1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:20:34.93 v8ntrnVv0 1/55

どこかの坂道

露天商「そう!全ての『正解』が見通せるのがこの眼鏡!」

露天商「3000円ポッキリ、いかがですか学生さん!」

「あはは。そりゃすごい眼鏡ですね」

露天商「フフフ。やってみせましょうか」

スチャッ

露天商「ムムム、見えますよ。貴方はこの眼鏡を……」

「買いませんよ」

露天商「えー!そんな殺生な!」

元スレ
男「カンニング眼鏡?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1359994834/

3 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:21:37.38 v8ntrnVv0 2/55

露天商「今ならお安くしますからああ」

「そりゃ3000円は眼鏡にしちゃ安いけど、それ、度も入ってない伊達でしょう」

露天商「確かに度は入ってませんけど伊達じゃないんですよお……」

「ああ、ごめんなさい。そろそろ行かないと」

露天商「貴方は志望校で迷っている」

「……え?」

露天商「どちらに行くべきか、その答えは……」

5 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:23:04.58 v8ntrnVv0 3/55

「ちょちょちょ、待って下さい」

露天商「あ、知りたい?分かっちゃうんだけどなあ~、この眼鏡で」

「……いやいや、制服着てる若者は大体進路で迷ってるか」

露天商「フフフ。そろそろどっちにするか決めた方がいいんじゃないかなあ」

「余計なお世話ですよ!」

露天商「ねえ。ほんと、人生は選択の連続ですからねえ……」

「……」

露天商「2500円!」

「……買います」

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:24:27.03 v8ntrnVv0 4/55

男の家

「ただいまー」

「おかえりなさーい」

「父さんは?」

「今日も遅くなるって」

「ふうん」

「ねえ、そろそろ決めた方がいいんじゃない?」

「決まったら言うから」

「そうね。待ってるわ」

11 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:26:25.97 v8ntrnVv0 5/55

男の部屋

「カンニング眼鏡、ねえ」

スチャッ

「賢くなった気はするな」

「どれ、一つ赤本でもやっつけてみるか」

「……」

ティーン

「正解が分かる……!?」

「はは、おいおい」

「勉強しすぎちまったかな、こりゃ」

「い、息抜きにクロスワードパズルでも……」

ティーン

「……ああ、本物だこれ……」

13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:27:45.48 v8ntrnVv0 6/55

通学路

(大変なものを手に入れてしまった……)

「おはよー」

「おはよう」

「……元気ない?」

「いや、別に」

「ふーん。ま、お互い様か」

「……」

「大学受験も近いしね」

「これから大変だなあ」

「うん」

15 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:28:57.93 v8ntrnVv0 7/55

「おっはよーう」

「おっす」

「おはよー」

「ふう~、寒くなってきたねえ」

「うん」

「もう、冬なんだな」

「進路決まった?」

「うーん。まだ、もうちょっとかなあ」

「そっかあ」

16 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:30:38.39 v8ntrnVv0 8/55

放課後

「ねえ!このあとスウィーツでも食べに行かない?」

「いいね。行こっか」

「おう、どこ?ミスド?」

「フフフ、実は駅向こうのカヘェを密かに開拓しましてね……」

「やるじゃん」

「やーん!もっと褒めてほめてええ」

「あはは」

「いいから行こうぜ」

「はーい」

18 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:32:12.84 v8ntrnVv0 9/55

カフェ

「なんにするー?私はねー、モンブラン!」

「チーズケーキかなあ」

「うーん」

「無難に苺ショートか、フルーツタルトか……」

「ショートケーキは前に食べたけど、おいしかったよ!」

「むむむ」

「こういうの、迷うよね。分かる分かる……」

「メニューの写真、どっちかマズそうに載ってたらいいのに……」

「ま~だ~?」

「もうちょっと待って」

19 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:34:15.33 v8ntrnVv0 10/55

スチャッ

「え、何その眼鏡」

「いや、別に……」

「うわ、似合わないなあ」

(俺は……俺はどっちを食べるべきなんだ)

ティーン

(なるほど、正解は……)

「フルーツタルトで」

「あ、私のこと信じてないな~」

「直感だよ、直感」

「ずいぶん時間のかかる直感だったね」

「……」

「で、その眼鏡なに?」

20 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:36:26.01 v8ntrnVv0 11/55

「めちゃくちゃうまかった……」

「チーズケーキも良かったよ」

「ね、ね。じゃん負けでおごり、どう?」

「えー。女ちゃん強いからなあ」

「フフフ。負けるのが怖いか。怖いか、負けるのが……」

「なんで反転したの……」

「強調するためよ……フフフ」

「いいだろう。やってやるよ」

「えー……仕方ないなあ」

22 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:38:04.54 v8ntrnVv0 12/55

(さて、何で来る。女は初手チョキが定石だが……!)

「よし、いくぞ!じゃーんけーん!」

ティーン

「あー待ったー!!!」

「ぽー!?」

「ど、どうしたの?」

チャッ

「え、何で眼鏡外したの」

「……この眼鏡には実は3トンの重りが」

「本気、って訳だね」

「おうよ」

「ではあらためて!じゃーんけーん!」

23 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:39:34.45 v8ntrnVv0 13/55

「ごちでーす」

「ごちそうさまー」

「フッ、気にするな」

「なに、その誇らしげな顔」

「じゃんけん負けただけなのに」

「……」

「最近出費が多いな」

「ははっ、恨み言は情けないっすよ~」

26 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:42:42.70 v8ntrnVv0 14/55

男の部屋

ティーン

TV『ファイナルアンサー?』

TV『ファイナルアンサーで』

「あー、それじゃないって」

TV『残念~!』

「だから言ったのに……」

「……この眼鏡かけてクイズ番組見ても面白くないな」

TV『賞金1000万円、クイズミリ◯ネア』

TV『次の挑戦者は、TVの前の貴方かもしれない……』

「……うーん」

28 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:43:58.32 v8ntrnVv0 15/55

通学路

(カンニング眼鏡、か)

(確かにフルーツタルトはおいしかった)

「おはよー」

(しかし、苺ショートも食べてみたかった)

(ううむ……)

「ねえ」

「あ、はい。おはようございます」

「おはよう」

29 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:45:09.97 v8ntrnVv0 16/55

「おっはよーう!」

「うーっす」

「おはよー」

「二人とも、今日の小テスト、勉強した?」

「えっ」

「えっ」

「……忘れてた」

「ぎゃー!完ッ全に忘れてた!」

「あらら」

「あわわわわどうしよう、どうしよう」

「女ちゃん、落ち着いて」

「受験で忙しい時期に小テストなんかやんなよ……」

30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:46:31.57 v8ntrnVv0 17/55

学校

先生「それじゃ、小テストはじめんぞー」

「先生、無理です!」

先生「制限時間20分な、がんばれ」

「ひいいい」

「あはは……」

(……やばい、全然分からない)

(しかもこれ入試の範囲外じゃないか)

(なんだよこれ。テストの意図も分からない)

(……ああっ、本当に分からない)

先生「あと15ふーん」

(……腹立ってきた)

32 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:49:05.30 v8ntrnVv0 18/55

(使うか……)

スチャッ ティーン

(ああ、なるほど)

(全然違ったな……)

(ん、これはもうちょっと考えれば分かったか)

(……)


先生「はい、終了ー」

36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:51:59.76 v8ntrnVv0 19/55

放課後

「終わった……」

「だ、大丈夫だよ。小テストだし……」

「大丈夫」

「だってええ、二問しか解けなかったんだよおお」

「あのテストはそこまで成績に加味されないよ」

「そうなの……?」

「うん。受験勉強にかまけて学校の授業を疎かにすんなよっていう意図」

「らしい」

「らしいって……」

「男くんは出来どうだったの?」

「……そこそこかな」

38 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:55:40.47 v8ntrnVv0 20/55

男の部屋

「ふう~……」

「……やっぱりあんまり気分の良いものではないな」

「みんなに嘘吐いてるようで……」

「実際ズルだしな」

「……よし、これはなるべく使わないようにしよう」

「大学も自分の意思で決めるぞ」

「入試だって自分の力で解いてやる……!!」

「……」

「フッ、ストイックな俺、かっけーぜ」

「なあ、かっけーだろ?見ててくれよ……」

42 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 01:59:07.81 v8ntrnVv0 21/55

通学路

「ねえ~、進路決まったの?」

「決まったよ」

「え、どこどこ!?」

「△△大」

「△△大、かあ」

「うん。三人ともバラバラになっちゃうな」

「……」

「ああ、たまには東京にも遊びに行くからさ」

「なっ、友」

「うん」

「約束だからねええ」

「お、おい泣くなよ」

43 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:02:36.64 v8ntrnVv0 22/55

放課後

「あれ、友は?」

「なーんか塾の強化週間?とか?」

「へえ、忙しそうだな」

「他人ごとじゃねえっすよー」

「まあなあ」

「へっへっへ」

「ん?」

「久しぶりに二人っきりっすねえ旦那ァ」

「ああ、まあ……」

44 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:05:22.36 v8ntrnVv0 23/55

「ねえ、この前の眼鏡」

「ん、ああ」

「結構似合ってたよ。またかけてみてくんないかなあ~なんて」

「頭良さそうだっただろ」

「ねえ~、写メ撮るからさあ、お願い!」

「……ちょっとだけな」

「ありがと!」

スチャッ

「フゥー!いいねいいね、似合ってるよー」

「ほら笑って笑って~」

「あのな、グラビアじゃないんだから……」

45 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:06:47.02 v8ntrnVv0 24/55

「よし、撮れたとれた」

「何枚撮ってんだよ」

「ありがとね」

「ああ」

「ほんと、ありがとね。ほんとに……」

「ああ、おい、泣くな……」

「東京いっ、ても、忘れない、から」

「……」

(こういう時どうすれば……)

ティーン

48 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:09:34.23 v8ntrnVv0 25/55

(!)

(しまった、眼鏡かけたままだった)

(そうか、正解は……)

チャッ

「……な、甘いもんでも食って帰ろう」

「うん……」

「今日はおごれよな」

「うん……って、それはちょっと」

「ははは、ダメかやっぱ」

(正解だとしてもそんなこと出来るか、このキザ眼鏡が)

51 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:12:00.57 v8ntrnVv0 26/55

男の家

「ただいま」

「おかえりなさーい」

「父さんは?」

「今日も遅くなるって」

「……ふうん」

「ねえ、そろそろ決めてくれると、母さん安心できるんだけどな」

「……決まったら言うから」

「そうね。待ってるわ」

「……うるせえな」

「え?」

「……何でもないよ」

53 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:14:26.03 v8ntrnVv0 27/55

通学路

「あけましておめでとーう」

「おめでとー」

「あれ、男くんは?」

「なんか、寝坊だってさ」

「珍しいねえ。っていうか初めてじゃない?」

「うーん、そうかも」

「前はどうだったの?中学の頃とか」

「ずーっと、兄弟揃って無遅刻無欠席だったよ。」

「へええ」

54 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:17:55.16 v8ntrnVv0 28/55

「なんかいいね、幼馴染って」

「そう?」

「うん、羨ましいなあ」

「……女ちゃんは分かりやすいなあ」

「えへへ」

「あ、きたきた」

「おはよう」

「あけま……おはよーう」

「おはよー」

「……ニヤニヤして何の話してたんだ?」

「ないしょ」

「ああ、ガールズトークね。はいはい……」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:20:02.41 v8ntrnVv0 29/55

「いや、参った。寝坊なんて初めてだ」

「寝坊はいいけど、どうしたのそれ」

「あはは、額にバンソーコーて、少年か!」

「慌てて飛び出してすっ転んだ」

「ふーん?」

「少年か!」

「18歳って少年だっけ?」

「あれ、どうだっけ?」

「うーん……分からん」

「ええっと、少年法の適用が……」

「そこから考えはじめて分かるのか?」

57 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:21:29.01 v8ntrnVv0 30/55

「ううー……」

「正解は」

「ん?」

「ないみたい。法律とか文脈で変わっちゃうんだって」

「ああー、そっか、そうだよねえ」

「なるほどなあ。友、それ知ってたのか?」

「ううん。今調べたんだよ、スマホで」

「やっぱ便利だな、スマホって」

「男くん、いつまでガラケーなの?」

「うーん、そろそろ換えるかなあ」

59 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:22:53.87 v8ntrnVv0 31/55

男の部屋

ブーブー

「お、友からメールか」

『明日昼過ぎから遊ぼう』

「はは、相変わらず漠然としてんなあ」

「いつ、どこで、誰とだよ、っと」


ブーブー

『三人で。場所と時間は決めて』

「だよなあ」

60 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:25:36.59 v8ntrnVv0 32/55



「おーっす」

「おっす」

「どこ行くか決めた?」

「おう、そろそろ卒業だからな」

「うん?」

「思い出作りに、水族館だ!」

「すいぞく、かん……」

「あれ?好きだったよな。水族館……」

「ばか」

「え?えー!?」

62 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:28:47.20 v8ntrnVv0 33/55

「い、いやいや。何かやらかしたの、俺?」

「女ちゃんは来ないよ」

「……え?」

「今日は元から女ちゃんは来ないの」

「私と二人じゃ、こないでしょ、男は」

「あー……何か?俺に女のことでお説教か何かか?」

「分かってるじゃん。そんなところ」

「はは……それじゃ水族館は張り切り過ぎたな」

「……いや、こっちこそごめん。私、待ち合わせの場所とかあんまり決められないから」

「ああ……失敗したら嫌だもんな」

「うん。だからいつも二人に任せてた。ごめん」

63 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:30:30.74 v8ntrnVv0 34/55

「よし、何でも聞くぞ。どんと来い」

「……はあ。単刀直入に言うけど、付き合いなよ」

「……」

「女ちゃんが男のこと好きなの知ってるでしょ?」

「めちゃくちゃ分かりやすいからなあ」

「で、男も女ちゃんのこと好きなんでしょ?」

「それは違うぞ」

「え?」

64 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:32:31.49 v8ntrnVv0 35/55

「確かに女は可愛いし元気で良い子だよ」

「……よく恥ずかしげもなく言えるね」

「恥ずかしいよばか」

「でも恋愛対象としては見てないみたいな?」

「そう」

「そうなんだ……それは……」

「どうするべきか、分からないだろ?」

「うん」

「俺は選択を誤って女っていう友人を失うのが怖いんだよ」

65 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:34:18.79 v8ntrnVv0 36/55

「それにさ」

「うん」

「俺が好きなのは、友、お前なんだよ」

「うん……?」

「ずっと前から」

「え、あ、」

「だけどお前は俺の兄ちゃんが好きだったんだよな」

「……」

「……」

66 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:35:46.35 v8ntrnVv0 37/55

「あ、あのさ」

「なんか、ごめん。こんな話になるとは思わなくて……」

「本当、どうしたらいいんだろうなあ」

「そんなこと言われても……」

「……行こうぜ、水族館」

「え?」

「昔、よく三人で行ったよな」

「……うん」

「俺も好きなんだよ、カバとか」

「カバは……いたっけ?」

「いいから!」

68 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:37:23.07 v8ntrnVv0 38/55

水族館

「久しぶりだなあ、ここに来るの」

「最後に来たの中三だっけ?」

「だったかなあ」

「お、アザラシ」

「違うよ、あれ、セイウチ」

「セイウチか」

「あ、見てみて!くま!しろくま!」

「……」

「……何?見てって、こっちじゃないよ。くま」

「はしゃぐとこ久々に見たから、なんか、やっぱり可愛いなあって……」

70 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:39:43.83 v8ntrnVv0 39/55

「……ッ」

「あ、照れてる?」

「私は、私はさ」

「うん」

「やっぱり、男のお兄ちゃんのこと好きだった」

「うん」

「だから、だから……ごめん」

「……うん。分かってる」

「……泣かないでよ」

「あ、泣いてたか……俺……」

71 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:41:32.28 v8ntrnVv0 40/55

男の部屋

「終わった」

「分かってたけど傷つくな……」

「くそ、あの馬鹿兄貴め」

「……これでよかったのか?」

「答え合わせ、してみるか……?」

チャッ…

「いや」

「やめとこう」

「どっちでもいいじゃないか……」

「それより今は、勉強だ」

72 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:44:30.48 v8ntrnVv0 41/55

通学路

「おはよ」

「おーっす」

「寒いね」

「……ああ」

「……白々しいな。忘れろ忘れろ!」

「あはは」

「今度三人で遊びに行くから」

「うん」

「予定は全部、友、お前が決めろよな」

「……うん、分かった」

「水族館以外な!」

74 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:47:36.01 v8ntrnVv0 42/55

「おっはよーうううう」

「うーっす」

「おはよー」

「女ちゃん、今度さ、三人で遊びにいこう」

「え!行く行く!どこ?」

「旅行なんかいいなって」

「りょ、りょこう?」

「なに?だめ?」

「いや決めるの早くて、なんていうか……その割にデカいなスケール」

「そう、なのかな?」

75 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:48:55.70 v8ntrnVv0 43/55

「卒業旅行かああ!いいねえ、最高だよそれ!」

「ふふ、よかった」

「……」

「男くん?」

「あ、ああ。いや、俺だけホテルで別の部屋なのかな、とか……」

「当たり前でしょ」

「ああ、やっぱり……」

76 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:51:17.18 v8ntrnVv0 44/55

放課後

「いやあ、楽しみだなあ」

「その前に受験だな」

「分かってる分かってる!」

「全部終わったら思いっきり遊ぼう」

「全部終わったらな」

「それじゃ、二人ともまたね!」

「うん。私も塾行くから」

「おう、またな」


「……全部、か」

79 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:54:49.87 v8ntrnVv0 45/55

男の家

「ただいま」

「―――!!」

「……」

「だいたいお前が!」

「あなただってずっと……!」

「ただいま」

「あ、ああ。おかえり」

「おかえり……」

「また喧嘩してたの?」

「また、とはなんだ!」

「……」

80 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:57:31.19 v8ntrnVv0 46/55

「もう、やめてよ」

「俺、今大事な時期なんだよ」

「分かってる。分かってるけどな」

「これは大人の問題なんだよ」

「どの口が大人なんて言ってるの?」

「ッ!またそうやって嫌味ったらしく……」

「悪いのはあなたでしょう!」

「俺は家族のために仕事してるんだぞ!」

「なら仕事で家族を蔑ろにしたら本末転倒でしょう!」

81 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 02:59:39.52 v8ntrnVv0 47/55

「だいたい、去年あの子が事故に遭った時だって……!」

「……っあの時は!あの時仕事を離れたら俺は……」

「葬式だって義父さんに任せっきりで!無茶苦茶だったじゃない!」

「あの葬式だって誰の金で挙げてると」

「やめろよ……兄ちゃんのことで喧嘩するなよ……」

「うるさいっ!子どもは黙ってろ!!」

ガッ

「ぐっ……」

「あなた、子どもに暴力を……!」

「お前だってやってるだろう!知ってるぞ!」

「……!」

82 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:03:02.43 v8ntrnVv0 48/55

「やめろよ!!」

「なんなんだあんたらは!」

「こんな両親のどっちか選べって!?」

「無茶言うんじゃねえよ!どっちもクズじゃねえか!!」

「なに!親に向かってその態度は!?」

「お前、誰の金で大学にいけると……」

「なんだよ、子どもには何もないのかよ」

「俺だって、俺の問題を自分でなんとかして」

「お前、お前らは押し付けあってばっかりで」

「俺を、子どもを何か助けてくれたかよ」

「……何も言わせてくれないのかよ」

「う、うあ、うあああああああ」

83 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:05:01.85 v8ntrnVv0 49/55

男の部屋

「なんなんだ、なんなんだよ」

「あいつらほんと、なんなんだ」

「俺は、兄ちゃんが死んで、受験があって……」

「大学に行くにはお金が必要で……」

「どうしたらいいんだ?なあ、俺はどうしたらいいんだよ」

「どっちが悪いんだ?どっちについていけばいいんだ?」

「なあ、教えてくれよ」

「『正解』、教えてくれよ……」

84 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:06:53.51 v8ntrnVv0 50/55

どこかの坂道

露天商「あの少年が眼鏡を……買うべきか否か」

露天商「見えちゃってたんだよねえ、正解」

露天商「分かってて売ったのはちょっと罪悪感」

露天商「でも、こっちも商売だから。悪く思わないで欲しいなあ」

露天商「ねえ。ほんと、人生は選択の連続ですからねえ……」

87 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:12:44.47 v8ntrnVv0 51/55

「教えてくれよ……誰か……」

「……」

「……」

「兄ちゃん、俺はさ」

「……俺もさ、いつも兄ちゃんに決めて貰ってたから」

「いつも間違いから逃げてたから……」

「俺は……」

「正解ってなんだろうな……」

「分からないけど、決めるよ」

「俺が決める……」

88 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:14:41.32 v8ntrnVv0 52/55

カフェ

「っていうことがあってな」

「へ、ヘヴィー……」

「それ、今話す?」

「だって、こんなの人に話さないとやってらんないよ」

「確かに確かに!まあなんだ!お疲れ様!」

「軽いなー、女は」

「こ、これでも一応深刻に受け止めてるんですけどお」

「分かってる、分かってる。ありがとな」

「で、結局一人ぐらし?」

「うん。両親はこの春、めでたく離婚するらしい」

89 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:18:27.40 v8ntrnVv0 53/55

「これでぜーんぶ、心配事は片付いたかな?」

「入試も思ったよりすんなり通ったしね」

「後は旅行にいって思い切り遊ぶだけだな」

「うん。それで、旅行の予定なんだけど……はい」

パサッ

「……何これ」

「……旅行のしおり」

「友ちゃん……こりすぎいい」

「何この綴紐おお!こりすぎだよこれはああ!!」

「お、おい泣くなよ」

「うっうう、感動のあまり……」

91 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:21:13.46 v8ntrnVv0 54/55

「よし、それじゃ、旅行当日、また会おう!!」

「おう。またな!」


「……ねえ」

「ん?」

「大丈夫なの?お金とか……一人暮らしも、旅行も」

「ああ、まあ、大丈夫じゃないかな」

「ふーん……?」

「はっはっは」

「なあ、友よ。人生の選択に正解なんてない。そう思わないか?」

「なに言ってんの?ほんとうに大丈夫?」

「あ、うん……本当に大丈夫です」

「……私は、あると思うよ、正解」

「そうかあ?うーん……そうかもなあ」

92 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/02/05 03:26:49.77 v8ntrnVv0 55/55

どこかの坂道

露天商「あっちでも売れないし、こっちでも売れないし」

露天商「さてさて、次はどこで店を開くべきか」

露天商「ウムム」

露天商「ティーンと来ないものかねー、ティーンと……」

露天商「お、また正解か。やるねえ。フフフ」

ワンセグ『ティ……イナ…ガーンジサーガジ』

露天商「ああっ、このボロケータイめ!イイトコなのにい……」

ワンセグ『…夜、…上最…少のミリ……アが誕生…』


おわり

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