翌朝
女「ね、男」
男「ん?」
女「・・・ちょっと話があるんだけど」
男「話?」
女「うん」
男「なに?」
女「うん」
男「?」
女「・・・これから話すこと、冗談みたいなことなんだけど」
男「・・・?」
女「・・・だから、信じられないかもしれないけど」
女「本当のことだから」
男「・・・?うん、わかった」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・実は私さ」
男「うん」
女「過去に戻れるんだ」
男「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
魔王「お前、リセットしてね?」【前編】の続きです。
元スレ
魔王「お前、リセットしてね?」
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1223909415/
女「・・・」
男「え?」
女「・・・」
男「いやいや」
女「・・・」
男「過去って?」
女「過去」
男「戻れるって?」
女「戻れる」
男「冗談?」
女「じゃないって!!」
男「・・・」
女「・・・」
男「いやいやいやいや」
女「・・・」
男「うそでしょ?」
女「・・・」
男「・・・そんなバカな・・・」
女「・・・本当だよ」
男「いやいや・・・」
男「そんなわけ・・・」
女「初めて魔物がこのまちを襲ったとき!」
男「!」
女「男が強いのか聞いたのも」
女「男に早く寝るように言ったのも」
女「魔物が来て、男をすぐに起こせたのも」
女「魔物が襲ってくることを知ってたからできたんだよ」
男「・・・」
女「男の名前も知ってた!」
男「・・・」
女「男が私にお礼を言うセリフも知ってた!!」
男「・・・」
女「全部知ってたんだよ・・・」
女「全部一度聞いてたんだよ」
女「男と出会ったときからさ」
女「なんでなのかわからないけど」
女「戻りたいって強く思うと過去に戻れるようになった・・・」
男「・・・」
女「戻りたいって思った時間に戻れるようになったの」
男「・・・」
女「・・・なんでなのかわからないけど」
男「・・・そっか」
女「・・・」
男「・・・そういうことだったのか・・・」
女「・・・?」
男「・・・」
女「・・・?」
男「・・・そういや・・・あの朝に、おれを泣いて引き止めたのも」
女「!!」
男「その夜に魔物が襲ってくることを一度経験してたから」
女「・・・」
男「知ってたから」
男「なんとかして引きとめたかったのか・・・」
女「・・・うん」
男「・・・一目惚れの話も・・・」
女「・・・・・・・・・あれは・・・」
男「・・・今更隠す必要ないってw」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・ごめんなさい」
男「まあ、ああでもしない限りおれ旅立ってただろうしねw」
女「・・・」
男「てか一度旅立ってるからあーゆーことしたんだもんなw」
女「・・・」
女「・・・でも・・・私は」
男「あははwもーいいってw」
女「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・と、とにかく」
男「?」
女「私は過去に戻れるから」
女「もしこの先このまちに魔物が襲いにきても」
女「また過去に戻ってあんたに知らせればいいし・・・」
男「・・・」
女「・・・だから、その・・・無理してこのまちにいなくても・・・だいじょぶだよ?」
男「・・・」
女「・・・魔王退治もあるだろうしさ」
男「・・・」
女「・・・いつまでもこんな小さなまちにかまってる暇もないでしょ?」
男「・・・」
女「・・・まあ、もし魔物が襲ってきて過去に戻ったらまた引き止めちゃうことになるけど・・・」
男「・・・」
女「でもほら、もしかしたら魔物が襲ってくる前に男が魔王倒しちゃうかもでしょ?」
男「・・・」
女「男めちゃめちゃ強いんだしさ!」
男「・・・」
女「・・・だから」
男「・・・そっか」
女「・・・」
男「・・・わかった」
女「・・・うん・・・」
女(これで男に告白とかされなくて済むし・・・)
女(計画通りなんだけど・・・)
女(・・・)
女(・・・よかったの・・・か・・・?)
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・で、でもさ」
男「?」
女「やけにすんなり信じたね」
男「・・・ああ」
女「普通だったら信じないと思うけど」
男「・・・」
女「・・・?」
男「・・・おれも過去に戻れるんだよ」
女「・・・・・・・・・え?」
男「正確には戻れた、だけど」
女「・・・・・・え、え?」
男「だからすんなり信じられた」
女「・・・男も・・・戻れるの・・・?」
男「・・・これで辻褄が合ったな・・・」
女「え?・・・え?」
男「もう隠しててもしょうがないか」
女「え?・・・え?」
男「ちょっと失礼」
男は女に手をかざした!
男は何かの呪文を唱えた!!
女「!?ちょっ・・・」
なんと!女の体から小さな箱が出てきた!!
男「・・・やっぱり」
女「!?なにこれ!!」
男「おれの探してた物」
女「え・・・?」
男「小さな箱って言ったじゃん」
女「え・・・?なんで?なんで私の体の中から出てくるの・・・?」
男「・・・」
女「・・・どういうこと?」
男「これはね」
女「・・・」
男「メモリーって言うんだ」
女「・・・メモリー?」
男「そう」
女「?」
男「今までの、冒険や、過ごしてきた時間を、記録することができる」
女「記録・・・?」
男「おれらはぼうけんのしょって呼んだりもしてる」
女「ぼうけんのしょ」
男「うん、大体は教会で記録する決まりになってる」
女「ふーん」
ねむい
男「つまりは記録した時間に戻ることができるんだ」
女「記録した時間・・・?」
男「つまりおれが今、このメモリーに記録したとする」
女「うん」
男「そして明日になったときに過去に戻ったとすると今、この時間に戻ってこれるわけだ」
女「今記録したから?」
男「そう」
女「・・・むずかしい」
男「あはは」
男「おれが勇者になったとき」
男「というか気付いたらなってたんだけど」
男「過去に戻ることができる力・・・おれはリセットって呼んでるんだけど」
男「その力と、このメモリーがおれの中にあった」
女「りせっと?」
男「うん、『リセット』って唱えると使える力だからリセットって呼んでる」
女「今も言ってるのに使えてないじゃん」
男「全く戻る気がないときは唱えても意味ないの」
女「ふーん・・・」
男「あとどうやら唱えなくても戻りたいって強く思えば使えるらしいね、女の話を聞く限り」
女「知らなかったの?」
男「うん、おれはいつも『リセット』って言って使ってたし」
ちょっとシャワー浴びてくる
女「つまりそのりせっとの力とこのメモリーがないと過去にはもどれないわけだ」
男「まあ・・・うん、そうだね」
女「じゃあなんで私は戻れたの?」
男「うん」
女「私別に勇者じゃないし・・・」
男「だね」
女「そんな力今までなかったよ」
男「多分だけど」
女「ふむ」
男「最初にぶつかったときにメモリーが女のほうに移っちゃったんだと思う」
女「ぶつかったとき?」
男「ぶつかったとき」
女「男が最初に私に降ってきたときか!!」
男「そ」
女「!!あれってもしかして戻ってきたの!?」
男「そう」
女「でも男、このまちに来たことなかったんでしょ?」
男「うん」
女「来たことない記録地点に戻ってこれるわけないじゃん!!」
男「それなんだ」
女「それ?」
男「これ」
女「メモリー?」
男「うん」
男「多分故障気味だったんだよね、これ」
女「故障?」
男「バグ?とも言うかな」
女「・・・バグ?」
男「要するに、過度に負担をかけすぎてたんだよ」
女「負担?」
男「例えば、異様に、ぼうけんのしょに記録→リセットを繰り返してたり・・・」
女「・・・男もけっこうりせっとしてたんだ」
男「・・・魔王・・・強くて」
女「・・・なるほど」
男「うん」
男「で、異常動作が起きて、来たことのない場所に戻っちゃったんだと思う」
女「ふうん・・・」
男「うん」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・あれ、でも」
男「ん?」
女「記録した時間に戻るんだよね?」
男「そう」
女「でも私記録なんかした覚えないのに戻りたいと思った時間に戻れたよ?」
男「それはですね」
女「・・・?」
男「こういうこと」
男はメモリーの箱の蓋を開いた!!
女「なんか中にいっぱい詰まってるね」
男「これが今まで記録してきた時間」
女「こんなに?」
男「うん」
女「へえ・・・」
男「・・・おれが使っていたときは1つしかなかった」
女「え?」
男「おれは記録する度に上書きしてたから」
女「・・・上書き?」
男「前記録した時間のところに新しく記録しようとする時間を記録するんだよ」
女「・・・よくわかんないけど」
男「まあつまり常に記録してる時間は1つだけってこと」
女「へえ・・・」
男「でも女に移って、多分完全に故障しちゃったんだろな・・・」
男「自動で不規則に時間をそれぞれ新規保存しちゃってるんだ・・・」
女「??」
男「つまり勝手にたくさんの時間を記録しちゃってるってこと」
女「なるほど」
男「うん」
女「だから私は戻りたい瞬間に一番近い記録されてる時間に戻ってたと?」
男「そう、わかってんじゃん」
女「ふーん・・・」
女「今も勝手に記録されているの?」
男「いや・・・体内に入れてないときは記録されないの」
女「へえー」
男「また体内に入れると勝手に記録されるよ」
女「永遠に?」
男「いやいや、メモリーに記録できる時間の数は限られてるから・・・」
女「メモリーがいっぱいになったら止まるの?」
男「そう」
女「へえー」
男「まあ、故障してるから止まる前にこのメモリーが完全に使えなくなるかもしれないけど」
女「そか・・・」
男「うん」
女「りせっとの力は?」
男「うん」
女「やっぱ移ったの?」
男「・・・うん、メモリーが移るとリセットの力も移っちゃうみたいだね」
女「そうなんだ」
男「またおれにメモリーを入れるとリセットの力も戻るはず」
女「なるほど・・・」
男「これが真相」
女「・・・なるほど」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・なんか他に聞きたいことある・・・?」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・いや、特に・・・」
男「・・・そか」
女「・・・うん」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
私はメモリーを男に返した。
まさか告白させないために、まちから離れさせるために、
過去に戻れることを告げたのに。
こんなことになるなんて、思ってもみなかった。
私は男の運命を変えてしまったのかもしれない。
その日、いつものように男は魔物からまちを守り、
私はいつものようにたびのやどの店番をした。
しかし、その日男と交わした会話はあれ以来なかった。
夜、寝る前に今朝のことを思い返してみると
聞きたいことなんて山ほどあったのに、
何も聞けなかった私は男の話に相当驚いていたのだろう。
明日、男にいろんな話を聞こう。
今度こそ、これまでの話を。
そして、謝ろう。
そう思いながら、眠りについた。
あ、そだ。忘れんうちに解説しとくと、
男の説明の上書き保存、新規保存については
ドラクエでセーブするときに常にぼうけんのしょ1にセーブするか、
いちいちセーブたびに新しいぼうけんのしょにセーブしてくかの違いですた
いちいち新しいぼうけんのしょにセーブしてったらメモリーカードの容量いっぱいになるよーって話。
わかりにくくてすまん。
ではおやすみなさい。
翌朝
女「ふあああああああ・・・」
女「・・・」
女「・・・ん・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・ねむ・・・」
女「・・・」
女「んん・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・男起こしにいかなきゃ・・・」
女「・・・」
女「・・・男―」こんこん
女「・・・」
女「・・・男―朝だよー!!」こんこん
女「・・・」
女「・・・男―!!」
女「・・・」
女「・・・?変だないつもはこれで起きてくるのに」
女「男―?」
女「・・・開けるよー?」がちゃ・・・
女「男―・・・」
女「・・・あれ?」
女「・・・」
女「・・・いない?」
女「・・・」
女「・・・どうして・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「!」
女はおきてがみと小さな箱を見つけた!
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女へ
魔王のところへ行きます。
何かあればリセットしてください。
メモリーは置いていきます。
体に押し付ければ自然と中に入っていきます。
色々と調べた結果、
このメモリーはもういつ使えなくなってもおかしくない状態にあります。
注意して使ってください。
色々と迷惑をかけました。
あなたたちのまちが平和になるように全力で魔王を倒すつもりです。
では、いってきます。
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・そっか」
女「・・・」
女「・・・行っちゃったのか」
女「・・・」
女「・・・私が行けって言ったんじゃん」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・男・・・」
女「・・・」
女「・・・ごめん・・・」
町民1「大変だ!」
女「うわっ!!」
町民1「女ちゃん!!」
女「どしたの朝っぱらから!!」
町民1「魔物がまた襲ってきたんだ!」
女「!!」
町民1「男様はまだ寝ているのか!?早く知らせないと・・・」
女「・・・」
町民1「男様―!!」
女「・・・」
町民1「男様―魔物です!!」
女「・・・」
女「・・・男は・・・もういないよ」
町民1「!?」
女「魔王を倒しに行った」
女「・・・私たちで、なんとかしよう」
魔物「ぐはははははは!」
女「やい魔物!」
魔物「小娘!勇者はどこだ!?」
女「勇者は今、朝風呂中につき私が相手だ!!」
魔物「ぐはははははは!お前が俺の相手になるか!!」
町民1「女ちゃん!無理だって!!」
女「やってみなきゃわかんないじゃない!」
女(それにここでりせっとしたら・・・)
女(・・・男だって戦ってるのに・・・!!)
女「いくぞー!!」
女のこうげき!
ミス!魔物にはきかないようだ!
魔物のこうげき!
女は10のダメージをうけた!
女のこうげき!
魔物はひらりとよけた!
魔物のこうげき!
女は12のダメージをうけた!!
魔物「ぐははははは!話にならんな!!」
女「うう・・・」
町民1「女ちゃん・・・」
魔物「とどめだ!!」
町民1「女ちゃん!!」
女「きゃああああああああああ!!」
魔物「!?」
なんと魔物の動きが急に止まった!!
女「!?」
魔物「・・・」
女「・・・?」
魔物はおとなしくなり野に帰っていった!
女「・・・これって・・・?」
女「・・・どういうこと・・・?」
町民1「女ちゃん!!」
それから数時間後、魔王が倒された、という情報が入った。
同時に勇者が命を落とした、という情報も入った。
相討ちだったらしい。
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・男」
男はリセットを使えなかった。
私たちのために、メモリーを置いていったから。
私たちと・・・
いや、私と出会わなければ落とすことのなかった命を、
彼は落としてしまったのだ。
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女「・・・」
女は静かにメモリーを自分の胸に押し付けた。
女「・・・」
女「・・・私は」
女「・・・」
女「・・・こんな平和、いらない」
女「・・・」
女「・・・男と私が初めて出会った瞬間に一番近い時間に・・・」
女「りせっと」
その刹那、私は確かに聞いた。
「記録されている時間は最新のものだけです」
「強制的にその時間に戻ります」
女「え?」
女「え?え?何今の・・・」
女「ひとつだけ!?」
女「なんで・・・?」
女「きゃあああああああああああ!!」
男「えええええええええええええ!?」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・うぅ・・・なにがどうなって・・・」
男「・・・いたい」
女「うわっ!!男!!」
男「・・・女・・・?」
女「生きてる・・・」
男「・・・?」
女「・・・うぅ・・・よかったぁ・・・ぐすっ・・・」
男「!?ちょっ・・・」
女「ひぐっ・・・」
男「なんで泣くの!?」
女「うう・・・」
男「てかなんでいきなりおれの部屋にいんの!?寝てるはずじゃ・・・」
女「うえええええん・・・」
女「・・・ぐすっ・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・落ち着いた?」
女「・・・うん」
男「・・・」
女「・・・今っていつ・・・?」
男「やっぱり戻ってきたのか」
女「うん」
男「・・・明日の朝早くに、魔王のところに行こうと思ってる」
女「・・・じゃあ前日か・・・」
男「魔物が襲ってきた?」
女「・・・」
男「・・・?」
女「・・・襲ってきたけど」
男「・・・けど?」
女「・・・途中で帰っていった」
男「途中で?」
女「うん」
男「どういうこと?」
女「誰かさんが魔王を倒したから支配が解けたの」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・その誰かさんって」
女「・・・男」
男「まじ!?」
女「うん」
男「まじか・・・倒せるんだ、おれ」
女「・・・でも」
男「・・・でも?」
女「・・・男も死んじゃう」
男「!」
女「・・・相討ちだって」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・そか」
女「・・・うん」
男「・・・やっぱそうなのか」
女「・・・?」
男「で」
女「ん?」
男「せっかく平和になったのに」
女「うん」
男「なんで戻ってきちゃったの?」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・いいわけないじゃん」
男「・・・?」
女「いいわけないじゃん!男が死んで手に入る平和なんて!!」
男「!」
女「・・・私のせいで・・・」
女「私のせいでリセットできなくなって・・・」
女「私のせいで死んで・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・大切な人を・・・」
男「・・・」
女「・・・自分のせいで失って・・・」
女「・・・それで手に入る平和なんていらないよ!!」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「だから」
男「・・・」
女「まだ出て行かないで」
男「・・・」
女「もっと修行して、レベル上げて」
男「・・・」
女「死ななくても倒せるレベルになったら倒しにいってよ!」
男「・・・」
男「・・・」
女「ねえ!」
男「・・・」
女「なんで!?」
男「・・・」
女「死ぬのがかっこいいと思ってるの!?」
男「・・・」
女「そんなの全然かっこよくないから!」
男「・・・」
女「ねえ!!」
男「・・・もう、無駄なんだ」
女「・・・無駄・・・?」
男「・・・もう、おれのレベルは上がらないらしい・・・」
女「・・・え」
男「・・・ある時からいくらけいけんちをもらってもレベルが上がらなくなったんだ」
女「・・・」
男「それで、おかしいと思って神父さんに聞いたんだ」
男「次のレベルに上がるにはあとどれくらいのけいけんちが必要かって」
女「・・・」
男「そしたら」
男「・・・もう成長の限界ですって」
女「・・・」
男「これ以上レベルは上がらないって」
女「・・・」
男「・・・だから」
男「・・・何度も何度も魔王を倒しに行ってるんだけど」
女「・・・」
男「・・・どうしても倒せなくて・・・」
女「・・・」
男「・・・でもレベルは上がらないし」
女「・・・」
男「・・・装備は完璧だし・・・」
女「・・・」
男「・・・でもリセットがあるから」
女「・・・」
男「最後の最後まで死力を尽くして戦うことはできなくて」
女「・・・」
男「・・・いつもリセットしてた」
女「・・・」
男「・・・だから、おれは死なないと、魔王を倒すことはできないんだと思う」
女「・・・そんな」
男「あるとき」
女「・・・」
男「何度目か忘れてしまったけど、魔王を倒しにいったとき、奴がこう言ったんだ」
女「・・・?」
男「『お前、リセットしてるだろって』」
女「え・・・」
男「驚いたよ・・・思わずリセットしてしまった」
女「魔王もリセットを知ってるの・・・?」
男「リセットは古代から存在するのではないかと言い続けられてきた力だからね」
女「古代から・・・」
男「代々勇者が魔王を倒してきたのもリセットの力があったからだと言われていた」
男「ただしそれを実際に見たものはいなかったから伝説の力とされてきたけど」
女「・・・へえ」
男「文献を読めばすぐにわかることだ」
女「・・・」
男「おれが何度もリセットを使っていた女に知らず知らずのうちに違和感を覚えたように」
男「魔王もおれに違和感を覚えたんだと思う」
女「・・・違和感・・・」
男「前に会ったことあるようなーっておれ言ってたでしょ?」
女「あ・・・」
男「・・・それから魔王軍はおれのメモリーを狙うようになったんだ・・・」
女「りせっとすれば何度でもやり直すことができるから・・・」
男「うん、倒されそうになったらリセットすればいい」
女「・・・だから、執拗に男を・・・」
男「うん」
女「・・・」
男「・・・とかなんとか言ってる間にもう夜明けか」
女「・・・ほんとだ」
男「・・・じゃあ、行ってくる」
女「!だめ!!」
男「・・・女」
女「じゃあせめてメモリーを・・・」
男「言ったろ?リセットが使えると思うと倒せない・・・」
女「・・・でも」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・じゃあ」
女「・・・待って」
男「・・・?」
女(・・・・・・これしか・・・ないか・・・)
男「久しぶりだな!魔王!!」
魔王「久しぶり!?私は貴様に会ったことなどないわ!!」
男「あ、そっか・・・う、うるさい!!以前の俺とは違うぞ!!」
魔王「何を寝ぼけたことを・・・と言いたいところだが」
男「!?」
魔王「その様子だと以前リセットしてからしばらく俺のところには来ていなかったらしいな」
男「・・・!やっぱばれてるか」
魔王「腰抜けめ!今回はリセットする間もなく殺してやるわ!!」
男「・・・今回は、使わないさ」
魔王「ふん!それも毎回言っているセリフか!?死ねええええええ!!!」
男「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」
男「うおおおおおおおお!!」
男のこうげき!
魔王に187のダメージ!!
魔王「その程度か!!」
魔王のこうげき!
男は190のダメージを受けた!
魔王「まだまだだ!」
魔王はしゃくねつのほのおをはいた!!
男は169のダメージを受けた!!
男「くっそ!やっぱり強い・・・」
魔王「ふははははははは!!」
男「ち・・・」
男は回復の呪文を唱えた!
男の体力は300回復した!!
魔王のこうげき!
男は152のダメージを受けた!!
魔王はかがやくいきをはなった!!
男は170のダメージを受けた!!
男「くそ・・・」
魔王「ふはははははは!!」
男「はあ・・・はあ・・・」
魔王「・・・少しはやるようだな・・・だが!次で終わりだ!!」
男「・・・」
男(残りHP・・・338・・・)
男(ここだ・・・いつもここでおれはリセットを使ってしまう)
男(この魔王のこうげきに耐えることができれば・・・)
男(倒せるはずなんだ・・・)
魔王「死ねええええええええええ!!」
男「・・・!!!」
魔王のこうげき!
勇者に168のダメージ!!
魔王のこうげき!
勇者に169のダメージ!!
男「・・・!!」
男「お・・・おお・・・おおおおお!!」
男のこうげき!
かいしんのいちげき!!
魔王に389のダメージ!!
魔王「・・・馬鹿な・・・!?」
魔王は倒れた!!
魔王「馬・・・鹿・・・な・・・おれが・・・倒される・・・など・・・」
男「はあっ・・・はあっ・・・」
魔王「く・・・そ・・・」
男「・・・なんだおれ死なないじゃん・・・かな・・・り・・・ぎりぎりだけど・・・」
女「男!!!!」
男「・・・女・・・痛いって・・・」
女「よかった・・・よかったよぅ・・・ぐすっ・・・」
男「・・・おれ死なないじゃん・・・うそつき・・・」
女「ぐすっ・・・ごめん・・・」
男「・・・はは・・・結局ついてきた意味なかったな・・・」
女「・・・ぐすっ・・・意味なくてよかったよ・・・」
男「・・・はは・・・」
魔王「・・・・・・く・・・そ・・・」
まちを出る前
男「・・・とかなんとか言ってる間にもう夜明けか」
女「・・・ほんとだ」
男「・・・じゃあ、行ってくる」
女「!だめ!!」
男「・・・女」
女「じゃあせめてメモリーを・・・」
男「言ったろ?リセットが使えると思うと倒せない・・・」
女「・・・でも」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・じゃあ」
女「・・・待って」
男「・・・?」
女「私も一緒に連れてって」
男「!?」
男「何を・・・!?」
女「私がメモリーを持っていって、魔王を倒した後で男が死んじゃう前にメモリーを男に渡せばいい」
男「いやいや・・・」
女「そうして男が死ぬ前にりせっとすれば男は死ななくてすむじゃん」
男「・・・いやいや危ないから!!」
女「ここで断ったって、男がいいって言うまで何度だって戻ってくるから」
男「!!」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・」
男「・・・わかった」
女「よし!!」
男「その代わり戦いが終わるまで出てくるなよ!?」
女「わかってる!」
男「・・・・・・はあ」
女「・・・リセットしちゃったらもう会えないんだよ・・・ぐすっ」
男「・・・」
女「・・・ぐすっ・・・意味なくて・・・よかったよ・・・」
男「・・・だな」
女「・・・うん・・・」
男「・・・」
女「・・・ね、男」
男「・・・ん?」
女「私ね・・・男のことが・・・」
魔王「うがあああああ!!」
魔王は最後の力を振り絞って炎をはいた!!
女「え?」
男「危ない!!」
男は1のダメージをうけた!!
魔王「ふ・・・ふ・・・はは・・・」
魔王はちからつきた
男「・・・」
女「男!!」
男「・・・・・・う・・・」
女「男!男!!」
男「・・・・・・やら・・・れた・・・な」
女「早く回復呪文を!」
男「・・・M・・・Pがもう・・・ない・・・・・・んだ・・・」
女「・・・!」
男「・・・そ・・・れに・・・もう・・・手遅れ・・・だ・・・」
女「そんな・・・ぐすっ」
女「・・・せっかく・・・これから・・・ずっと一緒にいれると思ったのに・・・」
男「・・・み・・・らいは・・・かえ・・・られない・・・んだ・・・とおもう・・・」
未来は変えられない。
その言葉を聞いたとき、今まで私が過去に戻り、変えてきたと思っていた事柄が、
実は全て未来に持ち越されていただけだったと、唐突に理解した。
最初に魔物が襲ってきたとき、
本当はあそこでまちは滅びるはずだった。
けれど滅びなかった。
だからその後も魔物が何度も何度も来たんだ。
まちが滅びるという未来を作るために。
男がまちを出て行くことも変えることのできない未来だった。
私が何度戻って何度引きとめたって、
結局男はまちを出て、魔王のところに来てしまう。
未来は変えられない。
女「・・・ぐすっ・・・」
女「・・・ぐすっ・・・」
女「・・・」
女「・・・けど」
女「・・・」
女「死ぬっていう未来が変わらないとしても・・・」
女「・・・ぐすっ・・・」
女「・・・大人になって」
女「・・・子供ができて」
女「・・・おじいさんになって」
女「・・・孫ができて」
女「・・・寿命を全うして静かに眠りにつくまでは」
女「・・・持ち越すべきだよ・・・」
女は手に持っていたメモリーを静かに男の胸に押し付けた。
男「・・・お・・・んな・・・」
女「りせっと・・・して?」
男「・・・」
女「早く・・・今ならまだ間に合う・・・」
男「・・・で・・・も・・・おん・・・なが・・・」
女「大丈夫、男が私のこと覚えててくれれば」
男「・・・」
女「あっちの私仲良くなって・・・」
女「もしも結婚とかしてもさ」
男「・・・」
女「今の私のこと、覚えててくれたら」
女「男が生きてくれてたら」
女「それでいいから」
男「・・・」
女「その代わり」
男「・・・?」
女「戻ったらこんなことは繰り返さないようにね」
男「・・・は・・・はは・・・」
女「仲間を見つけるとか、いくらでも方法あるでしょ!」
男「・・・わか・・・った」
女「じゃあ、ほら」
男「・・・」
男「・・・リセット」
この時、私はすっかり忘れていたのだ。
今日の夜中に戻ってきたとき、
本当は今日の夜中に戻ってくるつもりじゃなかったことを。
メモリーがほとんど消えていたことを。
「記録されている時間はありません」
「このままリセットすると現在の記憶も含め、全て初期状態に戻りますがよろしいですか?」
男「・・・え・・・」
女「え・・・?」
今日の夜中に戻ってきたのもメモリーがほとんど消えてて一番新しい時間しか残ってなかったからなんだ。
夜中に戻ってこれたのはたまたま男がメモリーを調べるために一時的に自分の中にメモリーを入れていて、
その時に自動記録された時間があったからで。
他の過去の時間は全て消えていたんだ。
そして今、その記録されていた唯一の時間も消えてしまっていたんだ。
女「・・・」
男「・・・お・・・んな・・・」
女「・・・」
男「・・・おれ・・・は・・・」
女「・・・」
女「男」
男「・・・?」
女「・・・一目惚れはうそだったけど」
女「でも、私はあんたのことが好き」
男「・・・!!」
女「いつのまにか惚れてた」
男「・・・な・・・にを・・・?」
女「・・・」
男「・・・」
男「・・・お・・・れも・・・」
女「・・・それ以上は言っちゃダメ」
男「・・・?」
女「その言葉は一度聞いたから」
男「・・・?」
女「男が私のことを忘れちゃっても」
女「今言わなかったら・・・またいつか、逢えるでしょ・・・?」
男「・・・・・・あ・・・」
女「ね?」
男「・・・・・・だ・・・ね」
女「じゃあ」
男「・・・」
女「ずっと待ってるから」
男「・・・・・・うん・・・」
男は静かに微笑んだ。
男「・・・・・・リセット」
女「たびのやどへようこそ!」
男、元気にやってますか?
そっちの私と出会った?
メモリー、私に移しちゃった?
私たちはあなたがくれた平和を十分すぎるほど満喫しています。
私はあなたと私が出会ってから、あなたがどんな風に過ごすのかわかっているから、
いつも今頃何をしているのか想像して楽しんでいます。
町民1「おーい女ちゃん!ちょっといいかー?」
女「なーにー?」
町民1「××のしろの方が来てるぞー!!」
女「えー?」
勇者の像を作ることにしたんだって。
顔とか格好とか色々聞かれたよ。
私の理想やら妄想やらが入ってるから本物よりかっこよくなりそうだよ。
そっちの私は素直になれるかな。
私みたいに後悔しなければいいけど。
町民1「女ちゃんー!!」
女「はーい!」
じゃあ町民1さんが呼んでるから今日はこの辺で。
私はこの先もあなたをずっと待ってます。
あなたの告白は未来に持ち越されたのだから。
「リセットおおおおおおお!!」
今日も世界のどこかで「リセット」は起きている。
おわり
おーわり!
今回はあまりハッピーエンドにするつもりはなかったっす。
疲れた・・・
とりあえず飯食うわw
あ、遅くてごめんなさいでした。
ほんとにぎりぎりだったなw
読んでくれた人たち、保守してくれた人たち、ほんとにありがとうございました。
時かけ見ようかなーw