※前編(3話)+中編(4話)+後編(2話)+マルチイベント前編(3話)・後編(3話)+最終章(3話) の構成となります。
第13話(マルチイベント編-4)「虹色の貝がら」
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A.D.600 チョラス村
マール「見つからないねえ~。『虹色に輝くもの』の手がかり」
マミ「なにせ、まぼろしですから。そもそもどういうものなのかも不明ですしね……」
エイラ「エイラ、飽きた! 腹減った!」
マミ「とりあえず一息つきましょうか? ちょうど目の前に酒場がありますし」
マール「そうだね。それに、酒場は情報収集の基本だから何か分かるかも!」
…………
A.D.600 チョラス村 酒場
マール「あれ? なんだろ、ずいぶん騒がしいね」
マミ「わ……。なんだか、パーティーをやっているみたいですよ?」
トマ「さあさあ、皆の衆! 今日は俺のおごりだ! じゃんじゃん食って飲んで騒いでくれ!」
エイラ「マミ、おごりってなんだ?」
マミ「タダで好きに食べていいってことよ」
エイラ「マジか! 神! エイラも食う!」
マミ「あ、ちょっと、エイラ!」
マール「気前のいい人もいるものだね~」
マミ「完全に部外者の私たちがお邪魔していいんですかね……?」
マール「あの人誰だろ? 身なりを見る感じ、旅人さんみたいだけど」
初老の男「あれは探検家トマ・レバインだよ」
マール「えっ?」
初老の男「おっと、いきなりで悪かった。私はこの酒場の主人をやらせてもらっている者だ」
マスター「あのトマはこの村の出身でな。私とも旧知の仲なんだよ」
マミ「今日はあの人の誕生会か何かなんですか?」
マスター「いや、そういうわけじゃない。この騒ぎは、あいつが世紀の大発見をしたとか抜かしてな……」
マール「何を見つけたんだろ?」
マスター「それがどうも、伝説とされている秘宝『虹色の貝がら』の手がかりらしいんだ」
マミ「虹色!? それってもしかして……」
マール「きっと管理人さんが言ってた『虹色に輝くもの』だよ!」
マスター「その手がかりが正しければ、発見したあいつは大金持ち。これはその前祝いということらしいぞ」
マール「でもまだ、実際に見つけたわけじゃないんだよね?」
マスター「そこなんだよ、あいつの困ったところは。今日のコレも全部ツケにしろなどと言う始末でな」
マスター「まあ、地元だから許されているが。トマはこの村では人気者だからな……」
マスター「こんな僻地の村では、あいつが持ち帰ってくる旅の土産話ぐらいしか楽しみがない」
マスター「あちらこちらをフラフラしながら借金だけこさえてくる放蕩者だが……」
マスター「いつか大きいことを成し遂げてくれる。そんな夢を見させてくれるのが、あいつなんだよ」
マミ「好かれているんですね、トマさんは……」
エイラ「うま! うまうま!」
トマ「ハッハッハ! 実に見事な食いっぷりだ。見てるだけで腹いっぱいになるぜ」
トマ「それによく見ると美人さんだな。あんた、どっから来たんだ?」
エイラ「エイラ、生まれたところ、イオカ!」
トマ「イオカ? 聞いたことのない地名だな……」
トマ「まだ未踏の地が残っているとは……。これだから冒険はやめられねえぜ」
マミ「エイラ、ダメよ。私たちは知り合いでもなんでもないんだし、もう少し遠慮しなきゃ……」
トマ「かまうこたあねえ。袖触れ合うも他生の縁、てな。旅ばかりしてると特にそう感じるぜ」
エイラ「お前、いいヤツ! マミ、マール、何してる? ふたりも食え!」
マミ「もう……」
マール「せっかくだから、少しだけお呼ばれしちゃおうよ」
マミ「まあ、マールさんがそう言うのなら……」
トマ「おう、食ってけ食ってけ! 悪いと思うなら、俺に酌でもしてくれや!」
トマ「美人なオネーチャンたちに囲まれて飲む酒っつーのは、この世で一番ウマイからな!」
マール「チャンスだよ、マミちゃん。彼に近づいて『虹色の貝がら』の話、聞きだしちゃお!」ボソボソ
マミ「なんかだましてるみたいで気が引けますけど……」ボソボソ
マール「手柄横取りしようってことじゃないよ。なんとか話に乗せてもらえるよう、頼んでみよ?」ボソボソ
トマ「どうした? 何か都合の悪いことでもあったか?」
マール「いえいえ、そんなことないですよー。ささ、座って座って。トマさんの話、私聞きたいなー!」
トマ「酒の肴が必要ってわけだな? いいぜ、何から話してやろうか……」
…………
翌日
マール「……うーん……あれ……?」
マスター「起きたか、お嬢さん。悪いな、もうすぐ開店時間なんだよ」
マスター「できればお仲間さんを起こして、移動してもらえると助かるんだが」
マール「え、マスター……。あれれ? もう朝?」
マスター「昨日は夜通し騒いでたからな。記憶があやふやなのも無理はないだろうが……」
マール「ウソ……。じゃあ私たち、ここで寝ちゃったの? わわわ、ゴメンなさい!」
マスター「いいってことさ。トマのヤツも、久しぶりに美味い酒が飲めたと上機嫌だったしな」
マスター「いやはや、あいつと張り合える酒豪だったとは。あんたら、見かけによらないねえ」
マール「そ、そういえば……エイラが先陣を切って、いつの間にかマミちゃんもザルになってたような……」
エイラ「グゴゴゴ! グカ~!」
マミ「うふふふ……むにゃむにゃ……」
マール(結局トマさんからは何も聞けなかったなあ。途中から酒盛りのほうがメインになっちゃって……)
マール「トマさんはどこに?」
マスター「あいつならもう発ったよ。そうそう、あんたらにこれを渡してくれと言われてたな」
マール「これ……お酒?」
マスター「あいつの好きだった地酒だ。よっぽど気に入られたようだな」
マスター「それからこれは書置きだ。あんたらへのメッセージだろう」
マール「えっと、なになに……。『マール、マミ、エイラ、昨日は楽しかったぜ』……」
マール「『お前らは"虹色の貝がら"のことを探ってたみたいだが、残念ながら教えるわけにはいかねえな』」
マール「……バレてたんだ」
マール「『今回の探検はちとヤバイ感じがする。お前らを連れていくわけにはいかない』」
マール「『もし俺が死んだら、俺の墓にマスターから預かった酒をかけてくれよ』……」
マール「『……ケッ、縁起でもねえや。じゃあな、またどこかで会おうぜ』……か」
マール「トマさん、何か嫌な予感がしてたのかな……?」
マスター「どうだろうな。確かに、あいつがそんな弱音を吐くのは珍しい」
マスター「そうでなくても伝説の秘宝なんだ。何があってもおかしくはないだろうさ……」
マール「……」
マスター「ま、だからといって怖気づくヤツじゃなかろうよ」
マスター「昨日会ったばかりのあんたらに言うのは変な話だが……あいつの無事を祈ってやってくれ」
マール「もちろんだよ!」
マスター「また来い。今度来た時は、トマの野郎がひょっこり戻ってきてるかもしれんぜ?」
…………
A.D.1000 ガルディア城 書物庫
マール「ト、ト……トマ……トマ・レバイン……」
マミ「トマさんのことが書いてある文献、見つかりました?」
マール「うーん、今のところ全滅。マミちゃんのほうはどう?」
マミ「私もまだ……。伝記のようなものでもあればと思って探してるんですけど……」
マール「なかなか見つからないものだね~」
大臣「おや、マールディア様ではないですか」
マール「久しぶり、大臣」
大臣「帰ってきていたのなら、一声声をかけてくださればよろしいでしょうに」
マール「ん……。ちょっと調べ物をしたら、すぐ出て行くつもりだから」
大臣「ふむ。やはりまだ、父君とは顔を合わせにくいと見えますな」
マール「……」
マミ(マールさんは確か、勘当に近い状態だって話だったかしら……)
マミ(クロノさんがマールさん誘拐の濡れ衣を着せられているからとはいえ、このままじゃダメよね……)
大臣「マールディア様の気持ち、この大臣、よく分かりますぞ」
マール「え?」
大臣「国王は何よりも国を大事になさるお方。それはそれで正しい」
大臣「しかし少々、一族をないがしろになさり過ぎではないかと思うのです……」
大臣「あれは、そう……あなたの母君アリーチェ王妃様が亡くなられた時も……」
マール「母様が!?」
大臣「おっと。失言でした。いやいや、なんでもありませぬ」
マール「話してよ、大臣! 何を隠しているの!?」
大臣「……申し上げにくいのですが……もともと病弱だったアリーチェ様の容態が急変した時です」
大臣「最後に一目国王にお会いしたいとおっしゃっていたアリーチェ様ですが、国王はなんと……」
大臣「国の仕事でお忙しいとはいえ、アリーチェ様のもとに来ず……」
大臣「幼いマールディア様が『死』ということも分からぬまま見守る中……」
大臣「アリーチェ様は、お亡くなりになられたのですじゃ……」
大臣「いやはや。あれでは国王がアリーチェ様を殺したも同然……」
マール「……父上が……母様を……」
大臣「おやおや、私としたことが! お気にしませぬように、マールディア様!」
マール「……」
マミ「マールさん……。あの、余計なことかもしれないですけど……」
マミ「仕方ないと思うんです。きっと王様も、わざとそうしたわけじゃ……」
マール「分かってる。頭では分かってるんだ……。でも……」
マミ「もう一度、ゆっくり話し合ってみたらどうですか? きっと、些細なすれ違いだと思うんです」
マール「……マミちゃんは、どうしてそこまで私と父上のことを気にするの?」
マミ「私は、その……」
城兵「大臣閣下! 賊が侵入しました!」
大臣「なんじゃと? 詳細を報告せい」
城兵「食料庫にて糧秣をあさる、野生児のような女を発見したのですが……」
大臣「けしからんな。捕まえて牢にぶち込め」
城兵「それが、その……。そいつがまたサルのようにすばしこく、ほとほと手を焼いておりまして……」
マール「……マミちゃん。エイラはどこいったの?」
マミ「絵本を読んでたはずなんですけど……。あああ……きっと飽きたんだわ……」
マール「頭抱えてる場合じゃないよ~。なんとかしなきゃ!」
A.D.1000 ガルディア城 謁見の間
ニガスナー、ツカマエロー! アッチダ! マズイ、アノサキハ!
ガルディア33世「うん? 何事だ、ずいぶん騒がしいな」
バターン!!
エイラ「ほっほーい!」
近衛兵「なんだ、貴様は!? 陛下の前で無礼を働くと許さんぞ!」
エイラ「ん? そいつ、王様か? つまり、マールのオヤジか?」
ガルディア33世「なに? お前、マールディアを知っているのか?」
エイラ「おう! マール、大切な仲間!」
ガルディア33世「……大切な……」
マミ「エイラ!」
エイラ「おう、マミ。どした、そんな慌てて」
マミ「ばかっ! 勝手に人様の台所をあさっちゃダメでしょ!」
エイラ「む……。すまん。エイラ、腹減って倒れる、5秒前」
マール「言ってくれたらちゃんと用意してあげたのに」
マミ「あとでちゃんと、お城の人たちにゴメンなさいしに行くからね」
エイラ「おー」
ガルディア33世「ずいぶんと野蛮な友人を作ったものだな、マールディア」
マール「……父上……」
ガルディア33世「なんだその目は! お前が勝手に城を飛び出すから、こんなことになっておるのだぞ!」
ガルディア33世「そうかと思えば、そんな奇天烈なやからを城に入れたりしおって……」
ガルディア33世「チンドン屋でも始めるつもりか! お前はもう16歳なのだぞ! 少しはわきまえよ!」
マール「なんてこと言うの! 私の友達に!」
ガルディア33世「……! そのような者が友人とは、王家のご先祖様に申し訳が立たぬわ!」
マール「父上は、私よりも……私や母様よりも、王国のほうが大事なのね……」
ガルディア33世「なに……?」
マール「母様を殺したのは、父上よ!!」
ガルディア33世「!!」
マミ「マールさん! そんなこと言っちゃ……」
マール「……」
ガルディア33世「……出て行け。二度と……私の前に姿を現すでない!」
マール「言われなくたって出て行ってやるわ、こんなところ!」
ガルディア33世「お前とはもはや親でも子でもない! 勝手にするがいい!!」
マール「父上のわからず屋! もう知らない!!」
マミ「マールさん!」
大臣「……くく……いいぞ……」
エイラ「なんだ、ケンカか? マール、泣いてた」モッチャモッチャ
マミ「エイラ、食べるのやめて! マジメにやってよ!」
エイラ「腹減る、イライラする。腹いっぱい、幸せ。怒ってるならメシ食え。落ち着く」モッチャモッチャ
マミ「それは……。というか、さっきから何を食べてるの?」
エイラ「これか? 干し肉。吊ってあった。マミも食うか?」
大臣「! ……なるほど、『ハイパー干し肉』か……」
大臣「あー、これこれ。君たち。国王陛下とマールディア様のことじゃがな……」
マミ「なにか?」
大臣「私に考えがある。マールディア様に伝えてくれぬか」
A.D.1000 ガルディア城 王妃の居室
マール「……母様……」
マミ「マールさん! 良かった、ここにいたんですね」
マール「! マミちゃん、エイラ……。……えへへ、ごめんね。みっともないところ見せちゃって」
マミ「いいんです。それより、これ見てください!」
マール「え? これって……『ハイパー干し肉』じゃない」
マミ「大臣さんから聞いたんです。これ、王様の好物なんですって」
マール「へ?」
エイラ「美味い飯食う。機嫌よくなる。仲直り、簡単!」
マール「……あ……」
マミ「マールさん、本当はあんなこと言うつもりじゃなかったんですよね?」
マール「……」
マミ「このまま放置しておけば、もっと気まずくなります。お父さんと仲直りしなきゃ。ね?」
マール「……うん……そう、だよね……。分かった、私、行ってくる!」
マミ「がんばって!」
A.D.1000 ガルディア城 国王の居室
ガルディア33世「……」
マール「……あの……ち、父上……」
ガルディア33世「! ……なんの用だ。お前とはもう縁を切った。話すことなど何もないぞ」
マール「……さっきは言い過ぎちゃったと思う……。その……ゴメン……なさい……」
ガルディア33世「……」
マール「……これ……」
ガルディア33世「……なんだ? その袋は……」
マール「父上の好物。お詫びにと思って……」
ガルディア33世「お前が私に……? ……珍しいこともあるものだ……」
ガルディア33世「いや、その。今のは非難したわけでは……。い、いや、いい。とにかく貰っておこう」
マール「……」
ガルディア33世「フ……。そうか、お前がな……。どれ、一口……」
ガルディア33世「……? ……ぐ! うぐぐっ!?」
マール「えっ!? ど、どうしたの、父上!」
ガルディア33世「はうう……ぐ、げえーっ! ……こ、この……お前というやつは!!」
マール「え? え!?」
ガルディア33世「私の血圧が高いことを知っていながら、こんな激辛なものを……!」
マール「だってそれ、大好物だって……」
ガルディア33世「しおらしい振りを装い、こんなだまし討ちをするとは……人として恥ずかしくないのか!」
ガルディア33世「今度という今度は勘弁ならん。お前が私をどれだけ嫌っておるか、よう分かった!」
マール「違う、違うの! これは何かの間違いで……!」
ガルディア33世「聞く耳持たん! どこへなりと行くがいい。二度と姿を見せるな!!」
A.D.1000 ガルディア城 書物庫
マミ「……あったわ! 『トマ・レバインの埋葬地』……。ここに行けば、何か分かるかも……」
大臣「探し物は見つかったんかいのう?」
マミ「はい。マールさんが戻ってきたら、早速行ってみます」
エイラ「マミ。マール、帰ってきた」
マール「……」
マミ「マールさん、どうでした? お父さんと仲直り、できました?」
マール「それどころじゃないよ……。逆に、取り返しが付かないぐらい怒らせちゃった……」
エイラ「なんでだ? 肉、好物、違うか?」
マール「むしろ一番口にしちゃいけないものだったらしいの……」
マミ「ええ? ど、どういうことですか大臣さん! 話が違います!」
大臣「おかしいのう。そんなはずはないんじゃが」
大臣「これはやはり、国王はマールディア様との仲なぞどうでもよく、ゆえにウソをついているのであろう」
マール「そんな……」
マミ「どうでもいいだなんて……。親が子にそんな考えを抱くなんてこと、ありえません!」
大臣「なぜそう言い切れる? 現に国王はこうして、マールディア様を軽んじておるではないか」
マミ「それは……!」
マール「もういいよ、マミちゃん。父上とはしばらく距離を置くから……」
マミ「ダメですよ、マールさん!」
大臣「いやいや、それで良いでしょう。こういう時は、ほとぼりが冷めるまで近づかぬが吉というものじゃ」
マミ「……」
大臣「私からも折を見て、国王に口ぞえしておきますよ。色々と、ね」
マール「うん……。お願いね……」
大臣「お任せあれ。……くくく……」
エイラ「?」クンクン
マミ「どうしたの、エイラ?」
エイラ「お前、変な臭いするな。クサイぞ。獣の臭いだ」
大臣「!」
マール「大臣、ガルディアの森でも通ったの?」
大臣「そ、そうそう! そのとおりでございます! リーネ広場に所用がありましてな!」
大臣「途中で少し迷いましてのう! 獣道のようなところを通ってしまったので、それが原因でしょう!」
マール「あの森、そんな迷うほど入り組んでたっけ?」
大臣「大臣ってばドジっ子! 頭コツン! なーんて申しましたり! ワハハハ!」
大臣「おっとっと。香水をつけておきましょう。エチケットですから。シュシュッとな」
大臣「さあさあさあ! 目的地が決まったのでございましょう? 善は急げ、早く出発しなさい!」
マール「……?」
A.D.1000 西の岬
"王国暦634.3.6 偉大なる探検家 トマ・レバイン ここに眠る……"
マール「これがトマさんのお墓か……」
マミ「史料によると、私たちと会ったあの日から数ヵ月後に重体となって発見されたそうで……」
マミ「それからは立って歩くことすらままならず、失意からか人が変わったようにふさぎこんだまま……」
マール「……」
マミ「……チョラス町には彼の子孫がいるそうです。そちらに行ってみますか……?」
エイラ「マール。アレ、くれ」
マール「アレって?」
エイラ「酒」
マミ「チョラス村の地酒のこと? 何をする気?」
エイラ「飲ませる」
エイラ「トマ、酒だ。腹いっぱい飲め」
マミ「エイラ……」
エイラ「トマ、酒、好きだった。きっと喜んでる」
マール「そっか……。お墓にお酒をかけてくれって、あの手紙に書いてあったね……」
キイィン...
マミ「! な、なに……? 光が……!」
トマ「よう、エイラ。それにマミとマールも一緒か。久しぶりだな」
マール「ト、トマさん!?」
マミ「ウソ……! これ……トマさんの霊魂……!?」
エイラ「トマ、旅、うまくいかなかったか?」
トマ「残念ながらな。ったく、予感ってのは当たってほしくねえモンに限って当たるよな。ハッハッハ!」
マミ「笑い事じゃないでしょう……」
トマ「そんな顔するなよ。どうやらお前らは、俺にとっての幸運の女神だったようだぜ」
マール「え?」
トマ「ずっと待ってたんだぜ、お前らをよ。死んでから会いに来るたあ、人が悪いぜ!」
マミ「私たちを……?」
トマ「『虹色の貝がら』を見つけた。結局、持ち帰ることはできなかったが……」
マール「本当にあったんだ!」
トマ「おうよ。この岬から北西の海上にある、『巨人のツメ』と呼ばれる島にそいつはある」
マミ「巨人のツメ……」
トマ「……行くんだな?」
エイラ「とーぜん!」
トマ「やれやれ。これじゃあ、なんのためにあの時、お前らを置いていったか分かりゃしねえな」
トマ「気をつけろ。あそこにゃ化け物がわんさかいるぜ」
エイラ「エイラたち、強い! ぶっ飛ばす!」
トマ「ヘッ……。なら、安心だな」
トマ「縁ってのは奇妙なモンだ……。この俺が、誰かに夢を託すことになるなんてよ……」
マール「トマさん……!? 宙に浮いて……」
トマ「あばよ。やっぱり、お前らと飲む酒は最高だぜ……」
エイラ「また持ってきてやる。次も、飲む」
トマ「ああ……そうだな……。……そうしてえ……な……」
マール「……」
マミ「……さようなら、トマさん……。どうか安らかに……」
A.D.600 巨人のツメ 入り口
マール「ちょっと迷っちゃったね。北西って言われても何もないよ!? ……って」
マミ「トマさんが亡くなったのは400年前ですから、その時のことを差していたんですよね」
エイラ「ここ、エイラ、来たことある」
マール「そうなの?」
エイラ「マミも、来たことある。あれ見ろ」
マミ「え……? 玉座……? そういえば、どこかで見たことあるような……」
エイラ「ここティラン城。ラヴォス降ってきた時、埋まった。そのままずーっと、地面の下」
マミ「……! 本当だわ。確かにここは、ティラン城……。いえ、ティラン城の遺跡か……」
マール「それって何万年も前の話だよね? なんだかすごいなー……」
『制限時間は50分です』パープー!!
マール「ん? なに、今の? なんか聞こえたよね?」
マミ「ラッパの音みたいでしたけど……」
QB「旦那さんたち、何してるニャ! クエストはとっくに始まってるニャ!」
QB「早く支給ボックスから支給品を入手するニャ!」
マミ「キュゥべえ!? どうしてここにいるの!?」
QB「バイトだよ。それとここでは『アイルー』って呼んでくれないかな」
QB「まずは装備の確認ニャ。なるほど、マールは《ライトボウガン》なんニャね」
マール「いつも使ってるから。でも、ライト……?」
QB「後衛ならではの立ち回りを期待してるニャ!」
QB「マミ。君は《ガンランス》ニャ? いいチョイスニャ~」
マミ「ランス? いえ、これはマスケット銃で……」
QB「ガンランスなんだよ! それはガンランスなんだよ! 大事なことだから2回言ったよ!」
QB「分かったら早く作り変えなよ! リボンの魔法で、ちゃっちゃとさあ!」
マミ(なぜ怒ってるのかしら)
マール「語尾忘れてるよ」
QB「おっと」
エイラ「テンテテン♪ テテテテンテテン♪ テテテテテテン♪ テテテンテテテンテテテン♪ テンテンテンテンテン~♪」
エイラ「ウルトラ上手に、焼けました~♪」
マミ「エイラがお肉焼いてる……」
マール「あの肉焼きセット、どこから……あ、支給品か……」
QB「彼女は全裸(装備なし)縛りの猛者ニャ。さすがに武器は必要だから、ハンマーを渡しておいニャ!」
QB「さあさあ、準備が整ったら早速進むニャ! もう5分過ぎてるニャ、急ぐニャ!」
…………
QB「ここは採取ポイントニャ! キノコとか取れるニャ!」
エイラ「オーキードーキー! イヤッフー! ヒアウィーゴー! イッツミーマーリオォ!!」
QB「ここは虫取りポイントニャ! さあ、その網を一心不乱に振ればいいニャ! 無様にさあ!」
マミ「ロイヤルカブト、ゲットだぜ!」
QB「ここは採掘ポイントニャ! 親方ァ! 空から女の子が!」
マール「バルス!!」
…………
QB「さて、そろそろ狩猟対象モンスターが出てくるはずニャんだけど……」
ルストティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」
マール「うわっ! 恐竜!?」
マミ「あの姿……ブラックティラノ!? 生きていたの……!?」
QB「違うよ、亜種だよ」
マミ「あ、亜種???」
Rティラノ「ゴアアオオオオオオォォォォォン!!!」
マール「! 火を吐いた!? よけて、マミちゃん!」
マミ「あ、危なかったわ……」
QB「うまいニャ、緊急回避ニャ! これは避けゲーだニャ。相手の攻撃を見極めるニャ!」
マミ「そんな簡単に言われても……」
マール「でも、今なら反撃できそうだよ!」
QB「そのとおり! 攻撃のあとには隙ができるニャ!」
マミ「よーし、いくわよ……えい! えいえいえい!」プスプス
Rティラノ「グエェ...」
マール「……なんか地味だね」
QB「堅実って言えよ! ランス使いナメんなよ!」
QB「マミ、突き攻撃だけじゃダメニャ! ガンランスの性能を生かせていないニャ!」
マミ「どうすればいいの?」
QB「もとはマスケット銃なんだから、砲撃もできるだろ! 早く引き金引けよ!」
マミ「あ、はい」カチッ
ドオォン!!
Rティラノ「ギャオオ!!」
マール「わっ、すごーい。槍の先端から砲撃できるんだ!」
マミ「その部分だけ銃口に戻してみたの」
QB「弾が切れたらリロードするニャ!」
マール「私も負けてられないね。いっけー!」ドシュッ!
Rティラノ「グエェ...」ドスドス!
マール「やったー! 当たった!」
QB「当ててんのよ!」ペチーン!
マール「いたっ! なんでぶつの!?」
QB「どこ狙ってるんだよ! 胴体なんざ誰でも当てられるんだよ!」
QB「顔を狙えよ! 弱点をさあ! もしくは属性弾使えよ!」
QB「それになんで、こんな遠くから撃ってるんだよ! クリティカル距離を保てよ!」
マール「むつかしーなあ……」
マミ「一突きしてドカーン! 一突きしてドカーン! ……うふふ」
Rティラノ「ギャオオオオオオォォォォォン!!!」
マミ「きゃっ!?」ゴロンゴロン
マール「マミちゃん! 大丈夫?」
マミ「咆哮でいきなり吹き飛ばされたわ……」
QB「まずいニャ、あれは怒り状態ニャ! 普段より攻撃が苛烈になるニャ!」
マール「ええ~……。どうしたらいいの?」
QB「逃げるんだよォーーーッ! スモーキーーーッ!!」
マミ「うわーっ! やっぱりそうだったァァァァァァン~~~~」
QB「旦那さんたち、こっちニャ! 優秀な僕がシビレ罠を仕掛けておいたニャ。罠の背後に回るニャ!」
マール「なるほど! おびき寄せる作戦だね!」
マミ「……あら? 私たちがいる場所とは全然違う方向に走っていったわよ?」
QB「なんだって? 一体どうして……。誰をターゲットにしてるんだ……?」
エイラ「テンテテン♪ テテテテンテテン♪ テテテテテテン♪ テテテンテテテンテテテン♪ テンテンテンテンテン~♪」
エイラ「ウルトラ上手に、焼けました~♪」
QB「あいつかよ! なんで肉焼いてんだよ!?」
QB「縛りプレイかと思ったら、ただのネタプレイ要員だったああ!!」
マミ「エイラ、危ない!」
エイラ「お?」
Rティラノ「グオオオオオオォォォォォン!!!」ドドドドド!!
エイラ「ふんぬっ!」ガシッ!!!
Rティラノ「グオ!?」
マール「すごい! 正面から受け止めた!」
エイラ「『がんせきなげ』!!」
Rティラノ「ギャオオオオオオオーンッ!!」
マール「あの巨体を放り投げた!?」
QB「ハンマー使えよォ~!! なんのために渡したと思ってんだよォォォ~~~!!!」ゴロゴロ
マミ「エイラのあまりのフリーダムっぷりに、キュゥべえが発狂して身もだえしだしたわ」
QB「と、とにかくチャンスニャ! 獲物は気絶してるニャ!」
>総攻撃チャンス!
マミ「エイラ、いくわよ!」
エイラ「おーし!」
マール「私も援護するよ!」
>!!
ドカバキドカゴスバキドカベンガスバキドカグラップラーバキ!!!
Rティラノ「グアオオアオオオオォォォォォ!!!」
QB「よーし、もはや虫の息ニャ! マミ、トドメに『竜撃砲』ニャ!」
マミ「なあに、それ? どうやればいいの?」
QB「ごちゃごちゃ言わずにティロればいいんだよ! 早くしろよ!」
マミ「わ、分かったわよ……。『ティロ・フィナーレ(竜撃砲)』!!」
ズドドオォォォン!!!
エイラ「ぬわーーっっ!!」
マール「エイラくん ふっとばされたー!」
マミ「ごごごごめんなさい、エイラ!」
QB「あーあ……。竜撃砲を味方に当てるなんて、これは晒しスレ行きだね」
マミ「えええっ!?」
エイラ「気にするな、マミ。おもしろかった」ケラケラ
マミ「本当にごめんね……」
マール「見て、ふたりとも! あの恐竜が倒れていくよ!」
Rティラノ「ギャオオオ......」
『メインターゲットを達成しました』
『クエストクリア!』
『支給品専用アイテムを返却しました』
マミ「終わった……の?」
エイラ「マミ、大砲、効いた!」
マール「なんだかよく分かんなかったけど、とにかくこれで先に進めるね!」
QB「クリアタイムは30分。やれやれニャ。ヒヨっ子ハンターの尻拭いも楽じゃないニャ」
QB「じゃあ僕は、次なるクエストに旅立つ旦那さんのもとへ行くニャ!」
マミ「もういいから……そのキャラ付け……」
QB「さらばニャ、HR1の雑魚ども! 次は上位クエストに挑戦できるようになってから呼ぶニャ!」
エイラ「お断りします( ゚ω゚ )」
マール「これ、クロノトリガーだよね?」
A.D.600 巨人のツメ 最奥
マール「見て、あれ!」
エイラ「きれい! でかい! これ、虹色の貝がらか? 食べられるか?」
マミ「見た目は貝だけど、さすがに食べるのは無理だと思うわよ」
マール「じゃ、早速持って帰ろうよ!」
マミ「エイラはそっちを持って。いくわよ……せーの!」
エイラ「やあっ!」
マール「ちょ、ちょっとちょっと! 傾いてる! エイラ、上げ過ぎ!」
エイラ「こうか?」
マミ「重い重い! こっちに負担かかりすぎよ!」
エイラ「むー……」
マール「はあ。ダメだ、これじゃあ運べないよ」
マミ「女性3人でこんな重いものを運ぶのは、やっぱり無理がありますね」
マール「エイラもひとりじゃ運べそうにないぐらいだもんね」
エイラ「すまん」
マール「謝ることないよ。……そうだ! ガルディア城から応援を呼んでこよう!」
A.D.600 ガルディア城
ガルディア21世「よくぞ来た、マール。後ろのふたりはお仲間か?」
ガルディア21世「君らはいつでも歓迎するぞ。今日は何用で来られたのか?」
マール「実は……」
…………
ガルディア21世「なるほど。その島にある大きな貝がらを、後世まで保管してほしいと申すのじゃな」
リーネ「他ならぬ、マールたちの頼みです。私からもお願いします」
ガルディア21世「あいわかった! その虹色の貝がらとやら、城に運ばせよう」
ガルディア21世「そして家宝として代々、宝物庫に安置させようぞ」
マール「ありがとう、王様! リーネ!」
ガルディア21世「騎士団長。巨人のツメに渡り、虹色の貝がらなる巨大貝を、なんとしても城に持ち帰れ!」
騎士団長「は、ただちに!」
マミ「良かった。これで目的達成ね。貝がらの調査はルッカさんたちに任せましょう」
年代不明 時の最果て
ほむら「へえ、ティラン城が遺跡にね……」
マミ「ほんと、驚いたわ。おまけにキュゥべえまでいるし」
ほむら「最近のあいつの行動指針が意味不明すぎて怖いんだけれど」
ルッカ「マール! 大変よ!」
マール「あれ、ルッカ? ロボと一緒に虹色の貝がらの調査に行ったんじゃなかったの?」
ロボ「ソレガ……裁判が近いとのことデ、ガルディア城に入れてもらえなかったのデス」
マミ「裁判? 誰か、罪を犯した人がいるんですか?」
ルッカ「落ち着いて聞いてね。被告は、王様よ。ガルディア33世……マールのお父さんなのよ!」
マール「え!?」
マミ「そんな、冗談ですよね? 一体なんの罪で……」
ロボ「横領デス」
ほむら「そんなことする人には見えなかったけど」
マール「……何かの間違いだよ。私、確かめに行ってくる!」
マミ「待ってマールさん、私も……! エイラ、行くわよ!」
エイラ「分かった。あんこ、菓子、エイラの分おいとけ」
杏子「心配しなくても全部食いやしねーよ。つか、『あんこ』はやめろ」
まどか「気をつけてね、みんな!」
A.D.1000 ガルディア城 裁判所
♪王国裁判
大臣「みなさん! 王家に伝わる家宝『虹色の貝がら』をご存じですか?」
大臣「私もこれを見るまで知りませんでした。ガルディアの遠い祖先の書いた遺言です」
大臣「裁判長! これを証拠として提出します」
裁判長「ふむ、どれ……。『千年の建国祭に家宝、"虹色の貝がら"を国民の前にまつれ』……」
ガルディア33世「そんなものは知らん! 大体、家宝などこの城にはない!」
大臣「これがニセモノだとでも言うのですか?」
裁判長「被告人は静粛に。発言は許可されていない」
ガルディア33世「……」
裁判長「大臣、続けなさい」
大臣「なぜ被告は『虹色の貝がら』を国民の前に出さないのか? それはもう、ここにないからです」
大臣「欲に目がくらんだ被告は、金ほしさに大事な家宝を売ってしまったのです!」
ザワザワ...
ガルディア33世「言いがかりだ!」
裁判長「静粛に! 静粛に!」ガンガン!
裁判長「その発言を裏付ける証拠は?」
大臣「証人がおります。今ここに連れて来ましょう……」
バタン!!
マール「父上!!」
大臣「な!? マールディア様!?」
裁判長「大臣。王女様が証人なのか?」
大臣「い、いえ、違いますが……。マールディア様、裁判中ですぞ!」
エイラ「人いっぱい。なんの宴だ?」
マミ「そんな楽しいものじゃないのよ、エイラ」
マール「大臣、一体これはどういうことなの! 父上をどうするつもり!?」
ガルディア33世「おお、マールディアよ。私は大臣にハメられようとしている!」
大臣「人聞きが悪いですなあ。証拠さえあれば、王の無実は証明できるのですよ」
マール「証拠?」
大臣「家宝を売っていなければ、まだこの城にあるはずですからな」
大臣「ここに『虹色の貝がら』を持ってこられたのならば、無実は認められる。ま、無理でしょうがね」
ガルディア33世「大臣! 何をたくらんでおる!?」
大臣「なんのことやら……くく……」
裁判長「いかな王女様といえど、無関係であるならば退室していただきたい」
マール「ま、待って! 父上……!」
大臣「ええい、聞き分けの悪い! おい、衛兵!」
…………
エイラ「つまみ出された」
門番「通せません!」
マール「通しなさーい!!」
門番「ダメです。王女様といえどもお通しできません。どうかお引取りを」
マミ「マールさん、落ち着いてください。正式な裁判じゃ、力押しは無駄です」
エイラ「家宝持ってく。マールのオヤジ、助かる!」
マール「何言ってるの! あれは大臣のでっちあげなのよ!」
マール「家宝なんて私、今まで聞いたことがないわ。初めっからそんなもの、ないのよ!」
エイラ「思い出せマール! エイラたち、昔の王様、頼んだ!」
マミ「歴史を変えたために、今の時代のこの城に『虹色の貝がら』はあるはずなんですよ」
マール「! そっか……。そうだよね! ゴメン。私、興奮しちゃってた……」
マミ「確か、宝物庫にしまっておくって言ってましたよね」
エイラ「どこだ?」
マール「きっと地下だわ! 行きましょう!」
A.D.1000 ガルディア城 宝物庫
にょろた「おい、異常ないか?」
にょろぽん「静かなもんさ。みーんな裁判所のほうに行っちまってるからな。そっちはどうだった?」
にょろた「親分は、13代にわたる恨みが晴らせるってウキウキさ」
にょろぽん「でっちあげの証拠品で王様は死刑か。いい気味だ」
にょろた「この『虹色の貝がら』が見つからなければ、万事うまくいくぜ。きっきっきっき!」
にょろぽん「なーに、誰も来やしねえよ。楽な仕事さ。きっきっきっき!」
マール「聞いたわよ……」
にょろた「き!? な、なんだお前らは!?」
マミ「やっぱり陰謀だったのね。しかもあなたたち、魔物のくせに人間に化けて城内に忍び込むなんて……」
エイラ「ぶっ飛ばすか?」
マール「当然! いくよ!」
A.D.1000 ガルディア城 裁判所
商人「ええ、確かに王様から買いましたよ。大変お金に困られていた様子で……」
ガルディア33世「ウソを申すな! 私はお前など、会ったこともないぞ!」
裁判長「静粛に!」
ガルディア33世「くっ……!」
商人「へへ、これで良かったかい?」ボソボソ
大臣「グーだ!」ボソボソ
A.D.1000 ガルディア城 宝物庫
マール「あった! 虹色の貝がら!!」
マミ「丸ごと持っていくわけにはいきませんよね……。エイラ、お願い」
エイラ「おっしゃ!」ベキン!
マール「なるほど。端っこだけ割って、かけらを持っていけば十分だよね!」
エイラ「ん? 待て。ここ、何かある! 紙ある、紙!」
マミ「手紙かしら?」
マール「ちょっと見せて。えっと……『マールへ』……?」
親愛なるマールへ。
父上との仲はいかがでしょう?
今のあなたには分からないかも知れませんが、いがみ合っても離れていても、親子は親子。
あなたは、いつか親から巣立って行かねばなりません。
そして、あなたもいつか親となる。
それはいつの世も変わりないはず。
だからこそ、私たちとマールもつながっているのですから……。
――――ガルディア王21世その妃リーネより
マール「リーネ……」
マミ「ふふ。リーネさんも、なかなか心憎いことをやってくれますね」
エイラ「おう、巣立つ! エイラにもそれ、分かる! プテランも巣立つ。時たてば、巣立つ!」
エイラ「マールも巣立つ! ねねする! 子供生む! おっぱいやる! そしてまた、子が巣立つ!」
マミ「みんな、そうして……親から子へ、受け継がれていく。とても大切なもの……」
マール「……マミちゃんが、ずっと伝えようとしていたのは、そのことなの?」
マミ「マールさん。私にはもう、両親はいません」
マール「!」
マミ「でも思い出が、私に力を与えてくれます。父や母が私にくれた愛情が、今も心の中で輝いている……」
マミ「私、お茶会が好きですよね? あれは、両親の影響なんです。今でも覚えている言葉がある……」
マミ「『豪華な料理も極上の美酒も、家族と飲む一杯の紅茶には勝てない。団欒こそが最高の調味料だ』と」
マミ「昔……父が、そう言っていました。そのころは私は小さくて、よく理解できなかったけど……」
マミ「今なら、その言葉の意味が分かります。だから私は、親しい人と過ごす時間が何より大切なんです」
マール「マミちゃん……」
マミ「マールさん。お父さんと、しっかり向き合ってあげてください」
マミ「時間が解決してくれるなんて思っちゃダメ。それでは、本当に分かり合うことは難しい……」
マミ「他人ならまだしも、家族ならなおさらです。言葉にしなきゃ伝わらないんです」
マール「……」
マミ「父親って、どうしても頑固になってしまうものだと思うんです。だから……ね?」
マミ「いなくなってからじゃ、きっと後悔しますよ。孝行のしたい時分に親はなし、です」
マミ「……なんて。ゴメンなさい、えらそうなこと言っちゃって」
マール「ううん。ありがとう、マミちゃん。あなたのその気持ち、すごくうれしい」
マール「そうだよね……。このまんまじゃ、ずっとモヤモヤしちゃうもん!」
マール「私、父上とちゃんと話すよ!」
マミ「ええ! きっと、お父さんも待ってますよ!」
エイラ「オヤジ、助ける! 急ぐ!」
マール「父上……! 今、行くからね!!」
A.D.1000 ガルディア城 裁判所
裁判長「陪審員たちよ。有罪だと思う者は左へ。無罪だと思う者は、右へ行きなさい!」
陪審員A「有罪」
陪審員B「有罪」
陪審員C「有罪……」
ガルディア33世「……」
大臣「くくく……。圧倒的有罪率……! いいぞ……!」
…………
門番「通せません。王女様といえども、お通しできません!」
マミ「無罪の証拠を持ってきたんです。通してください!」
門番「ダメです。そーいうことは所定の手続きを経てからにしてください」
エイラ「こいつ、頭岩石だな」
マール「どーしてもダメと言うの?」
門番「はい、どーしてもです」
マミ「どうしましょう……。せっかく証拠があっても、中に入れないんじゃ……」
マール「手はあるわ! 少し荒っぽいけど……。ついてきて!」
…………
裁判長「判決を言い渡す! 有罪4、無罪1。……よって、有罪とする!!」
ザワザワ...
ガルディア33世「こんなことが許されるのか……!」
大臣「これでガルディアの時代は終わりましたな。これからは、この私が国を指揮します」
ガルディア33世「大臣、貴様……!」
大臣「さあ、この大罪人を連れて行け!」
裁判長「以上をもって、当法廷は閉廷と……」
「待ってえーッ!!」
大臣「誰だ!?」
ガシャーン!!!
マール「ちちうえェーー!!」
ガルディア33世「マールディア!」
大臣「ス、ステンドグラスをぶち破って闖入してきおった!?」
エイラ「イエーイ、見てるー?」
マミ「もう、見世物じゃないのよ」
大臣「ぐ……こいつら……! しかし、もう遅い!」
大臣「ガルディア王は国民の裁判によって刑は決まったのです。いかに王といえども……」
マール「そんなことないわ! それは、あなたのでっちあげよ!」
大臣「何をおっしゃっているか分かりませんな。事実、王は王家の宝を……」
マミ「宝ならここにあるわ。エイラ!」
エイラ「テテテテッテテーン♪ 虹色のかけら~!」
大臣「そ、それは!?」
傍聴者A「あれが家宝の虹色の貝がら?」
傍聴者B「ってことは王様は無罪?」
傍聴者C「今の、CV:大山のぶ代?」
傍聴者D「わさびじゃないの?」
ザワザワ...
裁判長「大臣! どういうことだ?」
大臣「こ、これは……その……」
マミ「そうそう、大臣さん。こいつらに見覚えあるでしょ?」
にょろた「おやぶーん! すんませーん!」
にょろぽん「つかまっちゃいましたぁ~……」
大臣「! お、お前ら……」
マミ「彼らに、洗いざらいここで話してもらおうかしらね?」
大臣「……」
マール「あなたの陰謀は看破したわ! 観念なさい、大臣!」
大臣「……くくくく……」
マミ「!」
大臣「観念するのは君たちのほうだ。先祖代々受け継がれてきた恨み……今ここで、晴らさせてもらおう!」
大臣「スーパーウルトラデラックス! だいじーん……チェーーーンジ!!!」
ヤクラ13世「ガルディア国王に、俺はなるッ!」ドンッ!
ガルディア33世「馬鹿な……! 大臣の正体は魔物だったのか!?」
ヤクラ13世「400年前……今回同様、国を我が物とするため当時の王妃をさらった我が祖先……」
ヤクラ13世「その遠大なる計画は、人間どもに邪魔され初代も殺された!」
マール「こいつが……リーネをさらった魔物の子孫!?」
ヤクラ13世「そしてその恨みは、13代にわたり蓄積されたのだ。二度も邪魔してくれたな、人間め……」
ヤクラ13世「策を弄するのはもうやめだ! ここからは力ずくでいかせてもらう!」
ヤクラ13世「食らえ、『スピンニードルバージョン13』!!」
ズドドドド!!
ガルディア33世「うおっ!」
マール「父上! 大丈夫!?」
ガルディア33世「あ、ああ……。なんとか……」
マミ「マールさん、まずいです! ここで暴れまわられたら、国の人たちが!」
ウワー! キャアアアア! ニゲロ!!
ドケ、オレガサキダ! オスナ、オスナー!!
マール「みんな、落ち着いて! パニックにならないで!」
エイラ「聞いてない。大混乱」
ガルディア33世「衛兵! 国民の避難を……! くそ、ダメだ……収拾がつかぬ!」
マミ「ああ……! どうしたらいいのかしら……」
ヤクラ13世「ぐっへっへ! 全員まとめてあの世に送ってやる!」
エイラ「やらせない!」
マミ「待って、エイラ! ここで戦うと被害が拡大しちゃう!」
エイラ「大丈夫。エイラ、考えある。任せろ」
マミ「え……?」
エイラ「おい、お前! コッチヲ見ロッ!」
ヤクラ13世「フン、裁判官席の上に逃げたところで無駄よッ!」
ヤクラ13世「転がり落ちるがいい! 『ヤクラシェイク……」
エイラ「ジュリアーナ! トーキォー!!」
♪MAXIMIZOR - CAN'T UNDO THIS!! (ジュリアナ東京のアレ)
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」
ヤクラ13世「……」
マール「なにあれ」
マミ「えっと……『いろじかけ』……ですかね?」
にょろた「色仕掛けだと? バカめ。そんなものに引っかかる親分じゃ……」
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」
ヤクラ13世「フォーーーーウ!!」
にょろぽん「ものの見事に引っかかってたーーーー!!」
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」
国民「フォーーーーウ!!」
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」
裁判長「フォフォーーーーウ!!」
マミ「……」
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」
ガルディア33世「フォッフォーーーーウ!!」
マール「父上!?」
ガルディア33世「あ……いや、スマン。昔、通っていたパブを思い出してな……」
マール「聞きたくなかった、父上の黒歴史」
にょろた「親分! 気を確かに!」
ヤクラ13世「フォーーーーウ?」
にょろぽん「あかん」
エイラ「マミ! 来い!」
マミ「え? わ、私?」
エイラ「マミも『いろじかけ』、やれ!」
マミ「む、無理よ。私は……」
エイラ「頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!北京だって頑張ってるんだから!」
エイラ「もっと、熱くなれよおおおおおおおおおおおお!!!」
マミ「エイラ……。分かった! 私、やってみる!」
マミ「みなさん! こっちを見てください!」
にょろた「あ、あいつも何かやる気だ!」
にょろぽん「まずいぜ! 親分、見ちゃダメだ!」
マミ(上着を少しはだけさせて……)
マミ「……だ……だっちゅーの!!」
ヤクラ13世「……」
マール「マ、マミちゃん……」
にょろた「ぎゃはははは! ネタが古すぎるぜ。こりゃー興ざめだな。ね、親分……」
ヤクラ13世「フォーーーーウ!!」
にょろぽん「ダメだったーーーー!!」
エイラ「テッテッテッテテテテッテッテー♪」
ヤクラ13世&ガルディア33世「フォフォーーーーウ!!」
マミ「Happy! fancy baby doll! Love me! fancy baby doll! 世界一可愛い子に生まれたかった♪」
王国民「世界一かわいいよっ!! うおおおおおおおッ!!!」
マール「……」
にょろた「そうか、こいつら……! これは、れんけいわざ『ダブル色仕掛け』だな!」
にょろぽん「完全にヤツらのペースだ……。俺たち、逃げたほうがいいんじゃ……」
マール「ねえ、ちょっと。あなたたち」
にょろた「な、なんだよ?」
マール「イライラするから、踏んでいい?」
にょろぽん「……え?」
マール「ヴぁい! 洗脳・搾取・虎の巻~洗脳・搾取・虎の巻~!」グリグリッ
にょろた「あああっ! かっ、閣下~!! もっと足蹴にしてくだせえ!」
マール「マールさんは裏表のないステキな人です。はい、復唱」
にょろぽん「マールさんは裏表のないステキな人です!」
門番「中が騒がしいから覗いてみれば……なんだ、これは……」
門番「王女様と、そのお仲間……。彼女らが繰り出したのは、さんにんわざ『トリプル色仕掛け』」
門番「彼女たちの魅力にかなうものは、もはやいない。これにて、一件落着……」
門番「……」
門番「王女様ァー! 俺も踏んでください! 我々の業界ではご褒美ですッ!!」
…………
A.D.1000 ガルディア城 大食堂
エイラ「おかわり!」
給仕「申し訳ありません。もう材料が切れてしまいまして……」
エイラ「ぶー!」
マミ「エイラ、もう十分でしょ。それ以上食べると、おなか痛くなるわよ?」
マール「マミちゃん。どこ行ってたの?」
マミ「食後の紅茶をいれてきたんです。王様にお出しするのは、ちょっと気が引けますけど……」
ガルディア33世「なに、気にすることはない。今宵は堅苦しい礼儀作法は無用だ」
エイラ「ずずー」
マミ「音を立てて吸わない!」
エイラ「うまいな、この水」
マール「うーん。やっぱりおいしい。マミちゃんの紅茶、さすがだね!」
ガルディア33世「ほう……。確かにこれは、宮廷料理人にも引けを取らぬ」
マミ「そんな、ほめすぎですよ……」
マール「父上……私……」
ガルディア33世「いいんじゃ、何も言うな。わからず屋の私がいけなかったんだ」
マール「私こそ、父上の気持ちも知らないで……」
マール「ううん……。本当は分かってたのに、うまく言葉にできなかったの……」
ガルディア33世「私もさ。一時はお前が、本当に遠くへ行ってしまったように思えた……」
ガルディア33世「だがよく考えてみると、遠くに行っていたのは私のほうだったのだな」
マール「今は近くにいる。これからは父上になんでも言える」
マール「いろんなことを相談したり、クロノたちのことを話したり。母上のことを聞いたり……」
ガルディア33世「母か……。恥ずかしい話だが、あの時の言葉が、今やっと分かってきた気がする……」
マール「あの時?」
――――
―――
アリーチェ「あなた……私はもう、長くないわ……」
ガルディア33世「アリーチェ! 気を確かに持て!」
アリーチェ「聞いて。マールディアが大きくなれば、あなたの前に好きな人を連れてくる日が来るでしょう」
アリーチェ「その時は、ふたりをあたたかく迎えてやってね……」
ガルディア33世「……」
アリーチェ「だってその日は、あなたにとっても忘れられない、すばらしい日になるのですから……」
ガルディア33世「ああ……。分かっておる。その時はきっと、マールディアを祝福するとも……」
アリーチェ「楽しみね……」
まーる「パパ、ママ!」
ガルディア33世「なんだい、マールディア?」
まーる「私、好きな人いっぱいいるよ! パパもママも、お城の人たちも、みんな大好き!」
アリーチェ「そう……。ふふ……良かった……」
アリーチェ「……マールディア……。その気持ちを……いつまでも大切に、ね……」
ガルディア33世「! ……アリーチェ……」
――――
―――
ガルディア33世「はしゃぐマールディアを見て安心したアリーチェは、微笑みながら息を引き取った……」
マール「……母上の最後の言葉を、父上は聞いていたのね?」
ガルディア33世「ああ……。お前は小さかったから覚えていないかもしれないが……」
マミ「やっぱり。王様が王妃様を看取らなかったという話は、真っ赤なウソだったのね」
ヤクラ13世「でへへ……。すんません、罰として踏んでください」
にょろた「いや、俺を!」
にょろぽん「いやいやいや、ここは俺こそを!」
エイラ「だまれ」グーパン!
ヤクラ13世「ありがとうございます!!」
給仕「ちなみにこのお三方は、王女様に懐柔され、宮廷付きの使用人となりました」
ヤクラ13世「私は大臣のままだぞ! 私がいなくなったら、誰が政務を取り仕切るんじゃ!」
にょろた「『本物の大臣』なんて最初から存在しなかった」
マミ「また、おかしなたくらみを企てたら、今度こそ容赦しないわよ?」
にょろぽん「あなた方に見捨てられたら、我らはもはや満足できない体になっております! 心配ご無用!」
マール「……」
ガルディア33世「どうしたんだい?」
マール「私も小さいころは、父上のこと『パパ』って呼んでいたのね」
ガルディア33世「ああ、そうだよ」
マール「ごめんなさい……パパ……。わがまま言って……本当に、ごめんなさい……」
ガルディア33世「……マールや……。私も……すまなかった……」
マミ「良かった。親子は、仲むつまじいのが一番よね」
エイラ「めでたすめでたす」
ガルディア33世「城を出るのは認めよう、じゃが! くれぐれも気をつけるのじゃぞ」
マール「分かってるって!」
ガルディア33世「マミ、エイラ。娘を頼んだぞ」
マミ「はい、お任せください」
エイラ「お前、心配性! エイラ、マール、守る!」
ガルディア33世「……いい友達を持ったな、マールディア」
マール「でしょ! 今度、クロノたちも連れてくるからね!」
ガルディア33世「あの少年か……。う、ううむ……」
マール「どうかしたの? まさか、まだクロノを誘拐犯扱いしてるんじゃないよね!?」
ガルディア33世「いや、そういうわけではないのだが……」
マミ「うふふ。娘が嫁に行く時は、お父さんはいつだって渋い顔をするものです」
ガルディア33世「むう……」
エイラ「マール、いずれ巣立つ! 子供生む! おっぱいやる!」
マール「もう、ふたりとも! まだ先の話だよ!」
エイラ「……」
マール「? なに、エイラ?」
エイラ「オマエ、大丈夫か? おっぱいないな……。マミを見習え! この乳、ミルクよく出るはず!」
マミ「ぶー!!」
エイラ「きたない」
マミ「ゲホ、ゲホ! 何を言い出すの! お乳なんて出ないわよ!」
マール「マミちゃんやエイラと比べないでよ。それに今は、戦闘に邪魔だからサラシ巻いてるの!」
ガルディア33世「ぅおっほん! まあ、ガールズトークはそのへんにしてくれたまえ……」
ガルディア33世「マミ。紅茶をもう一杯もらえるかね?」
マミ「はい、すぐ用意します」
マール「よく飲むね。そんなに気に入ったんだ?」
ガルディア33世「うむ。今日の紅茶は格別だ。コーディネーターが優れているというのもあるが……」
ガルディア33世「何よりもお前たちと飲む、そのことこそが至高のものと化している要因であろう」
ガルディア33世「どんなに豪華な料理も、極上の美酒も、この一杯には勝てない」
ガルディア33世「家族との団欒こそが最高の調味料なのだ」
マミ「! ……」
ガルディア33世「私はそれを、後世に伝えよう。今日のこの日を、とわに忘れぬように……」
ガルディア33世「フ……。本当に、今日は……よき日じゃ」
第13話(マルチイベント編-4)「虹色の貝がら」 終了
セーブしてつづける(マルチイベント編-5へすすむ)
ニアセーブしておわる
セーブしないでおわる
第14話(マルチイベント編-5)「太陽石」
このセーブデータをロードします。よろしいですか?
ニアよろしい
よろしくない
A.D.2300 太陽神殿
杏子「……ここだ、間違いねえ。魔力のパターンが一致してる」
まどか「魔女の結界……」
杏子「ったく、なんでこの時代に魔女がいるんだよ。ラヴォスはもう、いねえんじゃなかったのか?」
まどか「この結界の中にいる魔女が、ジャキくんに口づけしたんだね……」
魔王「もうダメだ……おしまいだぁ……。勝てるわけがない……ラヴォスは伝説の超サイヤ人なんだぞ……」
杏子「普段はえらそうなこと言ってるくせに、肝心なときにいっつも役に立たねぇヤツだな」
まどか「まあまあ」
杏子「このバカから目を離すなよ。魔女とは、アタシがメインで戦うから」
まどか「気をつけてね、杏子ちゃん」
杏子「じゃ、入るぞ」
A.D.2300 太陽神殿 魔女の結界内
杏子「……いたぞ、あいつだ」
魔女「……」
暗闇の魔女 -Suleika-
まどか「なんか金平糖みたいだね」
杏子「一気にケリをつけさせてもらうぜ! 『三段突き』!!」
Suleika「……!」
まどか「動いた!」
杏子「トロいんだよ、逃がさねぇ!」
まどか「待って、杏子ちゃん! 何か変……」
Suleika「……」
杏子「なんだ、このモヤ!?」
まどか「の、呑み込まれる……!」
…………
………
ピピピ! ピピピピ!
まどか「……うーん……?」
タツヤ「姉ちゃ、朝~。起きてぇ、姉ちゃ~!」
まどか「タツヤ……? ふああ~……眠い……」
コンコン
「まどか、起きてるかい? 朝ごはんができてるよ、下りといで」
まどか「パパ。はぁい、今行くよ」
…………
詢子「おはよ、まどか」
まどか「おはよう」
知久「さあ、早く食べて。学校に遅れるよ」
まどか「うん」
詢子「おっし。じゃ、あたしは先に行くよ」
知久「ああ、いってらっしゃい。さあ、まどかも急がないと。待たせてるんだから」
まどか「え、あ、うん」
まどか(そっか。さやかちゃんたちを待たせちゃ悪いよね……)
「おはようございます、おばさん」
「おう、今日も可愛いね~。タツヤと遊んでくれてたんだ?」
「小さい子の扱いは慣れてますから」
「なるほど、弟さんか」
まどか(玄関のほうから声が聞こえる……。さやかちゃん、家の前まで迎えに来てくれたのかな?)
「それじゃ、あたしは行くから」
「はい。いってらっしゃい」
「まどかー! 早くしな、お待ちかねだよー!」
まどか「は、はーい! それじゃパパ、いってきます」
知久「ああ。車に気をつけるんだよ」
まどか「お待たせ、さやかちゃ……」
サラ「もう、遅いよまどか。早くしないと遅刻しちゃうよ」
まどか「……え?」
サラ「? どうしたの、私の顔に何かついてる?」
まどか「サラ……ちゃん……?」
サラ「はい、正解。私はサラです。……なんちゃってね。なに、からかっているの?」
まどか「……ううん、なんでもない……。迎えにきてくれたんだね……」
サラ「お隣だもの、当然じゃない。さあ、早く行きましょう。タツヤくん、またね」
タツヤ「いってらっしゃい~」
まどか「……」
…………
和子「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」
和子「目玉焼きとは、固焼きですか? それとも半熟ですか? はい、中沢君!」
中沢「えっ? えっと……どっ、どっちでもいいんじゃないかと」
和子「そのとおり! どっちでもよろしい!」
和子「女子のみなさんは、くれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとか抜かす男とは交際しないように!」
さやか「ダメだったか~」
サラ「3ヶ月目だったっけ? 記録更新よね」
ほむら「さっさと身を固めて欲しいものだわ。のろけと愚痴話はもうたくさんよ」
まどか「……」
仁美「まどかさん、体調でも崩されました? お顔の色がすぐれないようですけれど」
まどか「あの、ほむらちゃん。ほむらちゃんって、いつからこのクラスにいるんだっけ……」
ほむら「え? なに、突然?」
さやか「何言ってんのさ、まどか。春からずっと一緒じゃん」
まどか「そ、そうだよね……」
サラ「どうしたの、まどか? 今朝といい、様子がおかしいわよ」
まどか「大丈夫、なんでもないよ。サラちゃんも、一緒のクラスなんだよね……」
まどか「一緒に勉強して、遊んで……お隣さんで幼馴染で。私たち、ずっとそうやってきたんだよね……」
サラ「? 本当に大丈夫なの? 保健室行く?」
まどか「……」
…………
体育教師「よし。次、暁美ほむら」
ほむら「はい。……ふっ!」
体育教師「おお~。県内記録かよ、さすがだな」
さやか「文武両道で才色兼備の割には、ほむらって男子に人気ないよね」
仁美「近寄りがたい雰囲気をかもし出しているからでしょうか?」
サラ「隠れファンは多いと思うわよ。彼女、魅力的だし」
さやか「見滝原中のアイドルのあんたが言っても、説得力皆無だわー」
サラ「もう、やめてよ。いつも言ってるけど、そういうのじゃないから」
まどか「……あの、サラちゃん」
サラ「なに?」
まどか「あの格好いい男の人、誰?」
サラ「グレン先生でしょ? 体育教諭の……」
まどか(グレン、って……カエルさん!?)
仁美「まどかさん、グレン先生が気になりますの?」
さやか「なんだ~? 好きなのか~?」
まどか「や、そういうわけじゃ……」
ほむら「まどかに手を出したら、教師といえども私がぶっ飛ばすわ」
まどか「! ほむらちゃん……。いつの間に戻ってきたの?」
さやか「友達として忠告しよう! 悪いこたー言わない。グレン先生は絶対やめといたほうがいいって!」
まどか「……なんで?」
さやか「確かに顔はいいけど、言動が下世話すぎてね~。残念なイケメンってやつだわ」
グレン「聞こえてるぞ、美樹」
さやか「うげっ!」
グレン「よーし。次は鹿目の番だが、気が変わった」
グレン「美樹! お前には特別授業として、マンツーマンでみっちり鍛えてやるからな!」
さやか「イヤー! おかされるー!」
グレン「寝言は寝て言え! JCに興味はない!」
さやか「JKは?」
グレン「……」
さやか「あ、ちょっと迷ってら」
グレン「な、何を根拠に!」
さやか「体罰にセクハラ。おまわりさんこいつです」
グレン「やめろ! このご時勢、マジでシャレにならん!」
さやか「カツ丼でいいすか?」
ほむら「また始まったわ」
サラ「あのふたり、仲いいわよね」
まどか「……」
…………
仁美「お昼はいつものように、屋上でよろしいですか?」
さやか「そだね。あ~、あたしパン買ってこなきゃ」
サラ「お弁当は?」
さやか「いやー、今朝は忙しくて作れなかったんだって」
サラ「あらら……」
まどか「……」
ほむら「まどか。今日はずっと元気ないわね」
まどか「そ、そんなことないよ……」
男子生徒「あー、ちょっと。そこの君たち……」
サラ「はい?」
まどか(! ク、クロノさん!?)
クロノ「君たち、ここのクラスだよね。上条君に用事があるんだけど、呼んでもらえないかな?」
さやか「恭介に? 分かりました、呼んできます」
クロノ「すまないね」
まどか「……あ、あの……クロノ、さん……?」
クロノ「うん? あれ? 僕、自己紹介したかな?」
ほむら「生徒会長の名前ぐらい大体みんな知ってますよ、クロノ先輩」
まどか(せ、生徒会長なの!?)
クロノ「そうなのかな? まあいいや。で、なんの用だい?」
まどか「わ、私のこと、知ってます?」
クロノ「知ってるよ、鹿目まどかさんだろ」
まどか「! どうして……」
クロノ「マミから話は聞いてるよ。会うのは初めてだけど」
まどか「マミさんと同じクラスなんですか?」
クロノ「いや、僕は違う。彼女が同じクラスにいるから、それでね」
まどか「彼女……?」
恭介「クロノ先輩。用事ってなんですか?」
クロノ「やあ、恭介。悪いな、呼び出しちゃって。生徒会の仕事のことなんだが……」
恭介「またですか? 僕、役員じゃないんですけど」
クロノ「カタイこと言うなよ、優等生くん。来年はきっと君が会長だ」
恭介「部外者がなれるわけないでしょうに……」
さやか「お待たせー。じゃ、行こっか」
まどか「あ、あの、さやかちゃん」
さやか「ん?」
まどか「あのね。クロノさ……先輩の、彼女って誰か知ってる?」
さやか「マール先輩でしょ。割と有名じゃん」
まどか「マールさんが……!?」
サラ「今度はクロノ先輩が気になるの? まどか、いつからそんなに気が多くなったのかしら」
ほむら「なんですって! ダメよ、NTRなんてまどかには似合わないわ!」
仁美「ほむらさん、落ち着いてくださいまし」
さやか「そんなことよりおなかがすいたよ」
まどか「……」
…………
サラ「まどか、帰りましょう」
まどか「あ、うん。……あれ、さやかちゃんと仁美ちゃんは?」
ほむら「仁美はお稽古があるから先に帰るって。さやかは上条君でも待ってるんでしょ」
まどか(そういえば上条君、お昼に何か頼まれてたっけ……)
サラ「帰りにクレープ屋さんでも寄っていく?」
ほむら「いいわね、買い食いは学生の華だわ」
キャー! キャー!
まどか「なんだろ? グラウンドのほうが騒がしいね……」
サラ「ああ、きっとテニス部ね」
まどか「誰か人気のひとでもいるの?」
ほむら「どうせマミでしょ」
まどか「マミさんが!?」
サラ「まどか、見に行きたいの?」
まどか「う、うん! ゴメンね、ちょっと寄らせて!」
ほむら「見ても何も面白くないと思うけど」
エイラ「手塚ゾーン!!」
マミ「それ反則だってば、エイラ!」
エイラ「ワシの波動球は百八式まであるぞ」
マミ「もう、また負けちゃった……」
後輩A「マミ先輩! タオルをどうぞ!」
マミ「あら、ありがとう」
後輩B「エイラ先輩! スポーツドリンク飲みます?」
エイラ「汗かいた。水分必要。お前、気が利く!」
女生徒A「ああ……。今日も美しいですわ、巴様……」
女生徒B「エイラ様のワイルドな魅力に、わたくし、トリコにされてしまいましたわ!」
仁美「しかもおふたりは親友。これは俄然、はかどるというものですわね!」
ほむら「……仁美、帰ったんじゃなかったの?」
まどか「……」
…………
ほむら「どこのクレープ屋さんに行く?」
サラ「駅前のでいいんじゃない?」
ほむら「あそこはおとといも行ったから、別のところにしたいわね。まどかはどう?」
まどか「え? えっ……と、どこでもいいかな……」
ほむら「どこでもって言われると、逆に困るのよね」
まどか「ご、ごめん……」
サラ「あら? 校門のところに誰かいるわよ」
「あー、いたいた。今、帰りのようね。ちょうど良かったわ」
まどか(ルッカさん……!)
ルッカ「よっ、ほむら。それに、まどかとサラも一緒か」
ほむら「姉さん……。大学は終わったの?」
まどか「お姉さん!?」
サラ「どうして驚いているの?」
まどか「あ、いや……」
ルッカ「ほむら、ちょっと付き合ってよ。研究が行き詰まっちゃってさあー」
ほむら「なんで中学生の私に言うのよ」
ルッカ「あんたは天才だからねー。私には及ばないけど」
ほむら「ほめられてるのか、けなされてるのか、理解に苦しむわ」
ルッカ「はいはい。いいからさっさとバイクの後ろに乗って」
ほむら「ほんと強引ね。……ごめんなさい、ふたりとも。クレープ屋さんはまたの機会ね」
サラ「ええ、気にしないで」
まどか「あ……。バイバイ、ほむらちゃん」
ほむら「研究って、例のAIの研究?」
ルッカ「そうそう、『プロメテウス回路』のね。結構進んでるのよ」
ほむら「知ってるわ、前に見せてもらったから。姉さんが作ったにしちゃあ、紳士的なプログラムよね」
ルッカ「どーいう意味よ。……それと、ほむら。やっぱあんた、将来はうちの大学に来なさい」
ほむら「何よ、急に」
ルッカ「プログラムをまるで人間のように見るあんたのその思考、私と一緒だわ」
ほむら「……」
ルッカ「さ、飛ばすわよ!」
ほむら「飛ばさないで。安全運転でいってちょうだい」
まどか「……」
…………
サラ「遊んでたら、だいぶ遅くなっちゃったわね。ジャキ、怒ってるかしら……」
まどか「……」
サラ「そうそう。さっきね、知久おじさんが夕食はうちで食べないかってメールくれて」
サラ「ね、まどか。今日、泊まってもいい? 久しぶりにパジャマパーティーしましょうよ」
まどか「……サラちゃん……ごめんね……」
サラ「え、ダメだった? うーん、残念。じゃあ今度、都合のいい日にうちで……」
まどか「違う、違うの。サラちゃん……ううん、あなたはサラちゃんじゃない」
まどか「あなただけじゃない。ほむらちゃんも、クロノさんたちも……」
まどか「この世界はみんなウソ。わたしが見てる、ただの妄想」
サラ「……」
まどか「それとも……あなたが、見せてくれてたのかな……」
まどか「夢みたいだったの、今日一日。サラちゃんと、こんな日常が過ごせるなんて……」
まどか「でも……心が痛いの。幸せが痛いの……。だって、これって逃げてるだけだもん……」
サラ「まどか……泣いているの……?」
まどか「えへ、へ……。泣かないって決めたのに……。わたし、ダメだなあ……」
サラ「……」
まどか「でも……もう、泣いてるだけのわたしじゃないよ」
まどか「わたし、逃げずに立ち向かう。そうしなきゃいけないって、サラちゃんが教えてくれたから……」
サラ「そう……。それが……あなたが選んだ道なのね……」
サラ「辛く、苦しい道だわ……。きっと今みたいに、何回でも泣いてしまうでしょう……」
まどか「うん……」
サラ「ここにいたほうが、ずっと楽よ?」
まどか「うん……」
サラ「……それでも、行くのね」
まどか「うん。……さようなら。やさしくしてくれて、ありがとう」
サラ「さようなら。サラも喜んでいるわ、きっと……」
…………
………
まどか「……ん……。あ……?」
Suleika「……」
まどか「魔女……。そっか……戻って、きたんだ……」
Suleika「……」
まどか「……ごめんね。わたし、あなたを倒します」
まどか「『狂戦士の連弩』!!」
Suleika「……。……」
まどか「あ、グリーフシード……」
まどか「……?」
まどか(なんか、いつものと形が違うような……?)
『光のほこらにて、この暗黒石を6500万年以上の長きにわたり、太陽にさらせ』
『そして見よ。この石に宿る、少女たちの絶望から目を背けるな』
『さすれば太陽石と化したその石は、あなたに力を貸すだろう』
まどか「! 誰……!?」
まどか「……」
まどか「誰もいない……。今のは……?」
杏子「う……。あ、れ……? ここは……」
まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」
杏子「まどか……。今のは……夢……? そっか……夢かよ……」
まどか「……杏子ちゃんは、どんな夢を見ていたの?」
杏子「覚えてねえ。……けど、すごく幸せなものだった気がする……」
まどか「……」
杏子「そ、そうだ! 魔女はどうなったんだ!?」
まどか「倒したよ」
杏子「え、アンタが? へえ、やるじゃん」
まどか「ううん、わたしの力じゃないよ。あの子はたぶん、眠りたかったんだと思う……」
杏子「……?」
まどか「それと、この石なんだけどね……」
…………
杏子「光のほこらねえ。聞いたことねえな」
まどか「でも、どこかにあるはずだよ。シルバードで探しに行ってみよう」
杏子「そうだな……」
魔王「さっそく伝説の太陽石を復活させに出かける! あとに続け、貴様ら!」
まどか「ジャキくん、正気に戻ってたんだね」
杏子「アイツ、ぶっ飛ばしていい?」
B.C.65000000 光のほこら
杏子「ここか。案外あっさり見つかったな」
魔王「なるほど、ここは夜が訪れても光を失わないようだ」
まどか「それじゃ、暗黒石を光の当たる場所に置いて……と」
杏子「で、シルバードで時間移動すりゃ6500万年経ってるわけだ。3分クッキングみてーだな」
まどか「なんだか簡単すぎて拍子抜けしちゃうね」
魔王「時間移動という所業がそもそもありえんのだ。存分に利用させてもらおう」
杏子「よし、A.D.2300に飛ぶぜ!」
A.D.2300 光のほこら
まどか「なんで!? 暗黒石が、なくなっちゃってる!」
杏子「オイオイ、どういうことだよ」
魔王「いずれかの時代で紛失したか……」
まどか「探さなきゃ!」
杏子「どの時点でなくなったか突き止めねえとな。とりあえず、古代から行くか」
B.C.12000 光のほこら
杏子「この時代にはまだある、か……」
魔王「6500万年経ち、ラヴォスの攻撃を受けてもなお変わらぬこのほこら……。実に興味深い」
杏子「暗黒石、まだ特に変わった様子は見られねえな」
まどか「でも、ちょっとだけ光が戻ってきたんじゃない? ほら、こことか……」
キイイィィン...!
まどか「!?」
…………
………
「このクソガキが! 俺様の服にドロをつけやがったな!」
「ご、ごめんなさい!」
「口だけで許されると思っているのか? 弁償してもらおう」
「そんな……。こんな額、私たちには払えません!」
「ならテメェが体で払いな。弟の不始末の責任を取るのは、姉の役目だぜえ? ヒヒヒ!」
「こいつ……! 姉ちゃんに汚い手でさわるな!」
「き、貴様……! 殴ったな! 親父にもぶたれたことないのに!」
「だめ、やめなさい!」
「許さねえ。地の民のクズのくせに……。これは不敬罪だ! 貴様ら3人とも処刑してやる!」
「は、放して……!」
「やめろ! ちくしょう!」
「ああ……どうして……魔法を使えないというだけで、こんな目に……」
「私に……私に、力があれば……夢のような生活を……」
「それが君の願いかい?」
…………
「こんな巨大な魔力は見たことがない。特例として、君を光の民と認めよう」
「やったぜ、姉ちゃん! これで威張り散らしたヤツらを見返せる!」
「おめでとう、お姉ちゃん!」
「ありがとう、ふたりとも……。浮遊大陸でなら、私たち3人だけでもきっとやっていけるわ」
「何を言っている? 大陸に上がることを認めるのは君だけだ」
「え……!? そ、そんな! お願いします、弟ふたりも一緒に……」
「地の民は浮遊大陸の大地を踏むこと許さず。さあ、来たまえ」
「姉ちゃん! どけよ、クソッ……! 姉ちゃん!!」
「お姉ちゃああん!」
「ああ……なんてこと……!」
「なぜ……。願いはかなったはずなのに……。家族がバラバラになってしまっては、意味がない……」
…………
「太陽神さま……。どうか、弟たちをお守りください……」
「いもしない神に祈ったところで無駄だよ。分かっているはずだ。君の弟はふたりとも死んだ」
「あなたは……こうなることが分かっていながら、私を……」
「極寒の地で君たちのような幼子が生き延びられるはずがない。そんなことは言うまでもないだろう?」
「だからこそ、君はひとりで逃げ出してきたんじゃなかったのかい」
「私のせいなの……? 私が、分不相応な願いを持ったから……。魔法少女なんかになったから……」
「願いはかなったんだ。夢のような人生、存分に謳歌すればいい」
「……ごめんなさい……グラン……。リオン……」
「安心しなよ。ふたりは死んで、英霊となった。本来ならば君もそうなるはずだったけど」
「未練がましくこの世に踏みとどまるより、その魂を宇宙のために燃やし尽くすほうがずっと有意義だ」
「……おっと。こんなことを言っても、魔女と化した君には何も届かないんだったね」
「今までありがとう。そしてさようなら、ドリーン」
…………
(魔法少女は……夢を見ることも許されないの……?)
(私はただ、小さな幸せが欲しかっただけ……)
(ああ……私は今、悪夢を見ている……。これでは……安らかに眠ることもできない……)
…………
………
まどか「……ハッ!?」
杏子「オイ、どうかしたのかよ? 石にさわったまんま、ぼーっとしやがって」
まどか(今のは……? 過去の魔法少女の、記憶……?)
魔王「暗黒石の紛失がこの時代でないのならば、もうここに用はない。行くぞ」
杏子「おし、次は中世だな」
A.D.600 光のほこら
魔王「まだ据え置かれているな」
杏子「確認終了っと。じゃ、さっさと行こうぜ」
まどか「……あ、あの、ちょっと待って」
杏子「なんだよ?」
まどか「少しだけ、時間くれないかな……」
杏子「別にいいけど、何するつもりだ?」
まどか(さっきの現象、一体なんだったんだろう……。もう一度さわれば、分かるかな……)
まどか「……暗黒石……また少しだけ、光が戻ってきてる……」
キイイィィン...!
まどか「……!」
…………
………
「お母さん! お母さあん! うわあああん!!」
「可愛そうに……。魔族に殺されたんだそうだ」
「魔王がいなくなったというのに、魔族による被害はいっこうに減る気配を見せんな」
「東のほうではだいぶ落ち着いているらしいぞ」
「チョラス村のあたりか? 移住したほうがいいんだろうか……」
「だが住み慣れた土地を離れ、新しい土地でやっていくなんて無茶なこと、できるわけがない……」
「おい。それより、あの娘をどうにかしてやれよ。たったひとりの肉親が死んだんだぞ」
「そう言うならお前が引き取ってやれ。うちにはそんな余裕はない」
「い、いや。俺だってそんな厄介なことは……」
「アンタら、それでも男かよ!」
「……」
「大の大人がこれだけ集まってるってのに、あの子になんにもしてやれねえのか!」
「生意気言うな。ガキのくせに……」
「もういいよ。俺があの子の面倒を見る!」
「なに?」
「お母さん……うう……」
「もう泣くな!」
「だって……」
「俺が一緒にいてやる! 俺がお前を、ずっと守ってやる!」
「……それって、告白……?」
「なんでもいい。お前が泣き止むなら、俺はなんだってしてやるさ!」
…………
「大ニュースだぜ! 見てくれ、これ!」
「それ……勇者バッジ?」
「王家に保管されてたものを正式に授与されたんだ。ついに俺は、あこがれの勇者になったんだ!」
「行くの……? 魔族討伐の旅に……」
「ああ。誰かがやらなきゃならねえ。なら、俺がやる!」
「私も一緒に……」
「何言ってるんだ。危険な旅に、お前を連れて行くわけにはいかない」
「待っててくれ。必ずお前のもとに帰ってくるからよ!」
「待って! 行かないで……。イヤ……ひとりにしないで……」
「太陽神さま……。なぜなのですか……? なぜみんな、私のもとから去っていくのですか?」
「私はただ……愛する人と、ずっと一緒にいたいだけなのに……」
「それが君の願いかい?」
…………
「お前が……魔王、だったのか……」
「魔王? 魔族はそう呼ぶけど、私は私だよ。私はただ、あいつらを従えてるだけ」
「それが魔王じゃなくて、なんなんだよ……」
「ねえ、勇者の旅なんてもう終わりにしようよ。魔族は、私が命令すれば言うことを聞くから」
「……そうはいかない。たとえお前が人々のためを思って魔族を纏め上げたのだとしても……」
「国のみんなはそれでは納得しない! お前が倒されることでしか、平和はもたらされない!」
「それを実行するのが、勇者である俺の務めなんだ!」
「私を殺すの? どうして! 私は、あなたと一緒にいたかっただけなのに!」
「魔王……いや、魔族を率いる魔女よ! お前は人間の敵だ!」
「イヤ……! こんな、こんな結末……私は望んでいなかったのに……!」
「思い出の中で人は生き続ける。それも、キレイな姿のままでね」
「彼を殺して思い出とすればいい。それとも、君が死ぬかい?」
「良かったじゃないか。これで君の望みはかなった。彼とずっと一緒にいられるよ」
「やあ、見事な魔女だ。まさに、魔王と呼ぶにふさわしいね」
「さて、勇者タータは果たして無事魔王を倒せるのかな? 楽しみだね」
…………
(魔法少女は……大事な人の、そばにいることすら許されないの……?)
(私はただ、彼の愛がほしかっただけなのに……)
(ああ……もう何も見えない……何も聞こえない……。いとしい人を感じることができない……)
…………
………
まどか「……」
まどか(また、見えた……やっぱりこれって……)
杏子「大丈夫かよ? うずくまって……腹でも痛いのか?」
まどか「……ううん、なんでもない。さ、行こう……」
A.D.1000 光のほこら
まどか「! ない……!」
魔王「決まりだな。暗黒石は、この時代に紛失した」
杏子「クソッ、どこいったんだ? 誰か盗みやがったのか?」
魔王「犯行現場というものは何がしかの手がかりが残されているもの……見つけたぞ!」
魔王「ペロッ……これは青酸カリ!!」
杏子「なんやて工藤!?」
まどか「それただの土だから。遊んでる場合じゃないよ、早く暗黒石を見つけないと」
杏子「つっても、どうするんだよ。いつ、誰が持ち出したかも分からねーぞ」
まどか(暗黒石は、きっと魔法少女に関係があるもの……。だったら……)
まどか「ねえ杏子ちゃん。太陽神殿で探知した魔力のパターン、まだ把握してる?」
杏子「ん? ああ、そりゃ分かるけど……それがなんだよ?」
まどか「探して。きっとその発生元に、暗黒石があると思うの」
A.D.1000 パレポリ町
魔王「ずいぶんみすぼらしい家屋だな。本当にここに暗黒石があるのか?」
杏子「まどかの言うことが正しいんなら、そうなんだろ」
まどか「えっと、お邪魔します……。誰かいらっしゃいませんかー?」
元町長「おや、このような場所に何用ですかな?」
まどか「あ……ここの住人さんですか?」
元町長「いかにも」
まどか「私たち、とある石を探してるんですけど……」
…………
元町長「持ってきましたぞ。これがその石です」
魔王「確かに、暗黒石のようだ」
元町長「旅の若者がここに置いていったんですよ。あなた方には大切なもののようですな?」
まどか「はい。あの……譲っていただくわけには……」
元町長「構いませんよ。どうぞ持っていってください」
杏子「えらくあっさり渡してくれるんだな」
元町長「どんなものでも、みんなで分け合う! 困っている人には手を差し伸べる!」
元町長「それがワシのモットーです。亡き娘から教えられた、ね」
まどか「え……娘さんが……?」
元町長「さあ、お嬢さん。受け取ってください」
まどか「あ、どうも……」
キイイィィン...!
まどか(! また……!)
…………
………
「あの町長、なんとかならんものか? 金にがめつく自分のことしか考えていない」
「あんなのがこの町の長では、この先やっていけないぞ」
「先日も、独り身の老人を住まいから追い出したらしい。つぶして賭博場を建てるんだとよ」
「やってられねえな。俺たちの頼みは聞きもしないで、そのくせやりたい放題だ」
「早く死ねばいいのに」
「……」
「見ろよ、あれ。町長んとこの娘だ」
「近寄るなよ。あんな親を持つ子供だ、どうせあいつも性根が腐ってるさ」
(また、父さんの陰口……。みんなの冷ややかな目が、私にも向けられている……)
…………
「……ただいま」
「おう、娘よ。見ろ、この壷を。100年前に作られたもので、たいそう価値があるそうだ」
「これでまたワシのコレクションが増えるな! うひひひ!」
「そんなもの、見たくない」
「なんだ、機嫌が悪いのか? ……ん? どうした、その顔のキズは」
「……」
「イジめられたのか? どこの誰だ、言え。ワシの権力でこの町に住めないようにしてやる」
「……もういいよ!」
「おい、どこへ行く? 仕方のないヤツだ。夕飯までには帰ってこいよ。今日のメシも豪勢だからな!」
(もうやだ……。父さんがあんなだから、私には友達もできない……)
(それどころか、ののしられて殴られて……。誰も私を助けてくれない……ひとりぼっち……)
(父さんも父さんよ……。お金の力ですべて処理しようなんて、そんなのなんの解決にもならない……)
「ただ、少しだけでいいのに……。ほんの少し、父さんがみんなに優しくなれば……」
「お互い助け合って、分かち合って。困っている人を見捨てないことが、大切だってこと……」
「気づいてよ……父さん……」
「それが君の願いかい?」
…………
「職もない、食べ物もない……。このまま俺は浮浪者として死ぬのか……」
「それは大変だ! ワシが職を斡旋してあげよう。落ち着くまで、ワシの家で生活するといい」
「お母さんがはやり病で倒れちゃった……」
「国に陳情して、この町にも有名な医師が来てくれることになったよ」
「でも、お金が……」
「治療にかかる費用は全額、ワシが負担する。安心しなさい!」
「この年になると、家の階段を上るのも難儀でのう……」
「住みやすい家に改築しましょう! ワシに任せなさい」
「それにお爺さんがさびしくないよう、毎日来てあげますよ!」
「ニャー」
「これは可愛そうに。捨て猫か。ワシの家で面倒を見てあげなければ!」
「一体どうしちまったんだ、町長は? まるで人が変わったみたいだ」
「この前も私、ただ荷物が多くて苦労してただけなのに、当たり前のように家まで運んでくれたわ」
「あたしの誕生日を町全体でお祝いしてくれるんだって! うれしいな!」
「定期的に炊き出しを行ってくれるそうだ。これで食い扶持に困らなくてすむぜ!」
「なんて住みよい町なんだろう! このパレポリ町は、現世に現れた桃源郷だな!」
(町の人たち、幸せそうな顔をしてる。私にもみんな、良くしてくれる……)
(やっぱり人に情けをかけてあげれば、めぐりめぐって自分に返ってくるんだ!)
(笑顔がいっぱい。うれしいよ、私。なにより父さんが生き生きしてるもの)
(魔法少女になって、良かったなあ……)
…………
「おう、町長さん。またアンタの賭博場で全財産すっちまったよ。金貸してくれ」
「はいはい、お安い御用で! 返すのはいつでもかまわんよ!」
「ヒヒ……。返すわけねーだろ、バーカ!」
「町長さんよ。そろそろその職、辞職したほうがいいんじゃねえか? ボランティアには邪魔だろ?」
「そうですな。では、後任はあなた方に一任します!」
「あー、この家、豪華だよな。俺たちみたいな浮浪者にこそ必要なんじゃねえか?」
「ごもっともです。すぐ出て行きますよ!」
「アンタの嫁さん、健康でうらやましいよ。傷病者のために臓器提供してくれないかな?」
「困っている人のためなら、嫁さんでもなんでも差し出しますよ!」
「アンタんとこの子供、3人いるだろ? 弟さんと下の妹さんを俺にくれや」
「愛玩奴隷として可愛がってやりたいっつーオッサンがいるんだよ。俺には理解できないがね」
「可愛がってもらえるなんて、それはありがたい! どうぞ、連れて行ってください!」
「町長さん。いや、元町長さんよ」
「まだ隠し持ってんだろ? アンタの財産のすべて、町のみんなに還元してやれよ」
「ええ、ええ、ワシのものはみんなのもの! さあ、すべて持っていってください!」
…………
「父さん……お腹、すいたよ……」
「スマンな。この食料は町の人たちに分けてあげる分なんだ。ワシらが食べてしまうわけにはいかない」
「……ねえ……わたし……熱があるんだけど……」
「我慢しなさい。ワシはこれから、仕事に行かなければならないから」
「お仕事……? それって、お金もらえるの……?」
「何を言ってるんだ! 無償で働くからこそ、みんな喜んでくれるんだぞ。じゃあ、行ってくる」
「……」
「……寒い……苦しいよ……。助けて……太陽神さま……」
「お水……せめて、お水が飲みたい……。ああ……でも、もう……体が動かない……」
「誰か……誰か、いませんかあ……!」
「誰もいないよ。無情なものだね。苦しむ君には、見舞いのひとりすら来ない」
「……あなたは……」
「君はこんな言葉を聞いたことがあるかい?」
「『腹をすかせたネズミにチーズをやると、今度はミルクをくれと言い出す』」
「人の欲望には限りがない。与えれば与えるだけ、それ以上のものを望んでくる」
「人間のサガというものさ。それに気づけなかった君には、ご愁傷様というしかないね」
「……私は……なんのために……。……信じてたのに……」
「君はもうすぐ死ぬ。遠からず、君のお父さんも過労で倒れるだろうね」
「復讐しなよ。恩知らずの町の人たちに。魔女になって、さ」
「それが今、君ができる唯一のことだ」
…………
(魔法少女は……誰にも助けてもらえないの……?)
(私はただ、ほんの少し救いを求めただけなのに……)
(ああ……絶望が私を包む……。この弱った体で、怨みだけが活力を保ち続けている……)
…………
………
まどか「……」
元町長「お嬢さん、どうかしたのかい? もしかして、この石は目的のものではなかったのかね?」
まどか「いえ、そんなことは……。ありがとうございます……」
元町長「うむ。人助けして感謝されるのは、やはり気持ちがいいものだ」
まどか「あの……娘さんのこと、お悔やみ申し上げます……」
元町長「君は娘の知り合いかね?」
まどか「そういうわけではないですけど……」
元町長「そうか。見ず知らずの人に悲しんでもらえるなんて、あの子も果報者だよ」
魔王「石は取り戻した。この時代の光のほこらに置きなおし、A.D.2300へ飛ぶぞ」
A.D.2300 光のほこら
杏子「すげえ……! あの真っ黒だった暗黒石が、ものすごい光を放ってやがる!」
魔王「この光……闇に生きるものにとっては、少々まぶしすぎるな」
杏子「太陽の光を集めた『太陽石』ってわけか」
まどか(確かに、この光は太陽のもの。でも、それだけじゃない……)
まどか(数千万年もの時の流れの中で、生まれては消えていった女の子たち……)
まどか(魔法少女たちの、いのちの光なんだね……)
まどか(だって、見えるもの。こうやって、手を触れるだけで……)
キイイィィン...!
…………
………
「……痛い……」
「……苦しい……」
「……辛い……」
「……悲しいよ……」
「憎い……。魔女が、憎い……。何も知らない人たちが、憎い……」
「インキュベーターが憎い……。彼らは、どんな時代でもやってくる……」
「それは、ラヴォスがいなくなったこの時代ですら……。エネルギー採取のためだけに……」
「……怖いよ……」
「この世のすべてが怖い……」
「苦痛が、嘆きが、死が、憎悪が、喪失が……」
「……絶望が……私を襲う……」
「私は」
「わたしは」
「あたしは」
「アタシは」
「魔法少女は、希望を抱いてはいけないの?」
「魔法少女は、希望を信じてはいけないの?」
「ねえ、誰か」
「誰か、お願い」
「助けて」
「助けてよ……」
「私を」
「わたしを」
「あたしを」
「アタシを」
「助けてください」
「魔法少女を……誰か……」
「救ってください……」
「……ねえ、お願い……」
「……太陽神さま……」
…………
………
まどか(……ずっと……ずっと、見てきたんだね……あなたは……)
まどか(何も言わず……何も言えず……何もできず……)
まどか(ただ、聴くことしかできなかった……。彼女たちの祈りを……)
まどか(いっしょだね……わたしたち……)
まどか(……だから、あなたは……)
杏子「まどか? なんで泣いてるんだ?」
まどか「……この子も……泣いてるよ」
魔王「石が泣くだと? ありえんな、何を血迷ったことを言っている」
まどか「……」
年代不明 時の最果て
ルッカ「はい、できたわよ」
まどか「ありがとうございます、ルッカさん!」
さやか「へー、太陽石をボウガンにアタッチメントとしてつけたんだ」
まどか「うん。これで、ずっと一緒にいられるから……」
マミ「なんだかその石が人間であるかのような言い回しね?」
ほむら「何言ってるのよ。石は石でしょ」
杏子「どうも今回のまどかは様子がおかしいな」
カエル「意思を持つ石……なんつってな……」ボソッ
さやか「うわ、さっぶ。もっとおかしい人がここにいたわ」
カエル「このシャレの良さが分からんとは……。まだまだ青いな、さやか」
さやか「ただのオヤジギャグじゃん!」
まどか(サラちゃん、ハッシュさん。わたし、なんとなく分かった気がする)
まどか(わたしにできること。わたしが願うべき祈り……)
まどか(答え、見つけたよ)
第14話(マルチイベント編-5)「太陽石」 終了
セーブしてつづける(マルチイベント編-6へすすむ)
ニアセーブしておわる
セーブしないでおわる
第15話(マルチイベント編-6)「緑の夢」
このセーブデータをロードします。よろしいですか?
ニアよろしい
よろしくない
A.D.600 地底砂漠
メルフィック「Rトカツケラレナクテヨカッタ!!」
カエル「ヤツがこの地一帯を砂漠化させていた原因だったのか……」
さやか「でもなんとか倒せたし、これで木を植えてもすぐ枯れちゃう~なんてことはなくなるよね!」
クロノ「フィオナさんに知らせに行こうか。それにしてもさっきの魔物、どこかで見たような……」
…………
A.D.600 フィオナの小屋
マルコ「旅のお方。妻の頼みを聞いてくださり、感謝いたします。見ず知らずの私たちのために……」
さやか「問題ないっすよ! 困ってる人を助けるのは勇者の勤めだもんね、師匠?」
カエル「まあ……そうだな」
マルコ「! ではあなた方が勇者様一行……魔王を倒したと言われる……」
さやか「えーと、まあ……そうとも言うけど、そうじゃないとも言えるんですけどねえ……」
カエル「あまり話をややこしくするな。素直に受け取っておけ」
マルコ「私は兵士として、魔王軍との戦いに駆り出されていました……」
マルコ「こうして愛する妻のもとに無事帰ることができたのも、勇者様のおかげです」
カエル「そんなに感謝ばっかりされちまうと、なんだかむずがゆいぜ」
さやか「へへ、やっぱいいことすると気持ちいいね!」
フィオナ「みなさん、本当にありがとう。これでこの苗木を植えることができます」
クロノ「それは?」
フィオナ「代々伝わる、不思議な力を持った苗木です……」
フィオナ「これならきっと、砂漠を緑の大地に戻せるでしょう。私も、もう一度がんばってみます」
カエル「苗木から森を育てるのか? ずいぶん気の長い話だな」
さやか「あたしもよく知らないけど、それってむちゃくちゃ時間がかかるんじゃないの?」
フィオナ「そう、問題はそこなのです。気の遠くなるような時間が必要になる……」
フィオナ「たとえ私が一生をかけたとしても、どれほどの成果をあげられるか……」
マルコ「何百年でも働き続けることができる人がいれば……いや、そんな人間がいるわけはないか……」
クロノ「付近の村の人に頼むことはできないんですか?」
フィオナ「無理です。このような絵空事、賛同してくれる人などいません……」
マルコ「大丈夫だよフィオナ。ふたりで、できるところまでやろう」
カエル「……」
…………
年代不明 時の最果て
ルッカ「どうしろって言うのよ?」
クロノ「いや、どうにかならないかなーと。……ならないよな」
ルッカ「なるわけないでしょ」
まどか「砂漠を森に戻すって、どれくらいかかるんですかね……」
エイラ「ヘビガミさま、できる!」
マール「つまり神様ぐらいしかできないってことだよね……」
ロボ「……ミナサン、提案がありマス。ワタシがフィオナさんのお手伝いをするというのはどうデショウ?」
カエル「なに? ロボが?」
ロボ「ワタシの体は機械デス。何百年も働き続けられるデショウ」
ロボ「砂漠が森とシテよみがえったあとに、ワタシを回収してくださればよいのデス」
さやか「そっか……そうだね! ロボならいけるよ!」
クロノ「いいのかい?」
ロボ「お任せクダサイ」
ルッカ「……」
…………
A.D.600 フィオナの小屋
フィオナ「え……あなたが?」
ロボ「ハイ、ワタシがフィオナさんのお手伝いをシマス」
ロボ「何百年でも働き続けマス。キット、森を復活させてみせマス」
マルコ「すごいな。どういうカラクリで動いているのか分からないけど、頼もしいよ」
ルッカ「じゃ、ロボ……私たちは行くから……」
クロノ「頼んだよ!」
ロボ「ハイ、おふたりもお元気デ。イエ、この言い方はおかしいデスネ」
ロボ「アナタ方にとってはおそらく再会までの時間はイッシュンの出来事でしょうカラ」
ルッカ「あなたにとっては無限にも思える時間でしょうけどね……」
ロボ「そんな顔をしないでクダサイ。すぐ会えマスヨ」
ルッカ「……」
クロノ「未来で会おう! またな、ロボ!」
…………
年代不明 時の最果て
カエル「……失敗、だって……? どういうことだ!?」
クロノ「……」
ルッカ「そのままの意味よ。森は復活していなかったわ」
まどか「ロボさんは……?」
クロノ「分からない……どこに行ったのか……。壊れてしまったのかも……」
マール「そ、そんな……」
ルッカ「こうなるだろうという予感はしてたわ……」
さやか「ど、どういうことっすか?」
ルッカ「何百年も働き続ける……確かにロボなら、まったく不可能というわけではないわ」
まどか「な、ならどうして……」
ルッカ「正常な状態でいられたら、という前提がつくからよ」
ルッカ「農作業という過負荷、ドロや雨による劣化、予想だにしないトラブル……」
ルッカ「農業機械だってちゃんとメンテナンスしてあげないと、まともに稼動し続けられないわ」
ルッカ「誰がロボの面倒を見るのよ。マニュアル化してフィオナさんにでも渡す?」
ルッカ「それもひとつの手ね。けど、彼女に扱えるかしら? それに彼女が亡くなったあとは?」
カエル「……そ、それは……」
ルッカ「この件はどうにもならないわ。ロボを迎えにいって、終わりにしましょう」
ルッカ「……だいたい、ロボひとりに押し付けるなんておかしいわよ」
クロノ「……」
ほむら「あなたらしくない興奮っぷりね、ルッカ。ロボがいなくなって、さびしいからかしら?」
ルッカ「なによ。ずっと黙ってたあんたが、いまさらどうしようっての? 何かいい手でもあるわけ?」
ほむら「マニュアル化はできるのよね?」
ルッカ「そりゃあやろうと思えば……。だから、使える人がいないんだって」
ほむら「私なら使えるわ。ロボとはずっと一緒にいたし、あなたから多少なりとも教わったこともある」
ルッカ「そういうことじゃないでしょ。普通の人間は、何百年も生き……ら、れ……」
ほむら「……気づいたみたいね。いえ、他にも気づいている人がいるようよ」
マール「どういうこと?」
ほむら「私と同じく、だんまりだった人たちに聞いてみれば?」
マミ「……」
杏子「……」
まどか「……マミさんに杏子ちゃん? どうしたの、神妙な顔して……」
魔王「……彼女らは普通の人間ではない、ということだ」
さやか「え……あっ! そ、そっか……あたしら……」
まどか「ジャ、ジャキくん……そんな言い方……」
魔王「事実を言ったまでだ。不老不死に近いところにいるのは確かだからな……」
杏子「ソウルジェムの穢れをなんとかできりゃ、だけどな……」
マミ「不可能だわ、そんなの……」
マミ「たとえ理論的に生き続けられるとしても、きっとその前に精神がおかしくなってしまう……」
ルッカ「そ、そうよ! 机上の空論だわ!」
ほむら「不可能かもしれない。可能かもしれない。どちらにも転ぶなら、やってみるだけよ」
ほむら「ロボひとりに押し付けたこと、確かに恥ずべきことだった。なら、次の可能性にかけてみましょう」
カエル「そうは言うがな……」
エイラ「マミ、いなくなるか!? イヤだ! ならエイラ、行く! いっしょ!」
マミ「エ、エイラ……私は、その……」
ほむら「別にあなたたちにやれとは言ってない。行くのは、私よ」
まどか「ほむらちゃん!? なに言ってるの!?」
ルッカ「本気なの……あんた……」
ほむら「本気も本気。大マジよ。でなきゃこんなこと言わないわよ」
まどか「……どうして、そこまで……」
ほむら「ラヴォスを倒すためのこの旅、いつだって途中であきらめそうになった」
ほむら「でもそのたび乗り越えて、ここまで来たのよ。それを……」
ほむら「なにかひとつでもあきらめてしまえば、星を救うことはできない。そんな気がするだけ」
マール「……」
ほむら「さ、準備しなきゃ。長い旅になりそうだものね。ルッカもマニュアル、早いとこ頼むわよ」
ルッカ「……ええ……」
…………
数日後
ほむら「……じゃ、行ってくるわね」
杏子「考え直す気はねえんだな?」
ほむら「ないわ」
杏子「……そうかよ」
マミ「あの、暁美さん……。これ、私のお気に入りの茶葉なんだけど、良かったら……」
エイラ「エイラ、渡す! 肉! 食え!」
ほむら「餞別ね、ありがと」
カエル「なんと言っていいか分からんが……まあ、成功を祈ってるぜ」
魔王「フン、結果はすぐに分かる……」
マール「さびしくなったら帰ってきてもいいからね!」
ほむら「はいはい、そうならないように努力するわ」
クロノ「ほむら……」
ほむら「クロノ、いつか話したわよね? あなたたちは、私を無条件に信じ続けたおバカさんたちだって」
ほむら「どうやら私も、あなたたちのおかげでおかしくなったみたい。無条件に信じてみようって、ね」
クロノ「……」
ほむら「私に何かあったら、あとは頼むわね、副リーダー」
クロノ「……何かなんて、ないよ。絶対……」
ほむら「……そろそろ行きましょうか、ルッカ」
さやか「待った、待った!」
カエル「さやか、お前どこに行ってたんだ。こんな時に……」
さやか「荷造り手伝ってたの。ほら、早くしないと置いてかれちゃうぞ、まどか」
まどか「はあ、はあ……。ほむらちゃん、わたしもルッカさんと一緒に見送らせて」
ルッカ「ずいぶん大荷物ね。何が入ってるのよ?」
まどか「ティヒヒ、あとでまた話します」
ほむら「まあいいわ。それじゃまたね、みんな」
…………
A.D.600 フィオナの小屋
ロボ「おやミナサン。どうかしたのデスカ?」
ルッカ「ロボ、良かった……。あのね、あなたと別れたあと400年後に行ったんだけど……」
…………
ロボ「そうデスカ……。ワタシでは無理だったのデスカ……」
ほむら「気を落とさないで。そのために私が来たんだから」
ロボ「シカシ、ほむら……」
ほむら「ストップ。説明はちゃんとしたでしょ。もう決めたことよ」
フィオナ「いまだに信じられません。あなたが不老不死だなんて……」
マルコ「さすが勇者様だ。神のような者まで仲間にしてしまうとは……」
ルッカ「そういう納得の仕方でいいわけ?」
ほむら「本人がいいならいいんじゃない」
ルッカ「まどか、そろそろ行くわよ」
<モウチョット マッテクダサアーイ!!
ほむら「まどかは何をしてるのかしら?」
ルッカ「……さあ?」
ほむら「あなた何か隠してない?」
まどか「ごめんなさい、お待たせしました」
ルッカ「もういいの?」
まどか「はい。ほむらちゃん、ロボさん……あの、えっと……がんばって。無事でいてね……」
ほむら「まどかも元気でね。……って、この言い方はおかしいんだったかしら?」
ロボ「ハハ。そうデスネ。ワタシも言ってしまいマシタ」
ルッカ「……」
まどか「ほむらちゃん、これ……お守り」
ほむら「これ、サラさんのペンダントじゃない。あなたの大切なものでしょ?」
まどか「うん、だから……絶対返してね」
ほむら「……そうね。分かったわ」
まどか「ほむらちゃん……。サラちゃんが、きっと……守ってくれるよ……」
ほむら「ええ……。ありがとう、まどか……」
…………
ロボ「……行ってしまいマシタネ」
ほむら「そうね。これで後戻りはできないわ。これから忙しいわよ、ロボ」
ロボ「ほむらがいてくれるなら、きっと成功シマス」
…………
………
……
♪風の憧憬
ほむら「農作業って腰にくるわね……」
ロボ「ほむらは肉体強化の魔法を使っているのデハ?」
ほむら「最小限にしてるわ。あんまり魔力を使いたくないし……」
ロボ「マッサージでもしまショウカ?」
ほむら「そうね、帰ったらお願いできる?」
ロボ「勿論デス」
…………
フィオナ「どうかしら? お口に合うといいんだけれど」
ほむら「とてもおいしいです、フィオナさん」
フィオナ「良かった」
ほむら「ロボは食べられなくて残念ね」
ロボ「見ているだけで満足デス」
ほむら「あとでオイルを注入してあげるわ」
…………
フィオナ「そうそう、そうやってひとつひとつ植えて……」
ほむら「こんな感じでいいですか?」
フィオナ「ええ、十分。うまく育つといいんだけれど」
ほむら「不思議な苗木ですね。かすかに魔力を感じる……」
マルコ「おーい、そっち終わったかい? そろそろ昼飯にしよう!」
…………
ロボ「今日は小屋の北側を開墾してキマス」
フィオナ「お願いね。ほら、マルコも手伝ってきて」
マルコ「肉体労働は男の仕事~ってか」
ほむら「フィオナさん、おなべ焦げてます」
フィオナ「あらいやだ。これじゃ帰ってきたふたりに怒られるわ。家を守るのが女の仕事なのに」
ほむら「なんか……そういうのも、いいですね」
フィオナ「ほむらさんのところでは違うの?」
ほむら「ええ、まあ……いや、どうなんでしょう……?」
フィオナ「?」
…………
ほむら「鳥に食べられちゃってる……」
ロボ「案山子が必要デスネ。ワタシが立ってマショウカ?」
ほむら「ダメよ。ロボにはもっと違う仕事がたくさんあるわ」
ロボ「これは参りマシタ。ほむらはロボ使いが荒いデス」
ほむら「ロボ使いってなによ? まったく、もう」
…………
マルコ「思ったんだけどさ、ほむらさん。もう私たちは家族同然なんだし、敬語はやめにしないか?」
ほむら「え……?」
フィオナ「それいいわね! 私たちのことも、さん付けじゃなくて呼び捨てにして欲しいわ」
ほむら「そんな、失礼ですよ……」
マルコ「それそれ。なんか、だいぶ経つのに壁を感じるんだよねえ」
ほむら「そういうわけでは……」
フィオナ「……ほむら」
ほむら「! ……え、え?」
フィオナ「ふふ、呼んじゃった。なんだか娘ができたみたい」
マルコ「ハッハッハ! そのうちほむらに、弟か妹を作ってやるからな!」
フィオナ「もう~、マルコったら」
ほむら「は、はあ……」
…………
ほむら「作業の手が止まってるわよ、ロボ」
ロボ「オット、これは失礼シマシタ」
ほむら「何よさっきから。私の顔ばっかり見て、何かついてる?」
ロボ「イエイエ。最近のほむらは表情が和らいでいると思いマシテネ」
ほむら「……そう?」
ロボ「呼び方ヒトツ。言葉づかいヒトツ。ただそれだけデ、人の気持ちは変わるものデス」
ほむら「……あなたはたまに、人間より人間らしい考え方をするわね」
ロボ「ほむらと最初に出会った時カラ、アナタはワタシたちに対してくだけていマシタ」
ほむら「……突然の出来事で、混乱していただけよ」
ロボ「だとシテモ、そのおかげでこうして仲良くなれマシタ。ルッカも喜んでイマス」
ほむら「あいつが、ねえ……」
ロボ「ほむら、ワタシはアナタと出会えて本当に良かったと思ってイマス」
ほむら「なによ、突然」
ロボ「こういうときでもないと素直に聞いてくれませんカラネ、ほむらハ」
ほむら「あなたには負けるわ……」
ロボ「フィオナさんとマルコさん……いい人たちデスネ」
ほむら「……そうね」
ほむら「ところであなたは、敬語やめないの?」
ロボ「これはワタシのアイデンティティーデス」
…………
ほむら「ただいま」
ロボ「オカエリナサイ。魔女退治はうまくいきマシタカ?」
ほむら「ええ、なんとかね。ついでに村のほうで買出しも済ませてきたわよ」
ロボ「ではワタシが倉庫に収納してキマス」
フィオナ「いつもごめんね、ふたりとも」
ほむら「妊娠中は無理厳禁、でしょ」
マルコ「それにしても魔族に魔女、か。私たち人間は敵が多いな……」
フィオナ「この子が大きくなるころには、平和な世の中になっているといいんだけれど……あら?」
ほむら「どうしたの?」
フィオナ「今、この子……おなかを蹴ったわ!」
マルコ「なんだって! ちょ、ちょっとさわらせてくれ!」
フィオナ「きゃあ! やめてよ、マルコ! そんな鼻息荒くしないで!」
ほむら「……見てられないわね」
…………
マルコ「……」ソワソワ
ほむら「マルコ、落ち着いて。心配ないわよ」
ロボ「パレポリ村いちの産婆さんデスカラ、間違いないデショウ」
マルコ「そうは言ってもな。こういうとき、父親に心配するなというほうが無理な話だ」
ほむら「まあ、それはそうだけど……」
オギャー!!
マルコ「!」
ほむら「……良かったわね」
ロボ「元気な泣き声デス」
…………
ピエトロ「ほむ! ほむりゃ!」
ほむら「え、ええ……?」
フィオナ「うふふ。ピエトロはほむらが好きなのね」
マルコ「お父さんとしては複雑だなあ。最初の言葉が『パパ』でも『ママ』でもなく『ほふ』だもんな」
ロボ「キット、『ほむら』と呼ぶつもりだったのデショウ」
フィオナ「ほら、ほむら。抱いてあげて?」
ピエトロ「ぶー! ほむりゃ!」
ほむら「……わわっ……」
…………
ロボ「大丈夫デスカ? マルコさん」
マルコ「大丈夫、大丈夫。ロボがはしごを押さえててくれるからな」
ロボ「剪定でしたらワタシがやりマスガ……」
マルコ「ふふふ、甘いな。こういうのは専門家に任せておけ」
マルコ「それに、君たちに任せっきりだとフィオナが怒るんだよ。ちゃんと働け~ってね」
ロボ「気をつけてクダサイ」
マルコ「……ふむ。こんなもんかな。ん、待てよ……向こうの枝をもう少し切ったほうが……」
ロボ「! マルコさん、危ナイ!」
マルコ「う、うわっ!?」
…………
フィオナ「はい、あーん」
ピエトロ「あー……」
マルコ「フィオナ、私にもあーんしてくれ」
フィオナ「左手で食べてください! もう、怪我なんてしてたら余計ふたりに迷惑がかかるじゃない」
ロボ「ワタシの不注意デ、申し訳ありマセン」
フィオナ「ロボが謝ることはないわ。この人が調子に乗ったせいよ」
マルコ「……なあ、最近フィオナは私に厳しくないか?」
ほむら「尻にしかれてるわね」
マルコ「とほほ……」
…………
ガタガタ...ガタガタ...!!
ほむら「……すごい嵐ね。窓枠が外れそうだわ」
マルコ「……」
ピエトロ「ビエエェェン!!」
フィオナ「よしよし、大丈夫よ。怖くないからね……」
カッ!! ドシャーンッ!!!
ほむら「! ……雷……ずいぶん近かったわね……」
ロボ「苗木たちは大丈夫でショウカ……」
マルコ「……」ガタッ
フィオナ「マルコ? 何してるの?」
マルコ「ああ……ちょっとだけ、外を見てくる。ロボの言うとおり、苗木が心配だ」
フィオナ「何を言ってるの! 怪我も治っていないのに……」
マルコ「なあに、ちょっと行って帰ってくるだけだ。大丈夫さ」
ほむら「なら、私も……」
マルコ「ほむらが行くとピエトロが悲しがる。私ひとりでいいよ」
ロボ「ひとりは危険デス、ワタシも一緒ニ連れていってクダサイ」
マルコ「おいおい、女性ふたりと小さな子どもを残していくつもりか?」
ロボ「シカシ……」
マルコ「じゃ、頼んだぜ」
フィオナ「マルコ!!!」
…………
ほむら「今日は、風が冷たいわね」
ロボ「冬デスカラ」
ほむら「……雪でも降るのかしら」
ロボ「サア……」
…………
フィオナ「ふたりとも、おかえり。遅いから心配したわよ」
ほむら「ロボが張り切っちゃってね……」
ほむら「最初に植えた苗木も育ってきたし、そろそろ南のほうにも手をつけていいんじゃないかって」
ロボ「今日はだいぶ遠くのほうマデ開墾してきマシタヨ!」
フィオナ「あんまり根をつめちゃだめよ?」
ほむら「……あなたこそ、ね」
フィオナ「え?」
ほむら「なんでもないわ。夕飯にしましょう」
…………
ほむら「うわ……毛虫だわ」
ロボ「もうそんな季節デスカ」
ほむら「最近、年がめぐるのが早い気がするんだけど」
ロボ「ほむらもそろそろオバサンですカネ?」
ほむら「あなた今、全人類を敵に回したわよ」
ロボ「それはご勘弁願いたいデス」
…………
ほむら「おはよう、ピエトロ」
ピエトロ「……」
ほむら「あ、あれ? 行っちゃった……」
フィオナ「ピエトロも最近難しい年頃になってきたからね……悲しいわ」
ロボ「思春期デスカラ。仕方ないことデス」
フィオナ「それとも、可愛い女の子が同居してるせいで照れているのかしら?」
ほむら「可愛い女の子……ね」
ロボ「ほむらハ、カワイイデスヨ?」
ほむら「はいはい」
…………
ほむら「こんなところにいたのね。もう暗くなるわ、帰りましょう」
ピエトロ「……」
ほむら「外で遊ぶのもいいけれど、お母さんに心配かけちゃダメじゃない」
ピエトロ「……うるさい」
ほむら「またそんなこと言って。いい加減にしないと怒るわよ?」
ピエトロ「……」
ほむら「ねえ、ピエト……」
ピエトロ「あっち行けって言ってんだろ! 魔女!!」
ほむら「!」
ピエトロ「お前、なんなんだよ! 何年も何年もおんなじ顔しやがって! 気味悪いんだよ!!」
ほむら「それは……」
ピエトロ「母さんも母さんだ! なんでこんなヤツをうちに住まわせとくんだ!」
ピエトロ「父さんも、お前が……! ちくしょう、魔女め!!」
ほむら「……」
ピエトロ「お前なんか……お前なんか、出ていけ!!!」
ほむら「! 待って……! 待……」
ほむら「……」
…………
ほむら「あら、また来てるわ。あの小鳥……」
ロボ「この木が気に入ったんデショウカ?」
ほむら「なんだかうれしいわね。愛情こめて育ててきたから……」
ロボ「きっとそのウチ、この一帯は木々に覆われ、鳥たちの大合唱が聞けることデショウ」
ほむら「そうなるといいわね……」
…………
フィオナ「やっぱり行くの、ピエトロ?」
ピエトロ「ああ。俺は王国海軍に志願して、新大陸を見つけてやる」
ピエトロ「デカいこと成し遂げてやるんだ。そして母さんや、ほむらおばさんに楽させてやるよ」
ロボ「ワタシも忘れないでクダサイ」
ピエトロ「ははっ、ごめんごめん。じゃあロボには、異国の油でも土産に持って帰ってくるよ」
ロボ「体に合いますカネ……」
ほむら「気をつけてね、ピエトロ」
ピエトロ「ほむらおばさん。俺、ガキのころはなんにも分かってなかったよ」
ほむら「え?」
ピエトロ「そのせいでおばさんにひどいこと言っちまった時もあったよな……」
ほむら「……」
ピエトロ「なんか、うまい時期が見つからなくて今まで謝れなかったけど……ほんと、ゴメン」
ほむら「……いいのよ、そんなこと。とっくに忘れたわ」
ピエトロ「そっか。……へへっ。じゃあ、いってきます!!」
フィオナ「必ず帰ってきてね……!」
…………
ガタガタ...ガタガタ...!!
ほむら「また嵐……か」
ロボ「この季節はいつもこんな感じデスネ」
ほむら「嫌いだわ……。あの日を思い出すから……」
ロボ「……」
ガシャーン!
ほむら「!?」
ロボ「フィオナさん! どうかシマシタカ!?」
フィオナ「ごめんなさい。手が滑ってグラスを落としちゃったの……」
ほむら「怪我はない?」
フィオナ「ええ、大丈夫」
ロボ「危険デスからワタシが処理してオキマス」
フィオナ「ありがとう、ロボ。……あーあ、このグラス、あの子のお気に入りだったのに」
フィオナ「帰ってきたら、しかられるわね……」
ほむら「……」
…………
王国海軍兵「では、そういうことですので……」
ほむら「……あ……は、はい……」
ほむら「……」
フィオナ「ゴホ、ゴホ……。ほむら、誰か来てたの?」
ほむら「! ……なんでもないわ。それよりフィオナ、寝てなきゃダメじゃない」
フィオナ「ちょっと熱が出ただけよ。これぐらい……」
ほむら「そういう過信がいちばん危ないのよ。完治するまで安静にしてて」
フィオナ「迷惑かけるわね……。こんなとき、ピエトロがいてくれれば楽なのに」
フィオナ「あの子ったら出て行ったきり便りもよこさないで……。今ごろ、何してるのかしら……」
ほむら「……」
…………
フィオナ「……ふう。こんなものかしら?」
ほむら「大丈夫? あんまり疲れることしないほうが……」
フィオナ「あらなに? 年だから無理するなってこと?」
ほむら「そういうわけじゃないけど……」
フィオナ「大丈夫よ、たまには手伝わせて?」
フィオナ「それに今は……何かしてないと、変なこと考えちゃいそうだから……」
ロボ「フィオナさん……」
…………
ほむら「いい天気ね」
ロボ「こんな陽気デスト、思わず日向ぼっこをしたくなりマス」
ほむら「いいわね。あとでフィオナもつれてきてあげましょう。家の中ばっかりじゃ、かわいそうだわ」
ロボ「では、ワタシがイスを運びマス」
…………
フィオナ「ほむら……ほむら……。そこにいるの?」
ほむら「ええ、私はここにいるわ。ほら、手を握ってあげる」
フィオナ「おお、おお……。ロボも……いるのかい?」
ロボ「ハイ、ワタシはここデス」
フィオナ「ごめんね……ふたりとも。何もしてあげられなくて……」
ほむら「そんなことはないわ。私たちは、あなたたち家族にたくさん、大切なものをもらったわよ……」
フィオナ「そうかい……? そうだとしたら……いいんだけれど……」
ロボ「フィオナ……。安心シテ、ゆっくり休んでクダサイ」
フィオナ「本当に……あなたたちがいてくれて……私は救われたわ……」
フィオナ「この森のこと……どうか……よろしく、ね……」
ほむら「ええ、必ず……」
ほむら「……フィオナ……?」
ほむら「……」
…………
ほむら「……」
ロボ「ふたりきりになってしまいマシタネ……」
ほむら「いずれ、そうなるだろうと覚悟はしてたわ……。大丈夫……」
ロボ「……」
…………
ほむら「やった……! 私たち、やったのよね、ロボ!」
ロボ「ハイ! まだまだわずかですケレドモ……これハ、『森』と呼んで差し支えないデショウ!」
ほむら「フィオナ、見てる? あなたの夢は、きっと実現するわよ……!」
ロボ「サア、ほむら! 今日もがんばりマショウ!」
…………
ほむら「ロボ、見て! リスよ!」
ロボ「シマリスですネ。ネズミ目リス科シマリス属、樹上生リスとジリスの中間的な存在でアリ……」
ほむら「ちょっと。そういうことを言ってるんじゃないのよ?」
ロボ「分かっていマス。この森にも動物が棲むようになったのデスネ……」
ほむら「鳥たちも増えてきたし……。あなたの言ったとおり、最近は大合唱よ」
ロボ「彼らもこの森の一部デス。いとおしいものデス」
ほむら「そうね……。とてもかわいいわ……」
…………
ロボ「外で食べる昼食モ、たまには良いデスネ」
ほむら「それはそうだけど……。この鳥、いつまで私の頭の上に乗っているつもりかしら?」
ロボ「ハハハ。アナタは森の人気者ですカラ。鳥だけじゃありマセンヨ」
ほむら「いつの間にか動物たちが……」
ロボ「こうして見ているト、ひとつの絵画のようデス。タイトルは『森の聖女』なんてどうデスカ?」
ほむら「恥ずかしいセリフ禁止!」
…………
ほむら「ロボ! ロボ、しっかりして!」
ロボ「ウウ……ン? そこにいるのハ、ほむらデスカ……?」
ほむら「帰りが遅いから心配して探しに来てみれば……なにがあったのよ!?」
ロボ「魔族が襲ってきまシテ……突然のことデ、反撃もデキズ……」
ほむら「魔族!? どうして……。ビネガーは何をやっているのよ……!」
ロボ「彼がすべてを管理できるというわけではないのデショウ……」
ロボ「ゼナン橋以南は治安も悪ク、ビネガーの館からも遠いデスカラ……」
ほむら「とにかく、小屋に戻りましょう。壊れたところを直さなきゃ……」
ロボ「ほむらがいてくれて、良かったデス……」
…………
ほむら「それじゃあ、行ってくるわね」
ロボ「ハイ。魔女退治、がんばってクダサイ」
ほむら「そうそう、村に寄るんだから買出しもしなきゃね。何か不足してるものはある?」
ロボ「お待ちクダサイ、今リストを作成シマス」
…………
ほむら(最近、魔女の活動が活発化してきている……)
ほむら(なぜなのかしら? 今まではこんなことなかったのに……)
村人A「例の家族の話、聞きました?」
村人B「ええ……。自ら家屋に火を放ち、一家心中なんてひどい話ですわね……」
村人A「なんでも魔女のたたりだとか……」
ほむら「! ……」
村人B「あそこの奥さん、愛娘を亡くしてからというもの、異端の教えに傾倒しだしましたものね……」
ほむら(この時代は、魔女だの悪魔だのが信じられている……)
ほむら(あながち、完全に間違いだとも言えないところが皮肉なものよね……)
村人C「その話、私も聞きましたわ。どうも『森の魔女』の仕業だということらしいですわよ」
ほむら「……っ!?」
村人B「森の魔女? なんです、それ……?」
村人A「知っていますわ。先ごろ、砂漠に森が出来始めましたでしょう?」
村人B「そういえば……。私も、不思議に思っていました。あんな土地に森が復活するなんて……」
村人C「あれは、魔女の棲む森ですわ。あの森に出入りする少女を見た人がいるんです」
村人A「それがどうも、何十年も前から姿が変わらないとかで……」
村人B「まあ、怖い……」
村人C「この村でも似た少女を見かけたという人がおりますのよ」
村人B「えっ!? じゃ、じゃあ……もしかして、今もこの近くに……」
村人A「……あら?」
ほむら「……!」
村人C「どうかなさいまして?」
村人A「いえ、あの子……」
村人B「あのフードをかぶった子が、なにか?」
村人A「……ごめんなさい、きっと気のせいですわ」
…………
ロボ「ソウデスカ……。『森の魔女』……そんな噂ガ……」
ほむら「私は……とうぶん、この森から外に出ないようにしたほうがよさそうね……」
ロボ「村に何か用事があれバ、ワタシが行きマス」
ほむら「ごめんなさい、ロボ。迷惑かけるわね……」
ロボ「イエイエ。ほむらは、不注意でワタシが破損した時、直してくれマシタ。お互いさまデス」
ロボ「何があってモふたり力を合わせテ、乗り越えていきマショウ!」
ほむら「そうね。ありがとう、ロボ。おかげで元気が出たわ」
…………
ほむら「遅いわね、ロボ……。村のほうで何かあったのかしら……?」
バタン!!
ロボ「ほむら、大変デス!」
ほむら「!? なによ、その姿は!?」
ほむら「アイセンサーも壊れて……ああ……! あちこち、ひしゃげてるじゃない……!」
ロボ「ワタシのことはいいのデス! それよりここから逃げなくてハ!」
ほむら「ちょ、ちょっと! ダメよ、動かないで! どうしたの、また魔族!?」
ロボ「イエ……これは王国兵ニ……」
ほむら「ガルディア王国が!? どうしてこんなこと……」
「開けろ! ここを開けろ!!」ドンドンドン!!
ロボ「いけマセン、もうバレてしまったとハ……!」
ほむら「どうなってるの、ロボ!? 外にいるのは誰よ!?」
ロボ「……魔女狩り部隊デス」
ほむら「!?」
ロボ「『森の魔女はどこだ』ト……尋問されマシタ。ワタシもどう見ても人間ではありマセンカラ……」
ほむら「そ、そんな……!」
「くそっ、開けないつもりか……。おい、この扉をぶち破れ!」
ほむら「!」
ロボ「早ク、ほむら! 裏口から逃げるのデス!」
兵士「隊長! いました、あの女です!」
隊長「なにっ!? くそ、裏口があったのか……!」
ほむら「見つかった……!?」
ロボ「走るのデス、ほむら! さあ早ク!」
隊長「逃がすな! 追え! なんとしてもひっ捕らえろ!!」
ほむら(違う、私は魔女じゃない……!)
ほむら(魔女じゃないのに……!!)
…………
ロボ「なんとか逃げおおせマシタネ……」
ほむら「……しばらくはここに隠れて、今後のことを考えましょう……」
ロボ「ここハ?」
ほむら「カエルさんの、住んでいたところよ……」
ロボ「……」
ほむら「ホコリが、ずいぶん溜まってる……。きっともう何年も使われていないのね……」
…………
ロボ「ほむら、ほむら! 起きてクダサイ!」
ほむら「んぅ……なによ、こんな朝から……」
ロボ「部屋を掃除していたら見つけマシタ! コレ……コレハ……!」
ほむら「あなたが取り乱すなんて、余程のことね。見せて……手紙……?」
ほむら「……!!!」
久しぶりだな、ほむら、ロボ。
お前たちに会いに行こうかと何度か考えたこともあったが……。
その決意を尊重し、やめにした。
どうせお前らも俺に会いには来るまい? そういうヤツだよ、ほむら。お前は。
それでいい。
しかし今、この手紙を読んでいるということは、お前たちに緊急事態が起こったのだろう。
そうではないと願うが……もし正しいのであれば、棚の二段目の引き出しを開けろ。
そこに俺がルッカから預かった、お前らの助けとなるものを入れておいた。
一応、鍵をつけてあるが……ロボなら開けられるだろ。なんなら、ぶっ壊してもかまわんぜ。
お前たちの友として、俺がしてやれることはこれが精一杯だ。
忘れるなよ、ふたりとも。
俺たちはいつまでもお前らの味方だぜ。
――――カエルより
ほむら「これは……!」
ロボ「ゲートホルダーデス、ほむら! これはゲートホルダーデス!!」
ほむら「こ、これがあれば……ゲートを使って……」
ロボ「帰りマショウ、ほむら! みんなのもとへ!」
ほむら「でも……フィオナの森を、見捨てるわけには……」
ロボ「逃げ帰るわけではありマセン。もう一度やり直すタメニ……」
ロボ「あきらめないタメニ、戻るのデス! みんなの力を借りるのデス!」
ほむら「……」
ロボ「行きマショウ、ほむら。まだ、道は示されてイマス……!」
…………
ビュオオォォォ...!!
ほむら「く……嵐のせいで前が……見えない……!」
ロボ「ワタシが先頭に立ちマス。ほむらは後ろに隠れてクダサイ」
ほむら「ありがとう……」
ロボ「……グッ!?」
ほむら「ロボ!? 飛来物があなたに……」
ロボ「大丈夫、大丈夫デス……アッ!?」
ほむら「ぬかるみが……! 手を伸ばして、ロボ!」
ロボ「いけません、ほむら! 風で木が倒れてキマス!」
ほむら「!? ああ……っ!!」
…………
ロボ「……」
ほむら「えっと……あれ……おかしいな……?」
ロボ「直せそうにありマセンカ? ひどい損傷デスシ……」
ほむら「そ、そんなことないわ。これぐらい……なんのために、ルッカが託してくれたと思ってるのよ……」
ロボ「……」
ほむら「すぐ直してあげるから……。この配線が……こうなって……あれ……なん、で……あれ……」
ロボ「ほむら、もういいデス」
ほむら「そんな……よくないわよ!」
ロボ「時の最果てに戻れば、きっとルッカが直してくれマス。今はゲートに向かうことを優先シマショウ」
ほむら「そう……そうね……。ごめんね、ロボ……私のせいで……」
ロボ「ハハ。では戻ったあとにほむらには、ワタシの体をピッカピカに磨いてもらいマショウ」
ほむら「うん……必ず……」
ロボ「楽しみデス! さあ、ゲートの場所までもう少しデスヨ!」
…………
ほむら「……そんな……どうして……」
ロボ「ゲート……ありマセンネ……」
ほむら「き、きっと道を間違えたのよ!」
ロボ「イエ……確かにここデス。おそらく……閉じてしまったのデショウ……」
ほむら「……終わりだわ……私たち……ここで、死ぬのよ……」
ロボ「……」
ロボ「元気を出してクダサイ! まだまだあきらめていマセンヨ、ワタシハ!」
ほむら「無理よ、もう……。ゲートホルダーがあったって……ゲートそのものがなければ……」
ロボ「探しマショウ、ほむら! 別のゲートヲ! きっとあるはずデス!」
ほむら「ある、わけ……ないじゃない……」
ロボ「ありマス! 信じていれバ、必ず道は開かれるのデス!」
ほむら「……」
ロボ「さあ立ってクダサイ、ほむら! ワタシがそばにいマス。ずっと、そばにいマス!」
ロボ「アナタが絶望に襲われるならソレと戦い、アナタが希望を抱くなら、ソレを守り続けマス!」
ロボ「それがワタシの役目デス!!!」
ほむら「ロボ……」
ほむら「……そう、ね……。あなたが、いてくれるなら……。わたし……私は……!!」
兵士「発見しました!」
ほむら「!?」
隊長「よし、よくやった。やはりこの山に入っていったという情報は正しかったようだな」
ロボ「アナタ方ハ……!」
隊長「追い詰めたぞ、魔女め。要らぬ苦労をかけさせやがって……」
ほむら「ち、違う……私は魔女なんかじゃ……」
隊長「問答無用! 連行しろ!!」
ロボ「ほむらに手は出させマセン!!」
兵士「こ、こいつ、やっぱり魔女の手先だったのか!」
ほむら「ダメ、ロボ! あなたはとても戦えるような体じゃ……!」
隊長「まとめて取り押さえろ!」
ロボ「グ……! ほ……ほむ、ら……」
隊長「おい、負傷兵を下がらせろ。まったく、てこずらせやがって……」
ほむら「ロボ! ロボ、しっかりして!!」
隊長「ええい、おとなしくしろ!」
ほむら「いや! 放してっ!!」
兵士「!? 隊長! 魔女のふところから何か落ちました!」
ほむら「!」
隊長「ム……なんだこれは。杖……か? 魔女の武器だな、破壊しろ!」
ロボ「ゲ、ゲートホルダーが……!!」
ほむら「やめてえぇぇぇーっ!!!」
兵士「破壊しました!」
ほむら「あ……あああ……」
隊長「よし、これでひとまずは安心だな」
ロボ「これデハ……たとえ別のゲートを見つけたとシテモ、モウ……」
隊長「なんだ、魔女め。急におとなしくなったな。ついに観念したか」
ほむら「……」
隊長「よし、王都に戻るぞ」
兵士「この人形はいかが致しましょうか」
隊長「捨て置け。魔女の方が優先だ。早く連れ帰らねばならん」
隊長「こいつは世を騒がせた魔女として、拷問ののち火あぶりの刑に処されるはずだ」
隊長「それで人民の安心を得られるだろうという話だからな」
ロボ「な、なんてことヲ……!!」
ほむら「……」
兵士「さっさと歩け! ぐずぐずするな!」
ほむら「……て……やる……」
隊長「ん? おい、なにをぶつぶつ言っている! 呪文でも唱えようものなら即刻首をはねるぞ!」
ほむら「……殺して……やる……殺してやるわ……」
隊長「なに? いまなんと言った?」
ほむら「そんなに……魔女がお好みなら……今、この場で……私が魔女になって……」
兵士「た、隊長! こいつ様子がおかしいです!」
隊長「な、なんだこのまがまがしい殺気は!?」
ほむら「あなたたちを殺してやるわ!!!」
ロボ「ソウルジェムが……!! ほむら、イケマセン!!」
ほむら「!?」
兵士「うがっ!?」
隊長「こ、こいつまだ動けたのか!? 魔女を奪われたぞ! 追え!」
ほむら「ロボ……わ、私……なんてことを……」
ロボ「枷は外しマシタ。逃げてクダサイ、ほむら。ワタシがここで食い止めマス」
ほむら「いや! いやよ、そんなの! なに言ってるの!!」
隊長「いたぞ!」
ロボ「サア! 行ってクダサイ!! 早ク! 立って、走るのデス!!」
ほむら「ロボ……! ロボ……!!」
ロボ「忘れないでクダサイ。ワタシの言ったコト……希望は、必ずありマス!!」
ほむら「……っ!!!」
隊長「魔女が逃げるぞ!」
ロボ「ここハ、通しマセン……!!」
隊長「またお前か! くそ、何とかしろ! 複数で囲め!」
ロボ「ワタシが……ほむらヲ……守るのデス……!!!」
隊長「殺せえ!! こいつを殺せえええーッ!!」
ロボ「ウオオオオオオオオオオオーッ!!!!!」
ほむら「はあ、はあ……ああ……はあっ……! ぅぐっ……はあ……ああ……っ!!」
ほむら「ロボ……! ……はあ……ごめん……はあっ……なさい……!!」
ほむら「ごめん、なさい……ごめんなさい……ごめん……なさい……!」
ほむら「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……っ!!!」
…………
………
ほむら(足が……痛い……)
ほむら(確かに……ずいぶん歩いたけれど……それだけで……)
ほむら(魔力が……コントロール……できていないのかしら……)
ほむら(でも……大丈夫……。もうすぐ、フィオナの小屋……)
ほむら(結局……戻ってきてしまった……。この時代で……安らげるのは、あの小屋だけ……)
ほむら(魔女狩りが……張ってないといいけど……)
ほむら「……」
ほむら(少し休んだら……ロボを探しに行こう……)
ほむら(大丈夫……。きっと、無事よ……)
ゴオオォォォ...!!!
ほむら「うそ……なんで……!? 森が……燃えて、る……!」
ほむら「……そう……よね……。魔女の森、だもの……。そうする……わよね……」
ほむら(……私が逃げたから……? 私があの時死ねば、せめて森だけは……)
ほむら「……」
ほむら(燃えてる……みんな燃えちゃってる……)
ほむら(フィオナが……ロボが……私たちがつむいできた想いが……全部……)
ほむら「……ハハ……アハハハ……」
…………
ザアアアァァ...
ほむら「……寒い……」
ほむら「雨……やまないな……」
ほむら「……みんなに……あんなえらそうなこと言ったのに……」
ほむら「なに……やってるんだろ……わたし……」
ほむら「……」
ほむら「会いたいよ……鹿目、さん……」
…………
ほむら「すごいや。わたしって、こんなに強かったんだ」
ほむら「美樹さんの言ってたこと、ホントだったんだね」
ほむら「魔女になにされようが、その気になれば痛みなんて感じない」
ほむら「よーし、どんどんころすぞー」
ほむら「わるい魔女なんて、ぜんぶ死んじゃえばいいんだ!」
…………
ほむら「ロボー? どこにいるのー?」
ほむら「かくれんぼしてないで出ておいでー」
ほむら「もー、どこいったのかなあ?」
ほむら「ねえ、ロボー、ロボってばー」
…………
ほむら「あー、腕取れちゃった。魔力で治さないと……」
ほむら「んー……でも、めんどくさいなあ……」
ほむら「……あれ? ここ……フィオナさんの森だ。焼け跡でなーんにもないけど」
ほむら「戻ってくるつもりじゃなかったのにな? 道に迷っちゃったかなー……」
ほむら「ちょうどいいや。ちょっと休憩してこ……」
ほむら「もうずーっと歩きっぱなしだもん。さすがに疲れちゃうよね」
ほむら「何日たったのかな? いや、何週間? 何ヶ月?」
ほむら「ロボもずいぶん強情だなー」
ほむら「……ん? なんだろ……あれ……」
ほむら「え? あれ……? なんで、壊れたロボがここにいるの?」
ほむら「幻覚かなあ? いよいよ、わたしもおしまいなのかな?」
ほむら「……」
ほむら「……幻覚……じゃない……」
ほむら「ロボ!? ロボ!! 返事して! ロボ!!!」
ほむら「……こんな……あ、ああ……ロボ……」
ほむら「……はっ……ぅ、ぐっ……うぅ……うう゛ううううう゛うう゛うう゛う!!!!!」
…………
ほむら「はぁーっ……。寒い……。また風が出てきたわね」
ほむら「ロボ? あなたの体、ちょっと冷たすぎるわよ」
ほむら「え? 内部ヒーター機能? そういえばマニュアルにそんなの載ってた気がするわ……」
ほむら「ほんと、あなたって何でもありよね」
ほむら「……」
ほむら「でもゴメンね。直してあげられないの……」
ほむら「何も、直してあげられない……。ロボはここにいるのに……」
ほむら「うん……大丈夫よ……。こうしてロボの体にもたれかかってるだけで、あたたかいから……」
ほむら「ねえ、ロボ……。あなたはどうして、ここに戻ってきたの……?」
ほむら「そんなボロボロの体で……たどり着くのだって、辛かったでしょうに……」
ほむら「なにもないわよ、もう……。森も、ここに建っていたはずの小屋も……」
ほむら「……そうね……。私だって、結局戻ってきてるんだもの……」
ほむら「ここが……ふさわしいわよね……。眠るのには……」
ほむら「見て、ロボ。私のソウルジェム。真っ黒でしょ?」
ほむら「これでもがんばったのよ? あなたを見つけるまでは、決して魔女にはならないと……」
ほむら「ずっと……探してた……」
ほむら「……」
ほむら「あなたは……人間にかけてみるって……いつか、そう言ったわよね……」
ほむら「今でも、そう思っているの……?」
ほむら「どれくらいのあいだ、探し回ったか……分からないけれど……」
ほむら「あなたが言ってた希望……必ず、あるはずだって……」
ほむら「……なかったよ……希望なんて……どこにも……」
ほむら「うそつきだね、ロボは……」
ほむら「なんだか……疲れちゃった……ね、ロボ……」
「……私……もう……魔女になっちゃっても……いい、よ……ね……」
…………
………
……
A.D.1000 ゼナンの橋上空
まどか「……すごい……」
ルッカ「ウソ……! ここはただの荒野だったはずなのに……」
まどか「森だ! 見渡す限りの森ですよ、ルッカさん!!」
ルッカ「あいつら……。ほんとに実現させやがったのね……」
まどか「早くふたりを迎えに行ってあげましょう!」
A.D.1000 フィオナ神殿
まどか「神殿……?」
ルッカ「さすがに400年も小屋が残ってるわけないか」
まどか「ほむらちゃんたちはここにいるんでしょうか……」
ルッカ「……」
神官「おや、旅の方ですか? ようこそ、フィオナ神殿へ」
まどか「あの、ここは?」
神官「400年前、魔王との戦いで砂漠化した森をよみがえらせた『聖女フィオナ』様を祀った神殿です」
神官「あの窓を御覧なさい」
ルッカ「え……。うわ、ステンドグラス……」
神官「フィオナ様のお姿は不明瞭な点が多く定かではありませんが……」
神官「あれに描かれているものこそが現在最も有力とされているのです」
まどか「あれってフィオナさん……じゃない、ですよね」
ルッカ「……ほむらだわ」
まどか「ほむらちゃん、聖女様になっちゃったんですか!?」
ルッカ「名前だけ借りて、ここはフィオナさんの森だと示したつもりかしら」
まどか「うわー……すごいなあ。ほむらちゃん、キレイ……」
ルッカ「嫌な予感がする……」
まどか「え?」
ルッカ「……偉人は、この世を去ってから偉人と呼ばれるものよ」
まどか「そ、それって……」
神官「え? アケミホムラ? さあ……。私には、心当たりありませんが……」
神官「神父様なら何かご存知かもしれません」
まどか「どこに行けば会えますか?」
神官「祭壇の方にいらっしゃるかと……」
ルッカ「行くわよ、まどか!」
A.D.1000 フィオナ神殿 祭壇
ルッカ「神父様!」
神父「これ。この場は神聖なる神のおわすところ。そのように声を荒げること……は……」
まどか「? な、なんですか? 私たちの顔に何か……?」
神父「お、おお……。言い伝えはまことであったか……」
ルッカ「は? 言い伝え?」
神父「桃色の髪と慈愛に満ちた顔立ち。そしてそちらのお方は、知性と教養を兼ね備えた佇まい……」
まどか「ルッカさん。私たち、拝まれてるみたいですけど……」
ルッカ「いきなり気持ち悪いわね。なんなのかしら?」
神父「千年祭の年――時は来れり。さあ、礼拝堂の方へ……」
A.D.1000 フィオナ神殿 礼拝堂
まどか「! あ、あそこに安置されてるのって……」
ルッカ「ロボ!!」
ロボ「……」
ルッカ「ロボ、大丈夫!? しっかりして!」
まどか「ロボさん……! どうして動かないの!? ま、まさか……壊れ……」
神父「これこれ、『守護者』をそのように手荒に扱ってはいかん」
まどか「しゅ、しゅご……? なんです?」
神父「伝承にある。『守護者、はじめ森を守り、次に大地の扉を守る』」
神父「『そして今は、聖女の安らかなる眠りを守るものなり……』」
まどか「安らかなる眠りって……まさか……」
神父「桃色の髪の乙女よ。守護者の後ろの扉を開き、進みなさい」
まどか「え? この先って……」
神父「納骨堂じゃ」
まどか「……っ!!!」
ルッカ「……? おかしい……。ロボ……休止状態になってるだけだわ……」
まどか「ルッカさん、ごめんなさい! わたし……わたし、先に行きます!!」
ルッカ「まどか!? ちょ、ちょっと待ってよ、私も……!」
神父「ふむ? そうそう、言い忘れておった」
ルッカ「な、なに? 急いでるんですけど!」
神父「伝承の続きじゃ」
ルッカ「そんなのあとで……!」
神父「聞きなさい。伝承にこうある」
神父「『守護者、はじめ森を守り、次に大地の扉を守る』」
神父「『そして今は、聖女の安らかなる眠りを守るものなり……』」
神父「『彼の者の名はプロメテウス』」
神父「『人の……そして聖女の。"希望"を守るものなり』」
ルッカ「え……?」
A.D.1000 フィオナ神殿 納骨堂
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃあん!! どうして死んじゃったの!!」
まどか「絶対帰ってくるって……ペンダント返してくれるって……言ったのに……!」
まどか「ひどいよ、こんなの……こんなのってないよ! どうして……うぅ……」
まどか「目をあけて、ほむらちゃん……! お願い、声を聞かせて……!!」
ルッカ「……」
まどか「ル、ルッカさん……ほむら、ちゃんが……」
ルッカ「まどか。どいて」
まどか「え?」
ルッカ「ドララァ!!」ガスッ!!
まどか「な!? なにしてるんですか! 遺体を蹴るなんて……!」
ルッカ「ちょうどいい目覚ましでしょ、ほむら?」
まどか「……へ?」
ほむら「……いったぁ……。なに……? だれよ……」
まどか「ホムラチャン!!!???」
ほむら「……」
ほむら「いけない、禁断症状だわ。まどかがそこにいるように見える……」
ほむら「寝不足かしら? ダメね、お肌にも悪いし」
ほむら「ちょっと、そこのメガネの人? 今、何時かしら。ていうか、何年?」
ルッカ「チョオォーップ!!!」
ほむら「マドカァ!!」
ほむら「え!? まどか!? それに……ル、ルッカ!?」
まどか「ほむらちゃん! 生きてるんだね……!」
ルッカ「ったく、余計な心配かけさせるんじゃないわよ」
ほむら「本物……なの、よね……?」
まどか「もちろんだよ!」
ほむら「そう……。そうなの……。迎えに……来てくれたのね……」
ほむら「……ああ……まどか……。会いたかった……!」
ロボ「……」
ロボ「……?」
ロボ「……オヤ……? ワタシハ……起動されたのデスカ……? まだズイブン明るいようデスガ……」
ルッカ「ロボ!!!」
まどか「ロボさん!!」
ロボ「オ……オオ……!! ルッカ……まどかさん……! ナツカシイ……」
ロボ「イヤ……アナタ方にとってハ、一瞬のことだったのデスネ……」
ロボ「シカシ、ワタシたちニとっては400年ハながい時間デシタ……」
ルッカ「だから言ったでしょ。ホントに、もう……。無事で、良かった……」
ロボ「ほむら。すべて終わったのデスネ」
ほむら「そうね。これでもう、深夜にこそこそ動き回らなくてもすむわ」
まどか「どういうこと?」
神父「聖女さまを衆目の下にさらすと大変な騒ぎになるからの」
ほむら「神父様には、お世話になりました」
神父「いやいや。聖女さまのためとあれば」
ルッカ「そうか……。それでさっきは休止状態だったのね」
ほむら「ルッカ、帰ったらロボを整備してあげて」
ほむら「400年のあいだに私も勉強したけど……やっぱり機械に関しては、あなたにかないそうもないわ」
まどか「400年、かあ。ぜんぜん想像つかないよ……」
ほむら「色々あったわ……。でも、ここまで来れた。あなたたちのおかげよ」
ルッカ「私たちの……?」
ほむら「何度もあきらめそうになった。あの日、私は間違いなく魔女になってしまうはずだった……」
――――
―――
――
ほむら「……」
ほむら「……?」
ほむら(あれ……私……どうして……まだ無事なの……?)
ほむら(ソウルジェムは……とっくに、濁りきってるはずなのに……)
ほむら(……? なにか、光ってる……)
ほむら「これ……まどかから預かった……サラさんの、ペンダント……?」
ほむら「!? どういう、こと……」
ほむら「ペンダントが……ソウルジェムの穢れを吸収してる……!!」
ほむら「? なにかしら……」
ほむら(風で、積もった灰が飛散して……ロボの体の下に、なにかが……)
ほむら(……扉? どこへの……?)
ほむら「小屋は焼け落ちてしまったけれど……この扉だけは残っている……」
ほむら「……ロボ……あなたは……」
ほむら「この扉を守るために、戻ってきたの……?」
ほむら「真っ暗……」
ほむら(えっと、ロウソクはどこにしまったっけ……あ、あった)
ほむら「……地下室……いえ、確かここは貯蔵庫だったかしら……」
ほむら(そういえば……収納はロボに任せっきりで、入ったことなんてなかった……)
ほむら「……?」
ほむら「机の上になにかある……」
ほむら「……」
ほむら「……!? こ、これ……!!!」
まどかが何か書けってうるさいから、書いといてやるわ。
あんたら、あきらめたら承知しないわよ!
――――ルッカより
………………
ほむらちゃん、ロボさん。大変なことを押し付けちゃってごめんなさい。
わたしたちにできることがないか、たくさん考えたんだけど、これぐらいしか思いつきませんでした。
この部屋に、ベッケラーさんからもらったドッペル人形を置いていきます。
これを見て、わたしたちのことを思い出してください。
あ、ほむらちゃん。わたしにソックリだからって、イタズラしちゃダメだよ!
なんてね。
わたしたちは、いつでもあなたたちのそばにいます。
遠く離れていても、ずっと一緒です。そして、必ず迎えに行きます。
だから……待っててね。
希望は、あるよ。
――――まどかより
――――
―――
――
まどか「わたしたちの残した手紙、見てくれたんだ……」
ほむら「次からは、もう少し分かりやすいところに隠してね」
まどか「ティヒヒヒ」
ロボ「ワタシはすぐに見つけマシタガ」
ほむら「だったら早く言いなさいよ」
ルッカ「それにしたって、手紙だけでどうして……」
神父「伝承にある。『聖女フィオナ、三つの顔を持てり』」
神父「『命のグレートヒェン。理のアシュティア。そして――時のホムリリー』」
ルッカ「……まさか、あんた!」
まどか「え、なに? なにが?」
ほむら「使わせてもらったわ、ドッペル人形。あなたたちのも。私のも」
ほむら「病んだ精神をなぐさめ、痛んだ身体を交換し、新しい姿となり……また、人の目を欺くため……」
ほむら「そうしているうちに、暁美ほむらという固定観念は消えていった……」
ほむら「魔女とののしられた私は、いつの間にか聖女と呼ばれていたわ……」
ほむら「私はもう、元の身体ではない……『暁美ほむら』は死んでしまった……」
ルッカ「……」
ほむら「でも、大丈夫。私の魂は、心は……ここにあるんだもの」
ほむら「これがある限り、私は私でいられる……」
まどか「ソウルジェム……輝いてる……」
ほむら「忘れないうちに、これ、返しておくわ」
まどか「あ……。サラちゃんのペンダント……」
ほむら「不思議よね、それ。ソウルジェムに近づけると、黒い想いとともに穢れが癒されていく……」
ほむら「あなたが言っていたように……サラさんが、守ってくれたのかしら……」
まどか「……」
ルッカ「……そうか! そういうことだったのね!」
ロボ「何か分かったのデスカ?」
ルッカ「前に言ったわよね? ソウルジェムはドリストーン製だって」
ルッカ「そして、そのペンダントもドリストーンから作られたもの」
ルッカ「それもできたばかりの、最も純度の高いものだわ。そこに、サラの想いが加われば……」
ルッカ「ドリストーン同士はお互いの力を吸収する作用がある」
ルッカ「結果的には失敗したけれど、グランドリオンが魔神器を止める手立てとされたように……」
ルッカ「ソウルジェムの穢れを、同じドリストーンであるグリーフシードで吸収できるように……」
ルッカ「このペンダントは、ほむらのソウルジェムの穢れを取り除き……」
ルッカ「そして、自らの力を与えていたのよ!」
まどか「サラちゃん……! ほんとに……守ってくれてたんだ!」
ほむら「まさか、よね……」
ロボ「やはり人間はすばらしいデス」
ルッカ「それにしたってそのペンダント、400年分の穢れを吸ってまだ輝きを失わないなんて……」
ルッカ「サラさんってどんだけチートなのよ。ラヴォスを一万年以上も封印できるわけだわ」
ロボ「みなさんのおかげデ、森ハよみがえりマシタ」
ほむら「苦労の甲斐があってやれやれだわ……」
ロボ「サア、今夜ハ、400年ブリのサイカイをいわおうではアリマセンカ!」
…………
A.D.1000 フィオナの森
夜
ルッカ「どう? ロボ」
ロボ「ありがとうゴザイマス。ルッカのメンテナンスのおかげで、だいぶ調子が戻ってキマシタ」
ほむら「天才ね、あなたは」
ルッカ「もっとほめていいのよ?」
ほむら「……懐かしいうっとうしさをありがとう」
さやか「しっかし、これでほむらは400歳かー」
マミ「とんでもないわね……」
ほむら「私は永遠の14歳よ」
杏子「どこの声優だ、アンタは」
まどか「これからはジャキくんもほむらちゃんのこと、先輩として敬わなきゃね」
魔王「……」
マール「ほむらちゃん、大丈夫? 疲れてない?」
ほむら「400年分の誤差を埋めるのに少しかかりそうだけど……まあ、なんとかなるでしょ」
マール「なんとかなるんだ……」
エイラ「ほむ、変わってない! エイラ、うれしい! また仲良くする!」
クロノ「言ったろ? 何かなんて起きないって」
ほむら「そうね……。あなたたちの底抜けの馬鹿正直さが、私たちを救ってくれたのかも……」
ロボ「特にカエルさんにハ感謝してもしきれマセン」
カエル「俺か? 何かしたっけな……」
ほむら「まあ、そのうち分かるわよ」
マミ「ところで今回はお酒禁止なの?」
ほむら「今日ぐらいゆっくりさせてちょうだい」
エイラ「肉、食え! 代わり! 焼けたぞ!」
ほむら「そうそう。今回、400年もの旅をして、気づいたことがあるのだけれど……」
マール「なになに?」
ロボ「ゲートの出現はラヴォスの力のゆがみだと思ってイマシタガ、違うような気がしてきたのデス」
マミ「そういえばキュゥべえも、ゲートを見たことがないようだったし……」
ルッカ「確かに。ラヴォスについて回っていたのなら、初見というのはおかしいわね」
ロボ「確信は持てませんガ、誰かがワタシたちに見せたかったんじゃないかト……」
クロノ「見せたかったって、なにを?」
ほむら「いろんな時代の何かを、よ」
ロボ「もしくハ、その誰か自身が見たかったのかもシレマセン。自分の生きてきた姿を思い返すヨウニ」
エイラ「エイラ、それわかる。人死ぬ時、今までの思い出、全部見る! 言い伝え!」
杏子「走馬灯現象ってヤツか」
カエル「人は死ぬ時、生きていた時に深く心にきざんだ記憶が次々とうかぶという」
カエル「それは楽しい思い出もあるが、たいていは悲しい思い出さ……」
さやか「なんか……さびしいね、それって……」
ロボ「『あの時に戻りたい』『あの時ああしていれば』……」
ロボ「そういう強い思いが、記憶を呼び起こすのデショウ」
ほむら「……」
まどか「……ほむらちゃん……」
マール「私も死ぬ時はそうなるのかな?」
ルッカ「きっとそうよ」
マール「ルッカはあるの? 戻りたい、一瞬が?」
ルッカ「……」
マール「ごめん。聞いちゃ、いけなかった?」
ルッカ「……なるべく考えないようにしているの。だってつかれちゃうもの」
ほむら「……」
カエル「しかし、だ。この思い出の持ち主は、よっぽどラヴォスに縁があるんだな」
さやか「そういや全部ラヴォス絡みだよね」
まどか「わたしたちの時代に開いたゲートも、そうなのかな?」
ほむら「さあ……」
魔王「……で。誰だというんだ、そいつは?」
ほむら「それが分かれば苦労しないわ」
ロボ「もしかしたら人ではナイ、もっと大きな存在かもしれマセン」
ロボ「それが分かる日が、ワタシたちの旅の終わりなのかもしれマセンネ……」
クロノ「旅の終わり……か。そうだよな。いつか……終わるんだよな……」
ほむら「始まりがあれば終わりもある。至極当然のことよ」
ほむら「さ……そろそろ、寝ましょうか」
まどか「ウェヒヒヒ! みんなでお外で雑魚寝なんて、キャンプみたいで楽しいね!」
エイラ「マミ! 寝る! いっしょ!」
マミ「ええ、もちろん。なんなら、手をつないで寝る?」
エイラ「いいな! シアワセ、なる!」
ほむら「どう、まどか?」
まどか「わあ、ほんとだ。ロボさんに寄りかかって寝ると、安心するね!」
ルッカ「ちょっと、ほむら。つめてよ。私の寝るスペースがないじゃない」
ロボ「3人はさすがニ……」
さやか「師匠~? 女の子ばっかりだからって、盛ったりしないでよ?」
カエル「安心しろ。お前はまず間違いなく襲わん」
さやか「ひどっ! いやその前に、盛ることを否定してよ!」
カエル「男はみんな、狼なのだ……!」
さやか「師匠はカエルでしょーが!!」
杏子「ジャキ、ひとりで寝れるか? ガキのころみたいに、お姉ちゃんが添い寝してやろうか?」
魔王「……ふざけるな」
杏子「おーおー、生意気言っちゃって」
カエル「ちょっと待て! 『添い寝』ってなんだ!!」
ルッカ「なに騒いでるの。早く寝なさいよ。クロノとマールの寝つきの早さを見習いなさい」
カエル「そんな場合か! 俺は今、全読者の心の代弁をだな……!!」
さやか「師匠、うるさい」ゲシッ
カエル「あふん!?」
…………
ルッカ「……」
ルッカ「……う……んぁ……」ガツッ
ルッカ「! ……いつつ……。寝返り打ったら鼻ぶつけた……」
ロボ「――――」
ルッカ「こら、ロボ。あなた、体硬いわよ」
ルッカ「なーんて、当たり前か。……あーあ。変な時間に目が覚めちゃったな」
まどか「――――」
ルッカ(幸せそうな寝顔しちゃって。よっぽどほむらが無事だったのがうれしかったのね)
ルッカ「……あれ?」
ルッカ「……まどか? え……? なんで、息してないの……?」
ルッカ「ロボ? クロノ? みんな……」
ルッカ(……眠ったまま石みたいに……。なによ……これ……?)
ルッカ「まるで、時間が止まってしまったみたい……」
ルッカ「……」
ルッカ「ほむら?」
ルッカ「……」
ルッカ(あいつだけ……いない……。なんで……)
「……」
ルッカ「いたいた! ほむら、こんなところで何やってたのよ?」
ルッカ「ねえ、なんかおかしくない? 森が静か過ぎる……」
「……」
ルッカ「……ちょっと。なんで黙ってるのよ。何か言いなさいよ」
ルッカ「……」
ルッカ「……あんた……ほんとに、ほむらなの……?」
「……」
ルッカ「え、なに? あんたの盾が、どうかしたの?」
ルッカ「とうとう分解させてくれる気になったのかしら? ……んなわけ、ないわよね」
ルッカ「ねえちょっと。やめてよ、ダンマリは。気味悪いじゃない……」
ルッカ「……ん?」
ルッカ「あれ? あんたのその盾に付いてる砂時計……」
ルッカ「そんな形してたっけ? それに、なんだか……中の砂の色も、違うような……」
「これは、400年分の時の砂」
ルッカ「え?」
「あなたが、戻りたいと強く願う瞬間は、いつ?」
ルッカ「なに言ってるの? ほむら……」
「……」カラカラ...カラカラカラ...
ルッカ「! ……ゼンマイが……」
ルッカ「あなた、もしかして……」
ルッカ「……ほむらじゃなくて……『時の……」
カラカラカラ...
カラカラ...
カシャン!!!
ルッカ「……ハッ!?」
ルッカ「ここは……実家の、私の部屋……?」
ルッカ(……いえ、違う。調度品が古い……)
ルッカ(昔の私の部屋……。戻りたい瞬間……)
ルッカ「……まさか!!」
ララ「まあまあ、何の機械だか……。タバンは危ないから近づくなって言うけど、こう汚しちゃあねェ」
ルッカ(やっぱりお母さん! まだ……無事でいたころの……!)
ルッカ(ダメ、その機械にさわっちゃ! それに近づくと、あなたは……!)
ララ「あら? いやだわ……。ルッカ、ね、ルッカ」
るっか「なーに?」
ララ「ちょっと手伝って。スカートのすそがはさまっちゃったの」
るっか「うーん……! だめだよ、取れないよ」
ララ「困ったわねえ……」
カチッ! ゴウンゴウン...
ララ「!! き、機械が! どうしよう、変なところさわっちゃったのかしら……!?」
るっか「お母さん!?」
ララ「ダメ……引っ張られて……このままじゃ巻き込まれる!」
ルッカ(……させない! またあんな悲惨な光景を見るなんて、まっぴらよ!)
ルッカ(コンソールは……これね! よし、こいつで緊急停止させれば……!)
『パスコード入力』
ルッカ「……え?」
ララ「ルッカ! 機械を止めて!」
るっか「そ、そんなこと言ったって……」
ルッカ(考えろ……考えろ……父さんがつけそうなパスコード……!)
ルッカ(できる、私ならできる……そのために、私は……!!)
ララ「お願い、ルッカ! パスコードを……!」
るっか「ぱすこーどってなに!? わたしはどうしたらいいの!?」
ララ「ああ、もうだめ……! あなた……!!」
ルッカ「……ッ!!!」
「わからないわ! お母さん!」
…………
………
……
ルッカ「……」
ルッカ「……あ……え!?」
ほむら「……おかえり」
ロボ「こんなところで寝ているト風邪を引きマスヨ」
ルッカ(……今のは夢だったの……?)
ルッカ(いえ、夢にしては生々しすぎる……それに……)
ルッカ「ほむら……今、あんた……『おかえり』って……」
ほむら「……」
ロボ「泣いていたのデスカ、ルッカ? 目が腫れてイマス」
ルッカ「! ……こ、これは……」
ほむら「悲しくて泣いたのかしら? それともうれしくて、安堵したから?」
ルッカ「……」
ほむら「……まあ、深くは詮索しないわ」
ルッカ「あの日、誓ったの……。もう二度とあんな悲劇が起きないように、科学の道を究めようって」
ルッカ「ほむら。あなたは私が天才だと言ったけれど……実際は、ただのガリ勉よ……」
ほむら「だとすれば、むしろ尊敬するわ。400年かけても追いつけなかったんだから」
ルッカ「……」
ロボ「ルッカ。これヲ」
ルッカ「これは……?」
ロボ「プレゼントしマス。森で育った木のジュシをかためて、ワタシたちがつくりマシタ」
ほむら「400年の重みのある宝石、『みどりのゆめ』よ。何かに役立ててちょうだい」
ルッカ「……ありがとう。私には、こんないい友達がいるのね……」
ロボ「友達……。ロボットのワタシが……」
ルッカ「ね、ほむら……。なぜ私は、あの瞬間に戻れたのかしら……」
ほむら「……」
ルッカ「あなたも……あるんじゃないの? 『あの時に戻りたい』『あの時ああしていれば』……」
ルッカ「そう、強く願っている瞬間が……。だから、同じように私を……」
ロボ「……」
ルッカ「誰かに知って欲しかったんじゃないの? あなたが背負っているものの重みを……」
ルッカ「そして、できるならば……ともに……」
ほむら「ルッカ、これは夢なのよ」
ルッカ「え?」
ほむら「ここに今、私たちがこうしているのは、すべて夢の中の出来事……」
ルッカ「そんなわけないじゃない……」
ほむら「いいえ、きっとそうだわ」
ほむら「だから……私が何かを話したとしても、朝になればみんな忘れてしまうのよ」
ロボ「ほむら……」
ほむら「この森が……森の緑が……見せてくれている、ひとときの夢なのよ……」
ルッカ「……緑の……夢……」
ねえ…… 本当の気持ちって、どうしたら伝わるのかしら?
なによ、突然……
別に…… ちょっと、聞いてみただけ……
伝えるのって、難しいわね……
私が気持ちを伝えたら、応えてくれるのかしら?
分からないわ…… でも……
きっと、分かち合うことはできるかも……
そっか……
……ありがとう……
第15話(マルチイベント編-6)「緑の夢」 終了
セーブしてつづける(第16話「最後に残った道しるべ」へすすむ)
ニアセーブしておわる
セーブしないでおわる
【最終章】へ続く。

