幼女「とうもろこし、いる?」
男「いらん」
幼女「ね~」
男「なんだ」
幼女「とうもろこし、食べる?」
男「いらねぇ」
幼女「う~~~~~」
男「どうした?」
幼女「とうもころし、たべる?」
男「とうもろこしだろ?」
幼女「う~~~~~!」
元スレ
幼女「とうもろこし、いる?」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1285467296/
幼女「ね~」
男「どうした?」
幼女「チンチン電車のりたい」
男「却下」
幼女「う~~~~~~」
男「ダメなものはダメ」
幼女「乗りたい乗りたい~~~! チンチン電車のる~~~!」
男「我侭言うな」
幼女「う~~~~~!」
男「肩車ならしてやる」
幼女「やった~!」
幼女「めろん電車ってなあに?」
男「路面電車だ」
幼女「めろん電車だよ?」
男「路面電車だ」
幼女「う~?」
男「ロメン電車だ」
幼女「??」
幼女「やるくとやるくと」
男「ヤクルトだ」
幼女「おじちゃんも飲む?」
男「飲みかけたら最後まで飲みなさい」
幼女「う~」
男「どうした?」
幼女「おじちゃんもやるくと飲む?」
男「ヤクルトだ」
幼女「のむ?」
男「……少しだけだぞ」
幼女「うん!」
幼女「う”~~~」
男「ちょっと待ちなさい」
幼女「う”~~~?」
男「急に冷えたからな」
幼女「う~~~おはなちゅるちゅる」
男「鼻チーンだ」
幼女「う”~~~」
幼女「……」トテトテ
幼女「……」トテトテ
幼女「……」トテトテ
男「……?」
幼女「……」トテトテ
男「何やってるんだ?」
幼女「あ、おじちゃん」
男「うん?」
幼女「あのねあのね」
男「うん」
幼女「おはなでしおり作ったよ~~」
男「ほう」
幼女「おじちゃん本たくさん、つかって」
男「ありがとうな、大事に使うよ」
幼女「えへへ~」
幼女「動物ってな~に?」
男「熊とか犬とか猫とかだよ」
幼女「なんで~?」
男「動くからだよ」
幼女「動かないのは?」
男「動かないのは物だよ」
幼女「う~~~」
男「どうした?」
幼女「チンチン電車は動物なの~~?」
幼女「あれな~に?」
男「あれはタコだよ、赤いだろ?」
幼女「たこさん?」
男「そうだな、沢山いるな」
幼女「たこさんたくさん」
男「そうだな」
幼女「たこさんたくさん♪」
幼女「すいぞくかん、たのしいね!」
男「楽しいな」
幼女「じんべいざめ、大きいね!」
男「大きいな」
幼女「おじさんとどっちが大きいの?」
男「どっちだろうな?」
幼女「おじさんのほうが大きいよ!」
男「はは、ありがとうな」
幼女「うん!」
男「正直に言いなさい」
幼女「う~~~~」
男「顔を見なさい」
幼女「う~~~」
男「どうしてお弁当を残したんだい?」
幼女「たこさんういんなー、かわいかったから」
男「そうか」
幼女「ごめんなさい……」
男「私じゃなくてタコさんウインナーにごめんなさいだ」
幼女「うん、たこさんごめんなさい」
男「次はちゃんと食べるんだぞ?」
幼女「うん!」
男「週末どこか行きたい所あるか?」
幼女「う~~?」
男「どうした?」
幼女「おじさん、一緒ならどこでも」
男「そうか」
幼女「おじさんおじさん」
男「どうした?」
幼女「しりとり!」
男「林檎」
幼女「ごりら」
男「ラッパ」
幼女「ぱんつ」
男「つくえ」
幼女「えっち」
男「なっ?!」
男「どこでそんな言葉を覚えてくるんだろうか」
幼女「リカちゃんがタケルくんに言ってたよ」
男「どうなってるんだ最近の幼稚園は」
幼女「おじさん」
男「ん?」
幼女「車のりたい」
男「そうか。日曜日、海でも行くか?」
幼女「うん!」
幼女「う~~~~」
男「泳ぐにはちょっと寒いなぁ」
幼女「およぐ~~~」
男「風邪ひくぞ」
幼女「う~~~~」
男「泳ぐのはダメだが」
幼女「う~~~~」
男「波打ち際で遊ぶくらいなら良いか」
幼女「やった~~!」
男「こらこら、走ったらこけるぞ」
幼女「へぶっ?!」スッテーン
男「だ、大丈夫か?!」
幼女「うん! へーき」
男「……?」
幼女「へーきだよ?」
男「そ、そうか? どっか痛くないか?」
幼女「うん!」
幼女「おじさん、どうしたの?」
男「いや、てっきり大泣きするもんかと思ってな」
幼女「む~~」
男「ははは、そう怒るな。我慢できてちょっぴり大人になったな、偉いな」
幼女「おとな? えらい?」
男「褒めてるんだぞ?」
幼女「……」ペタペタ
幼女「……」ペタペタ
幼女「……」ザクザク
男「……?」
幼女「……」ペタペタ
男「何作ってるんだ?」
幼女「おしろ!」
男「ほう」
幼女「ここがおじさんの部屋」
男「ずいぶん狭いんだな」
ザザーン
幼女「あ~~~」
ザザーン
幼女「う~~~」
ザザーン
幼女「あ~~~」
ザザーン
幼女「う~~~」
男「引き波が’あ~~~’で打ち寄せ波が’う~~~’か」
幼女「おじさんおじさん」
男「ん?」
幼女「これあげる」
男「貝?」
幼女「きらきら♪」
男「ふむ」パキ
幼女「あっ」
男「これで私と二人分だ」
幼女「ありがと、おじさん」
男「こちらこそ」
男「日も暮れてきたな、そろそろ帰るか?」
幼女「う~~~」
男「まだ居るって?」
幼女「うん」
男「ちょっとだけだぞ」
幼女「うん!」
幼女「へっくち!」
幼女「へっくち!」
男「……すまない、私のせいで風邪をひかせてしまったな」
幼女「おじ……っくち! おじさん」
男「何だ?」
幼女「ごめんね」
男「なぜ謝る?」
幼女「おじさん、かなしい顔してる」
男「……」
幼女「いたいのいたいの、とんでけ~」
男「……」
幼女「いたいのいたいの、とんでけ~」
男「もういいよ、……ありがとう」
幼女「いたいの飛んでいった?」
男「飛んでいったさ、飛んでいったとも」
幼女「やった! ……っくち!」
男「ほら、いまお医者さんが来るから布団に入ってなさい」
医者「──、熱が下がば大丈夫ですね」
男「そうですか、ありがとうございました」
医者「いえいえ、では私はこれで」
男「えぇ、いつもありがとうございます」
医者「お大事に」
幼女「おじさん」
男「なんだ?」
幼女「えほん読んで」
男「わかった、どれを読めばいいんだい?」
幼女「ももたろう」
男「コホン、むかしむかしあるところに──」
男「──こうして鬼退治を果たしたももたろうは……」
幼女「……」スースー
男「眠ったか」
幼女「……」スースー
幼女「……」スースー
男「寝顔は姉さん似だな」
幼女「……」スースー
男「さて、書類の整理でもするか」
パタン
幼女「……おじさん……」スースー
チクタクチクタク
男「11時か、風呂入って寝るかな」
幼女「おじさん」
男「ん? どうした」
幼女「おしっこ」
男「一人で行きなさい」
幼女「う~~~」
男「怖いのか?」
幼女「う~~~」
男「しょうがない、一緒についていってあげるよ」
パタン
幼女「おじさん」
男「なんだい?」
幼女「いる?」
男「居るよ」
幼女「ほんと?」
男「ああ」
幼女「おじさん」
男「ん」
幼女「終わったよ」
男「そうか、戻ろうか」
幼女「……」ギュ
男「ん?」
幼女「こわい」
男「どうした?」
幼女「めがさめるとね、だれもいないの」
男「っ」
幼女「おじさん」
男「何だ?」
幼女「う~~~」
男「一人で眠れないのかい?」
幼女「う~~~」
男「わかったわかった」
先生「はーい、それじゃあ今日は似顔絵を描いてもらいます」
男の子「ねー、だれ書いてるの?」
幼女「おじさん」
男の子「おじさん?」
幼女「うん」
女の子「ヘンなのー!」
幼女「ヘンじゃないよ、おじさんだよ」
女の子「おとうさんとおかあさんはどうしたの?」
幼女「わかんない」
女の子「この子、たにんと暮らしてるのよ、フジュンだわ!」
幼女「たにんじゃないよ、おじさんだよ」
女の子「そんなのおかしいよ!」
幼女「おかしい?」
女の子「だってかぞくじゃないんでしょ?」
幼女「カゾク」
女の子「かぞくじゃない人と暮らしてるなんておかしいよ!」
幼女「おかしくないよ」
女の子「だいたい、そのおじさんってただのヘンタイじゃないの」
幼女「!」
女の子「いたっ?! なぐった! 今この子なぐったわ!」
男の子「わー、ケンカだー!」
先生「──というわけでして」
保護者「もう! うちの子に大怪我負わせるなんて信じられませんわ!」
男「大怪我って、子供の喧嘩でしょうに」
保護者「なんですって!?」
男「こうやって大人が出るまでもないでしょう、もう帰っていいですか?」
保護者「むきー!」
男「事情はわかりました、それでは失礼します」
保護者「あなた! ちょっと!」
男「なんですか?」
保護者「知ってますわよ、あの子があなたの子じゃない事くらい」
男「そうですが、それが何か?」
保護者「こーんな不出来な人間に育てられて子供が可哀想だと申し上げていますのよ」
男「その言葉、そっくりそのまま返してあげますよ」
保護者「なっ……」
男「それでは失礼します」
先生「あ、あの。ちょっと待ってください」
男「はい?」
先生「あの、ありがとうございました」
男「ちょ……頭を上げてください先生。それに私は何も御礼を言われるような事はしていないですが……」
先生「いえ、あの保護者さん、前々からよくああいう事言う人だったんですよ。ホントは、ちょっぴり嫌だなあって思ってたんですけど……」
男「あぁ、先生も大変なんですね」
先生「ええ。私はまだ日が浅くて何も言い返せなくて、あの、だから、ありがとうございます」
男「はい、それでは私はこれで」
先生「あ、あの」
男「まだ何か?」
幼女「……」
男「ここに居たのか」
幼女「……」
男「だいたいの話は先生から聞かせてもらったよ」
幼女「……」
幼女「……ごめんなさい」
男「うん、素直な良い子だ。でもおじさんに謝ってもだめだろ?」
幼女「……」
男「……」
幼女「……」
男「黙ってたらわからないぞ」
幼女「ねえ、おじさん」
男「ん?」
幼女「あのね、おじさんと一緒にいるの、ヘンなんだって」
男「っ!」
男「そんな事は無い、ヘンじゃないよ」
幼女「ねえ、おじさん」
男「なんだい?」
幼女「カゾクってなに」
男「家族?」
幼女「カゾクじゃない人と居たらヘンなんだって」
男「言われたのかい?」
幼女「うん」
男「それで怒ったのかい?」
幼女「ううん」
男「?」
幼女「あの子がおじさんの悪口言うからおこったの」
男「……」
幼女「だいすきなおじさんの悪口いうからおこったの」
男「……」
幼女「だから……、おじさん?」
男「……ん? どうした?」
幼女「どこかいたいの?」
男「どうしてだい?」
幼女「ないてるから」
男「はは、違うよ。これは」
幼女「ちがうの?」
男「痛いんじゃない、嬉しいんだよ」
幼女「泣いたらおとなじゃないんだよ?」
男「そうだね、おとなじゃないね」
幼女「泣いたらえらくないんだよ??」
男「そうだね、えらくないね」
幼女「いたくないのに、泣くの?」
男「あぁ、そうだよ。そうなんだ」
幼女「……う”ぅ」
男「泣きたい時は、泣いていいんだ」
幼女「う”うぅぅぅ”」
男「泣いていいんだよ」
幼女「うわぁぁぁああ”あああ”~ん」
男「よしよし」
幼女「ほんと、は。こわか、った」
男「そうだね」
幼女「たたいたら、いたくて、でも、でも、」
男「うん、うん」
幼女「ふえぇぇぇえええ~~~ん」
幼女「……ひっぐ……えっぐ」ギュ
男「ほら、顔がくちゃくちゃだ」
幼女「おじさん、も」
男「はは、そうだな」
幼女「鼻ちーんする?」
男「そうだな、鼻ちーんだな」
幼女「はい、てっしゅ」
男「ありがとう」
幼女「あ」
男「どうした?」
幼女「てっしゅ無くなっちゃった」
男「ほら、ハンカチ貸してあげるから拭きなさい」
幼女「ありがとおじさん」
男「さて、……もうそろそろ帰ろうか」
幼女「うん」
ガラガラ
女の子「……あの」
男「うん? 君は?」
女の子「その、」
男「どうしたんだい?」
女の子「ご、ごめんなさい!」
女の子「絵が、わたしより上手だったから。ちょっと……いけずしたくなって」
幼女「うん」
女の子「その……ほんとに、ひどい事いって、ごめんなさい」
幼女「ううん、こっちこそごめんね、いたかったよね」
女の子「ごめん……許してね」
幼女「ううん、ごめんなさい」
男「……二人とも偉いなぁ」
女の子「その、あの」
幼女「うん?」
女の子「よかったらともd」
保護者「まーーーーーー!!!!!! こんな所に居ましたの!!!!!」
女の子「おかあさん」
保護者「こんな人間と一緒の空間に居ちゃいけません! 帰りますわよ!!!」
女の子「あ、ちょ、待って」
保護者「か・え・り・ま・す・わ・よ!!!!」
女の子「……はい」
幼女「いっちゃった」
男「行っちゃったね」
幼女「おじさん、帰ろ」
男「ん、そうだね。我が家に帰ろう」
幼女「うんっ」
幼女「おじさん」
男「ん?」
幼女「きもちいい?」
男「うん、気持ち良いよ」
幼女「上手にできてるかなあ?」
トントン
トントン
幼女「かたこってますなー、だんなさん」
男「念入りに頼む」
トントントン
トントントン
男「それにしても肩たたき券か」
幼女「うん、ぷれぜんと」
男「ありがとう、嬉しいよ」
幼女「あのね」
男「うん?」
幼女「おじさん、いつもありがとう」
男「ん、どういたしまして」
男「そろそろお風呂も沸いたかな」
幼女「かなー?」
男「もう一人で入れるだろう?」
幼女「う~~~」
男「ん?」
幼女「……」ギュ
男「ああ、わかったわかった。わかったからしがみ付くのを辞めなさい」
幼女「わーい!」
幼女「おふろおふろー♪」
男「こらこら、お風呂で走っちゃいけません」
幼女「はーい」
ザッパーン!
男「湯船に飛び込むのもダメです」
幼女「む~~」
男「ほら、シャンプーが目に染みるぞ。目つむってなさい」
幼女「はーい」
男「お客さん、どこかかゆい所はありませんか?」
幼女「ないよー?」
男「かしこまりました」
幼女「ねえ、おじさん。アレやって」
男「アレかい?」
幼女「アレアレ」
男「ん、わかった」
男「できた、東京タワー」
幼女「すごーい、かみがくもみたいー!」
男「曇か、どっちかと言えばモンブランだが……」
幼女「もんぶらん?」
男「あぁ、デザートだ。美味しいぞ?」
幼女「もんぶたん食べたい」
男「もんぶらん、な」
男「じゃあシャンプー流すから目つむってろ」
幼女「えー」
男「どうした?」
幼女「もんぶらんくずすのもったいないよ」
男「後で本物食べさせてあげるから」
幼女「ほんと?」
男「あぁ、約束だ」
幼女「やっくそく、やっくそく♪」
男「じゃあ目つむってなさい、流すぞ」
幼女「はーい」
男「それじゃ湯船につかってから出るぞ」
幼女「うん」
ザバーン
男「はぁ……生き返るなぁ」
幼女「わー、こうずい」
男「はは、こうずいだな」
幼女「ねえ、おじさん。水はどこにいくの?」
男「水は川に流れるんだよ」
幼女「そのあとは?」
男「川に流れた水は海に行くんだ」
幼女「そのあとはー?」
男「海に流れた水は蒸発して雨になるんだよ」
幼女「それでそれで?」
男「雨になって、また川に流れて、海にもどって。また雨になるんだ」
幼女「えぇ? そうなの?」
男「そうだよ、だから水を汚したら汚れた雨が降って皆が困るんだ。水は大事にしないといけないよ」
幼女「わかった!」
男「それじゃあ10数えたら出るか」
幼女「うんっ」
男「いーち」
幼女「にー」
男「さーん」
幼女「よーん」
男「ご」
幼女「ろーく」
男「なーな」
幼女「はーち」
男「きゅう」
幼女「はーち」
男「きゅう」
幼女「はーち」
男「こらこら、終わらないだろ?」
幼女「やだー、でたくない」
男「のぼせちゃうから、今日はこれで上がろう」
幼女「う~~~」
男「わかったわかった、明日も一緒に入ってあげるから」
幼女「やった~!」
幼女「おっきがえ、おっきがえ♪」
男「一人でボタン留められるか?」
幼女「できたー」
男「……見事に一段ズレてるな」
幼女「あれ?」
幼女「ありがとおじさん!」
男「こらこら、待ちなさい」
幼女「なーに?」
男「ドライヤーで乾かさないと風邪を引く」
幼女「うん」トテトテ
男「……?」
幼女「よいっしょ」コトン
男「あの?」
幼女「おじさん、座って」
男「この椅子に?」
幼女「うん」
男「座ったよ」
幼女「乗せて乗せて」
男「……」
幼女「う~~~」
男「わかったわかった」
幼女「おじさんの膝のうえ、たかーい」
男「じゃあ、乾かすぞ」
幼女「はーい」
男「歯磨きしたな?」
幼女「うん」
男「トイレも済ませたな?」
幼女「うん」
男「じゃあ布団敷いて……と、寝るか」
幼女「おじさんも」
男「あぁ、わかった。私も寝るよ」
幼女「おやすみなさーい」
男「あぁ、おやすみ」
幼女「……」スヤスヤ
男「眠りに入るのが早いな、色々あったし疲れているんだろうな」
パタン
男「さて、もう少し作業してから寝るか……ん?」
Prrrrrrrrrrr.....
男「もしもし?」
『あ、起きてた?』
男「起きてるよ」
『よかったー、そっちが今何時なのかたまに忘れるのよね』
男「そうかい」
『あの子は元気?』
男「元気に寝てるよ」
『それはなにより、子供は寝るのが仕事だからね』
男「それより姉さん」
『何さ?』
男「今度はいつ帰ってくるのさ?」
『さあね』
男「さあね、って」
『そんな事言われてもねー、こっちはこっちで忙しいんだっての。体が4つくらい欲しいわよ。仕事と遊びとプライベートと自分磨きに』
男「まったく……、母親ならその中に子育ても入れてくれよ」
『それは言わない約束でしょー? こっちもあんたに全部押し付けちゃって負い目感じてるんだからさー』
男「とにかく、今年中に一回くらい戻ってきなよ。あの子も喜ぶ」
『こんな最低な母親が戻ってもあの子は喜びやしないわよ』
男「そんな事ないって」
『……そうかしら』
男「そうだよ」
『それよりあんたの方はどうなのさ?』
男「ん?」
『執筆、進んでるの?』
男「ぼちぼちだよ」
『どうせならこっちでも流通するくらいのモン書きなさいよね、取り寄せる輸送費も高いんだから』
男「俺はそんな事言いながらバカ高い国際電話を掛けてきてくれる姉さんが好きだよ」
『揚げ足を取るのがうまくなったじゃない? 作家っていう生き物はみんなそうなのかしら?』
男「とにかく、一度帰ってきなよ。年末くらいは休み取れるんだろ?」
『取れたら帰るわよ』
男「約束だぞ」
『はいはい、っと。ボスが戻ってきそうだわ、このへんでね』
男「あいよ」
プツ
ツーツーツー
男「ったく、どこで何やってんのやら」
幼女「おじさん……?」
男「ん」
幼女「いまのひと、だれ?」
男(しまった、軽率だった)
男(なんと答えるべきか……)
男「んー……」
幼女「?」
男「サンタさんだよ」
幼女「え?」
男「サンタさんにモンブランを持ってきてくれるように頼んだんだ」
幼女「ほんとっ?」
男「本当だとも、良い子に待ってたらサンタさんが届けてくれるよ」
幼女「良い子にしてるっ」
男「うんうん、そうだね」
幼女「さんたさん、もんぶらん♪」
男「はは、そんなに嬉しいのか?」
幼女「うんっ」
男「ところでどうして起きてきたんだい?」
幼女「あ」
男「?」
幼女「おしっこ……」
男「あちゃー……」
幼女「ごめんな……さい」
男「いいからいいから、とにかく着替えよう」
幼女「良い子に……ふえっ、良い子……に”っ」
男「大丈夫、ちゃんと謝る子は良い子だよ」
幼女「ふえっ……ふえぇえええぇぇぇぇえ~~~~ん」
フキフキ
フキフキ
男「フローリングの床で良かった」
フキフキ
フキフキ
男「よし……あらかた綺麗になったか」
男「ん? これは? あの子が描いた絵か」
ペラッ
男「4歳にしちゃ上手だなあ」
男「’おじさん、いつもありがとう’……か」
男「ありがとうを言いたいのはこっちなんだけどな……」
男「……久しぶりに何か書いてみるか」
男「……」カタカタカタ
男「……」カタッ
男「……」カチャ
男「……」
男「……」
男「ダメ、か」
チクタクチクタク
男「……今日はもう寝るか」
チュン
チュンチュン
先生「おはようございます」
幼女「おはよーございますっ」
男「おはようございます」
幼女「おじさん、行ってきます!」
男「おう、行ってらっしゃい」
先生「あの子、今日は特に元気ですね?」
男「えぇ、なんだか楽しみな事があるそうですよ」
先生「ふふ、そうなんですか?」
男「では私はこれで」
先生「あ、あの!」
男「はい?」
先生「この間の話──」
男「あぁ、考えておきますよ」
先生「あ、ありがとうございますっ」
保護者「あーーーら? 誰かと思ったら……」
保護者「暴力行為を容認した最低男じゃありませんの」
男「おはようございます」
保護者「あー、やだやだ。同じ空間にいるだけで息苦しいですの」
男「大変ですね、花粉症の方は」
保護者「むぐ……、気に入りませんの!」
女の子「……お母さん」
保護者「いいですの? あんな家の子と金輪際関わってはいけませんの!」
先生「ちょっと……っ」
男「いいですいいです、私は何を言われても構いませんから」
先生「でもっ」
男「それより、子供たちの事お願いいたします。先生」
先生「え? あ、はい」
男「では、私はこれで」
保護者「むっきー!!!!! あの男!!!」
保護者「今に吠え面かかせて……っ!! あら?」
TV『……また凶悪な事件が発生致しました……、先週土曜日未明……ショッピングモールで……』
保護者「ふふ、ふふふふふ、ふーっふーん♪」
保護者「いい! いいわ! なんて素晴らしいアイデアなの、あ・た・し!」
保護者「そうとくれば早速準備! 準備ですわよ!」
ワイワイ
ガヤガヤ
男の子「これあげる」
幼女「え?」
男の子「土だんご」
幼女「なんで?」
男の子「昨日、俺のせいで二人がケンカになっただろ」
幼女「……そうだっけ?」
男の子「そうだよ! だから、これ。仲直りのシルシな」
幼女「うん、ありがと。大切にするねっ」
男の子「へへっ、それじゃあな」
幼女「あ、まって」
男の子「ん? なんだよ」
幼女「い、一緒にあそばない?」
男の子「いいけど何する?」
幼女「あやとりとか、コマとか」
男の子「えー、サッカーやろうぜ」
幼女「さっかー?」
男の子「サッカー知らないの?」
幼女「う、うん」
男の子「しょうがねえなぁ、教えてやるよ」
男の子「こーやってボールをけるんだ」
男の子「てい!」
ポーン
幼女「すごい」
男の子「はっはっは、どうだ」
幼女「すごーい、田んぼの中までとんでったよ」
男の子「だろ? 田んぼの中に……」
「コラー! ボール蹴ったの誰だー!」
男の子「やっべぇ!!!!! に、逃げるぞ!」
幼女「え? へ?」
幼女「だめだよ、悪いことしたら謝らないと」
男の子「でも怒られるぞ?」
幼女「だめだよ。ちゃんと謝らないと」
男の子「う~ん……」
幼女「ほら、行こ」グイ
男の子「あ、おい」
「……なんじゃ」
幼女「おじいさんごめんなさい、ボールが田んぼに入ってしまいました」
男の子「ご、ごめんなさい!」
「またお前か!」
男の子「っ」ビク!
「……まぁ素直に謝った事だし、今日は許してやるかの」
男の子「ほんと?!」
「男に二言は無い」
男の子「やったぜじーさん、ありがとな!」
「まったく、ほんとに反省しとるんじゃろうな?」
幼女「あの、」
「なんじゃ? 見ない顔じゃの」
幼女「田んぼ、いたくない?」
「ん?」
幼女「やさい、いたくない?」
「……は、ハーッハッハ!」
幼女「?」
「そうかそうか、野菜の心配をしてくれるか。なに、大丈夫じゃよ、当たっとりゃせんわ」
幼女「ほんと?」
「ワシはボールを蹴り入れた事を怒ってるんじゃない、それを謝りに来ないガキ共に怒っているのじゃ。お前さんはちゃんとごめんなさいができるんじゃの」
幼女「うん」
「はっは、そうかそうか。いや、世の中まだまだ捨てたもんじゃないって事よの」
「さ、戻りんしゃい。先生が心配するぞい」
幼女「うん、おじいさん。ありがとう」
「なに、次からは気をつけてくれれば良い話じゃ」
幼女「またね、ばいばい」
男の子「おーい! はやく帰るぞー!」
幼女「まって」
男の子「ったく、足おせぇなぁ」
幼女「む~~~」
男の子「毎日はしったら速くなれるぞ」
幼女「はやくなってどうするの?」
男の子「足も鍛えて、サッカーも上手くなって、ワールドカップに出るんだ」
幼女「わーるどかっぷ?」
男の子「サッカーの世界大会だよ、4年に1回だけ世界のいちばんを決める大会があるんだ。世界中の人が注目するんだぜ」
幼女「へー」
男の子「ま、俺がワールドカップに出たら招待してやるよ」
幼女「うん!」
男の子「へへっ」
先生「もう! 二人とも一体どこへ行ってたの!」
男の子「げ!」
先生「とっくに休憩時間は終わってます!」
男の子・幼女「ご、ごめんなさい……」
幼女「でね、今日はこんなことがあったの」
男「ほう」
幼女「すっごくこわかったけど、がんばったよ」
男「えらいなぁ、良い子だ」
幼女「いいこ?」
男「うん、そうだな」
幼女「やった!」
幼女「それでね、おじさん」
男「ん?」
幼女「あたし、わーるどかっぷになる」
男「ワールドカップ?」
幼女「うん」
男「サッカーでもやるのかい?」
幼女「ううん」
男「??」
幼女「世界じゅうの人が、みんな見るんだって」
男「あぁ、そうだね。世界大会だからね」
幼女「だから、ひょっとしたらおかあさんがあたしを見つけてくれるかもしれないって」
男「あぁ、……そうだね」
幼女「男の子がね、つれてってくれるって」
男「あぁ、……そうだね。……そうなるといいね」
幼女「おじさん? どうしたの? 泣いてるの? どこかいたいの?」
男「いや、なんでもない。なんでもないんだよ?」
幼女「……」トテトテ
幼女「……」トテトテ
幼女「……」トテトテ
男「……?」
幼女「いたいのいたいのとんでけー」
男「……」
幼女「いたいのいたいの、とんでけー」
男「ありがとう、……ありがとう。もう痛くないよ」
幼女「ほんとっ?」
男「あぁ」
幼女「よかったね、おじさん」
男「ありがとう、助かったよ」
幼女「うんっ!」
男「もう遅いし、今日は寝よう」
幼女「うん、おじさんおやすみなさい」
男「私は隣の部屋にいるから、何かあったら呼びにきなさい」
幼女「わかった!」
男「おやすみ」
幼女『だから、ひょっとしたらおかあさんがあたしを見つけてくれるかもしれないって』
男「……」カタカタカタ
姉『こんな最低な母親が戻ってもあの子は喜びやしないわよ』
男「……」カタカタッ
先生『あの話……考えておいてくださいね』
男「……」カタン
保護者『あーーーら? 誰かと思ったら……』
男「……」
男「……だめ、か」
ワイワイ
ガヤガヤ
男の子「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」
幼女「あ」
男の子「おはよ!」
幼女「おはよう。ひょっとして、はしってきたの?」
男の子「へへっ、俺の家すぐそこだからさ。毎日走ってきてんの」
幼女「あのね」
男の子「?」
幼女「あたし、わーるどかっぷになるよ」
男の子「そっか! がんばれ!」
幼女「うんっ」
男の子「それでよ、昨日の香川のゴール見たかっ? すげーよなぁ、海外のチームに入って活躍するなんて」
幼女「かいがい?」
男の子「おう、サッカーうまくなれば外国だっていけるんだぜ」
幼女「さっかーうまくなったら外国いけるの?」
男の子「いけるいける、ブラジルだってスペインだっていけるぜ」
幼女「あたし、がいこくに行きたい」
男の子「なにーーーーーーーーっ?!」
男の子「それじゃあ……、今日から俺達は翼とコジローだ」
幼女「?」
男の子「ライバルってやつだな」
幼女「らいばるってなに?」
男の子「えっと、すごく仲の良い友達ってことかな?」
幼女「ともだち。……うん、わかった」
男の子「へへっ」
幼女「ねえ」
男の子「なんだよ?」
幼女「らいばるって何をするの?」
男の子「さあ? なんだろうな?」
幼女「??」
ワイワイ
ガヤガヤ
「あれれー? おっかしいなー!」
「どうしたでやんす? コナソくん」
「おかしいなー、この土だんご。壊れてるよー?」
「本当でやんす、事件のにおいでやんす」
「ペロッ……、これは……」
「なんでやんす? まさか青酸カリ……」
「土の味だ、間違いない」
「さっさと退散するでやんす、ずらかるでやんす~」
幼女「……」
男の子「おい、どうした?」
幼女「われてる」
男の子「なにが?」
幼女「もらった土だんご」
男の子「まー二日持てばいいほうだしな、土団子なんて──」
幼女「ちがうの」ポロッ
男の子「……それ」
幼女「こわれてるの」ポロポロ
女の子「ひっどーい! この子ったらせっかく作ってもらった土団子を壊してるわ!」
「え?」
「なになに?」
「またケンカ?」
幼女「ちがうよ、こわれてたの」
女の子「どうだか! せっかく貰ったものを壊すなんてサイテーよね!」
「貰った?」
「壊すってなに?」
「あれれー? おかしいなー」
「さっさと帰るでやんす」
男の子「ちょっと待て」
女の子「な……なに?」
男の子「こいつがそんな事するはずない!」
女の子「な、なんでよ?」
男の子「ライバルだからな!」
「あーもう、バーロー。みてらんねえ……しゃーねーな、この時計型麻酔銃で……と」
女の子「なっ?! とにかく。その子が壊したんだから、サイテーなのよ!」
コナソ「コホン、それがまずおかしいってんだ」
女の子「なにがおかしいの!」
コナソ「昨日はずっと俺と一緒に居たからな、こいつにいつそんな暇があったんだ?」
女の子「うっ……」
コナソ「アリバイが成立してるんだよ、こいつはシロだ」
女の子「そんな……そんなっ」
コナソ「それだけじゃない」
女の子「……」
コナソ「君は’貰った’土団子と発言したね?」
女の子「えぇ、したわよ! それが何か?」
コナソ「なぜそんな事を知っていたのか?」
女の子「……それは」
コナソ「それは? そこに最大の動機が潜んでいるんじゃねーか? お前は俺の事が──」
男の子「ムニャ?」
コナソ「(バッ、カ?! このタイミングで起きるだとっ?!)」
女の子「……っ」
「あ、逃げたぞ」
「どこ行くんだ~」
女の子「……っ」
タッタタタタタ
女の子「あぁぁああああああああああああ?!」
女の子「キラワレタきらわれた嫌われた!」
女の子「男の子から嫌われた」
女の子「どうしようどうしようどうしよう……」
女の子「なんで? なんでこんなことに……」
保護者『いいんですの? こっそりあの子に嫌がらせをしてやるんですの、やられたらやり返せですの』
女の子『えぇ? そんなの嫌だよ、それにもうわたし達……』
保護者『いいから! このままじゃママの腹の虫が治まらないの!』
女の子『でも……』
保護者『デモも大正デモクラシーもありゃしませんの! とにかく! 何か仕掛けてこないとご飯抜きですの!』
女の子『……』
保護者『返事は?!』
女の子『……はい』
保護者『それで良いんですの』
女の子『はぁ……どうしよう……』
女の子『あれは……?』
男の子『これあげる』
男の子『土だんご』
男の子『これ。仲直りのシルシな』
幼女『うん、ありがと』
女の子『男の子があの子と仲良くなってる』
女の子『胸が……ちくちくする』
女の子『……なんだかイヤだなあ』
保護者『いいんですの? こっそりあの子に嫌がらせをしてやるんですの、やられたらやり返せですの』
女の子『やられたら、やり返せ』
女の子『やられたら、やりかえせ』
女の子『でもっ、そんなのやっぱりだめだよ』
保護者『何か仕掛けてこないとご飯抜きですの!』
女の子『ヤラレタラ、ヤリカエス』
女の子『……誰も、見てない、よね?』
ガタッ
女の子『……』ビクッ
ニャーン
女の子『……はぁ。なんだ、猫か』
ニャーン?
女の子『ねぇ猫さん、わたしどうすればいいのかな』
ニャー
女の子『猫さん、あのね。わたし、家ではお父さんもお母さんもケンカばっかりでつまんないの』
ニャー?
女の子『でもね。あの子はお父さんもお母さんも居ないんだって』
ニャーン
女の子『それでも、見てるとわたしよりずっと楽しそうで。いいなって思った』
ニャア
女の子『ねえ猫さん、お父さんもお母さんも居ない方が幸せなのかな』
女の子『猫さん?』
女の子『そっか、つまんないよね。こんなはなし』
女の子『……』
女の子『……』
女の子『……、やっぱり帰ろう』
ニャーン
女の子『あ』
ニャ”ー!
ゴトン
女の子『どど、どうしよう。割れちゃった、だんご、割れちゃった』
ニャー?
女の子『……』
ニャー
女の子『……ううん、あなたは悪くないよ。悪いのはわたし、悪いことをしようとしたからてんばつが下ったんだよ』
ニャ?
女の子『ほら、いいから、あとはわたしがやるから』
ニャー
女の子『ばいばい、猫さん』
ワイワイ
ガヤガヤ
男の子『おい、どうした?』
幼女『われてる』
男の子『なにが?』
幼女『もらった土だんご』
女の子『(だいじょうぶ、きのう考えたとおりにすれば)』
女の子『(これでお母さんからも嫌われない、猫さんもわるくない)』
女の子『(わるいのは、わたしなんだから)』
女の子『ひっどーい! この子ったらせっかく作ってもらった土団子を壊してるわ!』
幼女「ねえ、そんなところでなにしてるの」
女の子「っ!」ビクッ
女の子「……」
幼女「……あのね」
女の子「……」
幼女「コナソくんが教えてくれたんだけど、猫さんの肉球のあとがあったって」
女の子「……」
幼女「それから、お母さんから、ひどい事言われてたって」
女の子「……」
幼女「あのね、えっと、だから」
女の子「……」
幼女「女の子は、何もわるくないよ」
女の子「……」
幼女「だまってたら、何もわからないよ?」
女の子「……」
幼女「ねえ」
女の子「なんで?」
幼女「うん?」
女の子「なんでわたしより、楽しそうなの?」
女の子「おとうさんもおかあさんも居ないのに」
女の子「なんで男の子と仲良くしてるの?」
女の子「ねぇ、なんで?」
女の子「なんで……」
女の子「なんで、わたしじゃないの……」
女の子「わたしなんか、もう……っ!」
幼女「そんなことないよ!」
女の子「え?」
幼女「猫さん、この子でしょ?」
ニャー
女の子「ど、どうして」
幼女「肉球がぴったりだったの、みんなで探したんだよ」
男の子「見つけたの俺な!」
ニャーン
幼女「猫さんをかばったんだよね? えらいよ。良い子だよ」
女の子「わたし、わだし……ひどい事、しようと、でもっ……」
幼女「もういいよ、だいじょうぶ」
女の子「ごべんな……さい、ひどい……ごめん……」
幼女「うん、うん。わかった、わかったよ」
幼女「あのね、おじさんが言ってたよ」
女の子「……ひっぐ、な……に?」
幼女「悪いことしたらごめんなさいって言うんだよ、それでおしまいっ」
女の子「あう……うん」
幼女「ね? 男の子も」
男の子「おう! なんだかよくわかんねーけど、土団子くらいならいつでも作ってやるぜっ! だから泣くな!」
女の子「うん、……うん!」
ニャー
幼女「はい、これあげる」
女の子「これは?」
幼女「土だんご、あんまりじょうずに作れなかったけど」
ニャ?
女の子「……ありがとう、ありがと……う」
幼女「仲直りのしるし、ね」
女の子「うんっ!」
男の子「雨ふって、ダンゴ固まるだな!」
女の子「それなんか違う気が……」
幼女「でもだんごよりとうもろこしの方が好きだなあ」
男「なにーーーーーーーーーーーーーっ?!」
幼女「どうしたの?」
男「なんでもねぇ! ちくしょーーーーーー!」
幼女「ヘンな男の子、ね?」
女の子「ふふ、そうだね」
女の子「あなたって不思議な子ね」
幼女「そう?」
女の子「うん」
幼女「あのね、秘密おしえてあげる。ぜったい誰にもナイショだよ?」
女の子「ひみつ?」
幼女「あのね、良い子にしてるとクリスマスにさんたさんがもんぶらん持ってきてくれるの」
女の子「さんたさん?」
幼女「だから良い子にならなきゃいけないの」
女の子「わたしのところにも来てくれるかしら」
幼女「ぜったい! ぜったいきてくれるよ!」
女の子「ふふ、素敵な秘密ありがとう」
幼女「それじゃあ、今日からあたし達らいばるだね」
女の子「ライバル?」
幼女「あのね、らいばるってすごく仲のいい友達らしいよ」
女の子「ライバル……ライバルか、うん。わかった。今日からわたし達、ライバルだね」
幼女「うんっ」
女の子「わたし、がんばる」
幼女「うん!」
女の子「よろしくねっ!」
男「──へぇ、それで女の子とライバルになったのか?」
幼女「うん!」
男「こんな年齢から三角関係……なのか?」
幼女「ちがうよ、らいばるだよ」
男「うーん……、そうだな。ライバルだな」
幼女「うん、ふぉれでね。ふぉれでね」
男「口にもの入れたまま喋るんじゃない、しっかり噛んでからにしなさい」
幼女「……」コクコク
幼女「……」モグモグ
幼女「……」ゴックン
幼女「おいしい!」
男「そうかい」
男「よし、お昼ご飯食べ終わったら買い物に行こう」
幼女「わー! おでかけー!」
男「隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう」
幼女「ゆうえんち?」
男「ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ」
幼女「う~~~~、たのしみ!」
男「はは、そうかい」
パタン
男「よし、乗ったな?」
幼女「うん」
男「シートベルトは?」
幼女「つけたよ」
男「よし」
幼女「しゅっぱーつ!」
ブロロロロロロロロロ……
幼女「くるまはやーい」
男「そうだな、自転車よりは速いかな」
幼女「ろけっととどっちがはやいの?」
男「う~ん、そりゃロケットの方が速いなぁ」
幼女「う~~~~」
男「空とんでるからな、相手は」
幼女「おじさんも空とべる?」
男「どうだろう」
幼女「あ、止まっちゃった」
男「赤信号だからな」
幼女「う~~~~」
男「歩いてる時も赤は止まれだろ?」
幼女「?」
男「車も同じさ」
幼女「おんなじなの??」
男「交通ルールってやつさ、守らないと皆が困るからね」
幼女「そっか、わかった!」
男「よし、着いたな」
幼女「うんっ」
男「じゃー、何から買おうか」
幼女「なにをかうのー?」
男「晩御飯の食材と、日用品と。あと好きなもの何でも1個買ってあげよう」
幼女「ほんとっ?!」
男「あぁ、本当さ」
幼女「やったぁ!」
幼女「わぁ……ひろーい」
男「そうだね、広いなあ」
幼女「おうちより広いね」
男「はは、家の100倍はあるかもな」
幼女「あ! きらきらがある!」
男「きらきら?」
○○宝石店
男「なん……だと……」
幼女『おじさん、これ欲しい!』
男『お、決まったか』
幼女『うんっ』
男『どれどれ』
幼女『あのね、なんでもひとつかってくれるんだよね』
男『ああ、約束だからね』
幼女『じゃあ、これっ!』
男『なになに……、真珠のネックレス?』
価格35万円
男『なん……だと……』
ナン……
ダト……
幼女「おじさん」
男「なん……だと……」
幼女「おじさーん?」
男「はっ?!」
幼女「おじさんどうしたのー?」
男「あ、あぁ、なんでもないよ」
幼女「おいていくよー?」
男「あぁ、すまない。もうきらきらは良いのかい?」
幼女「うんっ、あたしこれあるもん!」
キラッ
男「貝のネックレスか」
幼女「うん」
男「似合ってるぞ」
幼女「えへへ、おじさんとおそろい」
男「そうだな、おそろいだな」
男「それじゃあ食材を買おうか」
幼女「ごっはん、ごっはん♪」
男「好きなもん作ってやるぞ、何が良い?」
幼女「う~~~」
男「なんでもいいぞ?」
幼女「とうもころし!」
男「とうもろこしだろ?」
幼女「う~~~~~」
男「ははっ」
男「じゃあトウモロコシと、あと何だ?」
幼女「たこさんういんなー」
男「トウモロコシとウインナー……、パスタでいいか?」
幼女「あのね」
男「ん?」
幼女「おじさんのりょうり、何でも好き! だからパスタも好き!」
ワイワイ
ガヤガヤ
──ザリッ
『ターゲットを目視で確認しやした』
──、了解ですの。
『これから手はず通りに事を進めますぜ』
──、やっておしまい。
『はぁ……、しかしいいんですかい? あんな小さな子を……』
──、お灸を据えてやりますの! 天罰ですのよ! その為のお金は支払ってますの!
『はいはい、わかりましたぜ』
『ん』
──、どうしたましたの?
『ターゲットに接近する人物を確認しやした』
──、誰ですの?
『さあ? 資料にはなかった顔ですぜ』
──、むきーーーー! ここにきて邪魔者ですの?!
『どうしやす? 中止にしやすか?』
──、中止なんてありえないですの!
『はぁ……了解、切りますぜ』
──ザリッ
先生「あれ?」
男「あ、どうも」
幼女「わー、せんせー」
男「こんにちは、先生もお買い物ですか?」
先生「こんにちは、偶然ですね。そちらも?」
幼女「とうもころしと、たこさんういんなーだよ!」
先生「そう、良かったわねぇ」
幼女「うんっ」
男「今日はいつもとなんだか印象が違いますね先生」
先生「あはは、いつも幼稚園ではジャージですもんね」
男「そのスカート、とってもお似合いですよ」
先生「あ……ありがとうございます」
男「それでは、また明日」
先生「あ! あのっ!」
男「はい?」
先生「よ、よければ一緒に回りませんか?」
男「ええ、いいですよ。せっかくですからね」
先生「や、やった」
男「?」
幼女「……」じー
男「じゃあ行きましょうか」
先生「はいっ」
男「これと、これと。あと、これ……か」
先生「たくさん買われるんですね?」
男「ええ、大型店だとディスカウントされてますからね。このトイレットペーパーなんか地元のスーパーより150円も安いんですよ」
先生「そ、そうなんですか」
男「先生のカゴは随分インスタントが多いみたいですね?」
先生「え、あ、はい。あの、私……あんまり料理が得意じゃなくて、ついついこういうのに頼ってしまうんですよね」
男「それじゃあ栄養も偏るでしょう」
先生「そうなんですよ~」
男『よろしければ今度の日曜日、うちでご飯をご馳走しますよ』
先生『えぇ?! いいんですか?』
男『あの子がいつもお世話になっている御礼です』
先生『そんな……私は何も……』
男『いいえ、この際だから申し上げます』
先生『は、はい? なんですか?』
男『先生、ずっと一目見た時からあなたの事が好きでした。結婚を前提にお付き合いください』
先生『は……はい……喜んで……』
先生「そんな……でも……あぁ……」
男「先生?」
先生「ひゃっ!?」
男「どうしたんですか? 何か考え事でも?」
先生「な、なんでも! なんでもないです!」
男「そうですか?」
先生「ええ、なんでも! はい!」
男「……好き……な……ありますか?」
先生「好きっ?!」
男「何か好きな食べ物はありますか?」
先生「あ、……食べ物、ですか」
男「えぇ」
先生「肉じゃがとか、ビーフシチューとか」
男「おぉ、家庭的ですね」
先生「……を、作ってみたいです」
男「なるほど」
男「料理もやってみると意外と楽しいものですよ」
先生「そうでしょうか、私……不器用だから……」
男「始めてみると、新しい自分が見つかったりするかもしれませんよ」
先生「新しい……自分、ですか」
男「私もあの子を預かってから色々と始めてみましたが、料理も一通りは作れるようになりましたよ」
先生「すごいですね……子育てされてるんですもんね」
男「いや私なんてまだまだ。むしろあの子から教えられる事の方が多いくらいですよ」
先生「……あの」
男「?」
先生「こうしてると、その、夫婦、みたい……ですよね」
男「……しまった」
先生「え、どうしたんですか?」
男「あの子が居ない」
先生「へ?」
先生「どうしよう……、あの、私ったら会話に夢中になってて……ああ、ごめんなさい!」
男「落ち着いてください、子供の足です。そんなに遠くに行ったとは思えない」
先生「そ、そうですね」
男「先生はこの事を警備員に伝えてください、私はあの子を探してきます」
先生「は、はいっ」
ワイワイ
ガヤガヤ
便利屋「で」
幼女「次はあそこあそこ!」
便利屋「なんであっしはお嬢ちゃんのお守りなんぞやってんでしょうね」
幼女「次は二階~!」
便利屋「へいへい、ちょいと待つっすよ」
幼女「はやくはやく~」
便利屋「っていうか、ターゲットが向こうからこっちに来るなんて。あっし今日まだ何もしてないっすよ……ラッキーというか幸運というか」
幼女「おいていくよ~」
便利屋「あ~もう、ちょっと待つっすよ~」
便利屋「はぁ……、いつまでこんな便利屋なんて仕事をやってるんすかね……あっしは」
幼女「るんるん♪」
便利屋「お得意さんからの依頼だから引き受けちまったけど……」
幼女「るーんるん♪」
便利屋「よく考えたらこれ誘拐なんじゃ……」
幼女「るんるーん♪」
便利屋「はぁ……正直もうこんな仕事辞めて実家に帰りたいですぜ……」
幼女「次あっち~」
便利屋「あ、こらこら。一人で行っちゃだめっすよ~、迷子になるっすよ~」
幼女「次はここ!」
便利屋「へいへい」
幼女「次はあっち~!」
便利屋「ふえ~い」
幼女「えっとね、次は──」
便利屋「屋上の遊園地がそんなに楽しいんすかねぇ」
幼女「つぎは~あっちに行きたい!」
便利屋「お嬢ちゃん、ちょっと休憩しやせんかい?」
幼女「う~~~~」
便利屋「アイスでも買ってきやすから」
幼女「わー! ありがと!」
便利屋「はぁ……子供は暢気でいいっすねぇ。ほら、あそこのベンチに座るっすよ」
便利屋「ほい、買ってきたっすよ」
幼女「お兄さんありがと!」
便利屋「お安い御用っすよ」
幼女「ねーえ?」
便利屋「何ですかい?」
幼女「お兄さん、だーれ?」
便利屋「あっしですかい?」
幼女「うんっ」
便利屋「お嬢ちゃんのおじさんのお友達……っすよ」
幼女「おじさんの?」
便利屋「えぇ、そうっすね」
幼女「じゃあ、お兄さんもとうもろこし食べにくる?」
便利屋「トウモロコシ?」
幼女「うんっ、ばんごはん」
便利屋「トウモロコシ、……か」
幼女「?」
便利屋「いや、なんでもねぇです」
幼女「あのね、とうもろこしってとってもおいしいんだよ!」
便利屋「知ってやすぜ」
幼女「たいようのあじがするの」
便利屋「っ」
────────
────
──
『いいかぁ、よく聞け息子よ。農家ってのは太陽の味を作ってんだよ』
『太陽の味?』
『おうよ、お天道さんがくれたものを父ちゃん達がこうやって形にしてるのさ』
『ふ~ん』
『見ろ、この玉蜀黍。太陽の色してんだろ?』
『ただの黄色じゃん』
『かっかっか、お前にゃまだわからんか』
『むー、なんだよ』
便利屋「……太陽の味、……か」
幼女「とうもころしきらい?」
便利屋「とうもろこし、ですぜ」
幼女「すき?」
便利屋「あっしの実家は農家ですぜ、玉蜀黍なんか毎日食ってやした」
幼女「えぇ~! いいなぁ」
便利屋「本場の玉蜀黍をしらないとはお嬢ちゃん、モグリですぜ」
幼女「もぐら?」
幼女「じゃあこんど、お兄さんの作ったとうもころし食べさせてね!」
便利屋「……っ」
幼女「どうしたの?」
便利屋「いや……、なんでも無いですぜ」
幼女「どこかいたいの?」
便利屋「心が……少し」
幼女「あのね」
便利屋「?」
幼女「なきたいときは、ないてもいいんだよ?」
便利屋「……はは」
幼女「いいんだよ」
便利屋「……お嬢ちゃんの方が大人っすね」
幼女「こどもだよ?」
────────
────
──
『子供なんかじゃねぇよ!』
『なんだと! 父ちゃんに向かってその口の利き方はなんだ!』
『うるせえ! なんでわかってくれねぇんだよ! もう……もう、こんな家かえらねぇよ!』
『……今何て言ったっ?!』
『もう出てくって言ったんだよ!』
『……お前はまだ子供だ、……アテはあるのか? ちゃんと食べていけるのか?』
『今更父親面すんじゃねーよ!』
便利屋「お嬢ちゃん、よく聞いてほしいっす」
幼女「なあに?」
便利屋「あっしは、お嬢ちゃんに嘘をついてやした。あっしは本当はおじさんの友達なんかじゃないんですよ」
幼女「えぇっ、そうなの?」
便利屋「本当は……悪の組織に雇われてる悪い人間なんですよ」
幼女「あくのそしき?」
便利屋「だから……、騙しててごめんなさいっす」
────────
────
──
『お前……俺を騙してた……のか?』
『はっ、ひっかかるお前の方が悪いんだろうが』
『ちょっと待ってくれよ、お前を信じて家まで飛び出してきたのによ!』
『そんなの知ったこっちゃねぇよ。金さえ貰えれば俺はそれでいいの、じゃ』
『まっ……待てよ! 待ってくれ!』
『ははは、あばよ~』
『そん……な……』
『くそ……あいつ……畜生っ……』
『何が儲かる話だ! 何が……くそ!』
『あれだけ親父に啖呵きって……家出までして、これからどうすりゃいいんだ……』
『金も全部もっていかれちまったし……』
ゴソゴソ
『ん? カバンの奥のほうに……なんだこの箱?』
カパ
『封筒と、なんだこりゃ、トウモロコシ?』
『ん? 封筒の裏に何か書いてるな』
少ないけれど、もっていきなさい。
それと、おなかがすいたらたべなさい。
父より。
モグモグ
『あぁ……』
モグモグ
『しょっぺぇなあ』
モグモグ
『……』
モグモグ
『太陽の、あじ……か』
便利屋「……あっしは、本当に……っ。……大バカ野郎なんすよ」
便利屋「ごめん。ごめんな、お嬢ちゃん」
幼女「お兄さんはわるくないよ?」
便利屋「いや、事実こうやってお嬢ちゃんを──」
幼女「お兄さん、一緒にあそんでくれたもん」
便利屋「そういう手口なんすよ」
幼女「アイスもくれたし」
便利屋「大人は金持ちなんすよ」
幼女「それに!」
便利屋「……それに?」
幼女「とうもころし好きなひとに悪いひとは居ないんだよ」
便利屋「──っ」
幼女「お兄さん、ちゃんとごめんなさいしたから」
便利屋「……え?」
幼女「あたし、今日はお兄さんと遊んだだけ」
便利屋「お嬢、ちゃん?」
幼女「お兄さんも、今日はあたしと遊んでただけ」
便利屋「お嬢ちゃん……」
幼女「あくのそしきなんかにまけないで」
便利屋「あぁ……、合点承知ですぜ」
幼女「それじゃ、あたしおじさんのところに戻るね」トコトコ
便利屋「お嬢ちゃん!」
幼女「うん?」
便利屋「あっしは……もう一度、最初から頑張ってみるっすよ!」
幼女「うんっ」
便利屋「あっしの作ったとうもろこし、食べてくれっす」
幼女「わかった!」
便利屋「達者で!」
幼女「ばいば~い」
男「……はぁ……。あの子、一体どこに行ってしまったんだ……」
男「私さえもっとしっかりしていれば……」
男「……だから、文章も書けなくなってしまったんだろうな……」
男「いや、今は弱音を吐いている場合じゃない」
男「まだ探していないところがあるはずだ」
先生「あのっ!」
男「あ、先生」
先生「警備員の人にも協力してもらいましたが、1階と2階には居ませんでした」
男「となると、3.4.5階ですか」
先生「それと、あと屋上ですね」
男「屋上?」
先生「えぇ、子供があそべる、ちょっとした遊園地みたいなのがあるらしいですよ」
男「遊園地?」
男『隣町に新しく出来たっていうショッピングモールに行こうとおもう』
幼女『ゆうえんち?』
男『ショッピングモールだよ、人がたくさん居て色んなものが売ってて広くて大きい建物だ』
幼女『う~~~~、たのしみ!』
男「まさか……」
先生「あ、っと。どこ行くんですかっ?」
男「屋上です! たぶんそこにっ」
先生「……居ませんね」
男「くっそ! 私は……、私は一体何をやっているんだ……」
先生「諦めないでください!」
男「っ」
先生「私達が諦めて、どうするんですか」
男「……」
先生「大丈夫です、きっと」
男「えぇ、すみません。ちょっと頭に血が昇っていました」
先生「きっと、きっと……お腹がすいたらもどってきますっ」
男「どういう理論ですか、それ──」
ピンポンパンポーン
「迷子センターです。白のワンピースに、貝のネックレスをした4歳の女の子を預かっております」
「繰り返します、迷子センターです──」
「──、2階の管理事務局までお越しください」
ピンポンパンポン
先生「ね?」
男「すみません、さっきの放送の子。私の家族かもしれないのですが」
「はい、お名前を教えていただいてもよろしいですか?」
幼女「あ、おじさん!」
トコトコ
幼女「わ~、おじさんだ~!」
男「まったく……、急に居なくなるから、びっくりしたぞ」
幼女「ごめんなさい」
男「こわかったか?」
幼女「ううん、こわくなかったよ!」
男「そうか、よかった……本当に、よかった」
「しっかりしたお子さんですね。泣きもせず自分から’迷子です’って尋ねてきましたよ」
男「そうなのか?」
幼女「うんっ」
男「はは、こいつは参ったな」
「これからはちゃんと見ていてくださいね」
男「はい、ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ」
幼女「あ、せんせ~」
先生「良かった、ちゃんと見つかったんですね」
男「えぇ、本当に色々協力していただいてありがとうございました」
先生「そんな、頭を上げてください。私は何も……」
男「いえ、感謝してもしきれないくらいです」
先生「いえいえ、それじゃあ私はこれで……」
男「一度きちんと御礼をさせてください」
先生「え?」
男「次の休みの日にでも、私でよければご飯でもご馳走させてください」
先生「……」
男「先生?」
先生「へ?」
男「どうでしょうか?」
先生「え? あぁ、もう全然、全然オッケーです!」
男「でしたらまた詳しい事は後でご連絡致しますね」
先生「はひっ!」
幼女「せんせ~、何かヘンだったね?」
男「そうか?」
幼女「む~~~~」
男「さあ、帰って晩御飯を食べようか」
幼女「とうもろこし!」
男「パスタな」
幼女「とうもころし!」
男「とうもろこし、な。ん? ちょっと待ちなさい、口の周りに何かついてるぞ」
幼女「えっと、これはね。ア」
男「あ?」
幼女「あ~~、なんでもなーい」
ワイワイ
ガヤガヤ
男の子「んだよお前、迷子になったのか?」
女の子「えぇ? そうなの?」
幼女「うんっ」
女の子「だいじょうぶだったの? ヘンな人に連れていかれたりしなかった?」
幼女「ヘーキだよ!」
男の子「だっせーな、俺だったら絶対迷子なんかになんねーし!」
女の子「わたしだったら……、どうなるんだろう」
男の子「お前だったらぴーぴー泣いてそうだな!」
女の子「なっ、なんですって!」
男の子「ひえっ?」
ポーン
幼女「あ、ボールが」
男の子「やべっ、また雷ジジイの畑に……」
女の子「ふん、ジゴウジトクよ」
男の子「く……」
「こらー、誰っすかー。あっしの畑にボール蹴りいれたのはー、ダメっすよー」
三人「ご、ごめんなさーい」
保護者『失敗! 失敗ですの! あんな子供如きに諭されてどうするんですの! 連れ去って近くの公園に放置する契約でしたの!』
『奥さん、あっしはお金よりももっと大切な事を教えてもらいましたぜ』
保護者『むきーーーーーーーー! 何を生意気な! 世の中金、金、金ですの!』
『貰った金は返すっす、そんなに金が好きならもっていきやがれ』
保護者『べ・ん・り・や・ふ・ぜ・い・がぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!』
『あっしはもう店をたたみますぜ、仕事なら他を当たってくれ』
保護者『むきーーーーーーーー!』
保護者『おさまらない! このままでは腹の虫がおさまりませんの!』
保護者『このままでは終わりませんの!』
◇ ◇ ◇ ◇
キュキュ
ゴクゴクゴク
男の子「……、ぷはー! 生き返るぜ!」
女の子「もう、水道水がぶ飲みなんてはしたないわね」
男の子「こまけぇことはいいんだよ!」
女の子「まったく……おおざっぱなんだから。そう思わない?」
幼女「うん、おおざっぱ」
女の子「ほら、2対1よ?」
男の子「ぐ……」
男の子「2対1がなんだ、すーてきふりでも突破しなきゃゴールはうばえないだぜ!」
女の子「数的不利なんて難しい言葉よくしってるわね、意味わかってんの?」
男の子「もっちろん!」
女の子「どうだか、怪しいもんね」
男の子「あ、カアちゃんだ! おーーーーーーーーーーーーーーい!」
「かえるわよー」
男の子「じゃあな二人とも! まった明日~」
幼女「ばいばい」
女の子「またあしたね」
男の子「じゃあな~!」
女の子「それじゃあ次は何してあそぼっか?」
幼女「んーとね」
女の子「あやとりする?」
幼女「うんっ」
女の子「じゃあ取ってくるね」
幼女「あ、おじさんだ!」
男「おーい、迎えにきたぞ」
幼女「おじさーん!」
男「今日も楽しかったか?」
幼女「うんっ、あのねっ、今日はね──」
男「そうかそうか、帰ったら詳しく聞かせてくれ」
幼女「うんっ! それじゃああたし、帰るねっ」
女の子「あっ、うん……ばいばい」
幼女「ばいば~い!」
保護者「あーーーーーーーーーーーーーら?」
男「?」
保護者「ごきげんあそばせ」
男「保護者さん、こんにちは」
保護者「男性が毎日こんな時間に送り迎えって大変じゃあーーりませんの?」
男「いえ、私は自由業ですので時間の融通はきくんですよ」
保護者「まっ、まままままままま。定職には就かれてませんの?」
男「えぇまあ」
保護者「そのお年で定職に就かれてない……不憫、不憫ですの。わたくし、涙がほろりほろりとこぼれてしまいますの」
男「はぁ……」
保護者「知り合いの会社を紹介してあげてもいいですの。ちょーっと1年くらい遠い海での仕事ですの、オーッホッホ」
男「せっかくのお話ですが謹んでお断り致します」
保護者「まっ、人の厚意を無下にするなんて……ひどい人ですの」
男「私は今の生活に満足していますから」
保護者「後で後悔しても遅いですのよ」
男「えぇ、ありがとうございます」
保護者「……ふん」
女の子「……」
幼女「おじさんたち、むつかしいおはなししてるね」
女の子「ごめんね」
幼女「え?」
女の子「おかあさん、……ああいう人だから」
保護者「帰りますのよ!」
女の子「はい」
幼女「ばいばい」
女の子「ばいば──」
保護者「ほら! さっさと行きますの!」
男「私達も帰ろうか」
幼女「あのね、おじさん」
男「なんだ?」
幼女「あたしのおかあさんって、どんなひと?」
男「……ん」
幼女「おとうさんは?」
男「……」
幼女「どこに居るの?」
男「お前の両親は」
幼女「うん」
男「……すまん、今は話せない」
幼女「む~~~」
男「すまない……」
幼女「それじゃあ」
男「ん?」
幼女「さんたさんに聞いてみるね」
男「あ……あぁ、そうだな」
幼女「おやすみなさーい」
スヤスヤ
スヤスヤ
パタン
Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr......
男「姉さん?」
『よー、元気してるか弟よ』
男「元気さ、相変わらずだよ」
『相変わらず暗い声してるなー!』
男「姉さんに似て暗い声してるよ」
『あっそ』
男「そっちはどう?」
『さっむい、昨日から雪ふってる』
男「こっちはまだ暑いよ」
『日本の夏は世界で一番蒸し暑いわ、誇って良いわよ』
男「あんまり誇らしげに思えないんだけど」
男「それで、今日はどうしたのさ。声がいつにも増して弾んでる気がするけど」
『捜査に進展があったの』
男「へぇ」
『これであの人の冤罪を証明できるかもしれない』
男「……姉さん」
『なによ』
男「その台詞、聞いたの5回目だよ」
『捜査にはね、現場100回っていう言葉があるの』
男「うん」
『まだ5回目よ』
男「……101回になったら?」
『そんなの決まってるわ』
男「?」
『102回目になるだけよ』
男「いつになるんだよ、それまで」
『いつまでもよ』
男「今日、あの子に言われたよ」
『何て?』
男「お母さんはどんな人かって」
『……そう』
男「なぁ姉さん、そろそろ帰ってこいよ、一回でいいから会ってやれよ」
『だめ、まだだめ。もう少し』
男「あの子の子供時代は一回しか無いんだぞ」
『わかってる』
男「わかってない」
『わかってるわ』
男「わかってないよ……」
『……そうね、ごめん』
男「姉さんにとって大事なものは何か、もう一度かんがえなよ」
『……』
男「旦那さんの事、諦めろって言ってるんじゃないよ。ただ、自分の娘と顔を合わせるくらい……」
『怖いの』
男「怖い、ね」
『あの事件の後、あたしは夫を選んだ。……この手は二つあるのにね』
男「あの子は姉さんを待ってる」
『あたしがあの子の立場だったら母親の事、きっと憎んでると思う』
男「姉さん」
『自分を捨てて外国で旦那の冤罪を証明する事が生き甲斐のバカな女、それがあたしよ』
男「あんまり自分の子供を見くびらない方が良い」
『──っ』
男「あの子は、姉さんが思ってるよりずっと強いよ」
『はっ、だったらなおさらよ』
男「……姉さん」
『……もう切るわね』
男「クリスマス、あの子が楽しみにしてる」
『クリスマス?』
男「サンタさんがモンブランを持ってきてくれるってな」
『そう』
男「姉さん」
『切るわよ』
男「姉さん!」
プツッ
ツーツー……ツーツー……
男「アメリカ合衆国と日本か」
男「絶望的な距離だな……物理的にも精神的にも」
男「いっそのこと、こちらから乗り込むか?」
男「いや、……それじゃあ意味がないんだよな」
男「姉さんが、ちゃんとあの子を受け入れる事ができなきゃいけないんだ」
男「その時が来たら……」
男「その時が来たら、私は喜べばいいんだろうか?」
男「はっ、何を」
男「そんなの喜ばしいに決まってる」
男「……喜ばしいに、決まってる」
チュン……
チュンチュン
幼女「おじさーん、朝だよー!」
男「ん……、あぁ、おはよう」
幼女「おはよー!」
男「随分はやいな」
幼女「えへへ、早起きしちゃった」
男「偉いな、早起きは三文の得と言うからね」
幼女「さーもん?」
男「……プ」
幼女「?」
男「……ク、あはははは」
幼女「おじさん?」
男「いや、すまない。……ははは、さーもん、そうか。サーモンか」
幼女「おじさんがおかしいー」
男「はぁ笑った、ありがとう。暗い気持ちも吹き飛んだよ」
幼女「う~~~~」
男「ん?」
幼女「おじさんばっかりわらってずるい!」
男「あはは」
幼女「う~~~~、またわらった~!」
男「よーし、それじゃ着替えて朝ごはんだ」
幼女「うんっ」
男「今日のお弁当は気合を入れて作ってあげるよ」
幼女「えーっ、なになに?」
男「そうだな、トウモロコシとタコさんウインナーと、あとそれから──」
幼女「やったぁ!」
幼女「う~~~~~」
「わん!」
幼女「わんわん!」
「う~~~~~~」
幼女「う~~~~」
「わん! わん!」
幼女「わん!」
「う~~~~」
男「どっちが犬だ」
「わん! わん!」
幼女「このこ、どうしたの?」
男「お隣さんが旅行に行くみたいでな、預かってきたんだ」
幼女「へぇ~」
男「こわいか?」
幼女「ううん」
男「実を言うとな」
幼女「うん?」
男「私は……その、すこし」
幼女「どうしたの、おじさん?」
男「犬が、怖いんだ……」
「わん!」
男「……」ビクッ
幼女「こわくないよー?」
男「そ、そうか?」
幼女「あたまなでなでしてあげると喜ぶよ?」
男「頭……噛まれないか?」
幼女「だいじょうぶ、ほら」
「くぅ~ん……」
幼女「ね?」
男「む……」
幼女「ほらほら」
男「……ぐっ」
「わん!」
男「ひっ?」
幼女「……」
男「……」
幼女「……おじさん」
男「あー……ゴホゴホ。おかしいな、風邪か? すこしうがいをしてこよう」
スタスタ
幼女「おじさん、君がこわいんだって」
「わん!」
幼女「こんなにかわいいのにねー」
「わんわん!」
幼女「お名前はなんていうの?」
「わん!」
幼女「んー?」
「わん! わん!」
幼女「あ! ワンちゃんね?」
「わん!」
幼女「よろしくね、ワンちゃん」
男「エサは……、貰ったドッグフードでいいんだよな」
男「お手、伏せ、おかわり、待て……」
男「ちょっと難易度高すぎやしませんか?」
幼女「おじさーーん」
男「ん? なんだ?」
幼女「ワンちゃん、おなかすいたみたい?」
「くぅ~ん……」
男「そ、そうか」
男「このお皿に盛って……と」
「わん!」
男「う……さすがにゴールデンレトリバー、……でかいな」
幼女「よかったね、ごはんだよー?」
「わん! わん!」
幼女「さあお食べ~」
男「ちょ、ちょっと待て」
幼女「なーに?」
男「なんでもこの’大型犬の育て方’という本によるとだな……」
幼女「おて」
「わん!」
幼女「ふせ」
「くぅ~ん……」
幼女「おて」
「わん!」
幼女「まて」
「くぅ~ん……」
幼女「よくできました~、たべていいよ」
「わん!」
男「なん……だと……」
幼女「つぎはどうするの?」
男「え~とな、ちょっと待て」
幼女「わくわく♪」
男「ええっと、なになに? ’一日一度は適度な散歩に連れていくべし’?」
幼女「わ~、おさんぽ!」
「わん!」
幼女「わ、すっごくよろこんでるよワンちゃん」
男「尻尾がふりふりだな」
幼女「散歩に行けるのがうれしいんだねっ」
男「次は散歩か……幸い晴れてるし。となると問題は……首輪にこの紐を引っ掛けないといけないのか」
「わん!」
男「……」
「わん?」
男「……お、おとなしくしててくれよ……」
「くぅ~ん?」
男「よし……良い子だ、そのまま、そのまま……」
「わん!」
男「ひえっ?!」
幼女「も~、おじさんこわがりなんだから」
男「不甲斐ない……」
幼女「ほ~ら、散歩いこうね~」
ヒョイ
カチ
「わん!」
男「この手際の良さ……私よりデキる……」
男「いかんいかん……気を取り直して。それじゃあ近くの公園でも回っていこうか」
幼女「うんっ」
男「こうして見ると同じくらいの身長だなあ」
幼女「背中に乗れそう?」
男「はは、まさかそんな事──」
「わん!」
幼女「わーい」
男「──ちょっとパワフルすぎるんじゃないかあの犬……」
幼女「おじさんおじさん」
男「ん?」
幼女「なんだかもっと遊んで欲しそうだよ?」
「わん!」
男「ええっと? ’ボールやフリスビーで遊んであげてください’って書いてあるな」
幼女「ぼーる?」
男「あぁ、たしかお隣さんから預かっていたものが……」
ガサゴソ
男「あった、これか」
幼女「これをどうするの?」
男「投げるらしい」
幼女「投げてどうするの?」
男「とってきてくれるみたいだぞ?」
幼女「え~! かしこい!」
男「よし、まず私が手本を見せてやろう」
「わん!」
男「いくぞ」
「わん! わん!」
ポーン
テンテンテン……
コロコロコロコロ……
「くぅ~ん?」
男「なぜだ……なぜ動かん……」
幼女「おじさん」
男「うん?」
幼女「つぎあたしが投げてみるね」
男「あ……ああ、そうだね」
幼女「ワンちゃん投げるよ~」
「わん!」
幼女「えいっ」
ポーン
「わんっ」
パクッ
幼女「きゃ! すご~い!」
テクテクテク
幼女「ちゃんと持ってかえってきて、えらいねぇ」
「わん! わん!」
男「はは、すごいな。子供は」
男「なんでも吸収して、素直で」
男「それに引き換え、私ときたら……」
「くぅ~ん?」
男「ん?」
「くぅ~ん」
男「なんだ? ひょっとして心配してくれているのか?」
「わん!」
男「……」ビクッ
幼女「お~じ~さんっ。こわくない、こわくないよ?」
男「あ、あぁ……」
────────
────
──
姉『こわくない、こわくないってば』
『でもさっきこいつ、俺の事噛んだもん!』
姉『ちょっとじゃれてただけじゃない、大げさな』
『血! 血がでたよ!』
姉『あー、はいはい。青い血じゃなくて良かったねえ』
わん!
『ひえぇ?!』
姉『おー、じゃれてるじゃれてる』
『姉ちゃん助けて!』
姉『はっはっは~! あんたこいつに相当気に入られたねぇ』
『嫌だっ、こわいよ』
姉『だから怖くないって』
『う~~~~』
姉『よかったねぇ、一日遊んでもらえて』
『……もう犬なんか大っ嫌いだ!』
姉『あらそう』
『きらいきらいっ、大っ嫌い! 噛んでくるし、のしかかってくるし、吠えるし怖いし』
わん!
『ひあっ?!』
姉『あっはははははは、あんた面白すぎ!』
姉『あのね』
『なんだよ』
姉『こっちが怖い怖いって思ってたら向こうもそう思っちゃうの』
『だから何だよ』
姉『まず心を開かないとね、人間関係も一緒なのよ?』
『むつかしい話はわかんねーよ』
姉『そうね、おこちゃまにはちょーーーっと早かったかなーーー?』
『バカにすんな!』
男「心を、開く……ね」
幼女「おじさーーーん」
男「ん? どうした?」
幼女「そろそろかえろっ」
男「あぁ、そうだな。日も暮れてきたからね」
「わん!」
幼女「えへへ、いっぱい遊んだね?」
「わん! わん!」
幼女「わわっ、くすぐったいよう」
「くぅ~ん」
幼女「も~」
男「はは、すっかり仲良しだな」
幼女「うんっ!」
幼女「ただいまっ」
「わん!」
男「さて、晩御飯つくるか」
幼女「今日はなに~?」
男「今日は肉じゃがだ」
幼女「わ~い!」
男「すぐ作るからリビングで待っててくれ」
幼女「うんっ」
「わん!」
幼女「いこっ、ワンちゃん!」
「わん!」
幼女「その前にワンちゃんもご飯だべようねっ」
男「ちょっといいか?」
幼女「うん?」
男「あの、その」
幼女「どうしたの?」
男「わ、私にやらせてくれないか?」
幼女「うんっ!」
男「ありがとう」
幼女「おじさん、がんばって!」
男「あぁ、やってみるよ」
「わん!」
男「だいじょうぶ……こわくない、こわくない」
「くぅ~ん?」
男「お、おぉお、お手」
「わん」
男「ふ、せ」
「わんっ」
男「おかわり」
「わん!」
男「ま、待て」
「くぅ~ん……」
男「よしっ、食べていいぞ」
「わん!」
幼女「わ~、食べてる食べてる」
男「上手くいった……」
幼女「ねえおじさん」
男「うん?」
幼女「こわくなかったでしょ?」
男「あぁ……そうだな」
幼女「ねっ!」
男「よーし、じゃあもう一回だ!」
「わん!」
幼女「うんっ」
「わん! わん!」
幼女「たくさん食べてるねっ」
「わん!」
男「……なんだ、こんなに簡単な事だったんじゃないか」
「わん!」
幼女「そうだよ? かんたんかんたん♪」
男「……最初の一回を踏み出す勇気が、私には足りなかったのかもな」
幼女「ゆーきゆーき」
男「はは」
幼女「わたしもおなかすいた~」
男「おっと、ごめんごめん。もう出来てるよ」
幼女「わーい」
幼女「いただきますっ」
「わん!」
男「ゆっくり噛んでたべなさい」
幼女「……」コクコク
幼女「……」モグモグ
幼女「……」ゴックン
幼女「おいしいっ!」
「わん!」
「すみませんね、旅行中この子を預かってもらっちゃって」
男「いえいえ、お役に立てて光栄ですよ」
「今度お菓子でもお作りしますね」
幼女「わ~い、おかしおかし♪」
「ほら~、ポチ。かえるわよ」
「わん!」
「あら? ポチったらちょっとおデブちゃんになったかしら~? 明日からダイエットしましょうね~」
「くぅ~ん……」
男「ポチよ……すまん……、ついつい食べさせすぎてしまった……」
幼女「またおいで~」
「わん!」
【後編】に続く