444 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 00:49:24.78 fau4hUCCo 1/96



  ――#2 子どもができたら名前を考えないとね



元スレ
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311523412/

※関連記事
【本編シリーズ】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 【前編】 【後編】 【おまけ短編集】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その2号室 【前編】 【後編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その3号室 【本編】 【番外編】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その4号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その5号室
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その6号室 【前編】 【後編】 【幕間】
絹旗「きぬはた荘、ですか?」滝壺「うん」 その7号室
【番外編】
絹旗「……超暑いです」白井「沖縄ですし」 【前編】 【後編】
【アフター】(当SSシリーズ)
絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」
#0 プロローグ
#1 とある秋風の休日模様

※注記
『絹旗「きぬはた荘、あふたー!」白井「あふたー?」』は2013年10月時点で未完結です。

445 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 00:51:34.59 fau4hUCCo 2/96



~10月中旬 第7学区 某所~


ユリコ 「(・ω・三・ω・)」

絹旗 「どうでしょうか」

獣医 「とくに問題はないと思うね?」

絹旗 「それは超よかったです」

獣医 「ところで、猫は満月の夜に出産をすること多いね」

絹旗 「え? そうなんですか?」

獣医 「もし、この子も満月の夜を選ぶとすると、もう1週間以内ということになる」

絹旗 「な」

ユリコ 「ノシ・ω・)ノシ」

絹旗 「こっちで準備しておくこととかってなんですか?」

獣医 「特にないね?」

絹旗 「へ? ない?」

獣医 「むしろあれこれ構いすぎるのは逆にまずい」


446 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 00:53:23.02 fau4hUCCo 3/96


絹旗 「そうなんですか」

獣医 「出産前後は猫ちゃんもナーバスになるし、子どもに手を出されると勘違いすれば必死に守ろうとする」

絹旗 「言われてみりゃ超当然ですね……」

獣医 「飼い主を信頼している場合は側にいてほしいとアクションを起こすこともある」

獣医 「逆にいえば、そういう場合を除いてあまり近寄らない方がいいね?」

絹旗 「超覚えておきます」

獣医 「後は……猫ちゃんが安心して出産に臨める場所を用意するとベターかな」

絹旗 「といいますと?」

獣医 「明るすぎない場所に、新聞を敷いた段ボールを用意するだけでも効果的だね?」

絹旗 「段ボールですか……なら超すぐに用意できますね」

獣医 「君まで神経質になりすぎる必要はないね?」

獣医 「極論だが、勝手に産んで勝手に育てる。必要なときに手を貸してあげればいい」

絹旗 「超了解です」

獣医 「何かおかしなことがあれば、すぐに僕に連絡すればいいね?」

絹旗 「その時はお願いします。私も正直不安というか、超心配なので……」

ユリコ 「( ・ω・)ノ」


447 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 00:55:49.18 fau4hUCCo 4/96



~同日 第7学区 常盤台新寮~


絹旗 「ただいま戻りましたー」

ユリコ 「(・ω・)」オアーン

白井 「あら、おかえりなさいませ」

絹旗 「」ガサガサ

白井 「絹旗さん? 帰ってきて早々なにを?」

絹旗 「ユリコのために場所を超作ってるんですよ」

白井 「それはスニーキングミッション用の段ボールでは」

絹旗 「いやいや、スニーキングミッションてあの1回きりだったじゃないですか」

白井 「そう何度もされては困りますの」

絹旗 「超分かってますって。あ、白井さん、新聞紙ないですか?」

白井 「新聞紙? 寮監に聞けばあるかと思いますが……」

絹旗 「ちょっと行ってきます!」トテテテ


<バタン


448 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 00:57:23.54 fau4hUCCo 5/96


白井 「……張り切っておられますの」

ユリコ 「(・ω・ )」

白井 「ユリコ、貴女は安心してお産に臨んでくださって結構ですのよ?」

ユリコ 「( ・ω・)ノ」ビシィ

白井 「元気でかわいい子を産んでくださいね」ナデナデ

白井 (やはり……言い出すべきなのでしょうけど)

白井 (どう切り出したものでしょう)


<ガチャ バタン


絹旗 「戻りましたー」ガサガサ

白井 「ユリコはもうスタンバってますわよ」


 【段ボール】<オアーン♪


絹旗 「え、え? まさかもうですか?」

白井 「……表情を見る限り、リラックスしておられるので、まだ焦る時間ではないかと」

絹旗 「まったく、超驚いちゃいましたよ」


449 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 00:59:47.85 fau4hUCCo 6/96


白井 「……絹旗さん。何匹生まれるかは分かりますの?」

絹旗 「獣医さんの見立てでは、3匹か4匹らしいですよ」

白井 「3匹か4匹……」

絹旗 「ここも超賑やかになりますね」

白井 「やはり、飼うつもりなのですね?」

絹旗 「他に選択肢なんてないじゃないですか」

白井 「わたくしたちだけで、面倒を見きれるのでしょうか」

絹旗 「……正直、不安はありますよ」

白井 「ならば、里親に出すという選択肢もございますのに」

絹旗 「それも考えました。でも……私にはできません」

白井 「……」

絹旗 「生まれたばかりの子どもを、母親から引き離すようなマネ。私には超できません」

白井 「……そうですか」

絹旗 「どう言われようと、どう思われようと。これは超譲れないんですよ」

絹旗 「ここに置けないというなら、私ごと追い出してくれても」


450 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:01:28.62 fau4hUCCo 7/96


白井 「落ち着いてくださいまし」

絹旗 「むう」

白井 「本音を言いますと、わたくしも不安です。里親に出すよう強く勧めるつもりでもありました」

絹旗 「だから、それは」

白井 「ですが絹旗さんのいうこともごもっともですの」

ユリコ 「(・ω・)?」

絹旗 「……」ナデナデ

白井 「絹旗さんの決意が窒素装甲のように固い以上、わたくしから申し上げることもございませんわね」

絹旗 「白井さん……」

白井 「た、だ、し」

絹旗 「な、なんでしょう」

白井 「途中で投げ出すことは絶対に許されませんの」

絹旗 「超分かってますよ。何があったって、ユリコと私で面倒を見ますから」

ユリコ 「ノ・ω・)ノ」

白井 「……頼もしいですわね」クスクス


451 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:04:13.90 fau4hUCCo 8/96


寮監 「しかし、まさかユリコに先をこされてしまうとはな」

絹旗白井 「「うひゃぁ!?」」ビクッ

寮監 「何を驚いている。見回りの時間だ」

絹旗 「なんでいつも気配を断っているんですか……」

寮監 「ちょうどいい機会だ。絹旗、いいか」

絹旗 「?」

寮監 「命を育むというのは簡単なことではない。途中で投げ出すことは許されん」

白井 「仰る通りですの」

寮監 「お前たちが面倒を見るというのなら、私も応援しよう。だが」

絹旗 「だが……?」

寮監 「途中で役目と責任を放棄しようというならば、その時は」

絹旗白井 「「……」」ドキドキ

寮監 「子ぬこたちは私が問答無用で引き取る。良いな?」

絹旗白井 「「……」」

寮監 「よ、い、な?」

絹旗白井 「「は、はいっ!」」


452 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:06:36.10 fau4hUCCo 9/96



~翌日 第7学区 とある病院~


19090 「あ、あの、今日は番外個体にお願いがあります、とミサカは改まった態度で申し出ます」

番外個体 「えっ……な、なにかな」

19090 「このミサカに、検体番号以外の名前といいますか、別称をつけて欲しいのです」

番外個体 「はい? なんで私なの? 先生とかお姉様の方がいいんじゃ……」

19090 「あの、その、このミサカが一番仲良くさせて頂いてるのがあなたでしたので……」

番外個体 「あー、そういうこと。……IDの発行とかだったら先生に頼んでね?」

19090 「い、今の時点ではそこまでは求めてません」

打ち止め 「でも検体番号以外の名前を欲しがるっていい傾向かも、ってミサカはミサカは的確に分析してみたり」

番外個体 「というと?」

打ち止め 「名前も個性を構成する要素の一つだよ。自分の名前が欲しいってことは、
       妹達がそれぞれ個を持ち始めたってことを意味するとみた、とミサカはミサカは
       一息に吐いてみたり」

19090 「長セリフ乙」

番外個体 「……私のときは正直そこまで考えてなかったわ」


453 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:08:26.11 fau4hUCCo 10/96


19090 「それと、羨ましいというのもあると思います」

番外止め 「?」

19090 「あなたたちは真琴、静琴という名を持ち周囲からもそう認識されています。
     一味違うぜって感じがして羨ましいのです」

番外個体 「うん、まあ……」

打ち止め 「特別扱い不公平だって言われたら否定できないかも……
       ってミサカはミサカはちょっぴり罪悪感を感じてみたり……」

19090 「あっ、そ、そういう意味で言ったのではなく! その、憧れと申しますか」

番外個体 「分かってるって。で、なんか考えればいいんだよね」

打ち止め 「言うほど簡単じゃないかも、ってミサカはミサカは大いに悩んでみたり」

番外個体 「うーん……19090……うん? 19090、190……か」

打ち止め 「何か思いついたの? ってミサカはミサカは悪い笑みを浮かべてるワーストを怪しんでみたり」

番外個体 「19090→190→いくお。よしっ、今日からあなたはいく夫だ」

19090 「ふえ? い、嫌ですそんな可愛いとか可愛くないとかいう前に女性らしさのカケラもない名前は!」

打ち止め 「これはヒドイ……」

いく夫 「せ、せめてもうちょっとマシ、あっ!? 変えないでくださいまだ決定じゃないです!!」


454 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:10:26.03 fau4hUCCo 11/96


番外個体 「ダメかー。こう、頭ん中にピコーンって浮かんだんだけどなぁ」

19090 「あ、あの、言い忘れていたのですが……」

打ち止め 「なになに? ってミサカはミサカは19090号の顔を覗き込んでみたり」ジー

19090 「琴、という漢字を使ってください」

番外個体 「今の一言で難易度がすごい上がったよ」

打ち止め 「もうミサカの頭じゃ無理かも……」プスプス

番外個体 「ちょっと考えさせてもらっていいかな?」

19090 「はい待ちます! いつまでも待ち続けます!」

番外個体 (どうしたもんかね……名前を考えるなんてやったことないよ)

打ち止め 「名前を考えるって難しいね、ってミサカはミサカはショート寸前」

19090 「そういえば前から気になっていたんですが」

番外止め 「「なにかな」」

19090 「番外個体と上位個体は、御坂性ではないのはなぜでしょうか」

番外個体 「あー、それね。先生の意向も絡んでるみたいよ」

19090 「先生と言うと、冥土帰しの?」


455 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:12:50.69 fau4hUCCo 12/96


番外個体 「気になって聞いたことがあるんだけどね。出生や境遇、ましてやクローンだという事に
       囚われず、一人の人間として個を確立して欲しい。だから敢えて御坂姓にはしなかったんだって」

19090 「あの先生の考えそうなことですね」

番外個体 「そういう訳だから。あなたも名前が欲しいって言えば苗字もセットで考えてくれるかも」

19090 「……もし全員分考える事になったらと思うとぞっとしますね」

番外個体 「でもね、なるほど、とは思ったけどさ。メンドいこともあったんだよ? 一人称の矯正とか」

打ち止め 「ミサワなのにミサカじゃ不自然だよね、ってミサカはミサカは当然の指摘をしてみたり」

番外個体 「あなたたちの場合は語尾も……そういやあなた、語尾はどうした?」

19090 「あっ、いけません。最近抜けがちです、とミサカはうっかり属性持ちをアピールします」

番外個体 「あなたもTPOによってあったりなかったりするよね」

打ち止め 「ミサカは器用に使い分けるのだ」フンス

19090 (むしろ最近は語尾がない時間の方が長いですね……見習いとはいえ就業もしてますし)



~同日夜 第7学区 番外通行邸~


番外個体 (どーしよー。なんも思いつかねー)ジャブジャブ

番外個体 (琴って字を使え、か。うー……)


456 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:14:45.62 fau4hUCCo 13/96


一方通行 「? オイ、この本はどォしたンだ」

番外個体 「それ? 今日帰り道に買ってきたんだよ」カチャカチャ

一方通行 「出しっぱなしにしてンじゃ……名付け辞典、姓名判断……? オマエ、まさか……」

番外個体 「どうしたのさ」フキフキ

一方通行 「なンでもっと早く言わねェンだ!? そンなに俺のことが信用できねェか!?」

番外個体 「えっ、な……なんで怒ってるの……?」

一方通行 「ちょっと待ってろ」カチカチ

番外個体 「??」

一方通行 「もしもし、俺だ。……あァ、変わりねェよ。ところでアンタ、産婦人科は専門範囲か?」

番外個体 「」ブーッ

一方通行 「……あァ? 患者のためならなンだってするって豪語してたろォが」

番外個体 「せいや」ガンッ

一方通行 「がっ、は……!?」

番外個体 「あ、もしもし? 先生? ゴメンなさい、うちの人がトチ狂ったこと言い出して。
       えー、そんなこと全然ないんで。勘違いなんで。はい、ごめんあそばせー」ピッ

一方通行 「いきなり何しやがンだ! フライパンで人の頭どつくヤツがあるか!」

番外個体 「こっちのセリフだ! 早合点にも程があるだろうが!!」

一方通行 「え……違ェの?」キョトン

番外個体 「違うわボケェ!!」


457 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:16:28.53 fau4hUCCo 14/96



~翌日 第7学区 隠れ家的喫茶店~


番外個体 「はー……」カキカキ

ショチトル 「マスター? さっきから紙とペンで何をやっているんだ?」

番外個体 「んー……思考の整理」

ショチトル 「なんだか難しそうだな」

番外個体 「名前を考えてるんだけどね。いいアイデアが出ないなぁ」

ショチトル 「名前? ペットでも飼うのか」

番外個体 「いんや、人間」

ショチトル 「人間を飼うのか!?」

番外個体 「違うって! 人間の名前考えてるの!」

ショチトル 「? つまり……どういうことだ?」

番外個体 「あー、まぁ、ニックネームをつけてと頼まれたというか」

ショチトル 「ふむん」


<カランカラン♪



458 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:18:09.96 fau4hUCCo 15/96


ショチトル 「いらっしゃいませ」

結標 「いらっしゃいました」

絹旗 「どうも、絹旗です」

番外個体 「おや? 珍しい組み合わせだね」

結標 「偶然出くわしてね」

絹旗 「というわけで、超いつものください」

ショチトル 「モアイブレンドだな」

絹旗 「だから超いい加減その言い方は……もういいです」ハァ

ショチトル 「義姉さんは?」

結標 「そうね……アップルティー、ホットでね」

ショチトル 「承った」

番外個体 「そういえば、ユリコの調子はどうよ?」

絹旗 「超いよいよって感じですね」

結標 「あら、もうそこまで来たの?」

ショチトル 「子猫……ぜひ抱いてみたいな」


459 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:20:22.25 fau4hUCCo 16/96


絹旗 「ええ、落ち着いたらぜひ見に来てくださいよ」

結標 「私も行っていい?」wktk

絹旗 「超モチロンです」

番外個体 「はい、お待ちどう。ところで、いつ頃生まれるかってわかるの?」カチャ

絹旗 「獣医の先生が言うには、猫は満月の夜に出産することが多いそうですよ」

結標 「へえ、なんだか神秘的ね」

番外個体 「月の引力とか関係してるのかな」

絹旗 「超もしかしたら、次の満月の夜に……」

ショチトル 「次の満月って……今夜だぞ?」

絹旗 「な」


  [[携帯電話]]<キミト デーアーッテカラー イークツモノ ヨルヲカタ-リーアカーシタ♪


番外個体 「このタイミングでの電話ってまさか……」

絹旗 「は、はい、もしもしっ」

白井 『絹旗さん!? ユリコの様子が少しおかしいんですの。すぐに戻ってくださいまし』


460 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/15 01:22:28.47 fau4hUCCo 17/96


絹旗 「ち、超了解です! すぐ戻ります!」ピッ

絹旗 「そのまさかでした……すいません、今日はこれで失礼します!」

結標 「絹旗さん、待って」

絹旗 「なんですか、超緊急事態なんですよ」

結標 「緊急事態なんでしょ? だったら」ヒュッ

番外個体 「淡希が懐中電灯を出した……!?」

ショチトル 「あぁ、どうやら本気だ……!」

結標 「乗っていきなさい」

絹旗 「……結標さんに乗るのは海原さんの役 「ちっがーーーーう!!」

結標 「そうじゃないでしょ! 違うでしょ!」

ショチトル 「?」

番外個体 「深くは追及しなくていいよ」

結標 「もう! とりあえず行くわよ!」

絹旗 「ちょ、超お願いします!」


 ヒュッ



514 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:28:29.09 fm6OYpHso 18/96



~同日 常盤台新寮~


 ダダダダダ バーン


絹旗 「はっ、はぁっ……ユ、ユリコは!?」

白井 「」シー

絹旗 「」

白井 「夕方から段ボールに籠ったきり、一歩も出てきませんの」

絹旗 「超いよいよなんですか……」

白井 「段ボールに入る前も、なんだか落ち着きがございませんでしたし」


 【段ボール】<ゴソゴソ


絹旗 「?」

ユリコ 「( ・ω・)」ポテポテ

絹旗 「ユリコ? 出てきて大丈夫なんですか?」


515 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:30:33.75 fm6OYpHso 19/96


ユリコ 「(・ω・)」クイクイ

絹旗 「どうしたんですか?」

白井 「服をくわえて引っ張るなんて、珍しいですの……」

絹旗 「いや、初めてですよ。ここまでしたの」

白井 「側にいてほしいのでは?」

絹旗 「……私がいても、超大丈夫なんですか?」

ユリコ 「( ・ω・)ノシ」オミャー

絹旗 「超分かりました。すべて見届けましょう」

ユリコ 「(・ω・)」ジー

白井 「わ、わたくしもですか?」

絹旗 「白井さん、超お願いです」

白井 「……分かりましたの。もとよりわたくしにできることなど限られておりますし、せめて立会いぐらいは」

絹旗 「決まりですね」

ユリコ 「(・ω・ )」ポテポテ

白井 「今夜は長い夜になりそうですわね」

絹旗 「超望むところですよ」


516 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:32:23.73 fm6OYpHso 20/96


 :
 :
 :

白井 「ふとあの頃を思い出しました」

絹旗 「どの頃ですか?」

白井 「ユリコは、絹旗さんがどこからか拾ってきたのですよね」

絹旗 「あー、そうですそうです。家の裏庭の掃除してたら茂みから超飛び出てきたんですよ」

白井 「しかも素直に言えばいいものを、最初隠してましたわね」

絹旗 「いや……さすがにみんなの賛同が得られるか超不安だったんです」

白井 「あら、わたくし信用されておりませんのね」プイ

絹旗 「昔の話じゃないですか」

白井 「でもちゃんとみなさん受け入れて、名前まで一緒になって考えたではないですか」

絹旗 「懐かしいですね、何時間も議論してましたよね」

白井 「そういえば、名前は考えておられますの?」

絹旗 「名前は考えてないですが、考えはあります」

白井 「考え?」


517 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:34:45.60 fm6OYpHso 21/96


絹旗 「まあ、それは元気な仔猫を超拝んでからです」

白井 「そうですわね。今はそれだけを祈りましょう」

ユリコ 「(;-ω-)」ヒフー

絹旗 「あれ? 呼吸が……」

白井 「お腹が動いてますの……これは」

絹旗 「ユリコー、超頑張ってください」ナデナデ

白井 「……絹旗さんの仰る通りでしたの」

絹旗 「何がですか?」

白井 「窓の外をご覧になって」

絹旗 「あ、そっか。満月……」

白井 「部屋の電気を落としていると、月明かりでも存外明るいものですの」

絹旗 「……ユリコもやっぱり満月の夜を選んだんですね」

白井 「不思議なものですわね」

ユリコ 「(゚ω゚)」カッ

絹旗 「? ユリコ?」


518 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:36:44.63 fm6OYpHso 22/96


白井 「絹旗さん、後ろ……!」

絹旗 「え? あっ!」

白井 「出てきてますの……」

絹旗 「……」ナデナデ

白井 「ユリコ、もう一息ですの」

絹旗 「こ、こういうとき、なんでしたっけ。超ラマーズ法でしたっけ」

白井 「それは猫にも適用できるのしょうか?」

絹旗 「ええとええと、超掴んで引っ張ればいいんですか?」

白井 「絶対ダメですの」

絹旗 「あ、でも、なんかこう」

白井 「もう少しですの。ユリコ、頑張って」

絹旗 「しかし、すごい匂いですね」

白井 「台無しですの」ハァ

絹旗 「あ、一匹目……!」

白井 「え?」


519 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:40:59.79 fm6OYpHso 23/96


仔猫 「ピー」モゾモゾ

絹旗 「わ、あ……」

白井 「小さい、ですわね……でも、元気に動いてますの」

絹旗 「そ、それで、どうすれば」

白井 「お待ちになって。ユリコが」

ユリコ 「( ・ω・)」バクッ

絹旗 「ちょ、ちょっとユリコ?」

白井 「膜を破って身体を綺麗にしてるんですのね」

絹旗 「超びっくりしました、食べちゃうのかと」

ユリコ 「(・ω・)」ペロペロペロペロ

絹旗 「動いてますよ。仔猫超動いてますよ」

仔猫 「ピー」モゾモゾ

白井 「元気なお子さんのようですの」

絹旗 「あ、ユリコのお腹に」

白井 「お乳を求めているんでしょう」


520 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:45:41.66 fm6OYpHso 24/96


絹旗 「まだ目も空いてないのに、分かるんですね」

白井 「逞しいですわね、こんなに小さいのに」

仔猫 「ピー」

ユリコ 「(*・ω・)」

絹旗 「ユリコと同じで超真っ白な子ですね」

白井 「ええ。まずは一匹ですわね」

絹旗 「そっか、まだ続くんですよね」

白井 「ユリコ、この調子で頑張って。わたくしたちはずっとここにおりますので」ナデナデ

ユリコ 「( ・ω・)ノ」ビシィ

 :
 :
 :

絹旗 「一匹目から30分ほど経ちましたが……」

白井 「出てきませんわね……」

絹旗 「ユリコ、大丈夫ですか?」

ユリコ 「(;・ω・)」ヒフー


521 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:49:13.36 fm6OYpHso 25/96


絹旗 「これは超マズイですかね」

白井 「焦りは禁物ですの」

絹旗 「うー……超もどかしいです」

ユリコ 「(゚ω゚)」カッ

絹旗 「あっ」

白井 「出てきましたの……!」

絹旗 「ユリコ、焦らずに。超焦らずに」

白井 「もう少しですの」

絹旗 「ユリコ、超もう一息ですよ」

白井 「産まれましたの、二匹目……」

絹旗 「さあ、ユリコ。ほら、ユリコ」

白井 「急かしてどうするのですか」

ユリコ 「( ・ω・)」バクッ

絹旗 「超動いてますよ、ちゃんと……」

白井 「元気な子ですの」


522 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:52:40.12 fm6OYpHso 26/96


ユリコ 「(・ω・)」ペロペロ

仔猫 「ピ」モゾモゾ

絹旗 「ユリコの子どもだけあって、白い部分が多いですね」

白井 「この色合いは父親の血も現れているのでしょうね」

絹旗 「あ、一匹目と押し合ってます」

白井 「産まれて数分で兄弟ゲンカとは、逞しいですわね」クスクス

絹旗 「超仲良くしなきゃダメじゃないですか」

ユリコ 「(゚ω゚)」カッ

白井 「え?」

絹旗 「も、もうですか?」

白井 「前がつっかえていたから、後続が早いのでしょうか……」

絹旗 「あるいは、ユリコも超要領を得たのかもしれません」

白井 「あ、出てきましたの……!」

絹旗 「さあ、ユリコ。この調子です」

白井 「ユリコ、もう一息ですの」


523 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:56:09.65 fm6OYpHso 27/96


ユリコ 「(;-ω-)」ヒーフー

絹旗 「ユリコ?」

白井 「さすがに体力を使うのでしょう」

絹旗 「超頑張ってください。もう一息ですよ」ナデナデ

ユリコ 「(;-ω・)」

白井 「ユリコ……!」

絹旗 「あ、産まれた!」

白井 「よく頑張りましたわね」

仔猫 「ピィ」バタバタ

ユリコ 「(;・ω・)」バクッ

絹旗 「わ、こいつさっきの2匹より超動いてますよ」

白井 「よほど外に出たくて仕方なかったのでしょう」

ユリコ 「(・ω・)」ペロペロ

仔猫 「ピィ」バタバタ

絹旗 「超がっついてますね」

白井 「それだけ生きようとする意志が強いということですの」


525 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/16 23:59:20.14 fm6OYpHso 28/96


ユリコ 「( ・ω・)=3」

絹旗 「あれ? もしかして終わりですか?」

白井 「ユリコの表情を見る限り、逼迫した感じはしませんわね……」

ユリコ 「(・ω・*)」ペロペロ

仔猫ズ 「ピーピーピー」

絹旗 「……さすが私のユリコです。超頑張りましたね」

白井 「ユリコ、お手柄でしたわね」


<ガチャ


寮監 「お前たち、夕食は……おい、どうしたんだ?」

白井 「あ、寮監」

寮監 「何があった? なぜ二人して泣いている」

絹旗白井 「「あれ?」」

絹旗 「いやいや、これは……超いつの間に」ゴシゴシ

白井 「これはお恥ずかしいところを」フキフキ


528 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/17 00:03:12.92 wiyVGOpQo 29/96


寮監 「?」

絹旗 「やりましたよ、産まれたんですよ!」ピャー

寮監 「なんだと!」

白井 「寮監」シー

寮監 「む、これは失礼した……」

絹旗 「年甲斐もなく」

寮監 「」ベシッ

絹旗 「ふぎゃ」

白井 「案ずるより産むが易し、とは申しますが。超安産でしたの」

寮監 「そうか、よかったな。どれ、一目だけでも」

仔猫ズ 「ピーピーピーピー」

ユリコ 「( ・ω・)ノ」

寮監 「」ズギュゥゥン

白井 (あ、確か前も……)

寮監 「……よく頑張ったな」クスッ


530 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/17 00:06:43.14 wiyVGOpQo 30/96



~数時間後~


絹旗 「はい、超無事産まれまして……で、こっちでやるべきことって何か」

絹旗 「あ、特にない? あ、そうですか……はい、刺激しなければいいんですね」

絹旗 「エサ? あ、エサですか。そうですね、母乳に使いますもんね……はい、超了解です」

絹旗 「はい、夜分失礼しました。では」ピッ

白井 「獣医さんはなんと?」

絹旗 「無事産まれたのなら、しばらくは超見守ってればいいそうですよ」

白井 「そうですか。仔猫にさわれるのはまだ先のようですわね」

絹旗 「ユリコの許可が下りないと超ダメかと」

白井 「ならばそれを待つといたしましょう」

絹旗 「ユリコたちの調子はどうですか?」

白井 「母子ともどもぐっすり眠っておられますの」

絹旗 「一先ずは超安心ですね……はー」ヘナヘナ

白井 「それにしても、絹旗さんの携帯鳴りっぱなしですわね」


531 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/17 00:09:36.21 wiyVGOpQo 31/96


絹旗 「ユリコを知る人には報告メール出しましたし」

白井 「無事産まれました、と?」

絹旗 「ええ、まあ。浜面だけは"絹旗の子か!"とフザけた返事寄越したんで、後日窒素ぱんち超確定です」

白井 「だから言葉が足りないと前にも申し上げたでしょうに……」

絹旗 「何をどう受け取れば私が子ども産んだことになるんですか。相手もいませんのに」

白井 「相手がいたとしてもこの年齢で出産は普通じゃありませんの」

絹旗 「ともかく……超ホッとしましたね」

白井 「ですわね。一時はどうなることかと」

絹旗 「これから超賑やかになりそうですね……白井さんには話してませんでしたけど」

白井 「?」

絹旗 「ユリコご懐妊の噂を聞きつけて、仔猫見せてという人がこの寮にも結構いるんですよ」

白井 「まあ、無理もないかと」

絹旗 「さっきも言いましたけど、ユリコが超許可するまでは極力ご遠慮頂きませんと」

白井 「事情を話せば分かって頂けますの」

絹旗 「だー、超めんどくせー。いちいち説明しないといけないんですか」ゴロン

白井 「飼い主の責務ですわね」クスクス


532 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/17 00:11:45.49 wiyVGOpQo 32/96


絹旗 「あ、そうだ。仔猫たちの名前なんですけど」

白井 「ええ。何かお考えがあるとか」

絹旗 「私、ゲームでキャラの名前決めるときとか半日以上は超悩むんですよ」

白井 「?」

絹旗 「3匹分考えるとなると、いつまでかかるやら」

白井 「それで、どうなさるおつもりで?」

絹旗 「ほら、ユリコの名前って超みんなで考えたじゃないですか」

白井 「先程そのお話もしてましたわね」

絹旗 「そこでですね、3匹いることですし」

白井 「ですし?」

絹旗 「おすし」

白井 「……」

絹旗 「え、ええと、それでですね。今回は彼女らに名前を超考えてもらおうかなって思ったんですよ」

白井 「彼女らというのは?」

絹旗 「妹ズ。シスターズです」


567 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:41:25.70 OOe10n21o 33/96



~同日 ロンドン とあるアパートメント~


婚后 「♪」コポコポ


<オハヨォウ


婚后 (この声は……)クルッ

目玉 「よう」

婚后 「シェリーさん、お願いですから電話を使ってくださいな」ハァ

目玉 「こっちの方が楽なのよ」

婚后 「左様で……」

目玉 「んでさ。アンタ今日ヒマ?」

婚后 「はあ、予定はございませんが」

目玉 「よし。今日は午後から出かけるぞ」

婚后 「どちらまで?」

目玉 「ウィンザー城」


568 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:43:22.82 OOe10n21o 34/96


婚后 「ウィンザー城? なぜそのようなところに」

目玉 「まあ、見物だな。あと、そこに面白いヤツがいる」

婚后 「面白い……?」

目玉 「騎士派の連中はまだ信用しきれないが、そいつは大丈夫だろ」

婚后 「?」

目玉 「あ、ゴメン。こっちの話」

婚后 「……そ、それで、どのようなお人なのですか?」

目玉 「最近、イギリスに戻ったヤツでね。その前までは学園都市に潜伏してたらしい」

婚后 「え、学園都市に?」

目玉 「ウィリアム=オルウェルって知ってるか? 今日遊びに行くヤツの名前だ」

婚后 「さて……存じませんわね」

目玉 「学園都市でカフェの真似事してたらしいわよ?」ケラケラ

婚后 「!?」

目玉 「じゃ、今日昼過ぎにそっち行くから。準備しておくようにな」シュワシュワシュワ

婚后 「……ま、まさか」


569 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:45:38.82 OOe10n21o 35/96


婚后 「そうですわ。現マスターのミサワさんなら」

婚后 「……いえ」

婚后 「早合点はいけませんわね」

婚后 「それに向こうは真夜中。連絡は控えましょう」



~同日午後 タクシー車内~


シェリー 『ウィンザー城』

ドライバー 『はいよ』


  ブロロロロ...


婚后 「あの、今日お会いするウィリアムさんとはどのようなお方で?」

シェリー 「なんつうか、堅苦しいっていうか、堅物っていうのかな?」

婚后 「……」ウーン

シェリー 「どうしたのよ」


570 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:47:23.48 OOe10n21o 36/96


婚后 「いえ、もしかしたらお会いしたことがあるかもと」

シェリー 「え? てことは、あの男が潜伏してたカフェに行ったってこと?」

婚后 「もしかしたら、の話ですが……」

シェリー 「正直、あのゴリラがエプロンつけてる姿とか想像できねぇんだよな」

婚后 「ゴ、ゴリラ?」

婚后 (あれ? もしや違う人?)

婚后 (先代のマスターさんはたしかにガッシリしてましたが、ゴリラという顔では……)ウーン

婚后 (むしろ精悍だったような)

シェリー 「どうだった? アイツの店」

婚后 「いえ、まだ確定ではございませんので……」

シェリー 「ま、それもそっか」

ドライバー 『おい、姉ちゃんたち。見えてきたぜ!』

婚后 「シェリーさん、あれが……?」

シェリー 「ウィンザー城だな」

婚后 「思ってたより大きいんですのね……」


571 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:49:27.89 OOe10n21o 37/96



~ウィンザー城~


婚后 「まあ、なんと荘厳な……」

シェリー 「古いだけだろ」

婚后 「それで、お尋ねの方はどちらに?」

シェリー 「知らない」

婚后 「え」

シェリー 「だからこれから探すんだろ」

婚后 「こ、これだけ広い中から探すのですか!?」

シェリー 「なんとかなるわよ」

婚后 「なんとかと申されましても……せめて、手分けするとか」

シェリー 「……いや、ダメだ。ここでアンタを一人にするのは気が引ける」

婚后 「で、では、シェリーさんのあの目玉をたくさん使って」

シェリー 「こんなところでアレ使ったら私が捕まるっての」

婚后 「むう……」


572 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:50:44.90 OOe10n21o 38/96


シェリー 「諦めて、素直に探すしかないってことね」

婚后 「館内放送とか」

シェリー 「諦めろっての。ほら、行くわよ」スタスタ

婚后 「あ、待ってくださいな!」



~ウィンザー城 ミドル・ウォード~


婚后 「すごい……」

シェリー 「あまりキョロキョロしてると異国人だと思われるわよ」

婚后 「異国人ですもの」

シェリー 「あ、もう開き直るのね。さてどっちから行くかな……」

婚后 「シェリーさん、あそこに見える建物は?」

シェリー 「ん? 聖ジョージ礼拝堂だな」

婚后 「まるで遺跡のようですわね」

シェリー 「古いからな」


573 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:52:37.04 OOe10n21o 39/96


婚后 「ぜひ間近で見たいのですが」

シェリー 「じゃあっちから行ってみるか」

 :
 :
 :

婚后 「ここは英国の女王陛下もご滞在されると聞いておりますが」

シェリー 「年がら年中いる訳じゃないけど、いることは多いかな」

婚后 「の割には、観光客の方が多いのですね」

シェリー 「ここは結構あちこち見学解放してるからな」

婚后 「オープンなのですね」

シェリー 「まあね。って言ってる間に着いたけど」

婚后 「近くで見ると迫力がございますわね」

シェリー 「いつから頑張ってるのかしらね、こいつも」

婚后 「あの、撮影は」

シェリー 「禁止」

婚后 「」ショボン


574 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/19 00:54:38.31 OOe10n21o 40/96


シェリー 「さて、こっちの方にはいないっぽいな」

婚后 「あ、お尋ね人ですわね」

シェリー 「来た道戻るけど、いい?」

婚后 「ええ」

シェリー 「じゃ、いったん戻るぞ」



~ウィンザー城 アッパー・ウォード~


婚后 「入り口を境にして、左右に広がっていたのですね」

シェリー 「そ。ちなみに正規の出口は聖ジョージ礼拝堂の近くだから」

婚后 「え、それってつまり」

シェリー 「帰るときはまた戻らないとね」

婚后 「そっ、それを先に言ってくださいな」

シェリー 「いいでしょ、大して変わりゃしねぇよ」

婚后 「そうかもしれませんが、なんか損した気分ですわ」


575 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:56:32.53 OOe10n21o 41/96


シェリー 「日本人ってのは細かいな」

婚后 「日本人か否かは関係ございません」

シェリー 「はいはい。で、見えてきたな」

婚后 「こちらは?」

シェリー 「ステート・アパートメント」

婚后 「ええと、つまり」

シェリー 「まあ、謁見の間だとか来賓室だとか、そんな感じだと思っとけ」

婚后 「となると、中も綺麗な造りなのでしょうね」

シェリー 「ここならいるかもね。入ってみるか」

婚后 「え? だ、大丈夫なのですか?」

シェリー 「大丈夫大丈夫」

婚后 「ですが」

シェリー 「ほら、行くぞ」スタスタ

婚后 「あ、ちょ、ちょっと!」


576 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 00:58:33.78 OOe10n21o 42/96



~ステート・アパートメント~


婚后 「うわぁ……」キョロキョロ

シェリー 「やっぱこういう豪華すぎる部屋は落ち着かねぇな」ガシガシ

婚后 「なんと豪奢な」

シェリー 「アンタの実家って金持ちなんだろ? こういう部屋あるんじゃないの?」

婚后 「さすがにここまでのものはないですわよ」

シェリー 「ま、そんなもんか」

婚后 「それに金持ちといっても、世界有数の資産家である王室と比べれば庶民ですわ」


<ガチャ


侍従 「む?」

婚后 「あら?」

シェリー 「お?」

侍従 「」ペコリ


577 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 01:00:43.49 OOe10n21o 43/96


婚后 「あ、あの……」

シェリー 「見つけた見つけた」

侍従 「お前はイギリス清教の」

シェリー 「今日はアンタを尋ねてきた」

侍従 「?」

婚后 「あの! 以前に何回か、お会いしたことがございませんか?」

侍従 「貴女とか?」

婚后 「学園都市のカフェで、です」

侍従 「……ああ、あの時の」

婚后 「では、やはり先代マスターさんですのね」

先代 「まさか、こんなところで再会することになろうとはな」

婚后 「驚きましたわ。ある日お店に行ったら"いなくなった"ということだったんですもの」

先代 「突然であったのは申し訳ないと思っている」

婚后 「……まあ、先代様にもご事情があったのでしょうが」

シェリー 「おい、立ち話も疲れるから。どっか座れるとこないの?」

先代 「着いてくるのである」


578 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 01:02:26.35 OOe10n21o 44/96



~ウィンザー城 来賓室~


婚后 「こ、ここは国賓が使うような部屋では」

先代 「今は空いているのだから問題あるまい」

シェリー 「」ガリガリ

先代 「あの店……というか、ミサワさんは元気でやっているであるか」

婚后 「ええ、ご本人も楽しんでやっておられるようですわ」

先代 「それを聞いて安心した」

シェリー 「」フーッ

先代 「必要な書類や資金を置手紙と託して、夜逃げ同然に出てきたであるからな」

婚后 「最初はみな驚いてましたわ。あまりに突然なのですもの」

先代 「その点については重ねて詫びる」

シェリー 「でもなんで学園都市でカフェの真似事なんかしてたのよ」ガリガリ

先代 「深い理由はない」

シェリー 「ふん、どうだか」


579 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 01:04:21.76 OOe10n21o 45/96


先代 「そういえば、訪問してきた客に何も出さないままであったな」ガタ

婚后 「あ、それならば」

先代 「?」

婚后 「もう一度、先代様が淹れた紅茶が飲みたいですわ」

先代 「承った。しばらく待っているのである」


<バタン


婚后 「お変わりないようで安心いたしました」ハゥ

シェリー 「はー。ホントにやってたんだ、あのゴリラがね」

婚后 「ゴリラではないかと……確かに体格はがっしりとしておいでですが」

シェリー 「だからゴリラでいいじゃん」

婚后 「ですが、顔つきは精悍ではないですか」

シェリー 「ん? ああいうのがタイプなのか?」

婚后 「そ、そういう話をしているのではなく!」

シェリー 「分かった分かった」ガリガリ


580 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 01:06:31.19 OOe10n21o 46/96


婚后 「もう……勘違いされるではないですか」


<ガチャ


先代 「お待たせした」カチャカチャ

婚后 「わざわざありがとうございます」

先代 「しかし、紅茶を淹れるのと剣を振るうのは同じであるな。身体が覚えている」コポコポ

シェリー 「あ、私にも」

先代 「承った」

婚后 「まあ、いい香り」スンスン

先代 「熱いから気を付けるのである」

婚后 「」ズズ

シェリー 「あちあち」

婚后 「結構なお点前で」

先代 「これはご丁寧に」

シェリー (ミルクねぇのかな)


581 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/19 01:08:34.55 OOe10n21o 47/96



<ガチャ


?? 「なんだか、紅茶のいい香りにつられてやってきたぞ」

先代 「」

シェリー 「」ポカン

婚后 「?」ズズ...

?? 「ウィリアム、私にも一杯くれないか」

先代 「か、畏まった!」ガタッ

婚后 「シェリーさん、あの方は?」

シェリー 「…………女王」

婚后 「は、はい?」

シェリー 「女王陛下だよ。クイーンレグナント」

婚后 「」ブーッ


608 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:16:59.11 BLR0sHjbo 48/96


婚后 「」カチコチ

シェリー 「」ガリガリ

女王 「うん、うまい」

先代 「勿体なきお言葉」

婚后 (どうしてこんなことに……)

シェリー (あ、やべ。彫りすぎた)

女王 「ところでウィリアム、こっちの大和撫子とは知り合いか?」

先代 「以前、世話になった御仁である」

婚后 「そ、そそ、そんな滅相もございません!」

女王 「まさか、嫁候補じゃあるまいな?」ニヤニヤ

先代 「それはあり得ぬ。ご安心召されよ」

シェリー 「」フーッ

婚后 (シェリーさんはいつの間にあんな隅っこに……)

女王 「お嬢さん」

婚后 「は、はいっ!」


609 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:18:49.56 BLR0sHjbo 49/96


女王 「私はエリザード、英国王室で女王をやっている」

婚后 「は、ええと、えー……」

女王 「ほれ、私は名乗ったぞ。次はそっちの番だ」ホレホレ

婚后 「しっ、失礼いたしました! 日本から留学させて頂いている婚后と申します」ペコリ

女王 「んなガチガチに緊張せんでも。ウィリアム、お前がずっと怖い顔をしているからだぞ」

先代 「私のせいであるか!?」

婚后 「あ、あの……」

女王 「婚后さんとやら。今の私はプライベートだ、もっと楽にしてくれ」ガハハ

婚后 (なんという無茶振り)

先代 「陛下、あまり羽目を外しませぬよう。騎士団長の胃に穴が空きますぞ」

女王 「彼奴なら今はバッキンガムに行ってるから大丈夫だ」

先代 (何時間にも渡る愚痴を聞かされるのは私なのであるが……)

女王 「遠い異国の地から友人がきたんだぞ。今はこの貴重な時間を楽しまねばなるまい」

婚后 「友人だなんて、そんなわたくし如き」

女王 「固いことを言うな。こうしてる以上、茶のみ友達じゃないか」ケラケラ


610 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:20:54.30 BLR0sHjbo 50/96


婚后 (もう頭が真っ白ですわよ……失言などしたらどうすれば)ダラダラ

女王 「ウィリアム、お代わり」

先代 「はっ」

女王 「しかし見事な黒髪だな。やはり本場物は一味違う」

婚后 「あ、ありがとうございます」

女王 「ウチの娘も黒髪なんだが、そっちはなんていうかこう、カラスの羽みたいでな」

婚后 (娘さん……ということは王女様)

先代 「たしか日本では、カラスの羽というのは誉め言葉であったな」

婚后 「ええ、烏の濡れ羽色や濡烏とも申しますわね」

女王 「そうなのか! 成程、興味深い」ウンウン

婚后 (ああ、胃が重くなってきました)

女王 「……まだちょっと表情が硬いな」

婚后 「そ、そうでしょうか?」

女王 「そうだ、ウィリアム。騎士団長にここに来るように伝えてくれないか」

先代 「あの男はバッキンガムにいるのでは?」


612 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:22:49.50 BLR0sHjbo 51/96


女王 「構わんさ」

先代 「何をなさるおつもりで」

女王 「お前と二人で漫才をしてもらおうかと」

先代 「」

婚后 「」

女王 「あの日本の伝統芸を見れば、緊張もいくらか解れるだろう」ケラケラ

先代 「私にそのような芸はないのであるが……」

シェリー (見てぇ。そんで笑い飛ばしてやりてぇ)

婚后 「あっ、あのっ、そこまでして頂かなくても大丈夫ですから」

女王 「そうか? ならよいが」

先代 (助かったのである……)ハァ

女王 「よし。ならばゲームでもしようか」

婚后 「げ、ゲームですか?」

女王 「ウィリアム、アレを持ってきてくれ」

先代 「畏まった」ガタ

シェリー (極東、頑張れー)ガリガリ


615 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:24:56.96 BLR0sHjbo 52/96



~1時間後~


シェリー 「」ウトウト

先代 「……」

女王 「……」ムー

婚后 「チェックメイトですわ」タンッ

女王 「あぁ、待て待て待て! 今のなし! ノーカンノーカン!」

先代 「陛下、またであるか」

女王 「ああ、くそ。どうしてこうもうまくいかんのだ」

先代 「貴女もお強いであるな」

婚后 「幼少の頃、祖父に教えられて相手をしておりましたから」

女王 「このままでは終われん。もう一局いくぞ」カチャカチャ

婚后 「お、仰せのままに」

婚后 (……なんというか、親しみやすいお人ですわね)


616 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:27:15.40 BLR0sHjbo 53/96


女王 「しかしこの私相手に互角以上とは……やりおる」タンッ

婚后 「日本では、勝負は時の運とも申しますわ」トッ

女王 「運の一言で片付けられてたまるか。私はな、娘にも負けたことがないんだぞ」タン

婚后 「ご息女がおられるのですね」タッ

女王 「ああ、3人いる。もういい歳だが、私から見ればガキ同然だな」

先代 「陛下から見れば何十年経とうが、子どもであることに代わりはないのであろう」

女王 「その通り。さくっと私を超えてほしいものなのだがな」タン

婚后 「それは王室の者としての?」タッ

女王 「一国の長としての意見でもあるし、女王としての意見でもあるし、母親としての意見でもある」タンッ

婚后 「それで、ご息女に自分を超えてほしいと」タン

女王 「どいつもこいつも方向性が極端でな。あと何十年かかることやら」タッ

先代 (まあ、いましばらく時間はかかるであろうな)

女王 「まったく、引退はずぅっと先のようだ」ガハハ

婚后 (……大器、というのはこういった方のことを言うのでしょうね)


617 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:29:39.45 BLR0sHjbo 54/96


女王 「ほれ、チェックメイト」タンッ

婚后 「え? あっ」

婚后 (い、いつの間に!?)

女王 「よっしゃきたぁ! 見たか! これぞ私の真の実力よぉ!」ウェーイ

先代 「陛下、はしゃぎすぎである」

女王 「勝者の特権だ、固いこと言うな」

婚后 (チェックメイトされるまで、追い詰められていることに気付かないなんて……)

婚后 「参りましたわ」ズーン

女王 「そうヘコむな。相手が悪かったんだ」ニパニパ

先代 「これより前に5連敗しているであるが」

女王 「ふん、何とでも言うがいい」

シェリー (やっと終わったか)

先代 (陛下は勝つまでやめないであるからな)

女王 「おっと、もう日が暮れ始めているか」

婚后 「あら、いつの間に」


618 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:31:58.79 BLR0sHjbo 55/96


先代 「そこの。暗くなる前に帰した方が良いのではないか」

シェリー 「言われなくてもそうするわよ」

女王 「いや、今日は楽しかった。ありがとうな!」ガッチリ

婚后 「い、いえ、そんなとんでもない」

女王 「そうだ。今回の礼を用意しなければ」

婚后 「いえいえいえいえ、身に余ることです!」

女王 「そう言うな。ちょっと待ってろ。内線借りるぞ」


<あ、もしもし。私だ。


婚后 「あ、そうですわ。失礼する前に、先代様にお願いが」

先代 「なんであるか」

婚后 「ミサワさんに元気なお姿をお届けするために、記念撮影をお願い致します」スチャ

先代 「よかろう」

シェリー 「貸しな。私が撮ってやる」

婚后 「ではお願い致します。このボタンを長押しして」


620 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:33:50.50 BLR0sHjbo 56/96


シェリー 「分かるっての!」

先代 「ここでよいであるか」

婚后 「ええ、よろしいかと」

女王 「あ、おい! お前ら、この私を差し置いて記念撮影とはどういうことだ!!」ドタドタ

婚后 「え? え?」

先代 (女王陛下はこういうお人なのである)ヒソヒソ

婚后 (下手に撮影しては不味いと考えて、あえて避けたのですが)

先代 (それは逆効果であるな)フッ

女王 「ウィリアム、どけ。お前はでかいから後ろでいいだろう」

先代 「畏まった」

婚后 「あ、えと……」

女王 「おい、そんな離れてるとフレームアウトするぞ」

先代 「引きで撮ればよかろう」

シェリー 「あー、いいかー。撮るぞー」

女王 「おし、来い!」


 ピ カシャッ


621 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:35:46.17 BLR0sHjbo 57/96



~同日 ウィンザー城 ラウンドタワー~


婚后 「」グッタリ

シェリー 「さすがに疲れたか」ケラケラ

婚后 「ええ、まあ……シェリーさんの仰る通り、とびっきりの出会いでしたわね」

シェリー 「いや、クイーンの乱入はアクシデントよ」

先代 「陛下を歩くアクシデント扱いとは、畏れ多いであるな」

シェリー 「そこまで言ってねぇよ!」

婚后 「しかし、女王陛下……国家元首としても、一人の母親としても、大きな人物でしたわ」

先代 「会った人間はみな口を揃えてそう言うである」

シェリー 「単なるハイテンションおばさんって訳じゃないってこった」

婚后 「それにしても、いつも思うのですが」

先代 「なんであろうか」

婚后 「皆さん、日本語がお達者なのですね。英国にいるという実感が日に日に薄れていきますわ」

シェリー 「あー……そりゃあれだ。優秀な日本語講師が何人かいるからな」

シェリー (ってことにしとくか)

622 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:37:48.10 BLR0sHjbo 58/96


婚后 「そうなのですか?」

先代 「関わりの多い日本人が何人かいるのは事実である」

シェリー 「日本人街って行っただろ? あそこにも何人かいるし」

婚后 「成程、道理で……」

シェリー 「ただ、えらい独創的な日本語が板についてるヤツもいるけどな」

先代 「あの女であるか」

婚后 「?」



最大主教 「くちゅんっ」



先代 「さて、そろそろ来る頃であろうが」

婚后 「まさか送迎を用意して頂けるなんて」

シェリー 「タクシー代浮いたわ」

婚后 「シェ、シェリーさんっ」


623 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:39:42.75 BLR0sHjbo 59/96



<プップー


シェリー 「あ、あれね?」

婚后 「え、あれって……」

先代 「うむ。どうやら向こうの準備も出来ているようであるな」

シェリー 「よし、乗るか」

婚后 「」ポカン

先代 「道中、気を付けるように」

婚后 「あっ、今日は押しかけ同然に訪問したにも関わらず、ありがとうございました」ペコリ

先代 「何、気にすることはない」

婚后 「でもお元気な姿を見れて何よりでしたわ」

先代 「向こうに帰ったら、ミサワさんたちにもよろしく伝えてほしい」

婚后 「確かに承りました」

シェリー 「ほら、行くわよ」

婚后 「あ、はい。では失礼いたします」

先代 「うむ。壮健でな」


624 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:41:39.03 BLR0sHjbo 60/96


 :
 :
 :


  ブロロロロ...


婚后 「まさか、帰りの車を用意してくださるなんて……」

シェリー 「いや、さすが高級車。快適ね」

婚后 「ロールス・ロイスなんて初めて乗りましたわ」

シェリー 「私だって初めてよ」

婚后 「これが最初で最後になるかもしれませんわね」

シェリー 「実家金持ちなんでしょう? 高級外車の一台二台ありそうだけどな」

婚后 「……そういえば、海外車はなかったような」

シェリー 「国産派なの?」

婚后 「あっ! ドイツ製のリムジンならありましたわ!」

シェリー 「十分すげぇよ」

ドライバー 「間もなく到着致します」


625 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:43:34.92 BLR0sHjbo 61/96



~同日 ロンドン市内 とあるアパートメント~


<ガチャ バタン


婚后 「……」

婚后 「ふはぁ」ヘナヘナ

婚后 「ここまで神経をすり減らしたのは、今までの人生で暫定一位ですわ……」

婚后 「まさか女王陛下とチェスをすることになるなんて」

婚后 「……ですが」

婚后 「終わってみれば、いい思い出ですわ」

婚后 「」カチカチ

婚后 「女王陛下と写真を撮ったなどと……誰が信じるでしょうか」クスクス

婚后 「さて、留学も残すところあと1週間ですわね……」

婚后 「……」

婚后 「これは留学なのでしょうか……修学旅行と言った方がしっくりくるような……」

婚后 「まあ、得るものがあればよいですわね」


626 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/20 23:45:50.66 BLR0sHjbo 62/96



婚后 「さて、食事は」


<オーイ


婚后 「……」

目玉 「あれ? ちょっと? なんで無視してんのよ」

婚后 「電話を使ってくださいと、何度も……!」

目玉 「だってこの方が楽だし」

婚后 「……それで、どうなされたのですか」

目玉 「オルソラのやつがメシ作るから来いってさ」

婚后 「行きます!」

目玉 「食いつきすぎだろ……」

婚后 「だってオルソラさんの料理ですよ」

目玉 「気持ちは分かるけどさ。じゃ、王立芸術院まで来て。近いから大丈夫だよな?」

婚后 「ええ。今から向かいますわね」

目玉 「んじゃ、後でなー」シュワシュワシュワ

婚后 「……よしっ、急いでいくと致しましょう」タタッ


<ガチャ バタン


653 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:16:24.25 4k8imQ3ko 63/96



~仔猫誕生から数日 第7学区 常盤台新寮~


絹旗 「」カチャカチャ

白井 「?」

絹旗 「」パチン

白井 「絹旗さん、先程から何をしてらっしゃいますの?」

絹旗 「これですよ、これ」

白井 「……目玉?」

絹旗 「超Webカメラですよ!」

白井 「カメラ……ああ、仔猫を観察するための」

絹旗 「ええ。私たちがいない間は寮監が様子を超見てくれるとのことなんですが」

白井 「仔猫たちのことを考えると、場所は動かせませんものね……」

絹旗 「で、こいつの超出番ってワケですよ。3つほど設置しました」

白井 「映像はどのように閲覧を?」

絹旗 「こいつです」スチャ


654 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:18:45.91 4k8imQ3ko 64/96


白井 「ああ、叩き割った携帯の代わりに新調した最新型携帯電話ですのね」

絹旗 「その話はもういいんですってば!」ムキー

白井 「携帯から見れますの?」

絹旗 「説明書通りに設置はしてみたんで、超試してみましょうか」カチカチ

白井 「」ジー

絹旗 「おっ、すごい! 超見えてますよ!」

白井 「意外と鮮明ですのね」

絹旗 「あとなんか、簡単な操作ならできるっぽいですよ」ポチ


  【カメラ】<ウィーン


白井 「あら、すごい」

白井 (もっと早く知っていれば、お姉様攻略に活躍したのかも……)

白井 「でもよくこのようなガジェットをご存知でしたわね」

絹旗 「浜面と海原さんが、設置の仕方込みで超教えてくれました!」

白井 「あのお二方もお詳しいんですのね」


656 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:21:01.84 4k8imQ3ko 65/96


絹旗 「あの二人は機械とかに強いですよ」

白井 「たしかに、いざというときに頼りになることもありましたわね」

絹旗 「いやしかし、これで心配で心配で授業を抜け出すということは超なくなりそうです」

白井 「母親もしっかりしてますし、大丈夫かと思いますですの」

仔猫ズ 「ミィミィミィミィミィ」

ユリコ 「(*・ω・)」

絹旗 「ユリコ、超育児疲れになったら私たちを頼ってもいいですからね」

ユリコ 「(・ω・)」オアーン


<ピンポーン♪


白井 「はい、301号室……あ、はいはい、今お開け致しますので」ポチッ

絹旗 「お、来ましたか」

白井 「部屋は3階になりますので。お待ちしておりますの」

絹旗 「大丈夫ですかね。超迷ったりとか」

白井 「迷ったりは大丈夫でしょうけど……それより心配なのは」


657 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:22:46.86 4k8imQ3ko 66/96


<広ーい!きれーい!
<大体すごいにゃあ!
<こ、こら!走るな!騒ぐな!


絹旗 「……」

白井 「無理もないかと」クスクス

絹旗 「引率者もいる筈なんですがね……」


<コンコン


白井 「どうぞー」


<ガチャ


打ち止め 「こねこー!」

フレメア 「こねこー!」

絹旗 「ストップ! 超ストォォップーー!」

フレ止め 「「にゃ?」」


658 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:24:49.47 4k8imQ3ko 67/96


白井 「先に説明させてくださいまし。少々デリケートな時期ですので」

ショチトル 「まあ、出産から数日しか経ってないのであれば無理もないか」

結標 「ゴメンなさい、抑えきれなかったわ」

滝壺 「すごいパワーとスピードだった」

絹旗 「若さには適いませんか」

結標 「私だって若いわよ!」

滝壺 「みさわから、抑えるときはアンテナを引っ張ればいいよって聞いてるけど」

ショチトル 「な、なにっ。試してみていいか」

打ち止め 「」ビクッ

ショチトル 「前々から、それ引っ張ったらどうなるんだろうって気になってて」

打ち止め 「こ、来ないで、って……」

結標 「やめなさいっての」グイ

ショチトル 「ぎゅぇ」

フレメア 「大体せつめー!」

絹旗 「はいはい、今しますから。ちなみに大声も超控えてください」


659 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:26:27.66 4k8imQ3ko 68/96


 :
 :
 :

結標 「つまり、触るな近づくなってことね」

絹旗 「ええまぁ……ユリコに限ってないとは思うんですけど、子どもを取られると超勘違いされることも」

滝壺 「母は強しだね」

フレメア 「えー、触れないのー」

打ち止め 「ぶー」

ショチトル 「それは事前に聞いていただろう」

白井 「まだ目も開いておりませんし、仔猫を怯えさせることにもなるかと」

絹旗 「という訳なんです。超申し訳ないですが」

結標 「ま、大丈夫よ。3人とも平気よね?」

フレ止め 「「はーい」」

ショチトル 「3人ともって、私もか!?」

滝壺 「名付け親って名誉があるんだから、我慢できるよね」

結標 「でもいいの? 自分で考えなくて」


660 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:28:46.86 4k8imQ3ko 69/96


絹旗 「白井さんには話したんですけど、ユリコの名前って超みんなで決めたじゃないですか」

白井 「それで、今度はそちらのみなさんに付けて頂こうって話になったんですの」

フレメア 「ねえ絹旗、こねこにゃあ」

絹旗 「さっき説明した通りですからね。今日に限っては、超見守るだけですよ」

フレメア 「らじゃー」

打ち止め 「やっと見れる」wktk

フレ止め 「「ごー」」モゾモゾ

ショチトル 「なぜ匍匐前進? そこまでしないといけないのか?」

結標 「大きい音立てなければいいんでしょ?」

白井 「い、一応掃除はこまめにしてますが、お召し物が汚れますので」ワタワタ

滝壺 「」ソローリ

フレ止め 「「」」ソー...

ユリコ 「( ・ω・)?」

仔猫ズ 「」スピー

フレメア 「大体モガッ」

打ち止め (フレメア、しー)ヒソヒソ


661 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:30:41.91 4k8imQ3ko 70/96


滝壺 「わ、ちっちゃい」キラキラ

結標 「一番可愛い時期かもね」

絹旗 「何言ってんですが。ずっと超可愛いですよ」

ショチトル 「……お持ち帰り」

絹旗 「超ダメです」

結標 「でも、ユリコの子どもだけあって白い部分多いのね」

滝壺 「そっちの子は真っ白だね」

白井 「こっそり観察した結果、その白い子だけが男の子と判明してますの」

絹旗 「気が済むまで見たら、一旦超離れますよー」

フレメア 「にゃぁ」

打ち止め 「バックアップバックアップ」ミョンミョン

結標 「でもよかったわね。全員真っ白だったら見分けつかなかったわよ」

滝壺 「これなら背中の模様で判断できるね」

フレ止め 「「」」モゾモゾ

白井 「だから匍匐前進はやめてくださいまし。特にフレメア、スカートが大変なことになってますの」


662 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:32:31.11 4k8imQ3ko 71/96


絹旗 「すいません、ソファもない部屋なんで。超ベッドにでも座ってください」

滝壺 「わ、いいベッド」ゴロン

結標 「滝壺さん、寝ちゃダメよ」

フレメア 「わ、大体すごい」モフンモフン

打ち止め 「ふかふかだー」ボスボス

ショチトル 「よさないか、二人とも」

白井 「さて、名前なんですけれども……絹旗さん、どうします?」

絹旗 「決めてないんですよねー」

フレメア 「私白い子! 白い子がいい!」

白井 「お二人は構いませんか?」

打ち止め 「うん」

ショチトル 「元より、そこまで決める権利はないと思ってる」

絹旗 「じゃ、フレメアは超白い子担当ですね」

フレメア 「任せろ、にゃあ」

滝壺 「」ポケー


663 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:34:30.98 4k8imQ3ko 72/96


絹旗 「じゃ、ミニミサワさんは縞々でいいですか?」

打ち止め 「分かった、縞々だね!」

ショチトル 「じゃ、私は……アレはなんと言うんだ?」

結標 「背中の模様よね。んーと……サバトラとか?」

ショチトル 「……どこらへんがサバなんだ?」

結標 「色合いとか?」

ショチトル 「ふむん」

絹旗 「じゃ、分担は超決まりですね」カキカキ

白井 「この備え付けのミニ黒板、初めて使いましたの」

打ち止め 「ね、もう書いていい?」

白井 「あら。決めてますの?」

打ち止め 「うん、昨日の夜から考えてきたから!」

絹旗 「じゃ、ここに書いてくださいね」

打ち止め 「♪」カキカキ

ショチトル 「」ウーン


664 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:36:48.89 4k8imQ3ko 73/96


結標 「貴女、まさか今考えてるの?」

ショチトル 「いや、候補は絞っている。どれにするか……」

滝壺 (さすが常盤台の寮、いろんなAIMが渦巻いてて楽しい)ポケー

フレメア 「思いついた!」ピコーン

絹旗 「じゃ、この"白"の横に書いてくださいね」

フレメア 「♪」

結標 「偶然だろうけど、ちゃんと男の子っぽい名前、女の子っぽい名前になってるわね」

絹旗 「超しまった……それは言ってませんでしたね」

ショチトル 「……そうか。性別も考慮すべきだな」

白井 「ええ。サバトラは女の子なので、それっぽい名前の方がベターですの」

ショチトル 「なら決まりだ。考えた候補の中で女性らしい名前は一つだけだった」

絹旗 「お、決まりですか?」

ショチトル 「ああ。これで決定だな」カキカキ

結標 「これで出揃ったわね」

絹旗 「ええ。ご協力に超感謝です」


665 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:38:43.76 4k8imQ3ko 74/96



~その頃 第7学区 隠れ家的喫茶店~


番外個体 「うー」カキカキ

一方通行 「オマエ最近そればっかだな」ズズ...

番外個体 「ノリで決めるワケにいかないじゃん。ゲームのキャラメイクとは違うんだよ」

一方通行 「しっかしまァ、妹達から頼まれるとはねェ」

番外個体 「最終信号が言ってたけどさ、個の芽生えの現れなんだってね」

一方通行 「……ま、いい傾向なンじゃねェの」


<カランカラン♪


番外個体 「いらっしゃいませー」

海原 「おや、一方通行さんもおいででしたか」

浜面 「おっと、こりゃお邪魔みたいだな」ケラケラ

一方通行 「バラすぞ」

番外個体 「二人揃ってどうしたの? デート?」

浜面 「違うわ! 俺そっちの人じゃねぇ!!」


667 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:40:39.04 4k8imQ3ko 75/96


海原 「いや、家に一人で退屈だったもので。ここなら誰かいらっしゃるかなと」

浜面 「俺も家に一人でな。ハラが減ったから来た」

番外個体 「ん、まあ。で、何にする?」

海原 「一方通行さんと同じものを」

一方通行 「何企ンでやがる……」

海原 「他意はありませんよ」ニコニコ

浜面 「俺、タマゴサンド。キュウリ抜きで」

番外個体 「めんどくせ」カチャカチャ

浜面 「そう言わずに、お願いします!」

番外個体 「料金5割増しだからね?」ニヤニヤ

浜面 「え? 食材抜いてるのに増えるのかよ!」

海原 「いやはや、好き嫌いするとロクなことがないですね」

浜面 「ちくせう、やはり克服するしか……ん、なんだこの紙切れ」

海原 「……名前の羅列のようですが」

一方通行 「先に言っとくが、こいつに子が出来たワケじゃねェからな」


668 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:42:46.45 4k8imQ3ko 76/96


海原 「おや?」

浜面 「聞いてもないのに否定するとか、逆に怪しいんじゃね?」ニヤニヤ

一方通行 「うるせェ。オマエらだってフライパンでどつかれたくねェだろ」

海原浜面 「「?」」

番外個体 「はい、おまちどうさまー」カチャカチャ

海原 「これはすみません」

浜面 「いただきます!」

番外個体 「ところで、滝壺さんとフレメアも絹旗さんのところ?」

浜面 「おお、仔猫がどうとか言ってたな」ムグムグ

海原 「結標さんも行くと仰ってましたね」

番外個体 「淡希さっきまでここにいたよ。で、うちの小さいのとショチトルと一緒に」

一方通行 「チビガキのところに行ったな」

番外個体 「うちの人は即通報されるからともかくとして、二人は行かなくてよかったの?」

浜面 「来なくていいって言われたぜ!」フンス

海原 「常盤台の寮ですからね。おいそれと男が入っては問題になりかねないでしょう」


670 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:44:29.35 4k8imQ3ko 77/96


番外個体 「にしても、仔猫かー……私も見たかったなー」

一方通行 「やめとけ。電磁波で怯えさせるのがオチだろ」

番外個体 「むー」

海原 「仔猫でしたか。何の用事で行ったのか聞きそびれたんですよね」

浜面 「仔猫見に行ったんじゃねぇの?」

一方通行 「名前がどォとか言ってたな」

番外個体 「名前つけてって頼まれたんだよ。私も一緒に考えたし」

海原 「名付け親ですか。これは名誉ですね」

浜面 「……大丈夫なんかな。フレメアのヤツ」

一方通行 「名付けねェ。似たよォな出来事は重なるもンだな」

海原浜面 「「?」」

番外個体 「ううん、こっちの話」

番外個体 (仔猫の名前は決まったけど、もういっこがなぁ……あ!)

浜面 「おい、刻んだきゅうりが混じってるぞ」

一方通行 「黙って食いやがれ」ゴゴゴゴ

浜面 「ハイ」


671 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:46:41.29 4k8imQ3ko 78/96



~同日 第7学区 常盤台新寮~


絹旗白井 「「結果発表ー!」」

フレ止め 「「いぇーい!」」

滝壺 「」パチパチ

絹旗 「仔猫たちの名前はこのように超決まりました」


  ・白いの  リック
  ・縞々   テスラ
  ・サバトラ アスカ


白井 「どれもいいお名前ですの」

結標 「揉めなくてよかったわね」

ショチトル 「最初にちゃんと分担を決めたからな」

絹旗 「私が自分で考えようとしたら超悩んでましたからね。いい名前をもらえて良かったです」

滝壺 「ね、もう一回猫みてもいい?」

白井 「ええ、どうぞ」


673 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/22 00:48:20.16 4k8imQ3ko 79/96


ショチトル 「匍匐前進じゃなくていいからな」

フレ止め 「「はーい」」ソロリソロリ

結標 「それにしてもユリコも。よく頑張ったわね」

絹旗 「超安産でしたけどね」

白井 「子どもも元気ですし、何よりではないですか」

フレメア 「リック、大体早くおっきくなって抱っこさせてねー」

打ち止め (あれ? そういえばミサカの電磁波怖がってない?)

ショチトル 「歩き回るようになるまでどれぐらいなのだろうな」

絹旗 「まあ、超しばらくかかるでしょうね」

滝壺 「ゆっくり元気になってくれればいいよ」

結標 「そうね。結局それが一番でしょ」

白井 「ユリコも、もうしばらくはつきっきりですのね」クスクス

ユリコ 「( ・ω・)ノ」

フレメア 「ねー、絹旗。抱っこできるようになったらまた呼んでね」

打ち止め 「約束ー」

絹旗 「ええ、超約束です」


721 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:29:26.74 2+I7oZISo 80/96



~同日夜 第7学区 番外通行邸~


番外個体 「そっか。気に入ってもらえたみたいで良かったね」

打ち止め 「うん! でも仔猫触れなかった、ってミサカはミサカはガックシしてみたり」ガックシ

番外個体 「そりゃしょうがない。というか、触れないよって事前に聞いてたじゃん」

打ち止め 「でーもー」

番外個体 「触れるぐらいまで育ったらまた呼んでもらえるんでしょ? それまで待つことだね」

打ち止め 「むー」

番外個体 「はいはい、シャンプー流すよ」シャワワワワ

打ち止め 「わっわっ、まだ心の準備が!」

 :
 :
 :

打ち止め 「お風呂空いたよー、ってミサカはミサカは冷蔵庫にダッシュしつつ報告してみたり」ホコホコ

一方通行 「はいよォ」

番外個体 「ねー、明日病院に行ってくるけど」

一方通行 「あ? もう調整だっけか?」


722 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:31:41.63 2+I7oZISo 81/96


番外個体 「違うよ。調整は月イチになったって言っといたじゃん」

一方通行 「あァ、じゃ例の件か」

打ち止め 「あ、19090の!? ってミサカはミサカは冷えた麦茶を片手に尋ねてみたり」

番外個体 「うん、さすがにこれ以上待たせたらつつかれるかなと思って」

打ち止め 「聞かせて聞かせて」

番外個体 「ダーメ。本人より先に聞かせるのはなんか気が引ける」

打ち止め 「ちぇー」

番外個体 「なんなら一緒に来る? どうせヒマでしょ?」

打ち止め 「行く!」

番外個体 「あなたは来る?」

一方通行 「いや、留守番でいい」

番外個体 「お昼は?」

一方通行 「あるもンで済ますから気にすンな」

番外個体 「拝承」

打ち止め 「ねー、聞いて聞いて。今日、こねこがねー」


723 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:33:48.21 2+I7oZISo 82/96


一方通行 「オマエ、何回その話すりゃ気が済むンだよ」ハァ

番外個体 「ま、あれだけ考えて名前を付けてあげたんだしね。愛着も湧くさ」

打ち止め 「夜中まで考えてたもんねー、ってミサカはミサカは苦労をしのんでみたり」

一方通行 「夜更かしすンなっていつも言ってンだろォが!」グリグリ

打ち止め 「痛い痛い!」

番外個体 「でも結局、私が考えたのは全部廃案。最終信号が考えたのに決まったけどね」

一方通行 「オマエだしな。どォせDQNネームばっかだったンだろ」ニヨニヨ

番外個体 「失礼な。それなりには考えたよ」

一方通行 「どンなだよ」

番外個体 「ジーメンス、パスカル、ルクス……」

一方通行 「……安直にも程があンだろ」

打ち止め 「でもワーストも考えまとまったみたいでよかったね、ってミサカはミサカはこめかみをさすりながらホッとしてみたり」

番外個体 「うん、まあねー。ほぼ独りで考えたさ」

番外個体 (美鈴さんならアドバイスくれるかも! と思ったけど……)

番外個体 (その代償に、根掘り葉掘り尋問されそうだよね。美鈴さんだし)


724 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:36:11.23 2+I7oZISo 83/96


番外個体 「そういえばあなた、仔猫に近づいて大丈夫だったの?」

打ち止め 「意外となんともなかった、と思う、ってミサカはミサカは不安ながらも答えてみたり」

番外個体 「さすがユリコの子だな……」

打ち止め 「早く抱っこしたり遊んだりしてみたいなー、ってミサカはミサカは将来に思いを馳せてみる」wktk

番外個体 「案外すぐでしょ。猫が育つのは人間より早いし」ナデナデ

打ち止め 「♪」

一方通行 (……こいつ、MNWから離れて性格が丸くなったのと髪を伸ばしたのと)

一方通行 (客商売で自然と身についた愛想もあって、あの酒乱女に似てきやがったな)

一方通行 (そォいやアレのDNAも継いでるンだよなァ……絶対酒は飲ませないようにしよう)ウン

番外個体 「? なに。私の顔に何かついてる? それとも見とれてた?」

一方通行 「なンでもねェよ。フロいってくる」スタスタ


<バタン


番外個体 「?」
 
打ち止め (ワーストのこと遠くから見つめるのは珍しいことじゃないのに、ってミサカはミサカはちょっぴり嫉妬してみたり)


725 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:38:04.68 2+I7oZISo 84/96



~翌日 第7学区 とある病院~


番外個体 「さ、て。どこにいるのかなー」コツコツ

打ち止め 「まさか今から探すの!? ってミサカはミサカは行き当たりぽっくりなワーストに呆れてみたり」トテトテ

番外個体 「ぽっくりってなんだよ。殺さないでよ」

打ち止め 「この病院って、一般立ち入り禁止エリアもいれるとすごい広いよ? 見つかるかな」

番外個体 「広いって言っても建物の中だし。なんとかなるっしょ」

打ち止め 「それにお仕事中じゃないかな、ってミサカはミサカはスケジュールの心配をしてみたり」

番外個体 「でも今お昼時だよ? どっかで休憩でも……っていうかさ」

打ち止め 「?」

番外個体 「最終信号なら位置情報ぐらいスキャンできんじゃないの?」

打ち止め 「なるほど! ってミサカはミサカは早速ミサカレーダー」ミョンミョン

番外個体 「! ちょっと待った!」グイ

打ち止め 「いたっ! いたたた! ミョン毛引っ張らないでー!」

番外個体 「……みーつけた」ニヤー


726 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:40:33.41 2+I7oZISo 85/96


19090 「ようやくお昼ご飯ですね、とミサカは空腹を訴えます」

麦野 「ここの売店も飽きちゃったのよねぇ。とっくに全商品コンプリートしちゃったしさ」

19090 「で、ですが、食べれるだけマシと思いませんと」

麦野 「こういう食生活してるとね、栄養が偏りがりになるのよ」フゥ


  ガラララララ


麦野 「あ、オイこら! 誰だ、ストレッチャーで遊んで……あら?」

番外止め 「「Freeeeeze!!」」ガシッ x2

19090 「え? えぇぇ? なんですか? みっ、ミサカは急患じゃないですよ!?」

番外個体 「いいから乗って。あ、しずりん。これとこの子、ちょっと借りるねー」

打ち止め 「あとで返しにきまーす!」


<準備おk!行こ行こ♪
<出発進行ー!
<ガラララララ
<なー!


麦野 「??」ポカン


727 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:42:32.68 2+I7oZISo 86/96


 :
 :
 :

19090 「止めてください! 怖いです! これは怖いですぅ!!」

番外個体 「はいはーい」キキー

打ち止め 「よっと! ってミサカはミサカは見事な着地を決めてみたり」スタッ

19090 「……あ、あの、状況がまったく飲み込めません……」

番外個体 「んー、とりあえずさ。どっか座れるとこない?」

19090 「でしたら向こうに……」



~同日 とある病院 自販機コーナー~


番外個体 「はー、喉渇いた」ピッ ガコン

打ち止め 「あ、ミサカコーヒー牛乳ね! ってミサカはミサカはリクエストしてみたり」

19090 「それで、今日はどういったご用向きで、とミサカはおずおずと口を開きます……」

番外止め 「「名前!」」

19090 「……名前?」


728 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:44:15.83 2+I7oZISo 87/96


番外個体 「……もしかして、忘れてる?」

19090 「いっ、いえ、違くて、これは突然の快速特急ストレッチャーで思考の処理が
     追いついていないので、その、そんな怖い目で睨まないでくださいぃぃ!」gkbr

打ち止め 「ワースト、睨んじゃだめ」メッ

番外個体 (睨んだつもりなんかないのに……)ショボン

打ち止め 「でね、今日は19090の……ええと、この場合はなんて言うの?」

番外個体 「忌み名」

19090 「イミ!? それ絶対違う意味ですよね!?」

打ち止め 「とーもーかーく! 19090の名前を考えてきたんだよ! ってミサカはミサカは宣言してみたり!」

番外個体 「あなたにお願いされたヤツね」

19090 「ほ、ホントですか!? とミサカはようやく状況を飲み込めました」

打ち止め 「さあ、ワーストやったげて!」

番外個体 「聞きたいか、私の……とボケはともかく、発表といきましょうか」カキカキ

19090止め 「」wktk


729 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:45:55.58 2+I7oZISo 88/96


番外個体 「これだ!」ドン


  水琴


19090 「これは……なんと読むのですか?」

番外個体 「みずき」

打ち止め 「わぁ、なんか綺麗な名前」

番外個体 「」フンス

19090 「……あ」

打ち止め 「どうしたの? ってミサカはミサカは意味深な"あ"を見逃さない」

19090 「……あ、あのっ。頼んだ立場でこういうことを言うのは心苦しいのですが、とミサカは遠慮気味に口を開きます」

番外個体 「ん、なんか間違ったかな」

19090 「これは、場合によっては"みこと"とも読めるのではないでしょうか」

番外個体 「みこと、って……」

打ち止め 「お姉様だね、ってミサカはミサカは偶然ダブった事実に衝撃を受けてみたり」

番外個体 「うーん、読みとは言え被っちゃうのはダメだよねぇ」ガシガシ


730 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:48:34.59 2+I7oZISo 89/96


打ち止め 「違う漢字にしてみたらどうかな、ってミサカはミサカは代替案を示してみたり」

19090 「そっ、そ、そうですね。"みずき"はいい響きだと思います、とミサカは粋なフォローをしてみたり……」

番外個体 「んー、こういうこと?」カキカキ


  琴水琴


打ち止め 「……なんだこりゃ」

番外個体 「"ことみずき"」

19090 「なんだかお相撲さんみたいです……」

番外個体 「うぅん、じゃ、こう?」カキカキ


  琴琴琴


19090 「???」

番外個体 「琴がみっつで"ことみ"」

打ち止め 「これじゃ漢字クイズだよ! ってミサカはミサカはツッコミを入れてみたり!」ポカポカ

番外個体 「私ゃ漢字に弱いんだよぉ!」


731 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:50:23.57 2+I7oZISo 90/96


19090 「"みずき"という響きは個人的に好きですので、あとは漢字があれば……」

番外個体 「んー、どっかに漢字に強い人っていないのかな」

冥土帰し 「おや、お揃いだね」

番外個体 「あ、先生」

打ち止め 「おひさしぶりでーす! ってミサカはミサカは元気にご挨拶してみたり」

番外個体 「……あ、そっか。先生にも一緒に考えてもらおう」

打ち止め 「え? いいのかな」

番外個体 「土台はできてるんだしさ。それに亀の甲より蛙の子って言うじゃん」

冥土帰し 「なんか色々混ざっちゃってるね?」

番外個体 「それはそれとして、先生にも協力要請!」

 :
 :
 :

冥土帰し 「成程。確かに水琴だと"みこと"とも読まれかねないね?」

打ち止め 「なにかいい感じないい漢字ない? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

冥土帰し 「ふーむ……こうしたらどうかな?」カキカキ


732 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:52:09.57 2+I7oZISo 91/96



  瑞琴
  泉琴


19090 「おお」キラキラ

打ち止め 「先生すごーい!」

番外個体 「二つ目はちと読みにくいような気も……」

冥土帰し 「僕はアイディアを出すだけだ。決める権利があるのはあくまで一人だけだね?」

打ち止め 「という訳で、19090決めちゃって!」

19090 「え、ええと……どれも甲乙つけがたいのですが……」

番外個体 「やっぱここは琴水琴で」

打ち止め 「ワースト、ダメ」

19090 「では……これに決めました! とミサカは指差します」ビシィ

番外個体 「これが19090の選択か」

打ち止め 「じゃ、けってーい!」

冥土帰し 「うむ。些細なことでも、自分で自分の道を決めるのは大事だね?」

19090 「……みなさんにはお礼の言いようもありません、とミサカは頭を下げます」ペコリ


733 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:54:05.35 2+I7oZISo 92/96



~しばらくして とある病院 19090拉致現場~


麦野 「アイツどこ行ったんだか……もう昼休み終わるわよ」


<ガララララ
<これはもういいですから!歩けますから!
<ごーごー!
<これ押すだけでも疲れるんだからね!


麦野 「……おい、まさか」クルッ

19090 「怖いです怖いです!」

打ち止め 「飛ばせー!」

番外個体 「はっ、はぁっ……あいたっ!」コケッ

19090 「え! 番外個体が手離したら誰が止めるんですかぁ!」

打ち止め 「あれ? これってもしかしてマズイかも……?」

麦野 「え、ちょっ……」


  ガッ


麦野 「ぐっ、ぬぉぉぉぉ……!」ギギギ


734 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:56:10.17 2+I7oZISo 93/96


打ち止め 「すごい! 受け止めた! ってミサカはミサカはしずりんお姉ちゃんの怪力に感服してみたり!」

19090 「やはりしずりんの怪力には適いません、とミサカは、せ、戦慄します」

麦野 「怪力怪力うるせぇぞ!」ウガー

19090止め 「「ひぃ!」」

番外個体 「いやー、さすがしずりん! 頼りになるぅ☆ 神様仏様おしず様!」ケラケラ

麦野 「テメェら全員そこになおれ! オシオキカクテイコースだよぉ!!」ギャース

 :
 :
 :

番外個体 「すいません、楽しくてつい」←正座中

麦野 「肉体年齢トップのアンタが調子のってどうすんだ……ったく。次から気をつけろ」

番外個体 「反省してまーす」

麦野 「」ハァ

番外個体 「お、おしず様。足がシビれた」ビビビ

麦野 「そのおしず様ってやめてよ。なんか違う時代の人みたいじゃない」

番外個体 「しずきち」


735 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 01:58:02.29 2+I7oZISo 94/96


麦野 「いくらなんでも無理矢理すぎでしょ」

番外個体 「あれもダメこれもダメって、じゃどんなのならいいんだよ!」ムキー

麦野 「どんなもなんも、テメェは人の名前一つ満足に言えねぇのかゴルァ!」ウガー



19090 「……番外個体ってすごいです。あのしずりんの覇気に真っ向から立ち向かえるなんて」

打ち止め 「しずりんお姉ちゃんって怒らせたら怖いんだね……」gkbr

19090 「怖いです。超怖いです。とミサカは恐怖のフラッシュバックが……」

麦野 「おら、どうしたんだよ、さっきまでの威勢はよ」ローキック

番外個体 「ちょ、やめて。マジやめて! 足シビれてるんだってばぁ!」ジンジン

19090 「しずりん、そろそろ昼休みが終わります、とミサカは恐る恐る間に入ります……」

麦野 「あ、そうそう。それでアンタ探してたんじゃない」

19090 「いや、その申し訳ないです……」

麦野 「ま、悪いのはそこの悪人ヅラなんだけどね」

番外個体 「悪人ヅラって、しずりんに言われたくねーし!」

麦野 「あ?」

番外個体 「なんでもにゃい」


736 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 02:00:02.34 2+I7oZISo 95/96


麦野 「じゃ、私らは仕事戻るから。用が済んだならさっさと帰りなさいよ」

番外止め 「「らじゃ」」

19090 「お二人とも、今日はありがとうございました。とミサカは改めてお礼を述べます」フカブカ

番外個体 「いいって。なんだかんだでこっちも楽しんでたしね」

打ち止め 「またどっか遊びに行こうね! ってミサカはミサカは釘をさしておく」

19090 「はい、楽しみです」

番外個体 「じゃあね、19090……じゃなくて」

打ち止め 「ミサカたちの間では、瑞琴だね♪」

麦野 「?」

打ち止め 「またねー!」ノシ

19090 「お気をつけて、とミサカは二人を見送ります」

麦野 「瑞琴って……アンタ、そんな名前だったっけ?」

19090 「今日からミサカの第2の名です、とミサカはしずりんに比べると貧相な胸を張ります」フンス

麦野 「……そ。よかったじゃない」クスクス

19090 「よし、午後も頑張ります! とミサカは決意を新たにします!」


738 : ◆8GNB4AEvC.[sag... - 2011/08/24 02:02:01.05 2+I7oZISo 96/96



☆超オマケ 猫いっぱい?☆


~その1~


結標 「可愛かったなぁ、仔猫ちゃん……」

ショチトル 「ああ、破壊力は抜群だ」

結標 「ね、ウチでも何か飼ってみる?」

海原 「うーん……ですが、我が家にはすでに猫が二人おりますし」

結標 「?」

ショチトル 「?」

海原 「ははは」ニコニコ



~その2~


フレメア 「猫飼いたいにゃあ」

滝壺 「猫飼いたいって」

浜面 「俺に振るんかい。……つってもなぁ、ウチにはもう手のかかる猫がいんだろ」

フレメア 「定位置」モゾモゾ

滝壺 「……そだね。ペットは、フレメアがもうちょっと大きくなってからね」

フレメア 「にゃおー」


続きます

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