男「ヤンデレ」
元スレ
嫁「おかえりなさいあなた、ツンデレにします?クーデレにします?それともヤ・ン・デ・レ?
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1352539988/
嫁「そんなことよりあなた、この名刺はどういうことなのですか?女さんですって?なんですの、この裏のハートマーク」
男「そ、それはだなぁ。えーと・・・仕事の付き合い?」
嫁「つまりは、う・わ・き、ですね?」
男「いや、だから仕事の付き合いと・・・」
嫁「浮気ですね?」
男「だからしごt」
嫁「浮気ですね?」
男「・・・しg」
嫁「浮気です。」
男「ところでこれヤンデレって言う?」
嫁「うるさいです。私の、私だけの物にならないなら死ねなのです。」スッ
男「いや、そんな良くありそうなセリフを言われても…ってその包丁空中から出現しなかったか!?」
嫁「ウフフフフ♪」グサ
男「アバババァ」バタ
男「なんて夢を見たんだが」
友「うん、で?」
男「それだけ?」
友「何がだよ?」
男「相談に乗ってくれよ!!」
友「お前の夢の事なんざオレには関係ねえよ」
男「実はな、そんな夢を見てから心配でさ」
友「勝手に始めんな」
男「じゃあ自主的に聞け」
友「何が違うってんだよ」
男「世界だ」
友「えらく壮大に出たな」
男「男子たる者常に壮大でありたいものだ。」
友「そうなのか?」
男「お前も男子なら分かるだろう?」
友「いや、オレ女なんだが…」
男「え?猛々しい日本男子だろ?」
友「可憐な大和撫子だよこんちくしょう…男っぽいとは言われるけどよぅ」
男「自分で可憐とか大和撫子だとかないわー…あとお前は男だ」
友「女だっつってんだろ、しまいにゃぶっ飛ばすぞ!!」
男「『オレ』なんて言う奴は女とは認めねぇ!」
友「お前の価値観なんか知るか!大体最近は『ボク』って言ってる奴もいるじゃねえかよ」
男「『ボク』は可愛いからいいんだよ。可愛いは正義!!」
友「オレが可愛くないってのかよ!?」
男「少なくとも可愛いは違うな、厳ついでどうだ?」
友「どうだ?じゃねーよ。…あぁもうめんどくせぇなぁ、分かったよ話聞いてやっから」
男「本当?わーいありがとー」
友「分かったから、聞いてやるからその子供みたいなキラキラした目はやめろ。こっちを見るな、きしょい」
男「酷いことを言う男だ」
友「女だって言ってんだよ、いい加減にしろ」
男「まぁそれはおいといて、悩みというのはだな…」
友「んな深刻な顔してどうせ下らないことだろ?」
男「実は、怖いんだよ」
友「…?何がだよ?」
男「あれが…正夢になったらどうしようかと」
友「くだらねー」
男「即答かよ!お前さっき相談に乗るって言ったじゃん!男に二言があっていいと思ってんのか!!」
友「話を聞くと言っただけだし、ってかオレは女だと何度言えば…」
男「いいから相談に乗れよ」
友「んなこと言われてもなぁ…浮気なんてするやつが悪いんだし」
男「お前も男なら分かるだろ?」
友「オレ女だし、分かりたくねえし、ってかお前本当に浮気してんのか?」
男「んにゃ、まったく。『女』という名前も聞いたことすらない」
友「じゃあ大丈夫だろ、何が不安なんだよ」
男「で、何を選べばいいんだ?」
友「へ?」
男「ツンデレ、クーデレ、ヤンデレの究極の三択だ」
友「どこが究極だよ」
男「さぁ、選べ」
友「なんでオレが選ぶことになってんだよ」
男「さぁさぁさぁ」
友「お前…まぁいいや、クーデレだな」
男「ほう、どうしてだ?」
友「そりゃクーデレならクールな対応してくれるからヤンデレみたいに殺されたりツンデレみたいに嫉妬でめんどくさいことになったりしないだ
ろうしな」
男「おぉ、なるほど!さすが友、ありがとうな」
友「いいからそろそろ帰れ、マジで浮気と思われても知らねえぞ」
男「大丈夫、お前は男だから浮気に入らない」
友「女だから!あ、こら訂正しろ!逃げるなぁぁぁぁ」
家にて
男「たっだいまー♪」
嫁「おかえりなさいあなた。短剣にします?西洋剣にします?それとも、か・た・な?」
男「どこに持ってたんだよ、その物騒な三点セット!!うわ、本物の日本刀とファンタジーアニメで見るような剣に…なんだこの闇の儀式に使いそうな悪趣味な装飾の短剣」
嫁「さぁ、選んでください。どれでやられます?」
男「………え?こっちに向けて何を?」
嫁「短剣にします?西洋剣にします?それとも、か・た・な?」
男「え?いやいやいやいや、『やる』って何!?殺る!?俺殺られるの!?」
嫁「選んでください」
男「選ぶって何!?どれを選んでも死ぬことに変わらないじゃん。どれを選んだってdeath or die,daed、天国地獄選ぶ間もなくあの世行き!!」
嫁「うふふふふ」
男(どうする!?どうすれば避けられるんだ)
男「短剣で」
嫁「うふふ♪」
男「避ける!そして後ろに回りこんで…」ヒュ
嫁「一本しかないと思ったんですか?」
男「な、何!?」
嫁「左手に隠してました♪」グサ
男「みぎゃあああああ」
男(なんてことになりかねない…じゃあ守るか?)
嫁「死になさい」ヒュ
男「今だ、ブックレットガード、ハードカバー版」
嫁「貫きました」グサ
男「ば、バカなぁああ」
男(なんてことになりかねない、いやハードカバーよりジャンプみたいな厚さのある方が安心できるか…)
男(いやいや、そういう問題じゃない、もう一本隠し持ってる可能性もあるし元々三本あるし)
男(ストレートに逃げる?いや、学校最下位の足の速さの俺じゃ追いつかれるか)
男(ならば、ならば!!)
嫁「さぁ、選んでください」
男「ごめん!!」ギュ
嫁「!?」
男(まず抱きしめて動きを封じる。そして…そして?)
男(あぁもう、えぇいままよ)
男「ごめん、ごめんよ。俺は、俺は…」
嫁「あなたは…」
男「違う、許してくれ…出来心だったんだ。」
嫁「…」
男「俺の…」
グサ
男「グフッ」バタ
男「という夢を見たんだが」
友「だからオレに言われても知らねえよ、そして後半の展開が意味不明だよお前は何をしたかったんだよ」
男「だってさ、だってさ、正夢だったら怖いじゃん。後半は俺も知らんがな、勢いで喋ってたし」
友「ありえねーよ。前回のよりもありえねーよ」
男「わかんねーじゃん。人生何が起こってもおかしくはないんだぞ!?」
友「いや、それが起こり得ないことは分かるから」
男「未来視!?」
友「いや、考えれば分かるだろ」
男「この世に絶対はないんだぞ!?」
友「じゃあ聞くけどよ、お前の家に日本刀や西洋剣がある可能性は?」
男「絶対に無い!!」
友「このやろう…まぁそういうことだよ。安心しろそれが正夢ということは絶対にねえからよ」
男「この世に絶対なんて絶対ねえんだよ!」
友「めんどくせえよ!果てしなくめんどくせえよお前!」
男「まぁ、お前のおかげでかなり楽になったぜ。さすが親友、愛してるぜ!!」
友「ば、ばかやろう、そんなこと言ってっとマジで浮気と思われて刺されるぞ///」
男「男友達として!!」
友「女だって言ってんだろがマジでぶっ殺すぞおおぉおぉぉ!!!!!!」
男「じゃ、俺帰るわ!」
友「あ、逃げんじゃねえ!今度こそちゃんと訂正しやがれってんだ!!こら、待ちやがれ」
男「ははっ、じゃーな!」
友「あぁ、選択肢からは逃げんなよ。」
男「?」
家にて
嫁「お帰りなさいあなた。クーデレにします?デレデレにします?それとも、カ・ミ・デ・レ?」
男「カミデレ!?カミデレってなんだ!?」
嫁「さぁ選んでくださいあなた♪」
男「カミデレ…カミデレ。カミデレ?あぁ、無難にクーデレを選ばなければいけないのに、それなのにカミデレが気になってしかたない!!」
嫁「ウフフフフ」
男「あぁ、すっげー気になる!」
嫁「さぁ」
男「ええい、ままよ!カミデレで!」
嫁「カプッ」
男「耳噛まれた!?」
嫁「ハムハム♪」
男「甘噛み!?」
嫁「ん...チュプ」
男「う…はぅ」
※エロいことされているわけではありません。念のため
嫁「チュプ…レロ」
男「あ…気持ちいいよぅ」
※R-18なわけではありません
嫁「気持ちいいですかあなた?」
男「ん…ふぅ、あぁとてもいいよぉ」
※しつこいようですがエロいことでは(ry
男「という夢を見たわけだが」
友「夢かよ!」
男「おおぅ、ありそうでなかったツッコミだ!?」
友「るっせえよ。ようやく嫁さんがデレたのかと安心しようとしたら夢かよ!?」
男「夢だよ。まごうことなく夢だよ。それ以上でもそれ以下でもない!!」
友「オレの心配と安堵と安心を返せ!」
男「男にそんなもんは必要ない!」
友「女には必要なんだよ!!」
男「大丈夫、お前は男だ」
友「女だよ!みろこのおっぱい」
男「かわいそうに、ついに太った脂肪で胸まで膨らんできたんだな」
友「あ、今お前は全女性共通の地雷を踏みぬいたからな、覚悟しやがれ。」
男「やってみやg…すいませんその名状しがたいバールのようなものをさげてください、怖いです。」
友「女の地雷を踏んだ罪は重い、大人しく死ね。」
男「お前男j」
友「死ねぇ!!」ガイン
男「うおぅ!?危ないよ!」
友「うるさい!!死ね!死ね!」ガインガイン
男「うおっと。ごめんなさい、なんでもするから許してぇ」ガイン 、ガイン
友「なんでも?今なんでもっつったか?」ガイン
男「言った。言ったから、男に二言はねえ。だから止めて」
友「じゃあ………って」
男「ん?」Pardon?
友「オレ………きって」
男「切手?」
友「オレのこと好きって言って…くれよ」
男「なんだ、そんなことか。」
友「そんなことってなんだ‐」
男「‐大好きだよ」
友「…え?」
男「大好きだよ。お前のことは、ずっと前からな」
友「………バカヤロ///」
男「ま、男とはいえ大親友だしな」
友「だいたい予想ついていたよコンチキショー!!!!」
男「ギャー、バールがー」
家にて
男「ただいまー、死ぬかと思った」
嫁『おかえりなさいあなた。』
よかった。夢みたいなことにはならなさそうだ。顔は穏やかで手には何も持ってはいない
男「あぁ、ただいま。」
嫁『おかえりなさい、あなた。』
嫁が仕切り直すように繰り返す。
…変だ。嫁の体がブレて見える。
俺の目が変になったのか?目を擦るがさらにブレは酷くなり、いや、分身するように分かれて増えた
嫁『おかえりなさい、あなた。なににします?』
「わたしにします?」
「わたしにします?」
「それとも、わ・た・し?」
分かれて3人になった"嫁"達がそれぞれ自らを指差して言った
分身の内2体がいきなり変貌し始めた。
顔がチーズのように溶けだし、目を、口を、鼻を覆う。
俺の目の前で変貌を遂げた"嫁"達はもはや別人だった。
一人は見たことのない、しかし見ているだけで妙に心を掻き乱される女の姿に
もう一人は…
男「俺…?」
俺にそっくり、いや、俺そのものに化けた。
嫁「私にします?」
?(元嫁)「あたしにします?」
男(元嫁)「俺にします?」
嫁だった者達が追い詰めるように一歩俺に近づく
男「あ…やめ…」
男(元嫁)「さぁ、選んで」
俺に化けた嫁が急かす。
選ぶ気も考える気すらも無いのに頭が勝手に問いに対する答えを弾き出す。
選んでしまった。壊してしまった。
意識もしなかったそんな思いが頭を駆け巡った。
目の前で嫁が崩れさった。
どこか切なく、そしてとても優しい、そんな笑みを浮かべて石になり、バラバラに砕け散った。
男「あ、あぁあぁぁ」
そして、次が起こる。
見たこともない女の姿になった嫁が喜びの表情を浮かべ、一瞬の後に深い悲しみの表情に変わり後ろを向いた。
男「ま、待って!」
無意識に引き止めようとしていた。
だが、彼女の体は後ろを向いた瞬間に何か巨大なカギ爪を持った獣に引き裂かれたかのようにズタズタになって消えた。
男「そんな、そんなぁ」
悲しみを抱えたまま自分そっくりに姿を変えた嫁にすがりつく、しかし触れるか触れないかの内にそいつの体は黒くドロドロと溶解した何かへと変貌していった。
やがてそのヘドロ染みたスライムのようなモノは膨れ上がり、視界を、俺を、世界を飲み込んでいった。
何も見えない。
何も感じない。
視覚を、触覚を、嗅覚を、味覚を思考を記憶を意識を
全て感じない。
あぁ、終わりだ。
そう、何もかも…
お…わ…………………
完
男「と言う夢を…」
友「うん、分かった。よし良い病院紹介してやる。」
男「何で!?」
友「大丈夫だ。いい精神科医がいるからな」
男「いやいやいや、俺頭悪くねーし。行くりゆーねーし」
友「返答が馬鹿っぽいな。そんな夢見るってことはなんか精神に不安でもあんだよ。行って来い。」
男「自分が女だと思っているような男に精神がどーとか言われたくねーな」
友「い・い・か・ら!!」
男「うっせーな、何をムキになってんだよ?まさか心配してくれてんのか?」
友「!? い、いや誰がお前のし、心配なんかするかよ!!」
男「うんうん、可愛い奴だ」
友「・・・///」
男「まぁ俺は男色の気はないがな」ハッハッハ
友「・・・♯」ギリギリ
男「いたたたたたた、悪かった。悪かったから歯軋りしながら無言で首締めはやめてー」
友「俺の顔を見ろコラ、そんなに男っぽいか、あ?」
男「確かにいつもはかわいらしいが、今は鬼、超絶修羅顔だよぉ」ヒィィィ
友「ならこれならどうだ?」ニコ
男「…無いはずの胸が当たってる。やっぱり太ったか?」
友「ウガァアァアアア死ねやああぁあああぁぁああ」
男「あ、修羅だ…ギャアアア折れるううぅぅう」
ゴキッ
家にて
男「ただいま。あー酷い目にあった、首折れたかと思ったよ。気がついたら友の家で介抱されていたし」
男「あいつ『死ななくてよかった』とか泣きながら抱きついてくるし…死にそうになったのはあいつのせいだってのによぉ」
男「って嫁?おーい、ただいまー。…いないのかな?」
嫁「あなた……」
男「うおっ!?いつの間に後ろへ!!…もしかして何か怒ってる?なんか雰囲気が…」
嫁「おかえりなさいあなた、真実にします?虚実にします?それとも…また目を逸らします?」
男「え?どういう…また?」
嫁「あなたは優しい人です。私を一番に考え、どんなときも見捨てはしなかった。」
嫁「私は知らず知らずに内にそれに甘えてしまい、あなたの苦悩には気づかなかったのでしょう。」
嫁「あなたは過ちを犯しました。そして、それから逃げている。真実からも、虚実からも…選択肢から」
嫁「選んでください、あなたは強い。でも、時には凄く弱くなってしまう。お願いです、弱さを見せないで強い心を保って選んでください。」
男「これは、また夢なのか?」
嫁「あなた!!」
男「俺は、俺が選ぶのは!!」
男「という夢を見てな」
友「そうか、また逃げたな」
男「え?何の話だよ」
友「なぁ男、お前はどこから夢だと思っていた?」
男「は?どこからも何も…」
友「お前はどこから夢でどこから現実か区別ついているか?」
友「そもそもここは現実か?夢か?お前はいつ起きた?いつ寝た?いつ帰った?」
男「覚えてない…」
友「この世界から抜け出すんだ。この"停滞する世界"から」
男「どうすれば、どうすればいい?」
友「…病院へ行け、丘の上のあの病院へ」
男「あ、あぁ…」タッタッタッタ
友「…楽しかったぜ、あの頃の幸せを再び味わえてよ。神様ありがとうな」
男が丘に走り去ったあと、町は灰色の砂になってそこにいた人物ごと崩れ去っていった。
病院にて
男「先生、俺…」
先生「分かっていますよ。あなたの悩みも、どうすべきかもね」
男「え…俺どうすれば?」
先生「どうしたいんですか?」
男「ど、どうしたいとは?」
先生「あなた次第なんですよ。あなたが選んでください、真実か虚実か」
男「み、三つ目の選択肢は無いのか?」
先生「三つ目の選択肢はあなたが無意識に選び続けてたものですよ。何だと思います?」
男「…と、逃避?」
先生「それが分かっているならば覚悟は出来ているのですね、今度は自らの意思で選ぶ番ですよ。」
先生「さぁ選んでください。真実か虚実か逃避を」
男「嫁…」
先生「…私が彼女と被りますか?」
男「俺は…選ぶ、自らの意思で」
先生「では…どれを?」
男「俺は…俺は!!」
男「真実を!!ずっと目を逸らして逃げてきた真実を教えてくれ、友も嫁を遠回しにそう言っている。真実を選べと」
先生「…よろしいんですね」
男「はい」
先生「ではまずあなたの見てきた夢の解説から始めましょう。」
男「はい…はい?」
先生「最初に見ていた夢ですが…」
男「いやいや、理解も納得もしてないのに始めないでくださいよ先生。なんで夢などの解説を?」
先生「はぁ、いいですか?夢というものはあなたの脳が無意識下に考えていたことを元に作り出した物です」
男「え、あ…ハイ」
先生「だからですね、夢を紐解くということはあなたの深層心理を紐解き理解し、真実を知ることに大いに役立つのですよ」
男「そういうものなんですか?」
先生「そういうものですよ。」
先生「まず、最初の夢ですがあなたは3つの選択肢を提示され、自ら痛みを伴うであろう選択肢を選びましたね」
男「何故かそれを選ばなきゃいけない気がした。」
先生「そう、あなたは無意識にそれを選びました。そして、2つ目の夢でもあなたは彼女に理不尽に殺されました。」
先生「あなたの無意識は彼女に、彼女の手によって罰せられることを望んでいたのです」
男「俺の無意識はドMと言うことですか!?」
先生「違います、最後まで聞いてください」
男(ノらないなぁこの人)
先生「あなたは彼女に2つの夢を通して何度も殺されることで自らの罪を贖罪しようとしたのです」
男「贖罪…?」
先生「そう、だからあなたは2つ目の夢の最後に謝り、罪を認め許しを請うていたのです」
先生「そして3つ目の夢、あなたは彼女に甘えてもらいたかったのでしょう。前、2つの夢で罪を雪いだあなたは彼女に許され甘えてもらいたかった。」
男「それの表れがあの夢だと?」
先生「えぇ、そうです」
男「そこまでして許されたいと思う俺の罪ってなんなんでしょうか?」
先生「それは4つ目の夢と一つ目の夢を合わせて見れば分かります」
先生「4つ目の夢、まず嫁さんが三人に分裂し、それらの内二人はあなたの目の前で変貌を遂げますね」
先生「あなたは元々彼女をすごく愛していたのでしょう。彼女の幸せだけを願い、彼女だけが幸せならばそれ以外は何も省みませんでした。」
男「嫁…」
先生「ですが後にあなたはそれと同等、またはそれ以上に大事な物が出来てしまいます。あなた自身です」
先生「あなたは社会のつらい生活に身を置く内に少しづつ嫁さんよりも自分を優先して考えるようになってしまいます」
男「…」
先生「そして、自分の幸せの、悦楽
のために、それだけのために生きるようになっていったあなたが出会ったのが4つ目の夢に姿だけが、一つ目の夢に名前だけが表れた女性、女さんです」
男「浮気…」
先生「そのとおり、一番重要な答えは一つ目の夢ですでに提示されていたのです」
男「う…うぅぅ」
先生「頭が痛みますか?あなた自身が拒んでいるのですよ、全てを思い出すことを」
男「グゥゥ…」
先生「止めますか?」
男「いいえ、続けてください…もう3つ目の選択肢は、逃避は選ばない。そう決めたんです」
先生「…分かりました。続けましょう、記憶の紐解きを」
先生「浮気をしてしまったあなたの悲しい結末も4つ目の夢に表れていました」
男「結末…グ…」
先生「自ら思い出そうとしても無駄ですよ。あなたは無意識の最下層、さらにその奥に記憶を封印している。私の話を聞いて少しづつ思い出していきましょう」
先生「夢の中で三人に分かれ、他の姿へと変わっていった嫁さん達がどうなったか」
先生「まずは姿が変わらなかった嫁さんが石となって崩れさりましたね?あの時、あなたは何を考えていましたか?」
男「選びたくもないのに優劣をつけて無理矢理選んでいた。選んだ後もひどく後悔していた。壊してしまったと」
先生「そう、それが答えです。あなたは彼女らを天秤に掛けたのです。二股でやっていく事が辛くなったか、バレそうになったかでどちらかと別れなければならなくなったのでしょう」
男「じゃあ嫁が崩れさったということは…」
先生「えぇ、あなたが選んだのはあなた自身と浮気相手です。あなたは嫁さんからの信頼と愛を知りながら
棄て、当時あなたが愛していた浮気相手をとりました」
先生「そしてその時あなたは『壊してしまった』と感じていました。」
先生「単純に彼女との関係という意味ではないでしょう。彼女の姿がバラバラに崩れたとこから直接的、または間接的に彼女そのものを"壊した"のです」
男「嫁…うぅ」
先生「どうしました?泣いているのですか?」
男「いえ…続けてください」
先生「…分かりました」
先生「夢の中で、嫁さんの次はあなたの浮気相手である女さんの番です。」
先生「彼女は笑顔を浮かべた後悲しみを湛えてあなたに背を向けました。このことはこう解釈出来るでしょう」
先生「あなたは最初浮気をしていたことを伏せ彼女に結婚を申し出たのでしょう。しかし後にバレてしまい、あなたの元を去ろうとした。」
先生「しかし夢はこう続きます。去り行く彼女をあなたが引き止めようとした時、巨大なカギ爪を持った獣に引き裂かれたかのようにズタズタ
になって消えた」
先生「『巨大なカギ爪を持った獣』この獣とはあなたの『欲望』もしくはそれから来る怒りです」
先生「あなたの罪を知ってしまった彼女はあなたの下を去ろうとした。」
先生「しかしあなたはそれを引き止めようとした…その時でしょう、あなたの中の怪物が咆哮を上げたのは」
先生「あなたは故意か勢い余ってか彼女にも手をかけてしまいます。」
男「俺が…二人とも」
先生「はい、それが真実です。」
先生「そして夢の最後…あなたは自分自身に姿を変えた嫁さんにすがりつこうとしますがそれはヘドロ状の黒くドロドロしたものに変貌し、世界ごとあなたを包みます」
先生「もちろんこれもあなたの結末を表しています。」
先生「大事な人を二人とも殺めてしまったあなたがすがれるものは最早自分自身しか残っていませんでした。そしてあなたがすがりついたあなた自身は罪の意識から自分の弱い心を守るために、全てから隔離して閉じ込めてしまいます」
先生「そう、外界からの影響を何も受けない世界…この心の隔離室にね」
男「この世界は傷ついた俺の心を守るために作り出されたのか…」
先生「そうです。『友』という話し相手もあなたの傷ついた心を癒すために過去の記憶から連れて来ました」
男「過去の記憶…そうか、そうだよ。思えばこの町は一番楽しかった子供時代にすごした町並みじゃないか、俺が苦しんですごしていた会社のある町でも今の町並みでもない過去の景色そのものだ」
男「家の近くにあるあの駄菓子屋は中学に上がる頃には仲の良かったお店の人とともに亡くなってしまった…」
男「あの骨董品屋は子供の頃物珍しさによく通っていたなぁ…」
男「受験競争に揉まれて通えなくなって、高校に受かった後久々に行ったら全然興味無い店になっていて時が流れる残酷さを思い知ったっけ…」
男「他にも懐かしいものが色々ある…」
男「いつの間に閉まってしまった子供のころいつも通っていたオモチャ屋…」
男「友達と秘密基地を作った広すぎる公園と原っぱ…今は別の子供たちが作っているんだろうな、似たようで全然違う秘密基地を」
男「目をキラキラと輝かせながら通っていたあのプラモデル屋にはいつの間にか興味さえも無くなっていた」
男「この世界で嫁と暮らしていたあの家は懐かしい俺の生まれ育った家だ…」
男「あの大きな神社で中学の夏祭りのあの日に浴衣姿を見て初めてあいつを女と意識したんだったっけ…」
男「そしてこの病院は俺が遊びまくって怪我したときいつも通っていた病院だ。」
先生「そうです。この世界は全てあなたの一番楽しかった時代の記憶から作り出しました」
先生「それが一番あなたの心を癒せるからです」
先生「しかしあなたは今全てを知りました。あったこと、起こったこと、起こしたこと、全てを思い出したはずです」
男「…」
先生「それを知った今あなたは選ばなければいけません。この世界での最後の選択となるでしょう」
男「また選択肢か…この世界では本当に多いな」
先生「常に迷っていたあなたの心の表れですよ。誰かに答えを提示してもらいたい、相談に乗ってほしかった。ということの表れでもあります」
先生「では、その最後の選択肢を提示しましょう」
先生「この停滞した世界から出て前へ突き進むか、役目を終えて崩れ行くこの世界と共に永遠の眠りにつくかです。」
男「役目を終えた?」
先生「えぇ、さっきも言ったとおりこの世界はあなたの心を癒し、それまで外界から遠ざけることが存在理由でした」
先生「しかしあなたの心は完全に癒え、真実も少しづつ、そして完全に思い出しました」
先生「もうあなたが外の世界に戻るときなのです。あなたが外の世界に出たくないならこの記憶から作り出した虚構の楽園で眠りにつくことになるでしょう」
先生「だから今一度問います。」
先生「あなたが選ぶはどれですか?お選びください。進みます?止まります?それとも逃げ出します?」
男「もちろん…俺は進む。この世界から抜け出して現実で一歩踏み出すんだ」
先生「そうですか、ではお行きなさい。私があなたを目覚めへと後押ししましょう」
男「ありがとう。ところであんたは何者なんだ?」
先生「…そうですね、私の名は『罪悪感』といいます。」
男「罪悪感…俺の……」
現実
男(ん…ここは?白い天井、白いベッドに窓…病院)
「意識が回復した?…男さん、自分が分かりますか?」
男「…お・れ・は…俺は…あなたは、医者?」
「先生を呼んできます、ここでじっとしていてくださいね!!」タッタッタ
男「病院…どうして俺はこんなとこにいるんだ?」
男「ぐ…頭が痛む、怪我しているわけじゃないはずなのに」
男「ここに来る前何があったんだっけ?」
男「確か嫁と何か話をしてて、それで…それで?」
- ジ、ジジー -
男(ノイズ?…思い出そうとすると頭の中にノイズが走る)
- ジー、さい … た ジ -
男「違う、声…か?」
- おかえりなさい、あなた -
男「!?」
- あなた…みを -
- 罪を -
男「う、うわあああ!!」
男(嫁だ、嫁の声が頭に響く)
思い出した、全てを思い出した。
恐怖と後悔と絶望が頭を支配しほとんど無意識にベッドから抜け出し部屋を飛び出した。
男「…のに」
男「…たのに」
男「殺したのに」
男「そうだ、俺は殺した。殺してしまった二人も…二人を」
男「俺を愛してくれた何よりも愛していた二人を」
男「なのに、なのに…何故嫁は、まだ俺に話しかけてくるんだ。恨まれてもいいはずなのに」
男「優しい囁く声で…何故、責めてさえくれないんだ」
ガチャ
気がついたら屋上にいた。
どうやら無意識のうちに走り続けてここまで来ていたようだ
男「…そうか、俺はここに導かれて来たのか」
思えば誰も来る気配さえない。
二人も殺した殺人犯だ。普通目が覚めたら、いや目が覚めなくたって監視がいるはずだ
男「そうだよな、嫁…」
- あなた、選んでください -
男「あぁ、分かっている。選択肢を提示しなくてもわかる。選ぶべき選択肢を」
靴を脱いで屋上の縁に立つ
風が髪を撫でる。空にはぬけるような青空が広がり太陽が輝く、あぁ世界ってこんな美しかったっけ
男「そうだ、俺の少年時代の原風景はこんな感じの青空だ。俺が立っているその場所を中心に青空が広がっているような情景…」
それはいつだったろうか、迷子になり途方に暮れて泣き腫らしたことがあった。
そして泣き疲れて大空を見上げた時、涙が引いて笑顔が広がった。小さなことはどうでもよくなった。そう思うほどに気持ち良い青空だった。
男「あれが俺に残っている一番最初の記憶だ。あの最初の記憶と同じ空と共に最期を終えることができるのか…」
そういえばあの夢の中でもずっとこんな空だったなぁ
男「ごめん嫁、俺は…」
俺は…俺は何と続けたかったのだろうか。謝罪?懺悔?それともただ許してもらいたかっただけなのか
- 分かっていますよ。あなたはただ、あなたでいようとしただけなのでしょう? -
男「いや、俺はただ欲望に溺れてしまっただけなんだ…」
- 確かにあなたはいけないことをしました。でも私は咎めませんよ。あなたに付き従うと誓ったのですから -
男「…でも俺はお前を殺したんだ!殺して…黒い意識に囁かれるまま二人も、二人も…」
- …だからあなたは今から罪を清算していようとしているのでしょう?先に待っていますよ -
男「嫁……逝ってしまったか。」
男「ごめん、今後を追うよ。」
バッ
体が宙を舞う、体が風を切り耳元で唸る
男「俺は二人も殺めてしまったんだ。牢獄ではこの罪の意識は消せないだろう、ならば硬いコンクリートよ」
男「俺の頭を、罪を、存在を全て砕いてほしい!!」
願いを口に出す。最期に脳裏に浮かんだのは夢の中であった友のこと
男「そうか、あいつは幼き日の俺が恋を知る前の嫁だ。俺があいつを女と意識してしまう前の輝かしい少年時代の姿」
男(嫁、この世の最期にはお前の顔を見たかったよ。もう一度でいい)
- あなた、おかえりなさい -
男「嫁!!…ただいm
- ドチャ グチャ
完

