関連記事: 【前編】 【中編】 【後編PART.1】
それから約1週間後
アレフガルド
リムルダールの町
勇者「おじさん。こんにちはー!」
町の男「あれ?あなたたちは。しばらく見ないと思ったけど。」
武闘家「先日は貴重な悟りの書を譲っていただいてありがとうございました。」
戦士「おかげで仲間が一人賢者になることができました。」
町の男「おお、そうでしたか。それはお役に立てたようでよかった。」
賢者「初めまして、私が転職できたのもおじさんのおかげです。感謝します。」ペコリ
町の男「いえいえ、感謝なんて...いいんですよ。それでこの世界が救われるのなら安いものです。」
賢者「私、この世界は初めて来て驚いたんですが。勇者達の言うようにずっと暗いままなんでしょうか?」
町の男「そうです。ゾーマがアレフガルドに現れてからはずっと暗いまま、朝はきません。」
武闘家「前回、ラナルータを唱えてみたのですが、効果がありませんでした。これはやはり...」
戦士「...ゾーマの仕業というわけよね。大魔王ゾーマ、か。」
町の男「世界中の人間は希望をすっかり失っています...勇者さま、皆を、世界を、大魔王から救ってください。」ペコ
勇者「うん。まかせて、おじさん。絶対に大魔王ゾーマを倒してみせるから!」
戦・武・賢「(…………)」コクッ
町の男「おねがいします。」
リムルダールの町 宿屋
勇者「今のとこ、私達が手に入れたのはこの太陽の石と雨雲の杖、あとこの妖精の笛...」
戦士「ルビスさまというこの世界を創造した精霊を復活させないといけないのよね。」
賢者「勇者。マイラっていう町の道具屋にオリハルコンを預けてるんでしょ?そろそろ行かないと。」
勇者「あ、そうだった~。まだまだやらないといけないことが沢山あるなぁ。」
武闘家「そうですね~。一刻も早くゾーマを倒したいところですけど。今のままでは進めませんし。」
勇者「じゃあいっそのこと、二手に別れて動こうか?その方が楽だし早いよ。」
戦士「戦力は半減するけど...たしかにその方が良さそうね。全員ルーラも使えるしなにかあればここに戻れば大丈夫かな。」
リムルダールにて作戦会議を開いた勇者達は、二手に別れて行動することになった。
ドムドーラで偶然見つけた伝説の鉱石オリハルコンを預け、剣を打ってもらっているため受け取りにマイラの道具屋に行くのは勇者と賢者。
ゾーマにより封印されていた精霊ルビスを復活させるために、そのマイラの西にそびえ立つ塔に行くのは武闘家と戦士。
それぞれ、宿屋で休んだあと目的地に向かっていった。
マイラの町 道具屋
勇者「こんにちは~。この前、剣をお願いした勇者といいますが。」ヒョイ
道具屋の主人「ああ!勇者さん。ちょうどいいタイミングでしたね、つい先刻出来上がりましたよ!ほらっこの通り!」ギラッ
賢者「(この光!...すごい力を感じる!)」
勇者「わあ~!あの青い石っころがこんなカッコイイ剣になっちゃうなんてすっごいなー!」ジロジロ
賢者「い、石っころ...(オリハルコンっていうのはものすごい貴重なのになぁ)」ガクッ
主人「ほら、勇者さん。持ってごらんよ。手に馴染むといいけど。」スッ
カチャ
勇者は主人から出来上がったばかりの剣を受け取った
勇者「ん!」
勇者「(………なんだろこの剣。力が湧いてくる。手にもこんなにしっくりくるなんて。)」
賢者「大丈夫?勇者?どうしたの。」
勇者「え。あ、ああ大丈夫だよ。なんか手にした瞬間に全身に力が湧いてきたんだ。」
主人「そうだろ?私も打っている時に何度も不思議な力を感じてね。こんな硬い石なのに作業がサクサクだったよ。」
賢者「……ねぇ、勇者。ちょっと私にもその剣見せてくれない?」
勇者「いいよー。はいどうぞ。」カチャ
賢者は勇者から剣を受け取り、剣をじっくりと見定めた。
賢者「わっ。」ビクッ
賢者「(ほんとだ。手にした瞬間に力が湧いてくる感覚...あと僅かに感じる魔力はおそらく...)」
賢者「はい勇者、返すね。」スッ
勇者「ありがとう。なにかわかったの?」
賢者「うん。たぶんこの剣はあなただけしか使いこなせない、勇者のための剣。」
勇者「私だけの、剣?」
賢者「勇者以外でももちろん持つことはできるけど、その秘められた力を最大限に発揮できるのはあなただけだよ。」
主人「へえ~。あなたは武器にお詳しいんですね。」
賢者「あ、まあ。つい最近までは商人でしたから私。武器や道具の鑑定が得意なんです。」
主人「商人さんだったのかい?なるほど、合点がいきます。」
賢者「ああ、あと勇者。その剣には魔力が込められているみたい。あなたの魔力を込めて降るとなにかしらの魔法と同じ効果が出るはずよ....ってここじゃダメーー!」
勇者「じゃあ。え~いっ!!へっ?」ブンッ
ビュウ~~~
シュゴゴゴーーー!
勇者はおもわず剣を振りかざした。
すると、剣から大きな竜巻が巻き起こった。
ドガンズッドーン!
ドガガガガガ!!
巻き起こった竜巻は建物を破壊し、消えていった。
賢者「.....あちゃ~」ガックリ
勇者「あ、あははー!また私ったらやっちゃったね~。」ガックリ
主人「……………」ガックリ
勇者「あ、あのおじさん。ごめんなさい!お店こんなにしちゃって。」
賢者「私も不注意でした。本当にすみませんでした!」
主人「………いいんですよ。私の打った剣が勇者さん達の力になってくれれば。私も元鍛治屋として嬉しい限りですし、はは。」
勇者・賢者「本当にごめんなさい。」ペコペコ
二人は剣を打ってくれたお礼と店を半壊させたお詫びにと、持っているゴールド全部を主人に渡し、店を出た。
ふと店を出る直前に主人が賢者の元にかけより耳打ちした。
主人「最近、なにやら表世界から来たっていう商人風の男が各地で怪しい商売をして廻ってるって噂があります。あなたも元商人ならなにか知ってるかと思ったんですが。」
勇者と賢者はマイラで勇者だけの最強の剣《王者の剣》を手に入れた。
その足で、マイラの西の島に立つルビスの塔に武闘家と戦士に加勢するため向かった。
勇者「賢者。さっきおじさんに耳打ちされてたけどなんだったの?」
賢者「ん?別に大したことないよ。商売人同士のちょっとした情報交換ってやつかな。」
勇者「ふ~ん。商人は賢者になってもああいう風に鑑定とかできんだねー。すごいね~。」
賢者「ふふ、そんなことないよ。ただの癖みたいなものだから。」
賢者「さて、武闘家と戦士に早く加勢しに行かないとねっ!」タッタッタ
勇者「りょ~うかい!」タッタッタ
賢者「(商人風の男か.....ま、さかね...)」
ラダトームの町 宿屋
勇者「んじゃあその精霊ルビスさまっていう人がこの世界を作った人なんだ?」
戦士「ええ、彼女自身の口から聞いたから。本当にキレイな人だったわね。」
勇者「すんごいんだね~、世界作りなんてったら町作りも真っ青だね、賢者。」
賢者「いやいや、勇者。私のと比べられてもスケールが違いすぎて困るんだけどね。それより武闘家、それが...」
武闘家「はい、これがルビスさまから渡された《聖なるお守り》というものです。」
キラッ
勇者「キレイだねー。これがあればゾーマの城に行くことができるんだよね?」
戦士「おそらくね。それは勇者が持っておいて、それが一番いいわ。」
武闘家「そうですね、これは勇者さまにお渡ししておきますね。」ニコ
勇者「うん、わかった。しっかり持ってるよ。」チャキ
賢者「じゃああとはゾーマを倒しに行くだけってことになるの?」
戦士「そうなるかな、必要なアイテムもないし。武器も防具も最強のものが揃っているしね。」
武闘家「勇者さまの最強の剣も今日揃ったことですし。」
勇者「いよいよだ。ここまで短いようで長かったね。近いうちにゾーマの城に突入するよ!」
武闘家「はい!みんなで力を合わせて絶対にゾーマを倒してやりましょうね!」
戦士「そうね。これで最後の戦いになるのね。すべてをぶつけて戦う。」
賢者「....私も頑張るわ。」
勇者「(賢者?)」
翌日1日は完全休養の日とし、各自好きなことをして過ごすことにした。
勇者はとにかく1日ずっとボ~っとしていたいと。
武闘家は新聞を読みたいのと趣味の読者のためラダトーム城の図書館に。
戦士はこれまでの疲れを癒すのと、体の冷えのためマイラの温泉に。
それぞれ向かっていった。
一方、賢者はちょっと用事があると、3人よりも早くラダトームの町を出ていった。
ドムドーラの町 牧場
牧場主「商人風の男だぁ?」
賢者「はい。この町でそういう男を見たりしていませんか?」
牧場主「う~ん、俺は毎日町に出荷や買い出しがあるから行くけどよ、そういったやつは見かけねぇな。」
賢者「そうですか...すみませんお仕事中に。」
牧場主「構わねえよ。どうせ、仕事してたって世界が終わっちまえば関係ねぇしな、ヘン。」
賢者「……………」
賢者「(ここもダメかぁ。単なる噂なのかな、やっぱり。)」
女の子「ねぇねぇ、そこの髪の赤いお姉ちゃん!」
賢者「え?(女の子?)」
女の子「私知ってるよ、商人さんみたいな格好した男のひと。」
賢者「!?」
賢者「えっ?あなたその男を知ってるの?」ガバッ
女の子「うん、私ここの娘なんだけどちょっと前にお父さんに付いて町に行った時にお姉ちゃんが言ってたみたいな商人さんの格好をしたひとに話かけられたんだー。」
賢者「そ、その男はなんて言ってたかわかるかな?」
女の子「うんっとね~『お嬢ちゃんは大魔王が怖いかな?ずっと怖いのは嫌だよね?そんな時はこれを食べれば怖い気分を消してくれるんだよ』って。」
賢者「これを食べれば、って。なにかもらったの?」
女の子「うん、ちょっと待ってね。お姉ちゃんにも見せてあげるから。」ゴソゴソ
女の子「あったあった。これだよ。」サッ
少女は小さい手提げかばんから包み紙に包まれた、小さく黒光りするものを出して手の平に乗せた。
賢者「あ!これは...やっぱり。」
女の子「お姉ちゃんこれ知ってるの?甘くて美味しいんだよ~。食べると私、嬉しいキモチになるし。」
賢者「あのさ、1つお姉ちゃんにもくれないかな?だめ?」
女の子「いいよ!お姉ちゃんかわいいから1つあげるね!はいっ。」サッ
賢者「ありがとう、お嬢さん。」ナデナデ
賢者「わざわざ呼び止めて教えてくれてありがとう。」ニコ
女の子「えへへへ。どういたしまして。じゃあね~お姉ちゃん。」バイバイ
賢者「(形はあの時の物と同じようだけど.....引っ掛かるのは)」
賢者「(食べると怖い気分を消してくれる....)」
賢者「(子供相手だからか、単なる言葉のあや、かわからないけど。)」
賢者「(調べてみた方がいいね)」
賢者「(こういう使い方ができるかわからないけど、やってみよう)」ブツブツ
賢者は少女にもらった黒光りするものをグッとにぎりしめて、集中した。
賢者「(万物の神よ、我の手中の物の正体を示せ『インパス』)」
賢者はインパスを唱えた
賢者は握っている手を開いた
その物は赤く光っている
賢者「なんてこと....これはおそらく。」
賢者「(なにかしらの薬物が入ってる。)」
賢者「言葉巧みに、子供になんてものを!許せない。」
賢者「(そうだ。さっきの女の子はどこに?あのまま食べ続けたら危ない!)」キョロキョロ
賢者は暗い中、あたりを見回した。すると牧場の柵の近くで馬と遊ぶ少女を見つけ、すぐに駆け寄った。
賢者「お嬢ちゃん!さっきの甘いのはいくつもらったの?誰かにあげたりした?」ガシッ
女の子「えっ?まだ一箱分あるよ。あげてないけど、あのひとは『お父さんやお母さんにも勧めてあげてね』って、言ってたよ。」
賢者「そう、それならよかった。いい?お姉ちゃんの言うことをよく聞いて。ね?」
女の子「う、うん。怖いよお姉ちゃん....」ウルウル
賢者「あ、怖がらせちゃってごめんね。でもとっても大事なことよ。」ニコ
女の子「うん、わかったよ。」
賢者「今、私やあなたのいるアレフガルドっていう世界はゾーマっていう大魔王のせいでみんなが希望を無くしているの。」
賢者「私はその大魔王を倒すために遠いところからやってきた勇者さまの仲間なの。」
女の子「ゆうしゃ?じゃああの悪者をやっつけてくれるの?」
賢者「そう。だからもうこんな暗いままの世界ともお別れできるんだよ。」
女の子「ほんとに?じゃあ町のお外にも遊びにいけるようになるの?」
賢者「うん、もちろん。」ニコ
賢者「だからあなたがもらったっていうそのお菓子は私達が悪者をやっつけるまで我慢できる?」
賢者「だって大魔王が怖いからってそのお菓子に頼るなんてヘンでしょ?」
女の子「そうだね。美味しいから食べたいけど...我慢する。」
賢者「うん、エライエライ!」ヨシヨシ
女の子「じゃあそうなるまでお姉ちゃんが預かってて。それなら私も大丈夫だから、えへへ。」スッ
賢者「ありがとう。じゃあお姉ちゃんがしっかり預かるから、悪者を倒したら真っ先にあなたに返しにくるね。」
女の子「絶対だよー。お姉ちゃんも頑張ってね、応援してるから。」
賢者「うふふ、ありがとう。いい子ね。」
女の子「ねえ、お姉ちゃんはなんていうの?」
賢者「あ、私?勇者の仲間の賢者だよ、よろしくね。」ニコッ
賢者はラダトームを出たあと、ルーラでマイラ、リムルダール、ドムドーラと巡りついにマイラの道具屋の主人が行っていた商人風の男の手がかりを掴んだ。
ドムドーラの牧場に住む少女がその男から、薬物入りのチョコレートをもらっていたのだ。
少女は数個を食べただけで、特に症状めいたものは見られないうえ、そのチョコレートを賢者に手渡したため心配はしなくてもよかったが、どこで小さな被害が出ているかわからない。
子供を利用し、徐々に大人にゆっくりと被害を広めていく卑怯なやり方に賢者は怒りを覚えた。
賢者はまだ唯一行っていない町、絶望に包まれたメルキドに向かった。
メルキドの町
賢者「……………なにか町の雰囲気がおかしい。」キョロキョロ
賢者「(明らかにこの前に来た時と違う、この町全体を覆う重い気は。)」
よたよた
町の男「あ、あんた。町の外からきた人か?へへへへ」
賢者「はい。そうですが。あの、ここは城塞都市メルキドですよね?」
町の男「ん~そんなことはどうでもいいんだ。あんたアレ持ってないか?」
賢者「アレ?とは。(この人、目の焦点があってない!)」
町の男「だーかーら!なんつったかな、ちょこらーと?とかいう甘い菓子だよ。」
賢者「!?」
賢者「(まさかと思ったけど...この町がターゲットだったのね)」
町の男「姉ちゃん、早く出せって言ってんだろうがぁ~!」バッ
賢者「くっ!?」ブツブツ
賢者「(深き眠りの底に落ちろ)『ラリホー!』」フワァ
男が突然襲いかかってきた
賢者はラリホーを唱えた
男はその場で眠り込んだ
賢者「ふう~びっくりした。」
賢者「(まさか襲いかかってくるなんて、かなりな禁断症状が出ているみたい。)」
賢者「(この町はただでさえ、他の町よりずっと住民が絶望しているのに、そんな心のスキに入り込んでこんなことを。)」
賢者「(あの男、いるかもしれない。探してみよう。)」ブツブツ
賢者「光よ我の姿を消したまえ『レムオル』」パァー
賢者はレムオルを唱えた
賢者の姿が見えなくなった
賢者「(これで余計なことに巻き込まれずにすむぞ、よし行こう。)」テクテク
メルキドの町 王の間
メルキド王「おぬしか、この町の者達の心に付け入り怪しげな食べ物をバラ蒔いていたのは。」
商人風の男「怪しげな者とは心外ですなぁ、王様。私はただ、町の皆さんに喜んでいただければと思い、タダで商品を配っているだけですよ?ふふふ。」
王「タダで配っている?しかし今、町の者はその食べ物を欲している。それでも貴様はタダでと言えるか?」
商人風の男「くっくっく。さぁてどうするんでしょうねぇ。私もすべてサービスしてしまっては商売にならないのでねぇ。」
王「いたずらに人々の心を操作してなにが楽しいのじゃ?ただでさえこの世界は今、ゾーマの恐怖によって支配されているのじゃぞ。」
商人風の男「すべては金のため、自分のため、他はどうなってもかまわない。くっくっく。」
王「ぐっ、なんて輩じゃ。して貴様の目的はなんなのだ?」
商人風の男「私はこの町を拠点にアレフガルド全土で商売がしたいのですよ。すでにこの町は私の意のままです。」
王「商売じゃと?貴様も人間だろう、ゾーマの恐ろしさがわからんのか?貴様も魔物に殺されかねんのだぞ。」
商人風の男「ふふふ、私はそんな者は怖くはありませんよ。私が殺されるなどということはありませんね、くっくっく。」
王「貴様は一体、まさか....?魔物と手を。」
商人風の男「くだらないおしゃべりはそこまでに願いましょうか。王様。」
商人風の男「私は今まで人を騙して騙して生きてきました。その度に、騙す者が強者、騙される者が弱者だと信じてきた。」
商人風の男「私はずっと強者のまま生きるのです。だから王様、あなたはそれを邪魔するのならここで消えてもらいます。」ジャキ
王「な、なにを。」
商人風の男「この町は私のものです。だからすみません、死んでください王様。」ギリギリ
バシュ!
バシュ!
バシュ!
男は構えたクロスボウをメルキド王に向けて発射した。
放たれた矢が王に向かって飛んでいく。
「氷よ!壁となれ!『ヒャダルコッ!』」
パキパキパキッ!
ピッキーン!!
ドスッ ドスッ ドスッ
王の目の前に突然分厚い氷の壁が出来上がった。放たれた矢は3本ともに氷の壁に刺さった。
商人風の男「な、なにぃ!?一体何が起きたぁ!?」キョロキョロ
賢者「お久しぶりね!商人さんっ!」バンッ!
商人風の男「久しぶり、だと?一体あなたは…」
男の問いかけを無視して賢者は王に駆け寄った。
タッタッタッ
賢者「王様!大丈夫でしたか?お怪我は?」
王「た、助かったわい…そなたはたしか。勇者どのの、お仲間の方。」
賢者「はい。その男を探していたところ、このメルキドの異様な雰囲気が気になって。」
商人風の男「一体あなたは誰だと聞いているのです!」
賢者「私は商人の町ホープバークの初代町長をしていた商人です。」
商人風の男「ホープバーク?というと、ああ、あの老人と若い女商人とが一緒に立ち上げた...
その赤い髪。覚えてますよ。あのお嬢さんでしたか。くっくっく。」
賢者「そう。あなたにまんまと騙されちゃったけどね。」
商人風の男「そのあなたがなぜ今こんなところに?町を追放でもされましたかねぇ。」
賢者「たしかに、私はその後クーデターを起こされて投獄された。でも追放なんてされていない。」
商人風の男「ほう。それは幸いでしたね。ただそのクーデターもね私が仕組んだんですよ。」
賢者「な?なんですって!?(あれは仕組まれていたの?)」
商人風の男「私が金で雇った男達でねぇ。巧みにあの町に潜入させてたというわけですよ。くっくっく。」
賢者「……ふう。……まああの時のことは今はいいの。騙された私も悪かったしね。
ただあなたが今やっていることは許せない!」
商人風の男「許せない?ふ、まあそうでしょうな。ただこれが私の唯一の正義なのですよ!」
賢者「このアレフガルドに来て、ある町であなたの噂を聞いた。
賢者になっても商人だったあの時のことだけは頭から消すことはできなかった。」
商人風の男「ワケあって今はあの勇者さまご一行というわけですか。ご立派に賢者さまになられて。」
賢者「ふざけないで。ドムドーラの女の子に言葉巧みにあんな危ないチョコを食べさせるなんて。」
商人風の男「!?なに。あのチョコの秘密を知っているのか?」キッ
賢者「詳しくはわからないけど、魔法で危険なものかどうかだけは判断がつく。賢者をナメないことね。」
賢者「あの中には毒か薬物が入っているんでしょ?しかもゆっくり効くようにごく微量に。」
商人風の男「チッ!まさかこいつに気が付く野郎がいたとはな。ああ、そうさ!最初はなんともないが
何個も食べれば知らずのうちに禁断症状が出てくる。そうなれば俺の思うツボさ。」
賢者「この町の皆の大半に禁断症状が出てる。この絶望の町メルキドをターゲットにしたのね?」
商人風の男「そこまでお見通しとはね。この町の人間は強い絶望感に苛まれてる。
そこに付け入り、甘い話をもちかけてやれば軽くコロっとさ、くっくっく。」
賢者「王様。この世界では犯罪者は捕まるとどうなるのですか?」ヒソヒソ
王「うむ。ラダトーム城内の牢獄に入れられるのが通例じゃが……」ヒソヒソ
商人風の男「なにをヒソヒソ話をしている?まさか俺を捕まえようなんて考えてるのかい?」
賢者「ええ。そのまさかよ。あなたを拘束します!」サッ
商人風の男「拘束だと?ふざけるなぁ!!」バッ
賢者「(あれは?爆弾石?)」
商人風の男「貴様らまとめてぶっ飛ばしてやるわ、食らえ!!」ビュン
王「ひいぃぃぃ~~!!」
賢者「王様!伏せてっ!!(間に合うか!)」ブツブツ
賢者「聖なる光よ、我らを包め『フバーハ!』」パアァァー
男が投げた3つの爆弾石が賢者と王の目の前に転がり、直後爆発を起こした。
ドッゴーーーーン!!!
ズドーーーーーーン!!
パラパラ カラン.....
王「く、むうう。ワシはぶ、無事なのか?」キョロキョロ
賢者「……………」
王「け!賢者どの!?大丈夫か?」
賢者「んん...くう。お、王様はご無事ですか?」ハァハァ
王「ワシは大丈夫じゃ、賢者どのが庇ってくださったのでな。それより賢者どのが....」
賢者「私もなんとか大丈夫です...フバーハのおかげで致命傷は避けましたから。」ブツブツ
賢者「我らの傷を癒せ『ベホマラー』」パァ
賢者はベホマラーを唱えた
王と賢者の傷が治ってゆく
王「お。おおお、傷が治ってゆく。」
賢者「けっこう危なかったなぁ。それよりもあいつはどこに?逃げたの?」キョロキョロ
メルキドの町 郊外
商人風の男「はぁはぁ。俺まで巻き込まれるところだった……」
商人風の男「だけどあいつら、爆発をモロに食らったな。ありゃあ死んだな、へへへ。」
商人風の男「(一度どこかに隠れてほとぼりが冷めるまでは大人しくしているか。)」
賢者「待ちなさい!あなたは逃げられない!」
商人風の男「なっ!貴様!あの爆発をモロに食らって生きてるだと?」
賢者「不意打ちで危なかったけどね。死ぬかと思ったよ。」
商人風の男「普通の人間である俺じゃああんたにゃ敵わないようだな。」
賢者「もう無理だよ。観念しなさい!」キッ
商人風の男「人間ならなあぁ!」ピィーーーー!「来い!魔物たちよっ!!」
男は口笛を吹いた。
遠くより魔物が大量に押し寄せた。
賢者「なんですって!?あなたまさか、魔物と手を組んだっていうの?」
商人風の男「その通り!俺は魔物と契約したのだ。はっはっは!」
商人風の男「大魔王ゾーマの城で待っているぞ。そいつらを全部倒せたらの話だがなぁ!」
男はドラゴンの背に乗り、立ち去っていった。
賢者「ま、待てぇ!(数が多すぎる!いくらなんでもこの数は…)」
魔王の影ABCDEがあらわれた
マクロベータABCDEがあらわれた
メイジキメラABCがあらわれた
ラゴンヌABCDがあらわれた
サタンパピーABCDがあらわれた
マドハンドABCDEFGHIJKがあらわれた
ヒドラABCがあらわれた
賢者「ただ、逃げることもできないみたいね。やってやる!」ブツブツ
賢者「炎の精霊よ!猛り狂え!『ベギラゴーン!!!』」
賢者「風の精霊よ!刃となりて切り裂け!『バギクローース!!!』」
賢者はベギラゴンとバギクロスを唱えた。
炎が風に乗り勢いが何倍にもなり魔物達を襲う。
ドゴオォォォォ~~~~!!!
ビュオォォォ~~~~!!!
魔王の影ABを焼き尽くした
マクロベータADEを焼き尽くした
メイジキメラABCを焼き尽くした
ラゴンヌADを焼き尽くした
サタンパピーCDを焼き尽くした
マドハンドABCDEを焼き尽くした
ヒドラCを焼き尽くした
賢者「はぁはぁ。戦士と武闘家に教わった合体呪文はスゴイわね。でも.....」
賢者「も、う魔力が尽き、ちゃった、みたい…(ここまでかな私。)」バタッ
賢者はその場に倒れこんだ。
残った魔物達がじわりじわりと賢者に近づく
賢者が動かないのを確認すると魔物達は一気に賢者に襲い掛かった
その時、勇敢なる詠唱の叫び声が響いた
「天なる轟よー!裁きの雷となり降り注げーっ!!」
『ギ ガ デイィーーーーーン!!!』ピカァ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!
ドッシャアァァァァーーー!!
バチバチバチ!!!
シュウゥゥゥ~~~
魔物達全頭が豪雷により一瞬で焼け死んだ。
勇者「賢者!大丈夫?ダメだよ無理しちゃあ~~」ペシペシ
賢者「………ん。ううん。………」スゥ
勇者「(よかった。ただ魔力の使いすぎと体力の消耗が激しいだけだね。)」
勇者「とりあえず。ラダトームに戻らなきゃね。」ブツブツ
勇者「天よ繋がれ!『ルーラ!』」
勇者は賢者を背負い、ルーラを唱えた
賢者がメルキドの町に着くとほぼ同時刻
マイラの町 温泉
戦士「きぃもちイイ~!生き返るわ~。」チャプ
戦士「こんなのいつぶりかしら?まだ勇者達と旅に出る前か。」
戦士「早いなぁ、もう少しでこの旅も終わる...」
戦士「(生きて帰れればだけど、ねぇ。)」ブクブクブク
戦士はふと自分の両腕を見た。
戦いでついたと思われる深目の傷が無数にあった。
戦士「(あ、こんなところに傷が。)」
戦士「はぁ~」
戦士「(戦士になってから体も強くなったけど、傷が増えたわね。仕方ないか。)」
戦士「(アリアハンに帰ったら、どうしようかな。それかレーベの師匠のところでまた働こうか。)」
女番頭「お客さま~。お湯加減はいかがですか~?」ヒョイ
戦士「きゃあ!びっくりした。女将さんか~(覗きかと思った)」ドキドキ
女番頭「ああ、ごめんなさいね。ついいつもの癖で。」
戦士「湯加減、ちょうどよくて最高ですよ。こんな温泉は滅多にないかな。」
女番頭「そうですか、よかった~。お客さまは今日はどちらから?」
戦士「あ....あの上の世界からなんです。」
女番頭「え?上の世界から?じゃあお客さまはもしや、勇者さま?」
戦士「え、ええまあ。私は勇者の仲間です。」
女番頭「ホントッ?きゃー!最近噂になってて凄いんですよ。」
戦士「私達がですか?(案外有名人なんだな私達。)」
女番頭「ええ、それはもう!このアレフガルドを救う『希望の勇者』って。」
戦士「希望の勇者...そんな噂が。」
戦士「(悪い気はしないけど、なんか恥ずかしいわよね。)」
女番頭「その勇者さまのお仲間さんがこの温泉に来てくれるなんて~。」
女番頭「よ~し、見てなさいよ。隣の温泉の年増女将め、このことを上手く利用して、
ここをもっと宣伝して.....」ブツブツ
戦士「(………商魂逞しいわね。賢者もたまにああなるし。)」
戦士は温泉をたっぷり満喫したあと、温泉宿の食事処で食事をこれまた満喫していた。
食事時というのもあり、食事処はけっこうな人で賑わっていた。
戦士が運ばれてきた食事を食べている時にふと近くの席から男達の話し声が聞こえてきた。
マイラの町 温泉宿食事処
男A「なあ、それよりも知ってるかよ?」
男B「あん?なんのこった?」
男A「町外れに住んでる男Cのさ様子がおかしいんだよ。」
男B「あいつの様子のおかしいは今に始まったこっちゃねーだろが。」
男A「いや、そういうことじゃなくてな、ラリってる感じで。」
男B「おい、それって。なにかヤバい薬でもやってんじゃ?」ヒソヒソ
男A「なんでも近所のガキにもらった食い物を食べはじめてかららしい。」
男B「ガキの食い物?ホントか。それか魔物かなんかが関わってたりするんじゃねぇのか。」
男A「ん。まああいつはゾーマがここを支配してから特にやる気
をなくしちまったというか、塞ぎ込んでたしなぁ。」
男B「だな。あ~あ、早く噂の勇者さまってのがゾーマを倒してくれないもんかね。」
男A「ムリに決まってんだろ?なんでも勇者以下、全員20にもいかない女の子だっていうぜ。」
男B「ああん?じゃあさすがにムリだよな、そんな色気もねぇようなお子様達にゃあよ。」
男A「ちげえねえ、はっはっはっ~!その辺で転んで『いったぁ~い』なんて言ってるのがオチだな。」
プッツン
ガタンッ!
戦士「あんた達、さっきから人が黙って聞いてると思って。」キラッ
男A「うわっ!なんだよいきなり!ヒィッ!」
戦士は右手に持った剣を男Aの喉元に突き付けた。
男B「なんだ?この女!やんのか、オラァ?」
戦士「やめたほうがいいわよ、私を怒らせたあんた達が悪い。」ブツブツ
戦士は左手を男Bに向けて広げ、何やら魔法を唱えようとしている。
男B「な、何の真似だ?そんなんで俺が怖じけずくとでも...」
ボッ!!
戦士の左手にメラミの炎が浮かんだ。
戦士「あんたの顔面をこの炎でめちゃくちゃにしてあげてもいいのよ。」
男B「ひっ!や、やめろぉ。いや、やめてください!」ガタガタ
戦士「撤回しなさい。」
男達「はい?」フルフル
戦士「私はバカにされてもいっこうに構わない。でも私の仲間をバカにするのは許さないわ。」
男達「は、はい。本当にずびまぜんでじた……」ポロポロ
戦士「わかってもらえて嬉しいわ」ニカッ
男達「ひいぃぃぃ~~!」ダダダッ
男達は一目散に逃げ去った
………シーン………
戦士「あっ!」
戦士「(やっちゃった!)」アセ
戦士「ご、ごめんなさーい。あの、ごちそうさまでした~!」ササッ
戦士も一目散に立ち去った。
マイラの町 町中の公園
戦士「はああ~、またやっちゃった。」ボソボソ
戦士「(よかった。今回は私だけで。)」
戦士「(でもあの男達が最初に言ってた話、気になるわね。)」
戦士「(こっちの世界でもそんなヤバいものが出回ってるなんてね。)」
戦士「(そういえば師匠が言ってたわね、『薬物は魔物の手によって精製する方が容易じゃ』)って。」
戦士「ま、いいか。とりあえずゾーマを倒してからよね。」
戦士「もう少し、町を散策してみようかしら。」テクテク
戦士は再び、町中に歩いていった。
こちらも賢者がメルキドの町に着くのとほぼ同時刻
ラダトームの城 図書館
武闘家「あの、新聞閲覧させていただいて助かりました。ありがとうございます。」ペコリ
司書「いえいえ。いろいろとこちらの世界のことはわかったかしら?」
武闘家「はい。アレフガルドもそれぞれの大陸でいろんなことが起きてるんですねー。」
司書「ラダトームも今の王様が王座に就く前はね、まったく違う家系の王様だったのよ。」
武闘家「え?あの王様は今の家系では初代なんですか。知らなかったなぁ。」フムフム
司書「ふふふ、あなたって好奇心旺盛なのね。」
武闘家「私は『知る』って凄いことだと思うんです。
本から得る知識って頭に染み込むから忘れないですし。」
司書「そうよね。私も本が好きだからこの仕事をしてるんだけどさ。日々発見があるわ。」
司書「ただ、以前はここも沢山の人で賑わっていたんだけど、すっかり今は...見ての通り。」
司書が言う通り、アレフガルド最大の規模を誇るこの図書館も今や人がほとんどいないのだ。
武闘家「………ゾーマのせいですね。私以外には数人がいるだけです。」
司書「そう。あいつのせいで、みんなの楽しみが奪われてしまった。」
武闘家「司書さん....」
司書「勉強をしにくる人、読書をしにくる人、寝にくる人、
のんびりしにくる人、みんな来なくなった。」
武闘家「私も大好きな空間である図書館が、こんな景色なのは悲しいです。」
司書「だからあのゾーマが憎くてたまらない。武闘家さん、
押し付けちゃうのは心苦しいけどゾーマを絶対に倒してね。」
武闘家「まかせてください!明日、私達はゾーマの城に乗り込むつもりです。」
司書「そっか。死んじゃだめだよ。またあなたとここで話がしたいわ。」
武闘家「私もです!えへへ。」ニコッ
司書「じゃあ、私はちょっとお昼を食べてくるわね。」
武闘家「あ、私も外に行って食べてきますね。また後でお邪魔します。」ペコ
武闘家「(こっちの人は暗くてもお昼の時間がわかるんだな。慣れちゃったのかな闇に...)」
武闘家は人がいなくなった図書館を出て、町中に向かった。
ラダトームの町 宿屋の食堂
店員「いらっしゃーい。」
武闘家「1人分ランチお願いしま~す。」ビッ
店員「はい。ランチひとつねー。」
武闘家「(まだみんな帰ってないみたい。私だけか、少し寂しいなぁ。)」
武闘家「(勇者さまも賢者さまもどこに行ったかわからないし。戦士と温泉に行けばよかったかなぁ。)」
店員「は~い、お茶をどうぞ。」トン
武闘家「ありがとうございます。頂きます。」ズズ
武闘家「(あったかくて美味しい~!あ~やっぱり温泉にしとけば....ん?)」ジー
武闘家「(なんだろ、あれ?)」
武闘家がふと目をやった掲示板にずいぶん目立つ紙が貼ってあった。
目を凝らしても見えないので立ち上がって掲示板のところまで行こうとしたがちょうどランチが運ばれてきた。
店員「はい、お待たせしましたー。特製ランチです。」トン
武闘家「あ、すみません。ありがとう。」
武闘家「(食べ終わったら見に行ってみるかな。)」
武闘家「では。いただきま~す!」ペコ
ぱく
モグモグ
ぱくぱく
モグモグ
武闘家「(………イマイチ。賢者さまの食事がたまには食べたいなぁ。)」
ズズズズ
ごくっ
武闘家「(……スープも微妙ね。賢者さまの野菜スープ美味しかったな~)」
武闘家は心の中でも文句を言いながらランチを食した。
武闘家「(まあまあだったけど)ごちそうさまでした!」ペコ
武闘家は掲示板に近寄っていった。大きい掲示板に1枚だけ貼ってある紙をまじまじと見てみた。
《不審者の情報求む》
近頃、ここラダトームのみならずドムドーラなど各地で
商人を騙った不審者の目撃情報が寄せられています。
不審者の男は主に子供を狙い、話かけてはお菓子をあげる
という怪しい行動をしています。子供がいる親御さんは特に
注意を払ってください。
男の特徴は背丈は約180ほど
年齢は不明(20歳~40歳?)
頭に白いダーバンを巻き
いかにも商人という衣服を着て
いるが上から黒いロングコートを羽織っている。
顔は穏やかだが、絶えず口元に笑みを浮かべている
以上の特徴を持った男をもし見かけたらすぐに連絡を!
ラダトーム城 警備隊 まで
武闘家「なんなのこれ?」
店員「ああ~、それね。なんでもアレフガルドの各町に出没してるみたいなんだよな。」
武闘家「そうなんですか。このラダトームでも目撃されているんですか、この男。」
店員「みたいだね。ここに書いてあるように子供に話かけていたって話さ。」
武闘家「気味が悪いですね....」
店員「どこかで店を出すわけじゃなく、こんなことして。コイツ何考えてんだろねぇ。」
武闘家「(怪しいやつ………)」
店員「あんた達、勇者一行が取っ捕まえてくれよ。ゾーマ倒すついでにさ。」
武闘家「へっ?私達がですか?」パチクリ
店員「あんたらかなり強いだろ。俺、この前、たまたま町の外に
用事があって出た時にキメラの集団をバッタバッタと倒すあんたらを見たんだよ。」
武闘家「あ、私達が戦ってるの見たんですか?恥ずかしいな。」
店員「あんたも身なりは小さい武闘家だけど、キメラより早い動きで攻撃も凄かったからな。」
店員「と思ったら、いきなり炎の魔法とか使ってたからな。この子らならゾーマ倒してくれるかもって思ったわけよ。」
武闘家「(へぇ。私達って案外見られてるんだなぁ。)」
武闘家「じゃあ期待していてください。きっとゾーマを倒しますから。」
店員「おう、頼りにしてるぜ。」
ラダトームの町 宿屋 武闘家と戦士の部屋
武闘家「長かった旅ももう終わりか~。」ボソ
武闘家「大魔王ゾーマ...倒せるかな私達に。」
武闘家「(みんなの前じゃ強がってるけど、ホントは不安だらけだし。)」
武闘家「(でもここまで来たら、当たって砕けろ、かなぁ。)」
武闘家「(もしアリアハンに帰ったらどうしよう?)」
武闘家「(僧侶に再再々転職して教会に戻るか。)」
武闘家「(このままで旅人さんのお母さんがやってる武術道場で働かせてもらうのもいいかも。)」
武闘家「(そうだ!司書さんにも相談してみよっかな。さて図書館に戻ろう。)」ダッ
バタン
武闘家は再び図書館に遊びにいった。
一方こちらは賢者がメルキドに着く2時間ほど前
ルビスの塔 最上階
勇者「あ~やっぱりここは気持ちいいや~。風がそよいで、ボーっとするには持ってこいだね。」
勇者「よっこらせ、と」ゴロン
勇者「戦士は温泉ゆっくり楽しんでるかな。温泉に入って美味しいご飯を食べて、たまらんねー。」
勇者「武闘家は読書家だから、今頃図書館で目をキラキラさせてるんだろうな~。私は読書は苦手だけどねぇ。」
勇者「賢者....はどこに行ったのかな?昨日の賢者の顔、暗かった。なにか考えてる顔してたし....」
勇者「(マイラで道具屋のおじさんから話しかけられてから、明らかに賢者は。)」
勇者「頭が良くて慎重派の賢者のことだから、大丈夫だとは思うけど...」
勇者「なにか引っかかる。それになんだろう?この胸騒ぎは。」グッ
勇者「でも、私も眠~くなってきたなー。ふわ~あ。」ゴシゴシ
勇者「(みんなのおかげでここまで来た。明日は力合わせて頑張ろう.....)」スゥ
勇者「すーすー」
勇者「zzzzzzzzz~~」
勇者はあまりの心地良さに眠ってしまった。
それから2時間後
ルビスの塔 最上階
勇者「…………う、う~ん。」
勇者「ふぁあ~。寝ちゃったみたい。どのくらい寝たかな。」カパッ
勇者は懐中時計を取り出した、勇者の父親の形見の懐中時計は鈍く光っている。
時計を見ると長針が2時間分程度進んでいた。
勇者「2時間も寝ちゃったのか私。」
ドクン!
勇者「!?」グッ
勇者「(な、何?今の鼓動。)」
ふと勇者は自分の胸のあたりを見た。
すると首から提げていた聖なるお守りが光っていた。
勇者「お守りが光ってる?これはどうなってるわけ?」カチャ
勇者は聖なるお守りを握り締めた。
すると勇者の頭の中に声が聞こえてきた。
『勇者よ。定めの勇者よ。』
『はじめまして、私はルビス。精霊ルビス。』
「あ、あなたが精霊ルビスさま?」
「私はゆ、勇者です。ルビスさまがどうして?」
『危機を告げるためです。』
『今、このアレフガルドでなにかが起きようとしています。』
「危機?どこでですか。ゾーマの城ですか?」
『いいえ。また魔物のそれとは違うようです。』
『これは、人間。にわかに信じたくはありませんが。』
「人間って、私達と同じ人間ですか?」
『そのようです。それに...』
『あなたの仲間がそこにいます。』
「!?」
「きっと賢者だ!!私の胸騒ぎの正体はこれだったんだ!!」
『勇者よ、助けに行っておあげなさい。』
「ルビスさま!場所はわかりませんか?」
『南の地、としかわかりませんが。』
「(南?メルキドの方か!)」
「ルビスさま、ありがとう!すぐに行きます!」
『頼みましたよ。勇者よ。』
勇者は目を明け、握り締めていた手を広げた。
勇者「(よくわからないけど、賢者が危ない。)」
勇者「(2人に声をかけからじゃ遅いよね。私が行く!)」
勇者「(無事でいて、賢者。今行くよ。)」ブツブツ
勇者「『ルーラッ!』」ヒューン
勇者はルーラを唱えた。
メルキドの町 入口
キーーン!
スタッ
勇者「とりあえずメルキドの入口に来たけど、なんなのこの空気は....」
勇者「ん?しかも町の人が眠らされてる?」
勇者「(賢者の仕業?だったらなぜこんなことを?)」
勇者「これほどの広範囲にラリホーを分散させるとなるとかなりの魔力を使ってるはずだ。」
ヒュー
勇者が賢者を探そうとして町に入ったその時、
風の音が勇者の耳に入った。
ふと町とは逆の方角を振り向くと少し遠くで竜巻の欠片を見た。
勇者「あれは!?」
勇者「(賢者のバギクロスだ。)」
勇者「あっちだ!」ダッ
勇者は賢者がいるであろう場所に向けて全力で走った。
メルキド 近くの平原
勇者「(賢者!)」ダッ
勇者「(あれは!魔物!)」
ピタッ
ガササッ
勇者は平原を見渡せる巨大樹の枝の上に隠れた。
勇者「な!魔物があんなに!」
勇者「(それでも賢者が数を減らしたんだろうけど...)」
勇者「(あんなに一斉にに魔物が出るなんておかしい!誰かが手引きしたとしか。)」
勇者「(それより賢者はどこに?)」キョロキョロ
勇者が魔物達の多さに驚く直後に賢者の姿を探した。
すると剣を片手に、うつ伏せで倒れている賢者を見つけた。
衣服は汚れ、ところどころボロボロになっている。手や足にも血が滲んでいた。
賢者は倒れたまま動かない。
するとそれを認めたのか遠巻きに様子を見ていた
魔物達が一斉に賢者に飛びかかった。
勇者「(まずい!)」
勇者「(くそッ!こうなったら!)」バシュッ!
勇者「うおぉぉぉー!」
勇者「天なる轟きよー!」
勇者「裁きの雷となり、降り注げーっ!!」
『ギ ガ デイィーーーーーン!!!!』
ピカァ!
勇者は天高くジャンプし、詠唱した。
勇者はギガデインを唱えた!
上(表)の世界
ホープバーク 町長の家
旅人「お久しぶりだねー2人とも!」
町長「おや?あなたは。どこかで見たことが...」
老人「その声、しゃべり方。」
旅人「ふっふっふ。」
町長「ああ!武闘家さんじゃないですか?」
老人「むう。そうじゃそうじゃ、武闘家じゃないか!」
旅人「やっとわかったか~。まあ、たしかにこんな旅人の服じゃあわからないよね。」
町長「あの緑色の武闘着のイメージが強かったんで、わからなかったなー。」
老人「そういえばお前だけか?」
旅人「そうだよ。ちょいワケありってやつだよ。」チッチッ
旅人は今はホープバークの町長を務める青年と老人に、商人がここを離れてから、今までについてすべてを話した。
商人が自分の代わりに勇者パーティーに入ったこと。
さらに商人が賢者に転職したこと。同じく転職した仲間達のこと
自分は今、1人で世界中を旅していること
大魔王ゾーマ出現により下の世界アレフガルドが存在したこと
そして大魔王を倒すために勇者達がアレフガルドにいること
町長と老人は旅人の話を真剣に耳を傾けていた。
旅人「と、まあこんな感じかなー。」
老人「大魔王などというやついたか。勇者達も休まる暇ないのう。」
町長「商人さんが勇者パーティーに。しかも賢者になっていたなんて....びっくりしました。」
旅人「青年くんてば、私や勇者達のことよりも商人のことばかりだねーへへへ~。」
町長「え。い、いや。そういうことじゃなくて、た、ただ僕は、商人さんが心配で。」アタフタ
旅人「(わっかりやすいなー青年くんは。)」ニヤニヤ
町長「武闘家さん。なんですかそのにやけ顔は。」
旅人「なーんでもありません。」
老人「ところでお前はこれから?まだ旅を続けるか?」
旅人「もうホープバークが最後に来た町だよ。とりあえずここが終着点みたいなんだけど....」
町長「…………行くんですね、アレフガルドに。」
老人「なっ?そうなのか武闘家?」
旅人「うん。」コクッ
旅人「私自身、この世界中を廻ったんだけど、なにか満たされない気持ちなんだ。」
旅人「自分を見つめ直したら、わかったんだ。」
旅人「私は勇者達と一緒に戦いたい、ってね。私は私にしかできないことがあるかもしれない。」
旅人「あとね、勇者達の忘れ物を届けにいかないといけないんだなー。」
町長「忘れ物?」
老人「なんじゃなそれは?」
ゴソゴソ
旅人「これでーす。」キラッ
町長「水晶玉ですか?ただの玉じゃなさそうだけど。」
老人「なにかとんでもない力秘められてるとか。」
旅人「そうなんだよね。詳しくは言えないけど、なぜか私がパーティー
から抜けた時に私の道具袋に入っててそのままだったんだ~。」
旅人「(てか、なんで誰も気がつかないんだろうね~)」
旅人「(竜の女王の形見みたいなものだし。)」
旅人「(勇者も真性のおっちょこちょいだもんねぇ。)」
旅人は旅を終わらせ、再び勇者達に合うためにアレフガルドに向かうのだった。
あとホープバークから旅立つ際に町長から手紙を託された。
町長「武闘家さん、すみませんがこれを商人さんに渡してくれませんか?」スッ
旅人「なに、手紙?」
旅人「ねえねえ、青年くん。これはアレなのかな、いわゆる~まさかの~」ヘラヘラ
町長「茶化さないでくださいよ、武闘家さん。そのまさかです!」キッパリ
旅人「おお~男らしいね。青年くんは商人のこと好きなんだもんね!」
町長「僕の思いを書いてます。よろしくお願いします。」ペコ
旅人「わかった!必ず渡すから。」
旅人はギアガの大穴めざして、町を出ていった。
無事に旅人は勇者達に合流できるのか。
一方、勇者達は……………
ラダトームの町 宿屋
『……さま』
賢者「…………ん」ピク
『けんじゃさま!』
賢者「…………ん。ううん。」モゾ
賢者「はっ!?」ガバッ
賢者「わ、私。どうして...」
武闘家「賢者さまっ!よかったぁ~」ヘタ
賢者「武闘家...私は一体。魔物たちと戦って...」
勇者「気を失ってたんだよ、賢者。」ツカツカ
賢者「勇者。まさかあなたが助け」
パンッ!
部屋にかわいた音が響いた
武闘家「あっ!ゆ、勇者さま...」
賢者「ゆうしゃ?」
勇者「バカッ!すっごく心配したんだよ!私が行かなかったら賢者死んでたんだぞ!」
勇者「私は今日、ずっと胸騒ぎがしてた。理由はわからなかったけど。でも昨日の賢者の浮かない顔がずっと心の中で引っ掛かってた。」
勇者「起きてからあなたは何も言わずにそそくさと先に出てった。私も賢者は修行を沢山積んで強くなったから大丈夫かなって思ってたんだよ。」
勇者「でもまさか戦いの場に行ったなんて思わなかった。メルキドに着いて倒れたあなたを見た瞬間、背筋が凍ったみたいに心臓がバクバクしたよ!」
賢者「……………」
勇者「私達は単なる友達なんかじゃない!お互いに命を懸けて魔王を倒すために支え合って頑張ってきた仲間でしょ!」
勇者「私に、ううん武闘家や戦士でも構わない。どうして一言も相談してくれなかったの!」
勇者「私は勇者だ。魔王を倒す使命を背負ってる。だけど1人じゃ怖くてなんにもできないよ!だからみんなが一緒にいてくれて本当に嬉しかった。」
勇者「みんながいてくれたおかげで私はここまで来れた。そんな大切な仲間を絶対に死なせたくないよぉ。」グズ
武闘家「(勇者さま...)」グス
勇者「なのに....私....えっぐ、うう、うわぁぁん」ポロポロ
賢者「(私はなんてバカなんだ...1人で勝手にしょいこんで、心配してくれてた勇者を....)」
賢者「(あの時となんら変わらないじゃない。くそっ。)」
勇者「………でも。」グス
賢者「?」
勇者「賢者が無事でよかったぁ、ほんとにほんとによかった。」ニコッ
賢者「あっ。勇者っ!」ダッ
ガシッ
賢者「心配してくれてありがとう!助けてくれてありがとう!ごめんね勇者!」ポロポロ
勇者「へへへ。どういたしまして。」
賢者は勇者を抱きしめた。
武闘家は涙をこぼした。
ガチャ!
戦士「ただいまー!温泉最高だったわよーみんな。」
戦士「お肌なんてこんなにツルツルに....ってあれ?どうしたの?勇者と賢者で抱き合っちゃって?」
武闘家「………バカ。せっかくの感動のシーンなのに。」ジロリ
戦士「え?バカ?なんのシーン?」ポカン
勇者「おかえり~戦士。お風呂よかったみたいだね!ほんとだ、肌ツルツルだね~、
触らせて触らせて~!ほら賢者も触ってごらんよ。」プニプニプニプニ
戦士「あ、こら。必要以上に触らないっ!」
賢者「うん!触る~(ありがとね勇者。)」
勇者は賢者を背負い、ラダトームに帰ってくると、ちょうど図書館から忘れ物を取りに戻ってきた武闘家と鉢合わせた。
すぐに賢者を宿屋のベッドに寝かせ、魔力回復のため魔法の聖水を飲ませながら2人で回復魔法を施したのだった。
戦士がマイラから戻り、バカと言ったか言わないかで武闘家と一触即発になるも、勇者と賢者の仲裁により事なきを得た。
そして間を置いた後、賢者が今日の出来事を話し始めた。
武闘家「そ、そんなことがあったなんて。私全然...」
戦士「なんか私だけバカみたいにくつろいでたワケね。」
武闘家「本当にバカだからでしょ...」ボソ
戦士「なんですってぇ...」
勇者「はいはい、や~め。」ギロッ
賢者「(あ、ははは。)」
武闘家「あの、賢者さんがホープバークにいた時に会ったという男と今日会った男は同一人物なのですか?」
賢者「そうだよ、見間違うことなんてないよ。」
武闘家「その男は背が高く、いかにも商人風の格好なのに黒いロングコートを着ていますか?」
賢者「そうだけど。武闘家、その男を知ってるの?」
武闘家「いえ、私はこの宿屋の食堂の掲示板に不審者に注意を促す貼り紙をしてあったのを見たんです。」
勇者「そうなんだ。えらく異様に目立つ格好だよね、そいつ。」
賢者「あの男、各地で怪しい動きをしてるみたいね。メルキド以外じゃ被害は出てないみたいだけど....」
戦士「いや、賢者の言う被害はマイラでも出てるかもしれないわ。」
賢者「え?マイラで?」
戦士「私がある男から聞いた話だと、その男の知り合いが最近
薬物でもやってるんじゃないかってくらいおかしくなってるそうよ。」
武闘家「怖いですね、それは。」
戦士「近所の子供からなにやら菓子をもらって、それを食べるようになってかららしいわ。」
賢者「やっぱり。子供を巧みにそそのかしてチョコを渡していたんだ。」
勇者「チョコ?それってチョコレートのこと?」
賢者「そう。勇者達がポルトガで食べたことがあるって言ってたあれのこと。」
武闘家「すごく甘くて美味しかったですよねぇ~。また食べたいです私。」
戦士「私はあれ、苦手。甘いのダメなんだ。」
賢者「(あ!そうだ。)」ガタ
ガサゴソ
勇者「どうしたの賢者?」
賢者「(あった!)」サッ
賢者はチョコレートが入った箱を取り出した。
武闘家「あ。チョコレートじゃないですかー!賢者さまが持ってたなんて。」ダラ
賢者「だーめ。これは私がドムドーラの女の子から預かってるの。しかもチョコの中には何かしらの薬物が入ってる。」
武闘家「へっ?こ、この中にですか!」ゾク
賢者「インパスで視てみたら赤く光ったからね。戦士、どう思う?」
戦士「間違いないと思う。インパスは人間が編み出した魔法。故に人間に悪影響を及ばすものに反応して赤く光るのよ。」
賢者「そんなものを子供達に食べさせて、それを見て取り上げた親や大人が食べる。」
戦士「知らず知らずに禁断症状が出はじめるってわけね。それを利用して人々を意のままに。」
勇者「絶対に許すわけにはいかないね、その男。」
賢者「ただ...」
武闘家「ただ?」
賢者「あの男、あろうことか魔物と契約したみたい。現にドラゴンの背に乗っていたし。」
賢者「『ゾーマの城で待っているぞ』って言ってた。」
戦士「なんですって!!」バッ
勇者「私が賢者の所に着く、ほんの少し前だね。あれほどの数の魔物を呼び寄せるのはたぶん...」
武闘家「かなりの位の、もしかするとゾーマ直属の配下クラスの魔物と契約したのではないでしょうか?」
戦士「その可能性はかなり高そうね、厄介な話だわ。」
賢者「……………(それでも)」
賢者「それでもやるしかないよね。どのみちゾーマを倒さないと世界が滅んでしまう。」
勇者「そうだね。私達の使命を果たす時がやっと来たんだ。みんな!やってやろう!」
武闘家「はい。最後の戦いになるんですね。私もすべての力を出して戦います!」
戦士「もうここまで来て後悔はないわ。ゾーマを倒して世界に平和を取り戻す。」
賢者「失敗だらけだったけど、それを糧に私は振り向いたりはしない。私の今をすべてを賭ける。」
賢者「(旅人...あなたは今どこにいるのかな?ゾーマを倒してあなたに会いに行くからね。)」
賢者「(おじいちゃん、青年さん...生きて、今度は胸を張って町に行くよ。)」
賢者「(お父さん...何度も家を開けてごめんね。これが終わったらちゃんと帰るから。)」
勇者達は明日の最終決戦に向け眠りについたのだった。
翌日
勇者達はまだ町が寝静まっている時間に町を出て、リムルダール南にある聖なるほこらに行った。
そこで太陽の石と雨雲の杖とが合わさることで作られる虹の雫を手に入れた。
リムルダール最西端の海岸で虹の雫を垂らし、出来た橋を渡り、ついにゾーマの城にたどり着いた。
闇の力が一段と強く感じられるが、4人は臆することなく城内に入っていった。
ゾーマの城 入口
ギィー
バタン!
勇者「中は明るいみたいだね。空気は半端なく重いけどさ。」
戦士「案外見た目は普通の城みたいだけど、油断しちゃだめよみんな。」
武闘家「了解。」
賢者「後ろはまかせて!」
バルログA『キシシシシシ。貴様らニンゲンか?何しに来たんダ?』
勇者「ん~と。ゾーマを倒しにね。あんたが道案内でもしてくれるの?」
バルログB『ゾーマさまを?キシシシ、愚かな。貴様らニンゲンにそんなこと...オ』
バシュ!
ズバッ!
戦士の攻撃
武闘家の攻撃
バルログAを真っ二つにした
バルログBを一突きした
魔物達をやっつけた
勇者「魔物のくせに口が達者だね。嫌われるよ。」
武闘家「先手。取らせてもらいました。」
戦士「雑魚ね。」スッ
賢者「先制攻撃、すごいわ二人とも。」
勇者達はそれまで付けた実力をいかんなく発揮し、次々と現れる魔物達を倒していった。
武闘家が持ち前の素早さで爪の武器を振りかざし先制すると。
賢者がルカナンやバイキルト、マヌーサといった魔法で補助役に徹し。
勇者と戦士が各々の最強の剣で魔物にとどめを刺す。
時折、攻撃魔法も使い、戦いを優位に進めていった。
しかし、下に降りる階段がどこにもない。勇者達は一番奥の王座の間を調べていた。
ゾーマの城 1階 王座の間
勇者「おかしいなぁ。この部屋が一番奥なのに階段ひとつないなんて...」
賢者「他の間も全部見たけどね、ここもないのかな。」
武闘家「困りましたね。全部見れそうなところは見ましたけど。」
戦士「玉座の回りはバリア張ってあるしね。危ないわ。」
賢者「(バリア?まさか。)」ダダッ
賢者「ねえ、戦士。ここのバリアなんとかならない?」
戦士「え?ちょっと待ってて。」ブツブツ
戦士「聖なる光よ我らを包め『トラマナ』」パァ
賢者「ありがとう。もしかしたら玉座の後ろあたりに...」サワサワ
ガチャ
玉座の裏に階段があらわれた。
勇者「おお~!賢者ナイス!」
武闘家「なんでわかったんですか?」
賢者「企業秘密です。えへへ。」ニコ
戦士「じゃあ早く降りましょう。」
勇者「うん。行こう行こう!」
ザッザッザ
城を次々に下に降っていくたびに闇を伴った空気が濃くなり、
人間である勇者達は息苦しさを感じている反面。
魔物達は強さが増し、数も増える一方になっていく。
そんな状況にも4人は助け合い、魔物を倒してさらに進んでいく。
ふと勇者達の前にそれまでにない巨大な扉が立ち塞がる。
ゾーマの城 地下3階
賢者「大きい扉...今までにないくらいの憔気を感じるね。」
戦士「そうね。みんな用意はいい?」
武闘家「大丈夫よ、戦士。」
勇者「よく開けるよ」グッ
ガゴン
ゴゴゴゴゴゴ
賢者「あっ!!」
巨大な扉を開けると、そこには紫のローブを纏った魔物アークマージが3匹こちらを見据え立っていた。
『くっくっく。よく来ましたねぇ、商人いや、賢者さま。』
そしてアークマージの後ろにある大きく悪趣味な装飾を施された
椅子に黒いロングコートを羽織った人間の男がひとり座っていた。
賢者「私はあなたを許せないっ!」キッ
武闘家「こ、この男が?あの張り紙にあった男なの?」
戦士「こいつが、メルキドの人々を薬物中毒に追い詰めた...」
勇者「おい、お前!どうやって魔物達に取り入った?」
人間の男「こちらは威勢のいい娘さんだ。まあ私のことより目の前のアークマージを倒した方がよいのでは?くっくっく。」
賢者「勇者、先にアークマージを倒そう!来る!」ササッ
武闘家「私にまかせてください!えいっ!」バシュ
ズババッ!
武闘家の先制攻撃
アークマージAに大ダメージ
アークマージAをやっつけた
戦士「私も行くわっ!でぇい!」シャ
ザシュウ!
戦士の攻撃
アークマージCに大ダメージ
アークマージCをやっつけた
勇者「よっし!まず2匹!」
アークマージBはザオリクを唱えた
アークマージAが蘇った
アークマージAはザオリクを唱えた
アークマージCが蘇った
アークマージCはイオナズンを唱えた
賢者「そっ、そんな!(魔物がザオリクなんて)」
武闘家「きゃあああ~!!」
戦士「しまったぁ!!」
ズドドドドドド
ドッカーーーン!!
人間の男「おやおや~、一瞬油断したら脆いんですねぇ、はっはっは!」
勇者「くっ、あんな至近距離からイオナズンを。」ググ
戦士「ゆ、油断したわね。」
武闘家「……………う。」
賢者「ぶ、武闘家!(いけない!)」ブツブツ
賢者「傷をすべて癒せ『ベホマ!』」パァー
賢者はベホマを唱えた
武闘家の傷がすべて治った
武闘家「は。傷が。みなさん!」ブツブツ
武闘家「我らの傷を癒せ『ベホマラー』」パァー
武闘家はベホマラーを唱えた
勇者、賢者、戦士の傷が治った
勇者「武闘家ありがと!戦士行くよ!」
戦士「コクッ(武闘家、賢者頼むね)」パチ
武闘家「(戦士。わかった。)」ブツブツ
賢者「(よし、それなら!)」ブツブツ
勇・戦「「くらえ~~!」」
ズバッ!
バシュッ!
勇者の攻撃
戦士の攻撃
アークマージAに大ダメージ
アークマージBに大ダメージ
アークマージABをやっつけた
戦士「今よっ!」
武闘家「汝の言葉は...」
賢者「...心に届かぬ!」
武・賢『マホトーン!』シュー
武闘家はマホトーンを唱えた
アークマージCの魔法を一部封じ込めた
賢者はマホトーンを唱えた
アークマージCの魔法を完全に封じ込めた
アークマージCは魔法を唱えられない
賢者「やったね武闘家!」グッ
武闘家「二重掛けが効きましたね!」
勇者「よし、最強の剣の威力見せてやる!ええい!」ブゥン
勇者は王者の剣を振りかざした
剣からあらわれた巨大な竜巻がアークマージCを巻き込んで切り裂いた
アークマージCをやっつけた
人間の男「なにぃ?ふふふ。やりますねぇ。流石は勇者さまだ。」
戦士「あとはあんただけね。チャキ」
人間の男「なるほど。私の力ではあなた達には敵わないようだ。」
賢者「ずいぶん気弱なことを言うのね。昨日のあなたと違って。」
人間の男「勇者さま。先ほどのあなたの質問にお答えしましょう。」
勇者「…………」
人間の男「私はこれまで人を騙して騙して騙して続けてきた。」
人間の男「簡単なことです。飽きてしまったんですよ。」
武闘家「飽きた?どういう意味ですか?」
人間の男「言葉の通りです。人の次は魔物しかないでしょう?」
人間の男「魔物も知能の高い者ならば言葉を話すし理解もできる。」
賢者「あなたの得意な口で魔物も騙したってことなの?」
人間の男「上の世界の魔物は知性が弱い、そんな時に勇者さま
がギアガの大穴から下の闇の世界に入ったという話を耳にしましてね。」
人間の男「闇の世界の魔物ならと思い、私も密かに降り立ったわけです。」
人間の男「魔物は危険な存在ですが単純な分、一度騙せればこちらの思うツボ。」
勇者「あんた。とことん騙してばかりで、性根が腐ってるよ。」
人間の男「褒め言葉と受け取りましょう。くっくっく。」
人間の男「先ほどあなた達が倒したアークマージは魔力から劇物を精製するのが得意でねぇ。」
人間の男「それをチョコに入れ、見返りとして魔物にも提供し、ついでにこの世界に住む人間にも提供してやる。」
人間の男「人間でも的確に効いてくれたが、魔物には悪い意味で相性が合ってねぇ。好都合でしたよ。」
勇者「そうか!だからあんな数の魔物を。」
人間の男「まあゾーマはなにも興味を示してもくれなかったがね。」
人間の男「しかし、困った。この世界のすべてを騙してしまった…………こうなればもうやるべきことは一つしかない。」スッ
武闘家「やるべきこと?」
人間の男「貴様らを殺して、ゾーマをも殺し、私が世界の支配者となるのだァーー!!」
勇者「な、なんだって!?」
男の叫びとともに、それに呼応するように男の体が変化していく。
コートの下から覗く体は肌色から青色に変色し、膨れあがる。
頭には禍々しく大きなツノが生え、口にはキバが生え、背には翼が生えていく。
人間?の男「フハハハハー!!私が最強になるのだ!貴様らなぞすぐに消し去ってやるわ!!」グググ
魔物の男「まだまだぁー!もっともっと大きくなるぞぉー!これが魔物の力なのだぁー!」ググ
魔物の男「見ろ!人間どもよー!これで俺はさいきょ、うの」ピタ
魔物の男「な、なんだ?変化が止まった、だと?」
魔物の変化が途中でピタリと止まった。
賢者「あなたがずっと自分の話をしてて、あまりにスキだらけだったからね。」
武闘家「念のために戦士に魔封陣を張ってもらっていたんです。」
魔物の男「な、に?魔封陣だとぉ?」キッ
魔物が目を下げると、そこには魔物を中心に紋様が浮かぶ円い魔封陣が描かれていた。
等間隔で勇者達が立ち、それぞれが魔力を注いでいる。
戦士は全神経を集中させて魔封陣を張り続けている。
魔物「ぐう、そんなバカなぁ!こんな魔封陣なぞ。うおおおお!」ピクピク
魔物「(動けぬ!)」
戦士「ムダよ。なにをしたってこの魔封陣を解くことは不可能。」
勇者「戦士は元魔法使いだよ。魔封陣のエキスパートだからねっ。」
魔物「貴様らが、俺を『騙した』だと...」
賢者「そう。以前、騙されたお返しよ!醜い姿になった自分を悔いなさい!」
魔物「ぐうう、ぬおおお。」ピクピク
戦士「賢者。どうするの?魔物ならこのまま消し去ることもできるわよ。」
魔物「な。た、助けてくれ。頼む、消すのはやめてくれ~!悪かった、俺が悪かったよ。」
賢者「…………あなた反省できる?もう二度と人や魔物でも騙さないって神に誓って言える?」
勇者「賢者!なにを言ってるの?そいつはすでに魔物になってるんだよ。いくら口で言ったって信じられるもんかっ!」
賢者「魔物になっても少し前までは人間だった。だったら姿形は魔物でも更正してくれれば。」
武闘家「賢者さま....」
魔物「あ、ありがてぇ。反省するよ。もう二度とバカなことはしねえからよ。な?な?」
賢者「戦士、ごめんね。魔封陣を解いてくれる?みんな魔力を止めて。」
戦士「わかったわ。解!」シュウ
魔物の動きを封じていた魔封陣が解けた。床の紋様が消えた。
魔物「ぐっは、はあはあ。解けたようだな。」
賢者「私達はすぐにゾーマを倒しに行かなきゃならない。あなたはすぐにここから出ていた方がいいよ。」
魔物「わ、わかった。」ハァハァ
賢者「みんな。すぐに行こう。」ニコッ
戦士「そうね。魔力を回復しながら行きましょう。私も久々だったから解いたらふらふらよ。」
勇者「あ、武闘家、魔法の聖水か祈りの指輪持ってる?魔力けっこう使っちゃったからさぁ。」
武闘家「ありますよ。魔封陣は直接の術者もですが、魔力を提供するサポート役も魔力の消費が半端ないですからね。」
勇者達は魔物の横を通りぬけ、回廊にある階段を目指し歩いてゆく。
魔物「(へっへっへ。今の魔封陣とやらで奴らの魔力はカラか。だったら今の体でも)」
魔物「はっはっは~!ここまでコケにされておとなしく引き下がれるかー!!人間どもがぁ~!」
ドスドスドス!
魔物「今の貴様らは魔力がカラっきしだろう?だったらここでみんなまとめてくたばってしまえ~!!」
勇者「ま、まずいよ!体がフラフラだ。」ググ
戦士「(魔力回復が間に合わない!)」
武闘家「く、くそぉ!」ジャキ
バッ
勇者「け、賢者?」
フラフラの3人の前に賢者が立ち塞がった。
賢者「やっぱりダメだね私ったら。また騙されちゃった。」ニコッ
武闘家「賢者さま!!」
魔物「なんだ?また騙されて悔しいか~?商人さんよぉ!ヒャッハッハッハー!」
賢者「………は………じゃだ」ボソッ
魔物「聞こえねえなぁ~~!!くたばれぇぇええ!!」バシュッ
賢者「今の私は賢者だ!!」ブツブツ
賢者「炎の精霊よ!」
ゴウッ
賢者「暴れ狂えー!」
ゴオオオォ
戦士「(りょ、両手の炎が頭上で繋がってアーチ状に!)」
賢者『ベギラゴーーン!!』
賢者はベギラゴンを唱えた
魔物「な、なにぃ!?」
ベギラゴンの激しい炎が空中で身動きが取れない魔物を襲う。
ゴオオオォォォ!!
魔物「ぐわぁぁあああ~!!」
ドォン
魔物は床に落ちたが虫の息だ。
魔物「お、お、な、ぜだ?貴様も魔力が、カラのは、ずだ」
賢者「はぁはぁ、私は賢者だって言ったでしょ?」
賢者「戦士も武闘家も元は僧侶や魔法使いだけど、今の職になる時に
魔力量は半減。レベルが上がっても増えないの。」
賢者「そして勇者、彼女は元々の魔力量は多くない。」チラッ
賢者「今のパーティーじゃ私が一番魔力を残してたってわけ。」ハァハァ
魔物「さい、ごのさい、ごで騙された、ってことか。」
賢者「違うよ。」
賢者「あなたが勝手に勘違いしただけ。」
賢者「私は誰かを騙したくなんかないもの。」ニコッ
魔物「へ、そう、かもな。ぐふっ!」ガクッ
賢者は魔物をたおした
賢者はレベルが上がった
イオナズンを覚えた
ゾーマの城 地下4階 廊下
タッタッタ
勇者「みんな魔力の回復はどう?」
賢者「私はとりあえずフル近くまで戻ったよ。そこまで減ってなかったし。」
武闘家「私もなんとか、7割方戻りました。」
戦士「魔法の聖水も終わってしまったわ、私はまだ半分も戻ってない。」
勇者「祈りの指輪もあと1つしかないからね、次使ったら壊れるかもだし。」
戦士「まあいいわ。私は今は戦士だから直接攻撃する。補助程度なら問題ないから。」
武闘家「消費の多い攻撃魔法は賢者さまに一任します。私もとにかく相手を叩くことに専念します。」
賢者「みんな。ありがとう。私も3人を精一杯サポートするからね!」
戦士「ねえ、賢者。ちょっといい?」ヒソヒソ
賢者「どうしたの?」
戦士「あなたがさっき放ったベギラゴンだけど。」
戦士「あの形での発動は威力も通常のベギラゴンとは桁違いだけど体にかかる負担もとても大きい。」
賢者「……たしかに。体力魔力は回復しても体中がギシギシ言ってるみたいだもの。」
戦士「でしょう。今はもう撃たない方がいいわ。」
賢者「うん。わかった。」コクッ
タッタッタ
勇者「あっ!見て。あそこに階段があるよ!」ビッ
武闘家「早く行きましょう!」
長い廊下の先に階段を見つけた勇者達はその階段を慎重に降りていく。
するとまったく明かりがなく、フロアの広さもわからないくらいであった。
暗いままに少しずつ前に進むと、突然正面にあるいくつかのたいまつが燃え始め、勇者達の視界を開いた。
そしてその勇者達の前に、奥からゆっくりと歩み寄ってくる影があった。
その大きな影は他ならぬ大魔王ゾーマであった。
ゾーマの城 最深部 ゾーマの間
ゾーマ「よく来たな人間どもよ。まさか本当にここまで来れる人間がいたとはな。」
勇者「お前が大魔王ゾーマか!」
ゾーマ「いかにも。アリアハンでは声だけで失礼した。お初にお目にかかる。」
武闘家「(……これが大魔王。な、なんて威圧感。)」フル
勇者「私は勇者だ。お前を滅ぼしにきた!覚悟しろ!」チャキ
ゾーマ「まあ、そういきり立つな勇者よ。ワシを倒したくばまずは我が配下どもを倒してからだ。」
戦士「ま、まだ魔物がいるっていうの?」
ゾーマ「ワシは奥の玉座で待っておるぞ。わははははは!」クルッ
勇者「(スキあり!)」バッ
賢者「!?」
賢者「勇者っ!焦ったらダメ!」
勇者「ゾーマ!後ろを取ったりぃ~!」
『甘いわ。』
ガァン!
キングヒドラがあらわれた
勇者の攻撃はキングヒドラに弾かれた
勇者「くっ!なんて堅いの!」
賢者「勇者、落ちついて!まずはこいつからよ。」ブツブツ
キングヒドラ「生意気な人間どもよ。灰となれぃ!」ゴォ
キングヒドラは激しい炎を吐いた
賢者「聖なる光よ我らを包め『フバーハ』!」パアー
賢者はフバーハを唱えた
賢者達の前には光のカーテンがかかる
光のカーテンは炎の威力を半減させた
勇者達は小ダメージを受けた
戦士「助かったわ賢者。こちらの番ね。でぇやぁぁ~!」バッ
ズバァ!
戦士の攻撃
キングヒドラにダメージ
キングヒドラ「この程度か?攻撃とはこうするのだ!フン!」ビュオ
キングヒドラの攻撃
戦士に小ダメージしか与えない
キングヒドラ「なんだと?」
武闘家「『スクルト』成功です。」スッ
勇者達の守備力が上がっている
勇者「今、あんたにもルカニがかかってるよ!」
賢者「(『ルカニ』も成功っと)」
キングヒドラの守備力が大幅に下がった
キングヒドラ「ぐっ。いつの間に!こしゃくなぁ!」
勇者「もらったあー!!」ヒュン
戦士「やああぁぁ~!!」ダッ
バシュ!!
勇者と戦士の同時攻撃
キングヒドラの息の根を止めた
ゾーマ「ほう。なかなかやるようだな。」
ゾーマ「では次だ。ゆけぃ、バラモスブロスよ!」ブゥン
武闘家「バラモスですって!?生きていたの?」
バラモスブロスがあらわれた
ブロス「お前達がネクロゴンドで倒したバラモスはいわば我の兄弟。仇は取らせてもらうぞ!」
勇者「なら、あんたなんてもう怖くないよ!」
戦士「私達もあれからずっと強くなってんのよ!」
ブロス「なにぃ?バカにするのも大概にしろぉ!『イオナズーン』!」
賢者「来る!みんなここは耐えてー!」グッ
ブロス「耐えられるかなぁ!『メラゾーマ』!」
勇者「連続魔法!?」グッ
ブロス「さらにおまけだー!『バギクロス』!」
戦士「さ、三連発もっ!?」ググッ
バラモスブロスはイオナズン、メラゾーマ、バギクロスを唱えた
最大魔法が荒れ狂い、勇者達に大ダメージを与える
賢者「きゃああ~~!!」
カンッ カンッ カンッ
ブロス「ぐえっへっへっへ。見たか、まともに食らいおったわ。ん?」
ブロスが放った魔法が光の壁に弾かれ、ブロスの元に帰ってくる。
ドゴオォォォーン!!
ブロス「ギャアアアァ~~!」ドス
ブロス「な、なぜだ?どうなっている。我の魔法はやつらに当たったはず。」
戦士「ぐ、けっこう危ないわね....でも」
賢者「わ、私達3人は囮よ。」
ブロス「囮だと?……まさか!(もう1人がいない。)」キョロキョロ
武闘家「私はこっちだ!バラモスブロスッ!」
勇者「武闘家~!いっけえー!」
武闘家は武器の爪を天井から抜き、バラモスブロス向けて落下した。
ブロス「(こいつだけマホカンタで魔法を跳ね返し、爆風で目眩まししたスキに我の頭上を!?)」
ズドドドドド!!
ブロス「ぐぎゃあああ~!ゾッ、ゾーマさまぁぁ~~!!」
武闘家の空中からの攻撃
会心の一撃!
バラモスブロスを真っ二つにした
ドタン!
武闘家「いつつつ。や、やった。やりましたよ勇者さまっ!」グッ
賢者「やったね武闘家。すごかったよ。」
戦士「さっきのあなた最高にかっこよかったわ。」ニヤッ
武闘家「ありがとう!賢者さま。戦士。」テレ
勇者「照れてるとこ悪いけど、回復おねがいー。」ハアハア
武闘家「あわわ。今すぐに!」ブツブツ
ゾーマ「むうう。ブロスをもこうもたやすく倒すとは。まあよい。」
ゾーマ「出でよ、バラモスゾンビよ。」ビリビリビリ
バラモスゾンビがあらわれた
勇者「よし!あいつも一気に倒してケリをつけるぞっ!」
バラモスゾンビ「……………」
ズドン。
戦士「ぐっはぁ、うあぁ~!」
ズシャーー
バラモスゾンビの攻撃
戦士は大ダメージを受けた
賢者「戦士っ!」ダッ
戦士「うう、とんでもないパワーよ、あのゾンビ野郎。」
賢者「大丈夫?ひどい傷...」ブツブツ
勇者「戦士があんなに。武闘家!」
武闘家「はい!」ブツブツ
武闘家「我らの守りを堅めよ『スクルト』」パァ
勇者達の守備力が上がった
戦士「あのパワー。スクルト一度じゃ意味ないわ。私と賢者もよ。」ブツブツ
賢者「わかった!」ブツブツ
戦・賢「「我らの守りを堅めよ『スクルト』!!」」パアー
戦士と賢者はスクルトを唱えた
勇者達の守備力が限界まで上昇した。
バラモスゾンビの攻撃
ドスッ
賢者「ううっ(それでもかなり痛い)」
賢者はダメージを受けた
賢者「みんなー!とにかく攻撃しまくるのよ!私はもう一度かける。」ブツブツ
勇・戦・武『了解!』
賢者「汝の守りを崩せ『ルカニ』」シュゥー
バラモスゾンビの守備力を大幅に下げた
戦士の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ
勇者の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ
武闘家の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ
バラモスゾンビの攻撃
勇者はダメージを受けた
武闘家はダメージを受けた
戦士「キリがないわね、なんて体力なの?」
賢者「戦士ー!構えて!魔法をかけるよ!二人も攻撃の手を緩めちゃだめ!」ブツブツ
武闘家「わかりました!行きます!」バッ
勇者「こうなったら私も!」ブツブツ
勇者「天なる轟きよ!雷となり貫けー!『ライデイーン』!」ピカッ
賢者「精霊よ戦士に力をっ!『バイキルト』!」パァー
勇者はライデインを唱えた
雷が天井を貫きバラモスゾンビに直撃した
武闘家の攻撃
バラモスゾンビに大ダメージ
賢者はバイキルトを唱えた
戦士の攻撃力が上がった
戦士「力がっ!よし、うりゃあああ~!!」
ザシュ!
戦士の攻撃
バラモスゾンビは粉々になり消滅した。
勇者達は次々と襲いかかる、ゾーマの配下、キングヒドラ、バラモスブロス、バラモスゾンビを倒した。
勇者と賢者の魔法で体力を回復した4人は奥の玉座に鎮座しているゾーマを見据えた。
ゾーマは勇者達を冷たい目で見おろしていた。
勇者は仲間達と目を合わせると、ゆっくりうなずいて向き直り、玉座に向けて歩きはじめた。
最後の戦いがはじまろうとしていた.....
ゾーマの城 最深部 ゾーマの玉座前
勇者「お前の配下はすべて倒した。今度こそお前の番だ。大魔王ゾーマ!」
ゾーマ「よくぞ我が配下を倒した。しかし勇者よ!なにゆえもがき生きるのか。」
勇者「なんだと?」
ゾーマ「滅びこそ我がよろこび 死にゆく者こそ美しい。」
賢者「(なんてことを...)」タラ
ゾーマ「さあ我が腕の中で行き絶えるがよい!!」バンッ
勇者「みんなぁー!いくぞー!!!」ジャキ
大魔王ゾーマがあらわれた
勇者「とにかく攻めるしかない!賢者はサポートを。戦士と武闘家は私と一緒に攻撃だよ!」
賢者「わかった、まかせて!」ブツブツ
武闘家「まずは私が行きます!やあぁぁ~!」ヒュン
ザシュ!
武闘家の攻撃
しかしゾーマにダメージをほとんど与えられない
武闘家「え?手応えがない。」
ゾーマ「ふはは。どうしたワシは痛くもかゆくもないぞ。」
賢者「(どういうこと?とにかく)」
賢者「我らの守りを堅めよ『スクルト』」パァー
勇者達の守備力が上がった
戦士「ならば私が。この剣を受けてみろーー!ゾーマ!」バンッ
バシッ
戦士の攻撃
しかしゾーマにダメージをほとんど与えられない
戦士「そんなっ!」
勇者「(どうなってるんだ?)」
ゾーマ「もう終わりか。ならばこちらもいかせてもらうぞ!かあああぁぁー!」シュゴー
ゾーマは輝く息を吐いた
死ぬほど冷たい猛吹雪が勇者達を襲う
勇者「賢者っ!」クルッ
賢者「わかってる!」ブツブツ
賢者「聖なる光よ我らを守れ『フバーハ』!」パァー
賢者はフバーハを唱えた
勇者達の前に光のカーテンがあらわれた
ゾーマ「そんな貧弱なガードなど効かぬわぁ!」
バリバリバリ!
賢者「な、なんて威力なの!フバーハが破られるなんて!きゃああ~~!」ズバッ
武闘家「うわあーーー!!」
戦士「盾も役に立たない!」
勇者「ぐあぁ~~!!」
勇者達は最大ダメージを受けた
ゾーマ「わはははは!たいしたことはないな。闇の力を見くびらないことだな。」
武闘家「(はあ、はあ、おそらくルカニもあいつには効かない。)」
勇者「普通の攻撃は効かないの?なら魔法でやるしかない。」ブツブツ
戦士「このために魔力を残しておいてよかったわね。いくわよ!」ブツブツ
賢者「あいつは氷属性なの?なら炎で押し切るまでね!」ブツブツ
武闘家「せめて魔法は効いてくれなきゃ困ります!」ブツブツ
ゾーマ「来い!愚かな人間どもよ!」
勇者「天なる轟きよ!邪悪なる者に裁きの雷を!『ギガデイーン』!」
戦士「炎の精霊よ!我の元へ集え!『ベギラゴン』!」
武闘家「風の精霊よ!竜巻となり切り裂け!『バギクロス』!」
勇者はギガデインを唱えた
戦士はベギラゴンを唱えた
武闘家はバギクロスを唱えた
ピシャーーー!!
ゴオオオオーー!!
ヒュウウウ~~!!
3人の魔法がゾーマに直撃した
ゾーマ「ぬうううん!なかなかの威力。だがワシには効かぬわ!」バシュ
ゾーマにダメージを与えた
勇者「ちょっとしか、効いてない!?そ、そんな!」ヘタ
賢者「(ゾーマのやつ油断した!今だ!)」
賢者「精霊達よ!集いて弾けよ!『イオナズン』!」
賢者はイオナズンを唱えた
ゾーマ「姑息な手を。お返ししてやるわ。『マホカンタ』」
ゾーマの前に光の壁があらわれた
イオナズンを跳ね返した
賢者「え!マホカンタ?しまった!」バッ
武闘家「賢者さまーー!!」
ドッカーン!!
賢者の眼前でイオナズンが爆発した。
勇者「なんてやつ....こっちの攻撃が全然効かないなんて。」ゼイゼイ
戦士「さすがに打つ手がないわね....」ハッーハッ
武闘家「賢者さま大丈夫ですか?『ベホマ』!」パァ
賢者「あ、ありがとう武闘家。でも。これじゃあ。」
ゾーマ「ん?どうした。もう終わりか?絶望とはこういうことを言うのだ。」
勇者「ち、くしょう。どうすれば。」
武闘家「ここまででしょうか。私達...」
戦士「……………」
賢者「(正直どうしたらいいのかわからない。………でも。)」
賢者「あきらめるワケにはいかない!絶対に!」ググ
ゾーマ「ほう。まだこの期に及んで諦めぬか。その気概はほめてやろう。」
ゾーマ「だが、諦めようが諦めまいとしょせん同じことよ。」
ゾーマ「貴様らのことはワシが後世に語り継いでやろう。さらばだ!!!」
勇者「くそーーー!!」
賢者「(ここまでなの!?みんなごめん!)」
『待てぇぇ!!!!』
玉座の間に力強い声が響いた。
?「賢者の石よ!仲間の傷を癒せ!」バッ
パァーー!
光が勇者達に降り注ぎ、全員の傷が治った。
ゾーマ「誰だ?貴様?人間か。」
?「勇者、まだ諦めちゃだめだよ!あなたはまだ生きてるでしょ。」
?「戦士、見違えちゃったよ。かっこいいね。ちょいセクシーだし。」
?「武闘家、逞しくなっちゃってー!もう私より強そうじゃん!」
?「賢者、、頑張ったね。賢者姿がかっこいいよね!幼馴染みとして自慢だね!えへへ!」
勇者「あ、まさかその声は...」
戦士「来てくれたんだね。」
武闘家「あ、ああ!」ウルウル
賢者「武闘家ぁ!!!」
以前、パーティーから離脱した元武闘家があらわれた
?「へっへー!来ちゃった。またみんなで戦いたくてさ。」
?「私も旅人をしながら修行したんだ。みんなの力になれるようにね。」ブツブツ
?「聖なる光よ。みんなを守れ『フバーハ』」パァー
勇者達の前に光のカーテンがあらわれた
賢者「フバーハ?まさかあなた。僧侶に?」
僧侶「ピンポーン!大当たり!」
勇者「僧侶に?すごいじゃん、魔法を使えるようになったんだね。」
僧侶「旅をしながら一生懸命ね。今わたしができるのはこれかなって。」
武闘家「また会えてよかったですぅ。僧侶さぁん~!」ホロポロ
僧侶「おーよしよし。泣かない泣かない。」
戦士「おかえりなさい。僧侶。」
僧侶「ただいま。えへへ。」
賢者「あなたも頑張ってたんだね。よく来てくれたね、危なかったもん。」
僧侶「うん。ギリギリセーフね。あと....」クル
ゾーマ「感動の再会というやつか。だが人間が1人来ようが何も変わらぬ!」
僧侶「果たしてそっかなぁ。」
ゾーマ「なに?」
僧侶「強がっていられんのも今のうちさ!ハッ!」シュン
ゾーマ「速い!」キョロキョロ
僧侶「光の玉だー!受けてみろー!」
僧侶は光の玉でゾーマを照らした。
ピカーーーーーー!!
光の玉が辺りをすべて明るく照らした。
勇者「うっ、眩しい!」
賢者「目が!くらんで。」
ゾーマ「こっ!この光はぁ~!まさか!ぬわああああ~!」ギュン
ゾーマ「き、貴様がなぜこの玉を!信じられぬ。」ギュン
ゾーマが光に照らされ、ゾーマの体を覆っていた闇の衣をはぎ取った。
ゾーマのマホカンタが解けた。
僧侶「よしやったぜ!大成功~!」グッ
僧侶「勇者!あとは頼むよ!ゾーマはこれで弱体化したよ。」
ゾーマ「おのれ小娘ぇ!貴様から葬ってやるわ!があああぁぁーー!」シュゴー
ゾーマは輝く息を吐いた。
僧侶「なんの!」バシッ
僧侶「やああああ!」グググ
ゾーマ「なに!?フバーハごときにワシの息が効かぬとは。」
賢者「今ならゾーマに勝てる!みんな、一気に攻撃よ!」
武闘家「戦士、お願い!」パチ
戦士「(了解よ)」ブツブツ
戦士「精霊よ!武闘家に力を『バイキルト』!」パァ
戦士はバイキルトを唱えた
武闘家の攻撃力が上がった
武闘家「でやぁぁぁーー!」
ズドドドーン!
ゾーマ「ぐぉあああ!」ブシュウ
武闘家の攻撃
会心の一撃
ゾーマに極大ダメージを与えた
賢者「勇者ー!行って~!」ブツブツ
賢者「地の精霊よ、我らを乗せよ『ピオリム』」ヒュン
賢者はピオリムを唱えた
全員の素早さが上がった
ゾーマ「ぬうう。ちょこまかと。死ねい勇者!」ブン
ゾーマの攻撃
勇者はゾーマの攻撃を避けた
勇者「ゾーマ!がら空きだぞー!食らえー!王者の剣!」グォ
ズシャアアアア!!
ゾーマ「ぬあああああ!あ、あ、人間めぇぇ!」ガク
勇者の攻撃
会心の一撃
ゾーマに極大ダメージを与えた
ゾーマ「こ、凍りつけぇ!!『マヒャド』!!」ピキーン
賢者「!?」
賢者「戦士!武闘家!いくよ!」ブツブツ
武闘家「はい!」ブツブツ
戦士「わかったわ!」ブツブツ
賢・武・戦「燃えさかれ火球よー!!」
『『『メラゾーマ』』』
ズゴオオオオオオオ!!
3人の指先から発したメラゾーマが合体し、ゾーマのマヒャドを一瞬で消し去り、ゾーマに向かい飛んでいく。
ゾーマ「ワシのマヒャドが消され....う、うぎゃああぁぁー!」
ドサッ………
勇者「や、やったの?」ハァハァ
僧侶「メラゾーマ3つ分って凄まじいねぇ。」
武闘家「そういえば私、メラゾーマは初めて使いました。」
賢者「あ、そうなの?って私も初めてかも、あはは。」
戦士「よくまあ、息が合ったわね...」
ゾーマ「ぐ、まさかな。ワシが人間などにやられるとは。」ピク
勇者「私もまさか倒せるとは思わなかった。でも人間を甘く見た報いだ。」
ゾーマ「くっ、ふふふ。勇者よ…。よくぞワシを倒した。」
ゾーマ「だが光あるかぎり闇も またある…。」
ゾーマ「ワシには見えるのだ。再び何者かが闇から現れよう。」
勇者「………」ブツブツ
ゾーマ「だが、その時はお前は年老いていきて....」
ピカッ!
ビシャアアアーー!
ゾーマ「ぐはぁあああ!!」バタッ
勇者「あんたの負け惜しみなんて聞きたくないよ。眠ってくれ、大魔王ゾーマ。」
大魔王ゾーマをたおした
戦士「相変わらず容赦ないわね.....」
勇者「さーて。なんとか大魔王も倒せたことだし。」
勇者「帰ろっかー!!」
全員「うん!!」
僧侶「それにしてもさ、勇者。なんであなたって、光の玉とか賢者の石とか忘れてるわけ?」
勇者「へ?」
僧侶「私の道具袋に入ってたんですけどねぇ。」イライラ
勇者「あ、あはははは!忘れちゃった。」
僧・武・戦・賢「はあ~...」
賢者「じゃあとにかく地上に出て、ラダトームに戻ろう。ね。」
武闘家「そうですね。早くみなさんに報告しないと。」
戦士「急がなくてもよさそうよ。」
勇者「えっ?」
戦士は勇者のライデインやギガデインで天井に開いた穴を見上げていた。
すると、暗いはずの空から明るい日射しが覗いていたのだ。
ゾーマを倒したことによりアレフガルドにかかっていた呪いが解けたのだ。
僧侶「ほんとだ~!明るくなってる!よかったね~!」ニコニコ
勇者「これでみんな喜んでくれるね。胸を張って帰ろう!」
武闘家「よかったよぉ。本当によかったよぉ。ひぐっひぐっ」
戦士「また泣くー!嬉しいのはわかるけど。みっともないわよ。」
賢者「(これで終わるのか、私の旅も....今はそれでいいよね)」
勇者達はラダトームに戻った
エピローグ
勇者達が大魔王ゾーマを倒して3ヶ月が過ぎた。アレフガルドにも朝が来るようになり、人々も活気を取り戻しつつあった。
ロトの称号を得た勇者は、しばらくはラダトーム城にてその栄誉を称えられ、外出もできない状態だった。
そんな状況に嫌気がさした勇者はある時、城を抜け出し流浪の旅人となった。
上の世界と下の世界を自由に行き来し、時には仲間に会いに行くなど気ままな生活を送っていた。
大魔王を倒した勇者の仲間達は各々、故郷に帰るもの、新天地で暮らすもの、様々であった。
武闘家は元々の読書好きが高じて、ラダトーム城の図書館にて
司書になるため先輩司書の指導のもと、勉強をしているという。
彼女曰く「戦いよりも落ち着いて読書をした方が性に合ってる」とのことだ。
戦士は自分の故郷であるレーベの村にて、年老いた師匠に代わり
魔法教室を開業したようだ。彼女曰く「戦士の格好じゃ風邪引いちゃう」とのこと。
一方、僧侶はあっさりと武闘家に戻り、アリアハンの自分の母
が師範をつとめる武術道場で師範代として乱暴な活躍をしていた。
彼女曰く「1人旅は一生したくない。1人じゃつまらないしね」と話した。
そして賢者。彼女は悩みに悩んで賢者ではなく再び商人
になることを選んだ。自分が作り上げたホープバークにて自分
の道具屋を開業したのだ。
ホープバークの町民は商人の復帰を心から歓迎した。
彼女は本当の意味でホープバークの仲間になったのだった。
そんなある日、勇者はホープバークに立ち寄った。
ホープバーク 商人の店
商人「ふむふむ~。ポルトガの物価が急騰ねー。どこもかしこも不況なのは変わらないのねぇ。」
商人「とりあえずここは不況の煽りは受けていないみたいだけど。」ブツブツ
勇者「よっ!商人儲かってる~?」ヒョイ
商人「うわ!びっくりした!なんだ、勇者か~。」
勇者「なんだ、はないでしょ。人がちょくちょく来てあげてるのに。」
商人「ふふふ、ごめんごめん。で、今日はどうしたの?」
勇者「は?…………ブツブツ(ギラの詠唱)」
商人「え、あ!ああ!そうか。チョコね、チョコ。」アセアセ
勇者「今。素で忘れてたよね?」ジロ
商人「あはは。ごめん。」シュン
商人「なにせここのところ、世界中から色んな商品を仕入れてるからその整理に追われててね~。」ゴソゴソ
勇者「そうだよね。商人忙しいもんね。賢者やってた時より忙しいんじゃない?」
商人「うん、そうかもね。ええと、あったあった!はい。」トン
商人はカウンターに小さいダンボール箱を置いた。
勇者「これね。たしかにお預かりします、っと。」
商人「どう?前回の時もあの子喜んでくれてた?」
勇者「うん、そりゃもう大喜びでさ。あの子、『お姉ちゃん、届けてくれたお礼だよ。』って
私にも一箱丸々くれたんだよ。」
商人「そっか.....喜んでくれてるんだ。よかった。」
勇者「いいの?毎回毎回。あのチョコはポルトガの高いチョコなんでしょ?」
商人「まあね。あの子には感謝してるんだ。あの時にあの子が私に声をかけてくれなか
ったら、あの男のことを追うことができなかっただろうしね。」
勇者「……………」
商人「でなければ賢者としての私はそこで終わってたかもしれなかったから。」
勇者「そうそう。この前レーベに行った時にね魔法使いがね、ふと思い出してたように
言ってたんだけどさ。」
商人「なになに?」
勇者「ゾーマの城でさ玉座の裏の階段を商人が見つけたじゃない。なんでわかったのかな~って。」
商人「ああ~あれね。大したことないんだけど。」
商人「私がここでイエローオーブをさ家の庭に隠してたんだけど、あれね本当は町長の家のあの椅子の裏に
隠そうと思ってたんだよ。
商人「なんか隠すにはちょうどいいかなって。ただおじいちゃんや青年さんいたしムリだったから。」
勇者「ああー!そういうことなんだ。自分の経験上ってことか。納得。」
商人「ぜんぜん企業秘密じゃないよねぇ、えへへ。」
商人「僧侶もさ、今は司書さんとしてがんばってるんでしょ?」
勇者「まだ、司書のタマゴみたいだけどねぇ。」
勇者「あ、そうだ。なんかね次の休みの日にここに来たいって言ってたよ。」
商人「あ!そうなの?嬉しいなぁ楽しみー。」ワクワク
勇者「なんでも『商人さんの手作り野菜スープが食べたいんです~』だって。」
商人「ふ~んじゃあ腕によりをかけて作らなきゃね。案外大食いだよね僧侶。」
勇者「あれで太らないんだもん、羨ましいったらないない!」
商人「同感!あはは~。」
商人「そうだ!勇者。聞いてよ。武闘家が最近やたら暇だ暇だって言って遊びに来るんだよ。」
勇者「え、いいことじゃないの?」
商人「良くないよ!だって毎晩だよ!」
勇者「え?毎晩?それはまた極端な....」
商人「夕飯食べに来たよーって。私の家は食堂じゃないってのに。」
勇者「たぶん、武闘家は寂しいんじゃないの?幼馴染が離れて暮らしてるから。」
商人「そういうもんなのかなぁ。」
勇者「あれ?そういえばどうやって来てるの?毎晩。ルーラ使えないよね?」
商人「はぁ...レーベに行って魔法使いに、無理やり教えてもらったんだって。」
勇者「あ、そうなんだ、はは....」
勇者「あ、ねえ商人~~。」ニヤニヤ
商人「な、なによ、その怪しい目つきは。」
勇者「青年くんとはどうなったのさ?」ウリウリ
商人「え!あ、ああ。あの、まあまあよ。」タジタジ
勇者「なにそれ、まあまあって。」ニタニタ
商人「ま、まあ、たまにだけど一緒にご飯食べに行ったりとかはするかなぁ。」
勇者「思いっきりデートじゃない!パチパチパチパチ!」
商人「わーー!声が大きいよ勇者。恥ずかしいよ。」
勇者「でもよかったね。なんか商人が嬉しそうにしてるの見ると私も嬉しいもん。」
商人「あ、ありがとね。私も勇者と仲間になれて嬉しいよ。」
勇者「う~~。もう旅は終わったんだから『友達』ってのがいいかなぁ。」
商人「私達は『仲間』で『友達』ってやつかな。これからも、ね。」
勇者「そうだね。………ってそろそろ行かなくちゃ。ごめんね長話して。」
商人「ううん。来てくれてありがとう。じゃあチョコのお届けお願いね。」ニコッ
勇者「りょうか~い!じゃあ商人、青年くんとお幸せにね~」ニヤニヤ
商人「ブツブツブツブツ(イオラの詠唱)」ムッ
勇者「あははー!ごめんごめん。それじゃーね商人!!」バイバイ
商人「(ありがとう。)」
勇者は商人に託されたチョコレートの箱を大事に抱えて
店をあとにした。すると前から見慣れた老人と青年が歩いてきた。
勇者は軽く二人と挨拶し、別れた。
二人が商人の店に入っていくと商人の明るい元気な声が町に響いた。
「いらっしゃいませーーー!!!」
ホープバークは今日も平和だった
おしまい
491 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/01/24 23:12:43.64 IBwmxln70 393/395物語終了時の各キャラのレベルと職業
(レベルは最終の一つ前の職業でのレベル)
【勇者♀】
転職歴なし
Lv.50
【武闘家♀】
武闘家→僧侶→武闘家
Lv.30
【司書♀】
僧侶→賢者→武闘家→司書(書類上では僧侶登録)
Lv.44
【魔法使い♀】
魔法使い→僧侶→戦士→魔法使い
Lv.43
【商人♀】
商人→賢者→商人
Lv.38
486 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/01/24 22:25:43.80 YGV85CdOo 394/395ギアガの大穴は塞がってもとの世界には帰れないんじゃなかった?
だから1,2はアレフガルドなんでしょ?
493 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/01/24 23:28:23.94 IBwmxln70 395/395>>486
そのことですが、僕としてはどうしても勇者達には元の世界には
帰れるという話にしたかったんです。アレフガルドに閉じ込められるのは
あまりにも不憫と思ったので。あえて1と2の事は無視しました。
かなりなこじつけかもしれませんが、ゾーマはあの断末魔の語りを
最後まで勇者達に聞かせることで新たに絶望感を味あわせたかったのだと
思います。そしてすべて語ったことでそれがスイッチとなり城が崩れたり
ギアガの大穴が塞がるように罠を張ったいたのでないかと勝手に想像
しました。
しかし勇者が最後まで語らせず雷撃でとどめをさしました。
このことでゾーマの罠が発動しなかったのではないかと。
と、どうしてもハッピーエンドにしたかった作者の勝手な考えですが。


