【前編】 の続きです。
【第三章】
――1年前――
ヴァミリーマート本店、地下牢
サイボ-グ店員「≪雲≫が潜り込んでいたとはね」
サイボーグ店員「ゼウスの奴はよほど鼻が効くと見える」
裏店長「…」
サイボーグ店員「おっと。私に油断の隙は生じないし、そもそもサイボーグのため、その完全記憶消去能力自体、役には立たない」
裏店長「ち…」
サイボーグ店員「同盟企業ならばともかく、対立企業であるならば、偵察など、タブーの最たるものだ」
裏店長「表向きはな…」
サイボーグ店員「ふ」
サイボーグ店員「君は知りすぎた」
サイボーグ店員「しばらくそこで大人しくしているといい」スタスタ…
裏店長(…)
裏店長(胸毛野郎は焦っていたのか)
裏店長(ハゲスパイを寄越してまで、早々に欲しがっていた情報が此処にはある)
裏店長(その地下で囚われの身たあ…≪雲≫も名ばかりのもんだ)
裏店長「…」チラッ
裏店長(拷問器具なんかも置いてやがるな…)
裏店長(恐らくは、撲滅計画は真実であり、その被害者であるクレーマーは、ここで抹消される。そんなところか)
裏店長(首謀者は、やはり国王と言う線が確実…か……?)
裏店長(いや。奴は、自己の企業に関して無関心だという話を耳にした覚えがある)
裏店長(そんな奴が、企業理念たる計画を、こうまで強行しようと思い立つか? 有り得ねえ)
裏店長(何か…ある……)
――――カツ…
裏店長(! 足音…)
裏店長(誰か来やがるな)
裏店長(気休めだが…姿を変えておくか)シュイーン…
――――カツ…カツ…
――――カツ…カツ…カツ…
――――カツッ
裏店長(…)
裏店長(……ッ!?)
姫「……」
裏店長(あの時の美少女店員…)
姫「…お前」
裏店長(…ん? 『あなた』じゃなく『お前』?)
姫「私は≪雲≫を捕らえたと聞いて来たんだけど…」
姫「何よ写真と全然違うじゃない!」バシッ
裏店長(捨てやがった。写真捨てやがった)
裏店長(…)
裏店長(口だけで…情報が引き出せっかどうか)
裏店長「おい」
姫「黙れ小市民」キッ
裏店長(接客中の態度との差がとんでもねえなこの女)
姫「王女に徒労をさせるとは。あのクソサイボーグ、近日中にスクラップにしてやる…」
裏店長(!)
裏店長(…………こいつ…王女殿下だったのか…)
裏店長(!!)
裏店長(なるほど…。この全身からにじみ出ている悪人オーラ…)
裏店長(こいつか。首謀者…)
裏店長(つうか…≪雲≫の変身能力はサイボーグ野郎にばれてる筈だが…)
姫「」イライラ
裏店長(こいつの性格からして…詳細を聞かずにやって来た訳か)
裏店長(この拘束を解き、尚且つこいつの目から逃れるには…)
裏店長(大胆な手だ。さっきまでと違って死角が作れねえ。カメラがありゃアウト)
裏店長(この牢にはカメラは…ないな)
裏店長「」ボウッ!!!!!!!!!!
姫「!?」
姫「な、何。何が起きたの」
裏店長「びゃあああ!!!!!!!!!!!!!」
姫「こ、子供ッ? どこから湧いて出て」
――――ピカッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
姫「――き、た……の…」
姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ボー…
裏店長「こういう形の『油断』も発動条件に当て嵌まんだよ…」
裏店長(一度子供に化けたことで、拘束からも逃れられた)
裏店長(よし)
裏店長「鍵を寄越せ。ここから出る」
姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・私に命令とは、気に食わない、けど・・・・・・」
姫「・・・・・・・・・・・・はい」チャリン
裏店長「あ、ああ…」
裏店長(何つう自我の強さだ…)
――ガチャン!
裏店長「さて…」
裏店長「このまま、サイボーグの野郎か誰かが来ないうちに脱獄と行きてえところだが…」チラッ
姫「・・・・・・・・・・・・」
裏店長(問題はこいつをどうするかだな)
裏店長(性根がいくらひん曲がってるとは言え、こいつが撲滅計画の首謀者と決め付けるのは早計か…?)
裏店長「…」
姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ボー
裏店長「……お前…」
裏店長「――何か悩んでることでもあるんじゃねえか?」
姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
裏店長「言ってみろ」
裏店長「言え」
姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
姫「客が。憎い」
裏店長「ほう」
姫「クソオヤジが。他人と触れ合う機会を、接客と言う形で作り、コミュニケーションに慣れろ。と」
姫「王女でありながら。小市民に紛れて…アルバイト……を」
姫「善意でやってることの。何もかもが。裏返しに取られ」
姫「揚げ足を取られ」
姫「理不尽な要求」
姫「ストレスの捌け口」
姫「執拗に携帯番号を迫ってきたり、花束を贈りつけてくる、うざったい男性客」
姫「もう。限界」
姫「奴ら…奴ら……」
姫「ぶっ潰して…やりたい」
裏店長「……」
姫「どうして・・・・・・そんなことを・・・・・・聞くの・・・」
裏店長「…」
裏店長「そうだな…」
裏店長「そりゃ、俺に女を見る目があるからじゃねえのか」
姫「子供の・・・・・・・・・・くせに・・・・・生意気な・・・」
裏店長「…」
裏店長「」ボウッ!!
姫「・・・・・・!?」
裏店長(真)「これが、俺の『本当の姿』だ。そこそこ良い男だろ?」
裏店長(真)「覚えておけ。そして忘れろ」
裏連長(真)「じゃあな…」タタタ…
姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ボー
胸毛の覇者ゼウス「――砂時計計画?」
その夜、ロソーン
裏店長「ああ…」
裏店長「ヴァミリーマートは、…首謀者こそ不明だが、今だその存在を公にしない≪伝説の勇者≫に対して≪封印派≫の考えを見せている」
胸毛の覇者ゼウス「クレーマー撲滅計画は実在するものだった、か。そしてその計画には、≪悪意≫は邪魔なものになる…」
裏店長「現状。三大コンビニエンスストアの中でも、セッブンイレブンがその中で頭ひとつ抜けてきている業績の伸び様だが…」
裏店長「おそらく。セッブン勢はどことも組みはしねえだろう。情報漏洩と利益拡散の防止を徹底している節が見られるからな」
裏店長「となると、事実上トップであるセッブン勢に媚びずに、この競争から引き摺り下ろされねえよう、どんなに格好悪かろうが、無様に、息を荒げながら追いついて行かなきゃならねえ訳だ」
胸毛の覇者ゼウス「それで、ヴァミリーマートに合わせ≪封印派≫の方針を築くことで、距離を縮める――か」
裏店長「共通の敵がいりゃ、それは上っ面だろうが、仲間になり得る。考えとしては悪くねえはずだ」
裏店長「このまま純粋に≪中立派≫を続けていれば、他の中小企業に塗れて堕ちるのは目に見えてる。数年、問題視され続けている客との関係性の革新を図る為にも、勇者に対しての表明を提示し、積極性をアピールすべきだと俺は思う」
裏店長「どこの誰に勇者が封印されようが、接客そのものへの影響は直接的には繋がらねえが、≪覚醒≫を果たされりゃ、膨大な≪悪意≫が再び世界を覆い、こちら側にも当然被害を及ぼす。そうならねえよう、此方も≪覚醒派≫として動き、その≪悪意≫を如何にして利用するかを考える。か、もしくは、対立となる≪封印派≫に付くことで、これを阻止する」
裏店長「誰かが覚醒を阻止してくれるだろうなんざ甘っちょろい考えは足元をすくわれる。勇者に対する扱いの考えは≪悪意≫に対する考えと直結的だ。ライバル企業と対立するなら尚更、この時を我関せずの低姿勢で貫けば、客はその消極性を嗅ぎ取って寄り付かなくなる。」
胸毛の覇者ゼウス「一般市民は、勇者の覚醒リスクによる≪悪意≫の暴発については知る由もないじゃろう」
裏店長「今はな。この世界がとち狂ってる…時間がおかしくなっちまってることに気付いてる奴はごく少数だ」
裏店長「だが仮に時空間が再結合した場合はどうなる」
裏店長「違和感を取り戻した客は、初めて、それまで世界に異変が起きていたことを知り、一斉に事の経緯を探り出すだろう」
裏店長「そして全てを知った一般市民が、勇者に対して無関係を貫いた企業に向ける視線は、どのように変化すると思う?」
胸毛の覇者ゼウス「なるほど。流石はお前だ。先を見ているな…」
裏店長「ちったあお前も企業経営に対しての危機感を持ちやがれ」
裏店長「俺は表の世界には出られねえ人間だ。砂時計計画の立案者は、ゼウス。お前ということにしておけ」
胸毛の覇者ゼウス「よかろう…」
胸毛の覇者ゼウス「だが、セッブン勢が≪覚醒派≫という根拠は何処にある」
裏店長「根拠?」
胸毛の覇者ゼウス「お主の偵察によって、ヴァミマの計画を確定的なものし、推察によって≪封印派≫と決定したところまではよい」
胸毛の覇者ゼウス「だがセッブン勢が≪覚醒派≫という根拠がなければ、三大コンビニ内においての対立構造は消滅し、結局、ヴァミマとでセッブンを抜く策も崩壊するであろうに」
裏店長「そうだな…」
裏店長「…」
裏店長「『勘』…だな」
裏店長「奴らは危険な臭いがする」
胸毛の覇者ゼウス「勘、か」
胸毛の覇者ゼウス「……信じようぞ。≪雲≫よ」
裏店長「ありがとよ…」
裏店長(これで、表面上では、ヴァミマ・ロソーン対セッブンの構造が成立した)
裏店長(あいつがあのお姫様であるなら、胸毛野郎に、勇者に対しての覚醒・封印能力を預けている人物ということになる。能力の暴走を恐れてのことだろうが…)
裏店長(ロソーンのトップである胸毛野郎と、ヴァミマのお姫様を疎遠関係にしちまえば、覚醒は有り得ず、もう事態は動かなくなる。このままセッブンの一人勝ちだ)
裏店長(セッブンを追い抜かすには、能力をいつでも回帰させられるよう、予めヴァミマとロソーンはある程度は距離感を縮めておく必要がある)
裏店長(何よりも…)
裏店長(その方が、お姫様との接触が容易い)
裏店長(俺は裏の世界で生きてきたから分かる)
裏店長(あのお姫様を、こっちの世界に招き入れるような真似は駄目だ)
裏店長(胸毛野郎にはスパイという体で、極力頻繁にヴァミマへ進入し、お姫様との接触を試みる)
裏店長(猶予期間は一年)
裏店長(それまでにどうにか改心させてやるか)
裏店長(惚れた女だ。それくらいはな…)
数ヵ月後
ヴァミリーマート本店、休憩時間
姫「…また来たんですか」
裏店長「そう言うなって。そら、接客スマイル」
姫「からかわないでっ」
姫「……、…。こんな堂々としたスパイも珍しいですね…」
裏店長「へッ。今はセッブンを抜くために同盟を結んでる仲だろうが。あくまで『参考』だ」
姫「そうですか」
裏店長「そしてお前の偵察でもある」
姫「な、に言ってるの意味分からない死ねッ」
裏店長「素になってんぞ」
姫「今の、は。そう、疲労から来る妄言に過ぎませんわ」
裏店長「そうかい」
姫「大体、この同盟だって、何度目になることでしょうかっ。結んでは破り、そうして脆い契りを何度繰り返してきたことか」
裏店長「いずれ安定するさ」
姫「それにしたって、セッブンを追い抜いたら、またトップを争って対立でしょう?」
裏店長「違いねえな。でもな…」
姫「?」
裏店長「俺にとっては、猶予期間の一年の間だけ続きゃ、文句はねえからな」
姫「猶予、期間? 何の話ですか?」
裏店長「ところで最近の接客の調子はどうだ?」
姫「聞きなさいッ。無礼な!!」
裏店長「――どうなんだ?」
姫「……ッ」
姫「どうしてあなたは、真面目な話ほど飄々としているくせに」
姫「こんな他愛ない話の時は深刻な面持ちになるのですか…」
裏店長「心外だな。俺はちゃんと真面目な話の時に真面目になっているさ」
裏店長「俺には企業の事情より、お前の調子の方がよっぽど重要だ」
姫「…………。何なんですか、本当…」
姫「あなたと会って…遭ってから、気持ちが落ち着かなくて……。迷惑も甚だしいです」
裏店長「『遭って』…ねえ。こっちも同じ台詞だ」
裏店長(おかげで駄々っ子の面倒を長い間かけて見る羽目になったんだからな…)
姫「だったらもう来なくて結構です!」
裏店長「そういう訳にもいかねえよ。俺は一流のスパイだからな」
姫「……。あなたがヴァミマの人間であったなら、容易く強制排除できるというのに」
裏店長「そいつは残念だったな」
裏店長「で。どうなんだ」
姫「…」
姫「……」
姫「今日も、同じです」
姫「やはりまともなお客様という存在は、今の日本にはごく少数です」
姫「今のこの国は、おかしいのです」
姫「…………、」
裏店長「…そうか」
裏店長「そらよ」ヒョイ
姫「わっ。何ですか」パシッ
裏店長「ストレスによく効くドリンクだ。ちなみにウチの商品」
裏店長「効果は折り紙付だ。それでも飲んでじっくり体休めてろ」
姫「誰がロソーンの商品などっ」
裏店長「シフト、次は何日に入ってる?」
姫「誰が教えるものですか」
裏店長「一流のスパイはシフト表も入手してる。……次は火曜の朝からだな」スッ
姫「それを返しなさい!」
裏店長「じゃあな」
バタン
姫「くっ」
姫「いつもいつも…あの胡散臭い、自称一流スパイのペースに流されるがまま…」
姫「……」
姫「…」
姫「」スッ
姫「…」
姫「」カキュッ
姫「」ゴクリ…ゴクリ…
姫「……」
姫「…不味い」
――現代――
街
裏店長「探りを入れたヴァミマで遭遇したセッブンのスパイをとっ捕まえ、そして取り調べたのさ」
裏店長「その時も、ヴァミマとロソ-ンは同盟を結んでいる状況だったからな」
蠱惑の店員「ふうん…嘘じゃなさそうね」
裏店長「こっちからもひとつ」
裏店長「終焉の肉まんを生成したところで、そいつをどうするつもりだ。封印できなければ、結局また≪悪意≫は暴発するぞ」
蠱惑の店員「だから封印するんじゃない。ウチのボスの魔力でね」
裏店長「…………、」
裏店長(まさか…ホワイトワールド計画ってのは)
蠱惑の店員「まあ、もういいわ」
裏店長「何?」
蠱惑の店員「――いい時間稼ぎになったわ」
――――ズゴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
姫「きゃあっ」
表店長「何だッ!!?」
裏店長「……、ちっ」
裏店長(しまった…。数で勝っているんなら、あまりのうのうとゲームに乗せるんじゃなかったか…)
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
鉄壁の店員「遅く。なったな」
蠱惑の店員「悪いわねえ。あいつら、HPを共有してるみたいで、同時に倒さないと限度付きとはいえ、蘇っちゃう面倒な相手なのよ」
鉄壁の店員「なるほど。理解した」
表店長「兄者っ」
裏店長「……。ああ。俺は今来た図体のでかい方をやる」
鉄壁の店員「さあ。戦おう」
――パシッ
――二十年前――
高校、職員室
ヒキニート(当時18歳)「…」
教師「あのなあお前。この模試の結果のプリントに表記された数字をよーく見てみろ。こんな偏差値でどうやって進学するつもりなんだ。ええ?」
ヒキニート(18)「進学は…しません……」
教師「はあ…」
教師「なら就職でもするか?」
ヒキニート(18)「就職は…分からない、です……」
教師「…」
教師「要するに何も考えてない。考えたくないんだろう? ボーッとしてたらいつの間に成人寸前。やりたいこともなさそうだな。このままじゃあお前…」
教師「ニートまっしぐらだぞ」
生徒A「――このままじゃニートまっしぐら」
生徒A「だってよ!!!」
ギャハハハハハハハハッハハ!!!!!!!!!!!!!!!!
教室
ヒキニート(18)「……聞いてたのかよ」
生徒B「で。実際お前どうすんの?」
生徒C「一生引きこもってアニメでも観てるんだろ?」
クス…クス……
ヒキニート(18)(それができるなら…したいくらいだ……)
ヒキニート(18)(何て返しても、火に油を注ぐだけ…。ここは沈黙が正解か)スタスタ
生徒D[おい黙ってんなよ]ゲシッ
ヒキニート(18)「痛っ…」ガシャン!!
生徒E「ねえちょっと流石に可哀想だよ」クスクス
生徒F「こんなクズのために停学になることもねえだろー」クスクス
生徒D「それもそっかあ」
クスクス…クスクス……
ヒキニート(18)「…」
ヒキニート(18)(誰かを貶して、穢して、)
ヒキニート(18)(どうしてそんなことで愉悦を覚えるんだ…。動物的本能ってやつか)
ヒキニート(18)(……まあいいさ)
ヒキニート(18)(卒業まで、もうそんなにないんだから)
翌日、職員室前
ヒキニート(18)「プリントを貰いに来るのすっかり忘れて――」タタタタ
教師『――陰湿でないだけ、まだマシじゃないか。目に見える軽度の暴力行為に留まっている』
ヒキニート(18)「」ピタリ…
教師『ヒキニート君の件だよ。まあ彼は、精神的なしぶとさにかけては相当のものを持っているからねえ』
教師『このまま、卒業まで耐えてもらうしかない、と』
ヒキニート(18)「…」
教師『いじめについては、幾度となく議論が繰り返されてきた永遠不滅の問題だ』
教師「それでも結局出された答えは、曖昧な当たり障りのない、お飾りの言葉や、綺麗ごと、理想論…」
教師「私のクラスの件についても、正直なところ、どうしようもないよ」
教師『理想じゃ飯は食べていけないよ。廃業覚悟で臨めば、或いは、現状を打開できるかもしれないが…』
教師『そうだよ、私にも生活があるんだ。学園ドラマじゃないんだ、現実を見ろってことだよ』
教師『――彼は、その『現実』による一人の犠牲者なんだ』
――彼は、その『現実』による一人の犠牲者なんだ
ヒキニート(18)「…何だ……それ」
ヒキニート(18)「我輩が…現実の、犠牲者、だって……?」
――これが現実
ヒキニート(18)(教師ですら、屈するのか。その現実ってやつに)
ヒキニート(18)(長年生きて編み出した大人の出した結論が、それか)
ヒキニート(18)(…………もう、まっぴら、ごめんだ。何も、かもが)
ヒキニート(18)(理想なんか、クソ食らえ……ッ)グッ
ヒキニート(18)(夢も希望もない)
ヒキニート(18)(そんな世界で、我輩は、今まで、何と戦ってきたんだ)
ヒキニート(18)(何を我慢してきた。何のために我慢してきた)
その瞬間、全てがどうでもよくなった。
二十年は、一瞬だった。
理想の存在しない世界。
現実とはこんなものだ。
フィクションとは違う。
夢の見つからない人間は、どうやって生きていけばいいのだろう。
理想に対して盲目である人間は何を道しるべにして歩いていけばいいんだ。
才能なんて贅沢なものはいらない。
ただ、生きる指標となるようなものが欲しかっただけなんだ。
青春などなく。目標もなく。
ただ失望した世界は、異様に色褪せて見えた。
――――ズドォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
~薬局前~
姉「…………ッッ、」
姉「?」
母「あ…」
ヒキニート(雷)「……、」バチ…バチチッ…バチッッ!!!!!
守護神フリーター「雷の…防護壁か……」
守護神セイシャイン「流石の反応速度だな…ヒキニクノツルギ」
祖母(545800)「お主らは…守護者か」
守護神セイシャイン「いかにも。我らは破壊の店長を守護するものなり」
守護神フリーター「……それが≪雷神≫を唯一超越したと云われる、ヒキニクノツルギの形態≪雷≫か…」
少女「……」
ヒキニート(雷)「……オイ」
少女「だって…こんな…有り得ない…何が…まさか……」
ヒキニート(雷)「オイ!!」
少女「!」
少女「な、に」
ヒキニート(雷)「呆けるのは後にしろ。強敵が来てるんだ」
少女「え、ええ…」
少女「今なら…まだ…どうにかなる」
姉「――?」
守護神セイシャイン:HP
55555555555555555555555555555/55555555555555555555555555555
守護神フリーター:HP
55555555555555555555555555555/33333333333333333333333333333
守護神セイシャイン「はあ!!」
――セイシャインは≪大自然の咆哮≫を放った!
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(雷)「!?」
姉「コンクリートからいきなり大きい樹木がっ」
少女「!! まずい…」
――ヒキニート(雷)は≪イカズチノコブシ≫を放った!
ヒキニート(雷)「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああッッ!!!!」バチィ!!!!!!!!!!!
――――ゴバアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――ヒキニートに600000000ダメージ!
ヒキニート(雷)「……ぐ…ッああ!!」ドサッ!
少女「!」
姉「えっ。どうして!? ……簡単に押し負けた?」
母「あの剛腕の店員を一撃で倒した技だったのに…レベルが違うの?」
少女「……それもあるけど。挙げられる要因として大きいのは、属性の相性よ」
祖母(545800)「大自然は雷をも飲み込んでしまうということじゃ」
守護神フリーター「――所詮、勇者の器と聖女の器の二人以外は雑魚だ」
守護神フリーター「片付けてしまうぞ」
――フリーターは全体攻撃≪森の逆鱗≫を放った!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
母「大量の大木が降り注いでくる!!!!」
姉「いやあああああああああああ!!!!! 今度こそ死んじゃう!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(雷)「…、」
ヒキニート(雷)「――なら、」バチチッ
ヒキニート(炎)「焼き尽くすまでだ!!」ゴウッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――ヒキニートは≪ヒキニクフレア≫を放った!
――――グァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
姉「やった!」
――セイシャインは≪アクアストーム≫を放った!
ビュゴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(炎)「ごああああああああああああああッッ!!!!!!!!!!」
――ヒキニートに600000000ダメージ!
母「ヒキニート!!」
ヒキニート(炎)「く、そ…」ズシャア!
ヒキニート(炎)「次は……水、か…」
祖母(545800)「……。扱う属性の幅が広いのう…」
少女「こっちも、同様に属性の幅を広げて対抗するしかない」
母「でも攻撃の要のヒキニートは炎と雷の二つしか使えないわっ」
姉「それにあいつ…弱い私とお母さんとお婆ちゃんを含めた全体攻撃をヒキニートが庇うことを前提にして、後だしジャンケンの要領で弱点を付く属性攻撃を繰り出してくる…」
祖母(545800)「どうやら足手纏いのようじゃのう」
少女「残念ながら否定はしない」
ヒキニート(炎)「どうする…」
ヒキニート()「」ゴウッ・・・
ヒキニート(38)「はあ、はあ・・・」
守護神フリーター「諦めろ。所詮、これが現実だ」
ヒキニート(38)「」ピク
ヒキニート(38)「……何だって?」
守護神セイシャイン「勇者ごっこも終いということだ」
守護神セイシャイン「計画を遂げるために貴様を連れ帰る」
ヒキニート(38)「…、」
ヒキニート(38)「くそっ。どいつもこいつも計画計画…」
ヒキニート(38)「お前らは計画なくして生きていけねえのか! おい!」
姉「ちょっと…?」
ヒキニート(38)「何となく分かってきたんだよ、属性の意味」ゼイゼイ
姉「へ?」
ヒキニート(38)「」チラッ
少女「…どうしたの」
ヒキニート(38)「こいつらといい、お前といい、何を隠してるか知ったことじゃないが、我輩に死なれたら困ると言う。例えばこいつらなら計画利用のためだとほざく」ゼイゼイ
ヒキニート(38)「そして例えばお前ならどうだっ」ゼイゼイ
少女「今はそんなことどうでもいいでしょ」
ヒキニート(38)「ああそう言うと思ってたさ。だが、」ゼイゼイ
ヒキニート(38)「出会い頭。初っ端に、我輩をHPが切れる直前まで追い込んだ理由は何だっ」ゼイゼイ
守護神セイシャイン「……隙を作ってくれるとは有難い…」
――セイシャインは≪嵐の波動≫を放った!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
母「来たわ!!」
ヒキニート(38)「答えろ!!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
少女「それは…」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
少女「あなたの目を、覚ますためよ」
ヒキニート(38)「――ああ、そうだろうなっ」ギリッ
――――≪雷≫は、自己への強い怒りから目覚める属性と云われる
――――ゴバッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
姉「ヒキニート!!!!!!!!!」
――――パキッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
母「!!」
守護神セイシャイン「……」
守護神セイシャイン「…ちっ」
――――パキキッ……
「そうさ。物事に対しての危機感は≪炎≫」
「そして、自己への強い怒りが≪雷≫」
「そして『現実の肯定』――これこそが」
ヒキニート(氷)「≪氷≫の属性への目覚めだ」ヒュオオオオオオ……
少女「…」
守護神フリーター「形態≪氷≫…」
ヒキニート(氷)「何の理由もなく、感情的にお前が我輩をぶっ飛ばすなんて、有り得ない」ヒュオオオオオオ……
祖母(545800)(三つの属性を会得したことで属性形態と自我を両立できるようになりおったか)
ヒキニート(氷)「気付いたのは、ほんのさっきの話だ」ヒュオオオオオオ……
ヒキニート(氷)「要するに、ろくに現実の過酷さを知らない奴に『現実』なんて言葉を軽々しく使うことが許せなかったんだ」ヒュオオオオオオ……
姉(引きこもりニートが言えた口じゃないって言いたいところだけど…そのそもそもの原因として、あいつは昔に相当なイジメに遭ったんだもんね…)
ヒキニート(氷)「そして思い出した。昔を」ヒュオオオオオオ……
ヒキニート(氷)「我輩のような駄目人間がまともな人間になろうと思ったら、まずは心理状況から変化させることだ」ヒュオオオオオオ……
ヒキニート(氷)「ひとつに危機感。ひとつに自己への怒り。そして現実の肯定」ヒュオオオオオオ……
ヒキニート(氷)「それが属性に結び付くってところは、感覚的な発見だったけどな…」ヒュオオオオオオ……
守護神フリーター「……属性がひとつ増えた程度で…」
――フリーターは≪フルメテオバースト≫を放った!
グオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
少女「ちょっとっ」
ヒキニート(氷)「そして次に覚えるべき感情は、そう」
ヒキニート(氷)「理想の芽生え――だ」スッ
――――カッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
守護神セイシャイン「攻撃を…」
守護神フリーター「かき消した……?」
ヒキニート(光)「」コオオオオオ……
少女(連続して、新しい属性を…!)
姉「凄い。凄いよ!」
守護神フリーター「馬鹿な…」
守護神セイシャイン「その属性は…ッ」
祖母(545800)「光の属性を手にしたとなると…」
ヒキニート(光)「ああ…」
ヒキニート(光)「楽勝だ」スッ
――ヒキニートは≪デス・フラッシュ≫を放った!
街
蠱惑の店員「――今のはっ」ヒュッ!!!!!!!!
鉄壁の店員「惜しかった」ズシン!!!
裏店長「……クソがっ…」ズシャア!
表店長「敵さん…タイミングが…合ってきてるぜッ」ザザッ!
姫「もういい! 私は降ろして!」
姫「私は勇者の覚醒に必要不可欠な鍵です! 向こうも私を死なせるような真似はしないはずっ」
裏店長「馬鹿言え! それが向こうの思う壺なんだよ。人質にでも取られりゃお終いだ」
姫「……でもっ」
蠱惑の店員「……ふうん?」
裏店長「あん?」ゼイゼイ
蠱惑の店員「いえ。不思議と思ってねえ」
蠱惑の店員「同じ≪封印派≫とはいえ、そこまでその小娘を庇うなんて…やっぱりアレ? そういうことなのン?」
姫「なっ。この非常時に…」カアアア…
裏店長「…………。ああ、そうだ…」ゼイゼイ
姫「…え?」
裏店長「なあ、お前。こんな時だからこそ、もう一度だけ聞くけどな」ゼイゼイ
裏店長「生きることは、楽しいのかっ」ゼイゼイ
姫「……何故…」
裏店長「俺には嫌というほど分かる。憎しみの先には、良いことなんざ、何もありゃしねえ」
姫「何を…」
裏店長「クレーマー撲滅計画の首謀者は、お姫様、お前だった。そんなことは、とうに知ってることだったんだよ」ゼイゼイ
姫「――――ッ!!?」
蠱惑の店員「へえーえ。初耳」
鉄壁の店員「国王はこちら側にいる。撲滅計画の。首謀者は。ならば。一体誰なのか。兼ねてからの。疑問だったが。そういうことか」
姫「知ってて…ずっと……」
姫「いつ…から……?」
裏店長「――1年前だ」ゼイゼイ
姫「1年…前…」
姫「…………!!」
――――俺にとっては、猶予期間の一年の間だけ続きゃ、文句はねえからな
――――猶予、期間? 何の話ですか?
姫「……………………………………………………、」
裏店長「猶予期間は終いだ」ゼイゼイ
裏店長「俺はずっと、お前の傍らで、いつか改心をしないかと、あらゆる手段で接近を試みたが、お前の悪質な客に対する怨念は本物だった。ついに今まで、どうにもならなかった」ゼイゼイ
裏店長「今がその時だ。俺は」ゼイゼイ
姫「……、」
裏店長「お前が静かに眠れる日まで、全てをかけて戦う」
姫「え……?」
裏店長「いいか。ロソーンの砂時計計画…サービスの提供者と客を入れ替えちまえって話はな。立案したのは胸毛…ゼウスの野郎じゃねえ。俺だ」ゼイゼイ
姫「!」
蠱惑の店員「…」
裏店長「そしてその計画はダミーだ。このことはゼウスすら知らねえ」ゼイゼイ
鉄壁の店員「!」
蠱惑の店員「何ですって?」
裏店長「裏の世界の人間が正義なんざ貫こうと思ったらな。そういうやり方しかねえんだ。味方すら欺く」ゼイゼイ
裏店長「たった一人の女のためにだ」ゼイゼイ
姫「…」
裏店長「ダミーの計画を提示しておくことで、お姫様への接近は勿論、ロソーンの側の行動原理はそれで全て片が付く。そして企業理念たる、その真意は…」ゼイゼイ
裏店長「ザンクスと、同じだ。やはり、企業が落ちようが、何だろうが、」ゼイゼイ
裏店長「――特別なことは何もしねえ」
裏店長「ただし、理想も捨てねえ。腐ったこの現実の中で、客との理想を模索し続けることが、いっとう優れたやり方なんだよ」ゼイゼイ
蠱惑の店員「ぷ」
蠱惑の店員「あはあっはははははっははははっはは!!!!!!」
裏店長「…」
蠱惑の店員「何が模索よ。結局それも理想論じゃない」
裏店長「違うね」ゼイゼイ
蠱惑の店員「はぁ?」
裏店長「さっきも言っただろうが…。特別なことは何もしねえ。優れた奴ほどな、結局のところ、特別なことは何もしてねえんだよ」ゼイゼイ
裏店長「世界には答えのねえことが山ほどある。便利大好き。効率大好き。そんな奴らほど、決まって近道を探すもんだが…」ゼイゼイ
裏店長「遠回りしないように確かな道を見定めることは悪くねえ。だがな、ずるがしこく進める近道なんてものは、世界のどこを探そうが存在しねえし、あったとしても、そこから生まれた結果は希薄なものになる」ゼイゼイ
裏店長「俺やザンクスの出した結論は、理想論じゃねえ。いつだって、理想と現実は同じ処に存在している」ゼイゼイ
裏店長「企業勢力や、勇者の覚醒なんざ、利用する価値はねえ。ただ、現実と向き合いながら、理想を見据え続けること。これこそが、強さだ。人の強さなんだよ」ゼイゼイ
姫「…あなたと、いう人は……」
姫「本当に…」
蠱惑の店員「馬鹿じゃないのォ?」ヒュッ!!!!!!!!
――――ザクッ!……
裏店長「・・・・・・?」
裏店長「・・・!」
裏店長「く、は」
姫「」
表店長「」
鉄壁の店員「…」
鉄壁の店員「背後から。一突き」
姫「――裏店長ッ!!!!!!!!!!!!!」
表店長「兄者!!!!!!!!!!!!!!」
裏店長「」ドサリ
裏店長(何…だ……急に…スピ-ドが…増しやがった…)
裏店長(それに…コモンライフが……機能しねえ…)
蠱惑の店員「馬鹿ねえ」
蠱惑の店員「情報の引き出し合いゲームは、ちょうど今、終わったのよ」
裏店長「…!!」
裏店長(まさか…抑えてやがったのか……今の今まで……)
裏店長(助っ人すら…情報を引き出すための…布石……)
姫「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
――――ヴオァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
裏店長「!?」
表店長「ッ!!」
鉄壁の店員「!」
蠱惑の店員「何ッ!?」
――――シュオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(38)「よし、勝っ……!?」シュオッ
母「やったわヒキn……あら?」シュオッ
姉「きゃあっ」シュオッ
祖母(545800)(強制ワープ? いや…)シュオッ
少女「え!?」シュオッ
裏店長「!?」
表店長「お前ら、は…」
蠱惑の店員「あらァ?」
鉄壁の店員「勇者一行。じゃないか」
姫「」ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
蠱惑の店員「彼女の能力が引き寄せたのね…勇者の器を。ちょっと余計なのも混じってるけど」
鉄壁の店員「何にしても」
鉄壁の店員「――好都合だ」
音速の店員「」シュバッ!!!!!!!
剛腕の店員「」ズン!!!!
ヒキニート(38)「おい何だここどこだ? ……ッ!?」
少女「≪四天王≫が…それにあれは……ヴァミリーマートの…王女殿下?」
姉「そんなっ。剛腕の店員は倒したはずなのに」
祖母(545800)「まあトドメの一撃は入れておらんかったからの…」
母「何が…どうなって……」
音速の店員「信号を受け取った」
剛腕の店員「オレハコイツニタスケラレテキタ」
蠱惑の店員「じゃあ…まずはあの厄介な姫、どうにかしなきゃね」
鉄壁の店員「」ポイッ
カラン――
少女「! それは…」
鉄壁の店員「ヒキニクノタテだ。最も。今は。お前にとっても。お荷物に過ぎないが」
ヒキニート(38)「刻印が…ヒキニクノツルギと同じ…」
蠱惑の店員「じゃあ、クライマックスに向けて…」
「「「「――――合体」」」」
――音速の店員、剛腕の店員、蠱惑の店員、鉄壁の店員は合体した!
ストア・ドラゴン「――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
――――ズオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(38)「ぐあっ…」ビリ…ビリ…
少女「あれは…全ての店を司る伝説の龍……」ビリ…ビリ…
祖母(545800)「…、」ビリ…ビリ…
姉「で、ででででか、い……」ビリ…ビリ…
母「衝撃波だけで…心臓が飛び散りそう……ッ」ビリ…ビリ…
――――ファサッ、ファサッ、ファサッ…
――――ズシンッ!!!!!!!!!!!!
ストア・ドラゴン「――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ストア・ドラゴン:HP
∞/∞
ヒキニート(38)「な、何!?」
姉「あは…は…。あの時みたいに、特殊結界が」
少女「そんなものない。あれが正真正銘、本当のHP」
母「じゃ、じゃあ、ヒットポイント無限の相手なんて…どうやって倒すの」
祖母(545800)「ワシが出よう」スッ
少女「――!?」
ヒキニート(38)「ば、馬鹿言えよっ。婆ちゃんは歩くだけでも重傷――」
――祖母は≪火の鳥≫を召喚した!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
火の鳥「――――コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
姉「!!? お婆ちゃんッ?」
少女「不死と呼ばれる…伝説級の召喚獣を……」
少女「あなたが…魔女……どうして…」
祖母(545800)「ワシは、本来は戦わん筈じゃった。しかし、今」
祖母(545800)「ワシが戦わねば、もう、その時こそ、お主の筋書き通りには行かなくなり、取り返しが付かなくなる」
少女「あなた…………誰……?」
祖母(545800)「ワシはお前の味方じゃ」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
火の鳥「――――コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
ストア・ドラゴン「――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ロソーン
胸毛の覇者ゼウス「」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
国王「」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
胸毛の覇者ゼウス「」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
国王「」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
胸毛の覇者ゼウス「」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
国王「」
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ズズズン…ズズン…
胸毛の覇者ゼウス「く、ふぅ、はっ、はっ、」
国王「……大地が慟哭しておる」
ズズズン…ズズン…
国王「聖獣クラスの何かが戦っておるな。地形が変わる域を越え、下手をすると大陸が沈むほどのエネルギーだ…」
胸毛の覇者ゼウス「はっ、はっ……」
国王「まあもっとも。我らの勝負も、ぶつかり合っているエネルギー総量では決して負けはしないが?」
ズズズン…ズズン…
国王「だが貴様の方はいよいよ余裕がなくなってきたと見える」
胸毛の覇者ゼウス「はあ、はあ、」
胸毛の覇者ゼウス「どこで…このような力を身に付けた……」
ズズズン…ズズン…
国王「破壊の店長様の、恩恵を受けたのだ」
国王「そして飛躍的なエネルギーの向上を果たした」
国王「ふはははははははは!! 来るのなら来い、我はこの世界で二番目に強いぞ!!!!」
ズズズン…ズズン…
胸毛の覇者ゼウス「ぜえ、ぜえ、」
胸毛の覇者ゼウス「雲の考えは、ついぞ完全な理解には辿りつけなかったが…」
胸毛の覇者ゼウス「目を見れば分かる…。あやつは……正義を秘めて戦っておる…」
胸毛の覇者ゼウス「裏店長よ……。後は…」
胸毛の覇者ゼウス「――託したぞ」
国王「!」
国王「貴様…。まさ…か…」
胸毛の覇者ゼウス「」ギュオオオオオオ…
国王「自爆を……ッ!!?」
――――――グオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――――ズシン……!!!
姉「きゃっ!」
ヒキニート(38)「何だっ。今…遠くの方で……爆発が」
少女「このエネルギー…」
母「地震!!?」
祖母(545800)「うぬ…これは……」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
火の鳥「――――コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
ストア・ドラゴン「――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
裏店長「」
裏店長「あの、馬鹿…」
裏店長「野郎ッ…」
裏店長(真)「俺を見ろ!!! このボンクラ姫ッ!!!!!!!!!」ザッ
暴走姫「? ……」
暴走姫「………………、」
暴走姫「……………………………………!!?」
――――これが、俺の本当の姿だ。そこそこ良い男だろ?
――――覚えておけ。そして忘れろ
暴走姫(ソ……ンナ…)
暴走姫(地下牢デ…アッタ…………アナタガ…)
暴走姫(裏…テン……チョ、う………!?)
暴走姫「オ、オ…」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
裏店長(真)「自我の強いお前のことだ! 俺の能力の理屈なんざすっ飛ばして! 今もお前の記憶のどこかにおぼろげながら残っている筈だ!!!」
裏店長(真)「そいつを思い出せ!!!」
裏店長(真)「そして記憶の点と点を繋ぎとめることで!」
裏店長(真)「自我を取り戻せ!!!!!!!!!!!」
暴走姫「オ、オ…」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
裏店長(真)「――ぐ、う」ビリ…ビリ…
裏店長(真)(一年前……俺の…本当の姿を見せた時に…)
裏店長(真)(お前の我の強さを考慮して…あるコントロール魔法を……かけた…)
裏店長(真)(俺の真の姿を思い出す度に…それ以外の思考で脳内キャパシティを埋めてしまうことで……忘れるとまではいかないまでも…絶対に思い出せないような仕掛けを施したものだ…)
裏店長(真)(そいつの効力が…一年経った今も尚残ってんのなら……)
裏店長(真)(そのキャパを埋めようとする思考が…お前の暴走した能力に持ってかれた自我を取り戻す引き金になる……!)
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
裏店長(真)(自我が効けば…勇者側と組んで……この反則級の強さを誇るストア・ドラゴンも倒せるかもしれねえ…)
裏店長(真)(いや…もう……それしかねえ…)
ヒキニート(38)「おい! そこの眼つき悪い重傷のお前!!」
裏店長(真)「…!」
裏店長(真)「もう一人の、主人公とやら、か……」
ヒキニート(38)「はあ? まあ、我輩は不本意ながら勇者やってるが…今はそうじゃなくてっ」
ヒキニート(38)「何か手伝えること、ないのか!?」
裏店長(真)「!」
ヒキニート(38)「言え! 何でもいいから!!」
ヒキニート(38)「早く!!!」
裏店長(真)「…、…、」
裏店長(真)「あのお姫様を覆ってる超高密度エネルギーはな…自我を侵食しようとする『能力の意志』の表れだ」
裏店長(真)「雷系統が使えんのなら…あのエネルギーの殻を」
ヒキニート(38)「麻痺させりゃいいんだな! 分かった!!!」
――火の鳥は≪フェニックス・インフェルノ≫を放った!
ズァオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ストア・ドラゴン「――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
――ストア・ドラゴンに99999999999999999999999999999999999999999999999999999999ダメージ!
ストア・ドラゴン:HP
∞/∞
――ストア・ドラゴンは≪コスモ・インパクト≫を放った!
ズゴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「――――コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
――火の鳥に99999999999999999999999999999999999999999999999999999999ダメージ!
火の鳥:HP
∞/∞
祖母(545800)「ぐ…ぬ……」ビリ…ビリ…
祖母(545800)「流石は伝説級かっ…」
ヒキニート(雷)「――――痺れろ!!!!!!!!!!!!!!」
――ヒキニートは≪ライジング・インフィニィ≫を放った!
バンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
――ピシッ…
破壊の店長「――――始まるぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
――――ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(雷)「!?」
裏店長(真)「!?」
母「!?」
表店長「!?」
姉「!?」
祖母(545800)「!?」
少女「!?」
祖母(545800)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
姉「……え? お婆、ちゃん…?」
祖母(545800)「しもうた…≪穴≫に、衝撃を、与え、すぎた……」
ヒキニート(雷)「は? それってどういう――」
少女「や」
少女「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
母「!!?」
ヒキニート(雷)「おいどうした少女っ。何が、どうなってんだ!!!」
破壊の店長「――――世界が、現実化するのだよ」
ヒキニート(雷)「!!!!!?」ゾクッ
――――破壊の店長は≪神の一撃≫を放った!
ゴアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――――ストア・ドラゴンに∞ダメージ!
――――火の鳥に∞ダメージ!
――――暴走姫に∞ダメージ!
――――表店長に∞ダメージ!
――――裏店長に∞ダメージ!
暴走姫「――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
火の鳥「――――コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
ストア・ドラゴン「――――キィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
表店長「不覚……」
裏店長「…」
裏店長「…………姫…」
ドゴオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
少女「」
ヒキニート(雷)「何だよ…これ……」
姉「…」
母「…」
祖母(545800)「…」
破壊の店長「どうだ。この世界は」
破壊の店長「――楽しかったか?」
ヒキニート(38)「…?」
祖母(545800)「……」
祖母(545800)「前々からおかしいとは思っていたが…」
祖母(545800)「ラスボスである破壊の店長……お前さえも、≪演者≫であったか…」
少女「…………え?」
ヒキニート(38)「お、い。お前、もう気分は平気なのか」
少女「……最悪よ」
祖母(545800)「……勇者の覚醒なしに、穴が解放されたということは、完全にシナリオが書き換えられたということじゃ」
ヒキニート(38)「…は?」
祖母(545800)「ワシが・・・いえ・・・・・・」
祖母(545800)「私が、全て、明かします」
後輩「先輩」バシュウッ……
少女「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
少女「――――後輩・・・ちゃん・・・・・・・・・?」
――1ヶ月前――
サー…
ポツ……ポツ…
後輩「――先、輩…」
少女「後輩ちゃんッ後輩ちゃんッ後輩ちゃんッ…」
少女「ああああああああああ」
後輩「…」
後輩「先輩は…一人じゃ……ない」
少女「え…?」
後輩「先輩は…もっと、色んなものを……見て、聞いて、」
先輩「いろんな所へ行って…いろんな人と話して……」
先輩「そして、あなただけの…最高の作品を……作ってください」
少女「そんな…今にも……死んじゃうような、そんなこと、言わないで」
先輩「先輩…」
少女「っ、うっ…」
後輩「私は――――」
後輩「――私は、実は、不思議な力を持った、魔法使い…なんです……」
後輩「あなたが一人きりにならないよう…、最後に…魔法を、かけました……」
少女「え……?」
後輩「私、実は、あなたが書いた物語を、知ってるんです」
後輩「今夜、あなたが眠りに落ちた時…、聖女があなたに宿ります……」
後輩「そして、その物語の主人公と出会う時、全てが始まります」
後輩「そうです、先輩が描いた物語が、始まるんです」
少女「何…言ってるのか……分からないよ…」
後輩「今は…そうかも、しれません……。でも、聞いて…ください…」
少女「」コクリ…
後輩「先輩は…、主人公の視点から…、大筋は、その記憶にあるストーリーの通りに……話を進め、そして定められたエンディングに辿り付かなければ…、そのストーリーで起こったことが、そのまま…現実になります…………」
後輩「……死んだ人間は生き返らないし、地球が滅べば…、それも本当に現実化してしまいます。この真実、あるいは…それに結び付くことを……他の登場人物に吹き込むようなことがあれば…、物語は破綻し、その場合でも…現実化します……」
後輩「現実化の…定義は、『主人公の視点から、大筋が作中通りに進まず、異なるエンディングを迎えた場合』になります……」
後輩「あなたの書いた物語は……『完全な一人称』形式のために…、シナリオは…その視点からそのストーリー通りに完結すればいいんです……」
後輩「そしてそれは…同時に、物語を書いた先輩すら知らない部分が…世界に存在するということになります……」
後輩「でも…心配しないで……。そうでなければ…、フィクションがフィクションとして…成り立たないんです……」
少女「…どうしよう……」
少女「後輩ちゃんが…何を言ってるのか……分からないよ…」
後輩「先輩」
後輩「……頑張って、くだ、さい…」
少女「――――後輩ちゃん!!!!!!!!!!」
母「…」
ヒキニート(38)「…」
姉「…」
ヒキニート(38)「つまり…」
ヒキニート(38)「この世界は…少女の書いた……物語世界…だった、と」
――――さっきはあなたに死なれちゃ迷惑だから、仕方なしに助けたの
――――あなたが死んだら全てが終わる
ヒキニート(38)「我輩が…死なない物語だったから……」
――――聖女としての責任感なんて…分かりっこ、ない
ヒキニート(38)「本当は分かってたんだ…。でも、それを言ったら、世界の現実化に繋がる……。一人で、背負ってたのか…全部……」
――――遭いたくなかった
ヒキニート(38)「この物語を…」
ヒキニート(38)「始めたく、なかったのか」
ヒキニート(38)「!!」
ヒキニート(38)「じゃあ…死んだ親父は…。もう……」
ヒキニート(38)「いや…。それ以前に、我輩たちの存在は…どうなる……?」
後輩「…」
後輩「フィクションクリアを果たせば、全ては元に戻るんです。勿論、死んだ人だって」
――――まあ、この旅の行く末次第と言ったところかのう…
後輩「そしてあなたのお父さんの『死』は、少女先輩が物語世界から、その意志さえも引き返せなくなるよう、予め仕掛けられたものです」
ヒキニート(38)「!?」
少女「そう、だった、の…」
母「…」
――――本当に、いいのね
――――……ああ。あいつが決めたことだ
後輩「お父さんには、その≪演者≫となってもらいました。その妻であるお母さんも、内通者です」
ヒキニート(38)「!!?」
――――そんなことは分かっとる。なれば、お前は今、ヒキニートだけを見ていろ。それが、必ずやいい結果に結びつくじゃろうて
ヒキニート(38)「なら母さんに言ったあの言葉は…≪演者≫としての『台詞』に…過ぎなかったのか……」
母「あの子に頼まれたのよ」
ヒキニート(38)「どうし、て」
後輩「あなたのお父さんは、先輩の物語を知る人間だったからです」
ヒキニート(38)「!」
後輩「お父さんには、自ら死を選んでもらいました。お父さんは、『先輩の投稿作の内容を知る編集者』だったんです」
後輩「それを知る私は、その物語の登場人物の≪演者≫を頼んだんです。こうして私の内通者になりました。妻であるお母さんも当然その一人。これまでのお母さんの言動は演技によるものです」
後輩「ファンタジー要素を除いて、人物情報に設定改変がなされておらず、なおかつ物語の内容を知る、少女先輩以外ではお父さんがその唯一の人物だったため、真実を口にすることで、ファンタジー世界を現実化させてしまう恐れがあった。魔法をかけた当人である私以外に、それを現実化させずに口止めできる人はいなかったんで、何とか頼み込みました」
後輩「つまり、ファンタジー要素を除いて、人物情報に設定改変がなされてない、ヒキニートさん・お姉さん、加えて物語を知る≪演者≫お父さん・お母さん、そして当然書き手の先輩の五人は、実在する人物として間違いありません」
後輩「主人公一行は、実在人物を登場人物に配役させて、心理上のリアリティを追求するためです」
ヒキニート(38)「さっきから何言ってやがる!!!」
ヒキニート(38)「罪悪感はねえのか! 配役が…親父が実際に死んで、そのまま、今こうして世界は≪現実化≫しちまってる!!」
ヒキニート(38)「どうしてこんなことをした!?」
ヒキニート(38)「何が『一人にさせない』だ…」
ヒキニート(38)「余計、あいつは悲しみに暮れる羽目になった…」
ヒキニート(38)「この世界を…どうするつもりだ!?」
後輩「――他に聞きたいことはないんですか?」
ヒキニート(38)「こ、の」
後輩「この世界は既に二度繰り返されています」
ヒキニート(38)「!」
後輩「その二度で、穴には主人公であるヒキニートさんは≪意志≫と≪記憶≫に分散され、残されます。少女先輩は、書き手の性質上、≪意志≫のみが残された」
後輩「そして、前代の勇者・ヒキニクノツルギ、聖女マリアは、それぞれが実はヒキニートさんと、少女さんの≪意志≫です」
――――前のマリア』は、もっと懸命な判断力や思考力があったんだがの。聖女ともあろう者が、そんなことも分からんか
少女「!?」
後輩「世界は今が三度目。既に世界は二度現実化していて、その≪記憶≫は穴の中に消えている。少女先輩の作った設定上、時空間は三つ。そのために、これ異常はやり直しが利かないんです」
後輩「メガニート、ギガニートさんは、フィクションクリアに失敗したヒキニートさん自身の≪記憶≫です。あなたの祖父の存在は、あなたとイコールです。そのため、少女先輩は、主人公の動機となる祖父について、よく知らなかった。主人公の動機に繋がるものまでは、≪未設定≫だったんです。つまり先輩が書いた物語で、未設定だった動機の原動であるメガニートさんについては知る由もなかった。」
ヒキニート(38)「執拗に爺ちゃんについて迫ってきたのはそれが原因だったのか…」
――メガニートとの誓いなんて、本当、馬鹿馬鹿しい
ヒキニート(38)「じゃあ、誓いや、爺ちゃんの存在を知っていたのは…」
後輩「ただの脚本ですよ?」
ヒキニート(38)「我輩に記憶の断片がフラッシュバックしなかったのは…」
後輩「先輩が書き手。あなたは登場人物。そういうことですよ」
――我は使役される者…目的などない。ただ、使い手の意志に従うのみ
――うそ
――同じ過ちを繰り返させない
――歴史は繰り返すな。マリアよ
――現代の勇者の意志は、もしかすると十年前のそれを越えるやもしれぬ。実に興味深きことよ
――そして現代において尚生き続ける≪破壊の店長≫よ
ヒキニート(38)「何が…脚本の台詞で…何が過去の我輩の≪意志≫なのか…」
後輩「その線引きは、あなたにお任せします」
ヒキニート(38)「……繰り返してない時…そう、一度目の世界では配役に空きが出るんじゃないのか」
後輩「この物語の原作は、完全なる≪主人公の一人称視点≫です。先輩から見たあなたを視点に置いたもの。すると、他の現象は知るところではないけれど、神視点でないということは、書き手の先輩にも知らない世界が存在する。だから繰り返してない世界は、私達からすれば成り立たないんです。しかし、確かに存在はしていた」
後輩「そして」
後輩「そのような世界を、シナリオを書き換えようとする≪演者≫が、他にいた」
後輩「あなたは…一体……」
後輩「何者なの?」
破壊の店長「…………」
後輩「どうして、先輩の物語を知っていたんですか。でなければ、自我を以て、物語に逆らおうとはできないはずです」
破壊の店長「ふ。ふふふふ」
破壊の店長「僕は、そう」
破壊の店長「しがない、ただのニートだ」
破壊の店長「物語を知った経路は、そいつが作品を投稿した出版社の編集長である兄だ」
破壊の店長「≪破壊の店長≫を演じる僕は、建前上ではホワイトワールド計画を図っていたが――」
ヒキニート(38)「!」
破壊の店長「その実、真の狙いは『作品の現実化』だったのさ」
少女「国王は…そのための…コマ……」
破壊の店長「働く気も起きず、腐った現実に飽き飽きし、一時は自殺まで考えた」
破壊の店長「だが、それを実行する前夜、眠りに入ると、違和感に支配され、目が覚めたらフィクションの世界に存在していた」
破壊の店長「夢かとも思ったが、伝え聞いた、兄の出版社に投稿された作品の物語とあまりに酷似しており、設定上の能力である読心術を使い、様々な作中の登場人物を見て回ったところ、少女の存在を知り、そしてこの世界が筋書き通りに行かなければ、現実化することを知った」
破壊の店長「そして、破滅願望を持つ僕は、既定の筋書きから遠ざけるため、表面の目的である『ホワイトワールド計画』とは別に、設定上にある≪終焉の肉まん≫を用いて、本当に世界を消滅させる計画を考えた」
破壊の店長「全ては余興だったのさ」
破壊の店長「ふははははははははははははははははは!!!!!!!!!」
ヒキニート(38)「……違う」
破壊の店長「ははは……」
破壊の店長「んん?」
ヒキニート(38)「我輩もニートだったからな。世界への失望感、絶望感」
ヒキニート(38)「過酷過ぎる現実」
ヒキニート(38)「痛いほど分かる」
ヒキニート(38)「けどな。お前は、ニートとして、今、この瞬間、決定的に、我輩に敗北した」
破壊の店長「ああ?」
ヒキニート(38)「我輩は、作り物のフィクション世界で、嫌というほど、学んだ」
ヒキニート(38)「――前進する強さをだ」
――――ヒキニート。まずは外に出るところから始めなさい。家を出て三分歩いた所にある信号を渡り、左折、右手にあるパン屋と薬局とよく話しかけてくるオバハンを通過したら見えてくる、あの『セッブンイレブン』へ行き、アルバイトをしなさい。そこから、始めるんだ。
ヒキニート(38)「爺ちゃんが残してくれた言葉だ」
破壊の店長「祖父はお前自身だったのだろう?」
ヒキニート(38)「いや違う。真相を知った今なら分かる」
ヒキニート(38)「これは現実世界での話しだよ」
ヒキニート(38)「実在したんだ。確かに。誓いも。爺ちゃんも」
ヒキニート(38)「脚本と現実は、一致していたんだ。我輩に関しては」
破壊の店長「ふはははははっははははは!!! そんな馬鹿なことが」
ヒキニート(38)「――在るんだよ。確かに、だ」
破壊の店長「…」
少女「…」
ヒキニート(38)「でも、我輩はな、こんな世界も悪くないと思ってるんだ。あの腐った現実世界よりもずっと、生きてる感覚を味わってる気がする。なあ……、同じニートのお前だったら、分かるだろ?」ジャキ…
ヒキニート:HP
6700000000000000/6700000000000000
破壊の店長「お前………まさか…………」
ヒキニート(38)「ここから物語を書き綴るのは、我輩の役目だ」
ヒキニート(闇)「」ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
後輩(前進への決意が…最後の属性を呼び覚ました……)
ヒキニート()「そうだ…」オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………!!!!
ヒキニート(覚醒勇者)「――――戦えばいいのさ」ジャキン!!
――【三章・終→最終章へ】――
【最終章】
破壊の店長「ば、馬鹿な…。属性五つの会得だけでは覚醒には……」
破壊の店長「……!」バッ
国王「――全て、聞かせて、もらった…」ヨロッ
姫「――これが私の最後の役目であるならば、やり通すまでです」
破壊の店長「!!」
破壊の店長「貴様らッ……、フィクション人物の分際で…!!」
姫「暴走エネルギーの殻と…最後の最後で……あの方が庇ってくれたおかげで、何とか生き残りました」
国王「…我はゼウスの自爆寸前で、転移魔法をな…」
ヒキニート(覚醒勇者)「五属性の完全習得。そして鉄壁の店員が持ってきたタテ、国王のヨロイ、このツルギが共鳴し、最後には姫の能力」
ヒキニート(覚醒勇者)「これで覚醒条件は整った。少しはマシな勝負ができると思うけどね」ジャキ!
ヒキニート(覚醒勇者):HP
∞/∞
ヒキニート(覚醒勇者)「…ありがとな」
姫「いえ」
姫「あなた達も、あなた達の世界に還れる様、ご健闘を祈ります」
ヒキニート(覚醒勇者)「ああ……」
ヒキニート(覚醒勇者)「…じゃあ……」
姫「…………はい」キラ…キラ…
姉「! 光って…」
母「世界が現実化を始め、物語の主人公が世界の全てを知った時、フィクション中の人物は…」
後輩「はい…。名残惜しいでしょうが、実在人物を除き、全ては無に帰します」
姫「そこのあなた」キラ…キラ…
少女「!」
少女「…私を、憎んでる?」
姫「まさか」キラ…キラ…
姫「むしろ、感謝しています」キラ…キラ…
少女「……どうして」
姫「あの方と…裏店長と引き合わせて下さいました」キラ…キラ…
姫「それはイレギュラーでなく、あなたの書いたシナリオでしょう」キラ…キラ…
少女「そうだけど…」
少女「どうして…そんな顔で…幸せそうに…笑ってるの……?」
姫「決まってるじゃないですか」キラ…キラ…
姫「幸せだからです」キラ…キラ…
少女「これから…消えてしまうのに……」
少女「あなた達も、あなた達が歩んできた人生も、全て、私の作り物なのに……」
少女「偽者の自我なのよっ。記憶も、人格も、感情も…全て…私なんかが書いた……くだらない物語の、欠片…」
姫「……」キラ…キラ…
姫「私は、私ですわ」キラ…キラ…
姫「誰だって、自分が本物の自分だということは証明できません」キラ…キラ…
姫「今見つめている世界は、地に足を付け歩んでいる世界は、笑って、泣いて、怒っている世界は、果たして本物なのか。誰にも、証明はできないのです」キラ…キラ…
少女「それでも、あなた達は偽者の存在だということを、私が証明してしまった…」
姫「……」キラ…キラ…
少女「……」
姫「では、この世界の神と呼ぶにふさわしい、あなたにお聞きします」
少女「え…?」
姫「今、こうして、あなたとお話している私は、」
姫「――――偽者に、見えますか?」
ヒキニート(覚醒勇者)「…」
姉「…」
母「…」
破壊の店長「…」
後輩「…」
少女「…………見えない…よ……」
姫「」ニコリ
姫「なら、良かったです…」
姫「私は私」
姫「あなた、名前は、なんと言うのですか」
少女「…………少女…」
姫「そうですか」
姫「少女さん…」
少女「…」
姫「――――ありがとう」
少女「………………………………うん」グスッ
姫「ああ、私がこの意思で愛した男よ…」キラ・・・キラ・・・
姫「――――今、そちらに、逢いに行きます…」シュオオオオ……
姫「では」
バシュウッ――――…
国王「お主の名は」
ヒキニート(覚醒勇者)「…ヒキニートだ」
国王「そうか」
国王「お主とは何の縁も無く、ましてや我は作り物の存在であったが……」
ヒキニート(覚醒勇者)「作り物じゃねえだろ」
国王「…」
ヒキニート(覚醒勇者)「あんたは確かに世界に存在していた」
ヒキニート(覚醒勇者)「世界から卒業する形が、他人より少しカッコいいだけだ」
ヒキニート(覚醒勇者)「死より余程、美しいよ。今のあんた」
国王「む…」
国王「何にしろ…希薄な関係にあったことは違いない…」
ヒキニート(覚醒勇者)「だろうね。はじめまして、になるもんな」
国王「そのような我からだが、世界から卒業する前に、ひとつ、告げておこう」
国王「貴様…いや……ヒキニート…」キラ…キラ…
ヒキニート(覚醒勇者)「……ああ」
国王「自身を…持て……」シュオオオオオ……
国王「貴様は…弱いが……」
国王「――――故に、強い」
バシュウッ――――…
ヒキニート(覚醒勇者)「…キザな奴だよ……」
破壊の店長「本当に…戦うのか…」
ヒキニート(覚醒勇者)「当たり前だ。たかが一人のニートに世界をぶっ壊されてたまるか」
破壊の店長「同じニートでも、こうも分かり合えないとはね」
ヒキニート(覚醒勇者)「全国のニート全員に破滅願望があると思ってんなよ」
破壊の店長「……現実化は始まっている。これを止めることはできない」
破壊の店長「そして! 今!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
母「!」
姉「何?」
破壊の店長「穴が開放され、世界は再統合された! これまで分散されていた≪クレーマーの悪意≫が地上を満たし、そして引かれ合い、ひとつになる!」
破壊の店長「≪終焉の肉まん≫が完成する!」
――――カッ!!!!!!!!!
コオオオオオオオ…
破壊の店長「」パシッ
破壊の店長「…これが、≪終焉の肉まん≫だ」スッ
ヒキニート(覚醒勇者)「見た目は…ただの黒い肉まんだが…」
姉「何だか…凄まじい邪気を感じる……」
母「うめき声が聞こえてくるようだわ…」
後輩「ヒキニートさん気を付けて下さい」
ヒキニート(覚醒勇者)「?」
後輩「覚醒を果たしたあなたがあれを口にすることが、世界消滅の鍵になります」
ヒキニート(覚醒勇者)「! ……」
ヒキニート(覚醒勇者)「分かった」
後輩「それと」
ヒキニート(覚醒勇者)「まだあるのかっ」
後輩「――あなたにかけた呪いを解きます」
ヒキニート(覚醒勇者)「!」
少女「!」
ヒキニート(覚醒勇者)「そうだ。結局、呪いって、何だったんだ」
後輩「それは……」
後輩「主人公としてのあなたを、封印することです」
ヒキニート(覚醒勇者)「っ?」
――――カッ!!!!!!!!!
母「……ッ」
姉「う…」
少女「……!」
主人公(覚醒勇者)「」シュウウウウウウ…
破壊の店長「ふんっ。何だ。何も変わっていないじゃないか」
後輩「いえ。今この瞬間、彼は本当の『主人公』として、全ての命運が託されることになりました」
姉「……?」
後輩「物語を生み出す役目です」
少女「!」
後輩「通常の通りにフィクションクリアしていけば、結局、それが一番でした」
後輩「しかし、如何せん物語の世界ですらも、物事とはそう簡単には上手くいかないもの」
破壊の店長「何が言いたい?」
後輩「世界は現実化を開始しました。もうこれはどうにもなりません」
後輩「少女先輩の、物語の書き手による影響の一切が遮断された今。ここから世界を生み出していく役目は、主人公である彼に継承されました」
後輩「ヒキニートさんの行く末が、この世界から『答え』として導き出されます」
後輩「頑張ってください、主人公」
後輩「これがラストバトルです」
主人公(覚醒勇者)「……、」
主人公(覚醒勇者)「正直、意味がよく分からないけど…」
主人公(覚醒勇者)「そもそもの話として、お前が大事に思った少女をこんなに辛い目に合わせることを予測できながらこんな世界を創った理由、尚且つ、その世界を、そこにいた存在を、何もかも滅茶苦茶にした責任とか、色々と聞きたいことがあるんだっ」
主人公(覚醒勇者)「その辺、分かってるんだろうなッ?」
後輩「…」
後輩「全ては、エンディングが導いてくれるでしょう」
主人公(覚醒勇者)「…」
主人公(覚醒勇者)「そうかよ」
主人公(覚醒勇者)「パーティーメンバーは、我輩一人で十分だ」
主人公(覚醒勇者)「皆はもう下がってろ」
姉「うん…」
母「ヒキニート……」
主人公(覚醒勇者)「ん?」
母「帰ろうね。あの場所へ」
母「そして、進むの」
母「そのために、まず、コンビニに辿り付くんだよ」
主人公(覚醒勇者)「ああ…」
主人公(覚醒勇者)「爺ちゃんは、確かに存在した。そしてその爺ちゃんが死んでから、五年間、我輩は心をそれまでよりも徹底的に塞ぎ込み、家族の皆に迷惑をかけ続けた。我輩一人の存在が、家族全体をぎこちないものにしてしまった」
主人公(覚醒勇者)「分かってたんだ」
主人公(覚醒勇者)「母さんの、あの得体の知れない爆発を呼び起こす能力は、きっと、これまでに積もり積もった、怒り、悲しみ…」
主人公(覚醒勇者)「他の誰でもない、この我輩が抱えさせた、負の感情が、このファンタジーな世界観で具現化されたものだったんだ」
母「……ヒキニート、」
主人公(覚醒勇者)「もう、悲しい思いはさせないから…」
主人公(覚醒勇者)「前に進むって、決めたから」
主人公(覚醒勇者)「必ず、帰る」
主人公(覚醒勇者)「あの場所へ」
少女「……」
主人公(覚醒勇者)「少女」
少女「ごめんなさい」
主人公(覚醒勇者)「…」
主人公(覚醒勇者)「どうして、謝るんだよ?」
少女「あなたという、確かに存在する人間に、私の書いた物語のせいで、迷惑が…」
主人公(覚醒勇者)「お前は悪くない」
主人公(覚醒勇者)「必死に一人で背負ってくれていたじゃないか。全てを」
少女「…うん」
主人公(覚醒勇者)「お前まだ若いんだろ。我輩と違って。それなのに、そんな強さを持ってて、凄いよ」
少女「違うっ」
少女「私は…強くない……」
――私は、本当に強い人間なんて、いないんじゃないかと、そう思うの
――本当に強い人間がいるのだとしたら、それは何にも依存することのない人をさす
――そして、人は何かに依存しなければ生きていくことができない
主人公(覚醒勇者)「いや…いるさ」
少女「……え?」
主人公(覚醒勇者)「依存じゃない…」
主人公(覚醒勇者)「――――生きがい、だ」
主人公(覚醒勇者)「友情。恋人。家族。趣味。何でもいい、生きがいを見つけ、」
主人公(覚醒勇者)「…いや、生きがいなんか、たとえ見つからなくたっていいんだ」
少女「…」
主人公(覚醒勇者)「生きる。生き続けていく」
主人公(覚醒勇者)「それができているだけで、人は強いって言えるんだ」
主人公(覚醒勇者)「………………だからな」キッ
破壊の店長「! …」
主人公(覚醒勇者)「こいつみたく、何もかもを道ずれにして世界から逃げ出そうなんて考える甘っちょろくて弱っちいニートに、」
主人公(覚醒勇者)「――――今は前に進みたくて仕方の無い我輩が、負けるわけが無い!!!」ジャキン!!!
破壊の店長「…」
破壊の店長「見解の相違だな」
主人公(覚醒勇者)「ああ」
破壊の店長「世界に理想など存在しない! 現実はただひたすらに残酷だ!」
破壊の店長「お前の先の発言である、生き続けるだけで、人は強いという理屈もそれを裏付けているっ」
破壊の店長「善が、正義が、主人公が、必ずしも救われることは有り得ないことを今ここで、」
破壊の店長「――――証明してやろう!!!!!!」
主人公(覚醒勇者)「我輩…いや、俺は」
主人公(覚醒勇者)「明日を取り戻すんだ!!!!!」
破壊の店長:HP
測定不能
主人公(覚醒勇者):HP
∞×∞/∞×∞
主人公(覚醒勇者・光)「食らえ!!」
――主人公は≪サン・フラッシュ≫を放った!
カッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
破壊の店長「ふんっ」
――破壊の店長に3400000000000000000000ダメージ!
破壊の店長:HP
測定不能
主人公(覚醒勇者・光)「く…そッ。測定不能って何なんだよ」
主人公(覚醒勇者・光)「普通の攻撃じゃ倒せないのかっ?」
破壊の店長「くたばれ」
――破壊の店長は≪神の一撃≫を放った!
主人公(覚醒勇者・光)「!!」ゾクッ
主人公(覚醒勇者・光)「あの時の…ッ」
主人公(覚醒勇者・光)「!」
ゴアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――――ゴボッ
――主人公は≪ブラックホール≫で身を護った!
主人公(覚醒勇者・闇)「…、」
主人公(覚醒勇者):HP
∞×∞/∞×∞
破壊の店長「……ふん。小賢しい」
ズズズ!!! ズズズシン……!!!…
母「何か倒す方法は無いのっ?」
後輩「…確かにこの世界を具現化したのは紛れも無く私ですけれどね」
後輩「物語の設定は、先輩によるものです」チラッ
少女「…、」
姉「どうすればいいのっ」
少女「……正攻法じゃ、無理」
少女「HPが測定不能になってるから、単純な物理ダメージじゃ…」
姉「…何て設定にしてくれたのよ」
少女「仕方ないじゃないっ。普通、ただ小説を書くだけで、こんなとんでもないことになるなんて思わないっ」
母「今はそんなことを言っていてもしょうがないわ。実際に書いた内容ではどうやって戦ったの」
少女「……。そもそも、主人公とラスボスは戦わせない設定にしたの。改心させる形で完結させたから。極端な勧善懲悪は苦手で…」
姉「なら改心を…無理、ね。あの様子だと…」
後輩「エンディングを見守りましょう」
少女「……エンディング…」
後輩「?」
少女「後輩ちゃん。言ったよね。『ヒキニートさんの行く末が、この世界から『答え』として導き出される』って」
後輩「はい」
少女「そしてあいつに、真の主人公として、物語を導く役目としての存在価値を、今の今まで封印していた」
後輩「…」
少女「つまり、後輩ちゃんは、こうなることが分かっていた」
少女「物語の書き手の役目は、『最初から、私とあいつの二人に決めていた』――そうじゃないの?」
後輩「…」
少女「世界から『答え』として導き出される。この答えは、私一人では出せないってことを知ってたから」
少女「つまり、世界の現実化っていうのは…」
後輩「本当ですよ?」
少女「!」
後輩「導き出された答えが、現実化するんです」
少女「!!」
少女「……なら…」
少女「破壊の店長の人が…この物語世界に自我を以て≪演者≫としてシナリオを改変しようとすることも、」
後輩「はい。織り込み済みですよ」
母「!?」
姉「ええっ」
後輩「ただし」
後輩「今、この時からどうなるかは私には分かりません」
後輩「少女先輩の生き方は、これまでの答えです」
後輩「主人公である彼もまたそのように」
後輩「そして、これからの答え」
後輩「それが、このクライマックスの後にあるんです」
後輩「相反する先輩と主人公の彼の存在が紡ぎ出した物語の答えに、全てがあるんです」
後輩「それが、先輩達のリアルになるんです」
後輩「世界は、自分の信じたように姿かたちを変えていく」
後輩「本質は、フィクション世界も、現実世界も変わりません」
後輩「人はそれを引き寄せの法則と呼びますけどね」
後輩「全ては、思いの力なんです」
少女「……後輩ちゃん…」
後輩「ちゃん、なんて。呼ばないでください…」
後輩「私は、『後輩』という存在から生み出された架空情報でしかないんです」
後輩「本当の私は、あの時の事故で、死にました」
少女「…………そん、な」
後輩「どうか悲しまないで下さい」
後輩「ひどく辛い目に合わせてしまってごめんなさい。ヒキニートさんの言うとおり、私はあなたの友達として、とても酷いことをしてしまいました」
後輩「でもそれでも知ってほしかった。あなたが知るべき『答え』を…」
姉「…」
母「…」
少女「……うん」
少女「見つけるよ。答えを」
後輩「…はいっ」
姉「そのエンディングに進むにしても、」
母「破壊の店長を倒さないと…」
母「答えを見つけるために…」
少女「でも、どうすれば……」
後輩「先輩は、この物語の原作者です」
少女「う、うん」
後輩「だから、あなたの思うようにすれば、いいんですよ。きっと」
少女「………………」
少女「…!」バッ
主人公(覚醒勇者・闇&炎)「あああああああああああッ!!!!!!!!!」
――主人公は≪ダークメテオ・インフィニティ≫を放った!
破壊の店長「まだ分からないのかっ。無駄なんだよ!!!」
破壊の店長「現実を知れ!!! 理想では前には進めないんだよ!」
ズゴァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――破壊の店長に888883376473648920000000000000000ダメージ!
破壊の店長:HP
測定不能
主人公(覚醒勇者・闇&炎)「く、そ…」ゼイゼイ
主人公(覚醒勇者・闇&炎)「どうすれば…」
――少女がパーティーメンバーに加わった!
破壊の店長「!」
主人公(覚醒勇者)「!?」
少女(聖女)「私は…聖女」
少女「現代に生きる、マリアの役目を果たす者っ」
主人公(覚醒勇者)「馬鹿!!!! 何やってんだ、本当に信じまうぞッ!!」
破壊の店長「ふふん」ニヤリ
――少女は≪転生の詠唱≫を始めた!
主人公(覚醒勇者)「!」
――――立ち上がれ。
破壊の店長「? 何をする気かは知らんが」
――――気高く舞え。
破壊の店長「好きにはさせんぞ!!!!!!!!!」
――――天命を受けた戦士よ。
破壊の店長は≪神の連撃≫を放った!
主人公(覚醒勇者)「くそッ!!」
主人公(覚醒勇者)「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああッ!!!!!!」
主人公(覚醒勇者・五属性)「」ズオッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――――明日の平和への礎となれ。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
主人公(覚醒勇者・五属性)「間に合え……ッ!!!」ギュオッ!
――主人公は≪アルティメット・シールド≫を発動した!
ドゴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
少女(聖女)「――――」
主人公(覚醒勇者・五属性)「ッぐ……あ…!!」グググ…
姉「ヒキニートが防いだ!」
母「…でも……あのままじゃ保たない…!!」
後輩「……」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
主人公(覚醒勇者・五属性)「何…してんだ……早くパーティーから抜けろ…」グググ…
主人公(覚醒勇者・五属性)「庇いきれない! このままじゃ二人とも死ぬぞ!!」グググ…
少女(聖女)「――――」
――――天に捧げし命よ。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
主人公(覚醒勇者・五属性)「おい!!!!!!!」
――――弱き者の盾となれ。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
少女(聖女)(今までに散っていった、そして消えていった、私自身が生み出した皆…!)
少女(聖女)(力を…!)
破壊の店長「終わりだッ!!!!!!!!!」
――――そして世界を導け。
――時間の狭間――
?『待っていたよ。マリア』
――――ゴアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
破壊の店長「!!? 何だっ?」
姉「!!」
母「!?」
後輩「……ちょっとカッコいいですよ。先輩」
少女(聖女)「…」
主人公(真・覚醒勇者)「」コオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………
主人公(真・覚醒勇者)「何だ…これ……」コオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………
――はじめまして。
主人公(真・覚醒勇者)「!?」
少女(聖女)「フィクション内の人物は全て消えて行ってしまってたれど……」
少女(聖女)「時間の狭間にいた、『真の勇者の魂』だけは、その存在を保ち続けていたの」
少女(聖女)「今その魂を、あなたの身体に転生させたの」
破壊の店長「馬鹿なッ…そんなことが……」
少女(聖女)「本当は使わず終いの設定で、続編にこの魂は登場する筈だったけど…」
姉「…………これで…」
母「……勝てる」
破壊の店長「ふ、ざけるな。使わず終いだった設定、だと…?」
破壊の店長「そんなものの前に、この僕が屈してたまるかああああ!!!!!!!!!」
――破壊の店長は≪神の天罰≫を放った!!
グアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――力を貸すよ。主人公。
主人公(真・覚醒勇者)「! ……」
主人公(真・覚醒勇者)「ああ…!!」
主人公(真・覚醒勇者)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
――主人公は≪終焉の拳≫を放った!!!
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
姉「」
母「」
後輩「」
少女(聖女)「」
主人公(真・覚醒勇者)「……、」
破壊の店長「く、そ…」
破壊の店長「」ドサッ…
姉「…」
姉「やったァ!!!!!!!!!!」
少女(聖女)「……ふう」
後輩「」ニコリ
母「ヒキニート!!!!」
主人公(真・覚醒勇者)「…ああ、やったぜ」
主人公(真・覚醒勇者)「…」
主人公(真・覚醒勇者)「サンキュー」
――どういたしまして。
ヒキニート(38)「」フシュウ……
破壊の店長「く、そ…」
ヒキニート(38)「…」
ヒキニート(38)「ニートだって誰だって、前に進もうとする限りは、希望は絶対に残されてる」
ヒキニート(38)「例えそれが現実世界でも、どんなに理想とかけ離れた、絶望に満ち満ちた世界でも、」
ヒキニート(38)「希望は、自分の世界を生まれ変えらせる」
ヒキニート(38)「信じ続ける心こそ、人に残された最後の強さだ」
破壊の店長「……ふん」
破壊の店長「いいさ…」
破壊の店長「逝くのは…僕一人になった。それだけ…さ」
破壊の店長「……だが…、せめて…」
破壊の店長「君のように…、絶望を知って尚……、希望を捨てない、人間で在ることが…できるのだと…」
破壊の店長「もう少し早くに…知りたかった……」シュオオオオオオオ…
バシュウッ――――…
ヒキニート(38)「…」
ヒキニート(38)「…」
ヒキニート(38)「さて」
ヒキニート(38)「ん? あれ?」
少女「…どうしたの」
ヒキニート(38)「いや…お前……」
ヒキニート(38)「――皆は?」
少女「……え?」
少女「」バッ!!
少女「!」
ヒキニート(38)「母さんも…姉ちゃんも…お前の後輩も…」
少女「…い、ない……?」
――ウィン!!!
ヒキニート(38)「!」
ヒキニート(38)「メッセージ、ウインドウ…」
シュイイイイイイイイイイン――――……
ヒキニート(38)「!」
少女「目の前に…二つの……扉が…」
『――ラストバトルノショウリ、オメデトウゴザイマス』
ヒキニート(38)「…おい……」
少女「…知らない……」
少女「私はこんな設定、考えてない」
『――ミギノトビラハ、≪リソウノセカイ≫ニツナガッテイマス』
『――ヒダリノトビラハ、≪ゲンジツノセカイ≫ニツナガッテイマス』
『――エランデクダサイ』
『――ナオ、コノセカイハ、アト5フンで、ショウメツシマス』
『300』カチッ
『299』チッ…
『298』チッ…
『297』チッ…
ヒキニート(38)「…」
少女「…」
ヒキニート(38)「…どう、する」
少女「…」
少女「……私は、」
少女「理想の世界に行きたい」
ヒキニート(38)「…そっ、か」
ヒキニート(38)「そりゃそうだ」
少女「あなたはどうするの」
ヒキニート(38)「我輩は…」
ヒキニート(38)「…現実の世界、かな」
少女「!」
少女「どうして?」
ヒキニート(38)「この物語に感化されてさ」
ヒキニート(38)「今一度、戦ってみたくなったんだよ。現実とさ」
少女「辛いことばかりなのに?」
ヒキニート(38)「戦ってこそ、人間なんだよ」
ヒキニート(38)「逃げていたら、生きてるって、言えない」
少女「…」
少女「理想を追い求めることは、逃げじゃない」
ヒキニート(38)「当たり前だ」
ヒキニート(38)「たださ。この二十年間の自分にけじめをつけたいんだよ」
ヒキニート(38)「失った時間はもう取り戻せない」
ヒキニート(38)「でも、これからどうしていくのかは、いつだって自分自身が決めることができる」
ヒキニート(38)「無駄ってのはな、そこから何も学ばなかった時に、初めて『無駄』になるんだよ」
ヒキニート(38)「我輩は、あの逃げ続けた二十年間を、無駄にしたくない」
ヒキニート(38)「あの二十年間でさえ、自分が生きた証として背負っていきながら、明日を生きていくんだよ」
ヒキニート(38)「そのためには、用意された理想じゃなくて、自分が決めたやり方で理想に向かって行きたいんだ」
ヒキニート(38)「あのあまりにも過酷過ぎる現実世界で、理想を見続けて行きたい。ただし、現実から目をそらさないままに」
ヒキニート(38)「そして家族に、感謝の気持ちを表すんだ」
ヒキニート(38)「我輩は、今を以て、駄目人間を、卒業する」
少女「……」
少女「そう…」
少女「なら、ここでお別れね」
ヒキニート(38)「何だよ。寂しいのか?」
少女「寂しくない」
ヒキニート(38)「即答!」
少女「…」
ヒキニート(38)「お互いさ…強く生きようぜ」
ヒキニート(38)「何が強さなのか。何を以て大人なのか。色々偉そうなこと言っておいて、本当は我輩もよく分からないんだが」
ヒキニート(38)「決めるのは、いつだって自分の心だ。そうだろ?」
少女「…」
少女「そうかもね」
ヒキニート(38)「お前はお前が決めた道…答えで進め」
ヒキニート(38)「我輩も、我輩が決めた答えを進んでいくよ」
少女「うん」
少女「……あなたの祖父のこと」
ヒキニート(38)「?」
少女「本当に信じてるの?」
少女「現実化に失敗した、ここまで辿りつけなかったあなたの記憶そのものが、祖父との誓いの正体だって、そう言われたじゃない」
ヒキニート(38)「ああ」
ヒキニート(38)「思うんだけどさ」
ヒキニート(38)「この世界で、お前…少女の書いた通りに進んだことって、あまりなかったろ」
少女「それは破壊の店長もいたから…」
ヒキニート(38)「違う」
ヒキニート(38)「あの後輩は、それも知った上だったと思うんだ」
ヒキニート(38)「この世界で、何が本当で、何が脚本だったかなんて、結局、全ての根源である後輩以外には知りようがないんだ」
少女「…」
ヒキニート(38)「だから、祖父の存在が過去の我輩の記憶のものだって認識していること自体、筋書きに過ぎないかもしれないんだ」
ヒキニート(38)「だって、少女はこの物語の書き手だったけど、既定の通りに進まないことばかり、おまけに世界を具現化したのは後輩だ」
ヒキニート(38)「いるさ。爺ちゃんは」
ヒキニート(38)「だから、爺ちゃんの存在も、誓いも、嘘じゃない」
少女「…そうね」
ヒキニート(38)「…」
少女「…」
少女「…あと、ごめん」
ヒキニート(38)「え?」
少女「遭いたくなかったって言ったこと。ずっと、引きずってるみたいだったから」
ヒキニート(38)「…ああ、いいよ」
ヒキニート(38)「…」
少女「…」
『5』チッ…
ヒキニート(38)「そろそろ、時間だな」
少女「」コクリ
ヒキニート(38)「…」
ヒキニート(38)「それじゃあ、」
少女「うん」
「「――――また会う日まで」」
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
・・・・・・・・・、・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・。
少女宅
少女「念願の賞を取った!」
少女「やった!」
少女「これで晴れて…小説家に……」
少女「……やったよ、お母さん」
少女「お母さんが大好きだった小説を…私……仕事にできたよ」
少女「…見てる? お母さん…」
少女「夢、叶ったよ…」
少女「叶えたんだよ…」
少女「やったよ…」グスッ…
数ヶ月後
少女宅
少女「――理想が前面に出過ぎていて現実味がない」
少女「――現実離れしている」
少女「――人物同士の接し方、展開などが綺麗過ぎる。作り物として見てしまう。物事をよく観察せずに現実逃避する作家にありがちな書き方」
少女「…」
少女「そんなこと。言われたって…」
少女「どうすればいの…」
――学生の身分でこの賞を取ったのは凄いし、賞のブランド効果もあって、売上も相当なものになってるけどねえ。
――もう少し、色々な人生経験を積んでから、改めて筆を取ってみるのはどうかな。
――このままじゃ作家の名前ばかりが先行して、その知名度に伴わない内容に飛び交う批評から押し潰されちゃって、二度と筆を握れなくなるかもよ。
少女「……」
少女「作るって…何……」
少女「じゃあ、宇宙で戦う話を書く人は、実際に宇宙まで取材に行けってことなの?」
少女「ファンタジー世界を描く人はどうなのよっ」
少女「現実味って…何……」
少女「創作物は理想で当然でしょ。何を、言ってるの……」
少女「どうしたらいいか…もう…分からない……」
少女「……」
少女「…」
夜
少女父「ただいまー」
少女「おかえり」
少女「お風呂の掃除済ませて、お湯も沸かしておいたから」
少女父「ああ…。悪いな、いつも」
少女父「特に最近は小説の仕事と学校の勉強で忙しいのに、家事の負担もどんどん…」
少女「いいの」
少女父「ごめんな…」
少女「お父さん」
少女父「何だ?」
少女「話があるの」
少女父「――進学の方針に変える?」
少女「うん」
少女父「どうしてっ。小説の仕事に専念したいからと、あれだけ進学を渋っていたのに…」
少女「…」
少女「もっと、いろんな経験をしたいの」
少女「色んな人と接して、色んな所へ行って、」
少女「それには、まだもう少し、学生を続けていたいと思って」
少女父「それにしたってお前、受験勉強は…」
少女「」バッ!
少女父「…これは」
少女「……この間の模試の結果」
少女父「…お、おお。凄いじゃないか。いつの間に…」
少女「進学したら、アルバイトも始めようと思うの」
少女「いいよね?」
少女父「あ、ああ。勿論。好きにしたらいい…」
少女「それで、接客にしようと思うの」
少女父「ああ。そうするといい…」
少女「もうちょっと、現実を直視しようと思ったの。この目でちゃんと世界を見つめ直そうって思ったの」
少女「そして、現実味のある理想を持った作品を書くの」
少女父「そうか…」
少女父(あれだけ一人を好んでいたこの子が…変わったな……)
少女父(母さん。この子は、しっかりと前に進んでるよ…)
少女「で、早くお風呂入っちゃってよ。ご飯作りたいから」
少女「さっきから足臭いし」
少女父「え!?」
少女「早く!」
少女父「わ、分かった分かった…」
家
フリーター(39)「じゃあ、行ってくるな」
母「行ってらっしゃい。今日も平行して職探すんでしょう? 気を付けてね」
フリーター(39)「ああ、ありがとう」
姉(42)「いてらー」
父「おいフリーター」
フリーター(39)「何だよ今急いでるんだよ」
父「ちゃんと爺ちゃんに挨拶して行きなさい」
フリーター(39)「! ああ、忘れてた…」
和室、仏壇前
フリーター(39)「……」
フリーター(39)「爺ちゃん、行ってくるな」
フリーター(39)「…」
フリーター(39)「やっぱこの歳じゃ、選り好みしなくても、職って全然見つからないけど…」
フリーター(39)「悲観しないで、頑張るよ。戦うよ。現実と」
フリーター(39)「やりたいこと…我輩の理想が、もう少しで見つかりそうなんだ」
フリーター(39)「…」
フリーター(39)「爺ちゃん…」
フリーター(39)「行ってきます」
セッブンイレブン
普通の店長「おはよう」
フリーター(39)「おはようございます!」
普通の店長「あ、そうだ」
普通の店長「今日、新しい子が面接に来るから。もし見かけたら控え室に通してあげてね」
フリーター(39)「分かりました」
フリーター(39)(最近、人手が不足してたもんな…)
フリーター(39)「さて。今日も、頑張りますか…」
とある夢を見た。
登場人物や世界観からして、おそらくは『あの時』の世界だ。
――――何が模索よ。結局それも理想論じゃない
――――違うね
――――はぁ?
――――さっきも言っただろうが…。特別なことは何もしねえ。優れた奴ほどな、結局のところ、特別なことは何もしてねえんだよ
――――世界には答えのねえことが山ほどある。便利大好き。効率大好き。そんな奴らほど、決まって近道を探すもんだが…
――――遠回りしないように確かな道を見定めることは悪くねえ。だがな、ずるがしこく進める近道なんてものは、世界のどこを探そうが存在しねえし、あったとしても、そこから生まれた結果は希薄なものになる
――――俺やザンクスの出した結論は、理想論じゃねえ。いつだって、理想と現実は同じ処に存在している
――――企業勢力や、勇者の覚醒なんざ、利用する価値はねえ。ただ、現実と向き合いながら、理想を見据え続けること。これこそが、強さだ。人の強さなんだよ
あれは、何だったのだろうか。
どこか懐かしさを感じた、あの物語世界。
あの世界は、今の自分に何か訴えかけようとしているのだろうか。
ピンポンピンポーン
フリーター(39)「いらっしゃいま……」
フリーター(39)「……あ…」
フリーター(39)「お前……」
――――いつだって、理想と現実は同じ処に存在している
少女「あ、あの…今日面接に来た少女と……」
少女「……あ…………」
フリーター(39)「……よう」
少女「…」
少女「何となく、そんな気がしてたの」
フリーター(39)「そっか…」
少女「ずっとお礼を言いたかったの。あなたがあの時にかけてくれた言葉のおかげで、今、前に進めてるから」
少女「ありがとう」
フリーター(39)「……ああ」
少女「――――逢えて、よかった」
完
見事