身体が強く水を欲している。
それもその筈だ。
俺は黒い砂漠に迷い込んでいたのだ。
背中に重い荷物を背負った俺はゆっくりと足を進める。
真夏のコンクリートの上をのろのろ歩くカタツムリのようだ。
いやあ、待て。
何かがおかしい。
黒い砂漠なんて聞いたことが無い。
少なくとも俺の住む日本では存在しないだろう。
それにこの背中の重みはなんだ?
俺を見下げる老婆は一体……?
婆「カタツムリじゃ!死ね!庭を荒らすな!」
元スレ
男「のどが渇いて仕方無い……」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1304403184/
男「はぁ、はぁ・・・・」
老婆の放つ塩の猛攻から何とか逃れ、一命を取り留めた。
どういう事か俺はカタツムリになってしまったらしい。
これからどうすればいいのだ?
だが、身体から水分を奪われた俺は瀕死寸前だった。
視界が段々と黒く染まっていく。
どうせなら、アフリカマイマイになればよかったのに・・・
そうすれば、史上最強のカタツムリとして地域一体を支配できたというのに。
目を覚ますと部屋の中だった。
小さな部屋だった。
この透明の部屋の外にもうひとつ大きな部屋が見える。
足元には水が張ってある。
そこから俺の膜の中へ水が流れ込む。
生き返るとはまさにこのことだ。
「あ、動いた!」
どこからか声が聞こえた。
なんとなく前を見やる。
男「うわああ!?」
部屋の前に女児の大きな顔が迫っていた。
女「し、しゃべった・・・・・・」
今の女児の反応が気になった俺は微かな希望をこめて尋ねた。
男「お、お前は……?」
女「わ、わたしは、えと、えっと……」
急にカタツムリに話しかけられて驚いているのか、女児はそわそわしている。
男「いや、答えなくていい」
意志伝達ができるとわかっただけでもよしとしよう。
その上、恐らくこの女児こそ俺の救世主なのだ。
男「恩人」
こう呼ぶ事にしよう。
女「あ、あー。恩人なんて、ちょっと……」
男「恩人、ダメなのか?」
女「いや、ダメというか……」
しかし、この女児がお気に召さないというのであれば、致し方ない。
女「え、えーと、なんでしゃべれるの?」
女児はそんな質問を投げかけてきた。
……
…
俺は先までの出来事を掻い摘んで話す。
男「とどのつまり、気が付いたら俺はカタツムリになっていた!!」
女「嘘っぽい……」
説明を終えた俺に女児はそういうのだった。
男「恩人、君の髪の毛も嘘っぽいぞ」
女「えっ?」
動揺のため気にしなかったが、桃色の髪の毛というのはどうなのだ?
女「ピ、ピンクだからって馬鹿にしないでっ!」
言い残すと女児は部屋からアウトした。
ちょっと展開があれすぎやしないか?
俺はてっきりカフカだとか公房だとか非常な目に遭うものだとばかり思い込んでいた。
だが、一歩間違えればアダルトゲームになりかねない。
……選択肢はまだ出ていない。
俺はまだいけるような気がした。
女「へへへ、もう一匹連れてきた」
翌日、そう言って女児が巨大なカタツムリを連れてきた。
大「こんにちは」
男「き、君は……?」
大「私?私はアフリカマイマイよ」
やっぱり!
俺も寄生虫に犯されて死ぬ事になるのだろう。
いや、その前に食われてしまいかねない。
女「じゃ、わたし行って来るねー」
女児は去る。
大「これからどうしよう?」
アフリカマイマイは寄る。
俺は泣いた。
大「……」
男「は、はは……」
等身大の人間ですらその大きさに引いてしまうほどだ。
今や一カタツムリの俺にはこの圧迫感、とてもじゃないが耐えられなかった。
大「お腹すいたー」チラ
男「あー!そうだな!ハラペコペコ!」
大「お互い得するいい話があるんだけどー?」
男「あははは!遠慮しとこうかなー、なんちゃって!」
大「ホントにー?」
男「本当本当本当……」
念仏を唱えるように言った。
女「ただいまー」
大「チッ!」
男「神様!!」
女「恩人からランクアップ……」
この子にはとても大きな借りができてしまったようだ。
女「それはそうと、何か食べたいものある?」
男「えっと……」
大「あ・な・た♪」
男「ひっ!!」
女「ん?」
男「違う違う、えー……く、草で」
女「大きいほうは?」
男「えー、えー……草で」
女「わかった!取ってくる!」
大「殺す」
男「ひぃぃっ!!」
大「食いもんと言えば肉でしょうがっっ!!!!」
男「すいませんでしたすいませんでした……!」
大「次からちゃんとしなさい!」
男「は、はいぃぃっっ!!」
身だけでなく、心も押し潰れそうだった。
婆「ああ、これがお前が飼っているというカタツムリかい?」
女「うん!そうだよ!」
数日後、俺を殺そうとしたあの婆が部屋へと来た。
向こうはこちらに気づいていないのか、孫である(と思われる)女児と楽しそうに話している。
叶う事なら二度と顔を見たくなかったのに。
婆「そういや、このでかい方食用らしいよ」
女「本当!?」
大「なッ――――!?」
女「どうする?タッちゃん?」
……
…
タッちゃんと呼ばれる者からの返事はない。
早く答えろ、タッちゃん!
食いますと言え!
女「ねー、どうするの?タッちゃん?」
女児は俺のいる方の部屋をとんとんと叩く。
男「俺の事か……?」
女「カタツムリのタッちゃんだよ!」
勝機が目前に迫る。
アフリカマイマイは俺の方をもの凄い形相で睨んでくるが
背に腹は変えられない。
男「食べたいなー、なんちゃって」
女「わかった!」
女児は部屋の中からアフリカマイマイを取り出すと婆に受け渡す。
大「移してやるー!寄生虫移してやるー!!」
婆「あとで、アルコール消毒しないとねー」
アフリカマイマイ無念なり。
今日のディナーは少し豪華だった。
男「でも、俺って肉食べれるのか?」
女「うん、タッちゃん、やまひたちおびってカタツムリらしいよ」
ヤマヒタチオビは同じ陸生貝の仲間を食べる種であるらしい。
だが、植物も食べられるし、人間の特性も少なからず受け継いでいるのであろう。
つまり、カタツムリを食べるというのに若干の抵抗があるというもので……
女「んー微妙」
という女児の反応からしてもあまり口にしたくないのだ。
しかし、流石ヤマヒタチオビ。
そんな俺の意思は知らないとでもいうように、気付けば首が肉へと。
男「うむ……」
よく噛んで食べる。
男「意外といけるな」
女「ホント!?じゃあ、タッちゃんこれあげるね」
そう言って部屋の上からぼとぼととアフリカマイマイの肉を落としてきた。
男「頂く」
必死でアフリカマイマイにむさぼりつく。
本能とは恐ろしい。
だがしかし、コゲと肉のマッチングが貯まらないのもまた事実。
女「本当においしいのー?」
男「たまらないよ」
女「わかんないなー」
女児はまた本を読み始めた。
女「今度またタッちゃんの友達連れてくるね!」
嫌な予感がした。
女「つれて来たよー」
その声に身体をこわばらせる。
ふと見やるとその手にはカタツムリが。
女「なんかオカモノアラガイって言うらしい」
その名を聞いて俺の予感があたった事を知る。
オカモノアラガイ、モノアラガイの一種だが、彼ら自体に大きな問題は無い。
しかし!
それに取り付くレウコクロリディウムというやつがやばい。
何がやばいかって、見た目がやばい。
いつだったか、Wikipeda見てしまった写真が忘れられず、脳裏に焼きついてしまった。
そして、なんと、こいつは、女児の手にいる、あいつは!
同じ姿をしていたのだ。
Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Succinea_mit_Leucocholoridium.jpg
オ「やあ」
男「や、やあ」
オ「ああ、なんか外に出たい気分だね」
男「捕食される」
オ「そうかい?でも今はそれもまたいいかな、なんて」
男「そ、そうか……」
オ「世界は……広いね」
男「だが、この部屋は狭い」
オ「ああ、空が綺麗だ」
オカモノアラガイは上を見やる。
そこには天井があるだけだった。
オ「ふふ、面白い」
男「なにがさ」
オ「君がだよ!」
男「どうしてだ」
オ「ははは!なんでも無いよ!世界が美しいということさ!」
男「そうか」
オ「ああ!そうとも!!」
男「そうだな、綺麗だな」
オ「時と場合によるけどね!あと視点!僕はいい目を持った!」
オ「すごく広い視野さ!僕は今まで昼に出歩く事は無かったんだ。
だけれどね、いつの間にか出歩くようになったのさ!
心持ち身体も元気になったような気がしてたまらない!
今日も出歩いたおかげでここへ来る事が出来た!
君に会えたと言う事さ!それは素晴らしい事だ!」
男「そうだね」
オ「そうだろう!ステキだろう!」
オ「……また出歩きたい」
男「俺が頼んであげようか?」
オ「いいのかい……?」
男「ああ」
オ「ふふ、君は優しいね」
オ「それに面白い」
男「そうか?」
オ「なんでもい、世界が美しいという事さ!」
オ「まあ、時と場合にもよるけどね!」
後の会話は覚えていない。
似たような事が続いていたと思う。
その後、俺は女児に頼んで、あいつを外へ出してやった。
幸せは短いほうがいい。
少なくともあいつの場合は。視点にもよるけれど。
女「よかったの?」
男「ああ、あれが一番良かった」
彼にとっても、もう一人の彼にとっても。
女「ふーん、じゃあまた連れて来てあげるね」
男「別にいいさ」
女「でも誰もいないと寂しいよ」
確かにそうだ。
でも、俺は人間なのだ。
ヒトが恋しいのだ。
だから、この女児と話している間が最も楽しい時間だった。
女「まあ、まかせて!」
男「ああ」
女児は部屋の明かりを消し眠りについた。
女「今度こそ、いいのつれて来た!」
男「……」
タ「こんにちはオオタニシです」
男「タニシ……」
カタツムリでもマイマイでもないタニシ。
しかも淡水にすんでるから、ここにいると死んでしまう。
プラスチックとわずかな水入れだけが置かれた殺風景な部屋を見渡して思う。
女「わたし、ごはん食べてくるねー」
女児は俺の神様であり、彼らの悪魔でもある。
少しは暇をしなくてすむだろう。
俺はオオタニシに話しかけた。
男「やあ」
タ「死にそうだよ」
男「ああ、あそこにある水入れに入っていい」
タ「そうかい、ありがとう」
オオタニシは水入れへと向かう。
こつっ
こつっっ
オオタニシが引き返してきた。
タ「…入れないや」
オオタニシは自嘲気味に呟いた。
タ「すまないね」
あの後、女児にオオタニシを入れてもらうことで解決した。
男「なんてことは無いさ」
結局、女児あってこその出来事なのだ。
めぐり合いなのだ。
感謝も憎悪もいらない。
タ「すこし水が綺麗過ぎるね……」
男「綺麗に越したことはないだろう?」
タ「はは、まるで人間のような考え方だね」
男「……っ!」
人間という言葉に反応して身体が震えた。
タ「どうしたんだい?」
男「いや、なんでもないよ」
タ「まあ君のような表でしか生きていない奴には分からないかもしれない」
男「なんのことさ」
タ「汚いほうが得する奴が多いということさ」
男「まあ、君はそういう生き物だから。毎日カスを集めて食うんだろう?」
タ「いいや、僕に限った事じゃない。誰だって汚いほうが生きやすいに決まっている」
男「確かに一理はあるが……」
タ「一理じゃない、真理さ!」
オオタニシは大きく声を上げる。
タ「分からないかい?あの忌まわしき人間だってそうさ」
タ「奴らみんな汚い事ばかりしているし、自分達の領土を広げるために
森や湖を汚くしているじゃないか!
あいつら実は精神的にも物理的にも汚いものが大好きなのさ!」
男「だけど、それは裏にしかいたことが無い君の考えだ」
タ「はは、そうかもしれない」
数日後彼は死んだ。
死にかけていたオオタニシを殺したのは俺だ。
彼の意思、少しは継いでやろうと身体に取り込んでやったということである。
少し苦い味がした。
ところで、時間というのは確実に流れるものなのだ。
一秒として同じ時間が流れる事は無い。
子供のころを懐かしむヒトは多いけど、そうしている時間すらいつか思い出になる。
違うのは死ぬその瞬間だけである。
またそれと同じほどに特別な時間が流れる事がある。
いわゆる奇跡という奴だが、こいつが中々厄介で、めったに会うことができないのだ。
だが、それにめぐり合う事が出来たようだ!
俺は素晴らしい考えを思いついたのだ!
あの山を見てください
あ
ああ
あああ
ああああ
あああああ
ああああああ
「あ」の山です。
「あの」山ではありません。
とても綺麗ですね。
それであれは山なのでしょうか?
特別な機械がありました。
人間の脳に直接繋げば、その人の意志どおりになるというものです。
そこで一人の人間にそれを繋ぎました。
果たして彼の世界は現実と言えるのでしょうか。
ここで今一度、機械の設定を変更しましょう。
一人の人間が無理をしないようにリミッターをつけます。
また、複数人の人間が情報を共有できるようにします。
そして世界中の人々にその機械を繋ぎました!
あなたはそれに気付く事が出来ません。
俺はとにかく人間へと戻りたいのだ。
だが戻る方法がない。
寿命だって一年あるかどうかくらいのカタツムリだ。
少しの時間も惜しむ事ができない。
ならどうすればいい?
簡単さ。
目の前に誰がいる?
女児?
いいや、人間さ。
俺は部屋から這い出る。
今は俺の身体の一部と化したオオタニシだが、背中の荷物だけはある。
殻を踏み台にして外へと出る事に成功した。
女児は最近は天井を塞ぐ事が無かった。
そこが狙いだと思ったのだ。
部屋の壁を伝って女児の寝ているベッドまでたどり着いた。
人間時代、俺は壁と言うものだ大嫌いだった。
精神的なものにしても肉体的なものとしてもだ。
だが、今回はこれに助けられた。
今更だが感謝しよう。
感謝も程ほどに俺は女児へと近づいた。
気持ち良さそうに寝息を立てる女児だが、俺はその口元まで詰め寄った。
潰されないよう、慎重に。
唇に身体をくっ付けると女児はこそばゆいのか口を少し動かす。
女児の唇はいつか食べたアフリカマイマイのように柔らかかった。
俺はそっと女児の口の中へと侵入していく。
そうだ。
俺はオオタニシを食べてやったように、女児に食べられようと言うわけだ。
そして俺は晴れて人間へと戻る事ができるのさ!
素晴らしい案だと自負している。
特許だってなんだって気にしなくていい。
なんなら、君も実行すればいい!
丁度身体の半分が口の中へ入ったかと思うころ、女児の舌が俺を舐め上げた。
粘り気のあるその唾液が俺の身体を覆う。
その調子だ。
俺を食べるのだ。
一緒になろう。
その時女児が俺をおえっと吐き出した。
その目は憎悪の念を纏っている。
憎悪でも構わない。
だから俺を――
「死ね」
女児の足が俺の後半身を踏み潰す。
うめき声を上げる俺に女児は追い討ちを打った。
逃げようと思った時、それは既に遅かった。
俺は永遠の手錠を掛けられ、暗い牢獄に閉じ込められたのだ。
果たして、ある意味策は成功したのだった。
完
女児とのほのぼの書こうと思ったけど間違えた
56 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/03 18:41:47.14 891P9btDO 34/35間違えすぎだよバカ
どうしてこうなった
もう知らない
鬱病の作家ってこういうの書くよね
57 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/03 18:44:21.76 0wRxs/gn0 35/35路線変更する前から書き直せバカ

