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元スレ
女騎士「いやだ!死にたくない、仲間の居場所でも何でも話すから!」
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●帝国軍北部地方兵団所属・曹長それがしの戦果(1)
まどろみから覚醒したわたしは、何度かのまばたきの後に遅れて思考を開始した。
数か月ぶりかの、ふわふわのベッドシーツの感触。ぬくもりを抱くその純白に、わたしはすっかり包まれていた。
身に纏っているのは、血と汗と泥と硝煙にまみれた野戦服ではない。しみひとつない清潔なパジャマだった。
辺りを見回すと、野戦病院とは到底思えないような内装の部屋が広がっている。暖かみのある木造建築だ。
ベッドの横の窓からは、朱い陽の光が差していた。そういえば、今は黎明なのか。それとも薄暮なのか。
薄手の掛け布団をめくると、そこには見るのも憚られる銃創が……無かった。
右わき腹に2発、右腿に3発。連合の兵が放った9ミリが、私の肉を貫いていった筈なのだ。
被弾してからは必死に身を隠し、歯を食いしばりながら連中が過ぎ去るのを待った。その時の寒さも、熱さも、痛みも鮮明に覚えている。
……ああ、そこまでだ。そこから先はまさしく五里霧中、恥も見聞も小銃も投げ捨て、一心不乱に駆けだした。
死にたくない一心で、どれだけ走ったか。樹の根につまずき額をしこたま打ち、獣の遠吠えに怯えるあまり吐き下し、
それでも走って走って……気が付けば、いささか質素ではあるが、これまでの状況と比べれば天国もかくやと言うべき環境にある。
試しに右脚を大きく曲げ、そして伸ばしてみる。目を凝らせば、若干の痕が残っているのが見える程度である。
適切な治療を受けたにせよ、施術後の自然治癒でここまで回復するとは。それとも、予想するよりも遥か長期間を寝て過ごしていたのか。
ベッドの傍らに置かれている小さな丸テーブルの上には、古びた室内灯。そして、鮮やかな紫を携えたスミレが活けられた花瓶。
誰かが私を看病してくれた。それだけで、胸がいっぱいだ。ここに来て人間扱いされた事が、胸を突くほどに嬉しかった。
最新鋭の武装に身を包んだ連合の兵たちとの泥沼の塹壕戦、そんな環境では性差など二の次である。
女のわたしが叩き返されなかったのは、それほどまでに地方戦力が枯渇しかかっていたからだろう。
一部では、共同体との国境沿いの現地民による反東方パルチザンが各地で決起するまでに逼迫していたと聞く。
そうまでして守るものが、あんな北部の辺境にあったのだろうか。わたしにはわからなかった。
窓の外からの木洩れ陽の中で生の実感を噛み締めていると、部屋に来客が訪れた。
「おはよう、のどは乾いていないかしら」
ナイチンゲールのさえずり。ふと、わたしはそんな単語を想起した。
アクセントひとつをとっても、溢れんばかりの慈愛や哀憐の情を孕ませたる美声の持ち主は、
まばゆいブロンドの三つ編みを揺らして、私のそばへ歩み寄った。
手にしている盆の上には、たっぷりと水が注がれたガラスの水差し。そして、大粒の葡萄の実が積まれた皿。
「おひとついかが?」
ブドウの実の一粒をつまむと、淑女はにこりと微笑んだ。
清楚な雰囲気を醸す彼女の白いエプロンドレスの下から、こんもりとした弧を描く腹部、
その上に鎮座する豊満な乳房が、それぞれその存在を誇示していた。
来月には新たな命を産み落とす事になるであろう彼女は、続いてブドウの実を口に放り込んだ。
咀嚼の為の舌や顎、歯を噛みあわせる動きが、わたしにはやたらと艶めかしく、熱っぽく見えた。
そしてまた、見る者みな安堵に包まれるであろう笑顔を、わたしに向けた。
私の心臓が、ばくんと高鳴った。
●帝国軍北部地方兵団所属・曹長それがしの戦果(2)
彼女の来訪に心躍らせるわたしは、もはや餌付けされた犬だ。
行き倒れていた私を救われたる救世主は、その身に子を宿した淑女であった。
彼女の懐の広さにも驚いたが、発見されてからわずかに七日しか経っていない事にも吃驚した。
聞けば、この周囲を流れる河川は帝国の用水路と繋がっておらず、清らかなまま。
それが関係しているらしいと彼女は言うのだが、専門ではないらしく、申し訳なさげに目をしばたかせていた。
彼女には、感謝のことばも見つからない。
起きて話せるようになってからも、彼女は一日もかかさずに食事の用意をしてくれる。
節々が凝ったと言えば、マッサージもしてくれた。見かけによらぬ力強い指圧に、わたしは至福を味わった。
今日も彼女は太陽が真上にさしかかるころには、大きな乳房とお腹を抱えてわたしの部屋へやってきた。
魅力の虜。そんなものになるのは、男だけだと思っていた。しかし今のわたしを表現するには、その単語以外に存在しまい。
ドアがノックされる音を聞くだけで、動悸が激しくなる。髪を手櫛で撫ぜられるだけで、わたしの肌は汗を帯びる。
わたし自身は中背ほどの体格だが、彼女の背丈はわたしよりも頭ひとつぶんほど高い。
そのせいもあってか、わたしは彼女を前にすると、いつも包み込まれるような錯覚を感じていた。
ふわふわとした、柔らかな感情に揉まれる、ここちよい抱擁をおぼえる錯覚である。
この建屋は彼女の所有物らしく、別荘として使用しているのだという。今は一時的に滞在しているだけに過ぎないとの事で、
私が一命を取り留めたのは、まさしく神の思し召しと言ったところであろう。ちなみに、彼女の部屋は私の間借りしている部屋の隣にある。
夫はどこにいるのか聞くと、ここから少し離れた集落にいるという。彼女だけが、臨月に備えて養生しているというわけだ。
稚児に童話を語り聞かせるような、慈しみに満ちた声色。そんな美声が夫の存在を示唆したとき、わたしは恐らく嫉妬した。
なぜ? 誰に? どうして? そもそも、嫉妬するのも初めてであった。
こんなに美しい彼女を娶る事ができただなんて、なんて幸せなのだろう。ああ、羨ましい。
同性の私ですらこうなのだ。この淑女の伴侶が彼女を射止めた時の悦びたるや、尋常ではなかったであろう。
「どうかしたの? 気分でも悪い?」
つまらないやきもちで俯いていると、いつの間にか彼女はベッドへ上り込み、横たわるわたしの上に四つん這いで被さっていた。
こんなに間近で彼女の顔を見た事はない。長い睫毛に彩られたサファイアのような碧眼がわたしをまっすぐ見据え、
こぼれた髪が黄金のカアテンのように私を包んだ。石鹸の香りが、半開きになっていた小窓からの風とともに流れてきた。
●帝国軍北部地方兵団所属・曹長それがしの戦果(3)
我慢ができない。
一晩だけのつもりだったのに、気が付けば私は足を引きずりながらも彼女の部屋の前にいる。
もう、いつものベッドで自分を慰めるだけでは済まない。
あの、わたしの両手でも掴みきれないくらい大きな乳房。ふかふか、もちもちした感触が忘れられない。
あの、わたしの頭よりも大きなお腹。ともすれば痛ましく見えてしまうほど、ぱんぱんに張り詰めた肌の感触が忘れられない。
あの、わたしの浅黒く日焼けした肌を、優しく揉み解し愛撫する彼女の愛が忘れられない。
鏡の向こうには、そこには軍属の頃に比べ劇的に変化した私の顔があった。
張り艶の出た健康的な肌に包まれた頬を始め、ほのかな生気の色味が見てとれた。
しかし、その真っ当な外面の内側でくすぶる劣情が、わたしを常に苛んでいる。
彼女と一緒にいたい、身重な彼女の為に何かがしたい、庇護されるだけじゃ物足りない、もっともっと彼女に愛されたい、抱かれたい!!
出会った時には感じられなかった、母性の持つ暗部のようなものを持つ彼女に、わたしはすっかり惹かれてしまっていた。
ずっと彼女に甘えていたい。頭にあるのはただそれだけだった。原隊への帰還などクソっくらえだ。
親指をしゃぶりながら、片方の手で陰部をいじくりつづける。あの晩に見た彼女のじっとりとした視線を思い出すと、
腰が跳ねるほどの快感がわたしを襲う。彼女は罵倒なんかしない。空想の彼女は、あの甘美なる声で優しく愛の言葉を囁いてくれるのだ。
何度目かの彼女による愛撫を楽しんだ後、部屋に戻るととある違和感に気づいた。
家具に異常などない、なんの変化もないはずだ。部屋を一回りしても、ちりちりした焦燥感は拭えないままだ
まるで、そこで認識できて然るべきはずの異常になぜか気づけない、そんなもどかしさ――――
何度か部屋をふたたび見回すと、やがてわたしはその異常に気付いた。いいや、魅入られたと言うべきか。
その異常……怪異は、ほんの一瞬だけわたしの視界に飛び込んだ。次の瞬間、まばたきした直後には、そいつは姿をくらましていた。
顔がなく、真っ白な肌をした、異様なまでに手足が長いその怪異。そいつは、窓から数百メートル離れた木の陰で佇んでいた。
遠近が狂っていると錯覚するほど、そいつのフォルムはおかしかった。言い知れぬ不安と恐怖が、わたしの背筋を這いまわった。
姿を見たのはほんの一瞬。しかし、やつのひょろ長い姿は、未だにわたしの脳裏に焼き付いている……!!
●帝国軍北部地方兵団所属・曹長それがしの戦果(4)
祖霊、と彼女は言った。
この土地で代々祀られるカミの一柱、という事だった。
土地の繁栄を脅かすもの……あるいは停滞させる者の前に現れ、罰を与えるというのだ。
彼女は祖霊とやらの説明を一通り終えると、さめざめ泣き始めた。
「黙っていて本当にごめんなさい、赦して、赦して……」
無論、彼女を責める気など毛頭なかった。そもそもカミの一柱が何だと言うのだ。
こちとらは唯一神より王権を賜った皇帝に仕える兵士なのだ、そんなものは土着信仰のまやかしに過ぎん。
――――そう、彼女には嘯いた。
「ひょろ長」を一目見てから、わたしは彼女の部屋に行かなくなった。
夜が更ける前に、ベッドへと潜るようになった。日課となっていた、彼女を想っての自慰の回数も少なくなっていった。
ある夜。窓を見ると「ひょろ長」がいた。
ある夜。窓を見ると「ひょろ長」がいた。違う木の陰に隠れている。
ある夜。窓を見ると「ひょろ長」がいた。
ある夜。窓を見ると「ひょろ長」がいた。納屋の裏手に立っていた。
ある夜。窓を見ると「ひょろ長」がいた。納屋の裏手から少し動いていた。
ある夜。「ひょろ長」の姿が見えなくなった。私は震えながら、数日ぶりに彼女の部屋へ向かう事にした。
もう、限界だ。あれだけ健康的だった顔は、塹壕戦に参加していた頃に戻ってしまっていた。
「ひょろ長」、「ひょろ長」、「ひょろ長」。勘弁してくれ、お願いだから……やめてくれ……!!
●帝国軍北部地方兵団所属・曹長それがしの戦果(5)
部屋に彼女はいなかった。
わたしをいつも抱いてくれたベッドに、彼女はいなかった。
静寂の中に、わたしの荒い呼吸音と心臓の鼓動が響き渡る。聴覚が麻痺してしまったかのようだ。
窓には施錠がされている事から、私用で集落にでも戻ったのだろう。
彼女が使っていたバスケットが部屋にない事を確認し、安堵の息を吐いた。
そして、顔を上げると、心臓を握りつぶされたような感覚に陥った。
「ひょろ長」がいた。建屋のすぐそばの、木陰に。
わたしはすぐさま建屋から飛び出した。
支給されていた護身拳銃でもあれば心強かったのだが、ないものは仕方がない。
月が出ていた事は、幸か不幸かわたしには判断できなかった。
月明かりに照らされた「ひょろ長」の姿を正面から目にし、わたしはついに泣きだした。
許して、許して、出て行くから許してください、お願いします、赦して下さい神様。
息絶え絶えに周囲を見回すと、「ひょろ長」
樹の根につまずいて、顔を上げると木陰に「ひょろ長」
あんな、場所から場所へ移動できるなんて、考えられない。人間じゃない。
人間じゃなけりゃ神様しかいない。わたしに怒っているんだ、わたしを……
がちがち歯の根を震わせながら、半べそをかきながら、わたしは走った。
あいつの姿を見ないように目をつむって、とにかく走った。
やがて限界が訪れ、酸素を求めて立ち止まると、わたしの肩が誰かに叩かれた。
「お姉……様……たすけて……」
振り向いたそこにはお姉様の顔はなく、卵のように白い頭の「ひょろ長」が、わたしを見下すように佇んでいた。
「なるほどなあ、『こうなる』って事か。こりゃ、今の私の知識じゃ解明は無理だわ。あーあ、グチャボロじゃねぇか。
ともあれ、『実験』は成功だ。お前の戦果は忘れないよ。恨むなら事実を黙ってた私の旦那様を恨むんだなあ。
あのやぶ医者もすぐにそっちに叩き込んでやる、あの世で復讐するがいいさ。私は……当分この世を離れる気なんか毛頭ないがね」
敵兵「というわけで、間接的ではあるが、6年前に中央広場で起こったテロがきっかけで、東西戦争は一応の幕引きとなったって事だ」
ガキE「……?」
敵兵「テロ首謀者も、その目的もうやむやのまま。当事者の魔王軍側も無実を訴え続けている。
加えて、西側勢力と連合の争いも膠着状態。北方共同体は東へ、教皇領は西へ……このまま続けてもメリットは薄いから、いったんやめにしようぜってね」
ガキA「まだ終わってないの?もう連合の兵隊さんも見なくなったけど」
敵兵「まだまだ帝国の東側には駐留してる部隊がいるはずさ。あくまで帝国領を折半したに過ぎないからね」
ガキB「せっ……ぱん……?」
敵兵「西側は共和国や北西諸島、東側は連合のものっていう風に、分けっこしたんだよ」
ガキA「へえ……」
ガキC「慰謝料分配みたーい」
敵兵「やめてァ!!先生そんな事言う子に育てた事ないァ!!」
ガキD「(たまにこの先生、変な訛り出るんだよな……)」
ガキE「ねー、せんせーには子供いないのー?折半しないのー?」
敵兵「なんておぞましい事を!!そういう事言うのやめろァ!!きみ達は共和国の優しい子なんだからァ!!」
司祭「おお、これは先生。もう授業は終わりですかな?」
敵兵「一通りの重要案件はおしまいです……そちらの方は?」
おかっぱ「今日もお疲れ様デス、センセイ」
敵兵「……なんか、アクセントがおかしいような。東洋の人……ですよね」
司祭「ええ、極東列島からいらした方で。しばらくはこの街に滞在するらしく、うちで部屋をお貸ししようと思いましてね」
敵兵「はあ。オレと同じパターンですねえ。まだ、大陸に来て日は浅いでしょうに」
おかっぱ「まだ、一週間デス。船旅の感覚、まだ抜けてないデス」
敵兵「(鼻ぺっちゃんこだし丸顔だし……これ、その辺の子どもに混じってたらわかんねえな。東洋人の顔の区別つかねえ)」
おかっぱ「大きな戦争、終わってほんとに良かったデス。これでわたし達、大陸の事、いっぱい勉強できマス」
敵兵「なんと勤勉な。学生さんなのですか」
司祭「実を言えばわたしのセフレなのです。軽かったんで持って帰ってきたんです」
敵兵「」
司祭「冗談です」
敵兵「冗談を信じられないオレに向かってなんて事を」
おかっぱ「ああ、わたしも授業、聞いておけば良かったデス」
敵兵「あなたが?」
おかっぱ「わたし達、現代の大陸の情勢、とても疎いデス。わたし達の国、近くに北西諸島の植民地、ないデスから」
司祭「それは……その筈ですなあ。位置関係的にも、極東列島というのは……その、植民地化するメリットは薄いと言いますか」
おかっぱ「イナカだからこそ、強い国に、イジメられずに済んだのデス」
敵兵「そういう事ならいいですよ。オレの授業ノート、お貸ししますんで。教科書と合わせれば、大体わかります」
おかっぱ「よ、よろしいんデス?」
敵兵「ええ。開戦から休戦条約の締結まで、大まかには。各国都市の需要も、箇条書きですけど書いてありますんで」
司祭「さすが、心が広いですな。最近色気づいたせいもあるんでしょうが……」
敵兵「(いちいち俗っぽいのがめんどくせえんだよな……この人)」
おかっぱ「色気づいた。誰かに恋してるデスカ」
司祭「実は男子生徒の一人に……彼、授業中は四六時中勃起してるんです」
敵兵「根も葉もないデマァ!!」
司祭「そんなチェリボの先生がありがたく貸してくださったのです、良かったですね」
おかっぱ「ありがとうございマス!筆下ろし、頑張ってくだサイ!!」
敵兵「言いふらさないでくださいよ!!この学校つぶれますよ!!」
司祭「君のせいだな……とんだロリ……いや、ガチぺド疫病神だ」
おかっぱ「センセイは男色家でもいらっしゃるのデス?」
司祭「神職を前にしてそこまで教義にケンカを売るのは楽しいかね」
敵兵「(どこに行ってもオレはオモチャなのかな……生活できてるからいいけど)」
敵兵「ほら、あそこが6年前の演説の舞台になった広場です」
おかっぱ「石造りで立派ではないデスカ。この近くでテロが発生したと?」
敵兵「ここから西だから……あっちの方ですね。北西諸島の待機地点が爆破されたんです」
おかっぱ「それで犯人は不明……直後に魔王軍のトップが姿を消したとなると、かなり魔王軍側は怪しいデスヨネ」
敵兵「普通に考えれば、そうですよね。でも、今じゃなんの手掛かりも残っちゃいない。困ったもんです」
おかっぱ「連合側がこの件について魔王軍に対して言及していないのも不自然……妙デス」
敵兵「ま、一般市民のオレ達にとっては、日々の暮らしが安定すれば何でもいいんですがね」
おかっぱ「その通りデス」
敵兵「(本当に、気味が悪いぜ。連合側が手のひらを返したように、帝国の領地折半に応じて……
あのドラグーン……ほの字の対抗演説があった事実がどこにも公表されてない事を見れば、意図的な改竄があったのは明白だな……)」
おかっぱ「センセイ?顔が苔生した色になってマス」
敵兵「(更に気持ち悪ィのは……停戦協定を結んでからというものの、あの悪魔の情報をまったくと言っていいほど見なくなった事だ……
人知れずどこかで死んだのならまだいいが、奴がもし生きていたするなら……もし……)」
おかっぱ「センセイ?」
敵兵「オェェェェッ!!!ヴェッ、ヴェェェェッ!!」
おかっぱ「センセイィー!!センセイィィー!!」
敵兵「い、いやっ、ゴメン。何でもないんだ、ちょっと6年前から日常的に嘔吐反応が襲い来る症状に罹患してるだけなんだ」
おかっぱ「まあ……お大事にしてくだサイ」
敵兵「くそ……胃潰瘍は完治したと思ってたのに……また再発か……」
おかっぱ「……」
敵兵「……」
おかっぱ「……」
敵兵「(苦痛だ。ただでさえ珍しい東洋人を連れてる上に服が吐瀉物まみれとは。まじで通報される、早く水道探さなきゃ)」
おかっぱ「大陸の人は、公衆の往来でモドすのは一般的なのデス?」
敵兵「違います……オレだけがおかしいだけです……」
街娘「あら先生!おかえりなさい、今日は早いのね」
敵兵「あ、ああ。ただいま……あの子たちは?」
街娘「今日はちょっと二人でお出かけ。街道沿いで遊んでるんだと思いますわ」
敵兵「は、ははは……」
街娘「……そちらの方は……東の人?」
おかっぱ「ハイ。貴重な経験をさせていただきマシタ、日常的に嘔吐反応が襲……」
敵兵「つ、つい最近大陸に来たばっかりだって言うからさ。軽く案内してあげてたんだ」
街娘「まあ。初めまして、この国はどう?」
おかっぱ「ハイ、見た事ないものたくさんありマス。人も建物も、スゴク大きいです」
敵兵「そりゃあなあ……基準がキミくらいだとすると、オレ達から見た極東列島の街並みはミニチュアみたいだろうし」
おかっぱ「嘔吐物の内容もずいぶんと異……」
敵兵「見んといて!!変な事覚えて帰らんといて!!あと汚いからそれ!!」
おかっぱ「……センセイ。わたし、感づきマシタ」
敵兵「な、何を?」
おかっぱ「センセイが恋い焦がれているのは……あの女性デス。きっとそうデス」
敵兵「……ふ、ふふふ」
おかっぱ「やはりセンセイは、ぺドフィリアでもウロフィリアでもコプロフィリアでもなかったのデスネ……」
敵兵「オレそんなヤバい人間じゃないからァ!!」
おかっぱ「先ほどの嘔吐で……若干エメトフィリアの気を連想したのデスガ……」
敵兵「やめて!!嘔吐の流れ引っ張んないでよ!!オレ日常的に公衆の面前でゲロぶちまいてる変態みたいじゃん!!」
おかっぱ「センセイさっきそうおっしゃいマシタ!」
敵兵「そんな事言っ……たか?」
おかっぱ「おっしゃいマシタ!」
敵兵「言ってねえ!!言ってないもん!!」
おかっぱ「にしても、子連れのお方デスカ。連れ子が一辺に二人、四人家族とは賑やかになりそうデス」
敵兵「さ、察しがいいな……まったく」
おかっぱ「彼女の旦那様は?」
敵兵「……大きな戦争の後だからな。そういう事は詮索してない」
おかっぱ「賢明な判断デス」
敵兵「(世の中、妊婦さんに腹パンするクソ野郎がいるからな……お子さんのいる女性は労わってやらんと……)」
おかっぱ「して、いつ告白なさるのデス?文は当然、毎月送っていらっしゃるのデショウ?」
敵兵「ふ、文……?あ、ああ……手紙ね。そんなん送ってないけど……」
おかっぱ「まあ……大陸にも恋文の慣習はありましょうに……かの醜き鼻の剣士の名筆ぶりは、共和国のお方なら御存知デハ?」
敵兵「(オレ、もともと共和国民じゃないしなぁ……)」
おかっぱ「文のやりとりというのは重要なものデス、ロクサアヌも剣士のしたためた一文で気を失ってしまうほどですカラ」
敵兵「(……文……文字のやりとり……文字を書く……そういえば……名前を書けないほどのバカが……)」
おかっぱ「センセイ?」
敵兵「ヴェッ!!ヴェェェェッ!!ヴェェェ!!」
おかっぱ「センセイィー!!センセイィー!!」
敵兵「ゴメンッ、本当にゴメン!ちゃんと掃除するから許してくれ!!」
街娘「いいのよ、気にしないで、大丈夫よ!気分が悪くなることくらい誰にでもあるわ!」
敵兵「でもこれじゃあキミの住んでるアパートメントの前の通りが嘔吐物腐臭ストリートとかいう汚名を被ってしまう!」
街娘「そんな公害みたいなレベルには行かないわよ!考えすぎよ!」
敵兵「しかし!物事は常に最悪の状況を想定して動かねばならない……!」
おかっぱ「センセイはこの通り非常に真面目デス、過失でやった事ですので、許してあげてクダサイ……」
街娘「そんなに私の心は狭くないわ!」
敵兵「もう吐かないから!!ここでは吐かないから!!」
街娘「ここ以外では吐き散らかすつもりなの!?それだったらもう会う事考えるけど!」
敵兵「ああ違うんだ、そういう事じゃないんだ!!」
おかっぱ「大陸の皆さんはアグレッシブでいらっしゃいマス……」
敵兵「すまない……キミの案内がこんな酸っぱいニオイを振りまいての行脚になってしまって……」
おかっぱ「そんな、笑い話で済む事デス。通報されなかっただけ御の字デス」
敵兵「(ああ……まともだ……いや……これまでがヒドすぎただけか……連合の戸籍、ポイして良かった……)」
おかっぱ「さて……服も一新したところで、百貨店にでも向かいマショウ。共和国の百貨店、わたしの国にも資料来るほどデス」
敵兵「ひゃ、百貨店?」
おかっぱ「時代は徐々に、市民による大量消費の思想へと移り変わっていってイマス。まさしく、共和国の百貨店(デパート)はその体現と言えますカラ」
敵兵「あ、ああ……オレにはあんまり縁のない所だけどな。近所のモールやアーケードで十分だし」
おかっぱ「何を言いマス……これから所帯を持たんとする男(おのこ)がそんなではいけまセン!きちんとした身なりできちんとした贈り物を用意するべきデス!」
敵兵「ま、まじか……」
おかっぱ「お子さんへのプレゼントも忘れてはイケマセン!息子さん?それとも娘さんデスカ?」
敵兵「む、娘が二人だよ。顔つきがそっくりだったから、双子なんだと思う」
おかっぱ「となれば……同じものを贈るのがいいでしょうネ……何がいいデショウ……」
敵兵「と、とりあえず花束は確定だな。それに簡単な菓子折も……」
おかっぱ「洒落てきたではありまセンカ。その調子デス」
敵兵「(……ああ、楽しい……)」
おかっぱ「それでは、私は一足先に部屋に戻りマス。ちゃんと結果聞かせてくださいネ!」
敵兵「あ、ああ!付き合ってもらってしまってすまなかったな」
おかっぱ「イエ、色々見て回れただけでスゴク勉強になりマシタ。ありがとうゴザイマス!」
敵兵「こちらこそ。じゃあ、また明日……」
敵兵「……よし、よし、よし!決行は明日!彼女が仕事から戻ってくるであろう時間から2時間後!よし!!」
敵兵「……ふむ、すこし早く来すぎてしまったか。彼女は……」
敵兵「まだ帰っていない……のか?部屋の灯りが点いてないな」
敵兵「……もう7時を回るのに、どうかしたのか……?」
敵兵「フフフ……6年前を思い出すぜ、単独でのスニーキングミッションだな」
敵兵「……」
敵兵「……遅すぎやしないか?」
敵兵「……」
敵兵「……直接行ってみるか」
敵兵「(人の気配はするな……しかし灯りは……小さな室内灯だけ点いているのか?だとすれば、中に……)」
敵兵「おうい、誰か!誰かいるか?」
敵兵「……反応なし……いや、これは……施錠されていない?ノブが回る……!」
息子「……」
敵兵「や、やあ……久しぶり、ごきげんよう……」
息子「……」
敵兵「な、何週間ぶりかな……キミ達とはなかなか会えなくて……」
息子「……」
敵兵「そ、そうだ……今日はキミらにプレゼントがあるんだ、だから……」
息子「……」
敵兵「……お願いだから、その銃をしまってくれ……死にたくない……」
娘「……何してるの、お兄ちゃん」
息子「いつもの人。たぶん、この人がお母様のお知り合いだよ」
娘「この人が?」
敵兵「(お……お兄ちゃん?娘二人じゃなかったのか!?どう見ても女の子にしか……!)」
娘「ふうん……じゃあ、コイツがそのクソ童貞のクソ野郎ってわけね」
敵兵「ひ……や、やめてくれ……撃つな、撃つな……!」
息子「何が目的だ、言え。ここにはあなたにくれてやるカネもなければ権利書もないぞ」
敵兵「き、キミ達の……お母さんに用があって来ただけだ……!」
娘「お母様に……あなたが?」
敵兵「あ、ああ……ほら、見てくれよ!花束と贈り物!これしか持ってない!」
息子「あなたがお母様に……?」
娘「人間の雄が考える事は……わからないわね……」
敵兵「(何、何これ、これどんな状況なん?嘔吐はおろかお小水までしそう怖い怖い怖い)」
息子「……ちょっと、待ってて」
敵兵「(『いつもの人。たぶん、この人がお母様のお知り合いだよ』って……意味がわからん……なんかこの台詞、オカシイぞ……!?)」
敵兵「(それに、妹の方が言ってた『じゃあ、コイツが』って……そもそもオレの事、どう思われてたんだ……!?この子達……!)」
娘「なんだァ?オトナの癖に情けねェツラしやがって……タマついてんかよ、おい」
敵兵「……」
娘「シカト決めこんでんじゃねェ、ぞッ!!」バキ グジュ
敵兵「!!!!」
娘「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
敵兵「(おにんにんが!!!!お、お、おれのムスコと精巣が!!!!つ、潰っ……!!!)」
娘「そんなに痛がんじゃねェよwwwwwwwww腹いてえwwwwwwwwww」
敵兵「腹が捻じれる……痛てえええええ……!!!」
娘「いいじゃねェか、生きてたってどうせ使わねェだろ?それ以前に、生きてこっから出れるかわかんねェしよォ」
敵兵「(この子の薄汚い口調……なんだ……既視感……オレは……この口調を知ってる……なぜだ……!?)」
娘「あー、それとも何か?オナニー猿の連合兵は、タマ袋に脳みそが詰まってたってか?そりゃ失礼したわwwwwwww」
敵兵「(い、いやだ……思い出したくない……やだ、やだやだやだ……オレは、共和国のいち教師なんだ……ただの善良な……)」
息子「……奥に来い。妹に妙な事、しなかっただろうな」
娘「お兄ちゃん、聞いて……こいつったら……」
敵兵「」
娘「おら、立てよボケ。グズグズしてんじゃ……」
敵兵「ヴェエエエエエエエエッ、エッ、エッ、ェエエエエエエッ!」
街娘「あら……あなただったの……?部屋の前でウロウロしてたの……」
敵兵「」
娘「つっ立ってンじゃねェ!!床でも舐めてやがれ!」
敵兵「」
息子「下手なマネはするなよ。簡潔に、目的を言え」
敵兵「」
娘「夜這いにでも来たかァ?残念だったなァ、このベッドはもう満員でェす」
街娘「ん……それで、何の御用……?わたし……今……手が離せなくて……」
敵兵「な……ん……だと……」
娘「なンだァ?マジに脳ミソ潰れっちまったかァ?ネジくれたカエルみてェな声出しやがって」
街娘「騎士様に……愛していただくのに……忙しくて……」
敵兵「何でお前がここにいる……何で……」
女騎士「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
敵兵「何で、何でだァ!!彼女から離れろォ!!消えろ、死ねェェ!!」
娘「るせェンだよッ、この三下がッ!!」
息子「口を慎め。静かにしろ」
敵兵「何で……どこから……お前……」
女騎士「おやぁ?おやおやおやァ?何か床の方でゲリの音みてぇな声が聞こえるなァ……なあ、何だろうなァ」
街娘「さあ……存じません……」
敵兵「……な……何を……」
女騎士「あーあーあー、思い出した。6年前にこの私を裏切りやがったクソ童貞のクソ野郎だ。
しばらく見ねェ間にずいぶんショボくれたもんだなァ、死にゃあ良かったのに」
息子「お母様、それではこの男が?」
女騎士「そうよ、コイツがそう。あなた達も知ってる男なの」
娘「ハァーン……身の程知らずここに極まれりだなァ、ホント何しに来たンですかねェ……」
敵兵「この……子達……彼女の子じゃ……」
街娘「……え、私?まさか……何言ってるの?」
敵兵「え……」
女騎士「お前はホンットにフシアナ野郎だなぁ。この二人の美貌、どっからどう見ても私譲りだろーがよォ」
敵兵「お前が……こ、こ、子どもを……!?」
女騎士「ナリは十二、三だが、頭ン中は六歳に毛が生えた程度だ。楯突くと何するかわかんねーぜwwwwwwwwwwwww」
女騎士「で?何の用だ?マジに夜這いに来たのか?」
敵兵「……」
女騎士「花束?プレゼント?って事ァ何だ?上着の内ポケットには指輪かァ!?」
敵兵「……うう」
娘「先ェェェェン生ェェェェイよォォォォォ!!!メソメソしてンじゃねェ、懐にあるもん出せッつってンだよォ!!」
息子「いや、いい。ボクが調べる」
敵兵「や、いやだ、やめろ!!やめて、やめてくれえ!!」
息子「……お母様の言った通りだ」
娘「何か仕込まれている可能性は?」
息子「ない。いたって普通の……そこらの百貨店で売られているガラクタだ」
娘「だってサァ。良かったなァ、何か企んでやがったら、この場でペーストにしてやってたところだァ」
敵兵「……」
女騎士「そうすっと何か、お前はまんまと……この私のコマした開発済みの女に貢ぎに来たってわけかァ」
敵兵「ウソだ……こんな偶然……夢だ……」
女騎士「偶然じゃねーよタコwwwwwwお前がコイツ狙ってるの確認してから開発したんだからよォwwwwwwwwwwww」
敵兵「」
敵兵「ほ……本当……なのか……?」
街娘「何が……?」
敵兵「本当に……キミは……こんなゴミ野郎に……」
街娘「ゴミ野郎……人に向かってその呼び方は何!?あなた何様なの!?」
敵兵「」
街娘「他人の事をよく知りもしないで、よくもまあゴミ野郎ですって!?
育ちを疑うわ、少しは良識のある男性だと思っていたのに。あなたが一番のゴミ野郎だわ!!」
敵兵「」
女騎士「ああ……もう傷ついちゃったわ……ゴミ野郎だって……ひどいわ……」
街娘「騎士様……お気になさらないで、彼は少しおかしいんです。この前の通りでいきなり吐き戻すし……
昼間からお酒でもあおっていたのかしら……ひどい人です」
敵兵「」
娘「おゥい、聞いたかァ!?クソ童貞のゲロ野郎だってよォ!!」
息子「下劣な……品性を疑うな、ゲスが」
敵兵「(一体どういう事……だってばよ……)」
敵兵「……何でだよォ……何で……何でオレなんかにここまで……」
女騎士「あー!?あんだってー!?耳が遠くて聞こえねェよォー!?」
敵兵「もう放っておいてくれよォ……お願いだァ……」
娘「寝言ブッこいてンじゃあねェェェぞ!?テメェ、忘れたのかァ!?お母様の腿をぶち抜いたテメェ自身の大罪をよォ!?」
敵兵「……そ、それ……だけ……!?」
息子「それだけ……だと?」
娘「どこまでもザケた野郎だなァ、あァ!?」
息子「……あなたの元連合兵としてのポストを利用したいが為に、こうして罠をしかけた」
敵兵「……」
息子「とでも言えば満足か!?どうなんだよクズ野郎ォが!!!」
敵兵「ひ……」
息子「いいか低能、お母様の悲願が成就されんとする場所で、キサマがいらん邪魔をしなければだ!!下賤な魔族の王と、
それに与する勇者とやらの息の根を止める事ができたんだよ!!キサマのせいで!キサマのせいで大陸は未だ混乱の渦の中にあるんだよ!!」
女騎士「まあ……親想いの良い子に育ってくれて嬉しいわ」
敵兵「(怖いよォ……恫喝で言えばコイツ本人より怖い……)」
息子「……とはいえ、あなたのポストは今となっては役に立たない。というより、存在しない」
敵兵「は……?」
息子「不自然には思っていただろう?お母様の偉業が、何一つ明るみになっていない事について」
敵兵「い、偉業……だと……!?」
娘「おンやァ?口答えする気ならもうちょい我慢してからにして頂けませンかねェ!?」
敵兵「は、はい……」
息子「あなたの上官……禿頭の中佐があの後どのような末路を辿ったか、御存知ですか?」
敵兵「し……知ら、ない……」
息子「本国で銃殺されたそうです。『ありもしない虐殺事件』や『ありもしない歴史的大敗』によってね」
敵兵「ありもしない……!?」
娘「有体に言やァ、停戦条約を交わした際に揉み消されたンだよォ!!お母様の努力の全てが灰燼に帰したワケだ!!
連合の連中が北西諸島や共和国とのくだらねェ融和を実現したがったからなァ!!」
息子「要は、だ。お母様の付近に存在するポストそのものが抹消されたと言っていい。あなたは、連合では『存在しない人間』なんだよ」
敵兵「」
女騎士「いやはや。にしても一応の目付け役……連合の捨て石であるテメェがあんな事しでかすとはなぁ。
ちょいと警戒が足りなかったわ。反省してるわ、ホント」
敵兵「おい……じょ、冗談……だろ、オレが存在しないって……」
娘「一度で話理解しろよなァ、このキンタマ脳がよォ!!テメェは!親玉に!ポイされたンだよォ!!」
敵兵「」
息子「本国に戻ったところで戸籍がない。名前もない。福祉サービスも受けられない。ご理解いただけましたか?」
敵兵「う、う、ウソだァ!!名前はあるぞ!!家だってある、親父やおふくろだっている!!」
娘「果たしてどうなッてンのかなァ……テメェと関わりを持ったが為に不幸な目に遭うバカども、どう思ってッかなァ……」
敵兵「」
女騎士「いやーwwwww身から出たサビだなァwwwwwwwwwwどーすんのお前wwwwwwwこれからどーすんのwwwwwwwwww」
敵兵「」
街娘「ここで自殺とかしないでね、借家汚されたら困るし……」
敵兵「……オレ……どうしたら……いいの……どうしてオレ……こんな目に……」
娘「どうしてこんな目にィ?あァ?ンなもん決まってンじゃあねェかよ、テメェが敗者だから悪ィんだよスッタコがァ!!
テメェは何か努力をしたのかァ!?いつか誰かが何とかしてくれるとか思ってたんじゃあねェのかァ!?
甘ったれてンじゃあねェぞクソッタレ野郎がよォ!!テメェ、どの口が『こんな目に』とか言ってやがンだよォ!?」
敵兵「……」
娘「テメェは少しでも敗けねえ為の努力をしたのかッて聞いてンだよォ!!」
敵兵「(六歳児に脅されてる……三十路なのに……オレ……)」
敵兵「……もう、もういいだろォ……じゃあ、もうほっといてくれぇ……」
女騎士「は?何を?」
敵兵「こんな、こんなゴミみたいなオレなんか相手にするだけ無駄だろ……何でこんな…・・・6年越しでこんな事を……」
女騎士「決まってんじゃねーか、落とし前だボケ」
敵兵「おとしまえ……」
娘「どこのどいつがお母様に盛大にケンカ売ったかってンだよボケが!!
その足りねえ股間の脳ミソフル回転させてよっく考えンだなァ!!」
敵兵「そんな……し、仕返しってんじゃ……ないだろうな……」
女騎士「……」
敵兵「おい……おいぃ、どうなんだよォ!!」
女騎士「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
娘「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
息子「……」
女騎士「御wwwwww名wwwwwww答wwwwwwテメェにはwwwww私の夢が叶うのをwwwww特等席で見せてやるwwwwwww」
娘「その椅子もちろんwwwwwwww電気椅子wwwwwwセレモニーと同時にwwwwwwwテメェは瞬間加熱wwwwwローストビーフだぜェwwwwwwww」
敵兵「」
敵兵「はっ……」
敵兵「……夢……か……」
敵兵「……いやー。いやいやいやいや」
敵兵「まさかこんな悪夢あるわけないよなー、いやいや疲れてんのかな、オレちょっと働きすぎかなー……」
敵兵「……」
敵兵「寝よう……寝ちまおう……酒飲む気にもならねえ……」
敵兵「……目が覚めたら新しい一日が始まるんだ……」
敵兵「子ども達に囲まれて……昼ごはんは駅前のパン屋のサンドイッチ……礼拝の終わった司祭様や……
ああ、そうだ……あのおかっぱの子と一緒にティータイムだ……」
敵兵「はははは……あはははは」
敵兵「死にたくない……死ぬのは嫌だ……」
敵兵「……」
教員「……」
敵兵「オレの机……その……机がないんですけど……」
教員「……」
敵兵「あの……」
教員「ヒッ!?」
敵兵「……」
敵兵「クビ……ですか……?」
司祭「あー……その、ですね。何も、事実だとは私も思いたくはないんですが……その……」
敵兵「……」
司祭「……公共施設に……連合の人間がいるなんていう噂がこれ以上流れたら……どうなるかお分かりでしょう?」
敵兵「……」
司祭「いや、何もあなたが連合の人間だと決めつけているわけではなくですね……お子さんを預ける親御さんの目もありますし……」
敵兵「……」
敵兵「」
おかっぱ「元気出してくだサイ、働き口なんか……そう、コネ!司祭様から斡旋先の住所、貰ったんですヨネ!」
敵兵「……どこも雇っちゃくれないよ……たぶん……」
おかっぱ「あーうー……」
敵兵「……」
おかっぱ「あれ、ここは……あっ、そうだ!昨日、結局プロポーズ行かれたんデスカ!?」
敵兵「……ああ?ああ……」
おかっぱ「どうでシタ!?うまく行きマシタ!?」
敵兵「……」
敵兵「いかん吐く」
おかっぱ「えっ」
おかっぱ「そうでスカ……だめだったデスカ……残念デス」
敵兵「……」
おかっぱ「……」
おかっぱ「シテ、あなたはホントに、連合の人間なのデスカ?」
敵兵「……え?」
おかっぱ「イエス、カ、ノー、で、答えてクダサイ」
敵兵「……」
おかっぱ「……単なる風説。そう考えるには不自然なくらい、真実らしい噂が流れてイマスから……」
敵兵「な、何だ、それ……」
おかっぱ「さ、どうなんデスカ?心配せずとも、わたしは……」
おかっぱ「お前ら大陸のノータリンどもに比べりゃあ、ずっとずっとずっとずっと理知的で良心的で誠実だからなァ」
敵兵「なッ……!?」
おかっぱ「ククク……技術先進と聞いて来てみりゃあ……素晴らしい民度だな、共和国というのは……
やはり大陸で人殺しを生業にマラこすってるクソザルどもに理性を期待するのが大間違いってんだ」
敵兵「何……言ってんだよォ……」
おかっぱ「何か間違った事……言ってるかねェ……?それとも、文法間違ってて伝わってねェか?
テメェらが使ってる屁みてぇな言語なんか、口にしたくもねェんだ。勘弁しろよなァ」
敵兵「キ、キミ……が、が、学生じゃ……ないのか……!?」
おかっぱ「頭ン中の推察だけで事実を組み立てるのも、お前らクソ大陸人の特徴だなァ。自己が未発達のポンコツがよォ。
いつアタシ自身がバカ学生だって名乗ったァ?遊び半分で学びに……いや、ほとんど物見遊山で来たのァ合ってるけどよォ」
敵兵「じゃあ……じゃあ、一体……」
おかっぱ「アンタから名乗ったら教えてやらんでもないなあ……」
敵兵「……うう、れ……連合だよ、元連合の……兵隊だ」
おかっぱ「クク……言葉が通じねえってわけでもなさそうか」
敵兵「……」
おかっぱ「極東列島幕府陸軍……そこの小間使いとでも思ってくれればいい」
敵兵「ば、幕府……陸軍?」
おかっぱ「声がでけぇなプータローさんよォ。もっとも、未開のアホ大陸人にゃあ何のこっちゃだろうが……」
敵兵「(え、何!?スパイ!?何が起きてんの!?)」
おかっぱ「……周りのカスども、ホントウゼーな。そんなに東洋人が珍しいのかねェ」
敵兵「極東列島の文化はそれだけ一目を集めるんだよ……百貨店でも特設会場が組まれてたし……」
おかっぱ「クソが……茶屋に入りゃあ出てくるのはこの泥水だ。イカレてんなァ」
敵兵「(他人にカネ出させといてなんて奴だ……)」
おかっぱ「……なあ無職クン。話の続きだ。何でアタシ、わざわざアンタに近づいたと思うね」
敵兵「なぜって……オレが分かるわけ、ないだろ」
おかっぱ「出た出た、これだけは雄ってだけで万国共通なのかァ?都合が悪くなると思考を放棄する。うぜえうぜえ」
敵兵「……」
おかっぱ「ククク……機嫌悪くすんなよ……まあ、あれだ。6年前の東西戦争、あれについて調べてんだよ」
敵兵「わざわざ極東列島がか?何の為に……」
おかっぱ「そうさなぁ……お前らの言葉を借りんなら、啓蒙だよ。魔王軍とかいう連中が今も続けてるアレだ。
帝国法をある程度原型にした法律を使ってる私らが、ちょいと頭を貸してやろうと思ってなあ」
敵兵「……」
おかっぱ「脳が処理し切れてねェか?ならパープリンなテメーの為に簡単に言ってやるよ」
敵兵「ひどい」
おかっぱ「せっかく法をもてあましてるテメーら殺人サルどもの為に、アタシ達が教育し直してやるってこったよ。
いつまでもいつまでも戦争!戦争!戦争!よく飽きねェなあ、早く絶滅してくれよテメェら、マジで鬱陶しいんだわ」
敵兵「こわい」
おかっぱ「列島幕府は世界最強の無血政治形態だ。成立以降四世紀、大規模な戦争を許しちゃいない」
敵兵「それは……」
おかっぱ「国土の狭さだとか言うつもりか?違うな、テメェら大陸人の小きたねえ小便みてぇな血のせいだ。
現に見てみやがれ、アタシ達が使っている現行法はほとんど帝国法をイジくっちゃいない。罪刑法定主義を始めとした近代刑法を実装している。
だが、見てみろよ。帝国(笑)、前に一度資料で目にしたが……ヒデェなぁ、まるでクソが発酵して煮立ってるって有様だ」
敵兵「……否定できない」
おかっぱ「そんなクソ煮込み帝国を中心に……テメェらは何十年も何百年もぶっ殺し合い。
ああ、宗教戦争も度々やってたよなァ。そんなアタシら、何百年も前に克服してんぜ?」
敵兵「そんなの……やりたくてやってる訳じゃねぇよ」
おかっぱ「ハイ出たー、責任転嫁ー。あーあ、これだから大陸は……」
敵兵「(誰か……オレに優しくしてよう…… )」
第5部 女騎士おかっぱ編 序
┼ヽ -|r‐、. レ |
d⌒) ./| _ノ __ノ
第5部 女騎士おかっぱ編 破へ
ー- 、 ー-、``/
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制作・著作 NHK