生まれつき目が視えない。
この世界にあるのは、音と匂いと味と、さわった感触だけ。
それだけ。
私にとってそれは普通だったし、当然他の人もそうだと思っていた。
けど、どうも違うらしい。
他の人が普通に視られるものを、私は視れなかった。
元スレ
少女「お母さん、私、魔王さまの下で働きます」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1242997153/
私には魔力がるあるらしい。
たまに、私の周りのものが浮いているんだそうだ
自分では意識してないし視ることもできない。
私に魔力があることを、他の人は良く思っていないらしい。
それはそうだろうな。 魔力は魔物がもつものだって聞いた。
不気味だろうな
私、人間なのにね
母「ごめんね、ごめんね、母さんもう疲れちゃったんだよ、ごめんね」
カビや土の匂いがする。 森の中だろうか
母「ごめんね、ごめんね、ごめんね…」
ああ、お母さん泣かないで、悪いのは私
目が視えないのは私 魔力があるのも私
お母さんは何も悪くないんだよ
私は捨てられて当然だから
目の視えない私を育てるのは大変だったよね
魔力のある私なんか厄介だったよね
今まで育んでくれてありがとう、お母さん
さようなら さようなら
森の夜はとても寒いよ
きっと火があれば暖かいんだろうな
……あれ、なんだか暖かい
この音、焦げた匂い、もしかして、火?
…ああ、そうか、これが魔法か、私が出したのか
魔力がなければ、私、捨てられなかったのかな
…
獣の匂いがする。 魔物かもしれない。
私、食べられるのかな
私が死ぬのを待っているのかな
でも、私はいらない子だから
死んでもいいよ、もう
足音がする。 これは人間の足音
酒臭い
男が何かを言っている。 聞き取れない
突然お腹に激痛が走った
男の下品な笑い声が聞こえた
痛い。 助けて、お母さん
昨日蹴られたお腹はまだ痛い
お腹がすいた。 けど、草は美味しくない
ねえ、お母さん
お母さんの作った温かいスープ
すごく美味しかったよ
下品な笑い声が聞こえた
何人もの足音が聞こえる
左腕と右脚に
何か固くて冷たい物の感触がした
また、下品な笑い声が聞こえた
少女「あああああああああああああああああああああああああ」
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、
無い、無い、左腕が、右脚が、無い、
ない、止まらない、血が、止まらない
助けて、お母さん
私、死にたくない、しにたくないよ
おかあさん
…あれ
私、生きてる
腕も脚もない。 けど血は止まってる
…ああ、これも魔法のおかげなのかな
魔力のせいで捨てられたのに
それに助けられてる
…
今日は雨が降ってるよ
寒い
雨音に混じって人の足音が聞こえた
またかな
私、もう、痛いのは嫌だよ
体を持ち上げられた
下品な笑い声は聞こえなかった
建物の中に入ったらしい
男の話声が聞こえる
獣の匂いもする
ああ、もしかして魔物かな
私、食べられちゃうのかな
…なんだか変な感じがする
目に何か入ったのかな
目の中に、何かある
なんだこれ
なんだこれ
なんだ、これ
男「視えるか?」
少女「…え」
視える?
"視える"って?
もしかしてこれが、"視える"ということ?
男が喋ったときに動いたもの
これが"くち"?
目の前の男を触る
これは顔を触った時の感触
これが顔
これが口、これが鼻、これが耳
触ることでしか認識できなかったものを、
今、私は、視ている
少女「私、目が、視える」
私はたくさんのものを視た
たくさんの色を視た
たくさんの表情を視た
たくさんの生き物を視た
"視る"ということはこんなに楽しいことなのか!
私は人間
私を助けてくれた男は魔物
人間とそっくりなのに魔物だって
名前を魔王と言った。
聞いたことある。 なんだっけ?
狼を大きくしたような魔物Aさん
鳥みたいで翼もあるのに、四足の魔物Bさん
人間みたいなのに羽があって、小さくて、
私にいろんな生き物を変身して見せてくれた魔物Cさん
みんな魔物
魔物なのに私を食べない
魔物なのに優しい
魔王「少し痛くなるかもしれんが、我慢してくれ」
そう言われた。
魔王さんは手を私の無くなった左腕にあてた。
魔王さんは何かつぶやいている
なにするの?
ねえ、痛いのは嫌だよ?
…なんか、変な感じがする
無いはずの左腕から何か感じる
あれ?
左腕が視える 左腕がある
あれ?
魔王「…痛くなかったか?」
少女「痛くは…なかった」
何が起こったんだ
魔王「…! そうか、痛くないか!」
魔物B「陛下、おめでとうございます」
みんなとっても嬉しそうな顔
無くなったはずの左腕が戻ったんだ
私も嬉しい!
右脚も戻してもらった
今はちょっと痺れるけど、また、歩けるようになるんだ
自分の足で歩いて、見たいものが視れるんだ!
魔王さん、ありがとう
魔王「…っと」
魔物A「…なんだ、バテてんのかよ情けねえな」
魔王「…うるさい」
魔物B「連日実験されていては、魔力の回復も追いつけないのでは」
魔物C「しばらく休んだ方かいいんじゃ?」
魔王「とりあえず一つの山は越えられた、一旦区切りをつけておこう」
魔王さんがふらふらと部屋を出て行った
魔物Aさんも後に付いて行った
口は悪いけど、なんだかんだで優しいんだな、魔物Aさん
人間に変身した魔物Cさんと一緒に人間の村に来た
私が産まれて、育った村
寂しいけど、魔王さんたちとはもうお別れ
でも、お母さんに会える
もう、目が視えるようになったんだよ
魔力も抑えられるようになったんだよ
だから一緒に暮らそう、お母さん
人がいっぱい居る
いろんな顔の人がいる
お母さんはどこかな
お母さんはどんな顔かな
お母さんの声は覚えてる
優しい、お母さんの声
村人「もしかして、少女ちゃんかい?」
少女「!」
この声、聞いたことある
そうだ、近くに住んでて、優しくしてくれたおばさんの声
村人「…生きてたんだね」
ああ、おばさんはこんな顔をしていたのか!
少女「私ね、目が視えるようになったの!」
少女「ねえ、おばさん、お母さんはどこに居るの?」
村人「……」
村人「…死んだよ」
少女「え」
村人「村の者はみんなあんたを怖がっていたよ」
え
村人「魔法が使えるなんて…まるで魔物じゃないか」
うそ
村人「だから皆であんたを殺しに行こうとしたんだ」
ねぇ
村人「なのにあんたの母親はあんたを隠した」
おかあさん
村人「擁護した罪でね、火炙りの刑だよ」
うそっていって
村人「…あんたはこの村に居ちゃいけないんだ」
村人「もう来るんじゃないよ、死にたくなければね」
村人「この化け物め」
おかあさん
おかあさん
おかあさん
おかあさん
魔物C「ここが少女ちゃんが住んでた家」
少女「……」
なにもない
だれもいない
おかあさんが、いない
少女「……」
魔物C「もう、お別れだよ」
少女「…やだ」
魔物C「…魔物と人間は一緒にはいられない」
少女「やだ」
魔物C「できないんだよ」
少女「やだ…!」
私、いい子にするから
いっぱい勉強するから
いっぱい魔法覚えるから
だから
だから…
少女「ひとりにしないで…!!」
魔物C「…」
魔王「…で、連れて帰って来たのか」
魔物C「…ごめんなさい」
少女「…」
魔物A「これだから餓鬼は…」
魔王「…」
魔王さんの目が怖い
突き刺さるみたいだ
魔王「…勝手にしろ」
少女「…!」
魔王「ただし」
魔王「俺の研究室には一切近づかない事」
魔王「自分の命は自分でなんとかする事」
魔王「以上」
それから一生懸命勉強した。
字の読書きができる様になってから町の図書館にも行った。
でも、どんなに勉強しても
魔王さんの魔法の本は全く読めなかった。
魔物Bさんによれば、あれらは本人にしか読めないらしい。
私でも読める本が一角にあった。
魔王さんたちがこっちに来てからの、人間世界について
歴史には興味がなかった。どうせ戦争ばっかり。
少女「…これは?」
魔物B「世界地図です」
少女「世界の?」
魔物B「はい。 陛下が200年程前に、暇つぶしにとお作りになられた物ですが…」
魔物B「かなり正確なものです。 国や村は今はもう無いものばかりですがね」
少女「へー。 ね、海の果てはどうなってるの?」
魔物B「滝になっているそうです」
少女「どこまで落ちるの?」
魔物B「さぁ。 そこに住んでいる龍にも分からないそうです」
魔物B「ただただずっと、水が落ちていくんだそうです」
少女「へー」
少女「じゃあ、海を越えてずーっと真っ直ぐ飛んだらどこに着くの?」
魔物B「反対側に出ます」
少女「反対?」
魔物B「ずっと南へ南へと飛び続けると、いつの間にか北の大陸に着いてしまいます」
少女「へー、何でだろう」
魔物B「さぁ。 不思議ですね」
少量の魔力が秘められている木の実というのを教えてもらった。
森の中を散々探してやっと一つ見つけた。
舌が痺れるほど苦いけど、これで魔力が上がるなら
たくさんの魔法が使えるようになれるのなら
毎日頑張って探そうと思った。
少女「魔物Aさんは、食べないの?」
魔物A「オレぁ魔法より肉弾戦が好きなんだよ」
魔物Bさんには攻撃魔法
魔物Cさんには回復魔法
そして変身魔法を教わった。
人間の私には変身は難しいのかもしれない。
人型の魔物になるので精一杯だった。
それから私は
人間でいることを辞めた。
人間が憎かった。
魔物を殺す人間が憎かった。
私から手足を奪った人間が憎かった。
お母さんを殺した人間が憎かった。
何より、自分という人間が憎かった。
魔物になれば、人間を憎むという行為が少しでも許されるような気がした。
魔物Bさんに連れられ、丘の上に来た。
魔王様も気に入っている場所なんだそうだ。
見渡す限りに広がる草原
風に靡く草の音と鳥の囀りしか聞こえない、とても静かな場所
陽が落ちてくると緑は夕日に染まった
真赤に支配された世界はまるで終わってしまうかのように、どこか悲しいものがある
綺麗だな、と思った。
魔物B「たまには息を抜くことも大切です」
女「ありがとう、…ございます」
魔物B「感謝の言葉は陛下に。 眼を治したのは陛下です」
女「それでも…ありがとうございます」
感謝しても感謝しきれない。
ありがとう
城内に入ってきた人間は全て倒した。
でも、殺しはしない
魔王様に実験台として差し出す為。
…いや、私はそれに甘えているのかもしれない。
殺さないのではなく、殺せないのだ。
所詮、変身魔法
姿は変わっても、中身まで魔物になることなんて出来はしない。
魔王様の研究室から人間の叫び声が響く。
思えば私も実験台の中の一つにすぎなかったのだろう。
偶然拾われ、偶然実験が成功しただけの事
別に私でなくとも良かったのだ
私を生かした事も、魔王様の単なる気まぐれだったのかもしれない。
それでも良かった。
私は彼らに、一生従うことを心に誓ったのだ。
拾われて十年
勇者と名乗る男が城に侵入した。
魔王様の命により魔物Bさんと共に相手をすることになった。
また、いつも通り倒せばいいのだ
…勇者。 この国で名を知らない者はいないほどの人間。
強いんだろうな、と思った。
重い扉が開き、勇者が現れる
視たことが無いほどに、ひどい、目をしていた。
女「…貴方は何故魔物を倒すのですか?」
勇者「そんなの決まっている、魔物が人間を傷つけるからだ」
勇者「だからおれは魔物を殺す。 魔物を滅ぼす」
ああ、この人も憎いのか
私が人間を憎んでいるように、この人も魔物が憎いのだ。
…私もこんな、目をしているのだろうか
彼を止めようとしても無駄だろうな
今の私は魔物の姿なのだから
女「…ひどく後悔することになりますよ」
最後の忠告
きっと、私は彼に殺される
それでも良いと思った。
彼を止めたかった。
彼は強かった。
種類は少ないが、彼も魔法を使えた。
私が炎を出したのがいけなかったのかもしれない
彼は水を呼び炎を打ち消した。
蒸気で一瞬、彼を見失った。
いけない、目に頼りすぎた
そう思った時にはもう、長剣は私の身体に食い込んでいた。
口の中に鉄の味が広がる
腹から赤黒い血が噴き出す
膝から崩れ落ちる
内臓が外にでてる しまわなきゃ
血が流れていく 寒い
ああ、魔法が消えていく
人間の姿になってしまう
勇者が私を見ている
勇者、
私と同じ目をした勇者
私の姿を見て、どう思いますか
私の姿を見て、どんな顔をしていますか
魔王様ごめんなさい
魔物Aさんごめんなさい
魔物Bさんごめんなさい
魔物Cさんごめんなさい
貴方達のための命、敵である勇者に与えてしまいました
お母さん
憎しみはとても悲しいものです
結局、憎しみは憎しみしか生みませんでした
彼に、私を殺めさせてしまいました
でも、彼を、私と同じ目をした彼を止めるには、こうするしか無かったのです
私は彼を止めることができたでしょうか
彼の殺戮行為を止めることができたでしょうか
彼からこれ以上憎しみを増やさぬようにできたでしょうか
お母さん
死ぬのはとても怖いです
でも、回復魔法は使いません、使えません
私はとても悪い子です
これ以上生きても、また憎しみを生んでしまうだけです
これは報いなのです
お母さん
ねぇ、お母さん
お母さんはどんな顔をしていますか?
私は目が視えるようになったのです
お母さんはまた、私を抱いてくれますか?
優しく声をかけてくれますか?
優しく頭をなでてくれますか?
お母さん
お母さん
今、会いにいきます
お母さん
おかあさん
fin.
打ち切りかよ
いや、普通に完結だろ
支援してくれた人たちに感謝
やっぱ100いかなかったなwww勢いで書いたからこんなに少ないとは思わなかった
乙
だが鬱分がまだまだ足りない
>>85
打ち切りみたいだけど元々これで終わらす予定だったんだ
一応前書いた奴のスピンオフ的なものだし
>>92
もっと鬱にしたかったんだけどな
どうすりゃいいんだろうなー
経験積まんとわかんねーわ
>>97
魔王「私は新世界の…」
勇者「魔物に生きる価値なんかあんの?」
女は後者にでてる
終わってた
乙乙
ところで女の住んでた村じゃ魔法使ったら駄目なのか?
>>105
駄目ってわけでもないんだ
設定では、この世界の魔法はまだまだ発展途上で、魔法使いも多いってほどでもない
故郷の村は山に囲まれていて、旅人もそんなに寄らないような村
だから魔法を使える人もほとんど居ない
使うとすれば、近くの森とかに住む魔物だけ
魔法→未知→恐ろしい→魔物 みたいな感じで処分される
魔女狩り…みたいなものかな
なるほどなぁ
設定wwwww
お前設定馬鹿にすんなよw
無駄な設定考えるのが一番楽しいんだぞ


かなり好みが分かれる作品だと思う