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女騎士「いやだ!死にたくない、仲間の居場所でも何でも話すから!」 第5部 序
≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。
元スレ
女騎士「私が死ぬと思ってるの? バカなの? 死ぬの?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375200813/
敵兵「人魔の断絶……?」
おかっぱ「その通り。今までの我々の魔族への対応を、お前達にもやってもらう事になる」
敵兵「だ、断絶って……お前らはそんな事ができてたって言うのか?」
おかっぱ「別に、一本線を引いてこれがボーダー、こっからここまでが人間の土地、こっからここまでが魔族の土地。
だなんて事をするわけじゃあない。物質的ならぬ、観念的な隔離を行う」
敵兵「……?」
おかっぱ「つまりだ。人外の存在を超自然的な『災害』として人民に把握させるんだよ。
どこどこのどんな、どういう奴がどういう手口でどういう事をされたっていう詳細な被害を出させずにな」
敵兵「(意味がわからん)」
おかっぱ「魔族……魔物どもを、カミの領域へとシフトさせるんだよ。物質的ボーダーを用いないと言ったが、
それでもやはり連中をある一定箇所に押し込める必要があるがな。なに、そちらはそこまで厳格にする必要はない」
敵兵「かか、カミって……!お前、本当にそんな事ができると思ってんのか!?」
おかっぱ「実行もできねえような世迷言を携えて、わざわざこんなコエダメみてぇな土地に来るか?そんなマゾだよそりゃ」
敵兵「だ、だってよう……」
おかっぱ「これほど合理的なガス抜きっていうのは、古今東西探しても我々の列島にしかないと思うがね」
敵兵「……今の話を聞いても、何をどのように計らうのかまったくわからなかったんだが」
おかっぱ「ふん……まあ、一応クソ無職とはいえ情報提供者か。いいだろ、教えてやらんでもない」
敵兵「ひでえ」
おかっぱ「いいか、今さっきガス抜きと言ったがな。人間の社会で凝り固まる有害なガス……
行政システムなどに募る不平不満ってェのは、どこの社会体系にも当たり前のように存在するものなわけだ」
敵兵「まあな。帝国なんて、それが原因で内部崩壊したようなもんだ。南部も魔王軍に取られちまったし」
おかっぱ「疫病、飢饉、内乱。いかに土地が豊かだろうが、為政者が善政を敷こうが、イナゴのようにやってきて平穏を食い尽くす」
敵兵「(……まさにあの糞騎士だな)」
おかっぱ「そんな時、お前達のようは一神教徒はどうする?神様、どうかこんな事をする深淵の悪魔を追っ払ってください、か?」
敵兵「そんな直接的な言い回しじゃあないだろうが……」
おかっぱ「我々はそうした人に仇なす出来事を隠(オン)、もしくは鬼と呼称する。そして、その災厄そのものを崇め奉るのよ」
敵兵「……」
おかっぱ「北方共同体のケンタウリ達も、似たような事をやっていると聞くぞ。人身御供の概念は、どこも共通らしい。
ただ、お前達一神教徒のせいでそうした思想もペイガニズムと名を変えてしまっているようだがな」
おかっぱ「だがな、やられっぱなしじゃあない。どこの英雄伝承を見てもそうだろ、人に仇なすものを殺すのは必ず人なのだ。
聖ゲオルギアス、聖ジョージ、ベイオウルフ……カミの加護を受けた只人が魔を討つ」
敵兵「……数百年前の、勇者と魔王軍の闘いもそういう事だって言うのか?」
おかっぱ「どれだけ史実が歪曲されているかどうかは知らんがな。実際のところは、帝国と教皇領の仕組んだ失業者政策だったのかもしれん。
大量の人材を安く買い叩き、聖地奪回の名目で魔王軍や異教徒相手にドンパチやらせる。
ありがたーい教義で、中世期にも関わらず戦場における死傷者はウナギ昇り。勇者なんてモンは、共和国の出まかせなのかもしれねえ」
敵兵「まさか」
おかっぱ「ああ、まさかンな事あるわけがない。だが、無いとは言い切れねえ」
敵兵「……」
おかっぱ「その頃はまだ帝国は善政やってたんじゃねェか?得体の知れない魔王軍に敢然と立ち向かう……」
敵兵「その頃は、国教会の汚職も目立ってなかっただろうしな」
おかっぱ「だが、今はどうかな。中途半端に民主化・近代化なんぞを北西から輸入しちまったおかげで、
歪な貴族第一主義を強いる羽目になり……お前ら連合に取り入る隙を与えた」
敵兵「……」
おかっぱ「要はな。人間には得体のしれない神性ってものが必要なんだよ。触れも見えもしねえ、考えすら及ばねえ。
お前らの言うカミでもない、魔王でもない、魔人でもない、聖人でも竜神でもない。そんなカミが必要なんだ」
敵兵「……い、いきなりそんな事言われてもな。こちとら、産まれた時から天の神様信じてるんだぜ?」
おかっぱ「その結果がこれじゃあな。その神様とやらも草葉の陰でのたれ死んでるぜ」
敵兵「罰当たりな……」
おかっぱ「見えもしない、触れられもしない、そんな存在を、我々はカミだと思っていた。
神職以外は、コンタクトもできない超自然的存在だ。少なくとも、今まではそう思っていた」
敵兵「今までは?」
おかっぱ「我々も我々で、少し一悶着があったのさ。お前ら大陸人のちょっかいのおかげでな」
敵兵「何でも俺達のせいかよ……」
おかっぱ「おかげで、今まで保っていた人と神性の均衡が少しばかり崩れっちまったんだ。あーあ、ご先祖様はなんて言うかな」
敵兵「均衡とは?」
おかっぱ「ガス抜きの構造だ。魔を殺す人という方式を舞台裏で支援、演出する為の機構が、少しばかりばれちまった」
敵兵「え、演出ぅ?」
おかっぱ「信仰され、畏れられるだけの筈である『魔』の側が、自分の姿を白日にさらしちまったのよ」
おかっぱ「日常的に魔物と殺し合いをしてるお前らには驚きかい?」
敵兵「驚きも何も……それじゃ何か、列島には魔物がそれまではいなかったって言うのか?」
おかっぱ「そんなわけ無かろう、井戸の釣瓶にもいたし天井裏にもいた。そこらじゅう物の気だらけだぞ」
敵兵「(列島怖すぎワロタ)」
おかっぱ「ふん、お前ら大陸人に我々の『怪』を魔物呼ばわりされるのは心外だな。
零落したカミとは言え、敬われるべき神性だ。一緒にするんじゃない」
敵兵「(ぶっちゃけ区別なんかつかねえよ……)」
おかっぱ「ところで……大陸人どもの来航によって、列島幕府がどれだけ荒れたか想像が付くか?」
敵兵「これっぽちも。革命でも起きたのか?大規模な内乱が起こったとか」
おかっぱ「……さすがにそこまでは行かなんだが、識者は数名犠牲になった。元首を帝(みかど)に据えるか、
このまま列島幕府が封建体制の頂点に君臨し続けるかでな。だが、幸いにも大規模な革命は起きずに済んだのよ」
敵兵「み……かど?幕府にエンペラーがいるんじゃないのか」
おかっぱ「これだから大陸人は。北西諸島の連中はミカド概念を一言で呑み込んだというのに」
敵兵「(あーこれ、『これだから大陸人は』って気に入ってるパターンだわこれ)」
おかっぱ「その混乱も、『カミ』側の鶴の一声で事なきを得た。おかしな話だろ、語りえぬ存在の筈のカミからお声がかかるなんて」
敵兵「……?」
おかっぱ「あーもういいや、そのまんま聞いてろ」
敵兵「待て待て、ええと……するってーと何か、お前らの良い分では、お声がかかると、ホントの意味でのカミじゃないわけで。
だからおかしな話ってんだろ?ワケわかんねーけど」
おかっぱ「ホントの意味でのカミってのも、定義されてるわけじゃないがな。まあ、とにかくその物の気どもからお声がかかったわけだ。
幕藩に借りを作っていたと証言する連中からな。隠神刑部、白面、金長……ほとんどが西部地方の魔族だ」
敵兵「とほほ、人間にはかな……」
おかっぱ「よせやめろ」
敵兵「」
おかっぱ「……でだ。連中、生意気にも国防を手を貸すから列島内で混乱を広げるのはやめろと言いだした。
事実、中世期の禁教令で大陸にアレルギーを持っていた大名も多かったからな。正直言って助かった。
そうして成し遂げたのが幕藩帰化。憲法を為政の中枢に置いたうえで政治を行う体制が実現された」
敵兵「……じゃあ、何か。オレ達にも、その真似事をしろって言いたいのか」
おかっぱ「バカが。お前らがするのは断絶、隔離だ。現にその試みは6年前に盛大に失敗したんじゃないのか?」
敵兵「あ……」
おかっぱ「そもそも、教会にバカに育てられたお前らが我々のマネなんぞハナッからできるなんて思っちゃいない、安心しろ」
敵兵「(そろそろキレていい時期じゃないかな……こいつ何様だよホントに……)」
おかっぱ「本来なら、我々が数百年前に通った道のりだぞ。居もしない絶対神だけを盲信した結果がこれだよ」
敵兵「そばに敬虔な信者がいたら殺されるぞ……」
おかっぱ「そんなんが、魔王軍のクソみたいな言い分を聞いたらどうなる。水と油、もう悲惨な事になるね。
バカ同士のクソタレ連鎖反応だ。周囲に血の混じったビチグソが飛び散るぞ、オェェェ」
敵兵「あははは、笑えねぇー」
おかっぱ「その通り笑えねえ。そこでだ、我々はまず帝国を押さえたい」
敵兵「ふむ、帝国……帝国!?」
おかっぱ「ああ、正確には西側をな。可能ならば、連合側から皇族をかすめ取っておきたいところだが」
敵兵「いやいやいやいや、ナニイテンダ!?」
おかっぱ「かつての覇権国だ、まだその威光は完全には失われてはいまい。共和国の暫定政府なんぞより、
帝国の貴族の方が発言力が強い場合だってあろう。最終的には魔王軍を懐柔せにゃならんのだぞ」
敵兵「そこじゃ……いや、そこもおかしいけど、そうじゃなくて!」
おかっぱ「我々の最終目標は、お前ら連合の目的の一つでもあった信教のアカルチュレーションだ。
無論、お前らと違って無用な殺戮を行う気はないがな。それに……」
敵兵「だからさ!何言ってんですかってこったよ!あんた一人でそんな事できんのかよ!?オレにやれってんじゃないだろうな!
無理だろ!オレは単なる元士官の元教師のプータローさんだぞ!今すぐにでも日雇いの募集を探さにゃならんのだぞ!」
おかっぱ「何言ってんですかてなァ、アタシの台詞だ失業者!!アタシがそもそも何のためにテメェのようなプーさんに近づいたと思ってる!」
敵兵「何の為……って……」
おかっぱ「6年前の歪な共和国テロ……テメェがもしかしてその中心人物なんじゃねェかって言ってんだよ」
おかっぱ「東西戦争末期……連合の手が共和国領にまで及んだ際に起こった出来事だ。
共和国東部に滞在していた北西諸島の部隊が、テロリストに襲われたってェ話……実行犯は未だ不明、
魔王軍側も犯行を否認。共和国側も関係を否定。じゃあ連合側のとった対応はどうだ?」
敵兵「オレが……わかるわけないだろ?」
おかっぱ「先遣隊の一部による命令無視、越権行為……その程度にしか残っちゃいねぇんだ。
当時の指揮系統を担っていた佐官の銃殺という事実はあったが……それで許してくれよ、チャンチャン♪って風にしか見えなかったわ」
敵兵「(中佐……かわいそうなハゲ……)」
おかっぱ「だが、おかしいとは思わねェか?その当時、北西諸島のドラグーンとの交戦での戦力比は15対1。
だが、北西諸島に残されている書類では9対1にまで巻き返されちまってるんだよ。ただのいち先遣隊が、どうなったらそこまでの実力を持てる?」
敵兵「……」
おかっぱ「最新鋭の後送式ライフル……帝国や連合が末端兵に持たせてるガラクタとは段違いのオモチャの存在があったらしいんだよ。
加えて、異様なまでの的中率を誇る夜襲部隊の存在。いくら目下を警戒しても、適格にワイバーンの目をぶち抜く兵士たち……」
敵兵「そりゃ……おっかないなぁ」
おかっぱ「結果的には大勝で終わったものの、ごく一部の戦場ではドラグーンが20騎近くも撃墜されている。不自然たぁ思わねェか?」
敵兵「……魔王軍か……それとも、エルフが連合に肩入れしてたとでも言いたいのか?」
おかっぱ「状況から判断すれば……そうなるなァ」
おかっぱ「共和国領での戦闘はドラグーンによる挑発が原因。手を出したのは先遣隊……連合の言い分だ。
しかし、その後のテロは?これに関しては知らぬ存ぜぬ……」
敵兵「……」
おかっぱ「テロ直後の騒動で起こった恣意的とも思えるデマは……まあ、これは国内の帝政派やレイシストどもの便乗もあろうよ。
しかしだ。その中でちょいと妙な点が一つだけあったんだよ」
敵兵「妙な点?」
おかっぱ「共和国を流れる河川のずっと下流……男の変死体が見つかっているんだよ」
敵兵「……」
おかっぱ「全裸で、口ン中に銃痕。少なくとも、他殺体には見えなかったが……如何せん損壊が激しく、身元の特定には今の今まで至らなかった。
だが、怪しすぎるよなァ?死亡推定日時はテロが発生した日にちの前後と一致する」
敵兵「何が言いたい?」
おかっぱ「当時のデマでは、『井戸に毒を撒いたヤツがいる』という風説が異常なまでに強調されて流布されていたらしい。
その影響もあってか、共和国もかなりの気合を入れて河川の立ち入りを制限している」
敵兵「……」
おかっぱ「さて、ここで私が不自然に思ったのは全裸の不憫なホトケさんだ。まだまだお高い9ミリでできた口射創、
それに、水底から発見されたカラの薬莢。なあ、カラの薬莢だぜ?」
敵兵「まさか……自動拳銃だってのか?」
おかっぱ「帝国で試験的に製造された7,65ミリ拳銃とも違う、連合が大々的に宣伝してる最新型の自動拳銃のモンだ。
それが6年前の犯行に使われていたとあれば……こりゃ、やたらと謎の多い『単なる先遣隊』との繋がりも考えちまうわ」
敵兵「……う……うう」
おかっぱ「あんたも使った事あるんじゃないのかァ?ピッカピカの9ミリ銃をよォ」
敵兵「……」
おかっぱ「兵籍も戦果も抹消された、先遣隊メンバーさんよぉ。ネタは挙がってんだよ。
テロの後で共和国に亡命して、しばらくは橋の下で雨風凌いで、東部の汚染水で身体洗ってたて・き・へ・い・さん」
敵兵「ひ……」
おかっぱ「逃げんなよォ、取って食う気はねェんだから。ここまでは全部幕府側の推察に過ぎねえ……
情報のほとんどは北西諸島の外務省からいただいたモンだ、あいつらは確証を持っちゃいない」
敵兵「ほ、ほ、北西諸島が……!?ななな、何で……!」
おかっぱ「ありゃ、その日暮らしが板についちまって……知らねえのか。外務省が大々的に指名手配している、ある男を」
敵兵「しめい……てはい……!?」
おかっぱ「重要参考人の殺人未遂で国際指名手配……手配の似顔絵まで出回っちまって」
敵兵「……」
おかっぱ「アンタが髭生やして、もうちょっと肉付けたら……こんな感じかもなぁ」
敵兵「」
おかっぱ「おいおいおいおい、どうしたァ?顔色ワリィぞぉ、こんなとこで吐くんじゃねェぞ」
敵兵「お、お、おれは、おれは悪くない……おれは……」
おかっぱ「言っただろ、取って食やしねぇよ。ちったぁ落ち着け」
敵兵「お願いだ、お願いだ助けてくれ、死にたくない!死にたくない!!」
おかっぱ「ふん、確定か。まじにヒミツの先遣隊とやらがあるとはな」
敵兵「な、何でもする……何でもするから……ころ、殺さないでくれ……」
おかっぱ「心配すんじゃねェよ……幕府の……アタシ達の目的は、お前らの教育だからなァ」
敵兵「……」
おかっぱ「で、何でもするって言ったな、あんた。言ったよな?」
敵兵「あ、ああ!」
おかっぱ「エクレアとかいうのが食べたい。向こうの通りで売ってた、買ってこい。あと茶。泥水はダメだぞ」
敵兵「」
おかっぱ「まずい」
敵兵「え?」
おかっぱ「くどい、気持ちが悪い。何だコレは」
敵兵「いや……エ、エクレア」
おかっぱ「アホタレ、味だ。お前らはこんなものをありがたがって食っているのか」
敵兵「……」
おかっぱ「オマケに付け合せはまたこの泥水だ!客を舐めているのか、この国の茶屋は」
敵兵「ははは……」
おかっぱ「……居心地が悪そうだな、お前も何か食ったらどうだ」
敵兵「……」
おかっぱ「フフ、もう少し嬉しそうな顔をするといい。お前に価値があるうちは、我々幕府が命の保証をするんだぞ?
連合だろうが北西諸島だろうが……まあ、今のうちは手は出させんよ」
敵兵「(吐くものが残ってないよォ……)」
おかっぱ「ククク……クカカカ、面白い、面白いじゃないか。エルフを抱き込んで戦争だ?楽しいなあお前らは」
敵兵「……」
おかっぱ「北西諸島が探しているアジ・ダハーカとか言うのは、恐らくはそのブロンド女だろうな。ふむ……」
敵兵「アジ・ダハーカ……?」
おかっぱ「魔王軍側が非難している、非人道的掃討作戦の発案者……スラングようなものだと思っていたが、実在していたとは。
元来は謀略を司る中東の悪鬼だと聞く。魔王が悪鬼を恐れるとは、おかしなものだ
敵兵「(あいつそんな名前で呼ばれてたのかよ……)」
おかっぱ「いやはや、会ってみたいものだ。さぞかし敬虔な国教徒か、それともとんでもない野心家か……」
敵兵「あっ、会う……!?」
おかっぱ「当然だろ、人魔の共存だとかいう世迷言を謳う魔王軍を焼き払うなどと言う大陸人……
融和派が幅を利かせんとする中、声を大にしてそれを主張するなど並みの神経ではできんぞ」
敵兵「……あ、会う……会う、ねえ……」
おかっぱ「(……元貴族とのコネクション、もとい人質は帝国を確保するに必要なファクターだからな。
こればかりは北欧諸島や北方共同体との協調ではできん事だ。元帝国の王政主義者を味方に付けるのが最優先だ……)」
おかっぱ「アジ・ダハーカとは現在でも関わりが……その様子では無さそうだな」
敵兵「あるわけないだろ……思い出したくもない……」
おかっぱ「だろうな……とでも言ってほしいか?アタシゃ、あんたがその悪鬼の信奉者じゃないと信じたわけじゃねえ」
敵兵「ほ、本当だ、こればっかりは!!」
おかっぱ「まあ、テメェの信心には興味はない。奴とのコンタクトの足掛かりが見つかりゃ万々歳なんだ」
敵兵「……」
おかっぱ「どこにいるか、目星はつかねぇのか?」
敵兵「いや……その……」
おかっぱ「潜伏先……どの地方くらいはわからねえか?」
敵兵「……そ、そこのアパート」
おかっぱ「は?」
敵兵「アパートに……」
おかっぱ「……」
おかっぱ「……まさか、昨日のプロポーズってそのアジ・ダハーカにか!?やっぱり大陸人の思考はイカレてやがる!」
敵兵「やだ!やめろ!ふざけるな!!誰があんな悪魔と!!」
おかっぱ「ないわー」
敵兵「……」
おかっぱ「ホンット、ないわー。気持ち悪い……」
敵兵「うぅっ……うう……」
おかっぱ「泣いてる場合かクソ野郎。また明日、この喫茶で待っていろ。今日明日のメシ代くらいは工面してやる、必ず来いよ」
敵兵「(変わってない……6年前とあんまり変わってないよぉ……)」
おかっぱ「そういや……職と同時に部屋も叩きだされたんだってなァ。お気の毒wwwwwwwwwwwwww」
敵兵「……」
おかっぱ「ふん、とっとけ。部屋代込みで色付けてやる」
敵兵「……こ、こんなに!?」
おかっぱ「(……クク、せいぜい動けよクソ男。一宿一飯、恩義は果たして頂くぞ)」
敵兵「……うう……怖い……いやだ……怖い……」
敵兵「……夢じゃないよな……夢じゃ……」
敵兵「……金的食らった時……ムッチャクチャ痛かったからな……ああ……いやだ……」
敵兵「そもそも、あいつ……どうやってオレの居場所を知ったんだ……」
敵兵「おおよその目星は……まあ、共和国って事なら付くだろうが……」
敵兵「……」
敵兵「まさか、見られてる……?誰に……?」
ホテルマン「お客様、お手紙が届いております」
敵兵「……は?俺にですか」
ホテルマン「ええ、部屋だけが指定されておりまして……お客様宛にと」
敵兵「……」
敵兵「……」
敵兵「ひどいよ……こんなのってないよ……ひどすぎるよ……」
敵兵「しかも封筒に9ミリ弾……」
敵兵「……多分エルフどもかな……エルフならエルフらしく矢文とかにしろよ……」
ホテルマン「お客様、またお手紙が」
敵兵「……」
敵兵「」
敵兵「……」
おかっぱ「……(早くしろ、ノックしろノロマ)」
敵兵「怖い怖い怖い怖い……」
おかっぱ「……(グズが、開けろ。蹴破っちまえ)」
敵兵「(あのチビ……!自分だけあんな物陰に隠れやがって……)」
敵兵「あのう……すいませェん」
敵兵「すいま」
娘「いねェーーーーよ!!!ルスだよ!!!帰れボケェ!!!」
敵兵「」
敵兵「ルスだって言ってた」
おかっぱ「お前ホントふざけんじゃねェぞこの野郎」
敵兵「だってルスだって……」
おかっぱ「……ああもううぜえ、持っとけ。兵隊だったら使い方分かるだろ」
敵兵「うう……ああ……ピッカピカの自動拳銃だあ」
おかっぱ「あのう、スイマセェン」
おかっぱ「スイマセェン」
おかっぱ「開けろボケェーー!!」
娘「ルスだオ゛ラァーーー!!」
おかっぱ「開けろァァァァ!!!」
娘「帰れァァァーーー!!!」
おかっぱ「撃つぞオラァーーー!!!」
娘「やったれダラァーーーー!!!」
敵兵「」
娘「ンだオラケンカ売ってんのかテメェァ!!!」
おかっぱ「うるせぇガキが!」パンッ
娘「がうっ!!」
敵兵「」
娘「うおああああああああッ、や、や、焼ける゛ぅぅぅ」
おかっぱ「うるせェーーーんだよ、一度で黙れズベ公がよォ!!」
敵兵「あ、あの……」
おかっぱ「舐められる訳にはいかんだろうが。相手はアジ・ダハーカ様だぞ?」
敵兵「(子ども相手に……あ、2発、3発……うう……発砲するかね……)」
娘「て、てめえええ……こ、細切れにしてやる……ぶち殺……」
おかっぱ「ブロンドはどこかなっと……おい無職、寝室はあっちか?」
敵兵「……」
おかっぱ「おいプー助!!」
敵兵「はあ……」
おかっぱ「……テメェはお姫様か。制圧されんの早すぎだろうが」
敵兵「こ、この子……は、離してくれなくて……」
息子「あなたは……わざわざ殺されに来たのか?」
おかっぱ「話しがあんのはガキじゃねぇ、ブロンド出しな」
息子「……」
敵兵「あ、あの……オレは頼まれただけで……こここ、これっぽちも……」
おかっぱ「まだそいつには使い出がある、殺すんじゃねェよジャリガキ。いいからとっととブロンド呼べ」
息子「ち……」
おかっぱ「人質ってんなら持ってても構わん。そいつは貸してやる」
息子「……」
息子「……本当に……いつか……ブッ殺……クソが……」
敵兵「は、ははは……」
息子「ザケんな……母様……調子こきゃあがって……死ね……」
敵兵「怖い(迫真)」
街娘「はぁぁ……」
敵兵「」
街娘「あら……またアナタなの……何の用……?」
敵兵「ど、どうも……」
街娘「これ、一本どう……?私が巻いて作ったの……」
敵兵「……(あいつまだ麻薬売ってんのかよ……!)」
息子「銃をよこせ。動くんじゃないぞ」
敵兵「はい……(……ホントにあの糞騎士の子ども……だよなぁ……見た目は完璧なのに……)」
女騎士「……」
おかっぱ「……」
女騎士「あ?」
おかっぱ「お?」
女騎士「……ア゛ァーーー!?」
おかっぱ「ハァ゛ーーーー!?」
女騎士「ンだオラ゛ァーーーー!?」
おかっぱ「るせェァァ゛ーーーー!!」
敵兵「(こうなるよなぁ……)」
女騎士「何の用だマメチビがァ、ピッケルハウベみてぇな前髪しやがってよォー」
おかっぱ「これはこれは、お元気そうで何よりでございます、アジ・ダハーカ!ガキを囲って母親気取りか?」
女騎士「何言ってんのかわかんねェよ。おい童貞、テメェも何しにきやがった。コイツはテメェの女か?」
敵兵「滅相もございません」
おかっぱ「ちょいとお近づきになりたく思いまして、手前ども参上した次第にございます」
女騎士「お行儀のいい事で感心するなァガキ、ご褒美に風穴の一つ二つくれてやろうか?」
敵兵「(だめだ! はなしにならない!)」
街娘「あぺぺぺwwwwwwwwwwww」
敵兵「えっ」
女騎士「……童貞がァ、バラしやがって」
敵兵「……へへへ」
息子「にやついてんじゃ……この野郎……お母様に……無礼者……」
敵兵「(何この子爪齧ってて怖い)」
女騎士「ふん……じゃあ何か?そのド田舎列島の連中も、魔王軍の連中にケンカを売りに来たと?」
おかっぱ「噂に違わぬ短絡さだな……いい、それで構わん。大陸の魔物どもがどうなろうが構わんと言うのは、アタシも同じだからな」
女騎士「ははは、違いない」
娘「か……母様ァ……」
女騎士「なあに、どうしたの」
娘「ここ、肩ァ……撃たれた」
女騎士「唾でもつけときなさい。前はそれで治ったでしょ」
敵兵「えっ」
おかっぱ「しかし……アジ・ダハーカ。この子供は一体なんだ?どこかで拾ってきたのか?」
敵兵「……それはオレも非常に、非常ォォーに気になる」
女騎士「まさか。この私がイキんでひり出したに決まってるだろうが」
敵兵「(うわ……嫌な事言うなぁ……)」
おかっぱ「クク……父親の顔が見てみたいな」
女騎士「あれは痛かった、洒落になんねぇ。下痢の時みてえな腹痛がずっと続いてさあ……」
おかっぱ「そんなに痛いのか」
女騎士「やっべーよ。死にゃしなかったが死ぬほど痛かった。足もげるかと思ったぞ」
おかっぱ「そんなにもか……」
女騎士「まさか初産が二人まとめてとかさすがの私も予想外だったわ……産まれて初めてうぎゅううううwwwとか言っちまったわ」
おかっぱ「女体の神秘だな」
敵兵「(こんなカスでも子供産んだのか……信じられん……)」
~6年前~
リンドヴルム「やった、よく頑張ったな」
ハイエルフ助産師「おめでとう、男の子と……それに女の子、元気な双子よ」
女騎士「」
リンドヴルム「……良かった……母子ともに無事そうだ……本当に良かった」
ハイエルフ助産師「さ、抱いてあげてくださいまし」
女騎士「……」
女騎士「そぉい!!」ガシャーン
ハイエルフ助産師「」
ハイエルフ医師「お前……お前!!」
リンドヴルム「うわあああああああ」
女騎士「きったねーーーもん渡すんじゃねーーーよボケェェ!!」
ハイエルフ医師「自分の子どもだろ!!なんて事言ってんだよ!!!」
女騎士「あんな股から出てきたもん触れっかよ!!」
リンドヴルム「坊やァー!!坊やァー!!」
ハイエルフ助産師「あなたそれでも母親!?」
女騎士「うっせーゴミ野郎!!あんなもん腹に溜まってた尿路結石と同じだろうが!!」
ハイエルフ医師「自分の子どもに尿路結石はないだろ!!!」
女騎士「動いて叫ぶ以外は変わりねえわ!!」
女騎士「けっこう何回か夜泣きがうぜえから肥溜とかに捨ててたけど、毎回勝手に戻ってきやがる。赤ん坊って頑丈なんだなって思ったね」
敵兵「そんなわけねぇだろ!!明らかに変な血混じってるパターンだろそれ!!」
おかっぱ「子育てでそれ以上に苦労した事はないのか?」
敵兵「食いついちゃったよ!!興味持っちゃったよ!!」
女騎士「いやー……ないな。その辺の草とか枝とか石とか食って勝手に育ってたし」
敵兵「旦那さんに面倒丸投げしてただけだろ!!!つーか石はまずいだろ石は!!」
女騎士「るっせぇなぁ、ガキなんか経血の延長みてぇなもんだろ?」
敵兵「自分の子ども前にしてそれはねぇだろ!!」
おかっぱ「……大陸の女の観念は凄まじいな」
敵兵「納得!納得しちゃった!!遠路はるばる来てクソみたいな理論に納得しちゃった!!」
女騎士「二人もデキやがったせいで、妊娠線が取れやしねえ。散々だよまったく」
敵兵「マジだ……」
おかっぱ「おお……痛々しいな……」
女騎士「私のこの美しい肉体美も、そこの尿結石のせいで一時期崩れちまって。今のこの状態に戻すのには少し骨が折れたぞ」
敵兵「(ほんとコイツ自分大好きだよな……)」
息子「……」
敵兵「(……え、何?今なんか興奮するとこあった!?なんで息子さんもぞもぞしてんの?)」
おかっぱ「ふむ……見事な腹直筋だな。見直したぞ」
女騎士「正直私より綺麗な腹筋持ってる奴いたら出てこいってレベルやろ?」
敵兵「(あーーーー腹フェチかーーーー、息子さん腹フェチかーーーー、ニッチだなぁーーー、なんかエルフと仲良くできそうだなぁーーー)」
~5年前~
リンドヴルム「この樹上から見る景色、この子らも気に入ってくれたようだ。ここに来ると、途端におとなしくなる」
女騎士「ええ、そうね……」
リンドヴルム「……ここからなら、郷を一望できる。どうかな、君は……少しは慣れたかな」
女騎士「ええ。でも……少し帝国が恋しいですわ」
リンドヴルム「……」
女騎士「すみません、責めるつもりなどなくってよ……」
リンドヴルム「案ずるな。わたしの生涯をかけて、君と子供達の事は護ってみせる」
女騎士「まあ……」
リンドヴルム「君に不自由などさせない……まあ、この田舎では限界はあるがな」
女騎士「あなた……うふふ、嬉しい!」
リンドヴルム「フフ……」
女騎士「その言葉を待ってましたwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ハイエルフα「火事だァァァ!!」
ハイエルフβ「病院から火の手が上がったァァァァ!!」
リンドヴルム「」
ハイエルフγ「は、早く逃げろォォォ!!」
リンドヴルム「な、何が起こった……!?」
女騎士「おっとwwwwwwwwwww動くんじゃねーぞこのデカギツネがwwwwwwwww」
リンドヴルム「!!」
女騎士「さあ旦那様、このシケったタン壺からおさらばいたしましょう。全部全部焼き尽くしてなあ!!」
リンドヴルム「ま、まさか君がこんな事を……!?」
女騎士「おっと!黙って言う事聞きなァ?妙な事したら、ガキども二匹この上から叩き落すぜwwwwwww」
リンドヴルム「な……に……」
女騎士「あーあーあー、天下のリンドヴルム様最悪ー、女の子レイプして子供産ませて、その子供ぶっ殺すとか最悪ー」
リンドヴルム「か、考え直すんだ……やめてくれ……」
女騎士「あらー、レイプ野郎が何か言ってまちゅわねー、怖いでちゅわー。
あーあ、こんな事なら死んどけばよかったなー、そうすればこんな事しないで済んだのになー。誰のせいかなー?」
リンドヴルム「う……」
女騎士「クックク……地に憑くのが祖霊なんだろ?だったら文字通りサラ地にしてやりゃハゲ散らかして出てこれねえよなぁ!!
これで存分にフラフラ出歩けるってか?あーーーーダリィ1年だった!!表出たらゴルフ場でもブッ建ててやらあ!!」
女騎士「ってな事があってさぁー。今じゃ伐採され尽くされてあそこ荒地だわwwwwwなぁーにが祖霊だよバァーカwwww」
おかっぱ「」
敵兵「」
おかっぱ「(……地神を……焼き殺したとでも言うのか、この女……信仰や畏れといった感情が欠落しているのか?)」
敵兵「(6年も経ったのに全然変わってない……)」
女騎士「いやぁー……よく知り合いが言ってたんだわ、人間子供産むと考え方とか変わるってさァ」
おかっぱ「……それはまあ、確かに聞くな」
女騎士「あれインチキだよなァ、私とか全然変わってねーもん。世の中で一番美しいのはまず私だし、偉いのも私なわけじゃん。
そもそも元から世界って私を中心に回ってるわけでしょ?変わりようがないじゃん」
敵兵「」
女騎士「それともあれか?子どもを産む前から私の精神は完全な人間として成熟しきってたって事?それなら納得できるわー。
参ったな、選ばれた人間とは思ってたけどここまでとは。そりゃ周りがゴミに見えてもしょうがねぇわ……自分の才能が怖いわ……」
おかっぱ「」
敵兵「(何だこの状況)」
女騎士「うーん……いや、どう他の連中を贔屓してもさぁ……私ってヤベェ……超美人だよなぁ……」
息子「はい……お母様、お美しいです……」
女騎士「これ……ヤベェなぁ、なぁ!」
息子「はい……」
おかっぱ「」
敵兵「(えっと……あんま6年前と状況変わって無くない?直接的じゃなくてもエルフとも繋がりあるよねこれ)」
息子「お母様の血が流れてるって想像しただけで……ボク、すごく……すごく嬉しいです……」
敵兵「(オレだったら多分自害してるな……)」
おかっぱ「ちょっとタンマ」
おかっぱ「あの……あの……何?」
敵兵「はあ」
おかっぱ「はあじゃねェよ、何だよあれ」
敵兵「あれと言いますと」
おかっぱ「何だよあの……あの……あのクズ」
敵兵「あ、やっぱそう思った?」
おかっぱ「他に形容が浮かばねぇ」
敵兵「ですよねーwwwww」
おかっぱ「テメェは何で笑ってられんだよ……」
敵兵「何かもうwwwww6年もビクビクしてたらwwwwもう限界なのオレwwwwwそろそろwwwwww」
おかっぱ「」
女騎士「よし、決ーめたっ。幕府と組もっか」
おかっぱ「えっ」
女騎士「帝国西部の奪回という指針を打ち出せば、北西諸島傘下の遠征師団も引っ張り込める。
それに、魔王軍への打撃という面だけを強調すれば、ドラフェチだって味方にできらあ。だろ?」
敵兵「だろ?って言われてもなあ……」
女騎士「何より先立つものは人材だ。カネなんかはどうにでもなる、ガキ二人で散々学ばせてもらった」
おかっぱ「えっ」
敵兵「お前まさか、子供二人を売っ……」
女騎士「は?どうした、なんかおかしかったか?」
敵兵「……」
女騎士「いやー。世の中クソ変態って多いんだよなァ、特に金持ち犯罪者に多くいてびっくりだぜ、稼ぎ放題だ。
野郎が生きてるうちで一番油断する瞬間ってのは、品はねえがイく瞬間なわけだろ。その隙を突いてカミソリで……」
敵兵「……」
女騎士「いやいやいや、誤解すんなよ。さすがにガキどもは新品だぜ。妙な病気貰ってきたらキモいじゃん」
敵兵「クズ!!ばか!!この女騎士!!」
女騎士「だってさー、ロリコンだ何だに預けときゃこいつらの面倒見なくて済むじゃん。
ほら、ツラだけは私に似たっていう天恵レベルの奇跡のおかげで女装でも稼げるんだぜ」
息子「あふん」
敵兵「じ、自分の息子のだからって……スカートまくるなよ……って、しし、尻尾……?」
女騎士「ああ、表出歩くときに目立つのもうぜえだろ?だから体幹に巻きつけて、コルセットで固定してあるんだよ。
スカートの部分はペチコートで空間を作ってあるから余裕がある、ついでに……」
息子「あふん」
女騎士「これだこれ。角もあるぞ角も。きもちわり」
敵兵「なんか明らかにぶった切った跡なんですけど」
女騎士「高く売れるっつーからさー、ノコギリでぶった切って粉末にして叩き売ったわ」
おかっぱ「り……竜の……末裔の角を……たたたた、叩き……叩き売った……?ここ、こ、国宝を……!?」
敵兵「あははは」
おかっぱ「……」
敵兵「……」
おかっぱ「あれが……アジ・ダハーカか……なるほどな……」
敵兵「はあ……」
おかっぱ「……」
敵兵「(なんかやつれたなぁ……ムリもないか……オレも6年前と比べて体重20キロ減ったもん)」
おかっぱ「……こちらの戦力も、じきに補充される。お前にはもう少し付き合ってもらうからな」
敵兵「はあ……それはまあ、願ったりです。食う寝る所にも困ってますんで」
おかっぱ「……はぁ」
敵兵「やばい吐」
おかっぱ「ヴェッ、ヴェエェェェェッ!!ヴェエッ!!」
敵兵「」
マフィアA「ハッハー、小生意気な女がこんな所にまで潜り込みやがって!!」
女「いやッ、やめて!離してェ!!」
マフィアB「誰の許しで入ってきやがったんだァ!?」
女「ふ、ふん!誰があんた達なんかに!」
マフィアC「威勢だけはいいようだなぁ……おゥ、この女ァどうする」
マフィアA「クックック……」
女「(こんな……こんな時……男君さえいてくれたら……二人でならこんな奴らになんか負けないのに!)」
女騎士「何やってんだお前ら」
マフィアA「あッ、騎士さん!おはようございます!!」
マフィアB「おはようございます!!」
女「」
マフィアC「何の御用でしょう騎士さん!!」
女騎士「いやァ、つまんねぇ野暮用だよ。知り合い連れて来ただけだ。取り込んでんのか?」
マフィアB「騎士さんのお友達だァ!!無礼のねェようにしろ!!」
マフィアP「へい!」
マフィアQ「こちらですぜ!!」
マフィアR「お荷物はお預かりしますぜ!!」
女「(なんか思ってたより多い)」
女騎士「あ?なんだ、この女。どいつのだ?」
マフィアA「それが、延々とシラを切っていやがって……」
女騎士「じゃあ殺しちゃえ、時間の無駄やん」
マフィアA「えっ」
女「えっ」
敵兵「この建物……ワイン蔵か?」
おかっぱ「確かに共和国のワイン製造は我々の間でも有名だが……ブドウのニオイなどしないな、何故だ……」
敵兵「何だかケモノ臭いというか……牧場ほどではないにしろ、なんだか香しいな」
おかっぱ「何があると言うんだ……?」
女騎士「どうだ、今月分は全部孵化したか」
騎士は「あら、お帰りなさいまし、お姉様」
騎士ち「待ちくたびれましたわ。早くご報告がしたくて……」
敵兵「お、お、お前ら……!!」
騎士は「あら大尉殿、お久しぶりです。生きていて恥ずかしくないのですか?」
騎士ち「どのツラ下げて公衆の面前を歩いているのでしょうか?」
敵兵「お前らにだけは言われたくねぇわ!!」
女騎士「まあまあ、お前らなんか私に比べたら平等にゴミみたいなもんなんだからケンカすんな」
騎士は「お姉様……」
敵兵「(腹立つな……)」
おかっぱ「……孵化……とは?」
敵兵「まさか養鶏場でもやってるわけじゃあるまいに……」
騎士は「ああ、お姉様。お話ししてませんの?」
女騎士「渡来人がいるんだ、見せた方が早いと思ってな」
騎士ち「まあ……それなら……」
ゴンッ
騎士ち「これでわかって頂けますわ」
敵兵「でっけぇ卵……卵……なのか?つーか何の卵だコレ……デカすぎて気持ち悪いな」
騎士ち「検体名はエア・バシリスク。翼竜と毒牙竜のハイブリッド、その卵ですわ」
敵兵「……ん……ん?」
女騎士「なんか地味だなぁ。やっぱ3年前のティアマトーなんか可愛げがあったんだが」
敵兵「えっと……何やってんのかな?」
女騎士「養殖」
敵兵「……何の?」
女騎士「ドラゴン」
おかっぱ「」
女騎士「これまでで実用化に耐え得るのはメリジェーヌ型にティアマトー型に……」
騎士ち「お姉様、エアニズヘグもです」
女騎士「ああ、そんなんもあったな。いやー、麻薬の代わりの代替資源にと思って始めたら予想以上に儲かっちまって」
おかっぱ「」
敵兵「ドラゴンってそんなカエルみたいなお手軽さで増えるのか……」
女騎士「有能な種馬がいるからなぁ。元手はほとんどゼロだったぜ」
敵兵「種……馬……も、もしかして……お前の旦……」
女騎士「今も多分作業中かなぁ。見てくか?」
敵兵「やめとく」
息子「やあ、みんな。元気だった?寒くない?」
娘「お兄ちゃん!メリジェーヌ達が2頭増えてる!あの子が孵ったんだよ」
敵兵「……じゃ、じゃあ……ここのドラゴンのほとんどが……あの子らの腹違いの……」
女騎士「兄弟って事になるなあ」
おかっぱ「」
敵兵「(あー、口の中胃液でいっぱいだなこれ。ちょっと揺らしたら吐くな)」
女騎士「メリジェーヌもティアマトーもヒトの上半身を持つ、ケンタウリにほど近い竜なんだけどな。
連中ほど小賢しくないから扱いやすいんだ、ほとんどの個体がメスだから好事家が高値で買ってくし、まさしく看板娘だな」
息子「お母様!べスがたまご産みそうだって!」
娘「お母様ぁ!エイミーの赤ちゃんかわいいよ!!」
敵兵「あー……さすがきょうだい」
女騎士「私にゃ個体差なんかわかんねーのになあ」
おかっぱ「……どうも……私はティアマトーとやらは好きにはなれん……」
敵兵「ああ、なんか分かります……」
おかっぱ「半人というのはいい……人間の乳房が八個垂れ下がっているのが見るに堪えん……」
女騎士「そんな事言うんじゃねーよー、そういうのが好きって奴もいるんだぞー。あのガキどもとかさあ」
息子「ただいま、スタンダール。うん、元気そうでよかった!」
娘「おいで、ヴォルテール!ビシッと決めてやりましょ!」
おかっぱ「……これは!」
敵兵「たくさんのおっぱいはしっかりそれぞれ布で包まれている!」
おかっぱ「竜人(ドラゴニュート)を騎手に据えた新世代のドラグーン……!これが目的か!?」
女騎士「なかなかサマになってるだろ?母性……とりわけ乳房信仰ってのはあながちバカにはできねえシロモノだ。
首から下が乳房で埋まってるような女人像も見つかってるくらいだからな、心理的効果も期待できよう」
おかっぱ「ふむ……北西諸島の猿真似でなく……むしろ祝祭的要素を取り払い、文化侵略に長けた形態と言えるか」
敵兵「おっぱいがいっぱいだ!!!やったー!!!」
女騎士「このティアマトー、最高速度では北西諸島のワイバーンに劣る。しかしだ、特筆すべきはこの脚部の強さにある。
飛行速度こそヒト型という形態が邪魔をするが、地に足を付けた状態での立ち回りならば負けはしない」
おかっぱ「翼竜の前足でなく、人間の腕が使えるという利……ケンタウリ、それも姑獲鳥やハーピィに近いか」
女騎士「そんな鶏ガラと一緒にしてもらっては困る。こちとらはドラゴンだぞ?」
騎士ち「携行火器はトレンチガン及び大口径対戦車ライフル。胴体部にベルトを巻きつけ収納いたします。
また、白兵戦時には銃剣、並びに大型の斬馬太刀を使用。前面の乳房の為、弓などは論外。もっとも、使う必要などないでしょうが」
女騎士「積載量もハーピィなんぞとはけた違いだ。あんな連中は手紙だけ運んでりゃいいんだよ」
騎士ち「ただし、対戦車ライフルについては開発間もない武装であるため、あくまでも実装予定に過ぎません。
万一暴発して乳房がだめになってはいけませんから」
敵兵「どういう思考経路持ってんのかもうついて行けねえや……」
騎士は「お姉様、お客様にございます」
騎士ち「お早いお付きで……やはり翼竜は便利ですわね、馬よりも早く移動が可能とは」
女騎士「客……?」
エルフ三男「騎士様!騎士様!騎士様!騎士様ぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!騎士様騎士様騎士様ぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!女騎士様のブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
身ぐるみ剥がれた騎士様かわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
表に出てこられてよかったね騎士様!あぁあああああ!かわいい!騎士様!かわいい!あっああぁああ!
ドラグーンの実用化の目途も立って嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!春画なんて現実じゃない!!!!あ…小説も活動写真もよく考えたら…
処 女 の 騎 士 様 は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!兄者ぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?目の前の騎士様が僕を見てる?
騎士様のお嬢様が僕を見てるぞ!騎士様の坊ちゃんが僕を見てるぞ!経産婦の騎士様が僕を見てるぞ!!
うるわしの騎士様が僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には騎士様がいる!!やったよ兄者!!ひとりでできるもん!!!
あ、騎士様ああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ騎士様ぁあ!!き、騎士様ー!!騎士様ぁああああああ!!!騎士様ァぁあああ!!
ううっうぅうう!!ぼくの想いよ騎士様へ届け!!この目の前の騎士様へ届け! 」
女騎士「うるせー」
エルフ三男「あああああっ、騎士様ァ!!6年ぶりにございます!!ああ、御無事で本当に良かった……」
敵兵「ひっ……」
エルフ三男「本来ならば、居場所が分かり次第すぐにでも駆けつけたかったのですが……立場上それも難しくてですね……」
女騎士「まあまあ……ご苦労様にございます」
息子「こ、こんにちは」
娘「……はじめまして」
エルフ三男「やあ、あなた達が騎士様のお子さんだね。お近づきの印におこづかいをあげよう」
敵兵「……いいなあ」
エルフ三男「何でも好きなものを買いなさい」
敵兵「(なんか札束が見えたんだけどあれ国費じゃないの?)」
エルフ三男「ふふ。ほら、あの方が騎士様だ、御挨拶して」
魔子「……あ、あのう」
女騎士「……?」
敵兵「あらかわいい」
女騎士「(え、誰?何このガキ。割とマジで誰だかわかんない)」
魔子「あなたが、騎士様ですか……?本物、ですか!?」
女騎士「ええ、そう。本物」
魔子「すごい、すごいすごいすごい!本物です、本物の騎士様っておっしゃいました、閣下!」
エルフ三男「すごいだろう、僕の言った通り綺麗な人だろう」
魔子「思っていたより、ずっときれいです……」
女騎士「(……誰?)」
エルフ三男「(ほら、あの勇者のやつのカキタレの……」
女騎士「あーーーー豚煮込みか!!」
敵兵「声でかいっ!!」
エルフ三男「高次オーク種……ウルク・ハイの上物です。このまま健康に育てば、オーガに匹敵するスペックになりましょう」
女騎士「ククク……ようやくか。ぶっちゃけ手駒としては忘れてたが、使えるもんなら使うとしようじゃないか」
エルフ三男「幸い、顔の作りは母親寄りで崩れてはいません。褐色の皮膚を除けば、人間として通用します」
騎士ち「その母親はどうしているんです?共和国で人質として使用した後、再びあなた方が回収したと聞いていますが」
エルフ三男「あー……あれですか……」
女騎士「つーか、まだ生きてたのか。しぶてえなあ」
エルフ三男「……魔術行使者の末裔という事でね、色々と投薬の臨床試験に用いてはいたんですよ。
あれでいてかなり頑丈でね、いつぞやの騎兵の女なんかよりずっとタフです。自白剤を用いても、二日後にはもう回復している」
女騎士「勇者や魔王と同じで、単体ではかなりの能力の持ち主って事か」
エルフ三男「まあ、それでも所詮は人間ですからね……今となっては、正直見るのもおぞましいようなものに……」
女騎士「?」
エルフ三男「……大規模な不作から発生する飢餓への対策という名目で進めていた、高熱量食品の開発に利用しましてね。
その弊害で、その……まあ、使い物にならなくなったと言いますか。何であれで生きていられるのか不思議なくらいです」
騎士は「高熱量食品……安価かつ高熱量、高たんぱくを目指したものと推察します」
エルフ三男「まあ、そんな感じです。ぼくらが開発したのは流動食タイプでした、乳幼児から老人でも摂取が可能でなければいけませんから」
女騎士「それで、なんでそんなもんで使い物にならなくなるんだ?」
騎士ち「……毒でも入ってました、だとか」
エルフ三男「いやぁー……効きすぎてしまったと言いますか。投与から三ヶ月で、腹部の贅肉が床につくようになってしまいました」
女騎士「うげぇ……」
エルフ三男「ぼくが覚えている限りでは、そうですね……投与五か月目で自立できなくなっていました。もうラードを上から積み重ねた感じですね、
人間のパーツなんか肉襦袢から突き出た手足くらいなものです。全身だるだるのブヨブヨですよ。
その当時の重量は……ええと、確か投与開始時が43㎏だったから……872㎏ですね。いやはや、人間あそこまで太れるとは」
女騎士「お前らって本当にゲスな民族だよなぁ、帰ったらその肉塊見せてくれよ」
エルフ三男「よく言われますwwwwwww」
敵兵「」
騎士は「……して、大将。クロウクルアッハの試乗はいかがでしたか?」
エルフ三男「旋回、直線飛行、加速、どれを取っても北西諸島のワイバーンに勝るとも劣りませんよ。
さすがは神格の末裔の竜というのは違いますね、大陸におけるリンドヴルム信仰が存在する圏内ならば恐らく負けなしです」
おかっぱ「クロウ……クルアッハ?」
騎士ち「……北西諸島国内から、匿名で送られてきた贈り物、それを掛け合わせた新たなワイバーンです」
おかっぱ「ばかな……我々よりも早く、北西諸島とパイプを構築していたというのか!?」
女騎士「いやぁ……私ゃよく知らねえんだけどな」
騎士ち「すでに……円卓の座を掻っ攫う準備までは済ませているんですよ、私たちは」
騎士は「そうです。私たちの相手は何も連合や魔王軍だけではないんですから……ククク……」
女騎士「さすが、よくやってくれるぜ。ほの字よぉ……!」
騎士ち「これが、帝国のドラグーン兵団計画です。幕府の方、いかがですか?一度ご試乗なられては……」
おかっぱ「……」
第5部 女騎士おかっぱ編 破
┼ヽ -|r‐、. レ |
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第5部 女騎士おかっぱ編 ⑨へ
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制作・著作 NHK