雪女「夏に冬眠とはこれいかに」
男「だって溶けるんだろ」
雪女「エアコンの設定温度を十度くらいにすれば平気だぜ」
男「寒いわ。もう冷蔵庫の中にでも入ってればいいじゃんか」
雪女「狭いじゃん魚とか野菜とかと一緒じゃん」
男「ていうか何で夏に雪女がここにいるんだよ・・・」
雪女「てへぺろ」
元スレ
雪女「いつまで暑いんだよ溶けるだろ!」男「冬まで冬眠してろよ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1347805687/
男「暑いな・・・。もう九月も中旬なのに」
雪女「そりゃ雪女も溶けるよねぇ」
男「うわ床が水だらけに!?お前マジで溶けてるぞ!!」
雪女「それ汗だよ」
男「きたねっ!!滝のような汗って言うかこれ失禁したみたいなレベルだぞ!?」
雪女「ひとに向かって失禁とか失礼だとは思わんのかね」
男「妖怪だろ」
雪女「溶解だけに」
男「やかましいわ」
雪女「例年ならさ、この時期になると秋風っていう若干涼しい風が吹かないとおかしいよね」
男「普通ならもうそうなってないとおかしいんだけど。今年は連日三十度越えだな」
雪女「あたしら向けに溶解警報が出てるもんなぁ」
男「・・・どこから」
雪女「妖怪の気象庁的なの。天気予報とかもしてる」
男「意外と進んでるんだな・・・」
雪女「予報って言うか予言かも」
男「的中率百パーセントか?」
雪女「雷神の気まぐれ以外は当てます」
男「妖怪すげえな・・・」
男「暑いな・・・」
雪女「山からフライングして出てみたらこれだよ」
男「フライングしすぎだろ。溶けるんだろ」
雪女「いやもう溶けてるんだけどさ。このままいくと冬までにロリ化しちゃうよね」
男「そういうシステムなのか?」
雪女「需要はあると思うんだけど」
男「どうだろ」
雪女「あー・・・暑いなぁ」
雪女「そりゃ溶ければ小さくもなりますよ」
男「いや知らんけど。俺溶けないし」
雪女「体積が小さくなるから」
男「で幼女化すると?」
雪女「あたしのないすばでえがダメになるのは悲しいね」
男「・・・和服はスレンダーな方が似合うというが」
雪女「あー胸はもう縮んだわーここに来る前に縮んでるわー」
男「ああそう・・・」
雪女「そりゃあ、サキュバスとかと比べたらあれだけどね」
男「サキュバスとな」
雪女「あの種族エロいからなー。そういう身体になるんだろうねー」
男「そりゃ是非お近づきになりたいねぇ」
雪女「メルアドなら知ってるけど」
男「メルアド!?妖怪ってメールすんのか!?」
雪女「メルアドどころか、ツイッターもしますね」
男「妖怪のイメージが崩壊したわ・・・」
男「暑いなぁ」
雪女「絶賛妖怪溶解中」
男「とけろ」
雪女「そ、そうやって罵倒されるのも嫌いじゃないわ・・・」
男「お前変態だったのかよ・・・」
雪女「ネタにマジレスかよー。空気読めよー」
男「・・・あ、そういえば冷凍庫にアイスあったな・・・」
雪女「あざーす」
男「・・・なぜお前が食う気なんだ」
男「普通雪女ってさ、いるだけで涼しいとかさ、エアコン要らずーとかじゃねえのかよ」
雪女「お前よー、女子校に憧れちゃうタイプ?そんなわけないじゃんかよー」
男「妖怪って・・・」
雪女「そりゃ涼しくすることも出来ますよー。なんなら氷漬けにして凍死させてやれんこともないでー」
男「凍死は嫌だ。このクソ暑い中で完全に変死だろ」
雪女「でも透視はさせてあげないぞ☆」
男「お前への闘志は湧き上がるなー・・・」
雪女「なんでだよー、とか何とか言って脳内はエロい事ばっかなんだろこの変態」
男「エロくない男がいるかボケェ」
雪女「うわー、断言しやがったよ・・・」
男「うるせえな、そういうもんだろ」
雪女「・・・」
男「・・・」
雪女「・・・でも、嫌いじゃない・・・///」
男「変態はお前だこのなんちゃって妖怪が」
雪女「アイスくれよー」
男「ハァ・・・。もういいや、いくつか入ってるから取ってこいよ」
雪女「やだよ暑いもん。動きたくないわ」
男「てめえ・・・なけなしのアイスくれるんだから少しは働け」
雪女「だって他人の家の冷蔵庫開けるなんてはしたないじゃん」
男「・・・」
雪女「正論だろー。論破だろー」
男「・・・不法侵入はいいのか」
雪女「なにはともあれ」
雪女「ハーゲンダッツじゃないのかよー」
男「贅沢抜かせこの妖怪が」
雪女「・・・妖怪に妖怪って、それ人間に人間っていうくらい意味分からなくね」
男「・・・それもそうだな」
(風鈴)「チリーン・・・」
雪女「・・・妖怪に、用かい?」
男「しばくぞてめえ」
男「・・・少し涼しくなった」
雪女「あんまり変わらなくね?相変わらず残暑なうだぜ」
男「そりゃお前みたいなのには暑いのかもしれんけどな・・・。俺は少しはマシになった」
雪女「人間て単純だなぁ」
男「うるせえな。お前が思ってる以上に人間は繊細だ」
雪女「・・・ダメだ暑い。溶ける」
男「山に帰ればいいじゃんかよ」
雪女「・・・帰ったら、寂しくなるじゃん・・・」
男「!?」
雪女「・・・ほら単純じゃんかー」
男「オーケー、てめえ表に出ろ」
男「あー・・・。扇風機くらいはつけないとコリャダメだな・・・」
雪女「エアコン希望」
男「却下だ。・・・ああ、やっぱり無いよりはいいな」
雪女「なんでエアコンつけないんだよー。訴えるぞ」
男「つーか妖怪がエアコンエアコンいうのすげえ違和感あるんだけど・・・」
雪女「せっかくあるのに使わないで何が文明の利器か!」
男「誰だてめえ・・・」
雪女「わ~れ~わ~れ~は~」
男「すげえステレオタイプな・・・」
雪女「・・・よ~う~か~い~だ~」
男(お、変化つけてきた)
雪女「え~あ~こ~ん~を~つ~け~な~い~と~」
男「・・・次にお前は「溶解する」という」
雪女「よ~う~か~い~す~る~・・・ハッ!?」
男「お前本当は妖怪じゃないだろ!!」
雪女「わ~れ~わ~れ~は~よ~う~か~い~だ~」
男「またか・・・」
雪女「え~あ~こ~ん~を~つ~け~な~い~と~」
男「今度は何だよ」
雪女「呪うッ!!」クワッ
男「こええよ!!洒落になってねえから!!その顔でこっち見んな!!」
男「また暑くなってきた・・・。突っ込みだるい・・・」
雪女「さあエアコンを。あたしが幼女かしてぺろぺろされる前に!!」
男「何言ってんだてめえ・・・」
雪女「ハッ!?まさかそういうのが好きなのか!?目の前で幼女化した知り合いの女の子がぺろぺろされるの見て興奮するのかッ!!」
男「すごい想像力だ・・・」
雪女「見られてる・・・!!見られてるのにあたしぺろぺろされちゃってる・・・!!・・・的な」
男「お前バカだろ」
男「暑いなぁ・・・」
雪女「もうだめだ・・・。これ汗に見えるだろうけど、マジで溶けてます、はい」
男「とはいえ、何か九月中旬にエアコンつけるのは負けのような気がして・・・」
雪女「あー・・・あるよね、そういう変なプライドみたいなの・・・」
男「まさか賛同されるとは・・・」
雪女「三月入ってまで大雪を降らせるのはあたしもプライドが許さないわ・・・」
男「春が来るのってそういう理屈なのか・・・」
雪女「あー・・・あたしの身体が縮んでいく・・・」
男「冷蔵庫行けよ・・・」
雪女「見た目は子ども・・頭脳は妖怪・・・その名は、名探偵コナ
男「言わせねえからな・・・」
雪女「名探偵粉雪とかで行こうと思ったんだけど・・・」
男「そういう喉に優しくない感じの名前はよせやい」
雪女「あかん・・・ちょっと氷もらうよ・・・」
男「ああ、暑い時なめると少し体温下がるよな・・・」
雪女「少しでも体温下げないと、冬になる頃には手のひらピ●チュウ並になってしまう・・・」
男「微妙に古いものを・・・」
雪女「心まで白く・・・染められたなら・・・」
男「歌いきる気力ももう無いか・・・」
雪女「ふたあああありのおおおおおぉお心を包んで空にかァァァァエスカラ・・・」
男「なぜこのクソ暑い中無理して謳い切ったんだ」
雪女「ノリって・・・大事だよね・・・」
男「命がけのノリか・・・。若手芸人かお前は」
雪女「ワイルドだろゥ?」
男「若くないぞ彼」
雪女「三センチは縮んだなぁ・・・」
男「おいおい・・・。マジで子どもみたいになっちまうぞ」
雪女「山から下りたときはもっと、大人びた感じだったのに・・・」
男「大人びた、ねえ・・・」
雪女「・・・信じてないな」
男「いや、別にそういうわけじゃ」
雪女「ええと、あ、あった。ほら証拠写真。数日前に撮ったプリ」
男「妖怪がプリクラ撮ってんじゃねえよ・・・」
雪女「あたしらが見えない人には、何も写ってないように見えるから大丈夫・・・」
男「たまにある無人のプリクラってそういうことなのか・・・。どれどれ・・・」
男「誰だこの美人さんは・・・。お前の親か姉貴?」
雪女「それあたしだから・・・。隣にいるのは妖孤のいなりちゃんね」
男「いやこれどう見てもお前じゃないから・・・。いくらプリクラといえど、これは別人だろ・・・」
雪女「あたしだっての・・・。これでもだいぶ縮んだんだってば」
男「まーなんでもイイか・・・。ほら返すよ・・・」
雪女「あ、こいつ信じてねえな」
男「もうすぐ夕方なのに暑いなぁ」
雪女「まだ二十五度はあるな・・・」
男「そろそろ晩飯作らないとだ・・・」
雪女「カキ氷とアイスと液体窒素なんかあると嬉しいかな」
男「最後のに至っては最早食い物ですらねえ」
雪女「でもいい加減何とかしないと、溶けて死んでしまいます」
男「山に帰ればいいと思うよ。手遅れになる前に」
雪女「それは・・・諸般の事情によりできません」
男「はぁ・・・?」
男「ていうかさー」
雪女「なにさー」
男「お前マジで妖怪?」
雪女「え?今更根本的なところ?」
男「だって妖怪だろ?あり得なくね?」
雪女「失礼な・・・。妖怪は存在するんだぞ・・・」
男「平安時代じゃないんだからよ・・・」
雪女「あの頃は、まぁ妖怪全盛期だしねえ・・・」
男「今平成じゃん?」
雪女「まあねぇ」
雪女「確かに昔ほどあれじゃないけどねー。吸血鬼とか、猫神とか、そういうのは辛うじて存在してるよー」
男「これお前が溶けてなかったらただの電波話なんだけどなー」
雪女「ああ、妖怪って点は信じるんだ」
男「まあね・・・。それは分かるわ。何かこう、本能的な部分で」
雪女「え、厨二病?」
男「溶かすぞこら」
雪女「だ、抱きしめられたら、溶けちゃうからね!!」
男「ドライヤーだな」
雪女「愛が無い!」
男「じゃあ雪男は?」
雪女「ああ、あの獣人なら今はなんだっけ、あのでかい山」
男「富士山?」
雪女「外国の」
男「エベレスト?」
雪女「ああそれ。そことか他の雪山にこっそり住んでるはず」
男「そうなのか・・・」
雪女「ああ・・・どんどん幼女になっていく・・・。ハッ!?まさか幼女になったあたしを襲うのが目的!?」
男「バーカバーカ」
雪女「・・・で、でも、別に嫌なわけじゃ、その・・・」
男「この変態妖怪が・・・」
雪女「まー、人間に襲われるほど弱っちゃいないけどねー。キミ一人くらいならダイアーさんみたいに出来るぜ」
男「分かりにくい例えだな・・・。あー、面どくせえけど買い物行かないとだ・・・」
雪女「こ、この炎天下の中外に出るなんて自殺行為だ」
男「極端な・・・」
雪女「・・・液体窒素て売ってる?」
男「大学か科学館に忍び込めばあるんじゃないか?」
雪女「ぶー・・・」
男「で、お前いつまでここにいる気だよ。溶けたら死んじまうんだろ」
雪女「せ、SEGAが新ハードを出すまでは・・・」
男「一生ここにいる気か!?」
・・・
男「はぁ、汗だくだよ・・・疲れた、っと・・・」
(風鈴)「チリーン・・・」
男(・・・さすがにどこか行ったか。まったくなんだったんだろうな、さっきの・・・)
男「ま、夢でも見てたのかもな。暑さで朦朧として」
男「・・・多めに買ったから、しばらくアイスは買わなくていいな。さてシャワーでも浴びるか」
男「・・・ん?」
「・・・し、これで・・・」
男「・・・この声は・・・」
雪女「あ、張り付いてる・・・しかしそれに敗北するあたしではない!!これにつかれば元の身体に戻れるはず!!」
男(風呂場から聞こえるんだが・・・。あいつ湯なんか浴びたら死んじまうよな・・・)
雪女「よしいざ尋常に・・・!!」
男「おい待て早まるな!!」
雪女「え」
男「あ」
風鈴「チリーン・・・」
雪女「・・・ここは悲鳴の一つでも上げたほうがいいのだろうか」
男「・・・テンプレなら」
雪女「しかしあたしも常識はある・・・。鍵をかけなかったことについてはあたしが悪い」
男「はい・・・」
雪女「したがって不問にしましょう。平和的に」
男「ハイ」
雪女「出来れば早いところ出てくれると助かるかなー、と」
男「男らしい!!実に男らしいけど前は隠してせめて隠してっ!!」
雪女『自殺?湯船に入って?』
男「なんじゃないかと一瞬・・・」
雪女『どんだけだよ・・・。もう少しマシな死に方がいいわ。獣の槍に刺されるとか』
男「お前なんでそういうのには詳しいんだ」
雪女『まあ暇だからねー。冬以外は劇的に暇』
男「なるほどね・・・。で、お前風呂に入ってるわけ?」
雪女『まあそんなところ?お湯じゃないけど』
男「水か」
雪女『甘いね。さっきちょっと遠出して、液体窒素を拝借してきた』
男「ブバッ!!」
雪女『ふいー、お帰りあたしのないすばでえ。・・・あ』
男「」
雪女『あっという間に蒸発しちゃったわ。あれ、なんかバスタブ割れてるなあ』
男「・・・そりゃあねえ・・・」
男「大惨事だ。風呂場が大惨事だ」
雪女「いや正直すまんかった」
男「修理費どうしよう・・・」
雪女「ああ、これくらいならあたしの妖力でなんとかなるよ」
男「マジで?」
雪女「今のあたしは、久しぶりに本調子バリバリだぜ」
男「助かった」
雪女「で、どうよ、あたしのないすばでえは」
男(・・・あのプリクラ、詐欺じゃなかったのか・・・)
男「ええと、バスタブは完全に割れてるな・・・」
雪女「大丈夫、このくらいなら・・・」
男「さらに、床にもひび割れがある。それからガスの給湯システムもダメだ」
雪女「え?」
男「ああ、シャワーもダメか。管が割れたな。壁もボロボロじゃねえか・・・」
雪女「あれ、そんなにひどいことになってる?」
男「・・・レベル的には、新しくリフォームした方がいいレベルだな」
雪女「あらら・・・。よ、妖力でなんとか!!・・・なるかなぁ・・・」
男「するんだよなんとか」
雪女「・・・」
・・・
雪娘「な、なんとかなったね・・・」
男「ああ、これで元通りだな・・・。て、お前なんか無理してないか?」
雪娘「いやぁ、これくらいなら平気ですよ平気。もう妖怪なめないでいただきたいな!」
男(明らかにさっきよりも小さくなってる)
雪娘「はぁ、なんかすごく疲れたなぁ・・・」
男「身を削ったな文字通り・・・」
雪娘「え?」
男「鏡見てみろよ」
雪娘「・・・」
男「そ、そんなにショックか?」
雪娘「さっきより悪化してるし・・・」
男「まぁそれはいえてる。さっきまで女子高生→大人だったのに、今はどう見ても中学生だわ」
雪娘「妖力が足りないのか・・・」
男「壊しすぎなんだろ。方法が無茶だ」
雪娘「はぁ・・・」
男「・・・あ、そういえば。いいものがある」
雪娘「え?」
男「ドライアイスだ。アイス買ったから貰ってきてたんだが」
雪娘「・・・」
男「・・・いや、いらないならこのまま水に入れて捨てるけど」
雪娘「へえ」ニヤニヤ
男「な、なんだよ」
雪娘「しっかりその辺まで考えてくれてるとは、意外と紳士なんだなーと」
男「ば、そんなんじゃねえっての!」
雪娘「へへへ、これで風呂の一件はチャラでいいよ」
男「あ、あれだってわざと見たわけじゃ・・・」
雪娘「ええと、これ食べればいいかな」
男「ど、どうなんだろうな・・・。見たことも聞いたことも無いけど・・・」
雪女「・・・うん、少しは回復したかな」
男「ドライアイスをそれだけ食べればねえ・・・」
雪女「でもこれも応急処置にしかならないか・・・」
男「相変わらず暑いからなあ」
雪女「うーん。真面目に考えないとねえ」
男「溶けると」
雪女「うん。日が暮れたから少しは楽だけど」
男「・・・あの、大変言いにくいんですがね」
雪女「ん?」
男「今夜は九月なのに熱帯夜だそうで・・・。相当暑いとさっきニュースが」
雪女「」
雪女「ふざけんなよー、夜まで暑いって世の中おかしいぞー」
男「それは俺もつくづく思うけどさあ・・・」
雪女「あ・・・、言われてみれば確かに暑い・・・。寝苦しいとか言うレベルじゃないぞ・・・」
男「エアコン入れるしかないかねえ・・・」
雪女「それで負けた気がしないならそれでいけど・・・」
男「そうも言ってられんだろ。朝起きて水たまりが出来てたら俺が困る」
雪女「寂しい的な意味で?」
男「後片付け的な意味で」
雪女「・・・」
男「なれば、やはりエアコンだな。ちょっと窓閉めてくれるか」
雪女「へいへい。・・・て、妖怪をパシるなよ」
男「気にするな。ええと、リモコンの電池生きてるよな?ポチッとな」
エアコン「・・・ヴーン・・・」
男「うわー、何この『季節じゃねえんだから働かせんなよ』的なエアコンの音」
雪女「そして風鈴が寂しそうだ・・・」
風鈴「・・・」
男「あ、でも涼しいなさすがに」
男「がんばって働くのだな、エアコンよ」
エアコン「ヴーン・・・」
男「・・・なんで俺電化製品に話しかけないとならんのだ」
雪女「いや、あながち間違いでもないんだけどね」
男「は?」
雪女「そもそも妖怪って、物とかがなる場合も多いのよ。強烈な念を受けた人形が動き出すとか、今もある話でしょ」
男「髪が伸びる奴とか?あんなのトリック・・・て、目の前に妖怪がいる以上、そうでもないのか・・・」
雪女「今は廃れたけどさ、神棚ってある家があるでしょ。あれも家を妖怪、というか神として祭ってるものだしね」
男「なるほどねえ・・・。なら、おいエアコン、残業だと思ってしっかり働け」
エアコン「ヴーン・・・」
雪女「うわ、電化製品に話しかけちゃってるよあの人・・・」
男「燃やすぞてめえ」
男「ええと、夜中の三時に切れるようにタイマー入れておけば十分だろ」
雪女「願わくば一日中十度以下なら助かりますね」
男「アホいえ。さて寝るぞ。て、妖怪って寝るのか?」
雪女「まあ寝なくても平気だけど・・・。することもないし寝ようかね」
男「じゃその布団使え。かけるのは・・・いらないな」
雪女「夜中にむらむらして襲ってこないようにね」
男「違う意味で襲い掛かってやろうか」
雪女「そ、そういう激しい感じも嫌いではないです・・・///」
男「寝ろこのあほ妖怪!!」
男「・・・」
雪女「・・・」
男「・・・」
雪女(うーむしかし・・・。なんであたし見えるんだろうなこの人・・・)
雪女(見えること自体は珍しいことじゃないんだけど、適応力高すぎでしょ・・・)
男(しかし・・・。完全に驚くタイミング逃したなぁ。最初あまりにも自然と会話してたからな・・・)
男(つか最初はまさか本物の妖怪だなんて思わなかったしな・・・。でも色々見ちゃったし・・・)
男(って、見たって身体じゃないからな!!妖怪的な部分を、だからな!!)
雪女(でも実際、このままじゃまずいかもなぁ・・・。溶けちゃうのは予想外だわ・・・)
二人(はぁ・・・。眠れんなぁ・・・)
夜中
男(・・・んむ・・・。暑い。エアコン切れたかな・・・)
男(まぁ・・・寝れないほどではないか・・・。大丈夫だな・・・)
雪女(zzz・・・)
朝
男「む・・・。朝か・・・。暑、窓開けないと・・・」
男「う・・・窓開けても暑いな・・・。今日もこの調子かよ・・・」
男「ん?」
雪子「・・・」
男「・・・あの、どちら様でしたっけ・・・?」
雪子「・・・起きたらこうだった」
男「・・・ええと」
雪子「・・・溶けました」
男「oh・・・」
男「予想以上の暑さで、寝てる間に溶けちまった、と・・・」
雪子「・・・」
男「これはひどいな・・・。まじで幼女じゃんか。うわ布団びしょびしょ・・・」
雪子「困った」
男「確かに幼女はまずいな・・・。心情的にも、社会的にも」
雪子「じゃなくて。幼女自体は需要あるからいいんだけど」
男「あれ!?」
雪子「このままじゃ死んでしまうなぁ・・・」
男「うーむ・・・。それはまずいな」
男「昨日みたく液体窒素を拝借するのは?」
雪子「どうだろ、あれ意外と重いからこの身体じゃきついかも」
男「ドライアイスは?」
雪子「不可能じゃないけど・・・相当な数がいるよ、元に戻るには」
男「参ったな・・・。こうしてる今も溶けてるわけだろ?」
雪子「水も滴る・・・」
男「いってる場合か。なんとかしないとだろ」
雪子「うーん・・・。・・・幼女が汗をかいている・・・ように見える姿って、需要あるのかな」
男「何考えてんだてめえ!?」
雪子「いや、大きなお友達とか絵を書く人には需要あるんじゃないかなと」
男「知るか!俺は絵についてはまったく才能が無いし、その気も無い!」
雪子「うーん・・・」
男「俺の書く絵は『人類には早すぎる』といわれているくらいで・・・」(実話)
雪子「あ、もうその話じゃなくて。あたしの話」
男「切り替えが早すぎてついていけない・・・!」
男「例えば、せめて中学生くらいまで戻るくらいにドライアイスを食って、ある程度戻ったら液体窒素とか」
雪子「それがベターかな・・・。問題はこのまま溶け続けたら、歩くこととかしゃべる事が難しくなることかな」
男「つまりあんまり時間が無いわけだ」
雪子「yes,I am」チッチッチ
男「おちょくってるのかてめえは」
雪子「とりあえずドライアイスなんだけど・・・。さすがにこの暑さの中を歩くのはもうきついわ」
男「だろうな。とりあえずエアコンガンガンにして、あとアイスでも食って待ってろ。ドライアイスもらってくる」
雪子「すまんね。ちゃんと後でお礼するから。・・・身体で///」
男「冷蔵庫にぶち込むぞ」
・・・
スーパー
男「ドライアイス休止中!?昨日はあったのに・・・」
おばちゃん「ああ、ごめんなさいね。昨日機械が壊れちゃったみたいで。氷ならあるんだけど」
男「それじゃ意味ない・・・。すいません、失礼しました!」ダッ
男(どうする、コンビニにドライアイスはないだろうし、このスーパーにもない・・・)
男(坂道昇ったところにもう一軒スーパーあるけど・・・。この暑さで自転車・・・。いけるか?)
男「・・・くそ、行くしかねえじゃねえかよ。死にはしないだろ・・・!」
男「ハァ・・・ハァ・・・くそ、終わりが見えねえ・・・」
男『・・・なぜそんなに頑張る。相手は昨日あったばっかりの妖怪だぞ。死んだとしてもお前は困らない』
男「・・・そうかもな・・・」
男『諦めて自転車降りようぜ。で帰って謝れよ。ドライアイスは無かったって』
男「・・・それはすごい楽だろうね」
男『なぜそんな頑張るんだ?』
男「・・・あいつが可愛いから、以外の理由が要るのかよ」
坂の上のスーパー
男「あった・・・。ドライアイス・・・。三袋もいっぱい貰えば十分だろ・・・」
店員「・・・」
男(そんな目で見るなっての・・・。俺だって恥ずかしいんだ・・・)
男(もどらねえと・・・)
雪子「いつまで暑いんだよ溶けるだろ!!」
雪子「くそぅ・・・。一回のフライングでこんな目にあうなんて・・・」
雪子「ダメだ、溶ける・・・。アイスもやけ石に水だよ・・・」
雪子「・・・あいつおそいな。大じょうぶかな。今日すごくあついけど・・・」
雪子「・・・アイスもう一こ・・・」
男「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。うぅ、意識が朦朧とする・・・。随分かかったけど、まだ溶けてないだろうな・・・」
男「おい、バカ妖怪・・・。どこ行った?ドライアイス、貰ってきたぞ・・・」
男「・・・床こんなにびしょびしょじゃねえか・・・。おいどこ行ったんだよ」
エアコン「・・・ヴーン・・・」
男「・・・おい、まさか・・・。嘘だろ?」
男「・・・」
男「・・・はぁ・・・」
男「まったく・・・。うんざりする・・・」
男「最低、だ。こういうのは最低だろ・・・」
「・・・プハァ!!」
男「うおおおおお!?」
雪子「せまい!!すごくくるしい!!とけるのはとまるけど!!れいぞーこのなかはいや!!」
男「び、びっくりした・・・。おま、溶けて死んじまったのかと・・・」
雪子「ようかいだぞー。そうかんたんにしんだりしないからようかいなんだぞ。うしおととらよみなおせー」
男「さ、さらに幼児化してる・・・。ほら、とりあえず三袋分のドライアイスだ。食え」
雪子「おそかったからしんぱいしたんだぞー」
男「あ、ああ。そいつは、すまん・・・」
男「どうだ・・・?」
雪娘「ん・・・。まあこれだけ戻れば拝借するくらいの力はあるかな。服着なおすから後ろ向いてて」
男「あ、ああ・・・」
雪娘「んむ。幼女化する前に帰れるだけの力は戻ったかなー。でもさ、どこで液体窒素浴びればいいのさ。風呂壊したら元の木阿弥だよ」
男「・・・外さ。日陰の方がいいんだろ。家出たところに、いい場所がある・・・」
雪娘「なるほど名案。・・・大丈夫?顔色悪いけど」
男「あ?あ、ああ・・・。少し、疲れたかな・・・。大丈夫だ・・・」
雪娘「・・・。まあともかく、ちょっと行ってくるよ。すぐ戻るからなー」
男「・・・ああ」
雪娘「う・・・どんどん溶ける・・・。ウルトラマンでももっと活動できるだろうに・・・」
雪娘「あったあった、液体窒素・・・。拝借しますよっと」
雪娘「!」
雪子「・・・ッ・・・。いそがないと・・・」
生徒「教授!!また液体窒素が無くなっています!!」
教授「なにぃ!!貴様、命がけで探せぃ!!」
雪子「よい、しょ、と・・・。ただいま、って、あれ・・・」
男「・・・」
雪子「ねてる・・・?ああ、つかれたっていってたねそういえば・・・」
雪子「ね、おきてよ。はやくもとにもどらないと」
雪子「・・・?ねえ・・・?どうしたの?」
雪子「・・・!!これ、ねっちゅうしょう、それにみずものんでない・・・!!」
雪子「むりしすぎだよ、しんじゃうのはそっちじゃん!!」
雪子「どうしよう、まずはみずを・・・」
男「・・・」
雪子「・・・ええと、つぎは・・・」
雪子「ああ、もう!!あたまもまわらないしからだもちいさい!!」
雪子「こーなったら・・・!!たしかそとでてすぐだよね!!」
雪子(ちょっとでもみちまちがったら、いまのあたしにはちめいてき・・・。たぶんとけちゃう・・・けど!)
雪子「まっててよ、バカにんげん!!」
男「・・・あれ。どうしたんだっけ?」
?「キミはなぜそこまで妖怪のために尽くしたのだ。自身を命を危機にさらしてまで」
男「・・・さあ。わからないけど、あいつが可愛かったのと、何だろう、初めて会ったような気がしなかったから」
?「・・・なるほど。本来ありえないことだが、起きたのだから仕方が無いか」
男「?」
?「キミと彼女は初対面だがそうでない。キミは彼女を知らないが、違うキミは彼女を知ってる」
男「どういう・・・?」
?「いつか分かる日が来るかもしれないぞ。いつか、な」
男「え・・・。猫・・・?」
雪女「・・・」
雪女「間に合うか・・・。今からで・・・」
雪女「・・・妖力を使ってでも、キミを死なせはしないから・・・」
雪女「・・・ッ!!」
男「・・・」
雪女(間に合え・・・!!)
雪女「・・・」
雪娘「・・・」
男「・・・」
雪娘(諦めないからね、あたしは・・・)
男「・・・ぅ・・・」
雪娘(戻って来い・・・!!)
男「・・・ッ!?」ガバッ
男「あれ、俺・・・。そうだ、急に意識が・・・。でも、もうなんともない・・・?」
男「・・・床が水浸し・・・。あの妖怪、どこ行った・・・?」
男「・・・!!まさか、あいつ・・・。また冷蔵庫か!?・・・違う・・・。」
男「・・・今度こそ、俺、やっちまったのか・・・!?」
雪子「あぶねえとけるギリギリ!!」
男「うおおおおおおお!!!??」
雪子「おお、おはよう。あぶなかった、こんどこそダメかとおもった・・・」
男「お前・・・」
雪子「へへへ、またはいしゃくしてきた」
男「・・・あ、そう・・・。ひょっとして助けられた?」
雪子「おたがいにね。ああ、ちょっとひとっぷろあびていい?」
男「・・・外でなら、な」
・・・
男「暑いなあ」
雪女「うん・・・。地球どうかしてるぜ」
男「確かに・・・。エアコン、入れるか」
雪女「いいのかい?」
男「またああいうのはご免だからな」
雪女「・・・同感。結構ヘビーだったしねえ」
男「お互い死にかけた」
雪女「セーフセーフ」
男「・・・あれ。何か忘れてるような・・・」
雪女「え?」
男「あの時、何か妙な夢を見たような気がしたんだけど・・・。何だったかな」
雪女「?」
男「まあ・・・いいか」
TV『・・・次です。T大学から液体窒素が三本分盗難されていたことが分かりました。警察では研究室の教授から詳しく事情を聞くなどしています・・・』
TV『次は天気予報です。明日からようやく秋の気温です。長かった真夏のような暑さも今日が最後でしょう・・・』
男「夏も終わりだなあ」
雪女「さあ、いよいよあたしの季節ですよ。今年は冬は冬で大変な目にあわせますよ」
男「もう勘弁してほしいんだけど・・・」
雪女「もう妖怪天気予報ではそういう予報です。妖怪用のスマホで見れるんだけどさ。ほら」
男「妖怪にもスマホあるのか・・・。まあメールするくらいだしな・・・。・・・あ」
雪女「ん?」
男「・・・あのさ、お前が溶けかかった時さ。その電話で他の妖怪とか雪妖に助け求めればよかったんじゃ・・・」
雪女「・・・あ」
男「・・・」
雪女「・・・さーせん」
男「締める」
男「ていうか、最初からおとなしく山に戻ればよかったんじゃねえの」
雪女「いやあの、その・・・」
男「結局諸般の事情ってなんだったんだよ」
雪女「・・・。実は。他の仲間と、「そろそろ下界に降りる」「まだ早い」で口論になって・・・」
男「・・・は?」
雪女「見栄張って飛び出した分、戻りづらいといいますか・・・」
男「・・・え、なにその小さなプライド!?しょぼ!!くだらない!!」
雪女「め、面目ない・・・」
男「はあ・・・。それで、お前いつまでここに居候するつもりだ?」
雪女「そりゃあ、そういう事情で帰れないので・・・。冬までは間違いなくここに・・・」
男「・・・だよな・・・」
雪女「こんないい女と同棲できるなんて、この幸せ者~」
男「はぁ・・・。触るだけで溶けるような奴と同棲してもなぁ・・・」
雪女「あれ、言ってなかった?あたしね、妖力さえもてば一晩くらい余裕ですよ///」
男「・・・なに?」
雪女「ま、キミにそんな度胸があれば、だけどねー。あ、それともやっぱり中学生とか幼女化したあたしの方が好み?」
男「・・・教えねえ」
雪女「ケチー」
男「・・・」
雪女「・・・」
男「なあ妖怪」
雪女「なんだい人間」
男「聴きたいことがあるんだけど」
雪女「あたしも一つあるんだ。多分おんなじことだと思うぜ」
男「お前の」
雪女「名前、なんていうの」
男「正解」
雪女「あたしも。あたしの名前はねえ、――――」
・・・
?「うむ・・・。困った。あの雪女と青年はこちらでも相変わらずだったが・・・。はやく彼女を見つけないと」
?「・・・む?こちらでもまた違う妖怪と人間が・・・」
少年「この葉っぱ、天狗が持ってるやつだよねー」
友「バカだなお前、天狗なんているわけないだろ」
少年「・・・」
友「ほら行くぞ、みんな先に行っちゃったぞ」
少年「・・・この山には、天狗、いると思うんだけどなあ」
天狗「・・・」
完
というか、続く(?)
108 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/17 04:22:10.19 +D+WeTG20 69/72とりあえず終わりです
多分近いうちに天狗のやつを書くかと思いますが、雪女の話はこれで
見かけたら生暖かい目で見てくれるとありがたい
109 : 忍法帖【Lv=9,xxxP】(... - 2012/09/17 04:24:16.11 bnST4kV/0 70/72乙
面白かった
110 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/09/17 04:24:25.12 /FYzaewI0 71/72乙
この話の前作とかあったの?
111 : 忍法帖【Lv=32,xxxPT... - 2012/09/17 04:28:49.96 +D+WeTG20 72/72>>110
これぶっちゃけ以前書いた雪女のやつのやり直しの話なんだわ