マミ「はぁ……」
QB「どうしたんだい、マミ。元気がないね」
マミ「わたしのネーミングセンス、一向に鹿目さんたちにウケが良くないのよ」
QB「君のネーミングセンスというと、『ティロ・フィナーレ』とか『円環の理』とかかい?」
マミ「後者は言いがかりよ! あれはあの世界では一般的な表現で……。まあいいわ。とにかく厨二っぽいって言われて……」
QB「厨二? その表現は初耳だね」
マミ「う~ん、何て言うのかしら……。実例を挙げるから理解して。抽象化は得意でしょう?」
QB「出来るか分からないけど、言ってごらん」
元スレ
マミ「キュゥべえ厨二病説」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1323446089/l50
マミ「腕に包帯を巻いて『今日は左腕がうずきやがる……鎮まれ俺の邪気眼!』とか」
QB「腕が魔女に蝕まれているのかい?」
マミ「いえ、そういう設定で演じているだけよ?」
QB「何だ、本当は健康体なのか。訳が分からないよ」
マミ「あとは……皆が騒いでる中、窓の外を見て『この世界はくだらないな』とか」
QB「そんな世界でも、僕みたいに守ろうとしている者はいるんだけどね」
マミ「それと……『エターナルフォースブリザード、相手は死ぬ』とか」
QB「魔法少女に強力な必殺技があれば心強いだろうね」
マミ「あ~、ダメね。QBには分かってもらえないみたい」
QB「人間の感情というのは理解しがたいなあ」
マミ「……」
QB「どうしたんだい、マミ」
マミ「ねえ、QB。わたしが鹿目さんの役をやるから、ちょっと勧誘の練習してみない?」
QB「練習? まぁやってもいいけど」
マミ「じゃあ、鹿目さんがとっても困った状況にあるっていうシチュエーションね! ……ひどいよ……こんなのって……あんまりだよ……」
QB「(……)。諦めたらそれまでだ」
マミ「QB!?」
QB「でも、君なら運命を変えられる。避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。その為の力が、君には備わっているのだから」
マミ「……」
QB「だから僕と契約して、魔法少女になってよ」
マミ「いいわね。じゃあ次は、鹿目さんが力強く願い事を言うっていうシチュエーションで。QB、わたし魔法少女になる」
QB「あまたの世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みであろうと叶えられるだろう」
マミ「本当だね」
QB「さあ、鹿目まどか、その魂を対価にして、君は何を願う……?」
マミ「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」
QB「そ、その祈りは――! そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない! 因果律そのものに対する反逆だ! はっ……まどか……君は本当に神になるつもりかい……?」
マミ「OK! いい感じね」
QB「で、この小芝居に何か意味はあるのかい?」
マミ「改めて意識してみると、QBの言い回しって案外厨二っぽいのね」
QB「厨二の意味が分からない僕にそう言われても……」
マミ「『世界の運命』、『因果の特異点』……どれも厨二病患者が好きそうなワードね……」
QB「マミ、僕を置いていかないでくれないか」
マミ「これはわたしの厨二キャラを払拭できるチャンスかも……!」
翌日
マミ「(とはいえ、そう感じるのがわたしだけだったら困るわ……。まずはQBの言い回しが本当に厨二っぽいのか確認しないと)」
まどか「マミさーん」
マミ「あら、鹿目さん」
まどか「聞いて下さいよ。今駅前でパンのセールやってたんですけど、ちょうどわたしの前で売り切れちゃって……」
マミ「それは災難だったわね。でも仕方ないわ。それが世界の運命だと思って」
まどか「マミさん、世界の運命ってwwwww」
マミ「(取りあえずこのワードは通ったみたいね!)」
まどか「そうそう。その後駅の方に行ったら昼間から酔っぱらったおじさんが切符ないのに無理やり改札機通り抜けようとしてて、駅員さんに怒られてました」
マミ「ふーん。因果律そのものに対する反逆ね」
まどか「ウェヒヒヒwwwwマミさん今日調子いいですねwwww」
マミ「(うんうん、この調子!)」
まどか「その後杏子ちゃんに会って、せっかくだから一緒にマック寄ったんです。そしたら杏子ちゃんハンバーガー五個も食べて」
マミ「佐倉さんったら、食欲がエントロピーを凌駕しているわね」
まどか「エwンwトwロwピーwwwwww」
マミ「(イエス!)」
まどか「マミさんwwwwわざとやってるなら勘弁してくださいwwwwお腹痛いですwwwwww」
マミ「そうね、ごめんなさい。少し冗談が過ぎたわ」
まどか「もー、本気で言ってたらどうしようって思いましたよwwwww」
マミ「(QBは人間じゃなくて、初登場時からあのキャラだったから皆違和感を覚えてないだけね。一度指摘すれば……)」
後日
さやか「マミさん、めっちゃうまっすよ!」
マミ「ふふ、ありがとう」
まどか「今日は、QBはいないんですか?」
マミ「ええ、ちょっとお散歩に行っているわ。ところで、皆QBの喋り方について思うところはないかしら」
まどか「QBの喋り方……?」
さやか「なーんか妙に理屈っぽいよねー。あのルックスで」
マミ「わたし、あの子ちょっと厨二入ってると思うのよ」
まどか「QBが厨二?」
さやか「そんなwwwマミさんじゃないんだからwwwww」
マミ「まあ聞いてくれる? 例えば『エントロピーを凌駕した』とかそれっぽくない?」
さやか「言われてみれば……」
マミ「『僕と契約して魔法少女になってよ!』っていうのも、よく考えたら決め台詞として使っているわ」
まどか「確かに……」
QB「何の話をしているんだい?」
まどか「きゃっQB!?」
さやか「いきなり現れないでよ!」
QB「陰口とは感心しないなぁ。それともこの国の少女は皆そういった性質を持っているのかい?」
マミ「聞いてたんじゃない。というか、厨二病が悪口だっていうのは分かるのね」
QB「さすがにその言葉がマイナスのイメージを持つことくらいは推測できるね」
さやか「っていうかマミさんの口から言われてもよく分かんないよ! QB、何か喋ってみて!」
QB「いきなり喋れと言われても困るんだけどね」
まどか「じゃあさ、『感情』について語ってみてよ!」
QB「いいけど……。僕たちの文明では、感情という現象は極めて稀な精神疾患でしかなかった。だから君たち人類を発見した時は驚いたよ。全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね」
マミ「ほら! 『感情という現象は極めて稀な精神疾患でしかなかった』とかそうでしょ!」
さやか「う~ん……」
まどか「言われてみればそういう風に捉えられなくもない、かなぁ……」
マミ「何よ、あまり反応がよくないじゃない……」
さやか「いやー、確かに言葉自体は厨二っぽいけど」
まどか「QBが言うと何か馴染んじゃうんだよね」ティヒヒ
マミ「!?」
QB「へぇ、同じセリフでも僕が言うのとマミが言うのじゃ印象が変わるのかい。じゃあマミ、試しに僕と同じセリフを言ってごらんよ」
マミ「え、それは……」
さやか「おぉっ!?」
まどか「マ・ミ・さん! マ・ミ・さん!」
マミ「わ、わたしたちにとって感情という現象は極めて稀な精神疾患でしかないのよ……」
まどか「ティーヒヒヒヒヒッwwwwwwww」
さやか「マミさんには負けるわwwwwww」
マミ「ちょっ、何でよ!」
さやか「極めて稀な精神疾患(キリッwwwww)
まどか「感情を持たないわたしカッコイイwwwww」
マミ「あなたたちが言わせたんじゃない!」
QB「マミは僕を貶めて自分の地位を回復しようとしたからね。そこから災厄が生まれるのは当然の摂理だ」
マミ「ほ、ほら! 『当然の摂理だ』って!」
まどか「だからQBが言うと様になるっていうか、似合うんですよ」
さやか「うんうん。第一人間じゃないQBが俺カッコイイしてもメリットないし」
マミ「それ言ったら、わたしだって魔法少女よ!?」
まどか「確かに最初らへんはそうだったけど……」ティヒヒ
さやか「もうマミさん身近な存在になりすぎたっていうか」
マミ「そ、そんな……」
さやか「そんなに落ち込まないで下さいよ。あたしたち、厨二なところも含めてマミさんを愛してるんですから!」
まどか「そうそう!」
マミ「そんなのやだー!」
翌日 学校
まどか「わぁー」
さやか「いいねぇー」
マミ「(鹿目さんに美樹さん。何をしているのかしら……?)」
QB「こんなのでいいのかい?」
さやか「うんうん、もう最っ高!」
マミ「何をしているの? QBも……」
まどか「あ、マミさん。わたしたちのクラス、文化祭で劇をやるんです! 今その脚本を作ってて」
マミ「へぇ、劇。いいわね」
さやか「今、熱血な黒騎士とクールな白騎士が話しているシーンを作ってるんですけど、白騎士のセリフをQBに考えてもらってるんですよ」
マミ「ふーん……って何でQBが!?」
さやか「わたしたち、昨日マミさんに言われて気付いたんです!」
マミ「!」
さやか「QBの言い回しって、すごくカッコいいんだって!」
マミ「……え?」
さやか「感情で突っ走っちゃう黒騎士に対して、冷静で合理的な意見を言う白騎士のセリフはQBが考えるのがぴったりなんですよ」
マミ「ちょっと見せてみて」
~~
黒騎士「白騎士、何故止める! 姫を助けに行くことが無駄だとでも言うのか!?」
白騎士「無駄とは言わないよ。でも、僕に言えるのは無謀すぎるってことだけだ」
黒騎士「姫の命は魔王の手中にあるんだぞ! もたもたしていられるか!」
白騎士「残念だけど、魔王にとっての姫は僕たちを滅ぼすための便利なツールの一つにすぎない。君が今から行って助け出すなんて不可能に決まっているじゃないか」
黒騎士「やってみないとわからないだろう!?」
白騎士「訳が分からないよ。どうして君はそんなに一人で行くのに拘るんだい?」
黒騎士「何!?」
白騎士「一人ではそれまでだ。でも、二人なら運命を変えられる。避けようのない滅びも、嘆きも、全部僕たちで覆せばいい」
黒騎士「白騎士、お前……。死ぬかもしれないんだぞ!?」
白騎士「僕らは条理を覆す存在だからね。どのような奇跡を起こしても驚くに値しない」
黒騎士「へっ……お前も馬鹿だな。……行くぞ!」
~~
さやか「どうです? カッコいいでしょ!」
マミ「……確かにそうなのかもしれないけど、どうしても白騎士がQBの顔で再生されてしまうわ……」
さやか「ダメです! 白騎士は金髪ロン毛白甲冑高身長イケメンで再生してください!」
マミ「……イケメン……イケメン……」
さやか「どうです?」
マミ「なんだかカッコよく思えてきたわ……」
さやか「でしょ?」
放課後
マミ「はぁー。同じセリフでもわたしが言うのとQBが言うのじゃ全然評価が違うのね……」
QB「そもそも種族が違うわけだし、当然とも言える」
マミ「そうだけど~……」
QB「おや、あそこにいるのは暁美ほむらじゃないかい?」
マミ「本当だわ。暁美さーん」
ほむら「巴マミ」
マミ「今帰り?」
ほむら「ええ」
マミ「一緒していいかしら」
ほむら「どうぞ。余計な奴がいるのが気になるけど」
QB「ひどい言われようだね」
マミ「暁美さんはホントにQB嫌いねえ」
ほむら「あなたって鋭いわ」
QB「訳が分からないよ」
マミ「……!」
QB「マミ、何かを思いついたからといって一人でニタニタするのは止めた方がいい」
マミ「ね、ねえ! 良く考えたら暁美さんも……」
ほむら「?」
マミ「ちょっと厨二っぽいところあるんじゃないかなー……」
ほむら「……」ジロッ
マミ「……なんて」ハハハ
ほむら「そうだとしたら何だというの」
マミ「その割にわたしに比べて市民権得てるなー……とか」
ほむら「……」
マミ「わたしの『ティロ・フィナーレ』とかは笑われるのに……」
ほむら「わたしが市民権を得ているなんてことはないわ」
マミ「そ、そうなの?」
ほむら「初登場時からまどかに『あなたは鹿目まどかのままでいればいい』と言ったら、美樹さやかには『サイコなデンパさん』と言われ、
一貫して冷静な態度を保っていれば佐倉杏子に『てめえそれでも人間か?』と罵られ、終いには未来から来たと明かしたらまどかにすらドン引きされたわ」
マミ「えっ……。でも、暁美さんに対してそんなイメージはないわ」
ほむら「かもしれないわね。それに、そこのQBだって扱いがいいわけじゃないでしょ?」
マミ「確かに……現にあなたに恨まれているものね」
QB「その扱いは理不尽だ」
ほむら「巴マミ……同じ魔法少女のよしみで一つ教えてあげる」
マミ「な、何?」
ほむら「わたしやQBにあって、あなたにないもの……それは覚悟よ」
マミ「覚悟?」
ほむら「わたしはまどかに守られるわたしじゃなくて、まどかを守れるわたしになりたいという願いで契約したわ。今のわたしがクールキャラなのも全てその為」
QB「僕も宇宙の寿命を延ばすという目的の為を最優先しているからね」
マミ「……」
ほむら「あなたが厨二キャラをつき通す信念と矜持を持っていれば、評価は自ずとついてくるはずよ」
マミ「わたしは……選択の余地のない状況で契約した……。だから正直魔法少女としての生活は辛くて……
自分が正義の味方だという思いだけがわたしを支えていた……。わたしの憧れは子どもの頃夢に見てた魔法少女……その為に必殺技も決めポーズも考えたんだった……」
ほむら「それがあなたの最初の気持ち」
マミ「暁美さん、ありがとう! わたし、大切なことを思い出した気がする!」
ほむら「そう」
それからしばらく経って……
マミ「今日という今日は速攻で片付けるわよ!」
使い魔「クェックェッ」
マミ「くらいなさい!」ババババババ
使い魔「ピョッ!?」
さやか「おー! マミさんいいぞー!」
マミ「わたしの『魔弾の舞踏』は誰にも捉えられないわ!」
まどか「マミさん……」
マミ「あなたが魔女ね!」
魔女「……」
マミ「悪いけど、一気に決めさせて――」
魔女「!?」
マミ「もらうわよっ!」ブンッ
魔女「グワアア」
マミ「磔刑に処せられなさい!」
さやか「……」
魔女「ウー」バタバタ
マミ「人を呪う因果からあなたを解き放ってあげる……」ウィンク
まどか「くるよ!」
さやか「おおっ!」
マミ「ティロ――」キュイイイイン
魔女「ウーウー」バタバタ
マミ「フィナーレ!!!」バシューン
魔女「グワアアアアア」
さやか「やったー!」
まどか「マミさん!」
マミ「ふー」カチャ
まどか「マミさーん!」
さやか「何か今日のマミさんすごくカッコ良かった!」
マミ「そう?」
まどか「紅茶のポーズも決まってますよ!」
マミ「ふっきれたってとこかしらね。もう何も恐くない!」
おわり
さやか「でも『魔弾の舞踏』はちょっとアレですねwwwwww」
マミ「!?」
「厨二」的なものが一切ない状態は何の面白味もない、
個人的には嫌いな言葉です。
ですが、SSのネタにすると便利で面白い、
「厨二」なマミさん最高となります。
もう、訳がわかりません。