ミサト(家にいるとき、一見普通に見えるけど……)
ミサト(私が近づくと急にバッて離れたりするし)
ミサト(私に聞こえないように内緒話とかしてるし)
ミサト(時折アイコンタクトとかもしてるし)
ミサト(……くそっ)
元スレ
ミサト「最近シンジとアスカがウザい」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357017909/
ミサト(……ほら、今も……)
シンジ「~~~~」コショコショ
アスカ「~~~~」コショコショ
ミサト「…………」イライラ
ミサト(あれでバレてないとでも思ってるのかしら?)
ミサト(しかも時折、チラチラこっちを見てくるのがさらにムカつく)
ミサト(……ほら、今も……)
シンジ「……。……。」チラッ
アスカ「……。……。」チラッ
ミサト「…………」イラッ
シンジ「……。……。」クスッ
アスカ「……。……。」クスクス
ミサト「~~~~っ!」
ミサト「ちょ、ちょっとシンちゃん、アスカ? さっきから何、人の顔見て笑ってんの? 私の顔、なんかついてる?」ヒクヒク
シンジ「えっ」
アスカ「えっ」
ミサト「…………」
シンジ「べべっべつに……僕達、ミサトさんの方なんて見てませんけど」
アスカ「そっそうよ。自意識過剰なんじゃないのミサト~?」
ミサト「……ああ、そう。(……さっきおもっきし見てたじゃねーか)」
シンジ(……ほら、アスカが露骨に見るから……)ヒソヒソ
アスカ(何よ! シンジだって見てたくせに!)ヒソヒソ
ミサト「…………。(聞こえてるっつーの)」
ミサト(……と、こんなやりとりがもう一ヶ月近くも続いている)
ミサト(ただでさえ激務に忙殺される毎日に、家ではガキ二人が自分をおちょくってるとしか思えない態度)
ミサト(私の心の余裕は、もうとっくに消え失せていた)
ミサト(……しかし今も、シンジとアスカは相変わらず)
シンジ「……。……。」ヒソヒソ
アスカ「……。……。」クスクス
ミサト(……私そっちのけで、二人だけの世界に没頭している模様)
シンジ「……。……。」クスクス
アスカ「……。……。」ヒソヒソ
ミサト(……二人で肩を寄せ合って、何かの雑誌を読んでいるようだ)
シンジ「……こういうの、良いんじゃない?」ヒソヒソ
アスカ「え~、似合うかなぁ……」ヒソヒソ
シンジ「……似合うよきっと」ヒソヒソ
ミサト(油断しているのか、時々声が漏れ聞こえている)
ミサト(まあ、あいつらの会話の内容なんてバカップルのそれでしかないから聞きたくもないけど)
シンジ「……。……。」ヒソヒソ
アスカ「……。……。」クスクス
ミサト(……ていうかホント、何でこいつらこんなにいちゃいちゃしてんの? ねえ)
ミサト(人が毎日毎日朝から朝まで働いてるっちゅーのに)
シンジ「……。……。」ヒソヒソ
アスカ「……。……。」クスクス
ミサト(……いや、八つ当たりだってのは分かってる……)
ミサト(別にあの二人は何も悪くない……。他の子達が当たり前のようにしてるようなことを、しているだけ……)
ミサト(……そうよミサト。あなたはこの子たちの保護者なんだから……)
ミサト(もっと心に余裕を持って接しないと……)
ミサト「ね、ねぇシンちゃん、アスカ?」
シンジ「!」
アスカ「!」サッ
ミサト(……隠した……)
シンジ「ななっなんですかミサトさん」
アスカ「急に声掛けないでよもう。びっくりするじゃない」
ミサト「……ああ、ごめんね」ニコォ
シンジ「!?」ビクッ
アスカ「!?」ビクン
ミサト「……やあねぇ二人とも、そんなにびっくりしないでちょうだい」ニコニコ
シンジ「そ、そんなびっくりなんて……ははは」
アスカ「そうよもう……ねぇ?」
ミサト「あはは……で、二人して何の本を読んでたの?」
シンジ「え? 本?」
アスカ「何言ってんのミサト」
ミサト(こいつら)
ミサト「いやいや……今アスカが隠したじゃないの。そのクッションの下に」
アスカ「隠した? 私が?」
ミサト「そうよ。私が声掛けた瞬間に、サッと」
アスカ「隠してないわよ」
ミサト「隠したじゃない」
アスカ「じゃあ何時何分何秒? 地球が何回回ったとき?」
ミサト「…………」イラッ
ミサト「……じゃあもういいわ、そのクッションの下を見せなさい」
アスカ「嫌」
ミサト「何でよ」
アスカ「このクッションは私の私物だから、この下を捜索するのはプライバシーの侵害ですー」
ミサト「…………いいから」イライラ
アスカ「あ、やだ! ちょっ……」
ミサト「アスカ、その手を離し……なさいっ!」バッ
アスカ「あっ」
シンジ「あっ」
ミサト「……? なにこれ」
アスカ「あっ……」
ミサト「編み物入門……?」
アスカ「あっ、あっ……」
シンジ「アスカ……」
ミサト「……あー。そーいうこと」
アスカ「……え?」
ミサト「要するにこれで、愛しのシンちゃんに手編みのマフラーを作ってあげようとしてたってことね」
アスカ「!」
シンジ「!」
ミサト「……ったく、だったら最初から素直にそう言えばいいじゃないの」
アスカ「……ち、ちがっ……」
ミサト「何が違うのよ」
シンジ「ミサトさん! アスカは……」
ミサト「いいじゃないの、パイロット同士で付き合ったって。ま、あてられる方の身にもなってほしいけど」
アスカ「…………」
シンジ「……アスカ……えっと……」
アスカ「……そ……そうよ!」
シンジ「アスカ!?」
アスカ「わ、私はシンジが好きで……だから、えっと、手編みのマフラーをプレゼントして、付き合ってって言うつもりだったの!」
シンジ「アスカ」
アスカ「だっ、だから……あーもう! ミサトのせいでせっかくの計画が台無しじゃないの! バカ!」
ミサト「なっ……ば、バカですって?」
シンジ「ちょ、ちょっとアスカ」
アスカ「あーあ、張り切って損した! バッカみたい! 今日はもう寝ようっと!」 スタスタ……バタン!
シンジ「あ……」
ミサト「な、何よあの子……っていうかあなた達、まだ付き合ってなかったの?」
シンジ「…………」
ミサト「で、でもまあ……一緒に本読んでたんだし、実質ほとんど付き合ってたようなもんでしょ?」
シンジ「…………」
ミサト「そ、そりゃまあ、途中で横槍入れちゃったのは悪かったかもしんないけど」
シンジ「…………」
ミサト「まあでも告白っつったって、成功するのは目に見えてるんだし―――」
シンジ「……ミサトさん」
ミサト「ん?」
シンジ「……アスカが手編みのマフラーをプレゼントしようとしてたのは……僕じゃないんです」
ミサト「……え?」
シンジ「……ミサトさん、なんです」
ミサト「…………え?」
シンジ「……最近、ミサトさんずっと遅いし……明け方とか、冷え込むんじゃないかって」
ミサト「……じゃあ、アスカがさっき言ってたのは……」
シンジ「ミサトさんにあんな言い方されて、素直になれるアスカじゃないですよ。それは。ミサトさんもよくわかってるでしょ?」
ミサト「……………」
シンジ「アスカ、ずっと悩んでたんです。どんな形が良いかとか、どんな色が似合うかとか……」
ミサト「……最近、あなた達が私の方をチラチラ見てたのは……」
シンジ「ミサトさんに似合うマフラーを考えていたからです」
ミサト「…………!」
シンジ「でもアスカ、今まで編み物なんてしたことないって言うから……。だから僕、『だったら市販にしたら?』って言ったんです」
ミサト「…………」
シンジ「でもアスカ、『絶対自分で編む』って言って、聞かなくて」
ミサト「…………」
シンジ「僕も編み物は経験なかったから、二人で入門用の本買って、毛糸も買って……ようやく、編み始めたところだったんですよ」
ミサト「…………」
シンジ「……こう言うと怒られるかもしれないですけど、アスカって、そんなに手先が器用な方じゃないんです。だから、『それなら僕が編もうか?』とも言ったんですけど……」
ミサト「…………」
シンジ「アスカ、『ミサトにあげるプレゼントなんだから、絶対自分で最後まで編む』って……。だから僕は、アドバイスしてただけなんです」
ミサト「……アスカ……」
~アスカの部屋~
アスカ「うぇぇ……ぐすっ。ミサトのアホぉ……。もう絶対マフラーなんて編んであげないんだから……ぐすっ」
(コンコン)
アスカ「!」
ミサト「……アスカ? 入るわよ?」
アスカ「ど、どうぞ?」ゴシゴシ
(ガラッ)
ミサト「……アスカ……」
アスカ「……な、何よ……」
ミサト「……泣いてたの……?」
アスカ「! こ、これはっ……」
ミサト「…………」
アスカ「……そ、そうよっ!」
ミサト「…………」
アスカ「えっと……せ、せっかく……シンジに、告白しようとしてたのに、えっと、ミサトがバラしちゃって……えっと、なんかもう色々、台無しになっちゃったんだからね!」
ミサト「…………」
アスカ「あ、あんな醜態を晒してはもう告白どころじゃないわよ! どうしてくれんのよ! ミサト!」
ミサト「……ごめんね」
アスカ「あ、謝って済む問題じゃないでしょうが! わ、私がどんだけ……」
ミサト「…………」
アスカ「……どんだけ………」
ミサト「…………」
アスカ「……どん……だけ……ひっぐ……」
ミサト「…………」
アスカ「うっ……ぐすっ……うぇえええええええ」
ミサト「アスカ」
アスカ「うぇえええ……み、みさとのばか、あほっ……」
ミサト「アスカ」
アスカ「あ、あんたのせいで……あんたのせいで……うぇえええええ」
ミサト「……アスカ」
(ギュッ)
アスカ「うぇえええ……も、もうしらなっ…………?」
ミサト「…………」
アスカ「……みさ、と……?」
ミサト「……ごめんね。アスカ……」
アスカ「…………」
ミサト「……本当に……ごめん……」
アスカ「…………」
ミサト「…………」
アスカ「…………」
ミサト「……ねぇ、アスカ」
アスカ「…………なによ……ぐすっ」
ミサト「……シンジくんには、もう告白しないの?
アスカ「……は?」
ミサト「……いや、もし……しないんなら、さ」
アスカ「…………」
ミサト「……その、編みかけのマフラー……代わりに、私にくれないかなあ……なんて」
アスカ「! …………」
ミサト「……だめ、かしら……?」
アスカ「…………」
ミサト「…………」
アスカ「…………」
ミサト「…………」
アスカ「…………」
ミサト「…………」
アスカ「………わね…」
ミサト「……え?」
アスカ「……しょーが……ないわね……ぐすっ」
ミサト「アスカ……」
アスカ「しょ、しょうがなくよ! しょうがなく! シンジにあげるはずだったのを、しょうがなく! み、ミサトにあげるだけなんだからねっ!」
ミサト「……ええ、わかってるわよ。……アスカ」
アスカ「…………」
ミサト「…………」
アスカ「…………」
ミサト「……ありがとう。……アスカ」
アスカ「……ふんっ……」
ミサト「じゃあ、私はリビングに戻るから」
アスカ「……ん」
ミサト「……マフラー、楽しみにしてるわね」
アスカ「…………ん」
ミサト「……じゃあまた後でね。アスカ」
アスカ「………………ん」
(ガラガラッ……バタン)
アスカ「…………」
アスカ「……私、『編みかけ』なんて、一度も言ってないのに……」
アスカ「…………」
アスカ「……相変わらず、演技が下手なんだから……ミサトったら」
アスカ「…………」
アスカ「……ふふっ」
了
悪くはないけど物足りない