――空気が凍てついた。
姉は、五年前に祖父が死んだと知らされた時の80000000倍は驚いている表情を見せている。
姉「…………、ど、うして」
ヒキニート(38)「決めたんだ。我輩は、何がなんでも、コンビニへ行く。家を出て三分歩いた所にある信号を渡り、左折、右手にあるパン屋と薬局とよく話しかけてくるオバハンを通過したら見えてくる、あの『セッブンイレブン』に…」
姉「無茶よッ!!」ガタタンッ!
股間が凍てついた。
元スレ
ヒキニート(38)「ちょっとコンビニ行ってくる」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1372089564/
父「何!!?コンビニだと!」ズガガガンッ!!!
父が腰掛けていた椅子が、どういう作用が働いたのか粉々に砕け散ってしまった。
無理もない。何しろ中学を卒業し高校に進学したものの、あまりの醜悪な容姿に、とてつもないイジメを受け、そして引きこもり、高校を中退。以降、一歩たりとも外に足を踏み出したことのない中卒糞ニートが、外どころか、何とあの『コンビニ』に向かおうとする旨を口にし出したのだから。何の脈絡もなく。
何の、脈絡もなく…?
いや、違う。
全ては五年前から始まっていたのだ。
そう、言うなればこれは『宿命』に他ならない。
母「コンビニ!!!!!!!?」
キュイーン…――
カッ!!!
ドッゴオオオオ!!!!!!!!!!!
ズゴゴゴゴ……
どういう作用が働いたのか、近くの小学校が吹き飛ぶ音がした。
無理もない。……。いや、え?吹き飛ぶ?
母「じょ、冗談でしょヒキニート。ちょっと最近冷たく接しすぎたかしら…。とにかく、何か悩んでることがあるのなら言いなさい」
ズゴゴゴゴ…
ヒキニート(38)「悩みなんて…。いや、その葛藤を乗り越えるには、尚更行かなきゃいけないんだ。……コンビニへ」
ズゴゴゴゴ…
母「正気なの…」
ピーポーピーボー…
父「家族会議だ」
リビングにて突如開始された家族会議。
母「ねえ、そろそろ聞かせてくれない?コンビニへ行く理由を」
姉「こいつ、昔から何でも一人で考え込んで一人で決めちゃう、そういうタイプなのよ。それも、大事ほど」
この家族会議も何年振りになるのだろうか。いやに懐かしい。確か祖母が転んで膝を擦りむいたあのとき以来じゃないか。
祖母(545800)「…………」
ヒキニート(38)「皆は、もう忘れちゃったのかよ!五年前を!」
父「……ッ」
姉「!?」
祖母(545800)「!……、ヴぅっふっ、ゴホァ、ゲハッ!ゲハッ、ゴボボォッア!!!……ゼー、ゼー」
ヒキニート(38)「目を背けていたって、前には進めないんだ。長い間に引きこもっていた経験で知ったよ。もう我輩は何がなんでも前に進む」
父「そうか…五年前を思い出して、か…」
ヒキニート(38)「行かせてくれるよな。セッブンイレブンに」
父「…………。よし、いいだろう」
母「お父さん!!」ガタタンッ
キュイーン…――
カッ!
ドッゴオオオオ!!!!!!!!!
母「コンビニへ行かせるなんて、無理よ!それも全く外に出ないヒキニートが!」
母「死にに行かせるようなものじゃない!!!」
ヒキニート(38)「何か爆発したんだけど。ねえ?」
父「そう焦るな。流石に死にはしないだろう」
ズゴゴゴゴ…
母「大怪我なんて確実よ!!」
ピーポーピーポー…
ヒキニート(38)「その怪我人、出たっぽいよ。ねえ?爆発が」
父「何もヒキニート一人で行かせるとは行っていない」
姉「!」
祖母(545800)「グッォォエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ……」
父「俺も行く」
母「ば、馬鹿なっ。寝言もいい加減にしてっ!!今日は日曜日、家族で楽しいピクニックじゃない!」
祖母(545805)「ヒキニートを置いてな」
姉「あ、お婆ちゃんまた勝手に五年も老けて!」
祖母(545805)「」ホジホジ
父「ピクニックか…」
父「そうだな、今日は日曜日。楽しい楽しいピクニック。だった、そのはずだ」
父「だがな」
父「お前も薄々感じていたんじゃないのか…?あの、五年前の『惨劇』を。あの件以来、我が家庭では偽りの日常を過ごすことで、その精神的ダメージから逃げていたんだ。ずっと」
母「偽りの、日常…?」
父「そうだ。嘘の笑顔。建前の会話。過去の封印。俺の靴下」
ヒキニート(38)「ん?」
父「全て。全てが!この五年もの間、まやかしだった!そうだろ!?」
母「…………」
ヒキニート「…………」プウッ…
姉「…………」ヘックシッ
祖母(545805)「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」ヨロヨロ…
父「……。……、……。まあ、この緊張感の無さは想定外だが…」
父「ともあれ、だ」
父「俺は応援するぞ。お前のコンビニに向かわんとする、その勇姿を。志を。誇りを!」
ヒキニート(38)「早く行こうよ」
父「えっ」
姉「そうね。私も一緒に行くー。私、シュークリーム食べたーい」
祖母(545805)「ワシも行く。じゃがりこ買うわい」
父「えっえっ」
ガタッ ガタッ…
ヒキニート(38)「いっやぁー、久し振りの外出だなあ。靴は何履いていこうかな」
姉「まずアンタ外に出る服がないじゃない」
祖母(545805)「じゃっがりこ!HEY!じゃっがりこ!エキサイティング!YEAH!!」
バタバタ…
父「…………………………………、」
父「おい!!!!!!」
母「本当に、いいのね」
父「……ああ。あいつが決めたことだ」
セッブンイレブン
音速の店員「――――!?」
剛腕の店員「……ドウシタ。キョウワ、レジウチニズイブンミスガオオイジャナイカ…。ナニカアッタノカ」
音速の店員「今…?いや?そのちょっと前から?何か背筋が凍る?その?何と言うか直感というか?第六感?ああ、虫の知らせっていうか?」
剛腕の店員「オマエノシャベリカタワイツモキキトリニクイ」
鉄壁の店員「感じた。俺も。何かが。動き出す。そう。これは。悪い予感」
蠱惑の店員「あれれェーん。もしかしてェ、動き出したんじゃないのォ?」
剛腕の店員「ウゴキダシタトワ……、モシヤ」
――ピンポンピンポン
「「「「いらっしゃいませー」」」」
自宅
ヒキニート(38)「さて…」ジャキン!
姉「うん、様になってるじゃないの。覇剣《ヒキニクノツルギ》」
ヒキニート(38)「何かこの剣の名前から皮肉を感じてならないのは気のせいなのかね」
姉「さあ。名前を付けたのは千年前の人だし。古の剣よ。大事にして」
ヒキニート(38)「千年…。長い間生きてた婆ちゃんなら何か知らない?この覇剣《ヒキニクノツルギ》の由来」
祖母(18)「そんなの知らない」
ヒキニート(38)「あれェ!!!?」
母「お待たせ」
姉「ちょっとお母さん…。そのステッキ…」
母「いいのよ。コンビニに行くにはこれくらい、しっかりした装備は必要不可欠。これさえあれば、レベル60位の魔物なら一瞬にして焼き尽くせるわ」
ヒキニート(38)「我輩は剣士」
母「私は魔術師」
姉「私は銃士」
祖母(18)「わしは召喚師」
父「そしてこの俺…」
ヒキニート(38)「行くか」ガチャリ
姉「シュークリーム売ってるかなあ」
母「私は湿布が欲しいわ」
祖母(18)「じゃがりこは苺味に限るわい」
父「おォい!!!!長年引きこもっといて何だこのアクティブっぷりは!!あ!俺『武闘家』です!……ちょっとお待ちになってください!!」
――こうして、長く険しき旅が幕開けされた。
ヴァミリーマート
国王「……」
姫「王よ。このままではいけません」
国王「その言葉はもう聞きあきた…いい加減に諦めろ」
姫「いけませんっ。このままでは、ヴァミリーマート、ロソーン、そしてセッブンイレブン、全てが崩壊してしまいますっ」
姫「解決するには。この日本国のどこかに存在すると云われる、かの《伝説の勇者》を探しだし、全ての悪の根源であるセッブンイレブンをグッチャグッチャに叩き潰し……。いえ、成敗し、この国の均衡を保つ。それしかありません!」
国王「セッブンイレブンに負けない商法を考え出せばいい…」
姫「だからそれではいけないと!」
兵士「た、たたた大変ですッ!!」
国王「何事かっ」
兵士「よ、予言者オッパーイ様が目覚めたのです!
姫「!!」
国王「それは誠か!」
兵士「はい。オッパーイ様によると、先ほど『勇者が動き出した』と、そう宣って」
姫「何ですって!!!!」
国王「落ち着け姫よ…」
兵士「い、いかが致しましょう」
国王(このタイミングで勇者が動くか。勇者と言えば、先日に、これは極秘事項だが、国宝ヒキニクノツルギが何者かによって盗み出されたとの一報があったな。何か関係が…)
国王「……ならば、勇者の向かう先は恐らくセッブンイレブンであろう。しかし、セッブンイレブンに存在する、世界最強の『破壊の店長』と相対することになる。もし奴が本気を出すなどの展開になれば」
姫「……、なれば?」
国王「世界滅亡だ」
兵士「…………、」
姫「世界…滅亡…」
国王「これは杞憂であればいいが…。近頃、セッブンイレブンの肉まんが格別に美味いとの情報を小耳に挟む」
姫「馬鹿な!!肉まんにおいては我がヴァミリーマートの」
国王「落ち着かんか。知っての通り、肉まんには魔術エネルギーを一時的に向上させる効用を持つ。その効果は、味の質に比例して増大する」
国王「我がヴァミリーマートの○×店舗の店員Aが、一月ほど前にセッブンイレブンへ偵察へ向かったと聞いた」
姫「! スパイとは。なんと命知らずな…」
国王「その勇敢な店員Aが購入したセッブンイレブンの肉まんを試しに口にしたところ、そのたった一口が魔力を飛躍的に増大させ、あまりの魔力を抑えきれずに四国地方を跡形もなく消し飛ばしてしまったと聞く」
姫「いややべえじゃんそれ」
国王「姫。勇者を助けに行くのだ。奴らは危険過ぎる」
兵士「国王様。お言葉ですが、何も姫にその役目を任せることもないかと。我々、兵士にその役目を一任して下され」
国王「その提案は却下だ」
兵士「なっ、何故」
姫「兵士。私には、特別な力が宿っているのです。それは、かの《伝説の勇者》を真の姿に覚醒させる力」
兵士「真の…姿……」
姫「恐らく、現状、勇者は、その《伝説の勇者》という通り名からは考えもつかないほどのブサイクでチビでハゲでデブ…………、いえ、醜悪な出で立ちをなさっているに違いありません。それは、そう」
姫「呪いなのです」
兵士「呪い……?」
国王「要はその呪いを解かなければ、一口食すことで広範囲を跡形もなく消し飛ばすチート肉まんによって力を蓄えたセッブンイレブンの店員軍団、ましてやそれらを指先ひとつでねじ伏せる《破壊の店長》といった屈強な敵と相対した時、瞬殺されてしまう。勇者はこの国の希望だ。それは避けたい」
国王(せめて《魔女》さえ着いていれば、また話は変わってくるかもしれないのだが…)
兵士「国王。このままでは…」
国王「うむ。皮肉にも、全てを救いに第一歩を踏み出した《伝説の勇者》だが…。その一歩が、かろうじて保ち続けてきた均衡を破ってしまう可能性がある」
国王「戦争が起こってしまう」
姫「戦、争…」
国王「このままでは、日本国はセッブンイレブンに全てを征服されてしまう。それを防ぐには、今の状態を崩壊させるしかない。つまり何らかの形で勝負に出るしかないのだ。戦争が起ころうとも」
国王「だが《破壊の店長》が本気を出せば戦争どころか、世界が滅亡してしまう。そのような事態を招くくらいなら、歯を食い縛り、堪え忍ぶしかないと。そう、思っていた。だが、目覚めてしまったのだ。……勇者が」
国王「そしてその脚先はセッブンイレブンへと向けられている。衝突の始まりだ」
国王「事態を良い方向へ運ぶにはいくつかの方法がある」
国王「ひとつは勇者を止めること」
国王「ひとつは姫の力により勇者を覚醒させ、憎きセッブンイレブンをぶっ潰すこと」
国王「ひとつは、ロソーンと同盟を結び、憎きセッブンイレブンをぶっ潰すこと」
国王「もうひとつは、セッブンイレブンをぶっ潰すこと」
国王「とにかくぶっ潰すこと」
兵士「国王様。ぶっ潰しましょう」
国王「うむ。うむ」
姫「急に好戦的になりましたわね」
姫「……まあ、私を遣うとの言葉を頂いた時点で確信してました。今までの我慢から手段を転じさせ、勝負に出る。その意志を」
姫「私が、勇者を覚醒させます」
国王「念には念だ。ロソーンに同盟締結の話も持ち掛けてみよう。馬と遣いを用意しろ」
兵士「馬?現代に馬?」
~自宅を出て三センチ位の所~
母「コンビニまでの地図は用意した?」
ヒキニート(38)「母さん…。いくら長年引きこもっていたとは言え、我輩をあまり見くびらないでほしい」
ヒキニート(38)「目的地はあの『コンビニ』だよ?自宅から五分かかる場所だ。人間としての最低限の常識を弁えていたら、普通、地図くらいは用意する。常識さ」
姉「聞き苦しいから少し黙れ」
祖母(545800)「大分疲れたのじゃが、今までにどれほど歩いたのかの」
父「母さん。聞いて驚くな」
父「三センチだよ」
祖母(545800)「何とっ。それほど歩いたか」
ヒキニート(38)「ひとまず休憩だな」ゼイゼイ…
姉「……………………。そうね」
『おお、今日は一家揃って。いいですな、どこか出掛けるんかい?』
母「――きたわ!」
ヒキニート(38)「え?」
きんじょのじじいAがあらわれた!
父「敵かっ」スッ
姉「まだいるわ!」
きんじょのじじいBがあらわれた!
きんじょのじじいCがあらわれた!
きんじょのじじいDがあらわれた!
祖母(545800)「まだおるわい」
きんじょのじじいEがあらわれた!
きんじょのじじいFがあらわれた!
きんじょのじじいGがあらわれた!
きんじょのじじいHがあらわれた!
きんじょのじじいIがあらわれた!
↓
きんじょのじじいZがあらわれた!
ヒキニート(38)「うわあああああああああああああああああ!」
『どこに出掛けるんじゃ?ピクニックかっ。ピクニックなのか!!?』
『ピクニック!!!?ピクニックと言うと、あ、あのピクニックかっ』
『ワシも連れていけ!さもなくばきな粉もちを右耳にひたすら詰め込んでやるぞ!』
『ピピピピピクニック。ピピピピピピピピピピピピ。ピピピピピピピピピピピピ。ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ』
ヒキニート(38)「うあああああああああアアアアアアアア何だこいつらは!」
父「落ち着け!あれは長年の一人暮らしで孤独感に苛まれた、とにかく誰でもいいから会話を欲している近所のじいさんだ!」
母「会話さえ応じれば、どうということはないわ。ここは私に任せて」
母「こんにちは」
きんじょのじじいA『むむッ!?』
――きんじょのじじいはメテオバーストを発動した!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!
母「ぐぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
母:HP
12/50000000000000
母「……ぐッ、」
ヒキニート(38)「おい!!自宅から僅か三センチ地点で強すぎだろ敵!何だよメテオバーストって!」
父「落ち着け。よくある」
ヒキニート(38)「ねえよ!……どうする、このままじゃ勝ちの目はない。一度逃げるか…」
姉「この数を相手に退散は難しいわ」
祖母(545800)「わしが出よう」ザッ
ヒキニート(38)「婆ちゃん!」
――祖母は歩いた!
祖母(545800)「ぐベルぇヌフォォォォォォォッ!ムンッグアアイヤイヤイヤイアアアアアアアアアアアアアアア!ア!ア!グボァフォルァッ!!!!!ヴグァ!!」
ヒキニート(38)「救急車アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」ピポパポ!!!
祖母:HP
000000000.27/3
祖母(545800)「ふう。見たかわしの活躍」
ヒキニート(38)「帰ってくださると比較的嬉しいです」
姉「もうだらしないわね!私が行くわ!」ジャキッ
――姉は焔属性の銃弾を放った!
パァンッ!!
きんじょのじじいM「ふんッ!」バシッ
きんじょのじじいM:HP
∞/∞
ヒキニート(38)「やっぱ帰ろう。我輩が間違ってた」
母「もはや…これまでね…」
姉「旅が始まって今何分?凄い絶望感よ」
祖母(545800)「糞ゲーじゃ!糞ゲー!」
ヒキニート(38)「ぐっ。せっかく、一歩を踏み出せたのに。ようやく、外の世界に出たっていうのに。我輩は…。我輩は、こんなところで死ぬのか……」
父「…………、」
――きんじょのじじいはダーク・メテオバーストの攻撃準備に入った!
きんじょのじじいP『ふおおおおおおおお……』
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ヒキニート(38)「やっと…ヒキニートから一般的ニートへと進める、そう思ったのに…」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
父「…………、」
ヒキニート(38)「五年前の誓いは…果たせないのかッ!」
父「……、」
父「ヒキニート」
ヒキニート(38)「!」
父「お前はここ数年…俺のことを一度も頼ったりしなかったな」
ヒキニート(38)「な、なんで。今そんなことを…」
父「ヒキニート。この自宅から三センチ地点での凄まじいクライマックス感の中だからこそ、普段は恥ずかしくて口には出せなかったが…。そう、今なら」
父「今なら、言えることがある」
ヒキニート(38)「親父…」
父「父ちゃんはな。お前が、あの時に、顔を腫らし、その痛々しい身体で、立つのもやっとな、あのヨロヨロの状態で、言ったよな。苛められた、どうすればいい。そう言ったよな」
父「俺は、お前が苛めに会ったその事実に衝撃を受けつつも、どこかで安心してしまった自分がいたんだ」
父「お前はいつも独りよがりで、意固地で、誰にも甘えず、だからと言って強いわけでもなく」
父「そんなお前が、初めて、親父である俺を頼ってくれた。あれは、泣きそうになった。涙なんか見せたくなかったから泣かなかったがな」
父「そんなお前が俺を」
――きんじょのじじいはダーク・メテオバーストを発動した!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
父「ぴぎゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
父:HP
0/60000
ヒキニート(38)「親父イイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!!」
母「お、お父さんが…」
姉「近接戦闘の要が粉々に…」
祖母(545800)「若い癖にわしより先に逝きおってからに…馬鹿息子が……」
ヒキニート(38)「お前らッ…」
ヒキニート(38)「よくも…」ザッ
ヒキニート(38)「お、親父を…」ザッ
きんじょのじじいC「けけけ」
ヒキニート(38)「…………、」
ヒキニート(38)「」ギロリ
きんじょのじじいC「――――!!?」ゾクッ!!!
ヒキニート(38)「」ゴゴゴゴ…
姉「な…に……?」
…………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
母「天と地が…怯えてる……」
祖母(545800)「…」
祖母(545800)(こやつ…もしや……)
ヒキニート(38)「遊びは終いだ。クソジジイ共」ジャキッ!
母「! 覇剣、ヒキニクノツルギが…ヒキニートの怒りに呼応するかのように光を……」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!!!!!
きんじょのじじいA~Z『ぬ…ぐッ』
ヒキニート(38)「行くぞ…」
ヒキニート(38)「これが、ヒキニクノツルギ!!」
ヒキニート(38)「覇剣の力だああああああああ!!!!!」
――――ヒキニートはヒキニクバーニングを発動した!!!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
姉「剣の刃先から吹き出た炎が、龍の形になってくわ!」
ヒキニート(38)「食らえ!!!!!!!!!!」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
きんじょのじじいA~Z『ぐあああああああああ』
母「しかも全体攻撃よ!」
きんじょのじじいA~Z:HP
∞/∞
ヒキニート(38)「退さあああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアんッ!!!!!!!」
――ヒキニート達は逃げ出した!
――きんじょのじじいにかこまれた!
ヒキニート(38)「ぐっ…」
姉「もう無理よ!逃げられない!」
祖母(545800)「……、」
母「ヒキニートだけは死なせない!」
――きんじょのじじいはメテオバーストを発動した!
きんじょのじじいF「」ズゴゴゴゴゴゴゴ…
きんじょのじじいF「」カッ!!!!
母「ヒキn」ダッ!!
少女「――――特殊結界、解除」
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!
――ヒキニートに85ダメージ!
――母に5ダメージ!
――祖母は攻撃を回避した!
――姉に20ダメージ!
ヒキニート:HP
3415/3500
母:HP
7/5000000000000
祖母:HP
000000000.27/3
姉:HP
98880/99000
ヒキニート(38)「……。うっ…、ぐ。あれ?」
祖母(545800)「…」スタッ!
姉「あれ?敵の魔法の威力…落ちてない?」
母「あの子よっ」
ヒキニート(38)「え?」
――『少女』がパーティーメンバーに加わった!
――少女は≪月夜の弓≫を放った!!!
ヒュヒュヒュヒュ…
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ…
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ……!!!
きんじょのじじいA~Z「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
――ズドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!
――YOU WIN!!――
ロソーン
胸毛の覇者ゼウス「…。同盟、とな」
遣い「はっ。現状、セッブンイレブンに対抗しうる勢力は日本国に存在しません。そしていよいよ、ひとつの地方を消滅させるところまでセッブンイレブンの手が拡大している点から鑑みるに、」
胸毛の覇者ゼウス「ほほほ。あやつは焦っておるのか。となれば、確かにわれらも動かざるを得んな。さては勇者でも目覚めたか。ほほ」
遣い「……」
胸毛の覇者ゼウス「! ……」
胸毛の覇者ゼウス「誠か」
胸毛の覇者ゼウス「なるほど。あの誇り高いヴァミリーマートの国王の側から同盟を持ちかけてきたことにも得心が行った」
胸毛の覇者ゼウス「確信はあるのか」
遣い「預言者オッパーイ様の御言葉に相違ありませぬ。勇者が動き出した、と」
胸毛の覇者ゼウス「となれば≪破壊の店長≫の目的は…」
胸毛の覇者ゼウス「≪終焉の肉まん≫か」
遣い「……、」
裏店長「そいつはちと早計が過ぎるんじゃねえのかクソジジイよ」
胸毛の覇者ゼウス「裏店長!何をしておる、お主はまだ業務時間帯の筈…」
裏店長「くそだりい残業をこなしてる内に面白い情報が舞い込んできたもんでね」
裏店長「そこでこそこそしてるか弱い子猫ちゃんも顔を出したらどうなんだよ」
遣い「…」
遣い「姫」
姫「はい…」
胸毛の覇者ゼウス「何とっ。そなたはヴァミリーマートの王女ではないかっ」
姫「ゼウスよ。わたくしは、勇者を食い止める道を選びました」
姫「勇者を、封印するすべ。それには貴方の力が必要不可欠」
裏店長「はあ?封印?」
胸毛の覇者ゼウス「…」
胸毛の覇者ゼウス「覚醒の道を閉ざす、と」
姫「はい」
裏店長「待てよ。せっかくてめえらの憎きセッブンイレブンの頂に立つ≪破壊の店長≫をぶちのめすチャンスなんじゃねえのかよこれは。何でまたむざむざ言ってみりゃ味方の脚をへし折るような真似すんだよ」
姫「味方…」
姫「そうです。現在の情勢と、かの≪破壊の店長≫の目的から考慮すれば、どう事が転ぼうとも、わたくし達ヴァミリーマート勢、そしてロソーン含め、他のコンビニエンスストアからすれば勇者は、通り名に違わぬ存在として揺るがないでしょう」
胸毛の覇者ゼウス「しかし、だ」
胸毛の覇者ゼウス「勇者の覚醒にはあまりにも大きすぎるリスクが付きまとうのだ」
裏店長「リスク?」
姫「覚醒も封印も、私以外になし得ることはできませんが、その前に、ゼウス。わたくしも貴方の施しなくしては能力の行使は有り得ません」
姫「どうか御力を」
胸毛の覇者ゼウス「…………、」
胸毛の覇者ゼウス「やむをえまい」スッ…
――――シュオッ!!!!!!
姫「!」
姫「……」コオオオオオ…
裏店長「手を軽くかざしただけで王女が光りだした…?」
姫「元々は、永遠に行使されることのないよう、わたくしが幼き頃に国王である父がゼウスに頼んで〝預けた〟能力です」
姫「しかし時は来てしまった。勇者を止めます」
胸毛の覇者ゼウス「裏店長。護衛の任につけ」
裏店長「誰の」
胸毛の覇者ゼウス「王女殿下に決まっておろうが…。たわけがっ」
裏店長「あーはいはい分かりましたっての。だりいなあ」
姫「よろしくお願いします」
裏店長「ひとついいか?」
姫「はい?」
裏店長「生きることは楽しいか」
遣い「?」
胸毛の覇者ゼウス「…」
姫「それは…」
姫「勿論のこと」
セッブンイレブン
剛腕の店員「ウエカラノメイレイガクダサレタ。ユウシャイッコウヲブッツブシニ、スコシミセヲデヨウトオモウ」
音速の店員「今からか?マジかよ?深夜時間帯に一人にしないでくれって?退屈で死んじゃうから?行くなって?」
剛腕の店員「オマエノクチョウハ、イツモキキトリニクイ」
蠱惑の店員「命令じゃあしょうがないわよ。ま、頑張ってねん。せいぜいヘマしないように」
音速の店員「上がりか?お疲れ様?」
蠱惑の店員「あまり遅くまで起きてるとお肌が荒れちゃって困るからお暇させてもらうわん。発注ミス、片付けておいたから」
音速の店員「ありがとう?」
剛腕の店員「ジャア、イッテクル」
~自宅を出て三センチ位の所~
姉「お父さん…」グスッ…
祖母(545800)「大丈夫じゃて。必ず助かる」
姉「だって!!お父さんはもう死んでっ……!」
祖母(545800)「大丈夫、じゃて」
姉「……。グス。お婆、ちゃん…?」
母「…。何にしても、助かったわ。ありがとう。えーと…」
少女「少女で構いません」
母「少女ちゃん、ね。あなたは一体」
少女「…………」
ヒキニート(38)「…? な、何」
少女「勇者…」
ヒキニート(38)「ゆ、勇者ッ?」
祖母(545800)「……」
ヒキニート(38)「ま、参ったなあ。そっかあ。我輩って実は凄い存在だったんだなっ。しかし、そうか、この我輩が」
少女「――遭いたくなかった」
ヒキニート(38)「いやあ…。はっはっはっ……」
ヒキニート(38)「…………は?」
少女「…」
ヒキニート(38)「…」
少女「…」
~ヒキニート・ファンタジー~
【第一章】
ヒキニート(38)「遭いたく…なかった?」
少女「あなたは何しにコンビニに向かうつもりなの?」
ヒキニート(38)「それは…。そう、五年前の誓いを果たすため」
少女「迷惑なの」
ヒキニート(38)「!?」
少女「さっきはあなたに死なれちゃ迷惑だから、仕方なしに助けたの。でも、これ以上進むというのなら、今この場であなたを始末する」スッ
母「ちょ、ちょっと!!」
祖母(545800)「……」
姉「誰、なの。あなた…」
少女「引きこもりニートは引きこもりニートらしく、家で大人しくしてて」
少女「メガニートとの誓いなんて、本当、馬鹿馬鹿しい」
ヒキニート(38)「!!?」
ヒキニート(38)「な、んで。祖父ちゃんの名を…」
少女「あなたには関係ない」
ヒキニート(38)「関係。ない? そんな、だったら、我輩に関わるなよ!!」
ヒキニート(38)「そこをどけ! 助けてくれたことは感謝するよ。けどな、理由もなく始末されてたまるか」
ヒキニート(38)「誓いを果たすんだ!だから外に出たんだ!こんな脚ガクブルでも、外の空気に不慣れでも、近所の目線が怖くても、」
ヒキニート(38)「コンビニに行くって、セッブンイレブンに行くって決め」
ドシュウ!!!!!!!!!!!
――ヒキニートに3400ダメージ!
ヒキニート:HP
15/3500
ヒキニート(38)「ッ…、は……」
姉「……ひ、…」
姉「ヒキニートッ!!!」
母「な、何。何が、起きてるの」
少女「次で終わり」スッ
姉「待」
――少女は≪月夜の弓≫を放った!!!
ドシュウ!!!!!!!!!!!
――――ゴオオオオオオオオオ……
祖母(545800)「あれは…」
姉「え…え?」
母「本当に…ヒキニートなの?」
ヒキニート(炎)「…」ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!
少女「ヒキニクノツルギとの融合…」
少女「形態≪炎≫」
ヒキニート(炎)「何だ…」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「死なれちゃ困るんじゃなかったのか」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「言ってることとしていることが矛盾しているぞ」ゴゴゴ…
少女「……その引きこもりを演じているつもりなら、空々しいわ、すぐ止めて。私は、覇剣。あなたに用があるの」
少女「ヒキニクノツルギ」
ヒキニート(炎)「…貴様は」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「そうか」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「聖女か」ゴゴゴ…
少女「あなた何がしたいの?」
ヒキニート(炎)「我は使役される者…目的などない。ただ、使い手の意志に従うのみ」ゴゴゴ…
少女「うそ」
ヒキニート(炎)「ほう…」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「現代の聖女はなかなかどうして、強靭な気質を感じさせる……」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「歴史は繰り返すな。マリアよ」ゴゴゴ…
姉「マリ…ア……?」
母「さっきから、何を話しているの。ヒキニートはどうしちゃったの」
少女「――破壊の店長」
ヒキニート(炎)「!!!?」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「奴は…。あやつは、生きているのか!?」ゴゴゴ…
少女「なら分かったでしょう? もう家に引き返して。特殊結界すら見抜けずに…。自宅の真ん前でこれほどまで追い詰められて……、本当、馬鹿みたい。このまま歩を進めても待つのは無残な死、それだけよ」
祖母(545800)「じゃがりこ…」
姉「お婆ちゃんはちょっと黙ってて」
祖母(545800)「イチゴ味…」
姉「ちなみにじゃがりこにイチゴ味はありません」
母「と、とりあえず、この子の言う通りにしましょう。一度帰るのよ。外はあまりにも危険すぎたわ」
母「コンビニは、私達には、あまりにも遠い」
母「コンビニになんか、行けなかったのよ」
母「コンビニなんか無理なのよッ!! 所詮、幻の聖域だったのよ!」
母「コンビニを諦めて! ヒキニート!!」
ヒキニート(38)「嫌だ!!!!!!!」ドン!
少女「! ……」
少女(これほど一体化しておきながら覇剣に意思を侵されない? まさか…)
少女「…」
少女「ヒキニクノツルギの言う通り、私は現代における≪聖女≫の役割を果たす者」
ヒキニート()「」ゴウッ
ヒキニート(炎)「役割、と。ふん」ゴゴゴ…
少女「私のするべきことは、過去の過ちを繰り返させないこと」
少女「どうしても行くというのなら…」
少女「私も同行します」
祖母(545800)「いーよ」
姉「軽ッ!!!!!? お婆ちゃん軽い!!!!!!!」
母「……もう、何が、何だか」
ヒキニート(炎)「結局、こうなるのだ。運命には逆らえぬよ、マリアよ」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「現代の勇者の意志は、もしかすると十年前のそれを越えるやもしれぬ。実に興味深きことよ」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「そして現代において尚生き続ける≪破壊の店長≫よ」ゴゴゴ…
ヒキニート(炎)「マリア。面白くなってきたぞ」ゴゴゴ…
姉「誰か収拾付けろこの謎展開に!!!!!!!!!」
少女「パーティは五人以上は不可。空きができて丁度いいわ」
――時間の黒穴を越えて10年前――
メガニート(52)「ちょっとコンビニ行って来る」
妹「…………、ど、うして」
メガニート(52)「決めたんだ。我輩は、何がなんでも、コンビニへ行く。家を出て三分歩いた所にある信号を渡り、左折、右手にあるパン屋と薬局とよく話しかけてくるオバハンを通過したら見えてくる、あの『セッブンイレブン』に…」
妹「無茶よッ!!」ガタタンッ!
股間が凍てついた。
メガニート(52)「ちょっとコンビニ行って来る」
父「何!!?コンビニだと!」ズガガガンッ!!!
メガニート(52)「ちょっとコンビニ行って来る」
母「コンビニ!!!!!!!?」
キュイーン…――
カッ!!!
ドッゴオオオオ!!!!!!!!!!!
ズゴゴゴゴ……
母「じょ、冗談でしょメガニート。ちょっと最近冷たく接しすぎたかしら…。とにかく、何か悩んでることがあるのなら言いなさい」
ズゴゴゴゴ…
メガニート(52)「悩みなんて…。いや、その葛藤を乗り越えるには、尚更行かなきゃいけないんだ。……コンビニへ」
ズゴゴゴゴ…
母「正気なの…」
ピーポーピーボー…
父「家族会議だ」
リビングにて突如開始された家族会議。
母「ねえ、そろそろ聞かせてくれない?コンビニへ行く理由を」
妹「兄ちゃん、昔から何でも一人で考え込んで一人で決めちゃう、そういうタイプなのよ。それも、大事ほど」
この家族会議も何年振りになるのだろうか。いやに懐かしい。確か祖母が転んで膝を擦りむいたあのとき以来じゃないか。
祖母(544790)「…………」
メガニート(52)「皆は、もう忘れちゃったのかよ!五年前を!」
父「……ッ」
妹「!?」
祖母(544790)「!……、ヴぅっふっ、ゴホァ、ゲハッ!ゲハッ、ゴボボォッア!!!……ゼー、ゼー」
メガニート(52)「目を背けていたって、前には進めないんだ。長い間に引きこもっていた経験で知ったよ。もう我輩は何がなんでも前に進む」
ヴァミリーマート
兵士「…………、」
姫「世界…滅亡…」
国王「これは杞憂であればいいが…。近頃、セッブンイレブンの肉まんが格別に美味いとの情報を小耳に挟む」
姫「馬鹿な!!肉まんにおいては我がヴァミリーマートの」
国王「落ち着かんか。知っての通り、肉まんには魔術エネルギーを一時的に向上させる効用を持つ。その効果は、味の質に比例して増大する」
国王「我がヴァミリーマートの○×店舗の店員Aが、一月ほど前にセッブンイレブンへ偵察へ向かったと聞いた」
姫「! スパイとは。なんと命知らずな…」
国王「その勇敢な店員Aが購入したセッブンイレブンの肉まんを試しに口にしたところ、そのたった一口が魔力を飛躍的に増大させ、あまりの魔力を抑えきれずに近畿地方を跡形もなく消し飛ばしてしまったと聞く」
姫「いややべえじゃんそれ」
国王「姫。勇者を止めに行くのだ。奴らは危険過ぎる」
~自宅を出て三センチ位の所~
――きんじょのじじいにかこまれた!
メガニート(52)「ぐっ…」
妹「もう無理!逃げられない!」
祖母(544790)「……、」
母「メガニートだけは死なせない!」
――きんじょのじじいはメテオバーストをはつどうした!
きんじょのじじいF「」ズゴゴゴゴゴゴゴ…
きんじょのじじい「」カッ!!!!
母「メガn」ダッ!!
マリア「――――特殊結界、解除」
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!
――時間の白穴を越えて10年前――
ギガニートZZ(72)「ちょっとコンビニ行って来るわい」
兄「…………、ど、うした」
ギガニートZZ(72)「決めたんだ。ワシは、何がなんでも、コンビニへ行く。家を出て三分歩いた所にある信号を渡り、左折、右手にあるパン屋と薬局とよく話しかけてくるオバハンを通過したら見えてくる、あの『セッブンイレブン』に…」
兄「無茶だッ!!」ガタタンッ!
股間すら凍てつかない。
ギガニートZZ(72)「ちょっとコンビニ行って来る」
父「な…に……!!?コンビニだと!」ズガガガンッ!!!ヨロヨロ…
父「ふンがあ…」
ギガニートZZ(72)「ちょっとコンビニ行って来るぞい」」
母「コンビニ!!!!!!!?」
キュイーン…――
カッ!!!
ドッゴオオオオ!!!!!!!!!!!
ズゴゴゴゴ……
母「じょ、冗談でしょギガニートZZ。ちょっと最近冷たく接しすぎたかしら…。とにかく、何か悩んでることがあるのなら言いなさい。…ゴホッゴホッ!!」
ズゴゴゴゴ…
ギガニートZZ(72)「悩みなんて…。いや、その葛藤を乗り越えるには、尚更行かなきゃいけないんじゃ。……コンビニへ」
ズゴゴゴゴ…
母「正気なのかえ…」
ピーポーピーボー…
父「家族会議じゃ…ゴホッ!ン、ンン」フラッ…フラッ…
リビングにて突如開始された家族会議。
母「ねえ、そろそろ聞かせてくれないかえ?コンビニへ行く理由を」ヨロヨロ…
兄「コイツは、昔から何でも一人で考え込んで一人で決めちゃう、そういうタイプなんじゃい。それも、大事ほどのう」
この家族会議も何年振りになるのだろうか。いやに懐かしい。確か祖母が転んで膝を擦りむいたあのとき以来じゃないか。
祖母(544790)「…………」
ギガニートZZ(72)「皆は、もう忘れたのか!五年前を!」
父「……ッ」
兄「!?」
祖母(544790)「!……、ヴぅっふっ、ゴホァ、ゲハッ!ゲハッ、ゴボボォッア!!!……ゼー、ゼー」
ギガニートZZ(72)「目を背けていたって、前には進めないんじゃ。長い間に引きこもっていた経験で知ったよ。もうワシは何がなんでも前に進む」
ヴァミリーマート
兵士「…………、」
姫「世界…滅亡…」
国王「これは杞憂であればいいが…。近頃、セッブンイレブンの肉まんが格別に美味いとの情報を小耳に挟む」
姫「馬鹿な!!肉まんにおいては我がヴァミリーマートの」
国王「落ち着かんか。知っての通り、肉まんには魔術エネルギーを一時的に向上させる効用を持つ。その効果は、味の質に比例して増大する」
国王「我がヴァミリーマートの○×店舗の店員Aが、一月ほど前にセッブンイレブンへ偵察へ向かったと聞いた」
姫「! スパイとは。なんと命知らずな…」
国王「その勇敢な店員Aが購入したセッブンイレブンの肉まんを試しに口にしたところ、そのたった一口が魔力を飛躍的に増大させ、あまりの魔力を抑えきれずに九州地方を跡形もなく消し飛ばしてしまったと聞く」
姫「いややべえじゃんそれ」
国王「姫。勇者を止めに行くのだ。奴らは危険過ぎる」
~自宅を出て三センチ位の所~
――きんじょのじじいにかこまれた!
ギガニートZZ(72)「ぐっ…ぬ」
兄「もう無理じゃ!逃げられん!」
祖母(544790)「……、」
母「ギガニートZZだけは死なせない!」
――きんじょのじじいはメテオバーストをはつどうした!
きんじょのじじいF「」ズゴゴゴゴゴゴゴ…
きんじょのじじい「」カッ!!!!
母「ギガn」ダッ!!
マリア「――――特殊結界、解除」
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!
――現代――
~自宅から2メートル後~
姉「ねえ、お婆ちゃん。これは私の、あくまで、馬鹿馬鹿しい予想に過ぎないんだけど……」
姉「もしかして、お父さんを生き返らせる方法があるんじゃないの?」
祖母(545800)「ある」
姉「……そうだよね。うん、分かってた。私が馬鹿だっ…」
姉「え?」
ヒキニート(38)「あるのか!?」
祖母(545800)「まあ、この旅の行く末次第と言ったところかのう…」
母「お母さんは、何か知ってるんじゃないの?」
祖母(545800)「さてのう…」
母「お母さんッ。家族が死んだのよ!」
祖母(545800)「そんなことは分かっとる。なれば、お前は今、ヒキニートだけを見ていろ。それが、必ずやいい結果に結びつくじゃろうて」
母「………………はあ、」
少女「ねえ」
ヒキニート(38)「……何だ。我輩に話しかけるな。死に際まで追いやった当の相手とは本当なら目すら合わせたくないんだ」
少女「どうしてそこまでメガニーt…祖父のことが大事なの?」
ヒキニート(38)「…」
ヒキニート(38)「……、」
少女「…」ジー
ヒキニート(38)「…………、」
少女「…」ジー
ヒキニート(38)「ぐっ。う……、分かった、話す」
ヒキニート(38)「長くなるから面倒だったんだ」
少女「話して」
ヒキニート(38)「アンタ問答無用だな…」
ヒキニート(38)(……。見てくれがいつも画面越しに見る美少女のそれを圧倒する位なもんだ…。見つめられるとヒキニートとしては精神がとても保たん……)
ヒキニート(38)(それに…)
少女「…」
ヒキニート(38)(何となく…悪いやつじゃない気がする)
少女「やっぱり話すのは後でいい」
ヒキニート(38)「あれは五年前…って何でだよ!」
少女「だって」
少女「強いのが来たから」
――――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
姉「きゃああああああああああああ!!!!」
ヒキニート(38)「何だッ!?」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
母「め、目の前の一軒家が…木っ端微塵に……」
祖母(545800)「……」
祖母(545800)「でかいのう」
剛腕の店員「オマエタチヲタオシニキタモノダ」
剛腕の店員「……サア、タタカオウ」
――時間の狭間――
?『!』
?『始まった…』
?『1000年と10年後の世界に、とてつもなく強大なエネルギーが鬩ぎ合っているのが分かる』
?『おそらくは聖人と…。破壊の店長の手先がぶつかっているのだろう』
?『そうか。マリアは穴を乗り越え転生することに成功したのだな』
?『彼女がいれば当分は大丈夫か…』
?『いや…』
?『……』
?『頼む』
?『僕の転生が終わるまでは、どうにか持ちこたえてくれ』
?『そして現代の勇者の名を継ぎし者よ』
?『彼女を守れるのは、君だけだ』
――現代――
街
蠱惑の店員「はあい」
裏店長「ちッ…。早速に面倒なのと遭遇しちまったな」
姫「……!!」ジリッ…
蠱惑の店員「あんた達の目的はお見通しよ。勇者を…」
蠱惑の店員「――封印するのでしょう?」
姫(! ……)
裏店長「あれあれあれれ。おっかしいねえ」
蠱惑の店員「とぼけても無駄よ。おそらく護衛付とはいえ、貴方という一国の王女がほぼ単独で行動しているってことはつまり、その目的を公にはできない形で秘密裏にことを進める、そのため」
蠱惑の店員「ヴァミリーマートの国王様には、さしずめ、破壊の店長率いるセッブンイレブンを討つ為に、勇者を覚醒させる手に打って出る。とでもごまかしておけば、国内の混乱は収まる」
蠱惑の店員「――もうこの世界に希望はない。貴方達のやれるせいぜいのことと言えば、逆に勇者を『封印』することくらい」
裏店長「けけ。ぐちゃぐちゃくっちゃべんのがお好きのようで」
裏店長(意図はバレバレか…)
姫「……、」
裏店長(このお姫様を守りつつどこまで戦えるか)
裏店長(そういうスタイルは苦手だぜ、くそったれが…)
蠱惑の店員「それじゃあ、」
蠱惑の店員「戦いましょうか」
――ゴゥン!!!!!!!!!!!!!!
ゴゴゴゴゴ…
ロソーン
胸毛の覇者ゼウス「来ると思っていたよ」
音速の店員「結局店は、急遽、新人に任せ? そして俺は面倒事に駆り出される?」
音速の店員「あーあー?もうさっさと終わらせたいよね?」
音速の店員「俺は遅いことが何より嫌いなんだ?」
胸毛の覇者ゼウス「奇遇だな」
胸毛の覇者ゼウス「ワシもだよ」
音速の店員「…?」
音速の店員「余裕だね? これから死ぬんだよ? 自覚ないの?」
胸毛の覇者ゼウス「ほほほ」
胸毛の覇者ゼウス「まだまだ若い者には負けておれんわ」カッ!!!!!!!
――グワッ!!!!!!!!!!!!!!!!
音速の店員「!!」
音速の店員「なるほど? あんた≪預かり主≫かあ?」
胸毛の覇者ゼウス「この能力の元の持ち主は強いぞ」
たとえば、夢だ。
たまにその夢に出てくる、あれほど楽しかった、小学生時の記憶。
とうに忘れきっていたはずの、あの頃の友達。今はどこで何をしているかも不明な、友達。
そんな友達に囲まれ、建前のない、その純な笑みで、自分達は日が暮れるまで遊び倒した。
引きこもりの性質は当時から開花させていたのだろうか、既にインドア派であった昔の自分は、流行の定番ゲームで時間を過ごすことが大抵であった。
協力プレーでは、いつも影での引き立て役。ゲーム世界ですら、表舞台に立つことは許されなかったのかもしれない。
それでも良かった。だって、求められていたのだから。
――――くせえんだよブタ!近寄るな!!!
ああ、人はどうしてこうも変わるのだろう。
――――え?お前まさか、今まで俺のこと『友達』とか思っちゃってた?
止めてくれ。
――――もうお前、来るなよ。学校。
・・・・・・・・・・・・。
――しゃ。
・・・・・・へ?
――勇者
――――遭いたく、なかった
自分は。自分は…
表舞台に立てる器じゃない。一生、脇役。
それが…
「――ヒキニート!!!!!!!!!!!」
ドゴォ!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(38)「……っ!」
少女「何ボーッとしてるの?」シュタッ!!
母「少女ちゃんが庇わなきゃ…危なかったわ」
ヒキニート(38)「あ…」
少女「早く自分で立って」
ヒキニート(38)「わ、るい」
少女「早く覇剣と融合してっ」
ヒキニート(38)「そ、れが」
ヒキニート(38)「どうやればできるのか、分からないんだ」
少女「使えない。死んで」
ヒキニート(38)「あんまりだ!!」
姉「ふざけてる場合じゃないよ!!!」
剛腕の店員「オシャベリトハヨユウダナ」
――剛腕の店員は地に拳を叩き付けた!
――――――――――――――ッ・・・
ゴバッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――ヒキニートに7800ダメージ!
――母に5500ダメージ!
――姉に4900ダメージ!
――祖母は攻撃を回避した!
――少女に1ダメージ!
ヒキニート:HP
312200/320000
母:HP
49994500/50000000
姉:HP
93100/99000
祖母:HP
3/3
少女:HP
999/1000
ヒキニート「ぐあッ…!」ドシャッ!
母「く……、」タタッ
姉「ううっ」ヨロッ!
祖母(545800)「」シュタ!
少女「ん…」タタッ!!
母「皆下がって!!!」サッ!
――母は灼熱の雨を降らした!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴウッ!!!!!!!!
剛腕の店員「フン」スッ
――剛腕の店員は拳を振った!
ゴアッ!!!!!!!!!!!!
姉「跳ね返した!!?」
――ヒキニートに1000ダメージ!
――母に1000ダメージ!
――姉に1000ダメージ!
――少女に1ダメージ!
ヒキニート:HP
311200/320000
母:HP
49993500/50000000
姉:HP
92100/99000
少女:HP
998/1000
姉「炎系が駄目なら…」ジャキン!!!
――姉はイナズマガトリングを放った!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!……
剛腕の店員「ツマラナイナ…」ヒュ…
――剛腕の店員は≪必殺の一撃≫を放った!
少女「避けて!!!!!!!!!!!!!」
グアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――少女に350ダメージ!
少女:HP
648/1000
姉「…………ッッ、っ、あ、ありがとう…」
少女「う…」フラッ
ひきにーと(38ちゃい)「な、んだ。今の」
姉「気持ち、分かるけど…気ぃ緩みすぎアンタ」
母「強い…」
剛腕の店員「ドウシタ。ヒトリダケマシナヤツガイルガ…コンナモンカ」
祖母(545800)「綺麗だった町並みが見る影もないのう…。荒々しい奴じゃわい」
少女「町並みなんか、気にしてる場合じゃないのよ」ヨロ…
ヒキニート(38)「この強さの正体は何なんだ…」
少女「ひとつに≪肉まん≫を食していることには間違いないわ」
少女「彼がその気になれば、日本列島を真っ二つに叩き割る力はあるはずなの」
ヒキニート(38)「さっきから無理ゲー過ぎて思考が追いつかないんだが」
少女「あいつ…遊んでる」
剛腕の店員「…」
少女「打つ手がない。何としてでも逃げる」
母「逃げるって…」
姉「その気になれば日本列島を叩き壊すような相手から、どうやって」
少女「いくらなんでもそこまではしないはず。あいつの目的は、あくまで…」チラッ
ヒキニート(38)「わ、、我輩…」
少女「何かの拍子に死なれでもしたら困る筈だから」
ヒキニート(38)「そ、そもそも」
ヒキニート(38)「我輩の、何を目的として襲撃して来るんだ」
ヒキニート(38)「セッブンイレブンは、破壊の店長は、」
ヒキニート(38)「そもそも、何が、目的なんだ…」
剛腕の店員「オシエテヤルギリハナイナ。トニカク、メイレイニシタガイ、オマエヲツレカエル」
ヒキニート(38)「なあっ。お前なら、何か知ってるんじゃないのか」
少女「お前って呼ばないで」
ヒキニート(38)「あ、ああ…。いや、そうじゃなくて」
少女「いい? とにかくあなたは、」
少女「死なないことだけを最優先に考えて」
少女「あなたが死んだら全てが終わる」
ヒキニート(38)「な、んだよ」
ヒキニート(38)「言われなくたって、そりゃ命は最優先にして行動してるさ」
ヒキニート(38)「そうじゃなくて、なんで…」
少女「?」
ヒキニート(38)「なんで、我輩なんだ…」
少女「あなたが現代における≪伝説の勇者≫だから。言ったじゃない」
ヒキニート(38)「だから!!!」
母「ヒキニート…」
ヒキニート(38)「そもそも、どうして我輩が、その勇者ってのに選ばれた」
ヒキニート(38)「我輩は、そんな器じゃない」
ヒキニート(38)「我輩は、そんな目立つ役じゃない」
ヒキニート(38)「主人公にはなれない。そんな目立つ存在じゃない。我輩は…。我輩は!」
ヒキニート(38)「…………、」
ヒキニート(38)「世間の裏でひっそりと、何の意味も、価値も、生産性もなく、ただ息をするだけのように生きているだけ。何者にもなれない。負だけを撒き散らし、迷惑だけかけ、」
ヒキニート(38)「そう、つまりは…」
ヒキニート(38)「我輩は世界に必要のない、いらない、いない方がいい人間でしかないんだ」
少女「正論ね」
ヒキニート(38)「1ミクロもフォローしねえな!!」
少女「偽善で一時の慰めをするつもりなんかない」
少女「そして理由もない。あなたはあなただから勇者に選ばれたわけじゃない」
少女「ただ、あなたが勇者に選ばれた。たとえそれが当人にとって望ましくない結果として受け取られることになっても」
母「そんなことない!!」
祖母(545800)「果たしてそうかのう」
少女「ッ?」
母「ヒキニートは、人の痛みを知ってる。誰よりも弱いからこそ、その理解者になれる」
祖母(545800)「元来、勇者とは、例えフィクションであろうと現実であろうと、その本質は変わらん。――弱きを助け強気をくじく。それは弱き者の心の内を分かってやれる人にしかできんじゃろうて」
少女「ん…」
祖母(545800)「『前のマリア』は、もっと懸命な判断力や思考力があったんだがの。聖女ともあろう者が、そんなことも分からんか」
少女「え?」
少女「…………あなた、」
剛腕の店員「…ユウシャノソンザイカチナド、ドウダッテイイ。ワレラノネガイヲジツゲンスルベク、」
剛腕の店員「ソロソロホンキデツレテイク。タイクツモスギルシナ」
少女「……分かった」
少女「元々そのつもりだったけど、この際、逃げる方針もなし」
少女「私は私の使命を全うする」
少女「不服だけど、あなたを」
少女「文字通り、命をかけて、守ってみせる」
少女「私は、聖女だから」
少女「何としても、勇者を守り通す」
ヒキニート(38)「………………………………だから、どうして」
ヒキニート(38)「そうなるんだ」
――大丈夫。誰がいじめてきたって、お母さんは絶対にあなたの味方。
――おい、ヒキニート。そのな、父さんな、そう、たまには相談に乗ってやる。男同士で話さないか、酒でも飲みながら。
――お姉ちゃんに任しなさいってのー。本当アンタって無駄にプライド高いんだから。たまには頼りなさいって。
ヒキニート(38)「いつも、いつも、」
ヒキニート(38)「いつも…」
剛腕の店員「ホカノヨニンハシンデモラウ」スッ!
少女「さっきのがまた来る!!下がって!!!」
ヒキニート(38)「いつも、」
――剛腕の店員は≪必殺の一撃≫を放った!
少女「来た!!!!!!」
グアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――――――ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ガガガガガッガガガガガガガガッガ!!!!!!……
ビリッ…ビビビッ……バチッ
剛腕の店員「……ナ…ニ…?」
母「!!」
姉「わあ…」
祖母(545800)「ほほ」
少女「……!」
ヒキニート(雷)「」ビリッ…ビビビッ……バチッ
ヒキニート(雷)「…」ビリッ…ビビビッ……バチッ
ヒキニート(雷)「ふん」ビリッ…ビビビッ……バチッ
少女「形態、≪雷≫…」
剛腕の店員「マサカハネカエスドコロカ、スベテケシトバシテシマウトハ……」
剛腕の店員「コレガヒキニクノツルギト、ユウシャノチカラ」
ヒキニート(雷)「違うな」バチッ…バチチッ……!
剛腕の店員「ナニ?」
ヒキニート(雷)「これは、純粋な、人の力…『思い』だ。思いの力だ」バチッ…バチチッ……!
ヒキニート(雷)「≪雷≫は、自己への強い怒りから目覚める属性と云われる」バチッ…バチチッ……!
ヒキニート(雷)「力なき者が、周囲から護られようという状況へ常に立たされている時」バチッ…バチチッ……!
ヒキニート(雷)「往々にして、人間は、自らに対し、底知れぬ怒りを覚えるものだ」バチッ…バチチッ……!
ヒキニート(雷)「不甲斐無さを自覚し、それでも、泥臭く悩み続け、いつかは悩み切る」バチッ…バチチッ……!
ヒキニート(雷)「人はそれを進歩と呼ぶ。葛藤と成長は、人間に許された前進するための手段だ」バチッ…バチチッ……!
剛腕の店員「フ」
剛腕の店員「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
剛腕の店員「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
剛腕の店員「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
剛腕の店員「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
剛腕の店員「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
剛腕の店員「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ヒキニート(雷)「? 気でも狂ったか」バチバチッ…
剛腕の店員「クダラナァイ!!!!!!!!!!!」
――剛腕の店員は≪破滅の一撃≫を放った!!!
ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
少女「このエネルギー量…」ビリ…ビリ…
ヒキニート(雷)「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
――――――ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ズズズズズ……
剛腕の店員「グ……ッ」
剛腕の店員「ア」
ズシャ…
剛腕の店員「」
姉「倒した…?」
姉「倒した」
姉「倒した!!!!やったァ!!!!!!!!」
母「凄いわヒキニート!」
祖母(545800)「うむ。うむ」
少女「…………」
少女「凄い…」
ヒキニート(雷)「」バチッ…バチチチ!
ヒキニート(雷)「少し…疲れた」バ…チ
ヒキニート(雷)「あとを頼む」
祖母(545800)「良い」
ヒキニート()「」フッ…
ドサッ…
とある場所
国王「四天王の一人が敗れた」
――そうか・・・。勇者の成長ぶりはどうだ。
国王「流石は伝説の勇者の器。既に属性二つを覚醒させている」
――なるほど。
――≪穴≫はどうだ?
国王「少しずつだが弱まりつつある。こうなれば三時系列の統合も」
――不可能とまではいかないところまで来た。
国王「穴。勇者。終焉の肉まん」
国王「我らの目的を実現するには必要不可欠の鍵」
――そうだ。くれぐれも気を緩ませるようなことをしてくれるな。
――残りの四天王はどうだ。
国王「勇者の覚醒という体で、裏店長と行動する姫と、四天王の一人が現在相対している。ロソーンの厄介な≪預かり主≫にも、その一人が対応している」
――そうか。
――・・・・・・少し、眠い。
国王「後のことは私目にお任せを」
――頼む。
夜、自宅から5メートル地点
祖母(545800)「焚き火のための薪を拾って来たぞい」
母「こうして火の魔法で…」ヒュッ
ボウッ!
姉「こういう時に魔法って便利ねー」
母「さっきの戦闘で、すっかり見渡す限り瓦礫だらけね」
姉「宿もないし、野宿は仕方なし、かあ。お母さん、今夜はご飯どうするの」
母「ちゃんと家を出る時に食材を持ってきてるから大丈夫。シチューでも作りましょう」
姉「やったっ」
母「お父さんを蘇らせるためにも、コンビニ、絶対に行かなくちゃね。そうでしょう、お母さん」
祖母(545800)「うむ。目的地のコンビニにさえたどり着ければどうにかなるじゃろう」
姉「目的地まで、まだ4分56秒くらいの距離はある。ちゃんと体を休めないと」
母「逆に4秒もの時間をかけて進んできた自分達を褒めてあげたいわ」
姉「そうだね…」
ヒキニート(38)「ありがとうな」
少女「え?」
ヒキニート(38)「いや、命がけで護ってくれるって。あの言葉がなきゃ、多分踏ん切りがつかなくて、覇剣とも融合できずにあのままやられてたかもしれない」
少女「別に…」
少女「私は聖女だから」
ヒキニート(38)「なあ、お前…ああ、えっと」
少女「少女でいい」
ヒキニート(38)「ああ、そう。少女は、どこから来たんだ」
少女「1000年と10年前」
ヒキニート(38)「へ?」
少女「私はこの現代に、1000年と10年前から転生した存在なの」
ヒキニート(38)「聖女としての役割を果たすため、か」
少女「…」
少女「私もあなたと同じ」
ヒキニート(38)「え?」
少女「どうして自分が聖女に選ばれたか、分からないの」
少女「私にインプットされた情報は、勇者であるあなたを護り、そして破壊の店長の野望を食い止めること」
少女「その他に細かい情報もインプットされているけど…。どれも本質に迫れるものじゃないかもね」
ヒキニート(38)「転生って…。前の記憶は引き継いでないのか」
少女「時々、それらしいものがフラッシュバックみたいに脳裏を掠めることがあるの。あまりいい気分はしない。自分が、自分の中に二人いるみたいで気持ちが悪い」
ヒキニート(38)「そっか…」
ヒキニート(38)「聖女としての重圧というか、責任感も似た感じでインプットされたものなのか。それとも、何かのきっかけで自らその責任を背負う覚悟を決めた、とか」
少女「……。分からない」
少女「だから、思うの」
ヒキニート(38)「何を」
少女「似た境遇に身を置くあなたが、これほどまでに、勇者としての責務に固執する原動となっている、祖父に対しての思い」
少女「それは、どんのものなんだろうって」
少女「そう、思ったの」
ヒキニート(38)「……」
ヒキニート(38)「爺ちゃん…。メガニートのこと、知ってる風だったけど、どこまで知ってるんだ」
少女「それも記憶の断片。1000年と10年前に、メガニートは存在していた。あなたのこともよく話していた」
ヒキニート(38)「ふうん。……ッ!?」
ヒキニート(38)「1000年と10年前って…要は1010年前って解釈でいいのか。それだと、我輩や爺ちゃんは…」
少女「この世界は時間の概念がとても曖昧」
ヒキニート(38)「へ?」
少女「多分、いや、ほぼ確実に、時間の概念を、そう」
少女「≪破壊の店長≫が歪めていることは間違いない」
ヒキニート(38)「時間の概念を…歪める……」
少女「秒、分、時間、日、ヶ月、年。そういう単位は、単語として考えたときの上下関係は変わらない。一秒は一分より短いし、一年は一ヶ月よりも長い」
少女「でも体感時間や、時空間が変質していることから、体感は一時間なのに実際は一秒であったり。その逆も然り。何よりも…」
少女「この世界の住人がそれに順応してしまい、違和感の一切が消失してしまっていること。今の状態は危険すぎる。このままでは時空間ごと崩壊してしまう」
ヒキニート(38)「……。全然、気付かなかったし、それを聞いた今でも意味がよく飲み込めない」
少女「そして、それとは別に。時系列が、分散してしまっていること」
少女「ひとつの時空間を複数に分散し、そして≪穴≫をその間に生み出すことで、それぞれが決して触れ合うことのないよう隔絶されてしまっている」
少女「何より疑問なことが、その分散した時空間がまたひとつにまとまろうとしていること」
少女「それが何を引き起こすことに繋がるのかは、情けないことに全く検討もつかない」
少女「1000年と10年前って表現はね」
少女「まず、10年前地点に、大きな≪穴≫が二つ存在している」
少女「そして、10年以上前の世界の記憶は、それぞれの≪穴≫ふたつに閉じ込められてしまった」
少女「それも概念としてはパラレルワールドに近くて、その二つの穴は似たような性質としてそこに存在している」
少女「つまり、10年以上前の世界の記憶はふたつの≪穴≫に閉じ込められているけど、それは時間が『分散』したのでなくて、ほぼ似た形で『複製』のようなものとして、そこに収められている」
少女「だから例えば、Aの≪穴≫にあなたの親がいて、Bの≪穴≫にあなたの親の親がいる。という形が成立することになるの」
ヒキニート(38)「…?」
ヒキニート(38)「た、例えば」
ヒキニート(38)「20年間生きている人間は、どこの時空間に存在することになるんだ?」
少女「三つそれぞれね。穴の中に、十歳以降、年を取らない人間AとB。二十歳以降も年を取っていく人間がC。その理屈で言うなら、今私達のいる時空間は穴の外であるC」
少女「意味分かる?」
ヒキニート(38)「全然分からない」
少女「だから馬鹿なのよ」
ヒキニート(38)「やかましい!」
少女「まあ何にしても、コンビニ、セッブンイレブン本店へたどり着き、破壊の店長を倒しさえすれば、そのややこしくなっている時空間の乱れも修復できるかもしれないの」
ヒキニート(38)「なるほどな…」
ヒキニート(38)「そういや、転生したって言ってたけど、やっぱ普通に人間とは違ったりするのか。だって、三つの時空間に存在できる訳なんだから、転生する必要なんてないだろ」
少女「聖女や勇者といった存在は、その人間そのものでなく、言ってみれば少し特殊な魂を示すようなもの。その魂が選んだ器である人間自体は三つに分散してもおかしくないけれど、魂そのものは別々に同時存在することができないの。だから転生する必要がある」
少女「穴の外であるCの世界で何かをたくらむ≪破壊の店長≫を倒すために」
ヒキニート(38)「そういえば、我輩はそういった断片の記憶が一切ないぞ。現在の勇者のはずなんだろ?」
少女「知らない。馬鹿だから思い出せないんでしょ」
ヒキニート(38)「んなふざけた理由で片付けるな」
少女「それにあなた。どうにも呪いにかけられてるみたいだし。何か関係してるんじゃない」
ヒキニート(38)「の、呪い?」
少女「感じる。誰がいつ何のためにかけたのか分からないけど」
ヒキニート(38)「……。分からないことばかりだな」
少女「そう。あまりにも分からないことが多すぎる。だからその足りない情報を、前に進みながら探していくしかないの」
少女「それに、あなたには祖父との誓いもあるでしょう」
ヒキニート(38)「ああ。こうなると、もう本当に何が何でもセッブンイレブンに行く他なくなってしまったな」
少女「それで」
ヒキニート(38)「? ああ。話が途中だったな。それも二回も同じ話題で止まってたっけ」
ヒキニート(38)「爺ちゃんの話だったよな。コンビニに行く意志がどうして折れないのかって。どうしてコンビニに行くきっかけを与えてくれたその誓いを結んだ爺ちゃんを、そんなに強く思っているのかって。そんな話だったよな」
少女「話、長くなるんでしょ」
少女「まずは――」
母「二人ともー、夕飯のシチューが出来上がったわよー!」
ヒキニート(38)「……ああ」
少女「あれを食べ終わってからでも、遅くない」
――【序章~一章・終】――
【第二章】
――一年前――
ヴァミリーマート、本店
裏店長「偵察…ねえ。趣味じゃねえな」
裏店長「商品の味は勿論、陳列だの、品揃え、接客姿勢云々…」
裏店長「どうして俺がやらなきゃならねえ」
裏店長「……ち。まあ、入るか」
ピンポンピンポン
「「「「ッシャアアイアセッーッ」」」」
裏店長(今なんつった。いらっしゃいませ? この時点で減点1だな)
裏店長「」ウロウロ
「――何かお探しですか?」
裏店長(何かお探しかって…ここは服売る場所でもねえぞ)
裏店長「…!」
姫「いらっしゃいませ」
裏店長(さすがは本店か。店員の見てくれは上等品だな)
裏店長「や。お構いなく」
姫「ごゆっくりご覧くださいませ」
裏店長(店内が広いだけあって店員の人数も随分なもんだが、数いる女性店員でも今のがぶっちぎってるな)
裏店長(とりあえず加点5…と)
裏店長(とにかく適当に商品を選んだら、次はレジ会計の様子でも…)
「何だと!? スパイッ?」
裏店長「ッ!!」
裏店長(もう見つかっただと。バカな。俺の面はここの店員には割れてねえはずだが)
「それで。そいつは捕獲したのか」
「はい。今、事情聴取をしているところのようです」
裏店長(俺のことじゃねえみたいだな)
裏店長(……ん? 待てよ)
裏店長(日本の三大コンビニエンスストアに潜り込もうなんざ考える馬鹿は、他のロソーンかセッブンイレブンの店員が妥当ってとこだろう)
裏店長(下手をするとお仲間が捕まってるかもしれねえ訳か)
裏店長(……面倒だが、一応助けるか? 後々、足を引っ張るような結果を招かれても困るからな)
裏店長「」トコトコ
裏店長「」チラッ
裏店長(あそこが控え室か。まあ順当に考えりゃあそこで取り調べられてると思っていいだろう)
「いらっしゃいませー」
「525円です」
「ビニールはお分けしますか?」
裏店長(比較的にぎやかだが、いかんせんカメラの数が多い)
裏店長(さて…)
裏店長(どうする)
裏店長「すみません」
「はい、いらっしゃいませ」
裏店長「この辺りに銀行はありましたかね」
「ええ、ここを右に出て左手にある信号を渡り…」
裏店長「すみませんが、ここへは越してきたばかりで。おまけに方向音痴なもので、言葉だけじゃ道のりを把握しかねるんですよ」
「は、はあ」
「ではご案内の地図を…」
裏店長「いや」
裏店長「少しだけ店の外に出て、ジェスチャーで方向を示してくれさえすれば、おおよそは分かると思いますんで」
「そうですか。では一度店の前まで」
裏店長「ありがとうございます」
ヴァミリーマート本店付近
ドスッ!!
「う……ぐっ」
ドサリ…
裏店長「手荒且つ常套過ぎて使いたくない手段だが…」
裏店長「こいつの服を引っぺがして、それを着用し店員になりすますしかねえな」
裏店長「顔は、魔法で一時的にコイツになっときゃバレやしねえだろ」
裏店長「あまり男前とは言い難い面構えだが…」シュイーン…
裏店長「さあ、忍び込むとするか」
再び店内
「おう。案内ご苦労さん。ちょっと手が回らねえから控え室まで領収書を取ってきてきれないか。多分そっちに置いて来ちまった」
裏店長(さっきの案内を迫られた客の落し物を控え室に置いてくとでも理由付けるつもりだったが…これは都合がいい)
裏店長「分かりました。少し待っていてください」
裏店長(しかし領収書のありかを失念する店員がいるとはな。減点10だな。気構えが足りない)
控え室
裏店長(ここか…)
「どういうつもりだ!? 早く吐け! さもなくば万引きということで警察のご厄介になってもらう」ドンッ!!
ハゲスパイ「……」
ハゲスパイ「だから、何度も言ってるじゃないですか…」
ハゲスパイ「僕はそもそもセッブンイレブンでもロソーンの店員でも、ましてやコンビニエンスストアに勤務する人間ですらない」
「まだしらばっくれるつもりか…」
「うちの者が見ているんだ。ロソーンの×△店舗に、お前と思しき店員を見かけたことがある」
ハゲスパイ「そ、それなら、そっちだってスパイをしているんじゃないのかッ」
「今のは鎌をかけただけだ」
ハゲスパイ「! ……な、ぜ。なら店舗名まで特定できるわけがない」
「そうだな。我らも当然、それも頻繁に他のコンビニエンスストアへの偵察を図っている。そして幾度にも渡り実行し、商品や接客、店作りの姿勢を吸収し、異なる形でアプローチし業績を伸ばしている」
ハゲスパイ「馬鹿な…。あんた、今の言葉が知られれば戦争が起きるぞ」
「そうだな。だからお前はここで始末する」
「我らが他の店に偵察に向かうことは許されても、その逆は許されないのだ」
ハゲスパイ「ふ、ふふふざけるなッ」
裏店長「ちょっと失礼」
「ん? ……ああ、お前か。どうした、まだ休憩時間に入るには早いだろうに」
裏店長(『お前』……となると、変装対象の人物はこいつより下の立場か)
ハゲスパイ「…、」
ハゲスパイ「!?」
裏店長(分かるだろ?)ジッ…
ハゲスパイ「…」コクリ
裏店長「いえ…。ただ領収書を探しに来ただけで」
「領収書? ああ、確かさっきそこに…」
裏店長「ところでこいつは何者です」
「……それなんだがな。どうやら、」
「おそらくはロソーンから訪れたスパイと思しき者だ。まあ、ほぼ確定的ではあるが」
裏店長「す、スパイ、ですか」
「我らの偵察行為も知られてしまったからには、もうこいつは生かして返すことはできない」
「どう始末するかその方法に頭を悩ませていたところさ」
裏店長「なるほど…」
裏店長「…」
裏店長「なら」
裏店長「僕にその役目を任せてはくれませんか」
「お前がか?」
「……まあ、新人がその役目を買って出るのはそうないことだ。誰だって、自分の手は汚したくはないだろうからな」
「お前はなかなか見込みがある。前から思っていたが…」
「よし。任せよう」
裏店長「ありがとうございます…」ニヤリ
――――ピカッ!!!!!!
ハゲスパイ「さすが…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ボー
裏店長「――発動条件は『油断』。俺に対し完全に気を許した時、この能力は初めて発動する。極めて面倒な代物だが、その分、効果は絶大だ」
ハゲスパイ「完全記憶消去能力……。その光を浴びてから遡ること1時間、その対象の記憶を完全に抹消する。しかも能力にあてられてから五分は茫然自失とした、都合のいい人形と化す…」
ハゲスパイ「先輩がスパイの頂点として名を轟かせ、且つ、その顔や本名などの実態は誰も知らない…。通称≪雲≫」
裏店長「君は今から適当な事情で以て他の店員を説得し、何事もなかったかのように帰宅する」
裏店長「いいね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ。わかった」
「」トコトコ…
裏店長「さて、」チラッ
裏店長「控え室内にはカメラはないな」
裏店長「ずらかるぞ」
街中
裏店長「お前はもうロソーンに帰れ」
裏店長「そもそもお前の技量で本店をスパイなんざ土台無理な話だったんだ。独断か?」
ハゲスパイ「いえ。命令です」
裏店長「誰からの?」
ハゲスパイ「ゼウス様です」
裏店長「あ? あの≪預かり主≫がか?」
裏店長「自分の失態をごまかしたいがために妙なでまかせを言ってるんじゃねえだろうな」
ハゲスパイ「そ、そんな」
裏店長「……、まあそれはねえみたいだな。となると…」
裏店長(先の店員の口ぶりと言い、こんな駆け出しスパイを本店に向かわせる胸毛野郎の判断といい)
裏店長「まさか黒なのか…?」
ハゲスパイ「黒、とは」
裏店長「いいからお前は帰れ。いいか。『知る』ってことはな、時として地獄の泥沼に片脚突っ込む行為になり得るもんだ」
裏店長「お前はその器か?」
ハゲスパイ「か、かか帰らせていただきます」タッ
裏店長「それと」
ハゲスパイ「はいっ」ピタッ
裏店長「あの胸毛野郎に報告しておけ」
裏店長「お前が知りたがってる情報は今日にでも持ち帰る。ありったけの報酬を用意して待ってろってな」
ハゲスパイ「しょ、承知しました」
ハゲスパイ「では」タタタッ
裏店長「…」
裏店長「行くか」
ヴァミリーマート本店、店内二階
裏店長(風貌はまるごと変えてきた。複数回の入店による不信感は有り得ねえ)
裏店長(……)
裏店長(世間では、コンビニエンスストアは、もはや現代における文化的生活からは外せない存在として認識されている)
裏店長(より多くのサービス。手軽さ。現代人が求める様々な要素がそこには集約されているからだ)
裏店長(そんなサービスの提供者らが、いや…小売、接客全般、他もひっくるめ、問題視されている点がある)
「昨日! ここの店で購入したアイスの中身がぐちゃぐちゃになっていた!!!」
「も、申し訳ありません」
「10個だ」
「は、はい?」
「侘びだよ。10個、別のアイスを無償で貰い受ける権利くらいはあるだろう」
「お、お客様。それは」
「あああ!!!!?? 俺は客だぞ!!」
裏店長(――クレーマーの存在だ)
裏店長(その手軽さ故か、或いは日本人特有の過度な低姿勢、そして行き着いた考え方がその接客観念であるところの『お客様は神様』論、そういったものが奴等をとことんまで付け上がらせていった)
裏店長(これはとりわけインターネットでも絶えず物議を醸す、日本が抱えたひとつの大きな問題、忘れられないものとしてそこに在り続けている)
裏店長(長きに渡り、当然、世のコンビニエンスストアも打開策を講じるが、そう上手くは事が進まず)
裏店長(そんな中で、クレーマー気質の人間がどんどん増えていった)
裏店長(サービスの提供者は、どんな分野においても、その厄介な存在に常日頃から精神的苦痛を強いられる)
裏店長(職人の世界すらも、昔から『批判姿勢』である人間からは攻撃を受け続けていた)
裏店長(つまりものを創る者。与える者)
裏店長(教育の分野ですら、それらの存在のない見晴らしの良い景色には到底たどり着けない)
裏店長(モンスターペアレント)
裏店長(日本人は兎にも角にも『忍耐』を美徳として、行き過ぎた形で捉えている)
裏店長(ある時、我慢は限界を迎えた)
裏店長(――クレーマー撲滅計画)
裏店長(提案者は、一切、不明。風の噂でしかなかった。デマとさえ思われた。所詮、出所はインターネットだったからだ)
裏店長(ところが)
裏店長(その計画の実在を有り得る可能性として認識させる事件が起きた)
裏店長(落書きクレーマー消失事件)
裏店長(特定の店に対し、理不尽で一方的な不満を募らせたクレーマーが、その店の外観を、一夜にして落書きまみれの醜いコンビニに変貌させてしまった)
裏店長(その店舗は24時間体制ではなく、止める店員も存在しなかっただろう)
裏店長(しかし現代のセキュリティは奴等を見逃さなかった)
裏店長(高機能監視カメラ)
裏店長(猿並の知能としか思えない奇行に走る馬鹿でも、一応は顔が見えないようにヘルメットを防備していたらしいが、それも高機能監視カメラの前には無力だった)
裏店長(そのカメラの映像記録に収められた人間は、その翌日に『行方不明』となった。それも集団犯行であった十二人の全てが)
裏店長(事件後、数年もの月日が経つが、依然として犯人らは行方不明)
裏店長(この事件は都市伝説となった)
裏店長(が)
裏店長(その数年、特に大きくなっていったコンビニであるロソーンも、その事件から焦点を外さない日はなかった)
裏店長(真相は尚も闇の中に思えたが…)
裏店長(或いは、今この瞬間が、その闇を照らす光明となる可能性が出てきた)
裏店長(しかし…)
裏店長(実在する計画として発覚するにまで至って、あまりにも簡単すぎる気はしなくもない)
裏店長(俺の変装は確かに完璧だが…。ここはあのヴァミリーマートの、それも本店)
裏店長(誘導、されている…?)
裏店長(如何ともし難いこの俺の存在をおびき寄せるための罠。そうなのか?)
裏店長(ひとつ、仮説を立ててみる)
裏店長(仮にその事件は、先に目撃した光景のようにして、ヴァミリーマートの人間が働いたものとする)
裏店長(すると、三大コンビニエンスストアの中でも、『愛想の良い接客』として、プラスイメージを定着させてきたヴァミリーマートは、その実、裏で≪クレーマー撲滅計画≫なるものを実行している企業として、『黒』の判断が下される)
裏店長(当然、着目すべきは、その企業のトップになる)
裏店長(この仮説が、もし正しいのであれば…)
裏店長(…………)
裏店長(国王…か……?)
サイボーグ店員「君――≪雲≫だね?」
裏店長「」バッ!!!
裏店長(麻痺させる雷系統の魔法をッ……!)シュババッ!!!
サイボーグ店員「無駄だ」ヒュオッ!!!!!!!!
裏店長(早い――!?)
ガシッ
サイボーグ店員「つーかーまーえーたー」
サイボーグ店員「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふh」
裏店長「ぐ…」ゾクッ
裏店長「何故…」
サイボーグ店員「」ゥイーン…
裏店長「眼球が…カメラに……」
裏店長「くそ…。これほどの技術力が。見誤ったか…」
サイボーグ店員「連行しよう」
――現代――
――――――――グオッ!!!!
ドウッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
街
蠱惑の店員「なかなかの脚じゃないのォ。すばしっこくて攻撃がまるで当たらない」
蠱惑の店員「でも」
蠱惑の店員「避けてばかりの防戦一方じゃアタシは百年経っても倒せないわよんッ!!!!」
ゴバッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒュ――――
シュタッ!!
裏店長「ち…」
姫「裏店長…。やはりわたくしは」
裏店長「いいから黙って護られてろ役立たず!」
裏店長「思い出さねえか」タタタタタッ……
姫「はい?」
裏店長「一年前、お前と出会った……。いや、『出遭った』時をだ」
姫「はい……。克明に」
裏店長「そりゃ結構。たった一年前の記憶がぶっ飛ぶほど耄碌する歳でもねえみたいで助かる」
姫「ぶ、無礼なっ。わたくしはまだピチピチの十九…」ジタバタ
裏店長「テメーを抱えながら戦ってやってんだ、暴れんなクソが!!」
姫「一企業の王女に向かってクソ呼ばわりとは――」
蠱惑の店員「お喋りが過ぎるのよ」ヒュ!!!
裏店長「――ちっ、」ダッ!
――――ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!…………
蠱惑の店員「勇者の覚醒リスクも知ってることだしねえ。早いところ始末したいの。大人しくやられてよ」
蠱惑の店員「お似合いのお二人が仲良く同じ処に逝けるよう葬ってあげるから!!」ギュオ!
――――ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!…………
裏店長「それにしても」
――――ドウッ!!!!!!!!!!!!
裏店長「戦闘たぁね…。つくづく、趣味じゃねえな」シュタッ!!
蠱惑の店員「…、……、………、」
蠱惑の店員「よく、言うわ」
蠱惑の店員「アタシの攻撃が、ただの一度も当たらないなんて」
裏店長「ひとつは、正義の偵察と悪の偵察を分別すること。例えば、俺は悪として考えられる偵察は極力避ける」
蠱惑の店員「? 急に…何?」
裏店長「ひとつは、信用できる人間を作ること。例えば、変装中でも自身を認識してくれるよう、一種の『サイン』を前もってそういった者に伝えておくことで、非常時にも対応できる。これは自身の能力を過信しないことに繋がる」
蠱惑の店員「はァ?」
裏店長「もうひとつは」
裏店長「女とは戦わねえことだ」
裏店長「おい知ってるかよ」
裏店長「スパイにもな、一流ともなると曲げられない信念のひとつやふたつは出てくるもんだ」
裏店長「悪なる偵察も、孤軍奮闘も、女との戦いも」
裏店長「俺の趣味じゃねえ」
蠱惑の店員「何が信念よ馬鹿馬鹿し――」
蠱惑の店員「……!」
――ゴウッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドド………
蠱惑の店員「ァ、ぐあああああああああ!!!」ドサッ
姫「!」
姫「風属性の魔法……もしかして」
スタッ!!
表店長「悪ィ! 待たせたぜ!!!!」ビシッ!!
――――ビシャアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ズゴッゴゴゴゴ…
ロソーン
音速の店員「くっ…、は」
胸毛の覇者ゼウス「あのセッブンオレブン本店に属する≪四天王≫の一人ともあろう者が、所詮はこの程度か」
胸毛の覇者ゼウス「つまらんのう…」
音速の店員「今の能力は…まさか…馬鹿な?」
胸毛の覇者ゼウス「気付いたか」
胸毛の覇者ゼウス「かつて≪雷神≫とまで謳われた、雷属性の魔法を極限まで磨き上げた男から『預かった』能力だ」
胸毛の覇者ゼウス「貴様はどうにも速すぎる」
胸毛の覇者ゼウス「捉えるには雷が有効じゃろうて」
音速の店員「預かった…? フン?」
音速の店員「奪った、の間違いではないのか?」
胸毛の覇者ゼウス「さてな」
音速の店員「この世界にヒーローは存在しないんだよ。あまりにも悪で塗れている」
胸毛の覇者ゼウス「……」
音速の店員「同盟だと? 白々しい?」
胸毛の覇者ゼウス「耳が早いな]
音速の店員「ヴァミリーマートの国王が何を意図しているかを知る貴様が上に立つロソーンだ? そんな奴等と「ヴァミリーマートが真に徒党を組むわけがない?」
音速の店員「上っ面の同盟でしかない? ただ、我らセッブンイレブンが邪魔だから、共通の敵を潰したい、それだけでしかない?」
音速の店員「セッブンイレブン。ヴァミリーマート。ロソーン」
音速の店員「正義なんて、どこにも存在しないのさ?」
胸毛の覇者ゼウス「正義か…」
胸毛の覇者ゼウス「すっかり、その言葉も懐かしい響きとして耳をくすぐる」
胸毛の覇者ゼウス「正義が存在しない世界か」
胸毛の覇者ゼウス「そうかもしれんのう…」
胸毛の覇者ゼウス「…、」
胸毛の覇者ゼウス「――クレーマー撲滅計画」
音速の店員「!」
胸毛の覇者ゼウス「ホワイトワールド計画」
音速の店員「!!! 貴様、そこまで…」
胸毛の覇者ゼウス「そして、我らの計画」
胸毛の覇者ゼウス「三者三様の目的…」
胸毛の覇者ゼウス「そしてそんな深淵の闇に覆いつくされた世界で、ただ『正義』に身を委ね、前へ進まんとする者」
胸毛の覇者ゼウス「――勇者。裏店長」
胸毛の覇者ゼウス「ワシは≪封印派≫の人間ではあるが…」
胸毛の覇者ゼウス「もし」
胸毛の覇者ゼウス「もしも、仮に、二人の主人公がこの腐りきった世界を変えてくれるというのなら」
胸毛の覇者ゼウス「与える者と、与えられる者の関係が『理想』として成り立つ世界を作る道標になるというのであれば」
胸毛の覇者ゼウス「それはどの計画よりも素晴らしいものとなる、ひとつの結果じゃろう」
音速の店員「……そんな日は、」
音速の店員「一生、やってこないよ?」
ドゴォ!!!!!!!!!!!!!!
――ヒキニートに300ダメージ!
~自宅から10メートル後~
ヒキニート:HP
5500/350000
ヒキニート(38)「…、はっ、はっ、」
姉「ねえ。やっぱり私達も戦おうよ…」
母「駄目。やっと、ヒキニートが、自分自身の脚で前に進もうと、そう決めたんだから。見守ることは女の役目として大事よ。あんたも覚えておきなさい」
姉「と、とっくに。っていうかそんなこと言われる歳じゃないし…」
姉「――私もう19なんだけど」
少女「!?」
少女(歪、み…?)
姉「それにしても、パーティーで動かず、あいつ一人に戦わせるなんてさ…」
――ズドォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒキニート(38)「はあ、はあ…」
少女「……」
――いい? これから貴方は私を宿して、勇者を護りに行くの。
――え? あ、あなた誰。
――私は≪聖女≫マリア。
――おそらく、≪伝説の勇者≫を宿し、ヒキニクノツルギを手にした、現代の勇者の器は、誓いを果たすためにセッブンイレブンへ赴くでしょう。
――え? え? さっきから、あなたが何を言っているのかよく分からない。
――これは、夢?
――勇者の器って誰? 誓いって何?
――これは、夢。この夢が覚める頃には、私の記憶の幾らかがあなたに継承されるでしょう。
――でも安心して。人格はあなたのままだし、決して強制もしない。
――あなたは、あなたが決めたとおりに行動するの。
――いい?
――1ヶ月前――
とある高等学校、文芸部室
後輩「あっ、少女先輩」
少女「…」
後輩「例の作品、完成しました?」
少女「ええ」
少女「賞を取るために書いた作品だったから」
後輩「とうとう応募する気になったんですね」
後輩「大丈夫、先輩なら受賞間違いなしです。才能ありますもん!」
少女「…ありがとう、後輩ちゃん」
下校時、喫茶店
後輩「先輩、何頼みます? 私はアイスコーヒーで…」
少女「…私も」
後輩「分かりましたっ。すみませーん!」
「はい。ご注文伺います」
後輩「アイスコーヒー二つお願いします」
「アイスコーヒーを二つですね、かしこまりました。少々お待ちください」スタスタ
後輩「この店、接客する店員さんの愛想が凄く良い上に、店の雰囲気も最高なんですよねー」
少女「そうね…」
後輩「――それでですねっ」
少女「…」
この子は、私といて、果たして楽しいのだろうか。
どうして私なんかに構うのだろうか。
聞いて、みようか。
怒ったりしないだろうか。
・・・・・・。
後輩「どうしたんですか?」
少女「…ねえ」
後輩「はい?」
ど う し て 私 な ん か に 構 う の ?
少女「…、」
後輩「……それは、」
後輩「先輩が、面白いからだと思います」
少女「…面白い? 私が?」
後輩「はいっ」
少女「……どこが?」
後輩「ううん。どこがって具体的に迫られるとまた難しいんですけど…」
後輩「まず、基本的に、少女先輩って媚びませんよね。他人に」
少女「えっ」
後輩「だって、先輩、ものっすごく可愛いですよねっ。あなた自分を鏡で見たことあります?」
少女「そんな…」
後輩「……。いや、待ってください。分かりますよ」
少女「え?」
後輩「自分の容姿に無頓着なんですね。きっと好きな異性もいないんでしょう。自分を飾る理由がないんです」
後輩「先輩の頭の中は基本的に、寝ても覚めても小説創作のことだけ。それ以外は眼中になし」
少女「そんなっ」
後輩「いえ…。今のは確かに言い過ぎたかもしれませんが」
後輩「物書きを志す人間は、今まで見てきた中じゃ変り種がそりゃ多くて、何と言うか、ずれてるんですよね。大体」
後輩「先輩は、他人に無関心な訳ではない。かと言って、大勢と群れたりすることは苦手」
後輩「超が付くほどの合理主義なんです。コミュニケーションでさえ、物事の優先順位に当てはめて考えてしまう」
後輩「今の先輩は、どういう理由か、小説家になることしか頭にない」
後輩「どうしてそれほどの目的意識が、まだ学生である先輩を雁字搦めにして放さないのか、私には知るすべはありませんけど…」
後輩「他人に媚びないのは、個としての意志力が強い人なんかに顕著です」
後輩「その代わりに、何でもかんでも自分で背負い込んでしまうタイプ」
後輩「どんなに仲の良い友達相手でも、悩みを打ち明けたりすることは滅多にない。良くも悪くも、自分を表に出さない」
後輩「おまけに寡黙。ときたら、一見、常に自信のないように見えるけれども、目をよく見ると、そこには得体の知れない意志の力が宿っている」
後輩「少女先輩のミステリアスな雰囲気の理由を説明すると、つまりこうです」
少女「……」
少女「そんなに自分を語られたことは、初めて」
後輩「そりゃいつも見てますから」
後輩「ま、基本、昔に比べて娯楽が増えましたから。他人と接することに固執しなくても、寂寥感に苛まれることは少ないかもしれませんけど。それが現代人のコミュニケーションに対する無関心の表れとなってる要因のひとつですから」
後輩「何か、こう…私みたいに何の努力もしてない人間なんかが軽々しく使って良い言葉じゃないのかもしれないんですけど」
後輩「間違いなく、先輩には『才能』があるんです」
少女「ち、ちが」
後輩「まあこの際『才能』の定義はひとまず置いておくとして」
少女(喋らせてくれない…)
後輩「先輩みたく才能ある人であれば、要するに夢中になれるものを持っていれば、尚のこと、他人に固執する必要がない」
後輩「しかし他人を拒絶することもない。だから、私みたいな、滅多にいない一方的に接触をしてくる相手に対して煙たがることもなく受け入れる」
後輩「……、羨ましいんです」
少女「えっ」
後輩「私は、私の生きがいを、個として成り立たせることができないんです」
後輩「私にとっての豊かな人生とは、今こうしているように、誰かと接して楽しく話していること。それだけ」
少女「…それだけ、なんて」
少女「それが普通」
後輩「誰だって、自分にないものを持つ対象を羨望し、時には嫉妬さえする。人間ですから」
後輩「でも怖いんです」
後輩「こうして、私が一方的にコミュニケーションを持ちかけて、それに相手が対応してくれてる間はまだいい」
後輩「私には兄弟もいないし、このまま恋人もできず、結婚もできず、親も死んで、そうして、いつか独りぼっちになってしまったら」
後輩「私は何を見つめて生きていけばいいんだろうって」
後輩「それなりに友達だって、努力して作ってきましたっ。でも私はいつだって寂しい。いつも寂しい」
後輩「いつも胸の奥に穴がぽっかり空いてるみたいで」
後輩「私は、常に不安定なんですっ」
後輩「その点、先輩は強い」
後輩「才能とか、そんなことじゃなくて、私は、ただ、純粋に」
後輩「先輩の強さに憧れているんです」
少女「…」
少女「強い…」
後輩「……あっ。すみません。喋りすぎました…」
「アイスコーヒーでございます」カチャ
「どうぞごゆっくり」スタスタ…
少女「…」
後輩「…」
少女「そんなこと言われたの、初めて」カチャ…
少女「ねえ後輩ちゃん」
後輩「…はい?」
少女「私は、本当に強い人間なんて、いないんじゃないかと、そう思うの」
後輩「はあ…」
少女「人は誰だって寂しがりや。一人じゃ生きていけない」
少女「一人で生きていける人こそ異常なの。それは強さじゃない」
少女「強そうに見える人は、確固たる意志を持ってる人なんかからそういう印象を受けるかもしれないけど」
少女「例えば私なら、あなたの言うとおり、小説家になることしか、多分、今は頭にないと思うけれど」
少女「それは目的意識に依存してるって言い方もできると思うの」
少女「本当に強い人間がいるのだとしたら、それは何にも依存することのない人をさす」
少女「そして、人は何かに依存しなければ生きていくことができない」
少女「私は今の依存先を失えば、それこそあっという間。何もかもが崩れ落ちるまで」
少女「私は弱いよ」
後輩「……なるほど」
後輩「勉強になりますっ」カチャ…
後輩「……。ん、美味しい!」
少女「ね。美味しいね」
後輩「…ふふ」
少女「?」
後輩「先輩、今、私、楽しいです」
少女「……私も」
サー…
ポツ……ポツ…
後輩「――先、輩…」
少女「後輩ちゃんッ後輩ちゃんッ後輩ちゃんッ…」
少女「ああああああああああ」
後輩「…」
後輩「先輩は…一人じゃ……ない」
少女「え…?」
後輩「先輩は…もっと、色んなものを……見て、聞いて、」
先輩「いろんな所へ行って…いろんな人と話して……」
先輩「そして、あなただけの…最高の作品を……作ってください」
少女「そんな…今にも……死んじゃうような、そんなこと、言わないで」
先輩「先輩…」
少女「っ、うっ…」
後輩「私は――――」
――――ガンッ!!!!!!!!!!!!
母「……あ、」
少女「…、」
――少女の『アイスアロー』が9999HITした!
暗黒の野良犬「ガァ…」
暗黒の野良犬「」ドサリ
ヒキニート:HP
8/350000
ヒキニート(38)「わ、るい。助かった…」ゼイゼイ
少女「…」
ヒキニート(38)「それにしてもここ一帯のエンカウント率は」
少女「――――いい加減にして!!!!!!!!!!!!!!!!」
ヒキニート(38)「ッ…、」
少女「…」
ヒキニート(38)「何、だよ、急に…」
少女「勇者であるあなただって、死ぬときは死ぬの!!!」
少女「自惚れないでって言ってるの!!」
少女「楽しいでしょうっ」
少女「そうやって思うがままに戦って、名前は最低だけど格好良い剣で魔物を倒して、見た目も最低だけど勇者のような扱いされて」
少女「痛快でしょうっ。こんな、こんな、こんな…ッ!!!」
――――スパァン!!
少女「…あっ」
ドサッ!
姉「……お、お婆ちゃん…」
祖母(545800)「…」
少女「……。痛い…」
祖母(545800)「今そのまま話し続ければ、きっとお主はもっと痛い目に会ったことじゃろう」
祖母(545800)「もっとも、何のことかは知らんが…」
祖母(545800)「言葉は剣の鋭さに似ておる」
祖母(545800)「一時の感情に身を任せるでない。お主はまだ子供じゃが…」
祖母(545800)「今は子ども扱いできない状況下だからの」
姉「そもそも、分からないことが多すぎると思うの」
~自宅から17メートル後~
昼、休憩時
ヒキニート(38)「それを知るためにも、こうしてコンビニに向かってるんだろ」
姉「誓いを果たすため?」
ヒキニート(38)「……ああ。そうだ」
姉「突然現れていきなり仲間入りした少女さんは、もはや選択外として」チラッ
少女「…」
ヒキニート(38)「何の話だよ」
姉「お婆ちゃんよ、お婆ちゃん。何がって、何か知ってそうな、怪しい人よ」
姉「さっきの怒り方も、まるでお婆ちゃんが、少女さんに言われたら都合の悪いことを口封じしたようにしか見えなかった」
ヒキニート(38)「そうか? 何を言いたいかは分からないって」
姉「それを鵜呑みにするようだからアンタはいつまでたっても馬鹿なの」
ヒキニート(38)「今日は我輩罵られてばかりだな…」
ヒキニート(38)「でも、少女にしたって、事情通だって風には見えなかったけどな」
姉「どこが」
ヒキニート(38)「昨日、飯時に二人で話してたんだが」
姉「アンタ通報するわよ」
ヒキニート(38)「大いなる勘違いをしているぞお前!!!」
ヒキニート(38)「で…。やたらしつこく迫って来るんだよ」
姉「…………………………え?」
ヒキニート(38)「大いなる勘違いをしているぞお前!!!」
ヒキニート(38)「聞かれるんだ。よく。我輩と爺ちゃんの仲について」
姉「ま、アンタにとってお爺ちゃんは特別だからね…」
ヒキニート(38)「…、」
ヒキニート(38)「まあ、何だかんだ、話してないんだが」
姉「どうして?」
ヒキニート(38)「どうしてって…。話す前に夕飯のお呼びがかかったり、昨日の夜中も」
姉「夜中…?」
ヒキニート(38)「話の腰をいちいち折るな! 出現しただろうが、魔物が!」
ヒキニート(38)「その後も、今日の朝とか、とにかくしつこいんだよ」
ヒキニート(38)「それにあいつには≪聖女≫が宿ってるらしいが…」
ヒキニート(38)「それにしては、使命感の元だったり、我輩にかかった呪いについてだったり、時空間がひとつにまとまろうとしてることの意味だったり、肝心の破壊の店長とやらの目的だったり、分からないことのオンパレード」
ヒキニート(38)「でも現時空間の状態について詳しかったりするし、何も隠すことなんかないだろ。知ってれば話すだろうし」
姉「…そうかもね」
姉「じゃあ、アンタを誰かに重ねてるとか」
ヒキニート(38)「はあ?」
姉「あるいは、どこかからやってきたスパイだとか」
ヒキニート(38)「前者は意味が分からんし、後者は話が飛躍しすぎだ」
姉「十分有り得るって」
姉「だって、会って間もないアンタに、そうして接近しては情報を探り出そうとしてるのって、考えられることはその二つしかないじゃない」
姉「一目惚れは隕石が振ってくる確立より低いし」
ヒキニート(38)「弟の威厳を保つためにそろそろ実力行使に出ていいか」
姉「引きこもりニートが何を威厳にするの?」
ヒキニート(38)「…」
姉「可能性の話よ」
姉「前者は、最近読んだ漫画であった話よ。歳の差から考えて、少女さんから見れば…アンタは、そうね。生き別れた、或いは濃厚な線として死んだ兄に面影を重ねたり」
ヒキニート(38)「そういう目で見られてるようなものは感じ取れないが…。まるっきり的外れかと言われれば、それも疑問だが」
姉「ま、そんな胡散臭い話よりは、やっぱりスパイ説よね。可能性大」
ヒキニート(38)「否定はできないが、肯定はそれ以上にしたくない」
姉「じゃあ、本命」
ヒキニート(38)「本命?」
姉「人の本質は、例えば取り乱したときなんかからだと読み取りやすいわけ」
ヒキニート(38)「はあ」
――そうやって思うがままに戦って、名前は最低だけど格好良い剣で魔物を倒して、見た目も最低だけど勇者のような扱いされて
姉「――アンタは、本来、勇者と呼ばれるべき存在じゃない」
ヒキニート(38)「……!」
――遭いたくなかった
ヒキニート(38)「…」
姉「本来の勇者が別に存在していて、でも、その本来の勇者に権利か何かを明け渡すには、まずあなたが生きていることが前提」
――あなたに死なれちゃ迷惑なの
ヒキニート(38)「…」
ヒキニート(38)「本当にそうだとしたら、こんな座、さっさと譲ってやりたいよ我輩は」
ヒキニート(38)「我輩はコンビニに行きたいだけなんだ。時空間だとか、破壊の店長だとか、勇者だとか」
ヒキニート(38)「真実であったとしても、我輩には重過ぎる」
姉「…そうね」
姉「ま、結局は憶測よね」
姉「この話は保留ってことで」
ヒキニート(38)「…ああ。我輩たちは、まず何にしても、セッブンイレブンに辿り付く。それだけは絶対的な答えだ」
ヒキニート(38)「親父を蘇らせるためにもだ」
姉「うん」
ヒキニート(38)(一番の疑問は…)
ヒキニート(38)(あの時に、少女が我輩を攻撃した時だ。死んだら迷惑と言っておいて)
――遭いたくなかった
ヒキニート(38)(憎まれているのかもしれない)
街
表店長「兄者!! この俺が来たからにはもう安心だ!!! 安らかに眠れ!!!!」
裏店長「お前の兄になった覚えはねえ。眠る必要性もねえ」
姫「やはり表店長…」
蠱惑の店員「ちっ…」
蠱惑の店員「私達セッブンイレブン勢の計画を邪魔するなあ!!!!」
――蠱惑の店員は『ぱふぱふ』をしかけた!
表店長「ゥァァアアアアアョョィッ!!!!!!!!!!!」
――表店長に1000000000000000000ダメージ!
表店長:HP
0/58000000
裏店長「クソがあああああああああああああああああああああッ!!!!」
姫「な、ななな」カアアアア…
蠱惑の店員「んふ。所詮は男の子ねえ」
蠱惑の店員「次はあなたの番」
裏店長「」ニヤリ
――ゴウッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ズババババババババババババババババババババババ!!…………
蠱惑の店員「あああああああああああッ!!!」
――表店長の『カマイタチ』がクリティカルヒットした!
――蠱惑の店員に6000×10ダメージ!
蠱惑の店員:HP
380000000/4500000000
蠱惑の店員「ぐ。何が……」
裏店長「コモンライフ。俺と表店長を同時に倒さなければ、回数に限りはあるが蘇ることが可能だ」
表店長「今のは効いたぜ! 少しな!!」
姫「絶大な効果だっただろうが」
蠱惑の店員「…厄介な……」
裏店長「……お前、計画とか言ったな」
蠱惑の店員「それが何?」
裏店長「お前らの計画は≪覚醒派≫のもので間違いないな」
蠱惑の店員「話す義理がある? スパイなら自分で探ってみればァ?」
裏店長「探りは入れたさ。一年前にはな」
裏店長「ホワイトワールド計画」
裏店長「お前らのやろうとしてることは、これだ」
蠱惑の店員「」ニヤリ
裏店長「ビンゴって訳か…」
蠱惑の店員「ええ。そうね。よく調べてるじゃない。流石は≪雲≫ね。どこで情報を掴んだの?」
裏店長「一年前のことだ」
裏店長「胸毛野郎の命で、趣味じゃねえがヴァミリーマートに探りを入れた日だ」
蠱惑の店員「そのヴァミリーマートの王女の前で随分な発言ね。あなたロソーン側の人間でしょう?」
裏店長「そうとも。属する居場所はまるっきり違う」
裏店長「今回の同盟は上っ面のものではあるが、実はそうでもなかったって話さ」
蠱惑の店員「…」
蠱惑の店員「ロソーンも封印派というわけね」
蠱惑の店員「――砂時計計画は、実在するものだった」
裏店長「オオいいねえ。腹の探り合いなんざするつもりはねえからな。今ここで、俺らはお前を倒す」
裏店長「これはゲームだ」
裏店長「小出しに情報をあえて与え、そして引き出し、互いの求めるラインを越えた時」
裏店長「口封じの戦いが始まる」
蠱惑の店員「…面白いわね。それ」
サークルK・ザンクス、本店
スキンヘッド店長「セッブンイレブンの≪四天王≫の一人が…な、何の用だ」
リーゼント副店長「我ら中立企業は、覚醒派にも封印派にも属さないという表明を公にした筈だっ」
鉄壁の店員「そう。しかし。お前らは。≪ヒキニクノタテ≫を所持している」
スキンヘッド店長「! ……」
リーゼント副店長「情報が、漏れていたのか」
鉄壁の店員「勇者が。覚醒。するには。姫の能力だけでは。足りない」
鉄壁の店員「ヒキニクノツルギ。ヒキニクノタテ。ヒキニクノヨロイ」
鉄壁の店員「そして。五つの属性の会得」
鉄壁の店員「この状態から。姫の能力を用いることで。ようやく。覚醒は成し遂げられる」
鉄壁の店員「それを。お前らは。知っていた。筈だ」
リーゼント副店長「……ああそうだ。我らはあくまで中立。どこにも与さないことと同時に、自分達の力でこの現状を打破する、その考えの下での中立だ」
鉄壁の店員「青いな…」
スキンヘッド店長「ああ。そもそも、覚醒も、封印も、どちらにも転がらなくていいのだ」
スキンヘッド店長「もし封印をしてしまえば、可能性が消失したことで、セッブンイレブンは戦争を起こす。覚醒してしまえば、穴が解き放たれてしまう。そうなれば、緩和された世界に再び災厄をもたらす」
スキンヘッド店長「何ものにも頼ることなく、自分達で、この悪意に満ちた世界を変える」
リーゼント副店長「それが! ザンクスの出した答えだ!!」
鉄壁の店員「そのスキンヘッドは。ずばり。ストレスによるものを誤魔化した髪型だな」
スキンヘッド店長「…、」
鉄壁の店員「全ての悪意は。我らのために在り」
鉄壁の店員「ヒキニクノタテを。譲ってもらおう」ズシン…
スキンヘッド店長「ぐっ…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「ほぁぁぁぁァ!!!!」
――クサレ漫画家は『Gペンアタック』を放った!
ドゴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ズゴゴゴゴゴゴ…
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「フヒヒ、間に合ったようだな」
リーゼント副店長「クサレ漫画家! よくぞ間に合ってくれた!!」
スキンヘッド店長「時間稼ぎが功を奏したようだな…助かった」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「セッブンイレブンの≪四天王≫を倒すのは伝説の勇者ではない、この僕ちんだヌファハハッ!!! ……あ、今の台詞、次の作品に採用しよう…」
スキンヘッド店長「ヒキニクノタテは、世界の均衡を保つために、我々が守り抜かなければならぬ。今までも、これからもだ」
リーゼント副店長「うむ」
鉄壁の店員「――――随分と。でかい口を。叩くな。クサレ漫画家とやら」
――鉄壁の店員に0ダメージ!
鉄壁の店員:HP
10/10
リーゼント副店長「!?」
スキンヘッド店長「馬鹿な…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「何ィ!? 僕チンのGペンアタックが、通じていない…」
――鉄壁の店員は≪○なるバリア、ミラーフォース≫を放った!
ドォン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「…………く、は」
――クサレ漫画家に7799ダメージ!!
クサレ漫画家:HP
1/7800
スキンヘッド店長「クサレ漫画家!」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「ぐ…う」ヨロッ
鉄壁の店員「早く。楽になれ」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「何故…分からない……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「サービスの提供者と…与えられる者は…分かり合えるんだ……」
鉄壁の店員「ありえないな。結局、文句を吐く人間は。どうしようもないのだ」
鉄壁の店員「与える者に対しての敬意。そんなものは。既に世界からは消えてなくなってしまっている」
鉄壁の店員「感謝し、感謝される。理想に過ぎない。人間は汚い。醜い。そして愚かしい」
鉄壁の店員「貴様ら店長は。そんな人間を。接客の中で。どれほど目にしてきた」
リーゼント副店長「…、」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「僕ちんは…ネット上では、酷評の嵐だ……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「あまりにも無責任な発言…絶え間ない罵詈雑言……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「こいつの漫画は糞。くそ。クソ」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「絵が汚い。ストーリーが書けない。そもそも漫画の才能なし。資源の無駄遣い」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「見なければ…いいものを……。何度…ネットを徘徊しては……悔し涙を流したか…………」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「そして…ついに……出版社の人間からも見切られ…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「僕ちんは…世界の誰からも……相手にされない……空気と同じような…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「空虚な存在に…成り果てた…………」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「だが…ある日に……唯一…僕ちんに味方をしてくれていた……編集の…人が……贈り物を……寄越した…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「それは…一通の……手紙…だった…………」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「内容を読み…僕ちんは…………その日、一日中……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「ごみ屋敷のような…ボロアパートの一室で……むせび泣いていた…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「小学生の…子供から…だった……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「また、先生の作品を……読みたい…と」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「そして…僕ちんは……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「誰かを…喜ばせたい……希望を与えたい気持ちを…持ち続けている限りは……味方はどこかに…必ず存在することを…知った……」
――ドゴォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
クサレ漫画家:HP
0/7800
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「…………、」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「次の…作品……を…」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「手紙の送り主に…僕ちんの漫画で……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「キ…ボウ…を……」
クサレ漫画家(打ち切り7作目)「」
ドサッ…
鉄壁の店員「才能なき凡人の戯言だな」
リーゼント店長「き。き、」
リーゼント店長「貴様アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
スキンヘッド店長「アフロ副々店長おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!!!」
アフロ副々店長「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!」
リーゼント副店長「こいつを!!!!!! 倒す!!!!!!!!!!!!!!!」
鉄壁の店員「雑魚が。いくら群がったところで……」
「「「――――合体ッ!!!!」」」
――店長三人は合体した!!!
ゴールデン店長『はああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
ゴールデン店長:HP
10000000000000000000/10000000000000000000
ゴールデン店長『貴様はァ!! 絶対に許さん!!!!!!!!!』ドシュウッ!!!!!!
鉄壁の店員「ふん…」
ゴールデン店長:HP
0/10000000000000000000
ゴールデン店長『』
鉄壁の店員「ふん」
鉄壁の店員「この悪意ばかりが膨らみ。人の気持ちから余裕が失われていく世界で」
鉄壁の店員「善意など。もはや絶滅の危機なのだ」
鉄壁の店員「何故。それを受け止めない」
鉄壁の店員「……。ヒキニクノタテは。貰い受けるぞ」
ロソーン
胸毛の覇者ゼウス「なかなかどうして…粘りおる……」
音速の店員「ぜえ、ぜえ」
音速の店員「くそ、が」
音速の店員「攻撃を、回避するのが、やっと…」ヨロッ…
胸毛の覇者ゼウス「……まあよい。そろそろ、」
――――そろそろ下がれ、四天王の一人よ
ゴバッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
胸毛の覇者ゼウス「!?」
胸毛の覇者ゼウス「空間に…突然の割れ目が……」
胸毛の覇者ゼウス「…………早い登場だったな」
胸毛の覇者ゼウス「国王よ」
国王「」ビュゴオオオオオオオオオオオオオオ―――…
国王「」ゴゴゴゴゴ…
国王「」スタッ…
音速の店員「ち…もう、来たのか」
国王「満身創痍…。いつもの疑問口調もない。その威勢に様子が伴っておらんな」
国王「下がれ」ギロリ
音速の店員「…。ああ、分かったよ…」
胸毛の覇者ゼウス「……」
胸毛の覇者ゼウス「転移の魔法を会得しているとはな…腕を上げたな……」
国王「ゼウス。預かり主。能力泥棒よ」
国王「遊びは終いだ。≪ヒキニクノヨロイ≫を渡してもらう」
胸毛の覇者ゼウス「ふ。ふ」
胸毛の覇者ゼウス「ははははははははははは!!!」
国王「…」
胸毛の覇者ゼウス「もう、ロソーンとヴァミリーマートの建前上の契りは終いかっ」
胸毛の覇者ゼウス「――何を焦る」
国王「何」
国王「この歳にして、ワシもまだまだ子供ということだ。欲しいものは早くに。ましてや、道筋が見えてきたのであれば、尚のことよ」
胸毛の覇者ゼウス「…」
胸毛の覇者ゼウス「それは…」
胸毛の覇者ゼウス「ザンクスの連中がやられたと受け取ってよいのか?」ギロリ
国王「≪封印派≫は、得てして中立企業と親密な関係を築くことが多々ある」
国王「何故ならば、だ。≪伝説の勇者≫の覚醒による反動は≪穴≫を開放し、時空間と同様に分散されていた『クレーマーの悪意』が世界を満たす。封印派…貴様らにしても、結局のところは、世界を乱したくない。乱さず、自らの意向に進みだす」
国王「しかし封印を行えば、≪覚醒派≫の計画を進める企業との対立を余儀なくされる」
国王「言ってしまえば、≪封印派≫とは『好戦的な中立』でしかないのだ」
国王「そうだ。≪封印派≫の計画を進めていたロソーンは、中立であったザンクスと近い距離感にあった」
国王「時折、物資や働き手の相互支援などで助け合いをしていたことだろう」
国王「だが同盟までには行き着かなかった。いくら意見を交し合っても、やはり勇者の存在を如何様にするかという点がどうしてもネックになる」
国王「そんな希薄な関係にあったのだ」
国王「非情なお前のことよ。今更、ザンクス全域を滅ぼされたと知ったところで、微塵の怒りも沸くまい」
国王「そうであろう。ゼウスよ…?」ニヤリ
胸毛の覇者ゼウス「……」
胸毛の覇者ゼウス「≪ヒキニクノヨロイ≫を奪取するべく此処へやってきた時点で、『これまでの建前は全て取り払う』ものと受け取って、構わないのだな」
国王「大いに、結構」
胸毛の覇者ゼウス「やはり、貴様は、≪覚醒派≫の人間…」
国王「一方で、貴様らロソーンの≪砂時計計画≫とは、つまり、『クレーマーも含めた客、そして提供者。この二つの立場を入れ替える』ことにあった」
国王「セッブンイレブン一強の時代が囁かれはするが…」
国王「やはり、腐っても、三大コンビニエンスストアの一角を担う企業だ。それほどまでに業績を伸ばし、店舗を日本中に拡大していくことに成功したコンビニのひとつであるロソーンならば、或いは、その計画が実現する日が来たことかもしれんな」
国王「我らさえ、いなかったのであれば、の話だが…」
胸毛の覇者ゼウス「…」
胸毛の覇者ゼウス「――何故、ヴァミリーマートの国王が裏切りを働き、≪覚醒派≫である計画を進める、≪破壊の店長≫率いるセッブンイレブンに与した」
胸毛の覇者ゼウス「≪ヒキニクノヨロイ≫を必要とする≪覚醒派≫そのものの行動に出た貴様に、もはや隠すことはなかろう」
国王「ふむ」
国王「……そもそも。我は、それほどヴァミリーマートに固執していない」
胸毛の覇者ゼウス「何?」
胸毛の覇者ゼウス「貴様らヴァミリーマートが企てていた≪封印派≫による考えがもとになる『クレーマー撲滅計画』。これは、どうする」
国王「信じられんかもしれんがな」
国王「あれの首謀者は、我ではない」
胸毛の覇者ゼウス「!!?」
胸毛の覇者ゼウス「な、ならば…一体、何者が…」
胸毛の覇者ゼウス「まさか…!」
国王「貴様の予想は、恐らく、当たっておる」
胸毛の覇者ゼウス「何故…」
胸毛の覇者ゼウス「覚醒に転がろうとも、封印に転がろうとも、事態を開始させるために、今回、奴に能力を回帰させたが…」
胸毛の覇者ゼウス「そもそも、何故ワシに能力を預けた」
国王「あやつは、内に、闇を秘めておる」
国王「奴に能力を暴走させてはならなかったからな」
胸毛の覇者ゼウス「暴走…そんなことが…」
――――解決するには。この日本国のどこかに存在すると云われる、かの《伝説の勇者》を探し出し、全ての悪の根源であるセッブンイレブンをグッチャグッチャに叩き潰し……。いえ、成敗し、この国の均衡を保つ。それしかありません!
国王「あやつは相応に賢い。本性をあえて垣間見せ、覚醒派寄りの極端な発言をすることにより、計画を悟られないよう振舞っていた」
――――私が、勇者を覚醒させます
国王「だが撲滅計画は、ロソーンにおける砂時計計画と同様に、≪封印派≫の考えだった。姫は秘密裏に行動していた、ということだ」
胸毛の覇者ゼウス「そして貴様はその覚醒意見にあっさりと合意してみせることで、表向きは、トップに立つ国王自らは、覚醒派にも封印派にもどちらにも拘っていないという印象を与えることで、本当に≪覚醒派≫であることを隠し通している…」
――――とにかくぶっ潰すこと
胸毛の覇者ゼウス「いたちごっこだということか」
胸毛の覇者ゼウス「企業の上方に位置する二人が、双方共に、建前により会話を繰り広げていた。何の意味もない会話だ。そして、あやつはそれに気付けなかった」
――――姫。勇者を助けに行くのだ。奴らは危険過ぎる
国王「万一、覚醒するよりも先に何かの手違いで死なれたら困るからな。そういう意味では、あやつに念のため勇者を止めてほしかったのは、半分本当だったがな。封印の儀に入ったとしても、その直前に食い止めればよいのだ。だがまあ…」
国王「調査の結果、勇者に≪魔女≫が付いていたのだから、それも杞憂だったがな」
胸毛の覇者ゼウス「魔女…」
胸毛の覇者ゼウス「…」
――――待てよ。せっかくてめえらの憎きセッブンイレブンの頂に立つ≪破壊の店長≫をぶちのめすチャンスなんじゃねえのかよこれは。何でまたむざむざ言ってみりゃ味方の脚をへし折るような真似すんだよ
胸毛の覇者ゼウス(ならば、あの裏店長の演技…全てを知っているあやつが、わざわざ勇者の封印行為に対しての疑問を口にしたのは、姫に対し、ある種の『確認』を取っていた、そういう解釈ができる。撲滅計画は、そもそも勇者の覚醒リスクをふまえた上でなければ、成り立たないからだ)
胸毛の覇者ゼウス(≪雲≫であるあやつが、撲滅計画の首謀者を知らない筈がない)
胸毛の覇者ゼウス(行動を共にしている行為は『偵察』と取っていたが…)
胸毛の覇者ゼウス(仲間であるワシに対して、撲滅計画の首謀者を教えなかったのは、)
胸毛の覇者ゼウス(どう受け取っても、庇っているようにしか思えない)
胸毛の覇者ゼウス(≪雲≫よ…。お前の居場所は、どこに在る……)
胸毛の覇者ゼウス「そして…」
胸毛の覇者ゼウス「貴様らセッブン勢の≪ホワイトワールド計画≫…」
国王「――クレーマーの存在しない、優しい世界だ…」
胸毛の覇者ゼウス「ホワイトワールド計画の…真相……」
胸毛の覇者ゼウス「勇者を覚醒させ、≪穴≫を解き放ち、三つに分散されていた≪悪意≫を再び呼び起こし、」
国王「詳しいじゃないか。≪雲≫は優秀だな」
胸毛の覇者ゼウス「…その悪意を、破壊の店長の魔力により、ひとつにする……」
胸毛の覇者ゼウス「世界の≪悪意≫がひとつになり、それは≪終焉の肉まん≫となる…」
胸毛の覇者ゼウス「ひとつ。どうしても分からぬことがあった」
胸毛の覇者ゼウス「その凄まじい負のエネルギー体である≪終焉の肉まん≫を、どうするつもりだ」
国王「無論、封印するのだ」
胸毛の覇者ゼウス「馬鹿なっ。できる筈がなかろうッ!!!」
国王「破壊の店長であれば、あの方の魔力であれば、それは、いいか。可能なのだ
国王「絶対的に、だ」
胸毛の覇者ゼウス「優しい世界…」
胸毛の覇者ゼウス「今此処で、その計画の核を知り、可能性を感じたのであれば、ワシは、或いは、全てを貴様らに譲るつもりだった。客を支配する必要もなくなるのだからな」
胸毛の覇者ゼウス「だが、案の定、だ」
胸毛の覇者ゼウス「貴様らは無茶苦茶過ぎる」
国王「……………………であるならば、どうする?」
胸毛の覇者ゼウス「決まっている…」
胸毛の覇者ゼウス「今、ここで、貴様を」
胸毛の覇者ゼウス「止める」スッ…
胸毛の覇者ゼウス:HP
100000000000000000000000000000000/100000000000000000000000000000000
国王「そうだ…」
国王「所詮、相互理解など、人間には不可能なのだ」スッ…
国王:HP
100000000000000000000000000000000/100000000000000000000000000000000
胸毛の覇者ゼウス(国王が…相手となると……)
胸毛の覇者ゼウス(出し惜しみは…あり得んな)
国王「さあ戦うぞ≪預かり主≫!!!!!!!!」
国王「――我らの計画達成まで、あと少しだ!!!」
おかん「早く就活始めなさいな」
――数日前――
とある家
おかん「もうアンタも27になるでしょ。失業して以降の空白期間、これ以上はあまり作らないほうがええと思うんよ」
おかん「近所のヒキニートとか言う人も有名で、今や38歳らしいじゃない。アンタも手遅れになる前に」
初級ニート(27)「…」カタカタカタ…
初級ニート(27)「はあ…」
世界に退屈と失望を覚え始めたのは、いつからだろうか。
食べていくためには働かなければならない。
だから人は働く。
だが、働かなくても食べていける人間ならばどうだ?
働かないで、いいんじゃないか。
ところがどうだ。
おかん「あと一年、この状態が続くようであれば、家から追い出すからね」
おかん「いい?」
初級ニート(27)「……」
こんなことを言い出すのだ。
いいじゃないか。
勝手に生んだのはアンタだろうに。
社会は、自分には合わない。
合わさずに生きていける手段としての才能もない。
終わったんだ。
自分の人生は、終わったんだ。
――終わったんだ。
ヒキニート(38)「…………え?」
~薬局前~
姉「えっ……。あれ?」
母「い、今、あれ?」
祖母(545800)「…」
少女「時空間の歪みが…一層、酷くなってる…」
ヒキニート(38)「さっきまで、まだ自宅が後方に見える距離にいたのに…」
ヒキニート(38)「いつの間にすっ飛んだんだ?」
少女「!!」
フッ…
守護神フリーター「ここまで来たか。勇者一行よ」
守護神セイシャイン「早速で悪いが」
「「死ね」」
――――ズドォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
――【二章・終】――
続きます。