1 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/23 14:09:24 WJDtHc8Q 1/18

「あれ、こんにちは」

「いや、どなたですか」

「あいさつもできない人間に教える名前などない!」

「こんにちは」

「うふふ」

「で、誰ですか?」

「人です」

「いや、そういうことではなくて」

「humanです」

「無駄に発音いいな」

元スレ
うちの押入れがつながっていたときの話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1374556164/

2 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/23 14:11:16 WJDtHc8Q 2/18

「ところでなんでうちの押入れにいるんですか」

「不審者です!食べちゃうぞ!」

「通報しますよ」

「ごめんなさい勘弁してください」

「なんか、自宅の押入れに入って見たんですよ、
  そしたら壁がなくて、うちの押入れってこんな広かったっけ?って
  思って進んでるうちに気付いたらあなたの家の押入れにいました」

「どうなってんだうちの押入れ」

3 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/23 14:11:49 WJDtHc8Q 3/18

「とにかく、帰ってください」

「えー、いいじゃないですか、押入れ開通記念ですよ!」

「誰と誰の」

「あなたとわたしの!これでいつでも行き来できますね!!」

「来ないし行きません」

4 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/23 14:12:43 WJDtHc8Q 4/18

「押入れから出ていいですか?」

「嫌です」

「あなたのお部屋の押入れって布団一式しかないんですねー」

「ちょっやめてください!でてこないでください!」

「あれ、でれない!どうやら押し入れからはでられないみたいですね」

「今人生で初めて神に感謝しました」

「あ、わたしのことですか?いやーてれるなー」

「ちがいます」

5 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/23 14:14:00 WJDtHc8Q 5/18

「今何してるんですか?」

「レポート書いてるんです」

「なんの生態についてですか?キリン?」

「なんで生態限定なんですか、違いますよ」

「わたしキリンに乗りたいんですよー!
  観察に行く時はぜひ誘ってください」

「その前に話聞いてください」

12 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 15:57:36 00Dp8k3Y 6/18


コンコン
「男、いるか」

「まずい、父さんだ・・・」

「ご挨拶したほうがいいですかね!!」

「何言ってるんですか戸閉めて隠れて!!」

「でも未来のお義父さんになるかもしれない方ですし!!」

「シーッ!!部屋に連れ込んでると思われるじゃないですか!!」

「・・・男?誰と話しているんだ?」

「なんでもないです父さん!!ちょっとねずみが押し入れに!!」

「ひどい!!!」

13 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:01:28 00Dp8k3Y 7/18

ガラッ

「男、レポートのほうは順調か?
 最近たるんでいるそうじゃないか。お前が出ている講義の
 教授が言っていたぞ。怠けるなよ」

「はい、分かっています父さん」

「・・・・・」(なんだこの雰囲気・・・)

「私の顔に泥を塗るような真似だけはするなよ」

「・・・はい。」

「・・・・・」

14 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:06:05 00Dp8k3Y 8/18


ガララッ

「・・・・はぁ。」

ガラッ

「なんですかあの人!!なんですかあの人!!」

「父さんだよ。俺が通ってる大学の教授をやってる」

「この世で私が嫌いな人種の一つは、偉そうな教授です」

「・・・・俺もそうだよ」

15 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:17:38 00Dp8k3Y 9/18

「でも、家族だから」

「家族だから?」

「どうしても、嫌いになれないんだ」

「・・・・」

「父親だからね」

「家族だからって何も言い返さないのは、違うよ」

「あなたはとてもとても頑張ってる。私にはそう見えます」

「どうして?」

「目の下の隈に、パソコンの周りの栄養ドリンクの空き瓶」

「!!」

「見ず知らずの私にくらいは、
  本音言ってもいいんですよ?」

「・・・ありがとう」

16 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:23:05 00Dp8k3Y 10/18

「父さんはさ、テレビに出てるくらいの有名な教授なんだ」

「だからさ、必然的に俺は周りから期待されてた。
  でも俺はほんとダメなやつでさ、ろくに勉強しなかったんだ。」

「そんな俺を見た父さんは、いろんなコネと金つかって
  今の大学に俺を無理やり入学させたんだ。」

「笑っちゃうよな、俺本当はあんな有名な大学入れるような
  頭じゃないのにさ。」

17 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:37:59 00Dp8k3Y 11/18

「だから周りと話が噛み合わないし、友達だっていない」

「広義には毎回出てるけど、父さんの息子だからって
  単位もらったり、レポートだって他人のを金で買ったりしてるんだ。」

「最低だよ、俺は」

「父さんも多分、気づいてるんじゃないかな。
  俺がどうしようもないやつだってことにさ」

18 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:38:44 00Dp8k3Y 12/18

「じゃあ、今書いているレポートは?
  それがなによりの証じゃないですか。
  男さんは、だめ人間だけど、努力してます。」

「これは・・・ただのきまぐれだよ」

「きまぐれだったら、
  そんな何日も徹夜したみたいな顔しませんよ」

「お父さんと、ちゃんと話してみたらどうですか?
  私に今話してくれたこと、ぜんぶ」

「・・・・勇気が無いんだ。ずっとこうやって生きてきたから」

「じゃあ、何かやりたいことはないですか?
  楽しいことを思い浮かべれば、たいていの辛いことは
  平気ですよ!」

「簡単に言ってくれるね」

「男さんには、できますよ。
  私がついてます!」

19 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:42:01 00Dp8k3Y 13/18


「じゃあ、私はそろそろ帰りますね!」

「待って!!・・・いない」

「押し入れの壁、いつもと変わらないじゃないか・・・」

「ありがとう、女さん。いつかまた押し入れが繋がるまで
  俺は待つよ」

「・・・・大丈夫。俺にはあの娘がついてる」

20 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:44:30 00Dp8k3Y 14/18


ガラッ

「父さん、話があるんだ」

「なんだ男、いきなり改まって」

「俺、大学辞めるよ。ごめん」

「・・・そうか」

「いままでやってきたことは、決して許されることじゃ
  ないから。その責任は、自分でとるよ」

「お前、私が知っていることに気づいてたのか」

「うん、本当にごめん。ありがとう、父さん」

21 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 16:46:23 00Dp8k3Y 15/18

「俺、この家を出ようと思うんだ。」

「大学を辞めて家を出て、どうするんだ?」

「・・・キリンに乗りに行こうかな」

23 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 17:00:38 00Dp8k3Y 16/18


あの日以来、押入れが繋がることは無かった。

―今日はアパートへの引越しの日だ。
なるべく家と大学から離れたかった俺は、
遠い県外の部屋を借りた。
これからはアルバイトを探して、キリンの生息地である
アフリカに行く資金を貯めるつもりだ。
父さんは、「金を出そうか」と言ってくれたけど
それは遠慮しておいた。自分で働いて稼いだ金で行きたかったから。

24 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 17:01:13 00Dp8k3Y 17/18


「っよし!まずはご近所に挨拶だな」

ピーンポーン

隣人「はーい」

(この声は・・・?)

ガチャ

「!!!」

「!!!」

男&女「「押し入れの・・・・!!?」」

「あっあの!!!!」

「キリン!!!キリンに乗りに行きませんか!!!」

「ふふふ!喜んで!」

26 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/08/09 17:09:19 00Dp8k3Y 18/18

おまけ

「俺、大学辞めたんですよ。で、父とも話しました」

「私が何かの人だったら、あなたに賞をあげたいくらいです」

「女さんとキリンに乗ることを想像して、勇気を出しました」

「・・・・!!」

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