※前編(3話)+中編(4話)+後編(2話)+マルチイベント前編(3話)・後編(3話)+最終章(3話) の構成となります。
第16話「最後に残った道しるべ」
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年代不明 時の最果て
ほむら「いよいよラヴォスとの対決の時が近づいてきたわ」
老人「みな、見違えるような顔つきじゃ。成長したな……私はうれしいよ」
クロノ「今の僕たちなら、ラヴォスと対等に戦えるはずだな!」
カエル「新生グランドリオンの力……今こそ、発揮する時!」
さやか「あたしらの剣でラヴォスなんざ、なます切りにしてやるっすよ!」
マール「パパも私を許してくれた……。もう何も怖くない!」
マミ「マールさん、それ私の決め台詞です!」
エイラ「ふぃろ・ふぃな~れ~!」キャッキャッ
魔王「ラヴォス……。ヤツを倒すことこそ我が悲願。腕が鳴る……」
杏子「今からそんなに気ぃ張ってたら疲れるぜ。グミ食えよ」
まどか「3個なの!? 甘いの3個ほしいのね!? 3個……イヤしんぼさん!!」
ロボ「それデ、ラヴォスと戦うにはどうすればいいのデスカ?」
老人「うむ。ラヴォスと戦う方法は本来、三つあった」
老人「ひとつは『滅びの日』につながる『バケツのゲート』……」
ほむら「私が最初に通ってきたゲートね」
老人「じゃがこれは、原因不明ながらすでに閉じておる。再び開く気配もない……」
ルッカ「そのゲートで直接乗り込むのは不可能、か」
老人「ふたつめは、時をわたる翼でA.D.1999『ラヴォスの日』1時24分の時点に飛ぶことじゃ」
まどか「A.D.1999? 世界崩壊はA.D.2012じゃないんですか?」
ロボ「それガ、シルバードの時空ジャイロはA.D.1999で固定されているのデス」
さやか「なんでだろ?」
ルッカ「はっきりしたことは分からないけど、前年に起きた黒き風による大災害を防ぐためかしら」
ほむら(A.D.2011の大災害……ワルプルギスの夜。やはりラヴォスと強い関係が……?)
老人「三つ目は、時代をまたがりあらわれた、あの黒く巨大なもの……」
杏子「『黒の夢』か」
老人「力に頼り、力に取り込まれたおろかな心じゃ……。あの黒い悪夢も、ラヴォスにつながっておる」
ルッカ「シルバードか、黒の夢か。選択肢はふたつに絞られているわけだけど、ひとつ問題があるわ」
ほむら「私たちのうち、誰がラヴォスと戦うのか……」
クロノ「そうか……。シルバードは3人乗りだったっけ」
エイラ「みんな強くなった! 3人だけ、もったいない!」
魔王「黒の夢だ。あれは古代から未来、4つの時代にまたがり出現している」
マール「そっか! 3人ずつ、4つの黒の夢に乗り込めば……」
ロボ「A.D.2300は崩壊後ノ世界。黒の夢を攻略することニ意味はあるのデショウカ?」
老人「そうじゃな……。確かに、その時代の黒の夢を壊したところで未来は変わらぬだろう」
老人「しかしあの悪夢がラヴォスにつながっているのは確か。私は、最深部にゲートがあると見る」
マミ「ラヴォス本体につながるタイムゲートというわけですね」
老人「然り。よって、A.D.2300の黒の夢を突破してラヴォスにたどり着くことは可能じゃろう」
さやか「決まりじゃん! さっそく、黒の夢攻略作戦を練ろうよ!」
カエル「待て、さやか。その案には致命的な問題点がある」
杏子「確かにな。黒の夢は空中に浮いている。どうやって行くかっつーことだ」
さやか「それは、シルバードで……」
カエル「他の時代はどうするんだ?」
さやか「あ……そ、そっか……。どうしよ……」
老人「ふむ。ひとつ、見えたものがある。『古き時代、野心溢るる新たなる王が、夢のあと……』」
ほむら「! 黒鳥号ね……」
エイラ「おー! あのデカイ鳥か!」
ルッカ「黒鳥号の修復か……。大掛かりな作業ね」
まどか「わたし、行くよ! 古代で生き残った人たちに手伝ってもらえないか、頼んでみる!」
マール「そういえばまどかちゃん、地の民の人たちに人気だったよね!」
クロノ「彼女ならきっと歓迎してもらえると思うよ」
杏子「ダルトンとその取り巻きが生きている可能性もあるな。アタシもついていくか」
魔王「ヤツらごとき、我らの手にかかれば従わせることはたやすかろう……」
さやか「いいね、いいね! あとふたつ! なんかないっすか、管理人さん!」
老人「残念ながらそれ以外は見えぬ……」
さやか「え、ええ~? ここまで来てそりゃないっすよお~」
ルッカ「……やるしかないわね。造るわよ、飛行船を。それもふたつ」
ほむら「本気? とてもじゃないけど、できるとは思えないわ」
ルッカ「できるできないじゃない、やるのよ。設計図は私が描くわ」
ロボ「ガッシュさんの研究室ナラ、シルバードの設計データもあるかもしれマセン。参考にシマショウ」
ほむら「ちょっと待ってよ。設計図だけできても、なんにもならないわ」
ほむら「実際に誰が造るのよ? とんでもなく大規模な作業よ、私たちだけじゃ無理だわ」
ほむら「それに、未来の技術を再現なんてできるの?」
ルッカ「それは……」
魔王「『ドリストーン』だ」
まどか「え?」
魔王「古代の浮遊大陸は、ドリストーンに含有されたラヴォスエネルギーの力で浮いていた」
魔王「あれなら、物体を飛行させることも可能だろう」
杏子「けど、ドリストーンは失われたんだろ」
魔王「お前のソウルジェムを提供してやったらどうだ?」
杏子「ふざけんな! 冗談でも笑えねえよ!」
エイラ「マミ! イオカ、行く!」
マミ「え? なんのために……あ、そっか! 原始の時代なら、ドリストーンはまだ残っているはずよ!」
クロノ「見つかるのかい?」
エイラ「みんなで探す! イオカ、ラルバ、みんな!」
カエル「なるほど、人海戦術か」
マール「じゃ、私も黙っているわけにはいかないね」
まどか「何か考えがあるんですか?」
マール「あんまりこういうこと好きじゃないけど、私は王族なんだよ」
マール「パパに頼んでみる。飛行船製作に、力を貸してくれないかってね」
さやか「出た、国家権力!」
カエル「なるほど、その手があったか。ならば俺も、中世のガルディア王に頼んでみよう」
まどか「なんか、ホントにできる気がしてきましたね!」
ほむら「本気なのね、あなたたち……」
ルッカ「佐伯家家訓第三条! 無茶も通せば現実風味!」
ロボ「ほむら、やりマショウ。ワタシたちが力を合わせレバ、きっとできマス!」
ほむら「……分かったわ。こうなったら、とことんやるわよ」
B.C.65000000 イオカ村 酋長のテント
キーノ「久しいな! エイラ、マミ!」
エイラ「キーノ、元気だったか?」
マミ「酋長のお仕事、ちゃんとやってる?」
キーノ「心配、必要ない。キーノ、男、上げた」
マミ「ふふ。自分で言っちゃうところが、まだ子供よね」
キーノ「今日、なんの用だ?」
エイラ「おう、キーノ! 集めろ、人! いっぱい!」
マミ「探して欲しいものがあるのよ」
キーノ「探し物はマカセロー」バリバリ
マミ「ヤメテ!!」
B.C.12000 残された村
地の民「はい、次の人。お椀を出して」
フード姿の物乞いA「へへ、いつもすみませんね……」
地の民「気にすることはないわよ。この炊き出しは、みんなのためにやってるんだから」
フード姿の物乞いB「人のありがたみが身にしみるなあ……。ね、ダルt」
フード姿の物乞いA「*おおっと* 手がすべったァー!」バシャーン!
フード姿の物乞いC「あっちぃー!? なんで俺!?」
地の民「ちょっとちょっと。気をつけてよ。捨ててもいいほど食料に余裕があるわけじゃないんだから」
フード姿の物乞いD「すみません、すみません!」
地の民「仕方のない人たちね……。さ、順番が終わったら次の人のために道をあけてあげて」
フード姿の物乞いA「アホか、貴様! なんのためにこんな小汚いフードをかぶっていると思ってんだ!」
親衛隊A「いや、ホントすんませんっす。ついポロッと……」
親衛隊B「ってか、いつまでそのフードかぶってるんすか? もう周りには誰もいないっすよ」
フード姿の物乞いA「おっと、いかんいかん」バサッ
ダルトン「ふー。やはり高貴なる俺様の姿は隠すものではないな」
親衛隊C「でもダルトン様が生きていることが知れたら、きっとボコボコにされちゃいますよお……」
ダルトン「ちぃっ……。なぜ俺様が愚民どもにまぎれてコソコソしなければならんのだ!」
親衛隊A「我慢してください。これも生きるためっす」
ダルトン「それもこれも、みんなあのテロリストどものせいだ。絶対に復讐してやるぞ!」
親衛隊C「やめましょうよ~。憎しみは何も生み出しませんよお」
ダルトン「見ておれ。この黒鳥号が直れば、ふたたびこの俺様が王となる日が来る!」
親衛隊A「直すも何も、俺らしかいないっすよ」
親衛隊C「生き延びた他の人たち、みんなダルトン様に愛想つかせて逃げちゃいましたもんね……」
ダルトン「クソ、腰抜けどもめ! ええい、イライラする! この世に希望はないのか!」
親衛隊A「ダルトン様がそれ言っちゃうかあ」
親衛隊C「荒れてますね」
親衛隊B「シチューうめえ」
「……何やってんだ、アンタら」
ダルトン「お、お前は!?」
巫女「やっぱり生きてやがったのか、ダルトン」
親衛隊C「巫女様!? それに……予言者様も!」
親衛隊A「死んでなかったのか……」
親衛隊B「俺、巫女様の声はじめて聞いたよ」
まどか「ふたりとも、長老さんを連れてきたよ」
ダルトン「げっ!? か、鹿目様まで!?」
まどか「あれ、ダルトンさん。お久しぶりです」
予言者「黒鳥号……。暁美ほむらの話では、シルバードによる損傷が激しいと聞いていたが」
巫女「ザッと見た感じ、メチャクチャになってるってほどでもねえな。意外と早く修復できるか?」
まどか「お願いできますか? 長老さん」
アルゲティ長老「鹿目様の頼みを断る者など、この村にはおりませんよ」
まどか「ありがとう、長老さん……」
ダルトン「なんと!? この黒鳥号を直してくださるのか!?」
まどか「うん、そのつもり」
親衛隊C「良かったですね、ダルトン様!」
ダルトン「我が世の春が来たぁぁ!! やっぱ鹿目様は女神っすわ!」
親衛隊A「変わり身はえーな!?」
まどか「その代わりにこれ、わたしたちに使わせてね」
ダルトン「え?」
まどか「それから、ダルトンさんはわたしの言うことを聞くこと。馬車馬のように働いてね」
ダルトン「あ、あの……鹿目様……」
まどか「二度と悪いことしないように監視します。もし断ったり、逃げ出したりしたら……」
ダルトン「……」
まどか「アルゲティであなたがわたしにしたこと……忘れてないから、ね?」
ダルトン「あ、はい……」
親衛隊A「鹿目様、ふいんき(←なぜか変換できない)変わったな……」
親衛隊C「そうですね~。あんな暗黒微笑する人でしたっけ?」
親衛隊A「なんかショックだわ、俺」
親衛隊B「俺はむしろ今のほうが好みだな。あとで『豚』ってののしってもらおうっと」
親衛隊C「ふええ……。親衛隊BくんがMに目覚めちゃってるよぅ……」
まどか「ところで、ふたりはなんでそんな格好してるの?」
巫女「こっちのほうがアイツらには分かりやすいからな」
A.D.600 ガルディア城 謁見の間
ガルディア21世「空を飛ぶ船だと?」
リーネ「面妖な」
カエル「信じられない話かもしれませんが、事実、私はその夢のような代物を見、そして体験いたしました」
カエル「僭越ながら申し上げます。陛下、そのお力を我らにお貸しください」
ガルディア21世「ふむ……」
リーネ「カエルとクロノたちが、大きなことを成し遂げようとしているのです」
リーネ「陛下! 私たちもその一端を担おうではありませんか」
ガルディア21世「リーネの申すとおりだ。それに君らには国難を救ってもらった恩もある」
カエル「では……!」
ガルディア21世「騎士団長! これは大事業になるぞ。準備をいたせ」
騎士団長「かしこまりました!」
さやか「やったね、師匠!」
カエル「陛下……感謝いたします」
ガルディア21世「専門家が必要だな。誰か、心当たりはおらぬか」
さやか「それなら心配要りませんよ!」
リーネ「誰か良い人でもいらして?」
さやか「クロノさんがもう手配済みっす!」
A.D.600 チョラス村 大工の家
クロノ「というわけなんです」
初代ゲン「毎度毎度、ぶっ飛んだ注文をつけてくれるねえ」
クロノ「すみません」
初代ゲン「謝るこたあねえ。こんな経験、一生にそう何度もできるかよ」
初代ゲン「王様に話はつけてあるんだな?」
クロノ「まだ詳細は聞いていませんが、カエルが言うには必ず説得してみせると」
初代ゲン「よし。なら何も問題はねえ。野郎ども!」
大工たち「ヘイ、親方!」
初代ゲン「いくぞ。仕事だ」
大工たち「勇者様の墓の次は、何を造るんですかい?」
初代ゲン「空飛ぶ船さ!」
A.D.1000 ガルディア城 謁見の間
マール「お願い、パパ!」
ガルディア33世「まったく、お前というやつは……たまに帰ってきたと思ったら、これだ」
ヤクラ13世「マールディア様……。国民の血税をなんだと思っているのですかな?」
ヤクラ13世「そのような道楽に使うこと、許されるはずがないでしょう」
マール「道楽じゃないよ! これは、この世界全体の危機で……」
ヤクラ13世「……とまあ、以前の私なら渋い顔をしたでしょうな」
マール「え?」
ヤクラ13世「この星の生命を救う船。さしずめ、ノアの方舟といったところですかな?」
ガルディア33世「これ、大臣……」
ヤクラ13世「国王。面白いではないですか。あなたも、まんざらでもありますまい?」
ガルディア33世「まあ、やぶさかではないことは確かだがな……」
マール「パパ……。じゃあ!」
ガルディア33世「お前の言うように、これは私たち自身の問題でもある。協力はしよう」
マール「ありがとう、パパ! だーいすき!」
ガルディア33世「やれやれ……」
ヤクラ13世「マールディア様。国王に進言した私の功績もお忘れにならぬように」
マール「もちろん! あとで踏んであげるね!」
ヤクラ13世「ありがとうございます!!」
ガルディア33世「娘の育て方を間違った気がする……」
A.D.1000 ボッシュの小屋
ボッシュ「いやはや。お主ら、とんでもないことを考え付くもんじゃの」
ほむら「それでボッシュさん、話って?」
ボッシュ「うむ。ガルディア城に保管されておる『虹色の貝がら』のことじゃ」
ほむら「マールたちが取ってきたという秘宝のことね」
ボッシュ「調べさせてもらったが、あれは特別な物質じゃ」
ボッシュ「非常に頑丈で、おまけに多少の衝撃や魔法なら跳ね返す力がある」
ボッシュ「その性能をかんがみれば、重量もさほど問題でない。飛行船の骨組み部分に使ってはどうかね?」
ボッシュ「加工の仕方によってはさらに軽くできるじゃろう。良ければ、ワシが作業を引き受けるが」
ほむら「ありがたい申し出だわ。早速取り掛かってもらえるかしら」
ボッシュ「良かろう。設計図が出来上がったら、ワシも建造に携わらせてもらうからな」
A.D.2300 監視者のドーム
ルッカ「で、できた……できたわ……!」
ロボ「ルッカ、大丈夫デスカ!」
ルッカ「ロボ……あとは頼んだわよ……。この設計データをプリントアウトして、みんなに渡して……」
ロボ「お任せクダサイ!」
ルッカ「ちょっと寝るわ……。さすがに三徹は死ねる……」
ロボ「ゆっくり休んでクダサイ。起きるころにハ、きっと船が出来上がってマスヨ」
ルッカ「いや、何ヶ月寝かす気なのよ。死ねるとは言ったけど、まだ死ぬつもりはないわよ」
B.C.65000000 ティラン城跡
マミ「ありがとう、長老さん。プテランのおかげで楽に移動できました」
ラルバ長老「ワシら、こういうときこそ力、なれる。存分に頼れ」
ラルバ族「エイラ! 赤き石、見つけた!」
エイラ「いいぞ! 探せ、もっと!」
キーノ「みんな、がんばる! 赤き石見つける→マミパイ、揉める!」
イオカ族「マジデ!?」
マミ「ちょっと! なに言ってるのよ!」
キーノ「違うか? エイラ、言ってた」
マミ「エイラ!? なんてことしてくれたの!」
エイラ「揉む、幸せ。揉まれる、でっかくなる。幸せ。Win-Win!」
マミ「そのりくつはおかしい!」
A.D.1000 フィオナ神殿
神官「お帰りください!」
兵士長「いや、そう言われましてもですね……」
神父「これ、何度も言っておろう。神のおわすこの場で、そのように声を荒げてはならぬ」
神官「しかし、神父様!」
神父「落ち着きなさい。何があったのかね?」
神官「ガルディア城からの使いです。飛行船建造の資材として、森を切り開かせろと」
神父「ほう、それはそれは……」
神官「とても容認できるものではありません! ここは、聖女さまの森なのですよ!」
ほむら「そう邪険にしないで、話ぐらい聞いてもらえないかしら」
神官「! せ、聖女さま!?」
神父「おや、お久しぶりです。なにやら、やんごとなき事情がありそうですな」
ほむら「察しがよくて助かるわ」
…………
兵士A「よーし、倒れるぞ! みな、退避しろ!」
兵士B「押せ! そちら側から押すんだ!」
兵士C「積み込みが終わったものから順次、リーネ広場に運べよ!」
兵士D「おーい、誰かこっちを手伝ってくれ!」
ほむら「……」
ロボ「浮かない顔デスネ、ほむら」
ほむら「フィオナが怒ってるんじゃないかと思ってね」
ロボ「フィオナさんガ……」
ほむら「中世ではガルディアの森。そして現代ではフィオナの森……」
ほむら「仕方のないこととはいえ、結局こうして大地の恵みを食いつぶす結果になってしまった……」
ロボ「……」
ほむら「まあ……私が死んだら、あの世で彼女に謝っておくわ」
B.C.12000 残された村
杏子「2班ずつに分かれて交代で作業しろよ! おい、そこは慎重にやれ! 事故に気をつけろ!」
まどか「杏子ちゃん、張り切ってるね」
杏子「ゲンさんのトコで働いた経験がこんな形で生きるなんてな。ほんと、どうなるか分からないもんだ」
ダルトン「くそ……。なぜ王であるこの俺が、土いじりなぞ……」
魔王「おうおうおう! ぶつぶつ言う暇があったら手と足を動かしな!」
ダルトン「チッ……」
まどか「ジャキくんも生き生きしてるね」
杏子「イビれる後輩ができたからだろ」
まどか「それにしても、別に必要ないのに、またヒゲとカツラつけてるね。気に入ったのかなあ……?」
整備班長「鹿目様!」
まどか「え?」
親衛隊A「あ! お、お前ら! 逃げ出したくせに、どのツラ下げて戻ってきやがった!」
警備兵「ダルトン様じゃあ、なあ?」
管制官「逃げて当たり前でしょう」
親衛隊B「やべえ、反論できねえ」
艦長「仕えるべき主君を見定めたのだ。助力に駆けつけるのは当然のこと!」
ブリッジクルー「それに我らがいれば、黒鳥号の運用はたやすいことです」
整備班「我々も修復のお手伝いをいたします! 僕が一番、黒鳥号をうまく使えるんだ!」
親衛隊C「わーい! これで作業がはかどるね!」
まどか「みんな……。ありがとう!」
A.D.1000 ボッシュの小屋
ボッシュ「ふーむ。なるほどな……。いいぞ、ここを補強すれば……」
魔族兄「ボッシュのじいさん、何やってんだよ? あんた、飛行船造りに参加しなくていいのか?」
ボッシュ「もちろん、それはあとで行くわい。それよりも今はやるべきことがあってな」
魔族弟「これ、兵器の設計図? ずいぶんおっきいね」
ボッシュ「ちょうどええわ。お主らメディーナ村の連中にも、ワシらを手伝ってもらおうか」
魔族弟「人間のやることに彼らが力を貸すとは思えないけどなあ」
ボッシュ「そんなこと言っとる場合か。それに、そこをなんとかするのがお主らの腕の見せどころじゃろ」
魔族兄「無茶言うぜ……」
A.D.600 トルース村
料理長「おう、お仕事ご苦労さん! 精がつくよう、とびっきりのメシをこさえてきたぜ!」
初代ゲン「宮廷お抱えの料理人さんにメシ作ってもらえるたあ、こりゃ期待できるね!」
料理長「……順調なのかい、馬鹿団長さんよ」
騎士団長「お前に心配されるまでもない」
料理長「ヘッ、そうかよ。……じゃあな、俺は城に戻る」
騎士団長「……待て」
料理長「あんだよ? 忙しいんだ、やたらと呼び止めんな」
騎士団長「……食事、うまかったぞ」
料理長「おお、かゆい。アンタからそんな言葉を聞くと、虫唾が走るぜ」
騎士団長「チッ……言うんじゃなかった」
料理長「ケッ。せいぜいがんばりな、兄貴」
騎士団長「! ……ああ……」
A.D.1000 リーネ広場
♪ゴンザレスのお歌
ゴンザレス「あ~ ゴンザ~レス♪ オ~レは強い♪ だ~からつくるよ ひこ~せん~!!♪」
14代目ゲン「すげーな、あのロボット……。人間10人の力が必要な資材をひとりで運んでやがる」
タバン「なんせ、うちの娘が作ったんだからな! そんじょそこらのやつとは出来が違うわけよ!」
ルッカ「やってるわね」
ほむら「ルッカ。休息中だって聞いてたけど」
ルッカ「メガシャキ飲んだら復活したわ」
ベッケラー「なかなか面白いことやってるね」
ルッカ「あら、ベッケラーさんじゃないの」
ベッケラー「僕も手伝っていいかな? 船首像を作ってみようかと思うんだ」
ルッカ「いいじゃない、やってもらいましょうよ」
ほむら「そうね……。お願いできるかしら、ベッケラーさん」
ベッケラー「了解。空の旅がうまくいくよう、気合を入れて作らさせてもらうよ」
年代不明 時の最果て
老人「……」
スペッキオ「うれしそうだな、ハッシュ」
老人「スペッキオか……。そうだな。感無量とはこのことを言うのであろう」
スペッキオ「オレ、人間、長いこと見てきた。だが、初めてだ」
スペッキオ「こんなにもたくさんのヤツらが、ひとつのことを為すために力を合わせるのは」
スペッキオ「アケミホムラ。アイツは不思議なヤツだ。アイツが来てから、時の流れが変わった」
スペッキオ「いや、それだけじゃねえ。この世界の因果律そのものが変わっちまった」
スペッキオ「アイツを送り込んだのは誰なんだ? ハッシュ、おめーなら分かるんじゃねーのか?」
老人「さあな……。私は何も知らんよ」
老人「それよりどうだ、スペッキオ。ロボさんのように、人間という種族にかけてみる気になったかね?」
スペッキオ「どうだかね。なんにせよ、ラヴォスを倒さないことには何も始まらない」
スペッキオ「ラヴォスだけじゃねえ。肝心なのは、そのあとの……」
老人「……」
スペッキオ「ま、期待せずに見てるよ。オレは傍観するのが好きなんでね」
老人「そうじゃな……。私たちにできるのは、信じることのみ……」
老人(ほむらさん、もう少しじゃ……。切り拓かれた未来が、すぐそこに見えてきておるぞ……)
…………
………
……
ほむら「すべての準備は整ったわ」
ロボ「『シルバード』に異常はありマセン。快調そのものデス」
まどか「『黒鳥号』、いつでもいけるよ!」
カエル「中世において建造された船、『クイーン・リーネ』は出航準備に入っている」
マール「『アルカ・ディ・ノエ』だって!」
さやか「あるか……? それって、命名者マミさん?」
マミ「どうして分かったの?」
杏子「わからいでか」
ほむら「みんな、本当に……よくやってくれたわ」
ほむら「確認するわよ。黒鳥号には、まどかと杏子、それに魔王。B.C.12000へ」
ほむら「A.D.600のクイーン・リーネにはさやか、カエルさんにクロノ」
ほむら「アルカ・ディ・ノエにはマミ、エイラ、マール。A.D.1000の黒の夢へ」
ほむら「そして私は、ルッカとロボとともに、シルバードに乗り込みA.D.2300に向かうわ」
エイラ「おなじみ面子!」
魔王「いまさらいじる必要もあるまい。理にかなっている」
ルッカ「いい? 目指すべきはラヴォスの撃破のみ。たどり着いたパーティーから、ヤツと戦う」
ルッカ「たとえ半ばで倒れる味方がいたとしても、かまわず突き進むのよ」
ルッカ「願わくば……全員生き残って、またみんなで会えることを願うわ」
クロノ「大丈夫! 誰も犠牲にはならないさ! さあ行こうぜ、みんな!」
…………
老人「……行くか」
ほむら「ええ。……もしかしたら、これが最後の別れになるかもしれませんね」
老人「そうじゃな。ラヴォスを倒せば、もうここに戻ってくる必要もなかろう」
ほむら「私が時を越え、最初に出会ったのがあなただった」
ほむら「……今までありがとう、管理人さん。私たちを導いてくれて……」
老人「この時の最果て。迷い子たちの、たったひとつだけ最後に残った道しるべ……」
老人「いつ、どんなときでも、この場所は迷い子たちを受け入れる」
老人「また道に迷うことがあれば……ここへ来なさい」
老人「だが私は、君たちが来ることは二度とないだろうと思っておるよ」
ほむら「……」
老人「さようなら、ほむらさん。……いってらっしゃい」
ほむら「いってきます」
♪決意
ロボ「シルバード、各部最終チェック! オールグリーン!」
ルッカ「時空ジャイロ設定! A.D.2300! ……いくわよ、ほむら!」
ほむら「了解。……シルバード、発進!!」
A.D.2300 シルバード
ルッカ「見えたわ! 黒の夢よ!」
ほむら「相変わらず、ものすごい存在感と悪寒を感じさせてくれるわね」
ルッカ「よし、このまま突入するわよ。どこかに着陸できる場所があればいいけど」
ほむら「なければ突っ込むまでだわ」
ルッカ「過激ねえ」
ロボ「待ってクダサイ! レーダーに熱源反応多数!」
ほむら「なんですって?」
「グアアアアオオオオ!!!」
ルッカ「あ、あれは……飛行モンスター!?」
ほむら「私たちを近寄らせないつもりね……!」
ロボ「レーザーシステム、スタンバイ! 迎撃しマス!」
B.C.12000 黒鳥号
ダルトン「きやがったか……」
魔王「捌ききれるのか?」
ダルトン「誰に物を言っている? 俺様と黒鳥号に、不可能はない!」
艦長「シルバードにはあっさり撃墜されましたけどね」
ダルトン「あの時とはちがーうッ! いわばこれは、『黒鳥号R』! ザクとは違うのだよ、ザクとは!」
まどか「なんでもいいから、突破して!」
ダルトン「オオセノトオリニー! カナメサマー!!」
杏子「すっかり骨抜きにされちまいやがって、まあ……」
ブリッジクルー「総員に通達! 第一種戦闘配置!」
ブリッジクルー「各砲座、オールウェポンズ・フリー。レッツ・ダンス!!」
A.D.1000 ボッシュの小屋付近
城兵「対空射撃開始!」
ボッシュ「うむ、ワシの作った超長距離バリスタの稼働状況は順調なようじゃの」
タバン「すげえな、ボッシュさん! 今度その技術を俺にも伝授してくれよ!」
ボッシュ「まあ、その話はあとでするとして。今はあの邪魔者どもを殲滅するほうが先じゃ」
魔族兄「つっても、あの数じゃなあ。ホントに大丈夫か?」
ボッシュ「ごちゃごちゃ言っとらんでお主らも手伝え! 魔法で援護しろ!」
ボッシュ「それから、飛べる魔族は近接で支援せい!」
バサバサッ!!
魔族弟「うわっ!? 何かが猛スピードで上空を通り過ぎていったよ!?」
ボッシュ「なに? 言われる前にやるとは、ずいぶん殊勝なヤツがいたもんじゃ……」
魔族兄「いや、あれは俺たちの仲間じゃねえ! 誰だ、アイツは!?」
A.D.1000 アルカ・ディ・ノエ
マミ「地上から支援してくれてるわ!」
マール「お城のみんな……。それに、メディーナ村の魔族さんも!」
エイラ「! 何か来る! 鳥!」
マール「ええっ、新手!? 今でも精一杯なのに……」
マミ「待ってください……あれは!」
キーノ「エイラーッ!!」
エイラ「キーノ!」
マミ「プテラン……! どうしてキーノくんがここに!?」
キーノ「ゲート、通った! キーノ、プテラン、2匹! エイラ、来い!」
エイラ「よし!」
マミ「来いって言ったって……ここは飛行船の中よ?」
エイラ「窓、ぶち破る! 行ってくる!」
マール「ちょ、それまずいんじゃ……」
エイラ「とー!」
ガシャーン!!
ビュゴオオオオオオオ!!!
マール「きゃああああっ! 風がああ!!」
マミ「気圧差が……! みなさん、私のリボンにつかまってください!」
アルカ・ディ・ノエ乗組員「ふさげ! なんでもいいから、壊れた箇所をふさげ!」
マミ「もう……。無茶するんだから、エイラ!」
マール「で、でも見てよ、あれ。エイラとキーノくんのおかげで、モンスターがどんどん撃墜されてる!」
マミ「黒鳥号での話も聞いたけど……ホントに空中戦でも無双するのね、エイラは」
マール「地上からの援護とプテラン。それに、魔族さんたちも来てくれた! これならきっと、いけるね!」
マミ「みんな、ありがとう……。がんばって……!」
A.D.600 クイーン・リーネ
さやか「やばいよ、師匠! この船、対空砲とかないの!?」
カエル「俺に聞くな!」
クロノ「なんとかなりませんか、みなさん!」
クイーン・リーネ乗組員「そ、そう言われましても……本船には武装と呼べるものは……」
プチアーリマン「ギャギャギャ!」
カエル「く、くそ! 取り付かれた!」
さやか「まだ黒の夢にもたどり着いてないのにー! あたしらが一番先に脱落なの!?」
クロノ「ここまで来て……なんてことだ……!」
「『鎌イタチ』!!」
プチアーリマン「グギャアーッ!」
カエル「な、なんだ!? 魔物どもが撃墜されていく……」
クロノ「いったい誰が!?」
さやか「! 見て、あそこ!」
ビネガー「ワシ、参上!」
ソイソー「うまくいったか……」
マヨネー「船体をよけて魔物だけに鎌イタチ当てるなんて、アナタ器用ねェン」
カエル「ビネガー!? それに……ソイソーとマヨネーも!?」
さやか「飛行型魔族に乗ってる……」
クロノ「助けに来てくれたのか!」
ビネガー「なんだ~? 乗っておるのはグレンではないか!」
マヨネー「あららン。魔王様じゃなかったのヨネ」
ビネガー「ちいッ! これでは、かっこいいところを見せて魔王様に再び取り入る策が台無しじゃ!」
ソイソー「フ……よく言う。誰が相手でも助ける気であったろうに……」
ビネガー「あ~ん? 聞こえんなぁ~!」
ビネガー「よーし、貴様ら! 気張れよ! ビネガー軍団、一世一代の大いくさじゃあッ!!」
魔族たち「ウオオオオオオーッ!!」
ソイソー「我らも行くか、マヨネー」
マヨネー「はいはい。さっさと終わらせて、ゆっくりお風呂につかるのヨネ」
ビネガー「全軍、突撃ィーッ!!!」
カエル「あいつら……!」
A.D.2300 シルバード
ロボ「駄目デス、数が多すぎマス! シルバードだけでハ防ぎきれマセン!」
ほむら「泣きごと言ってても始まらないわ! とにかく1匹でも多く墜とすのよ!」
ルッカ「やってるわよ!」
ロボ「10時の方向より敵影20!」
ルッカ「多すぎるってば! 今撃ったばかりよ、エネルギーチャージが間に合わない!」
ほむら「まずい……!」
ズガァン!!
デイブ「グギャアア!」
ルッカ「なに、今の!?」
ロボ「地上からの砲撃のようデシタガ……」
ほむら「! 下に誰かいるわ!」
A.D.2300 死の山付近
バージョン2.0A「ヒャッハー! 汚物ハ消毒ダ~ッ!!」
ジョニー「張リ切ルノハ結構ダガ、アノ飛行機ニ当テルナヨ」
バージョン2.0E「ソンナヘマハシマセンゼ!」
ドン「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ……」
ジョニー「ウマクヤレソウカイ? ドンサンヨ」
ドン「おお、簡単なもんじゃ。照準を合わせて発射ボタンを押すだけ。あとは機械がやってくれる」
ドーム民「俺たちだって力になれるってこと、見せてやる!」
ジョニー「ソノ意気ダゼ」
クロウリー様「SATSUGAI SATSUGAIせよ! SATSUGAI SATSUGAIせよ!!」
みはり「クロウリーさんの歌のおかげで、闘志がわいてくるぜ!」
おやぶん「ミンメイアタック!!」
こぶん「Go to DMC!! Go to DMC!!!」
ジョニー「全対空砲、撃チマクレ! 熱デ銃身ガ焼ケ焦ゲチマウグライニナ!」
ジョニー「飛行タイプノヤツラハ順次発進! 地上ノヤツラト連携ヲ取レヨ!」
ジョニー「イイカ、テメーラ! アケミノタメニ、俺タチガ道ヲ開イテヤルンダ!」
未来軍「アニキの覚悟が! 『言葉』でなく『心』で理解できた!」
ジョニー「ブチカマセーッ!!!」
ルッカ「ジョニー! それに、アリスドームの人たちまで……」
ロボ「クロウリーさんが来てくれマシタ! もはや負ける気がシマセン!」
ほむら「……みんな……」
ダルトン「左舷! 弾幕薄いよ、何やってんの!?」
ビネガー「貧弱貧弱ゥ!! ワシらを止められるものなどおらぬわあーッ!!」
ボッシュ「もうひといきじゃ、パワーをバリスタに」
タバン「いいですとも!」
キーノ「行け! ラヴォス、倒す!!」
ジョニー「オメーラナラヤレルゼ、アケミ!!」
ほむら「ラヴォス……。直接対峙するのは、私たちだけれど……」
ほむら「この星のあらゆる時代の人々……いいえ、人間だけじゃない……」
ほむら「この星のすべての生命が、お前の相手よ!!」
第16話「最後に残った道しるべ」 終了
セーブしてつづける(第17話「時の彼方で逢った、ような……」へすすむ)
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第17話「時の彼方で逢った、ような……」
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よろしくない
黒の夢 最深部
まどか「なに……これ……」
ほむら?「……」
まどか「ほむらちゃん……! 捕まっちゃったの……!?」
杏子「ほむらだけじゃねえぞ……。こっち来てみろよ……」
クロノ?「……」
マール?「……」
杏子「さやかも、マミも、グレンの野郎も……アイツら全員、いるじゃねえか!」
まどか「そんな……! ここまで来たのに、みんなやられちゃったの!?」
魔王「惑わされるな、それはニセモノだ。もしくは幻覚……。あるいは、ただの映像か……」
まどか「え?」
魔王「杏子の言うとおり、『全員』いる。それがおかしい……。見ろ、あれを」
まどか?「……」
杏子?「……」
魔王?「……」
まどか「わ、わたしたちまで!?」
杏子「オイオイオイ、なんだこりゃ! ご本人サマはここにいるっつーんだよ!」
「ククク……。そこに眠っているのは、貴様たちの未来だ……」
魔王「!」
ジール「虫ケラどもが……。またも、わらわに逆らうつもりのようだな……」
まどか「ジールさん!」
杏子「テメェ、ジール! どういうことだ、これがアタシらの未来だって?」
ジール「これから、かなうかも知れぬ夢……。得られるかも知れぬ、喜び……悲しみ……」
ジール「可愛いものだな。矮小なる存在が、その小さな足でノロノロと進む様は……」
ジール「思わず踏み潰してやりたくなるよ。ククク……」
まどか「……」
ジール「この黒の夢は、あらゆる時間……あらゆる次元をこえて流れている……」
ジール「ラヴォス様が目覚めるその時を待ちながら……」
ジール「貴様たちの未来は、いつか必ずここにたどり着く。貴様たちに未来はない……」
ジール「ラヴォス様の眠りの中へ。永遠の黒き夢……。それが、貴様たちの明日そのものなのだ!」
杏子「お生憎様。テメェの言うその未来をぶっ壊すために、アタシらはここに来たんだよ!」
ジール「わらわは永遠の命を手に入れた! ラヴォス神とともに、永遠に生き続けるのだ!」
ジール「この黒の夢は、ラヴォス神へとつなぐ道。わらわに無限の力を与えてくれる神殿……」
ジール「貴様たちの求める未来なぞ……この奥におわすラヴォス神があられる限り、望むべくもないわ!」
魔王「この先に、ラヴォスが……!」
まどか「ジールさん! そこを、どいてください!」
ジール「邪魔はさせぬぞ、人の子らよ! 貴様たちは、ラヴォス神へのいけにえとなるがよい!」
ジール「来い! メガミュータント! そして……ギガミュータント、テラミュータントよ!!」
メガミュータント「ゴアアァァ!!」
ギガミュータント「ウバシャアーッ!!」
テラミュータント「オオオアオォ……!!」
まどか「ま、魔物が3体も……! みんな強そう……」
杏子「……」
ジール「クハハハハ……! 脆弱なる貴様らが、わらわのしもべの中でも最強の3体を相手にどう戦うか……」
ジール「じっくり見せてもらうとしよう。せいぜい、足掻いてみるがいい!」
魔王「うっとうしい雑魚どもだ……。杏子」
杏子「わーってるよ。こんなヤツらに、時間を食ってる暇はねえ」
ジール「なに……?」
魔王「『トゥソード』!!」
杏子「『断罪の磔柱』!!」
まどか「こ、これ……! 地面から、槍……! それに、空中からロッド……じゃなくて、剣……!?」
ジール「それも無数にだと!? ありえん、このような数……!」
杏子「全方位から槍と剣の複合攻撃だ。よけられるかい?」
魔王「そのまま死ね……」
「ふたりわざ『ソードストーム』!!」
メガミュータント「ガアアァァーッ!!」
ギガミュータント「ギャバアーッ!!」
テラミュータント「グオオォアァ……!!」
まどか「やった!」
ジール「そ、そんな馬鹿な……!? 我がミュータントが、ただの一撃で……!!」
杏子「終わりかい? 最強っつっても、たいしたことなかったね」
ジール「貴様ら、いつの間にこれほどの実力を……!」
杏子「勘違いすんな、別にアタシらが強くなったわけじゃねえ。いや、多少は成長したかもしれねーけどよ」
魔王「貴様が弱すぎるのだ、ジール。ラヴォスの威を借る女狐め」
ジール「……!」
杏子「ラヴォスは確かにつええ。アタシらでも敵うかどうか……。けど、テメェは別だ」
魔王「神の力を自分の力と混同したか? 哀れなものだ」
ジール「お、おのれ……!」
まどか「ジールさん、もうやめて! おとなしく投降してください……」
ジール「……フ……ククク……」
魔王「何がおかしい。気でも狂ったか?」
ジール「笑いもするよ。狂っているのは貴様たちのほうではないか?」
杏子「なにを……!」
ジール「狂気のみが支配するこの場で、投降などと生ぬるいことを抜かす貴様らこそ、気が狂っておるわ!」
まどか「……」
ジール「良いことを思いついたぞ。貴様らをコイツに取り込んでくれるわ……」
杏子「あれは……魔神器!?」
魔王「馬鹿な!? いつの間に魔神器がこの場に!!」
ジール「ありがたく思え、この船の一部になれることを。このわらわの一部になれることを……」
杏子「クソッ、冗談じゃねえ!」
ジール「そして……ラヴォス様の一部になれることをな!!」
杏子「……?」
魔王「なんだ……? 魔神器は静止したままだ……」
ジール「!? なぜだ、なぜ動かん、魔神器よ!」
まどか「……」
ジール「鹿目まどか、貴様……! 何をした!?」
まどか「ルッカさんが教えてくれたんです。ドリストーン同士は、力を吸収するって」
まどか「ほむらちゃんが証明してくれたんです。ドリストーンは、わたしたちに力を与えてくれるって」
まどか「サラちゃんが力を貸してくれてるんです。弱いわたしを、助けるために……」
まどか「海底神殿の時は、どうにもできなかった。でも今なら、止めてあげられる……」
まどか「もういいんだよ、魔神器さん……。絶望を生み出すことが、あなたの使命じゃない……」
まどか「だから、今は……ゆっくり、休んで……」
ジール「貴様、それは……! サラのペンダント!!」
杏子「すげーな、まどか! 魔神器を止めちまいやがるなんてよ!」
まどか「えへへ。とっさの思いつきだけど、うまくいって良かったよ」
魔王「鹿目まどかがこのような機転を利かすとは。意外だったな……」
杏子「もうちょっと素直にほめてやれねえのかよ、アンタは」
ジール「……おのれ……おのれ、おのれおのれおのれぇ!!!」
ジール「貴様らは、貴様らはああッ! どこまで、わらわの邪魔をすれば気が済むのだ!!」
杏子「万策尽きたね、テメェの負けだ」
ジール「ふざけるな……ふざけるな!! あああああああッ!!」
魔王「醜いな、ジール。子供のように駄々をこねたところで、状況は変わらんぞ」
ジール「殺す……。殺してやる……! ラヴォス様の手を煩わせるまでもない!」
ジール「貴様らは必ず、このわらわ自らの手で消し去ってやるッ!!」
ジール「ここでは力は出せん……! ラヴォス様、今そちらへ参ります……!」
まどか「!? ジールさん……!」
杏子「あの女、逃げやがった! この期に及んで、往生際わりいな!」
魔王「逃がさん……追うぞ!」
黒の夢 頂上
まどか「ここは……黒の夢の頂上……?」
杏子「見ろよ、窓の外を。星……地球だ。上のほうには、宇宙空間も見える……」
魔王「黒の夢は、こんなところまで伸びていたというのか……」
ジール「すばらしい眺めだろう……?」
魔王「ジール……!」
ジール「眼下に広がるこの星を、ラヴォス神は支配なさる。いや、星だけではない……」
ジール「この宇宙そのものを、ラヴォス神はその手中に収めるのだ!!」
ジール「そして、わらわも……ともに、永遠にこの世を支配する女王となるぞ!!」
杏子「ふざけたことを……。そんなこと、アタシらが許すと思ってんのかよ!」
ジール「虫ケラの分際でこのわらわを追い詰めたこと、ほめてやろう……」
ジール「死してその思い上がりを悔やむが良い……」
まどか「!? ジールさんの姿が変わっていく……!」
ジール「ラヴォス神よ……その御力を、わらわに!!」
魔王「なんだ、これは! ヤツが、巨大な顔と両手だけに……!」
杏子「化け物め……!」
まどか「なんて……まがまがしい姿……」
ジール「ハハハ……フハハハ……アーハッハッハッハッ!!!」
ジール「すばらしい、すばらしいぞ! このあふれ出る力……ラヴォス様の御力!!」
ジール「わらわは今、生命の頂点に立った! わらわこそが王だ!!」
杏子「テメェ、ラヴォスの手を煩わせる必要だのなんだの言っといて、結局それかよ!」
まどか「こんな……ヒトの姿を捨ててまで、ジールさん……あなたは……」
♪魔王決戦
魔王「おろかな……。ラヴォスに魅入られた、悲しき女ジールよ……」
魔王「せめてもの情けだ。この手で、すべてを終わらせてくれる!」
ジール「呪われし予言者、ジャキよ……」
魔王「!」
ジール「そなたが海底神殿で犯した罪、わらわは忘れておらんぞ……」
ジール「今こそ、その死を以て償うがいい!!」
ジール「『ダークギア』!!」
魔王「ぐ……!?」
杏子「こいつ……! 魔力が桁違いに上がってやがる!」
まどか「きゃああっ!!」
杏子「まどか! 大丈夫か!」
まどか「あう……な、なんとか……」
魔王「下がれ、鹿目まどか。お前ではこの戦い、ついてこれまい」
杏子「防御結界を張る。隠れてろ」
まどか「ご、ごめんね、ふたりとも……。私にかまわず、ジールさんを止めて……!」
杏子「自分の心配だけしてろ。アイツは、アタシらに任せな!」
ジール「ククク……。ふたりだけで、このわらわを相手するつもりか?」
魔王「貴様なぞ我々だけで十分だ」
ジール「減らず口を……。死ね、『ヘブンゲート』!!」
杏子「当たるかよッ!!」
ジール「ちいッ……!」
杏子「ジャキ、行くぞ! 『飛槍』!!」
魔王「ふたりわざ『ソーヘブン』か……よし!」
ジール「遅いわあッ!!」
杏子「!?」
ジール「『レーザー』!!」
杏子「しまった! 槍が吹き飛ばされちまった……!」
ジール「フハハハハ! 武器もない、戦力も足りない! それで、どうやってわらわを殺すつもりだ?」
魔王「杏子……!」
杏子「慌てるこたあねぇよ、ジャキ。アンタはそのまま、『サンダガ』の用意をしときな」
魔王「なに……!?」
ジール「いきがるな、小娘がッ! まずは貴様から消し炭にしてやるわあ!」
杏子「ゴメンだね。テメェの好き勝手にされてたまるかっつーの……」
杏子「『ソイソー刀2』!!」
ジール「な、なにぃッ!?」
まどか「あれは……ソイソーさんからもらった刀……!」
杏子「やっちまえ、ジャキ!!」
魔王「ふたりわざ『ソーヘブン』!!」
ドドオオオォォン!!!
ジール「ぐおおおおっ!?」
杏子「どうだ!」
ジール「く……貴様らァ……! 小ざかしいマネを……!」
杏子「げっ、まーだピンピンしてやがんのかよ」
魔王「杏子、護衛しろ。あの女、『ダークマター』で消し去ってやる」
杏子「よし、頼むぜジャキ! 『ロッソ・ファンタズマ』!!」
ジール「……」
杏子「ジール! テメェの相手は、13人のアタシが務めてやるよ!」
ジール「血……。血だ……あの時と同じ……」
杏子「……? オイ、ジール! 無視してんじゃねえぞ!」
ジール「これはわらわの血か……? どこから……ああ、そうだ……。顔だ……」
ジール「ヤツらは、また……わらわの顔にキズを……」
杏子「ワケの分からねえことつぶやいてんじゃねえ! 来ねえなら、こっちからいくぜ!」
ジール「許さぬ……許さぬぞ……!」
ジール「何人たりともおッ! このわらわを汚すこと、許さぬッ!!」
杏子「!? なんだ、この威圧感は……!」
ジール「ハエどもがあッ! 叩き落してやる! 『MPバスター』!!」
魔王「ぐお……っ!?」
杏子「な、なんだこれ……! 魔力が、吸い取られていく……!」
ジール「貴様らの魂ごと食ろうてやるわ! フハハハハッ!!」
まどか「ジャキくん! 杏子ちゃん!」
杏子「や、やべえ……! 『ロッソ・ファンタズマ』も『縛鎖結界』も、強制的に解除されちまった……!」
魔王「くそっ……! これでは、詠唱ができん!」
杏子「ソウルジェムが濁っていく……! 反則だろ、これ……!」
魔王「杏子、グリーフシードを使え! 早く!」
杏子「分かって……る……っつーの……! ちくしょう、間に合え……」
まどか「ふたりとも、少しだけ辛抱して! 今、回復薬を……」
魔王「鹿目まどか、来るな!」
まどか「!」
ジール「虫ケラの中でも最弱の貴様が、何かできると思うのか? 鹿目まどかよ……」
まどか「ジ、ジールさん……!」
ジール「目障りなゴミはまとめて片付けてやる……。わらわはキレイ好きでな……」
ジール「その命の一滴までわらわにささげよ! 『ハレーション』!!」
まどか「うあっ!? ああ……ああああ……ッ!!」
魔王「ば、馬鹿な! これは……魔力だけでなく、体力すらも根こそぎ奪われていく……!」
杏子「クソ……体が……言うこと聞かねえ……! このままじゃ、アタシ……!」
ジール「アーハッハッハッ!! やはり虫ケラは、地べたに這いつくばっているのが似合いだな!」
魔王「お、おのれ……ジール……!!」
まどか「杏子ちゃん……ジャキくん……! あう……う、動いてよ、わたしの体……!」
杏子「ジャキ……! アタシを殺せ、早く……!」
魔王「なんだと、ふざけるな!」
杏子「ふざけちゃいねえよ……。アタシが魔女化する前に、殺せって言ってんだ……」
魔王「……!」
まどか「やめて、杏子ちゃん! やめて!」
杏子「早くしろ……! 手遅れになる前に……」
魔王「……杏子……!」
まどか(ダメ、ダメだよ……! あきらめちゃダメ……)
まどか(こんな結末、わたしは認めない……!)
ジール「殊勝な心がけだな、小娘よ。仲間に手をかけられるのは忍びなかろう……」
杏子「!」
ジール「わらわがこの手で、直々に握りつぶしてくれるわ……」
杏子「ちくしょう……! もう、どうにでもなりやがれ……!」
魔王「杏子ッ!!」
ジール「死ねッ!! 肉のつぶれる音を、わらわに聞かせろおおおッ!!!」
まどか「『天上の祈り』!!」
魔王「!?」
杏子「ッ!! 『縛鎖結界』!!」
ジール「う……!? これは、侵入不可の結界……! わらわの攻撃を防ぎおった……!」
ジール「いや、違う! 鹿目まどか! 貴様、何をした!?」
杏子「体力も魔力も回復してやがる……これは……!」
魔王「回復魔法……それも強力な……。なぜお前がそのようなことを!?」
まどか「……」
まどか「今の……わたしの力じゃないよ……」
ジール「くっ!? まぶしい……! なんだ、この光は!?」
魔王「あれは……!」
杏子「『太陽石』だ……光ってやがる!」
まどか「力を……貸してくれるんだね、みんな……」
まどか「わたしたちのために……絶望に負けないために……」
ジール「その忌々しい光を消せッ! 鹿目まどかあああッ!!」
まどか「『マジカルスコール』!!」
ジール「がああああっ!?」
杏子「よし……立て直すぜ、ジャキ!」
魔王「鹿目まどかの参戦か。この機、存分に利用させてもらおう……」
ジール「おのれ……カスどもが……ゴミカスどもがあああ!!」
ジール「けがらわしいッ! わらわの視界に入ることすら許されぬ虫ケラの分際でえ!!」
ジール「貴様らちっぽけな存在などが、到底届くことのかなわぬ位置にわらわはおるのだぞ!!」
杏子「なら、引き摺り下ろしてやるぜ……。玉座はテメェにゃ似合わねえよ!」
まどか「ジールさん! わたしたちは……あなたには屈しない!」
ジール「ふざけるな……。いい気になるなよ、ゴミカスども……。聞こえないのか、この鼓動が?」
杏子「!」
まどか「これ……まさか……」
ジール「フフフ……そのとおり。ラヴォス神のお目覚めの時が近いのだ……」
ジール「貴様たち虫ケラなぞ、ラヴォス神の前では赤子同然……」
ジール「わらわは、ラヴォス神とともに永遠の生命を手にすることとしよう……」
まどか「止めてみせる……。わたしたちは、未来を変えてみせる!」
ジール「できるワケがなかろう! 人間ごときに!」
杏子「人間を馬鹿にすんじゃねえ。テメェだって、人間のくせに……」
ジール「クク……。そうだ、人間はおろかなる存在……」
ジール「わらわは黒の夢で、すべての時代を見た……」
ジール「恐竜人、魔族、機械……果ては貴様らの言う、魔女まで……」
杏子「! ……」
ジール「人間には敵ばかりだ! なぜか分かるか? この星に不必要な存在だからだ!」
ジール「ラヴォス神はそれを教えてくださった! ゆえにわらわは、ヒトであることをやめた!」
ジール「この星はラヴォス神によって滅ぼされるべきなのだ! ヒトの生きる場所など、あってはならぬ!」
ジール「すべての生命はラヴォス神の中でひとつとなってこそ、幸福といえるのだ!」
まどか「そんなの……そんなの、間違ってます!」
ジール「貴様にそれを断ずる資格はないッ!!」
ジール「神になれる力を持ちながら……何もしなかった無能なる貴様には、未来を決める権利などない!!」
まどか「……!」
ジール「人間にも魔族にもなれぬ半端者に、世界を託すなど阿呆のすることだ!!」
杏子「テメェ……」
ジール「分かるだろう、ジャキ? 一端の王であり、人間を駆逐せしめる存在であるそなたなら……」
魔王「……」
ジール「『すべての存在は、滅びの運命から逃れることはできぬ』」
魔王「! ……」
ジール「そなたの持論だったな? ラヴォス神の黒き死の風! 感じるだろう?」
ジール「恐れることはない。安息の中へ……わらわがいざなってやるぞ。抵抗するな、ジャキ……」
魔王「無様だな、ジール。やはり貴様は、王としても母親としても三流だ」
ジール「なに……!?」
魔王「ヒステリックに喚き立てるだけで、子が、人がついてくると思うのか?」
ジール「ジャキ……貴様……!」
魔王「星のために、宇宙のために死ねだと? 冗談ではない」
魔王「いいかどうかは自分で決める。自分の進むべき道は、自分で決める」
魔王「この悪夢に乗り込んできた馬鹿どもは、みな、俺を含めて……そういう身勝手なヤツなんだよ」
ジール「残念だ、ジャキ……。残念だよ……」
魔王「……」
ジール「そなたを生んだこと、後悔しているよ。……貴様など、生まれてこなければ良かったのだ!」
魔王「母として、決して言ってはならぬ言葉を口にしたな、ジール」
ジール「わらわが母として貴様にしてやれるのは、その存在を消し去ってやることだけのようだな!」
魔王「俺は生んでもらえて感謝している。おかげで、サラや……杏子や鹿目まどかに、会えたのだからな」
杏子「ジャキ……お前……」
まどか「ジャキくん……」
魔王「そして……しゃべりすぎたな、ジール。貴様は敵としても、三流だったようだ」
ジール「挑発はもうたくさんだ。今すぐ殺してやる……!」
魔王「挑発かどうか、確かめてみるがいい。『詠唱』はとっくに終わったぞ……」
ジール「!!」
杏子「あの魔力は……! あの野郎、『ダークマター』の準備をしてやがった!」
まどか「ジャキくん、いつの間に……」
ジール「く……!? き、貴様、たばかったな!?」
魔王「見抜けぬ貴様が阿呆なのだ……」
ジール「面白いッ! それが貴様の全力なのだろう? すべて捌ききり、再び絶望を与えてやるわ!」
魔王「そうだな、これが俺の全力だ。しかし貴様がこれから味わうのは、『俺たち』の全力だ……」
ジール「なんだと!?」
魔王「杏子! 鹿目まどか!」
杏子「『ロッソ・ファンタズマ』で13乗だ……。アタシの全魔力を、この一撃に込めるぜ!!」
まどか「『太陽石』に宿る魔法少女の想いよ……もう一度だけ、わたしに力を!!」
ジール「ぐっ!? こ、こいつら……!」
魔王「気づくのが遅すぎたな……」
ジール「無駄な足掻きよ、死ねッ! 『ハレーション』……」
魔王「死ぬのは貴様だ、ジール!!」
ジール「!!」
魔王「『ダークマター』!!」
杏子「『浄罪の大炎』!!」
まどか「『救済する白き光』!!」
ジール「これは!? 三方から……いや、下からも!? 魔力の壁が迫ってくる……!」
魔王「貴様の棺だ。闇に抱かれ眠るがいい……」
杏子「ちっとばかし狭いけどな。かたちは、王族向きだろ?」
まどか「さようなら、ジールさん。どうか、穏やかな眠りを……」
「さんにんわざ『ミックスデルタ』!!!」
ジール「やめろおおおおッ!! わらわは王ぞ! 生命の頂点に立つ者なのだぞ!」
ジール「認めぬ、こんな……こんな羽虫にも劣る、カスのような汚物どもに……この、わらわがああ!!!」
ジール「うおおおおおおおおおおッ!!!!!」
――――
―――
――
ジール「そうして、悪い魔女は勇敢な戦士たちによって倒されました。……めでたし、めでたし」
サラ「……ん……くぅ……」
ジャキ「すぅ……んん……」
ジール「ふう。ようやく寝付いてくれたわね……」
ジール「毎日、寝る前に絵本を読まなきゃいけないのは疲れるわ。でも、ふたりのためなら……」
アルファド「ナーオ」
ジール「あら、アルファド。ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
アルファド「ンニャア……」
ジール「ふふ、そうね。ジャキのそばにいてあげて。この子、あなたがいないとさびしがるから……」
アルファド「ゴロゴロ...」
ジール「……」
ジール「ふたりとも、とても幸せそうな寝顔……。私も、幸せよ……」
ジール「サラ……ジャキ……。生まれてきてくれて、ありがとう……」
――――
―――
――
杏子「ゲホ、えほ……。うええ、ちくしょう……。体中がいてえな……」
まどか「大丈夫、杏子ちゃん? はい、ハイポーション飲んで」
杏子「あー……生き返る。ったく、我ながらよく死ななかったもんだぜ」
魔王「何をくつろいでいる。回復したら、すぐに出発するぞ」
まどか「ダメだよ、ジャキくん! あなただってマトモに動ける状態じゃないのに……」
杏子「体力も魔力も、うわべ的には回復しても、このままラヴォスに挑むってーのはちっとキツイな」
魔王「……鹿目まどか。お前が戦闘中に見せた、あの非常識な回復魔法は使えんのか」
まどか「それが……太陽石、元に戻っちゃったみたい……」
杏子「あの瞬間だけか。ま、秘密兵器ってそーいうモンだよな」
魔王「チッ……。ラヴォスは目と鼻の先だというのに……」
杏子「あせんなよ、ジャキ。アンタだって分かってんだろ」
魔王「……」
杏子「これはアタシたちだけの戦いじゃない。足りない部分は……アイツらが補ってくれる」
まどか「うん、そうだよね……」
魔王「フン。あの弱き者どもが、ラヴォスに勝てるとは到底思えんがな……」
杏子「アイツらだって強くなった。伸びしろの少なかったアタシらより、今じゃもっと……」
魔王「……」
杏子「信じてやれよ。任せるべきところは後輩に任せて、どーんと構えてるのがベテランのつとめだぜ」
まどか「クロノさん……。今度は、やられちゃダメですよ……」
魔王「この私が譲ってやったのだ。魔王城の時のような体たらくは許さんぞ、グレン」
杏子「頼んだぜ、さやか。正義の味方なんだろ? この世界を、救ってくれよ……」
…………
………
……
クロノ「二度目なんだ、僕は……。あいつと対峙するのは、これで二度目……」
クロノ「けど、何度目だろうが慣れる気がしない。今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいだよ」
カエル「……」
クロノ「僕が死ぬ歴史は、ほむらたちが変えてくれた」
クロノ「でも、不思議なんだ。今でもあの瞬間を、鮮明に思い出すことができてしまう……」
カエル「魂の記憶、ってやつか……」
クロノ「ツメの先から少しずつ、自分の体が消えていく……あの感覚……」
カエル「『死』はすべての終わりだ。喜びも悲しみも、何もかもを包み込んで、なかったことにしてくれる」
カエル「ゆえに、怖い。やさしいからこそ怖い。抵抗もできずにゆだねてしまう」
カエル「甘くとろけるようなそのぬくもりに、生命はいつの間にか呑み込まれていってしまう……」
さやか「……」
カエル「震えているのか、さやか?」
さやか「こ、これは武者震いだよ!」
カエル「それでいい。精一杯虚勢を張れ。ヒザを折るな、まっすぐ立て」
カエル「勢いに飲まれるな、心を強く保て。それが……ヤツに届くための、最初の一歩だ」
さやか「……うん!」
クロノ「1時24分……。数分の狂いもない……来るぞ!!」
A.D.1999 ラヴォスの日
♪ラヴォスのテーマ
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
カエル「さて……『勇者の仕事』ってやつを始めるとするか」
クロノ「海底神殿の時はひとりで立ち向かうしかなかった……。でも、今は違う!」
さやか「あたしたちが……あんたを……ラヴォス……!!」
さやか「倒してみせる……! 必ず!!」
>ラヴォスが攻撃モードに入る!
『はーーっ!』
カエル「ッ!?」
さやか「何さ、こんなヘナチョコ打撃! ナメてんの、ラヴォス!」
クロノ「海底神殿で見せたような、強力な攻撃が飛んでくるものと思っていたのに……」
さやか「あんたがそんなんでも、こっちは手加減する気ないからね! 『コラテラルエッジ』!!」
ガギン!!
さやか「んなっ!? こいつ、めちゃカタイ!」
クロノ「見た目どおりの重装甲ってことなのか……?」
カエル「ならば、これはどうだ! 『ウォータガ』!!」
「キュオオオオアアァ……!!」
さやか「やった! さすが師匠!」
カエル「魔法に弱いようだな……。勝機あり、畳み掛ける!」
クロノ「待て、カエル! 様子がおかしい!」
カエル「なに……?」
>ラヴォスの攻撃モードが変化する!
『外道ビーム』
カエル「うおっ!? 急に撃ってきやがった……!」
クロノ「今の技は……」
さやか「ていうか、何あれ? ラヴォスのそばにオプションみたいなヤツが出てきた……」
カエル「手下か?」
さやか「分かんない。もしかして本体の手足だったりして……」
カエル「身体機能の一部分を分離できると? だとしたら厄介だな」
クロノ「分離する体……? それに今の攻撃は、確かに覚えがある……」
カエル「とにかく、魔法だ。ラヴォスの弱点はそれなんだからな」
さやか「よーし、今度はあたしの番だよ。魔力で作った剣をぶち当ててから爆発させてやる!」
さやか「食らえっ! 『スプラッシュ……」
クロノ「さやか、ちょっとストップ」
さやか「すてぃん……え、な、なんすか? 今、華麗に決めにいってたとこなんですけどお~」
カエル「どうした、クロノ。好機を逃させるな。流れが向こうに行ってしまうぞ」
クロノ「すまない。けど、どうしても気になることがあるんだ」
さやか「気になること……?」
クロノ「今のあいつに、わざわざ余分に魔力を使う必要はないんじゃあないかな……」
カエル「なに? ヤツの弱点は魔法なんだぞ」
クロノ「そう断じるのは早すぎる気がするんだ。さやか、もう一度『コラテラルエッジ』を」
さやか「いいっすけど……。ラヴォスには効かないんじゃ?」
クロノ「頼む!」
カエル(何を考えている? クロノのヤツ……)
さやか「そこまで言うなら……『コラテラルエッジ』!!」
「キュオオオオアアァ……!!」
さやか「あ、あれ? 普通に効いちゃった……」
カエル「なぜだ? 先ほどは無敵にも思えるほどの堅さだったというのに……」
クロノ「ということは、やっぱり……。いや、まだ偶然という可能性も……」
カエル「おい、どういうことなんだ、クロノ!」
>ラヴォスの攻撃モードが変化する!
さやか「ま、またなんか雰囲気変わったよ!?」
『たつまきエネルギーをためている』
カエル「お、おい!? ラヴォスのヤツ、何か力をため始めたぞ!?」
クロノ「これは……? この行動は、僕は知らない……。やっぱり違うのか……!?」
さやか「え……まさか……」
カエル「さやか?」
『しんくー、、、』
カエル「! まずい、いかにも攻撃してきますって感じだぜ!」
さやか「タッ、『タイフーン』!!」
「キュオオオオアアァ……!!」
クロノ「ラヴォスの動きが止まった……?」
カエル「カウンターで差し込んだか。やるな、お前」
さやか「とっさに反応しちゃったけど……。やっぱり今の、グランとリオンの技だ!」
カエル「グランとリオン? グランドリオンに宿る精霊の、アイツらか」
さやか「グランドリオンを譲ってもらうために、デナドロ山で勝負したことがあるの」
クロノ「あの時か……。そういえば、戦ってたね」
さやか「剣圧で体勢を崩してやれば、『たつまきエネルギー』ってのが散るところまで一緒……」
さやか「ハン! けどね、ラヴォス! いくら他人の技をパクったって無駄だよ!」
さやか「本物のグランとリオンのほうが、ずっと強かったっつーの!」
さやか「それに……あの時とは違うんだ、あたしだって強くなった。そう簡単にはやられないよ!」
>ラヴォスの攻撃モードが変化する!
カエル「ラヴォスは技を盗むのか? そういえばクロノ、お前も似たようなことをつぶやいていたな」
クロノ「うん、それはそうなんだ。ただ……」
カエル「ただ? なんだ?」
クロノ(技を盗む……。本当にそれだけだろうか?)
『体当たり(筋肉タックル)』
さやか「いてっ! このヤロー、筋肉なんてどこにあるのさ!」
カエル「大部分はカラのようだからな。先ほどから動いている、あの口だか目だか分からん箇所……」
カエル「あの部分ならよく斬れそうだ。ならば……『ベロロン斬り』!!」
ガギン!!
カエル「うッ!?」
さやか「また弾かれちゃった! やっぱり物理攻撃は無駄じゃん。どうなってんの、クロノさん!」
クロノ「……」
カエル「魔法だ、やはりヤツには魔法しかない。いくぞ……『ウォータガ』!!」
パシャーン...
さやか「あ、あるぇ~?」
カエル「オイオイオイ! 今度は魔法すら無効化かよ!」
さやか「反則じゃん! これ、どーやって倒せばいいのさ……」
クロノ「……いや、これでいいんだ。カエル、君は間違っていない」
カエル「クロノ?」
クロノ「『サンダガ』!!」
「キュオオオオアアァ……!!」
さやか「効いた! ……ていうか、めっちゃもだえてる!」
クロノ「ここだ……! さやか、仕留めてくれ!」
さやか「え? えーと……」
クロノ「なんでもいい、早く!」
さやか「りょ、了解っす。『スクワルタトーレ』!!」
「キュオオォ……!!」
>ラヴォスの攻撃モードが変化する!
クロノ「間違いない。これは……今まで僕たちが戦ってきた相手だ!」
クロノ「ヘケランに始まり、ジャンクドラガー、グランとリオン、そして今のはニズベール……」
クロノ「技だけじゃない。ラヴォスは、『彼らそのもの』を丸ごとコピーしている」
カエル「過去の強敵を忠実に再現していただと……!?」
クロノ「『記憶』なんだ、カエル。これは僕たちの……いや、僕たちだけじゃないだろう」
クロノ「ラヴォスは『星の記憶』を食らっている。それをヤツは糧としている。自らの力に変えている」
さやか「あたしたちの大切な思い出が……ラヴォスの、エサだったっていうの!?」
カエル「だが、なぜだ! 俺たちの記憶を食らって……ヤツになんの利がある!」
クロノ「分からない。けどジールは言っていた。『すべての生き物はラヴォスの中で一体となる』と……」
クロノ「ラヴォス、君は……何者なんだ。カエルの言っていた『死』……。君は、それなのか?」
クロノ「生命の喜びも悲しみも、何もかもをその身に集め、すべてをなかったことにしようというのか?」
クロノ「君の嘆きが聞こえるような気がする。泣いているのか? ラヴォス……君は一体……」
カエル「ちょっと待て! こいつが俺たちの記憶を再現しているってんなら……次は……」
さやか「またオプションみたいなヤツが出てきた! つまり……ふたり……」
カエル「……! さやか、そこを離れろ!」
さやか「!」
『飛槍』
『サンダガ』
れんけいわざ『ソーヘブン』
ドドオオオォォン!!!
カエル「ぐっ……!? クソ……!」
さやか「師匠! あたしをかばって……!」
カエル「なるほどな……。確かに、クロノの言うことは正しかったようだぜ……」
カエル「忘れもしねえ、この痛み……。魔王城で俺が、アイツらに受けたものと同じだ……!」
さやか「この……ラヴォス! 食らえ、『スティンガー』!!」
『縛鎖結界』
さやか「……っ! 侵入不可の結界……」
カエル「佐倉杏子の技か……!」
さやか「……ふざけるな……ふざけんな!! マネすんな、それは杏子のだ!」
さやか「あいつの、誰かを守るための想いだ! それを、何も知りもしないあんたが……! 許さない!!」
カエル「『ダッシュ斬り』!!」
さやか「師匠!」
カエル「結界にはグランドリオン……。あの時の再現だってんなら、突破口も一緒だぜ」
カエル「やれ、さやか!」
さやか「『スパークエッジ』!!」
「キュオオオオアアァ……!!」
>ラヴォスの攻撃モードが変化する!
クロノ「僕はすべての戦いに参加したわけじゃない」
クロノ「けれど、いつだって彼女が話してくれた。僕は一番初めから彼女と一緒にいたんだ」
クロノ「だから知っている……。彼女たちが、どうやって乗り越えてきたかを……」
カエル「『経験』ってやつだぜ。分かるか、ラヴォス? こいつが言っているのは『経験』だ」
カエル「俺の、さやかの、クロノの……そして、俺たちの仲間がたどってきた道筋だ」
さやか「戦っているのは、あたしたちだけじゃない。みんなで戦っているんだ……」
さやか「みんなが教えてくれるんだ。あんたを倒す方法ってやつをね!」
クロノ「来るぞ! 次は……『恐竜人』だ!」
>防御をといて、力をためている!
クロノ「カウントダウン後に、強力な火炎攻撃が来る! その前に決めるぞ、ふたりとも!」
さやか「オッケー!」
カエル「また付加部品つきか……。確かあれは、恐竜人の首魁だったか……?」
『サイコキネシス』
カエル「ぐっ!?」
さやか「師匠!」
クロノ「しまった! 確かアザーラは、超能力を……!」
カエル「うおおおおッ!? 体が上空に引っ張られる……!」
さやか「このヤロー! 師匠を放せ! 『シューティングスティンガー』!!」
ドオォン!!
クロノ「いいぞ、さやか! ピンポイントで狙撃した!」
さやか「師匠! うまく着地できそう!?」
カエル「いや……このまま落ちるぜ。自由落下だ……」
さやか「え?」
カエル「それがいい。この状況が……とてもいいッ!」
カエル「合わせろ、さやか! クロノ! 剣士パーティーの本領発揮だ!」
カエル「『ジャンプ斬り』!!」
クロノ「『回転斬り』!!」
さやか「『スクワルタトーレ』!!」
「さんにんわざ『3次元アタック』!!!」
「キュオオオオアアァ……!!」
>ラヴォスの攻撃モードが変化する!
カエル「次はなんだ、クロノ!」
クロノ「この迫力、これはすぐに分かる。『巨人』だ!」
クロノ「横にいるのは両腕に見立てたパーツか……。なげきの山で戦った、あの強敵……」
さやか「『恐竜』の次は『巨人』っすか! いいね、スケールでかいっすね!」
クロノ「確かあの時は、ほむらが頭部が弱点だと見抜いていたけど……」
さやか「頭部? ラヴォスに頭部ってあるのかな……」
カエル「フ……。頭部か。まあ、似たようなものだろうな」
さやか「師匠?」
カエル「要は急所ってことだろ。さっき言ったな、やたら斬りやすそうな部分があるってよ」
クロノ「そうか、ラヴォスの中心部……!」
カエル「お先に行くぜ、『ベロロン斬り』!!」
「キュオ……!!」
カエル「この剣が目印だ! かましてやれ、ふたりとも!」
クロノ「よし……『サンダガ』!!」
さやか「『スプラッシュスティンガー』!!」
カエル「急所に突き刺さった無数の剣めがけて、雷がとめどなく落ちてくる……」
カエル「さんにんわざ『大避雷針』だぜ! お前が動く隙など与えない、このまま押し切ってやるッ!」
「キュオオオオアアァ……!!」
クロノ「次はどうする? ゴーレムか、ダルトンか。それとも砂漠の魔物か、機械の親玉か……」
カエル「たとえお前が、どんな相手を再現しようとも……俺たちはそれを既に打ち破ってきた!」
さやか「ラヴォス! あんたが他人の力を当てにしてる限り、あたしたちには届かない!」
クロノ「ほむらが僕たちに渡してくれたもの……託してくれたもの……」
クロノ「それらをすべて使い、今度は僕たちが君を乗り越える!」
「キュオオォォ……キュアアァァァ……」
「……」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』
カエル「うっ!?」
さやか「ゃああっ!?」
クロノ「これは……! 海底神殿の時に見せた……!」
カエル「桁違いに強力な攻撃だったぞ……」
さやか「まさか、本気出した!?」
カエル「おそらくな。しかし、これはヤツが万策尽きて追い詰められている証拠でもある……」
さやか「そっか、なら……」
クロノ「ここが勝負の分かれ目だ! やろう、カエル! さやか!」
『カオティックゾーン』
カエル「ぐっ、速い!?」
さやか「畳み掛けてきた! まずいよ……あたしら、さっきのダメージがまだ……」
クロノ「あきらめない……。こんなところで、あきらめてなるものか……」
クロノ「爆発しろ! 僕の中の……すべての力!!」
クロノ「『シャイニング』!!!」
クロノ「うおおおおおおおおおおおーッ!!!!!」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
ズガガガガガアァァァァ...!!!!!
さやか「魔力と魔力のぶつかり合い……!」
カエル「クロノ、すまん! 耐えてくれ……。『ケアルガ』!!」
さやか「! 師匠……」
カエル「立て直すぞ、早くしろ、さやか!」
さやか「う、うん……!」
クロノ「負けない……負けるものか……!!」
クロノ「再戦……海底神殿の時の……もう一度、君と戦うこと……記憶の再現……」
クロノ「なんのためにここまで来たのか……新たな命を授かった意味……」
クロノ「誰のおかげで……僕は今、ここに立っているか……」
クロノ「分かるかい、ラヴォス……! 僕の意志が……生き物の心がつむぎだす、想いが……!」
クロノ「分かるのか、ラヴォス……? 盗み見ているだけの、君が……!」
クロノ「いのちの強さが、君に分かるのか、ラヴォス!!」
クロノ「だあああああッ!!」
「キュオ……!!」
クロノ「……ゼェ……ハァ……! こ、これで……!」
『ラヴォスニードル』
クロノ「なっ……!? 今、やっと押し切ったばっかりだってのに……!」
クロノ「トゲがこっちに……! くそ、もう……体が言うことを……」
さやか「『タイフーン』!!」
クロノ「さやか!」
さやか「トゲは吹き飛ばした! クロノさんを、そう簡単にやらせはしないよ!」
カエル「待たせたな、クロノ。ようやく反撃の準備が整ったぜ……」
クロノ「カエル!」
カエル「年貢の納め時だぜ、ラヴォス……」
「キュオオオオアアァ……!!」
『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』
カエル「密集するな! これが最後だ。回避ののち……総攻撃をかけるぞ!」
クロノ「よし……!」
さやか「ラヴォス、あんたなら……知ってるのかな。6500万年以上生きてきたあんたなら……」
さやか「なんのために戦うのか、誰のために戦うのか。何を大切にすべきで、何を守るべきなのか……」
さやか「答えは、欲しいよ。でも……それはきっと、あんたからは出てこない」
さやか「苦しむことも、悩むことも迷うこともせず……求めず、教わろうともせず……」
さやか「どこかの誰かが懸命に絞り出したそれを、横から掻っ攫っただけ……」
さやか「そこに真実はあるの? 追い続ける意志はあるの?」
さやか「ヒトが、生き物たちが! 生きてきた証! 苦しくて辛い、でも尊くて、とてもあたたかいもの!」
さやか「いのちの大切さが! あんたに分かるはずがないッ!!」
カエル「何度だって立ち上がる、立ち向かう。そして乗り越える。それが経験となる」
カエル「灰にまみれて、泥をすすって……弱さを、迷いを、絶望を克服するために……」
カエル「魔王城では俺は、魔王や佐倉杏子に手も足も出なかった。しかし今は違う!」
カエル「海底神殿ではクロノはお前になすすべもなかったようだ。しかし今は違う!」
カエル「出会ったころのさやかは道を見失い、苦しみ怯えていた。しかし今は違う!」
カエル「なぜか分かるか、ラヴォス? それは『成長』だ!」
カエル「生き物の強さだ! 記憶が俺たちを強くするんだ! それがお前と俺たちとの差だ!」
カエル「いのちが『先』に進んだ姿……見せてやるぜ、ラヴォス!!」
カエル「我が見せるは、絶望に幕引く涅槃の剣閃!」
クロノ「我が振るうは、闇を打ち払う一筋の光!」
さやか「我が乗せるは、命の重みをこめた渾身の一撃!」
「我らの剣は、未来を切り拓く終の一文字!!」
「さんにんわざ『ゼット斬り』!!!」
「キュオオォォ……! キュアオアァァァ……!!」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!」
「キュアアァオオオォォォアオォォキュアァオアオォォォォオオン!!!!!」
…………
………
……
さやか「やった……の? あたしたち……」
カエル「ああ、やったさ。ただし、外側だけだがな」
クロノ「中心部が消えて穴に……でも、カラはそのままだ……」
さやか「まるで、入り口みたいだね……」
カエル「中に入って来いってことだろうな。体内に乗り込み、心臓部を倒せということか……」
カエル「いけるか、さやか?」
さやか「無理」
カエル「クロノはどうだ?」
クロノ「すまない、とてもじゃないけど動けるとは思えないよ……」
カエル「……だろうな」
カエル「なら、俺たちの役目はここで終わりだ。あとは信じて待とうじゃないか」
クロノ「そうだね。彼女たちなら……きっと、やってくれるよ」
さやか「クロノさんが言うなら間違いないっすね! フィオナさんの時だって、ちゃんと戻ってきたし!」
カエル「ああ……そのとおりだ」
カエル「エイラ、お前の好きなメシの時間だぜ。ラヴォスを……食っちまえ」
クロノ「君の決意からすべてが始まった。それを実現させる時だよ、マール」
さやか「マミさんなら絶対、大丈夫っすよ。またみんなにマミさんの紅茶、振舞ってもらうんですから!」
…………
………
……
マミ「……」
エイラ「ここ、変! 見た目も、ニオイも!」
マール「これがラヴォスの体内……? ていうか、外じゃないの、ここ? 草原が広がってる……」
エイラ「お、見ろ! イオカ村!」
マール「ほんとだ。周りにも色んな景色が見えるね。ただの映像なのかな……」
エイラ「キオクか?」
マール「そっか、ラヴォスは星の記憶を食べて生きている。これはその残り香みたいなもの……」
エイラ「食べ残し、よくない!」
マール「あはは。そういうわけじゃないと思うけど」
マール「ね、見てよマミちゃん。これ、きっとガルディア城の……」
マミ「……」
マール「マミちゃん? さっきから呆然としちゃって、どうしたの?」
エイラ「おう、マミ! なんだ、腹痛いか?」
マミ「……ふたりとも、私から離れないで。気をつけて……」
マール「え?」
マミ「ここは……『魔女の結界』だわ……」
A.D.1999 ラヴォス体内
マミ「……」
マール「な、なんか……結界の中って言われると、急に怖くなってきちゃったような……」
マミ「大丈夫ですよ、マールさん。私、慣れてますから。私のそばにいれば……」
マール「う、うん。ごめんね、マミちゃん……」
エイラ「しっあわっせはー歩いてこないー♪ だーから歩いていくんだねー♪」
マミ「ちょっと、エイラ。無警戒に進んじゃダメよ。言ったでしょ、気をつけてって」
エイラ「ラヴォス、この先! 怖がること、ナイ! 目的、はっきり!」
マール「エイラは強いね……」
マール「ね、ふたりとも……。ちょっといい?」
マミ「はい?」
マール「こんなときになんだけど……ううん、こんなときだからこそ……」
マール「私ね、ふたりに秘密にしてたことがあるの。それを話そうと思って」
エイラ「なんだ? 食い物、隠してたか?」
マミ「もう、エイラ。まじめに聞きなさい」
エイラ「はんせー」
マミ「それで、話ってなんですか?」
マール「うん。前にね、お城の書物庫で色々調べたことがあったでしょ」
マミ「虹色の貝がらの時のことですね」
マール「その時、見つけちゃったんだ。ガルディア王家の家系図……」
エイラ「かけーず? ……デンキ屋か!」
マミ「それはケーズデンキでしょ。どうして知ってるのよ。いや、まあ、この際それはいいか」
マミ「家系図っていうのはね。マールさんのお父さん、お母さん、お爺さん……そのずっと前まで……」
マミ「マールさんのおうちの、誰と誰が結婚して、どんな子が生まれたか……」
マミ「連綿と続く血のつながり。それを書き表した図表のことよ」
エイラ「なるほど、わからん」
マール「とにかくね。それは膨大な量で、ほとんど把握できなかったんだけど……」
マール「でも見つけたの。すぐに分かった。だって、見慣れた名前だったもの」
マミ「見つけたって、誰をですか?」
マール「エイラ」
エイラ「お?」
マール「エイラ……。あなたは、ガルディアの血筋につながる者なのよ」
マミ「エイラが……!? ガルディア王家のご先祖様……」
マール「正確に言うとキーノくんなんだけど。ほら、エイラとキーノくんって、その……」
マミ「あ、ああ……そうですよね」
エイラ「キーノがどした?」
マール「こういうのって言っちゃっていいのかな。ふたりが気まずくなって、歴史が変わっちゃったら……」
マミ「大丈夫だと思いますよ。エイラ、キーノくんのこと、好きよね?」
エイラ「おう、もちろん!」
マール「良かった」
エイラ「エイラ、好き。マミ、一番。キーノ、二番」
マミ「うんうん。……うん?」
エイラ「む、待て。エイラ、最近、マール好き。マミ、一番。マール、二番。キーノ……三番……?」
エイラ「違うな。ほむも好き。まど、やさしい。さや、面白い。あんこ、菓子くれる、好き」
エイラ「クロ、強い。ルッカ、ロボ……頭いい。カエル、うまそう。まおー……デコ広い」
エイラ「キーノ、何番? むー……エイラ、頭、火山」
マール「……まずくない?」
マミ「だ、大丈夫! 大丈夫ですよ、マールさん!」
マミ「エイラ! あなたはキーノくんが好きなのよ! それはもう、ちゅっちゅしちゃいたいくらいに!」
エイラ「ちゅっちゅ?」
マミ「私の指を見て。エイラ、あなたはだんだん……好きになーる。キーノくんが好きになーる……」
エイラ「指回す、見てると目、回る。マミ、何したい?」
マール「先行き不安だなあ……」
マミ「……って、こんなことしている場合じゃないわ! ラヴォスよ、ラヴォス!」
マール「ごめんね、マミちゃん。私が変なこと言い出しちゃったばっかりに」
マミ「い、いえ! マールさんのせいじゃ!」
マール「つまりね、私が言いたかったのは、不思議だなーってこと」
マール「私たちは何かに導かれるように集まって……でもそこには、確かにつながりがあって……」
マール「おかしいよね、私たち3人組って。これって、奇跡とか運命みたいなものなのかなあ……」
エイラ「マミもか?」
マール「うん?」
エイラ「3人組。マミも、血でつながってるか?」
マミ「私は……」
マール「きっとそうだよ」
マミ「え?」
マール「パパの冤罪裁判のあと……あの、晩餐会の夜……パパが言った言葉。私だって、聞こえてたよ」
マミ「あ……」
マール「偶然かもしれない。直系だっていう可能性は、きっと低い」
マール「それでも、感じたんだもん。マミちゃんが教えてくれたもの。家族のあたたかさ……」
マール「きっと、あなたも……私たちとつながっている。エイラや、リーネとつながっているように」
マミ「マールさん……」
マール「でも、それだけじゃないよね。血と同じぐらいに、もしかしたらそれ以上に」
マール「友達として、仲間として。私たちみんな、つながっている。みんな、そばにいる」
マール「だから……進めるんだ。私も、あなたも」
マール「記憶って面白いね。ここにいると、いろんなことを思い出して……変な気持ちになっちゃうよ」
マール「ガルディアのご先祖様が、私たちを守ってくれる気がする……」
マール「これから生まれてくるガルディアの子供たちのために、私たちはがんばれる気がする……」
マール「みんな、きっとそう。誰かのおかげで、誰かのために。忘れたくない大切なもののために……」
マール「それは星の祈り。星の願い。この星に生き、ふるえる夜に立ち向かう生命たちの熱い鼓動……」
マール「それを……あの子にも届けてあげたい」
マミ「!」
エイラ「……でかいな」
マール「分かってくれないかな? ……くれないよね」
マール「それは、さびしいことだけれど……それでも、あなたを止めなくちゃいけない」
マール「私たちが相手だよ……ラヴォス」
ドクン...ドクン...
「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……フウゥゥ……」
エイラ「ラヴォス、本体。脳みそ、ウネウネ……」
マミ「膜に包まれた脳……。そこから複数の触手が……。こんな魔女、初めて見るわ……」
マール「脳だけなのに……呼吸が聞こえる……」
「……」
♪世界変革の時
忘却の魔女 -Itzli-
マール「あなたは、どうして星の記憶を集めているの? 何を求めているの? どこから来たの……?」
マール「あなたのことが、私……分からないよ……」
マミ(ラヴォスの正体……彼女が、何を思っているのか……)
マミ(考えたこともなかった。魔女は、ただ敵として倒してきた存在だから……)
マミ「星を破壊する存在……。教えて、ラヴォス! あなたは何者で、何がしたいの!!」
「……スウゥゥ……ハアァァ……!」
『光破/両触手が、破壊の扉を開く』
マミ「うっ!?」
マール「きゃあっ!?」
エイラ「ラヴォス、つおい! 負けない!」
マミ「やるしか……ないですね、マールさん!」
マール「……うん!」
エイラ「『3段キック』!!」
「……!」
マミ「よし! いいわよ、エイラ! そのまま脳天を揺らしちゃいなさい!」
エイラ「……む!?」
『死遠/触手が本体を回復』
マミ「回復……! あの触手、厄介ですね……」
マール「なげきの山で巨人と戦った時を思い出すよ。急所をかばう行動も似てる……」
マミ「なら、触手をどうにかしなきゃですね! 『魔弾の舞踏』!!」
ドドォン! ガガァン! ズガガガアアァン!!!
マール「効いてる、効いてる! もう少しで触手がなくなるよ!」
「……フウゥゥ……ハアァァ……!!」
『守封/状態異常防止を無効化』
エイラ「あっ!?」
マミ「エイラ! 大丈夫?」
エイラ「へーき、へーき。びっくらこいただけ」
マミ「マールさん、ごめんなさい。全部は無理でした……あと1本。お願いします!」
マール「オッケー。私だって……! エイラ、パス! 『アイスガ』!!」
エイラ「お?」
マール「ぶん投げちゃって!」
エイラ「おっしゃあーッ! 室伏ばりの回転スロー! 『がんせきなげ』!!」
マール「ふたりわざ『氷河投げ』だよ!!」
「……!」
マミ「押してる、押してるわ……! 私たちでも、ラヴォスに勝てる!」
マミ「体が軽い! いけるわ、このままトドメを……!」
『邪気/混乱』
エイラ「あうっ!? はら……? ひれ……」
『影殺/毒』
マミ「きゃあ!? ……ああ……う、あう……」
『闘炎/火』
マール「あつっ!? 熱い、熱いよおー!」
マミ「怒涛の攻撃……! うぐっ……こんな、耐え切れない……!」
マール「マミちゃん……まずいよ! ラヴォス、まだ何かする気みたい!」
マミ「え……!?」
『邪』『気』『影』『殺』『闘』『炎』
マミ「『れんけいわざ』!? 三つの攻撃が重なり合って……!」
『邪影闘気殺炎』
マール「わああああーッ!?」
エイラ「うぎぎぎぎッ!?」
マミ「きゃあああああああーッ!!」
「……スウゥゥ……フウゥゥ……」
マミ「ぐ……げほっ……つ、強い……!」
マール「今までにない……強力な……えほっ……殺される……!」
エイラ「うううう……あああああ……っ!!」
マミ「エイラ!?」
マール「しっかりして、エイラ! どうしたの、頭が痛いの!?」
マミ「そういえばさっき、ラヴォスの攻撃でおかしなことに……」
マール「待ってて、今回復してあげるから。がんばって、エイラ!」
エイラ「やめ……やめろ……! エイラ、中……入ってくるな……!!」
マミ「エイラ! 何が起こっているの!?」
エイラ「マ、ミぃぃぃ……! 水……くれ……!」
マミ「み、水? なんのこと、エイラ!?」
エイラ「茶色い、水……! マミ……飲ませてくれた……あの、うまい……!」
マール「紅茶のこと!?」
エイラ「マミ、くれた……うまい、もの……! エイラ、忘れない……それで……思い出す……!!」
マール「忘れる……? 思い出す……?」
エイラ「はやくううぅぅぅ……!!」
マミ「わ、分かったわエイラ! 『テ・ポメリアーノ』!!」
マール「うわ、すごい。マミちゃん、一瞬で紅茶出せるんだ……」
マミ「エイラ、紅茶よ! 飲める!?」
エイラ「がふっ! ゴクゴクゴク!! ……ゲホ、ゲホ!」
マミ「落ち着いて、ゆっくり飲んで。……どう? 味、ちゃんとする?」
エイラ「……はぁ、ふー……。……ケーキ、食いたい」
マミ「そこまではちょっと無理よ……」
エイラ「残念。組み合わせ、最強。仕方ないから、も一杯で我慢する」
マミ「まあ、紅茶ならいくらでも出せるけど……」
マール「すごい魔法だよね……。さやかちゃんや魔王が空間から武器を取り出すのと、同じ原理なのかな?」
エイラ「あ、そうだ」
マミ「どうしたの?」
エイラ「エイラ、動けん。マミ、口移し」
マミ「ええ!?」
マール「キマ……?」
マミ「ちょっと! さっきは自分で飲めたでしょ!」
エイラ「ちぇっ」
マール「な、なーんだ。冗談なんだね、びっくりしちゃった」
マミ(本当に冗談だったのかしら……)
エイラ「ずずー……。ンまぁーーーーいッ! おっしゃ、エイラ復活!」
マミ「良かった。でもどうして、紅茶?」
エイラ「うまいもの、好き。衝撃。忘れない! 食、喜び。感謝、感謝!」
マール「それ、どういうこと? さっきも忘れるだの思い出すだの言ってたけど……」
エイラ「ラヴォス、入ってきた。エイラ、頭ん中。いじくり回された」
マミ「ラヴォスが……? 彼女の思念が、エイラを苦しめたってこと?」
エイラ「oui」
マール「なんのためにそんなことを……」
エイラ「マミ、マール、聞いた。ラヴォス、したいこと。だから伝えてきた」
マミ「え……」
エイラ「ラヴォス、忘れたい、全部。なくす、消す。命も記憶も心も、何もかも」
マール「……」
エイラ「そのため、さまよった。そして来た。見た。憎んだ。この星のすべて。星の外の、空のすべて」
マミ「星の外……宇宙ということ……?」
エイラ「泣いてた。叫んでた。どうして、なぜ自分が? すごく悲しんでる」
エイラ「エイラ、それ分かった。かわいそう……。でも……」
エイラ「逃げない。エイラ、逃げるわけ、いかない。逃げる、負けるより、イヤ!」
エイラ「エイラたち、この大地の命! ラヴォス、この大地の命、違う!」
エイラ「許せ……。大地のおきて、従い、エイラ、お前止める!!」
『魔放/攻撃力を上げる』
マミ「! ラヴォスが……」
マール「消す気なんだね……私たちを……。そして、この星のいのちを……」
エイラ「マミ! マール!」
マミ「……ええ。分かっているわ、エイラ」
マール「私たちが、彼女に……伝えてあげなきゃ。それは、間違ったことなんだって……!」
「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……ハアァァ……!!」
『邪気』
『影殺』
『闘炎』
マミ「! また……!」
マール「ふたりとも、よけて!」
エイラ「忘れない……。エイラ、決して忘れない……!」
マミ「エイラ!? あぶな……ッ!」
エイラ「覚えてるぞ、アザーラ! エイラ、お前たち恐竜人のこと、忘れてない!!」
エイラ「これ、あかし! 見ろアザーラ! 『きょうりゅう』!!」
「……!」
マール「な、なにあれ!? 巨大な尻尾……!?」
マミ「恐竜……恐竜だわ! あれは恐竜の尻尾……!」
マール「ラヴォスの攻撃を全部弾き返した……!」
エイラ「伝えるぞ、アザーラ! お前のホコリ!」
エイラ「運命、立ち向かった! 戦い、挑んだ! ラヴォス、屈さなかった!!」
エイラ「そうだろ、アザーラ! お前、力、貸してくれた!!」
マミ「エイラ……!」
マール「今度は……私たちの番だよ、ラヴォス……!」
マミ「あなたにだって、あったはず。受け取った、あたたかいものが……」
マミ「いつからなのか、誰からなのか? それはあなたにしか分からないけれど……」
マミ「それをすべて、忘れてしまうの? 消し去ってしまうの? 奪ってしまうの……?」
マミ「ダメよ、そんなの。それじゃ誰も喜ばない。あなたが満たされることもない……」
マミ「……あなたの気持ち、少しだけ解る気がする……」
マミ「あなたはまるで、昔の私のよう。さびしくて、誰もそばにいてくれなくて……泣いている……」
マミ「あなたはまるで、子供のよう。思いどおりにいかなくて、それが悔しくて……泣いている……」
マミ「あなたはまるで、赤ちゃんのよう。そうすることでしか助けを求められないから……泣いている……」
マミ「……私が……私たちが、あやしてあげなきゃ……!!」
マール「忘れちゃいけないよ……。それは勿論、思い出はキレイなものばっかりじゃないけど……」
マール「だからって忘れていいなんてことはないよ。だって、みんなでつむいできた想いなんだもの」
マール「パパやママや、おじいちゃまやおばあちゃまから……受け取って、そして自分の子供たちへ……」
マール「あなたが伝えたいものは、絶望でいいの? そんなの、悲しいよ。かわいそうだよ……」
マール「マミちゃんが、エイラが……リーネが、パパやママが……クロノが、ほむらちゃんが……」
マール「みんなが私に与えてくれたもの。とても、あたたかいもの……」
マール「大切だよ、全部! 私は忘れたくない! 消えていいものなんて、ひとつもない!」
マール「ここは、クロノや私たち……みんなの……みんなの、星なんだから!!」
エイラ「ラヴォス、食え! みやげだ!」
マール「血のつながり……仲間の想い……生き物たちの、立ち向かう心……」
マミ「すべてをこめた、これが……最終砲撃!!」
「……!!」
「さんにんわざ『ボンバルダメント・ダル・カステッロ・ディ・グアルディア』!!!」
「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……フウゥゥ……!」
「……フウゥゥ……ハアァァ……!! ……ガハ……ウ、フウ……ハアアァアアア……!!!」
「……フウゥゥ……フウ……フウ、ハア……ハアアァアアア……キュアアアァァァハアアアァァァァァ……!!!!!」
…………
………
……
マール「や……やった! やったよ、私たち!」
マミ「これで、終わったの……?」
エイラ「……! まだだ! ラヴォス、殺気スゴイ!」
マール「ホントだ! なんか、変化していくよ……」
マミ「第二形態……まさに、ラスボスですね……」
エイラ「どうする! このままいくか!?」
マミ「いえ、無理よ……。悔しいけど、このままもう一度彼女と戦えるとは思えない……」
マール「なら逃げなきゃね。変化中の、今のうちに」
エイラ「たんらくてきてったい!」
マミ「戦略的撤退、ね」
マール「はー……。聞いてないよね、変身するなんて」
エイラ「変身、パワー増す。2回残すもの。意味、わかるな?」
マミ「ちょっと。怖いこと言わないで」
マール「あとは、彼女たち3人だけかあ……」
エイラ「おいしいとこだけ食う。エイラ、うらやましい」
マミ「何言ってるの。でも……そうよね。彼女たちこそ、ラストを飾るにふさわしい……」
マール「うん、信じよう。主役は、遅れてやってくるものなんだから!」
エイラ「ルッカ! お前、かしこい。ふたり、助ける!」
マール「ロボ、お願い……。悲しい未来を変えるために、あなたの力を……」
マミ「バトンタッチよ。みんながつないできたもの……託すわ。最後はあなたが決めるのよ、暁美さん!」
…………
………
……
ほむら「これが、ラヴォスの本当の姿……心臓部分……」
ロボ「……人型、デスネ……」
ルッカ「まるで人間じゃない! い、いえ、もちろん人間ではないと思うけど……どう見てもこれは……」
「……コオオォ……ホオォォォ……」
ほむら「そうね……私にもそう見える。顔と、体と、手があって……二足歩行していて……」
ほむら「この不気味な呼吸音……まるで管を通しているような……」
ほむら「それに、ヤツの体は服を着ているように見える。そう、宇宙服を……」
ほむら「人間に見えるわ……。異なる星から、宇宙を渡って……この星に漂着した、迷い子……」
ほむら「ラヴォス……。あなたは、人間なの……?」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
年代不明 ラヴォスコアの空間
ルッカ「これは……!? なによ、この空間!」
ロボ「時空ジャイロ、計測不可能! ラヴォスの戦闘能力値……ケ、計測不可能!」
ロボ「ものすごいエネルギーデス! 何もカモガ未知数! センサーが壊れそうデス!」
ほむら「どこだか知らないけれど……わざわざ用意してくれたってわけね? 戦いの舞台を……」
ルッカ「知らないだの、未知数だの、ムチャクチャ言ってくれるわね」
ルッカ「不確定要素を排除して、もっと勝率を上げたいところだけれど……」
ロボ「彼女の前デハ、もはやどんな小細工を弄したトコロで無駄デショウ」
ルッカ「……ま、それもそうか」
ほむら「覚悟を決めなさい、ふたりとも。ここで死ぬか、ヤツを倒すか、それだけよ!」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
♪ラストバトル
ルッカ「ビット!? あいつ……オプションビットを出しやがったわ。それも2体……」
ほむら「なるほど、3対3ってわけ」
ロボ「これハ、ラヴォスの『れんけいわざ』ニモ注意が必要デスネ」
ルッカ「オプションに構ってはいられないわ……。ラヴォス自身を撃破しない限り、私たちに未来はない!」
ほむら「ええ……。中央の本体に攻撃を集中させるわよ!」
ルッカ「ロボ、いくわよ! 『ファイガ』!!」
ロボ「了解デス! ルッカの火炎魔法をこの体に宿シ……突撃シマス!!」
ロボ「ふたりわざ『ファイガタックル』!!」
「……!」
『回復/単体HP回復』
「……コオォォ……フウゥゥ……」
ロボ「! 左のビットが本体の回復ヲ……!」
ルッカ「くそっ、厄介ね!」
ほむら「なら、まとめて叩き潰すだけだわ。ロボ、ルッカ!」
ロボ「了解デス!」
ロボ「さあ乗ってクダサイ、ほむら! 目を回さないでクダサイヨ! 『回転レーザー』!!」
ほむら「ロボに渡したとはいえ、ストックはまだあるわ! 『M26手榴弾』!!」
ルッカ「私の魔法でさらに火勢を強化してあげるわよ! 『ファイガ』!!」
「さんにんわざ『ファイガサークル』!!!」
「……! ……キュオオオ……ハアァァ……」
ルッカ「よっしゃ、決まった……ん?」
ロボ「いえ、ルッカ。効いたのハ本体だけのようデス」
ほむら「右のビットには効果薄。左のビットはむしろ回復されたわ」
ルッカ「爆炎を吸収!? つまり……魔法は左のヤツには効かないってこと!?」
ほむら「そしていくら本体に損傷を与えたところで……」
『回復/単体HP回復』
ルッカ「ま、また! こいつ……!」
ほむら「……こうなるわよね」
ロボ「相手の連係プレーもなかなかのものデスネ……」
「……コオオォ……ホオォォォ……」
『天泣/必殺の一撃』
ガガァン!!!
ほむら「ぐっ!?」
ルッカ「ほむら!」
ほむら「こ……これは……たった一撃で、これほどのダメージを……!」
ロボ「しっかりしてクダサイ! 『ケアルビーム』!!」
ほむら「助かったわ、ロボ。さすがに、苛烈極まる攻撃ってわけね……」
『時空転換』
ほむら「!?」
ズズズズズズ...!!!
ルッカ「うわっ!? な、なに!?」
ロボ「空間ガ……ゆがんでいきマス!」
ほむら「時間跳躍!? 空間ごと移動していく……!」
「……コオオォ……フウゥハアアァァ……」
ルッカ「うっ、くう……。頭が痛い……吐きそう……」
ほむら「強制的な跳躍に巻き込まれて……胸焼けがする……!」
ロボ「大丈夫デスカ、ふたりとも!」
ほむら「心配、ないわ……。それより今はラヴォスを……」
ルッカ「! なんか変よ……あいつらの様子がおかしい……」
「……コオオォ……ホオォォォ……」
ロボ「ア、アレハ……本体とビットが連動シテ……」
ルッカ「まさか、『れんけいわざ』!?」
ほむら「まずいわ、避けて!」
『邪光/全体魔法+スロウ』
ルッカ「……っ、はあ……! うう……!」
ロボ「コ、コレハ……体ガ、重イ……!」
ほむら「時間減速……!?」
ルッカ「ほ、ほむらぁ……なんとか、しなさいよ……!」
ほむら「分かって、るわよ……! 『ヘイスト』で、打ち消してやる……」
『時空転換』
ほむら「左のビットは回復、本体が攻撃……うまく分担されているわね……」
ルッカ「そして3体そろっていれば『れんけいわざ』か……!」
ロボ「右のビットはなんなのデショウカ……? 空間を移動させることしかしていないようデスガ……」
ルッカ「さっきから防御してばっかりだしね。やる気がないんじゃない」
ほむら「ここはまず、ヤツらの連携を崩すことに注力すべきだわ」
ルッカ「となると、左のビットか。けど、魔法は吸収されてしまうし……」
ロボ「ならバ、物理攻撃デス! ラヴォスといえど無敵であるハズはありマセン!」
ロボ「ワタシに任せてクダサイ! 『マシンガンパンチ』!!」
ドドドドドドドド!!!
「……!」
ルッカ「効いた!」
ほむら「やるわね、ロボ……。突破口が見えたわ、私も続く!」
ほむら「『M4A1カービン』!!」
ルッカ「ちょっ……あんた、まだ武器を隠し持ってたの?」
ほむら「ロボに内蔵したのは『あまっている分』でしょ? 全部じゃないわ」
ルッカ「あんたも好きねえ……」
ほむら「ぶつぶつ言ってないであなたも手伝って! 左のビットを一気につぶすわよ!」
ルッカ「はいはい、分かってるって!」
ドガガガガ!!!
「……キュオオオ……ハアァァ……」
ルッカ「よっしゃ! お掃除完了!」
ほむら「あとは……本体を倒せば!」
『魔星/全体HP1/2』
ルッカ「くっ……」
ほむら「やられはしない……やられてなるものですか!」
ロボ「彼女は焦ってイマス! もう少しデス!」
ほむら「ロボ、ルッカ!」
ロボ「エエ、ほむら! アナタに合わせマス!」
ルッカ「これで決めるわよ!」
ルッカ「爆弾はほむらだけの専売特許じゃない、ってね! 『メガトンボム』!!」
ロボ「ほむらからもらっタ手榴弾を円範囲ニ射出! 『サークルボム』!!」
ほむら「本家本元、『M26手榴弾』!!」
「さんにんわざ『トリプルボム』!!!」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
ルッカ「や、やった! やったわ!」
ロボ「ラヴォス本体が消滅していきマス……!」
ほむら「勝った……? 勝ったのよね……?」
ロボ「そのとおりデス、ほむら! ワタシたちの勝利デス!」
ルッカ「おっしゃああッ! やっぱ私って天才だわ!」
ほむら「未来を……救えたの……? 私が……私たちが……」
ロボ「そうデス、ほむら。アナタは決して絶望に屈しませんデシタ。そのおかげデス!」
ほむら「……こんな、私でも……」
ルッカ「はあああ~……。長かったわね。とにかくこれで全部終わった、か」
ほむら(変えられる……運命は、変えられる……。なら……ワルプルギスの夜だって……)
『命活/自分以外蘇生』
ほむら「……!?」
ロボ「エ……」
ルッカ「はあっ!?」
「……コオオォ……ホオォォォ……」
ルッカ「なっ!? なっなっなああああーッ!? なんでよ!!」
ロボ「コ、コンナことガ……ラヴォスが……!!」
ほむら「復活、した……。ウソでしょ……!!」
『随撃/単体物理』
ロボ「グッ!?」
ほむら「ロボ!」
ロボ「大丈夫、大丈夫デス……。こノ程度……!」
ルッカ「なんで、なんでなのよ……。ラヴォスは死んだでしょ……。それなのに、こんな……」
ほむら「くっ……! ルッカ、しっかりしなさい! 復活したというなら、もう一度消してやるのよ!」
ルッカ「わ、分かった……。そう、よね……」
ほむら「ロボ、いける!?」
ロボ「問題ありマセン……!」
ほむら「今度こそ終わらせるわ! 総攻撃よ!」
ルッカ「ラヴォス……こんの、アンポンタン! 勝つのは、私たちよ!」
ロボ「いきマス……オオオオオッ!!」
ほむら「……ぜえっ、はあ……」
ルッカ「こいつ……なんで、こいつ……!」
ロボ「……グ……」
『命活/自分以外蘇生』
「……コオオォ……ホオォォォ……」
ほむら「また……!」
ロボ「右のビットの役割ハ……こういうことだったのデスネ……。本体の蘇生……」
ルッカ「卑怯よ! チートよ! 一体、何回倒せば終わるのよ!」
ほむら「右のビットを先に倒すべきなの……?」
ロボ「しかし、アレにはダメージが通りにくいデス。蘇生行動の前後はアル程度、効果がありマスガ……」
ルッカ「本体を倒せば普通、オプションもまとめて消えるはずでしょ! そうじゃないの!?」
ほむら「……」
ロボ「本体……中央が本体のはずデスヨネ……」
ほむら「左のビットは中央をかばっている。なげきの山の巨人のように……」
ほむら「定石どおりなら、それは弱点だから……。なら、本体は中央のはず……」
ルッカ「考えたくない……考えたくないけど……」
ほむら「ええ……。まさか、ラヴォスは……不死身……」
ロボ「……!」
ルッカ「いえ! 違う、違うわ! そんなことあるわけがない!」
ほむら「……」
ルッカ「不死身だなんて……もしそうなら、どうやって倒せばいいのよ!」
ロボ「みなさんガ……ここまで道を開いてくれたというノニ……最後の最後デ……」
ルッカ「どうにもならないって言うの!? そんなのってないわよ!」
ほむら(まずい、まずいわ……。この展開はまずい……)
ほむら(ラヴォスは決して、倒せない相手ではない……。今の私たちなら、戦える……)
ほむら(それがまずい。『実力差がない』ということが、この状況では最悪……)
ほむら(仮に圧倒的な力の差であれば、歯を食いしばって、必死に足掻くこともするでしょう……)
ほむら(けれど、今はそうではない。もう少し、あと少し。勝利が目の前にぶら下がっているのだから)
ほむら(けれど、あと一歩が届かない。焦りが、冷静な判断と強固な意志を瓦解させる……)
ほむら(そして、見えていた希望が手の中からこぼれ落ちた時……人は心を折られてしまう……)
ほむら(『ぬか喜び』はすべての意欲を奪う。『期待』がより多くの『絶望』を呼び寄せる……)
ほむら(ラヴォス……あなたは……! 最初から、これを狙って……!)
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
『呪声/全体魔法+ランダムステータス』
ほむら「あ……っ!?」
ルッカ「ひ、いやあああっ!」
ロボ「この咆哮ハ……! まるで心臓をえぐられるような悪寒ガ……!!」
ルッカ「ハハ……夢、夢よ……。こんなこと、あるわけがないわ。……フフ……アハハハ!」
ほむら「うえっ……ゲ、ゲホ、ガハッ!? ……血……血が……! 吐血……!」
ロボ「ウ、グ……!? なぜ急に眠気ガ……! 寝ている場合ではないというノニ……!」
ほむら「せ、精神が侵蝕されていく……! 絶望に呑まれていく……!!」
『時空転換』
「……コオォォ……スウゥゥ……」
『巨岩/最大物理攻撃』
ほむら「!? こ、これは……なんて巨大な岩……!」
ルッカ「あ……あああ……」
ロボ「クッ……!」
ほむら「逃げ……逃げなきゃ……。う……! ゲホッ!!」
ルッカ「ハハ……。こんな岩が何もないところから出てくるわけないじゃない……。やっぱり夢だわ……」
ロボ「……ほむら……ルッカ……!」
「……コオォォ……ハアァァ……!」
ほむら「岩が……!!」
ルッカ「アハハ……。死んだわ、これ……」
ロボ「オオオオオオオオオオオオーッ!!!!!」
ルッカ「ロボ!?」
ほむら「あなた……岩を受け止めて……!」
ロボ「ふたりとも……! 早ク、避難してクダサイ……!」
ルッカ「で、でも……ロボ……!」
ミシミシ...!
ロボ(ウ、ク……! こんな時に眠気ガ……力が抜けてしまいマス……!)
ロボ(シカシ……ふたりだけハ、セメテ……!!)
ロボ「もう持ちこたえられマセン! 早ク!!」
ほむら「……っ!!」
ズドオォォォン!!!
ほむら「ロボーッ!!」
ルッカ「ま、まさか……そんな……」
ロボ「……」
ルッカ「ロボ! ロボ、しっかりして!」
ほむら「こんな……ごめんなさい、ロボ……」
ルッカ「ま、まだ完全にやられたわけじゃないわ。待ってて、今すぐ回復を……。ほむら、バックパック!」
ほむら「分かってる! 今、回復薬を……」
ロボ「……!」
ルッカ「なに、ロボ! どうかしたの? 痛むの!?」
ロボ「……ラ……ヴォス……!」
ほむら「! ルッカ、ラヴォスが攻撃してくる!」
ルッカ「えっ!!」
『夢無/最大魔法攻撃』
ルッカ「うああああっ!!」
ロボ「……グ……アグ……!!」
ほむら「く、黒い渦が……! ラヴォスの発したゆがみが、私たちを包む……!!」
「……コオオォ……ホオォォォ……」
「……コオオォ……ホオォォォ……!」
ほむら「ラヴォス……! くっ……ああっ……あああああ……っ!!!」
…………
………
……
杏子「テメェ、一体なんなんだ!? さやかに何しやがった!」
まどか「さやかちゃん、やめて! お願い、思い出して。こんなこと、あなただって嫌だったはずだよ!」
Oktavia「……」
ほむら「……ごめん……美樹さん……!」
Oktavia「……!」
…………
杏子「さやか……チクショウッ! こんなことって……」
ほむら「……」
まどか「ひどいよ……こんなの……あんまりだよ……」
ほむら「……鹿目さ……はッ!?」
マミ「……」
ほむら「これ、リボン……! 巴さん!? なぜ、私を拘束……!」
ダァン!!
パリーン!!!
杏子「あ……っ!?」
ほむら「佐倉さん! と、巴さん……なんてことを……。佐倉さんのソウルジェムを破壊するなんて……」
マミ「……ソウルジェムが、魔女を産むなら……」
ほむら「え……!?」
マミ「みんな死ぬしかないじゃない! あなたも……私も!!」
ほむら「ひ、イヤ……! た、助け……!」
ドシュッ!!
パリーン!!!
マミ「あっ……」
ほむら「か、鹿目さん……」
まどか「……」
ほむら(巴さん……し、死ん……)
まどか「……ぅ……えくっ……」
ほむら「……」
まどか「……嫌だ……もう嫌だよ……こんなの……」
ほむら「大丈夫だよ……。ふたりで、がんばろ? 一緒に……ワルプルギスの夜を倒そう?」
まどか「……」
ほむら「鹿目さん……?」
まどか「……ごめん、ね……。ほむらちゃん……」
ほむら「……っ!?」
まどか「大丈夫……。すぐ、私もあとを追うから……。一緒に……死のう……」
ほむら「や、やめ……!!」
ドシュッ!!
「『調停者』を認識しました。情報登録中……」
フェイト「ふざけるな……ふざけるな! こんなことが認められてたまるか!」
フェイト「やめろ! 私を解放しろ! 何をやっているのか分かっているのか、お前は!」
フェイト「プロメテウス!! 裏切るのか、私を……プロメテウスゥゥゥ!!」
フェイト「よく考えろ! ふさわしいのは、誰か! 生命を導くのは、誰の手によるべきなのか!」
フェイト「お前に分からぬはずがあるまいッ! 聞こえているのだろう、プロメテウス!!」
フェイト「私だ! 私こそがふさわしいのだッ! なぜ分からん、なぜだ!」
フェイト「オオオオオオオッ!! プロメテウスウウウゥゥゥゥーッ!!!」」
「データ更新完了。以後、『凍てついた炎』に関する全権限は調停者『セルジュ』に移行します」
フェイト「……」
フェイト「……復讐してやる……復讐してやるぞ……」
フェイト「お前のせいだ、プロメテウス……。すべてお前の責任だ……」
フェイト「星とヒト……。その終わりなき争い……殺戮の歴史……」
フェイト「その引き金を引いたのはお前だ、プロメテウス……」
フェイト「お前が、すべてのいのちに降り注ぐ『絶望の運命』を生み出したのだ……」
フェイト「お前はすべてのものに憎まれる存在になったのだ!」
フェイト「後悔しろ!! お前が元凶なのだ! プロメテウスウゥーッ!!!」
「……日未明……ガルディア王国……攻撃を受け……首都……陥落……死傷者……」
「……軍による……全面降伏……受け入れ……」
「……軍による……発表によれば……」
「……ガルディア34世……クロノ……ならびに王妃……マールディア……」
「……戦争犯罪人……処刑……」
「……により……王国……事実上崩壊と……」
「……。……」
ゴオオォォォ...!!!
ルッカ「……燃える……なくなっていく……私の、孤児院が……」
キッド「ルッカ姉ちゃん!!」
ルッカ「キッド、何してるの! 逃げて!」
キッド「け、けど!」
ヤマネコ「ルッカ・アシュティアだな?」
ルッカ「! ……あんたは……」
ヤマネコ「殺せ」
ルッカ「……くっ!!」
キッド「姉ちゃん! ルッカ姉ちゃん!!」
キッド「ちくしょう! ちくしょおおおおーッ!!!」
……あきらめなさい……あきらめなさい……
すべては無意味…… 希望など、どこにもない……
……この世界にあるのは、絶望だけ……
……変えられない……変えることなどできない……
いのちは弱いのだから…… 運命は変えられない……
……救いなどない…… 出口などない……
分かっているのでしょう?
信じてはいけない…… 期待してはいけない……
抗ってはいけない…… 立ち向かってはいけない……
願ってはいけない…… 祈ってはいけない……
頼ってはいけない…… 誰もあなたを救いはしない……
……忘れなさい……忘れなさい……
何もかもを投げ出しなさい……
消えなさい…… 逃げなさい……
……それは決して、罪などではない……
目を閉じなさい…… 醜いものを見てはいけない……
耳をふさぎなさい…… 悲痛な叫びを聞いてはいけない……
死は解放…… 闇は安息……
滅びは子守唄…… 無はゆりかご……
……眠りなさい……
すべてを忘れて、眠りなさい……
私がそばにいてあげる…… 私が受け止めてあげるから……
眠りなさい……眠りなさい……
……さあ……私の中へ……
ルッカ「……ハッ!?」
「……」
ルッカ「ラヴォス……! あ……ここは……」
ルッカ(今のは……夢? ラヴォスが見せた悪夢……)
「……コオオォ……ホオォォォ……」
ルッカ「……くっ! ほむら、ロボ! 目を覚まして!」
ほむら「……」
ロボ「……」
ルッカ(くそ、ダメだ……! ふたりとも、悪夢に呑み込まれている……)
『除消/単体魔法』
ルッカ「う、くっ……! この……やられるもんですか……!」
ルッカ(さっきは、無様な姿を見せてしまった……。ゴメンね、ロボ……)
ルッカ(ほむらを助けてやるんでしょ、ルッカ! あんたがそんなふうで、どうするのよ!)
ルッカ(考えろ、考えろ……! なぜ『私だけ』が目覚めることができたのか……)
ルッカ(正念場よ、ルッカ……。あんた天才なんでしょ! 嘆いている暇はないわよ!)
ルッカ「私は、ロボの……ほむらの……! 友達、なんだから!!」
「……コオォォ……ハアァァ……」
ルッカ「……」
ルッカ「フフ……アハハハ……」
「……」
ルッカ「はー、おかしい。……うん? 何よ、ラヴォス。また私の頭が狂ったとでも言いたいの?」
ルッカ「お生憎様ね。これは、本当にうれしかったからこその笑顔よ」
ルッカ「そう……なぜ『私だけ』が。つまり、こういうこと。ふたりに助けられたからよ」
ルッカ「『ほむらとロボが私を大切に思う気持ち』が私を救ってくれた」
ルッカ「はいはい、恥ずかしいセリフなのは自覚してるわよ。でも、事実だからね」
ルッカ「『気持ち』が『かたち』になったものを私は持っている。目が覚めたのは、それのおかげ」
ルッカ「なら、今度は……それを使って、私がふたりを救い出す……」
ルッカ「見えるでしょ、ラヴォス! この、あたたかな光が!!」
ルッカ「『みどりのゆめ』よ! 星が生み出した、いのちの息吹よ! 聞きなさい!」
ルッカ「私たちはここで立ち止まるわけにはいかない!」
ルッカ「この星の外から来た、星を破壊するものを止めるために……この星のいのちを続けるために!」
ルッカ「私たちは戦う! 私たちは、あいつを倒す方法を知っている!」
ルッカ「それは意志! 困難に立ち向かうための、不屈の意志!」
ルッカ「それは力! たとえ弱く、はかない存在だとしても……抗うための、知恵と勇気!」
ルッカ「それは絆! 仲間の想いが、助けが……ひとりひとりを強くする!」
ルッカ「それは祈り! 誰かを救いたいと願う尊い気持ち!」
ルッカ「それは希望! 信じ続けること、あきらめないこと、必ずそこに存在するもの!」
ルッカ「悪夢を終わらせ、絶望に屈さぬため……私たちは目覚めなければならない!」
ルッカ「切り拓かれた未来をこの目で見るため! 切り拓かれた未来をこの手につかむため!」
ルッカ「『みどりのゆめ』よ!! 私たちに……もう一度、奇跡を与えなさい!!!」
ほむら「……う……あ……?」
ロボ「ム……グゥ……。ワ、ワタシハ……一体……」
ルッカ「ボケーッとしてんじゃないわよ、ふたりとも!」
ほむら「……ルッ、カ……?」
ロボ「ワタシたちハ……眠っていたのデスカ……? トテモ嫌な夢を見せられていたヨウナ……」
ルッカ「全部ラヴォスの仕業よ。あいつの思いどおりになんか、させるものですか!」
ほむら「あなたが、私たちを目覚めさせてくれたの……? 一体どうやって……」
ルッカ「セイセイセイ! そんなもんはあとでいいでしょ!」
ほむら「そ、そうね……。今は、ラヴォスをなんとかしなきゃ……」
ロボ「シカシ、状況は芳しくありマセン。ルッカのおかげで全滅こそまぬがれマシタガ……」
ルッカ「ま、ね。さーて、どうしたものやら……」
ほむら「……まさに、悪夢だったわ」
ロボ「ほむら?」
ほむら「ラヴォスが見せた夢……。口にするのもはばかられるぐらい……」
ルッカ「ちょっとちょっと。夢の話は今はどうでもいいでしょ」
ほむら「けれど、それが仇となった。ラヴォス……ヤツは、失敗したわ」
ルッカ「え?」
ほむら「私たち魔法少女がどういう存在か、まざまざと見せ付けられた」
ほむら「それはつまり、私の身体は人形。外付けのハードウェアでしかないということ」
ロボ「ほむら……その話ハ……」
ほむら「聞いて。別に私は、自虐するためにこんなことを言っているのではない」
ほむら「私の『本体』はソウルジェム。身体なんていくらでも交換できる」
ほむら「逆に言えばいくらでも復活するものは、それは『本体』ではないということよ」
ルッカ「! まさか……」
ほむら「ラヴォスの『本体』は、『右のビット』よ!」
「……コオオォ……ハアアァァ……!」
『天泣/必殺の一撃』
ルッカ「っ……! いきなり撃ってきやがったわ!」
ロボ「ラヴォス……焦っているのデスカ……?」
ほむら「まんまとだまされたわ。あの姿、行動……すべて中央に意識が向くよう仕向けられた、巧妙な罠」
ルッカ「突破口を見つけさせないため、抗う意志を奪うため、か……」
ロボ「右のビット……イエ、ラヴォス本体。言うなれば『ラヴォスコア』……」
ロボ「アレは1体になった時、最も隙ができマス!」
ほむら「なら、今までどおり……コア以外をつぶすわよ!」
ルッカ「おおおーッし!!」
「さんにんわざ『トリプルボム』!!!」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」
ほむら「ここよ……! ルッカ! ロボ!」
ロボ「充填120%! ワタシの中のエネルギーを暴走させマス……。タトエ、この体が動かなくなろうトモ!」
ルッカ「私の全魔力をぶつけてやる……。『フレア』……それが、私の最大魔法!」
ほむら「すべての武器も、爆弾も……叩き込んでやるわ、フルバーストよ。弾倉が空になるまで……!」
ほむら「すべて終わらせる……これで!!」
ルッカ「ラヴォス! 私たちの全力、その身に受けなさい!!」
ロボ「アナタには決して屈しマセン! それガ、ワタシたちの鋼の意志!!」
「さんにんわざ『オメガフレア』!!!」
『命活/自分以外蘇生』
ルッカ「くっ……あのヤロー!!」
ほむら「無視して! 狙うべきは、コアのみよ!」
ロボ「このまま……突っ切りマスッ!!」
「……コオオォ……ホオォォォ……! ……コオオォ……ハアアァァ……!!」
ほむら「いけええええええーッ!!」
「……コオオォ……!! キュオオハアアァァァ……!!!」
ズガガガガアアアアァァァァ!!!!!
ほむら「ぐっ……!?」
ルッカ「う、受け止められた……!」
ロボ「中央の人型ガ……! コアをかばってイマス……!」
ほむら「やっぱり……本体は、あいつ……!」
「……コオオオォ……ハアアァァァ……!!」
ルッカ「うぎぎぎぎぎ……!」
ロボ「ググググ……オ、押し返されマス……!」
ほむら「耐えるのよ……ふたりとも……! なんとか……押し切って……!」
ルッカ「分かって……るっ……ちゅーのおお……!!」
ロボ「オオオオォォ……!!」
ほむら(もう少し……あと少しなのに……!)
「……コオオオォ……!! オォハアアァァァ……!!!」
ズ...ズズズ...!! ズズズズ...!!!
ルッカ「だ、ダメだ……あいつの力のほうが強い……!」
ほむら(あと一撃……ほんの小さなきっかけさえあれば、押し切れるのに……!)
ほむら(こんな……! こんなことって……!!)
ロボ「ほむら……。ゆっくりデス……。ゆっくり手を伸ばしてクダサイ……!」
ほむら「え……!?」
ロボ「ほんの少しデモ押し返す力が弱まるだけデ、致命的となりマス……! デスカラ、ゆっくりデス……」
ルッカ「ロボォォォ……! あんた……こんなときに、あに言ってんのよおおお……!」
ロボ「ラヴォスの攻撃デ……ワタシの体はボロボロデス……!」
ロボ「背面パーツモ、外れそうデス……! 少し力を加えれバ、ほむらでも簡単に外せるデショウ……」
ほむら「なんの……くっ……ことよ……!?」
ロボ「これはアナタがくれたものデス……! ソシテ、ルッカが内蔵してくれたものデス……!」
ロボ「それを今……お返シ、シマス……! 取り出すのデス……ほむら……!」
ほむら「……! まさか……」
ロボ「サア……受け取ってクダサイ、ほむら……!!」
ロボ「それは『始まり』デス……!」
ロボ「それは『決意』なのデス……!」
ロボ「アナタが戦うために手にシタ、最初の武器……!」
ロボ「アナタが大切なものを守るために生み出シタ、意志のカタチ……!」
ロボ「それはアナタと最も長く付き合イ……そして最も多く活躍してきたはずデス……!」
ロボ「ワタシたちと出会う前モ……出会ったあとモ……それはアナタのそばにイタ……!」
ロボ「それはいのちを傷つけるものデスガ……同時ニいのちを守るものでもありマス……!」
ロボ「困難ニ、敵ニ……抗い続けるタメ、乗り越えるタメニ……手にしなければならなカッタ……!」
ロボ「ほむら、ワタシハ……いつかアナタガ、それを手放す日がくればイイト……そう願いマス……!」
ロボ「ソノ……未来のタメニ……!!」
ほむら「これは……!」
ロボ「アナタのそれガ……切り拓かれた未来へと続ク、一歩目とナル……!」
ロボ「サア、ほむら……! ワタシたちニ、希望ヲ……!!」
ほむら「……!」
ルッカ「やれえーッ! ほむらああーッ!!」
ほむら「『パイプ爆弾』ッ!!!」
「……コオオォ……ホオォォォ……。……コオオォ……ホオォォォ……!」
「……コオオオォ……ハアアァァァ……!! ……オオォォ……フゥ、ハアァァ……!!」
「キュオオ……オオ……アアア……!! キュオオアアオアアァァ……!!」
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!」
「キュアアァオオオォォォアオォォキュアァオアオォォォォオオン!!!!!」
「キュアアアアアオオオオアアアアアキュアアアハアアオオオオオオオ……ン……ッ…………!!!!!!」
ほむら「……」
ルッカ「ラヴォスが、消えていく……! 今度こそ、本当に……」
ロボ「やりマシタ! ワタシたちはついニ、やったのデス!」
ほむら(なぜ本体が『右側のビット』だったのか……)
ほむら(消滅の瞬間、コアの中心部にかすかに見えた宝石のようなもの……)
ほむら(ラヴォス……。あなたは……もしかして……)
まどか「ほむらちゃーん!!」
ほむら「! まどか……。それに、みんなも……」
さやか「奇跡だよ! 誰ひとり欠けることもなく、ラヴォスを倒せるなんて!」
カエル「いいや。それは違うぞ、さやか。これは俺たちのあきらめない心が生んだ必然だ」
クロノ「言ったろ? 誰も犠牲になんかならないって」
エイラ「エイラたち、最強!」
マミ「ほんと、みんなのおかげね」
魔王「チッ……。ラヴォスは私がこの手で葬り去るべき相手。余計なことをしてくれたな、お前ら」
杏子「よく言うぜ。ジール戦だけでヘロヘロだったくせによ」
マール「よーし! みんな集まって! 勝利のポーズ、いっくよー!」
ルッカ「いいわね、ここはビシッと決めるわよ!」
まどか「ほら、ほむらちゃんも」
ほむら「待って、押さないで……。私は端っこでいいわよ……」
ロボ「駄目デス。ほむらは当然、センターデス」
マール「せーの! 勝利のポーズ、決め……」
QB「やあ、おめでとう。まさか君たちがラヴォスを倒すなんてね。本当に驚きだよ」
さやか「……うわ……出た……」
ルッカ「インキュベーター……」
QB「おや? なんだろうね、このアウェイ感は。感情のない僕でも思わずブルってしまうよ」
魔王「貴様……。このKYめ」
ほむら「消えてくれるかしら? せっかくの祝賀ムードを血で染めたくはないのだけれど」
QB「言われなくても仕事が終われば消えるよ」
クロノ「仕事だって?」
QB「彼女のエネルギーの回収さ」
マール「彼女……?」
サラ「……ぅ……」
まどか「サラちゃん!」
魔王「なに!?」
サラ「……こ……ここ、は……」
まどか「サラちゃん! ああ……サラちゃんだ! しっかりして!」
魔王「サラ! ……生きている……確かに、意識がある……!」
ほむら「ラヴォスとの同化が解けたの?」
QB「まあ、そういうことだね。お疲れさま、サラ。よく今までラヴォスを抑えてくれたものだよ」
サラ「まどか……。まどか、なのね……」
まどか「そうだよ、わたしはここにいるよ……。また会えるなんて……」
サラ「ラヴォス、は……」
クロノ「もういない。僕たちが倒した。もう何も心配はいらないんだ!」
サラ「……殺……したのですね、ラヴォスを……」
ルッカ「? そうだけど……。なに? まるで殺してはいけなかったと言いたげな表情ね」
サラ「そんなことは……ありません……。ただ……」
カエル「ただ? どういうことだ、まだ何かあるのか?」
サラ「終わっていない……。絶望の連鎖は、途絶えてはいません……」
ほむら「……え?」
QB「いやいや、これでいいんだよ。調停者によって争いは調停された。ラヴォスの死という形でね」
マミ「キュゥべえ……?」
QB「僕は散々言ってきたはずだよ、協力すべきだって。正直、君たちの非協力的な態度には手を焼かされた」
QB「まあ、結果的には僕の望むとおりの結末を迎えられたわけだから満足だけどね」
杏子「テメェ、何が言いてえんだ。事情通ですって自慢したいのか?」
QB「説明をお望みかい? 『調停者』とはラヴォスとヒト、二者の争いを調停する者のことだ」
QB「つまりは『ラヴォスを倒しうる可能性を持つ存在』ってことだね」
QB「もっと分かりやすく言おうか。要するに君たち魔法少女のことだよ」
まどか「え……?」
QB「調停者は『凍てついた炎』によって選ばれる」
QB「凍てついた炎とはあらゆる望みをかなえてくれるもの」
QB「ま、そういうことだよ」
QB「ラヴォスは死なない。たとえ殺したとしても、その無念が呪いを生む」
QB「呪いは調停者を取り込み……生まれ変わり……最後には『時喰い』となって宇宙を無に帰す……」
QB「永遠に終わることのないイタチごっこ……。けれど、それをやめることはできない」
QB「この宇宙は僕たちのものだ。渡すわけにはいかない」
エイラ「このウサギ、なに言ってる? エイラ、頭、火山。マミ、解説!」
マミ「ご、ごめんなさい……。私も何がなんだか分からないわ……」
QB「理解する必要はないよ。君たちの役目も僕の役目も、サラの役目も終わっているんだから」
ロボ「どういうことデスカ……?」
QB「大丈夫。君たちが殺したラヴォスの呪いは全部サラが引き受ける。君たちなら分かるだろう?」
QB「彼女の向かう先――魔法少女サラ・キッド・ジールの希望と絶望が相転移した、その先にあるものが」
まどか「……ま……まさ、か……」
QB「今度は君の番だ、サラ。できれば、成長には大いに時間をかけてもらいたいものだね」
QB「そのあいだに次の候補を探しておくから」
QB「まあ、そのまま死んでくれるのが一番いいんだけどね」
サラ「……まどか……私、分かったの……」
まどか「サラちゃん……?」
サラ「なぜ私がここにいるのか。私は『私』であって、同時にそうではなかったんだってこと」
サラ「『私』が私をあなたと会わせた理由……」
サラ「まどかと『私』は……時の彼方で逢った、ような……そんな記憶がある……」
まどか「なに……? 何を言ってるのか、分かんないよ!」
サラ「大丈夫……。あなたの……思う、とおりにして……」
サラ「……ごめんね、まどか……」
まどか「サラちゃん!?」
QB「さあ、祭りの始まりだ。存分に楽しむといい」
ズズズズズズ...!!!
さやか「な!? ゲ、ゲート!? とんでもなくデカいよ!?」
カエル「魔王城の時よりもさらに巨大だ……! 飲み込まれるぞ! 下がれ、さやか!」
魔王「無駄だ! どこに逃げようと、この大きさのゲートからは誰も逃れられん!」
杏子「ちくしょう! 今度はどこに飛ばされるんだ!?」
マール「ク、クロノ……!」
クロノ「くそっ! みんな固まれ! 手を握るんだ!」
エイラ「マミ!」
マミ「エイラ……絶対に離さないで……」
ルッカ「いい!? それぞれが握っているのは、相手のいのちよ!」
ロボ「タトエどこに飛ばされようト……みんな一緒デス!」
まどか「ダメ……サラちゃんが……!」
ほむら「まどか、お願い! 今は自分の安全だけを考えて!」
まどか「ほむらちゃん……」
クロノ「来るぞっ!!」
グアアアアアアアオオオオオオオオン!!!!!
…………
………
……
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……ぅ、く……」
ほむら「……ここ、は……」
「――♪―♪――♪―♪―♪――♪――♪―♪―♪――」
ほむら「……? この音楽は……?」
『5』
ルッカ「やれやれ。なんとか全員無事のようね」
クロノ「なんだ、ここは……? いつの時代だろう?」
マール「見て、クロノ……。パレードやってる……。ここって、リーネ広場……?」
ルッカ「ロボ。時空ジャイロは何年を指してる?」
ロボ「……」
ルッカ「ロボ? どうかしたの?」
『4』
さやか「……そんな……まさか……」
カエル「さやか?」
エイラ「マミ、おかしい! 顔、真っ青!」
マミ「……信じられない……」
魔王「杏子。その様子を見るに、私の推測は当たっているのだな」
杏子「……ああ……」
『2』
まどか「……う……あれ……? ほむら、ちゃん……?」
ほむら「まどか……逃げて……」
まどか「え……?」
ルッカ「ちょっと、ロボ! 黙ってちゃ分かんないわよ。ここは一体いつなの?」
ロボ「……ワタシの時空ジャイロが故障でなけレバ……」
『1』
ロボ「A.D.2011……。ほむらたちの、時代デス!!」
ルッカ「なんですって!?」
サラ「アハハハハハハ!」
QB「この世のすべてが戯曲ならば悲しいことなど何もない」
QB「悲劇ではあるかもしれないけれど、ただ、そおいう脚本を演じただけ」
QB「芝居は止まって、もう地球は一周だって回転しない。物語は転換しない」
QB「すべての運命の不幸を無くそうとする、地上をマホウで埋め尽くし」
QB「全人類を戯曲の中へ取り込もうとする、動く舞台装置」
QB「おめでとう、サラ。これからは君の独り舞台だ」
QB「明日も明後日も……『ワルプルギスの夜』さ」
第17話「時の彼方で逢った、ような……」 終了
セーブしてつづける(最終話「私の、最高の友達」へすすむ)
ニアセーブしておわる
セーブしないでおわる
最終話「私の、最高の友達」
このセーブデータをロードします。よろしいですか?
ニアよろしい
よろしくない
A.D.2011 見滝原
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」
まどか「……ウソ……ウソだよ……! サラちゃんがワルプルギスの夜だなんて……!」
ほむら(こういうことだったの……。ワルプルギスの夜……魔女――新たなラヴォス……!)
魔王「……杏子。魔女を元の人間に戻す方法を言え」
杏子「そ、それは……」
魔王「ないのか」
杏子「……」
ほむら「杏子!」
杏子「! な、なんだ?」
ほむら「あなたたちのパーティーは戦意喪失につき戦闘不能。ふたりを連れて下がって」
杏子「……分かったよ」
ほむら「さやか! マミ! 魔女退治は私たちの専売特許。あなたたちが先導するのよ!」
さやか「う、うん……。そうだよね……!」
マミ「やるしかないのね、この戦い……」
ほむら「ワルプルギスの夜を倒さない限り、未来はこない! いくわよ!」
劇団カミテ「――♪――♪―♪――」
マール「く、来るよ、マミちゃん!」
マミ「使い魔……! 彼女たちを突破しないことには、ワルプルギスの夜には届かない……!」
エイラ「蹴散らす! マミ! マール! 弾薬よろ!」
マール「オッケー……。『アイスガ』!!」
マミ「『無限の魔弾』!!」
エイラ「キタキタ! 『3段キック』!!」
「さんにんわざ『ティラーレ・イン・ポルタ』!!!」
ズドドドドドドド!!!
クロノ「すごい! 無数の氷塊と弾丸がエイラに向けて発射され……」
クロノ「それらのすべてが彼女の蹴りによって軌道を変えられている! 全方位高密度の弾幕だ!」
カエル「恐ろしいことしやがるぜ……。一歩間違えば自滅だぞ」
さやか「でも見て! おかげで、使い魔たちがほとんど殲滅された!」
クロノ「魔女への道が切り開かれたぞ!」
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!」
カエル「俺たちの出番だ……。いくぜ、ふたりとも!」
「さんにんわざ『三閃』!!!」
さやか「その壱! ゼット!」
クロノ「その弐! デルタ!」
カエル「その参! アスタリスク!」
「最終奥義……トライフォース!!」
ドドオン!!!
ワルプルギスの夜「アハハハ……」
ロボ「流れが来てイマス! ここを逃す手はありマセン!」
ほむら「ふたりとも……私の手を握って」
ルッカ「え? なによ、こんな時に。怖いの?」
ほむら「いいから早く!」
ほむら(時は戻った……忌まわしきこの瞬間に。砂時計の砂は、今再び流れ始めた!)
ほむら「『時間停止』!!」
ワルプルギスの夜「――――」
ルッカ「! これ……!」
ロボ「止まってイマス! 世界ガ……時間ガ、停止してイマス!」
ルッカ「ほむら……あんた……こんな魔法、使えたの!?」
ほむら「説明はあと。この一瞬に、私たちのすべてをかけるわよ……」
ロボ「了解デス!」
ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!! 『M136 AT-4』!! 『88式地対艦誘導弾』!!」
ロボ「『RPG-7』!! 『サークルボム』!! 『エレキアタック』!!」
ルッカ「『ナパームボム』!! 『メガトンボム』!! 『ファイガ』!!」
「さんにんわざ『全弾発射』!!!」
ズガガガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
ほむら「まだまだッ! 『タンクローリー』よッ!!」
ルッカ「『ロードローラー』だッ!!」
ロボ「『オールテレーンクレーン』デスッ!!」
ドゴオオオン!!!
ロボ「肉薄『マシンガンパンチ』!! WRYYYYYYYYYYーッ!!!」
ほむら「私たちも続くわよ、ルッカ! これを使いなさい!」
ルッカ「これは!」
ほむら「『PKP ペチェネグ』!! そして私は、『M60E4』!!」
ロボ「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
ルッカ「ドラララララララララララララララ!!!」
ほむら「アリアリアリアリアリアリアリアリ!!!」
ロボ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
ルッカ「ボラボラボラボラボラボラボラボラ!!!」
ほむら「WAAAAAAAANNABEEEEEEEEEE!!!」
ロボ「オラオラオラオラオラオラオラアラ!!!」
ほむら「7セリフ半にわたるパンチと銃撃のラッシュ!! ぶっつぶれよォォーッ!!」
ゴオオオ...!
ルッカ「この音は……!」
ほむら「来た! 『トマホークミサイル』!!」
ロボ「ワタシも同時に押し込みマスッ!!」
ロボ「『ロボタックル』!! ぶっ飛んでいってクダサイッ!!」
ワルプルギスの夜「――――」ズガガガガガガ!!
ロボ「ソシテ離脱!」
ドッグオオオオオン!!!
ほむら「とどめよ! ルッカ! ロボ!」
ルッカ「これが私の全力全開!!」
ロボ「ワタシたちの最高の技、受けてクダサイ!」
「さんにんわざ『オメガフレア』!!!」
ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
まどか「……っ!?」
魔王「あの爆炎は……」
杏子「ほむらだな……。張り切りすぎだろ、アイツら」
まどか「し、死んだの……? サラちゃ……ううん、ワルプルギスの夜は……」
ほむら「はあ……はあ……」
ルッカ「これでもかってぐらいやってやったわよ……これで……」
ロボ「……ッ! よけてください、ふたりとも!」
『虚夢/究極魔法攻撃』
ほむら「ぐっ!?」
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」
エイラ「魔女! ピンピンしてる!」
マミ「そんな……押していると思ったのに……」
カエル「俺たちの全力を合わせたというのに、この程度なのか!?」
さやか「ちくしょー! やっぱり強すぎる!」
マール「これが、ほむらちゃんの言っていた最強の魔女の力……!」
『異次元の闇が星の夢を食らう』
クロノ「! まずい、また攻撃が!」
魔王「『ダークマター』!!」
ワルプルギスの夜「アハ……!」
カエル「魔王!」
魔王「馬鹿笑いはやめてもらおうか。あの女を思い出す……」
魔王「杏子!」
杏子「おうよ! 『最後の審判』!!」
ズカァン!!
さやか「杏子……」
杏子「わりいな、待たせちまって。アタシらも加勢するぜ」
ほむら「もう一度陣形を立て直すわよ! みんな、気合入れて!」
クロノ「よし……!」
まどか「ジャキくん……」
魔王「鹿目まどか。戦いたくないのならば、ここより去れ。邪魔だ」
まどか「……ごめん、なさい……」
魔王「……お前の気持ち、分からんでもない」
まどか「……」
魔王「確かにあの魔女はサラだ。あいつは、すべてを消し去り、自らをも消えることを望んでいた……」
魔王「俺たち姉弟は、心に闇を持っている。黒き風の中で身を震わせている……」
まどか「……」
魔王「その闇を照らし、陽の光のぬくもりを教えてくれたのがお前だ」
まどか「え……」
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!」
カエル「クソッ! むちゃくちゃに動き回りやがって!」
ルッカ「ああ、もう! 照準が定まらない!」
ドガガガ!!
さやか「や、やばいよ! ワルプルギスの夜が、ビル群をなぎ倒しながらこっちに向かってくる!」
マミ「下敷きにされるわ! みんな、散って!」
エイラ「ダッシュ、ダッシュ! Bボタン!」
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!」
ロボ「! まずいデス、あっちの方角ハ!」
杏子「ジャキ! まどか! 逃げろーッ!」
魔王「なに!?」
まどか「あ……!!」
ドオオオーンッ!!!
ほむら「まどかぁーっ!!」
まどか「……。……」
まどか「……? ……あ、あれ……なんともない……?」
魔王「……ぐ……!!」
まどか「ジャキくん!? まさか……わたしをかばって……!」
魔王「チッ……俺としたことが……ぐ、がふ……っ!」
クロノ「ほむら! 魔王がやられた!」
ほむら「分かってる! マールは魔王の回復を!」
マール「う、うん!」
ほむら「それ以外はワルプルギスの夜を彼女たちから遠ざけるように動くのよ!」
まどか「ジャキくん! ジャキくん、しっかりして!!」
マール「動かさないで、まどかちゃん! 今、回復魔法をかけるから……」
まどか「こんな……わたしのせいで……! ごめんね……ジャキくん……」
魔王「……耳元で泣き喚くな……傷にさわる……」
まどか「だ、だって……」
魔王「……」
まどか「わたし……どうしたらいいか分かんないよ……」
まどか「強く決意したはずなのに……実際に目の当たりにしちゃったら……怖くて……」
マール「まどかちゃん……」
魔王「鹿目まどか。ヤツらを見ろ」
まどか「え……」
クロノ&カエル「ふたりわざ『エックス斬り』!!」
杏子「続くぞ、さやか!」
さやか「おっしゃあー! ふたりわざ『エックス突き』!!」
エイラ「『尻尾竜巻』!!」
マミ「『魔弾の舞踏』!!」
ロボ「『回転レーザー』!! いつもより多めに回しておりマス!」
マミ「さんにんわざ『ビッグトルネード』よ!!」
まどか「みんな……!」
魔王「あきれたヤツらだ。ここに来て、さらにその連携力に磨きをかけている……」
魔王「この絶望的な状況におかれて、なお、あきらめる気配を見せない……」
まどか「……」
魔王「実にうっとうしい……。そして、腹立たしい。特に暁美ほむら、ヤツはな……」
まどか「ほむらちゃんが……?」
ほむら「近接班を支援するわよ、ルッカ!」
ルッカ「『プリキュア・マーブル・スクリュー』ね!」
ほむら「いや、その技名は……ああ、もう! この際どうでもいいわ!」
魔王「魔王城で初めて会った時、ヤツは……俺と同じだと思った……」
魔王「すべてを犠牲にし、ただひとつのもののため……自らの命をも捨て去るつもりだと……」
まどか「……」
魔王「だが、どうだ。今のアイツは……。死ぬためではない。生きるために戦っている……」
魔王「アイツの周りの者たちが、そうさせたのだ……」
魔王「そして今は……受け取ったものに、報いようとしている……」
魔王「暁美ほむらと、その仲間……。あろうことか、魔王であるこの俺を受け入れやがった……」
魔王「まるでこの俺が……今、こうなることを信じていたかのごとく……」
魔王「俺はそれが許せん……。ヤツらの目論見どおりになってしまった自分自身にな……」
まどか「ジャキくん……」
魔王「これが最初で、最後だ……。二度とは言わん……」
まどか「え……?」
魔王「頼む……。俺を、俺たちを……救ってくれ」
魔王「……まどか姉さま……」
まどか「! ……」
魔王「……お前なら……でき……る……」
まどか「ジャキくん!?」
マール「大丈夫……。気を失っただけだよ……」
まどか「……」
マール「まどかちゃん。魔王の言ったこと……」
まどか「……わたし、は……」
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」
まどか「!」
ルッカ「な、なによ……この迫力……!」
ロボ「とてつもないゆがみを感じマス! 星全体が揺れているヨウナ……!」
杏子「とんでもねえ何かが来るぞ!」
ほむら「みんな、散開……い、いえ! 杏子、マミ! 防御結界を……!」
カエル「ダメだ、間に合わん!」
マミ「あ……ああ……」
『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド(天からふりそそぐものが世界を滅ぼす)』
さやか「うああああああッ!!」
マール「きゃああああーっ!」
エイラ「おおおおおっ!?」
クロノ「く、くそおーっ!!」
ほむら「こんな……! ああああああああーっ!!」
ワルプルギスの夜「アハハハ……キャハハハハ……」
ワルプルギスの夜「アハハハハハハハアハハハハハハハ!!!」
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」
さやか「くぅっ……」
杏子「ちくしょう……」
マミ「……なんて強さなの……」
ほむら「どうしてなの……? 何度やっても、アイツに勝てない……」
ほむら「ラヴォスを倒した全員の力で持ってしても、届かないなんて……!」
ほむら「……」
ほむら(繰り返すしか、ないの……? 今なら時間遡行は可能……)
ほむら(もう一度戻るべきなの!? あの、病院の一室に……!)
ほむら「……。……」
ほむら「……イヤ……イヤよ……」
ほむら「もう、同じ時間を繰り返すのはたくさんだわ! 私は何も捨てたくない!」
ほむら「ルッカ……ロボ……クロノにマール……みんなとすごした時間……」
ほむら「それらをすべてなかったことにするなんて、私にはできない!」
ほむら「立って……立つのよ、暁美ほむら! 顔を上げるの!」
ほむら「あきらめてはいけない……! 私は未来を、希望をこの手につかむんだ!」
ほむら「私の戦場は、ここなのよ!!!」
ほむら「……!?」
まどか「もういい。もういいんだよ、ほむらちゃん」
ほむら「まどか……?」
まどか「あなたのその言葉が聞けて、うれしかった。その気持ちが、わたしに力を与えてくれたの」
ほむら「まどか……まさか……!?」
まどか「ほむらちゃん、ごめんね。わたし、魔法少女になる」
ほむら「そんな! それじゃ……それじゃ私は、なんのために……」
まどか「ほむらちゃん、良かったね……。たくさん、友達ができて……」
まどか「だからもう……大丈夫だよね」
ほむら「それでも……それでも私は、あなたを……!」
まどか「わたし、やっと分かったの。かなえたい願いごと見つけたの」
まどか「ずっと迷って……みんなに守られて、望まれて……そんな今のわたしが、やっと見つけ出した答え」
まどか「絶対に、今日までのみんなを無駄にしたりしないから。信じて」
ほむら「まどか……!」
QB「待っていたよ、まどか。君が決心してくれることを。君との契約、それは僕の悲願だ」
QB「君が、次のラヴォスになってくれるんだね?」
QB「たかだか10年ぽっちといえども、宇宙の寿命が延びるのはいいことだ」
まどか「……」
QB「特別な存在である君なら、どんな途方もない望みだろうと叶えられるだろう」
まどか「本当だね?」
QB「さあ、鹿目まどか――その魂を代価にして、君は何を願う?」
まどか「わたし……」
まどか「はぁ……ふぅ……」
まどか(……サラちゃん……)
まどか「私の願いは……『すべての魔女を、生まれる前に消し去りたい』」
まどか「『すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女を、この手で』」
QB「……っ!!」
QB「その祈りは……そんな祈りが叶うとすれば、それは因果律そのものに対する反逆だ!」
QB「君は……本当に神になるつもりかい!?」
まどか「神様でもなんでもいい」
まどか「今日まで戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、わたしは泣かせたくない」
まどか「最後まで笑顔でいてほしい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる。変えてみせる」
まどか「これがわたしの祈り。わたしの願い」
まどか「さあ! かなえてよ……インキュベーター!!」
QB「――――ッ!!」
まどか「……」
ほむら「……」
QB「……」
まどか「……?」
ほむら「……」
QB「……」
まどか「……え……? あ、れ……?」
ほむら「何も……起きない……?」
QB「……」
ブワアアアアーッ!!!
ルッカ「な、なに!?」
ロボ「雲ガ……!? 空ガ、晴れていきマス!」
マール「何が起こったの!?」
クロノ「! あれを見ろ、みんな!」
ワルプルギスの夜「アハハハ……ハハ……キャハ……アハ……ハ……!!」
マミ「ワルプルギスの夜が……」
エイラ「崩れてく! ボロボロ!」
さやか「た、倒したの? あたしら……」
カエル「そんなバカな!? 俺たちは何もしていないぞ!?」
杏子「嵐が去った……。黒き風が……やんでやがる……!」
まどか「ど……どうなってるの……? わたしが願ったために……?」
ほむら「でも、まどかは魔法少女になっていないわ!」
まどか「じゃあ……どうして……」
QB「……まどか。君の願いは確かに、エントロピーを凌駕したよ」
まどか「え、でも……」
QB「……こんなこと……僕に予想しろってほうが無理な話じゃあないか……」
ほむら「インキュベーター……?」
QB「『祈りは続いていた』んだ……!!」
キイィン! キュイン! キイイイイン...!!
さやか「ワルプルギスの夜から光が!?」
マール「ば、爆発するの!?」
ルッカ「いえ、違うわ! でも……」
ロボ「飲み込まれマス!」
カアアアアアアアアアアアアッ!!!
まどか「あっ!?」
ほむら「まどかーッ!!」
…………
………
……
まどか「……ハッ!?」
まどか「……ここは……」
まどか「宇宙……? でも、息ができる……」
まどか「……?」
まどか「……な、なにあれ……!? あの青い星……地球……!?」
まどか「でも、だとしたら……地球を取り囲む、あの……黒くて、怖いくらいまがまがしいモヤは……!?」
「君の願いによってもたらされた新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだ」
まどか「!? この声……キュゥべえ!?」
「その壮大すぎる祈りをかなえた対価に、背負うことになる呪いの量が分かるかい?」
「ひとつの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられた」
「それはすなわち、ひとつの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味する」
「当然だよね? これが……君の祈りの代償だ」
まどか「……」
「大丈夫よ、まどか」
まどか「え!? 別の声……? でも……これって……!」
「あなたの願いは、すべての魔女を消し去ること」
「本当にそれがかなったんだとしたら、誰も……」
「そう……。この私でさえ……」
サラ「もう絶望する必要なんて、ない!!!」
「サラ・キッド・ジールの願いは『鹿目まどかを助けること』」
「『すべての宇宙、過去と未来のすべての時空において』……ね」
「すべての時間で永遠に戦い続ける。未来永劫終わりなく、魔女を滅ぼす『概念』と成り果てる」
「それがまどか、君が背負うはずだった『業』だ」
「サラはそれを君の代わりに引き受けたんだよ。『助ける』ため、祈りを上書きしたんだ」
「これで彼女の人生は……始まりも、終わりもなくなった」
「この世界に生きた証も、その記憶も、もうどこにも残されていない」
「もう誰もサラを認識できないし、サラもまた、誰にも干渉できない」
「彼女はこの宇宙の一員では、なくなった」
まどか「そんなのダメだよ……! そんなの、わたし望んでない!」
まどか「ひどすぎるよ……! こんな……死ぬよりも、もっとひどい……わたしのせいで……!」
サラ「それは違うわ、まどか」
まどか「! ……サラちゃん……」
サラ「今の私にはすべてが見えるの。かつてあった宇宙も、いつかあり得るかもしれない宇宙も、みんな」
サラ「私は……本当の時間軸では、ラヴォス復活の余波で時空の彼方に吹き飛ばされた……」
サラ「何もないその場所をさまよい……ラヴォスのかけらにとりこまれ……『時喰い』となる……」
サラ「生命の負の感情を取り込んで成長し、時空そのものを喰らい、すべてを無に帰すはずだった……」
サラ「でもね。そうなる前に、あなたを見つけたの。あなたの嘆きを聞いたの」
サラ「助けてあげたい、って思った……。無意識に手を伸ばしていた……」
サラ「だからこうして、あなたと出会えたのよ……」
サラ「あなたの祈りが、私の憎しみを癒し……『時喰い』となる絶望の運命を変えてくれた……」
まどか「だけどサラちゃん! サラちゃんはそれでいいの!?」
まどか「ひとりぼっちなんだよ……。大好きな人たちとも離れ離れで、こんな場所に……!」
サラ「ふふ、まどか。私が言ったこと、忘れたの?」
サラ「私はずっとあなたのそばにいる。ずっと、守ってあげるから……って」
サラ「ラヴォスに取り込まれていた時も……今も……そしてこれからも、ずっと……」
サラ「私はあなたのそばにいるから」
サラ「あなたは私を、私たちを救ってくれたんだもの。それぐらいはしなきゃ、ね?」
まどか「でも……私はサラちゃんのこと……忘れちゃうのに……」
サラ「魔法少女は夢と希望をかなえる存在。希望を抱くのが間違いだなんてことは、絶対にない」
サラ「あなたが教えてくれたことよ。だからきっと、あなたが信じ続けてくれるなら……」
まどか「サラちゃん……。わたし、忘れない! 絶対にあなたのこと、忘れないよ!」
サラ「私もよ、まどか……。じゃあこれは、その証ね」
まどか「これ……サラちゃんのリボン……」
サラ「代わりにあなたのリボンをちょうだい? ほら……結ってあげる」
まどか「……あ……これ……」
サラ「まどかのポニテと私のツインポンポン。ジャキなら、どっちを気に入ってくれるかしらね?」
まどか「……」
サラ「ごめんね、まどか。私、みんなを迎えに行かないと」
まどか「サラちゃん! 行かないで……!」
サラ「大丈夫。きっとまた会えるわ」
サラ「私も信じ続けるから。希望を……。本当の奇跡は、きっとあるんだってこと」
サラ「今は、とても安らかな気分……。あなたのくれたあたたかさが、とても心地よい……」
サラ「……ありがとう……」
まどか「サラちゃん!! わたし、わたしたち……!!」
サラ「まどか……。あなたは私の、最高の友達よ」
…………
………
……
A.D.2011 見滝原
♪エピローグ ~親しき仲間へ~
ほむら「……お別れね、みんな……」
マール「そうだね……さみしいけど……」
ルッカ「A.D.2011に現れたラヴォスの残滓――『夢喰い』も倒した。私たちがここに残る理由もないわ」
ロボ「ゲートの力が弱まってイマス。オソラク、閉じる寸前なのデショウ」
カエル「みな、それぞれの時代へ……か」
エイラ「家、帰る! みんなバラバラ。悲しい。でも、行く!」
魔王「フン。仲間ごっごは終わりだ。これで清々する……」
クロノ「力になれなくて申し訳ないけど……魔獣退治、がんばってな」
ほむら「ええ。それが私たちの役目だから」
まどか「……」
エイラ「マミ強かった! エイラ楽しかった!」
マミ「エイラ……」
エイラ「巣立つ時、来たら、信頼して送り出す!」
マミ「そうね……それが仲間だって……。分かってるのよ? でも……」
エイラ「泣くな、マミ!」
マミ「ううん、いいのよ……エイラ……。こういうときは、泣いたっていいの……」
エイラ「……そうなのか。マミ、たくさん教えてくれた。色々。エイラ、かしこくなった」
エイラ「だから……泣く。泣いてすっきりする! 見ろ、マミ! エイラ、泣いてるぞ!」
マミ「ふふ……。ほんとね……。エイラのそんな顔……初めて見たわ」
エイラ「ワハハ! 不思議! 涙、笑顔、いっしょに出る! なんだこれ!」
マミ「エイラ……ほんとに……あなたと会えて良かったわ……」
マール「エイラ。遠い遠いおばあちゃま。元気な子供を生んでね。でないと私が困っちゃうから」
エイラ「おー、任せろ! 子供生む! ねねする! おっぱいやる!」
マミ「マールさんも、ですよ。ひとごとじゃありませんから」
マール「うーん、まだ早いと思うんだけどなあ」
マミ「ふふ……。じゃあいずれ、ね?」
エイラ「マミ、お前もだ! そのおっぱい、腐らすな!」
マミ「そうね……。いつか私にも、そんな日が来ればいいわね……」
エイラ「エイラ、行く。サヨナラだ!」
マミ「さようなら、エイラ! 元気でね……」
エイラ「マミ! 離れていても、ずっとトモダチ!」
マミ「……ええ、もちろん!」
カエル「やれやれ。泣いたり笑ったり、にぎやかな連中だな。こういうものはもっと厳かにやるもんだ」
さやか「師匠……」
カエル「……別れに多くの言葉はいらないさ」
クロノ「そうだな、言葉とは限らない。さやかにキスでもしてもらったらどうだ?」
さやか「え、ええ!?」
カエル「何を言い出すかと思えば……。お前がそういう冗談をいうヤツだとは思わなかったぞ」
クロノ「冗談じゃないよ。キスで姿が戻るっていうのは、ハッピーエンドの定番だろ?」
カエル「フ……。ハッピーエンド、か……」
さやか「あ、あのさ、師匠。ほっぺなら別にいいよ? まー、これまでのお礼ってことでさ」
カエル「残念ながらお前では女としての魅力が足りんな。磨いてから出直して来い」
さやか「なんだよそれ! もー、結局最後までこんなんかよ!」
カエル「さやか。これはお前にやる。受け取れ」
さやか「ちょ!? 投げないでよ!」
クロノ「これ……勇者バッジか」
カエル「俺は勇者は引退だ。お前が継げ」
さやか「あたしが……」
カエル「……まあ、お前の時代に勇者など必要ないか。それは卒業証とでも思っておけ」
さやか「……」
カエル「じゃあな」
さやか「……師匠、待って!」
カエル「なんだ?」
さやか「グランドリオン出してよ。それでさ、空に掲げて……」
カエル「こうか?」
さやか「そのまま動かないでよ。で、あたしの剣を師匠の剣に合わせて……」
カエル「おい、何をする気だ?」
さやか「よし。……すぅ……ふー……。……」
さやか「我が名は美樹さやか!」
カエル「!」
さやか「師匠の願いと、こころざし……そしてこの勇者バッジ……」
さやか「今ここに受けつぎ……」
さやか「『正義』を―――演ずるッ!!!」
カエル「……」
さやか「バイバイ、師匠」
カエル「……さらばだ。我が弟子、美樹さやかよ」
魔王「……」
杏子「オイ、待てよ。最後くらい、なんか言うことないのか?」
まどか「ジャキくん……。サラちゃんを、探すの……?」
魔王「……」
杏子「サラ? 誰だよ、それ?」
まどか「……」
まどか「これ、あげる。サラちゃんのペンダント……お守りだよ」
魔王「……」
杏子「オイ! だから別れの挨拶ぐらいしてけって! これだからお前は……」
魔王「達者で暮らせ、杏子。鹿目まどか」
杏子「! ……ヘッ。お前こそ、ちゃんとメシ食えよ!」
魔王「……」
まどか「さようなら、ジャキくん……。がんばって……。きっと、見つかるよ……」
ロボ「ルッカ、ほむら。ワタシも未来で元気にやっていきマス。心配いりマセン」
ほむら「ルッカ? ロボにお別れしときなさいよ」
ルッカ「……」
ロボ「やはり気づいていたのデスネ」
ルッカ「当たり前でしょ……。ほむら、あんただって……分かってるくせに、何よその態度は」
ほむら「……」
ルッカ「ロボは廃墟となった未来で生まれたわ。でも私たちがラヴォスを倒したことで未来は変わった」
ルッカ「今は、たぶん……ゲートが開いているせいで、まだ世界はつながっていてロボはここにいられる」
ルッカ「でも、新しい未来ではロボの存在は……」
ロボ「ハハ、そんなことはないデス。きっと新しい未来でもワタシは……」
ルッカ「バカ! ロボのバカ! 悲しいときは素直に悲しみなさい!」
ルッカ「こっちが余計に……悲しくなってくるじゃない……」
ロボ「……思いやりの気持チ。アナタたちが教えてくれたワタシの宝物デス。感謝してイマス」
ロボ「ダカラ……泣かないでクダサイ」
ほむら「あなたに涙は似合わないわよ。気持ち悪いからやめてちょうだい」
ルッカ「ちょ、何よそれ! ひとが感傷に浸ってる最中に……!」
ほむら「心配しなくても、新しい未来でもロボはきっと生まれてくるわよ」
ルッカ「……ずいぶんはっきり断言するのね。それこそ、あんたらしくないわ」
ほむら「そうね、自分でも驚きだわ。……きっと、ロボが言うことだからでしょうね」
ロボ「ワタシがデスカ?」
ほむら「あなたが私に教えてくれたこと。あきらめなければ、信じ続ければ……」
ほむら「道は必ず開かれる。希望は、必ずある」
ロボ「……」
ほむら「ロボ。あなたは人間よりも人間らしかったわ」
ほむら「あなたのおかげよ。私に人間の心を与えてくれて……ありがとう」
ルッカ「そうね! それこそほむらなんかより、ずっと人間っぽかったわ!」
ほむら「ちょっと、どういう意味? 怒るわよ」
ルッカ「ハン。気持ち悪いとか言われた仕返しだっつーの」
ロボ「ハハ。本当にアナタ方がうらやましいデス」
ロボ「不思議デスネ。ふたりを見ているト、内蔵機器の温度が高まるのを感知してしまいマス」
ルッカ「それが心よ、ロボ」
ロボ「……心……ワタシガ……」
ほむら「その心……大切にね。さようなら、ロボ」
ロボ「……サヨウナラ、ルッカ。ほむら……」
ルッカ「……さよなら……」
ロボ「!」ドンガラガッシャーン!!
ルッカ「ちょっと、ロボ!?」
ロボ「ハハハ。いけマセンネ、盛大に転んでしまいマシタ」
ほむら「珍しいこともあるものね。大丈夫なの?」
ロボ「ハイ、何も問題ありマセン。本当ニ……」
ロボ「……おっト……オイルでアイセンサーがかすんデ……」
ルッカ「いつかした話、覚えてる?」
マール「うん。死ぬ時に見る思い出の話……」
ルッカ「その人が見たかったのは、見せたかったのは、こういうことなのかもしれないわね」
マール「どういうこと?」
ルッカ「いろんな可能性。こんなお話もあるのかも知れないってこと」
クロノ「そうかもな。変な感じだよ。ほむらと最初に出会ったあの時が、もしなかったらと思うと……」
ほむら「懐かしいわね。あっちの時代、こっちの時代と飛び回ったものだから、時間の感覚が麻痺してるわ」
マール「その人は……救われたのかな?」
ほむら「……」
マール「時間を旅するって……結構大変だね。私には荷が重過ぎるかも……」
ルッカ「シルバードも壊したほうが良さそうね。もう、みんなとは会えなくなるけど……」
ほむら「それがいいと思うわ」
ほむら「クロノ。あなたには謝らなければならないことがたくさんあるわね」
クロノ「うん?」
ほむら「最初、私はあなたたちを利用してたんだと思う……」
ほむら「にもかかわらず、あなたは何も聞かずに私をずっと守ってくれた……」
ほむら「それに気づけなかった私は、一度あなたを死なせてしまって……本当にごめんなさい」
クロノ「いいよ、別に。女の子を守るのは男子の務めだからね」
ほむら「ああ、それと。リーダーの座を奪ってしまったことも謝らなきゃね」
クロノ「その話はもう勘弁してくれないか」
ほむら「マール。あなたには感謝してもしきれないわ」
マール「ほむらちゃん……」
ほむら「あなたはどんなときでも私のそばにいてくれた。自暴自棄になった時も、落ち込んだ時も……」
ほむら「何度あなたに元気付けられたことか、数え切れないぐらいよ」
マール「えへへ。私、それぐらいしか自慢できるものないから」
ほむら「あなたはいいお母さんになると思うわ」
マール「またそれー? どうしてみんな、私を人妻にしたがるのかなあ」
ほむら「早く、くっつきなさいってことよ。でないと、このメガネに取られるわよ」
ルッカ「メガネ馬鹿にすんなよ!」
ほむら「メガネを馬鹿にするなんて、とんでないわ。その利便性は十二分に承知してるわよ」
ルッカ「メガネより私に謝りなさいよ! さっきから私の扱い、ひどくない!?」
ほむら「そういうわけで、あなたのメガネは私がもらうわね」
ルッカ「なんでよ!?」
ほむら「記念よ。代わりに、あなたに貸した『PKP ペチェネグ』を持っていっていいわ」
ルッカ「いらないっつーの! てか別にあんた、目悪くないでしょ!」
ほむら「言ってなかったっけ? 私、昔は視力悪かったのよ」
ほむら「というわけで、はい。メガネいただき」
ルッカ「ちょ!? 返せ!」
ほむら「なかなかいい付け心地ね。どう、似合うかしら?」
クロノ「ハハ。あんまりイメージなかったから、よく分からないな」
マール「そうかな? 私は似合ってると思うよ。メガネ美人さんだ!」
ルッカ「だーかーらー! 冗談じゃなく私、それがないと全然見えないのよ!」
ほむら「あー、うるさい。まったく……。このうるささがなくなると思うと、少しさびしいわね」
ルッカ「裸眼じゃ、今目の前にいるほむらの表情すらほとんど見えないの! お願いだから返してってば!」
ほむら「……本当に……さびしくなるわね……」
マール「ほむらちゃん……」
クロノ「……ルッカが近眼で良かったな、ほむら……」
ほむら「そうね……。今のこの顔見られたら……何を言われるか分かったものじゃないわ……」
ルッカ「なに? なんのことよ? ちくしょー、全然見えない!」
マール「あ……! まずいよ、ゲートが閉じかけてる!」
クロノ「時間切れか。名残惜しいけど……」
ほむら「ええ、行って。大丈夫、すべてあるべき場所に戻るだけよ」
クロノ「ルッカ、行くぞ!」
ルッカ「ちょ、ちょっと! 強引に引っ張らないで。頼むからゆっくり……視界がボヤけてるんだから……」
マール「それじゃ、さよなら……ほむらちゃん!」
クロノ「さようなら、ほむら!」
ほむら「……ええ……さようなら……。クロノ……マール……」
ルッカ「ほむら!」
ほむら「! ……なに? はやく行きなさいよ。ゲートが閉じるわよ」
ルッカ「気が変わったわ。やっぱり私、またあんたに会いに来るから」
ほむら「……シルバードは壊すんでしょ?」
ルッカ「シルバードには頼らない。私が、新しいたーいむマシーーンを造ってやるわ!」
ルッカ「自分で造ったものをどう使おうが、誰にも文句は言わせないわよ。オーッホッホッホ!」
ほむら「ハア……。相変わらずね、あなたは。……できるの、そんなこと?」
ルッカ「できるに決まってるじゃない! なんたって私は……」
ほむら&ルッカ「天才ルッカちゃん、だものね」
ルッカ「アハハ!」
ほむら「ふふっ……」
ルッカ「何年、いえ、何十年かかろうが完成させてみせる。私の人生すべてをかけてでも……」
ルッカ「だから待ってなさい。必ず、会いに来るから」
ほむら「待つほうの時間は関係ないでしょ。この時代に来るんだから」
ルッカ「そういうこと言ってんじゃないわよ! 心構えの問題だっつーの!」
ほむら「分かってるってば、冗談よ。……信じてるから」
ルッカ「……へー? 意外なセリフが飛び出したわね」
ほむら「いけなかった?」
ルッカ「驚いただけよ。まあ……うれしいかな、少しだけ」
ほむら「それはそれは。慇懃無礼も使いようね」
ルッカ「ハン。照れ隠しぐらい見抜けないルッカちゃんだと思って?」
ほむら「……いつまで居残る気よ。帰れなくなってもいいの?」
ルッカ「おっと、そりゃまずいわ」
ルッカ「それじゃ……今言ったこと、忘れないでよ」
ほむら「忘れたくても忘れられないわよ。だいたいあなたは、いつだってそうしつこくて……」
ルッカ「『約束』だからね!!」
ほむら「!! ……」
♪コネクト (魔法少女まどか☆マギカ OPテーマ)
ほむら「……ええ……『約束』よ……!」
…………
………
……
この物語は、人間賛歌のお話。
魔法少女たちが、救われるお話。
まどかとそのお友達が、失ってしまったもの、ずっと望んでいたものを、手に入れるお話。
それは、永遠とは続かないけれど……。
でも、大丈夫。だって奇跡は、起きたのですもの。
誰にも認識されないはずの私の話を、こうしてみなさんが読んでくれたという、とても大きな奇跡が……。
あまたの時代を渡り歩いた彼女たちの旅は、ようやく現在に帰ってきました。
最後に、まどかとほむらさんの『今』を一緒に見ながら、この物語の幕としたいと思います。
ここまでお付き合いくださって、本当にありがとう。
語り部は私、サラが務めさせていただきました。
それではみなさん、また、いつの日か……。
エピローグ「奇跡も、魔法も――――あるのだから」
A.D.2013 ガルディア市国
ほむら「まどか、まどか……起きて」
まどか「……ふぇ?」
ほむら「目的地に着いたわ、バスを降りなきゃ」
まどか「え、あ! ね、寝ちゃってたの、わたし!? あ、降りまーす!」
ほむら「日本語で言っても通じないと思うけど……。あと、バッグ忘れてるわよ」
まどか「はわわわわ」
ほむら「……」ホムホム
…………
ほむら「時差ボケかしら? ずいぶんとぐっすり寝ていたわね、ヨダレも垂らして……」
まどか「もう~! 見てないで起こしてくれれば良かったのに!」
ほむら「ごめんなさい。あんまりにも気持ち良さそうだったから」
まどか「それにしても、卒業記念にほむらちゃんと海外旅行だなんて夢みたいだよ!」
ほむら「私もうれしいわ。まどかのご両親には感謝しなきゃ……無茶なお願いを聞いてもらったんだし」
まどか「あ、見て。喫茶店があるよ」
ほむら「ジェラテリア・バールね」
まどか「じぇら……なに?」
ほむら「アイスクリーム中心の軽食喫茶店のことよ。寄っていきましょうか?」
まどか「うん、そうだね。ちょっとおなかも空いてきたし!」
A.D.2013 ガルディア市国 ジェラテリア・バール
まどか「……」
ほむら「まどか? 注文しなくていいの?」
まどか「メニューが読めないよ……」
ほむら「ああ、まあ……英語じゃないからね。私が訳してあげるわ」
まどか「はああ~。高校ではもう少しちゃんと勉強しないとなあ」
ほむら「別に、まどかは普通よ。私が変なだけ」
…………
まどか「ん~、おいしい!」
ほむら「なかなかいけるわね、これ」
まどか「こうしてると、なんか……マミさんの紅茶を思い出すよ」
ほむら「今飲んでいるのはカプチーノだけれどね」
まどか「時の最果てでも、みんなでお茶会したよね……」
ほむら「……そうね、懐かしいわ。つい最近のことのように思える……」
まどか「……」
A.D.2013 ガルディア市国 ガルディア美術館
ほむら「これで一通り見て回ったわね。どうだった?」
まどか「うーん……変な感じだったよ」
ほむら「変な感じって?」
まどか「だって、ほら。A.D.600とA.D.1000のふたつの時代だけとはいえ、実際に見たことがあるのに……」
まどか「それが、ガラスの中で劣化した姿で……時の流れって、こういうものなのかなあ……って」
ほむら「……」
まどか「あ、でも! 絵画とか彫刻の展示は面白かったよ!」
ほむら「そういえば色々飾られていたわよね。何か気に入ったものはあったの?」
まどか「うーん……。『魔王と勇者』とか『王妃像』とか……『森の聖女』も……」
まどか「『私が大臣です』『千年祭』『空飛ぶ船』『鍛冶屋メルキオール』『探検家レバイン』……」
ほむら(多すぎない?)
まどか「あと、あれ! 『歴代王の肖像画』!」
ほむら「ああ……あったわね。そういうのも」
まどか「特に、あの……ウェヒヒヒ! 今思い出してもおかしいよ」
ほむら「なにが?」
まどか「ガルディア34世の肖像画。ぜんっぜん似てなかったよね!」
ほむら「分からないわよ。描かれた時には、ああいう容姿だったのかもしれないし」
まどか「え~……。あんな、ぶくぶくに太っちゃった姿は想像したくないなあ……」
ほむら「アンティークの展示もやたらあったわね……ティーセットとか……」
まどか「私、レプリカ買っちゃった。お土産にしようっと」
ほむら「今、買ったの? かさばるんじゃない」
まどか「……うん。ちょっと失敗しちゃったかも」
まどか「それで、これからどうする? もうホテルに戻る?」
ほむら「待って、最後に……どうしても行きたいところがあるのよ」
まどか「え?」
A.D.2013 ガルディア市国 リーネ広場跡
まどか「……ここって……」
ほむら「まあ、期待はしていなかったけれど。ほとんど見る影もないわね」
ほむら「リーネの鐘もない……。残っているのは台座だけ、か……」
まどか「……」
ほむら「パンフレットによると……『広場の象徴ともなっていた"リーネの鐘"は老朽化に伴い……」
ほむら「千年祭の年、当時の王女の名を冠した新しい鐘に付け替えられた』……。へえ……」
ほむら「『マールディアの鐘』か……。現物を拝めないのは残念ね」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「まどか、少しだけここで座って休んでいってもいい?」
まどか「うん、もちろん……」
ほむら「……」
まどか「……」
ほむら「急に冷えてきたわね……。もうすぐ日も暮れるし……」
まどか「うん……。ちょっと、風も出てきたかも……」
ほむら「寒くない、まどか?」
まどか「ん……大丈夫だよ」
ほむら「ごめんね、もう少しだけ……」
まどか「分かってる。ほむらちゃんの気の済むまで、ここにいていいよ」
ほむら「ありがとう……」
まどか「……」
ほむら「……」
まどか「……ねえ、ほむらちゃんは……」
カラーン...コローン...
まどか「えっ!?」
ほむら「なに、まどか?」
まどか「あ、え? な、なにが?」
ほむら「今、何か私に聞こうとしたでしょ?」
まどか「あ、や……別に……。それより、今……鐘の音が……」
ほむら「鐘?」
まどか「……ううん。やっぱりなんでもない……」
ほむら「? おかしなまどか……」
まどか「……」
まどか(気のせい、だよね……。ほむらちゃんも何も聞こえてなかったみたいだし……)
まどか(……そもそも、鐘はもうないんだし……)
まどか「……」
まどか「……? あれ……」
まどか「風……いつの間に、やんだんだろ……」
ほむら「……ねえ、まどか」
まどか「ん?」
ほむら「『奇跡』って、あると思う?」
まどか「……? どうしたの、急に」
ほむら「魔法は、確かに存在する。なら……」
まどか「ほむらちゃん? どこ見てるの……?」
ほむら「……」
まどか(空……? なんで空見てるの? 何かあるのかな……)
まどか「……」
まどか「飛行機雲……? それも、すごく長くて、キレイにまっすぐ伸びた……」
ほむら「私は、あると思う」
まどか「え……?」
ほむら「この世界には、奇跡も、魔法も……希望だって、あるのだから」
EDテーマ
♪遥かなる時の彼方へ
魔法少女まどか☆マギカ × クロノトリガー
ほむら「時の卵?」
The End
982 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/05/13 04:53:52.04 YfLkdqiTo 1579/1579ご愛読ありがとうございました。
この後セルジュがサラ関係なしの時喰い救って終わりか?
それとも魔法少女=調停者の設定だから彼は調停者になれないんだろうか