1 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:04:42.16 +Fwm5NTK0 1/44

もう一人の私、もう一つの私。

例えば私が桜高に行ってないとする。

そしたら、みんなどうなってたのかな

そんな世界が存在するのかなあ

「なあにブツブツ言ってるんだよ、唯」

どうなってるんだろ、その世界

「唯?」

行こうかな

「唯………?」

元スレ
唯「別の世界」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1361509482/

3 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:06:27.21 +Fwm5NTK0 2/44

………
……





「お姉ちゃん~遅刻するよ…?」

「ん……ん…」

瞼をこじ開ける

朝日と鳥の囀りが、私を夢から覚めさせる。

私は急いだ。パンを齧りながら走って家を出た。

いつもの道。

並木道に沿って踏切を渡り、いつも書店前の自販機で一服。
荒れるに荒れた髪型を整えながら私は学校に行く。
普遍的な共学高校だ。とくに目立ったところもない。
私は今年で高校二年になる。妹は違う学校に進学した。
私もその学校が希望だったが、学力が足りなかったみたいだ。
2-Bと書かれた教室に入っていく。
疎らな人数が輪っかを成して彼方此方で会話をしている。

「唯~遅いじゃないか?」

4 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:07:41.25 +Fwm5NTK0 3/44

「男君~おはよう!」

幼馴染の男君。私が幼稚園の頃からの付き合いだ。

昔から遊んでたっけ。親友と呼べる存在なんだと思う。

「二年生そうそうの二日目で寝癖だらけかよ」

「直してる時間無かったんだ~」

にっこり此方がはにかむと、彼もわらってくれる。

「そういや、妹の憂ちゃんも高校生だよな」

「うん、憂は桜高行ったけどね~」

「あの進学校!?生まれる順番間違えたんじゃ」

「酷いよ~」ガーン

「そんな出来た妹だったとはな…」

こんなたわいもない話をしてれば時間は過ぎた。

私はこれが"私"と思っていたんだろう

このころから、私は憂に劣等感を抱いていた

5 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:08:35.63 +Fwm5NTK0 4/44

私は部活にも入っていない。

憂は入ったみたいだけど。

帰宅部の部長みたいなものだ。

わたしの日課といえば、下校時にスタバによることだと思う。

彼処のコーヒーは中々美味しい。

お洒落だし、私も大人な気分になれる。

私の生命線というべき存在か。

学校がようやく終わり、私は日課に勤しむ。

今日もコーヒー片手に勉強をしようか

そんな時、隣の席から声が聞こえてきた

6 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:10:34.21 +Fwm5NTK0 5/44

「似合ってるじゃないか!」

「中々だな~ムギ!」

「ムギ先輩はなんでも似合いますね!」

ムギ「みんなありがと~」

典型的な女子グループか。

私も中学生の頃の切実な夢

こうやって輪っかになってふざけあうこと。

でも今は…

そんな事には目もくれず、私はひたすら勉強に明け暮れる

あの高校に落ちてからかもしれない。

私は夢とかは無く、ふわふわ生きてきた人間だからだろう。

私は良い大学に入り、立派なOLになるんだ。

8 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:12:44.25 +Fwm5NTK0 6/44

「ふぅ……」

私はやれば出来る子なんだろう。

確実に成績は右肩上がりだ。

其れを楽しめてはいないのかもしれないが、
勉強が私の頼みの綱であり、生き甲斐になっていっている
この生活がベストだと私は思っていた。

(あの女子グループはまだ居るのか…)

彼女らはイヤホンを耳にかけながら、ノートにいろいろかいているようだ。

とはいっても覗き込むのは無理なようだ。

私は彼女たちの笑顔を観ていた。

彼女達は、幸せなんだろう。幸せなんだろうな

私はそろそろ、と夕飯の準備にあたらなければいけないから、

スタバを出る事にした。


???「ごめーん!遅れた……」

「遅いぞ!」

「全くなにしてたんだよ~」

11 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:13:59.72 +Fwm5NTK0 7/44

私が料理するのも日課だった。

憂は最近帰りが遅い。

私とは違くて、人生に満足しているんだろう。

いつも彼女の話題は部活だ。

「お肉…高いよ…」

両親は共働きだ。

中々裕福だった。父がリストラされるまでは。

それから、両親の教育方針は私を除外する形になった。

そのせいとは言わないが。

13 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:15:13.58 +Fwm5NTK0 8/44

「ついた……」

「重かったなあ」

冷蔵庫に食べ物を入れていく。
静寂がつつむ家は息苦しかった。

「ただいまー!」

そう、私はこの声に癒される。

「おかえりー、憂!」

寒いねーと話しながらリビングに向かう。

「今日も美味しそう!ありがとうお姉ちゃん!」

「良いんだよ~うい~」

私は彼女に癒しを貰ってるんだろう

そんな大切な彼女を、私は僻んだ目で見つめるようになり始めた

14 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:15:42.14 +Fwm5NTK0 9/44

「お姉ちゃん!今日はね~…」

憂は桜高に入ってから本当にイキイキしてる。

彼女は本当に楽しそうで、私はそこに嫉妬してしまう

私は彼女が大好きなのになあ…。

彼女は食べ終わると、急いで部屋に帰る。

部活の練習の予習をしているらしい。

最近はどんどん彼女との時間も減った。

昔は一緒に料理したり。

買い物したりしてたのに

「お姉ちゃん~」

部屋に入った彼女がドアを開ける

「ん~?」

「明日のクリスマス、部活の先輩方が来るんだけど、良いかな?」

15 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:18:39.38 +Fwm5NTK0 10/44

私は心底嫌だった。

一瞬眉間に皺が寄り、凍りついた表情を憂に晒してしまう。

だが、私はすぐに表情を戻す。

ニコッと「良いよ」と一言

16 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:19:11.42 +Fwm5NTK0 11/44

それは突如の話だった

「言うの遅いよ~」

「ごめん~ついさっき先輩が勝手にきめちゃってさ」

「もう~」

「良いよ、私が料理とかしとくから。」

「本当!?ありがとう!お姉ちゃん」

本当は嫌だったかもしれない。

しかし彼女のお願いだ。私は考えもせず、決めてしまったのだろう

17 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:22:33.15 +Fwm5NTK0 12/44

ピーッピーッピーッ

人工物の動作音と呼吸の音がする。
各種の人工物は其れの至る所に刺さっておおり
ケーブルがそれを仲介する。

二人の人間が騒々しく怒鳴り合っている。

雫を垂らして、這いつくばって、人間が悶絶したような表情で私を覗く

機械音に掻き消されたその言葉。

ある人は叱責し、ある人は冷静で

ある人は人格が崩壊したように阿鼻叫喚している。

18 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:23:36.85 +Fwm5NTK0 13/44

私は見えてはいない。

見えない眼で"見ている"のだ。

人々はやがて去っていく---------

19 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:24:36.04 +Fwm5NTK0 14/44

「おじゃましまーす!」

澪ムギ梓「失礼します、」

「どうぞどうぞ!」

笑顔で彼女らと対応する。
みたところ、私とおない年くらいみたいだ。

「似てるなー、憂とお姉さん」

「瓜二つだな」

「ありがと~律先輩、澪先輩!」

「しかし、出来たお姉さんですね。」

出来てるもんか、と私は小ちゃな女の子が言った言葉を腹で否定した

彼女らは和気藹々と、家族のような距離で接している

20 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:25:48.13 +Fwm5NTK0 15/44

「凄いね~唯さん!料理の才能あるよ!」

「律はないからな」

「なにを~!」

楽しい人達だ。皆がお互いを信頼してるような、そんな関係を感じた。
だからこそ、その中心に憂が居る事に、私は憤りを覚えた。
八つ当たりの類だろう。それでも私はなにかをゆるせなかった。

「澪はおっぱい無いくせに」

「それは……//」

「梓に負けているもんね~」

21 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:27:31.22 +Fwm5NTK0 16/44

元々彼女は人に好かれていたんだろう。

私はお姉ちゃんながら、憂に憧れていた。

それは何より両親からも愛されていたんだ。憂はね。

私は寂しかったよ。でも憂がそばにいたから、

でも遠くなっちゃったね。

私は寂しくないよ。

「…お姉ちゃん?」

「ん?どうしたの~憂~」

「お姉ちゃんにもきてほしいなって」

「文化祭」

22 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:30:13.64 +Fwm5NTK0 17/44

「ぜひ来てくださいよ!お姉さん!」

「お願いしますです!」

私は彼女らの熱気にも怖気つかされた。

部活ごとき…とは冗談でも言えないような、

23 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:32:29.11 +Fwm5NTK0 18/44

「もちろんだよ憂~」

「本当?やったあ!」

「でもなにするの?」

「ライブだよ、ライブ」

「ライブ?」

「私たち、HTTってバンドを--------…

またそれか。団結アピールだよね。

私、そういうの嫌いなんだよ。

26 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:37:49.03 +Fwm5NTK0 19/44

お姉さん相手に挑発しているのかな?

私は憂のお姉さんなんだよ?

血が繋がってるんだよ?

私は彼女らを蔑んだ目で傍観した。

格が違うのを理解していないのかな

何を勘違いしたのだろうか

私は私でなくなってた。

生き甲斐を寝取られた気分だった。

同病相憐れむといったところか

27 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:41:36.30 +Fwm5NTK0 20/44

私と憂は傷を舐め合う関係で、痛み分けしてると思った。

でも彼女は違った。彼女は人に好かれる性質だった。

両親も私と彼女とは態度が違った。

それだけ彼女が特質で、才能を有する人間だったのだろう。

最早活きている世界が違ったのかな。

28 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:45:08.49 +Fwm5NTK0 21/44

彼女は明るくて人気者だった。

中学の頃は一緒の学校だったから、私は彼女の姉という。

所謂大義名分をいただいていた。

しかし高校では違った。

彼女は両親に桜高を半ば強引に推し勧められ、

彼女は受け入れた。

もう私は要らない、用済みの存在だったのかもしれない

両親は落ちた私をこっぴどく叱責した。

当然だったのかもしれない

なぜなら

29 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:49:53.37 +Fwm5NTK0 22/44

---ある日の事


「話があるんだ」

何時もと同じ、低く冷たい声で私は父の書斎に呼ばれた。

父は半ば私を気遣いせずに言い放った。

私は腹違いの子であり、今のお母さんは義母だと。

父は自分の失態を正当化するような言い回しで

私に来れまでの経歴を述べている。

父は反省も謝罪も失態も落ち目の欠片も、彼の言動、挙動には感じなかった

30 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:53:47.34 +Fwm5NTK0 23/44

父は私を育てた恩人だと言い切った。

最早最下層の人間に成り下がった父のくせに。

ギャンブルに没頭し家計も知らず、酔狂している父

男をはべらかせ、一日中パートではなくホテルの一室で乱れてる母

平沢家の大黒柱は常時揺らぎ、軋む音が響いている

31 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 14:57:29.50 +Fwm5NTK0 24/44

私は冷静だった。

資産、財産を全て妹につかって貰った。

そのお蔭で彼女は進学校に合格し、悠々自適な日々を送っている。

かたや私は、限られたお金で家計を成立させ、スタバかバイトの日々

昨今の高校生の時給など高が知れている。

それでも、私は労働するしかなかった

三大義務も果たせない両親だから。

33 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:12:47.20 +Fwm5NTK0 25/44

文化祭の日

私は夢にまでみた校舎を見上げた。

本当なら、私はこの校舎に居たと思うと、

胸が痛い話だった。

36 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:18:11.31 +Fwm5NTK0 26/44

憂達は14時からライブみたいだ。

それまで時間でも費やすか。

さわこ「猫耳が似合いそうな子発見!!」

なんだあの先生は。

生徒を追いかけ回してる

生徒も満更でもない笑顔で逃走している。

何か感慨深い、あの子が私かもしれなかったから

おしとやか且つ明るい学校。空想上の学校が実在したようだった

37 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:24:16.97 +Fwm5NTK0 27/44

「そろそろライブだよ~」

「いこいこ!」

校内放送が流れ、人々は講堂に流れていく

私もその流れに乗り、講堂に行く。

大にぎわいのようだった。

HTTと書かれた服を手渡され、それを着る

HTT一色の講堂は彼女たちを待ちわびているようだった。

そして、そのライブが始まるほんの前。

一件の電話がかかってきた。

38 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:27:53.77 +Fwm5NTK0 28/44

「ごはんはおかず!」

~むしろごはんがおかずだよ~

ナンデヤネン!

「え~…次で最後の曲です」

ザワザワ

「聞いてください」






「Y&I!」

…………
……


39 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:31:22.86 +Fwm5NTK0 29/44

「はい、わかりましたお義母さん」




義母「じゃあ、お願いね。」




「はい、荷物は纏めときます。」


「…はい、…はい…」

44 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:40:31.91 +Fwm5NTK0 30/44

「ただいまー!」

返答はない。

「お姉ちゃん?」

静寂


「これは……」

置き手紙と食事。

豪華な食事は一人分しかなかった。

(私は違和感を覚えた)

嫌な嫌な想像に発展した直後、私は階段を駆け上がる。

最悪を想像した。

わからない、最近のお姉ちゃんが

49 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:50:18.89 +Fwm5NTK0 31/44

「憂……?」

彼女は段ボールに包まれた部屋で横になりながらそう問いかける。

「お姉ちゃん……」

安堵感と共に、段ボールに目が映る

「憂の足音はわかりやすいね…」

「憂しかこの部屋に来ないからかもしれないけどね」

彼女は虚ろな笑みを溢す

「お姉ちゃん…どうしたの?」

ピンクの壁紙は無くなり、段ボールとベッドしかない

いきなりの変貌した部屋に、私は状況がのみこめていない

51 : ◆iez41ipVZI [] - 2013/02/22 15:55:12.84 +Fwm5NTK0 32/44

………
……


「ーーー低下!ーー投与を」

女2「先生を呼んで!早くー!」

言葉の断片が耳から脳に伝わる。

「親御さんとご親族の方ははやく!」

「ーーーっ!」

「ーーーー!!」

叫び声が私の耳に届く。

異常を示す音が、霞んで行く

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:00:14.82 +Fwm5NTK0 33/44

「なんで…私がお母さんに言って」

「憂……?無駄だよ、私のお母さんじゃないもん」

「………?」


「私と憂とは」


「血、繋がってないんだ。」

「腹違いの子なんだ。」

56 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:05:39.41 +Fwm5NTK0 34/44

「……?」

私は、よくわからなかった。

いや、理解したくなかったのかもしれない。

「ごめんね、それで、本当のお母さんにの所にーー」

なにを言ってるんだろう、お姉ちゃん


「私、今の生活じゃなくなるの嫌なんだ。」

お姉ちゃんは窓縁に腰をかける。

「私は、楽しかったんだよ」

58 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:09:45.44 +Fwm5NTK0 35/44

「リストラになってなかったお父さん」


「夫婦の仲が睦まじかった頃の母さん」

「あの頃は楽しかったな……」

[心拍数低下ー!AEDを!]

私はお姉ちゃんの変化に気付いていなかったのかもしれない。

「二人で昔は料理してたよね…」

お姉ちゃんは私の身代わりをしていたのか。

「お父さん、蒸発しちゃったんだよ…」

「憂だけは引き取るってさ」

62 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:17:33.61 +Fwm5NTK0 36/44

[危険です!早くご親族を!]
ICUの中に何人かの人が入っていく。
声が遠い。よく聞こえないよ

……
………

「私ね、嫌なんだ。憂と離れるの」


「お姉ちゃん!ダメ!」


「ごめんね、さよなら」

彼女は窓縁から腰を上げ手を離そうとした。

咄嗟に私が掴む。


衿に触れた指はするっと滑り、彼女の行動も虚しく

「お姉ちゃん!!起きて!お姉ちゃん!」


さっきの憂とは違う、もう一人の憂

でも遅かったのかもしれない、

私は宙に……

64 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:20:11.60 +Fwm5NTK0 37/44

ふわりと風に流された身体は、道路際に流されていく


晴れのち曇り、

太陽は光を遮り出す


風に浮遊する身体はコンクリート……



ではなく、人に思いっきり衝突した…

66 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:24:46.02 +Fwm5NTK0 38/44

???「痛っ!ハッ…空から人が!?」



???「やばい!やばい!どうしよ律ちゃん!」

「こりゃあビックリって…憂ちゃんのお姉さん!?」

???「え、そなの?知り合い?」

「ああ、料理が上手い子で…」

???「そうなんだ~私とは正反対だね!」

???「じゃなくてどうしよ~」



「落ち着けよ…唯」

68 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:28:39.33 +Fwm5NTK0 39/44

[戻って!お姉ちゃん!、戻って来て!お姉ちゃん!]

誰かに抱きしめられながら、私は空をぼんやり見つめてる。

私は気が付いたみたいだ。ここはまた別の世界なんじゃ…と。


私を抱きしめてたのは、"私"だったから。


気が遠くなりながらも、"私"は私に話しかけている。

かなり彼女は心配しているようだ。

ごめんね"私"

私が奪ってたね、役目

70 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:32:52.25 +Fwm5NTK0 40/44

……



「戻って来て!!」

「先輩……!死なないで!」

「許さないぞ…唯!死ぬな!死ぬな!」

ムギ「さいとう!どうにかして!」

「死ぬな………!死ぬな……!」

両親「唯!死んだらダメだ!唯!」

医者「心拍数が……まずい…」

必死の呼びかけ

最善を尽くすと言い残した医者

73 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:40:13.56 +Fwm5NTK0 41/44

私は理解した。この世界を。

私の脳がつくった別の世界。

そこに私が来てしまったのだろう。

平行世界に同じ人間が二人居る事により

バランスが取れなくなっていた。


[戻って!お姉ちゃん!!]

微かに動く唇で"私"にいう

こっちの憂に謝らないと

「妹、平沢…憂に謝っておいて……」

"私"「……わかってるよ。だから、貴女は帰らないと」

「………うん、ありがとう、唯」

74 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 16:50:05.57 +Fwm5NTK0 42/44

……


医者「凄い……心拍数安定、全てが安定だ!」

異常音は収まり、いくらか鎮静した頃、私は目を開けた。

帰ってきたんだ。

「お姉ちゃん!」

私に抱きつく妹。私はそっと彼女を抱きしめ「ありがとう、ごめん」
と呟く。

あっちの平沢唯は大丈夫かなあ?

私は妹の大切さを身に沁みて感じながら

そっと眠りについた

77 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 17:03:17.94 +Fwm5NTK0 43/44

……

「なんで!あんな事したの!!」
「いやあ……」

もう一つの世界

「もぅ……っ!」

(私は何をしたのか知らないけど)

「ごめんね……」

あの後、いきなり私は自室に居た。

救急車に乗っていたはずなのに

みんなに聞いても知らないらしい

でも私と憂は知っている

「あれ……?」
自室の段ボール箱が消え去っていく

おそらく来た記憶、事実が消えていくのだろう
私は一人しかいない。
おそらくもう一人の私は間違って来てしまったのかもしれない、
ともあれ、
「ごはん作るよ~」
「お!アイス~アイス~」

78 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/22 17:09:17.20 +Fwm5NTK0 44/44

パラレルワールド


私たちは私たちだ。

世界は平行に存在している。

人はそのうちの一世界しか行けないのだ。

「私のU&I聞いた?」

「良かったよ~私も部活入ろうかな~」


「是非是非!」







憂ちゃん、お誕生日おめでとう

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