気が付いたらあいつの事が気になってた。
無意識のうちに眼で追っていて、意識した瞬間胸が高鳴る。
あいつと私はどんな関係なんだろう…?
ただの魔法少女仲間?友達?クラスメイト?
わからない……そんな疑問がふつふつと湧き出てきて私は頭を抱えている
さやか「こんなの絶対おかしい……どうしちゃんだんだろう私……」
唸っているといつのまにか背後に来ていたあいつに抱き着かれた。
元スレ
さやか「あいつと私」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1306378757/
杏子「何浮かない顔してんだよ、さやか」
さやか「ちょっ!ちょっといきなり抱きつかないでよ!」
杏子「何今更なこと言ってんだ、いつも抱き着いてるだろ?」
あいつは悪びれた様子も無く頬を擦り寄せて来る
さやか「ちょ///恥ずかしでしょ、バカ」
杏子「照れてるさやかも可愛いな、食べちゃいたいくらいだぜ」
なんでこいつは恥ずかしげも無くこんな台詞が言えるのか……
杏子「食後に美味しく戴くとして、早くお昼食べに行こうぜ!お腹すいて死にそうだ」
さやか「今準備するから待ってなさい、先に手洗ってきなさいね」
あいつは「さやかはお母さんみたいだな、さやかあちゃんだな!」等と造語を作りながら教室を出て行った
さやか「はぁ…まだ心臓がドキドキしてる……緊張したぁ…」
さやか「あいつ本気で『食後に美味しく戴く』気なのかなぁ…」
あいつが言った言葉を思い出しただけで顔が赤くなるのがわかる
さやか「じょ、冗談に決まってる、そうだよそうそう……」
だけどトクンと高鳴った鼓動を確かに聞いた
さやか「少しは期待しても……良いのかな……」
杏子「さやかー!手洗ってきたぞー」
無邪気に笑いながらあいつが帰ってきた
さやか「ねぇ…杏子、きょ、今日は屋上で食べない?」
杏子「良いけどなんでだ?」
さやか「今日はそんな気分なの!さぁ、お弁当持って行くよ」
あいつの手を取り強引に教室から駆け出した。
-屋上-
杏子「たまには外で食べるのもいいな、新鮮な空気、美味しい弁当、かわいいさやか、もう何も怖くないな」
突然何を言い出すのだろうか、お陰で噴き出してしまった。
さやか「なっ!何言い出すのよあんた、お陰で制服汚れちゃったでしょ!」
杏子「そんな面白い事言ったつもりは無いけどなぁ」
さやか「もう……(あいつの前でこんな失態するなんて恥ずかしいよぉ……)」
杏子「悪かったって、卵焼きやるから元気出せよ、さやかが作ったやつだけど」
さやか「うん、知ってる……」
杏子「ほれ」
っと卵焼きをつまんで差し出すあいつに少し意地悪してやろう…
さやか「食べさせて……」ボソッ
杏子「え?何か言ったか?」
さやか「食べさせてって言ったの!」
赤くなるあいつが見れれば許してやろうと思ったがそうはいかなかった
杏子「しゃーねぇなぁ、ほれ、あーん」
普通に口元まで卵焼きを差し出してきた
さやか「な!?そこは照れるところでしょ!?なんで普通に食べさせようとしてるのよ!」
杏子「ん?なんで?食べさせて欲しいって言ったのさやかじゃん?なんか違ったか?」
なんでこいつはバカ正直なんだろう。私の方が恥ずかしくなってきた。
杏子「ほれ、早く食べなきゃ逃げちゃうぞー」
目の前で卵焼きが揺れている。
さやか「…………」パクッ
杏子「美味しいか?」
にひひとあいつが笑う。
さやか「うん……自分で言うのもなんだけど美味しい」
杏子「だろう?あたしは毎日こんなにも美味しい弁当が食べられるだなんて幸せだ」
さやか「そんな大袈裟な、大したモノじゃ無いよ」
杏子「いいや、この食通の杏子様が認めてるんだ、自信もっていいぞ!」
さやか「なによそれ、自分で言うかぁ?」
杏子「なんだよぉ、あたしが認めてるんだぞ!」
さやか「はいはい、けど嬉しい……かな、ありがとう杏子」
杏子「うん、さぁもう時間も無いしさっさと食べて午後も頑張ろうぜ」
さやか「急いで食べると詰まるわよ…」
ガツガツと掻き込む杏子を眺めながらさやかは嬉しそうに微笑んだ
杏子「ふぅー、食った、食った!今日もありがとうなさやか」
さやか「お粗末様、今日も綺麗に食べてくれてありがとう」
杏子「当たり前だ、食い物は粗末に出来ないからな!」
杏子「さぁ、教室もどろうぜ」
とあいつが振り向いた
さやか「あ、杏子お弁当付いてるわよ」
杏子「マジで?どこだ?ここか?」
自分の顔をあっちこっち摩りながらご飯粒を探している
なかなか目的のモノにたどり着か無くてもどかしくなってきたのか顔をずいっと寄せてきた
杏子「どこにあるのかわからないからさやかが取ってくれよぉ」
平静を装いながらもさやかの鼓動は早鐘を打っていた
さやか「わ、わかった!けど恥ずかしいから眼閉じてて///」
杏子「ただ取るだけなら眼閉じる必要無いだろ?」
さやか「い、良いから言われた通にしなさい!」
へいへいと不満を漏らしながらもあいつが眼を閉じた
さやか「行くよ……?」
杏子「早くしてくれよなー」
ちゅっ
っと唇と唇が軽く触れ合った
杏子「な、なな何すんだよさやかぁ!」
あいつの顔が林檎の様に赤くなっていく、私の顔も負けず劣らずに赤いことだろう
さやか「何ってご飯粒取ってあげたの!そんな所に付けてた杏子がいけないんだからね!」
私も真っ赤になりながら言い返した。
杏子「なんだよぉ…こんな事であたしの初めてが奪われるなんて……」
さやか「な、何よ!あたしだって初めてよ、それにあたしとじゃ不満なの!?」
杏子「ちげぇよぉ……するならもう少しムードってもんがあるだろぉ」
と涙目になりながら杏子が呟いた言葉にキュンとしたそんな昼下がり
さやか「杏子は今度何食べたい?好きなもの作ってあげるよ」
杏子「さやかが作ってくれるなら何でもいいぞ!」
さやか「なんでもって……もう少し具体的によ、肉系、魚系とかあるでしょ?」
杏子「んー…そうだなぁ……」
と腕組をしながら唸りはじめた
さやか「そんな真剣に悩まなくてもいいでしょ」
杏子「だってなぁ、せっかくさやかが作ってくれるんだから選ばなきゃ損だろ」
さやか「杏子が悩むほど凄いもの作れる訳じゃ無いけど極力努力はするわよ」
杏子「そうだなぁ……あ!ハンバーグ、ハンバーグがいい!」
さやか「そんなので良いの?」
杏子「そんなのって言うなよ!ハンバーグは凄いんだぞ」
さやか「はぁ……良くわからないけどハンバーグね、じゃあ作ってきてあげる」
杏子「楽しみにしてるぞ!」
さやか「(ハンバーグかぁ…簡単だからいいけど本当にそれでいいのかなぁ)」
さやか「けど、簡単だからこそとびきり美味しいのを作ってあげなきゃね」
-次の週のお昼-
杏子「いやー腹減ったなぁ!早く弁当食おうぜさやか!」
さやか「少しは落ち着きなさい欠食児。ほら、この間約束したハンバーグ作ってきたわよ」
杏子「おおおぉ!覚えててくれたのかさやかぁ!」
さやか「忘れる訳無いでしょ、結構練習したんだからね?」
杏子「くぅ~、嬉しいねぇ嬉しいねぇ」
さやか「そんな喜ばなくても……こっちが恥ずかしくなって来るでしょ!」
杏子「さっそく食べていいか!?」
さやか「はい、どうぞ良く噛むのよ?」
杏子「いただきまーす!」
あむんっとハンバーグを口に運んで咀嚼する
さやか「……………」ドキドキ
杏子「んまい!美味いぞさやか!」
どうやら合格らしい。ホッと一安心
さやか「それは良かった、頑張ったかいがあったよ」
うんうんと笑顔で頷きながらあいつはハンバーグを食べていく。
その幸せそうな顔を見ているとこっちまで嬉しくなってくる。
さやか「そういえばさ、なんでハンバーグを選んだの?」
杏子「ん~?そうだなぁ」
とあいつはぽつぽつと語りはじめた
杏子「ハンバーグってさ、なんか『家族』の食べ物って感じじゃん?」
杏子「暖かい部屋で家族みんなで食べてさ、笑いあったりして……」
杏子「家はあたしを置いてみんな逝っちまったしなぁ。なんだかさ一人ぼっちのあたしが食べても寂しいからいつの間にか避けるようになってたんだ」
杏子「けどさ、さやかと友達になって弁当を作ってくれるようになってから心のどこかで少し期待してたのかもしれないな」
杏子「おかしいよな、ただの友達なのに何期待してんだか
ハハっと杏子が笑った
杏子「さやか……?」
さやか「……グスッ……」
杏子「さ、さやか!?どうしたんだよ!?何処か痛いのか!?」
違う、違うんだよ杏子。
いつの間にか頬に涙が線を描いていた
さやか「ちがっ、違うの、ただね、悲しかったり嬉しかったりしてね、ヒック、良くわからないの……」
さやか「杏子がね、今まで一人ぼっちで生きてきた辛さとか悲しさを考えたら涙が溢れてね、止まら無くなってさ」
杏子「さやか…」
さやか「後ね、あたしの事をね、家族見たいにって少しでも思ってくれた事が嬉しくてね…」
とぎれとぎれに思いの丈を紡ぎ伝えた
さやか「ごめんね、ちょっと感情が高ぶっちゃった」
杏子「こっちこそごめん……飯時にする話じゃなかった」
さやか「ううん、あたしが聞いたんだから杏子は謝らないで。それにね、杏子のこと知れて良かった」
さやか「ねぇ杏子。杏子がよければなんだけど、これからもハンバーグ作らせて?」
さやか「えっ、それって……」
さやか「皆まで言わないの。私はただ大好きな人にはなんでも食べてもらいたいだけよ
さっきまで暗い顔をしていたあいつの顔がみるみる明るくなっていき元気な声で「あぁ!」と返事をもらった
57 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/26 19:22:04.72 JaOxa0TvO 17/17一応これで終わりになります。
保守、支援していただきありがとうございました。