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女騎士「私が死ぬと思ってるの? バカなの? 死ぬの?」(第5部 破)
≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。
元スレ
女騎士「私が死ぬと思ってるの? バカなの? 死ぬの?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375200813/
女騎士「近くにいたお前が悪い」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375900319/
秘書「お疲れ様でございます、お嬢様。手ごたえはいかがでしたか?」
騎士と「以前に比べれば格段にマシですが……芳しくありませんわね。地方民の票は確保できても、有識層の汎共同体思想が邪魔です」
秘書「確かに……のちのちこれが響いてくると思うと、厄介ですね……」
騎士と「連合内部でも、魔王軍を抱え込む論調が盛んになっていると聞きます。早めに手を打たねばなりませんね」
秘書「……あの、お嬢様。つかぬことをお伺いしますが……本当に、お嬢様は魔物を……いずれはケンタウリをも手に……」
騎士と「またその話ですか?」
秘書「……」
騎士と「……お姉様は、言うなれば究極の実力主義者。お姉様の規定する枠の中で誠意を見せれば、あの方は必ず評価してくださるのですよ」
秘書「実力……」
騎士と「力で劣る人間をねじ伏せるような行いを善しとする魔王軍どもは、そもそも枠の内にも入る事はままなりません。
だからこそ、お姉様はその所業に鉄槌をくだそうと……きっと、今も尽力してくださっているのですよ」
秘書「……御無事だと、いいですね。彼女も先生……お父様の仇を討つために動いてくださっていたと聞いております」
騎士と「……」
騎士と「それで、勝手に執務室に入ってきてジャーキーを齧っている不届き者……あなた、それでもお姉様の姪ですか?」
姪「……外は寒い。腹が減ったんでな、勝手に入らせてもらった」
秘書「き、騎士様のお姉様の御息女とお聞きしましたので……」
騎士と「さりとて、窓ガラスを叩き割られて侵入されてはたまったものではありません……」
姪「ドアノブを壊すのは勘弁してくれと聞いていたからな」
秘書「あまり意味のない破壊活動はお控えください……」
姪「わかった、善処する」
騎士と「……」
姪「そんな顔をしないで欲しい、オーガの末裔のあなたに睨まれたら食事もおちおちできない」
騎士と「(元帝国陸軍情報部補佐、その息女……皇族や上層部が東側で軟禁されていると聞いてはいたが、
この女性を手駒に探りを入れてきた……目的は何?我々の政党にけちでも付けに来た……?何の為に……?)」
騎士と「事前に言って下されば、あたたかい物でもお出ししましたのに」
姪「いや、結構。私はこれがいい、熱いものは苦手だ。母と同じで猫舌なんだ。それにな……」
秘書「……?」
姪「事前に遊びに行く事を伝えちゃあ、おもしろオモチャを隠されちまうかもしれんしな。そんなのァつまらないだろ」
騎士と「おもしろいもの……十六のあなたがおもしろいと思える物なんて、私には見当が付きませんわ」
姪「ふん、三年だか四年だか早く産まれただけでよく言う……まあ、一通り部屋は洗わせてもらったが、おもしろオモチャは出てこなかった。残念だ」
騎士と「まるで……いえ、まるきりドロボーですわね。行儀の悪い子ですこと」
姪「おもしろいものと言えば、妙ちきでサイコなピンナップが数十冊……くらいだな。うげぇ、こんなもんアソコに付けてる」
騎士と「……」
秘書「イヤァァァァァ」
騎士と「えっ」
姪「うわー……何だコレ、でっけーピアスか?痛くねーのかなコレ……退くわ……純銀製だろコレ……」
秘書「かっ、返ッ、返してくださいィィィィィ」
姪「とまあ、こんなイカレた雑誌が国内で流通するくらい、おたくら共同体は儲かってるそうじゃないか」
騎士と「儲かってるだなんて……」
姪「共和国方面や帝国西側とも、今じゃあ簡単に鉄道で行き来できる。便利な世の中になったもんだね」
騎士と「ええ……燻製でない、新鮮なままの魚介を運搬できるのは大きいと言えますわね。物珍しさ以外にも需要がありますし。
内燃機関を搭載した列車による高速輸送……時代は変わりましたわね、香辛料が幅を利かせていた頃とは勝手が違いますわ」
姪「そうさ、非常に便利だよな。そうやって海から引き揚げたものをそのまま内陸に運搬できるんだから」
秘書「かえしてー!かえしてくださいー!そんなの親に見られたら生きていけませんー!」
姪「……それに、共和国西岸部を経由しないで内陸に物資を運べる」
騎士と「……」
姪「北西諸島の税関職員が駐在しているそこには、なるべく関わらずに済む方がいい。
だから、おたくらは必死こいて帝国の進めていた高速輸送手段を整えた……違うか?」
騎士と「まるで、私たちがイケナイものでも運んでいるかのような言い草ですわね。悲しいですわ」
姪「イケナイものかどうかは知らんが、少なくともマトモな目的に使うつもりはないだろ?」
騎士と「ひどいですわ、あんまりですわ……」
姪「例えば……そうだな。大事な大事な贈り物を途中でかすめ取るとか?」
秘書「あ、あなた……さっきから何をおっしゃってるんです!あとそれ返してください!」
騎士と「贈り物……?」
姪「ドラゴンがなぜか大人しくなっちまう、大事な大事な贈り物とかなあ」
騎士と「あの……本当に何のことだかわかりませんわ」
姪「……」
秘書「んもう……ああ、隙間風が寒いったらないですよ……」
姪「……んふふ、知らないか。それじゃあしょうがない、押しかけてすまなかった。悪かったよ」
騎士と「協力できなくてごめんなさいね」
姪「いいや、こちらこそ。変な探りを入れるような事をして申し訳ない……」
秘書「……あッ、なんでそれ持って帰ろうとするんですか!やめてください返してくださいばらまかれたら死にます死んでしまいます」
姪「それじゃあ、多分また来るよ。今日のところは帰らせてもらう」
騎士と「ええ……気を付けて」
秘書「行かないで!帰らないで、それ返して!!」
姪「細かい事が気になる性分なんだ、すまないね」
姪「……世の中でわたしが許せないものは妥協だからな。何度でも何度でも通わせてもらう」
騎士と「……」
騎士と「(本当に単なる諸国漫遊のお遊び……?いいや、そんなはずはない。いかに上級貴族の子女とはいえ……
わざわざ私の元へ探りを入れに来るような真似をするか。十中八九、連合の後ろ盾があると考えていいだろう)」
騎士と「(もしくは……他に想定できる事としては……)」
騎士と「(『ほの字』の暗躍。そう考えるのが妥当か)」
騎士と「(あのガキは間違いなく……我々が内陸部へヴォーパル鋼製装甲を横流ししている件を把握していた。
つまりは、ドラグーン兵団計画の一端を多少なりとも……!)」
騎士と「(あのガキのバックに連合……対外情報庁がいるとするなら厄介だな。6年間積み上げてきた政党の功績が、
一瞬にしておじゃんになる危険性がある。そう仮定するなら、ガキの所属は東側の……母親からして、元帝国情報部か?)」
騎士と「(そして、こんな揺さぶりをかけるようなマネをするのは……一人しかおるまい)」
騎士と「(ほの字……!お姉様の愛を独占せんが為に、単独での行動に走った不埒者めが……!)」
騎士と「(ワイバーン養殖計画の全貌は、恐らくあの女が遮断している……そんな事は薄々気づいていたが、
よもやこんなにまで見え見えの宣戦布告をしてくるとはな。虫唾が走る、他人をイラつかせる端女風情がッ……!!)」
将軍丙「……ヴォーパル鋼について、ですって?」
姪「ああ。知っている事だけで構わない。あなた方魔王軍が作ったものなのでしょう、ありゃ」
アラクネー「(……閣下ぁ。この女、信用できるんです?)」
将軍丙「(普通なら相手なんかしないわ……でも、身分をバッチリ提示されちゃ追い返すわけにもいかないでしょう)」
アラクネー「(うう……うさんくさい……あたしら、そうやって6年前も痛い目見ませんでしたぁ?)」
将軍丙「(……耳が痛いわ)」
姪「我々としても、西側との融和を進める為には把握しておきたい事なんだ。我々の土地にもズメイといったドラゴンが生息している、
そちらの精錬技術はこちらとしても喉から手が出るほどに魅力的なシロモノ。少しでも土産話がないと、私が上司に怒られてしまう……」
将軍丙「(身の上だけ鑑みればお気の毒だけど……白々しいわね。身も心も連合に売ったというの……?)」
アラクネー「残念ですけど……私たち、ほとんどあの金属については知らないです、よくわかんないんですよあれ」
姪「よくわからない……とは?」
将軍丙「言葉通りよ。精錬技術を確立したのは私たちではない。当然でしょう、『叡智の教義』によって封じられた私たち魔王軍が、
退魔の金属についての精錬技術なんか把握していると思って?そもそも、私たちはあなた方も御存知の通りの新興勢力にも等しいのですよ」
姪「なるほど……では、どこからそんなものが流れてきたと?まさか畑を掘ったらひょっこり出てきたわけでもありますまい」
アラクネー「そ、それはー……」
将軍丙「……あれをもたらしたのは、天使どもよ。かつて共和国に勇者が産まれた時と同じように、あいつらはやってきた」
姪「天使……ねえ?」
姪「いやはや、魔王ときて……次は天使ときた。次は本物の神様にでも会えるのかな?」
将軍丙「現に、零落したとはいえ神格を有するドラゴンを屈服させたとなれば、嫌でも信じる事になりましょうよ」
姪「……確かに、難癖つけるにはいささか野暮ですな。それで、急に教皇領と仲がよろしくなったのはその天使どものコネという事ですか?」
アラクネー「(うわ、嫌な言い方するなぁ……)」
将軍丙「仲がいいとまでは言えません、国教騎士団の剣の切先は未だ我々の喉元にあるのですから」
姪「しかし、6年前に比べれば劇的に関係は変化したと言える。後は北方共同体との関係改善ですな」
将軍丙「……帝国領での啓蒙が上手く行ったと信じたいところですがね」
姪「謙遜なさるな、共和国への弁解もそう悪いものではなかった。後は初心を忘れずに活動していけばいい……」
アラクネー「(あーもう、コイツ何様!?)」
姪「そして、あなた方の魔王様が無事に大陸で君臨なさるには……やはり、ヴォーパル鋼近辺の情報が不可欠です。
……どうです、私の提案にベットしてみませんか?」
将軍丙「あなた……何が目的なの?生憎、私たちはブロンドの帝国人には警戒するようにしているのだけど」
姪「ブロンド……アジ・ダハーカの事でしょうか?身元不明の謎のテロリスト、だとか。
エルフと組んでいた、だとか。連合で指揮をしていた、だとか。根も葉もない戦後レジームの被害者、だとか。」
将軍丙「……」
姪「……私が嫌うのは不義と不道徳、それとオマケに共産主義、ついでに、そういうドス黒い悪ってやつだ。
そんな奴らのせいで、私の愛した帝国は身を焼かれ、ふたつに裂かれ、くそ東方人に犯されつくされた!
街を歩けば半裸の女が乳房を晒し、安酒を煽って股倉をいきらせるゴミ男を誘う、幼子の通う神学校のすぐ裏手がそんな有様だ。
補修も行われない補導のひび割れからは吐き気を催すような下水のニオイが漂い、まるで中世の暗黒時代を思わせる」
アラクネー「ふぇぇ」
姪「……徹底的に痛めつけて、必ずムショにブチ込んでやる。大陸に巣食う害虫どもの一生をぶち壊しにしてやる」
将軍丙「あなた……」
姪「少なくとも、私はそう思っている。国を善くしたいだとかよりも、まずはクソ野郎を捕まえる事が先決です、将軍閣下……」
騎士は「お姉様、ほの字からの作戦立案書が届きました」
女騎士「……そういえばあの女の顔もとんと見てないな、いい事だ」
騎士は「やはり彼女本人が大陸に出向く事は難しいようです、戦力自体は西部港湾部から送られてくるようですが」
女騎士「あの女、一体どこのポストにまで上り詰めやがったんだ」
騎士ち「恐らく……円卓の重役と顔を突き合せるほどには。ドラグーンを己の権能だけで動かせるとなると、そのくらいにはなりましょう」
敵兵「(あの女……あの女は何で大成功してるんだ……あの女……)」
女騎士「(あーメンドくせー。私もそろそろラクして暮らせるポストに返り咲きてぇなぁ)」
敵兵「……して、お前ら……今度は何をしでかすってんだ……?」
女騎士「あ?決まってんじゃねーか、取られたもん取り返すんだよ」
敵兵「……ん?」
女騎士「テメェらがぶん取ってった帝国の半分だボケ、6年で頭ふやけちまったのかァ?」
敵兵「帝国の半分……」
騎士は「帝国西部領で各種勢力と合流、東部領の連合現地政庁を制圧します」
敵兵「……」
女騎士「よっしゃー負けねーぞーがんばっぞー」
敵兵「ええと……」
女騎士「なんだ童貞、どうした童貞、おなかいたいのか童貞」
敵兵「お前!!!お前今さら!!今さら!!今さら帝国の味方気取り!?今さら!?どの口が言ってんの!?ねえ!!?」
女騎士「人聞きが悪い事を……味方気取りも何も、なあ?何言ってんだろうなぁ?」
騎士は「ええ……いやですわねぇ」
敵兵「お前と初めて会った時の事忘れてないからね!?思いっきり裏切ってたよね!?
お前の一番大事なものってプライドでも何でもないよね!?自分の身の安全だよね!?」
女騎士「無礼なクソザルだ!私を誰だと思ってる!?」
敵兵「テロリスト!」
女騎士「おらっ」
敵兵「がふっ!」
女騎士「バカが!神託を重んじ正義を行う国教騎士団が一人であるぞ!!」
敵兵「うるせぇクソ女!もう全部言わせてもらうかんな、このアマ!!お前みたいなのが騎士なもんかバカ!
帝国はおろか大陸引っ掻き回してんのはお前のせいだかんな!!わかってんのかー!!」
女騎士「やかましいわプー太郎のくせによォ!!だったら密告でもなんでもしてみやがれってんだボケ!
できねェーだろォなぁー、テメェみてぇな臆病者にゃあよお!!」
敵兵「う、う、うるさい!!この、この……このドラゴンマダム!股倉でタマゴでもあっためてやがれ!!」
女騎士「」
騎士は「あっ」
騎士ち「あっ」
女騎士「」パンッ パンッ パンッ
敵兵「おぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃwwwwwwwwwwwww」
騎士は「お姉様!ここで発砲されては危のうございます!」
騎士ち「折檻は私たちにお任せくださいまし!」
敵兵「(痛ってwwwww本当に撃ちやがったwwwwでもwwwwざまあwwwwwざっっまあああああああwwwwwwwww)」
おかっぱ「……バカかお前は。真性のマゾヒストか」
敵兵「イターイ、イターイ……撃たれたとこ熱出てきたし死ぬ……死ぬ……」
騎士は「あら、おかえりなさいまし。いかがでしたか、試験飛行は」
おかっぱ「うむ……」
敵兵「し、試験……飛行?」
おかっぱ「ああ、例のクロウクルアッハに騎乗してきた……アレは……」
敵兵「あれは……?」
おかっぱ「サイッコー……だった。まさしく鞍馬の天狗が如く、自在に宙を舞うあの優雅なる快楽……・」
騎士は「原種のワイバーンと比較して、かなり人懐こい性格になっております。反面、轟音や閃熱には慣れさせる必要がありましょうが」
おかっぱ「すばらしい……」
敵兵「(あー、これあれですわ。まじで気に入っちゃった目ですわ)」
おかっぱ「お前もバカな所でケンカを売らなきゃ撃たれなかっただろうに」
敵兵「いやぁ……あれは本当に気持ち良かった……こりゃ6年越しのストレスも吹っ飛ぶわ……」
おかっぱ「何を言ったんだ……相当に機嫌が悪いようだったが」
敵兵「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
おかっぱ「しかし、人格はどうあれ……戦力の構築に関しては一任できそうだな、アジ・ダハーカは」
敵兵「一任……していいもんかねぇ……」
おかっぱ「ふん、アタシとて奴に付き従う気は毛頭ない。アタシ達の目的は帝国、国教会だ。魔王軍を必要以上に煽る気はない」
エルフ三男「ふふ、しかし東方の人。現状、魔王軍は癒着とまでは行かずとも……東西帝国とはどちらとも協商を結んでいる。
どちらの領に踏み込んだとしても、連中は過敏に反応を示してくるでしょう……」
敵兵「ひっ」
おかっぱ「あの女の潔癖ぶり、役には立つだろうが……アタシには枷にしかならんように見えるね」
エルフ三男「どうでしょう。あなたはいささか民衆を買いかぶりすぎているのでは?」
おかっぱ「どういう意味だ?」
エルフ三男「言葉通りです。民衆……下層民は自分でものを考える脳ミソなど持ち合わせていませんよ。
だからこそ、騎士様のヘイトスピーチは麻薬の如く浸透する。6年前のテロ直後を御存知ですか?
ある都市では、『井戸に毒が流し込まれる』という風説が現実になったらしいですよ」
おかっぱ「……救えんな。教会が教育を統括した結果がこれか」
エルフ三男「教会からすれば、あなた方ほど警戒すべき勢力はいないと思っているでしょうね。
各国軍部と違って、教育改革を目的の一つに掲げる幕府の方針……ぼく自身は非常に興味深く思っているのですが」
おかっぱ「そいつは光栄な事で」
敵兵「(なんかおじいちゃんが目を合わせてくれないんだけど)」
エルフ三男「ふむ……先ほど聞いたアジ・ダハーカとは、言い得て妙ですね。騎士様はまさしく三つ首の竜と言えましょうから」
おかっぱ「南方の異教徒の信仰を集める宗教の神……その一柱だそうだな」
エルフ三男「恐らくは魔王軍が敷いた戯言でしょう。確かに、連中どうにもその異教の者どもとも繋がりがあるようですから」
おかっぱ「拝火の教義だとか言ったか?」
エルフ三男「さて、詳しい事はぼくも存じません。ただし、敵に回せばかなり厄介な事は間違いありません。
信仰密度は数世紀前の魔王軍台頭時とほぼ同等……実戦使用可能な戦闘用魔術とやらを、現在でも有しているだとか」
おかっぱ「はっ……付け焼刃で歴史の浅いおまじないだろう、そんなもの」
エルフ三男「ぼくも、ここに腰を落ち着けてからは実用魔術などはとんと見かけなくなりましたが……
ああ、あなた方はそもそも、カミと共に暮らしているような人でしたね。失礼いたしました」
おかっぱ「自然信仰と言や、あんたらも似たようなものだろう。カネの次は、土地の方が大事だろ?」
エルフ三男「さあ……正直土地と言いましても……」
敵兵「(そうだよね、おじいちゃん達エルフの癖に保身の為に思いっきり森焼いてたもんね)」
エルフ三男「ああ、そうそう。あなた方にも作戦概要を伝えておく必要がありそうですね」
おかっぱ「よろしく頼む」
エルフ三男「まず、こちらが部隊編成と作戦区域の地図になります」
おかっぱ「ふむ……」
敵兵「あの、オレのは」
おかっぱ「こちらで実際に動かす人材はかなり少ないな。正面からでは魔王軍の駐屯部隊にも全滅させられそうだ」
エルフ三男「北西諸島の部隊や駐在大使に対しては、こちらのコネである程度の足止めが可能です。
よって、今回相手にするのはごく一部の魔王軍と連合軍だけに絞る事が出来ます」
敵兵「オレの……」
おかっぱ「となると、市街戦が想定されるな。大丈夫なのか、こちらの主力であるドラグーンは入り組んだ土地では不利なのだろう」
敵兵「……」
エルフ三男「その為のメリジェーヌ、その為のティアマトーですよ。どちらもワイバーンと比べて空戦機動力や防御能力では劣りますが、
両者の強みはその汎用性です。騎竜単体で重火器を運用できるのは、この上ないメリットと言えます。加えてケンタウリに勝る強靭な脚部があれば……」
敵兵「(あれ?オレお留守番かな?)」
エルフ三男「そして、敵拠点奪取と並行して、とある施設に対し強襲を敢行。ヴォーパル装甲の生産ラインを盤石のものにいたします」
おかっぱ「とある施設……?」
エルフ三男「帝国南部の旧ゲットーを制圧いたします。魔王軍によって解放されたドワーフをこちらの手中に収めるのです」
おかっぱ「ドワーフ……製鉄の種、タタラの怪か。ふん、大陸人は散々我々をドワーフ呼ばわりしてくれたが……
そうかそうか、あわよくば隷属させる気であったわけだ。気に喰わんな、殺人サルごときが」
エルフ三男「ふふ、愚痴らない愚痴らない。ドワーフのゲットーさえ確保すればこちらのものです、
共和国内でヴォーパル装甲の生産が可能になります。現状、装甲をこさえる事ができるのは北西諸島と魔王軍だけですから」
おかっぱ「なるほど、ヴォーパル鋼の加工だけでもこちらで行えるようになれば、北西諸島のスパイが被る負担が減るという事か」
エルフ三男「ある意味、そちらがメインとも言えましょうね。ドワーフさえ確保すれば、ドラグーン兵団の規模拡大はより容易になります」
おかっぱ「……了解した。こちらの方でも人材に色を付ける」
エルフ三男「宜しくお願い致します……」
敵兵「……あのう」
おかっぱ「……メンドーだな!アタシのを見せてやるから!!」
敵兵「わぁい幕府だいすき!!」
おかっぱ「以上が、現地提携組織との接触についてだ。何か異論はあるか」
九尾狐「……」
金長狸「……」
真神「……」
おかっぱ「異論は……」
九尾狐「怖い……」
金長狸「やっぱり大陸の人間頭おかしいわ……」
真神「まじ無いわ……オレたちそんなレイシストとなんか怖くて話できないわ……」
おかっぱ「このどうぶつ奇想天外ども!何を言っているのだ、何の為にはるばる大陸まで来た!」
九尾狐「好きで来たわけじゃないわ……」
金長狸「四国での面子があるから来ただけだし……九尾ちゃんいなかったらこんなとこ来てないもん……」
真神「信者が勝手にオレの事祀り上げるから……」
おかっぱ「ああもう!!では、陰陽寮のオカルト連中はどこへ行った!!」
九尾狐「えるふの娼館に一目散……多分、頼りになるのは幕府陸軍だけよ……」
金長狸「国学者周りも船を降りてから娼館に……」
おかっぱ「んぁぁぁぁ!!!」
真神「やめろ!!大きな声で怒るな!!怖い!!」
九尾狐「ひぃ……」
金長狸「だってだって、私ら世襲で結社の党首になったようなカスだし……」
九尾狐「ぶっちゃけ諸国漫遊のスチャラカ日和見旅行程度の甘い見積もりで同行しただけだし……」
おかっぱ「」
真神「怖い!」
おかっぱ「何がだ!!」
真神「この状況が怖い!!夢も希望もない!!大人しく武蔵のお山でひきこもっておれば良かった」
おかっぱ「びっくりだよ!御利益をくれよ!!」
九尾狐「ええと……それじゃあ、アサガオでも咲かせましょうか」
おかっぱ「豊穣アピール!?今そんなのいらないよ!!」
金長狐「鍋にはなりたくない」
おかっぱ「アピールしろよ!!」
真神「わんわんお!」
おかっぱ「働け!!」
エルフ三男「さて、作戦開始まであと2時間です。皆さん、準備はよろしいでしょうか?」
おかっぱ「問題ない」
真神「……」
九尾狐「ひぃ……天狗みたいな鼻がいっぱい……」
金長狸「こわい……」
女騎士「……インチキ仮装大会か?」
おかっぱ「問題ない!」
敵兵「(真剣に幕府に付こうかなぁ……一番まったりしてそうだし……連合にも戻れねーし……)」
エルフ三男「目標は魔王軍南部駐屯地の確保、並びにドワーフゲットーの掌握。最終的には帝国東部領の奪回を目指します。
既に北西諸島傘下にある旧遠征師団には暗号で支援を要請しています、ドラグーンによる急襲の後続として、彼らには動いて頂きます」
敵兵「よく師団の連中を抱き込めたな……」
女騎士「いやぁ、簡単だぜ?師団長な、大昔にマスタードガスの実戦投入騒ぎに巻き込まれてさあ。関与を公表するぞってユスったら快く」
敵兵「なんだいつもの手か」
敵兵「……でも、そんな弱みを握ってるんだったら6年前に使ってれば」
女騎士「ふん、連中が北西諸島預かりになったからこそ使える手だ。ほの字経由で外務省にその事実をばらしてやりゃあ……」
敵兵「……」
エルフ三男「しかし、実物がないのが悔やまれますね。飛竜部隊から散布を行えば効果が見込めましょうに」
女騎士「何とかするさ、絶対に手に入れてやるわ。師団長から芋づる式に当時の開発陣を探していけばいい」
敵兵「(毒ガスはあかんやろー……いや、あかんやろ……)」
おかっぱ「(毒ガスはやめろ毒ガスは……魔王軍に潰れられるのは困る……非常に困る!
使用が万一国際的に露呈されれば、こちらが圧倒的に不利になる……北西諸島本国を敵に回すのはまずい!!)」
九尾狐「何させられるのかしら……」
金長狸「鍋にはなりたくないわ……」
真神「鍋とか言うな、むしゃむしゃされちゃうって言え。怖い」
おかっぱ「んぁぁぁぁぁ!!!」
エルフ三男「ドラグーン隊、作戦開始。許可があるまで火器の使用は控えよ、例外はブケンタウリとの交戦に限る。
軽戦車との交戦は極力回避せよ、一騎でも多く庁舎及び駐屯地に到達するのだ」
エルフ弓士「第一隊、第二隊出撃。兵器使用の制限は……」
女騎士「すっげーカッチョイイー、なんか出来る将軍みたいじゃん」
エルフ三男「うっ」
エルフ弓士「か、閣下!?」
エルフ三男「……ふぅ」
エルフ弓士「」
エルフ三男「ちょっとトイレに行ってくる。君は引き続き状況確認に励んでくれ」
敵兵「(お盛んだなぁ……)」
娘「飛ばせ飛ばせ飛ばせえ!!もっともっと速く飛べええええ!!」
息子「まだ僕らの存在には気づかれていない。このまま察知されずにゲットーに到達したいが……!」
エルフ騎兵「若様、お嬢様。このまま接地せず、水路を通過してゲットー内部に侵入いたします」
息子「わ、若様……?」
エルフ騎兵「は。閣下から、そうお呼びするよう仰せつかっております」
娘「お兄ちゃんカッコいい……素敵よ、愛しちゃう」
息子「……あ、ありがとう」
エルフ騎兵「ゲットー内部に到達後、彩煙弾を射出。師団との連携を図ります、その後は騎士様の手筈通りに」
息子「了解しました、もっと低く飛びましょう。いいね、スタンダール!」
エルフ騎兵「(ワイバーンでは不可能な匍匐飛行ですら、こうもやってのける……市街戦ではこちらに理がある!)」
おかっぱ「クク……連合の庁舎と拠点の制圧……いいじゃないか、目に物見せてやる」
敵兵「オレも出るのかあ……」
おかっぱ「一応、あんたは幕府陸軍預かりのようなものだからな。相手が連合だろうが働いてもらうが、何か不審なマネをするようなら……」
敵兵「し、しません……言う通りにします……」
おかっぱ「前に出る必要はない、小銃で我々の援護だけをしてくれればいい」
九尾狐「良かったあ」
金長狸「援護だって援護!」
真神「やめろ怖い……おてつだいって言え」
敵兵「いやぁ一安心だなぁ」
おかっぱ「お前ら畜生は前衛だよ!?お国の為に頑張る事になるんだよ!?」
娘「辛気臭い所……早く帰りたいわ……」
エルフ騎兵「煙弾による合図には、恐らく本陣は気づいているでしょう。こちらの潜入に気づいた連合軍と魔王軍を師団が釘付けにしてくれれば……」
息子「……さっさと終わらせようこんなところに長居していたくない」
エルフ騎兵「同感です。駐屯地の制圧は早急にいたしましょう」
息子「おじ様、ここから駐屯地へはどのくらい離れているのでしょうか」
ドワーフ鉱夫「ああ?」
娘「おじ様、教えていただけませんか?わたし、兵隊さんにお礼がしたくて……」
息子「お願いします……何でも、何でもしますから……わたしたち、お金も持ってなくて……」
エルフ騎兵「(この子ら怖いなぁー、母親そっくりだなぁ……)」
エルフ騎兵「うっ!」
エルフ騎兵「……ふぅ……あの子ら、ちょっと時間かかってるのか?まだ余裕はあるにしろ……」
息子「やあ、お待たせしました」
娘「ここから直線3㎞、ゲットー北西部のはずれに位置。帝国東部の連合駐屯地を牽制する役割を担っているんでしょうね」
エルフ騎兵「ふむ……となると、別働隊とのタイミングがずれれば、双方蜂の巣を突いたような泥沼になるか……」
息子「とりあえず、現地の通貨も手に入りましたし腹ごしらえでもしましょう」
エルフ騎兵「通貨……通貨?」
娘「おじさんすっごい早くてねー、ロリコンだったのかしら?」
息子「ねえ、次は代わってよね。もうここであんなの舐めたくないよ」
エルフ騎兵「(うーんこのモラル崩壊ぶり)」
息子「直線でそのくらいなら、ここでスタンダールたちを待機させるよりも、連れて行って攻撃した方が早いです」
エルフ騎兵「そうですね、若様。白兵戦は避けたいところですが、ティアマトーを随行させれば保険になる……」
娘「うふふ、みんなと一緒だよ、お兄ちゃん」
息子「……煙弾上がった!師団と別働隊が位置に着いたか!」
エルフ騎兵「よし、全騎動くぞ!一気に魔王軍を叩く!!」
おかっぱ「……遠征師団の一部到着まで残りわずか、接敵させれば慌てて出てきた連合軍の相手がさせられる、か」
敵兵「(ほの字……あの女の息がかかった戦力かあ……すげえ気分わりいな)」
おかっぱ「ゲットー方面からの煙弾は確認できた、あちらも順調のようだな」
敵兵「しかし、どうぶつ御一行は凄いなあ。生身でドラグーンについて来てる……」
九尾狐「建物が高い……怖い……」
金長狸「ひぃ、あっちで火の手が……怖い……」
真神「オゥェェェェッ!!」
敵兵「ヴェェェェェッ!」
おかっぱ「」
エルフ騎兵「エッジ1、接敵する!若様、お嬢様!御武運を!!」
息子「了解です、ぼく達は建屋内部で幹部を押さえます」
エルフ騎兵「若様!わたし、実は本国に恋人がいるんですよ!」
娘「まあ、素敵!」
エルフ騎兵「戻ったらプロポーズしようと、花束も買ってあったりして!」
息子「ふふ、きっとうまく行きますよ」
エルフ弓兵「報告する!!アンノウン急速接近中!!警戒せよ、未確認部隊が接近中!連合軍ではない!!」
戦士「来たぞ、北西諸島ではない……テロリストだ」
僧侶「見た所、ひいふうみい……数は少ないですが、あんなドラゴンは見た事がありませんわ」
賢者「勇者様、いかがいたしましょう」
勇者「言った通りだよ、変わらない。ぼく達は、この地のドワーフ達を守る為にここにいる」
戦士「了解した」
僧侶「参りましょうか、皆さん。お怪我の無いように」
賢者「さあ、不埒者に天罰を下してさしあげましょうか」
勇者「好きにはさせないぞ、覚悟しろ」
エルフ騎兵ア「エッジ1、撃墜!!」
エルフ騎兵イ「クソッ、何だってんだ!?火砲からの砲撃とも思えなかった……!」
息子「アレ……アレが……」
エルフ騎兵ウ「若様ァ!!おふた方はこのまま大将首を!あの連中、魔王軍の虎の子でございます!!」
息子「あの野郎が……勇者……?」
エルフ騎兵ウ「断定はできませんが、恐らくは!魔王軍が有する共和国の『勇者』……その末裔かと!!」
娘「そォーーーかァ!!あれが勇者様かァ!!」
息子「あれが、あれが勇者!!諸悪の根源!!大陸の病巣!!」
娘「お会いできて嬉しゅうございまァァァす!!」
エルフ騎兵ア「」
娘「バラッバラにしてやるよォォ、二度と生き返ンねェよォに、ハラワタ引きずり出してやンよォォ!!」
息子「魔王に与する人間の恥……!!産まれた事を懺悔しながら苦しんで死ね!!」
エルフ弓兵「」
エルフ三男「……騎士様。ゲットー方面の別働隊が勇者と接敵いたしました」
女騎士「勇者……あのガキまーだ生きてやがったのか……いいや、適当に殺しちゃえ」
エルフ三男「騎士様、子供の6年というのは非常に長く密度の濃い物……厄介な障害と変貌を遂げておりますよ」
女騎士「障害……?」
エルフ三男「現在、別働隊が拠点攻略に際し交戦中……ティアマトー騎兵の重武装を以てしても、苦戦を強いられているようです」
女騎士「苦戦だあ?ガキ相手にドラグーンが突っかかるのか!?」
エルフ三男「いやはや、ぼくも信じられませんで……恐らくは、異教のカミの加護を受けているのか……」
女騎士「……カミサマのバーゲンセールだな、国教会も教皇領もへったくれもねぇや」
エルフ三男「スラッグ弾で腹を吹き飛ばしたとて、瞬時に身体の欠損が修復されたとも報告を受けています」
女騎士「……はあ?」
エルフ三男「また、120ミリ滑腔砲に匹敵する威力の火炎弾を放ってきたとの情報も入ってきています」
女騎士「」
エルフ三男「何なんでしょうねぇ、見当もつきませんが……」
女騎士「まったくだ……魔法でも使ってるのか?」
エルフ三男「魔法なんてありませんよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから……」
女騎士「(ち……人質を取ってゆっくりブッ殺してやりたい所だが……交渉が長引くような事は極力したくない。
そもそもドワーフの数を減らしちまったら本末転倒だ……何とか交戦中のドラグーン部隊で突破はできねぇのか……?)」
エルフ三男「(本物の魔術……リソースすら不明瞭となれば攻略はさらに困難か……恐らくは術士だかのイマジネーション……
肉体的疲労が引き換えに蓄積するのなら持久戦に持ち込めば打ち倒す事自体は可能だろうが、そこまで時間はかけられん……!)」
女騎士「西方師団の到着はまだか」
エルフ三男「既に列車から貨物の積み下ろしは終わっています、勇者部隊へ部隊を割きますか?」
女騎士「数は多いに越した事はない、そうしろ」
エルフ三男「了解しました」
女騎士「ああ、あと見せしめに何人かドワーフ殺しちゃってオッケーって伝えろ。根絶やしにしなきゃあいい。
連中の死の責任はクソ魔王どもにある、私は悪くない、あのゴミどもが悪い」
エルフ三男「まったく可哀想に……卑劣な魔王軍め……」
おかっぱ「拠点確保の煙弾が上がらない……!しくじったのか!?」
九尾狐「いやぁぁぁ」
金長狸「もうおしまいよぉぉぉ」
真神「わんわんお!」
敵兵「ど、どうする……こちらの人員を割くわけにもいかんだろうし……!」
おかっぱ「当たり前だ、アタシ達が連合を落とせなきゃ意味がないんだよ!!
モタモタしてると北西諸島の末端の兵まで出て来るんだぞ!!」
エルフ騎兵「では我々はこのまま予定通り、連合の駐屯地と臨時庁舎を急襲すると」
おかっぱ「せめてこの目的だけは果たさなければならんだろう。吶喊する!」
アラクネー「ひ、ひい!ほほ、本当に来た……!ド、ド、ドラゴン!」
姪「連合に媚びを売る絶好の機会ができただろ、将軍殿」
アラクネー「……こ、この人の言ってる事……ホントだったんですねえ」
将軍丙「あなた……本当に、本当に帝国の為に動いているって言うの?」
姪「無論だ。どこの馬の骨とも知れんウジムシどもに、私の故郷は渡さない。
腐ったインポ野郎やあばずれが夜な夜な跋扈する、私の大好きな帝国はな」
将軍丙「……」
姪「あなた方魔王軍は、理不尽な死を悪だと定めた。その定義が、私の価値観と少なからぬ合致をしたというだけの事。
それに反する不義には、偽悪には、罰を与えてやらんといけない。私は、必要な事をただするだけだ」
将軍丙「(自ら連合とのパイプ役を買って出たこの少女……この若さで、どれだけ重く深い矜持を背負っている……!?)」
エルフ騎兵ア「くそ、どういう事だ!?予定の時刻を過ぎたが……師団からの煙弾は確認できん!」
エルフ騎兵イ「若様ーッ、お嬢様ァ!!」
エルフ騎兵ウ「ロリータ二人はスイッチ入っちまってるし……こっち来る途中で何かトラブったのか!?」
エルフ騎兵ア「車両そのもののトラブルなら情報が回ってくるはずだ……一体どうしたってんだよ!」
おかっぱ「畜生め……散発的な戦闘でのアドバンテージは圧倒的にこちら側にあるにせよ、こう何度も接敵してちゃあもたんぞ……!」
敵兵「さ、最悪……庁舎に辿り着いた時点でアウトって事も……」
エルフ騎兵「定刻を過ぎたが、援軍到着の合図もない……」
金長狸「つかれたー」
九尾狐「おなかすいたー」
真神「わんわんお、わんわん……お……?」
エルフ騎兵「……」
おかっぱ「クソ畜生どもめ……」
真神「ま、待て、怒るんじゃない……な、何か匂ったのだ、何かが……」
おかっぱ「そりゃそうだろ、洗ってないイヌの臭いがプンプンするぜ」
真神「ち、違う……これは……き、きついカラシのような匂いだ……こ、こんな匂いは……嗅いだ事がない……怖い……」
おかっぱ「……」
おかっぱ「……どこから匂う?」
真神「に、西……南西だな……たぶん……」
エルフ騎兵「……どうかしたのか?」
おかっぱ「全騎兵に伝えろ!ドラグーンは庁舎と駐屯地方面を避け、高度を稼いで風上へ撤退だ!」
エルフ騎兵「な、何……!?」
おかっぱ「(カラシ……硫黄の化合物……有毒ガス!?どこのどいつがそんなものを保有していた!?
あのクズ女……保有していたなら、そもそもこんな回りくどい作戦など支持しない筈だ。エルフ……こちらも同様と言えるか)」
敵兵「な、何だよ……怖い顔すんなよォ」
おかっぱ「(誰が……誰が得をする!?今、この状況でガスを撒き……無差別殺人を行う事で得をする勢力……個人……誰だ、誰だ……!)」
賢者「有毒ガスの流出……それは事実なのですか?」
僧侶「詳細は現在調査中らしいです……マスタード臭がするとの事で、即時撤退が魔王さんから発令されました……!」
賢者「勇者様!!聞こえて!?」
娘「聞こえねェェェーーーよビッチがァァァ!!今テメェの飼い主サンは取り込み中だってンだよォォォ!!」
勇者「クッ……!!」
息子「往生際が悪い……!!早く、僕らに狩られてしまえ!!」
戦士「ラチがあかねえ……!ワイバーンとも違う、人間の女がくっついた気味のわりいドラゴンといい、こいつら一体何なんだ……!!」
娘「ヴォルテールがきめぇだとォォ!?ザッケてんじゃあねェーぞ、人間のオスがッ!!
ダラシなくぶら下がってる粗チンくびり取ってやろォかァ!?ぶち殺゛すぞオ゛ラァ!!」
息子「スタンダールを……侮辱したな?僕らからすれば……魔術じみた手段で戦うお前達の方が、よほど気味が悪い……!!」
僧侶「い、いったん退いてください!早く!」
勇者「しかし……こいつらは……こいつらは!!」
娘「あァ゛ー!?しッつけェなあ、まだ言って欲しいのかァ勇者様ァ!?テメェの愛しのカキタレの事をよォォ!!」
勇者「……言ってみろ、五体満足ではいられなくさせてやる!」
娘「ハッハッハァァァ!!いいねいいねェェ!!魔王に与するワルモノってなァ、そうじゃなくっちゃァ!!
勇者のセフレは豚煮込みィィィッてかァ!?あんま笑わせんじゃねェーってンだよォォォ!!」
勇者「やはりか……そうと分かれば……ガス流出にも真実味が帯びてくる……!」
賢者「ゆ、勇者様……!」
勇者「6年ぶりに出たか……ブロンドの悪魔め……!!」
≪幕間≫
――撮影を終えての感想をお聞かせください
おかっぱ「のどが潰れた(笑)」
女騎士「わかる(笑)。ようこそ現場へって感じです」
敵兵「しかし、6年ぶりだってのに全然演技変わってないよね、女騎士」
女騎士「怒鳴り合いの相手が変わっただけよね」
おかっぱ「ほんっと、喋りっぱなしで汗がすごいです。衣装びしょ濡れになりますし、おかっぱちゃんって動き多いから」
エルフ三男「甘えるな! もっと小さい子がいるんだぞ!(笑)」
おかっぱ「あー……双子ちゃんか。そういや役と違って女の子の双子なんですよね。びっくりした」
女騎士「あの子達、なんで来てないの?すごい可愛いのになー」
――収録時間が合わなかったそうです(取材時の時刻は午前2時)
勇者「夜中にこんな事してる僕らも僕らですけどね」
エルフ三男「よい子は丑三つ時にぶらぶら出歩かないと(笑)」
女騎士「んもー可愛いの。お弁当食べてる時が一番可愛いのよ、マネージャーさんと一緒にさあ」
エルフ三男「出た!親バカ!」
おかっぱ「親バカ(笑)」
(一同爆笑)
女騎士「6年前の勇者くんもすっげー可愛かった。可愛かったんだけど……」
おかっぱ「現場じゃ三枚目ですよね、どっちかって言うと」
勇者「高校生活が僕を変えてしまったようです」
敵兵「凄い真面目なんだけど、なんか笑えるというか……」
エルフ三男「にらめっこ常勝無敗のイケメンだよね」
敵兵「それだそれ、面と向かうとなんか吹き出しちゃう(笑)」
糸冬
女騎士「……するってーと何か、未だにガスを使用した部隊は特定できていません、デマも流れて一部で大荒れですってか」
エルフ三男「ええ、まずいですね……十中八九、魔王軍はこれに乗じて旧帝国体制へのバッシングを強めましょう」
女騎士「シャクだな、私に断りもなくそんなオモシロふしぎ道具を持ち出してくるとは!死にやがれ!」
エルフ三男「ぼくが出ます、とにかく動かない事には……!」
女騎士「ふざけんな、やめとけ。ただでさえお前らエルフは既得権益ドロボー呼ばわりされてる上に、
条約抵触の常習犯だろうが。この上化学兵器の開発や使用への関与が明るみになれば、ガサ入れじゃ済まねえぞ」
エルフ三男「しかし……!」
女騎士「(幕府のマメチビ……違うな、連中の引き連れてきた兵隊や物資は北西諸島の検閲を受けている。
そもそも、今回の作戦ではドラゴンに慣れたエルフの兵を中心に部隊を構築している、そんな奇妙なモンを持って来れまい)」
エルフ三男「クッ……全騎に通達、戦闘を避け風上へ向かえ!指定地にて別命あるまで待機!」
女騎士「(連合も違うか。連中、本国でも魔王軍融和派を抱えている、無暗にそういったキの字を自国内で煽る真似はまずしない筈……
ではまさか、魔王軍……毒ガスばらまく魔物がいたとしても不思議じゃあない……使用が疑われたとしても誤魔化す事はできるか……?)」
エルフ弓士「閣下……帝国領での情報統制もそろそろ限界かと。北西諸島がそろそろ動き出します!」
エルフ三男「どうせ末端の雑兵だ、地方警察とそう変わるまい。構わん、射殺していい」
女騎士「(それか北西諸島がやったか、だな……あの島国連中の腹の内は未だにわからん所が多い……
案外、これがアタリかもしれんな……やってくれる、ドラフェチどもが……!!)」
竜騎兵長「有毒ガスの使用だと!?そんな報告は受けておらん、許可などするものか!!」
騎手「し、しかし……」
竜騎兵長「この私が、わざわざ旧帝国の目と鼻の先にまで出向いたと知っての事か!?
やはり大陸の俗物に戦の気品や礼節を求めるのは無駄だったか……!!」
騎士ほ「……閣下。私が出ますわ、これも目付け役たる私が招いた惨事……!」
竜騎兵長「お前が……!?」
騎士ほ「夫亡き後、哀れな私を拾っていただいた女王陛下への御恩に、少しでも報いねば……」
竜騎兵長「……お前にはまだ幼い子がいるだろう、死のガスが蔓延しているやもしれん戦地に差し向けるなど!」
モルドレッド「ぼくがいてもダメかな、兵長。彼女は非常に有能な騎士だ、期待に応えてくれる働きを何度もしてくれただろう」
竜騎兵長「モルドレッド卿、あなたまで……」
モルドレッド「……円卓もなるべく不祥事沙汰になるような芽は、明るみに前に摘んでおきたいと言う事だよ。
行動を起こしたという体面を求める他の騎士たちにも体裁を繕える。そういう事で、納得してもらえないかな?」
竜騎兵長「……仕方ありますまい、私も随行させていただきますぞ。構わんな!」
騎士ほ「ああ……ありがたき幸せにございます……!!」
将軍丙「あ、あなた……!まだこんな所にいたの!?」
姪「まだ全てを把握したわけではないからな。案外、ガスの流出というのも事故……いや、それ自体がデマなのかもわからん」
将軍丙「何を言っているの!あなたも早く逃げなさい!」
姪「あなた方は、自己の徳に基づいて……ここに残って避難活動の支援を行っている。
私も同じだ、私も私の善性に基づくままに行動しているだけに過ぎない」
将軍丙「あなたは生身の人間でしょう……!」
姪「だからどうした。何だと言うのだ、あなた方と私とで何が違うと言うのだ。決定的な差異があるなら言ってみろ」
将軍丙「くっ……」
姪「私はまだ、この目で捉えていないのだ。罰を下すべき罪人の姿を。すぐ近くにいる筈だ
……二度と立てんようにした上で、必ずブタ箱に叩き込む。必ずな」
アラクネー「か、閣下ぁ。逃げましょうよォ」
将軍丙「30分!それだけ付き合うわ、それだけよ!」
アラクネー「」
姪「……救えんな」
竜騎士長「全騎兵、上昇せよ!使用されたのが硫黄由来の気体ならば低位に留まる筈だ!」
騎士ほ「……」
モルドレッド「浮かない顔だね」
騎士ほ「あら……そう見えましたかしら……フクク」
モルドレッド「機嫌が悪いと見た」
騎士ほ「そう見えるのなら、話しかけないでくださいまし……」
モルドレッド「……ごめん、調子に乗ったよ、すまない」
騎士ほ「……」
モルドレッド「(旧帝国師団の受け入れは、確かに円卓会議の賛成あっての事……
彼女自身の弁舌に心動かされた者が大半だ、事実として周囲からは人道的観点から好意的に取られた……)」
騎士ほ「……先行いたします……兵を動かしますわ……」
竜騎兵長「死に急ぐな、くれぐれもな!」
モルドレッド「(ガスの使用を消去法で考えるなら、魔王軍か帝国残党……だが、彼らに擦り付ける事を前提とした使用だとすれば……
……もしや、師団の連中か?そうとするなら、嫌疑の目を彼女にも向けねばならんが……)」
騎士ほ「……」
モルドレッド「(クク……今は、そんな事は野暮だな。考えるだけ無駄か。こんな所で弾劾などする気はない……
女王派にも好かれている彼女を貶めたとて、僕にはなんらメリットはない……そうさ、そもそも……)」
騎士ほ「……あら、卿はついて来てくれませんの?フクク……」
モルドレッド「(僕が彼女に与さない理由などないわけだからな……)」
モルドレッド「エクスカリバーを限定解放する。承認してくれ」
竜騎兵長「……よろしいのですかな、私めの名が本国の書類に送られてしまいますが」
モルドレッド「やれやれ……僕は相当君たち王党派に嫌われているみたいだな」
竜騎兵長「(ふん……円卓の青二才が。反女王派に負けず劣らずのタヌキぶりを見せてくれる……!)」
モルドレッド「『本物』でなくとも、我らが王国の威光は伝わる筈だ。よろしく頼む」
竜騎兵長「……御意に」
騎士ほ「(……モルドレッド卿が抜刀した……エクスカリバーを使う気か?)」
騎士ほ「(創国の宝剣……円卓に配られしそのレプリカ……!下手をすれば、本国で尋常でない反感を買うが……)」
騎士ほ「(フクク……何にせよ好都合だ、この目でその図々しい神意とやらを確かめられるのだからな)」
騎士ほ「(せいぜい円卓の椅子の座り心地を楽しんでおくがいい……王座に付くに相応しいのは猿山の大将じゃあない。
……近々には明け渡してもらうぞ、その場を……わたしのお姉様になあ……!!)」
姪「テロリストどもの奇襲から数刻……ガス騒ぎはそれから流布し始めたのだろう」
将軍丙「状況から考えるに、連中の後続部隊が流出をさせたのでしょうね。姑息なマネを……!」
姪「……近辺の路線図はあるか」
アラクネー「は、は、はいぃ」
姪「恩に着る。上下水道の配備図くらいしか持ち合わせていないのだ」
将軍丙「(ああ……)」
アラクネー「(だからちょっと臭うんだ……)」
姪「……なるほどな、この敷設状況なら……南西……ゲットーと連合駐屯地の中間地点に辿り着けるか」
将軍丙「……?」
姪「ゲットー付近の駅舎に向かうぞ、飛竜はいるか」
アラクネー「て、手配はできますけど……駅舎?なんで?」
将軍丙「実行犯に目途がついたというの……?」
姪「ああ、連合でも北西諸島でもない……おたくら魔王軍でもない。加えて、暴れてくれたテロリストどもでもないかもしれんぞ」
姪「……ふん、こういう事か。掃除を済ませてさっさとトンズラだな」
アラクネー「ひいいいい」
将軍丙「死屍累々……ひどいものね、駅舎の倉庫に潜り込んでこんな事を……」
姪「……」
アラクネー「ご、ご冥福……」
姪「(……装備や服装を見る限り、やはり北西諸島傘下となっていた西方遠征師団の部隊か。
目立つような外傷はなし、死因はテーブルの上を鑑みるに、恐らくは服毒……)」
アラクネー「こいつらが……ガスを撒いた実行犯って事なんでしょか」
姪「(ふん……こんなわざとらしい遺書まで用意しやがって。白々しい……誰が信じるものかよ)」
モルドレッド「動くな」
騎士ほ「まあ、これはこれは……酷い有様。あなた方の仕業ですの?」
姪「……ふん」
将軍丙「我々は魔王軍所属の者だ、そちらは北西諸島の……」
モルドレッド「……動くなよ、もちろん口も動かすな」
姪「……」
騎士ほ「(魔王軍がなぜここにいる……?ガスの存在に確証を持ったからこその行動だろうが……
証拠隠滅か?私の推察の全てが間違いであり、こいつらがここにいる理由は単なる尻拭い……?)」
モルドレッド「(エクスカリバーを使う事もなかったかな。この規模の部隊なら、現状のドラグーンでも……)」
姪「……拘束されるのは嫌いだ。見ろ」
将軍丙「……」
モルドレッド「帝国陸軍情報部……?貴様がか」
姪「もっとも、今はほとんど連合の使い走りだがな」
騎士ほ「……」
姪「私が……どうかしたかな」
騎士ほ「(どうも面影があると思えば……お姉様の姪か。汚らしい……!毒されてしまったのか)」
姪「(……見覚えがあるな、あの黒髪……死んだ魚のような目……どこかで……)」
将軍丙「我々は連合と共同で、ガス流出の真偽を調査している。一方的に拘束されるような謂れはない。
それとも、北西諸島は民衆の命に関わる活動にもけちをつけるのか?」
アラクネー「(け、結構エライ人だったんだ……でも、連合の後ろ盾が本物だったら、ここはなんとか切り抜けられる……)」
騎士ほ「(ここは……あまり欲張らん方がいいか。魔物どもやドワーフがいくらガスで死のうが知った事ではないが)」
モルドレッド「(状況的に、こちらは圧倒的に不利か。嫌疑を他に向ける事を考えねばならん……!)」
将軍丙「(獅子身中の虫……師団の中に巣食っていた、過激な帝国主義者による犯行で間違いなさそうね。
この連中がそれを後押しした可能性も否定はできないけれど……)」
姪「ここで睨み合っていても仕方なかろう、我々にもやるべき事がある」
モルドレッド「……奇遇だな、我々も同じだよ」
騎士ほ「卿……この現場は向こうに引き渡すべきです。他人を信じる事を知らぬ哀れで愚かな魔物どもです、
我々が譲ってやるのは道理でございましょう……」
モルドレッド「わかっているよ、僕もそう思っていた」
姪「(……島国のレイシストが、しゃあしゃあと善人気取りか。どうしようもないな、円卓も)」
騎士ほ「(お姉様の血筋の娘……できる事ならば、連合や魔物の毒を取り除いてやりたいが……
まだ時期が悪い、ここで連合に唾を吐くようなマネは控えるべきか……)」
姪「わかっていただけたようで結構。将軍殿、現場を押さえてくれ。私は少し用事があるのでな」
将軍丙「わかったわ。あなた、よろしくね」
アラクネー「ふぇぇ」
エルフ騎兵ア「若様ァ、お嬢様ァ!!もう限界です、撤退してください!!」
娘「今何してンのかわかってンだろォがァ!!」
息子「戦争の産んだ膿……!ここで殺さねばならない……!!」
エルフ騎兵イ「時間です、戻りましょう!!」
娘「ガスが何だってンだァ!?面白ェ、このオス豚ども羽交い絞めにして実験してやるァ!!」
エルフ騎兵ウ「お母様がお呼びです!!ご褒美をくれるそうですよ!!」
娘「お兄ちゃん、わたし帰る!!」
息子「皆さん、撤退いたしましょう!ドラゴンさえ残っていればいくらでもやりようがあります!」
エルフ騎兵ウ「(扱いやすいなあ)」
勇者「退く気か……!」
賢者「わ、私たちも早く場所を移さないと!」
戦士「だがよォ、住民の避難は終わってるのか!?」
僧侶「現在、ゲットーの7割の避難が完了……まだ完全とは言えません!」
勇者「実際に連合……それに北西諸島が動いたとなれば、ガスの件は真と判断して良いだろう。
僕たちも可能な限り救助に参加するぞ」
勇者「うっ!?」
僧侶「ゆ、勇者様!」
息子「クソッ、外した!」
エルフ騎兵ア「若様、おやめください!まだそれは試作品にございます!」
娘「お兄ちゃん、私にも一発撃たせて!」
エルフ騎兵イ「お嬢様、おやめください!その20ミリ弾が減っているとばれれば一大事です!
大将、嬉々として2000字は書かせてきますよ!!」
エルフ騎兵ウ「最後っ屁に対戦車ライフルなんか撃たんでください!」
勇者「……」
賢者「立ち位置がもう少しずれてたら、つぶれたスイカになってたでしょうね」
僧侶「あの、おっぱいがたくさん着いてるドラゴン……たぶん夢に出ます……」
戦士「何なんだあいつら……単なるテロリストとは思えねえ……」
おかっぱ「ふん……クロウクルアッハの速力に救われたな。この速さはティアマトーには出せんか」
エルフ騎兵「都市部に流れ込む黄土色の気体が確認されたらしい……やはり有毒ガス流出は行われたらしいな」
敵兵「や、やややややっぱり……あのクソ女がやった……?」
おかっぱ「さっきも言っただろう、エルフやあの騎士がやった事と考える事はできん」
真神「吐く……この匂いやべえ……オゥェェェェェ」
金長狸「におってきた……ううう……」
九尾狐「……」
おかっぱ「お前は文句いうなよな、殺生石」
九尾狐「えっ」
エルフ三男「騎士様、こちらの部隊の損害はほぼ無し……撤収は無事に終わった模様です」
女騎士「はーい、よくやった。じゃあ、こっちも頃合いだな。ガキどもに合図を出せ」
エルフ三男「了解です」
女騎士「クク……ただで起きてたまるかよ……同時にってのも興が乗るってもんだぜ……」
エルフ三男「……騎士様。若様のクロウクルアッハへの乗り換えも済んでいるようです。いけます」
女騎士「よく聞けや、田舎モンどもォォー!!」
息子「この地に住まうドワーフの皆さま!お聴きくださいませ!!」
女騎士「ガスで苦しんで死にたくなかったらよォー、武装を捨てて裸一貫で正門の前に来やがれ!!」
息子「我々北西諸島のドラグーン兵団は、あなた方の味方であります!どうか、我々の支持に従って行動してください!」
女騎士「うひゃははwwwwww必死こいて門叩いてんぜwwwww軍人どもwwwwざっまああああwwwww」
エルフ三男「火器の使用の危険性について説いたのも効果的だったようですね……あーあーひどい……」
おかっぱ「……こんな所で何をしている、地上の陣地に姿がないと思えば、わざわざクロウクルアッハを出して……」
女騎士「だってよォwwwww見ろよアレwwwwwwだっらしねーwwwwww」
おかっぱ「……街道への門が閉鎖されているのか!?」
エルフ三男「あの一派のもとにガスがなだれ込むのは、時間の問題ですね……連合や北西諸島の末端兵……」
おかっぱ「た、助けんのか!?人質にもなろう、何をしている!?」
女騎士「人質になりそうなのはドワーフどもの方だろ?そっちはガキどもが上手い事やってるっての」
おかっぱ「で、では……こちらの庁舎と駐屯地の人間は……」
女騎士「おらおらwwwww武器捨てなってwwwwバーカwwwww開門してあげないよぉー?」
エルフ三男「あー、見てください。市民ともめてますよ……あ、撃った。最悪ですね軍人って」
女騎士「あーあー、そんなにガスいっぱい吸って死にてーのかよwwwwwマゾどもがwwww」
エルフ三男「まったく人がゴミのようですねえwwwwwwwwwwww」
女騎士「私以外は元からゴミだろwwwwwwwwwwwwwwww」
おかっぱ「」
連合兵『――――』
北西兵『――――』
女騎士「あんだってーっ!?耳が遠くて聞こえねェよォー!!」
エルフ三男「『いやだ』『死にたくない』『仲間の事でも何でも教えるから』だそうです」
女騎士「身も心もグチャドロに腐りきったゴミカス野郎どもだなwwwww生きてる価値ねェやwwwwwwwww」
エルフ三男「民衆を守るための兵が、保身の為に民衆を撃つだなんて……」
女騎士「うぇぇwwwwwまじで服脱いでる奴いるよwwwwwバカじゃねぇのwwwwwwwwwwwww」
おかっぱ「……さ、先に降りているぞ」
女騎士「きったねーもん見せんじゃねェよwwwwwばーんwwwwばーんwwwww」パンッ パンッ
エルフ三男「騎士様射撃下手ッwwwww下手ックソwwwwwwww」
姪「……」
姪「(旧帝国西側領におけるガス流出『事故』における死傷者は約5000人……)」
姪「(旧ゲットーでの行方不明者は300人以上……魔王軍及び共和国で難民としての迎え入れができたのは、
総住民のうち6割強……ドワーフ達がどこに消えてしまったのか……魔王軍のその後の対応が待たれる……)」
姪「だそうだ、目論見は失敗に終わったようです、なあ!」バギッ
騎士と「がうっ!!」
姪「陸路を掌握していたのを良い事に、鉄道各社に人材を送り……政党の名を出して師団の指揮官を強請った……」
騎士と「……」
姪「……わからん、わからんな。どんな思惑があってそんな事をしたのかわからん」
騎士と「……」
姪「ガスを師団に撒かせたとして、損をするのは誰か。当然、師団の親代わりの北西諸島か、元鞘の帝国残党……
さっきまでは、誰が得をするかと考えていたが……分かるわけが無かったな、思案を逆にしたり努力はしたんだが」
騎士と「……」
姪「おまえ、北西の竜騎兵を狙ったな?大がかりな事だ、師団の受け入れを陳情したその騎兵をピンポイントで、なあ!」バギッ
騎士と「がっ……!!」
騎士ほ「フクク……ざまぁ見ろ……バカ女が……」
姪「……」
騎士ほ「私にケンカ売って……勝てると思ったのかしら……?つまらない横槍を入れてきて……フククク……」
姪「粉飾決算の山だ。相当ネジくれているな、この汚職政党は」
騎士ほ「オーガなんぞに共同体を任せるから、こんな事になるんです……いくら実力主義とはいえ……お姉様はお優しすぎますわ……」
姪「……」
騎士ほ「フクク……そのご褒美だけじゃ不満かしら……?政党の汚職の告発……そこまでは譲れなくてよ……?」
姪「ああ、取引だからな。私はお前から得た情報をもとにこのゲス女を断罪し……お前はこの政党を手中に収める」
騎士ほ「……おいしい取引で嬉しいわ……フクク……」
姪「……」
秘書「ひ、ひい!!」
姪「……」
秘書「こ、こ、こ、殺さないでえ!!嫌、嫌あ!!ももも、もう親のおカネでギャンブルしません!!ちゃんと仕送りします!
たた、助けて!!わたし悪くない、何も知らなかったんですぅ!!もう変なピンナップ集めませんからぁ!!」
騎士ほ「だそうよ……・フクク……」
姪「……連合には、この小娘を突き出して手打ちにする。それで十分だ」
騎士ほ「フククク……毎度あり……」
姪「(この女も大概だな、大陸に呼び込んではいけない害悪に他ならん。いつか、尻尾を掴んでみせる……ビッチが……!)」
第5部 女騎士おかっぱ編 ⑨
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制作・著作 NHK