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先頭:魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 #01
前回:魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 #02
――湖の国、首都郊外
しゅんっ!
勇者「……いいぞ」きょろきょろ
魔王「む。便利なものだな、転移魔法というものは」
勇者「魔王だって使えるだろう?」
魔王「いや、個人長距離移動性能と、目的地の選択の
関係でここまでの汎用性はない」
勇者「そうなのか」
魔王「術式が違うのだ。機会があれば研究したいが」
勇者「まぁ、いまは目的が先か」
魔王「うん。どこだ?」
勇者「あの丘の向こうだ。念のために顔は隠してな」
魔王「心得た。淑女の服に比べれば、変装の方が
ずっと着心地が良いぞ」
勇者「あれはあれでよい物なんだがなぁ」
元スレ
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1251963356/
ざっざっ
魔王「あれか?」
勇者「ああ、あの石造りの建物が、このあたりの
修道会を束ねる修道院だ」
魔王「宗教ばかりは私たちには判りづらいな」
勇者「俺だって説明しにくいよ。専門家じゃないんだし。
まぁ、でも『同盟』が化物だとすると
『教会』だって同じくらい化物だって事だ」
魔王「ふむ。用心するべきなのだな」
勇者「ああ、もちろんだ。お前は特に魔王なんだからな。
危険人物リストのぶっちぎりナンバー1だ。
なんせ神の敵だぞ」
魔王「ははは。神など恐れたことはない」
勇者「神の名を叫ぶ人間ってのは怖いんだぞ」
魔王「うむ、それは肝に銘じる」ぶるっ
勇者「さ、いくぞ。一応紹介の連絡だけは
入ってると思うが……」
魔王「最悪魔法で逃げ出せばいいだろう」
勇者「悪い意味で場慣れしてきたな、俺たちも」
――湖畔修道会、内部
修道士「こちらでございます、お客様……」
魔王「静かだな」
勇者「うん」
修道士「我が修道院はただいま『沈黙の行』の
時間です。どうかお気遣い賜りますよう……」
魔王「う、うん……」
勇者(雰囲気に飲まれてるぞ、魔王)
かつん、かつん、かつん……
勇者(独特の雰囲気があるな、修道会ってのは)
修道士「こちらが会議のための部屋となっております。
もうしわけありませんが、我が修道院は
午後の祈りを控えております。
しばらくお待たせしてしまうのですが」
勇者「かまわない。案内ありがとう」
魔王「さて、と。潜入は成功だ」
勇者「あとは、院長に面会して交渉か」
魔王「うん」
勇者「今回は出たとこ勝負って事になるのか」
魔王「まぁ、いくつか交渉材料は考えてきてあるんだが。
というか、そもそもこれは人間側のために考えた
人間にメリットの多い企画なんだがなぁ」
勇者「相手は宗教屋だからな」
魔王「そういえば、この世界の人間は、なんと言ったっけ?
その、光の精霊とかを信じているんだろう?」
勇者「ああ、中央大陸の主だった国は全て光の精霊信仰だ」
魔王「勇者はさっきから聞いていれば、
涜神的な言動が多いが、信仰心は薄いのか?」
勇者「薄いというか、何というか。
戦場に身を置いて、特に魔物なんかと戦ってると、
精霊様ってのは身近に感じるんだよ」
魔王「ふむ」
勇者「信仰心が薄い訳じゃなく、友達感覚のつきあいなんだ」
魔王「そうなのか? それはまた珍しい気がするんだが」
勇者「まぁ、俺は特別だよ。
夢のお告げなんかも聞いたりしちゃったしな」
魔王「神は実在するのか!?」
勇者「神じゃない、光の精霊だ」
魔王「ふむ……」
勇者「すごく善人なだけで、竜とか魔王とかと
似たような存在なのじゃないかな? 光の精霊も。
面倒くさいことが断れない気の弱い性格なんだと思うよ」
魔王「そんな存在でも、信仰の対象なのだろう?」
勇者「まぁな。それに信仰以外の所でも、
『教会』ってのは社会の中で大きな意味を持ってるんだ。
こんだけでかい組織だからなぁ。
『同盟』なんか人数だけで云えば比べものにならない」
魔王「研究や学術の面でも、か」
勇者「ああ。この世界のそう言った知識は、
殆ど教会の権力の下にあると云っても
良いんじゃないかな。以前にも話しただろう?
都市部の人々は、教会のミサで
お話や読み書きを教えてもらうんだ」
魔王「その組織に期待したいんだがな」
勇者「まぁ、今日のはとっかかりだし、
失敗しても傷口は浅くて済む。
『教会』は大所帯だから、内部ではいろんな
派閥があるんだ。いまはその派閥が『修道会』という
形で表に出てきている。様々な『修道会』が
入り乱れているのが現状だ」
魔王「でも、すべて光の精霊を信仰しているのだろう?」
勇者「そうだよ。だから表向き、全ての『修道会』は
友好的、と言う建前になっている。善の勢力ってことだな。
でも実際には信仰の方法論が違ったり、過激さが違ったり
もっと露骨に云えば信者の奪い合いでライバル関係で
あることも少なくはない」
魔王「なんだか、魔界の部族の領土争いと変わらないな。
破壊神と煉獄神と暗黒神とにわかれていたほうが、
まだ判りやすいぞ」
勇者「そう言う宗教があるのか?」
魔王「あるぞ。でも、大半はただのファッションだ」
勇者「で、まぁ。この湖畔修道会は修道会の中でも
実利的、かつ穏健でな」
魔王「ほう」
勇者「農民の生活援護みたいな事を主な活動にしているんだ。
労働力の提供とか、ブドウ栽培の指導とか、
戸籍の補完とか、そうそう、病院もやってるよ」
魔王「病院もか!」
勇者「つーか、病院ってのは教会の仕事だろう?
もっとも病人は受け付けない教会も少なくないけどな」
魔王「……ふむ」
勇者「魔王?」
魔王「どうした?」
勇者「魔王は……。なんだかな、そのう。
時々すごく寂しそうな顔をするよな。いまみたいな時」
魔王「そうか?」
勇者「ああ」
魔王「そんな自覚はないんだがな」
勇者「そうなのか? なぁ、魔王。魔王には
どういう風に物事が見えて」
ガチャリ
魔王「あー。お初にお目にかかる」
勇者「はじめまして。紹介書は届いてるかと思いますが」
魔王「南部辺境で農業を中心に研究生活を送っている。
紅の学士と云います。よろしくお願いしたい」
勇者「俺はその介添え兼護衛の白の剣士。
修道院に入るのは気後れする粗忽者なのだが
ご寛恕ください」
女騎士「……」
魔王「湖畔修道会に来たのは初めてですが
立派な建物ですね、びっくりしました」
勇者「……あ」
女騎士「……白の剣士ですって?」
魔王「へ」
勇者「あー。それはな。えっと」
女騎士「ゆ う し ゃ ! あなたねっ!!」
勇者「うぁ」
女騎士「なにが『白の剣士』よっ。
いままで何処ほっつき歩いてたのよ!
もう一年よ!? 一年も音沙汰無しでっ!!」
魔王「どういうことなのだ?」
勇者「いや、その」
女騎士「あなたがあたしたちを放り出したんでしょっ。
この先に進むのは一人で良いとか何とか
適当なことほざいてっ!!
あんな辺境の街で放り出された
私たちの身にもなりなさいよっ。
どんだけ心配したことかっ。
ってか腹立たしかったか!」
魔王「あー」
勇者「だってさぁ」
女騎士「だってもクソもないのよっ!
あっ。す、すみません。精霊様、クソなんて
云ってしまいました。懺悔しますっ」
勇者「ううう」
女騎士「私はともかく、弓兵さんも、魔法使いちゃんも
ものすごくへこんでたんだからねっ」
魔王「攻撃力過多なパーティーだな」
勇者「回復は俺と騎士でやりくりをね」
女騎士「話聞いてるのっ!? 勇者っ」
勇者「すんません」
女騎士「……ふぅ。で、いままで何してたの?」
魔王「あー」
勇者「そ、それは」
女騎士「ああ。済みませんでしたっ。学士様。
席も勧めませんで、今すぐお茶を持ってこさせます」
魔王「は、はぁ」
勇者「どうしたもんかなぁ」
女騎士「わたしは、元聖銀冠騎士団所属の女騎士。
ゆかりあって、いまはこの湖畔修道会で
みんなの生活の向上のために勤めています」
――湖畔修道会、会議室
勇者「と、まぁ。そんな訳で。魔王にも手傷は
負わせたんだけどさ。魔物総攻撃みたいな話になっちまって
退却してきたって訳さ」
女騎士「そうだったの……。まさか、いままでずっと
怪我の療養を?」
勇者「いや、それはないな。まぁ、色々事情があって
表舞台には顔を出せなかったって云うか……」
女騎士「諸王国がそこまで手を回したのっ!?」
魔王「――」じぃっ
勇者「いや、なんだそれ?」
女騎士「ううん。いいんだけどっ。判ったわ」
勇者「そっちは何でこんなところで修道院長やってるんだ?」
女騎士「もうっ。
私は元々の出身がこの辺なのよ。
騎士の叙勲されたのも教会でだったし教会所属の騎士なの」
勇者「そーいやそうだったなー」
女騎士「……実は、勇者が魔王城に向かってね。
それを諸王国軍本部へと報告して、ひと月たった頃。
特使が来てね。……勇者が出かけて、その身を顧みず
魔王に一矢浴びせたって。そう言って、仲間全員に
恩賞金が出たのよ」
魔王「ふむ」
女騎士「勘違いしないでよねっ。
私は受け取ってないんだから。
……で、そのあとね。
私たち三人はいままで大きな活躍をしてきたから、
王国の要職に取り立てるって……」
勇者「そうだったのか」
女騎士「……それって、体の良い引退勧告だよね。
私はイヤだった。勇者をだしにして出世するなんて
イヤだったし。だから故郷に戻って、今度はみんなの
ためになる仕事をしようと思って」
勇者「立派な志じゃないか。いや、女騎士は以前から
やるときゃやってくれる男気あふれた仲間だと
思ってたんだよ」
女騎士「…………はぁ」
勇者「で、あとの二人は?」
女騎士「……うん」
勇者「?」
女騎士「……弓兵さんはね。ほら、元々兵士だったでしょ?」
勇者「ああ、そうだな」
女騎士「だからね、諸王国軍に帰ったの。
恩賞金ももらってた。連合参謀本部の諜報室に
行くんだって云ってたよ。……その、ごめんね」
勇者「何で謝るんだ? 俺の活躍で報奨金が出たなら
それってすごく良いことじゃないか。出世もしたみたいだし」
女騎士「……う、うん」
勇者「で、魔法使いは? あいつも金もらってただろ?
ああ見えて守銭奴だからな。
『東方の、魔道書、買った……』とか
無表情のままぼそぼそーっとか云ってたろ?
あいつは味わいのあるヤツだからなぁ」
女騎士「魔法使いちゃんは、1人で行っちゃった」
勇者「へ?」
女騎士「勇者を追って、魔界へ」
魔王「……」
勇者「……」
女騎士「……ごっ、ごめんね」
勇者「止めたんだろ?」
女騎士「もちろんだよっ! でも、次の朝。
荷物が無くなってて、多分……」
勇者「じゃ、仕方ない。気持ちはわからんでも無いけれど
女騎士が気に病む事じゃないさ。もとはといえば
俺が1人で突っ込んだせいなんだろうしな」
女騎士「……勇者」
勇者「それより、今日は交渉だの相談だのがあってきたんだ」
女騎士「紹介状にも書いてあったけど……」
勇者「ま……学士」
魔王「わたしだな。改めて挨拶させてもらおう。
紅の学士と呼んで欲しい。学者だ」
女騎士「初めまして、勇者のもと仲間の女騎士です」
魔王「今日来たのは、この修道会のお力をお借りするためだ」
女騎士「うかがいましょう」
魔王「まず、これを見て欲しい」
とさっ
女騎士「これは?」
魔王「馬鈴薯、と言う植物だ。くわしい情報はこちらの
羊皮紙にもまとめてあるが、要点をまとめると
寒冷地でも耕作可能な農作物で、単位面積あたりの
収穫量は小麦の三倍に達する」
女騎士「っ!?」
魔王「もちろん、いくつかの注意点もあるが
作物としては多くの優位性がある。栽培もけして
難しくはない。お解りだと思うが」
女騎士「この作物は、多くの飢餓者を救える」
魔王「そうだ」こくり
女騎士「どのような助力を当修道会にお望みですか?
金銭ですか? それでしたらどのような手段を用いても、
最大限出来うる限りの謝礼を用意させていただきます」
魔王「ほら見ろ、勇者。これがこの作物に対する
智慧ある人物の対応だ」
勇者「わるかったなぁ、反応が鈍くて」
女騎士「……政治的介入や権力の行使をお望みなのですか?
何らかの爵位や身分を? 申し訳ありませんが、
当修道会は王族や貴族にそこまでの影響力は
保持していないのです。お金の用意できる量も……」
勇者「いや、それはない。
女騎士がそう言うの苦手なのはよく知ってるし」
女騎士「勇者じゃなくて、学士様と話してるのっ」
魔王「金銭的な援助は、それはあればあっただけ嬉しいが
当面の目的はそうではない」
女騎士「どういったことでしょう?」
魔王「南部辺境に、冬越しの村という寂れた寒村がある」
女騎士「はい」
魔王「その村に修道院を建てて欲しい」
女騎士「そんなことでよろしいのですか?」
魔王「私ももちろんバックアップをしよう。その修道院を
中心に、この馬鈴薯の栽培方法を農民に指導して欲しいのだ」
女騎士「それは願ったりというか、我が修道会の理念に
則った行動ですが……。そんなことで良いのですか?」
魔王「うん。もちろん、馬鈴薯の栽培が成功した場合、
付近の村や国に修道院を増やして、その栽培方法を
広めてもらえないだろうか」
女騎士「その過程でこの修道会の影響も増えますから、
それはこちらにとっては得ばかりの話ですが、
学士様にとってはどのような得があるのですか?」
魔王「実はこちらの目的も、馬鈴薯の栽培方法の伝播でね。
南方寒冷地の食糧事情の改善がされれば目的にかなう」
女騎士「そう……ですか」
魔王「それに栽培したいのは馬鈴薯だけではない。
農業の手法改革研究も進めている。
従来の三圃式農業にかわる、新しい生産性向上の
手法がある」
女騎士「そうなんですか!?」
勇者「なかなか優れものだぜ」
魔王「そう言った手法を実験的に行なっているのが
くだんの冬越し村なのだが、成功したとしても
私達だけでは広く伝えるための組織や人材が
不足しているのだ。
そう言った点で協力しあえればと考えている」
女騎士「あなたは、光の精霊様に使わされた
御使い様に違いありませんっ」
勇者「それはどーかなー」
魔王「……」げしっ
勇者「痛っ!?」
女騎士「そのようなことであれば、出来うる限りの。
ええ、私自らが冬越し村へと赴き、修道会の
総力を挙げて助力いたしましょう」
魔王「ご厚情痛みいる」
勇者「いや、それは……」
女騎士「何か文句あるの? 勇者」
勇者「いや、なんてーのかなぁ。ほら、えーっと」
女騎士「じれったいわね」
勇者「俺って昔から危険をはらんだニヒルな
勇者じゃない? だから、ほら。
近くにいると、無用の火の粉が……」
女騎士「そんなのずっと前から体験済みよっ。
それとも私が冬越し村に行くと何かまずいわけっ?」
勇者「えーっと……それは、そのまおーとか……」
魔王「協力してくださる修道会の長に
失礼があってはいけないぞ、勇者」
勇者「ええーっ!?」
女騎士「……余裕がおありですね」めらっ
魔王「余裕など無い台所事情ゆえ、こちらの修道会に
協力を求めてきたのだ。わたしは契約至上主義者ゆえ
契約の相手には最大限の敬意を払うことにしている」
勇者(た、たすけてー)
女騎士「ともあれ、二度と会えないかと思った……。
いえ、一年ぶりに会うことの出来た勇者と一緒に
このような恩恵の食物をもたらしてくれた学士様も
光の精霊のお導きというものでしょう。
わが修道会の天命かと思います」
魔王「いいえ、魂持つものの努力です」
女騎士「……ええ、そうですね。その通りです」
――湖畔修道会、前庭
女騎士「本当に良いの? 見送りは」
勇者「ああ、かまわない。部屋でも良かったのに。
どうせ転移魔法なんだから」
女騎士「そりゃそうだけど」
魔王「では、冬越し村で会えるのを楽しみにしている」
女騎士「そうですね、冬の間はさすがに移動できませんから。
この修道院の後任院長を決めて、春一番でそちらへと
向かいましょう。修道院建築に関して、当地の領主や
有力者との間に好意的な合意が出来れば良いのですが」
魔王「そちらに関しては、この冬の間に
出来る限りの根回しをしておこう」
女騎士「ありがとうございます」
勇者「なんだか仲が良さそうに見えて怖い」
女騎士「何か言った?」
勇者「なんでもありません」
女騎士「では春に!」
魔王「ああ、春にお目にかかろう」
――冬越し村の春
小さな村人「うんわぁ、やっとこお日様が顔をだしたなや」
痩せた村人「だしたなやぁ。ああ、風がぬるくなってきた」
村の狩人「ほーい。ほーい」
小さな村人「どうしたー?」
痩せた村人「今日は良い天気だなやー」
村の狩人「そうだなぁ。今年はなんだか良い事が
起きそうな気がするだなー」
小さな村人「さっそくかい?」
村の狩人「ああ、ウサギが4匹も捕れたよ。
1匹は村長さんの所へ持っていく」
小さな村人「そりゃぁいいな!」
痩せた村人「今年はイノシシの塩漬けがまだたくさんあるしな」
村の狩人「ああ、びっくりしたなや」
小さな村人「これも村はずれの剣士様のお陰だなー」
痩せた村人「うちの息子が、斧を研いでもらっただよ」
村の狩人「熊もつぶしてくれたとかで、
森の中も少し風通しが良いみたいだなや」
メイド妹 ~♪ ~♪
小さな村人「おんや。噂をすれば、村はずれの館の姉妹だなよ」
痩せた村人「本当だ。ほーぅい、ほーぅい!」
村の狩人「どこへいくんだーい」
メイド姉「こんにちは、みなさん」ぺこり
メイド妹「あのねー。村長さんの所へ、木イチゴの樽漬け
を分けてもらいに行くんだよっ」
小さな村人「そーかそーか。えらいな」
痩せた村人「お客さんでもくるんかい?」
メイド姉「はい、そのようです」
村の狩人「そうかそうか。……ふむ。
ようし、このウサギを、当主の学者様へと
お届けしてほしいだなや」
小さな村人「おんや、太っ腹だな、狩人さん」
村の狩人「なんの。森を安全にしてくれた
大恩あるおうちじゃないか。
ウサギなんて春になったのだからまた取れるだな」
メイド妹「ありがとー♪」
小さな村人「それもそうだ。
これは沢で取れたクレソンだなや。
ほら、分けてやるから持っていくと良い」
メイド姉「ありがとうございます、本当に」
痩せた村人「雪解けの屋根修理には是非呼んでくれだな」
村の狩人「そうだそうだ、是非お世話してやんねと」
メイド姉「はい。かならず当主に伝えます」
小さな村人「ええってええって」
痩せた村人「なんだ、みんなにこにこしてからに」
村の狩人「やぁ。やっぱりお屋敷詰めともなると
本当に2人ともべっぴんさんだねぇ」
メイド姉「……」
小さな村人「ああ、本当だ。俺たちとは全然違うだなや。
賢くて優しくてべっぴんで、俺たちは、みんな
2人に憧れてるだなよ」
メイド妹「ありがとー」にこぉっ
メイド姉「……ごめんなさい」
――村はずれの屋敷、深夜
勇者「よっ。ほっ」 ぎゅっ、かちっ
勇者「こんなもんか? 薬草もあるし、あとは
現地でどうとでも奪えばいいか」
魔王「こんな深夜に完全武装か」
勇者「魔王……」
魔王「私の物のくせに」
勇者「あー。うん。……ごめん」
魔王「なんだその情けない顔は。勇者だろうに」
勇者「後ろめたいとどうしてもこういう顔になるんだよ」
魔王「私はお前の物なんだぞ。そしてお前は私の物だ」
勇者「ああ」
魔王「止められるとでも思ったか?」
勇者「……」
魔王「見くびらないでもらおう」
勇者「え? いいのかっ?」
魔王「ほら」
勇者「これは?」ずしっ
魔王「先々代だったか? の魔王が使ってたという、
黒玉鋼の鎧兜だ。安心して良い。呪いの類は
かかっていない」
勇者「……?」
魔王「魔王の私がいなくて、魔界の統治のたがが
緩んできてるんだ。勇者はその粛正を適当にしてきてくれ」
勇者「お、おう」
魔王「こっちの紙に信用できそうな部族の族長のリストと、
紹介状をしたためておいた。人捜しなら助力を仰ぐ
必要もあるだろう」
勇者「いや、あいつはああみえて、その……。
動じないヤツだから。
きっと平気でけろっとしてると思うんだ」
魔王「だからといって探していけない道理もあるまい」
勇者「魔王……」
魔王「私が寛大で感謝するんだぞっ」
勇者「もちろんだ。ありがとう」
魔王「……」じぃっ
勇者「?」
魔王「それだけか?」
勇者「なにが?」
魔王「ほら、そのぅ。人間には、その、何だ……
親しい人と……というか親しい男女が別離をする時の
特別な風習があるそうではないか」
勇者「えー。あ。ああ」
魔王「……駄肉だからダメか?」
勇者「何でこういうタイミングで
じわぁって見上げるかなっ!?」
魔王「所有契約の項目外なのか?」 じわぁ
勇者「えー、あー。その」
魔王「やっぱりスキンシップが足りないのか」
勇者「なんでそうなる」
魔王「実は毎週メイド長に説教されるんだ。
『まおー様はスキンシップが足りません。
そもそも露出もかわいげも足りてないんですから
スキンシップくらいケチってどうなります?
いいですか? 戦争の基本は物量です。
飽和攻撃で殿方の理性など崩壊させてしまえば
戦術の必要性すらないのです』
そう言われるんだ」
勇者「戦術論的には正しいんだが」
魔王「ダメなのか?」
勇者「そ、その。照れくさいぞ。
そういうのはさ、ほら。
もっと落ち着いた時にさっ」
魔王「それで良く勇者が名乗れるな。
それでは臆病者ではないかっ」
勇者「ば、ばか云えっ。俺は勇気にかけては
世界公認の第一人者、それゆえ勇者ですよ!?」
魔王「では覚悟を決めるのだっ」
勇者「何で開き直ってるんだよ、魔王っ」
魔王「半年だぞ!? 雪の中にこもって
生活してればアドバンテージが取れて当然だろうに
なんだか流されるままにずるずると
何の進展もなく半年もの時間を浪費してしまった事実が
私を責めさいなんでるのだ。
そんな状況下でそろそろ修道院の建築も始まり、
夏の間には完成してしまう上に、
私の勇者は昔の女を探しに行ってしまうわけで
精神的に追い詰められない方がおかしいではないかっ」
勇者「あー」
魔王「……」じぃ
勇者「まったくなぁ」
魔王「……」
勇者「……」 ちゅ
魔王「……むぅ」
勇者「なんだよその恨みがましい視線はっ」
魔王「おでこではないか」
勇者「おでこで悪いか。気に入らないなら返せ」
魔王「それはダメだ。勇者の全ては私に所有権がある。
つまりこのおでこも私の私有財産だ。議論の余地はない」
勇者「むぅ……」
魔王「……」
勇者「残りは帰ってからっ!」
魔王「約束だぞ、勇者。かならずだぞっ!」
しゅんっ!
――村はずれの屋敷、中庭
女騎士「さて、諸君らの手元にあるのは南部諸王国の
軍において用いられる標準的な武器、ロングソードだ。
この武器は威力、間合いにおいてバランスが良く、
鉄の国おいて鋳造された製品で質も良い。
重量バランス配分がこの種の武器の使い勝手を
決めるので、手に持って馴染むかどうか、判断の
参考にして欲しい」
貴族子弟「……」
商人子弟「……」
軍人子弟「ばからしーでござる」
女騎士「何か言ったか?」
貴族子弟「……」ぷいっ
軍人子弟「馬鹿らしいといったでござる。何で拙者が
女如きに剣を教わらないといけないのでござるか」
女騎士「……」
軍人子弟「白の剣士殿から剣を教わったのは
別に女に弟子入りするためではないでござるよ。
女は家の中でケーキでも焼いていれば良いでござる」
女騎士「おい、そこのデブ」
商人子弟「ひゃ、ひゃいっ!? ぼ、ぼく?」
女騎士「剣を両手に持って構えろ」
商人子弟「……ううう」
女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
貴族子弟「!?」
軍人子弟「ッ!!」
商人子弟「けけけ、剣がっ!! ま、まっぷた、真っ二つ」
女騎士「はっ!!」 ギンッ!!
商人子弟「み、短くなったっ!?」
女騎士「その気になれば5cmずつ切り取ることも出来るんだぞ」
軍人子弟「ど、ど、どうしてっ」
女騎士「そこのゴザルに云っておく」
女騎士「私は、湖の国の女騎士。かつて勇者と共に
魔界で千の戦をくぐり抜けてきた女だ」
貴族子弟「ゆ、勇者っ勇者様のっ!?」
商人子弟「!?」
軍人子弟「ま、ま、ま、まさか『鬼面の騎士』!?
『怪力皇女』!? 『石壁しぼりの女夜叉』!?」
女騎士「色々詳しいじゃないか、ゴザル」
軍人子弟「……」がくがくぶるぶる
女騎士「これは別に怪力じゃない。技だ。
刃筋を安定させて、力を強度の低い場所に
集中させれば諸君らでも実行可能だ。
勇……あー。白の剣士は、素質がありすぎでな。
なんでも『なんとなーく』でやってしまうので
教師としては不適当なのだ」
商人子弟「もしかして、白の剣士殿は、女騎士殿の
弟子だったのですか!?」
貴族子弟「そ、そうかっ!」
軍人子弟「そうでござったか……」
女騎士「う、うむ。そういうような……。
そ、そういうことだ。とっ、とにかく。
白の剣士は、勅命を帯びて探索の旅に出ている」
貴族子弟「勅命……王のご命令ですか」
軍人子弟「探索の旅! 男子の本懐でござるな!」
女騎士「そう言うわけで、週に4回の戦闘訓練は
しばらくのあいだ私が受け持つ」
商人子弟「は、はヒィ!」
女騎士「なに。私は白の剣士とちがって
理論的かつ実戦的、基本に即した教練方法を
採用するつもりだ。諸君らの武芸を必ずや
実用の域まで高めよう」
貴族子弟「勇者の仲間の騎士様に
剣を教授いただけるとは光栄です!」
軍人子弟「そこまで言われては仕方ない。
拙者も剣の道を究めるとするでござる」
女騎士「では、手始めに北の森を、走り込みで三周。
そのあと帯剣して素振りをしながら一周。
小川へと移動したら、腰まで水につかって
ロングソードの素振り500回だ」
三子弟「「「ひぃぃぃ!?」」」
――村はずれの屋敷、初夏
ひいぃぃぃ! ひぃぃぃぃ!
魔王「今日も元気だな」
メイド長「まったくです。でも、女騎士さんは
あれで結構楽しそうですよ?」
魔王「そうなのか? 勇者がいなくなって
お尻に矢が刺さったアナグマのように怒り狂って
いたではないか」
メイド長「頼りにされると張り切ってしまう人
なんでしょう。可愛らしい人ですよ」
魔王「む」
メイド長「まおー様より引き締まった身体ですし」
魔王「むぅ」
メイド長「いえいえ。まおー様もスタイルは
悪くないんですよ? 出るべきところのボリュームは
それはたいしたものです。えっちではしたない肉体です」
魔王「メイド長の言い方の方がはしたない」
メイド長「しかし肉体性能は、お色気か癒し系ですのに
ご本人の性格がお色気とも癒しともまるで無関係なのが
まおー様の泣き所でしょうか?」
魔王「ほうっておけ」
がきょ、がちょ
メイド長「なんですか? それ」
魔王「うむ。呼び寄せた職人に依頼していた試作品だ。
実験して手直しして欲しい部分の指示を
書き付けておかないとな」
メイド長「何に使う物なのですか?」
魔王「羅針盤といわれているものだ。いま作っているのは
その改良だな。この二軸のシャフトと、大きなガラス球で
内部の羅針盤を水平に保つのだ」
メイド長「ふむふむ。改良前はどうやっていたんですか?」
魔王「水の上に磁石を浮かべていたんだ。
ほら、この内側の、内部に浮かんでいるのと
おなじ構造だな」
メイド長「だいたい判りました。でも、随分巨大化
してしまったわけですね」
魔王「仕方ない。これは試作品だからな。
実用化されれば、小型化のめども立つだろう」
メイド長「どういう改良なのですか」
魔王「うむ、羅針盤とは方位を知るものだ。
この内部の水の上に浮かべた磁石が回転して
北の方角を教えてくれるわけだが……。
そのためには水面が水平安定する必要があるな」
メイド長「はぁ」
魔王「方位を知りたがるのは船乗りだろう?
揺れる船の上で、ましてや嵐なんか来たりした日には
水に浮かべた磁石の方向を安定させるのは至難だ」
メイド長「じゃぁ、いままでどうやってたんですか!?」
魔王「根性だろ」
メイド長「……」
魔王「……」
メイド長「人間ってすごいですね」
魔王「まぁ、この宙づり自由式であれば
設置場所に難があるとは云え、揺れる船の上でも
下部の釣り錘によって水平が保持される」
メイド長「ふむ。根性が無くても出来るわけですね」
魔王「いや。人間であるというのは根性は必須だと
女騎士殿は云っていたから、根性はやっぱり
必要なのだろう。
この改良で軽減されるのは技能だ。
羅針盤を扱うのは特殊な技術だったからな。
この簡便な装置で技術者が増えるわけだ」
メイド長「でも、この村には海ありませんよ?」
魔王「うむ。この装置は、売りつける」
メイド長「買ってくれますかね?」
魔王「まともな目利きがあれば、家ほどの
黄金でも積むだろうな。これで『同盟』と接触する」
メイド長「まおー様の専門ですから、お任せします」
魔王「まかせておけ」
メイド長「ところでお昼は馬鈴薯で?」
魔王「うむ、まことに馬鈴薯の揚げは美味なるぞ」にこっ
――魔界、黒狼砦
黒狼鬼「うぉろろろ~ん」
黒狼鬼「ろろろぉ~ん」」
勇者「うお。何か集まってきたぞ」
黒狼鬼「うろろ~ん! がうっ! がうがっ!」
勇者「おまえらっ。怪我したくなきゃ、引いてろっ!」
ザガッ! ガッ!!
黒狼鬼「ぎゃんっ!?」
黒狼鬼「はっ……はっ……はっ……ギャウッ!」
羽妖精「黒騎士サマー。コッチコッチ!」
勇者「判るのか?」
羽妖精「女王サマ、コッチコッチ」
勇者「まかせろっ! 爆砕呪っ!」
羽妖精「上~コノ上~!」
黒狼衛兵「行かせぬっ」
勇者「なんだ、言葉がしゃべれるのもいるのかっ!?」
ギンッ! ギギンッ!
羽妖精「黒狼族ノ成体ダヨォ。
モット大キナノモ、イルヨォ」
黒狼衛兵「心配するな、貴様、ここまでだっ」
勇者「ほあちゃっ!!」
ドビシィッ!!
羽妖精「デコピン!?」
黒狼衛兵「む、無念っ!」
バタリ
勇者「切りがないな」
羽妖精「一杯来ルヨォ」
黒狼衛兵×15「ガフッ、ガフッ! オロローン!」
勇者「面倒くさいぞ、お前ら」
羽妖精「ダ、ダメッ! 塔ヲ壊シチャダメ!」
勇者「む、そうか。上に女王がいるんだっけ。」
羽妖精「ウンウンッ」
勇者「んじゃ、えいっ!」
黒狼衛兵「片手で岩扉をっ!?」
黒狼衛兵「に、逃げろっ」
勇者「ちょっと距離が必要なんだ、この技は。
……あんまりうろちょろするなよ、
急所に当たると死んじまうぞ-。
えっと、たしか、こうやって
背中をひねる感じでぇ……」
羽妖精「眩シイヨッ」
勇者「光の精霊直伝、光の封印槍だっ」
――魔界、黒狼砦の塔の上
ドッゴォォーン
羽妖精「ケフッ。ケフッ」
勇者「悪いな」
羽妖精「ヒドイヨォ」
妖精女王「何事ですっ」
勇者「お。この人がそうかな?」
羽妖精「女王サマッ!」
妖精女王「羽妖精ではありませんかっ」
勇者「こんにちは、手荒な訪問で済みません」
羽妖精「女王サマ、コレハ人間ノ雄」
妖精女王「みれば判ります」
勇者「人間です」
羽妖精「アタシ頭イー♪」
妖精女王「速く逃げてくださいっ。
魔狼将軍が来るといけません」
勇者「倒した」
妖精女王「まさかっ? 人間にそのような力が。
しかし、それだけではないのです!
魔狼将軍の背後にはさらなる実力を持つ
魔界でも高位の戦士、魔狼元帥が……」
勇者「それも倒した。先週」
羽妖精「!? あ、あなたは」
妖精女王「黒騎士人間ダヨ」
勇者「ああ。黒騎士だ。魔王の剣にして、
絶対忠誠を誓う魔界の執行官」
羽妖精「カックイイヨネ」
妖精女王「そうですか、確かにその鎧の紋章は魔王様の物。
いえ、もしやその鎧、魔王様ご自身の物では……?」
勇者「……その問いに答える言葉はないぞ」
羽妖精「カッコツケテルー」
妖精女王「魔王様の命令に背き、人間をさらっては
無益な殺生と玩弄を繰り返す魔狼族を粛正されに
きたのですね」うるうるっ
勇者「いや、ついカっとなっ」
羽妖精「……」じー
勇者「ごほん。そうである。魔狼族の横暴、目に余る。
人間族に慈悲を掛けるわけではないが、魔王の
命令は絶対である。逆らうことは許されない」
妖精女王「元は人間族でしょうに。何という忠誠心でしょう」
勇者「ふははは。我は黒騎士。絶対不破の魔王の剣」
妖精女王「魔王様の仰せの通りに」ふかぶかっ
勇者(なんか気分良いな! 魔王の部下も!!)
羽妖精「女王サマー」
妖精女王「何です?」
羽妖精「人捜シー」
妖精女王「人捜し?」
勇者「ああ。そういえばそうだった。
あーあー。
魔王の命令により、我は1人の人間をさがすものなり」
羽妖精「女王サマノトコロニ来テタ人間女ー」
妖精女王「ああ。あの術士ですか……」
勇者「いまは何処に?」
妖精女王「素晴らしい魔法の素質を秘めていましたからね。
彼女は妖精族の魔法を学ぶと、さらなる奥義を求めると
云って旅に出ました」
勇者「旅? どこへ」
妖精女王「それは判りませんが……」
勇者「一体何処まで努力すれば気が済むんだ、
あの無表情小娘。いまでも人間界最強のクセに」
妖精女王「そういえば……」
勇者「そういえば?」
羽妖精「魔界の果て、時の砂の滝が落ちる滝壺に
一つの古いベンチがあると。そのベンチに座った
旅人は星の最果て、『外なる図書館』へ行くことが
出来ると云われています。
――彼女は熱心にその伝承を調べていました」
勇者「『外なる図書館』だな? 判った」
妖精女王「しかしそれは伝説の場所。
詳しい場所やたどり着く方法は妖精族でも知りません」
勇者「そのようなことは問題ではない。
魔王の命にしたがいどのような場所であろうと
必ず見つけ出す」
羽妖精「カッコイー!」
妖精女王「ご無事をお祈りいたします」
勇者「妖精族は元の領地に戻り、いままでと同じく
その民を治めて暮らすようにとの魔王の仰せだ」
妖精女王「魔界を治める魔王様の治世に幸いあれ」
勇者「えー、こほんこほん。
魔狼族の生き残りにはきつく申し渡しておく。
元来魔狼族は誇り高い自由不羈の民のはず。
穏健派を中心に魔王の民として、その誇りを
まもるような生き方にするが良いだろう」
妖精女王「妖精族は魔狼族からの迫害さえなければ
異存はありませぬ。遺恨は伝えぬと誓約しましょう」
勇者「……その寛容、魔王に伝えよう。
では、時間だ。我は探索の旅に戻らなければ
ならない。縁があればまた逢おう」
妖精女王「このご恩、けして忘れません」
しゅんっ!!
羽妖精「カッコイー!」
妖精女王「妖精族は救われましたね。
魔王様にあのような部下がいるとは……。
ただのお飾り、柔弱で無能な王と云われてきましたが
何かが変わり始めているのかも知れません。
魔王様と云えば――あっ」
羽妖精「ドシタノー?」
妖精女王「魔王様といえば……」
(時の砂の滝が落ちる滝壺――
一つの古いベンチ
星の最果て――
『外なる図書館』――)
妖精女王「『外なる図書館』……」
羽妖精「?」
妖精女王「『外なる図書館』に引きこもる、
魔族の中でも変わり者の一族がいると……。
その一族は知識を求め、過去と未来を幻視し
『外なる智慧』を身につけて、憧れに魂を燃やすと……」
羽妖精「?」
妖精女王「魔王様って、魔王って……
何なのでしょうか……」
#02の「腹はくちくなったか」のところを調べて頂きありがとうございました
♯03は
602 羽妖精「!? あ、あなたは」 → 妖精女王「!? あ、あなたは」
妖精女王「黒騎士人間ダヨ」 → 羽妖精「黒騎士人間ダヨ」
608 羽妖精「魔界の果て、~」 → 妖精女王「魔界の果て、~」
ではないですかね?