【前編】の続きです。
――某所
さやか「てりゃあ!」ザシュ
使い魔「…」シュゥ
マミ「美樹さん、お疲れ様。上手だったわよ」ヘンシンカイジョ
さやか「いやいや、マミさんの援護のおかげですよ。あ、これ食べます?」ヘンシンカイジョ
マミ「あら、何かしら?」
さやか「差し入れだって、まどかから。駅前のお店のシュークリームだそうですよ」
マミ「本当! あそこのお店、評判がよくて、私もよく買っているの。それじゃあ一つ…」
さやか「他に、飲み物とかもありますよ。あ、あたしお茶もらいます」
マミ「それじゃあ、私はこっちをもらおうかしら。あとで鹿目さんにお礼を言わないとね」
さやか「最近のまどかって、妙に気が利いてますよねー。今日だって、差し入れとか」
マミ「そうなのかしら? 私は鹿目さんとは、まだ付き合いが浅いから、よくわからないのだけれど」
さやか「うーん、気が利いてるっていうか、心配されてるのかな?
毎日、調子はどうだとか、魔女退治はどうだったとか聞かれますね。なんか母親みたいですよ」
マミ「美樹さんは魔法少女に成りたてだから、鹿目さんも気になってしょうがないんでしょう。
危ないことだってことは、彼女もよくわかっているでしょうから」
さやか「うーん、まどかに心配かけてしまうとは…。わたしも、早く強くならないといけませんね」
マミ「そうね。それじゃあ、食べながら、今日の反省をしましょう、美樹さん」
さやか「はい! マミさん!」
マミ「美樹さん。魔力の消費はもっと抑えなきゃダメよ?
魔女ならともかく、使い魔ならもっと節約しながら戦わないと」
さやか「うーん、もっとマミさんみたいにかっこよく戦いたいんですけどねー。
ほらほら、銃をたくさん召喚して。舞うように! 踊るように!」
マミ「私のは、銃に弾丸を込めるだけでいいけれど、美樹さんの場合剣を一つずつ作らないといけないでしょう?」
それじゃあ、あまりにも効率が悪いわ。一本一本使い捨てだし
カッコイイって言ってくれるのは嬉しいけれど、もっと自分に合った戦い方を考えないと」
さやか「うーん、アタシに合った戦い方かー」
QB「僕もそうすることを、お勧めするよ」
さやか「あ、キュウベェ」
QB「魔法少女の能力は個々で大きく違うからね。誰かの真似をするのは利口とは言えないな」
さやか「はいはい。どうせあたしはバカですよーだ」
マミ「美樹さん、あせらずじっくり行きましょう。時間はまだあるんだもの」
さやか「でも、早く強くならないといけないし。それならお手本を真似たほうが良いと思ったんですけど…」
マミ「それでおかしな戦い方を身に着けて、ピンチになってしまっては元も子もないわ。
美樹さん。戦いはずっと続いていくのよ? だからこそ、上手なやり方を考えないといけないの」
QB「そうだね。まどかのような特異な例はともかく、魔法少女に成りたての頃はやられてしまうこと例も多い。
こうやって、誰かから守ってもらえる機会がある以上、その機会を大切にするべきだ」
マミ「そうね、鹿目さんは一人でも大丈夫だったけど、あなたは違うわ。
私がしっかりフォローするから、その間に上手な戦い方を身に着けていかないと」
さやか「ねえ、マミさん」
マミ「なに、美樹さん?」
さやか「まどかって、そんなに凄いんですか?」
マミ「私は鹿目さんの戦っているところは一度しか見たことがないけど、あれはもう本当に特殊な例。
鹿目さんだけでなく、ほむほむの経験のおかげという面もあるけれど」
QB「確かに、まどか達の戦い方は実に効率がいいね。
膨大な魔力を持っているにもかかわらず、攻撃にほとんど使わないから、その分を他に回すことができるし、温存することも出来る」
マミ「加えて時間停止の魔法。あまり長くは止められないみたいだけれど、それでも強力なことに変わりはないわ。
切り札もあって、魔力の使い方も上手。ちょっと攻め手にかけるけれど、総合的に見ればかなりのものよ」
QB「時間停止? それが彼女の魔法なのかい?」
マミ「ええ、一度見せてもらったわ。あんなに強力な魔法もなかなかないわね」
QB(時間に干渉する魔法…か)
さやか「…なんだか自信なくしちゃいますね。同じ新人魔法少女なのに、こうも実力が違うなんて」
マミ「さっきも言ったけれど、鹿目さんの例は本当に特殊な例よ」
マミ「それに彼女だって、一人で強いわけじゃない。
ほむほむっていう先輩のサポートがあって、あそこまでの力を発揮できているの」
さやか「サポートかー。あたしにもそんなのがいてくれたらな」
マミ「美樹さんには、私がサポートに着くわ。私達もあの二人に負けないように頑張りましょう?」
さやか「マミさん…。はい! 頑張ります。よーし見てろよ! まどか、ほむほむ!
あたしとマミさんの師弟タッグの力であんたらを越えてやるー!」
マミ「ふふっ、その意気よ」
マミ「でも、本当に鹿目さんは強くなったわよね。魔法少女してじゃなく、精神的にも。
端から見ても、なんというか自信がついているのがわかるもの」
QB「そうだね。彼女の変化は僕の目から見ても明らかだ。
方向性ができたというべきなのかな。以前は目標が定まっていなかったけれど、現在はそれが出来ている」
マミ「そうね。何かやりたいことを見つけたという感じだわ。それがおそらく、魔法少女としての強さにも繋がっているのでしょうね。
そして魔女が退治できて、自信もつく。いい流れだと思うわ」
さやか「…」
さやか「…本当にいいことなんでしょうか?」
マミ「え?」
さやか「マミさん。私の知っているまどかって、あんな風に戦えるような子じゃないんです。
誰にでも優しくて、でも今一つ自分に価値が見つけられなくて、守ってあげなくちゃいけないような子で」
「まだ信じられないんです。あのまどかが、魔法少女になって魔女と戦っているなんて」
「ねぇ、マミさん。これって本当にいいことなんでしょうか。
まどかは危ないことしているんですよ? あたし、どうしてもいいことのようには思えなくて…」
マミ「美樹さん…」
さやか「って、すみません! 変なこと言っちゃって」
マミ「いいのよ。誰だって急な変化には戸惑うものだわ」
さやか「…急、ですか。やっぱりそう思います?」
マミ「…そうね。でも魔法少女になってそれまでとは違った生活をしているのだから、そう不自然なことではないと思うけれど」
QB「僕もその点は少し気になるかな」
さやか「キュウベェ…」
QB「僕としては、あの小さいのと関わったことがまどかの変化の始まりだと考えている」
「そもそも、まどかの変身できるようになったプロセス自体がイレギュラーだ。何が起きても不思議じゃない。
もしかしたら、性格の変化にも何かが関係しているのかもね」
「まあ、魔法少女になって性格が変わること自体はそう珍しいことじゃないんだけれど。
それまでとは違う存在になるんだからね」
さやか(ほむほむ…か)
さやか(まどかが変わったのは、ほむほむのせい?
うーん、そういえば変身するたびに行動が大胆になっていったような…)
QB「マミだって、昔はあんまり戦うような子じゃなかったし。性格の変化そのものは魔法少女にはよくあることだよ」
マミ「ちょ、ちょっとキュウベェ?! 勝手に人の話をしないでちょうだい!」
さやか「え、そうなの? マミさんの昔の頃って?!」
マミ「美樹さんも食いつかないで! 恥ずかしいじゃない…」
QB「マミが嫌ならこの話はしないよ。本人の許可なくすることじゃないしね」
さやか「えー、キュウベエ教えてよ~」
マミ「…み・き・さ・ん?」ゴゴゴ
さやか「すみませんでした」ブルブル
マミ「…とにかく鹿目さんの変化については、私はいいことだと考えるわ」
「少なくとも以前の彼女と比べて成長しているのは確かだと思うし、何より彼女自身が目標を持って行動しているんですもの。
やりたいことが見つからなくておどおどしていた頃より、前に向かっていると思うわ」
「危ないことをしているのは、そのとおりだけど…。でも、私達だっているもの」
さやか「…あ」
マミ「彼女は一人じゃないわ。もし危険が迫ったら、私たちで守ってあげればいいんじゃなくて? 美樹さん」
さやか「そっか…。うん、そうですよね」
さやか(そうだ…私がまどかを守れるような魔法少女になれればいいんだ)
さやか(うし、そうと決まれば頑張るぞ! まどか、あんたはあたしが守る!)グッ
マミ「…」
マミ「…ねぇ、美樹さん」
さやか「何ですか! マミさん!」
マミ「一つ、聞きたいことがあるのだけれど」
さやか「? はい」
マミ「あなたが願いで腕を直した…、その、幼馴染の子とはどうなったのかしら?」
さやか「え、恭介ですか?」
マミ「ええ。その後どうなったのか、少し気になってて」
マミ「それに、ちょっと確認もしたかったから」
「あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」
マミ(結局、あの言葉は美樹さんには届いていたのかしら…)
(美樹さんはヒーローに成りたがっている。それこそテレビに出てくるような)
(ヒーローは見返りを求めない。あるのはひたすら自己犠牲によって平和を守ること)
(もし、美樹さんの願いに見返りを求める気持ちがあったのなら、ヒーローとしての彼女は自分を否定してしまう)
(それに気づかないで、ヒーローを続けたらいつか彼女は自分自身を壊してしまうわ。きっと)
(自分の気持ちに気づいているのか、それでもまだヒーローを続けるのか。ここでそれをはっきりさせないと)
さやか「恭介なら退院しましたよ、無事に。ちゃんとバイオリンも弾けるようにもなりました!」
マミ「それは、よかったわ。でも、長い間入院していたのに、そんなにすぐ退院して大丈夫かしら?」
さやか「腕と並行して、他のリハビリも続けてましたから。腕さえなんとかできれば、あとは自宅からの通院でも大丈夫だったんです。
ああ、マミさんにも聞かせてあげたいなぁ、恭介のバイオリン」
マミ「ふふ、そのうち紹介してね。私も楽しみにしているわ」
さやか「学校にも、もう通ってますから。会おうと思えば、いつでも会えますよ!」
マミ「あら、そうなの?」
さやか「はい。まだ松葉杖をついていてえっちらおっちらって感じですけど」
マミ「…それで、美樹さん。あなたはその、それで良かったのかしら?」
さやか「え?」
マミ「あなたは彼の為に願いを使った。そこにはあなた自身の意思や目的ががあるはずよ」
マミ「それは、ちゃんと達することができたのかしら?」
さやか「あ、あー。実は…ちょっと恥ずかしいんですけど」
マミ「…?」
さやか「マミさんに言われたじゃないですか。『恩人になりたいのか』って、それともちょっと関係するんですけど」
さやか「実は、その…告白しまして…」
マミ「!」
さやか「その、まどかに言われたんです。
魔法少女は死と隣り合わせだから、出来るだけやりたいことや言いたいことは言っておいたほうが良いって」
マミ「鹿目さんが?」
さやか「それであたし、色々考えたんですけど…。やっぱり恭介のことが好きだって気づいたんです」
さやか「それで…後悔しないように言おうって」
マミ「そう…。でも、それは本当に大事なこと。魔法少女って、本当にいつ終わりが来るかわからないもの」
さやか「…はい。あたしもマミさんがやられそうになったとこ、見てますから。
それで、告白しました。…恭介に」
マミ「そ、それで、どうだったの? 返事は」
さやか「あ、あははー。こっぴどく振られちゃいました」
マミ「え?!」
マミ「ご、ごめんなさい。美樹さん。デリカシーのないこと聞いて!」
さやか「わ、あ、謝らないで下さいよマミさん! あたしが勝手に話し始めたことなんですから」
マミ「でも…」
さやか「そ、それにですね。あんまりショックじゃなかったんです。実は!
接していても、そういうふうには見てくれていないなーって。何となくわかってましたから」
さやか「案の定、『さやかのことは好きだけど、その、そういう感じじゃない』って言われちゃいました」
マミ「美樹さん…」
さやか「でも、あたし後悔してませんよ! 魔法少女になったことも、気持ちを打ち明けたことも!」
言って、フラれて。自分でも不思議だったんですけど、後悔なんて気持ちは湧いてきませんでした」
さやか「そこで気が付いたんです。あたしは、恭介のバイオリンがもう一度聞きたかっただって気持ちに」
マミ「…」
さやか「思いが伝わらなかったのは、やっぱり悔しいけど…。でも、言ったらすっきりしちゃいました」
さやか「自分の本当の気持ちに気付けましたしね! 言ってよかったです!」
マミ「…美樹さん、本当に大丈夫? 泣きたいのなら、泣いたほうが良いわよ? 抑えるのは良くないわ」
さやか「平気ですよ、マミさん! 実はもうそのうちにベットでわんわん泣きましたし!」
さやか「だからもう大丈夫です! 恭介とも、まだ仲の良い幼馴染でいられていますしね!
バイオリンが聞きたくなったら、いつでも言ってくださいよ! 紹介しますから!」
マミ「…」
マミ(大丈夫…、なのかしら?)
マミ(少し無理をしているようにも見えるけど…、でも先ほどの言葉に嘘は感じなかったわ)
マミ(純粋に上条君のことを心配していた、ということでいいのかしら)
さやか「さ、マミさん。残りの個所もパトロールしちゃいましょう!」
マミ「あ、そ、そうね」
さやか「…マミさん?」
マミ「ごめんさい、少し考え事をしていたの」
さやか「んじゃ、こっちから行きましょう! 遠回りにしなくて済みますよ!」
マミ「ええ、そうしましょう」
マミ(自分の為ではなく、純粋に彼のため)
マミ(本当にそうなら良いのだけれど…)
―放課後―
まどか『ほむほむ、次はこっち見てみようよ!』
ほむら『…ええ』
ほむら(最近のまどかは、巴マミの言うことを聞いておとなしく魔女退治をしないでくれている。
今日は、久しぶりに学校帰りによく訪れていた雑貨屋を覗いて嬉しそうね…)
まどか『あ、これかわいい。ほむほむはどう思う?』
ほむら『私もいいと思うわ。ちょっと、色がきついような気もするけど』
まどか『ほむほむは、あんまり派手な色は好きそうじゃないしねー。魔法少女の衣装も、落ち着いた感じだし』
ほむら『…別に私の趣味で、あの服になっているわけではないのだけれど』
まどか『でもかわいいよね、あの服も。わたしは好きだなぁ』
ほむら『あの姿、良く似合っているわよまどか。かっこいいわ』
まどか『本当? やったぁ!』
ほむら(まどか…)
(やはり、まどかには魔法少女のような荒んだ生活は似合わない。早くこんな日々に戻してあげないと)
(…あなたを運命から解放できなくてごめんなさい)
(…私、もっと頑張るから)
(今は少しの平穏しかあげられないけれど、この時間をあなたには楽しんでほしい)
(…)
ほむら『…ねえ、まどか』
まどか『なあに?』
ほむら『…この格好は、その』
まどか『うん』
ほむら『…やっぱり恥ずかしいのだけれど』
ほむら(あの恰好で外に出るのは嫌だといったのに!)
ほむら(しかも、猫耳付きってどういうこと!)
まどか『うんうん、かわいいよ。思っていた通り、猫耳が似合うなぁ』ニヤニヤ
ほむら『あの、その、このフリフリの服も…』
まどか『それも昔持っていた人形の服だよ! 長い黒髪で、真っ黒けっけだからこっちも似合うね!』
ほむら『や、やっぱり、鞄に戻るわ!』
まどか『えー、だめだよ。そうしたらほむほむがお店の中見れないよ?』
ほむら『どうして、私がこんな恰好を…』
まどか『だって、ほむほむ。ここ数日色んなところに行ったのに、「こんな姿じゃ出られない」って言って鞄から出てこなかったでしょ?』
ほむら『…当り前じゃない。人前で私と一緒にいるなんて、普通騒ぎになるわ』
まどか『だったら、いっそのことお人形さんみたいに着飾れば、生き物に見えなくなって外に出ても平気だと思って!』
ほむら『…うう』
まどか『大丈夫だよ。動かなければ人形にしか見えないし、それにバレてるならもう騒ぎになっているよきっと』
ほむら(そうじゃなくて! 恥ずかしいの、まどか!)
まどか『本当にお人形さんみたいでかわいいなぁ、うりうり』スリスリ
ほむら『ほ、頬を触るのは止めて…』
ほむら『貴方一人で楽しむべきよ。せっかくの休日なのだし…』
まどか『わたしは、ほむほむと一緒がいいなぁ。魔法少女のことばっかりで、こうやって二人で買い物することなんてなかったし』
ほむら『それは…』
ほむら(その気持ちは嬉しいけれど…)
ほむら『でも、代わりにあなたがおかしな子のように見られているわ』
ヒソヒソ、クスクス
まどか『わたしはそんなの気にしないよ』
ほむら『貴方が気にしなくても、周囲は気にするの。人形を抱えて買い物する中学生なんて、変だもの』
まどか『会話は念話でしているし、そこまでおかしくはないとおもうんだけどなぁ』
ほむら『…ねぇまどか。やはり私は鞄の中にいるべきよ。貴方に迷惑はかけられないわ』
まどか『ほむほむは、わたしと一緒は嫌?』
ほむら『…嫌よ』
まどか『うそ』
ほむら『…っ』
まどか『あはは。意外とわかりやすいよね、ほむほむ。結構、顔に出るし♪』
ほむら『そ、そんなこと…』
まどか『わたしね、こんなふうにお休みを過ごしたいな。それができるなら、周囲のことなんて気にしないよ?』
ほむら『でも、私がこんなふうに外にいたら休まらないんじゃ…』
まどか『ううん。一緒にこうやってお話しながらいろんな場所を回る方が、楽しいしお休みになるの』
まどか『休むことが今のわたしの仕事なんでしょ? だったら相棒としてほむほむにも協力してもらわないと♪』
ほむら『…最近、まどかは意地悪だわ』
まどか『でも、本当のことだもん』
ほむら(…私の負けね)
ほむら『…わかったわ。今日一日は外にいるわよ』
まどか『本当?!』
ほむら『ええ、まどかの好きにして頂戴。私も協力するから』
まどか『じゃ、じゃあ、念話じゃないおしゃべりを…』
ほむら『それはダメ。これ以上、まどかを残念な子にはできないわ』
まどか『えー。協力するって言ったのに…』
ほむら『限度があるわよ』
まどか『うーん。じゃあ、これからもっと色んなところまわろうね! えーと、商店街に喫茶店にアイス屋に…』
ほむら『そ、そんなに? 家に帰るのが遅くならないかしら…』
まどか『大丈夫だよ。今日は友達の家に行くから遅くなるって、お父さんに言ってあるから。じゃあ行こう!』
ほむら『…こうなったら、とことん付き合うわ』
まどか『えへへ、そうこないと!』
まどか(こうやって、帰りの時間も過ごすのも、すごく久しぶり)
まどか(…楽しんでもらえるかな?)
―夜
ほむら『すっかり暗くなってしまったわね』
まどか『うん。アイスおいしかったね! でもわたしの少し食べるだけで、本当に良かったの?』
ほむら『…体、小さいから。あんまり入らないの』
まどか(…あれ? なんか顔真っ赤)
ほむら『そ、それより。そろそろ帰りましょう。言ってあるとはいえ、あまり遅くなりすぎるのもよくないわ』
まどか『そうだね』
まどか『ねぇ、ほむほむは今日は楽しかった?』
ほむら『何故、私に聞くの? 貴方の休日でしょう。貴方がリフレッシュできなければ意味がないわ』
まどか『いいから!』
ほむら『…楽しかったわ』
まどか『本当?!』
ほむら『え、ええ…』
まどか『よかった!』
ほむら(まどかが楽しめれば、嘘でも「楽しかった」というつもりだったけど)
ほむら(でも、楽しかったのは本当よ。まどか)
まどか『ねぇ、ほむほむ。この街っていい所だよね』
ほむら『そうね。公共機関は充実しているし、商店街やショッピングモールもあって娯楽も充実していると思うわ』
まどか『他にも色々あるんだよ。緑の多い神社とか、魚がたくさんいる沼とか。猫ちゃんがよくいる空地とかもね』
ほむら『そうなの? 知らなかったわ』
まどか『地元の人じゃないと、行かない場所だからね。よそから来た人をわざわざ連れて行くような場所でもないし。
小さいころは、さやかちゃんとよく遊んだなぁ。色んなところに連れて行かれちゃった』
ほむら『容易に想像できるわね。その場面』
まどか『だからね。思い出たくさん詰まってるんだこの街には』
ほむら『…』
まどか『…わたし達、守れるかな?』
ほむら『守るわ。絶対に』
まどか『うん、そうだよね』
ほむら『ええ。何があってもね』
まどか『あ、そうだ』
ほむら『どうしたの?』
まどか『最後に、寄りたい場所があるんだけど…』
―ィーン ジャラジャラ ヴァキューン オンオン
ほむら『…ゲームセンター?』
まどか『うん』
ほむら『意外ね。まどかがこんなところに入るなんて』
まどか『ううん。わたしも入るのは初めて』
ほむら『え?』
まどか『なんだかね、たまの休日っていういい機会だから、初めてなことやってみたくなっちゃって』
ほむら『そう。まどかがしたいのなら、別にいいと思うけど』
まどか『うん。でも、色んなゲームがあるんだね。目が回りそう』
ほむら『そうね。私もあまり経験がないから、よくわからないのだけれど』
まどか『あ、でもあの太鼓のは知ってる!』
ほむら『まどかは、ああいうのをやってみたいのかしら?』
まどか『うーん。ちょっと違うかな。
なんか、こう、踊るみたいな感じのがあったと思うんだけど…』
ほむら『ああ、それなら私も知っているわ。足で踏む奴でしょう? この表示を見ると、あっちのほうにあるみたいだけど』
まどか『じゃあ行ってみようよ!』
ほむら『そうね。行ってみましょう…』
ほむら(あれ…? そういえばこのゲームは確か…)
杏子「よっ はっ ほっ」タッタタタ
まどか「あ、杏子ちゃん」
ほむら『…!』
ほむら『まどか、気付かれないうちにここから離れましょう。早く…』
まどか「杏子ちゃん!」
ほむら『ちょっと、まどか?!』
杏子「ん? なんだ『しかめまどか』か。ちょっと待ってくれ。よっ、と」タットッ
まどか「…鹿目まどかだよ、杏子ちゃん」
杏子「読めねーっつうの。『鹿目』で『かなめ』なんて。あ、アタシはバカじゃないぞ。知識がないだけだ」トットットッ
まどか「確かに、初対面で間違えないで呼ばれたことは少ないけど…」
杏子「ほれ、アタシじゃなくてアンタの名字が悪いんだ。ほいほいほいっと」タンタンタン
ほむら『…まどか。どういうつもり?』
まどか『だって杏子ちゃんに会えたんだよ? だったら一緒に戦ってくれるように頼んでみないと!』
ほむら『そう簡単に話を聞いてくれるとは思えないわ。加えて、こちらには交渉するための手札がない。協力を取り付けるのは難しいわよ』
まどか『でも、見かけたのなら話しかけないと。何事も自分から始めないと前に進めないよ?』
ほむら『準備というものがあるでしょう! あなたはどこまで愚かなの!』
まどか『大丈夫大丈夫、ちゃんと考えてあるから! ね?』
ほむら『…最近のまどかは、少し強引な気がするわ』
杏子「ガッ、と。おおー、自己ベスト更新! で、何の用だい?」
まどか「あ、その前に自己紹介するね! わたしは鹿目まどか。こっちはほむほむ」
ほむら「ほむ」
杏子「…ほむほむ、ねぇ? で、何なんだこいつは?」
まどか「ほむほむは、ほむほむだよ」
ほむら「ほむむ」
杏子「まあいいか。で、今日は何しに来たんだ?
この前の続きをやろうっていうんなら、相手になるぜ?」ギロリ
ほむら『やはり、佐倉杏子は私たちに対して敵意を抱いているわね。
まどか、ここは先手を打ってこちらから見返りを提示しましょう。
勝手な話になるけれど、この街の一部のエリアを杏子の縄張りに…』
まどか「わたし達と一緒にワルプルギスの夜と戦ってください!」
ほむら『マドカァー?!』
杏子「あん?何だって?」
ほむら『ちょっと、まどか!直球過ぎるわ!』
まどか『えー、でも最初に用件を伝えれば話が分かりやすくなるよ。
それに、マミさんたちに内緒で勝手に街を預けたりなんてできないし』
ほむら『そ、それはそうだけど…』
杏子「ワルプルギスの夜だぁ? そんなもんがこの街に来るのか?」
まどか「うん。それでわたし達、街を守るために特訓したり、仲間を集めたりしててね。
それで杏子ちゃんも仲間になってもらって、一緒に戦ってほしいの」
杏子「ふーん。一つ聞くけど、何でアタシなんか誘うんだ?
アンタにはあのアマちゃんだっているし、ベテランのマミもついているんだろ?」
まどか「さやかちゃんもマミさんもいるけど、それでも必ず勝てるとは限らないから。
相手は最強の魔女だし。少しでも油断していたら、たぶん勝てない。
でも、わたし達は絶対に負けられない。だから、やれることはやっておきたい」
まどか「それでね? 杏子ちゃんがいればワルプルギスの夜との戦いも、ぐっと勝てるようになると思うの。
強いし、ベテランだし、頼りになるし」
杏子「褒めても何もでねーぞ?」
まどか「ううん。本心だよ? 杏子ちゃんがいれば、ワルプルギスに勝てると思う。
だから、一緒に戦ってくれれば嬉しいなって」
杏子「…」
杏子「なるほど、ここに来た用件はよくわかった」
ほむら(会ったのは偶然なんだけど、ね)
杏子「あんたが、マジでワルプルギスの夜を倒そうとしているのも理解したよ」
まどか「うん」
杏子「アタシの力が必要だっていうのも、まあわかった」
まどか「…じゃあ!」
杏子「…で、なんでアタシがそんなことに協力しなきゃならないのかね?」
ほむら(…!)
杏子「こんな街守ったって、アタシには一文の得もないじゃないか。アタシは正義の味方じゃねぇ。ふざけんのも大概にしろ。
アタシはこれまで一人でずっとやってきたんだ。誰かとつるむなんてことはお断りだね」
「それに仲間があの甘ちゃんと、正義の味方気取りのマミだって?
なんでアタシがわざわざそんな奴らと組まなきゃいけないっつーの。そんなの死んでもやらねぇよ」
「ワルプルギスはアンタらで勝手にやってくれ。別に邪魔は死ねぇし、そんなのが来ているならアタシはとっとと自分の巣に戻るよ。
わかったら、とっとと帰れ。仲間探しは、他を当たりな」
ほむら(くっ…やはりこうなってしまうのね)
(こうなると、彼女は梃子でも動かない。協力を仰ぐのはもう無理…)
(まどかと巴マミ、それに魔女化を阻止できれば美樹さやか。現在一番最善なのは、三人でワルプルギスに挑むことね)
まどか「…」
まどか「…悪いけど、杏子ちゃん。そういうわけにはいかないの」
ほむら「ほむ?」
杏子「…あん?なんだって」
まどか「さっきも言ったけど、わたし達は負けられないの。だから杏子ちゃんには仲間になってもらうよ」
杏子「だから嫌だって言ってんだろ。あんまりふざけた事抜かすとぶっ殺すぞ」
ほむら「…!」サッ
まどか「ふざけてないよ。ワルプルギスの夜と戦うには杏子ちゃんの力が必要。だからね」
まどか「無理矢理にでも、来てもらうからね?」
ほむら『まどか?!』
杏子「…面白れぇ。アタシとやろうってか」
まどか「こっちも本気だからね。しかたないよ」
杏子「言っておくが、この前みたいに簡単に行くと思うんじゃねぇぞ? あん時とは違って、こっちの体調は万全なんだ」
まどか「わたしもしばらく休ませてもらったから、元気いっぱいだよ?」
杏子「手加減は無用ってか。アンタ、意外と武闘派だったんだな」
ほむら『まどかダメよ! こんなやり方は…』
まどか『でも、杏子ちゃんを仲間にいれるにはこれしかないみたいだし。大丈夫、ほむほむには迷惑かけないよ』
ほむら『でも…!』
杏子「さてと、じゃあどこでやるか。あんまり人目につかない場所、知ってっか?」
まどか「ううん、ここでいいよ」
杏子「! おいおい冗談だろ? みんないるんだぞ?」
まどか「わたしは、ここがいい」
杏子「ますます面白れぇな。他人なんかどうでもいいってか。魔法少女ってのはそうでなくちゃな」
まどか「うん。そんなこと、気にしてられないからね」
ほむら『まどか?!』
杏子「じゃあ、やるか」ジェムショウカン!
まどか「…うん」
まどか「わたしが、このゲームで杏子ちゃんに勝ったら仲間になってもらうからね!」
ほむ杏「は?(ほむ?)」
杏子「…お前何言っていんだ?」
まどか「わたしがこのゲームの杏子ちゃんのスコア塗り替えたら、仲間になってね」
杏子「何でそうなるんだよ?! つーか、戦う流れだろ! 今のは!」
まどか「わたし今、休暇中なの。だからほむほむに止められてて変身できないんだ」
杏子「ふざけんな! だからってゲームはねーだろゲームは。じゃあ後日戦うとか他にあるだろ!」
まどか「時間もないしゲームでいいよ。それに、こんなことで魔力使うの勿体ないし」
杏子「そりゃあ…、まぁ同意するけどよ」
まどか「あれ? お金ってどこに入れるんだろ。杏子ちゃん教えて?」
杏子「あ、ああ。それはそこだよ。ほら、その右手のあたり…」
まどか「あ、ここだね。ありがとう!」
ほむら『…まどか』
まどか「大丈夫。頑張ってみるよ! 見てたら簡単そうだったし」
ほむら『そうじゃなくて、佐倉杏子が本当にこんなことで仲間になるとでも?』
まどか『杏子ちゃん、負けず嫌いだから上手くいくと思うんだけどなぁ』
ほむら『…私は不安しか感じないわ』
杏子「言っとくけど、アンタがゲームやったって仲間にならねーからな。そこは忘れんなよ」
ほむら『ほら、既に落ち着いてテンション落ちているわよ?』
まどか「もしかして、杏子ちゃん自信ないの?」
杏子「…あんだと?」
まどか「あれだけ頑張って踊ってても、あんまり上手じゃないんだ。ならわたしでも勝てそうだね!」
杏子「おいてめぇふざけんなよ。このゲームはパンピーが簡単に遊べるようなゲームじゃねぇんだ。
譜面に即時対応しなきゃいけねぇし、運動神経だって必要になる。あんたみたいな鈍くさい奴にはまず無理だね」
まどか「じゃあ、杏子ちゃんは絶対に負けないと思っているんだね」
杏子「当り前さ。100%無理だ。天地がひっくり返ってもあり得ないよ」
まどか「じゃあ、もし杏子ちゃんのスコア越えたら仲間になってね♪」
杏子「それとこれとは話が違う!」
まどか「なーんだ、やっぱり自信が無いんだ」
杏子「おいてめぇ。さっきからふざけた事言ってんんじゃねーぞ」
まどか「だってねぇ。難しいとか言ってるのに、わたしに絶対に負けないって言えないみたいだし」チラッ
ほむら「ほむぅ」チラッ
まどか「もしかして、ただ動いているだけで実は下手なんじゃないかと思ったり…」チラチラ
杏子「…」イライラ
杏子「…いいじゃねェか。この勝負受けてやる。
アタシが負けるはずねぇんだ! アンタが勝ったら仲間になってやるよ!」
まどか「その言葉、確かに聞いたよ!」
杏子「はん。絶対に無理だね! 譜面に踊らされて、情けない姿をさらしな!」
まどか『やった! 言質を取ったよ、ほむほむ』
ほむら『…最近、あなたのことがわからなくなってきたわ、まどか。
というか、勝てる見込みあるの? 結構上級者よ、彼女』
ほむら(以前の世界で、杏子と親密になろうとやってみたけど、結局かなわなかったし)
まどか『たぶん、なんとかなるよ。わたし反復横跳び得意だし!』
ほむら『ようするに無計画なのね』
ほむら(まぁ、これで少しは親密になって話も出来るようになるでしょう。
そうなれば、再度交渉の道も開けるわ)
まどか「勝ったよ!」テロテロレーン
ほむら『嘘?!』
杏子「そ、そんな…アタシのスコアが…」
まどか「わたしの勝ちだよ。杏子ちゃん! 仲間になってね!」
ほむら『…あの、まどか。このゲームやったことあったの?』
まどか『前に少しね。久しぶりだから自信なかったけど、魔力で身体強化してたから何とかなったよ』
ほむら(ますます、まどかが分からなくなってきたわ)
杏子「てめぇ、猫被ってやがったな! どう見ても初心者じゃないじゃねぇか!」
まどか「ささ、杏子ちゃん約束約束」
杏子「こんなの詐欺だー!」
まどか「絶対に負けないっていったのは杏子ちゃんだよ? 言ったことには責任を持ってもらわないと♪」
杏子「ううう…」
まどか「約束、約束♪」
杏子「…」
ほむら(意外と責め立てるわね、まどか)
杏子「…ふふふ」
まどか「? どうしたの、杏子ちゃん」
杏子「アタシは確かに勝負に負けたら仲間になるといった。
だが、誰も一回勝負とは言ってない! まだ勝負は続いているぞまどかー!」
まどか「! そ、そんな…」
杏子「よって、勝負は二回戦だ! 0-1で勝った気になっているんじゃねーぞ!」
まどか「こんなのってないよ…あんまりだよ…」
杏子「最初に取り決めをしっかりしなかったアンタが悪い。全面的にそっちの要求を呑んできたんだから、こんどはこっちの要求を聞いてもらうぞ!」
まどか「ううう、こうなったらとことんやるよ! 負けないよ、杏子ちゃん!」
杏子「こっちも今ので目が覚めた。手加減はしねぇぜまどか!」
まどか「じゃあ次はUFOキャッチャーね! どっちが早く人形取れるか勝負だよ!」
杏子「おもしれぇじゃねーか。アタシのテクニック見せてやるよ!」
ほむら(すっかりのせられているわね、杏子)
ほむら(それにしても、ゲームセンターではしゃぐまどかも可愛いわ)ホムホム
ほむら(それから、まどかたちはゲームセンターで勝負をし続けた)
ほむら(最初は勝敗を数えていたけど、途中からヒートアップして忘れてしまったらしい)
ほむら(まぁ、まどかは休日を楽しんでいるみたいだし、良しとしましょう)
杏子「…あー、疲れた」
まどか「はい、杏子ちゃんこれ」
杏子「何これ? コーラ?」
まどか「レモネードだよ」
杏子「しらねーなぁ…。あ、うまい」
まどか「わたし達はお茶だね。はい、ほむほむ」
ほむら「ほむほむ」クピクピ
杏子「…なんか今の今までスルーしてたけど、そいつ結局何なんだ?」
まどか「魔法少女だよ。わたし、ほむほむの力借りないと変身できないんだ」
杏子「だからあんとき合体したのか。変なの」
ほむら「ほむっ!」ペシ
杏子「…」ヒョイ
ほむら「むっ!」コロリン
まどか「はいはい。落ち着いてねー、ほむほむ」ヒョイショ
ほむら「むむむ」
杏子「しっかし、契約もしないで魔法少女になるなんてねぇ。何考えているんだか。
どうせやるなら、キュゥベえに頼んで願いを叶えてもらった方が得じゃねぇの?」
まどか「ふふっ、さやかちゃんと同じこと言うんだね杏子ちゃん」
杏子「んなっ! あんなアマちゃんと同じなんて。畜生、屈辱だ」
まどか「ありがと、杏子ちゃん。でもいいの。わたしは、ほむほむと一緒に戦えればそれでいいから」
ほむら「ほむ…」
杏子「…」
杏子「なぁ、真面目な話。なんでアンタは魔法少女なんかやってるんだ?」
まどか「杏子ちゃん?」
杏子「アンタはどう考えても、こんなことやるような人間じゃない。平和に暮らせている人間さ」
「この仕事はね、誰にだって務まるもんじゃない」
「アンタは幸せに暮らせている人間だよ。毎日美味いもん食って、たぶん幸せ家族に囲まれてる」
「そんな何不自由ない暮らしをしてる奴が、魔法少女なんてやることはねぇんだ」
「命を危険に晒すってのはな、そうするしか他に仕方ない奴だけがやることさ。そうじゃない奴が首を突っ込むのはただのお遊びだ。おふざけだ」
「もし、ただの気まぐれでやっているんだとしたらそんなのアタシが許さない。いの一番にぶっ潰してやる」
「だから聞かせてくれ、アンタはなんでわざわざこんなことしてるんだ?」
まどか「…」
まどか「わたしね、どうしても守りたいものがあるんだ」
杏子「守りたい? 誰を。それともこの街か?」
まどか「両方だよ。何があっても助けてあげたいし守りたい。
それがわたしが魔法少女になる理由なんだ」
杏子「つまるところ、他人の為ってか」
杏子(こいつも勘違い野郎か。昔の、アタシみたいな)
杏子「誰かを助けたくて、自分の身を削って、犠牲にして誰かを助けるってか。まるで正義のヒーローだね」
まどか「…どうなんだろ。そんな綺麗なものじゃないと思うよ」
杏子「?」
まどか「わたしね、色んな人に迷惑かけて生きてきたって最近分かったんだ。
心配させたり、言うこと聞かなかったり、知らないうちに約束破ったり」
「最初は罪滅ぼしのつもりだったのかな。でも、そんなこと誰も望んでないし、幸せにならないってことも分かったし」
「だからね、せめて助けたいって思ったんだ」
杏子「…」
まどか「わたしを助けてくれた人たちが、不幸になるのは嫌。そんなの我慢できないし、見たくもない。
だからこれはきっと自分の為なんだと思う。そんなことになるのがどうしても我慢できないの。
そうしなきゃ気が済まないし、たぶん一生後悔する。そんなの絶対に嫌」
「人助けっていっても、結局はそうせずにはいられない自分のため。そうしなきゃ、そのままの現実にわたしは耐えられないんだ。
だから、全然綺麗でも何でもないよ。助けるっていう自分のやりたいことを、自分勝手にやっているだけだから」
「でも、それがわたしの願いなの」
杏子「…そうか」
まどか「うん。長くなっちゃったね」
杏子「魔法少女なんてそんなもんだよ。みんな自分の為に戦うんだ。アンタ一人がそんな風に戦っているわけじゃないよ」
まどか「やっぱり、杏子ちゃんは優しいなぁ」
杏子「優しくなんかねぇよ。ホントのこと言ってるだけだ」
まどか「それでも、ありがと」
杏子「…」
杏子「…ワルプルギス」
まどか「え?」
杏子「協力してやってもいいぜ」
まどほむら「!」
まどか「本当?!」
杏子「ああ、気が変わった。ただし見返りはちゃんともらうけどな」
杏子(こいつは自分が何を願って、どういう気持ちから動いているか分かっている)
その上で他人の為に行動する、か)
(アタシもそんな風できていればね…)
まどか「やったやった! ありがとう杏子ちゃん!」
杏子「おい、抱きつくな!ていうか人の話聞いていたか? 見返りくれないと動かねーぞ?」
まどか「あ、そ、そうだね。何がいいのかな」
杏子「アタシとしては、この街の管轄を渡してほしいんだけどねぇ…」
まどか「それはダメ。わたし一人じゃ決められないし。グリーフシードは?」
杏子「よっぽど多くないとなら自分で稼げるし、それにたぶんワルプルギスで使っちまうしなぁ…」
まどか「うーん…」
杏子「まぁ、今すぐじゃなくていいよ。こっちもアンタが払えそうなもん考えておくし」
まどか「ごめんね、杏子ちゃん」
杏子「いいっての。ちゃんとくれれば文句は言わねーから」
まどか「ありがと。あ、そうだ!」
杏子「え?」
まどか「杏子ちゃん、こっちに来て! ほむほむも」
杏子「え? ちょっ、おいおい」
ほむら「ほむほむ?」
まどか「じゃあ、3人でプリクラ取ろうよ!」
ほむ杏「…」
杏子「何が『じゃあ』なんだ?」
まどか「せっかく仲良くなったんだから、その記念!」
杏子「…まあ、いいけどよ」
まどか「じゃあ入って入って!」
杏子「アンタは客引きか」
杏子(そういや、アタシ撮ったこと無いな)
ほむら(まどかとプリクラ、まどかとプリクラ…)ホムホム
まどか「周りから見えないから、ほむほむもきちんと表情作ってね!」
ほむら『表情って…ど、どうすれば』
まどか「ニコって笑うの。ほらほら杏子ちゃんも」
杏子「あ、アタシもか?」
ほむら『…』
まどか「ほむほむ、表情が硬いよ!」
杏子「アタシこーいうのはなぁ…」
まどか「二人とも頑張って! ほら写すよ!」
ほむら『努力するわ、まどか』
まどか「その言い方が既に固いよ…」
杏子「もう写すんじゃないのか? ボタンはこれか?」
まどか「え? あ」パシャ
まどか「うん、いいのが撮れたね!」
杏子「三回も撮りなおせばそりゃいいのが撮れるだろ…」
ほむら「ほむぅ…」
杏子「…お前も苦労してそうだな」
まどか「はい。これ杏子ちゃんの分!」
杏子「ありがとよ」
杏子(うわー、なんかこっ恥ずかしいな)
まどか「じゃあこれで、魔法少女同盟結成だね!」
杏子「おー」
ほむら「ほむー」
まどか「…二人ともなんかやる気ないよ」
杏子「いや、どう反応したらいいかわからなくてな」
ほむら「ほむほむ」
まどか「もー、こういうのはとにかく気合を入れるんだよ! 最初の一致団結なんだから」
杏子「あー、そうなのか?」
ほむら「ほむむ」
まどか「じゃあ、もう一回。魔法少女同盟結成!」
杏子「おー!」
ほむら「ほむー!」
まどか「よし!」
杏子(そういえば、誰かと一緒にいるっていつ以来だったかな)
杏子(…まぁ、たまにはこういうのも悪くないか)
まどか「それじゃあ、これからのことなんだけど」
ほむら『待って、まどか。今日はもう遅いわ。
色々話すには時間がかかるし、詳しいことは明日にしましょう』
まどか「え? わ、もうこんな時間。そうだね。ほむほむ」
杏子「ん? どうした?」
まどか「ごめん杏子ちゃん。話そうと思ったけど、今日はもう時間が無くて」
杏子「ああ、普通なら家にいる時間だもんな。いいよ明日で」
まどか「うん、ありがと。それで杏子ちゃんっていつもどこにいるのかな」
杏子「まぁ基本街をうろうろしているけど。そうだな、夕方はこのゲーセンにいることにするよ。
そうしたほうが探す手間も省けるだろ」
まどか「うん、そうだね。じゃあ、また明日!」
杏子「おう、じゃーな」
まどか「明日は、マミさん達も連れて来るよ!」
杏子「ちょーっと待った―!」
まどか「え?」
杏子「悪い、ちょっと付いていくわ」
―帰り道―
杏子「とにかく、すぐにはアタシをマミ達に会わせるべきじゃねぇと思う。
アタシは協力するつもりだが、あっちがそう簡単に信じてくれるわけねぇからな」
まどか「でも、協力してくれるなら早めにみんなで動けるようにしないと」
杏子「それは正論だが、世の中はそんなに上手くねぇよ。
昨日まで主義が違った連中と一緒に戦えるほど、みんな物分りがいいとは限らないさ」
ほむら『まどか、私も杏子の意見に賛成するわ。
すぐに直接会わせないで、私達がクッションになって少しずつ関係を良くしていきましょう』
まどか「…そうだね」
杏子「特にあの青いの。あいつはアタシに対して相当な敵意を持ってたからな。
会っていきなり斬りかかられちゃ、たまんないよ」
ほむら(まぁ、そうなってもおかしくないわね)
まどか「さやかちゃんは正義の味方を目指しているから。きっと、あのときの杏子ちゃんが許せなかったんだと思う。
でも杏子ちゃんって優しいし、それがわかればきっとさやかちゃんだって誤解を解いてくれると思うんだ」
さやかちゃんも優しいから。
杏子「正義の味方ねぇ。ほんとバカだなソイツ。そんなの、できるわけねぇのに」
まどか「ううん、それがさやかちゃんの凄いところなんだよ。
正義の味方を信じて、無理やりにでも自分がそうなれるように努力できる。
わたしじゃ、たぶんできない。自分がそんな風になれるとは到底思えないから…」
杏子「本気で信じているのかそいつ?」
まどか「うん。だから凄いんだよ。さやかちゃん、頑張ってほしいな。本当に正義の味方がいたら、みんな幸せになれるもん」
杏子(さやか…か)
まどか「あ、杏子ちゃんわたしの家ここなんだ」
杏子「お、そうか。じゃあなんかあったら、アタシはここに来るようにするよ」
まどか「じゃあ、おやすみ。杏子ちゃん!」
ほむら「ほむ!」
杏子「おー。また明日な」
杏子「…」スタスタ
杏子「…キュウベエ、いるか?」
QB「何だい杏子?」
杏子「美樹さやか。知ってるだろ?」
QB「さやかか。最近はマミと一緒に魔女狩りをしているね。使い魔も狩っているみたいだけど、何もしなくていいのかい?」
杏子「そのさやかについて知りたいんだ。どんな奴なんだ?」
QB「さやかに興味があるのかい?」
杏子「ああ、ちょっとね」
QB「まあ、僕の知っている範囲でいいなら答えるよ」
杏子(正義の味方を目指している、魔法少女か…)
杏子(…んなもん無理に決まってるのに)
QB「彼女はね…」
―朝―
まどか『何とか、杏子ちゃんを誘うことができたね』
ほむら『ええ。正直、ここまで上手く事が運ぶとは思わなかったわ』
まどか『杏子ちゃんだっていい人だもん。そんなに不思議じゃないよ』
ほむら『と、なると後は巴マミと美樹さやかにどうやって話を切り出すかが問題ね』
まどか『正直に話す…はやっぱりだめかなぁ』
ほむら『私達は佐倉杏子のことを知っているけど、マミ達は彼女を知らないわ。
最悪、私達が騙されていると疑われてさらに関係が悪化するでしょうね』
まどか『なにかいい方法はないかなぁ…』
まどか「あ、仁美ちゃんさやかちゃん、おはよう!」
仁美「まどかさん、おはようございます」
さやか「おーっす、まどか」
ほむら『とにかく、今はまだ内緒にしましょう。特に美樹さやかには、ね』
まどか『…うん』
さやか「まどか? なんか元気ないなー、もしかしてまた寝冷えでお腹冷やしたのかー?」
仁美「そういえば、以前もそんなことがありましたわね」
まどか「ち、ちがうよさやかちゃん!」
さやか「まどかは子供っぽいもんね」
まどか「だから違うってば!」
さやか『大丈夫、まどか? ちゃんと休んでる?』
まどか『うん、大丈夫だよ。さやかちゃんこそ魔女のほうは上手くいってる?』
さやか『マミさんがついていてくれてるから、こっちは平気だよ。昨日も一匹倒したし』
まどか『すごいなぁ、二人とも』
さやか『へへ。でも一時期一人で戦ってたアンタほどじゃないって』
さやか『見てなよ!この調子で強くなって、まどかもみんな守れるようになるからね』
さやか『そうすれば、あの赤い奴にだって…』
まどか『さやかちゃん…』
ほむら『…』
仁美「あら、あれは…上条君?」
さやか「え? あ、恭介だ」
上条「…」ウイセ ホイセ
まどか「松葉杖で歩いているね」
仁美「すごいですわね。退院してまだ日が経ってないのに、一人で登校だなんて」
さやか「リハビリを兼ねてるからね。あんまり楽とかしたくないんだって」
仁美「そうなんですか。でも、大丈夫なんでしょうか…」
さやか「病院でもずっと訓練してたから、いきなりってわけじゃないよ。
本人も自分のことはわかっているだろうし、無理はしてないと思うな」
まどか「でも、やっぱり大変そうだなぁ」
さやか「…」ウズウズ
まどか「…」
まどか「さやかちゃん、上条君のとこに行ってあげて」
さやか「え? ど、どうしたのまどか?」
まどか「いくら大丈夫そうに見えても、まだ退院したばっかりなんだから大変なはずだよ。
少しくらい、手伝ってあげてもいいと思うな」
仁美「そうですわね、わたしもそう思いますわ」
さやか「…いいの?」
まどか「うん。わたし達は先に行ってるよ。行こう仁美ちゃん」
仁美「ええ。上条君のこと、助けてあげてください。さやかさん」
さやか「…ありがと、二人とも。わたしちょっと行ってくるっ!」ダッ
オーイ、キョウスケー ア、サヤカ
まどか『…さやかちゃん。告白、上手くなかったんだって』
ほむら『そうらしいわね』
まどか『でも、上条君との関係はそんなに変わってないみたい。
告白、してよかったんだよね?』
ほむら『そんなことは、本人にしかわからないわ。
でも、心残りが減ったのは確かでしょう。これで巴マミとの訓練にも集中してくれるといいのだけれど』
まどか『もー、さやかちゃんはいつでも本気だよ』
ほむら『どうかしらね』
ほむら(…思いは実らなかったけど、美樹さやかの精神はとても安定している)
(彼女の魔女化は回避できた…?)
(いえ、油断は禁物ね。もっと様子をみないと何とも言えないわ)
(でも、このまま上手くいけばワルプルギスの夜に4人で対抗できる)
(もしかしたら、今回で…)
まどか「あ、さやかちゃん肩貸してる。あれじゃあ男の子同士みたいだなぁ」
ほむら(まどか…)
(もしかしたら、ようやく私、貴方との約束を守れるかもしれないよ?)
(だから、ごめん。もう少しだけ、私に力を貸して)
(…お願い)
―放課後―
さやか(ふー、今日もマミさんとの特訓は辛かったな)
(でも、使い魔ならあたし一人でも楽勝になってきたし、魔女にだってそこそこやれるようになってきた)
(マミさんからは、まだ色々注意されるけれど…)
(でも、あたしだって強くなっているよね!うん。これなら、ワルプ何とかとかいうやつも何とかなるかも!)
(あたしとマミさんとまどか。3人もいるんだもん。勝てるに決まってんじゃん!)
(3人もいれば…)
さやか(…おいおい。違うってあたし)
(何でナチュラルにまどかを戦わせようとしてるのよ)
(まどかは本当はこんなことするような子じゃないんだから、早く解放してあげないと)
(でも、まだあたしはまどかより強くないし…。それにワルなんとかも二人じゃきついかも…)
(ううん。だったら、あたしがもっと強くなればいいんだ! それこそワルを一人で倒せるくらい!)
(よーっし。気合入った! 明日からも頑張るぞー!)
―上條宅前―
さやか「…」
「…」
「…」
さやか(恭介…)
さやか(恭介…元気かな)
(やだな、恭介のことは決着がついたはずなのに…何で)
(告白もしたし、実らなかったけどそれで関係が悪くなったわけでもない)
(…じゃあ、なんで?)
(なんで、あたしは毎日ここに来ているの…?)
―あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?―
さやか(!)
(違う違う違う違う違う違う違う違う!)
(あたしは後悔なんかしていない――!)
(見返りを求めてなんか…絶対に)
(あたしは正義の味方になるんだ!)
(恭介やまどかやみんなを守れる存在に――!)
(褒められたり、尊敬されたいわけじゃない!)
(ただ、みんなを守れればそれで…)
???「何だ。やっぱりこんな所に居やがったか」
さやか「?! あんた!」
杏子「結局、あきらめずきれずにストーカーかよ。情けない」
さやか「杏子――!」
さやか「なんでアンタがこんなところにいるのよ?」
杏子「この家の坊やなんだろ? アンタが契約した理由って」
さやか「なんで知ってんのよ」
杏子「キュゥべえから聞いた。聞けば大抵のことは話すからな、アイツ」
さやか(後で一発殴ってやる)
杏子「にしても、まどかの奴が凄いっていうからてっきりアタシの眼鏡違いかと思えば。
何のことはねェ。ただの勘違い野郎じゃないか」
さやか「――! あんた、まどかに何かしたの?!」
杏子「別になにもしちゃいねぇよ。ただ話す機会があったから、アンタのことを聞いただけだ」
さやか「まどかが…?」
杏子「そ。本気で正義の味方を目指してる凄い奴だ…ってな。
それが見てみりゃ、自分が何が欲しいかも分からない奴なんて。まどかはあんまり人を見る目がないな」
さやか「…どういうことよ」
さやか(こいつ…気安くまどかまどかって…!)
杏子「ここの坊やに愛してもらいたんだろ?」
さやか「――!」
杏子「そうしてほしいなら、最初からそうなるように願えばよかったんだ。
それを回りくどく他人の為に願いなんて使いやがって。勿体ない」
さやか「違う! あたしは恭介にそんなこと望んでない!」
杏子「じゃあ、なんでこんな場所で呆けてるさ? 本当は愛が欲しいんだろ、坊やの」
さやか「違う違う!」
杏子「まったく…。いいか?魔法なんてのは徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるためのもんなんだよ。
他人のために使ったところで、ロクなことにはならないのさ。
巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」
―あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも―
さやか「…!」
杏子「その様子だと心当たりはあるみたいだね。じゃあ、馬鹿なのはアンタだけか」
さやか「うるさい!」
杏子「せっかくの先輩の忠告も聞かないなんて、何考えてるんだか。ホント見ててムカつくね」
さやか「うるさいうるさいうるさい!」
さやか「あんたにあたしの何がわかるっていうのよ!
あんたなんか自分の為に他人を犠牲にする最低の人間じゃない!
あたしはあんたみたいなやつや魔女から、理不尽からこの街の人を守るために魔法少女になったんだ!
その気持ちが間違いだなんてあるはずがない!
あたしは自分のために力なんて使わない! 誰かの為にこの力を使うんだ!
それの何が悪いっていうのよ!」
さやか「…」ハァハァ
杏子「誰かの為、ねぇ。自己犠牲は立派だけど、その先には何もないよ」
さやか「…」
杏子「それをしたところで誰もアンタを褒めたりしないし、坊やもアンタを愛したりはしないよ」
さやか「うるさい! あたしはそんなもの望んでない!」
杏子「望んでるじゃないのさ。ここでこうやって、捨てられた犬みたいに坊やの家を眺めているのがいい証拠だよ」
さやか「これは確認だ! あたしが何を守りたくて魔法少女になったのか。それを忘れないためにここに来ているの! そんな理由じゃない!」
杏子「何だ。もう、そんなことをしないと忘れそうなのか」
さやか「なん…!」
杏子「その程度で忘れてしまう決意なんて、そもそも決意じゃなかったんだよ。
もう一度、よく考えてみることだね。自分が本当は何を望んでいたのかを、さ」
さやか「…」
さやか「…あんた。なんなのよ」
杏子「あん?」
さやか「いきなり現れて、勝手なこと言って、人のことバカにして。
何がしたいのよ。気に入らないなら、あの時みたいに戦えばいいでしょ?」
杏子「…さぁ、何なんだろ。言われてみりゃ自分でもよくわからないな」
さやか「…」
杏子(ああ、そうか)
(こいつ、昔のアタシに…)
杏子「…悪い。少し話をさせてくれ」
さやか「…なによ?」
杏子「アタシの昔の話さ。アンタみたいに、誰かの為に願いを使った大馬鹿者の話だよ」
さやか「――え?」
杏子「ちょいと、長くなる。場所を変えるか」
―歩道橋―
杏子「これがアタシの顛末さ。全く我ながら何もわかっちゃいなかったと思うよ」
さやか「…そんな」
杏子「世の中ってのは、意外とバランスが取れていてね。本来あるはずのない奇跡が起きれば、その分どこかで絶望が起きるのさ」
杏子「アタシの末路がいい例だよ」
さやか「…」
杏子「だから願い事なんてのは自分自身のために使うべきなんだ」
「アタシ達の身勝手な奇跡が引き起こした絶望に、他人を巻き込むなんてことはしちゃいけないんだよ」
「他人の都合を知りもせず、勝手な願いごとをしたせいで、結局誰もが不幸になった」
「その時心に誓ったんだよ。もう二度と他人のために魔法を使ったりしない、この力は、全て自分のためだけに使い切るって」
さやか「…それで?」
杏子「アンタもアタシも、もう願ったことは取り消せねぇ。
でもこれからは変えることができる。後悔する前に、そんな生き方は変えるべきだ」
さやか「あたしに、あんたみたいになれって?」
杏子「ああ。といってもアタシの真似をしろってわけじゃない。
考えを変えてほしいんだ。アンタは今も間違い続けてる。見てられないんだよ、そいつが。
昔のアタシを見ているみたいでさ」
さやか「…まどかには」
杏子「ん?」
さやか「まどかには言ったの? そのこと」
杏子「アイツは理解していたよ、そのことは」
さやか「…え」
杏子「願いも力を使うことも、全部結局は自分のためだってな。
アタシが言うまでもなかった。見た目は普通だが、意外とするどいねアイツは」
さやか「まどかが…」
杏子「だからさ。アンタも開き直って好き勝手にやればいい。誰かの為じゃない。自分の為に力を使うべきなんだ。
もう、無理するのは止めなよ」
さやか「…」
さやか「…無理なんてしていない」
杏子「さやか?」
さやか「ごめん。あんたの事、色々と誤解してた。謝るよ。
でもね、あたしは人の為に祈った事を後悔してないし、無理なんてしていない。
その気持ちを嘘にしない為に、後悔だけはしないって決めたの。これからも」
杏子「バカ野郎! その先には何もねェって言ってんだろ! 誰もお前に感謝なんてしないし、振り向きもしない。
そんな奴らの為に、なんで自分を犠牲にする必要がある!」
さやか「それでもいいの。それでもあたしはこの力をそんな風に使いたい。誰かを守る為に。
それが、あたしの使命だと思うもの」
杏子「お前…」
さやか「だって、そうじゃなきゃ誰が魔女と戦うっていうのよ。
魔女と戦えるのは魔法少女だけ、だったらあたしたちが戦うしかないじゃない。
それならあたしは、誰かを守っているって考えながら戦いたい。
自分の為じゃない。放っておいたら魔女にやられてしまう誰かを助けるために、ってね」
杏子「…」
さやか「そう、あたしが守らなきゃいけないんだ。魔女からまどかや恭介たちを…」
杏子「…!」
杏子「…この街にはマミやまどかだっているじゃねぇか。アンタがどうして街を守る必要がある」
さやか「なによ、まだ文句あるわけ?」
杏子「質問に答えろ」
さやか「ここ最近、この街には魔女が多いんだって。アンタも知ってるでしょ。
マミさんは本調子じゃないし、まどかは今は休業中。あたしがやるしかないじゃない」
杏子「じゃあ、ここら辺の魔女が少なくなったら止めろ。マミやまどかがいれば十分だろ」
さやか「言ったでしょ、わたしは守るためにこの力を使うの。魔女が少なくなったって関係ない。
それにマミさんはともかく、まどかにこんなことはさせられないの。まどかは本当は戦えるような子じゃないんだから」
杏子「マミは優秀だ。本当なら一人でもこの街は守れるよ。だから、アンタは自分の為に力を使えばいいじゃないか」
さやか「わたしはあんたみたいにできないし、やらない。
わたしはわたしのやり方で戦い続けるよ。邪魔になるなら、前みたいに殺しに来ればいい。
負けるつもりはないけど」
杏子「…どうしてそこまで、守ることにこだわるんだ?」
さやか「しつこいわね。それができる力を持ってるんだから、あたしがやらなきゃいけないの。
「あたしがまどかや恭介たちや街のみんなを…」
杏子「…」
さやか「…なによ、何がそんなに気に入らないの?」
杏子「…」
さやか「もうあんたのやることに口出ししたりなんてしないよ。
そのかわりあんたもわたしのやることに何も言わないで。それが互いの為ってもんでしょ。
だから邪魔しないで」
杏子「…気に入らねぇ」
さやか「あたしも認められないよ、あんたのこと。でもお互い様でしょ」
杏子「ああ、ホントに気に入らねぇ」
杏子「さやか。何、まどかのこと見下してるんだ?」
さやか「…え?」
杏子「さっきから聞いてりゃ、守る守るって。そんなにまどかは弱いのかよ?」
さやか「あ、当たり前でしょ。そもそもまどかが魔法少女になって、戦っているのがおかしいのよ。
あの子はそんなことするような子じゃないんだから」
杏子「アタシは魔法少女になる前のアイツを知らないよ。さやかが言うなら、前のアイツはそんな人間だったのかもしれないさ」
杏子「でも、今のアイツのことならわかる。アイツは強い人間だよ、さやか」
さやか「え?」
杏子「魔法少女としてはもちろん、覚悟や気概もアンタより上だ。わざわざ守る必要なんてないよ」
さやか「そんなことないわよ! だってまどかはちょっと危なっかしくて、優しくて、でも自信がないような子で…」
杏子「それは昔のアイツだろ? 今はそんな奴じゃない。
あのちっこいのと一緒に力も持っているし、しっかりした気持ちも持ってる」
杏子「知ってるだろ? 少なくとも、実力がまどかの方が上だって気付いてるはずだ」
さやか「それは…」
(げっ…どうやって戦っているんだが全然わかんない)
(あたしって、こんなに力不足なの…?)
杏子「まどかは一流の魔法少女だ。誰かに守られるような奴じゃないよ」
さやか「そんなことない! まどかは変わらない、昔のままの優しい子だ!」
杏子「おい。何で否定するんだよ?
良いことじゃねぇか。アンタが守らずとも強くなったんだから」
杏子「それとも、そうなったら都合が悪いことでもあるのか?」
さやか「そ、それは…」
杏子「…やっぱり、そうだ」
「守る守る守る。そうさアンタはまどかを守りたいのさ」
「それでもまどかが魔法少女じゃないのなら、納得できるよ。戦えねぇから魔女にやられちまうかもしれないしな。
でも実際はそうじゃねぇ。魔法少女としてもアイツの方が強いのに、アンタはまどかを弱いって言っている」
「守るっていうのは、強い奴が弱い奴に対してすることさ。
だから、守るって考えるやつは、そいつのことを弱い奴って考えてる」
「アンタは、アイツを弱い人間だと思ってる。本当は、まどかの方がアンタよりも強いっていうのに。
アンタは自分より強いまどかを下に見て、優越感に浸ってるんだよ」
「ふざけんな」
「友達なのに、見下してんじゃねぇよ! ふざけんな!」
さやか「なん…!」
杏子「街を守るなんて言っているのも同じ気持ちだ! 祈りを捧げた坊やのことも!
守ってやることで、自分がアイツらより上だと思いたいだけなんだ!」
さやか「違う! あたしは…」
杏子「何が違って言うんだよ。まどかを見下してんじゃねえか!」
さやか「そんなのあんたの想像じゃない! 勝手に決めつけるな!」
杏子「見下している以外に何があるんだよ。『助ける』とか『一緒に戦う』とかならまだわかる。それなら対等だからな。
それを『守る』しか言わねーで、下にしか見てないじゃないか。他に何があるっていうんだよ!」
さやか「そうじゃない! わたしは…」
杏子「実力もないくせに、強くなったと勘違いして挙句に友達を見下しやがる…!」
杏子「さやかは…最低だ」
さやか「…!」ブチッ
さやか「この…言わせておけば!」
杏子「イラつてんのはこっちのほうだ。アタシはアンタみたいな奴が大っ嫌いだ」
さやか「あんたに…あたしとまどかの何がわかるっていうのよ」
杏子「まだ友達面する気かよ。この恥知らずが」
さやか「絶対に…お前だけは絶対に許さない。今度こそ必ず…!」ジェムショウカン
杏子「んなもんこっちのセリフだ。その腐った性根を叩き直してやる…!」ジェムショウカン
まどか「二人とも、待って!」
さや杏「まどか?!」
まどか「ダメだよ、こんなのダメ!」
さやか「まどか、どうしてここに…」
マミ「美樹さん、止めなさい!」
さやか「マミさんまで…」
マミ「鹿目さんから連絡があったの。ほむほむが貴方たち二人が一緒にいるところを見かけたって」
さやか「マミさん、止めないでください!
こんなやつは絶対に許しちゃいけないんだ…!」
マミ「美樹さん、落ち着いて。こんなところで戦ったら人目に付くし、周囲に被害が出るわ。
それは貴方が望むことではないでしょう?」
さやか「でも…っ!」
まどか「杏子ちゃん、止めて!」
ほむら「ほむむむっ!」
杏子「うるせぇ! 止めんなまどか、ほむほむ!」
まどか「ダメだよ! さやかちゃんも杏子ちゃんも!
こんなこと、放っておけるわけないよ」
杏子「こんなやつに期待したアタシがバカだった。
一回、本気でぶん殴らねェと気が済まないんだよ!」
まどか「杏子ちゃん、落ち着いて」
杏子「まどか、コイツお前のことどんな目で見てんのか知ってんのか。
友達をバカにするような奴はアタシは…!」
まどか「杏子ちゃん…」
さやか(なんで…、なんで、まどかはあいつと一緒にいるの?)
(なんで、あいつと友達みたいになっているの?)
(あいつはまどかを襲ったんだよ。もうそんなことも忘れたの?)
(何考えているのまどか。そいつは、敵だよ。最低な奴なんだ。分かってるでしょ?!)
マミ「美樹さん? 美樹さん、聞いてる? 美樹さん!」
さやか「…」ギリッ
まどか「杏子ちゃん。お願いだから…!グイッ
杏子「邪魔すんな!」バッ
まどか「きゃ…!」
ほむら「ほむ?!」
さやか「! まどか!」ダッ
マミ「ちょっと、美樹さん?!」
さやか「まどかに何するんだ!」ガシッ
杏子「てんめ…離れろ!」ジタバタ
さやか「あんたなんか…あんたなんか!」グイグイ
杏子「友達面してんじゃねぇよ!」バタバタ
さやか「黙れ!」ガッ
杏子「! アタシのソウルジェム! テメッ、返せ!」
さやか「こんなもの――!」
ポイッ
まどほむら「!」
ほむら(杏子のソウルジェムがトラックに…!)
杏子「アタシのソウルジェムが!」
マミ「美樹さん! なんてことを…」
さやか「これであんたは、魔法少女になれない…!」
もう、魔法少女にはなれないんだ!」
杏子「この――! …?」
杏子(え…?)
杏子「や…ろ……う―――」
ほむら(マズイ!)
ほむら『まどか、へんし「ほむほむ! 変身するよ!」
ほむら(…え?)
まどか「早く!」
ほむら『え、ええ!』カッ!
マミ「鹿目さん?!」
まどか「マミさん。わたしがソウルジェムを取り戻します!
だから、さやかちゃんと杏子ちゃんをお願いします!」ダッ
マミ「え? ええ!」
ほむら『まどか。まだ間に合う。時間停止を繰り返して追いつくわよ!』
まどか「うん!」
ほむら(…それにしても)
ほむら(さっきのは、一体…)
さやか「…ちょっとなによ」
杏子「…」
マミ「…!」
さやか「何、急に寝てんのよ。ふざけてんの?」
杏子「…」
マミ「そんな…どういうこと?!」
さやか「何とか言いなさいよ。また、そうやってあたし達を油断…」
マミ「美樹さん!」
さやか「…」ビクッ
マミ「あなた…、佐倉さんに何をしたの?!」
マミ「彼女…死んでるじゃない!」
さやか「…え?」
ブロロロロロロロロ
カシャ カシャ カシャ カシャ
まどか「見えた!」
ほむら『荷台の上ね。時間を止めている間に登って回収するわよ』
まどか「うん!」カシャ
ほむら『道路に落ちて、車に轢かれなかったのが不幸中の幸いね。そうなっていたら…』
まどか「うん、考えたくないよ」ノボリ
ほむら『…』
まどか「? どうしたの、ほむほむ」
ほむら『いえ、何でないわ』
ほむら(やっぱり…。でもどういうこと?)
ほむら(まどかは知らないはず。…一体どこで?)
ほむら(キュゥべえ? でもそんなことをする理由が…)
まどか「あった!」
ほむら『本当? 傷は無い?』
まどか「うん。特に無いみたい。良かったぁ…」ヘタリ
ほむら『何よりだわ。早く、マミ達のところに戻りましょう』
まどか「わかった。じゃあ急ぐよ!」カシャ
ほむら(おそらく、マミたちは残酷な事実に直面しているはず)
ほむら(何事もなく、というわけにはいかないでしょうね…)
―歩道橋―
QB「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ。
QB「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」
さやか「なによ…それ…」ガタガタ
マミ「キュゥべえ…何を言っているの?」
さやか「杏子はどうなったっていうのよ! 何で…なんでこんなことに!」
QB「僕の話を聞いてなかったのかい? さやか。佐倉杏子なら、今さっき君が投げ捨てたじゃないか」
QB「そっちは抜け殻。本体がいなくなったら、体が動かなくなるのは当然だろう?」
さやか「あ…あ…あ…」
QB「さやか、君は杏子のことを憎んでいたんだろう?」
QB「ならよかったじゃないか。これは君が望んだ結末だ」
QB「杏子は死に、君の目の前からいなくなった。君が望んだ、まさに最良の結果じゃないか」
さやか「うわああああああぁぁぁぁぁ!!!!」ダッ
マミ「美樹さん!」
QB「何が気に入らないのだか。まったく、わけがわからないよ」
マミ「キュゥべえ…。騙していたのね、私たちを!」
QB「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。
僕は魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ?」
マミ「だからって、こうなるなんてこと、一言も言わなかったじゃない!」
QB「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね」
QB「事実、今の今まで君だって気が付かなかっただろう?
日常生活に支障はないし、魔力で体も修理できるから戦闘も有利に進めることができる」
QB「むしろ感謝するべきじゃないのかな? 君たちにとってこれほど便利なことはない」
マミ「便利…ですって?!」
マミ「そんなわけないじゃない! こんな…こんなこと…」
QB「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」
マミ「当り前よ! 魂を抜かれて、死人になるなんて誰が喜ぶというの?!」
QB「死人ではないね。むしろ逆の存在だ。ソウルジェムが砕かれない限り、君たちは不死身だよ」
マミ「そんなの死んでいるのと同じことよ!
殺されても生き続けるなんて、キュゥべえはそんなことも理解できないの?!」
QB「価値観の相違はお互い様だろう? なぜ僕だけ非難されなきゃいけないのかな?」
QB「僕は君が望んだから願いを叶えたし、その体に造り替えてあげた」
QB「それとも君は、仕組みを説明されたのならあそこで死ぬことを望んだのかな?
なら、今すぐ自分のソウルジェムを砕けばいい。そうすれば時間はかかったけど簡単に望みは叶うよ」
マミ「そ、そんなこと…」
QB「どんな形であれ、生き続けるのが君の祈りだったはずだ。さやかと同じさ。これが君が望んだ結果だったはずだよ。
感謝されることはあれど、非難されることはないはずなんだけどな」
マミ「…」
マミ「…ねぇ、キュゥべえ。一つだけ教えて」
QB「何かな? マミ」
マミ「私、あなたのこと本当に大切なお友達だと思ってたのよ?」
マミ「あなたは私のこと、どんなふうに見ていたの?」
QB「『友達』というのはつまるところ、利害の一致している関係と考えるべきかな?」
QB「それなら、僕も君のことを『友達』だと思っていたよ」
QB「体を造り替えさせてもらえて、魔女と戦ってくれる貴重な存在を『友達』と思わないわけないじゃないか」
マミ「…消えて」
QB「?」
マミ「もう消えて! もう私の目の前に現れないで!」
QB「うん。君がそういうのなら、そうさてもらうよ」
QB「バイバイ、マミ。長い間一緒だったね。僕にとってもそれなりに有益だったよ」タッ
マミ「…」
マミ「…本当に」
マミ「…本当に、友達だと思っていたのよ…?」
マミ「…」
マミ「…」ヒック
マミ「…」ヒック グス ヒック
まどか「マミさん!」
―マミ宅―
まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」
杏子「ああ。体の方はもう問題は無いみてーだ。
痛みも何もないし、動かないとことかもねーよ」
まどか「よかったぁ…」
マミ「でも佐倉さん。無理は禁物よ?
一時的とはいえ、死んでしまったのだからどんな不調が出てもおかしくないわ」
杏子「大丈夫だよ。もしそんなことがあっても魔法で直せるんだろ?
造り替えた本人の、お墨付きなんだからさ」
マミ「…」
杏子「にしても、ソウルジェムがそんなもんだったとはなぁ。まどかは知ってたのか?」
まどか「ううん。わたしもついさっきほむほむに教えてもらったばかりだよ」
杏子「てことは、そいつは知ってたのか。このこと」
ほむら「ほむ…」
杏子「そんな顔すんなよ。別に攻めてるわけじゃねーぞ。ほむほむ」ナデナデ
ほむら「…」
まどか「ほむほむが言うには、今まで説明しても、誰も信じてくれなかったって」
杏子「そりゃそうだろうな。こんなこと、いきなり説明されても実際に見るまでは信じらんねーもん」
マミ「そうよね…。未だに信じられないくらいだもの。信じたくない、というのもあるけれど」
杏子「なあ、まどかもこんな体になっているのか?」
ほむら「ほむほむ。ほむむ」
まどか「わたしは違うみたい。その、キュゥべえと契約していないから。
ほむほむと離れていても、今まで体はなんともなかったし」
杏子「そりゃよかった。安心したぜ。
覚悟も無しにこんな体にされる人間なんて、少ないほうが良いからな」
まどか「杏子ちゃん…」
ほむら「ほむ…」
マミ「…」
マミ「佐倉さん。あなたは、平気なの…?」
杏子「ん? 何が?」
マミ「キュゥべえに、半ば騙されるような形で…、こんな体にされて」
杏子「んー、ショックじゃねぇと言えば嘘になるな。
あの糞野郎。今度会ったら八つ裂きにしてやる」
マミ「…そうよね」
杏子「でも、まあいいかとも思ってるんだ」
マミ「え?」
杏子「何だかんだでこの力を手に入れたから好き勝手できてるわけだし、後悔するほどのことでもないってね」
結局、無理矢理奇跡なんてものを望んだ罰ってことさ。自業自得だな」
マミ「自業自得…」
杏子「ああ、これはアタシがアタシに言っていることだからな。別にアンタを非難しているわけじゃねェよ」
マミ「…」
マミ「…いえ、そうかもしれないわね」
まどか「マミさん?」
マミ「そう。これは家族を見捨てて自分だけ生き残った私への罰なんだわ」
「あのとき、『家族を助けて』ってそう願うことも出来たはずなのに。私は自分が助かることだけを考えてしまった」
「そんなことも忘れて、正義の味方の真似して、街を守った気になっていて…」
「これじゃあ、パパやママだって怒るわよね…。見捨てたことも忘れて、生きているんですもの」
「こんな体になったことだって、そんな私への…」
まどか「…」
杏子「…」
ほむら「っむ!」タッ
マミ「え?」
ほむら「ほみゃ!」キック!
マミ「痛いっ…」
ほむら「ほむほむ!」
マミ「な、何するの…? ほむほむ」
杏子「…いや、よくやったほむほむ。グッジョブだ」
まどか「そうだね。ナイスツッコミだよ、ほむほむ」
マミ「あ、あの二人とも…?」
まどか「そんなことないです!」
マミ「鹿目さん?」ビクッ
まどか「マミさんのご両親が、そんなこと思うはずないじゃないですか!
マミさんが生きていることを怒るなんて、そんなはずがありません!」
マミ「でも私は…」
まどか「マミさん。マミさんのお父さんやお母さんは子供が死んじゃったら、喜ぶような人だったんですか?」
マミ「そ、そんなことは…」
まどか「だったら、罰なんて言わないでください!
そんな、悲しいこと…」
マミ「鹿目さん…」
杏子「少し違うが、アタシも同意見だね」
マミ「佐倉さん…」
杏子「アタシはアンタの両親が何考えていたかなんて知らないし、アンタがその体をどう思おうがアンタの勝手だ」
マミ「…」
杏子「だけども、その理由を死んだ人間に押し付けるんじゃねーよ」
マミ「押し付ける…?」
杏子「そうさ。人間死んだら、そこで終わりだ。考えることも、ましてや人を呪うことなんてことも出来やしねぇ。
死んだら、人間は無力なんだ。喜ぶことも、悲しむこともねぇんだよ」
マミ「そんな…」
杏子「だからアンタのしていることは、無力な人間に責任を押し付けているのと同じだよ。死人にさらに鞭を打っているようなものさ。
自分の体がそうなった責任を、アンタは死んだ両親に押し付けて楽になりたいだけなんだよ」
マミ「そんな、わたしは…」
杏子「無力なのをいいことに、そいつらの姿を都合のいいように歪めて、責任も押し付ける。そんな奴は、アタシは大っ嫌いだ。
次にそんなこと言ってみろ。あの糞害獣より先に、アンタを八つ裂きにするからな」
マミ「…」
まどか「ほら、マミさん。杏子ちゃんも、マミさんのご両親はいい人だって」
杏子「はぁ? んなこと言ってねーぞアタシは」
まどか「でも、『同意見だね』って」
杏子「あれは泣き言いってるマミが間違っているってことだよ! まぁ、そりゃ良い人だったのかもしれないけどよ…」
まどか「やっぱり優しいね、杏子ちゃん。さすがだなぁ…」
杏子「んなっ! 優しくなんてねーよ! つーか何だ流石って!」
まどか「だって、いつもなんだかんだ言いつつ優しくしてくれるし…」
杏子「アタシのどこをどうみたらそう見えるってゆーんだ! アタシは生きるためなら何でもやる悪いやつだぞ!」
まどか「本当に悪い人なら、自分のことを悪い人だなんて言わないよ、杏子ちゃん」
杏子「うっ…」
ほむら「ほむむ」
まどか「やっぱり、ほむほむもそう思う? 優しいよね、杏子ちゃんって」
ほむら「ほむ」
杏子「てめぇら、いいかげんにしろ!」
ほむら「ほむほむ」
まどか「あ、ほんとだ。杏子ちゃん顔真っ赤。りんごみたい」
杏子「がー! うるせー!」
マミ「…」
マミ「…ふふ」
まどか「マミさん?」
杏子「お、元気になったな」
マミ「ありがとう、三人とも。おかげで少し元気が出てきたわ」
マミ(…まだ、全てを受け入れられたわけじゃないけれど)
(でも、今の私は一人じゃないもの。大丈夫、乗り越えて見せるわ)
(それが、死んじゃったパパたちに報いることになるのよね、きっと…)
マミ「ところで佐倉さん」
杏子「おう。なんだ?」
マミ「こうして話せる機会が出来たから、折り入ってあなたにお願いしたいことがあるんだけれど…」
杏子「ああ、ワルプルギスと戦うんだろ? 協力してやるよ」
マミ「え? そ、そんなあっさり?」
杏子「ただし、見返りはもらうけどな」
マミ「それは…、まぁ良いのだけれど。
本当にいいの? 勝てるかどうか分からない相手なのよ?」
杏子「いいもなにも、もうまどかと話はついてるんだ。後はやるだけさ」
マミ「鹿目さんと? そういえば、妙に親しげだなとは思っていたけど…」
杏子「まぁ、色々あってな」
マミ(本当に何があったのかしら…?)
マミ「鹿目さん、休むように言っていたでしょう。約束を破って、勝手に動くのは感心しないわね」
まどか「ご、ごめんなさいマミさん…」
マミ「ほむほむも。ちゃんと鹿目さんが無茶しないように止めてもらわないと」
ほむら「ほむぅ…」
まどか「マ、マミさん! ほむほむは悪くないです! ただ偶然杏子ちゃんを見かけたから、わたしがチャンスだと思って…」
マミ「それでも、連絡の一つはしてほしかったわ鹿目さん。
交渉が決裂したら、最悪、襲われる可能性だってあったのだから。そうなったら、あなたの身が危なかったのよ?」
杏子「おい、いくらアタシでもそんなことしないぞ。というかそんな目で見ていたのか」
マミ「ごめんなさい。でもあの時点じゃ、あなたのことそんな風に見えていたから」
杏子「失礼な奴だな。金にもグリーフシードにもならない無駄な争いは、基本しねぇっつーの」
マミ「とにかく、鹿目さん。何か行動を起こすときは、ちゃんと言ってもらわないと…」
まどか「ごめんなさい…」
マミ「でも、今回は佐倉さんがこっちに来てくれたら良しとしましょう」
まどか「え…?」
マミ「ありがとう、鹿目さん。あなたのおかげで心強い仲間が増えたわ。
正直、佐倉さんの勧誘は難しいと思っていたの。でも、これでまた一つワルプルギスに対抗できる可能性が出てきたわ」
まどか「そ、そんなことないですよ。わたしのしたことなんて…」
杏子「あー、なんか悪いな。アタシのせいで怒られちまって…」
まどか「杏子ちゃんのせいじゃないよ。元はといえばわたしが…」
マミ「その話はもういいのよ、鹿目さん。でも、今度からは注意してね」
まどか「は、はい」
マミ「じゃあ、佐倉さん。『ワルプルギスの夜』との戦いの件。改めてお願いするわ」
杏子「おう。引き受けるよ」
マミ「ありがとう。私達だけじゃ手に余る相手だもの。あなたのような強い人が協力してくれるのは心強いわ」
杏子「けっ、褒めても安くしねーぞ。もらうもんはもらうからな」
マミ「それにしても、あなたが協力してくれるなんてね。
てっきり、割に合わないって言って断られると思っていたのだけれど」
杏子「そう思うなら、ちゃんと割に合うもん用意してくれよ?」
マミ「といっても、何がいいかしら…」
杏子「そうだな、ここら辺の縄張りの3割とか…、どうだい?」
マミ「ええ、それくらいなら構わないわ」
杏子「ホントか?!」
マミ「ただし、ちゃんと使い魔も退治してくれるという条件が付くけれどね」
杏子「それじゃもらう意味がねーよ。きっちりグリーフシードは稼がせてもらわねーと」
マミ「じゃあ、だめ。私の後任を引き継ぐなら、ちゃんとやってもらわないとね」
杏子「だろーな。はてさて、じゃあ何をもらうかね…」
マミ(協力してくれることには、変わらないのね)
杏子「んー、今は思いつかねーな。後でもらえそうなもん考えておくよ」
マミ「それなら、こちらでも何か案を用意しておくわね」
まどか「あ、それなら一つ提案があるんですけど…」
杏子「お、なんだまどか?」
まどか「杏子ちゃんをマミさんの家にしばらく泊めてもらうというのはどうでしょう?」
マミ杏「え?」
まどか「だって、杏子ちゃん。お家も携帯電話もないから連絡取るの大変だし。
それにいつも外でぶらぶらしているっていうのはやっぱり…」
マミ「ちょ、ちょっとまって鹿目さん!」
杏子「そうだぞ、まどか。いくらアタシでもそこまで厚かましくは…」
マミ「佐倉さん、家がないの?!」
杏子「…あー、そっちか」
―
マミ「泊まりなさい」
杏子「…いや、いいって。もう慣れてるし」
マミ「いいから、泊まりなさい! まったく、女の子が外で寝泊まりしてるなんて何考えているの?!」
杏子「いやいつも野宿してるわけじゃないぞ? 大体はホテルの空き部屋とかそういう場所を探してだな…」
マミ「…」ジー
杏子(うわ、こぇぇ。何か母さんみてーだな)
マミ「佐倉さん。そういう生活をしていたら、間違いなく体に良くないわ」
杏子「いや、アタシ魔法少女だし」
マミ「体だけじゃなく、精神的にもよくないの。いつも緊張してるから疲弊する一方だし、そんなことじゃいつか擦り切れてしまうの。
ましてや、これからワルプルギスの夜と戦うことになるんですもの。出来るだけ、体も心も休めるときに休めておかないと」
杏子(…反論できない)
マミ「どんな返事に関わらず、あなたには今日からここで寝泊まりしてもらいます」
杏子「既に決定かよ…」
マミ「当然よ。それに健康上の問題だけじゃなく、いつでも連絡の取れる場所にいてほしいの。
安心して。これは見返りじゃなくてワルプルギスを倒す作戦上の問題。あなたの言う見返りは別に用意するわ」
杏子「そういうことなら、まあ…」
マミ「そしたら、明日買い物に行くわよ佐倉さん。下着とかいろいろ用意しないと」
杏子「い、いーよ! そこまでもしなくても」
マミ「だめよ。どうせ、替えなんて持っていないのでしょう? 女の子としてそんなことは私が許しません」
杏子「面倒くせぇなぁ…」
まどか『二人とも、仲良くできそうだね』
ほむら『ええ。仲違いの心配はなさそうだわ』
杏子「さてと、じゃあ残る問題は…と」
まどか「さやかちゃん…だね」
杏子「キュゥべえの奴の話を聞いて、ショックで逃げちまったんだっけか」
マミ「ごめんなさい。本当なら、私があそこでちゃんと追いかけるべきだったのに…」
杏子「あん時はしかたねーよ。アタシもぶっ倒れてたし、アンタだってショックを受けてたんだ」
マミ「でも、結果的に美樹さんを一人にしてしまった。これは私の責任よ」
杏子「アタシこそ悪い。あんな風に事を構える気は無かったのに、いつの間にか互いにやり合わなきゃいけない流れになっちまってた」
マミ「そういえば、佐倉さんはどうして美樹さんと? 鹿目さんに連絡を受けて急いだから、経緯がよくわからないのだけれど」
杏子「…ちょっと、忠告するだけのつもりだったんだけどな。それが、感情的になっちまってさ。
全部アタシのせいだ。さやかのことは、アタシが責任を取るよ」
まどか「杏子ちゃん…」
マミ「とにかく、美樹さんのことは心配だわ。精神的なダメージが大きすぎる」
マミ(私も…そうだけど)
杏子「一人にしておくのはマズイかもな…。まどか、さやかと連絡つかないのか?」
まどか「それが、何度もメールや電話をかけてるんだけど、何も返事がなくって」
マミ「あんなことがあった後だもの。何とか佐倉さんが無事だってことだけでも、伝えられたら良いのだけど…」
杏子「そうか、アイツはアタシを殺しちまったと考えてるのか」
杏子「…悪ぃ。ちょっと外行ってくる」
まどか「杏子ちゃん?」
杏子「見つかるとは限らねぇし家に戻ってるかもしれないけど、それでも早く会って少しは安心させてやりたいんだ」
マミ「佐倉さん…。でも、あてはあるの?」
杏子「いんやちっとも。でも、アタシのせいだからな。まどかはさやかの家に行ってみてくれよ」バタン
まどか「あ、杏子ちゃん」
マミ「鹿目さん。佐倉さんも、じっとしていられないのよ」
まどか「…はい」
マミ「あなたはもう家に帰ったほうが良いわ。これ以上遅くなると、お家の人に心配かけてしまうわ」
まどか「はい…。それじゃあ、今日は帰ります」
マミ「ほむほむ、鹿目さんのこと頼んだわよ?」
ほむら「ほむ」
まどか「マミさん、杏子ちゃんの言うとおり帰りにさやかちゃんの家に行ってみます。
もしかしたら戻ってるかもしれないし、とにかく話をしてみないと…」
マミ「ええ、頼むわ鹿目さん」
まどか「それじゃあ、マミさん。また明日」
マミ「ええ、また明日ね」
ほむら(しかし、美樹さやかは家には戻っていなかった)
ほむら(そして、翌日。学校にも姿を見せなかった)
―結界内―
さやか「…」
使い魔「…」
さやか「おうりゃぁっ!」ザシュ
使い魔「…」シュー
さやか「…ったく…手こずらせるんじゃ…ないわよ」
QB「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ」
QB「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」
さやか(今のあたしはただのゾンビ…)
さやか(死んだ体が、魔女と戦うために動いているだけ…)
さやか(そんな…そんなのって…)
QB「戦いの運命を受け入れてまで、君には叶えたい望みがあったんだろう?」
QB「それは間違いなく実現したじゃないか」
さやか(知らない…そんなこと知らない!)
さやか(こんな体になるなんて聞いてなかった…)
さやか(こんなことなら、魔法少女になんか…)
さやか(なんか…?)
上条「ごめん、さやか」
さやか(違う…あたしは本当に恭介の腕が治ってほしかった)
さやか(その為に奇跡が必要なら、どんな運命だって背負うって決めたんだ)
さやか(この願いを叶えたことに後悔なんてない…)
さやか(後悔なんか…するもんか)
杏子「ここの坊やに愛してもらいたんだろ?」
杏子「そうしてほしいなら、最初からそうなるように願えばよかったんだ」
杏子「じゃあ、なんでこんな場所で呆けてるさ? 本当は愛が欲しいんだろ、坊やの」
さやか(違う! 違う!)
さやか(あたしは見返りなんて望んでない!)
さやか(ただ、恭介が元気になったのならそれでいいんだ!)
さやか(それだけで…!)
使い魔「…」
使い魔「…」
使い魔「…」
さやか「…今日は、随分たくさん出るじゃない」
使い魔「…」
さやか「アンタらのご主人様も近くにいるの?」
使い魔「…」
さやか「じゃあ、それも倒さなきゃね…!」
さやか(そうだ…あたしは見返りなんか求めない…!)
さやか(そんなものを必要としない、正義の味方に…)
さやか(まどかやみんなを守る、正義の味方になるんだ…!)
杏子「アンタは、アイツを弱い人間だと思ってる。自分より下に見て、優越感に浸ってるんだよ」
杏子「街を守るなんて言っているのも同じ気持ちだ!祈りを捧げた坊やのことも!
守ってやることで、自分がアイツらより上だと思いたいだけなんだ!」
杏子「さやかは…最低だ」
さやか(うるさい! うるさい! うるさい!)ダッ
使い魔「…!」ザシュ
―
さやか「…」ハァハァ
さやか(流石に…疲れたかな)
さやか(でも、これで誰かが使い魔に襲われることもなくなったんだよね)
さやか(うん。なら、これは良いことなんだ。絶対)
さやか(あたし、誰かを助けることが出来てるんだよね?)
さやか(はぁ…、学校も行ってないなぁ)
さやか(まどかやマミさん、どうしているんだろ?)
さやか(それに杏…)
「彼女…死んでるじゃない!」
さやか(…)
さやか(学校になんか…行けるわけないよ)
さやか(普通の生活に…戻れるわけがない)
さやか(だって、あたし人を殺したんだよ?)
さやか(知らなかったなんて、そんな言い訳できない)
さやか(だから、あたしは魔女を倒す魔法少女しかなることができない)
さやか(もうそれしか…意味がないんだ)
さやか「はぁ…」トボトボ
さやか(…あれ?)
さやか(あれは…恭介? と…)
上条「―…―」
仁美「…―…」
さやか(仁美?!)
さやか(な、なんで恭介と仁美が…)
さやか(しかも何で…あんなに…くっ付いて…)
上条「―?」
仁美「…―!」
さやか「…」
さやか(…ああ、そうか。そうだったんだ)
さやか(あたしなんか、最初から恭介の心にはいなかったんだ)
さやか(でも、仁美じゃ仕方ないよね。良い子だし。うん、恭介も幸せになってくれるよね)
さやか(…仁美。恭介のこと頼んだよ)
さやか「…っ!」ダッ
上条「…ごめん、志筑さん。急に眩暈なんかおこしちゃって」
仁美「いえ、まだ退院したばかりですもの仕方ないですわ」
上条「まぁね。でも、そうも言ってもいられないから。鹿目さん達は?」
仁美「まどかさんは先輩の方と一緒らしいですわ。何でもさやかさんとも親しかった方だとか」
上条「そうか…僕も頑張らないと」
仁美「…あの、やはり」
上条「ごめん。でもじっとしてられないんだ」
仁美「…そうですわよね」
上条「ごめん、付き合ってもらっちゃって。迷惑かけてるよね?」
仁美「いえ、私から言い出したことですし…。それに私も心配ですから」
上条「ありがとう。志筑さん。それにしても、どこに行っちゃんたんだよ、さやかのやつ」
仁美「そうですわね…」
さやか「うぉりゃぁぁぁぁぁっ!」
使い魔「…!」ザシュ
―電車内
「言い訳とかさせちゃダメっしょ稼いできた分は全額きっちり貢がせないと。
女って馬鹿だからさ。ちょっと金持たせとくとすっぐ下らねぇことに使っちまうからねぇ」
さやか「…」
「いや~ほんと女は人間扱いしちゃダメっすね 犬かなんかだと思って躾けないとね。アイツもそれで喜んでる訳だし
顔殴るぞって言えば、まず大抵は黙りますもんね」
さやか「…」
「ちょっと油断するとすぐ付け上がって籍入れたいとか言いだすからさぁ。甘やかすの禁物よ。
ったくテメーみてーなキャバ嬢が10年後も同じ額稼げるかってーの。 身の程弁えろってーんだ。なぁ?」
さやか「…」
「捨てる時もさぁホントウザいっすよね。 その辺ショウさん巧いから羨ましいっすよ。俺も見習わないと」
さやか「…」
エー、ツギハー
「―で…――の」
「いや――…で―」
さやか「…」タッ
ハッシャシマスー
さやか「…」
さやか「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」ダッ
魔女「…」ズドドドドドドド
さやか「あははははははっ、ホントだキュゥべえの言うとおりだ!
その気になれば痛みなんて…あはは。完全に消しちゃえるんだ!」
魔女「…!」
さやか「痛くない。痛くない。痛くない!」ザシュ
魔女「!!」
ザシュ ブチッ グシャ ベチャ
さやか「ほらほら…あんたももう…終わりだよ…」
さやか「あたしと…いっしょだ…」
まどか「さやかちゃん!」
―路地裏―
さやか「…」
まどか「さやかちゃん、随分探したんだよ?」
さやか「…ひさしぶり」
まどか「うん、ひさしぶり。ほら、ほむほむも一緒」
ほむら「ほむ」
さやか「…」
さやか(ああ、なんか腹が立つな、ほむほむを見てると。なんでだろ…)
さやか「元気そうだね…まどか」
まどか「うん。マミさんも、元気だよ。あと杏子ちゃんも」
さやか「杏子?」
まどか「そう。さやかちゃん、杏子ちゃんは無事だよ。それで、協力してくれることになったの」
さやか「…そうなんだ。よかったよ」
まどか「うん。だから、あとはさやかちゃんが戻ってくれば、みんな揃うんだよ?」
さやか「…」
さやか「…ダメ。あたしは戻れない」
まどか「さやかちゃん?」
ほむら「ほむむ…」
さやか「あたしはやることがあるの。だから一人にして」
まどか「さやかちゃん…」
さやか「ワルプルギスの夜がきたらちゃんと戦うからさ、ほっといてよ」
まどか「…ごめん。それはできない」
さやか「…なんでよ」
まどか「だって、今のさやかちゃん。危ないもん」
さやか「…危ないって何よ」
まどか「さっきの戦い方だってそう。自分をあんな風に扱って、あんな戦い方ないよ」
さやか「だって痛みを感じなくしてるんだもの。あれなら負ける気がしないわ」
まどか「でも、それだと何が危ないのかも分からなくなるよ?」
さやか「…」
まどか「あんなやり方で戦ってたら、今は勝てたとしても、そのうち続かなくなる。だから危ないの。今のさやかちゃんは」
さやか「…あたし、才能ないからさ。ああでもしないと勝てないんだよ」
まどか「適当な言い訳、しないで。才能がないなんて誰が言ったの。それにあの戦い方は才能以前の問題だよ」
さやか「…」ギリ
さやか(じゃあ、あんたが全部戦いなさいよ)
(あんたに、あたしの何がわかるの?あんたは普通の体のままじゃない)
(まずあたしと同じ立場になってみなさいよ。無理だよね? 当然だよね? ただの同情で人間やめらるわけないもんね?)
(優しいあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの。知ったような事言わないで)
(ねぇ、何であんたは弱いままでいてくれなかったのよ。そうすれば、あたしは…)
まどか「ねぇ、さやかちゃん。みんなのところに帰ろう? そうすれば、あんな戦いかたしなくても…」
さやか「…もういい」
まどか「え?」
さやか「まどか、ありがとう。ひさしぶりに顔見れて良かったよ。危ないことしないようにね」スタスタ
まどか「…」ギュ
さやか「…なに?」
まどか「言ったよ。今のさやかちゃんを一人にはできないって」
さやか「…大丈夫だよ」
まどか「大丈夫じゃないよ」
さやか「…まどか、離して」
まどか「…ダメ」
さやか「…っ」ポロポロ
さやか「お願い…だから…離して…」
まどか「…さやかちゃん?」
さやか「…まどかといる方が、あたしは辛いの」
「あたし、今なに考えていたと思う? まどかに対して酷いこと考えたんだよ?」
「もう、今のあたしは前のあたしとは違うの」
「自分でもよくわからなくなっちゃった。何がしたいのか、何がしたかったのか」
まどか「そんな…、さやかちゃんはさやかちゃんだよ」
「…ううん。もうまどかの知ってるような、あたしはどこかに行っちゃったんだ」
「当然だよね? 魔法少女になって、ゾンビにされて、変わらないほうがおかしいんだ…」
「前のあたしだったら、こんなこと考えるわけなかったのに…」
「おかしいんだよ? 今だって、まどかに対して、嫌なこと考えてるの」
まどか「…!」ビクッ
さやか「…なんで、こんなこと考えるようになっちゃったんだろうね、あたし」
「口には出さないよ、絶対。でもいつまで我慢できるかもわからない。もう自分がどうなるのかも、わからないの」
「それでも、あたしはまどかの友達だから…、今はまだ本当にそう思えているから」
「こんなこと、絶対に言いたくない」
「…ごめん。今のあんたはあたしに何もできない。一緒にいても苦しくなるだけなの」
「…だから、まどか」
さやか「あたしを…、友達を傷つける救いようのない人間にしないで…」
まどか「…っ」パッ
まどか「あ…」
さやか「…ありがと、まどか」
まどか「ち、違うの…これは…」
さやか「もう、見かけても近づかないほうが良いよ。あたしは前のあたしのゾンビだからさ」
まどか「ま、待って…」
さやか「…それじゃあね、まどか。元気でね」
まどか「さやかちゃん…待って……」
ほむら「…!」テテテ
さやか「…なによ」
ほむら「…ほむ」
さやか「ついてこないで。あんたが大事なのは、あたしじゃなくてまどかでしょ?」
ほむら「…」
さやか「…ついてくるな」
ほむら「…」
さやか「ついてくんなっ!」
ほむら「…!」ビクッ
さやか「…っ」タッタッタッ
まどか「さやかちゃん…」
ほむら「…ほむむ」
まどか「追いかけなきゃダメだったのに。手を離しちゃ、いけなかったのに…」
ほむら「…」
さやか「――――!」
使い魔「!」
―マミ宅―
杏子「…とにかく、まどかは少しさやかから離れたほうが良いと思う」
まどか「そんな…でも…」
杏子「気持ちはわかるけど、そんなこと言った手前、アイツの方もまどかに顔を合わせづらいだろ。
それにその様子を聞くと、アンタと会うことは今のさやかのやつには逆効果だと思う」
ほむら「ほむ…」
まどか「ほむほむも、そう思うの…? でも、さやかちゃんを一人にはできないよ…」
マミ「それなら、私が行こうかしら。どんな言葉をかけたらいいのかわからないけど、それでも…」
杏子「いや、マミは少しでも魔女や使い魔を狩って、戦いの勘を取り戻したほうが良いと思う。
アイツの指導をしていて、まだイマイチ勘が戻ってないんだろ?」
マミ「それは、そうだけれど…」
杏子「ワルプルギスの夜が来るまで、もうあまり時間がねぇんだ。貴重な戦力なんだから、勘を取り戻すことを優先すべきだよ」
マミ「でも、美樹さんのことはどうするの? 放っておくことはできないわ」
杏子「…さやかのやつは、アタシが行く」
まどか「杏子ちゃんが?」
マミ「いいの、佐倉さん? あまりこんなことは言いたくないけれど、美樹さんは貴方のこと…」
杏子「でも、アタシがまどかやマミたちに協力することになったことはアイツも知ってるんだろ?」
まどか「うん。それは伝えたけど…」
杏子「じゃあ、大丈夫だろ。さすがにまどかの言葉を信じないってことはないだろうし。
それに、もし襲いかかってきても、アイツの癇癪ぐらい受け止めてみせるよ」
まどか「杏子ちゃん…」
マミ「…そうね。もしかしたら、今の美樹さんには親しかった私たちより、
佐倉さんのような赤の他人に近い人の方が、話をできるのかもしれないわ」
杏子「そうだよ。それにこうやって本当に生きてる姿を見せれば、少しは安心してくれるかもしれねーしよ」
マミ「それじゃあ、佐倉さん。美樹さんのこと、頼んでもいい?」
杏子「おう」
まどか「また、前みたいに戦ったりしちゃだめだよ?」
杏子「あん時のことは反省してる。二度とやらねぇ。
喧嘩売られても、何もしねぇさ」
まどか「約束だよ?」
杏子「ああ、まどかはマミの手伝いをしてやってくれ。手助けしすぎると、練習にならないからほどほどにな」
まどか「わかった」
マミ「佐倉さん。美樹さんのことは心配だけど、あなたも自分を大切にしてちょうだい。
もう、仲間なんだから」
杏子「わかってるよ。ワルプルギスが来た時にリタイアしてて戦えませんでしたじゃ、シャレにならねーしな」
まどか「杏子ちゃん、さやかちゃんのことをお願い。
…今のわたしじゃ、力になれないみたいだから」
杏子「おうよ。まかせておけ」
ほむら「ほむほむ」
杏子「ほむほむも、安心して待っててくれよ」ナデナデ
マミ「それにしても、彼女、美樹さんのことに関しては積極的ね」
まどか「杏子ちゃんも、さやかちゃんのこと好きなんですよ、きっと」
マミ「そうかしら。あまり互いにいい印象を持ってないように見えたけど…」
まどか「…もしかしたら、似てるのかも」
マミ「え?」
まどか「さやかちゃんと…杏子ちゃん」
――――
さやか(…今、何やってたんだっけ?)
さやか(ああ、使い魔倒してたんだ)
さやか(弱いなぁ…。こんなんじゃ、人を襲っても大して被害を出さなさそう)
さやか(もっと、強いのはいないの? そういうのじゃないと、街を守った感じがしないじゃない)
杏子「さやか!」
さやか(痛みがないって、ホント楽)
さやか(負ける気しないなぁ…。勝っても何も感じないけど)
さやか(ほら、あたしこんなに頑張ってるんだよ。何も感じなくなって、それでも頑張ってるんだよ)
さやか(だから、褒めてよ。ねぇ、だれか…)
杏子「…」ボロボロ
さやか「バカじゃないの? いつもいつも、あたしにズタボロにされてさ。何がしたいのさ、あんた」
杏子「…そんなことしに…来たわけじゃ…ねェ」
さやか「それで、しつこく帰って来いって言ってくるわけ? ウザイよ。あんた」
杏子「…さや…か」
さやか「死んでよ、いなくなってよ。あたしのために何かしたいならさ、前の時みたいに」ドスッ
杏子「うぁ…」
さやか「できないよね。結局、あんたは自分が一番大事なんだもんね。ほら、あんたはそういう人間なんだ」
杏子「…」
さやか「なによ。気絶しちゃったの? 全く、何でこんなのに一度負けたんだか」
杏子「…」
さやか「あたしはあんたと違って、使い魔も倒さなきゃいけないんだから、無駄な力使わせないでよね」
さやか(もっと、魔女や使い魔を倒さないと…)
さやか(それにしか、あたしに意味なんてないんだから)
さやか(…何で、倒さなきゃいけないんだっけ?)
さやか(恭介のため? そんなわけない。恭介はあたしに何もしてくれなかったんだから)
さやか(世界を守るため? そんなわけない。だってこんな世界なんて、守る価値なんてないんだから)
さやか(…あれ)
さやか(じゃあ、何であたし…)
さやか「ねぇ、あたしが戦う理由を教えてよ」
杏子「…」
さやか「何でこんなことになってるのよ。あたし何で、魔法少女なんかになったの?」
杏子「…」
さやか「何でゾンビにされなきゃいけなかったの? 何で、まともに生きられなくならなくちゃいけなかったの?」
杏子「…」
さやか「何で、あたしこんな目にあってんの? あたしがいる意味なんてあるの?」
杏子「…」
さやか「ねぇ、お願い…教えてよ」
さやか(…ああ、そうだ)
さやか(まどかだ)
さやか(まどかを、守らないと)
さやか(弱いまどかが戦ってて可哀そうだから、あたしは魔法少女になったんだ)
さやか(いけない…また、どこかで戦ってるんだろうなぁ)
さやか(待っててね、まどか。あたしが、守ってあげる)
さやか「まどか、今行くからね…」フラフラ
杏子「…」
―魔女空間―
まどか「…――…」
ほむら「―――…?」
まどか「――!」
魔女「…」
さやか(いた…! しかも魔女と一緒)
さやか(全く、魔女を前にしてほむほむと話してるなんて。ホント抜けてるというかほっとけないっていうか…)
さやか(まどか…今守ってあげるからね…)
さやか「まど…」
まどか「」フッ
ガガガガガガガガガガ バシュバシュバシュバシュバシューン チュドーン
魔女「…――」
さやか(あれ…?)
――――
まどか「マミさん。調子はどうですか?」
マミ「ええ。ようやく実戦の勘が戻ってきた感じよ。もう問題なさそうね」
まどか「ごめんなさい。わたし、魔女に集中しててあまり援護できませんでした…」
マミ「ふふっ。相手は使い魔ですもの。そこまで遅れは取らないわよ。
まぁ、ここしばらくは情けない姿を見せていたもの。鹿目さんが心配するの仕方ないわよね」
まどか「そ、そんなことないですよ」
マミ「いいのよ。ソウルジェムのこと、ショックじゃなかったと言ったら嘘になるし。まだ、気持ちの整理がついたとも言えないわ。
でも、大丈夫。なんてったって先輩ですものね。これ以上、かっこ悪い姿は見せられないもの」
まどか「…無理しないでくださいね。
その、普通の体のわたしが言えたことじゃないかもしれませんけど…」
マミ「気にしないで。それよりも、鹿目さんこそ無理はしないでね」
まどか「ほむほむにも、よく言われます」
ほむら「ほむむ!」
マミ「ワルプルギスの夜まで、もうあまり時間もないのだもの。もし鹿目さんがいなかったら、戦いは苦しくなるわ。
お互い、万全の状態で挑めるようにしないとね」
まどか「はい!」
マミ「それにしても、まさか鹿目さんがここまで強くなるなんてね…」
まどか「えへへ、ありがとうございます」
マミ「さっきの魔女なんて、時間を止めてすらいなかったじゃない。凄いわ」
まどか「できるだけ、魔力は消耗しないようにするって決めたんです。
その…ソウルジェムはほむほむそのものだから、あんまり穢れとか溜め込みたくないなって…」
ほむら「ほむ…」
マミ「…そうよね。自分に汚れが溜まるなんて、あまりいい気分じゃないものね」
まどか「それに、あんまり能力に頼るのもどうかなって。
ほむほむにアドバイスをもらって、武器に魔力をこめたり、体を強くする配分を変えてみたり色々やってみたんですけど…」
マミ「ええ。確実に成果は出ていると思うわ。というより、もしかしたら鹿目さん、もうわたしより強いのかも」
まどか「えっ、そ、そんなことないですよ。わたしなんてまだまだ…」
マミ「あら、なって数週間で魔力の配分を考えるまでになるなんて、凄いことだわ。
魔法少女になって一か月も経ってない後輩に抜かれちゃうなんて、ちょっとショックかな?」
まどか「マ、マミさ~ん…」
マミ「ふふっ、冗談よ。でも鹿目さんはもう間違いなく戦力としては一級品よ。
何だか変身するたびに、魔力も能力も上がっているみたいだし、キュゥべえが言っていた『才能がある』っていうのも本当だったみたいね」
まどか「そうだとしても、わたし一人の力じゃないです。
ほむほむがいて、マミさん達がいてくれたからここまでこれたんだと思います」
マミ「それでも一番はあなた自身の力よ。もっと自信を持っていいわ」
まどか「そうでしょうか…」
マミ「そうよ。だからしゃんとしなさい、鹿目さん。
あなたはもう立派な魔法少女なんだから、ね?」
まどか「はいっ!」
さやか「…」
さやか(なんだ…そうだったんだ。もう、守る必要なんてないんじゃん)
さやか(もう、まどかはあたしを必要としてないんだ…)
さやか(あはっ…あははははっ)
さやか(じゃあ、あたしが魔法少女でいる意味って何?)
さやか(ねぇ、だれか教えてよ)
さやか(だれか…)
さやか(…)
さやか(…そうだ、あんたのせいよ)
さやか(あんたがいるから、こんなことになったんだ)
さやか(あんたが…、魔法少女になんか…こんなことに…)
さやか(…)
さやか「…キュゥべえ、いるんでしょ? 出てきなさいよ」
QB「呼んだかい?」
―帰り道―
まどか「魔力を弾丸に込めるのは上手くいったね」
ほむら『ええ。目に見えて魔女への効果が上昇したわ。やはり、単なる物理衝撃よりも魔法の方が効果があるようね。
私はそこまで魔法の扱いが上手くなかったからできなかったけど、まどかの才能なら問題なく使っていけそうよ』
まどか「でも、気を付けないとね。弾をたくさん撃つやつだと、魔力も一気に消費しちゃうみたい」
ほむら『そうね。フルオートで撃つ時は注意しましょう』
まどか「本当は、弾を全部魔法で造って撃ちだせればいいんだけど…」
ほむら『それだと、魔力の消費量が大きくなってしまうわ。やはり、このやり方が一番よ』
まどか「そういえばほむほむ。前から気になってたけど、この武器とか弾ってどこから…」
ほむら『巴マミは一人パトロールをすると言っていたわね。一人で最後の復帰の調整をしたいのでしょう。
心配でしょうけど、ここは彼女の意思を尊重しましょう』
まどか(露骨にはぐらかされた…)
まどか「…大丈夫かな」
ほむら『今日の戦い方を見る限り、もう一人でも大丈夫でしょう。魔女と遭遇しても、問題ないわ』
まどか「マミさんじゃなくて…、さやかちゃんと杏子ちゃん」
ほむら『…そうね。確かに心配だわ』
まどか「杏子ちゃん。体に傷跡が残っているよね。魔法で直しているみたいだけど、隠しきれてないよ…」
ほむら『美樹さやかね。考えるまでもなく。あの杏子が遅れを取るとは思えないから、おそらく癇癪に付き合っているのでしょう』
まどか「ねぇ。やっぱり、わたしが…」
ほむら『だめよ、まどか。美樹さやかは貴方の助けを拒絶した。今の自分の醜態を見られたくないとも言っていたわ。
貴方が彼女にしてあげられることは、何もない。辛いだろうけど、我慢して頂戴』
まどか「そんな…」
ほむら『そもそも、こういった問題は本人がどうにかしなければいけないの。佐倉杏子が美樹さやかに付いたのは、そういった意味では適格だと思うわ。
彼女は甘やかせるようなことはしないし、かといって見捨てるようなこともしない。今の美樹さやかには杏子のような存在が一番必要なのよ』
まどか「…くやしいなぁ」
ほむら『まどか?』
まどか「友達なのに、こんな時役に立てないなんて。くやしいよ」
ほむら『…こういったことには、状況によって向き不向きがあるから仕方ないわ。
美樹さやかが、自身に折り合いをつけられるように祈りましょう。それくらいしかできないもの私たちにはね』
まどか「…うん、そうだね」
RRRRRRRR
まどか「あ、電話…。え?」
ほむら『どうしたの?』
まどか「さやかちゃん…から」
ほむら『! とりあえず出てみましょう。受け答えは、慎重に選ぶのよ?』
まどか「う、うん」
まどか『…もしもし、さやかちゃん』
さやか『…まどか? 今大丈夫?』
まどか『うん、大丈夫だよ』
さやか『…ごめん、あんときのあたしどうかしてた』
まどか『いいの。気にしてないよ!』
さやか『ううん、友達のあんたにあんなこと言っちゃって…。だから、ちゃんと謝りたいの。
だから、これから会ってくれない?』
まどか『え? 今から…?』
さやか『お願い。今、謝らないときっと後悔するから…』
まどか『…わかった。じゃあ、どこで会おうか?』
さやか『そのことだけど…』
Pi
ほむら『美樹さやかは、なんと…?』
まどか「えっとね。謝りたいから、会いたいって。場所は、ここからあまり離れていないところだけど…」
ほむら『今から…?。電話じゃだめだったの?』
まどか「酷いことしたから、直接会って謝りたいって。それから、一人で来てほしいって」
ほむら『一人で?』
まどか「うん。わたしに以外、情けない姿見せたくないって言ってたんだけど…」
ほむら『…』
まどか「ほむほむ?」
ほむら『怪しいわ』
まどか「え?」
ほむら『心境の変化が急すぎる。佐倉杏子の説得が上手くいったのかもしれないけれど…』
まどか「電話じゃ、杏子ちゃんのことは一言もなかったよ?」
ほむら『一人で来い、という内容だものね。杏子が一緒なら、私がいても問題はないはず』
まどか「でも、もしかしたら…」
ほむら『…まどか。気持ちはわかるけれど、今の美樹さやかには慎重に行動したほうが良い。
佐倉杏子の傷を見ても、不安定になっているのは確か。下手をすれば、襲いかかってきてもおかしくないわ』
まどか「そんなこと、さやかちゃんはしないよ!」
ほむら『でも彼女も言っていたでしょう。「もう、見かけても近づかないほうが良い」と。
彼女自身、分かっているのよ。今の自分がまどかを傷つけてしまうとね』
まどか「…」
まどか「…それでも、わたしは行くよほむほむ」
ほむら『…そう』
まどか「あの時、さやかちゃんの手を離しちゃったから、今度はちゃんと掴んであげたいの」
ほむら『危険すぎるわ。何が起きるかわからない。それほど、美樹さやかは不安定なの。何が起きるか…』
まどか「うん。でもね、わたしに会いたいって言ってきてくれたのはチャンスだと思うんだ。
誰かに会いたいって思ったのなら、そこからまた一人じゃなくてみんなと居たいって考えてくれるかもしれないから」
ほむら『…そうね』
まどか「止めないんだね、ほむほむ」
ほむら『貴方は頑固だもの。一度言いだしたら聞かないことくらい、理解しているわ』
まどか「…ごめんね」
ほむら『パートナーだもの。このくらいはなんてことないわ。
でも、一人で行かせるのは反対。近くで待機するわ。何か少しでも不穏な気配があったら、すぐにテレパシ―で呼ぶこと。時間を止めてすぐに駆けつけるわ』
まどか「ふふっ、ほむほむも頑固だよね。絶対に引かないもん」
ほむら『責任感と言ってほしいわね。私にはまどかを守る義務があるのだから』
まどか「…責任感だけ? わたしを守ってくれるのは、それだけなの?」
ほむら『え?』
まどか「寂しいなぁ、わたしはほむほむのこと好きだったのに。
ほむほむはわたしのこと、責任があるから守ってくれるだけだったんだね」
ほむら『え、あ、いや、その…』
まどか「わたしの片思いかぁ」
ほむら『…』
ほむら(ど、どうしよう…)
ほむら(いっそのこと、好きだと…。でも、それじゃあ別れるときに辛く…)
ほむら(な、なにか良い返答の仕方は…)
まどか「…ごめん」
ほむら『え?』
まどか「な、何か変なこと言っちゃった。困らせる気なんかなかったのに」
ほむら『…』
まどか「あ、あやまるから…。機嫌なおして…ね?」
ほむら『…私も』
まどか「ご、ごめんさい…」
ほむら『貴方のこと好きよ。まどか』
まどか「あの、その。…え?」
ほむら『私も貴方のこと好きだといったの』
まどか「え!? あ、え?」
ほむら『あら、随分動揺するのね。それとも、私のことを好きだというのは嘘だったのかしら?』
まどか「う、ううん。それは、その…本当」
ほむら『ありがとう。嬉しいわ』
まどか「は、恥ずかしいよ」
ほむら『あなたから振ったのよ、それくらい我慢しなさい』
まどか「うう…」
ほむら『ほら、いつまでも悶絶していないで、早く美樹さやかのところに行ってあげなさい』
まどか「う、うん…」
ほむら『…まどか、私は貴方のことが好き。大事だわ。
だから、貴方のことを守らせて。お願いだから、無茶はしないでね』
まどか「…わかった」
ほむら『くれぐれも気を付けて。何かあったら、直ぐに呼ぶこと。いいわね?』
まどか「うん。それじゃあ、行ってくる」
ほむら(…これで、よかったのよね?)
―公園―
ほむら(ここなら、美樹さやかの指定した場所からテレパシーも届くし、この時間なら人もいない)
ほむら(届いたら、一回の時間停止ですぐに駆けつけられるし、待つにはうってつけね。何事もなければ、それでよいのだけれど…)
ほむら(…それにしても)
ほむら(まどかに好意を口にしてしまった…)
ほむら(やはり、マズかったかしら。ワルプルギスを倒したら、姿を消さなきゃいけないのに。
そうしたら、別れる時辛くなってしまって…)
ほむら(…いえ、もうこのような関係になっている以上、それを言っても仕方ないわね)
ほむら(…そういえば、別れるときはどのようにきりだしたらいいのかしら)
ほむら(これまでずっとワルプルギスの夜のことばかり考えていて、そのことを深く考えたことがなかったわね)
ほむら(…いえ、考えたくなかったというほうが正しいのかしら。この世界では、これまで以上にまどかと一緒にいられたから)
ほむら(いえ、だからこそ別れる時のことを考えないと)
ほむら(ようやく、約束を果たせそうなんだもの。最後になってまどかの心に傷を残すようなことになってはいけないわ)
ほむら(…でも)
ほむら(まどかが傍にいてほしいというのなら)
ほむら(それならいっそ、できるだけまどかの傍にいてあげたほうが…)
「暁美さん」
「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん」
「さよなら。ほむらちゃん。元気でね」
「やったぁ~、すごい、すごいよほむらちゃん」
「ほむらちゃん、やっと名前で呼んでくれたね。嬉しい…な」
「えっと…わたしとほむらちゃんってどこかで会ったことあるのかな?」
「ほむらちゃんだって、ほむらちゃんのことだってわたしは忘れないもん! 昨日助けてくれたこと、絶対忘れたりしないもん」
「暁美さん」
「暁美さん」
「暁美さん」
ほむら(…何を考えているの、私は)
ほむら(私はまどかとは、もう違う時間を生きてることを忘れたの?)
ほむら(今更、こんな膨れ上がったズレを、埋められるわけないじゃない)
ほむら(何度、時間を巻き戻したというの。どれくらい、失敗を繰り返したか覚えているでしょう)
ほむら(もう、誰も私のことを理解できる人なんていない。同じ時間を過ごした人なんて、どこにも…)
ほむら(そんなこと、わかってたのに…。分かっていたはずだったのに…)
ほむら(こんな、大好きな人に自分を理解してもらえないなんて)
ほむら(こんなこと…)
ほむら「…」グス
ほむら(ごめんさい、まどか。私、貴方と一緒にはいられない)
ほむら(まどかと一緒にいれば、私は貴方に他の世界の思い出を求めてしまう。
そして、それが叶わないと認識してしまえば私はそのことに絶望するだろう)
ほむら(でも、そんなことはしたくない。まどかを絶望の原因になんて、させたくない)
ほむら(だからお願い。私がいなくなっても、悲しまないで)
ほむら(貴方を、私にとっての希望でいさせて…)
ほむら(お願いだから…)
ヒュン
ほむら「?!」
ほむら『な…?』
???「夜の公園のベンチに無防備に座ってるなんて。怖い人に捕まったらどうするの?」ケラケラ
ほむら「…」
???「にしても、こんな簡単に上手くいくなんてね。ちょっと、勘が鈍ってるんじゃない? ベテランの名が泣いているよ」
ほむら「…」
???「ま、しかたないか。あんたは、まどかに全部押し付けた卑怯者だもんね」
ほむら「ほむむ…」
ほむら『…あなたは』
さやか「さて…死んでもらうよ」
ほむら『美樹…さやか…』
ほむら(くっ…体を握られて、身動きが取れない…!)
さやか「もがいてるもがいてる。でも無理だよ、もう完全にあんたはあたしの手の中だから」
ほむら(これじゃあ、時間を止めても…)
さやか「時間を止められると厄介だからね。こうさせてもらったわよ? これなら、止めても何の意味もないでしょ」
ほむら「…」
ほむら『まどか、返事をしてまどか!』
QB『無駄だよ』
ほむら『…! キュゥべえ!』
さやか「ああ、まどかを呼ぼうとしても無駄だから。キュゥべえのやつが止めているからさ」
ほむら(なっ…)
QB『君たちの念話は僕が管理している。残念だけど、君の声がまどかに届くことはないよ』
さやか「アイツも、あんたのことが目障りだったみたいでさ。あんたをまどかの前から消すことを提案したら、すぐに乗ってきたよ」
ほむら(くっ…)
ほむら(油断した…。なにかあるとは感じていたけど)
ほむら(私の方を狙ってくるなんて…)
さやか「何で、ここにいるのかって顔してるわね。安心しなさい。まどかは生きてるわよ」
ほむら「…!」
さやか「今頃は、ちょっと待ちぼうけ食らってるけどね。まどかには何もしてないよ」
ほむら「…」ホッ
さやか「…何、ほっとしたような表情してるのよ」
ほむら「…?」
さやか「あんた、まどかを危ない目に合わせてる張本人でしょ? そんな気持ちがあるなら、まどかの隣から姿を消しなさいよ」
ほむら「ほむ…?」
さやか「…そうだ。あんたがいるからいけないんだ。
あんたさえいなければ、まどかだって危ない目に合わなくて済んだし、強くなることだって…!」
ほむら(何を…、何を言っているの?)
さやか「あんたさえいなければ…」
ほむら「ほ…むっ?!」
さやか「あたしは、まどかを守り続けることができたのに…!」ギリギリ
ほむら「ほっ…むっ」ジタバタ
さやか「苦しい?でも我慢してよ。これくらいの八つ当たり」
ほむら「むーむー!」
さやか「おーおー、あがくねぇ。でも無駄無駄」
ほむら「むみゃ!」ガブ
さやか「あははは、噛みついてるよ。でも残念でした。今のあたしは何にも感じない身体だから、そんなんじゃ怯みもしないよ」
ほむら「…」ギリ
さやか「悔しい? 悔しいでしょ。でも、あたしの方が悔しかったんだよ。あんたに役目を取られてさ」
ほむら「むっ…むっ!」ジタジタ
さやか「ったく、ウザったい…。いっそのこと、頭もぎ取ってやろうかしら」ガシ
ほむら「…!」
さやか「おとなしくなったね。まあ、いい心がけだと思うよ。今のあたしは、文字通りあんたの命を握ってるんだからさ」
ほむら「…」ブルブル
さやか「あんたはまどかを傷つける」グッ
ほむら(ぐっ…)
さやか「あんたがいる限り、まどかは危ない目にあい続けるし、あたしはまどかを守ることができないの」ググッ
ほむら(あ…う…)
さやか「あんたに分かる? 守りたい相手が自分よりも強くて、何の役にも立たないこの気持ちが」
ほむら(なん…とか…隙を…)
さやか「もうあたしには、まどかを守ることしか存在する価値がないのに。なんなのよこの仕打ちは」
ほむら(腕は…動く…。何か…武器…)
さやか「消えてよ。あんたがいなくなれば、まどかは危ない目にも合わないし、あたしもまどかを守ることができるんだ」
ほむら(怯ませ…られれば…)
さやか「そうなれば、わたしが魔法少女になった意味があるんだ」
ほむら(火器じゃ…無…)
さやか「まどかを守れないわたしは、もう何の価値もないんだからさ」
ほむら(…!)
ほむら(…ふざけないで)
ほむら(まどかが、どれだけあなたことを心配していたか、知っているの?)
ほむら(どれだけ大切に思われていたか、貴方は知らないでしょ!)
ほむら(それを自分に価値がないなんて考えるなんて、まどかを馬鹿にしているの?!
あなたを心配したまどかの気持ちは全部無意味だっていうの!)
ほむら「ほむほむほむほむほむほむほむほむ!」
さやか「…うるさいな。ここに来て命乞いでもしてるの? ホント、あんたはどうしようもないね」
ほむら「ほむむほむほむほむほむ!」
さやかもう、いいや。痛め付けるのも飽きた。バイバイ」
ほむら(うっ…ぐっ…)カチッ
さやか「?」
ほむら(貴方なんかに…)
さやか「何、悪あがきしてんの? 時間でも止めるつもり?」
ほむら(殺されるものか…!)
ヒュッ
さやか「え?」
ほむら(閃光手榴弾。サイズは小さくても、この距離なら…!)バッ
カッ キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!
さやか「あぎゃ」
ほむら(拘束が緩んだ!)パッ
さやか「!!!!???!!?!?!??!?!?!」
ほむら(く、こっちもダメージが大きい。でもっ!)
さやか「こらっ、逃げっ…!」
ほむら(早く時間を止め…)
さやか「っざけんなぁぁっ!」ビュン
ほむら(! 蹴り、避け…)
バキッ!
ほむら「――」
さやか「ったく、油断も隙もありゃしない…」
QB「大丈夫かい、さやか?」
さやか「キュゥべえ、あいつは? ちょっと目と耳がやられちゃって何もわからないんだけど」
QB「君のキックを受けて、地面に横たわってるよ。ピクリとも動かない」
さやか「…もしかして、死んだ?」
QB「いや、かろうじて息はあるみたいだ。といっても、虫の息だけどね」
さやか「…ああ、目が直ってきた。こういうときには便利ね。ゾンビの身体って」
QB「戦うための体なんだ。当然のことだよ」
ほむら「…」
さやか「ホントに生きてるのコレ? 何か手足ヤバくない?」
QB「少なくとも死んではいないよ。それにこれくらいじゃ魔法少女は死なない。それじゃあ、魂をソウルジェムに変えた意味がないからね」
さやか「…ま、いいか。ソウルジェムを砕けばいいんでしょ、要は」ジャキッ
QB「全く。始末をするなら、最初からこうすればよかったんだ」
さやか「まあね。でも、ちゃんと話をしておく必要があると思ったから」
QB「話?」
さやか「ムカツク奴とはいえ、まどかを守ってくれてたのは事実だし」
QB「やれやれ、これから殺す相手にそんなこと考えるなんて、人間は相変わらずよくわからないよ」
さやか「別に、こいつの為じゃないわ。あたしのけじめの為。でもそれももう終わり」
さやか「一思いに、楽にさせてあげるわ」
さやか「今まで、まどかを守ってくれててありがと。そこは感謝してる」
ほむら「…」
さやか「でも、もうまどかが戦って傷つく姿を見たくないの」
ほむら「…」
さやか「あんたの事は忘れない。あんたは私が魔法少女になったきっかけのひとつだし、命の恩人でもあるしね」
ほむら「…」
さやか「だから、ごめんね。謝っても謝りきれることじゃないけど。そのかわり、まどかはこれからはあたしが守るから」
ほむら「…」
さやか「じゃあね。ほむほむ」
ほむら(ま…ど…か…)
まどか「ほむらちゃん!」
さやか「なっ、まどか?!」
まどか「ほむらちゃん! しっかりして、ほむらちゃん!」
さやか「ちょっとキュゥべえ! 何で、まどかがここに!」
QB「知らないよ。僕は何もしていない」
さやか「なにとぼけているのよ! あんたがテレパシーを使えるようにしたんでしょ?!」
QB「まさか。そんなことをして、一体何の意味があるんだい? テレパシーの制限はかけたままだよ」
さやか「じゃあ、なんでまどかがここにいるのよ!」
QB「さあね。どうやって彼女がここに来たのか。僕も興味があるよ」
まどか「待ってて、今治してあげるから!」ポウ
QB「…凄いね、お互いの傷なら治療できるようになったんだ。思ったより状況は進行してるみたいだ」
さやか(これじゃあ…。こんなはずじゃあ…)
まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃん!」
まどか「…さやかちゃん」
さやか「…っ」
まどか「何してるの…。何なのこれ…」
さやか「ち、違うの…。これは…その…」
まどか「どうしてさやかちゃんが、こんなことしてるの…?」
さやか「ま、まどか、話を聞いて…」
まどか「こんなことするのが、さやかちゃんのやりたいことだったの…? さやかちゃんはみんなを守りたいんじゃなかったの?」
さやか「ま、まどか…。だって、そいつは…。まどかを…」
まどか「弱い者いじめをするなんて、そんなのさやかちゃんらしくないよっ…」
さやか「…」
まどか「なんで…こんな酷いこと…」
さやか「…るさい」
まどか「…さやかちゃん?」
さやか「…うるさい」
まどか「…え」
さやか「うるさいうるさいうるさい!」
さやか「あんたにあたしの何がわかるっていうのよ!
あたしはね! 恭介のことが好きだった! マミさんみたいに街を守りたかった! まどかが傷つくのが嫌だった! それだけなの!
それが何?! 何でどれも上手くいかないの! 何で誰もあたしを認めてくれないのよ!
恭介は仁美が好きだったし、街の人は誰もあたしに感謝なんかしてくれない! 挙句に、あんたまであたしのことを否定するの?!
あんたはそいつに戦わされたんでしょ?! 辛かったんでしょ! だったらあたしが、何とかしてあげるわよ! いつもそうだったもんね! あんたは優しくて、貧乏くじばっか引いてさ!
あたしがあんたを守ってるのよ! それなのに、あたしのことを責めるの?! ふざけるんじゃないわよ!
何で…何で、みんな、あたしを必要としてくれないの!」
まどか「さやかちゃん…」
さやか「…まどか、そいつをこっちに渡して」
まどか「…だめだよ」
さやか「そいつがいなくなれば、まどかは苦しまなくてすむんだ。
魔女と戦うことになったも、こんなふざけた運命に巻き込まれたのも、全部そいつの都合でしょ?」
まどか「…」
さやか「まどかがそんなことに付き合う必要なんてないじゃん。だからさ…」
まどか「…勝手なこといわないで」
まどか「きっかけは確かにほむらちゃんだよ。でも魔法少女になるって決めたのは、わたし自身なの」
さやか「違う! まどかはそいつのせいで…」
まどか「ううん、他の誰でもない、わたしの気持ち」
さやか「そんなことない! だってまどかは優しいから、そいつの身代わりになろうとしたんでしょ?!
辛かったんでしょ! 止めたかったんでしょ! だからあたしは…っ!」
まどか「…違うよ。それに辛いこともあったけど、それは全部自分で決めたことだから。誰のせいでもないの。
さやかちゃん。さやかちゃんからみたら、わたしは状況に流されているように見えたのかもしれない。
でも違う。こんなことがなくても、わたしはきっと魔法少女になっていたと思う」
さやか「…」
まどか「さやかちゃん、魔法少女になったのは誰のせいでもない、わたしの意思。
自分で始めたことだから、その運命も因果もわたし自身がなんとかしなきゃいけないの。
わたしが魔法少女になって守れたものがあって、でもその一方で苦しんだり泣いている人がいるのも確かで。
だからこそ、そのことは自分でなんとかしなくちゃいけない。
わたしはわたしの始めたことについて、責任を取らなきゃいけない。
そのことをさやかちゃん押しつけるようなことはできないよ。
わたしが…頑張らなきゃ」
まどか「さやかちゃん。ほむらちゃんは傷つけさせないよ」
さやか「…」
まどか「ほむらちゃんも、わたしのせいで苦しんでる人の一人だから、助けたいの」
さやか「…」
まどか「だから、さやかちゃんお願い。こんなことはもう止めて」
さやか「…」
まどか「ほむらちゃんのせいじゃない。全部、わたしが決めてはじめたことだから…」
さやか「…」
さやか「…ああ、そう」
まどか「さやかちゃん…!」
さやか「…つまり、こういうことでしょ」
さやか「あんたも、あたしがいらないんだ」
まどか「…!」
さやか「あんたも他の奴と同じだ。あたしのこと必要ないんでしょ?」
まどか「違うよ、さやかちゃん! そういうことじゃないの! さやかちゃんは友達なの!
友達だから、甘えちゃいけないの! 自分で決着をつけないと!」
さやか「…まどか、そいつを渡さないなら。力づくでも、いくよ?」
まどか「さやかちゃん!」
さやか「もうまどかは戦わせない…。こんなふざけた現実、まどかに必要ない…」
まどか「…ほむらちゃんはこれ以上、傷つけさせないよ」
さやか「まどかはわたしが守る…。守るんだ…」
まどか「…さやかちゃん」
さやか「…まどか。最後だよ。そいつをこっちに渡して」
まどか「できないよ。さやかちゃん」
さやか「…あ、そう」ジャキッ
まどか「…」ギュッ
さやか「…手間かけさせないでよ。あたしにこれ以上まどかを傷つけさせる気なの?」
まどか「ごめん、さやかちゃん。でも…」
まどか「ほむらちゃんは、やらせない」
さやか「…っ!」
さやか「――――――――――――!」
まどか「…」
ガキン
杏子「何やってんだ! さやか!」バキッ
さやか「あうっ…!」ドサ
まどか「杏子…ちゃん?」
杏子「まどか! 大丈夫か!」
さやか「杏子…!」
杏子「おい、ほむほむが…!」
さやか「またあんたは、あたしの邪魔を…!」
杏子「いい加減にしろ!」
さやか「っ!」ビクッ
杏子「何だよこれは!」
さやか「あんたには関係ない! これはあたしとまどかの…」
杏子「さやかはまどかの友達だろ! 友達に何しようとしてたんだよ!」
さやか「違う! あたしもこんなこと…したく」
杏子「どんな理由があったら、まどかを傷つけるっていうんだ!」
さやか「…あたし…だって…」
杏子「まどかを守るっていうのは嘘だったのか! そんなことも忘れちまったのかよ!」
さやか「!」
杏子「自分が何をしたのか見てみろ!」
まどか「さやかちゃん…」
ほむら「…」
杏子「まどかは斬りつけられる寸前だったし、ほむの奴はボロボロだ。酷い有様だ!」
さやか「…そんな…の…」
杏子「全部お前がやったことだよ! 友達を傷つけようとしたのも、弱い奴に暴力をふるったのも全部!」
さやか「ち…ちが…」
杏子「正義の味方なんじゃなかったのか! さやか」
さやか「あ…あ…」
杏子「これが…正義の味方のやることかよ!」
さやか「う、あ…」
(あたしは見返りが欲しいわけじゃない)
(それにこれは、まどかを助けるためでもあるんだから!)
「当然です! だって、ここで願いを叶えなくちゃ絶対後悔するって思ったんですから!」
「だから、まどかは安心していいよ。これからはアタシも街の平和を守るから!」
「マミさん、あたし決めました。あたしはあんな魔法少女には絶対になりません」
さやか「あああああああああっ!」ダッ
杏子「待て逃げんな、さやか!」
まどか「杏子ちゃん!」
杏子「あっ…くっ…まどか、ちょっと待ってろ。マミの奴を探して…」
まどか「わたし達は、大丈夫だから! それよりさやかちゃんを!」
杏子「でも…っ!」
まどか「さやかちゃんを追いかけて! 今のわたしじゃ追いつけるかわからないけど、杏子ちゃんなら間に合う!」
杏子「まどか…?」
まどか「今追いかけなきゃダメなの! じゃないとさやかちゃんが…、本当に…手遅れに…」
杏子「手遅れ? 手遅れってなんだおい!」
まどか「わたしは、手を離しちゃったから…」
杏子「え…?」
まどか「お願い、杏子ちゃんは手を離さないで上げて! さやかちゃんの傍にいてあげて!」
杏子「まどか…」
まどか「杏子ちゃん!」
杏子「…わかった」
まどか「さやかちゃんのこと、助けてあげて…」
杏子「任せろ! あいつの首根っこ捕まえて、まどかの前で土下座させてやるからな!」シュタッ
まどか「…さやかちゃん」
―駅―
さやか「…」
杏子「こんなとこに居やがったか。どっか遠くにでも逃げるつもりだったのか?」
さやか「…」
杏子「少しは頭冷えたか?」
さやか「…」
杏子「とにかく、反省しろ。んでもって、まどかに謝りに行け。気まずいなら、アタシも一緒について行ってやるからさ」
さやか「…無理だよ」
杏子「無理じゃねェよ。ったく、ホントお人よしだぜ。あんなことになっても、まだアンタのこと心配してるんだぜアイツ」
さやか「…あはは、まどからしいや」
杏子「でも、アタシはそれくらいじゃ許さねえ」
さやか「…うん、そうだろうね」
杏子「とりあえず、謝るときは土下座しろ。ほむほむには元気になるまで不眠不休で看病だな。
あと、しばらくお前を監視するからな。変なことをしようとしたら、マジでしばらく再起不能になるまでボッコボコにしてやる」
さやか「…はは、厳しいね」
杏子「当たりめぇだ、バカ。とにかく、一人にはしないからな」
さやか「…」
杏子「…だからさ、もう帰ってこいよ」
さやか「…」
杏子「アンタは一人じゃないよ。気付いてないかもしれなけど、アンタを必要としてくれる人が一杯いるんだからさ」
さやか「…ダメなの」
杏子「え…?」
さやか「もうだめなの…あたし」
杏子「おい、大丈夫か…?」
さやか「一体何が大切で何を守ろうとしてたのか、もう何もかも、わけ分かんなくなっちゃった」
杏子「おい! しっかりしろ、さやか!」
さやか「挙句の果てに、まどかを傷つけて…。おかしいなぁ…あたしはまどかを守るはずだったのに」
杏子「今からでもいいじゃねーか! 一度の失敗くらいで諦めんなよ! 失敗したんなら、もう間違えることもないだろ!」
さやか「結局あたしは何もわかってなかったんだ。正義の味方がなんなのかも、自分が何を望んでたのかも」
杏子「おい、こっち見ろ! どこ見てんだよ、さやか!」
さやか「その結果が…このありさま」
杏子「おまっ…」
杏子(ソウルジェムが…穢れでどす黒く…!)
さやか「はは…。これあたしなんだっけ」
杏子「待ってろ! 今グリーフシードを…」
さやか「恨みや妬みで汚れきって…、これがあたしなんだね」
杏子「早く貸せ! これじゃあ、お前…!」
さやか「本当…自分が嫌になる」
杏子「さやか!」
さやか「あたしって、ホントばか」
QB「この国では、成長途中の女性のことを、少女って呼ぶんだろう?」
QB「だったら、やがて魔女になる君たちのことは、魔法少女と呼ぶべきだよね」
―魔女の結界内―
杏子「んなっ…!」
杏子(魔女の結界?! さっきまで何も感じなかったんだぞ…!)
魔女「ooooooooooooooooooooooo!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
杏子「何だテメェ…」ジェムショウカン
魔女「aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
杏子「さやかに何しやがった!」シュッ
魔女「uuuuuuuuuiiiaaaaaaaaaaaaa!!」
杏子(騎士…? 馬鹿でかい剣振り回しやがって!)
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
杏子(それになんだ…? あの使い魔、こいつを応援してんのか?)
魔女「iiiiiiiiiiiaaaaaaaaaoooooo!!!」バシュバシュ
杏子(おまけに変な車輪まで…。くっそ、近づけねェ…!)
さやか「…」
杏子「おい、さやか! なに寝てんだ!」
魔女「nnnnnnnnnnooooooooonnnnnnnuuuuuuuuuuu!!!」
杏子(畜生…! さやかにやられた傷のせいで…調子も…)
魔女「qqqqqqqqqqaqaaaaaaaaaaaaafffffffffuuuuu!!!」
杏子(さやかをここから連れ出さなきゃならねェってのに…!)
ドンドンドンドンドン
魔女「gggaaaaaaaagggggaaa!!」
マミ「佐倉さん! 平気?!」
杏子「! マミか!」
マミ「パトロールをしていたら、魔女の急に気配が出て来てみたんだけど…」
魔女「uuuuuuuuuuuiiiiiiiiii!!!」
マミ「もう動けるの?! かなり撃ちこんだのに!」
杏子「あの野郎…、さやかと話していたら急に現れやがった」
マミ「美樹さんと?」
杏子「ああ、さやかのやつはあそこに…っく」
マミ「佐倉さん、その傷…!」
杏子「ちょいと、またさやかのやつとやりあってな。おかげで調子がでねぇ。
正直、ヤバかった。来てくれて、サンキューな」
マミ「そう…。でも私もあまり余裕があるとは言えないわ。今日は、もう何回か戦ってきたところだし…」
杏子「…しかたねぇ、逃げるか」
マミ「…そうね、それが懸命だと思うわ。美樹さんも倒れていることだし」
杏子「一発、デカいのかましてくれ。その隙にアタシはさやかのやつを」
マミ「ええ、お願いね。出来るだけ、派手に行くわ」
魔女「mmmmmmmmmmmmmmmhhhhhhhhhhaaaaaaaaa!!!」
杏子「来やがった!」
マミ「佐倉さん、上に投げて!」
杏子(おっしゃ、槍を巻きつけて…)ジャラジャラ
杏子「どぉうりゃ!」ブオン
マミ「ティロ・フィナーレ!」
ドォォォォォォォォン!
マミ『佐倉さん!』
杏子『っし、逃げるぞ!』ダダダダ
魔女「aaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
―線路―
杏子「…」ハァハァ
マミ「なんとか…結界から抜けたわね…」ゼェゼェ
杏子「っぐ!」
マミ「ちょっと待って、今傷をふさぐから…」ヒール
杏子「悪ィいな…。やっぱり、傷を治すのはマミの方が上手だな」
マミ「そういう祈りで魔法少女になったのだもの、当然よ」
杏子「アタシはもういい。それより、さやかのほうを…」
マミ「…ええ」
さやか「…」
マミ「おかしいわ…。外傷は何もない。体に特に問題は無いわよ?」
杏子「んじゃあ、やっぱりソウルジェムに何かあったのか…」
マミ「そういえば美樹さんのソウルジェムは? どこにも見当たらないけれど…」
杏子「わからねぇ…急に何か起きたと思ったら、いきなりあの魔女が現れて…」
マミ「じゃあ、ソウルジェムが体から離れているのかしら。この感じ、あなたの時とそっくりよ」
杏子「じゃあ、あそこにあるのか? くっそ、魔女の奴が他の場所に移ってるといいんだが…」
QB「無駄なことは止めたほうが良いよ」
マミ「…キュゥべえ」
杏子「無駄だと? ふざけんな、さやかを探すことのどこが無駄なんだよ」
QB「杏子。君はもしかしたら、とっくに事実に気が付いているんじゃないのかい? だったら、現実を見つめるべきだよ」
杏子「…!」
マミ「佐倉さん、何か知っているの…?」
杏子「違う! そんなわけねぇ! そんなこと…」
QB「やれやれ、じゃあ僕から言わせてもらうよ。その方が君も認識しやすいだろう」
マミ「…キュゥべえ、何か知っているの?」
QB「ああ、美樹さやかの居場所をね。といっても、君たちがついさっき戦っていたんだけど」
杏子「…」
マミ「え?」
QB「美樹さやかは、穢れを溜め込み過ぎて、ソウルジェムをグリーフシードに変化させた。魔女を生んで消滅したよ」
マミ杏「…」
QB「さっきの魔女が生まれ変わった美樹さやかだよ。といっても、もう彼女は何も覚えていないだろうけどね」
杏子「てめぇ…」
QB「その死体は早く処理してしまったほうが懸命だと思うな。君たちの社会でも、確認されていない死体の処理は面倒なんだろう?」
杏子「そんなこと、今まで黙ってやがったのか!」
QB「魔法少女と魔女の関係のことかい? 聞かれなかったからね。それに警告はちゃんとしたから、非難される道理はないと思うけれど」
杏子「ふざけんな! これがテメェの目的か…! アタシ達を同士討ちさせることが、狙いだったんだな!」
QB「それは目的でなくて手段だよ。そのおかげで、僕たちは自分たちの目的を達成できる。教えてあげるよ、これは君たちにとっても有益な話だしね」
杏子「…!」
QB「君たちの…」ザシュ
ザシュズブザシュザスドスドスブシュ
杏子「…んなもん、聞きたくねぇ。どうせ、ロクでもないもんに決まってる」
QB「…」
杏子「畜生、さやか…」
シュル
杏子「?!」
杏子(リボンが…体に巻きついて!)
マミ「…」
杏子「おいマミ! どうしちまったんだ!」
マミ「…うっ…うっ」ジャキ
杏子「ちょっと待て! 冗談きついぞ!」
マミ「…うっ…あ…」ポロポロ
杏子(やべえ、ショックがデカすぎたのか?!)
マミ「あ…ああ…うあああ」ポロポロポロ
杏子(っていうか、人のこと考えてる場合か! これじゃあ避けられねぇぞ!)
マミ「ああああああああああ」
マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!」
マミ「あなたも、私も…!」
ドン
杏子「うぉりゃ!」シャッ
マミ「きゃっ!」
杏子(あぶねェ、寸前でリボンを切れたぜ…。武器が刃物でよかった)
マミ「離して! 離してよ!」
杏子「離したら、また心中しようとするだろ! いいから大人しくしろ!」
マミ「だって私たち、みんな魔女になるのよ! どうしようもないじゃない!」
杏子(完全に錯乱してやがる…。ひっぱたくなり、なんなりして落ち着かせねーと…)
マミ「魔女になんかになりたくない! なりたくない!」
杏子(くっ、両手は抑え込んでて使えねーし。何がショックを与えられる方法は…)
マミ「もうやだあぁ、やだよぉ!」
杏子「あああああああああああ! もう!」
ムチュ
マミ「!!!!?????!!!!」
杏子(ちくしょう、こんなやり方しか思いつかなかったじゃねーか!)
マミ「んー! んー!」
杏子(あっ、こら逃げんな!)ガッシ
マミ「?!?!?!?!?!?!?」バタバタ
杏子(ええい、こうなったら)チロ
マミ「??!!!??!!……」
杏子(…ついでに)ペロペロ
マミ「…――」
杏子(初めてだったんだけどなぁ…)
マミ「―」
杏子「ぶはあっ!」
マミ「…」
杏子「この…、やっと大人しくなったな」ゼェゼェ
マミ「…」
杏子「ったく、何でこうアタシのまわりはこう面倒なやつが多いんだ…」
杏子(まあ、こいつが錯乱したからこっちは冷静になれたけどよ)
マミ「…」
杏子「さて、こいつも連れてまどか達と合流しねーと」
さやか「…」
杏子(さやか…)
―まど部屋―
ほむら「…」
まどか「…ほむらちゃん」
ほむら「…」
まどか「さやかちゃん、止められなかった…」
ほむら「…」
まどか「こうならないように、頑張ってきたはずだったのに…」
ほむら「…」
まどか「ほむらちゃんはずっとこんな気持ちで戦ってたんだよね。何度も何度も」
ほむら「…」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん」
ほむら「…」
まどか「わたし諦めないよ。きっと、さやかちゃんを元に戻す方法はあるよ。ほむらちゃんが諦めなかったように、わたしも諦めない」
ほむら「…」
まどか「もちろん、ほむらちゃんのことも絶対」
ほむら「…」
まどか「だから、早く元気になって。ほむらちゃん」
―マミ宅―
マミ「あの…、そろそろソウルジェムを返してほしいのだけれど…」
杏子「うるせぇ、豆腐メンタル」
マミ「と、豆腐メンタル?!」
杏子「ショックだったとはいえ、いきなり心中しようとしやがって」
マミ「あ、あれは…その…」
杏子「とにかく、ソウルジェムはこっちで預かる。また、錯乱して無理心中されるのは勘弁してほしいからな」
マミ「学校はどうするのよ! まさか、ついてくるつもり?」
杏子「あのなぁ…、もう呑気に学校なんかいってる場合じゃねーだろ。今日と同じく当分休め。どーせ、大した用事なんか無いだろ」
マミ「…」ズーン
マミ「…鹿目さんは?」
杏子「ほむらの看病してるよ、まだ目を覚まさないんだとさ」
マミ「ほむら?」
杏子「ああ、マミにはまだ言ってなかったな。ほむほむの本名だと。暁美ほむら」
マミ「そういえば、ほむほむも本当は普通の人間だったのよね。すっかり忘れていたわ」
杏子「まぁ、あんななりだしな」
マミ「考えたら何も知らないのよね、あの子のこと。喋れないからというのもあるけど」
杏子「まぁ、何か色々あるのは確かだろうな。魔法少女が魔女になることも、知っていたみたいだし」
マミ「え?」
杏子「まどかがあんまりショック受けてなかったからな。こっちはマミん時みたいになるんじゃないかと、ヒヤヒヤしてたっつーのに」
マミ「そう…なの」
杏子「ほむほむ知っていたのかもな。魔女と魔法少女のこと」
マミ「そうね…。そういえば、ソウルジェムの浄化に関しては、私が言わなくても特に念入りしていたような気がするわ。美樹さんはサボることが多かったのに」
杏子「そっか。まあ、知ってりゃそうなるわな」
マミ「ええ。誰しも魔女になんかなりたくないものね…。絶対に」
杏子「まあ魔女の正体に関しては隠して正解だと思うけどな。
こんなこと実際に直面しないと信じられないし、マミは豆腐メンタルで受け入れられないしな」
マミ「それはもういいでしょ!」
杏子「だっていきなりリボンで縛って、銃向けてられたんだぜ。文句の一つも言いたくなるっつーの」
マミ「だ、だって仕方ないじゃない! あ、あんなこと急に知らされたら誰だって…」
杏子「納得いくか、そんな理由! 正気に戻すのに、スゲー苦労したし」
マミ「…!」
杏子「あん? 何顔赤くしてんだ?」
マミ「あなたがそんなこと言うからでしょ! そ、それに…あんな方法で」
杏子「ああ、ちゅーか」
マミ「っ…!」カァァァァァァァァァ
杏子「言っておくけど、アタシはファーストキスだったんだ。こっちだって失うもんがあったんだから文句いうなよな」
マミ「ファ、ファ、ファ…」
杏子「あー、でも昔妹と遊びでちゅーしたっけか。家族相手じゃノーカンなんだっけ?」
マミ「知らないわよ!」
杏子「なんで怒るんだよ? 理不尽だぞ」
マミ「もういいからこの話は!」
杏子「ああ、そうだな。じゃあこの件はもう、蒸し返さないってことで」
マミ(キスなんて、わたしだって初めてだったのに!)
マミ「…美樹さんは」
杏子「…向こうの部屋に体はある」
マミ「そう…」
杏子「魔法で状態は保ってるけど、所詮は一時しのぎだ。いつかは…」
マミ「それ以上はいいわ、佐倉さん」
杏子「悪りぃ…」
マミ「いえ、辛いのはわたしも同じだもの。こんなことに、巻き込んでしまった身としては、ね」
杏子「…なんとかならねーかな」
マミ「今まで魔女が魔法少女の成れの果てなんて、聞いたこともなかったわ。
それだけ情報が少ないのだもの。恐らく前例はほとんどないでしょうね。戻れるとしたら、それこそ奇跡みたいなものでしょう」
杏子「奇跡か…。アタシ達魔法少女はテレビじゃ奇跡を起こせる存在だったんだけどな」
マミ「現実は上手くいかないものよね。奇跡を起こすどころか最後は…」
QB「可能性がないわけじゃ――」
ドン
杏子「声を聞いただけで瞬殺かよ」
マミ「気持ちはちゃんと表現しないと伝わらないわよ」
QB「酷いなあ、マミ。話くらいは聞いたらどうだい? 代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね」
杏子「まあ、死なないみたいだしな」
マミ「それでも、こちらの意思は十分伝わったでしょう。きっと」
QB「こんなことしなくても、僕は君たちのことは理解できるよ。そのように努力しているからね」
杏子「…で、どの面下げてきやがった、テメェ」ジャキ
QB「僕は君たちに有益な情報を持っているかもしれないんだよ? 少しは、歓迎してもらいたいものだね」
マミ「これまでの自分の振り返ることね。キュゥべえ。そうすれば、口が裂けてもそんなことは言えないと思うけれど」
QB「まったく、認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね。理不尽と言わざるを得ないよ」
マミ「認識の相違を自覚しておきながら、事が有利に運ぶように黙っていたのなら、憎悪されても仕方ないと思うけれど?」
QB「自らの優位性を保つように行動するのは、当たり前だよ。それが合理的というものだ」
マミ「そうやって自分のことしか考えない人間は嫌われるわ。といっても、あなたは人間じゃないから人間関係のことなんて理解できないのでしょうけど」
QB「わかっているじゃないか、マミ。多くひしめく君たちが、どうして単一個体に大騒ぎするのか。その価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ」
マミ「私も、あなたの考えは理解に苦しむわ」
杏子「そんな話をしに来たのか、てめぇは。それなら、無意味にその体を潰してやるけど」
QB「話をしてきたのは、君たちも同じじゃないか。まったく、理不尽だよ」
マミ「有益な情報と言ったわね。それは美樹さんのことについてかしら」
QB「まあ、そうだね。魔女になった美樹さやかは、この街に結界を張って暴れているよ」
杏子「…!」
マミ「…それだけ? あまり有益とは言えないわね」
QB「他にもあるけれど、さっきも言った通り、僕と君たちでは価値基準が違うんだ。何が有益になるかは、そちらが質問してくれないと分からないよ」
杏子「じゃあ、答えろ! さやかを元に戻す方法はあるのか!」
QB「魔女が元の人間に戻った前例は、僕の知る限りでは、無いね」
杏子「っ…」
マミ「『僕の知る限りでは』と言ったわね。じゃあ、可能性はあるということかしら?」
QB「魔法少女は条理を覆す存在だ。君たちがどれ程の不条理を成し遂げたとしても、驚くには値しない。
さっきも言った通り、前例はないから方法はわからないけれどね。こればかりは助言のしようがないよ」
マミ「そう…、もういいわ」
QB「そうかい? 聞かれれば、まだ答えられることもあると思うけれど?」
杏子「役立たずは帰れっつってんだよ、糞害獣」
QB「酷い言われようだね。こっちは君たちの言う善意で来てるというのに。じゃあね」タッ
杏子「…どう思う?」
マミ「…たぶん、罠ね」
杏子「だよなぁ?」
マミ「希望があるような言い方をしてたけど、その実、具体的な案は何も無し。
目的は分からないけれど、私たちに美樹さんの救出を行わせて、そして失敗してほしいのでしょうね。キュゥべえは」
杏子「やっぱ、むかつくな。アタシも引き裂いてやりゃよかった」
マミ「それよりも…、どうするの?」
杏子「…」
マミ「美樹さんのこと」
―まど部屋―
まどか(ほむらちゃん、まだ起きない)
まどか(どうしよう…、このまま起きないなんてことないよね?)
まどか(怪我の方は、魔法で治した。だから、大丈夫だよね?)
まどか(ほむらちゃん…)
コンコン
まどか「?」
杏子「まどか、いいかい?」
まどか「あ、杏子ちゃん…」
マミ「こんにちわ、鹿目さん」
まどか「マミさんまで…、玄関から上がってもらえばよかったのに」
杏子「バカ野郎。アタシはともかく、マミのやつは学校に行っている時間なんだぞ。怪しまれるだろう」
まどか「あ、そっか…」
マミ「ふふっ。後輩の家に窓からお邪魔するなんて、なかなか無い体験ね」
杏子「あのなぁ、遊びに来たんじゃないんだぞ?」
マミ「わかっているわよ。ちょっと言ってみただけ。じゃあ、鹿目さん。入るわね」
まどか「あ、はい」
まどか「さやかちゃんを助けに行く…?」
マミ「ええ」
杏子「おう」
まどか「何か方法が見つかったんですか?」
杏子「確実というわけじゃないが、一応、作戦はね」
マミ「考えたのだけれど、魔女になったとしても、あれは美樹さんに変わりはないわ」
杏子「だからさ、ひたすら呼びかけてみようと思うんだ。呼びかけるのはアイツが憧れていたマミで、アタシはそのフォロー」
マミ「もしかしたら、これで美樹さんの意識を呼び覚ませるかもしれない。それでグリーフシードがソウルジェムに戻るかはわからないけれど…」
杏子「なあに、あれだけ頑固なやつだったんだ。魔女になったところで、そう簡単に意識が消えやしねぇよ。そのままグリーフシードがソウルジェムの変わりになるかもしれねぇしな」
マミ「とにかく作戦はこれ。後は状況に応じて出たとこ勝負ってところね」
杏子「まあ、もしかしたら、あの魔女倒したら中からさやかのソウルジェムがひょっこり出てくるかもしれないし。そうしたら万々歳。上手く行くことを祈っててくれよ、まどか」
まどか「でもそれは…」
杏子「…ああ、わかってるよ」
マミ「ええ、万に一つの可能性も無いでしょうね」
杏子「でもだからって、諦めることはできないからな」
まどか「…もしかして、キュゥべえに何か言われたんですか?」
マミ「! どうして、そう思うの?」
まどか「キュゥべえは魔法少女の祈りと、絶望して魔女になったときのエネルギーを集めているんです。
もし、マミ達やほむほむが居なくなったら、ワルプルギスと戦う為にわたしがちゃんとした魔法少女になるしかないから…」
マミ「…成る程、辻褄はあうわね」
杏子「これでアタシたちがやられれば、まどかが魔法少女になってまたエネルギーが得られる。まどかはすんげぇ才能があるんだよな」
マミ「ええ、キュウベエが見てきた中では一番の才能といっていたわ。恐らく、得られるエネルギーも膨大なものになるのでしょうね」
杏子「ついでにさやかの奴を戻せなくてアタシ達が絶望すれば、そっちのエネルギーも回収できて一石二鳥ってわけか。くっそ、腹立たしい」
マミ「…それでも、やるわ」
杏子「…ああ、そうだな」
マミ「そうだとしても、美樹さんを見捨てる理由にはならないもの」
杏子「キュゥべえの奴の手の平の上ってのは気に食わないが、さやかが戻れば何の問題もねぇ。
それに放置するわけにもいかないしな。魔女になったとはいえ、さやかに人を襲わせるわけにはいかないんだ。
…アイツはそんなこと、望んでなかったはずだからな」
マミ「貴方も美樹さんを見捨てるつもりは無いのね」
杏子「当たり前だ」
マミ「不思議ね。あんなに仲が悪そうだったのに。てっきり、見捨てて退治するものだと思ってたわ」
杏子「こっちにも色々あるんだよ。見捨てる気はねェよ」
マミ「…」
杏子「まどかは、悪いがここでほむほむの面倒を見ててくれ」
マミ「そうね。酷なようだけど、今の変身出来ない鹿目さんを守れるほど、こちらには余力がないわ。
只でさえ、下手に攻撃を加えられない相手ですもの。魔法少女じゃないと…」
杏子「ま、足手まといだな」
まどか「…」
マミ「ちょ、ちょっと…」
杏子「何だよ、こういうことははっきりしておいたほうが良いだろ?」
マミ「それはそうだけど、もうちょっと言い方を…」
杏子「まぁ、確かにまどかも一緒に語りかけてくれれば、少しは可能性が増えるとは思うんだがな。
今回はダメだ。おとなしく、そいつの面倒を見てやってくれ」
マミ「鹿目さん。あなたはその子の側に付いていてあげて。美樹さんのほうは私達に任せて、ね?」
まどか「…だめです」
杏子「まどか?」
まどか「だめ…です。そんなんじゃ、マミさんや杏子ちゃんを…行かせるわけに…は」
マミ「鹿目さん? あなた…泣いて?」
杏子「…無謀だとはアタシも思うよ、まどか。でも、さやかの奴を魔女にしたままにはおけないんだ。
どんなに上手くいく目が薄くても、やるしかねぇ。ほんの小さな可能性でも、そこにかけるしか今のアタシ達には…」
まどか「…可能性…なんて…な…い」
杏子「え?」
まどか「あの時だって、みんなで…一生懸命、呼びかけたの。でも、どうにもならなくて…結局…ほむら…ちゃんが…」
杏子「あの時?」
マミ「ちょっと待って、鹿目さん何の話をしているの?」
まどか「それで…みんな…死んじゃって…。ワルプルギスの夜には勝ったけど…、わたし、ほむらちゃんに…お願いを…」
マミ「ほむら…さん? それってほむほむの…」
杏子「ああ、本名だけど…」
まどか「…ひっく…ひっく…」
マミ「…鹿目さん、前々から気にはなっていたのだけれど」
まどか「…はい」
マミ「あなたは何を知っているの?」
まどか「…それ、は」
マミ「もしくは、貴方たち、ね」
杏子「どーいうことだよ、おい?」
マミ「鹿目さん、別にあなたを敵だとかそういう風に言いたいわけじゃないの。そんなことないのは、出会ってからのあなたを見ればわかるわ
ただ、何かを隠していることがあるのは、…その、あまりいい気分ではないわ」
杏子「おい、マミ。隠し事の一つや二つくらいいーじゃねーか。そこまでおおっぴらにするのもどうかと思うぞ」
マミ「悪いけれど、今回はそうもいかないの。もし魔法少女と魔女に関する情報があるなら、美樹さんを戻すためにも聞かなければいけないわ」
杏子「…そりゃ、そうだけどよ」
まどか「…」
マミ「鹿目さん、あなたどうして美樹さんにこの作戦が通用しないことを確信しているの?
美樹さんを元に戻すために役立つ情報があるなら、教えて頂戴?」
杏子「いや、マミ。やっぱりやめとけよ」
マミ「佐倉さん…、でも」
杏子「まどかはさやかの友達なんだ。そんな情報があるなら、隠しゃしねーよ」
マミ「それは、そうだと思うけど…」
杏子「言えないなら、言えないなりの理由があって、それがアタシたちのためでもあるんだろ。
まどかにあの糞害獣みたいに都合よく物事隠して、事を運ぶような頭はねーよ」
マミ「酷いことをさらりと言ってるわよ。でもまあ、そうね…。鹿目さんはそんな子じゃないわね」
杏子「だろ?」
マミ「…いいわ。鹿目さんごめんなさい。聞きづらいことを聞いてしまって」
まどか「そんな…」
杏子「でも、話せるようになったら話してくれよ? 何か気になるし」
マミ「…結局、貴方も気になるんじゃない」
杏子「だって気になるじゃんよ。善人まっしぐらのまどかが隠し事だぜ? こりゃ、明日にも槍の雨が降るな」
マミ「貴方が降らすんじゃないでしょうね? 気になってウズウズするとかで」
杏子「ワルプルギス用にアタシもそんな必殺技考えてみるかなー。『槍・フィナーレ!』なんつって」
マミ「…」
杏子「おい、何かいってくれよ。けっこー辛い」
マミ「…全く。これから美樹さんを助けに行くっていうのに、貴方ときたら…」
杏子「肩に力を入れ過ぎると、ロクなことにならないからな。これくらいがいいんだよ」
マミ「貴方はもっと、ギラついた野獣のような子だと思ってたのだけれど。私の勘違いだったみたいね」
杏子「野獣だって、屋根の下で三食付きの生活をすりゃ、少しは余裕も出て来るさ」
まどか「…」
まどか「ごめんさい」
マミ「鹿目さん?」
まどか「マミさんも、杏子ちゃんも。わたしのこと信用してくれてるのに、何も言えなくて…。
ほむらちゃんにも、仲間に隠し事はダメだって言ったのに…」
マミ「気にしないで。でも、言えるときになったら言って頂戴ね?」
まどか「…はい。でも、ダメなんです。全部わたしが何とかしないと。絶対に。みんなを巻き込んじゃ…」
マミ「…」
マミ「鹿目さん、少しいい?」
まどか「…はい」
マミ「貴方は私たちに話せないことがある…いいわね?」
まどか「…」コク
マミ「それは、あなたとほむほむに関係すること」
まどか「…」コク
マミ「それを話してしまうと、私たちを何かに巻き込んでしまう」
まどか「…」コク
マミ「そして、それは絶対にやりとげなければいけないこと」
まどか「…」コク
マミ「…そう」
まどか「…」
マミ「鹿目さん」
まどか「…はい」
マミ「貴方が何をしようとしているのか。何をしなければならないのか。それは分からないわ」
まどか「…」
マミ「でも、馬鹿にしないでくれる?」
まどか「え…?」
マミ「言えないだなんて、私たちが役立たずだとでも言いたいの?」
まどか「ち、ちがいます…そんなんじゃ…」
マミ「だったら、私たちを頼りなさい」
まどか「え…?」
マミ「私たちは、鹿目さんの先輩なの。貴方が何か困っているなら力になりたい。こういうときに頼られて押し付けられてしまうのが、先輩の役割よ」
まどか「でも…」
マミ「人間、一人でできることなんてそう多くないわ。魔法少女でもそう。だから、みんなでどうすればいいか考えましょう?」
杏子「そうだぞ、まどか。難しいことがあるなら、誰かに押し付けて巻き込んじまえ」
まどか「杏子ちゃん…」
杏子「絶対にやらなきゃいけないことなんだろ?
だったら周りを利用でも何でもして、ちゃんと達成しろよ。手段なんか選んでんじゃねぇ」
まどか「…」
杏子「幸い、ここには巻き込まれても平気だって言ってるやつが二人いるんだからさ。頼っちまえよ。こんなチャンスは滅多にねぇぞ」
まどか「本当に、いいんですか…? 全部、わたしがいけないのに…」
マミ「かまわないわ。後輩に頼られないなんて、悲しいもの」
杏子「先輩なんて、後輩にしてみりゃ面倒押し付けるくらいしか役に立たないんだからさ。遠慮する必要はないよ」
まどか「………」
まどか「……」
まどか「…」
まどか「わたしは…――――」
【後編】に続きます。

