赤沢「うんって多佳子…」
『…もう少ししたら学校行くから。あと…悪いけどしばらく電話出来ない』
赤沢「多佳子…」
『……ごめん…』プツッ
赤沢「……」ツーツー
※ネタバレがあったり、時系列や人間関係を変えたりしています。すいません…
元スレ
赤沢「多佳子……大丈夫?」『…うん…』
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346240071/
~~
赤沢「今日も多佳子は来ない、か…」
勅使河原「中尾の葬式から見てないし…。もう一週間くらいだよな、杉浦が休みだして。意外と繊細なんだな…」
望月「勅使河原君、そんな言い方は…」
勅使河原「あ、いや今のは悪い意味じゃないぞ!?」アセアセ
赤沢「…それくらいで怒らないわよ」
綾野「も~、少しは考えてから喋らないと将来苦労するよー?」
勅使河原「気をつけます…。でもここまでなるってことは、もしかして杉浦は中尾の事好きだったり……」
赤沢「さあ…でもあの二人は幼なじみだから…」
小椋「あたしはそうだと思う。中尾と話してた時よくチラ見されたから…バレてないつもりだろうけどね」
赤沢「あと、海の時見たと思うけど…中尾の体傷だらけだったでしょ?」
勅使河原「そういえば…」
赤沢「あれね、ほとんどが多佳子を守ろうとしてついた傷なの。多佳子ね、昔はか弱い女の子って感じで中尾にべったりだったのよ」
勅使「へ~意外だなぁ」
赤沢「だから好きかどうかは別としても多佳子にとって特別な人だったはずよ…。それでね、勅使河原に聞きたいんだけど…」
勅使河原「ん?」
赤沢「…私はどうすればいいの?」
勅使河原「…なにがだよ?」
赤沢「決まってるでしょ。多佳子を元気づける方法よ。風見の時はどうしたの?」
勅使河原「どうって…桜木と風見はただ委員長同士ってだけだから杉浦とは違うんじゃ…」
小椋「あんた本気で言ってんの?鈍感すぎ…」
望月「あのね、風見君は桜木さんの事…」
勅使河原「…マジで!?えっ、みんなそれ知ってんの!?」
見崎「うん」
榊原「転校生の僕ですらわかったのに」
綾野「そんなだからてっしーはモテないんだよ~」
勅使河原「おい、それはさすがにひどいぞ!」
赤沢「…」ジーッ
勅使河原「あ、悪い話それたな…。そういうのって人それぞれだからこれが正解ってのはねぇと思う。俺も風見をホントに支えられてるのか自信はないんだ…情けないけど」
赤沢「そう…」ムッ
勅使河原「…ただな赤沢、一つだけ絶対やっちゃ駄目なことはあるぞ。お前だけはそういう顔見すんな。杉浦が知ったら余計辛くなるぞ」
赤沢「…そうね、頑張る」
勅使河原「おう!あ、ちょうど今日風見と遊ぶし少しその話してみるかな」
赤沢「あんた、ちゃんと考えて喋りなさいよ…。それと、見崎さんにも聞きたい事があるんだけど」ジロリ
見崎「…なに?」
赤沢「…あなた本当は、誰が死者か、とか知ってるんじゃない?」
赤沢以外『!』
見崎「…なんでそんな事聞くの?」
榊原「そうだよ赤ざ赤沢「恒一君は黙って。…なんとなくよ。いないものだったし、あなたは何か隠してる気がする。で、どうなの?」
見崎「……さぁ」ウツムキ
赤沢「…本当に知らないのならどうして今ためらったの?」
見崎「……」
赤沢「…どうして黙るの!やっぱりなにか知ってるんでしょ!?教えなさいよ!!」ガシッ
小椋「泉美落ち着いて!」
赤沢「私は対策係よ!これ以上被害がでる前に対策しないといけないの!」
綾野「じゃあもし死者がわかったらどうするの!?」
赤沢「テープ聞いたでしょ!殺すに決まってるじゃない!」
勅使河原「赤沢!」
赤沢「うるさい!さあ答えて見崎さん!」
見崎「…知らない」
赤沢「…っこのおおぉ!!」
小椋「落ち着けっつってんでしょ!知らないんだからしょうがないの!ほら、昼休み終わるから教室戻るよ!」グイグイ
赤沢「引っ張らないで!まだ話は終わって……」ズルズル
綾野「…泉美思い込んだら止まらないからなぁ。…ごめんね?鳴ちゃん」スタスタ
見崎「…うん」
赤沢「…あなたが死者が誰か言わなかったせいでこれ以上死んだら、私はあなたをっ…――」
―バタンッ―
勅使河原「…赤沢にも聴かせたのはマズかったかな…」
望月「そうかも…」
榊原「大丈夫、見崎は悪くないよ。…でも赤沢さんだって辛いんだ。気持ちを分かってもらえるよね?」ナデナデ
見崎「…うん」
~~
勅使河原「よーし帰るぞ風見!」
風見「わかってるからそんなに騒ぐなよ…」
勅使河原「さぁでっぱーつ!」
風見「だから…はぁ」
~~
望月「見崎さん久々に美術部行かない?みんなまってるよ?」
見崎「…」チラ
榊原「…行っておいで。僕今日用事で早く帰らないと行けないから、いつもみたいに一緒に帰れないよ?」
見崎「なにその言い方…別に榊原君と帰りたい訳じゃないもん」
望月「じゃあ榊原君のお許しも出たし、行こっか」
見崎「望月君まで…もう//」
榊原「あははっ。じゃあね二人とも」
望月「ばいばーい」
見崎「ふーんだ…」
~~
赤沢「…部活行くわよ」
綾野「……」
赤沢「…何ぼーっとしてるの?」イラッ
綾野「あっ、ごめん…」ビクッ
小椋(泉美…気持ちは分かるけど、あんたがそうなっちゃ駄目って聞いたばっかでしょ…)
~~
風見「お邪魔します」
勅使河原「邪魔するんなら帰って~」
風見「うん」クルッ
勅使河原「おい、冗談だって!入れよ!」
風見「まったく…」
勅使河原「テレビで見ていつか使おうと思って…」
風見「…ふーん、ホントに部屋片付いてるね」
勅使河原「昨日言ったろ?掃除したらこれ見つかったって。だから久々にやりたくなって誘ったんじゃん」
風見「そうだったね。それにしても懐かしいなぁ…」
勅使河原「だろ?!よーし、電源オン!」
♪~ ドン!0%0%0%
風見「…予想はしてたけどね」
勅使河原「やっぱりか…いつでも新鮮な気持ちでやれるって事にしておこうぜ」
風見「だね…よし、じゃあ…」チラ
勅使河原風見『ジャンケンポン!』
風見「…やった、1P」
勅使河原「負けた…。適当に吸いこんで早く生んでくれ」
風見「せっかくだし一人でどこまで行けるかやってみようかな?」
勅使河原「おい!」
風見「冗談だって」
~~
望月「ごめんね、部活終わったのに宿題のノート取りに行くの付き合わせちゃって」
見崎「いいよ。せっかくだから写させてもらいたいし」
望月「…見崎さんマイペースだよね」
見崎「そう?」
望月「…僕まだ全部は終わってないから後は自分でするんだよ?」
見崎「じゃあ残りは榊原君に見せてもらおうかな?」
望月「もう…。あ、久々の美術部どうだった?」
見崎「楽しかったよ。もうすぐ絵も出来そうだからまた行くつもりだし」
望月「よかった…じゃあまた誘うね?」
見崎「うん。お願い」
望月「さ、もうすぐ教室だしノート取って帰ろ…」(あれ、誰かいる?…え?杉浦さん…どうして?)コソコソ
杉浦「…順太君…会いたいよっ…」グスッグスッ
望月(あそこは…中尾君の席だ…)
見崎「…ノート取れないね」ヒソヒソ
望月「そうだね…帰ろうか」ヒソヒソ
見崎「…うん」クルッ、ガン!
杉浦「!」
見崎「痛っ!」
望月「ちょっと!」
杉浦「誰っ!?」
望月「やばっ、ばれちゃう!走ろ!」ヒソヒソ、ダッ
見崎「うん」ダッ
杉浦「……」ジーッ
杉浦「虚しいわ…帰ろ…」
~~
赤沢「…彩、なにその演技?やる気がないなら帰ってくれない?」
綾野「う、ごめん…」
赤沢「うじうじしないで。イラつく」
小椋「…そんなに言うことないでしょ!」
赤沢「…なにが?」
綾野「いいよ由美、私が悪いんだから…」
小椋「いいや、おかしいのは泉美。見崎さんの時もそう…。多佳子の事で他の人に当たるのは違うでしょ!落ち着きなよ!」
赤沢「…そうね、あんた達はそうよね」
小椋「は…?」
赤沢「あんた達からしたら、多佳子は所詮ただのクラスメイトなんでしょ?だから平気なんでしょ!?」
小椋「…もう一回言ったら怒るよ?」
赤沢「何回でも言うわよ!あんた達は多佳子の友達じゃないから平気なの!」
小椋「…っこの!」
―バシッ―
綾野「由美!」
赤沢「…っ、何すんのよ!」
小椋「落ち着けっつってんだろ!!」
赤沢「うっ…」ビクッ
小椋「……泉美はさ、死者が分かったら殺すつもりなんだよね?」
赤沢「…そうよ」
小椋「…じゃあもし…もしも死者が多佳子だったら?」
赤沢「…!…そんなの…」
小椋「…一応言うけど、あたしは多佳子を殺せないよ」
綾野「…私も」
赤沢「…!」
小椋「もちろん他の人が死者だったとしても殺せないよ?でも多佳子だったら…尚更殺せない。大事な友達だから。ホントに記憶が消えるんだとしても」
赤沢「……」
綾野「…あのね、もし鳴ちゃんが泉美の言う通り知ってて言わないんなら…そういう事だと思うよ?」
赤沢「え…?」
綾野「今の話みたいに多佳子が死者だったら、もしかしたらあまり仲良くない人は殺しちゃうかもしれない…そしたら泉美や由美は悲しいよね?…私も悲しいよ…」
赤沢「……」
綾野「もちろん死ぬのは嫌だよ?でも、クラスメイトが人を殺したり、それで誰かが悲しんだりするのは……もっとやだなぁ…」
赤沢「……ごめんね二人とも、ひどい事言って…」
小椋「あたしもごめん、つい手が出ちゃった…」
綾野「気にしなーい♪」
赤沢「見崎さんにも謝らないと…」
綾野「私番号知ってるけど、鳴ちゃん電話はめったに出ないよ?」
小椋「いつ聞いたの?」
綾野「いない者解除のあとすぐ♪」
小椋「さすがだわ…」
赤沢「どうしよう…明日は祝日だし…」
綾野「私も鳴ちゃんもメール出来るやつだからそれでいいんじゃない?」
赤沢「うん。それでお願い…」
綾野「文は私がうつね。泉美のも私がうつから言って?」
赤沢「えっと…『見崎さん、今日は本当にごめんなさい…――
~~
望月「…杉浦さん、泣いてたね…」テクテク
見崎「うん…」テクテク(杉浦さんもみんなも限界だよね…?私ももう…)ブーッブーッ
望月「…携帯鳴ってるよ?」
見崎「…メールだ」
見崎(綾野さんから…ここからは赤沢さんなんだ…。…!)ジーッ
望月「…見崎さん?」
見崎「……」(赤沢さん、私の気持ちを…)
見崎「…望月君。話があるから今夜榊原君と一緒に家に来てくれない?」
望月「え?いいけど…今じゃなくて?」
見崎「…気持ちの整理がしたいから、時間が欲しいの」
望月「…?」
~~
風見「ふぅ…ちょっと休憩しない?」
勅使河原「そうだな。よっし、新しいジュース持ってくるから待ってろ!」
風見「うん、ありがとう」
勅使河原「おう!」
―ガラーッ―
風見(…久しぶりだな勅使河原の部屋)キョロキョロ
風見(ははっ、汚いのに慣れてたからこいつの部屋が綺麗だと逆に居心地悪いや。…ん?あの机の上にあるのって…)
勅使河原「ジュースお待ちーぃ!」
風見「!」ビクッ
勅使河原「なにビビってんだよ?」
風見「別にビビってないっ!」
勅使河原「ふーん、まぁいいか。ほら、炭酸が駄目な君に今度はリンゴジュースをしんぜよう!」
風見「…わざわざ悪いね」
勅使河原「いいって事よ!…続きするか?」
風見「まだ休んでたいかな」
勅使河原「俺もまだしんどいわ…。だったらさ、ちょっと話しないか?」
風見「なんだよ改まって…」
勅使河原「…お前さ、ホントにもう大丈夫なのか?」
風見「…なにが?」
勅使河原「桜木だよ。好きだったんだろ?」
風見「な、何いきなり言い出すんだよ!!別にそんなのじゃ…//」カーッ
勅使河原「……」ジーッ
風見「……知ってたの?」
勅使河原「今日な」
風見「何だよそれ…」
勅使河原風見「……」
風見「…もしかして今日誘ったのってこの話しのため?」ジロリ
勅使河原「…部屋を掃除したら見つかったゲームをしたいから誘った。これは嘘じゃない。ただな…お前がホントに立ち直ったのか不安だったんだ…。いつか聞こうとは思ってた」
風見「……」
勅使河原「お前悩み相談するタイプじゃないし、桜木の事も知ったからさ…お前がいつか爆発するんじゃないかって思うと…。だから俺から話を振った。余計なお世話かもしれないけど、気持ちを押し込むよりは吐き出した方が少しは楽になるぞ?」
風見「……」
勅使河原「ごめんな、今日は駄目だったな…。楽しくゲームするはずだったのに…」
風見「…その通りだよ」
勅使河原「…ごめん」
風見「そうじゃなくて……正直爆発しそうだったよ」
勅使河原「風見…!」
風見「でもなんとか堪えきれたのはね、…勅使河原が支えてくれたからだよ」
勅使河原「…ホントか?」
風見「何回も言わせるな!……ありがと」ボソッ
勅使河原「か~ざ~み~」グスッ
風見「あぁもう!…でも話を聞いてもらうのは今度でいい?…促されてするんじゃなくて、つらい時に自分からしたいんだ」
勅使河原「お前がそうしたいならそれでいい!但し絶対遠慮すんな!」
風見「…ありがとう。…じゃあ、今度はこっちの番」
勅使河原「?」
風見「二つあるけどまず、お前こそ赤沢さんとはどうなの?」
勅使河原「ハァ!?なんで赤沢!?」
風見「少なくとも僕よりは分かりやすいって…。さっきのお返し」ニヤニヤ
勅使河原「マジか…。…あいつサカキに惚れてる気がすんだよなぁ…。でも初恋を諦めるつもりはねぇぞ!」
風見「ふーん…」
勅使河原「自分から聞いてそれかよ!」
風見「だって僕達がこういう話をするの初めてだからなんか…」
勅使河原「まぁ、正直俺もなんか…幼なじみなのにな」
風見「幼なじみだからこそ、かな?」
勅使河原「だな…。おい、話変えろ!気まずい!」
風見「はいはい、じゃあ二つ目。…机の上のあれはどういうつもり?」
勅使河原「…あ」
《赤マル(ライト)》
風見「お前な~!」ピクピク
勅使河原「落ち着け!な?」
風見「…ふん」ハァ
勅使河原(お?ホントに落ち着いた…)
風見「…吸い始めたのはいつから?」
勅使河原「…三年になって現象の事知ってからさ、やっぱ最初は信じれねぇじゃん?でも嫌でも信じるしかなくなって、それで少しでも楽になるんなら、って思って」
風見「…知ってる人は?」
勅使河原「下の姉ちゃん以外には今お前が初めてだ。そもそも姉ちゃんは中学に上がった時には吸い初めてたんだからこういうのに理解あるっつうか?」
風見「ふーん。…で、実際吸ってどうだった?」
勅使河原「…よく分かんねぇな。ドップラー効果だっけ?こんなの気の持ちようだな実際」
風見「プラシーボだろ。救急車のやつだよドップラーは…」
勅使河原「はは、それそれ!…でもな、何やってんだろ俺、とは思ったな…」
風見「……吸ってるとこ見せてよ」
勅使河原「はぁ!?なんで?!」
風見「なんとなく」
勅使河原「…お前がいいならいいけどさ。あ、ならお前も吸うか?なんちゃって…」
風見「そうだね、せっかくだし」
勅使河原「はぁ!?」
風見「何だよ自分から言ったくせに」
勅使河原「冗談のつもりだったから…。なんでまた?」
風見「…こんな事しちゃうのが『普通』の中学生なんだろうなと思ってさ」
勅使河原「…『普通』か。かもな、ほらよ」スッ
風見「付け方とか教えてよ…」
勅使河原「おっとそうだな。とりあえずくわえて…よし、息を吸え!」カチッシュボッ
風見「…!」ゴホッゴホッ
勅使河原「最初はやっぱそうなるよな…」
風見「よく吸えるねこんなの…」
勅使河原「まだまだ強いのもあるんだぜ?で、どうだ?」
風見「…よく分からないけど、とりあえずこんな姿桜木さんには見せられないな」
勅使河原「俺も赤沢にだけはバレたくねぇな…あいつキレるぞ絶対」
風見「はは、だね。…ていうか早く吸ってよ。火つけてやるから」
勅使河原「おお、忘れてた!…あ、ちょっとやってみたい事あるんだけどいいか?」クワエ
風見「え?いいけどなに?」
勅使河原「…一応言うけど誤解すんなよ?」ニジリッ
風見「!」ビクッ
勅使河原「…お~着いた着いた。一回煙草から火をもらうのやってみたかったんだよな!」
風見「びっくりしたよ…」
勅使河原「まぁまぁ」フー
<ただいまー
勅使河原「ヤベぇ、母ちゃんかも!消せ消せ!」グシグシ
風見「え!バレたら大へ熱っ!」グシグシ
勅使河原「なに火触ってんだよ!ほらガム」
風見「あ、うん!」
―ガラガラ~―
姉「ひさ~智く…て、あんた、煙草吸ってたでしょ?臭いでバレバレ」
勅使河原「姉ちゃんかよ…びっくりした…」
姉「一応あたしにも隠すふりはしなさいよ…。まさか智君に吸わせたりは…」
勅使河原「し、してねぇよ!なっ!」チラ
風見「う、うん!」モグモグ
姉(ガム食べてるし吸い殻二本あるし…バレバレだっつの。)チラ
風見「」モグモク
姉(…無理に吸わせた感じじゃないし、二人とも学校でいろいろあるらしいしね…)
姉「まぁいいわ。智君来るの久しぶりだから姉さんが料理の準備張り切ってたわよ!で、私の仕事は~っと。…はい、置いてた歯ブラシだいぶ前のだから、新しいの♪」
風見「あ、ありがとうござ…え?」
姉「え?」
風見「…僕、今日泊まるの?」チラ
勅使河原「そういうつもりで姉ちゃん達には言ったぜ?」
風見「…そんなつもり無かったんだけど」
勅使河原「いいじゃん明日休みだし!あ、もしかして用事あった?」
風見「用事って程じゃないけど…明日少し学校に行かなきゃ…」
勅使河原「なんで休みに学校行くんだよ?」
風見「…忘れ物」
勅使河原「ふーん。まぁいいじゃん久々にさ!」
風見「分かったよ…。別に時間決まってる訳じゃないし」
勅使河原「決まりぃ!」
姉「よーし、じゃ私は風呂掃除~♪あ、今日こそは智君にキュウリ克服させるって姉さん言ってたよ」イソイソ
風見「え、そんな!」
勅使河原「キュウリ駄目とか変わってるよなお前」
風見「…小さいときにイボを触って痛かったから…」
~~
小椋「ここが多佳子の家?」
赤沢「うん。ただ、私あれから毎日行ってるけど会ってくれたのは最初の一日だけ…。会える保証はないわよ?」
綾野「…そっか」
小椋「でもやっぱ気になるもん。とりあえずピンポン押そうよ」
赤沢「はいはい」
―ピンポーン―
杉浦母「は~い、あら泉美ちゃんいらっしゃい」ガチャ
赤沢「あ、こんばんは」ペコリ
母「今日も来てくれたの?ありがとう。…ところで後ろの二人は?」
小椋「あ、私達は同じクラスの…」
母「もしかして由美ちゃんと彩ちゃん?」
小椋「え?」
綾野「どうして名前を…?」
母「…由美ちゃんはこの前小学生に年下と思われてからかわれたんだって?」
小椋「なっ!」
綾野「あははっ、あったね~」
母「彩ちゃんは学校サボって駄菓子屋行ってたことが先生にバレて怒られたんだよね?」
綾野「う~…」
小椋「へへーん」
赤沢「ふふっ、多佳子からですか?」
母「うん。今はあれだけど…あの子ご飯の時とかいっつもあなた達の事楽しそうに話してるから」
小椋「だからってそんな事まで…」
綾野「私のイメージが~」
母「あの子口下手だしぶっきらぼうだし社交性ないし、だから友達少ないじゃない?」
赤沢「じゃない?って言われても…」
母「だからその分みんなを大切に思ってるの。昔は泉美ちゃんや…順太君しかいなかったけど、今は由美ちゃんや彩ちゃんもいるから安心よ」
小椋「なんか恥ずかしい…」
綾野「私も多佳子大好きですよ!」
母「ありがと♪」
赤沢「…あの、多佳子はまだ…」
母「会ってもらいたいけど今日も…」
赤沢「…そうですか」
母「でもさっき少し外に出てたっぽいからもうすぐ…ね。もちろん来てくれた事は伝えるね。でも、大好きな順太君がいなくなっちゃったから…」
綾野「大好きってどういう…」
母「もちろん恋愛の方よ。私が『順太君のこと好きでしょ?』って聞くたびにいっつも顔真っ赤にして否定するけど」ニヤニヤ
小椋「母親から言われたらそうなりますよ…」
母「だってあの子幼稚園のとき、将来の夢って作文に『じゅんたくんのおよめさん』って書いてたのよ?」
綾野「かわいー♪」
母「あなた達がいない時は名前で呼び合ってるし」
小椋(前多佳子が私のそばで中尾と話してた時、「順太君」って呼んで顔真っ赤にしてたなぁ~)
母「毎年バレンタインにはものすごい凝ったのあげてるしホワイトデーの日は一日中玄関の前うろついてるし。あのメガネも順太君チョイスよ♪」
赤沢(おばさん暴露し過ぎです。こっちが恥ずかしい…)
綾野「もしかして付き合ってたりしたんですか?」ワクワク
母「まだそれはないかな~二人とも奥手だし」
綾野「な~んだ」ガックリ
母「でもね、私が言うのも変だけど、多分順太君も多佳子の事…」
綾野「そうなんですか!?」ワクワク
小椋「あんた食い付きすぎでしょ」
綾野「だって多佳子の恋バナだよ!?」
母「多佳子には今日の話内緒よ?怒ったら怖いから…」
赤沢「…知ってます」
母「ホント昔とは大違い…。それでね、泉美ちゃん東京に行くかもしれないんだよね?」
赤沢「まだ未定ですけど…」
母「順太君が心配してくれたの。『赤沢さんがいなくなったら多佳子が寂しがる!どうしよう!』って、自分の事のように。ふふっ、そんなの泉美ちゃんの勝手なのにね?」
赤沢「もし行く事になっても多佳子はずっと友達です。それに二人もいますし」
綾野「う~、多佳子と同じ高校行けるかな…」
小椋「…お互い頑張ろうね」
母「ありがとうねみんな。…暗くなってきたわね。女の子だけだしそろそろ帰った方がいいかも…」
赤沢「そうですね…。長々とすいませんでした」
母「こちらこそ来てもらったのにごめんね?」
小椋「また来てもいいですか?」
母「もちろん!ありがとうねみんな!」
赤沢「…ではまた」
母「うん!まってるからねー」バイバイ
―カチャ―
綾野「……中尾君が生きてるような会話だったね」
小椋「うん…」
赤沢(多佳子の部屋の窓は確か二階の…あ!)ビクッ
小椋「どうしたの泉美?」
赤沢「多佳子…」
綾野「ホントだ…」
小椋「こっち見てるね…」
杉浦「……」ジーッ
赤沢綾野小椋「……」ジーッ
杉浦「」パクパク
―シャッ―
綾野「カーテン閉められちゃった…」
赤沢「…口動いてたけど、なんて言ってたと思う?」
小椋「…思い上がりかもしれないけど、『ありがとう』だったら嬉しいな…」
赤沢「…大丈夫よ、…私にもそう見えたから…」
~~
榊原「ごめん遅くなって」
見崎「ううん大丈夫」
望月「…話ってなんなの?」
見崎「……ごめん。やっぱり言うのが怖い……」
榊原「…現象の事と関係があるの?」
見崎「……うん」
榊原「…教えて見崎?…僕はどんな事でも受け止める」
望月「…僕も」
見崎「……死者の正体」
榊原望月「!」
見崎「死者の正体を知って一番辛いのは二人だけど…だからこそ、二人が知らないのは余計辛い思いをさせるかも。…思い上がりだよね」
望月「……ねぇ、勅使河原君はどうして呼ばなかったの…?」
榊原「!…そうなの?…見崎?」
見崎「違うよ」
望月「…良かったぁ~」グスッ
見崎「…でも二人が辛いのは変わらないよ?」
榊原「…教えて、見崎。見崎も言わないの辛いでしょ?」
望月「…お願い」
見崎「…うん。死者はね…――
~~
榊原望月「……」トボトボ
望月「信じられないよね…まさか先生が…」
榊原「……」
望月「…どうすればいいの?もう分かんないよ!」
榊原「……」
望月「あ…ごめん、辛いのは榊原君の方だよね…受け止めるって言ったくせに取り乱して…ごめん」
榊原「…望月だって辛いんだ。我慢しないでいいよ」
望月「…ありがとう…」
榊原「…怜子さん…」
~~
見崎(辛いよね…ごめんね二人とも。でもまだ私にはしないといけない事が…)
見崎「……」
~~
―プルルップルルッピッ―
『おぉ珍しいな。どうしたぁ~赤沢』
赤沢「遅くにごめん…」
『気にすんな。お前の電話なら大歓迎だ。つうか風見がもう寝ちまったから暇でさー。こいつ早寝遅起きだから。よくそんなに寝れるよな』
赤沢「ふふっなによそれ…。その様子だとあんた達はもう心配なさそうね」
『まぁな!…『は』って事は、そっちはなんかあったのか?』
赤沢「変なとこ鋭いわね…。私の暴走を由美がビンタで止めてくれたり彩経由で見崎さんに謝ったり…返事はまだだけど。何より、少しだけ多佳子の顔見れたり、いろいろかな」
『ちゃんと謝ったんだな。偉いぞ~』
赤沢「あんた何様よ」
『ははっ。それにしてもお前にビンタなんて俺は出来ねぇな…』
赤沢「即反撃ね」
『でもそれって俺には遠慮してないって事だよな?嬉しいねぇ~』
赤沢「あほっ!」
『はいはい。で、杉浦はどうだった?』
赤沢「…『ありがとう』って言ってくれた」グスッ
『…良かったな。お前はちゃんと杉浦を支えれてるってことだ』
赤沢「…うん、ありがと」グスッ
『俺はお礼言われるような事はしてないぞ。お前が頑張ったんだからな』
赤沢「…変なの」
『さっきから変って言い過ぎ!』
赤沢「だってあんたのくせにちょっとだけかっこよさそうな事言うから…」
『失敬だなー』
赤沢「ふふっ。…あ、ごめんキャッチが…」
『おう、またな』
赤沢「…ありがとう。じゃあね」ピッ
赤沢(知らない番号…まぁいいか)ピッ
赤沢「…もしもし」
『…私だけど分かる?』
赤沢「…分かるわよ。びっくりしたけど」
『…話があるけどいい?』
赤沢「電話でもマイペースなのね…。でも私も言わないといけない事があるし、そっちから電話してくれてよかったわ」
『…なら先にいいよ』
赤沢「うん。まずは…――
…
……
<ワンワンッ!
――あれ?この光景…――
『じゅんたくん…こわいよぅ』ギュー
『たかこまかせろー!』
――ふふっ、やっぱり…――
『このっどっかいけ!!』
『あ…う…グスッ』
<ヴーッ
『このヤロ~!たかこをビビらせるな!』ゲシッ
<キャイン!
『ヒグッ…ヒグッ』
『もうだいじょうぶだぞ!』ナデナデ
『え~ん!あ゛りがど~』
――初めて私を守ってくれた時だね――
…
……
<おまえなまいきなんだよ!
『たか子ちゃんはかんけいないでしょ!なんでぶつの!?』
<うるさい!じょーきゅー生にさからうのか!?
『グスッ…』ジンジン
『だいじょうぶたか子ちゃん?…っこのバカ!』ナデナデ
<なんだとー!
『まて!見つけたぞ!たか子、それとしらない人…二人のかたきはおれにまかせろー!』
――あはは、私とは違ってあの子は昔から気が強かったなぁ――
<このやろ~いつかしかえしするからな~!
『いつでもこい!この中おじゅん太があい手になってやる!』ボロッ
『えっと…ありがとう』
『こっちこそたか子をまもってくれてありがとな!』
『ありがとぉ~!』グスッ
『よかった、たか子友だちできたんだな!…とりあえずうちにかえるぞ』クイッ
『…うん』スタスタ
『わたしみちちがうから。またねたか子ちゃん、しらない人ー!』ブンブン
『えへへ、またねいずみちゃん』フリフリ
――泉美と仲良くなれたのも順太君のおかげかな?泉美は忘れてるみたいだけど――
…
……
<ニャーン
『どうしよう中尾…』
『任せろ杉浦。こんな木なら簡単に登れるって』
――ふふっ、いつからだっけ?からかわれて恥ずかしかったから、名字で呼び合いだしたの?――
『よしっ捕まえた!』
『落ちないでよ…』ハラハラ
<ニャーッ!
『こら暴れ…おわっ!』ズルーッ
『順太君!』
『…っいってぇいってぇ!前擦りむいた!乳首取れてない!?見るの恐いから多佳子確認してくれ!』マクリッ
『変態!…もう…ありがと』グスッ
<ニャー
『ふふっ、良かったね猫ちゃん』ナデナデ
――でも意識しないと名前で読んじゃうんだよね。今さら変えられないよ――
…
……
『大丈夫?』サスサス
『あぁ…なんとか…おぇっ』
――…これは…――
『ビーチボールしましょう!』
『よしっ!』
――やめて…――
『ボールが…』
『任せろー』
――やめて…――
『おい、ヤバくねぇか?』
『ちょっと…』
――やめて…――
<ブォー…
――お願い…――
――ガンッ――
杉浦「やめてえええぇぇーー!!」ガバッ
杉浦「……夢…。枕濡れてる…泣いてたんだ…」
杉浦(…わざわざ見つからないように行って、思い出に浸って、馬鹿みたいに泣いて…だからこんな…)
杉浦「……今日は祝日、か…」
~~
勅使河原「お~い、いい加減起きろ~」
風見「ん……おはよ。…ふぁ~」
勅使河原「もうこんにちはだぞ?まったく…相変わらずよく寝るよな」
風見「うわホントだ…。学校行かないと…」
勅使河原「おぉ、まず顔洗ってこい。」
風見「うん」スタスタ
勅使河原(…な~んか隠してる気がすんだよなぁ。でも昨日あんな事言ったから俺から聞くのも…)
風見「ふ~」
勅使河原「お、服はどうする?…忘れ物だけだろ?」
風見「…学校に行くんだから一応制服のほうがいいかな」ヌギヌギ
勅使河原「ふーん…」
風見「……分かったよ、話すから。…桜木さんの花を替えようと思って…」
勅使河原「そういう事か…分かった!」
風見「なにが?」
勅使河原「よし、着替え終わったな!ちょっと来い!」
風見「だからなにが…ってなに付けてんだよ!」
勅使河原「ワックス」
風見「おい!」
勅使河原「…誰もいないんだから恥ずかしくないって!それに桜木にかっこいい姿見てもらうチャンスだぞ!」
風見「…はいはい」
勅使河原「…っし、完璧!」
風見「…変じゃない?」
勅使河原「決まってるぜ!」
風見「ならいいけど…」
勅使河原「それともう一つ…あったあった、ほれ」
風見「なにこれ?」
勅使河原「少ないけど俺のへそくり。良い花買えよ?」
風見「…え?」
勅使河原「あ、でも桜木には全部お前が買ったって言うんだぞ?」
風見「…こういう事を赤沢さんにしてあげたらいいのに」
勅使河原「お前だからしたんだよ」
風見「…本当にありがとう」
勅使河原「いいからいいから。…ほら、早く行ってこい」
風見「うん!」
~~
赤沢(そろそろよね…)
―カランカラン―
赤沢「…おはよう、は違うか。こんにちは、見崎さん」
見崎「…こんにちは、赤沢さん」
赤沢「メールでも電話でも言ったけどちゃんと口で…」
見崎「謝り過ぎだよ。気にしてないし、度を超えたらお互い気まずくなるよ?」
赤沢「…そうね。ところで電話じゃ会う約束だけなんて、そんなに直接じゃないと言えないの?」
見崎「そっちの方が話しやすいから」
赤沢「…そっか。で、誰?」
見崎「…信じるよ?」
赤沢「信じて。何回も言ったけど、もうあなたに昨日みたいな事はしないし、あなたの優しさをちゃんと理解出来た」
見崎「…死者はね…――
~~
赤沢「悲しいくらい筋の通った推理ね。私が恒一君に会った気がしたのもそれか…。さすがにあなたの目の事はびっくりだけど」
見崎「榊原君や望月君も目の事はびっくりしてた。でも…私の推理には否定出来なかった。…悲しいけど…」
赤沢「二人も辛いでしょうね…」
見崎「いっそ誰かが矛盾を見つけてくれた方が嬉しいのに…」
赤沢「そうよね…。ありがとう話してくれて」
見崎「…ごめんなさい」
赤沢「なんで謝るの?あなたは悪い事なんかしてないわ」
見崎「違うの。赤沢さんにはまだ隠してる事があるから…信用したくせに」
赤沢「…教えてもらって大丈夫?」
見崎「…私の双子がね、四月に現象で…」
赤沢「…そう」
見崎「だからどうでも良くなって、いないものなのに……ごめんなさい」
赤沢「……私はずっと前に従兄をね…。だから気持ちは分かるわ」
見崎「…え?」
赤沢「言ってなかった?」
見崎「うん」
赤沢「そもそも四月なら、その後にあなたが誰かと話した事は関係無いの知ってるでしょ?それなのにいないものにした私の方が悪いのよ。…ごめんね」
見崎「…ううん」
赤沢「…とりあえずあなたはもう誰かに死者の話をしないようにね。…昨日の私みたいな人がいてもおかしくないから」
見崎「…これからどうするの?」
赤沢「ここからは対策係の仕事、もし…言うべき時が来たら私の責任で言う。あなたの名前は出さない。もちろん目の事も。あんまり知られたくないでしょ?」
見崎「…でも赤沢さんが責められるかも…」
赤沢「…対策係ってね、災厄だけを対策するんじゃないの。この現象のせいで起こるかもしれない、全ての不幸も対策しないといけないの。…当然みんなから鳴を守る事もその中の一つ」ニコッ
見崎「…ありがとう赤沢さん」グスッ
赤沢「こら。私はあなたを鳴って呼んだのよ?」
見崎「…ありがとう…泉美」ボロボロ
赤沢「鳴も泣くのねー。ふふっ、かーわい」ニヤニヤ
見崎「やめて…//」
赤沢「…ていうか鳴、そもそも私が批判なんかに負けると思ってるの?返り討ちよ!…あ、でも多佳子には勝てないわ。怒ったら恐いのよ?私鳴を守れるかな…」
見崎「う…」
赤沢「冗談よ。勘違いされやすいけど、多佳子とても優しいのよ?あなたの気持ちも分かってくれるはずよ。……多分」
見崎「多分なの…」
~~
望月(なんで辛くなるのが分かってたのに美術室行ったんだろ僕…。…先生の絵、綺麗だったなぁ…)
望月「はぁ…宿題も持ったし、とりあえず帰ろ…」
―ガラッ―
望月「え?」ビクッ
杉浦「……久しぶり」
望月「…またなの?」
杉浦「なにが?」
望月「あっなんでも…」
杉浦「昨日…望月だったんだ」
望月「…ごめん、見ちゃった」
杉浦「別にいいわよ。…ねぇ望月」
望月「なに?」
杉浦「…死者って誰なんだろうね…」
望月「!」
杉浦「私考えたんだけど、一人増えたのならそいつがいなくなれば元の人数になるよね…」
望月「テープ聞いたの!?」
杉浦「…なんの事?」
望月「あ…なんでもないよ」
杉浦「…よく分からないけど当たってるっぽいね」
望月「…さぁ」
杉浦「じゃあ死者が誰かも知ってたりして…」
望月「やめようよこんな話…」
杉浦「…なにか隠してるね…教えて?」
望月「…知らない」
杉浦「……」グッ
―パシッ―
望月「っ…」
杉浦「教えてよ」
望月「…分かったらどうするの?」
杉浦「…そんなの……殺すしか…」グッ
望月「…知らない」
杉浦「…どうしてよ」
―パシッ―
杉浦「教えて」
望月「やだ」
―パシッ―
杉浦「教えて!」
望月「やだ!」
杉浦「…なんなのよっ…」
―ガラッ―
風見「…もうやめなよ」
杉浦「!…風見…休みなのに、なんでこんなに来るのよ…」
風見「ちょっと用事でね。…望月大丈夫?」
望月「…うん。…もしかして、話聞こえてた?」
風見「ごめん、実は最初から外で聞いてたんだ。でも杉浦さんの気持ちも痛いほど分かるから…すぐには止められなかった」
杉浦「…ゆかりね」
風見「…うん。でも望月にこんな事するのは違うよね?」
杉浦「だって…止め方分かってるのに…」
風見「…そうだね」
杉浦「なによそれ?じゃああんたはゆかりの事もう平気なの?…私はもう…」
風見「平気なはず無いよ。今でも辛いさ」
望月「……」
杉浦「…ほら」
風見「でも人殺しなんて…僕には出来ない」
杉浦「…きれいごと」
風見「かもね。でもこんな僕を支えてくれる人がいるから…。それに僕が好きなゆかりは…とても優しい人だから」
杉浦「…!」
風見「どんな理由でも人殺しなんかしたら…ゆかりはきっと悲しむ。大好きなゆかりや支えてくれた人に笑っていてほしいから、僕はそんな事出来ない」
望月「赤沢さん達、ものすごく心配してたよ…杉浦さんの事」
杉浦「…うん」
風見「もし中尾君が喜んでくれるなら僕は君を止めない。でも僕には、彼がそんな人に見えないな…」
望月「中尾君…見た目ちょっと恐いし勅使河原君の次にふざける人だけど、とっても優しかったよね…」
風見「…うん。一番彼の事を知ってる杉浦さんはどう思う?」
杉浦「…どう思うって…中尾は……」
…
……
『いっつもごめんね順太君…私のせいで』
『何を改まって。…まぁ多佳子は優しいからな~。反撃とかもしないし』
『…私、強くなる。そしたら順太君に迷惑かけないから』
『…勘違いしてないか?多佳子』
『え…なにが?』
『優しさと甘さは違う。甘さはただ弱いだけ、でも優しさはとっても強いものなんだ』
『…良く分からないなぁ』
『俺も上手く説明出来ないけど…とにかくお前は優しくて、そして強いんだ。無理に変わらなくていい。お前のいいとこはその優しさだからな』
『…分かった。…あ、じゃあ順太君も一緒だね。優しいし』
『うーん。俺はどうだろうな…我慢出来ないし』
『ふふっ』
『…もちろんこれからもどんどん頼れよ?迷惑かけるなんて思うな』
『…いいの?』
『当たり前だろ。優しいお前には出来ない事がたくさんあるから、そういうのは俺がする』
『…ありがとう、順太君』
『…おう、任せろ多佳子』
……
…
杉浦「…決まってる、そんなの順太君が喜ぶ訳ない…。私の優しさを誉めてくれて、大切にしてくれて…私優しくなんか…」
望月「…大丈夫、杉浦さんは優しい人だよ」
杉浦「…私望月をぶったんだよ?」
望月「…だって全然痛くないもん。手加減してたの分かったよ?それに殺すって言ったけど、僕にはそんな事出来そうな顔に見えなかったから…」
杉浦「……バレてたんだ。当たり前よ、そんな事出来ない。…ごめんね望月、私いっぱいいっぱいで訳分かんなくなってた…」
望月「…気にしないで」
杉浦「泉美達にも謝らないと…」
風見「謝るのもいいけど、お礼を言ってあげて。そっちの方が喜ぶと思うから…。ところで望月…」
望月「え?」
風見「…死者が誰か本当に知ってるの?」
望月「う…言わなきゃだめ?」チラ
杉浦「…お願い。やっぱり気になるし、もうさっきみたいな事はしない。…ていうか、私が殺す気ないの知ってたんならさっき言ってくれても別に…」
望月「あはは…一応…」
杉浦「もう…」
望月「…言うね。死者は…――
~~
杉浦「先生…か」
風見「…望月の推理?」
望月「違うけど…ごめん、教えられない」
風見「…分かった」
杉浦「そりゃあんたは言えないわね。大好きな先生が死者なんて」
望月「そっ、そんなんじゃなくて顧問だから…//」
杉浦「バレてないつもり?」
風見「みんな知ってるから」
望月「うぅ…//」
杉浦「…なんか私達似てるね。望月はちょっと違うけど」
風見「…かもね」
杉浦「…せっかくだし、みんなでお話しない?」
望月「いいけどどんな?」
杉浦「……恋バナ♪」
~~
杉浦「言い出しっぺだし、私からいくね」
風見「うん」
杉浦「…私ね、昔はものすごい泣き虫で弱虫で順太君にべったりだったの」
風見「意外だ…」
望月「僕は赤沢さんから聞いてたから。けどやっぱり…」
杉浦「…泉美め、内緒の約束だったのに」
望月「あ…」
杉浦「…まぁいいわ。やっぱり意外?」
風見「そりゃあ…」
杉浦「…順太君の体、傷だらけなの知ってる?」
風見「体育の着替えとかで見たけど、確かにたくさんあったね」
杉浦「あれね、ほとんどが私を守って…。あいつの『任せろ』って口ぐせもそれがきっかけ」
風見「そうなんだ…」
杉浦「…いつもそうやって守ってくれたけどやっぱり悪いから…努力したのよ?今みたいになるの」
望月「…もうそのころの杉浦さんには戻らないの?」
杉浦「…恥ずかしいじゃん」
望月「…じゃあ中尾君と二人きりでも?昔みたいに甘えないの?」ニヤニヤ
杉浦「なっ…?//」
風見望月「」ニヤニヤ
杉浦「う…少しだけ…甘える…//」ゴニョ
風見「ふーん…告白とかは?」ニヤニヤ
杉浦「そんなの出来ないわよ!?恥ずかしいじゃん!//」
望月「あははっ」
風見「シャイなんだね」
杉浦「あんたに言われたくないわよ!はいもう終わり!次、風見!」
風見「僕!?」
~~
望月「ずっと気になってたけど…今日髪かっこいいね」
風見「これは勅使河原が…」
杉浦「その花は?」
風見「…桜木さんのだよ」
杉浦「やっぱり。…あれ?あんたさっきゆかりって呼んでなかった?」
風見「…うそ?」
望月「僕もそう聞こえたけどな~?」
風見「…//」
杉浦「あんた達付き合ってたの?」
風見「…片想いだよ」
望月「でも名前で呼ぶんだね」ニヤニヤ
風見「…うるさいな」
望月「さっきあんなに好き好き言ってたし、風見君は意外と情熱的なんだね」ニヤニヤ
風見「望月…さっきから生意気だぞ」
望月「だってこんな風見君珍しいし」ニヤニヤ
杉浦「ね」ニヤニヤ
風見「ふーん…じゃあそろそろ反撃しようかな?」
望月「え?」
~~
風見「先生の胸に挟まれて嬉しかった?」
望月「なんでそれを!?」
風見「勅使河原から」
杉浦「…あんたそんな顔して、とんだ狼ね」
望月「違うよ!呼ばれて振り向いたら予想以上に近くて…//」
杉浦「ふーん」
望月「…わざとじゃないよ?」
杉浦「感想は?」
望月「…柔らかかったです//」
風見杉浦「」ニヤニヤ
望月「お願いだからみんなには…」
風見「じゃあ次の質問に答えてね?」
望月「…なに?」
風見「先生じゃなくて、クラスメイトだったら誰がいいの?」
望月「ぅえ!?」
杉浦「あ、私も気になる。別に好きとかじゃなくて、あの人いいな~ってくらいでいいからさ」
望月「……綾野さん」
風見「あ、多々良さんじないんだ」
杉浦「私もそう思った。恵大人っぽいし」
望月「多々良さんはあんまり話したことないし…」
杉浦「で、なんで彩?」
望月「席近いからよく話すけど、いつも笑ってて明るくて…僕すぐくよくよするから…」
風見「でも綾野さん榊原君のこと…」
杉浦「うーん、そうかな?あの子誰にでもあんな感じだから。頑張りなさいよ望月。チャンスあるわよ」
望月「そんなんじゃないって!!」
~~
望月「…じゃあ僕こっちだから」
風見「うん」
杉浦「また明日」
望月「…杉浦さん学校に来てくれるんだね」
杉浦「いつまでもふさぎこんでる場合じゃないしね」
望月「…うん!じゃあ、バイバ~イ!」フリフリ
風見杉浦「……」フリフリ
風見「…行っちゃったね」
杉浦「望月、これから私達よりも辛い思いをするかもしれないんだよね…」
風見「それを支えるのが僕達の役目だよ」
杉浦「…そうね。似た者同士、頑張りましょう」
風見「…うん」
~~
三神「恒一君…昨日の夜から変よ?」
榊原「…そんなことないです」
三神「ううん、変。何か隠してる…」
榊原「……」
三神「…もしかして現象となにか関係があるの?」
榊原「!…いえ…」
三神「お願い、教えて」
榊原「でも…」
三神「お願い…。私は…あなた達の先生なんだから」
榊原「…はい」
~~
三神「…そっか。私…か」
榊原「でも…まだ決まった訳じゃ…」
三神「ううん…その考えは間違ってなさそうだし、話を聞いていろいろ思い出しちゃった…。誰の考え?」
榊原「……言えません」
三神「…分かった。……恒一君、今日一緒に寝よっか?」
榊原「…え?」
三神「…なんとなく。いろいろお話したいし♪あ、でもえっちな事考えちゃ駄目よ?」
榊原「もう…分かってますよ…」
――その日、夢を見た――
…
……
『…風見君』
『え…桜木さん?』
『…名前で呼んでほしいな…智彦君』
『…ゆかり』
『…お花ありがとうございます。綺麗でしたよ』
『…勅使河原がね』
『知ってますよ…いい人ですね』
『…自慢の幼なじみだから』
『…今日はかっこいい智彦君をたくさん見れました』
『…あの髪は勅使河原が無理矢理したんだからね…?』
『もう、それじゃないですよ。…かっこよかったけど』
『…ありがとう』
『…ごめんね智彦君、もう行かないと』
『…そっか』
『最後に一つだけ』
『…なに、ゆかり?』
『…お願いです。ゆっくり来て下さいね…』
…
……
『久しぶりだな、多佳子』
『順太君…』
『…もう心配なさそうだな』
『…うん』
『まぁお前のことだから最初から心配はしなかったけどな。…ビビったけど』
『…ごめんね』
『…あんまり一人で思い詰めんなよ?お前が不器用なのは分かるけどさ』
『そうだね…』
『俺はもう見守ることしか出来ないけど…周りにはいい奴らがたくさんいるだろ?』
『…順太君のおかげだよ?』
『違う、お前が頑張ったんだよ』
『…ありがとう』
『…そろそろ行くか』
『…うん』
『そんな顔すんな。笑ってくれよ…』
『…だね。またね、順太君』
『おう。多佳子…寂しいけどさ、ゆっくり来いよ…』
――夢から目覚めると枕は濡れていて…でもそれを、冷たくとも哀しくとも思わなかった――
~~
三神「…では、朝のHRを終わりますが…私はみんなに謝らないといけない事があります」
『…?』ザワザワ
榊原(怜子さん…昨日話した通り…)グスッ
三神「…みんなこのクラスになって怖かったよね?大事な人がいなくなって寂しかったよね?」
赤沢(…まさか!)クルッ
見崎(…先生には言ってないよ)フルフル
赤沢(…うん。そうよね…)
三神「中学最後のこのクラスで楽しい思い出を作ってあげられなくて、ごめんなさい…」
望月「先生は悪くないです!」ガタッ
三神「ありがとう望月君…ちょっと来て?」
望月「え…?はい」スタスタ
三神「……」
――チュッ――
望月「!?//」
『!?』ザワザワ
勅使河原「おぉ!やったじゃん望月!」ピューピュー
望月「勅使河原君やめて…//。…先生?」
三神「私そんなに鈍感じゃないよ?ずっと前から気づいてた。…ごめんね?最後にこんな事して」
望月「…最後って……駄目だよ先生!」
三神「望月君は知ってるようね。他にも知ってた人がいるみたい…顔を見たら分かるよ」
榊原見崎赤沢風見杉浦「……」
三神「でも私は先生。みんなを守る事が何より大事なの。…分かって?」
望月「…はい」グスッ
三神「…このクラスの災厄を止める方法は、死者がいなくなればいいの。そして死者は…鋭い人は気づいたかな?…私なの」
『!?』ザワザワ
榊原見崎赤沢風見杉浦「……」
三神「理由は長くなるから言わないけど、間違いなく私なの。でもみんな、安心して。全部今日でおしまい。…今までありがとうね…」スタスタ
赤沢「…どこに行かれるんですか?」
三神「決まってるでしょ?…先生として、生徒に見せていいものじゃないから。…赤沢さん、対策係大変だったね。誰よりも頑張って…。もう大丈夫だからね?」
赤沢「……」グスッ
三神「…見崎さん」
見崎「…はい」
三神「私のせいでいないものにさせてごめんなさい。…これからは、たくさんいい思い出を作ってね?」
見崎「…はい」グスッ
三神(…恒一君の事、よろしくお願いします)
三神「…恒一君、私姉さんの代わりになれたかな?」
榊原「…代わりとか言わないで下さい。…怜子さんだから僕は…とても嬉しかった」グスッ
三神「…ありがとう。…ホントは一人一人とお話したいけど、別れ辛くなるから…。バイバイ」
望月「…っ!」バッ
三神「…望月君、そこどいて?」
望月「やだ!」
榊原「望月…先生の気持ちを分かってあげて?」
望月「やだ!最後まで先生といたい!」
榊原「望月!」
勅使河原「…サカキ、じゃあお前は最後まで先生といたくねぇのかよ!?俺は榊原「いたいよ!」バンッ
勅使河原「…だろ?」
榊原「…でも僕がわがまま言ったら…」
勅使河原「…一番辛いのはお前なんだ。…無理すんなよ」
榊原「……怜子さん。最後まで一緒にいて下さい」
三神「……」チラ
杉浦「後ろからも行かせませんよ?」
三神「……」チラ
小椋「窓からももちろん行かせません」
赤沢「…先生の事だから、私達の前で飛び降りなんて考えてないでしょうけど」
三神「…生徒の前で死んで言い訳ないじゃない。…どいて」グスッ
榊原「怜子さん…みんな同じ気持ちです」
勅使河原「だよなみんな!」
『当たり前だ!』
『お願い先生…一人でなんて寂しいよ?』
三神「…知ってるでしょ。すごい怖いのよ?目の前で人が死ぬのって」
風見「…僕達は三年三組ですよ?」
綾野「慣れるものじゃないけど…他の人よりは受け止める事ができます」
三神「…分かった。ありがとうみんな…」
赤沢「…こんな事聞きたくないんですが、どういった手段で…?」
三神「…これよ。理科室からパクって来ちゃった♪」ピラピラ
榊原「なにしてるんですか…」
三神「さすがに痛いのは嫌だもん。…みんなにお願いがあるけどいい?」
『……』
三神「私がいいっていうまで目を閉じてくれる?…多分ひどい顔になるから恥ずかしいの」
赤沢「…分かりました」
三神「ありがとう…。じゃあみんな、閉じて」
『……』
三神「…勅使河原君薄目」
勅使河原「バレた!?」
赤沢「勅使河原!」
風見「お前な…」
三神「ふふっ…もう大丈夫ね。じゃあ飲むから」
『……』
三神「……」ゴクッ
三神「…!ゴホッ、ゴホッ!!」
榊原「怜子さ三神「駄目!…うっ…もうゴホッゴホッ、もう少ししたら落ち着くからっ!…うっ…」
榊原「…はい」
三神(…あ~あ、死にたくないなぁ…。こんなにいい子達の担任を出来て…幸せだった…なぁ…)ゴホッゴホッ
三神「ゴホッ……」
『……』
三神「……」
『……』
三神「…………」
『…………』
勅使河原「…なぁ…長くないか?」
榊原「まさか!…あ…そんな…」
望月「…榊原君?」
榊原「みんな…もう開けて大丈夫だよ…」
望月「うん……あ」
三神「」ニコッ
望月「先生…なんで…」
赤沢「…あんなにいい笑顔で…。そんな余裕なかったでしょうに…」
綾野「…恥ずかしいってのも嘘だよね。私達を怖がらせないように…」
小椋「…うん」
望月「…っ!先生っ!ありがとうございました!」
『…ありがとうございました!』
~~
望月「うっ…うっ…」グスッ
杉浦「よしよし。辛いよね…」ナデナデ
風見「我慢しないで、たくさん泣いていいからね…」ポン
勅使河原「へへっ…あいつら、あんなに仲良かったっけ?」グスッ
赤沢「さぁ?…ふふっ」グスッ
見崎「…榊原君」ギュ
榊原「見崎…ありがとう」グスッ
見崎「うん…」
榊原「…僕、彫刻家を目指すよ。怜子さんに約束したから…」
見崎「うん…」
~~
榊原「凄いよね勅使河原…。外の空気を吸いに行こう、ってみんなを引っ張って…」
見崎「いつまでも教室にいたら余計ね…」
榊原「…初めて学校で話したの…この屋上だったっけ?」
見崎「…どうだったかな?」
『うっ…うっ…』
『先生…グスッ』
見崎「……榊原君、言うね?」
榊原「…見崎?」
見崎「……」スタスタ
赤沢「…鳴?」
見崎「泉美…私言うから」
赤沢「ちょっとめ見崎「みんな!」
榊原「…見崎」
『…見崎さん?』ザワザワ
『初めてあんな声聞いた…』ザワザワ
赤沢「鳴!」
見崎「いいの泉美」
赤沢「でも…」
見崎「みんな聞いてくれる?…私ね、先生が死者だって知ってた。先生に教えたのも私」
『!』ザワザワ
榊原「違う!僕が言ったんだよ!」
見崎「でもそれは私が言った事と一緒だよね?だから全部私なの」
『……』
見崎「もっと早く言えばみんな助かったのに言えなかった…。先生にだって他の教え方があったはず。…それにいないものなのに私守らずに……ごめんなさい」
『……』
勅使河原「……」ツマミ
風見「…なに?」
勅使河原「……」
赤沢「みんな、鳴の気持ちを分かって!」
『……』
赤沢「さっきの…とても辛かったでしょ?もし誰かに言ったらいつかさっきみたいな…もしかしたらもっと酷い事になってたかもしれない!だから言えずに一人でずっと悩んで…」
『……』
赤沢「それに鳴は四月に現象で大事な人を…。だからいないものなんて意味なかったの!鳴は悪くなんかないの!」
『……』
杉浦「……」ツカツカ
赤沢「多佳子!駄目!」バッ
見崎「…いいの泉美。どいて?」
赤沢「でも…」
見崎「お願い」
赤沢「……うん」スッ
杉浦見崎「……」
杉浦「……」バッ
見崎「…!」グッ
――あんな事言ったくせに、杉浦さんが左手を振り上げたとき私は目をつぶってしまった…。それでもなんとか右頬だけは、痛みを受け止める準備をした――
…っ!
――痛みはあった。でもそれは、想像していた張り裂けるような哀しいものじゃなくて…優しくて暖かくて、ちょっと可愛いものだった――
杉浦「……」ツネリッ
見崎「……すいうりゃしゃん?」ギュー
杉浦「ふふっ。ハイおしまい」パッ
見崎「…なんで?」ジンジン
杉浦「なんでって…泉美の言った事は嘘?」
見崎「本当だけど、そうじゃなくて…怒ってないの?」
杉浦「怒ってるよ…。私だって対策係なんだから、そんな大事な事早く言って欲しかった。だから言ってくれなかった仕返し」
見崎「…それだけ?」
杉浦「うん。…大変だったね、鳴」ナデナデ
見崎「……多佳子、ありがとう」グスッ
赤沢「…私よりもスムーズに名前呼び…」
杉浦「だって泉美恐いもん」
赤沢「多佳子に言われたくないわよ!」
小椋「…多佳子、もう大丈夫そうだね」
綾野「うん♪泉美も嬉しそう♪」
風見「…そろそろ離してよ。見崎さんに何かすると思った?」
勅使「い、いや、信じてたぞ!?一応な!?」
風見「はいはい…」
勅使「…あれ?杉浦って左利きだっけ?」
風見「…見崎さん左目に眼帯してるだろ?」
勅使「……へへっ、なるほどな!」
~~
杉浦「私ね、今日夢で順太君と話したの」
風見「奇遇だね。僕も今日ゆかりと話したよ。…どんな話をしたの?」
杉浦「…秘密。風見は?」
風見「…なら僕も秘密」
杉浦「ふふっ。…でもね、なんとなくだけど…同じことを風見もゆかりに言われてる気がする」
風見「…僕もそんな気がするよ」
――私達が卒業すると同時に、市町村合併によって隣町を二つほど吸収して夜見山市は名前を変え、同時に学校も名前を変えた。そしてこれがきっかけなのか、現象も今の所起きていない。まったく…私達をあんなに苦しめたくせに、こんな事でなくなるなんて…――
―ガラッ―
『…現象も案外適当よね』
『いきなりそれ?お疲れさまとか言ってくれてもいいんじゃない?』
『ふふっ。そうね』
『美術部の顧問お疲れさま。見崎先生』
『ありがとう。杉浦先生』
『まったく…なんで美術部なのにこんなに入って来るんだろう?』
『そりゃそうよ。鳴は絵の専門雑誌にちょくちょく名前が載るくらいだし、榊原君は今や世界で有名な若手彫刻家。人気があるに決まってるでしょ?』
『…だからってあの人数を一人じゃ大変よ…。多佳子顧問やってないんだから手伝ってくれてもいいんじゃない?』
『イヤよ。私は放課後ゆっくり過ごしたいし、私の絵望月以上に壊滅的よ?』
『望月君のはちゃんとした芸術。…前衛的なだけで』
『はいはい。…ところであのバカは?』
『さっき部活終わったっぽいからもうすぐ来ると思うけど…』
―ガラガラーッ―
『いや~疲れた疲れた!』
『あ、バカが来た』
『ふふっ』
『失礼だぞ杉浦!見崎も笑うなよ!…まったく。そもそもお前ら、何回も言うけど俺の事は勅使河原先生と呼んでくれてもいいんじゃないのか!?』
『じゃああんたは私達に敬語ね』
『そんな!?』
『浪人したあんたが悪い』
『むしろ勅使河原君が一回の浪人だけで大学入れたのに私達びっくりしたもん。』
『ぐっ…』
『ていうかあんたはまだ教育実習生なんだから、部活見るよりする事あるでしょうが…』
『いやぁ意外と楽しんだなぁ部活!中学の時やってりゃ良かったよ!』
『…勅使河原君も来年先生になったらここにくるの?』
『…二人と同じ理由でな。今のとこってだけで現象が完璧に止まった確信はないし、なにかあったら元対策係の泉美にすぐ言えるからな!』
『ふーん。でもそしたらあんたは運動部じゃなくて演劇部の顧問にさせられるだろうね。泉美から』
『私もそう思う。ちょうど来年で、演劇部の顧問の先生還暦だから』
『…そうなんだよな~。…千曳先生さえ生きていれば…』
『それにしてもやっぱり意外だよな。杉浦』
『なにがよ?』
『いや、見崎とサカキ、泉美と俺が付き合ってるのは分かるけどさ…』
『なに言ってんのよ。あんたと泉美が一番意外よ』
『なにをっ!?見てるだろ!?泉美と俺の仲の良さ!』
『だから意外なの。まさか泉美があんたとね…あいつと私に感謝しなさいよ?』
『まぁ…ある意味お前らのおかげだもんな』
『…で、なんなの勅使河原君?』
『…そうそう。だからさ、まさか杉浦と…――
~~
『…写真、ですか…』
『はい。非常識なのはわかってますが、僕達が一番近くで見ていてほしいのはこの二人なんです』
『…奥さんもですか?』
『もちろんです。私達二人で話し合って決めました』
『そうですか…。分かりました。あなた達を幸せにすることが私の仕事です。やりましょう』
『…ありがとうございます』
~~
『…綺麗ね』
『あぁ…泉美と俺の時を思い出すな。まぁお前の方が綺麗だけどな!』
『ちょっと!//』
『見崎さん、榊原君君は?』
『遅れて来るって。…まったく、こんな大事な日に仕事が入ってるんだもん。仕方ないけど』
『そっか。残念だったね。この結婚式を見せて榊原君をその気にさせるつもりだったんでしょ?』
『ちょっと望月君…//』
『……僕もだよ』
『望月君なにか言った?』
『…ううん』
『あーあ。私達はいつになったら相手が見つかるんだろうね、彩?』
『…さぁ、どうだろうね』
『……今どこ見てたの?』
『う、ううん別になんもないよ由美!』
『ふーん…』
『ごめん鳴遅れて!まだそんなに進んでないよね?』
『もう…今始まったばっかだから大丈夫』
『おっ、意外と早かったなサカキ!』
『話が予想より早くすんだんだよ。…あれ?あの写真…』
『やっぱサカキもびっくりか?まぁ相談されて前から知ってた俺達すらやっぱびっくりしたしなぁ…なぁ?』
『そうよね…。まぁ二人とも頑固だし、らしいといえばらしいけど…』
『そっか…。……結婚式の雰囲気っていいね、鳴…』
『…うん』
『……小椋さん』
『なに、望月?』
『……綾野さん呼んでもらっていい?』
『?…いいけど。彩、望月が呼んでる』
『え?……なにかな?もっちー…』
『……後で話したい事があるけど……いいかな?』
『……うん。そんな気がした…』
『……え…彩…望月……マジ?』
~~
『お邪魔します』
『お、久しぶりだな風見!』
『二週間前会ったばっかだろ?』
『まぁまぁ。…おい!髪は決めてるのになんでこの前一緒に買った服じゃないんだよ!?』
『…あの時は舞い上がってたけど、あれは良く考えたら若すぎだよ…』
『そうか~?』
<あ~かざみおじさんきた―!
『ふふっ、お邪魔します』
<びぇ~ん!
『あ、また泣いてる…。男なのに泣き虫なんだよなぁ~』
『いや、まだ赤ちゃんなんだから…』
<わたしがいく!おねえちゃんだから!
『おう!頼もしいぞお姉ちゃん!』
<うん!
『……子ども欲しかったなぁ』
『…お前が悪いわけじゃないんだ。気に病むなよ』
『…ありがとう。でも、この前から養子をもらおうか話し合ってるんだ。僕の体のせいで子どもが出来ないけど、そのせいで悲しい思いをさせたくないから…』
『そっか。いいもんだぞ、子ども…。…つってもちゃん~とやることはやってんだろ!?』
『なっ…お前変な事いう『お邪魔しま~す。あ、やっぱり風見君が一番だね』
『おぉ望月来たか!』
<あ、もっちーにいちゃん!
『こんにち…って引っ張らないで~!』
<はやくはやく!
『……僕はおじさんなのに望月はにいちゃん、か…』
『…気にすんな。望月がおかしいだけだ』
『…最近体がついて行かなくてさ…』
『…俺も、パパくさい、って言われた時は生活週間見直したさ…』
『…ところで榊原君はまた遅れるの?』
『連絡ないけどだろうな…』
『相変わらずだね…って、こんな話してたらちょうど電話かかって来たよ。…もしもし…え?』
『ん、どうした風見?』
『勅使河原、榊原君のメール見た?』
『え?あ、ホントだ。来てる』
『まったく…。うん、今勅使河原が君のメール見たよ。うん、じゃあね』
『……また張り切ったの作ったなぁ』
『どんなの?画像見せて……うわぁ…確かにこれは榊原君一人じゃ運べないね』
『まったく…なにも集まるたびに作らなくてもなぁ…』
『いいじゃないか。今や有名な榊原君の作品がもらえるんだから』
『そうだけどさ…。よし、いったんサカキんちにこれ取りにいくか。望月ー!留守番頼むぞー!』
<えぇ!?僕なの!?
『力仕事なんだからお前が行っても意味ないだろー!』
<そんなぁ~…
『よし、行くか風見』
『うん』
~~
『彩、由美、遅い!』
『だって彩が望月といつまでも…』
『あははっ、ごめんちゃい♪』
『もう…泉美が何杯ハワイなんとかを飲んだと思ってんの?…ところで彩、望月とどこまで進んだの?』
『えぇ!?いきなりは…後で言うから』
『ちゃんと教えなさいよ?私はみんなよりも早く望月の気持ちを知ってたんだから気になるの』
『…なによみんな浮かれちゃって』
『どうしたの由美?』
『鳴には分かんないわよ!…貧乳仲間だったくせに一人だけ幸せになって…』
『由美大学ではもててたって聞いたけど…』
『泉美…その話はやめてあげて』
『…彩?なんで?』
『…変なやつにつきまとわれるし、お兄ちゃんって呼んでってしつこいし…なんなのよ私の青春っ…』
『…なるほど』
『…なによ泉美その余裕!さすがラブラブな人は違いますねっ!』
『別にラブラブって訳じゃ…』
『ふーん。勅使河原が女子生徒に人気なの知って嫉妬してたくせに』
『多佳子っ!//』
『あと、下の子のマリッジブルーの時勅使河原とケンカして、私達に『直哉に酷い事言ったから私捨てられるかも~!』って泣きついて来たよね?』
『分かったから多佳子止めて!//…ならこっちだって…!』
『なによ?』
『…多佳子、あんた先月で4回目だって?生徒に告白されたの』
『どうしてそれを!?……め~い~?』
『ごめん…言っちゃった』
『多佳子それほんとなの!?ていうかそれちゃんと言ったの!?』
『あいつに?言える訳ないでしょ…』
『なにがあいつよ…。どうせ二人きりの時はラブラブで名前で呼んでんでしょうがっ…』
『あはは…。由美、荒ぶってるね~』
『ちくしょーー!男ー!』
~~
『はい、林檎』
『ありがとう。…もう僕達以外には見崎さんだけだね』
『そうね…。でもほかの人も長生きしたし、災厄を乗りきったらその分長生きになるのかしら?…泉美達は例外だけど』
『まったくだよ…。まさか榊原君の作品を狙われて強盗に会うなんて。ああいうのはお金にはならないのに…。榊原君が自分を責めてて大変だったなぁ…』
『…まぁらしい逝き方ね』
『うん…。『金はいくらでもやるけど泉美とサカキの作品にだけは手を出すな!』って…。榊原君の作品を守れても死んだら意味ないのに…』
『…泉美もせっかく勅使河原が守ってくれたのに、刺された勅使河原の仇を取ろうとして立ち向かって…』
『…結局勅使河原は病院に運ばれたけど即死。赤沢さんも…』
『うん。…次の日駆けつけた私達と子供達にこの話をして、『直哉のとこに行ってくるね』って眠るように…』
『ふふっ。なんだかんだ言って仲が良いからね二人は…』
『まったくね……。ねぇ』
『なに?』
『あんたが先に逝くだろうから言っとくけどさ…』
『いきなりだね。…なに?』
『私の事なんかいいから…先に会いに行っていいからね?』
『…どうだろうね』
『なによそれ…』
『ふふっ。…見崎さんと仲良くするんだよ?』
『なにを今更。鳴と私仲良しよ?』
『そうだったね。…なんだか眠くなってきたかな…』
『…おやすみ』
『…うん。おやすみ…』
~~
『……長かったなぁ』
『…ちゃんとゆっくり来てくれましたね。ありがとう』
『…久しぶりだね。ずいぶん待たせてごめん』
『いえいえ。…どうします?もうみんなの所へ行きますか?』
『…悪いけど、待っていてもいいかな?』
『ふふっ。やっぱり』
『ごめん。…また少しだけ待たせる事になるね』
『いいんです。そんなところが…私は好きだから…』
~~
『…来ちゃったか』
『やぁ』
『あんた…待たずに会いに行っていいって言ったのに…』
『うん。だから一回会ってここで待ってたんだ』
『もう…。屁理屈ね』
『ふふっ』
『久しぶり。多佳子』
『ありがとう。智彦』
風見『…気を使わなくていいよ?中尾君、こっちに来て』
中尾『…おう。よしっ!桜木も行くぞ!』
桜木『はい!』
杉浦『…順太君』
中尾『ちゃんとゆっくり来てくれたな…嬉しいよ。…この前も言ったけどありがとうな風見。多佳子と一緒に歩いてくれて』
風見『ううん。僕の方が一緒にいて救われたから…』
桜木『杉浦さん、ありがとうございます。智彦君の事…』
杉浦『なに言ってんの。礼を言われるような事してないよ?』
桜木『ふふっ…』
杉浦『…じゃあ智彦。…いったんお別れね』
風見『うん…そうだね』
中尾『え?お前らもういいのか?』
杉浦『まぁ…言い方は悪いけどそういう話だったしね』
風見『それにこの世界は、会おうと思えばいつでも会えるから…』
杉浦『そういう事』
中尾『…お前らにしか通じないなにかがあるんだな。分かったよ』
風見『じゃあ行こうかゆかり』
桜木『…はい』
風見『…今までありがとう』
杉浦『…こちらこそ、ありがとう』
風見『…バイバイ』
杉浦『こら。バイバイって、もう私に会ってくれないの?』
風見『あ…そっか。ふふっ。じゃあ…』
風見杉浦『またね』
~~
風見『…これからはやっと一緒にいれるね、ゆかり』
桜木『はい♪…でも、ちょっと嫉妬したゃったなぁ~…』
風見『ごめんごめん。…じゃあ行こうか』
桜木『うん!智彦君♪』
~~
杉浦『…順太君。私まだここの仕組みがちゃんと分かってないから教えてよ?ベテランなんだし』
中尾『ベテランって言われるとなんかなぁ…』
杉浦『ふふっ。…これからもよろしくね…順太君』
中尾『…おう、多佳子』
中尾『任せろ!』
~fin~
221 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/01 01:30:56.15 VInHKcxAO 212/247長くなりましたが、読んでくれたみなさんありがとうございます。
読み返したら誤字の多いこと…つじつまが合わないようなのは無さそうでしたが…。
…それで終わりと書いたんですが、明日他の人を中心とした話を少しだけ書こうと思います。
もう少しだけ付き合ってくれたら幸いです。
~epilog 1~
―ハネウマライダー―
三神『久保寺先生…元気出して下さい』
久保寺『……三神先生と比べて、私はなんと恥ずかしい姿を生徒に…』
三神『大丈夫ですって。みんないい子だから分かってくれますよ』
水野『そうですよ…。私だって看護するの大変なんだから、先生をしながらなんて疲れて当たり前ですよ』
久保寺『…しかし…』
千曳『…………やぁ』
三神『千曳先生!?なんで!?』
水野『え?先生?』
三神『あ、千曳先生は学校の…図書室の先生なんです』
水野『あ、じゃあ私が知らなくて当然か…。猛が図書室行くわけないし』
三神『…で、どうしてこんなに早く?先生は災厄の対象外だし、そもそも災厄は…』
千曳『…………いや、それが…非常に尋常ではない事をしてしまって…』
三神『…話してくれますか?』
千曳『今あっちは、知ってるかもしれないが夏休みでね…。みんな災厄から逃れられた事で夏休みを大いに楽しんでるところなんだ…』
三神『…それで?』
千曳『私も羽を伸ばそうと思って、倉庫に眠っていたバイクで久しぶりに峠を攻めていたんだ…』
水野『…まさか』
千曳『…ブレーキが効かなくなったから倉庫に入れていたのを忘れていてね…。……そのまま…まっ逆さまさ』
三神『…なにやってんですか』
千曳『みんなの夏休みに嫌な思い出を作ってしまって…悪い事をした…』
三神『…少しは年を考えて下さい』
千曳『もう少しで…新しい世界の扉が見えたんだ…』
水野『ある意味当たってますけどね』
久保寺『……はは…なんででしょうか?千曳先生の話を聞いたら少し元気が出てきましたよ…』
三神『……良かったですね』
~epilog 2~
―愛が呼ぶほうへ―
勅使河原『まさか俺が一番乗りになるとはな~…』
藤岡『ここに来たって事は、鳴のクラスメイトだよね?』
勅使河原『うわっ、見崎!?…な訳ないよな…。君が双子の藤岡さん?見崎から聞いてるぜ』
藤岡『その様子じゃ鳴とは仲良かったみたいだね…。良かった♪』
勅使河原『おぉ!当たり前だ!』
<直哉~!どこなの ー!?バタンバタン
勅使河原『えぇ!?泉美!?…なにこんなに早く来てんだよ…』
藤岡『おぉ~。愛だね~』
勅使河原『…だと嬉しいな。…あ、ちょっと一緒にイタズラしないか?あいつ見崎とちょっといろいろあったから…』
藤岡『…なんだか楽しそうな感じだね~?もちろんやるよ!』
勅使河原『よし!いいか…――』
<なんなのよも~!直哉ーっ!ドタンドタン
赤沢『……やっと着いた。道が分かりにくいのよまったく…』
勅使河原『よぉ泉美』
赤沢『直哉っ!…会いたかった…』
勅使河原『俺もだよ。…ところでさ』
赤沢『なに?』
勅使河原『…この子誰だか…分かるよな』
藤岡『……どうも』
赤沢『鳴!?…いや、違う。あなたが藤岡未咲さん…?』
勅使河原『あぁ。…なにかこの子に言うこと、あるだろ?』
赤沢『…うん。ごめんね…知らなかったとはいえ鳴をいないものにしたり酷い事言ったり藤岡『許さない』
赤沢『……そうよね。でも私にはあやま藤岡『許さない』
赤沢『……うん…』
藤岡『鳴は悪くないのにあんな事っ…あんな……っふ、ふふっ、…あっはっは~っ!』
赤沢『……え?』
勅使河原『ひっ…引っかかっ!…引っかかってやーんのっ!…あははっ!』
赤沢『……は?』
藤岡『も~、怒ってないよ~!勅使河原君からちゃんと聞いたから!あははっ!』
勅使河原『ぜーんぶ俺の仕掛けたドッキうわ!?なに投げてんだよ!?ていうかどこからあんなの出した!?』
赤沢『知らない!投げられそうなの想像したら出てきた!…あんたたち~っ…!』
勅使河原『やべぇキレた!逃げるぞ!』
藤岡『了解っ!』
赤沢『逃がすかっ!待てー!!』
勅使河原『ごめんってー!』
赤沢『こらーーっ!……ふふっ♪』
~epilog 3~
―ワンモアタイム―
綾野『まだかなまだかな~?』
小椋『落ち着きなさいよ…』
綾野『だってさ~もうすぐな気がするんだよね~♪…あ、来た!』
望月『会いたかったよ彩ちゃん!』
綾野『私もだよ優矢君!えへへ~♪』
小椋『…あー暑苦しい』
綾野『じゃあ由美も旦那さん連れてくれば?結婚出来たんだし』
小椋『ここは三年三組の世界だからあの人は来たがらないの!知ってんでしょ!』
綾野『あ、そうか。…ねぇ優矢君?』
望月『なに彩ちゃん?』
綾野『…三神先生に会いに行っていいんだよ?』
望月『え……いいの?』
綾野『うん♪やっぱり気になるでしょ?…でも浮気はダメだよ?』
望月『そんなのしないよ!彩ちゃん一筋だよ!』
小椋『…あーうっざ』
綾野『せっかくだから先生と同じくらいの年の姿で行こうよ!この世界は思えばなんでも出来るんだからさ!』
望月『そうだね。…………どう?』
綾野『……うんばっちり!先に行っていいよ?すぐ追い付くから』
望月『うん!』
小椋『……行っちゃった』
綾野『うん』
小椋『……先生と同じくらいの年であの若さかぁ…』
綾野『いつまでも若いとこが好きなの♪』
小椋『……あの姿で行っても大丈夫かなぁ…』
綾野『純粋で真っ直ぐなとこが好きなの♪』
小椋『まぁいいけど…』
望月『先生!』
三神『望月君…。おっきくなったんだね…』
望月『はい。…今の姿は先生と同じ三神『でもなんで高校生の頃の姿で会いに来てくれたの?』
望月『……え?』
三神『あ、もしかして『僕と同じで先生はいつまでも高校生でいけます』的な意味?も~♪嬉しい事してくれるじゃん♪』
望月『』
小椋『……やっぱり』
綾野『あははっ♪また会えて良かったね優矢君♪』
~epilog 4~
―素晴らしき人生かな?―
榊原『まさか鳴より僕が先になんてね…。大丈夫かな鳴?』
三神『恒一君』
陽介『おぉ~恒一!ここは快適だなぁ!』
榊原『怜子さん!父さん!』
理津子『…恒一』
榊原『……母さん。……ずっと会いたかった…』
理津子『…やっと会えたね』
榊原『うん…。…怜子さんも…』
三神『ふふっ。ちゃんと夢を叶えたんだって?おめでとう』
榊原『うん…。……父さん』
陽介『おぉ。父の胸に飛び込んで…――
―ボカッ―
陽介『痛!?…みはこの世界じゃ感じないけど、なにするんだ恒一!?』
榊原『なにするんだ!?じゃないよ!!心配かけさせるなよ!!』
陽介『なにが!?』
榊原『分かるだろ!?なに還暦祝いにエベレスト登って遭難してるんだよ!?大変だったんだよ!?』
陽介『落ち着け!…男にはな、無理だと分かっていてもやらないと…――
―バキッ―
榊原『知らないよ!!…せっかくの機会だから、父さんのせいで今までどれだけ苦労したか教えてやるっ!!』
陽介『やめろーっ!』
三神『…家族っていいね、姉さん』
理津子『あら?あなただって…子供は無理だけど、ほら』
三神『え?……あ』
松永『よぉ怜子!』
三神『マツ、あんたなんで!?』
松永『なに言ってんだ。寂しがってたじゃねぇか?』
三神『…あんたね!タイミング考えなさいよ!』
松永『まぁまぁ。あ、御姉さん久しぶりです!』
理津子『うん久しぶり♪良かったね怜子♪』
三神『御姉さんって言うな!…あんた、恥かかせてっ…!』
松永『…?』
―バシンッ―
松永『痛!?…くはないけどなんだよ!?』
三神『シメてやる!!』
松永『まて!!よく分からないけど悪かった!!だから…』
三神『問答無用!!』
理津子『もう…ふふふ』
霧果『…隣いいですか?』
理津子『あなたは…鳴ちゃんの…?』
霧果『…はい』
理津子『やっぱり。うちの息子がお世話になって…ありがとうございます』
霧果『いえいえ…むしろ鳴の方が恒一君にお世話になって。あの子難儀な性格だから…』
理津子『ふふっ』
理津子霧果『……』
<分かった!これは父を越えようとする息子からの挑戦だな!?来い!受けて立つ!!
<あぁやってやるさ!ここじゃ肺の事気にしないでいいから思いっきりやれるよ !!
―バタンバタン!―
理津子霧果『……』
もう止めろ!!分かったから!な!?大人になったのは胸だけか!?>
またそうやってバカにしてっ…!あんたは昔からそうなのよ!!性根直してやるっ!!>
―ドタンドタン!―
理津子霧果『……』
理津子『…平和ね』
霧果『…そうね』
~last epilog~
―search the best way―
見崎『私が最後…。自分でもびっくり』
榊原『鳴…お疲れさま』
見崎『恒一君…』
榊原『頑張ったね…』
見崎『ありがとう。長生きしたから良いこともたくさんあったけど……嫌なこともあったよ?』
榊原『うん…。あの子には会った?』
見崎『会ったよ…。親より先に逝くなんて。…でも、私と会って笑ってた』
榊原『…今度は二人で会いに行こうか』
見崎『そうだね…』
藤岡『鳴』
見崎『…未咲』
藤岡『お疲れさま。ずっと会いたかったよ?』
見崎『…私も』
藤岡『おいで?……よしよし♪』
見崎『……変だよ。泣きたいくらい嬉しいのに、涙は出ない。未咲に触れられてるのに、ぬくもりは感じない……』
藤岡『…この世界の事、ゆっくり覚えていこうね』
見崎『…うん』
榊原『…みんな、もういいよ』
『……』
見崎『みんな…』
赤沢『未咲と会えて良かったね、鳴』
杉浦『あーあ、鳴には負けちゃった』
勅使河原『まさか見崎が一番なんてな!頑張ったなっ!』
三神『見崎さん。…あれからいい思い出は出来た?』
見崎『……みんな…ありがとう』
赤沢『さてと…あのね、鳴?』
勅使河原『もうその話すんのかよ…。もうちょっと感動をさ…』
赤沢『あ、…ごめん』
見崎『ふふっ、いいよ。……また始まったかもしれないんだよね、現象。知ってるよ』
赤沢『私もこっちで噂で聞いたくらいだから保証はないけど…どうやらあの学校の三組の子が今年…ね』
見崎『今から現象の正体を探しに行くんでしょ?また私達みたいな子を作らないために…』
赤沢『ええ。…ただ、どうやって探せばいいか分からないし、姿形すら分からないから近くにいたとしてもすれ違うかもしれない…』
見崎『でも私の目があればもしかしたら…ふふっ』
赤沢『そういう事。…ふふっ』
三神『やっぱりあの時とっちめておけばよかったわね…』
望月『先生会ったんですか?』
三神『…正確には、声を聞いたって感じよ。近くをちゃんと探せば見つけれたのかなぁ~。…今度は逃がさないから』
綾野『あはは…』
小椋『先生やる気だ…』
三神『…その時に聞いたけど、次は綾野さん一家と小椋さんのお兄さんがね…。危なかったね』
小椋『…ブッ殺す!』
望月『彩ちゃん!僕頑張る!』
綾野『ありがとう優矢君!』
杉浦『順太君。私現象にも優しくしないと駄目?』
中尾『俺が許す!行け多佳子!』
杉浦『オッケー…』
風見『…ゆかりは駄目だよ?』
桜木『分かってますよ智彦君…。言われなくても出来ないかなぁ…』
風見『…うん』
赤沢『よーし!じゃあ三年三組、出発!!』
勅使河原『行くぞーー!!』
榊原『…行こうか鳴』
見崎『うん』
藤岡『鳴の辛かった分、ちゃーんと教えてやるからね!ふっふっふっ~…』
見崎『もう、未咲…』
杉浦『よーし。やってやろうかし、うわっ!』
赤沢『ちょっと多佳子…なんでここでこけるのよ』
杉浦『あはは…空回りね』
赤沢『ふふっ。はい、手』
赤沢『多佳子……大丈夫?』
杉浦『…うん!』
~epilog fin~
256 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/01 17:14:34.09 VInHKcxAO 247/247長くなりましたが、これで本当に終わりです。
みなさんありがとうございました。



感動した。