――空に浮かんでいるワルプルギスの夜が崩壊していく
奴が倒されたことで、街の壊滅は免れた。だけど……
ワルプルギスの夜を倒したのは私じゃない。私の、何よりも大切な人
あなたがワルプルギスの夜を倒す。それは、この時間であなたとの『約束』を果たせなかったということ
それに、あなたが奴を倒しちゃ駄目。あなたが倒したということは、つまり……
そして、ワルプルギスの夜が消滅すると同時に
彼女は、その場に崩れ落ちた
※まどマギとゲーム「魔界戦記ディスガイア」シリーズとのクロスです
元スレ
ほむら「魔法少女戦記ホムガイア」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364712788/
まどか「……っあ…う……」
ほむら「まどか!!しっかりして、まどか!!」
まどか「……ほむら…ちゃん……」
ほむら「まどか!!駄目、死んじゃ駄目よ!!」
まどか「……ごめん、ね…ほむら、ちゃん……」
ほむら「まど…か……」
まどか「ほむらちゃん……!早く、時間を戻して……!」
ほむら「まどか…あなた、何を……」
まどか「……自分のこと、だから…自分でどうにかするよ……。それに……」
まどか「ほむらちゃんには…ソウルジェムを、砕くところなんて…見せたく、ないから……!」
ほむら「まどか…あなた……!」
まどか「……っ…もう、ダメみたい……。だから、ほむらちゃん…早く……!」
ほむら「……わかった。次こそは…必ず、あなたを救ってみせる」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん……」
ほむら「まどか…ごめんなさい。……さようなら……」
まどか「うん…さよなら……」
ほむら「……っ!」カシャッ
まどか「わたし…もう、ほむらちゃんに…1人で戦ってほしく…ない……!」
まどか「天使でも…悪魔でも、何だっていいから…わたしの代わりに、ほむらちゃんを……」
まどか「ほむらちゃんを、助けて……!」
この世には、3つの世界が存在する
私たち人間が住む『人間界』
天使と呼ばれる存在が住む『天界』
そして、悪魔や吸血鬼、不死者のような闇の住人が住む『魔界』
この3つの世界が人間界を中心に、お互いに影響を与えながら共存している
天使は人間の心の拠り所として。悪魔は人間を戒める存在として
その中で唯一、天界、魔界に広く住みついている魔物がいる
――――――
「プリニー!プリニーはどこだ!?」
「殿下ー?何騒いでるんですか?」
「プリニーどもが見当たらん。どこに行ったのだ……?」
「プリニーならこの間の赤い月でほとんど転生しちゃってますけどー?」
「何!?何故それを言わんのだ!」
「ちゃんと言いましたよ?とにかく、次のプリニーが来るまで、しばらくは我慢して下さいよ」
「……仕方あるまい。次の出荷まで待つとしよう」
――――――
「のう、デビルバスター」
「その名前で呼ぶな…何だ?」
「ここ最近、プリニーを見かけぬのじゃが……」
「そう言われるとそうだな…まとめて転生したのか?」
「あやつらがそれほど稼いでいたとも思えぬが……」
「どこかに逃げたのか?」
「何にせよ、それほど気にする必要もあるまい?」
「そう…なのか?」
――――――
「えぇい!くそ、また失敗だ……!」
「少し休んだ方がいいんじゃないかなぁ……」
「うるさい!何としてもコレを完成させる必要があるのだ!」
「それはわかるけど……」
「つべこべ言ってる暇があるなら、早く次のプリニーを連れて来い」
「それなんだけど…もう1匹も残ってないよ?」
「何?あれだけいたのにか?」
「全部実験に消えていったよ。……まぁ、もうすぐ新しいプリニーが出荷されてくるはずだから……」
「こんなところで足踏みしている場合ではないと言うのに……!」
プリニー。ペンギンのような外見をした奇妙な魔物
主君に仕え、時には雑用、時には戦争の駒として働いている
投げると何故か爆発し、どこまで行ってもザコ扱い。そんなプリニーは少し特殊な魔物だ
プリニーは地獄で生まれ、プリニーとしての基礎をプリニー教育係から叩き込まれる
最終的にその教育を耐え抜いたプリニーたちが魔界や天界へ向けて出荷される
その地獄にて、今まさにプリニーたちが出荷されようとしていた
――――――
「フフフ…みっちりと詰まっているな、プリニーども」
「押忍!詰まってるッス!」
「聞け、プリニーども!今日がお前たちにとって、地獄最後の日となる!」
「お前たちは死して地獄に送られた!何故だ!?」
「罪を犯したからッス!」
「罪を犯したお前たちに教育を施したのは誰だ!?」
「ヴァルバトーゼ閣下ッス!」
「そうだ!俺はお前たちをいつ出荷しても恥ずかしくないプリニーに鍛え上げた!」
「今日は待ちに待った出荷日だ!これから死に物狂いで働き、金を稼ぎ、罪を贖うがいい!」
「……しかし、プリニーども…よくぞ俺の教育に最後まで耐え抜いた!」
「この先、どんな主君に仕えようと、この地獄で鍛えられたプリニーとして誇りを持って働くがいい!」
「……ただし、この地獄へ再び送り返された者には再更生プログラムが待っていることを…肝に銘じておけ!」
「アイアイサー!」
「うむ。……では約束通り、褒美のイワシをくれてやろう!有難く持って行くがいいッ!」
「そのイワシを食べて、主君のために存分に働くがいい!……では、さらばだ!プリニーどもよ!」
「ヴァルバトーゼ閣下!お世話になったッス!」
「……」
「今回も無事に出荷できましたね」
「当然だろう。俺を誰だと思っている?」
「……これは失礼いたしました」
「まぁいい。今回も、約束の褒美を与えて出荷できたのだからな」
「まだあのことを悔やんでおられるのですか」
「当然だ。約束は守った上で出荷せねば、プリニー教育係の名が廃る。アレは教育係として、最大の汚点だ」
「それはそうと、今回の出荷であの騒動時に地獄にいたプリニーは全て出荷されていったな。ようやく一区切りついたということか……」
「しかし…よろしかったのですか?魔界大統領の座に就かずに、再びプリニー教育係など……」
「俺にはこれが一番合っているからな。……さて、次のプリニーどもが待っている。行くぞフェンリッヒ」
「……はっ。全ては我が主の為に」
――――――
「オレたちはどこへ出荷されていくッスかねー?」
「それはオレたちにはわからないッス。……けど、あんまりにあんまりなところは勘弁してほしいッス」
「お願いッス…超魔王配下のつるぺた魔神のところだけは嫌ッス……」
「だけど…いざ出荷されてみると、地獄が懐かしくなるッス。閣下も厳しかったッスが、同時に素晴らしいお方だったッス……」
「オレたちみたいなプリニーとの約束もきっちり守ってくれる…この先、そんな人はきっと現れないッス」
「出荷先のご主人もそんな人であってくれると嬉しいッスねー。……あ、どうやらそろそろ着くみたいッスよ」
「それじゃ、これからプリニー同士、力を合わせて頑張るッス!」
大切な人との約束の為、時間を超えて独り戦い続ける魔法少女
彼女を助けたいと願った少女
己の罪を贖う為、主君に仕える魔物たち
これは、ひとりの少女を守る為に強大な敵に立ち向かう魔法少女と
そんな彼女を支えたいと願う少女
そして、彼女たちに付き従う爆弾ペンギンたちの物語
――――――
ほむら「……」
ほむら「これは…イレギュラー、かしら?」
ほむら「今までこんなところに結界なんてなかったはずだけど……」
ほむら「……アイツを始末したいところだけど、これを放置するのも危険ね。手早く片付けましょう」
まどかを守り、救う為に時間を繰り返して、もう何度目だろうか
数えるのを諦める程に繰り返したが、未だにまどかとの約束を果たせずにいた
私が不甲斐ないせいで、まどかを何度も辛い目に遭わせてしまった
今度こそ、彼女との約束を果たしてみせる。そう思った矢先にこのイレギュラーだ
学校で彼女には警告をしておいたが…インキュベーターのテレパシーを聞けば、彼女は間違いなくここにやってくる
奴がテレパシーでまどかを呼び出す前に、まずはこの結界を何とかしなければ
ほむら「……鬼が出るか、蛇が出るか……」ズズ
――結界内――
ほむら「……っと」
ほむら「……何もいないわね…奥まで進んでみましょう」
イレギュラーの結界に入ったが、今までの結界とは趣が違っていた
例えるなら、まるで魔界にでも迷い込んだようだった
結界の中というのはどれも気分のいい物ではない。早く結界の主を倒して外に出よう。そう思っていたときだった
結界を作ったと思われるイレギュラーが見えてきた。しかし、数が多い。面倒なことになりそうだ
私は盾の中から機関銃を引っ張り出し、イレギュラーの群れに向かって走り出した
プリニー1「しかし、ここはどこッスかねー……」
プリニー2「地獄から出荷されたと思ったら、こんなわけのわからないところに放り出されて……」
プリニー3「魔界に見えないことはないッスが…やっぱり、魔界とは違う場所みたいッス」
プリニー4「閣下から褒美のイワシを貰えたのはいいッスが、これからどうしたらいいッスかね……」
プリニー5「……まぁ、悩んでても仕方ないッス。イワシでも食べながら考えるッス」モグモグ
プリニー6「オレたち以外の魔物…この際、魔神でも魔王でも…天使でも構わないッス。とにかく、誰かいないッスか?」
プリニー7「ここに着いたときにざっと見て回ったッスが、オレたち以外には誰も……」
ズドドドド
プリニー1「な、何事ッスか!?」
プリニー2「向こうから銃を乱射しながら女の人が突っ込んで来るッス!」
プリニー3「銃なんて持ち出されたらオレたちまとめてやられてしまうッスよ!」
プリニー4「どこだかわからない場所に出荷された挙句、全滅なんて嫌ッス!」
プリニー5「ダメ元で話をしてみるッス!このままだと全滅ッス!」
プリニー1「了解ッス!」
ほむら「何かしら、このペンギンのようなもの…使い魔とも魔女とも違うみたいだけど……」ズドドドド
ほむら「随分と弱いわね……」ズドドドド
ペンギンもどきに向けて発砲する
幸い、このペンギンもどきはさほど強くはないようだ
この調子ならアイツがまどかと接触する前に殲滅できる。そう思い、攻撃を続けていると
プリニー「待つッス!攻撃を止めてほしいッス!」
ほむら「え……?喋った?」
ペンギンもどきが話しかけてきた
それも、攻撃を止めてほしい、と
何が何だかわからないが、意思疎通ができる相手のようだ
私は攻撃を止め、彼らと話をしてみることにした
プリニー「言ってみるものッスね…攻撃を止めてくれてありがとうッス……」
ほむら「……言葉を理解して話してるってことは、少なくともあなたたちは魔女や使い魔ではなさそうね」
ほむら「あなたたち、一体何者なの?」
プリニー「オレたちはプリニーッス」
ほむら「プリニー?」
プリニー「そうッス。見たところ、アンタは魔族や天使ではないみたいッスね」
ほむら「……何のことだかわからないけど、私は人間よ」
プリニー「人間ってことは…ここは人間界ッスか!?」
ほむら「まぁ…人間は山のように住んでいるわね……」
プリニー「人間界…厄介な場所に飛ばされてしまったッス……」
プリニー「魔界や天界なら時空の渡し人を使えばいいッスが、人間界となると…どうしたものかッス……」
ほむら「……悩んでるところ悪いけど、あなたたちが何者なのかまだ聞いてないのだけど?」
プリニー「この世には天使が住む『天界』と、悪魔が住む『魔界』と呼ばれる世界が存在するッス」
プリニー「オレたちプリニーは、その天界や魔界で働く魔物ッス」
ほむら「天使に悪魔…本当にそんなものが……?」
プリニー「信じられないのも無理はないッス。普段は滅多にそれぞれの世界から出てきたりしないッスから」
プリニー「……でも考え方を変えれば、これはあのプリニーをプリニーと思わぬ労働環境で働かなくて済むチャンスかもしれないッスね……」
ほむら「労働環境……?」
プリニー「オレたちは主君となる方に仕え、その方の下で働くんスけど…基本的に条件が悪いッス」
プリニー「働く場所によって少しずつ違うッスが、福利厚生なし1日20時間労働、ボーナスにイワシ1匹が基本ッス」
ほむら「酷いなんてもんじゃないわね……」
イレギュラーな結界の中で出会った、イレギュラーな存在のプリニーと呼ばれる者たち
イレギュラーに賭けるのも気が引けるが、彼らの力を借りれば、もしかしたら……
ほむら「……出会ってすぐにこんなことを言うのもおかしいけれど…私に協力してくれないかしら」
プリニー「協力ッスか?」
ほむら「そう。私は…ある悪魔を倒すために戦っている。それを倒すのに力を貸してほしい」
プリニー「悪魔!?人間界なのに悪魔が出るッスか!?」
ほむら「まぁ、悪魔…のような存在ね。協力してくれたら、詳しいことを話すわ」
プリニー「それじゃ、オレたちの雇用条件を提示するッス」
ほむら「え?」
プリニー「オレたちだってタダ働きは嫌ッス。ちゃんと雇用してもらいたいッス」
ほむら「そ、そうね…それじゃ、イワシ…はあなたたちが全部でどれだけいるかわからないから保留……」
ほむら「福利厚生については何が何だかさっぱりだからこれも保留…労働時間は1日5時間程で…どうかしら」
プリニー「……」
ほむら「駄目…かしら?」
プリニー「こんな…こんな高待遇でいいんスか!?」
ほむら「え、えぇ、それで……」
プリニー「アンタ、とんでもなくいい人ッス!オレたち、アンタについていくッス!」
ほむら「そ、そう…よろしくお願いするわね」
プリニー「よろしくッス!……えーと」
ほむら「私は暁美ほむら。ほむらでいいわ」
プリニー「よろしくッス、ほむら様!」
ほむら「ほ、ほむら様……?」
プリニー「今日からほむら様がオレたちのご主人ッスから」
ほむら「何だか急に偉くなったような感じがするわ……」
プリニー「しかし、これだけ数がいるとわけがわからなくなりそうッス…何か目印があるといいッスが……」
ほむら「……なら、この赤いマフラーを巻いておくといいわ。丁度持っていた物よ」ゴソゴソ
プリニー「了解ッス。それじゃ、これからはオレがプリニー隊のリーダーということで、頑張るッス」
ほむら「わかったわ」
プリニー「それと、これだけは守ってもらいたいことがあるッス」
ほむら「何かしら?労働条件のこと?」
プリニー「それもそうッスが…オレたちのことは、絶対に投げないでもらいたいッス」
ほむら「投げる?投げるとどうなるのかしら」ヒョイ
プリニー「あ、待つッス!止めるッス!」
ほむら「それっ」ポーイ
プリニー「あああぁぁぁ……」
――――――
ズドォォン
まどか「え、何?何の音?」
マミ「今のは…爆発?」
さやか「ば、爆発!?何が爆発したってのさ!?」
マミ「何が理由であれ、早く離れたほうがよさそうね…美樹さん、キュゥべえのこと、お願いね」
さやか「わかりました!」
QB(近くから魔法少女と、それ以外の魔力を感じるけど…まさか、ね)
まどか(ここに来る前にほむらちゃんを見た気がするけど…大丈夫かな……)
さやか「まどか、行くよ!」
まどか「あ、うん!」
雇用という形ではあるが、プリニーたちと協力を取り付けることができた
彼ら自体はさほど強いわけではなさそうだが、協力すればきっと……
まどか…今度こそ必ず、あなたを救ってみせる
巻き起こる爆発の中、私はそう決意した
48 : ◆SjWXMdM6SY[sag... - 2013/04/01 21:00:48.17 blNc+UpJo 30/528ディスガイア知らない人にも見て頂けているみたいなので
プリニーは投げると爆発するペンギンみたいなザコキャラと認識していただければ
補足ですが、名前の表記はマフラー装備のリーダーは「プリニー」
それ以外の一般プリニーは「プリニー隊」と表記してあります
次から本文
――翌日 放課後――
ほむら「はぁ……」
昨日出会ったプリニーと呼ばれるペンギンのような者たち
投げるなと言うから投げるとどうなるのかと思い、投げてみたらまさか爆発するとは……
結果として連鎖的に全てのプリニーが爆発してしまい、酷い目に遭ってしまった
ただ、ひと晩休めば回復するらしく、今日の朝にはもうピンピンしていた
それにしても、あの数…どうしたものか
何匹いるか数えてみたところ、全部で100匹もいることがわかった
これだけの数がいれば……
まどか「ほむらちゃん」
ほむら「……何か用かしら?」
考え事をしていたら、まどかが話しかけてきた
この時点でまどかの方から私に話しかけてくるとは思わなかった
まどか「うん…昨日、ショッピングモールで爆発事故があったでしょ?」
まどか「そこでほむらちゃんを見かけた気がして…それで、大丈夫だったかな、って」
爆発事故というのは恐らくプリニーたちの爆発のことだろう
本当のことを言うわけにもいかないので話を誤魔化しておくことにした
ほむら「……確かにショッピングモールには行ったけど、怪我もしてないから大丈夫よ」
まどか「そっか…よかった、ほむらちゃんが怪我してなくて」
ほむら「……どうして私の心配を?」
まどか「え?だってほむらちゃん、心臓が悪いって話だったし……」
まどか「ニュースになるような爆発事故にほむらちゃんが巻き込まれてるかもって思ったら、わたし……」
ほむら「……」
保健室に連れて行ってほしいという名目で警告をした程度の会話しかしていないのに、私を心配してくれるなんて
昨日インキュベーターを襲っていないことが功を奏したのか、それはわからない
だけど、少しだけプリニーたちに感謝しておくことにした
ほむら「私の心配なんて……」
まどか「わたし、ほむらちゃんと夢で……」
ほむら「夢?」
まどか「あ…ううん、何でもないの」
まどか(夢の中で会ったなんて言ったら変だと思われちゃうよね…えっと……)
まどか「ほむらちゃんとは…どこかで会ったような、そんな気がして……」
ほむら「え……」
まどか「だから…ほむらちゃんと友達になりたいなって……」
さやか「おーい、まどかー」
まどか「あ、さやかちゃん」
さやか「ほら、今日からマミさんのアレについてくんだから、そろそろ行くよ」
まどか「あ、うん。ごめんねほむらちゃん、わたし行くね」
ほむら「えぇ、さようなら」
美樹さやかの言っていたアレとは、恐らく巴マミの魔女退治について行くことだ
私はまだ魔法少女だと気づかれていない。だから私の前でそれを言うことを避けたのだろう
インキュベーターを襲っていない今なら、やりようによっては巴マミとも協力できるかもしれない
とりあえず私はプリニーたちを待機させている自宅に帰ることにした
――――――
プリニー「……これがその結界という奴ッスか」
ほむら「えぇ。この奥に魔女がいるわ」
プリニー「魔女と使い魔…ほむら様の話を聞く限りは魔界の悪魔とはまた違うものみたいッスね」
プリニー「正直、オレたちでどこまで戦えるか不安ッス……」
プリニー隊を引き連れ、結界へやってきた
あれだけの数を引き連れて移動するわけにもいかず、盾に入らないか試してみたところ、全てのプリニーを格納することができた
それよりも、彼らプリニー隊の戦闘能力はまだよく分かっていない
この薔薇園の魔女との戦いでプリニーたちの力を見極めさせてもらうことにした
ほむら「それじゃ、行くわよ」
プリニー「了解ッス」
――結界内――
プリニー「これが結界の内部ッスか……」
ほむら「えぇ、そうよ」
プリニー「……正直、このくらいならどうってことないッス。魔界の方がもっとおどろおどろしいッスから」
ほむら「頼もしいわね。それじゃ、戦闘もよろしく頼むわよ」
プリニー「頑張るッス」
ほむら「……なんて言っていたら、どうやらお出ましのようね」
使い魔「……」
プリニー「あれが使い魔…確かに魔物とはまた違った感じがするッス……」
ほむら「まずはあなたたちの強さを確かめさせてもらうわ。あの使い魔、全て殲滅してみなさい」
プリニー「了解ッス!行くッス!」
プリニー「相手の強さがわからないッスが、数はこっちが有利ッス!一気に行くッスよ!」
そう言ってプリニー隊は使い魔へ向かって突撃し、交戦を始める
どうやら彼らは集団戦が得意のようだ。攻撃が終わると、続けざまに別のプリニー隊が攻撃を仕掛ける。よく出来た連携だ
大して強くもない使い魔だからか、終始プリニー隊が優位に立つ。そして
プリニー「これで最後ッス!」ズバン
最後に残った使い魔を、ナイフのような武器で切り裂いた
プリニー隊の強さは大体わかった。後はそれをどう使うか
私は運用方法を頭の中で組み立てながら、結界の奥へと進んでいく
ほむら「数が多いとはいえ使い魔を倒すなんて、なかなかやるじゃない」
プリニー「正直オレたちより弱いのがいるとは思わなかったッス」
ほむら「まぁ使い魔程度に負けるようなら、100発の投げ爆弾として使わせてもらうつもりだったけど」
プリニー「マジッスか……」ダラダラ
ほむら「でもその心配はなさそうね。使い魔相手には十分戦えるってわかったわけだし」
ほむら「……さて、それじゃいよいよ魔女戦よ」
魔女「……」
プリニー「話には聞いてたッスけど、なかなか強そうッスね……」
ほむら「魔女とは私が戦う。あなたたちは援護をお願い」
プリニー「ほむら様1人で大丈夫ッスか?」
ほむら「大丈夫よ。この程度の魔女、何てことない。それに……」
ほむら「いざというとのために、盾の中にまだ数匹残してあるもの」
ほむら「さて、それじゃ……」ジャキ
ほむら「行くわよ!」ズドドドド
魔女「!」
使い魔「……」
ほむら「使い魔……!プリニー隊、抑えて!」
プリニー隊「ほむら様の邪魔はさせないッス!」
使い魔「……!」
ほむら「これで……!」バシュウ
魔女「……!」
ズドォォォォン
プリニー「やったッス!」
魔女「……!」ズアア
ほむら「……!」グルグル
プリニー「ほ、ほむら様ー!」
プリニー隊「は、早くほむら様をお助けするッス!」
プリニー「でもどうするッスか!?オレたちの攻撃じゃ届かないッス!」
ほむら「大丈夫よ、これで……!」ゴソゴソ
プリニー隊「行くッスよ!」
ほむら「止めよ!」ブン
プリニー隊「え!?そ、そんな、ほむら様ー!」
魔女「!!」
ズドォォォォォン
ほむら「……あなたたちの爆発も結構な武器になりそうね」
プリニー「身が持たないからできるならやめてもらいたいッス……」
ほむら「わかってるわ。できるだけ爆弾として扱うことはしないわ」
プリニー「お願いするッス……」
ほむら「それじゃプリニー隊、今日はこれでおしまい。戻って頂戴」
プリニー「わかったッス。何かあったときはまた言ってほしいッス」
ほむら「えぇ、わかったわ」
プリニー「それじゃプリニー隊、帰投するッスよ!」
プリニー隊「了解ッス!」
プリニー隊を回収したところで、グリーフシードの回収をしていなかったことを思い出す
辺りを見回し、私のすぐ側に落ちていたグリーフシードを拾い上げる
ほむら「さて、グリーフシードも回収したことだし、早く帰り……」
『あれ、ほむらちゃん?』
ほむら「……!」
まどか「ほら、やっぱりほむらちゃんだよ」
さやか「ほんとだ…転校生、こんなとこで何してんのさ?」
マミ「あなたは……」
本当は彼女たちが来る前に引き上げるつもりだったが、どうやら遅かったようだ
見つかってしまった以上は逃げるわけにもいかない。仕方なく話をすることにしたが
今の私は魔法少女の姿。つまり、これから聞かれることは……
マミ「まず最初に…あなた、魔法少女ね?」
思った通り、魔法少女のことを聞かれてしまった
ここで嘘を言っても仕方がない。私は正直に答えた
ほむら「……えぇ。私は暁美ほむら。魔法少女よ」
マミ「そう…私は巴マミ。あなたと同じ魔法少女」
まどか「ほむらちゃんも、魔法少女だったんだ……」
さやか「まさか転校生がねぇ……」
まどかと美樹さやかが驚いた顔でこちらを見ている
巴マミには疑惑の籠った視線を向けられていた
マミ「あなたのことはわかったけど……」
マミ「あなたの目的は何?私の縄張りを奪いにきたの?」
まどか「マミさん、そんな言い方……」
マミ「ごめんなさい。でも早いうちに彼女が敵か味方か、はっきりさせておいた方がいいと思って」
ほむら「……私は最近転校してきたばかりで、ここがあなたの縄張りとは知らなかった。それについては謝るわ」
ほむら「私としてはあなたと敵対するつもりはないわ」
マミ「そう…ごめんなさい、嫌な言い方をしてしまって」
ほむら「……構わないわ。それより、あなたに提案がある」
マミ「何かしら?」
ほむら「これからの魔女との戦い、私と協力してもらえないかしら?」
マミ「そうね……」
巴マミは答えを決めかねているようで、ドリルのようなツインテールの先を指先でくるくると弄っていた
インキュベーターを襲っていなかったからと言って、やはりそうすんなりと協力はできそうにない
協力できないのならこれ以上は時間の無駄。そう断りを入れようとしたとき、まどかが口を開いた
まどか「マミさん、ほむらちゃんと協力してあげられませんか?」
マミ「え?」
さやか「まどか?」
まどか「マミさん、言ってたじゃないですか。魔法少女は死と隣り合わせ。とても危険なことだって」
まどか「だから、ひとりで戦うよりも2人で戦えばそのほうが危険も少ないのかなって、そう思って……」
マミ「それはそうなんだけど……」
ほむら「……急に現れた魔法少女に協力しろ、と言われてそう簡単に協力はできないわよね」
まどか「マミさん、お願いします。わたし、マミさんにもほむらちゃんにも、危ない目に遭ってほしくないから……」
マミ「……今すぐにあなたを完全に信用することはできない。だけど……」
マミ「鹿目さんがここまで言うってことは悪い魔法少女ではないと思うの。だからあなたのその話、受けさせてもらうわ」
まどかの説得が通じたのか、協力してくれるようだ
まどかのおかげでいい方向に話が進みそうだ。ありがとう、まどか
ほむら「今はそれで構わない。よろしくお願いするわ」
マミ「えぇ。よろしく、暁美さん」
マミ「……今度は、佐倉さんのときみたいに…ならないわよね……」ボソ
さやか「マミさん?何か言いました?」
マミ「……いえ、何でもないわ」
まどか「……そうだ、ほむらちゃん」
ほむら「何かしら」
まどか「学校でも言ったけど、わたし、ほむらちゃんと友達になりたいの」
まどか「ほむらちゃん、わたしと友達になってください」
そう言って、まどかは私へ手を差し出す
魔法少女や私には関わってほしくない。そう思ってるのに
こんなことされて、断れるわけがなかった
内心では喜びつつも、差し出された手を握り返す
ほむら「よろしく、まどか」
まどか「よろしくね、ほむらちゃん」
そう言って、まどかは私に笑顔を見せる
まどかの笑顔を見て、少しだけ頬が緩んだ気がした
さやか「まどかと友達になったんだし、あたしともなってくれるよね?」
ほむら「えぇ。よろしく美樹さやか。巴マミも」
さやか「なーんかまどかと扱いが違う気がするけど……」
ほむら「それよりも、あなたたちは魔女を倒しに来たのでしょう?」
マミ「えぇ、そうだけど……」
ほむら「魔女なら私がもう倒したからいつまでもここにいるのは……」
マミ「それもそうね…今日はこれで帰りましょうか」
さやか「そうですね」
まどか「ふふふーん」
ほむら「まどか、もう離してくれても……」
さやか「何だかすごい嬉しそうだね」
まどか「そりゃそうだよ。だって、ほむらちゃんと友達になれたんだもん」
さやか「まどかにそう思われるなんてねぇ……」
ほむら「そ、それは嬉しいけど……」
マミ「もうすっかり仲良しねぇ、2人とも」
さやか「言っとくけど、まどかはあたしの嫁だからなー」
結局まどかは、私とまどかの家路が別々になるまで手を離してくれなかった
巴マミと美樹さやかに茶化されてはいたけど
まどかと手を繋いで帰るなんて、もういつ以来だろう
時間を繰り返す度に、まどかとの心の距離が離れていく
だけど、今回のこれで少しだけ、まどかに近づけた気がした
――数日後――
まどか「それじゃさやかちゃん、わたしほむらちゃんと寄り道して帰るね」
さやか「はいはい。ここ数日でまどかの嫁の座をほむらに取られてしまいましたな……」
ほむら「何を言って……」
さやか「ま、どの道あたしは今日は予定があるから行けないんだけどね。2人で楽しんできなよ」
まどか「うん、ありがとうさやかちゃん」
さやか「そんじゃ、またねー」
まどか「……それじゃほむらちゃん、わたしたちも行こうよ」
ほむら「えぇ」
まどかと友達になってから、まどかは色んな所へ私を連れて行ってくれるようになった
新しい友達の私と早く仲良くなりたいと思っているのだろう
この日もまどかに連れられて寄り道をすることになった
まどか「さやかちゃんがいつもわたしの嫁がなんだって言っててごめんね」
ほむら「まどかが謝ることじゃないわ。それに……」
ほむら「あなたの嫁なら…嫌じゃない…わ……」
まどか「な、なんかそう言われると恥ずかしいよ……」カァ
ほむら「あ、ご、ごめんなさい、別にそういう意味じゃ……」
まどか「でもなんだろう、ほむらちゃんにそう言われると何だか嬉しいな…なんて……」
ほむら「も、もうこの話は終わりにしましょう」
まどか「そ、そうだね。それじゃ、今日はショッピングモールに行ってみようよ」
ほむら「わかったわ。それじゃ、行きましょうか」
――――――
まどか「……ショッピングモールってほんと色々あるんだねぇ。今日初めて入ったお店も多かったよ」
ほむら「楽器店なんかは、自分は何も出来ないけど見てると面白いと思ったわ」
まどか「ほむらちゃんには…ピアノが似合うと思うよ」
ほむら「そうかしら……?」
まどか「うん。……あ、そういえばあの爆発事故って結局何が原因だったのかな?」
ほむら「さ、さぁ…ガスか何かじゃないかしら……?」
まどかと一緒にショッピングモールの色んな店を回る
ただ、私とプリニーが引き起こした爆発事故の影響か、一部は未だに立ち入り禁止だった
そんなことを考えながら次の店に向かっていると、まどかの携帯が鳴り響いた
Prrrrrrrr
まどか「あ、電話…さやかちゃんからだ、何だろう」ピッ
まどか「もしもし、さやかちゃん?何か用…え、ほむらちゃん?うん、いるけど……」
まどか「ほむらちゃん、さやかちゃんが代わってくれって。何かだいぶ慌ててるみたいだけど」
ほむら「何かしら…代わったわ」
さやか『あ、ほむら!あたし今病院にいるんだけど、グリーフシードが壁に刺さってるんだよ!』
ほむら「……!」
迂闊だった。ここ数日、まどかと遊び回っていてすっかり忘れてしまっていた
今日は病院に魔女が現れる日だ。こんな大事なことを忘れるなんて……
さやか『何だかよくわかんないけど、絶対ヤバイと思って電話したんだけど…コレ大丈夫なの!?』
ほむら「巴マミへ連絡は?」
さやか『マミさん!?ごめん、連絡先聞いてない!……それよりも、ヤバイのなら早く来てよ!』
ほむら「えぇ、すぐにそっちに向かうわ。あなたはすぐにそこから離れなさい」
さやか『わかった、なるべく急いで…うわっ!?』プツッ
ほむら「もしもし?美樹さやか?」
急に通話が途絶えてしまった。結界に飲み込まれてしまったのだろうか
それにいつもなら一緒にいるはずのインキュベーターがいないことも気になる
とにかく今は、早く病院に向かわなければ
まどか「さやかちゃん、どうしたの?」
ほむら「病院に魔女の結界が現れて、美樹さやかが飲み込まれたわ。私はこれから結界に向かう。あなたは家に帰りなさい」
まどか「……わたしも…わたしも、連れて行って!」
ほむら「まどか?何を馬鹿なこと……」
まどか「さやかちゃんが心配なの!わたしじゃ足手まといにしかならないって、わかってる…でも!」
ほむら「……」
ここでまどかと連れて行く行かないの問答をしている余裕はない
私は仕方なく、まどかを連れて行くことにした
いざとなったらプリニー隊にまどかを守らせればいい
ほむら「仕方ないわね…私から絶対に離れないで。いいわね?」
まどか「うん……!ほむらちゃん、ここから病院だと……」
ほむら「大丈夫、道なら知ってるわ。ここ数日、あちこち行ってるもの」
まどか「わかった、じゃあ急ごう!」
まどか(……でもわたし、病院になんて行った覚えないんだけどな……?)
――――――
ほむら「……これが結界よ」
まどか「これが……」
ほむら「……念の為に聞くけど、どうしてもついて来るというのね?」
まどか「うん…さやかちゃんも心配だし、それに……」
まどか「ほむらちゃんのことも心配なの。お願い、ほむらちゃん」
ほむら「……わかったわ。それじゃ、行きましょう」
――結界内――
まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何かしら?」
まどか「わたしね…魔法少女になろうかなって、そう思ってるんだ……」
ほむら「……っ!」
まどか「マミさんの話を聞いて、ほむらちゃんも魔法少女だと知って…わたしにも、2人の手伝いができたらなって、そう思って……」
ほむら「……忠告したはずよね?今と違う自分になろうだなんて、思わないで、って」
まどか「……わたし、人に自慢できる才能も、得意な教科とかもないし……」
まどか「でも、わたしでも魔法少女になってみんなを…ほむらちゃんやマミさんを助けられるのなら……」
ほむら「……常に危険がつきまとうと…いつ死んでもおかしくないものだと、わかっているの?」
まどか「うん、わかって……」
ほむら「もしかしたら私も、ここの魔女に殺されてしまう…かもしれないのよ?」
まどか「え……」
ほむら「誰かを助けたいと思うその気持ちはとても素晴らしいものだと思うわ。でも、魔法少女の世界にその優しさは通用しない」
ほむら「それでも、魔法少女になりたいと言うのなら…私は言いたくないことを言わなければならなくなる」
ほむら「私はあなたに魔法少女になってほしくない。これだけは覚えておいて」
まどか「うん…わかった……」
ほむら「わかってくれたのならいいわ。……さて、どうやら着いたようね」
まどか「この先に、魔女が……?」
ほむら「えぇ。あなたは美樹さやかと一緒に離れていて頂戴。危ないから」
まどか「うん……」
ほむら「それじゃ、行くわよ」
再度まどかに魔法少女は危険だと教えたが、やはりまだ魔法少女に憧れているようだ。私について来ると言うくらいに
ここで巴マミの凄惨な死を目の当たりにすれば、その考えもいくらか消えてくれるはずだが…そういうわけにもいかない
何としても、まどかから魔法少女への憧れを無くさせなければ。……例え自分が痛い目を見ることになるとしても
ほむら「美樹さやか、無事かしら」
さやか「ほむら!ありがと、来てくれて」
ほむら「魔女を倒すのが魔法少女の仕事。気にしないで」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「え、何でまどかがここに……?」
まどか「さやかちゃんが心配で…ほむらちゃんに無理を言って、連れてきてもらったの」
さやか「そうなんだ…ありがと、まどか」
ほむら「お喋りはそこまでにして。……来るわよ」
グリーフシードから魔女が孵化する
ぬいぐるみのような、魔女の外面が姿を現した
さやか「なんだろ…ぬいぐるみみたいだね」
ほむら「それでも立派な魔女よ。……さて、プリニー隊、出撃!」バッ
左手を前に突き出す。それがプリニー隊への出撃命令
左腕の盾から、多数のプリニーたちが召喚される
プリニー「お呼びッスか、ほむら様」
ほむら「えぇ。そこにいるまどかと美樹さやかの護衛をお願い」
プリニー「了解ッス!」
さやか「ちょっ!?ほむら、こいつら何なの!?」
ほむら「彼らはプリニー隊。私の手下たちよ」
さやか「て、手下!?どういうことなの!?」
ほむら「話は後にして。それじゃプリニー隊、任せたわよ」ダッ
さやか「あ、ちょっと!……あー、行っちゃったよ」
プリニー「アンタたちはオレたちプリニー隊が守るッス。泥船に乗ったつもりでいるといいッス」
プリニー「プリニー隊、全力でこの2人を守るッスよ!ほむら様の命令ッス!」
プリニー隊「アイアイサー!」
まどか「う、うん…よろしく、プリニーさん……」
さやか「はー…しかしこいつら、ペンギンっぽいけどあんまりかわいくないね。死んだ魚みたいな目してて」
まどか「えー、そう?かわいいと思うんだけどなぁ」
さやか「……あんたの趣味は時々わからんなー……」
魔女「……」
ほむら「出て来て早々悪いけど、さっさと中身を引きずり出させてもらうわ」ジャキ
ほむら「食らいなさい!」バシュウ
ズドォォォォン
魔女「……!」
ほむら「プリニー隊!叩き落として!」バッ
プリニー隊「了解ッス!プリニー連射ッス!」ビュンビュン
魔女「!」ズバババ
ほむら「地面に落ちた……!これで……」ガッ
魔女「!」
ほむら「……終わりよ」バァン
魔女「!!」
さやか「……どこが魔法なのよ……」
まどか「あ、あはは…す、すごいねー……」
魔女の外面にに有効打を与える。これで中身が飛び出してくるはず
いつ中身が出てきてもいいよう、私は魔女と距離を取った
ほむら「……そろそろかしら」ヒョイ
プリニー隊「え、ちょっと、ほむら様!?どうしてオレを持ち上げるッスか!?」
ほむら「それは……」
ズルゥ
魔女「……」
ほむら「このためよ!」ブン
プリニー隊「ヒドいッスゥゥゥ!」
ズドォォン
まどか「わっ、プリニーさん、爆発したよ!?」
さやか「ホントだ…あんたたち、一体どういう体してんのさ」
プリニー「オレたちは投げられると爆発するようにできてるッス」
プリニー「魔界では雑用に戦争の道具に…それに比べたら、ここはまるで天国ッス」
まどか「へ、へぇー……」
さやか「魔界って何よ、魔界って……」
プリニー「それは……!アンタたち、下がるッス、何か来るッス!」
魔女「……!」
ほむら「……しぶといわね」
プリニー隊「ほ、ほむら様…どうしてオレたちを投げて攻撃するッスか!?」
ほむら「それは…弾薬の節約のためよ」ブン
プリニー隊「あんまりッスゥゥゥ!」ズドォォン
ほむら「……」
正面からやりあえば、それなりの量の弾薬を消耗することになる
こんなところで大事な物資を減らすわけにはいかない
プリニーたちには悪いが、ここは私の武器となってもらうことにした
ほむら「しかし、投げすぎたかしら。煙が……」
さやか「ちょっと!あんたたち早く倒しなさいよ!」
プリニー「無茶言わないでほしいッス!コイツら、オレたちより強いッス!」
何やらまどかたちの方が騒がしい。使い魔でも出たのかと銃を構えて振り返る
しかし、そこにいたのは見たこともない
カボチャの頭をした奇妙な生き物だった
カボチャ頭「ケケケッ!」
プリニー「どうして魔物が人間界にいるッスか!?わけがわからないッス!」
カボチャ頭「クケッ!!」ズバン
まどか「あ…ぷ、プリニーさんが……!」
さやか「早く倒さないとみんなやられちゃうよ!」
プリニー「無茶言わないでほしいッス!オレたちは魔界で一番のザコッス!」
さやか「いばるな!」
このお菓子の魔女の使い魔に、あんな奴はいないはずだ
とにかくあのカボチャ頭を倒さなければ
そう思い、まどかたちのところへ向かおうとした時だった
まどか「ほ、ほむらちゃん!後ろっ!!」
ほむら「な……っ」
私の注意が逸れるのを待っていたのだろうか、爆煙の中から魔女が飛び出して来る
まどかたちの方へ意識が向いていたせいで完全に反応が遅れてしまう
慌てて魔女へ向けて銃を構えたが、もう遅かった。そして
大口を開けた魔女に、右腕を食らいつかれてしまった
ほむら「ぐ…う……!」
魔女「……!」
食らいつかれた右腕から骨の軋むような音が聞こえる
このままでは食いちぎられるのは時間の問題だろう
まどか「ほむらちゃん!ほむらちゃんが……!」
プリニー「助けに行きたいッスけど、コイツを倒さないとそうも行かないッス!」
カボチャ頭「ケケケッ!」
さやか「あーもう!こっちはいいから早く行って!」
ほむら「私のことはいいから!!そのまま2人を守って!!」
まどか「でも……!」
とにかく、早くこの状況をなんとかしなければ
私は盾からプリニー隊を召喚し、指示を出す
ほむら「この魔女の口を開けさせるか…私を引き剥がして」
プリニー隊「うえっ!?オレがッスか!?」
ほむら「早く…もう持ちそうもないわ……!」
プリニー隊「りょ、了解ッス!ちょっと手荒いッスが、勘弁してほしいッス!」
そう言うと、プリニー隊はカバンの中から何かを取り出し、魔女の口の中へ放り込む
それは口の中で炸裂し、私と魔女を吹き飛ばした
ほむら「ゲホッ…爆弾だったの、あれ…ありがとう、助かったわ」
プリニー「ほむら様!大丈夫ッスか!?」
さやか「ほむら!!」
目の前の魔女、後ろのカボチャ頭、どちらかを倒さなければ
時間を止めて魔女を倒すべきか。そう考えていたときだった
ズドドドドド
魔女「!」
カボチャ頭「ケケッ!?」
さやか「え…何!?」
マミ「みんな、大丈夫!?」
ほむら「巴…マミ……」
まどか「マミさん!ほむらちゃんが!」
マミ「え…暁美さん、大丈夫なの!?」
ほむら「私のことはいいから…とにかく手を貸して……!」
マミ「えぇ、わかってるわ!あの魔女と、カボチャ頭を倒せばいいのね!?」
ほむら「魔女の相手は私がする…あなたはカボチャ頭をお願いするわ」
マミ「あのペンギンみたいなのは?」
ほむら「あれは私の手下…味方よ」
マミ「手下って…とりあえず味方なのはわかったわ!向こうは任せて!」ダッ
巴マミが2人のところへ向かって行く。これで向こうは大丈夫だろう
魔女の相手は私がするとは言ったものの、利き腕をやられたせいで上手く戦うことができなかった
魔女「……!」グオオ
ほむら「く……!」
受けた傷の修復を試みるも、私がまともに戦えないのを知ってか、魔女が攻勢を強める
こうなってしまった以上、時間を止めてその間に魔女を倒すしかなさそうだ
ほむら(……あまり他の魔法少女がいる場で使いたくはないけど…そうも言ってられないわね)
ほむら(行くわよ……!時間……)
プリニー「ほむら様!」
ほむら「プリニー…どうしてこっちに……!」
プリニー「あのドリルの髪の人に、こっちは1人で大丈夫だからほむら様を助けてあげてと言われたッス!」
ほむら「マミが……?でも、あなたでは魔女相手には……」
プリニー「確かに今のままではろくに戦えないッス…でも、手段はあるッス!」
プリニー「ほむら様、プリニー隊を1匹出してほしいッス!」
ほむら「え?えぇ……」ゴソゴソ
プリニー隊「話は聞いてたッス!オレたちが魔女と戦うってことは、つまり……」
プリニー「そうッス、アレをやるッス!」
プリニー隊「了解ッス!戦闘は任せたッスよ!」
プリニー「わかってるッス!じゃあ行くッスよ!」
『怒ッキング!!』
ズゥン
プリニー「これなら負けないッス!さぁ、かかってくるッス!」
ほむら「え…プリニーが……?」
プリニーの指示通りにプリニー隊を1匹引っ張り出す。何をするのかと思ったが
2匹のプリニーが合体し、1匹の巨大なプリニーとなっていた
魔女「……!」
プリニー「よくもほむら様を…お返しッスよ!」チャキ
プリニー「食らえッス!」ズバババ
魔女「!」
ほむら「凄い…魔女相手に……!」
魔女「……!」グオオ
プリニー「そうはさせないッス!」ガギン
プリニー「続けて行くッスよ!プリニー連射ッス!!」ビュンビュン
魔女「!?」ズババババ
プリニー「行けるッス……!次で終わりッス!」
魔女「!」グオオ
プリニー「オレを食べても美味しくないッス…これでも食べてるといいッス!」ゴソゴソ
プリニー「プリニー爆弾ッス!!」
魔女「!?」ガポン
ほむら「あれって…爆弾!?」
魔女「!!」
ズドォォォォォン
ほむら「……倒した…みたいね」
シュゥゥ
プリニー隊「魔女は…倒せたみたいッスね……」
プリニー「ほむら様、大丈夫ッスか」
ほむら「え、えぇ、私は…それよりもまどかたちは……!」
プリニーたちのおかげで魔女は片付いた
カボチャ頭はどうなったかと振り返ると、向こうも終わったようだ
カボチャ頭「グゲッ……」
マミ「……何とか倒したわね」
プリニー隊「危なかったッス…アンタ、助かったッス」
さやか「マミさん、ありがとうございました」
まどか「プリニーさんたちも、ありがとう」
マミ「えぇ…それよりも、暁美さんの治療を……」
ほむら「私は大丈夫よ。それよりもプリニー、さっきのアレは何だったの?」
さやか「まさか合体してでっかくなるなんて…ねぇほむら、そもそもこいつら、一体何なの?」
ほむら「……そうね、説明しておいた方がよさそうね。私の家で話をしたいのだけど…いいかしら」
マミ「それは構わないけど……」
ほむら「ありがとう。……さっきのことの説明も頼むわよ」
プリニー「了解ッス」
ほむら「それじゃ、行きましょうか」
プリニーを全て回収し、まどかと美樹さやか、巴マミを連れて私の家へ向かう
私の手下のことと、巨大化のこと
それと、これからのことを話す為に
128 : ◆SjWXMdM6SY[sag... - 2013/04/03 21:13:26.23 H5b9ttZOo 87/528アニメ版にはほむら声のプリニーがいたような
元々地球勇者さんの助手やってたはずだけど
前回の頭に書いとくべきことだったけど、この辺からディスガイアの「特殊技」が出て来ます
ディスガイア知らない方は下記の動画を参考にして下さい
ディスガイア2
http://www.youtube.com/watch?v=uyvlAbpZFAU
ディスガイア3
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2958348
ディスガイア4
http://www.youtube.com/watch?v=xq4R9AEo1EQ
ディスガイア4 魔物編
http://www.youtube.com/watch?v=tbYcFEg6KZk
ディスガイア1は探したけど見つかりませんでした
次から本文
――ほむらの家――
ほむら「……と、こういう訳よ」
まどか「え、えーと……」
さやか「魔界って…マジだったの……」
マミ「ごめんなさい…ちょっと整理させてちょうだい……」
3人にプリニーについてのことを説明した
あの爆発の起こったフロアで出会い、彼らは魔界からやって来た魔物である、と
それと、プリニーたちの話によれば、結界に現れたカボチャ頭も魔物らしい
あのカボチャ頭は妖魔族といい、プリニーを含め他にも多種多様な種族がいるようだ
さやか「プリニーのことはわかったけど…何であんな大きくなったのさ?」
ほむら「それは…プリニー、どういうことなの?」
プリニー「あれは『怒ッキング』と言って、オレたち魔物が持ってる特殊能力のひとつッス」
プリニー「2匹の魔物が合体して1匹の巨大な魔物になる…そういう能力ッス」
ほむら「……だそうよ」
まどか「ほむらちゃんも知らなかったんだ……」
ほむら「えぇ…正直驚いたわ……」
プリニー「ただ、巨大になったとはいえ、元はオレたちッスから…劇的に強くなるわけじゃないッス」
ほむら「そう…なら、今まで通り集団戦をさせたほうがよさそうね」
ほむら「それで、これからのことなんだけど……」
ほむら「私は少しこの街を離れるわ」
さやか「え?そりゃまた何でさ」
ほむら「……武器を集めて来るの。これからの為に」
マミ「気になってたけど…その武器って、やっぱり……」
ほむら「……こうでもしないと私は戦えない。私は魔法で武器を作れないの」
マミ「……わかった、今は何も言わないわ」
ほむら「そうしてくれると助かるわ」
ほむら「さて、これ以上話すことがないようならそろそろ帰った方がよさそうよ」
マミ「あら…もうこんな時間なのね。それじゃ、帰ろうかしら」
さやか「そうですね。……よし、まどか、帰ろうか」
まどか「えっと…その……」
さやか「まどか?」
まどか「わたし…今日、泊まって行きたいんだけど、ダメ…かな……」
さやか「まどか?どうしたのさ、いきなり」
まどか「うん…ちょっと、ね……」
ほむら「……私は構わないけど……」
まどか「ありがとう…ほむらちゃん。わたし、着替えとか明日の準備しに一旦帰るね」
ほむら「えぇ、わかったわ」
マミ「それじゃ2人とも、帰りましょう」
まどかは準備の為に一旦家に帰っていった
それからしばらくして、玄関のチャイムが鳴る
ドアを開けると、カバンを持ったまどかが立っていた
まどか「ごめんねほむらちゃん、遅くなっちゃって」
ほむら「そんなことないと思うけど…それじゃ、あがって」
まどか「うん…おじゃまします」
まどかを先ほどの部屋に通す
まどかが泊まりに来るというので、プリニーには盾に戻ってもらうことにした
私はテーブルを挟んでまどかの向かい側に座ったが、こういうとき何を話せばいいのかわからない
少しの沈黙の後、まどかが口を開いた
まどか「ほむらちゃん、今日はありがとう。急に言ったことなのに」
ほむら「それは…まどか、だから……」ボソ
まどか「え、何?」
ほむら「な、何でもないわ。それで、どうしてまた急に?」
まどか「うん…魔法少女のことでほむらちゃんに話したいことがあるの……」
ほむら「……まさか、まだ魔法少女になろうだなんて考えているんじゃないでしょうね?」
まどか「……わたし、ほむらちゃんに謝りたかったの……」
まどか「ほむらちゃん、ごめんなさい……」
魔法少女のことで話があるというから何を言い出すかと思っていたら
まどかは私に深々と頭を下げて謝った
ほむら「……私はあなたに謝られるようなことはされてないと思うけど」
まどか「だって、ほむらちゃんが危ないって言ってたのに…連れて行ってなんて言っちゃったし……」
まどか「そのせいでほむらちゃん、酷いケガしちゃったし…私のせいだよ……」
まどか「……本当にごめんなさい、ほむらちゃん」
ほむら「怪我ならもう治したし、あなたを連れて行ったのは私の判断よ。あなたが気に病むことはないわ」
まどか「わたし…考えが甘かったんだと思う。確かに魔法少女は危険だって、そう言われた。だけど……」
まどか「実際そんなところ、目にしたわけじゃなかったから……」
まどか「心のどこかで、そんな命の危険なんて起こるわけないって…そう、思っちゃってたんだよ……」
まどか「でも…ほむらちゃんが魔女に噛み付かれたとき、すごく怖くなった……」
まどか「もし、あれで腕…ううん、頭でも食べられたら、って考えちゃって……」
まどか「結界の中で言ってたよね、『私もここの魔女に殺されてしまうかもしれない』って。わたし、ほむらちゃんがほんとに死んじゃうんじゃないかって……」
ほむら「そう…ごめんなさい、不安にさせてしまって。でも大丈夫よ、今はまだ死ぬつもりはないから」
まどかは俯いたまま謝罪の言葉を続ける
私の負傷を見たせいか、幾分か考えを改めてくれたようだ
ほむら「もう十分よ。まどか、顔を上げて」
まどか「ほむらちゃん…許してくれるの……?」
ほむら「許すも何も、私は最初から怒ってなんていないわ」
まどか「ほむらちゃん…ありがとう、ほむらちゃん」
ほむら「まどかは笑ってる方が素敵なんだから。ほら、笑って」
まどか「え、えぇ!?な、何言うのほむらちゃん!?」カァ
ほむら「え、思ったことを言ったのだけど…何かおかしかったかしら?」
まどか「あ、いや、そんなことはないんだけど……」
まどか「と、とにかくもう結界の中に連れて行ってなんて言わないよ」
ほむら「……魔法少女になる、っていうのは……?」
まどか「……ほむらちゃんの大ケガ見たら…ごめんね、ほむらちゃん……」
まどか「今思い返しても、すごく怖くて…わたしには…向いてない、よね……」
ほむら「そう思うのが普通よ。……あなたは魔法少女になっちゃ駄目。いいわね?」
まどか「うん……。約束するよ、絶対に魔法少女にはならないって……」
ほむら「そう…ありがとう、まどか」
まどか「それでもうひとつの話なんだけど…わたし、ほむらちゃんを支えることにするよ」
ほむら「え?」
まどか「魔法少女にはならないけど…ほむらちゃんを助けたいって言ったでしょ?その思いは本当だよ」
まどか「だから、魔法少女にならない範囲でほむらちゃんのことを助けてあげたい。……ダメ、かな」
ほむら「……」
理由をつけて断ってもこの子、変なところで行動力があるし、何をするか……
それなら、私の目の届くところにいてくれた方がよさそうだ
ほむら「それなら…お願いできるかしら?」
まどか「うん。任せてよ、ほむらちゃん!」
ほむら「よろしく、まどか。……さて、それじゃ夕飯にしましょう」
まどか「さっそく出番だね、手伝うよ!」
ほむら「いえ、今日はちょっと材料も何もないからカップラーメンで……」
まどか「あ…うん、わかった……」
ほむら「そ、それじゃ私はお湯沸かして来るわね」
まどか「うん……」
見るからに沈んでいるまどかを見て、少し悪いと思いつつ、キッチンに向かう
それでもカップラーメンが出来上がる頃にはすっかり元通りで、美味しそうに食べていた
それからまどかと少し話をして、お風呂に入って、明日からの準備を始める
眠たそうにしているまどかには半ば無理やり、私のベッドを使わせることにした
ほむら「……これでよし、と。さて、後は……」パァァ
ほむら「プリニー、ちょっと出てきなさい」
プリニー「お呼びッスか、ほむら様?」
ほむら「えぇ。プリニー隊に頼みたいことがあるの。まどかを……」
プリニー「……了解ッス。オレたちプリニー隊に任せるッス!」
ほむら「頼んだわよ。それじゃ、行って来るわね」
明日からの私の不在に対処できるよう、できるだけ手は打っておいた
それでも、いくつか不安要素はある。私もできるだけ急ぐつもりではいるが……
何にせよ、今度こそまどかを絶望から救い出してみせる
自分にそう言い聞かせ、私は家を後にした
――――――
ピピピピピピピピ
まどか「ん…あれ、ここ……」
まどか「……あ、そっか、わたしほむらちゃんの家に泊まりに来たんだっけ」
まどか「ん~…ふぅ、ほむらちゃん、もう起きてるかなぁ」
まどか「ほむらちゃん、おはよ…あれ、ほむらちゃん?」
まどか「別の部屋かな…あれ?なんだろう、これ……」
『まどかへ』
『おはよう、まどか。よく眠れたかしら?』
『昨日言っていた通り、私は少しこの街を離れる。2、3日程度で戻れると思うわ』
『あなたが私を支えてくれる…助けてくれると言ってくれたときは、本当に嬉しかった』
『ちゃんとお礼を言ってなかったから、ここで言っておくわ。ありがとう、まどか』
『私が留守の間、巴マミと美樹さやかのこと、お願いするわ』
『それじゃ、私が帰るまで無茶なことはしないで、大人しく待っていてね』
まどか「そっか…ほむらちゃん、もう行っちゃったのか……」
まどか「ほむらちゃんからマミさんとさやかちゃんのこともお願いされちゃったし、頑張らなきゃ」
まどか「よーし、それじゃまず……」
『目が覚めたッスか?』
まどか「うぇひっ!?」
プリニー「そんなに驚かなくてもいいと思うッス……」
まどか「あ、ごめんなさい…あれ、でもどうしてプリニーさんがここにいるの?」
プリニー「ほむら様不在の間、オレたちがまどか様を守るようにと頼まれているッス」
プリニー「プリニー隊のみんなもいるッス。今は別の部屋で待機してるッスけど……」
まどか「そうなんだ…って、まどか様!?」
プリニー「まどか様のことは、ほむら様から大事な人だと聞いているッス」
プリニー「ご主人にとっての大事な人はオレたちにとっても大事な人。だから、ほむら様と同等の扱いをさせてもらうッス」
まどか「そ、そう…よろしくね……」
まどか(大事な人って…どういうことなんだろう……)
まどか「でもどうしよう、あんなにたくさんいると…わたしの家に入らないよ」
プリニー「それも大丈夫ッス。ほむら様が帰って来るまでこの家を預かってほしいとの事ッス」
まどか「えぇ!?」
プリニー「まどか様を脅威から守るにはここが一番都合がいいと言っていたッス」
まどか「う、うーん…パパとママに相談してみるね……」
プリニー「お願いするッス。それはそうと、時間は大丈夫ッスか?」
まどか「え?……うわ、もうこんな時間!?急いで準備しないと!」
――――――
マミ「それで、鹿目さんは暁美さんの家を預かることにしたのね」
まどか「はい。パパとママにはほむらちゃんの心臓病のことを話して、それで何とか……」
さやか「あたしじゃなくてほんとよかった…死んだ魚の目したペンギンがうじゃうじゃいると思うと……」
さやか「それにしても…まるで単身赴任した旦那と帰りを待つ嫁みたいだねぇ、まどかさん」ニヤニヤ
まどか「うえっ!?な、何変なこと言ってるのさやかちゃん!」
さやか「ごめんごめん、冗談だって」
まどか「もう……」
マミ「ふふ…でも鹿目さんに留守を預けたってことは、それだけ鹿目さんを信頼しているんだと思うわ」
まどか「でも…わたし、そんなに信頼されるようなことは何も……」
マミ「なんていうか…鹿目さんのことは無条件で信じているような気がするわ」
さやか「あー、そんな気はしますね。まどかのことはまどかって呼んでるのに、あたしとマミさんは何でかフルネームですし」
キーンコーンカーンコーン
さやか「っと、もう休み時間終わりか……」
マミ「それじゃ2人とも、また後でね」
さやか「マミさん、また後でー。……さて、教室戻ろうか」
まどか「うん……」
まどか(ほむらちゃんはどうして…わたしをそこまで信頼してくれてるんだろう)
まどか(ほむらちゃんが帰ってきたら、聞いてみようかなぁ……)
さやか「まどかー、行くよー」
まどか「い、今行くー!」
――放課後――
まどか「さやかちゃん、この後空いてる?」
さやか「んー?……あー、ちょっとマミさんに相談したいことがあるんだ」
まどか「そっか…どうしようかなぁ」
さやか「何?あたしに用事?」
まどか「えっと、買い物に行くから手伝ってくれないかなーって……」
さやか「このさやかちゃんを荷物持ちに使おうとするとは…プリニーに頼めばいいんじゃないの?」
まどか「ものすごく目立つと思うよ……」
さやか「だよねぇ。……まぁそういうことで、あたしもちょっと用事があるから…ごめんね」
まどか「ううん、大丈夫だよ。それじゃ、わたし帰るね」
さやか「まどか、またねー」
まどか「ただいまー」
プリニー「おかえりなさいッス」
プリニー隊「まどか様、おかえりなさいッス!」
まどか「お留守番ありがとう、みんな」
プリニー「これも仕事ッス。まどか様が気にすることはないッス」
まどか「そ、そう……?」
プリニー「それでは朝言った通り、オレたちプリニー隊がまどか様をお守りするッス」
プリニー「ほむら様が帰って来るまでこの家にいることと、学校以外で外出するときはオレを連れて行く」
プリニー「これだけ約束してほしいッス」
まどか「え、でも連れて外歩くのは……」
プリニー「大丈夫ッス。この大きいカバンに入るッスから」
まどか「う、うん…わたし、着替えるついでに少し家の中見て来るね」
まどか(ほむらちゃん…この家、預かってほしいってことだったけど……)
まどか(家具も、テレビも…ほとんど何も置いてない……)
まどか(辛うじてベッドは置いてあったけど…ここに住んでるって言われても信じられないな……)
まどか「あ…冷蔵庫……」ガチャ
まどか「空っぽって…プリニーさーん」
プリニー「どうかしたッスか?」
まどか「ほむらちゃんって、朝とか夜って何食べてるの?」
プリニー「そこの棚に入ってるものを食べてるみたいッス」
まどか「ここ?」ガチャ
まどか「えぇー…棚いっぱいのカロ○ーメイト…あ、ドリンクまである……」
プリニー「ほむら様は最適な栄養の取れる便利な物だって言ってたッスけど……」
まどか「これじゃほむらちゃん、倒れちゃうよ…何とかしないと……」
まどか「プリニーさん、少し出かけたいの。ついてきて」
――――――
まどか(家具とかそういうのは買えないから置いとくとして、まず食べる物を……)
まどか(お金はほむらちゃんが置いていったのを預かってるけど、使ってもいいよね……?)
ドン
まどか「わっ…ご、ごめんなさ…あれ?仁美ちゃん?」
仁美「あら…鹿目さん……」フラフラ
まどか「どうしたの?今日、お稽古のはずじゃ……」
仁美「そんなこと、どうでもいいんですの…だって、これから素晴らしい世界へ旅立つんですもの……」フラフラ
まどか「ど、どうしよう…何だか様子が変だよ……」
まどか「と、とにかくマミさんに連絡して…っと」ピッピッ
まどか「あとは…ついて行くしか……」
――工場内――
まどか「あ!あれ、混ぜたらダメだって……!」ダッ
仁美「邪魔しないでいただけます?」ガッ
まどか「ひ、仁美ちゃん!?だって、あれ混ぜたら……!」
仁美「えぇ。だからこそ、ですわ」
まどか「そんな…助けて、プリニーさん!」
プリニー「了解ッス!」バッ
仁美「あら…何でしょう、このペンギン……」
プリニー「こ、こんなバケツ……」ガッ
プリニー「オリャーッス!」ガシャーン
まどか「や、やった!?」
工場長「何しやがるこのペンギン!!」
ゾロゾロ
プリニー「や、ヤバイッスよ……」ダラダラ
まどか「と、とにかくあの部屋に……!」バタン
プリニー「た、助かったッス……」
まどか「うん…あとはマミさんが来るまで……」
ズズズ…
まどか「え…け、結界!?」
使い魔「……」
プリニー「まどか様はオレが守るッス!」ズバン
まどか「プリニーさん……」
プリニー「さぁ、かかってくるッス!」
使い魔「……」ワラワラ
魔女「……」
プリニー「……と、言ってみたものの…これはマズいッス……」
まどか「数が違いすぎるよ…マミさん、早く来て……!」
プリニー「このままじゃ2人ともやられてしまうッス…こうなったら……」
プリニー「……まどか様、お願いがあるッス」
まどか「こ、こんなときに何!?」
プリニー「オレの代わりに、戦ってほしいッス」
まどか「えぇ!?で、でもわたし魔法少女じゃ……」
プリニー「オレがまどか様の武器になるッス!助けがいつ来るかわからない以上、こうするしかないッス!」
まどか「な、何が何だかわからないけど…わかった、わたし…やるよ!」
プリニー「ありがとうッス…それじゃ、行くッスよ!」
プリニー「魔チェンジ!!」
プリニー『まどか様、お願いするッス!』
まどか「な、何これ!?プリニーさんが、弓に……!」
プリニー『これは魔チェンジ…怒ッキングと同じく、オレたち魔物の特殊能力ッス』
まどか「そうなんだ…よし、後はわたしが……」
まどか(すごい…体に力が……。それに、弓の扱い方…ううん、もっとすごい何かの使い方が、頭に……!)
まどか「行くよ……!」キリキリ
まどか「ジール…レーゲン!!」パシュウ
ズドドドドド
使い魔「!!」
まどか「すごい…あれだけいたのに……」
プリニー『まだ魔女が残ってるッス!気を付けるッス!』
魔女「……!」ズズズ
まどか「させないっ!」パシュウ
魔女「!」ズガッ
まどか「これでトドメ!スプライン……」
まどか「アローッ!!」パシュウ
ズガガガガ
魔女「!!」
カラン
まどか「グリーフシード…わたし、勝ったの……?」
プリニー『そうッスよ!まどか様、スゴいッス!』
まどか「うぇひひ…無我夢中だったから何が何だか……」
まどか「でもあのものすごい矢とか、バーっとした攻撃とか…あれ、なんだったのかな」
プリニー『あれは魔界の……』
『鹿目さん!どこ!?』
『まどか!返事して、まどか!』
まどか「あ、マミさん…それと、さやかちゃん?」
プリニー『まどか様が心配でついて来たんじゃないッスか?』
まどか「そうかも…マミさーん、わたし、ここでーす!」
マミ「鹿目さん!よかっ……」
さやか「まどか!心配した……」
まどか「?」
さやか「えーと…まどか、その弓、何?」
マミ「見たところ魔法少女になったわけでもないみたいだけど…魔力は感じるわね」
まどか「あぁ…この弓、プリニーさんなんです」
さやか「へ?プリニー?」
まどか「うん。プリニーさん、戻ってくれる?」
プリニー『了解ッス』パァァ
プリニー「ふう…まどか様、ありがとうッス」
まどか「ううん、わたしの方こそ…ありがとう、プリニーさん」
マミ「話が見えないけど…つまり、そのプリニーさんが弓に変身して……」
さやか「使い魔どころか魔女まで倒しちゃったってこと……?」
まどか「そ、そういうことになるかな……」
さやか「ちぇー、せっかくのさやかちゃんの初陣だと思ったのに」
まどか「そういえばさやかちゃん…その恰好……」
さやか「まぁその、心境の変化と言いますか……」
さやか「……決心がついたんだ。マミさんと、ほむらと一緒に戦おうって」
さやか「ほむらの大ケガ見てさ、いつかマミさんやほむらが死んじゃうんじゃないかって思って……」
さやか「あたしにもみんなを助ける力があるのに見てるだけなんて…できないから」
マミ「本当は暁美さんにできるだけ契約しないように引き留めてほしいと頼まれてたけど……」
マミ「美樹さんの決意を聞いて…私には止められないと、そう思ったわ」
まどか「そっか…さやかちゃんが決めたことなら、わたしは応援するよ」
さやか「ありがと、まどか……。それにしてもキュゥべえの奴、どうしたんですかね」
マミ「私にもわからないけど…何だか急いでいたみたいね」
まどか「キュゥべえがどうかしたんですか?」
マミ「いえ、美樹さんとの契約が済むとすぐどこかへ行ってしまって……」
まどか「そういえば、マミさんと初めて会ったときからキュゥべえ、見かけてないなぁ」
マミ「最近姿を見せないのよね。どうしたのかしら……」
プリニー「キュゥべえって一体何者ッスか?」
さやか「そっか、知らないんだっけ…素質のある子の願いを叶えて、魔法少女にする…動物?」
マミ「素質のある子にしか見えないから、あなたたちは見えないと思うわ」
プリニー「そんな奴がいるんスか……」
さやか「……さて、それじゃ帰ろうか」
まどか「あ…まだ買い物してないんだった」
マミ「それじゃみんなで買い物して帰りましょうか。魔女の影響を受けた人は警察に任せましょう」
まどか「ありがとうございます、マミさん」
――――――
マミ「それじゃ鹿目さん、また明日。夕飯、ありがとう」
さやか「美味しかったよ。……しかし、どんどんまどかがほむらの嫁になっていく…あたしゃ悲しいよ」
まどか「そ、そんなんじゃないよ……」
さやか「わかってるわかってる。それじゃ、またねー」
まどか「マミさん、さやかちゃん、また明日」
バタン
まどか「……ふう、今日は疲れたなぁ…早めに寝ようかな……」
まどか「……これでよし、と。今日はもう寝ちゃおう」
まどか(普段はこんなに早くは寝ないんだけど……)パチン
まどか(この家、テレビも何もないからなぁ……)
まどか(話し相手がプリニーさんだけじゃなぁ…退屈だよ……)
まどか(ほむら…ちゃん、早く…帰って……)
まどか「すぅ……」
『あのペンギン、どこかで見た気がすると思ったら…そういうことか』
『向こうからの妨害かと思ったけど、どうやら偶然やってきたようだね』
『彼女との契約は…このままだと難しそうだ。何か手を考えるとしよう』
『もう無理に契約を取る必要はないけど…それでもあれだけの素質だ。契約できるのならそれに越したことはない』
『それと、暁美ほむら…彼女の目的は恐らく……』
『アレがやられるとも思えないけど…そうだ、あの子に話をしてみよう』
『何にせよ、僕たちの邪魔はさせないよ』
『きゅっぷい』
――翌日――
さやか「それじゃまどか、あたしはマミさんと特訓があるから今日はこれで」
まどか「うん。さやかちゃん、がんばってね」
さやか「外出するときは気をつけなさいよ?昨日みたいな無茶はもうしないこと」
まどか「わかった、気をつけるね」
さやか「わかってくれればよろしい」
マミ「美樹さん、いるかしら?」
さやか「あ、マミさん!……それじゃまどか、またね!」
まどか「さやかちゃん、またねー。……よし、わたしも帰ろうっと」
まどか「あ、その前にわたしの家に寄って、買い物して…っと」
まどか「……た、ただい、ま……」ヨロヨロ
プリニー「おかえりなさ…何スか、その大荷物……」
まどか「うん…ちょっと、ね」
まどか「あ、こっちの荷物を部屋に運んでおいてくれるかな」
プリニー「了解ッス」
まどか「お願いね。わたしはちょっとキッチン使わせてもらうね」
――――――
ほむら「思ったより早く帰って来られたわね……」
武器調達を終え、家に向かう
各地から少しずつ拝借したが、全てを合わせると相当な量になっていた
これだけの武器があれば、大丈夫だろう
これからのことを考えながら歩いていると、いつの間にか家の前に着いていた
ほむら「……あら、いつの間にか着いてたわね…考えるのは少し休んでからにしましょう」
ガチャ
ほむら「ただいま」
プリニー「ほむら様!おかえりなさいッス!」
ほむら「まどかの護衛、ありがとう。何か問題は?」
プリニー「何もないッス!」
ほむら「そう。ところで、まどかは?」
プリニー「あ、今呼んでくるッス!まどか様ー!」
ほむら「あの子…大人しく待っていてくれたようね。よかった……」
まどか「ほむらちゃんっ!」
プリニーが呼びに行ってからしばらくして、まどかが少し慌てた様子で部屋に飛び込んできた
何かの調理中だったらしく、エプロンを着けていた
まどか「ほむらちゃん、おかえり!」
ほむら「……っ」
まどか「……あれ、ほむらちゃん?」
ほむら「……ごめんなさい、家に帰ってきてそう言われるの、久しぶりだったから」
まどか「そっか…うん、でももう大丈夫だからね」
ほむら「え?まどか、それはどういう……」
まどか「あ、話の前に夕飯にしよっか。わたし、がんばったんだから!」
ほむら「え?えぇ……」
まどか「じゃあ今用意するから、ちょっと待っててね」バタン
ほむら「まどか……」
プリニー「ほむら様は幸せ者ッスねー」
ほむら「な、何よ」
プリニー「だってそうじゃないッスか」
ほむら「わけのわからないこと言ってると放り投げるわよ」
プリニー「勘弁してほしいッス……」
――――――
ほむら「ふぅ…ごちそうさま。美味しかったわ」
まどか「ほんと?ありがとう、ほむらちゃん」
まどかの用意してくれた夕飯はとても美味しかった
まどかが作ってくれたと思うだけで、何倍も美味しくなった気がした
ほむら「さて…まどか、私がいない間、何もなかった?」
まどか「え?何かって……」
ほむら「私がいなかった間、魔法少女に関連したことで何かあった?」
まどか「えっと、さやかちゃんが契約して、魔法少女になっちゃったんだけど…よかったのかな……?」
ほむら「そう…美樹さやかが……」
巴マミになるべく契約させないように伝えはしたが、やはり契約してしまったようだ
それでも以前と比べ、彼女の魔女化を防ぐ手段はいくつか見つけられた
まどかの為にも、美樹さやかを魔女にするわけにはいかない
ほむら「美樹さやかのことはわかったわ。私と巴マミに任せて頂戴」
まどか「わかったよ。それと…あのね……」
ほむら「何かしら?」
まどか「うん…わたしも、一緒に戦いたいの」
ほむら「まどか…あなた、まだそんなこと言って……」
まどか「待って、今説明するから…プリニーさん、お願い!」
プリニー「了解ッス!魔チェンジ!」カッ
プリニーがそう言うと、一瞬閃光が走る
次の瞬間には、まどかの手に弓が握られていた
ほむら「……何がどうなってるのかしら?」
まどか「えっと、これは『魔チェンジ』って言って、あの大きくなったのと一緒で魔物の特殊能力なんだって」
ほむら「怒ッキングと……?」
まどか「プリニーさんに武器になってもらえば、魔法少女にならなくても戦えるかなって……」
プリニー『まどか様はとんでもない魔力を持ってるッス。魔神…下手したら魔王クラスの魔力を秘めてるッス!』
プリニー『ただ、オレが魔チェンジしないとどうにも扱えない魔力ッスが……』
ほむら「危険だと…わかっているの?」
まどか「……うん。わかってるよ」
ほむら「少し…考えさせて……」
まどか「うん。……あ、それと」
ほむら「……まだ何かあるの?」
まどか「えっと、魔法少女のことじゃないんだけど」
まどか「わたしね…このまましばらくほむらちゃんと一緒にいようと思うの」
ほむら「え?」
まどか「理由はいろいろあるんだけど…一番はほむらちゃんが心配、だから……」
まどか「何もない家に独りでいて、まともな物食べてないほむらちゃんが、心配なの」
ほむら「そういえば…ぽつりぽつりと見慣れない物がいくつか……」
まどか「わたしの家から持ってきたの。この家…寂しすぎるから……」
ほむら「……」
まどか「……お願い。わたしに、ほむらちゃんを…支えさせてほしいの」
まさかまどかがこんなことを言い出すとは思わなかった
私と一緒にいてくれた方が色々とやりやすい。だけど……
まどかが私と一緒にいたいと言ってくれて…凄く嬉しい
ほむら「……わかったわ」
まどか「あ…ありがとう、ほむらちゃん!」
ほむら「お礼を言いたいのは…私の方よ。ありがとう、まどか……」
プリニー「ホント、ほむら様は幸せ者ッスねー」
ほむら「いい加減にしないと投げるわよ」
プリニー「ごめんなさいッス……」
まどかとそんな話をしていたら、随分といい時間になってしまった
そろそろお風呂にでも入って来ようか、なんて考えていたときだった
ドンドンドン
マミ『鹿目さん、いる!?』
まどか「あれ…マミさんだ。どうしたんだろう」
ほむら「どうしたのかしら…とにかく、出てくるわね」
ガチャ
ほむら「巴マミ、何かあったのかしら?」
マミ「あ、暁美さん!帰ってたのね!」
ほむら「えぇ、そういえば連絡してなかったわね。ごめんなさい」
マミ「そんなことより、少し上がらせて!治療を……!」
巴マミの背中には美樹さやかが背負われていた
だが、その姿は随分とボロボロだった
ほむら「……何があったの?」
マミ「まだ外にいると思うわ…それじゃ、ちょっと上がらせてもらうわ!」
そう言うと、巴マミは家に上がっていった
私は何があったのか確かめるべく、外に出る
ほむら「あなたは……」
家の前に、少女がひとり立っていた
真紅の衣装を纏い、槍を手にした赤髪の魔法少女
佐倉杏子が不敵な笑みを浮かべて、こちらを見ていた
杏子「暁美ほむらってのは、アンタかい?」
ほむら「えぇ、そうよ」
杏子「そうか、アンタか…あぁ、アタシは佐倉杏子。見ての通り、魔法少女だ」
ほむら「美樹さやかをやったのは、あなたなの?」
杏子「美樹さやか……?あぁ、あの青い剣使いのことだったらアタシがやったよ」
ほむら「そう……」
杏子「どうする?今ここで敵討ちでもするかい?」
ほむら「いえ、そのつもりはないわ」
杏子「文句はそのさやかってのに言ってくれよ。先に手を出したのはそっちなんだからさ」
ほむら「それで、あなたの目的は?」
杏子「あぁ、そうだった。アンタと…美樹さやか、巴マミに対しての……」
杏子「宣戦布告さ」
――――――
まどか「あ、マミさん…さやかちゃんは……」
マミ「もう大丈夫よ。今は眠ってるだけ」
まどか「そうですか…よかったぁ……」
マミ「美樹さんがテレパシーで助けてくれって言ってきて……」
マミ「その後で倒れてる美樹さんを見たときは何があったのかと思ったわ」
まどか「マミさん、さやかちゃんのこと、ありがとうございました」
マミ「さて、それじゃ私はそろそろ……」
ガチャ
ほむら「ちょっと待って。話があるわ」
マミ「暁美さん…佐倉さんは?」
ほむら「今日のところは帰ったわ」
マミ「そう…それで、佐倉さんとは何を?」
ほむら「彼女の目的を聞いておいたわ。……ここにいる全員への、宣戦布告だそうよ」
まどか「え……」
マミ「宣戦布告って、どういうこと……?」
ほむら「それは……」
――――――
ほむら「宣戦布告?一体どういうこと?」
杏子「理由は2つ。1つ、そっちの縄張りも欲しいから」
杏子「2つ。アンタ、魔法少女のシステムを壊そうとしてるそうじゃないか」
ほむら「一体何を言ってるの?身に覚えがないのだけど……」
杏子「キュゥべえの奴から聞いたんだよ。見滝原の暁美ほむらってのが魔法少女のシステムを壊そうとしてるってな」
杏子「アンタがそうしてる以上、アンタのお仲間もそうなんだろ?だったらぶっ潰すしかないよねぇ?」
ほむら「ちょっと待ちなさい、私は……」
杏子「とにかく、そういう理由でアタシはアンタらに宣戦布告させてもらうよ」
ほむら「……話し合いをしたいのだけど」
杏子「アタシに勝てたら話くらいは聞いてやるよ」
ほむら「そう…わかったわ」
杏子「ま、今日のところはこれで帰らせてもらうよ」
――――――
ほむら「……ということになってしまったわ……」
マミ「システムの破壊って…何を言っているのかしら?」
まどか「壊すって、どういうことなんだろう……?」
プリニー「詳しくないからわからないッスが、そう簡単に壊せるものなんスか?」
ほむら「いえ…そもそも、壊すも何も物体として存在してないもののはずだけど……」
ほむら「その概念的なものを破壊するだなんて…何を吹き込まれたのかしら」
マミ「キュゥべえに直接聞いてみるにも、今どこにいるのかしら……」
まどか「話を聞いてもらうにしても、戦わないといけないのかな……」
ほむら「そうなるでしょうね。どうにかできないかしら……」
マミ「対応を私の方でも考えてみるわ。……さて、それじゃ私はこれで帰るわね」
ほむら「えぇ。引き留めてごめんなさい」
マミ「美樹さんのこと、お願いね。それじゃ、おやすみなさい」バタン
まどか「ほむらちゃんが帰ってきて早々、こんなことになるなんて……」
ほむら「まどかが気にすることじゃないわ。何にせよ、私の邪魔をするのなら容赦しない」
プリニー「ほむら様の邪魔すると銃で撃たれそうッス」
ほむら「蜂の巣にするわよ?」
まどか「……あ、そうだ。ほむらちゃんが帰ってきたら聞こうと思ってたことがあるんだった」
ほむら「私に?」
まどか「うん。……ほむらちゃんは、どうしてわたしのこと、そこまで信じてくれるの?」
まどか「それと…プリニーさんに、わたしを『大事な人』って言ったみたいだけど…どういう意味なの?」
ほむら「っ…それ、は……」
まどか「わたし、ほむらちゃんにそんなに信じてもらえるようなことをした覚えないし、大事な人って言われる理由も……」
まどか「だから、どうしてかなって思って……」
ほむら「……覚えてるわけ、ないわ……」ボソ
まどか「え…何?何か言った?」
ほむら「……今はまだ、言えない。でも、いつか必ず話すわ」
まどか「……わかった。ほむらちゃんが話してくれるまで、待ってる」
ほむら「ありがとう…それよりも、そろそろ休んだ方がいいと思うんだけど……」
まどか「え?……うわ、もうこんな時間だったの?」
ほむら「美樹さやかがベッドを使ってたわね…布団を用意しておくから、お風呂に入ってきなさい」
まどか「うん。ありがとう、ほむらちゃん」
――――――
ほむら「……それじゃ、おやすみなさい、まどか」パチン
まどか「うん、おやすみ」
まどか(どうしてほむらちゃんがわたしを信頼してくれてるのか…お風呂でも考えてみたけど、全然わからないや……)
まどか(わたしが何かしたとも思えないんだけど…自分で気づかないうちに何かしたのかな……)
まどか(信頼してくれてるのは嬉しいけど、わたしとしてはもっと仲良くなりたいなぁ……)
まどか(……昨日もそうだったけど、何だか寝る前にほむらちゃんのことばかり考えてるなぁ)
まどか(それだけわたしにとってほむらちゃんが、大事な人だってことなのかな……)
まどか(ほむらちゃんが…わたしのことを大事な人って言ってくれたように……)
まどか(うん…もう寝よう……)
さやか「……ん…あれ、ここ……?」
さやか「……えっと、ここ、どこ?」キョロキョロ
さやか「まどかとほむらが寝てる…ってことは、ここ、ほむらの家かな」
さやか「えっと…確かあたし、赤い魔法少女にやられて…マミさんに連絡して…そっからは記憶がないな……」
さやか「ま、なんにせよ…ありがと、まどか、ほむら」
まどか「すぅ……」
ほむら「……」Zzz
さやか「……少しばかり、お礼をさせてもらいますかねっと」ニヤニヤ
さやか「よいしょ…それで、こっちに…と」トスン
さやか「さて…それじゃあたしは一度家に帰るかな。2人とも、また後でね」バタン
ピピピピピピピピ
ほむら「う…ん、朝…え!?」
まどか「んぅ…ほむらちゃん、おは…よ……」
ほむら「……」
まどか「……」
ほむら「な、なんでまどかと同じ布団に!?」
まどか「わ、わたしもわかんないよ!さ、さやかちゃん!起き……」
ほむら「……いないわね。ということは、犯人は美樹さやかね」
まどか「さ、さやかちゃん…やりすぎだよ……」カァ
ほむら「と、とにかく起きて支度しましょう」
まどか「う、うん……」
――放課後 ほむらの家――
さやか「あはは、驚いてくれた?」
まどか「さやかちゃん…あれ何だったの……」
さやか「んー、半分お礼、半分ドッキリ…かな」
ほむら「やられる側はたまったものじゃないからやめて頂戴……」
案の定、あんなことをした犯人は美樹さやかだった
彼女が来る度にあんな状態にされていては身が持たないので釘を刺しておいた
だけど、まどかと一緒に寝ていたと考えると…悪い気はしなかった
マミ「それよりも佐倉さんの件、どうしようかしら……」
まどか「そういえばマミさん、あの子を知ってるみたいでしたけど……」
マミ「佐倉さんとは…以前、一緒に行動していたのだけどね…考えが食い違ったせいで、出て行ってしまったの……」
まどか「そうだったんですか……」
マミ「ただ、佐倉さんも決して悪い子じゃないの…悪い子じゃないんだけど……」
さやか「でも、昨日のアレは…あたしは許せないです」
まどか「さやかちゃん、何か言われたの?」
さやか「アイツは…グリーフシードのためなら普通の人を見捨てるって…そう言ったんだ」
まどか「そんな……」
さやか「あたしがもっと強ければな…あいつを倒して、ここに引っ張って来られたのに……」
まどか「さやかちゃん……」
マミ「最初から強い子なんていないわ。強いってことは、それだけ経験があるってことなんだから」
さやか「でも……」
佐倉杏子にこっ酷くやられたせいか、少し自信を失っているようだ
彼女自身は強くなりたい、力が欲しいと思っているようだが、そう簡単に強くはなれない
今日のところはまた巴マミと特訓してもらおう。そう思っていたところで、プリニーが美樹さやかに話しかけた
プリニー「そこの青い人…何と言ったッスか……」
さやか「え?あ、あたし?美樹さやかだけど……」
プリニー「アンタ、剣を使うんスよね?」
さやか「うん、そうだけど……」
プリニー「……もしかしたら、オレがアンタの力になってやれるかもしれないッス」
さやか「え?ど、どういうこと……?」
プリニー「アンタに…魔界の秘技を伝授するッス」
さやか「……!」
プリニー「その佐倉杏子という人に勝てるかどうかは保証できないッスけど……」
さやか「……うん、それでもいいよ。少しでも、力が欲しい……!」
プリニー「わかったッス。全力で指導するッス」
ほむら「ちょ、ちょっと待ちなさい。その魔界の秘技って何なの?」
プリニー「魔界で使われている武器には、魔力を使って放つ『秘技』というものがあるッス」
プリニー「具体的には…剣に槍、弓、銃なんかがあるッス」
ほむら「銃……」
まどか「……あ、じゃあこの間のあれって……」
プリニー「そうッス。あれは弓の秘技ッス」
プリニー「弓は多数の敵と戦うためのものが多いッスね」
マミ「それじゃ、銃と剣は?」
プリニー「銃はサポート向けが多いッス。そして、剣は……」
プリニー「極めることができたなら、何者にも負けない力となるッス」
さやか「何者にも……」
プリニー「事実、魔王の多くは剣を使っているッス」
まどか「でも、そんなものをわたしたちに教えちゃっていいの?」
プリニー「本当はあんまりよろしくないッスが…今のオレたちのご主人はほむら様とまどか様ッス」
プリニー「ほむら様とまどか様のために戦ってくれるのなら、協力は惜しまないッス」
さやか「……ちょっと待って、今の話を聞くとあたしとあんたたちが同列に聞こえるんだけど」
プリニー「何言ってるッス。当然じゃないッスか」
さやか「あたし、こいつらと同列なんだ……」ズーン
マミ「私は何でも構わないわ。よろしくね、プリニーさん」
プリニー「それじゃ、さっそく特訓ッス。とりあえず、一番簡単なのから始めるッスよ」
さやか「はぁ、まぁいいか…よろしく、プリニー」
ほむら「……」
プリニーが言った秘技のある武器…剣に槍、弓…そして、銃
その銃の秘技、私にも使えないだろうか。私の雀の涙程度の魔力でも……
プリニーに聞いてみることにした
ほむら「待って」
プリニー「どうしたッスか?」
ほむら「その秘技、私にも教えてもらえないかしら」
まどか「ほむらちゃん?」
プリニー「それは構わないッスけど…急にどうしたんスか?」
ほむら「力が欲しいのは私だって同じよ。……私の目的の為に」
プリニー「ほむら様の目的って…出会ったときに言ってた、悪魔のように強い何かを倒すことッスか?」
ほむら「えぇ。その為なら、私はどんなものだって利用してみせる」
プリニー「わかったッス。それじゃオレが責任を持ってほむら様とさやかに秘技を伝授するッス!」
ほむら「えぇ、よろしく頼むわ」
さやか「やっぱり、あたしは『様』がつかないんだ……」ズーン
ほむら「私たちは特訓に出るけど、あなたたちはどうするの?」
まどか「あ、わたしついて行こうかなぁ」
マミ「私はパトロールに出るわね」
ほむら「わかったわ。佐倉杏子には気を付けて」
マミ「えぇ、わかってるわ」
プリニー「それじゃ、行くッスよ」
さやか「……ほむらの目的ってさ」
特訓場所…例の河川敷に向かう途中、美樹さやかが話しかけてきた
私の目的について聞いてきた彼女は、続けてこう言った
さやか「もしかしてだけど…まどかと何か関係ある?」
ほむら「……どうしてそう思ったの?」
さやか「あんた、普段からあたしたちとまどかじゃまるで扱いが違うじゃん?それ、どうしてだろうなって思ってさ」
さやか「その理由を考えてたんだけど、さっきの目的があるっての聞いて、あたしの中の何かがピーンと来たってわけよ」
ほむら「……外れではないとだけ、言っておくわ」
さやか「無理に聞くつもりはないけど…あたしとマミさんもいるってこと、忘れないでよ?」
ほむら「……覚えておくわ」
まどか「さやかちゃん、ほむらちゃんと何話してるの?」
さやか「んー?いやなに、ほむらにあたしの愛を伝えてだね……」
まどか「あ、愛!?だ、ダメだよそんなの!」カァ
さやか「おーおー、真っ赤になっちゃって。変な子だねぇ」
まどか「さ、さやかちゃんのせいでしょ!?」
ほむら「早く来ないと置いてくわよ」
まどか「ほむらちゃん!?ま、待ってよー!」
さやか「わー!今行くって!」
慌てて追いかけて来る2人を尻目に、河川敷へと向かう
魔界の秘技…私たち魔法少女の魔法による攻撃とどう違うのかはわからない。だけど
思わぬチャンスで新たな力を得られるかもしれない
力を得られるかどうかは私次第
絶対…何が何でも物にしてみせる
全てはあの子を…まどかを守る為に……
【中編】に続きます。