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大臣「あなたは私たちの期待に足りうる人材ですか」勇者「……あっ」
王様「他の国王ども張り切り過ぎだろ……引くわ」
―東の王国・街外れの家―
勇者母「今日は洗濯日和ねー、さっさと洗濯物干しちゃおっと」
ザッザッザ
勇者母「あら……お客さんかしら? こんな所に用があるなんて珍しいわね」
???「いやあ、相変わらずここらへんはなんにもねえな。街の賑わいが嘘みてえな静けさだ」
勇者母「……あらあら、ただでさえお客さんが来るのも珍しいっていうのに、まさかあなたがいらっしゃるなんて、王様」
王様「よっ! 久しぶり、勇者母。……奪還戦争以来だな会うのは」
勇者母「ええ、お久しぶりです王様。こんなところを訪ねてくるなんて、よっぽどこの国は平和なんでしょうね」
王様「たっはっは、すげー嫌み。これでも仕事詰めに詰めてようやく空いた時間なんだぜ」
勇者母「ではこんな世間話をしてる場合ではありませんね」
王様「へいへい、さっさと用事済ませますよーだ。……勇者たちのPTが『商人の街』を出た。次に向かうのは『ギルドの街』だ」
元スレ
勇者母「勇者ったら、しっかりやってるのかしら」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363398283/
勇者母「……無事に旅できているのね、教えて下さりありがとうございます」
王様「それを伝えたかったのと、もう一つ。『北の王国』が少し調子に乗ってるみてえでな」
勇者母「……私に伝えることなんですか? その情報は」
王様「あー、そのなんだ。お前にも手伝ってほしいんだ、『北の王国』の鼻っ柱へし折るのを」
勇者母「ずいぶん回りくどい言い方ですね。もう少しわかりやすく仰ってくれても良いんですよ?」
王様「ははは、察しがいいところも変わってねえな」
勇者母「……」
王様「魔王討伐の手柄を独占しようと『北の王国』がこの国の勇者の命を狙っている。調べでは6人の暗殺者を派遣したらしい」
勇者母「あの王国も何も変わりませんねえ」
王様「要するに、自分の息子を守るために戦ってほしいんだ……『パラディン』」
勇者母「……最初からそう仰って下されば良いんですよ、王様」
……
どうしてわらってくれないの?
どうしてそんなにこわいかおするの?
うわー! くまのおにんぎょうさんだ! ありがとうおかーさん!
どうしてちかよらないでっていうの? わたしのこときらいになっちゃったの?
どうしてむしするの? どうしてこっちみてくれないの? どうしてわたしのなまえよんでくれないの?
わたしのこと……きらいなの?
……私のこと、ずっと嫌いなんだよね。
私も嫌いだよ、お母さんのこと。
嫌い、嫌い。嫌い嫌い嫌い。
私に悪魔を植え付けたお母さんが嫌い。私を嫌っているお母さんが嫌い。私を生んだお母さんが嫌い。
……全部、大っ嫌い。
…夜…―テントの外―
悪魔「おい魔法使い、おい魔法使い」
魔法使い「……」
悪魔「おい魔法使い、おい魔法使い」
魔法使い「……うるさいな、私の名前呼ぶなっつうの。私に構わないでよ悪魔のくせに」
悪魔「『悪魔』っつうのは人間が俺たちに勝手につけた名前だろ。『悪い』っつうのはいつ言われても心にグサッくるな、どうでもいいけどよ」
魔法使い「私は絶対、魔王を倒してお前を地獄へ還すからね。もうこんな自分の体が半分しか使えない感覚ごめんなの」
悪魔「少し暑くて少し暗くて少し痛くて人間たちが住んだら死ぬだけの世界を『地獄』と呼び、そこでのんきに暮らす俺たちを『悪魔』と呼ぶ」
魔法使い「……」
悪魔「……勝手に呼び出され融合させられた俺だって立派な被害者なんだぜ? 俺は別に気にしてねえけどな、お前可愛いし」
魔法使い「……うるせえ、糞犬」
悪魔「少しだけ、変わってきたよな魔法使い」
魔法使い「……え?」
悪魔「命を共有してるんだ、俺にはわかるぜ」
魔法使い「……っち、だから嫌なんだよ」
悪魔「良いことだと思うぜ。俺も昔に比べてお前の傍に居やすくなった」
魔法使い「……」
悪魔「あの勇者たちとの旅は、確実にお前を変えてきている」
魔法使い「もう黙れよ、糞犬」
悪魔「お前は幸せにならなきゃ駄目だぜ。もちろん俺もな」
魔法使い「……黙れ、って。言って、るでしょ」
…翌日…―商人の街の南西の草原―
魔物のむれがあらわれた!▽
勇者「……」ズバッ!
魔法使い「……」ゴオオオオ!
魔物のむれをたおした!▽
魔物のむれがあらわれた!▽
勇者「……」ザシュッ!
魔法使い「……」ドパパパーン!
魔物のむれをたおした!▽
勇者「……」
魔法使い「……」
僧侶「……えっと、二人とも、ドンマイですよ。アイテムぐらいまた揃えましょうっ!」
魔法使い「……と言われてもさあ」
勇者「アイテム全部戦士が持ってっちゃったんだったあああああああああ!!」
魔法使い「こういうこともあるのね……」
僧侶「戦士さんの離脱があまりにも突然だったので、仕方ありませんよ」
魔法使い「……にしても誰も何も言わないなんて。気づいてりゃ全部アイテム回収したってのに」
僧侶「そうしたら戦士さんが可哀想ですよ!」
魔法使い「でもまあ、一人旅だし戦士が持ってったのは良いことだったんじゃない? そもそも私たちアイテム使わなすぎなのよ」
僧侶「普段使わないから、いざという時まで気付きませんでしたね……。回復は私がいるので安心してください」
勇者「……」
魔法使い「んじゃお言葉に甘えることにするわ」
勇者「……」
僧侶「……勇者さん、もうあきらめましょう? 回復は私が」
勇者「あの仮面も戦士が持ってっちゃったあああああああああああああああ!!!」
魔法使い「お前のショックはそこかよ!」
勇者「仮面……仮面。他のアイテムいらないけど最低でもあの仮面だけはこっちのPTで所持していたかった」グスン
魔法使い「必要なのは勇者だけでしょ……。また戦士が合流すること祈って、ちょっと我慢しよ、ね?」
僧侶「……」
……
――「……なんですか勇者様。そのダサいお面は?」
――「ダサくないだろ!むしろカッケえだろ!センスどうかしてね!? しかもお面じゃねえ、仮面だし! そこ重要だから!」
――「……いや、勇者様のセンスの方がどうかしてるかと」
――「俺が最初に降りた小さい島の部族のやつらが作ってくれたんだよ」
――「……はあ、そうですか」
――「これでも俺をモデルにして作ってくれたんだぞ! 神と崇めてくれてな!」
――「勇者様が……神様ですか? ふっ」
――「あー! お前今鼻で笑っただろ! 魔王封印した勇者鼻で笑っただろ!?」
――「そのお……仮面、どうするんですか?」
――「ああ、これも『準備』の一つに使おうと思う。後のやつらが上手い具合に利用してくれるかは俺の運次第だけどな」
――「どうするんですか?」
――「これをつけたら一時的に攻撃力、防御力、素早さがアップするようにしてやろうと思う。一回こっきりで」
――「勇者様の魔力を込めるんですね。……でも、並みの魔法使いでもその効果が持続するのは100年くらいですよ?」
――「勇者の力ナメてもらっちゃ困るぜ。それに、より効果が持続するように代償として『呪い』もつけりゃ1000年はもつ」
――「『呪い』……ですか」
――「うひひひひ……俺の趣味全開の『呪い』にしてやる。『準備』が済んだら島のやつらの所に返しとこっと」
……
僧侶(……戦士さん大丈夫かなぁ)
魔法使い「いつまでしょげてんのよ! ほら魔物が現れたわよ!戦う準備!」
勇者「……仮面んんん」
魔物のむれがあらわれた!▽
魔法使い「そーら火炎ま……」
勇者「おりゃっ!とりゃっ!どっせーいやー!」ズバッザシュッスパーン!
魔物のむれをたおした!▽
僧侶「勇者さんすごいですー!」パチパチ
魔法使い「ッ!? また来る!」
魔物のむれがあらわれた!▽
魔法使い「くらえ雷撃ま……」
魔物のむれをたおした!▽
勇者「おっしゃ倒したー!」
僧侶「勇者さん強っ!」
魔法使い「……」
勇者「『商人の街』で剣が使えなかった憂さ晴らしだー!」
魔法使い「おーい勇者ぁー! ちょっとこっち来てー!」チョイチョイ
勇者「……えっ? 冗談でしょー」ハハハ
魔法使い「冗談じゃないわよっ」ニコ
勇者「ええええええ! 魔法使いが良いって言うまで剣は禁止ぃぃぃぃぃ!?」
僧侶「ま、魔法使いさん、それはあんまりじゃあ……」
魔法使い「僧侶は黙らっしゃい!」
僧侶「ひゃ、ひゃうっ!」
魔法使い「……勇者、あんたの剣術の凄さは私も僧侶もわかってるから。だから、ね?」
勇者「……魔法だけで戦えって?」
魔法使い「極めるためにもね」
勇者「……」
魔法使い「私は真剣よ。これからの戦いには、勇者は剣だけじゃなく魔法も必要になってくる……必ず」
勇者「……わかった。っていうか、前から言われてたもんね、魔法の重要さ。俺頑張るよ!」
魔法使い「……ありがとう」ホッ
魔物のむれがあらわれた!▽
勇者「くっ、ば、なぅ、爆発魔法!(やっぱりミュンッってなる!)」ドッパーン!
魔物「ウギャアアアアアアア!」パーン
魔法使い「あんたは勇者なんだから剣で立ち回りながら魔法を使うことを想定して!」
勇者「ミュンッて……て、ばくは」
魔法使い「爆発魔法ばっかりじゃなくて即座の属性切り替えもしっかり!」
勇者「ふぅぅん、電撃魔法!」ビリリッ!
魔物「ジェアアアアアアアア!」ビリビリビリ
勇者「ミュンッて……疾風魔法!」ヒュンッズバッ!
魔物「キイヤアアアアアアアア!」ズバズバッ!
魔物のむれをたおした!▽
魔法使い「……さすがは勇者ねぇ。私も嫉妬しちゃうくらいセンス良いわ」
僧侶「……勇者さん(頑張ってください)」ウルウル
勇者「ミュンッってなるううううううううううううううううう!」ビクンビクン!
―南西・樹海の入り口―
勇者「……も、もう、勘弁して」ピクピク
魔法使い「この深い森の奥に、その向こうの山脈を抜けるための洞窟があるみたいね」
僧侶「ここからでも奥の山が見えますね」
勇者「……魔法ぅ」ピクピク
魔法使い「その洞窟を抜けたら、あとは山脈に沿って南東に進めば目的地よ」
僧侶「……勇者さん」
勇者「魔法使い、今日はここで休もうよぅ……」
魔法使い「そうね。日も暮れてきたし、あまり森の中で野宿もしたくないし。今日はここにテントを張りましょう」
僧侶「魔法使いさん私も張るの手伝いますよー」
勇者「……」
魔法使い「勇者は休んでて良いわよー。明日もMP切れるまで魔法で戦ってもらうから」
勇者「ふ、ふ、ふぅぅん……」ピクピク
…夜…―テント―
ジュージュー
勇者「ふんふんふーん♪(やっぱり外で料理するのは気持ちいいなー)」ジュージュー
僧侶「ゆ、勇者さん大丈夫ですか?」
勇者「んー、うん。魔法苦手なのはあの感覚のせいだし、何だかんだ言っても結局MPを一日で使い切っただけだし」トントントン
魔法使い「勇者が疲れてる一番の理由は、勇者のMPが多すぎて空にするまでアホみたく戦闘しなきゃいけなかったってことね」
勇者「……魔法使いの指導が厳しすぎるってのもあるけどね」ボソ
魔法使い「明日も森を進みながら空になるまで魔法使ってもらうわよー」ウフフ
勇者「ふぅぅんスパルタすぎるよぉ……」
僧侶「料理する手が止まった……」
魔法使い「でもまあ、勇者の料理でお腹いっぱいにしてゆっくり寝れば明日には全回復でしょ。特に勇者は」モグモグ
僧侶「元気湧いてきますもんねー勇者さんの料理」モグモグ
勇者「俺……今日……」モグモグ
魔法使い「さっさと寝ちゃいなさい勇者は。見張りは私たちに任せて」
僧侶「勇者さんは気になさらずゆっくり休んでください!」
勇者「あ、ありがとうぉ……」
僧侶「戦闘で魔法が剣と共に活用できるように頑張ってくださいね!」
勇者「お、おう。俺頑張るよ!」
魔法使い「剣も使ってくれちゃったら魔法使う暇もなく魔物倒しちゃうんだもん。我慢してね勇者」
勇者「わかってるよ魔法使い。んじゃ、二人とも俺は先に休んでるね。おやすみ」
魔法使い「おやすみー、しっかり休むのよ」
僧侶「おやすみなさい勇者さん!」
…深夜…―テントの外―
魔法使い「……」
僧侶「明日からいよいよ森を攻略! 頑張りましょう魔法使いさん!」
魔法使い「……っはぁぁぁー」
僧侶「えっ、ええ!?ため息ついてどうしたんですか!? 私何か悪いこと言っちゃいました!?」
魔法使い「違う違う、心配しないで」
僧侶「ど、どうしたんですか?」
魔法使い「緊張しちゃったの、私。勇者にあんなこと言って」
僧侶「……魔法使いさん」
魔法使い「剣ダメ!魔法だけ!って言って、勇者に嫌われたらどうしようってさ」
僧侶「……」
魔法使い「……怖かった、正直」
僧侶「これからの戦闘で勇者さんの魔法が必要になってくるのは、勇者さんも私もわかってます」
魔法使い「……」
僧侶「平和のためにも、そこを勇者さんが甘えちゃいけません!」
魔法使い「……僧侶」
僧侶「魔法使いさんが言ったことは正しいですし、何も怖がることはありませんよ!」
魔法使い「……うん、そう、だよね」
僧侶「勇者さんも私も、魔法使いさんのこと信じてるんですから」
魔法使い「……ありがとう」
僧侶「……だから魔法使いさんも、怖かったなんて言わないで、みんなのことを信じてください」
魔法使い「うん。……ありがとう、僧侶」
僧侶「私こそ、ありがとうですよ」
魔法使い「? なんのこと?」
僧侶「『北の勇者』さんと戦った時、魔法使いさん私のことで怒ってくれたじゃありませんか」
魔法使い「……あ、ああ。でもあれは単純に私がムカついただけでさぁ」
僧侶「正直、私嬉しかったですっ」クスッ
魔法使い「……僧侶」フフッ
僧侶「スカッとしましたよっ! 『北の勇者』さん私の秘密べらべら喋るんですもんっ!」フフフッ
魔法使い「ホントだよ! 人の過去バラすって常識的に考えてありえない。勇者にはロクに接せる奴はいねえのかって話しよ!」ハハハッ
僧侶「私たちの勇者さんもなかなかですもんねぇ」ハハハ
魔法使い「ほんとほんと」ハッハッハ
僧侶「本当に……ありがとうございます」
魔法使い「……悪魔と融合して、お礼言われたのなんて初めてだ」
僧侶「祝いましょうか? 魔法使いさんの初めて」クスクス
魔法使い「ふふっ、うっさいわよ僧侶。あははっ」ハハハ
僧侶「……魔法使いさん?」
魔法使い「どした?」
僧侶「魔法使いさんが勇者さんと旅する理由、魔王を倒す理由……聞いても良いですか?」
魔法使い「あー、前は私が言うの拒否したのよね」
僧侶「……そうです」
魔法使い「……私と融合してる悪魔を、地獄に還すためよ」
僧侶「地獄へ還す?」
魔法使い「悪魔は魔王の魔物とは違う。自分の生命を持った者たちなんだけど、この世へ召喚されるのには魔王の魔力が必要なの」
僧侶「……ああ、だからその召喚するための条件をなくせば」
魔法使い「もしかしたら……なんだけどね。もしかしたら私と融合してる悪魔も地獄へ戻るかもしれない」
僧侶「……」
魔法使い「だから私は、魔王を倒す」
僧侶「……それが、魔法使いさんの理由」
魔法使い「母親が憎いからってのもあるかもね」
僧侶「えっ、魔法使いさんのお母さんですか?」
魔法使い「小さい時に母親に無理矢理融合させられてね」
僧侶「……そう、だったんですか」
魔法使い「言いなりなんてレベルの話しですらなかったわ。抵抗する発想もなくわけもわからず融合させられた」
僧侶「……」
魔法使い「母親が何を思ってそうしたかわからないけど、私は自分の母親が大嫌い。死ぬほど嫌い」
僧侶「……」
魔法使い「だから私は、母親の鎖から逃れるためにも……絶対に魔王を倒すの」
僧侶「……魔法使いさん(もしかして、お母さんのしたかったことって……)」
……
…
…翌朝…
勇者「おはよう!」
魔法使い「おはよー勇者、昨日とうって変わって元気ねー」
僧侶「おはようございます!」
勇者「さあて朝食の準備だ!」ジュージュー
魔法使い「山に向かって迷わないように真っ直ぐ進めば、今日中には洞窟の入り口までつけるかな」
勇者「頼んだぜ魔法使い!」コトコト
僧侶「頼みました魔法使いさん!」
魔法使い「ったくあんたらは……」
勇者「……そうと決まればさっさと出発した方が良いな。朝食早く済ませちゃおう」
僧侶「いただきまーす!」モグモグ
魔法使い「……いただきまーす」
―樹海の中―
魔物のむれがあらわれた!▽
勇者「凍結魔法!」ピキーン!
魔物「グガー!」カチコチッ
魔物「ぐるわあああああああ!!」ブンッ
勇者「っく! よっと」ヒョイッ
勇者「灼熱魔法!」ゴオオオオ!
魔物「ゥルワアアアアアア!」ボオオオオ!
魔物のむれをたおした!▽
魔法使い「敵が強くなってる、魔王の城に着実に近づいている証拠ね」
勇者「ふぅ……少し慣れてきたかも」
僧侶「森の中からじゃ、目指す洞窟のある山が見えませんね……」テクテク
魔法使い「木が空を塞いじゃってるからね」スタスタ
勇者「まだ昼だと思うけど、それもわからないくらい森の中は暗いね」ザッザッザ
魔法使い「……おっと、また来たぞ」
魔物のむれがあらわれた!▽
勇者「よしっ!」タッタッタ
魔物「うがああああああああ!」グワァッ!
勇者「よっと」ヒョイ
魔法使い「そうそう、接近して魔物の攻撃を避けながらスキを突いて……」
勇者「火球魔法!」ボッ!
魔物「ギャァアアアアア!」ドカッ!
魔法使い「いい感じいい感じ。魔法の応用もやってくれちゃうのねー」
勇者「氷弾魔法!」ヒョンヒョン!
魔物「ッグエェェェエエエ!」ドカカァッ!
魔物のむれをたおした!▽
勇者「ハア……ハア……どうだ魔法使い!」
魔法使い「これは私の見立てが良かったわね。勇者の魔法使えるわ」
僧侶「魔法使いさん凄い得意げな顔……」
勇者「え、えへへ、そうかなぁ。でへへ」
僧侶「勇者さんも凄く嬉しそう……」
魔法使い「よし、じゃあ次は魔法発動から次の魔法までのインターバルを短くする練習!」
勇者「ふぅぅん……」
魔法使い「最終的には違う属性の魔法を同時に発動できるようにね!」
勇者「ふぅぅぅぅんんん……」
…夕方…―森の奥・洞窟の入り口―
勇者「……」ピク、ピク
僧侶「どうにか、ここまで……来れましたね」ハアハア
魔法使い「少し急いで進んだから、さすがに疲れたわね。アイテムが無いぶん回復も僧侶に任せっきりだったし」
僧侶「勇者さん、大丈夫でしょうか……」
魔法使い「剣との併用を想定した近接魔法の戦闘、他属性の連続魔法発動、両方とも申し分ない出来ね」
勇者「……じ、じゃあ」
魔法使い「それに、魔法の形態を変化させる応用魔法……まさかここまでやってくれちゃうとは」
勇者「じ、じゃあっ!」
魔法使い「でもその応用魔法の燃費がまだまだ悪いわねー。もう少し効率よくMPを使用して魔法発動できるようにしたいわね」
勇者「スパルタだよぉ……スパルタだよぉ」
魔法使い「僧侶ぉー、今日はここにテント張りましょー。手伝ってー」
僧侶「は、はーい!」
勇者「ふぅぅん……」
…夜…―テント―
僧侶「ふぅ、テント張るの疲れますね……」
魔法使い「ホント……戦士がやってくれてたの何気に助かってたのね」
勇者「こっちは料理できたよー」
魔法使い「疲れてるのに悪いわね、勇者……あ、いやコックさん」
勇者「……いやいや、疲れてるのはみんな一緒だし二人はテントやってくれたしお互い様だよ」
僧侶「……あれ?」
勇者「俺コックになったつもりねえぞ!?」
僧侶「ワンテンポ遅れた……」
魔法使い「思いのほか疲れてるみたいね……。食事済ませたらみんな早めに休みましょう」
僧侶「いただきます!」モグモグ
魔法使い「……洞窟の中入ったらもっと大変だろうし」
僧侶「今日の見張りは私に任せて、二人はゆっくり休んじゃっててください」
魔法使い「ありがとう僧侶。そうさせてもらうね」
…深夜…―テントの外―
僧侶「……」
…
……
――『……なあ』
――『なんですか勇者様?』
――『人の運ってさ、そいつが死んだあとも続くのかな』
――『……ふ、え? ……?』
――『なんつうか、例えば俺が1000年後のこの世界で『こうなってほしーなー』ってことを願うとすんべ?』
――『は、はい』
――『でも、俺はその時には普通に死んでんじゃん? 俺自身はどうすることもできねえじゃん?』
――『……はい』
――『そしたらもう神頼み、祈るしかねえじゃん。でもそれすら生きてるうちしかできねえ』
――『……』
――『今まで運にすげえ恵まれてきた俺だけどよ、それは俺が死んだあとも続いてくれるのかなって』
――『勇者様の願いがどういうものかはわかりませんけど……』
――『教えてあげないよーん』
――『……』
――『ごめん! ごめんて! そんな怖い顔すんなて!』
――『……それは『運』とかじゃなくて、多分、『意志』みたいなもので伝わってくれるんじゃないですか』
――『運じゃなくて意志……か。俺の願いを聞いてくれる人間がいればいいんだけどな』
――『適当に言ったんですけどねっ、私』フフフ
――『適当だったんかーい!』ハッハッハ
……
…
僧侶「……勇者様」
僧侶「安心してください、きっと……いや絶対に! 私は勇者さんたちと魔王を倒してみせます!」
…翌日…―洞窟の入り口―
魔法使い「いよいよ、洞窟攻略ね……」
僧侶「……ごくり」
魔法使い「洞窟を抜けるのにどのくらいかかるかわからないし、当然洞窟の中だから時間感覚も狂う」
勇者「そ、それは辛いな……」
魔法使い「魔物に挟み撃ちされる危険もあるから、長いことその場で休むこともできない」
僧侶「……うう、なかなかハードですね」
魔法使い「こまめに休憩しつつ、ささっと進んでいきましょう」
勇者「……みんな、気を引き締めていこう!」
僧侶「はいっ!」
魔法使い「松明みんな持ってねー」
―洞窟内―
勇者「あー、やっぱりこの暗くてジメジメしたのは慣れないな」テクテク
魔法使い「わがまま言わないの」テクテク
僧侶「……まあ、死体がないだけマシですけどね」テクテク
勇者「……確かに」テクテク
魔法使い「おっと?」
魔物のむれがあらわれた!▽
勇者「……そう簡単には抜けられないよなー」タッタッタ
魔物「ぐるるるる、うがぁっ!」ザンッ!
勇者「よっと!」ヒョイ
魔法使い「魔法よー、勇者頑張れー!」
勇者「雷撃魔法!」ピシャァァッ!
魔物「ウガアアアアア!」バリバリバリ! バタッ
魔物「ぐがっ!?」
勇者「火球魔法!」ボッボッボッ!
魔物×3「ギュアアアアア!」ドカカカッ!
魔物「ごああっ!」ブンッ!
勇者「遅い! 氷結魔法!」ヒュオオオオ
魔物「ご……あ」ピッキーン
勇者「とどめだ、爆発魔法!」
魔物「……ガァッ!」ドッパーン!
魔物のむれをたおした!▽
魔法使い「……うん! どう勇者、魔法使う感覚には慣れてきた?」
勇者「ちょっとクセになってきたかも」ハアハア
魔法使い「ははは、慣れては欲しいけどそこまで求めちゃいねえや」
僧侶「うーん、分かれ道が多いですねー」テクテク
魔法使い「そうね……行き止まりだったら引き返さなきゃいけないし、迷わないようにマッピングしないと」テクテク
勇者「……ええっと、その、本当申し訳ない魔法使い」テクテク
魔法使い「地図係の私に感謝しなさいよー」テクテク
勇者「ありがとうございます!」
僧侶「ありがとうございます!」
魔法使い「ホント調子良いんだから……」
僧侶「ああ、また分かれ道……」
魔法使い「さってここまで五戦五敗! ……勇者、今度はどっち進む?」
僧侶「大丈夫ですよ勇者さん! 二分の一ですもんっ」
勇者「……人は行動学的に左を選ぶことが多いらしい、それを見越して左は行き止まりになっているはず。右だ!」
僧侶「……こっちが行き止まりでしたね」
勇者「……」
魔法使い「ってゆうかそれ自然の洞窟に通用する理論じゃないでしょ。人が考えて作った洞窟でもないのに」
勇者「……ゴメンナサイ」
魔法使い「六戦六敗!」
僧侶「ま、まだまだこれからですよ! 次こそは勝ちましょう!」
魔法使い「……いや僧侶、本当は分かれ道が無い方が良いんだからね? 私の負担的にも」
勇者「……次こそはっ、次こそはっ!」
魔法使い「お前もかい……でもまあ、中途半端に先進むよりは隅々までマッピングできて良いんだけどね」
勇者「……皮肉すぎるよぉ魔法使いさん」
魔法使い「『商人の街』を探し回ってもこの洞窟の地図が無かったとこを見ると、完成した物はないのねー」
僧侶「魔法使いさんの顔が、いやらしくなった……」
魔法使い「ふっふっふ、完成したら高値で売ろうこの地図」ヒヒヒ
僧侶「……では、引き返します、か」ハアハア
魔法使い「んー、洞窟入ってからかなり時間たっただろうし、ちょうど背中は壁だし……」
勇者「そうだね……休憩しようか?」
魔法使い「そうしましょうっ!」
僧侶「す、すみません、私の体力が低いばっかりに……」
魔法使い「んやんや、私も疲れたし良いタイミングよ」
勇者「ここまでずっと魔物の群れとの戦闘で僧侶の回復に頼りきりだったし、僧侶が疲れるのも無理ないさ」
魔法使い「ずっと戦闘ってのは、自分の引きの弱さのせいもあるけどね」ヘラヘラ
勇者「もー、魔法使いうっさい!」
僧侶「ふふっ……ありがとうございます!」アハハハ
勇者「じゃーん! 見て見てこれ!」
僧侶「わあー凄い! 勇者さんが作ってくれたんですか!?」
魔法使い「凄い本気のお弁当ね……」
勇者「洞窟入り口で野宿した時に早起きして作ったんだ!」
魔法使い「もうこのPTのコックさん自覚してんでしょあんた……」
勇者「してねーし!」
魔法使い「だからなぜそこは否定するんだよ……」
僧侶「はやくっはやくっ! 食べましょうっ!」キャッキャッキャ
魔法使い「ここまでずっと飲まず食わずだったし、さすがに食べないとこれから先進めないわね」
僧侶「勇者さんいただきます!」モグモグ
魔法使い「いただきまーす」
僧侶「勇者さんの作ってくれたお弁当で元気湧いてきましたよ!」
魔法使い「よっし、じゃんじゃん先進んで行きましょう!」
勇者「えーっと、確かここの分かれ道で俺たちは右に行って行き止まりだったんだよね」
魔法使い「戻ってきたワケだから今度はまた右に行けば良いってことね」
僧侶「そういうことですね」
勇者「だね」
僧侶「ガンガン進んで行きましょう!」
魔法使い「またすぐに疲れるといけないからペース配分気をつけなさいよー」
勇者「後ろから魔物に襲われないのは運が良いね」
魔法使い「行き止まりの所に潜んでる魔物も潰していってるからね」
魔物のむれがあらわれた!▽
魔物「ぎゃしゃあああああああ!」
勇者「火炎魔法!」ボオオオオ!
魔物「ギャアアアアア!」ボオオオ……
魔物「ぐらぁ!」ブンッ!
勇者「……ぐぅっ!」ドカッ!
僧侶「勇者さんっ!」
勇者「大丈夫! 大したダメージじゃないから! 疾風魔法!」シュンシュン
魔物「ラァァァァ!」ザクザクッ!
魔物のむれをたおした!▽
勇者「……ふうぅ」
僧侶「回復します!」パアアア
勇者「ありがとう僧侶」
魔法使い「勇者、疲れてる?」テクテク
勇者「へ、へっちゃらだよこのくらい!」ハアハア
僧侶「強がってますね勇者さん……」テクテク
魔法使い「ここまでの分かれ道勇者の選択は102戦全敗、小休止11回、マッピングは4枚目が終わりそう」テクテク
僧侶「思ってたよりも洞窟長いですね……」テクテク
魔法使い「いつ抜けるかわからないってのも、精神的にキツいわね……」テクテク
……ヒュウゥ
勇者「……おおっ!?」
魔法使い「風の音? もしかしたら出口が近いのかも!」
勇者「やっとジメジメとおさらばできるかなっ!?」タッタッタ
???「……おおっと、この先には行かせねえぜ」
僧侶「っ!? 魔物!?」
魔物「このまま洞窟から抜けられると思ったか? 残念だったな、お前らはここで死ぬんだよ」
魔法使い「ということはこの先が出口で正解みたいね」
僧侶「今までの魔物と違います……この魔物強いですよっ!」
魔法使い「いわゆるこの洞窟の『ボス』ってやつか」
勇者「ボスってこんないきなり現れるもんなのかよ!?」
魔物「っは! 大人しく俺に食われろ!」ダッダッダ!
勇者「来るッ!」
魔法使い「……よし勇者、剣解禁! 思う存分戦いなさい!」
勇者「えっ!? 良いの!?」チャキッ
魔法使い「今までお疲れ様! 剣術と魔法を使いこなす今のあんたなら、あんなボスだって余裕よ! 行け!」
魔物があらわれた!▽
勇者「おっしゃあああああああ! ……あ?」チャキィィン……ジャリン
魔物「八つ裂きにしてやる!」ブオン!
勇者「……(うっわずっと剣鞘に入れたままだったから……うっわ)」ヒョイ
魔物「っち、ちょこまかしやがって!」ブオン!
勇者「……(うっわ剣サビさせちゃったあああああああ!!!)」ヒョイッ
魔法使い「何やってんの勇者! 剣使って良いのよ!」
勇者「くっ! らぁっ!(いや、ちょっとサビてるくらいだしきっと……)」ヒュンッ!
ペッキーン
魔物「なんだなんだぁそのナマクラは? そんなんじゃ俺の肉は切れねえぞ!?」ブオン!
勇者「がぁっ!」ドガッ!
僧侶「勇者さんっ!」
魔法使い「……剣使ってなかったから手入れもしてなかったのね。あんたが悪い」
勇者「ここまで来ておあずけなんてっ……おあずけなんてぇぇっ!」
魔物「お前ら、魔王様に歯向かう勇者どもだったのか。こらぁ良い!お前らの首だけ残して手柄にしてやる!」
魔法使い「仕方ない……んじゃあこれも修行の一環ってことで魔法で倒しなさい!」
勇者「ふぅぅん……火炎魔法!」ボオオ!
魔物「なんだその弱っちい炎は!?」
勇者「……電撃魔法!」ビリビリッ!
魔物「勇者ってのはこの程度なのかよ! 笑わせてくれるじゃねえか!」ブンッ!
勇者「……ふぎゃっ!」ドカァッ!
魔法使い「……勇者くん、あんたもしかして?」
勇者「ふふふ、いやー油断した、あいつ強いなー」
魔法使い「正直に言いなさい?」
勇者「ごめんなさいもうMPありましぇええええん!!!」
僧侶「回復魔法!」パアアア
勇者「あ、ありがとう!」
魔物「まとめて引き裂いてやる!」ダッダッダ
魔法使い「んー、さすがに勇者もカツカツだったか」
勇者「面目ない……」
魔法使い「……いや、私もスパルタ過ぎた、仕方ないわよ」タッタッタ
勇者「魔法使い、戦うのか!?」
魔物「ぐははっ! 今度は女か!? 良いだろうお前を先に食ってやる!」
勇者「気をつけろ魔法使い! 俺だから大丈夫だったけどアイツ凄い攻撃力だ!」
魔法使い「わかってるって。ここまでずっと戦闘は勇者だったしね、『商人の街』での一件もあるし……」
魔物「死ねッ!!!」ブオン!
魔法使い「私も魔法ブッぱなしたくてうずうずしてたんだよぉッ!!! 獄炎魔法!!!」ッゴオオオオオ!
魔物「ぐぅぅっ!」ゴオオオオオオ!
魔法使い「我慢してたのは勇者だけじゃねえぞ!!!」
勇者「……」ポカーン
僧侶「……」ポカーン
勇者「……あっ、もしかして、魔法使い俺に怒ったの?」
僧侶「……あっ、いやっ、魔法使いさんのことですし、怒ってるわけじゃないと思います」
魔法使い「おらあああああああああああああ!!!」ゴオオオオオオッ!
魔物「ぐおおおおおおおおおお!!!」ゴオオオオオ!
勇者「よ、良かった……それなら本当に良かった」
僧侶「……多分、ですけど」
魔法使い「見てろ勇者!」
勇者「ひゃっ、ひゃいっ!」
魔法使い「これが本当の魔法だ!!!」
魔物「このっ……」
魔法使い「業火魔法!凍結魔法!烈風魔法!雷撃魔法!爆裂魔法!」ドドドドド!
魔物「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」ドドドドド!
魔法使い「炎弾魔法!氷弾魔法!雷弾魔法!」バババッ!
魔物「がああああああああああああ!!!」ドガッガガァッ!
魔法使い「……ふっはっはっはっは! これだから魔法は素晴らしい……す、ば、ら、し、い!!!」
魔物「……がぁ、ああ」フラッ
ドサァァン……
勇者「……」ポカーン
僧侶「……」ポカーン
魔法使い「はあー、スッキリした。さーて勇者、僧侶、先を急ぎましょー」クルッ
勇者「僧侶……魔法使いは怒らせないようにな」ボソッ
僧侶「……は、はい」ボソッ
魔法使い「何か言ったー? 遠くて聞こえなーい!?」テクテク
勇者「何も言ってないです何も! ……魔法使いっ後ろっ!」
魔法使い「……えっ?」クルッ
魔物「……ぐぅっ、魔王様のお力に。ぐらぁぁぁぁ!」ブンッ!
ドカッ!
勇者「魔法使い!」
魔法使い「いっててて……吹っ飛ばされちった。ったくあの魔物、乙女の顔殴りやがって」ズザザザ!
僧侶「回復魔法!」パアアア
魔法使い「……ありがと僧侶」
勇者「大丈夫なのか魔法使い……ん?」
魔法使い「ああ、まあ『これ』のお陰でなんとか」
勇者「……その顔……角? 竜の鱗?」
魔法使い「んー、うん。これも糞犬……あの悪魔の能力なんだなあ、ったく」
勇者「な、なるほど……」
魔法使い「ビジュアル悪くなるからなるべく『生やす』つもりはなかったんだけどさ」
魔物「ぐぅうっ」フラフラ
魔法使い「見た目だけなら完璧私が一番の化け物だし」
勇者「魔法使い……俺は」
魔法使い「わかってる、安心してそこで見物してな。さっさと死にかけのアイツぶっ倒してくるから」タッタッタ
魔法使い「この野郎、顔殴りやがって……火炎魔法!」ボオオオ!
魔物「ぐっ、そんな弱い魔法は効かねえぞ! ……ッ!?」ピキッ、カチコチッ
魔法使い「ははは、ばーか。その弱っちい火炎魔法に騙されてるんじゃねえよ」
魔物「んなっ、体が凍りつく!? ありえない、凍てつく炎だと!?」カチ、コチ
魔法使い「違うよ、それができるのは『私』じゃねえ。見た目だけ派手な火炎に極寒魔法を重ねただけだ」
魔物「……」ピッキィィィン……
魔法使い「……爆発魔法」ドパーン!
パリィィン! ……キラキラキラ
魔物をたおした!▽
勇者「……」ポカーン
僧侶「……」ポカーン
魔法使い「さって、洞窟抜けますかみなさん!」ケロッ
僧侶「は、はいぃ……」
勇者「……あ、顔元に戻ってる」
―洞窟の出口・森の中―
勇者「やっと抜けられたああああ! お日様がまぶしいっ!」
魔法使い「んー、予想通り出口はすぐだったみたいで良かった」
僧侶「はふぅ……でも疲れましたぁ」ヘナヘナ
魔法使い「洞窟抜けるのは予想以上にハードだったわねー……」
勇者「……んー、どこかなどこかなー」
僧侶「勇者さん、何探してるんですか?」
勇者「……お、あったあった!」
勇者はひのきのぼうをてにいれた!▽
勇者「どんな武器でも、剣術が使えるならねっ!」
僧侶「な、なるほどっ!」
魔法使い「余程剣を振りたいのね……勇者」
勇者「うん!」
魔法使い「それもそうか。じゃあ今日はここで明日まで野宿しましょう。みんなテント張るの手伝ってー」
…夜…―テント―
勇者「はあ……ほんとに疲れた」クタァ
僧侶「剣解禁おめでとうございます!」
勇者「……『ギルドの街』に着くまではひのきの棒だけどね」
魔法使い「ここから、二、三日、森や林を進んで開けた所に『ギルドの街』はあるみたいね」
僧侶「うーん、ここからも遠いんですね……」
勇者「ふぐぅぅ……」グテェ
僧侶「勇者さんも相当お疲れですね……。今日は私と魔法使いさんで料理しましょうか?」
魔法使い「……えっ? 私!? わ、私はいいわよ……料理は僧侶に任せる」
僧侶「えー一緒に作りましょうよー」
魔法使い「私は、ほら……その、僧侶の料理が食べたいなーって」
勇者「い、いいよいいよ二人とも、俺が料理作るからさ」
魔法使い「敵も強くなってる、いよいよ魔王の城も近いわよ」モグモグ
僧侶「人語を話す魔物も出てきましたもんね……」モグモグ
勇者「『北の勇者』も『西の勇者』も近づいてるのかなー」モグモグ
僧侶「どうなんでしょうね……私たちも特別ゆっくり進んでるってわけでもないですし」モグモグ
魔法使い「アホ勇者は寄り道して遊びまくってそうね。変態勇者の方も違う意味で寄り道しまくってそう」モグモグ
僧侶「なんだかんだ、実直に進んでますよね……私たち」モグモグ
勇者「お、お、お、ちょっと寄り道したかったら言ってくれて良いんだからね!?」
魔法使い「勇者のアンタがそんなんでどうすんのよっ!」
僧侶「寄り道なんてとんでもないっ! 私は勇者さんの進み方で正解だと思ってますよっ!」モグモグ
勇者「……そ、そか、そだよね。うん、よ、良かった」ホッ
勇者「……でも、やっぱり不安だな。俺たちは魔王倒せるのかな」
魔法使い「そりゃあ絶対とは言えないわ。けど、今まで戦ってきた魔物がいいバロメーターになってるじゃない」
僧侶「バロメーター?」
魔法使い「私たち苦戦してた?」
勇者「んー、ほとんど苦戦してないな(……ほとんどね、若干数、苦戦してたけど)」
魔法使い「苦戦してたのも特殊な例でしょ? 確実に魔物は強くなってるけど、私たちはそれを倒してきてる」
僧侶「ああ、だから」
魔法使い「近づけば近づくほど徐々に強くなっていくってのは、逆に言えば私たちの力が通用する限界を知れるのよ」
勇者「あー、そっかそっか」
魔法使い「心配するのは、その時になってからでも遅くないわ」
僧侶「頭良くなりました! ありがとうございます魔法使いさん!」
魔法使い「……そんなことでお礼言われても嬉しくないぞー僧侶ー」
僧侶「……戦士さん大丈夫でしょうか」
勇者「そうだよ、戦士は一人で旅してるんだもんな」
魔法使い「あの野郎、アイテム全部持ってったんだから、それで死んだら承知しないわよ」
勇者「魔法使いさん角出てる角出てる!」
魔法使い「……ま、冗談はこれくらいにして」
僧侶(ほんとに冗談だったんでしょうか……)
勇者(冗談じゃない冗談じゃない、絶対冗談じゃなかった)
魔法使い「あいつの強さはみんなも知ってるでしょ?」
勇者「……うん。戦士がいなくなって正直、戦闘大変になったもん」
魔法使い「苦戦はしてないけどねっ!」
勇者(そこ念押さなくても……)
僧侶「戦士さんがいてくれたらもっと洞窟抜けるの楽でしたよね……」
魔法使い「だから戦士の心配は無駄よ無駄。だったらアホと変態の心配してた方がマシよ」
勇者「信じてるんだな、魔法使い(そこまで言うか……)」
魔法使い「……私たちの仲間だもん」
勇者「……ふふ」フフフ
魔法使い「んなっ、なによ勇者。何がおかしいの!?」
僧侶「魔法使いさんからそんな言葉が出てくるって意外だったんですよねー!」フフフ
魔法使い「ちょ、ちょっと僧侶ぉ! あんたが言うか!」
勇者「いやー、だってほんと意外だったからさー」ハハハ
僧侶「仲間って言った時の魔法使いさん、すっごく可愛かったですよー!」ハハハ
魔法使い「あ、あんたらー! 笑うなー! ……んっくしゅんっ!」
僧侶「あははっ! 魔法使いさんくしゃみも可愛いー!」
魔法使い「だ、か、ら、笑うなってー!」
…深夜…―テントの外―
僧侶「綺麗なお月さまー!」
勇者「ほんとだねー」
僧侶「ほら見てくださいお月さま綺麗ですよ魔法使い……さん? ……あれ?」
勇者「……テントの中で寝ちゃってる」
僧侶「魔法使いさんも疲れたんですね、ボスとの戦いで」
勇者「俺なんにも出来なかったしなー」
僧侶「勇者さんだってそれまでずっと魔法だけで戦ってたんですもん、仕方ないですって」
勇者「ははは、まあそうだよね……っと」フラッ
僧侶「勇者さんもテントの中で休んでください。一番疲れてないの私ですし、見張りやります」
勇者「大丈夫?」
僧侶「大丈夫です!」
勇者「……ありがとう僧侶。んじゃ、おやすみ」スタスタ
僧侶「おやすみなさい!」
…
……
――『うわー、見てください勇者様! 月が綺麗ですよ!』
――『……』
――『……勇者様?』
――『……わりぃ、俺明日から旅に出るわ』
――『えっ!またですか!?また一人旅ですか!? 最近多いですよ!』
――『勇者様は多忙なのー』
――『今度はどこ行くんですか!? 仮面返した南の島にバカンスですか悪魔召喚の資料集めですか!?』
――『ちょ、ちょっちょ落ち着けって』
――『あの変なグロイ植物と散歩ですか!?『光の剣』とその『鞘』を隠す旅ですかああああ!?』
――『……隠れてこそこそ不死身の研究してる奴らを懲らしめてくんだよ』
――『1000年後の準備準備って私を置いてっ、今度こそ私も……え?』
――『……ごめんな、今までもお前のこと置いてったけど、今度ばっかりはマジでダメだ』
――『……研究してる、って』
――『公にゃ解体されたっつうが、いるんだよ……『残党』が。世界中によ』
――『……私も』
――『ダメダメ』
――『私もっ!』
――『だーめっつってんでしょ! ……今にも泣きそうじゃねえか』
――『……ふっ、うう』グスン
――『お前は安全なここにいて、俺の帰り待ってろ。なーに俺は勇者様だぜ?さっさと潰して帰ってくらあ』
――『ゆ、勇者様ぁ……』グスン、ヒッグ
――『こんな泣き虫連れてっても楽しくねえしなー』
――『……絶対に、帰ってきてくださいよ!』
……
…
僧侶「……勇者様、月……とっても綺麗です」
…二日後…
勇者「ひのきの棒つっかえるぅぅぅ!」テクテク
魔法使い「……まさか魔法をマスターした勇者に剣術合わせただけでこんなに戦闘が楽勝になるとは」テクテク
僧侶「回復役の私の立場がぁっ!」テクテク
魔法使い「……私は楽できて良いんだけどね」
勇者「そういえば、全然『暗殺者』たちは来ないな『霧の村』以来」
魔法使い「あー、確かいたなそんなやつ。すっかり忘れちゃってたわ」
僧侶「『北の勇者』さんが倒しているんでしょうかね……」
魔法使い「あの変態のことだしありえるわね。でもお陰でサクサク進めてるんだし良いじゃない?」
勇者「それもそうだな……おっと?」
魔法使い「あー長かった、ここまでクッソ長かった」
僧侶「……やっと見えてきましたね、『ギルドの街』!!!」
―北にそびえる大山―
ヒュオオオオオオオオ!
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
ザッザッザッザッザッザ!
戦士「……」ザッザッザ
魔物があらわれた!▽
魔物「……くっくっく、こんな所に一人で」
戦士「……」ザシュッ!
魔物「グオアアアアアアアアアアアア!!」ブシュゥゥゥ!ドサッ
魔物をたおした!▽
戦士「……」ザッザッザ
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「……寒ぃよ馬鹿ああああああああああああああああ!!!」バカーバカー……バカー
戦士「ぜってえこっちで正しい!絶対だ! あの糞親父、俺が寒いの苦手だって知ってて遺産隠しやがったな!」ブルブル
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「笑うんじゃねえよ『わらいぶくろ』! っくっそー、寒ぃし魔物も強くなってやがるし寒ぃし!」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「アイテム全部俺が持ってっちまったけど、あいつら大丈夫なんだろうな……」
戦士「回復は僧侶ちゃんがいるから心配ねえだろうが」
戦士「……」チラッ
戦士「……このだっせえ仮面、勇者のやつ相当気に入ってたのによ」
戦士「……さっさと用事済ませて合流しねえとな」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ピョンピョン
戦士「おわっと! 引っ張るんじゃねえよわらい……ぶ、くろ?」
戦士「……山の斜面に洞窟」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ピョンピョン
戦士「見つけたぜ……ここか、ここなんだな!? 遺産の隠し場所の入り口は!」
―洞窟の中―
魔物のむれがあらわれた!▽
魔物A「この山は魔王様の……ギャアアアアアア!」ザシュウ!
魔物B「強い魔力で生まれた……ッガアアアアアアアア!」ドシュゥッ!
魔物C「我ら強力なまもズアアアアアアアアアアアアア!」ザンッ!
魔物D「だからお前みたいな命知らずはめったにコオオオオオオオオオオオオ!!」ブシュウ!
魔物のむれをたおした!▽
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「……ん、何か喋ったか?」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「確実に、強くなってるな……俺。……先に進もう!」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「うるせえよ『わらいぶくろ』。洞窟の中なんだから静かにできねえのかよ」テクテク
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「まあ、中入って雪風凌げるのは良いな。寒ぃのに変わりはねえが……」テクテク
戦士「洞窟つったら『霧の村』思い出しちまうぜちくしょう……。死体は出てくんじゃねえぞ」
戦士「……あいつら、俺いなくて大丈夫かな。っていうか、俺のこと忘れてたらどうしよう……」
戦士「いやいや大丈夫だ! ……多分。テント張るの手間取って泣いてるだろどうせ」
戦士「……」
戦士「一人ってこんな寂しいんだな……」
戦士「……」
戦士「……っは!? 何言ってんだ俺!? そんなキャラじゃねえだろ俺!?」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「お前は笑うんじゃねえよ!」
魔物のむれがあらわれた!▽
魔物A「なんだオメェ? こんなところに人間たぁ珍しいな」
魔物B「肉だ! 久しぶりの人間の肉だ!」
魔物C「へっへっへ、ここを盗賊どものアジトにでもするのかい? だったらもっと仲間呼んでこいよ食料さんよ」
戦士「……っち、またかよ。みんな揃って洞窟で暖まってますってか?」
ザクッザンッズバッ!
魔物のむれをたおした!▽
戦士「……なんだよなんだよなんだよっ! 俺はそんな盗賊みてえなナリしてんのか!?」
戦士「っちくしょー、気に入らねえけど一応それらしく振舞ってるつもりなのに」
戦士「盗賊じゃねえよ糞魔物ども。……俺は、『戦士』だ」
―洞窟・最深部―
戦士「……疲れた。ようやっとここまで来た、ってのに……」
ガッハッハッハッハッハッハッ!!!
戦士「行き止まり……なのかよ。おいおい嘘だろ?」
ガッハッハッハッハッハッハッ!!!
戦士「おいこらお前! お前がこっちに飛び跳ねて行くからついて来たんだぞ!」
ガッハッハッハッハッハッハッ!!!ピョンピョン
戦士「……これで隠し場所は全然違う所でしたー、っつったら笑えねえぞおい。カッコつけて離脱したってのによ」
戦士「……さむっ!」ブルルッ
ガッハッハッハッハッハッハッ!!!
戦士「……いや、間違いねえよやっぱり。あの糞親父の考えそうなことだもんな」
戦士「もっとよく調べてみるか」
戦士「財宝の隠された遺跡やダンジョンは何度も攻略してきたんだけどな……」キョロキョロ
戦士「どこかにスイッチやら隠し扉やらはねえのかよ」キョロキョロ
戦士「隠し場所に続く道ってのは大体そのダンジョンの最深部って相場が決まってんだけどな……」キョロキョロ
戦士「……さみぃ」ブルブル
ガッハッハッハッハッハッハッ!!!
戦士「……ああ、くっそ、そういやそうだったな」
戦士「俺が探すのは糞親父の財宝なんだ。あの野郎がそんな予想通りの相場で仕事するわけねえよな」
戦士「わかってたはずなんだけどな……ったく。死んだ、らしいくせにまだ俺のこと馬鹿にしやがって」
ガッハッハッハッハッハッハッ!!!
戦士「なんでもねえ途中の行き止まりでもあたってみるか」
戦士「……」テクテク
戦士「くっそ、無駄に戦闘しまくっちまった……」テクテク
戦士「んー、ただの行き止まりの壁だよなー」キョロキョロ
戦士「岩に紛れてスイッチとか……」ピトッ
戦士「……ん? 窪み?」ピトピト
戦士「……これは。岩に隠れて見えづらいが……確かにここだけ……」ピトピト
戦士「ああ、確かに不自然な窪みがある! こんなのわかりっこねえよ!」ピトピト
戦士「……それに、この窪みの形、よく見りゃ覚えがあるな」チャキン
パコッ
戦士「……やっぱりそうだ。糞親父のナイフの形だ。綺麗にハマりやがって」
ゴゴゴゴゴ……
戦士「洞窟の壁が開き始めやがった……どんな仕掛けなんだっつうの」カパッ
戦士「……ようやくここまで来た。見てるかよ糞親父、今から息子がお前の財宝盗みに行くぞ!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……ズシイイン
戦士「……完全に開ききったか。もうさっきの洞窟の壁は消えてなくなっちまったな」
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!ピョンピョンピョン
戦士「おいこらお前っ、勝手に先進むんじゃねえよ!」タッタッタ
ビュンッ!ガッ!
戦士「どわっ!」サッ
戦士「んな、矢!? 入り口入ってさっそく罠か!?」
ガッハッハッハッハッハッハ……。ピョンピョンピョン……
戦士「くそ、あいつ行っちまった。どうやらこの矢は俺を狙ってるみてえだな」
戦士「魔物の気配も感じられない……なるほどな、糞親父らしい」
戦士「こっから先は正真正銘、俺とお前の勝負ってことか」
戦士「ははは、お前の貯金箱……ぜってえ開けてやる」
――『いいか糞ガキ、馬鹿なお前に問題出してやるよ』
――『うるせーくそおやじ!』
――『一流の盗賊ってのは何ができるやつだと思う?』
――『ばっかじゃねーのー! そんなのぬすみにきまってんだろー!』
――『だーからお前はいつまでたっても馬鹿なんだよばーか!』ガッハッハッハ
――『うるせー! ちがうのかよ!』
――『んなの盗賊にゃ当たり前のことだろうが! 魔王の城から宝盗んだってそれだけじゃ一流じゃねえんだよ!』
――『じゃあなんなんだよくそおやじ!』
――『よく覚えとけよ糞ガキ、一流の盗賊ってのはな、『罠』を作れるやつらのことを言うんだ』
――『はー!? わなぁ!?』
――『偵察や盗みがいくらできようが、それをいくら自慢しようが『罠』を作れなきゃそいつは三流だ』
――『なんでわななんだよ!?』
――『アジトを守り、仲間を守り、盗んだ宝を守る。そいつが出来なきゃ一流じゃねえのさ』
―盗賊王の貯金箱・入り口―
ビュンビュンビュンッ!
戦士「くっそ! さっきまでの洞窟とうって変わって綺麗に整ったダンジョンしやがって!」サササッ
ビュンビュンビュン!
戦士「最初の部屋からいきなり迷路かよ! しかも矢!矢!矢ぁ!」サッサッサ
ビュンビュンビュン!
戦士「どこから撃ってんだくそ! 立ち止まる余裕もねえ!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「弾切れ待つかっ! 早く尽きやがれ!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「くそっ、おわあぶねっ!」サッ
ビュンビュンビュン!
戦士「尽きねえええええええええええ!」タッタッタッ
ビュンビュンビュン!
戦士「こっちの道は行ったから次はこっち!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「こっちは行った!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「おい全部行き止まりじゃねえか! ゴールどこだくそ!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「んー、あいつが考えそうなこと……」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「あいつのことあいつのことあいつのこと……」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「……まさか、上!?」キョロキョロ
ビュンビュンビュン!
戦士「……あった! 天井に抜け道がある!」サッサッサ
ビュンビュンビュン!
戦士「天井高ぇな。……まさかこの大量の矢で足場作れってか!?」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「それしかねえみてえだな、うおおおおお……あんの糞親父、馬鹿!死ね!大っ嫌いだ!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「避けるだけで精一杯なのにこの矢で足場作って上に登らせんのかよ!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「くっそうっぜえええええ!」タッタッタ
――『どうせお前じゃ一生見つけらんねえよ!』
ビュンビュンビュン!
戦士「やってやるよ! ああ!やってやるっつってんだよおおおおおおお!」タッタッタ
ビュンビュンビュン!
戦士「おっらこれでどうだ!」ガラガラガシャーン!
ビュンビュンビュン!
戦士「おっとあぶねっ! あとは登るだけぇ!」ガラガラ
ビュンビュンビュン!
戦士「くそっ、矢の山が足場ってのはさすがにキツイな、不安定すぎ」ガラガラ
ビュンビュンビュン!
戦士「登りづれえ!」ガラガラガラ
ビュンビュンビュン! ザクッ!
戦士「ぐっ……! んんあと少し!」ガラガラガラ
ビュンビュンビュン!
戦士「いっけえええええええええ!」ガラガラ
戦士「いったあああああああああ!」ピョンッ
―盗賊王の貯金箱・第二の間―
戦士「ハアッハアッハアッ! ……はあ、はあ。届いた……やっぱこの抜け道が正しかったみてえだ」
戦士「あれで入り口かよ!? ふざけんじゃねえぞ!」
戦士「……ぐぅっ、いっててて」
戦士「最後の最後で肩かすっちまった……」ゴソゴソ
戦士「勇者が前に買ってくれた13枚の薬草、良かった持っといて」
戦士「わりいが一枚いただくぜ」モグモグ
戦士「……はあ。僧侶ちゃんのありがたみがよくわかるな」
戦士「んで、上がったは良いが今度はなんだ……通路? ……っ!?」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「炎!? 通路の奥から噴き出してんのか!?」サッ、ピタッ
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「あ、あぶねえあぶねえ。あのまま進んでたら通路の真ん中で誰も食わねえ焼き肉になってたとこだ」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「壁の端に張り付いてギリギリ炎が届かないのか……」
戦士「今度はどうしろってんだよ、通路全部炎で埋め尽くされちまったぞ」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「考えろ俺考えろ俺! あいつのことあいつのこと」
戦士「……このまま普通に進んでも、数秒後には焼き肉だ。またどっかに抜け道があるのか?」キョロキョロ
戦士「……つったって、壁の端に張り付いてたままじゃ探せる場所もロクにねえよ」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「あいつのことあいつのことあいつのこと……」
戦士「進んだって数秒後には焼き……ん? 数秒後? ……嘘だろおい」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「……この炎の通路を進めっつうのか?」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「一向に止まる気配はねえし……」
戦士「炎の中の数秒間で抜け道見つけろってか!?」
戦士「そんなことしたら一瞬で死んじま……いや、違うな」
戦士「死ぬまで走り続けられんだ俺は、ショボい火傷ぐらいで諦めてられっかよ」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士「……こんな炎、どっかのブチギレ女の炎より全然ぬりぃんだよ!」
戦士「行ってやるぞこの野郎おおおおおおおおおおお!」ダッ!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
戦士(目が開かねえっ! 前が見えねえっ!)タッタッタ
戦士(熱いし苦しいし、やっべえな!)タッタッタ
戦士(これじゃ抜け道探す余裕もっ!?)ズルッ
戦士「っうっおおおおお!?」
戦士「落とし穴!? やっべえ落ちる!」
ヒュー……ン
バシャァッ!
戦士「はあ、はあ、はあ。うおお、水たまり! 髪が焦げる前に濡らさねえと」ビチャビチャ
戦士「……かなり下に落ちたんだな。上の方に小さく炎の光が見える」
戦士「……はあ、死ぬかと思った」
戦士「どこに落ちたんだ……」キョロキョロ
戦士「まーた狭い通路かよ。しかも先に進める道が二つあるな……それに、少し坂になってる?」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
―盗賊王の貯金箱・第三の間―
戦士「……この音」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
戦士「間違いねえ岩が転がってくる音だ!」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
戦士「右の通路から来るっ! 左に……」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
戦士「いや右だ!」ダダッ!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
戦士「あいつのことだ! バカ正直に左に逃げてもぜってえ閉じ込められる!」タッタッタ
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
戦士「迷ってる暇はねえ! このまま突っ込むぞ!」タッタッタ
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!! ドシャァァァァン!!!
戦士「……ふう、大正解! 右の通路に横道がありました!」
戦士「危なかった、ほんと一瞬でも遅れてたら横道塞がれて潰れてたな……」
戦士「あっちちち……」
戦士「炎の通路で火傷したってのに休みも無しかよ……」
戦士「薬草薬草」モグモグ
戦士「ほんっとーに僧侶ちゃんに助かってたんだな今まで!」
戦士「……はあ、少し回復できたしさっさと進むか」
戦士「早く財宝見つけて、あいつらに合流しねえと」
戦士「なにが一生見つけらんねえだ糞親父。……ぜってえ見つけてやっからな」タッタッタ
―盗賊王の貯金箱・第四の間―
ザバザバザバ!
戦士「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
―盗賊王の貯金箱・第五の間―
グルグルグル!
戦士「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
―盗賊王の貯金箱・第六の間―
ピチピチピチ
戦士「……」
―盗賊王の貯金箱・第七の間―
ガリガリガリガリ!
戦士「いやああああああああああああああああああ!」
…
……
―盗賊王の貯金箱・最深部―
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「ぜえ……ぜえ……ぜえ……や、っと、つい、た」ゼエゼエ
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「おま、え……こんなとこまで進んで、たのかよ」ハアハア
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「俺はあんだけ死ぬ思いして来たっつうのに……」
戦士「……でも、辿りついた」
戦士「やっと、やっとここまで来た……」
戦士「見たか糞親父ぃ! 俺は、てめえの宝を盗んでいくぞおおおおお!」
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「……このクソでけえ岩の扉の奥に、あるんだな」ゴクリ
戦士「……扉」ピトッ
戦士「はは、やっぱなぁ……」ニヤ
戦士「このダンジョンが開く時、抜き取っておいて良かったぜ」
戦士「あのまま壁が消えてたら、こいつも取れなくなっちまうところだった」
戦士「ここでも、この扉を開く『鍵』になってんだな……このナイフは」
戦士「同じ形の窪みだ」
パコッ
ズズズズズズズズズ……
戦士「開き始めた……またナイフ取って」カパッ
ズズズズズズズズズ……
戦士「見つけたぜぇ、糞親父……いや、『盗賊王』の財宝だぁぁぁぁ!」
―盗賊王の貯金箱・財宝の間―
キラキラキラ、キラキラキラ、キラキラキラ
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「……すげえ、北の大山の中にこんな広い空間を作るたあ」
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「その空間いっぱいに、宝石、ゴールド、財宝が積もってら」
ガッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「こりゃあ、俺の糞親父のだわ。他にここまで貯め込めるやつなんざいねえよ」
ガッハッハッハッハ……ハ
戦士「良かったな『わらいぶくろ』、お前が食いたがってた糞親父の『質の良い金』だぜ」クルッ
……
戦士「ん? どうしたお前気絶しちまったのか? やけに静かになっちまって」
???「『わらいぶくろ』には悪いけど、しばらく眠っていてもらうよー」
戦士「ッ!?」ザザッ
???「いやあ……『盗賊王』の名に恥じない財宝の山だ。俺が今まで稼いだ額とどっこいぐらいあるよ」
戦士「……やっぱお前だったのか」
???「どーもー、『盗賊王』の息子くん。『商人の街』以来だね、ってかまともに会ってはいなかったけどさ」
戦士「あの時の糞商人ッ!」
商人「俺が気付かれないように懐に潜ませといた『盗賊王のナイフ』は役に立ったかい? ははは」
戦士「んぐっ、……てんめぇ。今度会ったらぶん殴ろうと思ってたんだよ」
商人「はははっ、そりゃ都合が良いや。俺もちょうど、息子くんを殺そうと思ってたんだよ」
戦士「……あ?」
商人「ずっと息子くんをストーキングしてきたんだぜ。この財宝の山を奪うために」
戦士「くっそぉ……てめえ本当に商人かよ!」タッタッタ!
商人「戦おうよ、この財宝をかけて!」タッタッタ!
商人「ははっ、そらっ!」ブンッ!
戦士「っと! てめえもナイフ持ちか!」ガキン!
商人「たまたまマントの中から取ったのがナイフってだけだよっと!」ブオン!
戦士「んなっ! 今度は剣!?」キィン!
商人「武器だけじゃないよ!」ヒュンッ
戦士「ぐっふぅ」ドゴッ
商人「……蹴りはこないとでも思ったかい?」タッタッタ
戦士「くそっ!」
商人「倒れたままじゃ死んじゃうぞー」ブンッ
戦士「うおっと! 剣真上に投げ捨てたと思ったら今度は斧取りだすのかよ!?」サッ
商人「斧は重いね、すばしっこい息子くんには避けられちゃうな」パシッ、ブン!
戦士「……っく(上に投げた剣で追撃!? かわせねえっ!)」ズルッ
商人「あらっ?」スカッ
戦士「ぐえっ」ドサッ
商人「足元の財宝に救われたね、でもまだまだ!」ヒュンッ
戦士「くっそ!」ガキン!
商人「剣の一撃をナイフで受け止められちゃったか……」ドカッ
戦士「うっぐぅ!」ズザザッ
商人「だったら蹴り飛ばすまでだ」ポイッ
戦士「この野郎、次から次へと武器だしゃ捨てやがって(一旦距離取るか)」サッサッサ
ヒュンッ、ズカァ!
戦士「んいってえええ!」
商人「悪いが、この空間は俺の武器だらけだ」
戦士「くっそ、あいつゴールド投げてきやがった!」
ヒュンヒュンユン!
商人「皮肉だねぇ、さっきは命を救ってくれた足元の財宝たちが、今度は息子くんに牙を剥くんだ」
戦士「くそっ、離れたらゴールドの弾丸かよ!」サッサッサ
商人「はっはっは、どうする!?」
戦士「んにゃろう!」タッタッタ
商人「そうそう、近づくしかないよねー」
戦士「おっら」ヒュオン!
商人「ははは、速い、良い攻撃だ!」ガキン!
ガキン!キィン!ズバッ!ザクッ!キンッ!ガキィン!
商人「はっはっは、どうした、『盗賊王』はもっと強かったぞ!」
戦士「んの野郎おおおおおおおおおおおおおおおお!」
キィン!キキン!ガキン!
戦士(くっそ! 『商人の街』でもそうだった……この感覚!)
ガキン!ズバッ!キィンッ!
商人「どうしたどうした! 防戦一方だぞ!」
ザンッ!
戦士「ぐっ!(目の前にいるのに、確かに攻撃されてるのに、野郎の気配が感じられない!)」
商人「『盗賊王』の超潜伏スキルは何もお家芸ってわけじゃないんだぜ?」ブンッ
戦士「んなっ!?」キンッ
商人「伊達にライバルと謳われて、やつを殺した英雄と讃えられてはいないってことさ!」
戦士「……っつっ! 馬鹿にしやがって! 俺だってそんぐらいできんだよ!」
商人「ふっ(息子くんの気配が完全に消えた、俺の攻撃の中よくやってのけたね)」
戦士「おらおらっ! 攻撃の手が遅れてきてんぞどうしたよ!?」ザンッ
商人「くっ、良いね!(大声を出してそこにいるのに、目の前にいる息子くんが出来そこないの幻影に見える感覚)」
戦士「っそぉ、野郎もどんどん存在感がなくなってきやがる!」
商人「ほらほら! このまま打ちあってたらいつまでたっても俺は倒せないよ!」
キィン!ガキィン!ギンッ!ズバッ!
戦士「くっそ!」
商人「敵を倒してから成長してたんじゃ遅いんだよ! 戦いの中で経験を得ないと!」ブンッ
戦士「こんのっ!」キンッ
商人「攻撃するたびに!攻撃を受けるたびに!攻撃をかわすたびに!」ドカッ
戦士「ぐっは……また蹴りか」ズザザッ
商人「君たちは成長していかなきゃならないんだっ!」
戦士「野郎、えらそうに説教してんじゃねえよ!」
商人「……っ!?(息子くんの気配が完全に消えた、いや目の前にいるはずなのに!)」
戦士「おらああああああああああ!」タッタッタ
商人(いや、目の前にいるはずなんだ。凄いな、まるでこの空間一帯に俺だけしかいないような静かな感覚)
――『いいか、お前は今から『戦士』だ。そう名乗りやがれ』
――『ふざけんじゃねえよ糞野郎! 誰がてめえの言いなりになんかなっかよ!』
戦士「くらいやがれええええええええええ!」ブンッ
商人「はははっ、息子くん……この戦いで成長したね。……でも(……俺が捨てた斧を拾ったのか)」ヒョイッ
戦士「っちはずした!」スカッ
商人「重い斧じゃ……っ!?」
戦士「とみせかけて本命はこっち!」グルン
商人「ナイフッ!? くそっ速いっ!(考えたね、斧を振る遠心力か。こりゃあ避けられないや)」
戦士「俺は『盗賊王』の息子って名前じゃねえ! 『戦士』だああああああああああああ!」
ズバァッ!
――『あんたと戦うのは、これで何度目かな』
――『がっはっはっはっは! そんなのいちいち覚えてられっかよ!』
――『でもその戦いも……これで終わりにしようよ』
――『ああ賛成だ、お前ももう飽きただろ?』
――『とっくの昔に飽きてるよ。今日こそはあんたを殺すよ、商人の敵』
――『……殺されるつもりなんざねえよ、盗賊の敵』
――『はははっ……じゃ、始めますか』
――『んなこと言ってねえでさっさと来いよ』
――『っそれ!』ブンッ
――『おらぁ!』ブンッ
ガキンッ!
――『……はあ、はあ、はあ』
――『……』
――『俺の勝ちみたいだね、『盗賊王』』
――『……どうやらそうみてえだな、体が動かねえ』
――『……なんだよ、やけに清々しい顔してるじゃないか』
――『がっはっはっはっは……そうか?』
――『死ぬのがそんなに嬉しいのかい? あんたはマゾかよ』
――『ああ……嬉しい、のかもしんねえな』
――『なんだそりゃ』
――『……わからねえ、どこの誰だか知らねえが、そいつの願いを叶えてやった気分なんだよ』
――『相変わらずわけのわからないことを言うと思ったら、あんたらしくない。願いを叶えてやった?』
――『俺の知り合いの……『魔女』って呼ばれてるとんでもなく不器用な女の言葉を借りるなら』
――『……』
――『こうするしかなかったんだろうな』
――『意味がわからんよ。死ぬために俺と戦ったのか?』
――『いーや全力で戦ったさ、そんで負けた、そして死ぬ』
――『……』
――『俺もその女ほどじゃねえけどよ、不器用だからよ』
――『……な』
――『敵のお前に頼むのもおかしな話しだが、一つ、聞いてくれねえか?』
――『どんな頼みだい?』
――『俺のガキの……成長を見てやってほしい。なーに一目見るだけで良い、そんでもってこれを渡してくれ』
――『……ナイフ?』
――『俺の財宝の扉を開ける鍵だ』
――『自分の子供に遺産を渡そうってのかい?』
――『がっはっはっはっは! 渡すなんざ、俺がそんなにガキ甘やかすと思ってるのかよ?』
――『噂には聞いてるよ、とてつもない罠の奥に隠したって。そこまで行くことすら叶わないって』
――『ああそうさ、なんてったって『盗賊王』の貯金箱だぜ?』
――『それに……俺もそれを横取りするかもしれないんだぜ?』
――『ああ、それで構わねえ』
――『あんたの子供が死んでもかい?』
――『がっはっはっはっは! そんときゃそんときだ!』
――『たとえあんた……『盗賊王』の子供でも、無理かもしれないんだぞ?』
――『……だから俺は、ここで死んどいた方が良いんだろうよ。それにそこはお前が心配するとこじゃねえ』
――『……』
――『あいつは俺が思ってるよりもずっと強い。心配ねえさ』
ブシュウウウウウウウウウ!!!
商人「首やられちゃったな……こりゃ、だめ……だ」ドサッ
戦士「はあ、はあ、はあ。……勝った」
戦士「勝ったああああああああああああああ!」
商人「……(『盗賊王』、あんたの言った通り、戦士くんは強かったよ……)」
戦士「商人、この財宝は俺のもんだぜ」
商人「……(もう、声も出ないな)」
戦士「さって、そうだそうだ、そういや俺はなんで仲間と離れてここに来たんだっけか」
商人「……(最後に、あんたの頼み……果たしてやったよ……)」
戦士「……ここで静かに眠ってな、商人さん」
商人「……(戦士くんは、ちゃんと成長してるよ)」
戦士「……死んだか、っく」
戦士「……くっそー、薬草食わなきゃ俺も死んじまう」モグモグ
戦士「そういやあ、こっからどうやって抜け出せばいいんだ?」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!
戦士「おお、起きやがったか『わらいぶくろ』!」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ギュオオオオオオオオオオオオオ!
戦士「おわっ! この野郎、財宝吸いこんでやがる!」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ギュオオオオオオオオオオオオオ!
戦士「おいおい……『商人の街』で金吐きだしてから普通サイズに萎んだと思ったら……」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ギュオオオオオオオオオオオオオ!
戦士「まーたクソデカい『おどるほうせき』になろうとしてんのか!?」
ガッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ギュオオオオオオオオオオ……
戦士「財宝全部吸い尽くしちまった……」
……グーグーグーグーグー
戦士「と思ったらコイツ、『おどるほうせき』になったとたん寝始めやがったよ」
グーグーグーグーグースカピー
戦士「……ま、まあ、こいつがこれで良いなら良いか。このまま置いてって」
戦士「……んなことよりも、なんだあれ?」タッタッタ
戦士「……この広い空間の財宝全部吸収したかと思ったがまだ残ってる物があるみてえだ」タッタッタ
戦士「あっちの、隅っこに見えるのは……」タッタッタ
戦士「おお! 財宝に隠れて見えなかったが、良かった良かった抜け道があった」タッタッタ
戦士「それよりも……これは糞親父の財宝じゃねえのか?」
戦士「剣の……鞘? クマの人形?」
戦士「まだ他にも落ちてやがる……本?」
戦士「これ……『霧の村』の邸で見た本に似てるな……」ペラッ
戦士「ッ!?」
戦士「悪魔召喚の本だ……それにこの悪魔の絵」
戦士「……魔法使いの出した悪魔じゃねえかよ」
戦士「糞親父、財宝と一緒に何隠しやがったんだ」
戦士「……あっちにゃ紙の束があるな」テクテク
戦士「……ずいぶんボロボロの紙の束だなこりゃ」
戦士「……嘘だろ、なんだこれ」
戦士「……不死身の、研究資料?」
戦士「『北の勇者』が言ってた吸血鬼研究の資料じゃねえか!?」
戦士「……えっげつねえ研究だな」ペラッペラッ
戦士「……僧侶ちゃん」ペラッペラッ
戦士「ん? 研究の論文はこれで終わりっぽいのに、まだ紙の束が残って……」
戦士「……おいおいおい、こりゃあ一体」
戦士「とりあえず持って行こう! この鞘とクマの人形と本と資料!」
戦士「早くあいつらと合流しねえと!」タッタッタ
戦士「……ん? なんだこの落ちてるの、ボロっちい……手紙?みてえだな」
戦士「……」
戦士「いや、これは見ない方が良さそうだなんとなく。財宝と一緒にここに置いておこう」
戦士「……それが良い気がする」
戦士「……こんなん、俺一人じゃ抱えきれねえっつうの」タッタッタ
―北にそびえる大山・麓―
ヒュオオオオオオオオオオオ!
戦士「おっらあ!」ガコン!
戦士「ううっ、さっみいいい!」
戦士「……ったく、こんな所に雪に隠れて扉があったのかよ」
戦士「……だが」
戦士「糞親父の隠した財宝、その本当の意味……わかった気がするぜ」
戦士「……『盗賊王』にしかできねえ役目か」
戦士「その役目は、俺が引き継いだ」
戦士「待ってろ勇者、今すぐに追いついてやっからな!」
戦士「……月、綺麗だな」
―ギルドの街―
ワイワイ、ガヤガヤ
僧侶「うっわー! いろんな職業の人がたくさん歩いてますね!」
魔法使い「うん。私の同業者、戦士、商人、僧侶もいるわね」
勇者「……(久しぶりに魔法使いと僧侶以外の人たちの顔見たなー)」
街の入口にいる男「ようこそ『ギルドの街』へ! ……旅の方、ですよね?」
魔法使い「……」
勇者「……」
魔法使い「ほら勇者! 話しかけてきてんだから返事しなさい!」
勇者「っうえ!? あ、あふう、旅の方ですっ! あっ、いや、旅してます!」
街の入口にいる男「なんと! 今『勇者』と言われましたか!?」
勇者「ふひゃいっ!? そうでございます! 勇者づす!」
街の入口にいる男「いやー、まさか『東の勇者』様だったとは。ここまで来れば魔王城ももう目前ですよ」
勇者「……あ、はい。魔王城ももう目前なんですね(宿行きてえええええ!)」
街の入口にいる男「……『東の勇者』御一行がここに来る、ということは……まさか?」
魔法使い「ええ、北西にある洞窟を抜けてここまで来ました」
街の入口にいる男「な、な、なんと!? 強力な魔物でひしめくあの洞窟を抜けてきたのですか!?」
魔法使い「……勇者勇者」
勇者「……あ、っはい! そうです! 強力な魔物でひしめくあの洞窟を抜けてきたのですっ!」
街の入口にいる男「それはさぞかしお疲れでしょう!引き止めてしまってすみません、宿でお休みください!」
勇者「あはい! そうしたいと思いますっ!」
街の入口にいる男「ここから一番近い宿は、この通りを真っ直ぐ進んで行けばありますよ」
勇者「ありがとうござますっ」
僧侶「やったー! やっとゆっくり休めますね!」
魔法使い「やっぱ街についたらまずは宿よね」
―宿―
店主「いらっしゃいませー」
魔法使い「……頑張れー」
勇者「……あ、あの、三人泊まれますか? 一人一部屋で」
店主「はい、空いておりますよ。では一人110ゴールドで」
勇者「あ、はーい」チャリン
店主「ごゆっくりおくつろぎ下さい」
魔法使い「そうさせてもらいまーす」テクテク
勇者「ふぅー、緊張した」テクテク
魔法使い「でも慣れてきたんじゃない? スムーズだったわよ」テクテク
勇者「えっ、そ、そう? うっふふ、そっかー」テクテク
…夜…
勇者「久しぶりの他人が作ったご飯だ」モグモグ
僧侶「宿のご飯も美味しいですけど、私は勇者さんの料理が好きです!」モグモグ
魔法使い「ま、たまにはうちのコックさんも休ませてあげないとねー」モグモグ
勇者「俺はコックじゃないっ! 勇者だっ!」
魔法使い「コック兼勇者でいいんじゃない?」
勇者「なんでメインがコックなんだよ!」
僧侶「あははっ、じゃあ両方ともメインってことで良いじゃないですかー?」
勇者「間取ったつもりだろうけどそれ完全に片方に寄ってるからね僧侶!」
魔法使い「さあさあ、早いとこ食事済ませて各自ゆっくり休みましょうよ。みんな凄く疲れてるでしょ?」
僧侶「そうですね、休むのも仕事ですもんね!」
勇者「ああ、多分今日は泥みたいに眠るだろうな……ホント疲れた」
―僧侶の部屋―
僧侶「……」
僧侶「……勇者様、やっとここまで来ましたよ」
…
……
――『やりましたね勇者様! 魔王を倒しました!』
――『……はあ、はあ、はあ。いってて……』
――『大丈夫ですか勇者様!? 薬草を使って下さい!』
――『わりぃな、ありがとう』
――『ついに……魔王を倒したんですね』
――『残念だけど、倒してねえ』
――『えっ、だけど魔王は……』
――『俺が出来たのは封印だ……完全には倒せなかっちまった』
――『そんな……』
――『魔王も強かったってことだな、封印するのが精いっぱいだった……』
――『復活……するんですか?』
――『……ああ、今世界中で生きてる人間の孫が安心して死ねるレベルで先の話しだろうが、確実にな』
――『……』
――『恐らく、1000年後だな。魔王は復活する』
――『……で、でもっ! 勇者様の役目はとりあえず……』
――『いんや、俺の役目は魔王を倒すことだ、それは俺が死んだ後も続く……俺の仕事だ』
――『勇者様……これからどうするんですか?』
――『そうだなー、1000年後に魔王をぶっ倒すための準備かな。意志を伝えるための準備』
――『……準備?』
――『そう、準備。でもまあ、その俺の意志を引き継いでくれる才能を持った奴らが1000年後の世に生まれてくれるかっつうのは』
――『……』
――『はっはっは、それこそ俺の運次第なんだよな』
…翌日…―ギルドの街―
勇者「……ああ、『商人の街』ほどではないけどたくさんの人がいるなあ」ハア
僧侶「いろんな職業の人がいて面白いじゃないですかー」
魔法使い「勇者に何言ったって無駄よ無駄、知らない人間はみんな等しく敵だと思ってるんだから」
勇者「そ、そこまでは思ってねえよ!」
僧侶(……そこまではって)
魔法使い「街には『戦士ギルド』、『武闘家ギルド』、『魔法使いギルド』、『商人ギルド』があるみたいね」
僧侶「街の外からでも見えたあの四つの大きい建物がそうみたいですね」
魔法使い「魔王の城に近いってのもあるし、作りが要塞みたいね」
勇者「僧侶ギルドってのはないんだねー」
僧侶「……あ、あの、勇者さん。私たちは一応、神に仕える身なので……組合というものは」
勇者「あ、そっかー」
魔法使い「勇者、勇者」
勇者「どうしたの魔法使い」
魔法使い「あんた、ここ行った方が良いんじゃない? 地図見てみなさいよ」
勇者「んー、どれどれ?」
魔法使い「ここよここ」
勇者「……おお! 『鍛冶屋ギルド』!? こんなのもあるんだね!」
魔法使い「さすがにひのきの棒で魔王の城攻略するわけにはいかないでしょ?」
勇者「確かに!」
魔法使い「『鍛冶屋ギルド』ってことだし、この街の南西にある『戦士ギルド』の建物の傍にあるみたいね」
僧侶「なんてったって職人の街ですし、ちょっとやそっとじゃ折れない剣を作ってもらえそうですね!」
魔法使い「……と、その前にちょっと寄り道してからで良いかな?」
―商人ギルド―
テカり顔の商人「やあやあ、勇者さんご一行。ようこそ『商人ギルド』へ」
勇者「こ、こんちゃーっす」
テカり顔の商人「魔王城の手前だとここが最後の大きな街だからな、ここでいろいろ準備してくれよ」
魔法使い「……ふん、いじわるな商売の仕方ね……」
テカり顔の商人「俺は一人のか弱い人間として勇者さんの魔王討伐を切に願ってるだけさ」
魔法使い「……で?」
テカり顔の商人「でもこちとら商売だからな、世界の平和は望むが自分の飯の心配もしなきゃならねえ」
僧侶「……」
勇者「……」
テカり顔の商人「特別サービスで安くしとくからよ、ここでしっかり道具買っといてくれや」
魔法使い「まーそうなるわよねー」ハア
テカり顔の商人「俺ができる範囲で、全力で魔王討伐に力は貸すぜ」
魔法使い(なーにが全力でだ、ばーか)
テカり顔の商人「どうする姉ちゃん?」
魔法使い「……一つ勘違いしてるけど、別に私たちは買い物だけしようとしてここ来たわけじゃないのよ?」
テカり顔の商人「ん? じゃあ物でも売ってくれるのかい? 『東の勇者』ってったら……あ」
魔法使い「ようやく気付いたの?」
テカり顔の商人「あんたら、あの洞窟を通って来たのかよ!?」
僧侶「……」
勇者「……」
魔法使い「『商人ギルド』の連中が、山の向こうの『商人の街』に行けないのはさぞ辛いでしょうねー」
テカり顔の商人「あそこは、強い魔物がいるだけじゃなく洞窟自体が迷宮だからな……」
魔法使い「ここにねぇ……その迷宮洞窟内を隅から隅まで書いた地図があるんだけどなぁ」ピラッ
テカり顔の商人「よし、2万ゴールドで買おう!」
魔法使い「客が勝手に値段決めてんじゃねえよ。……10万ゴールドだ」
テカり顔の商人「待て待て姉ちゃんそりゃねえよ! ギルド潰す気か!?」
魔法使い「『商人の街』と交易できるようになれば、ここの連中ならすぐに元取れる値段じゃない?」
テカり顔の商人「くぅ……4万ゴールドだ!」
魔法使い「とっても良心的な値段だと思わない?10万ゴールドって! あはっ」
テカり顔の商人「……6万だ! それ以上はもう払えねえ!」
魔法使い「勇者ぁ、僧侶ぉ、ごめんね待たせちゃって。もうここには用無いから『鍛冶屋ギルド』行こー」スタスタ
テカり顔の商人「うううぅ……七万ゴールド!」
魔法使い「早く勇者の新しい剣手に入れないとねー。あーやだやだお金がなくなっちゃうわー」スタスタ
テカり顔の商人「8万ゴールドでどうだぁぁぁ!」
魔法使い「しょーがないわねー、今回だけだぞっ! 特別サービスで安くしてあげるわ!」クルッ
テカり顔の商人「……くっそぉ、やられた」チャリン
魔法使い「毎度ありぃ!」ニコニコ
テカり顔の商人「……はあ、まさか魔法使いの姉ちゃんに8万持ってかれるとはよ」
魔法使い「良いじゃない、その地図刷って流通させればそれだけでボロ儲けよ?」
テカり顔の商人「この地図が本物だったらの話しだけどな」
魔法使い「でもあんたは私と取引してくれた」
テカり顔の商人「……っふ」
魔法使い「……信じてくれてありがとう。安心して、その地図バカみたいに隅々まで正確だから」
テカり顔の商人「そうかよ」
魔法使い「勇者ぁ、僧侶ぉ、今度こそ本当に用事済ませたから『鍛冶屋ギルド』行きましょー」スタスタ
テカり顔の商人「……ははは、いやーな姉ちゃん」
勇者「……」テクテク
僧侶「……」テクテク
魔法使い「……」ホクホク
勇者「……うん、魔王倒すの、頑張ろ。みんなの希望の『勇者』として」
僧侶「……はい、是非とも世界中の人々に安心と幸せをもたらしてください」
魔法使い「ほんとは5万ぐらいで売れれば良かったんだけどねー、いやあやってみるもんだわ」
勇者「俺、頑張る」テクテク
僧侶「はい、私も全力でお手伝いします」テクテク
魔法使い「おっ、着いたみたいね。『鍛冶屋ギルド』に」
勇者「……凄いな、熱気が。中に入ってないのにめちゃくちゃ熱いよ」
―鍛冶屋ギルド―
ゴオオオオオ、カーンカーン、ジュゥゥゥゥ
魔法使い「おー、やってるやってる」
僧侶「あ、暑い……」
勇者「うっわー、なんかこういうの見てるだけで楽しいなー」
強面の鍛冶屋「いらっしゃい! あんたら、噂の勇者一行かい?」
勇者「……っあ、あはい、そうです」
強面の鍛冶屋「ここに来るってことは、もうここがどこだかわかってるんだろうが、一応な。『鍛冶屋ギルド』へようこそ」
僧侶「……す、凄いですねー。職人さんたちはこんな暑い所で毎日働いてるんですか」
強面の鍛冶屋「ははは、仕事だからな。俺らにしちゃ、魔王を倒すため旅するあんたらの方が凄いと思ってるぜ」
勇者「えっ、えへっ、そ……そうですか?」
魔法使い「……あの壁に飾ってある剣はなんですか?」
強面の鍛冶屋「ああ、あれかい? あれはな、俺ら鍛冶屋の神様が作った剣さ」
勇者「へっえー……、か、神様ですか?」
強面の鍛冶屋「そうさ、『鍛冶屋の神』と呼ばれる1000年前に魔王封印を成し遂げた『光の勇者』に剣を作った人間だ」
僧侶「えっ、それってもしかして、『光の剣』ですか!?」
魔法使い「……」
強面の鍛冶屋「詳しいね、お嬢さん。そう、あの剣は違うんだが、その『光の剣』に並ぶ『鍛冶屋の神』の傑作さ」
勇者「……ひ、『光の剣』ってのはないんですか?」
強面の鍛冶屋「『光の剣』に関する歴史書じゃ、魔王封印後どこにいっちまったのか不明になってる……残念だが」
勇者「あ、そ、そうなんすか」
魔法使い「1000年前の剣が綺麗な状態でここに飾られているってのは凄い話しね」
強面の鍛冶屋「ははは、まあ手入れを怠らないかつ実践で使わなけりゃ永遠に劣化することはねえ代物だからな」
魔法使い「ふーん」
強面の鍛冶屋「さてと、武器と防具の買い物だろ? 魔王討伐の旅の勇者様たちだ、安くするから見てってくれ」
勇者「すっげー、はやぶさの剣とか雷神の剣なんかもある」
強面の鍛冶屋「伊達に神様の下で働いてねえさ。ここのギルドの連中の腕は世界でもトップの腕だぜ」
僧侶「鎧とかは私は着れませんねー。凄く防御力高そうなのに……」
魔法使い「ねえ……鍛冶屋さん。あの『鍛冶屋の神』が作った剣っていうのは、やっぱり強いの?」
強面の鍛冶屋「あれは鍛冶屋の象徴として飾ってるからな、強さを確かめるために使うってわけにゃいかねえんだ」
魔法使い「さっきもそう言ってたもんね……」
勇者「……魔法使い、もしかして」
魔法使い「んー、鍛冶屋さん。率直に言うけど、あの剣私たちに売ってくれませんか?」
勇者「やっぱりか!?」
僧侶「ままま、魔法使いさん!?」
強面の鍛冶屋「それなりの金取るが良いのかい?」
勇者「え、売ってくれんの!?」
魔法使い「手持ち8万ゴールドあるんだけど、それで良い?」
勇者「地図売ったお金全部使うの!?」
強面の鍛冶屋「はっはっは! 俺らは自分の作った剣がどれだけ強いかしか頭にねえからな!」
魔法使い「おー! カッコいい!」
強面の鍛冶屋「象徴っつっても俺らの作品じゃねえから愛着がねえのさ」
勇者「そ、そういう感じなんだね……鍛冶屋の人たちって」
強面の鍛冶屋「それに、勇者さんのお手伝いだ。良いだろみんな!?」
奥にいる鍛冶屋連中「オー!!!」
強面の鍛冶屋「そーいうわけだ、あんたらが良ければ6万でこいつを買ってやってくれ!」
魔法使い「ありがとう。この剣に一つ伝説つけてくるわね」
強面の鍛冶屋「魔王討伐、頑張ってくれよ。俺だけじゃねえ、みんな平和を願ってるんだからよ」
―鍛冶屋ギルドの外―
勇者「……うっわー、すっげぇ。これが、『鍛冶屋の神』の作った剣」キラァン
僧侶「カッコイイですね!」
魔法使い「剣もギルドの中でずっと飾れられてるよりも、本来の仕事した方が喜ぶでしょう」
勇者「でもまさか魔法使いがこの剣選ぶとは思わなかったよ」
魔法使い「勇者に買い物任せて、また出来そこない買ってこられちゃ困るもの」
勇者「ふ、ふぇ、スミマセン」
僧侶「買い物は魔法使いさん付き添いの方が良いですね!」
魔法使い「……んー、これから防具、道具、食料なんかも充実させたい、ところなんだけどね」
勇者「魔法使いに任せようか……そこらへんの買い物も」
魔法使い「そうしたいんだけど、思いのほか剣に出費が偏っちゃった……」
僧侶「サービスしてくれたとはいえ、6万ゴールドですもんね……」
魔法使い「勇者の旅らしく……たまには勇者らしいお金の稼ぎ方でもしてみますか」
―戦士ギルド―
ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ
勇者「強そうな人たちばっかりだなぁ……」キョロキョロキョロ
僧侶「魔王の城付近の街ですし、実力は本物なんでしょうねきっと」
魔法使い「私たちの仲間の誰かさんと違って、兜やら鎧やら戦士らしい戦士ばかりね」
勇者「これが本来あるべき姿なんだろうなー」
受付「……ようこそ、クエスト受注カウンターへ」
勇者「わっと、ほんとだ……へー、クエスト受付所ってやつかぁ、初めて見た」
受付「ここは『戦士ギルド』だからね、魔物被害やら何やらの依頼ってのはここに来てギルドの連中が解決するのさ」
僧侶「壁にたくさん依頼の紙が貼ってありますね」
受付「その中から自分らの実力に合ってそうな依頼を選んで持ってきてくれ」
勇者「へえードラゴン退治なんてのもあるんだ……報奨金たっけぇ……」
受付「間違っても金で選ばないでくれよ、死なれちゃこちとらいろいろ大変になるんだ」
魔法使い「……」ピラッ
僧侶「うーん、やっぱりどれもこれも難しいクエストばかりですね」
勇者「さすがは強い戦士たちが集まるギルドの依頼所だね」
魔法使い「……ねえねえ、これだけやたら古い紙じゃない?」
僧侶「え……あ、ホントだ。他の依頼の紙に比べて年季入ってますね……」
勇者「どれどれ……『討伐依頼:密林のマドハンド!』? ……報奨金20万ゴールド!?」
受付「ああ……それ見つけちゃったのかい?」
魔法使い「受付さん、これ……」
受付「俺がここで働き始めた時からある一番古い依頼だよ、はあ」
勇者「ま、マドハンドの討伐で20万って……凄くなんというか」
僧侶「破格の報奨金ですね」
受付「やめとけやめとけ、そうやって依頼を受ける新参の腕自慢どもが後を絶えねえんだ」
魔法使い「それなのに、ずっとここに残ってるってのは……」
受付「そーいうこった」
魔法使い「……勇者、どうする?」
勇者「……純粋に、気になる」
魔法使い「ふふっ、じゃあ決定ね。受付さん、この依頼私たちが受けるわ」
僧侶「だ、大丈夫ですか?」
受付「他にも良い依頼たくさんあるぞ?」
勇者「あー、えっと、その……これでいいッス」
受付「あー……さっき自分たちの実力に見合うっつったばっかなんだけどよ……」
魔法使い「マドハンド討伐なんて、か弱い私たちにピッタリの依頼じゃない」ニヤニヤ
受付「わーったわーった、んじゃあ手続きするからあんたらのPT名教えてくれ」
勇者「……『東の勇者』PTです!」
―ギルドの街南の門・外―
魔法使い「目的の密林は……ここから西の方角にあるみたいね」
僧侶「大丈夫なんでしょうか、その依頼……」
魔法使い「大丈夫ではないでしょうねー」
僧侶「で、ですよねー」
魔法使い「今までだって面倒な事件に巻き込まれてきたじゃない、今さら綺麗な一本道進むなんてできっこないわよ」
僧侶「……(た、確かに、きな臭さになぜか安心してる自分がいる)」
勇者「ふんっ!ふんっ!ふんっ!」ブンブンブン
僧侶「うわっ、ちょ、何やってるんですか勇者さん!?」
勇者「剣の素振り!」ブンブンブン
僧侶「危ないから離れてやってくださいっ!」
勇者「んごっ、ごめんなさいぃぃ!!」
魔法使い「さって出発しましょー」テクテク
魔物のむれがあらわれた!▽
魔物「がるるるるる、ぐるるるる」グバッ
勇者「おっと!」ヒョイッ
魔物「がるぅっ!」ガチン
勇者「それっ!」ズバッ
魔物「グルワァァァァ!!」ザンッ
勇者「烈風魔法!」ヒュンヒュン!
魔物「ウガァァァァァ!!」ザシュザシュ
魔物のむれをたおした!▽
魔法使い「どう勇者、剣の使い心地は?」
勇者「……うんっ、かなり使いやすい!」
魔物のむれをたおした!▽
勇者「……ふう」
魔法使い「順調順調!」
僧侶「んー……目的地の道中で強力な魔物が現れるのかと思ったんですけど」
魔法使い「うん、そういうわけではないみたいね」
僧侶「では、この依頼に挑んだ人たちはその密林の中で……?」
魔法使い「そうなのかもしれないわね」
勇者「普通にマドハンド倒しただけじゃ終わらんのかな」
魔法使い「それだけって考えない方が身のためでしょう……それに」
僧侶「……それに?」
魔法使い「それに、私たちが一番注意しなきゃいけないのは、この依頼を頼んだ『依頼主』でしょう」
僧侶「あ、ああ、そっか。クエストの簡易説明と報奨金しか見てませんでした」
魔法使い「マドハンド討伐の依頼に20万ゴールドちらつかせるのよ?」
勇者「そういや全然考えてなかったな、そこらへん」
魔法使い「『依頼主』なら『依頼主』らしく、責任持ってクエストの詳細説明書くでしょうに」
勇者「……何が目的なんだろう」
魔法使い「わからない、それにあの受付が働き始めた時からあるって……」
僧侶「どのくらい前からあるかわかりませんけど、相当時間がたってるはずですよね」
魔法使い「ふっふっふ、面白くなってきたわね……魔王の城攻略前の一仕事といきましょうか」
勇者「魔法使いっ、顔怖くなってるよ!」
僧侶「凄い形相でニヤニヤしてる……」
―密林・入口―
僧侶「密林と言うだけあって……蔦やら変な形の木やらがうようよですね」
魔法使い「そもそも私たちは南の方角に旅してきたわけだからね。温暖な気候になれば植物の種類も変わってくる」
勇者「おっもしろい植物だなー」
魔法使い「ちょうど良いってわけじゃないけど、魔王の城目指すにはどの道この密林通るしかなかったみたい」
勇者「えっ、そうなのか?」
魔法使い「あんたも地図ぐらい見なさいよ……ほれ」
勇者「……あ、本当だ。この密林を抜けて少し進んだら『闇の山脈』になってる」
魔法使い「依頼達成したらまた戻らないといけないのが一番面倒ね」
僧侶「密林の地理もわかるし良いじゃないですかぁ」
勇者「……んじゃあ、突入しますか」
―密林内部―
僧侶「おわっ」コテン
勇者「大丈夫僧侶?」テクテク
魔法使い「蔦や木の根が地面埋め尽くしてて転びやすくなってるから気をつけてね」テクテク
僧侶「は、はい……わっ」コテン
勇者「僧侶、手貸して……よっと」ヒョイッ
僧侶「あ、ありがとうございます。足元が植物でびっしり……」
魔法使い「……魔力は感じられるのに、肝心の魔物がどこにもいないわね」テクテク
勇者「どっかにマドハンドのいる泥沼があるのかな」テクテク
僧侶「こう広大だとターゲットを探すのも一苦労ですね……」テクテク
勇者「さっき地図見たけどさぁ……魔法使い」テクテク
魔法使い「言いたいことはなんとなくわかるわよ、勇者」テクテク
勇者「『闇の山脈』ってそういや輪っか型の山脈だったんだよな」テクテク
魔法使い「……そう、大自然の城壁。魔王の城を囲むようにそびえる黒い山脈」テクテク
勇者「……勉強したなぁ、それも」テクテク
魔法使い「魔王を倒すためには、その山脈を登らなきゃいけないわけね」テクテク
僧侶「『闇の山脈』には今までと比べ物にならないほど強力な魔物たちが魔王城への道を守ってると聞きます」テクテク
勇者「び、ビビらせないで僧侶……」ザブザブ
魔法使い「そりゃあ魔王の城の城壁だもん、そこの守備固めるのは当然って話しよね」ザブザブ
僧侶「いよいよ……いよいよなんですね……魔王との決戦」ザブザブ
勇者「その前にマド……ん? ざぶざぶ?」ザブザブ
僧侶「うわー、いつの間にか足元が泥水になってる」ザブザブ
勇者「さっきまで植物で埋まってたのに、隙間から湧きだしてきたのかな?」ザブザブ
魔法使い「やっば……こいつら頭良いな。私たちが密林の奥に進むまでずっと植物の下で息潜めてたんだ」
勇者「……っえ? と、いうことは!?」
魔法使い「この密林に入った時から、私たちはマドハンドの巣にお邪魔してたってことよ!」
僧侶「きゃっ! 足が引っ張られる!」
勇者「こ、この密林全部マドハンドの巣だっつうのか!?」
魔法使い「全部かどうかは知らんけど、魔力の広がりからするに相当大規模よ」
ザブザブザブザブザブザブザブザブザブザブ
魔物のむれがあらわれた!▽
魔法使い(それに……なんだこのもう一つの魔力。デカイ魔力を必死で隠してるこの感じ)
勇者「くっ、僧侶大丈夫か!」ズバッ!
ザシュッ!
僧侶「あ、ありがとうございます!」
ザブザブザブザブザブザブザブ
勇者「うわうわうわ、一瞬で周りが泥の手だらけになった!」
ザブザブザブザブザブザブザブ、グワッ!
勇者「うっげ(足元から攻撃!?)」
魔法使い「爆裂魔法!」ドパーン!
パーン!
勇者「あっぶね、ありがとう魔法使い!」
魔法使い「迫ってくるマドハンドどもよりも、気をつけるのは足元よ!」
ザブザブザブザブザブザブザブ、グワッ!グワッ!グワッ!
勇者「くっ、とりゃ!せい! 僧侶、俺から離れるな!」ズバババッ!
僧侶「は、はいっ!」
勇者「足元から来るパンチってのは初めてだっ」ズバッザシュッ!
魔法使い「これは三人まとまってた方が良いわね、爆裂魔法!」ドッパーン!
勇者「おお、マドハンド一掃!」
ザブザブザブザブザブザブザブ、グワッ!
勇者「ぐっ! と思ったら続々湧いてくる!」ザンッ!
魔法使い「周りの雑魚は私が消すから! なるべく綺麗にするけど仕留め損ねた足元のやつお願い!」
勇者「わかった!」ズバッ!
ザブザブザブザブザブザブザブザブ、グワァッ!
ザクッ、ズバッ、ドシュゥッ!
魔法使い「あああああ!!! キリがねえ! くさった死体以上だぞ!」ドッパーン!
勇者「はあっ、はあっ! こ、これが……この依頼がずっと残ってた理由なのか!?」ズバァッ
魔法使い「わっからねえけど、報奨金独占したくて一人で来たやつはこの段階で密林の餌だろうな」ドパパパーン
勇者「うおっ、足掴まれちまった!」グイッ
僧侶「ゆ、勇者さん! このっ、離しなさい!」バシッバシッ
ザブゥ……
勇者「お、マドハンドが退いてくれた」
僧侶「ハアハアハア、私だって……戦えるんです!」
ザブザブザブザブザブザブザブザブ!
魔法使い「ちっ、四方八方からざぶざぶざぶざぶ! ったくうるせえったらありゃしねえ!」ドパーン!
勇者「魔法使い! 足元片付いたから俺も周りの一掃手伝うぞ!」
魔法使い「……あ、ああ、よろしく」イラ
勇者「爆裂魔法!」ドッパーン!
魔法使い「……」イライラ
ザブザブザブザブザブザブザブザブ!
勇者「爆裂魔法!」ドッパーン!
魔法使い「……ぅう」イライラ
ザブザブザブザブザブザブザブザブ!
勇者「爆れ……」
魔法使い「うっがあああああああああ! ダメだあああ! キリねえええええ!」ブチンッ
勇者「ひぃっ!」ビックゥ!
魔法使い「地面ごと吹き飛ばす……爆雷魔法!」ッドォォ……
ッッッッッカァァァァァァァァァン!!!
勇者「っぎゃああああああ! 魔法使い俺らも殺す気かあああああ!」
魔法使い「はっはっはっはっは! 木が吹っ飛んでお空が見えるぜ!」
僧侶「み、密林が大火事になったらどうするんですかぁ!? 私たちまで焼け死んじゃいますよ!」
魔法使い「だから火炎系の魔法我慢してたんだけど……」
僧侶「爆発系魔法もほどほどにしてください!」
魔法使い「ご、ごめんよ僧侶……」シュン
ザブザブザブザブザブザブザブザブ!
勇者「うっわうっわ、魔法使いがあんだけ吹っ飛ばしたのにまだ湧いてくるのか!?」
魔法使い「ば、爆裂魔法」パーン
ザバァッパーン!
勇者「火をつけないように大規模に攻撃できる効果的な魔法……」
魔法使い「爆裂魔法ぅ……」パーン
勇者「閃いた!」
僧侶「何をですか勇者さん!」
勇者「このマドハンドを撃退する方法! ……よっし!」
僧侶「ほんとですか!?」
勇者「う、うん……(やっぱ最大魔法は魔法使いみたいに簡単に発動できないな)」
魔法使い「爆裂魔法ぅぅ」パーン
ザブザブザブザブザブザブザブザブ!
勇者「……ッ! よっし、いくぞ! 極寒魔法!」
魔法使い「……えっ!? おい、ちょ、ばかっ……」
ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
パキパキパキパキパキ、ピキピキピキピキピキピキ、カチッコチッ、カチコチカチッ!
ザブザブザブザ……ブ、ザ……ブザ……
勇者「いよっしゃあああ! マドハンド全部凍らしてやったぜ!」
僧侶「凄い! これが勇者さんの撃退方法だったんですね!」
勇者「おうよ! 周囲のマドハンドを凍らせればそれより奥のマドハンドたちは進んでこれない!」
魔法使い「……」
僧侶「勇者さんさすがです!」
魔法使い「……ちょっと勇者?」
勇者「はっはっは……ん? どうしたんだっ! 魔法使い!」
魔法使い「私たちは、どうやってここから抜け出せば良いんですかね?」
僧侶「えー、凍ったマドハンドたちをどかしながら……」グッ……
魔法使い「……」グッグッ
僧侶「……抜け出せない」グッグッ
魔法使い「泥に沈んだ足元まで凍らしてどうすんのよ、大馬鹿勇者ああああああああああ!!!」
勇者「……ゴメンナサイ」
魔法使い「ったく、一時的にマドハンドたちが攻撃してこなくなったから良いものの……」
勇者「……ゴメンナサイ」
魔法使い「これじゃ囲まれて身動き取れなかった時と一緒じゃない」
勇者「……ゴメンナサイぃぃぃ」
僧侶「ど、どうしましょうこれ。全然抜けません」グッグッ
魔法使い「……火炎魔法!」ボオオオ!
僧侶「わわっ」
魔法使い「足を焼かないように、これで地道に溶かしていくしかないわね」ボオオオオ
勇者「……うーん」グッグッ
魔法使い「ほら、勇者も手伝っ……」ボオオオオオ
勇者「おらっ!」ピキピキ……ズボッ!ズボッ!
魔法使い「……」
勇者「抜けられた! 魔法使いと僧侶も頑張れ!」
魔法使い「できるわけねえだろうが! こちとらか弱い乙女じゃい!」
僧侶「……無理です、勇者さん」
勇者「……。……火炎魔法」ボオオオオ!
魔法使い「そーしてください」ボオオオオオ
スルスルスルスル……
僧侶「……?」
魔法使い「んもー、無駄に強力な極寒魔法使いやがって……溶かすの大変よこれ」ボオオオオオ
勇者「ほんと申し訳ないです……魔法使いに褒めてもらおうとして魔法頑張っちゃいました」ボオオオ
僧侶「あ、あの、勇者さん魔法使いさん?」
勇者「ん? どうした僧侶?」ボオオオオオ
魔法使い「わっわ! ちょっとよそ見しないでよ勇者! 足に火炎当たったらどうするの!?」ボオオオオ
僧侶「……なんか、この密林動いてませんか?」
魔法使い「え、なんて? 密林が動く? 凍った泥溶かすのに集中してて周り見る余裕が……」ボオオオオオ
スルスルスル……ズルズルズルズルズル!
僧侶「や、これやっぱり動いてますよね……動いてますよねこれ!?」
魔法使い「ッ!?(必死に隠れてたバカデカい魔力が表に出てきた!?)」
勇者「んまっ、魔法使いこれは!」
ズルズルズルズルズルズルズルズルッ!
僧侶「密林のツルが……生き物みたいに動いてる!?」
バキィ……ベキベキベキィ……パキパキパキ……
勇者「凍った泥沼が割れて……下から蔦が出てきたぞ!? 太っ!ツタぶっとぉ!」
シュルンシュルンシュルンッ!ビュッ!
僧侶「きゃっ!」
勇者「うおっ、あぶねっ!」ズバッ
僧侶「は、はぅ、助かりました勇者さん」
勇者「ぶっといツルが……今、確実に俺らのこと狙って攻撃してきたよな?」
僧侶「ですよね……勇者さんが切り落としてなかったら当たってました……」
ズルズルズルズルズルズルズルズルッ!
勇者「もう、見間違いじゃなく完全に動いてるよね……この密林」
僧侶「は、はい。上のツルも下の蔦も、元気よくズルズルしてますよね……」
魔法使い「二段構えの罠にはまったんだ……」
勇者「……え?」
魔法使い「最初は植物で気付かないままマドハンドの巣のど真ん中におびき寄せられて……」
魔法使い「……次はマドハンドの泥沼で気付かないまま足止めさせられた」
勇者「……?」
魔法使い「ここはマドハンドの巣であり……『ローズバトラー』の皿の上だったってこと!」
ズルズルズルズルズルズル、ビュッ!
勇者「ろ、ローズバトラー!? つったってこんなデカいもんなのか!?」ズバッ!
魔法使い「……ずーーーっと昔っから、ここに来る人間を何人も……何百人も餌にしてきたんでしょ」
僧侶「そ、そんな」
魔法使い「自分の餌の供給者がこれ以上いなくなるのに我慢できなくて自ら動き出しやがったんだ!」
勇者「マドハンドが人間たちを泥の中へ引きずり込んで、それを栄養にしてたってのか……」
魔法使い「密林の餌ってのは冗談のつもりだったのによぉ!」
勇者「……一旦この密林から脱出」
魔法使い「まだ私らの足抜けてねえ!」
勇者「……魔法使い! 僧侶を頼む!」
魔法使い「勇者はどうすんだ!?」
勇者「……俺が本体を倒してくる。それまで堪えてくれ!」タッタッタ
ズルズルズルズルズルズル、ビュッビュッビュッ!
僧侶「うっ!」
魔法使い「んのぉぉぉぉぉ! 爆裂魔法!」ドパンドパンドパン!
ッパーーーーーーーン!
僧侶「お、おお、ほお……」
魔法使い「くっそ、でっかいツルで押しつぶしにかかってるな。んなに腹減ってんのかこいつは!」
ズルズルズル、ビュンビュンビュンッ!
僧侶「ま、魔法使いさん後ろっ!」
魔法使い「うううううっ、雷撃魔法!」ピシャッ、バリバリバリ!
僧侶「こ、これじゃあ……」
魔法使い「自由に動けねええええええええええええ!!!」
ザブザブザブザブザブ!
勇者「凍結魔法!」ヒュウウウウ!
ザブザブ……ザ……ブ。カチコチッ
勇者「まだこっちの方のマドハンドは生きてるんだな、凍らして足場を作りながら進もう!」タッタッタ
ズルズルズルズルズルズル、ビュビュビュビュッ! ブオン!
勇者「おっらぁ! 爆裂魔法!」ズバァッ! ドッパーン!
ズルズルズル……
勇者「よく集中してみたら……マドハンドの魔力に隠れてデカい魔力の塊を感じるな」タッタッタ
ビュオンッ!
勇者「こっちの方向かっ!」ズバンッ!
勇者「凍結魔法!」ヒョオオオオオオ!
ザブザブ……カチンコチン
勇者「早くローズバトラーの本体を倒さないと!」タッタッタ
ズルズルズル……ズル
勇者「……?(ツルが退いていく?)」
ザブザブザブザブザブザブザブ!
勇者「くっそ、大量のマドハンドか! 極寒魔法!」ヒュオオオオオオオオオオオオ!
パキパキピキピキ……カチッコチッ……
勇者「よし、これでここら一帯足場になったぞ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
勇者「ん? なんだこの地響きは?」
ズズズズズズズズズズズズズズンッ!!!
ピシィッ、ピシピシ、バキバキ、バキッ!
勇者「……凍らした地面が割れて、うっわ!」
バキッ! ズッガガガガガガガガガガ!!!
勇者「がっはああ!(ツルの束が真下から突き上げてきやがった!?)」ドゴォォ!
ズガガガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
勇者「ぐぅっふっ……(さっき退いたと思ったのは、地中を潜ってきたのかよ!?)」
バキバキバキベキベキベキ!!! ズルズルズルズルズルズルズル!!!
勇者「うっお、うっわ空まで持ち上げられちゃった!」
勇者「こ、こんなに密林広いのか……ってなんじゃありゃあああああ!?」
……。……グ……バァァァァ。ベロンベロンベロン。
勇者「口のついた花ぁ!? なっがいベロ! べろんべろんしてる、あれがローズバトラー本体か!」
ガバアァァァ……ベロンベロンベロン!
僧侶「あっ、魔法使いさん! 空に勇者さんが!」
魔法使い「うわホントだ! ツルの束にあそこまでぶっ飛ばされたのか!」
僧侶「ツルの束が……勇者さんを挟んで運んでませんかあれ?」
魔法使い「僧侶、怒らないでよ! 爆雷魔法!」ッドッ……
ッカァァァァァァン!!!
僧侶「きゃあっ!」
魔法使い「あれまあ……」
僧侶「密林が吹き飛んで空が開け……あ、あれって!」
魔法使い「ローズバトラーの本体だね」
僧侶「あ、あんなに大きいんですか!?」
魔法使い「デカいんだから仕方ないよ……。あいつ、直接勇者食う気だな!」
ズルズルズルズルズルズル
勇者「ぐえっ、むぎゅう!」
ズルズルズルズルズルズル
勇者「束にっ……挟まれもがが」
グッバァァ……ベロンベロン
勇者(直接口の中に運ぶ気かよ!?)
ベロンベロンベロン!
勇者「もがががががが!(み、身動き取れねえ!)
バックンバックンバックン!ベロベロベロ!
勇者(……くっそおおおおお! 僧侶、あとで回復頼む!)
ズルズルズルズルズルズル……ドッパーン!
勇者「いっでえええええええええええ! 爆裂魔法だこの花野郎おおおおおお!」
僧侶「勇者さんを閉じ込めてたツルの束が!?」
魔法使い「勇者のやつもしかしてゼロ距離で爆裂魔法やったのかよ!?」
僧侶「勇者さんから黒煙が……」
魔法使い「なんっつう大馬鹿……」
僧侶「あっ、魔法使いさん」
魔法使い「……ったく、どうしたの僧侶?」
僧侶「ローズバトラーの蔦が動き回ってくれたお陰で、足元の氷が脆くなりました!」ズボッ
魔法使い「あら、ほんとだ」ズボッ
僧侶「行きましょう魔法使いさん!」タッタッタ
魔法使い「そうね!」タッタッタ
僧侶「勇者さんが落っこちる所へ!」
グバッグバッグバッ、ベロンベロンベロン!
勇者「もう食われる寸前だったのか! このまま落ちてったら口の中だな」ヒューン
ベロンベロンベロン
勇者「まずはそのなっがいベロベロ吹っ飛ばすぞ! ……くぅぅぅ」
ベロンベロンベロン! ガバァッ!
勇者「俺だってできんだ! 爆雷魔法!」ッドッカァァァァァン!
ベロンベロッ……。ドッパーーーーーーーン!
勇者「あー、もう全身痛いっ! 自分のせいだけどさ!」チャキン
ガバッグバッバクバクバク!
勇者「そのデカい口ぃ! 真っ二つにしてやらああああああああ!」
バクバクバクバクバク!
勇者「お……っらあああああああああああ!!!」ズッッッバアアアアアアアアアアアン!!!
魔法使い「爆裂魔法!爆裂魔法!爆裂魔法おおおおおおお!」ドカンドカンドカン!
僧侶「はぁっはぁっはぁっ! こっちの方向の、マドハンドが、凍ってます!」タッタッタ
魔法使い「勇者が魔法で道作ったのね! 爆裂魔法おおおおお!」ドッカーン!
僧侶「わぁっ! ローズバトラー大っきい! あ、勇者さんが……真っ二つにした!?」タッタッタ
魔法使い「剣術凄い云々の範疇越えてるでしょ!? 剣持ったらあんなことできんのかよ!」タッタッタ
僧侶「く、黒コゲの勇者さんが落ちる!」タッタッタ
魔法使い「見失わないようにしないと! 爆……疲れた。爆裂魔法おおおおおお!」ドッカーン
僧侶「こっちの方角です!」タッタッタ
魔法使い「周りのツルの動きが鈍くなってる!」タッタッタ
僧侶「勇者さんが倒したんですね!」
ガサガサガガガッ! ドサッ!
勇者「うっげげげ、いってええええ!」
勇者「……倒した、のか? ローズバトラー……。もう、ツル襲ってこないよな?」ハアハア
タッタッタッタッタッタッタ!
僧侶「回復魔法!」パアアアアア!
魔法使い「死ぬ気かお前は!?」タッタッタ
勇者「うっおー、助かった僧侶!ありがとう! 二人とも動けるようになったのか」
魔法使い「あんたの無茶な行動に振り回されてばっかりよ!」ゼエゼエ
僧侶「で、でも、間に合って良か……った、です」ハアハア
勇者「いやあ……さすがに死ぬかと思った」
魔法使い「死んでもおかしくなかったんだからね!」ゼエゼエ
勇者「……でも」
魔法使い「魔力の反応が、弱くなってきてるわ……」ハアハア
僧侶「わ、私たち……」ハアハア
勇者「ローズバトラー倒したぞおおおおおお!!」
僧侶「ハア……はあ。やったー!!」
魔法使い「とんでもない戦闘だったわね……」
勇者「……うん。さっきまでと違って、静かな密林になったな」
魔法使い「マドハンドたちも粗方やっつけたのか、これ以上喧嘩売るのは諦めたのか」
勇者「そっちの方が全然良いや。正直、これ以上はもう戦えない」
僧侶「こ、これは、クエスト達成ってことで良いんでしょうかね……」
勇者「『討伐依頼:密林のマドハンド!』、マドハンドを一匹残らず討伐してくれって依頼なら未達成なんだよね」
僧侶「……クエスト内容が、あまり詳しく書かれてないんですもん……わかりませんよね」
勇者「はあ、こんなに頑張ったってのに……なんなのだろうこの消化不良感は」グッタリ
僧侶「『マドハンドと戦ってたら巨大なローズバトラーが現れました、それ倒したんで許して下さいっ!』」
勇者「……」
僧侶「……それで報酬もらえませんかね?」テヘッ
魔法使い「そんな甘くないわよ僧侶……」
僧侶「そ、そですよねぇ」
魔法使い「報酬を貰うにしても……まずは詳細書かずに受注した人間をマドハンドの巣へ向かわせ」
魔法使い「挙句マドハンドだけでなく、ここへ来た人間たちを餌にしている巨大なローズバトラーの存在も知らせなかった」
魔法使い「その全てを『仕組んだ』、『依頼人』に会わないと報酬もへったくれもないでしょうに……」
勇者「……仕組んだ、か」
僧侶「な、何はともあれ『依頼人』さんに会わないといけないんですね!?」
???「その必要はねえよ」
勇者「おうわっ! こんなとこに人が現れた!」
男「なんで必要ねえかって? 俺が直々に会いに来たからさ」グビッグビッ
勇者「……え、直々? 会いに? 誰なの?(酒飲んでるよこのオッサン……)」
僧侶「……」
魔法使い「ってーことは? ……あんたがその」
男「……そうだ、俺がこれ全部『仕組んだ』、噂の『依頼主』だよ」
僧侶「……あなた」
魔法使い「聞いても無駄でしょうけど依頼主さん、それで20万ゴールドの報酬は?」イライラ
依頼主「はっはっは! 依頼詳細書くの面倒だから達成内容も中途半端なんだよな!」
魔法使い「……で、どうなんだよ?」イライラ
依頼主「最初っから払う気ねえよ! 持ってるように見えるか俺?」
魔法使い「……」プッチン
勇者「あ、やべっ」
魔法使い「密林ごとてめえ火葬にしてやらあああああああああああああ!」
依頼主「ちょ、ちょちょちょちょっと待て! やめろ! 争いはよせ! 平和にいこう!」
魔法使い「争わせてんのはお前だろうがこの野郎!」
依頼主「……俺、この密林に住んでんだよ」グビッグビッ
魔法使い「人の話し聞けや酒飲んでんじゃねえぞおらあああああああああああ!」
勇者「まーほーうーつーかーい落ち着いてえええ!」
魔法使い「がるるるるるるるるるる!」フーフー
依頼主「おーおー、おっかねえ姉ちゃんだなおい。……いろいろ気になることあんだろ?俺のことでよ」
魔法使い「私はさっさとぶっ殺してぇよ、お前のことをよ」ガルルル
依頼主「残念だがそりゃ無理な話しだ、はっはっは」グビッグビッ
僧侶「……」
依頼主「この密林の奥に俺の家がある、まあそこでゆっくり話そうぜ。『勇者』たち」ニヤッ
勇者「……(魔法使いはまともに話せる状態じゃないし僧侶は黙ってるし、俺が聞くしかないのかぁ)」テクテク
僧侶「……」テクテク
魔法使い「……」イライラ
依頼主「足元気をつけてなー」グビグビ
勇者「ど、どうして俺が勇者だって?」テクテク
依頼主「そりゃあなあ、俺の知ってる勇者にそっくりだからだよ」テクテク
勇者「……?(他の勇者もここを訪れたのか?)」テクテク
魔法使い「……っち」
僧侶「……」
勇者「んな、なんであんな依頼を……?」テクテク
依頼主「はっはっは、ローズバトラーに餌やるためだ」グビグビ
勇者「あ……そっすか(なんてどストレートな理由だ)」テクテク
僧侶「……何も、感じないんですか?」
魔法使い「……」
勇者「おっ(僧侶が喋った!)」テクテク
依頼主「何がって?」テクテク
僧侶「あなたは、ここへ人々を騙しおびき寄せローズバトラに食べさせることに対して、何も感じないんですか?」
依頼主「何も思ってねえし、何も感じてねえよ」グビグビ
僧侶「っ!」
勇者「……」テクテク
依頼主「アイツがデカくなってくれりゃ俺がこの密林でひっそりと暮らしやすいんだよ。わかるだろ?普段はあいつも大人しく寝てるし」
勇者「……なるほど」テクテク
魔法使い「あんたが飼ってたのね、あれ」
依頼主「貰い物なんだけどな、お陰で今は静かに暮らせてるよ」
勇者「へー」テクテク
依頼主「お前らに倒されちまったけどな、はっはっは」グビグビ
僧侶「人々を餌にして、何も感じないなんて!?」
勇者「そ、僧侶っ」
僧侶「あなたはそれでも同じ人間なんですか!?」
依頼主「まあ落ち着けってお嬢さん……あんたは俺の気持ちがよーくわかるはずだぜ?」グビグビ
勇者「……んえ?」
僧侶「……っ!」
魔法使い「……っち」
依頼主「俺は人間が大嫌いなんだよ、その大嫌いな人間餌にしようが何も思わねえ」
勇者「……なるほど」
依頼主「俺にゃお嬢さんの方が理解できねえけどなあ」グビグビ
勇者「……?」
僧侶「……」
勇者「あ、あの、あの依頼って……結構前からあったらしいですけど」
依頼主「あー、どのくらい前だったかな……初めて依頼として出したのは500年くらい前だったかな」テクテク
勇者「はえ? ふん? えっ、と……え、ごひゃ、え?」テクテク
魔法使い「理解しろ、勇者」
僧侶「……っ」
依頼主「わかるはずだぜ勇者さん、あんたはよ」
勇者「えっと、それって……つまり、ずっと生きてる、って……こと?」
依頼主「そこのお姉ちゃんとお嬢さんはもう気付いてるみてえだな」
勇者「……マジかよ」
依頼主「お嬢さんの方は当たり前か、だって『仲間』だもんな」グビグビ
僧侶「……」
依頼主「……俺も、『成功個体』の一人なんだよ」
勇者「えーっと、あっ、まあ、『北の勇者』は確かにそいつ『ら』って言ってたな」テクテク
依頼主「その内の一人ってこと」テクテク
勇者「……あ、へえー、そうなんすか、へえー」テクテク
依頼主「人間嫌いって言ったって仕方ねえだろ? 仕方あったって嫌いだけどよ」グビグビ
勇者「はあ、まあ、そうなんすかね……」テクテク
僧侶「……」
魔法使い「……」
依頼主「いい加減そう殺気立たないでくれよ、俺はあんたらと仲良くしたいのによ」
魔法使い「……はあ、まあ素性がわかったってだけ警戒は解けたわよ」テクテク
依頼主「そりゃ良かった」テクテク
僧侶「……」
依頼主「そっちのお嬢さんはまだ俺のこと嫌いらしいな……着いたぜ、ここに住んでんだ俺」ピタ
勇者「煙突がある」
依頼主「はっはっは、別に珍しくはねえだろ」グビグビ
魔法使い「それなりに良い家に住んでるのね」
依頼主「1000年も生きてりゃ建築素人でもこんなもんにゃなるさ」
勇者「……へ、へえー。自分で設計したってことか」
依頼主「おっと、ちゃんと勉強はしたから安心しろよ。違法建築じゃねえ」
勇者「こ、ここにずっと、一人で住んでるんですか?」
依頼主「一人が大好きなんだよ。それに、毎日『趣味』してっから退屈でもねえ」ガチャッ
勇者「う……熱っ」
依頼主「その剣でローズバトラー倒したんだろ?」
勇者「……は、はい(あれ? 家の中、鍛冶屋ギルドの中みたいだ……)」
依頼主「それ、俺が作った剣なんだよ。まあ入れ入れ」
勇者「んえ? この、『鍛冶屋の神様』が作った剣?」
依頼主「なんだそりゃ!? 神様ぁ!? そんなん知らねえけど、1000年前、俺鍛冶屋やってたんだよ」
―鍛冶屋(依頼主)の家の中―
勇者「……理解が、追いつかないッ!!!」
魔法使い「いや、少し考えればわかることでしょ」
鍛冶屋「500年くらい前から依頼を出してた依頼主の正体は……」
鍛冶屋「今、勇者が持っている剣を作った張本人、1000年前の鍛冶屋だったってことだ」グビグビ
勇者「……」
魔法使い「で、『成功個体』の一人でもあるってこと。だから今もこうして生きている」
僧侶「……」
勇者「……あ、なるほど!」
鍛冶屋「理解が早くて助かるぜ」
魔法使い「……遅いだろ」
鍛冶屋「いやあ……でもまさか知らねえ所で『神様』なんて呼ばれてたとは、驚きだね」グビグビ
勇者「……」
魔法使い「……」
鍛冶屋「なんだ? まだ引っかかる所があるような顔だな」ニヤニヤ
勇者「……あ、ああ、そうそう! この剣作ってくれた鍛冶屋さんなんですよね?」
鍛冶屋「そうだよ、よく斬れるだろそれ?」
勇者「『鍛冶屋ギルド』の人に話し聞いたんですけど……『光の剣』も作ったって」
鍛冶屋「……そうだ。あいつの剣を作ったのも俺だ」
勇者「や、やっぱり鍛冶屋さんが作ったんですか!? 伝説の『光の勇者』の剣を!?」
鍛冶屋「伝説……『光の勇者』ねえ……。あの野郎も偉くなっちまったもんだ。……そりゃお互い様か」
僧侶「……」
勇者「『光の剣』ってのは、今はどこにあるんですか?」
鍛冶屋「はっはっは……こんなに気付かねえもんだとは思わなかった。あいつもしてやったりだろうな」
勇者「……はい?」
鍛冶屋「お前、フライパン持ってるだろ? それだよ」
僧侶「えっ!?」
魔法使い「んなっ!?」
勇者「……なるほど(ダメだ、また俺の理解力が死んだ)」
魔法使い「……なんの冗談よ」
鍛冶屋「冗談じゃねえよ。あいつに頼まれて、俺は『光の剣』をフライパンにしたんだ」グビグビ
勇者「鍛冶屋ってそんなことできるんだぁ……すげー」
魔法使い「……」
勇者「……じゃねえよっ! えっ!?今までずっと使ってきたこのフライパンが『光の剣』だったの!?」ゴソゴソ
鍛冶屋「あー、久しぶりにみた」
勇者「母さんも俺も知らずに使ってたのか……。普通に肉焼いてたぞ」コンコン
魔法使い「でも……どうして私たちがそれを所持していたのがわかったの?」
鍛冶屋「そりゃ、そいつの生みの親だからな、光の反応が近づいてくるのぐらいわかるさ」
魔法使い「……そ、そんなもんなのかよ」
鍛冶屋「そんなもんなんだよ」グビグビッ
勇者「……(前に『北の勇者』は強い光の反応とか言ってたな。あいつはこれを感じ取ってたってことか)」コンコン
魔法使い「魔王の城へのルート、それも目前にあるこの密林。そこに住み、依頼を出し人を呼ぶ」
鍛冶屋「……はっはっは」
魔法使い「納得したわ。あんた……『勇者』が来るのを待っていたのね?」
鍛冶屋「正解だ。俺の本当の目的は、ここを通れる力のある『勇者』と出会うことだ」
勇者「……通れるって」
鍛冶屋「こんな所でくたばっちまったら『勇者』だろうが用はねえよ」グビグビ
勇者「ほ、ほえー」
魔法使い「……で、あんたは、20万ゴールドの代わりに……何をしてくれるの?」
鍛冶屋「いやな姉ちゃんだなぁ。聞いてくれなくたってハナっからやるつもりだったよ」
魔法使い「あら、余計なお世話だった?」ニヤ
勇者「……?」
鍛冶屋「勇者、お前の今持ってる剣とフライパンを貸せ」グビグビ
勇者「あ、あ、はい」スッ
鍛冶屋「……一晩だ。一晩で『光の剣』を作ってやる」
勇者「う、うぇっ!? えっ!? 作ってくれるんですか『光の剣』を!?」
鍛冶屋「まあな、あいつの願いだ。俺は叶えなきゃいけねえ……いや叶えてえんだ」
僧侶「……勇者様」ボソッ
魔法使い「……」
鍛冶屋「ここから魔王の城は目と鼻の先、だが、その前には『闇の山脈』が待ち構えている」
勇者「……はい」
鍛冶屋「険しい道のりだが、その道のりの少しの力にでもなれるように」
勇者「……」
鍛冶屋「俺は死ぬ気で『光の剣』を作り上げる。そいつを使って、お前たちは魔王を倒してくれ」
魔法使い「……ふん」
勇者「は、はい!」
鍛冶屋「……とまあその前に、せっかくだしそのフライパンで何か飯作ってくれよ」
勇者「……はい! ……は?」
鍛冶屋「俺、料理からっきしなんだよ。久しぶりに誰かの手料理食いたくなっちまってな」ハッハッハ
勇者「ふんふんふふふーん♪」ジュージュージュー
魔法使い「……鍛冶屋、どうにもあんたもいろいろありそうだけど」
鍛冶屋「そりゃあ1000年生きてりゃ嫌でもいろいろあるさ」
僧侶「……」
鍛冶屋「……ま、『仲間』の中じゃずっとマシな方だろうけどよ俺は。ここで呑気に暮らしてるわけだし」
勇者「ふっふふーん、ふふふふふーん♪」ジュージュー
魔法使い「この際あんたの過去は、私は詮索しないわ」
鍛冶屋「有難いね」グビグビ
魔法使い「……あんたは、本当に『勇者』に『光の剣』を作ることが目的だったの?」
鍛冶屋「……それだけだよ」
勇者「ふんふんふーん♪」ジュー
鍛冶屋「それだけのために、俺は今まで生きてきたんだ」
勇者「できたよー! みんなー!」
鍛冶屋「おっほ、こりゃ美味そうな飯だな!」ガツガツ
魔法使い「ありがとう勇者、いただきます」
勇者「どうぞ召し上がれ!」
僧侶「勇者さん……いただきます!」ニコッ
勇者「どうぞどうぞ(あー、やっと僧侶笑ってくれた)」
魔法使い「……」モグモグ
僧侶「……」モグモグ
鍛冶屋「うめぇうめぇ」ガツガツ
僧侶「……勇者さんの料理、やっぱり美味しいです! ホッとするし元気出ます!」
勇者「ありがとう僧侶!」
魔法使い「……鍛冶屋」
鍛冶屋「ん、なんだ?」ガツガツ
魔法使い「……これにも、何か仕掛けがあるの?」
僧侶「仕掛け?」
魔法使い「元気が出る、とかでは済まされないレベルで……『力が漲ってくる』この理由」
鍛冶屋「……ああ、それが『光の剣』の効果さ」
勇者「『光の剣』の効果?(これってもしや、俺の誤解解けんじゃね!?)」
鍛冶屋「というよりは、『光の剣』のその効果に付加された勇者の強力な加護のお陰だろうけどな」グビグビ
魔法使い「加護ねえ」
僧侶「……ゆ、勇者様の」フルッ
鍛冶屋「その物の形の本来の使い方をした時に力を授かると言われる『光の剣』の素材。そこにあいつの加護が加わったんだ」
勇者「……だから、フライパンの時はこうして料理食った時に力がつくようになってたってことか」
鍛冶屋「俺が言っても仕方ねえだろうが、もし今までこいつのお陰で元気づけられるようなことがあったとしたら」
勇者「……」
鍛冶屋「『光の勇者』に感謝してくれ」
僧侶「……っうぅ」
鍛冶屋「……あいつはお前たちのことを、ずっと、見守ってきてたんだからよ」グビグビ
…夜…
…
……
――『お前、魔王封印したんだってな!』
――『封印じゃ意味ねえんだよ。どうせ1000年後に復活しちまうんだ』
――『はっはっは、お前はその時にゃ死んでるだろうが。そんな先のこと心配してんじゃねえよ』
――『お前は生きてるじゃねえか』
――『……そ、そうだがよ』
――『友人の幸せ願って何が悪いんだ、俺が死んだ後の世界の心配したっておかしくねえだろ?』
――『……お前、馬鹿だな。……いや、大馬鹿だよ。大馬鹿勇者だ!』
――『はっはっはははは! うるせえっ!』
――『……はっはっは』
――『でよ、今日はお前に頼みがあって来たんだ』
――『なんだ頼みってのは?』
――『こいつを、そうだな……何か他の形に変えてほしい』
――『俺がお前に作った剣じゃねえか、どういうことだ?』
――『なるべく1000年後に、俺の意志を継いでくれる奴の手元にあるようにしてえんだ。隠すのも兼ねて』
――『……俺が預かっておけば良いんじゃねえか?』
――『いや、勘なんだが、それじゃいずれ失くされちまいそうでよ』
――『信用ねえな俺……しかも勘かよ』
――『何か他の形に変えてあった方が、狙われづらいし何より面白いだろ?』
――『はっはっは、結局お前が大事なのは面白さなんだろうが』
――『はっはっは! バレた?』
――『ならお前、フライパンとかどうだ?』ケラケラ
――『良いなそれ! そいつそれが俺の剣だって気付かねえで料理作っちまうのか!』ケラケラ
……
…
ゴオオオオオ、カーンカーン、カーンカーン
鍛冶屋「……」カーンカーン
ガチャッ
鍛冶屋「……あんたは寝ないのかい? お嬢さん」カーンカーン
僧侶「……」
鍛冶屋「黙ったままじゃ仕事の邪魔なだけだぞ」カーンカーン
僧侶「……あの」
鍛冶屋「なんだどうした?」ゴオオオオ!
僧侶「さっきはその、あんなこと言ってすみませんでした!」
鍛冶屋「『同じ人間か』ってのか? ……気にするなよお嬢さん」
僧侶「……でも」
鍛冶屋「俺は俺のままで、お嬢さんはお嬢さんのままで……それで良いだろ」
僧侶「……」
鍛冶屋「俺みてえな弱っちい野郎にはできねえ考えだ。……立派だよ、人を愛せるお嬢さんは」
僧侶「……」
鍛冶屋「……」カーンカーン
僧侶「あ、あの」
鍛冶屋「ん? まだなんか用か?」カーンカーン
僧侶「あ、ありがとうございます! 『光の剣』作ってくれて!」
鍛冶屋「ああ、これか」
僧侶「それに、一晩でなんて無理をさせて」
鍛冶屋「俺が好きで無理してんだ、お嬢さんは気にしすぎ」
僧侶「……勇者様の、願い」
鍛冶屋「勇者、とかじゃねえな。なんでもねえただの友人の願いを叶えたいってだけだ」カーンカーン
僧侶「……」
鍛冶屋「お嬢さんも疲れてるんだろ。さっさと寝ちまえ」
僧侶「は、はい……お休みなさい」テクテク……ガチャッ
鍛冶屋「……お前の言った通りだな。良い子だよ、あのお嬢さん」カーンカーン
…翌日…
勇者「ッ!?」ガバッ!
魔法使い「何これ、この強い反応? これが『光の反応』ってやつ!?」
勇者「魔法使いも感じたのか!?」
僧侶「……むにゃむにゃ、おふぁようございます」
勇者「あ、おはよう僧侶」
魔法使い「僧侶はまだ寝てても良いわよー」
僧侶「むにゃ……ッ!? いや私も起きますよ!」ガバッ!
ダッダッダ!
ガチャッ!
勇者「鍛冶屋さん!」
鍛冶屋「……おお、起きてきたか。できたぜ、お前の剣がよ」グビッグビッ
キラキラキラ……
魔法使い「うわぁ……ちょっと発光してるじゃない」
僧侶「あ、あたたかい……」
鍛冶屋「ほらよ」スッ
勇者「……これが、伝説の勇者が装備してた『光の剣』」
鍛冶屋「正確にはそれをちょっとお前用に作り変えたんだがな。お前が持ってた剣と合わせて」
勇者「す、すげえ……力が湧いてくるみたいだ」
鍛冶屋「勇者の加護が、フライパンの時と違ってもろに放たれてるんだよ」
魔法使い「さすがは『鍛冶屋の神』ね……私ですら良い仕事だってわかるわ」
鍛冶屋「褒めてくれるのは光栄だが、その神ってのはよしてくれ。恥ずかしい」
勇者「あ、ありがとうございます!」
鍛冶屋「はっはっは、礼を言うならその代わりに魔王を倒してくれや」グビグビ
勇者「絶対に魔王を倒します!」
鍛冶屋「ああ、それが最高のお礼だよ」
魔法使い「お釣りが来ても良いレベルのお礼じゃない?」
鍛冶屋「姉ちゃんそんなこと言うかよ……俺だって死ぬ気で作ったんだぜ」
魔法使い「冗談よーじょーだん」
鍛冶屋「……そうだな、おい勇者、そいつに名前つけてやれよ」
勇者「えっ、名前?」
鍛冶屋「そいつはお前のために作った剣なんだ。だから今は『光の剣』じゃねえ」
勇者「えっと……そうだな、『フライパンソード』」
魔法使い「……」
僧侶「……か、カッコイイと、お、思いますよ? はい、カッコイイです『フライパンソード』!」
鍛冶屋「ま、まあ、名前は人それぞれだし、い、良いんじゃねえか?」
勇者「……(ウケ狙いのつもりだったのに真面目に受け止められちゃった!)」
勇者「……」グッ
魔法使い「これで……魔王を倒す武器は完成したのね」
鍛冶屋「んー、それなんだがな」
勇者「え……? 完成じゃないんですか?」
鍛冶屋「この剣と一緒に存在する『鞘』がねえんだよ」
勇者「『鞘』……ですか?」
鍛冶屋「『光の剣』っつうのはな、並みの人間じゃ無理だが……強い心を持った者が念じると」
鍛冶屋「その者の『意志』を剣に宿すことができる代物なんだよ」
僧侶「……意志」
勇者「じゃ、じゃあこの剣には『光の勇者』の意志が宿ってるんですか!?」
鍛冶屋「あいつはとうの昔に死んじまったからな。その意志は時が経つにつれ弱まっているかもしれねえ」
鍛冶屋「だが、それでも……加護と合わせてその『意志』はお前たちの強力な助けになるはずだ」
勇者「『意志』が……俺たちの助けに」ギュウゥッ
僧侶「……」
鍛冶屋「でもな、剣だけじゃ『意志』は表に出てきてくれねえんだ」
魔法使い「……で、『鞘』が必要なのね?」
鍛冶屋「そういうこった。剣と鞘が一つになった時、持ち主であった者の『意志』が剣に現れる」
勇者「でも、その肝心の『鞘』ってのは……」
鍛冶屋「俺も知らねえんだよ、あいつどこにやっちまったのか……」
魔法使い「1000年も前の物だし、伝説の曰くつきならどっかの国が勝手に所有しちゃってるのかもね」
勇者「そ、そんなー」
鍛冶屋「あいつの考えてることは俺にもわからなかった……。ったく『鞘』はどうやって隠したのか」
勇者「……仕方ない、か」
―鍛冶屋の家・外―
勇者「……お世話になりました」ザッ
鍛冶屋「そんなに世話したつもりはねえよ」グビグビ
僧侶「鍛冶屋さんは……これからどうするんですか?」
鍛冶屋「んー、お前たちが勝ち取ってくれる平和の中で剣でも作りながらのんびり暮らすよ」グビグビ
魔法使い「……ったく、お気楽なもんね」
鍛冶屋「はっはっは、そうでもしなきゃ楽しく生きられねえんだよ俺は」
勇者「……じゃあ、俺たち魔王を必ず倒してきます!」ザッザッザ
鍛冶屋「達者でな」
魔法使い「……剣、ありがとうね」スタスタスタ
鍛冶屋「ふはっ!」グビグビ
僧侶「……それでは」テクテクテク
鍛冶屋「……お嬢さん、魔王……倒してくれよ」
僧侶「っ! ……はいっ!!!」タッタッタ
―密林の外―
勇者「やっと抜けられたな……密林」
魔法使い「そうね……結局魔物はあれ以降出てこなかったわね」
僧侶「不必要に戦わなくて助かりましたねっ!」
勇者「た、確かに……だって、これから」
コオオオオオオオオオオオオ……
魔法使い「目の前にそびえる『闇の山脈』を越えなければいけないんだものね」
勇者「本当に、密林抜けたら目と鼻の先だったんだな……」
僧侶「……空も……山も、黒い……」
魔法使い「きっと、魔王の放つ魔力が染みついて黒く染まったんでしょう」
勇者「ありえんのかよ……そんなこと」
魔法使い「……それを可能にしてるようなやつと、今から私たちは戦うのよ」
勇者「ま、魔王を倒す以前にあの山越えられるのか……」
魔法使い「黒い天にまで届きそうな黒い山脈……」
僧侶「闇……強い闇の反応を感じる」
魔法使い「あの向こうに魔王の城があるっていう確固たる証拠よ。魔物もさぞかし強力なんでしょうね」
勇者「だ、大丈夫かな」
魔法使い「ここまで来たんだからシャキッとしなさい! あんたが強いのは私が保障するから!」
僧侶「大丈夫ですよ勇者さん! 私たちがついてますし、フライパンソードだってあるじゃないですか!」
魔法使い「そうよ! フライパンソードがあるじゃない!」
勇者「そ、そっか(フライパンソードのせいで一気に不安になっちまった……)」
魔法使い「なるべく楽に越えられるように、山脈の低い所を探して迂回していきましょう」
勇者「そうだな……」
僧侶「これ以上近づくと、山が大きすぎて高さがわからなくなっちゃいますもんね」
魔法使い「この距離を保ちつつ、歩いてみましょうか」テクテク
勇者「……ああ、願わくばとっても低い場所があれば良いんだが」テクテク
魔法使い「期待せずに進んだ方が良さそうだけどね」テクテク
勇者「洞窟みたいな抜け道があれば良いんだけど」テクテク
魔法使い「地図にはそういうの書かれてないのよねー。登るしかなさそうなのよ」テクテク
勇者「……魔物、たくさんいるんだろうな」テクテク
魔法使い「でしょうね」
僧侶「低い所を探して、一気に突破するのが良いんでしょうか……」
魔法使い「なんにしろ気合は入れ過ぎても足りないくらい入れて行きましょう」
僧侶「……あれ?」テクテク
勇者「密林を抜け、目の前は『闇の山脈』……よくもまあ『ギルドの街』の人々は暮らせてたもんだね」テクテク
魔法使い「そのレベルの強さはあったってことでしょうね」テクテク
僧侶「あの……勇者さん、魔法使いさん」テクテク
勇者「どうした僧侶?」テクテク
僧侶「なんか、『闇の山脈』……あっちの方、なんか変じゃないですか?」
勇者「変って……? ……本当だ。本当だ、変だ」
魔法使い「ど、どういうことなのあれ?」
僧侶「やっぱりおかしい、ですよね?」
勇者「『闇の山脈』って、魔王の城を取り囲む自然の城壁……なん、だよな?」
僧侶「な、なんで……山脈のあそこ一帯だけ、山が『消えてる』んでしょうか?」
―闇の山脈・麓―
ヒュオオオオオオオオオオオオオオ……
魔法使い「なんなの……この光景は」
勇者「まるでこれじゃ荒野だな……まっ平らだ……」
僧侶「こ、この辺り一帯の山だけ消えてる……?」
勇者「おいおい……向こうの魔王の城が丸見えじゃないか……」
魔法使い「……消えてる、というよりもこの場所で何らかの大規模な『破壊』があったような感じね」
僧侶「た、確かに、山が削り取られてるというか抉り取られているというか吹き飛んでいるというか……」
勇者「……(輪っかの食べ物を齧った時みたいになってるな)」
魔法使い「それにしてもなんなのこれ? 魔王の城の城壁が、これじゃ通って下さいって言ってるようなもんじゃない」
勇者「……」
僧侶「ま、魔物の気配もありませんよ……」
魔法使い「本当に、まっ平らな荒野じゃない……」
勇者「……」
魔法使い「一体全体、何があったっつうのよ」
――『南の勇者が魔王の城目前で魔物の群れに倒れたんですよ』
勇者「……『南の勇者』だ」
魔法使い「……え?」
勇者「旅に出る前に、大臣から聞いたんだ。魔王の城目前で南の勇者が倒れたって」
魔法使い「目前で……って」
僧侶「『南の勇者』さんが……この山脈の一部を消したってことですか?」
勇者「俺には……わかる。『南の勇者』が後に続く俺たちのために魔王の城への道を切り開いてくれたんだ!」
魔法使い「わ、わかるってあんた……そんなこと」
勇者「俺もなんでわかるのかわからねえけど……なんでかな、そんな気がするんだ」
僧侶「で、でも現実にここを通れば……もう魔王の城です」
魔法使い「魔物の気配もない……」
勇者「『南の勇者』が……やったんだ」
魔法使い「山を消し飛ばしてこの付近の魔物を一掃したっての?」
勇者「……そこで力尽きたのか、力尽きるまでそれをしたのかはわからない」
魔法使い「……」
僧侶「……」
勇者「わからないけど、これだけは確かだ……」
魔法使い「……そうね」
僧侶「……はいっ!」
勇者「俺たちはこのまま進まなきゃいけない、ここで死んだ『南の勇者』のためにも……魔王を倒すんだ!」
???「なんだよー、僕が一番乗りかと思ったら違ったのかー。っちぇー」
勇者「……ん!?」
僧侶「……ぁあ」
???「それにしてもすげーことになってるね『闇の山脈』。せっかく強力な魔物と戦いまくれると思ったのにさ」
魔法使い「……相変わらずの戦闘狂っぷりね……変態勇者」
北の勇者「あっはっはっは! 相変わらずか、覚えてくれてて嬉しいよ強い魔法使いさん!」
勇者「……あ、お前も無事にここまで来れたんだな(おしゃべりな『北の勇者』だ!?)」
北の勇者「僕を舐めてもらっちゃ困るよ。『東の勇者』のライバルだもん、そりゃあ険しい旅かもしれないが乗り越えてきたさ」
勇者「ああ……へえ、そっすか(ライバルになったつもりねえんだけど)」
北の勇者「『東の勇者』、前に会った時とは見違えるほど強くなってるみたいだね!」
勇者「はあ……まあね」
北の勇者「それに……その剣、『光の剣』だね!?」
勇者「ああ、やっぱりわかるのか?」
北の勇者「以前あった時は、光の反応は感じてたんだけどそれらしい剣が見当たらなくてさ」
北の勇者「どうしちゃったのさ? 『光の剣』は今持ってるそれでしょ? この前も感じてたはずなのになぁ」
僧侶「『光の剣』じゃありませんよっ! これは勇者さんのフライパンソードです!!」
北の勇者「……」
魔法使い「……」
勇者「……(やめてええええ!僧侶やめてええええ! ウケ狙いで付けた名前胸張って紹介しないでえええ!)」
北の勇者「えっと……へえ、誰が名付けたの?」
僧侶「もちろん勇者さんですよ!」エッヘン
北の勇者「……そっか、ああ、うん。い、良いと思うよ、名前」ニ……ニコッ
勇者「……(全力で愛想笑いされちまったああああああ!)」
魔法使い「はあ……それはそうと変態勇者、あんたここで私たちと会ったけどどうするの?」
北の勇者「……」
魔法使い「あんたのことだ、強くなった私たちの勇者と腕試しー、とかほざいて今から戦うの?」
勇者(……ま、マジか。やんのか? マジでやんのか?)……チャキ
北の勇者「……はは、安心してよ。前も言ったろ、魔王を倒すのに勇者を減らすようなことはしないって」
魔法使い「あら、そう。なら良いんだけどね」
勇者「……(『北の勇者』がその気なら全然戦っても良いとは口が裂けても言えないなこれじゃ)」スッ
北の勇者「……でも、魔王の城を攻略する前に、一つだけやらなくちゃいけないことがあるんだ」
魔法使い「……あ?」
僧侶「……」
勇者「ま、魔法使い、そう殺気立たないで、ね?」
北の勇者「……あの、僧侶さん。この前は『化け物』なんて言って……すみませんでした」
魔法使い「……は?」
勇者「はぁ?」
魔法使い・勇者「ハアアアアァァァッ!? 『北の勇者』が謝ったあああああ!?」
北の勇者「……そ、その反応は予想してたけど、こうして実際にリアクション取られると傷つくな……」
僧侶「……」
魔法使い「……そー、僧侶さん?」ドキドキ
僧侶「……許して、あげません」
勇者「……(これは俺、会話に入らない方が良い感じだな)」
魔法使い「……」
北の勇者「そっか。まあ、仕方ないか、それぐらい僕はひどいことをしたんだ……仕方ない」
僧侶「……だから」
北の勇者「……?」
僧侶「だから……罰として、私たちと一緒に魔王を倒してください」
北の勇者「……」
僧侶「それで、みんなで生きて平和な世界を取り戻しましょう! じゃないと許しませんから!」
北の勇者「……ははっ、そんな簡単なことで良いのかよ。そんな簡単なことで……」
僧侶「ふふっ」ニコッ
北の勇者「僕、あれ以来、ここまでずっと反省しててさ、悪いと思っててさ、苦しくてさ」
僧侶「……」
北の勇者「そんなことで許してくれるなんて……僧侶さん、あんまりだよ」
北の勇者「わかった……魔王倒してやろう。みんなでねっ!!!」
魔法使い「……あんた、少し見ないうちに丸くなった? 前より大分マシになったわね」ニヤニヤ
北の勇者「僕だって、ここまでの旅の中で何もなかったわけじゃないさ……」
魔法使い「ふーん。なーんか、成長したって感じぃ」ニヤニヤ
北の勇者「……そう思ってくれるなら、僕の旅も無意味なものじゃなかったんだって思えるよ」
勇者「……とりあえず」
魔法使い「とりあえず、『北の勇者』は最高の戦力だし、私たち三人に加わってくれるなら申し分ないわね」
勇者「う、うん」
戦士「おいおいおいおい、三人に加わる? 『東の勇者』のPTは元々何人PTだったっけか?」
勇者「今は三人だけど……え?」
北の勇者「ッ!? いつの間にっ(僕が気配に気づかなかったなんて……)」
僧侶「戦士さあああああああああああん!!! 久しぶりですうううううう!!!」
勇者「うっおおおおおおおおおお戦士いいいいいいいいいいい!!!」
戦士「よっ! 元気そうじゃねえかお前ら! 良かった良かった」
僧侶「うわああああん! 戦士さん生きてたああああああ!!」
勇者「戦士ぃぃぃぃぃぃ! 会いたかったよおおおおおおお!!」
戦士「おっまえっら! くっつくんじゃねえよ馬鹿!」シッシッ
北の勇者「……ははは、賑やかだなぁ」
戦士「……なーんか『北の勇者』の野郎は僧侶ちゃんに謝ってるしよぉ……なんだよ良い子になっちゃって」
北の勇者「……その時から、盗賊くんはここにいたのかよ」
戦士「盗賊じゃなくてせん……まあ良いや面倒くせえ。ああ、いたぜ、しかもすぐ隣に」ニヤニヤ
北の勇者「……ふふっ(それでも気付けなかったのか僕は、凄い潜伏スキルだ……盗賊くん)」
魔法使い「……あんた、久しくいなかったからだーいぶ影薄くなっちゃったみたいね」
戦士「んなっ!? 影薄くなったわけじゃねえし! 嫌な言い方すんじゃねえよっ!」
魔法使い「冗談よ冗談、やーねー本気にしちゃって。おほほほほ!」
戦士「こ、こいつぅ……」
僧侶「け、ケンカはいけませんよぉー!」
勇者「……戦士、見つけてきたのか」
戦士「……ああ。親父の遺産、見つけてやったよ!」
勇者「そうか、やったじゃんか戦士!」
僧侶「凄いです戦士さん!」
戦士「だっはっは! まあ戦士様にかかりゃラクショーラクショー!」
北の勇者「……(やっべえ、全然話しについていけない……)」
魔法使い「んで……魔王を倒す前に遺産を見つけて、何か意味はあったのかしら?」
戦士「……んああ、意味かぁ」
勇者「な、なんだよ、言いづらそうに……」
僧侶「戦士さんの冒険聞きたいですっ!」
魔法使い「僧侶ちゃん、それは世界が平和になってからのんびり聞きましょうね」
僧侶「は、はぅぅ……そうですよね」シュン……
戦士「財宝を見つけてよ……親父が死ぬまでに盗んできた財宝を……」
勇者「……お、おう」
戦士「そのほとんどが、まあ金品……ゴールドや宝石だったんだが」
魔法使い「……だが?」
戦士「その中に財宝じゃねえ物がちらほらあったんだよ……」
勇者「へー……」
戦士「これなんだが」ガサガサゴソゴソ
魔法使い「……ッ!?」
戦士「剣の鞘と、クマの人形と、あと……この本」
魔法使い「そ、そのクマ……見せて」
戦士「おう、なんだ気に入ったのか?」
魔法使い「……(間違いない、私のだ。……どうして)」
勇者「なんで鞘だけ?」
魔法使い「……捨てたはずなのにっ」ボソッ
戦士「ん? 魔法使い何か言ったか?」
魔法使い「……なんでもないわ」
戦士「そうか、ならいいんだけどよ」
魔法使い「このクマ……貰って良い?」
戦士「べ、別に良いぜ。なんだよ……魔法使い、可愛い趣味だなずいぶん」
魔法使い「うるせえ」
僧侶「せ、戦士さん……この本って」
戦士「……ああ、僧侶ちゃん気付いたか」
魔法使い「……」
僧侶「ま、魔法使いさんの悪魔にそっくりですよね……」
魔法使い「……母親が持ってた本だわ」
僧侶「……えっ? 魔法使いさんのお母さんが?」
戦士「先に言っとくが、どうしてそんなのが親父の財宝の中にあったのか俺は知らねえからな」
魔法使い「……これも、私が受け取らなきゃいけない物、なのね」
戦士「嫌なら良いんだぜ、俺が勝手に持ってきちまっただけだし」
魔法使い「……いや、ありがとう戦士」
戦士「なんだよいきなり」
魔法使い「私も、少しだけ前に進める気がするわ」
戦士「……そーかい、良かったよ、その手伝いができて」
勇者「……ねえ、やっぱそうっぽいよね?」ヒソヒソ
北の勇者「いやこれ絶対そうでしょ。この鞘からも光の反応を感じるもん」ヒソヒソ
勇者「……うっわうっわー、マジか。すっげえ、戦士すっげえな」ヒソヒソ
北の勇者「まさか、この局面で剣と鞘が揃うとはね」ヒソヒソ
戦士「なんだ? お前ら二人でヒソヒソと話して気色わりぃな」
北の勇者「気色悪いとはなんだ」
勇者「……この戦士の持ってきてくれた鞘さ。もしかしたら『光の剣』の鞘なんじゃねえのかなって」
僧侶「……っ」
魔法使い「……っえ、まっさかー」
勇者「戦士がこの鞘を見つけた時、周りにそれらしい抜き身の剣はなかったんだろ?」
戦士「……ああ、その鞘だけだったよ。おかしなことに」
勇者「『光の剣』はフライパンになって俺の家に置かれてて、『鞘』の方は行方不明だったんだよ」
戦士「ふ、フライパン? ……『光の剣』ってなんだ?」
魔法使い「1000年前、『光の勇者』が魔王を封印した時に装備していた伝説の剣よ」
戦士「えっと、その剣が……っええええええええ!? フライパンって、ええええええええ!?」
魔法使い「もうそのリアクション私たちやったからあんたはやらないでいいわよ、うるさいから」
北の勇者「えええええええええええっ!? フライパンって何それえええええええええ!?」
魔法使い「お前もうるせえよ!!」
戦士「俺もお前らと一緒に驚きたかったよ……」
北の勇者「僕だって……」
魔法使い「……なんだお前ら」
勇者「……」チャキッ、スラァァ
キラキラキラキラ……
戦士「ほぉー……それが、その『光の剣』ってやつなのか」
北の勇者「フライパンソードって名前で『東の勇者』が名付けたらしいよ」
戦士「お、ほぉー……ま、まあ、良いんじゃねえか、おう」
勇者「……(なんで俺ウケ狙っちゃったんだろう……全っ然笑ってくれねえし誰も)」キラキラ
戦士「すげえな、剣自身が輝いてる……なんかあったけえし、これが光の反応ってやつか?」
勇者「『光の勇者』の加護らしい……」キラキラ
魔法使い「この剣がフライパンだった時は、それで作られた料理を食べることでその加護を私たちは受けてたみたいよ」
戦士「へえ……。『光の勇者』に感謝ってことか。料理の美味さは単純に勇者の腕なんだろうが」
勇者「そんでもって、この剣とは別に行方不明に……世界のどこかに隠されてた『鞘』と一つになることによって」カチャッ
スゥゥ、チャキン
勇者「『光の勇者』の意志が解放されるらしいんだ」
戦士「一つになるっつうのはつまり、そういう風に剣を鞘に収めるってことなのかな?」
勇者「……だと思うんだけどな」
僧侶「……勇者様の、意志」
魔法使い「……。聞いた話じゃ、長い年月の内に意志は弱まるだろうから期待はしないこと、らしいけどね」
戦士「『光の勇者』の伝説は1000年前だからなぁ、そりゃそんなに経ってりゃ欠片も残ってなさそうだな」
魔法使い「『加護』の効果と合わせて少しでも『意志』が解放されれば、それでも強力な力になるみたいだけどねー」
ッパァァァァ、キラキラキラキラキラ!
勇者「……うわ、うわうわうわ!」
戦士「っな、なんだなんだ!? 収めた途端、剣と鞘の輝きがバカみてえに強くなったぞ!?」
僧侶「……あ、ああ」フルフル
勇者「こ、これが、この輝きが『意志』の解放なのか!?」チャキッスゥゥ……
戦士「勇者、剣抜いて大丈夫なのか……?」
魔法使い「まっぶしいわね……」
戦士「とんでもねえ輝きだな……長い年月で弱まってるんじゃなかったのかよ」
魔法使い「……それだけ、『光の勇者』の『意志』が強かったってことなのかしらね」
北の勇者「……みんな、刀身に何か『文字』が浮かんできてない?」
勇者「ほ、ほんとだ……でも、なんだこれ?」
魔法使い「これが……伝説の勇者の『意志』ってやつなの?」
戦士「輝きが増して俺たちがパワーアップしたって感じはしねえし……もしかして、この『文字』がそれだってのか?」
勇者「『意志』って、本当の意味での『意志』を伝えることだったのかな……今この世界に生きてる誰かに」
僧侶「……ああ、ぁあ」グスヒッグ
――『嫌だっ! 勇者様死なないでください!』
――『ば……か、無理言うんじゃ、ね、えよ。こちとら……もうおじいちゃん、だってんだ』
――『私を独りにしないでっ! お願い、死なないで!』
――『安心……しろよ。俺、は……ずっと、お前の傍に、いてやっから』
――『また独りになっちゃう! 勇者様ぁ、死なないでよぉ!』
――『ず……っと、戦い、の……毎日だった、俺にとっちゃ……こりゃあ、安らかな死に方じゃ、ねえか』
――『嫌だ嫌だ嫌だ! 勇者様が死んじゃったら、私独りだよぉ! 死んじゃ嫌ぁ!』
――『最後に……よ、お前が、傍にいてくれて……良かった。楽し、かった。だから……お、まえ……も……』
――『勇者様っ! 勇者様ぁ! ……うう、うわあああああああああああん!!!』
……
…
――楽しく生きろよ!!!――
勇者「でも、誰に対する『意志』なんだろうな……俺たちかな。世界中に生きるみんなのことかな?」
戦士「そ、僧侶ちゃん!? どうして泣いてるんだよおい!」
僧侶「ううっ……うぐっ、ひっぐ、うぇぇ……」グスンヒッグ
北の勇者「……」
魔法使い「……」
僧侶「ふぅぅん……。うう……んぐっ」ゴシゴシ
勇者「ど、どうしたの僧侶? 何か泣くことあった?」
北の勇者「……あー、あーあー、そういえば『東の勇者』!」
勇者「んなっ、どうしたいきなり!?」
北の勇者「……この吹き飛ばされた『闇の山脈』の一部、吹き飛ばされてできた荒野」
勇者「……『北の勇者』も、わかるのか?」
北の勇者「当たり前だよ。……『南の勇者』の仕業だね」
勇者「だよな……俺は本人に会ったことないから、何を思ってこんなことしてくれたのかはわからないけどさ」
北の勇者「自己犠牲が大好きなドMの変態だよ……そして強い」
勇者「……」
北の勇者「他の勇者の誰よりも、四人力を合わせて魔王を倒すことを望んでいた女だった」
勇者「……」
北の勇者「彼女は、魔王の城への道を命を賭けて作った」
勇者「……だよね」
北の勇者「僕たちは、その道を通り魔王を倒さなきゃいけない」
勇者「……ああ」
北の勇者「王国の魔王討伐の名誉がなんだ、王国の栄光がなんだ」
勇者「……違うよな」
北の勇者「そうだよ。これは、生まれてから同じように世間から扱われていた『僕たち』の……」
勇者「……」
北の勇者「戦いだ」
僧侶「……勇者さん、進みましょう!」
勇者「……うん(僧侶はもう大丈夫なのかな)」
僧侶「泣いてなんかいられませんっ!!」
勇者「……そうか、そうだよね(強いなぁ、僧侶は)」
戦士「ならよー、いっちょここらで気合入れとかねえといけねえよな」ニヤニヤ
魔法使い「そうねー、今から魔王の城攻略するんだし? 景気づけに気合入れないとねー」ニヤニヤ
北の勇者「僕はあくまでも、『東の勇者』PTに加わったって形だし? ここは譲るよ」ニヤニヤ
勇者「えっ? えっと? はええ?(うっわうっわ、なんか嫌な予感うっわ)」
僧侶「勇者さんっ! お願いします!」
勇者「んふっ? な、何をかな僧侶さん?(最悪だもう最悪だうっわ)」
僧侶「気合一発! 勇者さんの魔王討伐宣誓ですっ!」
勇者「んなっ!? なんで俺がやらないといけないのっ!?」
北の勇者「うっわー、空気読めないわー」
戦士「これだからうちの勇者様は……」
魔法使い「……はあ」
僧侶「……じゃあ、魔王倒しに行きましょうか」
勇者「……」
勇者「今ここにぃ! 『東の勇者』の超最強PT!!!」
魔法使い「魔法使い!!!」
戦士「戦士ぃぃぃ!!!」
僧侶「僧侶!!!」
勇者「『東の勇者』!!! ……そして新たに加わった」
北の勇者「……フッ、『北の勇者』」
勇者「最強の5人でいざ参らん……(んで若干気取ってんだよ)」
勇者「魔王討伐へ!!!」
勇者「俺たちは……必ず魔王をたぁぁぁぁおぉぉぉぉっすぅぅぅっぅうぅ!!!」
勇者「……。……これで良い?」
北の勇者「よし、じゃあ行こうか」スタスタ
戦士「おう」スタスタ
魔法使い「いつまでもここにいると魔物集まって来ちゃうしね」テクテク
僧侶「魔王の城まで一本道! さっさと進んじゃいましょう!」テクテク
勇者「……あ、はーい」
勇者母「勇者ったら、しっかりやってるのかしら」【後編】 に続きます。

