1 : 以下、名無し... - 2011/12/09 20:38:13 cmQ72tNN0

「クラスメイトに『クリスマスは誰と過ごすの?』と聞かれたのだが、クリスマスとは、誰かと過ごす日なのか?」

「俺に聞かれてもな」

「私の記憶では、クリスマスというのは、イエスキリストの誕生日であり、その日は家族と共に静かに家で団欒する・・・・という感じなのだが」

「ふむ。お前は、多分、アメリカ、イギリスなどのキリスト教国のクリスマスをイメージしているのだろう」

「何、日本は違うというのか?」

「ああ、違うな」

「ほう、その違いを教えて欲しいものだ」

「いいだろう」

元スレ
女「クリスマス、が近づいているらしい」男「ほう」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1323430693/

6 : 以下、名無し... - 2011/12/09 20:44:16 cmQ72tNN0

「先ずは、その、『静かに』という部分だな」

「違うのか」

「周りを見てみろ。イルミネーション、クリスマスソング。色々なもので彩られている」

「色々」

「やめろ、抜くな」

「悪かった、先に進んでくれ」

「・・・・・まあ、なんだ。日本のクリスマスは、五月蝿い」

「確かにな。クリスマスケーキ、というのが特殊だと思うよ、私は」

「普通はクリスマスプディングだものな」

「ふむ・・・・日本のクリスマスは賑やかにするものなのか。じゃあ、友達と過ごすのが普通なのかな」

「ところが、違うんだよ」

「? 何故だ」

「日本は先進国でも類を見ない程の、性社会だ」

「性社会? ああ・・・性への貞操概念が薄い、ということか。確かにな」

「まあ、つまりクリスマスも、そういうことだ」

8 : 以下、名無し... - 2011/12/09 20:50:26 cmQ72tNN0

「というと? クリスマスも・・・・その、なんだ言い辛いが、援助交際、か」

「違う違う。そういうことじゃない」

「ううむ? なんだ、犯罪シーズン、と言う事ではないのか」

「シーズンは季節じゃないのか?」

「ノリだ」

「ノリか」

「じゃあ、何なのだ? 五月蝿い、性、と来たら」

「それは、単刀直入に言うと、彼氏彼女云々、だな」

「ふむ。」

「そして、雄しべ雌しべ云々をする、と」

「ほう、そういうことか」

「日本のクリスマスは、今そういうことなのだ」

「理解し難いな」

「そうか? 好きな人と一緒にいたい、という気持ちの現われで有るような気がして、多少の同情というのは出来るが」

「私は、少し下品だと思うがね」

10 : 以下、名無し... - 2011/12/09 20:58:42 cmQ72tNN0

「確かにな、その気持ちは分かる」

「と言うことは、だ。かの友人が、私に聞いてきた『誰と過ごすの?』という言葉は」

「まあ、彼氏、またはそれに準ずる人、そういう人がいるのか、ということだな」

「ふぅむ」

「どうした」

「あそこで、お前のことを話していたら、とか思っていてね」

「はは、俺とクリスマスを過ごしたいのか?」

「不服か?」

「むしろお前のほうが不服じゃないのか? 家族と共に過ごすのが、鉄板なのだろう?」

「”家族同然”」

「便利な言葉だな」

「一緒にいて、楽しい、と思った人とこそ、一緒に過ごす価値があるというものだろう?」

「・・・・・そうだな」

「ところで、聞きたいことがあるのだが」

「何だ? いきなりだな」

14 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:04:34 cmQ72tNN0

「・・・・・・・クリスマス、予定はあるかな?」

「無いな。誰かさんの為、と言わんばかりに」

「ふふっ、じゃあどうだ。私と一緒にクリスマスを過ごさないかい?」

「・・・・・願ったり叶ったりだ」

「はぁ・・・良かったよ、断られなくて」

「断る理由が無いね」

「そうだ、いいことを考えた」

「どうした」

「クリスマスイブから一緒に過ごさないか・・・?」

「夜を一緒に、と?」

「べ、べつに、その、性、的な、事をしたいのではないからな」

「分かってるさ」

「そ、そうか」

「じゃあ、12月24日、約束だな」

「ああ、約束・・・・・ね」

20 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:11:34 cmQ72tNN0

__________________________________

「・・・・・・・・午後6時か」

「そろそろかな」

「ああ、済まない、待たせたかな?」

「いいや、待っていない・・・・・というのは嘘になるかな」

「準備に手間取ってしまって・・・ね」

「女性が準備に手間が掛かるのは、仕方のない話、さ」

「理解があって助かるよ」

「しかし、随分とお洒落を、してきたようだね」

「変、か?」

「いいや、クリスマスを一緒に過ごす女性がこんなに可愛くて、なんだか申し訳ないね」

「誰に申し訳ないんだ」

「・・・・・・・まあ、世界中の男性、かな」

「っ・・・・話をふくらませすぎだろう」

「顔が赤いぞ」

21 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:15:57 cmQ72tNN0

「・・・・・ふぅ・・・・人が多いな」

「まあ、なんと言ったってクリスマスイブ、人が一番多い日だろう」

「・・・・・そうだな」

「ま・・・・俺もこういう人ごみは、苦手だ」

「早く人ごみを抜けて、広いところへ出よう・・・・・」

「そうだな、ここからだと・・・・・・」

「む、あそこに公園らしき場所があるが」

「公園か・・・・・」

「どうした、何かあるのか?」

「いや、何でもない。行ってみよう」

「・・・・・・ああ」

「それにしても、人が多い・・・・・」





23 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:22:47 cmQ72tNN0

「―――――着いた、な」

「ふむ・・・・予想通り、というところか」

「・・・・・・公園も人が多いとは。聞いていないぞ」

「俺らも、公園へ来ようとした。まぁそういうことだ」

「世に言うカップルの、愛の巣、ってことか」

「ああ、そうだ」

「移動する、か・・・・・・」

「行く宛が有るのか?」

「・・・・・あ、今思いついた」

「ほう、そうなのか」

「私が一度だけ行ったことのある、結構いい場所だ」

「・・・・・期待していいのかな?」

「その場所が、変わってないと良いが、ね」

「時間は時に、憎たらしいな」

「そう、だな」

26 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:30:50 cmQ72tNN0

「――――――――――――ふぅ」

「――――――――結構遠いから、な」

「遠いのか」

「まあ、な」

「向かってる方向からして、大体行く場所が想像出来そうでもあるが」

「まあ、まだ何も言わないでくれよ。お楽しみに取っておいてくれ」

「ああ、分かってるよ」

「悪いな」

「なぁに、お前と一緒なだけで楽しいから、それでいいのさ」

「・・・・・また、そういうことを言う」

「はは、また顔が赤いぞ?」

「誰がさせたんだ、誰が・・・・・」



27 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:37:56 cmQ72tNN0

「――――そろそろかな」

「登ったな、結構」

「む、遊歩道が出来てるのは此処までか。ということは、此処が、目的地かな」

「が、違うのだよ」

「秘密の抜け穴、みたいなものがあるのか・・・?」

「抜け穴、というかどうかは分からないが。まぁ、そういうことだ」

「ほう・・・・ワクワクしてくるな」

「ワクワク・・・? 疲れてないのか?」

「なぁに、山登りくらい楽な上に、男はこういうのが好きなのさ」

「冒険好き、というわけか?」

「男、だからな」

「男、だからか」

「さ、まだ進むのだろう? 早めに行こうじゃないか」

「ああ、行こうか」

31 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:46:55 cmQ72tNN0

「此処、さ――――――――」

「・・・・・・・・・・凄いな」

「どう、だ? こういうのも、偶には良いだろう?」

「ああ・・・・・最高だ」

「人間の作った人工の光・・・・・間近で見ると、なんとも感動を感じ得ないが」

「・・・・・遠くから見ると、綺麗に見えるのは、星を連想させるからだろうね」

「星、か。人工の光が発達したせいで、星ははっきりと見えないな」

「光害、だっけか」

「ああ、そういう呼び名だったかな」

「此処も、結構高い山だが、星があまり見えない・・・な」

「そう、だな・・・」

「悪い、話を暗くさせてしまったな。お前の連れてきてくれたところは、とても素晴らしいよ」

「そうか?・・・・・照れるな」

「中々、こういう場所を知っている人間、というのも居ないだろう。何で知ったんだ?」

「む・・・・うん、そうだな」

33 : 以下、名無し... - 2011/12/09 21:53:19 cmQ72tNN0

「何だ? 言いたくなさそうだが」

「いや、その、迷って・・・・・な」

「・・・・・ぷっ」

「あっ、そんな笑い方されるなんて心外だぞ」

「わ、悪いな・・・お前が迷う姿・・・・見てみたかったなぁ」

「面白いものじゃない」

「他人の戸惑う姿は、傍から見れば面白いものだよ」

「全く・・・・・」

「ごめんごめん」

「仕方ない、許す」

「はは、有難う」

「ところで、小腹は空いていないかい?」

「お、何か有るのかな?」

「欲しい?」

「ああ、欲しい」

37 : 以下、名無し... - 2011/12/09 22:05:34 cmQ72tNN0

「なら、進呈して進ぜよう」

「有難い」

「ほら、味噌汁だ」

「ほう・・・・温まる良いチョイスだな」

「味噌汁・・・というのもどうかと思ったのだがね」

「いいや、味噌汁は何時食べても美味しい。朝だけ、というのもおかしいと思うぐらいにね」

「そうだな。味噌汁は、いい食べ物だ」

「お、そこに良い感じに木が倒れてるじゃあないか。そこに座って食べようか」

「そうだな」

「――――ふぅ、暖かい」

「美味しいか?」

「ああ、美味い」

「良かった」

「心の底から温まる感じだ」

「ふふ、なら良かった」

40 : 以下、名無し... - 2011/12/09 22:18:43 cmQ72tNN0

「ふぅ・・・・・・」

「ふぅ・・・・・・」

「そろそろ、25日になるんじゃないのか?」

「もうそんな時間か」

「早いものだな」

「特に、好きな人と一緒にいるときは・・・・とか」

「・・・・・・恥ずかしく無いのか?」

「正直、恥ずかしい」

「・・・・・・・・・夜でよかった」

「・・・・・私もだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・顔が、近いぞ?」

「近づけてるんだよ」

「む・・・・・・」

45 : 以下、名無し... - 2011/12/09 22:27:05 cmQ72tNN0

「クリスマスはこういうふうに過ごすものなんだろう・・・?」

「ん・・・・まぁ・・・・そうだけどな・・・・・」

「じゃあ・・・・・・・私もその、流行に乗らせてもらおうかな」

「――――――――――――――――っ」

「んっ――――――――――――――――――――――――」




「・・・・・・・いきなり、か」

「・・・・不意打ち、と言う奴だ。効果的だろう・・・?」

「まぁ、そうだけど。」



「ふふっ、このタイミングで言うのもアレだけど」

「ん? 何だ?」


「メリークリスマス」

「・・・・・・メリークリスマス」
~fin~

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