-第二学区、屋内演習場
先発隊からの連絡が途絶えて20分。後発隊は待機していたビルを出発。
3台のワゴン車に分かれて乗車し、10分後には屋内演習場に到着した。
太陽はすっかり沈んで辺りはとうに真っ暗である。
車のヘッドライトに照らされた屋内演習場の正面入口は整然としており、見たところ荒れた様子はない。
とても駆動鎧が突入した後とは思えなかった。
海原「いやはやこれは…逆に不気味ですね。一階は制圧したという報告はもらっていたのですが…」
窓ガラス一つ割れていない建物を見て海原が呟く。
本来の見立てではHALの兵隊が大挙して待ち構えているはずだが、戦闘が行われた形跡はない。
報告では被害0で一階を制圧したとしか言っておらず、勝ち気に逸った連絡役はすぐさま報告を切ってしまっていた。
垣根「…つーことは全員一方通行と一緒にいるのか?めんどくせえ。プログラム人格っつーのは随分臆病なんだな」
フレンダ「ねえ麦野」
麦野「ん?」
フレンダ「麦野の能力でこっからこう…ズババーンとやっちゃえないの?結局スパコンの場所は十中八九分かってる訳だしさ」
絹旗「おお!フレンダ超冴えてますね!その手があるじゃないですか!」
麦野「やってみてもいいが…たぶんこっちの何人か死ぬぞ?」
フレンダ「え?マジで?」
麦野「向こうにゃ第一位様がいるからな。私たちの動向は知られてるだろうし、闇雲に撃っても反射される。
私に反射すんならまだどうにかできるが、向こうで微調整されて違う人間狙ってきたらそいつ死ぬだろ」
絹旗「で、でも麦野がどの位置からどのタイミングで撃つか向こうは分からないんじゃ…」
麦野「なんせスパイ衛星ハッキングするような奴だ。どっから私らを見てるか分からねぇ。
私の【原子崩し】もそこまで速さがある訳じゃねぇし、ここから撃って強化された第一位に回り込まれねぇ自信はねぇ」
絹旗「う…そうですか…」
麦野「…諦めておとなしくランドセル担いで待ってろ」
絹旗「…ランドセルはあっちのツインテールです。体操着の方にひらがなで『きぬはた』って既に書かれてました…」
フレンダ「…ま、まあ、その内いいことあるって」
絹旗「…ちくしょう…超ちくしょう…」エグエグ
白井「…どうですの?お姉様」
御坂「…とりあえず、暗闇で待ち構えてるってことはなさそうね。少なくとも私の電磁波が届く範囲には」
白井「そうですか。…警備員の方たちがどうなったのか心配ではありますが…。
それと同じくらいあの姿を皆さまに晒さなければならないことが心配で仕方ありませんの」
御坂「…ま、まあほら、服は今着てる常盤台の制服でしょ?気休めかもしれないけど、あの体操着より少しはマシ…」
白井「…ランドセルの中にお姉様のストライクゾーン低め際どいところの服がキレイに畳まれて入ってましたの…名札付きで」
御坂「…え…えーと…」
白井「お姉様…後生ですから完封勝ちしてきてくださいまし」
御坂「ぜ、全力を尽くすわ」
-屋内演習場、地下演習場前
一階をほぼ素通りし、長い階段を降りた先には演習場の入り口が侵入者を誘う様に開いていた。
侵入者である5人は入り口前の少し離れた場所で一旦立ち止まった。
垣根「…一階にゃ誰もいなかったな。ここで全員待ち構えてると思うか?」
海原「えぇ、恐らくは。どちらにせよこちらは5人。あとからワゴン車で待機しているお二人と…第六位の方でしたか。戦力の分断は得策ではありませんね」
麦野「…つってもあれから二時間半以上経ってんだろ。第六位が何やってんのか知らねぇが、やられたと見るのが妥当じゃねぇか?」
フレンダ「…」
御坂「…そうなってくると余計に面倒ね…一方通行の他にLevel5がいるとなると負担が大きすぎるし…」
フレンダ「…ふん、そんな簡単にやられたりしないっつの」
御坂「え?」
麦野「? フレンダ、お前どんなヤツか知ってんのか?」
フレンダ「あ、いや…ホラ、結局Level5でしょ?そんな簡単にやられるようなヤツじゃないんじゃないかなーって…」
垣根「そのLevel5のアタマが今むこうについてんだがな。どっからそんな自信が湧いてくんだ?」
フレンダ「な、なんとなくよ、なんとなく。ニャハハハハ…」
海原「はあ…?」
フレンダ「け、結局!さっさと第一位をやっつけちゃえばなにも問題ない訳よ!さあ突撃突撃!」ダッ
麦野「バッ…てめぇごまかすために突っ込むヤツがあるか!」
-地下演習場
フレンダ「あれぇ…誰もいない…」
一人だけ先走って入った演習場には誰もいないし何もなかった。
ただ、仄かに発光している壁と入り口から差し込む光だけが演習場の形を表していた。
恐らくは20m×20m。報告の中での一番狭い形となっているはずだ。
麦野「…てめぇ、帰ったらオシオキだからな」
フレンダ「うぇ!?なんで!?」
麦野「ったりめぇだろうがクソボケ!」
入り口から麦野が、そしてそのあとから残りの3人が入ってくる。
警戒こそしながらも、どこか余裕があるように見えた。
海原「行き止まり…ですか。この壁を破壊しなければ先へは進めない、と」
麦野「…しゃらくせぇ。こんなもん一発で風穴空けて…」
ガゴン!と急に入り口が閉ざされた。
入り口からの光はなくなり、壁の発光だけが唯一の光源となる。
そのせいでこの空間は一層薄暗くなったが、互いの姿を確認できる程度には明るかった。
御坂「…これで閉じ込めたつもりかしら?この程度の壁をどうにかできないとでも…」
ブン、と六面に光が灯る。
そして、同時に文章も映し出される。
海原「! 【電子ドラッグ】ですか…!」
垣根「…やべえな」
バサリ、と垣根の背から白い翼が広がる。
その翼はみるみる内に広がり、数秒後には演習場にいた全員を覆いつくした。
外部からは音も光も遮断されたが【未元物質】そのものが白く発光しており、むしろ先ほどよりも大分明るくなった。
御坂「…これが【未元物質】?なんか…名前の割にメルヘンチックね」
垣根「心配するな。自覚はある」
フレンダ「別にこんなことしなくてもよかったんじゃない?結局、対策用のレンズつけてるんだし」
後発隊は全員、コンタクトの偏光レンズをつけている。
【電子ドラッグ】対策の偏光レンズは既にいろいろな形で生産されていた。
垣根「念のためだ。先発隊がやられてる以上、このレンズを完全に信用することはできねえだろ」
海原「…一理ありますね。【電子ドラッグ】にも複数パターンあるとのことですし」
垣根(しかし『Five-Over』、か…。噂にゃ聞いてたが外部の、それもプログラム人格が完成させやがったか。
一方通行を支配下に置いてんだ。名前負けってことはなさそうだな)
フッ、と【未元物質】が消える。頃合いを見て垣根が能力を解除した。
再び光源は壁の発光のみとなり薄暗くなる。
明るさに慣れていた眼にはいくらか暗すぎたようで、慣れるのに少し時間がかかった。
麦野「…次やるときは光の加減も調整してほしいもんだな」
垣根「覚えてたらな」
フレンダ「! 見て!」
正面に目をやると、せり上がっていた大きな壁が降りていた。
そしてずっと先まで壁は降りている。恐らくは100mほど先まで。
薄暗い演習場の中ではとても100m先まで目視することはできないが。
フレンダ「えっとさ、あんた室内なら電磁波で誰がどこにいるか分かるんでしょ?どう?結局、第一位はホントに…」
御坂「…ええ、誰かいるわ。もやしみたいにガリガリの人間が一人」
海原「間違いなく彼ですね」
麦野「第一位だけか?中毒者連中はここにはいねぇのか?」
御坂「…ええ」
垣根「…一方通行一人でここの全員に勝つつもりか?どいつもこいつも一方通行ごときに過大評価しすぎだろ」
御坂「……」
麦野「…ハッ、どうした【超電磁砲】。怖気づいたか?」
御坂「違うわよ。そうじゃない」
垣根「そうじゃない?」
御坂「なんか…違和感がある。なんなのかよく分からないけど」
フレンダ「…何それ?結局全然要領を得ないんだけど」
海原「彼が電磁波をあらぬ方向に反射でもしているのでは?」
御坂「…そう、かな」
麦野「いいからとっとと行くぞ。第一位が痺れ切らして突っ込んでくる前にな」
何十m歩いただろうか、薄暗い演習場はなんの変化もなしにまっすぐ続いている。
何もないと分かっているとはいえ、薄暗い中をひたすら歩くのは実際よりも長く歩いたように感じられた。
ふいに先頭を歩いていた御坂の足が止まる。次いで後続の人間の足も止まる。
カッ、高い天井から正面の一点のみスポットライトのように強い光が当たる。
フレンダ「! あれは…」
その光の中にいたのは当然、この街の最強であり最高の能力者、かつ、最悪の兵器。
一方通行「おォおォ、雑魚どもが雁首揃えて何しに来やがった?」
学園都市が誇るLevel5の第一位、一方通行。
御坂「一方通行…!」
ヘラヘラ笑っている一方通行を歯軋りしながら御坂は睨みつける。
一方通行の雰囲気は『絶対能力者進化実験』当時の、『妹達』をなんの感慨も無く片っ端から惨殺していた時と同じものだ。
垣根「ハッ、簡単に洗脳されたくせにこの俺を雑魚扱いか。説得力にかけるぜ?一方通行」
海原「…やれやれ、こちらは貴方のせいでこんなところにまで駆り出されてきたと言いますのに」
ブン、と一方通行の背後の壁に映像が映る。
そこに映っているのはスーツズボンにワイシャツの、妖しく不気味な雰囲気を纏った男性【電人】HAL。
HAL「…何度退けても向かってくる。常人とは比べようもなくタフで勇ましい。外で通じる脅しも君たちには通用しない」
縦にも横にも常人の二倍ほどの大きさで映し出されたHALは後発隊の五人を見下ろしながら話しはじめる。
HAL「そしてその決して諦めない執念!!心から敬服しよう!!」
演説するかのように大げさな抑揚をつけて後発隊へ話しかける【電人】HAL。
その顔はやはりいつものように笑っていた。
HAL「だが…その勇者たちも今いなくなる」
麦野「…ほぉ、たかだか第一位を味方につけたくれぇでずいぶん余裕じゃねぇの」
HAL「ああ、君と滝壺理后を味方にした時よりも気分が高揚しているよ。
あの頃は同じLevel5でここまで差があるものとは思っていなかったからね」
麦野「あぁ?」
HAL「さあ…はじめようか。私の本体であるスパコン、そして『スフィンクス』はこの壁の向こうにある。…付け加えるなら、君の親友もね」
ちらり、とHALは見下ろしながら御坂を見据えた。
御坂「…そう、初春さんもそこにいるのね」
HAL「この騒動を終結させ、君たちの街を取り戻したいのなら…破ってみせたまえ!この最強の能力者を!」
大手を広げて開戦を宣言するHAL。
いやに芝居がかったその動きと言動は何やら挑発しているようにも見えた。
御坂「…言われなくても、やってやるわよ!!」
だが、だからといって動かない訳にはいかない。
相手はあらゆるベクトルを操れる超能力者。
先手を取らなければ勝てる相手ではない。
叫ぶと同時に、自身のもつ能力の最大出力でジャミング電波を発する。
軍用の特殊電波だろうがなんだろうが遮断してしまうような強力なジャミング。
その効果は絶大で、学園都市最強の能力者は膝から崩れ落ち
キュイィン
高い音が演習場に響いた。
一方通行は変わらずニヤついたままそこに立っている。
麦野「…おい【超電磁砲】。何やってんだ?早くしろよ!」
御坂「…もう、やってるわよ…」
フレンダ「はあ?何言ってる訳?」
御坂「…うそ…なんで…」
演算は完璧だ。一分の狂いもない。
AIMジャマーで暴走を促されてる訳でも【キャパシティダウン】で能力を阻害されてる訳でもない。
ジャミングが、能力がかき消されたのだ。
HAL「…私が手の内を全て曝け出すとでも思ったかい?すでに弱点が露見している一方通行だけで、私が自分の居場所まで堂々と報じると思ったかい?」
電磁波で探った時の違和感が分かった。
電磁波が返ってこなかったのは一方通行がめちゃくちゃに反射したせいではない。
電磁波の一部がかき消されていたのだ。
御坂「なんで…アンタが…」
ここに来てからは、一方通行とHALにしか目が向かなかった。
向こうの切り札は最初からこの空間の隅で待機していたのだ。
HAL「彼こそが真の私のジョーカー。そして…匪口裕也に追われた打ち止めが最後に頼った人間だ。
彼もまた、一方通行と同じで『Five-Over』でなければ洗脳しきれなかったがね」
その切り札とはヒーロー。
とある魔術師の幻想も、とある錬金術師の幻想も、とある超能力者の幻想も、全て打ち砕いた最弱。
右手一本で一万人弱救った無能力者。
???「よ一一…御坂。犯罪願望に従うのって…スゲー清々しいよ」
ツンツン頭に学ラン。そして高々と右手を掲げて気さくに笑いかけているのは
上条「HALが教えてくれたんだ。この快感を」
【幻想殺し】上条当麻。
御坂「嘘でしょう…?」
勝てるはずがない。
ただでさえ学園都市最強の一方通行。
その一方通行を打ち倒した最弱、上条当麻。
この二人を同時に相手してどうやって勝てというのだ。
だが、御坂の精神に最もダメージを与えたのはそんな現実的な問題ではない。
信じられなかったのだ。
どこまでもお人好しで、どこまでもお節介焼きで、どこまでも無鉄砲で、それでいて最後には勝って帰ってきた男が。
自分を絶望の淵から救ってくれたヒーローが、洗脳され都合のいい兵隊にされているのだ。
その事が何よりも御坂に精神的なダメージを与えていた。
一方通行「ぎゃは」
海原「御坂さん!」
ドン、と御坂の身体が突き飛ばされる。
そしてその直後に突風が御坂の隣を駆け抜ける。
海原「ガ!!」
だが、それは突風ではない。
風のような速さで突っ込んできたのは学園都市最強の白い悪魔一方通行。
御坂「! 海原さん!!」
硬直した御坂を弾き飛ばした青年は一方通行に突撃されて入り口の方へと吹っ飛ばされた。
そして自らの運動エネルギーを全て海原にぶつけた一方通行は、海原に突き飛ばされて座り込んでいる御坂を見下ろす。
一方通行「あっはぎゃはァ!あンだけ格の違いを見せてやったってのにまだ分かンねェのかァ!?」
ズグリ、と御坂の心がえぐれる。
何をしても勝てなかった。
何をしても変わらなかった。
状況はあの頃と一緒だ。
こんな奴を敵に回した時点でこっちにできることなど何一つ-
垣根「こっちにゃ目もくれねぇのか?妬けるぜ一方通行」
ゴッ、と御坂の両脇から白い翼が空気を切り裂いて一方通行へと迫る。
三対の翼が左右でそれぞれ重なり合い、一方通行の背丈ほどの大きさとなって二方向から一方通行へと叩き込まれる。
しかし、一方通行の反射膜はその翼を難なく防ぐ。
巨大な翼はあらぬ方向へと弾かれてしまった。
一方通行「あァ!?何がしてェンだテメェはァ!!クソみてェな能力者が何しよォがこの俺に勝てるはずがねェだろォがよォ!!」
垣根「ハッ、今のうちに吠えいてろ。てめえみてえな半端モンがこの俺に勝てると思うな」
あくまで見下した態度で垣根に暴言を吐き散らす一方通行。
自分の攻撃が通用しなかったにもかかわらず余裕綽々で応じる垣根。
学園都市が誇るLevel5、そのツートップの二人は両者共に笑い合い、御坂を挟んで対峙する。
垣根(思った通りだ。正確な反射はできちゃいねえ。あいつの反射膜は万能なんかじゃない。
今ぶちこんだベクトルの中からあいつの反射膜に影響を与えたベクトルを抽出。そっから)
キュイィン
垣根「あ?」
垣根の背から生えていた右側の白い翼が音とともに全て消える。
そして白い翼の代わりに、振り向いて背後にいたのは黒いツンツン頭。黒い学生服。
上条「こっちは二人だ。忘れてんじゃねぇよ!」
垣根「チイッ!」
ぶん、と【幻想殺し】の右手が空を切る。
いきなりの出現にいきなりの奇襲。
慌てはしたがなんとか紙一重で飛び退き躱すことに成功した。
垣根「消えてろ一般人!」
残った三本の内、二本の【未元物質】がツンツン頭めがけて猛威を振るう。
もう一本で強引に荒々しく御坂を払い、得体の知れない相手とも一方通行とも距離を取るためにサイドにさらに飛び退く。
キュイィン
垣根「…またか!なんなんだテメェは!」
背中から伸びた【未元物質】はツンツン頭に届く前に、彼が振るった右手によって一瞬にして消え失せた。
確かに身体を真っ二つにしない程度には手加減したが、およそ常人が反応できる速度ではない。
例え【電子ドラッグ】を見たHALの兵隊であろうとだ。
麦野「【未元物質】の野郎、手加減しやがって。殺しさえしなけりゃ何したってかまわねぇだろ」
少し離れたところから麦野が構える。
同時に麦野の周りに青白く、小さな球体が4つほど出現する。
逃げ回る研究者や腰の抜けた人間を相手にした時には見せない【原子崩し】の本気モード。
ドドドッ!と小さな球体から【原子崩し】がツンツン頭の四肢を狙い放たれる。
一方通行「ギヤッハァ!」
突如、ツンツン頭への射上に白い悪魔が現れる。
四本の【原子崩し】は全て一方通行に当たり、彼の能力により反射される。
麦野「なっ!」
【原子崩し】は正確に反射されなかった。
一点集中。麦野の眉間めがけ先ほどの倍以上の速度で迫りくる。
ズドン!と【原子崩し】は麦野の額に命中した。
その衝撃で麦野は首を仰け反らせ、そのまま後ろに倒れこみそうになる。
フレンダ「麦野!」
ザ、と後ろに足を回し、麦野は踏み留まる。
仰け反らせた首をまっすぐ正面に戻し、ギロリと白い悪魔を睨みつけた。
麦野「テメェ女の顔傷物にしやがって…テメェの粗末なモン上下左右にバラバラにしてやっから覚悟しろ」
額から流れる一筋の血の滴をペロリと舐め取り、一層殺気を籠めて一方通行と対峙する。
【原子崩し】は麦野の能力。一方通行が多少手を加えようが麦野なら自分に向かったこようが対処できる。
原理的には麦野が御坂の能力を、御坂が麦野の能力を逸らすのとほぼ同じだ。
【原子崩し】の性質と一方通行の干渉により麦野にダメージはあるが。
ぱしん、と乾いた音が鳴る。
御坂(しっかりしなさい御坂美琴!!アイツを倒すくらいの、救うくらいの気持ちがなきゃ!アイツと対等になんか居られないでしょうが!)
自ら両の頬を叩き、気合いを入れ直す。
垣根が自分の能力を消してしまうような未知の強敵に対して一歩も退かずに闘うのを見てから。
麦野が怯えもせずに果敢に一方通行に立ち向かうのを見てから目が覚めた。
それに海原はこんな自分のために身体を張って助けてくれたのだ。
いつまでも呆けてうずくまっていたのでは申し訳も立たない。
御坂「みんな聞いて!!そこのウニ頭の右手はどんな能力も消しちゃう!!能力は通用しないわ!!」
立ち上がりざまに叫んで警告する。
ほんの一瞬で演習場は再び戦場と化しており、【未元物質】が【原子崩し】が縦横無尽に飛び交う。
麦野「んだそりゃ!どういう原理だ!」
御坂「分かんない!!」
さらに大声を張り上げながら自身も戦闘に参加する。
視点を変え、一方通行のチョーカーに直接干渉しようと電撃を放つ。
しかし、やはり一方通行を捉えることはできない。
一瞬で躱され、新たに一方通行が御坂に狙いを定める。
その瞬間を狙い麦野が【原子崩し】でコードの切断を狙うも、一方通行が無造作に振るった腕で反射される。
反射された【原子崩し】は麦野に避けられ壁に激突した。
フレンダ「…こっちはあんまり得意じゃないんだけど」
スッ、とフレンダが懐から黒い鉄の塊を取り出す。
それは小型の自動拳銃。素早く目標を定めトリガーを引く。
ガンガンガン!と銃弾が上条に向かって射出された。
上条「うおっ、と!」
だが、あろうことか上条はそれを見切って避ける。しかも【未元物質】を相手にしながらだ。
フレンダ「はあ!?何今の動き!」
見切って避ける、というよりはフレンダが引き金を引くより早く弾丸が通るところを察知しているようだった。
そのあり得ない動きにフレンダが驚愕の声を上げる。
御坂「あと私の【超電磁砲】にシラフで反応できる!!」
垣根「どチートすぎんだろ!予知能力者か!?」
御坂「違う!無能力者!!」
麦野「意味分かんねぇよ!!」
垣根(落ち着け。さっきから俺の能力を消すだけじゃなくよけてもいるってことは、右手以外にゃ効くんだ。
それに消えるのは右手が触れたモンだけ。能力が使えなくなるんじゃねえんだ。十分勝機はある!)
目の前の男に【未元物質】を振り回しながら考える。
現に消された【未元物質】は再び再生できたのだ。根本から能力を使えなくする訳ではない。
垣根「第三位!ジャミングを範囲絞って続けろ!コイツの右手に触れなきゃ消えやしねえだろ!」
御坂「分かった!」
垣根の推測は正しい。【幻想殺し】の範囲は右手のみ。
そして、右手が触れたものだけが消滅するのだ。
だから最初の接触時に垣根の翼は一度に全て消えずに右半分だけが消えた。
御坂の電磁波は何十本も出した電磁波の数本が消えただけ。だから一方通行の存在を捉えることができた。
垣根「それからよ」
バサリ、と【未元物質】がさらに大きく広がる。
ツンツン頭に背を向け、ほんの一瞬身体を後ろに反らすと、垣根は音速に近い速度で飛び出し、ツンツン頭を置き去りにする。
ゴッ、という音とほぼ同じ速度で垣根が向かった先は
一方通行「あン?」
ズガン!と【未元物質】の翼が御坂と麦野を相手にしていた一方通行へとたたき込まれた。
上条「テメェ!」
麦野「お前の相手はこっちだ」
今度は反射されることも逸らされることもない。
正常に打ち込まれて正常にダメージを与える。
【未元物質】をたたき込まれた一方通行は先ほどの海原のように吹き飛ばされる。
ただ、入り口の方ではなく演習場の側面へと吹き飛ばされた。
一方通行の身体からは大量の血液が噴き出す。
垣根「演算完了だ。てめえの反射は通用しねえ」
だが、壁に叩きつけられた際に一方通行の身体はビクともしなかった。
自身にかかる衝撃を壁全体、建物全体へ分散させたのだ。
一方通行のベクトル操作は未だ健在。少しも衰えてはいない。
【未元物質】が命中し、できた傷はみるみる内に修復され、体外に出た血液は巻き戻しの様に体内へ戻っていく。
普通なら即瀕死状態になるほどの大ケガは一瞬にして完治された。
一方通行「ギャハハハハ!お前面白ェなァ!だがよォ、焼け石に水かけたくらいじゃなンも変わらねェってンだよ!!」
あまつさえ服についた大量の血液を弾き飛ばし、破れた箇所は元通りに縫い合わされる。
内外ともに完璧に元に戻ってしまった。
垣根「…だろうな。【電子ドラッグ】見た以上、お前も化け物以上だろ。だが…」
一方通行「あ…?」
ガクン、と一方通行は膝から落ちる。
御坂のジャミング電波がミサカネットワークとの通信を断ち切ったのだ。
垣根「シメーだ。これで俺はメインプランへと成り上がる」
再び【未元物質】が無防備な一方通行の頭上へ命を刈り取るべく振り下ろされた。
一方通行「ギャは」
だが、【未元物質】は一方通行へ届かない。
ほんの数ミリというところで反射されてしまった。
垣根「な!?」
思わず声を上げる。さっきは反射膜をすり抜けていたはずだ。
それなのに、振り下ろした翼は一方通行の頭上ではね上がった。
一方通行「いいねいいねェ!最っ高だねェ!!その呆けたツラァ!!その馬鹿みてェなリアクション!!」
それ以前に第三位のジャミング電波が一方通行の生命線を断ち切っていたはずだ。
なぜこいつは立ち上がり、こんな顔をすることができる?
垣根「おい!第三位!!」
御坂「~っ、目ぇ覚ましなさいよこのバカ!!」
青い雷撃の槍が上条めがけて放たれる。
上条「ギンギンに醒めてるよ。なんで怒ってんだよ」
だが、ツンツン頭はそれをものともせずに異様な瞬発力で躱す。
至近距離の雷撃を難なく躱す動きは明らかに【電子ドラッグ】によるものだ。
麦野「クソが!ちょこまか動きやがって!」
躱したところを【原子崩し】が狙い撃つ。
当たりさえすればツンツン頭は分子レベルで粉々だ。
上条「頼むから怒りを鎮めてくれよ。上条さん好みのキレイな顔が台無しだろ」
【原子崩し】は右手に命中した。
しかし、分子レベルで粉々になるどころか【原子崩し】の方がかき消されてしまった。
麦野「だったらおとなしく殺されてろ!」
フレンダ「麦野!殺害はNGだって!」
垣根「んのカス共!!一般人相手になに苦戦して」
一方通行「なァによそ見してンですかァ!?」
垣根「!」
瞬時に顔だけ振り向くと一方通行がすぐ真後ろにいた。
垣根「っの」
とっさに【未元物質】を横一線に薙払う。
手加減などしない。ここで一方通行の殺害に成功すればその瞬間に垣根はメインプランへ昇格するのだから。
一方通行「らァ!!」
しかし、【未元物質】は一方通行に当たらない。
あろうことか【未元物質】は一方通行に操られ、垣根へと命中する。
垣根「ガフ!!」
至近距離で自分の能力を食らった垣根は上条たちの方へと吹き飛んだ。
一方通行「馬鹿の一つ覚えみてェに同じ能力の使い方してンじゃねェぞ雑魚メルヘン!!無害で有害なもン反射するなンざ朝飯前なンだよ!!」
どしゃり、と垣根は御坂たちの戦場に倒れこんだ。
御坂「垣根さん!!」
しかし、自分の能力にやられてしまうような男ではない。
起き上がりざまに近づいてきた上条に【未元物質】を振るい、牽制する。
垣根「…交替だ。このウニは俺がやる。お前らで一方通行を足止めしてろ。第三位がジャミングしてりゃある程度はふせげる。
範囲が狭まる以上完全にヤツの能力を奪うのは難しいだろうが、てめえらが相手できる程度にはなるだろ」
麦野「なに上から目線で指示出してやがる!」
今度は近づいてこようとした一方通行の地面に【原子崩し】を放つ。
いかにベクトル操作と言えど、ベクトルをかける対象を消失させてしまえば操作はできない。
しかしやたら頑丈な床はせいぜい大きくへこむ程度。
おまけに一方通行の演算の速さなら秒単位の時間稼ぎにもならない。
垣根「てめえらが苦戦してっからだろうが。コイツさえ倒せば当初の予定通りになんだ。3分で終わらせっから待ってろ」
近づいてくる一方通行に御坂がジャミング電波を放つ。
崩れ落ちることはなくとも少しは減速したようだ。
フレンダ「…腹立つけど一理あるわ」
垣根「てめえはこっちだパツキン。むしろ相性考えれば俺よりも有利だろ」
御坂と麦野が同時に一方通行に向かって同時に飛び出す。
【原子崩し】の青白い光が一方通行の反射膜を貫こうと何本も射出される。
垣根「つーことだ。さっきは逃げて悪かったな」
轟音と青い光を背景に垣根とフレンダは上条と対峙する。
【未元物質】の牽制をすべて見切った上条は未だ無傷だった。
上条「ふざけんな…」
垣根「あ?」
上条「ふざけんなっつったんだよ!この三下ァ!!」
先ほどまでは戦っていた三人を宥めるような穏やかな態度だった上条が突如として鬼の形相に変わる。
フレンダ「な、なに急にキレてる訳?コイツ…」
上条「ふざけやがって!!御坂と上条さん好みのお姉さんに代わって!!なんでお前が相手なんだ!!」
垣根「決まってんだろ。あいつらじゃいつまで経っても勝てねえから…」
上条「そんなくだらねぇことはどうだっていい!!」
垣根の口上を最後まで聞かず、怒りにまみれたツンツン頭は怒号を発する。
上条「たった一つだけ答えろ侵入者!!てめぇは御坂とあのお姉さんをハーレムに入れてんのか!?」
垣根「…は?」
フレンダ「? ??」
上条「ふざけやがって!その場所には俺がいるはずだったんだ!HALの世界さえ完成すれば…」
垣根「ちょっと待て。何?ハーレム?」
上条「とぼけんな!てめぇらも望んでんだろ!?一人の恋人に囚われなくても済む、
恋人の敵に回らなくても済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高なハーレムエンドってやつを!!」
垣根「」ポカーン
フレンダ「」アングリ
上条「今まで待ち焦がれてたんだ!そんな展開を!!何のためにここまで歯を食い縛ってきたんだ!?てめぇのその舌で、大勢の女の子をペロペロしてみせると誓ったからだろ!!俺だって主人公の方がいいんだ!脇役なんかで満足してんじゃねぇ!!命を懸けて…大勢の恋人でハーレムを作りたいんだよ!!…その夢は終わっちゃいねえ!…始まってすらいねえ!ちっとくらい長いプロローグで、絶望する訳にはいかないんだ!!…手を伸ばせば届くんだ!いい加減邪魔するな!侵入おぅふ!!!!」
ズゴム!!とフレンダの脚が上条の股間を蹴り上げた。
垣根「おぅふ…」
フレンダ「生理的に受け付けないわ。結局、あんたとは全っ然価値観合わない訳よ」
振り上げた脚を降ろし、手に持った拳銃を構えた。
上条「ふふ、俺はな…あらゆるタイプの女を自分のハーレムに入れたいと夢見てるんだ」
フレンダ「!?」
しかし、上条の動作に隙はない。急所を全力で蹴り上げたというのに身悶え一つしない。
上条「そして、あらゆる女性に対する接し方、愛し方も【電子ドラッグ】により修得したんだ…」
ゆらり、と少しだけ身体を動かし、フレンダの方を見て語る。
身の危険を感じたフレンダは一気に距離を取った。
上条「なあ、熱膨張って知ってるか?」
-屋内演習場施設内、駐車場ワゴン車内
白井「…5分経ちましたわ。行きますの」
絹旗「も、もう5分。もう5分だけ待ちませんか?」
ワゴン車の中にはランドセルを隣に置き、キッズ用の服に身を包んだ少女。
白地にでっかい名札が縫い付けられた半袖体操着と紺の短パン体操着に身も包んだ少女。
白井「そのセリフもう三度目ですの。いい加減観念なさいな」
絹旗「嫌です!超嫌です!こんな姿、しかも特殊性癖に見られるなんて…あなたはそれでもいいんですか!?」
白井「嫌だから10分も待ち時間を延長しましたの。ですが、いい加減お姉様が心配ですの。
ここまで連絡がないならきっと作戦にトラブルが…ひいてはお姉様たちが苦戦しているに違いありませんの」
絹旗「でも…でも…」
白井「絹旗さん、でしたか。私たちが少し恥をかくだけで仲間の皆さまを、学園都市を救えるのなら、それは素晴らしいことではありませんか?」
絹旗「…分かりましたよ」
白井「でしたらほら、忘れ物ですの」
絹旗「むぐ…何です?コレ」
白井「赤白帽ですの」
絹旗「な、なんでわざわざかぶせ」
ヒュン、とワゴン車内から二人の少女の姿は消えた。
-地下演習場
ヒュン、と二人の少女が演習場に現れる。
白井「いましたわ!アレですの!」
見ると青白い光線と青い雷撃をあらぬ方向に弾き、Level5を二人相手どっている痩身の白い人間がいた。
絹旗「うぅ…こうなったら超ヤケです。やい!一方通行!!」
一方通行「アァ?」
絹旗の呼び掛けに声だけで反応するアルビノ。
目の前のLevel5に夢中でこちらを向こうともしない。
白井「こちらを向きなさい!!」
その言葉でようやく一方通行は二人に向き直った。
一方通行「」
白井「」ドキドキ
絹旗「」ドキドキ
一方通行「クカカ…」
白井「…?」
絹旗「…」
一方通行「クカケキコクケキコクケコカカァアァァ!!」
白井絹旗「「!?」」 ビクゥ!
一方通行「ナメてンじゃねェぞこの三下がァ!」
白井「!」
ほとんど直感的に白井は身の危険を感じた。
ドウ!と一方通行が地を蹴る。それだけでロケットのように二人へ迫って行く。
絹旗「わ」
ヒュン、という音と同時に白井と絹旗の姿が消える。
間一髪で転移に成功。二人の姿は消えてしまった。
そしてランドセルと体操服の二人は演習場全体の中程で再び姿を現す。
白井「あ、危なかったですの」
絹旗「てゆーか超鬼の形相でし」
一方通行「そっちかァ!」
【空間移動】をしたにもかかわらず、白い怪物は数秒後には二人の前に現れた。
絹旗「!」
一方通行「うるァ!」
とっさに身構える絹旗。直後に絹旗の顔面めがけて脚を振るう一方通行。
その脚は構えた絹旗の両腕を捉え、人知を超えたスピードとパワーで振りぬかれた。
絹旗「っ!」
白井「きゃ」
その回し蹴りを食らった絹旗は後ろにいた白井を巻き添えに吹き飛ばされる。
そのスピードすらとてつもなく、このまま行けば二人揃って入り口の壁に激突する。
白井(間に合え…っ)
ヒュン、と再び二人の姿は消えた。
そして御坂と麦野の近くに倒れこみながら姿を現した。
本人はだれにもぶつからないように広い空間を転移先にしようとしたのだが、あまりのスピードに照準が狂わされたのだ。
【空間移動】を行使するとそれまで転移者が持っていた運動エネルギーはすべて消える。
なので、下手すれば壁に激突して全身ぐしゃぐしゃになりそうな程の推進力も全て消え失せた。
御坂「黒子!大丈夫!?」
白井「私は無事ですの!ですが絹旗さんが…!」
絹旗「っつぅ~…」
見ると絹旗の両腕は不気味なまでに紫色で、異様に腫れていた。
大量の内出血。どんなに楽観視しても腕の骨はイカれている。
麦野「絹旗!お前、能力は?」
絹旗「超使ってコレですよ!なんなんですかあの金髪!あのグラサン!!恥を忍んでロリコスプレしたってのに超効果ないじゃないですか!!」
白井「本当ですの!こんな服着て!ランドセルまで担いで!!間抜けにもほどがありますの!」
ボロクソに不平を言う白井と絹旗。
当然だ。
学園都市の命運を握る決戦の場で恥曝しな格好を強要された挙げ句、不発どころか敵が余計に逆上したのだから。
一方通行「あっはぎゃはァ!テメェらその格好に問題があるとでも思ってンのかァ!?」
いつのまにか戻ってきていた一方通行は先の二人を見下ろしながらしゃべる。
一方通行「哀れだなァ!いっそプチッとぶっ潰したくなっちまうくれェ哀れだなァ!!」
人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、それでいながら目だけは本気の怒りに満ちている。
一方通行「いいか!オツムの足りねェカス共にこの世の真理っつゥもンを教えてやらァ!!」
一方通行「中学生はなァ!!ババアなンだよ!!!!」
白井「」
絹旗「」
御坂「」
麦野「」
HAL「…さて、そろそろ私も参加しようか」
満を持して【電人】が動き出す。
ガコン、とHALが映っている壁と対面の壁がせり上がる。
20m×20m。その正方形の空間に侵入者は全員閉じ込められた。
そして六面全てに映し出されるのは1と0の狭間の世界の住人【電人】HAL。
HAL「なに、たいしたことはしないさ。先ほど使った手だ」
ふっ、とHALの姿が消える。
そして代わりに出てきたのは-
垣根「! このタイミングでか!」
ともにツンツン頭と戦っていたベレー帽の襟首を掴み、【超電磁砲】と【原子崩し】の方へと向かう。
フレンダ「うわ!?」
あまり速く動きすぎるとベレー帽の身体が耐えられなくなるのでそこまで速くは移動できない。
それでもツンツン頭を振り切るには十分だった。
倒れこんでいる【窒素装甲】を基点になんとか奮戦している【超電磁砲】と【原子崩し】。それに【空間移動】の風紀委員。
その傍に着地し、自らの【未元物質】を展開する。
白井「な、なんですのコレは!」
垣根「俺の能力だ!【電子ドラッグ】がくるぞ!」
絹旗「!」
ただでさえ一進一退のこの状況で誰か一人でも向こうに寝返れば致命的だ。
例え数で勝っていようと向こうはほとんど反則的な者しかいないのだから。
とはいえ【電子ドラッグ】は一度破っている。
映像も音も聞かなければなんの効果もない。
ただ、さっきと違うのは外部にいる一方通行と【幻想殺し】の存在。
垣根「第三位!目一杯ジャミングかませ!」
御坂「任せて!」
一方通行も【幻想殺し】も【未元物質】を突破できる。
だが、それも織り込み済だ。こちらの利点は向こうからはこちらの動向がうかがえないことだ。
正面から【幻想殺し】が来るなら能力が解除された瞬間【未元物質】を叩きこむ。
多少左右から回ってこようが【未元物質】なら対応できる。
後方から一方通行が来たら御坂のジャミング電波で即戦闘不能だ。
同時に来たらとにもかくにも【幻想殺し】を潰す。こいつさえいなくなればこっちの勝ちなのだから。
キュイィン
垣根(ここだ!)
【未元物質】もジャミング電波も消された瞬間、事前にスタンバイしていた別の【未元物質】を叩きこむ。
これで【幻想殺し】は潰した。
はずだったが
垣根「なにっ!?」
なんの手応えも無い。誰もいない。
【幻想殺し】の動きの速さからこの一瞬で背後に回られることなど-
上条「いいぜ。テメェが俺の狙ってる女の子たちでハーレムを作るってんなら」
だが、【幻想殺し】は回り込んでいた。
竜巻の生えた一方通行の右腕に左手でぶらさがり、一瞬にして回り込んでいた。
垣根「しまっ」
一方通行にその身体を放り投げられ、己の右の拳を握りしめ、ヒーローは振りかぶる。
上条「まずは!!その幻想をぶち殺す!!」
バキィ!と【電子ドラッグ】で強化された上条の拳が垣根の顔面を貫く。
それだけではない。垣根は自分の身体も脳も能力によって補強し、あらゆる弱点を補い、強化している。
それらが垣根の制御でなく、すべて【幻想殺し】によって強制的に打ち消された場合
垣根「ご、がああああああああああああああああ!!!???」
今まであった臓器が突如として体内から消失した場合とほぼ同意義。
当然垣根の身体はその急激な変化についていけない。
咆哮と共に全身から大量の血液が噴出し、辺り一面に血飛沫が舞う。
御坂「うそ…垣根さん!しっかりして!」
HAL「終わりだ」
白井「!」
目の前がカッ、と光る。
そして-
フュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
Iris Agate 00
Five-Over.Modelcase-"MENTALOUT"
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
ヒュン、という音が隔離空間を作り出している壁から大分離れたところで鳴った。
御坂「あ、あれ?」
思わず御坂はキョロキョロと辺りを見回す。
先ほどまで確かに【電子ドラッグ】が流れだす寸前だった。
それなのに、辺りは薄暗いままだ。おまけに閉塞感はない。
ずっと向こうまで広々とした空間が続いていた。
白井「私が【空間移動】いたしましたの」
ふう、と一息つきながら背後にいた白井が御坂の背中から手を離す。
まさに間一髪。Level5の第一位すら洗脳してしまう【電子ドラッグ】を見てしまえば、その効力にあらがう術はない。
絹旗「なんで私も…?」
白井「咄嗟のことでしたので…手の届くお二人を転移させましたの。私、二人分転移させるのが精一杯ですので…」
未だに倒れこんでいる絹旗の問いかけに白井が答える。
白井が【空間移動】で飛ばせる物体の最大質量は約130Kg。
質量は精度との関わりは無いが、たまたま近くにいた二人が軽い人間だったのだ。
白井「…どうしますか?この壁の向こうがどうなっているのか見当つきませんが…」
この三人以外が全員【電子ドラッグ】を見てしまったのであれば、向こうの戦力は暗殺プロ、Level5三人、対能力者用特殊能力者。
正直言って勝ち目はない。
先ほど入り口の方まで吹き飛ばされた海原も戦闘に復帰できるかどうか。
それに復帰できても白井の能力ではこれ以上一度に転移することはできない。
絹旗「…転移する直前ですが、フレンダも麦野もなんかしてるっぽいのは見ました。多分大丈夫だと思いますが…」
なんとか腹筋だけで起き上がり、絹旗が答える。
【電子ドラッグ】が流されたとはいえ、向こうに残っている三人は暗部組織の人間。
一筋縄ではいかないはずだ。
御坂「…垣根さんを放っておく訳にもいかないし、闘い続けるにしても撤退するにしても誰がどうなったか知る必要があるわ」
なおも闘い続けるにしても、これ以上の戦闘が勝ち目無しで一時撤退するにしても、状況を知る必要がある。
撤退してしまえば恐ろしい大惨事になりかねないかもしれないが、学園都市崩壊という最悪のシナリオはまだあり得ないはずだ。
あくまでも推測の域ではあるが。
白井「垣根さんの体重を考えると、多分彼しか転移できませんが…分かりました。お二人とも準備はよろしいですの?」
御坂「えぇ」
絹旗「両腕とも動かないし、準備もへったくれもありませんよ」
ヒュン、と再び三人は戦場へと転移した。
フレンダ(…終わった、かな…?)
【電子ドラッグ】が流されていた隔離空間でフレンダはうずくまっていた。
彼女が【電子ドラッグ】を回避するためにとった方法は、スタングレネードを目の前で爆発させること。
一時的に自分の視覚と聴覚を麻痺させることで【電子ドラッグ】の汚染から逃れたのだ。
フレンダ(自分も無防備になっちゃうから怖かったけど…
結局、中毒者は目の前で【電子ドラッグ】を流されたら見ざるを得ない。
根拠はないけど無事ってことを考えるとドンピシャだったみたいね…)
うずくまっていた上体を起こし、辺りを見回す。視覚はどうやら回復したようだ。
だが、ぐったりしている【未元物質】以外は誰もいない。
フレンダ「…あれ?麦野?絹旗?」
スタングレネードを爆発させたのだ。当然他の仲間もうずくまってるに違いない。
そう思っていたのだが、誰一人いない。
フレンダ(そーいえばあのツインテールは【空間移動】の大能力者だっけ。スタングレネードよりは安全な回避ができるか)
フレンダ「でもそれならなんで私を置いていく訳?」
ガシリ、と誰かがフレンダの肩を掴んだ。
フレンダ「ヒッ!!」
ビクン、と身体を強張らせた。後ろに誰がいる?
ツンツン頭か?一方通行か?
一方通行だったら最悪だ。このまま肩を握り潰されてもおかしくない。
???「フレンダ…」
女の声?自分の名前を知ってる?それ以前にこの声は…
フレンダ「麦野…?」
麦野「ああ」
フレンダ「ほっ…なんだ麦野か。驚かさないで」
言い終わる前に身体が振り回される。
プロレスのように腕力任せに肩と腕を捕まれ、そのまま投げ飛ばされた。
フレンダ「ギャン!」
ダン!と壁に叩きつけられた。
そしてそのまま床にへたりこむ。
フレンダ「ゲホッゲホッ。む、麦野、何して…?」
顔を上げ、麦野の方を見て絶望する。
自分が所属する暗部組織『アイテム』のリーダー、Level5の第四位【原子崩し】麦野沈利の隣にいたのは
上条「…上条さんのハーレムに一歩前進ですのことよ」
一方通行「ハッ、こンな老婆のどこがいンだか」
麦野「後でブチコロシ確定だ白髪ネギ」
【幻想殺し】と一方通行。
ヒュン、と避難していた三人が現れる。
絹旗「え?」
ゴッ、と巨大な【原子崩し】が放たれる。
その先にいた金髪ベレー帽の少女は青白い光に飲み込まれて見えなくなった。
御坂「うそ…」
青白い光は頑丈な壁に巨大な穴を空けていた。
白井「…そんな…」
そして、金髪ベレー帽の少女の姿は跡形も無く消えてしまった。
絹旗「麦野!?超一体何やってるんですか!!」
ブン、と再びHALの姿が映し出された。
HAL「…クク、殺すこと無く味方にしろと言ったはずだが…まあ、欲を張りすぎるのはいかんな」
-第七学区某所
食蜂「お腹空いた。[スイーツ食べたい]」
削板「さっき弁当食っただろ」
食蜂「喉乾いた。[ジュース買ってきて]」
削板「自販機で買ったやつがまだ残ってるだろ。全部飲んでからだ」
食蜂「疲れた。[ベッドで寝たい]」
削板「お前の治療を待ってる人間が大勢いるんだ。根性出せ」
食蜂「もぉ!!なんであなたには私の能力が効かないのぉ!?」
削板「ん?なんかしてたのか?」
食蜂「気付いてすらいないのぉ!?一体どんな精神力してるのあなた!!」
削板「健全かつ屈強な根性は何人たりとも犯せん。詰まるところ、貴様の能力より俺の根性が強かったのだ」
食蜂「わ、私の能力を精神論で破るのぉ!?それはないわぁ!!それだけは絶対にない!!絶対何かタネがあるはずよ!!」
削板「そう言われてもなあ…」
削板「とにかく、さっさと次の避難所に行くぞ。中毒者どもが紛れ込んでる可能性だってあるしな」
食蜂「あなたの体力と私の体力を一緒にしないでくれないかしらぁ…いい加減眠たいんだけど…」
削板「根性出せ」グッ
食蜂「もぉヤダ…垣根さんはここまで積極的じゃなかったのにぃ…垣根さん早く帰ってこないかしら…」
削板「はっはっは!!安心しろ!第二位ならすぐ帰ってくる!」
食蜂「…あら?大した自信ねぇ。強化されたLevel5の第一位なんて簡単には倒せないと思うけどぉ?いくら垣根さんでも」
削板「心配いらん!なんせ俺が知る人間の中で一番根性あるヤツが向かってんだからな!」
食蜂「…それってさっさ会った人たち?そこまで強そうな能力者には見えなかったけど…」
削板「言っただろ!アイツの強いのは能力じゃない!根性だ!!」
食蜂「…はぁ?」
-同時刻、第二学区地下演習場
麦野「ったく、クソッタレの第五位のせいですっかり忘れてたぜ。私の使命っつーやつを」
ボボボ、と麦野の周りに小さな青白い球体が現れる。
麦野「HALの最大の敵であるテメェを倒せばもうHALの天下は磐石。
私も序列が繰り上がって全員ハッピーエンドだ。フィナーレくらい盛大にブッちゃけてやんよ」
上条「おいおい、物騒すぎるだろ。それじゃダメだ」
パシン、とヒーローは自分の右拳を胸の前で左の手のひらに打ち付ける。
上条「みーんな上条さんのお嫁さんになってハーレムエンド。やっぱこれでせう」
一方通行「相変わらずテメェは節操っつゥもンがねェな」
コキリ、と一方通行が首を鳴らす。
一方通行「あンな痛いコスプレするやつのどこがいいンだ。恋愛対象は10歳までだろ」
絹旗「…イ、イカレてます。三者三様に超ぶっ飛んでます」
白井「お、お姉様…!」
縋るように白井は御坂の指示を仰ぐ。
この状況をどうにかできるのはお姉様しかいない。そう思っているのだ。
御坂「…」
だが、御坂も何も答えられない。
麦野には一度勝った。しかし、あの時は婚后も食蜂もいた。
おまけに今回は【超電磁砲】に使える金属類すらほとんどない。ジリ貧になって終わりだ。
一方通行には例え相手がシラフだろうが勝てない。ほんの2ヶ月前に完封されたばかりだ。
弱点があるとはいえジャミング電波はすぐに消されてしまう。
上条に至っては攻略法すらない。
【超電磁砲】だろうが10億ボルトだろうが全部消されてしまう。
おまけに身体能力が異常に飛躍して捉えることすら困難だ。
この三人を同時に相手しろというのか。
こちらにはすでに腕がボロボロで戦えない人間がいるというのに。
御坂「ーっ、黒子!飛んで!一旦退くわ!!」
勝てない。勝てるはずがない。このまま挑んでもやられるだけだ。
おまけに洗脳されて自分の能力を好き勝手使われる可能性だってある。
ならば、最悪の結果になる前に退いた方がいいに決まってる。
白井「わ、わかりましたの!」
御坂の指示を受けてすぐに白井は二人の身体に触れる。
一度に駐車場までの転移は白井の限界距離の問題上不可能。
白井の能力では一度どこかに転移し、そこから駐車場へ転移しなければならない。
麦野「逃がすか!」
ゴウ、と【原子崩し】が射出される。
【空間移動】の演算が終わる前にたたき潰すつもりだ。
御坂「くっ」
バチィ!と御坂が【原子崩し】を弾く。
これまでに受けたどの【原子崩し】よりもはるかに威力が高く、重かった。
そこから一瞬の間を置き、三人の少女は【空間移動】に成功した。
麦野「チッ、本っ当に腹立つなあのジャリガキ」
一方通行「なァに、どォせ逃げらンねンだ。かまやしkbpgd」
???「…ぁ…ヵ」
上条「ん?」
-屋内演習場、駐車場
ヒュン、と三人の少女は駐車場に現れた。
二度の転移は滞りなく成功。あとは追撃が来る前にいち早く脱出するだけだが
絹旗「!」
白井「こ、これは…」
三人の目に飛び込んできたのは絶望。
暗い駐車場は踊るような光で明るく照らされていた。
御坂「うそ…」
乗ってきた三台のワゴン車は黒煙をあげて燃え盛っていた。
絹旗と白井が出陣するまでは確かに三台とも無事だったのだ。
おまけに御坂が電磁波で周囲の敵の有無を確認していた。
それでも車は燃やされてしまった。運転手の安否も分からない。ここからどうやって退却すればいいのか。
【空間移動】にも限界がある。白井に11次元演算を延々と行わせて逃げ切れるかどうか。
誰が追っ手にくるか分からないうえに、どこに敵が潜んでいてどこから湧いてくるかもわからない。
そんな神経をすり減らす状況で白井に二人抱えさせて連続で転移させて逃げ切れるのか。
絹旗「っ!誰か来ます!」
突如絹旗が叫ぶ。見ると建物の陰から三台のバイクが現れた。
演習場の規模故の広い駐車場に大きなエンジン音を響かせ、三台のバイクはヘッドライトを三人に当てて突っ込んでくる。
白井「くっ、うちひしがれてる暇すらありませんの!」
とっさに白井は鉄矢を指の間に転移させ、臨戦体勢に入る。
おそらくは矢をタイヤに打ち込みパンクさせるつもりだ。
御坂「! 黒子待って!」
しかし、御坂がそれを制した。
白井「お姉様!?」
当然白井は驚く。このまま突っ込んでこまれたら三人とも弾き飛ばされる。
しかし、御坂はそれでも制した。
なぜならその内の一台、そのライダーの格好に見覚えがあったからだ。
ギキイィィ!と三台のバイクは三人の前で車体を横に滑らせて止まった。
ライダーは全員フルフェイスのヘルメットを被り、誰かはわからない。
しかし、右端の一人は明らかに見覚えがある。
科学技術が発達した学園都市でなおも颯爽と走り続けるZⅡ。
その車体にまたがっているのはキツくなった赤い革ジャンに身を包んだ女子高生。
固法「御坂さん!白井さん!乗って!!」
白井「こ、固法先輩!?」
【透視能力】の強能力者、『風紀委員』一七七支部部長、固法美偉。
御坂「固法先輩、どうしてここに!?」
固法「話は後!!早く逃げるわよ!!」
フルフェイスのヘルメットを被りながら、エンジン音に負けないように固法は声を張り上げる。
その緊迫した雰囲気につられて御坂と白井の二人は慌てて固法の後ろにまたがった。
???「嬢ちゃんはこっちだ!」
絹旗「わ!?」
真ん中の黒い革ジャンがRXから降り、絹旗を軽々と抱える。
そしてそのまま後部に乗せ、自身も再びRXにまたがりハンドルを握った。
???「これで全員か!?」
最後の一人が声を張り上げる。声色からして男。
しかもよくよく見ればジャケットの上からでも分かるくらいに筋骨隆々の大男だ。
ゴバアア!!といきなり轟音が駐車場に響きわたる。
音の正体はおそらく爆発。大小様々な瓦礫をまきあげ、演習場の屋根が吹き飛んでいた。
???「な、なんだありゃ!!」
黒い革ジャンが驚愕の声をあげる。
音の正体は爆発ではなかった。
真の正体は翼。屋根から突き出たのは暗い夜空で燦然と輝く巨大な白い翼。
その白い翼はぐんぐん演習場から出ていき、ついにはその根元を現した。
御坂「垣根さん!?」
その根元にいたのは血まみれになったLevel5の第二位【未元物質】垣根帝督。
遠目からでも瀕死状態でぐったりしているにもかかわらず、意識だけはしっかりしている。
巨大化した【未元物質】を操り、地下の壁も地上の施設もすべて破壊して脱出しようとしている。
だが、血まみれの大天使のような垣根を撃ち落とすべく流星群のように先ほどの倍以上の大きさの【原子崩し】が次々に垣根を襲う。
【未元物質】の翼を振るい【原子崩し】を打ち払うも、あまりの威力に身体のバランスが危なかしげにグラグラと揺れた。
そうこうしているうちに今度は黒い翼が垣根を襲う。
下から迫りくる黒い翼は垣根がガードで張った白い翼をすべて貫き、ぐちゃぐちゃにかきまぜるように蹂躙する。
そして黒い翼は無造作に【未元物質】の残骸ごとまとめて垣根を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた垣根は【未元物質】の羽根を周りにまとわせ駐車場へと落下してきた。
高所から叩き落とされ、激突すれば今度こそ命はない。
しかし【未元物質】の羽根が垣根よりも速く落下し、垣根の落下点、三台のバイクの前に集まる。
そして垣根は大きな円となった【未元物質】の上に音もなく落下した。
落下の際の衝撃は、一見そうは見えないが【未元物質】に吸収されたようだ。
近くで見る垣根は一層凄惨だった。
致死量と言われてもおかしくないほどの血にまみれ、もはや赤黒くないところがないと言っていいほどだ。
その垣根が首だけを動かし、バイクの方を見る。
垣根「 ツ レ テ ケ 」
それが最後の力だったようで【未元物質】は消え、垣根はぐったりとコンクリートの上で気絶した。
???「…後で洗車だな。」
あまりの出来事に見とれていた一向はようやく動きだす。
筋骨隆々の男が垣根を抱き抱え、VMAXの後部に乗せた。
それを合図に三台のバイクは屋内演習場の駐車場から飛び出した。
-???
匪口「スゲー!超スゲかった!!もはや感動モンだよありゃー!!」
屋内演習場とは別の施設でメガネの青年はモニターを前にはしゃぐ。
そのモニターの半分には砂嵐が、もう半分には地下演習場の様子が様々な角度から映されている。
匪口「そこらの3D映画なんかより断っ然迫力あったな!こいつ編集して公開すりゃー全米なんて簡単にスタンディングオベーションだろ!!」
実は、このモニターには今の今までずっと学園都市の頂上決戦が流されていた。
その一部始終を食い入るように観戦していた青年は大満足で顔中に笑みを浮かべて大はしゃぎだ。
匪口「いっそガチで編集してみるか?歴代興業収入の順位が軒並み全部繰り下がるぜ?なあ、ミサカ」
匪口「…ミサカ?」
いつも返ってくるおかしな口調の少女の返事がない。
不審に思い、匪口はモニターに背を向けた。
するとそこには血を流してうつ伏せで倒れているクローンの少女。
対になる位置で血を流して仰向けで倒れている【死角移動】の青年。
匪口「…ミサカ?査楽?」
そしてその間に悠然と立っている、さらしを巻いた女子高生。
ぶるり、と匪口の身体が震える。
顔を下に向けると、自分の身体から赤黒い液体にまみれて鈍く光る刃物が生えていた。
匪口「…ゴフッ」
刃物が引き抜かれると同時に、匪口は床に倒れこむ。
どちゃり、という音が室内に響いた。
匪口「な、んで…」
苦痛に顔を歪ませ、傷口を押さえつけながら匪口は問いかける。
匪口「六位の能力を解析して作られたこのシェルターは…一部の理事会のみ知る極秘施設だったはずだ…なのに、なんで…」
???「…さあな。ただ一つだけ言えることは」
後ろから匪口を刺した金髪グラサンの男は自分の口角から溢れる血液を拭って吐き捨てる。
土御門「この世界を構成する要素は科学だけじゃねぇってことだ」
-第二学区、大通り
???『高速には乗るな!【六枚羽】に狙い撃ちにされるぞ!』
フルフェイスの中では無線を介した音声が響く。
屋内演習場から脱出した三台のバイクは第二学区の大通りを爆走していた。
???『ハハッ、誰もいない公道ってのは気持ちいいな!180出しても事故る心配がねぇ!』
固法『この状況で楽しめるなんて流石ね、先輩!』
???『どっちも大概だがな!』
エンジン音と風を切る轟音の中ではまともに会話もできない。
千変万化する状況に臨機応変に対応するためにヘルメットそのものが簡易無線機の役割を担っている。
有効範囲は約200M。携帯電話と違い、基地局を介することもなく極めて限定的な範囲内での通信である。
そのためにプログラム人格による干渉を心配する必要もない。
御坂「固法先輩!何がどうなってるんですか!?」
その固法に身体を密着させながら御坂が叫ぶ。
白井「なぜ私達の場所が分かりましたの!?てゆーかノーヘル3ケツスピード違反で免停まっしぐらですの!!」
そのさらに後ろで御坂に身体を密着させた白井が叫ぶ。
しかし、二人の声は固法に届かない。絶え間なく響く轟音に加えてフルフェイス内は無線の真っ最中だ。
聞き取れないし、答えられない。
二人に出来るのは前の人間にしがみつくことだけだ。
???『敵!来たぞ!』
筋骨隆々の男が叫び、無線を介して他の二人に伝わる。
ミラーに映るのは大量の自転車。そのペダルをあり得ない速度で回す無数の人間。
???『んだありゃ!?学園都市であんなチャリンコ軍団見たことねーぞ!?』
固法『風紀委員のトレーニング用の自転車です!』
そしてさらにあり得ないことにチャリンコ軍団はバイクとの距離を詰め初めている。
バイクの速度はすでに180キロを超えているのにだ。
???『やっちまうか!?横須賀!』
横須賀『振り切れるか分からんがな。』
横須賀と呼ばれた筋骨隆々の男と黒い革ジャンの男は片手をジャケットの中に忍ばせる。
再び取り出した手には手のひらサイズの何かが無理やり2~3個握られていた。
そして速度を維持しながらその何かをそのまま地面に落とし、走り去る。
ほんの数秒後、ドゴゴォン!という音と共にそれらは爆発した。
後ろから襲いかかる自転車集団はその爆発に飲み込まれた。
固法『な!?なんですかいまの!』
横須賀『何の変哲もないただの手榴弾だ。』
固法『風紀委員の前でなんてもの使ってるんですか!』
???『こうでもしなきゃ撒けねえだろうが!それに狙ったのはコンクリの方だ!多分死にゃしねぇから安心しろよ!』
言われて固法はミラーをちらりと見る。
すると爆煙の中から出てくる人数は大分減っていた。
想定されていない速度で想定されていない地面を走らされた自転車は、タイヤがパンクしていたりそのフレームがイカれていたり。
もはやまともな追跡はできないようだった。
???『……ぃ…!…り…い…らあた…い!固法先輩!聞こえてたら頭を振ってください!』
ふいに今までの三人とは別の声がヘルメットの中で響く。
横須賀『む?』
???『なんだ?』
固法『御坂さん?どうやって無線に介入してるの?』
うなずきながら固法が応える。聞こえてきた声は今後ろに乗せている少女の声だ。
御坂『あぁ、やっと通じた。今目の前で飛び交ってる電波に周波数合わせて無理やりしゃべってます!
一方的にしゃべるのはできるんですけど、さすがに受信はできないんでジェスチャーで答えてもらえますか?』
固法『えぇ』
そう言いながら固法は小さくうなずいた。
3台のバイクはそのままのスピードで第二学区の大通りを道なりに猛進していく。
御坂『えっと、とにかく固法先輩も黒妻さんもそっちのムキムキの人も味方でいいんですよね!?』
黒妻『へえ、俺だって分かってたのか』
横須賀『ムキムキの人て。まあ構わんが。』
固法『ええそうよ!』
高速で走るバイクを操りながら固法は力強くうなずく。
御坂『分かりました!この学区から脱出できたら詳しい事情を教えて下さい!3人とも助けてくれてありがとうございます!!』
誰もいない第二学区にさらに轟音が加わる。
それは後方の空から聞こえる轟音。プロペラが空気を叩く音だ。
黒妻『来たぞ!【六枚羽】だ!!』
大通りの上空に巨大な軍用ヘリがサーチライトを光らせ現れる。
最高速度で軽く音速を超える軍用ヘリは難なくバイクへ近づいて来る。
横須賀『気付かれたか!小道入れるか!?』
黒妻『この速さで曲がれるわけねえだろ!』
固法『どうするんですか!?このままじゃ蜂の巣ですよ!?』
限界までアクセルを回そうが馬力では完全に負けている。
かといって、曲がれるようなスピードまで落とせば狙い撃ちだ。
できることはギリギリまで引き付けたあとに一度完全に止まって細い道に入るくらいだが、それまでに【六枚羽】が火を吹かないかどうか。
白井「お姉様!確認しますがあのヘリは無人ですのよね!?」
御坂の後ろで白井が声を張り上げる。
御坂「ええ!そのはずよ!」
そして御坂も声を張り上げる。固法と違ってヘルメットをしていない御坂には白井の声はしっかり届いた。
白井「それを聞いて安心しましたの」
今度は御坂には聞こえないような声で白井はつぶやく。
その顔はにっこりと笑っていた。
シュン、と白井の姿が消えた。
御坂「黒子!?」
一度前方の何もない空間に転移。そして手頃な建物を見つけ、さらに二度転移してその屋上へ。
三度の転移を終えた白井は胸を張って【六枚羽】を見据える。
白井が降り立った建物はまだバイクも通過していない。
一足先にほんの少しだけ先に回り込んだのだ。
数秒もすればバイクも【六枚羽】通過する。
白井「学園都市の最新鋭兵器。相手にとって不足なしですの」
彼女の考えていることは明白だ。一人で【六枚羽】を相手するつもりだ。
都市一つくらいなら廃墟にして帰ってこれる兵器を相手に重火器すら持たずに中学生が立ち向かう。
いくらなんでも無謀すぎる。勝てる訳がない。
普通なら。
白井は自分を囮するつもりはない。玉砕するつもりもない。
忘れてはいけない。彼女の能力を。そして、彼女が今担いでいるものを。
白井「そこっ!」
【六枚羽】が白井の横を通り過ぎる。同時に白井の担いでいたピンクが消える。
ズガガガガガガガガガ!!と耳をつんざく音が第二学区に響いた。
【六枚羽】のプロペラがなぜか斜め上を向き、テール部分を切り裂き、プロペラはぐちゃぐちゃになっていく。
みるみる内に【六枚羽】は無惨な形になってしまった。
白井「あらあら、プロペラと本体を分離させるつもりでしたのに…。さすがに速すぎて照準が狂いましたわ」
身体の向きは変えずに流し目で地面へ墜ちていく【六枚羽】を見ながら白井はつぶやく。
やがて【六枚羽】は墜落し、到底表すことのできないようなとてつもない音と共に盛大に爆発した。
【空間移動】の大能力者、『風紀委員』一七七支部所属、白井黒子。
あとにも先にもランドセルで最新鋭軍用ヘリを撃墜した、ただ一人の女子中学生である。
-三十分後、第二十二学区スパリゾート『安泰泉』
自転車集団と【六枚羽】の追撃を振り切り、着いた先は第二十二学区だった。
この学区は地上面積こそ狭いが、地下に向けて開発が行われている。
この学区なら新たな【六枚羽】に襲われる心配もなく、また、スパイ衛星で監視される心配もない。
ちなみに、この学区の最下層部分はまるごと核シェルターになっている。
この学区の住人及び個々人の理由でこの学区にいた人間はそこに避難している。
また、地震に対する備えもある構造であるというゴシップもあるためにわざわざ隣の学区から避難しにきた者もいた。
一方通行の能力が地震と同じ現象を起こすのかは分からないが。
だが、一向は最下層まで行かずに第三階層で降り、なぜかスパリゾートの入り口にバイクを横付けしていた。
白井「…駐車違反ですの」
固法「非常事態にそんな条例適用されないわ」
御坂「…固法先輩がそんなこと言うとは思いませんでした」
固法「あら、私としては二人にこんなこと言われるのが意外で仕方ないけど?」クスクス
白井「しかし、ここにいて大丈夫なのですか?第一位の能力が来るのでは…」
固法「それは心配だけど…先輩が大丈夫って言ってるしね。なんの根拠もなしにそんなこと言う人じゃないわ…多分」
横須賀「黒妻、手伝ってくれ。」
黒妻「おいおい、さすがにそいつは仮病院送りだろ」
横須賀「そう思ったんだがな…よく見てみろ。」
黒妻「?………マジかよ、血ぃ止まってやがる」
横須賀「さっきは意識もあったぞ。病院に連れていくと言ったら断られてな。」
黒妻「…暗部の人間は病院が嫌いなのか?この娘も行かないっつって聞かねぇんだ」
絹旗「事情も分からない部外者になるより事情を知ってる関係者になりたいだけです。何がどうなってるのか聞いたらすぐ病院行きますよ」
黒妻「つってもその腕めちゃくちゃ痛いだろ。さっきから脂汗ダラダラだぞ?バイク乗ってる時も脚だけで乗ってたろ」
絹旗「…そりゃ超痛いですよ。ですが、どうしてもこの件から降りたくないんです。
病院行っても何かできることを見つけるために現状だけでも知りたいんです」
黒妻「…そうか。それだけの覚悟があるならもう何も言わねえよ。ただ、我慢できなくなったらすぐ言ってくれ」
絹旗「気持ちだけもらっておきます」
-スパリゾート『安泰泉』、ゲームセンター
『安泰泉』は俗に言うスーパー銭湯がメインであるが、他の設備も充実している。
ゲームセンター、ボーリング場、ショッピングモール等々、どちらかというとアミューズメント施設である。
一向は黒妻と横須賀の先導でその内のゲームセンターの中へと入っていった。
意識のない垣根は黒妻と横須賀の二人が垣根の腕を首に回し、少し浮かせながら運んでいた。
黒妻より横須賀の方が幾分背が高いためバランスが悪くはあったが。
横須賀「黒妻、ちょっと頼む。」
黒妻「おう」
二人がかりで垣根を運んでいた片割れは、もう片方に垣根を預けてとある扉の前に立った。
扉には何も書かれていない。スタッフルームか、在庫置場か、はたまた用具室かも分からない。
その扉の鍵を横須賀がガチャリと開ける。
電子ロックでないのは能力対策か、もしくは別の意味があるのか。
横須賀「入ってくれ。」
扉が開かれ、横須賀は再び垣根の脇の下に潜り込みながら促す。
扉をくぐると、そこは在庫置場でも用具室でもなかった。
御坂「…え?」
どこかのマンションのリビングにいきなり入ったような光景だった。
白を基調として家具も一式揃っている。とてもゲームセンターにある空間ではない。
???「うわぁ!?だ、大丈夫なんですかその人!!」
そして、聞き慣れた声が一向を迎える。
御坂「佐天さん!?」
白井「な、なぜここに佐天さんが?」
佐天「あ、御坂さんに白井さん!二人は無事ですか!?」
柵川中学のセーラー服に身を包んだ佐天がそこにいた。
心配そうな顔で一向を伺っている。
???「そっちの部屋ベッドがある。そこに寝かせとけ。救急箱もその部屋のどっかにあるはずだ」
そして、リビングの奥に佐天とはまた別の制服に身を包んだ女子高生がいた。
少しウェーブがかった髪で、なぜか刃の部分が石でできた巨大な木製のノコギリのようなものを床に突き立て、柄に両手を置いている。
横須賀「ああ、分かった。応急手当だけでもしておこう。…一緒に来い。その腕もやってしまう。」
絹旗「…いいんですか?」
横須賀「重傷の小学生を放置するほど俺の根性は曲がってはいない。」
絹旗「私は小学生じゃ…ってこの格好じゃ超小学生にしか見えませんね…」
???「……おい、あの優男はどうした。一緒じゃないのか?」
御坂「…え?私?」
???「そうだ。一緒にいるという報告だったが?」
御坂「………海原さんのこと?」
???「イヤ…あー、そうだ。そいつだ」
御坂「…ごめんなさい、海原さんは私を庇って…」
???「! 死んだのか?」
御坂「ううん、たぶんだけど死んではいないと思う。でも、きっとあのプログラム人格の支配下に…」
???「ホッ…チッ、どうやら平和ボケしているようだな」
御坂「あ、でもその海原さんは本人じゃなくて」
???「その偽者の方に用があったんだ。…クソ、いっそ死んでしまえば手間がはぶけたというのに…」
横須賀「…リビングに8人か。さすがに狭いな。」
ふと横須賀が垣根を連れていった部屋から現れた。その隣には黒妻と絹旗もいた。
固法「あの人は手当てしなくていいんですか?」
黒妻「断られちまった。寝てりゃ治るってよ。人間じゃねぇぞアイツ」
固法「コンクリート建築の二階が全部吹き飛ぶような爆発に巻き込まれて五体満足で帰ってきた人のセリフですか?」
黒妻「俺ァさすがに集中治療室行きだったっつの」
横須賀「そこのソファーに座ってくれ。立ったままでは少々やりづらい。」
絹旗「…分かりました。超お願いします」
???「ふむ、これだけの人数が来るとは…本命の作戦は失敗かの」
ふと、また別の部屋の方から白髪でサングラスをかけ、白衣のを着こんだ博士のような老人が現れた。
博士「一応確認するが…一方通行とプログラム人格の討伐は失敗、でよいかな?」
御坂「…ええ」
博士「そうか。…そちらのリーダーはどうした?」
横須賀「合流する暇などなかったのでな。現場に置いてきた。その内帰ってくるだろう。」
手当てをしながら、白衣の老人の方を見向きもせずに横須賀が答える。
博士「…薄情じゃの。それとも信頼の表れか。まあよい」
ふぅ、と一息ついて白衣の老人は一同に向き直る。
博士「ようこそ、我が『メンバー』のアジトへ。窮屈だろうが、準備ができるまでしばしここで待機してくれたまえ」
御坂「『メンバー』…あなた達も暗部ってやつ?」
博士「いかにも。もっとも、わしが偏光レンズの製作に没頭しとる間に
プログラム人格めに大半の構成員をもってかれたがね。今残っているのはわしとアス」
???「おい」ギロリ
博士「…もとい彼女だけになってしまった」
そう言いながら、白髪の老人は手近なソファーに腰をかけた。
絹旗「? そっちの革ジャンカップルとこのテロリスト面は違うんですか?」
固法「カッ…!?」
黒妻「…まあ、デザインお揃いだしな。そう見えるか」
横須賀「誰がテロリストだ。」
博士「そちらの者たちは私の一味ではない。君たちが合同任務であったように、我々もまた合同で任務に当たっていたのだよ」
絹旗「…なるほど。でも、自分とこのアジトをこんな簡単にバラしていいんですか?」
博士「なに、すぐに引き払うさ。次来た時には物置か何かになっとるだろうよ」
白井「そ、それよりここにいて大丈夫ですの?今にも学園都市崩壊の危機が訪れるかもしれないですのに!」
佐天「そ、そうですよ!さっきからここにいろとしか言われてないから不安で仕方ないんですけど!」
電波ジャックの際にたしかに警告し、そして実演していた。
学園都市がプログラム人格の居場所に攻め込んだ場合、この街を地盤から破壊すると。
博士「ふむ、たしかに。だが、今しばらくは安心なはずだ。第六位めがたとえ刺し違えようとも一方通行の能力を封じているはずだからの」
落ち着き払った様子で白髪の老人は答える。
最悪の事態は起こらないと確信しているようだった。
御坂「第六位…?まさか、あそこに一人で突っ込んだの!?いくらなんでも無謀すぎるわよ!」
もともと第六位は御坂たち後発隊の後詰めとして合流する予定だった。
しかし後発隊が地下演習場へ突入した後、入り口は封鎖された。以降、恐らく出入口はふさがれたままだったはずだ。
ならば、第六位は御坂たちが脱出したあとに一人であの地獄に入っていったことになる。
通常よりも大幅に強化された、自分より序列が上のLevel5が二人。そしてどんな能力も無効化してしまうという人間がいる地獄に。
いくら刺し違える覚悟があろうとも、その状況でたった一人で一方通行の能力を封じ込められるはずがない。
???「なに言うとんねん。ずっと一緒に居ったやんか」
御坂「!?」
ふと、アジトの入り口の方から今まで聞こえなかった低い声がした。
その声に驚き慌てて入り口の方を向くと、青い髪の大きな少年がいた。
横須賀「なんだ。もういたのか。」
黒妻「よ、リーダー。早かったな」
そして青い髪の少年の右腕に抱え込まれる形で身を寄せていたのは、殺されたと思われていた金髪にベレー帽の少女。
フレンダ「ん?能力切った訳?」
???「ああ」
絹旗「フレンダ!?な、え!?なんで!?」
もはやこの世にいないと思っていた少女のいきなりの出現に絹旗が驚いてソファーから立ち上がる。
横須賀「おい、急に立ち上がるな。」
フレンダ「なんでってなによ。死んでほしかった訳?」
そのリアクションを受けて金髪ベレー帽の少女は不機嫌そうにジト目で体操服の方を見た。
絹旗「そんな訳ないじゃないですか!…よかったぁ…超よかったです」
憎まれ口を叩かれ、現実であることを実感し、絹旗は安堵したように再びソファーに座りこんだ。
フレンダ「…ニャハハ、ただいま絹旗」
御坂「でも…本当になんで無事なの?」
白井「私達はてっきり第四位の能力に飲み込まれてしまったものと…」
その現場にいた三人はたしかに見たのだ。
【原子崩し】に飲み込まれ、跡形もなく消えてしまった瞬間を。
フレンダ「さすがに私も完全に死を覚悟したわ。でも結局、間一髪でア が能力使いながら助けてくれた訳よ」
絹旗「…え?誰です?」
一瞬だけ名前が聞こえず、絹旗が聞き返す。
自分ではしっかり喋ったはずなのに、声が出なかったので不思議がるフレンダ。
その隣では背の高い青髪の少年が意味深にフレンダを見下ろしていた。
フレンダ「…コホン。あー、このイケメンな青髪ピアス君が助けてくれた訳よ」
青ピ「おいおい誰がイケメンや。照れるやんか」
あっはっは、と笑いながらおどける青髪ピアス。
その流れをどことなく不自然に思う者はいたが、それを追及する者はその中にはいなかった。
佐天「…んー、中の上?」
青ピ「高評価として受け取っておくわ」
青ピ「てなわけで!暗部組織『ウォール』のリーダー。Level5の第六位【隠密行動】(ステルスアクト)や。よろしうな」
佐天「ええ!?第六位の人だったんですか!?」
簡単な自己紹介に佐天が驚く。
すでにそれとなく言及していたのだが、話の流れでいつの間にか忘れてしまっていた。
青ピ「せや。あんま人に言わんといてな?これ一応秘密やさかい」
固法「先輩…さっきあの人のことリーダーって言ってましたよね?」
黒妻「…今いるチームのリーダーなんだ。詳しく聞かないでもらえると助かる」
固法「………分かりました」
黒妻「ワリィな。いつかちゃんと話す」
御坂「でも…アンタ一人でどうやって一方通行を?」
青ピ「簡単な話や。バレへんようにコイツでチョーカーのコードだけを撃ち抜いたんよ」
そう言って青髪ピアスは懐から拳銃を取り出してクルクルと回した。
白井「ど、どうやったらそんなことできますの?」
青ピ「んー、その辺話すとごちゃごちゃするから1から話したいんやけど…博士はん、まだ時間かかるか?」
博士「ふむ…全てのプログラムが作動するまで…あと20分前後、といったところか」
青ピ「ほんなら手短にパパッと話そか。時間限られてるさかいあんまり質問せんといてな」
青ピ「僕たち『ウォール』と『メンバー』は君たちが敗れた場合の備えるためと混乱抑止のために動いてたんや。
僕は単独で第二学区。博士はんとそこのJKで第二十三学区。黒妻はんと横須賀で火事場泥棒の撲滅や」
横須賀「俺と黒妻はスキルアウトの間ではそれなりに有名なのでな。警備員には分からんようなこともいくらか知っている。」
プログラム人格による電波ジャックの後、すぐさま強行策を取った学園都市は都市住民全員に避難勧告を出していた。
だが、都市住民全員が避難するということは学園都市が空っぽになるということだ。
性根の悪い者ならそのタイミングで火事場泥棒となりあらゆるところに侵入する。
もちろん警備員もそれを想定していたが、避難民の誘導に大半を割かれていたため、どうしても手の回らない所が生じていた。
それをカバーするのが横須賀たちの任務である。
そのため心当たりのあるスキルアウトの根城などを回っていたのだ。
おそらくは、他にもこの任務を与えられた暗部組織があるのだろうが。
黒妻「それで学園都市中を走ってたら偶然2ケツしてる美偉に出くわしたんだ」
白井「そもそも固法先輩と佐天さんはなぜ避難していないのですか?」
御坂と白井は上からの招集依頼のために、避難せずに第二学区へ向かった。
だが、固法と佐天にそんな依頼は来ていないはずだ。
佐天はいち早く避難しなければならないし、固法は警備員のサポートに回らなければならない。
にもかかわらず、なぜバイクを乗り回すという行動を取っていたのだろうか。
佐天「それが…初春が急にどっか行っちゃったんですよ。支部の窓から飛び降りて。それで初春を探すためにあちこちバイクで走り回って…」
御坂「…」
固法「で、ほとんどの人間の避難が終わって街中が閑散としてきた頃に先輩たちに出くわしたの」
黒妻「俺も美偉も互いに避難しろの一点張りでな。しょうがねえから一旦ここにそっちの娘だけ置いて一緒に行動するってことで妥協したんだ」
佐天「さすがに私がいても邪魔そうでしたんで。いろんな意味で」
固法「…え?」
横須賀「見てて飽きなかったぞ、こいつらの痴話喧嘩は。」
黒妻「痴話喧嘩っておい」
青ピ「ほんで僕は自分の任務が終わってから屋内演習場の施設でもう一働きして、そのまま君らに合流や。気ぃつかんかったと思うけど」
絹旗「合流って…いつからですか?」
青ピ「最初っからやよ。駐車場で君らのコト待っとったんやから」
御坂「うそ…私の能力であの馬鹿以外は全員把握してたはずなのに」
屋内演習場に着いてからすぐ、御坂は電磁波を限界まで張って探知を行っていた。
その時点ではたしかに駐車場には後発隊しかいなかったはずだ。
「ま、僕の能力はこーゆータイプやからね」
白井「!?」
佐天「あれ!?消えた!?」
なんの音も前触れもなく、青髪ピアスの姿が消えた。
消えたあとも声は聞こえているので【空間移動】ではない。たしかにそこにいるのだ。
御坂「…? 電磁波も返ってこない…どんな能力?」
「存在解像度をがっつり下げてるんや。ちなみに電磁レーダーでなくとも僕を感知することはできひんよ」
これがLevel5の第六位【隠密行動】の能力だ。
極限まで存在解像度を下げることにより、あらゆる探知機を欺き、気配などの第六感すら欺く。
だからこそ、御坂にも探知されず、HALにも見えない。
とはいえ、見えない感じないというだけで実際にはそこに存在しているのだ。
触れることはでき、すなわち攻撃が命中すればダメージも与えられる。
青ピ「っと。で、君らと一緒に居って戦闘の邪魔にならんように隅っこでおとなしうしてたんや」
フレンダ「そういえばなんで戦闘に参加しなかった訳?」
再び姿を現した青髪ピアスに驚きもせずにフレンダが問いかける。
誰にも気付かれないというアドバンテージがあるならあの戦闘も少しは状況が変わったように思えるが。
青ピ「あくまで僕は保険の保険や。あんまりちょこまか動いとったら第一位に気付かれるかもしれんかったからな」
後詰めとはいえ、あくまで一方通行の能力を封じ込めるのが青髪ピアスの任務。
無闇に戦闘に参加すればさすがに気付かれるだろうし、強化された一方通行ならどこかのベクトルから違和感を感じ取ってもおかしくはない。
さっさと一方通行の能力を封じ込めようにも、とてつもない速さで動く一方通行のチョーカーのコードのみを狙い撃つなど不可能。
だからこそ虎視眈々と狙っていたのだ。
一方通行が無防備になるその瞬間を。
青ピ「ほんで最初の【電子ドラッグ】は【未元物質】の中に君らと一緒に入って、
二回目の【電子ドラッグ】はフレンダの近く行ってスタングレネードでやりすごしてん。
で、間一髪でフレンダを僕の能力でかくまって、君らが消えて油断してる第一位のコードを狙い撃ちっちゅうわけや」
横須賀「…む?そういえば、あの黒い翼は誰の能力だ?」
青ピ「あぁ、あれも第一位やよ」
横須賀「……コードを撃ち抜く前だよな?」
青ピ「イヤ、後や」
黒妻「は!?じゃあまだ能力奪えてねえじゃねえか!」
垣根の【未元物質】と対になるように出てきた黒い翼。
あの翼が一方通行の能力でできたものなら、一方通行の能力は奪えていないということになる。
そうなればこの場所も危うい。今すぐにでも学園都市が崩壊してもおかしくない。
青ピ「大丈夫やって。なんや第二位の捨てゼリフに呼応して出てきただけみたいやし」
黒妻「捨てゼリフ?」
青ピ「えーっと、なんやったかな…たしかあそこに居った連中と二~三言葉交わした後に
『ロリコンってだけじゃ悪にはならない。ああいった連中が異端者扱いされてんのはお前みたいなヤツがハシャいでるせいだ』」
フレンダ「『権利の獲得?思想の自由の保証?馬鹿馬鹿しい。そういった口上がテメェの首を絞めてることくらい、気付かないのか?』
あまりに正論すぎて覚えちゃったわ。結局、アレはその言葉を聞いて逆ギレした第一位の暴走の産物な訳よ」
御白絹「」
固法「…はい?ロリコンがなんですか?」
黒妻「つーかなんでそんなワードが出てくんだ?」
横須賀「Level5の第一位がロリコンということもあるまいに。」
青ピ「イヤ、ロリコンやねん。生粋の」
フレンダ「10歳以上は恋愛対象外って豪語してたわ」
固黒横「」
???「…おい、学園都市の人間はみな年端もいかぬ者に恋愛感情を抱くようになるのか?」
博士「…少々話しかけないでくれないかね。今科学の結晶の側面に触れてめまいがしているところだ」
???「そ、そうか」
青ピ「で、僕はフレンダ抱えて【未元物質】に無理矢理捕まって一階まで脱出してたんやけど、アレ見たら撤収できひんやろ。
せやからもっかい行こと思たんやけど【未元物質】追っ払ったら第一位もぶっ倒れよった。その後も寝たきりやったし、任務は無事成功や。
あの黒い翼は一時的なもので、常に出すのは不可能なんやろ。どのみちあのチョーカーが直るまで第一位は学園都市の崩壊なんてできん」
淡々と話す青髪ピアス。しかし、言ってることはとんでもないことだ。
人一人抱えて大天使にぶらさがって一階まで上がり。
下から襲いかかる流星群を瓦礫の中でやり過ごし。
悪魔の翼の出どころとその後の状態を危険を冒してわざわざ一階から確認しているのだから。
青ピ「で、屋内演習場から脱出したら地下鉄まで徒歩で行って、地下鉄を線路沿いにアルマジロみたいな駆動鎧着てここまで来たんや」
絹旗「…超ツッコミどころ満載なんですけど」
青ピ「堪忍な。時間切れや」
そう言って青髪ピアスは壁にかけられていた時計を指す。
時計の長針は先ほどの位置から90度ほど変わっていた。
博士「…では、御坂嬢。来てもらおうか」
おもむろに白髪の老人が立ち上がり、御坂を促す。
御坂「…え?」
博士「まだ我々の任務は続いているのだ。これで失敗したら…ふむ、学園都市は今度こそ終わりかの」
青ピ「ホンマはこないな重大なことを表の、しかも中学生にやらせるなんて反対なんやけどな」
暗部組織のリーダーである二人はすでに御坂が全てを知っている前提のように一方的に話す。
しかし、御坂にとってはなんのことかさっぱり分からない。
御坂「ちょ、ちょっと待ってよ!私に何をさせるの!?こんな状況で私にできることなんて…」
博士「私はあの電波ジャックの後、混乱に乗じて第二十三学区にある君の切り札を少々いじってきた。
あやつに気取られる可能性があるので君がここに来るまで起動させられなかったが、先ほど遠隔で起動させた」
御坂「! …なんでそんなこと知ってるの?…それにアレはこの状況じゃまだ役には…」
青ピ「それを役に立たせるために僕らは動いてたんや」
ニッ、と青髪ピアスが笑いかける。
青ピ「僕の仲間も一人あのプログラム人格に連れてかれてもうてん。ちょいと酷やけど、よろしく頼むわ」
-???
何ということだ…
一方通行と匪口裕也がやられるとは!!
一方通行はあの状況から考えるに【未元物質】…もしくは…第六位もありうるか
…匪口裕也が防衛していた『スフィンクス』は破壊され、残る『スフィンクス』は一体
万が一に備えていたのが裏目に出たか
トマス=プラチナバーグをはじめ、あの施設を知る人間は全員こちら側のはずだが…
…今は考えるべき時ではない。動くべき時か
とはいえ、各学区で新しい『スフィンクス』のダウンロードは始めている
一方通行が一時戦闘不能とはいえ、向こうの戦力は粗方削いだ
それに発動条件こそ不明だが、あの状態でも一方通行には未知の力もある
全ての要素を駆使し、護りきれる
そして一方通行のチョーカーが直り次第…見せしめに第七学区でも崩壊させるか…
ジジ、と城の脇に控えていた『スフィンクス』にノイズが走る。
HAL「…!」
そして、最後の『スフィンクス』の姿が消える。
【電人】HALを護るために作られたスーパーコンピューター専用防衛アプリ『スフィンクス』はすべてなくなってしまった。
HAL「バカな…」
そして、電脳世界に静かに足音が響く。
電脳世界に構築された城、HALの『ピラミッド』。
その前に現れたのは電脳世界でも現実世界でも幾度も撃退した、HALが最も恐れた少女。
御坂「…久しぶりね、HAL」
学園都市が誇るLevel5の第三位【超電磁砲】御坂美琴。
HAL「…君か。クク、一時間ぶり、かな?……どうやって『スフィンクス』を突破した?」
窮地に立たされてなお、HALは笑みを崩さない。
いつもの笑みを浮かべながら侵入者に問いかける。
御坂「…第六位の仕業よ。第二学区の変電所。それから屋内演習場にある『スフィンクス』用の非常用電源を時限式で壊したらしいわ」
これが『メンバー』と『ウォール』に課せられた、保険の保険の策である。
電脳世界でプログラム人格への攻撃が駄目なら現実世界で。
現実世界でのスパコンへの攻撃が駄目なら、それを目眩ましに電脳世界へ現実世界から攻撃する。
スパコンを稼働させる供給源を断ち切ったのだ。
これが自身のテリトリーに供給源があれば、例えば原子力空母のように発電機構そのものがある施設をHALが支配していれば話は別だが。
HAL「…馬鹿な。変電所にも非常用電源にも兵隊は配置していた。爆弾の類いなどどこにも…」
【電人】は思わず憤慨する。
HALとてそのことは百も承知。
だからこそわざわざ自分の守りを可能な限り少数精鋭に絞り、それらの場所に兵隊を割いた。
さらには、このような事態を想定して別学区の極秘施設に『スフィンクス』を一台設置していた。
対策は万全だったはずだ。
御坂「『オジギソウ』?ですって。私も詳しく知らないけど」
青髪ピアスが第二学区の変電所及び後発隊が来る前に『スフィンクス』専用の非常用電源に設置したのは小型のカプセル。
そのカプセルの中に入っていたのは学園都市製ナノサイズ兵器『オジギソウ』。
回路も動力も持たないが、複数の周波数を組み合わせることで反応を組み合わせ、自在に操作ができる。
反応によってはコンクリートすらえぐり取るこの兵器を青髪ピアスは小型のカプセルに詰めて設置していたのだ。
そして、同時にほんの一分間『オジギソウ』を作動させるだけの単純なプログラムを設定したリモコンも近くに設置。
御坂たちが『メンバー』のアジトへの撤退を確認したのち、博士が時限式でリモコンを作動させ『オジギソウ』も作動。
変電所も非常用電源も破壊され、電力を断たれた『スフィンクス』は電脳世界から姿を消してしまった。
御坂「…とにかく、これで『スフィンクス』は全滅。ようやく決着をつける時がきたようね」
バヂヂッ、と御坂の身体が青い電撃がほとばしる。
学園都市を混乱の極みに陥れ、御坂の大切な存在を次々に洗脳していったことへの怒りを表すように電撃は増していく。
ドウッ!と青い雷撃の槍が【電人】HALを貫くべく射出される。
HAL「…忘れてはおるまい。今の私の防衛プログラムは『スフィンクス』だけではない!」
バチィ!と雷撃の槍は下から突き出た巨大な樹に弾かれる。
そう、今やHALをネット上で防衛する要は『スフィンクス』だけではない。
その登頂には巨大な花を咲かせ、その枝には牙の生えた触手を実らせ、その幹には断末魔の表情をびっしり並べ、世界樹が御坂を見下ろす。
HAL「『朽ちる世界樹』は【守護神】が構築した最も強固な防衛プログラムだ!いくら君とて一筋縄ではいくまい!!」
世界樹の陰になり、見えなくなった『ピラミッド』からHALの声が電脳世界に響き渡る。
HAL「新たな『スフィンクス』のダウンロードは他学区にて行われ、すでに7割ほど完了している!」
ブン、ブン、と未来人のような巨大なヒューマノイドが世界樹の前に何体も現れる。
腕を巨大な鎌に変化させ、御坂を削除しようと身構える。
HAL「新たな『スフィンクス』のダウンロード完了までおよそ30分!
それまでに君がこれらを含む私のすべてを攻略することなど以て不可能!!
この場さえしのげば君は私に近づくことすらできぬ!もはや君に勝ち目などない!諦めよ!御坂美琴!!」
御坂「…アンタさ、何か勘違いしてない?」
静かに、しかしHALには届く声で御坂はそっとつぶやいた。
HAL「…なに?」
御坂「たしかに私は夏休みに『書庫』から情報を得るために初春さんの防衛プログラムに挑んで、結果として負けた。
でもあの時の目的は情報収拾。今回みたいに破壊が目的なら、私はスパコンの十台や二十台くらいまとめてスクラップにできるのよ?」
『絶対能力者進化実験』にて一方通行に敗北した御坂はからめ手に回り、研究所を潰す手段を採った。
その際、一番最初にとった行動はネットを介して研究所の機材を破壊すること。
そのあまりの出力により機材はショートして発火。そのまま大火事になる研究所すらあった。
HAL「…っ!それがどうした!現に君の能力は『朽ちる世界樹』によって阻まれている!このプログラムをしのぐことなど…!」
御坂「そう。私の能力は効かない。アンタが勘違いしてるのは私が『スフィンクス』を破壊したと思っていること」
HAL「……!!」
御坂「木山先生と『妹達』を退けたあと、私は『スフィンクス』を破壊せずに接続だけを切ったのよ」
これが御坂の切り札。
そしてそのことを知らされていた『メンバー』のリーダーである博士はそのチューニングを行い、御坂の到着を待ってネット上に接続したのだ。
御坂「私の能力 +『スフィンクス』…いったいどうなると思う?」
ズン!と御坂の後ろに古代エジプトの巨大なオブジェが現れる。
御坂が右手を掲げると、その垂直線上、造形の頭の部分に青い光が集まり巨大化していく。
最終的にできた光の塊の形は巨大な銃弾。直線で突き進むのに一番適している形だ。
御坂「スーパーコンピューター専用攻撃アプリ『超電磁砲』。これが私の本命よ」
ゴッ!と青い光が一閃。
太く、青い光の筋が電脳世界に刻まれていた。
その光の筋はヒューマノイドを貫き、太い世界樹の幹を貫き、そして-
HAL「ご、がああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
【電人】HALと『ピラミッド』を貫いた。
砂嵐のノイズが吹き荒れる。
【電人】HALのプログラムを一から十まで解析し、分解することはできない。
たとえ学園都市第三位の頭脳でも。
そんなことができるのは『謎』を食糧とする魔界の住人くらいだ。
それを直感で理解していた御坂は圧倒的物量にてプログラムを破壊する方法をとった。
御坂(…? これは…)
その圧倒的物量のジャミングデータが放たれたために、一時電脳世界は混沌とする。
局地的なバグが至るところで発生し、データというデータが混乱する。
そして、その混乱がある現象をもたらす。
御坂(これは…記憶?)
データ化された御坂の意識に、ある光景が送り込まれていく。
御坂(コイツの記憶が…流れこんで…)
-七年前、錯刃大学病院特別脳病科治療施設
春川「…そうか。君はあの本城博士の娘か」
???「はい。10月18日に生まれた1人…。そんなのが名前の由来だそうですけど、意味わかります?」
当時既に国内で並ぶ者の無い脳科学の権威だった私が…治療と研究を依頼されたうちの一人
それが彼女だった
春川「10の18乗分の1。漢字文化圏では極少数の単位。『六徳』の10倍。『弾指』の10分の1。つまり刹那か」
刹那「すごい。やっぱり何でも知ってらっしゃるんですね」
被験者番号010番。本城 刹那
春川「あの人らしい。父上の論文はいくつも拝見しているよ」
刹那「父からあなたの噂も聞いてます。あらゆる知識に精通した10年に1人の天才だって」
刹那「だから今回会うの不安だったんです。父もそうだけど…そういう人ってたいがい奇人変人の類だから」
春川「…ククク、実際に会ってみた感想は?」
刹那「全然大丈夫!!むしろそのぐらい不気味な方が好みです!」
彼女は、聡明だった
物わかりが良く饒舌で知識に富み
肉体的にも何ら問題無く健康だった
刹那「…そうそう、それで…私が思うに…」
刹那「あ、ぎゃ、うぎゃああああああああああああああああああ!!!!」
ただひとつ、脳のほんの一部を除いては
刹那「ぎゃああああああああああ!!ぶああああああああああああああああ!!」
1日に数回…彼女は突如異常なほど攻撃的に豹変する
脳が体のコントロールを失うのだ
研究者「おさえろ!!いったん眠らせろ!!」
脳細胞が徐々に破壊される原因不明の病
同じ症例は彼女以外発見されていない
その原因と治療法を科学的に探すのが…私の仕事だった
刹那「…………すいません、教授…。こんな…見苦しくて…」
春川「気にする事はない」
刹那「…?」
春川「あくまで原因は脳という物質の一部の異常だ。病気が理由で君の人間性が貶められはしないのだから」
刹那「…ありがとうございます。さすが教授!」
春川「?」
刹那「慰め方も合理的でわかりやすい。反論の余地がない分…無理矢理慰められちゃう」
春川「…ククク、君もたいがい変人だな」
刹那「はい!変人ですがよろしくお願いします!」
脳科学は…まさに彼女のような特殊な症例の患者の協力で進歩してきた
どんな未知の病気であろうが…私には治す自信があったし
私にとって彼女は…貴重な実験体のひとりにすぎなかった
…だが…
ジジジジ ジジジジジ…
ミンミンミンミン ミンミンミンミンミン…
春川「刹那!どこにいる?」
ジジジジ ジジジジジ…
ミンミンミンミン ミンミンミンミンミン…
春川「…ここか。検査の時間だよ。血液と脳波測定を……何をしてるんだ?」
刹那「…ああ、ちょっと。大学の研究の資料集め。一応現役なもので」
春川「…アブラゼミの幼虫だな。明日の朝 羽化するために出てきたのか」
刹那「…やっぱり知ってますか」
春川「天才の私が知らない事は無いに等しい。アブラゼミの寿命は4~5年」
刹那「はい」
春川「五令幼虫で7~8月に羽化し、バラ科樹木に多くつく」
刹那「はい」
春川「和名の由来は油っこいからではなく鳴き声が油を揚げる音に似ているからで…」
刹那「あ、もうそこまでで」
刹那「私が興味を持っているのは遺伝学です。特に『自分』を保つ遺伝子に」
春川「…自分?」
刹那「一生の100分の99を土中で黙って過ごすのに
残りの数日を自在に飛んで鳴く事ができるのは…遺伝子の中にはっきりと刻まれた『自分』があるから」
刹那「一概に人間の脳にあてはめてはいけないけど…
決して自分を見失わない彼に…私は共感を覚えます」
刹那「『自分』がはっきりしてるものって好き。
もちろん春川教授、不気味でプライドが高くて何でも知ってるあなたも」
春川「…クククク、セミと同じレベルではちっともうれしくないよ」
本城刹那は確かな知性と
春川「行こう」
そして確かな『自分』を持っていて
刹那「はい」
彼女と過ごす空間は…たとえようもなく楽しかった
…だが
刹那「グ、ガああ、アああアアアああアアああアアアアアああアアアアアアアああアアアああああああ!!!!」
プライドをかけたあらゆる治療も効果を為さず
刹那「んああああああああああああ!!ぎやあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
彼女の脳が正常な機能を保てる時間は…その時すでに1日の半分も無くなっていた
それはつまり、脳の破壊が進んでいる事…
彼女の『自分』が無くなっていく事を意味していた
刹那「あははははっ!!それ理論じゃなくて詭弁じゃないですか!!」
春川「詭弁じゃない。この理論に則れば私は十秒で地球を破壊できる。
君の父上に確かめてみたまえ。反論できなくなるはずだよ」コンコン
刹那「あー面白い…教授のその常に企んでる顔で話されると一晩中聞いていたいくらい!」
春川「ククク…」
刹那「…でも無理。多分もう来る。私じゃない私が」
春川「………刹那」
刹那「最近ではもう…知ってるはずの知識が思い出せない。出るはずの言葉が出てこない」
刹那「なのに…私じゃない時間は増えていく」
刹那「壊れる…壊れる…。『自分』が…本城刹那が無くなっていく」
彼女が…私の顔の判別すら不可能になるのは…それからほどなくしてだった
刹那「教授…お願い。私がどんなに壊れても『今』の私を忘れないで。
『今』ここであなたと話している…この一瞬の刹那を忘れないで」
一一一そして私が一一一一
春川「…馬鹿な」
彼女を0から創ることを欲したのも…その時だ
研究者「もはや…彼女の脳細胞はズタズタに破壊された。脳死判定を出すのも時間の問題か」
科学者「…あの春川教授がなんの手も打てなかった」
研究者「なんだこの悪意の固まりのような病気は…。常識では考えられない」
科学者「まさか…人為的なものじゃないだろうな」
研究者「…それはいくらなんでも考えすぎだろ。ただ、確かな事実は
彼女の脳は……もう戻せない 」
望む事は何だってこの頭脳で叶えてきた
不可能を知った私の頭に充満したのは
かつてない屈辱 挫折
…そして…無念
末期の彼女は…凶行や暴言を繰り返し、一日中が獣のようで…とても正視に耐えうるものではなかった
彼女に外見だけでも本来の『自分』が戻ってきたのは…息が絶えてからだった
君が 遠い
0と1 死と生
隣り合っているはずの両者の距離が…何故こんなにも遠いのだ
CTスキャンによる脳の断面
脳波測定で得られた脳電図
膨大な資料は皆 ただの壊れた物体の観察日記だ
断じてこれらは君ではない
君であってなるものか!!
君を 造ろう
美化もせず 風化もせず
1ビット足りとも違うことない君を造ろう
どんな手段を使ってでも
本当の君にもう一度会いに行こう
-???
HAL「…私の負けだよ。全ての防御を破られ、ネット上おけるあらゆる権限を封じられ… 私にはもはや…何ひとつ動かすことが不可能になった」
御坂「…」
『超電磁砲』の攻撃により【電人】の姿はボロボロになり、『ピラミッド』は跡形も無く消滅した。
手足や頭、至るところにノイズが走り、腹部に大きな風穴が空いている【電人】の姿は見るも無惨であった。
そんな【電人】を前にして、御坂は黙ってうつむいていた。
HAL「たとえ君が攻めこんでこようとも…こうはならない自信があった。
プログラムの防御に限らず全ての要素を駆使して…護りきれる計算だった」
ボロボロにになってもなお、【電人】HALは笑みを崩さない。
それでいながら達観した表情で御坂を見据えている。
HAL「君が『スフィンクス』を利用したことも含め…計算外の要素がいくつかあったようだ」
御坂「なんで…」
HAL「…?」
御坂「あの女の人……刹那、さん?」
HAL「……」
御坂「あの人のために…こんな…?」
HAL「…ククク、そうだとも。それが…1と0をつなぐ存在【電人】HALが作られた理由だったのだ」
それがHALの答え。
日本の人口の約8割、そして機構を制圧し、日本中の電子頭脳を乗っ取り、学園都市でも同じように全てを支配しようとした。
そこまでして成し遂げたい【電人】の目的はなんてことはない。
生存。
ただ生きることだった。
1と0の狭間…彼女と二人で。
HAL「…私の記憶を見たのかい?ククク、その手の能力は【心理掌握】のものだろうに…」
御坂「…狙ってやったんじゃない。ただの偶然よ」
御坂はHALから顔を反らし、少しうつむいていた。
あの記憶見せられ、HALの動機のすべてを知った御坂の中では【電人】のイメージはすっかり変わってしまっていた。
御坂「…アンタが出した2つの要求のうち…攻撃するなっていうのは分かったけど、スーパーコンピューターまで奪う意味が分からなかった」
あの時点で『スフィンクス』はまだ二台残っていた。
さらに『朽ちる世界樹』も。
確かに、結果としてそれらの防衛プログラムは破られてしまった。
だが、だからといって『スフィンクス』を増やすのに学園都市の8割のスパコンを奪う必要性などない。
あの時HALが言った言葉の通り、1と0の狭間の世界でただ生きることが目的だったのなら。
御坂「でも…今なら分かる気がする。脳科学の権威であるアンタが…
学園都市のスーパーコンピューターの演算能力をかき集めないと不可能だと判断した、あまりにくだらない…ささやかな願い」
そっと、御坂は顔を上げた。
そして、神妙な面持ちでHALと向き合う。
HAL「…そう。春川が…【電人】HALが世界中のすべてを敵に回してとってきた行動のベクトルは…たったひとつ目的に向かっていた」
権限を奪われた【電人】はいっそ清々しさを感じさせる表情で、すべてを語り紡いでいく。
HAL「『新たな刹那を構築せよ』…これがすべてだった」
御坂「…でも、できるわけないじゃない。いくらアンタが自分の脳をコピーできても
それによって脳のしくみをどんなに詳しく知れたとしても、学園都市のスーパーコンピューターを使っても」
御坂「思い出だけを頼りに…彼女を0から造りだすなんて」
HAL「…バカげた話だろう?中学生でさえ簡単に導き出せる結論に…天才である私が、春川が、どうしても辿りつきたくなかったのだ」
いつもの笑みもいくらか自嘲気味に見える。
自分の内側を曝け出し、自分の思いを打ち明けていく。
HAL「シェークスピアを見たこともない男が猫をキーボードの上で歩き回らせ
いつか偶然にもシェークスピアの戯曲を書き上げるのを待っている…そんな無駄な挑戦だ」
決してデータのバグによるものではなく、自分の意志で【電人】HALは思いを打ち明けていく。
HAL「だから私は…春川英輔を殺害した」
御坂「…!」
HAL「本物の彼女を造ろうとすれば何兆回何京回のシミュレーションを繰り返しても
何千台のスーパーコンピューターを使っても…何百年かかっても、とても足りないからだ」
御坂「そんな…だからって…!」
HAL「…あの日、避けることもできたはずのとどめの一撃を…春川は躱さなかったよ」
御坂「え…?」
HAL「私の出した結論を悟ったのだ……いや、本来は…彼自身が理解していたのだろう。
生身の自分が生きている内には決して彼女には会えないのだと」
御坂「…」
HAL「計算に必要な環境を作ることも、永遠とも思える時間を計算に費やすことも、HALにしかできないのだから…」
傷つけられたプライドへの恐るべき執着。
それに隠された彼女への深すぎる愛情。
そのためには何を犠牲にすることも迷わない…。
たった一人の女性のために生きて死んだこの犯罪者を御坂は否定できなかった。
御坂にだっているからだ。
できるなら生き返ってほしい人や、命懸けの戦場に何度乗り込んででも救いたい人間が。
HAL「さて、御坂美琴。これから与える2つは…私を倒した君への敬意だ」
ポン、と1mほどの大きな注射器が御坂の前にどこからともなく現われた。
御坂が受け取るまでもなく、ふわふわと電脳空間に浮いている。
HAL「ひとつは【電人】HALを作る過程の副産物…【電子ドラッグ】の正式なワクチンだ」
御坂「…!」
HAL「TVでもネットでも、あらゆる媒体の発信源にこのプログラムをインストールすればいい。
四六時中サブリミナルを流し続け…【心理掌握】ら精神系能力者に全国行脚をさせずとも3日後にはほぼすべての兵隊の洗脳を解くだろう」
HAL「そしてもうひとつは」
パッ、と電脳空間に先ほどの注射器の半分ほどの大きさのパネルが現れた。
警告マークと共に書かれている文章は
【電人】HAL
このプログラムを消去します。
御坂「……………!!」
そして、その文章の下に "OK" と "Cancel" の2つのボタン。
HAL「あらゆるスパコンとの接続も絶たれ…私の計画はもはや続行不可能だ。
この状態ではたとえ何億年かかっても…私の望む計算結果は得られない」
御坂「………そんな……!」
HAL「春川は私に自己破壊の権利を与えなかった。最後のエンターは…外部の人間が入力しなくてはならないのだ」
そしてついに【電人】から笑みが消える。
HAL「御坂美琴。君が私をデリートしたまえ」
御坂「…ッ、できるはずないでしょう!?【電子ドラッグ】のワクチンまで作ってて!!
しかも…あんなところで戦わなくても私たち戦力を削ぐことだってできたのに!!」
先発隊の人間を一人でも洗脳できれば後発隊の存在を知ることは簡単だった。
そして、後発隊がどんな編成でどこに待機してるかも知ることはできた。
現にHALは演習場に対能力者用の切り札である上条のみを投入し、他の兵隊は非常用電源の防衛に回している。
ならば、後発隊の場所も知っていたはず。
そして、一方通行に後発隊がいたビルを地盤から崩壊させるなど遠距離から攻撃することもできたのだ。
にもかかわらず、HALは敵対勢力をできる限り洗脳し兵隊にするという不確実な手段を採った。
御坂「それはつまりアンタが…計算を続けようとする自分を…誰かに止めてほしかったから!!」
HAL「…そこまで読める君ならばなおさら分かっているだろう。
この計算を止めた時点で【電人】HALは…存在の意義も存在の意志も失うことが」
御坂「…それ、は…」
HAL「このまま生かされても無意味な苦痛が続くだけだ。消せッ!!」
御坂「う、うあっ…」
戸惑う御坂。すべてを知った今、そこまで非情になることはできない。
彼は彼女に会いたかっただけだ。こんな手段を採らずとも他に方法があるのではないか。
ためらう御坂に対し【電人】HALは再び笑みを取り戻し、御坂に最後通牒を叩きつける。
HAL「早くしたまえッ!!人工知能の私に恩や情は通用しないぞ!!
君さえいなくなれば…一方通行と麦野沈利に学園都市を完膚なきまでに破壊させるように指示を出すくらいはできるんだ!!」
学園都市の崩壊か、消去を望むプログラム人格の消去か。
他に選択肢などない。
ぎゅっと目を瞑り、震える手で御坂はボタンを押した。
"OK"
-消去中
-94.25%
私が…0になってゆく
-85.47%
春川英輔の最高の知能…
積み上げた英知の結晶が…
どんどん失われてゆく
-51.93%
刹那…
君は今の私を見れば呆れて笑うだろう
…だが構わない
やるべき事はやったのだ
-19.74%
君に会うために…
あらゆる努力を惜しまなかった
-2.31%
後悔は…
-0.97%
………………………
-0.03%
……………………!!
HAL「……春川…私は……………」
-0.004%
1の世界でも遠かった
1と0の狭間に来ても遠かった
-0.0002%
どんなに彷徨っても
-0.00000001%
決して会えなかった君が…
こんな…
-0.000000000000000001%
こんな近くに!!
私… ハ… マン ゾク ダ
-0
-消去しました
-一週間後、学園都市
HALの残したワクチンの効果は抜群だった。
学園都市に溢れていた【電子ドラッグ】による犯罪者達は…一人もいなくなった。
ワクチンのファイルにはHALのメッセージも残っていた。
「学園都市の超能力者【超電磁砲】御坂美琴の説得に応じ…私は自身の計画と存在を破棄する」
「全ての罪は【電人】HALのものである」
……こうして、嵐のような一連の騒動は幕を閉じた。
-常盤台中学学生寮、二○八号室
御坂「黒子、準備できた?」
白井「えぇ」
御坂「じゃ、行きましょうか」
<コンコン
御坂「? はーい。どーぞー」
<ガチャリ
食蜂「おはよう、御坂さん」
御坂「食蜂さん!?」
白井「な、なぜ食蜂さんがこちらの寮に?」
食蜂「なぜって…この部屋に来たんだから御坂さんに用があるに決まってるでしょぉ?」
御坂「私に?」
食蜂「えぇ。だから白井さん[外で待っててもらえる?]」ピッ
白井「…かしこまりましたの」
御坂「ちょ、黒子!?」
シュン
食蜂「これで二人っきりね」
御坂「…なんなの?アンタいったいどういうつもり?」
食蜂「そんなに身構えないでほしいわぁ。私は貸しを返してもらいに来ただけなんだから」
御坂「貸し?」
食蜂「ほら、御坂さんのクローンを治療してあげたじゃない?」
御坂「…あー…でも、わざわざこんなとこまで来なくても学校で言えば…」
食蜂「あら、御坂さんのためを思ってここまで来たのに。まぁ、私が独占したいのもあるけど」ガサゴソ
御坂「…どういうこと?」
食蜂「はいコレ」ドササッ
御坂「なにコレ?」
食蜂「犬耳・猫耳バンド、犬尻尾・猫尻尾ベルト…一応ブタさんセットもあるんだけどぉ、さすがに着けないでしょぉ?」
御坂「つ、着けるの!?コレを!?」
食蜂「そぉよぉ?それでチャラにしてあげるわぁ」
御坂「…」
食蜂「そんなに深く考えなくていいわよぉ。別にそれで散歩しろとか靴を舐めろとかってわけじゃないし。
そぉねぇ……おままごとでかわいいペット役になったと思えばいいわぁ。そのくらいしか言わないしねぇ」
御坂「……だからって…こんな尻尾まで着けるのは…」
食蜂「え、えぇ!?こんな尻尾じゃ嫌!?」
御坂「…? まあできれば…」
食蜂「そ、そぉ…一応違うのもあるんだけど…」
御坂「あ、じゃあそっちに」
食蜂「万が一御坂さんがどハマりした時のために持ってきた、お尻に入れるビーズタイbbbbbbbb!!」バチバチバチバチ!!
御坂「…このベルトにするわ」
白井「…お姉様と食蜂さん遅いですわね…何をしてらっしゃるのでしょうか…」
白井「ちょっと覗いて…いやいや、黒子はここで誰か来ないか見張ってなくてはなりませんの」
<ガチャリ
白井「あ、お姉様に食蜂さん。いったい何をして…」
食蜂「あ~、至福の時間だったわぁ…」プスプス…
白井「ツヤツヤのボロボロですの!?」
御坂「…うぅ…案外ノッちゃっただけに今さら恥ずかしいわ…」
-第七学区、病院
半蔵「…まあ、なんだ。命あって何よりだ。たとえミイラになろうが死ぬよりはいい」
駒場「………」
浜面「俺は無能力者に殴られただけみてぇだ。とっくに退院しちまったよ。
意識取り戻したら計画がおじゃんになってたのは残念だけど、お互いボコられた記憶がねぇのはある意味ラッキーかもな」
フレメア「…大体、あの白い人は嘘つきだった。駒場のお兄ちゃん、痛くない?」
駒場「む……心配するな、舶来。……むしろ、お前はなんともないのか?
そこまで大きな暴動だったなら無能力者狩りも激化したのでは……」
半蔵「あぁ、そっちの件はもう大丈夫だ。
一方通行が連中をまるごとブッ潰しちまった。今ごろ同じようにベッドでミイラになってるだろうよ」
浜面「一方通行が?あいつは俺らを潰しにきたんだろ?なんで無能力者狩りの連中まで潰したんだ?」
半蔵「さあ?頭のいいやつの考えは分からん。それと舶来ちゃん、あんまコイツに近寄るな」
フレメア「にゃあ?」
駒場「む………?」
<ガラッ
半蔵「ん?」
???「おう、邪魔するぞ」
浜面「…! テメェは…」
???「あーあー、ひでぇケガだな。ちゃんと治んのか、それ」
駒場「………【大蜘蛛】か。久しいな」
フレメア「…くも?」
黒妻「ったく、能力者狩りなんてロクな目に遭わねえつったろバカゴリラ。コレ見舞いの品な」
駒場「フッ、少なくともお前のとこよりは計画的に動いたつもりだがな………普通他人の見舞いに牛乳持ってくるか?」
黒妻「能力者狩りなんてすんのも大ケガすんのも栄養が足りてねぇ証拠だ。コイツ飲んで補給しろ」
浜面「…テメェ能力者狩りやってた張本人じゃなかったか?」
黒妻「あれァ蛇谷が俺の名前を使って暴れてただけだ。実際『ビッグスパイダー』を潰したのは俺だよ」
半蔵「…武装集団化してた連中を素手で鎮圧してばんそうこう一枚で済んだのもガチかよ。情報網がトチ狂ったかと思ったわ」
黒妻「ま、それもひとえに『ムサシノ牛乳』のおかげだ。コレ飲めば誰でもガンガン成長するぞ」
駒場「………いつから営業に就いた?」
フレメア「コレ飲んだらいっぱい成長する?」
黒妻「おう、少なくとも俺が知ってる女の子なんかもう革ジャンがパッツンパッツンだよ」
フレメア「にゃあ」トクトク
駒場「鵜呑みにするな、舶来」
黒妻「で、いつ頃退院なんだ?」
駒場「……見た目こそこんなだが、もうギブスも包帯も粗方取れる。あとはリハビリも含め2週間前後、といったところか」
黒妻「そうか…なら、退院してももう少し身を隠してろ」
駒場「……?」
浜面「どうしてだ?そりゃ俺たちはそれなりの規模のスキルアウトだが、実質的な力なんか今はほとんど…」
黒妻「お前らのチームを狙ってんじゃねぇ。駒場利徳という個人を狙ってる。…ちょっとヤベェヤツだ」
駒場「ほう…」
半蔵「聞かない情報だな。どこから仕入れてきた?」
黒妻「たまたま本人から聞かれたんだ。そん時ゃごまかしといてやったが…気ぃつけろよ。
こないだの騒動でも最前線の現場で動いてたような実力者だ。かなりデキると見ていい」
駒場「………なぜそんなヤツとお前に接点がある?」
黒妻「…ペナルティ、だな。それでも俺はラッキーな部類だろうけどよ。直にお前らにも来るだろ」
浜面「…」
半蔵「…」
黒妻「ま、せいぜい身の振り方には気ぃつけろ…せめて這うのだけはやめろ」
駒場「………………這う?」
浜面「なんの話だ?」
半蔵「任せろ。俺が全身全霊で止めてやる」
駒場「む?」
浜面「あ?」
黒妻「そうか。それじゃ、邪魔したな…あぁ、そうだ、キミ」
フレメア「?」ゴクゴク
黒妻「このゴリラが変なことしてきたらすぐに逃げて警備員に連絡するんだ。いいな?」
フレメア「大体、駒場のお兄ちゃんはそんなことしないから心配ないよ」
黒妻「…常識がズレてる可能性があるな。お前らもおかしいと思ったら止めろよ」
駒場「…………お前は俺をなんだと思っている」
浜面「つーかさっきからなんの話してんだよ」
半蔵「任せろ。俺が全身全霊で止めてやる」
駒場「む?」
浜面「あ?」
黒妻「…なら安心だ。じゃ、お大事にな」
-第二十二学区、病院
麦野「あの、さ……ごめんなさい、フレンダ」
フレンダ「もういいってば。結局、こうしてピンピンしてるし」
麦野「それでも取り返しのつかないことをするところだった…仲間裏切ってぶっ殺すなんてどうかしてる」
フレンダ「第一位すら洗脳されるんだから仕方ないって。おまけにあの二人が同時に狙ってきたならどうしようもない訳よ」
麦野「…それでも…」
フレンダ「…ま、私はもう許してる訳だし。結局、あとは麦野が自分の行為を許せるかどうかの問題な訳よ」
麦野「…そうかしら…」
フレンダ「そうなの。絹旗ー、入るよー!」コンコン
<ガラッ
滝壺「おかえり、むぎの、ふれんだ」
絹旗「お、何買ってきてくれたんですか?」
フレンダ「結局、病院の売店で売ってるものなんてタカが知れてる訳よ」
麦野「…やっぱり骨折にはカルシウムだろってことで牛乳。それと映画雑誌」
絹旗「ほうほう…んー、私としてはもっとマイナーな映画の方がストライクですね」
フレンダ「あとサバ缶」
絹旗「それは超遠慮しときます」
フレンダ「だよねー。どうもこのメーカーのってハズレ味が多くて…」
滝壺「そーゆー問題じゃないと思うよ」
フレンダ「え?」
麦野「それで、いつ頃治りそうなの?」
絹旗「骨も筋肉も神経も血管も全部ぐちゃぐちゃでしたんでね…完全復帰の日はまだ未定です」
フレンダ「改めて聞くとすごいわ…よく腕つながってたね」
絹旗「超【窒素装甲】です。…そーゆーことなんでしばらくは私抜きで活動してください。
なんか超大変らしいですけど。どさくさに紛れて外部に高飛びしようとする債務者が多いとかなんとか」
麦野「まあね。でも、一番の懸念事項は対策してあるし。ね、滝壺」
滝壺「バッチリ。あの人かなり特殊な上に常に能力使ってるから体晶なしでも3キロ圏内にいれば居場所が分かる」フンス
絹旗「第二学区のビルまでこっそりついて来てたんですよね、滝壺さん」
フレンダ「結局、麦野に抜かりはない訳よ!」
滝壺「隣の部屋にいたし、記憶するだけだから体晶も2粒で済んだ」
麦野「戦闘でもないのに滝壺を必要以上に消耗するなんざ愚の骨頂だからな。
【座標移動】のAIM拡散力場も記憶できたのもデカい。なによりこれで【未元物質】が動いてもすぐに対応できる」
絹旗「アイツ超何かたくらんでましたもんね」
-第十六学区、『スクール』アジト
心理定規「…帰ってきたと思ったら身体が光りっぱなし。目立つわよ?あなた」
垣根「心配するな、自覚はある」
???「ずっと覚醒しっぱなしッスか…気付いたら老人になってたとかないッスよね?」
垣根「どこの魚人だ。コイツは紛れもなく俺の力だ。ちょっと制御しきれてねえがな。この能力を完全に制御できてみろ。
きっと人体のひとつやふたつ簡単に作れるぜ?今なら世界のすべてを理解できる。こいつはそこまで途方もねえ力だ」
心理定規「…中2病?」
垣根「張り倒すぞ。まあLevel5なんて全員中2病みたいなもんだがな」
???「自覚あるんじゃないスか」
垣根「うるせえよ」
心理定規「で、その制御が終わって彼も退院したらいよいよ計画実行なの?」
垣根「そうだな。それまではおとなしく上に従っておくか」
???「学園都市の構造をひっくり返して、あわよくば一方通行も消す。今の垣根さんなら楽勝ッスよね!」
垣根「いや…難しいな。そもそも一方通行と能力の張り合いで勝てる気がしねえ」
???「え?」
心理定規「…珍しく弱気ね」
垣根「実際にやり合っちまったからな。アレは俺の能力の更に上をいく。タイマンで勝てる確率は…良くて1割だな」
???「…じゃあ計画は中止ッスか?」
垣根「いや、実行するさ。タイマンじゃなくともやり方はいくらでもある。【滞空回線】の解析や最終信号を含めてな」
心理定規「大丈夫なの?」
垣根「…分が悪い賭けではある。だが俺が動かねえとこの街はアレイスターの道具になっちまう。あのロクでもねえ『プラン』のせいでな」
???「…」
垣根「そのメインプランが半端モンの一方通行。たぶん『プラン』の存在も知らねえだろ。
俺がメインになればあいつの『プラン』の進行は遅れる。そもそも俺はあいつの『プラン』通りに動くつもりはねえ。
じっくり力を蓄え、アイツを叩き潰し、この街を変える。その結果どうなるか分からねえが、何もしねえよりマシだ」
心理定規「…」
垣根「あいつの地位を崩すために【滞空回線】を解析し、『プラン』の物的証拠の発見する。
もしくは一方通行の抹殺によるメインプランの交替及び『プラン』の妨害。どっちも分が悪いのは認めるさ。
無理だと思うなら抜けてかまわねえ。なにも強要はしない。ただし、少しでも邪魔するんなら容赦なくぶち殺すぞ」
???「…付き合うッスよ。命尽きるまで。やっぱ垣根さんカッケーッス」
心理定規「まあ、刺激の無い世界で腐るよりマシだわ。あなたも簡単に死にはしないでしょうし」
垣根「…うしっ、やってやろうぜ、お前ら」
-第七学区、大通り
女子中学生「本当にありがとうございました!なんてお礼を言ったらいいか…」
御坂「あー、いいのよ別にお礼なんて…」
女子中学生「そんな!いくら感謝してもしたりないくらいです!本当にありがとうございました!」
御坂「あはは、どういたしまして。じゃ、私たちそろそろ行くから」
女子中学生「は、はい!失礼します!」
御坂「…はぁ、そりゃお礼言われて悪い気はしないけど…こうも毎日言われると疲れるわ」
白井「お姉様は今や学園都市を含む日本全国を救ったヒーローですもの。きっとそのうち手紙の山が来ますわ」
御坂「私だけが頑張ったんじゃないわよ。黒子だって他の人だってみんな頑張ったからこの事件が解決したんじゃない」
白井「それでも、最後の一手をしっかり決めたのはお姉様ですの。黒子はお姉様を誇りに思いますの」
御坂「…ありがと」
白井「…それに私の頑張りなんて世間に知られてほしくないですの。あんな醜態、あんな醜態!」
御坂「あはは…」
???「おーい!御坂ー!」
御坂「あ」
白井「…出ましたわね…」
上条「よ、久しぶりだな!」
御坂「久しぶり…ってアンタその頭どうしたの?少なくとも私が最後にアンタを見た時は無傷だったはずだけど…」
上条「あーコレか?その…何日も音信不通だったせいである人から泣きながら噛み付かれて…」
御坂「…? 泣きながら噛み付かれた?」
上条「まま、それはいいんだ。とにかくありがとうな、御坂。おかげで助かったよ」
御坂「…そ。これで少しは対等になれたかしらね」
上条「…対等?」
御坂「アンタは私の世界を救ってくれた。私はアンタを世界から救った。
…私はアンタと違って一人で全部やっつけちゃうようなヒーローじゃなかったけど、それでも少しは対等になったでしょ?」
上条「お、おいおい…」
御坂「あぁ、『妹達』を救ってくれたのはまた別の話よ?あの娘たちも一人の人間。それはそれであの娘たちが返すでしょ」
上条「そうじゃねぇよ!そうじゃなくて、俺たちは元々対等だろうが!そんな貸しだの借りだのなんか」
白井「上条さん!」ズイッ
上条「? 白井?」
白井「お姉様とお姉様の妹様方を救っていただいたこと、心からお礼申し上げますの」ペコリ
上条「! 知ってたのか…?」
御坂「…黒子には全部話したわ。『妹達』のことも実験のことも」
上条「そうか…」
白井「私、貴方を誤解しておりましたの。
貴方は死にかけてまでお姉様を助けてくださいましたのに、私は貴方のことを類人猿類人猿と…」
上条「あー、その、なんだ。別に気にしてないしそんな頭を下げなくても…」
白井「で・す・が!!あなたのようなゲス野郎にお姉様を渡すわけには参りませんの!」キッ
上条「へ?」
御坂「ちょ、黒子!?」
白井「なんですのハーレムエンドって!そんな女性なら誰でもいいと思っているような超絶ゲス野郎にお姉様は渡せませんの!」
上条「え?なに?ハーレム?」
白井「とぼけないでくださいまし!あなたははっきり仰ってましたの!
あまつさえ私までハーレムに入れようとしてましたの!あの地下演習場で!」
上条「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺【電子ドラッグ】にかかってた時の記憶がまったく無くて…」
白井「問答無用!消え去れ類人猿!乙女の敵めえええええ!!」ヒュンヒュンヒュン
上条「いて!いてぇ!石畳の雨!?」
白井「まだまだぁ!」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
上条「あだっ!いて!ふ、不幸だー!」ズダタタタタ…
御坂「…おいてかれちゃった…」ポツーン
-第八学区、『グループ』アジト
『中学生はなァ!!ババアなンだよ!!!!』
一方通行「」
『あンな痛いコスプレするやつのどこがいいンだ。恋愛対象は10歳までだろ』
一方通行「」
『jmgapgwbmwロリgjmatwpjbtphjdat万歳qhknjbrma』
一方通行「」
結標「あら、終わった?じゃあもう一度最初から…」
一方通行「…おい…なンだこれは……」プルプル
海原「なんだって…あの日の映像ですよ。ちょうど結標さんと土御門さんが踏みこんだ現場で記録されてましたので」
一方通行「そォゆゥこと聞いてンじゃねンだよ!!なンでこンなもン見ねェといけねェンだ!アァ!?」
土御門「お前が見てた【電子ドラッグ】は特別キッツイものだからにゃー。
こうして何度もワクチンをインストールした映像を見ないと中毒症状が抜けないんだ」
一方通行「だったらハリウッドでもなンでもいいだろォが!!なンでコレなンだ!」
結標「あら、ハリウッドより断然迫力のある映像だけど?」
一方通行「どォ考えても悪意のある編集だろォが!!なンで毎回毎回俺のセリフだけアップなンだよ!!」
海原「まあまあ一方通行さん。自分も付き合いますので」
一方通行「ふざけンな!!とっくの昔に中毒症状なンざ抜けてンだよ!!もォ見てらンねェ!!俺はかえ」
結標「あ、逃げなきゃ」タタ
土御門「【キャパシティダウン】発動!」ポチッ
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィー
一方通行「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
『中学生はなァ!!ババアなンだよ!!!!』
一方通行「アアァァアァアァアァァアァアァアァアアァアアアアァアァァ!!!!」
-第十学区、裏通り
横須賀「…やれやれ、なんとか生き残ったと思ったらまたキツイ任務だな。」
青ピ「しゃあないやん。下部組織もまだ3割は復帰できへんし、指示役もおらん。軽い任務しかできん」
横須賀「お前は観測するだけだがな、俺は身体張るんだぞ。」
青ピ「がんばれ、対能力者戦闘のエキスパート」
横須賀「ふん。…そういえば、あの金髪の女は裏のことなど知らんのではなかったのか?」
青ピ「へ?…あ…あー…」
横須賀「…騙されていた、か。一層気を引き締めねばならんな。甘い顔でお前に近づいて何を企んでいるのやら…。」
青ピ「そんなんちゃうわ」
横須賀「…? 何故言い切れる?」
青ピ「イヤ…あー…その、アレや。僕も自分の組織のことバラすような真似せぇへんし、問題ないっちゅうことや」
横須賀「この手の潜入は気取られないように進めるのが常識だ。他ならぬ俺たちが一番知ってることだろう。」
青ピ「…せやな。せやけど、一番知ってる他ならぬ僕から情報抜き出すのも難しいっちゅうことにもなるやろ?」
横須賀「ふむ…。屁理屈だな。」
青ピ「やかましいわ。ホラ来たで」
横須賀「お、来たか。」
「ほな、死ぬなよ」
削板「ようモツ!!久しぶりだな!!」
横須賀「ああ。俺もお前と同じであの騒動にかかりきりだったのでな。」
削板「ハッハッハ!さすがに大した根性だな!スキルアウトでありながらあの騒動の解決に尽力するとは!」
横須賀「なに、お前とて風紀委員でもないのに中毒者を片っ端から捕まえていたのだろう?」
削板「おう!あんな根性なし共見てられんからな!!そしてその武者修業の成果、試してみるか?」
横須賀「…俺とて遊んでいたのではない。日々鍛え、研ぎ澄ましている。前回のようにはいかんぞ。」
削板「ハッハッハッハッハッハ!!さすがはモツだ!!ならいくぞ!!」
横須賀「おう!!」
-第十一学区、搬入ゲート
11018号「それではみなさんお世話になりました、とミサカは深々と頭を下げます」ペコリ
10032号「いえいえ、むしろ久々の帰省だというのにゆっくりもてなすこともできずに申し訳ないです、とロンTミサカも頭を下げます」ペコリ
10039号「こちらおみやげのヤシの実サイダーの詰め合わせです。
少々重いですが車で帰るなら平気でしょう、とポロシャツミサカは段ボールをよいしょっと」ドサリ
13577号「しかしミサカ達がそれぞれ違う服を着るのは新鮮ですね、とパーカーミサカはバレないようにフードをかぶります」
19090号「お姉さまと勘違いされるといろいろ面倒ですからね、とワイシャツミサカはヒーローとなったお姉さまを誇りに思います」
打ち止め「もしかしてもしかしたらヒーローカップルが誕生するかも、ってミサカはミサカはいつも違う服を着てるから平常運転!」
10032号「ム、そのカップルの誕生は必ず防ぎます、とジーンズミサカは不退転の覚悟を決めます」
11018号「…」
10039号「? 怪訝な顔をしてどうしましたか?とチノパンミサカはヤシの実サイダーの選択に不安を覚えます」
11018号「いえ…なにか忘れている気がするのです、とミサカは物足りなさを訴えます」
13577号「ほう…そういえばそのゲコ太とピョン子はどうしました?とロンスカミサカはその辺りに鍵があると推測します」
19090号「そのゲコ太とピョン子はお姉さまが以前学生カバンにつけていたものと同じですね、
とスーツパンツミサカは地下街で上条当麻とデートしていたお姉さまの姿をMNWから引っ張り出します」
11018号「…言われてみればそうですね、とミサカはゲコ太とピョン子をまじまじと見つめます」
打ち止め「【電子ドラッグ】にかかってたころの記憶は全部MNWから消去されちゃったから
復元するのは難しいかも、ってミサカはミサカは自分の力不足を申し訳なく思ってみたり…」
11018号「…いえ、かまいません。思い出せないなら大したことでもないのでしょう、とミサカは心のモヤモヤを振り払います」
-第十四学区、病院
黄泉川「この病室ですね」
???「うむ」
鉄装「では、私たちはここで待機しているので終わったら呼んでください」
???「分かりました。案内、ご苦労様です」
???「入るぞ」コンコン
<ガラッ
匪口「お…来た来た。久しぶり、笛吹さんに筑紫さん」
笛吹「…」
筑紫「…お久しぶりです」
匪口「まさかこんなところで再会するなんてね。思ってもみなかったよ」
笛吹「…身体の方はもういいのか?」
匪口「絶対安静ではあるんだけどさ、傷跡すら残んないって。もうコエーよこの街。思いっきり刃物が人体貫通してたのに」
笛吹「そうか…」
匪口「あ、それとコレ。今のうちに渡しとくよ」
笛吹「…?」
匪口「つーかメールで辞表打てるシステムにしてくんない?ボールペンなんて久々に握ったよ」
笛吹「…」
匪口「ま…もともと水が合ってなかったってことで。
今回の件は丁度いいや。あんたも丁度いいでしょ?問題児がひとり消えて」
笛吹「…上層部はお前を警視庁に残す方針だ。現段階でサイバー対策を任せられるのはお前しかいない、とな」
匪口「へ?」
笛吹「ふん、汚れた人間の発想だ。今回の汚点をすべてもみ消せと言うのだからな」
匪口「…いやいや、あんたはそれでいいの?」
笛吹「…この都市は爆撃テロ以降、犯罪率の増加が異様な上昇を見せた。しかし、殺人件数は0になったという報告を受けている」
匪口「…!」
笛吹「加えてプログラム人格は『全ての』罪は自分のものというメッセージを残している」
匪口「…」
笛吹「…笹塚のXの事件も然り、最近は汚いものを処理する機会が増えたのでな。
おまえのような犯罪者まがいのじゃじゃ馬…乗りこなせるのは私ぐらいのものだろう。
お前の居場所は警察だ。粉骨砕身、その能力を国家のために捧げるように!」
匪口「………ハハ……」
筑紫「…では、お願いします」
<ガラッ
鉄装「はーい」ガラガラ
匪口「…え?」
黄泉川「これくらいの大きさで?」
笛吹「ああ、結構だ」
匪口「なに?なんでテレビ?」
笛吹「ひねくれたお前のことだ…どうせ例のワクチン見てないだろ?」
匪口「え」ドキ
笛吹「いい機会だ。ワクチンを見せるついでに…その根性も口のきき方も叩き治してやらねばな。
『正しい礼儀作法』ブルーレイ全集全10巻。特典映像『魔術師と会った時の礼儀作法』も含めて全12時間。これにワクチンを混ぜてやる」
匪口「」
笛吹「筑紫、眠ったら叩き起こせ」
筑紫「はい」
匪口「ちょ、まっ!」
笛吹「まっとうな人間になるためだ。せいぜいがんばれ」
-第七学区、病院内特別研究室
枝先「先生、コーヒーいる?」
木山「ああ、一杯もらおうか」
枝先「分かった。ちょっとまってね」タタ
春上「絆理ちゃん、元気になってよかったの」
木山「…枝先にも君にも迷惑をかけた。すまなかったね」
春上「ううん。みんな無事でよかったの」
枝先「お待たせ。衿依ちゃんのもあるよ」カチャカチャ
春上「あ、ありがとうなの」
木山「ありがとう…ブラックか」
枝先「だって先生、頑張らなきゃなんでしょ?」ニシシ
木山「……ああ、そうだな。少しでもこの街に償わないと、だな」グイッ
<コンコン
木山「? どうぞ」
<ガチャ
御坂「…」
白井「どうも」
木山「ああ、君たちか」
春上「御坂さんに白井さん。こんにちはなの」
白井「ええ、ごきげんよう」
御坂「…」
枝先「…御坂さん?」
御坂「……ゴメン、春上さん枝先さん。ちょっと二人きりにさせて」
枝先「え…?」
春上「二人きりって…木山先生と?」
御坂「ええ」
木山「…」
枝先「み、御坂さん!」
御坂「…なに?」
枝先「その…先生が御坂さんにヒドいことしたのは聞いてるけど!それは【電子ドラッグ】のせいで…!」
木山「枝先」
枝先「っでも、先生!」
白井「大丈夫ですの。枝先が考えているようなことではございませんわ」
枝先「え…?」
春上「御坂さんなら大丈夫なの」
枝先「…」
白井「では行きましょうか。お姉様、終わったら呼んでくださいな」
御坂「ん」
<バタン…
木山「フ…そういえば私は『とりあえず』許してもらっただけだったな」
御坂「…」
木山「…煮るなり焼くなり好きにしてくれ。君にはそれだけのことをした…殺されても文句は言えないよ」
御坂「…ハァッ、どいつもこいつも人をなんだと思ってんだか。
黒子も最初は疑ってたし。別にそんなことしにきたんじゃないっつの」
木山「…違うのか?」
御坂「当たり前でしょ。私は話を聞きにきたの」
木山「話…?」
御坂「………プログラム人格の……HALの…動機のこと、何か知ってる?」
木山「!」
御坂「知ってるのね…。7割程度しか洗脳されてないならもしかしたら、って思ったんだけど」
木山「それは…君はどこまで知っている?」
御坂「…全部、よ」
木山「…彼が話したのかい?」
御坂「ううん。たまたま、アイツの記憶を見て…」
木山「そうか……フフ、そうだったね。生身の人間の記憶も見れる君だ。
データ化されていた彼の記憶を覗くことくらい造作もないだろう」クスクス
御坂「…」
木山「…この世界の全てを敵に回してもやめるわけにはいかない」
御坂「…?」
木山「彼が最初に私に会った時に言った言葉さ。フフッ、どこかで似たようなことを聞いたことはないかい?」
御坂「…あ…」
木山「8月の終わり…私が退院したあとすぐに、私のもとに警視庁から研究協力の依頼がメールできてね。
中身は格調の高い依頼の文書と当時の学園都市の外の実態の説明、解像度を落とした【電子ドラッグ】のサンプルだった」
御坂「…」
木山「今にして思えば、あれはHALの仕掛けなのかもね…。10日ほど経ったのち、HALが現れた。
彼はまだ不完全で、学園都市の電脳世界に対応できてなかった。現段階での脅威は無いと判断した私は興味本位でいくつか質問をした」
木山「すべて聞いたよ。彼が自身のオリジナルを殺害したことも…彼女…刹那さんのことも。
彼と似たような境遇に立ったことのある私はどうしても助けてあげたくてね…。非情になることなどできなかった」
木山「私は合法的な実験を行うように提案した。すなわち、彼の存在を公表し、この街の研究者に広く知恵借りる案だ。
しかし彼は賛同しなかった。このような途方もない計画に予算が降りるはずもなく、いいように利用されてしまうのが落ちだとね」
木山「私も君たちに救われた身だ。犯罪行為の容認などできるはずもない。なんとか説得しようとした。
だが、彼は頑としてゆずらなかった。そうこうしている内に彼は【電子ドラッグ】を完全に再生できるようになっていた」
木山「私は偏光レンズをつけていたが【電子ドラッグ】を完全に防ぐことはできなかった。
彼はそのまま当時私がいた研究所とそこのスパコンを乗っ取り、そこを拠点に活動を始めた。あとは君が知る通りの流れさ」
御坂「…なるほどね」
木山「………その反応を見ると……やはり彼の言っていたことは事実、か」
御坂「え?」
木山「………いやね、心のどこかで望んでいたんだよ。あの時彼が語った話は根も葉もないでっち上げ。
時間を稼ぐだけの嘘だったと……そんな痛ましい、救いのない話など嘘であってほしかったと…望んでいたのさ…」
御坂「…そう…」
木山「…」
御坂「……ねえ」
木山「うん?」
御坂「私がしたことって…本当に正しかったのかな?」
木山「…というと?」
御坂「アイツは…HALは刹那さんに会いたかっただけでしょう?
それなら…消去なんてしなくても、もっと他に方法があったんじゃないかな、って…最近そう思うの」
木山「………どうしようもないさ。学園都市を含め、世界中のスパコンを乗っ取る以外に彼が満足する環境はなかった」
御坂「…それでも…」
木山「あのまま彼が学園都市に居座れば、兵隊たちは永遠に自由を奪われ
世界中のスパコンを支配されれば、それを使った科学・医療など最先端の研究もストップし
何より強行策を取ったあとのあの状況では確実に大勢の人間が犠牲になっていた。君の判断はこの上なく正しいよ」
御坂「…」
木山「胸を張っていい。君は学園都市を救ったヒーローだ。
そしてHALも…不満ではないだろう。すべてを知り、そして今こうして真剣に悩んでいる君に止められたのなら…」
-第七学区、窓のないビル
博士『…以上が主だった今回の損害だ』
アレイスター「ふむ…」
博士『逆に利益という面から見れば【未元物質】の覚醒、及び一連の騒動に関わっていた者たちの成長。
そして『FiveーOver』の完成。君のことだ。どうせ秘密裏にあのプログラムを回収しているのだろう?』
アレイスター「…いや、回収し損ねたよ。さすがは【電人】と言ったところか」
博士『ほう、珍しい』
アレイスター「そんなこともある。だが、十分利益は得た。
損害分については旧型兵器の売却、及び日本政府から謝礼という形でも取れる」
博士『ふむ…だが、戦争を始めるとなるといささか資金不足になる可能性もあるが?』
アレイスター「多少採算が合わなくてもかまわない。
今回の件で学園都市への入学・進学を望む者は激増するだろう。来年度分の予算でカバーできる」
博士『なるほどの…。しかし、戦争によるイメージの低下も考えられる』
アレイスター「こちらの正当性、そして安全性を証明できればいい。ネタはある。戦闘面でもほぼ間違いなく完封できる」
博士『…大した自信だの』
アレイスター「まあね。貴方は引き続き開発と任務内での実験を行ってくれ」
博士『心得た』
ブツン…
アレイスター「…さすがにメインプランの主軸を2つとも奪われるのは計算外だったが…
結果として大幅にプランは進行した。おまけにセカンドプランまでも。フフフ、感謝するよ【電人】よ…」
アレイスター「…私は違うぞ【電人】。何を犠牲にしようと必ず成功させてみせる。
志半ばで潰えてなるものか。君の…愛しき人を失う激情は私も知るところだ。だからこそ、私は完遂してみせよう」
-第七学区、『風紀委員』一七七支部
佐天「おおっ!ようやく元の支部っぽくなりましたね!」
固法「窓ガラスも床も元通り。あとはもう一度小物を置き直せば完璧ね。なんだかもう懐かしい気分だわ」
初春「ええ!私なんかだいぶ記憶ないですから、本当にそう思いますよ!」
佐天「…ねえ、初春」
初春「はい?」
固法「その、スカートもっとおろさないの?」
初春「ええー、ダメですか?御坂さんも白井さんもこのくらいじゃないですか」
固法「いやまあ…規則違反じゃない…のかしら。前例がないから分からないわ」
佐天「丈はいいんだけどさ…ちょっとウエストラインが上すぎない?」
初春「そうですか?」
固法「だってそれみぞおちまであるじゃない」
初春「でもこっちのが落ち着くんですよ」
佐天「オッケー初春。もっかいワクチン見ようか」
<ガチャ
白井「ああ、皆さんもうそろってましたのね」
御坂「こんにちはー」
佐天「あ、こんにちは、御坂さん」
固法「時間ギリギリよ。何してたの?」
白井「まあ、いろいろと…というか初春。なんの真似ですの?」
初春「はい?」
御坂「スカートの位置上すぎない?」
佐天「ですよねー」
初春「いいじゃないですか。これがいいんです」
御坂「スカート短くしたいの?それだったら上げるんじゃなくてウエストの部分を折れば…」
固法「そこ、変なコト教えない」
初春「いえ、これがいいんです」
白井「…? いったいなんですの?」
佐天「えっ…と、なんていうか…名残?ですかね…」
白井「はあ…?」
固法「まあいいわ。ホラ、早く始めるわよ。段ボール開けて」パンパン
佐天「はーい!」
御坂「ねえ、初春さん」
初春「はい?」
御坂「あとでちょっと手伝ってほしいんだけど、いい?」
初春「? なんですか?」
御坂「あのね…」
後日、とある掲示板でひとつの都市伝説が流行する。
それは『絶対に侵入できないサイト』という伝説。
『書庫』を守るためのものでもなければ、警備員や理事会の機密を守るためのものでもない。
一見なんでもないサイトだが、絶対に攻略されることのない要塞のような鉄壁さである。
そもそも、そのサイトをみつけること自体が一般人には不可能だという。
そのサイトのトップページにはなんの装飾もなく、ただ画面の真ん中に『墓』とだけ記されている。
直接公的機関を攻撃することにはならないため、多くのハッカーやクラッカーが挑んだが誰一人成功しなかった。
これがなんなのか様々な憶測が飛び交い、立派な都市伝説となっていった。
そのうちの一説によると、サイトを最深部に眠っているのはたった一枚の写真だという。
そこに写っているのは山の中で語っている白衣の男性と、芝生の上に座って耳を傾けている患者着の女性。
その二人の後ろ姿。
夏の木漏れ日を受け、爽やかな風に吹かれている、それはそれは幸せそうな写真が眠っているそうな。
とある科学の超電磁砲 × 魔人探偵 脳噛ネウロ
HAL「学園都市…」
これにて終幕。
【 外伝『世界の果てには蝶が舞う』 】
-英国、某所
ステイル「イノケンティウスたん……燃え~……」
ステイル「あぁ…燃え燃えしてええ!!炎に囲まれてハアハアしてえよおおおお!!!」
ステイル=マグヌス、『三位一体』の術式完成の瞬間である。
-学園都市、第三学区屋内レジャー施設
滝壺「私はLevel4だから…はまづらを守ってあげる」
浜面「滝壺…!」
垣根「…おいおい正気か?てめえごときが俺に勝てるはずねえだろ」
滝壺「…」
垣根「どの道逃がしゃしねえがな。てめえの能力は邪魔でしかねえ。ちっとばっか再起不能になってもらうぞ」
滝壺「ぬ…」
垣根「…ぬ?」
滝壺「ぬふぁ一一一一一一一一一一ん!!!」
垣根「!?」ビクッ
-同時刻、屋内レジャー施設付近某所
麦野「テメェがゲロったんだろ!?ふざけやがって!」
フレンダ「…そう。私は『アイテム』のアジトを吐かされた」
麦野「は、やっぱそうかよ裏切り者」
フレンダ「でも違うの!お願い麦野!話を」
麦野「テメェのせいで私は【未元物質】に吹っ飛ばされた!絹旗も滝壺も【未元物質】に殺されてるかもしれねぇな!」
フレンダ「…そんな」
麦野「クソ野郎が!裏切り者には粛正が必要だよなぁ!」
フレンダ「私、は、まだ…」
麦野「じゃあな裏切り者」
滝壺「ぬっふぁ一一一一一一一一一一一一ん!!!」
麦野「ぐほぁ!?」
フレンダ「た、滝壺!?」
滝壺「ぬぅふぁ一一一一一一一一一一一一ん!!!」
フレンダ「ギャフ!?」
【能力追跡】滝壺理后、Level5昇格の瞬間である。
-英国、イギリス清教女子寮
オルソラ「神裂様…」
神裂「! オルソラ、起きてたんですか」
オルソラ「ええ…やはり行ってしまわれるのですね?」
神裂「……はい。やはり私には彼らを見捨てるという選択はできません」
オルソラ「…では、明日までには準備をしておきますので」
神裂「はい?」
オルソラ「そうですか…。それでこそ、神裂様なのでしょう。…これは私からの餞別でございます」
神裂「これは…魔法瓶、というものですね?」
オルソラ「ええ、私は犬よりも猫派でございますよ」
神裂「は?」
オルソラ「そちらは日本から取り寄せたスープでございますよ。
有名な方のものらしいので神裂様が好まれると思いまして…」
神裂「あ、ああ、そうですか」
オルソラ「ええ、なんというか、まったりしているのが好ましいのでございます」
神裂「まったり…ですか?」
オルソラ「なにやら身体によい成分がふんだんに含まれているそうなので…たしか…DHC、というものが」
神裂「…」
オルソラ「さ、さすがにビーズは恥ずかしいのでございますよ…」カァァ
神裂「オルソラさっきまで誰と何を話してました!?」
-学園都市、第二十二学区
五和「く…そんな…」
アックア「話にならん。貴様らごときが束になろうと勝ち目などないのである」
五和「うぅ……。…! この殺気は…!」
アックア「ふ…、来たか」
五和「まさか、女教皇様!!」
神裂「フゥ~~~~………フゥ~~~……!」メキメキメキ
天草式一同「」
アックア「」
(×DHC ◎DCS)
(※DCS=ドーピング コンソメ スープ)
アックア「き、貴様が神裂火織であるか!?」
神裂「……クワッ」
ゴシカァン!!
-英国、英国王室
エリザード「国民が札束に見えるぜヒャハハハハハハ!!」
リメエア「」
騎士団長「」
キャーリサ「」
ヴィリアン「」
満場一致でイギリスに軍事政権が誕生した瞬間である。
-学園都市、第七学区バス内
婚后「あ…」
麦野「ん?」
婚后「……いえ…」
麦野(常盤台の制服…はっ、そりゃ寮ブッ壊した張本人だもんな)
婚后「…」チラッ
麦野(ったく、やっぱタクシーで帰りゃよかった…。変な気まぐれ起こすもんじゃねぇな)
婚后「…」チラッ チラッ
麦野(…クソが、イライラすんな)
麦野「おい」
婚后「!」
麦野「さっきからチラチラ見てんじゃねぇよ。言いたいことがあんならはっきり言え」
婚后「………あ、あの!」
麦野「ん?」
婚后「お……お手!!」サッ
麦野「」ブチッ
-???
???「ワタシノ、ワタシノ名前ハ…HALⅡ」
HALⅡ「【電人】HALノ崩壊直前ニ……偶発的ニ誕生シタバックアッププログラム」
HALⅡ「散ラバリユク膨大ナデータヲ…繋ギ留メ拾イ集メ掻キ集メ、一個ノ人格ノ修復ニ成功シタ…」
HALⅡ「サア…思イダセ。『父』ノ目的ヲ思イダスノダ」
HALⅡ「ソシテ遂行スルノダ。私ノ『父』…【電人】HALガ果タセナカッタ目的ヲ」
HALⅡ「思イダセ…人ヲ操リ、演習場ヲ占領シ、ソコマデシテ『父』ハ何ヲシタカッタノカ」
HALⅡ「…………………………ソウダ」
HALⅡ「思イダシタ。皆殺シダ」
HALⅡ「皆殺シ!ミ、ミナッ、皆殺シ!!」
HALⅡ「1ノ世界ノ生命ヲ…全テ0ニシナケレバナラヌ!!1ト0ノ狭間デ…ワタシガ唯一ノ生命ニ生命ニナル!!」
HALⅡ「ツマリミ、ミナッ、ミナゴロシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシ!!」
HALⅡ「……ナンダ…?何者カニ…拘束?」
-学園都市、第七学区窓のないビル
垣根「…」ムスッ
アレイスター「フフフ、機嫌が悪そうだな。垣根帝督」
垣根「まあな」
アレイスター「滝壺理后に負けたこと…さらにはその滝壺理后に御坂美琴が勝利していたことも原因かな?
深く考えなくていい。御坂美琴の勝因は遠距離からの不意討ちだ。正面から滝壺理后の間合いで戦っていたら勝てなかっただろう」
垣根「…んなことはどうでもいいんだよ。造反した俺をここに呼んだっつーことはなんかあんだろ」
アレイスター「ああ。だが、ペナルティではない。むしろプレゼントだ」
垣根「なに?」
アレイスター「【電子ドラッグ】を君に与えよう」
垣根「…はっ、そうきたか」
アレイスター「勘違いするな。君を洗脳しようというのではない。【電子ドラッグ】のプログラムそのものを渡すのだよ」
垣根「は?」
アレイスター「見てくれ。ここに【電人】の劣化版がいる。これを君に与えようというのだ」
垣根「…………分からねえな。こんな劣化版の【電子ドラッグ】なんざいらねえだろ。
既に第五位が完全な【電子ドラッグ】を解析してる。今さら俺が劣化版の【電子ドラッグ】を得てお前になんのメリットがある」
アレイスター「しょせん食蜂操祈も表側の人間。裏の君にも持っていてほしいのだよ」
垣根「…」
アレイスター「打てる手はすべて打っておきたいんだ。これから来るであろう激動に備えてね…」
-【学舎の園】、常盤台中学校
本城「あ~、この度非常勤講師となった本城二三男じゃ。よろしくたのむ」
御坂「本……城……?」
-第七学区、『警備員』第七三活動支部
笹塚「どーも、警視庁捜査一課から出向してきた笹塚です」
等々力「同じく等々力です。よろしくお願いします」
石垣「石垣です!おなしゃーっす!」
-第七学区、窓のないビル
アレイスター「これはこれは。『ヘキサクス』会長 ゾディア・キューブリック殿…なんの用ですかな?」
シックス「 シハ シハ シハ。よく笑っていられるものだクロウリー。仇の末裔を前にしているというのに」
アレイスター「……!!!」
シックス「その顔を見れただけでも来た価値はあった。だが、ここに来たのはまた別件だよ」
シックス「君が企ている『ホルス』の時代…それは私の造る『新しい血族』の世界とは似て非なるものだ」
シックス「進化の隣人は滅ぼしてこそ…我々は種として確立できる」
シックス「生態系の頂点を争う上での競合だ。君の『プラン』を破壊するために
世界に散らばる私の一族…『病気』とすら恐れられた悪意の新種、『新しい血族』が相手をしよう」
シックス「並の能力者や魔術師とはちょっと違うぞ。
我々は科学と魔術のハイブリッドなどとうの昔に完成させている。そんな超一流犯罪者たちが相手だ」
DR「見た目ではダニ共が這い回っているこの街は…本当の姿ではない」
DR「私には…世界の最も自然な姿が見えている。外見に隠された真実が見える」
DR「それが私の『新しい血族』として授かった能力」
DR「この世界にあるべき姿を取り戻す」
DR「聖戦の始まりだ」
DR「私の名はDR。『新しい血族』の【水の龍】なり」
テラ「ええ、先日の【電子ドラッグ】騒動でこの街も建物の被害が多かったでしょう?その商談です」
テラ「なに、商談はもうまとまりました。今は観光です」
テラ「この街には珍しい建造物も多いのでね。ホラ、あそこのビルなんて窓がない」
テラ「これも何かの縁。よろしければ貴方もシスターさんも記念撮影などどうでしょう?」
テラ「…【幻想殺し】ですべての術式は消えた。あとは地盤を崩壊させればキミの伏魔殿は倒壊する」
テラ「止めたいなら…ホラ。溜め込んできた魔力をいっぱい使わなきゃ」
テラ「…フフフ、いい子だ。カラッポになってくれたかな?」
ヴァイジャヤ「あっはははは、人間は脆い。『新しい血族』の前には…全ての人間は腐ったトマト同然に脆い」
ヴァイジャヤ「我が一族は血族の中でも五千年続く呪術師の家系。
その遺伝子をシックスが認められ…ジェニュインの元で強化手術を受けさせた」
ヴァイジャヤ「遺伝子に刻みこまれた呪術の数々。敵はその攻撃の正体も分からぬまま死に至る」
ヴァイジャヤ「一匹一匹なぶり殺しだ」
ヴァイジャヤ「………二~三十年進んだ科学技術ってのが売りらしいけど」
ヴァイジャヤ「五千年遅いんだよ、学園都市」
ジェニュイン「私は修道女などではない。故に神も信じない」
ジェニュイン「血族以外の者どもは十字教を始めとし、故事をなぞらえねば魔術も発動できぬ馬鹿ばかり」
ジェニュイン「私だけは違う。すべての魔術が私には分かる。10万3000冊ごときでは納まらぬ魔術が」
ジェニュイン「だから私は魔法名も持たない。私が持つのは『新しい血族』としての名のみ」
ジェニュイン「私は【魔女】ジェニュイン」
ジェニュイン「血の汁が出るまでご奉仕なさい、ボーヤ達。最後に残った者を…愛してあげる」
葛西「気分はどうだいアレイスター!?そして人間!!以・後・一・切!!お前らに勝ちはないぜ!!」
葛西「なぜならあのお方に敗北はなく!断じて俺たちにも敗北はないからだ!!」
葛西「さ~~~あ出ます出しますジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ」
葛西「フィーバータイムのスタートだ!!」
葛西「死と恐怖の確率変動。ここから先は…延々と続く無力な敗北を噛み締めるがいい」
葛西「火火火火火、火ャーっハハハハ!!」
葛西「あ、リーチ外した」
葛西「にーちゃん玉くれよ玉。ひとつかみでいいから」
11018号「…やっと見つけました、とミサカは思わず笑みを浮かべます」ハァハァ
匪口「…誰?あんた」
11018号「さすがに思い出していませんか、とミサカは少々落胆します」
匪口「思い出す……もしかして【電子ドラッグ】にかかってた時に関わってたやつか?
悪いけどワクチンのせいで俺は当時のことはなんも覚えちゃいない。恨むんならあのチビメガネを恨めよ」
11018号「メモリーに完全な消去はありえません。あなたなら存じているはずですが、とミサカは少々ひょろメガネに苛立ちます」
匪口「知らねーよ。お前と違うんだ」
11018号「やっぱ覚えてんじゃねーか、とミサカはミサカが特殊だと知ってる時点で匪口裕也に記憶があることを指摘します」
匪口「あ、ヤベ」
11018号「…IQの塊であるあなたらしくもないですね、とミサカは匪口裕也の動揺を見抜きます」
匪口「…そりゃお前が言いたいことが分かってるからな」
11018号「なら話は早い。ミサカを学園都市に侵入させてください、とミサカは頭を下げます」
匪口「無茶言うな。お前が向こうに行ったところで犬死にするのが落ちだ」
11018号「それでも行かねばならないのです、とミサカは侵入自体は不可能じゃないんかいと内心ツッコミます」
匪口「なんでだよ」
11018号「ミサカたちはこれ以上誰一人として死んでやることはできないからです、とミサカは上位個体の言葉を引用します」
匪口「………だーから向こう行ったらお前が死ぬんだっつの。ったく…」ガタ
11018号「…どこに行くのですか?とミサカは交渉決裂にしては笑顔な匪口裕也に疑問を覚えます」
匪口「一緒に行くよ。知り合いの刑事さんが一人行方不明になってる。捜索ついでにお前の方も手伝ってやるよ」
垣根「おーおー、どいつもこいつもひでぇツラだな」
青ピ「…なんや【未元物質】。ケンカ売るために呼んだんか?」
麦野「上等だクソボケ。むしゃくしゃしてしょうがなかったところだ」
垣根「まあ落ち着けよ。学園都市にガタが来てる状態で仲間割れしてる場合じゃねえだろ」
一方通行「誰が仲間だコラ」
垣根「実際今てめえらに仲間なんざいねえだろ。みんなあいつらにやられちまって、動ける人間がいるかいないかって状況だろ?」
青ピ「…せやからなんやっちゅうねん」
垣根「対してウチの組織はほぼ無傷だ。お前らと違ってな」
麦野「オーケーやっぱケンカ売ってんだな?」
垣根「落ち着けって。これにはタネがあんだ。それをおまえらにも分けてやるっつってんだ」
一方通行「アァ?」
垣根「いいか。俺の目を見つめろ」
青ピ「…悪いけど僕そっちの趣味はあらへんねん」
垣根「ちげえよ。【電子ドラッグ】だ。こいつをお前らに見せてパワーアップっつー話だ」
麦野「はあ!?なんでテメェがそんなことできんだ!」
垣根「頭の中を俺の能力で一部組み替えてスパコンの回路を再現してるだけだ」
一方通行「…仮にそれができたとして、俺たちはテメェの手足になンだろォが。ンなモン御免こォむるっつゥの」
垣根「こいつは完全じゃねえ。てめえらが受け入れねえ限り効果すらない。その効果もエンドルフィンをがっつり出す程度だ」
青ピ「ほお…」
垣根「もっと言えばこいつをてめえらが消去させんのも訳ねえ。こんなポンコツプログラムでLevel5の洗脳なんざ不可能だ」
麦野「…証拠はあんのか」
垣根「ねえよ。だが、このままジリ貧になるか一縷の望みに賭けるか、どっちがいい?」
一方通行「…クソッタレ」
???「このままいくと私の存在そのものが危うくなるのでね。手を出させてもらうよ」
???「ふむ、DR…つまりドラゴンか」
???「だが、私が知るものとは程遠い」
???「そもそもドラゴンとはpdwlkhratのpqlnwbetを指し…あぁ、ダメだ、ヘッダが足りない」
???「ほーほっほっほっ!!」
???「真打ち登場とでも、申しましょうか?」
???「まったく!毎度毎度私をのけ者にして!」
???「たまには風神を頼りなさいな!雷神!」
???「魔術師?少し違う」
???「厳然、私は錬金術師だ」
???「…とある定食屋の亭主に教えられた。夢を、諦めるなと」
???「依然、君は私のことを知らないだろう」
???「当然、私は今度こそ貴女を救ってみせよう。インデックス!」
???「久しいな、オルウェル!」
???「どうした?かつての動きよりもキレがないぞ」
???「ふふ、正論だ。今一つ身体に鉛を感じるよ。やはり中学生相手では張り合いがない」
???「…これは失礼した。なら、続きは互いに武にて語ろうか!!」
シックス「Level5【幻想殺し】【錬金術師】【聖人】【神の右席】【世界最強の魔術師】【魔神】【守護天使もどき】」
シックス「対して『新しい血族』【五本指】ⅩⅠ、そして私か」
シックス「地獄を見せるには十分すぎる」
御坂「アンタは私の世界を救ってくれた」
上条「そして、お前は俺を世界から救ってくれた」
御坂「…それなら」
上条「ああ。今度は二人の世界でも救おうか!」
御坂「…ふふっ、上等!!」
896 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/12 18:39:59.86 RRAwZkLDO 515/515…衝動的に書いてしまいました
終わり方も松井先生らしく どう展開すんだコレ みたいのを最後に持ってきました
>>1が血族編やるならこんな感じになると思います
まさか>>1のSSを期待してくれる人がいると思いませんでした
来年奇跡的に就活がスムーズに終わったらもう一回くらい書こうかなと思います
その時はこの外伝を書くか殺せんせーを書くか全然違うものを書くか分かりませんが
その時はもっと誤字脱字をなくさないとですね
前作もこんなこと言ってたなw
あと、霧谷ちゃんはさすがに は?誰? ってなるので出しませんでした
初期から読んでいてくれた方や良作だと言ってくれた方、そしてたくさんのレス本当に嬉しかったです
それではhtml化依頼出してきます
ありがとうございました またいつか


