1 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:35:29 hGfqEKgo 1/36

「嫌だよ、男!死んじゃヤダ!」

「…」

「ねぇ、返事してよ、男!」

「…」

「目を開けてよ、男!」

元スレ
幼馴染「どうしてこんな事に…」男「…」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1343219729/

2 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:35:53 hGfqEKgo 2/36

看護師「あの…ちょっとすみません」

「な、何ですか?」

看護師「病室ではお静かに願います」

「で、でも!男が!男が目を覚まさないんですよ?」

「…」

看護師「て言うか、あの…お見舞いは明日にしてもらえますか?」

看護師「もう面会時間過ぎてますし…」

3 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:36:40 hGfqEKgo 3/36

「そ、そんな…」

「イヤです!私、男が目覚めるまで、ここに居ます!」

看護師「あの、男さんは大丈夫ですから…」

「で、でも!」

看護師「麻酔で寝てるので、今は起きませんから…」

看護師「それに…」

「もう、ちょう…なんでしょう?」

「さっき、廊下で看護師さん達が話してるの、聞きました!」

4 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:37:20 hGfqEKgo 4/36

看護師「は、はい、盲腸ですよ」

「…それは」

「もう、ちょうやばいって事なんでしょう?」

看護師「はいぃ?」

「男!起きてよ、男!私、男の返事をまだ返事を聞いてないよっ!」
ユサユサ

看護師「あ!あの!そんなに乱暴に揺らすと、手術痕が!」

「うわーーーん!男ー!」

5 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:37:52 hGfqEKgo 5/36

看護師「け、警備員さーん!ちょっと来てくださーい!」



警備員「あのーお嬢さん?ちょーっとこっちに来てもらえるかな?」

ガシッ
「イヤ!離してっ!男っ!」

「イヤーーー!」


看護師「あの子、男君と同い年くらいに見えたけど…」

看護師「盲腸も知らないのかしら…?」

看護師「まさかね?」

6 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:38:21 hGfqEKgo 6/36




「あ、幼。久しぶり1週間ぶりくらい?」

「…」

「すぐ見舞いに来るかなーと思ったけど」

「…」

(入院した日に騒ぎすぎて)

(1週間、出禁食らってたなんて、言えない…)

7 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:38:55 hGfqEKgo 7/36

「ん?何で何も言わないんだ?」

「うぅ…」

「ん?泣いてるの?」

「もしかして俺が死ぬかと思ったとか?まさかな」

「思ったよ!バカッ!」

「何で泣きながら怒鳴るんだよ、幼」

「え?だって盲腸だよ?」

8 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:39:15 hGfqEKgo 8/36

「そ、そうだよね。盲腸だよね…」

「急性虫垂炎の事だよね」

「あ、あぁ、そうだな」

「最近は手術しなくても良い場合もあるんだってね」

「あぁ、炎症が軽度なら、抗生物質で何とかなる場合もあるんだってな」

「…なら、何で男は緊急手術だったの?」

「…えー言わなきゃ駄目?」

9 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:39:37 hGfqEKgo 9/36

「言って!」

「絶対怒らない?」

「怒られるような事なの?」

「うーん。幼は怒りそう」

「怒らない!絶対怒らないから、言ってみて!」

「既に怒ってるじゃん…」

10 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:40:08 hGfqEKgo 10/36

「怒ってない!」

「ほら、大きい声出さないでよ」

「病院ではお静かに?」

「怒ってないのに、怒ってるとか言うからでしょ!」

「ほら、早く言って!」

「落ち着いてよ、幼。手術痕がまだ痛いんだ」

「あ、ご、ごめん…」

11 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:40:35 hGfqEKgo 11/36

「それじゃあ、正直に話すけどさ…」

「うん」

「落ち着いて聞いてよ?」

「わかった」

「実は倒れる4日前くらいからさー」

「結構お腹痛かったんだけど」

「幼とのおでかけが楽しみすぎてさー」

「ちょっと我慢してたんだよね」

「…」

12 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:41:17 hGfqEKgo 12/36

「それで一週間前…」



「ねぇ、男!最初はあれに乗ろうよ!」

「お、おう。観覧車か…」

「俺、高い所苦手なんだけどなー」

「知ってるよっ!」

「知ってて、あれを選ぶかー」

「選ぶよっ!」

13 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:41:55 hGfqEKgo 13/36

「普通、最後に乗るもんじゃね?」

「私は普通なんて言葉に縛られないよ!」

「最初からクライマックスだな…」

「期末テストで勝負しようって言ったの、男じゃん!」

「私が勝ったんだから、今日は男に拒否権ないよ?」

「わかってるよー」

「さぁ、テンション上げて行こうっ!」

「お、おぅ…」

14 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:42:35 hGfqEKgo 14/36

「なーんか、若干テンション低くない?」

「そ、そんな事、ないぞ?」

「なーんか、顔色悪くない?」

「まぁ、今から強制で高い所に上るんだからな」

「顔色も悪くなるってもんよ」

「でも乗るけどね?」

「ですよねー」

「さぁ!行こう!あの大空の彼方へ!」

「別に空は飛ばないからね?」

「一定の高さまでゆっくり上がって、ゆっくり下がるだけだからね?」

15 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:43:15 hGfqEKgo 15/36



係員「さぁ、どうぞ。可愛らしいカップルさん」

「いやぁ、カップルだなんて、照れてしまいますな?」

「お、おぅ…」

係員「か、彼氏さん、大丈夫ですか?顔が青いですよ?」

「おぉふ。高い所、若干苦手なんですけど…」

「男の子なんで、頑張ります!」

「頑張らせます!」

係員「そ、そうですか、それじゃ、ごゆっくり?」

16 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:44:09 hGfqEKgo 16/36



「観覧車なんて、いつ以来だろうね?」

「多分、幼稚園の時に乗った時以来じゃないかな…」

「あの時、幼がてっぺん近くで大はしゃぎしたから」

「ゴンドラが揺れて、大変だったじゃん」

「そんな事あったっけ?」

17 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:44:39 hGfqEKgo 17/36

「俺が高所恐怖症になったのは、多分その時だからな…」

「へー」

「軽いリアクションありがとうございます」

「上がってきた!ね、上がってきたよ!」

「そりゃあ、上がるだろうさ」

「わぁ…高いね!男!」

「高いなぁ…」

18 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:45:20 hGfqEKgo 18/36

「そろそろてっぺんだよ、男!」

「…おぅ。目も回る高さだな…」

「それを言うなら、目もくらむ高さ、でしょ?」

「そうか、目もくらむ高さ…か」

「…」

「…」

19 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:46:03 hGfqEKgo 19/36

「…ね、男」

「…ん?な、何だ?」

「私、男に伝えたい事があるんだ…」

「…ン」

「…」

「わ、私ね…小さな頃から男の事が…」

「…」

20 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:46:39 hGfqEKgo 20/36

「す、好き…なの」

「…」

「お、男は私の事、どう思ってる?」

「…」

「…ね、ねぇ男、聞いてる?」

「…」

「ちょっと、男、寝てるの?」
ユサユサ

21 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:47:16 hGfqEKgo 21/36

「男?どうしたの?」

「…ィ…」

「え?何?」

「…」
グッタリ

「男!男っ!」

「下ろしてー!誰か!助けて!男が死んじゃう!」
ガタガタ

22 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:47:54 hGfqEKgo 22/36



係員「さ、さっきの可愛らしいカップルさんが乗ったゴンドラが…」

ユサユサガンガン

係員「めっちゃ揺れてる叩いてる!!!!」

「開けてー!早く下ろしてー!」

係員「そしてめっちゃ叫んでる!?」

23 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:48:32 hGfqEKgo 23/36



係員「ど、どうしたんですか?」

「早く下ろしてって言ったのに!」

係員「そう言われても、スピードを変えるとか無理なんで…」

「早く下ろしてくれないから、お、男が!死んじゃった!」

「…シ…ィ」

「え?男?大丈夫?今、何て言ったの?」

「…シンデ…ナイ…」

24 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:49:13 hGfqEKgo 24/36

「しっかりして!腹の底から声出して!」

「…ハラ…イタイ…」
ガクッ

「男が…し、死んだ!?」

係員「い、いや、確かに気を失ったみたいですけど」

係員「死んではいないと思います!」

「早く199番を!」

係員「お、落ち着いて下さい!それ、ギリシャの消防の番号ですから!」

「この際、消防でも何でも良いよ!早く呼んで!」

係員「すぐ119番通報して、救急車呼びますから!」

「男!しっかりして!」

25 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:49:49 hGfqEKgo 25/36




「まぁ、そしたらさ」

「盲腸だったんだけど」

「こじらせて、腹膜炎になっちゃってたって訳なのさ」

「ふくまくえん?」

「おう。すげー痛いんだぜ?」

「今ももう、超ヤバいくらい痛いぜ?」

「…」

26 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:50:35 hGfqEKgo 26/36

「手術して一週間にもなるのにさー」

「身体起こすのが嫌になるくらい痛いんぜ」

「私のせい…だよね?」

「え?」

「私が、遊園地なんかに誘ったから…」

「いや、腹が痛いのを我慢してた俺が悪いだろ」

「わ、私が…私が男を、こんな風に…」

「こんな風って…大丈夫、2週間もすれば退院だから」

27 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:51:31 hGfqEKgo 27/36

「私が男を不幸に…しちゃった」

「ちょっと、聞いてる、幼?」

「ご、ごめんね、男。もう私、男に近付かないから…」
ガタッ

タタッ

「は?幼、待って!」
ガタタッ

「ふがっ!痛ってぇぇえ!」

「こんちくしょうがあぁぁぁ」

タタタッ

28 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:52:13 hGfqEKgo 28/36

「幼!ちょっと、待って!待って下さい!」

「…」

ダダダッ
「がぁぁ!待てって言ってんでしょうがぁぁあ!」
ガシッ

「!」

「話しを…最後まで…ちゃんと…聞け、幼…」

「男、顔色が…」

「いいから聞いてくれ!」

「う、うん」

29 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:52:53 hGfqEKgo 29/36

「俺の病気は別に不治の病って訳じゃくて」

「たまたまそうなっただけだからさ」

「幼が遊園地に誘ってくれた事とは関係ねぇからさ」

「お前が…幼が居なくなったら、それこそ俺は不幸になっちまうよ」

「俺の前から居なくなるとか、そんな事言わないでくれよ」

「わ、わかった…」

「俺も、幼の事が、昔から好きだったんだぜ…」

「え?」

30 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:53:31 hGfqEKgo 30/36

「い、今のが…」

「か、観覧車で言えなかった、俺の…返事…」

「ほ、本当に?」

「ホ…ン…ト…」
ガクッ

「男?大丈夫?ねぇ?」

「…」

31 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:54:07 hGfqEKgo 31/36

「だ、誰か!誰か助けて下さい!」

看護師「ど、どうしたんですか?」

「い、急いで911番に通報してください!」

「お、男を病院に連れていかなくちゃ!」

看護師「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい!」

看護師「911番はアメリカの緊急通報番号ですから!」

看護師「それにここが病院ですから!」

32 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:54:46 hGfqEKgo 32/36




「うぅ…」

「退院、延びちまったなー」

「すげー無理して走っちゃったから」

「ご、ごめんね、男」

「いや、まあ、アレだよ」

「なに?」

33 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:55:52 hGfqEKgo 33/36

「再手術にはなっちゃったし、退院も延びたけど」

「俺の気持ち、伝えられて良かったよ」

「あ、あの…」

「昔からの癖だけどさ」

「え?癖?」

「学校の成績は良いのに」

「たまにとんでもない勘違いして暴走する癖の事だよ」

34 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:56:33 hGfqEKgo 34/36

「これからはあんまり暴走するなよ?」

「ぼ、暴走なんてしてないし!」

「ほら、病室ではお静かに?」

「…」

「俺は大丈夫だから」

「あ、うん…」

35 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:57:31 hGfqEKgo 35/36

「退院したらさ」

「うん…」

「また遊園地行こうな?」

「う、うん!」

「観覧車は最後な?」

「えー?」

36 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2012/07/25 21:58:02 hGfqEKgo 36/36

「いっぱい遊んで、楽しんで、笑ってさ」

「うん?」

「最後に、また改めて俺の気持ちを伝えるから」

「…それでいいかな?」

「…うんっ!」

「男っ!大好きっ!」

「ま、待て!幼!今抱きつかれたら、また…」

ガバッ!

「ギャーーーーーー!」



おわり

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