【前編】の続きです。
・・・・・・・・・・・
―――【朝】
・・・・ドン・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・ドン
・・・ドンドン
・・・・・・・・・・・・・・・ダァァァァァン!!!
???「・・・・どんだけドア固めてあるんだよ!」
???「・・・・おい、無理やり開けたら壊れるだろうが」
幼剣士「・・・!」ビクッ
乙女僧侶「な、何事ですか・・・!?」ガバッ
童子騎士「な・・・何の音・・・!」ガバッ
めがね魔道「・・・」グゥグゥ
幼剣士「・・・扉が、開いてる・・・?」マブシイ
童子騎士「て、敵!?」
幼剣士「・・・ううん・・・人がたってる・・・2人・・・」
乙女僧侶「だ、誰ですか!?」
???「・・・誰ですか、だってさ」
???「ひでぇなおい・・・」
乙女僧侶「・・・・あぁっ!」
僧侶戦士「久しぶりだな」
武道家「よっ、無事だったか!」
乙女僧侶「・・・・武道家さん!僧侶戦士さん!」
僧侶戦士「アラクネの討伐完了だ。ひとまずちょっとだけ落ち着いたぞ」
武道家「へへ!」
・・・・・・・・・・・・・・
僧侶戦士「・・・・町はひどい有様だった」
武道家「あんま言いたくないが・・・、あまりにも犠牲が多すぎる・・・」
乙女僧侶「・・・」
童子騎士「そんな・・・」
幼剣士「・・・」ブルッ
めがね魔道「なんで・・・こんなことに・・・」グスッ
僧侶戦士「軍に魔獣の異変が届いたのは約3週間前。パニックを恐れて非公開にしてたんだ」
乙女僧侶「そ、そんな前から・・・?」
僧侶戦士「あぁ。だが・・・それは逆効果になってな・・魔獣たちの赤眼・・・感染速度が尋常じゃなかったんだ」
幼剣士「感染・・・もしかして・・・塔・・?」ボソッ
武道家「ん・・・・お前・・・、弟クン・・・幼剣士だったか・・・?なんで塔のことを知ってる?」ピクッ
幼剣士「前、お兄ちゃんが話したのを聞いたから・・・」
乙女僧侶「塔ってなんですか?」
武道家「・・・・僧侶戦士、いいのか?」
僧侶戦士「・・・身内だ。多少の話は仕方ないだろう」
武道家「いいか・・・、30年前の魔王との戦いは知っているな?」
幼剣士「・・・」コクン
武道家「その時に魔王軍が建てた負の遺産・・・、「魔法の塔」が星降町があるんだ」
乙女僧侶「あ、聞いたことがあります」
武道家「そのテッペンに真っ黒な純粋な魔法石があるんだが・・・それを巡って、その周辺で戦いが起きた」
童子騎士「それが・・紛争?」
武道家「アレがあると、元々貧乏だった村ですら巨大な産業国になりうるくらいの価値があったんだ」
幼剣士「・・・」
武道家「その紛争は地区同士の潰し合いから、どんどん肥大化していった。やがて・・その周辺全体が紛争地帯となっていったんだ」
僧侶戦士「それが星屑と呼ばれるようになった全貌だ」
幼剣士「で、でも・・・それが今回の襲撃と何か関係が?」
武道家「問題っつーのは、その負の遺産・・・"塔"の存在だ」
乙女僧侶「・・・?」
僧侶戦士「機密事項なんだがな・・・その"塔"の魔石ってのは、元々、魔力が宿ってなかったんだよ」
乙女僧侶「・・どういうことですか?」
僧侶戦士「単純にいえば、他の周囲の魔力を吸い取ることで力を発揮する物だったんだ」
乙女僧侶「周りの・・・ってことは・・・」
武道家「その通り。紛争は元々仕込まれたものだった可能性が高い。あの塔だってそういうのを見越してたのかもしれない」
幼剣士「・・・・!」
武道家「紛争が終了したっていうのも、その塔の周辺から"赤眼"が出たからだ」
乙女僧侶「・・・」
幼剣士「ち、ちょっと待ってよ!じゃあ・・・お兄ちゃんは!?お兄ちゃんはその星屑の町に向かったんだよ!」
武道家「・・・」
僧侶戦士「そのことなんだけどな・・・」
武道家「実は・・・、青年剣士が向かった理由は・・・その塔の調査だったんだ」
幼剣士「・・・お、お兄ちゃんは大丈夫なの・・・?」
僧侶戦士「約2週間前。最後に塔の中枢から連絡が入った日だ」
乙女僧侶「え・・・・じゃ、じゃあ・・」
武道家「行方不明・・・になってる」
幼剣士「・・・嘘だよ!!!絶対!!!お兄ちゃんがそんなわけない!!」
乙女僧侶「・・・青年剣士さん・・・が・・・・」
僧侶戦士「・・・」
武道家「・・・」
童子騎士「その・・・、師匠は・・・・、そんな重要な事を任される立場の人・・・だったんです・・か・・・?」
僧侶戦士「あいつはな・・・人以上の力を持ってる上に、成果をあげてる軍のエースなんだ」
武道家「実力だけでいえば、世界でも指折りになるかもしれないな」
童子騎士「・・・・師匠・・・」
乙女僧侶「・・・・それで、これからどうなるんですか・・・?」
武道家「・・・・、ここは大尉殿がいる限り安泰だから安心していい。あと問題は・・・・青年剣士だな・・・」
童子騎士「昨日から、大尉殿、大尉殿って皆言ってるけど・・・そんな・・・凄いんですか・・・?」
僧侶戦士「ああ強いぞ。なんて言っても、俺らの恩師だからな」
乙女僧侶「恩師?」
武道家「あ、そうか・・・おい!それ言っちゃだめだろ!」
僧侶戦士「あ・・・、悪い!何でもない!」
乙女僧侶「・・・・ま、まさか・・・」
・・・・・・・ガチャッ・・・・ギィィィ・・・
幼剣士「ま、また誰か来た?」
???「・・・ここも大丈夫みたいだな」
僧侶戦士「た、大尉ど・・・」
武道家「ば、ばかっ!」ビシッ
乙女僧侶「・・・・や、やっぱり・・・」
戦士先生「・・・・ん?」
乙女僧侶「よ、良かった!戦士先生・・・無事だったんですねっ・・・」ダキッ
戦士先生「お、おいおい、若い娘に抱きつかれたら・・・いくら俺でも甲斐なく照れるぞ」ハハ
幼剣士「だ・・・誰?」
武道家「俺、青年剣士、幼馴染、僧侶戦士・・・、その冒険学校時代の恩師だ」
僧侶戦士「・・・1年前に軍にスカウトされて、光の速さで大尉まで上り詰めたんだ」
戦士先生「ったく・・・バラしちゃったのか」
乙女僧侶「どうして隠しているんですか・・・?」
戦士先生「知られないで行動するっていうのも、また1つの仕事だったんだ」ハハ
僧侶戦士「・・・ま、どのみちココを中心に護衛にあたるし・・いつか気付かれるじゃないですか」
戦士先生「そりゃ・・そうなんだけどな・・」
武道家「でも、これで俺らは俺らの事できるな」
幼剣士「俺らの・・事?」
武道家「そっ。青年剣士の後を追いかけて、救出に向かう」ニヤッ
乙女僧侶「そ、そんな・・・危険すぎますよ!」
僧侶戦士「だけどな、俺もあいつも・・・そんな単純な仲間じゃないんだ・・・だろ?」
乙女僧侶「・・・・」
戦士先生「星降町は今、暴走化した魔獣の巣窟だが・・・止めたって無駄だろう?」
僧侶戦士「・・・申し訳ないです」
武道家「物分りがいい上司殿でよかったよ」ハハ
戦士先生「特別に眼ぇつむるけどな・・・、道中は今まで以上に危険だし、どこもかしこも・・町は交戦中だぞ・・・」
僧侶戦士「何とかなりますよ多分」
戦士先生「楽観的な・・・。ま、昔からそれで何もかも解決してきたんだろうしな」ハハ
武道家「冒険の扉はやっぱもう使えないよな・・・」
戦士先生「あぁ。ダメだ・・・。中央国まで行けば動いてるのもあるかもしれん・・・・が・・・」
武道家「・・・何か?」
戦士先生「中央国にはかなりの冒険の扉があるだろう?」
僧侶戦士「・・・ありますね」
戦士先生「そこを逆に通って、魔獣たちが姿を現して、大規模な戦闘状態に陥ってるらしい」
幼剣士「中央国・・・そ、それじゃマスターは!?」
戦士先生「懐かしい名前だな、はは。あの人なら大丈夫だろ、よっぽどじゃない限り倒れないさ」
武道家「はぁ、それじゃあやっぱり歩きで星屑まで行かないといけないのか・・・・」
戦士先生「海はどうするんだ?」
僧侶戦士「あ・・・」
乙女僧侶「そこ考えてなかったんですか・・・?」
武道家「港まで歩きで4日、そこから船で最速2日・・・か。船・・・動いてっかなぁ・・・」
戦士先生「・・・動いてないだろう・・・この状況じゃ・・・」
武道家「ど、どうしよう・・・」
乙女僧侶「ちょっと強くなりましたけど、何か色々と昔と変わってないのは安心します」ヘヘ
武道家「・・・・乙女僧侶、さりげなくバカのまんまだなって意味で言っただろ・・」
乙女僧侶「い、いえそんな!」アセアセ
童子騎士「・・・あの」
武道家「どうした?えーっと・・・名前なんだっけか・・・」
童子騎士「・・・童子騎士です。その、船って"動けば"いいんですか?」
僧侶戦士「・・・どういうことだ?」
童子騎士「西の港ですよね?さすがに最新の魔動力船は無理ですが・・・・、 旧式であれば使える場所、知ってますよ」
武道家「・・・・何?本当か!?」
童子騎士「・・・はい。亡くなった親父が、よく船旅をしてたので、その周辺で昔よく着いてって遊んでたんです。
そこの港では、いらなくなった旧式とかの船を貸し出し、していたので・・・大丈夫だと思います」
武道家「船の操作をできるやつは?」
童子騎士「本来ならサポーターがつくんですが、多分今はないないですよね?俺、できます」
幼剣士「・・・童子騎士くん、凄い・・」
僧侶戦士「・・・・だけどな、さすがに子供を連れてくわけには・・」
乙女僧侶「・・・そうですよ!ダメです!」
武道家「・・・・」
童子騎士「じゃあ・・・それ以外に方法・・・あるんですか?」
乙女僧侶「そんなの・・・いくらでもありますよ!・・・ね?」
戦士先生「・・・」グヌヌ
武道家「・・・」ウーン
僧侶戦士「・・・」アルカナ・・
童子騎士「・・・」
乙女僧侶「・・・・・」
僧侶戦士「・・・・西の海を越えた後に、すぐに大きな漁港村がある。そこも交戦中だが、他の場所よりは安全だ」
武道家「だな・・・」
僧侶戦士「そこまでの案内、頼めるか?」
童子騎士「・・・大丈夫です」コクン
乙女僧侶「で、でも・・・!」
戦士先生「確かに危険だけどな、道が他にないんだろう・・。それとも、青年剣士のピンチを何もせず見ているか?」
乙女僧侶「それは・・・そうです・・・が・・」
僧侶戦士「『犠牲とか、俺のこととかはどうでもいい・・・チャンスを目の前にして逃げてみろ、俺が殴り飛ばす』」
乙女僧侶「・・・え?」
僧侶戦士「子供のとき、俺に人生の英断をさせてくれたヤツの言葉。それ以来、チャンスには必ず手を出すよう
にしてる。もちろん、それが俺自身が犠牲になろうとも」
乙女僧侶「・・・」
僧侶戦士「俺が英断をしたのは、ちょうど童子騎士くらいの歳だったな・・・・。危険だが・・・頼めるか?童子騎士」
童子騎士「は、はいっ!」
幼剣士「・・・」
僧侶戦士「じゃあ1時間後には出発するか。準備はしておけよ」
童子騎士「わかりました!」
幼剣士「ぼ・・・僕も・・・ダメ、ですか・・・・!?」ブルブル
めがね魔道「よ、幼剣士くん・・・」
乙女僧侶「・・・」
武道家「・・・お前も、行きたいのか?」
幼剣士「ぼ・・・僕の家族は・・・、家族は・・・・・・・・山賊に・・・殺されて・・・」
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「だ、だから・・・、お兄ちゃんになるって・・・言われた時・・凄い嬉しくて・・・」ヒグッ
武道家「・・・」
幼剣士「・・・だけど、今、お兄ちゃんはピンチで・・・僕は・・・何も出来なくて・・・」グスッ
乙女僧侶「幼剣士くん・・・」
幼剣士「・・・待ってようと思ったけど、童子騎士くんが一緒に行く事になって・・・なんか・・凄い悔しくて・・・」ポロポロ
童子騎士「・・・幼剣士・・」
幼剣士「だから・・・無理だってわかってるけど・・・お願い・・したかった・・・・・」グスッグスッ
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「わがまま言って・・ごめん・・・・なさい・・・・」
武道家「・・・幼剣士。言っとくが、人のこと構えるほどの状況じゃないかもしれん。危険は必ず伴う」
僧侶戦士「痛いし、辛いし、もしかしたら最悪の結末だってあるかもしれない」
武道家「それでも・・・・」
僧侶戦士「我慢、出来るか?」
乙女僧侶「・・・・」
幼剣士「我慢・・・する・・・・・。だから・・・・僕も・・・連れてってっ!!」
戦士先生「はっは・・・お前ら、いっぱし言うようになったな」
武道家「へへ、でしょ。・・・これで4人パーティだな」ハハ
僧侶戦士「・・・多少の面倒はお前も見ろよ?」
童子騎士「そ、それじゃ・・・」
幼剣士「いいの・・・?」
武道家「男の決断を無碍にしたら、俺らの男が下がっちまうだろ」ハハ
僧侶戦士「無理だけはすんなよ。無理だと思ったらすぐに、そこで待機だからな?」
幼剣士「・・・うん!!」
乙女僧侶(何を言っても・・無駄ですね。頑張ってください・・・皆さん)
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
乙女僧侶「その・・・必ず・・・無事に戻ってきてくださいね・・・。本当にお気をつけて・・・」
武道家「もちろんよ!」
めがね魔道「る、留守の間は僕がここを守ります!」
僧侶戦士「おう、乙女僧侶のことしっかり守れよ?」
戦士先生「・・・気をつけてな」
武道家「・・・もちろん!」
幼剣士(待ってて・・・・お兄ちゃん・・僕が、必ず・・・!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・トコトコ・・・
武道家「それにしても・・・弟クン、さっきはよく男らしく言ったな。勇気があってよかったぜ」ハハハ
幼剣士「そ、そんな・・・必死だったっていうか・・」
僧侶戦士「いや、凄いと思うぜ。勇気と行動力は、青年剣士の子供のころソックリだな」ハハ
幼剣士「そうかな・・」テレッ
童子騎士「師匠はやっぱり、子供のころから強かったんですか?」
武道家「んー・・・アイツはやっぱ少し秀でてた」
僧侶戦士「冒険学校に入学した最初の試験で、キングゴブリン倒したのも実質アイツだったしな」
童子騎士「き、キングゴブリンを!?」
幼剣士「凄い・・」
武道家「あの時は童子騎士と一緒くらいの歳だったはず」
僧侶戦士「・・・その後はトントン拍子に色々あって、妹まで出来たりして・・・」
幼剣士「あ・・・僕のお姉ちゃん?確か、凄い遠い場所にいるって・・・」
僧侶戦士「あーあの子は・・・お姉ちゃんになるな。遠い場所で、今は王女になる特訓でもしてるんじゃないか」
武道家「・・・かもな」
幼剣士「ど、どんだけ凄い人が・・・・。いつか会えるかなあ」
僧侶戦士「ああ。いつか会えると思うぞ・・・きっとな」
幼剣士「・・・うんっ」
・・・・ガサッ
アウルベア『・・・・グルル・・・』
武道家「うは、早速かよ・・・!」スッ
僧侶戦士「遅れるなよ、2人とも!」チャキッ
幼剣士「も、もちろん!」チャキッ
童子騎士「任せてくださいよ!」スチャッ
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【夜・道中の村】
・・・・・ホゥ・・・ホゥ・・・
武道家「交易に使われる村だが・・・・、見事に真っ暗だな」ハァ
僧侶戦士「・・・血の痕がひどい。全員やられたか、逃げたか・・・」
武道家「逃げた・・・と願うよ」
幼剣士「・・・凄い怖い・・」ガクガク
童子騎士「・・・」ブルッ
武道家「しかし参った・・・ココに泊まる予定だったんだが・・・」
僧侶戦士「宿も宿番もいないだろうしな・・・、勝手に借りるか?」
武道家「緊急事態だしいいんじゃねーか?」
僧侶戦士「じゃ、行ってみるか・・・」
トコトコ・・・・
幼剣士「あの・・・2人はこういう場所・・・怖くないの・・・?」
童子騎士「平然と・・・してて凄いとは思いますが・・」
武道家「ん?あぁ・・・怖いっていうか・・・」
僧侶戦士「慣れてるってのもあるけど、怖くないわけじゃない」
武道家「だな。それ以上に悲しいって思いが大きい」
僧侶戦士「・・・そうだな・・」
童子騎士「・・・」
・・・・ザッザッザ・・・トコトコ・・・
僧侶戦士「お、あったあった。やっぱココも真っ暗・・・か」
武道家「魔獣は・・・ない。一応安全だ」
僧侶戦士「・・・失礼しますよっと」
・・・・・ギィ・・・
幼剣士「・・・・うっ・・・」
宿番「・・・」
客「・・・」
僧侶戦士「ひ、ひでぇ・・・」
武道家「血だらけじゃないか・・・、こりゃアウルベアのやり方だ・・・」ドロッ
僧侶戦士「・・・とりあえず2階で休もう・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
幼剣士「・・・何で、ここは・・・こんなに・・被害がひどいの・・・?」
僧侶戦士「交易の休憩所って呼ばれる村でな、見てわかると思うが凄い小さい村なんだ。
だから、軍の支部を置くには経費問題もあるし、村人自体の戦闘知識も少なかったんだ」
武道家「・・・」
幼剣士「そ・・そうなんだ・・・」
僧侶戦士「・・・」
武道家「・・・」
童子騎士「・・・」
幼剣士「・・・」
童子騎士「そ、そういや・・・、魔物とか魔獣とか言ってましたが・・・どんな意味があるんですか?詳しくわからなくて・・」
武道家「ん・・・あぁ。魔獣とか魔物っていうのはいわゆる区分だ」
童子騎士「・・・区分?」
僧侶戦士「魔獣は下位。スライムやウルフとか、弱めの奴の全般をそう呼んでいるんだ」
幼剣士「へえ・・・」
武道家「まあ、魔獣でも上級や下級、亜種や異種なんてのもあるから、一概に弱いとは言えないけどな」
童子騎士「じゃあ、さきほど僧侶戦士さんたちが倒したアラクネっていうのは・・・」
僧侶戦士「蜘蛛の女王で、魔物では割と有名なほうだ」
童子騎士「・・そうなんですね」
幼剣士「じゃあ、魔物って呼ばれるのが一番強いの?」
僧侶戦士「いや、一番上には神獣っていう更に上位種がいる」
幼剣士「神獣・・・」
僧侶戦士「ま、その辺までいくと・・・ほぼ伝説的なのが多い」
武道家「ちなみに、竜族、神族、魔族、巨人族。それが神獣の中でも四天王って呼ばれてるワケだ」
幼剣士「す、凄い・・・」
僧侶戦士「ま、一生かかっても会えるかどうかって話だけどな」ハハ
武道家「・・・そうだな」ハァ
童子騎士「・・・色々聞けて本当に勉強になります」
幼剣士「だねっ」
武道家「ま、明日も早いし今日はさっさと寝るか」
僧侶戦士「そうだな」
幼剣士「うん・・・」
童子騎士「・・・」
僧侶戦士「よっしゃ、休むことも大事だ。おやすみ・・」ゴソゴソ
童子騎士「はい・・・おやすみなさい」モゾモゾ
幼剣士「・・・おやすみなさい」
武道家「・・・」
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「・・・」
童子騎士「・・・」
武道家「・・・」
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「・・・」スゥ・・・
童子騎士「・・・」グゥ・・・
武道家「・・・」
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「・・・」スゥ・・・スゥ・・・
童子騎士「・・・」グゥ・・・グゥ・・・
武道家「・・・寝たか?」
僧侶戦士「みたいだ・・・じゃ、行くか?」
武道家「面倒くせー・・・魔力プンプン放ちやがって・・・」
僧侶戦士「起こさないようにな」
・・・・・ギシッ・・・トコトコ・・
・・バタン・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【2日目の朝】
・・・チュンチュン・・
幼剣士「・・・ふわぁ・・・!」
童子騎士「ん・・・」ムクッ
僧侶戦士「お、やっと2人とも起きたか」
武道家「よ、おはよう」
幼剣士「!」ガバッ
童子騎士「ふ、二人とも早いですね・・」
僧侶戦士「まあな、こういう早起き習慣が身についてるからな」
幼剣士「・・むにゅむにゅ・・・・ちょっと眠い・・」
武道家「ほらほら、眼覚ませー。これでも食って」ポイッ
幼剣士「わわっ・・・これは?」トスッ
武道家「アウルベアの肉を焼いといた。外に倒れてた」モグモグ
幼剣士「あ、ありがとう・・・」モニュ
童子騎士「・・・美味しい」モグモグ
僧侶戦士「おっしゃ、とりあえず外に出ようか」
幼剣士「うん」モグモグ
童子騎士「はい」モグモグ
・・・・ガチャッ・・・バタン
・・ギシッ・・・ギシ・・・
幼剣士「あれ・・・ココに倒れてた宿番さんたちは・・?」
僧侶戦士「俺らが早く起きて埋めといてやったよ。ここも後で軍本部に報告せにゃいかんけどな」
武道家「・・・」
童子騎士「・・・」ハァ
・・・ギィ・・
幼剣士「うわっ!!」
童子騎士「うおっ!!なんじゃこりゃ!」
異種アウルベア『』
幼剣士「大きい・・・もしかして、このアウルベアがこの村を・・・?」
僧侶戦士「ああ。昨日は気づかなかったけど、朝外に出たら近くに倒れてたんだ」
武道家「さっきの肉はこいつから採ったから、新鮮そのものってわけ」ハハ
幼剣士「ほえー・・・」
童子騎士(新鮮って・・・、そんなこと分かるのか?もしかして、この2人が倒したんじゃ・・・)
武道家「ん?どうした?」
童子騎士「あ、いえ!何でもありません!」
武道家「それならいいんだけどな。おっしゃ、とりあえず出発すっかぁ!」
僧侶戦士「このペースで歩けばすぐ着くからな、どんどんいくぞ」
幼剣士「うんっ!」
童子騎士「はい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【4日目・西の港】
武道家「ふぅ、やっと着いたな」
僧侶戦士「・・・思ったよりは早い段階で着けたが・・」
幼剣士「港町だぁ・・・海の匂い・・・」クンクン
童子騎士「懐かしい匂いだな・・・」
武道家「んー・・・それにしても、この港は思ったより・・あまり襲撃され・・・・」
・・・・ドゴォォォン!!!
・・・コッチニキタゾ!!ニゲロ!!
武道家「てるみたいね・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
マーマン『ゲヘ・・・・』
武道家「・・・掌底波ァっ!!」ヒュッ
・・・グシャッ!!
マーマン『』
僧侶戦士「えと・・・これで結構倒したよな・・・だいぶ少なくなったか」
武道家「ふむ・・・、だけど何だ。ここは軍人の援軍がいないのか?」
僧侶戦士「んー・・・」
・・・・トコトコ・・
村人A「あの、軍人さんたちですか?」
僧侶戦士「あぁ、そうだが」
村人B「た、助けに来てくれたんでしょうか?」
武道家「いや、ちょっと海を渡りたくてね・・・援軍じゃないんだ・・・」
村人A「そ、そうですか・・・。いた軍人さんたちは今、集会所にいる人たちを守るために・・・そこにいます」
村人B「ずっと戦ってくれてるんですが、みんな衰弱が激しくて・・・」
僧侶戦士「そうか・・・もうあれから5日目だもんな」
幼剣士「どこも・・一緒なんだね・・・」
村人A「そ、それより・・・海を渡るって・・・いってましたよね?」
僧侶戦士「そうだが?」
村人B「や、やめといたほうがいいかと」
僧侶戦士「なんでだ?」
村人A「海のクラーケンが赤眼で暴れて、その時出てた組合の船が全滅しまして・・」
武道家「また・・面倒な・・・・・」ハァ
僧侶戦士「あー・・・」
童子騎士「クラー・・・ケン?」
武道家「海も魔物だ。そいつ自体は強いわけじゃないんだが、海の上っていうステージだと向こうが有利でな」
僧侶戦士「昔から船の天敵と呼ばれてきた最悪の種でもある」
童子騎士「じゃあ、渡れないんですか?」
武道家「うーん、僧侶戦士は確か、軍のクエストでクラーケンと戦ったことあったよな・・・?」
僧侶戦士「あの時は強い味方メンバーが一緒だったから何とか、だ」
武道家「行動の特徴は?」
僧侶戦士「触手で船が沈められないように、けん制しながら本体の出現待ちだな」
武道家「・・・・いけるか?」
僧侶戦士「いや無理だろ。俺らが触手を担当しても、本体を叩く火力役がいない」
武道家「そうか・・どうするか・・」
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「出会っても、逃げるとか・・・!」
童子騎士「あのな・・・」
武道家「・・・そんな簡単にいったら、どれだけうれしいことか」ハァ
童子騎士「・・・あ」
武道家「ん?」
童子騎士「・・逃げる手立て、あるかもしれません!」
武道家「マジで・・・?」
村人A「ク、クラーケンから逃げる船なんて・・・」
童子騎士「こっちです!」
・・・・タッタッタッタ
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・ガラガラッ!!
村人A「おいおい・・・ここは古くなった帆船やらを置く・・・貸し出し広場だぞ?」
童子騎士「えっと・・・ちょっと待っててください」タッタッタ
村人A「・・・」
僧侶戦士「ここじゃ最新の魔動船とかは貸してもらえないのか?」
村人A「本来ならあるんですが・・・、クラーケンと遭遇した時に一気に畳み掛けられて・・・」
武道家「・・・そうか。やっぱアイツ頼るしかねーな・・」
童子騎士「みなさーん!こっちです!」
僧侶戦士「・・・お、なんか有ったみたいだぞ」
・・・・タッタッタ・・
幼剣士「童子騎士くん、あったの?」
童子騎士「あぁ・・あったよ。旧式だけど、魔法動力船では最高速度を誇ったことがある船・・・だったはず」
村人A「・・・おいおい・・こんなところに・・・こんなもんあったのか・・・」
武道家「・・ちっちゃいな」
童子騎士「速度のみに特化してる船ですからね・・・、だけどこれなら普通の船の数倍の速度で走れますよ」
幼剣士「じゃあ・・・いけるんだね・・・?」
童子騎士「昔、親父とココに来た時に話をしてたのを思い出したんだ。海の魔物だろうが、振り切れる船だって」
武道家「・・・運ぶのはいいとして、問題は・・・動くのか?」
村人A「あ、たぶん動くと思います。ここは貸し出し用の旧式の船置き場で、廃船したのはありませんし・・・」
僧侶戦士「そ、そうか・・・!よし、これで海を渡れるな!」
童子騎士「よし・・・それじゃ、海に出しましょう」
武道家「運ぶぞ・・・、みんな手伝え!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・ザバァン!!
武道家「よしっと・・・」
村人A「こ・・腰が・・・」イタタ
僧侶戦士「ご協力感謝します」
武道家「・・・で、船の調子は?」
幼剣士「童子騎士くん、エンジンはかかるの?」
童子騎士「慌てなさんな・・・、えと・・」カチャカチャ
幼剣士「・・・」ワクワク
童子騎士「・・・あ!」
武道家「な、なんだ?」
童子騎士「・・・あの、緑の魔石ありますか?」
僧侶戦士「・・・一応これだけな」ゴソゴソ・・・ポイッ
童子騎士「わわっ、ありがとうございます。充分な大きさです・・・よし・・・!」カチャッ
・・・・・ブルッ・・・ブォン!!!
ブルッブルッ・・・ブォォォォン!!!
武道家「おぉ!」
僧侶戦士「やるな。大丈夫そうか?」
童子騎士「えぇ・・たぶん大丈夫だと思います。思った以上にいい状態で放置されてたみたいです」
幼剣士「やった!」
童子騎士「それじゃ、行きますか?」
武道家「・・・すぐ出発できるのか」
童子騎士「問題ないですね。コレの速さなら1日で着くと思います」
僧侶戦士「疲れをとる為に大型船でのんびり・・って訳にはいかなくなったな」
武道家「あ、そういやさ。方角とかどうすんだ?わかるのか?」
童子騎士「あ・・・」
村人A「それなら大丈夫かと思いますよ。錬金術か何か忘れましたが、設定すれば自動で着くはずです」ヨイショ
・・・ピッピ・・・ピッ・・・
武道家「・・・便利なもんだな」
僧侶戦士「軍もこんくらい便利で簡単なシステムにならないかな」
武道家「全くだ。クエスト報告だの、上位下位関係だの、内部派閥抗争だの勘弁してくれ・・・」ハァ
村人A「あはは・・・よし!これで後は行き先を入力するだけです。どこですか?」
武道家「海を渡った先の西の漁港だ」
村人A「・・・漁港・・・っと・・・」ピッ・・
僧侶戦士「出来たか?」
村人A「はい、出来ました!」
僧侶戦士「ありがとう」
童子騎士「よし、それじゃ・・・乗ってください」
・・・トコトコ・・・ユラッ
幼剣士「よいしょ・・・とと、揺れるね・・・」ユラユラ
童子騎士「この揺れから慣れないと、船酔いするかもしれないぜ・・・」
幼剣士「初めてだから・・・するかも・・・」
村人A「では、気をつけてくださいね・・・」
僧侶戦士「・・・そちらこそ。この港に幸運を・・・」
武道家「・・・」ペコッ
童子騎士「では、今度こそ準備はいいですね?」
僧侶戦士「問題ない」
武道家「オッケーだぜ」
幼剣士「・・・いいよ!」
童子騎士「それでは・・・出発します!」カチャッ
ブルン・・・ブルンブルン・・・
ブォン!!!!!
ブォォォォォン・・・!!!ブォォォォォォ・・・・・・・・・・・・!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・ゴォォォォ!!
武道家「うひょー!はえぇ!」
幼剣士「み、水しぶきが・・・・」バシャバシャ
童子騎士「・・・あとは操作はいりませんね。いい船ですよこれ・・・」
僧侶戦士「そんなイイモンなのか?・・・なんでそれが旧式だったんだろうな」
童子騎士「あそこの貸し出しは結構いい船置いてましたし・・・、最新のどんどん導入してるのかもしれませんね」
武道家「つか、これならクラーケンでも何でも振り切れるのか?」
僧侶戦士「ああ、大丈夫だと思うぜ」
武道家「それならいいんだがな」
僧侶戦士「・・・ん?」
幼剣士「・・・」ウプッ
武道家「・・・酔ったか?」ククク
僧侶戦士「あーあー大丈夫か?」ハハ
幼剣士「・・らいじょうぶ・・・・・」ウプッ
童子騎士「酔うのはええよ!」
幼剣士「・・・」オエッ
童子騎士「あーあー・・・もう、このペースだと結構早く着くから我慢するか・・・慣れろ」サスサス
幼剣士「うう・・・ありがとう・・・」
僧侶戦士「ま、空とか海眺めながらのんびり行こうぜ」
童子騎士「そうですね・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・ブォォォォ・・・!!!
童子騎士「3分の2地点通りすぎました。あと少しで着きますよ」
武道家「幼剣士、ちょっとは慣れたか?」
幼剣士「ふぁい・・・」
僧侶戦士「ダメだなこりゃ・・・」ハハ
童子騎士「それにしても、暗くなってきましたね」
僧侶戦士「魔獣たちが一番活発になる時間帯だな・・・・」
・・・・・・・ブォォ・・・・・
武道家「・・・何の音だ?」
童子騎士「?」
僧侶戦士「・・・おい、皆。一応武器構えとけ。童子騎士は全速力で舵を頼む」
武道家「まさか・・・」
僧侶戦士「気のせいだといいんだが・・・、全員聞いたって事は気のせいじゃない・・・からな」
武道家「・・・」スッ
僧侶戦士「・・・」チャキッ
幼剣士「・・・」フラフラ
童子騎士「・・・」ググッ
・・・・ドォン!!
・・グラッ!!
武道家「うお、揺れる!」
幼剣士「・・・」ウプッ
・・・ドォン!!ドォン!!!
幼剣士「・・・揺れるぅぅぅ」
僧侶戦士「やはりな。いいか、船の下見てろ・・・中火炎魔法!」ボワッ
武道家「・・・・なんじゃこりゃあ!!!」
・・・・ユラユラ・・・
僧侶戦士「クラーケンの触手の影だ・・・でっけえな・・・」ハハ
童子騎士「ス、スピードをあげます!」
・・・グォォォォン!!!!
武道家「どうすりゃいいんだ?」
僧侶戦士「本体は俺らに追いつけないみたいだな。触手を叩く!」
・・・・ザバァ・・・・・・・!!
武道家「しょ、触手でけぇ!船を叩き割る気か!?」
ヒュンッ・・・!!
僧侶戦士「はぁっ!」ビュッ
・・・・ズバァッ!!・・・ドシャァッ・・・
武道家「おお、簡単に意外と切れるんだな!」
僧侶戦士「触手だけの相手ならワケないな。船に攻撃がくる前にドンドン落とせ!」
・・・・ザバァ・・・
・・ザバァ・・ザバァ・・・・・ザバァ・・・・!!
武道家「よ、4本か・・・」
僧侶戦士「お前3本な。俺だるいから」
武道家「・・・なんでだよ!?」
・・・・ビュビュビュビュッ!!
武道家「早いが・・・対処できねェ速度じゃねぇ!!」ダダダァン!!
僧侶戦士「大斬っ!」ズバァ!!
・・・・ドサッ・・・ドサドサドサッ・・・
ザバァ・・・ザバァ・・・・・・ザバァ・・・ザバ・・ザバ・・・
武道家「な、何本でてくんだよ!」
僧侶戦士「もっとスピード上げられないか!?」
童子騎士「無理です!メーターいっぱいです!」グ゙ォォォン!!
武道家「掌低波ァ!連弾!!」ズバババァ
僧侶戦士「武道家・・・攻撃増大魔法!」パァッ
幼剣士「ふ・・船が揺れる・・・」オエッ・・
僧侶戦士「よっしゃ・・・、触手がひるんだ!」
武道家「このペースで走り続けられるか!?」
童子騎士「大丈夫です!」
・・・グォォォォン!!
武道家「おっしゃぁ!触手が離れていく!」
僧侶戦士「・・・さすがに俺も少し焦ったぜ・・。本体が出てきてたら対処仕切れなかった」
幼剣士「何もできず・・・ごめんなさい・・・」オエッ
武道家「あぁ気にすんな。仕方ねーことだ」
僧侶戦士「そうだな・・・ひとまず安心していい。漁港まではあとどんくらいだ?」
童子騎士「えーと・・・、あと本当に少しで着くと思います」
武道家「オーケー・・・じゃあ俺もちょっと休憩しよう」ハァ
僧侶戦士「漁港についたら、童子騎士はそこで待機・・・でいいんだな?」
童子騎士「はい・・・、大丈夫です。そういう約束ですから・・・」
武道家「・・・幼剣士はどうする?無理だけはするんじゃないぞ?」
幼剣士「ぼ・・僕は・・・、最後まで着いていく・・・着いて・・・行きたい・・・」ゴホッゴホッ
僧侶戦士「・・・・いい覚悟だ。港についたら、漁港から星屑までは歩いて半日もかからないだろう」
童子騎士「もう夜になりますしね、漁港でひとまず泊まりますよね?」
武道家「真夜中に、前線付近を歩くバカがどこにいるんだよ・・・」
童子騎士「ですね・・はは」
僧侶戦士「とにかく、漁港についたら周辺の様子にもよるけどな」
幼剣士「とりあえず着いたら・・・寝ましょう・・・」グッタリ
僧侶戦士「まあお前はそうだな・・・。お、灯台が見えたぞ!」
武道家「こんな時でも灯台は点いてるのか?魔獣近づいて来るんじゃねーの?」
僧侶戦士「魔石の自動点灯だと思うぜ」
武道家「そ、そうか・・・」
童子騎士「比較的、ポツポツと薄い明かりは見えますね?」
武道家「あそこには軍の支部があるからな、警戒にあたってるんだろう」
童子騎士「なるほど・・・じゃ、もうすぐ着くので準備してくださいね・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【西の漁港】
幼剣士「・・・」フラフラ
童子騎士「ほら・・・肩。しっかりしろ・・・」
幼剣士「あうう・・・ごめん・・・」
武道家「ほう、思ったよりもきちんと体制保ててるな」
僧侶戦士「・・・ん?」
・・・・タッタッタ・・・ビシッ!!
軍人「住民の方から不信な船が着港したと聞き、一応見に来ましたが・・・・、軍の少尉殿らとお見受け致します!」
武道家「わざわざご苦労様です!」ビシッ
僧侶戦士「わざわざお手数をお掛けしました」ビシッ
軍人「それで、この漁港に何用があって参られたのでしょうか?」
僧侶戦士「星屑・・・いえ、星降町の調査です」
軍人「え・・・ほ、星降町ですか!?し、しかしあそこは今危険で・・・・」
武道家「どうしても行かねばならないんです」
軍人「そうですか・・・ですが、今日はもう陽が傾いていますし、ここで休憩なさっていってはいかがですか?」
僧侶戦士「ええ、どこも今は大変な時期ですが・・・・、そちらがご迷惑でなければ泊めさせていただければ・・・」
軍人「主要の宿泊施設はすべて避難民でいっぱいですが・・・、軍支部で良ければいかがですか?」
武道家「あー・・・そうですね。一般人の子供2人もいるのですがよろしいですか?」
軍人「身内という事ならば大丈夫だと思います」
僧侶戦士「ありがとうございます」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・カツ・・・カツ・・・
童子騎士「ここが・・・軍の支部か・・・」キョロキョロ
幼剣士「初めて入ったけど、キレイだね」キラキラ
僧侶戦士「お、少しは気分良くなったのか?」
幼剣士「うん、迷惑かけてごめんなさい・・・」
武道家「気にスンナってば」
軍人「あ、着きました」
・・・コンコン
「"入っていいぞ"」
・・・・ガチャッ・・・ギィ・・・
軍人「調査隊の方々をお連れ致しました」
少佐「ありがとう、下がっていい」
軍人「はっ!」ススッ
僧侶戦士「今日だけお世話になります、僧侶戦士少尉です。中央国のほうから海を渡ってきました」
武道家「・・・武道家少尉です」
少佐「・・・なんと・・・海を渡ってきたのかね?」
僧侶戦士「はい」
少佐「よくクラーケンの海を渡ってきたね?」
武道家「く、クラーケンの海ですか?」
少佐「今回の騒動で・・海に大量のクラーケンがウヨウヨしていてね・・・、迂闊に海に近づけないんだ」
武道家「・・・」タラッ
僧侶戦士「・・・本当ですか・・・・」
童子騎士「は・・・あはは・・・・」
少佐「それで、何の用でココに来たんだったかな?」
僧侶戦士「えと・・、塔の調査関連で訪れました」
少佐「許可は?」
僧侶戦士「ありません」
少佐「・・・何?」
武道家「独自の判断です。ある理由で塔を登らなければなりません」
少佐「・・・無断で行けると思っているのか?」
僧侶戦士「・・・」
少佐「あそこは今・・・この暴走した魔獣を解く鍵を握る、最重要地点だ。下手に塔に近づくことは許されないぞ?」
武道家「ですが・・・行かなければならない理由があります・・・」
僧侶戦士「・・・」コクン
少佐「・・・」
武道家「許可、出来ませんか?」
少佐「・・・何か訳ありだな?」
僧侶戦士「・・・はい」
少佐「・・・」
僧侶戦士「・・・」ゴクッ
少佐「・・・・真剣な眼差しか・・・、問題だけは起こすんじゃないぞ・・・?」
武道家「で・・では・・・!・・・ありがとうございます!」
僧侶戦士「・・・感謝致します」
幼剣士「・・・!」パァァ
童子騎士「・・・良かったな!」
少佐「・・・して、この2人の子供はなんだ?」
僧侶戦士「軍に所属する中尉殿の弟と、その友人です。ちょっとした理由で同行させています」
少佐「ここから先の前線は危険だぞ?」
僧侶戦士「そのことなんですが、片方の童子騎士という子を預かってほしいのですが・・・」
少佐「ずいぶんと、ワシにお願いごとをしてくるな」
僧侶戦士「ご迷惑だとは分かっておりますが・・・どうか・・・」
少佐「・・・ま、一般人の保護もワシらの仕事だ。受け入れよう」
僧侶戦士「ありがとうございます!」
少佐「そっちのもう1人は連れて行くのか?」
僧侶戦士「え、えぇ・・・はい」
少佐「・・・」
僧侶戦士「・・・」
少佐「はて、思い出したぞ」ポン
僧侶戦士「・・・?」
少佐「中尉の弟と言ったな。確か、先発部隊で・・・塔の中途で行方不明になったのも中尉だったな・・・?」
僧侶戦士「は・・・はい・・・」
少佐「・・・そういうことか」
武道家(トボけた顔して・・・、このオッサン食えねえ洞察力もってやがる・・・)
僧侶戦士「・・・」
少佐「・・・そういうのは嫌いではない。餞別だ・・・、今の前線の状態を教えてやろう」
僧侶戦士「ほ・・・本当ですか!?」
少佐「・・・半日も歩けば星降町に着くが、今はほぼ9割が壊滅状態になっている」
僧侶戦士「・・・」
少佐「だが、集会所にはまだ住民らが待機して必死の抵抗をしているはずだ」
武道家「保護はしないんですか?」
少佐「元々、紛争を長く繰り返してた住民らだからな・・・下手な軍人よりも武力はある」
僧侶戦士「・・・ですね」
少佐「まぁ長話はこの辺にしておこう。少し疲れただろう・・・?ゆっくり休むといい」
僧侶戦士「ありがとうございます!」
少佐「全員、下がっていいぞ」
2人「はっ!」ビシッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
――【軍支部・客室】
武道家「何が、下がっていいぞ・・だよ!あのジジィ!」
僧侶戦士「この辺を仕切ってる少佐だぞ・・・。壁に耳ありって言うだろ・・・・あまりそういう事は言うな」
武道家「だけどよ・・・」
幼剣士「でも、これで塔に登れるんだ・・・?」
僧侶戦士「・・・そうだ」
武道家「無事でいるといいんだがな・・・・」
・・・・コンコン・・・ガチャッ
軍人「失礼します。少佐殿から、長旅の疲れを癒すよう"入浴"の準備をしておいたそうです」
武道家「まじかよ!風呂なんて久しぶりだぜ・・・いい少佐殿だ!」
僧侶戦士「・・・おい」
幼剣士「お風呂か・・・」
僧侶戦士「俺と武道家は後でいいから、お前ら入ってきたらどうだ?」
童子騎士「あ、いえ俺は水洗魔法で既に体を流したので・・・」
幼剣士「ええ・・僕1人・・・・?」
軍人「いかがなさいます?」
幼剣士「・・・入る」
軍人「わかりました、ではご案内いたしますのでこちらにお願いします」
僧侶戦士「おぼれるなよー」
武道家「お前それ何気にひどいぞ・・・」
・・・・・ガチャッ・・・
・・・・トコトコ・・・
軍人「・・・あそこの扉です。ごゆっくりなさってください」
幼剣士「・・・ありがとう」
トコトコ・・・・・ガチャッ
幼剣士(お風呂か・・・お兄ちゃんと入った時・・・楽しかったな)
・・・ゴソゴソ・・ヌギヌギ
・・・パサッ
・・・・ガラッ
幼剣士「わぁ・・・広い・・・・」
・・・シャァァァ
幼剣士「・・・・シャワーの音?誰か先に入ってる人でもいるのかな?」
・・・ペタペタ・・
幼剣士「・・・湯気でよく見えないけど・・・、こんにちわっ!」
???「・・・えっ!だ、誰!?」
幼剣士「・・・あ、ココで一晩お世話になってるんだけど・・・それで風呂に入れって・・」
???「そ、そうじゃなくて・・・・」
幼剣士(あ・・・・湯気が晴れて・・・)
・・・・サァァァッ・・・
幼剣士「・・・えっ?」
吟遊詩人「・・・き、君は・・・・」
幼剣士「確か・・・吟遊詩人くん!?」
吟遊詩人「な、何でここに・・・?」
幼剣士「僕ら、ちょっと用事があって・・・」
吟遊詩人「そ、そうなんだ・・・・」
幼剣士「・・・うん」
吟遊詩人「・・・」
幼剣士「・・・」
吟遊詩人「・・・って、きゃあああっ!」ガバッ
幼剣士「えっ、えっ!?」ビクッ
吟遊詩人「ま、前隠してよ!っていうか、こっち見るなぁー!」
幼剣士「ど、どういうこと?湯気であまり見えないよ・・・?」
吟遊詩人「そ、そういう問題じゃ・・・いくら私でも男子の裸を見るのも、自分の裸を見せるのも恥ずかしい!」
幼剣士「・・・も、もしかして・・・・・女の子・・・」
吟遊詩人「い、今頃!?はっ・・・そういえばずっと吟遊詩人くんって・・・」
幼剣士「ご、ごめんね」トコトコ
吟遊詩人「こ・・・こここ・・・・こっちに来るなぁ~っっ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
吟遊詩人「・・・・」ハァハァ・・
幼剣士「ご・・ごめん・・・・・」
吟遊詩人「いくら僕でも・・・ああいうのは苦手なんだ・・・勘弁してくれ・・・」
幼剣士「僕?さっきは私って・・・」
吟遊詩人「そ、それは忘れてくれ・・・」
幼剣士「う、うん・・・でも、なんでココに?」
吟遊詩人「それは僕のセリフ。なんで君がココにいるんだ?」
幼剣士「ちょっと星降町に用事があって来たんだ・・・」
吟遊詩人「あ、あそこに?なんでまた・・・」
幼剣士「そ・・それは・・」
吟遊詩人「・・・・ま、いいよ。僕はここにお爺ちゃんが支部長やっててね、こんな状況だからお世話になってるんだ」
幼剣士「へえー」
吟遊詩人「それより・・・さっき、僕の・・・見た?」
幼剣士「え?」
吟遊詩人「だから・・・見た・・・?」
幼剣士「何を?」
吟遊詩人「・・・言わせるなっ!」
幼剣士「・・・・ああ!裸!?」
吟遊詩人「大声で言うなっ!」
幼剣士「だ、大丈夫だよ・・・湯気であんま見えなかったから!」
吟遊詩人「・・・本当か?」ジー
幼剣士「本当だよ・・・本当本当!」
吟遊詩人「それならいいけど・・・」ハァ
幼剣士「?」
吟遊詩人「それにしても、僕ってそんな男っぽいかなぁ・・・。ずっと間違われてたなんて・・・」
幼剣士「あの大会でもアナウンスで"吟遊詩人クン"って呼ばれてたし・・」
吟遊詩人「・・・あー・・」
幼剣士「でも初めて見た時も思ったけど、凄いキレイな声で、顔もキレイで・・・」
吟遊詩人「・・・」グヌッ
幼剣士「女の子って髪の毛が長いイメージあったから・・・そういうのもあるかも・・・」
吟遊詩人「あぁこれはね・・・」シュルッ
・・・・フワッ
幼剣士「わっ・・・」
吟遊詩人「僕は動きまわるほうだからね・・・、髪の毛はいつも結って短くしてるんだよ」
幼剣士「すごーい!!綺麗!さらっさらだぁ・・・!長いほうが可愛いよ!」ワイワイ
吟遊詩人「そ、そうかな・・・ありがと」テレッ
・・・・コツ・・・コツ・・・
武道家「おーおー・・・騒がしいと思ったらナンパか幼剣士は」
僧侶戦士「女ったらしの所もアイツに似なくていいんだぞ」ハハ
幼剣士「ナ、ナンパなんかじゃないよ!」
吟遊詩人「もしかして・・・ナ、ナンパだったのか?そういうの疎くて・・・気づかなかった・・・ごめん・・・」
幼剣士「違うってばぁ!!」
武道家「はっはっは・・・ん?お前、どっかで見たことあるな?」
吟遊詩人「僕ですか?」
武道家「んー・・・どこかで・・・」
吟遊詩人「もしかして・・・・、髪の毛結べば・・・」ヨイショ
武道家「あぁぁ!思い出した!中央国で大会に出てただろ!」
吟遊詩人「あ、はい・・・」
武道家「なんだよ女の子だったのか・・・」
吟遊詩人(・・・)ビクッ
幼剣士「・・・うーん、女の子かもしれないけど・・・、僕と戦った時は凄い強くて・・・、尊敬したよ!」
吟遊詩人「・・・!」
武道家「あー・・・まあな。女子でも強いやつ知ってるわ・・・」
僧侶戦士「俺らの周りって、考えたら強い女子ばっかしかいないんじゃねーか?」
吟遊詩人「強い・・?」
武道家「おうよ、一緒に冒険をしてきた仲間は結構女の子いてな・・・」
幼剣士「でしょ?だから、"なんだよ女の子かよ"とかはダメだよ!」
武道家「はは・・・怒られちまった。悪かったな・・・えーと・・」
吟遊詩人「吟遊詩人です」
武道家「そうそう・・・すまんな、吟遊詩人」
吟遊詩人「・・・いえ」アセッ
僧侶戦士「だからお前は口に気をつけろってーの。俺らは風呂いってくるわ」
武道家「部屋に後きちんと戻っておけよ」
幼剣士「あ・・・うん」
・・・カツカツ・・カツ・・・・
ガラッ・・・
幼剣士「・・・」
吟遊詩人「・・・」
幼剣士「・・・」
吟遊詩人「その・・・何か、ありがと・・」
幼剣士「・・・何が?」
吟遊詩人「僕のことを尊敬するとか・・・女が関係ないとか・・・さ」
幼剣士「え?当然だよ・・僕は負けたし、あの時も凄いと思ったし、そういうの気にしなくていいと思う!」
吟遊詩人「・・・そういうの嬉しいな」
幼剣士「・・・えへへ、当たり前のことだってば!」
吟遊詩人「・・・僕さ、冒険とか・・・戦ったりすることが好きなんだけど・・・」
幼剣士「うん」
吟遊詩人「やっぱり、友達とか親とかからは"女の子なんだから"とかばっかで・・・」
幼剣士「・・・」
吟遊詩人「でも・・・初めてだよ。そんな風に言われたの・・」
幼剣士「少しでも元気になってくれたなら良かった・・・えへへ」
吟遊詩人「・・・」テレッ
幼剣士「あ、いけない・・・童子騎士くん部屋で1人だよ・・・」
吟遊詩人「あぁ・・・、あの時一緒にいた子?」
幼剣士「うん・・・ごめんね、また今度お話しよう!」ダッ
吟遊詩人「あ・・・またね・・・」
・・・・ガチャッ!
童子騎士「おぉ、遅かったな?」
幼剣士「ごめんごめん、ちょっと色々あって・・・」
童子騎士「なんだかよくわかんねーけど、お・・おう・・・」
幼剣士「・・・・?、何してたの?」
童子騎士「これ、あの2人の軍服と少尉のエンブレム・・・かっけえよな」キラキラ
幼剣士「そうだね・・・やっぱり、ココまで来るのに努力したんだろうなあ・・・」
童子騎士「俺・・・軍人目指そうかな・・・」
幼剣士「軍人?」
童子騎士「今回の旅っていうか、師匠とか、あの2人とか、軍の人たち見るとさ・・・何かやっぱ・・・憧れないか?」
幼剣士「・・・うん、憧れる・・」
童子騎士「本当は強くなって、乙女僧侶を守りたかったんだけど・・・、軍に入れば一緒のことは出来る・・よな?」
幼剣士「うん」
童子騎士「よっしゃ!俺は軍に入って、師匠みたいな立派に国のために尽くす軍人になるぞ!」
幼剣士「・・・僕はどうしよ・・」
童子騎士「軍人を目指さないのか?」
幼剣士「僕は、お兄ちゃんに"お前を強くして、世界を見せてやる"って言われたんだ・・・」
童子騎士「おぉ・・・」
幼剣士「でも・・・お兄ちゃん・・・こんな事になって・・・、僕・・・」
童子騎士「まーたすぐ泣く!師匠に何かその事で言われたことなかったのか!?」
幼剣士「あ・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青年剣士「泣き止んだか・・・強い子だね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
幼剣士「うん・・僕、強くなる・・・」
童子騎士「その意気だ!」
幼剣士「・・・うん!」
・・・ガチャッ
僧侶戦士「なんだ、まだ起きてたのか」
武道家「童子騎士はともかく・・・幼剣士は早く寝ておけよ?」
幼剣士「あ、ごめんなさい」アセアセ
僧侶戦士「早く休むことも修行であり、仕事の1つ!って似たようなこと、兄ちゃんいってただろ?」ハハ
幼剣士「そうだった・・・じゃ、僕は寝るね」
童子騎士「俺だって疲れたから寝るよ・・・」
僧侶戦士「俺らは、一応・・・風呂のお礼言ってくるから・・・明かり消しておくぞ?」
武道家「おやすみ」モゾモゾ
僧侶戦士「うおい!お前も行くんだよ!」
武道家「えー・・・眠いのに・・・しゃあないな・・・」ガバッ
僧侶戦士「じゃ、おやすみ」
幼剣士「・・・おやすみ~」
童子騎士「おやすみなさい」
・・・・・・・・パチッ・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【次の日の朝】
・・・・パンパン
僧侶戦士「ほらー、朝だぞー」
幼剣士「・・・んにゅ・・・・、おはようございます・・・」ボサボサ
童子騎士「・・・おはよ・・」ネムイ
武道家「戦士たるもの朝にも強くないとダメだぞ」
幼剣士「・・・ふぁい・・」
僧侶戦士「んじゃ、少佐殿に挨拶に行くぞ」
幼剣士「・・・ふぁーい・・」
武道家「童子騎士も世話になるんだから、一緒に頭下げるぞ」
童子騎士「もちろんです」
僧侶戦士「じゃあ行こうか・・・ほらしっかり立って」
幼剣士「・・・」ムニュムニュ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・コンコン
・・・ガチャッ
僧侶戦士「失礼します。昨晩はありがとうございました」ペコッ
少佐「おぉ・・もう起きたのか。疲れはとれたかね?」
僧侶戦士「おかげさまで・・・本当に感謝します」
武道家「ありがとうございました」
幼剣士「ありがとう!」
僧侶戦士「ですが、あと数日だけ身内の子を預かっていただくので・・何かこちらからもお礼を・・・」
少佐「ふむ・・・気にしなくていいのだが・・・」
僧侶戦士「しかし・・・」
少佐「お互い軍仲間だろう?困った時はお互い様だ・・・気にするんじゃない」
僧侶戦士「・・・感謝致します」
吟遊詩人(あ・・幼剣士くんたち・・・。今日どっか行くみたいの言ってたけど・・・なんの話してるんだろ)コッソリ
少佐「本当に行くのかね?」
僧侶戦士「はい、決めたことですので・・・」
少佐「・・・そうか。止めても無駄だな・・・武運を祈るぞ」
武道家「この時期に塔に登るなんて・・・よっぽどですよね」ハハ・・
吟遊詩人(!)
少佐「全くだ・・・」
・・・ガチャッ!!!
吟遊詩人「い、今・・・塔に調査に行くって・・・!」ドタドタ
少佐「ぎ、吟遊詩人・・・今の話を・・・」
幼剣士「吟遊詩人くん・・・?」
武道家「・・・ん?」
童子騎士「・・・あれ、お前は・・」
吟遊詩人「ぼ、僕も連れてって下さいませんか!?」
幼剣士「・・・え?」
少佐「・・・」ハァ
武道家「いきなりなんだぁ・・・?」
幼剣士「・・・」
吟遊詩人「お願いします!足手まといにはなりません・・・だからっ!」
僧侶戦士「ちょっと待て。整理がつかない。一個一個分かるように説明してくれ」
吟遊詩人「あ・・・あの・・その・・・」
少佐「・・・その子の親父が、先発調査隊の1人なんだ」
幼剣士「え!?」
少佐「そして・・・、ワシの孫でもある。こんな状況だからな・・・ここで保護をしているんだ」
僧侶戦士「じゃあ・・・もしかして、先発隊のその人は・・・」
少佐「左様。ワシの息子・・・だ」
吟遊詩人「・・・」
武道家「・・・」
幼剣士「・・・」
童子騎士「・・・」
少佐「実は、もう1つお願いしたい事があったんだ・・。その子の親父で、ワシの息子の"伶人"を探してもらいたい・・」
僧侶戦士「・・・」
少佐「あいつはワシがやった銀色のペンダントをしているはず。見たらわかる・・・はずだ」
僧侶戦士「銀色のペンダントですね・・・了解しました」
吟遊詩人「僕も・・・お願いします・・・連れてって下さい!」
少佐「ダメだ!」
吟遊詩人「ダメでも・・・行きたい!!」
少佐「分かってくれ・・・ワシにはもう・・もしかしたら・・家族はお前しかいないかもしれないんだ・・・」
吟遊詩人「お父さんは・・きっと生きてる・・・だから・・・」
武道家「・・・」
僧侶戦士「・・・」
吟遊詩人「僕だって戦える!」
少佐「・・・危険なんだ!女が行く場所ではない!」
吟遊詩人「・・・」ギリッ
幼剣士「そ、それは・・・!」
・・・・スッ
武道家「幼剣士、やめとけ・・・・少佐殿、ちょっといいですか?」
幼剣士「・・・武道家さん」
僧侶戦士「お前・・・また余計なことを・・・」
武道家「いいからいいから」ニヤッ
少佐「なんだ?言ってみろ」
武道家「あのー、俺頭悪いんで良く分からないんですけど・・・、女が・・とか、男が・・とかは戦いの場では関係ないと思います」
少佐「・・・何だと?」
武道家「出すぎかもしれませんが、自分の周りは強い女がたくさんいますし・・・」
少佐「それはお前の環境が、だろう?吟遊詩人はそういう人間ではないのだ」
武道家「・・・吟遊詩人が、中央国の武道大会で優勝したの知ってますよね?」
少佐「・・・」
武道家「それで、戦える証は充分だと思うんです」
少佐「そういう問題ではな・・」
武道家「いや何も、今一緒に行こうって言ってるわけじゃなくて。女だから・・とかの差別は・・苦しい人には苦しいモンだと思います」
僧侶戦士「・・・」ッフ
武道家「ましてや、戦うという意思を持った人間や、家族を失いかけてる前で"お前は見ていろ"は酷すぎませんか?」
少佐「・・・」
武道家「俺も昨日、傷つけた言い方しちゃいましたので・・・。そこだけは言っときたかったんです」ペコッ
少佐「・・・ふん」
武道家「以上です。・・・出過ぎたマネして本当すいませんでした。罰なら受けます」
僧侶戦士「仲間の罰は連帯責任、自分も受けます」
武道家「・・・お前」
幼剣士「ぼ、僕も!」
童子騎士「俺も!」
吟遊詩人「みんな・・・・」
少佐「・・・そこまで言われて、断ったらワシの器の小ささがバレてしまうじゃないか・・・仕方ない・・・」
吟遊詩人「え・・・じゃあ!?」
少佐「武道家、僧侶戦士だったな・・・危険だと思ったらすぐに引き返せ。それが条件だ、いいか?」
吟遊詩人「お爺ちゃん・・・!」ダキッ
少佐「むおっ・・・わかったわかった・・・」
武道家「へへ」チラッ
僧侶戦士「・・・・やるじゃん」
少佐「・・・頼んだぞ」
童子騎士「皆・・・気をつけて・・・」
僧侶戦士「任せてください!」ビシッ
武道家「行って参ります!」ビシッ
幼剣士「行ってきます!」ビシッ
吟遊詩人「いってきます!」ビシッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【星降町付近の道中】
・・・ザッ・・・ザッ・・・
吟遊詩人「あの・・ありがとうございました」ペコッ
武道家「いいよ気にスンナ。昨日の詫びの代わりだ」
吟遊詩人「・・・」
僧侶戦士「つか、童子騎士のやつ何言ってるか分かってなかったみたいだったぞ」
幼剣士「あぁ・・・吟遊詩人さんが、女の子だったって知らないんだ・・・」
吟遊詩人「それはそれでちょっとショックなんだけどな・・・」ハァ
幼剣士「まあ僕らが、吟遊詩人さんは可愛くてキレイな女の子って知ってるから大丈夫!」ヘヘ
吟遊詩人「なっ・・・」カァッ
幼剣士「どうしたの?」チラッ
吟遊詩人「な、なんでもない!」プイッ
僧侶戦士「・・間違いなく青年剣士の弟だわ」
武道家「全くだ」
僧侶戦士「お・・・、あそこに見えるのが星降町だぞ」
武道家「おーおー久々だ」
幼剣士「で・・・あそこの山沿いに建っているのが・・・」
吟遊詩人「"塔"・・・・!!!」
武道家「気をつけろよ。もうこの辺からは何が出ても不思議じゃない・・・ハァッ!!!」ブォッ
・・・・グシャッ!!
グール『』ピクピク
武道家「こんな風にな?」
幼剣士「わ・・・ゾンビ・・・?」ビクッ
僧侶戦士「この辺の地中は紛争や、今回の騒動の死体が埋まってるんだろう。それを喰ってるんだ」
吟遊詩人「・・・」ゴクッ
武道家「お前らもこうなりたくなかったら、充分気をつけることだ」
吟遊詩人「も、もちろんです!」
幼剣士「当たり前だよ!返り討ちにしてやる!」
僧侶戦士「・・・ははは・・、お!あそこが町の入り口だ!」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
――【星降町】
武道家「・・・ひでぇ・・・・・・」
若い男「・・・」
軍人「・・・」
若い女「・・・」
老いた爺「・・・」
僧侶戦士「血だらけ・・・死体だらけじゃねーか・・・大丈夫か2人とも?」
幼剣士「・・・あの時・・みたい・・・だ」
吟遊詩人「大丈夫です・・・」
武道家「合掌・・・。本当に世界一の星の町だったのか・・・疑いたくなるな」
僧侶戦士「人が足りなすぎる上に、冒険の扉が使えないから回収もできないんだ・・・」
武道家「そして放置された死体は・・・、グールに喰われ・・・感染するわけか・・」
・・・・モゾモゾ・・
軍人(グール)『・・・ウゥ』ムクッ
若い女(グール)『・・・グッ・・』ムクッ
爺(グール)『・・・』ガバッ
若い男(グール)『・・・・ガ・・』スッ
武道家「すんませんが、まだ死にたくないので・・・成仏してよ!掌底波ァ!」ブワッ!!!
・・・・グシャグシャグシャア!!!
武道家「ひぃぃこの感触は嫌だぁぁ」
吟遊詩人「うっ・・・」
幼剣士「だめだ・・・僕、見てられないよ・・・」
僧侶戦士「しっかりしろって言われたばっかだろ!喰われてーのか!?」チャキッ
幼剣士「・・・くそっ・・」
吟遊詩人「・・・うぅ・・」
武道家「そういう覚悟で来たんじゃねーのか!相手は人だが・・人じゃねえ!そんな生半可な覚悟なら、家に帰すぞ!」
・・・ブシャァッ!!
・・・・・・・グシャァ!!!!
僧侶戦士(酷だが・・・、武道家は正論だ・・・。あいつらのトラウマにならなきゃいいが・・・帰すべきか・・・?)
幼剣士「う、うわぁぁっ!」チャキッ
吟遊詩人「・・・・ああああっ!」スッ
幼剣士「小斬っ!!」ブォッ!
吟遊詩人「・・・・火波動ぅっ!!!」ギュィィィン!!!
・・・ブシャッ!!!・・・ドゴォォォォン!!!
町人(グール)『・・・グ・・・』
・・・ドサッ
幼剣士「ごめんなさい・・・」
吟遊詩人「・・・ごめん」
武道家「はっは!上等・・・!このまま一度・・・集会場まで突っ切るぞ!」
僧侶戦士「しっかり着いてこいよ・・お前ら!」
幼剣士「・・・うん!」
吟遊詩人「・・・行きます!」
・・・・・・・タタタタッ!!
・・・ブシャッ・・・
ドサッ・・・ドゴォォン!!・・・グシャッ・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
武道家「あった・・・あそこが集会場だろ!」
僧侶戦士「人らしいのが戦ってるな・・・おっしゃ、大丈夫かお前ら!」
幼剣士「大丈夫!」
吟遊詩人「大丈夫です!」
・・・・タッタッタッタ・・
軍人A「くっ・・・今日の相手は数が多い・・・もっと支援をよこせ!」
軍人B「限界です!」
軍人A「マナが持たない!」
軍人A「・・・お、おい!なんだあれは!誰か来る・・?」
・・・・タタタタタッ
武道家「大丈夫か!掌底波連弾!!」ダダダッ
幼剣士「小斬っ!!」ブォン
僧侶戦士「大火炎魔法!」ボワッ
吟遊詩人「火波動!!」ギュィィィン!!
・・・ドドドド・・・・ドゴォォン!!!
グール達『・・・グァ・・』
・・・・ドサッ・・ドサドサドサッ・・・
軍人A「はぁ・・・はぁ・・・、助かった・・・あんた達は一体・・・?」
僧侶戦士「援軍・・・だったらいいんだろうが、ちょっと訳ありの旅の軍人とその仲間です」
軍人B「それは少尉のエンブレム・・・、軍の少尉殿ですか?」
武道家「いかにも。中央軍所属、武道家少尉です」
僧侶戦士「同じく、軍所属の僧侶戦士少尉です」
軍人A「はっ・・・!自分は軍所属の一等兵です!」
軍人B「同じく、軍に所属する一等兵です。よろしくお願いします!」
僧侶戦士「本当は、休みたいところなんだが時間がないんだ・・・協力してほしいことがある」
軍人A「・・・協力ですか?」
僧侶戦士「ここから塔までは走りで20分かからないだろう?そこまでの安全なルートを教えてほしい」
軍人A「と、塔!?」
武道家「あぁ。ちょっと行かなければならないんだ」
僧侶戦士「この付近で滞在している君たちなら、多少の安全ルートは分かるよな?」
軍人A「一応分かりますが・・・今は、塔の付近に魔物や魔獣が多く・・・行くのは危険かと・・・」
武道家「魔物?確認されているのは何だ?」
軍人A「どこから現れたか分からないのですが・・・、この付近にはいるはずのないモノでして・・・」
武道家「だから、何が出るんだっての」
軍人A「グレンデル、キマイラ、サラマンダー、ショゴス・・・、いずれも上級と認知される厄介な奴らですよ・・」
僧侶戦士「ふぅむ・・・武道家、お前どれ倒せる?」
武道家「どれも戦ったことあるけど、そんな強くないぜ。サラマンダーの大火炎が厄介なくらいだ」
僧侶戦士「抵抗魔法で何とかなるか?」
武道家「お前のならダメージ通らないだろうし大丈夫だろ」
軍人A「・・・凄いですね・・お二方・・」
僧侶戦士「慣れだよ慣れ。塔の中の情報もあればありがたいんだが・・・何か知らないか?」
軍人A「あ・・それなら、先発部隊の方がこの集会所で療養してますよ」
武道家「・・・何?」
軍人A「先発部隊の中尉殿が、大怪我を負いながらも・・・ここに辿り着き、その後、ここで休んでおられます」
幼剣士「ち、中尉!?お兄ちゃん・・・・?」
僧侶戦士「まさか・・・」
武道家「い、今そいつと会えるか!?」
軍人A「・・・大丈夫だと思いますよ。前と比べて元気にもなりましたし」
・・・・ガチャッ・・
軍人B「と、噂をすれば。中尉殿、ご苦労さまです!」ビシッ
幼剣士「・・・・!」
中尉「・・・塔の中の話だと聞こえたが・・・何モンだてめぇら・・・」
幼剣士「違う・・・」
僧侶戦士「・・・青年剣士じゃ・・ないか・・・」
武道家「ぬか・・喜びだったな」
中尉「アァ!?人のことなんだと思ってやがる・・・お前ら少尉だろ!敬えよコラァ!」
武道家「申し訳ありません!」ビシッ
僧侶戦士「く、口が出過ぎました!」ビシッ
中尉「チッ・・・。んで、何しにあの塔行くんだよ」
武道家「それは・・・」
僧侶戦士「機密です!口にすることができません!」
中尉「上官命令だ!言え!」
僧侶戦士「言えません!」
中尉「・・・殺すぞ」
僧侶戦士「・・・」クッ
吟遊詩人「あ、あの!僕の御爺ちゃんが、軍の少佐です。それで・・・いいですか?」
中尉「何だと?」
僧侶戦士「・・・自分の口からは言えませんが、上官が絡んでいるのは確かです。それでいいですか?」
中尉「・・・っち」
武道家(・・・クソ野郎が)
僧侶戦士「協力してほしいことがあります。塔の内部と、先発部隊はどうなったか・・・教えていただけませんか?」
中尉「・・・」
僧侶戦士「・・・お願いします」ペコッ
中尉「・・俺は、今・・・お前らの塔の話で虫の居所がわりぃ。一発殴らせろ、それでいい」
武道家「てめっ・・・!」クワッ
僧侶戦士「やめろ!武道家!」ガシッ
中尉「アァ?教えてほしくなけりゃ別にいいぜ?勝手にいって勝手に死ねばいいだろ・・・」ハハハ
僧侶戦士「・・わかりました。お好きにしてください・・・」スッ
中尉「・・・お前じゃねえ」
僧侶戦士「・・?」
中尉「そっちの生意気な方だ」
武道家「・・・俺・・・ですか・・・・?」ピクピク
中尉「そうだ。殴らせろ」
僧侶戦士「いえ・・・だったら自分が2発殴られますので!」
武道家「いやいいよ・・・・俺が1発殴られりゃいいんだ・・・、わかりましたよ・・・」
僧侶戦士「お・・おい・・・」
幼剣士「・・・」ゴクッ
吟遊詩人「・・・」
武道家「ど・・・どうぞ・・・・?」ピクピク
中尉「・・・・オラァッ!!」ブォン!!
・・・・・・・・スッ・・ピタッ
武道家「・・・・あん?」
僧侶戦士「・・・え?」
中尉「・・・っち、本当に殴るわけねえだろ・・・、教えてやる・・・中ぁ入れ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中尉「で、何が聞きたい」
僧侶戦士「本当にありがとうございます・・・では、塔の先発部隊はどうなったんでしょうか・・?」
中尉「俺を除いて全滅した」
幼剣士「・・・・え?」
吟遊詩人「・・・・え・・・」
僧侶戦士「・・・・は?」
武道家「・・・・何?」
中尉「聞こえなかったのか?俺を除いて全滅だよ。塔の9層目でな」
僧侶戦士「冗談です・・よね?」
中尉「冗談言うかよ。最後のテッペンの前に、デュラハンが現れやがったんだ」
武道家「デ・・デュラハン・・」
中尉「そこから最初は部隊長を筆頭にしてな、有利な戦いを繰り広げたんだ」
僧侶戦士「・・・」
中尉「だがな、アイツは自分が不利だと思った時に建物を崩しやがったんだ」
僧侶戦士「た、建物ごと?」
中尉「モロくなってたのもあるけどな、あの塔は純粋な魔力が打ち込まれた建物でな・・・?」
僧侶戦士「そうですね・・」
中尉「普通の瓦礫ならワケないが、部隊のほとんどがソレの下敷きになっちまった」
僧侶戦士「そ・・・そんな・・・」
中尉「そこからはアイツの有利よ。ぼんぼん攻撃してきて、阿鼻叫喚とはよく言ったもんだ」
武道家「・・・」
中尉「だけど、そこに2人の軍人が立ち向かったんだよ。名前は忘れたが、片方は俺と一緒の中尉だったはずだ」
僧侶戦士「青年剣士・・・ですか?」
中尉「そうそう!それと、もう1人は銀のアクセサリーをぶっらぶらさせてたな」
吟遊詩人「・・・!れ・・・伶人って名前・・・じゃないですか?」
中尉「そう!そんな名前・・・って、なんだお前ら知り合いか?」
吟遊詩人「・・・」
中尉「ハハーン、分かったぞ・・・」
武道家「・・・」
中尉「お前ら、中にそいつらがどうなってるか見に行くんだろう?」カッカッカ
僧侶戦士「それで・・・どうなったんですか?」
中尉「スゲー技ぶっぱなして、今度は逆に建物を崩しを逆手にとって、デュラハンを下敷きにして倒しちまったよ」
幼剣士「・・・!」
僧侶戦士「じゃあ、生き残ったのでは?」
中尉「いや。その下敷きに巻き込まれちまった」
吟遊詩人「・・・・!!!」
幼剣士「・・・・そん・・な・・」
武道家「う、ウソつくなよ!」ガバッ
中尉「ウソはつかねーよ!座れや!」
僧侶戦士「落ち着け・・・武道家」
中尉「状況が状況だったからな・・・それしかなかったんだ」
幼剣士「・・・お兄ちゃん・・・」
吟遊詩人「お父さん・・・」
中尉「たまたま生き残った俺だったが、片脚、腕は潰されたが・・何とかギリギリここまで逃げてきたんだ」
武道家「そんな・・・訳ねえだろ・・・・あいつらが死ぬわけ・・・」
僧侶戦士「・・・なあ、アイツは魔力の瓦礫に埋もれて死ぬほど・・柔な人間か?」
武道家「・・・」
僧侶戦士「・・・俺は信じない。自分の目で確かめるまでは・・・な。俺らが諦めて・・・どうする?」
武道家「そう・・・だよな・・」
吟遊詩人「お父さん・・・」
幼剣士「・・・」
僧侶戦士「・・・・吟遊詩人。お前が落ち込んでたら、親父さんは本当に死んだことになってしまうぞ」
吟遊詩人「・・・」
僧侶戦士「俺らの目でしっかり見に行くんだ。それが今の俺たちにできることだ」
吟遊詩人「・・・はい」コクン
幼剣士「・・・うん」コクン
僧侶戦士「中尉殿、お話ありがとうございました」スタッ
中尉「お、おいお前ら・・・本当に塔に行くのかよ・・・、俺があいつら下敷きになったの見たっつーの!」
僧侶戦士「ですが・・・"亡骸"は見てないんですよね?」
中尉「そりゃ・・・」
僧侶戦士「なら・・・、その1%にも賭けます」
中尉「・・・っち、面倒なやつらだ・・」ハァ
武道家「さっさと行こうぜ!あいつらも俺らのこと待ちわびてるかもしれねーぜ?」ハハ
幼剣士「・・・うん」スタッ
吟遊詩人「・・行きましょう」スタッ
・・・・・・・ガチャッ
軍人A「お話、終わりましたか?」
僧侶戦士「あぁ・・・終わったよ」
軍人A「実は、わずかながら聞こえてしまいました・・・がんばって下さい」
僧侶戦士「あぁ・・ありがとう」
武道家「ありがとうな」
幼剣士「・・・」
武道家「おっしゃゴールは目の前だ!気張っていくぞ!」
僧侶戦士「張り切りすぎるなよ」ッフ
幼剣士「・・・うん」チャキッ
吟遊詩人「・・・はい」スッ
僧侶戦士「・・・出発だ」
・・・・タッタッタッタッタ・・・・
軍人A「・・皆様に、幸運があらんことを願います・・・」ビシッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
――【魔法の塔】
・・・・ゴォォォ・・・
ヒュウウゥ・・・ウゥゥ・・・・
武道家「ここか・・・」
僧侶戦士「・・・」
吟遊詩人「凄い・・・」
幼剣士「・・・」ゴクッ
武道家「ドアもでけえな・・・おらっ!」
・・・・ギィィィィ・・・
僧侶戦士「広いな・・・奥の階段から上に行けるみたいだな」
幼剣士「ここを・・お兄ちゃんが通っていったんだ・・」
僧侶戦士「そこら中に転がってる肉塊は、先発部隊のモンだな。切り傷が大斬の切り口だ」
武道家「あがるのだけは簡単そうだ。確か10層のはず・・・9層目にデュラハンがいたって言ってたな?」
僧侶戦士「とりあえず・・・行くか」
武道家「お前ら、何か異変に気づいたら必ず言うんだぞ」
幼剣士「うん」
吟遊詩人「はい」
・・・・・カツ・・・カツ・・・
・・・カツ・・・・・カツカツ・・・・・
武道家「・・・」キョロキョロ
僧侶戦士「・・・」
・・・カツ・・カツ・・
カツ・・・カツカツ・・・カツ・・・
幼剣士「・・・」
吟遊詩人「・・・」
僧侶戦士「魔獣の気配はないな。外にうじゃうじゃいるっていうのに・・・中はいないのか?」
武道家「別に変な感じもしねーし・・・、何の変哲もない塔って感じだぜ」
幼剣士「静か過ぎるくらい・・・でちょっと怖いかな・・」
吟遊詩人「相変わらず魔獣の死体がゴロゴロしてるけど・・・目立ったのもないね・・」
武道家「おいおい、次で8階目か。マジで何も起きないで・・9階目まで行っちまうぞ?」
・・・・ギィィィ・・・
???「・・・」ニタッ
武道家「っと・・・フロアの真ん中に・・・何かいるぜ」
???「・・・」チャキッ
僧侶戦士「・・・何もない訳じゃなかったな」
武道家「おっしゃ・・・全員準備しろ」スッ
僧侶戦士「・・・」チャキッ
吟遊詩人「・・・」スッ
幼剣士「・・・」チャキッ
・・・・トコトコ
???「・・・」
僧侶戦士「よく見えないが・・・、魔獣か・・魔物か・・?」ググッ
幼剣士「・・・」ググッ
???「・・・」ピタッ
幼剣士「・・・え?」
僧侶戦士「なに・・・・!?」
武道家「おま・・・え・・・」
吟遊詩人「・・・?」
"青年剣士"「・・・・」
幼剣士「お・・・お兄ちゃんっっっっ!!!!!」
ガランガラン!・・・タッタッタッタ・・
青年剣士「・・・」ニコッ
幼剣士「お兄ちゃん・・・お兄ちゃんっ!!」タタタタッ
・・・・ダキッ!!
幼剣士「お兄ちゃん・・・無事だったんだね・・・怪我ない?大丈夫!?」グスッグスッ
青年剣士「・・・」
武道家「お、おい・・・」
僧侶戦士「無事だったのか・・・」
吟遊詩人「あれが、幼剣士のお兄さん・・・」
青年剣士「・・・」ニタッ
・・・ドシュッ・・!!!
幼剣士「・・・えぐっ・・・・・・」ガクッ
・・・・ポタッ・・
武道家「・・・は?」
僧侶戦士「・・・おい・・」
青年剣士「・・・」
・・・ズリュッ・・・・・シャキン・・
・・・・ドサッ・・
幼剣士「・・・ひぐっ・・お兄ちゃ・・ん・・・?」ビクッ・・ビクッ・・
僧侶戦士「よ、幼剣士っ!」ダダダダッ
武道家「てめえ、青年剣士!何してんだコラァ!」
青年剣士「・・・大斬・・」ブォン!!!
僧侶戦士「うおっ!」キィン!!
武道家「ぐっ!」キン!!
僧侶戦士「・・・くっ、何なんだよ・・・一体!」
武道家「て・・め・・・・、血迷ったのかよ青年剣士!」
吟遊詩人「それより・・・幼剣士くんが!」
青年剣士「・・・」ググッ
幼剣士「・・・ごほっ・・」
武道家「やべえぞ!トドメ刺す気だ!」
吟遊詩人「・・・波動音っ!」ギュゥゥゥン・・・
青年剣士「・・・」ピタッ・・
吟遊詩人「今のうちです!」
僧侶戦士「ナイス!・・・中火炎!」ボワッ
・・・・・ドゴォォォン!!
青年剣士「・・・く」
武道家「よっしゃチャンスだ!」ダダダダッ
幼剣士「・・・う・・」ダラダラ・・
青年剣士「・・・大斬」ブォン!!
武道家「見切った!」
・・・・キィン!!
僧侶戦士「くっ・・・・幼剣士!回復魔法!」パァッ
幼剣士「・・・はぁ・・はぁ・・・」
吟遊詩人「血が止まった・・・良かった・・」
青年剣士「・・・」
武道家「・・・一体どういうことだよコレは・・」
幼剣士「お兄ちゃん・・」ハァハァ
僧侶戦士「なんでお前が・・俺らを攻撃してくるんだ!」
吟遊詩人「・・・仲間、弟クンのこと、忘れちゃったんですか!?」
青年剣士「・・・」チャキッ
武道家「聞く耳持たずかよ・・・肉体鋼鉄化!抵抗魔法!」パァッ
青年剣士「・・・火炎装」ボワッ!
武道家「げっ・・・それはやべぇ・・」
青年剣士「火炎斬り」ボゥッ
僧侶戦士「・・・中水流魔法!」ザバッ!!
・・・・ドォォォン!!!
・・・サァァァ・・・
吟遊詩人「相殺して・・霧が・・・・」
武道家「くっ・・・」
僧侶戦士「・・・」
青年剣士「・・・」
武道家「ちくしょお・・・」
僧侶戦士「・・・青年剣士!どうしたんだよ・・・しっかりしろよ!」
幼剣士「お兄ちゃん・・・」
青年剣士「・・・」ニヘラッ
武道家「・・・」ゾクッ
僧侶戦士「何だよ・・その笑みは・・・」
幼剣士「・・・」
青年剣士「は・・・ハはハハハははハ!!」ビリビリ
僧侶戦士「・・・なんだ・・?」
武道家「何かに触れておかしくなったんじゃねーのか・・・?」
僧侶戦士「つーか、俺・・・まともにアイツと戦い合って勝てる気しねーんだけど」
武道家「奇遇だな・・・俺もだ」
幼剣士「・・・」
青年剣士「・・・」ニタッ
僧侶戦士「どうすりゃいいんだよ・・・」
吟遊詩人「ほ、本当にアレは青年剣士さんなんですか?」
武道家「・・・紛れもねえよ」
吟遊詩人「何か・・特徴とか、ないんでしょうか!?」
武道家「・・・特徴っていってもよ・・」
僧侶戦士「・・・待て。アイツ・・、いつも着けてるネックレスと指輪はどうした・・・?」
幼剣士「あ・・・着けてない・・?」
僧侶戦士「もしかしてこりゃ・・・」
武道家「何かわかったのか!?」
僧侶戦士「・・・・光波動ォ!!」ピカッ
・・・パァァァ!!
青年剣士「・・・ぐ!やめ・・」
僧侶戦士「ち・・・やっぱりか・・・・」パァァッ
幼剣士「く、苦しんでる?」
吟遊詩人「・・・あれは"ドッペルゲンガー"だね」
幼剣士「どっぺる・・げんがー?」
吟遊詩人「・・魔物。それ自体の力は弱いけど、姿や力を写し取るっていう厄介な魔物だよ・・」
幼剣士「何で・・・それがお兄ちゃんに・・・?」
吟遊詩人「あれはね・・心の中で最も人が人に対して、強い想いを抱く人間に化けるんだ」
幼剣士「・・・?」
吟遊詩人「簡単に言えば・・僧侶戦士さん、武道家さん、幼剣士くんの3人が想ってる青年剣士さんに化けたってことだよ」
幼剣士「そ・・・そうなんだ・・・」
僧侶戦士「く・・・・」ビリビリ
・・・・パァァァ・・
青年剣士『ヴァァァァ・・・ア・・・アアアァァァ!!ヤメロ・・・・!』
僧侶戦士「人の気持ち踏み躙りやがって・・・・、消えうせろ!」カァァッ!!!
・・・パァァァァ!!!・・・・
ドッペルゲンガー『ァ・・・・』ドロッ
・・・ドロッ・・・・・・・・ドロドロ・・・
ドロッ・・・・・・・・トプンッ・・
幼剣士「真っ黒になって・・・溶けた?」
僧侶戦士「・・・はぁっ・・・はぁはぁ・・・」ガクッ
幼剣士「僧侶戦士さん!?」
僧侶戦士「魔力を放出しすぎた・・・、大丈夫だ・・・マナポーションを飲めば治まる・・」グビッ
武道家「・・・ドッペルゲンガー、死んだのか?」
僧侶戦士「いや・・・ドッペルゲンガーは心を映し出す鏡だ・・・。いなくなりはしないさ・・」
武道家「・・・」
僧侶戦士「俺もお前も・・・幼剣士も、心の奥底では青年剣士と"本気で戦いたい"って心が見透かされたんだろう・・」
武道家「なるほど・・・」
幼剣士「僕が刺されたのも・・ちょっとした自業自得なのかな・・・」
僧侶戦士「そういうことじゃねえよ。あ、そうそう・・・お前、キズ痕は後で消してやるからな?」
幼剣士「え?」
僧侶戦士「子供のうちからそんな大きな切り傷、刺し傷があったら・・・かわいそうだろ?」
幼剣士「あ・・・ううん、消さなくていい・・」
僧侶戦士「ん?」
幼剣士「お兄ちゃんも、凄い傷が多くて・・・、それが自分の歴史だ、思い出だって言ってた」
吟遊詩人「思い出・・・か」
幼剣士「自分はそれくらいでしか語れないって・・・。だから、僕もこのまま傷を残したい!」
武道家「ハハ、男だな!」
幼剣士「えへへ・・」
僧侶戦士「ったく・・・変な所まで青年剣士と本当に似てるよ・・お前は・・・」ハハ
吟遊詩人「あはは・・」
武道家「おっしゃ・・・!僧侶戦士、少しは休めたか?」
僧侶戦士「・・・鬼畜だなおい。ま、行こうか」ヨイショ
幼剣士「え、無理しちゃだめだよ・・・?」
僧侶戦士「大丈夫さ、俺らはこういうの日常茶飯事だからな。息を整えるのは慣れてるんだ」
幼剣士「僕もそのくらい強くなりたいなぁ・・」
武道家「人の心配より自分の心配だぞ」
僧侶戦士「・・・次はいよいよ問題の9層目だ。お前ら・・・いいんだな?」
幼剣士「・・・」コクン
吟遊詩人「どんな結末でも・・・受け入れます」コクン
武道家「よし・・・行くぞ・・・・」
・・・・・ギィィィィ・・・
カツ・・・カツ・・・カツ・・・カツ・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
ギィィィ・・・・
僧侶戦士「さて9層目のドアを開き・・・・・・うっ・・・」
武道家「っ・・・・!」
僧侶戦士「こいつは・・・酷い・・・」
幼剣士「軍人さんたち・・・みんな・・・倒れてる・・・」
吟遊詩人「・・・」
武道家「・・・先発部隊って言っても、一応軍のエース達なんだぜ・・・」
僧侶戦士「部隊長は中佐だったはずだよな・・・。それもこんな簡単に・・・」
幼剣士「・・・お兄ちゃんと、吟遊詩人さんのお父さんは・・・?」
吟遊詩人「・・・」
武道家「そうだったな・・・中尉の話だと、壁だか建物崩壊させたって・・・あそこか」
僧侶戦士「見事に崩れてやがる・・・あの黒いのががデュラハンだな」
幼剣士「・・・ってことは・・・」
吟遊詩人「あそこに・・・お父さんが・・・いる・・・?」
幼剣士「・・・」ゴクッ
吟遊詩人「・・・」ブルッ
武道家「・・・俺らが、見てくるか?」
僧侶戦士「そこで待ってても・・・いいぞ」
吟遊詩人「・・・行きます・・。その為に・・・ココまで来たんですから・・・」ハァハァ
幼剣士「・・・僕も」
武道家「・・・わかった。着いて来い」
・・・タッ・・・タッ・・・・タッ・・・
武道家「・・・見事にデュラハンも息絶えてるな」
僧侶戦士「このでっけー瓦礫を、ひっくり返せばいいんだよな?」
武道家「あぁ・・・」
僧侶戦士「・・・正直、怖い」
武道家「当たり前だろ・・・俺も同じだ」
幼剣士「・・・」ガクガク
吟遊詩人「・・・」ハァ・・ハァ・・・
武道家「やるぞ・・・・そっち持て・・・準備いいか?」
僧侶戦士「・・・ちょっと待ってくれ・・・・・・、手に・・力が入らない・・・」ブルブル
武道家「・・・・」
僧侶戦士「俺の・・・足元にな・・・血だまりが・・、流れてきてる跡があるんだ・・・」ゴホッ
武道家「・・・気づいてた。俺の足元もだからな・・・。それに、乾ききっていない・・・」
・・・ドロッ・・
僧侶戦士「幼剣士、吟遊詩人・・・偉いように言ってきたが・・・、俺もこうなっちまうとは・・・すまん・・」ブルブル
幼剣士「・・・・」ガシッ
僧侶戦士「お前・・・手伝ってくれるのか?」
吟遊詩人「・・・」ガシッ
武道家「お前ら・・・・」
幼剣士「最後まで来て・・・逃げてたら・・・・・、お兄ちゃんも・・・悲しむよね・・・」
吟遊詩人「うん・・・そうだよね。手伝わせてください・・・」
僧侶戦士「よっしゃ・・・ありがとうよ・・・持ち上げるぞ・・」
武道家「・・・」
全員「イチ・・・ニの・・・・サンッ!!」
・・・・ガラガラッ!!!
・・・ドシャァン・・・・・モクモク・・・
僧侶戦士「ごほっ・・・土煙が・・・」
武道家「・・・うっぷ・・」
幼剣士「・・見えないや・・・ごほっ・・」
吟遊詩人「ごほっごほっ・・・」
僧侶戦士「小風刃魔法!」
ビュウゥゥ・・・フワァ・・・
僧侶戦士「よし、これで見え・・・・たが・・・・」
武道家「おい・・・」
幼剣士「そ、そんな・・・」
吟遊詩人「・・・」
僧侶戦士「・・・・!」
僧侶戦士「残ってるのは血だけ・・・。遺体も・・・デュラハンのしかない・・・」
幼剣士「ってことは・・」
僧侶戦士「アイツは・・・生きてる。いや、生きてた・・のかもしれない。いずれにせよ・・・」
吟遊詩人「この・・・上のフロア、最上階・・・・・になりますよね・・」
武道家「今までで一番緊張した瞬間が・・・また変わるのかよ・・・勘弁してくれ・・」
僧侶戦士「・・・行くか?」
武道家「当たり前だろ・・・」
・・・・・カツ・・・カツ・・
カツカツカツ・・カツ・・・・・・ピタッ
武道家「さて・・・最後のドアの訳だが・・」
僧侶戦士「・・・あぁいいぞ」
幼剣士「開けて・・」
吟遊詩人「お願いします」
武道家「ちくしょうが・・・おらぁっ!」
・・・ギィィィィ・・・・・
僧侶戦士「・・・・なんじゃこりゃ」
幼剣士「魔石・・・・・大きい・・・」
吟遊詩人「フロア全体を覆う・・大きな魔石、こんなの初めて見た・・・」
武道家「これが話に聞いてた吸収する魔石か・・・って、それより青年剣士は!?」
・・・タタタタタッ
僧侶戦士「人の気配、魔獣の気配すらない・・・」
武道家「今までよりは狭い部屋なんだぞ?あいつら消えちまったっていうのか?」
僧侶戦士「・・・」
幼剣士「・・・・あ・・、あぁぁ!」
武道家「ど、どうした!?」
幼剣士「あぁぁ・・・・、ま・・・」ブルッ
僧侶戦士「どうした?落ち着け・・・・」
幼剣士「あ・・・あれ・・・あれっ!魔石の・・・」
武道家「ん・・・?」
吟遊詩人「あれ?」
僧侶戦士「・・・・?」
青年剣士「・・・」
伶人「・・・」
僧侶戦士「ま・・・魔石の中に・・・・・」
武道家「何だ・・・あれは・・・」
吟遊詩人「お、お父さん!お父さん・・・お父さん、お父さんっ!!」
幼剣士「お兄ちゃん!!!」
僧侶戦士「魔石の中に・・・・・、2人が・・・・・取り込まれている?」
青年剣士「・・・」
伶人「・・・」
武道家「おい!青年剣士!どういうことだこれは・・・返事しろ!」
僧侶戦士「聞こえてるのか!」
幼剣士「お兄ちゃん!!」
吟遊詩人「お父さんっ!!!」
青年剣士「・・・」
伶人「・・・」
武道家「くっ・・・どけお前ら!僧侶戦士、俺に増大魔法かけてくれ!」
僧侶戦士「・・・攻撃増大魔法!」ピカッ
武道家「掌底波ァァァ!!!」ブォッ!!!
・・・・キィン!!!
僧侶戦士「・・・大斬っ!!」ビュンッ!!
・・・・キィン!!
武道家「ってぇ・・・何て硬さだ・・・傷一つ・・付かねぇ」
僧侶戦士「・・・・何なんだよ・・・」
青年剣士「・・・音・・?」
幼剣士「!!!」
僧侶戦士「せ、青年剣士!!」
青年剣士「あぁ・・・俺・・眠ってたのか・・・」
武道家「き、聞こえるのか!?青年剣士!?」
青年剣士「・・・、武道家?その声は武道家か?」
幼剣士「お兄ちゃん!!」
青年剣士「幼剣士・・・?どこだ?どこにいる?」
幼剣士「・・・ここだよ!目の前っっ!!!!」
青年剣士「すまない・・・何も見えない・・・」
武道家「な、なんでこんな事になってるんだよ!」
青年剣士「こんな事・・・?俺は今どうなってるんだ?」
武道家「巨大な魔石の中に取り込まれてるんだよ!」
青年剣士「・・・・、思い出した・・・そうだったね・・」
幼剣士「なんで・・・こんなことに!?」
青年剣士「扉・・・」
僧侶戦士「・・・扉?」
青年剣士「俺らが・・ココに辿りついた時、魔界との扉、亀裂が開く寸前だったんだ・・・」
僧侶戦士「何だと・・・」
青年剣士「この魔石は暴走の為なんかじゃない・・・、魔界との扉だった・・」
武道家「それで・・・どうしたんだ」
青年剣士「俺と、伶人さんは・・・自らを犠牲にして、魔石の魔力と相殺させたんだ・・・」
幼剣士「そんな・・」
青年剣士「その後、魔力枯渇で急な眠気に襲われて・・・気づいたら・・・この有様みたいだね・・・」
武道家「助けだす手立てはないのか!?」
青年剣士「・・・俺らが魔力の相殺をやめれば、この世は魔界と繋がってしまう・・・」
吟遊詩人「・・・ここまで来て・・」ヒグッ
青年剣士「・・・その声、あの時の大会の吟遊詩人の女の子かな・・・?」
吟遊詩人「え・・・は、はい!」
青年剣士「君までココに・・・、そうか、伶人さんの娘さん・・・だったって聞いたよ」
吟遊詩人「・・・はい・・」
青年剣士「・・・お父さんも助けられず・・こんな結果にしてしまった・・・、ごめんよ」
吟遊詩人「いえ・・・お父さんと、青年剣士さんは・・・、私たちを守ってくれました・・・」
青年剣士「・・・」ニコッ
僧侶戦士「どうすりゃいいんだよ・・・」
青年剣士「・・・・、だめだ・・・そろそ・・・ろ・・別れの時かも・・・しれ・・な・・・」
武道家「どうした!?」
青年剣士「意識が・・保てない・・・・・・、魔・・石に・・飲みこ・・・る・・・」
幼剣士「お兄ちゃんしっかりして!だめだよ!だめ!!」
青年剣士「・・・・幼・・・士・・」
青年剣士「・・・」ニコッ
幼剣士「僕を強くしてくれるって・・・約束忘れないでよ!何で!!目覚ましてよぉぉぉ!」
青年剣士「・・・」
武道家「・・・」
僧侶戦士「・・・冗談じゃないぞ。これで全部終わりか・・・・」
吟遊詩人「・・・」グスッ・・
幼剣士「・・・」
僧侶戦士「・・・動く気力もない・・」
幼剣士「だめだよ・・・諦めたら・・・・・・、うわぁぁっ!」チャキッ
・・・・キィン!!!
・・キィン!!
・・・キィンキィン!!・・・キィン!!!
キィン!!・・キィンキィン!!!!
幼剣士「はぁ・・・はぁ・・・・必ず・・・助けるから・・・・・!」
吟遊詩人「幼剣士くん・・・・」
武道家「幼剣士・・・、アイツはもう・・・」
・・・・ビキッ・・
ビキビキッ・・
僧侶戦士「何の・・・音だ・・・・?」
武道家「何かが割れてる音・・・か?・・魔石ってわけじゃなさそうだ・・・が」
・・・・ビキビキビキ・・・
・・・・バリィィン!!!
・・・ギュゥゥゥゥゥン!!!!!
幼剣士「何これ・・・・空中に・・・渦が巻いてる?」
僧侶戦士「なっ・・・近づくな!それは冒険の扉だ!」
武道家「何で急に・・・まさか魔界の亀裂が開いたのか!?」
・・・ゴゴゴゴゴ・・!!
僧侶戦士「な、何か通ってくる・・」チャキッ
武道家「変なの出てこなきゃいいんだが・・・・」スッ
吟遊詩人「・・・」
幼剣士「・・・」
・・・・ギュゥゥゥゥン!!!・・・ドサッ!!
???「痛いっ!もう・・・やっぱ慣れないなぁ・・・」
武道家「お・・・お前・・・」
僧侶戦士「なん・・・で、どうしてここに!」
幼剣士「・・・誰?」
僧侶戦士「・・・赤髪少女。前言ってた、お前の姉さんだよ・・」
赤髪少女「お姉さんって・・・、その子私の弟・・・?」
僧侶戦士「そ、そうだけどよ・・・・、それよりなんで・・・」
赤髪少女「可愛いっ!名前は何ていうの?」
幼剣士「その・・幼剣士・・・」アセアセ
赤髪少女「そっかぁ、宜しくねっ!」
幼剣士「う、うん・・・」
僧侶戦士「だから、説明しろっての!お前どっから現れた!つーかその冒険の扉なんだ!」
赤髪少女「これは魔界の亀裂。昔、みんなで通ったやつと一緒のね」
武道家「で、どうした」
赤髪少女「魔王が残した塔のせいで、また魔界との亀裂が入っちゃって・・・」
僧侶戦士「めちゃくちゃな迷惑だ。こっちじゃ戦争状態だぞ」
赤髪少女「またそれを巡ってこっちで戦争起きて・・・、ようやく収拾がついて・・・」
武道家「・・・」
赤髪少女「完全に閉じる前、お兄ちゃんの魔力を渦の前から感じとってね・・」
幼剣士「お兄ちゃんの・・」
赤髪少女「それがドンドン薄くなってって、助けに行かないと・・って思ったんだけど・・」
僧侶戦士「扉が完全に閉じてしまった、と」
赤髪少女「うん。本当にわずかな亀裂しかなくなって、もうダメだって思った時・・・・。
大声と、魔石を叩く音が鳴り響いて、それが共鳴してまた少し亀裂が広がったの」
幼剣士「・・・!」
赤髪少女「それをちょっと無理やり広げて・・・ココにきたって・・こと」
僧侶戦士「お前の叫びが届いたんだよ・・・幼剣士」
幼剣士「じゃ・・・助かるの・・・お兄ちゃん・・・?」
赤髪少女「・・・・見事に魔石に取り込まれてるけど・・・」
幼剣士「・・・」
赤髪少女「この魔石はね、元々魔界にあるもので・・・こっちの世界にはない物質なの」
僧侶戦士「なるほどな・・・、だからキズ一つ付かなかったわけか」
赤髪少女「だからね・・・、私が・・・・竜波動っ!」ブワッ!!
幼剣士「え・・・竜?」
赤髪少女「へへ、私、竜族なんだよ?」グググッ
幼剣士「えぇっ!」
吟遊詩人「り・・・竜族って・・・」
僧侶戦士「それはまぁ気にするな・・・・」
赤髪少女「・・・・」ググッ
・・・ビキッ・・
武道家「・・・魔石にヒビが!」
赤髪少女「これ・・は・・・私でもちょっとキツイかな・・・」ビリビリ・・
幼剣士「頑張って・・・お、お姉ちゃんっ!」
赤髪少女「お姉ちゃんか・・・嬉しいな・・・頑張るよ!」グググッ・・・
・・・ビキビキッ・・・・・・ビキッ・・・
・・・・・・・・バキャアアアンッ!!!!・・・サラサラ・・・・
・・・ドサドサッ
青年剣士「・・・」
伶人「・・・」
幼剣士「割れた・・・・!お兄ちゃん!」タタタタッ
吟遊詩人「お父さん!!」タタタタッ
赤髪少女「・・・」ガクッ・・・ハァハァ・・・
武道家「大丈夫か!?」
赤髪少女「うん・・大丈夫・・・」
武道家「・・・ってか、ここの魔石壊していいのか・・・?」
赤髪少女「まだ亀裂は開いてるし、向こう側からまた封印するから大丈夫・・・うん」
武道家「そか・・・」
僧侶戦士「おい、青年剣士!しっかりしろ!」
青年剣士「・・・う・・」
伶人「・・・ごほっ・・」
吟遊詩人「い・・・生きてる・・・お父さんっ!!!」
赤髪少女「良かった・・・」
青年剣士「・・・」ハッ
赤髪少女「えへへ、お兄ちゃん久しぶり」
青年剣士「・・・あ、赤髪少女・・・?どう・・・して・・ここに・・・?」
武道家「・・・元気そうで何よりだ」
幼剣士「・・・お兄ちゃん」グスッ
僧侶戦士「・・・ふ」
伶人「・・・、ココは・・・・?確か、魔法封印をしたはずじゃ・・・・」
吟遊詩人「・・・お父さん、お父さん!」ダキッ
伶人「うおっとと・・・、吟遊詩人・・・・どうしてここに・・・・」
青年剣士「・・・みんなのお陰で助かったようですよ」
伶人「青年剣士くん・・・、みんなのお陰・・・?」
武道家「どもっす」
僧侶戦士「無事で何よりです」
幼剣士「へへ」
吟遊詩人「・・・」ニコッ
赤髪少女「・・・えへへ」
伶人「そうか・・・君たちが・・・・」
青年剣士「お礼、しなくちゃいけませんね・・・」
伶人「そうだな・・・。そういや、魔界の亀裂はどうなったんだ?」
青年剣士「俺の妹が抑えてくれました」
伶人「亀裂を抑える・・・とは、どうやったんだ・・・?」
赤髪少女「へへん、それはね私が・・・・」モガモガ
僧侶戦士「ああ、いえ!この娘は博学で、魔力と動力を応用した技術を生かしたんですよ!」
赤髪少女「何するのー!」
僧侶戦士「ば、バカ!お前が竜族だとか・・ほいほい言うと、立場が色々やばいんだよ!」ボソボソ
赤髪少女「・・・うー、それじゃ仕方ない・・」ボソボソ
伶人「そうだったのか・・・感謝するよ赤髪少女ちゃん」
赤髪少女「うん!」
青年剣士「さて・・・と。魔石も破壊したし、これで暴走もじき収まるだろうね」
僧侶戦士「今回の一件は、報告できる部分で全部報告しないといけないな・・・」
武道家「そうだな・・・」
・・・カタッ・・
青年剣士「それじゃ・・・帰ろうか・・」
幼剣士「また、修行一緒にできる?」
青年剣士「ああ、できるよ」ニコッ
幼剣士「えへへ・・・」
・・・カタカタッ・・・
武道家「・・・?」
カタカタカタ・・・カタカタ・・・・・・・・・
僧侶戦士「ん?地震か・・・?」
ガタガタガタガタ!!!!
青年剣士「な、なんだ!?」
赤髪少女「・・・これは魔力による微振動・・・、いけない!魔石から離れて!!!」
武道家「なんだ!?どうなる!?」
赤髪少女「魔石を壊したから、急激な魔力の放出が始まった!何が起きるかわからない!」
僧侶戦士「まだこれで終わりじゃないってか・・・・!」
・・・・ガタガタガタガタ・・・バリッ・・・・バリバリ・・・!!
・・スゥゥゥゥ・・・・・
武道家「な、なんか・・・空気が・・・吸い込まれてないか・・・?」
青年剣士「・・・」
・・・・スゥゥゥゥゥ・・・・
赤髪少女「・・・・魔力の暴走による亀裂・・!みんな、何かに掴まって!!吸い込まれる!!」
・・・・ビュウウウウウウ!!!!!
武道家「・・・・ぐっ!」ガシッ
青年剣士「・・・幼剣士!手を!」ガシッ
幼剣士「・・・!」ガシッ
吟遊詩人「・・・!」
伶人「・・・くっ」
僧侶戦士「・・・・・うおおっ!」
・・・・・・ビュオオオオオオッ!!!
・・・ギュゥゥゥン!!!
青年剣士「この感じ・・・冒険の扉か!?」
赤髪少女「どこに飛ばされるか分からない・・・!絶対に放しちゃダメだよ!」
吟遊詩人「・・・・ち・・力が・・・」ズルズル
幼剣士「吟遊詩人さん!」
伶人「俺の腕につかまれ!」スッ
吟遊詩人「ダメ・・・届かない・・・・・!」
伶人「ぎ・・・吟遊詩人!!」
青年剣士「・・・みんな・・、弟と、妹・・・・幼馴染のこと・・・頼んだよ」
武道家「な・・・」
僧侶戦士「お前、まさか!」
青年剣士「武道家、幼剣士を支えてくれ!」スッ
武道家「・・・おい!」ガシッ
幼剣士「・・・お兄ちゃん・・・ダメだよ・・・ダメ・・・・」
青年剣士「・・・」ニコッ
・・・・・パッ・・・
・・・・ゴォォォォ!!!
幼剣士「お兄ちゃぁぁぁん!!」
青年剣士「吟遊詩人・・・・それっ!」
・・・ドンッ!!
吟遊詩人「きゃあっ!」フワッ
伶人「つ、つかんだ!」ギュッ
青年剣士「良かった・・・」
・・・ゴォォォォ!!!!
・・・・・ギュゥゥゥゥン!!!!
青年剣士「み・・・な・・げん・・で・・・」
「・・た・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・」
武道家「青年剣士ぃぃ!」
赤髪少女「お、お兄ちゃん・・・!!!」
幼剣士「・・・・」
僧侶戦士「・・・・青年剣士・・ダメだ・・・」
・・・・スゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・チャリンッ・・
伶人「吸引が・・収まった」ハァ・・ハァ・・・
武道家「・・・なんだよこれ・・」
僧侶戦士「夢・・・だろ?」
赤髪少女「・・・」ヘナッ
幼剣士「・・・」
武道家「お、おい赤髪少女、あの暴走の渦はどこに繋がってるんだ!?」
赤髪少女「わからない・・・よ・・・」
武道家「魔界とかじゃねーのか!?」
赤髪少女「魔界とは違う・・・、まったく違う感じだった・・・・。普通の扉とも違う・・・どう言えばいいか・・」
僧侶戦士「どうしたらいいんだ・・・よ・・」
吟遊詩人「・・・みんな・・私のせいで・・・」
伶人「・・・」
武道家「お前のせいじゃない。気にするな・・・」
吟遊詩人「でも・・・・でも・・・・!!!!」
僧侶戦士「俺らは・・・こういう事になるかもしれないっていうのはいつでも思って戦っている」
武道家「そうだな・・・、きっとアイツの事だ。どこか、世界の片隅に放り投げられて笑ってるかもしれないしな」ハハ
僧侶戦士「あぁそうだな。一度戻って、捜索隊にお願いしに行こう」ハハハ
幼剣士「・・・笑ってる・・・・・おかしいよ!お兄ちゃんが・・・あんなことになったのに・・・笑ってるなんて!」
僧侶戦士「・・・笑ってるように見えるか?」
武道家「俺らだって・・哀しいんだ・・・」
幼剣士「泣い・・・てる・・・?」
吟遊詩人「・・・」
僧侶戦士「伶人さん、すいません。一度先に星降村で休んでてくれませんか?」
武道家「俺たちはやる事あるんで・・・、お願いします」
伶人「・・・わかった。行こう、吟遊詩人」
吟遊詩人「・・・うん。肩、使って」
伶人「ありがとう・・・」
・・・・ザッ・・・ザッ・・・・・ギィィ・・・・
武道家「・・・赤髪少女、お前は一度帰っておけ。こっちの亀裂も閉じかかってる」
赤髪少女「・・・」ヒグッ
幼剣士「お姉ちゃん・・・」
赤髪少女「・・・わかった。また、何かあったら・・・」
僧侶戦士「あぁ・・・。こっちはこっちで探しておく。お前らのほうにいたら、そっちで預かっててくれ・・・」
赤髪少女「・・・うん・・」
幼剣士「バイバイ、お姉ちゃん・・・・・・・また、会える?」
赤髪少女「・・・もちろん。君は大事な弟だもん」ギュッ
幼剣士「うん・・・」
赤髪少女「またね・・・・」
・・・・・・ギュゥゥゥゥン・・・
・・・・・スゥゥ・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僧侶戦士「こっちも閉じたか・・・・」
幼剣士「これから、どうするの?」
武道家「あいつは最後まで笑顔で、人の為に尽くした。それなのに、俺らが悲しんでたらあいつが笑えないよな」
僧侶戦士「そうだな・・・」
武道家「一度俺らも戻って、救援隊、捜索隊に話をつける。暴走は収まっただろうし、今回のことを軍に報告する」
僧侶戦士「・・・青年剣士の最期を、あいつらに伝えるのか・・・?」
幼剣士「幼馴染さんと、乙女僧侶さん・・・?」
武道家「・・・・辛いな」
僧侶戦士「・・・・・俺は乙女僧侶に伝えよう。お前は幼馴染に頼む」
武道家「分かった。学校時代の友達、先生、教官たちにも伝えないとな・・・・・」
僧侶戦士「・・・・」
武道家「・・・・戻るか・・」
僧侶戦士「あぁ・・・」
幼剣士「うん」
武道家「幼剣士、疲れたろ。背負ってやるよ」
幼剣士「ううん、自分の足で歩く」
武道家「そうか・・・はは」ワシャワシャ
幼剣士「うにゅ・・・」
武道家「っと・・・青年剣士のやつ、ネックレス落としていきやがった」チャリッ
僧侶戦士「形見の・・つもりだったのか?」
武道家「幼剣士、ほら・・・お前が持っておけ」チャリッ
幼剣士「僕でいいの・・?」
武道家「あぁ・・・。大事にしろよ」
幼剣士「うん・・・」
僧侶戦士「じゃ、帰るか」
武道家「そうだな・・・」
カツ・・・カツ・・・・・カツ・・・・
・・・・・・ギィィィ・・・・
バタン・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・シーン・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・スゥッ・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・スゥゥゥゥ・・・バリッ・・・・・・バリバリッ・・・・・!!
・・・・・・・ギュゥゥゥゥン!!!!・・・・・・・・・
・・・・・・ドサッ・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――【1週間後・大聖堂】
僧侶戦士「・・・っていう訳だ・・」
乙女僧侶「・・・・」ヒグッ・・
戦士先生「・・・・」
めがね魔道「師匠が・・・」ウルッ
童子騎士「・・・」
僧侶戦士「・・・」
乙女僧侶「・・・・青年剣士さぁん・・・」ヒグッ・・グスッ・・・
戦士先生「・・・本当に立派で誇れる生徒だよ・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――【軍部・魔法研究所】
武道家「・・・・すまなかった・・」
幼馴染「アイツが・・・」
・・・パリンッ!!
武道家「おいおい・・・ケガするぜ・・・・」
・・ポタッ
幼馴染「ひぐっ・・・、青年剣士ィ・・・・・」
・・・ポタポタッ・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――【1ヶ月後・中央国】
ザヷ・・・ザワザワ・・・
コンカイノコトノハナシラシイ・・・・・
元帥「今回の・・・暴走騒動は、鎮火しつつある!」
・・・ウォォォ!!
元帥「そして、この暴走事件を抑える鍵となった、数名の勇敢なる戦士たちがいる!」
・・・・ウォォォォォ!!!!
元帥「壇上に、上りたまえ!」
僧侶戦士「・・・」
武道家「・・・」
吟遊詩人「・・・」
幼剣士「・・・」
伶人「・・・」
童子騎士「・・・」
元帥「この7人は、塔の頂上にあった暴走の原因となる魔石を破壊し、世界に平和をもたらした!」
・・・・・・ウォォォォォォ!!!
カッコイイ!!!スゴイ!!!!
デモ、7ニンジャナクネ・・・?6ニンシカイナイゾ・・・
元帥「子供たちには大陸名誉賞を・・・・、軍に所属する4人には加えて特別な賞与を与える!」
幼剣士「・・・」
元帥「僧侶戦士、武道家、伶人は二階級特進を与える!」
僧侶戦士「いきなり、俺らが大尉かよ・・・はは」
武道家「あいつを抜いちまったな」
元帥「そして、最後の1人・・・青年剣士!ここにはいない彼は、自らの命を張って、世界を救った勇者である!」
・・・ザワ・・
セカイヲスクッタッテイウ・・・ケンシカ・・・
元帥「彼には、三階級特進と・・・・、名誉称号である・・・・"英雄剣士"の称号を授与する!」
・・・・・ウワァァァ!!!!!!
・・・・ウオォォォォォォォ!!!!
僧侶戦士「・・・・!」
武道家「・・元帥殿・・・・・」
元帥「世界を救った最高の剣士だ。30年ぶりとなる英雄称号の授与なんて・・・二度とないと思っていたがね」フフ
武道家「おい・・結局、俺らは永遠にあいつに追いつけなくなったってことじゃねーか」
僧侶戦士「一瞬だけの追い越しだったな」
武道家「っちぇ、やっぱアイツはスゲーやつだな」
僧侶戦士「はは、俺らも英雄になればいいんだろ?」
武道家「そうか・・・そうだな」ハハ
幼剣士「お兄ちゃんが・・・英雄剣士に・・・」
幼馴染「青年剣士・・・見てる?あなた・・・英雄剣士になったんだって・・・」
乙女僧侶「・・・」グスッ
童子騎士「俺の師匠は・・・英雄剣士・・・」
めがね魔道「僕の師匠だってだよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
―――【3日後】
捜索隊「それでは、出発しますが・・・準備はよろしいですか?大尉殿」
武道家「いつでもいいぜ」
僧侶戦士「あぁ・・・、じゃ行ってくるよ」
幼剣士「気をつけてね・・・・」
幼馴染「2人まで行方不明にならないでね?」
乙女僧侶「そうです・・・気をつけて行ってきて下さい」
武道家「それじゃ・・・青年剣士捜索隊、1番部隊、行ってくるぜ」
僧侶戦士「同じく2番部隊、出発だ」
幼剣士「・・・・行ってらっしゃい」
・・・・ザッザッザッザ・・・
・・ザッザ・・・
・・・・・・・・・・・・
幼馴染「あーあ、アイツらも行っちゃったわね」ハァ
乙女僧侶「ですねえ」
幼剣士「・・・」
幼馴染「それで・・・あなたが幼剣士くん、青年剣士の弟クンね?」
幼剣士「あ・・うん」
幼馴染「もしかしたら・・・君・・・叔父さんになっちゃうかもよ」アハハ
乙女僧侶「そ、それって・・・・・・・・まさか・・・」
幼馴染「んふふー・・・♪」
乙女僧侶「き、聞いてないですよう!いつの間にですか!!!」
幼馴染「秘密ー♪」
・・・キャー!キャー!!
幼剣士「あはは・・・・・」
・・・・・サァァッ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・チュン・・・チュンチュン・・・
・・・・空が・・・・・蒼い・・・・
幼剣士「・・・・きっと、どこかでお兄ちゃんは生きてる・・・」
・・・この空の下のどこかで・・・きっと貴方は笑ってる・・・・・・
幼剣士「・・・・だから、僕は・・・・」
・・・・・・・いつか、また・・・貴方と笑いあいたい・・・
幼剣士「・・もし・・見つからなくても・・僕は世界に出ます・・貴方を探して」
・・・・そう・・・・僕は・・・・信じてる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから・・・・・
幼剣士「待っていて下さい・・僕が・・必ず・・!」
【TO BE CONTINUED】
588 : ◆qqtckwRIh.[] - 2013/07/07 10:45:55 chiN6NdI 519/525
ここまで読んでくれた方、有難うございました。
今までよりも長めで、ちょっと面倒で長い件などでダラダラしてしまいましたが・・・
これで新シリーズの最初の作品は〆で、第二作目は既に考案してますがまだ形にしていません。
多少、次回に繋がるものも含めて回収していない部分も多くあります。
もし、今回のが少しでも面白いと思ってくれたなら、もう少しだけ・・・このシリーズにお付き合い頂ければ嬉しいです。
次の目処が立ち次第、こちらにURLを貼らせていただきます。
ありがとうございました(A´ω`)
P.Sこの後、ちょっとした読み物(暇つぶし程度で勉強できるファンタジーの世界・他)を書き溜めたのを貼っておきます
【ファンタジー辞典】
実際に、色々なゲームで使われたり歴史の中で登場しているモンスターを使っています。
それをちょっとした感じでご案内。実際の伝承に伝わっているものをわかり易くしているので楽しめると思います。
過去に登場させたものもあるので、よければ読んでいってください。
■アウルベア(魔獣)
フクロウのような頭を持ち、熊のような姿をした魔獣。何かしらで見たことがあるのではないでしょうか。
通常のクマよりも凶暴で、作品によっては魔術によって生み出されたモンスターともされています。
■アラクネ(魔獣)
本作品では上位クラスの魔物として登場させました。
実際は魔獣で、ギリシャ神話に登場します。少女が蜘蛛にされてしまい、人間だった頃は織物が得意でした。
そのため、蜘蛛になった後は多様な蜘蛛の糸を使ったりしました。
■ドッペルゲンガー(魔物)
実際は、アンデッド族の仲間です。
生き写しの存在、またはその人物に変身する魔物といわれています。実はドイツに古くから伝わる伝承に出てくる魔物です。
■アイスタイガー(魔物)
前作に出しましたが、実際は"アイスタイガー"という魔獣、魔物は基本的に出典先がありません。
近代になって、ファンタジー系のオリジナル要素として描かれる部分があります。
作品によってまちまちですが、基本的には巨大でライオンまたは、そのまま水色のタイガーとして描かれる事が多いです。
■バンシー(妖精)
2作品前に登場。割りと好きな子です。
結構このキャラも有名ですが、実はアイルランドの伝承に出てくる妖精が元々のネタ(スコットランドという話もある)です。
色々と能力差は作品によってまちまちですが、キャラクターとしては、馴染み深いので『死神』といえばわかりやすいと思います。
■オーガ(巨人)
2作品前に登場。ヨーロッパの伝承に登場する怪物として伝わっています。
子供をさらい食べたり、オーガはオーガ同士(女性はオーガスという)で子供を生む1つの種族です。
特に北ヨーロッパでは凶暴ですが、化け物というより・・・どちらかというと巨大な人間のような描写です。
★蛍石(フローライト)
作品のほとんどの要になっているといえる、実在する鉱石です。
普通のものは無色ですが、不純物により黄、緑、青、紫、灰色、褐色など多種多様なカラーバリエーションがあります。
更にこの石の最大の特徴として"加熱すると発光する"という、不思議な鉱石です。
黒い魔石(塔の頂上)や、青年剣士の持つ剣(熱を帯びたりするのに向いている)などは、これがモチーフになっています。
★ミスリル(架空)
2作品前に登場した鉱石で、青年剣士の持つミスリルソードのネタになっています。
ミスリル自体は有名だと思いますが、実在せず、J・R・R・トールキンという作者の世界に登場する架空の金属が元ネタです。
その作者の最大の有名作品で、"ロードオブザリング"で一躍有名になったのではないでしょうか。
★太陽の祭壇(マヤ神話)
1,2年ほど前に騒がれた地球滅亡説でも有名になった"マヤ神話"に登場し、実際に存在するアステカの祭壇が元ネタです。
アステカの祭壇は呪われの祭壇としても知名度はかなり高いと思います。
また、生贄の祭壇としても有名で、生贄がなければ太陽が消滅すると信じられていました。
作中では、太陽(昼は魂の昇華)で、月(夜は生贄の怨念)としてバンシーなどの登場に一役買っています。
★小ネタ
ロードオブザリングは、今日という日のファンタジー作品の始祖とも呼ばれています。
なぜかというと、指輪物語は世界的なヒットを生んだことで、古代神話や伝説という存在が認知され始めたとも言われています。
文学史(歴史)の中の起源とすれば、やはり有名なギルガメッシュや聖書(キリスト)などが有名ではないでしょうか。
●伶人(レイト)
なぜかココに書きますw
実は、伶人は"吟遊詩人"を別名称の呼び方で存在します。実際に伶人というのは様々な部分で使われてたりします。
この作品は名前という名前を出さないのですが、知らない方は"伶人"というのにギョっとしたものあるかもしれませんが・・・。
吟遊詩人の父親として伶人(レイト)というのを使わせていただきました。(本来はレイジンと読みます)
【Secret Story?】
・・・・・ドサッ
青年剣士「・・・・・いてっ・・!助かった・・のか?」
・・・ザワ・・・ザワザワ・・
青年剣士「ここ・・・どこだ・・・・・・?」
・・・ワァァァァッ!!!
アナウンス「おぉぉっと!?こ、これは・・・・・!!!乱入者かぁ!?」
王様「あやつは・・・・まさか・・・・」
【Don't miss it !!!】
596 : ◆qqtckwRIh.[sag... - 2013/07/07 10:52:44 chiN6NdI 525/525
以上で今回は本当に終了です。読んで下さった方々、応援コメントの数々を下さった方々、ありがとうございました。