1 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:18:25.70 U35r+UIP0 1/33



魔王「なんという田植え日和!かんかん照りだ!」

魔王「今年は三区画に植えるぞ!」





元スレ
魔王「田植えの季節だ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370859505/

2 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:19:54.49 U35r+UIP0 2/33



魔王「エリザベスカラーっぽいお婆ちゃん帽子オッケー!」

魔王「首巻きタオルオッケー!」

魔王「袖が落ちないカバーオッケー!」

魔王「もんぺよーし!」

魔王「地下足袋…うーん…どうせ私有地だからなぁ」

魔王「大して石も落ちてないだろうし…」

魔王「よし!裸足で行こう!」ポイポ-イ

魔王「今日は暑いからな!水田であるし気持ち良さそうだ!」



3 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:21:26.46 U35r+UIP0 3/33



魔王「それでは失礼して…」ソロォ

魔王「おふぅ!土もいい感じに水を吸ってねちょねちょだ!」グチョグチョ

魔王「これは期待できる!」

魔王「まずは紐と棒を繋いで…」

魔王「できた!これを田んぼの端と端に立てて…」

魔王「どうだ!これで植える目安ができたぞ!」

魔王「ちゃんと苗を植える間隔の目印つきだ!」



4 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:22:29.35 U35r+UIP0 4/33



魔王「苗を適当に一束ずつ取って…」

魔王「印に沿ってズブリ!」

魔王「おおぅ、この感じ…懐かしい!一年振りだ!」

魔王「おや?苗が倒れてしまった…感覚を忘れているのだな」

魔王「まあ一年振りだしな…仕方ないだろう」

魔王「まだまだ苗はたくさんあるのだからそのうち思い出すだろう!」



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魔王「とりあえず植え直して…っと、よし!」

魔王「カニ歩きで横に移動して…歩き辛い…」

魔王「また印に沿ってズブリ!」

魔王「おお!今度はうまく行ったぞ!」

魔王「この調子でいけば日暮れまでには終わるだろう!」

魔王「フハハハハ、待っていろ苗ども!すぐにお水たっぷりの天国へ送ってやるからな!」



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魔王「とりあえず一列終わったか…」

魔王「棒を刺し直すところからだが…」

魔王「反対側の端がなぁ…」

魔王「遠いなぁ…」

魔王「側近たちがいてくれれば…ハッ!」

魔王「いかんいかん!今はいない者たちのことを考えてどうする!」ブンブンッ



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魔王「さぁ、こちら側の棒を動かしたら反対側に行き、また植えるぞ!」

魔王「よいっしょっと」

魔王「待ってろ反対側の棒よ!すぐに場所を移動させてやる」バシャバシャバシャバシャ



8 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:25:53.22 U35r+UIP0 8/33



魔王「おう、走りにくいがこれはなかなか楽しいぞ!」バシャバシャバシャバシャ

魔王「人間たちが田植え前の水田でスポーツするのも頷けるわ!」バシャバシャバシャバシャ

魔王「はーっはっはっはっはっ!」バシャバシャバシャバシャ

にゅるんっ

魔王「!」

べちょんっ

魔王「」ドロドロ



9 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:26:36.84 U35r+UIP0 9/33



魔王「…こけた…」グスン

魔王「泥とは…随分滑りやすいのだな…」グスン

魔王「さらに適度な固さもある…」グスン

魔王「腹からこけたから、腹がジンジンする…」グスン

魔王「もう走らない…」グスン



10 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:27:49.34 U35r+UIP0 10/33



魔王「さあ、気を取り直して棒を移動させるぞ!」シャキン!

魔王「よいっしょっ…ととっ!」

魔王「泥が重たいが…これくらいどうということはない!」

魔王「さあ棒め!待っていろー!はーっはっはっはっはっ!」バシャバシャバシャバシャ



12 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:33:42.08 U35r+UIP0 11/33



魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「…ふぅ」ゴシゴシ



13 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:34:24.61 U35r+UIP0 12/33



魔王「ん?もう太陽があんなところに…」

魔王「そろそろ昼だな」

魔王「半分はできたし、午前はこんなものだろう」

魔王「とりあえず用水路で手と足の泥を落として…」バシャバシャ

魔王「そうだ、ついでに顔も洗っておこう」バシャバシャ

魔王「泥だらけでは折角の男前が台無しだからなっ!」キリッ



14 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:34:54.35 U35r+UIP0 13/33



魔王「んむ…」フキフキ

魔王「さあ飯だ!」

魔王「今日のご飯はシンプルにおにぎり!」バ-ン

魔王「たくあん!」ババ-ン

魔王「冷やしすまし汁!」バババ-ン

魔王「極め付けは…」

魔王「よっく冷やした麦茶!」ド-ン

魔王「いただきまーす!」



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魔王「……」モグモグ

魔王「……」モグモグ

魔王「……」モグモグ

魔王「……」モグモグ

魔王「……っ」ゴクン

魔王「…ん、…ん」ゴクゴク

魔王「ぷっはー!労働の後の飯は美味い!」



16 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:36:44.49 U35r+UIP0 15/33



魔王「塩加減も完璧!さすがだ!自分で作ったからよく好みがわかってる!」

魔王「焼き海苔に醤油をつけて巻くのもいいが、個人的には味海苔に醤油派だ」ムシャムシャ

魔王「塩分濃度なんて気にしない」モグモグ

魔王「すまし汁も美味しいなぁ」ズルズルズルズル

魔王「たくあんは二切れしかないからな」モグモグ

魔王「最後まで取っておくんだ」ゴクゴク



17 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:39:05.42 U35r+UIP0 16/33



魔王「おにぎりとすまし汁完食!お待ちかねたくあんターイム!」

魔王「あーん…」ポリッ

魔王「………」ポリポリポリポリ

魔王「………」ポリポリポリポリ

魔王「………」ポリポリゴクン

魔王「はぁ…美味いなぁ…」

魔王「いつかたくあんもつけてみたいものだ…」ヒョイ



18 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:39:54.95 U35r+UIP0 17/33



魔王「あーん…」ポリッ

魔王「………」ポリポリポリポリ

魔王「………」ポリポリポリポリ

魔王「………」ポリポリゴクン

魔王「はぁ…たくあんがなくなってしまった…」

魔王「いつも思うのだが、なぜ大根を漬けたらあんなまっきっきになるのだろう…?」

魔王「世の中には不思議な術もあったものだなぁ」



19 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:41:23.82 U35r+UIP0 18/33



魔王「おっ、いい風…」ソヨソヨ

魔王「………」ソヨソヨ

魔王「あと数ヶ月もすれば、あの苗たちは背が伸び、稲となり、米となるのだな…」ソヨソヨ

魔王「…できることなら、側近たちと共に…」ウトウト

魔王「いかんいかん!田植えの続きだ!」

魔王「動かねば昼寝してしまう!」

魔王「はっ!そうだ!」パンッ

魔王「ごちそうさまでした!」



20 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:45:35.77 U35r+UIP0 19/33



魔王「半分終わったとはいえ、まだニ区画あると思うと少し気が重いな…」サクサクサクサク

魔王「まあ今日中にこの区画が終れば、一区画一日でできるということだ」サクサクサクサク

魔王「そう思えば、三日。たった三日頑張るだけでいいのだ」サクサクサクサク

魔王「完成した暁には縁側で昼寝をしてやろう…」サクサクサクサク

魔王「城の縁側は高台にあるからな、田んぼの様子もよく見えるし、なにより風が気持ちいい」サクサクサクサク

魔王「ああ、楽しみだな」サクサクサクサク



21 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:46:13.00 U35r+UIP0 20/33



魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「…ふぅ」ゴシゴシ

魔王「そろそろ腰が限界だな…」セノビッ

魔王「だがあと4分の1といったところか…」ン-

魔王「あともう一踏ん張りだ!やるぞ!」



22 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:47:01.86 U35r+UIP0 21/33



魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「……」サクサクサクサク

魔王「…ふぅ」ゴシゴシ

魔王「終わった…」

魔王「むっ、すっかり夕方であるな」

魔王「とりあえず用水路で手足と顔を洗って…」

魔王「はぁ」バタン



23 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:47:48.58 U35r+UIP0 22/33



魔王「あー…草の匂い…」ソヨソヨ

魔王「夏だなぁ…」ソヨソヨ

魔王「………」ソヨソヨ

魔王「側近…どこへ行ったんだ…」ソヨソヨ

魔王「いなくなってどれほどの時が経ったと思ってる…」ソヨソヨ

魔王「このままだと、全部植えてしまうぞ…」ソヨソヨ



24 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:48:34.71 U35r+UIP0 23/33



魔王「他の魔族どももだ…」ソヨソヨ

魔王「連絡もなしに…みんな一斉にいなくなってしまった…」ソヨソヨ

ーーーーーッ

魔王「なにがいけなかったのだろう…」

ーーーードッ

魔王「人間の領土に頼らない、自給自足制の導入がいけなかったのだろうか…」

ーーーッドッ

魔王「いやそもそも人間との協定がいけなかったのかもしれぬ」

ーードッドッ

魔王「しかし、あのまま戦争を続けていても、ただいたずらに民たちを傷つけるだけであったしなぁ…」ウ-ム



25 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:49:24.47 U35r+UIP0 24/33



ードッドッドッ
ーーオ-ーー

魔王「それとも、…あれか?勝手に闘技場を田んぼにしたからか?」

ドッドッドッドッ
ーーオ-サー

魔王「だってもう闘技場いらなかったじゃん…ほとんどかくれんぼの会場扱いだったし…」

ドッドッドッドッ
ーーオ-サマ-

魔王「にしてもさっきからこの地鳴りはなんだ?」

ドッドッドッドッ
マオ-サマ-!

魔王「西の方…人間の領土から…なにか…?」

ドッドッドッドッ
マオ-サマ-!マオ-サマ-!

魔王「…逆光で見えぬ…」

魔王「いや…あれは…!」



26 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:54:01.75 U35r+UIP0 25/33



側近「まおーさまー!」ドッドッドッドッ!

魔王「…!側近…!側近ではないか!」

側近「まおーさまー!」ドッドッドッドッ!

魔王「側近ー!側近ー!」タッタッタッタッ

側近「まおーさまー!あっ」ドッドッドッガウンッ!

魔王「」チ-ン



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魔王「自分で自分に蘇生術かけるとか初めてだよ…」

側近「魔王さま自ら轢かれに来たんじゃないですか」

魔王「というかその馬はなんだ、鳴き声は可愛くないし、なんだか硬いんだが…」サスサス

側近「馬じゃありませんよ、ク○タ電機製ラク○ェルです」

魔王「」



28 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:55:26.58 U35r+UIP0 27/33



魔王「えっ…えっ?」

側近「いわゆる自動田植機です」

魔王「えっ?」

側近「あれ?魔王さま、田植えして下さってたんですか?」

魔王「そ、そうだぞ!側近がいないから一人でだな…!」

側近「今日自動田植機に乗って帰りますと、書状を一月ほど前にお送りしたはずですが」

魔王「」



29 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:56:20.99 U35r+UIP0 28/33



側近「読まれてなかったんですか…」

魔王「郵便受けに入ってるものはダイレクトメールだけだと思ったんだもん…」

側近「そんなわけないでしょう…」

魔王「だっ、大体お前らが勝手にいなくなるから…!」

側近「みんなそれぞれ農業を学びに人間の領土に留学してますよ」

魔王「」



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側近「お伝えしましたでしょう?」

魔王「…!それならそれで、みんな使い魔とかで連絡をしてくれれば」

側近「人間の領土では使い魔が出せるほどの瘴気がないのをご存知で?」

魔王「」



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側近「だからみんな手紙を送ってるはずですが?」

魔王「」

側近「はぁ…それでは、とりあえず城へ帰りましょう」

側近「ほら、魔王さま」

魔王「ん?」

側近「二人乗りくらいはできるので乗ってください」

魔王「お…おう!」



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魔王「はーはっはっはっ!これはなかなかどうして。良い乗り心地ではないか!」ドッドッドッドッ!

側近「はいはい」ドッドッドッドッ!

魔王「側近!運転してみたい!」ドッドッドッドッ!

側近「あー、じゃあ明日の田植えの時にお教えしますね」ドッドッドッドッ!

魔王「よし!楽しみにしてるぞ!」ドッドッドッドッ!

側近「はいはい」ドッドッドッドッ!



33 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 19:59:32.53 U35r+UIP0 32/33



魔王「…!側近、田んぼを見ろ!」ドッドッドッドッ!

側近「なんですか…、あ」ドッドッドッドッ!

魔王「夕日が…反射して綺麗だな…」ドッドッドッドッ!

側近「…そうですね」ドッドッドッドッ!



34 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/06/10 20:00:52.34 U35r+UIP0 33/33



魔王「…よしっ!帰るぞ我が城へ!」ドッドッドッドッ!

側近「それじゃあ発進しまーす」ドッドッドッドッ!

魔王「うわっ!」ズルッ

側近「えっ?」ドッドッドッガウンッ!

魔王「」チ-ン

側近「…まあ、帰ってからの蘇生でいいか…」ヨイセッ

側近「………」ドッドッドッドッ!





魔王「田植えの季節だ!」 おしまい

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