上条「……ん。もう朝か……」
ミーンミーンミーン
上条「……暑い。ちょっと早いけど起きるか。朝メシ朝メシー……と、」
上条「ん?……はぁ!? 冷えてない……?」
上条「おいおい! 嘘だろ! 冷蔵庫壊れてんじゃん!!」
上条「あー! 卵も惣菜も昨日買い込んできたっていうのにー!」
上条「はぁ……」
上条「やっぱツイてないよな、俺って」
元スレ
上条「学園都市のナンバーセブン……それだけは覚えているんだ」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1283759426/
上条「夕飯どうしよう」
猫「にゃー」
上条「黒猫か……最近よく見るな」
ハト「ブッ!!」
ヒュー・・・ベチャ!!
上条「ははっ……ウンが付いてるってか……」
上条「……」
上条「(ずっとこんな調子だ……)」
上条「(学園都市に来たからって何も変わらない……不運な日常)」
「うわっ 上条が来たぜ」
「やだ……ねぇ、あっち行こう」
上条「(なぁ、神様。アンタは人の命を弄んで楽しいのかよ?)」
俺の名前は上条当麻。中学三年生。
通称、疫病神。というのも、右手に宿るへんてこな力のせいでそう呼ばれているのだが……。
物心ついた頃には周りの人間から避けられるようになっていた。
「他のクラスは体育祭の練習で忙しいっていうのに、俺たちだけ何もしてないよな」
「来月の文化祭の出し物も決まってないんだぜ、うちのクラス」
「別にてきとーでいいんじゃない? 上条がいるから何やっても私らは最下位だし、頑張っても無駄でしょ」
生まれつきの不幸体質である俺を気の毒に思った親父の計いで、この学園都市に送られてきた。
しかし、この科学の街でさえも俺の右手をまともに解析することはできず、
俺は不幸を呼び寄せる疫病神として依然、嫌われ者のままである。
夏休みが明けて今日から二学期なわけで、最悪な学園生活が再び始まる……。
「つーか、あいつ何しに学校に来てんの?wwww」
「俺たちに災厄を振り撒くために決まってんだろwwwマジウザいwwww」
上条「はぁ……」
ガラッ
テレスティーナ「はーい。みんなー、自分の席に着きなさい」
テレス「今日は皆さんに素敵なお知らせがあります!」
「なんだなんだ……」ガヤガヤ
テレス「うふふ」
「せんせー! 勿体ぶらずに教えてくださいよー!」
テレス「なんと……このクラスに転校生がやって来ています!」
ワー ワー キャー
上条「こんな時期に転校生……俺たちもう中三なのに……」
「転校生だってよ! お前知ってたか?」
「聞いた聞いた。なんでもレベル5って噂だぜ」
「マジで!?」
上条「レベル5……? 学園都市に七人しかいないっていう、あの?」
テレス「入ってらっしゃい」
ガラッ・・・ピシャ!!
削板「」ムッフー
上条「なんだありゃ……どこの制服だ?」
テレス「じゃあ、自己紹介してくれるかしら?」
削板「おっほん!!」
削板「はじめましてぇええぇえええええぇぇぇぇぇぇ!!」ビリビリ
上条「(うぉ!? 空気が震えてる!?)」
削板「えー……俺の名前は削板軍覇!! もうすでに噂されているかと思うが、そう!! 学園都市のナンバーセブンとは俺のことだ!!」
「えっ なにあれ、不良? というより暴走族?」
「イロモノすぎ……レベル5にもなると見た目からしてくせがあるな」
テレス「削板くんは別の学区から引っ越してきた学生さんよ。数ヶ月の間だけど、みんな仲良くしてあげてね」
「「「はーい」」」
テレス「それじゃ削板くんの席は……」
上条「……」
テレス「……上条くんの隣りが空いてるわね。あそこでいいかしら?」
削板「はい!!問題ありません!!」
削板「おいっす!!」
上条「…ども」
削板「削板軍覇だ!!転校してきたばっかで、なにかとご教示お願いするっす!!」
上条「あ、ああ……こちらこそヨロシクっす……」
削板「んで、さっそくなんだが、教科書見せてくれないか?」
上条「……えっ?」
削板「ほら、ここで使う教材はまだ買い揃えてないんだ!!前にいた中学のヤツとは全然違うからな!! 」
上条「うっ……。あー……いや……すまん、駄目かな?」
削板「まぁまぁ!!そう堅いことを言うな!!こうやって一緒に見れば……むっ!?」
上条「……あ」
削板「な、なんだこれはッ!!」
削板「先生!!」ガタッ
テレス「……どうかしたのかしら、削板くん」
削板「この教科書を見てください!!死ねだのアホだのオ○ニーマスターだの!!落書きされてる!!」
テレス「……」
削板「こんな胸糞悪いことをする奴はどこの根性無しだ!! 出てきやがれ!!」
シーン
テレス「……言いたいことはそれだけかしら?」
削板「あぁ? 何言ってんだあんた!! 自分の生徒がイジメられてるんだぞ!?」
テレス「だから?」
削板「は!?」
テレス「それがどうしたっていうの?」
「……ぷぷっ」
「クスクス……」
「ぷりぷりぷりぷり……」
上条「(ああ、くそっ……!)」
「「「あはははははは!」」」
削板「なんだ!!何がおかしい!?」
「関わらない方がいいぜ、第七位さんよー」
削板「どういうことだ!!」
「そいつは『疫病神』だからな、いるだけで皆の迷惑なんだよ」
削板「き・さ・ま……!!」ガシッ
「…な、なんだよ」
削板「歯ぁ食いしばれぇ!!すごいパーンチ!!」
「おぶし!!!!」
「きゃああああああ!!枝新崎くぅうううん!!」
テレス「ちょっと、何やってんのあなたたち!!」
「テメー……レベル5だからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!! 最下位のお前なら俺でも倒せ」
削板「まッ!だッ!殴られ足りないようだなぁああああ!!?」
「ひっ!」
テレス「オーディエンス!!」テーン
削板「ん?」
テレス「削板くんが悪いと思うひとー?」
「はーいなんだよ」
「はーいですの」
「はーいって、ミサカはまっすぐ手を挙げます」
テレス「はーい。多数決の結果、削板くん方に非があることになりました」
削板「なんだそりゃ!! なんなんだ今のは!? おかしいじゃねぇか!!」
テレス「転入早々悪いけど、今日一日あなたは自宅謹慎よ。上条くん、あなたもね」ガシャンガシャン
上条「……はい、解りました」
削板「うおおお!? なんだこのガンダムみたいなマシンは!? ……ってそいつは関係ねぇだろ!! 聞いてんのか、おい!! あんたそれでも教師かぁああああ!?」
バタン
「枝新崎くん、大丈夫……?」
「レベル4の発火能力者、枝新崎を一撃で……」
「やっぱ、あいつタダもんじゃないぜ……」
テレス「あれが学園都市最大の原石……ね」
削板「くそ、なんなんだあの先生は……!!」
上条「ははっ……すいませんね、上条さんのせいでクラスのみんなとトラブル起こしちゃって……」
削板「何もお前が謝ることはないだろう!? 悪いのはあの連中だ!!」
上条「……」
削板「…そういや、まだちゃんと名前聞いてなかったな?」
上条「上条……。上条当麻だ」
削板「当麻、今日から俺たちは友達だ!! 卒業までの短い間だが仲良くしようぜ!!」スッ
上条「……」
削板「どうした!?ほら!握手だ!!」
上条「あいつらの言うとおりだよ……」
削板「ぬ!?」
上条「俺の右手。幻想殺しっつーんだけどさ、こいつが異能の力ならなんでも打ち消しちまうんだ。それがたとえ幸せな運命でもな……」
削板「イマジンブレイカー? お前の超能力か?」
上条「いや、生まれつき持ってた天然の力なんだけど……まぁとにかく、俺には極力近寄らない方がいいよ……停学の件も俺が巻き込んじまったようなもんだろ?」
削板「う~……」
上条「さっきは俺のこと庇ってくれて、ありがとな……そんじゃ」
削板「それがどうしたッ!!!」
上条「えっ」
削板「幻想殺しだの!!幸福を打ち消すだの!!俺とお前が友達であることになんの問題があるってんだ!!?」
上条「仕方ないだろ……俺の側にいたら、アンタまで不幸になっちまうんだぞ!?」
削板「大体、そんな力がなんだ!!根性さえあれば不幸なんて関係ねぇ!!男なら、んなもんは根性で吹き飛ばせ!!」
上条「簡単に言うけどな……!」
削板「いいか? 嫌なことがあった時にはな、こうやって叫ぶんだ」
削板「」スゥー
削板「不幸だああああああッ!!!!」
ザワザワ・・・ エ、ナニナニ
上条「お、おい……なにやってんだよ……やめろって!」
削板「さぁ、当麻。お前もやれ!!」
上条「ええ!?俺も叫ぶのかよ! ヤダよ恥ずかしい」
削板「いいからやるんだ!!全部ここで吐き出しちまえ!!はい、せーの!!」
上条「ええい、わーたよ!」
上条「」スゥー
上条「不幸だー!」
削板「もっと!!もっとだ!!腹の底からッ!!」
上条「不幸だああああああ!!」
ヤダー ナニアレー アイツカミジョージャネ?
削板「うし!!それでいいぞ!!これからはそうやって不幸吹き飛ばすんだッ!!」
上条「(むちゃくちゃだな……この人)」
「木原さま、頼まれていたデータです」
テレス「ご苦労。……第七位、削板軍覇。レベル5に分類されるほどの強力な能力を有するが、その力の具体的な原理は未だ不明……?」
「…申し訳ありません。バンク以外のサーバーを探ってみても不十分な情報しかないようで……」
テレス「……チッ。また訳の解らないもん仕入れてきやがってよぉ……で、ガキ共の様子はどうだ?」
「ハッ! 順調です。これで全ての手筈は整いました。後は……」
テレス「感応能力者……強力なテレパスか」
「ふふふっ……統括理事会から高位の能力者や原石の指導を任されている木原所長のこと……今年度行われたカリキュラムの功績が認められれば、幻生が残したこの研究を引き継ぐ正式な許可が下りる……」
テレス「ったりめーよ。そのためにわざわざ教師役を買って出てたんじゃねーか。あいつら全員、私のコレクションだ!!実験用のハツカネズミなんだよ!!ぎゃははははは!!」
削板「すごいパーンチ!!!!」バチコーン
上条「ぶるあああああああ!!」
ズサァ・・・!!
削板「どうした!? 全然打ち消せてないじゃねぇか!!」
上条「だーかーらー! 右手に触れないと無効化できないの! つか、今のは能力云々以前の問題だろ! 普通にぶん殴っただけじゃん!!」
削板「うるせぇええぇえええ!! ごちゃごちゃ言う暇があるならもっと機敏に動けぇええぇえええええ!!」
上条「うわっ と、」
削板「遅い!!遅い!!まだまだ修行が足りんぞ当麻ぁッ!!」
上条「だああああああ!! 不幸だああああああ!!」
上条「はぁ……!はぁ……!」
削板「だんだん男の闘い方が板に付いてきたじゃないか!! いいぞ!!その調子だッ!!」
上条「こんなことして……ゼェ……不幸が……ゼェ……治るんでせうか?」
削板「いいか!?心が強ければ運命は切り開ける!!そしてその心を鍛えるにはまず肉体からだ!!」
上条「はぁ……そうっすか」
削板「ところで、そろそろ決めゼリフを考えてもいい頃合じゃないか!?」キラーン
上条「えっ?……いや、俺はそんなのいいっすよ」
削板「まぁまぁ!! 遠慮すんな!!」
上条「別に遠慮してねーよ」
削板「俺の右手が光って唸る!お前を倒せと輝き、叫ぶッ!!」
上条「ないない」
削板「ギガぁ!!イマジンんんん…!! ブレイクゥウウゥウウウウウ!!」
上条「長い! 溜め長すぎますから!」
削板「んっー……じゃあ、そうだなー……幻想殺しだからぁ……」
上条「もういいって」
削板「その幻想をぶち殺すッ!!……なんてどうだ?」
上条「まんまじゃん……せめてもうちょっとまじめに考え」
「きゃ!」
上条「おわっ!」
春上「あいたたたた……」
グニュゥ
上条「ああ!!うんこ踏んだ!!」
削板「なにやってんだ、ったく。ほらよ、大丈夫か?」
春上「…すいません。私、ぼっーとしちゃってたみたいで」
上条「不幸だああああああああ!!」
春上「はぁ……駄目だ。ここじゃ全然聞こえないよ」
削板「…何かお困りのようだな」
春上「え?」
削板「よーし当麻!!人助けも修行の一貫だ!!俺たちがこの子の悩みを解決してやるぞ!!」
「春上衿衣……レベル2。受信型のテレパス……か」
削板「腹が減っては戦はできぬ!!まずは腹ごしらえだ!!」
春上「あ、おいしそうな匂いなの」
削板「おっちゃん、タコ焼き三つ!!」
「はいよ」
上条「奢りっすか。なんか悪いな」
削板「気にするな!!金なら腐るほどあるからな!!遠慮せずに食え食え!!」
春上「」モフモフ
削板「遊園地だ!!遊園地!!ジェットコースター!!」
春上「キャー!!なの」
上条「のわああぁぁー!!」
削板「動物園!!」
熊「がおー!!」
削板「おっしゃあ!!相手になってやるぜクマ公!!」
上条「誰かあいつを止めろー!」
削板「水族館!!」
春上「うわー、綺麗なの」
上条「水族館……?」
削板「いやー、ホント何でもあるな!!学園都市は!!」
上条「おい、ちょっと待てよ。遊んでばっかじゃん!!」
ピンポンパンポーン
『〇〇中学の削板軍覇くん、至急クリスティーヌ先生のところへ来なさい』
削板「ぬっ!? 呼び出しだ!!すまん当麻!!後は任せた!!すぐに戻るからなッ!!」
上条「……お、おい、ちょっと待てって!」
春上「面白い人なの」
上条「はぁ……やれやれ。じゃあ本題に入るか。今さらだけど」
春上「…うん。実は私、友達を探してるのね……」
削板「せんせー!!どこにいるんですかー!!」
「来ました、木原さま」
テレス「撃て」
ドパァン!!!!
削板「あたぁ!!」
「!?」
削板「―――っ!!痛ぇな!!誰だ!?」
テレス「……鯨でも0.1mgで動けなくなる毒なんだけどね」
削板「先生!?」
テレス「まったく、デタラメな奴だよ。AIM拡散力場もまともに観測できないしなぁ……」
削板「今のはアンタか!?一体どういうつもりだ!?」
テレス「テメェみたいな不穏分子がいると邪魔だかんな、しばらくお寝んねしてもらう、よっ!!!!」ガシッ
削板「ぐっ……!!」
テレス「ヒャハハハハハハ!!お前には感謝しないとな!!あの希少なテレパスがいれば予定より早く計画が実行できそうだZE!!」
削板「ッ!!……春上のことか……!!」
テレス「名前なんかどーだっていいんだよ……お前ら実験動物にとって重要なのは能力だけだろうが!!ほらほら、苦しくなってきたんじゃないのか!?」
削板「こ……」
テレス「あ?」
削板「根性ぉぉおおおおおお!!!」バッキーン
テレス「なに!?……チィッ!!」
「木原さま!!」
削板「事情は知らねぇが、お前がムカつくってのはよーくわかったあああああ!!」ゴオォォ
テレス「フン」ガシン
「木原さま、それは……!」
削板「なんだそりゃ?まぁいい、ぶっ飛ばしてやる!!」
テレス「第三位を擬似した電撃砲だよ。削板くんはこれに耐えられるかな~?」
削板「御託はいいから……こい!!お前を倒す!!そして春上は絶対に渡さないッ!!」
テレス「……ふふふっ。アハハハハハハハ!!」
削板「!?」
テレス「いるいる!!こういう身の程知らずの馬鹿がよ!!ろくに世間を見てねぇ餓鬼が生意気な口叩いてくんじゃねぇぞ!!」
テレス「でしゃばりが調子乗って、誰かを救うだぁ?お前にテレパスは救えねぇ!!あの幻想殺しもなぁ!!」
削板「!!」
テレス「ケッケッケッ……ほんっと残念な奴だよなぁ……上条当麻、あいつにはこれから先も最低最悪の糞みたいな人生が待ってるんだ!!」
削板「当麻は……」
テレス「この学園都市で!!この世界で!!あいつの肩を持つ奴なんざ一人もいねえ!!いてほしいと思ってる奴なんか誰もいねえんだよ!!!」
削板「不幸なんかじゃねぇ……!!」グッ
テレス「茶番はもう終わりだ。とっとと死んじまえぇぇ!!」ギュィーン
ドドドーン!!!!
テレス「あっけないねぇ……なーにが世界最高の原石だ。役に立たないモルモットはいら」
ガキンッ!!!!
テレス「………はっ?」
削板「へへっ……」シュゥー
テレス「……な…に?」
削板「はいひはほほへーは」
テレス「レールガンを……噛んで受け止めた……だと……?」
削板「」ペッ
カン、カラン・・・
テレス「ば、馬鹿な!!威力だけなら本物の御坂美琴以上だぞ!?」
削板「言いたいことはそれだけか……?もう許さんぞ貴様……」ポキポキ
テレス「ぐ……」
「木原さま!!ライフラインがまだ残っています!!」
テレス「テレホン!!」テーン
削板「ぬ!?」
テレス「もしもし……かくかくしかじかで……」
削板「な、なにをやっていやがる!!」
テレス「あひゃ!!たった今、刺客を送り出した!!テメェ以上のレベル5をなぁ!!」
削板「まさか暗部組織の……」
テレス「ケッケッケッ……足掻いたところで無駄なんだよ、結局」
削板「うおおおおおお!!そいつはやべぇ!!今行くぞ当麻ぁああああ!!」バチコーン
テレス「ぐほっ」
「木原さまー!!」
上条「ここはどうだ?」
春上「ダメ……。全然ダメなの……」
上条「うーん……やっぱり風紀委員か警備員に……」
麦野「いたわ。あの娘ね」
垣根「あいつか……」
垣根・麦野「ん?」
麦野「あんた……垣根帝督!?」
垣根「うおっ!アイテムのババアじゃねぇか!」
麦野「ドラァー!!」ピシューン
垣根「おっと」チュイン
麦野「今なんつった?よーく聞こえなかったんだけどー?」
垣根「(更年期かよ。うぜぇ……)」
春上「私は最近噂の虚数学区ってとこが怪しいと思うのね」
上条「そんなとこあるのか?」
垣根「あ、そうこうしている内にターゲットが……追跡追跡」
麦野「はぁ?ちょっと待ちなさいよ、まさかアンタもあの子ら狙ってるわけじゃないでしょうね?」
垣根「お前もか?んー……おそらく、クライアントが二重に依頼したんだろうよ」
麦野「ふざけやがって……」
垣根「怒りっぽいな。やっぱり更ね」
麦野「あぁ!?」
垣根「すんません」
ズドドドド!!!
ワー キャー
春上「え、えっ?」
上条「な、なんだ地面が崩れて……」
垣根「よぉ、兄ちゃん」
上条「!?」
垣根「俺の名は垣根帝督。学園都市第二位のレベル5だ」
麦野「随分派手にやるのね」
垣根「で、そこのお姉さんが四位ね」
上条「レベル5……」
垣根「俺たちお嬢さんにちょっとだけ用があるんだけど、いいかな?」
春上「……」ギュ
上条「(ヤバいヤバいヤバい。なんかまたとてつもなく危ないことに巻き込まれているような気が……)」
垣根「悪いことは言わねぇ。大人しく言うことを訊いてくれたら俺たちも手出しはしない。カタギには取り合わない主義でな……」
上条「あっ!!アンチスキル!!」
麦野「なに!?」
垣根「……ちっ!もう嗅ぎ付けやがったか」
上条「今だ!!」ダッ
春上「あっ」
麦野「!? 騙された!」
垣根「なっ!……こんな手に引っ掛かるとは……舐めたマネしやがって……!」
上条「はやく、こっち!!」
春上「あ、う、待って……」
麦野「逃がさないわよ」コォ
ピシュュュンッッ!!!!
上条「……っつ!!」パシュゥン
麦野「!!?」
上条「右手は通用するみたいだな……ここは俺に任せて、君は逃げろ!!」
春上「だ、駄目なの……脚が……」ブルブル
垣根「そこまでだ」
上条「くっ……!」
垣根「面白い奴だな、お前。『原子崩し(メルトダウナー)』の光線をこうも簡単に打ち負かすなんて……」
垣根「ならこいつはどうだ?」
ヒュン ヒュン
上条「なんだ……見えない何かが周りに……」
垣根「俺の能力『未元物質(ダークマター)』はこの世界に存在することのない素粒子。この世には存在しないモノだから、この世の物理法則には適応しねぇ」スッ
ヒュン……
垣根「ショック」パチン
ボンッ!!!!
上条「ぐわあああああ!!」
春上「あっ!!」
垣根「…あれ?」
上条「……ぉお」
春上「だ、大丈夫なの!?」
垣根「拍子抜けだな……ちょっと破裂起こしてやっただけなのによ」
春上「血が……背中からいっぱい血が出てるの……」
麦野「さっき私の攻撃を防いだのはなんだったのかしら?よく解らない奴ね」
垣根「まぁいい。なぁ、もう解っただろ?お前じゃ俺たちには敵わないんだ。これ以上、痛い目に会いたいか?俺に弱い者イジメをする趣味はないぜ」
麦野「その娘を寄越しな。今なら見逃してやるよ」
上条「……」
上条「……へへっ。なんというか、不幸っつーか」
上条「……ツイてねぇよな」
上条「お前ら本当にツイてねぇよ!!」
麦野「あ?」
垣根「ん?」
上条「ああ、そうだよ俺は右手以外はなんの力もない無能力者さ。……だけどな、お前らなんかに負けるつもりはミジンコほどもないぜ」
麦野「……なーに言ってんだか。いいか?レベル5だ、レベル5。しかも二人よ。よくもまぁ、この状況でそんな馬鹿げたことが言えるわね」
上条「だからそんなこと知ったこちゃねぇっつてんだ!!」
麦野「あぁん!?」
垣根「……」
上条「いいぜ……!てめーらが最強のレベル5で……なんでも思い通りにできるというのなら……!!」
上条「 ま ず は そ の ふ ざ け た 幻 想 を ぶ ち 殺 す ッ!!!!」
垣根「久々にカッチーンときた……どうやら最高に愉快な死体になりたいようだなぁ!!」
削板「よーく言ったぁッ!!!!」
垣根・麦野「!!?」
上条「……軍覇」
削板「待たせたな当麻!!」
垣根「お前は……」
麦野「七位か……!」
削板「おうよ!!学園都市のナンバーセブン!!削板軍覇さまとは俺のことだッ!!」
上条「軍覇!こいつら衿依ちゃんを狙ってるんだ!」
削板「ああ、お前たちのことはよーく知ってるぜ。スクールにアイテムのリーダーさんよ」
垣根「おいおい、まーたテメェかよ」
麦野「性懲りもなくまた現われたわね」
削板「ぬははは!!この俺がいる限りお前たちに学園都市の平和は渡さんぞッ!!」
上条「知り合いか……?」
麦野「いくらアンタでも今回は無理よ。私ら二人相手に勝てるわけが……」
削板「うるせぇ!!学園都市の暗部組織だろうが!!運命だろうが!!世界だろうが!!そんなことはどうだっていいッ!!」
削板「どんなに酷い絶望が立ちはだかろうとも!!たった一人の女の子を救うために立ち上がることができる!!それが根性だッ!!」
垣根「……こいつは俺がぶちのめす。原子崩し、お前はツンツン髪の方だ」
削板「おうおう!!かかってきやがれ!!ホスト野郎ッ!!」
麦野「(垣根のくそったれが……私に指図してんじゃねぇぞ……!!)」
上条「軍覇……」
削板「俺の背中は任せたぜ、当麻」
上条「うおおおおぉぉぉ!!」
麦野「……フン。見苦しいわね」スッ
ピシューン……チュン!!チュン!!チュン!!
上条「!?」
麦野「アンタの能力がどんなモノかは知らないけど、この半導体で拡散させた私の高速砲をさばくことは不可能!!」
上条「うおおおおぉぉぉ!!」ブンブン!!
麦野「アヒャヒャヒャ!!なに腕振り回してんだよ!!気でも狂ったのかぁ!?パリイ!パリイ!パリイ!」
上条「イマジンバリアー!!」ブンブン!!
垣根「へっ!相変わらずくっだらねぇ偽善を振りかざしやがってよぉ……俺はな、テメェみたいな熱血バカが一番ムカつくんだぜ? 削板さんよ」
削板「ハァァァ……!!」ゴゴゴゴゴ
垣根「聖神パシー、放射!!」バサッ
削板「超・すごいッ!!」
垣根「太陽光ビームだぁ!!」ビビビビ!!!!
削板「パーンチッ!!!!」
バリバリドンガラガッシャンドーン!!!!
麦野「あー……あ"ー……」
上条「へぇ……へぇ…」
垣根「はぁ…はぁ……」
削板「ふっー!!ふっー!!」
垣根「ふざけんじゃねぇぞ……二位の俺様が七位ごときに……」
削板「まだまだぁ……!!」
春上「……」
春上「ん~……」
春上「!!」ピーン
春上「」ゴソゴソ
上条「? なにやってんの衿依ちゃん」
垣根「おい、餓鬼。妙な動きをするんじゃ」
春上「んーとね、んーとね……あった!」
春上「タケコプターなの!!」テッテレレーン
上条「え?」
春上「そーらを自由に、とっびたいなー♪」
上条「衿依ちゃん……何を言って……って飛んだ!?」
春上「みなさん、さようならー」ビューン
上条「あ……」
垣根「……」
削板「タケ……なんだって……?」
麦野「……」
垣根「逃げたか……」
麦野「逃げられたわね……」
垣根「俺も飛べないことはないが、タケコプターじゃ仕方ないな……」
上条「えっ? えっ?」
垣根「まんまとしてやられたってわけだ」
削板「よし勝ったぁ!!俺たちの勝ちだぞ当麻!!」
上条「えぇー!?」
麦野「あ"ー……も、だるぅ……シャケ弁買って帰ろ」
垣根「……しかし、暗部のトップ二人を打ち負かしたとなれば、上層部の連中も黙っちゃいない」
上条「上層部……? なんの話だ」
垣根「これは大問題だぜ?」
削板「……」
垣根「ま、せいぜい覚悟しておけよ」
アレイスター「ばっかもーん!クビだクビ!」
テレス「ちきしょぉぅううう!!なんてこったぁあああああ!!!」
上条「転校!?」
削板「ああ」
上条「まさか昨日の騒動が原因で、退学……とか?」
削板「あー……んまぁ、そんなとこだな」
上条「やっぱ俺のせい……だよな……」
削板「なーに言ってんだッ!!」バシン!!!!
上条「痛ぇ!」
削板「こういうことは定期的にあるんだよ。レベル5にもなると色々あんだ」
上条「そ、そうなのか……?」
削板「そもそも俺は誰かに自分の運命を左右されるつもりはないぜ!!お前が疫病神だろうがなんだろうが関係ねぇ!!」
上条「そ、そっか……」
削板「おうよ!!俺は学園都市のナンバーセブンだぜ!?」
上条「ははっ……」
削板「…んじゃ、もうそろそろ行くよ」
上条「!! ま、待てよ! もう少しくらいはいいだろ? なんならウチで晩飯食っていけよ! 俺、こう見えても料理作るの得意なんだぜ! なっ? いいだろ?」
削板「いや……」
ブロロロ・・・ キキィッ!!
削板「もう迎えが来ちまった」
上条「……っ!」
削板「じゃあな」
ダッ!
上条「ありがとう!!」
削板「……」
上条「俺、アンタに出会えて本当に良かった……今までずっと自分の不幸を嘆いてばかりの愚か野郎だった……でも、アンタに出会えたおかげで少しだけ変われた気がするんだ!!だから……」
削板「ふくっ……ハッハッハッハッハッハッ!!」
上条「そ、そんなに笑うことないだろ!俺は結構本気で感謝してんだぞ!」
削板「はー……。礼はいらん。俺はなんにもしたつもりはないからな」
上条「そんなことねぇよ!!現に俺は……」
削板「本当はよ、当麻。お前は誰から何も教わらなくても、自分の意地をまっすぐ貫いていける……そんな男なんだぜ?」
削板「お前には根性がある。お前ならこれから先、どんなに困難なことがあったとしても乗り越えて行けるッ!!お前の根性は不幸なんかに負けたりしねぇ!!」
上条「軍覇!!」
削板「男はよ……たった一人の女の子を守るためにならどんな時でも勇者になれる……いつかお前も、そんな日が来るんだ」
上条「待ってくれ軍覇!!」
削板「約束だぜ、当麻。次会う時はもっと大きく……」
上条「軍覇ああああぁぁぁぁ!!」
チュンチュンチュン・・・
上条「待てよ……ぐん」
インデックス「とうまー!」ドーン
上条「ぐほっ!!!!」
インデックス「お腹ペコペコなんだよ。早くご飯作ってくれないと餓死しちゃうんだよ?」
上条「ん…」
インデックス「とーま~」
上条「……わーたよ、今起きるって」
インデックス「はやくはやく!」
上条「なんかみょーに懐かしい夢を見たような……」
インデックス「ぶー。材料ないんだったら昨日の内で買っておいてよね」
上条「文句言うなよ、穀潰し。ほら、たまにはお前も少しくらい荷物持つの手伝えって」
インデックス「ふわぁあ……とうまは私みたいなか弱い女の子に重いモノを持たせようとするの!?それはちょっと酷いかも!!」
上条「あのな……」
「邪魔だ!どけ!」
ドン!!
上条「おわっ!」
「くそっ……!あいつどこまで追ってきやがる!!」
削板「待ちやがれ銀行強盗ぉぉおおお!!!」
インデックス「ありゃ、まーた銀行強盗だ。物騒なところだね、学園都市は」
上条「…いつも思うんけど、この街で銀行強盗する奴ってどこへ逃げるつもりなんだろうな。外には出られないし……」
削板「おっ」
上条「ん?」
削板「」ジー
上条「うぇ? あの…ええっと……」
削板「へへっ」ニカッ
上条「えっ……」
削板「待ーてぇええぇえええええ!!おじょうぎわが悪いぞぉおおおお!!」
「しつこいのはテメェだろうがああああああ!!」
インデックス「?……とうま、あの人知り合い?」
上条「いや……全然」
インデックス「でも、とうまを見て笑いかけてたよ?変なのー」
上条「……あっ!」
インデックス「どうしたの?」
上条「思い出した!そうそう!前にどっかで……」
インデックス「名前は知ってるの?どこどこの何さん?」
上条「学園都市のナンバーセブン……それだけは覚えているんだ」
インデックス「…ふーん。でも、名前も知らないなら大して顔見知りってわけでもなさそうだね」
上条「そうだな…もしどこかに思い出が残っているのだとしたら……」
削板「すごいパーンチ!!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
上条「心に、じゃないか?」
おしまい