【1】 【2】 【3】 の続きです。

855 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 21:45:42.30 3rIsNhg0 486/630


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




そして、運命の日が訪れる――。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


856 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 21:49:36.50 3rIsNhg0 487/630

3日後――。

本来ならあと1時間ほどで最終下校時刻を迎える頃、それは始まった。
1つの爆音を皮切りに、学園都市の至る場所から爆発や炎が舞い上がったのだ。
それは、学園都市の崩壊を報せる狼煙とも言えた。
地獄がまた始まったのだった――。


ジャッジメント第177支部――。

その日、美琴たち4人は予め早くから支部に集合していた。

美琴「始まった……っ!」

遠くで鳴り響いた爆音を聞き、美琴は立ち上がった。
内戦が始まったのだ。

黒子「電話が通じませんの。混線状況ですわ」

初春「ネットも使えなくなってます」

佐天「いよいよ終わりか……」

黒子「じき、インフラも麻痺するでしょう。本当の本当にこれで学園都市も終わりですわね」

美琴「さぁ、早く行くわよ!」

初春「待って下さい! 後ちょっとで機密書類の処分が終わりますから!」

黒子「こっちももうすぐですの!」

佐天「2人とも急いで!」

美琴「一刻の猶予も無いわ!」

パソコンを操作する黒子と初春を見、美琴と佐天は焦りを見せる。

黒子「終わりましたですの!」

3人は、ドアの付近に集まり初春を手招きする。

佐天「初春! 早く!」

初春「……よし終わった! 今行きます!!」

佐天は、手招きしていた腕を、走ってきた初春の肩に回すように急がせる。
最後の後始末も終え、美琴たち4人は支部を飛び出した。

857 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 21:54:35.55 3rIsNhg0 488/630

美琴「こっちよ!! 合流地点までのルートは頭に入れてある」

4人は通りを駆け抜ける。この辺りはまだ、内戦勃発の煽りを受けていないのか、どこも被害は無く静かだった。

佐天「もっと早いうちに出てれば良かったんだけど……」

美琴「それじゃあ駄目なのよ。内戦開始の直前は、研究者側も敵対するテログループたちも神経をすり減らしてる。そんな最中に怪しい動きをすれば、どちらかの勢力に勘付かれる可能性もある」

黒子「逆に、内戦が始まったらみんな緊張も解けてカオスな状況になるので、隙が生まれやすいということですわね!?」

美琴「そういうこと! あいつが説明したまんまのことだけどね。それにわざわざあいつらはジャッジメント支部の近くに合流ポイントを設けてくれたわ。危険を冒してまでこんな近くまで迎えに来てくれるんだから贅沢は言えないでしょ!!」

佐天「なるほど確かにそれもそうですね!」

初春「なら早く行かないと」

美琴「ええ、寄り道は出来ないわ」

息を切らし彼女たちは走る。だが、それと同時に言い知れぬ緊張や不安も沸々と湧き上がってくる。
辺りはまだ静かとは言え、付近の建物が急に爆発したり、路地裏からテログループが顔を覗かせないか、と考えると余計に焦燥感が増してくるのだった。




ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!




突如、サイレンが鳴り出した。

858 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 21:59:38.68 3rIsNhg0 489/630

恐らく、学園都市全域に緊急避難警報が出されたのだろう。

美琴「これは……サイレン!?」

本能をつつくような不気味な音を耳にし、美琴は僅かに顔を上げる。
と、その時だった。

黒子「お姉さま!!!!」

美琴「え……?」

先頭を走っていた美琴が、黒子の声に気付き正面に顔を戻した時だった。
突如、曲がり角の陰からごつい装甲を纏った腕が飛び出してきた。

美琴「!!!!!!!」

1秒後、美琴は後方に吹き飛ばされていた。

黒子「お姉さま!!!」

佐天初春「御坂さん!!!」

地面に転がった美琴に駆け寄る3人。彼女たちの絶望を更に肥やすように、ズゥンという地響きが後ろから轟いた。





「ぎゃぁっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!! いいザマだなぁ、レベル5のお嬢ちゃんよぉおおおおおおおおおお!!!!!!」






859 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:05:16.71 3rIsNhg0 490/630

黒子たちが振り返る。
そこには、ピンク色のどぎつい模様で全身を埋められた、1台の駆動鎧(パワードスーツ)が3人を見下していた。

黒子「あ……貴女は……」

3人の顔に冷や汗が浮かぶ。



テレスティーナ「正解でぇぇぇぇっす!!!! ご無沙汰してましたかぁ、お嬢ちゃんたちぃぃぃい??? まあこっちはお前らガキのことなんて1㎜たりとも心配なんてしてなかったけどなぁ!!!! ぎゃははははははははははは!!!!!!!」



その駆動鎧に身を纏った人物――それはかつて『乱雑反応(ポルターガイスト)』の事件でさんざん美琴たちを苦しめた黒幕の女だった。

美琴「テ……テレスティーナ=木原=ライフライン………」

頭から一筋の血を流しながら、美琴が起き上がろうとする。

黒子「お姉さま!!」

佐天初春「御坂さん!!!」

テレスティーナ「あぁぁぁぁん? 何だ死んでなかったのかよこのクソガキは!!??」

限界まで顔を歪めに歪めまくり、テレスティーナは暴言を吐く。

美琴「……咄嗟に……回避しただけよ……もう少し反応が遅かったら、危なかったわね……」

テレスティーナ「ほざくなアバズレがぁ!!!」

黒子「くっ!」

美琴に注意を向けているテレスティーナの隙をつき、黒子が動きを見せる。

テレスティーナ「はいざんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんん!!!!!!!」

ドゴッ!!!!

黒子「きゃん!!!!」

しかし、彼女は攻撃を仕掛ける間も無く、駆動鎧のごつい左腕に薙ぎ払われてしまった。

美琴「黒子!!!」

佐天初春「白井さん!!!」

テレスティーナ「テレポーターなんてほんの少し捻って精神状態を悪化させてやれば無力になるからなぁ!!!! 強力に見えても実は相手しやすいっていう」

860 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:11:37.19 3rIsNhg0 491/630

佐天初春「……………っ」

佐天と初春が、倒れた美琴と黒子の前に立ちテレスティーナを睨む。

テレスティーナ「ぁぁぁああああ? 何だその目はぁ?? 生意気なガキどもが!!! いいぜぇ、いつぞやの借りここで返してやるぁぁぁぁぁ!!!!!」

美琴「そうは……させない……」

美琴が震える手でポケットからコインを取り出す。

テレスティーナ「遅すぎるぞブァァァァァァァカ!!!!!!」ガッ!!

美琴「きゃ……あっ!!!!」

駆動鎧の右腕が美琴を掴み上げた。

テレスティーナ「何がそうはさせないキリッだよ!!!!!」

佐天初春「御坂さん!!!」

テレスティーナ「お前らの戦闘パターンなんてお見通しなんだよ!!! 1度戦ってるからなぁ!!!! 所詮レベル5とレベル4でも精神が未熟なガキだしぃぃ!!!! ほんの少し隙をついて傷つけてやるだけで戦闘を有利に運べるんだから簡単だよなぁあああああ!!!!????」

美琴「くっ……うぅ……」

美琴は何とか電気を発しようと試みるが、駆動鎧の右腕が彼女の首を押さえるようにしめつけているため演算に集中出来ない。

テレスティーナ「なぁぁんか前にもこんな風景見たことあるよなぁぁぁぁ!!!! あんときゃお前の知り合いのせいでみすみすお前を取り逃がしたが、今度こそお前は終わりだぜぎゃははははははははは!!!!!!」

黒子「そうは……させませんの!!」

ヨロヨロと黒子が立ち上がる。

テレスティーナ「あ?」

黒子は太ももに巻いていた革ベルトに手を触れ、金属矢をテレポートさせる。
しかし、何故か金属矢は駆動鎧に当たる前に、地面に叩き落されてしまった。

黒子「なっ!?」

861 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:17:21.41 3rIsNhg0 492/630

テレスティーナ「驚いたぁぁぁ? 驚きまちたかぁぁぁぁぁ???? こっちにはなぁ、魔術師なんて反則的なやつもいるんだよ、ブァァァァァカ!!!!!!」

見ると、その言葉に反応するように駆動鎧の後ろから1人の外国人らしき男が出て来た。恐らくはテレスティーナが言った魔術師だろう。
黒子たちは初めて目にする驚異の力と魔術師という存在に動揺する。

テレスティーナ「こっちはこの生意気なクソガキを圧殺しとくから、お前はそのテレポーターどもをぶち殺しとけ!!!!!」

言われた魔術師はニヤッと笑い、黒子と佐天と初春に近付き腕を伸ばす。

佐天「あ……あ……」

初春「来ないで……」

黒子「……………っ」

目の前の、魔術師と言う未知の相手にどう対処していいのか悩んでいるのか、それともテレポートを実行するほどの精神を保てるほど冷静ではなかったのか、黒子は攻撃の動作に移れなかった。
美琴は美琴で、テレスティーナの駆動鎧に首を掴まれ壁に押し付けられ手も足も出せない状態だった。

テレスティーナ「ヒャハハハははははははははははは!!!!!!! 死ね氏ね士ね詩ね師ね詞ねシネ市ねしねSINE歯ねSHINEしねシネ死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

美琴「がっ………はっ……」

美琴の意識が遠のいていく。
顔を歪みまくるテレスティーナを目の前にして、美琴は手を動かそうとするがまともに反応しない。
視界の端には、今にも魔術師らしき男に襲われそうな黒子と佐天と初春の絶望がかった顔がチラッと見えた。
美琴はテレスティーナを睨む。

テレスティーナ「なんだぁぁぁぁその反抗的な目はぁぁぁぁぁあああああ!!!!??? どうやらおしおきが必要なようだなぁぁぁぁあああああ???? いいぜぇぇぇぇえ、そのブッサイクな面、不快だから今すぐぶっ潰してやんよ!!!!!!」

862 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:23:11.42 3rIsNhg0 493/630

駆動鎧の左腕が動く。

テレスティーナ「死ねええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」

佐天「御坂さん!!!」

初春「御坂さん!!!」

黒子「お姉さま!!!」

美琴「くっ……!!」

重く、無慈悲な駆動鎧の左腕が美琴の顔を粉砕しようと振るわれる。
が、しかし………




テレスティーナ「……………あ?」




美琴「!!??」

いつまで経っても、攻撃は来なかった。不審に思った美琴が目を開くと、そこには不自然な方向に折り曲げられた駆動鎧の左腕が見えた。

テレスティーナ「ぐぎゃああああああああああああああ!!!!!!」

エイリアンのような悲鳴を発し、テレスティーナは駆動鎧の左腕を見る。恐らくは内部で自身の左腕も同じように曲がっているのだろう。
テレスティーナは恨めしい顔で叫んだ。

テレスティーナ「なんだぁお前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????」

テレスティーナが睨んだ先には………






駆動鎧と美琴の間に、1人の白い悪魔が立っていた。







865 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:29:25.57 3rIsNhg0 494/630

美琴「!!!!!!!!!」

黒子「あれは……」

驚き、黒子や魔術師もそっちの方に顔を向けた。
そしてその時、別方向からも1人の少年が現れ、声を上げた。





「悪い御坂。遅くなったな」





美琴「!!!!!!!!!!!」

美琴たちの窮地を救った2人の少年――それは、上条当麻と一方通行だった。

上条「今すぐ助けてやる」

一方通行「やれやれェ」

テレスティーナ「…………………」

その光景にしばし呆然としていたテレスティーナだったが、我に返るとすぐにまた顔を歪めた。

テレスティーナ「…………………ハッ!」
テレスティーナ「何が助けてやるだクソヤロウ!!! 遅れてきたヒーロー気取りか!!?? ああ!!?? お前らみたいなクソガキが2匹増えたところで何にもならんぇぇぇぇよぶぁぁあぁァぁか!!!!!!」

一方通行「っせェ………」

テレスティーナ「ああぁぁぁ?」

駆動鎧と美琴の間に立っていた一方通行が、テレスティーナに背中を向けながら呟いた。

一方通行「うるせェって言ってンだよ三下が」

僅かに振り返り、一方通行は深紅の目でテレスティーナを睨む。

866 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:35:49.24 8ClKob20 495/630

テレスティーナ「生意気なガキだなぁぁぁぁてめぇぇぇも!!!!! 左腕折られただけで戦闘力が減るとでも思ったかぁぁぁぁああああ?????」

ブンッ

そう言うと、テレスティーナはゴミを捨てるような動作で美琴を放り投げた。

美琴「あっ!!」

上条「よっと」

しかし、それを上手く上条がキャッチする。
が、テレスティーナはもう美琴のことはどうでもいいのか、既に一方通行に注意を向けていた。

テレスティーナ「てめぇみたいな生意気なガキは虫っころみたいに死んどけやああああああああああ!!!!!!!」

駆動鎧の右腕が一方通行に向けて振るわれる。




一方通行「うぜェ」




ドッ!!


テレスティーナ「…………は?」

鈍い音が一瞬響いた。
何が起こったのか理解する間もないまま、テレスティーナが纏った駆動鎧はどこからか生じたベクトルによって操られ………



ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!



2秒後、100m先の建物の壁にめり込んでいた。

869 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:41:51.56 8ClKob20 496/630

決着はすぐに着いた。

一方通行「ふン」

美琴「しゅ…瞬殺……」

それ以外に形容し難い、あっけない戦闘の終わり方だった。
上条に抱きかかえられた美琴は、遥か遠くで倒れたテレスティーナの駆動鎧を唖然と見ていた。

一方通行「俺を殺したいなら、木原くンの木原神拳なみの策ぐらい練ろよ。にしても、ホントあの一族にはろくなのがいないねェ」

つまらなさそうに一方通行は髪を掻いた。

上条「で、大丈夫か御坂?」

上条は、お姫様だっこのように抱えている美琴を見下ろす。
彼女は、子供のように片腕を上条の肩に伸ばし、身体も上条に寄せていた。

美琴「え? あ……うん……」

上条「良かった」

美琴の無事を確認すると、上条は安心したように微笑みを見せた。

魔術師「クソ! どういうことだこれは!?」

上条「ん?」

振り返ると、魔術師がうろたえていた。
恐らく、一方通行の実力の一端を垣間見て、慣れない超能力に今更ながら慌てふためいているようだった。

上条「悪い御坂、少し降ろすぞ」

美琴「うん……」

上条は、優しくそっと美琴を地面に降ろす。

魔術師「クソオオオオオオオオオ!!!!!!!」

黒子佐天初春「!!!!!!」

錯乱した魔術師が両手を黒子たちに向けた。
そして、そこから何らかの攻撃が放たれた。

バギィィィン!!!!

魔術師「なに!?」

871 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:47:26.53 8ClKob20 497/630

上条「寝てろ三下」

ドゴッ!!

と言う鈍い音と共に発せられた殴打を受け、魔術師は壁に突っ込みそのまま崩れ落ちた。

上条「ふん」

一方通行「雑魚しかいねェのかよ……」

3分もしないうちに、2人の強敵は倒された。

美琴黒子佐天初春「…………………」

そんな2人を4人は唖然と見ていたが、我に返った黒子と佐天と初春が美琴に駆け寄っていった。

黒子「お姉さま!」

佐天初春「御坂さん!」

美琴「大丈夫よこれぐらい。あんたたちは何ともない?」

黒子「私たちは大丈夫ですわ」

美琴「良かった……あんたたちが来てくれなかったら危なかったわ。ありがとう」

そう言って美琴は上条と一方通行に視線を向けた。

黒子佐天初春「ありがとうございます!」

美琴に続き、黒子たち3人が礼をする。

一方通行「礼は後だ」

上条「この近くに黄泉川先生たちの車があるからそこまで移動するぞ」

美琴「分かったわ」

数分後、美琴たちは上条に連れられて通りの端に待機していたワゴンに乗り込んだ。

872 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:52:56.01 8ClKob20 498/630

前後に1台ずつ、警備員が運転する自動車に護衛されてワゴンは出発する。

美琴「いっつ……」

カエル医者「よし、これで大丈夫だよ?」

カエル顔の医者から応急処置を受ける美琴。
ワゴン車は10人乗りで、運転席に鉄装、助手席に黄泉川が、前部座席に左から打ち止めと一方通行が、中央座席に左から黒子、佐天、初春が、後部座席に左から上条、美琴、カエル顔の医者が乗っていた。
因みに、木山と寮監はワゴン車の前を進む自動車の中だった。

上条「今から全員で脱出地点まで向かう。敵は双方共に街の中心部で衝突しつつある。この車列は郊外に離れていくから、騒ぎの中心からは遠のいていくことになる。敵の方も、何も事情を知らないはずの学生たちがこんな早くに逃げ出すとは思ってないからな」

カエル医者「逆に言えば今しかチャンスはないわけだね?」

美琴「そう言えば先生」

カエル医者「何だね?」

美琴「病院の患者さんたちはどうしたんですか?」

カエル医者「全くもってその通りだよね? 僕も我ながら情けないよ。患者さんたちを置いて『外』へ逃げることになるなんて。一応、病院内の患者さんたちには、医療施設が整ってある第7学区随一のシェルターに避難させたけどね?」

本当に物悲しそうにカエル顔の医者は語る。今この時も患者のことが気になって仕方がないのだろう。
それを汲んだのか、腕組みをして前を見ていた一方通行が言う。

一方通行「自虐することはねェだろ。あンたはよくやってるよ」

カエル医者「まさか君からそんな言葉が出るとはね?」

一方通行「けっ」

美琴はカエル医者の顔を一瞥する。
本当に彼は残念そうな顔をしている。だが、このまま学園都市の『中』に残っていても出来ることはほとんどない。ならば、学園都市の『外』から患者を救う手立てを考えるのが最良の策なのかもしれない。

打ち止め「もう、アナタってば素直じゃないのね、ってミサカはミサカは呆れてみたり」

一方通行「っせェ」

初春「にしても、ちゃんと最後まで脱出出来るんでしょうか?」

初春が窓の外を眺めながら呟く。

佐天「心配と言えば心配だよね」

黒子「杞憂であればいいんですけどね」

上条「敵に見つからない限り大丈夫だろう。まあ、後は車で向かうだけだ。脱出地点の近くまで来たら、徒歩に切り替えるけどな。その後は、闇夜に紛れて川からボートに乗って『外』と『中』の境界まで行くだけだ」

873 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 22:58:33.83 8ClKob20 499/630

美琴「………………でも、私たちだけ逃げるのってやっぱり何だか気が進まないな」

ふと、美琴が呟いた。

黒子「確かに、学園都市にはまだ多くの学生が残っていますしね」

車内に沈黙が訪れる。

カエル医者「………ま、かと言って学生たちを放っておくわけでもないよ。『外』のNGO団体の施設では、どのようにより多くの学生たちを学園都市から助け出すか、という計画が今から始まってるらしいからね。君たちなら、学園都市の内部を知る貴重な人材として彼らに協力することだって出来るんだ。だから、元気を出しなさい。ね?」

美琴「ゲコ太……」

上条「………………」

美琴「……でも」

カエル医者「ん?」

美琴「でも、学生たちだけじゃない。今こうしてる間にも、黄泉川先生の部下の人たちや、妹達が陽動で動いてるんでしょ?」

更に不安材料を口にする美琴。彼女の声はどこか弱弱しい。

一方通行「アイツらが自分で決めたことなンだ。ここで愚痴ってみろ。オマエはアイツらの意志を踏みにじることになるンだぞ」

黄泉川「私の部下たちも、生徒たちを守るのが本来の任務。腐ったアンチスキル上層部に代わって己の職務を全う出来るんじゃん。だからこそあいつらは喜んで志願して陽動任務を引き受けてくれたじゃん」

美琴「でも……でも……」

一方通行「グダグダうっせェな。納得いってないヤツがオマエだけだと思うなよ」

美琴「え?」

一方通行「だが、納得出来ても止められねェもンがあるだろ。それを止めようとしたら、逆にアイツらを馬鹿にしてることになる」

黄泉川「そういうこと。ま、人情としては見過ごしたくないんだけどさ」

一方通行と黄泉川の言葉にはどこかやり切れなさが含まれていた。恐らく、彼ら自身も妹達や部下たちに思うところがあるのだろう。

打ち止め「ちなみに、今ミサカネットワークに入ってきた陽動に就いてる妹達からのメッセージだけど……『これはミサカたちが自らの意志で決めたことです。お姉さまがここでミサカたちを心配して引き返したり、脱出に失敗すればミサカたちの行動も無駄になります。今、お姉さまが一番にすべきことは学園都市から逃げることです。では、ご武運を祈ってます』って下位個体たちが言ってるよ、ってミサカはミサカは説明してみる」

美琴「………あの子たち……」

打ち止め「ミサカだって本当は悲しいんだよお姉さま。だけど、下位個体たちの想いを無駄にするのは一番駄目だと思う」

美琴「……………………」

確かに、その通りかもしれない。だが、どうあっても全てが全て納得出来るものでもなかった。

上条「……………………」

874 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:04:25.39 8ClKob20 500/630

と、その時だった。黄泉川の無線に連絡が入った。後ろの車両からだ。

黄泉川「何? 車が急に止まった?」

無線を受けた黄泉川が後ろを振り返る。それにつられ、全員も後部ガラスから後ろを窺った。
見ると、確かに後方に付いていた車が停まっている。

佐天「何かあったのかな?」

初春「エンジントラブルでしょうか?」

美琴「どうするの?」

カエル医者「ちょっと待っててくれ。僕が1番彼らの車に近い座席に座ってるしね。様子を見てこよう」

美琴「あ……」

そう言うと、カエル顔の医者はドアを開き出て行った。

鉄装「い、いいんですか?」

黄泉川「まぁ、すぐ戻るだろ」

世話好きなカエル顔の医者らしい行動と言えたが、あまり無駄に時間を食うわけにもいかなかった。

カエル医者「どうかしたのかな?」

カエル顔の医者は停車した車のところまで近付くと、運転席を覗き込んだ。

警備員A「分かりません。エンジンに異常は無いはずなんですが」

警備員B「急に止まった感じで」

カエル顔の医者「ふむ、急に…ね」

カエル顔の医者は異常を調べるため、車の周りを回る。
ワゴン車からは美琴たちがその様子を不安げに見つめていた。

カエル医者「おや? これは?」

875 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:09:37.79 8ClKob20 501/630

車の背後に回った時、何かに気付いたのかカエル顔の医者が腰を屈めた。

カエル医者「パンクしているね……。しかもこれはまるで撃たれたような……ん?」

不意に、カエル顔の医者は立ち上がる。

美琴「何があったの?」




ズドオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!




突如、ワゴン車の後部ガラスの視界がオレンジ色に染まった。
咄嗟に、上条は美琴を庇うように覆い被り、他のみんなも反射的に椅子に頭を引っ込めた。



カエル医者「…………………」

しばらくして、カエル顔の医者は目を見開いた。

ボオオオオ……

周囲は黒い煙に覆われ、すぐ側ではオレンジ色の炎を上げながら燃える車が目に入った。

カエル医者「一体何が起こったんだね?」

状況も理解出来ず、カエル医者は呟いていた。

カエル医者「ん?」

彼は自分の身体を見た。
そこに、あるべきはずの下半身が無かった。

カエル医者「おやおや……」

877 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:15:26.88 8ClKob20 502/630

上条「クソ!」

頭を上げ、後部ガラスから後方を見る上条。
車が炎上していた。

美琴「何があったの?………何よあれ!?」

黒子「車が……燃えてますわ……」

佐天「何であんなことに!?」

初春「まだあの中には、先生と2人の警備員がいるんですよ!!」

上条「チクショウ!!」

一方通行「チッ!!」

ガラッ!

同時に、上条と一方通行が扉を開けて飛び出していた。

美琴「あっ!」

打ち止め「アナタ!!」

鉄装「黄泉川先生、あの2人が!」

黄泉川「クソ! 急に爆発したと思ったら……。いつでも出発出来るようしとくじゃん!」

美琴「………………っ」バッ

黒子「お姉さま!?」

佐天初春「御坂さん!!!」

黄泉川「何!?」

止める間も無く、美琴も車から飛び出していた。

879 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:20:38.61 8ClKob20 503/630

燃え盛る炎の熱にも負けず、上条と一方通行が車に近付いて来た。

一方通行「駄目だな。警備員の2人は即死だ。恐らくRPGの直撃でも受けたンだな。どこから撃ったのかは分からねェが、止まってると良い的だ。早く逃げるぞ」

上条「待て! 先生だ!!」

車から少し離れた所に、カエル顔の医者が仰向けに転がっていた。
ただし、  上  半  身  の  み  だ  が  。  

上条「先生!」

慌てて上条が駆け寄る。

カエル医者「おお君か。いやいや参ったね?」

上条「先生………」

その姿を見た上条が絶句する。

美琴「ゲコ太!!」

カエル医者「おや君まで。外に出たら危ないよ?」

上条「御坂!?」

美琴「あああ……何て……酷い……ゲコ太!!」

口元を両手で覆うように驚き、美琴はカエル顔の医者に駆け寄った。
一方通行は2人の様子を横目で窺いながらも周囲に警戒を向けている。恐らく、敵からの攻撃に備えているのだろう。だが、例え彼であっても音速で飛来する物体からワゴン車を守りきれるかは分からなかった。

880 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:25:32.23 8ClKob20 504/630

木山「何かあったのかな?」

寮監「一番後ろの車が爆発したようですが、あの先生が巻き込まれたようですね」

先頭の車内でも、後ろで起こりつつある惨状に気付いたのか、後部座席に座っていた木山と寮監が後ろを振り返っていた。

木山「………本当に? 無事ならいいんだが……」



美琴「やだ! やだよゲコ太!! 死なないで!!!」

上条「御坂、残念だが先生はもう無理だ。可哀想だけど、早く行かないと」

美琴「放っておけって言うの!?」

涙で顔をクシャクシャにし、美琴はカエル顔の医者にすがる。

一方通行「敵が来るぞ。いつまでも余裕こいてる暇ねェぞ!」

上条「御坂、もう無理だ」

美琴「でも……!」

カエル医者「泣くのは止めて早く車に戻りなさい」

美琴を諭すように言うが、カエル顔の医者の腰から下は千切れており、そこからは大量の血が流れている。

カエル医者「その代わり、これを持ってってくれ」

美琴「?」

カエル顔の医者は懐からケースに入れられた1枚のCD-ROMを取り出した。

カエル医者「ふふ、さすが僕自慢の耐火耐衝撃ケースだ。少しヒビが入ってるだけで中身は何とも無さそうだね?」

美琴「……これは?」





カエル医者「能力者から能力を消すための音声データだよ」





美琴「……………え?」

881 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:31:29.99 8ClKob20 505/630

カエル顔の医者の言葉に、美琴の思考が一瞬停止した。

カエル医者「能力者から能力を消し去るためのものだ」

美琴「…………な……何を? ……能力を消す?」

カエル医者「……そうだ。これは僕が長年の研究を費やした結果、極秘に作ったものでね。この中の音声データをある種のカリキュラムに沿って聞き続けると『自分だけの現実(パーソナル・リアリティ)』を消失させる効果が出るんだ。実際、先に学園都市の『外』に逃げた学生に協力してもらって成果も出てる」

美琴「どうして……こんなものを……?」

カエル医者「たとえ『外』に逃げられたとしても、学園都市で能力開発を受けた学生たちが満足で暮らせる生活環境は少ない。そればかりか、能力を使っただけでどこか怪しい外国の機関に目を付けられたり、あるいは過激派団体に攻撃の対象にされることも考えられる。だから、そういった危険な目に遭わないために、このデータを作り出したんだ」

美琴「そんな……でも……能力を消すだなんて……」

カエル医者「無論、最終判断は本人に任せるけどね? とにかく君は、これをNGO団体の施設にいる僕の友人の研究者たちに渡してほしい。以前、上条くんが君にあげたUSBメモリに入ってるはずだよ。持ってるね?」

美琴「持ってるけど……私は…私は能力を消すって……そんなの…どうしたら……」

カエル医者「だから言っただろう? それは本人の最終判断だと」

そう言うと、カエル顔の医者は美琴の手をギュッと包み込むようにCD-ROMを渡した。

カエル医者「『外』に脱出した学生たちが、少しでも平和に……そう、今までみたいに“あの男”のモルモットとして生きるのではない、1人の真っ当な人間として幸せな人生を送るために………」

カエル顔の医者は魂が篭った目で美琴を見据える。




カエル医者「頼んだよ」





882 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:36:43.38 8ClKob20 506/630

美琴「うっ……ヒグッ……ゲコ太ぁ……」

目元を拭う美琴。

一方通行「もう待てねェぞ!!」

上条「行くぞ御坂」

上条と一方通行が美琴を促す。

美琴「………うん」

胸にCD-ROMを抱き、上条に急かされるように美琴はワゴン車へ戻っていく。
1度だけ彼女はカエル顔の医者の方を振り向いたが、すぐにワゴン車に飛び乗った。

一方通行「悪い遅くなった」

黄泉川「私の部下たちは?」

一方通行「死ンでたよ。あの医者ももう虫の息だった」

黒子佐天初春「そんな……!!」

黄泉川「……そうか」

打ち止め「あの先生が……」

美琴「…………………」

上条「黄泉川先生、早く出発して下さい」

黄泉川「よし、行くぞ!! 出せ!!」

鉄装「はい!!」

再び、車は発進する。仲間だった1人の犠牲者を残して――。

美琴「…………………」

美琴は後部ガラスから、小さくなっていくカエル顔の医者の姿をずっと眺めていた。

883 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:41:11.53 8ClKob20 507/630

カエル医者「……さぁて、未来の芽は咲いたばかりだアレイスター。君が生きていようが死んでいようが知ったことじゃないが、もうこれ以上、無垢な子供たちを利用なんて出来ないからね?」

フウ、と息を吐きカエル顔の医者は虚空を見上げる。

カエル医者「おでましか……」

カエル顔の医者が顔を巡らすと、通りの向こうから武装した兵士たちが近付いて来るのが見えた。
警戒しながらも、周囲に危険が無いと判断した兵士たちはカエル顔の医者の前で立ち止まり銃口を向けた。
下半身が千切れ、もう虫の息であるにも関わらず、だ。

カエル医者「悪いがね、君たちにつける薬はこれしかないんだ」

武装兵たちが怪訝な顔をする。

カエル医者「本当は患者を救うのが僕の信条なんだけどね? あの子たちのことを考えると、そうも言ってられないからね? でも、安楽死だって1つの治療手段だろう?」

武装兵たちの顔が強張った。

カエル医者「共に人生の最果ての地まで赴こうじゃないか。僕と君たちは医者と患者の中なんだし」

突如、武装兵たちが喉を押さえて苦しみ始めた。
カエル顔の医者は笑う。
彼の手元には2つのビンが転がっており、そこから漏れ出した2つの液体が混じり空気と合わさり、1つの化学ガスを生み出していた。

カエル医者「安心しなさい。主治医は患者を最後まで1人ぼっちにはしないよ? それが死ぬ時でもね………」

武装兵がバタバタと倒れていく中、カエル顔の医者は微笑み呟いた。





カエル医者「それこそが、医者としての本懐なのさ……」






885 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/11 23:47:32.79 8ClKob20 508/630

1人分の座席が空いたワゴン車は、ひたすら目的地に向けて進む。
車内は、静寂に包まれていた。そんな中、美琴がポツリと口を開いた。

美琴「……………ねぇ……」

上条「ん?」

美琴「……あんたはどう思うの? ゲコ太が言ったこと……」

そう言って美琴はチラッとCD-ROMを覗かせた。

上条「俺には何とも言えない……。だけど、お前の能力に限っては、この間言った通りだ」

美琴「…………………」

2人が何やら大事な話をしているのは他のみんなも分かっていたが、どうもそれが2人だけの間に通じる話題であると悟ったのか、誰も何も口を開こうとは思わなかった。

上条「だけど、本音を言うとさ」

美琴「?」

上条「お前の電撃には何度も追い掛け回されたからなぁ。言わばそれはお前との思い出の日々みたいなもんだ。だから俺としては、お前には今のままでずっといてもらいたい」

ハッキリと上条は言い切った。

美琴「…………そう」

美琴は顔を手元に向ける。

上条「まあ、最後は自分で決めろ」

それだけ言うと、2人の会話はそこで終わった。


美琴たちを乗せたワゴン車は徐々に街から離れていく。このまま行けばスムーズに脱出地点辿り着けそうだった。
が、しかし、その時だった。


キキィィィーーーーー!!!!!!



ドォォォン!!!!!



けたたましい音が鳴り響いたかと思うと、次の瞬間には鈍い衝突音が全員の鼓膜を貫いた。
何かが起こった。分かったのはそれだけだった。

917 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 22:32:33.56 VpgIO4I0 509/630





キキィィィーーーーー!!!!!!



ドォォォン!!!!!



耳をつんざくような嫌な音が聞こえたかと思うと、その次の瞬間には何かが衝突するような音が轟いた。

佐天「わっ何々!?」

初春「何かあったんですか!?」

一方通行「敵襲か!?」

黄泉川「落ち着くじゃんみんな!!」

車内がざわめく。

黄泉川「前方の車両が事故ったぞ!」

その言葉に反応し、全員がフロントガラスから外を覗き見る。
確かに、前を走っていた自動車が壁に衝突している。だが、被害がどれほどかはここからは分からなかった。

黄泉川「鉄装、ここで待ってろ」

鉄装「え? あ、はい!」

黄泉川「上条、一方通行、手伝え!!」

黄泉川は助手席の扉を開け外に飛び出し、上条と一方通行もそれに続いた。

美琴「寮監が………っ!!」

初春「木山先生も……っ!」

事故を起こした車内には、寮監と木山が乗車している。そのことを思い出したのか、美琴たちは顔を蒼くし車外へ飛び出していた。

鉄装「あ、コラ! 待ちなさいみんな!!」

打ち止め「お姉さま!?」

美琴たち4人は鉄装の注意も聞かず、既に走り出していた。

918 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 22:38:57.95 VpgIO4I0 510/630

一方通行「どうだ?」

黄泉川「……駄目じゃん」

壁にめり込んだ自動車の開いたドアに手を掛け、運転席と助手席を覗き込んだ黄泉川は首を横に振った。

黄泉川「潰れてる」

余りにも急スピードで衝突したため、運転席と助手席に座っていた黄泉川の部下の身体は悲惨な状況と化していた。

上条「大丈夫ですか!?」コンコンコン

上条が後部座席の窓を叩き、中にいる木山と寮監に声を掛ける。

上条「このっ!!」

上条は多少変形したドアを開けると、上半身を潜り込ませた。

美琴黒子「寮監!!」

初春佐天「木山先生!!」

一方通行「なっ!? オマエら!? 危ねェから来てンじゃねェよ!!」

美琴たち4人が寮監と木山を助けようと、駆け寄ってきた。

美琴「だからって、ただ黙って見てられないわ!」

黄泉川「……ハァ。ま、いいじゃん」

美琴と黒子は後部座席の左側に周り、初春と佐天は右側に周った。

初春佐天「木山先生!!」

木山「君たちか……くっ」

上条が支える木山の身体を、初春と佐天も一緒になって引っ張り出そうとする。
衝突で脳が揺さぶられたのか、木山の意識は弱々しそうだった。

美琴黒子「寮監!!」

黄泉川と一緒に、美琴と黒子も寮監を引っ張り出そうとする。

黄泉川「前部座席は見るなよ」

美琴黒子「え?」

しかし、思わず見てしまった2人はすぐに顔を背けた。

919 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 22:45:17.54 VpgIO4I0 511/630

黄泉川「だから見るなって言ったじゃん」

寮監「………おいおい、私の顔の上に……吐き出さないでくれよ」

寮監から反応があった。

美琴「寮監!!」

黒子「ご無事ですか!?」

寮監「当たり前だろ。私を誰だと思っている。だが、まさかお前らが助けに来てくれるとはな……。いつもはお転婆で生意気なお前らが今日は……天使に見えるよ」

美琴黒子「………っ」

寮監の身体を支える美琴と黒子の手に力が篭る。
黄泉川の助けもあって、何とか彼女たちは寮監を車外に引っ張り出せた。

初春「木山先生!!」

佐天「大丈夫ですか!?」

木山「まぁ何とかね……。多少、歩くのには難儀だが」

一方通行「よし2人とも救出した。戻るぞ!」

上条「俺が背負いましょうか?」

木山に話しかける上条の後ろで、初春と佐天が心配そうに眺めている。





木山「いや、その必要は無い。私はここに残るよ」





上条「!!??」

初春佐天「えっ!!??」

920 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 22:51:33.01 VpgIO4I0 512/630

美琴「ちょっ、何言ってんのよ!?」

黒子「全員でワゴン車に戻るんですの!!」

黄泉川に寮監を預け、美琴と黒子は木山に詰め寄った。
車体にもたれ、木山は前方に顎をしゃくった。

一方通行「あァ? どうやらおでましのようだな」

木山「その通り。恐らくこの車が衝突したのもあいつらが原因……」

木山が見つめた先、随分向こうだが、そこには複数の白衣を纏った研究者らしき男たちと、数名の武装兵がいた。

美琴「敵!? ならここで私が」

木山「駄目だ。忘れたか? あいつらはただの研究者じゃない。非正規の手段で能力を手に入れた連中だ。どんな力を有しているのかは未知の領域だぞ」

初春「でも、木山先生を置いて行くなんて……!」

佐天「そうですよ! そんなの出来ません!」

木山「お前らが今優先すべき目的は脱出地点へ向かうこと。時間を潰せば潰すだけ状況は悪化するぞ。あいつらの相手をしている間に敵が後から増えることもあるだろうしな」

上条「…よし、分かりました。御坂たちは任せて下さい」

美琴黒子「えっ!?」

一方通行「黄泉川! 打ち止めが心配だ。早くワゴン車へ戻れ!」

黄泉川「分かったじゃん」

寮監を肩で支えながら、黄泉川はワゴン車に戻っていく。

一方通行「オマエらもだ。早くしろ! 時間が惜しい!」

一方通行が美琴と黒子を急がせる。

美琴「ま……待ってよ!」

黒子「こんな所に木山先生を1人で置いて行くなど……」

上条「さぁ、早く来るんだ!!」

初春「木山先生!!」

佐天「先生!!」

美琴たち4人は小さな身体を必死に動かして、彼女たちを押さえる上条と一方通行に抵抗しようとする。彼らが少しでも手を離せば、すぐにでも木山の下に駆け戻りそうだった。

922 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 22:57:26.09 VpgIO4I0 513/630

木山「フゥ……」

上条と一方通行に連れられその場を離れていく4人の少女たちの悲痛の声を聞き、木山は1つ溜息を吐くと静かに言った。

木山「枝先や春上たちと仲良くしてやってくれ」

初春「!!!!!!!」
初春「木山先生!!!!」

佐天「嫌だ! 木山先生も一緒に!!」

黒子「離して下さいですの!! 木山先生!!」

美琴「木山先生!!!」

上条と一方通行に引っ張られるように美琴たちは連れ戻されていく。
車体に背中を預け、白衣のポケットに両手を突っ込んだまま木山は呟いた。

木山「まったく……聞き分けのない子らだ。だから私は子供が嫌いなんだ……」

だが、彼女はどこか嬉しそうだった。


ドォォゥ!!!!


次の瞬間、目には見えない、何らかの衝撃波のようなものを受けたのか、木山は地面にうつ伏せに倒れ崩れた。

美琴黒子佐天初春「木山先生!!!!!!」

上条と一方通行は強引に4人をワゴン車に乗せた。

上条「出発して下さい! 敵がすぐそこまで来てる!!」

黄泉川「だが、ルート上には敵がいるんだぞ!!」

本来のルートならば、丁字路を右に曲がるはずだったのだ。だが今そっちの道には倒れた木山と、そして研究者たちがいる。

上条「左に迂回して下さい! 多少、遠回りになりますがそっちからでも行けます!」

黄泉川「了解。鉄装、左だ!」

鉄装「はい!!」

言うやいなや、ワゴン車は出発する。美琴たち4人は、右側の窓に集まり、倒れた木山が景色と共に後方に流れていくのを見つめていた。

美琴「木山先生……」

一方通行「座ってろオマエら! 舌噛むぞ!!」

923 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:03:37.79 VpgIO4I0 514/630

木山「………行ったか……」

ググッと全身に力を込め、木山は前方を見据える。彼女はまだ、死んでいなかった。
こっちへ向かって歩いてくる研究者たちは、木山ではなくもっと後ろを見つめている。恐らく、走り去るワゴン車を視界に据えているのだろう。

木山「……そうはさせんよ」

痛む身体に鞭打ちながらも、木山はヨロヨロと立ち上がった。
それを、驚いた目で研究者たちは見つめる。

木山「……驚いているな。何故、私が最初の攻撃で死ななかったのか……」
木山「簡単なことだよ。私にはもしもの時に残していた“秘策”があるんだよ。そう、あの子たちを逃がすために取っておいた飛びっきりのがね」

木山は研究者たちを睨む。そして、その目に変化が訪れた。

木山「『幻想猛獣(AIMバースト)』を知ってるかな? ……そうだ。私が開発した『幻想御手(レベルアッパー)』を元に、1つの巨大な脳波ネットワークを構築する演算装置……」

研究者たちの顔に動揺が現れる。無理も無い。木山の頭上に、世にも怖ろしい不気味で異形な胎児が姿を現したのだから。

木山「確かに、1度ネットワークは解体されたが、その時に残ったバックアップデータがあるんだ。再び同様の事件が起きた時にすぐさま解決出来るようにと備えていたものなんだよ。だが、残念ながらこれは本来の力を発揮出来ない、出来損ないでもあるんだ」

木山の頭上のAIMバーストがギョロリと目を剥く。

木山「実際に1万人の脳波も使っていない、ただの劣化した擬似AIMバーストだが、足止めぐらいにはなるだろう?」

木山が、不適に笑う。既に、ワゴン車は通りの視界から消えていた。


ダラララララララララララララララ!!!!!!!!


恐れをなした武装兵たちがAIMバーストに向かって一斉に発砲した。

924 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:08:29.04 VpgIO4I0 515/630

続き、研究者たちも能力を発動させる。

木山「さぁて、廊下に立たされる悪い生徒たちにお仕置きをしなければね」

AIMバーストが武装兵たちを薙ぎ払う。しかし、研究者たちの反撃も同時に開始された。


ドオン!!! ドオオン!!!!


木山「ぐふっ!!」 
木山「なかなかやるじゃないか……」

様々な能力の直撃を受け、ボロボロだった木山の身体がずきずきと痛みを発する。
彼女の頭上のAIMバーストもまた、強力な攻撃によって半分ほど形が崩れていた。

木山「もう……時間も無いか……」

そして木山は静かに呟いた。

木山「枝先……春上……みんな……幸せになるんだぞ……」

研究者たちは止めを刺すべく、己の強大な能力を発動させる。
木山は変色した目で研究者たちを睨んだ。それと呼応し、AIMバーストも雄たけびを上げた。





木山「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





凄まじい爆風が起こり、辺りは崩壊が始まった。

925 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:14:45.64 VpgIO4I0 516/630

美琴「木山先生……」

黒子「まさか私たちを守るために、残るだなんて……」

佐天「ずるいよ…。最後にカッコいいところ見せちゃってさ……」

ワゴン車の車内で、美琴たちは顔を暗くしながら木山の最期の姿を思い出していた。

初春「……木山先生」

初春はグッと手に力を込めた。

初春「春上さんたちは、私たちに任せて下さい……」

そんな美琴たちの悲痛が混じった表情を横目に、上条は座席から身を乗り出して黄泉川たちと話していた。

上条「とにかく、一刻の猶予もありません。出来るだけ飛ばして下さい」

一方通行「一度、脱出ルートを考え直した方がいいンじゃねェのか? 敵に気付かれてンだろ」

上条「駄目だ。遅くなればなるほど、脱出失敗の確率が上がっちまう」

一方通行「どの道同じだろ。アイツらすぐまた追っ手を寄越してきやがるぞ。それだけでなく、テログループどもともバッタリ鉢合わせしちまったらどうすンだ!? それこそ八方塞りになるぞ!」

上条「だから急ぐべきだって言ってんだ!! これぐらいの遅延なら想定の範囲内だ!!」

一方通行「敵がそれ以上にこっちの情報を掴ンでたらどうすンだ!!?? 全員一緒にお陀仏でもすっかァ!!??」

車内に、上条と一方通行の怒鳴り声が響き渡る。
脱出作戦の予定に狂いが生じ始めているためか、2人は苛立っているようだった。

打ち止め「お、怒っちゃダメだよ2人とも! ってミサカはミサカはなだめてみる」

一方通行「俺は現実的なこと言ってるだけだろうが!!」

上条「ならお前は、失敗した時の責任取れるのかよ!?」

美琴黒子佐天初春「……………………」

今にも殴り合いを始めそうな険悪な2人を前に、美琴たちは不安げな表情でその様子を見つめている。

926 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:20:51.40 VpgIO4I0 517/630

黄泉川「いいからお前ら黙れ!! ちょっとは冷静になれないのか!?」

一方通行「俺ァ、時間掛けてでも安全な道で行くべきだって言ってるだけだ。それに何の問題があるンだ!?」

上条「時間を掛ければ掛けるほど、敵に追いつかれちまうんだぞ!! それぐらい分からないのかお前は!?」

一方通行「あァ!? 舐めた口きいてくれンじゃないの三下ァ!?」

美琴「も、もうやめてよ2人とも!!!!」

その時だった。



ヒュゥゥゥゥ……



ズォオオオオオオオン!!!!!!



足元から這い上がるような地響きが唐突に轟いた。

美琴「な、何!?」

黄泉川「鉄装右だ!! 右にハンドルを切れ!!!!」

鉄装「はい!!」

キキィーという音を立て、ワゴン車が右に急カーブする。
揺れる車内。
直後、ワゴン車が通った後を瓦礫らしきものが上からいくつも降ってきた。

上条「何が起こった!?」

全員が窓から外を覗く。見ると、たった今通り過ぎた横の建物が音を立てて盛大に崩れるところだった。
続き、


ドゴオオオオオオン!!!!!!


と、また別の轟音が響いた。更には、遠くて近くではない距離から銃声音まで聞こえてきた。
車内がどよめく。

黄泉川「今のはRPGが誤爆したんだろう。恐らくあいつら、この付近でドンパチ始めやがったじゃん」

美琴黒子佐天初春「ええええええ!!!??」

927 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:26:20.99 VpgIO4I0 518/630




ズオオオオオオン!!!!!

ダカカカカカカカカカカカカ!!!!!



轟音と銃声音が響く。それに呼応するかのように、あちこちから連続して崩落音や爆発音が聞こえ、立ち並ぶ建物の向こうからいくつも煙が上がってくるのが見えた。

佐天「見てあれ!!」

初春「わぁっ!!」

全員が窓から外を覗いた。
群青色になりかけていた空を、飛行機雲のようなバックブラストを吐き出しながら、3本のミサイルが通り過ぎていった。


ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!


数秒後、轟音が響き、車内が僅かに揺れた。恐らくはミサイルが着弾した余波によるものだろう。

黄泉川「研究者勢力も敵対グループもメチャクチャやってやがるじゃん」

一方通行「RPGもまともに狙わずにバカスカ撃ってンぞありゃァ」

黄泉川「どうするじゃん? 絶対に安全なルートなんてもうこの辺りには無さそうだが?」

上条「くっ……」

上条は振り返り美琴たちを見る。彼女たちの顔は不安で満たされ、その目は上条に向けられていた。

928 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:31:21.73 VpgIO4I0 519/630

上条の第一の使命は、美琴たち4人を無事に脱出地点まで連れて行くこと。だが、周囲で大規模な戦闘が始まった今、最も安全な策など無きに等しいものになっていた。

上条「とにかく、俺と一方通行で対策を考えますから、このまま行って……」

美琴「でも、敵が双方共に戦闘に意識を向けてる今なら、その隙をついて上手く逃げられるんじゃ……?」

そこまで言って、会話が途切れた。



ズッ!!



という音と共に再び足元が揺らされた。
しかし、今度は先程のとは比にならない、まるで直下型大地震を震源地で食らったような衝撃だった。



ドゴオオオオオオオオオン!!!!!!



車内の景色が回転する。
悲鳴が轟き、誰かと誰かがぶつかり合う鈍い音が聞こえ、いまだ止まらない衝撃は車内に乗っていた全員の脳を容赦なく揺さぶった。
非現実的なことが起きた。分かったのはそれだけだった。

美琴「あ……う……」

霞んだ目にゴチャゴチャになった車内が映ったと思うと、そこで視界がブラックアウトした。

929 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:36:29.48 VpgIO4I0 520/630

ピピピピピピという何かの警告音が耳を打ち、美琴は目を覚ました。

美琴「う……」

上条「おい! 御坂! 大丈夫か!?」

美琴「………あれ? 何……?」

上条「お前らも、みんな、しっかりしろ!!」

視界が晴れていく。どうやら1分ほど気絶していたようだった。
そしてすぐに現在発生している異常に気が付いた。

美琴「何これ!!??」

起き上がる美琴。頭上に窓ガラスとドアが見え、目の前には前の座席の背もたれが横向きになっている。

美琴「横転してる………」

上条「良かった。無事だったか」

安心するように上条は溜息を吐く。どうやら彼は衝撃がきた時、咄嗟に美琴を庇い、回転する車内で彼女がなるべく怪我をしないよう、その身体を必死に抱き締めていたらしい。

美琴「あ…あんたが庇ってくれたの?」

上条「ああ」

美琴「……そう……あ、ありがと……」

黄泉川「無事か……お前ら? クッ……」

運転席の方に視線を向けると、横倒しになった座席から黄泉川が頭から一筋の血を垂らして顔を覗かせた。

上条「俺は大丈夫です」

打ち止め「ミサカも大丈夫だよ。咄嗟に一方通行が守ってくれたからね、ってミサカはミサカは一方通行にお礼をしてみる」

一方通行「一瞬の出来事だったからなァ。危なかったな……」

寮監「くっ……何が起こった?」

美琴「寮監! 無事だったのね!」

鉄装「う、うーん……」

車内に乗っていた人間が次々と目を覚ます。

黄泉川「お、鉄装も大丈夫そうじゃん。で、その子らは?」

930 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:42:31.24 VpgIO4I0 521/630

黒子「私も何とか無事ですの……」

頭を押さえながら、黒子がヨロヨロと起き上がる。

佐天「あ……あ……」

上条「どうした?」

佐天が絶句したように驚きの顔を見せた。

佐天「初春が!! 初春が!!!」

美琴黒子「!!!???」

自分の身体の上に重なるように乗っていた初春を見て、佐天は悲鳴にも似た声を上げた。

佐天「初春が反応ないんです!! どうしよう!!??」

黒子「そんなっ……初春!!」

美琴「初春さん!!」

一瞬、車内に緊張が走る。

初春「う……ん…佐天さん?」

佐天「初春!!!」

初春「……あれ? 何が……あったんですか?」

ボーッとした顔を向け、初春が辺りを見回した。どうやら初春は無事のようだった。

佐天「初春……」

黒子「良かったですの……」

美琴「もう、心配させないでよ……」

涙を浮かべる3人を見て、初春はキョトンした顔を見せた。

上条「とにかく全員が無事だったのは奇跡だな。後はどう脱出するかだが……」

上条は頭上を見る。横倒しになっているため、窓ガラスとドアが上に付いているのだ。現状としては、そこから1人か2人ずつ抜け出すしかない。

一方通行「ンな面倒くせェことやってられっか」

上条の意図を汲み取ったのか、一方通行が背中を屈めて移動し、今は左側面に位置している天井部分に近付いた。

上条「どうするんだ?」

931 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:48:32.53 VpgIO4I0 522/630

一方通行「こうする」


ドガッ!!!!


一方通行が思いっきり蹴ると、天井部分が綺麗に外れそのまま道りの向こうまで飛んで行った。
大きな脱出口が出来あがった。

上条「なるほど。よし、みんな急いでここから出るぞ」

出口に近い者から外に出、中にいる者を引っ張り出すように力を貸す。そうして何とか全員、無事に車外に出ることに成功した。

上条「原因はこれだな」

上条と一方通行が横転したワゴン車の後ろへ回ると、そこには巨大なクレーターが出来ており煙が一筋上がっていた。

一方通行「RPGでも着弾したか。直撃しなかっただけでも幸いかもなァ」

上条「だがどうする? 移動手段を失ったぞ」

一方通行「歩いて行く以外にねェだろ」

2人は空を仰ぐ。どうやらいつの間にか夜になっていたようだ。

一方通行「徒歩で密かに行くにはおあつらえ向きの暗闇だが……」

上条「危険が無いとも言えないな……」

2人が打開策を考えようとした時だった。

黄泉川「敵じゃん!!!」

出し抜けに、黄泉川の声が響いた。
咄嗟に振り向く2人。

黄泉川「12時の方向!! とんでもない数がいるぞ!!」

急いで、黄泉川の元に駆け寄る上条と一方通行。
見ると、長い大通りの向こうから、白衣を纏った研究者や武装兵たちが歩いてくるのが見えた。私服の格好をしているのは恐らく雇われ魔術師だろう。見た限り、30人はいる。

一方通行「アイツらがRPGで車を横転させやがったな……。敵との戦闘中にここまで出向いて来るとは、よっぽど余裕があンのか」

黄泉川「どうするじゃん?」

黄泉川と鉄装は車体を陰に、ライフルを構えている。

一方通行「どうするもこうするも………ん?」

932 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:54:26.51 VpgIO4I0 523/630



ダララララララララララララララララ!!!!!!


金切り音が鳴り響く。武装兵が発砲し始めたのだ。
全員が息を呑んだ。

一方通行「どこ狙ってンだ三下がァ!!!!」

しかし、銃弾は一方通行の身体にぶつかると、そのまま元の持ち主のところまで帰っていった。
反射された銃弾を受けて何名かの武装兵が倒れるのが見えた。

一方通行「敵30名を相手しながら逃げるのは少し無理があるな……」
一方通行「オマエら先行ってろ」

それだけ言い残すと、一方通行は足元でベクトルの向きを操りミサイルのように敵陣の真っ只中へ飛んで行った。

打ち止め「一方通行!!」

黄泉川「先に行っとけ、と言われてもな」

困ったように黄泉川が呟く。

黒子「黄泉川先生!」

黄泉川「ん?」

美琴「私たちも戦います!」

黄泉川が振り返ると、そこには身体中から電気を発している美琴と金属矢を手にした黒子が立っていた。
その後ろでは寮監と佐天と初春が心配そうに様子を見つめている。

上条「駄目だ! お前らがここに残っても意味が無い! 先行ってろ!!」

美琴「え?」

美琴に怒鳴った後、上条が黄泉川に言う。

上条「俺たちもすぐに行きますから、御坂たちを連れてって下さい」

933 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/12 23:59:24.72 VpgIO4I0 524/630

黄泉川「……分かったじゃん」

黒子「何ですって?」

美琴「ちょ、ちょっと! 勝手なこと言わないでよ!!」

上条「じゃ、また後でな」

美琴が声を掛ける間も無く、上条は一方通行に1歩遅れて走り出していた。

黄泉川「……ったく、あんのガキどもめ。ま、そういうことじゃん。あいつらなら大丈夫だろう。行くじゃん」

美琴「えっ……そんな!? でも!」

黒子「私たちも加勢しますわ!!」

美琴と黒子はそれでも引き下がろうとしない。

黄泉川「あいつらの実力忘れたのか? 簡単に死にはしないじゃん」

美琴「あっ…ちょ……」

黄泉川と鉄装が美琴と黒子を押し戻す。

佐天「御坂さん、白井さん!」

初春「今は先を急ぎましょう」

美琴「う……でも」

美琴はチラと後ろを振り返る。確かに、今も上条と一方通行は30名の敵を相手に奮闘している。

打ち止め「お姉さま! 一方通行もいるし大丈夫だよ! ってミサカはミサカは急かしてみる」

寮監「あまりわがままばっかり言ってると殴ってでも連れて行くぞ」

美琴と黒子は顔を見合わせる。
これ以上無理を言っても、逆に佐天や初春たちを危険な目に遭わしてしまうと考えたのか、2人は素直に応じた。

美琴「(でも……大丈夫かな? 本当に……)」

935 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/13 00:04:42.77 FBch8UM0 525/630

その頃、自ら囮役を買って出た上条と一方通行は30名もの敵を相手に奮戦していた。

一方通行「シッ!!」

ドガッ!!

飛び散る破片を受けて武装兵たちが投げ飛ばされる。

ドン!!

キィィン!!

「ぐわっ!!!」

一方通行「学習しろよ。俺に能力ぶつけても跳ね返るだけだぜェ?」

「らぁ!!」

一方通行「チッ! キリがねェなァ!!」

バギィィィン!!!!

「ぎゃあ!」

上条「これで……8人目……ゼェ……ハァ……だが、どういうことだ?」

息を切らし、上条は襲い来る魔術師たちを1人ずつ殴り倒していた。

「死ねやオラぁぁぁ!!!」

上条「クソ!!」

バギィィン!!!

上条「倒しても、倒しても、敵の数が減らない。…寧ろ、徐々に増えてるような……」

「これで終わりだ!!」

上条「今度は能力者か!?」

バギィィィン!!!!

上条「連携取れてないから……ゼッ……1人ずつぶっ倒せるけど…ハッ……まるでキリが無い……」
上条「永遠に……増え続ける……ハァ……ゴキブリを1匹ずつ……相手してるみたいだ」

と、そこで上条は気付く。いつの間にか自分が10名近い敵に囲まれていることに。
能力を持った研究者と雇われ魔術師が混じった集団に追い詰められ、上条は口中に舌打ちする。

上条「万事……休すか?」

936 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/13 00:10:42.34 FBch8UM0 526/630

皮肉げに笑ってみたものの、打開策は思い浮かばない。
一方通行は少し離れた所で研究者や武装兵たちを相手にしており、こちらに気付く気配は無い。
そうこうしている内に、研究者や魔術師たちが上条に狙いを定めて攻撃の構えに入った。

上条「…………ここで、終わりかよ…情けねぇな……」

上条はボソリと呟く。

上条「……これじゃあ、御坂たちを守れねぇじゃねぇか………」

最後に上条が笑う。
そして、研究者と魔術師たちの攻撃が始まった。


ズドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!


上条「…………っ」

目を閉じる上条。
しかし………

上条「あれ……?」

攻撃が来ない。
目を開くと、そこには上条を中心にして、円状に倒れている研究者や魔術師たちの姿があった。
全員、身体中に青白い電気を纏ってヒクヒクと痙攣している。

上条「これは………」





美琴「やっぱりピンチになってるじゃない」






937 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/13 00:16:18.28 FBch8UM0 527/630

声がした方を振り向くと、全身から紫電を纏った美琴の姿がそこにあった。

上条「御坂………!?」

美琴「何よ? 私はね、守られてるだけは性分に合わないの。たまには私に守らせてくれない?」

呆然と美琴を見る上条。そんな彼を武装兵たちが物陰から狙おうとしていた。

黄泉川「撃ち方始め!!!!」


ダカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!


上条「!!??」

突然の銃撃を受け、倒れていく武装兵たち。
発砲音がした方に顔を向けると、黄泉川と鉄装が構えるSIG 550アサルトライフルの銃口から硝煙が上がるのが見えた。

黄泉川「しぶといな」

黄泉川は愚痴を吐く。更に武装兵たちが増えたようだった。
武装兵たちが黄泉川たちに銃口を向ける。

ヒュヒュヒュヒュン!!!!!

しかし、武装兵たちは発砲することが出来なかった。何故なら、手にしたライフルの銃身に複数の金属矢が刺さったからだ。

上条「白井!?」

黄泉川の側に、手に金属矢を持った黒子がテレポートで現れる。

黒子「やはり、劣勢になっているじゃありませんの」

よく見ると、黒子の後ろには佐天と初春と寮監がいた。結局全員、上条と一方通行が心配で戻って来たのだ。

一方通行「馬鹿が…。わざわざ引き返しやがって」

美琴「うっさいわよ。私は私がやりたいようにやるの」

美琴と一方通行が背中を預け合う形で通りの中央に立つ。
臨時的に組まれたレベル5のタッグはその存在を知る研究者たちを戦慄させた。

938 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/13 00:23:01.87 FBch8UM0 528/630


ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!

恐れをなした武装兵が、20mm機関砲を持ち出し一方通行に向けて撃ち始めた。

一方通行「きかねェって何度言やァ分かるンだ!!」

当然、それらの銃弾は反射され、武装兵に戻っていく。トドメと言わんばかりに一方通行は戦闘で削り取られたコンクリート片の雨をベクトルを操り蹴り放った。
直撃を受けた研究者たちが倒れていく。

美琴「ちょろっとー我慢してよね!!」

チャリン

手元にコインを投げる美琴。


ズオオオオオオオオオオオオオン!!!!!


美琴から放たれた超電磁砲が建物の壁を突き破り、それによって巻き起こった小さな崩落が武装兵たちの動きをかき乱す。
レベル5の超能力者2人によって作られた全周360度が射程圏内の強大な攻撃は見るものを圧巻させた。

「クソッ!!」

そんな2人を見て、雇われ魔術師が水で出来たボールのようなものを投げ付けてきた。一方通行に効かないとしても、美琴は直撃を受ける可能性がある。
だが、そうはならなかった。



バギィィィィン!!!!!



「なにっ!?」

上条「そうさせると思うか?」

上条が右手を突き出し、魔術師の攻撃を打ち消していた。

美琴「何よ? 格好つけちゃって。あれぐらい私でも何とかなったっての」

上条「相手、魔術師だぞ。これは俺の本分だ」

一方通行「どうでもいいが、敵は増えるばかりだぜェ?」

939 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/13 00:29:39.94 FBch8UM0 529/630

上条と美琴と一方通行。
彼らは3者3様、互いの主張を唱える。
今現在、通りの中央には上条と美琴と一方通行の3人が互いに至近距離で背中を預け合い、最強のトリプルタッグが形成されていた。
彼らは、それぞれ正面の敵を見据える。





美琴「さぁ、おねんねの時間よ!!!」


一方通行「掛かってきな三下どもォ!!!」


上条「お前らの幻想、まとめてぶち殺してやるよ!!!」





『超電磁砲(レールガン)』、『一方通行(アクセラレータ)』、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』――。
最強の実力を擁する3人が強敵を前にして共に立ち上がる。

966 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:18:20.57 FjTKXhU0 530/630

美琴「らぁっ!!」

バチバチバチッ!!!!

一方通行「どうしたそれで終わりか三下ども!!」

ドゴッ!!!

上条「お前らの下らない幻想なんて俺にはきかねぇよ!!」

バギィィィン!!!!

『超電磁砲(レールガン)』、『一方通行(アクセラレータ)』、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』――。
最強の実力を持つ3人は互いの背中を預け合い、攻撃・反撃し、時には見事な連携を取りながら研究者たちを、武装兵たちを、魔術師たちを倒していく。

黄泉川「ったく、あの3人が組んだら誰だって逃げ出すじゃん。私らも負けてられんぞ」

鉄装「はい!!!」

ダカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!

上条たちの戦う姿を見て奮起した黄泉川と鉄装が彼らを援護射撃する。

黒子「これでも食らいやがれなさいですの!!」

ヒュヒュヒュン!!!!

その合間に黒子もテレポートによる近接格闘と金属矢を組み合わせて敵を薙ぎ倒していく。

佐天「うっひゃぁ……すごいなこれ。御坂さんと上条さんと一方通行さんが組んだらあんなに強力になるんだねー」

初春「白井さんや黄泉川先生、鉄装先生もすごいです! 正直、観戦に回っている自分が情けなく思います」

打ち止め「みんなとってもすごいね! ってミサカはミサカは超感心!!」

少し離れた所で、佐天と初春と打ち止めは、プロレスの試合を観戦するように目の前で繰り広げられる戦闘をリアルタイムで眺めていた。
しかし、彼女たちは気付いていなかった。背後からナイフを持った敵兵が3名、彼女たちに近付いて来ているのを。
何も知らない無垢で小さな3つの背中にナイフが振り下ろされる。



ドッ!!!!!




967 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:24:15.38 FjTKXhU0 531/630

佐天初春打ち止め「!!!!????」

が、彼女たちの背中から血が噴き出すことはなかった。

「グぎゃああああああああ!!!!!!」

武装兵が悲鳴を上げる。




寮監「お前ら、この子らに何の用だ?」




佐天初春「りょ、寮監さん!?」

見ると、寮監が武装兵の1人をヘッドロックしていた。

打ち止め「うわぁ、何か衝撃的な場面を見ちゃった気分、ってミサカはミサカは寮監さんの意外な面に感心してみたり」

他の武装兵たちも寮監の勇ま恐ろしい姿を見て呆気に取られていた。技を掛けられた武装兵が抵抗しようとする。

寮監「フン!!」

ボキッ!!

武装兵「がはっ!!」

躊躇無く、寮監が武装兵を落とした。クタクタと地面に倒れる武装兵。その姿を眺めていた他の武装兵たちが一斉に寮監に飛び掛かる。

「このやろおおおおおおおお!!!!!」

「死ね怪物女がああああああああああ!!!!!」

寮監「……………」キラーン

寮監の眼鏡が光る。

寮監「せい!!」ドスッ

「ぐげぇ!!」

寮監「ハッ!!」バキッ

「がはっ!!」

次々と寮監は体術を駆使して武装兵を倒していく。

968 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:30:40.61 FjTKXhU0 532/630

打ち止め「いいね、いいねェ、最高だねェ!! ってミサカはミサカはワクテカしながら応援してみる!」ヤレヤレー!!

佐天「あわわわわわわわわわ」

初春「す、すごい……」

寮監「生徒たちを守るのが寮監の務めだ」キリッ

「うおおおおおお!!!!」

「くらえやあああああああ!!!!」

どこに隠れていたのか、物陰から更に4名の武装兵たちが寮監に向かって飛び出してきた。

寮監「ありゃぁ!!!」ドガッ

「ぶぼっ!?」

寮監「えいやっ!!」ズガッ

「ぎゃあ!?」

寮監「ふんっ!!!」バシッ

「ぐえええ!!」

寮監「チェストー!!」ゴスッ

「ひでぶっ!!」

次々と繰り出される多彩な技に、屈強な武装兵たちが崩れ落ちていく。
気付くと、寮監は全滅した武装兵たちの中心に、怪しげなオーラを発しながら君臨していた。

寮監「かはぁぁぁ~~~」

再び、寮監の眼鏡が光った。

佐天初春「お、お見事」

打ち止め「やぁりぃ! ってミサカはミサカは指パッチン!」パチン!!

寮監「生徒に攻撃(めんかい)するにはまずは寮監を通してから」キリッ

969 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:36:17.50 FjTKXhU0 533/630

キィィィィン!!!!!

「ぐえっ!!」

一方通行「そっち行ったぞ!!!!」

美琴「了解!!」

バチバチバチッ!!!

「ぎゃあああああ」

美琴「最後、頼んだわよ!!」

上条「任せとけ!!!」

バギィィィン!!!!

上条美琴一方通行「「「っしゃぁっ!!!」」」

互いの隙を補いながら、または攻撃に威力をプラスしながら3人は見事な連携プレーをもってして敵を次々と倒していく。

黒子「いい加減に観念しなさい!!」ヒュンヒュヒュン

バキッ!!

「ぷおっ!!」

黄泉川「往生際が悪いじゃん!!」

鉄装「右に同意です!!」

ダララララララララララララララララ!!!!!!

黒子や黄泉川、鉄装もまた敵兵たち相手に奮戦していた。

美琴「ったく、キリがないわねこいつら。明らかに後から後から増えてるじゃない」ビリビリッ

一方通行「このまンまじゃ埒があかねェぞ」ドゴオッ

上条「クソッ、仕方ない。撤退しよう」バギィィン

通りの中央で共闘していた上条たち3人。しかし、増え続ける敵たちを前に、彼らは撤退の断を下した。

黒子「撤退ですのね!?」

黄泉川「この状況じゃ仕方ないじゃん」

上条「2人とも、目くらまし頼む」

970 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:42:21.47 FjTKXhU0 534/630

上条が1歩下がる。代わりに、美琴と一方通行が前に進み出る。

美琴「せいやっ!!」

一方通行「らぁっ!!」

美琴が地面に向かって放電し、一方通行が思いっきり地面を踏ん付けた。


ドオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!


同時に、電気を纏ったコンクリート片の雨が2人を境にして垂直何mにも亘って巻き上がった。それはまるで、滝が逆流するかのような光景だった。

上条「今だ、逃げるぞ!!」

踵を返し、上条と美琴と一方通行は走り出す。続けて、黄泉川と鉄装、黒子も戦闘を止めて引き返した。

上条「こっちだ!!」

佐天、初春、打ち止め、寮監も合流し、彼らは敵の視界を塞いでいる間に全速力でその場を離れる。

寮監「白井、早くしろ!」

黒子「今行きますの!」

寮監「……ん?」

そこで、寮監は気付いた。

寮監「!!!!!!!!」

先程倒したはずの武装兵の1人が、黒子の背中に銃口を向けているのを。
もちろん、当の黒子は自分が狙われていることに気付いていない。

寮監「くっ!! うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

寮監が、みんなとは別の方向に走り出す。
黒子に声を掛けるよりも、距離的に考えて直接取り押さえた方が早いと思ったのか、寮監は武装兵に飛びついた。

黒子「寮監!!!!????」

971 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:48:52.65 FjTKXhU0 535/630

「ぶごっ!!」

寮監に殴られた武装兵が倒れる。

美琴「寮監!!!!」

美琴と黒子の声に反応し、すぐに戻ろうとした寮監だったが、また別の武装兵が彼女の背後から羽交い絞めにした。

寮監「チッ!!」ドゴッ

「ぐはっ!!」

そのまま肘鉄を食らわす。

ガシッ!!

再び立ち上がろうとする寮監だったが、今度は足を掴まれた。

寮監「!!??」

また別の武装兵だった。
そして、それを始めとして倒れていた武装兵たちが次々と起き上がり寮監を抑えようと数人掛かりで襲い掛かってきた。

寮監「くっ!!」

寮監は、必死に武装兵たちに反撃を行うが、どうあっても数の上で不利だった。




パンパンパパン!!!!




寮監「!!!!!?????」

その時、寮監の腹部を衝撃が貫いた。

寮監「ぐっ……ふ……」

972 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:54:09.32 FjTKXhU0 536/630

1人の武装兵が寮監の腹部に向かって拳銃を発砲したのだ。

美琴黒子「寮監!!!!!!」

それを見た美琴と黒子が悲鳴にも似た叫び声を上げる。

上条「御坂! 白井!」



寮監「来るなああああああああああ!!!!!!! 行けえええええええええええ!!!!!!!!」



美琴黒子「!!!???」

助けようとした美琴と黒子の動きを察知したのか、寮監は叫んでいた。

ドゴッ!!!

叫びながら彼女は、発砲した武装兵を殴り倒す。

パンパンパン!!!!

寮監「ご……ほっ…」

寮監が振り返る。今度は後ろから発砲音が轟いた。

美琴黒子「寮監!!!!!」

寮監「早く行けええええええええええええええ!!!!!!!!」

血を吐きながら叫ぶ寮監。
美琴と一方通行が作った一時的な目くらましは既に効果が無くなりつつあり、研究者や魔術師たちはその隙をつき、上条たちを追ってきている。
もしここで寮監を助けに戻っていれば、また敵に囲まれてしまうだろう。

上条「来い!!!」

上条が苦い顔を浮かべ、美琴と黒子の片腕をそれぞれ掴んで走り出す。

973 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 22:59:44.10 FjTKXhU0 537/630

美琴「あっ!!」

黒子「待って!!」

上条「駄目だ!!」

美琴「でも……寮監が…寮監がっ!!」

黒子「寮監を助けないと……!!」

上条「もう寮監さんは間に合わない!!」

前を見ながら上条は叫ぶ。

美琴黒子「!!!???」

上条「ここで戻ってたら寮監さんの想いをフイにするんだぞ!!」

美琴黒子「……………っ」

美琴と黒子は涙目で振り返る。徐々に寮監の姿が遠くなっていく。

美琴「やだぁ!! 寮監!!」

黒子「寮監!! 離して下さい!! 寮監が…寮監が……」

寮監は、腹から血を流しながらも武装兵たちと格闘を続けている。

寮監「行けええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」

いつまでも美琴と黒子の身を案じ、寮監は己も省みず叫び続ける。
彼女の想いを無駄にしないためには、今ここで逃げるしかなかった。

美琴「りょうかああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!」

後ろへ流れていく涙を気に留めることなく、美琴と黒子は小さくなっていく寮監の姿をずっと見ていた。

974 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:05:49.67 FjTKXhU0 538/630

追っ手から逃れるため、9人まで減った一行は細い路地を曲がり、曲がり、走り抜ける。10分経ったのか、1時間経ったのかは定かではなかったが、上条たちは今、とある裏路地のスペースで小休止していた。

上条「ハァ……ゼェ……多分……これで…撒いただろう……」

黄泉川「……ゼェ……ならいいが……ハァ……いつまでもゆっくりしてられないじゃん……」

全員、息を切らしている。もたれるように壁に手を着くと、上条は黒子が自分を睨んでいるのに気付いた。

上条「…何だ?」

黒子「どうして……どうして寮監を助けさせてくれなかったのですか!?」

涙を浮かべて黒子が上条に掴みかかる。

佐天初春「白井さん!」

上条「………………あそこで助けに戻ってたら、全員また敵に囲まれてるところだった。寮監さんは身を挺して俺たちを逃がしてくれたんだ」

黒子の目がキッと鋭くなる。

美琴「やめなさい!」

黒子「!」

突然、美琴が黒子を一喝した。

黒子「お姉さま……」

美琴「そいつの言う通りよ……。どの道、寮監は助からなかった…。悔しいけど、あれが最善の策だったのよ」

黒子「ですが……」

美琴「黒子!」

黒子「!」

美琴が怒鳴る。だが、その目にはやり切れなさが垣間見えた。

美琴「…………………」

黒子「………………ごめんなさいですの」

美琴の顔を見ると、黒子は上条から手を離した。

上条「……………」

黒子「グス……」

美琴「黒子」

976 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:11:27.38 FjTKXhU0 539/630

泣きそうになる黒子を引き寄せ、美琴は彼女の髪を優しくポンポンと叩く。
それを見て上条は1つ、溜息を吐いた。

一方通行「状況は悪化するばかりだな」

一方通行が呟く。
今も、爆発音や連続した銃声音が耳の中を僅かに振動させている。恐らく研究者勢力とテログループなどが戦闘を行っているのだろう。

黄泉川「しかし、いつまでも裏路地にいてたら脱出地点には辿り着けないじゃん」

鉄装「どうします?」

黄泉川と鉄装は、裏路地の陰からローレディーの態勢でライフルを構え表の通りを窺っている。

佐天「あの……」

黄泉川「ん?」

初春「その脱出地点、ってまだなんですか?」

佐天と初春が恐る恐る訊ねた。

黄泉川「どうだ?」

黄泉川が上条と一方通行に顔を向ける。

一方通行「恐らくもう4分の3は来たはずだ」

上条「後は街を抜けて、しばらく郊外を走れば目的地の川に着くはず」

佐天「そ、そうなんですか?」

佐天と初春の顔に僅かに希望の色が浮かび出た。

一方通行「どの道、今すぐにでも動いたほうが良さそうだぜ」

黄泉川「しかし、表に出たところで待ち伏せとかされてないか心配じゃん」

一方通行「ンなこと言ってたら状況は進まねェだろ」

上条「確かに。もう悠長なことは言ってられない。そろそろ行こう。いいな?」

上条は美琴たちを見る。彼女たちの表情からは疲労が窺えたが、反対している余裕も無かったのか何も答えなかった。

黄泉川「じゃ、出発じゃん」

一方通行「動けるか?」

打ち止め「うん、まだ大丈夫そう、ってミサカはミサカは元気をアピール」

978 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:17:45.25 FjTKXhU0 540/630

一方通行「無理すンなよ。疲れたら言え」

打ち止め「分かってる分かってる、ってミサカはミサカは優しいアナタに笑顔」

上条「じゃあ行くぞみんな」

上条の声に、美琴たち4人はしんどそうに頷く。
それを合図に、黄泉川と鉄装が壁に沿ってゆっくりと歩みを進める。
2人は物陰から少し顔を覗かせ、表通りに人の気配が無いのを察知するとそのまま静かに裏路地から出、四方にライフルの銃口を向けた。

黄泉川「………………」

黄泉川が手招きする。それを見て上条たちも表通りに出た。
歩道に沿って、9人は辺りに注意を向けながら小走りで移動する。

美琴「…………………」

黒子「…………………」

佐天「…………………」

徐々に、走る速度が増していく。

初春「…………………」

鉄装「…………………」

黄泉川「…………………」

躊躇をしなくなった9人分の足が更に速くなる。

一方通行「……………………」

遂に全速に近い速度で9人は歩道を駆け抜ける。

上条「……………………」

その時だった。

打ち止め「待って」

静かに呟いた打ち止めの一言によって、一行はブレーキを掛けるように唐突に立ち止まった。

打ち止め「…………………」

一方通行「何だ? どうした打ち止め?」

心配するように一方通行が訊ねる。全員が打ち止めに注視する。

979 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:23:09.99 FjTKXhU0 541/630

打ち止め「…………………戦況が届いたみたい」

一方通行「戦況?」

上条と一方通行が怪訝な顔をする。

打ち止め「陽動に出てる妹達(シスターズ)から」

上条一方通行「!!!」

全員が、息を呑む音が聞こえた。

上条「何て言ってるんだ?」

打ち止め「…………………」

目を閉じ、打ち止めが急に静かになった。
ミサカネットワークから情報を受け取っている最中なのか、それとも既に受け取ってはいるが、伝えにくい情報ゆえ言うのに逡巡しているのかは分からなかった。

一方通行「打ち止め?」

一方通行の問い掛けに答えるように、目を見開いた打ち止めはゆっくりと言葉を紡いだ。




打ち止め「陽動に出てた妹達(シスターズ)が全滅したみたい」




上条一方通行「!!!!!?????」

美琴「……………っ」

黒子「な、何ですって!?」

佐天「そ、それって……」

初春「どういう意味なんですか!?」

黄泉川「ちょっと待つじゃん、あいつらがやられたということは……」

鉄装「もしかして、私たちの仲間の警備員たちも……?」

現在、学園都市にいる20人の妹達(シスターズ)と黄泉川の部下の警備員たちは、美琴たちの脱出作戦から敵の意識を逸らすため、街の中心部で陽動作戦に出ているはずだった。
しかし、その結果はたった今、打ち止めの口から語られた通りだった。彼女たちは、全滅した――。

980 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:29:49.05 FjTKXhU0 542/630

打ち止め「陽動に出てた全小隊が敵の攻撃を受けて全滅、これで黄泉川中隊の生き残りはヨミカワたちだけ……」

黄泉川鉄装「………………」ゴクリ

打ち止め「そして、妹達もまた、同じく全滅……」

一方通行「………………そうか」

一方通行の言葉はそれだけだった。と言うよりも、それ以上語りたくない感じだった。
一気に、その場に悲壮な空気が漂う。

打ち止め「どうやら、妹達が引き付けてた敵の主力が今、こっちに向かいつつあるみたい」

上条「………………」

打ち止め「あ」

一方通行「どうした?」

打ち止め「報告してくれてた10039号からの通信が途絶えた……」

それの意味するところは、陽動についていた妹達(シスターズ)が1人残らず全滅したということだ。

一方通行「分かった。もういい」

そう言うと一方通行は打ち止めの頭をクシャと優しく掴む。
無表情でいるが本当は打ち止めも泣きたいほど辛いはずだ。自らミサカネットワークに繋がることで彼女たちの死を実感したのだから。

上条「…………とにかく、そういうことだ。残ってるのは俺たちだけ。そして、敵もこっちに向かっている最中」

上条は暗くなっていたムードを止めさせるため、話を変える。
しかし………

美琴「……………きない」ボソッ

ふと、一団の後方で美琴が呟いた。

981 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:34:53.93 FjTKXhU0 543/630

全員が振り返る。

黒子「お姉さま?」

佐天初春「御坂さん?」

美琴「………出来ないよこんなの」

一方通行「………………」

打ち止め「………………グスッ…ううう」

美琴「納得出来ないわよ!!!」

美琴が叫んだ。

美琴「どうしてあの子たちが死ななきゃいけないのよ!?」

上条「御坂……」

美琴「これじゃあまるであの子たちは私たちの身代わりじゃない!? そんなのって……」

そこで美琴の怒号は掻き消された。




ドッ!!!……オオオオオオオオオオン!!!!!!




かなりの至近距離で轟音が発生した。
唐突に生じた衝撃波を受けてその場にいた全員の身体が軽く飛ばされた。

982 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:39:32.36 FjTKXhU0 544/630


オオオオオオ………

美琴「うっ………ぐぐっ…」

何が起きたのか理解しようともせず、地面に這いつくばる形で倒れていた美琴は手を握り締め、唇を噛み叫んでいた。

美琴「何で……どうして、こんなことになるのよ………もうやだぁ……」

上条「御坂!! 無事か!?」

そこへ上条が駆け寄って来た。

美琴「………うっ……ヒグッ……」

ショックで泣いているのか、美琴は何も答えない。

上条「………………」

そんな美琴を見て、上条は無言で彼女を起こしその肩を支えてあげた。

美琴「………やめてよ……」

上条「やめない」

美琴「もうやなの……。何で……私たちが逃げるだけで犠牲が出なきゃいけないのよ………」

弱音を吐く美琴を、上条は横目で窺う。そこには学園都市第3位の超能力者『超電磁砲(レールガン)』ではなく、ただ現実に打ちのめされ悲しみに涙を浮かべる1人の少女がいただけだった。

美琴「………グスッ…」

上条「…………………」

美琴「黒子たちはともかく、私にはそこまでして助ける価値があるの……?」

美琴は自暴自棄になったように話す。
彼女の言葉を聞き、上条は即答していた。

上条「あるさ」

美琴「………………」

上条「ある」

美琴「…………私みたいなわがままで世間知らずな子供が世の役に立つとでも言うの?」

上条「当たり前だ」

美琴「!」

983 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:45:43.54 FjTKXhU0 545/630

上条「今までお前、白井たちと色んな事件解決してきたんだろ? さんざん言ってたじゃねぇか。グラビトン事件、レベルアッパー、スキルアウト、ポルターガイスト……。お前らが動いたことで助かった人がたくさんいるんだ。そこら辺の偽善者より何百倍もお前は世の役に立つことしてる……」

美琴「………でもそれでも私はあんたには遠く及ばない……」

上条「数は関係ないさ。お前に感謝してる助かった人はたくさんいるのは事実なんだ……」

上条は美琴の小さな肩を支えながら、なるべく早く道を歩く。

上条「な?」

美琴「………………」

上条「御坂妹も、カエル顔の先生も、木山先生も、寮監さんも、全滅した20人の妹達や黄泉川先生の部下の警備員たちも、みんなお前らが無事に『外』に脱出出来るのを願ってた。だから、その想いをフイにしちゃ駄目だ……」

美琴「…………あんたは?」

上条「ん?」

美琴「…………あんたもそうなの?」

上条「当たり前だろ。今更何言ってんだ」

上条は微笑みを作る。

上条「それに……」

美琴「?」

上条「お前は、俺にとって大事な人間だから………」

美琴「!」

上条「だから美琴………お前だけは絶対に俺が守ってやる……」

美琴「………っ」

上条「安心しろ。命に代えても、お前は俺が守る」

上条は美琴の目を見据え断言した。

美琴「………………当麻」

上条「……………………」

歩きながらも、美琴と上条は至近距離で数秒ほど見つめ合っていた。

一方通行「おい! こっちだ!!」

と、その時、一方通行の声が聞こえた。

984 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:51:51.96 FjTKXhU0 546/630

裏路地の陰から一方通行が手を振っているのが見えた。
上条は急いで美琴を連れてそっちに走って行った。

黒子「お姉さま! 大丈夫ですか!?」

佐天「怪我はないですか!?」

初春「御坂さん! しっかり!!」

他のみんなは無事だったのか、うなだれた美琴を見て心配するように声を掛けてきた。

美琴「私は……大丈夫。何があったの…?」

一方通行「あそこにミサイルが直撃したンだよ」

美琴は振り返る。
先程まで立っていた場所の200mぐらい後ろの建物から煙が上がっているのが見えた。

黄泉川「グズグズしてる暇はない。みんな走るじゃん!!」

黄泉川がライフルを後方に向けて全員を促す。

上条「目的地はもうすぐだ! みんな頑張れ!!」

上条が気合を入れるように叫ぶ。

985 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/14 23:57:06.63 FjTKXhU0 547/630

9人は走る。ただひたすら走る。
脱出地点までの距離はもう残り少ない。

上条「走れ!!!」

一方通行「後ろを振り向くな!! そのまま前だけ向いて走れ!!」

黄泉川「立ち止まるなよ!!!」

上条たちの声に押されるように、美琴たち4人はは息を切らしながら通りを駆け抜ける。



ダカカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!!!



突如、銃声音が鳴り響いた。耳の側を何かの物体がヒュッと通過する風切り音が聞こえた。
思わず美琴たちは振り返る。

一方通行「振り返ってンじゃねェよ!! 前向いて走れ!!!」

走り疲れた打ち止めを胸に抱えながら、一方通行は叫ぶ。

上条「クソ、追い着かれたか?」

発砲音と銃弾が耳元を通り過ぎた風切り音までのタイムラグが極端に短い。恐らく、敵はすぐ後ろにまで迫っている。

上条「あと少しなのに……っ」ギリッ

黄泉川「…………………」

鉄装「…………………」

全員を護衛するように最後尾を走る黄泉川と鉄装が急に黙りこくる。
彼女たちは前方を走る美琴たちを見やると、顔を合わせて大きく頷いた。

986 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 00:02:26.26 nRM8KM20 548/630

黄泉川「ここは私らが食い止めるじゃん!!」

鉄装「君たちは先に行きなさい!!」

突然、黄泉川と鉄装が走るスピードを減じたかと思うと、踵を返し来た道を戻っていった。

打ち止め「ウソ……ヨミカワたちが!!」

一方通行「アイツら……!!」

上条「黄泉川先生……鉄装先生……」

上条たちの返事も聞かぬまま、黄泉川と鉄装は既に走り去っていた。

美琴「えっ!? 何でちょっと待ってよ!!!」

黒子「そんなっ……無茶過ぎますわ!!!」

後ろを振り返った美琴と黒子が叫ぶ。
反対方向に駆けて行く黄泉川と鉄装の背中が遠くに見えた。

佐天「黄泉川先生が!?」

初春「鉄装先生まで!?」

上条「もう振り向くな!! 全速力で走れ!!」

これ以上、後ろに構ってる余裕なんて無い。上条は前方を走る少女たちに叫ぶ。

美琴「くっ……どうして……」

悔しそうな表情を浮かべ、美琴は振り切るように正面を向いた。
目的地はもうすぐ目の前に迫っている。彼女たちの旅路の終わりは近かった――。

9 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 22:31:30.20 RKTAF8E0 549/630

黄泉川「ハァ……ハァ……ゼェ…」

鉄装「ゼェ……ハッ……ハァ…」

追っ手を引き付ける囮となるため、通りを逆走していた黄泉川と鉄装は前方100mほど先に武装兵たちの姿を視認すると、通りの脇に停車されていた軽自動車のバンパーの陰に咄嗟に身を隠した。

ダカカカカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!!

それに気付いた武装兵たちが発砲し、銃弾が車体に降り注ぐ。
黄泉川と鉄装は、着弾によって発生した微振動を車体越しに感じ取った。

黄泉川「先遣隊、ってところじゃん。恐らくこの後メインの勢力が追いついて来るじゃん」

鉄装「でも、主力部隊どころか先遣隊も通す気はないんですけどね」

黄泉川「あったり前じゃん」

2人はニヤッと笑みを交わすと、バンパーに上半身を乗り出し、SIG 550アサルトライフルの折りたたみ式銃床を肩にガッチリ固定した。そして、狙いを定めると思いっきり引き金を引いた。

ダララララララララララララララララ!!!!!!

2つ分の斉射が武装兵たちに振るわれる。武装兵たちは物陰に身を隠した。

ダカカカカカ!!!!!! ダカカカカ!!!! ダカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!!

次いで、反撃が行われる。

黄泉川「チッ」

黄泉川と鉄装は咄嗟に車体に身を隠し、ものの数秒で弾倉を切り替え遊底を引く。

鉄装「敵兵の数は7、8名といったところでしょうか」

黄泉川「ああ。数の上では不利じゃん。問題は、どれだけ時間を稼げるか、じゃん」

鉄装「もちろんそのつもりですよ!」

敵の銃弾が止んだ隙をつき、再び黄泉川と鉄装は射撃を開始する。

ダララ!!! ダラララララララ!!!! ダララララララララララララララ!!!!

黄泉川はダットサイトを覗き、アンチスキルで得た射撃テクニックを駆使して敵兵を薙ぎ払っていく。
鉄装もまた同様に、容赦なく武装兵たちに銃弾を浴びせていた。

10 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 22:37:26.91 RKTAF8E0 550/630

鉄装「!!」

車体に身を隠す鉄装。

黄泉川「どうした!?」

前方を見据え発砲しながら黄泉川が訊ねる。

鉄装「弾切れです。ここまでの道中で使い切ってしまったようです」

黄泉川「そうか……おっと」

黄泉川も車体に身を隠した。

黄泉川「こっちも弾切れじゃん」

鉄装「…………………」

黄泉川「…………………」

鉄装「でも、まだ……」

黄泉川「諦めるわけにはいかないじゃん?」

再び2人はニヤッと笑い、右腿に巻かれていたレッグホルスターからサイドアームの拳銃を取り出すと、車体に身を乗り出し発砲し始めた。
敵はまだ4名は残っている。黄泉川と鉄装の不利は変わらない。寧ろ、この状況で敵1個分隊の半数を2人だけで戦闘不能にしたほうが奇跡的だった。

鉄装「あっ……!!」



ドサッ



突如、鉄装が後ろに倒れた。

黄泉川「鉄装!!!!」

見ると、鉄装の肩口から血が流れ出ている。恐らくライフル弾を浴びたのだろう。

11 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 22:43:25.25 RKTAF8E0 551/630

だが、鉄装はそれでも立ち上がる。

鉄装「まだ……です」

黄泉川「鉄装!?」

鉄装「生徒たちを悪漢から守るのが……アンチスキルの……大人の……教師としての役目でしょう?」

ヨロヨロと上半身を起こす鉄装を呆然と見ていた黄泉川だったが、すぐに彼女に笑みが戻った。

黄泉川「その通りじゃん」ニヤッ

鉄装「なら、まだ諦めません!」

バッと車体から身を乗り出し、鉄装は拳銃を向ける。
しかし、その瞬間だった。

ドッ!! ドドッ!!

という鈍い音を轟かせ、敵のライフル弾が鉄装の身体を貫いた。
鮮血が飛び散る。

鉄装「…………っ」

黄泉川「鉄装!!!!!!!!!」

更にもう数回、

ドドドッ!!! ドッ!!

と鈍い音が鼓膜を揺さぶったかと思うと、黄泉川もまた後ろに倒れていた。
視界がゆっくりと流れ、血が闇夜に飛び散るのが見えた。



ドサッ



鉄装に並ぶように、黄泉川が地面に仰向けに倒れた。

12 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 22:49:21.02 RKTAF8E0 552/630

黄泉川「…………………」

撃たれた、という認識はしていたが何故か恐怖は無かった。
黄泉川は頭を起こし、自分の身体を見てみる。ボディアーマーに穿たれた複数の穴から血が流れ出るのが確認出来た。
試しに触れてみる。黒い手袋を更に塗りつぶすように黒色の液体がへばりついた。

黄泉川「……………致命傷か」

それだけボソッと呟く。
何故か痛みを感じず、どちらかというと熱かった。
そのまま黄泉川は横に顔を向ける。笑顔でこちらを見る鉄装の顔が側にあった。

鉄装「黄泉川……さん……」

ニコッと笑う彼女の喉元からは僅かに、ヒューヒューという音が聞こえてくる。

黄泉川「鉄装……大丈夫か?」

体勢はそのままで黄泉川は鉄装の顔に手を伸ばす。

鉄装「あの子たち……幸せになれると……いいですね……」

鉄装が小さな声で言う。

黄泉川「それが……教師として生徒へ1番に望むことじゃん……」

その言葉を聞くと、鉄装は笑顔のまま動かなくなった。

黄泉川「…………………」

黄泉川は顔を正面に戻す。星が煌くのが見えた。

黄泉川「ハァ………」

1つ、溜息をしてみる。

黄泉川「まさかこんな結末になるとはな」
黄泉川「生徒の安全を守るために、アンチスキルに入隊して……訓練を積んで……過ちで生徒を撃って………色々あったじゃん。だが、子供たちを守るために殉職、って言うのも教師冥利に尽きるじゃん。なぁ、鉄装?」

黄泉川は上を向いたまま横にいる鉄装に訊ねる。もちろん彼女は何も答えない。

黄泉川「私は時間稼ぎぐらいしか出来ないが、あの子たちが少しでも遠く逃げおおせられるのならそれで十分じゃん」

そう呟くと黄泉川は自分の腰に巻いてある弾帯ベルトのポーチに目を向けた。そして、そこから、あるものを取り出した。

13 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 22:55:36.77 RKTAF8E0 553/630

その頃、上条たちを追っていた主力部隊の先遣隊である武装兵4名は、急に敵の攻撃が止まったことを不審に思い銃撃を一旦中止していた。
しかし、いつまでもジッと待っているわけにはいかない。それに、敵を仕留めた手応えも僅かながらあった。
隊長らしき武装兵はハンドサインを出し、生き残っていた3名の部下と共に物陰から身を乗り出した。

武装兵「………………」

ゆっくりと彼らは前進する。手に抱えるM-4E2アサルトライフルのグリップを握る手が少しながら強張る。
やがて武装兵4名は敵が倒れていると思われる軽自動車の側に到達した。
ここまで来て攻撃が無いということは、本当に敵は戦闘不能に陥っているのだろう。彼らは2手に分かれて挟み込むように車体の陰に回り込んだ。

武装兵「………………」

そこには、仰向けになって死んでいる敵兵と、うつ伏せになって死んでいる敵兵の遺体が転がっていた。
1人の武装兵が、死亡を確認するためうつ伏せのまま転がっている敵兵の遺体に近付く。

バッ!!

そして武装兵は足をつかってその遺体を仰向けにさせた。
と、その時だった。



ピン!



という小気味良い音が聞こえたと同時、死んでいたはずの遺体がニヤリと笑みを刻んだ。

武装兵「!!!!!!!!!!」

敵兵の手の中には2人分の計4つの手榴弾が握られており、そのうちの1つのピンが外れていて………





ドォォォン!!!!!!!





直後、閃光と爆音が辺りにほとばしった――。

14 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:02:52.03 RKTAF8E0 554/630

美琴「ハッ……ハァ……ゼッ……」

暗闇の中、遠く背後に爆発音や銃声音を聞きながら、美琴は走る。
誰も何も発しない。脱出地点を目前にして彼女たちは黙々と走っていた。

黒子「ハァ……ゼェ……ハァ」

佐天「ゼェ……ハッ……ハァ」

初春「ハァ……ハァ……ゼェ」

今、彼女たちは既に街を抜け、周囲に建物がほとんど見られない地帯を走っている。
足元には雑草などが生えており、アスファルトの地面を離れてからだいぶ時間が経っていた。

上条「………………」

一方通行「………………」

そんな美琴たちを守るように併走する上条と一方通行。

打ち止め「…………………」

打ち止めは一方通行に抱えられている。

美琴「(黄泉川先生……鉄装先生……)」

美琴は時間稼ぎのために街に残った黄泉川と鉄装を思い出す。

美琴「(寮監……木山先生……ゲコ太……)」

そして、自らの身を挺して死んでいった大人たちの最期の姿が脳裏を過ぎる。
彼らは、美琴たちを逃がすために死んだのだ。その死に様は、美琴たちでは真似出来ない、信念と責任感のある立派な大人のケジメのつけ方だった。

美琴「(警備員の人たち……妹達……)」

もうここまで来て泣き言は言ってられなかった。
死んでいった人たちのために自分たちが出来るのは、脱出を成功させること。
美琴は湧き出る涙を無理矢理抑えてひたすら走った。



上条「こっちだ!!!」



上条が叫ぶ。

美琴黒子佐天初春「!!!」

15 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:08:11.37 RKTAF8E0 555/630

美琴たちは方向を変え、背の高い草を掻き分けていく上条に続く。
殿を一方通行が走る。

上条「ここだ!」

やがて彼らは草村を抜けると、水路にも似た1つの川の側に辿り着いた。川の大きさは幅10m余りだろうか。
その川岸に、草に隠れるようにして1つのボートが木の杭に繋げてあった。

美琴「これが……?」

思わず、口に出す。

上条「ああ、これがそうだ」

上条と一方通行がボートに近付き準備を始める。
美琴たちは息を切らしつつ、互いの顔を見た。

美琴「(遂にこれで……)」

そう、遂にここまで来たのだ。後は、このボートに乗ってしまえば全て終わり。もう、恐怖と緊張に苛まれて足を酷使して走る必要も自分たちの代わりに誰かが死ぬことも無い。そして、学園都市の内戦や崩壊の危険に巻き込まれることなく『外』に逃げ切れるのだ。

上条「このボートは予め設定した目的地に自律航行で連れて行ってくれる。1度始動すると目的地までは止まらないシステムになっている」

一方通行「一種のモーターボートみたいなもンだが、学園都市製の無音モーターボートだ。音で発見されることはない」

上条と一方通行は説明する。
彼らの説明通りだと、大きな音を出して敵に見つかる恐れはないとのこと。おまけに今は深夜で川は道から数mほど下を流れているのだ。それに背の高い草も都合の良い隠れ蓑になるだろう。
そう、これでもうほとんど安心だ。

上条「朝には目的地の学園都市の『外』と『中』の境界付近に着いているはずだ。後は、以前説明した通りそこから秘密の抜け穴を歩いていけばもう『外』に出られる」

説明しながら上条はボートに取り付けられたディスプレイを操作する。
彼の言葉に美琴たちは僅かに笑みを浮かべ合った。
いよいよだ。いよいよ脱出出来る――。

16 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:14:23.73 RKTAF8E0 556/630

上条「よし準備は完了した。さあ、みんな乗り込め」

一方通行「揺れるから落ちないように気を付けろよ」

上条「どうした? 時間が無い」

上条は美琴たちを見る。どうも彼女たちはなかなか足を踏み出せずにいるようだ。

美琴「みんな、行きましょう」

美琴が言う。それで他の3人も決心が着いたのか、1歩進み出た。

上条「よし来い」

上条は片足だけボートのヘリに置き手を伸ばすと、先頭にいた佐天を手伝うように彼女をボートに乗せた。

佐天「うお……すごい乗り心地」

一方通行「さァ早くしな」

上条「次だ」

再び上条が手を伸ばし、今度は初春をボートに乗せた。

初春「うわ、ボートなんて久しぶりに乗りましたよ」

上条「ほら」

チョイチョイと上条が促し、今度は黒子をボートに乗せる。

黒子「なるほど。思った以上に快適ですわね」

上条「御坂」

呟き、上条は美琴に手を伸ばす。

美琴「あ、うん。ありがとう……」スッ

上条「気にすんな」ガシッ

笑顔で応じる上条。
美琴と上条の手が一瞬繋がられる。
そして美琴もボートに乗り込んだ。

美琴「これで目的地まで行くのね……」

4人は、最新式のボートに乗って多少はしゃいでいるように見えた。

一方通行「さァてと……」

17 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:20:34.57 RKTAF8E0 557/630

一方通行が呟く。
そして彼は横に立っていた打ち止めの脇を両手で持ち上げた。

一方通行「ンじゃ、コイツも頼むわ」

そう言って一方通行は打ち止めを美琴に渡す。

美琴「あ、うん。分かった。おいで打ち止め」

打ち止め「…………え?」

美琴は胸の中に抱くように打ち止めをボートに乗せた。
しかし、そこで打ち止めは不可解な表情をして一方通行に訊ねていた。

打ち止め「どういうこと一方通行?」

一方通行「…………………」

一方通行は何も答えない。
不審に思った美琴が打ち止めに質す。

美琴「ん? 何? どうしたの?」

と、そこで何かに気付いたように美琴は上条と一方通行の顔を見て聞いていた。

美琴「そういやあんたたちも早く乗りなさいよ。敵が来ちゃうでしょ」

上条「…………………」

一方通行「…………………」

一方通行は背中を向けるように立っており、上条にいたっては1つ、淡い笑みを浮かべるだけだった。
そこで、美琴は嫌な予感を覚えた。

美琴「まさか………」






上条「俺たちは行かない」






美琴「……………え?」

18 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:27:21.20 RKTAF8E0 558/630

初めは、その言葉が信じられなかった。余りにもその言葉の意味と上条の笑顔にギャップがあったからだ。
もう1度、上条は言う。




上条「俺たちはここに残る」




美琴「……………ウソ…だよね?」

それだけしか出てこなかった。

黒子「……何をおっしゃっているんですの? 初めから全員で脱出するはずだったじゃありませんの!?」

佐天「そ、そうですよ! あたしたちもてっきりそのつもりでここまで来たのに!!」

初春「ど、どういうことか事情を説明して下さい!!」

信じられない、と言うように黒子と佐天と初春も声を上げた。

打ち止め「違うの! 初めから、お姉さまたち4人以外はみんな学園都市に残る、って決めてたの!」

思い切ったように打ち止めが説明した。

黒子「……な…」

佐天「何で? え? どうして? わ、訳が分からないよ!!」

初春「私たちは全員で脱出するって聞いてたんですよ!?」

打ち止め「よく考えてみてよ! こんなボートに10人以上も乗れるわけないでしょ!!」

黒子佐天初春「あ…………」

打ち止め「だけど……これはどういうことなの一方通行!? ミサカまで一緒に逃げるなんて聞いてないよ!!」

黒子たちは上条と一方通行を見る。2人とも黙ったままだ。

美琴「そんな…………」

美琴は呆然と顔を2人に向けた。手が震えているのが分かる。
信じられない。信じられないのだ。今、起こっていることが。
その不安を掻き消すように彼女は叫んでいた。

20 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:33:53.34 OIb6.QI0 559/630

美琴「ね、ねぇ待って! 何があったのか知らないけど、予定変更だって有り得るでしょ? だからさ、あんたたちも一緒に乗ろうよ! ねぇ?」

まるで命乞いをするかのように美琴は言う。

上条「無理だ。そのボートの定員は5名。それ以上、俺たちは乗れない」

だが、上条は初めから決定していたことを捻じ曲げるつもりはない、と言いたげにキッパリと即答していた。

美琴「……………そんなの………」

言葉が出てこない。

黒子「ずるいですわよ! どうしてそんなこと黙ってたんですの!?」

佐天「そうですよ! 何でいつもあたしたちだけ蚊帳の外なんですか!?」

初春「もう……誰かを置いてくなんて……嫌ですよ!!」

涙を浮かべながら彼女たちは訴える。

打ち止め「一方通行!! 訳が分かんないよ!! 嫌だよ……ミサカは……あなたと離れたくないのに!!!」

打ち止めの双眸からは既に大量の涙が流れ出ていた。

一方通行「っせェよ。オマエらに言ったらどうせ自分たちも残るとか言いかねないから教えなかったンだ」

背中を向けつつ一方通行は語る。

打ち止め「一方通行!!!」

それでも、打ち止めは彼の名を叫ぶ。

打ち止め「アナタがいないなんて……ミサカは1人で生きていけないよ……ううう」

一方通行「黙れクソガキ!!!」

打ち止め「!!!!」ビクッ

打ち止めに振り向いたと同時、一方通行が怒鳴った。

一方通行「オマエはこれから『外』の世界で新しい人生を送るンだよ!! これ以上、学園都市の闇に生きるゲスどもに利用されないようにな!!」

打ち止め「でも……そんなのって……ひどいよ……ヒグッ」

一方通行「あのカエル顔の医者の知り合いが、オマエの体調を管理してくれる手筈になっている。それに『外』には1万人近い妹達(シスターズ)とそれに、超電磁砲(レールガン)がいる。何かあったらソイツらを頼れ」

打ち止め「ミサカには……グスッ……ミサカには……ヒグッ……誰よりもアナタが一番なの!! アナタがいない人生なんて、ミサカは……信じられない!!!」

打ち止めは涙でグシャグシャになった顔を一方通行に見せる。

21 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:39:35.03 OIb6.QI0 560/630

一方通行「……………っ」

1度、耐えられないように視線を外した一方通行は打ち止めの両肩を掴んだ。
そして一方通行は打ち止めの顔を見据えた。

一方通行「わがまま言ってンじゃねェ!! 俺だってオマエと気持ちは同じなンだよ!!! オマエと離れたくないンだよ!!!」

打ち止め「……ううっ……グスッ……あくせられぇたぁぁ……」

一方通行「生きろ」

打ち止め「!」

一方通行「そしていつでもいい。辛くなったら、悲しくなったら、俺のことを思い出せ!! 俺はずっとオマエの側にいる。だから……ダチをたくさん作って、好きなヤロウでも見つけて、大人になって円満な家庭でも作りやがれ!! それが、オマエに託す俺の最後の望みだ!!!」

それだけ言うと、一方通行は打ち止めを抱き締めその耳元で静かに付け足した。

一方通行「俺の分も生きろ」

打ち止め「あくせら……れぇた……」

そして、一方通行は名残惜しそうに打ち止めから手を離した。
彼は打ち止めの泣きじゃくる顔を最後に1度だけ見ると、背中を向け踵を返した。

上条「もういいのか?」

一方通行「ああ。後頼むわ。先行ってる」

それだけ言い、一方通行はもと来た道を歩き始めた。

打ち止め「………グスッ……ヒグッ」

一方通行「…………………」ピタッ

もう1度、一方通行が足を止めた。そして優しく彼は呟いた。

一方通行「打ち止め……」

打ち止め「?」

一方通行「オマエといた時間は、俺の最低最悪な人生の中でも一番輝いてたぜ。…オマエに出会えて嬉しかった。ありがとな………」

打ち止め「一方通行……」

一方通行「幸せになれよ」

こうして、一流の悪党は暗闇の中にその姿を没していった。最愛の少女を守るために。
ボートには、いつまでも泣きじゃくる打ち止めの嗚咽が響いていた。

22 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:46:09.12 OIb6.QI0 561/630

上条「さて……と。俺もそろそろ行かないとな………」

一方通行の背中を見、静かに呟くと上条はボートの航行ボタンを押すべく手を伸ばし………



ガシッ



と、その両腕を誰かが掴んだ。

上条「……………御坂」

美琴「お願い。行かないで」

美琴が搾り出すように懇願する。
2人は、至近距離で見つめ合う。

上条「…………ごめん。でもあいつ1人だけにさせるわけにはいかないし、どの道このボートに俺は乗れない」

美琴「やだよ……。私を置いてかないで………」

上条と美琴の会話を、黒子と佐天と初春は黙って見つめている。
打ち止めは初春の胸の中でいまだ泣き続けていた。

美琴「あんたと……離れたくない」

上条の腕を掴む美琴の手に力が込められる。

美琴「電撃食らわして気絶させても連れて行くわよ……」

上条「はは…それは恐いな。そっか、もう…お前とも馬鹿みたいな一晩中電撃浴びせ浴びせられ鬼ごっこも出来なくなるんだよなぁ」

美琴「…………グスッ。そうよ…私は……あんた以外に電撃を浴びせるやつなんて…『外』にはいない………」

2人は思い出す。初めて出会った日のことを。そして、一晩中追いかけっこをしていた日々のことを。

上条「だけど、ごめん。これだけは無理なんだ御坂。そういうことだ……」

美琴「でも……!!」

23 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:52:52.27 OIb6.QI0 562/630

上条は黒子たちに顔を向ける。

上条「白井」

黒子「……はい」

上条「佐天」

佐天「……はい」

上条「初春」

初春「……はい」

上条「お前ら、こいつのこと宜しく頼んだぜ。強気だけど、こんな風に本当は弱いやつなんだからさ」

声を掛けられ、一瞬黒子たちは戸惑うような表情を浮かべたが、すぐにそれは笑顔になった。

初春「任せて……下さい」

佐天「あたしたち3人とも、御坂さんの大切な親友ですから。大丈夫です」

黒子「貴方には色々お世話になりましたね。ありがとうございます。お姉さまのことなら、ご心配なさらずに。私たちがついていますから」

それだけ聞くと上条は頷く。

上条「なら、安心だ」

そして彼は打ち止めに視線を移す。

上条「打ち止め」

打ち止め「………グスッ……」

上条「一方通行の望み、叶えてやれよ」

打ち止めは小さくコクンと首を縦に振った。

上条「じゃ、そういうことだ。もう時間が惜しい」

そう言って上条はボタンを押す。
ゆっくりと、モーターが始動する音が聞こえ始めた。
と、そんな上条を無理矢理振り向かせるように美琴が突然、上条の頬に両手を添えた。

上条「!?」

黒子佐天初春「あ…………」

24 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/15 23:59:05.31 OIb6.QI0 563/630








美琴上条「「―――――――――――――」」








25 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:04:14.42 xYR0ZPE0 564/630

永遠のような一瞬が2人の間に流れた――。

美琴「…………………」

ややあって、ゆっくりと美琴は上条から顔を離し、潤んだ目で彼を見つめた。

上条「…………………」

モーターボートが川岸から離れ出す。

美琴「私……あんたのことが………当麻のことが大好きだった」

そして、美琴は言っていた。

美琴「ずっと……ずっと……当麻のことが……好きだったの……」

美琴は僅かに俯く。
静寂がその場を漂う。
モーターが動く音だけが徐々に大きくなっていく。






上条「俺もお前のことが好きだ美琴」






美琴「…………え…?」

26 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:09:32.39 xYR0ZPE0 565/630

顔を上げ、美琴は上条の顔を見た。彼は、優しく微笑んでいた。

上条「俺も、ずっと美琴のことが好きだった」

美琴「当麻……」

ボートは川岸から離れていく。それと同期するように上条と美琴の距離も開いていく。

美琴「当麻!!!」

美琴はボートのヘリに掴まり、遠くなっていく上条に叫ぶ。

美琴「私……待ってる!! 当麻のこと!! 10年も50年も……100年も!!」

上条「俺もだ美琴!! 俺も…たとえ死んだってお前に会いに行く!!」

美琴「絶対だよ!!」

上条「ああ、約束だ!!」

そこで美琴は名残惜しそうに一瞬俯いたが、すぐに顔を上条に戻した。

美琴「私、当麻のこと愛してる!! ずっと……今までも……そしてこれからも!! ずっと……ずっと……」

上条「俺もだ!! 俺も…美琴のことずっと愛してるよ……」

美琴「ずっとだよ?」

上条「ああ、ずっとだ」

2人の仲を切り裂くように、ボートは進んでいく。
だが、彼女たちの絆は決して裂くことは出来ない。何があっても――。

上条「美琴………」

美琴「当麻………」

最後に、彼らは愛し合っていた人の名前を交互に呟いた。
2人は、お互いの姿が見えなくなるまでずっと見つめ合っていた。




モーターボートはようやく全力で航行し始めた。
美琴は遠くなっていく街並を見続ける。彼女の胸の中にあるのは、1枚のCD-ROMと、永遠に交わることのない1つの愛の絆だった――。

27 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:15:14.97 xYR0ZPE0 566/630

一方通行「遅いぞ」

上条「悪い」

後ろから響いた足音に気付き、ポケットに両手を入れて立っていた一方通行が振り向きもせず声を掛けた。

一方通行「ちゃンと、後始末やって来たンだろうな?」

上条「大丈夫だ。モーターボートはちゃんと出発した」

上条が一方通行に並ぶ。

一方通行「そっちのことじゃねェよ」

上条「ん? ああ、そのことか。それなら、大丈夫さ………」

僅かに瞳を揺らし上条は呟く。そんな彼を横目で窺って一方通行は言った。

一方通行「やれることはやった。後1つを除いてな」

2人は前方を見据える。
彼らが今立っているのは大通りの中心だ。

一方通行「おでましだ」

上条「………………」

彼らが視線を向けた先、大通りの向こうに人影がパラパラと現れ始めた。
ある者は白衣を着、ある者は私服の姿をし、ある者はその手にライフルを抱えていた。
その人影が徐々に、増えていく。

上条「なぁお前……」

一方通行「なンだ?」

上条「今、立ってられるだけで精一杯なんじゃないのか?」

一方通行「………チッ、バレてたかよ」

上条「キャパシティダウンか?」

上条は一方通行の足に視線を向ける。彼の足が僅かに震えていた。

一方通行「アイツら、正規の改良版キャパシティダウンを完成させてたようだな。任意でレベル設定が出来る代物だ」

恐らく、視線の先の集団の誰かが改良版キャパシティダウンを今も流しているのだろう。任意によって対象をレベル5に設定されたそれは、一方通行に悪影響を及ぼしているのだ。

28 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:21:41.48 eo4pN5k0 567/630

上条「大丈夫か?」

一方通行「ったりまえだろが」

大丈夫なはずがない。足を震えさせているのがその証拠だ。並の能力者なら頭を抑えて地面を転がり回ってるはずだ。本当は今この時も、一方通行の脳内には激しい激痛が襲っているのだろう。だが、それでも彼は平然と立っている。それはまさに、学園都市最強の超能力者として相応しい姿と言えた。

一方通行「まぁ、反射もベクトル操作もかなり精度が落ちるかもしンねェがなァ」

上条「だが、もう後悔はしてないだろう? あいつらを逃がせたんだから」

一方通行「まァな。だが……未練が無いと言えば、嘘になるかもなァ……」

2人は笑みを浮かべる。互いを認め合うように。

一方通行「さて、そろそろだな」

上条「ああ」

彼らの視線の先には、彼らを討つべくやってきた研究者や魔術師、武装兵たちがいた。
その数およそ200越え――。
圧倒的な不利であるのに関わらず、上条と一方通行は笑みを絶やさない。




ドオオオオン!!!!!!




その時、莫大な衝撃波が2人を襲った。
恐らく能力者の研究者から放たれたものだろう。2人はその場に倒れ込んだ。
そんな上条と一方通行を見て、容赦を知らない敵の主力部隊は更に歩みを進める。

29 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:27:26.38 eo4pN5k0 568/630

だが、彼ら2人はこれで終わるようなタマじゃない。それを証明するように、上条と一方通行は前方を見据え、ゆっくりと立ち上がろうとする。


上条「いいぜ……」


一方通行「オマエらが、そう簡単に俺たちを倒せると思ってンなら……」


その目に闘志が宿る。



上条「美琴たちを捕らえられると思ってるなら………」



2人は同時に勢い良く立ち上がり、ただ一言叫んだ。







上条一方通行「「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!!!!!!!!」」







咆哮のような雄叫びを上げ、上条と一方通行は走り出していた。
彼らは拳を握る。愛する人たちを守るために――。

30 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:33:14.64 eo4pN5k0 569/630

美琴「………グスッ……」

黒子「………ズズッ」

佐天「…………グスッ」

初春「…………ヒッグ」

打ち止め「……うううっ……グスッ…エッグ……」

美琴たちは、自律航行するボートの上にいた。
5人分の嗚咽だけがその場に聞こえていた。




ズズウウウウウウウウウン!!!!!!




その時だった。遠くになりつつある街の方から轟音と、続き銃声音が聞こえてきた。

美琴黒子佐天初春打ち止め「!!!!!」

美琴たちはそちらの方角を見る。
暗闇の中に浮かぶ街の建物群が、爆炎らしき光で照らし出されるのが見えた。

打ち止め「一方通行………」

美琴の胸の中にいた打ち止めが嗚咽混じりに呟いた。
美琴も同様に呟く。

美琴「当麻………」

美琴たち4人は涙を流しながら、街を見つめていた。
学園都市の崩壊はまだ始まったばかりだった。

31 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:38:17.93 eo4pN5k0 570/630

同時刻・学園都市の『外』――。

連合NGO団体の巨大施設に彼らはいた。
その2人――1人の少年とその傍らに佇む1人の少女は遠くに見える学園都市を眺めていた。
ここからでも爆発音が聞こえ、学園都市のいたる所から煙が上がっているのが見えた。

「現在時刻0時丁度。……いよいよ始まったんだな」

「こわいの……?」

「まさか。でも、あの街は俺とお前が出会った場所だからな。寂しいと言えば寂しいかもしれないな」

「そうだね……」

「本当言うと、あいつも一緒に3人で逃げたかったけど。あいつは俺たちを逃がすために死んじまったからなぁ……」

「………………」

不意に、少女が少年の手をギュッと握った。少年もまた少女の手をギュッと握り返した。

「心配するな。何があってもお前は絶対守ってやっからさ。一生かけてでも」

「うん……」

「幸せになろうな?」

「うん………」

2人は寄り添い、遥か遠くの落日の街を見つめる。
爆炎によって照らし出されたその街は、夜空にオレンジ色の光を何度も映えさせていた。

33 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:45:27.28 eo4pN5k0 571/630


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




翌日――。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


34 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:48:37.05 eo4pN5k0 572/630

霧も深い早朝。美琴たち4人を乗せたモーターボートは川の終点で止まっていた。
小鳥たちの囀る声に混じって、モーターボートのディスプレイからピピピと音が鳴った。終点に着いたという合図だった。

美琴「う……ん……」

そんな中、美琴はゆっくりと目を覚ました。

ピピピピピピ

美琴「なに……?」

徐々に意識がはっきりしてくる。ふと気付くと、胸の中で泣き疲れた打ち止めが眠っているのが見えた。
ボートを見回してみると、黒子と佐天と初春が寄り添って眠っていた。

ピピピピピ

ボートの外は霧に包まれていたが、どうやらそこが終点であることは何となく分かった。

美琴「そっか、着いたんだ……」

美琴はディスプレイを操作し、音を止めた。

美琴「打ち止め、ほら、起きなさい。着いたわよ」

打ち止め「……う…ん?」

揺さぶられ目を覚ました打ち止めが目をこする。

美琴「ほら、黒子、佐天さん、初春さん。起きて」

黒子たちを起こす美琴。

黒子「ん……どうしたんですのお姉さま?」

佐天「ふぁーぁ……あれ? えっとここどこ?」

初春「むぅー……よく寝た…」

美琴「ほら、よく見なさい。目的地に着いたのよ」

打ち止め「あ、本当だ…ってミサカはミサカは重い瞼をこすりながら辺りを見回してみる」

黒子「そうですか、ようやく着いたのですね」

佐天「いつの間にか朝になってたんだ」

初春「疲れちゃったので寝てました」

美琴「ほら、みんなしっかり。後もう一踏ん張りよ」

35 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 00:54:33.06 eo4pN5k0 573/630

美琴たちはボートを降りる。
どうやらそこは川の終点のようで、川の先は下水になっているのか柵が下ろされていた。

美琴「確か、この辺りに抜け道があるはずだけど」

葉っぱに覆われた下水施設の壁を、美琴は手探りに調べてみた。
川が下水に流れていく音が心地良く響く。

黒子「もうここは学園都市の『外』に近い場所なんですわよね?」

佐天「そうらしいですねー。にしても、抜け穴なんて見つかりませんね」

初春「でもここのはずですよ」

黒子たちも手伝って、傾斜になっている壁の葉っぱの裏を覗いてみたり草を掻き分けてみたりと色々試す。

美琴「ん? もしかしてこれじゃないかしら?」

美琴が葉っぱをめくってみると、確かにそこには古びた蓋らしきものが壁にくっついていた。
黒子たちが駆け寄って来る。

黒子「確か、上条さんの話によれば蓋に『作業員用非常出入り口』と刻まれてるはずだと」

美琴「ええ、ちゃんとあるわよ」

確かに、蓋には『作業員用非常出入り口』と彫られていた。ここで、間違いない。

パカッ

美琴「おっと」

少し力を入れてみると、蓋が簡単に開いた。
中を覗き込んでみる。直径2mぐらいの暗闇がずっと続いていた。

佐天「うひゃあ、じめじめしてそう。変な虫とかいないかな?」

初春「そう言えば、ボートに懐中電灯があるから使え、って言ってましたね」

そう言って初春はボートを簡単に探してみると、すぐに懐中電灯を見つけた。

初春「はい、ありました」

美琴「ありがとう」
美琴「さて、じゃあ行きますか」

黒子たちが頷く。

美琴「打ち止め、行くわよ!」

36 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 01:00:31.52 eo4pN5k0 574/630

美琴がボートの側で屈んでいる打ち止めに声を掛けた。

美琴「どうしたの打ち止め?」

何やら打ち止めは、草の上にいる動物と戯れている。

ニャ~

美琴「猫?」

見ると、1匹の三毛猫が尻尾を振って打ち止めと遊んでいた。

打ち止め「ねぇお姉さま、このネコちゃんも連れて行っていい? ってミサカはミサカはキラキラした目で訴えてみたり」

美琴「まあ、それぐらいならいいけど……って、ん? ちょっと待って、その子……」

美琴が打ち止めに近付いた。

打ち止め「どうしたのお姉さま?」

美琴「この子、スフィンクスじゃない」

打ち止め「スフィンクス?」

ニャ~と三毛猫は久しぶりに会った知り合いを見て嬉しそうに鳴いた。

美琴「当麻たちが寮で飼ってた猫よ」

まさかここで会うとは、と美琴は少し驚いた。それよりも飼い主の不在期間が長く続いたというのにこの猫は1匹でたくましく生きていたのだと思うと、彼女は素直に感心した。

打ち止め「そうなんだ。おいでスフィンクス~」

美琴「慣れてるのかしら? 私たちみたいな電撃系能力者でも平気そうね」

ニャ~

スフィンクスは打ち止めの胸の中に飛び込む。
ここで彼と再会したのも何かの縁なのかもしれない。

美琴「まあいいわ。その子も連れて来ていいから、そろそろ行くわよ」

打ち止め「はーい!」

こうして、美琴たちは抜け穴に忍び込んだ。

39 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 01:06:33.83 eo4pN5k0 575/630

懐中電灯を持つ美琴を先頭に、スフィンクスを服の中に抱えた打ち止め、佐天、初春、黒子が続く。
事前の情報通りなら抜け穴は1本道。但し、暗い上に何度も角を曲がらなければならないらしく、出口に着くまでは結構時間が掛かるとのことだった。

美琴「…………………」

ゆっくりと、四つん這いの格好で彼女たちは進む。
多少、熱さを感じたが何とか我慢出来るものだった。
そして、1時間が過ぎた頃……。

佐天「まだですかね?」

初春「だいぶ疲れてきちゃいましたぁ」

打ち止め「あぅーミサカも手が疲れてきちゃった、ってミサカはミサカはグウの音を出してみたり」

ニャ~

黒子「こらこら。恐らくもうそろそろでしょうし、頑張りましょう」

美琴「ええ……その通りね。どうやら出口が見えてきたみたい」

それを聞き、4人の顔が一斉に明るくなった。

打ち止め「それって本当に? ってミサカはミサカは期待の色を浮かべた顔をしてみる」

美琴「ええ、前方10mほど先に恐らくは地上に向かうための垂直の空間があるわ。あそこに見える梯子を上れば恐らく……」

佐天「おお、ゴールは目の前ですね」

初春「よかったー」

黒子「ささ。ラストスパートですわ。ゴールが見えてきたのですから、頑張りましょう」

41 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 01:11:27.26 eo4pN5k0 576/630

数分後、彼女たちは円柱形の空間に辿り着いた。何とかそこは5人分が立てるだけのスペースはあった。
美琴は懐中電灯を頭上に向かって照らしてみる。

美琴「あった。蓋よ。恐らくあれが出口ね」
美琴「梯子が脆くなってないか心配だから1人ずつ上りましょう。まずは私が行くわ」

黒子「分かりました。落ちないようお気を付けて」

美琴「ええ」

美琴は懐中電灯を口に咥え、梯子を上り始めた。耐久度はどうやら大丈夫のようだ。

美琴「………………」

ゆっくりと美琴は梯子を上る。真ん中まで来たところでチラッと彼女は下を見てみた。
4人が心配そうにこちらを見上げている。
彼女たちの顔を確認すると、美琴は引き続き残りの梯子を上り始めた。
そしてようやく彼女は天辺の出口まで辿り着いた。

美琴「(いよいよね……)」

美琴が片手で手を伸ばし、蓋の取っ手口に手を掛けた。

黒子「さて、遂に世紀の瞬間ですわね」

打ち止め「ワクワクドキドキってミサカはミサカは興奮してみる」

ニャ~

佐天「何が待っているか」

初春「解禁ですね」

黒子たちが期待と不安の混じったコメントを口にする。
美琴自身もまた、自分の胸の鼓動が早くなるのを感じていた。
取っ手に力を込める。



ガコッ……



開いた――。

そのまま蓋を開けきると、円柱形の空間に眩い光が降り注いだ。
思わず目を細める梯子の下の4人。
美琴はググッと力を込めて最後の梯子を上り終えた。

42 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 01:17:32.58 eo4pN5k0 577/630

美琴「…………………」

穴の中から顔を覗かせ周囲を見渡す。そこは、どこかの土手だった。右手に大きな川が見えた。
間違いなくそこは、学園都市の『外』だった。

美琴「着いたのね……」

と、その時、美琴の横合いから1人の男が手を差し伸べてきた。

「大丈夫かい?」

「おい! 学園都市から逃げてきた生徒たちだ! 手伝ってくれ」

4人の若い男たちが近付いて来るのが見えた。恐らく、上条が言っていたNGO団体の職員だろう。
そしてその周りには迷彩服を着込んだ兵士らしき姿をした人間が自動小銃らしきものを構え立っていた。護衛任務を受けた自衛隊かもしれない。

男たちに手伝われて、美琴は久しぶりに地上に足をつけた。
続けて、梯子を上ってきた打ち止め、佐天、初春、黒子も同じように地上に足を下ろした。

「お疲れ様だ。早速、あのトラックに乗ってNGO団体の連合施設まで行ってもらうけど大丈夫だね?」

美琴「あ、はい……」

美琴たちは久しぶりに学園都市の『外』の空気を吸う。どこか、新鮮な感じがした。
そこで彼女たちは気付く。風景の向こうに佇む学園都市を。
5mほどの壁に遮られた空間の内部からは、いくつかの煙が上がっているのが見えた。

美琴「学園都市が………」

横に並び、彼女たちは呆然とその光景を見つめる。
所々破けた服も、汚れや傷がついた肌も、気にする素振りすら見せず、美琴たちはずっと学園都市を眺めていた。


今、彼女たちの長い長い旅路は終わりを迎えた――。

72 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 23:40:50.46 7wBXR5.0 578/630


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




1ヵ月後――。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


74 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 23:45:59.77 7wBXR5.0 579/630

打ち止め「ブーン、ってミサカはミサカは飛行機になった気分で走ってみたり~」

大きくて広いメインホールを、元気な声を発しながら打ち止めが駆けていく。

「わっ」

「きゃっ」

「おっと」

打ち止め「どいてどいてー! ミサカ20001系は急には止まりませーん! ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」

ホールを行き交う人と人の間を、打ち止めは忍者のように素早くすり抜けていく。
ホールには、学園都市から逃げてきた学生、NGO団体の職員、研究者たち、政府関係者など様々な人がいたが、誰も打ち止めのことを鬱陶しそうに見る人はいなかった。

打ち止め「ちなみにミサカは逆戻り出来ませーん! だって一方通行だもーん、ってミサカはミサカはブーン」

この施設にいる子供と言えば、学園都市から逃げてきた子供しかいない。従って、そんな子供たちを邪険に扱う人は誰もいなかったのだ。

黒子「打ち止めちゃん、あまりはしゃいでいるとこけますまわよ!」

そんな打ち止めを後ろから注意する黒子。本来なら打ち止めのお目付け役は美琴がするはずだったが、色々と事情があって今は黒子がその役を仰せつかっていた。

黒子「まったく…何故私があの子の世話を……。まあ、彼女の笑顔を見ているとそう悪いものではないのですがね」

はしゃぐ打ち止めを見て黒子は笑みを浮かべる。

打ち止め「大丈夫大丈夫~、ってミサカはミサカは…あう!!」

ドシャ!

黒子「あ」

黒子が予感していた通り、打ち止めは転倒してしまった。

黒子「まったく…だから言わんこっちゃない……」

打ち止め「あうううう……鼻が痛い……ん?」

黒子「あら?」

打ち止めが見つめる床に、1つの小さな影が現れた。打ち止めが顔を上げると、そこには男の子2人、女の子1人が心配そうに彼女を見つめていた。どうやらみんな打ち止めと同じ年頃らしい。恐らくは上条たちとは別ルート経由で学園都市から逃げてきた子供だろう。

女の子「大丈夫?」

男の子A「気を付けろよな」

男の子B「痛くない?」

76 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 23:51:26.46 7wBXR5.0 580/630

初対面であるにも関わらず、子供たちは転んだ打ち止めを心配する言葉を掛ける。

打ち止め「…………………」

そんな子供たちの顔を呆然と見つめ返す打ち止め。

黒子「(これは……しゃしゃり出ないほうがいいですわね)」

黒子は少し離れた場所で打ち止めの様子を見守ることにした。

女の子「ほら立って」

打ち止めに向かって手を伸ばす女の子。

打ち止め「え? あ…うん」

打ち止めは一瞬キョトンとしたが、恐る恐る女の子に手を伸ばしてみた。

ギュッ

恥ずかしそうな表情を浮かべながら、女の子に手伝われて打ち止めは立ち上がった。

打ち止め「あ…ありがとう……ってミサカはミサカは感謝してみる……」

女の子「どういたしまして」ニコッ

打ち止め「………………」

満面の笑みを浮かべる女の子を見て、打ち止めはどう対応していいのか分からなかったのか視線を逸らした。

男の子A「お前、学園都市から逃げてきたんだろ?」

打ち止め「え?」

男の子B「違うの?」

と、男の子たちが打ち止めに話しかけてきた。

打ち止め「そ、そうだけど……」

女の子「じゃあさ、友達にならない?」

打ち止め「え……」

女の子「わたしたちもここで知り合ったんだけど、もっと友達を増やしたかったの」

男の子A「お前なら歓迎するぜ?」

男の子B「そうだよなろうよ友達」

77 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/16 23:57:53.82 7wBXR5.0 581/630

打ち止め「あ……う……」

一瞬、打ち止めは少し顔を俯かせた。

女の子「ね、友達になろう!」

しかし、再び女の子の笑顔を見ると打ち止めは恥ずかしながらも答えていた。

打ち止め「うん……じゃ、じゃあ…こんなミサカでよかったらお友達に……」ボソボソ

女の子「やったぁ!」

男の子A「今からお前俺たちの仲間な!」

男の子B「君、名前何て言うの?」

打ち止め「えっと……『打ち止め(ラストオーダー)』?」

女の子男の子A男の子B「らすとおーだぁ?」

打ち止め「あ、じゃなくて『ミサカ』! 『ミサカ』でいいよ!」

女の子「そうなんだ。じゃあ『ミサカ』ちゃんって呼ぶね! わたしの名前はね……」

つい先程知り合ったばかりだと言うのに、もう彼女たちは仲良さそうだった。

黒子「………クス」

新しく…と言うよりも初めて出来た友達と嬉しそうに話す打ち止めを見て黒子は微笑みを浮かべた。

打ち止め「……うん、これからも宜しくね! ってミサカはミサカは満面の笑顔で答えてみる!」

黒子「(あの殿方の影響からか、打ち止めちゃんは強い子ですわね。しかし、問題は………)」

黒子はその顔から笑みを消すと、不安な表情をつくって虚空を仰ぎ見た。

78 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:02:50.14 plNqHvA0 582/630

連合NGO団体施設に設けられた、学生たちの居住区エリア。その一室に美琴はいた。

コンコン

部屋の扉をノックする音が聞こえた。

黒子「お姉さま、私ですの」

美琴「…………開いてるわよ」

どこか元気の無い声で美琴は答えた。

ガラッ

黒子「お姉さま……」

黒子が中に入ると、部屋はカーテンで締め切っており昼間だと言うのに夜のように暗かった。
そんな広くも無い、トイレや風呂、テレビなど必要最低限の施設が備えられたその部屋の中央のベッドの上に彼女はいた。うつ伏せになりながら。

黒子「お姉さま、こんなお昼からカーテンも締め切って健康に悪いですわよ?」

美琴「放っといてよ……」

黒子「…………………」

振り向きもせず、美琴は鬱陶しそうに答える。

黒子「もう学園都市から離れて1ヶ月近く……そろそろ規則正しい食生活に移行した方が……。もうすぐ例の“カリキュラム”も始まりますし……」

美琴「……………私の勝手でしょ」

黒子「じきに学生たちには両親との面会期間も設けられます。いつまでもそんなことしてる場合では……」

79 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:07:33.90 plNqHvA0 583/630

美琴「うるさい!!」

黒子「!!」ビクッ

美琴「……………もう、出てって……」

黒子「…………………」

美琴の言葉に、黒子はただ黙るしかなかった。

黒子「…………分かりました」

黒子は部屋から出、ドアに手をかけた。

黒子「………そう言えば…ついさっきのことですけど、打ち止めちゃん、友達が3人出来たようですわ」

美琴「……………………」

黒子「なるべく彼女にも会って下さいませ」

ガララ……ピシャッ

ドアが閉められ、部屋は再び暗闇と静寂に包まれた。

美琴「……………………」

孤独感が美琴を襲う。

美琴「……………ふぐぅ……当麻ぁ………」

嗚咽混じりに、彼女は布団をギュッと掴んだ。

80 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:12:48.39 plNqHvA0 584/630

佐天「いっただきまーす!」

初春「いただきまーす!」

明るい声が響きわたった。

黒子「では、いただきますの」

施設に設けられた食堂の1つ。そこに今、黒子と佐天と初春は昼食を食べるべく同じテーブルに集まっていた。

佐天「モグモグ……意外にもおいしいね」

初春「そうですね。もっと質素なんじゃないかと思ってたんですけど…ムシャムシャ」

目の前に広げられたピザやスープ、ハンバーグなどの洋食を食べながら彼女たちは談笑する。

黒子「学園都市のレストランにあった、よく意味の分からない実験的料理のように先鋭的な味はしませんが、それでも食事出来るだけ贅沢なものですわね」

佐天「確かにそうですよね」

初春「そう言えば、昨日また婚后さんに会いましたよ」

黒子「ほう? これで何回目でしょうかね」

初春「泡浮さんや湾内さんと一緒にいました。みんなお嬢さまですけど、ここの生活環境にも随分慣れたようですね」

佐天「あたしてっきり、お嬢さまってこういった俗世間と混ざったら消滅するのかと思ってました」

黒子「佐天さんはどういう考え方をしていますの……」

佐天「あはは。でも結局良かったじゃないですか。みんなと再会出来て」

それを聞き、黒子と初春が頷く。

初春「固法先輩に婚后さん、泡浮さん、湾内さん。春上さんや枝先さんたち。みんな元気そうでしたよ」

佐天「アケミやむーちゃん、マコちんもね」

黒子「あすなろ園の子供たちもみんな無事だったようですわね」

81 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:18:28.92 plNqHvA0 585/630

佐天「みんなちゃんと生きてて学園都市から逃げれたんですよね」

初春「全部、あの人たちのお陰なんですよね……」

黒子佐天初春「…………………」

そこで一旦、食事が止まった。彼女たちは誰かを思い出しているようだった。

佐天「そういや、御坂さんはどうです?」

黒子「え?」

初春「やっぱり、まだ元気が無いまま引きこもってるんですか?」

佐天と初春が心配そうな顔を黒子に向けてきた。

黒子「ええまあ……。さっきも伺ってみましたが、相変わらず。カーテンも締め切って、レベル5の超能力者とは思えないほど……。何だか最近以前よりも痩せてきたようにも思えますし……心配ですわ」

佐天「もうだいぶまともに会ってないですよね」

初春「……でも、やっぱり仕方ないと思います。あんな別れ方をしたら……」

黒子「打ち止めちゃんはようやく友達も出来たんですがね……。お姉さまも元気を出してくれればいいのですが……」

黒子佐天初春「…………………」

再び、食事が止まった。

初春「私はそんな経験無いからよく分からないですけど、両想いが発覚した瞬間、失恋ってどんな気持ちなんでしょうか……」

佐天「失恋って言うより、今生の別れだよね。……恋が叶った途端、今生の別れだなんて……」

黒子「確かに。お姉さまにとってあの方の存在は計り知れないほど大きなものでした。そう簡単に立ち直るのは難しいでしょう。それこそおよそ10年掛かるかもしれませんわね。いえ、その存在そのものを忘れることは一生掛かっても無いでしょう……」

佐天初春「御坂さん……」

黒子「今は、そうっとしておきましょう。……ですが、私は信じていますわ。お姉さまが元気を取り戻して私たちにあの凛々しくも美しい笑顔を再び見せてくれることを……」

そう言って黒子は食堂に設置された窓に顔を向けた。佐天と初春もそれに倣った。
そこから見える空は青かった。

82 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:24:37.58 plNqHvA0 586/630

学生の居住区エリア。その一室。
カーテンも締め切り電気も点いていない部屋の中、壁際に設置されたテレビが僅かな光を漏らし、暗い空間を淡く浮かび上がらせていた。

テレビ『学園都市内部では、今も研究者勢力とテログループの戦闘が行われ………』

机の上に置かれたノートパソコンには、学園都市崩壊に関する記事を載せたいくつかのサイトが複数のブラウザで表示され、床には同じく学園都市の記事を扱った新聞が散らばっていた。

美琴「……………当麻ぁ」

全て、美琴が上条の行方の手掛かりを少しでも得るために集めたものだった。

美琴「どうして……どうして……私を置いて……行っちゃったの……?」

布団の中にくるまりながら、美琴は涙を流し悲しみに明け暮れる。

美琴「やだよ……会いたいよ当麻………もう1回、その笑顔を見せてよ……ううう…グスッ」

ここ1ヶ月、ずっと美琴はこの調子だった。忘れようとしても忘れられない想い人の笑顔が、共に過ごした日々が何度もフラッシュバックするのだ。

美琴「………何で……何でよ………」

美琴はギュゥッと自らの身体を抱き締める。

美琴「当麻……」

学園都市から逃げる1週間ほど前、共に御坂妹の死を悲しんだ時、美琴は上条と寄り添い互いの悲しみを慰め合った。
その時の、自分を抱き締めてくれた上条の大きな身体が、温もりが、匂いが、いまだ忘れられないのだった。

美琴「えうっ……ヒグッ…」

彼女は自分の唇に触れてみた。
上条の人肌の最後の感触が唇を触れたびに蘇るのだった。

美琴「……当麻………」

彼女の双眸から涙が止まることはなかった。

84 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:30:43.59 plNqHvA0 587/630


上条「俺もお前のことが好きだ美琴」


――私も!! 私も当麻のことが好きだった……!――


上条「俺もだ!! 俺も…美琴のことずっと愛してるよ……」


――私も……私もずっと愛してる……っ――


上条「またな……美琴」


――やだ……行かないで!! お願い待って!! 私を置いてかないで!! 当麻!!――


上条「………」ニコッ


――やだ……1人にしないで……やだよ……うう……グスッ」――


――どうして……行っちゃうの? ……私たち、せっかく結ばれたのに……――


――やだよ……当麻がいないと……私……――


――もう、死にたい………――


――…………………………――


『ダメなんだよみこと』


――え……?――


『せっかくとうまが生かしてくれた命なのに、死んじゃダメなんだよ』


――誰……? 誰かそこにいるの?――


87 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:36:26.29 plNqHvA0 588/630



『みこともよく知ってると思うよ』


――?――


『みこと……とうまはね、みことの幸せを誰よりも願ってるんだ。みことが幸せになることを望んで戻っていったんだよ?』


――でも……私は……――


『ここでみことがずっと悲しんでたり、それどころか死んじゃったりしたら、とうまはとても悲しむんだよ』


――貴女、もしかして……――


『だから、生きるんだよみこと。そして幸せになるんだよ』


――ねぇ、貴女!――


『それが、とうまの願いなんだよ』


――インデックス!!!――




ガバッ!!!!




美琴「………ハァ………ハァ………ゼェ………」

90 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:42:58.56 plNqHvA0 589/630

息を切らし、美琴は飛び起きた。

美琴「夢……?」

いつの間にか眠っていたようだ。

美琴「………夢か……」

暗闇の中、テレビの光が部屋を淡く照らしていた。
ふと頬に手を当ててみると、水滴がついた。どうやら寝ながら泣いていたらしい。

美琴「…………………」

しかし、どこか頭はスッキリしていた。
と、カーテンの隙間から光が差し込んでいるのが見えた。

美琴「…………………」

何の意図も無い、無意識のうちの行動だったが、美琴はベッドから降り、カーテンを開けてみた。

美琴「うわ」

その瞬間、夕焼けの光が彼女の顔を照らした。

美琴「………綺麗」

かつて上条と共に学園都市から見たものよりもとても美しく綺麗な夕焼けだった。

91 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 00:48:11.33 plNqHvA0 590/630

美琴「こんなにも綺麗だったなんて……」
美琴「……………………」

しばらく美琴はその光景に目を奪われていた。

美琴「………よし!」

そして彼女は、何かを思い立ち、適当に髪を整えると、部屋のドアを開け久しぶりに外に飛び出した。



しばらくして、美琴は頂上に大きな木が生えた小さな丘の上に来ていた。
すぐ近くから、はしゃぐ子供たちの声が聞こえた。

美琴「…………………」

美琴は、とある方向に視線を据えてみた。その先にあったのは、かつて彼女が暮らしていた街―『学園都市』だった。

美琴「学園都市か………」

風が吹き、彼女の髪を優しく揺らした。

美琴「当麻……ありがとう」

風に揺れる髪を押さえながら、彼女は学園都市に向かって呟いた。

美琴「……………………」

その顔には、もう涙も悲しみもなかった。
ただ、凛々しく美しい笑顔が浮かんでいるだけだった。


まるで彼女を慰める風に包まれながら、美琴はいつまでも学園都市を眺めていた――。

98 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 01:00:39.38 plNqHvA0 591/630


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




10年後――。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


103 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 01:07:17.22 plNqHvA0 592/630

東京・都心部――。

多くの人が行き交うビジネス街。その一角にあるオープンカフェのテーブルにその女性は座っていた。
ボブショートに切り揃えられたシャンパンゴールドの髪。細くて、しかしどこか力強さを感じる白い腕。理想的な体型に整えられたその肉体は、並のモデルでも思わず見とれてしまうほどだった。
凛とした顔は鋭く、化粧も程ほどに薄いのにも関わらず、それでいてみずみずしい美しさを保っている。

彼女の名前は御坂美琴――。かつて、超能力が科学として認められた街『学園都市』で、レベル5第3位の超能力者だった女性だ。

美琴「待ち合わせの時間までもう少しかしら?」

今、彼女は本を読みながら人を待っていた。学園都市で出会った友人たちを。

美琴「学園都市……か」

美琴は思い出す。かつて住んでいた街のことを。そしてその顛末を。

10年前、美琴たちは、とある少年たちの手を借りて、崩壊間近の学園都市から逃げ出した。
初めは不安だらけだった。何しろ、久しぶりの『外』の世界だ。一般人から白い目で見られるのではないかと思ったほどだった。
だが、実際は違い、一時的に預けられたNGO施設の職員たちは優しく接してくれ、親身になって相談に乗ってもらったりもした。その後も、施設の中で先に脱出していた友人たちや、心配になって面会に来てくれた両親とも再会し、時は穏やかに流れていった。
やがて施設を出ると、都内の学校に入学。学園都市から来たと打ち明けても誰も恐がったり避けたりもせず、たくさんの友達に恵まれた。
振り返ってみれば、とても充実した幸せな10年だった――。

「あ、いましたよ!」

「御坂さーん!」

「ご無沙汰しておりますの!」

ふと、我に返る美琴。見ると、3人の旧友たちが歩いてくる姿が見えた。

佐天「久しぶりです!!」

初春「相変わらず元気そうで何よりです」

黒子「ああ、お姉さま、とても会いたかったですわ。しかも会うたびに綺麗になられて黒子はとても嬉しいですの♪」

白井黒子、佐天涙子、初春飾利。かつて共に学園都市で戦い、共に青春を生きた掛け替えのない一生ものの親友だった。
彼女たちを見て、美琴は微笑んだ。




美琴「久しぶり、みんな!」





182 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 22:34:43.15 m4txh7.0 593/630

美琴「黒子! 佐天さん! 初春さん!」

思わず美琴は叫んだ。久しぶりに見る旧友を前に笑顔が零れた。

黒子「あああんお姉さまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 会うたびに綺麗になられて黒子は感激ですの~!!!」

美琴「ええい、あんたのそれだけは10年前から変わらないわね!」

佐天「あははは、やっぱりこれ見ると御坂さんと白井さんって感じがしますねー」

初春「ホント、いいコンビですよね!」

美琴と久しぶりに再会した旧友である黒子、佐天、初春が席に着く。みんな、この10年でとても美しい女性に育っていた。
黒子は、昔のようなツインテールではなく髪を肩口付近まで伸ばしている。癖っ毛への苦肉の策としてウェーブを掛けているらしく、それが昔とは別の意味で大人っぽさを醸し出していた。体型は昔のように小柄だったが、繊細で華奢なスタイルは保っているようだ。
初春は逆に髪を背中まで伸ばしているが、花飾りだけはいまだ装着しているようだった。但し、どうも昔と比べて花飾りのボリュームが増しているように見える。服装は緩やかでおとなしめの女性の雰囲気を窺わせた。
佐天の美しい黒髪は変わっていなかったが、今は後ろで束ねてアップにしている。今時の女性らしい格好にスラッとした身体は男も女も羨むほどだった。

黒子「お姉さまああああああああああ!!!!」スリスリスリ

「うわあああああああああん!!!!」

と、そこで赤ん坊の泣き声が聞こえた。

黒子「Oh,これは失礼ですの!」

美琴の胸に抱かれた赤ん坊だった。

美琴「もーう何やってるの黒子ったら」

佐天「うっは、また一段と可愛くなってますねその子」

初春「えい、このこの」プニプニ

赤ん坊が笑った。

初春「可愛いー」

佐天「美女4人を前にして照れてるのかな?」

黒子「にしてもホントお姉さまにも似て可愛いですわね。食べちゃいたいぐらいですわ♪」

美琴「あんたが言うと洒落に聞こえないわ……」

ご覧のように、美琴は今、一児の母だった。

189 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 22:45:49.07 m4txh7.0 594/630

彼女は1年前に結婚していたのだ。
大学を卒業した頃、美琴は両親より見合い話を持ち出された。何でも相手は大企業の社長のご子息らしく、社長の友人だった父親の強い薦めによる見合い話だった。

黒子「あら? 至って普通の意味で言ったつもりですわよ? ウフフフ」

美琴「どうだか」

もちろん美琴は当初、猛烈に断った。まだ早すぎる、それどころか自分は一生結婚しないと決めていると言って断ろうとした。両親は何よりも娘である美琴の気持ちを最優先するような性格だったが、さすがに一生独り身というのは親として納得出来なかったのか、そのお見合いだけは半ば強引にセッティングされてしまったのである。

佐天「でもこの子男の子ですよね? 御坂さんに似てとても元気そうじゃないですか。それにイケメンだし」

美琴「だって。良かったね、イケメンだって」

お見合い相手は、文武両道でおまけにハンサム、しかも性格は完璧で非の打ち所がなかった。それにはさすがに美琴も感心したのだが、それでも彼女は承諾出来ず、丁寧に断った。どうも美琴にとってその完璧過ぎる性格は己の中の理想像と一致しなかったのだ。

初春「将来有望ですね」

美琴「ヤンチャにならなきゃいいけどね」

だが、お見合い相手は美琴のことを気に入ったのか、諦めずに何度もアタックを掛けてきた。そこには傲慢さもわがままも無かった。学園都市の話でも親身になって相談してもらい、美琴も徐々に心を打ち明けていった。そして1年ぐらいが経過した後、その男性の猛烈なアタックと両親からの強い薦めもあって結婚にいたったのだ。

佐天「それにしても御坂さん幸せそうですね~」

初春「旦那様も優しい方のようで羨ましいです!」

美琴「(幸せ……か)」

確かにその通りだ。今の生活を幸せではない、と言ったら多くの人に妬まれそうである。それほど、今の生活は幸せだった。
夫は優しく子供は可愛い。友達にも恵まれていて別に経済的に苦しいわけでもない。友達のような両親との付き合いも何の不満もない。で、あるのに何かが足りない。何か、心の中が一部分ポッカリと空いている気がする。そしてそれを思い出すたび、1人のとある少年の顔が脳裏にちらつくのであった。

佐天「幸せって、あたしにはあんたも幸せに見えるけどな?」

初春「えへへへー」

191 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 22:51:38.81 m4txh7.0 595/630

初春が照れるようにお腹をさする。

佐天「何ヶ月だっけ?」

初春「8ヶ月です! 元気な女の子ですよー」

実は、初春も既に結婚し妊娠していたのであった。マタニティドレスを着込んだ彼女のお腹はまん丸と元気そうにふくれている。

佐天「いいなー」

初春「そういう佐天さんだって、彼氏さんと上手くいってるじゃないですか」

佐天「むふふふふふふふふふ」

初春「わー! わー! すんごい幸せそうな笑顔!」

美琴「確か、次の6月に結婚式だっけ?」

佐天「そうです! 待ってて下さいねー綺麗なドレス姿見せてあげますから!」

嬉しそうに報告する佐天。今彼女は大学で知り合った男性と婚約中の身であった。

初春「ワクワク。楽しみです!」

黒子「実に喜ばしいことですわね。ですがみなさま、ゆめゆめ男性に現を抜かし過ぎないように」

美琴「そういうあんたはどうなのよ黒子」

黒子「さ、さぁて何のことやら?」

美琴「3日に1日は若旦那様との惚気話をメールでしてくるじゃないの」

黒子「あら? 身に覚えがありませんわねオホホホホホ」

佐天「うっわー白井さん、ラブラブ♪」

初春「まさかあの白井さんが結婚するとは思いませんでした。男性に好かれるような性格じゃないのに」

黒子「だから貴女はいつも一言多いですのよ初春コノヤロ」

初春「ぎゃあああ、花飾りだけは花飾りだけはむしらないで下さい!!」

言いながら黒子はどこか嬉しそうだ。意外かもしれないが、実は彼女は新婚ホヤホヤだった。

黒子「ご心配なくお姉さま! 私は殿方と結婚してもお姉さま一筋なのは変わりませんから」キラキラ

美琴「それはそれで問題だと思うけどね」

初春「あ、そう言えば打ち止めちゃんはどうしてますか? あの子も大きくなったでしょう?」

193 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 22:57:20.61 m4txh7.0 596/630

美琴「あの子は大学で頑張ってるわ。科学者になるって夢に向かってね。ただこの前も『講義のレポート手伝ってぇ』とか言ってきて困ったわ。この間もね、あの子の部屋に行った時のことだけど……」

――――2週間前・打ち止めの部屋――――

打ち止め「わーい、お姉ちゃんに久しぶりに会えて感激、ってミサカはミサカはお姉ちゃんに抱きついてみたり」ダキッ

美琴「こーら、もう20歳でしょ? いつまでも甘えてないの」

打ち止め「いいじゃない久しぶりなんだし、ってミサカはミサカは笑顔を浮かべてみる」

美琴「まったくあんたは……」

打ち止め「だって私のお姉ちゃんなんだもん」

美琴「確かにそうだけどね。あんたの高校入学式の時もお母さんの代わりに私が出席したぐらいだし?」

打ち止め「お、お母さんやお父さんも好きだよ? もちろん妹達だってみんな好き。だけど一番好きなのは美琴お姉ちゃんだから……ってミサカはミサカは照れてみたり」

美琴「まったく、可愛いこと言ってくれんじゃないの」

打ち止め「えへへ……///」

ニャ~

美琴「あ、スフィンクスも久しぶり」ナデナデ

ニャォォ ニャァァン 

美琴「で、この子たちが……」

打ち止め「天凰ちゃんに、サニーちゃんだよ、ってミサカはミサカは猫ちゃんの名前を説明してみる」

美琴「そうだったわよね。よしよし」ナデナデ

打ち止め「ふふ。みんな仲良しでしょ」

美琴「ええ。……あ、そう言えば、あんた今日は学校は?」

打ち止め「講義は午前しかないから大丈夫。バイトは夜からだし今はフリーだよ」

美琴「何のバイトしてるんだっけ?」

打ち止め「ウェイトレスだよ、ってミサカはミサカは胸を張ってみる」

美琴「そ。楽しそうで何より。勉強もバイトもちゃんと両立しなさいよ」

打ち止め「分かってる分かってる、ってミサカはミサカはウインク」

Prrrrrrr....

196 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 23:03:32.15 m4txh7.0 597/630

打ち止め「あ、ごめんなさいちょっと電話出るね」

美琴「ええ」

打ち止め「はいもしもし。え? あ、うん。明日? 多分大丈夫だよ。本当に? じゃあ私も行くね。うん、楽しみにしてるから。はーい、バイバイ」

美琴「お友達?」

打ち止め「うん。明日一緒にカラオケ行かないか誘われちゃった、ってミサカはミサカは答えてみる」

美琴「あんたさ……友達の前では普通に喋るのに私の前では語尾に『ミサカミサカ』ってつくのね……」

打ち止め「うー…つい昔からの癖で、ってミサカはミサカは…おう」

美琴「いいわよ無理しなくても。でもあんたが青春楽しんでそうで良かったわ」

打ち止め「あれ? もしかして若さに嫉妬してたりする?」

美琴「何だとー? たった4歳しか違わないのにって言うかあんただっていつかはおばさんになんのよ!」

打ち止め「あーやめて…それだけは聞きたくなーい、ってミサカはミサカは頭を抱えてみる」

美琴「ふふ。でも心配しなくても大丈夫よ。あんたは私の妹なんだから。十分モテる顔してるわよ」

打ち止め「それって遠回しに自分褒めてない? ってあー頭グリグリしないでせっかくセットしてるのにーってミサカはミサカはお姉ちゃんに抵抗してみたり」

美琴「まあいいわ。あんたの成長見られて嬉しいし。それに最近では、色気づいてきたようだしねー?」ニヤニヤ

打ち止め「うっ…そ、それは別にその……////」

美琴「初めての恋人なんでしょ? 仲良くしなさいよ」

打ち止め「………////////」

美琴「にしてもまさか甘えん坊のあんたに彼氏が出来るなんてね? お姉ちゃん寂しいなー」

打ち止め「だ、だって……あの人にどこか似てたんだもん//// いつも1人でいるくせに、本当は周りに優しいとことか……私が困ってる時はいつも助けてくれるし////」

美琴「あらあら。惚気? キャーうちの妹は現在絶賛恋愛中でーす」

打ち止め「はぅぅ……////」

美琴「ま、それもあいつが望んだことだしね」ポン

打ち止め「!」

美琴「幸せになりなさいよ、“琴美”?」

打ち止め「うん!!」ニコッ

201 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 23:09:45.90 m4txh7.0 598/630

――――時を戻して現在――――

美琴「……とまあ、そんなわけ。すっかり今時の女の子だわ。でも大学生になったんだからそろそろ姉離れしてほしいわ」

佐天「いいじゃないですか。まだまだお姉さんに甘えたいんですよ」

美琴「ま、そうなんだけどね。彼氏いるくせに『お姉ちゃんお姉ちゃん』言うのもどうかなーって」

初春「確かその彼氏さんって、一匹狼みたいな人なんですよね?」

佐天「一匹狼とか……語感が古いよ。ただ1人でいるのが好きなだけなんじゃないの?」

黒子「しかし琴美ちゃんも結構変わったタイプの殿方がお好きのようで」

美琴「でも琴美はあれでもしっかりしてるし、過去の経験から物事の良し悪しの判断はちゃんと出来る子だから心配ないわ」

美琴の話を聞き、黒子たちは満足そうに頷く。

美琴「あ、それから『妹達(シスターズ)』もそれぞれ世界中で色んな生活送ってるわ。保母さんになったり、看護師になったり、アイドルなったり、どっかの怪しい探検隊に入って秘境の奥地にUMA探しに行ったり……結婚して子供を生んだ子も少なからずいるようね。あと、1番驚いたのはハリウッド女優になってた子ね。あの子、どこまで個性を伸ばすのかしら?」

初春「いいじゃないですか。それぞれの人生を歩んでるなら」

佐天「ちゃんと治療も完治してますからね。後は1人の人間として生きていくのみ」

黒子「確かに。素晴らしいことですわ」

美琴「ま、確かに姉としては嬉しいからねー」

そう語る美琴の顔は本当に嬉しそうだった。

美琴「あ、そういえば初春さん、この間隣に引っ越してきた夫婦が学園都市出身とか言ってなかった?」

初春「あ、そうそう、そうなんですよ」

黒子「へー学園都市出身のご夫婦が隣人だなんて偶然ですわね」

佐天「なんか心強いですね」

初春「ええ。とても仲の良さそうなおしどり夫婦です。5歳ぐらいの子供もいるようですけど、とってもラブラブで幸せそうなんですよー。せわしない旦那さんとおっとりとした奥さんで、たまにお茶しながら学園都市での話してますよー」

美琴「いいわね。学園都市の学生たちも色んな形で自分の人生送ってんのね」

208 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 23:15:47.73 m4txh7.0 599/630

佐天「そういや今思い出したんですけど、婚后さん、世界的に有名なIT企業の大富豪と結婚したようですよ」

黒子「うへーあの方らしいですの」

美琴「確かに。イメージぴったり来るわ」

初春「何だか常盤台のお嬢さまから財閥の奥様に格上げした、って感じですね」

黒子「ちなみに、泡浮さんと湾内さんはお2人でカレーライス屋さんを開いてますの」

初春「ぬっふぇ! 意外ですね。あのお嬢さまたちが」

黒子「何でも若者に人気らしく、将来はチェーン店を目指すのだとか」

美琴「なるほどね。あの子たち、昔はカレーの作り方すら知らなかったから随分成長したわね。なんなら今度みんなで食べにいきましょうか」

佐天「賛成賛成!」

初春「どれだけ美味しくなってるか楽しみです」

黒子「因みに、固法先輩は警察の生活安全部でバリバリ活躍中ですの。この間会いにいったのですが、制服姿がとても似合っていましたわ」

美琴「へー固法先輩らしいわね」

佐天「大人になっても同じような仕事ついて頑張ってるなんて、かっこいいなー」

黒子「まさに昔のままですわ。やはりあの方には凛々しい姿がお似合いですわね」

美琴「そうねー。そう言えば、春上さんとかはどうしてるのかしら?」

初春「春上さんや枝先さんたちはみんなで大学の教育学部に通ってるそうですよ。何でも木山先生みたいに教師になるのが夢だとか」

黒子「それは何よりですわね」

美琴「恩師の跡を追いかけるとか素晴らしいじゃない。立派な夢ね」

佐天「こうして振り返ってみると、みーんなそれぞれの道を歩いてるんですよねー」

初春「あのまま学園都市に残ってたら、私たち今頃どうなってたんでしょうかね」

黒子「さあ、それは分かりませんの。ただ、1つだけ言えることは、今は与えられた幸せを噛み締めることが1番大事ですわ」

4人は思いを馳せる。自分たちが幼い頃に育った学園都市での生活を。その顛末を。そしてその結果としてある今の幸せを。

黒子「それに……」

黒子が静かに呟く。

黒子「もう、私たちには学園都市の名残りである能力もありませんしね……」

209 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/17 23:23:22.47 m4txh7.0 600/630

美琴「……………………」

佐天「ま、あたしには元々無かったんですけどね」

初春「私も大した能力でありませんでしたけど、たまにコンビニの弁当を遠地で買ったりしたらちょっと不便に思います」

どこか懐かしそうに語る3人。
彼女たちは10年前、学園都市の『能力開発(カリキュラム)』で手に入れた能力を完全に失った。
かつて『冥土返し(ヘブンキャンセラー)』と呼ばれた名医が学生たちの幸せを願って作成した音声データ。学園都市の『外』で能力者のままいれば、その生活に危険が及ぶ可能性があるとして彼はそれを生み出したのだった。そしてその音声データによって、黒子たちを含む学園都市から逃げてきたほぼ全ての生徒が能力を失ったのである。

黒子「お姉さまはレベル5の超能力者でしたからね。やはり、能力を手放すを決めたときはとても逡巡したのではありませんか?」

黒子が美琴に訊ねる。それを受け美琴は一言だけ答えた。

美琴「………………そうね」

彼女たちは無言になる。どうやら、学園都市での能力生活を思い出しているようだった。

「うああああああああああん」

美琴「おっと、どうしたのかな?」

急に、美琴の胸に抱かれていた赤ん坊が泣き出した。

「うああああああああああああ」

美琴「よしよし、ほらほら男の子でしょ。泣かないの!」

赤ん坊をあやす美琴。

黒子「もしかして暗い空気になっていたのでそれを感じ取って泣き出したのでは?」

佐天「あはは、能力者みたいですね。お姉さんたち悪いことしちゃったかなー?」

初春「ごめんねー」プニプニ

ようやく赤ん坊が泣き止んだ。

美琴「むーじゃあ、そろそろ行きますか」

黒子「そうですわね。いつまでも話しているわけにはいきませんし」

佐天「今日はこれが一番の目的ですからね」

初春「早く行ってあげましょう」

美琴「ええ。じゃ出発!」

4人は席を立ち上がった。

249 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 21:56:44.93 HSrZc2g0 601/630

久しぶりに再会した美琴、黒子、佐天、初春の4人。
彼女たちは、1時間あまり会話に没頭すると、ある目的地に向かうため席を立った。

佐天「着きました。ここですねここ」

初春「お花がたくさん添えてありますね」

彼女たちが着いたのは、とある巨大モニュメントの足元だった。
多くの石碑が広場一杯に並んであり、そこにはたくさんの名前が連なっている。モニュメントの少し後ろに目をやると、その先には瓦礫がたくさん散乱していた。

美琴「学園都市の跡地か……」

黒子「ここに来ると10年前を思い出しますわ」

佐天「まだ行方不明の人もたくさんいるんですよね」

初春「5年経った今でも時折調査が行われるぐらいですからね」

彼女たちが訪れたのは、かつての学園都市の廃墟だった。
美琴たちが10年前に学園都市から逃れた後も、学園都市内部では内戦や“能力者狩り”が行われ、その期間はゆうに5年にも及んだ。
たまに、奇跡的に学園都市から脱出してきた学生がニュースで取り沙汰されることもあったが、それでも死者や行方不明者の数の方が圧倒的に多かった。

美琴「もう学園都市は存在してないのよね……」

黒子「……………………」

佐天「……………………」

初春「……………………」

美琴は、1歩前へ進み出て花束をモニュメントに添える。

250 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:01:27.34 HSrZc2g0 602/630

美琴「リアルゲコ太……木山先生……寮監……黄泉川先生……鉄装先生……警備員の人たち……20人の妹達……妹……」
美琴「………そして………」

そこで美琴は言葉を切った。

美琴「今の私たちの幸せがあるのは貴方たちのおかげです。とても感謝しています」
美琴「ありがとうございます」

美琴が頭を垂れる。

黒子佐天初春「ありがとうございます」

彼女に倣い、黒子と佐天と初春も頭を垂れた。

美琴「さて………」

美琴が振り返る。

美琴「帰りましょうか」

彼女の顔に笑顔が浮かぶ。

黒子佐天初春「はい」

こうして、彼女たちは学園都市の廃墟を後にした――。

251 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:06:10.28 HSrZc2g0 603/630

再び、街に戻ってきた美琴たちは混雑した大通りを歩く。

美琴「さぁ、これからどうする?」

黒子「久しぶりに会いましたし、まだ帰るのはもったいないですね」

佐天「じゃ、ちょっと早いですけど飲みに行きますか?」

初春「あ、ちょっとそれは遠慮したいです。お腹の子にさわりますし」

美琴「私もこの子がいるからお酒は駄目ね」

佐天「あ、そっか。ごめんなさーい」

黒子「カラオケ……も妊婦や赤ん坊を連れて行く所ではありませんわね」

美琴「んーじゃあ無難に夕食でも食べに行っか」

黒子佐天初春「さんせーい!」

美琴「どこがいい?」

黒子「そうですわね……」

わいのわいのと彼女たちは10年前に戻ったように話し合う。

佐天「それじゃあ、あそこは………」

初春「あの店高くないですか……?」

その光景は、まるで制服を着た4人の少女が仲良く寄り添って歩いているようだった。

252 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:11:36.21 HSrZc2g0 604/630

黒子「たまにはお洒落なお店でも……」

美琴「お洒落ねー……」

左端を歩く美琴は話に夢中で視線を前方には向けていない。

美琴「ふふ、そうね……」

彼女の視界の端に、前方から歩いてくる1人の男が映ったような気がしたが、こんな混雑した場所では大して珍しいことでもない。

美琴「ああ、いいかもねそれ……」

徐々に、男との距離が狭まる。
それでも、美琴は話に夢中で視線をそちらには向けない。

美琴「もう! 分かったわよ……」

男との距離1m――。
そこで美琴は初めて意識をその男に向けた。
何の意図もない、距離が近かったから注意を一瞬向けただけのこと。ただ、それだけ。それだけだった

美琴「うん……だから……ね………」

その寂びれたような男はポケットに両手を突っ込み、ヨレヨレの服を着て、しかし歩調はしっかりとしており、そしてどこかやる気のない目をし、髪がツンツンで………





美琴「!!!!!!!!」





すれ違ってから気付いた――。
今の男は……………。

253 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:16:26.17 HSrZc2g0 605/630

唐突に振り返る美琴。

美琴「……………っ」

彼女は無言でその場に固まる。

美琴「(いない……)」

人だかりに向けてあちこちに視線を巡らす美琴。だが、今すれ違ったはずの男の姿はどこにもない。
通行人たちが、道の真ん中で立ち止まった美琴を鬱陶しそうに見ながら歩き去る。

黒子「どうしたんですのお姉さま?」

佐天「何かあったんですか?」

初春「御坂さん?」

美琴「え? あ…うん……」

不審に思った黒子たちに声を掛けられ、美琴が我に返る。

美琴「何でもない……」

黒子佐天初春「?」

もう1度、彼女は人だかりに視線を向けてみたが、やはり変わったことは何もなかった。

美琴「(気のせい……よね……)」

佐天「御坂さーん」

初春「いつまでも立ち止まってると他の人に迷惑掛かっちゃいますよ」

黒子「早く行きましょう、お姉さま」

美琴「うん、ごめん。そうだね………」

それだけ言うと、美琴は名残り惜しそうにしながらも再び歩き始めた。

美琴「それで、どこに行くんだったっけ?」

そう……そんなはずがない。そんなはずがないのだ。
美琴の初恋は10年前に終わりを迎えたはず。今更、何らかの奇跡に恵まれてあの少年と再会出来るわけがないのだ。それは当然だ。10年間、そう信じやってきたのだから。

美琴「あはは、私はねー………」

それだけ胸中に復唱すると、彼女は今あったことを強引に心の奥底に閉じ込め、再び親友たちとの幸せな一時に身を預けた――。

254 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:22:25.66 HSrZc2g0 606/630


人間の営みなど知ったことではないように、月日は流れる。流れていく。

それを止めることなど何人にも出来ない。

とある少女が抱いた、とある少年への淡い恋心も叶われることもなく無情にも時は過ぎていく。

だが、どれだけ長い時が流れようが、とある少女の心から、とある少年の存在が消えたことは1度もなかった。

5年経とうが、10年経とうが、50年経とうが、90年経とうが………。


255 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:26:07.83 HSrZc2g0 607/630


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




御坂美琴・最期の日――。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


256 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:32:55.92 HSrZc2g0 608/630

静かで、どこか趣きのある部屋の一角。そのベッドの上に彼女はいた。
御坂美琴・御年ちょうど100歳。
もはや、皺だらけのその身体は若かりし頃のような美麗さは保たれていない。だがしかし、どこか優雅で立派な印象を受けた。

美琴「……………………」

老眼鏡を掛け、真っ白に染まった髪からは100年分の苦労が見て取れた。
彼女は今、末期の病気に冒され余命幾ばくの身だった。

美琴「(色々……あったわね………)」

美琴は自らの人生を振り返る。
学園都市に入学した時のこと。初めて自らの身に能力が宿った時のこと。必死で努力して能力レベルを上げたこと。1万人以上の自分のクローンが殺されたこと。そして、初恋相手である、とある少年との忘れようのない日々………。

美琴「(当麻………)」

その少年は、自らの身をもってして美琴に幸せを与えてくれた。そうして彼女は順風万版な人生を送ることが出来たのだ。
普通に友達と遊び、普通に結婚して、普通に子供を生んで、普通に子供の成長を見届けて、普通に孫の誕生に涙を流して、普通に友達の死に涙して……。
だが、不幸だと思ったことはない。とある少年が与えてくれた人生は、幸せそのものだった。


チカチカと電気が明滅しているのが分かる。恐らく電池が切れかかっているのだろう。
美琴はヨレヨレと手を空中に挙げると、そこから青白い光を発した。
それに合わせて電気の光が少し復活した。

美琴「(この能力を使うのも……最期かしらね……)」

かつて、学園都市で手に入れた唯一自分のアイデンティティーを示す電撃能力。
彼女は思い出す。とある少年の言った言葉を。



      ―――お前の電撃には何度も追い掛け回されたからなぁ―――



      ―――言わばそれはお前との思い出の日々みたいなもんだ―――



      ―――だから俺としては、お前には今のままでずっといてもらいたい―――



ニコリと笑う美琴。あの少年の言葉があったからこそ、彼女は100年この能力と共に生きてきた。
そして指先から青白い光を出すたび、彼との楽しかった日々が蘇るのだった。

257 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:38:21.83 HSrZc2g0 609/630

美琴は腕をベッドの側の机の上に伸ばした。
そこにあったものを手に取り、顔の前に持ってくると彼女は目を細めた。

美琴「ああ………」

それは写真だった。少女時代に仲の良かった友達4人とピクニックに行った時に撮った写真。
みんな可愛らしい私服を着ており、仲良く寄り添って写真に写っている。
だが、そこに映ってる少女は今、美琴を除いて1人もいない。彼女たちは何十年も前に美琴を置いて既にこの世を旅立っている。

美琴「もう1度……貴女たちに……会いたいわ……」

不意に、目頭が熱くなり涙が溢れてきた。

美琴「もう1度……あの頃に……戻りたいわね……」

涙が零れ出る。電気の灯りが再び明滅し始める。

美琴「神様……もし……この老いぼれの願いを叶えてもらえるなら………もう1度……あの人に……会いたい………」

徐々に、彼女の視界が闇に染まっていく。それと共に手元から力が抜けていく。
そうして彼女は最期に一言だけ呟いた。






美琴「当麻………」






彼女の目が完全に閉じられ、その腕は写真を手にしたままパタンと降ろされた。
そして電気の灯りが完全に切れ、部屋に暗闇が訪れた。

258 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:44:17.39 HSrZc2g0 610/630







美琴「はっ!!!」






唐突に、美琴は目を覚ました。

美琴「…………………あれ?」

周囲を見渡してみる。何だか、ポワポワとした夢の世界のような、どこか不思議で煌びやかなモヤが彼女を渦巻いていた。

美琴「………は? どこここ? 私って、死んだはずじゃ……」

呆然とする彼女は自分の身体をふと見てみる。

美琴「……って、ええ!? 何これ!?」

美琴が驚いたのも無理は無い。何故なら彼女は子供用の制服を着ていたのだから。

美琴「常盤台中学の制服? 何でそんなもん着てんの!?」
美琴「でも懐かしいなぁ……」

と、その時、制服の触り心地を確かめていた美琴はあることに気付いた。

美琴「!?」

咄嗟に彼女は自分の両手を目の前に持ってくる。

美琴「皺が無い……」

次いで顔に手を当ててみた。

美琴「顔もなんだか異常に綺麗で若々しいような……。って言うか私ってこんな子供みたいな可愛い声してたっけ?」

そこで美琴は気付いた。

美琴「あれ? もしかして私、若返ってる? って言うか死んだはずよね? その前にここどこ?」

困惑する彼女の疑問に答えるように、突然誰かが声を発した。

259 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:50:14.86 HSrZc2g0 611/630







「学園都市だよ」







260 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:53:21.72 HSrZc2g0 612/630

美琴「え? 誰?」

見ると、前方のモヤの中に誰かのシルエットが見てとれた。

美琴「誰かそこにいるの?」




「いやだなぁ短髪ったら。もしかして私のこと忘れちゃったの?」




美琴「だ、誰よ……?」

『短髪』という言葉を聞き、美琴は何か懐かしさを覚えた。随分昔に、とある女の子にそう呼ばれていた記憶がある。
シルエットが鮮明になっていく。美琴は目を細める。

美琴「あ……あんたは……」

彼女の目が大きくなった。





インデックス「久しぶりなんだよ、みこと!」





美琴「インデックス!!!???」

261 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 22:58:13.07 HSrZc2g0 613/630

そこに立っていたのは、真っ白い修道服を着た1人の少女――インデックスだった。
何十年も前に、とある街で知り合った外国人の修道女だ。

美琴「何であんたがここに!?」

インデックス「むぅ、そんな言い方はないんじゃないかな? 久しぶりに会ったのに」

インデックスが頬を膨らませる。

美琴「いや、だっておかしいでしょ? 私はお婆さんになって死んだはずで……」

と、そこまで言ったところでインデックスが手鏡を取り出してきた。

美琴「な、何よ!?」

インデックスは手鏡に美琴の顔を映すように押し付けてくる。

美琴「って、ええええええええええええええ!!!???」

インデックス「むふふ」ニコッ

美琴「何これ!? 何で私が若返ってんの!?」

驚きの声を上げる美琴。鏡には、ちょうど14歳ぐらいの時の美琴の顔が映っていた。
シャンパンゴールドの肩まで伸びた髪、髪留め、そして綺麗な白い肌。
彼女は久しぶりに見る自分の幼い時の顔に、驚きを隠せない。

インデックス「だから言ったじゃない。ここは学園都市なんだって。学園都市は学生の街でしょ?」

美琴「は? いや、学園都市って言われたって。そんな大昔のこと……」

インデックス「なら、その目で確かめるといいんだよ。みんな、みことのこと迎えに来てくれてるから」

インデックスが優しい笑顔を見せる。

美琴「みんな……って?」

美琴が怪訝な表情をした時だった。




「お待ちしてましたわよお姉さま」





262 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 23:03:23.31 HSrZc2g0 614/630

出し抜けに、懐かしい声が聞こえた。
美琴はそちらの方を見る。

美琴「黒子!!」

黒子「はい、お姉さま♪」

名前を呼ばれ、そこに立っていたツインテールの少女――白井黒子が美琴に抱きついてきた。

美琴「ど、どういうこと? 何であんたまでここに?」

黒子「だから、みんなでお迎えに上がりに来ましたの」

美琴の胸の中で黒子はそう言う。そして彼女は美琴から離れると、誰かを紹介するように腕を伸ばした。

黒子「ほら」


佐天「久しぶりです御坂さん!」


初春「うわぁ、懐かしいですねー」


モヤの中から、制服を着た佐天涙子と初春飾利が現れた。

美琴「佐天さん? 初春さん?」

驚く彼女をよそに、佐天と初春は嬉しそうに会話する。

佐天「何年ぶりかなぁ? 2、30年は待ってたよね」

初春「この姿で考えると、およそ90年ぶりですね♪」

美琴「貴女たち……」

佐天と初春が微笑む。
と、美琴の周囲を覆っていたモヤが突然晴れていった。
そして、その先にはたくさんの懐かしい面々が美琴を見つめながら微笑み、立っていた。

美琴「あ………」

インデックス「みーんな、みことのことを待ってたんだよ!」

263 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 23:08:34.05 HSrZc2g0 615/630

一方通行「ようやく来たかよ超電磁砲(レールガン)」

打ち止め「ね、だから言ったでしょ。待ってればお姉さまが必ずやって来る、ってミサカはミサカは久しぶりの再会に喜んでみる」

そこには、一方通行と打ち止めが手を繋いで立っていた。

御坂妹「どうやら相変わらず元気そうで何よりです、とミサカはお姉さまの顔を見れて安堵しました」
御坂妹「あ、ちなみにここには2万人の全ての妹達(シスターズ)がいるので後で挨拶に行ってあげて下さい、とミサカは結構無茶なことを要求してみます」

そこには、御坂妹と何人かの妹達(シスターズ)が立っていた。

カエル医者「どうやら何も問題はないようだね?」

寮監「ふむ。遅刻だぞ御坂。後でお仕置きだ」

黄泉川「お転婆なのは変わってないようじゃん」

鉄装「いきなりで驚かせちゃったみたいで悪いですね」

そこには、カエル顔の医者が、寮監が、黄泉川が、鉄装が立っていた。

木山「やはり君には一番その顔が似合う」

そこには、春上や枝先ら置き去り(チャイルドエラー)の子供たちと手を繋ぐ木山が立っていた。

美琴「みんな………どうして……」

他にもよく見れば、固法、婚后、泡浮、湾内など美琴の知る人たちが、昔の姿で美琴のことを見つめていた。
そして、彼女たちの後ろにはどこか見覚えのある近未来的な街が佇んでいて………

美琴「学園都市……?」

佐天「みーんな御坂さんのこと待ってたんですよ」

初春「そうそう。今日、御坂さんが来るって知ってみんなで迎えに来たんです」

佐天と初春が美琴に近付いてきて言った。

黒子「あの『学園都市』には能力開発もありませんし能力者も1人もいません。しかし、安心なさって下さい。同様に、あそこには暗部も闇も、非人道的なことも何1つ存在していませんから。あの学園都市には、多くの学生や教師たちが一緒に未来を夢見て楽しく生活しておりますの」

黒子が美琴の腕を掴みながら説明する。

美琴「………………本当に?」

黒子「本当ですわ」ニコッ

美琴「そうなんだ……」

美琴の顔に、淡い笑みが刻まれた。

264 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 23:14:09.08 HSrZc2g0 616/630

インデックス「これからはみんなで幸せに、永遠にあそこで暮らせるんだよ、みこと」
インデックス「ね、とうま?」

美琴の正面にいたインデックスがそう告げる。

美琴「え………? “とうま”」

インデックスの言葉に驚く美琴。
そして彼女の前に、1人の少年が現れた。

267 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 23:16:16.14 HSrZc2g0 617/630








上条「美琴、久しぶりだな」








268 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 23:20:15.30 HSrZc2g0 618/630

そこには、美琴がずっとずっと想いを抱いていた、あの少年――上条当麻が笑顔で立っていた。

美琴「………とうま………?」

上条「ああ」

美琴「当麻!!!!」

思わず、彼女の口からその名前が出た。同時に、笑みも零れる。

美琴「会いたかったよ! 当麻!!!」

駆け寄り、上条の胸元に飛び込む美琴。そんな彼女を上条は優しく抱き締める。

上条「俺もだ、美琴」

100年の時を経て、少年と少女は再会する――。
2人はしばらくの間、互いの顔を愛しげに見つめ合っていた。

佐天「じゃ、そろそろ」

初春「行きましょうか」

黒子「そうですわね」

黒子と佐天と初春が、美琴のために道を開ける。上条が1歩後ろへ下がり、その側にインデックスが立つ。





インデックス「学園都市へ!!!」






269 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/18 23:26:23.45 HSrZc2g0 619/630

上条が、静かに美琴に手を伸ばす。美琴はその伸ばされた腕を見て、次いで上条の顔を見た。
上条が、笑った。
それに応えるかのように美琴はその手を掴んだ。





上条「さ、行こう!」





美琴は満面の笑みで応えた。





美琴「うん!」





一斉に、みんなが走り出した。

向かう先は何の痛みも苦しみもない、希望と未来に満ち溢れた街『学園都市』――。

上条に手を引かれ美琴は走る。








こうして、彼女は永遠の幸せを手に入れた―――。








                                            ~Fin~

361 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:06:21.61 mMt95Jg0 620/630

>>1です。
みなさんありがとうございます。ここまで来れたのはみなさんの支援や評価、批判などあったお陰です。
無事終わらせることが出来て感謝してます。

今更ですが、自分の中では
1スレ目の>3~>4が「プロローグ~地獄編~」、>18~>217が「事件編」、>242~>407が「邂逅編」、
>459~>673が「謹慎編」、>692~2スレ目の>16が「隠遁編」、>28~>203が「再戦編」、
>314~>632が「真相編」、>634~>826が「御坂妹編」、>855~3スレ目>42が「大脱出編」、
>72~>257が「未来編」、>258~>269が「エピローグ~天国編~」
というように便宜的に分けていたので、もし読み返す方がいれば参考にでもして頂いて構いません。

正直なところ、前半バトル中心、後半ドラマ中心の2部構成は失敗だったかもしれません。。。
まるで、某ジブリの世界観に似たプレイステーション用配信アニメみたいになっちゃいました。

スレタイについてもですが、一応このSSは、美琴の学園都市との決別と上条との恋の決着を描いた話で、
その過程において一番の見所が禁書サイドと超電磁砲サイドの対決だったので、それをスレタイに採用しました。

以上です。何か質問とかあれば少しだけ答えます。

362 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:14:09.70 z0vU7QYo 621/630

チョーカーは結局どうなったの?

363 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:14:21.02 UhmBKoAO 622/630

一方通行と上条は死んだの?
10年後街中で美琴が見た上条は何?

364 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:20:08.40 mMt95Jg0 623/630

えーっと最初に言っておくとはっきり答えられないものもあります。

>>362
チョーカーはしてません。1スレ目でも書いた通り一方通行は完治してましたから。

>>363
一応これは不明、ということにしておきます。
ただ、この話はロシアとの戦争の後が舞台なので、もしかしたら上条は幻想殺しの
真の能力を得てるかもしれませんし、一方通行もいざとなった時の黒翼もあります。
10年後美琴が見た上条についても敢えてみなさんの解釈に任せておきます。

365 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:30:55.08 IOhEVIMo 624/630

魔術側のキャラが少なすぎたなーって思う
上条さんがピンチになってるなら動く人たくさんいただろうに
ただ出しちゃうと風呂敷広げすぎてまとまらなかったかもしれないがw

366 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:31:33.27 Ym/dOSE0 625/630

アレイスターは本当に死んだのですか?

367 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:38:42.30 z0vU7QYo 626/630

どっちかというと完治した経緯が知りたいです

368 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:39:36.27 Kk4i3gA0 627/630

最後はみんな幸せに暮らしてるよな。

369 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:40:34.61 Y2i1syc0 628/630

みことじゃなくて短髪じゃなかったっけ

370 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:47:28.88 z0vU7QYo 629/630

短髪は恋敵としての美琴に対する敵対心とかの表れだろうしな
名前を覚えていないはずがないし、本編でも「短髪」はわざとのはず

371 : VIPにかわりましてGEPPER... - 2010/07/19 23:52:02.04 mMt95Jg0 630/630

>>365
うーん、そう言われると申しわけないです。。。
ただ裏設定として、美琴たちは学園都市から逃げた後、
インデックスや上条の知り合いである神裂や五和と何度か交流図ってます。

あと裏設定というか、大人になった打ち止めが飼ってたスフィンクスの子供の猫
「天凰」と「サニー」ですが、御坂妹の名前からとってます。100(てんおう)→天凰、32(さんに)→サニー
と言う様に。

>>366
これも答えちゃうと野暮というか何と言うか。
どうなんでしょうか。誰かが言ってましたけど、もしかしたら
どっかからほくそえんで学園都市の行く末を見てたのかもしれません。

>>367
ここはあまり話の根幹に深く関わらないので書かなかったのですが、カエル顔の医者が
何らかの形で尽力してると思われます。

>>368
これも答えると野(ry
そうだと思います。美琴は以前より学園都市のことを地獄のような存在だと思ってた(と自分は解釈してみました)
のですが、それが1スレ目の初めで現実化した形になります。でも最後の最後にはみんなで
天国へ行けたのではないでしょうか。ということで1スレ目の最初と3スレ目の最後は一応対比なってます。

>>369
これは、インデックスと美琴が知らず知らずのうちにお互いの仲が接近していた証拠です。
だから互いに呼び捨てしてました。上条と一方通行が呼び捨てしてあったのと同じ。


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