1 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:31:48.00 WPGsmTBb0 1/50

「何が二回目なんだ」

「テメェに大声で起こされんのが二回目だって言ってんだよクソ兄貴」

「大声じゃないと起きないだろ」

「ブタ箱みてぇに鉄柵越しに起こすんじゃねぇんだ、体揺するなりなんなり優しく起こせってんだ」

「ああ分かったよ、次からそうするよ」

「頼むぜ兄貴」


「朝だぞ起きろ」妹「わかったよ、ああクソッタレ、わかったよ」
http://blog.livedoor.jp/ayamevip/archives/20776398.html

元スレ
兄「おい、起きろ」妹「ああクソッタレ二回目だぜ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1354440708/

4 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:32:37.54 WPGsmTBb0 2/50

登校中

「やれやれ…どうしてあんな妹に育ったのか…」

「あ、そうだ今日は漫画の発売日だったな。ちょっとコンビニ寄ってみるか」

ウィーン
<イラッシャーセー

「お、あったあったブラックラグーン最新刊だ。なんだ一冊しかねーじゃん危ない危ない」

「あ」

「ん?」

「あ、いえ…すいません。ちょうど私もその本を取ろうとしたものですから…」

「あ、そうなの? ごめんね、えーっと、買うの?」

「いえ…あの……その」

「買わないなら俺が買うけど…?」

「えっ、あの…」

(やれやれ)

5 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:33:12.12 WPGsmTBb0 3/50

ウィーン
<アリガトウゴザーヤシター

「すいませんすいません譲ってもらっちゃって!」

「いいよいいよ、俺は帰りに本屋にでも寄って帰るから」

「すいません…兄に頼まれてたもので…」

「ああお兄さんのか、どうも君が読むには合わないなぁと思ってたよ」

「ええ、私はこういう乱暴な漫画は苦手なんです」

「うちの妹とは逆だね。うちの妹に少女漫画なんか見せたらその日のうちにトイレットペーパー代わりに便所に置かれてるよ」

「まぁ、面白い妹さんなんですね」クスクス

「柄が悪いだけだよ…。あっと、学校に遅れそうだ。じゃあね、ばいばい」

「あ、すいませんお名前を」

「名前? 兄だけど、えーっと……君は?」

「すいません私から名乗らないと失礼でしたね」

「私の名前は、雪といいます」

7 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:33:40.62 WPGsmTBb0 4/50

学校

「おっす友。どうだ最近は? また男みたいな猿野郎に目ぇ付けられてねぇか?」

「おはよう妹ちゃん。うん、妹ちゃんのお陰で男くんも大人しいし、最近は平和だよ」

「そりゃ良かった」

「それより妹ちゃん知ってる? 最近女の子に声かける柄の悪い人達がいるんだって」

「なんだそりゃ? 声かけるだけなのか?」

「私の友達がそれにあったんだけど、何か大きい車で声かけるんだって。もしかしたら拐う気かも知れなかったって怖がってたの」

「ああそりゃ確定だな。それで拐う気がないって言うのは、サンタの格好した父親がプレゼントは無いと言うくらいに不自然だぜ」

「妹ちゃんも気を付けてね」

「安心しな、私なら声を掛けられた瞬間に車に乗り込んで全員サンタより真っ赤にしてやるよ」

「い、妹ちゃんならやりそうだね…」

8 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:34:15.43 WPGsmTBb0 5/50

放課後

「さてと…本屋に行くかな」

「おっす兄貴。なんだ、兄貴も今帰りか?」

「おう。ん? そっちは?」

「ど、どうも…」

「この子は私の……と、友達だよ。ああチクショウ何か照れくせぇなオイ」

「ほーう、お前に友達か。こりゃ俺に彼女できる日も近いな」ニヤニヤ

「はっ、夢みんなよクソ兄貴。今から毎日宝くじ買ってりゃテメェに彼女できる前に三億当てる自信があるぜ」

「わ、私今日から宝くじ買う!」

「買わなくていいよ。ごめんねこんな妹で。迷惑かけてない?」

「そんな! 妹ちゃんにはいつも助けられてばっかりで…」

9 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:35:02.27 WPGsmTBb0 6/50

「そういうこった。私は友達想いの品性良好な優等生で通ってんだよクソ兄貴」

「品性良好の優等生は自分の兄をクソ兄貴と呼ばないよ」

「友達想いはあってるけど他は…」

「悪かったよ。冗談だから真面目に否定しないでくれ。恥ずかしくって今すぐ穴掘ってブラジルまで逃げたくなっちまう」

「なら最初から言うなよ。ところで、これから本屋に行くけど、お前も来るか?」

「お、ついてるぜ友。今日は兄貴が何でも好きなもの買ってくれるらしい、住宅買うなら今だぜ?」

「す、すいません庭付き一戸建てを……」

「買えないよ。せめてリカちゃんハウスにしてくれないかい?」

「いいから行こうぜ兄貴。私も友も腹へってんだ」

「食い物おごるのは確定か…漫画の分の金残れば良いけど…」

11 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:41:03.49 BWFZjqeh0 7/50

本屋

「えっと最新刊のコーナーは…」

「あ」

「あ、君は確か…」

「雪です。兄さん…でしたよね? 今朝はどうも」

「兄貴、漫画あったか?」ハフハフ

「すいません私までたい焼き買ってもらっちゃって…」ハフハフモグモグ

「あら、この子もしかして…」

「ああ、これが今朝言ってた妹だよ」

「やっぱり」クスクス

「あ? なに笑ってんだ? 理由によっちゃアゴ外すぞ?」

「妹ちゃん駄目だよ…」モグモグ

12 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:41:47.39 BWFZjqeh0 8/50

「面白い子ね」クスクス

「よっしゃもう理由関係なくアゴ外してやんよ。ちょっと口開けな。スイカを丸ごと口に含めるようにしてやるよ」

「妹ちゃんだめぇぇ!!」

「友ちゃんここ本屋だからあんまり大声ださないでね。妹も騒ぐならそのたい焼き自腹だからな」

「ご、ごめんなさい…」モグ

「ちっ…分かったよ。ところでこのお嬢さまは誰なんだ?」

「今朝ちょっと知り合ったというか…まぁ、ね」

「たまたま同じ本を買おうとしていて、一冊しか無かったその本を私に譲ってくださったんです」

「ほーう、なんだ兄貴やるじゃねぇか。こんなお嬢さまを引っかけるなんてよ」

13 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:42:25.44 BWFZjqeh0 9/50

「人聞きの悪い言い方をするなよ。えっと、ところで雪ちゃん、どうして本屋に? お兄さんの本は今朝買ったよね?」

「ええ。ここへは私が読む本を買いに来たんです。兄の気紛れで買ってもらえることになって…」

「雪、買いたい本は決まったのかい?」

「あ、噂をすれば…」

「こ、これがお兄さん…?」

「はっ、うちの兄貴と大違いだな。こうも違うと笑えてくるぜ」

「か、かっこいい…」モグモグ

「皆さん紹介しますね。これが私の兄です」

「名前は銀といいます」

14 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:43:06.73 BWFZjqeh0 10/50

「雪、この子たちは?」

「ほら、さっき話してた銀兄の欲しがってた本を譲ってくれた方」

「ああ、君が…どうも有難う」

「い、いえ…別に急ぎじゃ無かったんで…」

「そっちのおチビちゃんは?」

「口は災いの元だぜ? 今はたい焼きがあるから聞き逃してやるが二度目はねぇぞ?」

「気にさわったなら謝るよ。そうだな…お詫びに僕からもたい焼きをプレゼントしよう」

「ヒュー、聞いたか友? コイツ太っ腹だぜ。欲しいものあるなら頼んでみろよ」

「あ、あの! 庭付き一戸建てが欲しいです!」

「……君もたい焼きでいいかな?」

「あ、はい。すいませんでした…」

「兄さんの周りは面白い方ばかりですね」クスクス

「妹にはもっと女の子らしく育って欲しかったんだけどね…」

「聞こえてんぞ兄貴。そんなに私が嫌ならこっちの銀兄に鞍替えしてもいいんだぞ」

15 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:43:58.99 BWFZjqeh0 11/50

たい焼き屋台前

「」モグモグ

「」モグモグ

「すいません俺の分まで…」モグモグ

「いえいえ、いいんですよ。ちょうど今朝のお礼もしたかったので」モグモグ

「こらこら、金払ってるのは僕なんだぞ」

18 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:45:40.84 BWFZjqeh0 12/50

ブロロ…
「あれ…今の車…」モグモグ

「あ? どうした友」

「さっきの大きい車…今曲がり角まがった女の子を追っていったように見えたけど…」モグモグ

「そういやお前不審車がどうとか言ってたな、どれ、気になるなら私が見てくるよ」

「女の子は危ないよ。僕が行くよ」

「あ? 安心しろよ、私が行った場合危ないのは相手の方だ。心配すんなら死人が出ないように祈ってな」

「……」チラッ

「すいませんうちの育て方が悪かったみたいで…」

「いいじゃないの銀兄。妹ちゃんと一緒に見に行ったら」

「雪…だがなぁ…」
<キャーダレカー
「……!? 誘拐!? 妹ちゃん!!」モグモグ

「任せろ! たい焼き預けたぜ友!」ダッ

「分かった!」モグモグ

「……」ダッ

(まぁ妹が行くなら大丈夫だろ)モグモグ

19 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:46:19.41 BWFZjqeh0 13/50

「おい! 早く連れ込めよ!」

「分かってるよ! おい! 抵抗すんな」

「ちょっと!放してよ!」

「おうオッサン共。女の子拐うなんざなってねぇぞ」

「その子を放してください」

20 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:46:54.09 BWFZjqeh0 14/50

「なんだガキ共か」

「おい、顔見られたぞ」

「仕方ねぇやっちまうぞ。2はさっさとソイツ連れ込め」

「おう」

「きゃあ!」

「…おい銀公、私が二人相手すっからお前はあの子を…」

「その必要はないよ」スタスタ

「お、おいテメェ勝手に…」

「なんだテメェ? ガキが粋がってんじゃねぇぞ」

「……」スッ

(……あの構えは…)

「おいおい坊っちゃん、ボクサーの真似事じゃ勝てねぇぜ」

「……」

(真似事…って雰囲気じゃねぇな…)

21 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:49:23.73 BWFZjqeh0 15/50

「おい3、お前はそっちのチビを捕まえろ。人呼ばれちゃ面倒だ」

「おう、チビちゃんちょっとこっち来な」
パシンッ
「痛っ! なんだテメェ!」

「貴方たちの相手は僕ですよ」

「上等だテメェ!」グワッ

パシンパシンッ
「がっ…クソっ!」

(素人じゃジャブは避けれねぇよな…にしてもあの坊っちゃん…)

パシンパシンッ ゴッ
「ぐあっ…」ドサッ

「この野郎よくも3を…」グワッ

「…」スッ ガシッ

「お…!」

「なっ…!?」
フワッ ドスン
「ぐはっ…!」

「い、一本背負いだぁ?」

22 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:50:03.76 BWFZjqeh0 16/50

「な、なんだコイツ…クソっ! おい3、ずらかるぞ!」

「う、うう…」

「お、おいこの女の子は…」

「さっさと放しやがれ」

ゴスッ

「ぐはっ…」ドサッ

「こ、こっちのチビも化物だ! おい! 早く車だせ!」

「でも2がまだ…」

「いいからだせ!」

バタン…ブロロ…

27 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:52:01.42 BWFZjqeh0 17/50

「おーい大丈夫だったかー?」

「あ、犯人捕まえたんだ」モグモグ

「銀兄、大怪我させてないよね?」

「ああ、大丈夫だよ。ちゃんと加減したから」

「……おい銀公、お前面白いことやってたな? ボクシングに柔道か?」

「昔色々やっててね、ボクシングが一番長かったけど」

「う、うう…」

「さて、コイツはどうするか…」ズイッ

「ひっ!」

「警察につき出そうか…」

「か、勘弁してくれ! 出来心だったんだ! 二度とやらねぇから見逃してくれ!」

「おいテメェこの期に及んで…」

「まぁまぁ妹ちゃん」

28 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:52:57.77 BWFZjqeh0 18/50

「なんだ嬢ちゃん、まさか逃がす気か?」

「いえいえ、ただ私は被害者の意見を尊重したいと思って、ね?」

「え? わ、私はもう助けて貰ったので別に…」

「駄目だよ! 捕まえとかないとまた狙われるよ!」

「さすが経験者だ、良いこと言ったぜ。そういうこった…と言いたいが、あいにく私はマッポは苦手でね、つき出すなら他の奴に頼むぜ」

「正直僕もバイトがあるからあんまり時間掛かるのは困るな…」

「わ、私はちょっと大事になりそうなのは…」モグモグ

「というより私たちは第三者ですし…当事者がいないと…」

「あの、すいません私これから塾が…」

「なんだ皆ダメなのか」

29 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:53:37.08 BWFZjqeh0 19/50

「……」ソローリ…ダッ

「あ!」

「逃げた」

「逃げたね」

「逃げたな」

「面倒くせぇもう放っておこうぜ」

「あ、あの…遅れましたけど有難うございました」

「礼ならこっちの坊っちゃんに言いな」

30 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:54:09.43 BWFZjqeh0 20/50

「……さて、女の子も塾に行ったし俺たちも帰るか」

「そうですね。今日はまた会えて良かった、とても楽しかったです」

「私たちも楽しかったよ! またね雪ちゃん!」モグモグ

「おい友、私が預けたたい焼きはどこいったんだ」

「ふ、故郷が恋しくなったって言って海に…」モグモグ

「ちったぁ面白いこと言うようになったが、私の怒りを鎮めるにはちぃとばかしユーモアが足りねぇな」

「おいおい友達を脅すな。お前にはまた買ってやるから」

「…変わった子だね」

「ええ、本当に」クスクス

31 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:54:44.08 BWFZjqeh0 21/50

「ねぇ、妹ちゃん」

「あ?」

「私が少女漫画をプレゼントすると言ったらどうする?」

「少女漫画? いらねぇよそんなもん。貰っても読まずに便所紙と一緒にトイレに流すのがオチだぜ」

「ふふっ、是非そうして」クスクス

「ね?」

「ええ」クスクス

「あ?」

「……雪、帰るよ」

「ええ。それでは皆さん、また会いましょう」

「うん、またね」

33 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:56:28.18 BWFZjqeh0 22/50

数週間後

「おはよー妹ちゃん」

「おっす友よ、そろそろ宝くじ買った方がいいぜ」

「え?」

「うちの兄貴があの雪とかいう嬢ちゃんに入れ込んでのさ。携帯のアドレスも交換したらしく毎日ポチポチだ」

「お兄さんに彼女できたんだ!」

「まだそんな関係じゃないだろうがな。仲の良いお友達って所だろ。ただなぁ…」

「ただ?」

「携帯いじってニヤニヤしてんのが気持ち悪くてな。だらしない顔しやがって、あれならブルドックの方がまだしまってるぜ」

「ダルンダルンなんだ」クスクス

「今ならいきなり顔面ぶん殴っても雪の写メ見せりゃ笑うだろうよ」

「でも良かったじゃん、お兄さんに彼女できそうで」

「まぁ、な」

34 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:57:55.14 BWFZjqeh0 23/50

放課後、下校中

「それでさ、妹のやつ本当にソイツのアゴ外したらしいんだよ」

「まぁ怖い」クスクス

「…そういえば、雪ちゃんは家族は銀さんだけ?」

「はい、両親は小さい頃に事故でなくして…」

「あ、ごめんね嫌なこと聞いて」

「いいえ、銀兄がいますし、そんなに気にしてないんですよ?」

「そうなんだ…、大変でしょ? 二人でなんて」

「親戚からの仕送りがありますし、銀兄もバイトしてくれてるので意外と裕福なんですよ」クスクス

「そうなんだ。ごめんね急に変なこと聞いて」

「いいえ、気にしないでください。それに…兄さんには知って欲しいですし…」

「え」

「ふふっ、深い意味はありませんよ?」クスクス

「う、うん」

ブロロ…

36 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 18:59:42.19 BWFZjqeh0 24/50

「あれ?……この車…」
ブロロ…キキッ
「兄さん! この車この間の!」

「!」
バタンッ
「コイツらだ! こっちは男の妹、こっちはあのチビの兄貴だ! 間違いねぇ!」

「お、お前!」

「きゃあ!」

「おら! 大人しく車に乗れ!」

「おいコラ! 雪ちゃんを放せ!」

ガッ
「ぐあっ…!」

「へへっ…なんだ兄貴の方は大したことねぇな」

「ぐっ…お前ら雪ちゃんをはな…」

「おら、お前も乗るんだよ」

バタンッ

ブロロ…

37 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:00:20.19 BWFZjqeh0 25/50

下校中

「あ?」

「ん? どうしたの妹ちゃん」

「いや、今なんか聞こえたような…」

「そう? 私なんにも聞こえなかったけど」

「なら気のせいか…」

39 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:02:25.57 BWFZjqeh0 26/50

やめろー!

いやぁ! 助けて…!

放せ! 雪ちゃんに手を出すな!

痛い!お願いやめて……!

やめろ! 頼むからやめてくれ…!

ああ、兄さん…兄さん………見ないでぇ…見ないで……。

うわあああああ!!!!

42 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:03:18.82 BWFZjqeh0 27/50

自宅

ガチャ…バタン

「おう兄貴、珍しく遅かったな? 雪ちゃんと仲良くしてたの…か…っ!! おい! なんだその怪我は!?」

「……」フラッ

「おい! 答えろ! 何があったんだ!?」

「……ぐ、ぐぅぅ……」ポロポロ

「あに…き…」

44 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:04:07.69 BWFZjqeh0 28/50

翌日

「おはよー友ちゃん」

「……」

「あれ? どうしたの?」

「……昨日兄貴がボロボロになって帰って来やがった。しかも何も話さねぇ」

「え! お兄さん大丈夫なの?」

「今日は学校休んでる。どこの誰か知らねぇが、うちの兄貴に手を出すとは良い度胸だ。必ず探してだしてぶち殺してやる」

46 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:04:45.07 BWFZjqeh0 29/50

放課後

「あれ?……妹ちゃん校門に立ってるのって…」

「……やぁ」

「おう銀公、久し振りだな。その様子だとそっちも何かあったみたいだな」

「……昨日うちの妹が酷い有り様で帰ってきた。君の兄から話を聞こうと思ってね」

「どうやら痴話喧嘩だったわけじゃなさそうだな…」

「だ、誰かに襲われたってこと…?」

47 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:05:35.56 BWFZjqeh0 30/50

自宅

「おい兄貴、いい加減答えろ。テメェと雪をやったのはどこのどいつだ」

「……」

「………」

「なってねぇぞクソ兄貴! こちとら身内をやられて頭にきてんだ! こっちの銀公も同じだ! テメェが黙ってんなら手当たり次第に柄悪い奴捕まえてぶちのめしてまわるぞ!!」

「……この間の奴らだ」

「……! あのクズ野郎!」

「……それで、君は雪が…やられてるのを黙って見てたのか」

「そんなっ…! 俺だって守ろうと……!」

「じゃあ何をしてたんだ。一緒にいて何も出来なかったのか」

「それは………」

「……あ? おい銀公、うちの兄貴に怒りを向けんのは筋が違うぜ。確かに兄貴は虫みてぇに弱いが、女がやられんのを黙って見てるようなクズじゃねぇ」

「……どうして! どうして守ってくれなかったんだ!」ガシッ

「……!!」

「おい銀公その手を放せ。じゃねぇとアイツらをやるより先にテメェをやることになっちまう」

49 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:06:50.97 BWFZjqeh0 31/50

「守れないような弱い男が雪に近付くな!」

「お、俺は…」

「兄貴しゃべるな、火に油だ。銀公手を放せ。私は短気なんだ、長くは待たねぇぞ」

「雪はあれから一言も口をきいてないんだぞ! あの子が二度と笑えなくなったらどうするつもりだ!」

「謝って済むとは思いません…でも…」

「当たり前だ! 今さら君が何をしたところで……!!」

「銀公終わった話だ、私たちは今出来る事をやるしかない。いいから手を下げろ」

「僕は君も許さないぞ…!」

「許して貰おうとは思いません…ただ、責任をとって雪ちゃんの傷が癒えるまで支えてあげたいと思います……」

「責任だと……!! このっ…!」

「いい加減にしろよ銀公!! 兄貴を責めるより先にやることがあんだろうが!! その手を放さねぇってんならへし折ってやってもいいんだぞ!!」

「……くそっ!」バッ

「ゲホッ…ゲホッ…」ドサッ

「……雪を君に近付けるべきじゃなかった…」

ガチャ…バタン

51 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:08:04.87 BWFZjqeh0 32/50

数日後

「お、おはよう。兄くんの様子は?」

「狂ったように雪に電話してやがる。昨日電話したきり繋がらないらしい。銀公もあれから姿が見えねぇし、まぁ雪と兄貴をやった奴らを探してんだろうが…」

「雪ちゃん…」

「………」

53 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:08:43.41 BWFZjqeh0 33/50

自宅

「雪ちゃん…雪ちゃん頼む電話に出てくれ……頼むから…」

「昨日の電話じゃ…まるで君が…」

55 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:09:17.06 BWFZjqeh0 34/50

「なぁ、そろそろ車変えないと不味くねぇか?」

「だな。不審車とかで警戒されて近付く前に女の子が逃げちまう」

「また車買うのかよ出費がでけぇよ」

「1くん…あの、何か男がこっち見ながら近付いてきてるけど…」

「あ? っ! この間の男じゃねぇか! やべぇ復讐か!?」

「でもこっち四人だぜ? 全員で掛かれば勝てるんじゃねぇの?」

「そうか、それもそうだな。よし全員車から降りろ」

ガチャ…バタン

「よう久し振りだな兄ちゃん。妹は元気か?」

「へへっ」ニヤニヤ

「………」

57 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:10:23.85 BWFZjqeh0 35/50

放課後

「妹ちゃん、校門に立ってるのって…」

「銀公…」

「………」

「…奴らが見付かったのか?」

「……雪が死んだ」

「なっ…!?」

「そんな…どうして…!」

「昨日浴室で手首を切っていた。病院に連れていったが…」

「それは…残念な話だったな…」

「僕は雪を殺した奴らを許さない」

「……それを私に言うってのは、つまりどういうつもりなんだ?」

「お前の兄もだ」

「……」

「え? え?」

59 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:11:41.91 BWFZjqeh0 36/50

「銀さん行っちゃった…雪ちゃんが……そんな…」

「……不味いな」

「え? 今言ったの嘘だよね? どうして銀さんが兄くんを?」

「いや、嘘じゃねぇだろうな…。あの野郎なんか臭ぇと思ったら……」

「ありゃ血の臭いだ」

62 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:14:19.13 BWFZjqeh0 37/50

自宅

「兄貴…銀公に会ったぜ」

「! 雪ちゃんの事は何か言ってたか!?」

「雪は…自殺したらしい…」

「!! ああ…そんな…そんなっ…」

「言っちゃなんだが死んだもんは仕方ねぇ。問題は残った銀公がテメェを狙ってるってことだ」

「仕方ないって…お前はどうしてそんな言い方が出来るんだ!」

「嘆いたところで生き返るわけじゃねぇ! 嘆くより死んだ奴のために出来ることを考えろ!」

テレビニュース「速報です。つい先程住宅地に停めてあったワゴン車の中から四人の男性が血塗れになっているのが見付かりました。一人は死亡が確認され、三人は現在も意識が…」

「このニュースっ…!」

「…今私たちに出来るのは、銀公の暴走を止めることだ。兄貴、しばらく私の側を離れるなよ」

「銀さん…! そうだ…俺は雪ちゃんから……ああ、雪ちゃん…」

66 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:15:33.94 BWFZjqeh0 38/50

翌日、登校中

「雪の葬式は済んだのかい? 行けなくて悪かったな。家を知ってりゃ線香あげに行ったんだが」

「必要ない。あの家は僕と雪だけの場所だ」

「銀さん…」

「雪が死んだのに、君だけ生きてるのは不公平じゃないかい?」

「兄貴さがってろ。銀公、どうしてもやるってんだな」

「雪のためだ」

「雪はそんなこと望んでねぇよ。死んだ奴は何も望まねぇ。死ぬ前に言葉を残すだけさ…」

「銀さん…俺は雪ちゃんから…」

「黙れ」ダッ

「!! 兄貴さがれ!!」

71 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:16:39.31 BWFZjqeh0 39/50

ガシッ

「待てよクソッタレ…聞く耳持たずか…」ブンッ

「……」ガシッ

「!!」

フワッ ドスン

「妹!」

「ぐっ…クソッタレ忘れてたぜ…柔道やるんだったな…」

「邪魔をするなら手加減しないよ」

「そうかい、それならこっちも遠慮なくやらせて貰う…ぜ!」ダッ

「…」スッ

ブンッ ブンッ

(クソがっ、当たらねぇマジもんのボクサーと同じ動体視力してんのか)

「僕は雪を守るために強くなったんだ。柔道もボクシングも全て雪のためだった」

75 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:17:24.60 BWFZjqeh0 40/50

「へっ、シスコンやろうが」

「ボクシングが一番長くやってたよ。プロになる気がなかったから追い出されたけど、実力ならプロ相手でも勝てるよ」

(しゃべりながら余裕でかわしやがる…なめやがって!)

「ボクシング知ってるかな? 例えばこれ」

パシンパシンッ

「ぐっ…」

「今のがジャブ」

「クソッタレ!」ブンッ

77 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:18:00.35 BWFZjqeh0 41/50

「そしてこれが…」スッ

「……っ!」サッ

「さすがに大振りは外れるな…」

パシンパシンッ

「ぐっ…がっ…! このやろ…っ!!」

ドスン!

「これがボディーブロー」

「かはっ…!!」

「そしてこれがさっき教え損ねた…」

(ぐっ…身体が動かねぇ…)

「ストレートだ」

ゴッ!

「がっっ……!!」ドサッ

「妹!!」

79 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:18:56.71 BWFZjqeh0 42/50

「次は君だ…」ザッ

「っ! ぎ、銀さんの言い分は分かります。雪ちゃんを守れなかった俺にも確かに責任はある」

「だったら大人しく…」

「でも、こんな事で雪ちゃんが喜ぶとは思えない」

「……」

「それに俺は雪ちゃんから…」

「喋ってると舌を噛むよ」ガシッ

「…っ!! 銀さん! 雪ちゃんは俺に…」

ガッ

「ぐっ……!」

「君が雪の名を口にするな」

ゴッ!

「ぐはっ!」

82 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:20:07.94 BWFZjqeh0 43/50

ガッ! ゴッ! バキッ!

「ぐっ……! ぎ、銀さ…!」

ドスン!

「ぐぶっ…っ!!!」

「ボディーブローからストレート、妹ちゃんと同じ結末だ…」

「がはっ…! こ、こんなの……こんなのアンタの自己満足だ…」

「……言いたいことはそれだけかい」スッ

「待ちやがれクソッタレ!!!」

「い、妹…」

「まだKOされてねぇぞシスコン野郎…!」

85 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:22:25.11 BWFZjqeh0 44/50

「ハァ…ハァ…兄貴の言う通りだ。こんなもん、テメェの自己満足だぜ…」

「……もう君とは終わったはずだけど?」

「ハァ…ハァ…へっ、ボクシングってのは、一回のダウンは負けじゃねぇんだろ?」

「……カウントをとるべきだったな」

「そういう事だ…ハァ…さぁ続けようぜ銀公」

「ファイナルラウンドだ」

86 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:24:03.40 BWFZjqeh0 45/50

パシンパシンッ

「ぐっ!」

ガスッ

「クソッタレ!」ブンッ

「何度やっても…」スッ

「!」サッ

「ボディーブローが怖いかい?」

「ちっ…!」

「…ハァ…ハァ…銀さん…」

「……」

パシンパシンッ ゴッ!

「ぐはっ…」

87 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:25:25.28 BWFZjqeh0 46/50

フワッ ドスン!
パシンパシンッ

「銀さん…俺、雪ちゃんが自殺する前に……電話をもらったんです…」

「!」

(動きがとまった!)ブンッ

「っ!」サッ

「雪ちゃんは…ハァ…ハァ…俺に『貴方は生きてください』と…言いました」

「!!」

「続けろ兄貴!」ブンッ

「!」サッ

「ちっ!」

89 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:26:48.05 BWFZjqeh0 47/50

「だから…ゲホッ…俺は生きます。そして…もう1つ…」

「アンタが……アンタが復讐に走ったら止めて欲しいとも言って……ました…」

『銀兄には…汚れて欲しくないので…』

「ハァ…ハァ……これが雪ちゃんの残した言葉です…。雪ちゃんは…! こんなこと雪ちゃんは望んでいません!!!」

「っっ!!!」

「っ!!! 迷ったな銀公!!」ブンッ

ゴスッ!

「がっ…!!!」ドサッ

「ハァ…ハァ…そのまま寝てろよ…」

「……」

「……」

「ハァ…ハァ…そろそろ十秒か?」

「……10カウントKOだクソッタレ!!」

90 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:28:32.69 BWFZjqeh0 48/50

「銀さん…雪ちゃんは自殺する前にも俺や銀さんの心配をする優しい子です……だからこんな事やめてください…」

「雪ちゃんが悲しみます」

「ぐっ……ぐう…」

「銀公、あの四人……やったのアンタだろ。悪いことは言わねぇ、自首しな。そんな血で汚れた手で添えた花なんざ……雪は喜ばねぇよ」

「花を添えてやるなら……ムショに入って…汚れを落としてからにしな……」

「……どうして…どうして雪が襲われた時…」

「その時そばにいたのが……どうして僕ではなく……」

「僕ではなく!どうして君だったんだ!」

「………」

「………僕はなんのために強くなったんだ…!」ポロポロ…

「銀さん…」

92 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:30:19.23 BWFZjqeh0 49/50

「兄貴、帰るぞ。この顔じゃ学校には行けねぇ」

「でも銀さんが…」

「いいから行くんだよ」

「女が泣いてる時にゃ寄り添ってやるもんだが、男が泣いてる時は一人にしてやるのが情ってもんだ」

「……わかった」

「雪……うぅ…」ポロポロ…

93 : ◆DCPmUu/AIjbw [... - 2012/12/02 19:32:53.42 BWFZjqeh0 50/50

翌日
「銀さん…自首したんだってな…」

「……世間のわずらわしさから離れるんだ、ムショなら雪との思い出に浸るには静かで良いだろうよ…」

「俺は…生きてて良かったのかな…」

「なに言ってんだ。雪から生きろと言われたんだろ」

「雪は現実を受け入れて生きる勇気がなかった。それで逃げて、とうとう戻ってこれねぇ所まで逃げちまった…それだけの話だったんだ…」

「兄貴がそれで罪や責任を感じるのは勝手だが、罪を償うにしても責任をとるにしても生きてなくちゃ何もできねぇ」

「死んで解決することなんか、何もありはしねぇんだよ」

「……」

「それに雪の最期の頼みだ、聞いてやんな」

「……うん。それと、俺…強くなるよ…」

「当たり前だ馬鹿野郎。いつまでも弱いまんまだと私がしめちまうぞ」

「ああ…」

「さて、学校に行こうぜ。兄貴も私も日常は続くんだ」

「私たちは生きてるんだから」

終わり

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