1 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 14:57:32 OK5e.VnY 1/13

「あなたはわたしと婚約関係にありますか」

「いいえ」

「だけどあなたとわたしは同じ指輪をはめている」

「それは結婚指輪ではありません。薄く切られたちくわです」

「これはちくわですか。わたしにはそうは見えないけれど」

「そういうものです」

元スレ
男「あなたはわたしと婚約関係にありますか」女「いいえ」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1373867852/

2 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:00:40 OK5e.VnY 2/13

「あなたはわたしと付き合っていますか」

「いいえ」

「だけどわたしとあなたはおんなじところに住んでいる」

「ルームシェアです」

「ワンルームなのに?」

「今朝起きたら壁が無くなっていたんです」

「ちなみに私は隣に住んでいるものです」

「これはこれは」

「どうもどうも」

「ところでこの家、一戸建てですよね」

「だまされましたか」

「だまされた!!理不尽な暴力!理不尽な暴力!」

「殴らないでください」

3 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:02:07 OK5e.VnY 3/13

「あなたはわたしとデートにでかけたことがありますか」

「いいえ」

「水族館に行ったようですよ、写真がある」

「それは私ではなく、ジンベエザメです」

「間違えました」

「でもこのジンベエザメはとても可愛らしいですね。」

「やっぱりわたしです」

「どうりで肌が青くないわけだ」

4 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:02:59 OK5e.VnY 4/13

「あなたは灰色がきらいですか」

「はい」

「なぜですか」

「私のきらいなものは、たいてい灰色なのです」

「例えば?」

「曇った空とか、ネズミとか、あと、あなたの脳みそもきっと灰色です」

「私の脳はきらわれているようですね」

「はい」

5 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:03:48 OK5e.VnY 5/13

「あなたはわたしのことをおぼえていますか」

「・・・・・」

「どうしました?」

「黙秘権を使います」

「すいません、こちらの黙秘クーポンの有効期限、昨日までなんですよ」

「そこをなんとか!」

「だめです」

「こいつじゃ話にならねえ!店長を呼べ!」

「タチの悪い客だ!店長――!!」

「あれっ」

「ごまかさないでください」

6 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:05:45 OK5e.VnY 6/13

「あなたはわたしのことを好きですか」

「いいえ」

「そうですか、悲しいです」

「どちらかといえば、愛していますよ」

「今なら空も飛べるはずです。ちょっと飛んできますね」

「窓から飛び降りるのはやめてください」

8 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:07:01 OK5e.VnY 7/13

「あなたは記憶喪失ですか」

「いいえ」

「本当のことを教えてください」

「では、私からもあなたに3つ質問をしましょう」

「わかりました」

9 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:07:46 OK5e.VnY 8/13

「まず一つ目」

「あなたはわたしのことをおぼえていますか」

「黙秘権は使えますか」

「すいません、こちらのクーポン当店のものではないんですよー」

「そうなんですか!恥ずかしい!!」

「ははは、なんだこいつ!なんだこいつ!」

「指を指して笑うのはやめてください!

11 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:09:39 OK5e.VnY 9/13

「つぎに二つ目」

「あなたは記憶喪失ですか」

「・・・いいえ」

「嘘ですね」

「嘘です」

「やっぱり、あなたには記憶がない」

「・・・・はい。朝起きたら何も覚えていませんでした。
  この部屋も、となりで寝ていたあなたのことも」

「何も?」

「ええ、何もかも」

14 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:12:49 OK5e.VnY 10/13

「では、最後の質問を」

「あなたは、わたしのことを好きですか」

「・・・・いいえ」

「ですよね」

「すみません」

「いいえ、あなたが謝ることはない」

「代わりと言ってはなんですが、
  左手の薬指にはまったちくわを食べてください」

「・・・・わたしには、婚約指輪にしか見えないのだけれど」

「それはちくわなんですよ、だから飲み込んでください」

「そういうものですか」

「そういうものっていうことにしといてください」

「・・・・なぜ泣いているんですか?」

「泣いてません、こっち見ないでください」

17 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:18:01 OK5e.VnY 11/13

「あなたはまだわたしに隠しごとをしていますね」

「どうしてわかったんですか」

「起きた時、体中がとても痛かったんです。
  見ると全身にあざややけどの痕が、そしてとなりには、
  わずかに血のついたフライパンを持ったまま寝ている、あなたが」

「それで?」

「記憶のないわたしでも分かります。
  あなたは、わたしに暴力をふるっていた」

「例えば?」

「フライパンで叩いたり、熱湯をかけたり。
  それらなら、小柄なあなたにでもできるでしょう」

「・・・・ごめんなさい。あなたは耐え切れなくなって、
  すべてを忘れることを選んだのでしょう、きっと」

「わたしは壊れているんです。歪んでいるんです。
  だから、いびつな形でしか、あなたを愛せなかった」

「あなたはここにいるべきではない。きっとわたしはまた、
  あなたを傷つける。だから、逃げてください」

「誰から?」

「わたしから」

18 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:18:54 OK5e.VnY 12/13

「・・・・いやですよ、ここはわたしとあなたの家です」

「わたしには記憶がありませんが、
  あなたのことが嫌いではないみたいです」

「あなたに暴力をふるっていたのに?」

「そういうものです」

「さあ、着替えて指輪を買いに行きましょう。

今度はちくわではなく、本物の婚約指輪を」

「・・・・免罪符は使えますか」

19 : 以下、名無しが深夜にお送りします... - 2013/07/15 15:19:34 OK5e.VnY 13/13

短いですが、これで終わりです。
見てくださった方、ありがとうございました。

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