1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 20:03:03.53 vozwoRehP 1/57

職員「はい。通称≪サポーター≫です」

「本当にこんな大金、もらえるんですか?」

職員「まあ、現金支給ではなくポイント制ですが」

「……ネット通販サイトで使えるんですよね?」

「バカっぽいけどマジだよ。実際、私も使ってるしね」

(友ちゃんがもう少しバカじゃなければ信用するんだけどね……)

元スレ
妹「近親恋愛支援機構……」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1359284583/

2 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 20:04:00.86 vozwoRehP 2/57

職員「一応、もう一度最初から説明しますが」

職員「パートナー登録していただいた異性の家族に対し、この表にある行為――」

職員「手料理、手をつなぐ、添い寝……えー、以下は略しましょう」

職員「それらの行為をしていただくと、表に書かれたポイントが加算されます」

職員「実行時には、このストラップ風の装置が作動し、達成後に表示される認証コードを読み込んで完了」

職員「コード内には登録者情報もありますので、携帯・スマホで読み込めば自動でポイントが加算されます」

職員「もちろん、≪サポーター≫への登録後にも近親恋愛行為をしない自由はあります」

職員「ただし。機構の存在を他人に漏らす、パートナーに機構の存在を知られる」

職員「これらは即登録抹消、ポイント没収です。自主的な登録消去も可能ですが、再登録は不可です」

職員「以上です。登録しますか?」

4 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 20:04:55.01 vozwoRehP 3/57

「率直に聞きますけど、このシステム、誰が得するんですか?」

職員「誰も得しないでしょうね。上司は『私は知らん。適当に説明しておけ』と言っていましたが」

「何十万円分も買い物できるんだし、別にいいじゃん?」

(ここまで怪しい相手に、気軽に個人情報を渡しちゃダメでしょう……)

職員「一応、この喫茶店の向かいが本部ですから、何かありましたらどうぞ」

「お、大きいビルですね」

職員「……本当、こんなふざげた業務なのに、なんであんなに大きいんだろう。僕も毎朝不思議で仕方ない」

(素に戻るくらい不思議なんだ……)

職員「ああ、それでどうします?」

(……私の個人情報に、何十万円分の価値ってある?)

(それに、一回手を繋いだだけで1000円分のポイント……)

「……わかりました、登録します」

24 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:12:12.01 vozwoRehP 4/57

(あーあ、登録しちゃった……)

「これからガンガン儲けよう!」

「そうね」

(儲けるって言っても、地道に稼ぐしかないのよね)

(携帯に送ってもらったポイント一覧) カチカチッ

『メール 5ポイント』

(5円分のポイントか……消費税にしかならないわね)

「オススメは添い寝! 3000ポイントだよ!」

「考えておく」

(これから帰る……送信、と)

「あ、認証コード出てるよ? 送っといてあげる!」

「えっ? もう?」

(一体どういう仕組みなの、これ?)

29 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:19:59.94 vozwoRehP 5/57

「ただいま」

(挨拶も5ポイントだったわね)

「おかえり。そういやさっきのメール、どうしたんだ?」

「別に。なんとなくメールが送りたかっただけ」

(この調子じゃ1000円分も稼げなさそう)

「登録しちゃったし、適当に頑張るかな」

「何が?」

「別に」

(メール、挨拶……他に私にもできそうなのは、手料理くらい?)

(でも料理って苦手なのよね)

31 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:22:45.46 vozwoRehP 6/57

「はい、兄さん。晩御飯」

「この真っ黒な食パンは何だ?」

「だから晩御飯」

「……」

「妹の手料理が食べられないの?」

「はぁ。わかったよ、捨てるのも持ったないしな」 ガリッ

(これで手料理はクリアされたはずだけど……) カチカチッ

(5ポイント? 挨拶の分だけ?)

「うぇ……次やる時は火の加減位しろよ」

「はいはい、わかったから」

(おかしいな。壊れてるの?)

34 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:27:33.24 vozwoRehP 7/57

職員『料理として認識しなかったんでしょう』

「……」

職員『故障したわけではないようなので失礼』

「待ってください、まだ故障じゃないと決まったわけじゃ……」

職員『いやもうぶっちゃけ僕、就業時間外なんで。カスタマーセンターに電話してください』 ブツッ

「……最低」

(料理もダメ。それじゃ、後は……手をつなぐ?)

「……バカじゃないの、子供じゃあるまいし」

(手料理よりも少ないけど、手をつなぐだけで1000ポイント……か)

「別に、減るものじゃないし。バイト1時間と同じだと思えば……」

36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:31:45.74 vozwoRehP 8/57

「兄さん」

「ふぁんだー?」 ゴシゴシッ

「……手、つないで」

「あとれな」 ゴシゴシッ

(人が決心して言ってるのに!)

「ガラガラガラガラ……ぺっ」

「死ね」

「はぁ?」

「……」

「お前、やけに情緒不安定だな。生理か?」

「この……っ」 バシンッ

「……ってぇな!」

「うるさい、死ね!」

38 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:34:45.69 vozwoRehP 9/57

(どうしてこうなるわけ……) ズーンッ

(ただ手をつなぐだけのはずが、なんで……)

「もうやめようかな……あれ? 認証コードが出てる」 カチカチッ

「1000ポイント? どうして……あっ」

『喧嘩する 1000ポイント』『仲直りする 1000ポイント』

(私は今、すごい錬金術を見つけたかもしれない……)

40 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:38:08.58 vozwoRehP 10/57

「兄さん!」

「あ?」

「さっきはごめんなさい!」 ペコリッ

「い、いや、そんなに謝らなくていい。俺もちょっと無神経だった」

(仲直り成功? よし……)

「やっぱり許さない」

「はぁ?」

「兄さんは最低、バカ、クズ!」

「お前マジで何したいんだ? おい?」

「ふんっ」

(この繰り返しで無限に1000ポイントが手に入るはず……)

43 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:44:51.28 vozwoRehP 11/57

「手に入るはず、がないよね……」 ガクリッ

(この装置、どういう仕組みなんだろう……) カチャッ

「もう少し詳細がわかれば、ポイント稼ぐのも楽なのに」

(友ちゃん、に聞いても絶対何もわからないし、やっぱりあの人かな)

「……あ、もしもし、職員さん」

職員『いい加減怒りますよ』

「この装置ってどういう仕組みなんですか?」

職員『人の話聞いてませんね。そんなの僕も知りません』

「職員さんって何も知りませんよね」

職員『全部上が悪いんです。苦情はカスタマーセンターにどうぞ』

(こんな胡散臭い会社、苦情を言ってどうにかなると思えないし)

職員『一応忠告しますが、その装置、不正の匂いに敏感です。不正は無視されます』

「精度は?」

職員『やたら凄いです。それでは友達と飲んでる所なので』 ブツッ

(使い慣れてくしかない、か)

47 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:49:48.50 vozwoRehP 12/57

(今後の方針)

(挨拶は欠かさないこと。これで毎日20ポイントは狙える)

(メールのやり取り。面倒だけど、こまめにすれば50ポイントくらい?)

(手料理、は……はぁ……練習、しようかな)

(手をつなぐのは無理。それ以外も無理なのばっかり)

(喧嘩は……仲直りできそうな時だけ、たまに狙ってみようかな)

「目標は、一ヶ月で10000ポイント!」

(その前に、喧嘩と仲直りで手に入った2000ポイントで、本でも注文してみようかな) ポチッ

(一応、使えるかどうか試しておかないとね)

48 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:54:07.98 vozwoRehP 13/57

(そう決めたはずなのに……)

「なあ、なんで毎回パンを焼くだけでこんなになるんだ?」

「私に聞かないでよ」

「……」 ガリッ

(認証コードは、出ないよね……)

(10000ポイント、このままじゃ無理かな)

50 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 21:57:38.42 vozwoRehP 14/57

「コツ?」

「そう」

(まさか友ちゃんを頼る日が来るなんて……)

「普通に仲良くすればいいだけでしょ?」

「その普通がわからないから聞いてるんじゃないの」

「早起きしてパパを起こして、作ったご飯食べさせてあげて、ネクタイ結んであげて……」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って、そんないっぱい言われても!」

「……?」

(この娘、想像以上に女子力が高い……っ)

53 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:03:01.85 vozwoRehP 15/57

「他には、疲れて寝てるパパに布団掛けてあげたり、マッサージしてあげたり……」

「聞いてるだけで無理。……私もお父さんにすれば良かったかな」

「妹ちゃん、パパと仲良かったっけ?」

「全然。会話もしない。まだ兄さんの方がマシなくらい」

「じゃあお兄さんと仲良くしなよ」

(簡単に言ってくれるわね……)

「私も最初は、やっぱり恥ずかしかったけど、色々してあげると結構喜んでくれるよ?」

「……」

「仲良くできてないんじゃなくて、妹ちゃんの方が引いてるだけなんじゃないの?」

「言うだけなら、簡単なんだけどね」

(でも、やらなきゃポイントは稼げないし、経験者に従ってみるしかないか)

54 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:05:38.78 vozwoRehP 16/57

(……最近、妹の挙動がおかしい)

(元々仲は良いと言うほど良くなく、悪いと言うほど悪くなく)

(不干渉でやってきたはずなんだが) ポチッ

『今から帰ります』

「なんで地味に敬語なんだ?」

「……変なことにならない内に、少し話でも聞いてみるか」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:07:40.08 vozwoRehP 17/57

「ただいま、兄さん」

「おかえり。……あのさ」

「あの」

「ん?」

「さ、先にどうぞ」

「いや、いい。お前が先に話せよ」

「……に、兄さんって、甘えられるの、好き?」

「はぁ?」

「……嫌い?」

(こいつは突然何を聞いてるんだ?)

57 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:13:30.47 vozwoRehP 18/57

「……まあ、人による」

「……」

「男に甘えられても気持ち悪いし、女ならまあ、男は大体嬉しいだろ」 ポリポリッ

「本当に?」

「なんで俺が嘘つくんだよ」

(もう行くしか道はない!)

「兄さん!」

「な、なんだ?」

「……腕枕、とか、してもらっていい?」

「腕、枕?」

(すごい不思議そうな顔されてるんだけど!)

「い、今のなし、なし!」

「……なしならなしでいいけど……腕枕くらいなら、まあ……」

「い、いいの?」

「お前から言ってきたんだろ、聞き返すなよ。俺の方が恥ずかしくなるだろ……」

59 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:19:13.22 vozwoRehP 19/57

(腕枕、添い寝のコンボで一気に5000ポイント! きてる、私の時代きてる!)

「……あんまり頭動かすな」 カァァ

「あ、うん」

(うわぁ、兄さん照れてる……)

(こうして間近で見ると、兄さんってこう……)

「……なんだよ」

「かわいい」

「はぁ!?」

「もしかして妹に甘えられて嬉しい?」 ニヤニヤッ

「嬉しいわけないだろうが、このバカ!」

(5000ポイントも稼いじゃって、おまけに兄さんもからかって遊べるなんて……)

(うん、悪くない)

62 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:23:27.81 vozwoRehP 20/57

「10000ポイント? 昔の私はずいぶんレベルの低い女だったわ」

「目標は、100000ポイント」

(現金十万円相当のポイント。これから稼ぎ続ければ、千万も夢じゃない……)

「働かずに暮らせる日も、来るかも……」

(どうしよう、ニヤニヤが止まらない……っ)

「ああ……お金を稼ぐって、こんなに簡単だったんだ……」

63 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:25:50.59 vozwoRehP 21/57

(最近、妹の様子がおかしいの域を越えて別人になりつつある……)

「に~いさん!」 ギュッ

「は、離れろよ!」

「ダメ。……ねえ、今度の休み、一緒に遊びに行かない?」

「遊びにって……」

「映画でもいいし、買い物でもいいし……ね、ダメ?」

「だ、ダメじゃないけど、お前、どうしたんだ?」

「どうしたって何が? ふふっ、変な兄さん」

(変なのはお前だ……)

65 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:29:12.54 vozwoRehP 22/57

(デート、5000ポイント。腕組み、2000ポイント。上目使い、500ポイント)

(たった数十秒で、7500ポイントも稼いじゃった)

「……誰かに自慢したい!」

(でも話せる相手は……あ、そうだ)

「……あ、もしもし」

職員『妹さんですね、何のご用でしょうか?』

「私の自慢話を聞いてください」

職員『聞きません』 ブツッ

「……」

(友ちゃんと話そうかな)

68 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:32:11.13 vozwoRehP 23/57

「友ちゃん、待った?」

「……えっ? ううん、別に」

「そう? 良かった。ふふふっ」

「機嫌、良さそうだね」

「わかる? ポイントって慣れると簡単に稼げるんだもの、楽しくって」

「……楽しいかな」

「楽しいでしょ? 普通の人が働いて稼ぐより、私達はずっと稼げるんだから」

「……うん」

「……?」

70 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:36:32.17 vozwoRehP 24/57

「私さ、なんか最近辛いんだよね」

「どうして?」

「わかんない。ただ、ポイントを稼ぐと、どんどん辛くなる」

(またよくわからない事を言い出して……)

「妹ちゃん、そういうことない? 苦しくなる感じ」

「全然」

「……そっか」

「別に死ぬわけじゃないんだから、稼げるだけ稼いだ方がいいんじゃない?」

「そう、なのかな……」

「それより、今日兄さんをデートに誘ったの。それで5000ポイント! それで……」

「……ごめん、私帰るわ。じゃあね」

「えっ、ちょっと!」

(まだ全然自慢もしてないのに……ああ、もう!)

72 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:41:12.53 vozwoRehP 25/57

(苛々する……こんなに上手くいってるのに、誰にも言えないなんて……)

「あれ、もう帰ってたのか? 早かったな」

「……」

「何かあったのか?」

(この苛々、思いきりぶつけちゃおうかな)

「一々兄さんに報告しないといけないわけ?」

「そんな事は言って……」

「言ってるでしょ? 人の事情詮索しないでよ」

「だから、そんなつもり……」

「ないなら話しかけないでよ! ああ本当苛々する! 鬱陶しいっ!」

「そんなに私に構って欲しいの? ちょっと甘えられたからって調子に乗らないでよっ!!」

「……ああ、悪かったな……」 スタスタッ

「えっ? ちょっと待ってよ!」

75 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:44:44.21 vozwoRehP 26/57

「何だよ」

「悪かったなって、それじゃ私が一方的に兄さんを責めてるだけみたいじゃない!」

(それじゃ喧嘩にならないでしょ!)

「……俺が悪かった。だからそれでいいだろ」

「よくない!」

「さっきのがお前の本音なんだろ? なあ?」

「……はぁ?」

「俺も調子に乗ってたかもな」

「そ、そんなこと別に思って……」

「思ってない言葉が出て来るのか?」

「……ごめん、なさい……」

「謝る理由、ないだろ。じゃあな」 スタスタッ

(……こんなはずじゃ)

(こんなはずじゃ、なかったのに)

78 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:50:36.26 vozwoRehP 27/57

「……」

(何が悪かったんだろう?)

(喧嘩して、仲直りする。2000ポイント)

(それだけのはずだったのに)

(……喧嘩って、そういうものだったっけ)

(許せないことがあってぶつかって……喧嘩ってそういうことじゃないの?)

(じゃあ、私がしようとしたことって、何?)

「……八つ当たりだ」

「ただの理不尽な八つ当たり。心配してくれた人への八つ当たり」

「……バカじゃないの」

80 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:56:22.52 vozwoRehP 28/57

(……接し方を間違えた。そんな気がして仕方ない)

(あいつはあいつなりに、俺に何かを求めてたように思う)

(でも、俺はそんな風に、うまく役割を演じるみたいな真似、できない)

「……実際、甘えられて喜んでたのは、事実だしな……」

「……兄さん」

「ああ、なんだ?」

「ごめん」

「だから、謝る理由ないだろ」

「……」 ギュッ

「……甘えられると調子に乗るぞ」

「ごめん。酷いこと言った」

「……まあ、酷いこと言われたよ。でも、あれも本音だろ」

「うん、実はちょっと本音。甘えられてデレデレしすぎ」

「ひっでぇな、おい」

「ふふふっ、本当だから仕方ない」

84 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 22:59:23.54 vozwoRehP 29/57

(……頬にキスは、5000ポイント) チュッ

「うぉいっ!?」

「サービス。これで許してね」

「……お前なぁ」

「明日からもよろしくね、兄さん」

「お前、俺をからって遊んでるだろ?」

「実益も兼ねてますから。ばいばい」 スタスタッ

(……よくわからん奴だな、本当に……)

87 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:04:49.57 vozwoRehP 30/57

「どう?」

「お見事。ようやく普通のトーストが出てきたな」

「訓練は実を結ぶってことね」

「そうな。とっとと朝飯にしようぜ」

「うん」

「……そういえばさ」

「ん、なに?」

「お前って実は俺のこと好きなのか?」

「何それ?」

「最近ベタベタするようになっただろ?」

「兄さん、鏡見ようね?」

「……顔が悪くてすみませんね」

91 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:07:53.59 vozwoRehP 31/57

「はい、あーん」

「……今人をブサイク扱いしたばっかで、なんだよそれ」

「あれ、食べないの?」

「……」

「食べないんだ?」

「食べるよ……」 ガブッ モグモグッ

「はい、もう一口」

「……」 ガブッ モグモグッ

「はい牛乳」

「むごっ!?」 ビチャビチャッ

「あーあ、零しちゃって」

「やったのはお前だろうが!」

「はいはい、今拭くから」 フキフキッ

「俺は子供か?」

「子供みたいなもんでしょう?」

93 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:10:14.39 vozwoRehP 32/57

「学校頑張れよ」

「そっちこそ」 スタスタ

(……あれ、そういえば……)

(ポイントって今、どうなってるんだろ?)

96 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:16:17.55 vozwoRehP 33/57

「おはよ」

「……」

「どしたの?」

「さっき、2万ポイント入ったの」

「……すごいね」

「認証コードが溜まってて、全部清算したら2万ポイント」

「私は、多分もっと溜まってるかな」

「……どうして?」

「妹ちゃんと同じ」

「私と同じ? 忘れてたってこと?」

「ふふん。違うけど教えない」

(友ちゃんの癖に、その余裕な態度は何?)

「すぐにわかるよ。……私は応援してるからね」

「はいはい、そうですか。……はぁ」

99 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:22:20.71 vozwoRehP 34/57

(最近は妙にバタバタしてたからな……ゲームにも癒されるぜ……) カチャカチャッ

「に~いさん! ただいま!」

「げぇ、妹!」

「げぇ、って何? げぇ、って?」

「また何かするつもりだろう?」

「何かして欲しいの?」 ニヤッ

「……して欲しくないから言ってるんだ」

「ふーん。……一緒にゲームでもする?」

「する、って何だ? なんで俺が遊びたがってるみたいな感じなんだよ」

「そうなんだ、私と遊びたくないんだ……」

「俺が悪かったです、一緒に遊んでください」

「素直でよろしい」

100 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:25:36.15 vozwoRehP 35/57

「……」

(露骨につまらなそうなんだが……接待プレイしとくか) カチャカチャッ

「んんっ?」

「あー、これ負けるかもー。やべー」

「……この勝負、負けた方が言うことを聞くこと!」 カチャカチャッ

「ほぼお前の勝利確定した後で言うなよ!?」 カチャカチャッ

「言ったもん勝ちでしょ?」

「クソ、なんだそのルール!?」

103 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:30:20.64 vozwoRehP 36/57

「膝枕! 膝枕!」

「それは普通、女がする方だろ……」

「いいから! はやく!」

「……あー、はい、どうぞ好きにしてくれ」

「やった!」 ゴロンッ

「……」

「はぁ……」 スリスリッ

「お前、変わったな」

「何が?」

「いや。何がっていうか、全部」

「そう? そういえば最近、なんか楽しいかも」

「……」 ナデッ

「……ん……このまま寝ていい……?」

「ああ」 ナデナデッ

(気持ち良いなぁ……ふふふ……)

104 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:33:11.62 vozwoRehP 37/57

「……ん……」

「……」 コクリッ コクリッ

(兄さんも寝ちゃったんだ)

(起こさないように、そっと……) スッ

(……あれ、携帯にメール?)

『少しお聞きしたい事があります、連絡を』

「……職員さん?」

107 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:38:24.48 vozwoRehP 38/57

職員『……ああ、すいません。忙しいところ』

「いえ、忙しくはないですけど。何ですか?」

職員『友さん、何か様子がおかしかったとか、ありませんか?』

「……何かあったんですか?」

職員『登録消去したようです』

「……えっ?」

職員『上司に報告したところ、そういうこともある、と流されましたが、おかしいでしょう?』

「そうですね」

職員『こんな上手い話、普通手放しませんよ? ああ、この職場での私の評価が……』

「そんなに悪いんですか?」

職員『いえ、まだ転職して3ヶ月ほどなので、特には』

「私からも聞いてはみます」

職員『よろしくお願いします。では』

(……登録消去? どうして?)

108 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:40:43.96 vozwoRehP 39/57

「……あ、認証コード」 カチカチッ

(もう一万ポイントオーバー……)

「……あれ」

(全然嬉しくない……それどころか)

「気持ち悪い……何これ……」

113 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:44:40.25 vozwoRehP 40/57

「……妹、そこにいたのか」

「ひっ!? な、何?」

「起きたらいなくなってたから捜してたんだよ」

「そ、そっか……うん、ごめん」

「具合悪そうだな……寝てた方がいいんじゃないか?」

「そうだね……ううん、ごめん。ちょっと出かけてくる」

「用事なら代わりに行こうか?」

「ううん、大丈夫。大丈夫だから」

(……今すぐ会わないと……)

115 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:46:35.86 vozwoRehP 41/57

「おっかえりー、パパー……あ、あははー、何、どしたの?」

「……」

「や、うちに来るなんて珍しいじゃん?」

「入っていい?」

「少しなら、いいかな」

「そう。お邪魔します」

118 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:50:01.39 vozwoRehP 42/57

「それで、えーと、私が≪サポーター≫やめた話?」

「それと、相談」

「相談って、あー、お兄さんのこと?」

「どうして?」

「ううん、違うならいい」

「……今日、1万ポイント以上稼いだの」

「そっか」

「凄いでしょ?」

「そだね」

「なのに今、私、凄く気持ち悪くて、苛々して、苦しいんだよね」

「そうだろうね」

「……」

「私さ、パパが好きなんだ」

「……?」

「大好き。もう世界で一番格好良いと思う」

121 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/27 23:55:33.53 vozwoRehP 43/57

「えと」

「うちママが子供の頃死んで片親じゃん?」

「うん」

「パパと私だけだったけどさ、あんまり馴染めないっていうか、仕事で忙しくて全然家にいなかったし」

「……」

「でも、甘えてみたらさ、凄い喜んでくれて、世話してあげたらさ、幸せそうに笑って」

「……うん」

「色々勘違いしてるんだろうなー、と思うけど、好きなんだ」

「うん」

「で、パパが大好きでなんでもしてあげたいと思って、そうやって頑張るとさ、あいつが言うんだよね」

「あいつ?」

「あいつ。『お前は金欲しさにやってたんだろ? ほら、今日も頑張った分だけやるよ』って」

「……」

「私がどんだけパパのためにしたいと思っても、あいつが勝手に値段を付けてく。……私を責める」

128 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:01:19.21 KR93iOKCP 44/57

「私はお金なんてもう欲しくない。だから、もういい」

「……そっか」

「やめたからって、それで許されるって思わないけど……でも、限界なんだ。ごめん、私が薦めたのにさ」

「いいよ。私もわかるから」 

「……ふーん、詳しく聞かせてよ」 ニヤニヤッ

「もうパパさん帰って来るんじゃないの?」

「あっ」

「それじゃ、私も帰るね」

「じゃ、また明日」

「また明日。ばいばい」

(私も、もういいかな……)

133 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:11:58.60 KR93iOKCP 45/57

(……疲れちゃった……)

「……」

(あそこの公園で、ゆっくりしようかな)

137 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:14:54.90 KR93iOKCP 46/57

「……」

(お金はたくさん稼いだけど、結局、全部兄さんを騙してきた結晶で)

(私が今兄さんを好きだと思うのだって、本当は嘘なんじゃないかな)

(だって、全部嘘だったんだから。自分の欲望のためだったんだから)

「……」

(じゃあ、友ちゃんの気持ちも嘘なのかな?)

(あんなに幸せそうにパパさんの話をしてたのに?)

(でも、勘違いしてるんだと思う、って……)

「……勘違いじゃダメなの?」

(わかんないな……私、自分で思うほど頭良くなかったんだなぁ……)

140 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:20:56.43 KR93iOKCP 47/57

「寒いなぁ……」

「……」

「兄さん、温めて?」

「なんて……」

(ちょっとやらしい……)

「耳、冷たそうだな」 ギュッ

「ひゃっ! に、兄さん!?」

「携帯、持ってけよ。どんだけ心配したと思ってるんだ」

「あ……ごめんなさい」

「……こんな所で何してるんだ?」

「何してるんでしょう?」

「俺が聞いてるんだが」

「私にもわかりません」

「なんで敬語なんだよ」

「なんででしょう?」

141 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:22:32.98 KR93iOKCP 48/57

「……何か悩んでるのか?」

「聞きます? 聞いちゃいます?」

「普通にな」

「……多分ビックリするよ」

「そうか」

「嫌な想いもする。私を嫌いになるかもしれない」

「……」

「聞く?」

「ああ」

「……それじゃ、話そうかな」

146 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:26:31.65 KR93iOKCP 49/57

「……つまり、実は妹は謎の組織から金をもらって、俺と仲良くしてた、と」

「そう。私はお金欲しさにベタベタしてたわけ」

「ふーん」

「どう? 面白いでしょ?」

「まあ、何か理由があるとは思ってた」

「……」

「お前、訳のわからない切れ方してろ? あれは絶対におかしかった」

「……ごめんなさい」

「でも、最近は違ったろ」

「……」

「あれは演技じゃないよな?」

「さあ、どうだろ。わかんない」

148 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:30:59.04 KR93iOKCP 50/57

「……なんでそんな泣きそうな顔すんだよ」

「……」

「あー……しかし、何か癪に障るな」

「ごめん……」

「違ぇよ。お前がじゃない」

「……?」

「全部思惑通りにされてるみたいで、すげえ腹立つ」

「何が?」

「お前、俺が好きだよな?」

「……何その聞き方、ムカつく」

「ああ、悪かったよ。……ちょっと話を聞けよ」

154 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:36:42.22 KR93iOKCP 51/57

「俺は今な、好きな女の子がいる」

「……っ」

「最近、そいつが気になって仕方ない。できれば気のせいだと思いたかった」

「……」

「そいつに『俺が好きか?』と聞いてみたら、『何それ』と言われた。まあそうだろうと思った」

「それって……」

「ああ、俺はお前が好きだ」

「あ、あの、でも、私……」

「お前が何してたかとかは、正直どうでもいい。それと俺がお前を好きなのは別だ」

「本当に……私が、好き?」

「好きだ。でもな、俺がお前を好きになったのっていつだと思う?」

「……子供の頃から?」

「だったら素敵だな。……でも実際は、お前が甘えてくるようになってからだ」

「……あ……」

「わかるか? こうなるように仕組まれてた気がして仕方ないんだよ」

157 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:41:42.00 KR93iOKCP 52/57

「誰かが『ちょっと可愛い妹が甘えてくれば落ちるんだろ?』と言ってる気がするんだよ」

「か、可愛いって……。でも、考えすぎじゃない?」

「そう思うか?」

「……あんまり思わない」

「俺はな、そいつを一発ぶん殴ってやらないと気が済まないんだよ」

「……」

「あー、ただ、言っておくぞ。俺はお前が好きだ。何がどうとかは関係ない」

「……私も、好き」

「……キスするぞ。その後で、一緒に殴りに行こう」

「あははっ……うん、殴りに行こう」 チュッ

163 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:46:38.16 KR93iOKCP 53/57

「ここだよ」

「ここが、近親恋愛支援機構……」

「……もう誰もいないのかな?」

「ここで隠れて待ってろ。俺はちょっと様子を見てくる」

「う、うん……」

「何かあったら、すぐに呼べよ」 タッタッタッ

(何かって、何もあるはずないのに……心配性なんだから)

職員「こんばんは」

「……っ!?」

職員「ああ、静かに。私、最後の挨拶をしに来ました」

「最後の?」

職員「はい」

167 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:53:20.86 KR93iOKCP 54/57

職員「実は近親恋愛支援機構なんて組織、初めからないんです」

「えっ?」

職員「いやだって、そんな何の儲けにもならないバカな組織、あるはずないでしょ?」

「えっ、あの……」

職員「というわけで、もうあなたと会うこともないので」

「……ちゃんと説明してください」

職員「お兄さんが帰ってくると怖いので手短に言えば、まあ、実験です」

「……?」

職員「あまりの仲の良くない家族を、仲良くしようという実験。面白いでしょう?」

「すいません、意味がわかりません」

職員「……まあ、暇人が変な事をした、と思ってもらえれば、それでいいよ」

「……結局、あなた一人でやってたんですか、全部?」

職員「お金はそれなりにあるからね」

171 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:56:19.76 KR93iOKCP 55/57

職員「実際は君と友さん二人が初めてのターゲットだったんだけどね」

「あなた、頭がおかしいんですか?」

職員「いや全然。ただ、家族は仲が良い方がいいと思ってるだけだよ」

「……」

職員「はははっ、まあ感謝しでひっ!?」

「一発だけ、叩かせてもらいましたから。消えてください」

職員「酷いなぁ……」

「本当だったら殺してます。……兄さんと一緒になれた事だけは、感謝してますから」

職員「うんうん、仲良きことは良きことかな。それじゃ僕は行くよ。またね」

「二度と会いたくないです。さようなら」

173 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 00:59:30.64 KR93iOKCP 56/57

「……」

「はぁ……はぁ……やっぱり、誰もいなかったよ」

「もう帰りましょう、兄さん」

「いいのか?」

「だって、誰が原因だとか、そんなのどうでもいいじゃない」

「……」

「今、私は兄さんが好きで、兄さんは私が好き。それじゃダメ?」

「……まあ、充分かな」 ポリポリッ

「ふふっ、はやく帰りましょう。私達の家に」

「引っ張るなよ!」

175 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/01/28 01:06:05.08 KR93iOKCP 57/57

職員「……初回にしては、上々だったかな」

職員「二組の恋人の幸せを祈ってるよ」

職員(……問題は、あの人が満足してくれるかだけど……)

職員「……あ、もしもし」

『……連絡が遅い』

職員「すいません、姉さん」

『うるさい。もう帰って来るな』

職員「そんなぁ……姉さんの言う通りに働いたじゃないですか……」

『知らん。野垂れ死ね』

職員「僕が死んだら、近親恋愛支援機構は終わりですよ?」

『馬鹿者。もうじき全国の支部が動き出す。お前は用済みだ。……わかったら、はやく私の所に帰って来い』

職員「はい」

『……それと、浮気なんてしてたら殺すわよ』

職員「は、はははっ、まさか……それじゃ、急いで帰りますので……」

職員(……これ以上殴られたくは、ないですね……) ヒリヒリッ



おわり

記事をツイートする 記事をはてブする