いや……でもなぁ」





923 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:39:17.85 gQVMfx0vo 67/159


布束 「Anyhow 今日ここまでの食事は肉まみれだったのでしょう。だったらバランスがとれるわね」

削板 「むう……仕方あるまい」

白井 (肉食男子と菜食女子ですの)

削板 「今日は俺の番だったな。待ってろ、根性溢れるメニューを用意してやる!」フンフンス

絹旗 「で、さっきの話の続きなんですか」

布束 「食い下がるのね……いいわ、昔話を聞いてもらうのも悪くないかも」

白井 「」●REC

布束 「もう2年以上前になるわね。私はある日を境に、命と頭脳以外のすべてを失ったわ」

絹旗 「……」

布束 「それについてはまるっきり自業自得。今更泣き言を言うつもりもないのだけれど」

白井 「……それからどうやって今の生活に?」

布束 「その日以来、頭脳を買われて軟禁の身で汚れ仕事を続けていたわ。色々とね」

布束 「But そんな生活も突然終わった。何があったのかは正確には知らされてないけど」

布束 「それが一昨年の年末」

絹旗 (暗部クビ祭りは超確かにその頃でしたね)





924 : >>922 またやっちまったんだ... - 2011/09/01 00:42:51.43 gQVMfx0vo 68/159


白井 「その後、第7位さんとの運命的な出会いが!」

布束 「期待してるような話は出ないわよ。少女マンガやトレンディドラマで使いまわされたような話」

絹旗 「kwsk」

布束 「その以来、行く場所も帰る家もない私はホームレス同然のその日暮らしだったのだけれど」

白井 「真冬にですか……」

布束 「夜は廃ビルとかでしのいでたわね」

布束 「そんな生活を始めて……そうね、数か月経った頃かしら」

布束 「路地裏をフラフラしてたら、チンピラの集団に拉致されそうになったのよ」

絹旗 「わあ、超ありがちです」

布束 「浮浪者同然の身だったから、連れ去って色々楽しむには都合がよかったのでしょうね」

白井 「そういう輩はなかなか根絶しませんわね」ハァ

絹旗 「そこに第7位が駆けつけて、悪党どもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ」

布束 「ね、ありがちでしょう?」

白井 「よく言えば王道ですの」

布束 「今だから言うけれど、彼の第一印象はよくなかったわ。"メンドくさそう"って」





925 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:45:18.25 gQVMfx0vo 69/159


絹旗 「超分かる気がします」ウンウン

布束 「路上生活でよれよれの私を見て、最初になんて言ったと思う?」

絹旗 「風呂入れ?」

布束 「違う」


  ――このまま放ってはおけん! 俺の家に来い! 部屋なら余っている!


白井 「男らしいというか、あの方らしいというか」

布束 「返事を渋ってたら、文字通り担がれてこの部屋まで運ばれたわ」

絹旗 「いいんですか、それで」

布束 「それからはニート同然の生活を送ってた。さすがに申し訳ないから、掃除とかしてたけど……」

白井 「下世話で申し訳ないのですが、何かされるという心配はございませんでしたの?」

布束 「だって削板よ? そんな心配、2日で霧散したわ」

絹旗 「まあ、確かに」

布束 「それで半年前。新設した研究所に職員として迎えられた」

絹旗 「それが今日行った研究所ってワケですね」

926 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:47:35.25 gQVMfx0vo 70/159


白井 「ではあの研究所は、第7位さんと貴女のために造られたようなものですわね」

布束 「……否定はしないわ。計画段階からあいつも関わってたらしいし」

白井 「? では、まさか」

布束 「ご察しの通り。後から知ったけれど、私を職員に推薦したのは削板よ」

絹旗 「私、色んなカップルを見てきましたけど、研究所をプレゼントされた人は超初めてですよ」

白井 「布束博士。正直言って、第7位さんに好意を抱いてますの?」

布束 「……おっ、恩人としてね。私は生物学的精神医学の専門家よ。恋愛感情は精神病の一種と断言できるわ」

絹旗 「超ドライです」ブー

布束 「……そういう意味では、私も罹患中なのでしょうけど」ボソッ

白井 「今、何か」

布束 「何も言ってない」

白井 「あら? でも」

布束 「言ってない!」カッ

白井 「」

絹旗 (寿命中断、超怖ぇー)





927 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:49:46.68 gQVMfx0vo 71/159



<メシだぞぉぉ!!


削板 「出来た出来た! 削板軍覇特製、根性鍋だ!」

布束 「待ちなさい。そのままテーブルに置いたらダメ」

削板 「む、これはすまん」

絹旗 「白井さん白井さん、キャメラ構えたまま超硬直しないでください」ユサユサ

白井 「……はっ、わたくしは何を」

削板 「嬢ちゃんたちも来い! メシだメシだ!」

絹旗 「はいはい、ただいま」

白井 (ファインダー越しに恐ろしいものを見てしまったような……)

 :
 :
 :

削板 「うむ、うまい!」バクバク

布束 「箸の持ち方がおかしい。何度言ったら治るのよ」

絹旗 「……これが根性鍋ですか」

白井 「豪胆な料理ですわね、これは」





928 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:51:52.68 gQVMfx0vo 72/159


絹旗 「じゃ、大根を一つ……なんですかこりゃ!」

削板 「何って、大根だろうが」

絹旗 「なんでこんな超歪な形なんですか」

削板 「手で折ったからだろ」

布束 「彼女たちはこの調理法に慣れてないの。さも当然のように言わないで」

白井 「……まさか、この鍋の食材って」

削板 「ああ、全部ちぎったり折ったりして大きさを整えた」

絹旗白井 「「」」

布束 「indeed 形はどうであれ、味に影響はないわ」ハフハフ

絹旗 「ま、見た目はともかく食べれる味なら超おkですよね」モギュモギュ

白井 (あの共同生活で、見た目難な料理にも耐性がついてしまいましたものね)

削板 「しかし肉がないとどこか物足りないな」

布束 「そう? これでも満足できるじゃない」

削板 「ハラは膨れるけどな。気分的な問題だ」

布束 「この方が体にはいいのよ」

絹旗 「昼間のようなメニューだったら私たち超逃げだしてましたよ」





929 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:54:17.80 gQVMfx0vo 73/159



~食後~


白井 「片付けもこれで全部ですの」

布束 「助かるわ」

絹旗 「いえいえ、超ごちそうになったんですし」

削板 「」フゴー

絹旗 「ありゃ、寝ちゃいましたか」

布束 「いつものことよ。食後は寝る習慣があるの」

白井 「どこまでも"らしい"ですわね」

布束 「ホント、世話が焼ける。……けど、見てて飽きないのも事実よね」ファサッ

絹旗 「私はもうセブン成分は超お腹いっぱいです」

白井 「今日も色々ありましたものね」

布束 「Well 貴女たちはどうするの?」

絹旗 「そろそろ超お暇します」

白井 「今日はありがとうございましたの」ペコリ

布束 「お役に立てようでなにより」





931 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/01 00:56:41.91 gQVMfx0vo 74/159


絹旗 「それでは、またいずれ」

白井 「どうぞ末永く」

布束 「"寿命中断"」カッ

絹旗 「うお、あぶね!」

白井 「」

絹旗 「ありゃ」

布束 「もう遅い時間だから。気を付けて帰りなさい」

絹旗 「超了解です。ほら、白井さん。行きますよ」グイグイ

白井 「」テクテク

絹旗 「それじゃ、超ありがとうございました」ノシ


  バタン


白井 「はっ、わたくしは」

絹旗 「という訳で、紆余曲折を経て、あのお二人もそれぞれの道を超歩み始めたようです」

白井 「あっ、あれ? もうまとめですの?」

絹旗 「もっとも、その道もこの先交わったり重なったり、あるいは一本になったりしそうですけどね」

白井 「え、えと、それを見届けたところで今回の取材を終えたいと思います」





952 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:45:13.29 g1qfy8ejo 75/159



~翌日早朝 第7学区 とある高校~


絹旗 「はー、超ねみー」

絹旗 「なんか肩こりが」コキコキ

白井 「肩がこるほどのものをお持ちでもないでしょうに」

絹旗 「白井さんには超言われたくないですよ!」ウギャー

白井 「3、2、1、スタート」●REC

絹旗 「はい、今日はですね。第にゃにゃ学区」

白井 「……」

絹旗 「……超すいません、もう一回」

白井 「第にゃにゃ学区」プークスクス

絹旗 「ぐぬぬ……」プルプル

白井 「テイク2ですの」●REC

絹旗 「今日はですね。第7学区のとある高校に来ています」

白井 「今日の取材対象は、本日こちらへと登校されるとのことですの」

絹旗 「というワケで、待機してみようと思います」





953 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:47:30.19 g1qfy8ejo 76/159


 :
 :
 :

白井 「えー、現在朝の8時です」

絹旗 「……ぼちぼち人が増えてきましたね」

白井 「あ、あちらの方ではないですか?」

絹旗 「青い髪の大男って超目立ちますね……」

白井 「あの、すみませーん」ノシ

青ピ 「おんや? 絹旗ちゃんに白井ちゃんやないの」

絹旗 「一年ぶりだというのに、よく覚えてたじゃないですか」

青ピ 「当然やん! ボクは一度会った女の子の顔と声と匂いと名前と誕生日は絶対忘れない男やで!」

絹旗 「うはぁ、超キモいです。ていうか誕生日なんて教えた覚えはないですよ」

青ピ 「じゃ教えてくれへん? プレゼントとか期待してもええよ」

絹旗 「毎月15日です」

青ピ 「毎月!? 毎月なん!? こりゃプレゼント代とか大変やわぁ……」

絹旗 「超期待してます☆」

白井 「いえ、あの、本気になさらないでください」





954 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:50:23.15 g1qfy8ejo 77/159


青ピ 「ま、こないなところで立ち話もなんやし。移動しよか」

白井 「今日は定常授業なのですか?」

青ピ 「んー、そやね。なにもなさそうやし。今日も平和で何よりやね」



~とある高校 教室~


絹旗 「さて、まず教室まで移動してきました。超本格的に密着取材」

青ピ 「密着? ボクと密着したいん? もちろん、絹旗ちゃん相手なら大歓迎やで!」

絹旗 「タヒね」

白井 「今回密着取材するにあたり、特殊な交渉術を用いておりますの。それについては
    極秘事項であるため詳細はお伝えできませんが、無事に密着取材のお許しが出ましたの」

青ピ 「ああん、もう、そういうキツイ所がたまらんわぁ。小学生みたいにちっちゃいのにキツイ性格ってええよね!」

絹旗 「バカにしてるんですか、あなたはぁ!」フギャー

白井 「」●REC

絹旗 「いや、あの、白井さん。撮影係に徹しないでくださいよ。いつもの調子で超やってくださいよ」

白井 「いつもの調子、とは?」





955 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:52:54.33 g1qfy8ejo 78/159


絹旗 「世の男どもにやってるみたいに、生ゴミを見るような目で語彙の限りを尽くして超罵倒してやってください」

白井 「絹旗さんはわたくしを悪女か何かと思っておいでなのですか!」ムキー

青ピ 「二人が望むなら、ボクはなんでも受け入れるで」

絹旗 「むしろ何も望まないんで、超普通にしててください」

青ピ 「小学生みたいにちっちゃいのに、どこか冷めた態度」

絹旗 「ちっちゃいちっちゃい煩いンですよォ!!!」ポカポカ

青ピ 「ちょ、ちょっと痛いやん」ガシッ

絹旗 「え、あ、あれ? 届かない?」スカスカ

青ピ 「はっはっは、頭に手を添えるだけでボクの方が有利やで」

絹旗 「超ちくしょーーー!!」スカスカスカスカ

白井 「ところで、ほかのみなさんは?」

青ピ 「んー。みんなが来るにはまだちいと早いしなぁ」

絹旗 「いい加減手をどけてくださいよ!」バシッ

青ピ 「おっとっと」


<ガラッ




956 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:55:05.10 g1qfy8ejo 79/159


吹寄 「おはよう」

青ピ 「おっはー」

吹寄 「相変わらず早いのね」

青ピ 「ほらほら、ボクって早く来ることだけが取り柄やん?」

吹寄 「他に取り柄を作りなさい」

絹旗 「あ、超ご無沙汰してます」

白井 「その節はお世話になりましたの」

吹寄 「あら、貴女たち。すっごい久しぶりね」

青ピ 「ボクに会いに来てくれたんやで!」ウェーイ

吹寄 「何を血迷ってるのよ」

絹旗 「否定しきれないのが超悔しいです……あ、そうだ。吹寄さん」

吹寄 「うん?」

絹旗 「私、中学卒業したらここに進学しようかなって超思ってるんです」

白井 「えっ」

吹寄 「えっ」

青ピ 「えっ」





957 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:57:24.42 g1qfy8ejo 80/159


白井 「きっ、き、絹旗さん! 初耳ですの!」

絹旗 「ええ、人に話したのはこれが超初めてですし」

吹寄 「貴女が決めたのなら……でも、どうして? 貴女ならもっと上狙えるでしょ」

絹旗 「いやー、私エリートエリートした空気って超苦手なんです。ここぐらいまったりしてる方が性に合ってるかなって」

白井 「絹旗さんらしい理由ですの」

絹旗 「それで、もしかしたら何か教わることもあるかもしれません」

吹寄 「そう……でも、あたしたちは今年度で卒業なのよね」

絹旗 「まあ、学校内じゃなくても」

吹寄 「そうね。あたしでよければ何でも相談して」

青ピ 「むほぉぉ! こうしちゃおられへん! ちょっと留年届書いてくるわ!」

吹寄 「そんな届ないだろ馬鹿者!!」

青ピ 「なあなあ、どうやったら留年できるんかなぁ?」

吹寄 「血迷うな! 貴様はもう進路が決まってるだろう!」

青ピ 「だって絹旗ちゃんが来るんやで? それに留年すれば小萌先生の授業も一年余分に受けれるし!
    なぁ、なんとかなれへんかなぁ?」

吹寄 「……小萌先生が、生徒の留年を簡単に認めるような先生だと思ってるの?」





958 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 01:59:43.78 g1qfy8ejo 81/159


青ピ 「うっ」

吹寄 「あの人が教師として、普段どれだけ真摯な姿勢で臨んでるか。大ファンの貴方ならよく分かってるハズよ」

青ピ 「……」

白井 (人望溢れる教師ですのね)

青ピ 「絹旗ちゃん」

絹旗 「なんでしょう」

青ピ 「ゴメンな、普通の先輩みたいに学校の中案内したり、朝一緒に登校したりはできへん」

絹旗 「誰もそこまで頼んでないですよ」

青ピ 「その代わり、なんか困ったことがあれば、ボクじゃ頼りないかもしれへんけどいつでも頼ってもらってええよ」

絹旗 「…………まあ、たまになら」

青ピ 「さあ! ボクの胸に飛び込んでおいで!」

絹旗 「吹寄さん、こいつ超殴っていいですか?」

吹寄 「抑えなさい。受験時期に問題は起こすものじゃないわ」

絹旗 「むー」

白井 「さて。そろそろ、始業の時刻も近づいておりますわね」





959 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:02:13.53 g1qfy8ejo 82/159



~しばらくして~


小萌 「では出席をとるのですよ」

白井 (あの方が小萌先生……)

絹旗 (超ちっちゃ)

青ピ 「カミやんもつっちーもおれへんのかぁ。今日はヒマやなぁ」

吹寄 「五月蠅いのがいなくて結構じゃない」

姫神 (また。なにか。巻き込まれてるのかな)

 :
 :
 :

小萌 「はい、ここまでで質問のある人ー」

絹旗 (えー、超すっごい分かりやすい)

白井 (なんと教え上手な……生徒に慕われるのも納得ですの)


  キーンコーンカーンコーン


小萌 「はい、じゃ今日はこれで終わりなのです」





960 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:04:30.49 g1qfy8ejo 83/159


青ピ 「きりーつ」


  ガタガタガタガタッ


絹旗 「おや?」

青ピ 「礼!」


 アリアタシター


青ピ 「やー、やっぱ小萌先生の授業は至高やね!」

白井 「なぜ青ピさんが号令を?」

青ピ 「ん? だってボク学級委員やし」

絹旗 「えぇ? 学級委員って吹寄さんじゃないんですか?」

吹寄 「よく間違われるけど、違うわよ」

青ピ 「まー、吹寄サンのあだ名が"いいんちょ"でも違和感あれへんしね」

白井 「失礼ながら、わたくしもそう思います」

吹寄 「否定はしないけどね。大覇星祭とかの実行委員は率先してやってるし」

961 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:06:51.09 g1qfy8ejo 84/159


吹寄 「さて、男どもはさっさと出て行きなさい」

青ピ 「へ? なんでなん?」

吹寄 「次の時間は体育でしょう。男子は隣の教室で着替えよ」

青ピ 「別にボクは気にせえへんよ。ここで着替え」

白井 「いいから、さっさと出て行ってくださいまし」タッチ


  ヒュンッ


吹寄 「ゴメンなさいね、わざわざ」

絹旗 「白井さんがテレポしてなければ、私が超蹴り飛ばすところでした」

吹寄 「さっ、早く着替えていかないとね」ヌギヌギ

絹旗白井 「「っ……」」

吹寄 「? どうしたの?」

白井 (なんとたわわに実った果実……)

絹旗 (やっぱり超勝てません……)

吹寄 「?」





962 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:08:57.11 g1qfy8ejo 85/159



~同日 とある高校 グラウンド~


絹旗 「さて、体育ということで超グラウンドに移動してきました」

白井 「なぜわたくしたちまで体操服を?」●REC

絹旗 「気分の問題です」

白井 「はあ……予定外の苦労を背負うことになっても知りませんわよ」

黄泉川 「涼しくなってきたし。今日はいっちょ持久走でもやっておくじゃん」

黄泉川 「とりあえずグラウンド30周。はい、スタート!!」パンパン


  エー キツイヨー シンジャウーー


黄泉川 「今文句言ったヤツはプラス15周じゃん」

絹旗 「超キッツイですね、あの人」

白井 「これぐらいは当然では」

黄泉川 「ほら、何やってるじゃん。お前たちも」

絹旗 「え? い、いや、私たちは」





963 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:11:17.25 g1qfy8ejo 86/159


黄泉川 「体操服着てるってことは準備オーケーってことじゃん? ほら、いったいった!」

絹旗 「どっ、どうしてこんな!」

白井 「だから言いましたのに」

吹寄 「ふふ、災難ね」タッタッタッタッ

絹旗 (うわぁ、揺れてます、超揺れてます)

白井 「ほら、絹旗さん。遅れてますのよ」タッタッ

絹旗 「ううー……どうしてこうなった」

青ピ 「お、絹旗ちゃんも走ってるんやね! 体験取材ってヤツ?」

絹旗 「ほっといてください!」

青ピ 「そんなこと言わんと! あ、今なんかアレっぽいやん!」

白井 「あれ?」

青ピ 「"待てよー。ふふふー、捕まえてごらんなさーい"ってヤツ!」

絹旗 「超ありえないですから!」

青ピ 「よーし、漲ってきた! ボク頑張って絹旗ちゃん捕まえるで!」ダダダダ

絹旗 「ひゃぁぁぁ! 来ないでください! 超来ないでください!」ダダダダ





964 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:13:33.94 g1qfy8ejo 87/159


青ピ 「ははは、待ーてー」ダダダダ

絹旗 「誰か! 誰か助けて!」ダダダダ

吹寄 「」ハァ

白井 「あのペースでは30周もちませんの」

吹寄 「彼奴はあのペースでも30周ぐらいなら余裕で走りきるわよ」

白井 「では、このままでは絹旗さんがいずれ捕まる……」

吹寄 「どうかしら。追い込まれた小動物は思わぬ力を発揮するものだし」

青ピ 「あーん、もー絹旗ちゃんの照れ屋さーん」ダダダダ

絹旗 「ちっ、ちが……そういう、のじゃ……はっ……」ダダダダ



~30分後~


絹旗 「……も、無理……」グッタリ

青ピ 「うーん、残念! 結局捕まえれへんかったぁ!」

白井 「絹旗さん、意外と体力ないのですね」

絹旗 「わた、し……持久力より……瞬発、力、なんです……」





965 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:16:09.84 g1qfy8ejo 88/159


黄泉川 「あんなペースで走ってれば30周程度でもへばるに決まってるじゃん」

吹寄 「さすがに、ちょっと疲れたわね」

絹旗 「しら、いさん……な、んで……超、平然、と……」

白井 「風紀委員ですの」

黄泉川 「風紀委員の訓練はこんなもんじゃないからな。よく鍛えられてるじゃん」ハッハッハ

吹寄 「使う? 酸素スプレー」

絹旗 「お願い、します……」

吹寄 「はい、どうぞ」シュコー

絹旗 「ホハー」

青ピ 「次ボク!」

白井 「貴方はピンピンしておられるではないですか。むしろ酸素がお余りなのでは」

青ピ 「あっ、そうやね! 酸素余って腹がパンパンや! という訳で絹旗ちゃんにおすそ分けを」

黄泉川 「バカやってんじゃないじゃん」ゲシッ

青ピ 「おうふ」

絹旗 「はー……超ちょっと復活しました」





966 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:18:30.74 g1qfy8ejo 89/159



~同日昼 とある高校 教室~


絹旗 「なんかこの取材、体力使ってばっかりなような気がします」

白井 「記者は体力勝負ということですのね」

絹旗 「一日目は特売という名の超戦場で、二日目は第7位とバトって」

白井 「で、今日は持久走と」

絹旗 「そろそろ太ももに超筋肉痛を感じ始めているんですが」

青ピ 「じゃボクがマッサージしたる!」

絹旗 「あっちいけ!」ゲシッ

吹寄 「こんなところで油売ってていいの? 購買、売り切れるわよ」

青ピ 「はっ、しもうた! もう昼休み食い込んでるやんか!」ダダダダ

吹寄 「まったく想像しい」ガサガサ

白井 「吹寄さんはパンですのね」

吹寄 「よかったら貴女たちもどう? 多めに持ってきてあるから」

絹旗 「あ、いいですか? 今日なにも用意してなくて」





967 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/03 02:20:37.81 g1qfy8ejo 90/159


吹寄 「ええ、どうぞ」

白井 「いただきます、の……?」

絹旗 「……なんですか、これ」

吹寄 「何って、パンだけど?」

白井 「"脳を活性化させる十二の栄養素が入った能力上昇パン"……」

絹旗 「超効果あるんですか?」

吹寄 「ち、超はないけど……」

白井 「味は普通ですの」モフモフ

絹旗 「……しまった。パンだけだと口の中が超渇きますね」マフマフ

青ピ 「たっだいまー」

絹旗 「あー、独り言ですけど。なんだか超コーヒー牛乳が飲みたい気分です」

青ピ 「まかせときー!」ダダダダ

吹寄 「……小悪魔ね」

白井 「絹旗さんはああいったタイプの殿方の扱いには慣れておられますし」マフマフ

吹寄 「の割には振り回され気味なようにも見えるけどね」





985 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:19:46.82 YZNHVH6Po 91/159


青ピ 「絹旗ちゃん、コーヒー牛乳飲まへん? 僕のおごりやで!」

絹旗 「わぁ、超いいんですかぁ?」

吹寄 「自分の可愛さが武器になることを自覚してるタイプなのね」

白井 「そしてそれを活用する術も心得てますの」

青ピ 「さ、飲んで飲んで」

絹旗 「超ありがとうございまーす」ズチュー

青ピ 「ええねええね、やっぱ女の子が一番かわいい瞬間って、おいしいもん食べて笑ってるときやね」

吹寄 「それが志望動機って聞いたときは唖然としたわよ」

白井 「志望動機……そういえば今朝方、進路は決まっているというお話が」

絹旗 「言ってましたね。超就職なんですか?」

青ピ 「んー、どっから話せばええんかな。ボクがパン屋で下宿してるって話したの、覚えてる?」

白井 「覚えてるような覚えてないような」

青ピ 「ま、ええわ。んでな、作業とか店番とか手伝うことも結構あるんよ」

吹寄 「いい心がけね」

青ピ 「給料はパン払いやけどね」ハハハ





986 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:20:58.70 YZNHVH6Po 92/159


絹旗 「それが進路にどう繋がってくるんですか」

青ピ 「夕方になるとな、学校帰りの学生とか結構くるんよね。で、おやつ代わりにパン買ってくれるんや」

白井 「小腹が空く時間ですものね」

青ピ 「で、買ったその場でガサガサ食べ始める子も多くてね。で、その瞬間が、なんていうんかなー」

青ピ 「ボクが作ったり仕込んだり並べたりしたパンを、みんなすっごいおいしそーに楽しそーに食べるんよ」

青ピ 「それ見ると、あー朝早かったり力仕事だったりだけど、やってよかったなーって」

青ピ 「女子小学生とか女子中学生の楽しそうな顔みると、心底思うんよね」

青ピ 「それで決めたんや。ボクこの道進んでみよ、って」

絹旗 「超いい話だと思ったのに……」

青ピ 「なんで? めっちゃハートフルやん」

吹寄 「自分で余計なこと言うからでしょ」ハァ

白井 「それで、卒業後は?」

青ピ 「うん。そんなこんなで、調理師の専門学校を推薦で受けたんよね」

青ピ 「面接でも熱く語ってやったで! 女の子がいちばん可愛いのは」

絹旗 「なんでそこを超強調しちゃうんですか」





987 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:22:47.97 YZNHVH6Po 93/159


白井 「ま、まあ、ともかく。卒業後の進路が決まってるというのはそういうことでしたのね」

青ピ 「そゆこと。なんや知らんけど、さっさと合格通知も来たしね」

絹旗 「じゃ、もう受験超終了じゃないですか」

青ピ 「気楽でええわ、ホント。あ、吹寄サンはまだよね? 頑張りや!」ポンポン

吹寄 「ヘッドバットするぞ」

青ピ 「ゴメンなさい」orz

吹寄 「ま、せいぜい卒業を取り消されないように慎ましく暮らすことね」

青ピ 「ヒドイわぁ。ボクのことHENTAIかなんかと勘違いしてへん?」

吹寄 「HENTAI以外にどう表現すればいいのよ」

青ピ 「HENTAIちゃうで! HENTAIという名の紳士やで!」

吹寄 「白井さん、こいつが何かやらかしたら、その時は遠慮なく捕まえちゃってね」

白井 「承りましたの」

絹旗 「ところで、吹寄さんは進路とかは?」

吹寄 「私は普通に大学よ」

白井 「どのような分野に?」





988 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:24:46.35 YZNHVH6Po 94/159


吹寄 「小萌先生の専門分野にさ、私もちょっと興味あるのよね」

青ピ 「発火能力やね!」

吹寄 「そっちじゃないわよ。心理学でしょ」

絹旗 「え? あの超ミニ先生の専門ってそっちなんですか?」

吹寄 「ええ。環境心理学とか行動心理学、社会心理学の専門家よ」

白井 「博識ですのね……」

吹寄 「だから、あたしの場合は将来何がしたいかというより、これを学んでみたいっていうのが行動原理なんだけどね」

白井 「なんにせよ、やりたいことがはっきりしているのは良いことですの」

青ピ 「惚れちゃう? やりたいことはっきりしてるボクに惚れちゃう?」

絹旗 「こっち来んな!」


 キーンコーンカーンコーン


絹旗 「ほら、昼休み超終わりましたよ。自分の席に帰ってください」

青ピ 「いや、絹旗ちゃんが座ってるそれがボクの席なんやけど……」

絹旗 「え、あ、ごめんなさい」スッ





989 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:26:52.37 YZNHVH6Po 95/159



~同日夕方 とある高校 教室~


絹旗 「どうやら今日の授業はこれで超終了のようですね」

白井 「お二人のご予定は?」

青ピ 「んー、カミやんもつっちーもおれへんしなぁ」

吹寄 「まっすぐ帰ったら?」

青ピ 「それはそれで味気ないやん」

絹旗 「いつも通り過ごしてくださいよ」

白井 「ええ、それでこそわたくしたちがいる意味もございますし」

青ピ 「ほな、目的も持たずフラフラしてみよか」フラフラ

絹旗 「吹寄さんはどうします?」

吹寄 「……なぜかしら。アレを野放しにしておくのは危険な気がする」

絹旗 「なぜもなにも、超当然ですよ」

吹寄 「ま、今日は貴女たちもいるし。あたしも行ってみようかしら」

白井 「では参りますの」





990 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:28:46.27 YZNHVH6Po 96/159



~第7学区 とある大通り~


白井 「さて、わたくしたちは下校時間帯の街へと繰り出してきましたの」

青ピ 「どっかに可愛い子おれへんかなー」

絹旗 「超早速ですか」

吹寄 「いちいち反応してたら疲れちゃうわよ」

絹旗 「そもそもこれだけの超美少女に囲まれてて、まだそんなこと言うんですか」

白井 「それとも、わたくしたちは好みではございませんかしら?」

青ピ 「そんなことあれへんよ! ボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹

 :
 :
 :

青ピ  獣耳娘まであらゆる女性を迎え入れる包容力を持ってるんよ?」

吹寄 「クレープおいしそうじゃない?」

絹旗 「お、超いいですね」

白井 「折角ですし、頂いていきましょうか」

青ピ 「あるぇ~?」





991 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:30:53.10 YZNHVH6Po 97/159


青ピ 「みんな聞いてた? ボク今すっごいええこと言ったんやで?」

吹寄 「どこがよ」

絹旗 「落下型までは聞いてました」

青ピ 「ぜんぜん序盤やん!」

白井 「まあ、貴方が雑食系男子ということは分かりましたの」

青ピ 「いやいや、ボクかて見境ないワケじゃないよ? 選ぶっていったら世の女性に失礼やけど、そういう目はあるよ?」

白井 「では、あちらのオープンカフェに3人の女性がおりますが、どなたがお好みですか?」

青ピ 「んー? あ、あのお姉さんたち?」

吹寄 「……なんかキツそうな人ばっかりね」

絹旗 (あ、あの3人って……!)

青ピ 「せやなぁ、全員べっぴんさんやけど……敢えて言うなら真ん中のお姉さんかな?」

吹寄 「あのウェーブヘアの人?」

絹旗 「!」ピコーン

絹旗 「青ピさーん。どうせなら声かけてみたらどうですか?」

白井 「ちょ、ちょっと絹旗さん」





992 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:32:43.23 YZNHVH6Po 98/159


絹旗 「女3人でお茶会とか、きっと超さみしい連中ですよ。超飢えてますよ」

青ピ 「い、言われてみれば確かに」

吹寄 「悪いことは言わないわ、やめておきなさいよ」

青ピ 「男なら当たってくだけなあかん! そもそもナンパなんて失敗前提やで!」ピュー

白井 「あ、あっ……そんな、まさかこんなことになるなんて……」

吹寄 「?」

絹旗 「見かけたのは超偶然ですけど、あの3人は私たちの友達なんですよ」

吹寄 「あら、そうなの? だったら尚更……」

絹旗 「超大丈夫じゃないですか?」

白井 「あのお三方は……2名がLEVEL4、1名がLEVEL5ですの」

吹寄 「えっ!?」


<チュドーン
<おわぁぁぁぁ!?
<そこになおれ!テメェの[ピーーー]焼き切ってやる!






993 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:34:32.61 YZNHVH6Po 99/159


青ピ 「たーすーけーてー!!」

麦野 「待ちやがれグルァァァ!!」

青ピ 「きゃぁぁぁ! 絹旗ちゃん、これ違う意味で飢えとるやないかーーい!!」

麦野 「誰が飢えて……あ? ねえ、今絹旗って言った?」

絹旗 (あ、超やべ!!)

麦野 「……そうか。絹旗のヤツ、一枚噛んでるのね」

青ピ 「あ、いや、ええと」

麦野 「正直に言ってくれたら、お姉さん嬉しいなぁ?」

青ピ 「……すいませんでしたぁ!」orz

麦野 「?」

青ピ 「ボクが調子乗ってました、ホンマすいませんでしたぁ!」orz

麦野 「そうか、それがお前の回答かよ。……だったら」

番外個体 「まーまー、しずりん。それぐらいにしてあげなよ」

結標 「相手も謝ってるじゃない。これ以上、騒ぎを大きくすることもないでしょ?」

麦野 「……アンタ、助かったわね。いいわ、行きましょ」カツカツカツ

番外個体 「ゴメンね、青い人。それじゃね」

結標 「次からは相手を選びなさいね」





994 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:36:36.15 YZNHVH6Po 100/159


青ピ 「…………ぶっはぁ。超怖かったぁ!」

白井 「大丈夫でしたか!? あの、すみません。軽率でしたの。こんなことになるなんて……」

青ピ 「はは、ナンパしてたらこんなこと、日常茶飯事やで」

絹旗 「……相手にバレてたような」

青ピ 「ん? あー、絹旗ちゃんの知り合いなん? 絹旗ちゃんのこと知ってるみたいやったで」

絹旗 「ええ、まあ」

青ピ 「もー、人が悪いなぁ。あんな怖いお姉さんなら事前に教えといてや」

吹寄 「すごい迫力だったわね……でも貴方、よく口割らなかったじゃない」

白井 「絹旗さんのことを聞かれても、ただ謝ってましたわね」

絹旗 (あっ……)

青ピ 「いやー、だってさっきのお姉さん、めっちゃ怖かったもん。絹旗ちゃんに何するか分からへんやん?」

絹旗 「あの……なんというか……超やりすぎました。ゴメンなさい」

青ピ 「ええのええの。気にせんといて」

絹旗 「でも」

青ピ 「それにホレ、あんな綺麗なお姉さんたちに蔑んだ目で見下ろされるって体験もできたしね!」

吹寄 「」ハァ





995 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:38:12.10 YZNHVH6Po 101/159



~とある公園~


絹旗 「これ、さっきの超お詫びもかねて、奢りです」

青ピ 「ええの? 助かるわー。今月財布が氷河期で」

吹寄 「この店ってよく来るの?」

白井 「ええ、ちょくちょくと。味も評判ですし」

青ピ 「クレープって一度食べてみたかったんよねー」ハモハモ

吹寄 「嘘。食べたことないの?」

青ピ 「男だけでクレープって来づらいやん? 一緒に来る女の子もおれへんし」

絹旗 「180cmを超える大男が一人で並んでたら、超違和感を覚えるかもしれませんね」

青ピ 「だから、今度からは絹旗ちゃんが一緒に」

絹旗 「超お断りです!!」

白井 「おや? ちょっと進展したと思ったのですが」

絹旗 「進展ってなんですか進展って! スタートラインにも並んでませんよ!」

吹寄 「ま。当然よね」





996 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:39:46.21 YZNHVH6Po 102/159


青ピ 「もー、そういうちっちゃいのにつれないところとかたまらんわなぁ」クネクネ

絹旗 「超ちっちゃいって、煩いんですよォ!」ポカポカ

青ピ 「わ、ちょっと。危ない、危ないから!」ワシッ

絹旗 「だから人の頭をーー!!」スカスカ

青ピ 「はははー、ちょろいでー」

吹寄 「絹旗さん、これ。よかったら持ってって」

絹旗 「なんですか、これ」

吹寄 「身長が伸びると評判のサプリメントよ。買ってはみたけど、あたしは身長に関しては現状で満足してるしね」

絹旗 「」

白井 「あら。よかったですわね、絹旗さん」

青ピ 「女の子にモテモテーになるとか、女の子と出会いまくれるーってサプリはないのん?」

吹寄 「タヒね」

絹旗 「超うるさいハエが寄り付かなくなるサプリとかないですか?」

吹寄 「あったらあたしが使ってるわよ」

青ピ 「え? 吹寄サンに言い寄るようなガッツあるやつがこの世におるん?」

吹寄 「どういう意味だ貴様!」





997 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:41:17.86 YZNHVH6Po 103/159



~しばらくして~


  【飛行船】<間もなく完全下校時刻です。速やかに帰宅しましょう。


吹寄 「あら、もうこんな時間?」

青ピ 「いやー、楽しい時間ってのはあっという間に過ぎるもんやね!」

絹旗 「全くですね」

青ピ 「やっぱり絹旗ちゃんはボクとていて楽しかったんやね! わかるで!」

絹旗 「なんでそんな超ポジティブシンキングなんですか!」

白井 「ポジティブシンキングのほうが生きてて楽しいかと」

青ピ 「そうそう! お蔭様で毎日が楽しいで!」

絹旗 「幸せそうで超なによりです」ハァ

吹寄 「あたしは帰るけど、貴女たちは?」

白井 「そうですわね。そろそろ引き上げようかと」

青ピ 「私はこの後は青ピさんと超二人きりで」

絹旗 「なんであなたが答えてるんですかぁ!」ボカッ

青ピ 「ごふっ」





998 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 02:42:56.63 YZNHVH6Po 104/159


吹寄 「とうとう強硬手段に出たわね」

絹旗 「冗談がすぎますよ!」

青ピ 「ははっ。最後に一発もらったところで、ボクも帰るかなぁ」

白井 「今日はありがとうございましたの」

吹寄 「いいえ、今日は楽しめたわ」

青ピ 「絹旗ちゃんと白井ちゃんにも会えたしね!」

吹寄 「じゃ、二人とも、またその内ね。帰り道気を付けてね」

絹旗 「お二人も、あ、いや、吹寄さん超気を付けてください」

青ピ 「あれ? ボクは?」

白井 「お二人もお気をつけて」

吹寄 「ええ、またね」ノシ

青ピ 「じゃ、ボクあっちやから。絹旗ちゃんに白井ちゃん、また会う日まで!」ノシ

絹旗 「……最初から最後までずっとあの調子でしたね」

白井 「変わらず過ごしているようで、でも時間は間違いなく経過しておりますの」

絹旗 「進路とか……先のこともみんな超ちゃんと考えてるんですよね」

白井 「それを実感したところで、今回の取材を終えたいと思いますの」





1000 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/04 03:29:18.63 YZNHVH6Po 105/159



~同日夜 第7学区 常盤台新寮~


<ガチャ バタン


絹旗 「はー、今日も超疲れましたねー」

白井 「なんだかんだ言って楽しんでおられるでしょう」クスクス

絹旗 「人のこと言えませんよね」

白井 「あら、見透かされておりましたか」

絹旗 「私たちの仲じゃないですか。で、明日はどこの誰ですか?」

白井 「ええと……え? えぇ!?」

絹旗 「どうしたんですか?」ヒョイッ

絹旗白井 「「……」」



絹旗白井 「「イギリスーー!?」」



 絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」~その2
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1315074469/





24 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:24:05.29 YSgbhsWro 106/159



~翌日 ロンドン ヒースロー空港~


絹旗 「」グッタリ

白井 「」ゲッソリ

絹旗 「………………ふぇ」

白井 「うぐぅ…………」

絹旗 「……私は、言ったじゃないですか」

白井 「乗車前、絹旗さんがあれだけ駄々をこねて泣き叫んでいた理由が、分かりましたの……」

絹旗 「だからヤなんです……超超音速旅客機」

白井 「……はぅ」

絹旗 「始めますか……」

白井 「」●REC

絹旗 「えー、現地時刻9時32分。現在私たちはイギリスに来ています……」

白井 「今回お尋ねする人は現在イギリスにおられるとのことですの……」

絹旗 「という訳で、これから移動を超開始したいと思いまーす……」


25 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:26:07.86 YSgbhsWro 107/159


白井 「移動は地下鉄でしょうか……」

絹旗 「ガイドブックによると電車もあるみたいですね……とりあえず」

白井 「とりあえず?」

絹旗 「ヒースローセントラル駅というところに向かいましょうか……」ヨテヨテ

白井 「あ、絹旗さん。お足元が」

絹旗 「ふぎゃっ」ドテッ



~30分後 ロンドン市内~


絹旗 「」ズルズル

白井 「絹旗さん……自分の力で……歩いてください、まし……!」

絹旗 「電車の揺れが……こんなにも超凶悪だなんて……思いませんでした……」ズルズル

白井 「このままでは、どうにもなりませんの……まずどこかで休みましょう……」

絹旗 「あれ? フレンダ? どうしたんですかー……現世に戻れたんですねー……」ズルズル

白井 「あぁぁぁ、絹旗さん! フレンダさんがどなたかは存じませんが、気をしっかり!」


26 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:28:05.90 YSgbhsWro 108/159


?? 「おや? お困りのお嬢さん方がおられるようですな」

?? 「あの後姿……あれはもしや、常盤台の制服では……」

絹旗 「超吐きそうなんですが、もう私のお腹には吐くものもないんですよね……」

白井 「だから出発前に軽食を取りなさいと、あれほど申しましたのに」

?? 「そこのお二人」カツッ

白井 「はい、なんで……あら?」

婚后 「奇遇ですわね、まさかこんなところで出くわすなんて」

白井 「婚后さん!?」

執事 「お二人とも。ご無沙汰しておりますな」

白井 「あ、あれ? なんで執事さんまで」

婚后 「話は後。とりあえず絹旗さんをどうにかいたしませんと」

絹旗 「(;゚q゚)」

白井 「もう相当マズいですわね……」

執事 「では及ばずながら私が」

婚后 「こら。貴方は休暇中の身でしょう、働くことは認められません」


27 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:29:45.41 YSgbhsWro 109/159


執事 「これは仕事ではなく、一人の紳士としての振る舞いでございますゆえ」

白井 「まぁ……お願い致しますの。力仕事で殿方には適いませんでしょうし」

執事 「絹旗様、失礼いたします」ヨイショ

絹旗 「」グッタリ



~同日 ロンドン近郊 とあるアパートメント~


婚后 「さ、どうぞ」

白井 「お邪魔いたしますの」

婚后 「絹旗さんはそちらのソファーへ」

執事 「かしこまりましてございます」

絹旗 「うぅ……」

白井 「妙ですの……いくらなんでも、乗り物酔いでここまでなりますかしら……」

執事 「微熱があるようでございますな」

婚后 「熱? では風邪などを?」


28 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:31:44.51 YSgbhsWro 110/159


執事 「何か思い当たることはございませんかな」

白井 「ここのところ、少々過密気味のスケジュールでしたが……」

執事 「そのままロンドンに……成程、過労かもしれません」

絹旗 「いえ、超大丈夫ですから……ちょっと疲れ気味ですけど」

婚后 「ですから疲れ気味なのがよろしくないのです」

執事 「今、お茶でもご用意いたしましょう」

婚后 「なりません。ここは一時的でもわたくしの家、それはわたくしの仕事です」

執事 「左様で」

婚后 「それよりも絹旗さんの側に」

白井 「あっ、ならわたくしがお手伝いを。押しかけた立場ですし」

婚后 「そこまで仰るのならば、お願い致しますわね」

白井 「さて、何からいたしましょう」

婚后 「ではお湯を沸かしてくださいな」

 :
 :
 :



29 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:34:06.58 YSgbhsWro 111/159


執事 「絹旗様、ご容体はいかがですかな」

絹旗 「横になってたら、大分ラクになりました」

執事 「無茶は若さの特権ですが、度が過ぎるのはよろしくありませんぞ」

絹旗 「超すいません……」

執事 「今日一日はゆっくりするのがよろしいでしょう」

絹旗 「はい……あの、ところでどうして執事さんがここに」

執事 「さて。どうお話したものか……過度に自分を語るは使用人失格ですからな」


<そう言わずに。


婚后 「子守唄代わりに聞かせてあげるのも、よろしいのではなくて?」

白井 「お茶が用意できましたの。さ、どうぞ」

絹旗 「超いただきます……あつぁ!」

白井 「慌てて飲むからですの」

執事 「お変わりございませんな」

婚后 「それにしても……どうしてお二人がロンドンに? それも大した荷物も持たずに」


30 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:36:40.07 YSgbhsWro 112/159


白井 「ええと、どこから話したものでしょうか」

婚后 「それにカメラもずっと回しっぱなしのようですが」

白井 「これはですね、わたくしたちが受けている特別講習でして」


~説明中~


婚后 「なるほど。また珍しいことを……」ズズ...

白井 「わたくしも最初はそう思いましたの」ズズ...

絹旗 「なんというか、超体力勝負でした」

婚后 「ですが、非常に楽しそうでもありますわね」

白井 「ええ、なんだかんだ言って楽しんでやっておりますの」

婚后 「あの第7位さんと勝負だなんて、貴重ではございませんか」

白井 「負けてしまいましたけどね」

絹旗 「一矢報いたじゃないですか。超合体技で」

執事 「見事なコンビネーションだった訳ですな」

絹旗 「ええ。ただあの技には一つ問題が」


31 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:39:00.16 YSgbhsWro 113/159


婚后 「問題と言いますと?」

絹旗 「私のかち上げちっそぱんちと、白井式ライダーキックで相手の頭を斜めに挟む形なんですが」

執事 「顎とこめかみに同時に攻撃を受けるわけですな。これは容赦がない」

絹旗 「これだと見たくもない白井さんの悪趣味超ハデパンツを」

白井 「あっ、お茶をこぼしてしまいましたの」チョロチョロ

絹旗 「あっつぁぁぁぁ!!」

婚后 「あらあら、これは大変。すぐに冷やしませんと」

絹旗 「なっ、なにしてくれてんですが人の太ももにー!」ムキー

執事 「絹旗様、動き回ってはいけませんぞ」

絹旗 「そ、そうは言いますけどね……」

白井 「そうそう、今日はごゆっくり」

絹旗 「ぐぬぬ……全快したら頭から液体窒素かけてやりますからね」

婚后 「それは少々洒落になりませんわよ」ペタッ

絹旗 「つめたっ!」

婚后 「さて、次は貴方の番ですわよ」


32 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:41:02.38 YSgbhsWro 114/159


執事 「はて? 何をご所望ですかな」

婚后 「またとぼけて。先程尋ねられておりましたでしょう」

絹旗 「あ、そうだ。なんで執事さんがここに?」

白井 「まさか婚后さん。留学先にまで執事さんを?」

婚后 「そうではございませんわ」

執事 「そうですな……むっ」ギラッ

絹旗白井 「「!?」」ビクッ

婚后 「どうしました?」

執事 「何者かの気配を感じたのですが……」

婚后 「この部屋にはわたくしたちしかおりませんわよ」

執事 「……そこかっ!」ヒュッ


  ズンッ


婚后 「……壁しかないではないですか」

執事 「失礼、気のせいだったようです。歳はとると感覚が鈍っていけませんな」


33 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:42:59.79 YSgbhsWro 115/159


白井 (今の数瞬、別人のような顔つきに……)

絹旗 (す、すごい速さでナイフを超投げましたよ……)

婚后 「まったく、壁を傷つけてはダメではないですか」スポン

執事 「申し訳ございません。こちらは帰る前に修繕致します」

目玉 (あっぶねぇぇぇ! 何もんだよあの爺さん!!)

目玉 (なんでか知らないけどお客人もいるみたいだし、今日は退散しましょうか)シュワシュワシュワ

執事 「さて。それでお嬢様の小さい頃のお話でしたな」

婚后 「ち、違います! それはおいそれと話してはいけません!」

絹旗 「そっちも超気になるのですが、今は執事さんのお話が聞きたいです」

白井 「ですの」

執事 「ふぅむ……まず、なぜ私がここに来ているか、ですが」

絹旗 「」wktk

執事 「私は元々、英国の出身でございます」

絹旗 「え、そうなんですか?」

白井 「外国の方とお見受けはしておりましたが」


34 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:44:57.28 YSgbhsWro 116/159


執事 「今回、母の命日が近いので墓参りをしようと。それで英国に参りました」

白井 「まあ、お母様の」

婚后 「おそらく、わたくしのお母様から行ってこいと言われたのでしょう」

執事 「お見通しでございましたか。仰る通り、今回の休暇も奥方様に勧められてのことでございます」

絹旗 「それで婚后さんもこっちにいるから、超悪いことをしてないか確認に来たと」

婚后 「心外ですわね。非行に走るようなマネはいたしませんわ」

執事 「はい、ご察しの通りでございます」

婚后 「えぇ!?」

白井 「丁度良いと言えば、丁度良い機会ですものね」

絹旗 「執事さんがなんてイギリスにいるかは分かりましたけど……」

婚后 「何か疑問でも?」

絹旗 「いや、なんで日本で執事やってるのかなー、って」

執事 「ふむ、たまには年寄らしく昔話でもしてみましょうかな」

白井 「たしか、婚后さんが生まれる以前より務めていたと、以前にお伺いしてますが」

婚后 「そうですわね。わたくしが物心ついたときから側におりましたもの」


35 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:47:07.54 YSgbhsWro 117/159


執事 「婚后家には来日した直後からお仕えしております。その頃は執事ではございませんでしたが」

絹旗 「つまりどれぐらいですか?」

執事 「当代、つまりお嬢様のお父様が6歳の頃からです」

婚后 「ということは……40年近いですわね」

白井 「そんなに!」

絹旗 「日本に来る前も執事だったんですか?」

執事 「その頃は修業の身でございましたので。こちらの言い方では"フットマン"という職になりますな」

絹旗 「超色々あるんですね」

執事 「英国では使用人といいましても、階級・性別で細かく分かれております」

白井 「素朴な疑問なのですが、執事という職は男性がなるものなのですか?」

執事 「はい、バトラーは男性使用人に与えられる職でございますゆえ」

婚后 「わたくしの実家の場合、女性使用人の統括はハウスキーパーと呼んでますわね」

執事 「ハウスキーパーは女性使用人の上級職でございますな」

絹旗 「おー、なんか超新鮮な感じです」

白井 「わたくしたちが住む世界ではこんな話しませんもの」


36 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:49:23.86 YSgbhsWro 118/159


絹旗 「ところで、執事さんって普段なにしてるんですか?」

執事 「今の主な業務は、当代様の秘書のような仕事を。それと男性使用人の統括です」

白井 「婚后さんの教育係とかではないのですね」

執事 「お嬢様がご実家を出られるまでは、教育係兼ボディーガードでしたな」

婚后 「懐かしいですわね。多忙な両親に代わって、いつも側にいてくれたものです」

執事 「その頃のお嬢様と来たら、それはそれは」

婚后 「わーわーわー!!」

絹旗 「婚后さん、超邪魔しないでくださいよ」

白井 「そうですの」

婚后 「わたくしの話はいいではないですか!」

執事 「今のおしとやかなお姿からは想像もできない、とだけ申し上げておきましょう」

絹旗 「え? 超おしとやか?」

白井 「誰のことですの?」

婚后 「貴女たちはぁ……!」

執事 「おや、お嬢様。学園都市ではかつてのお転婆な姿に戻っておいでなのですかな?」


37 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:50:52.22 YSgbhsWro 119/159


白井 「それはもう。並み居る悪人たちをちぎってーは投げ、ちぎってーは投げ」

絹旗 「不埒を働く輩を空の彼方まで超吹き飛ばして」

婚后 「貴女たち! それでもこの婚后光子の友人ですか!!」ムキー

絹旗 「ウソはついてないじゃないですか!」

白井 「全て紛れもない真実ですの!」

婚后 「むぐ……お、お茶のお代わりを持ってまいります!」ズカズカ

執事 「……お嬢様は」

絹旗白井 「「?」」

執事 「色々ございまして。お嬢様は同年代の友人に恵まれず過ごしておられました」

白井 「そうなのですか? ですが」

執事 「ええ。私自身も何度かお会いしておりますが、今はよきご友人に恵まれておられるようです」

絹旗 「婚后さんが一声かければ5人は超集まりますね」

白井 「いえ、さすがにもっとおりますの」

執事 「差し出がましいのは承知ですが、この老いぼれの頼みを聞いてもらえますかな」

絹旗 「超喜んで!」

白井 「わたくしたちにできることならば」


38 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:53:07.99 YSgbhsWro 120/159


執事 「気難しい部分もあるかもしれませんが、これからもお嬢様のご友人でいてあげてください」

絹旗 「……言われるまでもないですよ」

白井 「婚后さんはわたくしたちにとっても、大切な友人ですの」

執事 「ふふ、これはよき冥土の土産になりましたな」

絹旗 「いやいやいやいや!」

白井 「まだお早いですの!」

婚后 「お茶を……お二人ともどうしました?」

絹旗白井 「「なっ、なんでもございません!」」

婚后 「?」

執事 「……よきことですな」



~同日夕方~


執事 「さて。壁の修繕も終わりましたし、私はそろそろ失礼致します」

絹旗 「えー、いっちゃうんですかー」

白井 「絹旗さん」


39 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:54:50.00 YSgbhsWro 121/159


執事 「元より、今夜の飛行機で帰国する予定でございましたので」

婚后 「帰り道、くれぐれも気を付けてください」

執事 「勿体なきお言葉」

白井 「またお会いする機会があれば、よろしくお願い致しますの」

執事 「ふふ、では南の島でお待ちしておりますぞ」

絹旗 「超行きたいです」

婚后 「そうですわね。善処致しますわ」

執事 「それではお嬢様。留学期間も残り僅かですが、どうかご壮健に」

婚后 「心得ております」

執事 「では……あぁ、絹旗様」

絹旗 「?」

執事 「くれぐれも、今日はご安静に」

絹旗 「超了解です!」

白井 「わたくしが付いておりますので」

執事 「はい、白井様もお体にお気をつけて。では、失礼致します」


<バタン



40 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:56:54.94 YSgbhsWro 122/159


絹旗 「行っちゃいました……」

婚后 「さて、お二人は」

白井 「宿を探さないといけないでしょうか……」

婚后 「ならばここで一泊するとよろしいですわ」

絹旗 「いいんですか?」

婚后 「構いませんわよ」

白井 「ありがとうございますの」

絹旗 「それにしても、まさか執事さんに会えるなんて。超ラッキーでした」

白井 (相変わらず年上好みなのですね)

婚后 「ではそろそろ夕食の準備でも」

白井 「あっ、ならばお手伝い致しますわ」

絹旗 「じゃ私も」

婚后 「絹旗さんは休んでてくださいな」

白井 「そうですの。執事さんにも言われたではないですか」

絹旗 「う……超わかりました」


41 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/05 01:59:10.99 YSgbhsWro 123/159


婚后 「ところで、明日はどちらに向かわれるおつもりで?」

白井 「ええと、たしかウィンザー城ですの」

婚后 「ウィンザー城!?」

絹旗 「? どうかしたんですか?」

婚后 「あ、いえ……わたくしも、明日そこに向かう用事がございましたので」

白井 「そうですの? ならば、ご同行してよろしいですか?」

絹旗 「私たちじゃ超土地勘もありませんし」

婚后 「ええ、構いませんが」

白井 「助かりますの」

婚后 (たしか、密着取材と……ウィンザー城に行くということは、まさか……)

婚后 (取材するのは女王陛下!?)

絹旗 「いやー、何が起こりますかねー」

白井 「何も起こらないに越したことはございませんの」

婚后 (もし女王陛下ならば、何も起こらない訳がございませんわ……)


71 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 00:48:47.26 ptup8NPOo 124/159



~翌朝 ウィンザー城 アッパー・ウォード~


白井 「3、2、1、スタート」●REC

婚后 (あれ? そういえば撮影ってOKなのでしょうか?)

絹旗 「どうもー。今日は英国、ウィンザー城までやってきてます!」

白井 「なんとまぁ、息を呑んでしまうほど荘厳なお城ですのね。素敵な雰囲気ですの」

?? 「」ウロウロ

絹旗 「今日お尋ねする人はこの超ウィンザー城におられるとのことでーす」

白井 「……ちょっと一旦止めますの」

絹旗 「? どうしたんですか」

白井 「いえ、なんか……先程からあちらの女性がフレームインしようとしていて」

絹旗 「アレって、掃除のオバちゃんじゃないんですか?……あ、なんかこっち来た」

?? 「おいおい、こんなところで記念撮影か?」

絹旗 「あ、すみません。撮影はまずかったですか?」

白井 (そういえば取材交渉がまだでしたわね)

婚后 「」プクク


73 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 00:51:08.31 ptup8NPOo 125/159


?? 「私抜きで記念撮影とはけしからんな! さあ、撮り直しだ」

絹旗 「は?」

白井 「あの……」

?? 「どうした。こちらの準備はもうできているぞ」

絹旗 (超なんなんですか、なんでイギリスに大阪のオバちゃんがいるんですか)

婚后 「陛下。カメラではなくビデオですから、もっと動きませんと」

女王 「なんだと!? くそ、一杯食わされたか」

白井 「え?」

絹旗 「陛下?」

女王 「時に極東よ、約束の時間は午後の筈だが」

婚后 「わたくしの友人であるこの二人が案内してほしいというので、この時間にご訪問した次第です」

女王 「ほう、この小さいコンビは友人だったか。なるほどなるほど」ウンウン

絹旗 「ちょ、ちょっとちょっと、婚后さん!」

白井 「まさか、こ、こちらの方は」

女王 「いかにも! 私こそが英国女王、エリザードである!」ドン

絹旗白井 「「」」ポカン


74 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 00:52:56.55 ptup8NPOo 126/159



<陛下!


女王 「む、うるさいのが来おったか」

先代 「陛下、みだりに外出されては困るのである」

女王 「ここは私の城で、ここは私の庭だぞ。外出なぞしていないではないか」

先代 「そもそも、そのような服装では」

絹旗 「あ」

白井 「見つけましたの」

先代 「む?」

 :
 :
 :

絹旗 「えー、こちらはウィリアム=オルウェルさん。学園都市にある某カフェの先代マスターさんです。
    ちなみに、私も本名は今はじめて知りました」

白井 「今回密着取材するにあたり、特殊な交渉術を用いておりますの。それについては
    極秘事項であるため詳細はお伝えできませんが、無事に密着取材のお許しが出ましたの」

女王 「なんで私ではなくウィリアムなんだ」ブーブー

婚后 「まあまあ。今回はそういうことですので」

先代 「なんだかよく分からないであるが」


75 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 00:54:54.36 ptup8NPOo 127/159


白井 「先代様は、今はこちらでお勤めに?」

先代 「うむ」

絹旗 「観光名所の警備員になったとは聞いてましたけど」

先代 「うむ」

婚后 「あながち間違いではございませんわね」

絹旗 「でも、どうして急に? ミサワさん、超困ってましたよ」



 *** 回想 ***

絹旗 「おじゃましまーす」

番外個体 「……」

絹旗 「あれ? 今日はマスターさんいないんですね」

番外個体 「……絹旗さん、どうしよぉ。マスター帰っちゃった」

絹旗 「か、帰った? どこにですか」

番外個体 「イギリス」

絹旗 「」

番外個体 「朝来てみたらね、これ。お店の権利書だとか通帳だとかと置き手紙……」

絹旗 「あー……ミサワさんにお店を超託したということなのですかね」

番外個体 「うっそーん……いくらなんでも急すぎるでしょ……」ヘナヘナ

 *** ここまで ***



76 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 00:57:01.96 ptup8NPOo 128/159


先代 「彼女には申し訳ないことをしてしまったであるな。だが、彼女なら続けてくれると
    確信した上での行動である」

白井 「お店ですが、あれからご自分のペースで続けておられるようですの」

絹旗 「満席とはいかなくても、超そこそこ客は来るみたいですよ。リピーターも多いみたいですし」

婚后 「わたくしたちのような、ミサワさんのご友人も通っておりますしね」

先代 「それはなによりであるな」

絹旗 「で。どうして超急にイギリスに?」

女王 「うちの娘が寂しがって毎晩泣いておったからな。私が直々に呼び戻した」

先代 「陛下!」

白井 「あら、これは非常に興味深い話になってきましたの」

絹旗 「女王様の娘ってことは、王女様ですよね?」

女王 「3番目の娘がな、ウィリアムにご執心なんだよ、な? な?」

先代 「陛下、お戯れが過ぎますぞ」

婚后 「今の話はわたくしも初耳ですわね」

絹旗 「超詳しく」

女王 「この年頃のお嬢さんたちは、こういう話となると入れ食いだな」ガハハ


77 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 00:59:14.75 ptup8NPOo 129/159


先代 「とっ、時に陛下。そろそろ時間ではなかろうか」

女王 「ん? なんかあったか?」

先代 「午前はバッキンガム宮殿で王室TVの撮影があるはず」

女王 「ほっとけ。こっちの方が面白そうだ」

先代 「なりませぬ。王女様たちは既に向かわれておられるのですぞ」

女王 「ああもう、しょうがないな。おい、誰ぞあるか! 出かける支度をするぞ!」ドタドタ

先代 「」ハァ

絹旗 「それで先ほどのお話の超続きなんですが」

先代 「ノーコメントである」

絹旗 「え、なんでですか」

先代 「私の立場上、王室の人間に関わることをおいそれと口外するわけにいかないのでな」

絹旗 「えー、せっかくイギリスまで超来ましたのに」

先代 「さて、行くであるぞ」

白井 「どちらへですか?」

婚后 「ご公務ですわね」


78 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:01:06.25 ptup8NPOo 130/159



~ウィンザー城 ラウンドタワー~


先代 「……」

絹旗 「さっきから超つっ立ってるだけですね」

白井 「これがお仕事?」

婚后 「先代様は、ウィンザー城内におけるあらゆる業務をご担当しておられるとか」

絹旗 「例えば?」

婚后 「語学能力を活かしてのガイドだとか、トラブル対応だとか」

白井 「警備員って揶揄してるのかと思いましたが、本当に警備員なのですね」

婚后 「あら。そうとも言い切れませんわよ」

絹旗 「と申しますと?」

婚后 「あの制服、エンブレムがデザインされておりますでしょう」

白井 「ええ、ございますわね」

婚后 「人伝に聞いた話ですが、あれはエスカッシャンと言って騎士としての証だとか。
    家柄につき一つ、騎士と認められた者に与えられるらしいですわよ」


79 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:03:16.32 ptup8NPOo 131/159


絹旗 「日本でいう家紋みたいなものですか」

白井 「あら、では先代様は正式に認められたナイト様でもございますのね」

先代 「騎士などではない。傭兵くずれのごろつきである」

絹旗 「」ジー...

先代 「なんであるか」

絹旗 「いや、どんなデザインなのかな、と思いまして」

白井 「これはユニコーン……? それと……」

婚后 「なんでしょうね? 動物のようですが」

先代 「ドラゴン、ユニコーン、シルキーであるな」

絹旗 「これってなんか意味あるんですか?」

先代 「あるにはあるが、そう人に話すものでもない」

絹旗 「超ケチですー」

先代 「残念であったな」フッ

白井 「先代様、中々手強いですの」

婚后 「黙して語らずを地で行く方ですから」


80 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:05:01.40 ptup8NPOo 132/159


絹旗 「超仕方ないですね。話題を変えましょうか」メモメモ

白井 (あ、質問リスト)

絹旗 「なんで学園都市で超マスターやってたんですか?」

先代 「……一昔前までは体力勝負の稼業をしていたのだがな。
    色々あって、体力の衰えは否めないのである」

白井 「そうなのですか?」

婚后 「筋骨隆々のように見えますが」

先代 「それでも、全盛期ほどの力は出せない」

絹旗 「じゃ、あれできますか、あれ」

白井 「あれ?」

絹旗 「超上腕二頭筋からぶら下がるヤツです」

先代 「それぐらいなら問題あるまい」ホラ

絹旗 「ちょっと失礼しますよ。……わっ、硬っ! すごっ、私がぶら下がっても超ビクともしないです!」ピャー

先代 「衰えたといっても、女子小学生を支えるぐらいなら問題ないのである」フン

絹旗 「超女子中学生ですよ!」ムキー


81 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:07:02.65 ptup8NPOo 133/159


白井 「ともかく、体力の衰えを心配してカフェを始めたと」

婚后 「ですがカフェも、デスクワーク等に比べれば体力が要求されるのでは?」

先代 「現役時代に比べれば、大したものでもあるまい」

絹旗 「さっき超傭兵くずれって言ってましたよね? じゃ、前は傭兵さんだったんですか?」

先代 「うむ」

白井 「なるほど。傭兵に比べれば街中の喫茶店は体力を使いませんわね」

絹旗 「でもなんで学園都市に?」

先代 「今だから言えるが、警備がザルで入り込むのが容易かったであるからな」

絹旗 「え?」

白井 「えっ」

婚后 「ざ、ザル……?」

先代 「?」

白井 (これは帰ってから警備の強化を訴えなければ……)

先代 「ところで、いつまでぶら下がっているつもりであるか」

絹旗 「あ、すみません、つい」


82 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:08:58.73 ptup8NPOo 134/159



~同日昼 ウィンザー城 ミドル・ウォード~


先代 「さて、少し早いが昼食にするであるか」

絹旗 「少しどこじゃないと超思いますけど」

先代 「女王陛下がご帰還召される前に済ませておきたいのでな」

白井 「ああ、だから早めなのですね」

婚后 「お食事は、普段どちらで?」

先代 「周辺の店で買ってきて、この中で食すことが多い」

絹旗 「お店で食べるんじゃないですね」

先代 「この格好では目立ってしまうであるからな。さて、貴殿らはどうするであるか」

白井 「もちろんご同行させて頂きますの」

先代 「言っておくが、英国人の食事は日本人の舌には合わぬかもしれぬぞ」

婚后 「…………」

絹旗 「超望むところです」

白井 「異文化に触れるのも醍醐味ですの」


83 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:11:12.72 ptup8NPOo 135/159



~30分後 職員控室~


先代 「」モシャモシャ

絹旗 「えー。イギリスに来てまでサブウェイのサンドイッチだとは超思いませんでした」

白井 「手軽でよいではないですか」

絹旗 「騎士様の食事ってどんなのかと、超ちょっと期待したんですが」マグマグ

先代 「騎士ではない。傭兵くずれのごろつきである」

婚后 「それにしても、旺盛な食欲ですわね」

白井 「先代様だけフットロング(1フィート)ですもの」

絹旗 「私なんかレギュラー(6インチ)でも食べきれるか怪しいですよ」

白井 「レギュラーでも大層なボリュームですものね」モフモフ

婚后 「絹旗さん、口の周りがドレッシングだらけですわよ」フキフキ

絹旗 「モガ」

先代 「ふむ。女子小学生にはボリューム過多であろうな」

絹旗 「だから超女子中学生ですってば!」ガオー


84 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:13:10.35 ptup8NPOo 136/159


 :
 :
 :

先代 「紅茶でよいであるか」カチャカチャ

婚后 「はい、ありがとうございます」

絹旗 「おお、元マスターの超紅茶ですよ」

先代 「熱いので気を付けるのである」コトッ

絹旗 「」ススス...

婚后 「絹旗さん? なぜ隅っこに?」

絹旗 「いえ、別に。紅茶持った白井さんが超怖いとかじゃないですから。別に」

婚后 「ああ」クスクス

白井 「昨日のあれは絹旗さんが原因ではないですか」

絹旗 「超しりません」プイ

白井 「」ハァ

先代 「……まるで歳の近い姉妹であるな」

婚后 「寝食をともにしておられますから、似てくるのかもしれません」クスクス


85 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:15:03.96 ptup8NPOo 137/159


絹旗 「なっ、な、なんでこんな超変人と姉妹なんですか!」

白井 「変人指数なら絹旗さんも負けておりませんの!」

絹旗 「白井さんには超負けますよ! あの悪趣味」

白井 「それ以上言うならば、この紅茶、ご馳走しちゃいますの」スチャ

絹旗 「超ごめんなさい」

先代 「些細なやりとりからも、コンビネーションを感じるのである」

婚后 「羨ましい限りです」

絹旗 「え、えと、それよりもですね!」

先代 「?」

絹旗 「素朴な疑問なんですけど、なんで婚后さんは女王様と超普通に接してたんですか?」

白井 「そういえば……まさか、家柄の関係ですでに面識が?」

婚后 「まさか」

先代 「女王陛下はああいうお人なのである。まったく、見境がない」

婚后 「あの、せめて分け隔てないと言ったほうが……」

絹旗 (王室の人間に関わることをおいそれと超口外していいんですかね)


86 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/07 01:17:27.37 ptup8NPOo 138/159


白井 「でも、初対面ということでもないのですよね?」

婚后 「ええ。最初は全く偶然に出会いましたわね」

絹旗 「言われなければ掃除のオバちゃんだと思っちゃうところでした」

白井 「絹旗さん!」

先代 「さっきお会いした通り、奔放なお人であるからな」

絹旗 「で、今日は何回目かのご対面なんですか?」

婚后 「ええ。それで、今日はですね……帰国する前に、送別会をすんぞ! と呼ばれまして」

白井 「そういえば、もうすぐ留学期間も終わりですわね」

先代 「陛下は、貴殿と話すのを楽しんでおられたようであったからな」

婚后 「身に余ることでございます」

絹旗 「もう超仲良しじゃないですか」

白井 「考えてみれば、これはすごいことですの」

婚后 「とても気さくなお人ですから」

先代 「さて。その陛下がそろそろご帰還召される時間であるな。向かうとするのである」

絹旗 「あ、やべ。なんか超緊張してきました」

白井 「絹旗さん。くれぐれもオバちゃんなどとは言わないでくださいまし」


121 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:30:35.33 gw7Lp+iOo 139/159



~同日 ウィンザー城 ステート・アパートメント~


女王 「ふう」

先代 「お帰りなさいませ」ペコリ

婚后 「お疲れ様です」

女王 「あぁ、疲れた。あんな形式に拘ったって肩がこるだけだろうが」

白井 「」●REC

絹旗 「えー、ただいま女王様が超ご帰還なされたようです」

女王 「お、チビッコンビもまだいたか。よーしよしよし。これ、カメラまわってるのか?」ピースピース

絹旗 「……あ、あの、日本語が超お上手ですね」

女王 「女王様だからな」ガハハ

先代 「今、昼食を用意させておりますので」

女王 「ハンバーガーでいいぞ」

先代 「残念ながら、今からでは変更は間に合いませぬ」

女王 「……仕方ないな」ハァ

絹旗 (女王様の食卓ってどんななんでしょ)


122 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:33:13.15 gw7Lp+iOo 140/159


女王 「よし、食事の前に着替えだ。こんな格好で食っても美味くないからな!」ドカドカ

先代 「陛下。今日は客人もおりますゆえ、くれぐれも」

女王 「わーかってる! ジャージとかはやめろと言うんだろ」

先代 「お分かりならば申し上げることはございませぬ」

女王 「まったく」


<バタン


絹旗 「ジャージ……」

白井 「奔放な方ですのね」

婚后 「ですが、人の上に立つ人物としての器は持っておいでですわよ」

先代 「うむ。私もこれまで生きてきて、あれほどの大器は数えるほどしか見ていない」

絹旗 「私には超ハイテンションなオバちゃんにしか」

白井 「こら!」

先代 「その評価もあながち外れではあるまい」

婚后 「ですわね」クスクス


123 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:34:52.46 gw7Lp+iOo 141/159



~食堂~


白井 「さて、現在わたくしたちは食堂スペースに来ております」

絹旗 「女王様の食卓はスパゲティにサラダ、意外とスタンダードです」

女王 「お前たちは茶だけでいいのか」ハグハグ

絹旗 「はい」

白井 「ご厚意だけ頂きますの。先程済ませましたので」

婚后 「」ズズ...

先代 「」コポコポ

女王 「おい、ウィリアム。彼女らには何を食わせた?」

先代 「私と同じもので良いというので、サブウェイでテイクアウトを」

女王 「なんだと!? けしからんな!」

絹旗 「あぁ、いえいえ」

白井 「わたくしたち如きに、そこまで気を使って頂かなくても」

女王 「私もそっちがよかったぞ。なんで買い置いてくれなかったのだ」


124 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:37:01.30 gw7Lp+iOo 142/159


先代 「申し訳ありませぬ」

絹旗白井 「「……」」

女王 「次行くときはローストビーフサンドを買ってくるように。パンはハニーオーツな」

先代 「畏まった」

絹旗 「なんか超庶民的ですね」

白井 「親近感を持てますの」

婚后 「それが陛下のよいところですわね」クスクス



~しばらくして~


女王 「さて、食事も済んだし……お、そうだ!」

先代 「?」

女王 「人数も揃ってることだしな。麻雀でもやるか」

絹旗 「ルール超知らないんですけど」

白井 「恥ずかしながら、わたくしも……」


125 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:39:22.72 gw7Lp+iOo 143/159


女王 「なに? それならばしょうがないな……とりあえず移動するか」

先代 「畏まった」

婚后 「わたくしたちも行きますわよ」

絹旗 「超了解です」

白井 「どちらまで?」

先代 「来れば分かるのである」



~ウィンザー城 ステート・アパートメント 来賓の間~


絹旗 「……すっげ。美術館ですか、ここは」

白井 「美術館といっても差し支えない部屋ですの」

女王 「ウィリアム。アレの準備をしてくれ」

ウィリアム 「はっ」

女王 「そう言えば、チビッコンビの名前をまだ聞いてなかったな」

婚后 「こちらが技の1号、そちらが力の2号ですわ」


126 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:41:09.90 gw7Lp+iOo 144/159


2号 「ちょ、ちょっと婚后さん! 人の名前を超勝手に変えないでくださいよ!」

1号 「そうですの! というか名前ですらありませんの!」

女王 「ふむ。では1号から名前を教えてくれ」

白井 「は、はあ……白井黒子と申します」ペコリ

女王 「よい名前だな」

白井 「恐縮でございますの」

女王 「次、2号!」

絹旗 「2号て……絹旗、最愛です」

女王 「覚えたぞ! 白井に絹旗だな!」

絹旗 (まさか女王様に名前覚えられるなんて)

白井 (畏れ多いことでございますのね)

婚后 (……わたくしなど、いつの間にやら"極東"で定着してますのに)

先代 「陛下、お持ちしたのである」

女王 「お、きたきた」

絹旗 「これは……チェスセット、ですか」


127 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:42:45.66 gw7Lp+iOo 145/159


女王 「よし、1号から順番に私と勝負だ」

白井 「え、わ、わたくしですか!?」

女王 「私が女王だからといって気後れすることはないぞ。本気でかかってきてくれ」

白井 「で、では……お相手仕りますの」

絹旗 「女王様ってチェスが超お好きなんですか?」

先代 「暇なときには、よくやっておられるであるな」

婚后 「お強いですわよ、陛下は」

絹旗 「婚后さんも超お相手仕ったんですね」

婚后 「ええ。これを通じて親睦を深めたようなものですわね」



~30分後~


先代 「……」

婚后 「……」

女王 「」ドヤッ

絹旗 「20秒~」

婚后 「それは将棋ですわ」


128 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:44:21.61 gw7Lp+iOo 146/159


白井 「……参りましてございます。投了ですの」

女王 「はっはっは! 参ったか!」

先代 「相手が悪かったであるな」

白井 「お強い……これは完敗ですの」

女王 「よし、次は2号だ!」

絹旗 「わ、私もですか……かろうじてルールを知ってるぐらいですよ」

婚后 「というかご存知なのですね」

絹旗 「ええまあ。寮で、白井さんと超暇つぶしにやったりしてたので」

白井 「絹旗さん、お気をつけて……わたくしとは比べ物になりませんの」

絹旗 「……」ゴクリ



~10分後~


絹旗 「超参りました」

女王 「え、もう?」


129 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:46:17.55 gw7Lp+iOo 147/159


先代 「まあ、よく耐えたほうであろう」

白井 「序盤から防戦一方でしたの」

絹旗 「そうなんですか?」

婚后 「恐ろしいことに、それを悟らせないまま追い詰めるのが陛下の実力ですの」

女王 「よーし、今日はノってるぞ。次は真打か」

婚后 「僭越ながら、お相手仕ります」ペコリ

絹旗 「婚后さんって強いんですか?」

先代 「陛下に勝ったこともある」

白井 「まあ……」

女王 「今日は負けんぞ」

婚后 「本気で参りますわ」

女王 「望むところだ!」クワッ

先代 「さて、長引くであるぞ」

絹旗 「超マジですか……」

白井 「実力者同士の闘いは長期戦になるか一瞬で決まるかのどちらかですもの」


131 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:47:45.40 gw7Lp+iOo 148/159



~2時間後~


女王 「むう……」

婚后 「」パタパタ

絹旗 「20秒~」

白井 「それはもういいですの」

婚后 「」パチン

絹旗 「婚后さん、扇子を弄る余裕を見せてますよ」

白井 「あるいはそれもブラフか……」

女王 「」ガクッ

絹旗 「お?」

女王 「投了だ……」

先代 「勝負あったであるな」

絹旗 「婚后さん超すげぇ」

白井 「お見事でしたの」


132 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:49:53.49 gw7Lp+iOo 149/159


婚后 「いえ……相手のミスに助けられましたわね」

先代 「ふむ。序盤、陛下は少々冒険が過ぎたであるな」

女王 「だって定石通りやっても面白くなかろうが」ブーブー

婚后 「ともかく、これでわたくしの5勝4敗ですわ」

女王 「? 逆だろう? 私が5勝の筈だ」

婚后 「あ、あら?」

女王 「ウィリアム、そうだったよな」

先代 「陛下の戦績は3勝6敗である」

女王 「」

絹旗 「婚后さん勝ちまくってるじゃないですか」

婚后 「勝ったといっても、それは陛下が新しい手を試したりギリギリで勝てたりしたケースですわよ」

白井 「とりあえず、お二人が結構な実力者ということはわかりましたの」

女王 「くっそー、やはり若い方が良いのか……」

先代 「そういう訳でもないかと」

女王 「まあ、チビッコンビと打てただけでもよしとしておこう」


133 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:51:49.98 gw7Lp+iOo 150/159



~同日夕方 ウィンザー城 食堂~


絹旗 「さて、超食堂へと戻って参りました」

白井 「これから送別会という名目でのティーパーティーが催されるとのことです」

女王 「今日の主役たっての希望で、慎ましやかに行うことにした。なんなら楽団とか呼んでも良かったんだが」

婚后 「いえ、そこまでして頂くと逆に恐縮ですわ」

絹旗 「派手好きの婚后さんらしくないですね」

先代 「静かに過ごすのも良いであろう」

絹旗 「にしても、すごいです。このケーキ超おいし」

白井 「見た目もまるで芸術品のようで」

女王 「時に、チビッコンビは今日の内にロンドンを発ってしまうのか?」

絹旗 「その予定です」

白井 「今夜の飛行機で帰国する予定ですの」

女王 「なんだ。もっとゆっくりしていけばよいのに」

絹旗 「折角のロンドンですからね。路地裏の映画館とか超行きたかったなとは思いますけど」


134 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:55:23.61 gw7Lp+iOo 151/159


先代 「また機会があるときに来ればよかろう」

白井 「ええ、是非そうしたいものですの」

女王 「ところで、ロンドンはどうだった?」

婚后 「どうだった、と申されますと」

女王 「ここがいいとか、ここがダメとか。後学のためにも、是非とも忌憚ない意見を聞かせてほしい」

絹旗 「いいとか、ダメとか……」ウーン

白井 「一晩しか過ごしておりませんし、ご参考になるかどうか……」

婚后 「街並みの調和は取れておりますし、学園都市に比べると治安もいいですし、よい街だと思います」

先代 「……治安よいのであるか。キングス・クロスなどは一人歩き非推奨であるが」

婚后 「もちろん地区によりけりですが」

女王 「治安か。確かにな、地区によってはまだよいとはいえない。課題の一つだな」メモメモ

白井 「学園都市もですわね。場所によっては昼間でも危ないですもの」

女王 「他になにかあるか?」

婚后 「街中のレストランの食事が、うっかり地雷を踏むと……」

女王 「それは仕様だ」

絹旗 「やっぱイギリスの食事は超不味いって都市伝説じゃなかったんですね」


135 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 00:58:06.14 gw7Lp+iOo 152/159


白井 「幸か不幸か、それは体験できませんでしたわね」

婚后 「よかったと思います。わたくしは一度、地雷を踏み抜いてしまいましたが……」

女王 「参考にさせてもらうぞ!」ウンウン

絹旗 「でもロンドンってアレですね。学舎の園に超似てますよね」

白井 「学舎の園が似せて作ってあるんですの」

婚后 「あ、やはり。わたくしもそれは思いました」

女王 「お? なんだ? 学園都市もロンドンを参考にしてるのか!」

絹旗 「いや、断言はしかねますけども」

白井 「ですが確かに。ロンドンに降り立ったとき、美しい街並みだとまず思いましたの」

婚后 「ああいった雰囲気。なんだかいいですわよね」

女王 「街並みの綺麗さには自信と定評があるからな」ガハハ

 :
 :
 :

先代 「そろそろ日没であるが」

女王 「む、もうそんな時間か」


136 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:00:01.73 gw7Lp+iOo 153/159


婚后 「なんだかあっという間でしたわね」

絹旗 「……白井さん、私ケーキいくつ食べてました?」

白井 「それはもうたくさん」

絹旗 「つい手が超伸びてしまいました……」

女王 「いやぁ、実に有意義な午後を過ごせた。異国の友に出会えた偶然に心から感謝しよう」

白井 「勿体なきお言葉ですの」

女王 「今回はこれで別れとなるが、またいつか遊びに来てくれ」

婚后 「ええ、機会に恵まれれば是非」

女王 「来なければ私の方から押しかけるからな!」ワハハ

絹旗 「この女王様、本当に来そうで超怖いんですけど」

先代 「確かに、やりかねないであるな……全員総出で止めるであろうが」

女王 「おい、ウィリアム。帰りの車を手配しろ」

先代 「畏まった。行き先はヒースロー空港でよろしいか?」

白井 「はい、迎えが来ている筈ですので」

絹旗 (またアレに乗らなきゃいけないんですか……)

女王 「チビッコンビ、次会うときにはもうちょい成長しといてくれよ?」

絹旗 「超余計なモゴッ」


137 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:02:03.30 gw7Lp+iOo 154/159


白井 「はい、精進致しますの」

白井 (失礼な発言は控えてくださいまし!)ヒソヒソ

絹旗 (すいません、つい)ヒソヒソ

先代 「下に車が到着したそうである」

婚后 「では、名残惜しいですが」

絹旗 「今日は超ありがとうございました」

白井 「先代様も、突然の訪問にも関わらず応じてくださって感謝しております」

先代 「何、気にすることはない。あぁ、あと」

絹旗 「?」

先代 「ミサワさんにも、元気でやっていると伝えてほしい」

絹旗 「映像つきで超報告しておきますよ」

女王 「全員、道中気を付けるようにな!」

白井 「はい、心得ましたの」

婚后 「今日はお招き頂き、ありがとうございました」ペコリ

絹旗 「またいつか会える日を超楽しみにしてます」

女王 「言ったな? その言葉、忘れぬようにな!」ビシィ

先代 「では、下まで案内するのである」


138 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:03:48.23 gw7Lp+iOo 155/159



~同日夜 ロンドン ヒースロー空港~


絹旗 「超驚きました……なんですか、あの超高そうな車は」

婚后 「ロールス・ロイスですわね。陛下ご自身も使う車だそうですわ」

白井 「タクシーだと思ったら、あのような車をご用意頂けるなんて……懐の深いお方ですの」

絹旗 「しかし……またアレに乗らなきゃいけなんですね」ズーン

婚后 「?」

白井 「あのオバケ飛行機ですの」

婚后 「あぁ……あれは気が進みませんわね」

絹旗 「白井さん、超イヤですよー。白井さんのテレポで帰りましょうよー」ユサユサ

白井 「だからムリですと、何度も申し上げているではないですか!」

婚后 「それができれば、LEVEL5ですわね」クスクス

白井 「LEVEL5どころじゃございませんの」

絹旗 「はぁ……仕方ないですよね。じゃ、婚后さん。私たちは超一足先に帰ってますので」

白井 「婚后さんのご帰国の予定は?」


139 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:05:26.28 gw7Lp+iOo 156/159


婚后 「明後日に出発の予定ですわ」

絹旗 「戻ったら、またどっか行きましょうよ。超見せたいものもありますし」

婚后 「見せたいもの?」

絹旗 「むふふ。それは超お楽しみです」

白井 「そうそう。婚后さんが戻ってきたら、例の約束も果たしてもらいませんと」

絹旗 「約束? 何かありましたっけ?」

白井 「後のお楽しみですの」

婚后 「あらあら。楽しみが増えてしまいましたわね」クスクス

絹旗 「むう」

白井 「あ、絹旗さん! あれ忘れてましたの!」

絹旗 「あれって……あ!」

婚后 「?」

白井 「ええと……3、2、1、スタート!」●REC

絹旗 「先代マスターは祖国に戻って、思い出を胸に新たな人生を超スタートしていました」

婚后 (ああ、なるほど)

絹旗 「それを見届けて空港まで送ってもらったところで、今回の取材を超終えたいと思います」


140 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:07:18.95 gw7Lp+iOo 157/159



~3時間後 第7学区 常盤台新寮(日本時刻 9:00)~


絹旗 「」グテー

白井 「さすがに疲れましたわね……あら?」

?? 「」

白井 「ユリコ? 貴女がわたくしのベッドに来るなんて、久しぶりではないですか」

?? 「」

白井 「子どもたちの様子はいかがですの?」

絹旗 「それ、ユリコじゃなくてコンビニの袋ですよ。さっき私がピザまんとか買ってきたときの」

白井 「」ガサガサ

絹旗 「ユリコなら、仔猫たちと一緒に超お休み中です」モグモグ

白井 「」ガサッ

絹旗 「にしてもコンビニの袋に向かって語りかけるなんて、白井さんも超お疲れモードですね」ケラケラ

白井 「」ズボッ

絹旗 「わぷっ! ちょ、ちょっと頭から被せるのナシですよ! 超窒息しますから!」

白井 「なぜ! なぜわたくしのベッドに袋を放置しているのですか!!」

絹旗 「いや、ゴミ箱に投げ入れようとしたんですが、超思いの外距離が伸びなくてですね」


141 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:08:52.40 gw7Lp+iOo 158/159


白井 「人の寝床をなんだと思っているのですかぁ!!」ムキー

絹旗 「モガーー」ジタバタ

 :
 :
 :

白井 「……」

絹旗 「映像チェック中ですか」カチャカチャ

白井 「ええ、撮れてるかどうか程度のチェックですが」

絹旗 「変なものが超映ってたところで、ここじゃ動画編集もできませんもんね」カチャカチャ

白井 「仰るとおりで。……ところで絹旗さん、レポートなら明日でもよいのでは?」

絹旗 「」カチャカチャ

白井 (あ、これは相当集中してますわね)

絹旗 「」ムー

白井 (せめて邪魔はしないようにいたしませんと)ソロリソロリ

絹旗 「」カチャカチャ

白井 (……レポートじゃなくてブログでしたか)


142 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/09/10 01:11:33.80 gw7Lp+iOo 159/159


絹旗 「ま、こんなもんですね」タンッ

白井 「寮監の方にも、明日中には提出できそうですの」

絹旗 「いやー、もー、超疲れました」ノビー

白井 「過密スケジュールな上に、どの取材も体力勝負でしたもの」

絹旗 「でも超貴重な体験ができましたね」

白井 「ええ。特に第7位さんとのバトルと、女王陛下と過ごしたことは普通じゃ経験できませんわね」

絹旗 「第7位には超エライ目にあわされたじゃないですか……」

白井 「今となってはいい思い出です」

絹旗 「まあ、そうなんですけどね。さて、出かけましょうか」

白井 「? どちらへ?」

絹旗 「ミサワさんのとこですよ。そのキャメラ、提出する前に先代マスターの元気なお姿を見せませんと」

白井 「あ、それは名案ですの。参りましょう」

絹旗 「どんな顔しますかね」

白井 「大きいお姉様のことですから、"ふーん"って言いながらも嬉しそうにガン見ですの」

絹旗 「こんだけ超頑張ったんですし、奢ってくれるといいんですけど」

白井 「これまでやってきたように、交渉してみては?」クスクス


<バタン



続きます

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