~古典部部室
里志(部室に来た誰かを驚かそうと棚の後ろに隠れたはいいけれど……)
える「伊原、さぁん……」ハァハァ
里志(どうしてこうなった!)
里志(千反田さんを驚かせるのは申し訳ないとか、そんなこと思わなければ良かったんだ……)
える「はぁ……んっ」
里志(これじゃあ出るに出られないよ!)
元スレ
える「はぁ、はぁ……伊原さん……んっ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1346599578/
里志(うう……どうしよう……)
える「んんっ……うくっ……伊原、さ……んっ」
里志(しかもホータローじゃないんだね! あの二人、割と良い感じだと思ったんだけどなぁ!)
里志(って、それは問題じゃない!)
里志(なんで摩耶花なんだ! 確かに摩耶花の笑顔はとても魅力的だが、千反田さん、あなたは女の子だろう!)
里志(って、それも問題じゃないか)
里志(千反田さん、神聖な部室でなんて破廉恥なことを! 僕はあなたを見損なった!)
える「ううっ……ゆびぃ……」
里志(な、なんかだんだんと、声が色っぽさを帯びてきたぞ……)
里志(くっ……どうやってここから抜け出そうか)
里志(いやまて、こういうのはどうだろう)
~~~~
里志『はぁぁぁぁぁ、よく寝たー』
える『……え、福部さん!? い、いいいいいいつからいたんですか? わわわわわたし気になります!』
里志『あ、千反田さんいたんだ! ごめんごめん、ケータイで音楽聞いて寝てたから気付かなかったよ!』
える『そうなんですか! わたし気になりません!』
~~~~
里志(……って、ケータイ机の上に置きっぱなしだー!)
里志(くっ、この案は却下か……あの勘のいい千反田さんが、こんな雑なウソに騙されるはずがない)
える「ん……んんっ……!」
里志「!?」ギクッ
える「あぁ……はぁ、ん……くぅ……」ガタガタ
里志(な、何の音!?)
える「あぁ……あああ……っ!」ガタガタ
里志(あ、椅子か……そう言えば、部室に一つぐらつく椅子があったな……)
里志(ん、待てよ……)
里志(部室の椅子の配置は、
窓窓
僕
棚 ○机机○ 本
棚 ○机机○ 棚
扉扉
ってかんじで、件の椅子は、その左下……)
里志(ここから扉までの経路は、彼女の位置からなら完全に死角!)
里志(千反田さんが果てた瞬間を狙えば、無事に脱出できるかもしれない……!)
える「んっ……くぅっ……!」ガタガタ
里志(誰も傷つくことなく、全てを終わらせられる……!)
える「あ……んっ……い、ひゃっ、ぁあ!」ガクン
える「はぁ……はぁ……」
里志( い ま だ ! )
扉『ガラッ』
奉太郎「なんだ、千反田だけか」
える「お、おれきひゃん! い、いらっしゃい!」
里志(ホータローファァック!!)
里志(そして千反田さん、よくバレなかったな! 人間の警戒心が一番薄くなる瞬間だってのに!)
里志(……)
里志(感心している場合じゃないぞ……)
里志(これでますます、出て行きづらくなった)
える「お、折木さん、お茶、淹れます!」
奉太郎「へえ……今日は紅茶か」
える「は、はい。部室に置きっぱなしになっていたので……」
里志(香りの強い紅茶で、匂いを誤魔化すつもりだな……)
里志(なるほど。今まで不定期に紅茶が出てきたけど、その理由が今分かった)
里志(データベースは結論を出せないけれど……今回は特例だ)
里志(くっ……千反田さんのイメージが、音を立てて崩れていくよ……!)
奉太郎「そう言えば、里志と伊原はまだなんだな」
える「はい。漫研は文化祭の片付けがあるみたいで……」
奉太郎「里志の文芸部は? それと生徒会か」
える「えっと、福部さんからはなにも聞いていませんね」
奉太郎「ほぉ、そうか……」
里志(おいホータロー、なぜこういう時だけ自主的に考える)
える「ふふっ、折木さんが自主的に考えるなんて、珍しいこともあるんですね」
奉太郎「お前は俺をなんだと思ってる。俺だって考えるときは考えるさ」
里志(ホータロー、君が物事を真面目に考えるのは、試験中か千反田さんに詰め寄られたときだけだよ。千反田さんの認識はそう間違っていない)
奉太郎「……」ペラ
える「……」ペラ
里志(二人とも本を読み始めたらしい。ここからは何も見えないけれど、黙っているってことはそういうことなんだろう)
奉太郎「……」ペラ
奉太郎「ときに千反田」
える「はい?」パタン
奉太郎「本を閉じなくてもいいんだが」
える「は、はいっ! 少し動揺してしまって!」
里志(わざわざそのことを口に出すってことは、少しどころじゃなく動揺しているね、千反田さん!)
奉太郎「お前は携帯電話を買ったのか?」
える「か、買っていませんけど……どうしてですか?」
奉太郎「いや、それ」
える「まあ」
里志(ああああああ忘れてたあああああああああああ!)
里志(頼む、二人とも……! 僕のだってことに気付かないでくれ!)
える「こ、こここここれは、福部さんのですね」
奉太郎「だろうな。俺もそう思った」
里志(あ)
里志(なんかもう、終わったな)
里志(もちろん僕は、千反田さんの評価が落ちるような行動はしないさ。だから、さっきのことは知らない振りを貫き通そう)
里志(でも……千反田さんは、そうも行かないだろうなぁ……)
~~~~
里志『僕は何も見てないし聞いていないよ』
える『あんなに声を出していたんだから、聞こえていないはずありませんよ……』
里志『いや、だからなにも聞いてな』
える『そうです、わたしは変態さんなんです。伊原さんを想像していけないことをしてしまうような、とんでもない変態さんなんです』
里志『いや、だか』
える『友達で、こういうことするのって、最低ですよね……分かってます、そんなことわたしにも、分かってたんです……でも、止められなかったんです……』
里志『い』
える『福部さんは優しいですね……こんな淫乱メス豚を慰めてくれるだなんて。でも、もういいです。わたし、古典部を辞めますから。伊原さんだってきっと、こんな変態さんとは一緒にいたくないでしょうし』
里s
える『あははは……もう、千反田えろに改名しちゃいましょうかね。あはははははははは……』
~~~~
里志(こうなるに決まっている!)
奉太郎「ふうん……里志のやつ、間抜けだな」
里志(えっ)
奉太郎「携帯電話を部室に忘れて行くだなんて、間抜けとしか思えない」
える「えっ」
里志(ホータローのやつ……)
奉太郎「あー、千反田。その携帯は、明日にでも俺から里志に返しておくから、気にしなくていいぞ」
える「は、はい」
里志(間抜けだな!)
一時間後
奉太郎「結局だれも来なかったし、もう今日は帰ろうか」
える「はい、そうですね」
里志(はあ、やっとか……)ホッ
里志(いい加減立ちっぱなしも疲れていたんだよな……)
奉太郎「じゃあ、鍵しめるぞ」
える「はい」
扉『ガチャッ』
里志「ほっ、やっと解放された。さあて帰るか」
扉『ガチャガチャ』
里志「……」
里志(そう言えばここ、内側からは開けられないんだったっけ……)ダラダラ
里志(こ、このままじゃ、明日になるまでここから出られない!)
里志(大声で叫んで助けを呼ぶか……? でもそれだと、ホータローや千反田さんに隠れていたことがばれてしまう!)
里志(だったら二人が去るのを待つか……? いやダメだ。放課後に地学準備室に来るのなんて、古典部部員くらいのものなんだから!)
里志(ホータローが僕のケータイをおいていってくれてたら話は別だったんだけど……)
里志(しかたない。叫ぼう)
里志「スウッ」
扉『ガチャ ガラララ』
里志「うぇっ……げほっげほっ!」
奉太郎「里志、なにしてたんだお前」
える「福部さん……」
里志「あ、あははっ。ごめんごめん、ホータローたちを驚かせようと、棚の影に隠れていたんだけど……寝ちゃって」
奉太郎「まったく、お前らしからぬまぬけさだな」
里志「あ、あはは」
里志(ってことはさっきのは演技!? ホータロー、僕に意地悪するために、わざわざ省エネ主義をねじまげたんだね……)
奉太郎「ほら、お前の携帯」
里志「あ、ありがとう、ホータロー」
奉太郎「さて、じゃあ帰るぞ」
える「折木さんは!」
奉太郎「なんだ千反田?」
える「折木さんは、先に帰っていて下さい。わたしは福部さんに、話がありますので……」
奉太郎「? そうか、なら遠慮無く帰らせてもらう。じゃあな、里志、千反田」
里志「う、うん。じゃあね、ホータロー」
える「……」
~屋上
里志「で、話ってなんだい、千反田さん?」
える「分かってて、聞いているんですよね?」
里志「さあ。さっぱりだね」
える「……」
える「部室で、わたしがその……を、していたことでなんです、けど……」カァッ
里志(口に出そうとしただけで真っ赤になるくらい恥ずかしいなら、あんな場所でやらなければいいのに)
里志「さあ、何の事だろう?」
える「だ、だから、あの、その!」
里志「ううん、分からないなあ。ところで千反田さん、僕は明日までの宿題があるから、もう帰ってもいいかい?」
える「ううっ……」
里志(返答がない)
里志「少しでも時間が惜しいからね、もう帰らせてもらうよ」
える「待って下さい!」
里志「なんだい千反田さん。まだ何かあるのかい?」
える「わたしがちゃんと言わなくちゃ、福部さんは相談に乗ってくれないんですね? なら分かりました、言いましょう!」
える「わたしが部室で、伊原さんを想像しながらお」
里志「ストォップ!」
える「! で、でも」
里志「いいんだ。言いたいことは分かったから」
里志(言わせてしまったら最後、僕が千反田さんの行為を知ったという事実は確固とした真実となってしまう)
里志(そうなる前に、なんとか話を終わらせてしまおう)
里志「で、相談ってなんだい?」
える「はい……伊原さんのことなんですけど」
里志(ほっ、やっと話が行為からそれた)
える「伊原さんて、とてもかわいらしい方ですよね」
里志「まあね。とても高校生とは思えないほど幼い外見をしているし、かわいらしいという表現は適切なものだろう」
える「はい。それと、外見だけじゃないんです。なんにでも一生懸命なところとか、折木さん相手だと素直になれないところとか、福部さんに一途なところとか……とにかく全てが可愛らしくていとおしいんです」
える「あとは、たまに見せるあの太陽のような笑顔も魅力的ですね。見ただけできゅんきゅんしちゃいます!」
里志(……千反田さん、本物だ……!)
える「福部さん? 聞いてますか?」
里志「ああ、ごめん。なんだっけ?」
える「伊原さんがいかに魅力的かという話です」
里志「違った気がする」
える「あ、そうでした! 伊原さんに対する、わたしの想いでしたっけ」
里志(色々すっ飛ばしていそうだけれど、面倒だしまあいっか)
里志「そうだったね」
える「はい。えっと、そのぉ……」
える「率直に言って、わたしは伊原さんのことが大好きです。愛していると言ってもいいくらいに。そう、これは恋愛感情なんです!」
里志「……てっきり、千反田さんはホータローのことが好きなんだと思っていたよ」
える「あ、それは……」カァッ
里志(なぜ! 赤くなった!)
える「そ、そのお話は、今はなしで……」
里志「わ、分かったよ、千反田さん」
里志「で、どうして僕に相談を?」
える「それは、だって……聞かれちゃいましたし……」
里志(まずい! 今のは地雷だったか……)
里志「り、理由はとりあえず保留として、僕にどうしてほしいんだい?」
える「もちろん、恋のキューピッド役を」
里志「えっ」
える「えっ」
里志「ところで、僕にどうしてほしいんだい?」
える「だから、恋のキューピッド役を」
里志「ところで、僕に」
える「目の前の現実から目をそらさないで下さい」
える「もちろん、伊原さんをあなたから奪うようなことはしません。告白の仲介のような役割をしてもらうだけです。そして、ちゃんと気持ちを伝えた上で、伊原さんに選んでもらいます」
里志「いやでも、恋愛とかには無縁な僕にそんなことができるかどうか……」
える「いえいえ、大丈夫です。一部の人達の間では、福部さんはそこらの女性キャラよりもよっぽど可愛いと評判ですから。立派な天使になれますよ」
里志「いや、全然大丈夫じゃないんだけど。むしろその一部の人達に恐怖を感じるんだけど」
える「それに、伊原さんへの仲介なんて頼める人なんて、かなり限られていますし」
里志「いやでもね、データベースは結論を出せないんだよ」
える「決め台詞の乱用は、作品のバランスを大きく揺るがしますので危険です」
里志「あ、ごめん」
里志(千反田さんは今なんの話をしていたのだろう)
える「というわけで今から、商店街の喫茶店に伊原さんを呼んできて下さい」
里志「えっえっ」
える「急いで! この気持ちが覚めてしまう前に!」
里志(告白する前から恋の炎が風前のともし火ってどういうことだよ!)
~喫茶店
摩耶花「で、なんなのよふくちゃん。いきなり呼び出して」
里志「いやあ、ごめんごめん。ちょっと千反田さんが用事があるとかで、僕に連絡を頼まれたんだ」
摩耶花「ああ、そういえばちーちゃん、ケータイ持ってなかったもんね」
里志「そういうわけだから入って入って」
ドア『チャリンチャリーン♪』
える「い、いいいいいらっしゃいませっ!」
摩耶花「ちーちゃん落ち着いて」
える「す、すひませんっ!」
里志(動揺しすぎだよ……)
摩耶花「で、用事ってなに? わたし、漫研抜けてきてるんだけど」
える「話でしたら、福部さんが」
里志「え、僕から言うの?」コソコソ
える「キューピッドですから」コソコソ
摩耶花「わたしの目の前で内緒話とか、やめてよ……」
里志「ご、ごめん」
える「ほら、福部さん」コソコソ
里志「わ、分かったよ……」コソコソ
里志「摩耶花、千反田さんから、君に告白したいことがあるんだそうだよ」
摩耶花「えっ……」
摩耶花「ま、まさか……」
里志(もしかして、勘付いていたのか……?)
摩耶花「転校、しちゃうとか?」
里志・える「?」
摩耶花「い、いやだよ、ちーちゃん……ちーちゃんと離れるなんて、いやだよ……」ウルウル
える「!」ガタッ
ササッ
里志「?」
える「伊原さん。いいえ、摩耶花さん」ギュッ
摩耶花「!」
摩耶花「ちーちゃん……?」
える「わたしは、どこにも行ったりしません」
摩耶花「え、じゃあ、転校ってわたしの早とちり……?」
える「そんなことするわけ、ないじゃないですか……摩耶花さんをおいて、そんなこと」
摩耶花「ちーちゃん……」
える「摩耶花さん、好きです。愛してます」
える「摩耶花さんの全てが、わたし、気になります」
里志(決め台詞の乱用は、作品のバランスを大きく揺るがすから危険だよ、千反田さん)
摩耶花「……わたしも、好き」ギュッ
える「摩耶花、さん?」
摩耶花「わたしも、ちーちゃんのことが、大好き」
える「でも、福部さんのことは?」
摩耶花「福部さんのことは、忘れましょう」
里志「え、ちょっと僕ここにいるんだけ」
摩耶花「ちーちゃん、好き、好き、大好き」
える「わたしもです。摩耶花さん、好き、好き、大好き」
摩耶花「好き、好き、大好き」
える「好き、好き、大好き」
摩耶花「好き、好き、大好き」
える「好き、好き、大好き」
……好き、好き、大好き……
…………好き、好き、大好き…………
………………好き、好き、大好き………………
……………………好き、好き、大好き……………………
…………………………好き、好き、大好き…………………………
「好き、好き、大好き……んっ」
里志「はっ!」ガバッ
里志(今のは……夢?)
里志(なんだか、恐ろしい終わり方だったな……)
里志(まあ実際のところ、千反田さんが変態で百合な女の子のはずないんだし)
里志(そう考えると、リアリティのない夢だったことになるのか)
里志(それにしても、立ったままよく寝たな……)
里志(どうやら、部員のみんなを驚かせようと棚の後ろに待機して、そのまま寝てしまっていたようだ)
里志(ふふっ、ホータローの言うとおり、僕らしからぬ間抜けさだな)
ガタガタッ
「んっ……ちーちゃんっ……!」
里志「え」
摩耶花「いっ……ひゃぁぁぁぁんっ///………………え」ドサッ
摩耶花「……ふ、ふくちゃん!? い、いいいいいいつからいたの? わわわわわたし気になります!」
里志「……」
里志「他人の決め台詞は勝手に使うべきではないよ。データベースとのお約束だ」
33 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/03 01:37:17.59 phbiiMRH0 30/30終わりです。
眠いな、寝よう。