「ふざけるな!!あの化け物はなんだ!?」
QB「君以上の素質を持つ少女が魔女化したのさ」
「私一人が死ねばこの星のノルマは終わるんじゃなかったのか!?」
「魔女化するのが私だったら……この国の魔法少女が揃えば勝てたかもしれないのに…!」
QB「確かにね。でもその少女は君の比じゃない素質さ。エネルギーは多いに越したことは無いだろう?」
「くっ……私達とお前らは会い慣れないようだな……」
「契約だ」
QB「ほう?」
元スレ
織莉子「流浪のギタリスト」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349062496/
「私の願いは……貴様ら宇宙人がこの星で働き、地球を復興させることだ」
QB「成る程……面倒なことをしてくれるね」
「良いだろう。ソウルジェムを受け取りたまえ」
20XX年
地球は『救済の魔女』により
総人口の七割、文明の八割、人間以外の生命の五割が滅ぼされた。
だが、二人の少女の契約により、救済は止められ、復興が始まった。
さやか「ごめん、まどか」
「あたし、あんたを許せない」
QB「戦うのかい?」
さやか「まだ完全には滅んでない。あたしが食い止めるしかない」
「マミさんも杏子もほむらもどっか行っちゃったからさ……」
「ま、みんな死にたくないよね」
「あたしの願いはあいつを倒す力を手に入れること」
QB「中々難しい話だね」
さやか「……あたしが魔女化した時に出るエネルギーを力学的エネルギーに変えれば倒せない?」
QB「君にしては難しい話だね」
さやか「……ほむらのノートに書いてあったんだ」
QB「良いだろう。ソウルジェムが濁り切るまでに剣でほじって内部に入るんだ」
さやかを青い光が包み込み、さやかはそのまま魔女に突っ込んで行った。
織莉子「キュゥべえ……」
QB「なんだい?」
織莉子「私の願い、決まりました……」
QB「やっとか……君は中々優柔不断だよね」
「それで、君はどんな願いでソウルジェムを輝かせるんだい?」
織莉子「私は……」
「私の生きる意味を知りたい…!」
QB「……」
「バカげている」
織莉子「なっ……」
QB「そんな願いにするくらいなら復興に役立ててくれよ」
織莉子「復興……?」
QB「どうやら……君は最近外を見ていないね?」
織莉子「……」
QB「外を見てみるといい」
「外の世界はもう君の知る物ではないはずさ」
織莉子「……」
恐る恐る外へ出てみる。
そこに広がってる風景は、長い間手入れをせずに生い茂ってしまった薔薇園……ではなく、砂漠。
辛うじて私の家自体の被害外側だけで済んでおり、門も役目を果たしている。
QB「君が寝ぼけてる間に地球は滅びかけていたんだよ」
「これに気づかないなんて相当だと思うけどね」
確かにこれに気づかないのはおかしい。
しかし、おかしいくらいに私はふさぎ込んでいた。
QB「これからどうするんだい?」
「魔法少女になれば食糧にも困らないけど、さっきのような曖昧な願いを叶えるわけにも行かないんだ。僕と立場が変わったからね」
織莉子「……ではどうしたら」
QB「魔法少女の生き残りが居るから彼女達にしばらくついて行ってみたらどうだい?」
「具体的な願いも決まるかもしれない」
私はその生き残りの魔法少女について行くことにした。
他に選択はないから。
他人のために願いは使いたくない。
━━━━
まどか「どうしてそんな冷たいこと言えるの!?」
「マミさん死んじゃったんだよ!?」
━━━━
まどか「約束ってなに?」
「ここで動かないなんて人じゃない」
「そんな約束するなんてそのわたしはわたしなんかじゃない」
━━━━
マミ「暁美さん……大丈夫?」
杏子「大丈夫なわけねえだろ……」
「ずっと信じてた物を真っ向から本人から否定されて平気で居れるわけがねえ……」
「……あたしがそうだったんだ」
マミ「半ば私のせいのような物よね……」
「むしろ私が生きてるのがおかしいくらいよ」
ほむら「ごめんなさい、弦を張り替えてただけよ」
杏子「……強がるなよ。あと、マミも変なこと言うな。ほむらに負担が掛かるだろ?」
ほむら「いえ……巴さんが真実を受け入れて生きてくれてるだけで私は十分」
「まどかのことも貴方が気に病むことではないわ。あの子は契約できれば良いという考え方だったから、貴方が生きていたら酷い願いで契約していたかもしれないわ」
マミ「……大して知らなかったから、ケーキで契約させようとしてしまったわ」
杏子「せめてお菓子の家とかにしろよ」
濃い黒紫色の大きなローブに身を包みクラシックギターを持つ黒髪の少女。
棺桶を引きずる、南蛮の民族舞踊衣装を着た長い赤髪の少女。
カッターシャツの裾を結び、大きい胸とは裏腹に異様に鍛えられ縦筋が入った腹部を露出して、ぶかぶかのジーンズを穿いた少女と呼ぶには少し苦しい金髪の少女。
彼女達は『救済の魔女』が産まれた見滝原市の魔法少女だ。
マミ「それで、私達はなんで旅をしているんだったかしら?」
マミが手に持ったカスタネットをカチカチ鳴らしながら確認する。
杏子「東京のほむらの両親に会いに行く為だろ、覚えとけよ」
棺桶についた鎖をジャラジャラしながら答えるのは少しイライラしている杏子。
ほむら「生きているかどうかわからないけどね」
そこに畳み掛ける右目を常に閉じたほむら。
マミ「アレよ……たまに確認しないと私達は旅の目的を見失ってしまう」
杏子「ハン、そんなのマミだけだよ」
「な、ほむら?」
ほむら「まぁね。少なくとも私は忘れたことは無いわ」
ほむら「ねぇ、杏子」
杏子「なんだ?」
ほむら「固有魔法、使えるかしら?」
杏子「……いや、使えないよ。あんたが願いに裏切られてからはあたしも魔女になってもおかしくないくらいだ」
「やっぱり報われないんだってな」
マミ「でも生きてるじゃない、それに安心しなさい。魔女になって戻れなくなったら私が葬ってあげるわ」
ほむら「煩い葬式になりそうね」
杏子「で、なんでそんなこと聞いたんだ?」
ほむらは少し悲しそうな顔をして左手を見つめながら言う。
ほむら「いや、時間遡行ができなくてね」
「元々舞台装置がくる日を過ぎたら時間停止を使えなくなるのだけど……」
杏子「祈りに否定されて使えなくなった……と」
マミ「私は死にたくなったら使えなくなるのかしら?」
ほむら「まぁもう戻ろうとも思わないけど」
微妙な雰囲気が漂う。
マミ「まぁ……気分転換にでも魔女でも狩りに行かない?」
杏子「だな」
ほむら「時間停止が無いから私はあまり気分転換にならないのだけれど……」
杏子「じゃああたしが多めに狩ってくるよ」
ほむら「じゃあ私は棺桶を見てるわね」
マミ「……そういえば暁美さんがあれから戦っているところ、見たこと無いわね」
杏子「一応銃の類は持ってる見たいだけど、あたしらの前じゃ絶対使わないよな」
疑問を感じつつ、二人は魔女狩りへと出掛ける。
19 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/10/01 14:16:11.13 kZE3tdR0o 18/285まどかがここまで強大になったのは
そもそもほむらのせいって情報は伝わってないのかな
22 : ◆USZbC4nXcg[] - 2012/10/01 14:32:10.43 k7+mCUBIO 19/285>>19
まどか契約以降QBとほむらが関わって無いのでQBはほむらのことを大して気にしていません。
23 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/10/01 14:39:27.17 kZE3tdR0o 20/285乙
どうりで絶望してないわけだ
24 : ◆USZbC4nXcg[] - 2012/10/01 18:03:28.12 k7+mCUBIO 21/285改変後どころか滅亡後なんで
ほむらの親や宇宙人を始めとするオリキャラがたくさん出るかと思います。
なるべく濃すぎず嫌われずを意識して書きますがどうでしょう
そしてまどかとさやかは出ません。
あすみ?ここで出してもスレたマミさんにミンチにされるよ。
QB「やることが派手だね」
解体用のハンマーで近所の家のガレージの扉を破壊する。
織莉子「体力を増強された人に追いつくに足で行って追いつけるわけないでしょう?」
「だから車を使いましょう」
壁についた鍵付きボックスを破壊し、中から車の鍵を取り出す。
QB「厳つい車だね。悪路でも走れそうだ。この状況にうってつけかもしれない」
織莉子「燃費が心配ですけど……走れなきゃ意味がありませんよね」
車に乗り込み、外へ飛び出す。
燃費が悪そうな外見だったが、流石元未来都市見滝原、中身はエコカーだった。
QB「人の影も無いね、流石に爆心地だけある。君が生き残ってるのが不思議なくらいだ」
織莉子「……コンビニで食糧を頂戴して行きましょうか」
コンビニの入口にトランクを向けて車を停める。
QB「なりふりかまって居られないね」
調理なしで食べられる物を片っ端からトランクに放り投げる。
QB「ケーキだね、貴重な糖分源と脂肪源だ」
織莉子「最重要は水分です」
「コーヒー、コーラ、お茶、スポーツドリンク、果汁ジュースは確保しておきましょう」
QB「これだけあれば神奈川までは持つんじゃないかな」
「彼女達は最初は沿岸部に出るといっていたよ」
織莉子「気を取り直し行きましょうか?」
見滝原を出て、風見野を通りかかった時遠くで輝きが見えた。
QB「あれはソウルジェムの輝きかもしれない、だが宇宙人かもしれない」
「宇宙人は一応復興を目的に来ているけど、君に何をするかわからない」
織莉子「大丈夫です、お父様の秘書の形見がありますので」
取り出すは巨大な拳銃。
QB「君が撃てば肩が外れるとおもうけど」
織莉子「そんなヤワな身体ではありません。ちゃんと両腕を使えばショットガンも撃てます」
QB「まぁ無事を祈るよ」
車を停め、光の方向へ向かう。
結論から云うとそこに居たのは魔法少女と一般人一人だった。
QB「彼女が生きてるとは……いや、彼女はともかく……」
織莉子「識っているの?」
QB「僕には忘れるということがないからね。契約した相手はみんな覚えているよ」
織莉子「どんな方ですか?」
QB「……典型的な正義のヒーロー型の魔法少女さ。戦闘センスは見滝原の三人に匹敵するけどね」
「もう一人は、彼女の契約の願いで不治の病を治してもらった親友」
織莉子「そうです……か……」
人の為の祈り……しかし、人と言っても結局は赤の他人などでなく、自分に戻ってくるもの。
しかし私には近い人など居ない。
契約の願いを復興に投じても、その私の献身は知れ渡ることはない。
私はそこから生きる意味を見出すことはできない。
ユウリ「ん、生き残りか?」
気付かれたようで、こちらに魔法少女の方が向かってくる。
織莉子「こんにちは、きっと今は昼です」
ユウリ「こんにちは、アンタは……まだ契約してないね」
「未契約がウロつくには危ないよ外は。魔女も魔獣も宇宙人も居るからね」
魔女と宇宙人はわかるけど、魔獣……?
QB「魔獣は呪いの塊さ。一説には世界意思が創り出してる修正力だとかね」
織莉子「でも、私は車ですので……」
そう言った瞬間魔法少女の表情が変わる。
ユウリ「アンタ……車があるのか!?」
急に身を乗り出す魔法少女。
織莉子「は、はい……」
ユウリ「どこかに向かってるのか!?」
織莉子「えっ……沿岸部経由で東京へ……」
それを聞いてとても嬉しそうな顔をし、更に聞いてくる。
ユウリ「ねぇ、乗せて行ってくれないか?」
「二人で助手席に乗る。荷物の邪魔にはならないでしょ?」
QB「彼女は強力だ。食糧なら後からまたコンビニを漁れば良い。死にたくないなら彼女達を連れて行くといいよ」
織莉子「……わかりました」
車の乗組員が二人増え、少し車の中が賑やかになった。
ユウリ「沿岸って聞いてもうピンと来たんだ」
「鎌倉って知ってるよね?いいくにつくろう鎌倉幕府。神奈川の古都なんだけどさ」
それくらい知っている。
三代目将軍が刺し殺された大銀杏の木が近年根刮ぎ抜けたことまで。
あいり「あそこは宇宙人が少ないんだって」
「あそこを護る魔法少女のおかげで、あそこは生き物こそ死んでも建物はほとんど無事みたいでさ」
QB「どこでそんなことを知ったんだい?」
ユウリ「その魔法少女の仲間の遠隔テレパス」
織莉子「とりあえず神奈川を目指せば色々目的を果たせそうですね」
ほむら「遅いわね……」
棺桶から取り出した懐中時計を見ながら呟く。
ほむら「まさか、目標がないからはぐれた?」
「いやいや……」
「もうしばらくここで待ちましょう」
棺桶に懐中時計を戻し、棺桶に手を合わせ再び棺桶に腰掛ける。
宇宙人
魔法少女システムによって生み出されたエネルギーの恩恵に預かっている、もしくは預かる可能性のある、言わば地球より発展した惑星の知的生命体。
名目上地球の復興のために来ているが、彼らの主義主張はバラバラで、人間に対して友好的な者、昆虫、魚類を地球の筆頭種族だと思っている者、インキュベーターを憎んでいる者、人間を見下し危害を加える者、魔女に魅力を感じる者などと様々だ。
現地生物への配慮として現地生物と似た姿を取っているが、これは超技術による手術らしい。
ほむら「あの二人も帰って来ないし、ギターでも弾きましょうか?」
ギターを構え、深呼吸をして、弾き語りを始める。
「何度でも 名前を呼ぶよ━━━━」
ほむら「これは杏子の想いが届いて美樹さんが助かった時間軸に、杏子が作曲して美樹さんが歌詞をつけたものだったかしら?」
「……あの時間軸ではまどかが既に契約していたから私は去ったけれどね」
ユウリ「使い魔なんて轢き殺しちゃえ!」
織莉子「……揺れますよ!」
QB「きゅっぷい!」
三人と一匹、大量の荷物を乗せた厳つい車は大地を跳ね回り、海を目指して進んで行く。
あいり「ユウリ、今お腹痛くならなかった?」
ユウリ「大丈夫大丈夫!」
「それより、キュゥべえ、尻尾がくすぐったいんだけど?」
QB「おかしいな、地球の女性はこういう感触が好きだと統計が出ていたから、君達のケアをしようと思って」
あいり「淫獣」
ごめんなさい、キュゥべえ。
弁護できません。
QB「しかし……ガソリンは足りるかな?」
織莉子「この分だと沿岸部に出るまでにガソリンは切れますね」
メーターは既に下から一つ目の目盛りをさしている。
あいり「普通に走るより使うよね……」
織莉子「……ガソリンを補給しましょうか」
……
QB「どうやってだい?」
織莉子「鳴呼……スタンドが動かないんでした……」
途方に暮れていると、ユウリがソウルジェムを取り出し、注射器を生成した。
ユウリ「これのデカいのを出せば……イケる?」
QB「……それだね」
あいり「でびかる……?」
織莉子「いでみつ」
あまりにも変な言い間違いを即直されたあいりは顔を赤くして縮こまる。
ユウリ「アタシがガソリンを取り出して入れるから、二人は少し外の空気でも吸ってるといい」
あいり「空気もなんか生きてる感じがしないけどね……」
私達は車を出て、各々の方向へ歩いて行く。
QB「ユウリと離れるのは得策ではないと思うけどね」
織莉子「すぐに戻りますよ……」
服を脱ぎ、キュゥべえを鷲掴みにして、炭酸水をかけ身体を拭く。
QB「な、何をするんだ!!」
織莉子「身体が蒸れて仕方ないんです……」
「年頃の女の子が集まる密室で汗の臭いなんてしたら……恐ろしい」
QB「なんで僕を使うんだ……ぎゅぷぷ」
織莉子「貴方の毛皮は肌触りが良いからちょうどいいかと」
QB「第一これレモン香料入りじゃないか……」
濡らさなかった尻尾で濡れた身体を拭き、服を着る。
織莉子「この服も緩くなったような……」
QB「君が食事をきちんと取らな……」
急に話を止めたと思うと、声のトーンを少し変え叫んだ。
QB「何か来るよ!!」
しかし、言った時には既に遅く、私の前にいかにも宇宙人が乗り回してそうな巨大なガラスのタイヤのようなものが停車していた。
コックピットが開いて、持ち主が現れる。
降りてきたのはパッと見地球人の中年男性。
異質なところと云えば、額に三箇所黒子のような物があるのと……
「よう、地球人の女は男とちゃんと差別化されてて良いよなぁ~。俺たちは女でもこんなんよ、フハハハ!!」
笑った時に見えた歯が真っ黒なこと。
「このスタンドからはガソリンが取れるか?」
QB「取り出す器具があればね」
「君が持ってるとも思えないけど」
QB「……彼らは蜂男、大半は生殖機能を持たないけど、何故だか女を侍らせることが好きでね、異星人の女に手を出す為だけに宇宙進出したのさ」
織莉子「……地球人のパソコンのセキュリティの発展みたいですね」
QB「乗り物と兵器以外の文明レベルは地球と大差ないよ」
QBは私の肩に乗っかり、尻尾で頭を撫でてくる。
もう先程の水分は乾いている。さすが最高級の毛皮だ。
蜂男「でもお前さん達はガソリンの補給をしてるからここにいるんだろ?」
「器具を貸してくれないか?」
QB「害も無いけど得も無いね、織莉子、君が決めるといい」
蜂男「頼むよ……お前さん良い女だ、そして良い女ってもんは優しいもんさ」
なんだかおちょくられてる気分だ。
QB「こういう時はふっかける物さ」
「良い男って物は振り回そうとする女も手玉に取るらしいからね」
蜂男「お前さんがそんなこと言えるとはね。まぁその理屈で言ったらお前さん達は相当良い男なんだろうね」
QB「僕達に性別の概念は無いよ」
蜂男「それ言ったら俺もだろうが」
……
織莉子「良いでしょう、まず補給をしましょう。車を持ってきてください」
「条件は後で良いです」
蜂男「ふっかけんなよ……地球来るだけでもかつかつなんだからさ」
ユウリ「ん?どうした織莉子?」
「もうそろそろ終わるよ」
織莉子「その……あの宇宙製の車にも補給をお願い出来ますか?」
ユウリ「わかった。そいつは敵じゃないよね?」
織莉子「恐らくは」
巨大な注射器を、穴の空いた地面に差し込みガソリンを吸い上げ、車のガソリンタンクに注入する。
織莉子「ところで……」
ユウリ「ん?」
織莉子「車の運転はできますか?」
ユウリ「ここでお別れか。車と食糧ありがとね!」
あいり「気を付けてね」
……
QB「こっちに乗り換えるとは思わなかったね」
織莉子「速い方が良いと思いましてね」
蜂男「これが条件か……嬉しい条件じゃねえか」
「俺は地球の女を車で乗り回したかったんだよ」
タバコらしき物を吸っているが、不快な臭いはせず、香ばしい匂いがする。
QB「……年頃の娘にその煙を吸わせるのは辞めてくれないかな?」
蜂男「おっとすまねぇ」
「えーっと……沿岸部だったか?」
織莉子「はい……三人組の女の子を探しています」
蜂男「人探しかァー……気が滅入るねぇ」
吸っていたタバコもどきを飲み込み鼻から煙を出す。
マミ「随分遠くまで来ちゃったわね」
杏子「これじゃ夜……いや、『夜』までに帰れないな」
魔女を探して歩いているうちにほむらと大きく離れてしまった。
マミ「『夜』って本当にあるのかしら?」
杏子「……風見野の魔法少女が一人やられたよ」
「あいつは心臓の毛が生えてるから死にゃしないと思ってたけどな」
そう言った杏子の表情は『ざまぁみやがれ』と言ったもので、哀しむものでは無かった。
マミ「だとしても何故来るとわかるの?」
杏子「ほむらが言ってたよ。あいつはまどかの呪いや、魔女の呪いが云々でわかるんだとか」
「どっか宿を取らないとあたしらが危ないね」
マミ「そう……」
更に暫く歩いたところで、大きな影が見えた。
杏子「……ホテルだな」
マミ「恐らく発電機や貯水タンクはあるはずね」
槍を取り出し入り口をこじ開ける。
杏子「ってことは久々に魔法以外で身体を洗えるのか…!」
嬉々として階段を駆け上がっていく。
マミ「暁美さんには悪いけど……」
「羽を伸ばさせてもらいましょうか」
杏子「ほーっ!フカフカのベッド!」
「いつぶりだろうなぁー……」
マミは別の部屋で寝るらしい。
スイートルームを一人一部屋だなんて贅沢な話だ。
杏子「先ずは風呂だな!」
服を脱ぎ捨て、風呂場に駆け込む。
「……」
シャンプー、リンス、ボディソープが何種類もある。
杏子「これはトニックで……これはヘアケアか……」
「うわっ、なんだこれ…嫌らしいヌルヌルだな……一応ヘアトリートメントなのか……」
徹底的に全身をくまなく洗い、湯船に浸かる。
杏子「ふぁー……生き返るー……」
「……」
ドライヤーは電力消費が激しいらしいからタオルで徹底的に水分を取ってから軽くかける。
杏子「まぁ、トリートメントもやったし大丈夫だろ」
ドライヤーで乾かしきれなかった分は諦めて、あたしは布団にダイブした。
おやすみなさい。
「……」
杏子「ふぉぁぁ……」
ベッドで伸びをし、寝返りをうつ。
「やっほ」
杏子「のわぁっ!!?」
あたしの隣に誰かが寝ていて、あたしを見開いた目で見つめてやがった。
よく見るとそいつは二股に別れていて紫がかった黒髪にカチューシャ。
杏子「なんだほむ……いや、なんでお前がここに!?」
ほむら?「ほむっ!?それ良い響きね、私の新しい名前に貰おうかしら」
何を言ってるのかわからないのは、あたしがねぼけてるからでは無いはずだ。
杏子「第一……なんで服着てないんだよ!」
ほむら?「私は服など持っていないわ」
髪をかきあげる。すると辺りに何やら妖しい匂いが漂う。
杏子「どうしちまったんだよ……とりあえずこれ着な、無いよりはマシだろ」
パステル紫のバスローブを渡す。
ほむら?「ありがとう……あんこ」
杏子「あんこって呼ぶな!」
「ん?……なんであんたあたしがあんこって呼ばれてたこと知ってるんだ?」
「第一あんたなんかおかしい……本当にほむらか?」
目を細めて、疑ってかかる。
ほむら?「いえ、私は貴方のいうほむらでは無いわよ」
あっさり認めやがった。
ほむら?「私は地球外から来た……名前はさっき付けたので『ほむほむ』ね」
「貴方の記憶から姿を作らせてもらったの」
バスローブ一枚羽織ったほむら擬きはあたしに顔を近づけ語る。
杏子「それで……宇宙人があたしになんの用だ」
低い声で脅す様に聞く。
宇宙人は警戒しなくちゃならない。
宇宙人に殺された奴だっている。
ほむほむ「いえ……大したことじゃないのよ……地球に行けるっていうから来たのに人が居ないからガッカリしたところに、見つけたから部屋に上がり込んで覗いて添い寝してただけよ?」
杏子「……何がしたいんだよ」
訳がわからない奴だな……
ほむほむ「地球の女の子って可愛いじゃない?あぁ……私あんこちゃんに会えてよかったわ」
「ほむっ!」
そいつは抱きついてきてあたしの髪に顔を埋める。
杏子「ばっかやめろ!」
ほむほむ「ここで楽しまないのは運命への冒涜よ!」
杏子「おい!やめてくれ!」
そいつの吸気や鼻のてっぺんが肌に触れてくすぐったい。
ほむほむ「……ほむほむ……やっぱり良い匂いがするわ……」
元々着崩れていたホテルの寝巻きは殆ど脱がされ、あたしはこいつに好き放題嗅ぎ回られて、撫で回されている。
杏子「やめてくれよぉ……」
流石のあたしも泣きそうだ。
マミならとっくに泣き出している。
恐らく本物のほむらでも泣くだろう。
……
ほむほむ「ありがとう、これで当分戦えるわ」
杏子「あたしは当分立ち直れないよ……」
とりあえずマミに会いに行こう。
こいつは放っておいてな。
蜂男「俺はな、兵器の方はトンチンカンだけどな、乗り物の方に関しては……」
よく喋るおじさんだ。
QB「良いかい織莉子、口説き落とされちゃダメだ。あくまでも公平な条件でないと君はバカを見る」
「魔法少女はそのバカを見るところから魔女化してもらってたんだけどね」
蜂男「ひっでぇ言われ様だな。俺は単にお喋りを楽しみたいだけなのに」
QB「君のお喋りっていうのは自慢話じゃないか。地球人はそういうのに辟易しやすいことを覚えておくと良いよ」
地球に来る宇宙人とはやかましいものである、覚えておこう。
蜂男「流石有史以来食い物にしてきたインキュベーターさんだ、詳しいな」
蜂男「でもよ、人探しなんてしてそいつとどうするんだ?」
「家族かなんかか?」
織莉子「いえ、家族は『救済』以前に亡くなってます」
「自分の街の魔法少女三人に会って、話さなければならないことがあるのです」
QB「ユウリは綺麗すぎるからね」
「絶望に近い中ずっと生き抜いている彼女達なら参考になるだろう」
宇宙タイヤはジープ擬きの三倍以上のスピードで大地を駆ける。
蜂男「どうだ、外の風景が……そんな変わらないな、ゴメンよ」
QB「水分補給はしておくべきだよ。眠るならコーラやお茶は避けて……」
三ツ矢サイダーを取り出し、一気飲みする。
織莉子「……」
蜂男「オイ……冗談だろ?炭酸一気飲みしてなんで平気な顔してるんだよ……」
織莉子「なんでと言われても……」
何も不都合は無いのだけれど……
QB「今のは褒められた行動ではないよ。糖分たっぷりの炭酸飲料を一気飲みすれば急性の糖尿病になるかもしれない」
野暮な獣だ。
蜂男「俺なんかよりお嬢さんの方がワイルドなの…」
QB「まずいコトになったかもしれない!」
野暮な獣が叫ぶ。
つくづく野暮だ。
私が眠りにつこうとしているのに。
蜂男「どうした」
QB「『夜』だ……」
「その道を進んではいけない!」
それを聞いた蜂男はため息をついて答える。
蜂男「あのなぁ…俺はな、一度決めた道は変えない主義なんだ。それにこのマシンがあればそんなもん通りすぎてやるさ」
QB「……織莉子、降りよう」
「戦闘力の無い僕らでは危険すぎる」
……こういう場合は感情にとらわれていないキュゥべえを信用したほうがいいはず……
織莉子「すいません、ここで降ろしてください」
蜂男「……仕方ねえな、お前さんがそんな腰抜けだと思わなかったよ」
QB「あくまでも論理的に考えた結果だ」
蜂男「うるせぇ、降りるなら早く降りろ」
私達は足早に車を降り、振り返った時には宇宙タイヤは走り去って行く。
織莉子「『夜』とは……なんでしょうか?」
QB「……救済の魔女の使い魔と魔獣の戦いだ」
「通常使い魔は本体の魔女が死ねば消滅するんだけど、救済の魔女の使い魔はあまりにも魔力が大きくて消滅できなかった」
織莉子「……しかし本体が存在してない使い魔は存在してはならない」
QB「そうさ、そこで世界の修正力たる魔獣が現れるわけだ。しかし彼らも呪いでできた存在、決着がつくことはない」
「ひとしきり暴れたら散って行ってまたどこかで暴れるようだね。そしてそれは毎回夜に起きるから『夜』ってわけさ」
織莉子「でも、どうして世界の修正力は呪いだけじゃないでしょうに、魔獣の方が出てくるのでしょう?」
「もっとこう……天使とか……」
QB「簡単な話さ。『救済』だからだよ」
「死の反対が生とは限らない」
「魂を吸い上げられ死ぬことの反対は、謎の光線で風穴を開けられて死ぬっていうことなんだろうね」
こいつらのシステムも大概だが、世界も残酷だ。
遠くで爆発が起きる。
風に運ばれてきたのはガソリンの臭い。
QB「いわんこっちゃないよ」
「あの意固地さなら契約の素質があったかもしれないね」
だったら私達少女じゃなくて、昭和一桁の九州男子達と契約して欲しかった。
織莉子「あちらの方角は危険なんですね」
「ではあちらを避けて通りましょうか」
QB「歩きになるとはね」
白い一人と一匹は重い荷物を担いで歩いて行く。
マミ「あら、暁美さん来たの?」
杏子「騙されんな、こいつはあの硬派なほむらなんかじゃねえ」
「人を押し倒して脱がして全身嗅ぎ回る変態宇宙人だ」
ほむほむの頬をつねりながら不機嫌そうにマミに話す。
ほむほむ「始めましてマミ、貴方って腹が出てそうな顔してるのに、凄い引き締まってるのね」
「あ、顔が太ってるって言いたいんじゃないわよ。でもなんか雰囲気的にね……」
……
マミ「暁美さんに言われてるみたいで凄い嫌ね……」
ほむほむ「私はこの姿が気に入ってるの。雪の様な白い肌、焔の様に赤い頬、さらさらなのに埋もれたくなる髪、紫水晶の様な瞳」
「頸から上が凄い気に入ってるわ。そこから下ならいくらでも変えてあげるわ。あぁ…早く本物に会いたい……」
語りつつ身体のパーツを変形させる。
杏子「あたしの下半身……」
マミ「私のお腹……」
杏子「この胸は……ユウリか」
マミ「んでもって腕は……美樹さんね」
ほむほむ「うーん……尻はやっぱりその子の方が良いかしら?」
マミ「美樹さんのお尻は犯罪的よ!!」
杏子「その下にあたしの痩せた脚って……」
バスローブをはだけ完成した身体を見つめ満足気になる宇宙人
ほむほむ「うーん、これぞ私って感じがするわ」
「私に本当の姿なんて無いけど」
知り合いの顔をしたよくわからない宇宙人相手に困る二人。
杏子「つまりあんたはなんだ、本当に女漁りにだけに地球に来たのか?」
ほむほむ「そうよ、お父さんにくっついて来たんだけど、お父さんは復興事業で忙しいから私は流々浪々することにしたの」
髪をかき分ける。本物のほむらですら回数が思われがちだが、こちらはあちらの比では無い。
マミ「何この妖しい香り…!」
ほむほむ「良い匂いでしょう?」
マミ「すごいいやらしいわ……」
杏子「もう魔女は諦めるとしてさ、ほむらと合流しないとな」
ほむほむ「私もその『ほむら』に逢いたいわ。早く会って…」
杏子は続けようとするほむほむの口を塞ぎ話を続ける。
杏子「しかしこいつをいきなり会わせるわけには行かない」
「そしてこいつはあたしを離れない」
マミ「私が迎えに行くのね」
「わかったわ」
杏子「場所はわかるか?」
マミ「……自信はないわ」
「でも行くしか無いわね」
あたしと変態宇宙人はマミを見送り部屋に戻る。
杏子「なぁ、あんたあたしの記憶を覗いたって言ったよな?」
「どこまで見たんだ?」
少し威圧気味に言う。
知られたくない過去があるから当たり前の反応だ。
ほむほむ「会ったことのある物の外見しか見れないわ」
「それに貴方が本気で怒る様な姿にはならないわ。だって……」
変態はあたしの顎を触り、囁く。
ほむほむ「貴方に本気で嫌われたくないから」
……
ほむほむ「痛い……」
杏子「セリフ一つだけでムードが出来ると思うなよ」
ほむほむ「ねぇ、あんこちゃん」
杏子「本当はあんた他の記憶見えてただろ?」
ほむほむ「とんでもない、寝言で『あんこじゃねぇ……』って言ってたから」
杏子「じゃねぇって言ってるじゃねぇか!」
ほむほむ「じゃあ……」
またあたしの顎を触り
ほむほむ「杏子……」
杏子「……ッ」
……
ほむほむ「痛い……」
杏子「顎をベタベタ触るなんて誰が教えた」
妙な奴だ。
最初に来たのがキュゥべえとかじゃなくて、こいつみたいなのだったら……
QB「魔法少女がこの近くに居るよ」
「この薄汚れた感じは……」
「見滝原の魔法少女だ。しかも彼女に一番始めに会うとはラッキーだね」
どうやらアタリの様だ。
しかし、何故一人なのだろうか?
三人で出たのではないのだろうか?
QB「元々三人とも単独行動の多い魔法少女だったからね」
……
……
QB「居たよ」
棺桶に腰掛け、ギターを弾く少女。
黒紫のローブが一般的に言う魔女を彷彿とさせるが、本人は流浪の民の服だと思っているだろう。
織莉子「貴方が……三人組の一人」
ほむら「……美国織莉子?」
「……どうして私だけが生き残ってるの?」
「街には変な人間じゃないのがちらほら居るだけだし……」
おさげの少女が逃げ込んだのはとある倉庫。
QB「おや、まだこの街に人間は居たのか。プレイアデス聖団が宇宙人と逃げて、飛鳥ユウリ達が鎌倉に向かったからもうもぬけの殻だと思ったんだけどね」
「あんたは……」
QB「僕かい?僕はキュゥべえ!あすなろ市担当のインキュベーターさ。君は……」
「聖カンナ」
92 : ◆USZbC4nXcg[] - 2012/10/02 19:53:06.51 N4cxh3PIO 65/285まとめ 下に行くほど南
カンナ あすなろ
ほむら&織莉子
あいり&ユウリ ジープ擬き
マミ
杏子&ほむほむ ホテル
93 : ◆USZbC4nXcg[] - 2012/10/02 20:04:31.26 N4cxh3PIO 66/285ちなみに聖=ひじりね
オリキャラじゃないよ、かずみに出て来る子だよ
ほむほむ
どこぞの木星型惑星の衛星の生命体。
名前が無かったのは姿が皆同じ不定形のため、個の概念が無かったため。
彼女の父親というのも、本当に父親かどうかは怪しい。
他の生物に会ってからは話が別で、その生物の記憶を読み取り、それにある姿を継ぎ接ぎにして自分の姿を作る。
種族全体のことはわからないが、彼女は地球の女の子が大好きだそうで、そのために来た様だ。
名前の由来は、杏子が驚いた時に発した「ほむっ!?」
現在の外見は
頸から上はほむら
胸から上はユウリ
腹部はマミ
腕と尻はさやか
脚は杏子
ほむら「まさかこんなところで貴方と会うとは……いえ、その前に貴方が生きてるのが驚きね」
この人は……
織莉子「私を知っているのですか……?」
期待を込めて問う。
ほむら「少しね。私の知ってる貴方は……『救済』が訪れない為に元の少女を殺そうと奔走していたわ」
……
織莉子「その私は……本当に私なのですか?」
確かに『救済』のことがわかっていれば、私はそれを止めることに奔走しただろう。
しかし……鳴呼
織莉子「いえ……その私は魔法少女でしたか?」
ほむら「ええ、予知の使い手だったわ」
……成る程。
彼女の話は初っ端から疑問点だらけだ。
まずその『私』とは何者だろうか?
私のそっくりさんが居たかもしれない。
だが、彼女は私の名前を呼んだ。
……もう一つ質問をしましょう。
織莉子「……その私は…どうなったんですか?」
少し間を置いて彼女は答える。
ほむら「最期の力で……目的を遂げたわ」
答えは出た。
これは他の世界の話。
魔法少女の私が世界を救い最後は散る。
……
ほむら「でも彼女、世界より大事な物見つけたみたいだったわ」
「でも見つけた時には既に失っていた」
……
私の願いは「私の生きる意味を知りたい」のままだろう。
私が世界を救うために動いたというのは、恐らく誰かに存在意義を認めて欲しかったから……
となると最後に知ったのは……
ほむら「ねぇ、一曲聞いてくれない?」
ギターを構えなおし、弾き始める。
フラメンコとかその辺りだろうか……
表情と違って情熱的だ。
……何か引っかかる。
ほむら「なんか煮え切らないようね」
「右目は開けないわよ」
織莉子「いえ……私が気になるのは……」
私が指差したのは彼女の右手。
……
ほむら「……これはギターを弾きやすくする為のピックみたいな物よ」
いや、明らかにおかしい。
ほむら「あんまり気にしないことよ」
「知り過ぎても、良いことなんて無いし、いずれ全てしることになるわ」
そう言って彼女は演奏に戻る。
それは全体のことを言っているのか、それともあの右手のことなのか。
QB「おや、あのことは誰にも話さないつもりかい?」
ほむら「ええ、今は少なくともね」
あのこととはなんだろうか。
ひっかかってたことをいつのまにやら忘れて……
ほむら「これを教えるのは……そうね……、貴方がある程度仮説を立てられるようになったら教えるわ」
ほむら「それで……私に会いにきたからには何か用があるんでしょう…?」
ギターでリフを弾きながら、語りかける。
縫い付けた様に右目を開かないまま、左目で私の目を見る。
ほむら「……わかったわ。貴方、何か迷っているわね」
QB「契約の願いがあまりにも抽象的だから断ったんだ」
「そういう願いで後で後悔して魔女化されたら復興の邪魔になるからね」
日本は復興出来るのかわからないが、私も死ぬのはごめんだ。
ほむら「へぇ……じゃあ願いを聞かせてごらんなさい」
織莉子「……私の生きる意味を知りたい」
それを聞いた暁美さんは手を止める。
改めて見るとやはりおかしな爪だ。
ギターの弦が切れないのが不思議なくらい。
ほむら「……」
いきなり、ジャカジャカ弦を掻き鳴らし、ボディを叩きながら軽快な音楽を奏で始める。
ほむら「ねぇ……インキュベーター」
QB「なんだい?」
ほむら「あなた……あなたなりの答えをまず……教えてあげなさい」
音楽に乗せ、話を振る。
右目は閉じたまま、否、綴じたままと言った方が良いだろうか。
その状態だが、表情はミュージシャンの物であった。
QB「僕かい?僕は……いや、僕達はね……」
キュゥべえまで音楽に乗せて語り出す。
不思議と茶化されてる気分にはならない。
QB「そもそもそういう……疑問は抱かないんだ」
「生きる為に生きる……そんなところだろうね」
「君達と違って…個の概念も…感情も……ないからね」
キュゥべえが話し終えると、再び激しく弦を掻き鳴らす。
織莉子「……ミュージカルですか?」
ほむら「生きる為に生きる……それも一つの正解かもしれないわ」
「特に意識…していない人は…それに含めても…良いかもしれないわね」
妙なソロを入れ始める。
キュゥべえが変なステップを刻み始める。
QB「音楽を奏でたり聴く少女はこうすると喜んでいたんだ」
ほむら「……まぁ嬉しくなくはないわね」
ほむら「私の生きる意味と云うのは……私が死んでることを…前提にして聞いて欲しいのだけれど」
ボディを叩くのをやめ、弦だけの演奏に切り替えた。
何を意味するのかは理解出来ない、というかさっきからこの人は何をしているのだろうか。
ほむら「生きるというのは……戦い続けること」
「昔読んだ漫画の受け売りよ」
暁美さんは死んでいる……
つまり、戦うのを辞めたということ……
ほむら「そして、私は……二つ目の約束を果たす為に…生きることを誓ったの。これは本来の意味ね」
「私の戦う相手はここには居ないから」
急に曲調を静かに変える。
ほむら「杏子もマミもキュゥべえとそんなに変わらないと思うわよ」
「……彼女はどうかわからないけど」
ほむら「どうかしら?力になれたかしら?」
……他人からの見られ方を気にしてきた私と、一人で居た彼女や他人を気にしないキュゥべえとの間には大きな隔たりがあるようだ。
QB「煮え切らない様子だね」
ほむら「まぁ、仕方ないかもね」
「あなたは他人に必要とされたいたいタイプだったから」
空気が重くなる。
曲調も変わっている。
ほむら「……カスタネットの踊り子が居ないからギターも退屈だわ」
「貴方、少し踊れるかしら?カスタネットなら貸すわよ?
……
ほむら「普通嫌よね」
「じゃあ暫く考える時間にでもしましょうか?」
……
要するに彼女はここに生きる理由は無いけれど、生きる理由はあるから生きると言ったところだろうか。
私は戦うべき相手など元よりいなかった。
居るとすれば、『美国の娘』という看板。
今はもう無い。
……
ほむら「私は本来の戦いの場に出る力も失ってしまったから、本当に生きる為に魔女などと戦うだけになってしまったわ」
……
考えるといえばもう一つ。
最初に考えろと言われた彼女のこと。
おかしな右手や、開けない右目。
失った力、そして力が無いにも関わらず生き残っている辺り代わりの力がある……?
よくわからない人だ。
QB「弱ったな……『夜』が来るよ」
織莉子「もう夜明けなのにッ!?」
ほむら「……」
遠くは無い距離に背の高い僧侶のような物がわらわらと湧いてくる。
そして私達を挟んで反対側には腕を広げた黒い影が現れる。
ほむら「……魔獣と使い魔ね。私は戦いたくないから逃げようと思うけど、貴方は……逃げられないわね」
この人は死刑宣告でもしているのか?
あまり直球すぎて戸惑う。
化け物達は私達に段々近づいてくる。
ほむら「さっきのシンキングタイムで仮説は立てられたかしら…?」
織莉子「こんな時に何を…!」
半ばパニックを起こしてしまう。
彼女はまだギターを弾くのを辞めない。
ほむら「私を理解できない人間に『私達』の力は見せたくないの。グズグズしてたら私はジャンプでこの場を去るわ。棺桶担ぐので精一杯だから貴方は諦めて頂戴」
織莉子「ひとでな……」
ほむら「私はもう人ではないわ」
……
散らかった頭を高速で整理して考える……
右目…右手……『私達』……
織莉子「……右半身は貴方の物ではなく、他人の物ですね?」
ほむら「……60点、単位認定は貰えるわよ」
ほむらを紫色の光が包み込む。
マミ「そういえば……暁美さんのあの棺桶って中身はなんなのかしら?」
「ちょくちょく懐中時計とかを取り出してるけど……」
「絶対もっと大きいもの入ってるわよね……」
「今思うと見ておけば良かったわ……」
紫と白を基調にした学生服のような衣装に変身する。
ほむら「私達が分け合ったのは身体じゃなくて」
今まで一切開けなかった右目を開く。
きゅろろ
そこにあったのは明らかに人間のものではない目玉。
ほむら「魂だ」
織莉子「ッ!?」
QB「皆には内緒にしているらしいんだけどね、今いる暁美ほむらは暁美ほむら一人ではないんだ」
棺桶から紫色の靄が現れ、右目に吸い込まれる。
今度はほむらの身体が闇に包まれる。
QB「あんな特殊な願いは前例は無かったよ。まぁエネルギーは合計一人分とれたから良いけどね」
先程の衣装に加え、リボンの巻かれたシルクハットを被り、手には長い鉤爪。
ほむら「『夜』か、腕がなるね!」
腕を広げ化け物の群れに突っ込む。
光線を飛ばしてくるのを、あろうことが爪で遮る。
ほむら「私の爪には斬るという概念が少し強く乗っていてね……」
「光を斬ることも少しならできる!」
そのまま更に進み、化け物を爪で撫で、別の化け物に爪をねじ込み、次のものをかつら剥きにして……
ほむら「魔獣は粗方片付いたね」
「合流する前ならこんなにも脆い」
後ろを振り返ると使い魔が何か呻いている。
ほむら「君が拒絶したのに、今更呼びかけるなんて調子が良いんじゃないかな?」
「根性を叩き直してあげよう」
爪の本数が増え、足にも鳥の様に踵に一本、爪先に三本の爪が生える。
ほむら「行くよノロマ」
空間に何やら透明、でも空間が歪んで何かがあることがわかるような物が打ち出される。
それをジャンプで避け、逆立ちで着地する。
そこから腕をバネのようにして、使い魔に飛びかかる。
ほむら「ほら遅い」
上から爪を刺し込み、もう片方の手の爪を抜き刺しする。
ほむら「随分一方的だね!!」
バック宙で使い魔から一度遠ざかり、再び使い魔に飛びかかる。
今度はドロップキックか。
いや、確かにドロップキックを決めた、しかし本命はそちらではなく……
ほむら「……捕まえた」
足の爪で相手を掴み、膝蹴りを喰らわせる。
ほむら「膝に爪が出ないのは残念だ」
後は無力にも爪で葬られるのをみているだけとなった。
ほむら「全く……これがあの二人ですら苦戦するかもしれないなんて嘘くさいね」
QB「激化する前に倒したからだって自分で言ったじゃないか」
ほむら「そうだっけ……まぁどうでもいいか」
話し終えると元のローブにギターの格好に戻る。
そして私に顔を近づけ……
ほむら「……君」
「魅力的な風格を秘めてる」
「私とは仲良くできる気がするよ」
そう言って微笑んだ。
ほむら「うーん、私はクラシックギターよりエレキギターの方が好きなんだよなぁ」
棺桶を漁る。
中は見かけより広いようだ。
ほむら「こんな大層な物だけど大した物入ってないんだよ。呉キリカの身体は入ってるけどね」
「あった!」
取り出したのはZO-3と呼ばれるスピーカー内蔵のエレキギター。
QB「電池はあるのかい?」
ほむら「……」
取り出したばかりのギターをしまい込む。
ほむら「じゃあこっちだ」
今度はエレキベース。
ほむら「生音で我慢しよう」
スラップ演奏を始める。
こっちも同族か。
軽快なスラップベースの演奏にのせ再び会話が始まる。
QB「キリカ、君は…どこまで聞いていたんだい?」
ほむら「そうだな……ある程度は…ある程度は聞いていたけれど……」
「私は…私は君から直接聞きたいね」
この状況は他の人が見たらイライラすると思う。
織莉子「……私は…私の生きる意味……それを…それを知りたい」
ペースに飲まれて来た。
他の人にあったときにこれが出ないことを祈る。
QB「だそうだ……だから…キリカ…君の意見を…聞かせてやったらどうだい?」
ほむら「私の生きる意味かい?」
「状況を見れば…わかると思うけど」
「ほむらに生きてもらう、それが私の…私の生きる意味だ」
ほむら「少し昔話をしようか」
QB「君の話そうとしてる話は決して昔話ではないと言い切れるね」
ほむら「二週間前は昔に入らないか……」
ベースの音色が単音弾きに変わる。
ほむら「これは、とある三人の愚か者のお話━━━━」
━━━━
ところは変わってあすなろ。
カンナ「ッ……!」
逃げ込んだ倉庫をよく見渡すと似た外見の少女が12人。
皆虚ろな表情だ。
QB「プレイアデス聖団、彼女達の負の遺産さ」
「人造魔法少女、彼女達は人間ではなく……いや、君にはまだ何も話して居なかったね」
「この地球を滅ぼしたのは魔女という……君たちでいうところの放射性廃棄物だね。それの巨大なものだ」
……
インキュベーターは魔法少女システムについて語り出す。
カンナ「何それ……あんたらが地球滅ぼしたようなものじゃない……」
QB「それは違うね。あくまでも滅ぼしたのは鹿目まどかさ」
カンナ「放射性廃棄物剥き出しで放置したあんたらが何言ってるの……」
「それに地球を滅ぼす必要なんて無いじゃない……産まれてすぐ殺せばこんなことには…!」
QB「それは地球人の責任だろう?」
カンナ「━━━━ッ!!」
目の前の小動物に殴りかかろうとする……が
カンナ「辞めた……ここであんたをブン殴っても何にもならない」
QB「冷静だね」
カンナ「よっぽど人をおちょくるのが好きなんだな…!」
QB「しかし、さっきの話には続きがあるんだ」
「とある少女の願いでね━━━━」
今度は現在の地球について話し始めた。
QB「そしてこの子達はあすなろの魔法少女の徒党が魔法で作り出した人造人間さ」
「理性が保てないとかで、彼女達は失敗作と判断したようだけど」
……
QB「どの道人間が一人で生き残るのは難しいと思うよ」
カンナ「……コネクト」
「この子達と繋がる力が欲しい」
QB「……契約成立だ」
眩い光が包み、ソウルジェムが生まれる。
ほむほむ「ねぇ、あんこちゃん」
杏子「……なんだ」
ほむほむ「あんこちゃんって呼んでも怒らなくなったのね、嬉しいわ」
杏子「突っかかる気力も無いんだよ」
「真面目な顔をしてとんでもないことしでかすもんだからな」
ほむほむ「とんでもない……?そこまでかしら?」
杏子「相当だよ。初対面相手に服脱がすなんて滅亡前ならブタ箱行きだよ」
ほむほむ「滅亡前に来たときのために覚えておくわ」
杏子「あたしどころか地球まで馬鹿にしてるよなあんた?」
ほむほむ「そんなことないわ」
杏子「やめろ!髪からいやらしい匂いがする!」
ほむほむ「ところで本題なんだけれど」
杏子「あぁ」
ほむほむ「貴方達は何か目的を持って行動しているの?」
杏子「まぁ……東京に向かってるよ。その顔の奴の親に会いにな」
ほむほむ「生きてるの?」
杏子「……望みはあまりない」
「でもそれ以外は漠然と『生きる』ということしかきまってないからな」
ほむほむ「……そう」
「生きてると……良いわね」
「漸く辿り着いた刻にその希望が打ち砕かれた刻は……」
杏子「誰かしら魔女になるな」
ほむほむ「まぁ貴方達のことを差し引いても、私も生きていて欲しいと思うわ」
杏子「優しいんだな」
ほむほむ「そんな綺麗なものじゃないわ。この子の母親はさぞかし美人なんだろうなって思ってね」
少し微笑み、髪をかきわける。
そういやあいつの笑った顔、見たことないな……
いや、笑えないか。
ほむほむ「どうしたのボケっとして。髪の匂いの虜になってしまったかしら?」
杏子「あんたじゃないんだよ」
ユウリ「あいり、気持ち悪くなったら言ってね?」
あいり「大丈夫……」
注射器型の武器を装着した車は只管進む。
南へ南へ
ユウリ「織莉子が案外物を残してくれたのは良かったな……」
あいり「……あそこに誰か居る」
ユウリ「……地球人だな」
マミ「暁美さんどこまでおいてきちゃったのかしら?」
まどかに否定された。
私を、私の祈りを、私の憧れたあの『まどか』を。
美樹さんが唖然とする中、私に見せつける様に契約された。
ループのことも話した。しかしそれは彼女の心には響かず、むしろ私を立ち直れなくする原因となった。
その後は気絶してしまった様で、次に目覚めた時には美樹さんの家のベッドだった。
さやか「起きた?」
ほむら「……うん」
さやか「……それがあんたの本当の性格か」
ほむら「……」
さやか「さっきの……本当の話だよね」
「ねぇ……前のあたしってどんな感じだったの?」
ほむら「……さっきのまどかみたいに話を聞いてくれずに最期は……」
「魔女になることが多かったわ」
さやか「……そっか」
「ん?魔女?」
ほむら「ソウルジェムにはキュゥべえが教えてくれない秘密があってね、私達魔法少女の魂はこれにとじこめられていて、身体は抜け殻」
さやか「……まるでゾンビじゃ…あ、ごめん……」
ほむら「良いの、私を表す言葉としてちょうどいいくらいよ」
「そして、これは魂なら当然精神状態が悪くなると濁る。魔法を使うだけが濁る原因では無いのよ」
さやか「まぁ空になるとかじゃなくて濁るってのもよく考えれば……」
ほむら「ほら、七割くらい濁っているでしょう?」
さやか「……グリーフシードはあるの?」
ほむら「あるわ。使うかは別にして」
「そして最後の秘密は、濁り切ったソウルジェムは砕けてグリーフシードになる。魔女が孵るわ」
さやか「……だから魔法少女になるなって」
「マミさんはこのことを知ってるの?」
ほむら「知らないわ。この辺りの魔法少女で知ってるのは私だけ。契約してればの話だけどもう一人知ってるのが居るわ」
「巴さんは教えても信じてくれないか、自殺するのどっちかよ」
さやか「……」
ほむら「孤独に耐えて無理にヒーローを気取って魔女と戦っていたのに、自分が魔女になるなんて耐えられない、というのが彼女の反応」
さやか「マミさん……」
一呼吸置いて続ける。
ほむら「そして、こんなこと言いたく無いのだけれど……まどかが魔女化したら地球は滅びる、言わば魔法少女のまどかは地球破壊爆弾よ」
さやか「ッ!?」
「それじゃあ……近い内に地球は……!」
ほむら「えぇ……だからまどかを殺すといっていた魔法少女も居たわ」
「事実まどかのソウルジェムを濁り切る前に破壊しないと、地球は滅びる」
さやか「でも……」
ほむら「自分の友達と同じ顔をした人間を殺せるかしら?いいえ、出来っこないわ」
さやか「……同じ顔…か」
「あたしもまどかを殺せって言われても……できないだろうね」
「世界滅亡がパッと来ないとかじゃなくて…なんだろ……」
ほむら「それが普通よ」
さやか「……で、あんたはこれからどうするの?」
ほむら「……もう心が折れてしまったわ」
「もう魔女一匹満足に狩れないかもしれない」
さやか「それじゃあ魔女に……」
ほむら「ええ、でもどうせ弱いでしょうね」
さやか「いや、そう話じゃなくて……」
ほむら「私のことは問題ではないわ。どうせまどかが魔女になったら皆死ぬもの」
「……ソウルジェムが耐えられたら親の顔でも最期に見ておきたいかしら?」
さやか「……ゴメン」
さやかは唇を噛み締め、続ける。
さやか「あたしはあんたの宿命を背負うことも、まどかを殺すこともできない……ゴメン」
ほむら「良いの、貴方が最後に話を聞いてくれただけでも嬉しいわ」
私は美樹さんの家を後にした。
……
最後に美樹さんが話を聞いてくれて良かった……
今日はハコの魔女が現れる日……
……おかしい
廃工場近くに居るのにまどかの気配も巴さんの気配もしない……
仁美「あらぁ?暁美さん、ごきげんよう……」
ほむら「……ッ!!」
仁美「私達はこれから素晴らしい場所に参るのですわ……」
ハコの魔女の口付けは強力だ。
物理的には弱いが、精神系はもしかしたら通常の魔女の中ではトップクラスかもしれない。
仁美「暁美さんもいかがでしょう?」
鳴呼、ここで正気を失って死んでしまうのも良いかもしれない。
ほむら「……ご一緒するわ」
このまま死んでもいいと思いつつ、廃工場の中へ進む。
なんだったら漂白剤を取り上げて一気飲みしてやろうか……
「こんな小さな工場一つ守りきれない俺に何ができる!」
もうすぐ始まる……
魔法少女の気配は無い。
コンビ結成記念パーティでもしているのだろうか。
……?
一人様子がおかしいのが居る…?
キリカ「……嫌、どういうこと……」
「そんなもの混ぜたら……」
……未契約の呉キリカだ。
口付けを受けていない。
どうしようか。
どうせ『救済』されてしまうなら……
キリカ「……死にたくない…ごめんなさい……」
……
気がつくと私は漂白剤を取り上げ、窓に向かって放り投げ、呉キリカを担ぎ窓の向こうへ飛び出していた。
しかし飛び出した先は魔女結界。
ほむら「くっ……!」
呉キリカは半ばパニックで過呼吸を起こしそうになっている……
時間停止で一旦脱出して、外に置いてこようか。
盾に手を掛け……回す。
回す。
回す。
時間が止まらない。
鳴呼、祈りを否定してしまったから私は固有魔法を使えなくなってしまったんだ。
ならば……
だったら……
腕に最大級の身体強化を使い、両手に大きな銃を構える。
ほむら「穴あきチーズにしてお菓子の魔女のグリーフシードを添えてやるわ」
巴さんに倣い、自分をヒーローと思い込む。
キリカ「……何が起き…」
呉キリカを背負い、結界の深奥へ向かう。
身体強化以外に魔法を使う必要が無いので、走るのは速く、結界の深奥に辿り着くのは容易だった。
両手に構えた銃を二つとも奥で羽ばたくブラウン管に向けて……
ほむら「落ちろ…ッ!!」
ブラウン管に大きな風穴を開け、這い出てきた人形に絶え間なく銃撃を食らわせる。
キリカ「……」
ほむら「大丈夫、もうすぐ終わるから」
精一杯洋画ヒーローを気取る。
だが、洋画のヒロインに似合うのは美国織莉子の方だろう。
ボロボロの人形から赤いリボンを奪い、それを暫く見つめた後、それを引き裂く。
キリカ「あ…ありがと…ござ……」
ほむら「礼には及ばないわ、貴方が生きたいと思っていたからそれの手助けをしただけよ」
今までのループでの経験上、同類だと思っていた彼女も、今の私と違い『生きたい』という意思があった。
私はそれが羨ましくなったのかもしれない。
マミ「……」
まどか「……」
……魔法も使えないこっちが一般人を庇いながら必死に魔女を倒していたというのに力のある方々は良いご身分だ。
ほむら「デビュー戦の邪魔をして悪かったわね。志筑さんやこの子が死にそうだったから先に狩らせて貰ったわ」
「別にグリーフシードならあげるわ。私にはもう……必要ないから」
そのまま呉キリカを負ぶって私は帰ることにした。
ほむら「家まで送って行くわ。普通ならあんなことがあったら腰が抜けてしまうでしょう?」
キリカ「ありがと……そこを右……」
思わず助けてしまったが、こんなことをしては彼女は私の為に契約してしまう。
正確には彼女自身の為であるが、私のせいで契約してしまうのは変わらない。
でももうどうでもいい、私は近い内に魔女になる。
もし自分を想ってくれる人がトドメを刺してくれるならむしろいいかもしれない。
どうせ地球は滅ぼされ、皆死ぬ。
次の日がきた。
寝たまま逝けるかと思ったが、そんなに優しく魔法少女システムはできていないようだ。
私が魔女になったらどのような魔女になるのだろう?
時間停止は相変わらず使うのだろうか?
使い魔は巴さんや美樹さんの様に誰かを象徴する物だろうか?
……最後に「ほむらちゃんは正しかった」とか言われるのはシャクだから、今日は学校を休もう。
最期は……杏子にでも看取ってもらおう。
これだけグリーフシードを渡せばそれくらいしてくれるだろう。
あわよくば私の話を聞いてもらおう。
どうせ死ぬんだし、美樹さんの時の様に私と死んでくれたら……
いえ、そんなことを望んではいけない。
私は転校前に持っていたロザリオを取り出し、廃教会に向かう。
このロザリオは……先輩、いやお姉様にいただいた物。
入院してしまって会ったのはその一日だけで、顔も覚えていないけれど。
「ちょっといいかしら?」
……何故この声が。
振り返ると巴さんと……
ほむら「鹿目まどかは居ないのね」
マミ「鹿目さんは学校に居るわ、私も抜け出すことに抵抗はあったけど……」
キリカ「……」
ほむら「成る程、成る程ね」
マミ「魔法少女のことを知りたいというから教えたら、焦って貴方を探せと言うからね」
……
マミ「どうやら貴方が危ないっていうからね」
「その表情、魔女の口付けを受けた人と似てるわ」
……言ってしまうなら今かしら?
ほむら「ねぇ、願いに裏切られた魔法少女がどうなるかは知っているかしら?」
マミ「……そうして固有魔法が使えなくなった魔法少女を知ってるわ」
ほむら「そうね、でも彼女は強い。ずっと入院していて友達もロクにいない私はそうは問屋がおろさない」
マミ「……どうなるっていうのかしら」
冷静に聞いてくれている。
嵐の前の静けさだろうか。
ほむら「祈りを否定され、絶望した魔法少女は魔女になるわ」
マミ「……ッ!?」
ほむら「嘘ではないわ。もうすぐ現物が見れるから」
「安心して、貴方の願いは確か『生きたい』でしょう?魔女になるイコール死なんだから大丈夫」
「貴方は強いし、願いが願いだからまず魔女になることは無いわ」
マミ「……」
良い傾向だ、最後の最後でこれを達成するなんて酷い皮肉。
巴さんが話を信じてくれて騒ぎを起こさないなんて。
マミ「助かる手段は無いの…?」
ほむら「ここに大量にあるグリーフシードを使えば濁り切ったソウルジェムを浄化することはできるわ」
「でも、助かろうなんて思わない」
それを聞いた巴さんは酷い表情を浮かべる。
彼女の祈りの真逆だから仕方ないだろう。
ほむら「祈りを否定され生きている意味を見出せないの」
「どんなに一生懸命になっても信じてくれなかった、もう嫌なの」
段々と意識が薄れて来る。
そろそろか……指輪が軋み音を上げ始める。
キュゥベェ!
アケミホムラヲタスケルニハケイヤクシカ
ソウルジェムの割れる音が聞こえたのが途中まで聞こえたところで私の意識は完全に途絶えた。
……何故か意識が戻る。
目覚めるとそこは黒紫色の闇に包まれたデパートの様な場所。
見覚えのある巨大ウジ虫が這っている。
しかし被って居るのはシルクハットではなく、鎧の頭部分、太い蝋燭、そして貴婦人が頭につけるアレ……名前は思い出せない。
恐らく美樹さん、杏子、巴さんを差している。
エレベーターがあるので乗ってみる。
今気付いたが、私はどうやら黒紫のローブ一枚という危ない格好の様だ。
エレベーターで昇った先には大広間。
その中央には……
キリカ「やぁ、余計な真似して悪かったね」
リボン付きシルクハットに灰色のボディスーツ、そして鉤爪の呉キリカがこちらを哀しい目をして見ていた。
ほむら「……この空間は何?」
キリカ「君と私の精神世界みたいな物だよ」
ほむら「私は生きているの?」
キリカ「半分は生きていて、半分は死んでいる」
「私もね」
ほむら「契約したの?」
キリカ「そうだとも」
あっけらかんと言い放つ。
前の私ならなんらかのマイナス症状を催すだろうが、今の私は何も感じない。
ほむら「どういった願いで?」
キリカ「物凄い身勝手な願い」
「詳しくは言わないけど、自分の魂を半分溶かしてでも君に生きて欲しかった、とだけ言っておくよ」
……
ほむら「自覚はあるのね、物凄く身勝手よ」
「私は死にたかったのに」
キリカ「身勝手なんて言葉じゃ足りないかもしれない。勝手に君の魂と私の魂を繋げて一つにしてしまったんだからね」
「もう君一人の物じゃないんだ、それは」
……
どうやら私にはソウルジェムとグリーフシードが一つずつあるようで、両方とも半分は呉キリカの魂でできている。
ほむら「……何がしたいのかしら?」
キリカ「君に生きて欲しかった、それだけさ」
「私を助けてくれた時、魔法も殆ど使えなかったんだろう?」
「私のためなんかに命を懸けてくれる人が居たのが嬉しかったんだ」
……
経験上、こいつに何を言っても無駄だ。
ほむら「そう、じゃあ精々自分の祈りが否定されないように祈ることね」
「私はかなり幻滅されるような人間だから」
目覚めたら青くなった巴さんと、動かなくなった呉キリカの姿があった。
マミ「……どうなってるの?」
ほむら「呉キリカなら此処にいるわ」
ソウルジェムを突き出す。
その色は青紫と赤紫のグラデーションになっていて、ツカの形もダイヤ型でも丸型でもない別のものに変わっていた。
マミ「……こっちの呉さんは」
ほむら「動かせばこっちの体が動かなくなるわ」
盾を取り出し、呉キリカの身体を突っ込む。
まだ温かい。
マミ「……」
ほむら「目の前で人が死ぬのがそんなに珍しいかしら?」
「私は数えきれない程見てきたわ」
「巨大な魔女の攻撃から後輩を守る為に壁になった人、まだ契約してない私を守るため戦ったその後輩、巨大な魔女を倒した時にソウルジェムが濁り切って魔女になった人、魔法少女の真実と自分の願いの叶い方に絶望して魔女になっ……」
マミ「辞めて頂戴!」
「辞めて…」
ほむら「全て貴方たちのことよ」
「ねぇ、私はここ一ヶ月間を何度も繰り返してるの」
「何度も人が死ぬどころか、それが同じ人達で、その度に自分だけが生き残るってどれ程の罪悪感がするかわかる?」
「貴方ならわかるでしょう?親二人は死んで貴方だけが生き残ってるんだから」
マミ「繰り返しているというのは本当なのね……」
ほむら「ええ、何度繰り返しても誰一人救えずに終わる」
「それでも今回は大丈夫、今回は大丈夫、きっとわかってくれる、そう自分に言い聞かせ頑張って来たわ」
「でもそれも今回で終わり、貴方はその時死んでいたからわからないでしょうけど、鹿目まどかに真っ向から私の祈りを否定されてしまった」
マミ「……だからあんなことに」
ほむら「貴方に伝え忘れたことがあることがあるけど、一つその前に言っておくわ」
「あの子は釘を刺したりキュゥべえを始末しない限り、貴方が誘導したりしなくても契約していたわ」
マミ「それで……伝え忘れたことって」
ほむら「気付いて居るとは思うけど、鹿目まどかの素質は非常に大きい、魔女になれば地球は滅びるわ」
マミ「……何よそれ」
ほむら「だからその魔女に殺される前に死のうと思ったの」
「でも呉キリカは私に生きて欲しいようだからそれまでは生きているしかないわ」
ほむら「貴方は世界を救うという大義名分があれば人を殺せるかしら?」
「どの道、二週間後程にくる舞台装置と戦えば力を使い果たし彼女は魔女になるわ」
マミは何も答えなかった。
ほむら「そうよね、私もできないわ」
滅亡までの日を楽しもう、そう思いながらその場を後にする。
━━━━━━━━
━━━━
ほむら「私達を愚かだと笑うかい?」
織莉子「いいえ……私にそれは判断しかねます」
話が重過ぎる。
魂を分かち合う、繰り返し同じ人の死を見るなど。
ほむら「君も含めて今生きてるのは奇跡に近い」
「愚かしくあろうが賢くあろうが、大部分の人はあの魔女に等しく吸い上げられてしまった」
「いちいち振り返っていられないんだ。生きた者が正義って言うのかな……」
「そう、生きた者が正義!これ君の問答のヒントにならない?」
大破したジープ擬き。
それを尻目に宇宙人の乗る巨大な車。
「うわぁ…あれ現地人じゃない?」
「知るかよ、俺らの進路に居るから悪いんだろ」
スケールを考えればこれは轢き逃げだ。
何も無いような場所で轢き逃げが起こるなんて相当な確率なのだが……
あいり「……ユウ…リ…」
金髪の少女は全身を叩きつけられ、筋肉はズタズタになり、ソウルジェムが砕けていた。
銀髪の少女は下半身全てを潰されていた。
普通ならキュゥべえがやってきて、契約を取るところだが、彼らは現れない。
だが、偶然は重なる物で……
「酷いな……しかし、私の技術を示すにはうってつけなんじゃないかな」
「ドクター、不謹慎ですよ。しかし彼女達を救えるのは貴方くらいでしょう」
「む、魂魄共に扱えるのは私くらいだからな」
「設備はありませんが、妥協点まではいけそうですね」
全身水色のイカニモな宇宙人が動かないユウリと動けないあいりを運び出して行った。
「金髪の子は身体はアレ埋め込めば使えるけど、銀髪の子はこの設備じゃ無理かな」
「仲が良さそうですし、一人にしちゃったらどうですか?どっちにしても金髪の子死んでますよ」
「そりゃ参った。もうそれしか無いね」
イカニモ達は勝手に結論を出し、作業に入った。
「そろそろ目覚めてもいいんじゃないかな?」
「……」
ユウリ「……」
「目覚めたか」
ユウリ「……ユウリの身体?」
「そうだとも、君の身体はもう見るに堪えないもので、その身体の持ち主の魂は砕けてたから、その身体に君の魂を入れるしか無かったんだ」
ユウリ「……」
「と言ってもその身体もなかなか酷い状況だったから生物兵器の細胞を入れさせて貰ったよ」
「ドクター、地球では生物兵器は細菌やウイルスしかまだ……」
ユウリ「あの轢き逃げ野郎……」
「ん?」
ユウリ「私達…いや、アタシらを轢いた奴らは?」
「……そう遠くには行ってないとおもうよ」
「ドクター、彼女の考えてることは恐らく復讐です」
ユウリ「……」
「やってくればいいんじゃないかな。なんたって生物兵器だし」
「……ここから真北ですね。直線にしか進んでないようです」
ユウリ「……とっ捕まえて殺してやる」
「地球ではお守りという物を持つようで、よければこれを」
ユウリ「なんだこの人形……」
「貴方の元の身体です。この設備では貴方の身体の復元はこれが精一杯でした」
ユウリ「……ありがと」
金髪の少女はドーム型の宇宙船を飛び出し、北へ向かった。
杏子「なぁ、地球は元に戻るのかな?」
ほむほむ「まぁ貴方が生きてる間は無理でしょうね。滅ぼした奴以上の素質を持つ者が契約すればその限りではないけれど」
杏子「……なんであのチビがそんな素質持ってたんだろうな」
ほむほむ「ねぇ、少し事情を教えてくれないかしら?」
杏子「良いもんなのかね……まぁ念のため口外するなよ」
あたしはほむらのことを話した。
契約の時や、約束のこと、そして拒絶……
ほむほむ「これは仮説なんだけど……ほかの人に言ってはダメよ?」
杏子「……なんだ?」
ほむほむ「その子がループを繰り返したことで……素質が膨れ上がったんじゃないかしら…?」
杏子「……なんでだ?時間を巻き戻してどうして素質が増えるんだ?」
ほむほむ「……魔法少女の素質というのは、一生の間にその人が他の人に影響を与える可能性、短く言えば因果。それと契約時の感情の上下のしやすさで決まるんだったかしら」
杏子「まぁよくわかんねえけど、そうなのか」
ほむほむ「えぇ、だから一国の女王や、新興宗教の巫女、それに躁鬱の人とかは強力な魔法少女になりやすいわ」
杏子「でもあのチビは別にメンヘルでもガキ大将でも無かったぞ」
ほむほむ「もう一つ難しい話になるけど……ついてこれるかしら?」
杏子「……聞いてから判断するよ」
ほむほむ「並行世界ってわかるかしら?」
杏子「ん?交わらない世界か?」
ほむほむ「字が違う気もするけど、言ってることはあってるわ」
「並行世界は普通交わることは無いわ。奇跡や魔法でもない限りね。だから机上の空論にしかならない」
杏子「それをやったのがほむらなのか」
「でも、あいつは時間を戻しただけなんじゃないのか?」
ほむほむ「……並行世界は枝分かれで出来て居るとされる場合があるわ。元々平行な世界があるという説もあるけれど、まどろっこしいからなるべく簡単な方を取るわね」
「たとえば今ここで私が貴方に抱きつこうとするとするわ」
杏子「ブレないなあんた」
ほむほむ「するとこの時点で無数の枝分かれが産まれる。抱きつくのを辞める世界、抱きついて振りほどかれる世界、抱きついてそのまま甘い時間を過ごす世界、抱きついた勢いで貴方のソウルジェムを割って殺してしまう世界、迷って少し待ってから抱きつく世界」
杏子「……変なの混じってるし怖いのも混じってるな」
ほむほむ「そして普通、全ての者は他の世界を観測することはできない」
杏子「でもほむらはそれをしたと」
ほむほむ「そう、しかもその『カナメサン』をループの軸にしてしまった」
「ほむらさんという針の針穴に『カナメサン』の因果の糸を通してしまったと思って頂戴」
「もうわかるわよね?」
杏子「そんな酷い話……」
ほむほむ「仮説が正しければほむらさんのせいで地球は滅んだような物かもしれないわね」
「だからほむらさんには絶対話してはダメよ」
杏子「……」
ほむほむ「でも、責めるべきは彼女ではないことくらいわかるわよね?」
杏子「……ああ。喩えりゃ二種類の洗剤をただ只管集めてただけだ。混ぜなきゃ別になんもならなかったはずだからな」
魔獣の群れが二箇所に現れた。
二箇所とも中心地点には金髪の少女。
マミ「もう、取り囲んで……これじゃ私が〆られるみたいじゃない」
今にも光線を放って来ようとしている。
マミ「でも銃殺刑になるのは、貴方達よ」
自分を取り囲む様にマスケット銃を召喚する。
マミ「ティロ・シチリアーナ!」
シチリアンマフィアをイメージしたのだろうか、必殺技ノートやイタリア語辞典は手元に無いためネーミングが些か手抜きだ。
リボンの弾は最前列の魔獣を一掃し、僅かに貫通する。
二列目以降の魔獣が殺人光線を放つ。
しかし、少女が指を鳴らすと、鏡が現れ光線を跳ね返す。
マミ「アイギスの鏡よ。暁美さんの盾程じゃないけど防御にはもってこいね」
そしてもう一度指を鳴らす。
貫通したまま止まっていたリボンが残りに巻きつく。
マミ「レガーレ・ヴァスタ・アリア」
ひと呼吸置いて、ヒーロー気取りとは打って変わって先程イメージしたであろうマフィアの者のような表情で
マミ「アッペデント(絞首刑)」
リボンがキツく締まり魔獣が握り潰される。
絞首というより弾頭、というより単なる圧殺。
マミ「あら……まだ結構居るのね。じゃあ新しいの見せてあげようかしら!?」
マミ「宇宙人が来てるなら宇宙のこと勉強しておかなきゃでしょう?だから私も衛星の仕組みを勉強したのよ」
巨大ないつもの大砲を召喚する。
マミ「アン!」
正面に一発お見舞いする。
マミ「ドゥ!」
指を鳴らすと真横に弾がそれる。
マミ「トゥロア!」
ポーズを取ると、リボンの弾がオレンジに煌き、円を描くように魔獣を一掃し始める。
マミ「カトゥル!」
違うポーズ、恐らく決めポーズを取る。
この間僅か四秒。
マミ「こんなところね。私も宇宙で通用するかしら?」
ユウリ「……」
「どうした、来いよ」
「こっちはエイリアンに追いつかなきゃいけないのにさぁ」
言葉を理解してなのか、魔獣は殺人光線の一斉射撃を始めた。
「ドクター、機械を使わず生物兵器を使う利点とはなんでしょうか?」
「そりゃあまず、欠損したりしても他の部分で補ったりできることだろうね」
「他には?」
「魂があるから比較的楽に魔法を使えることかな」
ユウリ「……どこ狙ってんだよ」
360°全方位からの殺人光線を全て避ける。
ユウリ「次はこっちから行かせて貰う」
次の光線が来るまでに、魔獣に飛び掛り頭部を掴む。
そして、着地と同時にその頭部は本体からもぎ取られる。
ユウリ「脆いな、いや、素晴らしい力だ」
ユウリの身体が僅かに妖しく煌めく。
彼女自身は魔力を生み出さない。
では使う魔力はどこからやってくるのだろうか?
答えは簡単だ。
倒した相手から吸収する、それだけだ。
ユウリ「……」
回し蹴り一発で周りの魔獣が皆消し飛び、両手を使えば魔獣を真っ二つに引き裂き、魔獣を倒す度に彼女の身体の煌めきは増す。
ユウリ「さぁ、とっとと捕まえてズタズタにしてやろうか、頸を洗って待っていろよ……」
復讐者は再び北に向かう。
マミ「……よくもまぁ私ものうのうと生きてるわよね」
鹿目さんを契約させたのは私のような物だし、この道に引きずり込んだのもそうだ。
そのくせ真実を知ったら逃げ出して……
━━━━
マミ「やっぱり私はここでは狩りはしないことにして、貴方と暁美さんにここを譲ることにするわ」
まどか「どうしてですか!?」
マミ「……ケジメかしら。魔女にやられた雑魚魔法少女がヘッド面してるのはよくないと思うの」
よくもまぁこんないけしゃあしゃあと
マミ「しばらくは風見野で活動することにするわ」
まどか「マミさん……」
マミ「……頑張ってね」
━━━━
マミ「我ながらクズ過ぎるわ……」
「その後は確か……」
━━━━
杏子「……今更何しにきた」
マミ「もう私も魔法を……自分の為に使おうと思ってね」
杏子「何があったんだ?あんたらしくもない」
マミ「ワルプルギスの夜、それとそれを上回る魔女が現れ地球が滅びるわ」
杏子「……はぁ?いつもの漫画みたいな奴か?」
マミ「だったら良いわね。でも残念ながら滅びるのよ」
杏子「……馬鹿らしい」
ほむら「嘘ではないわ」
杏子「……誰だあんた」
━━━━
マミ「これが三人集まるきっかけだったわね」
「暁美さんは四人って言ってるけど」
「柩の中身ってもしかして呉さんの死体?」
……
マミ「でもまぁ生きていれば何か良いことあるわよね」
「暁美さんどこかしら……」
ほむら「インキュベーター、東京の被害状況はわかるかしら?」
QB「魔獣とかは多少マシだけど、逆に宇宙人が暴れまわってるよ」
ほむら「……お父さんとお母さんは大丈夫かしら」
QB「……なんとも言えないね。『救済』の順番は案外適当だったから」
ほむら「……」
……
QB「おや、アレはマミじゃないかい?」
ほむら「……やっと戻ってきたのね」
QB「でもマミ一人だね」
織莉子「要するに今まで三人バラバラだったんですね」
ほむら「恐らく拠点を見付けたのね」
マミ「やっと見つけた……ごめんなさいね」
ほむら「まったく……」
QB「早く合流した方がいいんじゃないかい?」
マミ「え…えぇ!そうしましょ」
二人目を確保した。
三人目に合流するために、私達は再び歩き始めた。
マミ「貴方のことは知ってるわ。風見野にいく途中に素敵なお屋敷があったから勝手にお庭にお邪魔したときに窓から顔が見えてね」
織莉子「勝手に……まぁいいですけど」
QB「まどかが契約してから君のええかっこしいは加速したね」
ほむら「少し考えれば理由くらいわかるでしょうに、そういうのは相変わらずね」
マミ「歩き疲れたら言って頂戴、負ぶるから」
織莉子「いえ、体力には自信がある方なので」
ほむら「……杏子は今どこに居るのかしら?」
マミ「三時間程歩いたところにあるホテルのスイートルームに居るわ」
織莉子「どうして一緒に居ないのですか…?」
マミ「その……宇宙人に……」
それを聞いて暁美さんは身体を目付きを変える。
思わず右目を開いてしまっているが、左目同様紫水晶のような瞳になっている。
ほむら「襲われたの!?」
マミ「ま、まぁ…襲われたという表現は正しいかもしれないわ」
ほむら「どういうことなのよ…」
マミ「いや、絡まれたというか……舐められたというか……」
織莉子「嘗め……?」
ほむら「まったくわからないわ……」
苦笑いをやめた巴さんは一呼吸置いて、会えばわかるとだけ言って、再び前を向いた。
ほむら「こうやって全部滅びてしまえば何もかも虚しいわよね」
「文明も文化も、名声も権力も」
マミ「……今はもう生き残った者が正義よ」
「これいいわね、かっこいいわ」
ほむら「これは参考になるかしら?」
織莉子「私は今、幸運で生きているだけです」
マミ「……生きているんじゃない、生かされてるのよ」
「これもいいわ」
ほむら「無視して頂戴、彼女も半ば壊れてるの」
織莉子「……」
どうやら魔法少女は変人ぞろいの様だ。
ユウリさんだけはマトモだったのが喜ばしい。
杏子「他にどんな宇宙人が来てるんだ?」
ほむほむ「そうね、クリッターやタコ、ウサギとかそういうメジャーなのは大体来てるわよ」
杏子「なんか特に変…ッてのは来てないのか?」
ほむほむ「ほむ……あ、宇宙人が連れ去った人間が来てるわよ」
杏子「……はぁ?」
ほむほむ「宇宙人が何かの目的で連れ去って、それが宇宙の文明を得てこっちでドヤ顔してるのよ」
「現地人を見下してる中の一派ね」
杏子「……うぜぇ、どうせ奴隷や家畜、モルモットだったろうにさぁ」
ユウリ「……見付けた」
前方に大きな未来的な車が走っている。
大きくついた傷からして自分達を轢いた物だとわかる。
ユウリ「先ずはあたしらがやられたみたいに車体を…ドーンだ」
車に追いつくのにも相当な脚の力を使ったのだが、車如きに追いついた程度で終わる様な物は兵器とは呼べない。
ユウリ「……ッ!!」
今までとは比にならないほどの脚力で遠くの車にひとっ飛び。
そして空中の魔法陣を経由し
ユウリ「凹みなッ!!」
ドゴォォォ
古典的なキックで車の屋根を破壊する。
「ヒィッ!?なんなんだ」
ユウリ「あたしか?」
「あたしはあんたらが轢いたジープの乗組員だよ」
低い声で返答する。
「あの時は…悪かった!悪かった!許してくれ!!」
「代わりの車は用意する!な、許してくれよ!人間のよしみでさ」
……
ユウリ「そうか……あんたら人間だったのか……そんな姿が変わらないと思ったよ……少し親近感湧かないこともないな」
「だろ?な?だから…」
ユウリ「でも断る、許してやんない」
「んぴッ!?」
拳を叩きつけ、後部座席の女性を砕く。
ユウリ「あたしらはあんたらに殺された、だからあたしはあんたらを殺すの」
後部座席に腰掛け、助手席の男性のこめかみに指を射し込む。
ユウリ「勘違いするなよ?あたしはシリアルキラーじゃないんだからな」
指を引き抜き、後部座席に転がる目玉や歯を詰め込む。
ユウリ「残るはあんたか……こっちは二人やられたけど、イーブン二人で済ませようかな……」
ユウリ「じゃあ、さよなら」
「えっ」
ユウリは床を思い切り蹴り、車体を真っ二つにした。
男を乗せた前半分はバランスをなんとか保持しながら、しばらく進んだ後爆ぜた。
ユウリ「……こんなことしてもユウリは戻って来ないのにな」
「契約すれば……どうなのかな」
━━━━
「かっこよくなっちゃえばいいんだよ」
「クラスの皆にはナイショだよ?」
「ほむらちゃんを護れて良かった」
━━━━
ほむら「……」
マミ「暁美さん、貴方が何考えてるかくらいわかるわよ」
「鹿目さんのことでしょう?それも貴方が契約する前、もしくは契約したばかりの」
ほむら「……えぇ、私の憧れたまどかのことを考えていたわ」
マミ「しつこいようだけれど、それは表向きの私に憧れた美樹さんと鹿目さんと変わらないわよ」
ほむら「……少し違うと思うけど……彼女は契約でコンプレックスを解消していたし彼女の祈りは成就していたわ」
マミ「第一なんで鹿目さんだけなのよ!私も入れてくれたっていいじゃない!」
ほむら「覚えてないわよ、そんな昔のこと。契約なんて衝動的にしたもの」
マミ「うぅ…所詮私なんてすぐ死ぬし、運命を受け入れないし、皆を巻き込む地雷よ……毎回死ぬあまりマミるとか言葉が作られてたんだわきっと……」
ほむら「否定はしないわ」
マミ「酷い……」
ほむら「第一貴方を護る私ってどんなのよ」
「大砲振り回してるダイナマイトバティを護るなんて、筋肉質な洋画ヒーローくらいしかできないわよ」
マミ「うぅ……」
ほむら「あら、褒めてるのよ?かっこいいって」
マミ「話の流れ的に嬉しくないわ」
QB「ユウリが異端なんじゃないよ、この子達がおかしいんだ」
織莉子「わかってます」
杏子「ねぇ、あんたは何が正解だと思う?」
ほむほむ「なんのことかしら?」
杏子「ほむらはどうすれば良かったのか」
ほむほむ「そうね……護る側と護られる側に心が通ってないと望まない結果になるのはまず言い切れるわ」
「そして護る側は護られる側からも何らか受け取らなければならない」
「貴方は何もしなくていい、私が護るからって聞こえは良いけど、そんな言葉に従ってくれると思うかしら?」
杏子「なるほどね……」
ほむほむ「でも正解なのかはわからないわ。こんな小一時間も考えてないようなもので彼女が救えるとは思えない。私が言えるのはここまで」
ほむほむ「地球としての最適解は、ほむらさんが諦めて『カナメサン』を殺すか、どこか遠い、魔女化しても『救済』される生命が居ない宇宙空間に放り出すことでしょうね」
杏子「……ッ!?」
ほむほむ「あとは誰かしらの契約の奇跡を使えば……」
杏子「……」
ほむほむ「所詮一人で運命に抗うなんて不可能なのよ」
「私のお母さんがそうだった」
杏子「でも、二人なら…三人なら」
ほむほむ「可能かもしれないわ」
「やり直せればね」
ほむほむ「なんか真面目な会話ばっかりで疲れちゃったわ……」
杏子「あたしもなんか疲れてきたよ」
ほむほむ「おやすみ……」
継ぎ接ぎ宇宙人は眠りについた。
杏子「さっきから妖しい匂い振りまいてるこの髪が気になって仕方ないな……」
「……ちょっと埋もれて寝てみるか」
ふかふかの後ろ髪に顔を埋め眠りにつく。
ほむほむ「ねぇ、あんこちゃん」
自分の髪に埋もれる同じく長髪の少女に声をかける宇宙人。
ほむほむ「寝てるようね、やり返すなら今のうちということかしら?」
起き上がり、杏子に触れる。
ほむほむ「さて……あら?」
杏子の異変に気付く。原因は言うまでもない。
ほむほむ「……これは…お母さんが言ってた『男を知った顔』…とは少し違うわね……」
宇宙人は見なかったことにして、少女の髪に埋もれ再び眠りにつく。
織莉子「そういえば何故暁美さんはギターを?」
ほむら「それは……巴さんが」
マミ「流浪の民と言えばギターでしょう?」
「でも私達でギターを弾けるのは暁美さんだけだったから」
ほむら「私だって弾けたわけじゃないわよ……」
暁美さんはソウルジェムを見ながら言う。
そういうことか。
ほむら「病院で本当に少しだけ習ってたの。その人は先に退院してしまったけどね」
あとは裏で呉さんが教えていたと……
織莉子「でも流浪の民なのにどうしてそんな格好を…?」
巴さんのアメリカに居そうな格好に対して言う。
ほむら「最初はそれこそフラメンコダンサーみたいな格好をしていたのよ」
「でも、戦闘中に吹っ飛ばされて川にダイブしてね」
「一応まだ持ってるわよ、そろそろ乾いたんじゃないかしら?」
マミ「合流するまでは着ないわ、胸がキツいから」
織莉子「……」
ほむら「……」
QB「合流したら着るつもりなんだね」
ほむら「それで、そのホテルってどこまで機能してるの?」
マミ「一応ライフラインはストックがあるみたいで、シャワーも灯りもあるわ」
どうやら今夜はキュゥべえで身体を拭く必要はなさそうだ。
ほむら「そういえば、私達は魔法でなんとかできるけど、貴方はどうしていたの?そこまで臭わないけれど」
織莉子「……」
言わないでくださいね。
QB「まったく、酷いんだよ?僕に炭酸水をふりかけてそれで全身を拭いてたんだ」
言いましたね。
マミ「素晴らしいボディタオルだ」
ほむら「使わなきゃ勿体ないじゃないか」
二人してキュゥべえのモノマネで言う。
QB「やめてくれ」
マミ「さ、あれよ」
ほむら「なんであそこまで綺麗に残ってるのかしら?」
QB「もうかなり爆心地から離れたから壊れる建物の割合も減ったんだろうね」
周りが少し煤ける程度の大きなホテル。
最上階に灯りが灯っている。
マミ「……暁美さん、何を見ても取り乱さないでね?」
ほむら「宇宙人のこと?」
マミ「ええ……」
一体どんな宇宙人なのだろうか。
クリッター?タコ?ウサギ?それともまたおじさんでしょうか?
杏子「ふぁぁ……おはよ」
ほむほむ「……おはよう」
杏子「なんか身体が熱いな……」
ほむほむ「原因はわかってるでしょう?」
火照った身体を冷やす為に、ホテル備え付けのパジャマを脱ぎ、シャワールームに向かおうとする。
ほむほむ「私の髪を枕にしたわね?」
杏子「……」
ほむほむ「長い間あの匂いを嗅いで普通でいられるわけが無いことくらいわかるでしょう?」
杏子「そりゃあまぁ……」
ほむほむ「もっと自分を大事にし……」
マミ「ただいま」
ほむら「…!?」
織莉子「あら…同じ顔が二人……」
ほむらの目線は半裸の杏子と、自分を一回り大きくしたような少女を行き来している。
ほむほむ「……こんばんは」
ほむら「……」
「……」
「……」
ほむらは軽く崩れ落ち、頭を抑え始めた。
ほむら「やぁ、はじめまして。君が巴が言っていた宇宙人かな?」
マミ「貴方もなんか様子が変よ?」
どうやらもう一人が出てきたようだ。
ほむほむ「ええ、そうよ。貴方の顔、他の人の身体のパーツを二人の記憶から再現させてもらったわ」
ほむら「どうりで大きいのか」
ほむほむ「貴方のままだと平坦すぎるから」
ほむら「巴、ベースでぶん殴っていいかい?」
マミ「私はもっと酷いこと言われたわ」
それから私達はシャワーを浴びたり、食事をとったり、ベッドで休んだりとこのチャンスを最大限に活かした。
乗っとれるホテルなんて二度とあるかわからない。
これを活かさない手はない。
マミ「パックのものでも紅茶が飲めるのは良いわね」
杏子「お土産屋のお菓子は頂いておこうかな」
暁美さんと宇宙人はどこか別の部屋に居るようだ。
ほむら「……どうして私の顔をした者が居るのかしら?」
自分と同じ顔の宇宙人に畏怖を抱いた表情で問いかける。
ほむほむ「簡単な話よ。私は決まった姿を持たない宇宙人。彼女達の記憶の中から一番気に入ったパーツを頂戴したの」
ほむら「その……不気味だから変えてくれないかしら?」
ほむほむ「できない相談ね」
冷たくあしらうと、今度は逆に艶めかしくにじり寄り、ほむらの顎を持ち上げ囁く。
ほむほむ「貴方とっても可愛いわ。三日三晩抱いて寝たいくらいに」
「私、この顔と髪が凄い気に入ってるの。自分がそれになるのすら物足りない」
そして今度は抱き寄せ、耳元で囁く。
ほむほむ「……だから今度は貴方を私の物にしたいの」
半ば強張った顔で、怯えた声でほむらは問いかける。
ほむら「……断ることは?」
ほむほむ「インポッシブル」
マミ「暁美さんたち遅いわね」
杏子「あたしと同じ目にあってるんだろ。触らぬ神に祟りなしだよ」
何をされたというのだろうか。
杏子「あいつ、ほむらの親にまで手を出す気で居るからな」
マミ「え…そんな…過激な……」
どうやらあの宇宙人はあまり健全な物では無いらしい。
……
宇宙人がぐったりした暁美さんを抱えてくる。
暁美さんの顔は元々の病的な白さだったが、頬が桃色に染まりきっていて、あんまんの様に見えなくもない。
杏子「……この頬触りたいな」
それこそ触らぬ神に祟りなしかと。
ほむほむ「同じ物で許可がおりるものがここにあるわよ」
杏子「バーカ、なんもわかってないな」
宇宙人を無視して、更にほむらを奪い取り頬擦りをし始める。
杏子「身長が同じくらいな上に普段の性格がアレだけど、寝てるとな……」
織莉子「……佐倉さんは妹的存在が欲しいのでしょうか?」
杏子「ああ、実の妹は数年前に一家心中でな」
マミ「あら、随分あっさり話すのね」
杏子「隠し通す方が難しいよ」
どうやら今までは秘密にして居ることが多かったことのようだ。
マミ「成る程、暁美さんを妹分だと思ってるのね」
杏子「ちょっと写真見たけど三つ編みに眼鏡のめちゃくちゃ可愛かったよ」
頬と頬を合わせてなにやらぷにぷにしている。
この人を少しでもマトモだと思った自分が呪わしい。
ほむほむ「むぅ……」
杏子「あんたはあざとすぎだ」
ほむら「騒がしいわね……」
起きた。これから起こるであろう恐ろしいことにさ触れないことにしよう。
ほむら「揃ったからこっちに着替えなさい」
巴さんにフラメンコの衣装を差し出す。
それに対し露骨に嫌そうな顔をする巴さん。
杏子「おい、マミ。あんたに付き合わされてこっちは着てるんだからな」
マミ「だって胸がキツイんだもの……」
杏子「だぁーっ!余計な栄養ばっか溜め込みやがって、そんなんだからすぐ死にまくってどうせマミるとか裏で言われてたんだろ!」
マミ「ちょっと!?それは関係ないし、佐倉さんだってすぐ他人の為に祈った子に自分を重ね合わせて心中までよく行ってたそうじゃない!?」
杏子「なっ…てめぇ!覚悟しろよ!」
マミ「上等よ、表に出なさい」
宇宙人がマトモに見えてきた、相対的に。
ほむほむ「これ着ていいかしら」
ほむら「あの様子だと着ても北斗の拳みたいに服を破壊しかねないから貴方が着ていて頂戴」
流石に私のサイズの服は無いだろう。
学校でも私と同じサイズの服を着ていたのはバスケットボール部、バレー部の方々と一部の非常にふくよかな方々だけだったこともありますし。
杏子「ったく……リボン出されてそれを切っての千日手じゃねえか」
マミ「やるだけ無駄よね」
カスタネットをカチカチ鳴らしながら愚痴る二人。
それを見てクラシックギターを取り出す暁美さん。
ほむら「貴方達もどうかしら?」
明らかにカラオケ屋から盗んできたマラカスを私と宇宙人に渡す。
まさかとは思いますが……いや、他にないからそのまさかに違いない……
暁美さんが弦を激しく掻き鳴らす。
それを聞いて二人は動きを一旦止め、立ち上がる。
カスタネットの音がギターの音に合わさって、どのジャンルの音楽だか容易にわかる。
ほむら「情熱とは少し違う気もするけど、こういうのは唄と踊りが良いらしいのよ」
何を言っているんだろうかこの人は。
ほむほむ「私との情熱的な…」
ほむら「Volare!!!」
遮る様に、ビールのコマーシャルでよく聞く曲のサビを唄い始める。
か細い声だけれど、確かに情熱を感じないこともない気がする。
ちなみにジプシーは放送禁止用語らしい。
佐倉さんがフラメンコの踊りを踊る。
付き合わされてるだけの割には上手い。
ほむほむ「踊り子あんこちゃん……良いわね」
誰か常識人を連れてきて下さい。
巴さんは佐倉さん程動きはしないが、歌を唄っている。
言い出しっぺだというから恐らく、歌詞をカタカナで書き出して頑張って覚えたのだろう。
ほむら「貴方も踊ったらどうかしら?シャワーはあることだし」
……私は腰を上げた。
ユウリ「今アタシのこと轢こうとしたよなぁ?」
「こんなに道が広いのにさぁ」
上下に分断された車体は、乗組員まで上下に分断されていた。
ユウリ「アンタ達、地球嘗めすぎじゃないか?」
「まぁアタシはもう地球人じゃないんだろうけどさ」
「復興作業から逃げて遊びに出かけた奴らが惨殺されてるらしいな」
「ハン、働かない奴なんて生きててどうすんのさ」
「しっかし…魔法少女でもあんなことするのはなかなか居ないはずなんだけどね」
「加害者側に問題があるのか、そうならそう言えよ」
「別に問題は無いんだけどね、我々には」
どうやら下働きの、他惑星で発展した人類は地球人を見下しているだけではなく、このようなところで働かされることを快く思っておらず、現地人には辛くあたる。
「おい、現地人が居るぞ」
「轢き殺すか?」
「いや、女だな」
また愚か者が一組……
ユウリ「またこっちに来るな……」
ユウリの前に車が止まる。
「お嬢さん地球人?」
ユウリ「だったら?」
「乗ってかない?」
芸が無い。
ユウリ「いや、いい」
「そんな固いこと言わないでさぁ」
……
ユウリ「じゃあ手に持ってる物出しな」
「!?」
慌ててスタンガンを隠す。
ユウリ「はぁ……車を降りな」
……
……
ユウリ「無血開城って言うのかなこれは」
車を乗っ取ったユウリは再び鎌倉を目指す。
織莉子「軽トラがありますね」
ほむら「私達運転出来ないわよ」
織莉子「私がやります」
マミ「免許は?」
QB「取れるわけ無いだろう、何歳だと思ってるんだい?」
杏子「じゃあマミが助手席に乗っててくれ、あたしら三人は荷台に乗る」
ほむほむ「何か別の意味で旅って感じね」
車に乗れば速いもので、メーターを見ていれば着実に沿岸部に近づいている。
そう言えばユウリさん達は今頃どうしているだろうか。
マミ「水あるから飲んで頂戴ね」
織莉子「どうも」
ほむら「トラックの荷台でギターってそれっぽいわね」
杏子「マミを荷台に乗せると立ち上がって踊りそうだからな」
QB「あり得るね」
ほむほむ「振り落とされるの必至ね」
ほむら「多分もうそろそろ沿岸部ね」
ほむほむ「ここから東京に行くまでは簡単かしら」
杏子「問題は東京についてからだろうな」
……
ほむら「そろそろギターも飽きてきたわ」
ほむほむ「エレキの歪みが恋しい……」
杏子「カスタネットだけじゃつまらないな……」
ユウリ「楽だけど……」
「走った方が速いかもしれないな」
彼女もまた沿岸部に近づいていた。
しかし、彼女には既に旅の目的など無い。
ユウリ「……ガス欠か」
車を降り、トントン足踏みを始める。
ユウリ「空飛ぶ絨毯とか箒とかあれば良いのに…」
「なっ!」
思い切り地面を蹴り、空に舞い上がる。
ユウリ「飛べる飛べる、こっちの方が楽だったな、ハハッ」
金色のバッタは海を目指して跳ねていく。
織莉子「そろそろ潮の匂いがするころですね」
マミ「もう荒れ地は少ないわね」
織莉子「海に寄って行きますか?」
マミ「それもそうね、貴方も休憩したいだろうし」
海水浴場の駐車場に車を停め、私達は浜辺へと出た。
ほむら「潮の匂いなんていつぶりかしら」
杏子「あたしは始めてだな」
マミ「私は……魔法少女になってからは一度も無いわ」
ほむほむ「ここに足拭きは居るから皆足だけでも海入ってきたら?」
QB「もしかして僕のことかい?」
ほむら「自覚はあるのね」
私は疲れたので少し横になって休む。
涼しくて気持ちいい。
ほむほむ「隣、良いかしら」
この声は……
ほむほむ「宇宙人よ」
織莉子「……どうぞ」
持ち主の居ないボディボードで作ったベッドの横に腰掛ける。
ほむほむ「ねえ、どうして貴方はこんな旅に……魔法少女でもないのに」
織莉子「言わば…自分探しの旅でしょうか?」
ほむほむ「何それまさに年相応って感じね、あ、気を悪くしないで頂戴」
失礼な宇宙人だ。
ほむほむ「それで具体的には?」
織莉子「……私は…私の生きる意味が知りたくて…」
ほむほむ「生きる意味…ねぇ」
暫く考えた後、宇宙人は口を開く。
ほむほむ「他の子達はなんて言っていたのかしら?」
織莉子「……生きる為に生きる。戦う為に生きる。大事な人の為に生きるなど……」
ほむほむ「あら、それじゃあ納得行かないの?」
織莉子「……誰かから存在を認めて貰わないと駄目なんです、私は」
「これまでの人生が私をそうしてしまった」
ほむほむ「難しい話ね……女漁りなんかに地球に来た私は煙をあげるほどの」
「私なりの回答はね、『生きる意味を探す為に生きる』よ」
「たかだか一ヶ月も無い旅でそうそう見つかるものでは無いわよ、きっと」
言い終えると、髪を掻き分け去って行った。
織莉子「……」
マミ「こ、こう?」
ほむら「そうそう、もっと腰をくねらせて」
杏子「えろはおえー」
暁美さんが巴さんにフラダンスを踊らせ、佐倉さんが適当に唄っている。
マミ「もう!佐倉さんも踊りなさいよ」
杏子「あたしはそういうのんたんしてるのは嫌だね、ほらほむら、フラメンコ頼むよ」
ほむら「はいはい……」
この人たちが生き残った理由がわかった気がする。
ほむら「さて、そろそろ……」
ユウリ「……この車、アンタのか?」
ほむら「ええ、そうよ」
ユウリ「アンタ、地球人か?」
ほむら「……当たり前じゃない」
ユウリ「どこに向かってる?」
ほむら「東京の実家よ」
ユウリ「東京か……」
織莉子「どうかされ……飛鳥さん?」
ユウリ「や、やぁ……織莉子さん」
QB「ん……?」
「おや、君は……魔法少女だったはずなのに、ソウルジェムが無いね」
織莉子「!?」
「杏里さんは…?」
ユウリ「……アタシがあいりだ」
「ユウリのソウルジェムと杏里あいりの身体は交通事故で壊れたよ」
……
それが意味するのは死。
一帯を沈黙が包む。
QB「でも見たところ君は車にも乗ってないじゃないか、どうやってこんなに早くここまで来たんだい?」
ユウリ「ハハッ、知りたいか?」
すると彼女は返答を待たずに、足元を思い切り蹴る。
蹴った場所にぽっかり穴が、否、蹴った場所が圧縮されている。
ユウリ「アタシもう人間じゃないんだ」
その後、彼女は自分達を轢き逃げした犯人をとっ捕まえ惨殺したことを話した。
織莉子「そんな……何も殺さなくても……」
ほむら「いいえ、殺さないと気が済まない。殺さないことは彼女の生きることに対する否定になるわ」
ユウリ「よくわかってるなアンタ。そう、アタシはもう戻れないんだ」
「でも別に殺人マシーンになったわけじゃない、それに抵抗が無くなっただけだ」
ほむら「織莉子さん……覚えておきなさい、これも一つの答えよ」
それはとても悲しいこと、しかし確かに私の考えるピースに成りうる物だった。
ユウリ「ってわけでよろしくな」
杏子「にゃー!?なんであんたが!?」
ほむら「あら、知り合いだったの?」
杏子「風見野の端っこで揉めたんだよ」
ユウリ「それはこの身体、魔法少女のユウリだな。アタシはその親友のあいり」
ほむほむ「魂は別人なのね」
ユウリ「そうそう」
杏子「わっけわかんねえ……」
ほむら「ますます私のことが話しにくくなったわね……」
特に目的が無い飛鳥さん、いや、杏里さん…どっちなのだろうか…
彼女も東京に行くことになった。
キュゥべえで足を拭いて、トラックに乗り込み、再び走り出す。
杏子「マミ、絶対立つなよ!?落ちても拾いに行かないからな」
マミ「佐倉さんの私の認識はどうなっているの!?」
ほむら「私からも立たないで欲しいと言っておくわ」
マミ「酷くない!?」
ガソリンを切らした上に、補給手段が無い為車を乗り捨てる。
ユウリ「アタシが担いで走っても良いんだけどね」
色々怖いから勘弁して欲しい。
杏子「しっかし…代わりの車なんてあるのか?」
マミ「あの車は鍵がわかりやすいところにあったから良いけど……」
ほむほむ「死体剥ぎ取りなんて趣味が悪いにも程があるわね」
ほむら「趣味でこんなことやってるわけじゃないのよ、だから良いの」
マミ「六人はギリギリ違反よね?」
織莉子「……無免の時点で察してください」
電気自動車を一台手に入れることが出来た。
これで東京には行けるだろう。
ほむら「杏子、膝に座らせて頂戴」
ほむほむ「ちょっとズルくないかしら!?」
どっちの意味だろうか。
ほむら「杏子、キツくないかしら?」
杏子「キツいって言ったらどうすんだ?」
……
杏子「別に大丈夫だよ」
マミ「そう言えばそろそろ生き残りが多めに居るだろうから食糧はこの辺りで手に入れていかないと……」
数分後、コンビニについたが、弁当などは賞味期限が過ぎたものばかりだった。
マミ「せめて雷か熱の魔法が使える子が居れば……」
念のためレトルトやチルドの類を頂戴し、あとはお菓子を……
ほむほむ「ポッキーゲーム」
杏子「反対側から食ったらその場で折って新しいの出すからな」
ユウリ「アタシポッキーゲームいっつも負けて」
マミ「それ以上いけないわ」
QB「どうして止めるんだい?僕にポッキーを咥えさせて反対側から君も食べてたじゃないか」
ほむら「うわぁ」
杏子「マミ……」
私は何も聞いていない。
運転席の後ろで巴さんの啜り泣く声が聞こえる。
ほむほむ「そんな落ち込んでると魔女るわよ」
マミ「魔女る!?マミるの次は魔女る!?」
ほむら「マミるも単なる貴方の被害妄想だから……」
ユウリ「そうだマミ、普通一人ポッキーゲームとかで虚しくなるところを、キュゥべえで」
杏子「抉るな」
というかあの無表情とポッキーゲームって……余程……
織莉子「ところで、もうすぐ都内ですけど家はどちらに……」
ほむら「えっと……確か青山通りの……」
マミ「えぇ…随分と贅沢な…」
杏子「お前金持ちだったのか?」
ほむら「そんなわけないじゃない……お嬢様学校に通ってたのは心臓病で特待だったから、青山通りに家があるのは父親の友達が買ったものを貸してもらってるだけ」
借りるだけでも随分高くつくと思うが……
ほむら「もちろんお金なんて払ってないわ。私の入院費でかつかつよ」
ユウリ「あれ?でも見滝原中も私立じゃ……」
ほむら「なんでなんでしょう……わからないわ」
ユウリ「青山通りの家をタダで借りるってどういうこった?」
ほむら「父親の友達が事業で成功して家を買ったけど、飽きたそうで」
「でも不動産が嫌いらしくてね」
めちゃくちゃな理由だ、流石成金。
ほむら「あとは同情よ、家だけは良いものをってね」
マミ「青山通りの延長線上ね、ここは」
ユウリ「そろそろ着くのか」
杏子「宇宙人の数も減ったな」
ほむほむ「地球人がちらほら居るわね」
織莉子「……でも最悪の事態は覚悟しておいてくださいね」
ほむら「えぇ……」
暗い雰囲気になってしまったので、電池に余裕があることだし、音楽をかけることにした。
杏子「あー……音楽聞いてたら踊りたくなってきた……」
マミ「私もよ……」
ほむら「私も弦を掻き鳴らしたいよ……」
この三人はある意味廃人だった。
クラシックギターとベースの音は禁物のようだ。
ユウリ「あーなたにあーえたそーれ…」
ほむほむ「数ある中からこの音楽を選んだのも原因ね」
マミ「Not so bad……Not so bad」
一人を除いて静かになった。
ほむら「そろそろね、」
ほむら「そろそろね、そこの駐車場に停めてくれないかしら?」
二度と契約者が現れない月極駐車場に車を停め、車をを降りる。
今度は乗り捨てるわけではない。
ほむら「まず私一人でいってくるわ。特に宇宙人が一緒だと話が拗れるから」
マミ「そうね、私達はこの辺りを彷徨いてるから親子水入らず過ごしていらっしゃい」
杏子「おい、過度に期待させるなよ」
……
ほむら「じゃあ行って来るわ」
ユウリ「交代でここで待ってるよ」
暁美さんは実家へと向かって行った。
ほむらは家へ駆けて行く。
体感時間にして何年ぶりだろうか、自分の為に身を粉にして働いてくれている両親に会うのは。
それは小学校の頃は寂しかった。
しかし中学に上がってからは、愛が無いなどと思ったことはなかった。
むしろ一緒にいる時間が短い分綺麗な部分を見ていたのかもしれない。
ほむら「メガネはかけた方が良いわね」
ただでさえ黒紫のローブにクラシックギターなどという格好だ。
少しでも……別に学校の友達ではないからメガネ無しの姿にも見慣れているとは思けれど。
ほむら「ただいま、お母さん、お父さん、居る?」
……
ほむら「ほむらだよ?見滝原から帰ってきたよ?」
……
物音がしない。
よくみると家の鍵は開いている。
『救済』が起きたのは深夜三時半頃
鍵が開いているならば『救済』されていない可能性が高い。
ほむら「ただいまー……」
しかし最悪の事態を想定しつつ中へ入って行く。
二階から微かな物音がする。
……女性の物だ。
ほむら「お母さん?」
再び音が鳴る。
トーンからして八割方母親だ。
二階に行ってみよう……
部屋に入る。
そこには体育座りをしてこちらを見る母親の姿と、ベッドに眠っている父親の姿があった。
母「……おかえり、ほむちゃん。どうやって帰って来たの?」
ほむら「車をちょっと……ただいま」
暗すぎる。
不審に思った私は父親をよく見てみる。
ほむら「ッ!?」
母「……一週間前の朝起きたら死んでたの。過労死かと思ったけど、外に出たら……」
ほむら「お母さんは生き残れたんだ……」
やり直せない人の死。
今まで実感することは無かった『救済』の実態。
もうお父さんは戻らない。
母「ほむちゃんの為だってあんなに頑張ってたのに……こんなの……」
母親は泣き崩れてしまった。
母「何があったの?……なんでこんなことになっちゃったの?」
ほむら「……ちょっと長い話になるけど…いいかな」
それを聞いて目を丸くする。
当たり前だろう、私に聞いたつもりなんて無いだろうし。
しかしそれを聞き捨てるような真似をできる余裕は母親には無かったようで、
母「教えて…何か知ってるの?」
私はお母さんに救済の魔女の話をした。
街を救おうとした少女の力が暴走して、独善的に地球の生命を自分の楽園に吸い上げる化け物になったことを。
母「……変な話だけど…嘘じゃないんでしょ?そうでもなきゃ……」
ほむら「うん……本当だよ」
母「……お父さんのお墓作ろっか。もう…生き返らないし」
救済の魔女は美樹さんによって倒されたらしい。
つまり結界の中の魂も当然の如く結界と共に消えてしまっている。
私達はお父さんの死体を外へ運び出し、庭の一角に埋めた。
成人男性の物にしては恐ろしく軽かった。
母「……他に生きてる人は居るの?」
ほむら「向こうで会った人と来る途中で会った人が五人居るよ。今は外を彷徨いてると思う」
母「そう……他にも生きてる人が居るのね」
お母さんは私を抱き締め、『貴方が生きてて良かった』と囁いた。
私も『お父さんのことは残念だけど、お母さんだけでも生きてて良かった』と囁いた。
久々の親の温もり。
宇宙人や杏子、巴さんとは確かに違う温もり。
宇宙人のような艶かしい香りも無ければ、杏子のような長い髪も無いし、巴さんのような大きな胸があるわけでもない。
けれど確かに感じるのは無償の愛。
杏子が「わかってくれる人」であれば、お母さんは「何も語らずとも抱き留めてくれる人」
……他にも考えたいこと、言いたいことはあったがそれは後でいい。
今はただこうしていたい。
母「お友達…?呼んでおいで。何も出せないし、こんな辛気臭いけど」
ほむら「うん、じゃあちょっと行ってくる」
ギターだけを置き、皆を迎えに行くことにする。
『ねぇ、お母さんの髪型私に似てなかった?』
ほむら「……そう?」
『似てるよ!まぁあっちの身体には当分触らないだろうけど』
ほむら「でも……親の居る安心感って凄いわ。お母さんに自分の身の上をわかってもらえたらどんなに楽なことか」
『……そうだね』
宇宙人はどうしようか……
一回り大きい、正確には脚だけが長い私そっくりの人を連れて行ったらどんな反応をされることか……
ほむほむ「地球が滅んでるんだから、娘が二人に増えたくらいじゃ驚かないわよ」
その理屈はおかしい。
というかこいつが顔を変えてさえくれればこんなことを悩まなくていいのに。
ほむら「もうそっくりさんで押し通すから髪型だけどうにかしてくれないかしら?」
私を象徴する二股に分かれたロングヘアー。
三つ編みが被るのはまだしも、これが被るのはおかしい。
ほむほむ「じゃあ……これでいいかしら?」
……一本の三つ編みにして、左前に出してある。
マミ「地中海のレモン畑のお姉さんみたいね。黒髪じゃなかったらもっとそれっぽいわ」
杏子「なぁ、あたしの前髪全部上げれば昔のメイドっぽくないか?」
織莉子「つまみ食いしてそうな類の」
それからお母さんに皆を紹介した。
思いの外宇宙人にはそれほど驚かなかった。
案外宇宙人の言ったことは当たっていたかもしれない。
そういえばユウリ以外は宇宙人を含めて『救済』以前に既に母親を亡くしている。
皆の視線が少し羨望を帯びていたのは気のせいでは無いだろう。
一方のお母さんは甘えてこようとする宇宙人をうまいことスルーし、巴さんや織莉子さんに話しかけている。
目線が明らかに胸に行っている。
羨ましいのだろう、あの二人は大人と比べても別格だから……
杏子「ほむらってほむちゃんって呼ばれてるんだな。ほむらだとなんかマミが好きそうな響きだけど、ほむちゃんだと急に可愛くなるな」
ほむほむ「だから私のことはほむほむと呼びなさい」
杏子「あんたの名前は変態で十分だ」
私の両親は私よろしくそんなに身体が強くない。
会社員をやる傍ら、アルバイトで更にお金を稼ぐ。
しかし、それらは殆ど私の治療費に消える。
ほむほむ「バイトは何を…?」
母「えっと……私は絵を描いたり、彫ったり……」
「ここに写真があった……かな」
仕事と書かれたアルバムを取り出し、開く。
マミ「えっ見せて貰えるんですか?そそぎさん」
ほむら「読み方はユキよ。勝手にかっこよくしないで頂戴」
ユキ「あら…?」
親の前ではこの態度はまずかったか。
しかし、お母さんの態度も少し怪しい。
ユキ「こっちのアルバムは……子供に見せる物じゃないわね……」
多かれ少なかれ後ろめたい仕事はしていた様だ。
私も人のことを言えないが。
杏子「漫画チックなのが多いな。なんかの漫画のキャラなのか?」
ユキ「ううん、オーダーメイドよ」
「それは秋葉原のお店のね」
恐らく隠したアルバムの中身はそれの際どい物だろう。
ユウリ「これは……」
織莉子「刺青……?」
マミ「あぁ…彫るってそっち……」
どうやら刺青の彫師もやっていたようだ。
華奢で褐色の背中に大きなアゲハ蝶。
次のページには厳つい背中に観音様。
ほむら「……まさかとは思うけど……」
ユキ「安心して、私は入れてないわよ」
「紺屋の白袴とか言われちゃってたけどね」
私が銃を奪っていたような組織とも交流があったようだ。
織莉子「他には何を…?」
ユキ「あとは普通のバイトよ、身体を壊したら元も子もないから危ないことはやらないことにしてたの」
……
杏子「な、腹減ったろ?ダメになる前に持ってきた物食おうぜ」
ユウリ「ああ、今日の夜にはダメになるのもあったな」
持ってきた食糧を開け、皆で取り分け頂く。
気付かれない程度に生身の三人に多めによそう。
……
ユキ「久しぶりにお腹いっぱいになったかも……少し牛になってもいいしちょっと寝ようかしら」
仕事から解放された反動でマイペースになったようだ。
ユキ「ほむちゃん、添い寝しよ?」
『かなりの』を付け加えておくべきだろうか。
ほむほむ「今行くわお母さん」
杏子「……あんたじゃないよ?」
ユキ「貴方もおいで」
ほむほむ「は、はい!」
マミ「ゴネ得ね……」
お母さんと宇宙人の間を死守し眠る。
絶対に手を出させない。
目覚めたら朝になっていた。
お母さんに真上から覆いかぶさるような格好であったのは驚いたが、お母さんに衣服や髪の乱れがない辺り、私はお母さんを守りきることができようだ。
ユキ「おはよ」
ほむら「……おはよう」
頭を撫でた後に、額に口付け。
久々に娘と会ったんだ、スキンシップ過剰気味になるのも頷ける。
私もとことん甘えたい。
杏子「羨ましいね、親がいるなんて」
ほむら「体感時間にして数年会ってなかったけれどね」
杏子「会えるなら数年なんて刹那に過ぎないだろ」
「あたしは死んでも会えないからな」
……
杏子「あたしが過去のループで妹分を作ったことがあるって言ったよな?」
ほむら「ええ、風見野の虐待児に、呪いの魔法少女、まどかの時もあったわね」
杏子「じゃあ、あたしやマミが親代わりを見つけたことは……」
ほむら「居ないわね、魔法少女に寄り添える他人は同じ魔法少女だけだから」
「そんなベテラン居たら舞台装置に勝つことができたと思うわ」
マミ「なんか話してて思ったんだけど、ユキさんってどっちの暁美さんとも違う性格してるわよね」
ほむら「そうね、私はどちらかというとお父さんに性格が似ていたと思うわ」
マミ「なんというか……柳のような人よね」
ほむら「わからないでもないわ。ああでもなきゃストレスで体調を崩していたかもしれないけれど」
マミ「……素敵なお母さんだとおもうわ」
ほむら「ありがとう……」
一番の寂しがりやもまた羨ましがっている。
親なんて代わりは居ないから……
ユキ「ねぇ」
織莉子「……はい」
ユキ「貴方一人だけ格段に雰囲気が違う気がするの」
「ほむちゃんのそっくりさんもなんか変だけど」
織莉子「……」
ユキ「貴方もしかして、別に目的があってずっと……」
織莉子「はい……ざっくりいうと自分探しの旅を……」
ユキ「そういうの私もしたことあるわ、大学の時にバックパッカー旅行で最初はヨーロッパ、次はアメリカ、最後はインドにね」
織莉子「それで……見つかりましたか?」
ユキ「うん、インドで旦那と出会ったんだけどね、それでわかった気がしたの」
そういえば大人には聞いたことがなかった。
というより大人と会わなかった。
この人なら私を導いてくれるんじゃないだろうか……?
織莉子「実は私は…汚職で自殺した政治家の娘です」
ユキ「……」
織莉子「幼少より様々なことを頑張ってきましたが、すべてお父様の付属品としてしか見られず、お父様が死んで以来私は誰にも認められず……」
ユキ「だから自分を確固たる物にしたかった、かな?」
織莉子「はい……私は私の生きる意味を知りたい……のです」
ユキ「そうね……」
口角に指をあて、考えている。
その様子はとても四十代には見えない。
あの宇宙人ではないが、その頬をつついてみたい気もする。
ユキ「結論から言うとね、自分自身で完結できなかったら、自分では生きる意味なんて見出せないの」
若干期待外れだ。
やはり見つからないのだろうか。
滅亡前なら契約ですぐに見つけられたかもしれないのに。
ユキ「でもね、自分に意義を見出してくれる人を探すことはできたわ」
親子で同じようなことを言っている。
ユキ「それで逆に、私は相手の価値を認めてあげるの」
「まずは他人の価値を認めてあげたらどうかな?」
……
織莉子「……少し考えてみます」
ユキ「力になれたなら嬉しいわ」
織莉子「他人の価値……」
私は特に他人を見下したりしたことはない。
しかし逆に他人に関心を持ったことも大してない。
生徒会の役員、クラスメイト、お父様関係のお友達。
どれも別に疎遠では無かったが、そこまで深くはなく、だからこそお父様が死んでからは全て遠のいた。
美国の娘としてしか見られなかったのは、私の驕りのせいだったのではないだろうか?
ただ完璧に立ち振る舞えばいいと思っていたけど、そんな甘くはないのか。
もっと内面を見てくれるような人付き合いをするべきだったのではないか?
……こちらは今更何を言っても遅いか。
では、彼女達はどうだろうか?
旅の同行者達を私はどう思っているだろうか?
……
……
織莉子「……ッ!!!」
中々思いつかない。
今までしなかったことをしようとしても中々出来ない物だ。
では彼女達の為に何かをするのはどうだろうか。
彼女達に出来なくて、私に出来ること……
織莉子「……車はもう用済みじゃない」
QB「まだ問答を繰り返していたのかい?」
織莉子「はい……」
QB「暁美ユキの言う様に、自分に価値を見出してくれる人を探せばいいじゃないか」
織莉子「彼女達は一人でもやっていけるような人、私なんか必要としていません」
QB「……このままの世界ならね」
……
QB「未契約の一般人、しかも鹿目まどかや魔法少女の知り合いでもなかった君が生き残っているのはいわば本物の奇跡だ」
「必然でも無ければ、誰かの契約の奇跡でもない」
「良いニュースがあるよ。君はどうやら運命にだけは価値を見出してもらえたようだね」
……
QB「だから君の魔法少女の素質は旅のはじめから段々増加している」
織莉子「……」
QB「今の君なら日本を元に戻すくらいは出来るだろうね」
「あくまでも『くらい』だから焦ってそのままの内容で契約しようなんて考えないでくれよ?」
「そのくだらない問答以上に慎重になるべきことだからね」
……私は
マミ「暁美さん、ユキさんにずっとベタベタね……」
杏子「あたしらも世界が滅んだ時に親が居たらベタベタしたくもなるだろ」
ほむほむ「私はいつでも構わないわ」
杏子「あたしの親になったら真っ二つにするからな」
マミ「……良いなぁ」
杏子「でも、ほむらもあんな顔するんだな」
……
杏子「親がそばに居たらもっと上手く立ち振る舞えただろうに……」
織莉子「……」
……
織莉子「しかし……」
どう評価しているかは別にして、今持っている物は失いたくない。
仮にも一緒に旅をした仲だ。漠然とした情は湧いている。
日本を元通りにすると言って居たが、魂の霧散した死人を生き返らせるなんて相当な素質を要するはず……
QB「君が願えば日本は再び人口一億人越えの自然の多い国になるよ」
……鳴呼、個体の区別なんてこいつらはどうでもいいのか。日本人という群体はできても例えば美国久臣という個人を復活させたりはしない。
……
QB「君は君達の中では僕らに価値観が近いと思ったんだけどね」
……私は良いにしても、彼女達は……
ユキ「ほむちゃん、起きて。織莉子ちゃんが話があるみたいよ」
ほむら「ん……なんだい?」
……貴方が出てくるのね。
ユキ「あら?」
母親に強く抱きついている。
ほむら「親の温もりは生物学レベルで欲するものらしいね、どうやら」
脳は共用だからだろうか。
そういえば魂は23gと言われるが、ソウルジェムにはきっとシステムの為の物が組み込まれているのだろうか?
ユキ「ちょっと甘えすぎじゃないかしら……?」
ほむら「この衝動には逆らえないよ!」
純粋な想いでここまでなのだから、いかに宇宙人が危険かわかる。
ほむら「それで、話って…?」
……
織莉子「少しテラスで良いですか?」
ほむら「……わかった」
ユキ「いってらっしゃい」
彼女は赤いメガネをかけ、手櫛で髪を整えながらテラスに向かう。
QB「なに……エネルギーが必要だって?」
「わかった。手っ取り早いのがあるよ」
ほむら「話ってなんだい?」
風に煽られ、折角整えた髪が靡く。
織莉子「すいません……暁美さんを」
ほむら「……わかった」
……
ほむら「何かしら?」
織莉子「やはり、私契約しようと思います」
ほむら「……そう」
織莉子「私の素質は崩壊以降上がり続けているらしく、その気になれば日本を再び人口一億人越えの自然の多い国に戻せるそうです」
ほむら「……それの実態がどうなるかはわかるわ。よく似た別人だらけになるということでしょう?」
織莉子「恐らく……」
織莉子「私はそれでも構わないというか、『救済』で死んだ方の中に大事な人は居ないので……」
「しかし貴方たちはどうかと思いまして……」
ほむら「……確かに関わったことがある人達がいわば偽物になるのは堪えるかもしれないわね」
「例えば私のお父さんはどうなるのかしら?」
……
ほむら「他の願いは考えたかしら?」
織莉子「いえ……それをどうしようかを……」
ほむら「だったら私みたいに父親が死ぬ前からやり直したらどうかしら?」
魅力的な提案だ。
お父様の無実を証明できればお父様は死なないで済む。
ほむら「でも貴方の父親の汚職が仮に濡れ衣でなければ貴方はそれを隠蔽するために一生父親を匿わなければならなくなるわよ」
……真偽はハッキリしない。
私は濡れ衣だと信じているが、もし……
ほむら「そのもしもが起きた時に貴方は受け入れられるかしら?父親の罪と自分の宿命を」
……感情的に決めて良いことではない。
ほむら「それに、父親が生きていれば貴方は付属品のままかもしれないわね」
……ッ!?
ほむら「怒らないで頂戴。失礼は承知よ。でもいずれ貴方が思うであろうことのはずよ」
……つまり、自分を取るか、お父様を取るか……
織莉子「他に何か思いつきませんか?」
ほむら「……そうね、価値を見出してくれる父親を生き返らせてあげたらどうかしら?」
……
織莉子「他の方に相談してきます……」
ほむら「キリカは日本再編でもいいんじゃないかって言ってるわ」
……
その後、巴さんと佐倉さんにも意見を仰ぐことにした。
QB「暁美ほむら、話があるんだ」
杏子「へぇ……あたしならそれはゴメンだね。ニセモノの舞台で人生を演じ続けるみたいで」
……
杏子「他の願い…?生き残りだけでコロニーを作るとかでいいんじゃないか?」
マミ「そうね……再編も手段の一つかもしれないわ」
「でも貴方はその不気味さに耐えられるかしら?」
「周りの人間が殆ど作り物、それ以外も私たちの様な化け物。そんなものに」
……
マミ「他の願い?……そうね、宇宙のどこかに新たな大地を築きそこの神になるのも良いかもしれないわね」
ほむほむ「再編?いいんじゃないかしら」
「私は貴方達が居ればいいことだし」
「他?そうね、あえて人間だけ再編しないで他の動物を人間クラスまで進化させるのはどうかしら?」
ユウリ「アタシはニセモノはゴメンだね」
「遡行が良いと思う、こんな壊れた世界も嫌だからね」
ほむら「話って何かしら?」
QB「復興を行う傍ら、この様な事態に至った原因を究明しているんだけどね」
ほむら「原因も何も『救済』じゃない」
QB「いや、どうして平凡な少女のはずのまどかがあそこまでの魔女になったのかをね」
ほむら「……どういうことかしら」
QB「予想はついてるんじゃないかい?」
「君が契約する前のまどかはワルプルギスの夜に単身立ち向かってあっけなく返り討ちにあったというのに」
「三回目の遡行ではワルプルギスの夜を一撃で消しとばす程に、そして地球を滅ぼす魔女へなったそうじゃないか」
QB「君が遡行を繰り返す度に絡まるはずの無い並行世界の因果の糸がまどかを中心に絡まり」
「まどかはより強力な魔法少女、そして魔女になったんじゃないかな?」
ほむら「……ッ!!」
QB「マミ達と話していて薄々は勘付いて居たんだろう?」
「地球が滅び、父親を死なせる原因は自b」
ほむら「それ以上云うな」
「ほむらの祈りを侮辱するのは私が赦さない」
QB「やれやれ、僕を潰しても意味が無いことは知っているだろう?」
「それに僕達には侮辱するという概念は無いよ。事実を述べただけじゃないか」
ほむら「こっちにはワイルドカードがあることを忘れるなよ。君達全員の魂を熔かすことだってその気になれば」
QB「恐るべき話だね」
「……ガードが硬いから君達は諦めよう。エネルギーが要り用でね」
ほむら「早く消えてくれ」
ユキ「……」
織莉子「これ、頂いて良いですか?」
杏子「ああ、コピー品であんまり口に合わなかったけど、食いたきゃ好きに食いな」
国母と書かれたクッキーの袋を開け、中身を頬張る。
本物を圧縮した感じだ。確かに美味しくはない。
杏子「これからどうしようかね、あんたの契約はアテにしないとして」
織莉子「もう少し真面目に復興して欲しい物ですが……」
杏子「爆心地の日本以外はどんどん復興してってるらしいよ。魔法少女の契約のおかげもあるけど」
宇宙人の復興などハナからアテにしていなく、契約によって復興させているのか汚い話だ。
ユキ「……ほむちゃん」
ほむら「何?」
何食わぬ顔をして母親に振り返る。
その身体から切り離された心にどんな闇を先のやり取りで溜め込んだのかは、もう一つの黒い貴金属をみれば一目瞭然である。
ユキ「さっきのは何?何も無いところに向かって……変な刃物振り下ろして怒ったような声出して……」
「それになんか変よ…?随分元気な口調になったり、今まで使わなかった女口調になったり……」
……
時は満ちた。
ほむら「これから話すことをただ、ただ聞いて欲しいの」
全てを話すことにした。
例え受け入れられなくとも……
ユキ「……」
ただ黙って抱き締めている。
この様子だと信じてはくれた様だ。
ユキ「……何もしてあげられなくてゴメンね」
ほむら「ううん……そんなことないよ……」
相変わらずの親子水入らずにしておこう。
織莉子「この国母って美味しくないですね。牛乳があればどうでしょうか?」
ユキ「でも、本当に終わりで良いの…?」
……
ほむら「……それは」
私の願いは決まった。
杏子「なんだその願い……にしてもこのクッキー美味しくないな」
マミ「かっこいいじゃない?契約なんて心から祈れば大丈夫なのよ?」
「この国母美味しくないわね、牛乳が欲しいわ」
織莉子「……希望を持つことを否定される魔法少女ですが、それを否定したいのです」
暁美親子を除く全員で集まり、私の願いについて話し合う。
ほむほむ「魔法少女というか、ほむちゃんのことでしょう?」
ユウリ「呼び方ナチュラルに切り替えたな」
織莉子「まぁ本命は暁美さんですけど……」
マミ「佐倉さんのこともあるわね」
杏子「……だな。余計なお世話って言いたいところだけど、最初とは…違うけど似た願いがあるんだ」
織莉子「契約の結果どんな魔法を身につけるのか、どういうしっぺ返しが来るかは全て既に予測しています」
杏子「じゃあさっさと契約した方がいいんじゃないか?」
ユウリ「善は急げって云うしな」
ほむほむ「でも急がば回れとも言うわよ」
ユウリ「今更回ってどうするんだよ」
ほむほむ「ワンと咆えるわ」
マミ「……」
マミ「でも暁美さんの魔法は確か……」
織莉子「そこがどうにかなるかは賭けかもしれません。しかしそれは私の祈り、大抵のことは叶うと思うのですが……」
杏子「もうそこはやってみるしかないね」
ユウリ「ダメでもあいつだけはなんとかできるようになるな」
QB「どうやら契約の願いについて話してるようだね」
「願いは決まったかい?」
織莉子「……はい」
私の体重が23g減る時がやってきた。
……
辺りを白い光が包み込む。
ボロボロの様に見える純白のローブ。
よくみればそれがデザインだということはわかるのだが、その格好からは壊れた世界でただ只管祈る姿を自然と想像させる。
ユウリ「……ほう」
ほむら「……!?」
胸の中が何かに見たされて行く気がした。
突如何もしていないのに、左手に盾が現れる。
ユキ「あら……」
盾の中の砂が輝きを取り戻し、歯車の錆が消え失せた。
ほむら「鳴呼……」
ユキ「……答えは出たみたいかな?」
杏子「待った待った、あたしらも連れてけ」
マミ「まだ出来るかはわからないけれどね……」
ほむほむ「私やユキさんも行けるかしら……」
織莉子「……」
白いローブの織莉子がほむらに近づくと、盾から時計の仕掛けが消え、代わりに部屋の床に時計の模様が現れる。
ほむら「まさか……」
ユウリ「ああ、今度は一人じゃないからな。お母さんだって居る」
「あんたの祈り、叶えに行って来い」
QB「集団時間遡行かい?その並行世界でのエネルギー回収を円滑化する為に僕もついてい……」
キュゥべえの尻尾をユウリが鷲掴みにする。
キュゥべえは痙攣した後、動かなくなった。
ユウリ「こいつらはアタシが食い止めとくからさ」
「化け物が普通の世界にいちゃマズイだろ?」
ユキ「ユウリちゃん……」
ユウリ「戻ったらあたしら、ユウリとあいりによろしくな」
……
織莉子「暁美さん、お願いします」
ほむら「元気でね、ユウリ」
ユウリ「そう簡単にはくたばらないよ」
カチャ
「ほむら、目覚めようか」
目覚めるといつもの病室。
しかし、いつもはしない物音。
ユキ「おはよ、ほむちゃん」
林檎を剥く杏子、お茶を淹れる巴さん、お菓子を用意する織莉子さん。
どうやら私の脚に座っているらしい宇宙人。
そしてベッドに腰掛け、私の髪の手入れをしようとするお母さん。
ほむほむ「棺桶は流石にマズイからベッドの下にあるわよ」
杏子「幻覚でこのウサギ林檎が本物のウサギに見える……ってのはどうだ?」
マミ「名付けて、ラビアンローズね」
杏子「適当言うなよ」
織莉子「やっぱりなんだかんだ人の評価を気にするのは治らないみたいで……」
「だからこのやり方に致しました」
ほむほむ「祈りで満たすなんて、キリスト教の聖書にあったようなフレーズね」
……
織莉子「そして私、新しい生活を見滝原中学からやり直すことにしました」
ほむら「……じゃあ、ほむらと同じ転校生で、こっちの私や巴の同級生だね」
織莉子「頑張って……青春して人生に意義を見出します!」
ほむら「……この宇宙人のが少しうつってないかい?」
ほむほむ「私がするのは青春じゃなくて買春よ」
ユキ「…ダメよ?女の子がそんな話しちゃ……」
どうやら、お母さんだけは魔法少女でないので二人に増えてしまったようだ。
元からこの世界に居たお母さんは東京でそのまま働き、遡行してきたお母さんはこちらで主婦業をするようだ。
マミ「アパート辞めるだけであちらのユキさんの負担を幾分か減らせるかと思いますが……」
そして、私達親子は巴さんのマンションに一緒に住むこととなった。
杏子「マミが寂しいだけだろ?」
ほむほむ「いつでも胸貸されてあげるわよ」
手のかかる子供二人を増やして。
お母さんが大変なのは相変わらずになりそうだ。
ほむほむ「これが私の新しい名前……?」
ユキ「ごめんね、コネで譲ってもらった物だから……」
ヤクザのコネで宇宙人は戸籍を買い、新しい名前を手に入れた。
ほむほむ「……穂村…かえで?」
ユキ「ほむってフレーズが気に入ってるって言ってたから」
かえで「……素晴らしい名前ですね」
「三年生に大きい女の子二人転校してきたみたいだよ」
「バスケ部入ってくれないかなー」
「バレー部だよー」
まどか「うちのクラスにも来ないかな?」
さやか「ラブレターの次は転校生ー?ベタがお好きですなー」
仁美「パンを加えて住宅街でドリフトですわ」
早乙女「目玉焼きは塩と醤油どちらですか、美樹さん!」
さやか「ソースです!」
早乙女「志筑さん!」
仁美「生卵ですわ」
早乙女「鹿目さん!」
まどか「へっ!?け、ケチャップ?」
早乙女「キィィィッ!!中沢君!」
中沢「どっちでも良いんじゃ…」
早乙女「その通り!ナ━━━━」
さやか「ダメだったんだ……」
「つーか、まどかケチャップって……」
まどか「仁美ちゃんよりは普通だとおもうけど」
早乙女「じゃ、転校生紹介します」
「さ、入ってー」
入って来たのは二股に分かれたストレートヘアーに、赤縁メガネ、黒タイツ。
ほむら「暁美、ほむらです」
そして……その小さな背中に背負うは……
ほむら「趣味はクラシックギターです。聞いてください」
FIN
483 : ◆USZbC4nXcg[] - 2012/10/19 20:24:57.94 esCV90kIO 280/285本編終了。
カンナは回収不可でした。
読んでくれた方々ありがとうございます。
言いたいこといっぱいあるけど、今はお腹減ったから後でゆっくり話す。
質問あったらどうぞ。
487 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/10/19 20:55:07.45 cMxLFKpUo 281/285乙
このほむらならコミュ障で信頼築けないとかはなさげかねぇ
489 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/10/19 23:59:50.88 SYhPLscs0 282/285ほむらさんには熱情だったか?アレを弾いてみてもらいたいもんだ
511 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/10/22 14:01:21.34 E7drlGpH0 283/285乙 楽しかった
512 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/10/22 14:36:30.31 3uBi5cDD0 284/285乙
しかしほむらはあそこまで手酷く拒絶されてよくまだまどか助ける気になれたなぁ
513 : ◆USZbC4nXcg[] - 2012/10/22 18:30:12.87 tmBWTndIO 285/285あくまでも「他の誰のためでもない、自分の祈りの為に戦う」「戦うことこそ生きること」「私の戦場はここではない」「ほむらには生きていて欲しい」「ほむちゃんはそれでいいの?」が原動力なので


大胆なifは嫌いじゃない。