ほむら「何をしているの? 鹿目まどか」
まどか「ほ、ほむらちゃん!?」
ほむら「そこはあなたが利用すべき施設ではないわ」
まどか「ち、ちがうの。たまたま通り掛かって」
ほむら「あなたの辞書では、30分以上も立ち止まることを『通り掛かる』と言うのかしら?」
まどか「ほ、ほむらちゃんこそ、なんで私がずっとここにいたって知ってるの?」
ほむら「え?」
まどか「もしかして、ずっと私のことを見てたー……とか?」
元スレ
ほむら「ま、まどかがホストクラブの入口をじっと見つめているわ」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1304421853/
ほむら「違うわ。たまたま30分前にもここを通ってあなたを見たというだけよ、鹿目まどか」
まどか「そっか」
ほむら(本当はストーカーしてたってバレたら嫌われるわよね)
まどか(私の自意識過剰なのかな? ……残念)
ほむら「とにかく、すぐにここから立ち去りなさい。そして二度とこんなところに近付いてはダメ」
まどか「でも」
ほむら「いいから早く」
まどか「だって!」
ほむら「そんなに! ……そんなに、ホストクラブに入ってみたいの?」
ほむら(おのれー! 世界中のイケメン全員爆発しろ!)
まどか「ううん。私じゃなくて………………ママが」
ほむら「っ!?」
まどか「今週だけでもう3回目かな。私が気付いてるってこと、ママはまだ知らないみたいだけど」
ほむら(こ、これは、ひょっとしてあれよね)
ほむら(不倫発覚→家庭崩壊→傷つくまどか→慰める私→弱みに付け込んでほむらちゃん大勝利って流れよね)
ほむら(よし。ならさっそく時間を止めて証拠写真を撮ってまどかの家のポストに……!)
まどか「嫌だよ」
ほむら「え?」
まどか「パパにバレたら喧嘩しちゃうよ。そんなの嫌だよ。こんなのってないよ」
ほむら「まどか……」
ほむら(ぐ、偶然よね? 声に出てなかったよね?)
QB「なら、僕と契約してまh……」
ほむら「……」パンッ
まどか「あれ? 今何か……?」
ほむら「気のせいじゃないかしら? あなた、憑かれてるのよ」
まどか「そっか」
QB「けいや……」
ほむら「…………」パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ
QB「くっぽっしっぱふっまほっうばらっ………………」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん。いきなりこんなこと言っても困らせちゃうだけだよね。私たち、まだ会ったばかりだもんね」
ほむら「大丈夫よ」
まどか「ううん、ごめんなさい。相談してどうにかなることじゃないし、聞かされても戸惑うだけだよね」
ほむら「そっちじゃないわ」
まどか「え?」
ほむら「私が困らないのが大丈夫なんじゃない、あなたの家庭は大丈夫だって言ったのよ」
まどか「ありがと、ほむらちゃん。その気持ちだけで嬉しいよ」
ほむら「気休めで言ったつもりはないわ。忘れたの? 私は魔法少女なのよ」
まどか「でも、いくら魔法少女でもできることとできないことが……」
ほむら「私の能力は、こういうときにはうってつけの能力なの」
まどか「信じたいけど、ほむらちゃんのこと嘘つきだなんて思いたくないけど、でも全然大丈夫だっていう気持ちになれないよ」
ほむら「なら、ひとつ証拠を見せてあげるわ」
まどか「……え? ほむらちゃんが手に持ってるの、私が穿いてるのと同じ柄のパn……!!!!!?」
まどか(なんで? さっきまでちゃんと……)
ほむら「これで信用してもらえた?」
まどか「う、うん。だから私のネコさんパンツ、返してよ」
ほむら「もう穿いてるわよ?」
まどか「え? あ、あれ?」
ほむら「安心しなさい、鹿目まどか。あなたのお母さんのホスト狂いは私が止めてみせるわ」
まどか「ホント!?」
ほむら「その代わり、キスして」
まどか「ふえぇぇっ!???」
ほむら「あなたは私にキスをする。私はあなたの家庭を救う。これは公平な取引よ」
まどか「こんなの絶対おかしいよ」
ほむら「私と契約して幸せな女の子になりなさい」
まどか「だけど、でも、そんなの全然公平じゃないよ」
ほむら「嫌なの?」
まどか「ううん、嫌なんかじゃなくて、むしろそれだとどっちの条件も私はとっても嬉しいなって」
ほむら「ほむっ!?」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「まどか……」
まどか「んっ……」チュッ
ほむら「ほむぅ……」
※ホストクラブの前の公道です
ほむら「契約、成立ね」
まどか「うん」
――数時間後
詢子「くはーっ、今日も有意義な時間だった♪」
ほむら「鹿目詢子さん?」
詢子「ん? 誰だい? その年格好だとまどかの友達?」
ほむら「あなたがホストクラブに入り浸っている写真、撮らせていただきました」
詢子「あははっ、お金でもせびろうってわけかい。その年の割にたくましいじゃないか。可愛いねえ」
ほむら「いえ、そうではなく……」
ほむら(な、何よこの余裕?)
詢子「でも無駄だよ。うちの夫は了解済みだから」
ほむら「え?」
詢子「あー、でもまどかが知ったら傷つくかなー? よし、お嬢ちゃん、いくら欲しいの?」
ほむら「ま、まどかはもう知ってます」
詢子「え? そうなの? まずったなあ。あの子、変に勘が鋭いところがあるから」
ほむら「まどかは本気で心配してるんです! だからもう不倫はやめt……」
詢子「バカにしないでくれる?」
ほむら「え?」
詢子「私と知久の愛情をバカにしないでくれるかい? 私が不倫なんてできるわけないじゃないか」
ほむら「いや、だって」
詢子「場所、変えようか?」
マスター「いらっしゃいませ」
詢子「マスター、私はエクソシスト。こっちの子にはミルクね」
マスター「かしこまりました」
詢子「で、あんた、暁美ほむらちゃんであってる?」
ほむら「っ!? どうして私の名前を?」
詢子「ああ、やっぱりか。まどかが言ってたのさ、物凄い美人の転校生がやってきたって」
ほむら「でも、それだけじゃ」
詢子「まどかの美人基準をクリアできる思う女の子なんてそうはいないさ。何しろ、毎日私の顔を見てるんだから」
ほむら(すごい自信ね。でもそれが空回りしていない。……まどかもあと何年かしたらこんな素敵な女の人になるのかな)
※エクソシスト:謎の白い液体から作るお酒を使ったカクテル。青い。
詢子「どうしたんだい? 顔が赤いよ」
ほむら「そんなことはないです」
詢子「肌が白いから赤くなると分かりやすいねえ。ホント可愛い。食べちゃいたいくらい」
ほむら「えっ? ええっ!?」
詢子「あははっ、冗談だよ冗談。それより、まどかとはどういう関係なのさ」
ほむら「恋……親友です」
詢子「親友ねえ。でも会ったばかりなんだろ? それなのに人ん家の家庭の事情に首を突っ込むのかい?」
ほむら「友情に時間は関係ないと思います」
詢子「ははっ、あんた、いい女だね。かっこいいよ」
ほむら「ほむっ……///」
マスター「どうぞ。エクソシストとミルクです」
詢子「じゃあ、乾杯といこうか、うちの娘の親友さん」
ほむら「……」
詢子「かんぱーい!」グイッ
ほむら「……乾杯」クイッ
詢子「特別、だからね」
ほむら「え?」
詢子「あんたは、うちの娘のことを本当に大切に思ってくれてるみたいだから、特別に教える」
ほむら「はい」
詢子「あたしがOLやってることはまどかから聞いてるかい?」
ほむら「ええ、知ってます」
詢子「勤め先のライバル企業の専務の奥さんがあのホストクラブの常連なのさ」
ほむら「それって……」
詢子「その専務っていうのが面白みの欠片もない男でさ、家でもベラベラと仕事の話ばかりなんだって」
ほむら「その内容を聞き出すために?」
詢子「そーいうこと。ちょっとした産業スパイさ。正直、ホストなんて苦手だけどね」
ほむら「ならもう止めてください」
詢子「そういわれてもねえ」
ほむら「どんな理由があるにせよ、まどかを傷つけないであげてください。お願いします」
詢子「…………マスター、ロングアイランド・アイスティー」
マスター「かしこまりました」
詢子「あんたも何か頼むかい?」
ほむら「あ、じゃあ私もそのアイスティーで」
詢子「ぷっ、くく……」
ほむら「?」
詢子「マスター、ロングアイランド・アイスティーふたつで」
マスター「しかしお客様」
詢子「いいんだよ、責任はあたしが持つ」
マスター「……かしこまりました」
ほむら「あの」
詢子「ねえ、ほむらちゃん。親が子のためにしてあげられる最高のことって何なんだろうね?」
ほむら「……私には、分かりません」
詢子「うん、それが正解。答えなんてどこにもないのさ。突き放しすぎると荒んでしまう。甘やかしすぎると腐ってしまう。本当に難しいよ、親子って」
ほむら「……」
詢子「私の夢はね、いつかあの子が結婚する日、一流のホテルをまるごと一棟借り切って式をあげてやること」
ほむら「それは……素敵ですね」
詢子「ん? 表情堅くない?」
ほむら「これがいつもの顔です」
詢子「ふーん?」
詢子「とにかくね、その日のために私は今の会社で偉くなって、会社自体も大きくしないといけない。何か文句があるかい?」
ほむら「よく分かりました。やっぱりホストクラブ通いは止めてください」
詢子「やれやれ、平行線だね」
ほむら「その代わりに、私がそのライバル企業の情報を盗み出してきます」
詢子「あんたが? どうやって?」
ほむら「それは言えません。でも信じてください」
詢子「……参ったね。この子、本気みたいだ」
ほむら「明日の夜、資料を持ってきます。それを見て判断してください」
詢子「危険なことはするんじゃないよ。親友に何かあったらまどかが悲しむ」
ほむら「大丈夫です。問題ありません」
詢子「なんだろうね。夢の中で悪魔と契約しちまったような気分だよ」
ほむら「悪魔? ふふっ、正解かも知れません」
詢子「……」
マスター「お待たせいたしました。ロングアイランド・アイスティーふたつです」
詢子「ほい。じゃあ悪魔さん、契約祝いに乾杯だ」
ほむら「ええ、乾杯………………っ!??? こ、これ!」
詢子「ソフトドリンクだと思った? カクテルでした」
※ロングアイランド・アイスティー:テキーラ、ウォッカ、ジン、コーラから作る紅茶色のカクテル。度数が高い。
ほむら「ふきゅううぅ」
詢子「あはは、一口で酔っちゃったか」
ほむら「あれ~? ものが二重に見えりゅ~」
詢子「あははははは」
ほむら「まどかー? まどかだー! まどかが大人になっとぅりゅ~」
詢子「そうだよー。私は大人になったまどかだよー」
ほむら「まどか~! 大好き~~~!!!」
詢子「ちょっ、んんっ!? ……んっ、んちゅっ」
ほむら「えへへ~。またまどかとキスしちゃっら~」
詢子「……え? また?」
詢子「あんた、またっていったいどうゆう……」
ほむら「ふにゅ~」バタン
詢子「あちゃー、寝ちゃったか」
ほむら「……まどかー。まどかー。むにゅむにゅ」
詢子「参ったね。この子の家の場所知らないのに」
――翌朝
ほむら「謎の白い液体っ!」ガバッ
ほむら「あ、あれ? ここどこだろ?」
まどか「…………zzz」
ほむら「目が覚めたらまどかが同じベッドの中に寝ている……」
ほむら「なんだ。いつもと同じ夢か」
まどか「んー…………あー、ほむらちゃん、おはよー」ポケー
ほむら「……夢の中なら何をしてもいいのよね」
まどか「えー? ほむらちゃん何で服を脱g……ちょっ、やっ、そこはダメェーーー!」
ほむら「ほむっ、ほむほむっ! ほむむむーん」
まどか「こんなの、ぜったい、くふっ……おかしくなっちゃうよー」
ほむら「目が覚める前にこん度こそ最後まで! ほむ~~~!」
まどか「覚めてる! もう覚めてるから!」
ほむら「ほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむ」
まどか「ほむらひゃん、正気にもどって~!」
タツヤ(まどか弟・3歳)「まどかぁ、朝、朝ー。起きてー!」ガチャ
ほむら「ほむほむほ……」
まどか「あ……」
タツヤ「んー?」
まどか「あ、あのねタツヤここここれは……」
タツヤ「プロレスごっこー?」
まどか「そ、そうだよ! プロレスごっこだよ!」
タツヤ「一緒にやるー!」
まどか「ええっ!? だ、だめだよ」
タツヤ「やだやだー! まどかと遊ぶー!」
ほむら「ねえタツヤ君、まどかお姉ちゃんはもう起きてるから、次はママを起こしてあげてくれるかな?」
タツヤ「うん!」
まどか「ほっ」
タツヤ「ママ、ママ! 朝ー!」タタタッ
ほむら「誤魔化せたー……かしらね」
まどか「うん、たぶん。ありがとね、ほむらちゃん」
ほむら「お礼には及ばないわ。それより、どうして私はここに?」
まどか(今さら!?)
まどか「えっとね、昨日の夜、酔いつぶれたほむらちゃんをママが運んできたんだけど、覚えてない?」
ほむら「……あう」
まどか「あ、あとね。反対はしないけど、後悔しないかよく考えてからにしなさいって言われた。その……女の子同士の、それは」
ほむら「……あうあう」
まどか「ママにばらしちゃったの?」
ほむら「……き、記憶にないけど、ごめんなさい、まどか」
まどか「ううん、びっくりはしたけど気にしてないし、それに……」
ほむら「それに?」
まどか「後悔なんて、あるわけないよ」
ほむら「ほっむーん!?」
まどか「それで、ホストクラブの件はどうなったの? ママは教えてくれなくて」
ほむら「心配ないわ、まどか。もうまどかのお母さんがあのお店に行くことはない。……その辺は覚えてるから」
まどか「ほむらちゃんが説得してくれたの!? 大好きほむらちゃん!」ギュッ
ほむら「感謝されるにはまだ早いわ。今夜あと少し話さないと行けないことがあるの。でも大丈夫。絶対うまくいかせるから」
まどか「あ、そーなんだ?」
ほむら「でももうちょっとだけこうしたままでもいい?」ギュー
まどか「うん♪」
――その夜
ほむら「これが約束の資料です」
詢子「へえ、どれどれー?」
詢子「……………………」
詢子「……………………!?」ワナワナ
詢子「……………………あんた、何者だい?」
ほむら「お察しのとおり、悪魔です」
詢子「適当に作ったにしては、これまでに私が盗み出した情報と細部が一致しすぎている。そしてあの専務でも知らないような極秘事項まで……」
ほむら「これでホストクラブ通いはやめていただけますね?」
詢子「OK、取引成立だよ。あの店にはもう行かない。まどかにはあんたから教えてやんな」
ほむら「ええ、感謝します」
詢子「感謝したいのはこっちさ。これだけの情報があれば……、ふふふふふふふ」
ほむら「あの、図々しいことを言ってもいいですか?」
詢子「ん?」
ほむら「その資料の対価としてお願いしたいことがあるんですけど」
詢子「いいよ。私にできることなら」
ほむら「じゃあ、おかあさんって呼んでもいいですか?」
詢子「えっ?」
ほむら「だ、ダメですよね。気持ち悪いですよね。私なんて……」
詢子「ほむら」
ほむら「あっ……」
詢子「ほむら、今からあんたは私の娘だ」
ほむら「は、はい!」
詢子「マスター! ボトル入れるよー! オールド・パー持ってきて!」
マスター「かしこまりました」ゴトッ
詢子「よしっ! 今夜は飲……」チャラチャラチャー
ほむら「携帯、鳴ってますけど」
詢子「ちっ、誰だいこんな時に」
詢子「もしもしー。ああ、あんたかい。うん。うん。え? 何だってー!?」
ほむら「あの、何かあったんですか?」
詢子「……」ガッ、グビグビグビ
ほむら「ちょっ、ウイスキーをそんな一気に飲んだら……」
詢子「お終いさ! 全部パーになっちまった」
ほむら「え?」
詢子「会社ののっとりを企んでることが社長にバレたのさ。このままじゃ私はクビにされる」
ほむら「そんな!」
詢子「ごめんよ。ほむらがせっかく手に入れてくれたこの資料も無駄になっちまったね」
ほむら「何か、私に出来ることはありませんか」
詢子「これ以上迷惑をかけるわけには」
ほむら「娘がお義母さんの力になりたいって思うのに、理由が必要なんですか?」
詢子「ほむら……」
詢子「なら、クビにされる前にのっとりを完了させるしかないね」
ほむら「はい」
詢子「今のところ社長派の持つ株は67%、私と私が弱みを握……じゃなくて私派の役員の持つ株が26%」
ほむら「他の7%は?」
詢子「中立派の役員だが、これはこの際関係ない。狙いは25%の株を持っている取引先の大企業だ」
ほむら「そこの社長の弱みを握ってくればいいんですね?」
詢子「大企業の社長なんて所詮雇われさ。狙うは株主だね。あそこの株の大半は、前社長が事故死した後、一人娘が相続してる」
ほむら「名前は?」
詢子「たしか巴マミ」
ほむら「!?」
詢子「ちょっと待ってね。住所を知ってるやつに電話を……」ピポパピ
ほむら「大丈夫です。もう知ってますから」
詢子「え? 知り合いなのかい?」
ほむら「お義母さんの首は、私が守ります」
ほむら(ちょうど明日はお菓子の魔女が現れる日)
ほむら(経験上、魔女との戦闘が始まる前に話しかけると私は縛られて拘束される)
ほむら(なら、マミが食べられる直前のタイミングで助け出せばいいのよね)
ほむら(命の恩人の頼みを断れるはずもない。ほむらちゃん大勝利!)
――翌日
マミ「ティロ・フィナーレ」
お菓子の魔女「ニョルルロローン」
マミ「!?」
さやか「マミさん危ない!」
ほむら(今ね!)
ほむら「巴マミ、助けに来たわ」カチッ
お菓子の魔女「!???」ズドーン
まどか「ほむらちゃん!?」
ほむら「怪我はないかしら、巴マミ」
マミ「え、ええ」
ほむら「そう。それはよかった」
マミ「……何が目的なの?」
ほむら「え?」
マミ「魔法少女の数が減ったほうがグリーフシードを集めるためには得でしょう? どうして助けたの?」
ほむら(正直に言ったら警戒されるわよね)
ほむら「友達になりたいから。そんな理由じゃ不足かしら」
マミ「本当のことを言ってもらえない?」
ほむら「真実よ」
マミ「……私が一人になってから、たくさんの人が近付いてきたわ。ある人は遺産目当て。別の誰かは体目当て。私を利用しようとする大人ばかり」
ほむら(こ、こいつ、手強い)
マミ「おおかた、どこかで私のお父さんのことを聞き付けてきたのよね? 私はもう騙されないわ。信じられるのはQBだけよ」
QB「その通りだよマミ。僕は気付いてたけど、暁美ほむらはさっきから隠れ……」
ほむら「……」パンッパンッパンッパンッパンッ
QB「てぐっ、そっ、こびゃっ、たいみんぐがががが……」
ほむら「強がらなくていいのよ、巴マミ」
マミ「近寄らないで!」
ほむら「あなたはもう一人じゃないわ。魔法少女の辛さも、友達がいない寂しさも私はよく知っているから」
マミ「だって、何度も何度も騙されて……そんな、もう誰も信じなくなるしかないじゃない!」
まどか「あの、マミさん。ほむらちゃんは裏表があるような子じゃないんです。私も家族のことで助けてもらって……」
ほむら(う……まどかの純真さか痛いわ……)
マミ「信じても……いいの?」
ほむら「ええ、巴さん。友達になりましょう」ギュッ
マミ「暁美さん。私、私……ずっと魔法少女の仲間が欲しくて、一人で戦うのは恐くて、それで……」
ほむら「ええ、分かるわ。私はあなたのことを理解してあげる。だからあなたは私のことだけ信じなさい」ナデナデ
マミ「うん」
ほむら「ところであなたの持ってる株式のことで頼みがあるんだけど」
マミ「ええ。何でも言ってね。友達のお願いなら何でも聞くわ」
ほむら(計画通り!)
まどか(…………あれ? 何でマミさんほむらちゃんに頭を撫でてもらってるの?)
さやか(…………あれ? 何でマミさん転校生にあっさり騙されちゃってるの?)
ほむら(結論から言うと、お義母さんは会社を辞めた)
ほむら(巴さんを味方に付けたお義母さんは群馬の地方企業を飛び出し、日本に冠たる巴グループの経営権を手に入れてしまったのだ)
ほむら(私と鹿目一家と巴さんは、ワルプルギスの夜が来る前に本社のある東京に引っ越し、難を逃れた)
ほむら(見滝原は壊滅的な被害を受けてしまったけれど、仕方ない。まどかさえ無事なら、私は心を鬼に出来る)
ほむら(ただ、まどかがときどきアルバムを開いて悲しそうな顔をしているのを見ると、胸が痛む)
ほむら(まどかも、お義母さんも、巴グループも、私が守り盛り立ててみせる。それが見滝原を失ったまどかへの贖罪なのだ)
――ライバル企業会議室
社長「どうなっているんだ、最近の巴グループの急成長は!」
専務「それが、新しい女社長がやり手でして」
会長「それだけではあるまい」
社長「というと?」
会長「この理不尽な業績の伸び。おそらく巴グループも雇ったのだろう、魔法少女を」
常務「なら、目には目をですか?」
会長「おそらくは情報収集に特化した魔法少女の仕業だ。戦闘に秀でた我が社の魔法少女にはかなうまい」
???「ふーん。要するに、ぶっ潰しちまえばいいんだろう?」
常務「そういうことだ」
???「それで? ちゃんと報酬は貰えるんだよな?」
常務「もちろんだ。巴グループの魔法少女を始末した暁には、大奮発して……ポッキー300箱!」
???「マジで!? 奮発し過ぎだろ! おじさんたちマジで良い人たちだな」
社長(あー、ほんとこいつ安上がりで助かるわ)
専務(あんこちゃんマジ天使)
杏子「じゃあさっそく行ってくる! 報酬の件、忘れるなよ」
会長「もちろんじゃ」
――巴グループ本社ビル
杏子「つーわけで、この会社をぶっ潰してやんよ!」
マミ「あら、佐倉さんじゃない」
杏子「げえっ!? マミ!」
まどか「マミさんの知り合いですか?」
マミ「以前、人の縄張りを荒らしに来たのを追い返したことがあるのよ」
杏子「マミが相手だなんて聞いてねえぞおい」
マミ「見逃してあげるわ。おとなしくここから去りなさい」
杏子「そうはいかねえ。あんたを倒せばポッキー300箱が貰えることになってるからな」
マミ「…………はい?」
杏子「あまりに豪華でびっくりしたかい? だからアタシは負けられないのさ」
ほむら「ねえ、佐倉杏子。あなたもしかしてポッキー300箱で雇われてるの?」
杏子「そうだけど、あれ? 何で下の名前まで知ってるんだ?」
ほむら「トッポ500箱でどう?」
杏子「え?」
ほむら「鈍いわね。私たちの味方になる気はないのかと聞いているの」
杏子「なっ……!? そ、そんな簡単にものに釣られて裏切るわけには……」
ほむら「800箱」
杏子「その話、乗った!」
常務「待て待て待て待てー!」
マミ「あら、どなた?」
ほむら「この顔は見覚えがあるわ。たしかライバル会社の役員よ」
常務「そっちが800箱ならこっちはポッキー1000箱だ。ついでにキノコ500箱もつけるぞ!」
杏子「えー、どうしようかなあ」
常務「ならばタケノコ500箱追加だぁぁぁ!」
杏子「悪いな、マミたち。アタシはやっぱり長年世話になった会社の味方に付くぜ」
ほむら「コアラのマーチ」
杏子「!?」
ほむら「私に従うなら一生コアラのマーチには不自由させないわ」
杏子「一生あんたに付いてくぜ!」ギュッ
常務「ならこっちだってキノコタケノコおまけにキリカブ一生分で」
杏子「そんなものに釣られるアタシじゃない!」
常務「なら役員と同等の年俸を用意しよう。いや、私の一存では決められないから至急社に戻って検討した後のことになるがしかし努力はするつもりで」
杏子「金の問題じゃないのさ」
常務「な、ならいったい?」
杏子「だってほら、コアラはかわいいもんな」ニパッ
常務「そ、そんな。我が社はもうおしまいだ……」ガクッ
ほむら「よく決心してくれたわね、佐倉さん」ナデナデ
まどか「………………むぅ」
――ほむらとまどかの寝室
ほむら「ねえまどか、何をそんなに怒っているの?」
まどか「ふーんだ。怒ってなんかないもん!」
ほむら「だったら」
まどか「この線からこっちに入ってこないで!」
ほむら「私、何かまどかを傷つけるようなことしたかしら?」
まどか「分からないの?」
ほむら「ご、ごめんなさい。謝るから許して」
まどか「……私も言い過ぎたかな。その線から入ってきてベッドを使ってもいいよ、ほむらちゃん」
ほむら「ありがとう、まd……」
まどか「代わりに私は床で寝るから」
ほむら「な……!?」
まどか「ほむらちゃんと同じお布団で寝るくらいなら床のほうがマシだよ」
ほむら「どうして……? 昨日の夜だってあんなにたくさん愛し合ったのに」
まどか「思い出させないで!」
ほむら「そんな!」
まどか「ほむらちゃんは誰だっていいんでしょ? 私の体だけが目当てだったんだよね? 私はほむらちゃんのことだけが好きなのに、ずるいよ」
ほむら「そんなことない。私だってまどかのことだけを……」
まどか「ならどうしてマミさんや杏子ちゃんと抱き合ったりしたの!?」
ほむら「全部あなたのためなのよ」
まどか「おかしいよ、そんなのってないよ。私には何のことだか全然分からないよ」
ほむら「まどかに贅沢な暮らしをさせてあげるためなのよ。あんなの全部演技、本気じゃなかったわ。好きなのはあなただけよ!」
まどか「……じゃあ、約束してくれる?」
ほむら「約束?」
まどか「これからは一生私のことだけを愛して、私にだけ尽くしてくれるって。そう約束してくれたら、許してあげるよ?」
ほむら「約束するわ! 一生まどかに尽くします」
まどか「ほんと!? ほむらちゃん大だいだいだいだーい好き!」ギュウウウウゥゥ
ほむら「ああ、まどか! まどかぁ~!」
詢子「話は聞かせて貰ったよ!」バンッ
ほむら「お義母さん!?」
まどか「ママ、盗み聞きなんてヒドいよ。あんまりだよ」
詢子「あはは、ごめんごめん。それよりあんたたちに朗報だ。巴グループの海外発展のために、私たちはワシントンに引っ越すことになったよ!」
まどか「私、英語は苦手で……ほむらちゃん、二人で日本に残ろうよ」
詢子「おやあ? いいのかい? ワシントンDCの州法だと同姓婚が合法なんだけど」
まどか「英語の勉強がんばろうね、ほむらちゃん!!!」
ほむら「ええ。私が手取り足取り教えてあげるわ。……ベッドの上で(キリッ」
詢子(よし! こうやってまどかをあてがっとけば、もうほむらを引き抜かれる心配をせずにすむね)
詢子(……ほむらに本当の娘になってほしいとか、そういうんじゃないんだからね!)
ほむら(こうして渡米した私は、お義母さんと二人三脚で巴グループを世界最大の企業へと育て上げた)
ほむら(ぶっちゃけ時止め最強!)
ほむら(そして大学を卒業した私とまどか、いつのまにかくっついていた巴さんと佐倉さんは、MSGでダブル同姓結婚式を挙げることになる)
ほむら(世界最大企業のオーナー、そして社長令嬢の式とあって、会場の周りは同姓婚賛成、反対、両派のデモが騒がしい)
ほむら(でも、私は今すごくしあわ……)
まどか「ほむらちゃーん、何書いてるの?」
ほむら「何でもないわ、まどか」パタン
※MSG:ニューヨークにある多目的スポーツスタジアム。音楽の聖地。日本における武道館+東京ドームのアメリカ版。
ほむら「それより素敵ね。まどかのウエディングドレス姿」
まどか「えへへ、そうかな? ほむらちゃんのタキシード姿もかっこいいよ。それにお色直しの後のドレス姿も楽しみ」
ほむら「まどかのタキシード姿もね」
まどか「えへへへへー」
ほむら「ねえ、まどか?」
まどか「ん?」
ほむら「私、今すごく幸せよ」
ほむら(今夜はまどかと結婚初夜まどかと結婚初夜まどかと結婚初夜ほむほむほむほむふふふふっ!)
まどか(まあ、最初から最後まで全部私の掌の中だったんだけどね)
まどか(あなたのおかげで好きなだけ贅沢できるよ。ありがとう、ほむらちゃん)
まどか(さて、今夜もほむらちゃんが寝付いたら……)
QB「ほむら『まどかがホストクラブの入口をじっと見つめているわ』」
QB「おしまい?」
255 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 00:40:37.46 yXGtp/2v0 60/126えっ
そんなのってないよ
264 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 00:44:11.60 lakOtCGEO 61/126まどかさんに愛はあったの?
乙ほむ
QB「おや、久し振りだね」
???「……」ジャキン
QB「なんだい? いきなり剣を構えて」
???「あんたがいると、まどかが幸せになれないのよ」
QB「え? ちょ、待……うわぁーーー!」ザシュッ
――夜
まどか「ほむらちゃん、寝ちゃった?」
まどか「よし、じゃあほむらちゃんをうつぶせにして……」
まどか「うわぁ。今日も肩首腰がガチガチに凝ってる」
まどか「よいしょ、よいしょ」モミモミ
まどか「私には夜中にこっそりマッサージしてあげることくらいしか出来ないけど」
まどか「大好きだよ、ほむらちゃん!」
――朝
ほむら「ふぁぁ、朝か」
まどか「…………zzz」
ほむら「ふふっ、今日も素敵な寝顔ね、ねぼすけさん」
ほむら「この横顔を見てるだけでどんな辛い仕事にも立ち向かえる気がするわ」
ほむら「最近は何故かどんな疲れも一晩で抜けるし、今日も一日頑張るぞ! まどかのために!」
恭介「あれ? どこに行ってたんだい、さやか」
さやか「んっふっふっー。今度こそホントにおしまい!!!」
283 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 00:51:47.61 yXGtp/2v0 65/126おつ
なんというハッピーエンド
284 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 00:52:34.35 GxJNQ7OV0 66/126完璧なハッピーエンドだ…!
285 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 00:52:39.98 8tD57WuPO 67/126じゃあ残りでさやかがどうやってワルプルさん切り抜けて上条とくっついたか行ってみようか
覗いてくださった方、支援してくださった方、ありがとうございました。
おかげでサルさんも出ず、快適でした。
緑まではフォローできん。
>>285
ワルプルギスは倒せなかったけど二人だけなんとか生き残った、とかじゃダメ?
アナウンサー『それでそのスーパーセルというのはどういった現象なんですか?』
学者『簡単に言うと巨大な竜巻を伴う雷雲です。日本での発生はごく稀ですが、欧米では度々発生し、複数の町が壊滅したことも……』
さやか「うわー、これほんとにくんのかな、QB?」
QB「うん。このままだと間違なく見滝原市を直撃して壊滅させるだろうね」
さやか「げっ」
QB「僕としては嵐が通り過ぎるまでどこか遠くの町に避難することをおすすめするね。みすみす魔法少女の卵に死なれるのは惜しいよ」
さやか「え? でも避難所に行けば大丈夫だって……」
QB「あれは政府の嘘さ」
さやか「そんな!」
QB「ある意味で君たち人間は僕たち以上に非情だよね。僕たちは都合の悪いことは言わないだけで嘘は付かないもの」
さやか「あ、あはは、何言ってるのよQB。私がいつまでも契約しないからってそんな冗談……」
KAN『避難所の強度には問題ないと私は判断しております』
38『いざとなったら中国の支援をですね』
寝ろ『台湾にはお礼を言いません』
ポッポ『命を守りたい。ただし防災予算は削ります』
アナウンサー『政府高官はこのように述べており……』
さやか「…………」
QB「僕とテレビとどっちを信じるんだい、さやか?」
さやか「QB、まどかたちの引っ越しで先送りになってたけど、願い事は決まったよ」
QB「本当かい?」
さやか「私は魔法少女になる。だからスーパーセルを消して!」
QB「残念だなあ、その願いを叶えるには君の潜在魔力では足りないよ、さやか」
さやか「そんな! だって、奇跡も魔法もあるんでしょ!」
QB「あれがただのスーパーセルならさやかにも止められたんだけどね」
さやか「どういうこと?」
QB「人を救うための魔法があれば破壊のための魔法もある。あのスーパーセルの正体は魔女さ。それもとてつもなく強力な」
さやか「なーんだ」
QB「え?」
さやか「だったらさ、倒しちゃえば良いじゃん。その魔女を倒せば嵐も止まるんでしょう」
QB「君は自分が何を言っているか分かっているのかい? いや、僕の説明が足りなかったのかな。あの魔女はマミとほむらが協力しても歯がたたな……」
さやか「関係ない!」
QB「さやか」
さやか「倒せるかどうかなんて関係ない。倒さなきゃ大勢の人が死ぬなら、私はそれを倒すの!」
QB「驚いたよ。そんな発想の仕方があるなんて」
さやか「へへっ、そう?」
QB「うん。さやかは僕が認識していたより、遥かにバカだったんだね」
さやか「おい白いの今なんつった」
QB「魔力の絶対値が違いすぎる。精神論じゃ倒せないものは倒せないよ」
さやか「なにをー? 性能の差が戦力の圧倒的な違いになるわけではないのだぞー」
――いっぽうそのころ
マミ「ねえ暁美さん、鹿目さん、せっかく東京に来たんだから池袋という所に行ってみましょうよ」
ほむら「ええ、次の休みに行きましょう」
まどか「私、原宿にも行きたいな。みんなでお洋服選ぼうよ」
マミ「お金のことは私に任せてね。友達のためだもの」
まどか「わー、ありがとうマミさん」
ほむら「…………」
まどか「ほむらちゃん、どうかしたの?」
ほむら「ううん、なんでもないわ」
ほむら(ごめんなさい、見滝原のみんな。本当に……ごめんなさい)
ほむら(私が見捨てたあなたたちへの鎮魂の祈りとして、私はもう黒い服しか着ないことにするわ)
ほむら(一生喪服を着続けるのが私の罰)
ほむら(………………)
ほむら(………………)
ほむら(……ウエディングドレス以外)
――見滝原市の病院
恭介「やあ、さやか。今日はもう来てくれないのかと思ったよ」
さやか「あはは、ごめんね~、面会時間ギリギリで」
恭介「気にしてないよ」
さやか「うん、でも今日はもうひとつ謝らなきゃいけないことがあって」
恭介「なんだろう? 心当たりがありすぎて困るな」
さやか「あっはっはっはっはー! 恭介が冗談言うなんて珍しいじゃん! あはははは」
恭介「僕だって冗談くらい言うさ。さやかが無理して明るく振る舞ってるって気付いたときとかは、特にね」
さやか「っ!?」
恭介「めんどくさいけど、便利なこともあるよね、幼馴染って。相手が無理してるのを見抜けるし」
さやか「きょ、恭介。私、私はー……」グスッ
恭介「さやか、ちょっとこっちまで来てくれるかな」
さやか「ぐすっ…………うん」
恭介「よしよし」ナデナデ
さやか「あ……右手」
恭介「指もまともに動かないこの手だけど、まださやかの頭を撫でるくらいは出来るみたいだ」
さやか「バカ恭介、力加減がおかしい」
恭介「さやかこそ、変な髪型」
さやか「それはいま恭介がやったんだろー!」
恭介「ははっ」
恭介「昔はずっとこうだったよね」
さやか「……うん」
恭介「さやかはいつも無茶して失敗してばっかでさ。でも強がって平気なふりをして、それに僕だけが気付いて」
さやか「よく頭を撫でて、慰めてくれたよね」
恭介「今では逆の立場になってしまったけどね。僕が事故にあってからはさ」
さやか「恭介……」
恭介「さやかだけだよ。僕のことをこんなに気にかけて、何度もお見舞いに来てくれるのは」
さやか「いやー、感謝されるほどのことではございませぬよー」
恭介「感謝? 何を言ってるんだい、さやかは?」
さやか「え?」
恭介「正直、ウザいんだよね。もう来ないでくれるかな?」
――いっぽーその頃
マミ「こら佐倉さん! ちゃんと歯を磨かなくちゃダメじゃない」
杏子「いちいちめんどくせーんだって。虫歯になってから魔法で治せばいいだろー?」
マミ「だめよ。こういうのはマナーの問題なの。さあ、これで磨きなさい」
杏子「へへっ、逃げるが勝ちってね」
マミ「あっ、こら! 待ちなさーい!」
まどか「マミさん、歯ブラシを手に持ったまま走るのは危ないよ」
マミ「捕まえたわ」ガシッ
杏子「わあっ!? 放せー! 後ろから抱き付くなー!」
マミ「めんどくさいなら私が代わりに磨いてあげるわ。口を開けなさい佐倉さん」
杏子「やめ……ひゃふほひゃひゃほほひゃひ///」シャカシャカシャカ
まどか「ねえほむらちゃん、なんで杏子ちゃんは赤くなってるのかな?」
ほむら「他人に歯を磨かれると耐えがたい快感が発生するのよ。昨日読んだ本に書いてあったわ」
まどか「化○語?」
ほむら「ももいろシ○ターズ」
まどか「ふーん。じゃあ私たちも磨きっこしよっか?」
ほむら「ほむっ!」
杏子「ガラガラガラ……ぺっ」
マミ「はい、よく出来ました」
杏子「もういいだろう。いい加減放せよ」
マミ「ダメよ。せっかく歯を磨いたのに、今放したらまたすぐお菓子を食べる気でしょ?」
杏子「ギクッ」
マミ「拘束弾を使わないだけありがたいと思いなさい」
杏子「……………………どさ///」
マミ「え?」
杏子「マミに抱き締められるのは、気持ちいいから……いいけどさ///」
マミ「もう! ……そうね、キシリトームガムなら見逃してあげるわ」
杏子「げっ、ガムが髪についちまった」
マミ「あらあら」
まどか「あー、あれってなかなか取れないんだよねー」シャカシャカシャカシャカ
ほむら「ほむほむほむほむ///」
まどか「あ、ほむらちゃんよだれ」ペロッ
マミ「ほら、そこに座りなさい。私が髪をとかしてあげる」
杏子「ちっ、マミがどうしてもとかしたいっていならやらせてやるよ」ペタン
マミ「ふふふ。そういうことにしておきましょうか」
杏子「ったく、調子狂うなー……」
マミ「佐倉さんの髪ってサラサラで綺麗ね」
杏子「そ、そうかい? そんなこと言われたの初めてだよ」
マミ「ええ。ガムは取れたから、ついでにちょっと髪型をいじってみてもいいかしら?」
杏子「あんまり変なのはよせよな」
マミ「このマミさんに任せなさい!」
ほむら「ねえまどか、女の子が他人に髪を触らせるって特別なことよね」
まどか「うん」
ほむら「私もリボンを結んでみようと思うのだけど、やってくれない」
まどか「じゃあ、おそろいのリボンにしようよ!」
ほむら「まどかとおそろい……素敵」
マミ「完成よ! クリムゾン・ドリル・ヘアー!」
杏子「なんじゃこりぁぁぁぁ!」
恭介「さやかのお節介が迷惑なんだよ! もう来るな!」
さやか「……恭介が昔の話をしてくれたおかげかな。いろんなことを思い出したよ」
恭介「なんだよ、いいから早く出てけよ」
さやか「私、バカだったからさ、優しくされるのになれてなくて、怒ったふりして拒絶したりしたよね」
恭介「……!」
さやか「幼馴染ってほんとにめんどくさい。簡単に騙されてあげられないもんね」
恭介「僕は、ただ……こんな体になった僕にさやかに優しくされる権利なんて……だから、僕は嫌われないと……僕はぁ……」
さやか「お互いのことを思いやっている分だけ、同時に傷つけずにはいられない。私って、私たちって、本当にバカ」
恭介「……だからって泣くことないだろ」
さやか「だって、だってー」
恭介「…………」ギュッ
恭介(あれ? さやかの体って、こんなに軟らかくていい匂いがするものだったっけ?)
さやか「恭介、ごめん。あたし、ほんとはもういちど恭介の演奏を聞けるはずだったのに、ぐすっ、治してあげるはずだったのに……」
恭介「さやか? 何のことだい?」
さやか「ごめんなさい、ごめ、ひっく、恭介のことお願い出来なくなっちゃって、ぐすっ、でも私がその手のかわりになるから、ぐすっ、ひっく」
恭介「さやか、目を閉じてよ」
さやか「んっ…………」
恭介「………………」
さやか「………………」
恭介「…………っはぁ。泣きやんだ?」
さやか「……恭介のエッチ。変なとこが硬くなってるよ」
恭介「こ、これはその」
さやか「なるほどー? 恭介は私なんかの体に欲情しちゃったわけですなー?」
恭介「さやかだって顔が真っ赤だし僕の肩から手を放そうとしないじゃないか」
さやか「そ、それはその」
恭介「しちゃおっか?」
さやか「ええええええええ!?????」
恭介「病院ではお静かに」
さやか「だ、だって……」
恭介「さやかとしたい」
さやか「きょーすけ……/// だめだよまだ早いよ。私たちまだ中学生だし」
恭介「童貞のまま死にたくない」
さやか「な、何言って……」
恭介「凄い嵐が近付いてるんだろ? 助からないかもしれないのなら、その前にさやかとひとつになりたい」
さやか「避難すれば大丈夫だよ。テレビでも言ってたし」
恭介「それ、嘘なんだって」
さやか「!?」
恭介「パニックと渋滞で半分の人が逃げ遅れたら政府の責任だけど、何も知らせずに全滅したら災害のせいに出来るから」
さやか「何で恭介がそんなことを知ってるのよ!」
恭介「昨日、志筑さんが病室に来てね。一緒に逃げようって言われたんだ。偉い人やお金持ちはもう皆、見滝原の外だって」
さやか(仁美あんにゃろー! 恭介だけ誘って私はスルーってどういうことだ)
さやか(汚い。さすがお嬢様汚い)
さやか(あれ? そういえばまどかたちもこないだ引っ越したよね)
さやか(……な、何考えてるのよ私は。まどかのママの仕事の都合だって言ってたじゃない)
さやか(でもそういえば転校生が強力な魔女がどうとかって話をしてたようなしてなかったような……)
さやか(……まどか、私たち、離れてても友達だよね?)
詢子「ほむら、言われたとおりに投資したけど、本当に大丈夫なのかい?」
ほむら「ええ。嵐の規模から考えても、建設や機械メーカー株の値上がりと地下の暴落はまちがいないです」
詢子「志筑家や議員の先生方に避難を促したのも恩を売る策略かい?」
ほむら「そんなところです」
詢子「でもねえ、相手は天災じゃないか。何かの気紛れで進路がずれたら我が社は大打撃だよ」
ほむら「止められるはずありませんよ。あれは、誰にも」
さやか「恭介はさ、なんでその誘いに乗らなかったの?」
恭介「だって、さやかをおいていけないし」
さやか「……///」
恭介「実を言うとね、ちょっとだけ好きだったんだ、志筑さんのこと」
さやか「ちょっ……、私としたいとか漏らした口ですぐそんなことを言いますか!」
恭介「もう何とも思ってないけどね。自分達だけ逃げようなんて幻滅だよ。さやかなら、もしそんな立場になっても逃げないだろう?」
さやか「あったりまえじゃん。正面から立ち向かって、嵐なんて殴り飛ばしてやるのだ!」
恭介「くすっ、さやからしいね」
さやか「うん。だからさ、死ぬ前にしようなんて言うのはやめてよ。この嵐では誰も死なないし死なせない」
恭介「どうしてもダメ?」
さやか「私も恭介もこの町の皆も、誰一人欠けずにこの嵐を乗り切って、そしたら今日の続きをしよ?」
恭介「そうなったら最高だけどね。でも被害者ゼロなんて、奇跡でも起こらない限りは……」
さやか「ねえ恭介」
恭介「ん?」
さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ?」
杏子「ツインドリルゥゥゥ……」
マミ「フィナァァーレ!」
魔女「…………!?」ドカーン
杏子「へへっ、グリーフシードげっとだぜ」
マミ「東京には魔女が多いから魔力の回復が楽で助かるわ」
まどか「今日も絶好調ですね、マミさんと杏子ちゃんのドリル☆シスターズ!」
杏子「なあ、やっぱりこのユニット名変えないか?」
マミ「……そうよね。自分でも分かってるのよ。私のネーミングセンスが世間より3歩先だってことくらい」
杏子「あ、その……」
マミ「生まれて来るのが早すぎたのよ私なんて私なんて私なんて……」ブツブツブツブツ
杏子「いやあ、最高のユニット名だよな、ドリル☆シスターズって!」
マミ「そうよね!」パアッ
まどか「そういえば、見滝原の魔女って今どうなってるのかな? マミさんもほむらちゃんも東京に来るちゃったし」
杏子「どこからか他の魔法少女が流れ込んだか、QBが新しい女の子と契約したかんじゃねえか。あそこらへん、結構いい縄張りだったしさ」
マミ「案外、美樹さんが魔法少女になっていたりしてね」
まどか「あ、さやかちゃんならありそう」
杏子「その美樹ってのは二人の友達なのかい?」
まどか「んー…………」
杏子「友達かどうかは考え込むレベルの知り合い、と」
まどか「うん、友達ではないかな」
マミ「え? 鹿目さん?」
まどか「友達じゃなくて、親友だよ。ほむらちゃんの次くらいに大切な」
マミ「ああ、そういうこと」
まどか「お互いの結婚式には呼び合おうねって約束してるんだ」
杏子「へえ、いいなあ。そういう相手がたくさんいるのって」
マミ「佐倉さんには私がいるじゃない」
杏子「……///」
まどか「ところで、何だったのかな? 今倒した緑色の魔女。すごく不気味な結界だったけど」
マミ「そうねえ。使い魔や結界の雰囲気からすると、失恋の魔女ってところかしら」
杏子「どうでもいいよ。早く会社で働いてるほむらにグリーフシード届けてやろうぜ」
マミ「ええ」
まどか「うん」
QB「後悔はしないかい、さやか。叶える願いごとは本当にそれでいいんだね?」
さやか「うん。後悔なんてあるわけないよ」
QB「僕としては上条恭介の腕を治して二人で逃げるという選択をおすすめするけどね。まあ、優先されるべきはさやか自身の意思だ。契約しよう」
パアアアアアア
QB(あ、やべ。思ったより魔力が足りなくね?)
QB(……願い事の8割くらいしか叶わなかったよ)
QB(まあいいか。黙っていればばれないよね)
QB「さあ、さやか。これで君は魔法少女だ」
さやか「ありがとうQB。これで私はワルプルギスと戦える!」
QB「その発言には語弊があるね。ミジンコが鯨にぶつかることを戦うと表現するかい? 轢かれるとか潰されると言うべきだね」
さやか「そんなのやってみないとわかんないじゃん」
QB(やれやれ、魔女になる前に死なれるとエネルギーの回収量的には損なんだけどな)
QB「ならやれるだけやってみるといいよ。でも無理はしない方がいい。危なくなったら町を見捨てて逃げるんだ」
さやか「QB、優しいんだね」
QB「その優しさという概念が僕には理解出来ないね」
さやか「照れるでない、照れるでない」
QB「その照れるという概念も僕には理k……来たみたいだ」
ワル夜「ウフフ……アハハハハ…………」
さやか「よし! いくぞ魔女! 恋する乙女はどんな奇跡でも起こせるって教えてやる!」
QB(さやかっていろんな意味でマミの弟子だよね)
QB(さあ、さやかが空中のワルプルギスに向かって斬りかかっていったよ)
QB(……なんだい? そのサヤ・スラッシュっていうのは?)
QB(見る限り何の変哲もないただの上段斬りだね)
QB(しかも刃が届く前に虹色の光弾で叩き落とされたよ)
QB(撃たれたところを押さえて転げ回っているね。そういえば痛覚の遮断方法をまだ教えていなかったっけ)
QB(……聞かれなかったしね)
QB(なんとか立ち上がったみたいだ)
QB(こんどはギガ・サヤカ・ブレイカー? 微妙に韻を踏んでいるんだね。ただの袈裟斬りだけど)
QB(そして使い魔に弾かれる、と)
QB(人間って実に不便だなあ。痛みで泣いても視界が悪くなって余計に不利になるだけじゃないか)
QB(その点、本体をソウルジェムに移してあげた僕は優し……ああ! これが優しいという概念なんだね)
QB(おや、避難所がひとつ潰されたみたいだ)
QB(魔法少女の資質を持つ女の子が中にいたわけでもないし、僕には何の関係もない出来事だよ)
QB(家やビルや次々と吹き飛ばされていくね)
QB(二つ目の避難所も壊滅かな)
QB(ブート・ミキ・ゾルドナーも不発、と)
QB(おや、ワルプルギスが病院の方へと向かっていくね)
QB(…………)
QB(…………)
QB(あちゃー)
さやか「ちくしょう……ちくしょう…………ちくしょーーー!」
QB「よかったね、なんとか生き残れたみたいで。ワルプルギスの夜は破壊するだけ破壊して去っていったよ」
さやか「よくなんかない!」
QB「何を怒っているんだい? これはハッピーエンドじゃないか」
さやか「何が? どかがさ!」
QB「確かに建物は一つ残らず吹き飛ばされてしまったけれど、君自身は無事だったじゃないか。これは充分ハッピーエンドと呼ぶにふさわしい事態だよ」
さやか「……だまれ」
QB「ちなみに、この見滝原市で現在生存している人間はゼロ人だよ。ああ、もちろんさやかを除いての話だけど」
さやか「だまれQB!」
さやか「全部……、全部なくなっちゃったんだよ? 幼稚園も小学校も、見滝原中も、学校帰りによく行った喫茶店もCDショップも」
QB「それが何か?」
さやか「思い出の場所だったの! まどかと、恭介と、……それに仁美と。皆で笑いながら過ごした思い出がいっぱい詰まった、大切な場所だったの!」
QB「物理的には、思い出なんてものにマッチ一本分の価値もないんだよ、さやか」
さやか「あんたにとってはそうても、私にとっては違ったの!」
QB「ああ、それと、さやかが魔法少女になるときの願いだけど、ちょっと魔力が足りなくてね」
さやか「…………え?」
QB「8割くらいしか叶えられなかったよ」
さやか「嘘……でしょ?」
QB「僕は隠し事はするけど嘘は言わない。前にも言ったよね」
さやか「やだ…………やだよ! そんなの嫌だよ!」
QB「ちなみに、見滝原の市民全員を安全なところに避難させてという願いのことだよ。さやかの魔力では人口の8割で限界だった」
さやか「あ……あああ……あああああああああああああっ!」
QB「大事なことなので二回言おう。今現在、見滝原市の人口は、ゼロ人だ」
さやか「いやああああああ!」
QB「これは一つの奇跡だよ。まさか建築物にこれだけの被害が発生しながら、犠牲者がゼロだなんて」
さやか「あああああああ…………ぅえ?」
QB「さやかの魔力だけじゃ8割しか救えないはずだったんだけどね、とある大企業が偶然バスやトラックやヘリや小型機を見滝原に集結させていてね」
さやか「それじゃあ!」
QB「ちょっと拝借させてもらったよ。魔力での避難が8割、乗り物での避難が2割。犠牲者はゼロ人だ」
さやか「あう……あうあうあう」
QB「これはハッピーエンドだって言ったよね? 僕は嘘は付かないよ」
QB「この町の壊れた建物群もいずれ復興するんだろうね」
QB「慈善団体も個人のボランティアもインフラやゼネコンの企業ももう動き出しているみたいだ」
QB「君達人間は本当に不合理な生き物だよ」
QB「だってそうだろう? 滅んだ町を再興するだけのお金があるのなら、他の土地で優雅に暮らせばいいんだ。貧乏人はほっておいてね」
QB「それなのに君たち人間は他人の未来のために自分の現在を犠牲にしようとする」
QB「まったく、わけがわからないよ」
QB「おそらく僕が人間を理解することはできないんだろうね。……嫌いにもなれないけどさ」
さやか「QB、あんた……」
QB「ところで、乗り物を使ったら移動の魔力が少しだけ余ってね」
QB「これはおまけだよ、美樹さやか。今から君を君の大切な人のところにワープさせよう」
さやか「やっぱり優しい」
QB「だからその概念は分からないって。それじゃあ、転送するよ」ポワー
詢子「ガソリン代、運転手の日当、ヘリや小型機のチャーター費……」
詢子「やれやれ、こりゃ、復興需要に相当うまく食い込まないと大赤字だね」
ほむら「私、うまくやりますよ」
詢子「あんたってほんとカッコいいよね」
ほむら「買いかぶらないでください。目先のお金よりずっと大切なもののために行動しただけです」
詢子「人命?」
ほむら「会社の評判です」
詢子「悪ぶるなよ」
ほむら「私、悪魔ですから。……それじゃ、そろそろまどかに会いにいく時間なので、失礼します」
まどか「この写真は5年生の時の運動会だね」
まどか「こっちは小学校の卒業式」
まどか「私、すごくたくさん泣いちゃって」
まどか「この小学校も、ずっと住んでたあの家も、もうないんだよね……う…………うう」
まどか「うん、ありがとう。大丈夫だよ」
まどか「アルバムを覗いて泣くなんて、なんだかお婆ちゃんになっちゃったみたいだよね」
まどか「誰も死なずにすんだんだから、笑顔でいないといけな……ぐすっ」
まどか「わっ、そんなにきつく抱き締められたら痛いよ」
ほむら「……何をしているのかしら? 美樹さやか」
まどか「ほ、ほむらちゃん!? いつからそこに!」
さやか「いやあ、まどかがアルバム開いて泣いてるを見たら、つい抱き締めたくなっちゃって」
ほむら「気持ちは完全に理解出来るわ。私が聞きたいのは、どうやって3重のセキュリティーに守られた私とまどかの寝室に侵入できたのかってことなの」
さやか「こう、QBにヒョーンとワープさせられたと思ったら、気がつくとこの部屋にいてさ」
ほむら「あの淫獣!!!!」
さやか「あんたがQBのこと目の敵にしてるのは知ってるけど、それほど悪い奴じゃないと思うよ」
ほむら「ちょっと屋上」
さやか「なんだってー!?」
ほむら「魔法少女を絶望させて魔女に堕として利益を貪る。それがQBの正体よ」
さやか「そんなやつを優しいと思い込むなんて。私って本当にバカ」
ほむら「ええ。あなたはバカで不器用で騙されやすいわ。今だって私の言葉を簡単に信じたし」
さやか「だってホントのことでしょ?」
ほむら「なぜそう思うの? 私だって騙そうとしているかもしれないのに」
さやか「だってあんたは私の親友の親友だもん。それを疑ってたら人生つまんないでしょ?」
さやか「よし、決めた! 私もQBからまどかを守る! あんたはすぐそばで、私は遠くから。二段構えで守るのだ!」
ほむら「いいの?」
さやか「うん、私がいたら邪魔でしょ?」
ほむら「そんなことは……」
ほむら(あれ? 美樹さやかがウザくないなんて……)
さやか「それにほら、私にはもう恭介がいるしー。デヘヘヘヘ」
ほむら(前言撤回)
さやか「じゃあ私はそろそろ恭介の顔を見に行くから」
ほむら「ええ。上條君とお幸せにね。それと時々はまどかに会いにきてあげて」
さやか「うん。あんたもまどかと幸せに。では、さらばだー!」タッタッタッタッ
ほむら「…………」
ほむら「…………」
ほむら「…………」ピポパピピポパ
ほむら「もしもし、お義母さん?」
ほむら「ちょっとお願いしたいことがあって」
ほむら「実は、巴グループ製薬部門の予算を拡充したいの」
ほむら「ほら、巨額の研究費をつぎ込んで完成させても、採算がとれなさそうだという理由で開発されない薬ってあるでしょ」
ほむら「例えば、一度動かなくなった手を『日常生活レベル』ではなく『専門的な動きが出来るレベル』まで回復させる薬とか」
ほむら「うん。その部門でどれだけ赤字が出たとしても、他で補えるように私頑張るから」
ほむら「……え? だから私は悪い女だって言ってるでしょ」
ほむら「うん。うん。お義母さん、大好き」
ほむら(そして8年後、私とまどか、巴さんと佐倉さんの結婚式)
ほむら(式の雰囲気を盛り上げるオーケストラのバイオリンの席には、一人の日本人青年の姿があった)
ほむら(会場は、音楽の聖地、MSGだ)
――おしまい!
661 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 22:56:13.29 TWUC5iop0 124/126乙!
こんなハッピーエンドに出来るもんなんだな・・・
666 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 22:59:36.80 yXGtp/2v0 125/126完璧なハッピーエンドだ
乙乙
681 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2011/05/04 23:42:36.25 GxJNQ7OV0 126/126乙!
グランドフィナーレですな