【前編】の続きです。
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夢を...私は夢を見ています。
夢の中の私は、どうにもならないことを、どうにかしようと抗い続けている人達になっています。
その人達の痛みはとても強く、その人達の想いも、とても強く...
私は叫びました。
頑張れ...頑張れ...!頑張れ...!!
そう、強く願い続けているのです...
さやか『カハッ...!』
何度も地面を転がり、吹き飛ばされた衝撃を殺しきれないうちに、さやかは壁に衝突した。
度重なる被弾により、絶影の身体は、左腕は無く、所々に痛々しいほどに亀裂が走り、尾も半分以上が欠けている。立っているのがやっとといった状態であった。
回復の魔法を使おうにも、この身体では燃費が悪く、すぐさま手持ちのグリーフシードを使い果たしてしまうことだろう。
もっとも、マミは、使う暇すら与えてくれないようだが。
QB「やれやれ。君たちは、どうしてそんな無駄なことに拘るのかなぁ?カズマと違って、君はわかっているだろう?
円環の理...いや、鹿目まどかと共に、幾多もの時間軸を見てきた君なら」
いつのまにか現れたキュゥべぇが、さやかの近くにちょこんと座っていた。
さやか『...何が言いたいのよ』
QB「例え奇跡が起こったとしても、魔女になった魂を戻すことなどできはしない。できるなら、まどかも、濁りきる寸前のソウルジェムに干渉するだけの存在になどならなかっただろう」
さやか『......』
QB「まどか程の素質の持ち主でさえ無理だったんだ。それに遠く及ぶことのない君に、どうこう出来るわけがないじゃないか。今の内に考えを改めた方がいいんじゃないのかな?」
さやか『...うるさい』ボソッ
さやか『わかってるのよ、そんなことは。あたしは、才能も無ければ、誰よりも強いわけでもない。おまけに、いつもどっちつかずの半端者だった』
QB「わかっているのなら、何故...」
さやか『でもね...そんなちんけなあたしにも、どうしようもないあたしにも、燻ってるものがあるのさ』
さやかの脳裏に、かつての彼女たちの姿がよぎった。
さやかが魔女となった時も、決して諦めずに、さやかに呼びかけ続けた杏子。
ワルプルギスの夜との闘いで、その戦力差にも挫けず、戦い抜き、まどかを庇って倒れたマミ。
何度、絶望の底に叩き込まれようとも、ただ一つの目的のために戦い続けたほむら。
そして、魔法少女の運命に反逆するために契約を交わしたまどか。
そんな奴らの背中を見せられて、はいそうですかと諦めれられるわけがない。
―――だが、無情にも、さやかに向けて、今までで最大級のティロ・フィナーレが放たれた。
躱すことができない、マミの弾丸。
だが、さやかが目を逸らすことは無かった。
その傷ついた身体で、剣を残った右腕に創りだし、全身全霊を込めて叫んだ。
さやか『意地があんのよ!女の子には!!』
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―――――で
声が聞こえる。
――――いで
この声は...なんなんだ?
―――ないで
俺を知っている、俺が知っている、お前はいったい...
――けないで
カズマ「―――なんだ、お前か」
―――――――――――――――――――――――――
瓦礫の山。
その中心で、前のめりに倒れているカズマ。
杏子は、ジッとカズマを見つめている。
カズマは、痛々しいほどに傷にまみれ、血だまりに沈んでいた。
対する杏子は無傷。どんなに強大な力であっても、当てることが出来なければ、意味はなさない。
カズマの拳と杏子の幻術...彼にとって相性は最悪であった。
カズマ「...ッへへへへ」
だが、カズマは笑った。諦めなどではない。むしろ、これはその逆。
カズマ「ヌルいな...甘くてヌルい」
ゆらりと立ち上がるカズマ。
カズマ「そんなんじゃ倒せねえ...」
いくら疲労が溜まっていようが、傷ついていようが、関係ない。
カズマ「この俺は倒せねえなぁ」
あいつの前で、情けない姿はできねえ。
その意地が、カズマを突き動かす。
そして、彼の意地に応えるように、シェルブリットが激しく輝き始めた。
―――負けないで!
カズマ「そうだよなあ、かなみいいいぃぃぃ!!」
――――――――――――――――――
さやかは弾丸を剣で防ごうと、剣を構えた。
無論、片手で、しかもろくに魔力も込められていない剣で、太刀打ちできるはずもない。
弾丸の勢いを殺すこともできず、剣はあっさりと折れてしまった。
やられる―――!
弾丸が目と鼻の先ほどの距離まで迫った、その時。
どこからともなく現れた青色の無機質な触手が、さやかに当たる寸前で、弾丸を受け流した。
さやか『え...?』
触手は、自分の身体のものだった。
だが、さやかはそのような能力を使った覚えはないし、あることも知らなかった。
気が付けば、自分の姿も先程までとはだいぶ変化していた。
今までの、蛇と人間を合わせたような姿ではなく、両腕を拘束されたような人型に近い姿に。
「よくぞ咆えた。お前の意地...確かに届いたぞ」
声が聞こえる。男の声だ。
「お前の意志に、信念に、敬意を表そう」
カズマではない。なら、恭介?もっとありえない。
なら、いったい誰が...
「この俺...絶影を持つ男、劉鳳が!」
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ロストグラウンド 某所
劉鳳「アクセス型のアルター能力だと?」
箕条「ええ。あなたとアルターとのリンクを、アクセス型の能力を通じて繋ぎ直すのです」
君島「そんなことできんのかよ」
箕条「もちろん、普通の方法では難しいでしょう。ですが、シェリスさんの能力があれば可能になるかもしれません」
シェリス「あ、あたし?」
箕条「あなたの能力『エターナル・デボーテ』で能力を強化するんです」
君島「なるほど、その手があったか!なら、早くそのアクセス型の能力者ってのを連れてきて...」
箕条「残念ながら、いませんでした」
君島「いねえのかよ!」
劉鳳「ならば、結局は八方塞というわけか...」
箕条「いいえ。いないのならば、それを解決する策はある...」
劉鳳「解決策だと?」
箕条「その能力者を作ればいいんですよ」
「作る?」
箕条「はい。ホーリー部隊が秘密裏に行っていた、改造実験を憶えていますか?」
劉鳳「忘れられるものか...知らなかったとはいえ、あのような悪事に間接的に手を貸していた身だ。彼らにはいくら謝っても足りん...」
水守「劉鳳...」
箕条「...思うところはあるでしょうが、まずは聞いてほしい。その実験内容は、アルター能力者の強化。
そして...非アルター能力者たちをアルター使いに進化させること」
「!?」
箕条「もちろん、あのような外法は使いません。しかし、実験記録にはこう書かれていました。
『全ての生物のDNAには、【アルター】の記憶が眠っている』と」
君島「えーっと、つまりどういうこと?」
箕条「生物ならば、誰にでもアルター使いになれるチャンスはあったということですよ」
劉鳳「だが...そう簡単にいくものなのか?もし、それが本当ならば、今頃世界はアルター使いで埋もれている筈だ」
箕条「ええ。アルター使いになれるチャンスは生まれる前だけ。そこを逃せば、二度とアルター使いにはなれない...」
劉鳳「ならば、どうやって作る?」
箕条「音楽で」カッ
劉鳳「なっ...!?」
箕条「私の進化したアルター能力『サウンド=スタッフ=エボリューション』で、非アルター能力者のDNAに音楽で訴えかけ、
アルターの素質を呼び覚まし、一時的にアルター使いにします」
君島「そんなことができんのか...なら、早くやr「ですが」
箕条「もちろん、リスク無しとはいきません。眠っている素質を無理やり覚醒させるわけですから、身体にかかる負担も大きい。
...最悪、死に至るかもしれない。それに、アルター能力は千差万別。成功したところで、それがアクセス型の能力になるかは...」
かなみ「やります」
君島「俺もだ」
水守「かなみちゃん、君島さん...」
箕条「言っておきますが、成功する確率はかなり低いですよ」
かなみ「構いません。もし、ここで動かなかったら後悔する...そんな気がするんです」
君島「そういうこと。相棒が命張ったんだ。なら、今度は俺達の番だろ?」
箕条「その言葉...偽りはありませんね?」
かなみ「はい!」
君島「おう!」
箕条「分かりました。では、劉鳳を合わせた三人で、手を繋いで円になってください」
劉鳳「こうか」ギュッ
箕条「桐生さんは、皆が怪我をした時のために治療の準備を!シェリスさんは、すぐにアルターを使える準備を!」
二人「は、はいっ!」
箕条「ではいきますよ...『サウンド=スタッフ=エボリューション』!!」
キュピイイィィン
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かなみ「こ、ここは...!?」
一面に広がるのは、哺乳類、両生類、爬虫類、植物...
数えきれないほどの動植物が、かなみの視界に飛び込んでくる。
かなみ「これはなに!?」
その中に、一筋の光が走った。
かなみ「......!?」
かなみは、その光に吸い込まれるかのように、手を伸ばした。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
箕条「!成功者は...かなみちゃん!シェリスさん、急いで能力を!」
シェリス「え、ええ!」
シェリス『エターナル・デボーテ』
シェリスは、かなみの身体に触れ、その身を一体化させた。
水守「誰も動かない...いったい、どうなったんですか?」
箕条「かなみちゃんは能力を開花させ、君島さんは能力こそ開花しなかったものの、かなみちゃんを通じて意識をアクセスすることに成功したようです」
水守「なら、劉鳳も...!」
箕条「絶影とのリンクを繋ぎ直せた筈です。あとは...彼らに...」フラッ
ハーニッシュ「晶!」
水守「箕条さん!」
箕条(劉鳳...君島さん...かなみちゃん...そしてカズマ...どうか、無事で...)
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さやか「くぅ~、今日の授業も疲れたなぁ」
仁美「結局さやかさんは寝てましたけどね」
さやか「失礼なことをいうな!ちゃんと起きてたよ...最初の10分くらいは」
まどか「さやかちゃん、そういうのは起きてるうちに入らないよ」
メガほむ「というか、10分も経たないうちに寝ていた気が...」
さやか「ま、まあ細かいことは気にしないの!それじゃ、今日もいつものとこでダベるとしましょうか」
仁美「そうですね。今日はお稽古もありませんから、大丈夫ですわ」
まどか「ほむらちゃんはどうする?」
メガほむ「私も...」
―――「 」
メガほむ「?」
まどか「どうしたの、ほむらちゃん?」
メガほむ「今、なにか声が聞こえたような...」
さやか「あら、ほむらちゃあん、ひょっとして電波なキャラに目覚めちゃったんじゃないの?」
メガほむ「ち、違いますよ!」アタフタ
メガほむ(気のせい...なのかな?)
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さやか『だ、誰よあんた!?』
劉鳳『俺の名は劉鳳。このアルターの持ち主だ』
さやか『劉鳳?劉鳳って...あ、カズマがそんなこと言ってたような...』
劉鳳『詳しい説明は後だ。今は、この場を切り抜けるぞ!』
さやか『は、はいっ!』
マスケット銃から、さやかに向けて大小様々な黒の球体が放たれる。
だが、さやか...いや、劉鳳は、絶影の触手で、それらを難なく叩き落とした。
劉鳳『その程度の攻撃など通用せん!』
劉鳳は、マミのもとまで跳躍し、触手で殴りつけた。
さやか(速い...!)
速度自体は、さやかが操っていた真・絶影の方が上だろう。
だが、劉鳳の無駄のない動きが、体感速度を何倍にも感じさせた。
劉鳳『もう一撃!』
身体の崩れたマミを、もう一本の触手で殴りつけ、壁に叩き付けた。
劉鳳『チィ...さすがにこれでは無理か』
すぐに起き上がるマミを見やると、劉鳳は、絶影の真の姿を解放。
完全修復された真・絶影が再び姿を表した。
劉鳳『...お前の名は?』
さやか『み、美樹さやか』
劉鳳『美樹さやか、今一度問おう。お前には覚悟があるか?』
さやか『覚悟...?』
劉鳳『何を犠牲にしてでも己の信念を貫き通すという覚悟だ』
さやか『!』
劉鳳『中途半端に明日を夢見て、いざという時にも力を制御する...それでは、何も掴むことなどできん』
さやか『......』
劉鳳『かなみ...俺の仲間の能力を通じて、お前たちがどのような境遇かは大方分かっている。だが...もし、お前がその覚悟を持たないのならば、彼女とは俺が闘おう』
さやか『...あたしは、本当なら死んでる身だ。だから、あたしの命を賭けることでマミさん達を戻せるのならいくらでも賭けてやる』
劉鳳『......』
さやか『でも、あたしは、何一つ犠牲にするつもりはないよ。全部背負ったまま、運命を覆してやる』
劉鳳『...そうか』
劉鳳『ならば、あの言葉を唱えてみせろ。俺の絶影に刻まれたあの言葉を!』
さやか『あの言葉...?』
劉鳳『進化の言葉だ。お前の信念が本物ならば、掴める筈だ』
さやか『言葉...』
――――■.■■■.■■
さやか『―――!...わかった、劉鳳。確かに掴んだよ、あの言葉を...!』
劉鳳『覚悟はいいな!?唱えるぞ!』
絶影に刻まれた
まどかが言った
―――あたしが掴んだ
あの言葉を!!!
『『s.CRY.ed!!!』』
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キュゥべぇ...あんたは言ったよね、魔女から元に戻る方法なんて無いって。
でも、それは違うんだよ。
...もしかしたら、それはあたしが死の間際に自分に見せた、都合のいい幻だったのかもしれない。
でも、あいつの...杏子の声が届いたとき、確かに思い出せたんだ。
一度だけでも、あたしがあたしであることを確かに取り戻せたんだ。
その希望があるから、曲がらずにいられる。戦うことができる。
運命に、反逆することができるんだ。
...そうだよね、ほむら、まどか。
***************************
QB「こ...これは!」
光の柱に包まれると共に、真・絶影が、その身体を粒子状に分解される。
やがて、光の中で、絶影だった粒子が人型に集まり、その姿を曝け出す。
全身を覆う蒼の装甲。
首の周りを包む蒼のヘッドギア。
下腹部に、ベルトのように装着された、青色のソウルジェム。
そして、正義を思わせる、一対の純白の剣。
さやか「これが、あたしの...劉鳳から受け取ったあたしの力...」
その名も―――美樹さやか、正義武装!!!
――――――――――――――――
カズマのシェルブリットが眩いほどの輝きを発し始めた。
カズマ「おおおぉぉおおぉ!!」
ギャラン=ドゥを退けた時と同様に、右腕が変化し始める。
カズマは、『アルター粒子』とでもいうアルターを構成する素材がなかったため、今まで最終形態である『ハイブリット』を使えなかった。
ならば、何故第一形態である『シェルブリット』は構成できたのだろうか。
理由は至って単純。
素材がないのならば、他のものを代用すればいい。
カズマは、魔法少女や魔女から発生した『魔力』という超常的なものをアルター粒子の代わりとしていた。
魔法少女が多い美滝原、それ自体が魔力に近い魔女の結界、魔力を垂れ流し続けているワルプルギスの夜とアルター粒子を発しているギャラン=ドゥとの闘い...
そういった段階を踏む度に、カズマのシェルブリットは強化され、進化していった。
―――もっとも、カズマ自身はそんな面倒でどうでもいい理屈を考えたりはせずに、無意識に行っていたのだが。
だが、なにもかもが都合の良いように転ぶわけではない。
カズマ「なっ...なんだよ、おい!」
変貌を遂げたシェルブリットが、ガタガタと震えだす。
―――オーバーヒート
魔力という異質なものを吸収しすぎたシェルブリットが、暴走を始めたのだ。
カズマ「ぐっ...くっ...!」
その暴走は、使い手のカズマ自身でさえ抑えることができない。
それどころか、更に光を増して輝きだしてしまう。
そして、その輝きは光の柱となり、カズマを呑み込んだ。
カズマ「あと...もうちょいだってのによ...!」
耐え切れなくなったカズマのシェルブリットの至る所にヒビが入りはじめた。
そして、彼の信念は、とうとう粉々に砕け散
『大丈夫だよ、カズくん』
『シャキっとしろよ、カズマ』
カズマの右腕に、そっと小さな両手と男の両手が添えられた。
幻想だろうか。それとも、本当に彼らなのだろうか。
―――いや、どっちでもいいな、そんなことは。
カズマは、振り向かなかった。あいつらがそこに居るという感覚があれば、それで十分だった。
カズマ「何やってんだろうな、俺は...さっき言ったばっかじゃねえか...あいつには、あいつらには、情けない姿を見せられねえってよ...」
信じるのは自分自身。そうあいつらに示してきたのは、他ならぬ俺だ。
カズマ「"シェルブリット"...てめえも俺ならよ、こんなところでくたばってんじゃねえぞ...!」
だから、自分自身に負けることなどあってはならない。
光は、より一層輝きを増した。
カズマ「突き崩すぜ、限界をよおっ!!」
杏子は、カズマを呑み込んだ光の柱を、じっと見据えていた。
やがて、その光の柱が、輝きを失っていく。
カズマ「よお、待たせたな」
その光の柱から、カズマが姿を現した。
右腕だけでなく、眼と口を除く顔から、つま先まで全てを覆う金色の装甲。
背中に生えていた三枚の羽は、左右三枚ずつの計六枚の巨大化した羽に変化。
そして右腕は、さらに巨大化し、竜の頭部のような装甲から拳が突き出している。
カズマ「こいつが俺のアルター...」
これが、カズマのアルター。
魔力を取り込み、新たな進化を遂げたアルター。
カズマ「『凄いハイブリット』だッ!!!」
――――――――――――――――
さやか「これが、新しい力...」
劉鳳『そうだ。それがお前の信念の結晶だ』
さやか「これなら...しない」
劉鳳『ああ、しない』
「『負ける気がしない!!』」
足元に魔法陣を作り出し、それを足場にして、マミのもとへと跳びかかる。
マスケット銃から放たれる黒球。足元から絡め取ろうとしてくるリボン。
それらを、剣を盾にして弾き、切り裂きながらも、その勢いのまま突き進んでいく。
さやか「はあああああぁぁぁ!!」
剣を持った両手を合わせると、一対の剣は、たちまち一振りの巨大な剣に変化した。
だが、さやかに向けられるのは巨大な銃口。
このままでは、あちらの方が発射が早い。
さやか「読まれてる!」
劉鳳『憶するな!そのまま、全力を注げ!』
ティロ・フィナーレが放たれ、それにわずかに遅れてさやかが剣を振り下ろした。
大剣と砲丸が衝突する。
劉鳳『切り開け!お前の、お前たちの未来への道を!』
大剣は、砲弾を両断し、魔女をも切り裂いた
――――――――――――――――
三体の杏子の分身が、槍を構え突撃し、残りの四体が槍を地面に突き刺し、カズマの足元から大量の槍を召還した
カズマ「そんなんはなあ...俺たちには効かねえんだよぉ!初撃の新・ハイブリットォォ!!」
対して、カズマは躱すことも、受けることもしない。
殴った。その右拳で、迫りくる槍を殴った。
その拳圧は、地を抉り、大気を振るわし、迫っていた三体の分身を槍もろとも消し去ってしまった。
カズマ「へっ...へへへっ...」
『『いけっ...カズマ(カズくん)!!』』
カズマ「あいよ!」
背にある六枚の羽を展開し、拳を握る。
杏子は消された分身を補おうとするが、カズマはそんな暇など与えない。
カズマ「六枚羽発動!!」
六枚の羽を発動するとほぼ同時に、残った四体の分身がカズマに襲いかかる。
一体目―――カズマに何をする間もなく消え去った。
二体目―――カズマの拳の拳圧で消え去った。
三体目―――カズマの拳が当たった瞬間消え去った。
四体目―――カズマの拳に槍を突き出したが、しかしそれは拮抗することもなく、槍は砕け散り―――
カズマの拳は、ついに彼女を捉えた。
カズマ「覚醒の―――ハイブリットォォォォォ!!!」
――――――――――――――――
QB「やはり、無駄だったようだね」
地に膝をつくさやかに、キュゥべぇが淡々と告げる。
QB「君は、君たちは、幾つもの超常現象を起こしてみせた。それこそ、マドカくらいしかできないようなね。
魔力とアルターの融合装着、異世界間の干渉、そして、更なる進化...生身の人間でここまで出来るなんて、まさに予想外だった。
でも、そこまでだ」
消えていく、マミだった魔女をキュゥべぇは見つめていた。
QB「結局、マミも杏子も魔女から戻ることは無かった。君たちも進化したとはいえ、所詮は倒すだけの力でしかなかった。
ただの一個体が運命を変えることなんて、できはしなかったのさ」
さやかは、俯いたまま何も答えない。
QB「劉鳳...だったかな?残念だったね。君が託した進化は、無駄に終わったようだ」
劉鳳『...フッ』
QB「何がおかしいんだい?」
劉鳳『奴の...奴らの信念を甘くみるなよ、インキュベーター』
QB「それはどういう...!」
感情が無い筈のインキュベーターが、目を見開いた
QB「こ、これは...!?」
流していた。
流れる筈のない涙を、魔女―――マミは、流していたのだ。
QB「女泣き―――!!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
消えていく。
私のためのあの世界が消えていく。
やめて。
現実ではのぞめないあのせかいをけさないで。
もう失うのは嫌だかラ
もうくるしムのは嫌だカラ
おネがイ。もうわたしを
ヒトリニしナイデ
「マミさん!」
光が差し込み、手が差し伸べられた。
聞いたことのある声だった。雰囲気にも覚えがある。
―――ああ、そうだ。これは彼女の...
私は、差し伸べられた手をぎゅっと握った
―――――――――――――――
サラサラと砂粒が落ちていくかのように、魔女の身体は涙と共に消えていく
『...夢を、見ていたの』
マミだった魔女が、言葉を発した。
QB「そんな...魔女が意思を持つなんて、ありえない筈だ...!」
劉鳳『黙っていろ、インキュベーター』
マミ『その夢の中では、両親も生きてて、皆が傍にいてくれた。魔法少女だとか、魔女なんてものもなくて...とても素晴らしい世界だった』
劉鳳『......』
マミ『でも、それは全部夢だった。そんな世界はありえなかった。臆病だった私が、そんな世界の可能性を潰してしまった。だから...』
さやか「ありえるよ、ぜんぜん」
さやか「その夢を現実にしちゃおうよ。誰に頼るでもなく、あたしたちの手で。そりゃ、完璧に同じにすることは無理だけどさ、まだできることはあるでしょ?」
マミ『美樹さん...?』
さやか「なんやかんやであたしもここに居るし、ほむらも杏子もきっと戻ってくる。それで、まどかを連れ戻して、全部が終わったら...今度こそ皆で、ね」
マミ『...美樹さんは、こんな私でも、必要としてくれるの?嘘つきで、臆病な、こんなに弱い私でも』
さやか「もちろん!あたしたち、マミさんが大好きですから!」
マミ『...ありがとう。約束...するわ。必ず戻ってくるって...そして、皆が揃ったら...』
さやか「お茶会、だよね」
マミがニコリと笑うと、その身体は消え去った。
その跡に残ったのは、一つのグリーフシード。
彼女のソウルジェムの淡い光に包まれた、ヒビ割れたグリーフシードだった。
さやか「待ってるからね、マミさん」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
家族が皆生きていて、マミさんたちもいる世界。
魔法少女は、魔女をやっつけて、皆を守れる本当の正義の味方。
正義の味方だから、だれにも拒絶されない。誰も絶望することなんてない。
ああ、なんて素晴らしい世界なんだ。
今まで味わってきたあの苦しいばかりの世界が夢だったんだ。
あれは、夢なんだ。
「腑抜けてんじゃねえぞ」
だれだ...!?
「てめえはその程度のやつなのか?」
浮かび上がってくるのは、一人の男。
右腕を変形させ、髪を逆立ててあたしを睨んでいる。
「その程度のやつなのかってきいてんだよ、俺が!!」
そいつは、拳を固く握りしめ―――あたしをブン殴った。
―――お前は...いや、てめえは!
脳裏に、男の姿がよぎる。雄々しく、荒々しい男の姿が。
てめえにだけはみっともねえ姿を晒してたまるか。てめえにだけは!
――――――――――――――――
ガラガラと音をたて崩れていくコンクリートの壁。
全てが落ち切ると、多量の砂埃が舞い上がった。
やがて、砂埃は晴れていき、彼女の姿が現れた。
杏子『...よお。手間...かけさせたな』
カズマ「...まあな。めちゃくちゃ疲れたぜ」
杏子『そうかい。なら、疲れてるところ悪いけどさ...もう一発だけ、頼むわ』
カズマ「...死ぬつもりか?」
杏子『ハッ、あたしのしぶとさをなめんなよ。ちょっとケリをつけに行くだけさ』
カズマ「......」
カズマはジッと杏子の目を見つめた。
こいつの目は、さっきまでのように冷めてねえ。反逆してやるって気持ちがビンビン伝わってきやがる。
カズマ「いいねえ。なんでか知らねえが、俺はてめえが心底気にくわねえ」
杏子『奇遇だな、あたしもだ』
カズマ「だが、そういう目の奴は嫌いじゃねえ」
カズマがニヤリと笑うと、杏子もニヤリと笑みを返した
カズマ「OK。お前の反逆、俺が引き受けた!」
右腕に装填されるのは、反逆の弾丸。
彼らの間に、遠慮や容赦など一切ない。
身動き一つしようとしない杏子に向けて、カズマの拳が放たれた。
カズマ「反逆の―――ハイブリットォォォォォ!!!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
―――もう、やめようよ
マミ「......」
―――私たちが戻ったところで、何もできないよ。今までもそうだったでしょ?
―――私は、もう失うなんていやなの。だから、この何も消えない理想の世界で...
マミ「だめよ、それじゃあ」
―――どうして?あなたもそれを望んだ筈...
マミ「そうかもしれない。でもね、自分に都合のいいだけの世界にすがってるだけでは...なにも始まらない」
マミ「だから...今度こそ、掴みとりましょう。私たちの幸せを、私たち自身で!」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
杏子「...ごめん、モモ。それに父さんも母さんも...」
モモ「お姉ちゃん?」
杏子父「どうしたんだい、杏子」
杏子「ちょっと、用事ができたんだ。それで...しばらくは帰れそうにない」
杏子母「あら、またお友達のところ?」
杏子「や、友達とかじゃないんだよ。ただ...」
杏子「ほっとけない馬鹿どもがいるんだ」
――――――――――
杏子だった魔女の姿が消え、赤色の淡い光に包まれた、ヒビ割れたグリーフシードが地面に落ちた。
カズマは、それを拾い、ポケットにしまった。
『―――必ず帰ってきてね、カズくん』
ふと、聞こえた彼女の声。
気がつけば、先程まで感じていた二人の気配は、もうどこにもなかった。
カズマ「ああ、わかってるよ。かなみ、君島...」
カズマは、右の手のひらを空に向けてかかげ、拳を握りしめた。
カズマ「俺は必ず帰る。あのクソムカツクアルター野郎をぶっとばしてな!」
――――――――――
劉鳳『ここまで...か』
さやか「帰っちゃうの?」
劉鳳『ああ。かなみの能力がもうじき消えるようだ。絶影はお前に預けよう』
さやか「...ありがとうね、劉鳳。あんたのおかげで助かったよ」
劉鳳『いや、俺はきっかけを与えたにすぎん。この進化はお前自身のものだ。
...カズマに伝えておいてくれ。必ず帰れ、と』
さやか「うん...わかった」
目蓋を閉じてみれば見える。
かつて憧れた正義の味方のような、劉鳳の姿が。
劉鳳『美樹さやか...武運を祈る』
そうして、劉鳳は消えてしまった。
後味を残すこともなく、さっぱりと消えてしまった。
さやか「...さようなら、劉鳳」
286 : ◆do4ng07cO.[sag... - 2013/07/22 23:18:34.39 gG2LShnc0 231/367紛らわしいですが、このスレに出てくるまどかとマドカはほぼ別人です。
再開します。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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志筑さんと美樹さんと別れ、私と鹿目さんは帰路についた。
メガほむ「楽しかったです。こうやって、皆と過ごせて」
まどか「もう、大げさだよ。こんなこと、いつものことでしょ?」
メガほむ「いつも通りでも、楽しかったんです」
そう、楽しい。鹿目さんや皆との何気ない会話が、微笑みかけてくれるのがとても楽しい。
でも、なんでだろう。
なんで、どこか満たされていないのだろう。
なんで...
『一生与えられるだけの人生はきっと―――辛いぜ?』
―――!?
『ただ一つだけ、守りたいものを守り通せばいい。ははっ...なんだかなぁ。あたしだって今までずっとそうしてきた筈だったのに』
声が聞こえる。
『なにをしょぼくれてんのさ、ほむら!一番先輩のあんたが弱腰でどうすんのよ』
いつか聞いた、彼女たちの声が。
『よかった、無事で...本当によかった...』
どこで聞いたんだろう。
『わたしね、ほむらちゃんと友達になれて嬉しかった。あなたが■■に襲われた時、間に合って...今でもそれが自慢なの』
思い出せない。思い出せ...
『私は、まどかに与えられるだけの幸せに満足なんかしない。絶対に』
ん...?
『わからなくてもいい...なにも伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、私にあなたを守らせて...!』
あれ...なんだろう、これ...?
『キュゥべぇに騙される前の...馬鹿なわたしを、たすけてあげてくれないかな...』
『約束するわ...絶対にあなたを救ってみせる!何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!』
なんだっけ、これ...
『鹿目さん、私も■■少女になったんだよ!これから一緒に頑張ろうね!』
『え、えっと...うぅ...///』
誰だったっけ...
『教えてごらん。君は、どのような祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?』
『私...私は...』
『私は、鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい!』
あれ...えっと...そうだ...これ...
私だ
まどか「ほ、ほむらちゃん、大丈夫!?」
ほむら「...ええ。問題ないわ、まどか」
そう、何も問題ない。
まどか「そっか、よかった。ほむらちゃん、急に頭を抱えて倒れそうに...あれ、ほむらちゃん、今わたしを名前で」
ほむら「ええ。あなたは、鹿目まどか。私の最高の友達」
私は覚えている。あの時刻んだ痛みも、苦しみも、罪も、罰も。
まどか「ほ、ほむらちゃん!?いきなりなにを...///あれ?」
ほむら「そして」
まどか「ほむらちゃん、眼鏡は?」
必要ない。
だって、これは夢だから。
ほむら「突き崩すべき、最後の壁」
袖から取り出したのは、一丁の拳銃。
あの時、まどかを殺した拳銃を空に掲げ
―――ドンッ
その引き金を引いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
――――――――――――――――
避難所
恭介「だ、大丈夫かい志筑さん!?」
仁美「あの...私は...」
恭介「急に倒れたから、びっくりしたよ。具合でも悪いのかい?」
仁美「......」
恭介「志筑さん?」
仁美「...行か...なきゃ...」
恭介「えっ?」
タタタ
恭介「志筑さん!?」
避難所 階段前
詢子「...間違いない」ハアッ ハアッ
詢子(なんで今まで忘れてたんだ...私は、ここで■■■を見送った。...送りだしちまったんだ)
詢子(ああくそっ!大切な奴だってのは分かってるのに、名前が出てこない!教えてくれ...あんたは誰なんだ!?)
知久「...詢子さんも思い出したのかい?」
詢子「あなた...」
知久「僕も、急に思い出してね。僕たちには、後一人足りなかったんだ。大事な子がね」
詢子「だったら...」
知久「うん、行こう。僕たちの本当の家族を確かめに!」
タツヤ「ねえちゃ!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
空、町、まどか...眼に映る全てのものが消えていく。
漆黒の空間に取り残されたのは、変身が解けた私と、魔法少女姿のまどか。
まどかは膝をつき、手で顔を覆い、涙を流していた。
かつて、私を殺そうとした巴さんを撃ち殺した時の彼女のように。
まどか『どうして...どうしてなの...?』
ほむら「......」
私は、彼女をそっと抱きしめた。
ほむら「ありがとうね、まどか。とてもいい夢を見させて貰ったわ」
かつては憧れていた夢。
絶望の無い、素晴らしい夢だった。
ほむら「でもね、私は忘れたくないの。私が今まで犠牲にしてきたものも、あなたを殺した痛みも、私の願いも...何もかも」
私の願いは、度重なる戦いの中で意味を変えて、真実だったものを嘘に変えてしまった。
まどかを契約させないこと。
―――違う。
まどかを守り続けること。
―――それも違う。
私はただ、あなたの隣に立っていたかった。
胸を張って、私があなたの友達だと言えるようになりたかっただけだった。
ほむら「私は、あなたと対等でありたかった。...それが、私の最初の願い」
いくら彼女を私から遠ざけようが、この手を汚そうが、彼女が私の手の届かないところへ行こうが、諦めきれていなかった願い。
だから、私は彼女に守られるだけのあの世界を受け入れたくなかった。
ほむら「皮肉な話よね。私自身の願いを叶えるために、あなたと戦う羽目になるなんて」
自分の道とぶつかったのなら、誰であろうと戦うだけ...
あの時、カズマが言った通りになったわね。
...もちろん、『円環の理』が無くなれば、世界にも影響が及ぶ。
それでも、世界の命運より、自分の願いを優先する。
それも、普通なら我慢できるようなほんのささやかな願いを。
ハタから見れば、愚か者でしかないだろう。欲深いクズだと思われるかもしれない。
それでも構わない。いくら罵られようとも関係ない。
ほむら「私は勝つわ。勝って、今度こそ私自身の願いを掴みとる!」
空間が崩れていく。あの世界へ戻れるのだろう。
私は、まどかから身体を離し、踵を反した。
だが、まどかは私を肩越しに抱き止めた。
ほむら「まどか...?」
まどか『バカだよ...ほむらちゃん、ほんとバカ...』
ほむら「ええ、そうね。バカじゃなかったら、こんなことになっていないわ」
まどか『...どうしても、行くんだね?』
ほむら「行くわ。例え、あなたが邪魔しようとね」
まどか『...わかった』
まどかが、互いの額同士をピタリとくっつける。
流れ込んでくる、彼女の力、記憶、想い...
ほむら「...力を貸してくれるの?」
まどか『......』ニコリ
彼女の笑顔に私が頷くと、今度は手のひら同士を合わせた。
手のひらの隙間から桃色の光が溢れ、私たちを包み込んだ。
光の中で、手を繋いだまま、渦を巻くようにぐるぐると回りだす。
もつれ合いながら、私たちは笑顔を交わし合う。
ポンッと何かが弾ける感覚と共に、腕、足、体の順に、私は魔法少女の衣装になっていった。
そして、最後に彼女は私の額に軽くキスをして
笑顔と共に、彼女は光の泡となって私のソウルジェムに溶けていった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
―――――――――――――――
ワルプルギス「アーハッハッハッ!」
ほむら「...帰ってきてそうそう、あなたが出迎えてくれるなんてね」
ほむらが左手をかざすと、現れたのは紫と桃色が混じった弓。
ほむら「わるいけど、私はあなたに興味なんてないの。だから、一瞬で終わらせてあげる」
紫色は、ほむらが使い方を知らなかった、この時間軸に存在していたほむらのもの。
桃色は、まどかの魔力が込められたもの。
ほむら「マドカ...私は、あなたに与えられるだけの幸せなんかいらない。あなたが立ちはだかるのなら、私は...」
ほむらは弓を引き絞り、そして...
ほむら「あなたという壁に反逆する!」
ワルプルギスの夜へと放った。
―――これは、反逆の狼煙。
あの時、カズマに言われたからではない。まどかに頼まれたからでもない。
他でもない、私自身が未来を描くための反逆だ。
――――――――――――――――
さやか「おーい、カズマ。そっちはどうなった?」
カズマ「...誰だ、てめえ。劉鳳みてえな恰好しやがって」
さやか「あ、そっか。絶影の姿でしか会ってなかったね。さやかだよ、さやか」
カズマ「ああ、お前か。杏子の奴ならぶん殴っといたぜ。目が覚めるくらいに思いっきりな」
さやか「...あんた、まさか殺してないでしょうね」
カズマ「知るかよ。けど、戻ってくるっつったから、戻ってくるんじゃねえか?」
QB「心配はいらないよ、さやか、カズマ」
カズマ「どういうことだ、耳毛野郎」
QB「二人のグリーフシードからは、ちゃんと魔法少女の魔力を感じとることができる。彼女たちが己の魔女に勝てば、少なくとも意識は戻せるんじゃないかな」
さやか「よかった...」フゥ
カズマ「そういや、ほむらの奴はどこ行ったんだ?さっき耳毛がリタイアしたとか言ってたけどよ」
さやか「いや、あたしもよく分かってないんだけどさ。キュゥべぇ、あれどういうことなの?」
QB「さやか、君は見ていただろう?ほむらと鹿目まどかがシャボン玉に包まれたところを」
さやか「うん。まどかがほむらを抱きしめたと思ったら、急に...あれ?」
カズマ「なんだよ」
さやか「キュゥべえ...なんであんたがまどかや魔女のことを知ってたの?あたしたち、あんたにはまだ教えてなかったよね?」
QB「教えてもらったからだよ、マドカとギャラン=ドゥにね」
さやか「...は?」
QB「ギャラン=ドゥから彼女のことを教えてもらい、彼女は全てのことを教えてくれたんだ」
さやか「それって...じゃあ...まどかとギャラン=ドゥは...」
QB「手を組んでいるといっても過言ではないね。他でもない、彼女自身の意思で」
さやか「うそ...」
カズマ「オイ。どうやら、くっちゃべってる暇はねえみてえだぞ」
ワルプルギス「ウフフ...アーハハハハハ!!」
カズマ「あの野郎、さっきから大人しいと思ってたら、急に動き始めやがった。さっさと叩き潰して...」
さやか「うそ...まどかが...敵...?」
カズマ「はぁ?」
さやか(あたしは、まどかを助けたかったんだ。なのに...そのまどかが、ギャラン=ドゥの味方で、この騒ぎを起こした張本人...?
それじゃあ、劉鳳から預かったこの力も、あたしが闘う意味も...)
カズマ「...チッ」
ガンッ
さやか「いたっ!なにすんのさ!?」
カズマ「うだうだ言ってんなら、どっか行きな。目障りだ」
さやか「...そんなこと言っても、まどかが...」
カズマ「まどかがアルター野郎の味方ってのが気にいらねえなら、ぶん殴ってでも連れ戻すなり、徹底的に叩き潰すなりすればいいだろうが」
さやか「あんたねえ...まどかがどれほどのもの背負ってきたか知らないくせに、好き勝手言わないでよ!」
カズマ「知らねえなあ。俺はアルター野郎をボコる。そんでもってまどかが邪魔するなら容赦はしねえ。ただそれだけだ!」
さやか「だーかーら、あんたとあたしじゃ戦う理由が違うんだって!元々、あたしはまどかを助けたくて蘇ったの!」
カズマ「だったら、俺と戦うか!?あぁ!?」
さやか「そういう問題じゃないでしょ!あたしが言いたいのは...」
カッ
さやか「な、なに!?」
QB(あの光は...なるほどね。それが君が選んだ答えというわけか)
ワルプルギス「アハハ...ハ...」シュウウウ
さやか「ワルプルギスが消えていく...」
カズマ「なんだったんだ、さっきのは...」
QB「暁美ほむらさ。まどかが作った空間から抜け出したんだ」
さやか「えっ...それじゃあ」
QB「もちろん、彼女はマドカがギャラン=ドゥと組んでいることは知っている筈さ。ワルプルギスを消し去ったということは、それでもなお戦うことを選んだのだろう」
さやか「ほむら...あいつが...」
カズマ「どうすんだ?俺はアルター野郎をぶん殴りに行くが...邪魔すんなら、受けてたつぜ」
さやか「あたしは...」
さやか「...いや、あたしもあいつと戦うよ。マミさんとの約束もあるし、あのほむらが戦うって決めたんだ。だったら、あたしだけが理由どうこう言ってる場合じゃないでしょ」
カズマ「ハッ、そうかい」
カズマは空を睨みつける。
その視線の先は、ギャラン=ドゥが逃げていった方角。
カズマ「ケリつけようぜ。この長い喧嘩によぉ」
―――――――――――
美滝原 某所
ギャラン=ドゥ「をいをいをい...こいつはちっとマズイんじゃねえのかァ?」
ギャラン=ドゥ(あの二人は戻されそうだし、ワルプルギスも倒されちまったし...俺はカズマのあの拳のせいで、完調とは言えねえ)
ギャラン=ドゥ(それに、カズマは進化したハイブリットを解放し、美樹さやかも絶影の力を手に入れ、暁美ほむらもなんかパワーアップしてやがる...最低でもこの三人、最悪五人まとめて相手しなくちゃならねえってか...)
『心配いらないよ、ギャラン=ドゥ。ちょっと予想外だったけど、何も問題はないよ。ワルプルギスは偽物の代用品だし、ほむらちゃんが取り込んだあの子は、私のほんの一部でしかない。...そんなちっぽけな力に私たちは負けないよ』
ギャラン=ドゥ「!...待ちくたびれたぜ、マドカ」
マドカ『ウェヒヒ。ごめんね、我儘言っちゃって』
ギャラン=ドゥ「いや、構わねえさ。俺は野望のためなら助力は惜しまないからなァ」
マドカ『なにはともあれ、お疲れ様。ちょっと休んでて』
ギャラン=ドゥ「おう、そうさせてもらうぜェ...」
マドカが手をかざすと、ギャラン=ドゥの身体が粒子状に分解され、彼女の手のひらに吸い込まれていった。
マドカ「...決着を着けるよ、全ての因縁に」
――――――――――――
避難所
自衛隊
「空が...晴れた...」
「なにがあったんだ?前触れもなく、いきなり消えたが...」
銀髪の男「魔法少女の仕業ですよ」
「だ、だれだ!?」
銀髪の男「なに、あなた方に名乗る程の者ではありません」
「怪しい奴め...動くな!」
隊長「待て!」
「隊長...!?」
隊長「...何を知っている?」
銀髪の男「いえ、私の主は彼女たちの持つ摩訶不思議な力に興味がありましてね。大体のことは知っていると思いますよ。例えば、あなた達政府が裏で...」
隊長「!...撃て」
「え、しかし...」
隊長「撃て!」
銀髪の男「...口封じでもするつもりですか?無駄だと思いますよ。なぜなら...」
ポコリポコリとシャボン玉が地面から湧き出てくる。
シャボン玉は次々にくっついていき、たちまち巨大なシャボン玉となり、そして―――
銀髪の男「あなた達はここで眠るのですから」
避難所にいる人間は、全てシャボン玉にのみ込まれた。
『...ブレード・ダンス』
シュピン
パシャン
銀髪の男「...どうやら、あのシャボンは、人の心の隙間に付けこむ能力のようですが...隙間のない者には効果が薄いようですね。だから、あなたは彼らに仲間同士で戦わせ、偽の舞台装置まで作って隙間を作ろうとした。まあ、それでも及ばなかったようですがね。
そしてこの私も、信じるのはあなたではなく、あの御方だけ」
銀髪の男「この町を最後まで残したのは、単に『逃げ』か、それとも徹底的に叩くという『決意』か...どちらなのでしょうか」
銀髪の男「拝見させて貰いますよ。あなたのその祈りで、どこまで変えることができるのか」
―――――――――――――
鹿目宅
詢子「......」
詢子(間違いない。この部屋はあの子のものだ。誰も使ってない空き部屋なのに、物置としても使わなかった...今考えりゃおかしな話じゃないか)
詢子「なんで、今まで気付かなかったんだろうな...」
知久「...もしかしたら、あの子がそれを望んだのかもしれないね。自分がいないことで苦しめたくなくて...」
詢子「あの馬鹿...忘れた方がいいわけないだろうが...!」
知久「でも、こうして思い出せたということは、あの子が近くにいるのかもしれない。...探しに行くかい?」
詢子「当たり前だ。探し出して、嫌ってほど抱きしめてやるさ」
タツヤ「パパ、ママ!シャボン玉!」
知久「シャボン玉?」
詢子「なんだ...こっちに向かってくる...!?」
シュン
パシャン
知久「シャボン玉が消えた...?」
詢子「今、光みたいなのが通っていった気が...」
ほむら「大丈夫ですか?」
詢子「え、ええ。あれ...あなた、この前河原で会った...」
タツヤ「まろか!ねーちゃ!まろか!」
詢子「タツヤ?またまどかって...ッ!」
詢子(あの子のリボン...まどか...)
『リボン...どっちかなぁ?』
『...ん』
『ええ~?派手すぎない?』
『それくらいでいいのさ。女は外見で舐められたら終わりだよ』
詢子(―――まどか!)
詢子「ちょ、ちょっとそのリボン見せてくれる!?」
ほむら「...ええ。どうぞ」
詢子(...そうだ、このリボンは...)
詢子「あなた、あたしの娘の...まどかを知らない!?」
ほむら「!...思い...出したんですか?」
詢子「...情けないことに、さっき急にね。それより、どこにまどかがいるか知らない!?」
ほむら「...はい。まどかは、たぶんこの辺りと...」
ほむらは、トンと左手のソウルジェムを指した。
ほむら「ここにも、一人」
詢子「どういうことだい...?」
ほむら「詳しい事情は話せませんが...今は、私たちを信じて待っていてください。お願いします」
詢子「信じろって言われても...」
タツヤ「ねーちゃ、ゆびきり!」
ほむら「うん。必ず、まどかを連れて帰るね」ニコッ
タツヤ「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます!」
ほむら「『...指切った』」
詢子「...!」
髪の色は違う。声も、身長も全く違う。
リボン意外の共通点がない筈だが、それでも詢子にはまどかと目の前の少女がどこか重なって見えた。
詢子「...あなたは、いったい...」
ほむらは、薄く微笑んだ
ほむら「まどかの友達、ですよ」
――――――――――――
QB「いいのかい?マミ達の復活を待たなくて」
カズマ「いつ戻ってくるかわからねえ奴らを待ってられるか」
さやかはほむらとテレパシーを交わした後、杏子とマミの遺体がある廃屋へ戻っていった。
カズマはカズマで待つことは苦手なタイプであるので、単身ギャラン=ドゥが跳んでいった方面へ歩みを進めていた。
勿論、カズマの性格によるためだけの行動ではない。
彼は彼なりの、ロストグラウンドで培ってきた本能と予感のもとに動いていた。
もし、ここで動かなければおそらく...
ほむら「...カズマ」
カズマ「よう。随分とスッキリしたツラしやがって。昼寝でもしてきたか?」
ほむら「そういうあなたこそ、大分お疲れ気味のようね。手を貸しましょうか?」
カズマ「ぬかせ、コノ」
そう言って、二人は歩き出す。
片方は、しっかりとした足取りで。もう片方は、明らかにフラついた足取りで。
ほむら「...カズマ。退くなら、今の内よ」
カズマ「あぁ?」
ほむら「元々、あなたはこの世界に関係のない人間...あなたの守るべきものはここには無いでしょう?」
カズマ「おいおい、俺のケンカを横取りするつもりか?」
ほむら「彼女との決着は私がつける。これだけは譲れないわ」
カズマ「ワリーが、俺も譲れねえわけよ。だから退かねえ。文句あるか?」
ほむら「...好きにすればいい。死んでも、後悔しないことね」
―――――――――――――――
タタタ
仁美「ハァ...ハァ...」
仁美(なんで彼女を忘れていたのだろう。友達...だった筈なのに...)
恭介「志筑さん、どこまで行くんだい!?」ゼェゼェ
仁美「学校...学校に行けば...」
仁美(行って...どうなるの?今まで、彼女のことを思い出せなかった私に何ができるの?)
仁美(―――ああ、そうだ。さやかさんも彼女も、一度だって私を頼ってはくれなかった。何も言わず、どこかへ消えてしまった)
仁美(さやかさんも■■■さんも...友達だと思ってたのは...私だけ...?)
恭介「危ない、志筑さん!」
仁美「え...?」
ドン
仁美「きゃっ!」
仁美を突き飛ばした恭介は、迫りくるシャボン玉の身代わりとなってのみこまれてしまった。
仁美「上条くん!」
恭介「がぼっ!」
恭介(く、苦し...くない...?むしろ、気持ちいい...)
脳裏に流れる、彼のバイオリンの音色。
傍には、笑顔で拍手を送ってくれる、大切な幼馴染。
もう会えない筈だった幼馴染。
恭介「さやか...!」
名前を呼んで、手を伸ばす。
彼女は、手を伸ばし返すが、しかし握らない。
駄目だよ、というかのように首を横にふる。
恭介「さやか...なんで...!」
彼女は、無言のまま、恭介の背後を指差す。
恭介が振り返るとそこには―――
シュピン
仁美「さやか...さん?」
さやか「久しぶり、仁美。恭介」
恭介は、ただ茫然としていた。
当然だ。あの居心地のいい空間から連れ出してくれたのは、紛れもない、本物のさやかだったからだ。
さやか「とりあえず、さっきほむらからテレパシーがあったから、詢子さんたちと合流して...」
こんな時に、気の利いた言葉なんてでてこない。
恭介「さやかあああぁぁぁ!」
仁美「さやかさああぁぁん!」
さやか「のわっ!?」
二人は、感情のままに、さやかに抱き着いた。
仁美「さやかさんの馬鹿...なんであの時、私に何も言ってくれなかったのですか!?」エグッ
さやか「仁美...」
恭介「なんで...なんで、勝手にいっちゃったんだよ!」グスッ
恭介「皆が...僕がどれだけ...」
さやか「恭介...」
************************
回想
ほむら『さやか、あなたには詢子さんたちを頼んでいいかしら』
さやか『え、なんでさ』
ほむら『あの人たちを守れる人が、あなたしかいないからよ。マドカとは私がケリを着ける』
さやか『そんな!あたしもあいつと...』
ほむら『杏子とマミの身体も維持しなくてはいけないでしょう。カズマはそんな能力は無いし...あなたが一番の適任なのよ』
さやか『......』
ほむら『待つことも立派な戦いよ。...お願い、さやか』
***********************
さやか(はは...なんだかなぁ...)
泣きながらすがりついてくる二人を、さやかは優しく抱きしめる
さやか「ごめんね、二人とも。もう大丈夫だから」
今すぐにも、あいつのところへ駆けつけたいのに
こんなこと言われたら、ますます行けなくなっちゃうじゃん
さやか「もう、あたしはどこにも行かないから」
でも...本当に、これでいいの...?
―――――――――――――――
カズマ「ここは...」
彼らの目の前にあるのは、ヒビ割れたような空間の裂け目。
カズマはこの場所を覚えている。
ここで、結界の中へ引きずり込まれ、ギャラン=ドゥに敗北したのだ。
ほむら「...誘ってるわね」
カズマ「みてえだな」
この先に、互いの目的がいることを確信した二人は、躊躇うことなく足を踏み入れた。
あの時と同じ、お菓子や薬のビン詰めだらけの空間。
だが、歩みを進めるまでもなく、まるで彼らが吸い込まれていくかのように、その空間は移り変わっていく。
薔薇まみれの空間、次は幾多のモニターにカズマの今までが映し出され、はたまた眼前には白と黒だけの世界が広がる。
そういった空間へ、順番に一つずつ変わっては通り過ぎていき、それは扉が開くと共に速度を増していった。
しばらくして、ピタリと止まったかと思うと、目の前にそびえ立つのは巨大な扉。
カズマ「ここまで連れてきといて、最後は自分で開けろってか?舐め腐った奴らだぜ」
カズマは、拳を握りしめ、シェルブリットを発動した。
突き破った先に広がるのは、視界一面のお花畑。
木々や湖にも溢れ、どこか心地よさを感じさせる。
天国なんてものがあるとしたら、それに一番近い光景であろう。
「...今、あなたたちが見てきたものは、かつての魔法少女たちの成れの果て。私は、彼女たちを絶望で終わらせたくなかった」
二人の背後に現れたのは、桃色のふりふりとした魔法少女の衣装に身を包んだ、ツインテールの小柄な少女。
カズマ「!」
ほむら「マドカ!」
マドカ「でもね、知れば知るほど、救いようのないことがあるってことを思い知らされた。...それは、あなたや亡くなったお兄さんはよくわかっていることでしょう?」
カズマ「......」
蒼乃大気【お前もアルター能力者だということでいわれもない迫害を受けてきた筈だ。その悪夢を、二度と繰り返してはならない】
アルター使いとして生まれたことを後悔したことはない。
だが、アルター使いであるが故に忌避され、利用されてきた者たちは散々見てきた。
カズマ自身、同居人のかなみに、ここ最近まで正体を隠していた。
もちろん、君島や水守のようなアルター使いに偏見を持たない人間もいないことはない。
だが、数が違い過ぎるのだ。数が多ければ、それだけで正しいものはそちらになってしまう。それくらいは、カズマでもわかっている。
つまりは、マドカが言いたいことは、こちらでいうそういうことなのだろうとカズマは解釈した。
マドカ「だから、私は絶望を断ち切るために全てを救済するの。そのためにも、早く身を委ねてくれないかな...?」
だが、だからこそカズマは反逆する。彼女には、気に入らない何かが秘められているから。
カズマ「...おい、ガキ。わかってんのか?俺は反逆者だぜ?」
カズマの全身をアルター粒子が包み込み、ハイブリットを発動させる。
カズマ「ノーとしか言わない男さ!!」
マドカ「...ほむらちゃんは?」
ほむら「私も、カズマと同意見よ」
マドカ「そう... 残 念 だよ」
瞬間、彼らに底冷えするような暴風が襲いかかる
カズマ「!」
ほむら(今のは...!?)
殺気ではない。マドカにとっては、ほんの少しイラついただけのこと。
たったそれだけのことで、彼らは、マドカの底知れぬ力を感じ取ることが出来た。
マドカ「質問を変えるよ...」
マドカ「私の能力が、空間だけでなく時空間までも操れるとしたらどうする?どんな攻撃も効かないとしたらどうする?
どこに逃げても追いかけてくるとしたらどうする?そんな私を倒さなければギャラン=ドゥと戦うことすらできないとしたらどうする?
どうする?どうする?どうする?あなたたちはどうする!?」
カズマ「決まってんだろ...」
ほむら「戦うだけよ!」
カズマが拳を握りしめ、ほむらは弓を引き絞る。
カズマ「壊滅のハイブリット!!」
ほむら「スプレットアロー!!」
マドカ「ゆるゆるだっ!!!」
衝撃波のようなものをぶつけられ、二人は吹き飛んだ。
カズマ「ぐああっ!」
ほむら「がはぁ!」
マドカ「...幾多の因果率が収束した私に、その程度の攻撃は通用しないよ」
カズマ「ハイブリットが効かねえ!?」
ほむら「これがマドカの実力...」
カズマ「めんどくせえ奴だぜ」
ほむら「ええ。全く手強いわね」
「「だが!!」」
カズマ「手強くても」
ほむら「勝つ!」
マドカ「だから無理だって!!」
―――――――――――――――
詢子たちとも合流し、杏子たちの身体が置いてある廃屋へ避難したさやか達。
さやかは、時折現れるシャボン玉の処理と、杏子たちの身体の維持をしていた。
さやか「......」
ソウルジェムが激しく反応している。
ほむらとカズマが闘っているのだ。
今すぐにでも、駆けつけたい。
でも、行けない。
ここで自分が離れてしまえば、誰が彼女たちを守るのか...
仁美「...行きたいのですか?」
さやか「仁美...」
仁美「そうやって、我慢し続けるのは、あなたの悪い癖ですわ」
さやか「......」
仁美「さやかさん。今度こそ、あなたの本当の気持ちに向き合ってください」
さやか「...勝手言わないでよ」
さやか「あんたたち置いて、行けるわけないでしょ!もし、あたしが行ったら、誰があんたたちを...!」
仁美「あまり、私たちを舐めないでくれますか?自分の身くらい、自分で守れます」
詢子「そうそう、こっちには大人もいるんだからさ、子供は好きにやればいいんだって!」バンッ
さやか「あだっ!じゅ、詢子さん...仁美...」
恭介「さやか...正直、僕はさやかにはもうどこにも行って欲しくない」
さやか「......」
恭介「でも、それでさやかが一生後悔するくらいなら、そんなのはごめんだ。だから、さやかがしたいようにすればいい」
さやか「恭介...」
仁美「あの時、あなたは何も言わずに立ち去ってしまった...だから、今度は約束してください」
仁美「誰も欠けずに、絶対帰ってくると」
さやか「......」
―――――――――――――――――
仁美(結局、さやかさんやほむらさんたちに頼ることしか出来ない...)
仁美(いつも、そうでした。あの人たちは、私の手の届かないところの人間。だから、私が頼られることなんてない)
仁美(こうやって、いつものように、何も知らないままに終わって、失って、後悔ばかりして...)
知久「...行ったのかい?」
詢子「うん...ははっ、情けない親だよな。娘が大変なことになってるってのに、あいつの友達に頼ることしかできないなんてさ」
仁美「...そんなことありませんわ。彼女は、とても素敵なお母様だといつも仰っていましたわ」
詢子「...あんたも、強い子だよ。だからさ」
詢子「あんたも、我慢しなくていいんだよ」
仁美「......」
ギュッ
詢子「大丈夫。あんたはれっきとした、まどかやさやかちゃんたちの友達だよ」
仁美「...うぅ...えぐっ...!」ポロポロ
さやか(ごめんね、仁美、皆。必ず、約束は守るから。だから...どうかあたしたちを信じていて)
「なにしてんだボンクラ。早く行かねえと、パーティに送れちまうだろ」
さやか「......!」
「準備はできたかしら、美樹さん」
さやか「...うん!」
――――――――――――――
マドカ「これで...理解できたかな?」
マドカは、余裕の笑みを浮かべている。
ほむら(つ...強すぎる...!)
ワルプルギスの夜やギャラン=ドゥがかわいく思えるほどの圧倒的なパワー。
カズマ(ヤベェ...)
かつて、カズマに『反逆』を教えた男の姿がよぎる。
カズマ(ヤベェよ兄貴...)
『弱い自分に反逆する』
その教えが霞むほどに、彼は弱さに支配されつつあった。
カズマ(弱い考えしか思い浮かばねえ―――!!)
―――『反逆者』様方は、こんなところで終わるのか?
「「「んなわけねーよな!!」」」
ほむら「...!」
カズマ「お前ら...!」
さやか「お待たせ、二人とも」
杏子「情けないツラしてんじゃねーぞ、バカ共が」
カズマ「ハッ...誰が情けないツラしてるって!?」
マミ「はいはい。二人とも、ケンカは後でね」
カズ杏「「わかってるって!」」
マドカ「...それで?たった三人増えただけで私を止めれると思うの?」
杏子「おい、マドカ。あんたがどれだけ強い魔力を持ってようがな、こっちには経験値ってやつがあるんだ。ベテラン魔法少女を舐めんじゃねえぞ!」
マドカ「ふ~ん...なら、見せてもらおうかなッ」
シュンッ
さやか「消えた!」
マミ「慌てては駄目よ」
杏子「カズマ!マドカの出現するポイントに拳を叩き込め!!」
ほむら「予測なんてできるわけ...」
杏子「できる!」
カズマ「ああ、できるな」
ほむら「どうやって...!?」
杏子「あたしの魔法と」
カズマ「俺の拳で!!」
ピクン
マミ「佐倉さん、右方向30m!」
杏子「任せろ!」
シュン
マドカ「っ!そ...それは!?」
マドカの出現場所ピンポイントに放たれた、視界を覆い尽くす程の巨大な拳。
その数、サイズ...まさに逃げ場なし!
カズ杏「「幻惑のハイブリットォォォォ!!!」」
拳を受けたマドカが、後方に吹き飛ぶ。
それを追撃する影が一つ。
マドカがそれに気付いた時にはもう遅い。なにもかもがスロウリィ。
その影がマドカの横を通り過ぎた時には既に、マドカの右腕にリボンが巻きついていた。
さやか「速さが足りないよ、マドカ!」
マドカ「......!」
マミ「『どうして私の出現ポイントがわかったの!?』...って顔してるわね。さっき佐倉さんも言ってたでしょ?あなたとは、圧倒的な経験の差があるのよ」
マミは、目を凝らしても見えるかどうか程度の細さのリボンを張り巡らしていた。
そして、『ワープ』を使う際に生じる空気の歪みを振動として察知したのだ。
さやか「ほむら、これで準備は出来たよ!」
マミのリボンが巻き付いているため、ワープを使うことができない。
そして、そんなチャンスを見逃すほど、彼女はお人好しではない。
ほむらが創りだしたのは、桃色と紫色の混じった巨大な弓。
ありったけの魔力を込め、ほむらは弓を引き絞る。
ほむら「これで...決着を着けてやる!」
ほむらは、照準をマドカに合わせ、弓矢を放った。
杏子「マジかよ...!」
乾いた声が響き渡る。
カズマの拳と、ほむらの弓矢の衝撃により立ち上る砂煙。
「...やっぱりね」
その中から、姿を現したのは、埃一つ付いていない、マドカそのものだった。
マドカ「やっぱり、この町を最後にしてよかった。ここが、一番手強いところだって思ってたから...」
カズマのハイブリットは効かない。
ほむらの弓矢も届かない。
杏子の幻惑も、さやかの正義武装も、マミのリボンも、もう通用しないだろう。
それでも、彼らの目から、反逆の炎は消えていない。
マドカ「だからこそ、全力を注げる。後を気にしないでいける」
マドカの身体から、神々しい光が滲み出る。
マドカ「だからこそ、真の姿であなたたちを導くことができる!」
マミ「真の姿...!?」
光は、よりいっそう輝きを増して、彼女を包み込んだ。
マドカ「そう...これが本当の私!!マドカ★まぎか、設定年齢14歳、天秤座のA型!!」
光の中から、5人の前に姿を現した彼女。
ほむらよりも長い長髪に、白のリボンと、胸元が少し開いた純白のシルクドレスに身を包んでいる。
その神々しいオーラを纏った彼女を見た瞬間、5人は叫んだ。叫ばなければいけない気がした。
「びっ....美形だっ!!!」
ほむら「これが、マドカの真の姿...!」
杏子「今までのは、三味線弾いてやがったのか!?」
カズマ「チッ、コケにしすぎなんだよ!」
さやか「全くだね!」
マミ「ま、待ちなさい!」
さやかがマドカの右方から、カズマは真正面から殴りかかる。
―――が、それが彼女に届くことはない。
二人の攻撃は、いともあっさりと止められていたからだ。
さやか「あたしたちの攻撃を...小指で...!?」
マドカ「さあ、それでは救済と攻撃を開始するよ。自覚と覚悟はいいかな!?」
――――――――――――――――――――
ロストグラウンド 某所
君島「イタタタ...結構、副作用きついな...」
箕条「言ったでしょう?命がけの選択だって。むしろ、これだけで済んだのが幸いですよ」
かなみ「シェリスさん、ありがとうございました」
シェリス「いいのいいの。正直、劉鳳以外の人と合体するのは気が引けたけど、あなたみたいな可愛い子だったからよかったわ」
君島「え、じゃあもし俺が開花してたら...」
シェリス「吐いてたわね。三日間くらいずっと」
君島「そんなに嫌なの!?」
水守「それにしても、魔法少女って...メルヘンチックというか、なんというか...」
劉鳳「実際は、そんなものではなかったがな...むしろ、俺たちアルター使いに似た何かを感じた」
水守「それって、どういう...」
―――キィン
水守「!私のペンダントが...!」
劉鳳「これは...!?」
――――――――――――――――――――
QB「鹿目まどか、暁美ほむら、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子、そしてカズマ...」
QB「彼らは、それぞれのエゴを持ってして、契約とはまた別の奇跡を起こしてきた。でも、これは本当に偶然の産物なのか、それとも...」
ザッ
「あなたがインキュベーターですね?」
QB「...僕が見えるのかい?」
「ええ。私の名は異納泰介。アルター使いです」
QB「アルター使い...君も、カズマのようにタイムマシンでここまで来たのかい?」
異納「タイムマシン?...どうやら、彼と私たちでは事情が違うようですね」
QB「...?それで、そのアルター使いが僕に何の用だい?」
異納「私の主が、ここで待つようにと仰っしゃられたので。そのついで、ですよ」
QB「主...」
ズズズ
「お待たせしました、異納くん」
異納「お帰りなさいませ、無常様」
無常「すみませんねえ、わざわざここまで迎えに来させて」
異納「いえ、私はあなたに仕える身...当然のことです」
QB「君が、異納泰介の主かい?」
無常「はい。私の名は無常矜持。精製を受けた、アルター使いです」
QB「精製...?」
無常「平たく言えば、改造手術のようなものです。ですが、それは些細なこと。私は、あなたに用事がありまして」
QB「僕にかい?」
無常「なに、ほんの下らないことです。私が一度彼女の能力に取り込まれ、見てきたものを参考にした私の推測を、あなたに吟味していただきたくて」
QB「取り込まれた...つまり、君はわざと彼女に身を委ね、今ここに出てきたというわけかい?」
無常「そう考えてもらって構いません」
QB「それは興味深いね。ぜひ話してくれないかな」
無常「あの腕を変形させるアルター使い...名はなんと言いましたっけ」
QB「カズマだね」
無常「そう、そのカズマは、アルター能力を発動させるために必要な力を、魔法少女や魔女の魔力で代用した。そして、美樹さやかや鹿目まどかという少女もまた、進化の言葉により、アルターを取り込んだ新たな進化を遂げた」
QB「その点は僕も想定外だったよ。まさか、あんなことができるなんてね」
無常「...しかし、妙だと思いませんか?本来なら、関わり合う筈のなかった能力同士。それが、こうも都合良く影響しあうことに」
QB「...君は、何が言いたいんだい?」
無常「共通点が多すぎるのですよ。アルター使いと魔法少女にはね」
QB「共通点...?」
無常「アルター能力とは、生来からその形が決まっているわけではありません。環境、生き方、なにかのキッカケ等が影響することで形作られるのです」
無常「例えば、私の能力は、『アブソープション』。他者のアルターを吸収し、変質させることができます。私は育ち柄、飢えや反骨心が強くてね。常々、全てを手に入れたいと思っていたのです。そして、開花したのがこの能力なのですよ」
QB「なるほど。願望が、能力に影響するわけだね。その能力で、君はマドカの能力から逃れたていたわけか」
無常「はい。ですから、仮に私が速さを求め続けていれば、この能力にはならず、それに見合った能力になるのです。...これは、あなたが契約により生みだす魔法少女の特性に酷似していませんか?」
QB「...確かに、魔法少女の能力はその願望に見合ったもので、創りだす武器は、性格に左右されやすい」
無常「まあ、それだけなら他にもありそうなものですが...アルター使いは物質と己の生命力を、魔法少女は魔女のグリーフシードでの浄化...つまり、魔女の魔力を対価とすることにより己の能力を発動させる。他を犠牲にしなければ能力を使えないのですよ」
無常「己のエゴが原動力であり、己のエゴを否定すればするほど能力が弱体化するなど、他にも挙げればキリがないのですが...しかし、極め付けはその終着点にある」
QB「......」
無常「ギャラン=ドゥというアルターは、元来から意思を持っていたのではなく、マーティン・ジグマールという男がアルター能力を極めた結果だと聞いています。
つまり、私たちアルター使いは、アルターに作られた卵といえるでしょう。そして、魔法少女もまた、魔女になるためにあなたがたが創りだした卵...」
QB「それは、つまり...」
無常「ええ。私はこう思うのです。アルターと魔法少女...その源流は同じものではないのだろうかとね」
――――――――――――――――――――
マドカ「...まず、私のシャボンの能力で、世界中全ての人の魂と肉体を一時的に分離する」
彼女の足元には、幾多のへし折れ、砕けた剣の残骸が転がっている。
マドカ「次に、その肉体を半アルター化、及び魂を半魔女化させ、表面的な自我を失くす。普通の魔女化と違うのは、私たちが、それぞれに欲しいものを与えるし、魔法少女でない人もできるってところだね。
しかも、そこから発生する感情エネルギーは宇宙のエネルギーに変えられる」
彼女の傍には、粉々に砕かれた槍と引きちぎられたリボンの欠片が散らばっている。
マドカ「そして、全てが完了した後に、ギャラン=ドゥに意識の統一をさせる。そうすれば、誰もが悲しむことも争うこともない、幸福な世界が完成する。
それが、私たちの計画『ワールド・オルタレイション』だよ」
彼女の後ろには、血塗られたアルターの破片が、今にも消えそうなほど、空気に溶け始めている。
もはや、動きを見せる者は、彼女以外誰一人としていない。
マドカ「...そんな、私とギャラン=ドゥを、それでも邪魔するのかな?」
息も絶え絶えに、脚も震え、両腕は力なくダラリと垂れ下がっている。
もう、杏子とマミが魔獣から手に入れたグリーフシードも残っていない。
それでも、5人の中で最弱の彼女、暁美ほむらだけは、倒れることなくその両目をギラつかせていた。
ほむらが震える手で、弓を引く。
ほむらのなけなしの魔力が、限界まで込められた矢だ。
マドカは避けようとも、受け止めようともせず、ただその場に立っている。
ほむらが弓を放つ。
マドカは微動だにしない。
マドカの右肩に弓が刺さる。
しかし、血もアルター粒子も、何も出はしない。
ただ、魔力で出来た矢がマドカに刺さり、何も変えることなく消え去ったという結果だけが残った。
マドカ「...もう、いいでしょう?」
マドカが、ゆっくりとほむらに歩みよる。
マドカ「もう、残ってるのはほむらちゃんだけなんだよ」
幾つものシャボン玉が、倒れている4人を取り囲む。
マドカ「大丈夫。さやかちゃん達は勿論、あなた達をたぶらかしたカズマさんも見捨てはしないから。皆、幸せになれるから」
歩みよるマドカに、ほむらは何もしようとしない。
目と鼻の先ほどまで接近して、マドカは歩みを止めた。
マドカ「皆で一緒にいこう、ほむらちゃん」
マドカは、ほむらを優しく抱きしめ
ほむらは、わらった
マドカが歩み寄ってくる。
―――鹿目まどか
魔力が尽きかけ、今にも倒れそうになるほむらの頭の中に、言葉がよぎる。
―――巴マミ 佐倉杏子 美樹さやか 暁美ほむら
それは、今までに聞き、触れてきた言葉の数々。
―――志筑仁美 鹿目タツヤ 劉鳳 上条恭介 鹿目詢子 絶影 ソウルジェム 鹿目知久 ティロ・フィナーレ
何の意味もなく、順番も何もかもが滅茶苦茶な言葉の羅列。
―――カズマ シェルブリット ギャラン=ドゥ マドカ 魂 時空間ワープ
その中から、必要なものだけを選び、掴みとる。
―――魔法少女 アルター 魔女化 ギャラン=ドゥ 進化 マドカ
掴みとった言葉を、彼女なりに紡いでいく。
マドカの足音が止む。
―――『魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから』
一つの答えを見つけだした時
ほむらは、わらった。
マドカ「...?」
ほむらを抱きしめることにより、マドカは直接シャボン玉に取り込もうとした。
しかし、笑みを浮かべるほむらに違和感を覚える。
マドカ(心が...)
ほむらに、マドカに対する抵抗はない。
マドカ(折れていない...!?)
だが、わからない。
こんなに近くにいるのに、ほむらの何もかもがわからない。
「おりゃああ!!」
掛け声と共に、マドカの首筋に、こめかみに、微かな衝撃が走る。
もちろん、マドカには、何のダメージもない。
しかし、マドカの注意がそれた隙を突き、一つの影が、ほむらを抱きかかえ、マドカから距離を取った。
マミ「そう何度も夢みがちじゃいられないのよね」
マドカのこめかみを撃ったのはマミ。
杏子「言ったよな、ベテラン魔法少女舐めんなって」
首筋にケリを入れたのは杏子。
さやか「またまた速さが足りなかったね、マドカ!」
ほむらを連れ去った影は、さやか。
魔力も体力も尽きかけた、4人の瀕死の魔法少女。
彼女の、彼女たちの叛逆の炎はまだ潰えてはいなかった。
ほむら「...カズマ、あなた、あと何発シェルブリットを...カズマ?」
ただ、一人の反逆者を除いては。
マドカ「どうやら、カズマさんは限界みたいだね」
呼吸はしている。流れている血も、致死量ではない。
だが、カズマは目を覚まさない。
地に這いつくばったまま、立ち上がらない。
杏子「...おい、なにしてんだ、カズマ」
ロストグラウンドでは、マーティン・ジグマールや蒼乃大気といった強者と戦い、こちらに来てからは、杏子、魔獣、ギャラン=ドゥ、特殊魔女化した杏子、そしてマドカと戦い...
休む間もない度重なる連戦や、魔力を取り込む荒業により、カズマの身体は、精神は、もう限界を超越しすぎていた。
シャボン玉が、カズマの身体を包み込む。
杏子「ふざけんじゃねえぞ...!」
カズマは抵抗をしない。することができない。
杏子「あたしにあんだけ言った奴が、こんなところで終わるつもりか!?」
マミが、さやかが、ほむらが呼びかけるが、しかし、カズマはピクリとも反応しない。
杏子「この...馬鹿ヤロウがぁぁぁ!!」
杏子の叫び声も、伸ばす手も空しく、カズマはシャボン玉と共に消え去った。
**************************
―――カズマ...
誰だ..?
かなみ...じゃねえな。君島か...?
いや、違うな...けど、どっかで聞いたな...
―――カズマ...
意識がボヤけちまう。
全身に力が入らねえし、吐き気もする。
めちゃくちゃダルくて、めちゃくちゃ眠てえ。
...駄目だ。
もう、疲れちまった。
―――カズマ!
一喝されて、意識がハッキリとしてきた。
俺の目の前にいるのは、その長い脚を振り上げて、特徴的なサングラスを掛け、笑みを浮かべる伊達男...
カズマ「ストレイト・クーガー!!」
クーガー『どうした、カズマ。女の子たちに負けていて、それで満足か?』
...あぁ?
クーガー『俺はよく頑張った。限界も何度も超えた。だから、立てないのはしょうがねえ...お前はそれでいいのか?』
ふざけんな、誰がもう立てないって...!?
俺の反逆は、こんなもんじゃねえんだよ!
クーガー『だったら、今のお前の弱い考え方はなんだ?答えろ!』
クーガー『答えろカズマ!!』
へっ...それは...
奴をボコれず、見下されたままくたばってることだ!!
**************************
―――パァン
小気味いい破裂音と共に、人影が空間から落ちてくる。
その人影は、言うまでもなくカズマ。
カズマ「―――ッ!?」
吐血。
ただでさえ疲弊しきった身体と精神で、全力で抜け出したのだ。
その負担はただではない。
その血は、止まる気配は一向にない。
それを見た彼女は、青ざめた。
マドカ「―――!」
敵である筈の、マドカが青ざめていた。
ほむら(...!?)
マドカの反応にいち早く気付いたのは、ほむら。
敵である筈のカズマの様子を見て、明らかに動揺している。
演技だろうか?いや、それにしては唐突すぎるし、何より理由がない。
彼女と対峙してから、訳の分からないことを言ったり、別のキャラのような言動は度々あったが、それでもこの反応だけは理解できない。
いくら、私たちが5人いるとはいえ、どれも死にぞこないと言っても差支えない。
一切、力が衰える様子のない彼女の方が圧倒的に優勢な筈...
ほむら(...何にせよ、これはチャンスかもしれないわね)
理由はどうあれ、今のマドカは隙だらけ。
今なら、彼女に聞かれることなくカズマに伝えられるかもしれない。
ほむらが、全ての時間軸から掴みとった答えを。
さやか「大丈夫、カズマ!?」
さやかとマミが、カズマに治療の魔法を施す。
だが、カズマは答えない。
ただ、鋭い眼光のまま、突っ立っているだけだ。
マミ(これ以上は、私たちの魔力が...!それに、肉体は回復できても、精神までは...)
突如、カズマが右腕を前に突き出す。
人差し指、中指、薬指、小指の順に、指を折り曲げていく。
そして、最後に親指を折り曲げ、力強く握りしめる。
杏子「へっ...そうだよな。あんたは、この程度のやつじゃねえよな」
杏子の言葉に、カズマが凶悪な笑みを浮かべ、全身を虹色のアルター光が包んだ。
カズマの脳裏に、先程のクーガーの姿が浮かび、その声が問いかける。
―――カズマ。何故、その拳を握る?
決まっている、反逆するためにだ。
―――ひょっとしたら、あのお嬢ちゃんは頼めばアルター野郎を出してくれるんじゃないのか?
アルター野郎との決着は着ける。だが、何を背負っているかは知らねえが、あのガキの、人を不幸だなんだと決めつけるような考えも気に入らねえ。
―――おいおい...まるで、チンピラだな
チンピラで結構。反逆する理由なんざ、『気に入らねえ』。ただそれだけで十分だろうが!
―――だったら...やれ!
言われるまでもねえ!
拳を握りしめ、アルターを発動させるための虹色の光が、カズマを包む。
しかし、ほむらが手を添えることによって、アルターの発動は遮られた。
ほむら「駄目よ。それはまだ、とっておきのために残しておいて」
――――――――――――――――
マドカの中で、誰にも聞こえない彼らだけの会話が交わされる
ギャラン=ドゥ『...代われ、マドカ』
マドカ『ギャラン=ドゥ...』
ギャラン=ドゥ『お前、あいつの様見て動揺しちまったんだろォ?それに、あまり力を使い過ぎると...』
マドカ『悪いけど、これだけは譲れないの。私の手で、全ての因縁を断ち切らなくちゃいけないの』
ギャラン=ドゥ『けどよ、俺たちの野望は、ミスを許されない...俺に任せた方が、ミスる確率は減るぜェ』
マドカ『...それでも、だよ』
ギャラン=ドゥ『......』
ギャラン=ドゥは、かつての自分の創造主を思い出す。
自分の野望は、この世界...つまり地球の支配者を人間からアルターに変え、究極のアルターワールドを築くことだった。
だが、あの男はさらにスケールのデカイ夢、全宇宙を支配するなどというバカげた野望を本心から掲げていた。
例え、創造主を遙かに超えていようと、ギャラン=ドゥは終ぞジグマールの野望を抱くことはなかった。いや、できなかった。
頼りなく、最後まで使えない奴ではあったが、ギャラン=ドゥには無いなにかをあの男は持っていた。
マドカに関しても、そう。結果はこうなったものの、あの時は、とにかく助かろうとしていただけで、その後のことは考えもしていなかった。
まどかが掴みとったものがあるからこそのマドカであり、ギャラン=ドゥは何もしていない。
そして、今、目の前に敵対している彼女たちもそう。
純粋にパワーだけなら、ギャラン=ドゥに遙かに劣る連中ばかりだ。
だが、それでも、彼に出来ないことをやってのけてしまった。
魔女が、己の限界を決めつけてしまったが故に、心の底から欲しいものを手に入れることが出来ないのと同じように、ギャラン=ドゥもまた、己の限界を決めつけてしまっているのではないだろうか。
ギャラン=ドゥには無いなにかを秘めているからこそ、彼らは、人間は、進化を続けることができるのではないだろうか。
ギャラン=ドゥ『...てめえといい、ジグマールといい、あいつらといい...魔法少女やアルター使い...いや、人間ってのは、頑固者が多いみてえだなァ』
マドカ『...私は、違うよ。"まどか"はもう捨てたでしょ?』
ギャラン=ドゥ『それでも、だ。いいさ、俺はもうお前の邪魔はしねえ。俺の主はお前だ』
マドカ『ありがとう、ギャラン=ドゥ』
ギャラン=ドゥ『ただ、お願いと言っちゃなんだがよォ...』
マドカ『?』
ギャラン=ドゥ『俺も、お前の隣に立たせちゃくれねえか?』
―――もしかしたら、お前の隣に立つことで、俺にも何かが見えるかもしれねえからな
―――――――――――――――――
カズマ「正気かよ...?」
カズマが、ほむらの言葉を聞いてからの第一声がこれだった。
他の三人も同様だ。
カズマですら正気を疑うような、彼女の言葉に、何も言葉が浮かばなかった。
ほむら「不可能ではないでしょう?」
さやか「いや、そうは言ってもさ...」
理論上は、確かに可能ではある。
だが、もしそれを実行すれば...
カズマ「てめえ...死ぬぜ」
馬鹿のカズマでも分かる答え。
死ぬどころか、何が起こるか分からないし、何も起こらないかもしれない。
ほむら「あら、知らないのかしら?」
幾度も絶望を見せ続けられ、希望をへし折られ続けた少女は、こともなさげに言い放つ。
ほむら「魔法少女は、夢と希望を叶えるのよ」
カズマは、思った。
―――馬鹿だ、こいつ。
やってみなきゃ結果はわからねえってのが、俺の信条だ。
だが、それでもこんなことをやろうとは思わねえし、思いつきもしねえ。
かなみや君島にも言われて来たし、自分でも相当なものだと思っていたが、こいつはそれ以上。
俺以上に無謀で、俺以上にイカレてて、俺以上に命知らずの馬鹿ヤロウだ。
―――けどまあ
カズマ「いいね、そういうのは嫌いじゃねえ!」
杏子「...仕方ねえ。どうせこのままやってても、終わっちまうだけだからな」
マミ「そうね。やれるだけやりましょうか」
さやか「ま、あんたなら出来るかもね。何度もまどかのために繰り返してきたあんたなら」
ほむら「ええ。必ず成し遂げるわ」
『何企んでるかは知らねえが...果たして、そううまくいくかねェ?』
ヤマネエエェェン!
さやか「この音、ギャラン=ドゥ!」
マミ「でも、どこに...!?」
マドカ『...こっちだよ』
マドカの声と、ギャラン=ドゥの声が重なって聞こえる。
しかし、姿が見えるのはマドカだけ。ギャラン=ドゥの姿は見えない。
ギャラン=ドゥ『そろそろ、てめえらがウザったくなっちまったからよォ。つい、表にも出てきちまったぜェ』
マドカ『今の私たちは、二人で一つ。今の私の身体は、私とギャラン=ドゥのものなの』
ギャラン=ドゥ『俺が出てきた以上、さっきまでみてえに甘くはねえぞ』
カズマ「...なるほど、よくわからねえが、てめえをボコれば、アルター野郎もまとめてボコれるってわけか」
ギャラン=ドゥ『ま、やれるもんならやってみなァ』
ほむら「マドカ...いえ、まどか」
マドカ『違うよ、ほむらちゃん。私はマドカ★...』
ほむら「そんなことない。あなたは、鹿目まどか。優しくて、つい自分をないがしろにしてしまいがちで、でも自分の決めたことは曲げようとしない...そんな女の子」
マドカ『......』
ほむら「思えば、私たちから、全てが始まったのよね」
マドカ『そうだね、まどかがあなたを魔女から救け、あなたはそんなまどかを救けるために契約した』
ほむら「まあ、あなたからしてみれば何気ない好意だったのでしょうけど、それでも私はあなたに惹かれたの」
マドカ『きっとあの子は、昔の自分みたいに自信のないあなたに、似たなにかを感じ取ったんだろうね』
ほむら「それから、何度も時間を巻き戻してきた。そして、その過程で色んなものを犠牲にしてしまった」
マドカ『そして、巻き戻した分、あの子は魔女となり、世界を滅ぼしてしまった』
ほむら「それでも、望んだものを得るために戦ってきた。その度に、私は何かを壊していった」
マドカ『そんなあなたの願いを、あの子は置き去りにしてしまった』
ほむら「私は、あなたの隣にいたかったから」
マドカ『あの子は、魔法少女たちの希望になるために、私は、全てを私の思い描く救済へと導くために、なにもかもを置いてきた』
ほむら「クズね、私たち」
マドカ『そうかもね。あなたもあの子も...私も』
―――それでも、譲れないものがあるから
ほむら「私は、私のためにあなたに叛逆する!」
マドカ『あなたも皆も、全てを救済へ導く!』
私たちから始まった、全ての因縁に決着を着けるために!
シンとした静寂に包まれる。
マドカが、掌をほむら達に向け、弓矢を創りだす。
それは、マドカが今まで行わなかった、殺意が込められた攻撃である。
ギャラン=ドゥ『先に聞いておくが...これが、最後の質問だ』
マドカ『あなた達は、私達と共に来る気は...?』
杏子は槍を構え
マミはリボンを創り
さやかは『正義武装』の姿のまま剣を握り
カズマは拳を握りしめ
ほむらはその眼光鋭く
同時に答えた。
「絶対にノゥ!!」
その言葉と共に、矢が放たれ、たちまち膨大な数に分散した。
杏子「お前ら、そこから動くな!」
杏子が、両の掌を合わせ、前方に防御壁を創る。
が、それはマドカの矢の前ではほぼ無意味。
一つ被弾しただけで、防御壁は消滅し、それは杏子の腹部を貫いた。
杏子が、こと切れたかのように膝から崩れ落ちる。
だが、倒れたのは彼女だけ。
他の4人は、杏子が創りだした巨大な槍によって、上空へと持ち上げられていたからだ。
杏子「 」
倒れている杏子の身体を、シャボン玉が取り囲み、彼女を包み込んだ。
槍が消失し、4人が落ちてくる。
――――――――――――――――
いつも、さやかの傍にあんたはいた。
マミともさやかとも険悪な仲になっていた時、あんたはあたしのもとへと訪れた
それからも、時々会っては他愛のない話で盛り上がって、『頑張って素直になろう』なんて馬鹿みたいな約束を交わして...
あの時は呆れたよ。
でも、ホントは、スゲー嬉しかったんだぜ。
短い間だったけど、あたしにとっての初めての『友達』だったんだから。
結局、約束は果たせなかったんだけどな。
...そういえば、さやかを助けに行く時も「一緒に遊ぼう」って約束してたっけ。
だからってわけじゃないけど、これが終わったらさ
杏子「一緒に遊ぼうぜ、まどか」
――――――――――――――――――
マドカ『躱したところで無駄だよ!』
無数の矢が、方向転換して、カズマ達に襲いかかる。
マミ「美樹さん!」
マミがリボンを伸ばし、さやかに握らせる。
さやかが受け取ったことを確認すると、マミはそのリボンを千切り、矢に向き合った。
さやかは、カズマとほむらの手を握り、己の魔法陣を足場にし、一気にマドカのもとへ跳んでいった。
マミは、盾にするかのように、リボンを展開。
しかし、それも迫りくる矢を止めることも出来ず、矢はマミの心臓部を抉っていった。
シャボン玉が、マミを取り囲み、杏子と同様に包み込む。
シャボンに取り込まれながらも、マミは確かに微笑んでいた。
――――――――――――――――――――
いつだって、あなたは私を孤独から救ってくれた。
あなたが魔法少女であろうとなかろうと、傍にいてくれた。
そして、私がいなくなった時は、心の底から悲しんでくれた。
あなたは、後輩でもあったけれど、友達でもあってくれた。
それなのに、いつもみっともない姿を見せちゃってごめんなさい。
あなたをこの道に引きずり込んだ癖して、あなたに助けられてばかりで、こんなことを押し付けてしまって...
やっぱり、駄目な子ね、私。
でも、もうあなた一人に背負わせたりなんかしないから。
あなたばかりに辛い思いはさせないから。
今度こそ、皆揃ってお茶会をしましょう、鹿目さん
――――――――――――――――――
さやかが、マドカに肉薄する。
後、10メートル、7メートル、5メートル
それに対してマドカは、両腕をドリル状に変化させ、地を蹴った。
逃げの方向ではなく、今まさに迫りくるさやか達に。
さやか「なっ!?」
真・絶影の姿ならばどうにかできたかもしれない。
しかし、今のさやかは人間体。
絶影の能力を借りているとはいえ、飛行能力は無いに等しい。
さやか(せめて、ほむらとカズマだけでも...!)
さやかは、カズマとほむらを上空へと、思い切りぶん投げた。
もちろん、隙だらけとなったさやか自身に、マドカを躱す術はない。
右手のドリルに、さやかは腹部を貫かれた。
マドカは、さやかをうち捨て、上空のほむら達へ向き合った。
時空間ワープを使おうとするが、しかし右腕に違和感をおぼえる。
右腕には、青の触鞭が巻き付いていた。
さやか「...烈...迅...」
ふらふらと立ち上がっていたさやかは、今度こそその場に崩れ落ちた。
―――――――――――――――――
初めてあった時は、なんだか臆病な子だなって思ってた。
あたしが話しかけたら、ものすごく嬉しそうにしちゃってさ。
これはあたしが守ってやらなきゃって勝手に思い込んでた。
それに、あんたに八つ当たりしたり、何度もあんたを泣かせたりもした。
今思えば、あたしがあんたを追いこんでたんだね。
それでも、あんたはあたしを見捨てないでいてくれたね。
本当に、ごめんねまどか。
でも、まどかの決意は否定できないけどさ、あんたが皆と笑って生きていけないような世界は嫌かな。
劉鳳からこの力を貸してもらっておいてなんだけど、あんたが泣きを見るような世界を受け入れるのが正義なら、あたしは正義じゃなくていいよ。
だって、あんたはあたしにとって、大切な親友なんだから。
――――――――――――――――――――
右方向には、マドカが放った矢が、真下には絶対的力を持つマドカがいる。
どうするか?決まっている。
カズマは、ここにきてやっとアルターを発動させた。
分解したのは、魔力が込められた槍とリボンと剣、そしてあと一つ。
カズマ「杏子、マミ、さやか、ほむら...お前たちの名前、確かに刻んだ。そんでもって...」
カズマの全身が、かなみと君島と共に掴みとった黄金の装甲に包まれる。
カズマの背に、3対の羽、計6枚の羽が生える。
一番上の対から、赤色、黄色、青色の羽だ。
そして最後に、右腕が、紫色の盾のついた装甲に包まれた。
カズマ「お前たちの"叛逆"、俺が引き受けた!」
――――――――――――――――――
さやかがマドカの右腕を絡め取ったのは、ほんの一瞬。
さやかが倒れると共に、触鞭は消え去り、彼女の身体もシャボンに包まれた。
改めて、時空間ワープでほむら達のもとへ向かおうとする。
しかし、ワープが発動しない。
そして、気付く。周りの一切の物が、音が、止まっていることに。
マドカ(これは...ほむらちゃんの時間停止!?)
一口にワープといっても、空気の流れに乗る、といった方が正しいだろう。
その流れを止められれば、ワープは発動できなくなる。
しかし、ほむらはもう時間停止を使うことができない筈...
その答えは、遙か上空にあった。
マドカ『ほむらちゃんの姿が...ない!?』
***************************
カズマ『とっておきってなんだよ』
ほむら『これよ』
杏子『お前、それ、ソウルジェムじゃねえか!』
ほむら『ええ。杏子の槍の一部でもあれだけの力が引き出せたのなら、ソウルジェムなら更に力を引き出せる筈』
マミ『でも、ソウルジェムは、私たちの魂...』
ほむら『だからこそよ。私の全てをカズマのシェルブリットに弾丸として込め、マドカに直接叩き込む』
カズマ『正気かよ...?』
ほむら『不可能ではないでしょう?』
さやか『いや、そうは言ってもさ...』
カズマ『てめえ...死ぬぜ』
ほむら『あら、知らないのかしら?』
ほむら『魔法少女は、夢と希望を叶えるのよ』
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アルター能力は、物質を分解・再構成する能力。
したがって、生きている者の身体を分解することはできない。
しかし、魔法少女の魂は、ソウルジェムという物質。
加えて、魔法少女の身体にも魔力は通っており、ソウルジェムが無ければ、ただの抜け殻となる。
つまり、カズマは、ほむらの全てを弾丸に変え、ほむらの想いは、彼女の本来の能力『時間跳躍』さえも再構成したのだ。
カズマ「これが俺の自慢の拳...そして」
これが、カズマが仲間達と掴みとった最終進化。
これが、さやか、マミ、杏子の魔力を取り込んだ、最速の弾丸。
これが、ほむらの全てを詰め込んだ、最強の弾丸。
そして、これが
カズマ「俺と、お前達の輝きだあああぁぁぁ!!」
―――これが、彼らの『叛逆』の形。
カズマ「叛逆の―――ハイブリットォォォォォ!!!」
背中の六枚の羽が展開し、目にも映らない速さで、カズマがマドカに迫る。
躱すことが出来ないのなら―――迎え撃つ。
両腕のドリルと、カズマの右拳が衝突する。
火花を散らし、両者は拮抗する。
マドカ「......!」
だが、それも束の間。
突き出された両腕のドリルの間を、カズマの拳は押しのけていき―――
カズマの拳は、マドカの胸元を捉えた。
ギャラン=ドゥ『うおっ...!』
マドカ『ぐううッ...!!』
カズマの拳を受けたマドカの身体が、溢れだす光と共に崩壊していく。
光は輝きを増し、拳を打ち込んだカズマもそれに巻き込まれる。
カズマの装甲は全て消え去り、彼の左腕と右足を奪い、その身も呑み込まれた。
光は柱となり、結界も、時空すらも貫き、天高くそびえ立った。
弾丸は、確かにマドカに撃ちこまれた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
真っ暗闇の中。
彼女は、何をするでもなく、ただ漂っていた。
「ギャラン=ドゥ...どこ...?」
彼女の唯一の同士の名を呼ぶ。
過程はどうであれ、彼女に協力してくれた彼は返事をしない。
あの、饒舌な彼が一切返事をしないということは、答えは既に出ている。
(...そっか。消えちゃったんだ)
「結局...私はなにがしたかったのかなぁ...」
本来の目的も失って。
友や家族も置き去りにして。
本当の『自分』さえも切り捨てて。
手に入れた力さえも、今まさに消えようとしている。
今の彼女に、残されているものはなにもない。
―――ごめんね、ギャラン=ドゥ。最後まで我儘に付き合せちゃって。
―――ごめんね、ママ、パパ、タツヤ。私が大人になるまで一緒にいられなくて。
―――ごめんね、みんな。こんなことに巻き込んじゃって。
―――ごめんね、ほむらちゃん。あなたの想いに応えてあげられなくて。
『起きて、わたし』
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
宇宙にも似た、星空煌めく空間。
かつて、まどかとほむらが別れたところにそっくりな空間。
彼女は、一糸纏わぬ姿でそこにいた。
ほむら「...目が覚めた?」
まどか「ほむら...ちゃん...?」
そこにいるのは、魔法少女でも、円環の理でも、アルター使いでもない、二人のただの少女。
マドカ★まぎかはもう、ただの鹿目まどかになっていた
ほむら「迎えに来たわ」
ほむらが微笑みながら、手を差し伸べる。
ほむら「一緒に帰りましょう、まどか」
ずっと寂しかった。
ほむらちゃん以外のわたしの大好きな人達が、誰もわたしを知らなくて。
誰にも触れることすらできなくて。
色んな希望を見てきた分、それ以上の絶望を味あわせられて。
それでも、わたし一人で全ての希望にならなくちゃいけなくて。
それでも、どうすることもできなくて。
...帰りたい。
パパやママと何気ない挨拶を交わして。
お姉ちゃんらしく、タツヤの面倒をみてあげて。
学校の勉強に必死についていって。
仁美ちゃんやさやかちゃんとくだらないことで笑いあって。
マミさんや杏子ちゃんたちとも一緒に遊んで。
ほむらちゃんの隣に立って。
皆と、なんでもない日々を過ごしたい!
でも...
まどか「駄目なの...わたしは、皆の希望にならなくちゃいけないから...」
ほむら「......」
まどか「今なら、まだちょっとだけ力も残ってるから...ごめんね、ほむらちゃん...皆にも、謝っておいて...」
ほむら「まどか...」
ギュッ
まどか「え...?」
ほむら「そうやって、全部を抱え込もうとしないで」
まどか「は、離して...」
ほむら「希望になんて、ならなくていい。まどかは、まどかのままでいて」
まどか「離してよぉ...」ポロポロ
ほむら「嫌よ」
涙が止まらない。
わたしは、何もできない自分が嫌いだった。
守られてばかりの自分が大嫌いだった。
だから、せめて大好きな人たちや、希望を望んだ子たちの役にたちたかった。
まどか「なんで...そんなこと言うの...?」
ほむら「あなたが大好きだからよ」
でも、それを壊してでも愛してくれる人たちがいる。
こんなわたしでも、大事に想ってくれる人がいる。
それを認めてしまえば...帰りたくないなんて口が裂けても言えない。
全部投げ出してでも、帰りたい。
そんなの、許されるわけがない。
「いいんじゃねーか。帰っても」
「鹿目さん、あなた一人で頑張りすぎよ」
「そうだぞ、まどか。もうちょい分けてくれてもいいでしょ?あんたはあたしの嫁なんだから!」
皆の姿が浮かび上がる。
杏子ちゃんにマミさんにさやかちゃん...それだけじゃない。
わたしが導いてきた、全ての魔法少女たちの姿が。
「鹿目まどかさん...あなたは充分私たちの希望になってくれました。だから、今度は...」
前に進み出てきた少女は、チラリとほむらちゃんを見て、わたしに微笑みかけた。
「あなたが、あなた自身の希望を見つけて下さい」
「そーそー。それに、あなたが泣きをみているのに、その上で胡坐かいてんのも文化的じゃないしね!」
「私らはもう大丈夫だよ。だから...」
「今までありがとう!」
さっきの少女に、他の少女も続いていく。
もう、自分の希望は見つけたのだと。
だから、今度はわたしが希望を見つける番だと。
まどか「みんな...」
...もう、我慢できそうにない。
まどか「...ありがとう」
涙は拭わず、それでも満面の笑みで、わたしは彼女たちに応えた。
まどか「―――行ってきます!」
ほむら「まどか」
差し伸べられた手を、もう拒絶したりはしない。
まどか「...うん」
その手を、わたしは握り返した。
そして、二人で弓を創りだし、構えをとる。
わたしの背中を、ほむらちゃんが支える形だ。
この闇から帰るために、わたしは弓を引き絞った。
ほむら「それじゃあ、いこっか」
まどか「うん!」
空に、一筋の光が走った。
光は、これからのわたしたちの未来を照らすかのように、闇をかき消した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
――――――――――――――――――
ロストグラウンド 某所
水守「ペンダントの疼きが、治まった...」
劉鳳「――――――!」ビクン
シェリス「ど、どうしたの?」
劉鳳「...今、絶影の所有権が美樹さやかから俺に戻った」
君島「と、いうことは...」
かなみ「決着が...!?」
劉鳳「ああ。勝ったのは―――」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
光の柱が天高くそびえ立っている。
主を失った結界が崩壊を始めるが、それでも光は輝きを失わない。
光の中から、シャボン玉が溢れだしていく。
そのうちの一つが割れ、一人の人間が地面に横たわる。
その人間は、かつて鹿目まどかと呼ばれた桃色の髪の少女。
眠っている少女の近くに、虹色の粒子が集まりだす。
粒子は、左腕から順に人の形を模っていく。
やがて、それの左腕が動き、ゆっくりと天へと突き出された。
そして、掴みとったものを誇示するかのように。
そのヒビだらけの腕を、固く、固く握りしめた。
QB「見事だったよ、ほむら」
QB「大した素質もなく、強大な力を持っているわけでもない。そんな一個体から、全てが始まり、全てが終わるんだ」
QB「僕は、そんな君を称賛し、尊敬するよ。マドカに変わって、決着の言葉を贈ろう」
QB「暁美ほむら...君の勝ちだ」
――――――――――――――――
無常「ごらんなさい、異納くん。あの光を!なんと素晴らしい...!」
異納「これが、全ての始まり...」
無常「しかし、それだけに残念です。彼女の力が、全ての救済などという夢物語に費やされてしまったことが」
異納「...彼女は、全てを救済するための『進化』をした。だから、誰一人として切り捨てることができなかった。もし、あの時カズマが死んでいれば、彼女の祈りは効果を失い、全ては無に帰していた...」
無常「せっかくの力なのに、殺さないように全力で手加減し、あまつさえ強大すぎる進化のため、己の身も長く持たないなどと...私の求めているものには、単に邪魔にしかなりませんねぇ」
異納「それで、これからどうするのですか?」
無常「あのアルター使い...カズマと言いましたか。彼にはとても興味が湧きました」
異納「では、元の世界に帰還した後、彼を捜索しますか?」
無常「お願いします。それと、念のため、鹿目まどかと暁美ほむらという少女も」
異納「承知しました」
無常「ところで、異納くん。私たちの計画はまだ名前がありませんでしたよねぇ?」
異納「はい」
無常「彼女の信念こそは受け入れられませんが...彼女の執念を讃え、せめて、名前だけでも継いであげましょう」
無常「これからの私たちの計画名は...『ワールド・オルタレイション』です」
*************************
時代は古代。
恐竜が生態系を牛耳り、まだ人類が産まれる前の時代。
そこに、突如光の柱がそびえ立った。
やがて、その光から地面に弾きだされた影が一つ。
その影は、まるで死んでしまったかのように、ピクリとも動かない。
左肩から先は無く、右足も膝から下は失われ、それでも彼は微笑んでいた。
まるで全てを出しきったかのように、一片の曇りも無く、確かに彼は微笑んでいた。
それが、この光を見つけたのは、ほんの偶然。
宇宙のための新たなエネルギーを求め、この地球に調査しに来て、たまたまこの光を見つけただけだ。
それは、恐れることなく、その光の中へ足を踏み入れた。
「――――!!」
未だ体験したことのないエネルギー。
これほどのエネルギーならば、宇宙のエネルギー問題を解決するのに、ふさわしいかもしれない。
このエネルギーの根源となるものは、いったい...
「これが、感情...か」
この時、後にインキュベーターと呼ばれる彼らは、初めて『感情』という精神疾患を知った。
彼らが、これを応用し、魔法少女システムというものを産み出すのは、まだまだ先のこと。
―――嗚呼、人よ。神は知っているのです。
サルが人間から進化したのは、彼らの手によるものなのです。
この時放たれたアルターと魔法の光によって、人が人を進化たらしめたのです。
それを創りだしたのは5人の魔法少女。
そして、この光を放出したのは一人の男。
男の名は、カズマ...
『反逆者』カズマ―――!!
エピローグ
叛逆、そして反逆
あの戦いから、一年が過ぎた。
カズマはあの光の影響で別の時代にとんでいき、あれ以来、魔獣も綺麗さっぱり消え去ってしまった。
シャボンに取り込まれていた人たちも誰一人として死なずに戻り、魔法少女システムも復活しているようだ。
多少損壊(主にカズマとさやか達の戦闘で)していた美滝原の町も復興し、全てはまどかの契約前と同じになった。
それでも、世界は、人は変わり続ける。
その胸に変わらぬものを抱いて、人は変わり続ける。
さやホーム
さやか「はあっ...はあっ...これで、どうだぁ!」
仁美「......」
さやか「......」ドキドキ
仁美「60点です」
さやか「よっしゃ、20点アップ!これで、もうこの科目は...」
仁美「はい。後30点ですわね」
さやか「ちょっ」
仁美「口答え無用!あなた達には長いブランクがあるのですから、高校までに追いつくにはこれくらいでは足りませんわ!」
さやか「くそ~...こんな時に限ってまだリハビリ中のまどかが羨ましいよ...」
仁美「もちろん、まどかさんにも詰め込んでさしあげますわ。さやかさん以上のスペシャルコースで...」ウフフ
さやか「...恭介ぇ、仁美ちゃんが怖いです」
恭介「志筑さんは、それだけさやかたちを心配しているんだよ」
さやか「そうは言っても、さすがにこの量は...劉鳳、もう一度あたしに力を貸してくれええぇぇ!」
仁美「さあ、もう一度復習しますわよ!」
さやか「ぬわ―――!!」
美滝原 某所
ズルズル
少女「」
使い魔「......」
杏子「ちょっとちょっと、なにやってんのさ」
使い魔「......!」
杏子「そのガキ、まだ生きてんでしょ?だったら、あんたの餌にするわけにはいかないねえ」
使い魔「」シュルッ
杏子「へえ、あたしとやりあおうっての?」
使い魔「」ジャッ
杏子「さあ、どっからでもかかってきやがれ!」ジャキッ
使い魔「」シュウウ
マミ「あら、随分早かったわね、佐倉さん」
杏子「たまたま近くにいたからな。...おい、ガキ。起きてるか?」
少女「ん...」ムニャムニャ
杏子「寝てるか。マミ、このガキを警察にでも送っといてくれ」
マミ「わかったわ。に、しても...ここのところ、随分張り切ってるわね」
杏子「今、魔女とまともに戦えるのはマミとあたしだけだろ?それに...」
マミ「それに?」
杏子「あいつには、いつかリベンジしなくちゃならねえからな」
マミ「...よっぽど、カズマさんにお熱なのね」
杏子「その言い方はやめろ。怖気が走る」
マミ「その割には、組んで戦う時はノリノリだったじゃない」
杏子「あれは仕方なくやっただけだっつーの!」
マミ「さて、どうだか」クスッ
病院 屋上
ほむら「......」
QB「やあ、ほむら。何か考え事かい?」
ほむら「キュウべぇ...久しぶり」
QB「一か月ぶりだね。ちょうど、君が繰り返してきた時間と同じ日数だ」
ほむら「...教えてもらえるかしら。『円環の理』が無くなったこの世界のことを」
QB「いいよ。と、言っても、ソウルジェムのことくらいしか判明していないんだ」
ほむら「ソウルジェム...」
QB「まあ、君にはあまり関係の無い話だけれどね」
QB「ソウルジェムの濁りが、以前に比べて遅いんだ。日常生活や些細な感情の揺れ動き程度では、濁らないくらいにね」
ほむら「原因は?」
QB「おそらく、マドカのシャボンが影響しているのだと思う。あれには、生物の『進化』を促す効果があったからね」
ほむら「『進化』...」
QB「それに、あれのおかげで、魔法少女の素質を持つ少女の記憶に、魔法少女の本質が刻まれているみたいなんだ。
もし、契約する時が来たならば、それこそ魔女になってでもどうにかしたい時でしか契約しないだろうね」
ほむら「そう...あなた達からしたら、厄介なことになったものね」
QB「まあ、あの光のおかげでほぼ無限大に近いエネルギーを手に入れることができたからね。そんなに固執することもないさ」
ほむら「なら、何故ここにいるのかしら?」
QB「ノルマは達成されているけれど、することがなければ、ここに残っても構わないだろう?」
ほむら「...変わったわね、あなた」
QB「そうかな?まあ、君ほどじゃないさ。魔法少女でも、アルター使いでもない君ほどではね」
私は、もう魔法少女ではなくなっていた。
あの時、カズマにソウルジェムと共に再構成されたたためか、それとも私の本来の願いを叶えたためか...
理由はなんにせよ、私のソウルジェムはもう無くなり、変身することもできなくなった。
同じくアルターと深く関わりを持った美樹さやかは、身体も戻り、魔法少女のまま。
彼女の場合は、『進化の言葉』とやらの影響が強いためらしい。
ただし、私は元の人間に戻ったわけではない。
身体の至る所に亀裂が走っており、そこからは金属片が覗いている。
カズマのアルター能力により、体内が金属で再構成されたからだ。
おそらく、普通の人間として暮らすことは出来ないし、もう永くもないだろう。
それでも...
ガチャリ
まどか「ほむらちゃん」
まどか「隣、いいかな?」
ほむら「ええ」
ほむら「まどか。身体の調子はもういいの?」
まどか「うん。ママたちが手伝ってくれてるんだ」
ほむら「そう...でも、あまり無理はしないでね」
まどか「わかってるよ。みんなに心配かけたくないからね」
まどか「...ここまで、色々あったね」
ほむら「...そうね。魔女と戦って、何度も時間を巻き戻して、あなたは概念にまでなって、挙句の果てにはアルターなんてものまで割り込んできて...波乱万丈なんて言葉じゃ足りないわね」
ほむら「辛いことも、悲しいことも数えきれない程あった。この手をいくらでも汚してきた。おまけに、こんな身体にまでなって...」
まどか「......」
ほむら「それでも、私は、あなたと出会えてよかった。あなたと出会えたことを誇りに思うわ」
まどか「...わたしもだよ、ほむらちゃん!」
コソコソ
マミ「二人とも、あんなに嬉しそうな顔しちゃって。見てるこっちまで嬉しくなってくるわ」
さやか「...どう思います?仁美先生」
仁美「幾度もすれ違い、傷つけ合い、最後に寄り添い合う...これは、禁断の恋の予兆ですわ!」ゴクリ
杏子「なにワケわかんねえこと言ってんだ、お前ら」
ほむら「それで?扉の後ろに居る馬鹿4人はなにをしてるのかしら?」
さやか「ヤベッ!バレた!?」
バタン タタタ
ほむら「......」
まどか「......」
ほむら「まったく、あの人たちは...」
まどか「そういえば、今日は5時からマミさん家に集合だったよね」
ほむら「...行ったら、とっちめてやりましょう」
まどか「目が本気で怖いよ、ほむらちゃん...っとと」フラッ
ほむら「大丈夫?まどか」
まどか「う、うん。まだ、完調ってわけじゃなくって...」
ほむら「掴まって」スッ
まどか「ありがと」ギュッ
ほむら「...行こっか」
まどか「うん!」
―――――――――――――――――
一年後 ロストグラウンド
世界は、人は変わっていく。
己の正義のための旅に出た劉鳳さんとシェリスさん。
カズくんがいないため、なんでも屋を休業し、真面目に働くこととなった君島さん。
チーム・ロウレスを復興させている水守さんや箕条さんたち。
変わらないものを胸に秘め、今を生きていくために必死に変わっている。
皆も、そして私も...
ロストグラウンド 極寒地帯
元・ホーリー部隊隊員で、現在観測隊員の橘あすかは、氷の中のモノを見て、驚愕した。
橘「こ、氷漬けの恐竜!!?」
氷の彫像の足元には、巨大な亀裂が走っている。
まるで、氷の中から破壊されたような巨大な亀裂。
その氷の亀裂の中を見た橘は、再び驚愕した。
『s.CRY.ed☆magica』
橘「な、なんだこの文字は...!?」
橘「大発見だ!!タマんないぜ!!」
カズマの家
かなみ「カズくん...遅いなぁ...」
...私は、待ち続ける。―――信じる。
カズくんは約束してくれたから。
カズくんが生きていることを信じて待ち続ける。
カズくんのように...あの人たちのように。
諦めることに反逆する―――!!
一仕事を終え、帰路につく途中だった。
―――カツン
音がした。
霧がかかって見えないが、前方から誰かこちらに向かってきているようだった。
何故だか、私は向かってくる人を知っているような不思議な感覚がした。
やがて、霧の向こうに人影が映った。
片腕は確認できず、残った片腕で杖をつく姿から、どう見ても五体満足には見えなかった。
「よぅ!」
霧が晴れて、光が差しこむ。
笑顔を湛えたその人を見た瞬間、言葉を失った。
カズマ「待たせたな、かなみ!」
私の前に立つその人―――カズくんは、いつも私に向けてくれるあの笑顔で私のもとへ帰ってきた。
かなみ「......」
何も言葉が出てこない。
おかえりなさいも、お疲れ様も口にできない。
かなみ「...ズ...くん」
ただ一つ、ただ一つの名前だけが今の私の全てだった。
かなみ「カズくん!」
私が、ありったけの想いを込めて彼の名前を呼ぶ。
ただいまも久しぶりも全部詰め込んで、彼は応えてくれた。
カズマ「あいよ」
―――――――――――――――
悲しみと憎しみばかり繰り返す、救いようのない世界だけれど、それでもここは私たちが掴みとった道なんだ。
それを、覚えている。
だから、私たちはこの道を守るために戦い続ける。
魔法少女には絶望しかないという運命に、叛逆し続ける。
運命...これほど叛逆しがいのある相手もいないわね
兄貴...そして兄貴!
俺は生き抜く。泥を啜っても生き抜く!!
そのために闘う―――!!
運命にすら反逆してやる!!
運命...これほど反逆しがいのある相手もいねーな。
―――そう思うでしょう?
―――あんたも!
ほむら「その馬鹿を極める」【スクライド×まどか☆マギカ】
完
おまけ
杏子「改めて見返すと、このssのメインじゃないのに、よくもまあ4回も戦ったもんだな」
カズマ「結果は、俺の4戦1勝3分け。俺の勝ちだな」
杏子「はあ?あたしがいつ負けたって!?」
カズマ「てめえが魔女だかなんだかになってる時だ」
杏子「あれはあたしがあんたの能力を利用したんだよ。その方が手っ取り早かったからな」
カズマ「言い訳してんじゃねえぞ!」
杏子「あんたこそ、勝手に決めつけるんじゃねえ!」
カズマ「だったら、ここで白黒ハッキリさせておこうじゃねえか!」
杏子「望むところだ!」
カズマ「決着のシェルブリットォォ!!」
杏子「ロッソ・ファンタズマ!!」
ゼー ゼー
杏子「チッ...決着は着かずか。やるな、カズマ」
カズマ「お前もなかなかのもんだったぜ、杏子」
杏子「こうやって、ぶつかりあって絆を深めあう...ははっ、悪くないねこういうのも」
カズマ「それは、こっちも同じよ」
杏子「......」
カズマ「......」
カズマ&杏子「キモッ!」
ガバァ
チュン チュン
廃教会
杏子「......」
カズマ宅
カズマ「......」
カズマ&杏子「夢かよ...」
元ネタ スクライドアニメブック カズマVS劉鳳 戦いの記録より
次回作?予告
希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、わたし、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。
きっと、いつまでも言い張れます。
『わたしたちの、最悪の脚本』
パッと思いついた小ネタもこれで終わりです。
書きためって大事だなと思いました。
465 : 以下、新鯖からお送りいたします[... - 2013/09/14 14:26:40.55 Fm845uJWO 367/367むちゃくちゃ面白かった>>1乙のシェルブリット
作中の文章の節々から>>1の両作品への愛が滲み出てた。なんかもう胸熱展開過ぎて泣きそうにだったぜ。
次回作も超期待してるぞ。名作をありがとう


熱いし悪くない終わり方で嫌いじゃないタイプの話なのに、何だか気持ち悪い。
モヤモヤもするし、イライラもするしで、スクライドもまどマギも好きなのにどっちも二度と見直したくなくなる、そんな感じ。