マミ「~~♪」
シャッシャ シャッシャ
ブォォォォー…
――クルリンッ
マミ「うん、今日もばっちり」
マミ「それじゃあ、キュウべえ。行ってき――あら?」
QB「……」
マミ「キュウべえ? この寒いのに、ベランダなんかで何をしているの?」
QB「……。マミ」
マミ「う、うん。なぁに?」
QB「今日、学校が終わったら、パトロールの前に少し話がある」
マミ「なに? どうしたの?」
QB「霊脈が開いた」
QB「この街に、ワルプルギスの夜が来る」
元スレ
マミ「今日も紅茶が美味しいわ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304834183/
第十三話 既知の脅威と未知の希望
カチ、カチ…
マミ(『ワルプルギスの夜』……これね)
マミ(えっと、なになに……? 『ヨーロッパで広く行われる行事のこと』)
マミ(『ドイツでは、ヴァルプルギス・ナハト、あるいはヘクセン・ナハトと呼ばれ、
“魔女の夜” を意味する』)
マミ(『その夜には、魔女による宴が開かれる』)
マミ(……)
マミ(魔女たちの宴、か……なんとも不吉な響きね)
マミ(そして、霊脈)
マミ(魔女の通り道、だったかしら)
マミ(……嫌な予感しかしないわね)
マミ(恐らくは、百鬼夜行のようなもの。この街の先代魔法少女を圧殺したという、それ)
マミ(私一人で、どうにかなるの……?)
QB「無理だ」
マミ「……」
QB「君一人では勝てないよ」
マミ「で、でも、私のことを現役最強だってあなた言ったじゃない。
それって今活動してる魔法少女の中で私が一番強いってことでしょう?
なのに無理だっていうの?」
QB「ああ。無理だ」
マミ「そ……」
QB「マミ、君は台風を倒せるかい?」
マミ「え?」
QB「火山の噴火や、地震、津波などでもいい。そういった災害を一人でどうにかできるかい?」
マミ「そ、そんなの……無理だけど……」
QB「そういうレベルの相手なんだよ、“彼女” は」
QB「あれはもはや災害だ。実際、一般人には災害として認識されるしね」
マミ「え? ど、どういうこと?」
QB「歴史に名を残している大災害のうちいくつかは、“彼女” によって引き起こされたものなんだ。
ここ百年以内でいえば、イタリアの南端を襲った津波や、インドの大竜巻などがそうだ」
マミ「ま、待って? 三年前は、そんなの何も……」
QB「……」
QB「そうか、なるほど。すまないね。どうやら勘違いさせてしまったらしい」
マミ「……え?」
QB「三年前に起こったのは既存の霊脈の 『活性化』 だ。これによって起こったことは、
君が推測したとおり、魔女の大量出現。百鬼夜行というのは言い得て妙だよ」
QB「対して今回は、これまでになかった道が新たに開かれた」
QB「“彼女”――ワルプルギスの夜のための専用トンネルがね」
マミ「……」
QB「『ワルプルギスの夜』 というのは、“彼女” につけられた便宜上の呼び名だよ。
その正体は、もはや僕らにもわからない」
QB「複数の魔女の集合体じゃないかと思ってはいるけど……まぁ、不明だね」
マミ「でも、どうしてそんなものが……」
QB「悪いけど、それもわからない。
霊脈というものについても、僕らも全てを把握しているわけじゃないんだ。
ただ、これまでに観測されたデータから見て、間違ってはいないはずだ」
QB「遅くとも半年以内に、必ず来る」
マミ「半年……」
QB「半年以内、だよ。楽観視しすぎないようにね」
マミ「楽観なんて……」
QB「……」
マミ「どうにか、ならないの? 出てくるのがわかっているなら、例えばその穴をふさぐとか」
QB「……。できなくはない。前例もある」
マミ「だったら!」
QB「ただし、どこかよそに噴き出すことになる。抑え込まれた反動で、さらに強力になって」
マミ「……」
QB「この街 “だけ” を守るなら、それが最上手だろうね」
マミ「うぅ……」
マミ「どうすればいいの……?」
QB「逃げることだよ。それが最善だ」
マミ「そんな! 街の人たちを見捨てろって言うの!?」
QB「……。現在の人類の科学なら、表われる災害を事前に察知することができるだろう。
政府が避難命令を出すはずだよ」
マミ「だからって……!」
QB「何度も言うけど、君一人では勝ち目はないんだ。きっと絶望する間もなく殺される」
QB「実際にそうなった子を僕は何人も見てきた。無駄な戦いを挑むぐらいなら、
住民の避難誘導に当たった方がまだいくらかましだろう」
QB「さいわい、他の魔女と違って “彼女” はずっと居座るわけじゃない。
放っておいても長くて一昼夜で消えてくれる」
QB「そして勝てない限り、君が矢面に立ったところでその結果は変わらない」
マミ「……」
QB「……。まだ時間はあるんだ。街の人を上手く逃がす方法でも考えようよ」
マミ「……」
QB「仲間を探すのもいいかも知れない。一人じゃ無理でも、二人、三人なら、あるいは」
マミ「……」
マミ「……キュウべえ、あなた、さっきから 『勝てない』 って言ってるわよね?」
QB「……。君のプライドを傷つけるつもりはないよ。ただ――」
マミ「そういう意味じゃないわ」
QB「……。じゃあ、何が言いたいんだい?」
マミ「『勝ち』にこだわらないならどうなの? ってことよ」
QB「……」
マミ「確か、この街の先代は、魔法少女としては平均だったのよね?」
QB「……。ああ」
マミ「そんな彼女が、最後には三体の魔女を一度に倒したのよね?」
QB「……。マミ、待つんだ」
マミ「……」
QB「駄目だ。そんなことは考えないでくれ」
QB「そんなことをさせるために、僕は君を魔法少女にしたわけじゃないんだ」
マミ「つまり、できるのね?」
QB「……」
QB「マミ」
マミ「止めないで」
マミ「止めるなら、他の方法を示して。私じゃなく、街を守る方法を」
QB「……」
QB「そうじゃない。雨の日の約束を覚えているかい?」
マミ「――え?」
QB「君が魔法少女としての最後を迎えるときは、僕はそのそばにいるという、あの約束だ」
マミ「それは……」
QB「僕は守るつもりだよ。たとえその “最後” が、どんな形であろうとね」
マミ「っ……!」
QB「僕は忘れない。君も覚えておいてくれ」
マミ「キュウべえ……」
QB「まだ時間はあるんだ。他の方法を考えよう」
マミ「……」
カチャカチャ
コポコポコポ…
カチャリ
マミ「いただきます」
QB「いただきます」
QB「……」 モグモグ
マミ「……」
マミ(あれからもうかなり経つけど……まだ他の方法は見つかっていない……)
マミ(仲間集めも、全く進んでいない)
マミ(近くの街にいる魔法少女たちに応援を呼び掛けてみてはいるけれど、手ごたえはない。
みんな自分の居場所を守るので精いっぱいらしいから)
マミ(新しい魔法少女の勧誘も、できていない……)
◆
QB「さしあたって、候補者は一人だ」
マミ「たった一人……?」
QB「ゼロじゃないだけマシだよ。魔法少女としての潜在能力は平均程度だけど、
祈りの内容と君のサポート次第では、十分な戦力になってくれると思う」
QB「もっとも、それでも勝てる見込みは低いんだけどね」
マミ「契約は、すぐにできるの?」
QB「いや、まだそれだけの願いを抱いてはいないんだ」
マミ「そう……」
QB「今のうちに挨拶だけでも済ませておければいいんだけど……
あいにく、僕の立場で急かすことはできないし、助言するのもルール違反だからね」
マミ「……どこかで偶然に出会う、とかは?」
QB「それを意図している時点で偶然とは言えないよ」
マミ「そっか……そうよね」
QB「さて、どうしたものかな」
マミ「……」
QB「……君は、どうすればいいと思う?」
◆
マミ(どうすればいいの……?)
マミ(その子に、早く仲間になって欲しいとは思うけど、
それはすなわち平和に生きている女の子を戦いに巻きこむということでもある)
マミ(それも、尋常ならざる戦いに)
マミ(……早い方がいいという、キュウべえの意見も理解はできる。
早く契約すれば、それだけ余裕を持ってワルプルギスの夜に備えることができる)
マミ(だけど……もし彼女が 『逃げたい』 と言い出したらどうするの?)
マミ(そう。契約したって、魔法少女だからって、一緒に戦ってくれるとは限らないのよ)
マミ(ユリさんや佐倉さんがそうだったように……)
マミ(……)
マミ(今日は16日だから……あれからもうそろそろ四ヶ月。危険域、と言っていい……)
マミ(やっぱり、私が命を懸けるしか……)
マミ(……考えることを、いかにキュウべえを出し抜くか、に切り替えるべきかしらね……)
マミ「ふぅ……」
カチャリ
マミ「ねぇ、キュウべえ……」
マミ「……」
シーン…
マミ「キュウべえ? ――あら?」 キョロッ キョロキョロッ
マミ「……キュウべえ? どこにいったの? ねえっ?」 ガタン
マミ(さっきまで一緒に朝ごはんを食べていたのに……)
マミ(どうして? あの子、どこに行っちゃったの?)
マミ「キュウべえ? ――キュウべえ!」
QB「――こっちだよ、マミ」
マミ「あ……」
マミ「もう、キュウべえったら……びっくりするじゃない」 スタスタスタ
ガラリ
マミ「ベランダなんかでいったい、何……を…………」
QB「……」
マミ「え? まさか」
QB「……」
マミ「嘘でしょう? まさかもう、来るっていうの? “ワルプルギスの夜” が……」
QB「……」
QB「いいや、違う」
マミ「そ、そう……」 ホッ
マミ「でも、だったら何をしているのよ? 紅茶、まだ残ってるわよ?」
QB「……」
マミ「……キュウべえ?」
QB「わからないんだ」
マミ「え?」
QB「ああ、わからない。こんなことは初めてだ。いや、そもそも起こるはずがないんだ」
QB「この国の社会情勢からして、こんな人間が存在する余地はないはずなんだ」
QB「仮にあったとしても、こんな急に発生するなんてことは有り得ない」
QB「どこかで因果が捩じ曲がったとしか考えられない。本来はそれも有り得ないのに」
マミ「きゅ、キュウべえ?」
マミ「どうしたの? 何を言っているの?」
QB「……」
QB「マミ、向こうを見てごらん」
マミ「向こうって……住宅街の方よね?」
QB「何か感じないかい?」
マミ「え? えっと…………別に、何も感じないけど?」
QB「そうか……流石に、この距離で潜在的な魔力までは感知できないか……」
マミ「……どうしたのよ、キュウべえ? いったい向こうに何があるっていうの?」
QB「……」
QB「一国の女王や救世主に匹敵……いや、それすら凌駕する、桁外れの魔力が観測された」
マミ「……?」
マミ「えっと、つまり……誰か凄い人が来た?」
QB「違う。彼女はずっとこの街にいた。急に跳ね上がったんだ」
マミ「……そんなことが起こり得るの?」
QB「起こり得ないから混乱しているんだよ。何が何だか、わけがわからない」
マミ「……」
マミ「……ほんとう。珍しいわね、あなたがそんなになるなんて」
QB「初めての経験だよ。君たちに出会ったときでさえこれほどまでには驚かなかった」
マミ「そ、そうなの……」
QB「……」
マミ「……ワルプルギスと、何か関係があるのかしら?」
QB「わからないよ。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない」
QB「……。いや、そうだね。その可能性は高い」
QB「正確には、現時点ではそれぐらいしか考えられない」
QB「それに……そうか。そうだ。そうだよ」
QB「まだわからない。わからないけど……調査結果次第では……」
マミ「……?」
QB「マミ」
マミ「え? え、ええ。なに?」
QB「もしかしたら、どうにかなるかも知れない」
マミ「……なにが?」
QB「決まってるだろう! ワルプルギスの夜だよ!」
QB「この彼女が契約して、魔法少女になってくれれば……!」
マミ「……! まさか――」
QB「そうさ!」
QB「倒せるかも知れない――あの厄介な舞台装置を!」
418 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/07/05 21:01:58.60 sCoB9TV+o 284/571
以上
はい、これにて本編と接続(コネクト)とあいなりました
ほむほむまで行かんかったなぁ
べぇさんがワル夜を厄介扱いしてる理由は>>406ね
貴重なエネルギー源を何人もダメにされたからってことで
QB《――この子たちだよ。見えるかい?》
マミ「ええ……」
『たまご焼き、もーらいっ♪』
『ああっ。さやかちゃん、ひどーい!』
マミ「この映像……キュウべえ、あなた窓から覗いたの?」
QB「そうだけど?」
マミ「あまり関心できたことじゃないわよ。……で、どっちがそうなの?」
QB「桃色髪の方だよ。もう一方の彼女にも素質はあるようだけど」
マミ「でも、本当に接触してしまっていいの? ルール違反って言ってなかった?」
QB「まぁ、特例だね。あの途方もない魔力係数の調査は、どうしたって必要だ」
マミ「そう……。じゃあ、行きましょうか」
第十四話 異変は続く
テクテクテク…
マミ「それで……何かわかったの? この子について」
QB「いいや、残念ながらまだ何も。むしろ調べたことでわからないことが増えちゃったよ」
QB「異変は彼女――鹿目まどか一人にだけじゃなく、その周囲にも及んでいるらしい」
マミ「というと?」
QB「まず、さっきテレパシーで見せた映像の中の、もう一人の少女。
美樹さやかというんだけど、以前の彼女には魔法少女としての素質はなかったんだ」
マミ「それが……今はある?」
QB「ああ」
QB「まぁ、それ自体は有り得ないことじゃない。何かのきっかけで急に素質が芽生えるのはね。
彼女は鹿目まどかと親しいようだから、“引っぱられた” 可能性もある」
マミ「なるほど……」
QB「うん。だからそっちはまだいいんだけど……もう一つあるんだ。
これがまた輪をかけて不可解な問題でね……」
マミ「……なんなの?」
QB「今日、二人が所属しているクラスに転校生が来た」
マミ「転校生? ……ああ、そういえばクラスの子が噂してたけど……それがどうかしたの?」
QB「魔法少女だった」
マミ「え……」 ピタ
QB「……。マミ、歩こう」
マミ「……え、ええ」 …テク、テクテクテク
QB「……」
マミ「間違いないの?」
QB「間違いない。体育の授業で身体強化の魔法を使っているのを見たよ」
マミ「また覗き……? それに、その子も何をしているのよ……」
QB「そんなことは問題じゃないよ。問題なのは――僕が彼女を知らないってことさ」
マミ「知らない?」
QB「正確には、全く知らないというわけじゃない。
魔法少女候補としてチェックを入れておいた中の一人だからね」
QB「名前は暁美ほむら。半年ほど前に見たとき、彼女は東京にいた。
そのときは素質があるというだけの、どこにでもいるただの女の子だった」
QB「それなのに、いつの間にか魔法少女になってしまっている」
マミ「……あなたたちの誰かが契約したんじゃないの?」
QB「忘れたのかい? 僕らは記憶を共有しているんだ。
この僕が知らないってことは、他のどの 『僕』 も知らないってことなんだよ」
マミ「……」
QB「彼女は、僕と契約していない。それなのに魔法少女になっている」
QB「いったい何が起こっているんだか……」
マミ「うーん……」
マミ「……あなたたちの他にも魔法少女を生み出す存在がいる、ということかしら」
QB「ないよ。……少なくとも、僕の知る限り、そんな存在はいない」
マミ「……」
QB「……けど、確かに、それぐらいしか考えられないのも事実だね」
マミ「そう……なら、ついに “機関” が動き出したのね……」
QB「“機関”? なんだい、それは?」
マミ「……ううん、ただのジョーク ///」
QB「……」
マミ「ごっこ遊び的な、ね……一回言ってみたかったの……///」
QB「冗談を言ってる場合じゃないんだけどなぁ」
マミ「ごめんなさい……」
QB「別にいいよ。それより、この暁美ほむらだけど」
マミ「うん」
QB「さっきから後をつけてきている」
マミ「え?」 ピタ
マミ「……どこ?」 チラリ
QB「右後方、200メートルぐらい。こちらからだと影になっていて見えないね」
マミ「……」
QB「行こう」
マミ「ええ……」 …テクテクテク
マミ「……」 テクテクテク
QB「……」
マミ「……付いてきているの?」
QB「ああ。魔力の気配が、ぴったりと付いてくる」
マミ「……困ったわね。ケーキは四人分しか用意していないのに」
QB「……。その程度の困りごとで済めばいいんだけどね」
マミ「ハァ……そうね。何が狙いなのかしら」
QB「考えられるのは、とりあえず三つかな」
マミ「……私か、あなたか……でなければ、前にいる鹿目まどかさん?」
QB「そうだね」
マミ「私やあなたはわかるけど、どうして彼女に?」
QB「わからないよ。ただ、彼女は学校でも鹿目まどかに近付くような動きをしていた」
マミ「そう……」
マミ「どうするべきかしら?」
QB「そうだね……仮に、彼女の目的が攻撃的なものなら、このまま鹿目まどかたちと
接触してしまうのは危険かも知れない」
マミ「じゃあ、まず彼女の方に話を聞く?」
QB「そうしてみるか。とりあえず、僕だけで行ってみるよ」
マミ「どうして?」
QB「魔法少女同士だと、いきなり戦闘になる恐れがある。君にその気がなくてもね」
マミ「……。そう、ね」
QB「マミは鹿目まどかたちを見ていてくれ。接触するかどうかは……任せるよ」
マミ「わかったわ。気をつけてね」
QB「うん。……一応、応援も呼んでおこうかな」
マミ「応援?」
タタタタタッ
マミ「あ……行っちゃった」
マミ「まぁいいわ。こっちはこっちで、することしないとね」
店員「いらっしゃいませ」
マミ「ダージリン、お願いします」
マミ「……」 チラ
「――」 キャッキャ
「――」 ウフフ
マミ(お友だちとお茶会か……関係ない子もいるみたいだし、さすがに乱入は無理ね)
マミ(……はぁ、羨ましいなぁ)
マミ(三年生になって、いつものあの子たちともクラスが別れちゃったから、もう長いこと
ああいったこととは御無沙汰なのよね……)
店員「お待たせしました」
マミ「ありがとう」
マミ(……)
マミ(……契約をさせたら、彼女たちからもああいった時間を奪うことになる)
マミ(けれど、そうしなければ、彼女たちを含めた多くの人が不幸に見舞われる)
マミ(だったら選択の余地なんてない)
マミ(……)
マミ(……だけど、それは本当に “正しいこと” なの?)
マミ「……」
マミ「……」 ズズ…
マミ「……」
マミ(……イマイチね。たぶん、ちょっと蒸らし過ぎてる)
マミ「ふぅ……」 カチャリ
マミ「……」 チラ
「――」 キャッキャ
「――」 ウフフ
マミ「……」
マミ「……」 カタン
マミ「……」 スタスタスタ
マミ「すみません。お会計、お願いします」
マミ(考えがまとまらないわ。ちょっと外の空気でも――)
――ポゥ…
マミ「――!?」
マミ(魔女の気配……!)
マミ(……まったく、色んなことが次から次へと……忙しい日ね!) タタッ
バン!
バンバンバンバン!
マミ(……私の役目は、この街を守ること)
『ミ゙ッ』
『ミ゙ミ゙ッ』
バンッ!
マミ(私を生み、育んでくれたこの街を)
マミ(父と母から受け継いだ因果の力と、キュウべえが繋いでくれた命を使って)
マミ(街の外のことを見捨ててでも、守り切る)
バンバン! バンバン!
マミ(それが私の、魔法少女としての在り方)
マミ(誰に強制されたわけでもない、私自身が私のために決めた生き方)
マミ(そのために、何をすべきか。何をするのが正しいことなのか)
――バァンッ!
マミ(それを見定めないといけないわ)
マミ「ふぅ……」
シュイーン…
マミ「――!」
マミ「結界が消える……まだ魔女は倒していないはずなのに……」
マミ「まさか、例の正体不明の子が……?」
ポゥ…
マミ「……いえ、気配はまだ残ってる。移動しただけ、か」 ホッ…
マミ「……」
マミ(今、私、安心した?)
マミ(倒すべき魔女がまだ生きていることを、喜んだ……?)
マミ(……)
マミ(……)
マミ(……)
マミ(……そうか……わかったわ。私は……)
マミ(この手で守りたいんだ。この手で……倒したいんだわ。“ワルプルギスの夜” を……)
マミ(だから、ためらっていた)
マミ(彼女――鹿目まどかさんに契約してもらうのを、躊躇していた)
マミ(自分にできないことができてしまう……そんな存在が生まれることを、恐れていた)
『――彼女がいれば、どうにかなるかも知れない!』
マミ(……嫉妬していたんだわ、私……)
シューン…
マミ「ふぅ……」
マミ「――なら、もうためらってはいられないわね」
マミ「そんなくだらない理由であの子の念願を邪魔するなんて、その方がよっぽど耐えられないわ」
マミ「それじゃあ気を取り直して――」
マミ《キュウべえ、聞こえる?》
《……》
マミ《……》
マミ《……? キュウべえ?》
《……――て……》
マミ《え? なに? なんて言ったの?》
《……》
《……たすけて……》
マミ「――っ!?」
マミ《キュウベえ!? どうしたの!? 何があったの!?》
《……たすけて……》
マミ(くっ……! 聞こえていないの? なら、直接行くしか……) ダッ
《助けて…………まどか……》
マミ(え――?) ピタ
マミ「……キュウべえ?」
《……》
マミ「『まどか』って……どうして……」
《……》
マミ「私がいるのに……ここにいるのに……」
《……》
《……まどか……》
マミ「どうしてそんな……他の子を、呼ぶの…………?」
444 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/07/10 22:03:03.69 0a4kVArZo 301/571
以上
『ミ゙ーッ』
『ミ゙ミ゙ッ』
『ミ゙ィーッ』
さやか「く、くるなっ! くるなあっ!」
まどか「さやかちゃん……っ!」
――バンッ!
『ミ゙ッ!?』
まどか「え……?」
バン! バンバンバン!
さやか「こ、今度はなに?」
マミ「危ないところだったわね、あなたたち」
マミ「でももう――大丈夫よ」 ニコ
第十五話 new faces
さやか「あ、あなたは……」
マミ「私は――」
QB「……うぅ……」
マミ「――!? キュウべえ!!」 ダッ
まどか「きゃっ?」
マミ「ひどい怪我……いったいどうして……」
まどか「あ、あの。この子のこと、知ってるんですか?」
マミ「……ええ、私の大切なお友だちよ……」
まどか「え、えと、この子、いじめられてたみたいで……」
マミ「……。そう」 ジャキッ
まどか「え?」
さやか「ちょ、何を――」
バァンッ!!
『ミ゙ーッ!?』 パチューン
まどか「……へ?」
さやか「あ! あれ、さっきの!」
マミ「まだ残っていたみたいね」
さやか「な、なんかまたいっぱい来た! なんなの、あれ……?」
マミ「ごめんなさい、話はあとで。今は下がっててもらえるかしら?」
さやか「あ、は、はい」
まどか「……っ」 コクコク
マミ「キュウべえも、もう少しだけ我慢してね? すぐに治してあげるから」
QB「……」
『ミ゙ィッ』
『ミ゙ミ゙ッ』
『ミ゙ッ』
マミ「一気に終わらせる……――整列〈アテスタ〉!」
ザッ――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!!
さやか「うわっ! 銃が……」
まどか「いっぱい……」
マミ「―― 百丁斉射〈ティロ・チェント〉!!」
――ッバアァァァン!!
パァァァ…
QB「……」 シュゥゥゥ…
さやか「……! 傷が……」
まどか「すごい……」
マミ「キュウべえ……」
QB「……う、ん」 ピクッ
――ピョコン
QB「フゥ……助かったよ、マミ」
さやか「喋った!?」
マミ「よかった……まったく、心配したんだから」 ダキッ
マミ「……」
マミ(あれ……?)
さやか「……あの、いいですか?」
マミ「えっ? ……あ、え、ええ」
さやか「えっと……とりあえず、あなたはいったい……」
マミ「そうね。まずは自己紹介かしら」
マミ「私は巴マミ」
シューン…
さやか「変身した!? ……いや、変身を、といたの?」
まどか「あ……その制服……」
マミ「そう。見ての通り、あなたたちと同じ、見滝原中学の生徒よ。ちなみに三年生」
マミ「そしてこの子はキュウべえ」
QB「よろしくね、鹿目まどか。そして、美樹さやか」
さやか「ど、どうしてあたしたちの名前を?」
QB「今日は君たちにお願いがあって来たんだよ」
まどか「おねがい?」
QB「そうさ。君たちには、僕と契約して魔法少女になって欲しいんだ!」
まどか「まほ、う……?」
さやか「なに、それ?」
マミ「また……もう、キュウべえ? もっとちゃんと説明しなさいって、前にも――」
「待ちなさい」
マミ「――!」 バッ
まどか「ほ、ほむらちゃんっ?」
さやか「転校生、あんた……」
マミ「……」
マミ「そう、あなたが暁美ほむらさんね」
ほむら「……」 ピク
マミ「魔女は逃げたわ。すぐに追えばまだ間に合うでしょうけど」
ほむら「用があるのはそちらの獣よ。渡しなさい」
マミ「……」 ピク
マミ「なるほど、つまりあの怪我はあなたがやったのね」
マミ「そんな相手に、大切なお友だちを、はいそうですかと渡すと思う?」
ほむら「……」
マミ「退きなさい。この上、無関係な彼女たちを巻き込んでまで遣り合おうというのなら――」
ほむら「……」
マミ「……容赦は、しないわよ?」
ほむら「……」
さやか「……」 ゴクリ
まどか「……」 オロオロ
ほむら「……鹿目まどか」
まどか「は、はいっ!」
マミ「……」
ほむら「私が言ったことは覚えているわね」
まどか「う、うん。でも……」
ほむら「ならいいわ。その人――巴マミの話を聞けば、意味も理解できるでしょう」 クルリ
まどか「え……」
マミ「……?」
ほむら「くれぐれも、軽はずみな真似はしないでちょうだい」 カツン
カツン、カツン、カツン、カツン……
さやか「行っちゃった……? なんなの、アレ?」
まどか「ほむらちゃん……」
QB「……」
マミ「鹿目まどか、さん?」
まどか「えっ? あ、はい」
マミ「彼女、暁美さんがあなたに言ったことってなんなのか、教えてもらってもいいかしら?」
まどか「え、えっと、それは……」
さやか「……」
さやか「なんか、家族や友達が大事なら、自分を変えようと思うな、とかなんとか」
まどか「さやかちゃん!?」
さやか「いや、だってこっちの人の方が信用できそうだし。
それにあたしらに話したぐらいだし、喋るなって言われたわけでもないんでしょ?」
まどか「それは…………、うん……」
マミ「自分を変えるな、か……キュウべえ、どう思う?」
QB「うん。魔法少女になることだと考えて、間違いないんじゃないかな」
マミ「そうね……」
まどか「……」
まどか「あ、あの……」
マミ「ん?」
まどか「なんなんですか? その、魔法少女、とかって……」
さやか「ってゆーかイロイロわけわかんないんですけど。
さっきの気色悪いお化けとか、その喋ってるヌイグルミみないなのとか……」
マミ「あら、ごめんなさい」
マミ「……そうね。あの暁美さんの言いなりになるみたいで少し癪にさわるけど、
最初からそのつもりではあったし」
まどさや「「……?」」
マミ「あなたたち、今から時間、あるかしら? 説明する――いいえ」
マミ「説明を、させてちょうだい」
465 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/07/15 00:42:25.76 iqdV3hsio 314/571
以上
うーん、ずっとマミQの二人芝居ばっかりやってきたから人数が増えると勝手がわからん
特にまどかが扱いづらすぎる
ガチャ
マミ「独り暮らしだから、遠慮しないでくつろいでね」
さやか「わ……」
まどか「素敵なお部屋……」
マミ「ありがとう」 クス
マミ「飲み物を用意するわ。紅茶しかないんだけど、いいかしら」
まどか「あ、はい」
さやか「ごっちゃんです」
マミ「ふふっ」
第十六話 お茶会/黄昏
まどか「魔女退治……」
さやか「代わりに願いをなんでも一つ、か……なるほど。だから 『契約』 ってわけですか」
マミ「そういうことね。あなたたちには、どんな願いでも叶えられるチャンスがある。
でもそれは、死と隣り合わせなの」
まどか「ふぇ……」
さやか「んー、悩むなぁ」
QB「……。とりあえず、説明はこんなところかな」
マミ「そうね。……」
マミ「――え?」
まどか「え?」
さやか「ん?」
QB「どうしたんだい、マミ?」
マミ「どうしたじゃないわよ、キュウべえ、まだ肝心なことを言っていないじゃない」
QB「というと?」
マミ「決まってるでしょう! “ワルプルギスの夜” のことよ」
QB「……」
まどか「わる……」
さやか「……ぷる?」
マミ「ワルプルギスの夜――伝説級の最大の魔女の名よ。
街一つを吹き飛ばすほどの力を秘めているらしいわ。それがもうすぐ、この街に来るの」
さやか「なっ……!」
マミ「あなたたちが今から魔法少女になるのなら、確実にそれと出会うことになる」
まどか「えぇっ!?」
さやか「ちょ、なんでそんな大事なことを言わないのよ!」
QB「……。確かにワルプルギスの夜の名前は出さなかったけど、僕は言ったじゃないか。
まどかならどんな魔女が来ても苦もなく倒せるだろうね、と」
QB「“彼女” も魔女であることには変わりはないし、重ねて言う必要もないかと思って」
マミ「理屈は、わかるけど……」
さやか「だからって、そういうことはちゃんと言ってよ!
……うわー、なんだろ。なんかあんたのこと、急に胡散臭く見えてきたんだけど」
マミ「ご、ごめんなさいね、美樹さん。この子、見ての通り人間とは違う生き物だから、
私たちの感覚とは少しずれてるところがあって……」
さやか「はぁ……」
QB「僕としては、まどかの素質を見たあとでは “彼女” なんて大した問題とは思えなくてね。
それだけまどかが優れた魔法少女候補だということだよ」
さやか「ってゆーかソレが一番信じられないんだけど。だってまどかって本当に普通の子だよ?
そりゃすごく良い子だけど、運動なんかはむしろ苦手な方だし」
まどか「う、うん……」 コクコク
QB「運動能力や、ヒトとしての優劣は大して関係ないよ。魔法少女としての潜在能力は、
背負った因果の量で決まるんだ」
さやか「いんが……?」
QB「他者とのかかわり、世の中に与える影響のことさ。これが大きいほど強い魔法少女になる。
君たちにもわかりやすい例でいうと、政治家の娘なんかがそうだね」
QB「あるいは、一国の女王や救世主。まどかはそれすら凌駕しているけれど」
さやか「いやいやいやいや、何言ってんの。それじゃ余計におかしいでしょ」
QB「そう。おかしいんだ」
さやか「――は?」
QB「まどか。むしろ僕の方こそ君に聞きたい」
まどか「え? え?」
QB「君から感じられる魔力がここまで大きくなったのは、実はつい最近のことなんだ」
まどか「そ、そうなの……?」
QB「ああ、一週間ほど前だよ。正確には、先週の水曜日の朝」
QB「何か心当たりはないかい? どんな些細なことでもいい。聞かせてほしい」
まどか「え、えぇと……えと……」
QB「……」
まどか「…………特には……」
QB「……」
QB「そうかい」
マミ「キュウべえ、無理よ。こっち側のことをついさっき知ったばかりの子にそんなふうに言っても
混乱させるだけだわ」
QB「……。そうだね」
QB「ごめんね、まどか。無理を言っちゃったね」
まどか「ううん、ううん。わたしこそ、役に立てなくて」
マミ「いいのよ、鹿目さん。気にしないで」
まどか「は、はい……」
マミ「……本当に、気にすることはないのよ?」
まどか「え?」
マミ「あなたの秘めている力は、確かに大きなものよ。こうして向かい合うと、ぼんやりとだけど、
私にも感じられるわ」
まどか「はぁ……」
マミ「だけどね? だからといって、あなたに責任はないの」
まどか「そう、なんですか?」
マミ「そうよ」
マミ「『大いなる力には、大いなる責任が伴う』――それはそれで当然のことだけれど、
それはあくまで力を振るおうとする場合の話」
マミ「むしろ、妙な責任感から無理に力を使っても、碌なことにならない場合の方が多いわ」
マミ「美樹さん、あなたもよ。
あなたたちには、今日見たことを全て忘れて、普通の生活に戻るという道もあるの。
それを忘れないで」
さやか「はぁ……」
まどか「……はい」 コクリ
マミ「まぁ、どちらにしても今すぐに決める必要はないわ。むしろゆっくり考えてね?」
さやか「う~ん……ですけど、何をどう考えたらいいのか……」
マミ「そうね。いきなり多くのことを、一度に言いすぎちゃったわね」
QB「なら、実際に現場を見てみるというのはどうかな?」
マミ「え?」
さやか「現場?」
QB「まどか、さやか。君たちはマミに付き添って、実際の魔女退治の現場をその目で
見てみるといい。話を聞くだけよりは理解が深まると思うよ」
まどか「え……?」
さやか「ふむ、なるほど」
マミ「……そうね。確かに、見てもらうのが一番手っ取り早くはあるわ」
QB「決まりだね」
まどか「え? え?」
マミ「だけど、危険よ。一般人を結界の奥深くまで連れ込むなんて、何が起きるか……」
QB「君が守ってあげればいいじゃないか」
マミ「っ!? そ、そんな簡単に……」
QB「……。いつも僕のことを守ってくれているだろう? それと同じようにすればいいのさ」
マミ「それは……」
QB「それにいざというときは、僕と契約することで、最悪の事態だけは避けられる」
QB「――もっとも、そうなるのは、君たちにとっては不本意な結果かも知れないけれど」
さやか「あはは。まぁ、そうだね」
まどか「えぇと……」
マミ「……」
QB「……。どちらにしても、マミ、これは君にとっても有益な話だよ」
マミ「……どうして?」
QB「もしまだ君が、街を守るためにワルプルギスの夜と戦うつもりでいるのなら、
何かを守りながら戦うという経験はきっと役に立つ。
“彼女” の破壊の力は、災害として現実の世界にも表われるんだから」
マミ「……」
QB「……」
マミ「……そう、ね」
マミ「美樹さん、鹿目さん。あなたたちも、それでいいかしら?」
さやか「あー……あたしは望むところっすけど」
まどか「えっと……わたしなんかがいたら、邪魔になっちゃうんじゃ……」
さやか「怖いなら素直にそう言いなって」
まどか「えぅ……」
マミ「じゃあ、見学は美樹さんだけということね。さっそく明日からでいいかしら?」
さやか「はい」
まどか「……」
まどか「や、やっぱりわたしも行きますっ!」
マミ「……無理しなくていいのよ?」
さやか「そうだぞー、まどか。ただでさえあんたは争いごととか苦手なんだし」
まどか「で、でも……やっぱり、わたしも……」
マミ「……」
マミ「わかったわ。――魔法少女体験コース、お二人様ご案内、ね」
さやか「はいっ」
まどか「よ、よろしくおねがいします!」
マミ「こちらこそ、よろしくね。あなたたちのことは全力で守るから」
マミ「それじゃあ、今日はこれでお開きにしましょうか。もう遅いし、送っていくわ」
さやか「じゃ、あたしココですんで」
マミ「そう。じゃぁ、また明日ね、美樹さん」
まどか「さやかちゃん、ばいばーい」
さやか「うーい、またあしたー」 ブンブカ
まどか「……」 テクテク
マミ「……」 テクテク
マミ(それにしても……) チラリ
QB「……」
マミ(……キュウべえ、どうして鹿目さんの肩に乗っているのかしら)
QB「ねえ、まどか」
マミ「……」 ピクッ
まどか「ん……なぁに、キュゥべえ?」
QB「今日は君の家に寄らせてもらっていいかな?」
まどか「え?」
マミ(え……?)
まどか「別にいいけど……あー、でもパパやママがなんて言うか……」
QB「その点は平気だよ。僕は普通の人の目には見えないから」
まどか「そうなの? だったらまぁ、大丈夫だと思うけど……でもどうして?」
QB「君もまだいろいろと聞きたいことがあるんじゃないのかい? 答えてあげるよ」
マミ「……」
まどか「そっか。……でも、さやかちゃんに悪いかも」
QB「もちろんさやかにも時間を取るさ」
まどか「ん~、じゃあ……えっと、マミさん。いいですか?」
マミ「え、ええ。もちろん私は構わないわ」
QB「決まりだね」
まどか「うん。よろしくね、キュゥべえ」
QB「こちらこそ」
マミ「……」
まどか「あ、ここです。わたしの家」
マミ「……素敵なお家ね」
まどか「えへへ……それじゃあ、失礼します。行こ、キュゥべえ」
QB「お邪魔するよ」
マミ「あ……」
マミ「……」
マミ「ちょ――ちょっと、待ってもらえるかしら?」
まどか「え? なんですか、マミさん?」
マミ「その……ちょっと、キュウべえと二人で話しておきたいことが、あるのよ……」
まどか「はぁ……」
QB「……。僕は別にかまわないよ」
ピョーイ
QB「まどか。君は先に戻っていてくれ。あとで直接君の部屋にお邪魔するよ」
まどか「いいけど、場所、わかる?」
QB「君の魔力をたどるさ」
まどか「そ、そっか。それじゃあ、またあとでね。マミさん、失礼します」
マミ「ええ、また明日」
QB「……」
QB「それで、マミ。話って?」
マミ「えぇ……」
マミ「大したことじゃないんだけど……ちょっと、気になって……」
QB「……」
マミ「……」
マミ「少し、歩きましょうか……」
マミ「えっと……」
マミ「……あなたが、暁美さんに襲われた時のことだけど」
QB「ああ……あれは参ったよ。まさかいきなり撃たれるとは思ってなかったからね」
マミ「撃たれた? 彼女の武器も銃器なの?」
QB「……。それがよくわからないんだ。拳銃のように見えたけど……
気がついたときにはもう、撃ち抜かれていた」
マミ「……」
マミ「……?」
QB「話というのはそのことかい? なら、残念だけどそれ以上のことはわからないよ」
マミ「い、いえ。そうじゃなくて」
QB「だったらなんだい?」
マミ「それは……」
QB「……」
マミ「……ねぇ、キュウべえ」
QB「うん」
マミ「どうしてあのとき、鹿目さんに助けを求めたの? ――私にではなく」
QB「……」
マミ「言ってはなんだけど、彼女では助けにならなかったはずよ?
いくら素質が大きいとはいえ、まだ契約していないんだから」
QB「……。だから、その契約をしようと思ったのさ」
マミ「え……?」
マミ「な、何を言っているのよ。そんな、襲われてる状況で契約なんて……」
QB「そんな状況だからこそだよ。『僕のことを助けたい』 と願ってもらうつもりだったんだ」
マミ「……なんですって?」
QB「まどかは、性格ゆえか環境ゆえか、ごく些細な望みすら抱いていないようだった」
QB「しかしその一方で、一定以上の “善良さ” を備えていると見受けられたからね、
助けを求めれば、『そうしたい』 と願ってくれると思ったんだ」
マミ「な……」
マミ「何を、言っているの、キュウべえ……?」
QB「何って、君の質問に対する答えだよ。――上手くいくと思ったんだけどなぁ」
マミ「キュぅ……」
QB「実際、何かしらの願いを抱えてもらうところまでは成功したんだよ。
だけど生憎と僕の方が、それを聞き出せる状態じゃなくなってしまったんだ。
まったく、勿体ないことをした」
QB「まぁ、暁美ほむらが今後も僕を狙うつもりでいるのなら、まだチャンスはあるだろう」
マミ「……っ!」
マミ「――何を言っているのよ! キュウべえ!」
QB「……」
マミ「そんな、そんなの、おかしいわ。そんなのはダメよ」
QB「……。どうしてだい?」
マミ「だってそんな、罠にはめるみたいな遣り方、間違ってるわ」
QB「暁美ほむらが僕を襲ったのも、魔女の使い魔が現れたのも、偶然だよ。
僕が意図したことじゃない」
マミ「そういうことを言ってるんじゃないわ! どうしてわからないの!?」
QB「……。わからないよ。何をそんなに問題にしているんだい?」
マミ「彼女は、鹿目さんは、心から心配してあなたを助けようとしたのよ?
その気持ちを踏みにじるようなことを、あなたはしようとしたの!」
QB「まさか。逆だよ。その気持ち――助けたいという意思を無駄なく活用するための
もっとも効率的な方法だよ」
マミ「……!?」
QB「それに、守護の祈りで契約すれば、高い確率で守りに特化した魔法少女になれる。
まどかならきっと、ワルプルギスの夜からもこの街を完璧に守り抜いてくれるはずさ」
QB「マミ、これは君の希望にも沿うことだろう?」
マミ「……」
QB「……? マミ?」
マミ「あ、あなた……」
QB「どうしたんだい、マミ? 顔色が悪いよ?」
マミ「どうしちゃったの、キュウべえ……今日のあなた、どこかおかしいわ」
QB「僕はいつも通りだよ?」
マミ「おかしいわよ! ワルプルギスの夜のことを隠そうとしたり、
一般人を魔女退治に連れ出そうなんて言いだしたり……」
QB「……。ワルプルギスの夜については言う必要がなかっただけだし、
見学についてだって、君も納得したじゃないか」
マミ「違う……違うわ……」
マミ「普段のあなたなら、そんなことは絶対に言わない……」
QB「そうかな? 昨日と今日で、ルールや行動指針を大きく変えたりはしていないよ?」
マミ「そういう、ことじゃ……」
QB「……。わからないな。君はいったい、何にそんなにこだわっているんだい?」
マミ「それは……」
QB「……」 ジー…
マミ「っ……」
マミ(……目を逸らしちゃった……何をやっているの、私……)
マミ(……でも、違う。何かが変だわ。“この子” は何かが、いつもと違う……)
QB「……。まぁ、言いたくないなら別にいいけど」
マミ「……」
QB「もう行っていいかい?」
マミ「……ま、待って」
マミ「一つ。あと、一つだけ」
QB「……。なんだい?」
マミ「……」
マミ「……さっき、鹿目さんたちと一緒に出したお茶、だけど……」
QB「うん」
マミ「お、美味しかった……?」
QB「……」
QB「うん。美味しかったよ」
マミ「そ、そう? 本当に?」
QB「もちろん本当さ」
マミ「そう……」 ホッ…
. . . ..... . .. .. .
QB「でも――それがどうしたっていうんだい?」
マミ「……ッッ!?」
マミ(うそ……)
マミ(そんな……)
マミ(こんなの、違う……)
『――気がついたときにはもう、撃ち抜かれていた』
(貫通している傷なんて一つもなかった)
マミ(違うわ……)
『―― 一応、応援も呼んでおこうかな』
(“応援” なんて、どこにいるの?)
マミ(この子は……)
『――フゥ……助かったよ、マミ』
(抱き心地が、いつもと違った)
マミ(……キュウべえじゃ、ない……!)
マミ「……まさか……」 ズ…
マミ「……そんな、そんなこと……」 ズリ…
QB「……。マミ?」
マミ「ひっ――!」 ズザザッ
QB「……。やっぱり、おかしいのは君の方だよ。どうしてそんなふうに距離をとるんだい?」
マミ「う、あ……」
マミ「あぁ……あ――」
マミ「あなた………………………………………………………………誰なの?」
QB「……」
QB「へぇ」
502 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/07/19 22:01:13.87 Y7FSLY7Jo 341/571
以上
ひゃっはー、やっと一番書きたかったシーンが書けたぜえー
QB「ああ。確かに “この僕” は、三時間ほど前まで君のそばにいたのとは別の個体だよ」
QB「そちらは暁美ほむらに撃ち殺された」
QB「だけど、それがどうしたっていうんだい?」
QB「……」
QB「わからないなぁ」
QB「もう何度も説明しただろう? 僕たちは一つの意識と記憶を共有しているって。
身体は別でも中身は同じさ」
QB「君だって服を着替えたぐらいで別人扱いされたら困るだろう?」
QB「それに、君と契約したのだって、君のそばにいたのとは別個体だったんだよ?」
QB「ほら、どれだって同じだろう? どうしてそんなことを気にするんだい?」
QB「わけがわからないよ」
QB「……」
. . . ... .
QB「死体かい? もう片付けちゃったよ」
第十七話 魔法少女体験コース
マミ「う、うぅぅ……」
マミ「キュウべえ……」
QB「なんだい?」
マミ「っ……」
マミ「……あなたじゃないわ……」
QB「僕もキュゥべえだよ」
マミ「違う! 私のキュウべえはあの子だけよ!」
QB「……。“君のキュゥべえ” なんていやしないよ。僕は君に所有された覚えはない」
マミ「……ッ!?」
QB「君のそばにいたのは、君がそうして欲しいと言ったからだ。
魔法少女やその候補者の要望には可能な限り応えることになっているからね」
マミ「やめて……」
QB「しかしね、マミ」
マミ「やめて!」
マミ「その顔で……その声で! 私の名前を呼ばないで!」
QB「……」
QB「それは、少し困るなぁ。まどかたちの見学のときに、会話に支障が出る」
マミ「っ……!!」
QB「何がそんなに不愉快なのかはわからないけど、我慢してもらえないかな?」
マミ「……」
QB「……」
マミ「……わかったわ」
マミ「でも、私と二人のときは、名前を呼ばないで」
マミ「……ううん。まず、できるだけ二人きりにならないで」
QB「ふむ……まぁ、それならいいか。わかったよ」
マミ「……」
QB「……」
QB「それじゃあ僕はもう行くけど、気をしっかり持っておくれよ?」
QB「いま君に終わられると、まどかとの契約が難しくなりそうだからね」
トエトテトテ…
マミ「……」
マミ「……」
マミ「……」
『――終わりのときは、僕は君のそばにいる』
マミ「……うそつき……」
マミ「……」
まどか「……」
さやか「……」
QB「……」
さやか「あの、マミさん?」
マミ「えっ?」
さやか「どうしたんですか? なんか……黙っちゃって」
マミ「あ……ご、ごめんなさい。少し考え事を、ね」
さやか「はぁ……」
マミ「本当にごめんなさい。えっと、その……人を連れての魔女退治なんて初めてだから、
いろいろと考えちゃって」
さやか「あぁ……なんかすみません」
まどか「あの、お邪魔でしたら、やっぱり……」
マミ「ううん、大丈夫よ。もうだいたい考えはまとまったから。ごめんね、不安にさせちゃって」
マミ「それじゃあ――魔法少女体験コース第一弾、張り切っていってみましょうか」
マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に、魔女探しは足頼みよ」
マミ「大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は、優先的にチェックするの。
あとは、自殺に向いてそうな人気のない場所ね」
マミ「――来たわ。強い魔力の波動……向こうね」
マミ「魔女の口づけ……やっぱり、この人も魔女に魅入られたんだわ」
マミ「さて、今日こそ逃がさないわよ」
マミ「バットに魔力を付与したわ。気休めだけど、身を守る程度の役には立つから」
マミ「鹿目さんは、引き続き “その子” を抱えていて。離さないようにね」
マミ「……『キュゥべえ』、あなたは周囲の警戒を」
マミ「いたわ」
マミ「見て。あれが魔女よ」
マミ「心配ご無用」
マミ「未来の後輩に――あんまり格好悪いところ見せられないものね!」
マミ「――ティロ・フィナーレ!!」
マミ「ふぅ、あの女の人も大丈夫だったみたいだし……うん。ざっとこんなところね」
まどか「ふわぁ……」
さやか「ところで、その黒いのって何なんですか?」
マミ「これはグリフシード。魔女の卵よ」
さやか「タマゴっ!?」
QB「この状態なら危険はないよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」
マミ「そうよ。――見て」
シューン
まどか「あ……えっと、ソウルジェム、でしたっけ?」
さやか「え、でも、なんかだいぶ色が違ってません? 昨日はもっと明るかったような……」
マミ「これが魔法少女の力の源だという話はしたでしょう?
力――つまり魔力を消費すると、こんなふうに輝きが失われて、黒く濁ってくるの」
マミ「そしてその濁りを取り払うのに必要なのが、このグリフシード」
シュウゥゥゥ…
さやか「おお、キレイになった」
マミ「そう、これで私の魔力も元通り。これが魔女退治の見返りってわけ」
まどか「……それ、濁り切るとどうなるんですか?」
QB「……」
マミ「それは……魔力の枯渇を意味するわ」
QB「まぁ、魔法少女を続けることはできなくなるね」
さやか「なるほど……でも、一回でそんなになるものなんですか?
さっきの、かなりヤバげな色してませんでした? どす黒いってゆーか」
マミ「いいえ。……まぁ、魔法の使い方にもよるけど、今ぐらいのレベルの魔女だと、
補給なしでも3、4回は戦えると思うわ」
マミ「ただ、昨日あなたたちと別れたあとに、ちょっとあって」
さやか「そうなんですか……思ったより忙しそうですね……」
まどか「……」
マミ「……あと、魔力の消費だけじゃなく、恨みや憎しみと言った負の感情を抱いたりすると、
それも濁りとなって溜まってしまうから、覚えておいてね」
さやか「え? それは、どうしてですか?」
マミ「……」
QB「……。そういうものだからさ」
まどか「へ?」
さやか「そういうものって……そんな言い方、なんか無責任じゃない?」
QB「ソウルジェムの運用は、魔法少女自身の責任で行われることだよ?」
さやか「いやいやいや、そういうことじゃなくてね――」
マミ「無駄よ、美樹さん」
さやか「え?」
マミ「昨日も言ったでしょう? “その子” は、人の心が上手く理解できないの」
さやか「は、はぁ……」
マミ「……私は、これは戒めだと思っているわ」
さやか「イマシメ?」
マミ「ええ」
マミ「『清い心を保て』、『魔女を倒して人々を救え』」
マミ「そんなふうに、魔法少女として正しくあるようにと、常に囁いてくれているの」
さやか「お……おぉ、なんかカッコいい」
まどか「う、うん」
マミ「ふふ、ありがとう」
マミ「――ねぇ? あなたもそう思わない?」
さやか「え?」
まどか「マミさん?」
――カツン
さやか「あっ! あんた!」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん……」
さやか「なんで、いつから……」
マミ「最初からよ」
さやか「え?」
マミ「学校を出てからずっと、彼女は私たちの後をつけていたわ」
マミ「そうよね? 暁美ほむらさん?」
ほむら「……」
さやか「うわ、マジで? ストーカーじゃん……」
まどか「……」
マミ「――で、どう思うかしら?」
ほむら「……」 ファサ…
ほむら「不愉快ね」
マミ「……」 ピク
ほむら「もしあなたの言う通りなら、私たちはまるで魔女を狩るための奴隷だわ」
ほむら「……いいえ。心の中で舌を出す自由さえないのだから、奴隷以下ね」
さやか「なっ……!」 ムカッ
マミ「……そう。あなたも、“そう” なのね」
ほむら「……」
マミ「あなたもこれが目当てなのね。グリフシードだけが」
ほむら「……」
マミ「でも、お生憎さま。これはもう限界よ。これ以上穢れを吸いこんだら魔女が生まれてしまう」
ほむら「……そのようね」
さやか「……」
まどか「……」 ハラハラ
ほむら「なら、さっさと処理させたらどう?」
マミ「……」
マミ「そうね。―― 『キュゥべえ』」 ポイ
QB「うん」 パカ
――スポッ、パクン
QB「きゅっぷい」
まどか「え……?」
さやか「た、食べちゃったの?」
QB「これもまた、僕の役目の一つだからね」
まどか「大丈夫なんですか……?」
マミ「もちろん。私は 『キュウべえ』 が同じことをするのを四年間見てきたけれど、
おかしなことは何も起こらなかったわ」
マミ「まぁ、初めて見たときは私も驚いたけどね」
まどか「はぁ……」
マミ「――暁美さん」
ほむら「……」
マミ「あなたの求めるものはここにはないわ。だからもう――」
マミ「私の前から、消えてくれないかしら」
まどか「……!」 ゾクッ
さやか「ま、マミ、さん……?」
マミ「……」
ほむら「大した剣幕ね。あなたらしくもない」
マミ「……まるで私のことをよく知っているような口ぶりね」
ほむら「さぁ……どうかしら」
マミ「……」
マミ「いいえ。知るわけがないわ」 ジャキッ
さやか「ちょっ!」
まどか「ま、マミさん!?」
ほむら「……」
マミ「そうよ。知っているわけがない」
マミ「知っているなら、あんなことができるはずがないのよ……!」
ほむら「……」
さやか「マ……」
まどか「……」 オロオロ
ほむら「……」
ほむら「……」 チラ
まどか「ひっ……」
ほむら「鹿目まどか」
まどか「な、なに……?」
ほむら「この空気に耐えられないと思うなら、それはあなたが戦いに向いていないという証拠よ。
考えを改めなさい」
まどか「あぅ……」
マミ「……それを決めるのはあなたじゃないわ」
ほむら「ええ。あなたでもないわね」
マミ「……」
マミ(この子……いったい何者なの?)
マミ(この距離で魔法仕掛けの武器を向けられて、微塵の動揺も見せないなんて……)
マミ(隙のない物腰に……それに何より、あの目つき)
マミ(冷たく、暗く……なんの感情も読み取れない。まるで氷のよう)
マミ(いったい何を見続ければこんな目ができるようになるの?)
マミ(とてもじゃないけど、キャリア半年未満とは思えない……)
ほむら「……、フゥ……」
マミ「……」 ピク
ほむら「無駄に争うつもりはないわ。お望み通り、消えてあげる」 クルリ
カツン、カツン、カツン……
マミ「……」
まどか「……」 ホッ…
さやか「……あの、マミさん」
マミ「……」
シュイーン
マミ「ごめんなさい。結局、みっともないところを見せちゃったわね」
まどか「い、いえ。そんな」
さやか「何かあったんですか? 転校生と……」
マミ「……気にしないで」
さやか「いや、でも、」
マミ「何も言わないで」
さやか「……」
マミ「……ごめんなさい。でも、聞かないでほしいの。あまり触れられたいことがらじゃないから」
さやか「……すみません」
マミ「いいのよ。わかってくれれば」
さやか「……」
まどか「……」
マミ「さて――」 クルリ
マミ「それじゃあ、帰りましょうか。送っていくわ」
さやか「……はい」
まどか「……」
QB「……」
ゴポ…
◆
まどか「――殺された?」
QB「うん」
QB「あまり正確な表現じゃないけど、“この僕” の前任者だったと、そう思ってくれていい」
QB「マミのもとで、四年近く、同居する形でずっと一緒に過ごしていた」
まどか「えっと……つまりマミさんは、その人と契約して魔法少女になったの?」
QB「ヒトではないけどね」
まどか「そうなんだ……」
QB「マミとはとても良好な関係を築いていた。――つまり、仲が良かった」
QB「彼女の言葉を借りれば、かけがえのない存在、だそうだよ。
片時もそばを離れたがらなかったし、最後の瞬間まで共にいることを望んでいた」
QB「言葉は悪いけど、依存していた、とすら言えるね」
まどか「……」
QB「それが、暁美ほむらに殺された」
まどか「……!」
QB「マミにとって彼女は、友達の仇というわけだね」
まどか「そっか……だからマミさん、あんなに……」
QB「……」
まどか「で、でもなんで? どうしてほむらちゃん、そんなこと……」
QB「理由はわからない」
まどか「……」
QB「彼女はいきなり攻撃してきたんだ。警告も威嚇も何もなかった。まさに問答無用さ」
QB「まぁ、その後の言動から、だいたいの想像はつくけどね」
まどか「……」
まどか「……つまり、わたし?」
QB「ああ。君を、魔法少女にさせたくない。そういうことだろうね」
まどか「そんな……」
QB「だけど、だからこそ君には早く契約して欲しいと思う。
魔法少女になってしまえば、暁美ほむらも諦めてくれるかも知れない」
まどか「……そうかな? 逆に怒らせちゃうんじゃ……」
QB「なってしまえばこちらのものだよ。まどかなら最強の魔法少女になれるだろうからね」
まどか「……」
QB「……。それに、これはマミのためでもある」
まどか「マミさんの?」
QB「そうさ。友達を失った彼女は、新たな心の支えを求めている。
これには普通の人間よりも、共に戦える魔法少女の方がふさわしいだろう」
まどか「それは……キュゥべえじゃダメなの?」
QB「駄目だね。昨日、はっきりと否定されちゃったよ」
まどか「そっか……」
QB「それらを抜きにしても、ワルプルギスの夜のこともある。
“彼女” を打倒してこの街を守ることができるのは、まどか、君だけなんだ」
まどか「……」
QB「まぁ、まだ時間はある。ゆっくり考えて、願いが決まったらいつでも言ってよ」
555 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/07/24 21:32:11.39 K7Rgyj3So 366/571
以上
まだ終わらないけどもうすぐ終わるかな
あと三話ぐらい
コツ、コツ、コツ…
マミ「……」
シーン…
マミ(ジェムに反応はなし……)
マミ(夕方に美樹さんたちの前で倒した使い魔は、どうやら完全な “はぐれ” だったみたいね)
シューン
マミ「ふぅ……」
――カツン
マミ「……」
マミ「ハァ……またあなたなのね」
ほむら「……」
第十八話 暁美ほむら
ほむら「わかっているの? あなたは無関係の一般人を危険に巻きこんでいる」
マミ「彼女たちはもう知ってしまったのよ。無関係じゃないわ」
ほむら「だとしても、あなたは二人を魔法少女へと誘導している」
マミ「それが面白くない、ってわけ?」
ほむら「ええ、迷惑よ」
ほむら「特に――鹿目まどか」
マミ「ふぅん……そう。あなたも気付いているのね、彼女の持つ素質に」
ほむら「……あの子にだけは、契約させるわけにはいかない」
マミ「あなたの決めることじゃないわ。彼女はキュウべえに選ばれたのよ」
ほむら「あの獣にこそ、誰かを選ぶ権利なんてない」
マミ「……」
マミ「わかってないのは、あなたの方よ」
マミ「権利を持っているのは私たち。彼らはその使い方を教えてくれているだけ」
マミ「あなたもその権利を行使したからこそ、今のあなたになったのでしょう?」
ほむら「……」
マミ「……いえ、あなたは彼らとは無関係なのだったかしら?」
ほむら「……」 ピク
マミ「『キュウべえ』 が言っていたわ。あなたと契約をした覚えはないって」
ほむら「……」
マミ「……」
マミ「ふぅ……」
マミ「なんにしても、完全に無関係な人間なんて一人もいないわ。特に今のこの街にはね」
ほむら「……?」
マミ「“ワルプルギスの夜” ――聞いたことはあるかしら?」
ほむら「――!」
マミ「……知ってるみたいね」
マミ「そう。それがもうすぐこの街に来る。対抗するには、鹿目さんの力が必要なのよ」
ほむら「……させないわ」
マミ「……」
ほむら「あの子には、戦わせない」
マミ「……あなた、何者なの? どうしてそこまで鹿目さんにこだわるの?」
ほむら「……」
マミ「……」
マミ「……まただんまり、か。まぁ、いいわ」
マミ「あなたみたいな他所から来た人にはわからないでしょうけど、私はこの街が大切なの。
何を賭してでも守るつもりよ」
マミ「だけど、他人の命まで捧げようとは思わない」
マミ「鹿目さんのことも守ってみせるわ。だからもう、放っておいて」
ほむら「……」
マミ「ワルプルギスが来るまで、遅くともあと二ヶ月。……実際は、たぶんもっと早い。
死にたくなければ今のうちにこの街を去りなさい」
ほむら「……。いいえ」
マミ「物わかりが悪いのね。見逃してあげると――」
ほむら「そうじゃない」
ほむら「二ヶ月もない。あと三週間よ」
マミ「――……なんですって?」
ほむら「正確には、あと十九日。時刻は夜の七時から九時のあいだ」
マミ「何を……」
ほむら「場所は西側の工業地域。……最初から周囲に人がいないことだけは幸いね」
マミ「何を言っているの? どうしてあなたが、そんなこと」
ほむら「見てきたからよ。この目でね」
マミ「見てきた……?」
ほむら「そうよ。私は――」
ほむら「…………私は、未来から来た」
マミ「……!?」
ほむら「あの獣が私のことを知らないのがその証拠よ。
本来の時間軸では、この時点の私はまだ魔法少女になっていなかったから」
ほむら「私が契約したのは、“ワルプルギスの夜” 襲来の翌朝」
ほむら「瓦礫の山と化した街の中心で、鹿目まどかの遺体のそばに座りこんでいた私の前に、
あいつが現れたの」
マミ「……」
ほむら「まどかは私の友達だった」
マミ「……」 ピク
ほむら「転校してきた私を親身になって世話してくれた、たった一人の友達だったのよ」
マミ「……」
ほむら「私はまどかを守りたい」
マミ「……」
ほむら「ワルプルギスの夜は私が倒す。でも、」
ほむら「あなたも、この街を守りたいのなら――お願い。力を貸して」
マミ「……」
ほむら「……」
マミ「……そう」
マミ「あなたにも大切に思う人がいるのね……」
ほむら「……! 信じてくれるの?」
マミ「そんなわけないでしょう」
シュルルルル――――ギシッ!!
ほむら「なっ……きゃあっ!?」
マミ「……フン」
ほむら「な、何を……!」
マミ「何を、ですって? 呆れたわ……。今みたいな話で本当に騙せると思ったの?
まったく、舐められたものね」
ほむら「くっ……! 嘘なんか……!」 ギッ ギシッ
マミ「無駄よ。その鎖模様のリボンは拘束に特化している。素手なんかで千切れやしないわ」
ほむら「っ……」
マミ「……まぁ、辻褄はあっているわね。あの子があなたを知らなかったことも、
あなたが私たちのことを知っているふうだったことも、今の話なら説明はつくわ」
マミ「でもやっぱり、デタラメよ」
ほむら「嘘じゃないわ! 本当よ!」
マミ「ならなぜ鹿目さんの契約を阻むの? 守りたいなら自衛のための力を与えるべきでしょう?」
ほむら「そ、それは……」
マミ「ほら、答えられない」
マミ「私の考えでは――あなたは、『キュゥべえ』 ではない他の何かから力を得た。
そして鹿目さんもそちらに引き込んで、彼女の力を自分たちのものにするつもりでいる」
マミ「と、そんなところじゃないかしら?」
ほむら「違う! 他の何かなんていないわ!」
マミ「なら、理由を言ってみなさい」
ほむら「だからっ、それは……!」
マミ「……」
ほむら「くっ……!」
マミ「フン……」
ほむら「……ま、」
マミ「『ま』?」
ほむら「まどかは…………彼女の力は、大きすぎるのよ。その魔力は人の身に収まらない。
解き放っては……ワルプルギスの夜と出会わせてしまっては、いけないの」
マミ「……。出会わせたら、どうなるっていうの?」
ほむら「……ッ」 ギリ…
ほむら「そうしたら、あの子は……………………魔女に、なってしまう」
マミ「……」
マミ「魔女に? 鹿目さんが?」
ほむら「そ、そうよ……」
マミ「……」
ほむら「す、全ての魔法少女がそうなるわけじゃないわ。まどかの強すぎる魔力が、特別で。
だからそれをさせないために、私は――」
マミ「ふふっ……」
ほむら「――!?」
マミ「何を言い出すかと思えば……語るに落ちたわね」
ほむら「え……?」
マミ「あなた、さっき言ったじゃない。彼女の亡骸のそばに座り込んでいた、って」
ほむら「……ッ!」
マミ「鹿目さんは死ぬの? それとも魔女になるの? どっち?」
ほむら「それは――どちらもありうるの! 私が過去に戻ったのは今回が初めてじゃない!
死んでしまう未来もあれば、魔女になってしまう未来もあるの!」
マミ「またそんな都合のいい……」
ほむら「本当なのよっ……!」
マミ「……だとしたら、またおかしなことになるわよ?」
ほむら「え……?」
マミ「過去に戻るのが初めてじゃないって、それじゃあ今回は何度目なの?」
ほむら「……じゅ、十二回目よ」
マミ「それだけ繰り返した中で、鹿目さんを街の外に逃がそうとは考えなかったの?
出現日時も場所もわかっているのに?」
ほむら「……やったわ、それも。まどかだけじゃなく、彼女の家族も逃がした」
マミ「ふぅん」
ほむら「だけど、ワルプルギスの夜に破壊しつくされた街のために、結局契約を……」
マミ「……」
ほむら「……」
マミ「……それで?」
ほむら「それで、って……」
マミ「ワルプルギスの夜が去ったあとなら契約して魔法少女になっても問題ないはずよ。
“それ” と出会うからまずいのでしょう?」
ほむら「あ……」
マミ「ハァ……」
ほむら「――っ!」
ほむら「……お願いっ、信じて……!」
マミ「信じられると思う?」
マミ「……そもそもね、私を納得させられるような事情があなたにあるなんてこと、
私は最初から信じるつもりはないの」
マミ「特に、大切な誰かを守りたいなんて……」
マミ「そんな想いを抱えている人間に、あんなことができるはずないじゃない……!」
ほむら「……? 私が何をしたっていうの?」
マミ「……」 ピク
キィーン…
ほむら「ぐぅうっ!?」 ギリギリギリッ
マミ「『何をした』?」
マミ「『何をした』、ですって?」 キィーン…
ほむら「うぁあああっ!!」 ギリギリギリギリッ
. . ..
マミ「驚いたわ……嘘つきなだけじゃなく、そこまで人でなしだったなんて」
ほむら「う、ぅう……!」
マミ「それとも、あの子を――キュウべえを殺したのは自分じゃないとでも言うつもり?」
ほむら「キュゥ……べえ……?」
マミ「……」
ほむら「何を言っているの……? アレはまだ、生きて――」
マミ「“アレ” はあの子じゃない。別の個体よ」
ほむら「!? あなた、あいつらの在り方を知って……?」
マミ「馬鹿にしないで。当然よ」
ほむら「なら、わかるでしょう? 一匹潰したぐらいでは――ぐっ!?」
ほむら「うぁあああああああああああっ!!」 ギリギリギリギリッ
マミ「……」
マミ「……ふっ」
マミ「ふふ、ふ、ふふふふふふふふふふふ、ふ……」
シュイーン――キラッ!
マミ「潰した?! 潰したですって!?」 ジャキッ!!
ほむら「!?」
マミ「よくもそんな言い方ができるわね! あの子を何だと思っているの!?」
マミ「人間じゃなくても、在りようが違っても、ちゃんと心を持った生き物なのよ!?」
マミ「それを、どうして……どうしてそんな……っ!」
ほむら「ち、違うわ!」
ほむら「アレに心なんてない! あなたは騙されてるのよ!」
マミ「――ッ!」
マミ「黙りなさい!!」
シュルルル――パシッ!!
ほむら「むぐっ!?」
マミ「言うに事欠いて……」
マミ「あの子の命を奪っただけでは飽き足らず、そんな侮辱までするなんて……」
マミ「あの子がどれだけ優しかったか! あの子がいてくれて、私がどれだけ救われたか!」
マミ「それを知りもしないで……っ!!」
ほむら「ンンッ! ンーッ!」 ギリギリギリ…
マミ「――ハァ、ハァ、ハァ…………」
ほむら「ッ! ……ーッ!」
マミ「……」
マミ「……」
マミ「……」
ほむら「ッ……、…………?」
マミ「……あなた、似てるわ」
ほむら「? ……?」
マミ「私が初めて倒した、あの “子供部屋の魔女” に。今のあなた、そっくりよ」
ほむら「……」
マミ「あの魔女も、耳障りな騒音を撒き散らして、キュウべえを傷付けてくれたから、
そうやって口を塞いでやったのよ」
マミ「……」
マミ「そう…………あなた、魔女だわ」
ほむら「――!?」
マミ「身勝手な理由で人を傷つけて、惑わして、貶めて……」
マミ「暁美さん。あなた、魔女そのものよ」 シュンッ…
ほむら「……ッ」
ほむら(? ……マスケットを、消した?)
マミ「――レゴ〈拘束〉」
シュルルルル――パシッ
ほむら「ッ!?」
マミ「……どうしてまた別のリボンを巻くんだ、って思った?」
マミ「『未来から来た』 なら知らないでしょうね……このリボンは私のかつての武器よ。
銃が使えるようになるまでは、これで魔女と戦っていたの」
マミ「〈ナストロ・ブルカーノ〉……日本語にすれば、火山帯、ってところかしらね」
マミ「名前の通り、爆発するわ」
ほむら「!!?」
マミ「あの魔女も、これで顔から焼き殺してあげたわ」
マミ「危ないから封印してたんだけどね……今なら、また使えそうな気がする」
マミ「そういえば……本来そういうものなのよね、魔女狩りって」
マミ「魔女は磔にして焼き殺すのが、古来からの……そう。正しいやり方」
マミ「……そうよ。これは正しいことなのよ」
マミ「魔女は殺す……殺さなきゃいけない……」
マミ「魔女……私たちの、敵……」
マミ「キュウべえの……――カタキ!」
ほむら「……っ!!」
ほむら(まどか……ッ!!)
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……、……?」
ほむら(……生きて、る?)
マミ「……」
マミ「……うっ」
マミ「う、うぅぅ……ううっ……」 ――ペタン
…パラッ
ほむら「ひゃっ?」 ドサッ
シュウゥゥゥ…
ほむら「……え?」
マミ「う……ぅ、う……」
マミ「……できるわけ、ないじゃない……」
マミ「あの子は……キュウべえは、言ったのよ! 魔法少女には生きていて欲しいって!」
マミ「魔女を殺すことなんかより、ただ生きていてくれればそれでいいって!」
ほむら「な……っ!?」
マミ「それなのに! それなのに……っ!」
マミ「……殺せるわけ……ないじゃない…………」
ほむら(あいつ……!) ギリ…
マミ「うっ、ううっ、うっ、うぅぅ、うぅ……」
ほむら「……」
ほむら「……巴マミ」
マミ「……」 ピク
マミ「何も言わないで」
ほむら「……」
マミ「……」
ほむら「……」
マミ「……お願い。この街から出て行って」
ほむら「……」
マミ「……お願いよ」
マミ「……あなたがいるって思うと、私、この街を守れない……」
ほむら「……」
◆
ドアを開け、閉め、鍵をかける。
ただいま、と呟いて、返事がないことに気付いて、我に返った。
帰ってきていた。
家に、いつの間にか。
マミ「……」
廊下を歩いて、リビングに入って、そこで身体から力が抜けた。
ラグの上に横たわる。
何もしたくない。
何も考えたくない。
マミ「……」
ふと、視線が定まる。
サイドボードが目に入る。ガラスの戸棚が目に入る。仕舞われているモノが目に入る。
飴色の瓶。
毎年お父さんの誕生日に、数滴ずつ紅茶に入れて飲んでいる、ブランデー。
それが、目に入る。
マミ「……」
マミ「……………………」
614 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/02 21:45:14.80 M2YVSSjwo 389/571
以上
ってかそーいや12話に出した魔女の私的図鑑を忘れてたなぁ
まぁいいや
だいたい描写した通りだし
633 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/07 15:00:37.32 jWnBZRE2o 390/571
投下
イッツァクライマックス
長めなんで途中で休憩とります
三日が経過した。
私は日常を送っている。
つまり、朝起きて、学校に行って、放課後はパトロール。
四年前から始まった魔法少女としての日常を、一人でこなしている。
一人で。
鹿目さんや美樹さんとは、会えば話ぐらいはするけれど、行動を共にはしていない。
魔法少女体験コースは終了した。
今の時点で教えられることはもうないから。
これ以上のことがらは、彼女たちが契約してからでないとあまり意味がない。
けれど――私はそれまで、もつだろうか。
マミ「……」
あの日以来、急速に濁りつつあるジェムを眺めながら、クッキーをかじり、紅茶をすする。
美味しくない。
焼き加減も、蒸らし時間も温度も完璧。
なのに以前ほど美味しくない。
そのことが、悲しくて、だけど同じぐらい安心できた。
呼び鈴が鳴ったのは、そんなときだった。
第十九話 お菓子の魔女 前編
走る。
オレンジ色の街並みを、ひた走る。
マミ「病院か……最悪ね」
まどか「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」
マミ「『キュゥべえ』 にも、処理はできなかったのね?」
まどか「ハァッ、ハァッ……は、はい……」
マミ「……」
ダメだ。
つい苛立ってしまった。鹿目さんの、足と受け答えの遅さに。
それは仕方のないことなのに。
病院の敷地内に、孵化しかけのグリフシードが刺さっていた。
友達のお見舞いに行った際に見つけた。
今は美樹さんが、『キュゥべえ』 と共に見張っている。
玄関先でそう説明してくれたとき、彼女はすでに息も絶え絶えだった。
病院から私の部屋まで、よほど急いでくれたのだろう。
そして、今も走っている。
携帯番号ぐらい交換しておくべきだった。どうにも私はその手のことに気が回らない。
次からは気をつけるようにしよう。
次があれば、ね。今はそれよりも――
マミ「――……」
ほんの一瞬、ジェムに意識を集中させる。身体能力強化――完了。
マミ「鹿目さん。手を」
まどか「え? あ、はい……――きゃあっ!?」
伸ばされた腕を掴んで、引っぱり上げて、そのまま横抱きに抱きかかえる。
まどか「ま、マミさ――」
マミ「喋らないで。舌を噛むわよ」
まどか「あぅ……///」
いわゆるお姫様だっこの体勢。
できるだけ裏道を通るつもりではあるけれど、それでも多少は人に見られるだろう。
しかし恥ずかしいのは我慢してもらう。
マミ「首に手をまわして。しっかりつかまって」
だってそれこそ、仕方のないことだから。
◆
マミ「付いたわ。もう降りて大丈夫よ」
まどか「あ……はい……」
マミ「……ちょっと無茶しちゃったかしら?」
まどか「い、いえ。大丈夫です」 フルフル
マミ「そう、ごめんなさいね。――で、場所は?」
まどか「あ、あっちです。裏手の、自転車置き場のある方」
マミ「オッケー。行くわよ」
まどか「はいっ」
マミ「ここね」
鹿目さんの言葉に従い裏手に回ると、駐輪場に面した壁に、既に結界の入り口が
出来上がっていた。
正面に立ち、テレパシーで呼び掛ける。
マミ《『キュゥべえ』、状況は?》
QB《まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ》
想像していたよりも呑気そうな声が返ってきた。
安心――とは別の感情が浮かびかけるが、今はそれどころじゃない。押し込める。
まどか《さやかちゃん、大丈夫?》
さやか《平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう》
QB《むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がマズい。
急がなくていいから、なるべく静かに来てくれるかい?》
マミ《わかったわ》
確認はもう十分だ。ひとまず念話を切る。
まどか「よかった、間に合って……」
マミ「無茶し過ぎ、――って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。
これなら魔女を取り逃がす心配もないし」
マミ「それじゃあ……、……」
行きましょうか、と言いかけて、気付いた。
考えてみれば、鹿目さんが付いて来る必要はないのだ。
でも、今さら来るななんて言っても納得してくれるかどうか。
だったらどうして連れて来たのかと思われるだろう。
そう、ここまで連れてくる必要も、なかった。家で待っていてもらえばよかった。
マミ「……」
まぁ、魔女も生まれたてのものなら危険もそれほど大きくだろうしないし……それに、
『キュゥべえ』の言っていたこともある。
まどか「……マミさん?」
マミ「なんでもないわ。行きましょう」
誰かを守りながら戦うという経験は、きっと私の役に立つ。
彼も、決して正しくないわけじゃない。
まだ心が未熟で、物事の善し悪しや人の気持ちというものを上手く理解できないだけで。
だって、あの子と志を同じくする仲間なんだから。
結界の内部は、甘い匂いで満ちていた。
まどか「……これ、全部お菓子ですか?」
マミ「そのようね」
キャンディー、ドーナツ、チョコレート。イチゴのケーキにクリームサンドのビスケット。
色とりどりのさまざまなお菓子が薄暗い空間を埋め尽くしている。
どれもでたらめに大きい。匂いどころか見た目だけで胸焼けしそうだ。
まどか「なんで、こんな……」
マミ「さぁ、ね」
また、ところどころに医薬品の類も混ざっている。
向こうで山になっているのは、ジェリービーンズだろうか。それとも薬のカプセルだろうか。
難病の子供でも入院しているのかも知れない。
その辛さ、恨みつらみが寄り集まって魔女が生まれた、といったところだろう。
そういえば私も、入院中はお菓子なんかろくに食べられなかったっけ。
マミ「……。あまり考えない方がいいわよ」
まどか「え?」
マミ「魔女の考えることなんか理解できるわけないし……仮に理解できたとしても、辛いだけよ」
マミ「どのみち、倒さなくちゃいけないんだから」
まどか「……」
気味悪げ、また物珍しげだった面差しが、憂いを帯びる。
やっぱり彼女は向いていないのかも知れない。
優しすぎる。
マミ「ねぇ、鹿目さん――」
言いながら振り返って、その言葉と動きが途中で止まる。
顔から表情が消えるのが自分でわかった。
まどか「え……?」
鹿目さんも同じように振り返って、同じように固まった。
小さな肩がギクリと震えるのが見えた。
ほむら「……」
まどか「ほむら、ちゃん」
暁美ほむら。
頭の中で、何かが切り替わったような、気がした。
マミ「言ったはずよね。街から出て行ってって」
まぁ、別に期待はしていなかった。
彼女の家族構成は知らないけれど、例えば私と同じように一人暮らしだったとしても、
中学生がそうやすやすと棲家を変えられるとは思っていない。
ほむら「ここの魔女からは手を引いて。危険なの」
マミ「……」
だけど、私の前に姿を現すというなら話は別だ。
マミ「ここの魔女というと――いま、あなたの後ろにいるヤツかしら?」
ほむら「え……」
パンッ
軽い発砲音。
続いて、
ほむら「ぅ――?」
ドサ、と、暁美ほむらが倒れ込む。その背中にさらに一発。
ほむら「ぅあっ!? な――に、を……」
まどか「マミさんっ!?」
二人分の驚愕が向けられる。
動揺は特にしなかった。
マミ「非致死性の麻痺弾よ。死にはしないわ」
他にも炸裂弾や煙幕弾など、弾丸のバリエーションはそれなりにある。
これはグリフシードを巡っての争いや模擬戦など、対人用に準備しておいたものだ。
それなりに集中が必要なので佐倉さんのときは使えなかったけれど。
しかし、さっきの妙な感覚のおかげか。
まだ変身すらしていないのに繰り出すことができた。
まどか「だ、だからって……」
鹿目さんがうめく。
だけど悪いけど、今は後回し。
マミ「油断したわね、暁美さん」
ほむら「……」
マミ「撃たれないと思った? 前回殺されなかったからって」
ほむら「っ……」
睨まれる。
が、まったく迫力というものを感じない。
マミ「あなた、弱いわ」
ほむら「……ッ!」
マミ「まったく、とんだ見掛け倒しよ。ただ目つきが悪いだけじゃない」
マミ「その程度の実力で、よくもワルプルギスの夜を倒すなんて吠えられたものね」
ほむら「くっ……」 ギリ
背を向ける。
マミ「寝てなさい。帰りに中和してあげるわ」
使い魔の行き交う結界の中で、それまで生きていられれば、ね。
マミ「それじゃ――行きましょうか、鹿目さん」
まどか「……。はい……」
ほむら「待、ち……なさい……!」
そんな必要はない。
ほむら「待ち……おねがい、待って……!」
ほむら「ここの、魔女は……」
ほむら「……これ……までの……ものとは、わけ、が……」
マミ「……」
マミ「……」
声が途絶えた。麻痺が喉まで回ったか。
まったく、どこまでも馬鹿にしてくれる。
私が魔女相手に油断したことなんて、一度だってありはしないというのに。
奥へと進む。
マミ「……」
まどか「……」
沈黙。
鹿目さんは何も言わない。
私も、使い魔をやり過ごすための指示を出す以外には、何も言わない。
チョコプレッツェルの林を抜けて、氷砂糖のドアをくぐる。
ずらりと並んだベットに寝転ぶジンジャーブレッドマンを横目に見ながら、さらに奥へ。
マミ「……」
まどか「……」
そのままずっと続くかと思われた沈黙は、少しだけ意外なことに、
鹿目さんの方から破られた。
まどか「あの……マミさん」
マミ「……。何かしら」
まどか「えっと、その……」
マミ「……」
ため息をひとつ。
マミ「暁美さんのことなら、何も言わないで欲しいわ」
まどか「あ……」
マミ「あなたの前で暴れてしまったことだけは少し反省しているけど、やったことそのものを
顧みるつもりはないの」
マミ「既に同じことを一度やっているし、彼女が私の前に現れるなら、何度だってやってやるわ」
まどか「……」
再度の沈黙。
扉をくぐる。
板チョコレートでできていたらしく、少しべとついた。ハンカチを取り出してぬぐう。
まどか「そうじゃなくて……いえ、それもあるんですけど……」
マミ「……なに?」
まどか「その……」
まどか「わたし、キュゥべえから聞いたんです。キュゥべえの前の子が、ほむらちゃんに、その……」
マミ「……」
余計なことを。
デリカシーのないところはあの子と変わらないのね。
マミ「なら、わかるでしょう?」
私がどれだけあの女を憎んでいるか。
まどか「いえ、あの、でも」
マミ「……鹿目さん」
足を止める。
振り返らない。
マミ「何か言いたいのなら、できるだけ言葉を選んでちょうだいね?」
マミ「私……あなたに八つ当たりみたいなこと、したくないの」
まどか「……」
振り返らない。
深呼吸の音が聞こえた。
まどか「……マミさん」
マミ「なに」
まどか「わたし、キュゥべえにもう一つ聞いたんです」
マミ「何を?」
まどか「わたしの願いで、マミさんのそばにいた子を生き返らせることはできるの? って」
マミ「――っ!!?」
振り返る。
目が合った。
それは真剣な眼差しだった。
まどか「できるそうです。……わたしが心から願えれば」
目を見開く。
言葉が、頭の中で繰り返される。
生き返る。
生き返らせる。
戻ってくる。
つまり、
あの子に、キュウべえに、もう一度、逢える……?
マミ「ほ……」
マミ「ほんとう、に?」
まどか「はい」
マミ「……」
まどか「どう、ですか?」
マミ「……ッ!」
マミ「ま――待って。待って、待って待って。だめ。だめよ、そんなの」
まどか「え……?」
マミ「それは、もちろん――でも、だめよ! そんなことにあなたの願いを使うなんて!」
まどか「『そんなこと』 なんかじゃないです」
マミ「っ……!」
マミ「ま、待ってってば!」
マミ「私、言ったわよね。人のために願いを使うなら、自分の望みをはっきりさせなさいって」
マミ「“それ” を願って、あなたはどうするの? 何を得るの?」
まどか「わたしは……」
まどか「願いごとについて、わたしなりにいろいろと考えてみたんです」
まどか「マミさんには、考えが甘いって怒られるかも知れないんですけど……」
まどか「わたしって、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて」
まどか「きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって」
まどか「それがイヤでしょうがなかったんです」
まどか「でもマミさんと会って、誰かを助けるために戦ってるの、見せてもらって」
まどか「同じことが、わたしにもできるかも知れないって言われて」
まどか「何よりも嬉しかったのはそのことで」
まどか「だからわたし、魔法少女になれたら、それで願いごとは叶っちゃうんです」
まどか「こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら」
まどか「それが、一番の夢だから」
マミ「……」
私の “忠告” どおり、慎重に言葉を選んでくれたのだろう。
たどたどしく語られたその願いは、
『――私は、生きたい。生きて、その命を正しいことに使いたい』
私の祈りに、どこか似ていた。
似ているようで、全く別の、はるかに貴い祈りにも思えた。
マミ「それは……大変な願いよ」
マミ「ええ、甘い考えだわ。私も同じようなことを考えたけど、無理だった。
ぜんぜん上手くできなくて、何度も失敗して、何人もの人を目の前で魔女に殺されて……」
マミ「もう、どれだけの挫折を味わったのか、思い出せない」
まどか「でも、それでもマミさん、がんばってくれてるじゃないですか」
まどか「そんなマミさんに、わたし、憧れてるんです」
マミ「憧れるほどのものじゃないわ……」
マミ「鹿目さん、あなたも見たでしょう? さっきの私を」
マミ「ううん、あなたが見てたからあの程度で済んだの。
あなたがいなかったら、私……彼女に何をしてたかわからない」
まどか「それは……」
鹿目さんが言葉に詰まる。
まどか「……そう、ですね。ああいうのは、イヤです。見たくないです」
当然だ。
――と、そう思ったのだけれど。
まどか「でも――わたしの祈りがキュゥべえに届いたら、もうあんなことする必要なくなりますよね?」
マミ「……!」
まどか「そうなったら……ほむらちゃんのこと、許してあげられませんか?」
マミ「……」
この子は。
まどか「えっと、その。ほむらちゃんは……言ってることは、よくわからないこともあるし、
やったことはもちろん悪いことですけど、悪い子じゃないと思うんです」
まどか「なんて言ったらいいか、わからないんですけど……すっごく一生懸命っていうか」
まどか「だからたぶん、どうしてもそうしなきゃいけない理由とか、あったかも……とか」
まどか「い、いえ。それでももちろんダメなんですけど、そこは、わたしが。願いで」
この子はどこまで、優しいのか。
マミ「……鹿目さん」
まどか「あ、は、はい」
マミ「……それは、わからないわ。彼女を許せるかどうかは」
まどか「マミさん……」
マミ「わからないの。あの子が大切っだって気持ちが、いなくなった今でも消えないように……
暁美さんに対するこの嫌な感情も、そう簡単になくなってくれるとは思えないの」
まどか「……」
マミ「……、でも」
まどか「え?」
マミ「努力は、してみるわ」
まどか「マミさん……!」
私の答えに、鹿目さんは澄んだ笑顔を浮かべてくれた。
こちらの心まで暖かくなるような、素敵な笑顔だった。
マミ「……」
もしかしたら。
もしかしたら、暁美さんの言っていたことは本当なのかも知れない。
他はともかく、鹿目さんを守りたいという部分だけは、本当なのかも知れない。
マミ「……でもね、鹿目さん」
まどか「なんですか?」
マミ「やっぱり、あなた自身にも見返りは必要だと思うの」
まどか「あー……」
すると、困ったような顔。
マミ「私から何かお礼を返してもいいけど……もらうものが大きすぎて、何も返せないわ」
まどか「いえ、いいんです」
マミ「でも……」
まどか「だってお礼をするのはこっちですから」
マミ「え?」
まどか「マミさんは四年間も、ずっとこの街を魔女から守ってくれてたんですよね?」
マミ「え、ええ……」
まどか「わたし、そんな人がいるなんてぜんぜん気付きませんでしたし、思いもしませんでした。
でも、確かにマミさんやその子がいたから、わたしの今はあるんだと思うんです」
まどか「もし二人がいなかったら、わたしや、パパやママや……弟とか、さやかちゃんに仁美ちゃん、
そういうわたしの周りの人たちが今みたいに無事じゃなかったかも知れませんから」
まどか「だから、そのお礼です」
マミ「……鹿目さん……」
なんてことだろう。
なんて子なんだろう。
涙が出そうになる。
ソウルジェムの濁りすら浄化された気分だ。
お礼、と差し出された手に手を伸ばし――
《――マミ!》
――たところに、『キュゥべえ』 の念話が割り込んだ。
QB《グリフシードが動き始めた! 孵化が始まる!》
マミ「……まったく、無神経なところもそっくりなんだから」
QB《何を言ってるんだい? いいから急いで!》
マミ「オッケー、わかったわ」
指輪をジェムへ。
魔力を練り、想起する。『悪い魔女と戦う、戦士としての自分の姿』。
ほとばしった金色の光りが全身を包み込み、制服がどこかへと消えうせる。
代わって、ブーツにスカート、ドレスシャツにコルセット、
指抜きの長手袋と、羽付き帽子が次々と現れ、身に纏われる。
マミ「今日という今日は速攻で片付ける!」
同時に、結界内の空気が震えだす。
私の魔力を察知した使い魔たちが一斉に動き始めたのだろう。
目を向けると、行く手から十数匹の群れが迫ってきていた。
銃を召喚。様子見の第一発。
弾丸は群れの真ん中を貫き、射線上にいた何匹かを撃ち抜いた。
よし。
ここの使い魔も例にたがわず耐久性が低い。これなら十分いける。
マミ「行くわよ、鹿目さん」
まどか「は――はい!」
伸ばされた手をとり走り出す。
胎動から孵化までは、だいたい二分ぐらい。
普通ならまず間に合わない。よくてギリギリだ。
ましてや一般人である鹿目さんを連れているのだし。
でも、それがどうした。
今の私は普通じゃない。
絶対に間に合わせてみせる。
マミ「――跳ぶわ」
まどか「あ、え?」
返事はともかく、握り返してくる感触があった。
それを信じて、跳躍。
まどか「ひゃっ――」
空中で体勢を組み替え、小脇に抱える形に持っていく。
敵は前方斜め下に十一体。
マミ「――整列〈アテスタ〉!」
呼び出すマスケットは……五つ。
狙いを定め、それぞれをそれぞれのタイミングで、撃つ――撃つ、撃つ、撃つ、撃つ!
『ピキャッ!』『キーッ!?』『ジャッ!』『キュエッ!!』
悲鳴が重なる。
そうして再び着地したときにはもう、敵は残らずチリと化していた。
一発の射線上に数匹が重なるよう狙った結果だ。
『ミ゙ッ!!』
『ヂギッ!』
おっと、伏兵。
左右と正面から一匹ずつ、三匹。
空いている左手に召喚した銃で、やや速い右の一匹をまず射抜く。
その反動を利用して、正面と隣の二匹に銃身で打撃を食らわせる。
今度こそ、一段落か。
マミ「……」
周囲を見渡す。
よし。近くにはいない。
まどか「あ、あの……」
と――鹿目さんの声。
目を向けると、右の小脇に身体を抱えられながら、恥ずかしそうに身を縮こまらせて
こちらを見上げてきていた。
マミ「あら、ごめんなさい」
まどか「あぅ……」
鹿目さんを降ろし、再び手を引いて走り出す。
次々に湧いてくる使い魔をやはり一度に数匹ずつ射抜き、
撃ち終わった銃は打撃武器として利用する。
バラけている標的はリボンでひとまとめに縛り上げ、大口径で一掃する。
鹿目さんのことも忘れない。
ときには背後にかばい、ときには物陰に隠し、ときにはリボンで吊って空中に逃がす。
決して無理はさせることなく、しかし余計な動きもさせないように。
撃って、打って、縛って、投げて。
完成間近のパズルのように、面白いほど動作が繋がる。
そしてここの魔女を倒せば、そのときは――
変身のときに確認したが、ジェムの濁りはそのままだった。
それはそうだろう。
気分一つでどうにかなるなら苦労はしない。
だから無駄なく魔力を振るう。
最小の労力で最大の効果を叩き出す。
効率性と合理性。
それは、あの子が最も大事にしていたこと。
賛成しきれない部分もあったし、そもそも口に出して説いてくることもなかったけれど、
その無言の教えは私の中で確かに貯えられて、生きている。
ああ。
体が軽い。
こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めてだ。
仲間ができる。
街を守れる。
あの子が、帰ってくる。
だから――もう、何も怖くない。
気付けば、最後の扉はもう目の前。
ここまででかかったのは100秒と少し。魔力の残りも、きっとギリギリなんとかなる。
マミ「鹿目さん、大丈夫?」
まどか「は、はいっ」
マミ「よし」
扉を、開く。
さやか「マミさん! まどか!」
まどか「さやかちゃん!」
マミ「二人とも、お待たせ」
QB「気をつけて! 出てくるよ!」
『――……』
QB「……。これは、また」
マミ「ずいぶんと極端なサイズね」
敵を見上げて、思わずつぶやく。
まぁ、どんな相手だろうが関係ない。
マミ「せっかくのところ悪いけど、一気に決めさせて――」
マスケットを召喚。
まずは胴体に牽制の一発。
マミ「……もらうわよ!」
同時に跳躍し、距離を詰める。反撃の暇なんか与えない。
掃射でもって足場を壊し、バランスを崩したところに遠心力を乗せたフルスイング。
壁に叩きつけ、休むことなくさらに銃撃。一発。二発。三発。
『――……』
ここまで抵抗らしい抵抗はない。しかし油断も容赦もしない。
地に落ち、倒れ込んだその頭部に、銃口を押し付けての零距離射撃。
撃ちこんだ弾丸をリボンに戻し、その胴体に巻きつけ、持ち上げる。
さやか「やったぁ!」
マミ「ふふっ」
歓声を挙げる美樹さんに微笑んで返す余裕すらあった。
縛り上げた敵を見上げる。
ぐったりと動かないけれど、まだ生きている。結界が消えないということはそういうことだ。
マミ「――再装填〈リ・カーリカ〉」
手の中や周囲の撃ち終えたマスケットもリボンに戻し、ひとまとめにして再び束ね上げる。
出来上がるのは長広口径。
私の、至高の一撃。
マミ「ティロ……フィナーレ!!」
放たれた弾丸は、狙いをたがわず、敵の胴体のど真ん中を貫いた。
よし、これで……
さやか「――マミさん!」
マミ「え……?」
671 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/07 15:42:40.12 jWnBZRE2o 426/571
はい休憩
675 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/07 16:03:54.38 P5Xvp4Zmo 427/571なんちゅうとこでアイキャッチ仕込んでくれるんや……
なんちゅうとこで……乙
677 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/07 16:38:21.23 jWnBZRE2o 428/571
僕は途中で休憩をとるって、きちんと言ったはずだよ?
そのタイミングについては、説明を省略したけれど
んじゃ再開
◆
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……、ん……?」
ほむら「――!?」
ほむら「これは……」
◆
声に、振り返ったときにはもう。
目の前まで迫っていた。
がば――と、抱きしめられる。
マミ「み……美樹さん?」
さやか「すごい! すごいよマミさん!」
. . . .
さやか「あんな大きいのを一方的にやっつけちゃうなんて!」
さやか「あたし、あたし……! 見た瞬間、ダメかと思っちゃったよぉ……」
マミ「……」
さやか「ありがとう、マミさん……恭す――病院を守ってくれて、本当にありがとう……!」
マミ「美樹さん……」
涙目になってはしゃぐ彼女を、頭をそっと撫でてなだめる。
. .
確かに今の魔獣は、かなり大きかった。
病院だけあって苦しんでいる人や弱気になっている人が多いのだろう。
通常の倍以上という、極端なサイズになっていた。
平均か、少し小さめのものしか見たことのないこの子では、絶望してしまうのも無理はない。
マミ「……」
マミ「……?」
ふと、周囲を見渡してみる。
何もない。
何の変哲もない、病院裏の駐輪場だ。風が柔らかくそよいでいる。
結界はもちろん消えている。
それなのに、なんだろう。
違和感がある。
マミ「……ねぇ、美樹さん」
さやか「ん、なんですかマミさん?」
マミ「えっと…………誰か、もう一人いなかったかしら」
そんな気が、したのだけれど。
さやか「もうひとり?」
美樹さんは首をかしげる。
さやか「いませんよ、そんなの」
さやか「あたしは今日は一人です。こっち絡みに仁美を巻き込むわけにはいかないし……
ってゆーか、ここに来るときはたいてい一人なんで」
一人。
私も彼女も、それぞれ一人。
だとするなら。
マミ「私……どうやって、ここに……?」
さやか「はい?」
マミ「……」
さやか「あたしが電話で呼んだから、来てくれたんですよね?」
マミ「……」
そう、か。
いつだったかの教訓を生かして、出会ったその日に番号を交換したんだった。
さやか「あの、マミさん?」
マミ「……。ごめんなさい、私の勘違いだったわ」
マミ「そうよね。私とあなたと、二人だけだったわよね……」
QB「僕もいるけどね」
足元から、そんな声。
マミ「……」
一瞬だけ視線を落として、すぐに逸らした。
何故だか、逸らしてしまった。
QB「何の話だか知らないけど、そんなことよりも、早くソウルジェムを浄化した方がいい。
かなり濁っているじゃないか」
マミ「……」
言われてみれば。
なんだか酷く消耗しているような気がする。魔力はむしろ節約気味に使ったはずなのに。
マミ「えぇ……そうね」
ジェムの穢れを取り払うもの。グリフシードは、すぐそこの地面に落ちている。
拾うために、腰を落とし、身をかがめた。そのとき。
柔らかな風がほほを撫でた。
同時に、何かが鼻をくすぐった。
マミ「……」
ほんのりと甘い、やや癖のある香り。
元をたどって、首を回した。
マミ「……」
マミ「……」
マミ「……」
QB「……。どうしたんだい、マミ? そんなにジッと見て」
マミ「……香りが……」
QB「香り?」
マミ「シナモンの、香りがするわ」
QB「あぁ、そりゃ、さっき食べたばかりだからね」
マミ「……食べた?」
QB「……。マミ、本当にどうしたんだい?」
. . . . ... . ... . . . .. . .. . . . .. . ... . . .
QB「君が焼いてくれたクッキーだよ。さっきまで二人で食べてたじゃないか」
マミ「…………!!」
マミ「……」
マミ「……キュウべえ……?」
QB「うん。なんだい?」
マミ「あなた、『キュウべえ』 よね?」
QB「……。見ればわかるだろう? 四年近くも一緒にいるのに、何を言っているんだい?」
マミ「キュウべえ……」
QB「え? ちょっと」
QB「グリフシードはそっちだよ。僕を抱き上げてどうしようっていうんだい」
マミ「キュウべえ……!」
QB「ま、マミ……苦し……」
マミ「あぁ……キュウべえ……キュウべえだわ……」
QB「……」
キュウべえが、そしてたぶん美樹さんも、困っている。
私自身も困惑している。
この行動は何なのか。この感情はどこから来たものなのか。
わからないけど、だけど。
今はこうしていたい気分だった。
マミ「キュウべえ……」
懐かしい。
そんなはずはないのに、何故だかそう感じるこの抱き心地。
今は一秒でも長く味わっていたかった。
QB「……」
QB「わけがわからない……」
686 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/07 16:48:14.74 jWnBZRE2o 437/571
以上
ふー、二番目に書きたかったシーンもこれで完了
何が起こったのかは、まぁ、わかってもらえると思います
ってゆーかアレだね
今回が実質的な最終回ですね
あとは「後編」でほむらとの決着を、「最終話」でその後のマミさんを描いて完結です
八月中に終わるかどうか、って感じ
マミ「キュウべえ……」 スリスリ
QB「……」
QB「……さやか」
さやか「……え? あ、うん。なに?」
QB「どうやらマミは、記憶の混濁を起こしてしまっているようだ。ちょっと危険な状態だよ」
さやか「その言い方もどうかと思うけど……」
QB「他にどう言えっていうんだい。とにかくこのままじゃ危ない。君がジェムを浄化してくれ」
さやか「あ、あたしが?」
QB「そこのグリフシードを拾って、マミの髪留めに当ててくれるだけでいい。危険はないよ」
さやか「う、うん。わかった」
第二十話 病院の少女 後編
さやか「よいしょ……キューブもまたでっかいね。ますます “種” って感じしないわ」
QB「右側だよ」
さやか「うん。――えー、マミさん。当てますよ? 動かないでくださいねー、っと」
コツン
――シュウゥゥゥ…
さやか「おぉ、取れてる取れてる」
マミ「ん……」
マミ(あぁ……穢れが取り払われていく……)
マミ(心が軽くなっていく……)
マミ(でも……なんだろう?)
マミ(それと同時に、何か他のものも失われていくような……)
――カツン
マミ(……)
マミ(……何かしら、今の音)
マミ(背後で、何か、硬いものが地面を打ったような。例えば――そう)
マミ(靴音)
マミ「……!!?」 バッ
さやか「うわっ?」
QB「きゅっ?」
さやか「ちょ、マミさん? どうしたんですか、急に振り向いたりなんか、して……」
マミ「……」
ほむら「……」
さやか「げ」
マミ「あなたは……」
ほむら「……」 ピク
. .. . . . . . . . ..
ほむら「知っているの? 私のことを」
マミ「え……」
マミ(……あれ?)
マミ(なんだろう。今、なんだかすごく、嫌な感じがしたのだけれど)
マミ(いや――それよりも、この子)
. . .. . . .. . .. .
マミ(長い黒髪をカチューシャでまとめて、赤いセルフレームのメガネをかけた女の子)
マミ(どこかで見たことが……見たことが?)
. . . . . .. .
マミ「……い、いいえ。知らないわ」
ほむら「……」
ほむら「……そう」
マミ「……」
さやか「あ……あー、えーと、うちのクラスの転校生ですよ! 先週、転校してきて!」
マミ「転校生?」
さやか「そうです! そう! えっと――暁美、さん、だったよね?」
マミ「え? ちょっと、美樹さん?」
さやか「あたし、ホラ! 同じクラスの美樹さやか! って、もう一回言ったっけ! あはは!」
ほむら「……」
さやか「それで、その……ぐ、偶然だね! こんなところで! ……何してるの?」
ほむら「……それはこっちのセリフなのだけど」
さやか「へ?」
ほむら「あなたたちこそ、何をしているの?」
さやか「え? なにって、別に」
ほむら「何をしていたの?」
さやか「いや、だから」
ほむら「……そっちの人の、妙な恰好は、なに?」
マミ「え? …………あ」
マミ「あああっ!?」
マミ(……み、美樹さんっ。どうしよう。魔法少女の格好、見られちゃったっ) ヒソヒソ
さやか(……って今気付いたんですかっ? あたしさっきからソレで慌ててるのにっ) ヒソヒソ
マミ(……ご、ごめんなさい。やっぱり、今さら元に戻るのはダメよね?) ヒソヒソ
さやか(……そりゃそうですよ。とにかくなんとか誤魔化してみますから) ヒソヒソ
ほむら「……」
さやか「え、えっと、これは、その……ね? つまり、そう! コスプレ!」
マミ(……ちょ、美樹さんっ!?) ヒソヒソ
さやか(……だ、だってっ。それぐらいしか思いつきませんよっ) ヒソヒソ
マミ(……私そんな趣味ないわよっ) ヒソヒソ
さやか(……他にどう言えってんですかっ。ってかもう言っちゃいましたよっ) ヒソヒソ
ほむら「……」
ほむら「コスプレ、ね」
マミ「ち、違うの。そうじゃなくて、これは」
ほむら「だったら――」
ほむら「――さっきの白い巨人は、なに?」
マミ「え……」
さやか「な……」
ほむら「……」
さやか「て、転校生、あんた……今なんて……」
ほむら「白い巨人。そう言ったわ」
ほむら「やたらと大きかったけど、あれもコスプレだったというのかしら?」
マミ「あなた……見えたの?」
ほむら「『見えた』……?」
QB「……。“アレ” は、『魔獣』 と呼ばれる存在だよ」
ほむら「……、?」
マミ「キュウべえ、もしかしてこの子……」
QB「いや……」
ほむら「……」 キョロキョロ
ほむら「……」
ほむら「もしかして、“それ” が喋ったの?」
QB「そうだよ」
ほむら「……」
QB「僕の名前はキュゥべえ。君は、暁美ほむらだね」
ほむら「……!」
ほむら「名前を……」
QB「ああ、知ってるよ」
ほむら「……」
QB「名前だけだけどね」
ほむら「……」
ほむら「なら、“これ” のことは?」 スッ…
さやか「え?」
マミ「……!? その指輪は……!」
シュイーン、キラッ!!
ほむら「……」
マミ「……」 ポカーン
さやか「……」 アングリ
QB「……。『魔法少女』――だね」
さやか「え――ええええええええっ!? 転校生が!? マジで!?」
マミ「え? え……? だったらどうして、魔獣やキュウべえのことを知らないの……?」
ほむら「……?」
ほむら「それって、なんなの?」
QB「本当に何も知らないのかい?」
ほむら「だから聞いているのでしょう。答えて」
QB「……。魔法少女とは、『魔獣を狩るもの』 さ。僕と契約を交わすことで誕生する」
ほむら「契約?」
QB「ああ」
QB「僕は君たちの願いを、なんでも一つ叶える。その代償に、魔獣と戦ってもらう。
そういう契約だ」
ほむら「……交わしてないわ、そんなもの」
QB「……。だろうね。僕も、君と契約した覚えはない」
マミ「え?」
ほむら「……」
さやか「ど、どういうこと? あんたと契約しなくても魔法少女ってなれちゃうの?」
QB「そんなはずはないよ。……ないけど」
マミ「キュウべえ……」
QB「こんなことは初めてだ。わけがわからない」
ほむら「……」
ほむら「そう……」
…パシュッ
さやか「あ、戻った」
QB「とにかく、この状況で僕が言えるのはそれぐらいだ。ねぇ、ほむら」
ほむら「……気安く呼ばないで」
QB「……。暁美ほむら」
ほむら「……」
QB「今度は君の話を聞かせてもらえないかな。いつ、どうやってその力を手にしたんだい?」
ほむら「……」
QB「……」
ほむら「……」
ほむら「……わからない」
マミ「え?」
さやか「ちょ、わからないってアンタ」
ほむら「わからないものはわからないのよ……!」
マミ「……」
ほむら「……気がついたのは、半月ぐらい前だけど……それ以前からだったかも知れない」
ほむら「とにかく、いつの間にか。この指輪だけが手の中にあったの」
ほむら「使い方だけはなんとなくわかった。でも、使い道と使える理由がわからない」
ほむら「こっちの方から何か、懐かしい気配を感じた気がしたんだけど……」
QB「……」
ほむら「無駄足だったみたいね」 クルリ
さやか「なっ……」 イラッ
ほむら「……」 スタスタスタ…
マミ「あ……」
マミ「ま、待って。……半月前、って言ったわね?」
ほむら「……」 ピタ
ほむら「ええ」
マミ「なら、確かめたいことがあるの。指輪をジェムに――宝石の形に戻してみてくれないかしら」
ほむら「……」
シュイーン…
ほむら「これでいいの?」
マミ「ええ、ありがとう。……やっぱり、かなり濁ってる」
ほむら「……?」
マミ「キュウべえ、グリフシードはまだ使えそう?」
QB「……。うん、いけると思う。でも、」
マミ「私のはもう十分よ。美樹さん、貸して」
さやか「あ、はい」
マミ「暁美さん、これを」 ポイ
ほむら「……」 キャッチ
ほむら「これは?」
マミ「やっぱり、それも知らないのね……
その宝石、ソウルジェムに触れさせるの。そうすれば色が元に戻るわ」
ほむら「……何のために?」
マミ「それは――、……」
マミ「……それを説明するには、少し込み入った話が必要になるわ。
だから今はまず、やってみてくれないかしら。悪いようにはしないから」
ほむら「……」
さやか「……なんだってのよ……知らないなら黙って言うこと聞けっての……」 ブツブツ
マミ「美樹さん。ダメよ、そんな言い方」
さやか「むぅ……」
ほむら「……」
ほむら「フゥ……わかったわ」 コツ
シュウゥゥゥ…
ほむら「……、……、……」
ほむら「確かに、綺麗になったわね。――それで?」
QB「その前に、それは返してもらえるかい?」
ほむら「……、……」 ポイ
QB「ありがとう」 パカ
――スポッ、パクン
QB「きゅっぷい」
ほむら「……!?」
さやか「おー、驚いてる驚いてる」
ほむら「な……なんなの、その生き物は?」
マミ「暁美さん。それも含めて、全部説明するわ。
でもいつまでも立ち話もなんだから、もしよければ今から家に来ない?」
ほむら「……」
マミ「時間がないなら明日以降でもいいわよ。美味しいお茶とお菓子もつけるわ」
ほむら「……」
ほむら「わかったわ。――でもね、」
マミ「何かしら」
ほむら「……食べ物に釣られるわけじゃないわよ。そこは勘違いしないで」
マミ「……」
マミ「え、ええ。わかってるわ」
マミ(なんだ……意外と可愛い子じゃない)
◆
ほむら「……」
ほむら「これが……私の魂……?」
QB「……」
さやか「やっぱそこかー……。あたしもソレが引っ掛かってるんだよねー……」
マミ「……気持ちはわかるわ。私も、そのことを知ったのは契約した後だったから」
ほむら「……そうなの?」
マミ「ええ。仕方がないことだといえばそうだったんだけどね。
事故で、悠長に説明なんか受けていたら死んでいた、なんて状況だったから」
ほむら「……」
マミ「ちなみに、その状況から助かりたい、というのが私の祈り」
ほむら「そう……」
マミ「もちろん、普通なら事前に全て教えてもらえるわ。美樹さんはそうだった」
さやか「うん」
ほむら「……」
ほむら「キュゥべえ、と言ったわね」
QB「ああ」
ほむら「“これ” で身体を操作するというけど、それはどの程度までできるの?」
QB「個人差があるから、一概には言えないね。
全くの別人に変身できる子もいれば、身体が丈夫になるだけって子もいる」
ほむら「……」
ほむら「……」 カチャ、スッ…
キィーン…
さやか「? 何やってんの、メガネなんか外して?」
ほむら「……」 キョロキョロ
ほむら「……なるほど」
さやか「無視かい」
マミ「まさか……今、視力を?」
ほむら「ええ。便利なものね」
マミ「……」
ほむら「最近、なんとなく体調が良かったし。もしかしたらと思ったのよ」
マミ「驚いたわ。あなた、強いのね……」
ほむら「別に……貧弱でままならなかったこの身体に、嫌気がさしていただけよ」
QB「そういえば、君はずっと入院していたね」
ほむら「……」 ピクッ
さやか「え? そうなの?」
QB「僕らは魔法少女の素質を持った子を求めて、世界中を探し回っているんだ。
だから君のことも、ある程度は知っているよ」
QB「もっとも、肝心の契約したときの記憶は、やっぱりないわけだけど」
マミ「もう、キュウべえ……人のプライバシーをそんな軽々しく……」
ほむら「……あなたとは、仲良くなれそうにないわね」
QB「気に障ったなら謝るよ」
ほむら「フゥ……まぁいいわ」
ほむら「そうよ。心臓の病気でずっと入院していて、最近ようやくマシになったところ。
だからこのソウルジェムとやらについては、とりあえず納得したわ」
QB「それはよかった」
ほむら「だけど……濁り切ったら消滅するというのは、本当なの?」
マミ「ええ、そうらしいわ。私も美樹さんもまだ実際に見たことはないけど」
さやか「あんたマミさんに感謝しなさいよ。さっきの色、かなりヤバかったんだから」
ほむら「……。そうね」
ほむら「ありがとう、巴マミ。感謝するわ」
マミ「気にしないで。困ったときはお互いさまよ」
ほむら「けれど、これが魂なら、消滅するということは……」
QB「死ぬということだね」
ほむら「……」
さやか「だからもうちょっとオブラートに包めっての」
QB「それをやると何故か、あとから 『騙された』 と言われてしまうんだよ。
騙すという概念からして僕には理解できないのにね」
さやか「ハァ……」
マミ「……」
ほむら「あなた、よくこんなのと一緒に暮らしてられるわね」
マミ「い、良いところもたくさんあるのよ? それになんと言っても、命の恩人だし……」
ほむら「……そう」
マミ「……お、オホンッ」
マミ「ちなみに、ソウルジェムの黒化によって訪れる最期のことは、魔法少女のあいだでは
『導かれる』 と言われているそうよ」
ほむら「……?」
マミ「何者かに、ということじゃなく……そうね。この宇宙を支配する法則のようなものかしら」
さやか「円環の理、でしたっけ」
マミ「ええ」
マミ「光と闇、善と悪、希望と絶望、祈りと呪い――
それら相対となるものが互いに繋ぎ合わされて形を為す、一つの輪の中に、ね」
ほむら「円環……」
ほむら「……、……えん、かん……?」
さやか「うん?」
マミ「……暁美さん?」
ほむら「っ……」
ほむら「……、……、…………」
ほむら「……なんでもないわ。少し――」
さやか「少し?」
ほむら「…………何かが引っ掛かったような、気がしただけ」
マミ「何か思い出したの?」
ほむら「いいえ。……そうかも知れないけど、消えてしまったわ」
マミ「そう……」
ほむら「それでは、そろそろ失礼するわ」
マミ「あら。もう?」
ほむら「ええ。もう話は終わったのでしょう?」
さやか「でも、あんたとキュゥべえの記憶が消えた原因、まだわかってないじゃん」
ほむら「考えて答えが出る問題とは思えないわね。
今日のところは手掛かりが見つかっただけで良しとしておくわ」
マミ「まぁ、あなたがいいならそれでいいけど……」
QB「……」
さやか「キュゥべえは気になんないの?」
QB「気にはなるけど、僕が知らないことなんて他にいくらでもあるからね。
今すぐに危険があるというわけでもないし、この問題だけに固執する理由はないよ。
本人がいいと言っているならなおさらさ」
さやか「あんたって、ホントに……」
ほむら「フン……」
QB「ただ――」
ほむら「心配しなくても、魔獣退治とやらは引き受けるわ。私だって死にたくはないもの」
QB「そうか。ならいいさ」
ほむら「それじゃあ――明日から、よろしくお願いするわ、先輩」
マミ「え……」
マミ「え、えぇ。任せて。できる限り力になるから」
ほむら「ありがとう」
マミ「……」
さやか「……」
さやか「えーと、じゃあ、あたしも帰る。時間も時間だし」
マミ「そう。二人とも、気をつけてね」
ほむら「ええ」
さやか「おじゃましましたー」
ガチャ
バタン
◆
マミ「ふぅ……」
なんだか疲れた。
今日一日でずいぶんといろいろなことが起きたような気がする。
実際はそうでもないはずなのに。
マミ「……」
マミ「……」
マミ「……」
……っと、いけない。ぼぅっとしてしまった。
テーブルの片付け、夕飯の支度、学校の宿題。やるべきことはまだまだある。
一人暮らしは忙しいのだ。
マミ「――んっ」
ほほを叩いて気合いを入れる。
さて、まずはテーブルから。
カップとソーサーをお盆にまとめて、お皿に残っていたクッキーを口に放り込む。
シナモンの甘い風味。
マミ「……」
キッチンに運んで、洗い桶に浸けておく。
洗うのは夕飯のあと、まとめてでいいだろう。
……それにしても、なんだったのだろう。
病院でのあの妙な感覚は。
どうして私は、あんなわけのわからない行動を取ってしまったのだろう。
あの子の言った通り、単なる意識の混濁だったのだろうか。
確かに、それ以外には何もないとは思う。
でも、それだけじゃないような気もする。
マミ「……」
マミ「……キュウべえ……」
QB「なんだい?」
マミ「え……」
QB「どうしたんだい? ぼぅっとして」
マミ「な、なんでもないわ。それより、早かったわね」
QB「まだ遠くには行ってなかったからね。
暁美ほむらが置き忘れて行ったメガネは、確かに本人に届けたよ」
マミ「そう。お疲れさま」
QB「お安いごようさ」
マミ「……」
QB「……?」
マミ「……ねぇ」
QB「なんだい?」
マミ「えっと……」
マミ「……おかえりなさい、キュウべえ」
QB「……」
QB「ああ。ただいま、マミ」
732 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/12 15:03:40.39 6gqj6i3Eo 467/571
以上
Q.前編と後編でタイトル違うんだけど
A.まど神さまのおぼしめしです
Q.ほむほむの記憶がないのはなんで?
A.本編ではさやか消滅の時点ではまだカチューシャだった
つまりそれまでは思い出せてなかった、という解釈です
というわけで、次回は最終回! マミるよ!
最終話 巴マミの死
廃墟だった。
ビルは崩れ、橋は折れ、公園は木々に埋もれ、明かりは一つも見えない。
広く造られた幹線道路だけが、辛うじて形を残しているばかり。
冷たく降り注ぐ月の光が寒々しさを助長する。
だけど、それでも。
積み重なった瓦礫の高さが、公園跡の敷地の広さが、幹線道路の幅と長さが、
在りし日の街並みを思い起こさせる。
そう、ここもかつてはそれなりに栄えた都市だった。
私もそのころの姿を知っている。訪れたこともあるし、住んでいたことさえあった。
良い街だった。
そう思う。
だが、今は動くものとてない、ただ風が吹き抜けるだけの廃墟だ。
――否。
動くものなら、いる。
私と、そして――白いローブをまとった姿の、聖職者めいた異形たち。
ほむら「……こんなになっても、まだ魔獣は出るのね」
翼を広げ、飛翔する。
私の魔力を察知したのだろう。
何かを探すように彷徨っていた四体の魔獣が、一斉にこちらを振り仰ぐ。
節くれだった指を掲げ、攻撃の構えを見せる。
だが――
ほむら「遅い」
弓を召喚。矢をつがえ、放つ。
それで終わった。
解き放たれた一条の光は軌道上で四つ又に分かれ、魔獣どもを同時に射抜いた。
白い巨体が溶けるように消え失せる。
さらに、モノクロだった光景が元の色を取り戻す。すなわち、結界が解けた。
ほむら「……」
着地し、翼をしまう。
ほむら「……呆気ないわね」
独りごち、周囲を見渡し、気配も探ってみたけれど、やはり何の反応もなかった。
本当に今ので終わったらしい。
とりあえず、勝利の報酬、キューブ状のグリフシードを拾う。
それにしても解せない。
敵の数は少ないし、そもそも最初から弱り切っていたようにも見えた。
これならわざわざ応援に駆け付ける必要なんてなかったんじゃないだろうか。
首をかしげた――その瞬間、
ほむら「…………――!!?」
総毛立った。
気配に、肌が泡立ち、全身の産毛が逆立った。バネ仕掛けのように振り返る。
恐怖ではない。
警戒でもない。
これは、歓喜だ。
私を構成する全ての血が、肉が、魂が。
“あの子” の存在を捉えたことに、喜びを爆発させている。
放心は一瞬。
次の瞬間には再び翼を広げ、最初からトップスピードで馳せていた。
ほむら「まどか……っ!!!」
◆
ほむら「……」
その場所は、やはり、廃墟だった。
砂埃がつもり、コンクリートは風化し、剥き出しの鉄骨は錆びにまみれていた。
だけども辛うじて、人が一人隠れられるだけのスペースができていた。
その場所に、横たわる人物が一人。
服装は泥と埃に汚れ、みすぼらしい。
美しかった金の巻き毛も、色あせ、ほつれてしまっている。
けれど、眠っているようなその表情は、確かな充足と安らぎに満ちていた。
「――」
ほむら「……間に合わなかった、か……」
QB「そうだね」
その獣は、いつの間にか、背後に。
ほむら「……」
QB「……遅かったじゃないか、暁美ほむら」
この廃墟に似つかわしくない、真っ白な毛並みの尻尾を揺らし、彼は言う。
ほむら「……」
どうしてだろう。
感情なんてないはずのその声が、落胆の色を帯びている気がした。
QB「マミは逝ってしまったよ。君たちの言う、“円環の理” の向こうに」
ほむら「……」
QB「残念だよ。君があと一分、早く来てくれていれば……」
QB「……いいや、いい。
来てくれただけでも助かるよ。僕一人ではマミを弔うことすらできないからね」
ほむら「……」
QB「……。手伝ってくれるだろう?」
ほむら「……ええ」
改めて、彼女の亡骸に目を落とす。
そして――ようやく気付いた。
その場に似つかわしくない、もう一つのものが落ちていることに。
つややかな白磁のティーカップ。
ほむら「……?」
振り返ってみると、彼のそばにも同じものがもう一つ。
こちらには中身が――真紅の液体が、湯気を立たせて揺れている。
QB「……。マミだよ」
私の視線を受けてか、彼はぽつりとつぶやいた。
QB「彼女が最後に出してくれたんだ」
ほむら「……」
なるほど。
言われてみれば確かに、かすかだけれど彼女の魔力を感じる。
しかし当の本人が逝ってしまったのに残っているというのは、どういう奇跡なのか。
QB「……わけがわからないよ。僕は、そんなつもりで言ったんじゃないのに」
QB「こんなことさえしなければ、君が来るまでもっていたかも知れないのに」
ほむら「……そう」
QB「……そうさ」
ほむら「なら、早く飲んでしまいなさい。冷めてしまうわ」
QB「……。そうだね」
ほむら「……」
QB「……」
ぴちゃぴちゃ、と、液体を舐める音が小さく響く。
ほむら「……」
QB「おいしいよ」
ほむら「そう」
QB「そうさ。マミの紅茶は、いつだっておいしいんだ」
ほむら「……そう」
QB「……そうさ」
◆
街じゅうを歩きまわって、使えそうな木材を掻き集めた。
十分な量がそろったころにはもう、東の空は白みかけていた。
ついでに探してみたけれど、やはり生きている人は残っていないようだった。
つまり彼女は、守り抜いたわけだ。最後まで。
……最期まで。
街を見下ろす高台――かつて中学校の校庭だった場所に穴を掘り、
集めた木材で即席の祭壇を組み上げて、彼女の遺体を横たわらせる。
QB「すまないね、余計な力を使わせてしまって」
ほむら「大したことないわ、これぐらい」
既に何度もやった作業だ。
もっとも、この環境で一人でというのはそれなりの重労働だったが。
ほむら「お別れは済んだ?」
QB「とっくに」
ほむら「……」
QB「……。今さら何を言えっていうんだい。
マミの魂は消滅してしまったんだ。ここにあるのは本当の意味でのぬけがらさ」
QB「それに、もし仮に声が届くのだとしても、僕にその資格があるとは思えないよ」
ほむら「……あなた以上にふさわしい人なんていないわ、もう」
QB「よしてくれ」
ほむら「……」
QB「……。僕は 『ヒト』 じゃない」
ほむら「あなた……」
QB「……。なんだい?」
ほむら「さっきから話していて違和感があったのだけど、もしかして……」
QB「……」
QB「どうだろうね」
ほむら「……」
QB「僕らの定義では、このレベルの精神のブレは平常の範囲内に入るんだけど」
QB「……けど、マミだけでなく君にまでそう感じさせてしまったのなら……」
ほむら「……彼女は、なんと言っていたの?」
QB「……。最近優しくなった、と」
ほむら「そう……。彼女がそう言ったのなら、きっとそうなんでしょうね」
QB「そうなのかな、やっぱり」
ほむら「ええ。きっと」
QB「そうか」
ほむら「ええ」
しばしの沈黙が流れた。
太陽は完全にその姿を現していた。
朝日が彼女を髪の毛を照らし、記憶の中と同じ綺麗な金色に染め上げていた。
それからまたもうしばらくの沈黙を挟んで、彼が言う。
QB「……兆候は、少し前からあったんだ」
ほむら「……」
QB「二年前かな。この街に、マミを除いて最後まで残っていた一群が、
最年長の老人の死をきっかけに他所に移っていったときからだ」
QB「それ以来マミは、言葉の端々に死を匂わせるようになった」
ほむら「……」
二年……
QB「そうなると必然的に、僕の方もそのときのことについて考えざるを得ない」
QB「そうしているうちに、僕は僕の記憶の中に奇妙な欠落があることに気がついた」
QB「あれは……マミと出会って、三年が過ぎたころだ。雨の日だった」
QB「僕はマミと一つの約束をしたんだ」
QB「自分が死ぬときは僕に傍にいて欲しいと、彼女は言った」
QB「そのとおりにすると僕は返した」
ほむら「それは……」
呟いて、先ほどの場所があった方へと視線を飛ばす。
ほむら「……守られたのでは、ないの?」
QB「半分だけね」
ほむら「半分?」
QB「続きがある」
ほむら「……」
視線で促す。
QB「『終わりのときは、僕は君のそばにいる。
君の最後の言葉を聞いて、そして僕からも、君への最後の言葉を贈ろう』」
QB「そう、約束したんだ」
QB「マミの最後の言葉は聞いた。だけど、僕からは贈れなかった」
QB「約束した、その時点で、何を言うかは決めていたんだ」
QB「そのはずだったんだ。そういう記憶ならある」
QB「なのに、不思議なんだ。肝心の “言うべき言葉” が思い出せない」
QB「どれだけ記憶を探っても、推測を重ねても、『これしかない』 と決めていたはずの
その言葉が、どうしても見つからないんだ」
QB「……見つからなかったんだ。最後まで」
ほむら「……」
QB「……。君との件については、叶えた願いの効果によるものということで決着がついた。
具体的にどんな願いだったかはともかくね」
QB「だけどこれは、これまで僕らの知り得たどんな理論を持ってしても説明できない」
QB「ただ一つ、精神疾患を除いて」
QB「“感情” は、どんな不条理な記憶改竄でも引き起こす――そうだろう?」
ほむら「……」
……なるほど。
そう思った。
私には、見当がついた。
というより、知っている。彼の中で――いや、この世界で、何が起こったのか。
もしその約束というのが、改変される前の世界でも交わされたものだとするならば、
答えは簡単だ。
きっとこいつはこう言うつもりだったのだ。
ソウルジェムが濁り切ることで最期を迎える彼女に。
君はこれから魔女になるんだよ、と。
そうすることでより深い絶望に突き落とし、多くのエネルギーを得ようとしていたのだろう。
こいつらはそういう奴らだ。
もっとも、だとするならこの彼にも改変前の記憶が一部とはいえ残っていることになる。
……まぁ、そういうこともあるのだろう。
いずれにしても、
ほむら「……そうね」
わざわざそれを教えてやる必要は、ない。
QB「……。だから、仕方なく別のことを言ったんだ。マミが最も喜ぶであろう言葉をね」
ほむら「……」
ああ……そういうことか。
ほむら「それで、紅茶なのね」
QB「……」
QB「ああ、そのとおりさ」
QB「マミの紅茶は美味しかった。もう飲めないのは残念だ――そう言ったんだ」
QB「本心だったよ。だけど、最後の魔力を使ってまで出して欲しいなんて、
間違っても思っちゃいなかった」
ほむら「……」
QB「君たちのやることは、本当にわけがわからない」
ほむら「……そうかも知れないわね」
QB「……。それにしても、よくわかったね」
ほむら「長い付き合いだもの。あなたとも、彼女とも」
QB「なるほど」
ほむら「確か……もう、300年ぐらいにはなるかしら」
QB「プラス14年だよ。君と出会ってからはね」
ほむら「……よく覚えて……いえ。よく数えていられるわね。
カレンダーなんてもうずいぶん前に機能しなくなってるのに」
QB「まぁ、そのぐらいはね」
QB「ちなみに、マミと出会ってからは、318年になる。318年と、58日」
QB「それだけ長いあいだ、同一の個体が一人の相手とともに過ごした例は他にない」
QB「だから、まぁ……前例のない不具合が起きたとしても、不思議ではないかな」
ほむら「318年……」
318年。
一口に言ってしまえば簡単だが、実際、人にとってそれは途方もない長さだ。
普通の人生、4~5回分。
幼木が神木と呼ばれるようになるほどの時間。
人類がその数を、最盛期の十分の一以下にまで減らすのに、充分な時間。
そのあまりにも長すぎる年月を、
彼女はただひたすらに、人々を魔獣から守るための戦いに費やしていた。
誰よりも多くの魔獣を屠り、手にしたグリフシードの数は100万を超える。
その大半は他の魔法少女のために使われた。
後進の育成にも力を注ぎ、彼女に送り出された少女は四桁を超える。
その九割以上は、彼女より先に逝ってしまったけれど。
世界各地を飛び回り、彼女に守られたことのない都市はもはやない。
“ワラキアの夜” と呼ばれる魔獣の大量出現も、七度に渡って乗り越えた。
生きながらにして伝説と呼ばれ、また 『女王』、『聖母』、『守護天使』 など、
さまざまな称号で一部の一般人にまで語られた。
中には、なんの皮肉か 『魔女』 なんて呼ぶ輩もいたけれど。
そんな、あらゆる意味で最高の魔法少女。
巴マミ。
それが彼女だ。
……彼女、だった。それなのに。
二年。
たった二年だ。
この街から人が消えたという、ただそれだけのことが、
その短い期間で彼女を擦り潰してしまった。
別に世界中から人間がいなくなってしまったわけではない。
むしろここ十数年は再び人口が増え始めている。
だから、相棒を連れて他の街に移り住むことだってできたはずだ。
彼女ならどこに行っても歓迎されただろう。
だというのに、彼女はこの地に留まり続けた。
思えば昔からそうだった。
請われればどこへでも出向いたが、自分から積極的に街を出ることはしなかった。
たとえ短い期間でも街を空けるときには必ず他の魔法少女を代理に置いた。
どれほど遠くへ行っても、そこで気まぐれのように仮暮らすことはあっても、
最後には結局ここへと戻ってきていた。
そんなにも大切なものなのだろうか。
“帰るべき場所” というものは。
……わからない。
私には、よくわからない。
ほむら「……」
QB「まぁ、その記録も、すぐに君が追い越してしまうんだろうね」
QB「少なくとも、君があと四年のうちに死んでしまうとは、僕には思えない」
ほむら「……そうね。そんなつもりはないわ」
QB「……」
ほむら「私は、生きてもう一度あの子に逢うの。死ぬ間際なんかじゃなく」
ほむら「そしてできることなら、あの子をこの世に呼び戻す」
ほむら「それを成し遂げるまでは、死ぬ気はないわ」
QB「……」
ほむら「……」
ほむら「……そろそろ、始めるわよ」
QB「……。ああ」
手にした棒きれの先端に火を点け、祭壇の隙間に挿し入れる。
小さな火種は瞬く間に燃え上がり、彼女の身体を包み込む炎となった。
QB「……」
ほむら「……」
QB「よく燃えるね。この街に燃料になるものなんて残ってなかったと思ったけど」
ほむら「そんなものは使っていないわ」
ファサ、と髪をかきあげる。
この癖だけはどうにも治らない。
ほむら「ただの魔法よ」
QB「……。なるほど」
全てが灰になるまで、10分、といったところか。
ほむら「……」
QB「……」
QB「そういえば、一つ気になってることがあるんだ」
ほむら「? ……何かしら」
QB「君が会いたがっている、神さまになったという少女のことだけど」
ほむら「まどかが、なに?」
QB「……。いや、それさ。名前を確認しておきたかった。『まどか』 というんだね?」
ほむら「ええ」
QB「そうか。……なら、やっぱり違うな」
ほむら「何が?」
QB「……。マミがね、最後の最後、こと切れる寸前に、誰かの名前を口にしたんだ」
ほむら「……」
QB「僕の知らない名前だった。だから、もしかして、と思ったんだ」
QB「もしかして、君の言っていた通りにその子がお迎えに来たのかな、と」
QB「でも、『まどか』 じゃなかったよ」
ほむら「……」
ほむら「『鹿目さん』」
QB「――!?」
ぽつりとつぶやいた私の声に、彼が勢いよく振り返る。
相変わらずの固定された無表情だけど、なんとなく驚いている様子がわかった。
QB「どうして……」
ほむら「『鹿目まどか』――あの子のフルネームよ」
ほむら「彼女は、親しい相手でも名字で呼ぶ人だったでしょう?」
QB「……」
ほむら「……そういえば私、あの人に名前で呼んでもったことってあったかしら……?」
QB「神さまに、名字があるっていうのかい?」
ほむら「当然よ。もともとは普通の女の子だったんだから」
QB「……」
QB「……そう、か……」
ほむら「信じる気になった?」
QB「……」
QB「そうだね。他ならぬ、君とマミの言葉だ。有力な仮説として考慮に入れさせてもらうよ」
ほむら「……疑り深いのね」
QB「そうかな?」
ほむら「そうよ」
QB「ふむ……」
ほむら「……」
祭壇は燃えている。
今はまだ、原形を保っている。
もう少しすれば崩れ始めるだろう。
よく晴れた朝の光の中で、その炎はあまり目立たない。
QB「……。もし、本当に 『まどか』 がいるのなら、」
ほむら「ん……?」
QB「一度会ってみたいものだね。話が聞きたい」
ほむら「フン……」
思わず、鼻を鳴らす。
気軽に言ってくれたものだ。
ほむら「なら、試しに死んでみれば?」
QB「え?」
ほむら「あなたは魔法少女でもないし、ソウルジェムも持ってはいないけど、
もしかしたら何かの気まぐれで逢いに来てくれるかも知れないわ」
もちろん、冗談だ。
皮肉でもある。
そんな簡単に逢えるわけがない。
逢えてたまるものか。
私でさえ、稀にかすかな気配を感じ取るのがやっとだというのに。
QB「……」
ほむら「……」
QB「そうだね。それじゃあ、やってみようかな」
ほむら「ふふっ……」
今度は、笑いが漏れた。
どちらだと受け取ったのかは知らないが、まさか乗ってくるとは思ってなかったから。
どんな顔で言ったのか、見てやろうと思って振り返る。
そんな私の目の前を、彼は、
ひょい、と。
横切った。
ほむら「……え?」
それはまるで、親しい相手の肩にでも飛び乗るような軽やかさで、そして実際に、
着地点は巴マミの肩のあたりだった。
けれども “そこ” は、燃え盛る炎の真っただ中で――
ほむら「な――何をしているのよあなたは!!」
叫ぶ。
QB「た――しん――ばっ――ったのは、――じゃな――か」
何か答えが返ってきたが、よく聞き取れない。
当り前だ。火に捲かれた状態でまともな声など出せるものか。
火。
そうだ。
火を――火を消さなければ。
しかし、その考えに至ったときには既に手遅れだった。
次の瞬間には祭壇は音を立てて崩れ始めていた。中心に向かって陥没するように。
そうなるように組み上げたのだから当然だ。
だが、そのせいで、二人の姿はもう確認できない。
自然の崩壊以外には動きもない。
それにインキュベーターの身体は、もともと脆い。
手遅れだ。
ほむら「……」
茫然と立ちすくむ。
いったい何が起こったのか。
全てを間近で見ていたにもかかわらず、そんな疑問を抱いてしまう。
理解が追いつかない。
まさに、あっという間のできごとだった。
炎は、想定通り10分ほどで燃え尽きた。
あとには灰しか残らなかった。
◆
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「どういう、つもり?」
問いかける。
答えは、
「言葉通りだろうね」
あった。
振り返る。
こいつらは殺してもすぐに別の個体が現れる。
自殺の場合も同じらしい。
便利なことだ。
ほむら「……どういう意味?」
QB「だから、言葉通りさ。ためしに死んでみたんだよ」
ほむら「……」
ほむら「どうして、そんな……」
QB「君が言ったことだろう?」
ほむら「っ……」
そんなつもりはなかった。
ただの冗談だった。
それなのに。
QB「気に病むことはないさ。彼はどのみち死ぬ予定だった」
ほむら「……」
ほむら「……?」
待て。
ほむら「『彼』?」
どういうことだ。
こいつらは全体で一つのはず。それがなぜ三人称を使う。
QB「接続が切られたからね」
ほむら「……」
QB「君も見て、感じたんだろう? 彼の精神は感情に汚染されていた。
その自己診断に基づいて、必要最低限を除いた全てのリンクが切断されたのさ」
QB「だからもう、『あれ』 は 『僕』 じゃない。ただ一体の 『キュウべえ』 だ」
ほむら「……」
QB「もちろん、『まどか』 に会えたのかどうか、その結果もわからないよ。
ま、君がそれらしい反応をしていないのを見る限り、無理だったんだろうけどね」
ほむら「……」
確かに、私は何も感じなかった。
それどころじゃないぐらい動転してはいたけど、“来た” のなら気付かないわけかない。
QB「いや、そもそも本当にそんなつもりで死んだのかどうかも疑わしいかな」
ほむら「え……?」
QB「他にも遣りようはあったってことさ」
QB「『僕』 が死んだのなんてこれが初めてじゃない。
もちろん、今のように魔法少女と共に死んだケースもたくさんある」
QB「だけど、その中でそれらしい何かを見たことなんて一度もない。
そんなことは彼にだってわかっていたはずだ」
ほむら「なら……」
QB「さぁ、何故だろうね」
ほむら「……」
わからない。
……わけでは、ない。
理由なら思い当たる。
人間の場合ならそれで間違いないだろう。しかし……
QB「ま、なんだっていいさ。さっきも言ったけど、不具合を起こした個体は死ぬ決まりだ。
同じことなら巴マミの手向けにするのも悪くはない」
QB「彼女も喜んでるんじゃないかな」
ほむら「っ……」
ほむら「……そんなわけないでしょう」
QB「そうなのかい?」
ほむら「そうよ。あの人がそんなことを望むはずがない」
ほむら「“彼” には、生きていて欲しいと、そう願ったはずよ」
QB「……。なるほど、そうかも知れないね」
ほむら「そうよ……」
QB「でも、無理だよ」
ほむら「……」
QB「決まりは決まりさ。他の個体にまで汚染を広めさせるわけにはいかないんだ」
QB「彼の死は確定事項だった。固定されたその状況の中で、この結果は、
人類の価値観と照らし合わせてみても、悪くないと言えるんじゃないのかい?」
ほむら「……」
ほむら「そうね……少なくとも、お前に食い殺されるよりは、救いのある死に方だわ」
QB「だろう?」
ほむら「……」
ほむら「フン……」
まぁ、いい。
納得ができないというわけでもない。
これでよかったと感じている私も確かにいる。
彼女と “彼” は二人で一つだった。
きっとどちらが欠けても駄目だった。
300年かけて、そこまでの関係になれたのだ。人間と、インキュベーターが。
そういうことなのだろう。
なら、それでいい。
QB「……さて、それじゃあ僕はそろそろ行くよ。君はどうする?」
ほむら「まだ残るわ。彼女の遺品を回収しないと」
QB「ああ、弟子の子たちに配るんだね。それは僕には手伝えないな」
ほむら「そうね。……その方がいいわ」
QB「……?」
QB「ま、いいか。それじゃあまたね、暁美ほむら」
そう言うと、そいつは消えた。
私も、二人の遺灰にもう一度だけ目礼をささげて、その場を後にする。
ほむら「……さようなら、先輩」
またいつか会いましょう。
かつて、見滝原と呼ばれた街があった。
今はもうない。
その地に生まれ、その地に生きて、その地を守り抜いた一人の少女がいた。
今はもう、いない。
――けれど、
私たちは、忘れない。
785 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/17 22:18:50.37 qWjAzS6io 505/571
以上
おしまい
あー、終わった終わった長かったー
えー、
細かいあとがきとか裏設定とか、語りたいことはいろいろあるけどまた今度にしますわ
質問とかあればできるだけ答えるので書いといて
んじゃまた
787 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/17 22:41:04.00 e6VJBDDeo 506/571乙彼様でした
最後まで街を守りきったか、マミさんも重ねて>>1さんもお疲れ様でした
788 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/17 23:02:31.88 FYhWKpeno 507/571お疲れ様でした。
彼女たちの旅路がよきものであらんことを・・・・・・・・。
806 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/19 22:56:09.78 r4FxE6nk0 508/571最後までまどマギらしい物語だった
本当に乙です!!
812 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2011/08/29 01:13:49.24 e36AKY5Bo 509/571読み終わった。
おもすれーーー
数あるまどかSSの中でも断トツに好きだわ。
お疲れさま
【後書き】に続きます。

